運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-07-22 第8回国会 参議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十五年七月二十二日(土曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方税法案内閣送付)   —————————————
  2. 岡本愛祐

    岡本委員長 これより地方税法案につきまして、地方行政委員会公聽会開会いたします。  開会に当りまして公述人各位に一言御挨拶を申上げます。本日は御多用中お差繰り御出席下さいましたことについて、委員一同を代表いたしまして篤くお礼を申上げます。申すまでもなく、地方税法案は本第八回臨時国会におきまして最重要法案でございまする第七国会におきましても地方税法案提出をされました。併し参議院におきまして不幸にして地方税法案が否決になつたことは皆様承知通りであります。この第八国会におきまして、政府は第七国会に出して参りました地方税法案を一部改正いたしまして提出をいたして参りました。その目的といたしまするところは、地方自治を確立し、推進をいたします。他面地方公共団体地方税を増額いたしまして、その基礎を強固にしようというのにあるのでございます。併し一方国税の方が大減税になつておりますのに、地方税の方が四百億も増税をされる、こういうような見地から国民の間にいろいろ反対もあり、賛成もありますけれども、反対が多いのであります。こういうような実情に鑑みまして、地方行政委員会におきましては愼重審議をしておるのでございます。今日各位にお出でを願いまして、又改めて公聴会を開きますのも、皆様方の多年の御経験、御研鑚のことを拜聴いたしまして、審議に資したいという微意に外ならんのでございます。どうかかような意味におきまして思憚ない御意見を吐露されますようにお願いしたいと思います。  今日の新聞に見えております通り政府の今回の地方税法案に対しまして附加価値税を二十七年一月一日まで延期をする。それから固定資産税税率を一・七というのが政府原案でございますが、それを一・六に引下げるというような修正が可能であるということになつて参りました。そういう点をお含みの上で御意見の御開陳を願いたいと思います。尚、申上げますが、公述のお時間は一人三十分以内にお願いいたします。又御発言内容は当委員会が御意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことに参議院規則でなつておりますので予めお含みを願います。  それではこれから御意見の御開陳をお願いいたします。最初に日本租税研究協会地方税委員長荒井誠一郎君にお願いいたします。
  3. 荒井誠一郎

    荒井公述人 本日はお招きによりまして、汐見会長又は原副会長が参上する予定でありましたが、いずれも東京におりませんので、私から協会において研究いたしました結果に基きまして、地方税改正に関する全般的の観察を申述べます。本論に入ります前に一言いたしますることは、日本租税研究協会シヤウプ勧告に基きまして設立されたものであります。前回地方税改正法案以来、委員会を設け、又会員にいろいろ質問書を出しまして研究を続けて参つたのであります。その研究に基きまして、大体会におきまして考えておりましたことを申上げます。ただ会員は多数でありますので、私の申上げることに違つた考えを持つておるものもあることは御了承を願つて置きたいかと思います。  只今委員長からお話がありましたように、今回の法案前回法案の一部修正があつたものでありますので、前回法案についての意見が大部分今回の法案に適用がある思います。前からの研究について一言いたしたいと思います。この地方税改正につきまして、委員会等におきまして、最も大きな問題として取上げられましたのは道府県税における附加価値税市町村税における市町村民税固定資産税、この三つの柱と申すべき税であつたのであります。その中で最も議論のありましたものは附加価値税固定資産税でありました。附加価値税は御承知通り他国にも殆んど前例がありませんので、日本において初めて実施されるという新税でありますので、当協会におきましても、研究に当りまして、当初はその要領を把握するのに非常に骨が折れたのであります。又立案する当局においてもはつきりした考えがなかつたようでありますが、その後各方面において次第に研究が積まれまして、この税の要領が大分具体的にはつきりして参り、法案ともなつたのでありますが、協会において研究の結果は、この税につきましては、地方税といたしまして成る特長があり、長所があるものであるということは認められたのであります。理論上さようではありますが、併しながら前に申しました新らしい税でありますので、その実施面におきましては、徴税者納税者相当準備を要するものと思われたのであります。尚、内容につきましても、その計算方式につきまして、法案では控除方式を採用しておりますが、加算方式を希望する者も相当に多く、又第一種の業種税率四%は少し高過ぎはせんか。引下ぐべきであるという議論もあります。又第一種の業種の中には税率を低くすべきものがあるというような意見もあつたのであります。結局その趣旨は認めるにいたしましても、その施行については相当期間延期することがよろしいのではないかというのが多数の意見であつたのであります。今回の法案におきましても、一年間延期するということになつており、又更に委員長お話によりますと、それが更に延期になるということでありまして、その期間相当準備が整えられるということは極めて適当な措置であると思うのであります。  固定資産税につきまして問題の点は課税標準、つまり二十五年度につきましては九百倍という比率の問題であります。これを或る点まで引下げて八百倍程度にするという意見相当つたのであります。或いはそれ以下にすべきであるという意見もありました。併しながらその倍率の問題は三十五年度の問題でありまして、むしろ先の年度に当りまして税率を引下げることが必要であるという意見相当にあつたのであります。今回の法案におきましては、税率低下の方針が明らかになつております。又只今お話によりますれば、更にその程度が進んで行くということでございます。この点におきましては財源上差支ない限り税率は低位に止めまして、そうして急激なる負担の増加は避ける方がよろしいと考えられるのであります。尚、固定資産税につきまして問題になりますのは償却資産であります。從来は御承知通り土地家屋に対しての税はありますが、固定資産税につきまして償却資産が加わります。これは新らしい課税の客体であります。その評価相当に困難であると予想されるのであります。又その評価については非常な技術を要しまするし、慎重な注意を要すると思います。或いはこれは五として実施面になる問題だと思いますが、この点については今後とも十分注意をする必要があると考えております。要しまするに、今回の地方税法案前回国会を通過いたしまして、すでに実施されておりまする国税と連繋の深いものであることは言うまでもないところであると思われますので、国税地方税を通じて負担の均衡を考えておるものと承知いたしておるのであります。今回国会提案になりました案も、その趣旨で作成せられたものと我々も考えておりますので、その体系根本に覆えすことはこれは最も避けなければならないと思います。その体系はこれは飽くまでも尊重しなければならんと考えております。併しながらかかる体系に基きまして、できるだけ今回の法案がその実施面におきまして適当な考慮も加えられまして、施行し易い法案として成立して、速かに実施されますことは、今日の地方財政現状から見、又納税者立場から見ましても、極めて必要ではないかと考えるのであります。  大変簡単でありますが、大体の観察を申述べて発言を終りたいと思います。
  4. 岡本愛祐

    岡本委員長 只今意見開陳につきまして、御質疑の方は御発言を願います。
  5. 相馬助治

    相馬委員 一人々々やりますか。
  6. 岡本愛祐

    岡本委員長 ええ。
  7. 安井謙

    安井委員 ちよつと伺いますが、只今固定資産税倍率の問題についてお触れになつたようでありますが、あれにつきまして、もうちよつと具体的な御意見を聞かして頂ければ……将来低減か低下というようなお言葉もあつたように思いますが。
  8. 荒井誠一郎

    荒井公述人 倍率の問題は御承知通り二十五年度の問題、賃貸価格は初めの千倍が九百倍になつたのでございますが、それを八百倍或いはその程度にしましても、税收は十分に上るのじやないかと、こういうような算計もされておつたのでありまして、その倍率を下げるのも一つ方法じやないかと思つております。併しこれは三十五年度の問題でありますので、むしろそれはそのままにしまして、税率の百分の一・七、今回は七ですが、当時は七五ですか、その七五を下げた方がいい、こうするならば先までずつと軽減されるという説もありましたが、後の方をとつた方理論上よくはないかという考えに向いて行つたわけであります。このことを御説明いたしたわけであります。
  9. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御質問ございませんか。
  10. 相馬助治

    相馬委員 附加価値税について非常に含みのあるお話をなさいましたが、地方税としては或るものは特徴がある。併しまあこれは非常にむずかしい法律である。そこでここ一年ぐらい取るのを延期することは極めて結構である、こういうことをおつしやつたのですが、それに含めて、私共としてはこの附加価値税というものはどうもまずいと、こう考えておるのであります。あなたの今のお話ですと、その後の方では体系を崩すことはまずいと、こういうふうにおつしやつておりますが、附加価値税をこのまま二年も三年も研究だからというて徴收をやらないで置いて、そして差当り止むを得ずしてあの事業税というようなものを、今度政府提案原案を見れば、御承知のように仮りにまああれを徴收しておりますが、そういう形でよろしいとお考えですか。
  11. 荒井誠一郎

    荒井公述人 理想から申しますれば、いいものであれば直ぐに実施するということは、これはよろしいことかと思いますが、ともかく新税でありますし、相当準備を要する、その間はまあこれに一番近い事業税徴收する、これは止むを得ない措置ではなかろうか、その期間をどのくらい延ばすかということは、まあできれば成るべく早い期間法案が成立しておれば実施する方がよいかと思います。これはまあ程度問題であると思います。当時一年くらいという話もあつたのであります。それが各般の情勢で無理だということであれば、これはもう我々の方の研究の外に出る問題になるかと思います。それだけ申上げて置きます。
  12. 相馬助治

    相馬委員 分りました。
  13. 岡本愛祐

    岡本委員長 有難うございました。  次に、事業課税につきまして、十條製紙株式会社常務取締役金子佐一郎君にお願いいたします。
  14. 金子佐一郎

    金子公述人 この度政府提案になりました地方税法案の要綱のうち、時間の関係もございますので、私は企業経営立場から、主として事業に最も影響があると思われますところの附加価値税事業税固定資産税、その三種目を中心にして私見を述べたいと存ずるものであります。  先ずこの地方税一般的について考えて見ますと、從来地方税というものは国税の附加税的な位置にあつたというようにすべての国民考えております。從つてこの地方自治体の徴税機構というものは甚だしくこれは弱体である。これが将来は恐らく拡充されるでありましようけれども、それまではたとえその税制理論的で、合理的でありましても、税務行政の運営の面から見まして余り複雑で、そして課税標準の把握が明瞭でなく、困難であるというようなものは絶対に避くべきではないかと考えておるのであります。そしてその意味において附加価値税延期され、これに代つて事業税が採用されたというような理由もここにあるのではないかと思われるのであります。すべてこの点に十分な考慮が押われなければ、どんな税制が布かれましても、地方税の円滑なる運用というものは期待し難いのじやないか、このように考えます。尚、二十五年度におきましては、地方税の総額が四百億円増しますが、一方国税の方で七百億程度減税になるから、差引国民負担というものは三百億円減ずるというがごとき印象が與えられておるのであります。勿論これは全体的に見た場合におきましては、或いは間違つていないかとも考えられますが、この納税者の個々の立場からいたしますれば、これは容易にそうはならないのであります。即ちこの改正案の根幹をなしますところの、この固定資産税は勿論のこと、附加価値税課税標準の大部分というようなものが外形標準課税で、いわゆるこの支拂能力というものを基準にいたしてないのでありまして、いわゆる固定資産なら、固定資産を持つているということによつて税がかかつて来るのでございますから、これは赤字企業のような場合におきましては、所得がない場合、この所得基準にしております所得税とか、法人税というような国税を納めておりませんために、これが軽減というものの恩恵には浴せない、ただ從来納める必要がなかつた新らしいこれらの地方税負担だけが加重になつて増すのでございます。從つて赤字のためにこれらを仮に一時負担いたしましても、消費者への転嫁ということも不可能でありますので、その企業負担というものは非常に重くなるということは、我々として余程注意しなければならないことだろうと思うのであります。勿論このシヤウプ勧告によります附加価値税だとか、固定資産税というものはどう考えられているかと言えば、これは支拂能力をむしろ考えずに、地方財政から蒙むりますところの企業が受ける恩恵、これに対する応益主義と申しますか、これに基いてこれが課せられるのであります。併しこれは飽くまでも流通課税といたしまして、結局は消費者転嫁することが可能だという條件の下においてのみこれが合理的に私は採用されることができるのではないかと思う。現在の我が国のような経済情勢下におきましては、特に比較的重要な産業と思われるような企業におきましても赤字が多いのであります。これが転嫁が困難だとするならば、相当これはむずかしいということが言えるのであります。強いてどうしてもこれを実施せんとするならば、これは非常に負担を軽くし、いわゆる税率などにおいても十分企業負担を強く考えて、これを軽率にしなければ、税制合理化というものが却つて企業合理化を妨げたり、或いは又場合によつて経済再建を阻止するというような結論が出るのではないかと思うのであります。  そこでこの附加価値税の問題は、一応この政府原案におきましても、来年一月一日に延期され、そうしてこの問題が、或いは場合によつてはもう少し長く延ばされるのではないかというようなこともありますけれども、これはすべてこの附加価値税そのものが、すでに年の中途半端から実施するということが徴税技術上から言つても困難であるということは明らかでありますから、今年は止むを得ないといたしましても、これはやはり根本が複雑で、余りにもまだ現在の徴税機構ではこれを実施するには力が弱過ぎる、こういう点も又考え、又一方日本経済状態というものが、赤字企業が多いというような現状では、このような税の負担には耐えられないというような点から見ましても、是非ともこれは日本経済が安定するまで延ばすのがよいのか、或いはこのような税はいつそ、代り財源として事業税が今度取られておりますが、一般輿論を見ましても、このような税が延期になつて、代つて事業税が行われておりますことが、全体に歓迎されている、そういう点を見ましても、この税は或いはたまたまシヤウプ博士も再び来朝になりますので、こういう機会に十分改めてこれを検討いたしまして、こういう税が果して実施することがよいのか、或いは別に他の税がなければ、又この事業税というようなものを更によく、更に更に合理的なものにして実施した方がよいのか、この点は今後の研究課題だろうと私は考えております。  固定資産税につきましては、これは性格がもともとから支拂能力基準といたしませんので、外形標準課税といたしまして、資産を有するものにはかけるという財産税的なものでありますので、これは流通課税であるという建前から申しましても、今日のような、先程申しますような企業経理状態では、非常にこれは企業としての負担は過重になると私は信ずるのであります。從つて特にこの税を見ますと、巨額の固定資産を持つているような大工業というようなもののうち、電力、鉄道というようなもの、これらの国にとつて重要な産業であると思われるようなものの負担というものが一段と多いのであります。特にこういう企業については例外的規定が当然設けられなければ、この負担は結局料率の引上げというような、又インフレのような様相を含んだ形において解決しなければ、この問題は容易に実行することは事実上不可能だろうというふうに強く考えております。特にこの固定資産税の問題は、やはり課税標準の問題でございます。これは今後も相当論議中心になる、一応現在の案では、この賃貸価格の九百倍、即ち農地以外の土地家屋についてでございますが、九百倍、それからその他の償却資産に対しては帳簿価格とか、或いは再評価価格とか、或いは所有者見積価格、或いは再評価限度額七〇%というようなものを基準に置いて、これを取上げておりますが、結局これらの問題を実際当嵌めて見ましても、企業といたしましては御承知通り陳腐化資産であるとか、或いは操業度が低いとか、或いは遊休設備があるとか、いろいろな特殊事情がありますので、こういうものとこれを絡み合せまして、当局企業との間に多くの問題が私は露呈されるのだと、今から想像いたしております。從つてこの固定資産税は、税率も大切でございます。或いは倍率も大切でありましようけれども、一体その価格幾らであるかというような、償却資産の面で大きくこれは不分明な、不明瞭な面を残しておりますだけにこの議論については私は非常に疑義がある。從つてこの問題を八百倍がいいのか、九百倍がいいのかと言われましても、この問題はなかなかむずかしい。そこで政府原案におきましても、仮納付というようなものを取上げられて、来年度再評価が実施されて、その実績が現われた上でこれを取上げようということになつておりますことも、十分うなずかれるのでございます。從つて税率が一七になつておりますが、これとても私は一・六がいいのか、一・五がいいのかということについては、これは低いければ低い程よいのでありますが、併しいわゆる理論的な論拠についてはまだまだ研究の余地があるように思いますが、併しいずれにいたしましても、一般的に想像されるところでは、一七で九百倍では、徴税目標五百二十億を遥かに超える過重收入になることが言われております。これは今申上げたようなもので、議論もありましようが、とにかくこれは相当強過ぎるということが言われておりますが、結局これは或る意味においてこの捕捉率の問題が非常に大きく出ております。捕捉率を何%にするか、余り低く見ればこれは非常に高い税率になります。こういう点は国民といたしましては堪えられないような過重な負担になるという企業もあるようでありますから、十分愼重にやられて、是非共できるだけこれらの問題について企業を圧迫しないように愼重考慮すべきものだということを私は特に指摘いたしたいのでおります。その他これらの固定資産税につきましては、工場とか、倉庫とかいうような、これらの機械の一連の生産設備につきましては、何とか賃貸価格倍率によらないで、むしろ機械と同じような倍率に、倍率と申しますか、評価方法によつた方が遥かに低くなつて、それが理論的であるという意見も出ております。又その他船舶の問題、これもむしろ船舶税独立税で課した方がよろしいとか、或いは軌道、車輌、発電、配電設備、或いはガス供給設備というような、公共事業のようなものについては、やはり独立税でやつた方がよいという意見、或いは石炭その他金属の鉱山のような坑道というようなものは、これは一つ開発費というか、一種の繰延資産と同じようなものであるから、こういうのは転換処分もできないし、新らしく更新もできないから、これは是非減税して貰いたいという意見、その他経営者の責に帰せないところの遊休設備或いは未稼働の設備の分については、是非非課税にして貰いたいというような意見、これらの点もございます。そういう点も十分取入れてお考え願いたいと思うのでございますが、特に最後に、官庁関係の国鉄とか、專売公社というようなものに対して課税をするかしないか、これは大きな問題でありますが、これは一応原則的な考え方によれば、むしろ課税を低率であつてもした方がよいのじやないかというようにも考えております。同じ一つの村に、或いは町に專売公社工場があつて、一方他の民間の企業工場があつて、片一方だけは負担しないということは果して正しいかどうか、勿論これは堂々廻りで、これは專売益金が減りまして同じことになると言いますけれども、一応その方が公社となつ性格から言つてすつきりするのじやないかというふうに考えます。  次に結論になりますが、このように固定資産税のように、この帳尻というようなものが、まだ再評価をいたさないのでよく分らないのであります。是非ともこれらの問題は課税標準並びに再評価をやらす。そして正確なところが把握できた上で、来年度においてこれが是非とも修正をするというようなことについては、是非徹底的にやつて頂かなければならないと思うのでございます。ともかくこの地方税法案が第七国会において不成立になりまして、今日までこの地方財政はどうなつたかと言えば、地方財政平衡交付金とか、或いは預金部資金の融資によりまして辛くも今日まで繋いでおります。從つて今日若しこれが不成立になるようなことがありますれば、地方自治行政というものが停頓いたしまして、混乱いたしまして、その影響は甚大であると思います。ですからこのシヤウプ博士勧告地方財政確立の目的にも反することになりますので、是非とも一般国民輿論を十分受入れられた上で、十分関係方面との折衝にも今からできる限りの範囲において負担軽減を図ると共に、最善の修正を得られまして、この問題を成立させるように御盡力あらんことを希望いたします。これを以て公述といたします。
  15. 岡本愛祐

    岡本委員長 金子氏に対して御質問を願います。
  16. 石川清一

    石川委員 只今固定資産税の場合に、一・七の率の九百倍では相当予定金額より上廻るだろうという御意見ですが、大体どのくらいに押えておられるか、凡そでよろしいですから、金額を承わります。
  17. 金子佐一郎

    金子公述人 今の御質問は私の公述の中にもこの問題を取入れておりますが、非常にむずかしい問題であるのであります。これは私が一体償却資産幾らに見るかというところにこの問題があるのでありますが、これはいろいろと各方面でも私の耳に入つているのでは八百億から、場合によつて多ければ千億くらい取るのじやないかというふうに聞いております。併し遺憾ながら、それは実際そうなるのか、或いはそれ以下になるのかということについて、これは非常に疑問でもございますが、とにかく一般に高いというふうに聞いております。
  18. 石川清一

    石川委員 仮に今の法案通りまして、もう一年の間にその他の調整ができるように、法では示されておりますが、それが非常に困難だというようなお言葉がありましたが、明年一年で、本当に今の法のような建前のような平均な適正な課税に訂正できるかどうか、先ず一年でできるかどうかを一つお伺いしたい。
  19. 金子佐一郎

    金子公述人 私はこの問題は非常に自信がないのです。個人として……。というのは、この固定資産評価、まあ前から一体時価とは何ぞやと聞きましても、まあ失礼ですが、恐らくそれに率直に答えられる方はない。あらゆるいろいろな見方があるわけで、結局これを先ずああいうふうに再評価限度額というような、理論的に出された倍率基礎に置いてこれを片附けるとするならば、それには再評価の問題として疑問があつても、地方税としては或る程度まで片附けられる、併しそれは適正であるかどうか、いわゆる真の時価とそれが果して一致しているかどうか。いわゆる負担の公平がそれで期し得られたかどうかということになりますと、これは相当問題だと思います。從つて私はこの固定資産税はむしろ実施したる後は、課税標準になるいわゆる時価、それの決め方、而もそれは形式的に決まつても実際のものの時価と、それから決められたいわゆる時価というものとの間に企業、各企業、各機械或いは建物、その個々についても相当問題が残される、それは止むを得ない。ですから一年ですつきりしたようなことはできない。やはり極く理論的に抑え付けるというだけでありまして、それは真の意味においては相当将来問題になる。かように考えております。
  20. 岡本愛祐

    岡本委員長 では有難うございました。  次は、固定資産税について関西経済連合会理事工藤友恵君にお願いします。
  21. 工藤友惠

    ○工藤公述人 私は実は前の荒井さんと金子さんのおつしやつた線が大分重なりまして、不要な点もございまするが、大体において固定資産税中心にしまして、一応の私共経済界にいるものの考えお話をいたしたいと思います。尚私のには数字がございまして、その点徹底を欠く嫌いがございますから、私の喋る原稿の写しがここにございますから委員の方にあとからお渡ししたいと思います。  私共は從来参議院地方行政委員会に対しまして、経済界の意向としまして、どういうことを考えておるかということを、税制全般についてしばしば申上げておりまして、その点についてこれから私の申上げますることも重なる点もあり、政府と申しまするか、政府案等の変更によりまして多少の違いがありますが、本旨においては異なるところはございません。從いまして前提は概ねこれを抜きにしまして、具体的な問題について一々申上げたいと思います。  市町村が異なるに從いまして、固定資産税課税標準が非常にまちまちになりまして、地方によつては税の負担が不均衡に陥るという危險がございます。これを避けるという目的が一つ、もう一つは、課税標準額査定に関しまして、スキヤンダル、これを申しまするというと、例えば地方においてボスの横行等の事実が起る危險があるのでありましてこれは地方自治の発達のためにも国の平和のためにも心配でございますから、これに備えまして、次のような措置を必要とするのでありまして、土地家屋については、先ず地方財政委員会において時価算定の基準並びに方式を具体的且つ詳細に定め、これを各市町村に指示する、即ち土地については地域別、用途別坪当り基準を決定し、家屋につきましては構造別、用途別基準を決定します。各市町村はこれに基いて価額を決定し、これを地方財政委員会に報告させます。地方財政委員会は、その結果に基いて相互の不均衡を調整する目的を以てこれに修正を加える。こういう措置が第一に望ましいのであります。  償却資産につきましては、可及的速かに適正なる時価を調査決定し、これを課税標準とする必要がございます。但し資産評価により認められたる再評価最高限度額、この最高限度には註釈が付いて、陳腐化等については陳腐化等を考慮したる最高限度額、(以下同じ)を最高限度とする必要があると思うのであります。最低限度は企業の実際行なつた再評価額を以てすることは、これは法案にある通り、止むを得ないと思います。家屋についてもこれは同じようなことでございまするから繰返しませんが、同様の趣旨の取扱いを必要と存じます。特に昭和二十五年度におきまして土地及び家屋につきましては、賃貸価格に或る倍数を乘じて得られる価格課税標準とすることはこれは止むを得ないのでありまするけれども、その止むを得ないという理由は土地及び家屋の時価を急速に算定することが極めて困難であるが故に外ならないのであります。從つてそれは飽くまで適正時価の、何と申しますか、便宜の代用措置でございまするから、倍率九百倍と申しまするのは最初の政府案にございまするが、これは実際に比して甚だ高率と一般考えられております。でき得る限りこの倍率を引下げることが必要でございます。伝えられるごとく七百倍というような数字も、これも金子さんがおつしやいました通りどこが妥当であるか急には分りませんが、いずれにしてもこれは下げなければならないと思います。これは大阪高等裁判所管轄内において仮処分決定に際しまして、供託金を納付させる際に用いる数字は賃借価格の五百倍を以て時価となしておるように私共は聞いております。これも一つの参考かと思いまして五百倍という数字も一応出て来るのであります。又この課税標準資産評価法により認められたる再評価最高限度額を最高限度とすることが必要だと思うのであります。企業の実際行いたる再評価額を最低限度とすることは法案通り止むを得ないと思います。例えばこれは大阪の或る倉庫業者の例でございますが、再評価最高限度額は七億五千三百万円でありますのに、賃貸価格の九百倍は実に十一億三千五百万円であります。これは或る大きなビルデイング業者の例でありますが、これによりますと再評価の最高限度額は七億五千三百万円であるのに、賃貸価格の九百倍は実に十三億七千五百万円でございます。これに対しまして課税されるというのが今の法案趣旨であります。而もいずれの場合も再評価実施価額は最高限度額の数分の一以下になる見込であります。即ち時価を若し評価し得たとすればそれがそれより更に小さいものになるのであります。かくのごとき例は必ずしも沢山ないかも知れませんが、応急措置といいましてもかかる企業者にとつては到底堪え得ないところだと思うのであります。  それから機械等の償却資産について見ますると、急速に時価を査定することの困難、それより生ずる不均衡、並びに新らしい課税対象になつた等の事情に鑑みまして、もう一つ加えますれば先程金子さんのおつしやつたような数字も方々に伝えられておりますことから考えまして、昭和二十五年度においては資産評価法に認められたる再評価最高限度額の十分の五相当額を以て課税標準とすることが必要であると思うのであります。これは特に第七国会において廃案となりました結果、非常に地方財政の上にいろいろの困難が起つておりまして急速に決定する等の関係からしますとこういう割合になる。一般に経済界では納得し得る、そうして数学的にもこれは腰だめで大体いいのではないかと思われる数字を以て代用して行つたらいいのではないかと、こう思うのであります。工具、器具備品等低額な固定資産につきましては時価算定が困難なると共に甚だしく手数を要するのであります。これはすぐにお分りになると思うのですが、これは到底少しの手数ではできないのであります。で、私共の考えではその帳簿価額を課税標準とすることが必要であると思います。  税率につきましては、現在の企業負担能力を考え一般的に低率なるものとする必要がある。機械一構築物等の償却資産は新たに課税対象となつたものでありますし、企業の税負担に急激なる変化を與え、且つ課税標準の算定が著しく困難なるため不均衡を生ずる虞れがありますから、税率土地、建物と区別し更に一層低率ならしめる必要がある、こう考えております。この点につきましては時間がございませんから差上げました表の中に御参考の資料が出ております。  それから固定資産税は現下の経済情勢並びに企業負担能力等に鑑みまして、且つ地方別の負担の不均衡を極力避けるため標準税率を超えて徴收しないようにする。そうして止むを得ない場合には地方財政平衡交付金に適当な調整を委ねる、こういうふうにしたいと思うのであります。これも金子さんのお話にありましたが、電鉄とか倉庫とかレソト等のように税の負担が著しく且つ急激な変化を受け、而も価格統制上税の転嫁が困難なような状態にある事業につきましては、その税率一般と区別し低度のものとするか或いは独立税として別個の低率な取扱いを必要とすると考えるのであります。  これも金子さんの御意見にございましたが、船舶、軌道等のごとく從来独立税であつたものが、固定資産にも含まれる結果、税負担が急激に大幅に増加しその負担を困難とするものにつきましては、固定資産税より除外して從来通り独立税としまして、低度のものとする必要があると考えるのであります。  鉄道用地、これは土地評価問題でありますが鉄道、船舶に関しましてはここに出ておりませんが、この中に数字がございまするが、別に或る会社の数字を持つておりまして、或いは場合によつては説明いたします。鉄道用地を近隣の時価によつて推算することは、それが特殊の用途に供される土地であるという趣旨から申しまして妥当ではないと思います。これも地方財政委員会において別個に一般的に時価を決定する必要があるのじやないかと思います。  その次に国又は地方公共団体より賃借りしておる土地家屋に対しましては、企業は賃借料の外に固定資産税負担することとなるのでありますが、この場合賃借料の算定に当りましては税相当額を含まざるものとし、二重負担とならないように措置する必要があります。現在の賃借料は地代家賃統制令によつているのでありますが、この中には税相当額が含まれているから、右のごとき土地家屋を賃借する企業に対し固定資産税負担せしめる場合には、賃借料のうち税相当額を控除することは当然であると考えるのであります。  法人税法第六條の規定により法人税を免除される事業につきましては、一定期間を限り固定資産税を免除する必要があります。これは法人税の方ですでに免除されておる適用でございまするが、更に私共が考えまするのに、今日の日本産業界の技術水準の低い点から申しまして、固定資産技術研究の必要性の見地よりしまして固定資産税を免除する必要があります。国税に関しまして私共は法人税の免除を要求しておるのでありますがまだ取上げられておりません。  未稼動設備につきましては、法案第三百四十一條第一項第四号により課税されざるものと考えられますが、これも金子さんのお話にありましたように、遊休設備についてもこれと同様担税力のないというところからしまして、是非非課税とすべきものだと考えるのであります。  固定資産評価員は、当該市町村住民の公選により選出された民間人を王とすることを要望します。これに対しては非常に高い地位と良い待遇を與えて遇すべきで、即ち良い優れた人に来て貰うためであります。その選挙資格としては、例えば私の考えでは退職後三年を経過していない前官吏と申しますか、公務員経験者はこれは不適格とすべきものだと考えます。  それからこれも金子さんの御意見にございましたが、国鉄並びに專売公社等国有事業にも課税すべきものであります。私鉄、海運等と形態をひとしくする国鉄等国有事業に対しまして、固定資産税附加価値税附加価値税ちよつと何ですが、一切非課税としておるのは民間事業との均衡上不適当であります。まあこれは競争と申しますか、かれこれいろいろのことを言いますが、実際におきまして国鉄が非課税意味に、今後非常に民間業を圧迫する危險があるのであります。又独立採算制の趣旨を徹底する上からも堂々と四つに組んでできるような企業形態を取らないと、国鉄を特別にああいう形式にした意義が全くないのじやないかと、こう考えるのであります。この点から考えるときに、專売公社についても事は同断であると、こう考えるのであります。  以上甚だ簡単でございまするが、固定資産税に関してのみ多少文献に修正を要する点もありまするが、從来繰返しておつた点を改めて御報告する次第であります。
  22. 岡本愛祐

    岡本委員長 只今の工藤友惠君の御意見に御質疑をお願いします。御質問でございませんか。……それでは次に移りまして、地方税法案の全般的観察につきまして、立教大学教授経済学博士藤田武夫君にお願いいたします。
  23. 藤田武夫

    ○藤田公述人 この方面の問題につきまして幾ら研究をいたしておりまするので、今日は研究者としての立場から今回の地方税法案につきまして全般的な観察をいたしたいと思います。  今回の地方税改正法案地方団体の活動を財政的な面から強化するという点におきましてはいろいろ優れた点を持つておりますが、併しながら尚この改正案を完備したものとするためには、そこに今後要求さるべき問題が残つておると考えられます。  先ずその第一の点は、今回の税制改正案によりますると、国民の各階層間における租税の負担関係に可なり大きな不均衡が生ずるというふうに思われるのであります。例えば市町村民税について申しますると、御承知のように今回市町村民税は從来の住民税に比較いたしまして、約二倍半の大増税になるのであります。然るに法人につきましては從来法人が負担しておりました住民税の額に比較いたしまして、今回の新らしい法人が負担いたします市町村民税の額というものは、約一五%にしかならないのであります。  それから個人の場合について見てみますると、例えば勤労所得八万円の扶養家族三人の少額の勤労者の負担いたしまする新市町村民税の額は、從来の住民税の額に比較いたしまして約三倍半になるのであります。ところが同じ勤労所得で百万円の所得者の場合を考えて見ますると二倍にしかならない。そういうふうに各階層間における租税負担関係において可なりの不均衡が見られるのであります。  それから新らしい府県税制におきまして附加価値税の代りになりまする事業税税收入の中で、その八五%までは個人組織の業主が負担するということにつきまして、この点において中小企業者が、他のものに比較してその負担が一層重いということが見られるのであります。そういつた地方税における負担の不均衡の問題に対しましては、一方からは国税において所得税を通じて少額所得者に対しては負担軽減してあるので国税地方税を通じて見ればその地方税における負担の不均衡は是正されるという議論が唱えられております。尤も事実上扶養家族の非常に多い少額所得者の場合をとつて考えますると、確かにその説の通り国税における負担軽減によつて地方税負担の不均衡が相当緩和されることは認められるのであります。併しながら御承知のように今回の市町村民税は、同一世帶内にあるものでも所得のあるものには各個人に別々にかかつて来るのであります。そういう点を考慮いたしますると、国税における負担軽減によつて果して地方税負担の不均衡が是正されるかどうかということは、可なり疑わしいのであります。又一歩讓りまして国税軽減によつてその地方税負担の不均衡が緩和され得るといたしましても、国税において負担軽減されたから地方税の領域においては負担の不均衡をそのままにしておいていいかどうかということについては、これは問題であろうと思われます。各市町村、各都道府県がおのおの独立の財政主体として財政運営を行なつておりまする以上は、その府県その市町村内の住民の各階層間において負担の不均衡があつてはならない、やはりその間に負担の均衡が保たれなければならないというふうに私は考えます。それでこういつた地方税における負担の不均衡を是正するのにはどういつたことが考えられるかということについてちよつと申上げて見ますると、例えば市町村民税については法人に対する所得税割を設けるという説も出ておりまするが、これはシヤウプ勧告において本来、法人というものを從来の日本税制の場合と違いまして、個人と別個の納税主体と認められておりませんので、この点はなかなか実現がむずかしいのではないかと思われます。從つて法人に現在課税されておりまする均等割につきまして、法人の資本金額の大小によつて均等割に段階を設けるというようなことも考えられるわけであります。それから個人の場合におきましては累進税率所得割に適用する。併しこれは今年は所得税に対して一八%と決まつておりまして、すでに所得税を累進にいたしておりますのでそのまま今年直ぐに使うことはむずかしいかと思われます。御承知のように所得税割は各人の所得金額に対しても課税し得るような組織になつております。それでまあそういつた方法を使えば累進税率を適用するということもできるわけであります。それと同時に個人の均等割額は今度の改正法では相当高いのでありますが、これを可なり引下げるということも考えられるわけであります。それから事業税につきましては、個人の場合にはその業主の労賃部分に当るようなものも相当所得の中に含まれておるといつたような関係からして、法人に対して個人よりも事業税幾らか高くする。又全体的に軽い累進税率を適用するというふうなことも考えられるのであります。又固定資産税について免税点を引上げるというふうな方法もあるのであります。改正税法に関しまする第二の問題点は、今回御承知のように地方税收入は四百億円増收になるわけでありまするが、地方団体と申しましても一万何千もありましてその事情は千差万別であります。從つて地方団体については非常に増收になるものもありましようし、却つて減收になる団体も出て来るわけであります。その最も著しいものは農業県の場合が税收入が却つて減收する傾向があります。と申しまするのは、御承知のように新らしい府県税制事業税、特別所得税、それから入場税、遊興飲食税、まあ大体そういつたものを主軸にいたしておりまするが、事業税は御承知のように農業や林業には賦課されません。從つて農業県の税收入というものは非常に少くなるのであります。私が最近長野県を調べましたところでも、税收入の二倍の平衡交付金を貰わないと財政の運営がやつて行けないというふうなことを言つてつたのであります。それからもう一つ、府県税制については非常に同一の府県内において都市から上がる税收入が非常に多くつて税收入が同じ府県内でも偏在するという点が一つの欠陥として指摘されております。これは道府県というものを一つの自治体として一体的に考える場合には一つの重要な問題になり得ると思うのであります。  こういつた農業県の問題に対する対策といたしましては、地方財政平衡交付金で農業県が必要とするのに十分な交付金を與え得るように、地方財政平衡交付金の額を確保する。御承知のように今回の地方財政平衡交付金法によりますると、制度上はこの平衡交付金の総額に対しては何らの制度的な保障は與えられておりません。それは一に国会の審議にかかつておるわけであります。從つてこの点について十分平衡交付金の総額を確保すると共に、農業県等へも十分な交付金が配付されるような組織を持たしめるということが重要であります。それと同時にこれもシヤウプ勧告に基きまして昭和二十五年度に限つて地方の災害復旧、土木費の全額国庫負担をすることになつております。これは併し二十五年度だけの特別措置でありますが、この制度を今後も継続して行くということが農業県、その他の弱小地方団体にとつては非常に重要な問題であろうと思われるのであります。改正地方税法案の第三の問題といたしましては、これは制度そのものと申しますよりは制度の運用に非常に関係がございますが、市町村税は、今回の税法によつて四百億円増收になる予定になつております。ところが市町村民税は、市町村民税だけと比べますると從来の約五倍近くになり、又固定資産税も從来の地税、家屋税と比べると三倍半にもなる、そうして固定資産税は先程からお話がございましたように、非常に評価徴收のむずかしい税金であります。從つて市町村の住民の担税力なり、又納税意識というふうなものの現状から考えまして、果して制度上與えられたこの四百億円の増收が現実の増收となつて現われ得るかどうかということにはいろいろな問題があると思われるのであります。市町村の税收入が十分に上がるためには、市町村の税務当局者のみならず住民がそれに対して熱烈な自治意識を持つて協力することが必要でありますが、そのためには先程申しましたように、住民の各階層間における負担の均衡化を図るということが先ず第一の前提條件であろうと思うのであります。そうしてそれと同時に、住民が今後地方団体の自治活動に十分な認識を持つと共に、各市町村が十分徴税機構を整え、又税務吏員の素質を向上するといつたようなことがなくては、今度の市町村税というものは予期通りの收入を上げ得ないのではないかというふうに思われるわけであります。私が今度の税制改正案につきまして感じました主な点を申上げたわけでありますが、現存都道府県市町村は御承知のように、前の税法の不成立によりまして非常な財政の混乱を呈しております。從つて今度こそは国会において各方面輿論を斟酌されまして、一日も早く完全な税法を制定されて、この混乱を救われるということを切に希望する次第であります。
  24. 岡本愛祐

    岡本委員長 只今の藤田武夫君の意見に対して御質疑をお願いいたします。
  25. 安井謙

    安井委員 ちよつと伺いますが、今の固定資産税、いや事業税の現行が中小企業者には負担過重になつておるというのはその通りだと思いますが、その点につきまして新らしい附加価値税がむしろ考え方としてはこれを非常に大きく是正して行くと思われるのでありますが、比較対照してどう考えられるか。
  26. 藤田武夫

    ○藤田公述人 附加価値税につきましては、その税收入の面から見ますると大体六割までが法人の負担になるであろうということが推計されております。そういう点からいたしますと、中小企業者と大企業、大会社との関係から見ますると、それによつて中小企業が積極的に負担軽減されるかどうかはこれは別の問題だと思いますが、相対的な関係からいたしますると、附加価値税の方が大企業者、大会社には重くかかるのではないか。そういうふうに考えます。
  27. 安井謙

    安井委員 そういたしますと、方法として適宜な方法が取れるような附加価値税を採用した方がよろしいとお考えですか、それとも事業税をそのまま残した方がよろしいのでございますか。
  28. 藤田武夫

    ○藤田公述人 附加価値税につきましては、先程から公述人の方々からいろいろな問題が出ておりますが、私も附加価値税についてはまだ今後研究の余地が十分あると思うのであります。それで現在私の考えておりますところは、附加価値税は現在の日本の各企業の帳簿組織なり、その他の経理組織、又地方団体の徴税能力というふうなものから考えますれば、附加価値税をここ一、二年の間に実施するということは、相当無理であるというふうに考えております。併しながら、若しどうしても附加価値税を実施しなければならないという場合には、これにはいろいろ問題もあるわけでありますが、附加価値の計算の方法を今までの税法では、総收入、総売上金額から総支出金額を引くという方法でやつておりますが、そういう方法は現在の日本企業の状態から見て非常に混乱を来たし正確なものが取れませんので、むしろ利潤と労賃と地租と地代を計算するというような方法によると共に、税率はこれは可なり引下げるべきである。それと同時に附加価値税というものは、税金の性質がまだはつきりしておらないのでありますが、これを製品の価格の引上によつて転嫁する、流通税にするということもシヤウプ勧告にも認められておるようでありますが、これははつきりと私自身の考えとしましては、收益税として税率を可なり引下げるという方法で実施するよりいたし方がないではないか、そういうふうに考えております。
  29. 中田吉雄

    ○中田委員 事業税で、非常に中小企業の方に重く大きい法人で軽く徴税されておるようなことは、徴税技術の欠点、例えば国税におきまする税務署のような完備した徴税機構がある場合は十分防げるではないかと考えられる向もあるのですが、そういうことによつては是正されませんか、そういう中小企業に重くなつている事業税に。
  30. 藤田武夫

    ○藤田公述人 只今お話のように徴税機構の点も勿論影響はいたしておるとは思いますが、併し税金の組織そのものが法人の場合には御承知のように所得の計算が非常に嚴密に算出されるようにできておりまして、中小企業の場合には、その中小企業業種により又家族の労働に対する賃金というふうなものも所得のなかに含まれて普通は出されておる場合が多いのであります。そういうふうに所得の計算の方法が両者において違つて参りますので、どうしても事業税負担というものは中小企業者に重くかかるわけであります。若し附加価値税でありますれば、これは労働賃金というものも御承知のように附加価値額の中に算入されますので、從つて法人の場合にもそういうものが附加価値額の中に入つて来るということで、法人の負担相当重くなつて来るわけであります。徴税機構だけで問題は解決しないと思われます。
  31. 岡本愛祐

    岡本委員長 他に御質問ございませんか。
  32. 相馬助治

    相馬委員 この法案が前国会不成立であつたために地方財政が混乱を来たしておることはまあその通りだと思います。それで成るべく速かに通して頂きたいという一つの希望條件が述べられて、成るべく速かに通す前提としていろいろの條件を挙げられました。そのうちの一つに平衡交付金を増さなければならない。理由としては階級別的にも、業種別的にも、地域別的にも非常に負担の均衡というものが破れる危險性がある。これは政府提案説明の理由とはまるつきり逆のわけです。そこで学者としての先生の立場から見ますと、こういうふうに平衡交付金を法的にまで措置して額を抑えそうしてそれを増加して、やがてバランスをとらなくちやならんということは、逆の面から見れば現在論議されておりまするこの地方税法案というものは、現実の日本の置かれておる地方の状況からは極めて矛盾に満ちた、又いろいろ面白くない内容を含んだ法律案である、こういうふうに了解してよろしいのですか。結論的にいうと、政府原案地方税法案というものは誠にあれはおかしな法案なんだ、こういうふうに了解してよろしいのですか。学問的な立場からで結構であります。
  33. 藤田武夫

    ○藤田公述人 お答えいたします。地方団体に自治的な財源を十分與える、そのために増税をするというやり方は、これは地方自治の発達のために一つの重要なやり方だと思われます。ところが税源を地方へ與えて見ましても、各地方の経済力に甚だしい差違がある。これは否定し得ないのでありますが、そうなれば幾ら税源を與えて見ても貧弱な団体と富裕な団体との間に谷間ができるということは、これは世界的な傾向でありまして、どこの国でもそういう現象は現われております。從つて平衡交付金によつて埋めなければ地方団体の財源が十分に充たし得ないということだけで以て、その地方税法が惡い、適さないということは言えないわけでありまして、一般的な傾向としては、どうしても各地方団体間に、大都市を中心とした府県などには非常に税收入が殖える、そうでないところは税收入の殖え方が少い。そうしてその間に谷間ができて、そうして而も貧弱な団体にも大体国民的な水準の事業施設を行わせるというためには、これはどうしても平衡交付金が必要なのでありまして、これは決して今度の税法だけの欠陥ではなくて、根本的な経済社会の機構といいますか、そういう基礎から出ている問題であります。從つて今回の税法がそれだけで適しないということは言えないと思われまするが、その谷間が今回程大きくできることが適当であるかどうかということになると、これは税制の立て方によつて違うわけでありまして、今回の税制では先程申しましたように、府県税では事業税とか入場税、遊興飲食税、而も農業には事業税を課さないということで、谷間が一層大きくなるというわけであります。それから各階層間における負担の不均衡ということは、これは今の問題とは別でありまして、これは税制の立て方によつて或る程度緩和することは十分できると思われます。
  34. 相馬助治

    相馬委員 今のお答えは非常に問題は含んでいるが、或る程度制度の運用の妙を期すれば救い得られるであろう、こういうふうに了解いたします。  そこで今先生がお話されたうちの地方団体と地方団体の間の谷間の問題も、非常に大きな問題ですが、同時に、先生もよく御了解だと思いまするが、今の日本地方民は、地方税というのは国税に比べまするとこれはゆつくり納めてもよろしいのだ、金ができてからゆつくり納めても仕方ないのだ、こういうふうな考え方が現実にあるわけです。それともう一つ地方団体が財源を與えられても、日本の現実では不渡手形を預けられたようなものだ、私共はこういうふうに見ている。そこで総括的には制度の運用の妙味を発揮してもなかなかに救い難い矛盾を内蔵している。結論的にもさよう了解してよろしいでしようか、総括的には。
  35. 藤田武夫

    ○藤田公述人 非常にむずかしい御質問ですが、矛盾と申しまするか、税制の立て方のうちにいろいろな問題があると思われまするが、又一部からは税制の運用によつて救い得る部分相当ある、そういうふうに考えております。矛盾の部分も勿論含んでいるということは認められると思います。
  36. 中田吉雄

    ○中田委員 固定資産税を都道府県から市町村に委讓しましたことは妥当な税制改革だと思われますか。
  37. 藤田武夫

    ○藤田公述人 固定資産税を都道府県から市町村へ移したということが妥当であるかどうかということは、これはいろいろな問題を考えなくては簡単にお答えできないわけでありますが、御承知のようにアメリカの市町村の財源は財産税、実質的には今回の固定資産税に非常に近いのでありますが、これが市町村の財源の九〇%以上を占めております。そうしてシヤウプ博士の頭の中にも、来られた最初からそういう考えがあつたようなことを聞いておりますが、市町村の税源というものはこれはその市町村の事業施設によつて一番利益を受ける家屋とか土地とか、又明確にそれが掴み得るところのそういつた不動産から上る税收入でできれば大部分を賄つた方がいいというような考え方があつたように間接に聞いておりますが、そういう点から恐らく市町村税になつたのであろうと思われます。それからそういう理由の外に、制度の運用の面といたしましては、各家屋土地それから特に償却資産につきましては広範囲に亘る都道府県の範囲を対象として評価したり徴税をいたしますよりは、市町村が主体となつて狭い範囲徴税をした方がむしろ実情に適した徴税ができるのではないか、そういうふうに考えております。
  38. 中田吉雄

    ○中田委員 この度の改革で附加税制度がなくなつたのは非常な大きな改革だと思いますが、附加税制度をなくしたことが府県間、市町村間の財政のバランスを非常に破りまして、そのために平衡交付金に非常に多く依存せざるを得ないという、特に農業県などがそうですが、そういうことによつて地方自治財政的の裏付が一層多く破壊されるというようなことは考えられませんですか、その附加税制度の撤廃の是非ですね。
  39. 藤田武夫

    ○藤田公述人 附加税制度が今回撤廃されましたことは、御承知のように日本地方税というものが昔からずつと附加税中心主義でありますが、これを思い切つて廃止したということは非常に地方自治の発達という観点からは優れたやり方であると思われます。それによつて地方団体間に税源の不均衡が生ずるということは今お話のような結果が出ると思われます。併し私の考えといたしましては、それよりも各住民が自分の市なり町なり又県に一体どれだけの税金を納めておるかということに対する認識ということが明確になることが地方自治の発達の前提條件である、そこから地方団体の事業施設、行政活動に対する批判も高まつて来るわけでありまして、そういう点から見まして、附加税制度を廃止したということは少くとも地方自治の観点からはこれは尊重さるべきやり方であると思います。
  40. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御質問ございませんか。それでは次に移ります。  住民税について、東京都議会議員、本島百合子君。
  41. 本島百合子

    ○本島公述人 今般改正されようとしております地方税につきましては、先程委員長が申されましたように、大体四百億円の増額が見込まれておるわけであります。これは国におきまして直接税で大体同額のものが削減された、その減税なつた分だけがそつくり地方税にかかつて来るというような感じ方をいたしまして、納税者立場から申しますと、少しも減税にならないという感が深いのでございます。只今国民の生活は全く不安に覆われておりまして、納税の苦しさから生活苦、又生活の苦しさから自殺する人や或いは一家心中をする人達が数を増して来ております。こうした時期におきまして、而も国民所得は二十三年の下半期から段々收入は減少しております。そして二十四年に入りましては政府でいたしました行政整理や企業整備、そうしたことによります失業者等が非常に多くなつておる。中小企業や商業等の不振等によりますところの給料の遅拂が非常に多くなつて来ております。こうしたときに一〇〇%の納税を期待することができるかどうかということは私共は非常に疑わしい感じを持つておるわけであります。從いまして、こうした時期に過重な税金を決めるということは時期的に大変まずいのじやないか、でき得るならば、この本年度の收入が昨年度の收入と比べて、又インフレ時代と比べまして殖えておるという時期であればよろしうございますが、逆に減つておるという時期にこうした税金の値上をするということは、非常に苛酷なような感じがいたします。而も直接税におきましても地方税におきましても、大体二〇%から三〇%の納税不能者があるということは御承知通りで、物価は下つたと言われておつても、その下つておる物価でも買うだけの力が今勤労大衆の懷ろにはないということが言えると存じます。而も生きて行く上に一番必要な主食は、大体終戦後十一回目の値上をいたしまして、百三十一倍となつておりまして、この固定資産税などが決りますと、当然土地家屋など、或いは電気、ガスなども上るだろうと予想されております。こうした時期に国民の收入が減つて来るということを私は痛切に感じる次第であります。而も地方税中一番高率に上つて来るものは市町村民税であろうと思います。只今藤田先生からも申されたようでありますが、市町村民税に至りましては大体二五倍と申されております。併し私共の調査いたしましたところによりますと、三倍から六、七倍に値上りする。人によつては七倍近いものが上るというような結果が出て来ると存じます。大体の表といたしまして現行税の合計と、改正になります合計と、その倍率の上から見ますと、全所得年收五万円の方が現行では五百六十円であつた、これが改正案で申しますと二千六百円で、大体四・七倍となるわけであります。年收十万円の方が現行では千六十円であつたものが、改正案で参りますと五千三十円となつて、四・六倍。二十万円の年收の方が現行では四千四百四十円であるものが、改正案で一万二千五百円となり、二・七倍となつて参ります。大体この三十万円が中間になります。三十万円の所得者が現行で九千百二十円で、改正案で二万一千五百円となつて二・三倍となりますから、この中間のところが大体政府で言う二・五倍という考え方であつて、五十万円の年收の方につきましては、現行では三万五千三百八十円となり、改正案では四万一千三百円となつて一・六倍となり、百万円の收入の方は現行で七万八千七百八十円で、改正案では九万八百円となつて僅かに一・一倍となつております。この表から考えましても、如何に少額所得者が税金が重くなるかということが明白となつて来ると思います。大体二十四年度には国から一人当り千四百五十円と指示されて参りまして、その枠の中で累進課税的に均等割、家屋割、所得割というようなものが入つておりますので、資産の多い方はそれだけ沢山の税金を抑えたのでありますが、勤労者の少額所得者はその比率に少くなつている。ところが今度の改正案では均等割だけで計算されるものですから、少額所得者程この住民税は高くなつて来るということになつております。大体本年度の一人当りは二千八百四十九円六十銭と言われておりますが、こういう一つの枠があつて、その枠の中からどれだけをとつて行くということになりますと、個人の所得者に対しまして、先程藤田先生もおつしやつたように、法人分が非常に安くなつておる。それだけの分を個人が負担しなければ地方財政の或る程度徴收はできないということが考えられて、個人負担がもつと重くなりはしないかという不安を強く持たれておるような次第でございます。法人分につきましては均等割だけになつておりますので、東京都の例で申上げてみますれば、大体今度の改正で三十億円程度の増額を見込んでおります。併しその見込まれたものの中には少額所得者に犠牲を多く拂わせる。先程の表で申しましたように、少額所得音程倍率の高い税金が決つて来るということになりますので、私共はこの法人分の均等割というのを均等割でなく、從前の資産割とか、或いは所得割のようなものを何か考えて頂いて法人分を引上げて貰いたいというような感じ方を強く持つている次第であります。殊に東京都のような場合におきましては、交付金のことも大体ないようで、これだけの増税をいたしましてもプラス・マイナス零で、納税者から言いますれば財政は少しも豊かにならないし、私共の公共事業というものがどういうふうになるかという不安を強く持つておるような次第であります。均等割につきましては、政府で決められようとしておりますところの都市におきます八百円、一千円、税率というものが決つておりますが、これは皆様方承知でありますので、省略さして頂きますが、大体制限税率というものが決められますときには、当然地方財政が窮乏しているところにおきましては、この制限課税までとるということをお考え頂きたい。そういたしますと、八百円であるものが千円になるということをはつきり御承知つて皆様方にこの均等割をお決めになつたその上り方が非常に高くなつているということをお考え頂きたいと思います。均等割の個人分が非常に上つているということは、現行で大体東京都は百九十円であつたものが一躍八百円となる。そういたしますと約四倍半からの値上りであります。法人分は二千二百円でございますから一割弱の二百円しか上つておらないという結果になりまして、個人と法人が非常に税率の点で法人が守られている、個人に過重な税金が課かつて来るということがはつきりいたすのでありますが、私共はこの均等割に対しましてむ、もつと個人分に対する税率を下げて頂きたい。そうして法人分はもつと上げて頂きたい。そうして或る程度の開きを狭めて頂けばいいのではないかと考えておるような次第でございます。個人分を支拂いますときには、その支拂う人が大体所得のある成人と今度は改正されるわけでありますが、今の日本の勤労大衆の生活を見ておりますと、少額所得者の家ほど大勢の人を働かしておるわけであります。その一人一人にこの均等課税というものは課かつて来るので、大世帶の貧乏やり繰りをしておるような所に住民税が非常に大きく課かつて来る。それに反しまして大邸宅に住んでおられて沢山の收入を取られる方は、自分一人で働いておつても向生活に裕りがあるというような所でも均等割八百円だけでございますので、非常に矛盾を感じるわけであります。例えば防空壕や小住宅のバラツクに住んでいる人達が、二家族三人世帶或いは十人世帶という所で三人、四人と働いていらつしやる家ほど税金が高くなる。大邸宅の豪壯な生活をしておられる方々が非常に少くなつて来るというようなことは、私共といたしましては最も考えさせる点でございましてこの点を一つ独立した生計を営む者と改めて頂いて、從前通り世帶主一人に課かつて来るということになれば、或る程度の不平等は避けられるのではないかと考えております。所得割につきましては、大体現行法で行きますと、大変高い累進課税となつておりますので、私共は大体そうあるべきだと考えておりました。改正案で申しましても、大体は所得税額の一割八分ということになつておりますので、累進課税的になつております。併しこのことはもともとの基礎となりますところの所得税について私共は考えるのであります。何故かと申しますと、基礎控除が現行一万五千円から僅かに二万五千円に引上げたということは、大体一人々々の生活の最低生活が保障されるものであるかどうかと申します。と、この点の引上げ方はもつと引上げて頂いて、そうして勤労控除が逆に二五%から一五%に引下げられたというようなことは、勤労所得者にとつてはこれは基礎控除の引上げの効果を減殺するような形になつておりますので、私共はこの点から考えて来まして、多少累進課税的にはなつてつても、少額所得者が非常に辛い税率になるということを考え、この一八%というのをもつと切下げて頂きたいと願う次第であります。二万五千円の引上げと申しましても、それは月額にいたしますと二千八十三円弱でありまして、官公吏の最低号俸の給與で行きますと二千四百円であります。從いましてこの人達がこの課税から逃れることができない。而も二千四百円で今日一人暮して行くことができるかということになりますと、絶対に生活の維持はできないというようなことになるわけであります。私はこうした意味におきまして、今回審議されております状態を見ましても、附加価値税や或いは固定資産税については相当論議もされ、言われておりますが、市町村民税になりますと余り論議されていないように聞いております。而も私共実際に生活を立てておる者の立場から考えますれば、この少額所得者ほど税率が高くなつて来る、倍率が高くなつて来る、その市町村民税が決められようとしておるのでありますので、この一人々々の会計、殊に主婦連が財布を開くときにどんな思いをするかということを考え合せますときに、何とぞ均等割八百円を少額所得者全部にかけるのではなくて、世帶血一人にかけられるように訂正をして頂き、又法人分が法外に安くなつておるのを、そうしてそれの分だけを何と申しますか、個人分で負担しなければならんというようなこうした矛盾を何とぞ皆様方の御賢察によりまして是正して頂きたい。そうして納得できる税金で完納ができ、地方財政の確立ができることを私はお願いする次第でございます。以上を以ちまして私の公述を終ります。
  42. 岡本愛祐

    岡本委員長 本島百合子君に対する御質問を願います。
  43. 鈴木直人

    ○鈴木委員 この前の国会において婦人代表として船田さんの奥さんから税に対する御意見をお聞きして非常に感銘を深くしたことを記憶しているのでありますが、その際のことを簡単に申上げて御意見をお聞きしたいと思うのですが、現在家庭の主婦の立場に立つて、そうして子供を小学校或いは中学校、高等学校等に入れておる、そうして毎月々々PTAの会費とか或いは給食費とか或いは何というようなことで非常に多くの金をお母さんにねだつてつて行かれる。それを毎月計算をして見るというと、まあ大体において年收十万円くらいの方で二割、一年に二万円近くになるくらいの額になる、子供を三、四人学校にやつていると……。從つてむしろこの方面が非常に辛い。そこで今度の税制では寄附を全然取らないというような立場で以てそれが嚴格にやられる。そうして税のみによつて学校のいろいろな諸経費というものも賄つて行くことができるのであるということが、本当にこれが実施されるのであるならば、むしろ住民税のごときは実際安い。この程度の住民税で、それであと教育費を殆んど取られないということになるならば、計算して見るというとむしろその方が安いというようなことでお話をお聞きしたのでありますけれども、各学校にいろいろ取られる経費と、この住民税との関係においてどういうふうにお考えになられますか。
  44. 本島百合子

    ○本島公述人 大体寄附行為ということで、寄附の率を含めて今度の税制改革になつておると思います。東京都も大月一日に寄附行為取締條例というものを作りまして、寄附金募集を止めさせるような方法を取つております。併しそうしたものを支拂つてつておること自体がおかしいことであつて、国の予算なり地方公共団体の予算で以てすべてが賄われるということが原則であると思います。從いまして私が申上げましたのは、少額所得者が非常に高率にかかつて、法人並びに高額所得者が非常に甘い汁を吸う、と申しますと惡いかも知れませんが、大体非常に保護されている。こういう立場に立つて、今のあなたの御質問のように、寄附金を取られるならばむしろ税金で支拂いたいという方は相当支拂う能力のある方だと思います。現実にはそれだけ支拂う能力が今日の東京都の場合都民にないということが言えますので、税の建前から言つて、私は支出と收入の点については必要なる額だけを住民から取るのではなくて、取れたものの範囲内において最高度の仕事をして行くともう建前を取つて頂ければいいのではないかと考えておる次第でございます。
  45. 相馬助治

    相馬委員 女性としてお一人の公述ですから、私特にお尋ねしたいと思いますことは、只今鈴木委員がお話された中に現れておるように、寄附金の問題は全く主婦の方にとつては大きな問題だと思う。而もその寄附金の内容をなす重大なものが教育に関する寄附である。いわば親心の弱味につけ込んでどうにもこうにも納めなければ義利の済まんような内容を含んでおる寄附が極めて多い。私たちはこういう現実を知つております。そこで先の国会を私は存じませんが、船田さんとかいう方の公述の中に、そういう寄附が全部廃されるならば住民税の課税は高くないというお話だそうですが、このことはすつかり間違いです。なぜ間違いかと申しますと、私は今次国会においてもこの法案の審査の過程において政府質問をしております。そうしますると、国としては強制的に寄附行為を止めさせるような法的措置をする用意がないと言明しております。地方の條例を見たところが、現実に教員の給料までこの地方税によりて賄われるというこの段階においては、私は強制寄附は当然形を変えて又半租税的な性格を持つて主婦の皆さんのところへのしかかると私には推定されるのです。從いましてあなたは主婦の立場から、国家としてそういう強制寄附は止めろというような強硬なる法的措置をこの際要望なさるかどうかということが第一点です。  それから第二点は、市町村民税の均等割の問題に論を及ぼしまして、極めて立派な資料を示されての諄々のお話で、非常に参考に相成りました。その中に制限課税まではどうしても取られる傾向があるからさよう承知しろというお話が教訓的な意味であなたの口から出ておりますが、私もさようだと心得ております。そういたしますると一つ問題がありますることは、大きな所得を持つておる者は比較的楽かも知れませんが、実はこの法案を見ますと、生活保護法によつて補助を受けて。る者は一銭も納めない、ところが生活保護法によつて補助を受けていなくとも、現実には明け暮れの糧に困つておるような方が多いわけです。そういうところをどの人にもおしなべて八百円かかつて来るわけです。そうするとあなたの御意見ですと世帶主一人についてかけるように持つてつて呉れと申しておりますが、この問題については如何でございましよう。この二点について特に御意見を聞かせて置いて頂きたいと思います。
  46. 本島百合子

    ○本島公述人 御質問は後の方から答えさせて頂きます。今言われました通りに、今日生活保護法を受けておる人と生活保護法を受けないですれすれの線の人たちというものが非常に多いということは戦争によります戦争未亡人で、それからその後におきます未亡人の方たちを調査いたしますと、全く生活保護法を受けなければやつて行けない立場でありながらいろいろの條文に引つかかつて受けられないという実情にあります。そういうんたちが均等割八百円を拂うということについては、という御質問でありますが、私先程申上げるときに申落したのかも存じませんが、こういう点につきましては或る程度の免税点を設けて頂きたい、その家族と收入の度合において最低生活の維持できないというところに一つの線を設けて頂けばよいのではないかと考えておる次第であります。それからもう一点の強制寄附についてでございますが、これは私は政府に対しましても強制寄附については当然止めて貰うという考え方を持つております。そして少くともとにかくあらゆる意味におきまして、国家予算でも地方財政でもどつかに冗費というものがあると私は考えます。そうした意味から冗費節減ということの大きな立場に立つて、その点からも、或る程度のことは緩和されるのではないかと、こういう考えの下に強制寄附ということは国においても止めて頂きたいと痛切に考える次第であります。
  47. 相馬助治

    相馬委員 もう一点。多分お子様を学校に学ばせておられると思うのですが、お母様の立場から特に教育費を、而も義務教育費を全額地方財政の下に隷属せしめるというこの本法案の行き方に対しては如何お考えでしようか。
  48. 本島百合子

    ○本島公述人 このことは曾て昭和七年頃だつたと思いますが、間違つておりましたら皆様方の方が十分に知つていらつしやると思いますが、やはり今と同じような状態で地方の先生方が殆んど給料を貰えなかつたという姿があつたと思います。そういうことを考えればやはりこれは地方税にだけによるのでなく、やはり国と考え合せて貰うべき性質のものだと私は考えております。
  49. 竹中七郎

    ○竹中委員 ちよつと一点お伺いしたいと思いますが、住民税だけで御研究になりますというと、非常にそういうふうになりますが、この度の税制固定資産税とか、いろいろなものの総合的の税期でありまするので、必ずしも私達考えますというと、零細な人がうんとやつて、中くらいの人が非常に軽くなつたということは考えられないように考えますが、この固定資産税その他の問題に対しましても御研究になつて御発表になつたのでございますか。ただ住民税のみを取上げますと非常に下権衡になりますが、外のものを総合いたしますと、或いは私も先程の藤田さんが申されました通り、少額の收入者の方々がちよつと重いと、こういうことは認めますけれども、ただあなたのお説を伺つておりますと、まるつきり外の者は少くて少額收入者が多いというふうに受取れますが、その点を御研究になつて御発表になつたものでありますが、その点をお伺いいたします。
  50. 本島百合子

    ○本島公述人 固定資産税につきましても、藤田先生の意見と私は大体同じような意見を持つておりまして、この倍率についてはもつと引下げるべきだ、時価換算の問題につきましても又本日の新聞あたりに一・六というふうに言われておりますが、この点につきましてももつと下げるべきものだと考えております。併し市町村民税との考え方といたしますれば、固定資産税において課かるものは勤労者の全部でないと思います。而も又勤労者の人達が家を借りておるとか、土地を借りておるというようなことで家賃や土地の値上りに撥ね返つて来ることは又火を見るよりも明らかでございますけれども、私はこれは全部の人が持つておると言われないものですから、例えば働く人達の立場に立つて、その人達の線には少いと考えております。從いまして住民税の方が苛酷になつて来る。撥ね返りの線で申しますれば、これは税の話と違つて物価の問題に入つて来るのじやないかと考えておるようなわけでございます。
  51. 竹中七郎

    ○竹中委員 固定資産税の方は大体三倍以上になる、こういうことになりますので、この点よりしますというと、まあ三十万円とか或いは五十万円の例をいろいろ御説明になりましたが、これと市町村民税とのバランスをとりますと、馬鹿に違うというふうにはとれないと私は考えますが、あなたの方では今の家賃の問題があるから非常に違うとお考えになりますか。
  52. 本島百合子

    ○本島公述人 そうでなくて、土地家屋を持つておる勤労大衆、少額所得者は少いというわけなんです。それで結局その上つたものが当然地生、家主さんが支拂わないで、店子にかけて来る場合には物価の撥ね上りとして帰つて来るから、この税金の立場からとれば私は固定資産税の方がいいと言うのです。
  53. 吉川末次郎

    ○吉川委員 本島さんの主として住民税を中心としてのいろいろな御意見、大体において私も賛成の点が非常に多いのでありますが、別に本島さんの御意見反対立場から申上げるわけのものではないのでありますが、本島さんがおつしやいました一家のうちにおいてそれぞれの所得者に個々に一人一人均等割及び所得割の住民税が賦課されるということは從来に比べて非常に増税になるからして、從来と同じように戸主、或いは主帶主にだけこれをかけるようにして実れという御意見でありますが、この点について非常に御尤もだと思うのですが、併しながらシヤウプ勧告がそうしたことを指示しておりますのは新憲法の精神に副うて、從来の日本の家族主義を個人義的な観点から還元して行こうということの考え相当にそのうちに含まれていると思うのですが、勤労者に対する税金が多く賦課される。これを軽くしてやらなければいけないという点については全く同感でありますが、そうしたシヤウプ勧告意味しているところの家族主義より個人主義へということの立場は私は重んじられなければならない考えじやないかと思うのですが、本島さんは婦人解放運動に從事していらつしやると思うのですが、そういうことの矛盾といいますか、相関性といいますか、そういうことについての考え方をもう一度一つ説明して頂きたいと思います。
  54. 本島百合子

    ○本島公述人 今御質問になりました点につきましては、一応今まで税の面から見て合算税で、総合所得の中から税金が課けられて来ておつた。それが非常に高率なものであつたので、一人一人に分けて支拂う方が安くなるということを言う方がございます。併し私共は大資本を持つたり、或いは財産を持つておりませんものですから、低い、收入の少い線の、数の多い線から見まして、その点から言えば非常に高くなるということで、一応世帶主に限定して頂きたいと考えるわけでありますが、税の面からではそういうことは言えますが、思想的には個人主義と家族主義の面については別の機会に意見を述べさして頂きたいと思います。税の面では今までの総合所得という合算税は非常に高かつたということを思います。併し今度の均等割で一人々々かかるということになれば、その点から言えば安くなるかも知れない、併し少額所得者を私共は対象として、而もそれが国民の九五%であるとしたらば、その働く対象の人達の收入と支出を考えて行きますので、この点では反対であるということを申上げます。
  55. 岡本愛祐

    岡本委員長 どうも有難うございました。  それでは次、一つ般的観察について千葉県東葛飾郡新川村眞通新藏君。
  56. 眞通新藏

    ○眞通公述人 私は千葉県の農村から遥々やつて参つた者でございます。諸先生方のように私は深く研究は持つておりませんが、本当に農村の立場から忌憚のない意見を申して見たいと存じております。いよいよ近く実施に移されます地方税法案は、本邦税制史上全く画期的な税制でございまして、私共最も関心の強いものがございます。これら重要法案の実施は、私達国民生活の上におきまして多大の影響をもたらすことは必至でございまして、これが衝に当るところの全国の市町村並びに徴税の衝に当るこれらの職員の任務は本当に重大なものであると思います。私は昨年まで実は村の役場におりまして十七ケ年ばかり徴税の仕事をやつておりまして、昨年実はやめまして只今百姓をやつておる者でございます。この地方税については、ふだん本当の素人に研究でございますが、ぼつぼつ農村の状態を研究しておる次第で、本日遠慮のない意見を吐かして頂きたいと思います。  今度の地方税の発布に当りまして、最も困難を予想されますものは、何と申しましても固定資産税であろうと思います。そうしてその固定資産税は、その評価の問題が最も重大な課題の一つではないかと思います。そしてこれに関連するところの評価委員の選任並びに評価委員達の任務の遂行の点でございます。本法は私はよく存じておりませんが、この評価委員の選任に当りまして、仄聞するところによりますと、市町村内に五名乃至は十名くらいの評価委員が置かれるのじやないかと予想されておりますのですが、この評価委員の設置につきましては、これは現在全国の市町村に置かれております農地委員会或いは選挙管理委員会、ああいうような組織で市町村役場の徴税機関以外のいわゆる機関によつてこの評価の仕事を担当することが最も公平に、而も遠慮のない査定ができるのじやないかと、そういうような農村の側の要望がございます。本法案は果してどのような評価委員の選任組織が編成されるかよく分りませんが、地方農村の要望から申しますと、かような提唱をいたしたい次第でございます。そうして今度の地方税の実施に置かれまして、全国の市町村役場の徴税機構の問題でございますが、これまでの市町村役場の徴税機構は、申しては失礼ですが、はつきり申しますと、とても弱体でございます。ですからこの厖大な地方税の実施に当りましては、もつともつと市町村役場の徴税機構というものを根本的に、整備と申しますか、とにかく整備拡充の線にもつともつと政府当局が関心を持たれまして、現在の税務署でやつております国税ですらも、なかなか国家の養成機関で養成されました專門の税務担当の者ですらも、なかなかこの徴税が困難な仕事でありまして、これが果して市町村役場の現在の職員、経験と申しては何でありますが、極めて研究の浅い存在が相当多いのでありまして、そうした組織の中へ、この厖大な大事業を織込んで行くことは、相当容易な仕事じやないと思われます。かかる見地から地方自治庁なり或いは政府当局なり、そうした面でこうしたいわゆる徴税公吏の養成をもつともつと根本的にやつて頂きたいと思います。そうしてこの税制のもつと円滑な運営を望むものでございます。  徴税機構の整備の問題でございますが、それから先程先輩方が申されましたいわゆる住民税の均等割の問題ですが、農村方面としては、人口五千程度の町村においては四百円になつておりますが、これは地方農村の要望としましては二百円くらいが至当じやないか。三百円……、そうした要望が相当ございます。これならば源泉徴收に無理がないというような町村も大分ございました。実は私本日ここへ参りますについて東葛方面の数ヶ町村でいろいろ伺つてつたのですが、せめて原案の半額くらいに行かなくてはなかなか容易じやないかという要望が相当ございました。私の村は野田市の近在でございまして、人口五千六百を数える小さな村でございますが、昨年は所得税が約七百万円、住民税が三百五十万円、県民税三百万円で千三百五十万円ばかり納めております。今度の地方税の推算によりますと、大体所得税が今年度は八百万円、又附加価値税が実施されたと仮定しまして百万円、又それにいわゆる住民税が八百万円ですか、大体そのようなわけで千七百万円くらい行くらしいような傾向が見えております。結局はかれこれ合算しますと、大した増税ではないという推算が出ております。
  57. 中田吉雄

    ○中田委員 その数字をもう一度……。
  58. 眞通新藏

    ○眞通公述人 今度の税制が実施されました場合に千七百万円くらい、人口約五千六百万の村ですが予想されております。これは村から出て行くあらゆる税金を全部合せた金額でございます。
  59. 中田吉雄

    ○中田委員 昨年は幾らですか。
  60. 眞通新藏

    ○眞通公述人 概算ですが、住民税が三百五十万円ばかり出ておりまして、あと所得税が七百万と推定されるのですが、県民税が約三百万出ております。まだ私は外に採算漏れがあると思いますが、農村といたしましては、この地方税金額そのものは昨年、一昨年あたりと村民の負担は大した差がないとまあ数字の上では申しますが、現在農家としましても、「なす」一個三十銭、「きゆうり」一貫目二十円といつたような、昨年、一昨年あたりのインフレ当時と違いまして、相当窮迫した農家経済、いわゆる農産物価の低落によりますわけでありますが、これらによります農家の懷工合の頗る惡くなつた状態、それから来る方が相当大きな問題だと思います。ただ金額の数字、いわゆる村から出て行く税金の額そのものは、昨年、一昨年と、今後の場合も大した数字の差はないけれども、その数字は一昨年の五百万と今年の五百万は、その五百万を稼ぐための力は容易な負担じやないと思うのですが、昨今のトマト一貫目三十円、「すいか」一個六十円といつた最近の農家の取得の状況から申しますと、相当農家は苦しい立場に現在事実追い込まれております。ですからその同じ一万円の負担でも、昨年の一万円の負担よりは今年の一万円の負担の方が、昨年の倍以上に骨の折れる実情になつております。そうしたような点の方が大きくあつて、何もこの地方税金額そのものじやないと思います。そうした方からの負担の重過が何より一層苦しい状況じやないかと想像されております。  それから具体的に申しますが、地方税原案によりますと、荷車税が、これが大小に拘わらず牛馬が八百円となつておりますが、この点農村の要望としましては、先ず規格に大小を付けて頂きたいというような要望がございます。それはこれまでの荷車税と申しますものは、大は十六平方尺、中は十平方尺から十五平方尺まで、九平方尺以下が小で、太中小の荷車税の階級があつたのでありますが、今度の原案によりますと、大小に拘わらず、牛馬八百円となつております。これも小はともかく大中ぐらいまでは階級を付けた方がいいのではないかと存じます。この点は農家の側として極力要望いたします。それから自転車税と荷車税の月割計算の問題ですが、現有の制度ではその計算の方法はできなくなつております。四月一日現在の賦課期日になつております。ですからいわゆる脱税のできるような方法にあれができておるのです。ですから脱税のできないような方法に改めて貰いたいと思います。そうして月割計算の実施をお願い申上げます。例えば三月三十九日に自転車を一台買えば、四月一日現在が賦課期日ですから、四月一日の町村役場の賦課の対象になつてしまうのでありますが、仮に自転東を四月五百に買つたとすれば、四月一日現在ですから、この人は税金がかからなくなつてしまう。ですからこうした点を省く意味において、自転車税の月割計算徴收ということの設置を望む次第でございます。税を取る方に大体力が人づてしまいましたが、これは町村役場あたりの要望が入つております。  大体以上でございます。
  61. 岡本愛祐

    岡本委員長 償通君に対して御質問ございませんか。
  62. 吉川末次郎

    ○吉川委員 固定資産税評価が非常に農村等において困難であるというお話でありましたが、私もその通りだろうと思うのでありますが、ここへおいでになるのに、多分地方税法案相当読んで来て頂いたと思うのですが、固定資産税については、第三百八十條以下に非常にこれについての詳細な規定が法案にはありまして、又そういうことについて府県が中心になつていろいろ指導をするということの任務を府県知事が負わされておることになつておるわけでありますが、法案のどういう点について、如何なるところがそうした評価ということについて一番困難であるかというようなことを、もう少し母体的に法案中心にして伺いたいと思います。
  63. 眞通新藏

    ○眞通公述人 お尋ねの点でございますが、私も余り詳細には調べておりませんですが、例えば評価につきましても、隣り合せておりましても、農家の場合は、インフレで儲けたいわゆる最近の闇財閥といいますか、そうした農家の家屋と、それから何十年となく修繕も何もしないでおつた農家の家屋とを比較した場合に、一方は何十万という評価が下されようとする場合、一方は形こそ整つておりますが、すでに相当腐朽が甚だしくなつておる農家の二つを例に取つた場合に、いよいよ評価委員がその家屋を算定する場合に、なかなか容易ならぬ苦労があるのじやないかと思われます。ですからこの評価委員の者は、相当建築方面の熟練を必要とするでございましようし、村としても相当信用のおける人物をその評価委員に据えなければ、なかなか村民が納得しないのじやないかと思われます。例えばその家屋が十万と言つても、なかなか農家はその十万という数字を……、無論詳細な評価方法があると思われますが、そうした点が農村側としてはむずかしいのじやないかと予想されておるわけなんであります。
  64. 鈴木直人

    ○鈴木委員 自転車税、荷車税を一ケ年に一度、四月一日現在で以て課税をするということについては、只今お話通り四月一日或いは四月三日以降に購入したり、取得した者は一ケ年間課税されないというようなことになつて、非常な不合理があるのではないかという点を実は私も考えて、そうして今月割というお話でしたが、それよりも、そういう自転車を購入したというような場合に取れるというような形なども、考え方としてはいいのじやないかという意見政府に申しましたところが、そういうような行き方ということは非常に繁雑であつて、非常に面倒くさい役場からいうと……。だからもう四月一日現在でぽつと取つてしまう。その役買つたのは止むを得ないのだというふうなことに付かなければ、実際においてやれないのだというような答弁がありましたが、役場等においてはそういうことでありますか。その実情をお聞きしたいと思います。
  65. 眞通新藏

    ○眞通公述人 実は役場あたりの意見一つを、昨日実は田舎の町村役場に伺つて調べた結果ですが、そういう要望がございましたのです。
  66. 鈴木直人

    ○鈴木委員 いや、それは月割でやるということは、月割で取ることは経費ばかりかかつて、人の一人も三人も、まあ極端に言えば余計役場が人を増さなければならんというようなことになる。少しばかりの税金でそういう繁雑なことをやれない、だからむしろ一ケ年に一度取る方が簡単でいいのだという政府の説明であつたけれども、そういうふうに現実の役場というものは月割とか、そういうことにすると非常に面倒なものでありましよう、こういうことを申したのです。実情を……。
  67. 眞通新藏

    ○眞通公述人 お答えします。面倒という点は、恐らく職務執行上ないと思われますが、ただいわゆる脱税した者が随所にできますと、その方からいわゆる税金の何と申しますか、役場として非常に困るのじやないかと思います。
  68. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に眞通者に御質問ございませんか。  それでは午前は終りました。これで休憩いたします。一時から続行いたします。    午後零時五十三分休憩    —————・—————    午後二時十六分開会
  69. 岡本愛祐

    岡本委員長 これより休憩前に引続き公聴会を続行いたします。  地方自治体と財政及び税制改革について、都道府県議会議長会会長石原永明君にお願いいたします。
  70. 石原永明

    ○石原公述人 私の申上げることは、只今委員長からおつしやいました地方自治体と地方財政及び税制改革という表題でありますが、先ず第一に、地方自治体のあり方について一言簡単に申上げたいと思います。  御承知通り今度の憲法並びに地方自治法によつて見ますると、地方自治体に対して高度の独立性を認めております。從つて国の政が国民の政治であると同時に、自治体の政治は自治住民の行う政治である、こういう建前に立法されておりまする関係から、国の支配力を自治体に及ぼさない、自治体は自治体で独立してやつて行かなければならん、こういう建前になつておりまするから、私共は一応自治体の関係者として常にその線に沿うて進みつつあるのであります。從つて税制の問題につきましても、今日までのごとく、即ち新軍法発布以前のごとく、国に依存してその自治体の財政を図る、こういうようなことは根底から改革しなければならなくて、国の收入は收入、地方自治体の收入は收入と、おのおのその分野を異にして財政上の裏付けが独立性を持たなければならない、こういうのでありまするから、私はこのシヤウプ博士の勧告を待つまでもなく、こういう線によつて税制を改革しなければならん、こう考えておるのであります。併しまだはつきりとしたその税制の分野或いは又国家の事務、地方自治体の事務との分野というものが曖昧混沌としておつて明瞭を欠いておりますから、先ず以て本当の税制を確立するという上には、国の政治の範囲内に属する行政事務と、この自治体の権限に属せしむる権限との分界を先ず以て明らかにしなければならん。これによつて財政需要額というものが明らかになつて来るのですから、今度幸に行政調査委員会というものができて、国と市町村或いは都道府県という自治体との関係における行政事務の分野を明確にするということは、全く一層早くやつて頂かなければならんという感じがするような必要性を帶びたものであります。從つて私は、この事務の分配というものが出て、初めて自治体の分業というものが明らかになつておりまするから、この分業に相当する地方財政需要額というものが現われて来るから、それに相当するだけの收入というものが出る、出さなければならんと、こう思つているのであります。併し財政上、自治体の財政需要額というものが、各自治体の状況、即ち貧富或いは人口その他担税力の多い少いという点において、非常に甲乙があるのでありまするから、まあ幸にして、これは平衡交付金で補う、こういうのですが、私共の考えから申しますと、自治体の独立性を完全に維持するという上からいうと、この平衡交付金制度というものは、余りよろしからん、即ち国家が貧弱町村に対して財政需要額に相当する收入の不足を補填するというのが眼目になつておりまするから、從つてその点については、やはり国家依存という観念に囚われる虞れがあるから、私共平衡交付金制度というものは、先ず満腹の賛成はしておりませんが、併しまだまだ日本はそこまで行つておりませんから、止むを得ん暫定の措置と思うのであります。從つて私の申述べることは、只今申しました高度の独立性を持つている関係上、岡の支配力から離脱する。独立的に財政を裏付けして貰う、こういう線に沿うてすべてのことが、税制の改革又は税制制度の確立ということをしなければならん、こう思つております。私はそれだけ申上げまして、その程度一つ
  71. 岡本愛祐

    岡本委員長 それでは只今の石原永明君の発言に対して御質問ございませんか。  次に地方自治体と財政及び税制改革について、全国市議会議長会会長小澤二郎君。
  72. 小澤二郎

    ○小澤公述人 只今御紹介を煩わしました全国市議会議長会の会長を勤めさして頂いております横浜市会の議長小澤でございます。  私は地方自治体と財政及び税制改革について申上げさして頂くことに相成つておりますか、実は、前回の第七国会において地方税法案が審議されておりました際、私共の全国市議会議長会は、全国町村議会議長会その他市長会等と協議を重ねまして、この法案地方税制、地方財政確立の基盤をなす画期的な法律案であるという観点に立ちまして、これを速かに是非通過させて頂きますことが、地方自治団体の財政根本的に安定を與えますことであり、延いては市町村政の運営に支障なからしめるゆえんであると存じまして、これが通過成立方につきまして、参議院の全議員各位に懇請の陳情をいたした次第でありまするが、不幸にしてその成立を見ることができ得なかつたのでございます。申上げるまでもなく地方自治団体の財政根本的な欠陥は、地方における財源の貧困にあるのでございます。特に独立財源である税財源が僅少でありまして、地方財源の大部分を中央に依存しているために、地方団体の財政は全く自主性が失われております。誠に遺憾な事実なのでございます。大変失礼でありますが、一つ横浜市の実例によつて市町村財政における独立財源としての税收入と中央依存の財源との占むる割合をここに申上げて見ますと、昭和三十年度の横浜市の市税が僅かに一〇%でございます。国、県の補助金、配付税、市価等が五四%になつております。昭和二十一年の市税が一五%、国、県等の補助金等が六一%、昭和二十二年度は市税が一九%、国、県の補助金が六七%に相成つております。二十二年度の市税は漸くにして二六%に達しました。これに対しまして国、県の補助金は五三%という割合でございます。税收入を基盤とすべき近代財政生活におきまして、五大都市の一つである横浜市の財政におきましても、その市税の占むる割合が、只今申上げましたように、昭和三十年度においては僅かに一〇%であり、三十一年度以降は警察、消防等の移管と人件費膨脹等に伴います税源付與によつて行いました三度の税制改革によつて、三十三年度は漸く市税が二六%に増加しているに過ぎない実情でございます。三十四年度はまだ決算が済んでおりませんので、正確な数字は申上げられませんが、恐らく前年度と大差ないという実情であると私共予想しておる次第でございます。  こうした現状にありますが故に、シヤウプ勧告にも指摘されておりましたように、地方自治団体といたしましては最も避けなければならない巨額のいわゆる強制寄附が、種々の形によつて余儀なく住民に負担されていることは、全く隠れもない事実でございます。これらを救済するには各方面にいろいろな御議論があるとは存じますけれども、先ずこの税制改革の実施に待つよりいたし方がないと思つておるのでございます。地方自治団体といたしましては、この法案の一日も速かに実施されんことを念願いたしております。恰かも旱天に慈雨を望むという状態にあるのでございます。併しこの税制改革によりまして、当然市町村民税が住民の大きな負担となるべきものであり、又その徴税枝術の上から申しましても、種々難点が生ずることは想像せられるのでありまするが、とにもかくにも一応これを実施した上で、将来実情に即して改むべきは改めましても敢えて遅くはないことと私共考えております。併し私共といたしましても、許されることでありまするならば、幾分でも負担軽減されるように修正されることを望んではおります。併し諸般の情勢がこれが困難であるといたしますならば、まあ折衷案というような形でも解決がつかないのでございましようか。これは一つの例でございますが、固定資産税税率にいたしましても、固定資産税評価基準の場合でも、まあ最高と最低の基準を承されまして、各都市の状況に応じまして適当に按配できるように弾力性のある方法をやつてもよいのではないかと私共考えている次第なんでございます。市町村民税におきましても相当の弾力性を持たして頂いて解決する方法があるのではないかと思つているのでございます。この場合各都市はその培率に対しまして有効適切に運用して、その効果を挙げているや否やによりまして、平衡交付金を加減するというような妙味も十分発揮できるのではないかと考えております。而も全国各府県、各市町村の財政状態は一様に惡いのでありまするが、惡い中にも相当の優劣のある点にも十分御関心を持つて頂きたいのであります。これを画一的に律することの可否をも十分にお考え置きを願いたいのでございます。いずれにいたしましても、今臨時国会には是非共この法案を通過さして頂いて、前国会において地方税法が不成立になりました結果、全国地方団体に重大な影響を與えておりますことは申すまでもありません。御承知通りでございます。このため地方団体はその財源措置といたしまして、全般的に抑制を加えております。諸事業、諸施設の繰延べ、停止を行なつております。繰延べ抑制のでき得ない給與費、民生事業費等の絶対経費のみを中衞交付金、市債の前渡し、或いは預金部資金の短期融資等によつて辛じて賄つておるような次第でございます。これ以上空白が続いて参りますれば、地方財政は崩壊するのではないかというふうにさえ憂慮されておるわけでございます。全国市町村が毎日無理算段をしてやり繰りに浮身をやつしておるという実情に御理解を頂きたいのでございます。シヤウプ税制は、これだけの大改革でございますので、かすに時間を以てしなければ完成しないことに思いをいたして頂きたいのでございます。一応地方財政基礎を軌道に乘せて頂く意味において、地方税法を通過成立せしめられるようお願い申上げまして、私の公述を終ります。
  73. 岡本愛祐

    岡本委員長 小澤二郎君の公述に対しまして御質疑をお願いいたします……。地方行政委員会の審議の過程におきまして、地方税、殊に大都市の税收が多くなることは地方自治の拡充のためには非常に結構であるが、どうもそれが放漫な使途に使われるようなことになりはしないか。殊に接待費とか宴会費とか、そういうものに浪費をされる傾向が多分にある。それは都道府県としましても、又市の状況を調べて見ましても、年々そういう食糧費とか、交際費とか、そういうものの額が著しくかかつて来る、こういうところからも証明ができる、こういう説があるのです。この点に対しまして各委員に大分懸念を持たれておる向もあるのですが、その点御説明願います。
  74. 小澤二郎

    ○小澤公述人 前回の第七国会委員会でも何かそういうような御発言が委員の中からあつたというように、又本会議ですか、そういうふうなお話があつたというふうに伺つております。只今委員長からお尋ねでございますが、私共も御同様そういう懸念は十分持つておりますが、少くとも私共議会に席を置く者は、そういう点において将来他から非難をされないような立場において十分自重して参りたいというような覚悟を持つております。
  75. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御質問ございませんか。では有難うございます。  次に同様の地方自治体と財政及び税制改革について、全国町村議会議長会会長齋藤邦雄君にお願いいたします。
  76. 齋藤邦雄

    ○齋藤公述人 私は只今委員長から御指名を受けました全国町村議会議長会会長であります。地方税法の問題につきましては、前の国会以来両院で関係の皆さんに対していろいろお願いを申上げて、たびたび御面接もいたしまして御無礼をいたした点は、この際お詫びを申上げたいと思うわけでございます。  本日は御指名を蒙りまして公聴会に罷り出ました。只今都会の石原議長、それから市の全国会長小澤氏とお二人からお話のありましたのと大体重複をするようなことを申上げるようになりまして、柳か恐縮ではありますが、私は全国一万二百有余の町村議会の代表者という立場から、地方自治団体の関係者といたしまして、特に皆さんに今回は是非ともこの地方税法を成るべく里く通過さして頂いて、その成立によりまして先ず地方自治体の確立をするというスタートを切らして貰いたいと、かように先ず冒頭に考えておるのであります。  御案内のように今回我が国といたしましては、国税及び地方税のいわゆる税制につきまして大改革が行われんとしつつありますことは、我が国再建の上から考えまして誠に感慨の深いものがあります。もとより只今小澤氏からもお話のありました通り、税の内容個個に当りましては、それぞれおのおの考えが異り、いろいろな御意見もあることとは考えますが、先ず先程石原氏からもお話が出ました通り、從来六十有余年の久しきに亘りまして、我が国の地方自治体がとにもかくにも中央の監督指導を受けましてやつて参つたことは事実でありますが、かような結果になつて、国の建直しをして行く、これから出直しをして行くということにつきましては、從来のようにいつまでも子供が親に厄介になる。かようなことは精神的においてもこれは改めなければならんことであります。況んや自治体におきましてはみずからお互いの住んでおる町なり村なりが、お互いが一つ持ち寄つて、そうして気持のいいところの明るい町なり村を建設して行く、こういうことにならなければ、私共は日本の再建は期しても得られないことであると常々考えておる次第であります。そういうようなことから参りまして、今回はアメリカのシヤウプ使節団の勧告にもあります通り、先ず地方の自治体はみずから一つ賄いをいたし、国への依存を成るべく避けて、そうしてみずからこれを治め営んで行くようにという勧告がありました。誠に我々といたしましては、地方の住民として大いに考えを新たにせなければならんことは御承知通りでありまして、私が申上げる必要もございませんが、さようなことと同時に、今回の税制根本的理想といたしまするところは、国税を減じ、地方税を増額する。先程午前の公聴会の際にも伺つておりましたが、国税を減じて地方税を殖やしたのでは何も税制の何はないのじやないかというような御説も多少ありましたが、私はそういうようなことも一応の理屈はあるとは存じますけれども、とにかく地方が独立をして行くと  いうために、国家への依存をなくして、地方でみずから賄つて行くという建前から出たことであるのでありますから、これは当然なことではないかと考えておるのであります。而して国税地方税との関連におきまして負担の均衡を図り、そうしてひとしく生活をし、ひとしく事業をやる者が均衡を得たところの納税をするということは、これは当然なることでありまして、何ら議論の余地はないのであります。今日までかれこれ言われますことはただ課税技術の上において人間のやることでありますから国税においても、地方税においては間然りでありますけれども、多少課税技術の上に欠陥がありまして、お互いが納得をするというところまで参つておりませんけれども、私はこれは税の額の多い少いということによつて納得をする、納得をしないというような從来の考え方は、我々地方民といたしましては先ず第一に改めて行かねばならんことではないかと考えております。これは要するに先程も申述べました通り、お互いの町はお互いで一つ経営して行くのだ。こういう建前になりまして、これだけこの町の予算がかかる。そういうことであるからして、これこれの税金がこれこれかかるのだということになりまして、よくこれを町村民に納得の行くようにお話をいたしましたならば、私は町村民も必ず喜んで納税をして下さるものと考えておるのであります。かような意味から申しまして、今回の地方税法につきましては先程小澤氏からお話がありました通り、いろいろ内容についてはそれぞれ御議論もあり又修正をという御意見も拜聴しておりますが、これらは挙げて世論をお聽取り願いまして、国会において適当なる御決議を願うことは、これは結構でございまするが、地方税法そのものを先ず一つ今回は通過成立せしめるようにくれぐれもお願いを申したいと考えて、去る七月七日におきまして、全国議会議長大会を開いて決議をいたし、政府及び各関係方面にお願いをいたしたような次第であります。これが私の申上げまする第一点でございます。  次に第三点は、平衡交付金を或る程度増額するように皆様の御配慮を願いたい。これは先程石原氏からお言葉がありまして私も或る程度同感であります。平衡交付金というものはやがて将来はこれは地方が独立で経営をして行く上から行きますれば、理想としては平衡交付金は必ずしも適当なるものではないとも考えますが、現在暫らくの間はこの地方の自治体にでこぼこがあります。これを調整する一つの力を持つております平衡交付金でありまするからして、暫らくの間は平衡交付金制度というものは私は必要であると考えております。併しながら特に今年は御承知のように一ケ年間の税金を、この地方税法の成立遅延に伴いまして、下半期の後の半年に大体徴收をいたさなければならん、納税者は納税をせなければならんというような特殊な事情がございますので、これは地方自治体といたしましても若干徴收の困難を見る面があるのではないかと考えます。さような場合にはどうしても平衡交付金において一応賄いをつけて頂くというようにいたして頂かんというと、工合が惡いのではないかということも考えるのであります。そういうような意味から今回は特にこの平衡交付金につきましては御考慮を願うように願いたいということが第三点であります。私が申上げたいと思いますことは以上の二点でございまして、繰返し申上げるようでございまするが、今回の第八国会におきましては何とぞ皆さんの御配慮によりまして成立をいたし、地方自治体が将来に向つて見通しのつくところの運営ができるようにお願いをいたしたい。かように考え公述をいたした次第であります。
  77. 岡本愛祐

    岡本委員長 只今の齋藤邦雄君の公述に御質問ございませんか。
  78. 安井謙

    安井委員 固定資産税その他で相当町村の徴税事務が殖えると思うのですが、徴税機構から見まして小さい町村で非常に困るといつたようなこと、或いはボスの跳梁するというような御懸念はありませんですか。
  79. 齋藤邦雄

    ○齋藤公述人 お答え申上げます。只今安井さんからお尋ねがありましたが、それは御尤もなことで、御承知の特に私共の関係をいたしておりまする町村は、徴税機構と申しますと甚だ貧弱なるものであります。今回の地方税法が成立をいたしました曉には、これは当然或る程度徴税機構を完備しなければならんと考えておりまして、これについてはいろいろ研究をいたしておりますが、どこの市町村におきましても徴税機構の拡充整備を図りましてやつて行きたいという考えは持つております。
  80. 石川清一

    石川委員 固定資産価格の査定について審議会が持たれて、納入者の異議の申立をするような機関が作られてあります。これについて先程も大分、一年ぐらいの間では到底適正な査定ができないだろう。相当異議も出て来るだろう。混乱が二三年も続くのではないかというような御意見がありました。それについてどういうふうにお考えであるか。
  81. 齋藤邦雄

    ○齋藤公述人 これはどうもお尋ねの通り、何にしても初めてやることでございますから、多少の混乱と申しますか、軌道に乘るまでには若干の日数が必要だと思います。併しこれはおのおの町村におきましてその町村の実情に即した方法を審議会なり何なりで取つて頂くということになれば、そう長く、二年三年混乱をして、殆んど固定資産税評価審議に当つてごたごたと紛糾することが長びくということは、私はないと思います。成るべく早くそういうことは解消をして、軌道に乘つて頂くように、先程安井さんのお話徴税機構の改革のようなことにも関連をいたして、そういうふうにやつて頂きたいと考えております。
  82. 石川清一

    石川委員 そこで先程の午前の御意見の中にも、固定資産の査定の中にはボスが横行するであろうというようなことが述べられておりましたが、そういうような懸念が、全国的に見まして査定の上でございませんでしようか。
  83. 齋藤邦雄

    ○齋藤公述人 これは私は、ボスが横行するかしないかというようなことは、今日はちよつと考えておりません。
  84. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御質問はございませんか。……次は事業に対する課税について、全日本通運労働組合、川淵義光さんお願いします。
  85. 川淵義光

    ○川淵公述人 全日通労働組合の川淵義光であります。今議会に提出されましたところの地方税法案の中におきまして、附加価値税の問題につきましてはこの実施が昭和二十六年の一月一日に延期されるというふうに聞いております。併し今日の新聞を見ますれば更にもう一ケ年延期いたしまして、昭和二十七年一月一日から実施ということになつておるそうでありますが、私及び私と意見を同じくしていますところの国会鬪争委員会に参加するところの五百万労働者は、これに対して全面的な反対を表示いたしまして、これの撤回を要求するものであります。與えられておりますところの時間が僅少でありますので、その理由を極く簡単に申述べて見たいと思います。第一番目には、この附加価値税というものは、勢い労働者の犠牲によるところの税金であり、更にこれが著しいところの労働不安を醸すものであるということであります。即ちこの附加価値税におきまして、その計算方法によりますならば、総売上金から特定の支出を控除いたしましたものに対しまして、全部課税標準となるというふうになつておりますが、こうした場合に私達労働者といたしまして、最も注意を拂わなければならない問題は人件費に対してそれに相当する分の税金が課せられる、こういうことであります。このことは勢い沢山の從業員を擁しておる会社程多くの附加価値税徴收せられる結果になりまして、これがどういう結果になりますかと申上げますならば、今後の経営者というものは一応我々の賃金を支拂う場合に、人件費に相当するところの附加価値税を先ず天引きして置いて、そうしてこの枠の中で我々の賃金を操作するであろうということが考えられますといたしますならば、私達は今與えられておるところの賃金がそのままの形で行くならば、この賃金から何%かの附加価値税相当部分の引かれたものが我々の賃金と変つて来なければいけない。若し会社に業績があれば又今の場合と同じような賃金が與えられるでありましようけれども、併し現在のような不況時代におきましては、当然にこれが賃金の切り下げ、或いは人員を整理したことによつて、我々の賃金が賄われるというふうな結果になるのであります。これは名目は資本課税でありながら大衆課税、我々労働者の頭にかかつて来るところの税金であるというところに大きな不満を私達は持つのであります。一例を申上げますと、日本通運株式会社という通運事業を営んでおります会社におきましては、昭和二十四年度の下期におきまして、総收入金額が百八十三億二千三百九十六万幾らというものに対しまして、この人件費総額が実に百二億三十万四千、約五割六分という割合百に相成つておるのであります。こういうふうな厖大な人件費を賄うところの会社にありましては、その附加価値税の殆んどは人件費によつてこれが賄われる。つまり我々労働者が資本に代つてこの附加価値税負担しておるという結果になるのであります。仮に今申上げました日本通運の場合の人件費に相当するところの附加価値税幾らになるかと申上げますならば、政府原案によりますところの選択の場合を適用いたしましても、これが約百分の三ということになりまして、二億四百四十万円の附加価値税が人件費のみによつて増加されるものであります。こういうふうなことから我々としては何としてもこの附加価値税というものについて納得ができない。この附加価値税を了解できない態度を表明するものであります。  それから第二番目といたしましては、この附加価値税は、決して適正な課税標準を設定することができないということであります。このことは前回国会におきまして地方税法が不成立に終つたという原因でもありましようし、又今回提案されますところのこの税金の二ケ年延期というところの理由の一つにもあると思われますが、このように適正な課税標準の設定ということは実に困難な專業でありまして、これは現在日本にありますところの各種の業体、各種の規模を有するところのそれぞれの事業に対しまして適正な標準を設定するということは何人もなし得ない問題であります。こういうような問題をいい加減にいたしまして、そうして画一的な課税標準にいたしますならば、そこに大きな混乱が生ずることは当然であります。先に例を申上げましたところの日本通運の場合におきましてもこれが事業税によりますと、三十四年の下期の実績によりまして六十百七十三万七千円の事業税でありますが、附加価値税なつた場合には、これが三億六千四百万幾らという額に上りまして、大体六倍の増税になるわけであります。これが日本通運の場合でありますが、或る百貨店の場合におきましては事業税に対するところの附加価値税倍率は三・二倍であります。更に某化学工業会社の場合には同じく三・七倍であります。それから某保險、会社におきましては、これが八・二倍であります。このようにいたしましてこの附加価値税というものは誰がどのような操作をいたしましても、決して満足の行くような姿に持つて行くような地ならしはでき得ないと私は信ずるものであります。このようなことからこの適正課税標準の設定ができないというところに反対の第二の理由を申述べる次第であります。  次に第三の理由といたしましては、これが赤字経営に対しても附加されたところの価値に対して課税されるものであります以上、今までの事業税でありますならば当然收益において幾ら幾らと課せられますが、赤字を続けておる会社、或いは事業場におきましては、もうすでに担税能力の限界点に達しておる、もう崩壊の一歩に来ておる。こういうふうな場合におきましても、人件費を要しておればやはり多額の附加価値税徴收せられる。こういう不合理は今までの税習慣によりますならば、当然これが收益課税というこのような勧告に基くところの税金につきましては、十分にその理解に苦しむわけでありまして、こういうような基礎的な問題を等閑にいたしまして、天降り的に徴收するならば、恐らく国民は、或いは法人は税金に対して協力をしないというふうな、或いは納税忌避というような態度が更に強くなるのではないかということを憂うるのであります。  次に一言附加えて申上げますならば、この前に設定されたところの、そうして本年一月一日から実施されておりますところの資産評価とこの附加価値税との関連性であります。資産評価におきまして資本の蓄積が認められ、そうして今後適正な減価償却も可能となつて来ておるわけでありますが、これに対して一方附加価値税におきましては、今後特定の支出の中に減価償却というものが全然認められていない。こういうふうな或る税法では適正な減価償却が可能とされ、そうして資本の蓄積もなされておる。この附加価値税においてはそうした減価償却をも否認するような性質を持つておる。こういうふうな矛盾をここにさらけ出しておる。こういう意味合からしまして、この附加価値税につきましては第三の理由といたしまして反対する次第であります。  このようにこの税金が著しく労働不安を起しまして、失業者群を街に送り込み、そうして事業不振と産業麻痺を増大し、更に担税の不安を誘発する。こういうような結果を来す附加価値税については絶対に反対いたしますが、若しこれを押切つて実施するというような場合に逢着するならば、果して地方財政の確立ということができましようかどうか。地方財政というものが天降り式に納得しなくてもいいのだという考えを以て決して取れるものではないと思うのであります。やはりみんながこの税に対して協力するところの態勢を整えてこそ初めて完全な徴税が行われ、税目標の完璧が期せられるであろうと私はかく信ずるものであります。このようなことからいたしまして、この附加価値税につきましては、全面的に撤回して頂きたい、かように思います。尚昭和二十七年、もう二ケ年先の実施でありますが、二ケ年先に実施する問題を今から早まつてする必要はないじやないかということを私は考えるものであります。この附加価値税がこの今議会におきまして否決されたにいたしましても、地方財政には何ら影響はないのでありまして、地方財政事業税によつて一応その補いがついております。從いまして二ケ年実施を延期するならば、それまでにもつととつくりと考えてそうして今私が申上げましたような疑念が氷解されて、そうしてみんなが納得の行つた納税をする態勢にいたしまして、そこに更に綿密な調査と検討がなされた結果に基くところの、新らしい税金が考えられていいんじやないか。かように思いまして、この撤回を要求するのであります。以上私の意見を申述べました。
  86. 岡本愛祐

    岡本委員長 只今の川淵義光君の公述に対しまして、御質疑がございましたら御発言願います。
  87. 安井謙

    安井委員 只今附加価値税の御批判がありましたが、五百万の労働者大衆の立場からというお話であつたのでございますが、御存知の通りこの附加価値税というのは、まあ事業税と対して考えられるも旭のだと思います。その徴收総額においては事業税より非常に減額されておるということは、企業全体の負担から言いますと、これは軽減されておるということと、もう一つ内容から申しますと、今までの從来の事業税は、この中小企業に対する負担が非常に加重されておる。今度の附加価値税では少くともそれは逆の立場になつておるという点は、具体的な事実であろうと思うのであります。これを実施する、しないの技術的な問題は別にしまして、理念としてどういうようにお考えでありましようか、お伺いしたいと思います。
  88. 川淵義光

    ○川淵公述人 私は労働者の立場からと申上げましたが、この附加価値税が結局こういうふうな性格を以て、先に言いましたような附加価値税の新らしい計算方法、こういうふうな方法によつたときは、それが勢い我々の賃金に影響する。これが一番初めに申しましたような大きな理由でありまして、その外のものは若干技術的な問題に属するものであります。今までの從来の事業税によりますならば、これは收益課税でありまして、そういう点については人件費、つまり我々の賃金を増すことによつて附加価値税を増すというような結果は先ずないものと我々は確信しておるわけであります。こういうふうなところから反対しております。
  89. 安井謙

    安井委員 今の必ず人件費に転嫁されるという結論ちよつと早過ぎる。そういう傾向があるという懸念はあると思うのでありますが、必ず転嫁されるものだという結論は、少し早過ぎるような気がいたしますが、どんなものでありましよう。それと今の中小企業と大企業との負担の均衡が緩和されるというこの点についてはどう考えておられますか。
  90. 川淵義光

    ○川淵公述人 お考えの相違であろうと思いますが、私といたしましては、やはりこういうものが実施されますならば、当然企業家というものは人件費というものを先ずこれだけという枠を決めております。で、それが幾らでも、或いはその附加価値税を取引高税みたいに、更に原価の中に織込んで、そうしてこれを一般消費者から徴收する場合になりますならば、人件費にそう転嫁されなくていいでしよう。併しこれが或る公定価格料金とか、認可料金とかで押えられているものに対しましては、附加価値税を更に転嫁する途がないのであります。從つてそれは全部人件費の方に転嫁されると、こういうふうな結果に私はなると思うのであります。それから中小企業との関係でありますが、成る程事業税によりますと、大企業か小企業が有利になるというふうな考えでありますけれども、併し私は決してそういうことは限らないと思うのであります大企業であればこの事業税が有利であり、それから中小企業では附加価値税が有利であるというふうな結論は、私としては持つておりません。そういうことは一応考えることもありますけれども、これもあなたと私との考えの相違でありまして、私としては必ずしもそういうふうにして中小企業事業税に変ることによつて有利になるというふうなことは思われません。
  91. 安井謙

    安井委員 そうしますと、もう一度。議論になりますからくどく申しませんが、転嫁される方法がとれれば、それはよろしうございますか。この附加価値税が人件費へ加重されるんじやなく、その転嫁される方法がとられ、又人件費へ加重されるということが阻止されれば、それはよろしうございますか。
  92. 川淵義光

    ○川淵公述人 転嫁される方法といいますが、どのような税金に対しても、大抵これは大衆にかかつて来ておるものであります。あらゆる税金がすべて我々末端の一人々々の個人にまで、これが何らかの形で転嫁されて来ておるのでありまして、今言つた転嫁される方法が講じられればというのは、恰かも私は、大衆労働者として違つた形で来ればいいのじやないかというお考えを表明されたのだと思いますが、併し現実に賃金にこれが転嫁されることは大きな影響があるわけであります。併しこれがその外のいろいろな消費税という形で転嫁される部分は極く少部分でありまして、これは我々労働者だけでなく、多く、何ですか、贅沢品を消費する者は、それだけ他より負担するわけでありまして、全部が我々労働者に転嫁されるものではないと私は信ずるのであります。ですから転嫁されるということは、これはあらゆる税金が転嫁されておりますので、それは当り前であると思う。附加価値税にした場合には、当然に事業者は我々の賃金にこれを乘り換えると、こういうふうなことから反対をしておるわけなんであります。
  93. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御質問ございませんか。それじやどうも有難うございました。  次に農業課税につきまして、全国農業協同組合百事務局長平尾卯三郎君。
  94. 平尾卯二郎

    ○平尾公述人 肩書が長いのでこれは省略されてありますから、立場を明らかにする意味で申上げますと、全国農業協同組合の下に代表者会議の実行委員会というものの事務局長をいたしております。更にもう一つ全国指導農業協同組合連合会の農政部長をいたしております。農業協同組合代表者会議でこの地方税法案要綱につきまして、いろいろ意見を本委員会にも差出しておるわけでありまして、すでに一応要請の趣旨については御了承を願つておると存じますが、主な点だけ簡単に説明申上げたいと思います。最初に農業協同組合の問題を申上げ、次に農業或いは農民全体につきまして申上げたいと思います。農業の協同組合の立場から申上げますと、要請にも附加価値税並びに固定資産税の免除又は低税率にして欲しいということを要望しておるのでありますが、これは協同組合の目的が法律の第一條に明らかでありますが、更に第六條には「組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という規定がございます。更に員外利用、組合員外の利用につきましては、全事業分量の五分の一に制限されておるというような協同組合の事業については、法律によつて制限を加えられておるわけであります。從いまして農業協同組合は公法人と私法人の間の中間法人というようなことが言われておりますが、その行なつております事業は免税になつております。公共団体の事業相当準ずるということが言えるものが多いのではないかと思うのであります。從いまして附加価値税が営利を目的とし、営利行為の結果の附加価値を課税する。又固定資産税が、公共の用に供しない資産、即ち事業上の資産課税客体として取上げておるものありとするならば、農業協同組合に対しましてはその法律の規定等の趣旨によりましてできるならば免税、更に課税をするというならば、他の法人等と異なり低い税率是非ともお取りを願いたい、こういう要請をしておるわけであります。現在事業税負担と、それから附加価値税が今度農協に課せられるというのを比較いたして見ますと、附加価値税は單位組合、町村にあります組合に対しまして七億二千五百万円、連合会に対しまして二億二千万円、計十億四千五百万円になりまして、從来の事業税負担に対しまして約五十一、二倍というような非常に大きな殖え方になるわけであります。他の事業企業には二、三倍、或いはもつと大きいのもあるように只今。話がございましたが、それに比べましても農業協同組合に対する率というものは驚くべきものになるのでありまして、この理由は何かというと人件費の割合が非常に多いということ、更に一般的にいつて経営規模の小さいもの程これが割高になるという傾向があるわけでございますが、先程申上げましたように、農業協同組合は員外の利用が制限されておるということから、又経営規模が小さいというようなことから、只今申上げたような非常に高率の課税になつて来るわけであります。御承知のように、現在農協は経営が非常に困難になつておりまして、赤字を出しておる組合が、すでに四割程度に及び、僅かに收支を償つておるというような組合が相当あるわけであります。從いましてこれに対しまして附加価値税をかけるということになりますと、農協の経営を破綻させるということは極めて明らかなる事実であります。若しこれを、附加価値税を流通税であるということで組合員に転嫁するか、或いは経営規模を拡大してその総体的な税負担軽減させるというようなことになりますと、これは一般の商事会社と同じような経営になつて、農業協同組合は本来の趣旨を喪失して、協同組合の名を掲げた営利事業ということになつてしもう、こう考えるのであります。又固定資産税については、農協が蒙る税負担は非常に増大するのでありまして、数字を申上げますと、現在農協の持つておる固定資産は、帳簿価額で約百二十二億と言われております。これを帳簿価額のまま評価するということにいたしましても課税額は二億一千三百万円でありまして、現行税額一千六百万円の十三倍半になるのであります。この時価を帳簿価額の十倍ということにいたしますと、二十一億ということになりまして、現行税額の百三十倍という驚くべき額に達しております。從いまして現在不振の組合が激増しつつあるときにおきましては、附加価値税以上の圧力を持つて農協経営に打撃を與えるということは明らかでございます。次に農協に対する市町村民税について申上げますと、これにつきましては同一市町村内に事務所又は事業所を二つ以上持つておる場合には從たる事務所にはかけないようにして頂きたい、こういうお願いをしておるわけであります。これは村内における交通の不便なところ、或いは組合員の便宜のために設けておるわけでありまして、こういう課税方法を取られますならば、組合員の便宜のために事業所、或いは事務所を設けることを阻害する結果に相成ると存ずるのであります。以上が大体協同組合の地方税法に対する意見でございますが、この協同組合に対する税額の割合を予定されておるのを見ますと、全部で一千九百八億円の中で、大体三十億というものが予定されておるわけであります。現在の農村の経済的な困難の時代におきまして、それらの団結によつて協同組合が困難を打開して行こうという社会的な責任があるわけでございますので、私はできるならばこういう税金を農協にかけることを止めまして、この三十億のために農協の経営を困難にさせるということを是非ともお止めを頂いて、財政平衡交付金というようなものの支出によつてそれが補えるなら補つて頂きたい。こういうふうに考えておるわけであります。次に農民の場合について申上げますが、第一に市町村民税のことを申上げます。最も主張いたしたい点は、均等割の課税方式が極めて不合理であるということであります。これは改正所得税法によりますと、第十一條の二に、農業專從者の所得は、これをその生計を一にするところの納税義務者の事業所得とみなす、となつておりまして、農業專從家族の所得というものはすべて経営者所得と一緒に合算されるということになつているわけであります。從いましてこのような專從者に対しまして、是非とも均等割の課税というものを廃止して頂きたい、政府はこれに対しまして、均等割の逓減を三百十二條の第三項に規定していると言われているのでありますが、併し農村の事態というものを見ますと、それだけではなかなか救えない、こう考えるのであります。調査によりますと、農林省の昭和二十三年度の農家経済調査によりますと、一戸平均の農業專從者の数は一毛作、二毛作、普通畑、蔬菜いろいろ違つておりますが、大体において平均をいたしまして、四人ということになつております。世帶主がその中で一人あるということなので、專從家族は三人ということになるわけでございます。一人当りの均等割を逓減したものとして計算いたしますと、九百円、世帶主の分を入れると大体千三百円くらいになると思うのでありますが、これはこの税金は均等割でございますから、村内におきまして、貧農も富農も殆んど同一の割合で課税されるということになつて参ります。一町未満の農家も三町程度の農家も平均してこの專從家族の税金を拂つているということになつているのでありますが、最近調査しました実例によりますと、茨城県の真壁郡の川西村というところで調査いたしました結果によりますと、この村の住民税は一等級より五十等級までに分かれておりまして、一等は七千百十六円、五十等は三百十円ということになつております。この等級を戸数の割合で見ますと、全戸数六百十七戸のうちに、丁度半分の二十五等までが百三十五戸、それから税金が二千二百三十六円であります。残りの四百八十二戸がこの下半分に乘つておりまして、更に五十等は四十六戸というふうに最も多数を占めているわけであります。それが先に申上げた均等割の計算一戸平均千三百円というものと比較いたしますと、五十等級の四十六戸の農家は、本案によりますと、從来の税金の四倍以上を負わなければならないという結果になるわけであります。而も改正所得税法によりますれば、これらの下層農家というものは、所得税を大体納めていない、免税点以下であるという実態でありまして、貨幣收入としては、殆んど何ものも有しないというような悲惨な農家でございます。從来から地方税につきましては、人頭割的な傾向が問題になつて来たのでありますが、今度の案のような、画一的な均等割というものを課ずるといたしますと、一般市町村民税の増率は二・五倍という予想がされておりますが、このように所得のない階層に一方的に四倍以上というような増税がされて、惡平等の結果を生ずる。こういうことに相成ると存ずるのであります。從いましてこの專從家族の均等割の方につきましては、国税地方税と一貫した形で行くというのが今度の税体制の整備の根本的な立場でありますし、更に現実において、今申上げたような負担の不均衡を更に増大するという立場から、是非ともこれは改正をしてほしい、こう考えておる次第であります。第二に固定資産税について申上げたいのでございます。固定資産税については、農民が最大の負担者であるということは、從来からいろいろな方に言われておるのでありますが、この附加価値税を農民に課さない理由として、固定資産税をかけるからだと言つておりますが、これも実に大変な負担増になるわけでありまして、計算した結果によりますと從来の田畑併せての現行税率によりますと、三十四億二千二百万円というのが現行税率による税額でございます。今度政府から提出された改正されたものによりますと、百九億八千百六十万円ということになりまして、実に農地だけで七十五億五千万円の負担増になるということに相成りまして、土地による負担額が二百十億ということに予定せられておるようでありますが、実に農民の、農地だけで全額なかば以上を負担するということになると考えるのであります。次にこの固定資産税について申上げたいのでありますが、固定資産の税徴收予定によりますと、農地を含めた土地並びに家屋については把握率が一〇〇%ということにいたしまして、償却資産については把握率を五〇%で計算をしておるのであります。そうしてその結果五百二十億の税收を確保する仕組になつておりますが、同法案の第三百五十條においては、その收入見込額がおよそ五百二十億となるように昭和二十六年一月中において一・七%の税率を変更し得る規定を掲げておるのであります。そうしますと一方においては一〇〇%の課税、他方では五〇%しか課税客体を把握していないで、而も一定額だけの税收を掲げるために、あとで税率の調整をするということになりますと、税收予定を超えた場合はよろしいが、下廻つたときは税率を引上げなければならないことに相成りまして、総体的には土地家屋所有者と、償却資産所有者との課税負担額の不公平が更に増大するということが考えられるわけであります。次に農地の倍数について是非お願いをしたいのでありますが、我々は公定価格の十二倍という倍数を計算をいたしておるのであります。これは農林省が行なつた調査から来ておるわけでありまして、自作地中等田の反当り收益率が四百九十八円五十三銭、これを国債利廻り五五%で資本還元いたしますと、九千六十四円に相成ります。これは現在の公定の他の価格の約十二倍であるということでありますので、是非とも現在の倍数を十二倍に変更するということをお願いをいたしたいのであります。農地の事業用の資産でありますから、それは飽くまで收益を基準として課税すべきであろうと、こう考えるわけでありまして、十二倍の係数ということがそういう根拠から出ておることを是非御了承をお願いしたいのであります。次にシヤウプ勧告には、この徴税係数は各府県毎に異つてよろしいがというようなことを言つておりますが、これにつきまして私は寒冷地の農地に対して特別の倍率是非ともお願いをいたしたい。こう考えるのであります。これは單作地方十一県の平均と、一方は多毛作地帶三十四県の平均を見たわけであります。現在の反当り賃貸価格は、單作地帶の方は十四円八十九銭、多毛作地帶は十八円七十銭ということになつておりますが、これを政府案による固定資産税を見て見ますと、単作地帶では二百三十四円五十二銭。それから多毛作地帶は二百九十四円五十三銭ということに相成りまして、二十二年度の單反收益額というものを一応取出しまして見ますと、單作地帶は二千四百八十五円。多毛作地帶は四千二十二円ということになつておりますので、この固定資産税は單作地帶においてはその收益に対しまして九・四%になり、多毛作地帶は七・三%ということに相成るわけであります。明らかに單作地帶の方が、一律に徴税倍率を掛けますと、負担の不均衡がここに生れて来るということが言えるわけであります。從いまして私たちはこういう計算から一般は十二倍、寒冷地は十倍の徴税係数を採用することが適当である。公平な負担に相成る。こういうふうに考えておるわけであります。又農地以外の土地家屋についても、一般としては倍数が六百倍。寒冷地については特別倍率として四百倍を採用することが適当であるということを申述べておるのでありますが、その理由といたしましては、最近の実際の売買の事例を見ますと、宅地で賃貸価格の四、五百倍、家屋は三百五十倍から一千二百倍というような幅がございますが、大体を平均すると、先ず六百倍くらいが最も現実の時価に近いものであるというふうに考えておるわけであります。寒冷地については、家屋については特別の工事費を要するとか、或いは積雪のために耐用年数が短くなるとか、いろいろな理由が考えられるわけでございますが、これにつきましても私たちが調査いたした数字を御参考のために申上げたいと思うのであります。同じく先程申上げたのと同じように、寒冷地と單作地帶が大体一致しているわけでありますが、一道十一県のものと、それからその他の温暖地方とを分けて見たのであります。そうしますと人口一人当りの住宅、納屋、倉庫、その他の建坪を見ますと、寒冷地帶においては一人当りが五・二八坪、温暖地方は四・四九坪ということに相成つておるのであります。從いまして寒冷地帶においては一人当りの戸数坪数というものを広く要するためにこういうことになつておりますが、その結果寒冷地帶には非常に税金が高くなり過ぎるということが言えるわけであります。
  95. 岡本愛祐

    岡本委員長 平尾君に申上げますが、大分時間が過ぎました。
  96. 平尾卯二郎

    ○平尾公述人 ああ、そうですか。もう直ぐ終ります。こういたしますと、一人当りの税金つは寒冷地方の一〇〇に対しまして、温暖地方は八二という比率があるわけでありまして、これを調整する意味で寒冷地帶は四百倍にしたい、こういう考えを持つておるわけであります。まだ申上げたいことがございますが、これで終ります。
  97. 岡本愛祐

    岡本委員長 以上の平尾卯次郎君の公述につきまして御質問ございませんか……。じや有難うございました。次は固定資産税について、全国不動産協会連合会代表、和田益幸君、神戸市灘区の方であります。
  98. 和田益幸

    ○和田公述人 只今委員長から御紹介になりました神戸地家保全協会会長をしております和田でございます。このたび全国不動産協会連合会の代表としまして、土地家屋に対する固定資産税についての意見なり、希望を述べさして頂きます。固定資産税課税標準は、財産税の評価額の土地については十五倍、家屋については十二倍とし、最高は先程の公述人がおつしやつたごとく、賃貸価格の六百倍……これは最高でございます。六百倍を限度として頂きたい即ち資産評価は財産税の当時の賃貸価格から見ますと、十五倍ということは即ち賃貸価格の四百五十倍ということになるのでございます。それで相続税は現在七百倍をどうしても受けております。相続をした場合に……。そうしてこの六百倍を限度としておりますが、若しも六百倍を上回つておるというような場合は、これは万々一そういう場合がありとすれば、これは権利金が含まれている場合であるのでありまして、これ以上を上回るという時価はないのであります。でありますから、法案の九百倍は時価より高過ぎ、結局課税対象としては名目的資本価格所有者に強要することになるのであります。名目的の資本価格を強要しましても、この価格による売却処分は、現在のところ全く不可能であり、又これに対する利子所得、即ち地代、家賃收入は伴うておりません。東京都におきましては、確か去る三月だつたと思いますが、第七国会公聽会がありましたときに、勧銀の副総裁のお話を承つておりますと、東京都におきましても平均この賃貸価格の六百倍が時価であるというようなことがお話されたように記憶しております。関西方面の大阪市及び神戸市においては平均時価は三百倍となつております。併し賃借権とか地上権とか、附帶物件はそういうものがついております場合は、更に低く八十倍乃至三百倍が関の山でございます。税の対象としての資本価格は処分可能な価格でなければならないのであります。然りとしますと、この賃貸価格の九百倍ということは余りに不当と申上げなければならんのであります。而して固定資産税税率原案では百分の一・七となつておりますが、これは是非百分の一・二にして頂きたいのであります。我々はなぜ一・二にして頂きたいと申すかと申しますと、シヤウプ勧告税率は一・七五%、不動産の利廻りを五分五厘と見て、その五分二厘五毛を基準としてその三分の一を公課に充て三分の二を維持費、或いは投下資本の利潤に充てる前提において定められたごとく仄聞するのであります。ところが現在の不動産利廻りは去る七月の十一日、住宅というものはまだ統制下にあります。大体統制令が解除されたのでありますがその後の賃貸借の相方において、貸借の相方において協定可能の賃貸料を基準として計算して見ますと、先ず近畿地区の都市においては、昔から一番上の利廻りとしても四分、或いは三分、平均三分六厘内外になるものと思います。だからシヤウプさんの言つておられる割りからいたしますと、この三分六厘を基準とすれば三分の一は税金、三分の二は経費或いは手取りというような関係で、結局税率は一・二とすべきが妥当と考えられるのであります。  それから物納制度ということはこの政府案には出ておらないと思いますが、これは是非お附け加えを願いたいのであります。但しその物納価格課税客体たる資本価格を税額に充当して頂きたい。即ち理由を申上げますれば、固定資産税額の転嫁方法が困難であること。これが先ず第一。  第二は、特に土地家屋の個人所有者は財産税以来資金というものを持つておりません。  第三は土地家屋の売却が困難でございますから、納税資金の調達が非常に困るのでございます。誠にあくせくとして納税するにもせられないというのが今の土地を持つておる、家屋を持つておる、勿論附け加えて申しますが、我々の階級は土地家屋というものに恋恋としておりません。早く何とかこういう重たいものを背負うておることをせず、何か軽くなりたい、身軽るになりたいと思うのでありますが、今申上げる通りに気はあせつておりましても思う通り売却が困難である。從つて納税資金の調達が困難であるということになるのであります。でありますから結局物納によらなければ納税し得ない場合が多いのであります。この点特に御留意願いたいと思います。收益課税である本税が、收益の大部分課税されるということなれば、勿論物納が当然認められなければならないと思います。そうして又結局自治体そのものが、若しも物納によりまして、自治体が土地家屋を所有し、経営している現状に鑑みまして、物納物件をも包含して経営管理することは、別段に労を要さないと思考いたします。そうしてかくのごとくいたしますれば、自治体の所有経営といたしますれば、税收以上に賃貸料の増收入が図られるのでございます。物納制度をかくのごとく強調せざるを得ないほどに、我々現在においては苦境に追い込まれておる、その苦痛をどうか御賢察願いたいのであります。この際是非物納制度の途をお聞き願いたいことを強調して止みません。  第四は、所有者の責に帰せない未嫁動地については、減免税の措置をなし得るように法文化を願いたいのであります。理由は、戦災都市復興の遅れているのは、必ずしも土地所有者のみの責とは考えられないのであります。又内港工事による地盛事業、防潮堤工事の未完了、地盤沈下或いは都市計画施行遅滯によつて使用不可能の土地が多いのであります。從来かかる土地所有者の責に帰さない理由で使用できない土地については、戦災地減免が認められていたのであるが、更にこれを減徴することを是非法文化して頂きたいことを願うものであります。急激なる増税はこれは我々だけではございません。一般論でございますが、特に私も強調いたしたいと思いますのは、増税は絶対、現在においては止むを得ないと言いながら避けて貰いたいのであります。税金問題が一部社会問題を起しつつある折柄一不当なる増税ということは是非御遠慮願いたいと思います。  固定資産税の担税力はもうすでに先程も申しました通りに、すでに限界点を超過している次第であります。ここに地代と地租の比率について御説明申しますれば、如何に我々が先程申しましたことが妥当であるかということが、御賢明なる各位におかれてはお分りだろうと存じます。先ず昭和十三年で賃貸価格が、これは大阪でございます、賃貸価格が坪当り三十円という場合に、地代は三十六円に対して地租は三円十銭、即ちパーセントで言いますと九%、それから昭和二十四年を例にとります。つまりついこの間までのこの関係を申上げますれば、只今の三十円の所は、地代が二百三十二円九十二銭、ところが地租は百八十六円、八〇%という割になつております。昭和二十五年においては、大体は統計はとつておりますが、まだはつきりと決まつておりませんので、御遠慮申上げたいと思います。右の表のごとく、地代の大部分が地租であつて、更に管理費等の膨脹と併せ考えた場合、所有者としての担税力がすでに限界点に達しておるということがお分りであろうと思います。又税法と他の法律との調整を図つて、所有権の司法的保護を與えて頂きたい。他の法律と申上げるのは、即ち特別都市計画法、借地借家法等でございます。税法においては、所有権のみを認めておりますが、他の法令においては所有権が甚だ弱体化されておるのであります。租税が所有権者に課税される以上、当然司法的にも所有権に対し保護政策が行わるべきであると思います。  もう少し具体的についでに申上げますが、特別都市計画法によりましては、所有者の意思に反しても強制的に土地は余儀なく減らされるのであります。又例えば借地権の讓渡、或いは又借しの権利金が莫大な金額に上り、所有者の知らぬ間に取引されておる。普通所有権が二割、賃借権が八割は通例ということを仄聞しております。地方税法を決定される以上、他の法令も同時に修改正をすることを前提として頂きたいのであります。  税額と地代家賃との調整を図つて頂きたい。これはここで序ながら申上げるので、或る程度御参考になると思いますので申上げさして頂きます。過去の地租家屋税増税率に比して、地代家賃値上り率が甚だ不均衡であります。地代家賃の値上り指数と、地租家屋税の増徴指数を例をとつて申上げます。昭和十三年から十四年を仮に一〇〇%といたします。そういう場合には、地代が昭和二十三年は多少公が上つた関係で三七五、二十四年は八八〇、その代りに昭和十三年十四年の地租が一〇〇%といたしますれば、昭和二十三年には、地代の三七五に対して二八二三という指数が出るのであります。又二十四年は地代の八八〇に対して六七三九という指数が出て、こういうように税ということの方が遥かに地代よりも上廻つておるということが、この一例によりましても十分会得せられるだろうと思うのであります。
  99. 岡本愛祐

    岡本委員長 和田君に申上げますが、時間が参りましたので、結論を急いで……。
  100. 和田益幸

    ○和田公述人 右の表によつても税額は物価指数に準じている。從つて地代家賃も物価指数に準ずるような値上を認めることが先決でなければならん。これは物価庁関係の問題でもございましようけれども、ついでに附加えさせて頂きたいのであります。税額転嫁のための地代家賃統制令の改訂が近年実施されましたが、常に徴税年度に遅れることが甚だしく、從つて所有者に税の加重負担を強いて来た。即ち最近の例を見ましても、七月十一日に住宅の外は統制解除というような関係がありますが、たとえ自由意思で双方共上げられるというようになりましても、税金は四月一日からという基準になるので、そこにズレがあります。いつも何事でもズレということが今までにありまして、納税者として非常に困つてつたのであります。租税には延滯加算税或いは差押え等の強権を持つておりますが、地代家賃は相手方の好意による支拂のみで、結局所有者が苦境に置かれております。地代家賃統制額が甚だ低廉なるため、賃貸権、地上権が跳梁して、所有権を無視して高価な自由取引が行われていることは誠に矛盾をいたしております。当然のことでありますが地代家賃は税負担と維持管理費及び純利得が加算された額でなければならないのであります。  最後に、固定資産税の納税のための金融を図つて頂きたい、こういうことを申上げたいのであります。固定資産税は收入を俟たずして、一番初めの原案は前納というようになつておつたと思いますが、たとえこれから三回拂とか何とかになりましても、納税者としては非常に困つた立場におりますので、固定資産税のためには貸出し金融を図ることが必要である。現在不動産抵当による貸出し銀行は全くないので、不動産所有者は非常に困つているということを、これも申上げたいのであります。要の所は、我々といたしましては、この度の固定資産税は、地方税法案というものに全面的には決して反対をするのじやございませんが、私ほいつも申上げているのは、即ち如何なるようにして国会で適当なりと思われる税法を拵えられましても、納税者なるものが拂いにくいというような税法であつては、又自治体におきましても取れるような税法でなければ非常にお困りだろうと思います。そういう関係で、この度の固定資産税、又地方税法案全般にいたしましても、要は画に書いた餅ということにならずに、本当に国民としていわゆる明るく納税ができる、非常に納め易い税金、こういう点を念頭に置かれまして、皆様議員さん方は、非常に暑さの折柄、毎日重大なるこの御使命に対して日夜御奮鬪下すつておることは、我々は深甚の敬意と感謝を表するものでありますが、只今申上げましたように、我々得手勝手でありますが、固定資産税の中の土地家屋関係のものはこういう関係におるということを十分お酌取りの上、適当なる我々の要請いたしまするこの税率又倍数を、特によろしく御審議あらんことをお願いいたしまして、長らくの拜聴厚くお礼申上げます。
  101. 吉川末次郎

    ○吉川委員 公述人のおつしやつたことは市街地における土地家屋所有者の利害関係を代表した御意見として私達の立場からは今直ぐに御賛成できない部分相当ありますが、ともかくもそういう利害を代表された御意見として十分参考になり、我々拝聴いたすわけでありますが、併し寡聞にして全国不動産協会という団体のどういう団体であるかということを知らないのでありますが、これはどういう団体なのですか。
  102. 和田益幸

    ○和田公述人 申上げます。今の御質問に対してお答えをいたしたいと思います。この不動産所有者という人は、非常に露骨に申しますれば大名気分の人が多かつたと思う。いつも心に思いながら積極的には出られないようなお考えの人、引込思案、もう一つええ言葉で言えばお上品にすぎるという方が多いと全国的に思われます。それでいつも我々は一般の方々に宣伝もいたしませんが、そしてこういう陳情とか何とかということも心に思いながらようしないというのが不動産階級の一つの弱みと言いますか、意気地がないと申上げますか、そういう立場に置かされたものであります。我々の不動産の持主は財産税以来非常に困惑をいたしております。ところがいろいろと御研究なすつて、さあ今このことを申上げようかというても、一つのグループというものがなかつたのであります。併しなかつたとは言えません。曾て三十年、二十年来とか十年来、御当地の近くの横浜なんかも古い土地協会というものがあつたのです。我が関西方面でも三十年に垂んとする歴史ある協会があつたのでありますが、余りにお上品過ぎて、運動、陳情とか、世間にかくかくのことを意思表示をしようという考えを失礼ながら持つておらなかつたのであります。だからこういう地方税法案が、我々としては国会でこういうようにお作りになられても、拂いやすいようにというところに税を抑えて行くために、我々は固く手を握つて、そうして全国的な勿論運動でございますから、全国的に握手をいたし団結いたしまして、そこで十分御当局に要請、陳情その他のことをやらなければならんということを遅蒔きながらに、運動方面は遅蒔きながらではございますが、現在大いにやつておる始末でございますが、全国……関西、関東という関係の、近畿においては、勿論近畿という名前がついておる以上二府六県でございますが、網羅し、又こちらの方は横浜又は東京とも連繋を持ちまして、関東と関西と相提携いたしまして、全国不動産協会というものが結成された次第であります。今後この問題に拘らず、何れの方面にいたしましても、事不動産のことに関しましては、この度の地方税法案に拘らず何事も提携して、そうして検討しよう、何も引込思案でなく大いに積極的に、曾て引込思案であつたことを我々としては時代遅れであつたと自覚した人が多いのであります。不肖私もそういう点を書生時代から思つておりますので、是非そういう関係方面の運動というものが必要であることを申上げて、皆さんにこの度は非常なる御協力を得まして、御当局に陳情なり意見開陳をしようと思つておりますので、よろしく御了承の程お願いいたします。
  103. 吉川末次郎

    ○吉川委員 いや、私何も知らなかつたのですが、全国に亘つて、東京でも大阪でも、土地売買業者、土地会社というようなもの、或いは土地売買業者、関西で口入なんと言いますが、ああいう土地売買業者が主になつた、主体になつた団体ですか、或いは土地家屋の、都会における土地家屋所有者の直接的な団体なんですか、どつちなんですか。
  104. 和田益幸

    ○和田公述人 お答えいたします。我々は不動産関係のブローカーではないのであります。実は不甲斐にして先租代々の土地或いは家屋を、財産税は取られましたが、まだ多少共持つておる、こういう関係土地家屋所有者の集まりでございます。
  105. 吉川末次郎

    ○吉川委員 ブローカーは入つておらないのですか。
  106. 和田益幸

    ○和田公述人 ブローカーは一切入つておりません。ブローカーのようなものは金の関係のことでございます。我々は所有者の側のこととして……。
  107. 岡本愛祐

    岡本委員長 外に御意見ございませんか。それではこれで公聴会を終りたいと存じます。公聴会を終るに当りまして一言御挨拶を申上げます。公述人各位には御多用中、又この暑いのに万障お繰合せの上御出席願いまて、いろいろな点から有益な御意見開陳を願いましたことに対しまして厚く御礼申上げます。法案の審議の上に非常なる有益なる参考となりました。厚く御礼を申上げます。  これにて公聴会を終ります。    午後四時九分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            堀  末治君            吉川末次郎君            岩木 哲夫君    委員            石村 幸作君            岩沢 忠恭君            高橋進太郎君            安井  謙君           小笠原二三男君            相馬 助治君            中田 吉雄君            鈴木 直人君            竹中 七郎君            石川 清一君   公述人    日本租税研究協   会地方税委員長  荒井誠一郎君    十條製紙常務取    締役      金子佐一郎君    関西経済連合会    理事      工藤 友惠君    立教大学教授  藤田 武夫君    都議会議員   本島百合子君    農業協同組合員 眞通 新藏君    都道府県議会議    長会々長    石原 永明君    全国市議会議長    会々長     小澤 二郎君    全国町村議会議    長会々長    齋藤 邦雄君    全日本通連労働    組合      川淵 義光君    全国農業協同組    合事務局長   平尾卯二郎君    全国不動産局会    連合会代表   和田 益幸君