○参考人(万木仙君) 先程から
ユーザンスの
手形の問題が大分論議されておりましたようでありますが、この問題について
業者の希望を申上げます。ストレートの
ユーザンスの
手形であ
ろうと、一覧拂の
手形であります
輸入の貿手のリレーされた
金融であ
ろうと、
業者の側から見ましたならば、正直に申上げますと、いずれにしても安い
金利で
支拂が成るべく延して頂けるのが一番の眼目であります。理屈は如何にあ
ろうとも要点はそこにあります。そこで、もう
一つ業者の立場から申上げますと、
輸入業者というものは
自分で消費するものでもなし、
自分で食
つてしまうものでもなし、全部これは国内の実需要家に
輸入品を売繋いでおります。
従つて如何なる過酷な
條件、
決済條件を押付けられようとも全部これを実需要家に転嫁するのが我々の偽らざる立場であります。併しながら非常に苛酷な
條件、
決済條件その他を押付けられた場合に、実需家にこれを完全に転嫁できるかどうか、完全に転嫁できたとしても実需家がこれに堪え得るかどうかということは非常に疑問であります。
従つてその撥返りが我々の体に振りかか
つて来るところに
業者としての非常に辛いことが多いのであります。これを具体的に申上げますと、
輸入品の場合には先ず
輸入の
契約ができました場合に、我々は
銀行に担保金を差出さなければならない。或いは二%である、或いは一割である必らず担保金を差出さなければならない。或いは
現金で積めと言われる場合もあります。その場合に我々のやり繰り
状態というものは、皆
銀行から借金してや
つております。昔と違いまして自己資本というものは殆んど
貿易会社の経営の側分の一にも何十分の一にも当
つておりませんので、全部
銀行の借金でに振廻しております以上、それだけ借金が殖えるだけでありまして、実需家もこれだけ我々の所は
銀行へ担保して、お前の所から見返りの担保金をこれだけ呉れと言
つてもなかなか全部がそれでカヴアーできるわけではありません。やはり一部身銭を切らなくては担保金が出ないということにな
つて来ます。非常に寛大な
條件にあればあるだけ我々も
仕事がし易いし、実需家もそれを喜ぶでしよう。それから船が一般満船で入
つて来たような場合に諸掛りの立替が非常に嵩みます。その場合に現下の
決済が早急にや
つて来る船の諸掛りの
決済も早急にしなければならないとなりますと、あれやこれやダブりまして、いよいよ
貿易業者の立替は多く、立替えても金が来ないということでいよいよお互いに皆困
つてしましましてうまく行かなくなる。殊に緊急
輸入と称せられております今度いよいよ始まるように聞いておりますが、
輸入品がどかどか入
つて来ますと、従来例えば実需家が二ヶ月のストツクを持
つて操作をしてお
つたのを、備蓄の意味もあるでしようし、動乱によ
つて原料の壮絶を考慮して少し余計に持
つて置かなければならんという場合には非常に手持を殖やしましようから、そういうものの
輸入やる場合には実需家も参
つてしまうだ
ろうし、我々もとでも賄い切れなぐな
つて来るということにな
つて来る。勢いできるだけ
ユーザンスの
手形であ
ろうと貿手であ
ろうと構いませんがら、成るだけ寛大な
條件でや
つて頂きたい。原則はやはり我々考えますのは、民間
貿易で
輸入をや
つて頂いて、どうしてもいけなく
なつたならば
政府の御厄介にでもな
つてこれを貯蓄して置きたいと思うのであります。
もう
一つ非常に
制度の上で矛盾した現象がありまして、皆様に訴えておきたいことは、現実の例を申上げますと、工業用の塩であります。外国から塩を買
つて輸入しておりますが、CIF
日本沖着で今まで買
つておりました。
日本船がいよいよ出ることになりまして、今度は
日本船を
使つて一つ輸入しようじやないかという話が非常に起
つて来ますと、外国の港渡しで我々が
外貨で買うとすると、例えば外国の港渡し五ドルで買
つて、運賃があと五ドルかかる。これを
一つ日本船を
使つて節約しようじやないか、円でこちらで
拂つて外貨を節約しようじやないか、というのは誠に理論上御尤もな話であります。併し実際にや
つてみますと、CIFなら十ドル
外貨を拂わなければならん。FOBなら五ドルだけ
外貨であとの五ドルは円で拂えばいいのですが、今の
輸入の
金融から行きますと、CIF十ドルで買うと十ドルそのまま
輸入金融のラインに乗
つて来ます。FOB五ドルで買
つた場合は、五ドルだけは
輸入金融のラインに乗
つて我々は恩恵に浴しますが、運賃だけは誰も
金融して呉れません。我々は
自分の
銀行から借金して佛うか、実需家から
拂つて貰うか、何らか都合して拂わなければからん。となるとこれはどうも国策上甚だ
外貨を節約していいように思いますが、我々の懐勘定から見ると大変どうも悪くなることにな
つて来まして、こういうところにもう少し今後考えなければならんことが起るんではないかと思
つております。
それから朝鮮動乱の発生後どういう変化があ
つたかという御質問でございましたが、
輸出の面から見ますと、朝鮮の動乱発生前から
アメリカの動向が非常に好景気の方に向
つて進んでお
つた、その好景気の兆しはどこから出て来たかと言いますと、
割合に堅いものから出て来たのでございます。金物その他からや出てお
つて、繊維製品その他の軟いものは比較的落着いてお
つた。どうしてこの堅いものがどんどん上
つて行くか、おかしいと思
つているうちに、朝鮮動乱を契機として堅いものも軟いものもみんな上
つてしま
つて、一時に買付いて来た、かたがたクリスマス前の商売が盛んに行われて来た、それまで印度方面でもぼつぼつ日永の物は何時でも値切
つて買えるからゆつくり買
つていいだ
ろうというようなのつもりでじわじわや
つてお
つたのが、みんな慌てて買付いて来たというようなことで
輸出が非常に一時に進展して来ました。その上に例えば繊維製品その他は
戰前二千万錘からありました
時代の頭で紡績会社も
割合に物を
計画しております。我々も少く
なつたとは言えども、
日本の紡績というものは大したものだと思
つております。海外でも
日本は相当な能力があるから何時でも物は買えると思
つていたのが、案外この上り坂にや
つて見たところが根が浅くて、少し買
つて見たらもう無くな
つてしま
つたというようなことにな
つてしま
つて、誠に
貿易業者として、
日本の
輸出余力経済基盤というものが余りに薄か
つたというような感じを持たされたわけであります。
それからもう
一つ特殊需要といいますか、
アメリカの陸海空軍の買付が始りまして、ダブ
つてお
つたストツクが大した金額でもありませんが、吸上げられてしま
つたので、その心理的な影響も手伝いまして、どんどん値段が上
つて来た、
アメリカでは一度に三割も値段が上ることはないのに、
日本ではどうして三割も上がるのかというふうな質問を受けるくらいに急に撥上
つて我々はどうも
日本の基盤は弱いのだなというような感じを受けたわけであります。逆に
輸入の面から見ますと、砂というようなことで、いろいろ
契約が取決められて進んで参りました、ところがこれたるや実に不手際な結果に終
つております。物が下り坂にな
つておりましたときには物々交換を
契約いたしまして、
日本へ
輸入を先にしろということでありますから、
契約をしたときと
船積みするときと、大分
船積みするときの方が値段下
つておる。そこで
契約の値段より安い値段で外国商社が物を買付けて
日本へ積んで来る。
日本へ品物が入
つて見返品を出すときは二、三ヶ月後ですから、
日本のものはそれよりも下
つてしまう。
日本が買
つたものは高いものだ、売
つたものは安いものだというので、バーターは困
つたものだと思
つておりましたところが、世界的な物価騰貴に遭遇したときに、この
契約はどうなるかと言いますと、キューバの砂糖なんがを
日本がバーターで
契約したときに、
日本へ積ままないで、上
つたものですから
ニユーヨークのマーケツトで利食いして、何十万ドルが儲けて、
日本へはもう積みませんと言
つて知らん顔されてしまう。これは下り坂で
日本が損をし、上り坂に安いときの
契約の品物は手に入らんというようなことでの、金のない人間が苦しまぎれに考えたバーターという
一つの重宝な
貿易組織でありますけれども、上り坂にもうまく行かん、下り坂にもうまく行かんというような誠に不便な
制度であるということが、今回身を以て実験されたわけであります。差当り御報告申上げることはそのぐらいにいたしておきます。