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1950-10-04 第8回国会 参議院 文部委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月四日(水曜日)    午前十一時十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育文化施設及び文化財保護に関す  る一般調査の件(教職員のレツド・  パージ問題に関する件)(全国学生  自治会連合の取締問題に関する  件)(文部省関係予算に関する件)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれから本日の文部委員会を開会いたします。文部大臣が出席しておられますから、御質疑のあるかたから発言を許可いたします。
  3. 波多野鼎

    波多野鼎君 天野文部大臣レツド・パージの問題について若干の質問を申上げたいと思います。御承知のように我が国における民主主義思想実践確立ということは未だできておりません。漸く芽生えができた程度であります。この民主主義的な思想実践確立が我々の一つの国策として追求しなければならん点であるのでありますが、そういうときにたまたまレツド・パージという問題が起きまして思想界に非常に大きな衝撃を與えつつある現状であります。特にこの民主主義的な思想体系実践を身に付けてなくて、終戦後において初めて民主主義の洗礼を受けたというような人たち、こういう人たち日本の進歩的な発展について一つ役割を持つておりますが、そういう人たち動揺は激しいものがあると思うのであります。天野文部大臣はそういう点についてはいろいろの苦労もされ、風雪に堪えて来た人でありますから、この民主主義思想家動揺する。風声鶴唳に驚いて動揺するというようなことは馬鹿げた話だというふうにお考えになるかも知れませんが、事実そういう人が多いのです。でありますから、そういう人が多いという現実の上に立つて文教政策をやつて行かないと、今日のままで置きますならば反動的な思想に転落する人もたくさん出て来るのじやないかということが憂えられるのであります。現に学生試験拒否の問題などについて、文部当局、或いは東大の学長あたりの談話が新聞に出おるところを見ましても、これはレツド・パージの問題について真相が明らかでない。或いは又誤解から起きているのだというふうに言われておるのを見るのでありますが、我々も実はレツド・パージの問題についてよくわからない。よくわからないためにそこに宣伝、デマが入つて来る余地もできましようし、風声鶴唳に驚いて顛倒する人も出て来ると思う。そこでこの文部委員会におきましていろいろな点を質問申上げて、天野文部大臣にこのレツド・パージ真相を国民に知らせる機会を作つてあげたいと、こう思つて今日御出席を願つたわけです。どうかその趣旨で御答弁をお願いしたいと思うのであります。  先ず第一番にお聴きしたいのは、いわゆるレツド・パージというのはポツダム政令第六十二号、第三條第一項及び同施行規則別表の第一の第三項によつて行われると伝えられておりますが、これは真実でありますか。先ずその点から一つ
  4. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) その通りでございます。
  5. 波多野鼎

    波多野鼎君 それでは今申上げたこの條項によりますと、「行為あるいは義務の不履行により連合国軍日本占領目的政策に反対の態度を公表し、又は右の目的政策に反対させるために他人を指導した者」、こういうのが教職員から追放される、除去されるということにあるようでありますが、この点をもう少し後でお聞きすることにいたしまして、このレツド・パージを行うに当りまして責任日本政府がとるのであるか。それともそうではないのか。日本政府責任をとるといたしますれば、その当面の官庁は文部省であるのか、法務府であるのか。その点一つお伺いいたしたいと思います。
  6. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは日本政府で、文部省であります。
  7. 波多野鼎

    波多野鼎君 次に、これも新聞に伝えられるところでありますが、審査委員会というものを、大学或いは公私立学校、それから大学職員等審査をするに当つて、いろいろそういう審査委員会というものを設けられて、更に第二審として中央教職員適格審査委員会があり、第三審として文部大臣審査が行われて、これによつて決定するということが伝えられておりますが、この審査委員会というものはどういうふうにして構成され、又その委員は誰が任命若しくは指名するのでありますか。
  8. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今お尋ねの第一審は、大学の場合は学長がし、それから公立学校の場合には知事委員指名をする。それから文部省でやつておる中央委員会文部大臣指名する。そういうことになつております。
  9. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういう委員指名される場合に、或いは又知事などをして指名させる場合に、何らかの基準でもあるのですか。
  10. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 別に基準はございません。
  11. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると知事などは、まあ自分考えるところに従つて勝手に審査委員指名してもよいわけなんですね。
  12. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 知事考えによつて指名するわけでございます。
  13. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういたしますと第一審におきまして公正な判断が下されないという危険が非常に多いということを考えますが、文部大臣はそういう懸念はお持ちにならないのですか。
  14. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそういう危険も確かにあると思います。けれどもそのために二審、三審というのがありますから、非常に注意深くして、そういう場合の間違は是正することができるという考えを持つております。
  15. 波多野鼎

    波多野鼎君 それはそうだろうと思います。ところが職務が第一審において停止されるのです。第一審において決定が行われますと、職務が停止されるということになつておるようでありますが、そうだとしますと、そういう公正ならざる判断が下されるかも知れない危険がある第一審の決定によつて職務を停止してしまうということに非常な不合理が出て来ると思うのでありますが、どうお考えになりますか。
  16. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 人間のやることですから、そこに過ちがあるということも絶対ないと私は言えないと思いますが、併し若し委員の構成について、私がこれではいけないと思えば、それを命じて改正させることもできます。そういうふうにしてできるだけ公正を期したい。私はその本来の趣意において決して何か人の過ちをほじくり出して、そうして何かこれを処罰するということが少しも目的ではないのでありますから、できるだけその委員にも適当な人を選ぶとか、あらゆる手段を講じて公正なことをいたしたい。そういう考えから出発しております。
  17. 波多野鼎

    波多野鼎君 文部大臣の御意向はよくわかるのですが、それが組織なり機構の上に現われておらないと非常にたくさんの審査委員会ができることであり、多くの審査委員が任命されることでありましようから、公正な判断ができないような委員も出て来るという危険が非常に多いので、制度的にそういうものを防ぐようなことをお考えになつてはどうかと思うのですが、如何でしようか。
  18. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はまだこれを、すべてそのやり方を全然きめてしまつたというわけじやないのです。だからして若しそれを防ぐ方法があつたらば波多野さんなどのアドバイスによつて防ぐこともいたしたいと思います。ただこういうことについては、何にも欠点がないということは非常にむずかしいことですが、併しおよそ制度としても三審を経てそうして良識的な判断をすれば、およそ人聞のすることとしては間違いないことができるのではないかという自分考えを持つております。併しそれでも尚一層それを公平にする途があるというならば、私はどういうお考えにでも従いたいという考えを持つております。一体私は只今申上げてもよろしいのですが、どこからも拘束を受けておりません。全く私自身の良心従つてできるだけ公平な、何人も承認できるような方法でやりたいということを考えておるものでございますから、若し適当な御注意があれば伺つて、尚よく審議して適当と思えばいつでもそれに従う考えであります。
  19. 波多野鼎

    波多野鼎君 非常に公平を期して公正にやりたいという文部大臣のお考え、非常に結構だと思います。私の案も多少ながらありますが、これは練りましてから又申上げたいと思つております。それからこの委員会におきまして審査を受ける人は、みずから勿論抗弁し、或いは弁明する機会が與えられるであろうとは思いますが、その外にその人を弁護するための人が出て来ることが可能であるのか、或いは又いわゆる陪審員的な者がここに列席することも可能であるのか、そういう点について一つお伺いいたしたいと思います。
  20. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 今のことは幾らか事務的なことになるから、説明員からお答えいたさせたいと思いますがよろしうございますか。
  21. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) どうぞ。
  22. 相良惟一

    説明員相良惟一君) お答えいたします。現行の規定によりますと、適格審査はすべて書面審理建前になつております。併しながら必要なる場合は、或いは当人の希望のある場合は、審査を受ける者を審査委員会に呼びまして、当人陳述を聞き、又は当人の利益を代表する者の陳述を認めることになつております。
  23. 波多野鼎

    波多野鼎君 それでは次にこの審査をやるに当りまして、基準となるべき事項が定められておると思います。先ほど読上げましたようなことでは非常にあいまいでわからないと思うのです。即ち例えば占領目的に反するとか、占領政策に反することを公表したとか、或いはそういうふうに指導したとかといつたようなことだけでははつきりしないので、従つてこの人が該当者であるいうことを判断すべき基準が恐らく定められているだろうと思います。それを一つ明らかにして頂きたいと思います。
  24. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) おつしやることは誠に御尤もで、私も何かそういう細かい基準を作つたほうが委員会でもやり易いのではないかと言つて、それを作るように文部当局言つておるのですけれども、まだそれを完成するに至つておりません。
  25. 波多野鼎

    波多野鼎君 それではその基準ができるまでは、この審査の段階には入らないというふうに了解してよろしいですか。
  26. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) そうでございます。
  27. 波多野鼎

    波多野鼎君 文部大臣が過日関西へ旅行された場合に新聞に語られたことの一説の中に、共産党員であるということ自体は追放理由にならないというような趣旨のことが、言葉は多少違つておるかも知れませんが、趣旨はそういうことであつたと思いますが、出ておりますが、これは文部大臣の今でも持つておいでになるお考えでありましようか、或いは新聞記事の聞違いなのでしようか。
  28. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは私が初めから抱いておる考えであります。この私の考えが容れられないならば、私はこういうことはやれない。私はただ党員であるとか、同調者であるというようなことではこの対象にならないという考えを初めから強く抱いております。
  29. 波多野鼎

    波多野鼎君 共産党党員或いは同調者であるということは、追放理由にならないという理由はどういうところにあるのですか。
  30. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 共産党がまだ合法政党として許されておる以上、ただ共産党員だからというだけでは私は追放するということができないのではないかと考えております。
  31. 波多野鼎

    波多野鼎君 この問題は重要な問題ですからもう少しお聴きしたいのですが、まあ共産党は私の解釈するところでは、外の政党とは性格を異にいたしております。党の方針或いは指令というようなものは、これを鉄則として遵守するのが党員義務であろうというような形で運営されておると私は理解しております。ところで共産党に対しまして過日来いろいろの措置がとられておるので、例えば機関紙の「アカハタ」の無期限発行停止というやはり恰好になつておると思いますが、そのこと、或いはその後指導的な地位にあつた人が次々に追放されておるということ、そうしてこれらの場合に理由として挙げられておりましたことは、占領目的に反する、占領政策に反する行為或いは指導をしたということで追放されたのだと思うのです。ところでそういう機関紙或いは指導者の下に党員として活動しておつた人たちが、その「アカハタ」などに掲げられた方針に反したことを、或いはこれをサボるようなことをやつてつたとは理解できない。ここが共産党が外の政党と非常に違う点じやないか。そういうふうに考えて行きますと、党員であるということは、同時に追放された指導者或いは党機関紙の「アカハタ」の趣旨守つてつた人たちであるというふうに考えられないかということをお聴きしたい。
  32. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 誠に御尤もなお考えだと思います。一体この共産党党員であるならば、その指導に従うというのが当然の義務である。若し従わないというならば義務を怠るような人間なんだから、そういう人間は教職には適しないというのも私は一つの理論だと考えております。そういう建前からやられる人があるというのも一つ考えではありましようが、併し私はこの大学というようなものは特別なところだという考えを持つております。即ち大学では祕密が漏洩するということがあるわけでもない、又その関係する学生というものは相当の批判力を持つたものでもあるというようなことから、もともと先ほどからも申すようにこの趣意が、何か不都合なことを摘発しようという意味ではなくして、学問の、学園の自由とか平和とか、社会の秩序とかいうものに対する阻害か防止したいという消極的な建前から出ておりますから、私は理論的に言うならば、共産党員が直ちに大学教授として不適格だということは言えないことはありせんが、右のような趣意から、大学ではただ党員だということでは追放しないというのが適当ではないか考えたわけでございます。
  33. 波多野鼎

    波多野鼎君 只令大学についてのお考え、まあ私も同感の点も多少ありますが、問題は大学だけでなくて、地方公立私立学校高等学校以下の学校にも関しておりますが、そういう場合にも同じことなんですか。
  34. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 実は私はそごには違いがあるということを考えております。高等学校、或いは義務教育において、党員なるが故に直ちに追放してもいいかとも考えておりますが、今は暫く大学教授を扱うのと同じ扱いをして行こうという考えで、その差別は私も十分に考えておるところでございます。
  35. 波多野鼎

    波多野鼎君 審査委員会についてもう少しお尋ねしたいのですが、この委員というのは一方において検事的な役割もすると同時に、判事のような役割もするということになると思いますが、この場合陪審員というようなものは、先ほどもお尋ねしたのですが、お答えがなかつたのですが、陪審員というようなものはお考えになつていないかどうか。それから判事的な役割と検事的な役割を同時に兼ねてしまうということはどうお考えになつておるか、どういうお考えですか。
  36. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 只今のところでは陪審員というようなそういう制度考えでおりません。適格審査委員会はやはりさような性質で、委員の良識によつて審査をする。これが妥当ではないかと考えております。
  37. 波多野鼎

    波多野鼎君 審査委員会では先ほど文部当局からお話なつたように、書面審理ということが中心だというお話でありますが、その前に先ず誰を審査にかけるかという、誰を審査するかということはどこで誰が決定するのでありますか。
  38. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 現在すべて現職におられる教職員は再審査という形式をとりたいと考えております。特定のかただけを、いわゆる指名手配というような考えを持ちませんので、すべて一応再審査を受ける。こういうやり方で行きたいと考えております。
  39. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういたしますと、すべての教職員が再審査を受ける。非常に大変な手続だと思うが、それはそれとして、再審査を受ける場合に、審査を受ける人は書面の上において恐らく連合軍占領目的に反したといつたようなことは、仮にあつても書くはずはない。そうしますとお前はそういうことをやつたじやないかという証拠を挙げることが必要になつて来る。それは一体誰がやるのですか。
  40. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 一応調査表を取ることを考えております。調査表に所要の事項、即ち所属の政党であるとか或いは著述、どこでどういう著述をしたとか、その内容、或いは著作、雑誌、新聞等に書いたこと、或いは著述、著書、そういうものを一応調査表に書いて頂く。それ以外にいろいろの傍証を固めまして、それを審査資料にしたいと、こういう考え方を持つております。
  41. 波多野鼎

    波多野鼎君 その今の傍証を固めるということが私聞きたい点なので、それが即ちお前は該当者だという証拠を挙げることなので、それは文部省がおやりなのですか、特審局がおやりなのですか。
  42. 相良惟一

    説明員相良惟一君) これは審査委員会委員がいろいろな方法を以ちまして資料を集める、かようなことに相成ります。
  43. 波多野鼎

    波多野鼎君 そういたしますと、審査委員会というものにはこれは相当大規模な調査機関でも作らなければ手が廻らないと私は思いますが、そういうことはお考えになつておるのですか。
  44. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 現在では考えておりません。すでに適格審査は一昨々年からやつておりますが、その場合も別に調査機関等を持たないで、委員会が自由な判断で以て資料を集めまして、それを証拠として審査に使つておりまして、かような方法を今度もとりたいと思つております。
  45. 波多野鼎

    波多野鼎君 この前の終戦直後やられました適格審査、これと今度の適格審査とは性格が違うから、そこは慎重にやつて頂きたいと思うのです。というのは、この前のときは軍国主義云々というようなことが問題になつたから極端な国家主義者とか、これは非常にはつきりしておつたのです。今度は取扱い方によつて民主主義的な思想家でさえもひつかかる虞れがある。これはあると私は思つておる。ですから超国家主義だ、軍国主義だといつたようなものを扱うのと同じような組織で扱われては無辜の人が資格を剥奪される危険が非常に多い。第一審においてすでに処分が決定されるのですから、その辺の準備をもう少し愼重にやつて頂きたいと思うのだが、何かお考えはあるのですか。
  46. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 只今大変結構な御意見を頂きましたので、その御意見によつて十分研究を重ねたいと思つております。現在ではさような詳細の点はまだ研究中でございます。
  47. 波多野鼎

    波多野鼎君 これは文部大臣にお尋ねしたいのだが、そうしますと、十一月の初めにもう第一次追放をやるのだという新聞記事が始終出ておりますが、これは誤りなんですか。
  48. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) できるだけ早くやりたいとは思つておりますが、準備ができないのにやるという考えはございません。従つて幾らか遅れるということも可能だと思つております。
  49. 波多野鼎

    波多野鼎君 これは文部大臣にお尋ねしていいかどうか……、法務総裁にお尋ねするのがいいのですが、文部大臣に、国務大臣の一人として聞いて置いて頂きたいのです。それは今年の九月二十六日発行週刊新聞でありますが、青年新聞というのに、第一次追放者リストというものが発表されております。大学教授に関するもの総数七十九名の氏名が挙げられまして、そうして発表されておるのですが、これを御覧になつたことがございましようか、どうでしようか。
  50. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそれを見ておりません。ただそういうことがあつたということを聞いております。それで私の考えでは、恐らくは人がためにするところあつて、そういう人名社会に出したものではないかと思います。先ほど波多野委員からして、民主主義的な考えの人もこういう災難に会う危険があるということをおつしやいましたが、私はそういうことはないように万全の策を盡したいという考えを抱いております。で只今申された人名というのははつきり知りませんが、到底問題にも何にもならんような人をそこに数え上げているというように聞いております。
  51. 波多野鼎

    波多野鼎君 先ほど全部の教職員資格の再審査という形で進めると言つておられる、その方針はいいと思うのです。いいと思いますが、そういう方針をあたかも言葉は少し強いのですが、あざけるかのごとくこの審査にかける人、追放すべき人というのは大体きまつておるというような世評が高いのです。これは後で文部当局のほうにお聞きすればいいことですが、現に昨年の九月か十月頃文部省から各大学学長を呼んでいろいろ話をされた場合に、あなたの大学にこういう人がいるからこれを追放しろ、追放という言葉を使われたかどうか知らんが、そういうようなことを言われて、そうして現にリストを與えられておる。私はそれを見ておる。そういうようなことがあり、又今度の問題も恐らくそういう方針が一方に一つぐつと出て来ておる。それをカムフラージするがごとき意味において全職員を一応再審査するというようなカムフラージがなされておるだけじやないかという印象が強いのですが、文部大臣はどうなんですか。
  52. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は自分の就任前のことはよく知りません。どういうことがあつたか知りませんが、自分になつてからは只今説明員のお答えした全般をやるというようなことでも、何にも策略とか何とかいうような意味は全然ございません。私はどういう方法でも自由的な考えを持つたかたに累などは及ぼさんように、そういうことを念願して止まないものなのであります。そういう点については先ほども申しましたように、私は何人からも拘束されていない、ただ信ずるものは自分良心だけであります。そういうつもりでありますから、私は自分ではそういう人に迷惑を及ぼさないようなことでできる。そのために再審査というようなことを特にとつたのであつて、私には相当公平なことができるのではないかと考えられております。
  53. 波多野鼎

    波多野鼎君 最後にお尋ねして置きたいのが、今日の思想界の動き、日本社会情勢その他からいろいろ考えまして、今度のレッド・パージの問題については扱い方が一歩誤りますと、恐らく非常なことになると考えられます。幸いにして天野文部大臣先ほど縷々お話になるような信念でやつておいでになるので、我々もそう大きな危惧は持ちません。そう大きな危惧は持ちませんが、世間に流布されておるいろいろな事柄、いわゆる風声鶴唳でありましようが、こういうものが絶えないのです。そのために動揺がひどい、大学教授あたりになりますとそうでもないでしようが、地方の中学校、小学校先生たちになりますと相当ひどい、それでそのひどい結果が非常な反動的な方向に走つてしまうということさえも現に見られるのです。この辺の兼合いと申しますか、事情を文部大臣がよく洞察されて、文部大臣良心を私は疑うわけじやないのだが、その運営上の機構の面において、文部大臣の抱負が実現されるような保障ある機構を作つて頂きたい。これを私も又考えますが、考えて御参考に供しましようけれども、当面の責任者である文部省において十分考えて頂きたいということをお願いして、文部大臣に対する私の質問を終りたいと思います。
  54. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 法務総裁が見えましたが、文部大臣から御答弁がありますから……。
  55. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 波多野委員の御注意は私も十分考えて見たいと思います。尤もこの私の案は私がただ自分一人で考えたわけではなくして、自分は先ずどうしたらば公平なことができるかということを非常に考えて、この案がよいのでにないかと思つて、そうして私の知る限りの主なかたがたに、法律のかたとか、或いは教育者とか、そういうかたがたの御意見伺つて今ここに到達しておるわけでございます。併しこの上とも波多野委員等から本当に有益な御助言を頂いて誤りないことを期したいと思います。
  56. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどから波多野委員のほうから質問が継続されまして、波多野委員のほうからこの前の適審と今度は違うという言葉がありましたし、又文部大臣からは自分の就任する前のことはわからない。如何にも文部大臣の御言葉では今度新しく作るのだというようにもとられます。又総務課長からは、現行法規ではというような言葉が出てはつきりしないところがありますので、重ねて私からお尋ねいたします。それは適格審査をする委員会の規程というものが政令六十二号に基いて出ておりますが、あの二十三條に、文部大臣が必要と認めたときには、再審査を命ずることができるということがありますが、それを全教職員に適用してやられるのかどうか、お伺いします。
  57. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 現在考えておりますのは、只今おつしやいました通りでございます。
  58. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではあの規程に基きますというと、適格審査委員会は都道府県教職員適格審査委員会、それから大学教職員適格審査委員会、更に教職員適格審査委員会というのがあつて、その上に中央教職員適格審査委員会、更に大臣が取扱う。こうなつておりますが、先ほどの大臣の答弁ではあの中にある教職員適格審査委員会というのが落ちておりましたが、今度それを落すのでありますか。
  59. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私が申述べましたうちに落ちておつたらば、それは私が間違えておりますから訂正いたします。尚私は自分の就任以前のことは知らないというのは、就任以前のことに対して何も責任を持たんという趣意ではなくて、その事情を明らかにしておらないと申したわけであります。
  60. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点わかりました。それでは全面的に政令六十二号、それからその附属法規によつて今度の適審がされるということがはつきりしたわけでありますが、現在適格審査委員会は現存して、ちやんと委員が設定されているわけでありますが、現在のあの適格審査委員のままでやられるのか、或いはあの人選を変えられるのか。それからあの人選の仕方については校長何名、教員何名という規定がちやんとあるわけでありますが、あの通りにされるのか、その点をお伺いします。
  61. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 現在御承知の通り委員会委員の数は、都道府県の適格審査委員会大学適格審査委員会も五名ということになつておりまして、人数の点におきましても、又現在の委員になつておられる顔触れにつきましても、多少考慮を要すべき点がありはしないかと考えております。この点につきまして目下研究中でございます。
  62. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次にあの適格審査委員会ができたのは、教育委員会法が制定される前の昭和二十二年だつたと思うのです。従いましてその委員指名する人は知事であり、尚又不適格であると指名する人は知事であつたわけでありますが、教育委員会法ができた今日においては、この教育委員会に変えるべきであつて、さつきの答弁にあるように知事がするのはおかしいと考えるのですが、それに対して御意見を……。
  63. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 只今の御意見誠に御尤もでございますが、教育委員会ができましたときにこの点も一応考えたのでございますが、いろいろの点から考慮いたしまして教育委員会教職員適格審査委員会とは別個に切離したほうが至当ではなかろうかと、一応の結論に到達いたしましたので、現在さように相成つております。この点についてもいろいろの御意見もございましよう。十分研究したいと思つております。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に如何なる者が不適格になるかという基準についてさつきの大臣の答弁では、これからこれを研究して出したい。こういうふうに答弁がありましたが、あの中には相当程度基準が現在示されておるわけですが、あれ以外に更に新たな基準というものを規程として出されるつもりか、その点。
  65. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私の申上げたことは占領政策違反とか、そういうように人を指導したとかいうのでは何となく漠然としておつて審査も非常にしにくいということもありはしないか、それだからあれをもつと限定したさまざまの規程と申しましようか、基準と申しましようか、そういうものを作ることが、審査をされる上において便利ではないかという考え、又全国的に統一したことができるのではないかというその内容的規程を研究しようというのであります。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣にお尋ねいたしますが、我々が法律を頂いて、その法律の運用ということはこれは非常に大事だと考えるのです。最近の全学連あたりの運動についても後ほどお伺いいたしたいと思うのですが、憲法とか或いはいろいろな規定があつて、その規定を必要以上に拡張解釈してやるというようなことをやりますと、当り前だと考えておつても、その拡張解釈に対して反抗的な気持を国民は相当強く起すんじやないか。そういうことは過去において事実において示されておると思うのです。そういう角度から大臣にお尋ねするのでありますが、大臣は先ほどから答弁もされましたし、今まで随分とレツド・パージについては非常に立派なお考えでおられる点、私敬服しておるのでありますが、そのときに常に何人も納得するような行き方でしたい、決して無理なことはやりたくない、こういうふうにお答えになつておられるわけであります。その立場から私は政令六十二号、これに基く規程、それらによつて行われた過去の教職員適格審査、これを今度の適審にこの規程を適用するというのはちよつと私法的に理解しかねる点があると思うのです。先ほど波多野委員からもちよつと出ましたが、あの政令六十二号並びに附属法規、そういうものを全部見ますというと、これは明文にはつきり出ておるように軍国主義者、或いは極端なる国家主義者、そういう大きな筋金でずつと一貫しておるわけでありまして、そのうち三項あたりに占領政策に反対する者というようなことが出ておるわけでありますけれども、あれをここに持つて来るということは、やり方としても非常にまずいんじやないかと、こういうことを感ずるのでありますが、それに対する大臣の見解を承わりたいのであります。学校教育法の第九條の四項であつたかと思うのでありますが、教職員はこういう場合はいけないということを書いてあります。その中に憲法、或いはその憲法の下に設立された政府というものを暴力によつて破壊するような政党とか、或いは団体を結成し、或いはこれに加入する者という明文が第九條の四項だつたかと思うのですが、あつたと思うのです。現在の共産党というものが非合法政党になれば問題なくこれで行くと思うのでありますが、そうでない現段階に、法的根拠に苦慮されて、この政令六十二号を使われたかと思うのですけれども、これは教職員全部を果して十分納得させ得るかという点に私は疑点を持つておるわけであります。その点に対する大臣の答弁をお願いいたしたいのであります。
  67. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 何か矢嶋さんのお考え伺つておると政令六十二号ですか、あすこにあるすべての條項によつて適格、不適格をきめるというお考えのようですが、私共はあの中の別表第一の第三項によつてやろうというのでございます。ただそういうことは先ほど波多野委員もおつしやつたように、何となく概念が漠然としていて扱いにくいのではないかという御趣旨だと思いますが、私もそういうことを思うのですが、何も拡げて余計人をその中に抱き込もうとか、そういう意味では少しもなくして、概念が漠然としているから、それをもつと明確にするために何かいわゆる概念の徴象と申しましようか、そういう一つの何と言つたらいいのですか、規定をそこに作つたほうがやり易くはないかというだけのことなんでございます。法律に関しては私は十分知識がありませんから専門の法律家に十分相談をいたしてやつて来ましたし、今後もやつて行く考えでございます。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 我々は民主主義国家の建設を標語に揚げて進んでいるわけでありまして、反民主的なもの、暴力的なものというものは飽くまでこれを排除して行かなければならない。この立場においては、私常に考えている点でありますが、まあ今大臣のほうからこの第一表の第三項ということを申されましたが、あの中には私は連合軍という言葉があつたと思うのです。恐らくそうなればまあここに連合軍とは何ぞやというようなことを言うものが出て来たならば、相当この問題が複雑になつて来るのじやありませんか、それに対する見解を……。
  69. 相良惟一

    説明員相良惟一君) 只今その規定には連合軍という言葉を使つているではないかという、そういうお問だつたと存じますけれども、従来あの規程によりまして不適格と判定されたような場合、反米鬪争に加わつた者とか、或いは反米的言辞を弄した者とか、すべてさような事例はあの規程を適用しております。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ではこの問題についての質問をここで打切りますが、先ほどから波多野委員からも要望がありましたように、地方適格審査委員会では随分とこの行過ぎがあるのであります。あの終戰直後にやりました適格審査のときも随分まあ極端な行き方をしまして、大体我々は極端から極端に行く国民性を持つていると思うのですが、動があれば必ず反動があるのであつて、あの当時随分極端なことをやつて二審、三審、随分混乱した県もあつたわけでありまして、行き過ぎというものがないように、この点については特に大臣の御善処をお願いいたしたい。こういうふうに考えて、その点をお願い申上げる次第でございます。
  71. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 矢嶋委員の御注意のように十分慎重にやりたいと思つております。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 大臣の時間の都合も聞いておりまするので、今日で私の質問は盡きるかどうかわかりませんが、足りない部分は後に延して又質問を継続したい、こういうふうに思います。私が先ず第一に伺いたいのは、こういうような適格審査委員会というものが新しい情勢によつて、又この事態に即応して復活するというような形で、赤色教員の追放ということが考えられておるようなのでありますが、この根拠に対しましては、これは先ほどからいろいろ前の議員たちからも問題になりましたように、非常に我々はまだ納得することができない幾多の問題を持つております。併しこの問題を今これを追及していますというと時間がかかりますので、これはこの次に讓りたいと思います。私がここで特にお伺いしたいのは、この現在の情勢、つまり何と言いますか、日本の民主化の問題については先ほど波多野委員からも触れられたのでありますけれども、この民主化が実に完全に行つているとは思えない。在る場合にはいろいろな方面で日本の民主化が疑似民主化の形をとつて、表面だけはレツテルを貼つているけれども、その内容には旧態依然たるものがある。こういう形の中で日本の民主化を徹底的にやろうとする下からの動き、そういうものに対しまして、まだそれが不完全な形でいる場合に、而も現在においては非常にこれに反するようないろいろな情勢が出て参りまして、そこに反動的な状態が起つておる。こういうふうな形の中で、そういうものに便乗した形で以て、これはいろいろな追放が行われておる。教育界におきましては殊にそれが非常に大きな教育の自由を奪うというような現象が起つておる、こういうふうに思うのであります。そこで私がここで問題にしたいのは現状だけの、こういう情勢だけを近視眼的にこれを見ることでは、日本の情勢は改革できない。殊に戰争前から陥つたところの日本の状態、教育の状態、そうしであの馬鹿げた戰争をやつた一つの原因でもあつたこの教育の原因、この原因を本当に除去するためにこそいろいろな施策が行われて来たはずであります。而もそのときには連合軍の指令、並びにこのGHQからのいろいろな教育施策に対する指令、或いはアメリカの教育使節団の報告書、或いは極東委員会日本教育に関する指令、こういうような基本線が出されたのでありますけれども、これらの基本線が現在本当に行われておると文相は考えておるかどうか。それから今まさに文相によつて行われようとしているところのこの赤色追放なるものは、果してこれらの基本的な線とどのように相応したものと考えればいいのでありましようか。この点は非常に大きい問題であると思いまして、この点について文相はどのような見解を持つかお伺いしたい。例えばここに挙げますところの一九四五年の十月二十二日に日本教育制度に対する管理政策、これは総司令部の指令であります。これは終戰直後の十月でありますが、例えばそのうちのAの二項に、議会政治、国際平和、個人の権威の思想及び集会、言論、信教の自由のような基本的人権の思想に合致する諸概念の教授及び実践確立を奨励すること、こういうようなことが挙げられ、又Bの二項によりますというと、自由主義者或いは反軍的言論乃至行動のための解職又は休職となり、或いは辞職を強要せられた教師及び教育関係官公吏は、その資格を直ちに復活せらるべきこと云々、こういうような指示、指令の問題であります。曾て帝国主義戦争時代に反軍的な言論、或いは自由主義的な言論によつて追放された者が、連合軍の進駐によりまして、そういうような理由追放された者は直ちに復帰すべきである、そういう指令さえ出された実情なのであります。ところがまさにそれと裏腹のような関係におきまして、今日は例えばこの戰争反対、憲法に規定されましたところの平和を守り抜くというような意向を持ちまして、あの教壇の実践におきまして、あの憲法を実践するというような立場から、こういうような運動を展開しておる。或いはそういうような考えを子供たちに教育するというような立場が非常に問題になつて来ておる。こういうことが起るとすればまさにこれは時代の波というもの、どんどん変る波によつて教育というものが絶えず大きな変動をしていいのかどうか。こういう点は例えば哲学的な信念に立たれておるところの天野文相は、一体日本の長年の弊を眺め、又吉田総理の問題にしておりますところの民族の独立精神、愛国精神云云という、この内容については問題がありますけれども、そういうことをとにかく述べられており、こういう問題と連関して、一体このような態度はどういうことになるのであるか。それから又今の同じ総司令部の指令の中のBの四項でありますが、学生、教師、教育関係官公吏は教授内容を批判的、理智的に評価することを奨励せらるべく、又政治的、公民的、宗教的自由を含む各般の自由討議を許容せらるべきこと。又一九四六年三月に出されましたアメリカ教育使節団報告書の中の一節を我々は問題にしますというと、教師の能力が最もよく発揮できるのは、自由の雰囲気の中においてである。行政官の任務はこの雰囲気を作り出すことであつて、その逆ではない。特に私はその行政官は云々ということについて、これは文相にここで反省を求めたいと思うのであります。続けますと、教師は他の公民の持つ一切の特権と機会を與えられ、思想、言論の自由を持ち、相当の給料が與えられなければならん、云々。こういうことを特に日本の陥つておりましたところの教育の実情に対しまして、使節団が勧告しておるのであります。又更に一九四七年四月十一日の日本教育制度刷新に関する極東委員会指令、これによりますと、指導及び目的の一節におきまして、教育は真理の追及、民主的国民生活への準備及び自由に伴う社会的、政活的責任のための訓練と考えらるべきである。個人の尊嚴と価値、独立した思想及び創意探求の精神の伸長などが強調さるべきで、又国際生活の相互依存性が主張されねばならない。又その次は課程、教授法の一節には、教師と学生は独立不覊の考え方を持つよう奨励しなければならない。以上挙げたのは一例でありますけれども、こういうようなところが日本教育制度の根本理念じやなかつたかと思う。この根本理念を一体文相は果されたと考えておるか。そうして逆にすでに昨年から教育界に対して行われました二千人の教員の馘首によりまして、今職場においては何が起つているか、どのような事態が起つておるか。我々はあの戰争を、権力に盲従することによつて……、批判のない、実に権力に対して弱いところの教員のそういう態度に対して、あの戦争に実はラツパ吹きの役割をさせられて来た。これであつてはいけない。飽くまでも教権の自由、教育の自由を確立して、そうして我々の対象とする国民をして真に自由の精神、批判の精神、そうして平和を與える。芦の髄から天井覗くではなくして、国際的な視野を與える。そういうようなことによつて我々は真に民主的な国家を確立しなければならない。そういうことを基盤として教育を考えて進んだはずであります。併しそれが逆な方向に現在進んでおることは私がどうこう言わなくても歴とした事実であると思う。従つてこういうようなむしろ反動的な空気の中におきまして、今又便乗的な嫌いのあるところの赤色追放というものが進められていることによつて日本の教育はどうするか。これは全く国の将来を憂えるところの、日本国民のひとしく憂えておる気持であろうと思うのであります。従いまして私の話は少し長くなりましたけれども、以上のような基本的な教育改革に対するところの理念と、交相が今まさになさんとしているところのものとどのように一体調和を考えておられるか。この点が最も基本的な問題であると思いますので、この点伺いたいと思います。
  73. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 岩間さんのお説はこれを要点において把握すれば、結局自由ということになると思うのです。自由があらゆる面において尊重されなければならないのに、今私がその自由をこのパージというようなことによつて破る、阻害するというのはどういうことかということに帰着しはしないかと思うのです。これが御質問の中軸をなすのではないかと考えますが、自由というのは決して法律的な自由というようなものは、束縛がないところに自由はないのです。自由というのは別に宙にぶら下つているのでも何んでもない。自由はいつでも歴史的現実の中にある。私は日本の歴史的現実の中において生きた自由を把握して行こうと思うのです。そういう意味においては私は岩間委員と何も異なるところはないのでございます。そういう歴史的現実に処して、飽くまでも自由を守ろう、こういう考えでございます。私は附加えて申しますが、たびたび岩間さんからして日本国家とか、国家の前途とかいう言葉を承わつて幾らかそこに、疑問を持たざるを得ない点がある。共産主義の原理から言えば、歴史の主体はどこまでも階級でなければならない。国家、民族というものが歴史の主体にならなければならないのであります。だからして決して日本とか、そういうものを主体にしては共産主義の原理に合わない。ところがあなたのお言葉伺つていますというと、いつでも日本国とか、愛国とか言われるのは私は少し理解しかねる点であります。ただ私の考えるところによれば、やはり階級というふうのものは、一朝事があればすぐそれは破れてしまつて日本のプロレタリヤも外国のプロレタリヤとすぐ鬪うというのが歴史の現実ではないか。そうなると、歴史の主体を階級として把握するという思想には抽象性がありはしないか。だからしてこういう歴史的現実の激しい世界になるというと、岩間さんのごとく、く本来ならば階級というものを歴史の主体として考えらるべき人が、口を開けばすぐ愛国とか、日本の前途とか言われることに私はどうも解し難い点があるのですが、どんなものでございましようか。
  74. 岩間正男

    ○岩間正男君 天野文相とここで今の愛国とか、それから国家とか論争を私はやろうとは思いません。若し時間が許されればこれはもつと時間をかけてやりたい。併し今の御論には私は賛成することはできない。国家とか、民族とか、そういうような問題を一体抜きにして、共産主義があるというような把握そのものが、今日共産主義をいろいろ排除したり、それからこれを彈圧したりする根拠になつておりますけれども、この事実は一体どういう点から、どういう事実からそういう主張をなされておるのか。これは一つの、その辺に流行しておる共産主義並びに共産党に対するそういう一つの何ですか、デマに基くものと私は考える。この点はここで議論し合つてもしようがないと思いますから、これはいずれ後に残します。共産党が国を愛しないとか何とかということは、これは実に滑稽なことに属する。我々はこの信念でやつておることをここで言うだけです。時間がないからこの点は保留してもいいけれども、私はその点をはつきり断言しておきます。が、今言われた文相のそういう前提に立たれている認識というものに対して、私は賛成することができません。その問題に文相は持つて行かれましたけれども、私のお聞きしたいのはその点でなく、要点は結局日本の教育改革の基本的な理念というものが一体本当に実現されているかどうか。そこでこのレツド・パージの問題がそういうものを実現する方向をとるのか、それを抑圧する方向をとるのか。私は非常に日本の教育界の現状をはつきり考えると、今の職場に起つておる姿を見ると、日本の過去の陥つていた姿、そうしにまさにそれが過去に戻りつつあるこの姿を見るときに、非常にこれらの基本線がぼやかされておる。こう考えざるを得ないのでありまして、この点に対してこれは文相は恐らく違つた考えを持たれるかも知らんけれども、この点について深い反省を求めざるを得ない。情勢が変る、風のまにまにこれが変るということは、これは恐らく文相の信念じやないだろう。今までのつまり天野哲学と言いますか、道義的な観念を打立てた、そういう文相の多年の主張から考えるときには、どうしたつて長い眼で物を見る。民族の将来を考える。これが本当の立場だと思うのでありますけれども、丁度文相はそういうような時代の板狹みの中に立つて、その役割をどつちにどうしようかとしておるところの非常な大きな分岐点に立つておると思うのでありまして、そういう点からこのレツド・パージの問題につきましても、この審査委員会を作るかどうかという根拠についても我々はまだ十分納得できない、こういうことを申したい。議論になつてもしようがないのですが……。
  75. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 岩間君、文部大臣は約束の時間が過ぎますので簡單に一つ
  76. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一点具体的にお聞きしましよう。基準についてさつき問題になつたのでありますが、例えば平和擁護、或いは戰争反対、こういう運動に参加することは、これは一体追放基準になるかどうか、具体的にお伺いしたい。これはどうですか。
  77. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 平和擁護とか、そういうようなことは勿論結構なことでございますが、それがどういう仕方において反対されるかということが問題であつて、ただ平和擁護だからいいとか悪いとかいうことは、私は言えないと思つております、尚皆さんに非常に相済まないのですが、私は今日これからどうしても十二時半までには役所に帰らなければならない急用を持つておりまして、今後又いつでも出席して幾らでも御意見を伺い、又私の考えも述べますから、大変失礼をお許し頂きたいと思つております。
  78. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただ一点だけ文相の御答弁に対しまして……。そうしますと、平和擁護とか、それから戰争反対、こういう運動というものが、どうも具体的にどういう方法でどういうふうにと言われまするけれども、これはどうもそうなると、そういうことを基準の中に細かく書いて行くということになりますか、例えば一番重要な問題はそういうような問題だと思う。具体的に例えば六十二号の政令の第三項、これを敷衍するかどうかということは非常に大きな問題になります。問題になりますが、これを敷衍するというところの現実的な問題として、問題になつて来るのは、戰争反対の問題とか、平和擁護、こういう問題になつて来ると思う。そういう問題について細かにいろいろな規定をされるのでありますか。例えばどういう方式による平和運動ならばよろしい。こういうような戰争反対はいけない。こういうようなことを一々規定されないというと、これは実に昏迷に陷るというように考えますが、どういうふうに考えておりますか。文相は。
  79. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この適格審査委員に選ぶ人は子供でもない、何でもない、良識のある立派な人を選ぼうと思うのですから、そんな細かしいことまで中央から指図する考えはございません。その人たち考えによつて判断して頂くのです。ただ大体の基準は示さないというと、判断しにくいし、又全国的な統一ということもむずかしいという考えなんでございます。要するにできるだけ公平な手段で以てやりたいという考えでございます。誠に済みませんが、只今申したように、よんどころない用事を持つておりますのでお許し願いたいと思います。
  80. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは文部大臣に御意見もあり、又質問もあろうと思いますが、次の機会に讓り、これから法務総裁に対する質問をいたします。
  81. 波多野鼎

    波多野鼎君 法務総裁にお尋ねいたしますが、先ほど文部大臣にお尋ねした点でありますが、九月二十六日発行週刊新聞なんですが、青年新聞という週刊新聞がございますが、その週刊新聞の記事には教職員の赤色追放、遅くも十一月初旬に発表、こういう見出しで書いておる。その中にこういうことが言われております。法務特審局が秘中の秘としておる第一次追放リストに名を連らねておる大学教授、助教授は云々として、七十九名の氏名が大きく発表されております。でこの新聞記事法務総裁は御覧になつたことがあるでしようか。
  82. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私はまだ読んでおりません。
  83. 波多野鼎

    波多野鼎君 読んでおられないというと、特審局あたりがこういうような新聞を取つておらんということなのですか。
  84. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私自身が読んでおらんということであります。
  85. 波多野鼎

    波多野鼎君 今丁度この問題が国を挙げての大きな問題の一つとして、論議されておるときに、こういう記事が発表されたということは、特審局にとつては重大な問題だと私は思う。従つて若し特審局に人がおればこれを読んだならば、すぐ法務総裁にこういう事が出ておりますということは伝うべきだと私は思う。それが当然ではないですか。それを御存じないというならば、それは特審局の怠慢ですね。
  86. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) その点について特審局の怠慢とは私は考えておりません。
  87. 波多野鼎

    波多野鼎君 先ほど来論議がされておりますが、日本の文化政策がどういうふうに行くか、文教政策がどうなるかということで、国民挙げて大きな関心を持つておるそのときに、特審局において秘中の秘として挙げておるリストが発表されておるという問題が新聞に出ておるということを、御存じないということであるというと、法務総裁としての職務を遂行される上において支障が来やしないですか。
  88. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) さような新聞を読んでおらんということで、職務上支障があるとは考えておりません。
  89. 波多野鼎

    波多野鼎君 それではお尋ねいたします。私は読上げますからお聞き下さい。法務特審局が秘中の秘としておる第一次追放リストに名を連らねておる大学教授、助教授は北大杉之原舜一氏以下七十九名として……、外は読みませんが、大学教授の第一次追放リストは次の通りである。東京大学文学部教授出隆、農学部教授川田信一郎、同古島敏雄、法学部教授辻清明及び川島武宣、法学部助教授丸山眞男、こういうふうにしてずつと総計七十九名の名前が出ておる。特に私がお聞きしたいのは、私は二十三年九州大学におりまして、同僚が沢山残つております。その九州大学の、特に経済学部を見ますと、九州大学から九名の人が第一次追放リストに載つております。経済学部の部長は森耕二郎、同じく教授として馬場克三、同じく助教授正田誠一、この三人が出ておる。そこでお尋ねしたいのは、法務特審局におきましては、こういういわゆる追放について何らかのリストをお作りになつておられるか。それともリストに入れなくても特に目をつけて、これらの人たちの平生の行動を審査しておられて、そうしてどうもこれはブラツク・リストに載せなければならんという意味で載せておられるものがあるのか。そうしてその中に今の九大の経済学部の二人の教授と一人の助教授の名前が入つているのか。それをお聞きしたい。
  90. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 特審局といたしましては、平素からさような教授のかたがたの行動を調査いたしまして、それによつてブラツク・リストを作るというようなことはいたしておりません。
  91. 波多野鼎

    波多野鼎君 今度の、今計画されておる赤色追放の問題に関しまして審査委員会なるものができるということを文部大臣言つておりますが、この審査委員会特審局とは何らかの連絡が作られるものか、作られないものですか。
  92. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 審査委員会審査につきまして、特審局が連絡をいたすというようなことは考えられないと思うのでございます。
  93. 波多野鼎

    波多野鼎君 例えばこういう場合はどういうふうになりますか。例えば或る大学審査委員会から特審局に対しまして、こういう人について何らかの調査資料でもあれば欲しいと、こういうふうに仮に来た場合にはどうなりますか。
  94. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まださような御要求はございませんです。
  95. 波多野鼎

    波多野鼎君 政府として赤色追放考えておられるわけなんだから、恐らく閣議においてもこれは問題になつておることだろうと思う。文部省だけがひとりでやつておるのではないということを先ほど文部大臣言つておられた。内閣全体としてやつておるのだからということは言つておられた。従つて行政各部門の連絡というものは、こういう問題についてあるはずだと私共は思う。そういう話があるはずだと思う。誰も大学から……、まだ審査ができておりませんから、どこからも申込んで来ていないのは当り前だ。生まれていないのだから、赤ん坊は腹の中におりますから、声をあげていないのだから……、而もそういう場合も予想される。併しそういう場合にはどうするかという方針はあるはずだと私は考えます。
  96. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 特審局におきましては団体等規正令によりまして各政党からその所属員の氏名の届出がございます。これは法令に基きまして各政党から提出せられておる名簿でございます。かような名簿がございます。それでありまするので、若しさようなお問合わせがございました際に、或いはさような名簿が御参考になるようなことがあればそれをお示しすることができると考えております。
  97. 波多野鼎

    波多野鼎君 それではそういう程度のことで特審局と、いうものは今現に……、現にと言うよりも昨年の九月、十月の頃から問題になつておると思う、大学の赤色教授追放の問題は。そういう問題になつておるのに、特審局はただそういう名簿がありますよという程度のことであつて、そういう程度の返事ぐらいしかできないで、昨年十月頃から問題になつておる赤色大学教授追放云々ということについての何ら資料はございませんというふうに御返事なさるおつもりですか。
  98. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 本年二月末現在におきまして団体等規正令に基きまする届出の共産党党員として名を連ねておりまする大学教授の数は国立大学のみで二十八名でございます。
  99. 波多野鼎

    波多野鼎君 いや、そうではなくて、それ以上の資料の提供ということは特審局にはする準備がない。ただこういう名前がありますよという返事をするだけで、この人についてはこういうような事例がある。この人はこういう所でこういうような演説をしたといつたような調査資料準備されていないということですか。
  100. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) その通りでございます。
  101. 波多野鼎

    波多野鼎君 私はもうこれでいいです。
  102. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣がおると非常に都合がよかつたのでありますが、席を外されましたので法務総裁に簡單にお尋ねしたいと思います。それは全学連の問題でありますが、先ず現在の全学連の運動を法務総裁はどういうふうにお考えになつておられるか。
  103. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今のところ全学連そのものについては、別にどうということは考えておりませんですけれども、各学校に現われた結果につきましては、非常に遺憾の事実であると考えております。
  104. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私も十分調査していないのですが、随分と新聞に出まして大きな社会問題になつておると思うのでありますが、まあ遺憾な点と言うと例えばどういう……、一、二の例を挙げてやつて頂きたい。
  105. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この全学連に関連いたしまして、各学校において学内の秩序が乱れた。或いは他の学生研究の自由が妨害されておるという事実は極めて遺憾であると考えます。
  106. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 数日前の新聞に、この全学連に対して団体等規正令を適用して、これを解散させるだけの資料法務府のほうには十分揃つて、時の問題であるというような新聞記事を見たのでありますが、団体等規正令を適用する段階に来ておるのかいないのか。
  107. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 全学連に対しまして、団体等規正令による解散処分をなすべき段階にはまだ参つておりません。
  108. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ではここで法務総裁に要望いたします。この現在の学生運動は確かに行過ぎている点もあると思うのでありますが、これは飽くまでも政治運動として……、これは学校内の教育行政の問題として処理さるべき問題であつて、それは昭和二十三年の通牒にもある通りでありますが、この全学連がこういう段階まで来たということについては、私はそれを国の政治という立場から反省しなければならん点があると思うのであります。学生がああいう学生運動を非常に……、授業料の値上げ以来ずつと過程を辿つて来たわけでありますが、これは結局政治の貧困がもたらしたところであるし、又この指導者が……、今日のレツド・パージの問題も具体的にありますが、そういう問題を十分学生に説明して、学生を納得させればそういう段階にならなくても済むのに、そういうことを怠つて、そして彈圧一手で行く。すべての政治がそういう面に、そういう方向に進んでおるように思うのでありますが、非常に法律というものを拡張解釈して、彈圧一手で行こうとする。そうすれば若し煽動者がここにおつたならば、その煽動者というものは、いい口実を掴んで善良な学生も引つ張つて行く。そうしてそういう理論闘争においてイデオロギーが対立しておつても、実際こういうふうにやろうじやないかという事実を見せつけられるというと、そこに理論鬪争に負けて思わざる方向に行くということが、私は過去に事実においてあつたと思うのです。これは実際その指導者が本当に民主主義の理念に徹してこれを指導したら、学生つて馬鹿じやないのですから解決する問題を……、非常にこの指導力の貧困さから混乱を招いていると思うのです。殊に最近に早稻田大学ですぐ警察を入れてみたり、或いは新聞に……、今法務総裁に聞くというと団体等規正令を適用する考えはないということを発表されておりますが、数日前から今にも適用があるという……、それであの団体等規正令の適用のどれに該当するかということは、恐らく学生から聽いてはいないが、討論はやつでおるのじやないか。こういう彈圧を断乎排除すべきじやないかと言つて、次々に輪を巻いて拡大して行つておるのじやないかと思うのです。そういう意味において、私は学生運動についてもそうでありますが、殊に学生運動についてでありますが、法務総裁には閣内においてもそういう立場の最高責任者であります。大きく学生運動とか労働運動、こういう国民大衆の指導に当つては国の政治を打ち出すに当つては、私は愼重に閣内においても指導的立場において善処されたい、こういうことを切に要望する次第であります。この問題は飽くまでもこれは文部大臣責任に属するところの、文部省の問題であつて文部大臣質問をいろいろしたかつたのでありますが、文部大臣不在でありますので、それだけ法務総裁質問し、尚要望いたした次第であります。
  109. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この機会にちよつとこの問題に関しまする取締当局の立場を申上げて御参考に供して置きたいと思います。全学連の各学校におきまする状態に対しましては、取締当局といたしましては積極的に活動に乗り出すということはでき得る限り避けるという方針をとつております。即ち犯罪行為が現実に行われているという明らかなる事実がある場合、又は学校当局より明白な要求のありましたる以外におきましては、学連に対する警察力の発動は差し控えるべきである。かような方針を以て進んでおるということを御了承願いたいと思います。それからこの問題に対する解決策といたしまして、これを治安上の問題として団体等規正令によつて処理するというような方法をとるべきでなく、むしろでき得る限り教育上の問題として学校当局の自主的な手によつて処理して頂きたいということも又私共の方針一つであるということを併せて御了承願いたいのであります。
  110. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 法務総裁に他に御発言もなければ、次に文部省の昨日の質問の続行をいたします。
  111. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 昨日の質問が途中でうつちやりを食つたような形になつておりますので……、二十五年度の補正予算の中に結核並びに産休補助教員の予算が枠内に入つてつたように了承しておつたのですが、産休が全面的にこれが削られておるように昨日御返事があつたわけであります。そうして文部大臣はこれに対して婦人教師を軽視するという考えはない。地方財源の余裕があつた場合には地方においてやろうと思えばできるだろうと思う。又会計課長は基準経費の中には入つていないけれども、地方においてこれを考慮に入れるということを期待するというような非常にあやふやな御返事があつたのですが、私の聽きたいことはどうして産休だけが切られたか、その切つた理由を明白に私は聽きたいのです。その御返事を頂いてから質問を重ねて行きたいと思います。
  112. 辻田力

    説明員(辻田力君) 只今の御質問にお答え申上げます。二十五年度の問題、特に小学校について申上げますが、平衡交付金の中に計上されておりまするものは、校長二万五千六百八十四名、教員二十五万九百十四名、補助教員一万九百名、合計二十八万七千四百九十八名、尚その他に結核教員としてこれは少し多いのでありますが、三%見積りますと、八千六百二十五人というようになりまして、合計小学校の関係で申しますと、二十九万六千百二十三人というのが必要なのでありますが、平衡交付金の中では三十三万六千九十一人というものが計上されておりますので、その差額でありますところの三万九千九百六十八人というものが差引き残るのでございます。大体これを操作いたしますると、一校二人くらいの定員と申しますか、体外の教員が増し得るのでありまして、これによつてこの操作によりまして、只今お尋ねございました産休の場合の処置とか、或いは又認定講習の場合の処置をし得るようになつておるのであります。従つて先に会計課長が説明したことにつきましては、詳しくは、当時おりませんので存じませんが、実際はさようなことになつております。
  113. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 そうすると、それははつきりとなぜ産休教員の補助教員の予算だということに明文化されておらないのでしようか。私が聞くところによりますと、この枠外の予算の中には、産休補助教員の予算は入つていないという御丁寧な註釈までついているということを私は聞いている。そうだとすると、文部省がこれに対して殆んど無関心に予算を組んで、私の質問にあわてて、そういうことを言われたようにしか、私には考えられない。なぜ産休教員を結核と並べて、産休という文字をそこに入れられなかつたかということです。
  114. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) 二十五年度の平衡交付金に算入されたところの教員数については、先に局長からお話がありましたように、小学校が五十分の一・五、その外に結核の実際休んでおるところの者が一・三三%ありました……実際に療養しておる者の一・三三%、これだけを一応見たわけであります。ですからお話のように産休の場合の枠外という措置はとつておりません。併しながらこれは産休というものが事実どの程度にあるかということは、これははつきりいたしませんし、又その期間というものは、結核のように二年なら二年の療養を要すというものでございませんので、これは労働基準法によつて所定の期間が定められておりますので、その期間だけの代用をなす意味でございます。そういう意味でございますから、認定講習或いは先生の自己便宜等でお休みになる場合の補助教員の問題になると思うのであります。こういう意味から大体一・五の枠内で操作ができるという形と私共は考えております。従つてお話の産休の場合には、これは労働基準法の規定通りの措置がなされるのが当然である、こういうふうに考えております。
  115. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 そうすると、これは非常に問題を孕んで参りますけれども、一校二人くらいの枠外の教員というものは、自己便宜上の補助教員に取つたという御答弁であります。私はこの産休の補助教員を取るという問題は、これは單に婦人教師の問題だというふうには考えておらないのであります。なぜなら今の教員の質の低下というような問題、特に取り上げて考えられる質の低下の問題は、女教員の中に多くその要素が包蔵されているのであります。その原因を追及して参りますときに、戰前においては教員の、特に母性としての教員の家庭は、子守を雇つても婦人の先生は教壇を守ることが大体できた。けれども戰後の経済状態からそういうことが許されなくなつたために、あたら子供を産んで、教師として完成された婦人教師というものが、櫛の歯を引くように教壇を去つて行く。その後に補充として来たものが現在教育の質の低下を来たしているという、全く無資格のこの先生が、そういう役割を果して来たと思うのです。そういうことから考えたときに、やはり教育というものが單に知識の切り売りではなくて、完成された教師によつて子供の全人格を築いて行くとするならば、やはりこの母性教師というものは、本質的にこれは保護されなければならない。日本の教育復興の途上において、この果す役割というものが極めて大であるというような考えを持たれたならば、結核教員の補助教員と同様に、全くこれは同じように、当然予算の中に組み入れられて行かなければならないということが一つと、現在あなたは労働基準法の法規に副つて休まれればというけれども、今のような定員定額で、教員の数が少いときに、私共の調によると、労働基準法で定められた最低の十二週間も休んでいないという教員が非常に多い。これはやはりこの産休の補助教員がないというところに基因しているもので、少くとも労働基準法が婦人の産休ということを規定したということは、日本の母性のためにこそあれが規定されたのである。特に私共は曾て団体協約において、教育の特殊性から考えて、産前産後の休養十六週間というものをお互いに認めて来た。政令二百一号が出ましてからも、この十六週間というものが、完全にこれが権利でないということは誰も考えておらないし、たびたびあなたもこのことについては認めていたと思う。そういうことを実施するためには、これはどうしても文部省がこの問題に対しては考え方を改めて、自己便宜のためとか、或いはその枠外に二人くらいの余裕があるから、それから取つたらいいだろうというような、そういうような彌縫的な考えでなくて、もつと教育保護、それから或いは日本の婦人労働に対する新しい観点に立つてはつきりとこれは予算に組むべき性質のものだと私は考える。そこであなたのさつきの自己便宜のための補助教員としてというような考え方と、私の考え方には非常にズレがあるんですけれども、その点はつきりと伺いたいのです。
  116. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) 高田さんのお話は、私もその点は同感でありますが、ただ労働基準法が正確に適用されるならば、この問題は解決されるのじやないかと思うのですが、現実に教員が少いから、労働基準法通りの休暇が取れないと、こういうふうにお話がございましたが、その点は昨年度は一・三五で非常に窮屈であつた。定員定額で困つたので、今年度二十五年度には国庫補助金ではございませんが、国庫補助の場合としますならば、一・五の余裕もございますので、この通り各府県で裁定が実施されるならば、私は産前産後の教員数は完全に確保できるという考えを持つておるのであります。と申しますのは、大体戰前と戰後を通じまして、次第に女教員の市部の比率が下つて来たのであります。一時は、曾て四七%ぐらいに女教員の率が上つたのですが、だんだん低くなつておる。これに対しまして大部分のかたが未婚者でございますので、結婚されたおかたは恐らく、今ここに正確な数字はお持ちしませんでしたが、一割乃至二割程度と考えますので、そのうち結婚されたかたのうちお産されるかたは更に少いのじやないか。そこで今お話のような数字ですと、大体私は今年の枠の一・五、一・八というものが確保されるならば、この問題は当然に解消する。そこで私共は労働基準法の適用の完全実施ということを期しますならば解決するのじやないか。尚これの配分については、各教育委員会が合理的な配分をして、或いは各ブロツクごとに産休代用というような制度を布くならば、この問題は更に容易に解決されるのじやないか。ですから具体的には各教育委員会学校への定員配置との関連の問題じやないか。でお話のような点については私共もあらゆる機会にそういうことを申上げていますが、今後一層そういう方面で督励をいたしたいと考えております。ただ前年度のように文部省が国庫補助金を持つておりませんので、今では平衡交付金における教育費の基準財政需要額の算定ということになつておりますので、各府県の教育費を幾ら出されるのかということになつておりまして、定員とか定額ということは今は申上げておりませんので、その基準財政需要額に余裕があれば勿論やるし、余裕がなくても尚三〇%の余裕財源がございますので、できるだけそういうことを制度化するように指導して参りたい、かように考えております。
  117. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 大体わかりました。それではあれですか、教育委員会のほうに産休補助教員を採る予算はないというようなことをわざと附加えたということはないわけですね。
  118. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) そうです。
  119. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 それで具体的にはあなたは今御返事の通り実行されるだろうと思うのですけれども、文部省のほうからやはり地方の教育委員会のほうを拘束する権限は勿論ないわけですけれども、そういう面の指導性を直ちに発揮して、具体的に発揮して下さるということだけは確約できますね。
  120. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) はい。
  121. 木村守江

    ○木村守江君 産休の予算の問題ですが、昨日大臣が時間がないというもんですから申上げなかつたのですが、ちよつと高田さんの問題に関連してお話申上げたいと思います。その前にちよつとお伺いしますが、各学校当り二人ぐらいの先生が残つているはずだというのは、去年示した小学校が一・五、中学が一・八の定員を取つて二人残るのですか。
  122. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) さようでございます。
  123. 木村守江

    ○木村守江君 この問題につきましては後からにしますが、今労働基準法を学校の先生が守るんだつたら、ここに二人余つているんだから差支えないのだという答弁なんです。結局役所なんかで事務をとる人だつたら別ですが、生きた人間を教育している女の先生が、これは実際十六週間休みたくても休まれないというような恰好で学校に出て無理をするというのが女教員の実態だろうと思う。そういう点から予算の面で余つているのになぜ一体産休の算定基準を除外したかという問題なんです。予算がないというのだつたら問題じやないのですが、予算がある。先生も余つている。それなのになぜ結核療養休暇の先生を除外して、そして産休の人を削つたか。私は恐らく私自身が考えたのですが、これは事務的に非常に複雑性がある。産休の先生を産休のために代理の人を廻すということは、非常に事務的にむずかしさがあるというような点からやつたのじやないかという考えを持つているんですが、どんなお考えで創つたのですか、高田さんの話の中心も恐らくそこにあると思うのです。
  124. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) 予算上削つたという意味ではございませんで、実は定員定額のときに問題になりましたのは、二十四年度は御承知の通り一・五と一・八にきめる。結核もその中に籠めておつたわけでございます。ところがドツジさんが見えまして、これを一・三五と一・七に削減されましたので、二十四年度は全国的に定員定額制の一大旋風を巻き起した。で非常に皆さんがたにも御迷惑をかけております。そこで私共としては、各府県の陳情で一番多かつたのは結核の問題でございます。結核を定員の中に入れて貰つては困るということが非常に要望されましたので、結核を何とかして枠外に出したいということで努力した結果、現実に療養している者、この実際に療養する者は恐らく三%乃至四%に上ると思いますが、現実に療養する者の数だけを一応大蔵省に承認させたということで、こういう形になつたわけです。今の産休の問題でありますが、これを定員外にする。定員というものは一学校で一・五あればいいという考えはないのでありまして、一・五をきめる場合に、大体学校数が幾つあつて、実際の学級数が何学級で、養護教員は大体千人に一人くらいそこで認めるけれども、尚且つ余裕があるから、それは産休とか、その他認定講習等で休む場合の代用にするというような考えで、一・五という数字を彈いたわけであります。小学校の場合は学級單位でありますから、一学級に一人あればいい、校長というものを別に置くという考え方でいいのではないかと思います。全体の中で操作ができればいい、ただ産休というのは、御承知のように今もお話のあつたように、技術的に非常に困難、複雑であつて、十六週間ですから、六十週間のために、そのためのみにとるということは大変なことで、大体産休は一年間に延ばしたものが何人くらいあるかということを計算して見ますと、これはできないこともない。府県單位に考えますならば、私は或る程度できると思う。ですからそれは今の中で操作ができるのではないか。或いは教育委員会指導の問題にもなるのではないかと思います。
  125. 木村守江

    ○木村守江君 この産休の問題ですね。操作の中でできるということはわかるのです。わかるのですが、今まで産休の枠外がとつてつて、今度これはとらないぞというのは、何か産休を認めないぞというような印象を受けるのではないかと思います。殊に学校の先生は、今まで産休が結核と同じように枠外があつたのをなくしたために、これはやはりそこが拘束されるのではないか。普通の会社と学校の実態とは違うのでして、殊に女の先生、弱い女の先生は、できるだけ早く学校へ行かなければならんだろう。殊に産休は枠外にとらないということを命じられることによつて非常に困るのではないかと思う。若しも文部省のほうに親切心があつたならば、教育委員会のほうに産休のほうはこういう都合で以て枠外にしなかつた。併し当然余る教員があるのだから、それを以て今まで通りやるのだというような親切心があつたならば、この問題は解決した問題じやないかと思う。どうぞその点どういう方法かで以て各府県教育委員会にやつて貰いたいと思います。それからちよつと平衡交付金の問題で、非常な疑問ですが、これは課長もよく御存じだと思います。その平衡交付金の中の教育関係の、いわゆる財政基準の算定法によつて算定した金額は、これは今までよりも多くなつた。而も平衡交付金の中には今までの教育費よりも大体八十億円ほど余計に廻されたと思いますが、この八十億円は果して各府県に適正に分配されておつたかどうかという問題なんです。これは私共のほうの県の一例を申上げますと、その他の教育費という項目がありますね。その他の教育費の問題で計算して見ますと、国のほうであの算定基準表から算定して見ますというと、大体最初は一億七千八百五十八万円で、我々が昭和二十四年度に編成したその他の教育費の予算が三億二千九百七十万一千百六十二円、ここに一億五千二百五十一万二千六百余円という差が出ておる。それであるから今年の昭和二十五年度の予算から一億一千七十五万六百五十九円、ところが平衡交付金から算定して見ますというと一億三千三百五十六万二千百一円ということで、大体昭和二十四年度においては四六%、それから二十五年度においては四二%の不足を示しておる。こういうことは結局私は算定規準なるものが各府県の実情に即しないということによるのではないかと思うのです。その一例を挙げますと、その府県に、昨日もお話申上げました県立の大学とか、専門学校とかいうものの有無を考慮に入れなかつたというのが一つの問題であろうと思う。大学、専門学校はその他の教育費において取つておる、そのパーセンテージは大体一五・六パーセントです。そういう大きな金が大学、専門学校に取られてしまうということによつて、この金額が減少して参ります。それから第二番目には人口の構成を考慮に入れなかつたのではないか。いわゆる人口の稠密、稀薄度を考えなかつたのではないか。御承知のように一般の都市では青壮年層が多い、田舎では中学校、小学校、幼稚園というような階級の子供が多い。従つて学校教育指導費とか、或いは盲聾学校、或いは社会教育の面、或いは学校衛生費とか、教育委員会の費用とか、そういうものが非常に嵩まつて来ると思うのです。ところがこの補正係数というものは、これと相当食い違つた恰好になつているということが私言えるんじやないかと思うのです。それから三番目にこの府県の面積ですね。人口だけでなくして府県の面積を考えないという点もあるのではないか。算定表から申しますと人口を面積で割つたものは人口の密度というような点から、人口と密度というものをまあ考慮に入れるということから、面積も間接的に入つておるはずです。ところが実際問題としてこの面積の多いところでは事務局の出張所の出張所費及び連絡費、通信教育費、社会教育費、或いは教職委員会の費用というようなものが相当多くなると思う。そういうことを考えるとこれは平衡交付金の教育関係の基準財政需要額を決定するについても、まあ一応考える点があるのではないかと思うのです。特に昨日も話しましたのですが、高等学校の場合、高等学校は七百五十名までは大体においてもう適正規模の高等学校というように考えられて、七百五十名以上の学校が多い府県では非常にいいのですが、七百五十名を割る、大体四百名、五百名、或いは三百名という高等学校の経費を計上すると非常に少いのです。特に定時制高等学校が普通の全日制高等学校と同じように考えられており、大体定時制高等学校は全日制の一・四倍ありますことを考えて見ましても、これは高等学校のいわゆる生徒の数というものは学校というものを勘案してやつて貰わないと、東京のような人口の稠密な、学校の適正規模の高等学校の経営ができるところはいいでしようが、東北各県のように適正規模の高等学校の経営ができないところは非常に財政的に困ると思います。あの方法高等学校の経費を増加した場合に……。そうするとその高等学校の経営をせんがために義務教育の面の経費を高等学校へ入れてくれということになりまして、実際庶務課長が言つたようにそれが小学校へ行く、一・五の……、中学校には一・八の教育費が出る。ましてや一校当り二人平均余るということは到底不可能だという実情に直面しているのです。殊に困つておることは、あの平衡交付金の中のいわゆる教育関係基準の算定表というものが、高等学校の分があるためにあの中から高等学校の分を取るんだということを府県当局に特に観念ずけた。あの中から金を取つて、そうして義務教育費の削減という形に実際なつて来るのであります。こういうことは非常に大きな問題だと思うのです。実際問題として、私これは本当の問題で、今私の県なんかでは非常に困つておる問題です。内藤庶務課長の今のお話とは全く反対で、到底一・五とか一・八とか、下へ残るとかいうようなことは夢にも考えられない。(「その通り」と呼ぶ者あり)その点どういう考えですか。これは余りにも実際とかけ離れておると思います。
  126. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) それでは平衡交付金のことについて少しお話申上げたいと思うのですが、その前に産休が前年度あつたのを今度創つたということは全然ございません。新しく結核の分が枠内に入つたので、産休の分は私共としては或る程度推定をいたしたのでありますけれども、結核の場合には二ヶ年間通じて休まなければならんのですから、枠内の理由が立つのですけれども、産休の場合はそういう措置が非常に困難だということで一応要求の中に入れたのですが、大蔵省で削つたのです。学校に新しく入つた経費で今まであつたものを落したというようなことは毛頭ございませんし、私共は産休が労働基準法通り実施されるよう指導して参つたつもりでございますが、今後ともこの点については各委員会の工夫によつて実施されるよう希望するのであります。  それから今の平衡交付金の話ですが、これは今の小学校の定員等とも関連するので、非常に重要な問題なので、文部省といたしましても非常な関心を持つて努力いたして参つたのであります。漸く仮決定ができたのですが、その場合どういうふうな措置を講じたかと申しますと、本年度の税收が千九百億でございますから、その千九百億の七割できめなければならん。これは最低経費ですから七割に抑えなければならん。その收入の七割と平衡交付金の千五十億の九割、その額が二千二百八十億になるのでございますが、この二千二百八十億の中にあらゆる地方の行政費をぶち込まなければならん。基準経費としてぶち込まなければならん。そこに問題があるわけです。そこで私共といたしましては勿論この基準教育費の單位表の枠をきめる場合は、これはあらゆる経費がそうでございますが、寄附金、手数料、授業料、その他の雑收入というものは全部外してあります。その單位表の経費が加わるわけであります。それを更に七割で計算してありますから、三割の分は外して計算した税收を丸々取つた場合に七割で見ておりますから、この三割の分は外して單位表をきめたのです。そこに問題がまああるわけです。そこで平衡交付金は元え妥当に彈いて教育費とか、その他の地方費の基準をきめまして、これを合理的に配分する、というのが狙いなわけで、飽くまでも地方財政を合理的に調整しようというのが根本の狙いなのです。そこで基準財政需要というものを考えた、その基準財政需要額は、只今申しましたように大体二千二百八十億の枠内できめた。その場合に教育費として私共は地財と折衝して大体九百十六億程度を確保したわけです。その九百十六億のうち義務教育の分が七百四十八億、この七百四十八億と申しますのは恩給と共済組合の費用を入れてでございますが、これを恩給と共済組合を除きますと七百三十六億程度になるのであります。これは従来の負担金のあつたもの、或いは国庫補助を伴うもの、こういうものは一〇〇%見たのであります。その他の経費についてはこれは三〇%大体落さなければ計算が合わない。ですから現実の予算よりは三〇%程度落して計算したわけであります。そこで義務教育の経費は国庫予算の補助で見た、同じような比率で、同じような予算の……、義務教育の経費は割合によく見ておる。併しながら高等学校とその他の経費は非常に圧縮されておる。これは全体を三〇%落したところに問題があるわけであります。そこでこの平衡交付金を今のお話のようにその他の教育費の中に全部ぶち込んでやる、高等学校費は別にして小学校、中等学校高等学校、その他の教育費、こういうふうな四本建になつております。これを成るべく詳しくわけると予算支出の形をとりますので、そこは地方の財政需要から申しますと、大まかにきめたほうがいいわけなんであります。ただ教育費の点から申しますと、成るべく細かにきめて流用がつかないほうがいいのかも知れませんが、併しながら全体の中で操作するとしますれば或る程度大まかにきめて、そこにかれこれ融通のできるようにするのが望ましいのではないか。それで高等学校の場合には理論的には地方財政を調整するという意味から言えば、人口を基礎にしたほうがむしろ適切なんですが、現実には高等学校の生徒を非常に抱えておるところのものは、それでは予算的に非常に困りますので生徒数を單位に取つたお話のように小さい学校が非常にあるから、その場合どうするかという問題ですが、高等学校は或る程度の、相当な規模を持つておりますので、生徒單位でよいのではないかと考えたわけであります。ただ定時制の学校あたりは細かい学校等もございますので、この場合にはやはり学校というものを單位にとつたほうがよいのではないかと考えておりますので、今後平衡交付金法の改正がございますならば、そういう措置を考えて行きたい、單位費用の中に学校数というものを入れて見たい。それからその他の教育費ですが、その他の教育費の中に幼稚園から、盲聾唖から、大学から一切合切入つておる。それを測定單位は人口を見て、人口一人当り幾らとしましたので、この標準的な団体の中に大学が入つていませんと、大学を背負つている府県は非常に重荷になるし、幼稚園が発達しておるところは幼稚園が重荷になるであろうし、盲聾唖学校が普及しておるところは、それが多少重荷になる。盲聾唖のほうは経費の上で極く少いのですから、そう大きなことはなやでしようが、社会教育で公民館とか図書館の発達しておるところでは経費が足りない。こういうことになりますので、この費用を成るべくその他の教育費を細かにわけて参りますと、基準財政需要を見るのにはもつと合理的になるわけであります。ただ実際貰つた府県のほう、或いは市町村では却つて融通がつがないという結果になるかとも思うのであります。それで本年度は相当無理もございますので、これを調査するために平衡交付金の一割が特別交付金となつておりますから、その今までの基準で捕捉し難い事情がある場合、例えば高等学校の非常に小さい高等学校が多いというような場合は、現行の平衡交付金法で捕捉し難い事情でございますから、その場合には特別な補正を考える。そのために特別交付金から出してやるということが考えられるのでございます。それから先ほどお話の補正係数でございますが、補正係数は人口を基礎としております。人口を一つとりまして……人口、それは人口高でございます。それから密度を見ております。その外に市町村の規模、この三号補正というのは市町村の規模でございますから、これは大体今までの生活給と、今の勤務地手当を基礎に考えて補正したのであります。四号補正が、積雪寒冷地でございますから、石炭手当とか寒冷地手当、こういうものが含まれるように補正したのであります。五号補正が行政種別でございますので、これは高等学校については五号補正を加えております。それで普通の課程を一としますと、定時制も一、定時制は先ほどお話のように一・四倍かかるというお話があつたけれども普通の高等学校よりは安上りで済むのじやないか。大部分が兼任教員で済みますので、これはそんなに一・四なんかかかるはずがないと思うのです。私のほうで出たデータなんか見ても遥かに少いのです。併しこの場合に政策的に定時制は全日制と同様に引上げたのです、と申しますのは授業料が少かつたり、或いは全然とつておらない。ただ全日制の單価そのものが低いから困るというよつうなことはありますけれども、全日制と同様な單価に持つてつたということは、今年は文部省としては成功じやなかつたかと考えております。その他の課程別の係数、例えば水産課程を一・七とか、商業課程を一・三としますというふうな課程別の補正係数というものもきめてありますから、この補正係数についても今後十分研究して改正いたして行きたい。十二月には本決定をする予定でございますから、十二月までに今の法律の範囲内で改正できることはして行きたいと考えております。それから非常に小さな学校の場合でも、例えば学校当りの経費を多く見たり、前の何では小学校ですと一学校五万五千円ぐらいのところを今度は十三万八千円というふうに相当高く見ておりますから、小さなところの府県ではそんなにお困りになつていない。むしろ都会地の、大都会のほうがお困りかも知れませんが、大体山間僻地のある府県は小中学校に関する限りは非常に余裕が出ておるというふうに考えております。まあ非常に平衡交付金のお話はむずかしいので、いつか又適当な機会に細かに御説明申上げたいと思います。
  127. 木村守江

    ○木村守江君 今の人口と密度のお話ですが、面積の点はどうでございますか、この点も考えておられればお開きいたしたいと思います。それから定時制の高等学校は全旧制の学校よりも経費がかからないはずだというお話ですが、これに定時制高等学校については今後適正な改正をするつもりがあるというようなことが書いてありますが、あれは要するに定時制高等学校のほうが普通の全日制の高等学校よりは経費がかかるがら変えなくちやいけないというような意味じやなかたつたでしようか。
  128. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) 定時制高等学校のほうは実態調査の結果を見ましても遥かに低いのでございます。むしろ改正したいと私が考えておりますのは、学校当りの経費というものを高等学校へも考えて上げたいということなんです。
  129. 木村守江

    ○木村守江君 私のほうでは多いのですがね、実際計算したのですが。
  130. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 非常に掘下げて極く小さい点一つだけお伺いして決意を承わりたいのです。それは高等学校教育ですけれども、現在の日本学校教育界は高等学校教育が今一番ブランクになつていると思うのです。特に統廃合の行き過ぎによつて普通科においては果して日本の文化水準、学術水準の維持ができるか、私は維持できぬと思う。向上は勿論のことできぬ。今の高等学校教育では、特に職業教育の振わざることにはこれは重大関心を拂わなくちやいけない。日本の産業振興の上に大きな禍根を残すと思うのです。私は今の高等学校教育は空白になつておると、こういうふうに考えるのです。それでさつきから基準財政需要の高等学校の問題ですが、曾ての教育使節団も高等学校教育まで義務教育にしたいと言われました。先般の文部委員会でも文部大臣高等学校までは義務教育と同じように扱つて行きたいと、こういうことを言われたわけです。私はこの段階においてあの高等学校基準財政需要額というものは、現在の六五%に私は不満足なんです。これは一〇〇%この際やるべき絶好の機会だと思うのです。それをやらなければさつきからお話も出ていたように高等学校には経費を要するし、地方自治体は困る。授業料が上れば教育の機会均等が破れる。学校を少くすればさつき言つた高等教育は尚空白になる。こういうことは私は日本のこの教育と国家の興隆のために将来の大きな禍根の芽生えだと考えているのですが、それでこの前もちよつと問題になつたのですが、その後六五%の交渉の経過がどうなつたか。今後どこまで持つて行かれる腹か。それから平衡交付金の最後決定までのその見通しはどうか、そういう点について決意を承わりたいのであります。
  131. 内藤譽三郎

    説明員(内藤譽三郎君) 平衡交付金の算定については先ほど申しましたように、総額の基準財政需要は二千二百八十億、この中で教育費をどれだけとるかという問題です。義務教育の場合には少くとも教員給の分は全額とつてありますが、それ以外は他の経費と同様に府県の場合には三五%で、市町村の場合は二五%、平均三〇%とする。これは先ほど申しましたように、地方税は七割で計算した。そこに問題があるのですが、地方税の八割なり八割五分に引上げまするならば、一割引上げても百九十億浮くわけです。で、地方税のほうの基準財政收入額を引上げることが一つ、それから他に平衡交付金を増額することが一つ、この二つの問題について今後解決しなければならない重大な問題だと私は考えております。ただ本年度は法律で七割と基準財政收入額をきめておりますので、これも本年度は困難であろうと思いますが、翌年度については、地方財政委員会と十分折衝いたしまして、基準財政收入額をもう少し上げる。そうしまするならば二百億だけ行政規模がふくらむわけであります。基準財政の最低限度の行政規模がふくらむ。要するに二合八勺を三合に引上げたほうが私はいいと考えて……、地方自治の点からすれば、收入を低く押えて地方の財政に幅を持たしたほうがいいわけです。ところがこの八割なり九割なりを、基準財政の收入額と見ますと、全国の裕福な府県も貧乏な府県も殆んど一律になる。それでは地方の財政的自主性から言いますと、多少不満の点があろうかと思いますが、現在のように個人もみんな平等に困つておる。地方団体も皆困つておる時代ですから、成るべくこの基準財政收入額を上げて、そうしてその面から財源を見出すと同時に、平衡交付金の総額を殖やすことによつて、その中から教育費をどのくらい確保するかということになると思いますので、できるだけ御趣旨に副うように努力して参りたいと考えております。
  132. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本日の委員会はこれで散会いたします。    午後一時三十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            成瀬 幡治君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            荒木正三郎君            高田なほ子君            波多野 鼎君            鈴木文四郎君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君    文 部 大 臣 天野 貞祐君   説明員    文部省大臣官房    総務課長    相良 惟一君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省初等中等    教育局庶務課長 内藤譽三郎君