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1950-07-25 第8回国会 参議院 通商産業委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十五日(火曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件日本製鉄株式会社法廃止法案(内閣  提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは只今から委員会を開会いたします。前回の委員会では、日本製鉄株式会社法廃止法案につきまして提案理由説明がありましたが、今回から質疑に入ることになつております。別段御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  3. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 御異議ないものと認めます。それでは御質疑の方は御発言をお願いいたします。
  4. 駒井藤平

    駒井藤平君 日鉄法廃止法案に関通いたしまして、二、三横尾通産大臣にお伺いいたしたいのであります。政府は去る六月末を以て鋼材補給金を全廃いたしたのであります。鋼材補給金の全廃については、業界では致命的な問題として、論議の焦点となつていた事実であります。なぜかならば補給金撤廃は、そのまま鋼材価格の値上りとなり、これによつて関連産業が甚大なる影響を受けるとともに、その反射作用といたしまして、有効需要の一層の減退という形で再び問題が鉄鋼界に帰つて来るという本質的な問題の外に、最近の補給金は本来の性格たる低物価政策の用具と見るより、むしろ当該産業に対する一種の助成金的な作用を示し、鉄鋼業者などにおきましても、一種運転資金として重宝がられておつたのであります。そうしたところが多分にあつたのでありまするが、然るに蓋を開けて見ますると、朝鮮問題という突発的な問題が、飛び出しましてその後の鋼材市況予想外に堅調のようであります。併し我々は今日こうした表面的、一時的現象から、直ちに我が鉄鋼業が安定し、見通し得る近き将来において安易に自立し得ると考えることは早計であると思うのであります。日本鉄鋼業が生来的に持つているウイークポイントは依然として問題として残されているのみでなく、当面の価格政策の見地からしても、銑鉄トン当り五十ドル棒鋼トン当り七十ドル平均生産価格は、決して国際水準価格とは言えないのであります。とくに鉄鋼生産費低下目標とするいわゆる鉄鋼業自立態勢の確立が問題とされるのであります。今回産業合理化審議会答申案も作成されたのでありますが、ところでその合理化審議会答申書でありまするが、それは関係業者の最大公約数的な意見であり、更に問題になつ石炭側まで仲間入りしたために、総合部会答申書なるものは、私の見るところでは前提条件の上に更に前提条件を積み重ねており、その一角が崩れると全構造が雲散霧消してしまうという懸念が多分にあるのであります。のみならず業者の最大公約数的意見なるが故に、合理化関連して当然に言及すべきいわゆる鉄鋼業の再編成については不問に附しておる。鉄鋼部会答申書中、強いてこれを求めるならば「極力高能率工場操業度を上昇させる」云々と、極めて抽象的な表現で、むしろその問題を敬遠しておるのであります。  そこで政府にお伺いしたいのでありまするが、現段階の鉄鋼業界にあつては、高能率工場とは如何なる分野を指して言われるのであるか、又業界には銑鋼一貫工場中心主義と、これに対立する單独平炉工場関係者反対論がある。私共参議院通産委員会が昨年春、関西地方現地視察をいたしたのであります。その際にはつきりとその対立が私共の目、皆さんの目、皆さんの耳で聞いて帰つたのであります。通産大臣群小メーカーが濫立しておる鉄鋼界の現状からして、鉄鋼業合理化のために、業界のいわゆる再編成を必要と認められるかどうか、この一点、更に又若し必要なりと認められる場合、如何なる方針を以て再編成指導されるか、そのために何らかの行政若しくは立法措置をとられるか、それとも軍に自然のままに放つて置いて、そうして業界の優勝劣敗に任せるかどうか、この点を先ず初めにお伺いいたしたいのであります。
  5. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 大臣に対する御質問でございまするが、便宜上私から代つて答弁申上げたいと存じます。只今の御質問のうち、鉄鋼業補給金が打ち切られた後において、どういう状態になるかというのが第一の御質問であると考えるのでありますが、この点は、仮に朝鮮事変というものが起らなくても、すでに半年前から補給金は大体打ち切られるであろうということを業者の方では予知いたしまして、それぞれ内部的の整理或いは冗費の節約、或は技術面改善等によりまして、相当操業度改善をいたしておりまするから、仮にかような突発的な事件が起らなくても十二分に充実できるような態勢にある、かように我々は考えておるのであります。  更にその次の再編成の問題でありまして、いわゆる高能率工場とは如何なるものか、或いは又銑鉄、鋼鉄、これらの利害関係相反目、又は企業整備という点の御質問でありまするが、我々の考えておりまする高能率工場と申しまするのは、又それに関連して企業整備というような考え方は、戰時中におけるように或る特定工場を指定しまして、その工場に他の工場を集中するというようなことは全然考えていないのでありまして、いわゆる自由経済下におきまして、いい製品、そうしていいところの、その能率の非常に高い、こういう工場に自然的に注文が集まるであろう、從つてそれに対しましては、政府といたしましては、別の面で防止する必要のない限り、自然の姿に一応任して置きたいというような考え方を現在では持つているのであります。
  6. 駒井藤平

    駒井藤平君 私初めに鉄鋼業合理化問題に絡んで、業界の再編成についてお尋ねいたしましたのは、旧日鉄從來業者において特殊な地位を持ており、八幡富士製鉄所に分割され、日鉄法が廃止されると言いましても、今日依然として両製鉄所業界における地位はその企業規模からして、特異な存在であると私は思うのであります。即ち從来から持つていた銑鉄及び半製品外売による製鋼圧延企業に対する支配力は、日鉄解体後においても両製鉄所においてそのまま継承され、而も国策会社であつた日鉄においては、そのことは権利というより、むしろ国策の線に沿うた一種の義務であつたのであります。然るに日鉄解体後は純然たる営利企業会社なつた。そういう立場からしまして、銑鉄製品外売は両製鉄所にとつて営利的計算に基きまして、これはやつて差支えない。そのことは日鉄銑鉄若しくは半製品に依存している企業にとつては存立の基礎に影響する問題であり、逆に又行政措置で両製鉄所が旧日鉄におきますると同様に、一定量銑鉄若しくは半製品外売を強制されるならば、両製鉄所企業自主性を失うであろうと考えるのであります。かような観点からいたしますれば、両製鉄所動向如何は今後の我が鉄鋼業に大きく左右するということになるのは必然だと思われるのであります。政府日鉄法廃止後の両製鉄所行政的監督乃至は指導を奈辺に目標を置いて、而して具体的に如何に実施されるつもりであるかどうか。第一に、両製鉄所製鋼圧延会社との関係、第二に、両製鉄所相互間の調整関係、この両点について通産大臣の責任ある御答弁を求める次第であります。  次に、旧日鉄ブロックにあつては、現在富士製鉄に属する広畑製鉄所帰属とその動向が特に問題にされているのでありまして、広畑は去る三月末、第一高炉の火入れが実施されました。次いで平炉及び圧延一貫方式による再開のスタートが切られたのであります。これは我が鉄鋼界のみならず、広く産業界全般のためにも祝福せざるを得ないのであります。併しながら広畑は次の点において特色を持つておることは御承知であろうと存じます。  第一に、全工場を挙げて賠償指定を受けたこと、第二に、同所設備が近代的且つ総合的であり、欧米に匹敵する最新式であり、同所連続式厚板工場で生産される鋼板ABロイド等規格品としまして、造船用鋼板として不可欠のものであるのであります。第三に、その反面立地的に原料基地とは隔絶した土地にあることは御承知通り、而も規模が大きいために、その操業を維持するためには一定量原料が量的に確保されなければならない。第四には、単独平炉会社であるいわゆる関西の三社に囲繞されておるという状態、これらの諸点から、その再開帰属が特に問題にされておるのであります。日鉄再建整備に絡んでも種々取沙汰されておるのでありまするが、ともかく富士製鉄の一翼として待望の操業再開が行われたのであり、最近では運営もやや安定した感がいたしておるのであります。関西平炉会社との関係におきまして、或いは又外貨導入に絡む広畑分離施設などについて、政府当局は如何なる御見解を持つておられるか、責任ある御答弁を求める次第であります。
  7. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 第一問の八幡並び広畑が、長い間政府のあらゆる補助を受けたことによつて分離しても相当有力だ。從つてその他の工場との関係がどうなるかという御質問かと存じますが、これは御承知通り分離いたしましてまだ時日が経つておりません。從つてここで具体的にそれをどうするというような事態は何も起つていないのであります。今後これがためにその他の工場が非常に圧迫を受けるとか、何とかというような事態になりました場合には、改めて考慮して然るべきだというふうに考えるのであります。  尚、只今広畑工場帰属問題でありますが、御承知通り広畑工場賠償対象物件でありまして、一応富士製鋼に賃貸の契約で使用せしめておるのであります。從つてこれが帰属ということは賠償が解除されなければ決定できない問題でありまして、而も今日の場合、いつそれが解除されるかという見通しが一切付いておりませんので、その帰属という点につきましては、現在のところ何ら考慮していないのであります。さよう御了承願いたいと存じます。
  8. 駒井藤平

    駒井藤平君 只今の政務次官の御答弁は、総括すれば、まだ帰属点等考えておらない、こういうような御答弁でありますが、何ら御考慮はないのでありますか。
  9. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 先程申しましたごとく、いつ解除されるか分りませんので、目下のところ、そこまでは考えていないのであります。
  10. 駒井藤平

    駒井藤平君 併しこれは遅いか早いかで、当然解除されることに違いないと思います。そこでこうしたように日鉄廃止法が実施されるということになれば、当局としてそれぞれのお考えがあるべき筈だと私は考えます。然るに未だ何らの考えがないということでは、私は納得し兼ねるのでありますが、その辺大臣において如何に考えておられますか。
  11. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 只今広畑の問題に関しましては、まだ最終的の決定がありませんので、これを云々することがちよつと早いのじやないかと考えます。それから銑鉄の問題でございますが、成る程富士八幡日本鋼管は元同じ会社であつたから、平たく言えば値段の協定をされるのではないかという虞れを持つておられるようでありますが、同じ会社であつても競争心が激しいのでありますから、そういうことは万々ないと考えております。又阪神の平炉メーカーは、在来の銑鉄の配給に対して相当の不満があられたように聞いております。この点はむしろ分割して、そして広畑が完全とは行かなくても、或る程度操業いたしますならば、却つてその方がよくなりはせんか、こういう考えをしております。
  12. 駒井藤平

    駒井藤平君 私の質問は保留いたして置きまして本日はこの程度で……。
  13. 古池信三

    ○古池信三君 二、三法律問題につきまして、お尋ねをいたしたいと思います。この法案の第五項に、「この法律施行後二年以内に発行する社債社債権者は、この法律施行後三年以内は、それぞれ当該第二会社の財産につき、他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」という規定がありますが、これはいわゆるゼネラル・モートゲージの規定でありまするかどうか、そういたしますると、担保附社債信託法との法律的関係はどうなるのでありますか。それをお答えを願いたいと存じます。それから続けて第五、第六、第七の各項、即ち只今申上げました社債と、それから第六の対日援助見返資金による貸付金と更に復興金融金庫貸付金は、これは第八項によりまして、民法との関連においては順位規定されておりまするが、この三つ債権の間の順位はどういうふうに扱われるのであるか、同一順位であるか、或いはその中に更に順位が付くのであるかどうか、こういう問題、第三にお尋ねいたしたいのは、この社債権者が、この法律施行後発行する社債について規定されておりまするが、從来社債権者と今後の社債権者との間の優先順位はどうなんであるか、この三つの点につきまして簡単にお答えを願いたいと思います。
  14. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 大臣は十五分ばかり閣議の都合で今席を離れたいと言つておられますから、さよう御承知願います。
  15. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 御承知通り日鉄、現在の八幡富士両方とも特殊会社でありましたので、あの厖大な設備を今日まで一つも登記していないのであります。これを登記いたすといたしますれば、少くとも二年乃至三年を必要とする。而も金融の方は当面迫つた問題でありまするので、そういう隘路を防止するために、この法案作つたのでありまして、二年乃至三年の間は、從来と同様の簡単な方法で金融を受けられるということにいたしたのであります。さてその社債と、或いは対日、或いは復金優先順位がどうなるかという御質問が第二でありまするが、これは全く同一権利を持つものでありまして、この中のどれが優先するかということは一つもありません。更に又前の社債と、後の今後の社債の権限の問題でありまするが、これも全く同一権利でありまして、その間に何らの差違もないということを御了承願いたい。
  16. 古池信三

    ○古池信三君 そういたしますと、第一の問題は、要するにこの法律によつて一般担保附社債信託法の除外の特別法というようにお考えになつているわけでありますか。
  17. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) お説の通りであります。
  18. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止
  19. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 速記を始めて……。
  20. 下條恭兵

    下條恭兵君 政府に一、二お尋ねしたいのでありますが、朝鮮事件以来、鉄鋼需要が殖えて参りましたことは新聞に伝ることでありますし、又八幡製鉄の八月の圧延能力が四万五千トンぐらいであるのに、八月分の需要の申込はその四倍でありまして、或いはそれ以上になつているというふうに、これは正確なる数字じやありませんけれども、承つているのでありますが、大体最近の経済情勢からしまして、日本鉄鋼需給状態に対する政府見通しはどうでありますか。その点ちよつと承わりたい。
  21. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 朝鮮問題が起りまして以来、漸次この方面に利用されるのではないかと考えられるような需要が段々殖えて参つておるようであります。現在のところ、然らば具体的に幾らその方面に使われたかという正確な数字は集まつておりませんから、お答えできません。御承知通り世界的に鉄鋼工場が非常な勢いで上つて来ましたので、各方面とも今日まではとかく極端に考えていたにも拘わらず、経済情勢がかような状態なつた結果、多少その需要というものも殖えて来たのではないか、そういうことが只今お説のごとく、八月八幡製鉄所におけるところの発註相当殖えて参つたというふうに考えるのであります。いずれにいたしましても、朝鮮事変のみならず、その他の一般経済界情勢から考えましても、今後需要相当量殖えて参るのではないかというような見方を持つておりますので、それに対処いたしまするように、石炭であり、或いは鉄鉱石であり、今日まで輸入いたしました正規の輸入量以外に相当量この際緊急的に輸入いたしまして、以て需要が急速に増大いたしましても、万遺憾ない措置をとつて置きたい、かような考え方から、現在この作業を続けておる次第管あります。
  22. 下條恭兵

    下條恭兵君 そういう原料関係輸入などで、政府が手を打つておられるということは大変結構だと思うのでありますが、これも聞くところによりますと、引揚げに配船する船もないということで、船舶関係も逼迫しておるということを聞きます。そんな関係から、輸入の計画が果して内地事情にマッチし得るように進められるかどうか、私は疑問に思つておりますけれども、その辺の見通しは如何でございましようか。
  23. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 目下のところでは関係先の方の意向も一致していないように考える点があります。從つて作業が急速に我々の考えておりまするように進みにくいというネックはありますけれども、併し今後の事態考えた場合、どうしてもこの際万難を拜して目的を達成しなければいかんということで、相当担当の局におきましては熱意を持つてこれが解決に努力いたしておるのでありまして、我々の考え方としては必らずできるというような信念を持つて、今進めておるわけであります。
  24. 下條恭兵

    下條恭兵君 信念は大変結構に思いますけれども、例えば具体的に申しまして差支ない範囲で結構ですが、船をどうするとか、或いは取引はどうするということについての成る程度の具体的な御説明を願えませんでしようか。
  25. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 御承知通り最近日本輸出貿易は繊維を筆頭といたしまして、意想外な盛況を示しておるのであります。その上にこの事変関係から船舶関係、或いはその他の要員の関係、或いはいろいろ物資の面等々の面が全部ドル決済で支拂われております。これは端的に言えば一つ輸出だと見てもよいと思うのでありますが、そういう関係ドル資金は極めて豊富だということをこの際申上げてもよいと思います。ただこの豊富であるドルを使用いたしまして、物資輸入した場合に、内地の円がどうなるかということが現在最も考究される対象になつておるのであります。併しながらこれは国内問題であります。而も今日までは裏付のない円を発行いたしましたからインフレなつたけれども、今回のものは飽くまでも裏付が全部あるのでありまして、全部ドル資金裏付になつておりますから、それに対比するような、円を持ちましても、決してそれは從来のような空白なインフレではないというような考え方から、どうしてもこの円問題を解決したい、こういうふうに考えておる次第であります。
  26. 下條恭兵

    下條恭兵君 次にお尋ねしたいと思いますが、最近船舶もそうかも知れませんが、朝鮮事変以来の市場の様子は、鋼材にせよ、鉄線のようなものにせよ、非常に値上りしまして、例えば特別調達庁関係なんかでも、入札当時と今度は情勢が変つてしまつて、実際に請負契約の遂行が不可能になつたという二、三の事例を私聞いておるのでありますが、このことは当時輸出関係につきましても、昨今の事情機械類のようなものの輸出もずつと以前の引合なんかが、直ぐ先方から輸入許可とか、LCを開いて来るというようなことで、而もこの春頃から国内状況が一変しておるために、これ又輸出取引が円滑に行かぬというような実情があると思うのでありますが、政府はこういうことに対する対策がございますか。
  27. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) お説のような需要がある、供給の少いもの、これは或いは極く特殊なものでありまして、平素は非常に需要の少いものだというふうなものは、そういう事実があるかも知れませんが、大体において今日のところそう需給のバランスが逼迫しておるとは考えていないのであります。尚この問題も各製品の内容については鉄鋼局長から詳しく御説明申上げた方が御参考になるかと思いますので、鉄鋼局長から御説明申上げます。
  28. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 最近の海外引合状況でございますが、数学的に申上げますと、まだ具体的にこれを取纏めてどうという程度に至つておりません、ただ一般的な状況を簡単に申上げますと、本年の四月、五月、六月の実際の輸出状況は、丁度引合の惡かつた当時の船積関係で、四月が二万トンを少し越す程度、五月がやはり二万八千トン程度、六月に入りまして大体その程度という状況で推移いたしましたが、引合状況は四月は四万、五月が六万、大月に入りまして、更にこの数字を上廻つておるという状況でありまして、朝鮮事変影響から来ます海外需給増加ということもいろいろの見方で分析しなければ、直接的或いは間接的な影響という点を考慮しますと、どの程度数字がそれに対応するか、その数字を判定するのは実は困難ではなかろうか、只今申上げましたように、輸出引合はすでに四身頃から上昇カーヴに向つておりまして、これが七月にどの程度数字になりますか、目下関係主要メーカーについて調査をいたしておりますが、現実の数字はそう思つた程の数字になつておりません。それで長い目で、いろいろの引合相当噂されておりますが、それは噂の域をそう脱していないのじやないか、私は事務的に考えまして、そう著しい数量に上つていないように考えております。
  29. 下條恭兵

    下條恭兵君 私は鋼材素材輸出の話をしたのでなくて、むしろ機械類輸出向けの場合のことを言つておるのですが、引合はずつと春頃であつてその頃は補給金もあつたし、鋼材も安かつたが、現在上つてしまつてつて、而も最近流れが激しいために、そのままで註文が来ると輸出することができないというような状況にあることを言つておるのでありまして、その点に対する対策を何かお考えになつておりますか、その点をお尋ねしているのであります。
  30. 中村辰五郎

    政府委員中村辰五郎君) 先般の七月一日に価格改訂を行いまして、例の鋼材補給金撤廃ということに相成つた。この場合に価格統制も同時に廃止いたしましたので、価格業界の個々のメーカー建値ということによつて取引せられるということに相成つたのであります。その建値と申しますのは、大体八幡製鉄が宙として指導的立場から最初に建値の発表をいたしました。これは棒鋼を標準にとりますと、大体三割三分程度引合ということに相成つております。鋼材補給金並びに銑鉄補給金の一部を削減いたしましたことから考え鋼材価格値上額は、ただ單に数字的に申上げますと、八千四、五百円程度に相成るのでありまするが、そこまでの引合いは勿論需要関係等から見まして上げませんで、一部合理化その他で吸收させまして、鉄鋼島としても、できるだけ低値の価格を実施したいということで、只今申上げましたように、三割三分の値上げ、全体を上げますと、四割二、三分になるかと思いますが、その程度上廻つた程度価格建値目下実施させている状況であります。これが機械等に及ぼす影響でございます。勿論鋼材使用量のウエイトによりまして、各産業の受けます影響はそれぞれ異なるかと思います。車輌造船等については、相当問題が大きいかと思いますが、他の範囲機械工業については、鋼材のいわゆる加工の全体の生産コストから見て比較的占める程度が少いので、そう大きな影響はなかろうかと私共の方では考えております。造船関係につきましては、目下政府関係当局鋼材価格について適当な措置をとるべく検討しておりますので、これについては目下のところ確たる見通しはございませんが、これに対する措置関係方面と検討中でございます。
  31. 下條恭兵

    下條恭兵君 例えば輸出特定のもので、どうしても造船関係車輌関係のように、政府で何か措置をしなければならんというような必要があれば、将来政府はやつぱりそれについても輸出を奨励する意味で何か手を打たれる考えでありますかどうか、その点お伺いいたします。
  32. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 適当な対策をとりたいと、かように考えております。
  33. 下條恭兵

    下條恭兵君 私ばかりお尋ねして甚だ恐縮ですから、この辺で打切りますが、只今のように大臣がお出で下さつておられたら、さつきも駒井さんの御意見もあつたのでありますから、将来の政府方針というようなものは大臣からお答え下さることをお願いしまして私はこれで……。
  34. 栗山良夫

    栗山良夫君 私大臣に二、三お尋ねしたいのでありますが、このたび提案されておりまする法律案の法的な措置については、私共も提案理由説明にはつきりと謳われておりまするように、もうこの法律が存続の意義がなくなつたということを端的に了承するものでありまして、何らかの形をとらなければならんと思いますが、こういうような工合に、日本の基礎産業でありまする鉄鋼業に対する基本的な政策というものを一遍考えて置く必要があろうかと思うのでありまして、例えば政府の言われるのは、朝鮮問題の発端は別といたしまして、デフレ経済による需要減退というようなことが大きな比重になつておりますにも拘わらず、これのバランス状態改善せられておる。或いはドツジ氏の均衡予算のために財源難が理由になつて価格補給金というものがどんどん撤廃されておる、そうして鉄鋼産業にそれが迫つておるのでありますが、そういうようなことも、これが企業合理化として十分なし得るであろうかというような形の説明をされておるのでありますけれども、これでは鉄鋼産業がうまく行かないと思うのでありまして、果せるかな産業合理化審議会におきましては、こういうような政府の施策に対して、恰も不十分とするがごときいわゆる合理化案というものが出ておるわけであります。私は先ず第一に大臣にお聞きしたいのは、大臣鉄鋼関係に非常に造詣の深い方であり、又重要なる業界のメンバーでもありまするので、政治問題を離れて鉄鋼業界のような形でお考えになりましたときに、この産業合理化審議会が作りました鉄鋼産業の自立を目途とする合理化案というものは、果して了解し得るものであるかどうか、この遍の御見解を承わりたい。
  35. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 日本の基礎産業の中で最も大きい製鉄業のことに関しましては、特に私は在来の自分の本職の関連もありまして、関心を持つものであります。只今お話のように、いろいろと問題もありますし、又今後に対していろいろと考案しなければならんものがあるのであります、但しこれだけは私は是非申上げて置きたいことは、私らが業界でやつておりまして、今日のような、これ以上のコストは下げ得ないというようなことをよく言うたものでございます。併し窮すれば通ずと申しますが、価格制度が変りましても、先ずこれは造船業でございますが、成る程度競争ができ得るというような段階まで進み、又進みつつあるのであります。製鉄業にいたしましても、そういうようなことで、例えて見まするというと、熱管理の方を少し研究して見たり、いろいろと研究する部門が沢山私は残つておるかと思うのであります。又政府といたしましては、これを援助する意味において、或いは金利の引下であるとか、その他審議会の方針に現われておりまするものに対しましては、極力この方向になるように努力をしたいと思いまするけれども、その中には或いはできない部分もありはせんかと考えます。ただ抽象的に、私常に合理化合理化と申しますけれども、これは事実又残されたる部門が沢山あるということは、業界に御精通の皆さん方には御納得し得られるものではないかと思うのであります。それで先刻申上げましたように、基礎産業である、殊に製鉄業は、よしんば多少高くても、外国の製品が高くても、外国製品が安い故にこれを輸入するというようなことは、これは業界を育成する上において好ましからぬものと信じているのでありますから、そういう方面は極力措置いたしまして、そうしてコストに合い得るような業態に早く持つて行きたい、こういうふうに考えております。その点御了解を願いたいと思います。
  36. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、大臣の御答弁は審議会の合理化案というものは若干合点の行くところもあるけれども、相当手前味噌的なものが入つている。それだから政府の今行なつている政策を押し進めることによつて、こういう審議会の案のような内容を全部やらなくても、十分に合理化を……。輸出採算価格まで下げることができるのだと、そういうようなお考えなんですか。
  37. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 合理化委員会方針の中にありますものに対し、できるものは、これを例えば金利の引下のごとき、又できるかできぬか分りませんが、復金その他の借入金について低金利特別措置を講ずると書いてありますが、或いは償還期を延すとか、いろいろな申答がありますが、これには努力して行きたいと思つております。けだし鉄道運賃を石炭のやつばかりをするか、できるかできぬか一応向うに相談をいたしますけれども、こういうものは、これはできるかどうかということは甚だ懸念をするものであります。できるだけの努力をいたしまして、そうして合理化と相共に進んで行きたい。こういう考え方であります。決して問題をなおざりにするという考えは毛頭ございません。
  38. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、大体大臣としては、この合理化に必要な審議会が挙げましたところの施策というものはどれも大体好ましいので、できるならやつて行きたい。こういうことでございますか。
  39. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) そうであります。
  40. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、先程次官は駒井委員の質問に答えられたときに、補給金をなぜ鋼材に対して切つたのかというお話がありましたときに、これは昨年からの豫定のコースであつて業者はそういうことを百も承知の上で合理化案というものを立てておつたのである。從つて今更何ら驚くべきことではないのであつて、当然のことではないかというようなお話がありましたが、そこに私は問題が出て来ると思います。ということは、この審議会の答申案にははつきり経過的措置のところに、こういうように謳われております。右のごとく諸施策によつて、これは諸施策というのは、九つばかり具体的に挙つております。これは抽象的ではありません。そしてその諸施策によつて鉄鋼業及び石炭鉱業の合理化を急速に推進するけれども、両産業がそれぞれ目標とする自立態勢に到達するまでの期間においては、鉄鋼価格を国際水準に据置くために必要な限度において、鉄鋼業に対し補給金を交付する措置を講ずることが必要である、こういう工合に言つております。從つて大臣がお認めになつたように、こういうような施策を大体了承して、そうした努力をしたい。そういうことでなければ国際水準に据え置かれない。二十八年度を目標にしておるわけでありますけれども、そこまでは落ちない。そういう状態にあるということは、この審議会の方ではそういう状態にたるまでは補給金を継続しなければ困るというわけでありますから、補給金を打切るということは既定の事実でありますから、打切つても自立して歩むであろうという先程の次官の見解は甚だ当を欠くものであつて、切る以上はこの審議会が指示しておりまするような政策で、九つあるわけでありますが、これが全部一遍にできないでありましようけれども、少くとも自立態勢のために、殊に必要とする幾つかの重要政策は断行して、それから後でなければ、これは企業を潰すという、まあ我々その一言に盡きると思う。その辺の調整をどういうふうにするか。
  41. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 私は補給金の問題に触れなかつたのでありますが、銑鉄には補給金が付いておりますから、その問題は……。
  42. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) 只今栗山委員より、私の答弁大臣答弁に食違いがあるというお説でありますが、私の先程申上げましたのは、国内相場、当面の問題として国内的に行けるか行けないかということを主として申上げたのでありまして、今の産業合理化審議会の答申は国際的水準に到達する、国内をもつと飛躍して、国際水準の相場に到達するには如何にすべきかというのが産業合理化審議会の答申でありますので、この間にはいささか相違があると思います。この点は御了承願いたいと思います。
  43. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、自立態勢目標を、その価格を国際水準に置かないということになりますならば、補給金を切つても今のままでやつて行ける、こういうような簡単な考えで、まあ大体今の政府の施策というものは行われている、こういうふうに了解してよろしいのですか。
  44. 首藤新八

    政府委員首藤新八君) お説の通りであります。国内相場を、いわゆる国内の需給関係を基礎とした相場を考えまするならば、一応補給金を切つても行けるであろうという予想であります。
  45. 栗山良夫

    栗山良夫君 それは今日まで既定の事実として政策を進めておいでになつたわけでありますから、そういう御答弁が出て来るのは私も分るわけでありますが、政府のいわゆる鉄鋼産業に対する基本的な理想を持つた計画としては、やはり答申案の持つておるような方向に推し進めて行くということが、私はこれが一つの理想でなければならないと思うのですが、その辺に対して、最近ここで伺いまする御意見というのは、大体現状は現状はということで承つて来たわけでありますが、もう少し長い一つの期間を捉えての政府の政策というものを考えました場合には、どうしても今ここで審議会が挙げられている程度合理化案というものを強力に推進して行かなければならないと、そういう工合に考えるのでありますけれども、その点を政府としてまだ御決定になつていなければ至急にでも御決定を頂く。これは鉄鋼だけでないかも知れませんけれども、施策の御用意があるかどうか、その点をちよつと私は伺います。
  46. 横尾龍

    ○国務大臣横尾龍君) 審議会の答申が出まして、私実は、結論だけここに出ておりますが、内容についてはまだ討究をしておりませんので、甚だ相済みませんが、ここに書いてありますものを要約して見ますと、たとえて見ますと、外国機械、技術の輸入についての特別措置というような抽象的に書いてあります。これも当然私は必要であります。私少し言い過ぎかも知れませんが、広畑製品八幡製品にいたしますと、先刻のお話にありました造船用材のロイド・クラス又はアメリカン・ビユーローに合格する鋼材の技術に対しましても格段の差がございます。これは御承知通りであります。だから広畑のような製品であつたならば、まだ価格が下げ得るという私は自信があるのであります。それでありますから、こういう外国機械の購入ということは、これは是非やらなければならんものではないかというふうに考えておるのであります。屑鉄対策の強化ということも、これは何と申しましても今日鉄鋼を考えるときは第一に考えなければならんと考えます。今回の、もう皆さんのお耳に達しているかと思います低能船の解体ということも、或いはこういうものに是非結びつけて、そうして屑鉄の收得に貢献したいと考えているのであります。
  47. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) それでは本日の委員会はこれで閉会いたします。この次も続行することにいたしたいと思いますが、御異存ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 深川榮左エ門

    委員長深川榮左エ門君) 異議ないと認めます。さよう取計います。それでは散会いたします。    午後零時九分散会  出席者は左の通り。    委員長    深川榮左エ門君    理事      古池 信三君            廣瀬與兵衞君            栗山 良夫君    委員      上原 正吉君            小野 義夫君            小松 正雄君            島   清君            下條 恭兵君            加藤 正人君            山内 卓郎君            山川 良一君            駒井 藤平君            境野 清雄君            西田 隆男君   国務大臣    通商産業大臣  横尾  龍君   政府委員    通商産業政府次    官       首藤 新八君    通商産業鉄鋼    局長      中村辰五郎