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1950-10-06 第8回国会 参議院 文部委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月六日(金曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育文化施設及び文化財保護に関す  る一般調査の件  (文化財保護の状況及び予算に関す  る件)  (教育職員免許法及び同施行法の実  施に伴う件)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれから文部委員会を開会いたします。  長らくの間参議院文部委員会が主になつて審議を重ねて参りました文化財保護法が、本年の八月の二十九日に施行されまして、同時に又委員の任命もありまして、法律案が成立いたしましたので、この際に新しく任命されました委員の方の御出席もありまするので、先ず委員の方の御紹介を申上げ、同時に我々が苦心して作り上げた法案でありまするから、将来の発足の上に、又それが施行される上において期待通りに進んで参りまするよう希望いたしますと同時に、我々がかねて抱いておりまする意見なども忌憚なく申上げ、又委員の方の御抱負なりも承わりたいと思つてこの機会を利用したのであります。そのつもりで一つ皆さんから御質問なり、御意見を頂き、又御希望も頂きたいと思うのであります。  先ず、それでは委員としては高橋委員矢代委員有光委員、一萬田委員細川委員の五名の方でありますが、一萬田委員細川委員は少し遅れて後で見えますが、只今ここにお見えになつておりまする高橋委員長外二名の方の御紹介を申上げます。(拍手)委員長から何かお話がありましようか。
  3. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 只今紹介を頂きました高橋でございます。当参議院を始めといたしまして、衆議院におきましても非常な御熱心を以て成立いたしました文化財保護委員会が、いよいよ八月二十九日を以て発足いたしまして、我々五人の者が委員に挙げられました。二十九日に集まりましてこの文化財保護法の精神を活かして忠実にこれを実施したいと思いましていろいろ協議を重ね、先ず第一に委員長の互選を行いましたところ、私甚だ不肖でありまして、又他に多少いたしております仕事もございますので、是非委員長だけは御免蒙りたいということを申上げたのでありますが、いろいろ事情がございまして、遂に委員長をお引受いたさなければならんことに相なりました。次に、最初は三年委員、二年委員、一年委員と三つに分れておりまするので、これを決めなければならないことになりましたので、矢代委員を三年委員といたしまして矢代委員の御承諾も得たのであります。三年委員は、即ち委員長事故ある場合には委員長を代理するということに相成つておりますることは御承知通りでございます。尚二年委員、一年委員につきましては、籔で定めると法はなつておりますので、これは百二十條でございますが、その規定によりまして籔で決めるということになつておるのであります。これは誠に法を無視したようで甚だ恐縮ではございますが、有光委員は種々なる事情がございまして、どうしても一年委員にして貰いたいという御希望がございまして、動かすことができませんでしたので、有光委員を一年委員といたしました。他の二人、細川委員と一萬田委員が二年委員になられたのであります。この点御了承願いたいと思います。当日は直ちに新聞記者諸君を集めまして、そこで委員長就任挨拶並びに近く実行いたしたいと思つております諸計画等お話いたしました。それから各方面参議院文部委員室を始めといたしまして、衆議院その外を歴訪いたしまして、挨拶をいたしたのであります。その後着々として実施に着手いたしておるのでございますが、誠に庁舎その外の点が遺憾な点が多いのであります。幸い文部省諸君もいろいろ協力せられまして、元の社会教育局長室、これを委員室に当てることにいたしまして、社会教育局長は元の視学官室に移りまして、これがためにとうとう日本芸術院長部屋に当てられておりましたところのものがなくなりまして、芸術院長は誠に気の毒な状態に置かれた次第でありまして、それから博物館に分室を設けることに相成つております。委員長は殆んど毎日そのいずれかに勤務いたすことになつておりますし、他の委員の方々もでき得る限り多く出席せられることになつておりますが、定例会議といたしましては只今のところ土曜日一日と定めております。尚必要あるごとに随時招集いたしてはおりまするが、定例の集会は土曜日一日といたしております。それから尚局長並びに部長、課長等人選に移りまして、これは比較的早くおのおの適材を得たと考えております。今日一緒に参つております森田文部省総務課長事務局長として就任せられることに相成つたのであります。その他の人事は省略いたします。何事をおきましても国民全般に呼びかけまして文化財保護の必要を強調するということが第一義と考えましたので、各都道府県の教育会社会教育課長、即ちこれが文化財保護課長になつておりまするので、この招集を行いまして、これに臨みまして私の考えを述べまして協力を求めた次第であります。それからこの無形文化財にも無論力を注がなければならんのでございまするが、これは当委員会の力だけでは誠に弱いことを感じましたので、只今開かれております日本学術会議に呼びかけまして、この学術会議協力或いは後援を得まして、講演会その他を開きたいと考えておるのでありまするが、これはまあ無形文化財のみに止りませんのであります。それから尚目下文部省では芸術祭を挙行いたすことに相成つておるのでありますが、この芸術祭無形文化財保護とは密接な関係のあることを知りましたので、保護委員会におきましてもこれと協力することに決定いたしまして、幾分の経済的な負担もいたすことにほぼ決定を見たのであります。  それから尚我々の先ず行わなければならんことはこの重要文化財調査であります。これも最善の力を盡しまして着々としてその緒に着いておるのでありまするが、併しながら御承知通りこれは非常に困難な事業でありまするので、今日までのところではこれぞという業績をまだ挙げることができませんのは甚だ遺憾なことでありまするが、各地方の先程申上げましたところの文化財保護課長その外の協力を得まして、是非これは近いうちに成果を挙げて参りたいと存じております。それからこれに関連いたしまして国宝の再調査を行わなければならん、真に国宝たるに値いするところのものを十分に調査して、重点的に保護を加えて行かなければならんという考えを持つておるのでございまするが、これには保護法が規定しておりまする専門審議委員人選に力を盡さなければならん、こう考えておりまするので、委員会はこの人選に今取かかつているのでございまするが、これが相当慎重を期さなければならんのでありまして、まだ本極りにはなつておりません。大体目鼻はついているのでございまするが、まだ確定というところへは参つておりません。最近に決定いたしたいと考えております。  それからこの委員会に属しておりまする博物館機構の改正を行わなければならんという機運に迫られておるのであります。実は博物館長も私が今までいたしておつたのでございまするが、委員就任いたしますると共に当然博物館長は解かれたことと考えます。それで博物館の最後の評議委員会におきまして、この機構のことを一応議しましたのであります。博物館の案をお示しいたしましたところが、いろいろ意見がございましたが、素直にこれが通りましたのでございます。今度の委員会が成立いたしましたにつきましては、更にこれを検討いたしたいと考えております。至急これを委員会にかけたいと考えておつたのでございまするが、博物館のことに明るい委員の方からして、博物館諸君十分協議を遂げて見たいという御意見がございましたので、一再ならず会見を遂げておられまするし、博物館の方でもたびたび会合を開いております。昨日も会議が開かれたというような有様でありまして、やがて以前の博物館案、それから又新らしく出来ますものなどを基にいたしまして、委員会におきまして十分検討を加えて参りたいと存じております。研究所につきましても同様でございます。  それからして予算の点でございまするが、これも誠に我々といたしましては遺憾な点が甚だ多く、計上いたしましたところのものが大分厳しい査定を受けたのでありまするが、まあここ最近は予算の確保に殆んど時間を割かれてしまつたというわけでございまして、事務局のみならず委員諸君もそれぞれいろいろ奔走いたして呉れられまして、まあ私は総理大臣に会いましていろいろ重要文化財保護の必要を説いて参りましたのであります。一万田氏は大蔵大臣お話をして下さつたということでありますが、甚だ遺憾な結果ではございましたが、四億二千万円、それからして補正予算におきましては五千万円、これだけに相成ると考えております。予算は乏しいのでありまするが、その範囲内におきましてできる限り効果を挙げて参りたいと存じております。まあ十応これまでの我々のやりました仕事は申上げたと考えまするが、尚私の言葉の足りませんところなどは、予算その外の点におきましては、局長から補わせることにいたしまして、何か御質問がございましたならば、どうぞお願いいたします。
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 予算その他のことで御質疑がありましたら……。
  5. 山本勇造

    山本勇造君 事務局の方から予算説明でもございますか。
  6. 森田孝

    説明員森田孝君) 只今参考にお手許へ昭和二十五年度補正予算及び昭和二十六年度概算事項をお配りいたしましたが、これは速記ちよつとお止め願つた方がよろしいと思いますが……。
  7. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を止めて。    午前十時五十九分速記中止    ——————————    午前十一時十分速記開始
  8. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて。
  9. 若木勝藏

    若木勝藏君 今御説明があつた次第でありまするが、大蔵省査定額は四億二千万円程度になつております。昨年度と今年度との比較におきましてこの問題を計算して見ますというと、補正予算の分を入れますと大体今年度は三億になるかと思うのであります。そうすると来年度において僅かに一億しか超しておらないような状態であるのであります。我々はこの法案審議に当つてつた途中幾多の、法隆寺の金堂の炎上を始めとして随分災害が続いている。果してこれだけの予算で以てこの保護事業が十分になされるかどうかということが非常に危惧される点だと思います。これは大蔵省査定額として出ているのでありまするけれども、実際において文部省としてはどれだけの要求をしたのでありますか、その点について伺いたいと思います。
  10. 森田孝

    説明員森田孝君) 最初に第一点といたしまして、本年度と来年度との比較の話が只今出たのでありますが、来年度災害復旧費といたしましては、我々約一億円を要求いたしているのでありますが、この点につきましては大蔵省といたしまして、まだこれが正式の要求を提出して査定に応じるような態勢になつておりませんので、二十六年度予算はいわゆる当初予算だけでありまして、災害復旧費は入つておりません。従つて年度の約五千万円の分は来年度は約一億円を要求いたそうと考えているという点を先ず御了承願いたいと思うのであります。  それから当初要求でありますが、二十六年度に関しましては、当初要求八億九千万円を要求したのでありまして、これに対して、四億二千万円の査定になつております。約半額になつておりまして、誠に我々の微力を恥ずる次第でありますけれども、御承知通り文化財保護委員会は発足いたしましてまだ具体的な事業が、どの程度に実際に我々が全力を挙げていたしまして可能になるかという見通しにつきまして、我々自身においては相当の何といいますか、慾張つたり自信が非常にある計画作つたのでありますが、客観的に申しますと、その点についての過去の実績というものがないのでありまして、従いまして、その見通しにつきます見解の相違という点が、この査定には一番大きく作用しているものと考えるのであります。我々といたしましては、この少い予算を有効に使いまして、その実績を十分に挙げることに努力いたして将来の増額考えて参りたいと思うのであります。二十五年度補正予算につきましては、一億五千万円の要求をいたしましたが、実はこの中には文化財保護委員会庁舎の新営費が入つてつたのであります。併しながら御承知通り公共事業その他におきまして、相当の庁舎の問題を今直ちにこれを補正として食い込んで参るには時期が不適当であるという考えから、我々の方といたしましては一応文部省内の各部屋を利用いたしまして、最小限度にこういう方面は捕えて参ろうというような考えを起しまして、これを私の方で落したので、従つて要求は約一億になつておるのであります。従いましてこれは約半額の五千万円の決定を見たというわけでありまして、殊に国宝及び重要文化財災害復旧につきましては、一応最小限度の緊急にして必要な措置は異常なく行える見通しがついたのでありますので、我々といたしましては、その他の事務的な経費につきましては節約を旨といたしますことにいたしまして災害復旧に重点を置いて参る意味において、この程度で折れたのであります。
  11. 若木勝藏

    若木勝藏君 御答弁によつて大体分りましたが、八億九千万円の要求に対して四億二千万円ということになると、非常に私は手厳しいところの査定といいますか、誠に減額されておるように思うのであります。この減額されておる部分はここに示されたところのどの面において一番多いか、こういう点についてお答えをお願いいたします。
  12. 森田孝

    説明員森田孝君) これは項目といたしましては、我々が新らしく要求したこの委員会の成立によつて従来文部省時代考えなかつた新らしい各種の法律の命ずる費目を出したのでありますが、その点に関しましては全般的に一つの認めないものもない、全般的にこれを認めて呉れたのであります。従いまして削られました全部の減つた原因というのは、総体的に各般の人件費を除きます各項目につきまして、総体的に若干ずつ減つておるという状態でありまして、率から申しますと特に少いというような点はないのであります。ただ金額におきましては、国宝重要文化財保存修理というのが二億六千万円の査定になつておるのでありますが、前年度は一億七千九百万円になつておりますが、これが要求が四億一千九百万円になつております。この点が金額から申しますと、一番大きい違いでありますけれども、我々の方といたしましては、この点につきましては若干の計画が次年度に延ばしても実際の保存上に重大なる影響を及ぼすものではないという点は見通しが付きましたので、事実上我々の方では行い得ます能力、この保存修理に関する技術的な能力をも考慮に入れまして、不満ではありますけれども、この程度で折れたのであります。
  13. 若木勝藏

    若木勝藏君 私の危惧しておつた点は、やはり今御説明がありました八億九千万円何がしの要求に対するいわゆる文化財保存経費であつたのであります。それが僅かに四億二千万円程度査定されておるということは、非常に私も遺憾だと思うのであります。今のお話では今後において重大なる支障を来さないような見通しもあるというふうな御答弁であつたわけでありますが、この点についてはそうたやすく考えられない問題であろうと思うのであります。なぜかというと、非常に今までの事態も、火事とか或いはその他のことによつて保存上のいろいろな事態が非常に起つておるのであります。私は昨年中尊寺の方の視察にも参つたのでありますが、防火施設、そういうようなものになりますと殆んどないのです。極めて原始的な状態になつておるのでありますが、そういう点を勘案されまして、今後この点について若しこの査定額通り決定したといたしましたならば、十分当局において研究されて行く必要があるのじやないか、こう考えるのであります。以上を以て私の質問を終ります。
  14. 森田孝

    説明員森田孝君) 只今若木委員お話、この点御尤もでありましてちよつとその点附加えて御説明申上げて置きたいと思いますが、この国宝重要文化財保存修理費が昨年度より約八千万円の増額になつておりましてその点におきましては委員会が成立いたしましても、実際の人的能力その他から考えまして、飛躍的に大きくならないという関係上、能力を今までのゆつくりしておつたのを非常に馬力をかけてしなければならないというような、拍車をかけられるというむしろ傾向になつて参つたのであります。防火防災の点につきましては、本年度一千万円というのが来年度は二千七百万円に増額をいたしまして、只今仰せの点も十分に考慮して完璧を期して参りたとと考えております。街予算には関係がございませんけれども、消防法の改正なり、或いは又国会の中に設けられております議員方消防議員連盟の方とも十分に只今連絡をとりまして、或いは又消防庁の方とも十分に連絡をとりまして、諸般の調査及び最も各施設に適当な防火防災施設がどうかという戸別的な調査なども行なつておりますので、将来は各物件ことに最も適切な防火防災施設をして参りたいと考えておるような次第であります。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 予算のことについては若木君から質問がありましたので、これは私も同感でありますので省きます。そこでお伺いしたいのは無形文化財保護ということでございますが、これについて当面どういうような仕事を、新聞なんか見ておりますけれども、今企画されておりますところをちよつと洩らして頂きたいと思います。
  16. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) まだ先程申上げました専門審議委員決定を見ておらんのでございますが、如何なる無形文化財保護すべきやという点を十分に検討いたしまして、その必要あるものに対して保護を加えて参りたいと考えておるのでございますが、これを保存する方法といたしましては、或いは物によりましてはこれを映画化する、又幻燈にとるとか録音するとかいうような方法をとつて参りたいと思つておりまするが、先程ちよつと申上げました芸術祭なども段々民衆芸術とか郷土芸術とかいうようなものにまでも及んでおります。今年初めての試みでございまするが、こういうものの中で十分保護を加えて行く必要がございましたならば、やはりこれらのものを録音化するとか或いは映画化するとかというようなことをして参りたいと存じております。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 そういう記録的に保護するというそういう努力も必要ですが、現在文楽とか歌舞伎ですね。こういうものに対して何かこの前から非常に問題になつてつたのですが、どのようにしてこれを持続させるかという点、殊に文楽なんかその必要が非常に起つておる問題なんですが、こういうようなものは当面の計画には入つておらない、そこまで手が伸びないのでありますか。
  18. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 只今質問のありました歌舞伎並びに文楽でございまするが、これも私共といたしましては相当就任前から考えておる問題であります。技術保存いたしますということ、それから歌舞伎若しくは文楽十分興行をして引合つて行くことができるように保護するという二つの仕事があると思うのでございまするが、この興行方面に亘りますということは非常に困難ではないか、やはり暫くの間は十分な予算でも取れません限りは、興行主連絡をとつてこれらのものの保存に力を盡したいと思つておるのでありますが、こちらから積極的に出かけて行くという力は今のところでは遺憾ながらないように存じます。これもやはり興行主などの援助を得なければならんのでありまするが、先程申上げました映画化或いは録音化というような点におきまして技術保存するという方面には幾分力を注ぐことができるのではないかと思います。能楽などになりまするというと、これは技術方面もでありまするが、随分能楽衣装とか、面とか、道具とかいうようなものが危機にさらされておりまするので、そういうようなものが散逸してしまいまするというと、能楽を催すことができない、まあ差当り今問題になつておりますものは金春本流であります。これが衣装諦楽社というものにゆだねてあるのでありますが、この諦楽社が又維持困難になりまして、諦楽社の所有に只今帰しておりまする金春流衣装、面その外のものが散逸する虞れがあるのであります。これが散逸してしまいまするというと、金春本流は全く演能を行うことができないという悲境に立たなければならないのでありますので、そのうちの重要な文化財とみなされるべきものはこれを買上ぐべきではないか、或いは博物館あたりでこれを保管しておくべきものではないかという意見もあるのでございまするが、併しながら博物館で保管しておりますものを更に又演能のために貸興するということになりまするというと、いろいろそこに困難な問題が生じて来はしないかという点で頭を悩ましておるのでありまするが、とにかくこういうふうに有形文化財無形文化財との間に密接な関係のありまするところなどは、有形文化財保護を行いますことによつて無形文化財保護することになるというふうに考えておる次第でございます。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 文楽なんかの問題でありますけれども、そういういろいろな方面に亘つた問題で今手がつかないという問題が多いのでありますが、そのうちでも女楽なんかの興行ができなくなるという一番大きな問題は、やはり税金の問題ではないか、この委員会でも非常に問題になつたのでありますが、保護委員会の方でやはりこういうものの一つの対策として、今後こういうものをどういうふうにして大蔵省の方を納得させてやつて行くかというような点が当委員会なんかで非常に協同してやらなくちやならんという問題でありますが、御努力頂いたら非常にいいのじやないか、税金の問題がやはり一番話が成立たないために基礎が壊れるという一番大きな原因のように聞いておるのであります。  それからもう一つお伺いしたいのでありますが、無形文化財というような形になると思いますが、古くから伝承されて来た民謡とか童謡とか、こういうものが今の段階でもう集録しなければ殆んど散逸してしまう、こういう形のものが非常に出ておると思う、それでこういうものに対しましてやはり今から基本の線だけはお考え頂いて、そうしてそういうもののの散逸しないうちに何とかしてこれを保存するというような方法をお考え頂いたら都合がいいのじやないかというふうに考えておるのですが、この点は如何でありますか。
  20. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 只今岩間さんから御質問のありました点、殊に税金ということが厄介な問題でございまして、私共芸術祭執行委員長を仰せつかつておるのでございまするが、この芸術祭などにおきましても同様の意見希望をたびたび聞かされており、芸術祭執行委員の方でも大蔵省と交渉するとか、いろいろなにできる限りの手は打つておるつもりでありまするが、どうも意に任せないところが多く、甚だ悩まされておるのでございます。近く歌舞伎座ができ上るにつけまして、昨日は大谷松竹社長意見を聞いたのでありまするが、大谷氏も歌舞伎道の将来を思いまするというと、何と申してもこの税金を減らして貰わなければならんということを頻りに申しております。これはただ興行者の手前勝手ばかりではないと考えておるのでございます。まだこれは保護委員会といたしましては何の手も打つておらないのでありまするが、こういう方面にも努力いたしたいと考えております。  それから民謡その外の芸術の失われますこと、これは誠に遺憾なことでありまして、この方面におきましては、先程申上げました芸術祭執行委員協力して参るという以外に、まだ保護委員会といたしましては何のこともいたしておりません。ただそれだけでございまするが、私自身考えておりますことをちよつと申上げますというと、先年私の関係しておりまする国民学術協会というものがございまして、この学術協会労働歌の失われることを遺憾といたしまして、町田嘉章君を煩わしまして、全国に亘りまして失われんとする労働歌、つまり生産の形態などが変るにつれまして労働歌もだんだん変つて行く。曾て歌われておつた歌も歌われなくなる、こういう遺憾がありまするので、これらのものを録音したいという考えを持ちまして、町田氏はポータブルを背負いまして、農村、漁村を訪ねられまして、老農、老漁夫達の歌を録音して参りまして、音盤五十を製作せられたのであります。こういうことなども大いに参考になると思つておるのであります。労働歌民謡化しまして、芸人などによつて歌われまするというと、労働歌本来の味がなくなつてしまうのでありまするからして、労働者自身の歌う歌をそのまま録音して置きたい、こういう考えなども持つておりまするのであります。これはただ私だけの考えでございまするが、やがてこういうような点も文化財保護委員会で取上げて参りたいと存じておるのであります。
  21. 高良とみ

    ○高良とみ君 この文化財保護委員会が御発足になりまして、国会における立法と共に非常に多方面なことを御期待申上げることが多いと思うのであります。併し余り初めから多方面にお亘りになるということに対して、今回の予算部面を拜見しましても、少しく憂慮するのでありますが、例えばこの埋沒しておりますような史蹟名勝天念記念物等を、いつかお話のございました皇室の御墳墓等に対し、或いはその他の地下文化に対して、これを余り急速に発掘調査するということが進められるということは、今日の社会状態から考えまして如何かと思われる点もあるのであります。多分これだけの予算ではそういうところまでは手がお届きにならないだろうと思うのでありますが、その点をこの保護委員会が発足一年に当りまして集中なさる方面を伺えれば大変仕合せだと思うのであります。それが第一点であります。  第二点は、何と申しましても、戰争前から長く古文化財が放置されておりましたために、あらゆるところで修理修復保存を要するのでございますが、殊に戰争の前後十年をかけまして、日本のそれぞれの絵画、彫刻その他専門技術は発達しておられるでございましようが、世界各国におきまして非常な進歩発達がございますし、特に第二次世界大戦の後で随分破壊を蒙むりました世界の、殊に欧洲方面の絵画、壁画、彫刻等の修理に対しましさは、そういう国々が全力を挙げてやつておりますのでございますから、その方面の御調査もお遅れではないと思いまするが、技術の面において、今まで法隆寺等についても余りに議論が多過ぎて、そうして新進の技術或いは科学的な面、或いは日本に固有のものについて遅れておつたやに伺つているわけでございます。そこで本年度のこれだけの予算防火防災ということの外に、どういうところに重点を置いてなさるかということをもう一つ伺いたいのでございます。  第三点は、先程文化財などのお話がございましたが、芸術院というものもあることでありますし、又文化行政全部にとかく要望はここにかかつて来ると思いますが、余り多岐に亘りまして、保存に関するものはいいのでありますけれども、文化財を如何にするかというような面になりますと、保護委員会にこれを期待されるということは、少し範囲が広過ぎるのではないかということを多少心配いたすのであります。殊に民衆がみずから進んで娯楽を兼ねて文化の大事なことを主張してやるのがいいのでございますけれども、興行化したような、まあ極端に申せば「おいらんの花道中」みたいなものまで入つて来るとすれば、これは文化財保護委員会としては深甚な御考慮を要することであると思います。その点について御意見を伺えれば仕合せでございます。
  22. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 最後の点を私からお答えいたします。芸術祭はこれは芸術院からも離れている仕事でございまして、文部省でやつている仕事ではございまするが、芸術院の仕事ではございません。無論当文化財保護委員会仕事ではないのでございまして、ただ無形文化財保護する意味におきまして、或る程度までこれと協力するということが、無形文化財保護の上に相当効果があるのではないか、こう考えまして、これを協力する、むしろこちらからこれを援護しさ行くというような態度をとつた次第でございまして、そういう文化財保護の範囲を逸脱いたしまして手を拡げて参るという考えはございませんので、我々といたしましては飽くまでも文化財保護という点に力を集めて参りたいと考えている次第でございます。第一、第二の御意見につきましては、局長から申上げる方がいいのではないかと思います。
  23. 森田孝

    説明員森田孝君) 第一の埋蔵文化財の点でありますが、これは法律施行前から終戰後の特徴といたしまして各地におきまして地元の高等学校或いはその他いろいろの人が濫掘する傾向が非常に全国的にあるのでありまして、そうしてその発掘したものにつきましてもたまたまこれを見出だしたものが各自適当に処分をするとか、或いは保持するというような傾向が非常に強かつたのであります。現在におきましてもその点が全国的に一つの流行となつておるような形になつております。従いまして、文化財保護法によりまして。二十日以内に届出ることを要するという規定になつておりまして、この文化財保護委員会に届出をした後においてこれを行うように全国に対しまして趣旨の徹底を目下盛んにいたしておるような次第であります。従いまして予算に計上してあります埋蔵文化財の発掘というものは、全国的に見まして非常に大きな埋蔵文化財が存するところと考えられております数ヶ所を選定いたしまして、その中から逐次年度を逐つて一つ又二つずつ直営工事でこれを発掘いたして参り、そうして学術的にもその他にも万全を期してこれが保存その他調査の徹底を期して参るというような計画で、この文化財保護委員会といたしましては直営工事の分だけが予算として計上されておるのであります。  それから第二の点でありますが、予算におきましては何といたしましても保存修理が中心であることは勿論なことでありますが、その外に防火防災という点も又国民の文化財に対する意識を高めて、文化財を倉重するという気風を作るという点が先程も申しました通り防火防災につきましても基本的なやはり政策である。今度金閣寺がそのお寺の中の坊さんによつて焼かれたというような点は、文化財を尊重する意識さえあればそういうことはあり得ないわけでありますので、そういう点にこの委員会といたしましては非常な重点を置いて今後促進して参りたいと考えておるのであります。以上御説明申上げます。
  24. 高良とみ

    ○高良とみ君 只今説明を伺いました三つの点でありますが、殊に第一、第二、第三と申上げましたが、更に少し御質問申上げたいのです。今の埋沒文化財につきまして直営でなさるというのでありますが、これだけの予算で大した直営の事業は困難であろうと思うのです。で、届出を二十日以内に要するということはどこにでもその発掘を許可するというふうな建前に聞えるのでありますが、この文化財保護法律の不備な点もあるかと思われますけれども、更にそれに対して許可権というようなものを委員会が確保なさるというような傾向に行かないものでありますか、その範囲は皇室の古墳墓とかそういうふうなものになれば勿論許可権も必要でありましようが、その他随分民間伝わるところの日本の古代史についてもさまざまな臆測と学説を立てて全国あらゆるところを相当掘り返しているように一般にやはり見える傾向があると思うのです。で、そういうふうな行き方に対して保護委員会でありますから、もう少し保護的な立場で二十日までは許可……どこでも掘り返してそれから届けるということでは相当に破壊される部分があると思うのです。日本全体の立場から申しますると、文化財にいたしましても未だそういう時期ではないという面も言えると思うのであります。即ちまだ戰後の復興が緒についておらないのでありまして、新しい文化を生み出す面になつておらないのであります。そのセンスを以つてこれをやられたら随分これは保護ではなく破壊に行く慮れがあると思うのであります。更に只今重要文化財保護の面についてでございますが、私共の憂うるところは破壊の勢力が強過ぎるという面でありまして、金閣寺ぞの他の城もそうでありますが、非常に破壊力が早い、又無暴である。今日の国民の文化財保護の空気は最近に頓に上つて来ておるということは事実でありますし、お互いに慶賀すべきことでありますが、それは非常に低い程度のものであります。終いには方々から私共も文化財を見つけた、私も国宝を見つけたというようなそういう浅薄な傾向に行きはしないかということ憂慮される面があると思います。従つてもう少し国民の文化財に対するコンセンス、それと文相のおつしやるよき感覚と、よき教養と、よき歴史的研究が育つように、戰後の国土、国民の文化財保護するという点で御考慮願う面を期待したいと思いますが、拒否し得る点があればお伺いたしたいと思います。
  25. 森田孝

    説明員森田孝君) 只今文化財保護法の建前といたしましては、拒否権はないのでありまして、届出の義務だけであります。これは勿論国有地或いは地方の公共団体で持つております土地につきましては、それぞれその所有権の帰属するところの承諾が必要でありますが、只今主として濫掘せられておりますのは私有地でありまして、これはそれぞれの土地の所有者は当然にその土を掘る権利を持つておりますので、これも法律に特別に規定のない限り差押えるということは困難であります。ただこれを例えば今例を挙げられました古墳の中の或る物を盗んで行くというのは、これは別の何と申しますか法律で取締るべきものかも知れませんし、或いは又これを文化財で取締るとなれば、文化財保護法によつて新し規定を設けて貰わなければならないと考えております。それから発掘せられました物につきましては、遺失物法の適用があるのでありましてこれは出て来た物は一切所轄の警察署に届出をしなければならぬ。そうして警察署の方からこれは都道府県の教育委員会に報告をしてその指示を受けてこれを処置するということになつております。法律の建前から言いますと、その遺失物法の適用によつて出て来る物は一応こちらの審査の筋にかけて、こちらに替える物は替え、或いは保管を命ずる物は保管を命ずるという処置ができるようになつております。併しながら現実にはなかなかこれが守られていないという現状でありまして、目下その趣旨の徹底に努力しているような状態であります。
  26. 高良とみ

    ○高良とみ君 更にもう一つ、先程ちよつと申上げましたが、日本の古文化財というものは日本民族に属するものでありますが、更に世界に属するものでありまして、世界各国のその方面の專門家達及び国民も漠然として日本の文化財に対しては非常な関心を持つているわけであります。従つてこれの保護保全の方法については世界各国とも非常な憂慮をしておるのでありまするから、この古文化財の国際性という面で日本がこれをどう壊そうと、どう修理しようと、どうどこへ移管しようと、これは自由であります。ということは国際儀礼上非常に憂うべき面があると思うのでありますが、その点で一々世界中に相談するわけには勿論参りませんけれども、殊にまあ法隆寺の壁画のごときものとか、或いは金閣寺のようなものは、ただ戰後の破壊の一端としてあういうことが起つたからと言つて、それで以て投げてしまわずに、暫く世界の輿論というようなものにも耳をかして、そしてそれらの方面から起つて来る同情或いは意見等にも研究をして行くという面を私は希望したいのであります。この点につきましては改めて又委員会にも御相談したいと思いまするが、種々技術的な面がございまするのと、フランス及びイタリヤの美術界及びこの法隆寺の保護に立ちましたワーナー博士のごときもそれぞれ何かの意見を持つて非常に憂えている面がございますので、その面で一つ日本国民にもそういうふうに世界中がこれに対して興味を持ち、責任を感じていて呉れるんだということを一つお伝えする私共も義務を感じておりますし、皆さんもそういう建前で以て世界的な保護方法をお図り願いたいという希望を申上げておきたいと存ずるのであります。
  27. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 只今質問のありました点、一々御尤でございまして、我々就任以来日浅く、まだ実は正直に申上げると何ごともいたしておりませんのでありますが、アメリカから参つておられましたケーツさん、この人の帰りまする際に、暇乞いに私が出まして、あなたの御協力を願いたいと我々は考えておつた。この文化財保護委員会が成立いたしました当初において特にあなたの御援助を願いたい、こう考えておつたのであるが、お帰りになつてしまうということで甚だ遺憾であるということを申上げましたところが、文化財保護委員会が成立した以上は、自分は安んじて諸君にお任せしてアメリカへ帰ることができる、これが私のアメリカに帰る一番いい機会だと思う、実は自分は任期一年であり、一ヶ年間おる筈であつたのでありまするが、今年一月に就任して半年ほどで去るということは遺憾のようではあるが、併しいい機会に際会したのであるからして、安んじて帰る、こういうことを申されましたので、これは誠に止むを得ないことではあるが、尚日本の文化財保護のために、お帰りになりましても十分力を盡して頂きたいということを申しましたところが、ケーツ氏も世界は狭くなつたのであるからして、この文化財保護の点に関しても世界を十分見て行つて貰いたい、こういうことを申しておられたのであります。殊に文化興降というような点では小さな国民性に捉われずに、大きな見地からやつて貰いたいということを申しておられましたので、私も無論同感であると言つて別れたのでございまするが、まああらゆる機会を利用をいたしまして、世界と協力いたして、十分な効果を挙げて参りたと念願いたしておる次第でございます。
  28. 森田孝

    説明員森田孝君) 先程高良委員からの御質問によりまして、私の言葉が足りませんで、誠に誤解を受け易いことを申上げましたが、埋蔵文化財の発掘について許可権があるかないか、こういう御質問に対しまして、許可権がないと申上げたのであります。許可権はないのでありますけれども、即ち届出義務だけがあるのでありますけれども、文化財保護委員会といたしましては、法の五十七條によりまして必要のあるときにはその『必要な事項を指示』することができる。それから又その届出なり、或いは又遺失物法によりまして警察を通じ、教育委員会の方へ届け出られたものに関して調べたり、或いは又届出を見た結果、必要な場合においては発掘を禁止し、若しくは中止を命ずることができるということになつておるのであります。従いまして許可権はありませんけれども、これに対して発掘の禁止、中止を命ずることができるというようになつておりますので、この点を補足して御説明申上げます。
  29. 山本勇造

    山本勇造君 高橋委員長から文化財保護委員会の発足以後の経過について詳細な御報告があり、又森田局長から予算についての御報告がありましたのについて、各委員からそれぞれ御質問がございましたが、私もちよつと一言申上げて見たいと思つております。  この文化財保護法は御承知通りに国会で立案して、その国会といつても特にこの文部委員会が中心になりましてやりましたものなので、そういう上から行きますと、我々はこの保護委員会に対して非常な責任を持つておるわけであります。若し世の中の普通の例に従いまして、赤ん坊を産んだとすれば、当然その産んだ母親がその赤ん坊を育てて行くのが当然なのでありまするし、又一つ事業計画いたしましたならば、その計画した人がそれをやつて行くのが当り前なんであります。ところが国家の機構におきましてはそういうわけに行かないで、三権分立の建前から、立法したものは立法だけ、それから事務行政に当るものは事務行政をやつて行くと、そういうふうな建前になつておりますために、我々はこれを立法はいたしましたけれども、その先のことは一切手を触れぬ、又触れてはならない、そういう建前になつておりますものですから、これはできました後のことは、まあ一切この文化財保護委員会の手によつてつて頂かなければならないのであります。ところがこの文化財保護委員会なるものは、昔の国宝保存会などに比べますと、非常に範囲が広くなつており、権限も強くなつておる。而も予算は大分先程お話も出ておりましたように少いので、非常にやりにくい委員会だと思うのであります。従いまして、私達がこれを立法しております当時において、この委員会ができるのは結構だができたときにいい人が出て来て呉れるだろうか、こういう面倒くさい委員会であつたらなかなかいい人が出て来ないんじやないかと、非常に実は心配しておりましたのでありますが、幸いにして五人の立派な方が選ばれ、而も今日はその委員の方の殆んど全部の方が御出席になつておるというような御熱意を示されておる。我々の方で今日この委員会を開くに当りまして、御説明を願いたいということは申入れましたが、皆さんに揃つてお出でを願うとまでは我々は思つておらなかつたのであります。それにも拘わらず皆さんが揃つて御出席になるということは、皆さんの御熱意のほどが我々にも感ぜられまして、非常に有難く思つておる次第で深く感謝をいたしております。併しながら、又ついこの間の、今月号であると思いますが、或る有名な人が或る雑誌に書いておるのを見まするというと文化財保護法なんというものは必要じやないと、そうしてあれに使う金は勿体ないから、むしろそういうものは減税に充てるべきだというような意味のことを書いておる人があります。勿論国民の誰でもが税金には苦しんでおるんですから、減税は誰でも望んでおることでありますし、ここの国会でも皆減税のことを考えてないものはないと思います。そういう点はその点は賛成でありますけれども、文化財保護法はそんな必要じやないというあれは、まあ文化財保護法をお読みになつておるのか、或いは実情を御存じになつておるのかいないのか、その辺甚だ疑問でありますけれども、例えばただ一つの例といたしまして、若し文化財保護法がなかつたならば、昔の国宝保存法だけであつたならば、国宝を指定するということもできない。ストツプ状態にされておる。今度の保護法ができたのでやつとこれが指定することができるようになつたのでありまして、若しこの指定ができなければ相当に立派なものが海外に流失するというような心配があり、又あつたやにも聞いておるのでありまして、そういう点非常に心配なんでありますが、これができたために段々そういうことがこれからなくなつて行くだろうと思います。その一事を取りましても、この文化財保護法というものは決して無用なものでないのでありますし、又この予算の面におきましても、これで使うのは僅かに三億円前後の金、来年の予算にしましても四億円程度のものでありまして、国家の全体の総予算からしますると非常に微微たるものであります。これを若し税を取らない、この方にかけないで減税したとしましても、一人当りの税金がどれだけ少くなるか、実に少いものであろうと思われます。又これをそういうものにかけないで減税しまして、先程から問題になつておるように荒廃しておるさまざまな文化財をそのままに放つて置いてどうするかという点を考えますると、この文化財保護法ができで、又この委員会ができてやつて行くことは非常に僕は大事な点であろうと思うのでありますが、今申す通り相当な有識な人でもこの法律乃至はこの委員会に対してとかくのことを言う人がある、僕は実にちよつと分らない気持がいたしておる。併し幸いにして先程の若木委員や、或いは岩間委員の御質問を聞いておりますと、今のとは反対の立場に立つておられるように見受けられますので、大変心強く思うと共に、あなた方の方も心強く思われるだろうと思いますが、併しこの委員会が今後においても予算等の面においてはさぞかし大変であろうと思います。皆さんの御苦労をお察しする次第であります。そこで先程の高橋さんの御報告なり、或いは局長の御報告を聞きまして、実は私いろいろ疑問がありましてあの御報告の中についても質問したいこともあり、或いは又御報告になかつたことの中にも僕は質問したい点があるのでありますが、私は今日はわざと質問を遠慮しようと思つております。質問を持つてつて遠慮するということは議員の職責を果さないようにも考えられますけれども、併しながら又何も質問するだけが大事なことではなくて、一番大事なことはこの法律がどういうふうに活用されて行くか、これが本当に活きてうまく成功を挙げて行くかというところが大事な点だと思いますので、私は質問はいたしませんけれども、併しながらどういうところにそういうのがあるかということは賢明な皆様においては大体お察しがついておるのだろうと思います。そこで今日は私わざと質問はいたしません。無論私だけでありまして、外の方に質問しないで呉れということを申しておるのではございません。私は質問はございますが今日は質問いたしません。併しながら質問すべきようなものがあるように私は思つておりますから、この文化財保護法の根本の精神を一つ十分お呑み込み願うと共に御活用願うように進んで頂きたいと思うのであのます。この委員会はとにかく発足して僅かでありまして、赤ん坊で言えば這い這いのところでありますから、這い這いのときに余り突込んだ質問をするのもどうかと思いますから、私は今日は控えるつもりであります。殊に五人の委員の方々は非常に人格においても見識においても手腕においても実に立派な方々でありますから、皆さんの手腕、人格、識見に信頼をいたしまして、私は今日は質問いたさないつもりでございますから、どうか一つこれを方向を誤らないようなふうに持つてつて頂きたいと思います。尚又この委員会が成立すると共に事務局も設けられ、森川局長を初めといたしまして事務当局ができたわけでありますが、事務当局の方におきましても今のような意味合いで十分に誤りなくそして敏速に事務を運んで頂きたい。私はそういうふうな意味で五人の方々に御苦労を感謝いたしますと共に今のような希望を申述べまして私の話を終ります。
  30. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 只今山本委員から非常に御懇篤なお話を頂戴いたしまして、誠に感謝に堪えません。先程お話のありましたように文化人などでこの文化財保護法につきましていろいろ我々とは違つた考えを持つておられる方々があるように存じております。殊に有力な文化人、或いは芸術家、文筆の士達でそういう考えをお持ちの方と個人的に十分話合つてみたいと考えております。最近私は特に志賀直哉君と話をいたしたいと考えております。尚細川委員のごときはこれらの人々と非常に親しい関係を持つておられるのでありますから、十分これらの諸君文化財保護法の精神を吹込んで頂くことに御盡力願いたいと考えておる次第であります。尚山本委員はいろいろ私並びに森田局長の御報告申上げましたことにつきまして、いろいろ御質問になりたい点がございますように伺つておりまするが、やがて山本さんと個人的にお目にかかることもございましようと思いまして、その際に十分御親切な御忠告を伺いたいと考えております。私共といたしましては飽くまでもこの文化財保護法の精神を活かし、忠実にこれを実施したいと考えておる次第でございます。
  31. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 先程一萬田委員は遅れても来られるようになつておりましたが、内閣の金融対策委員会の方でどうしても手が抜けられない、後日皆様にお目にかかつて挨拶申上げたいというので、私がお取次ぎいたします。他に何か御発言ございませんか。……御発言がなければ文化財保護委員会の問題についてはこれで打切りたいと思います。    午後零時八分休憩    ——————————    午後二時二十三分開会
  32. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 午前中に引続き、委員会を開会いたします。
  33. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと文部当局にお尋ねいたします。御承知のように今回の文部委員会は先きに施行されました教職員の免許法並びにその関係法規に関して相当考慮すべき点があるというような観点から、これらの改正案を協議するために開催されたものと考えるのであります。かような観点から今回施行された認定講習においては教職員の物心両面の負担が多過ぎる。或いは兒童、生徒の授業にも支障が来る。受講者の旅費、その他の負担が非常に多いために受講者が非常に困る。或いは僻地に勤務するところの受講者の不便のために本当の教育の機会均等という原則を阻害するというような観点からこの改正をめざして進んで来たのであります。従つて私が昨日養成課長にお尋ねいたしました点は、この免許法並びに施行法の改正を前提として行なつたのでありまして、従つてそれに対する御答弁は私の質問の線に沿つて答弁になつたのだと断定してよろしいのでありますか。
  34. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 昨日のどの点でございましようか。
  35. 木村守江

    ○木村守江君 それでは改めてお尋ね申上げます。第一番目に、免許法の第四條に関係ある第一項の問題は、免許状の種類を普通免許状と臨時免許状に定めてあつて、いわゆる助教諭の免許状はこれを廃止すべきではないかと考えますが。……。
  36. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 助教諭と申しますのが今の臨時免許状になつておるのでございますから、今の御質問は仮免というのが一つございますが、それと臨免との関係は反対ではないでしようか。
  37. 木村守江

    ○木村守江君 どうも失礼しました。結局仮免を廃し、いわゆる正規の学校を出たものを普通免許状として、正規の学校を出ないものを臨時免許状とするという、この二種類にすべきじやないかと考えますが、御意見を拝聽したいと思います。
  38. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 免許法では大学の四年を出たものと大学の二年を出たものと、それから大学の一年の課程を出たものとの三段階に分けてできているわけであります。これは教員の全部を急速に大学の卒業生を以て充てるということは不可能だと考えましたので、普通の教員養成所は、大学では四年の課程と二年の課程があるわけであります。それからいわゆる大学教員と称せられた人達は成るべく早く正規の免許状の一つであるところの仮免許状に上げてやることによつてこの人々の安定を期待することができるという意味で仮免を設けたのであります。このことについてこれを改正する意思があるかないかとなりますと、私ちよつとお答えいたしかねるのでありますが、趣意はそういう趣意であります。
  39. 木村守江

    ○木村守江君 それでは臨時免許状と仮免許状の差ですが、私は教諭の一級、二級の別があるのでそういう点に免許もはつきり分れているのじやないかと思いますが、教諭の一級、二級の別を分けてそして免許状には普通免許状と臨時免許状の二つに分けてやるべきじやないかと思いますが御意見を伺いたい。
  40. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 理想的に申しますと、大学の四年を出た人に普通免許状を與え、その他の人に臨時免許状を與えるという制度はいい制度だと思つております。但し現段階の日本でそれを実施することが果して適当であるか否かということが私共にとつて大きな問題になつておるわけであります。
  41. 木村守江

    ○木村守江君 それでは次に校長、教育長、指導主事の仮免許は廃止すべきであると思いますが、御意見は如何ですか。
  42. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 御趣意は教育長、校長、指導主事は一級、二級の二種にして進んで行くべきだというお考えかと思いますが、一級、二級があつて仮があるのですね……。
  43. 木村守江

    ○木村守江君 仮免許は廃止して一級、二級にすべきだという意見なのです。
  44. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) これは御承知通りに急に教育委員会が発足いたしまして、教育長、指導主事に免許法が要求するような十分な準備のある方をお迎えすることができないという理由で仮免許状というものを設けたのでありまして、その時期が来れば当然これは廃止すべきものだと存じます。
  45. 木村守江

    ○木村守江君 第六項の教科のことでありますが、高等学校の教科を再配分しなければならないと思います。例えば社会科というものは人文地理とか、一般社会科とか、歴史とか、時事問題とかそういうものが含まれている。理科には物理とか、化学とか、生理とか、生物とか、そういうようなものがありますので、この社会科とか理科とかいうものをセパレートすべきだと思いますが、御意見を伺います。
  46. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 昨日もお答えいたしましたように、高等学校の教科分類に従つて免許状の分類をいたしましたので、勿論例えば理科と申しましてもその中に物理化学或いは植物、動物、生理衛生というような学科がございますが、その学科の一つ一つにその学科の名前を冠した免許状を出すことは、高等学校の新らしい行き方が成るべく広い教養の下に或る特殊な専門を持つ教師を欲するという理由から、私共の方では今までのところ今のお説とは反対の意味に考えて来たのであります。
  47. 木村守江

    ○木村守江君 これと反対の現象で私は高等学校については只今私が申上げたような考えを持つておりますが、中学校の教科中においては職業科に家庭科を、職業実習に家庭実習を含めなければならないと考えておりますが、これに対する御意見は。
  48. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 御意見に私共も賛成でありまして、これをどういう形で、例えば職業家庭科というふうな形でまとめてしまつて免許状を一本にするか、或いは職業家庭科としてまとめては置くけれども、免許状は別にするということが今問題になつているところであります。
  49. 木村守江

    ○木村守江君 次に、第五條、第六條に関係する問題ですが、教育職員に対して一定の單位を有する者には試験検定を加味して上級免許状を授興すべきではないかと考えますが、御意見を聞きたい。
  50. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 試験検定の制度は今回の免許法では全部廃めてしまつたのであります。その理由は試験検定という方法が非常に曖昧であつて、その人の力を見るのに十分でない。それよりかむしろ大学が主催するところの講習会その他において人と人とが直接に接触して相知り相学んだその評価に信頼して、それが與えたところの單位というものによつて認定する方が、試験検定の弊害を除去するにはいいのではないかというのが根本の考えでございました。勿論例えばよく言われることでありますが、多年の教育経験をしているうちに自学自習的に学問した人達が、その学問を検定して貰う機会がないということにはまあ随分不備があるわけでありまして、このことは私共今試験検定制度の或る程度の復活というものを考え得ないかどうかということを検討しております。
  51. 木村守江

    ○木村守江君 そうすると、課長の話は現在のようなあの認定講習の状態で本当にその講師と授講者が心を照し合せて教育をして行けるというようにお考えでありますか。
  52. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 現在の状態につきましては、先旧来皆さんの御報告を拝聽して、誠に困つた事態が少なくないものだということを了承いたします。但しこれはいつまでもこの状態が続くとは思いませんので、教員養成をするところの大学の教授陣容の拡充強化というものと、それにもつと教育者が落着いて来まして、そうあわてないでゆつくり單位を取つて行くことができるようなときになりますと、更に有効な教育が行われるということを私共の方では期待しておりますし、又それは強ち無理な要求ではないと思つております。
  53. 木村守江

    ○木村守江君 勿論本年度よりは来年度において一歩前進した認定講習の形態が実現されなければならない。実現されるということを考えておりますが、少くとも六十万に近いところの全個の教職員を五年間に教育するというのでありまして、私は学校においてその先生と生徒どの間のようないわゆる本当の教育ということを考えられないと思うのでありますが、そういう点から考えてもこの試験制度による検定試験を加味した上級免許状を必要とすると思うのでありますが、如何でしようか。
  54. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) それにつきましては、私は意見を申上げない方がいいと思いますが、ただ試験検定制度の復活ということがどういう形で可能であるかということを研究いたします。それでお許しを願いたいと思います。
  55. 木村守江

    ○木村守江君 では、今と関連した問題ですが、別表第四の問題ですが、例えば小学校の教員をしておつた者の在職年限を中学校の教員となつた場合に加算する。或いは中学校の教員をしておつた者が高等学校の教員になつた場合に、中学校の教員としての在職年数を加算するというような方法を取つて計算しては如何かと思いますが、それに対して御意見を。
  56. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 在職年限につきましては、小学校とか中学校とかという区別では、少なくとも過去のこの免許法が施行せられる以前の学校については殆んどない程度に同じ種類の学校として認めるというふうに規則の方に出してありまして、例えば外学校の勤務年限というものは中学校の教員というものに加算されてあるのです。
  57. 木村守江

    ○木村守江君 別表第七の関係なんですが、校長、教育長、指導主事は、これは一級の免許状を持つた者だけになつております。これは当分の間二級免許状を有する者にも道を開いた方がいいのじやないかと思います。こういう状態でありますと、一級の免許状のない者は校長になれないということになります。これは来年度四月から校長になる人が一人もないというような状態になりますと、これは実際問題として……。
  58. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) おつしやる通りここには校長の仮免許状がある人は、これは法の不備かも知れませんが、校長の二級普通免許状はとれるという順序になつております。ただ一般にこれからなる人達は二級免許状では校長になれないという事実があります。来年からは直ぐなれなくはなくて方法はあるのでありましたが……。
  59. 木村守江

    ○木村守江君 方法はないのです。三年間は……まあ前のやつは三年でしたが、これは五年です。五年間は一級免許状がとれませんから、早くとれる人はいいでしようが、少なくともここ二三年は校長になることはできないということになるのです。
  60. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) その点は今ちよつと私考え違いしていたようですが、あと研究いたして見ます。そうして若しここ数年間に校長になる候補者が得られないという事実がありますと、その得られないという事実に即して然るべき措置をしなければならんと思います。
  61. 木村守江

    ○木村守江君 それでは只今の問題は実際問題として校長に欠員ができてから校長になれないというような事実がありますから、御調査願います。  それから第二條関係の免許法施行法の問題ですが、附則第六項ですか第七項ですか、専門学校に準ずる各種学校を卒業したものを、この第六項か第七項かに加えて貰たい。
  62. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 専門学校に準ずるというのはどういう御意思ですか。
  63. 木村守江

    ○木村守江君 例えば何か私立の各種特殊学校ですが、裁縫の学校とか……
  64. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 研究いたしておきます。
  65. 木村守江

    ○木村守江君 それからこの第十九号ですね、国民学校の本科正教員の免許状を有する者、高等学校において三年以上教科を担当して良好な成績を得て勤務した者で、所管庁の証明を有する者については同一に取扱つて貰いたい。例えば体操とか音楽とかそういう技術面で来た者に対してはこの第十九号に加えて貰いたい。
  66. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 検討して見ますから。
  67. 木村守江

    ○木村守江君 それから第七條関係ですが、現在のところでは一級は二十三單位、二級は十五單位、仮免が二十五單位という状態なんですが、第一項の第四号の在職年限を十年ですが、これを五年以上としてもいいのじやないかと考えるのでありますが、これに対する御意見を伺いたい。それから第一項第七号の在職年限を五年とあるのを三年以上にするような考えがありませんか。
  68. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 在職年限につきましては、これは立法の当時在職年限はただ一回限り單位と換算することができるという原則を立てまして、別表、例えば第四の場合に六十單位取らなくてはならないところを四十五單位、つまり十五軍立割引く、割引くというと変な言葉でありますが、割引きしてあるわけでありまして、この年限は併し十年を五年にし、五年を三年にするというふうにいたしますと新しく出て参りますところの新制大学の卒業生との均衡上ちよつと困難があるのじやないかと考えておりますが、尚検討いたしてみたいと存じます。
  69. 木村守江

    ○木村守江君 施行規則第七條の関係ですが、第七條の各項に掲げてある年数を更に次の段階に、第七條の單位数を年数の段階に推して漸減することができないかどうか。例えば一級の場合、経験年数が十年である場合に専門教科の單位が十三軍位で教職が十單位、それから十五年の場合には専門教科が十單位にして教職が八單位、二十年の場合は専門教科を八重位にして教職を五單位というように在職年限によつて單位数を漸減して行つてもいいのじやないか、いわゆる十年の四十五單位を二十三單位としたという観点から考えればこういうような計算も成り立つのじやないかと考えますが、これに対する御意見は……。
  70. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 経験年数は一回きり計算に入れないという原則からはそれはちよつと困るのでありますが、併し実際問題として経験年数と、それからその人の専門教養、若しくは教職教養に関する知識技術の内容との相関関係は可なり困難な問題を持つておるのでありまして、むしろこういうふうなお考えでしたら、これを徹底して国家試験をやる、そしてもう年数のことなんか言わないで、まじめに勉強した人は早く一級になれるとし、そうでない人は遅くなるという制度の方が明らさまでいいかも知れない、こういつたような議論が今あるのであります。
  71. 木村守江

    ○木村守江君 それはそう言つておるのじやないのです。これは十年の経験を持つものが二十三單位になるのだから十五年は十八單位、二十年の経験を持つ者はもつと減少していいのではないか。
  72. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 経験を長く持てば、必ず専門教養や教職教養の單位は少くともいいだけの経験価値ある経験をするということが保証されなくてはならないと思います。そこは非常にむずかしい問題になると思います。
  73. 木村守江

    ○木村守江君 そうだと、十年の経験を非常に大きく活かして……。
  74. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) これは勿論便宜上の趣旨でありまして、どうせどこかに線を引かなければならんというところで引いただけであつて、それの理論的根拠はありません。
  75. 木村守江

    ○木村守江君 それでは、便宜上の意味から十年、十五年と引くわけには行かないのですか。
  76. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) この問題はまあ随分経緯があることでありますが、一回限りそういう特別な処置をするということの原則を壊すことがその当時許されなかつたと、こう申上げる外ありません。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長ちよつと審議計画について……。この免許法の審議計画を先ず考えて進めないというと、私は非常に非能率に陷つたり、或いは後に戻つたりして余計の時間を費すのではないか、今木村委員から随分質問されましたが、ああいう質問の出る前に先ず大きな根本方針というものが決められなくてはならないと考えますが、その点について委員の各位に諮つて頂きたい。
  78. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 矢嶋委員からの御意見でありまするが、木村委員が先程から政府委員からいろいろ言質を得てというようなことで質問されておるようであります。我々の取る態度には、これは皆さん御承知のように前の国会で全面的に検討を加えて、そうして若し改正すべき点があるならば改正をこの際しよう。これはエーミス課長に出会つたときも意見を我々は述べてあるのであります。勿論教育職員免許法施行法に或いは欠陷があるかも知れませんが、向うでは若干の改正すべき点があるように思うということでありましたが、我々の若干という点にはあなた方のお考えの若干と我々の若干とは相当開きがある、これに検討を加えたいと思うから、改正については関係筋はどういう御態度でしようかということを念を押したところ、できるだけ正しい線で御援助しよう、こういう回答を得て来ております。それについてできるだけ我々いろいろな資料を集め、又視察もし、又各方面意見も正式に聞いた上で、意見をまとめて、その上から先程申しましたように、文部委員会としての意見もまとめ、同時に又我々の意見もまとめて、一応それを提案として、今後の再会に当つて審議し、十分な検討を加えた上で、先ず第一の案としては教育審議会なり、或いは文部省文部委員会の案として正式に改正を要望する。第二の案としては、関係方面と折衝し、議員提出とする。これは第二段の案でございますが、そういう方向に向つて進んで行きたい。委員長としてはそういう考で進んでおりますから、皆さんの御意見があるならば承りたいと思います。
  79. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 少し質問したいことがあるのです。木村さんがするからその次に。
  80. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 政府委員にですか。
  81. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 ええ。
  82. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) では質問を続行します。
  83. 木村守江

    ○木村守江君 高等学校の二級免許状をとる場合に小中学校と同じくすべきじやないかと思います。小中学校が十五單位で、高等学校には二十五單位というのは、中学校の先生と高等学校の先生が号俸が同じで、高等学校の先生のみが二十五單位とらなければならんということにちよつと無理があるじやないかと思う。
  84. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 高等学校の教員の方は、これは今大学院というものがございませんけれども、将来の計画では大学院の一年を終つたものを一級免許状にする、そういう建前から、二級に対しても要求するところが高かつたのであります。
  85. 木村守江

    ○木村守江君 然らば高等学校と同じ俸給で、高等学校の先生になるためには二十五單位をとらなければならん。小中学校は十五單位、而も俸給は同じだというのでは高等学校の先生になる人がなくなつてしまう。実際問題として。
  86. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 大学の四年コースを終えたものが更に一年に相当する勉強した場合には、それに相当する待遇は当然ついて行くものである。ついて行かなくちやならないという建前であります。
  87. 木村守江

    ○木村守江君 ついて行つていないじやないですか。
  88. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 現在はそういう人がいないものですから。旧制大学の卒業生は旧制大学の卒業生としての給與基準に従つて與えられておるわけではあります。
  89. 木村守江

    ○木村守江君 同じ学校にしても片方が中学、片方が高等学校、ところが同じ俸給です。中学も高等学校も同じ俸給で、そうして片方で免許状をとる場合には二十三單位、二十五單位とらなければならん、片方はやはり十五單位で普通免許状をとる、俸給は同じです。二十五單位とつて、高等学校の普通免許状をとつたから俸給が上るというのであつたら話が分る。そうでないのです。
  90. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 今木村委員のおつしやることは、つまり中学校の先生というのが高等学校の先生と同じ資格なんでしよう。それだつたら俸給は同じです。
  91. 木村守江

    ○木村守江君 同じですが、高等学校にいるために二十五單位とらなければならん。中学校にいるのは十五單位でいい。而も二十五單位とつたら高等学校の先生の二級の普通免許状があるから俸級が上るというのだつたら納得できる。現在はいいのだが、二十五單位の單位をとうたらどこか変るところがなくちやならん。
  92. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) その問題はこれからの給與のスケジユールの問題になつて来ると思う。それは二十五單位の半ヶ年の研修に当りますので、そういうことは多分考えざるを得ないだろうと思います。全然勉強してもしなくても同じだというふうなことでは正しい待遇とは言えない。私共の方としては單位をとりて一定の免状を貰えば、その免状に相当する待遇はいつもついて行くと、そういう予想の下にこれは作つておるのであります。
  93. 木村守江

    ○木村守江君 それから先日申上げたんですが、通信教育の受講料は今度来年度から廃すお考えでありますかどうか。
  94. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 大蔵省予算折衝しております範囲内では、尚そのまま本年と同じように考えております。
  95. 木村守江

    ○木村守江君 通信教育のいわゆる受講料を取ることが適正だと考えておられますか。
  96. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) これは大蔵省と折衝いたしましたのですが、大蔵省当局は通信教育は自宅にあつてテキストをただ買つて勉強するのであつて、今後いわゆる公開議座の方へ参ります人達への旅費の補助の関係から睨み合わせると、これは取ることが正しいんだという結論でありました。その意味は結局公開議座の方へ出掛けて行く人達の個人負担というものを予想しておりますので、全額国庫若しくは教育委員会の負担ではありませんから、その積算の根拠から言えば通信教育の教育費を免除するというのは不公平になると、こういうような形になるわけです。
  97. 木村守江

    ○木村守江君 大蔵省の御意見はそうかも知れませんが、少くとも文部省として通信教育を受ける人はどういう立場の人か考えましたときに、実際はこれはスクーリング、本当の認定講習を受けたい。これは僻地等にあつて或いは一身上の都合によつてどうにもしようがないという人が通信教育を受けているのだと思うのでありますが、そういう点から考えまして認定講習に実際出られる人には補助を貰つて、そうしてそのために相当の経費も使つてつておるのに、通信教育に限つては個人負担がないのだから聽講料いわゆる通信教育料というものを取つてもいい、受講料を坂つてもいいというのは文部省の立場として考えらるべきじやないかと思つております。この間会計課長がここでこの問題を私が質問いたしましたときに、前例がそうなつておりますので、実際はそうすべきじやないかと思うのだが、今年の予算に組んでしてしまつたというような率直な答弁があつたんでありますが、教育課長の御意見如何ですか。
  98. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 大蔵省が申したからと言つたのは、私はそれが大蔵省の言うのは道理があつたからと思つたからでありまして、大蔵省が申したから止むを得ずひつ込んだというわけではないのであります。将来これは通信教育の方までそういうふうに国の負担が行き得るときが来れば結構だと思つております。丁度今現職教育のやり方に対して旅費の支給額に一定の額が出ておりますので、それが増額されるというふうな場合も同時に考えていいと思います。
  99. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この審議計画の運び方にまだ私は理解できん点があるのですが、我々は先ずここに会の運び方について、今の質問というのは免許法をどういうふうに改正するとか、その大きな方向を我々が見出すために今質疑を展開すべき段階で、それによりてAというこういう枠内において改正をやろう、或いはBというこういう枠内において改正をやろうという先ず結論が出て、そうして例えばBというこういう枠内について改正をやるということにならば、今度はそこに進んで、この角度から更に質疑応答で改正する方向というものを我々は把握すると、こういうような審議過程を通つて行かなければ非常に質疑応答が飛躍して、成る場合によると復つて来なければならんということができて、審議上混乱を起して非能率を来たすのじやないかと思いますがそういう点について、先程私質問したのですが、聞いていて審議計画の運び方についてどうしても納得できないものがあるのですが、はつきりして頂きたいと思います。
  100. 若木勝藏

    若木勝藏君 矢嶋君の動議は尤もだと思うのでありますが、今の段階ではそれを決めてこれを云々するとか何とかじやなしに、我々はこれの法改正について自分の意見をまとめて行く上において疑問とする点を文部省側に質問すると、こういう機会は今日までに與えられなければならんと私は考えます。実は私はそういう意味におきましてここをこう思うとか、これについてどういう意見があるかという点はその必要はないと思う。それでこの点はこの條文においてこの点が疑問であるからして、この点はどういう解釈があるのだと、みんな思うんであつたらどうかする必要があると思う。私も現に二、三点について質問する点があるのであります。
  101. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 質問を続行いたします。
  102. 若木勝藏

    若木勝藏君 今の決めて下さい。
  103. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 ちよつと黙つて下ざい。私は質問があるのですよ。
  104. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ちよつと荒木君。僕が言うからちよつと待つて下さい。矢島君の言われることは尤もです。だからその点で法改正する点について自分達が聞かんとする点はやはり十分に質疑を重ねてお聞きしておいた方がいいと思います。多少その点が質問される方によつて外れるかも分りませんが、これは本人が自分の疑念を晴らして置きたいと思われる主観的に見てこの点は仕方がないと思います。時間がかかつても、多少外の人から見れば或いはこれは不必要であるかも知れないが、あなたの線に沿つて審議を重ねておることは事実ですから、成るべくそれに沿うようにそういう質疑を重ねて頂きたいと思ます。こう思いますから……。
  105. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 質問する前に矢嶋さんのおつしやつたことは御尤もですけれども、やはり各人趣旨は共にあるのでありますけれども、それに沿うかどうかは私は分りませんけれども、私は二つ是非とも質問して置きたいと思うのでありますが、これは速記を中止して頂いても結構だと思います。それはこの免許法の原案をお作りになる際、そのときの経過についてお尋ねをするのであります。と申しますのは、この免許法をお作りになる場合に次の点が問題になつたろうと思うのであります。それは現在小学校、中学校、高等学校に仕事を持つて教育に従事しておるものの取扱をどうするか、この問題が可なり問題になつて来ておると思うのであります。これらの仕事を持つて教育に従事しておるものをこの新らしい免許法に従つて再教育すべきかどうか、それが問題になつていると思うのであります。これは私も他の方面から多少のことは聞いておるわけなんですが、特に関係方面との折衝においてこれはどういうふうになつてつた、か、その経過を私詳細に承りたいと思います。実は免許法改正に当りまして、私の考えはこの点に一つのポイントを置いておるわけです。従つてこの点については一つ詳細にお話を願いたいと思います。
  106. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  107. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて……。
  108. 若木勝藏

    若木勝藏君 二、三質問申上げますが、この法の改正につききましては、文部大臣並びに劔木次官の名前で日教組の委員に回答しているのでありますが、その中に次期国会を目途に免許法改正の目的を以て日教組を加えた法律改正委員会弄速かに設け、同法の全般的検討をする、こういう一項目があります。これについてのその後の経過が一つ。それからもう一つ同じくそれに関連する問題でありますが、この法改正については法改正審議会というふうなものが設けられるように私は聞いているのでありますが、而もそれが九月二十七日かに開かれるというようなことも私承知しておつたのでありますが、それが開かれたか。開かれたとすればその経過についてお伺いしたい。
  109. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 日教組を加えた法改正委員会と申しますのは、慣例的に申しますと、教職員免許等審議会であろうと思います。その教職員免許等審議会は仰せの通り九月二十六、七日でしたかまでは開かずにあつたのであります。と申しますのは、委員の中に当時アメリカに視察に出かけた者がおりますし、幹事であります私も当時いませんでしたので開会が延期されていたわけであります。勿論その間組合の人達と文部省関係者との間には数回の懇談、或いは協議が行われておりました。そうして九月二十六日かの改正審議会で問題は取上げられたわけであります。当時この法改正審議会におきましては、一方で教育刷新審議会が教員免許法を検討する必要があるという決議をしていらつしやつたので、その方面の情報を公に発表して頂いて、それから免許法の改正の要があるか、或いは現職教育と睨み合せてどういう点を考慮しなければならないか、又免許法に特例を設ける必要はないか、この三点に意見が出て参りましたけれども、最も多く議せられた点は、現職教育の実施上の困難、或いは弊害その他でありまして、結論的には免許法の立法の精神というものは大体において認めるという意見が大部分でありました。問題はつまり旧免許状を持つている者の切替え措置、そこにあるのではないかというようなことが論ぜられました。尚最後の特例を云々と申しますのは、校長とか、教育長、指導主事というような免許状には何か特例は考えられないか。それから実業、それから芸能学科に関する教員に対して特例は設けられないか、という二点であつたように記憶しております。そこでこの審議会では詳しいことは在京の委員で常任委員会を設けて、この人々に一応免許法を検討して貰つて、どういう点を改正したらいいかを一つ書き出して見る。そうして各地方におられる委員の方には連絡をとつて行こう、こういうふうなことで散会になりまして来週の水曜日にその第一回の常任委員会と申しますか、それが開かれる予定になつております。
  110. 若木勝藏

    若木勝藏君 第二の点は、先般アメリカの教育使節団がおいでになりまして、教育状況を視察されて、総司令部の方に勧告されたようでありますが、それを我々は今以てまだ手に入れることができませんので、甚だ遺憾に思つております。その勧告の中に教職員の免許法に関する事項があつたかどうか。若しありましたら、どういうことを言つておりますか。
  111. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 教員免許法につきましては、免許法並びにそれに連関しての現職教育につきましては、使節団の報告書は、現在の制度でよろしい。これは維持しなければならない。この基準を下げることはいけない。むしろこれが改善に向つて努力すべきであるというのが結論であつたと思います。  それから現職教育につきましても、現職教育についてのいろいろな措置、考え方はよろしいけれども、これの具体的な運営について遺憾の点が少くない。殊に教育の現職にある人々の経済的困難を顧慮して、この予算的措置というものが大切である。これをやらなくてはならんということと、それから現職教育のやり方について、田舎の方におる人でも容易に受け得られるような態勢を整えて行く必要がある。この二つであつた思つております。
  112. 若木勝藏

    若木勝藏君 この法律は先に修正され、更に又次の国会において一部修正がなされるのでありますが、この実施に当りまして、今までの経過を辿つて参りまして、今先ず免許法の方面について文部省としては現状から考えて不備な点があるとお考えであるかどうか。それから殊に私は免許法の施行法の面においては非常に教員の実態が多種多様に亘るので、非常に複雑性を持つておるので、切り替えの上においては非常な事務的に考えましても困難な点があると思うのでありまして、そういう点から考えてこの点は確かに現在の実態に合わないで、脱落しておるというような面があると、そういうふうに認定されておる点がありましたら、お聞きして置きたいと思います。
  113. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) この点につきましては、今私共の方で逐條に研究いたしておりますので、尚今ここで一々第何條の第何項というふうに申上げられる段階に至つておりませんので…。
  114. 若木勝藏

    若木勝藏君 第何條第何項に亘らなくても、こういう教員の資格の見落しもあるというような大きな問題が見つかつてつたらお願いしたいと思うのです。
  115. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 資格の見落しとなりますかどうですか、青年学校教員養成所が廃止されて新らしく青年師範が発足する。その間に地方に青年学校臨時教員養成所というものができたそうであります。これは或るものは半年であり、或るものは一ヶ年であつたというようなことから、その一ヶ年を受けた人達はその前まではよかつたのに、つまり教員になれたのですが、その次からも勿論いいのに、その間のその臨時養成だけは取上げてないということを申し出られました。これなんかはどういう形でか考慮されなくちやならんと思つております。それがまあ一つです。それから小学校の専科の正教員という人達の中で、昔の高等科を受持つた人達が何か仮免になつておる筈でありますが、これはどうもバランスを失してはいないかという注意を受けたのでありますが、これも考えて行かなくちやならんじやないかと思つております。それから基本問題としましては、皆さんの方からよく伺うことでありますが、経験年数というものと、学校若しくは講習会における單位というものとの関係をどうするかという基本問題がある。これはなかなか簡單に解決がつかないのでありますが、とにかくこれが恐らく施行法の方では一番重い。その他の問題は大した問題ではなくて、実はそこにすべての問題は帰着して来るかとも考えております。それではその單位を取るというやり方にするか。国家試験というやり方にするか。それから従来の先生方は触らないことにして、元のままでおることができるというような行き方にするか。という三つの方法があるわけです。もう一度申上げますと、国家試験によるか。国家試験によつて一級、二級の格を付けてしまう、過去の人は、そういう行き方によるか。第二は現行の一定の割引せられた單位を以て上級の免許状を與えるか。第三の方法は旧制のものは旧制のままでおることができる、こうすると、この三つの方法があるわけなんです。これらいずれにも一長一短がありまして、この決定は相当研究を要するのじやないかと思つております。
  116. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 詳しいことは私知りませんですけれども、アメリカでも免許法が新らしく制定せられたと聞いている。その際に現職の教員については旧来のまま認めて行つた所と、それから一部分新たなる免許法に切換えるために、日本でやつているような方法によつて切換えた所もあるように聞いておるのです。その際現職の教員はそのまま認めて行つた所には不合理がなかつたかどうか。特に待遇の上において不利益を蒙らなかつたがどうか。そういう点について幸いアメリカに行かれたのですから、若し御存じでありましたらお尋ねしたいと思います。
  117. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 資料が余りに多くて、今は一まとめにして申上げる段階に達しておりません。勿論この点については或る時期にお答えできるように私の方で勉強いたしますから、暫く御猶予を願います。多少の実例を知らないではありませんが、やはり全体を見通さなければ工合が悪いと思いますから、暫く御猶予を願いたいと思います。
  118. 岩間正男

    岩間正男君 私も二、三点お伺いしたいと思つております。  先ず第一にこれも一気に改めて貰つてもよいが、この前最初に法文化するときに経費の問題、この免許法によつて講習をやる。そういう資格を與えるために殊に教員の要する経費、旅行者の要する経費、そういうようなものを法文化して挿入しようという意向が文部省にあつたのかないのか。その点についてはどうですか。
  119. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) これは例の教育公務員特例法の中の研修というところがあるから、そうして免許法とは直接には法令的には関係がないからというので、初めから入れる意思はなかつたのであります
  120. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、今一番大きな問題になつておるのはやはり予算がないということですが「そういうことに対する大体文部省としてはこの法が施行されて今日のような事態が起るというようなことについては、以前から予想しておられなかつた。こういうことなんですか。この問題については私も前国会の予算委員会あたりで、これは多分玖村さんではなかつたと思いますが、例えば義務教育に必要な先生はこれは当然国家或いは地方公共団体においてこういうような費用の全額を負担するのが建前ではないか。それで義務教育という建前から一体どつちがよいかというようなことを質問したことがあつたと思うのでありますが、それについてはやはりできるだけ国家で出した方がよいというような返答があつたというふうに考えておりますが、そうすると、こういうような事態に対してはこれは文部省は今日の事態についてどういうふうに、この施行によつてどんなことが起るかということを予測しておられたか、おられないか。その点を伺いたい。
  121. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) こういうふうにストを以てこれに反抗せられるということは期待していなかつた。ただ非常な困難があるとすれば、この問題は当然経費の問題と絡んで来ますので、我々の方で初めから国から幾ら、一つも金を出さないでよいとは考えていないので、大蔵省に対してはその要求をしていたけれども、それはなかなかその当時聞入れられなくて取れなかつた。だけれども、それをいつまでもそれで放任して置いてはならない。問題は確かに重大な問題でありますので、国の予算もこの方に注がれなくちやならんという考えは初めから持つておりまして、差当り開設費の一部分だけでもと言つてつたのが免許法の開設費なのであります。これは誠に僅かの金ではありましたけれども、そういう段階であつて、まあ今日に及んだわけであります。
  122. 岩間正男

    岩間正男君 その点いろいろ御議論をする考えはないのでありますけれども、やはり最初から我々は問題にした。この法案について審議するときから非常に問題にしたのでありますが、そのときの文部省の取上げ方というものは、やはりこういう事態が起るようなことを予想されていなかつた、ストが起る云々というお話がありましたが、ストせざるを得ないところまでこの現在のひどい給與状態の中であれだけの大きな負担を個人の負担にされることは大変だ。そういうようなものがあの法案の中に含まれておつた。この点についてこれは十分に考えなければならないと思います。文部省としてはこういうものを法文化するというような意向を持つておられるかどうか。殊に予算としては非常に微細なものであるけれども、補正予算でもそれは二十六年度でもとられたのであるかこういうような点については講習をやつても一応やはり承認しなければならないと考えておるかどうか、この点……。
  123. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 免許法の中には挿入すべきでないと思います。ただ外の何らかの基準というようなこと、学校教育の基準というようなものを若し立てるとすれば、当然教員の研修という一節において法文化されてよいのではないかと思います。
  124. 岩間正男

    岩間正男君 これは研修と免許法というのは性格は非常に違うと思うのでありますが、その点はここで議論の限りでありませんから、そのままにしておきます。  次にやはり問題になるのは職場を先生が離れてしまう、そうしてそのあとの授業をどのように継続するか、つまり補助教員の問題、この問題がやはり非常に我々がこの法案審議するときに大きな問題として出ておつたのでありますが、この点についても文部省は今まで立案並びに審議の過程において考えられたことがあるかどうか、こういうことが考慮に少しも上らなかつたのであるか、或いは考慮になつたとか、そういう点について打開をしようとしたけれども、うまく行かなかつたのであるか、この点が又非常に今日の教育運営の面において支障を来しておる。教育的に見るならば、教員の経済負担がこれよりももつと大きな拡がりを持つた影響を持つと思うのであります。そういう点からお聞きするのであります。
  125. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 切替のために、單位の修得につきましては主としてこれは休み中に行うという原則で考えておりました。若し休み以外のときにやるとすれば、極く少数の者が研修の機会を與えられて、それを單位に見られるならば、免許法と関係を持つて来る、その少数のものに対しては一学級一・八とか、一・六とか、一・三とか、まあ程度によつて違うようでございますが、その中から教員の一人、二人は出て来ることが可能だ、こういうふうに考えたのであります。
  126. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、実際実施して見た面と、最初文部省考えられた点は非常に齟齬があつたように思うのでありますが、これは認められておるわけですね。現在において……。
  127. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) どういう意味でしようか、今の点ちよつと分らなかつたので……。
  128. 岩間正男

    岩間正男君 結局免許法によつて実際実施して見ると、非常にあとの補充がつかないで弱る。校長さんとか教頭とか、そういうような学校の運営に直接携わる責任者は非常に困つておるという実情が発生したのですね。そういう点については最初から準備ですね、計算されたのですか。つまり免許法によつて正確に実施されると何人の教員がこれば事故することになるか、それによつて授業の運営がどういうような欠陥が起るか、これに対する計画ですな、そういうデータを作られて検討して発足したかどうか、こういう問題です。
  129. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 只今の点は多少の齟齬があつたために例の三年云々ということをせざるを得なくなつたのでありすから、計画は十分でなかつたということは認めなくちやならないと思います。併し一体授業のあるときに、そういう種類の講習を教育に支障を来たすということなしにやるというのが我々の建前でありまして、その建前から言つて三年間延長するということが当然のことだというようになつた次第であります。
  130. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つつておきます。大学が講習において、実際の講習の組織でやつておるわでけありますが、これは参加の仕方が大学の権威というようなことを非常に言つておるところもあるわけですね。そうしてどこまでもその実施の計画を推し進めておるようでありますが、もつと受講者の立場からの意見要求、こういうようなものを入れてやるように一体文部省考えてこういうように大学を参加させたのであるか、それともどこまでもそういうような点を大学の一つの権威というようなものでこれを推し進める、こういうふうに考えておるのであるかどうか、これは実際の施行上の面に亘りますけれども、その点について文部省最初の目的としてはどういう程度まで大学をこれに参加させようと考えておつたのか。
  131. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 申すまでもなくこの免許状の切替のための講習は大学並びに教育委員会が主宰することができるのでありまして、大学に対しては私共の方から通知表初めに出して教員の代表と教育委員会とで協議会を作つて協力的に話を進めて行くように、又事実そうなつておる筈であります。併し今御質問の大学の権威云々ということは内容的にはまだ分りませんけれども、大学は大学として自分らの出す或いは自分達の授與する單位に対しては責任を負わなければならん、そういう意味において責任を果すために守るところがある、それは当然だろうというふうに思つております。
  132. 岩間正男

    岩間正男君 それは明らかに今のお説の通りだと思いますが、それは相当度を過ぎておるところがあつたのじやないか。我々の視察の結果、協議会というものの運営が非常にうまく行つていない。どうもその要求に大学がすぽりと入つて来て問題岸解決するというのでなくて、飽くまでも自分の立場というものを強硬にやつておるように現に見たわけです。それで今のような質問が出たわけです。やはり三者の協議につよつてそこのところをできるだけ民主的に運営するというのが文部省の意向だと考えてよいわけですか。
  133. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) その通りであります。
  134. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 教育の振興は学制そのものも大事でありますが、人を得るということが最も大事だと考えるのですが、現在全国の学芸大学或いは大学の教育学部の採用人員と志願者数、それがお分りでしたらお聞かせ願いたい。
  135. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 詳しい統計が出ておるでのありますが、今はつきり私記憶いたしておりませんが、二万四千の定員に対して約七八%ぐらいの入学許可をした者がおります。で、志願者を全部入れませんために少し率が悪いのですが、今ではそのくらいの程度であります。併し年々増加の傾向にあることだけは事実でありまして、これは後刻資料をお目にかけましよう。
  136. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大学の入学試験において智能検査の最も低位の者が教育学部に集中しておる。法学部、工学部、理学部、教育学部と、こういうふうにやはり大学では入学者の結果を見ると、智能検査の最下位の者ばかりが教育学部に集中しておるいうことを聞くのでありますが、それは事実でございますか。
  137. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 最下位の者を集めて学芸学部に入れるというわけではありません。学芸学部を選んだ者の中にも非常に優秀な者がおります。例えて申しますと、鹿児島県なんかでは鹿児島県のやはり伝統もあると思いますけれども、文、理学部、農学部よりは教育学部の方が優秀な者が入つております。これは先日そういう統計を貰つたのであります。ところで全国的に見ますと、遺憾ながら若干の者の智能検査の結果は非常に悪いという事実はあります。けれどもお読の通り他の学部の選り残りが学芸学部に集まるというのでなくて、学芸学部にだつて優秀な者はいる、併し平均をして行くときにはその悪い人が平均には影響を及ぼすそうですから、相当教員養成の学部ば全体の平均から言えば智能の指数は低いという事実はあると思います。殊に小学校教師の養成の場合がそうであります。中学校はそうでありません。
  138. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 現職の教員の年齢でありますが、二十五歳未満の年齢層の者が最も多くて、まあ或る学校に行きますというと、二十五才以下の者が殆んどで、校長だけが年輩だつたというのが数多くあるわけであります。二十五才から三十五才あたりのこの中堅層の年齢層に該当する者が非常に少いという統計を私は見たのでありますが、文部省の方でもそういう統計が出ておるかどうか伺いたいと思います。
  139. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 教員の年齢配置の統計は出ております。おつしやる通りでありまして、二十五才までが多くて、殊に女教員の場合は大体五ヶ年間にはどんどん減つて行きます。下の若いところが多くて、そうして三十五——四十才頃になると又少し多くなる、そういう形になつております。これは又お目にかけてよいと思います。
  140. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ特例もありましようが、全般的に教育学部に進む学生が他の学部に進む学生より智能の低位の者である、そして志願者は割に少いということは私は肯定しなければならんと思うのです。それからお嫁さんに行く関係もあるということも一応分りますが、二十五歳から四十歳くらいのこの中堅層が相当教育界から足を洗つておるということも或る程度それも認めなければならんと思います。この原因を教職員養成課長はどういうふうに把握されているか承わりたいと思います。
  141. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 原因調査いたしたことはありません。ただこれは統計局の方でやつてつていることでありますが、やはり転職、及び戰争中に他の職に転じた人が帰つて来ない原因は恐らく待遇にあるだろう、そういうふうに思つております。
  142. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの人を得るということが、教員の資質を向上するということが極めてこの教育貧困の際から大事だと思うのですが、国家の教職員養成に当つてはこういう数字というものは私は由々しき問題で、この原因を探求し、その解決を図らなくちやならん、こういうふうに考えるわけであります。で、今課長の方から待遇の問題もあるというように発表されましたが、私もその点もあると考えます。更にこの免許法が余りにも飛躍しているのぢやないかということを考える、まあその点について意見を承わりたいのですが政治をやる場合には十年、百年の先を考え、この理想というものを堅持して行かなければならないのは勿論でありますが、それと同時に現実に即するということが私は政治というのは生きているのだから極めて大事なこと、だと考えるのです。あのいわゆる新学制の発足が、校舎もなく教員もなくて全国的に各町村に新制中学校を作らしたというあの事態は、私は或る程度反省すべき点があるのじやないかと思うのです。あれはやはり現実かち少し飛躍したということが私反省されるのではないか、まあ私はそう考えるのですが、今度の免許法につきましても、使節が先般お帰りになるときに、運営の面とか或いは予算の面を考慮しなければならんということを勧告されて帰つたわけでありますが、敗戰日本の経済の実情からそういう予算的措置ができないということは過去の事実がはつきりと示していることでありまして、そういう角度から考えても日本の文化国家を建設するその理想、願望というものを堅持して行く立場からは、今の免許法というものも一応了承できるのでありますが、少くとも生きた現在の政治を、実情に即したものをやるという立場から言うと、どうしても私は少し飛躍し過ぎておるのじやないか、こういう考えを持つ。従つてその飛躍というものを現実に沿う線に持つて行かなければならん、こういうふうに考えるのですが、教職員養成課長は最も責任のある立場にあると思いますが、どういうお考えを持つておられるか意見を伺いたい。
  143. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 飛躍し過ぎておるならば、二年程度で止めて、そうしてジユニアカレツジで教員養成は可能であるという結論が出て来る。又そう言う識者も多いようであります、私はこれは文部省全体の意見を代表しておるわけではありませんけれども、これからの教育の重要性に鑑みましてやはり大学を出た者を以て小学校や中学校の教師にするという基準は堅持するのがいいのではないか。どうも近頃まあ経済的困難ということは勿論あるのではありましようが、教員養成は二年あたりで止めて置いたらどうだろうという考え方は非常に現実に屈託し過ぎておる、勿論私共は一時にそのことが実現されるとは考えませんので、大体今の新制大学の教員養成の学部の三分の一乃至半分の者だけを四年間で教育し、残りの者に二年の過程で教育する、こういう二段構えで当分は進んで行くべきだと考えております。
  144. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ具体的に申上げますと、教職員の資質の向上を図るために、大きな理想として大学を四年課程を以て充る、これから出て来る教師に対してそういう教育をやるというのと、更に現実的に現職の教員とちよつとここで切離して処理して行くという現実に即した行き方もあるのじやないかと考えるのですが、それに対して教職員養成課長はどういうふうにお考えですか。
  145. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 考え方としては二つあり得ると思います。ただ私がここで心配いたしますのは、現職の教員は従来のままでよろしいという法律を作りますと、新らしい免許状も自分達が得たいと望む場合の途はない。それは大学は従来の教師の受けた教育を参照いたしまして、例えば大学の三年に編入するというような制度を取つて正規の大学の四年のコースの或る部分を受けて新らしい免許状を取るという方法になると思いますが、それでよければそういう途も考えられる。今の一番重要な問題は、教員養成諸大学に入学志願者が少いという原因は何かということの一つに、少くとも教育職員というものは一つの専門職である、大学の卒業生がこれに興る職業であるということが社会的地位を高めるためには私は根本的に必要であると思う。若しこの程度を下げるならば、大学の学生が喜んでその四年過程を終つた後に教育界に入つて来ることはなかろう、やはり教育者の社会的地位を高めるためには、遅れても、面倒でも、苦しい中を現職教育を受けて頂いて社会的地位が高くなつて行くという状態を作らないと、教育界はいよいよ悲惨な状態に追込まれる、こういうふうに考えております。
  146. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 教職員の社会的地位を高める、こういうことも私賛成であります。併しこの教職員の仕事というものは非常に内容は複雑であるし、責任も大きいし、この免許法のようにこういうふうに非常に嚴重な法律というものが一つの教職員になる條件となるとすれば、当然この教職員というものは検察官のように特別職とさるべきものと考えるのですが、その見解如何ですか。
  147. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 特別職だと思います。私共の狙つておるのは、特に専門的な教育をやかましく免許法が要求するということと相並んでその待遇については特別な考慮が拂われなくてはならない。人事院も聞くところによりますと、教員のためには特別な俸給表を作るようにということを言われておるということを承りましたが、正にそうだろうと思う。そうなるために私共は特に教育家は専門家でなければならんという原則を強く打立てたわけであります。
  148. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこに問題があろうと思うのです。教職員の職務の内容から言つても私は特別職にする。そうして経済的にも社会的にもその地位を維持して行く、そのために特別表を設けて待遇を向上させて行く、こういうものがあつて免許法の裏表になつて始めて円滑に進んで行くことができると思うのです。併し敗戰日本の経済力として現在そういうような飛躍的なことがなされない現状である。又政府としても積極的にやろうという意向もないのに、制約する、こういう免許法だけ一方的に非常に進む、その裏付となるべきものは非常に遅れておる。こういう敢行的な政治というものが私は能率を低下させる、混乱を起す大きな原因になると思うのです。私はいろいろな情勢というものから非常に政治というものはやはり実情に沿つて無理のないような進み方をしなければならんと思つておるが、そういう意味において私はやはり免許法だけが飛躍し過ぎておるのではないか、こういうことを考えるのですが、如何ですか。
  149. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 皆さんの方でこの点は議論をして頂いて、本当に高いのだつたら下げて頂いて私共もそれに適応する免許法を作りますが、これについては私とあなたと話合いをしても仕方がないのですから、どうぞ皆さんで御議論を願いたいと思います。
  150. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 課長は免許法の実情に沿うような改正をするというような、課長全く個人の意思はないのでございますか、あるのですか、その点……。
  151. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) 基本方針につつきましては、先程申上げましたような理想の下に文化国家、日本の文化国家水準の維持のために大学の卒業者を以て級の教員とするという基本方針は私は現在までの考えたところによれば、私共では変える必要はない、そう思つておるのでありますが、ただ私共は一事務官僚でありますから、或いはそういうことは理想に馳せ過ぎていて現状に合わないから改めろというお話しがあれば、又人が代つてやるだろうと思います。
  152. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたの気持は分つたわけですが、もう一つお伺いしたい点は、課長は先般来アメリカをずつと教員養成状況を視察されて来たわけですが、視察されたアメリカと日本の国情は違うから向うの通りにはいかんでしようけれども、両方の国の教員養成状況を視察されて、特に免許法あたりと関連して印象を強く受取つて来られた点がありましたら、極く簡單で結構ですから承りたいと思います。
  153. 玖村敏雄

    説明員(玖村敏雄君) アメリカでは御承知のように教育科学の進歩が世界のどこの国よりも著しいところでありますから、従つてアメリカの教育にはいわゆる教育科学というものを基礎にした学問的な行き方というものは相当やつておると思います。そういう教育科学乃至教育技術というものとそれから学問そのものに対する理解との関係如何という問題は又別の問題でありますが、少くともアメリカは教育の科学的技術というものについての研究を十分にしておる。それから現職教育の制度は全部大学の夏季の講習というものでやつておる。そうしてそれは同時に大学の学士号という或いは又向うのマスターとか、博士号とか、そういうものと結び付けられたものとして随分まじめにやつておるということは言えると思います。それから設備がいいというようなことは幾ら申上げましても今の日本の段階ではどうにもならないと思いますけれども、教授と学生との関係が非常に親密で、非常に相互的に理解し合つてよく指導をしておるという点は強く打たれたところであります。尚現職教育において取つた一定の單位と待遇の改善ということが常に結び付けられてあります。その單位を取れば幾ら俸給が上がるというような表が作つてありまして、機械的にその表に従つて処置しておるようであります。これもよいか悪いかということは又別な議論ができると思いますが、そういう点は誠に整然たる割当によつて行われておるように思いました。まあそういう点が主たる問題でありまして、申すまでもなくアメリカにおいては小学校、中学校、高等学校の教員は、大学の教授もそうでありますが、夏休みは俸給を受けない。俸給を受けない三ヶ月間、或いは二ヶ月のところもありますが、それが彼ら教育者にとつては現職教育を受ける機会になつておるという組織でありまして、経済的に裕かなところがありますから、まあそういうこともできるのだと思いますが、それは日本で直ぐやるということは勿論できない。国情が違うということも思いましたけれども、とにかく夏休みをどこかの大学に行つて一定の單位をとるということを一般の先生方は楽しみにして、あちらこちらと随分遠方に行つて教育を受けているというところを見て参りました。
  154. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の質問を打切ります。
  155. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本日はこの程度で散会いたしまして、明日は午前十時より開会いたします    午後三時五十九分散会  出席者は左の通り    委員長     堀越 儀郎君    理事      加納 金助君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員      木村 守江君            荒木正三郎君            高良 とみ君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   説明員    文化財保護委員    会委員長    高橋誠一郎君    文化財保護委員    会事務局長   森田  孝君    文部省大学学術    局教職員養成課    長       玖村 敏雄君