○
参考人(友末洋治君) 私茨城県の
知事でございます。本日は
全国の
知事会を代表いたしまして、私以外に広島、山口、香川、大分の
知事さんと一緒にお伺いを申上げたのでございます。貴重な時間を割いて頂きまして、誠に有難く、厚くお礼を申上げます。
地方財政に関しまする問題は、
相当前からの問題でございまするが、二十五
年度の
補正予算をめぐりまして、最後的な深刻な
段階に相成
つて参
つたのでございます。そこで
知事側といたしましては、去る十一日に
全国知事会議を開催いたしまして、この問題についての協議をいたしたのでございます。尚
府県側と市側、
町村側、それぞれ同じような深刻な
段階に相成
つておりまするので、これらの
団体とも協力いたしまして、その後各
方面に強力に要請を申上げておるところでございます。そこでこの機会に問題の要点と、それから従来の滯納経過のあらましを申上げまして、皆様の御了解を頂き、今後格別の御高配と御援助をお願い申上げたいのでございます。
今一番問題にな
つておりまするのは、二十五
年度の
補正予算でございまするが、この問題はただ二十五
年度ばかりでなく、二十六
年度の
予算編成にも関連を持
つておりまするので、一応順序といたしまして、二十六
年度の問題をごくあらましに申上げまして、次に二十五
年度の補正問題を御
説明申上げたいと存じます。
二十六
年度におきましては、
地方側におきまして、私共の
考えておりまするところは約七百億
程度どうしても赤字が出る
計算に実は相成るのでございます。ところでこの七百億の赤字を何とも
措置できないといつたような
状態のままに置かれておるのでございます。これについては
地方財政委員会から
大蔵省にも強く要請せられたところでございまするが、
大蔵省方面におきましては、その
措置をとられない、で一応閣議決定がされまして、
関係筋に持込まれておるのでございます。丁度持込まれましたのは、第二次のシヤウプ勧告が出ました前日でございます。御
承知のようにシヤウプ勧告によりますれば、大体
地方財政委員会の
意見を採用せられまして、来年の
平衡交付金は約二百五十億
程度殖やすべきだというふうな実は勧告に相成
つておるのでございます。後の赤字につきましては勧告の附録書が出まして、
災害復旧の
措置をどうするかという問題が実はあるのでございまするが、
政府としては従来の
災害復旧費
全額国庫
負担を改めて、補助といたしまして三分の二補助する、
あとの三分の一は
地方負担というので組まれておるわけでございまするが、それをシヤウプ勧告によりましては、やはり国庫が
相当部分
負担するといつたような
方法で要求が出るごとにな
つておりますが、それがまだ出ておりません。更にその残りはいわゆる
地方起債の枠を拡げるといつたようなことに相成るかと思うのでありますが、これに対しまして、
政府としては僅か三十五億しか
平衡交付金を殖していないわけでございます。その三十五億と申しますのは、義務教育に従事いたしまするところの
教職員の
給與ベースの改訂に要しまする費用の半分でございます。即ち約七百億の赤字に対しまするところの三十五億、五%しか
措置がされていない、九五%は何ら
手当がしてないという
状況でございます。閣議決定の際におきましては、シヤウプ勧告が出ますれば、その線に副うて更に
考え直すという実は紐が付いておるように我々は了承いたしておるのでございます。ところでシヤウプ勧告が先程申上げましたように、
地方の
財政についてもつと
平衡交付金を殖してやらなければならんし、
災害に対する費用も真剣に
考えてやらなければならん、
起債の枠も拡げる必要があるといつたように、
地方財政につきましては当然のこととはいいながら、正しい見解を表明されたのでございます。第一次のシヤウプ勧告につきましては、我々非常に遺憾に思
つておりますことは、中央の均衡
予算を
編成されまするがために、
地方財政というものが非常に犠牲にな
つておつたということを痛感いたしてお
つたのでございまするが、第二次のシヤウプ勧告によりましては、この日本全体の均衡
予算を
考える場合においては、一応中央の方はできたけれども
地方の方はまだ不十分である、第一次の勧告では不十分である、それを第二次で補完してやらなければならん、補充してやらなければならんといつたようなことで、
全国各地を仔細に
検討されまして、さような勧告に相成つたと実は意を強ういたしておつたところでございますが、その後
大蔵省とされましては、折角シヤウプ勧告は出た、それについて
検討するという紐が付いておるにも拘わらず、何ら
検討されておりまするような模様はございません。むしろ
地方財政はゆとりがあ
つて、三百億減税が二十六
年度はできるのだという
結論を発表されておるのでございます。私共といたしましては、全く意外、怪奇そのものであるというふうに実は
考えておるところでございます。そこで七百億の赤字と三百億の黒字でございまするから、その間には一千億の見解の間違があるわけでございます。そこでその三百億の黒字がどういうふうにして算出されておるかという問題に相成るのでございまするが、私共の
考えといたしましては、全く了解に苦しむような基礎で以てそれがでつち上げられておるのでございます。即ち
昭和九年の
地方予算に対しまして、
物件費については二百倍、それから
人件費については八十倍という倍数を乘ぜられまして、一応の支出を四千九百億、
地方であればそれで十分なのだという
結論を出しておられます。歳入の方は
地方税或いは
平衡交付金、国庫
補助金、
起債、それらを含めまして五千百億円実は入るのだ、そこでそれだけでもすでに二百億の黒字が出る、更に
地方は
給與ベースが高いから
給與べースの切替えをやらぬでもよろしい、そうすると五十億の黒字が出る。又
物件費等の
節約をすれば、これ又四、五十億は出るのだ、そこで百億出る、合計して三百億は黒字になる。実は御
承知のように、ずつと前に一千億の減税案というものを民自党から出されておつたわけでございまするが、国税では七百億円、これは二十六
年度においてやるのだというふうに
大蔵大臣も非常に強腰しでや
つておられます。残りの三百億は
地方税でやるのだ、丁度その三百億に
大蔵省で作り上げられましたところの
数字というものが合うのでございます。三百億を何とか恰好を付けるために、さような子供だましの
数字を持
つて来られまして、そうして歳出の方は極力少く見、歳入の方は極端に最高を見られまして、この三百億が出ておるように思うのであります。いずれの点から
考えましても、さような子供だましの基礎
数字では私共は納得できないのでございます。二十六
年度の問題はさような
状況に相成
つております。従いまして二十五
年度の
補正予算につきましても、やはり同様な
考え方で以てこれを取扱
つておられるのでございます。即ち義務教育の
給與ベースの改訂に伴いまするところの
増額の半分、九億だけ殖やしてやる、
あとは
地方はゆとりがあるのだから、何ら
措置する必要がないというふうなお
考えのようでございます。私共の方といたしましては、お
手許に差上げてありまするように、二十五
年度におきましては三百八十九億、約三百九十億の赤字が出ることにな
つているのでございます。その内訳といたしましては、
給與関係におきまして百四十億でございます。その中には
給與べース改訂、六千三百円
ベースが一千円引上げられるのでございますが、これに要しまするところの費用が四十三億円、それから年末
手当、これが一ヶ月分でございまするが、九十二億、その他
教職員の
待遇改善に要しまするものが四億九千万円、合計いたしまして百四十億円赤字か出るごとに実は相成るのでございます。
給與べースの一千円の引上、それから年末
手当を一ヶ月分出すといつたようなことは、
補正予算の際に大体案を立てられまして、そうして
政府の方はがつちり
予算ができ
上つているのでございます。
地方の方は当初
予算からさような
考え方で組んでおりません。
給與べースは相変らず六千三百円
ベースで組んでおります。年末
手当の支給なんというものは実は認められておりませんので、何
一つ組んでおらないのでございます。実は御
承知のように
政府では債務償還費でありまするとか、或いは価格差補給金といつたようなものをお止めになりますれば、立ちどころに出る
財源というものがあるのでございまするが、
地方にはさようなものはびた一文もございません。そうしてどんどん
地方で組みました
予算は、仕事の進行に連れましてすでに支出をいたしている最中でございまして、
年度半ばになりまして、かように百四十億というふうな大きな金はどこからも実は搾り出すことが困難なのでございます。更にそれ以外に
平衡交付金及び
起債の枠が決定いたしました後に、中央の
方面から法令の制定、
改正というような点につきまして、どうしても
地方としてはその執行には出さなければなりません臨時的な費用、経常的な費用があるのでございます。これらを
計算いたしまするというと、百七億要するのであります。更に本
年度は各地に
災害が頻発いたしまして、これに伴いまするところの復旧費でありまするとか、或いは
災害救助費でありまするとか、又
災害につきましては、御
承知のように單県の事業もあるのでございます。更に進んで失業
対策事業も
政府の方針に
従つて実施しなければならんわけでございます。それらが百二十七億要するのでございます。尚
政府の
補正予算で、文部省
関係、農林省
関係、厚生省
関係でそれぞれ事業、
事務というものが決定されているのでございまするが、それを執行するといたしますれば、どうしても
地方としては百二十四億ばかり
負担せざるを得ないのであります。これらを合せまするというと、三百九十億実は赤字が出るのであります。そこでこれを如何に
措置するかという
財源問題でございます。勿論
地方としましても、
物件費等の
節約は極力やりつつあります。これを一応この五%と見ますというと、約四十億の
節約になるわけでございまするが、これもすでに各地共実行し、
節約をや
つておりまするので、
数字上は一応さように
計算が出ますけれども、実際や
つて見まして、かような
節約の
財源が出るかどうかということについては疑問があるのでございますが、一応は
政府の方針に
従つて、極力
地方費を
節約するということで一応出した
数字でございます。更に
地方起債は約二百十五億枠を拡大し頂く、さようにいたしますれば、
平衡交付金の
増額が百三十四億、かように実は相成るのでございます。かような次第で、この三百九十億を本
年度内に何とか
財源的な
措置を講じて貰いたいと、かように
考えておるのでございます。特に
給與の
関係或いは御
承知のように人の問題であります。
国家の官吏に
給與ベースの改訂或いは年末賞與が支給されますというと、
地方は放
つて置くわけには実は参りません。何んとかしてこれは出さなければならんのでございますが、出すにも実は金がないというふうな苦しい立場に追込まれておるのでざいます。御
承知のように
地方の
公務員といたしましては、約百二十万人こございますが、これの家族を入れますというと、五、六百万の、実は生活の深刻な問題に相成るわけでございます。そこで
給與ベースの切替え、又年末賞與も出さなければならん時期が刻々と迫
つて参
つておるのでございますが、
地方側といたしましては、何ともこれはやりくりが付かない、
大蔵省方面は、
余裕があるから放
つておいても何とかするだろうというふうな安易なお気持にな
つておられるように思うのでございまするが、これは
余裕がないのが実際でございます。各
府県知事ともこれはちつとも出せない、そこでどうするかということになりまして、十一日以来継続的に、実は肚を決めて、この問題の解決に実は邁進をいたさざるを得ないという苦しい立場に追込まれておるわけでございます。
財源があるとかないか、或いは
余裕があるとかないかといつたような問題を今強く論議しておるときではないのではないか。かような
事務的な問題も勿論これはあると思います。併しその
結論はそう
簡單に短時日に出るものではない。
大蔵省の
考えられたようなくらいの倍数で
ちよこ
ちよこと出して、これが
地方の適当な指数である、或いはこれが
地方に入る收入であるとかいうような
簡單な操作で
結論を出されますることは、
地方側としては迷惑至極である。特に
大蔵省としては、
地方の
行政、
地方の
内容というものを一向に御存じではないのであります。
昭和九年から本年まで
地方の
行政の
内容というものは非常に大きく変化をいたしております。今日
地方の支出で自主的な支出というものは殆んどございません。大部分が国の
関係に紐が付いております。国の命令のようなもの、法令の施行に伴うもの、又国の指示によるもの、これらが、人の問題につきましても、事業の問題につきましても、
施設の問題につきましても、細かい紐が一切付いております。ところがこれに伴いまするところの費用も中央から当然来なければならんものが来ていない。
全額国庫
負担と、名目は
全額負担にな
つておりまするけれども、ほんの一部しか金が来てない。又二、三補助率が決ま
つておりましても、その
通りにはなかなか来ない。更に当然国で出される費用も出されておらない。新制大学の
施設の問題でありまするとか、或いは
町村長の命取りでありまするところの供出の問題、これらについては
政府が当然お金を全部出されなければならんのでございまするが、ほんの僅かしか来ない。それをどうしても供出問題を放
つて置くわけには参りませんので、各
府県ともとても大きな金を注ぎ込んで
政府の施策に協力しておるのであります。さように又人の問題につきましても、
地方はそれぞれ欠員の補充を得まして、條例を一歩も出ないように強い方針でかか
つて来ておるのでありますが、次々と中央からこれだけ金をやるからこういう人を殖やせというふうに指令が実は参るのでございます。その金もほんの微々たるもので、大部分は
地方で補わなければならんというのが実情でございます。かように、仕事にいたしましても、
事務にいたしましても、又人の問題にいたしましても、すべて中央に紐が付き、又中央の施策の
財政的な
措置の不十分のところを漸く無理算段いたしまして、苦しい
地方財政でこれを補
つて来ておるというのが現在の偽らざる
府県町村の仕事のやりぶりでございます。さような
関係で、実はにつちもさつちも行かない苦しい
状態に相成
つておりまするので、何とか
一つこの機会に本年を越せるように是非とも御配慮をお願いいたしたい、かような
考えで私共申上げた次第であります。