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1950-09-27 第8回国会 参議院 通商産業委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年九月二十七日(水曜日)    午後一時五十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○派遣議員報告通商及び産業一般に関する調査の件  (通商産業省関係予算に関する件)   —————————————
  2. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず最初に派遣議員各位視察報告を承わり、次いで通産省当局より明二十六年度予算編成現状について説明を聴き、最後に当面の諸問題に関する緊急質問を行う、大体以上の順序で議事を進めたいと存じます。  それでは当委員会継続予備審査にかかる鉱業法案並びに採石法案に関する視察について東北北海道班の方から御報告を願います。
  3. 島清

    島清君 では委員長の御指名によりまして、本委員会において継続審査中であります鉱業法案及び採石法案につきまして、東北北海道方面現地視察経過概要北海道班を代表致しまして御報告申上げます。  視察日程は八月二十四日に上野発その日に仙台に着きまして、直ちに右の二法案につきまして関係業者との懇談会を開催いたしたのであります。次に秋田に参りまして帝国石油株式会社八橋採油所日本石油株式会社土崎製油所視察後、当該地区関係業者懇談会を開いて同じく右二法案に対する御意見を伺つたわけであります。更に、大平鉱業株式会社尾去沢鉱業所視察いたしたのであります。ここは御承知のごとく銅を中心にその他金・銀・鉛・亜鉛等採掘をやつてるところでございます。続いて硫化鉱採掘を行なつております岩手県の松尾鉱山に参り、ここで東北日程を終り、北海道渡つたのであります。  北海道は先ず函館の近くの上磯にございます日本セメント上磯工場及び、同社所有峩朗石灰石採掘所視察いたしたのであります。上磯から札幌に参りましてここで仙台秋田と同じく関係業界方々懇談会を行い、次いで山川さんの会社砂川炭抗に参上してから、最後山部にございます野沢石綿セメント山部石綿石綿採掘所及びその附属工場視察して十日間にわたる日程を終了したわけでございます。  視察の全日程を通じて関係業界方々には、非常に熱心に、意見を開陳せられ、又論議されたのであります。且つ仙台札幌通産局及び秋田鉱山事務所では視察日程の円滑なる遂行に、万全を期せられたため、所期の効果を十分に挙げることができたのであります。尚私共の視察目的は前に申上げました通り鉱業法案採石法案に関するものでございますが、副次的な收獲として一般鉱業政策に関する要望乃至意見も得て参りましたので、いずれ機会をみて、御報告申し上げたいと存じております。  鉱業法案採石法案に関する現地状況及び意見の見聞したところ、大体次のような点が問題となるのではないかと思われます。  先づ採石法案に関してはあまり意見なく僅に、宮城珪藻土株式会社の佐藤某及び、宮城登米スレート工業協同組合理事長高橋某から本法案については大概結構であるが、同法所管庁である通商産業局長地方公共団体との関係如何との質問がございましたが、通産地方公共団体との関係は、第十條第二項の「採石権設定及び譲受の許可に関し、その土地保安林である場合にのみ、通商産業局長があらかじめ関係都道府県知事協議すべきこと」の規定があるだけでございますので、この点大した問題はないと存じたのでありますが、聞くところによりますと衆議院通産委員会委員が、私共より遅れて当地で懇談会を開催いたしました折には、所管庁都道府県にせよとの要望があつたやに洩れ承わつております。併しこれもよく話合いの上本法案通産局長による監督規定でないという、観点をよく了解して納得した由であります。  鉱業法案に関する問題点は相当ございますのでできるだけ簡單に順次述べてみたいと思います。  その第一は、試掘権存続期間に関するものでございます。これは、各地懇談会及び視察事業所の多くが、問題としておるところでございます。各地意見共通点は本法案第十八條第一項によりますと、試掘権存続期間は登録の日より二年とし、一回限りの延長を二ケ年認めているのでありますが、これを現行法通り四ケ年とし、更にその上二ケ年乃至四ケ年程度延長を認むるごとく改正すべきであるとの意見であります。その理由とするところと具体的な要望を各業種別地域別にみますと、先ずこの説を最も熱心に主張しておりますのは石油関係採油関係であります。帝国石油秋田鉱業所では、従来主として採油対象とされた背斜構造の外に断層封鎖・尖減封鎖等特殊構造対象とするようになり、このような構造調査には相当の長期間を必要とする。更に最近石油資源の探査が、漸次平原地帶に移行する傾向にある。事実私共の見た秋田附近は殆んど全部田畑に「やぐら」を組んで居ります。こうなると重力探鉱による概査と地震探鉱或は放射能探鉱その他による精査を施行して試掘候補地を見出すまでの地質調査期間として二ケ年は先ず見て置かねばならない。次にこの地質調査期間終つてから試掘することになるが、地層の状況・地理的な條件或いは深度等関係から二ケ年以上はどうしても必要である。その上本邦においては石油賦存地帶が主として降雪地帶に偏在するために、地質調査、並びに試掘作業に相当季節的な制約を受けることを考慮すると四ケ年の存続期間は勿論更に二ケ年の延長期間も認めることが望ましいという要望でございました。  この問題につきましては北海道金属鉱山を代表する鉱業会石炭側を代表する石炭協会からも、北海道気候的特殊條件から冬季約六ケ月は寒気と積雪のため試掘作業は困難であり、又これは東北方面鉱山も同様でありますが、多数の試掘鉱区を保有している鉱業権者は資材・資金・技術陣容関係上、短期間即ち二ケ年程度では事実上試掘鉱区開発は不可能である。而も鉱業稼行の実態よりして保護鉱区予備鉱区としての試掘鉱区は相当数必要とされているので、ますます短期間試掘権存続期間現状を無視したものであるというのであります。北海道では四ケ年の存続期間に更に四ケ年の延長を認めるごとく改正すべしとの意見でございました。  尚秋田懇談会において、現行法もそうでありますが、試掘権採掘権が分離し、本法案においては更にその存続期間が短縮されている理由の底には、鉱産税鉱区税等税関係の問題が伏在するのではないかという疑問がございました。この点御参考までに申上げて置きます。  その他、試掘権存続期間の計算について、北海道鉱業会から現行法による存続期間は、本法案施行の日に登録されたもとして計算されたいとの注文でありました。これは本法施行法の問題と思いますが、施行法がまだ提案されておりませんので、同法審議に際し参考意見として、検討すべきではないかと思うのであります。試掘権存続期間にからんで種々なる課題が提起されて居ります。例えば探鉱国営或は探鉱助成金の交付・試掘権先願主義保護優先主義に切り換うべし等の意見でありますがこれは一般鉱業政策或は、本法立案趣旨の問題でありますのでここでは詳細は省略させて頂きます。  鉱業法案に対する第二の要望点採掘権存続期間についてでございます。これにつきましても東北北海道の各方面からの要請であります。即ち本法第十九條第一項には採掘権存続期間が、三十年となつているが、現行法通り期限とされたいというのであります。その理由は、石炭金属を問わず地下埋蔵鉱量採掘事業着手当初、鉱区内の全鉱量を把握して操業するものでなく、事業進行従つて予測しない鉱床が発見せられ、又予想より鉱量が少いことがある。鉱況によつては二年乃至三年で放棄する場合もあり、二・三百年も継続することもある。従つてその存続期間を無期限とし企業者の自由に委すべきで、存続期間を設けることは期間の更新に官庁・業界相互の手続の煩瑣と将来採掘権残存期間迫つたものについては担保価値を減じ融資等も不利になる。更に、企業価値が無くなつたならば放棄するのであるから永久権とはならないということであります。  要望の第三点は土地使用收用に関するものであります。この点に対する業界意見は、北海道金属石炭の各団体から出ていますが、鉱業用地使用收用に関する権限を従来通り通商産業局長に保持せられたいという要望でございます。現行法では他人の土地使用する権利のみを認め、土地所有者請求があつたときに限り、その土地收用できることになつているのを、本法案によれば特定の鉱業上の目的に利用し、その土地の形質を変更し、而もその土地を将来永く鉱業上の目的に供さねばならぬときは、その土地收用できるように規定してあるのでありますが、土地使用收用許可通商産業局長が與える場合、当事者間の協議が不調に終つた際の裁決権限は、本法案第百七條規定により土地收用法規定を受け、土地收用審査会にあるということになる。即ち現行法では、多少の困難があつても、土地使用收用通商産業局長権限で全部処理せられ、比較的順調な解決を行なつていたのであるが、本法案によれば事業の認定を除いては土地收用審査会にその権限が移行されたため、同審査会において、新に調査審議を重ねることになり、そのため問題の処理に必要以上の日時を費し、鉱業権者企業計画支障を来すこととなり合理的開発は困難となる。而も右の審査会は殆んど鉱業関係のない人々を以て構成されておるようでありますので、鉱業権者にとつてはますます不利となるように考えられるのであります。勿論本法案第百八十七條規定にあるごとく、土地收用法規定による裁決若しくは決定に不服のあるものは、内閣直属土地調整委員会の裁定を申請できることになつて居りますが、本法案のみでは土地調整委員会の性格、構成が明確に把握できず、政府では土地調整委員会設置法立案中と聞いておりますので、この法案提出によつて改めて検討すべきではないかと思います。ただこれも仄聞したに過ぎませんが、通産省が本法案立案過程において、業界要望するごとく土地使用收用に関しては現行法のごとく通産局長権限を以て行い鉱業法にすべて規定してあつたそうですが、何故本法案のごとくなつたのか、又本法案規定そのまま適用した場合、運用業界の言明するごとき支障があるのかどうかという点、大いに研究し問題とすべきではないかと思われます。  問題の第四点は、鉱害に関する事項でございます。鉱害につきましては北九州地区のごとき社会的政治的対象となるような事例及びいわゆる金銭賠償か、原状回復かという論議東北北海道にはないようでございました。併し、程度の差こそあれ、又問題の角度こそ異なれ、鉱害につきましての紛争はあるのであります。視察行程中においても大平鉱業尾去沢鉱業所同和鉱業小坂花崗鉱業所をめぐる米代川鉱水問題、松尾鉱山鉱水問題等二件ございました。  詳細に申上げますと長くなりますので極く簡單に触れたいと存じます。米代川の方は尾去沢小坂花崗鉱山を始め多数の小鉱山上流に持つているのでありますが、ここから放流せられる場内水は酸及び鉄分を含んでいるため、米代川流域水田酸性土壌となつて水稻被害を與えているとの農民側申出を右三鉱山は諒として、これに対して、種々対策練つてつたのであります。即ち尾去沢では二十四年度九十七万円、小坂が約百二十万円、花崗が約三百五十万円の金銭賠償を実施した外、尾去沢では石灰中和水路修理灌漑用清水配水等鉱水処理を実施し、小坂花崗も同じく鉱害防止施設清水、灌漑水を供給する施設を整備しているようでございます。これらの諸施設の直接間接費用と煙害に対する賠償も含めて尾去沢では年千二百万円程度鉱害処理費用に計上されておるのであります。小坂花崗もこの程度或はそれ以上の費用を計上しているのではないかと思われます。このため尾去沢附近を流れている米代川上流流域農民は納得している状況にあり、小坂花崗流域農民も納得していると思いますが小坂川と合流して米代本流となるところの流域については未だ問題が残つているようであります。併しこれも三鉱業所金銭賠償鉱害対策施設の完備により解決せられるのではないかと思われます。  松尾鉱山の方はやはり硫酸分を含んだ鉱水北上川上流である赤川に放流されているので、この流域及び北上川流域の一部の水田に対し、金銭賠償を二十三年度には二百四十万町歩に対し二百五十万円程度支拂つて居る外、尾去沢と同じく鉱水処理施設石灰中和等により効果を挙げているのであります。被害者側も大体これで満足しているようでありますが、会社としては金銭賠償を含め、二千五・六百万円が鉱害防止使用されている状況であります。  以上述べた点に、本法案における法文上の直接の問題点にはならないのでありますが、鉱害防止乃至緩和のために計上せられる金額は、会社経理上非常な負担となる上に、法案第百十七條第二項に新たに石炭及び亜炭以外の鉱物について、その価格の百分の一を越えない範囲内において定める額を供託金として、通商産業局長が必要と認めたときは供託を命ずることになつているが、文字通り、これが実施せられることにならば更に経理上の負担が増大し、且つ被害者側損害請求権根拠ともなるので、尾去沢松尾鉱業所を始め、金属鉱業鉱害は掘採量に関係のない排水・鉱煙等であるので実情にそぐわぬ法文として東北鉱業会あたりも反対しているのであります。  尚北海道では石炭側から北海道では鉱害発生事例が少いので除外の特例を設けられたいとの申出もございました。鉱害関係観察各地で反対されましたものに鉱害賠償責任消滅時効の項がございます。法案第百十五條によれば、鉱害賠償責任損害発生の時又は損害進行の止んだ時より二十年で消滅時効にかかることになつているのでありますが、鉱業権存続中の損害についてはともかく、鉱業権消滅の時は消滅の時より十年程度とするのが適当ではないか。何故ならば鉱業権消滅の場合、鉱害進行中のものはやんだ時より二十年とすると実際上長期となり、鉱業権者の所在及び責任等が不明となるからである。又本法案第百十九條により、鉱業権消滅の場合消滅後十年経過して損害が生じない時は、鉱害担保供託金の取戻しができることも併せ考える必要があるというのがその理由であります。  要望の第五点といたしまして、鉱業権出願に対する通商産業局長処理に関するものを挙げたいと存じます。これは東北方面鉱業権者から出ている意見でございます。簡單に申し上げますと次の通りであります。  第一は本法案第二十四條の鉱業権出願に対し都道府県知事との協議に対する回答については、法文上何ら規定はないが、その回答を六十日以内とし、その期間内に申出のない時は格別意見のないものとして処理出来るようにされたい。  第二は、通商産業局長は、鉱業権設定出願若しくはこれに準ずる出願を受理したときは、一ケ年以内に許可又は不許可の処分をするようにされたい。但し重複する出題のあるときはこの限りでない。尚この規定は本法案実施後五ケ年間の猶予期間を設けて貰いたい。  第三には、本法案第二十五條石灰石等採掘権出願に際し、その土地所有者に対し、通商産業局長意見書を提出させる機会を與えねばならぬとあるが、この意見書提出には三十日以内の期間を定め、延期を認めないようにされたい。  第四には、鉱業権設定出願地に一部重複して同種鉱物出願があつた後、その出願と他の部分において重複する増区出願をしたときは互に優先権のない部分を不許可できる規定を設けられたい。  第五点として、本法案第六十一條の鉱業権の表示の変更に対し、通商産業局長が一方的に変更するごとく規定されているが、これに鉱業権者が異議の申立のできるようにされたい。  第六は、図面又は書面の修正命令設計書、或は施業案の提出期限に対し、止むを得ざる場合の外延期を認めぬこととし、これを認める場合も一回限りとされたい。  尚北海道石炭側から、法案第六十二條第一項の事業着手の義務を六ケ月としてあるのを一年以内とし、同條第二項、第三項の認可制届出制にされたいとの要望がございました。前者は、北海道季節的事情により、鉱業権設定期日如何によつて事業著手が不可能である場合が生ずる。後者は、事業の未着手及び休止は止むを得ざる事由のため生ずる場合が多いので之に対し認可制をとることは妥当でないということがそれぞれの理由でございます。ついでに申し上げますが、法案第四條第二項の石炭鉱区の最近面積規定は、現行法第九條第二項の五万坪相当の十五ヘクタールで別に不便がないから、この面積を三〇ヘクタールに引上げる必要はないと申し出ております。  以上の外北海道鉱業会帝国石油株式会社日本セメント上磯工場で各業種特殊性により開陳せられた意見、及び視察の結果、問題と思われる点を取上げてみたいと存じます。  先ず北海道鉱業会では、砂鉱という名称を法案第三條追加鉱物の項に使用せず、適用鉱物によつて砂鉱床を掘採せしめるよう統一させ、その際には当然砂白金属法定鉱物に追加されたいという意見がありました。尚追加鉱物としてボーキサイドも取上げられたいということも出ております。これは砂鉱とその他の鉱種区別鉱床による区別であるが、鉱床賦存の情況より、鉱種名を変じ、鉱業権を異にする必要はないのであつて、鉱脈、鉱床沖積鉱床とは容易に判断し難い場合があるため、北海道でも紛議を起した例もあるので、両者操業支障を来たすのみならず、合理的開発もできないこともあるので、同一人に掘採せしめるのが妥当ではないかという意図から出たものと存じます。  次に帝国石油秋田鉱業所から、法文には直接関係がないかも知れないと思いますが、石油鉱業特殊慣行である稼行用地借地に伴ういわゆる地元歩油を廃止して貰いたいという希望がございます。この地元歩油は御存じの方もあるかも知れませんが、正常なる借地料の外に、その借他より産出する原油量に応ずる定率の支出がございます。これが地元歩油というのだそうでありますが、これはもともと町内祭礼酒肴料のごときものであつたのが、永年の慣行上生産に応ずる歩率を生じて現在に至つているようであります。前に述べた通り秋田あたりでも原油採掘場は田地の中にあり、他の採掘場平原にある関係上、この地元歩油農民側で強硬に要求している現状にある。地元歩油支拂は私共の視察した八橋のみで、四月十七万円、五月十九万円、六月十八万円、七月十六万円となつており、最近一年間帝国石油の各油田別に百六十二万五千円支拂つている状態にある。これは法律的にも支拂根拠のあるものでなく、又会社経理の面からいつても大きな負担となつているので、法的に何らか当該制度廃止を謳つて貰えないかというのであります。この点に関しては、種々現地でも論議がありましたが解決は相当困難のようでございました。  最後日本セメント上磯工場視察の際、問題となりました各点について申上げます。第一に、この上磯工場セメント工場石灰石山を持つているのでありますが、同一系統の工場一貫経営でありながら、セメント工場の方は労働基準法適用を受けるが、石灰石山鉱山保安法適用を受けるのでありますが業者としては保安法適用を歓迎しております。併し工場との関係基準法と二重監督になりますが、その運用よろしきを得るやの問題、第二に本法案施行法の問題と思いますが、本法施行後の鉱業権出願の際の処理、取扱の問題、第三に追加鉱物に関する鉱産税鉱区税事業税附加価値税等いわゆる税制の問題等がございました。この諸点についても大いに研究の要があるのではないかと思います。  以上極く簡單視察概況について御報告申上げましたが、各地要望意見等については鉱業権者のみのものであり、利害相反する側の意見を聴取する機会日程の都合により持たなかつたので、或いは一方的な見聞になつたかも知れませんが、東北北海道方面には、それ程紛争も起つていないようでありますので、この程度が実質的な意見でないかとも思われます。
  4. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 同件に関する福岡班の御報告をお願いいたします。上原委員
  5. 上原正吉

    上原正吉君 九州班を代表いたしまして視察概要九州班を代表して御報告申上げます。  現地小松議員が参加してくれましたし、又吉田議員も專門家であるという見地から参加してこの視察にお手伝いを頂きました。懇談会福岡市、大牟田市、飯塚市の三市で開催いたしました。いずれも炭業中心地でございますので、参会の各業者並びに鉱害被害者、並びに通商産業局の職員の方々、いずれも熱心に論議を続けられました。法案に対しまする研究もよく行届いておるということを痛感いたしました。視察の地は三池、三井田川三菱新入日炭高松炭坑、この炭鉱と船尾の産業セメント工場石灰石採掘状況視察いたしました。鉱害地といたしましては三池の附近井草忠隈附近、二瀬町、飯塚市内目尾附近新入附近、これらを視察いたしました。折からキジア台風の通過後でございました。陷没の水田は満々と水をたたえておるというような惨害を目のあたり見ることができました。それからこれは直接の関係はないかとも思いまするが、日本化成の瀬板の貯水地問題に関しまして、日本化成貯水地、それから日本炭礦高松炭坑に入坑致しましてその採掘状況とを視察いたしました。日本化成の瀬板貯水池問題につきましては、何れ後の委員会なり何等かの機会に充分御検討を御願し、その節詳しく申上げたいと思いまして、今日の処は御報告を省略させて頂きたいと思います。尚これは法案関係はございませんが、八幡の製鉄所とそれから三井化学工業会社工場とを視察いたしました。各地懇談会におきまして熱心な意見が開陳されましたがこれを順次御報告申上げたいと思います。  先ず法案の第三條に関しまして、法案によりますと採鉱が独立の鉱物となつておりまするが、これを例えば金鉱といえば砂金を含む、このように改めて欲しい、こういう要望がございました。又法案によりますると、第三條第二項に、「廃鉱又は鉱さいであつて土地と附合しているものは、鉱物とみなす。」こういうようになつておりますが、これではボタ山鉱物とみなされる虞れがある。尚第五條の「同種鉱床」という言葉がございまするが、これは意味が不明確であるから誤解がないような言葉に改めて欲しい。例えば石炭層附近耐火粘土同種鉱床に属するかどうかというような疑問が起り得て又混乱が生じ得る、このような意見でございました。第十四條につきましては、鉱区面積が三十ヘクタールを下ることができないと法案にありますが、これは現行が五万坪であつて一向に不自由がないので、やはり現行通り五万坪として頂くことが適当であろう、このような要望がございました。又第十八條につきましては、試掘権存続期間が短きに過ぎる。存続期間現行通り四年にして又延長期限も四年にして欲しい。又誠実に探鉱を続けておつたということが証明されるなれば、延長の回数を一回限りとすることなく何回でもこれを認め、て欲しい。こういう要望かございました。尚試掘権者が誠掘権の期間満了後に採掘権出願した場合には、これに優先権を與えて欲しい、こういう要望がございました。第十九條の法案に関しましては、採掘権存続期間が三十年とあるが、これは現行通り期限にして貰いたい。尚十九條第五項に「産業利益を損じ」とあるが、この「利益を損じ」を「著しく利益を損じ」と改めて欲しい、そして非常な利益損害がなければ、採掘権が許されるということを明らかにして欲しい、こういう要望がございました。尚二十二條に関しまして、第二項の鉱害予想云々という言葉がございます。併し鉱害予想することが非常に困難であるからこれは削除して欲とい、こういう要望がございました。二十四條に関しましては、鉱業権設定いたしますように関係都道府県知事協議するという定めになつておりまするが、協議の整わなかつた場合の裁定方法が欠けている、こういう意見がございます、尚協議を待つていると許可が遅れるから、関係都道府県知事意見を徴するという程度で止めて欲しい、こういう要望業者側からございました。尚参会の市町村長の方々からは、鉱業権設定並びに延長に関しては、地元の市町村とも協議して欲しいという要望がございました。尚三十五條の「利益を損じ」も同様「利益を著しく損じ」というふうに改めて欲しいという要望がございました。五十五條に関しましては、いろいろと鉱業権の取消を行い得る事項が列挙してあるのでございまするが、この中に鉱区税の納入を怠つた場合を加える、この場合にも鉱業権を取消し得ることに定めて欲しい、こういう要望がございました。尚六十二條に六ケ月以内に採掘着手しろという定めになつておりますのを、一ケ年以内と改めて欲しい。尚三項の採取を休止いたしまするには都道府県知事の認可がいるという定めでありまするのを、これを單に届出をすればよろしいということに改めて欲しい、こういうことに要望がございました。尚六十二條の中にありまする事業という言葉の意味を広義に解釈いたしまして、測量等も事業の開始のうちに入れて欲しい、測量を開始いたしましたならば、即ち事業を開始したものと認めて欲しい、こういう要望がございました。七十七條に関しましては、租鉱権を設定する場合にも、関係都道府県知事協議をする必要があることに定めて欲しい、こういう要望がございました。八十八條以下四章全体に関しましては、これは戰時の統制経済的色彩が非常に濃い官庁の企業官署を廃して、業者の自主制を尊重するために、この第四章は削除すべきであるという意見が開陳せられました。百四條に関とましては「採掘作業のため」とございまするのを、探鉱試掘、採掘作業のためと改めて欲しい。尚「機械設備」とあるを機械その他の設備と範囲を拡張して欲しいと、こういう要望がございました。百五條に関しましては收用し得る場合の範囲を百四條同様に探鉱、試掘、採掘作業のため、又は機械その他の設備をするために收用し得るよう改めて欲しいと、こういう要望がございました。第百六條の二項に関しましては、知事と協議をすることは必要がなかろうという意見が開陳されました。第百八條に関しまして、水の收用が定めてありまするが、この水の收用に水表面の收用並びに漁業権をも收用し得るように拡張して欲しいという要望がございました。第百九條に関しましては、租鉱区における鉱害は、租鉱権者と鉱業権者とが、連帶して賠償の責に任じなければならないと、このように責任の範囲を拡張して欲しいという要望がございました。百十一條に関しまして、賠償は金銭を以てすることを原則とせよという意見と、原状を回復することを以て原則とせよという意見と激しく対立いたしておりました。尚鉱害に関しましては、單に鉱業権者の責任だけでは十分に賠償の責は果し得ないことが多いから、国家も賠償の責任を分担すべきであるという意見が強力に述べられました。そのために鉱害復旧法というような独立の立法を望むと、こういう声が非常に強いものがございました。尚第百十二條の二項は削除せよという議論がございました。第百十三條に関しまして、鉱区の地表に建造物その他の施設をするものは予め鉱業権者協議すべきもめと定めて欲しい、これを怠つた場合には本條で定める斟酌をすることができることに定めて欲しい、こういう要望が可なり強いものがありました。第百十四條に関しましては、本法施行以前の契約による打切補償にも本法適用して法律上の権威を與えて欲しい、こういう意見がございまして、これには被害者側は強い反対を表明いたしました。第百十五條に関しまして時効の期限が二十ケ年とあるのを長過ぎるから十ヶ年に改めて欲しい、こういう要望がございました。百十七條に関しましては、第二項に定めてありまする鉱害の担保供託、この金額を二十円とあるのを十二円五十銭ぐらいに引下げて欲しいという要望がございました。両第百十七條の三項は無用であるという意見がございました。更に特別鉱害賠償責任を負担しておる間は、その鉱区供託の義務の負わせることを免除されたいと、こういう要望がございました。百六十七條に関しましては、地方鉱害賠償基準協議会の委員には地元の人も入れて欲しい、尚少くとも学識経験者を参加せしむべきであるというこういう意見が強力に述べられました。  更にこれは法案にございませんが、法案に追加して欲しいという希望がありました。それは不毛になつ土地、もはや收穫の皆無となつ土地は、鉱業権者の希望によつて打切補償ができるように法律的な根拠を與えて欲しいと、こういう要望でございました。  以上が鉱業法に関する現地側の意見の大要でございます。  採石法に関しましては各地におきまして殆んど議論がございませんでした。僅かに採石権設定に際しましては、通商産業局長は知事と協議をする必要があるということを定めて欲しい、今一つ石材等の採取によつて損害が生じた場合には、これを賠償せしむるの規定を設けて欲しい、この二点が開陳せられただけでございました。  以上九州班各地を巡歴いたしまして親しく現地業者又は住民の方々から伺つた意見の大要でございます。これを以ちまして私の報告を終ります。
  6. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 次に近畿班でございますが、これは只今の報告のあつた両班とは内容が異なつておるのでありますが、鉱業法案についても特に中京地区で現地調査をして頂くようにお願いした関係もございますので、この機会に御報告を願いたいと思います。
  7. 境野清雄

    ○境野清雄君 加藤委員と私が視察に派遣せられました関西方面状況報告いたします。  日程は九月十一日から十七日まで一週間でありまして、視察地は名古屋、一ノ宮、大阪、神戸、滋賀の東洋レーヨン、福井でありまして、目的鉱業法案に関する意見聴取、商品取引所法案の施行状況並びに通商産業一般に関する諸問題に関してでございます。各地視察状況を要約いたしまして鉱業法案に関する問題、商品取引所法案に関すること、中小企業に関する件、貿易に関する件、災害に関する件、この五項目に分けて御報告いたしたいと思います。  第一に鉱業法案に関する件について御報告申上げます。先ず継続審査になつておりまする鉱業法案採石法案に関して名古屋の通商局管内の意見を徴しましたが、大体におきまして原案に賛成する者は多いのでありますが、耐火粘土業者には若干の注目すべき反対論があつたのであります。それは今回の法案において耐火粘土法定鉱物に追加されるわけでありまするが、この追加に関する反対なのであります。業者といたしましては多治見の組合と最近では三重県伊賀の組合も反対しておるということであります。業者理由とするところは主として経済上から来るものでありまして、法定鉱物になりますと鉱山保安法によつて律せられることになり保安上の諸施設が必要になつて来る。これは現在では労働基準局の要求する設備で足りるのでありまして、そういう面から行きましても諸施設が余分になつて来るというような一つの議論なのであります。次に法定鉱物になりますと、鉱区税鉱産税とを納付しなければならない。鉱産税はそれだけ事業税を減ずることになりますけれども、鉱区税の方だけは増税されることになる。第三番目には法定鉱物になりますと、官庁関係の書類は増加する虞れがある。業者も多くは小規模なのでありまして、第一項の保安施設と共に書類の多いことは中小企業をして大企業に比しまして不利益な立場に立たせるものである。こういうのが業者の反対意見なのであります。業者以外の反対者といたしましては、多治見の市長、土岐津町長、笠原町の助役が挙げられるのでありますが、理由は主としまして次の二つなのであります。その一は治山治水の点からであります。法定鉱物なつたために土地所有者でない者が採掘に当ることが予想されますが、その場合従前よりも濫掘となる弊があるのじやないか。その第二といたしましては、財政上の理由からいたしまして公有の山地を貸して採掘しておりますが、これが法定鉱物となりまして鉱業権設定して採掘が行われるような場合は、市町村の財政收入が減少することが懸念される。以上が耐火粘土法定鉱物追加に対する主なる反対論でありますが、これらの反対論の多数が小規模経営なる点は特に注目されなければならない。天規模も小規模も同一の法令によつて律しようとするところに無理があるのじやないかというようなことが考えられるのであります。この点は特に研究する必要があると共に、今後右の法案審査に当りまして、公聴会を開催するような場合には、右の反対論者の意見をも聴取すべきではないかというように考えるのであります。  次に商品取引所の施行に関する問題であります。商品取引所法は御承知の通り、前回の国会におきまして成立したところの法律でありまして、八月五日に公布せられ同二十日から施行せられておるのでありますが、右の施行を業界一般は如何に迎えておるかということを調査することも今回の派遣目的の一つであつたのであります。商品取引所法は一般に非常に観迎されているように見受けられたのであります。併し我々の会つた者が多く当事者でありますから、その他の者からも取引所法の施行を不可とする者が全くないということから見まして、現在商品取引所を開設することは決して時期を失したものではなかつたというようなことが考えられるのであります。商品取引所ができることによりまして、商品価格の真の位置を知ることができ、生産者は「つなぎ」取引を利用することによりまして価格の激変による不利益をカバーし得ることになつたわけであります。取引所を開設すべき時期に際会していたという事実を立証するものといたしまして次のことが言えると思うのであります。  その第一は、取引所類似の取引が各地で盛んに行われておることであります。即ち福井、大阪の人絹の「仲間取引」いわゆる「オツパ」のごとき、又神戸におきまするゴムの「仲間取引」のごときがそれであると思うのであります。併しながらこれらは取引関係も限られておりよく市場の空気を反映しているとは言えないのでありまして、却つて暴騰暴落の原因を作ることがあるということが考えられるのであります。取引所が開設されますれば、かかる取引の大部分が取引所に移行されまして需要も供給も全部が一ケ所に会して取引することになりますから、これら「仲間取引」に伴う弊害を除くということができるというふうに考えたのであります。  取引所法が観迎されている理由の第二番目は、現行法で指定されておりまする九品目以外にも是非とも上場したいという物件がすでに考えられているということであると思うが、これは小樽、函館で雑穀、海産物を上場する取引所を設けたいという陳情はすでに前国会でも見られたのでありますが、名古屋で毛織物、福井で人絹織物を上場できるようにいたしたいと言つておりますことはこの機運を端的に示すものと言えます。従つて各地における取引所の設立状況は頗る円滑でありまして、大阪の化繊におきましては十月十日頃、他は名古屋の繊維取引所、大阪の三品、神戸のゴム、福井の人絹はいずれも十一月には開設の運びに至るような状況と見て参つたのであります。併しながら商品取引所の将来について、全然懸念がないかといえば必ずしもそうではないと思うのであります。その最も大きな脅威となつたものは、前回の当委員会でも問題になつたところの暴利取締に関する政府の態度であります。たまたま我々の視察中に暴利取締に関する経済調査庁の強硬な措置が問題となつてつたのであります。商品取引所の決定する価格と暴利との関係如何業者の関心の的となつてつたのであります。暴利の何たるやについて議論することはここに避けたいと思うのでありますが、商品取引所を開設するからには商品の公正なる価格の決定は挙げて取引所に一任すべきであると思うのであります。若し価格統制を再び行おうとするならば取引所の機能は全く抹殺されるのでありまして、取引所関係者が、これを憂えておるのは当然であります。業者の多くは暴利という名目の下に価格を抑えても、騰貴する価格はこれを抑えきれるものでないのであります。むしろ需給の面において考慮すべきでありまして、表面的な価格を抑えることは本末を顛倒した措置であるという者が多いのであります。併し綿糸布については暴利取締の実施と共に若干の値下りを見たのでありますが、これは偶然の一致でありまして、暴利取締を行わなくともすでに値は下るべき大勢にあつたと考えられるのであります。決して暴利取締の効果のみではないといつておるのであります。むしろ暴利取締が海外に喧伝されて、日本の相場下落を故意に予想せしめ、そのために切角の買気配を頓挫せしめたという結果を来たしたと嘆いておりました。幸いに政府も物価再統制は行わない旨、再三声明しておるのでありますが、業界も又これに期待しておる状況であります。  然らば取引所法に関しては何らの不満もないかというに瑣末の点で二、三の改正意見があつたのであります。その一は取引税との関係であります。その二は会員の預託する会員信認金の有価証償について、証券取引所に上場されていない証券は如何に確実なものでもこれを許さないというのは不便であるというような意向か多かつたのであります。これらはすでに法案審議の際にも問題となつたのでありますが、今後更に研究を重ねて行く必要があると思うのであります。その三は貿易の自由、殊に輸入の完全なる自由が望ましいということでありまして、これなくしては取引所は完全にならないというような意見があつたのであります。  次に第三の問題といたしまして、中小企業に関する問題を申上げます。中小企業に関しましては一ノ宮と大阪と福井において観察し、各地業者意見を聞く機会を持つたのでありますが、その困難性は大部分が大企業との関連において生じつつあるという点で注目すべきでありますが、その二、三を述べますと第一に金融難は依然として強い。彼らの陳情と意見とを聞いて見ると、現在の金融業者には中小企業のよさを発見する能力と努力が足りないという感が深いのであります。従つて政府は金融業者に対して、中小企業の健全なるものを発見するための努力を勧めると共に、金融業者が安んじて中小企業者に資金を流し得るところの條件を備えてやるように努力しなければならんと思います。即ち国家補償による中小金融、或いは中小企業信用保険制の実施等が考慮されなければならないと思うのであります。  第二に協同組合助成についての陳情が名古屋及び一ノ宮で聞かれたのでございます。協同組合の多くは従来の統制組合の因習から脱し切れず到る所で経営不振のようであります。中小企業庁においても漸く最近に至りまして協同組合課を新設したのでありますから、一段の努力を望む次第であります。尚組合は加入脱退が全く自由なる原則を持つておるのでありまして、この原則がありまするためにたとえ組合が自発的に企業の濫設をみずから抑え、無暴なる競争によつて共倒れになることを防ごうといたしましても、加入脱退の自由は組合の企図を行い得ないようにしてしまうことを指摘しなければならないのであります。これは一ノ宮の毛織組合で強く主張されておつたのでありまして、事業団体法との関連の下に、今後研究すべき重要課題であるというふうに考えておるのであります。  第三は大企業との関連において中小企業が置かれておる不利益でありまして、中小企業の多くは第一次加工部門たる大企業の製品を原料として第二次加工を施すものが多いのであります。例えば一ノ宮の毛織物、福井の人絹織物、大阪のメリヤスのごときものがそれぞれ大企業たる紡績、人絹会社からその製品たる糸を受入れて織物やメリヤスにするのでありますが、この場合若し大企業の採算が有利な場合はなかなか原料糸を廻し呉れないということになります。大企業の下請となるか、然らずんば大企業の臨時余剰の原料だけを購入して加工するという不利益な立場に置かれ勝ちなのであります。中小企業者が団結して大企業に交渉するか、或いはみずから資本を集めて組合の力で原料部門の経営を行うかというようなことが一応考えられるのでありますけれども、それは決して容易にできることではないと思うのであります。大企業との関連を如何に調整するかは依然として大問題たるを失わないのであります。この関係はゴム会社の原料たる綿糸布についても同じであります。輸出がよいために内需に廻る綿布が少いことを訴えておつたのであります。  第四番目に、貿易に関する事情を聴取したのであります。貿易につきましては先にも述べましたように、輸入の自由が強く要望されておつたのであります。輸入が為替統制の影響を受けて円滑に運ばず、そのために買入の時機を失して高い仕入をするということは国としても非常に損であるとの声が聞かれたのであります。  次に対等貿易への希望があります。占領下で対等貿易を主張することは無理かも知れませんが、外国の輸入税について見ても日本は依然として敵国の扱いを受け、甚だしいのはシリア、レバノン等におきましては日本は西ドイツ、イタリヤの二倍の輸入税を課せられておるという話も聞いたのであります。又クレームにも業者は相当困つておるのであります。クレームも必ずしも正当なるクレームのみではないのであります。従つて小貿易業者は貿易組合のようなものを結成いたしまして、クレームに対して相互補償する制度を作り、国家が再補償するごとき制度の生まれることを望んでおつたように見受けられたのであります。  輸入税については、染色関係者から高級染料の無税輸入が主張され、又一ノ宮毛織染色業者から公団の手持染料のために高級染料の輸入が手控えられるとの噂があるけれども、輸出品の重要原料であるからその措置を誤らないようにとの陳情がありました。東洋レーヨンにおきましては、将来の輸出産業としての化繊工業保護論と共に、重要産業の保護を関税によるべきか、生産奨励金によるべきか大いに考慮すべき点であるのであります。  雑貨、殊に名古屋の陶磁器業者の希望として注目すべきは、貿易協定に際してしばしば雑貨が協定品目の中に入れられない危險があるから注意して欲しいということ、更に陶磁器のごとき重要貨物につきましては是非とも日本船による安い運賃が必要であるから日本船による運搬に関し当局の一段の努力を望む旨が述べられたのであります。  最後に災害に関しての報告を申上げます。我々の旅行中キジア台風の進路如何が毎日心配されておつたのでありますが、キジア台風は幸いに我々の視察地へは襲来しなかつたのであります。併し京阪神並びに福井におきまするその前のジエン台風による被害が著しいのであります。そうしてその報告を聞いたのでありますが、出発前に大阪工業会から書面で和歌山県知事から電報でいずれも委員長宛に、台風被害が激しいから復旧融資その他について格別の助力を望む旨の陳情が来ておつたのでありますが、現地において見聞したところは相当な被害があつたように見受けて参つたのであります。大阪通産局調査によつて九月九日現在までに判明いたしました被害状況は鉱工業のみで百五十三億、これが復旧に要する資金は設備資金百六億、運転資金九十六億、合計二百一億という厖大な額を要するというような状況であります。今回の災害で特に注目すべきは阪神の海岸地帶でありまして、ここに約二メートルの高潮が襲来して工場、倉庫等を潮浸しにしたことであります。高潮を防ぐための防潮壁のある工場は極めて少く、そのためにたとい防潮壁はあつても地下からの湧水を汲み出さねばならん状況であつた。かくのごとく高潮の襲来することは地面の沈下したことも一因であつて、必ずしも不用意なる立地選定によるとはいえないらしいのであります。この際高潮の危險地帶から工場を他に移転することも考えらますが、又海岸地帶に防潮壁を築くことも考えるべきであろうと思うのであります。もとよりその費用は企業のみのよくなし得るところではないのでありまして、日本全体としての災害対策の重要なる一環として復旧対策に遺漏なきことをお願いしたいと存ずるのであります。  以上私共の視察して参りました報告概要でありまするが、各地におきまするところの要望事項はそれぞれ妥当なるものと私共も考えておつたのでありまして、政府におきましても又本委員会におきましてもこういう問題に関しまして格段のお力添えを願いまして、要望事項の貫徹するように御助力を賜わりたいと存ずるのであります。以上甚だ簡單でありますが私の報告を終ります。
  8. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 以上で視察報告は終つたのでありますが、特に鉱業法、採石法の両法案につきましては今後の法案審議上有力な資料となり、当委員会においても十分活用されることと存じますが、この際重要な問題点について御質疑がございましたらば政府関係者も御出席になつておりますので簡單質問をして頂きたいと存じます。何か御質問ございませんか…。なければ次は予算の説明に移りたいと思います。   —————————————
  9. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 官房庁の永山時雄さんから予算の説明をして頂きます。
  10. 永山時雄

    ○説明員(永山時雄君) それではこれから通産省の来年度の予算の関係を概略御説明いたしたいと存じます。お手許に配付いたしました資料によつて御説明をいたします。  前年度との比較という欄を御覧頂きますと、二十五年度通産省の一般会計の予算といたしまして四十三億、それから公益事業委員会が三千四百万円、合せて四十三億四千四百万円というのが二十五年度予算のトータルでありますが、それに対しままして二十六年度におきましては八十億、結局御覧になりまするようにノミナルには約三十六億というものが殖えておるのであります。ただこの内容には若干の喰違いがございましてそれを整理をいたしますと、先ず二十五年度の予算の中には、例の輸出信用保険特別会計の繰入金として五億円というものが含まれております。又一方二十六年度の関係には、貿易特別会計の来年度は廃止をするという関係でそれに伴う経費が二十八億入つておりまして、而もこれらはいずれも臨時的なものなのでそれぞれ控除することといたしまして、この公正な比較ができるのであります。そういたしますと二十六年度が五十一億七千九百万円、それから二十五年度が三十八億四千四百万円、結局差引いたしまして十三億三千万円というものがネツトの状態になるわけであります。それで通産省の予算の要求といたしましては、先ず貿易の振興ということが一つの重点だと思います。それから技術振興という問題がやはり一つの重点だと思います。それから中小企業の振興という点が第三の重点であります。それから第四といたしまして資源開発に重点を置き、更に当面いたします企業の合理化という問題を第五の重点にいたしまして、この五つの項目につきまして特に重点を置いて来年度予算の要求案を編成をいたしたのでありますが、そのトータルの要求額が全部突込みまして約二百四十億というものを要求をいたしたのでございますが、結局御覧頂きましたようにそれが八十億ネツトにいたしますと約五十億ということに相成つたのであります。それで十三億の増加をいたしました内容は、貿易振興で一億一千万円、それから技術振興で五億一千万円、中小企業で一億二千万円、それから機械設備の更新対策といたしまして六億円、電源開発一億円、並びに一般会計の雑件では一億円程減少をいたしまして結局絞りました結果十三億という恰好になるのでございますが、それを若干内訳をいたしましたものが第二ページにあります。  で先程申上げました大体五つの重点を持つてつたのでございますが、第一の貿易の振興対策におきましては二十五年度の予算が六千六百万円というのに対しまして、来年度が一億七千九百万円、約一億八千万円という程度に増加をいたしたのでございます。増加の内容は、主なものといたしましては海外市場調査会、これは本年度千五百万円計上いたしまして更に来年度三千万円を注ぎ込んで行く。イギリスのジエトロ、ブリテツシユ・エキスポーター・リサーチ、オーガニゼーシヨンという海外の輸出市場の調査機関がイギリスにあつて相当強力に活動いたしておるのでございます。それにならいまして日本式のジエトロを作つて行こうという意味でそれに対する補助金でございます。それから殖えました第二の主なるものは、海外博覧会、或いは展示会、それの開催費の補助金でございます。昨年の六百六十万円に対しまして本年度は四千万円という可なり増加を見たのでございます。これは本年度六百六十万円の金額では、すでにパキスタン、インド等開催をしつつあり、或いは予定しておるというものにつきましても足りませんので、移流用によりまして二千万円程この関係の経費に注込んでおるのでございます。来年度はそれが四千万円ということで、これは輸出振興のために非常に貢献をするということを申上げます。それから第三には総トータルということで載つておりますが、特にこの中で主なものといたしましては在外事務所、御承知のようにすでにニユーヨーク或いはロスアンゼルスというようなところにできておりますし、或いは今後逐時在外事務所ができるのでございますが、そういうところに陳列室を作りまして日本の商品の見本品を展示しようというのでございます。この陳列室その他の施設費につきましては、これは外務省の所管になるのでございますが、通産省といたしましては国内でその見本品の買上をする、或いは現地に送るというような関係の経費を計上する建前になつておりまして、この一億九百万円の中にその金額が入つておるのであります。それから第二の技術振興でございますが、これは昨年が十億八千万円に対しまして、約五億程増加いたしました十五億九千万円という来年度の予算になつております。内容の主要なものといたしましては、試験研究部門の整備拡充で八億六千万円が九億になつておる。これは試験研究機関、いろいろ通産省の工業技術庁その他この所属の関係にございますが、これの設備がすでに大分老朽をしておりまして、修理をしなければならないもの、或いは更新をしなければならないもの、沢山に抱えておるのでございますが、こういうものを更新をして行こう或いは修理して行こうというような点、それから従来人件費に対しまして研究費が非常に不足をいたしておりまして、そのために十分に一人々々の研究技術者の能率が発揮できていない、活用されていないという実情に照しまして、研究費の増加を図るというような内容で、ここに出ておりますような増加になつておるのでございます。それから民間試験研究の補助といたしまして、ここに四つほど工業化の試験の補助、鉱工業の技術研究の補助、自転車工業の研究補助、或いは自動車工業の研究補助というふうなものがございますが、工業化試験の補助はこれはすでに一応の研究を終つたものにつきましてそれの工業化をする場合の補助金でございますが、今年度ここにございますように一億円あつたのでございます。ところが実際の申請は約二十二億でございますか非常に多額の申請がございまして、何といたしましても嚴選に嚴選を重ねましても一億では足らないというので折衝の結果二億五千万円まで増加を認められた、査定を受けたのでございます。それから鉱工業の技術研究補助、これは工業化の一歩手前の比較的それに比べるとやや基礎的な研究費に対する補助でございますが、これも従来の研究奨励金が非常に申請に対しまして不足をいたしておりますのでこれも若干増加をいたしました。特にこれは文部省の関係に従来含まれておりました補助金を通産省の工業技術庁の方に移管をいたしましてその関係の増加も入つておるのでございます。それから自転車工業の補助、これは例の競輪関係の国庫收入の三分の一を自転車関係の経費に当てるという建前で予算を編成いたしまして、その一部がここに計上されておるのでございます。自動車工業の研究補助もやはり自動車競走の関係の收入を見込みましてその一部をここに計上したというものでございます。  それから中小企業関係につきましては、昨年一億七千三百万円というのが二億九千五百万円ということに、これ又若干の増加をいたしておるのでございますが、特に増加をいたしましたものは中小企業の共同施設費の補助、昨年一億円のものが本年度二億円になりました。特に昨年の中小企業の共同施設費補助の一億円のうちには、競輪関係の收入で自転車関係の共同施設費の補助七千万円を含んでおりまして、従つて自由に使い得る金は僅かに昨年の一億円のうちの三千万円に過ぎなかつたのでございますが、本年度におきましてはこれを増加をいたしましては二億円、この中で自転車関係のものは一千万円、従つて残り一億九千万円のものが自由に中小企業のために使い得るということで、これは中小企業の振興のために相当裨益するところがあるというように考えておるのでございます。それから第二は、中小企業の指導、助成、調査等の補助或いは委託費、これは主として地方庁関係の事務費の補助、或いは指導所、相談所、そういうものの補助になるのでございまして、この関係で御覧頂きますように約一千万円強増加しておるという内容でございます。それから中小企業の信用保険を次の臨時国会、或いは臨時国会が開かれない場合、最近の通常国会というものに提出をしたいというように考えておりますが、この関係の出資金、来年度といたしまして十億円、更に本年度分は補正予算に盛ろうとして大蔵省と現在交渉中でございますが、大体五億円を補正予算として計上するということにいたしておるのでございます。  それから次は合理化の問題といたしまして特に代表的なものがここに載つておるのでございますが、機械設備更新対策六億円、これは御承知のように、戰時戰後を通じて非常に民間の工場の機械設備が老朽をし、或いは外国に比べて非常に遅れて来ておるということで、この機械設備を更新して産業の近代化を行うということがこの際非常に大事な問題でありまして、特に合理化の中心をなすものであるとかように存じまして、機械設備更新対策として六億円の計上をいたしたのでございます。日本の産業の近代化をやるというのに対して僅かに六億円ということは、いささかさびしい金額である嫌いがあるのでございますが、ともかく来年度僅かながらもこういう金額を計上いたしましてできるだけ早期に出発をするということで、この予算の査定を受けたのでございます。  尚ここにも載つておりますが、資源関係といたしましては、公益事業委員会の中に電源開発調査費というのが一億円計上してございますが、特にこの資源開発の中でも電源開発というものに新しく重点を置きまして、只見川とか或いは熊野川とかいろいろ問題となつております、そういう大きな対象になつておりますものにつきましても、只見川につきましてはほんの一通り調査が行われておる、熊野川については殆んど調査が行われていないというような現状に照しまして、一億円この関係の計上をいたしまして電源開発に資して行きたいというように考えたのでございます。この外に尚資源開発といたしましては、石炭の埋蔵量調査の経費、それから非鉄金属探鉱奨励金の経費というようなものがそれぞれ計上されておりますが、これは昨年度と殆んど大同小異の金額でございまして、従つて特にここに計上することを避けたのでございます。  以上申上げたような内容で、来年度の予算が一応査定を受けてまとまつておるのでございますが、人間の関係は表には落ちておりますが、今二十五年度の予算定員は御承知のように六月、九月、それから十二月というふうに段々と減らして参りまして、来年の一月一日現在では通産省の一般会計、特別会計全部突込みで約一万八千八百人というのが予算の定員となつておるのでございますが、二十六年度の予算におきましてはそれが一万七千六百九十名で差引千百五十名の減員ということになつております。この減少の主たるところは物資関係の局が仕事の縮少につれまして減少して参つたということも主たる原因でございます。大体千百五十人の減少というのが人員に関する大体の数字でございます。  以上を以ちまして大体通産省関係の予算の説明を一応終ることにいたします。
  11. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 何か御質問ございませんか。
  12. 境野清雄

    ○境野清雄君 この前大体この予算が決まる前に、約二百億以上の通産省から内訳を聽いたのでありますが、今日見ますと八十億くらいに削られている。八十億と二百四十億からでは三分の一でありますから、三分の一でここに重要事項一覧にありますものの中で、特に前に通産省自体が見ておつたものからこれだけに減らされたのではなかなか困難だというようなものがあるか、或いは又この項目に上がつていないもので、前の二百四十億のときにはいろいろ項目もあつたようでありますがそういうようなものに関して、通産省自体としてこの予算のものでは非常に困るというような問題がどこかにあるかどうかということをお聽聴きしたいと思います。
  13. 永山時雄

    ○説明員(永山時雄君) 御承知のまあ予算の関係のことでございますので、従つてこれは多少の弾力性といいますかそういう問題がそこにあるのでございますが、只今御説明いたしました予算では、私共も当初の要求に比べまして非常に削減をされておるものが多い関係からいたしまして、当初考えておりましたような仕事ができないという点も若干ございますが、現状からいたしますと先ず通産省だけで百%希望を達成するということも困難であるというような関係から、一応これで止むを得ないということに考えておるのでございますが、例えば貿易振興の関係におきましては当初の要求、先程境野議員からお話がありました二百四十億の中で、貿易振興といたしましては七億ばかりの要求になつておるのでございます。それが一億七千九百万円ということで、例えばそれをもう少し具体的にいいますとジエトロ、海外市場調査会というのが五千万円がここに出ておりますような三千万円に削減されているということで、これは仕事が仕事でありますから絶対に三千万円ではできないという性質のものではございませんで、ただ我々がもつと広い活動と豊富な調査とを期待をしておりましたものが、その点が必ずしも当初考えていた程には十分に行かないということになるのでございまして、これは一例でございますが、その他も大体こういうような大同小異の関係で金額が少しずつ減つておるというのでございます。ただ大きい問題として落ちましたのは鉄鋼関係で、二百四十億の予算の要求当時に我々が期待をいたしておりました鉄関係の約二十億というものが入つておるのでございます。屑鉄回收が十六億でございます。それからコーライト、コークス用の補助として約五億ばかり、合せて約二十一億というものが入つてつたのでございまして、これは鉄に関する何といいますか考え方というものが従来の考え方と若干方向を異にして参りまして、特にこの鉄に関する予算の編成をいたしました当時は、朝鮮事変発生以来の特に鉄鋼業の当面いたしておりますような状況を必ずしも十分に頭に入れておりませんで、従来の補給金の継続されるそうした姿を頭に入れて要求を出したものでございまして、従つて補給金も一方においてこれは経済安定本部の方の予算でありますが、補給金が一方において解消されると同時に屑鉄関係につきましてもこの屑鉄の現在の価格政策というものを更に再転換をいたしまして、この屑鉄回收補助というものを落して行くという結果になつたものであります。これらはむしろ何といいますか考え方の相違、方針の若干の相違ということによつて落ちたものであります。  それから二百四十億の予算のうちにはこれは通産省関係のものを全部寄せ集めたものでございまして、例えば通産省関係の公共事業費約三十七億というものを含めておつたのでございますが、これは予算の整理上は外の省の公共事業費一本として安定本部の方に入るのでございまして、従つて、この関係は安定本部の方の関係の予算に含まれておるということになつておるのでございます。そういう関係の移動が相当この中に入つておるのでございます。  それから更に大きな違いは機械設備更新対策でございますが、これは二百四十億予算の当時は六十億、只今説明いたしました金額の十倍を要求いたしておつたのでございますが、これが著しく減つたというような関係で只今御説明申上げたような姿になつたのであります。
  14. 境野清雄

    ○境野清雄君 今の問題の中であれですか、競輪が廃止されたという場合に、この予算に対して影響がどういうふうにあるかお分りだつたら御説明願いたいと思います。
  15. 永山時雄

    ○説明員(永山時雄君) 競輪の関係は先程御説明申上げましたように、国庫收入の三分の一をこの自転車関係に使うということで通信省の予算に計上されております。これは技術研究とか、貿易振興とか、中小企業とかいろいろな所に項目的には分れておるのでありますが、それを集計をいたしますと約四億二千万円このうちに入つております。従つて当て込んでおりました来年度の競輪の関係の收入が落ちますれば四億二千万円が落ちる、こういうことになろうかと思うのであります。
  16. 結城安次

    ○結城安次君 続いて今のに関連しておりまするが、自動車の方の收入が二億円入つております。これは小型自動車競争をやつて見てそれだけの收入がなかつた場合にはやはりこれだけ入りますかということ。それからその次に機械設備更新対策という六億円でありますが、これはどういうふうな方法でお使いになるのかということ。それから雑件で二十五年度は二十九億八千八百万円である。それが今度は五十一億一千四百万円、二十二億殖えておるのですが、これはどういう点で殖えておるのだかこれだけを御説明願います。
  17. 永山時雄

    ○説明員(永山時雄君) 第一の御質問の自動車関係の経費でございますが、これは私が先程境野委員に対してお答えをいたしました点が若干不正確でございますので、両方の点を合せてお答をすることになろうと思いますからさよう御了承願いたいと思いますが、一応自転車関係、自動車関係、競輪なり参或いは自動車競争の收入をそれぞれ見込みまして、そうしてその経費として通産省の予算に支出を計上いたしておるのでございますが、ただこれは特別会計ではございませんので、従つて收入が落ちましても当然にはこれが落ちることにならない、かように考えておるのでございます。従いまして自動車関係につきましても一応この程度の経費は使い得るということに予定はしておりますが、これが更に收入が増加することもありましようし、減少することもあろうと思いますが、それに拘わりなく一応使い得るということに御解釈を願いたいと思います。  それから第二の機械更新対策の問題でございますが、これは特に私の方としては当初予定をいたしておりました金額が非常に削減をされましたので、重要な産業石炭関係その他或いは鉄の関係、そういうようなものを特にピツク・アツプいたしまして、そうしてその関係の近代化を講じて行く、例えば機械を輸入して据付けるというようなものに対しまして、それに何分の一、三分の一なり何なりを補助して行くというような恰好で特にこれを重点的に使つて行くということに運用をして参りたいとかように考えております。  それから雑件の関係が御指摘のように非常に増加をいたしておるのでございますが、これは貿易特別会計が今年度限りで廃止をされまして、その貿易特別会計は来年度清算過程に入るのでございますが、その関係の支出をここに計上いたしておるのでございます。それがその五十一億の中に二十八億入つておるのでございます。例えば鉱工品公団の清算に伴う損失の問題とか、或いは更に貿易特別会計の人間をこちらの一般会計へ振替をいたしております。それの人件費を含んでおるというような内容であります。
  18. 結城安次

    ○結城安次君 只今の御説明なんですが機械設備更新対策、この六億円の中には輸入したものの或る部分を補助するのだという御説明ですが、これは内地の現在便つくおるものを更新する、或いは内地でできる新たな機械を入れるというようなところには補助するのですか、しないのですか。又それから補助も産業の種別で予めこれとこれとこの産業には補助するが、それ以外に補助しないと決まるのか、或いは今後の申請によつて審査の上決めて行くか、その点をお伺いしたい。  それから只今のお話では、雑件の中には鉱工品公団云々とありますが、表の第一頁には一般会計予算には貿易特別会計廃止に伴う経費二十一億二千六百万円が含まれておるというのですが、これは貿易特別会計だけでなく通産省の主管する各種の公団全部含めて、それで大体或る種の公団、これはいわば公団は一つの営業機関ですが、それを廃止するというときに損が出るということは想像し得ざることで、一般的にはそれがこういうふうに出るのか、各種の公団が皆損しておるのかどうか、或いは貿易公団が損しておるのか、その点をちよつと。
  19. 永山時雄

    ○説明員(永山時雄君) お答えをいたしますが、第一の御質問の機械設備更新の問題でございますが、これは何分にも我々の方の当初の雄大なる規模のものがかように査定を受けましたので、従つてこれの査定を受けた金額をどういうふうに使うかという点については更にもう一度研究をいたしたいと思います。かように考えておりまして只今その研究を進めておるのでございますが、大体の只今までの極くざつとした考え方では、試験用といたしまして外国から機械を購入する分についてはそういう試験や、実用の試験に一応試みに入れるというもの対しまして補助をする。それから国産のものにつきましては、現在の設備を更新するというものに対しまして補助をして参りたいというように考えております。それから業種でございますが、これも只今申上げましたように、まだ金額が大幅に減りますのではつきりしたことは申上げかねますが、先程申上げしましたように、主要な業種をピック・アップするというような考え方で参りたいと存ずるのでありますが、炭鉱関係それから化学関係、或いは鉄鉱関係、そういうようなところを主眼にいたしまして、ただ繊維だとか、或いはその他の雑貨の関係につきましてもとよりその中に重要なものもございましようと存じますが、そういうものは更に今後研究して拾い上げて行きたいというように存じております。  それから二十八億ばかりの貿特の関係の損失経費の計上の問題でございますが、これは貿易特別会計の公団は、現在では繊維貿易公団、鉱工品貿易公団の二つでございます。繊維貿易公団については黒字が出るのでございますが、鉱工品公団につきましては昔見込み輸出で作りました当時のものがそのまま捌けずに、極力これは民間に売捌かれておりますが而もなかなか売れないで困つているような品物もあるのでございまして、そういうようなものの始末をするとか、それから、更に風水害先般のジエーン台風その他の災害で大阪方面で若干の被害を受けた、そういうような関係の支出も当然含まれておるのでありまして、これは計上の仕方が貿易特別会計を全部搾つてその欠を損失として計上するというやり方ではございませんで、損失は損失として一応経費に立てる。従つて一方において貿易特別会計から繊維公団その他の利益が相当一般会計に入つておりますから、その関係の差額をここに計上しておるというやり方ではないのでございますからその点もお含みを願います。
  20. 結城安次

    ○結城安次君 分りました。
  21. 境野清雄

    ○境野清雄君 この予算の問題ではやはり相当重要だしこれは又後日もう一遍ゆつくり聴きたい問題だと思いますが、次回にでも又これを取上げてよく御説明を聴いたり又質問したいと思うのですが、今日はまあこの辺でこの問題を打切つて頂いても結構ですがどうでしような。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  22. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 御異議がございませんければ更に緊急質問に移ります。
  23. 島清

    島清君 私はこの際幸い大臣も見えられましたので、この何といいますか新鉄鋼政策といいますか、そういう問題についてお聴きしたいと思いまするが、思いまするに朝鮮事件を契機といたしまして大きく変貌しつつありまする世界経済の現段階と、これの関連する我が国産業の推移について、当委員会としては絶えず検討を進めて行かねばならんと思うのでございまするが、問題は極めて広汎であり又繊維関係については過般の委員会で暴利取締の運営に絡らんで一応触れられたことでございまするので、本日は問題を鉄鋼、金属などに限定をして大臣に所見を質したいと思つております。  先ずその第一点といたしまして鉄鋼価格の見通しについてでございまするが、政府は朝鮮事件勃発後の去る第八国会においては事件の我が国産業に及ぼしまする影響を低く評価し、特別の価格対策などを取らぬことを極力主張されたのでありまするが、世界経済の実態は吉田内閣の当時の見通しと大分異なつて、世界を挙げての準戰時態勢といいまするか、再軍備気構えから軍需関係商品は勿論のことでございまするが、そうでない商品まで一齊高となり、それは一面においては足踏みでありました我が輸出産業に一種の刺戟を與えたことは事実でございまするが、反面又輸入原料の入手難などとなり、原料高となりまして我が国産業の今後の新しい問題を提起しておることは隠れもないところの事実でございます。そこで新聞で拝見をいたしますると、鉄鋼の補給金が何か池田大蔵大臣によつて拒否されたように伝えられておるのでありまするが、事件以来の鉄鋼価格の推移、今後の予想、特需及び輸出を含んだ現在及び今後の需給の見通しについて大臣から御説明願えば幸いだと思います。
  24. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) 鉄鋼補給金についてのお話でありまするが、最初我我も鉄鋼に対しての補給金を或る程度お願いしたいと思つて最初二十一億何がしの予算を組んたのであります。これは一トン当り第一四半期において千九百何がし、第二四半期においてその半額というので組んだのでありますが、この金額が過少であり又鉄鋼の生産の上昇によると相当に補給金としては少くなるのであります。再度あります際にも、その次にもいろいろと討議を重ねまして約百億くらいなものを頂戴する方が最もよくはないかというような考えでいろいろな案を立てて見ましたが、御存じの通り、本年度の我が国の経済が非常に窮迫と申しましては如何でございましようけれども、予算が削られる関係上そのことも考えられず、最後の段階におきまして再要求に対する政府の持駒が至つて少くて、予算編成に非常なる支障を来したことは新聞で御覧の通りでございます。一面鉄鋼、銑鉄又は鋼材などの価格につきましては御存じの通り逐次上昇したのであります。私の覚えにおいては現在において、普通銅二万五六千円程度、そうして特殊材においては三万二、三千円程度でなかろうかと思つております。でこれに対しまして補給金が我々が最後に出しましたる予算の場合を引用いたしましても、鉄材に対して大した効果がないのであります。一方只今申上げましたような財政上の関係上、私はむしろこれを刻下の困難なる財政を尚その上に困難にするよりも何かこれに代る方法を持つていくことはできないのかということを考えたのでございます。御存じの通り補給金制度の生産業というものは、自由に任せておきまするものよりも進歩改善が一歩遅れることは御存じの通りだと思います。私は生産に従事しておるものといたしまして、何としても自由競争によらざれば生産コストの引下げは遅れる、できないとは申しません遅れると思うのであります。幸いに朝鮮事変で需要を増し一般の鋼材の需要を増した今日に、多少の困難はあると雖も、補給金をとりましても又我々が考えておりましたぐらいに補給金をとりましたといたしましても、これくらいなことはそれに及ばないと雖も、それに近いまでに生産の合理化或いは又その他の方法によつて経営の合理化もありましようし、或いは運賃コストの合理化を考え得るのでありますから、国家財政に非常なる難点を與えるよりも業者として努力し、そうして努力する方面に当局としては援助することがよかないかというので、私は最後の段階において大蔵大臣の申したのに賛成したのであります。  それならばお前はどういう案をもつているかということでありますが、私は鉄鋼メーカーではありませんので詳しいことは分りませんけれども、まだまだ我々はいい原料をそうしてこれに加うるのに油等を、業者の欲する量だけをやることができたならば、私は或る程度のコストの切下げはできやせんかと思うのであります。一面平炉業者に対しましては或る程度のいろいろの面について不安の点があるかのように考えまするので、在来の輸入しておりまする銑鉄の量を増すことを考えたのでございます。この銑鉄の量を増しますことは、在来悪い銑鉄で作つておりまするところの製品がいい銑鉄を輸入する、率直に申上げますれば我々が使つておりましたコツパー・コンテントの多いものを使うよりもそれの少いものを使いますならば、製品の品位も上り歩止りもよくなるというので私は銑鉄の補給金をとつたことは非常な苦痛でありまするけれども、併し一面堪え得ないようなものじやないじやないかというような考えをもつのであります。私といたしましては業者のために銑鉄の補給金のあることを望むのは同様であります。併し先刻も申上げまするように、いろいろの事業にいろいろの資金も要りまするこの際、たとえて見ますると公共事業費のごとき利根川の氾濫もあるしその他いろいろの風水害もありまする際でありまするから、私はそういう方に廻されることに対してそれをこちらに貰うということに対しては忍びないことだつたので私はそれに賛成したのであります。どうか私の賛成いたしましたことも事情をよく御了察願えますならば甚だ幸いでございます。
  25. 島清

    島清君 どうも只今大臣の御答弁を承わりまして、大変意外に思うのですが、それは大臣は去る第八国会において又当委員会の席上鉄鋼中心とか、産業合理化委員会の答申案の実現に努力するということを縷々言明されておられる。只今のお話を全く喰違いますので私たちはどうも呆然たらざるを得ないわけですが、そこで大臣の食言といいますが、大臣の政治的な責任といいまするか、それは日を改めて違いがあれば追及しなければならんと思うのですが、それはさておきまして、そういつたような一連の助成政策というものが雲散霧消した今日におきまして、一体鉄鋼の価格はどういう工合にはね上り、又はね上つて来るということは、火を見るより明らかであります。それが関連産業に如何なる影響をもたらすと思うか、その点について御説明を煩わしたいと思います。
  26. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) 私が鉄鋼答申に対しまして努力いたしますということも、單に補給金ということばかりでないのでありまするから、その点は御了承願います。鉄鋼、銑鉄の値上りに対していくらぐらいな影響があるかということでありまするが、これは或る程度の補給金がなくなつたので上昇するということは先刻も申上げた通りであります。併しこれによつて製品の価格も多少上りつつありますので、世界水準の鉄鋼の生産までには尚まだ価格はいろいろありましようけれども、併し堪え得ないことじや私はなかろうとこう考えております。詳しき数字は鉄鋼局長から説明をさせますが、私はそう大して影響はないと申上げると、大しての程度でございまするが、併しこれを今申上げますと、公共費、その他一連のことを考えまするならば、我々、我々と言つては失礼でありますが、生産業に従事する人は多少苦痛でありましようけれども、尚残された部面において御努力を願うことが私は望ましいと思うのであります。
  27. 島清

    島清君 まあ大体大臣のお考えというものは大凡見当がつかんわけでもないのですが、質問を申上げたついでにもう一ぺんだけお聞きしておきたいのは、この補給金で銑鉄の補給金乃至助成金が撤廃されまするその統制と関連をいたしまして、統制解除の問題についてでございますが、明年度からおつしやるように銑鉄の補給金が廃止されることになりますると、従来の補給金の廃止の例から見まして、銑鉄の統制が廃止されるだろうということは当然に考えられるわけなんです。で政府はこれについてどういうような考えと方針を以てそれに臨んでおられるか、これをちよつと明らかにして頂きたい。
  28. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) 今の価格統制は撤廃になりますが、配給統制はすべきものとこう考えます。
  29. 島清

    島清君 大臣の只今までの後答弁では補給金が撤廃になつても鉄製品というものが値上りをしないのだというような御見解のようでございまするが、私達はそうは考えない。当然に補給金が撤廃をされまして統制が外されますと、恐らくはこれは自由党さんのお考えでありまして、統制を撤廃して手放しの自由主義に還元させるというお考えのようでございますが、そうしますとやはり鉄鋼製品というものは基本産業でございまして、当然にこれは値上りを来たして参りまして、又世界の客観情勢からいたしましてもさようでございまするから、当然にこれは私達国民生活の上にはね返つて来ると思うのです。例えば国内の資材にいたしましてもスクラツプ等が非常に枯渇いたしておりますし、更に海外からの鉄鉱石の輸入等も非常に困難を来たして来るのじやないかと思うのです。そでそういつたような客観情勢の下に補給金を撤廃し統制を外しました場合に、大臣は、繰返して申上げますが、国民生活にそうさした影響は持たないような御答弁でございますが、そういつたような情勢の下に、日本の再建に必要とするところの鉄鋼製品といいますか、何といいますか、そういうものが生産可能であるとお考えであるかどうか。例を造船の問題にとつて考えましても、通商産業省は只今の予算の説明にもございましたように、貿易の振興ということを謳つておられますけれども、併しながら貿易の振興をするには只今のところ外国船に依存をして来ておる。我々は国内において造船業を盛にしなければなりませんが銑鉄等の値上りによつて造船業に対して非常なる支障を来たして来る。そういたしましたならば外国船のチャーターもちよつと困難でありますが、そういたしますと貿易の振興というものを謳つて見たところで、こういつたところの基礎産業の方でまずくなりますと、この貿易振興等も室念仏に終るのじやないか。こういうふうに懸念されるのですが、ですからそういつたような助成金の撤廃によりまして、統制を外すことによりまして、私達は諸物価の値上りというようなことは当然に考えられて来るのですが、見解の相違とおつしやればそれきりかも知れませんが、もう一段と詳しく一つ見通しとその対策というようなものをお洩らし願いたいと思うのです。
  30. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) いろいろとお話御尤もな点もありますが、船のことにつきましては甚だ失礼でありますが、私專門屋でございますが、銑鉄の補給金よりも鋼材の補給金が必要だと思います。併しこれは御存じの通り船舶だけに補給金をつけるということは一般産業に非常なる影響があると思うのです。これに対しましては、私はその外の産業に対しても金利の引下げを非常に要望するものであります。故に私はこの鉄鋼や特殊材の補給金の代りに当局に是非これは見返資金並びに市中金融の金利を下げて貰いたいということを要望しておるのであります。幸いに大蔵大臣もそれには賛成なさつて、大蔵大臣自身も閣議でこれの代りにはこういう金利のことは努力するということを言つておられますので、それで私も多少の補給ができる。こういうように思うのであります。  重ねて申上げますことは、補給金をとることを喜ぶものではなく、併し財政と見比べまして再要求が、要求に応じられることが少くて、再要求する額が多く、殊に公共事業費の要求に対して非常なる難関に到着した際でありまするので、私はこの方を忍んだのであります。その点の消息を御了承願いますならば、多少の御不満はありましようけれども、上らんということではなく上ることは事実であるから申上げるのでありまして、決して上ることを喜ぶものでないということを御了承願います。
  31. 島清

    島清君 どうも話は元へ戻るようでございますが、それでは大臣或いは鉄鋼局長からでもよろしうございます。この鉄鋼価格の推移、並びに今後の予想といつたようなものについてちよつと御説明を煩わしたいと思います。
  32. 中村辰五郎

    ○説明員(中村辰五郎君) 銑鉄補給金全廃の場合におきますいわゆるコストから見た価格の上昇と国際価格の動きとを合せて申上げますが、朝鮮事変を契機といたします日本自体の鉄鋼輸出価格の推移、並びにこれに伴いましてアメリカが鉄鋼に対します輸出の何と申しますか制限的な措置、鉄鋼の受注の集中化というような関連がございまして、日本の鉄鋼の輸出価格が著しく上昇して参つたような事情でございまして、その数字を概略申上げますと、産業合理化審議会の鉄鋼部会で審議しておりました頃は、最も世界的に強い自由市場として有名でございますベルギーの価格が最も安かつた国際価格と考えてよろしいのじやないかと思います。これが輸出価格FOBで五十六ドルからそれをちよつと上廻る程度が実情でございました。当時の日本の鉄鋼の輸出の採算点と申しまするのは、捧鋼で申上げまして大体七十五ドル前後と考えられる次第であります。ところがその後におきます上昇は著しく海外の国際価格は上りまして、ベルギーの捧鋼の輸出価格が、九月一日の状況を見ますとこれが八十ドルに上昇いたしております。その後アメリカの国内の鉄の状況も相当何と申しますか緊張いたしておりまして、相当大幅の増産計画を立てなければならんような情勢でございまして、これが又日本の鉄鋼に対しますいろいろの需要が喚起されまして、最近におきます日本の棒鋼の輸出価格はFOBで八十五ドル程度に達しております。工場渡しが概ね八十ドル見当でございます。こういつた情勢の変化を一面考えますと、今後の国際価格の上昇がどの程度であるかということは、一面これは一つの見通しでございまして、後から考えますと或いは間違つているかというような問題も考えられるのでありまするが、大体銑鉄の補給金を全廃いたしましたときの銑鉄の価格が概ね四十五、六ドル程度になるかと考えるのであります。この四十五、六ドルと申しますのは一面国内原料或いは輸入原料の値上りを織込んで見通した価格でございまして、この銑鉄の上にできます捧鋼の価格を考えますと大体九十五ドルから百ドルを下る線が一つの見通しと考えます。勿論この価格の中にもスクラップの価格上昇を織込んでおります。こういつたような結論を国際価格の上昇価格から考えますと、銑鉄補給金を撤廃いたしますことは必ずしも一種の冒險とのみ言い切れないのじやなかろうかと思うのであります。  尚日本の鉄鋼業も勿論脆弱な点もございまするが、御質問にもございました海外原材料の入手状況を考えまして、例えば鉄鉱石について相当問題があるのじやなかろうかという御説明でございますが、特に日本の鉄工業のために幸いいたしております海外鉄鉱石で、フイリツピンの鉄鉱石の増産が極めて急速なる発展をいたしております。この鉄鉱石の増産傾向は今後におきます日本の鉄鋼業の重要なソースとして、国内の鉄鋼業の裏付けとなることは現に明らかな情勢でございます。他の地域におきます鉄鉱石の問題もございますが、最も安全と考えますこの地域の鉄鉱石が極めて著しい進歩、拡充をいたしておる事実は、先程の質問にもございました鉄鉱石の問題に対して、或る明るい見通しを立てて然るべきものではなかろうかと思うのであります。  石炭の入手の問題でございますが、これは先般開らん炭の百万トンの輸入契約ができまして、これが来年度どの程度に処置できるかという問題でございますが、今日までの開らんの出炭状況の推移からいたしまして、少くも百四十万トンの供給は可能かと思うのであります。他面又極く最近のアメリカ炭の輸入問題に関連いたしまして、極めて少量ではございまするが、十五万トンの英炭の輸入が始まつておるのであります。ただ石炭につきましてはその米炭に限らず、他の地域からの輸入の操作もあるのでございまして、この点に対しましても私達は決して明るい見通しはないというような印象を持ち得ないのでございます。  次にこれらの海外の原材料の入手の見通しからいたしまして、本年度下期、来年度初めにかけまして、国内の銑鉄の増産対策を逐次進めて参りたいと思うのでありまして、今日まで日本政府部内でまとまりました計画の一部を申上げますならば、十月の十七日に釜石の熔鉱炉に火入れする予定にいたしております。次に日本鋼管の鶴見の熔鉱炉を遅くも一月の上旬に火入れをいたす予定になつております。これに引続きまして、目下司令部との間に賠償関係の交渉を続けておりまするが、小倉製鋼の所属の鉱炉を遅くも二月の上旬に入れる予定にいたしておりまして、その後の稼働の予定の準備を進めております鉱炉は、大体四乃至、五つ程現に準備を整えつつございます。これに対しまする稼働の時期については、原材料の入手の状況を判断して概ね二ケ月乃至三ケ月の予告期間を以ちまして稼働の時期を明示いたす方針でございます。  これらの計画が進みまするならば、今日特需或いは輸出或いは内需の相当大幅の需要喚起に対しまして、銑鉄の面からいたしまする計画は概ね十分になし得られるのではなかろうかと考えるのであります。と同時にこういつた国際情勢でございまするので、鉄源の確保という点から考えまして、銑鉄の輸入を極力増進して参り、銑鉄補給金が外れまして銑鉄価格が相当上りまするならば、海外の銑鉄の輸入も又でき得るのじやなかろうかという見通しを持つておるのであります。そういうような状況判断からいたしまして、この銑鉄補給金の撤廃が、大臣の御答弁の中にございましたように、真の企業の合理化と申しますか、そういう方面に対する努力が相当高度化いたすのではなかろうか。同時に銑鉄補給金の廃止を前提といたしまして、各社の自己資本の充実という点が特に顯著に相成つて参るのではないかと思うのであります。こういつた鉄工鋼業自体の自立のためにいたします自己蓄積の線の努力いうことは、この国家助成費の廃止に伴いまする大きなプラスと考えるのでありまして、私は今日まで鉄鋼補給金の数年間に亘ります直接の利益というものも、これは評価して評価し盡せない大きな要素たと思うのでありますが、鉄鋼の操業度が三百五十万トンを上廻り、第四四半期には一四半期百万トンのべースにも達せんかという状況下におきましては、経営者の創意と努力ということに政策の重点を置く点が我我の最も重要な点ではなかろうかと思うのでございまして、そういう意味合から国際的に見ますれば、相当の脆弱な点を持つ工業ではございますが、今日のような国際状況下において、鉄の自立性に拍車をかけるということは必要じやなかろうかと思うのであります。  炭素製鋼の観点に一言触れまして、日本の鉄鋼業が国際的に遅れております主要なポイントは、製鋼圧延の部門にあることは広く知られておるのでございますが、これに対しまする施設といたしまして、鉄鋼局は平炉メーカーに対しましては全般的に炭素製鋼の方式を採用するよう勧めております。その計画は概ね二十六年度の上半期には相当の主要メーカーの採用するところとなろうかと思うのでありますが、これが一画スクラップの節約に役立つと同時に、コストの切下けには相当の効果を発揮することは現に研究済みでございまして、こういつた面の措置が並行して参りますならば、先程大臣も御説明下さいましたように、全体の鉄鋼のコストの引下げという方向にも十分なる効果を現わして参ると考えられるのであります。
  33. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) 先刻申上げました配給統制を止めたいと申しましたのは、銑鉄それから釜石の鉄を今後値しますことによつて、止めるとしましても需給状況を勘案いたしまして決定すべきものとこういうふうに御解釈願いたいと思います。
  34. 島清

    島清君 それでは私はこの私の質問を要約いたしまして、結論としてやつぱりこの関連産業に重大な影響を及ぼすものである、延いては又私は予算にも関係を及ぼして来るのじやないか。そういうことについては日を改めてお聞きしたいと思うのですが、この補給金を撤廃することによつて多少の影響はあるだろうけれども、その影響というものは金利の引下げによつて勘案して行きたい、そうして業者産業の合理化によつてこれの影響を防止して行きたいと、この二点にしか鉄鋼政策というものは今のところお持合せがないというふうに了解していいのですか。
  35. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) この鉄鋼対策といたしましては、補給金ということは先刻申上げました通りに、これにはやつぱり産業の合理化ということが一番必要じやないかと思います。これにはまだまだ我々考えますのに無駄な費用が各所にあるということで、そういうことを総合いたしましてこれを助成して行きたい。又技術の向上を図るならば、先刻申上げますように油を使つて見たり酸素を使つて見たりすることによつて、又或いは配合の関係もありましようし、或いは石炭の焚き方もありましようし、いろいろの点におきまして私はまだまだ残されたる合理化の点があると考えております。かように御了承願います。
  36. 島清

    島清君 思いまするに大変産業に及ぼします影響というものは、私は甚大であると思いまするので後日この質問をいたしたいと思つておりますけれども、何か私に與えられた時間というものはないようでございまするからして今日はこの辺で打切りたいと思います。
  37. 境野清雄

    ○境野清雄君 日頃私が質問しようと思いました問題は、纖維局長が今日見えられないので一点だけ大臣の所管を一つ承わりたいと思うのであります。と申しますのは化学纖維の特に合成纖維の問題なのでありますが、合成纖維が御承知の通り第一期計画としては今年の三月三十一日現在で日産五トン、来年の二十六年の三月三十一日までに日産二十トンにして、そして海外にまで進出したいというような意向があるやに承わつておるのでありまして、特にこの合成纖維に関しましてはイタリーなり或いはドイツなりでも相当研究されておる。こういうようなことを勘案いたしますと、大体におきまして東洋市場というものが若しイタリーなりドイツなりに先鞭をつけられますと、日本の商品というものが東洋市場に出て行くことが非常に困難になるじやないかというようなことを考えておりまするとき、たまたま倉敷レーヨンにいたしましても、或いは東洋レーヨンにいたしましても、その増設をする工場の資金というようなものに相当難点がありまして、今日私先般来聽きましてもまだ遅々として進んでおらないような形になつておる。併し日本の産業といたしまして是非合成纖維というものに対しては通産省としても相当なる力添をして貰いたい。こういうふうに考えておりますので、この資金の面に関しまして従来やつております倉絹なり或いは東洋レーヨンなりというものが息ずくように、こういう点に関して一つ通産大臣として今後御援助なり或いはこれに対して相当の関心をお持ちになつておるかいなかという点だけ一つ簡單にお伺いしたい。  それからもう一つの問題は、私過般関西を廻りまして痛感いたしました暴利取締令の問題でありまして、これは所管が違いますので大臣に申上げることはどうかと思いますが、暴利取締令か余り強化されておりまするために、日本の国内の価格はやがて下るのではないかというような観点からいたしまして、海外の発註といろものが一時止つたというような形になつておりますので、この暴利取締に関しまして通産省自体は今後どういうような考えを持つておるか。この二点に対して簡單にお伺いしたいと思います。
  38. 横尾龍

    ○国務大臣(横尾龍君) 合成纖維の問題に対しましてはいろいろ問題があるようでございます。又いろいろと計画もなされておるように聞いております。資金の問題に対しましては御存じの通りいろいろの方面で資金難が叫ばれておりますので、各業種に対して通産省といたしましては御援助したいと考えておりますが、何分資金は枯渇しておりますので出来得るならば見返資金を流用することを大蔵当局と話を進めたいと思います。  それから暴利取締の件でございますが、これはもはや御存じの通りの状態になりました。従つて只今のお話の通り今後値下りをしはせんかというので、貿易に非常に影響しておるということも聞いております。これは必ずしも非常に貿易を阻害してまで、或いは又多少の値上りを暴利なりというような観点から見ないで、彈力性のある取締をして行きたいと考えております。
  39. 境野清雄

    ○境野清雄君 只今の話で金融問題に対して通産省として御援助願うということを聞いて大変有難く感謝をする次第であります。先般東洋レーヨンでは見返資金四億がつかえてなかなか出ないので、大臣の手許に相当陳情なりなんなりが来ておられると思いますが、こういう点に対しましては是非格段の御援助を願いたいと思います。尚暴利取締に関しましても、何か私共聞くところによりますと、通産省当局と物価庁の間が感情問題になつて物価庁が強くなつておるというような話も聞いておつたのでありますが、そういうことがあるないは別問題といたしまして、物価庁との連絡をスムースにして頂き、是非業界のために最も効果のあるような手を打つて頂きたい。これを私の方からお願いいたします。
  40. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 他に御質問ございませんか。
  41. 境野清雄

    ○境野清雄君 染料関係の方お見えになつておりますか。
  42. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 化学局の有機課長が来ております。
  43. 境野清雄

    ○境野清雄君 大体染料の問題に関して質問したいと思います。何か染料に関しましては公団の手許の染料が非常に多く、極端に言いますと三十年間日本で使え得る染料があるから新しく輸入することは禁止するというようなお話がありました。尤も輸出に必要な染めをするようなものに、各染料工場でも逼迫を告げておるような状態であつても、尚且つ輸入は禁止されておるというような話を聽いておつたのでありますが、その点に関してどのような形に相成つておるかを御説明願いたい。又同時に染料の関税についてどんなお考えを持つておるか、合せて公団の手持である染料はどういうような処置方針を採るのか、現在におきまして何か拂い下げその他をやつておるようでありますけれども、拂い下げ自体に使えないような悪いものも加味されて入つて来るというような話も聽いておりますので、そういうような問題に関して、簡單で結構でありますが化学局の方から御説明を願いたいと思います。
  44. 入江明

    ○説明員(入江明君) 御説明申上げます。公団の手持の染料は非常に高くなつたように申されておりますが、総数量を申上げますと約九百トンばかりでございます。染料の月間の生産量はトータルで六百トン乃至八百トンぐらいの間を上下いたしておるのでありまして、数量から申上げますとそれ程大きなものではございません。ただ御承知のように染料にはいろいろ種類がございまして、その中の或る種のものは極めて少量しか使わないので何年分とあるかも知れませんが、総体的に見てそういうような状況でございます。この九百トンの公団在庫のうち七百トンばかり買つて、日本の染料の生産が落ちておるときに、緊急必要であるとして輸入したものがずれて入つて来たもので国産対抗品はございます。残りの百五十トンばかりは国産対抗品がないのでございます。この国産対抗品があるものにつきましては取敢えず品質の悪いものもございますので、手直しをして出すということの必要上一応メーカーに入札をいたさせまして、その結果といたしましては約百五十トンばかり落札されて、残りはそのままになつております。国産対抗品のない百五十トンばかりのものにつきましては、オープン・ビツドの手を打つて落札させたんでございますが僅かに一トンしか落札いたしません。これらを合せまして最近の機会において全部オープン・ビツドにいたしまして処分いたす。それまでは輸入染料と申しますものは、特別に優先外資その他によるもの以外は一応差控えておりますが、このビツドが終りましたら又輸入することになつております。
  45. 境野清雄

    ○境野清雄君 そうしますと、輸入を禁止されておるということはなくて、現在の手持のものを処分した後においては、優先外貨なりなんなりの方法によつて輸入すると、こういうふうに解釈してよろしうございますか。
  46. 入江明

    ○説明員(入江明君) さようでございます。
  47. 境野清雄

    ○境野清雄君 染料の関税はどういうふうにお考えですか。
  48. 入江明

    ○説明員(入江明君) 染料の関税につきましては目下いろいろ折衝中でございますけれども、大体の方針といたしましては、昭和十年乃至十五年頃、即ち戰争の影響をそれほど受けなかつた時代、この時代の関税は従量税であつたわけであります、このときの相場と勘案いたしまして、非常に種類によりまして率が違うのでございますが、安い方のものは一五%、高い方は四〇%ぐらいの率になつております。そこで私共の考えといたしましては、特に国内用生産が少く且つ輸出向けに使われます建染染料を除きまして、一律に二五%の関税をかけております。建染染料だけは当時のやはり従量税から推しまして大体一五%程度を適当と認めまして現在建染染料は一五%、その他のものは二五%という線で大蔵省と折衝中でございます。
  49. 境野清雄

    ○境野清雄君 九百トンありました中で入札済のものは百五十トンで、現在の残りというものは七百五十トンというふうに解釈してよろしうございますか。
  50. 入江明

    ○説明員(入江明君) 九百トンのうち国産対抗品のある七百五十トンは先般ビツドした結果落札したわけでございます。国産対抗品のないものは百五十トンばかりで先般ビツドした結果僅か一トンしか落ちておりません。こういう状況でございます。
  51. 境野清雄

    ○境野清雄君 経理部長さんは見えているのですか。
  52. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) 来ています。
  53. 境野清雄

    ○境野清雄君 来ておりましたら、前に御説明願つた輸出金融金庫法案が何かその後変つて来ているというお話を聞いているのですが、それに対して簡單で結構ですが御説明を願いたいと思います。
  54. 石井由太郎

    ○説明員(石井由太郎君) 只今お尋ねのございました輸出金融金庫につきましては、先国会の終り頃に輸出金融金庫の先行きが少し悲観的であるということを、振興局長から当委員会で申上げてあると存じます。輸出金融金庫を構想いたしました基礎になりましたものは輸出金融なかんずく有機化学工業の金融につきましては、国際競争力の点でございますとか、或いは製作に長期の製作期間を要する点でありますとか、金額が非常に厖大であるというような点から考えまして、特殊な金融措置を講じませんことには、今後我が国の基幹産業となるであろうところの機械工業の市場開拓のためにする輸出が、なかなか困難であろうという前提に立つて、或いは金庫をよしとする議論或いは見返資金から直接に供給乃至は融資をする考え方、又は市中金融機関を最大限度に活用いたしまして、その資金源の裏打といたしまして、預金部資金或いは見返資金等の預託を行うといつたような各種の構想のうちから、金融金庫が一番よい構想であるというので取上げられたわけであります。主としてこれを取上げました理由は、当時御承知のような国内の金融情勢でございますから多額の長期金融を行うといたしますれば、現在資金源といたしましては見返資金の外にソースがないわけであります。ところがこの見返資金を資金ソースとして使いまする時分に、これに基本金乃至は元金として求め得る金額の限度は或いは二十億程度ではなかろうかと想像されたのであります。そういたしますれば想像されまするところの輸出の金額は或いは百億、二百億に上るわけでございまするので、これをカバーするためには見返資金から出て参りまする基本金の何倍かに達しまする金融債を発行いたしまして、その債券発行はよつて供給資金を賄うという以外に方法がないと構想されておつたのであります。又他面におきましては見返資金を資金源として使いますれば、その貸付につきましては一々総司部の非常に厳格な管理を受けておりまするので、電報が参りますればすぐに返事を出すというような国際商業取引資金としてこれを使用することは困難ではなかろうか。このような点からいたしまして輸出金融金庫を設定いたしまして、これによつて先ず第一に国内において必要とされまする長期製造資金を賄いたいと考えたのであります。但しこのような金融金庫ができますれば、その機能の範囲はひとり国内における長期製造資金のみでなく、国外に対しての円資金クレジツトと申しますか対外信用の供給すらも可能になると考えられたのであります。即ちプラント輸出の名の下に呼ばれまする重機械設備、車両船舶といつたような物の輸出につきましては、非常に国際競争が激甚でございまして、それらの多くはそれぞれ相手方の顧客に対しまして長期の金融をやつておる。繰延條件で機械を売込んでおるというのが国際市場における一般なのでございます。これに対抗いたしますためにはどういたしましても日本自身も国外に対しましてクレジットを設定し、そうしてこれらのプラントの輸出を安からしめるという措置が必要であると考えたからであります。  これらの構想を以ちまして見返資金を中心といたした金融の構想でありましたので、総司令部当局とも交渉いたしたのでありまするが当時見解として披瀝されましたところは、日本においては輸出の増進等によつて資金が相当流れておる、むしろインフレ的傾向が強いのであるから、資金の梗塞はそのようなものでない筈であるというような見解であつたことが第一点。第二点といたしましては、金融金庫を作りますればそれは我々が過去において経験いたしました復興金融金庫の轍を踏むの慮れもあるというような見解も披瀝されたのであります。尚円クレジットにつきましては、現下の日本の国際的地位、殊に最近の重機械の売込競争から段々にサプライヤー、メーカーを買手の方が圧迫して参るというような傾向にありますので、或いは却つて不利にしはしないかというような懸念も考えられました。そのような点が指摘されますると同時に、見返資金を以ちまして国内において行いまする長期製造資金の需要を賄うことは差支ないという意図が明らかにされましたので、それに従いまして去る八月の十八日、只今お手許にお配り申上げますが長期輸出金融措置要綱を政府といたしましては決定いたしたわけでございます。  この大体の大要を申上げますれば、先ず融資の対象となりまするものはプラントの輸出業者、ときによりましては製造業者といたしまして輸出商品の内容は、製造装置、これは化学機械でありますとか発電設備等を意味するのでありますがいわゆるプラント。それからそれの据付けを中心といたしまするその他の施設、並びに車輌、船舶等を含みまする重機械類。それから融資をいたしまするケースはどうかと申しますと、輸出契約が締結されて確実に相手方が支拂その他の債務を履行することが確実だと認められるもの、又代価でありまする外貨が、「別に定める標準」と申しますのは大体品物の引渡に八〇%、据付けを完了し試運転後に九五%、それからこのような長期設備につきましては保証期間というのがございまするが、保証期間が一年内に完了したならば残り五%を拂うというような條件をそなえた輸出契約に対して金融いたすのであります。尚輸出の金額はプラント輸出でございまするから細かい案件は除けまして、大体二千万円以上、その限度は契約金額からメーカーなりサプライヤーの国内経費、又は利潤等に相当するでありましようところの金額を一〇%と見まして、それを除きました金額に対して融資をいたすことにいたしました。尚これらの融資につきましては、市中金融機関と見返資金との抱合せ金融ということにいたしまして、市中金融機関で三〇%を融資いたしたものは自動的に一定の標準に合致しまする限り、見返資金から残り七〇%が融資されるということはいたしまして、復興金融金庫等におきまして見られましたようなともすれば無責任な融資に流れないよう、乃至は回收の確実性でありまするとか、取引の商業性を阻害しない範囲での融資ということを完璧ならしめようとしたわけであります。尚この場合の融資の方法といたしましては、一般の見返資金におけると異なりまして、毎四半期に見返資金かち日本銀行を通じて貸出すという措置をとりまして、個々の案件を政府機関がタッチしまして審査等をする煩を避けて、できるだけ能率的に迅速に金融ができるようにしようという構想を考えました。融資の総額といたしましては、大体当時問題となつておりました輸出契約の総額が百億ございましたので、これの約七〇%見当といたしまして七十億見当を今年度内に融資しようという構想であつたのであります。尚利率は見返資金の一般と同じ七分五厘でございますが、償還期限は、長期製作物でございまするけれども海外に対しての長期の円クレジットになりますることをできる限り避けようというような見地から、三年以内の償還期限を一応構想いたしました。融資の手続は、只今申上げましたように市中金融機関との抱合せ融資によつて、日本銀行の手許限りで一定の條件を具えたものには貸して行くというふうにいたしまして、政府が干渉或いは容喙することがなくてコンマーシヤール・べースでできる限り円滑に供給されることを考えたのであります。以下細かい点は資料で御覧願うことにいたしまして、一応このような構想が政府におきまして決定いたしましたので、これは勿論総司令部当局とも随時連絡を取りつつ決定になりました最後の案を提出したのでございますが、たまたま輸入金融の問題、外国為替管理委員会にありまするユーザンスの問題でございまするとか、外国為替管理委員会運用しておりまする外国為替特別会計の円資金の不足の問題でございまするとかというような、輸出入を総合いたしました日本の金融問題というものが一元的に解決されねばならんという場面に遭遇いたしましたので、政府におきましては八月下旬に申請をいたしておるのでございますが、まだ最後的にこれを承認を受けるに至つておらないのでございます。この案が決定いたしまする過程におきましては、たまたまフイリツピンにおける硫安の製造設備でございますとか、沖繩における発電所の設備等大きな設備が日本側に注文になり、国際競争に参加いたしまして或る部分日本側が成功するというような事実もございましたので、案の推進が非常にうまく参つたのでございまするが、遺憾ながらフイリツピンの契約につきましてはまだ正式の契約が締結されていないような事情にありますので、本日只今からこの措置を動かして行く事実上の必要がないというような状態であります。ただ最近にアルゼンチンにおきまして相当大きな発電設備の入札に成功いたしまして、これをこの金融措置に待たねばならんというような具体的な事実が上つて参りましたので、これらの事実をも上げましてこの要綱による融資が即急に軌道に乗るようにいたしたいと考えております。  問題はこれと輸出金融金庫との関係如何ということに次の問題として相成るわけでありますが、只今申上げましたような長期輸出資金の融資は融資方法、融資金額、融資の機構、そうしたものは輸出金融金庫を設置いたしました場合に、我々の予期いたしました狙いを大体カバーしておると考えられるわけであります。即ち独立の機関を作りませんでも能率的且つコンマーシャル・ベースで資金源も十分確保し得て、これらの金融がつくという見通しが立つておりまするので、国内における製作資金だけを考えますれば、輸出金融金庫の構想はこの見返資金の適切な運用で大体やつて行けるのではなかろうかと考える次第であります。ただ円クレジットを積極的に国外に放出いたしまして、輸出の増進を図るということになりますと、この見返資金の運用ということではややり不十分だと考えるのでございますが、国際情勢も若干変つておりまして、現在そのような長期の円クレジットを出すことはやや危險ではないかというような意見も出ております。又先程申上げましたが、このようなプラントにつきましては、いわゆるバイヤーズ・マーケットが未だ以て続いておるわけでございまして、円のクレジットが参るということになりますと、それにつけ込んで相手方から逆用されて地位が弱くなるというようなことなども考えられますので、円クレジットの問題につきましては今後更に検討せねばならんと思うのでございますが、或いはその検討の結果によりましては更に輸出金融金庫の問題を採上げて考えねばならんと考えておる次第であります。
  55. 境野清雄

    ○境野清雄君 輸出金融金庫法案というものを政府は捨ててしまつたのでなくて、その輸出金融金庫ができるまでの暫定措置としてこの長期輸出金融措置というものを作つたものやら、或いは輸出金融金庫というものはもう捨ててしまつて、これによつて現在のプラント輸出は賄つて行くんだというような考えか、いずれかを承わりたい。時間もありませんので後日もう一回お出かけ願つて御説明願いたい。ただ長期輸出金融というものがこの程度のものでプラント輸出ができるということは非常に甘い考えでありまして、到底こんなものによつちや輸出は促進できない。輸出金融金庫でさえ私共は相当難点があると思うので、まして個人個人が市中銀行へかけ合う、ただ従来のものよりも三分の二は見返資金で三分の一は市中銀行がやるのだかも、それによつて百億くらいのものはできるのだという考えは相当甘かないかと思うので、これにつきましては相当異論があると考えますが、後日これは又何するとして一応この措置によつてやるが、輸出金融金庫を捨ててしまつたものやら、そうでなくて輸出金融金庫は依然とし考えるが、暫定の今賄えない点だけをこれでやるのかという一点だけをお伺いしたいと思います。
  56. 石井由太郎

    ○説明員(石井由太郎君) 只今のところ御指摘にございましたように、プラント輸出の長足の伸張を図るというためにはこの措置で十分であるというわけに考えておるのではございません。現に先程申上げましたアルゼンチンの入札等においでは相手方のアメリカは七ケ年の融資をやるという條件がついているわけでありまして、これを我々の方が即金決済ということにいたしますれば、別に値段の面におきまして相当不利な立場に立たなければならなくなるわけでありますから、この問題は十分まだ残つておるものと考えております。従いまして現在考えております見返資金の運用による長期輸出金融措置は暫定的なものでありまして、これは来るべき国会等の間におきまして金庫の設置の費用、或いはその規模、運用の機構といつたようなものを検討する所存でございます。
  57. 廣瀬與兵衞

    理事廣瀬與兵衞君) それではこれで閉会いたします。    午後四時五十七分散会  出席者は左の通り。    理事            廣瀬與兵衞君            結城 安次君    委員            上原 正吉君            重宗 雄三君            松本  昇君            島   清君            下條 恭兵君            山内 卓郎君            山川 良一君            境野 清雄君   国務大臣    通商産業大臣  横尾  龍君   説明員    通商産業省大臣    官房長     永山 時雄君    通商産業通商    鉄鋼局長    中村辰五郎君    通商産業通商   化学局有機課長  入江  明君    通商産業通商   振興局経理部長  石井由太郎君