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衆議院議員(
佐瀬昌三君) この第八条が訓示的
規定であるということと、
刑法三十五条の
関係がどうなるかという点については何ら矛盾するものではないと申上げたいのであります。訓示的
規定であるが故に
鉄道公安職員はこれだけ守ればいいというのでは断じてないのでありまして、すべで憲法以下それぞれ、法令の命ずるところに從わなければならんのは当然であります。又国民もそれに服從する、国民の作為不作為が要求される場合はやはり同様に覊束されるものである、これは
法律の
一般性から見て当然であります。
さてこの八条に基いて
鉄道公安職員が
武器を
使用した場合は、
刑法三十五条の法令による
行為であるかどうかということにつきましては、これは勿論第八条に基いた行動はやはり法令による
行為であり、
刑法の
解釈においては何らさように
解釈して矛盾はないと
考えます。ただ然らばそれが当を失した場合にはどうなるか。御承知のように
刑法三十五条には、三十六条以下の過
剩防衞とか過剩避難に相当する
規定はないのであります。併しながらこれは
刑法の理論としてやはり三十五条の正当
行為もそれが当を失しているという場合には或いは訓示
内容として
犯罪になり、或いは又超過
行為であるということであるならば過
剩防衞等に準じて
解釈すべきものというように定説がな
つておるように私は承知しております。でありますから三十五条の適用によ
つて本法第八条による
行為は当然
刑法の問題に
なつた場合にはさように規制されて行くものである、かように
解釈して差支えないと思います。ただ問題は先程も
鬼丸委員が
指摘されたように、急迫不正の侵害という文字がこの第八条にはないのに、
鉄道公安職員がただ自己又は他人の
生命又は
身体の
保護に関してやつた場合はどうなるかという御疑問は、これは一応御尤もであると思うのであります。併しながら大体これは
鉄道犯罪の
捜査の過程における出来事であります故に第八条は「この
職務を行うに当り」ということを謳
つております。然して又一方においては「やむを得ない必要がある場合」というふうに限定しております。つまり
鉄道犯罪を行うものがある場合にこれを
捜査するに際して「やむを得たい必要がある場合」というふうになるのであります、この字句の意義についてはこれ又相当いろいろな疑問があろうと思いますが、やはりやむを得ない
必要性ということはただ
拳銃を行使する、その外に手段がないというような
意味に限るべきではなくして、やはりこれも判例、学説等ですでに明確にされておりますように、いわば
武器を
使用することがその具体的な場合において相当である、いわゆる相当性がなければならんというふうに相成ることと
考えるのであります。要するに
犯罪捜査に当
つて、而も
生命、
身体という重大な法益を
保護するために尚且つ
必要性があり、而もそれが相当であるという場合に限
つてこれが
武器の
使用が許されるのだということになり、それが実質的にはやはり
刑法の問題に
なつた場合には三十五条或いは三十六条等の正当
行為なり、
正当防衞なりに概念的には一致すべき場合が多い。併しそれは先程猪俣
委員も言いましたようにそれが
犯罪になるや否や、
公安職員の行動が
犯罪になるや否や、この違法性を阻却するや否やいう問題に当面した場合に、それが初めて起る問題でありまして、第八条はそういう場合の起らないように、嚴に
武器使用を一定の基準によつでなさなければならんという訓示的なことを
海上保安庁法等と相並んでここに明確にしたというのが、この第八条の
立法趣旨である、かように御了承願います。