○
説明員(
大月高君) それでは今お話のございました新
金融業法の最近の
経過を御
説明いたしたいと思います。この間
局長から大体の
あら筋は、ここにお配りいたしました第三次案の
概要というので御
説明を申上げてございますので、その後重要な問題につきまして変更のございました点を主にして、個個的な問題について御
説明申上げたいと思います。
一つは、この
金融業法に盛り込まれております
内容でございますが、第三次案におきましては、信用組合と無
盡会社、これをこの
法案で一括いたまして、
信用協同組合、こういう章を設け、無
盡会社はこれを改組いたしまして、
貯蓄銀行と無
盡会社とを兼ね合わしたような性格を持ちました
相互銀行にするということが入
つております。その後の
関係方面との
話合いにおきまして、この二点は場合によ
つては別の
法律にして出そうか、ただ
考え方としてはその第三次案に盛られた
方向で
考えようという
程度に
なつております。で主な
内容はどうしても
銀行にあるものでございますので、目下は
銀行法プロパーの
内容につきまして個別的に重要な問題について
話合いを進めておる
段階でございます。狭い
意味の
銀行法では、
銀行と
信託会社を入れまして、先程申上げました
相互銀行と
信用協同組合を拔いたかつこうで第四次案的なものができるという
考えでございます。この間御
説明申上げました中でむずかしい問題は、
一つはワン・ボロアの問題という問題でございます。
銀行が
貸出をいたしますときに、無
制限に誰に貸してもいいというわけでなくて、一人に対する
貸出は或る
一定の
限度内に限る、こういう
原則でございます。この点につきましては、第三次
案同様資本金の二五%を
限度とするということに今のところ
なつておりれますが、ただ形式的に
資本金の二五%ということで切
つてしまいましたのでは、現在の
産業界の
需要に応ずるという点において非常に困難を生じますので、自体的に差支えない
範囲、
健全金融の
原則に反しない限りにおきまして、この三五%の
例外を認めるという
方向に進んでおります。その
考え方といたしましては、
銀行の
資産の
流動性を確保するという点に主眼を置きまして、少くとも
貸出の中で
流動性を持
つておるものについてはこれを
制限外にするという大
原則でございます。
御存じのように
銀行は
原則として
商業金融をやるべきものであり、その
商業金融は
短期でなく
ちやいかん、その
短期の
貸出は直ぐに回收し得るものでなく
ちやいかん、こういう
原則を立てますと、今
一般に行われております
商業手形、而も
短期のもの、今
商業手形は大体二ケ月乃至三ケ月というものを
原則といたしておりますが、
法律におきましては六ケ月ということを一応枠といたしまして、
期限六ケ月以内の
商業手形、これをこの
制限の枠から外す、こういう
原則を立てております。それから
銀行が引受ける
手形もあるわけでございまして、これは支拂が完全なものでございますので、それの
銀行引受手形の割引、これもこの
制限から外して行く、それから勿論
地方公共団体に対する
貸出も、
課税権を持
つております
建前から完全に安全なものでありますので、これも
制限から外す。それから
国債及び
地方債を
担保にした
貸出、これも
十分流動性を持
つておるということで
制限から外すことに
なつております。それから
貸出の中でも、現在はございませんが、
政府が
元利保証をしておる
貸出、或いは
政府が
元利保証をいたしております
有価証券、現在はございませんけれどもこれは将来は予想されておるのでありまして、そういう
元利保証債券を
担保とする
貸出、これは
制限から外そう、それから勿論
一般の
商業手形以外におきましても、
担保に
流動性があ
つて、而もその
期限が短い
貸出についてはこれを外そう、こういうことに
なつております。これでこの
制約を外すことによりまして、現在
普通銀行として実行いたしております
貸出の健全なものは、大
部分制限から外れることになりまして、
銀行業務としては
支障のない、而も健全なものになるということが期待されておるわけであります。ただ現在の
銀行といたしましては、或いは
資本金の二倍、或いは三倍の
金額の
貸出をや
つておる、一人に対しでそれだけの
金額を
貸出しておる場合もございますので、
経過規定といたしまし三二年間はこの
規定の適用をしない、後の二年間、四年目、五年目におきましては二五%という
数字を五〇%にする、で五年
経過いたしまして初めてこの
規定を完全に適用するというように
経過規定を
考えておるわけであります。この外、
社債、
株式等につきましても、
一定の
制限を設けまして、一
会社の
株式或いは一
会社から
発行した
社債の保有を
制限しようという話に
なつおりますが、そのパーセントについてはまだ決ま
つておりません。或いは
貸出と同じ二五%にするか、或いは五〇%或いは一〇〇%にするかということで、今計数的に
検討をいたしております。この
社債を
制限するという問題で最も大きな問題は、
金融債をどう処置するかという問題でございまして、
御存じのように
興業銀行、
勧業銀行等で
金融椿町を
発行して、それを
銀行に持たしております。その
金額は
相当な
金額に上りますので、例えばAという
銀行が
興業債券を持つ、それが
自分の
資本金の例えば二五%ということになりますと、もうすでにその
制限を超えているわけでありまして、現在では
興業債券は現在の
銀行の
資本金の二八八%という
数字に
なつております。従いましてそういう
制限を置くといたしましても、十分な
経過規定を置きまして、
金融債発行の
状況或いは
証券市場の
状況、その他
一般の
経済状況と睨み合せてこれを適用して行く、その間に
経過的な
措置を講ずるということが必要であろうと
考えております。
それから第二点として非常に大きな問題は、
不動産担保貸出の問題でございます。
御存じのように現在
不動産金融が非常に詰ま
つていると言われているのでありますが、幸い最近
金融債の
発行ができまして、最近
統計をと
つたところによりますと、
勧業銀行におきます
不動担保貸出は、大体月十億
程度殖えております。この三月末から七月末までの
統計をとりますと、七月末で五十二億ばかりの
不動産担保貸出、六月で四十二億、五月で三十億、そういう
数字に
なつつておりまして、丁度
金融債発行の七、八〇%ぐらいのところが
不動産担保として伸びている
状況でございまして、
銀行をして
金融債を
発行せし
むるという制度は、或る
程度機能を発揮して、いると
考えているのでありますが、一方逆に
商業銀行という立場から
考えますと、徒らにその
資金が
不動産担保貸出に固定するということは避くべきことでありますので、
一定の
制約を置く、それが実際の
需要を梗塞しないで、而も
銀行の
貸出の
健全性を保つ、この点に焦点を置きまして、種々
検討を続けております。現在の
段階におきましては、
銀行の
不動担保貸出の
総額の
制限を
一つ置くことにいたしてありまして、それは
定期的預金の
総額と
債券のり総額との
合計金額の百分の六十、六〇%に
相当する
金額か、或いは
資本金の
金額かのいずれか高い方の
金額を
制限にしよう、こういう
総額制限をやつでおります。勿論この
数字は今の
不動産担保貸出の
数字といたしましては十分な
数字でございまして、現在この
制限にかか
つている
銀行はございません。それから次に個々の
貸出につきましては、その
担保といたします
不動産の
担保の
掛目を七〇%に押える、こういう
規定を
一つ置いております。大体
銀行が実行いたしております
掛目も六十乃至七十或いは七十五
程度のところでございまして、これは
アメリカの
制度等におきましてもこの
数字で採られておりますし、
日本においても妥当なところだと
考えられております。
尚第三点といたしまして、
商業銀行は
長期に
資金を固定すべきでないという
原則をとります
建前上、
一般に
不動産担保貸出は五年以内に限るという
原則を
一つ立てております。併し
不動産担保貸出でございまして
長期のものでありましても、毎月或いは毎年に均等に償還されて行くものは、そう不健全なものでもございませんし、曽ての
勧業銀行法におきましても
割賦償還貸出につきましては特に
例外を認めて、
相当長期のものを認めておりましたこともございまして、この
不動産担保貸出が五年を越えてはいけないという
制限の
例外といたしまして、
期限二十年以内の
割賦償還貸出であ
つて、
貸出の日から十年以内に貸
出金額の百分の六十に
相当する
金額以上の金が返され、且つ
期限内にその残額が返済されるものについてはこの
制限外とする、
割賦償還貸出であれば、大体二十年以内の
期限の
不動産貸出はや
つてもいいという
規定を置いたわけでございます。
それから
不動産担保といろ
意味でございますが、例えば
根抵当といいますように、普通に
当座貸付契約を結びまして、その
根抵当として置いておりますような
担保は、この
制限の中に入れない。
日本では残念ながら今
有価証券市場も発達しておりませんで、大体
担保に入れるというと、先ず
建物とか
土地とかいうものが多い状態でございますので、
一般の
商業金融の
根抵当としたもの、これは
不動産担保という
概念の中には入れない。ただ今この家を
抵当に入れるから金を貸して呉れというものを
不動産担保貸出として
制限するという
建前をと
つております。
それからもう
一つ、
不動産の
概念として重要な点は、
不動産は
日本では
相当広い
意味を持
つておりまして、例えば
船舶であるとか、或いは立木であるとか、或いは
工場財団、
工業財団、
鉄道財団、こういうものが全部
不動産とみなされ、或いは物とみなされ、少くとも
不動産なみに取扱われております。この
金融を梗塞するという意図はございませんので、ここでいいます
不動産というのは、
土地及び
建物その他の
土地の
定着物、いわゆる
土地建物というものを
意味している
不動産抵当でございます。
船舶その他の
金融については
支障がないように、先程申上げました一、二に対する
貸出の
制限はございますが、
不動産担保という面では抑えない、こういうことにしてございます。それから先程申上げました
短期の
金融については、
銀行として
制約を蒙らないという
意味をはつきりいたりしますために、この
不動産担保貸出でございましても、
期限が短いものについては、これは適用しない。今これを六ケ月にするか、一年にするかということで
検討いたしておりますが、そういう
短期の
貸出については
幾ら不動産抵当のものであ
つてもこの
制約の下に置かない、こういうことでございます。
それから第七点といたしまして、例えば無
担保で今金を貸しておる、ところがどうも危く
なつたということで、この債権を保全するために急に
不動産を
抵当に取るということがあるわけでございまして、これまで抑えることはこの立法の
趣旨ではございませんので、いわゆる追
担保とい
つている分につりいてはやはりこの
制約から外す、こういう
実情に応じた
例外を認めることによりまして、
不動産担保というものは十分に
愼重にしなく
ちやいかんということと、それから
実情にはできるだけ応ずつるように貸すという
趣旨が
相当はつきり出ておるのではないかと思いますが、
不動産担保貸出の
制限というものが、こういう恰好で今ほぼ結論出たことに
なつております。
それから
銀行の
業務といたしまして、如何なる
範囲を認めるかという点について
相当むずかしい問題がございます。それは
アメリカの
銀行の
制度をいろいろ研究いたして見ますと、
銀行か
債務の
保証をすることがないということが一点、それから
有価証券貸出という
業務をや
つておらないということ、それから外の
銀行のために
預金とか或いは
貸出の
代理業務をやらない、こういう
三つの問題がございまして、これにどうしても近代的な
銀行のり考え方としては、いずれもこれを外すべきだ、こういう意見がございます。
債務保証の問題につきましては、現に具体的な事例といたしまして、各地で
銀行が損を被
つたという例がございますけれども、それは大
部分の場合が
債務保証をや
つたことに起因するものが多いのでございます。具体的な例は差障りがございますが、要するに普通の
貸出であるならば
自分の持
つている金を貸す、
従つて十分
愼重にやりますけれども、
保証をするということになりますと、現に手金がなくても
保証をする、判をすればいい、その上手数料は入
つて来るということで、つい安易な気持で
債務の
保証をするということで、
銀行で非常に損失を蒙る慮れがあるわけでございまして、この
制度を是非やめたいということであります。勿論この
保証につきましては、
国税その他の
関係におきまして、例えば酒税の
延納担保や
織物消費税の
延納のための
担保或いはアルコール、或いは塩の
関係その他
政府の
関係におきまして、
銀行の
保証さえあれば
延納してや
つてもいいという
制度がありますので、これらの
制度だけを認めるか、或いはこれらの
制度について例えば
保険会社に
保險をかけるということで
政府の方で
延納を認めるか、別途の
措置を講ずる必要があると思うのでございますが、そういう
制限を設けることによりまして
一般の
債務保証というものを禁ずる、こういう
方向に今
考えられております。勿論
債務の
保証と申しましても、例えば
外国貿易の
関係で
信用状を
発行するとか、或いは
手形を引受けるということは実質の
債務保証でございますので、こういう点を正常の取引として禁ずる
趣旨ではございません。そういう
意味の
保証はこれを実行してもいいことに
例外が
考えられております。それから
有価証券の
貸出の問題でございますが、
銀行は現に大体の場合は、やはり
国税の
関係と関連いたしまして
国債を
担保にさえ入れて置けば
延納を認めてもいい、こういうことに
なつておりますので、
銀行から
一般の八は
国債を借りましてそれを
担保に入れている、こういうことがあります。
銀行としても
有価証券を寝かして置くよりも有利だという
意味においてこれを貸して
税金の
担保に入れているわけでありますが、最近は
御存じのように
国債が次第に減るという傾向にありまして、この
制度に合せて、先程申上げました
銀行が
保証すれば
税金の
延納を認めるという
制度に切換えておりますけれども、現に若干の
有価証券の
貸出というものは残
つております。これも
銀行の本来の
仕事としては、金を貸すべき
仕事であ
つて、
有価証券を貸すということは異例であるということで禁じたいということであります。この
需要に応じますためには、
信託会社としては十分その
業務はやり得るわけでありますし、それから必要な面については今の
保証について別の
制度を置くとか、
政府関係において手を打てば、この
制度もそう
一般には
支障なくして行われ得るのではなかろうかと
考えております。
それから
代理貸の問題でございまするが、
御存じのように現在
地方銀行で
勧業債券を持ちまして、その持
つて貰つた二十五%の
範囲内で
地方銀行が
勧業銀行の
代理として金を貸しておることがあります。これは
地方の
不動産金融のためには
相当有益な
機能を果しておるであります。その他例えば
復興金融金庫の
代理貸であるとか、或いは現在行われております
住宅金庫の
代理貸とか、そういうものについては
銀行が現にや
つておるのでありますが、その中で例えば
復金だとか或いは
住宅金庫とい
つたような
政府機関につきましては、これは問題ないといたしまして、
銀行同士で
代理の
業務をやるということは、要するに
自己責任の
原則に反する、人の
名前で貸すということはおかしいじやないか。それなら
自分の金で貸せばいい、若しそのために金がない、
資金がないから
代理貸という
名前でよそから金を貰
つて貸すならば、それは貸金の
預託でも受けて
自分の責任で貸す。こういう
方向に持
つてい
つたらいいじやないか、
銀行が
一つの
銀行として独立した
機能を営むべである、そういう理念からいたしまして、
銀行相互において
代理貸或いは
預金を
代理で受け入れる、こういう
制度を禁止しようという
方向に向いております。現在行われております例えば
勧業銀行と
地方銀行との間の
代理貸につきましても、例えば
勧業銀行から
地方銀行に
資金を
預託してそれを
地方銀行の名において貸すということにすれば、現在の
制度と実質的に変りなく運用されるものと
考えております。
その他
銀行について特に現在の
機能を変えて行こうという点はございませんが、第三次案の第二章にもございますように、
債券の
発行を各
銀行に認めることによりまして、或る
程度長期の
金融に見合う
資金の吸收、これを図るという
制度に
なつております。いわば
証券市場の発達いたしておらない現在におきまして、
商業銀行を主体としながら、一部
長期金融にも乗り出してもいいということを折衷的に認めておる
制度でございます。
それから
信託会社と
銀行との
関係でございますが大体におきまして現在の
信託業務について認められております
制度をそのまま持
つて来る。ただ
考え方といたしまして
信託業務は、本来
銀行がやるべきものであ
つて、独立した
信託という
仕事というものは大体において必要がないであろう。特に
日本の戰後におきます財産及び
資産の
状況におきましては、
信託本来の
会社として成り立つということも非常に少いという現実もございまして、
銀行は
信託業務を兼営できるということを本筋といたしまして、ただ兼営するにつきましては、特に
大蔵大臣の認可を経た場合に限るということに
なつております。勿論
專営の
信託会社を作ろうという時には、
專営の
信託会社を認め得るという
建前に
なつておりますが、
原則として、現在ございますような
信託銀行のアイデアーをそのまま立法化したいということでございます。
それから大きな問題といたしましては、
日本銀行預け金つまり、
レザーブ・システムの問題があります。
御存じのように
アメリカにおきましては
連邦準備制度を採りまして、いわゆる
レザーブ・システムというものを採り、各
銀行はその
準備制度に加盟することに上りまして、
一定の
金額を
連邦準備銀行に
預託するという
制度を採
つております。この
制度を
日本において採るべきかどうかという問題につきましては、根本的な問題があると思います。
御存じのようにその
制度の
趣旨は、
一つは
金融の
調整にあるわけでありますが、
一つは
支拂準備を確保する。いざという時の
預金の
貸出に準ずるという
三つの
機能を持
つております。
支拂準備の
意味におきましては、現在の観念といたしまして
国債を持ち、
社債を持ち或いは
株式を持ち、現金を持つということによりまして、
流動性を確保する
建前を採
つております。これはイギリス的な
考えでありますが、
アメリカ的な
考えで申しますと、先程申し上げました
連邦準備銀行に
預金をすることによ
つて、いつでも引出し得る
預金を常に
一定金額持
つておる。こういうことであります。その
外金融の
調整という
意味におきましては、確かにこの
預託金、
預金制度が有効なわけでありまして、この
預託する
金額の
割合を上げ下げすることによりまして、或いは
金融を引締め、或いは
金融をゆるめるという作用を持ち得るわけであります。ただ
日本の
現状といたしましては、
御存じのように
日本銀行の
貸出が現在千四百億とか或いは千五百億とかということでありまして、各
銀行に
預金の
義務を負わすことといたしましても、それが逆に
日本銀行貸出によ
つて賄われることに
なつては、結局
貸出と
預金とが両建に
なつて、
金融的にも單に
銀行の負担を増すに過ぎないじやないか、こういう
考え方もあるわけでありまして、その辺の
考え方を如何に
調整するかということがポイントに
なつておるわけであります。
制度としては非常に結構な
制度でありますが、果して直ちに
日本の
金融界にこれは適用できるかどうか。或いは適用するとして如何なる
程度にこれを
調整して適用するかというところが問題であろうかと存じます。現在
考えられております
制度といたしまして、
銀行を二種類に分けまして、いわゆる
大都市銀行と
地方銀行とに
概念的に分けます。
一つは
東京都、大阪市又は人口五十万以上、これは六
大都市でございますが、その他の市に
本店を有する
銀行と、
大蔵省の指定するもの、例えば全
高田農商というような
銀行がございますが、
東京都の中にございます。
資本金は三百万円でございまして、こういうものを大
銀行として扱うのは適当でないので、
大都市に
本店を持
つております
銀行でも
Aクラスから外せるように今のような
規定をしたわけでありますが、そういういわば
Aクラスの
銀行につきましては、
定期的預金の
総額の百分の一に
相当する
金額と、
当座預金の
総額の百分の五に
相当する
金額との
合評額以上の
日本銀行頂け金を保有しなければならない。こういう
規定にしてあります。それから
Bクラスにおきましては、この
定期的預金総額の百分の一という
数字は同じでございますが、
当座預金の
総額は百分の三という
数字をとりまして、若干その
義務を軽減いたしております。そういたしまして
金融の情勢によりましては、
大蔵大臣におきまして今申上げました百分の一或いは百分の三、百分の五という
数字の
割合を変更することができる。併しその
割合につきましては、今申上げました
数字の三倍に
相当する
割合を超えてはならない。こういうように
規定いたしております。例えて申上げますと、
定期的預金につきましては百分の一を
最低として百分の三を
最高とする。
当座預金につきましては、
Aクラスの
銀行におきましては百分の五を
最低とし、百分の十五を
最高とする
範囲におきまして、この
割合において適宜変更する、こういうことであります。現在
アメリカの
割合では、この
定期的預金の
割合が百分の三に
なつておりまして、
当座預金におきましては百分の五とか、百分の七というふうに
なつておるかと存じますが、その倍率は二倍ということに
なつております。
日本の
現状から
考えまして、その
最低限を低め、その彈力性を殖やすという
意味におきまして、二倍を三倍にするということにいたしております。現在
アメリカの大
銀行におきましては、この
支拂準備率は非常に高く
なつておりまして、全体で二七%くらいに
なつておるかと思います。それからこれだけの
義務を課しましても、いざ地震があ
つたとか、或いは全国的な取付けがあ
つたというような場合には、本当の
意味のリザーブとしてこれを
預金さして置く必要もないわけでございますので、その
状況を認めましてこの
預け金の
義務を免除し得ることに
なつております。こういたしましてこの
計算の
基礎といたしましては、毎日の
平均残高を、各
銀行の毎日の
預金の毎月の
平均残、これを
計算いたしまして、その月の
預金義務額の
計算の
基礎にするわけでございますが、
銀行が若しここに決められました
金額を
預金することを怠
つたというような場合におきましては、
過怠金といたしまして
一定の
金額を国庫に納付する、今の
考えといたしましては
日本銀行の割引適格
商業手形についての割引歩合がございますので、それに年四分の
割合を加えたものを
過怠金として取ろうということを
考えております。これは
考え方といたしましては、
一定の
預金の
義務があるのに、そこまで達しないという場合には、逆に申しますればその金を
貸出なり、
有価証券を持つなりに運用したと仮に
考えることができるわけでありまして、
義務を違反して他に転用したことによ
つて運用益を得る、それの方が得だということになりますならば、経済的にこの
制度が護りにくいということになりますので、
預金義務を懈怠した場合には決して得にならないだけの経済的な罰則を加えるという
考え方でございます。これはこの
支拂準備は、
制度の
趣旨から申しまして、いつでも引出し得るということが
趣旨でございますので、いつでもそれを引出し得る。或る人におきましてはゼロになることも勿論可能でございますが、
平均残においてはこの
規定にかなわなくてはいかん。
従つて銀行としては自己の金繰りに応じまして、この
義務を眺めながら調節をし得るわけでございます。ただ
銀行といたしまして意識的にこの
義務を怠るということになりますれば、
大蔵大臣におきまして役員に対して、警告を発する。常にこの
義務に違反しているということでございましたならば、役員の解任とか、営業の停止とか、その他の
措置をとり得るという行政
措置を
考えられております。それから又先程申上げましたように、
日本の
現状といたしまして、直ぐにこの
制度を採ることがいいかどうかという根本的な問題がございますので、現在のところでは、この施行時期は
日本銀行政策
委員会の意見を聞いて、
大蔵大臣が適当だと認めた時期から施行する。
大蔵大臣といたしましては、
日本銀行の
貸出の
状況とか、通貨
金融の情勢、それから根本的には
日本の資本の蓄積の問題でございますので、資本の蓄積、その他経済
一般の
状況に照らして適当だと認める時期から施行するということにいたしたいと存ずるのでありますが、ただ見通しといたしましては、この
経過期間はどのくらいにしたらいいか
検討いたしておりますが、五年くらいではどうであろうかということを今
検討中でございます。
それから信用
調整の
一つの手段といたしまして
有価証券を買う、株を買う場合に、
一つの仮に
株式の、ブームが起きました場合にどんどん株価が上る。それを
担保として金を貸し、それで株を買う。それによ
つて株価か上る。又それを
担保にして金を貸すということでございましたのでは、
金融的な操作として非常な不都合を生じますので、株を買い……株だけじやございません。
有価証券を買い、それを買うために必要な
資金を供給する場合におきましては、その
担保の
掛目につきましては、
大蔵大臣が適宜の
割合を決めることができる、こういう
制度を
一つ採
つております。
アメリカでマージン・リクワイアメントと言われておる
制度でございまして、
一つの信用
調整の手段として
考えられておるところでございます。それから現在臨時金利
調整法におきまして、
預金及び
貸出の金利の
調整をなし得ることに
なつておるのでありますが、この金利の
調整の手段も新
日本銀行法にこれを取入れて、臨時金利
調整法はこれを外したい、廃止したいというように
考えられております。勿論金利を外して自由に放任すべきものであるか、或いは現在や
つておりますように法的な
調整を加えるべきものであるか、或いは法的な
調整を加えるべきものであるとしましても、これは止むを得ない臨時的な
措置とじてやるべきものであるか、或いは本来法的に規制すべきものであるか、
相当根本的な議論があるわけでございますが、独禁法の精神もございまして、昔のように金利の協定というものが許されておりません
現状におきまして、而も金利を完全に自由にするということは、
金融的に申しまして適当であるまいという観点から、この恒久立法の中に取入れるという方針で進んでおります。勿論この金利の問題にいたしましても、
有価証券担保の
掛目の問題にいたしましても、いわゆるリザーブ・システム、
支拂準備金の問題にいたしましても、信用
調整の根本に触れる問題でございまして、これが現在ございます
日本銀行の政策
委員会、或いは
日本銀行自体と
大蔵大臣との間の
関係を如何に
調整するかということが、根本の問題として残
つておると思います。いわば財政と
金融との
調整、或いは
金融自体における
大蔵大臣と
日本銀行政策
委員会との
関係ということで、非常にむつかしい問題であろと思います。まだ最終的の結論にも達しておりませんが、少くとも意見を徴する
程度には持
つて行かなければならんのであろうかと事務的には
考えておるわけであります。
それから
一つ新らしい観念といたしまして採られておりますのが実質資本という観念でございます。この
法律をお読みになりましてお分りになりますことは、とにかく
貸出しにつきましても、先程申上げましたように、資本というものを
基礎にしてその二五%に
制限する。それから
不動産担保貸出にしましても、
定期的預金の六〇%と資本の
金額といずれか高き方という
制限がと
つてございます。それからまだ、省略いたしましたが、1
銀行の
資産の
流動性を確保するという
意味におきまして、
銀行が所有いたします
不動産について
制限を設けております。
銀行は
不動産として必要なものはいわば店舖でございまして、この店舗は
不動産として欠くわけに行かないわけでございますが、その他仮に森林を持つとか、或いは田畑を持つというように、
不動産に投資をするということは、
資金の
流動性という面から避くべきことでございます。従いまして
担保流れ、その他止むを得ない事情があります場合の外は
不動産の所有を禁ずる、必要な
業務用の
不動産につきましても資本の七〇%という
制限を置く、こういう案に
なつております、そういうように
不動産所有につきましても資本を
一つの基準といたしております。
従つてその基となります資本を如何に管理するかということがこの
銀行法の運営上非常に重要な観念と
なつております。この新
銀行法で採
つております資本の観念は、実質資本という観念でございます。実質資本というのは英語で申しますとアンインペアード・キャピタルインペアードというのは毀損する、毀つという
意味でございますから、壊れていない資本という
意味でございます。仮に自己資本が一億といいましても、若しこれに欠損を含んでお
つたならば一億の実質的価値かない。
従つて実際上は自己資本に
相当するものでありますが、それは十分に怪我のない、傷のない
内容の充実した資本であるべきだ、こういう観念であります。これの本質的な問題といたしましては、いわゆる償却の問題でございまして、
銀行は
預金を預
つて人に金を貸しておる、その貸金は必ず一〇〇%回收できるものでもございませんので、各
銀行の内部におきましても十分に監査をいたしておりますし、
銀行検査におきましても一件々々これを審査いたしまして、果してこれが十分に回收し得るかどうかということを嚴重に監督いたしておりますが、併し何分にも人のやることでありますし、経済界の変動もあるし、いろいろな間違いもございまして貸倒れということは避けられないものでございます。これがためにシヤウプ勧告に基きまして貸倒準備金の
制度も法人税に認められまして、現にこの九月決算かち認められることに
なつておるのでありますが、貸倒準備金を認めます一方、現にはつきり取れないと決ま
つたものにつきましてはどんどん利益から落として行くべきものであります。
銀行法といたしまては常に淨化作用と申しますか、そういう欠損であ
つた資産は逐次決算期ごとに切取りまして健全な姿にして置く、その結果出た利益は結局株主に配当になる、その地積立金になるわけであります。表面に出ておる帳簿価格としての資本が、
資本金及び準備金が完全な欠損のないものである、怪我のないものであるということをこの
法律において要求するわけでございます。従いましてこの実質資本の
概念を採りまして、この
法律において実質資本の
金額とは、
銀行の資本、準備金その他株主勘定に属するものの
金額として前項の
金額は決算期において不良
資金の適正な消却を行
なつて決定されなければならないということにいたしまして、十分なる消却を行
なつて後に、尚且つ株主勘定に乗
つておる
資本金及び準備金、これを実質資本と名付けまして、これを基準といたしまして
銀行運営の諸般のケースの
基礎にしたいという
考え方でございます。この実質資本の観念は
アメリカの
法律において採られておりますが、ニューヨークの
銀行法、それから昨年の十月一日から施行になりました、最も新らしい
アメリカでの
銀行法でございますカリフォルニアの
銀行法におきましては、実質資本という観念が採られておらないのでありまして、自己資本という観念に置き換えられております。この点は種々
検討をいたしておるのでありますが、要するにニューヨーク等におきましては、
銀行は最も発達したものでありまして常に
法律の
規定を待つまでもなく、自己資本というのは十分に充実したものである、償却すべきものは十分に償却したものであるという観点から特に実質資本という観念を掲げる必要がない、ただ
日本の
現状、或いは
アメリカの全体の何からいたしますと、いろいろのレベルの
銀行があるわけでありまして、或る
程度レベルの低い
銀行を含んでおる
日本の場合におきましては、実質資本という観念、その指導理念をはつきりいたす
意味において適当ではなかろうかと
考えまして実質資本という観念を採
つておるわけであります。
それから最後に
預金着の保護の
意味におきまして、少額
預金者に優先権を認めてございます。これは
アメリカの
銀行法には勿論ございませんが、
アメリカにおきましては
預金保險制度がございまして、各
銀行は
預金保險会社に
一定の
保險料を拂込む、それで
銀行が破産でもいたしました場合には、今五千ドルに
なつておるかと思いますが、その
金額までは
預金保險会社が拂
つてやる、
従つて少額
預金者としては何ら心配がない。
銀行が潰れることによ
つて何ら心配がないということに
なつております。
日本におきましては、やはり
保險料の負担の問題もありますので、これに代る
制度といたしまして
法律的に少額
預金に優先権を與えるということで
制度を運用いたしたいと
考えるのでありまして、現在のところ
預金の十万円以下の
部分につきましては個人ごとに名寄せをいたしまして、
銀行の破産の場合におきましても優先権を與えるという
制度を
考えております。
それか外国
銀行の問題といたしまして特別
本店勘定というものを設ける
制度が採られております。現在外国
銀行は
有価証券を供託することに
なつております。初めてこれによ
つて日本国内における
銀行業務を適正に行わしめるという
建前に
なつておるのでございますが、供託という
制度は、いわば非常に不経済な、
銀行の立場から申しますと不経済な
制度でございますので、常時
自分の持
つております金を自由に運用し得る
建前にして、而も弊害がないという
意味、それから外国
銀行が
日本に進出いたしますことにつきましては、その必要な金は
日本で借入れたり或いは
日本の
預金をとるだけで
仕事をしないように、必要な
資本金は
日本に持
つて来て欲しいという
意味を表わしますために、
日本の
銀行の資本の
最低限度に
相当いたします三千万乃至五千万につきましては、これは特別
本店勘定としてこちらへ持
つて来ておいて欲しい、常にそれだけの
金額は
本店勘定としてこちらへ持ち込んでおるということを要求いたしております。
それから
銀行の監督及び検査の問題でございますが、主として
銀行の監督は検査に待つより外にないのでございます。
アメリカの
制度にいたしましても、
銀行検査に非常に重点をおいております。
日本におきましても戰争中は、検査というような無駄なことはよしたがよかろうということで、検査という機構は殆んど動いておらなか
つたのでございますけれども、そのために実際には
銀行の経理も乱れがちでございますので、最近では新しい
アメリカの検査様式を採用いたしまして人員も充実し、徹底的に検査を始めております。その
意味におきまして今度の
銀行法におきましては、
銀行の検査は年に一回必ずやるという
規定をここへ織込んでございますのに、ここの
規定としては、それでは余りに人が要り過ぎる、予算の
関係もあるということで、三年に二回というような表現が使
つてございまして、非常に堅実と認められる
銀行は若干その間の期間を置いてもいいように
考えておりますが、
原則としては年に一回必ず検査をしたい。そのための人員を十分に充足したいということを
法律に織込んでおります。
それから最後の問題といたしましては、
御存じのように、税と
銀行との
関係でございまして、現在税務官吏が
銀行に不必要な調査なり臨検をする、そのために
預金者が動揺いたしまして、
預金がなかなか集まらないという問題がございます。この検査と
銀行の経営とを如何にするか、勿論税を取るということは絶対的の要請でございまして、
税金が取れないというような
制度は絶対にとるべきではないと思いますが、又一方不必要に
預金者に不安動揺を與えることも適当でございませんので、その間に何らかの
調整をとり得る法規を入れたい、勿論その中身についてはまだ確定した成案はございませんけれども、今
検討中でございます。
アメリカの運用では、やはり法規的には税務官吏は自由に支店長に質問をし、調査をするということをし得ることに
なつているのでございますが、現実には例えばお前の店の十万円以上の
預金者は全部調査してつけ出せというような調査はいたしておりませんので、現実の問題として、特に必要な人の
預金を調べるというように、非常に紳士的に運用されているようであります。そこらを法的にどういうように規制するかという非常にむずかしい問題があると思いますが、まだこの点は試案の域を脱しておりません。
従つてそれに関します條文も、ただそういう
趣旨の條文が入るという
意味において御了解願えれば結構かと思います。
まあ大体問題になりますところは、以上のような点でございますが、最後に
銀行の役員の
制度といたしまして、
御存じのように新商法におきまして監査役の
制度の
考え方が非常に変
つております。
アメリカにおきましては監査役というものはございませんめで、
会社は年に一回公認会計士の監査を受けなくちやならん、こういうことに
なつております。ただ
銀行は
御存じのように
銀行検査の
制度もございますし、内部は経理の、いわば專門家でございますので、できるだけ自己監査の
制度を残して置きたい。そういう
意味におきまして商法の特例といたしまして、新しい監査役の
制度を採用し、その監査役が経理の面から
銀行の
業務を調査し、或いは取締役にいろいろな意見の具申をする、その他商法にない経理的な権限をここで
規定いたしたいということに
なつております。それから今の取締役に勧告する外、例えば
銀行が
大蔵大臣に提出する経理に関する書類を監査する、そういう点におきまして公認会計士の関與を排除いたしまして、監査役の
制度乃至地位を高める、これによ
つて銀行検査と相待ちまして
銀行の経理を適正ならしめるということが
考えられております。
以上大体重要と思われる点について御
説明申上げました次第でございますが、大体の
考えといたしましては、この本文をなします
銀行法の
規定には、
相当理想的な形態を織込みまして、これに別に
銀行法施行法というようなものを付けまして
経過的な
措置を講じ、
実情に無理がないようにして、而も近代的な
銀行のかつこうに指導して行くという方式をとりたいと存じます。現在の
銀行法ができました時、例えば
資本金の
規定は
東京と大阪市におきましては二百万、
一般の所におきましては百万という
制限が付いているのでございますが、それが当時ございました
銀行から申しまして非常に強い
制限でございまして、その
規定を運用して手数百ございました
銀行を目近くに減らして来たわけでございます。その
経過規定が五年という
経過規定か附いておるような例もございまして、何分
一つの大きな
金融制度の流れにおける
一つの機構といたしまして
相当の目標を掲げ、且つ又
相当の猶予期間を置きまして、その間に無理のない行政と正しい
銀行のあり方というものを両々兼ね合せるという所にポイントがあるかと存ずるのであります。取敢えず以上で
説明を終りたいと思います。