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説明員(長谷愼一君) 電波監理委員長から大体の点を御
報告申上げてございますが、この
漁業無線の問題は沿革的に申上げますというと、大体
漁業者が無線を欲しいというところを、電波の行政上差支えないところはどんどん利用して、その利用によ
つて水産
事業というものが発展されることを我々は望みまして参
つたのでありますが、一方
農林省におきましては、無線局の
建設に対しまして、助成金を
予算上持
つておりまして、例えて申上げますと、
漁業無線局を作る場合には、その半額を助成する、或いは又船に
漁業用の無線局を作る場合にも適当な助成をするという助成策をと
つて参りました。これに並行しまして、電波庁時代からもできるだけ
漁業無線というものを発展するように、利用ができるようにということで進んで参
つたのでありますが、これが戰争後非常に急激に殖えて参りまして、言葉を換えて申しますと、自然発生的な
状態になりまして、これは水産当局の方々からお聞き下さいますと、或いはすでに御案内かと存じますが、
漁業者の間には
相当激しい競争がございます。極めで接近した
漁業根拠地におきまして、お互いに何らの関連なしに、こちらも無線局を持てば、そちらも無線局を持ちたい、こういうような非常な競争
状態にな
つて参りました。一方
農林省では水産の助成ということから、今申しました無線局の助成金の
交付等をや
つているのでありますが、これが非常に多数にな
つて来ましたために、我々の予期以上の
状態にな
つて来ましたために、
電波行政上どうしても限られた電波を能率よく、而も誰でも利用できるようにするためには何か
考えなければならんという
状態にな
つて参
つたのであります。言葉を換えますというと、やや濫立
状態にな
つて参りましたものですから、これは何かもつと能率よく整頓された形において
漁業無線が行われなければならない、こういう事態になりましたものですから、
関係方面の御慫慂もありまして、水産庁、それから当時の
電気通信省、それから電波庁の
関係者、
安本の
関係者、それから水産の業界の代表者等も参りまして、約二年半に亘りまして、どうやつたならばこの
漁業無線が能率的に、而も理想的な形態として
運用できるかということを、
一つの委員会を作りまして研究いたしまして、その結果本年の三月に大体その委員会の結論というものが得られたのでございますが、遺憾ながら水産庁の方々は、少数意見として、その委員会の決議に賛成できかねるというような少数意見も出て参つたものであります。電波監理委員会といたしましては、六月一日出発されましてから、そういうようないろいろな事情も非常に検討して頂きまして、実を申上げますと、電波監理委員会が去る八月に無線局の開設の根本基準につきまして聽聞会を開いて、各方面の意見書並びに調書に基いてお述べ願
つたのであります。その根本基準の一番問題になりました、而も電波監理委員会で非常に愼重に御討議にな
つたのは
漁業無線の問題に外ならなか
つたのでございます。人体今申上げました
調査委員会の決議案というものを参考にいたされまして、各方面の意見も聞き、水産庁の労務者の意見等も数回に亘り、委員長初め皆さんにお聞きになり、父業者の代表者とも会われましな結果、大体これならば行くであろうという案を聽聞委員会の持案として出しました。その聽問委員会には勿論水産
関係の者は多数見えまして意見の開陳もありましたが、それらの意見を斟酌いたしまして、九月の上旬に無線局の開設の根本基準というものを制定にな
つたのでございます。この開設の根本基準によりますというと、御案内と存じますが、
漁業会におきまして、
漁業協同組合法というものがございまして、従来の
漁業会が協同組合に変更にな
つております。この
漁業協同組合は、御案内のように
中小漁業者のための組合でございますので、総計三百トン以上の漁船を持つ非常に大きな船主とか或いは会社組織にな
つているものは、この協同組合には入れないという形にな
つております。ところが無線を利用するのは勿論一隻々々の持主である
漁業者も非常に利用されておりますが、何と申しましても会社組織にな
つているものは大きな船を持
つておりまして、遠洋
漁業をやるものですから、そういう会社組織にな
つておりますところの業者が非常に無線を利用するわけであります。その協同組合というものが
漁業会のあとを受けまして、
性格がすつかり変りましたが、あとを受けまして、無線の
運用、これの維持を引受けたのでございますが、今申しますように協同組合に入れない組織のものができたら、こちらも無線を又持ちたい、こういう希望も出て来るように
なつた、そういたしますと、同じところで協同組合が無線を持ち、又会社組織にな
つているところのものも持ちたいというようなことになりまして、それでは電波の能率的な利用、
経済的な利用、国の電波の利用を離れて、
経済的の面を離れまして、非常に無駄なことでございますので、この根本基準におきましては、協同組合がそのままでもよろしいし、或いは一人々々の無線を持
つている
漁業者でも結構でございますが、全体で
一つの組合組織を
作つて、その団体が
一つの無線を持
つて、皆が公平に無差別に利用できるようにしたならば一番理想的ではないか。これは専用通信というものをそういう形のものにすれば専用通信とも
考えられるであろう。
一つの団体の組織内での通信ということなら専用通信でないということも一応
考えられるので、そういうことで行つたならばどうかというのが、この根本基準の案なのでございます。ところが一方水産庁
関係の方々は、協同組合というものが
農林省の監督下にあるわけでありますが、この協同組合の
一つの重要な
仕事として無線の維持運営をや
つておる。その協同組合が、この根本基準によりまして無線局を
運用できないということにな
つては、
一つの大きな
仕事を協同組合から剥ぎ取られる形になるので非常に潰憾である。又一方従来各県が水産指導用の無線局というものを持
つております。これは殆んど治岸の漁船にあるくらいでございますが、この水産指導用の県が持
つている無線局は、
漁業の
調査、漁場の
調査或いは水産上のいろいろな
調査並びに
漁業に対する指導をやるのが本来の目的でございまして、無線局のそういう
状態の通信をやるという目的で設置されております。ところがだんだん
一つ一つの漁船と、それから船主との間の個々的なと申しましようか、勿論これは漁撈上の通信でございますけれども、そういう特定の人々の通信を申継するような形にな
つて来ておるのであります。これは本来から申上げますと、目的外の通信で、法的に或いは規則上から言
つても違反となるわけでございますけれども、やはりこれは漁撈の通信、水産業のためには必要なものであるからということで、拡張解釈をして、従来、まあ黙認という言葉を使いますと妥当でないかも知れませんけれども、見逃がしておつた形なのであります。併しこれは新らしい電波法の精神並びにその場合に基く規則等から申しますと、どうしても調整しなければならんというところに立ち至りまして、先程申しました根本基準におきましては、団体組織の中に県の無線
設備を包含してしまえば将来いいのではないかという、非常に水産庁或いは業者の
関係も
考えた案にな
つておるのでございます。ところが最近におきまして、業者の一部の人達並びに過般衆議院並びに参議院の水産委員会におきまして、この点が問題になりまして、根本基準或いは電波法によるところの禁止ということも分るが、現在の
漁業界の
状況からしまして、急激にこういうことに変更することは
実情に合わないじやないか、協同組合でどうしてもいけないところは理論上はよく分るけれども、実際上非常に業界が困るから、協同組合でもできるように拡張解釈をしてやらすことはできないか、こういう話が出ておるのでございます。尚この問題は先程申上げましたように、水産庁の当局者とも我々水産庁長官或いは
物価庁の人々とも数回に亘
つて折衝いたしておりますが、水産庁の人々もこの
趣旨に対しては反対ではない、併しこれを今やることについては規則だけではやり得ないのではないか、法律的な措置がなければ、なかなか
漁業界というものはついて行けないから、法律的な措置が必要だ、そういう意味で、先程
お話に出ましたところの
漁業無線組合法というものを
作つて行きたいと思
つておるというようなことが話に出たことがありましたけれども、私達はそういう必要はないのだということでそれ切りに
なつたと思
つてお
つたのですが、ところが過般御指摘になりましたように、新聞紙上に出て参りまして、私共もこれはと驚いて
内容を正式に尋ねたのでありますが、まだ
農林省から正式に何らの表現がございません。併し新聞等に出ておりますところによ
つて、その
内容を想像いたして見ますると、先程委員長からも御
説明申上げましたように、
農林省に
漁業用の無線として或る電波の数を割当てて貰
つて、この電波のどこの局にはどの電波を割当る、或いはこれの時間はどういう工合に
運用する、時間を指定して行くというようなことが、一切
農林大臣の監督によ
つてやるというような案にな
つているやに思われるのであります。そういたしますと、これは電波法が折角作られた、
官庁から会社或いは各個人の無線というものを国際的な視野から
考えて、或いは電波というものの特質から
考えて、電波法と一本の法にしなければならんという根本理想に非常に反するようでありまして、我々はこうあ
つてはならないと思
つているのでございますが、今申上げましたように、正式に私共の方に相談はまだ参
つておらない次第でございます。大体総括的に申上げまして、そういう
状態でございます。御
質問によりまして
お答えをさしで頂きます。