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1950-10-05 第8回国会 参議院 文部委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月五日(木曜日)    午前十一時四十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育文化施設及び文化財保護に関す  る一般調査の件  (教育職員免許法及び同施行法の実  施に伴う諸問題に関する件)  (教職員レツド・パージ及び全国  学生自治会連合の取締問題に関す  る件)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは開会いたします。
  3. 木村守江

    木村守江君 第四條が校長教育長指導主事仮免許状になつておりますが、この仮免許状は廃止すべきじやないかと思いますが、御意見ちよつと伺いたいと思います。
  4. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 仮免許状は勿論今の仮の資格というのがそもそも仮のことでありまして、或る時期に当然廃止すべきものだと思います。
  5. 木村守江

    木村守江君 次に第六項の教科制度についてですが、高等学校教科というものをもつと細分しなければ意味をなさないと思います。例えば社会科という教科がありますが、社会科には人文地理一般社会も或いは歴史も一諸になつております。こういうふうじや私は社会科の本当の意義がない、又理科の問題についても、これは物理も、生理も、化学も、生物も一緒になつておりまして、これじや高等学校教科としての意義がないと考えるのでありますが、それに対して意見はどうですか。
  6. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 高等学校教育で今御質問のことは全く私もそう思うのでありますが、併し実際に高等学校教員になろうとする人のとる單位とり方は、今おつしやつたような特殊な専門を持つていて、そうして例えば社会科の全体を理解して、そうして特に歴史については詳しく専攻するというふうな制度にしておりますので、今後の卒業生御覧になりますと、必ず御要求のようになつておる。それで高等学校教科の分け方が今の免許法のようになつておりますので、便宜上そういたした、そういうわけであります。
  7. 木村守江

    木村守江君 それでは教科單位でなくて教養単位になるのじやないか。
  8. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 教養として、例えば社会科学全般教養を持つていて、そして或る社会科の中の一分科に特に深く専攻した者は専門教養と申しまして区別してあるのです。専門教養が何単位かなければ高等学校教員にはなれないという規定がありますから、待つて校長が若し教員を採用なさるときには、大学の証明した單位とり方御覧になつて、これは歴史を専攻した者らしい、これは地理をやつた者ということはお分りになるようにしてあるのです。御採用上決して差支えないと思います。
  9. 木村守江

    木村守江君 これは上級免許証をとるということから考えますと、やはり私は高等学校教科というものはセパレートすべきものだと思うのですが、如何がなものですか。
  10. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) お答えいたします。そうなりますと、意見の問題になりますが、現在の少くとも学校教育全般の空気は、そういう細分は成るべく避けるというのが新らしく要求されているのですが、今はそういうふうになつているわけでありますが、余り狭く専門になり過ぎることは教育者としては好ましくない。そういう大体思想に基くものであります。
  11. 木村守江

    木村守江君 どうもこの問題と非常に逆行していると思うのですが、高等学校よりも中学校教育というものがやはり一般的にならなければいけないと思うのです。ところが第六項のように、中学校教科職業科家庭を含んでいない。家庭科を含んでいない。職業実習家庭実習を含んでいないというような、これが全然今の答弁と矛盾したような状態にあると思うのですが。
  12. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 今の点は御指摘通り文部省でも今考え直しております。近く家庭職業一つになる、中学校の方でございますが、なることになつておりますので、御指摘の点は全くそうだと思います。
  13. 若木勝藏

    若木勝藏君 重ねてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、新制中学方面は御承知のように、年齢も若いし、又学習の経験年数も少い。そういう新制中学に対しまして、旧来のいわゆる中学校の教諭であつたところの人が、当然そういう程度の低いところの新制中学教員なつた場合には、一級免許状を貰うべきではない。こういうふうにも考えられるのでありますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  14. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 程度の低いというふうには考えませんので、中等教育としては六三三はやはり一つ考え行つて、そうして小学校から、いわゆる高等学校に移り行く中間段階にそういう教師が入つていることが大事だと思うのです。そうして二級とか、一級ということは、その人の修業年限を以て計算いたしました関係上、そういうふうになつているのであります。
  15. 若木勝藏

    若木勝藏君 程度の低くないという見解は、これはいわゆる中学というような、いわゆる形式的な方面考え方でありまして、旧制のいわゆる五年制度中学に比べたら、新制中学という場合には、明らかにこれは実質的に程度が低い。私はその点を言つているのであります。そのものに対するところの教育をする者は、当然これは程度の低いものになるのでありますからして、一級免許状も貰うべきではないという、こういう見解であります。
  16. 玖村敏雄

    説明員玖村敏雄君) 旧制師範学校も三年程度専門学校程度であります。それから農林専門学校も三年の専門学校程度であります。その農林専門学校卒業生一級にして置いて、旧制師範学校卒業生を二級にするということはバランス上困るのであります。尚注意して頂きたいと思いますことは、新制中学の例えば社会科或いは理科というふうな学科は、従来免許状を出しておりましたところの或る種の学科よりも非常に範囲が広くて、その人々は必ずしも中学のためには完全な先生だとは言えないわけであります。そういう点では左右の均衡ということを主にいたしております。主として十二年のものはニ級、こういう原則によつたものであります。
  17. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは文部大臣がお見えになりましたから、昨日に引続き質問を受けることにいたします。ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止
  18. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 速記を始めて……。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 教職員レツド・パージの問題並びにこれと関連しまして全学連の問題が非常に重大化しまして、大きな社会問題となつておりますので、この際レツド・パージの問題並びに全学連の問題につきまして、ここに大臣から明確なる答弁を頂き、広くその性格実情というものを国民に知らせて頂きたい、こういう立場からここに御質問申上げます。第一番に、今度の教職員レツド・パージは誰の責任においてなされるのか、お伺いいたします。
  20. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 文部大臣責任においていたします。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 法的根拠については新聞でいろいろ報道されておりますが、その法的根拠教職員の除去及び就職禁止等に関する政令六十二号を適用すると解釈してよろしいかどうか。
  22. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そう解釈いたしております。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういたしますと、これに伴つて適格審査委員会というものを設けるようになつておるが、その委員会新聞に報道された通りと解釈してよろしいかどうか。
  24. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そう解釈してよいと思います。
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あの委員会規定によると、委員指名地方教職員については知事がその指名をすることになつておるのでありますが、現在教育委員会ができて責任者教育委員会なつた現在においては、あの委員指名責任者というものは当然教育委員会がなるべきものと思うが、文部大臣所見如何
  26. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 確かにそれも一つの御意見だと思いますが、併し今は知事がすることになつております。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 現在各教職員適格審査委員は現存して委員が任命されておるわけであるが、今後も現在のままの委員でこの審査を継続されるつもりであるかどうか。
  28. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 現在のままで継続するとは一概に決まつておりません。必要があればそれを改めるかと、或いは人数を増すとかいうことを考えたいと思つております。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここで一つ大きな問題があると思うのでありますが、それはこの政令六十二号を貫くところの精神は、軍国主義並びに極端なる国家主義者追放するという筋金でこれは通されていると考えられます。その一つ第三項に著明なる連合軍への反対者追放すると、こういうふうにあるわけであるが、連合軍とは何ぞやという意見が述べられて来た場合に、この政令六十二号でやるという点については聊か納得しかねる点があるのではないか、若しもこの際そういう反民主主義或いは暴力主義者という者を追放するならば、新たにここに法律を設けてやられた方が国民諸君を納得させ得るのではないか、これに対する見解を伺いたい。
  30. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 事態が非常に変つて来ておるので、それに適当した條項として今の條項考えておるのですが、併しこのままやるか、或いはこれに新らしく何かの規定を加えるかということはまだ確定しておりません。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 民主主義思想確立実践が非常に不十分な現段階においては、この審査は前の審査性格が違うだけに相当行過ぎも起るかと思うのであるが、大臣は今まで共産党員であるからこれを追放するようなことはしないというようなことを再三言明されているのでありますが、現在においてもその見解に相違ないか否か承わりたいつと思います。
  32. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その通りでございます。
  33. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣は昨日もこの適正なる審査を遂行するために混乱を招かないよう一つ審査基準というものを準備して事に当りたいと、こういうように発表されたのでありますが、その基準なるものはいつ頃完成し、いつ頃からこの審査に着手されるか、その点をお承わりしたいと思います。
  34. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今研究中であつて、いつという時期を申上げることができません。
  35. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大凡の時期はいつ頃であるか、これを発表して頂きたい。
  36. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 大凡の時期も今申し上げるまでになつておりません。
  37. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではここ一ヶ月くらいはないと解釈してよろしいか。
  38. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そんなに長くはかからないつもりでおります。
  39. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 であれば、相当ここで基準というものは具体的に進んでいると考えられるが、その基準の若干を発表願いたい。
  40. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は事務当局によぐ研究するように言つてありますが、自分はそれをまだ聞いておりません。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 このレツド・パージの問題について、ここで質問を打切りますが、要望いたしたい点は、民主主義思想確立実践が不十分な現段階においては、この前の適格審査のときもそうでありましたが、随分とこの行過ぎがあつて、二審、三審の手数を煩わし、随分と混乱したわけでありまして、今後反民主主義者或いは暴力主義者で政府の顛覆を企図するというよ6な教育者として不当な人は、これは排除しなければならないが、この審査に当つては、いつも大臣が言われておるように、皆に納得をして貰うような、無理のない処置をとるというこの基本線沿つて、特に地方に行過ぎがないように十分の配慮をしてやつて頂きたいことを要望して、このレツド・パージに対する質問を打切ります。  次に、これと関連して今大きな社会問題となつている全学連の問題について質問いたします。先ず現段階における全学連の問題をどういうふうに分析し、又どういう実状にあるか簡單に承わりたい。
  42. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 全学連言つても元来学生なんです。だからして私は飽くまでも学生としてこれを指導して行きたいという考えを抱いて、大学学長諸君にもそのことを要望して、この全学連が不当なものであるなら、学生をそれに参加させないように、私は脱退をさせるようにということをお願いをしておりました。学長の方から全学連解散ということの希望もございましたけれども、例えば広島の森戸学長のごときは、自分大学学生はすべて撤退させてしまつておるという例もありますので、まだ今のところは解散というまでに至つておりませんが、併しすでに言うまでもなく、学生としての分、あり方を破棄しておるものだと私は考えますので、適当な時期にはこれは解散をすべきものだというふうな見通しを持つております。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の全学連運動は、これは一つ学生運動で、昭和二十三年の次官名を以て通牒された政治活動に関する件、あの通牒に基いて、これは学内における教育行政上の問題と解釈して処理すべきだと、こういうふうに考えるが文部大臣見解如何
  44. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私も同じ見解を持つて今まで事に当つて来たのですけれども、併し今日のようになりますというと、ただ教育の見地からだけは解決できないものがありはしないかというように考えて参りました。もとよりこれを文部省解散するということはできません。ただ文部省としては解散希望を述べて、そういうようにして頂きたいと考えて、そういう時期も来るのではないかと考えておるのです。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 新聞に、大臣法務総裁に対して団体等規正令適用を依頼したというようなことを新聞に発表されたのでありますが、それは事実であるか答弁願いたい。
  46. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 事実であります。ただ法務総裁相談の結果、私の意見も暫くと申しましても、いつそれが来るか知りませんが、時期を待つということになつたわけであります。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 法務総裁は昨日この委員会において、現段階において団体等規正令適用する段階に来ていないと、こういうふうに意見を述べておるのであるが、大臣はどういう点において団体等規正令適用する段階に来ておると解釈しておるか、答弁願いたい。
  48. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 要するに、元来これは教育の力でやるべきことなんですけれども、すでに現在の情勢を見ておると、私はこれは到底教育の力ではいけないという学長方の言われることも一理あるのではないか、一番学生取扱つておいでになるのは学長諸君でありますから、そういう方の御意見であるので、私は尚重ねて法務総裁と御相談をして見たいと思つております。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは先般早稻田大学において、大学当局警察に要請して警官学内に入れて、そうしてこれを鎮圧しようとした。それが一層学生を刺戟して問題を更に大きくしたように考えられるが、あの警察学内に入れる点について大臣はどういう見解を持つておられるか。
  50. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 場合によつては止むを得ないと思います。それは学長の御判断に任せているもので、一概にいいとか、一概に悪いとか言えない、そのときの情勢によると思います。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ここで私はこの点について意見を申上げたいのでありますが、学生運動は丁度授業料値上から始まつたのでありますけれども、純粋な学生運動指導よろしきを得ればここまで来なくて済んだと思うのでありますが、非常に教育者の方は教育力に欠けて、鎮圧、彈圧一手で行こうとするし、政治家文教政治政治力が欠如している。この文教政治力貧困さというものが学生をああいう運動に追いやつて、そうして指導立場にある教育者がこれを彈圧一手でやろうとするところに学生運動をいよいよ邪道に追い込んでしまつた。私はああいう学園にすぐ警察を入れるということは学生を刺戟して非常にまずいと思うのです。一部煽動者が仮にあつた場合に警官が動員される。そうなりますと、そら見ろ、こういうふうに警官を入れて来て我々を彈圧しようとしている。団体等規正令適用すると大臣も盛んに言つている。そういうようなことを純粋な学生に、若しも一部煽動者があつてこれを煽つた場合には、いよいよ彼らの士気を鼓舞して、そうして内心では少し運動は行き過ぎていると反省している学生をも捲き込んでしまつて、この運動をいよいよ大きく誤まらしめる結果を招来する、事実招来している、私はこう考えるのです。そういう意味において、私は今後こういう学生運動指導には教育者は勿論のこと、文教最高責任者である天野文部大臣に特に私は慎重に善処して頂きたいと考えるわけであります。これに対して大臣意見如何でございますか、承わりたい。
  52. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はあなたのお言葉をお聞きして、率直に言えば、談何ぞ容易ならんという感を禁じ得ません。今の学生指導するということが如何にむずかしいことであるか、この戦後の現実において教育者ただ力だけで彼らを十分に導くということがどんなにむずかしいことか、私は決して学長諸君のなされることが彈圧一手だとは思いません。或る人達は彈圧が足らぬのだという論さえあるのです。要するにそれに対しては勿論学長初め私も十分責任を持つもので、その責任を逃れる考えは毛頭持つておりませんけれども、これは決してそう容易でないということを私は識者に了解して頂きたいと思います。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では大臣は現在の学生の大多数の者を信頼していないというわけでありますか。
  54. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 非常に意外であつて、私は今全学連が盛んであり、共産主義運動が盛んであつても、大多数の学生は決してそれをよしとはしておらない。私は学生ボン・サンスを信頼して今日に来ておりますが、尚その信頼を決して止めでいるわけではありません。
  55. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は昨日文部大臣声明を出されたことに対しては非常に好感を持ち、その適宜な措置に敬意を表し天わけでありますが、あの声明を出された大臣の心境を承わりたい。
  56. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今度の事柄には学生に非常な誤解があると思うのです。それはいろいろな宣伝があつて、到底そんな追放対象などにはならない人までも対象とされるがごとく宣伝をするとか、そういうことによつて純真な若い人たちが非常な誤解を持つておると思うのです。私はこの問題が共産党関係学生に利用されたことを非常に遺憾といたしますが、併しそのために純真な学生たちは決してこれに同意するというのではなくして、誤解のために動かされておる。只今も申したように、私は大多数の若い学生ボン・サンスを信頼して参りましたが、今後も彼らのボン・サンスを信頼して行きたいという考えでございます。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、私の言われる指導力教育力というものはそれなのであります。その実情をよく学生に知らせるために、学校当局はもう少し適当な手を打つべきであつたし、大臣声明も、もう少し早く欲しかつたと私は考えるのです。レッドパージについては、もう数ヶ月前から全国でやれ一万名やるとか、やれ二万名というようなデマが飛んで、教育者を随分不安定にしていたわけでありまして、こういうものをもう少し早く十分知らせれば、教職員の方の動揺もなく、又これに乗つかつて社会問題となつておるこの学生運動破局化ということも私は未然に防げたと考えます。そういう意味において私は指導力教育力というものを切に要望しているわけなのであります。最後にお伺いいたしますが、それは今も大臣から申されました、学生誤解もあつたと、それに更に私は血気にはやつて指令に乗つて動いた学生もあると思うのでありますが、その学生学校教育法施行規則第十三條四項で多量の犠牲者を出すということは、私は今後の学生指導に当つても愼重を期さなければならんと考えるのでありますが、現在文部大臣はこの重大な段階至つて、この十三條四項の適用についてどういうふうにお考えになつておるか、御意見を承わりたいと思います。
  58. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは学長が現場におつて十分研究しておられることですから、学長のお考えによつてやる考えでございます。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは最後に要望いたします。今のこの十三條四項の適用というのは、これはやはりこの問題の事後処理、将来の点についても重大な問題だと考えるのでございますが、今度の問題についても大臣は各大学学長十分連絡を今までとられて来たことでありますが、今後もとられると考えるのでありますが、私は十三條四項の適用によつて多数の学生犠牲者が出ることのないように十分の慎重さを期して頂きたい。こういうふうに考えるわけであります。現在の学生運動は勉強というものを放棄して、この段階に来たことについては我々も文教政治力貧困さに責任を感ずるものであります。学生の大部分というものは大臣が言われる通りに、これは純真な立派な将来の日本を背負つて立つ学生であります。彼らはあのような学生運動の危局に突入することなく、安んじて勉強できるような環境というもの、政治力というものを我々は打立ててやらなければならない。こういうふうに考えるわけでありまして、我々も責任を感じますが、大臣の今後格段の御配慮、御盡瘁を要望いたしまして、私の質問を終ります。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 昨日大臣にいわゆるレッドパージの問題で質問しておつたのですが、時間がありませんでしたので、今日継続さして頂きたいと思います。只今までの質問の様子並びに大臣の御答弁を聞いておりますと、結局今度のいわゆるレツド・パージというものは、合法政党としての共産党員追放がその目的でなくして、学園秩序破壊者をここで排除する。こういう目的のためにやられておるというふうに御答弁考えられるのでありますが、そういうふうに我々は解釈してよいか、この点を伺いたい。
  61. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は共産党員だからすぐその故を以て教職から退いて頂くとかという考えは毛頭持つておりません。けれども占領目的に違反するとか、或いは学園秩序を紊るとか、そういうような行動或いは言説をされるとか、そういうふうに学生を導くとか、そういうことのある者は、これを排除したいという考えでございます。ただそういう人達共産党、或いは共産党同調者に多いかどうかということは事実の問題として研究しなければならないと思います。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 只今の御答弁で、今私の発言したことが大体承認されたのじやないかと思いますが、そうしますと、飽くまでも学園秩序を図り、この秩序を飽くまで保つて行くために、そういう者を粛正すると、そこに狙いがあるのだと確認してもよいわけですね。もう一度。
  63. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それでよいと思います。要するに何か特に欠点を探し出して、そうしてその人を排除するとかという趣意ではなくて、社会秩序とか、或いは学園の自由とかというものが守られるように、それを阻害する人を除きたい、去つて頂きたいというだけのことでございます。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、レッドパージという名前一般に呼ばれておりますのは、これは世間で付けた名前であつて非常に妥当でないと考えてよろしうございますか。
  65. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 誠に適切なお言葉だと思つて有難く思う次第でございます。決してレッドパージなんという名前は私共が付けた名前ではなくして、巷間において勝手に付けた名前でございます。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 大臣のお気持は昨日、それからこの前の御答弁でも、それから只今の御答弁によりまして明確にされたと思うのでありますが、ともすると、一番問題なのは、やはりこういうような学園秩序を紊す、こういうのを粛正するのだという名前によつてつて、逆にいわゆる共産党員或いはその同調者、これを追放するのが如何にも趣意であるように一般考えられておる。ここに問題があると思うのであります。問題だけじやなくて、そういうふうな態勢が、このいろいろな今度の審査委員会の作り方とか、それからその基準の決め方とか、そういうところからも出て来るように考えられるのでありますが、この点非常に国民は明確でないのです。この点について非常に不安を持つているわけです。只今こういうような、つまり文相が自分考えていられる意図に反対な方向に行くところの危険性に対してはどういうような措置をとられるか。この点が非常に重要だと思いまするので、これは国民一つ思想の自由、こういう点から非常に重要なんで、その点伺いたいと思います。
  67. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今の御説は御尤もなんですけれども、ただそういう私の考えるように占領政策に違反したり、或いは学園秩序を紊つたりする者が、とかく共産党関係の方に多いという事実がありはしないだろうかどうか。そういう危惧を一般に持つておりますから、今度の教職員審査というものが專らその点に集中するということに考えられるのも自然の勢いではないかと思います。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 昨年行われました教員の、これは追放ではありませんが、教員に対するいろいろな辞職勧告、結局追放のようなことが行われたのでありますが、こういうやり方に非常に只今の問題とこんがらがつた問題が出て来たのぢやないか、こういうふうに考えられるわけであります。それで今度、去年は教育委員会に任せてあのようなことがあつたのでありますが、今度は特にこの審査委員会というようなものを設けてやられるその意図はどこにあるのであるか、この前のやり方はどこに欠点があつたか、或いはその欠点を認めておられるか、ないのか、こういう点について伺いたい。何故今度改めてこういう審査委員会を設けてやられるのであるか。
  69. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは適格審査という従来の形をそのままとつたことから来ておることなんでありますので、私はたびたび申しておりますように、どうか不公平なことのないようにしたいというような考えから、この三審制というものをとつて来ておりますので、できるだけそういう不公平なことの起らないように、たとえ一審で起つても、これは二審で以て改め、更に三審で以てそれを是正するとかというような手段をどこまでも講じて行きたいという考えでございます。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 そしますと、これは去年のあのやり方については、これは直接天野文相は責任を持つておられないのでありますけれども、各地方で起つたやり方に対して不完全なものを認めているのであるか、その点を伺いたいのであります。
  71. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそれが不完全であるかどうかを実は知つておりません。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 これは地方でも今非常にこの結果が問題になつておるのでありますが、つまりこういうような態勢に便乗して、いろいろな面で教員の労働組合に活動した者とか、それから共産党に籍を置いている者とか、こういう者が非常にやられた形がある。そうして現にこのためにこの不当な知り方、又法規を無視したようないろいろなやり方、この問題については改めて係りの人に私は質問したいと思いますけれども、そういう例が至る所で起つております。現に一番大きな問題になつているのは新潟における休職処分に対するところの取消の法廷におけるところの今公判が開廷されて、私も証人に喚ばれてその実情を見て来た。実は東京でもこういうものが起つておるのでありますけれども、こういう点について文部省として、これは現在の形から行きますと、文相の直接の責任ではないようでありますけれども、文部省としてのこれは責任はお考えになつていらしやるかどうか、この点伺いたい。
  73. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それが果して本当に不当なことが行われておるのかどうか私は存じませんが、若し本当に不当なことが行われたとしたら、それは文部省責任として、私もその責任を負うものでございます。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 この点につきましては、私は非常に、ここにこの資料があるのでございますが、簡單にだけ申上げまして、詳しいことは、法的な問題につきましては係りの方からで結構だと思うのでありますが、これは実際公務員特例法がそのまま使われないで、そうして逆に公務員特例法のその中の九條によつてそれを拡張解釈によりまして、明治時代にできたところの文官分限令、こういうような古い法規、つまり新憲法によつてはとても考えられないような法規を取り出して来て休職にしたというのが、新潟でも、東京でも、その他至る所で起つている例であります。而してその根拠はどこにあるかと言いますと、それは昨年の三月だと思いますが、文部大臣官房秘書課長の名によりまして、全国の県知事並びに教育委員会に出された一つの示唆的な、発、秘十八号というものによる、こういうことがはつきりこの証拠として出ておるのでありますけれども、こういう点について、文相はあの文官分限令というようなものを用いて、この重大な教員の身分保障の問題を左右していいとお考えになりますか。
  75. 相良惟一

    説明員(相良惟一君) 非常に法規的な問題になりますので、私代つて答弁申上げます。現在御承知のように公立学校の先生は地方公務員ということになつております。これは教育公務員特例法の第三條にはつきり書いてございます。で、地方公務員につきましては、これは公立学校の先生以外の一般地方公務員についてすべて適用する現在国家公務員の身分を規律いたしますような一般的な法規、即ち国家公務員法というような規定はございません。それで国家公務員、地方公務員に対する一般的な法規が制定せられるまでの間は、地方自治法附則第五條の規定によりまして、官吏に関する従前の規定を準用する、こういうことになつております。官吏に関する従前の規定と申しますのは、只今指摘になりました官吏分限令であるとか、官吏懲戒令というような勅令でございます。これは文部省だけの見解ではございませんので、一般地方公務員についてはすべて地方自治法附則第五條によつて、その規定適用されることになります。でありますから、公立学校の先生を免職する場合においては、官吏分限令の規定適用するということは何ら違法ではないのであります。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 それは文部省だけの見解ですか、或いはこれは意見局あたりの意見を参考にされたのですか。
  77. 相良惟一

    説明員(相良惟一君) これは文部省だけの見解でなく、地方公務員の全般の事務をやつております地方自治庁或いは法務府全体の、全般意見でございます。決まつた定説でございます。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 この点が今法廷において論争の中心点になつておりますが、特例法におけるそういう規定ができるまでは、国家公務員法によるという規定があると思う。そういう法が何故用いられないで、そうして官吏分限令というような明治時代の黴の匂いの紛々とする法律をわざわざ引つ張り出してこれで作られておる、この点が非常に重大な問題だと思うのでありますが、これは如何ですか。
  79. 相良惟一

    説明員(相良惟一君) 只今岩間委員のおつしやいました通り、国家公務員の例によるというのは、教育公務員特例法の施行令の第十一條にあります教員の給與に関することと御混同になつておるのではないかと思います。給與については国立学校の教員の例によるということになつておりますので、私共のような国家公務員の給與に関する規定を準用いたしますけれども、その外服務分限、特に懲戒等につきましては、教育公務員特例法施行令第九條の地方公共団体の職員に関する規定を準用するということになつております。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 この点に入るのが私の今日の目的ではなくて、細かいことはあとでやろうと思いますが、結論的に申上げますと、特例法第十五條の三項、「任命権者が、校長又は教員に対し、その意に反して降任し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い、又は懲戒処分を行う場合については、国家公務員法第八十九條から第九十二條第二項までの規定を準用する。但し、この場合において、「人事院」とあるのは「任命権者」と読み替えるものとする。」、この方はいけないのですか。この方はどういうふうに解釈するか。
  81. 相良惟一

    説明員(相良惟一君) 地方公務員であるところの公立学校の先生に対する不利益処分、只今指摘のような意に反する免職、意に反する降任というような、そういう不利益処分に対しましては国家公務員法第八十九條以下にありますところのいわゆる不利益処分に対する事後審査規定を準用しております。それはその通り生きております。実際それでやつております。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 この問題に深入りするのは私は目的ではないから、保留します。  そこでこういう形で切られまして、全国で言えば今非常にこの問題が問題になつておるのでありますが、こういう点から考えまして、この前の教員パージというものは非常に多くの輿論を起したと思うのでありますが、で私はここでパージの問題として根本的な問題として考えられるのは、一体どういう人達が切られるか、殊に去年二十人切られておりますが、こういう人達を見ますと、これは組合運動に非常に精進したとか、或いは六・三制の実施によりまして、教育が御承知のようにいろいろな破局に直面した。校舎が足りない、それから学力が非常に低下する、青少年の不良化の問題、そういうような問題のために挺身して、むしろ闘つて来た。そういう人達が非常に該当者として挙げられて切られておる。そういう者が大部分であります。そこで私はここで政治的な問題を追及したいと思うのでありますが、この教育を破壊した、こういうところに追込んだ根源は一体どこにあるのか、教員にあるのであるか、或いは政府当局にあるのか、これは我々の考えは明らかなんでありますが、一体この点について文相はどういう見解を持つておられますか、この点伺います。
  83. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今の御質問は要するにこういう処分を受けたのは、為政者が悪いのか、本人が悪いのかという御質問のように理解しました。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 そうです。
  85. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは御本人に行き過ぎた行動があると為政者は認定して、そういう処置をとつたことは言うまでもないことと存じます。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 どうも文相の御答弁で私は納得することができない。過日文相は、六・三制はあれは今日の日本の現実に合わないものだということをおつしやつたと思う。準備がない。いろいろな準備をしない。又日本の経済に合わない形で進められたので、そこからいろいろな問題が起つておる。そうして現在において文相はこのために非常に苦心されておる。こういうお話、御答弁が半月ばかり前の当委員会においてなされておる、こういう点から考えても明らかだと思うのでありますが、私もその点については全面的に同意見を持つております。準備をしない。殊に八億などという、あんな情ない予算で発足した、そこにすべての根源があると考える。従つてその負担が本当にどこにそれが行くかと言いますと、何を言つても一番教員に行くと思う。教育の当面の現場におけるところの担当者のその教員が一番大きな負担を課せられておる。又子供である。又更に経済的負担の面から言いまして父兄である。そのためにこれを守ろうとするところのいろいろな運動が起つておる。教育復興運動、これは教員組合あたりも取上げ或いは日本復興教育会議というものが取上げられて、この問題に挺身した。当然その教育を守るという鬪いでありますけれども、それは当然予算の問題に連なつて参りますから、結果においては政治的な運動というようなものに繋がらざるを得ない。繋がらないところの運動はあり得ない。現在一つ要求を出せば必らずそういう形になります。そういう面から例えば行き過ぎだとか、政治的とかいう問題が出たのでありますが、その原因を当人の行き過ぎ、そういうものだけに求めるというのは、これは非常におかしい。本を治めないで、そうして末を問題にするという政治体制、このものが一体許されてよいかどうか、これは教育の道義の観念から言いましてもこれは元々許されない。政治道義の面から考えましてこれは許されない。私は文相の只今の御意見は非常に、つまり政治の自分責任は棚に上げておいて、そうしてそれによつてむしろ被害を受けた、それを守ろうとして必死にたつたところの教員大衆の上にその責任を転嫁するのだ、こういうように考えざるを得ないのでありますけれども、もう一度この点に対する文相の御意見を伺いたい。
  87. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はですね。六・三制というものは原理的にはよいものだと思つております。だからよく人が、将来講和でもできたならば六・三制は止めるのではないかということを言う人がありますが、これは絶対に止めてはいけない。六・三制は原理的によいのであつて、この通りやらなければならんと思つております。ただそれを実施する際に、余り急いで全部小学校から大学までやろうとしたところに、確かに無理があつたということは私も承認するところであります。ただ無理が……更にいろいろな無理なことが起つて来た、それならばどういう行為をしてもよいかというと、そうではない、どんな環境にあろうとも行過ぎたことはしない、社会秩序を紊るようなことをしないというところに人間の道徳性というものがあるのであつて、これはもつと詳しく又機会を得ましたならば岩間委員と論議いたしてもよろしいのですが、岩間委員のような考えを推しつめると、あなたのおつしやる道徳なんというものは否定せざるを得ない立場に追込まれることになりはしないかと思いますが、今日はどうかもう大分になりますから、私への質問はこれくらいで御猶予願いたいと思います。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 もう少し話を進めます。今のまあ論議は十分に、これは個人的でも結構でありますが、十分にいたしたいと思います。これは少くとも日本の教育、破壊されたこの敗残の中から立上つて、今までの教育の形では教育は復興できない、そこで教育組合の責任者としてもこの教育復興の運動に携わつて来たのであります。その後三、四年当委員会でもやつて来たのであります。そういう人の中でどの人が情熱を持ち、どの人が本当に教育を憂えて来たか、それを過去の敗残の教育、無気力に権力に盲従したところの教員の姿と比べて見て……当人も馘首せられた。そういうところから私は申上げでおるのであります。そういう点から考えまして、どうも文相は答弁を外らされたようでありますが、政治の本を正さないで、そうしてその結果だけを見る、こういうところに私は賛成することができません。そこでその次に是非これは伺つて置かなければならないのでありますけれども、この基準の中で、つまり六十二号政令の附則の第三号になりますが、この連合軍占領政策目的を批判、又はこれに反対の態度を公表し、又は右の目的と政策に反対させるために他人を指導した者、こういう点が具体的にこの政令の目標なんでありますが、これは昨日もお聞きしまして、最後の方が龍頭蛇尾に終つたのでありますが、例えば具体的に言いますと、平和擁護の運動、それから戰争を絶対しない、こういう運動が起つております。これは世界的な規模においても起つておる、で日本の憲法の建前からしますというと、こういう運動を推進させることが、果してこれは連合軍占領政策批判になる、これに反対になるか、この点に対してこれは明確なやはり我々は見解を持たなければならないと、こういうふうに考えるわけであります。昨日の文相の御答弁では、その方法如何によるというお話でありますけれども、その方法の点につきまして、一体どういうふうに具体的にこれは文相はお考えになるのか、正しい方法があつたら私はお示しを頂きたい、こういうふうに思います。
  89. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は岩間委員から問題を外らすということを言われましたが、今までたびたび出ましたが、各委員から私が問題を外らすと言われたことはないのであります。自分は問題を外らして一時逃げようとか、そういう考えはございません。ただ只今岩間委員の言われた道徳論になりますと、岩間委員の言われたようなお考えだというと、これは道徳の否定になる、併し今ここでそういう論を……、あなたと哲学、倫理の問題を論ずるということは不適当だから論じないと言つただけであります。問題を避け、逃げようという考えは寸毫も持つておりませんから、御了承頂きたいと思います。  それから第二の平和運動とか、絶対戰争をしないとかということは、私もこの日本の憲法の下においては絶対戰争をしないどか、又平和ということはこれは実に我々の熱望だと思つております、だだ併しそういうことに便乗して、そういう立派な名目の下に社会秩序を紊したり、又学園の自由を破壊しようとするということは、これは黙視できないということを私は申したわけであります。尚岩間委員のお説の中で、私がいつもたびたび服し得ないことは、情熱だとか、純真だとか、情熱や純真ですれば何でもよいというようなお考えが何か伏在しておるようでありますけれども、曾て言いましたけれども、二・二六でも五・一五でも、或いは今のストライキでも、或る人達はこれは純真な情熱からやつておることなんです。純真とか、情熱とかいうことだけでは人間の行為は弁明できないということは申すまでもないことでございまするが、岩間委員の言説を伺うと、何かそういう気がするので附加えることをお許し願いたいと思います。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 まあ自由の問題に又戻つて行きそうでありますが、昨日もこの自由の問題については保留しておつたのです。今日もまあそれに深入りしようとは思いません。併し自由は心に抱いていて守れるということはない。必らずこれは恐らく今の文相流に申せば、一つの抵抗を突破しなければ、どうして真の自由は得られない。これは当然なことじやないか、こういうふうに思うのです。そういう点から考えて当然情熱の問題が出たわけですが、私は情熱があるからどうしてもいい、こんなことは言つておりません。その点は文相の非常な私に対する誤解じやないか。ただ過去の教員のやり方を見ますと、情熱どころか無気力だ、こういう形で以て本当に正しいものを、そうして真の生命を守り抜くということが過去の政治になかつた。私自身をも加えて、そういう体験を、そういろ反省を持つておる。そういう点から敗残の日本を再び起上らせるためには、どうしてもそういうものを捲き起さなければならん。むしろ教員がそういうような情熱を持ち、実践力を持ち、指導力を持つということなしに民族を復興することはできない。これは今の大きな課題になつておるのでありまして、そういう点から言つても、文相の気持は分りますが、どうも今の立場において文相は随分そういう議論にセーブされておるのじやないかと考える。平和擁護、戰争反対というような運動については、これは文相としては、これに対してその方法が正しいということだつたら少しも反対できないという御答弁だつたと思いますが、一体そういう方法はどういうことなんですか。つまり考えておることだけですか。戰争は反対だ、それから平和は飽くまでも守らなければならん、これを心の中で考えたり、祈つたりする、どういうことですか、行動を伴わないところの一つ思想というものは私はあり得ないと考えるのでありますけれども、そういう点はどういうふうに文相はお考えですか。例を挙げますと、学生諸君が、例えば日本の今の態勢の中におきまして、平和を守り抜かなくちやならん、戰争はどうしても憲法に規定するところによつて飽くまでもこれは反対せざるを得ない、戰争を放棄した憲法を持つておる日本人としてこの運動を起す、皆の力を合せてそういうふうな運動を進めることは対して、文相は一体どういうふうに考えるのですか。(「常識」と呼ぶ者あり)常識です。非常に重大だ。これは今度のこの基準一つの大きなポイントになると思うから……、文相は外らさないということをおつしやいましたから、私も信ずる、そういう意味において外らさないところのはつきりした良心的な御答弁を願いたい、こういうふうに思います。
  91. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 教育者が情熱を持ち、理想のために努力しなければならんということは私もすでにたびたび書いてもおることで、その点においては岩間委員と全く御同感でございます。たば平和運動とか、戦争反対とかいうようなことは、その時、所というような、現実において或る時にはよいことにもなるでしようが、そのやり方によつては悪くなる。これは先程どなたかもおしやつたように、我々のボン・サンスによつて決めることだと思います。大体そういうような考えでございます。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 具体的な例を挙げます。第二次大戰のときに、フランスが、ドイツの侵入を受けて、ナチズムに対して非常な一つ国民運動としてレジスタンス運動が起つたと思うのです。ああいうことについては、文相はどういうふうにお考えになつておるか。あの運動について、これは否定されますか、肯定されますか。
  93. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今ちよつと岩間さんの御質問がよく分らなかつたが、千九百何年のでき事のことですか。
  94. 岩間正男

    岩間正男君 それは今何を……、年代は覚えておりませんけれども、ドイツが侵入しまして、そういう人民運動が非常に起つたフランスで……。
  95. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今岩間さんの言われるドイツが侵入してフランスにそれが起つたというのはどの事件をお指しになるのか、私にはつきりいたさないから、従つて父御答弁いたすことができません。
  96. 岩間正男

    岩間正男君 例えばルイ・アラゴンなんかが非常にこれに対して一つの詩人の立場から自由と千和を守らなければならない、こういう運動が非常に起つたと思うのですが、それが單にアラゴンだけのあれでなくて、そういう運動が非常に展開された。こういうものに対して一体どういうふうにお考えになりますか。フアシズムとの戰い、そうしてそれに対する抵抗、戰い、こういうものは民族としてなすべきか、なすべきじやないか、どうお考えになりますか。この点非常に重要だと思います。
  97. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はどうも歴史的知識に乏しくて、その時の事情をよく存じておりませんから、抽象的にこれがいいということをいつて、現在それが日本で又いいのだというようなことになると困りますから、はつきりした御答弁をいたしかねます。これは問題を外らす意味でも何でもなくて、私の知識の足らないことに由来するものであることを申上げてお許し願います。
  98. 岩間正男

    岩間正男君 それじや問題を進めますが、今度の首相の新聞記者団との会見、或る協会での席上の演説によりますと、経済と文教政策を非常は重要税して、それでどうしも独立心と愛国心、そういうものを養わなければならない、こういうふうに声明された。これは言葉に関する限りは我々もこれに対して異論はない。併しどうですか、現在の一体吉田内閣の政策の問題になつて来ますが、こういう点についてはこれは非常に独立を保つ、それから本当に愛国心を高めて行くと、こういうような政策を進めておられない点が非常に多いのじやないか、これは産業、経済、貿易、見返資金の自主性の問題、それから社会政策、税金の問題、こういうようなものを挙げて行けば、ここでこまかにやらなければならないのでありますが……、(「脱線だ」と呼ぶ者あり)こういうふうな基本的な政策がはつきりと変つた、まるで裏腹のような独立の問題、愛国心とか言われておりますが、これをどのようにして今の基盤で文相は実現されるのですか。この点非常にやはり重要だと思うのですが、具体的に一つそういう点で今後の文教政策の展開の前に明らかにして頂きたい。
  99. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) どうも御質問があれば、私としてお答えをしなければならないのですが、併しちよつと私に意見を述べさせて頂くなら、私は今日は朝から出て、まだ本省に帰ることができないのです。片方には私はどうかしてこの教員の年末手当とか、昇給とかいうことに対して経済閣僚とも話合をしたい、又学生の問題についてもまだいろいろやりたい、そういう非常に自分は仕事を持つておる人間なんです。国会を尊重してどこまでも私は御質問は受けたいと思いますけれども、どうもこの非常な、自分などはそういうところに、今の文部省の複雑なところに追込まれておるという事情は、どうか国会の委員諸君又委員長にも御了承を願いたいと思うのです。そういう事情を申上げては勝手ですが、御了承を願いたい。ただ今の御質問のことについては勿論お答えを申上げます。それは私は教育を振興するということによつてその目的を達したい。それがどう具体的な事実に現われて来るかということは、予算とか、その他のことにおいて、或いはその他様々のことにおいて私がいたしておることで御質問頂くより外ないと思つております。私も吉田内閣におつて自分の良心に反するようなことは決して内閣がしてない。内閣が私の良心が許さないときがあれば一日も内閣に留まる考えは持つておりません。只今のところでは吉田内閣が何もそんな不都合なことはしていないと私は考えております。
  100. 岩間正男

    岩間正男君 大臣がお忙しいということは重々私も了承しておるのであります。それにも拘わらずこういう質問を繰返えさなければならんところに、やはり現状に問題があるのでありますから、この点御了解を頂きたいと思います。私は今度の追放問題と連関して是非お伺いして置かなければならんのは、これは大体文部委員会が始まつた当初に私はお伺いしたがつたのでありますが、曾つて全面講和という運動に対して文相は署名されたと思うのですが、その文相が全面講和論をとつていないところの現内閣に入閣された。ここのところに私達が非常に一貫したものを感ずることができない。この点に対して今なぜそういうことを問題にするかというと、平和擁護、戰争反対、こういうものと非常に繋がりがある問題です。そうしてこういうような運動教育の面におきまして、憲法を守るというような行為が、一つの問題がどのようにこれは今後教壇において説かれなければならないかということと非常に連関がある。この運動の範囲、つまり文相が逸脱した行為とか、或いは秩序を紊る行為、こういうものと非常に関連を持ちますから、どうしても明らかにしなければならん問題でありますが、文相はなぜそういうような点で我々から見ますと、前後矛盾したような行動をとられるのであるか。この点について明らかに伺うて置きたい。
  101. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそのことについては衆議院の文部委員会で詳しく説明をいたしました。実は初め朝日新聞社から私に対して全面講和か、單独講和かという質問があつたときには、私は返事をいたしませんでした。そうすると、電話で以て問合せがありましたから、私は理想としては全面講和に決まつておるけれども、併しそれが成立たないときには、單独講和も止むを得ないのではないかという考えを抱いておるから、全面講和か、單独講和かということには返事をしかねておるのだということを申しました。朝日新聞の回答のところに私の回答が入つていないのはそのためであります。今日も同じであります。私は岩波書店において催されておる平和懇談会というものについて皆さんがよくお知りにならないと思う。あれは決して同じ考えの人が集まつておるのではなくして、様々な考えの人が集まつておるのであつて、私はあれに署名するときには、これはただ願望だ、願望としてという條件付であれに署名する、その後若しこれがいろいろな形において発展するならば、私はこの会に留まることができないということをその席上で申しました。そうして幹事の人に、これは願望でよいのか、それでよいということで私は署名しております。あれには願望ということが謳つてあります。今日も私は全面講和は願望であります。併し現実にそれをどうしても許さないというときになるならば、多数の国と講和して更に進むということもよんどころないのではないかと自分思つております。私は四月号の世界に「平和に対する熱願」という文章を書いておりますが、多くの人が私のあの文章の表題だけ読んで中を読まないと思います。私はあの文章の中において、日本人が現実を忘れてただ空疎な論をすることは非常に間違つておるということをあの論文の殆んど全部に述べております。そうしてただ我々の願望を述べさせるならば、我々は全面講和であることは当然である。併しこの当然のことをなぜいうかというならば、私は自明の真理という言葉を用いております。決していわゆる全面講和は、どこでも決して講和ができないというのならば、それは自明の真理でないのである。よんどころない場合には私は次善も止むを得ないという考えをあの論文において私は明らかにしております。私は朝日新聞にお答えして以来、今日に至るまで終始一貫自分考えを変えたのではありません。その点において今岩間委員の申されたことは、私の論文を読んで頂きたいと思います。
  102. 岩間正男

    岩間正男君 私は願望であつて現実がどうだというようなお話でありますが、その点が我々には納得が行かない。そこにやはり考えておることと、行動との間にどうしても食違いが出て来るのではないか、こういうふうに考えるのである。なぜその願望を通す、そういう真実な行動が伴わないであろうというところに我々は終戰前から批判される大きな問題があるのじやないか。我々はこの前の太平洋戰争のときも、そういうふうなものは戰争についてはしたくない、平和を守りたいという願望は非常にあつたと思います。殊にこの知識人の場合にそういうことが起つたのでありますけれども、併し現実の情勢一客観情勢が変れば、その度にどんどん転落して行つてしまつて、そうして守り切れなかつたのが、日本の知識階級の凡その運命じやなかつたかということを考えるのであります。そういう点から考えて、我々は願望そのものを通す、そういうような気高い行動というものを貫くことが一体不可能であるのかどうか。我々は時代の動き、情勢の変化、こういうようなもの、併しその中にも拘おらず一つ自分で進まなければならない道、或いは当然目分達がそういうふうにこれは歴史規定している、こういう道、そういうようなものがあると思います。そういうものの中におきまして、オポチユニストであつてはならぬ。飽くまでどんな嵐の中でも、これはやはり貫いて行くという精神だけが今日民族の独立自主というものを私は回復することができるわけである。そういう点から考えますと、どうしても例えば吉田首相が独立愛国ということを言つている。これが現在の平和と果して一体どういうことになるかという、こういう点から考えますと、独立愛国とはそもそも何であるか。文相の只今のお言葉から考えましても、レッドパージのごときものが、そういう情勢の変化、こういうものによつて、六十二号というような軍国主義者、超国家主義者適用されるところのいわば片刃の刃である。それに一方に刃をつけて、今度は逆にこれを赤色を追放するというような形で、民主主義者、或いは平和主義者、或いは反戰論者に刃を当てるということが、果して一体歴史の本当に容認するところであろうかどうか。この点を私は文相に十分お考え頂きたい。このことがやはり日本の今後の文政を大きく左右する。私はもう昨日も申しましたけれども、正に一つの巌頭に立つ、こういうふうに考えますので、この点を私は強く切望したいと思います。
  103. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは時間も大分経過いたしましたから、本日はこれで散会いたします。    午後一時三分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            加納 金助君            木村 守江君            平岡 市三君            高良 とみ君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   説明員    文部省大臣官房    総務課長    相良 惟一君    文部省大学学術    局教職員養成課    長       玖村 敏雄君