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1950-07-29 第8回国会 参議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十九日(土曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○勤労学生所得中一部所得税免除に  関する請願(第一六〇号)(第一八  一号)(第二〇四号)(第二七七  号) ○接收資産に関する再評価の時期延長  の請願(第一八三号) ○織物消費税およびメリヤス物品  税廃止に伴う特別措置請願(第四  四六号) ○日本銀行盛岡事務所支店に昇格の  請願(第三三六号) ○国民金融公庫法中一部改正に関する  請願(第四三六号) ○輸出長期金融制度確立に関する請願  (第五〇〇号) ○山林資産評価に関する請願(第二  八〇号) ○衣服用はけおよび頭髪用はけ物品  税撤廃に関する請願(第一〇七号) ○陶磁器物品税撤廃に関する請願  (第一四七号) ○運動用乱物品税撤廃に関する請願  (第二九三号) ○板紙物品税撤廃に関する請願(第  三一八号) ○果実エツセンス物品税撤廃に関す  る請願(第三二六号) ○ラジオ受信機等物品税減免に関す  る請願(第三九九号) ○化粧品物品税撤廃に関する請願  (第四〇三号) ○袋物類物品税撤廃に関する請願  (第四〇四号) ○マツチ物品税撤廃に関する請願  (第四四七号) ○水あめぶどう糖物品税全廃に関  する請願(第九四号) ○水あめぶどう糖物品税撤廃に関  する請願(第四四八号) ○酒税引下げ等に関する請願(第一六  九号)(第一七〇号)(第一八七  号)(第一八八号)(第一八九号)  (第二三四号)(第二三五号)(第  二六一号)(第二六二号)(第二六  三号)(第二九〇号)(第二九一  号)(第二九二号)(第三〇〇号)  (第三〇二号)(第三二五号)(第  三二七号)(第三二八号)(第三二  九号)(第三七四号)(第三七五  号)(第三七六号)(第四六〇号)  (第四六一号)(第四六二号)(第  四六三号)(第四六四号)(第四六  五号)(第四六六号)(第四六七  号)(第四九〇号)(第四九一号) ○揮発油税軽減に関する請願(第一六  六号)(第二一九号)(第二二〇  号)(第二二一号)(第二四〇号)  (第二四一号)(第二四二号)(第  二四三号)(第二六六号)(第二九  六号)(第二九七号)(第二九八  号)(第二九九号)(第四七三号)  (第三二二号)(第三二三号)(第  三二四号)(第三八七号)(第三八  八号)(第三八九号)(第三九三  号)(第三九四号)(第四六八号)  (第四七四号)(第四六九号)(第  四七〇号)(第四七一号)(第四七  二号) ○船舶公団共有持分処理等に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○証券取引法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国有財産法第一三條の規定に基き、  国会の議決を求めるの件(内閣送  付) ○関税法の一部を改正する法律案(内  閣提出・衆議院送付) ○地方自治法第百五十六條第四項の規  定に基き、税関の支署及び出張所の  設置に関し承認を求めるの件(内閣  送付) ○租税行政に関する調査に関する件  (金融政策並びに制度に関する件)   —————————————
  2. 小串清一

    委員長小串清一君) これより大蔵委員会を開会いたします。  先ず請願及び陳情に関する小委員会の結果を小委員長から御報告いたさせます。
  3. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 昨二十八日行いました請願八十二件についての小委員会の審議の経過並びに結果を御報告いたします。  先づ請願趣旨を全面的に採択したものから申上げます。請願第百六十号外三件は、いづれもいわゆるアルバイトをしている学生扶養控除の対象から除外されているということは、機会均等見地から一般学生との均衡を失うことになるので、所得中年額一万二千円を学資金として非課税とせられたいという趣旨であります。請願第百八十三号は、現在接收されている資産について、再評価額決定が極めて困難であるので、接收解除の日又は引渡しの日を再評価基準日とすることができるように改正せられたいという趣旨であります。請願第四百四十六号は、織物消費税メリヤス物品税廃止に伴い、生産業者並びに販売業者は莫大なる損失を蒙つたので、廃止実施日現在における在庫品に対し、廃止税額に相当する金額を交付せられたいとの趣旨であります。請願第百九十二号は、我が国の美術工芸保護対策の一として、芸術本彫の物品税を軽減されたいという趣旨であり、又請願第三百三十六号は、岩手県下の資金需要が増大しているが、日本銀行盛岡事務所では十分その機能を果し得ず、同県の経済は不利なる環境に置かれているので、同事務所支店に昇格せられたいとの趣旨であります。  請願第四百三十六号は、現在の国民金融公庫法の枠内においては貸付資金に制限があるため、中小企業特に零細企業資金難を救済し得ないので、同法の一部を改正せられたいとの趣旨であります。請願第五百号は、貿易金融の不円滑が輸出振興を妨げているので、応急策として貿手制度の改善を、又恒久対策として輸出金融金庫を設立せられたいとの趣旨であります。以上はいずれもその趣旨は妥当なものであると認めて採択しました。  次に條件付で採択したものについて申上げます。請願第二百八十号は、山林経営特殊性を考慮せられて、その評価資産算入の場合、実際の価格にて算定すること、又奥地の未利用林分等については資産算入から除外することの二点を要請しております。後者については採択することは困難であるが、前者趣旨は妥当であると認めて前者のみを採択しました。次に物品税撤廃趣旨としているものを一括して申上げます。請願第百七号は、衣服用はけ及び頭髪用はけ請願第百四十七号は、陶磁器請願第二百九十三号は、運動用品請願三百十八号は、板紙請願第三百二十六号は果実エツセンス請願第三百九十九号はラジオ受信機等請願第四百三号は化粧品請願第四百四号は袋物請願第四百四十七号はマツチ請願第九十四号及び第四百四十八号は水あめぶどう糖について、それぞれ物品税撤廃せられたいという趣旨であります。小委員会としては撤廃することが望ましいが、若し諸般の情勢から見て不可能ならば、できるだけ軽減させることが妥当であると認めて採択しました。  次に酒税引下げ等に関する請願請願第百六十九号外三十一件、揮発油税軽減に関するものは請願第百六十六号外二十七件ありまして、いずれも前回御報告いたしました通り採択いたしました。  以上御報告いたします。
  4. 小串清一

    委員長小串清一君) 只今の御報告に対しまして、異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは只今の御報告は満場の御賛成を得たものと認めて採択に決定いたしました。
  6. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは昨品留保されておりました、この船舶公団共有持分処理等に関する法律案について質疑を続行いたします。
  7. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 船舶公団担当者の方に伺つておきたいのですが、この共有契約書の第十二條を拝見するというと、「共有開始後十ヶ年以内においては、甲は運輸大臣命令ある場合の外乙持分を買い取ることを得ないものとする。」こういう規定があるのでありますが、運輸大臣から命令があれば恐らくこれは買取ることができるとも解釈できるし、又運輸大臣がどういう場合にこれを命令するかという点が非常に疑問が起きて来るのでありますが、これに対してどういう見解を持たれておるのか、この際説明願いたい。
  8. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) この第十二條の趣旨でございますが、これは第一号と第二号と併せて読んで頂きますと、多少はつきりするかと思うのでありますが、第一号の方では、甲、つまり船舶公団運輸大臣命令ある場合の外は、乙の持分は買取ることができない。二号の方で見ますと、船主の方はいつでも船舶公団持分を買取ることができるということになつております。つまり船舶公団が乙の持分を買取るということは原則としてはないのであるという趣旨をここに書いてあるわけでございます。そうしてその持分買取価格につきましても、一号の方で見ますと、船舶公団は買取る場合何らのそこに特別の約款がついておりませんので、船舶公団船主から持分を買取る場合には、いはゆる相対の合意の上で買取る、従つてその場合、大体の場合はこれは時価になると思うのであります。逆に二号の場合は船主の方では、この買取価格原則として公団持分帳簿価格であるというような特別の約款がついておるということにたつておる。尚運輸大臣命令ある場合というのはどういうことを予想しておつたのかということでありますが、この文句の使い方も、普通ならばこれは運輸大臣承認というようなことで規定をする趣旨であると思われるのであります。特にこういうことを言いましたのは、承認では非常に弱い、承認があれば公団船舶業者持分を買取ることができるというのでは困るので、運輸大臣から積極的な買えという命令のある場合の外は公団は買わないのだというように、公団というものは船主持分は滅多に買取ることができないという趣旨をはつきりさしたいという趣旨であります。その予想される場合というのは、例えばこれは賠償の関係等でどうしても何か国の方で船主持分買上げて一隻の国の所有船舶として相手国に渡すとかいうような、非常に稀な場合を考えておる、或いは又この共有開始後十ヶ年経過したような場合で、乙が船舶所有者船舶公団持分を買取らないという場合のときに、公団としては船舶業者持分もこれを買いまして、そうして丸い一隻の船としてこれを他に売つた方が有利であるというような場合にこの規定が働くというような場合を予想しておるようであります。
  9. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうしますと、この第十二條が、公団から国というふうに変つた場合に、どうもこの條項は妙なものになりはしませんか。甲はというのは、甲は国になるわけでしよう。国は運輸大臣命令ある場合の外、運輸大臣から国が命令されるというような結果が出て来ると思うのです。こういうのは例えば今度の法案によつて根本的に契約を直して行くおつもりがあるのですか。
  10. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 結局その場合、運輸大臣もこれは国になりますので、国の内部的な問題になるかと思うのであります。現在この運用につきましては、大蔵次官運輸次官の間に、一応大蔵大臣清算事務を担当するわけでありますが、元々これは運輸省との関係が密接なものでございますから、運輸次官大蔵次官の間に特別の覚書を作りまして、両者の間で連絡委員会を作つてやることになつております。その間で密接な連絡の下にこういう場合についての相談をした上で国が買上げるというようなことをやる、従つて契約の文言としては、国が必要ある場合というように直せばいいと思つております。
  11. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 その点大体分りましたが、次に第十七條を見ると、甲が第三者に対して前項の債務を弁済したときは乙は遅滞なくその支拂を甲に拂うものとする、こういう條項があるのですが、その債務を弁済するというのは、実際上はできないことになつている筈ですが、どういう場合に第三者に対して債務を弁済することが現われるのですか。
  12. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは船舶公団の場合の條文といたしましては、海難等の場合にこういうことが起つて来るわけでありますが、これが国に変りましたときは、こういうことは予算措置を講じなければできないことになるということになると思います。
  13. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうすると、そういうのは全面的にこの契約書は変るということになりますね。それは明確なんですね。
  14. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今この共有持分が国が当事者になります関係上、或いは所管大臣大蔵大臣だというような関係によりまして、変る分は当然変つて来ることになると思います。
  15. 小串清一

    委員長小串清一君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は盡きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  17. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私は民主党といたしまして、今回の法案には賛成いたすものであります。併しながらこの法案を通じて根本的の精神というものを見ますときにおいて、成る程今国家では船舶というものの重大なる役割ということを十分認めて、船舶業者に対してこの法律によつて相当援護の手を延べているというような精神は分るのでありますけれども、最近朝鮮事変を契機といたしまして、傭船料が非常に高くなつているというようなことも現われております。そういうふうな際において余り国家恩惠が過大であつて船舶業者が非常に不当ないわゆる恩惠を蒙むるというような点も、国民の一人として懸念されて参るのであります。こういうことにつきましては、やはりこういう契約書等によつて国船舶業者との間にいろいろの條件が交わされてあるとしても、時勢に応じまして国家的見地から船舶業者がすべて行動をとるように国家においても十分なる監視をするというふうなことを特に強調いたしまして、この法案賛成するものであります。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は日本社会党を代表しまして、本法律案に先ず賛成態度を表明いたします。ただこの法律案を通じて考えますことは、今まで船舶公団として特殊な公団方式海運業を半公共的に運償いたしていたのが、それか廃止されたとは言え、相当な共有持分国家が引受けなければならないという意味においては、船舶業者に対する、海運業者に対する国家の介入がまた非常に大きく残つておるという問題があると思うのであります。そういう意味において我々も又海運業に対する国家的な保護、助成をやらなければ日本海運業発展しない、その点は非常に重大であるし、更には将来海運業の、或いは国有民営、或いは国有国営というような問題も真剣に考慮しなければならない問題をここに更に含んでいるんじやないかということを感ずるわけであります。そういう場合に我々が注意しなければならない問題は今も油井委員からも希望がありましたように保護はしなければならないが、その保護国民の犠牲において特殊の船舶業者なり海運業者だけに過当な利益を保護してやるというような結果に陷ることがないかどうかという点において非常に危惧する問題が多々ございますので、そういう点については、共有持分を引織いだ国家が十分な留意をしなければならないということ、同時に又国家船舶業者をこれだけ非常に手厚く保護する限りにおいては、これと並んで海運業に従事している海員諸君生活保護に対しては特段の注意を拂う、そういう点を特に考慮しながら国家がこれらの責任を引受けるというようなふうの運営をお願いしたい、それだけの希望を付けてこの案に賛成いたすものでございます。
  19. 山崎恒

    山崎恒君 賛成するものでありますが、先程から油井委員からお話がありましたように、海運界現状は、必ずしも今回の買上げによつて好転するとは申されないと思うのであります。殊に現在各海運業者経営状態は四万トン乃至五万トン以上の保有船を所持しているところの業者は殆んど五千万円乃至は、郵船のごときは一億二、三千万円の赤字経営だというような状況に置かれているのでありまして、最近におけるところの、先般の株価等の問題と経営とは決して相等しいものではないと思うのでありまして、今後日本海運界外航に寄與する点、或いは輸出入貿易のために日本海運界が飛躍するためには、より一層の政府の庇護が或る程度なければ到底潰されましたところの現在の日本海運界発展しないと思うのであります。殊に日本の今後の情勢からいたしまして、特に日本貨物船の使用ということが大きな問題になろうと思うのでありまして、かような点からいたしまして、少しでも現状海運業者の共有しておりまする船を買上げることは最も必要だとかように思うのでありまして、今後は十分国において立ち上るまで或る程度は庇護するという態度を強く強調いたしまして、賛成する者であります。
  20. 小串清一

    委員長小串清一君) 別に御意見もないようでございまするから、討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないものと認めまして、直ちに採決に入ります。船舶公団共有持分処理等に関する法律案衆議院送付)本原案に対して御賛成の方の挙手を願います。    〔総員挙手
  22. 小串清一

    委員長小串清一君) 全会一致と認めます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定をいたしました。  尚、本会議における委員長口頭報告内容は本院規則第百四條によつて予め多数意見者の御承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案内容、本委員会における質疑応答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することにいたしまして、御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出する報告書に多数意見者署名を附することになつておりますから、本案を可とせられた方々は順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名    大矢半次郎  佐多 忠隆    山崎  恒  木内 四郎    九鬼紋十郎  黒田 英雄    清澤 俊英  野溝  勝    森下 政一  小林 政夫    杉山 昌作  油井賢太郎    森 八三一  木村禧八郎   —————————————
  24. 小串清一

    委員長小串清一君) 次に、証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきましては、一昨二十七日に質疑は終局いたしておるのでありまして、これより討論に入りたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議なしと認めます。  これより討論に入ります。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は本案賛成するものであります。本案は勿論証券業者登録制度を整備して、そうして一般投資者に対しまして証券を保有しても心配ない、こういうふうにいたしまして、そうして産業資金証券による調達をこれで育成して行くということが一つ精神であると思うのでありますが、それにしても政府委員お話にありましたように、これはほんの当面の応急対策の一部であつて、更にまだ今後根本的な対策を講じなければ、今後証券を通ずるいわゆる直接投資による産業金融の育成ということは非常に困難であろうと思われるのでありまして、政府においてはこの応急的なほんの一部の対策に止まらず、この質疑の間に政府側からいろいろお話がありましたように、今後もつと根本的な対策を至急講ずるように希望いたしまして、賛成するものであります。
  27. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私は民主党といたしまして、この改正案賛成するものであります。併し只今木村委員からもお話がありましたが、この本案によつて証券業者に対するところの内容のいわゆる惡化を来たさないようにするというその精神は分るのでありますけれども、法律によつて單証券業者を或る一定の枠内に当嵌めて、それ以下にならないようにというような簡單なことだけで証券業界発展、つまり日本経済界のバロメーターとなるところのこの業界発展を期するということはできないと思います。而も又昨年あたりは、証券民主化運動というようなことで以て、国会あたりでも音頭をとりまして、国民大衆有価証券を持たせて、日本産業大衆の手によつて回復させる、こういうようなことを図つたのでありますが、政府施策がこれに伴わなくて、いわゆるデイスインフレの線が却つてデフレというような傾向をとつたために、その最も敏感に現われるところのこの証券取引所にも多大の影響を與えた。そのために証券業界においても多数の破綻者を来たしている。而も破綻に瀕せんとする人々も尚数多くある、こういうような状況になつておるのであります。單りこういうような改正案によつてのみ、そういう状態を救われるということは私は到底不可能だと思います。そこで政府におきましては、一方においてかかる改正案と共に根本的に証券業界、つまり日本産業発展ということを目標としてあらゆる財政経済施策を図るべきだ、こういうことを意見として申添えまして、この案に賛成するものであります。
  28. 森下政一

    森下政一君 日本社会党本案賛成いたします。ただ社会党といたしましても、強い希望をここに披瀝しておきたいと思うのであります。昨年株式民主化運動が可なり大掛りに行われまして、大衆が株に対して相当なけなしの金を投じたと思うのでありますが、株価暴落をいたしまして、株の値下りで非常な損失を蒙つた、株の値下り損失を蒙つたのは止むを得なかつたにいたしましても、更にこの証券業者暴落影響を受けて内容が非常に惡くなつた。そのことのために更にそば杖食つて折角投資をいたしました大衆が株の値下りだけではない、それ以上の損を分担しなければならなかつたというような状況になつて、折角民主化運動が行われたのに、今日大衆は株というものに対して非常な不安を持つという感じを持つておると思うのでありまして、その意味から申しますると、証券業者内容を良くするという意味で、今回の改正法律案は誠にふさわしいと思うのであります。併しながら先般の委員会においても木村委員等からもお話が出ておりましたが、この株価対策というものに対して政府は今日まで荏苒手を束ねて徹底的な方策というものを講じていない。この点に強く一つ政府に要望をしておきたいと思うのであります。昨年株が暴落いたしました当初、大蔵当局は或いはこの金融機関、或いは生命保険会社等に株の買出動を促しまして、そうして買い煽らせることによつて株価引上げようと講じたように思うのでありますが、こういうような策というものは極めて微温的な一時的なものであつて金融機関といたしましても、保險会社にいたしましても、おのずから自己資金というものには限度がある、限界がありますから、そう株価が安いからといつて無暗にこれに資本を投下する道理がない。のみならず、株が安いからといいましてどの株でも買つてもよいということにはならないわけで、恐らく金融機関が株に投資するとしても、或いは株を買いあさるにしましても、特殊な事情のある僅かな限られた銘柄のものだけに限るのであつて、安いからといつてどの株でも買うということはあり得ないということを考えますと、かような方策ぐらいのことで株価の真剣な対策が行われるということは考えることはできんのであります。同時に株式市場が甚だ不振な状況で、長い間不振な状況を持続しておるわけでありますが、こういう状態が今後共続くようなことでは経済界の安定もこれを良くすることはできないと思いますし、再建も又可能になつて来るということも考えられるのであります。一般的には命詰りのために全く投資の余力も持つていない。同時に株に投資をしようといたしましても、買えば確かに将来有利であると考えておつても、その資金調達に今日では恐らく困難を感じてさようなことは不可能だということが考えられる。況んや経済界全体が今日のような不況な状態を来たしておるときに、株式市場だけが繁栄するということも考えられないということを考えて見ますると、どうしても政府がこの際に可なり大掛かりな、大きな経済情勢の転換ということを必要とするということに気が付かなければならん。こう思うのであります。即ち景気立直し策の一環として政府株価対策を講ずるところがなければならんと思うのである。国民はひとしくそれを期待しておると思うのでありまするが、未だ今日まで見送られて、何らの真剣な対策というものが講じられていない。従いまして、この際に政府真剣味をこめて株価対策に一段の工夫をして貰いたい。ただこの従来の行懸りに捉われるとか、或いは当の面目にこだわるというようなことで、そうして今日のような不況の状態をこのままに見過しておるということであつては、到底この政府の言う経済安定も、或いは経済の再建も不可能になつて来る。株式市場がこういう状態では到底これは望むことができないということを考えるのであります。重ねて申しまするが、大衆が蒙むりました被害というものは相当甚大である。そこで政府はこの際徹底的な株価対策というものを講じて、大衆が安んじて、安心して、進んで投資をすることができるような株式市場本来の姿を作り上げるということに一段の工夫と努力をして貰いたいということを要請いたしまして、賛成いたすものであります。  更に附加えて言いますが、本法案が成立いたしましたならば、相当証券業者の整理が行われると思うのでありますが、その際にややもすれば起りがちではないかと憂えますることは、極く少数の証券業者が独善的に多くの自分達の勢力を拡大して行くということになつて、不合理な整理が行われるということがあつてはならんと思うのでありますので、当局はこの点につきましても十分関心を持つて対処して貰いたいということを附言して、賛成いたすものであります。
  29. 小串清一

    委員長小串清一君) 外に御意見もないようでありますが、討論は終局したものと認め、直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないと認めて直ちに採決に入ります。証券取引法の一部を改正する法律案衆議院送付)の本案に対して、原案の通り可決することに賛成のお方の挙手を願います。    〔総員挙手
  31. 小串清一

    委員長小串清一君) 総員賛成と認めます。よつて本案は、原案通り可決すべきものと決定をいたしました。  尚、本会議におきます委員長口頭報告内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案内容、本委員会における質疑応答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することといたしまして、御承認を願うことに御異議はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき、多数意見者署名を附することになつておりますから、本案を可とせられた方々の御署名を順次お願いいたします。  多数意見者署名    大矢半次郎  佐多 忠隆    山崎  恒  木内 四郎    九鬼紋十郎  黒田 英雄    清澤 俊英  野溝  勝    松永 義雄  森下 政一    小林 政夫  杉山 昌作    高橋龍太郎  油井賢太郎    森 八三一  木村禧八郎   —————————————
  33. 小串清一

    委員長小串清一君) 次に、昨日政府より提案、予備審査に付されました国有財産法第十三條の規定に基き、国会の議決を求めるの件につきまして、政府の提案の理由を求めようと思います。
  34. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) 只今議題となりました国有財産法第十三條の規定に塞ぎ、国会の議決を求めるの件について御説明申上げます。  これまで皇室の用に供せられておりました葉山御用邸附属地は、天皇、皇后、皇太后三陛下及び皇太子殿下の葉山御用邸御滞在時におきまして、馬匹の繋養、馬車の格納等の目的に使用せられていたのでありますが、今回この必要がなくなりましたので、用途廃止をしようとするものであります。この財産は、国有財産法上皇室用財産でありまして、総理府の所管になつておりますが、用途廃止せられますと総理府から大蔵省へ引継ぎを受け、大蔵省所管の普通財産となるのでありまして、大蔵省におきましては最も有効適切にこれが活用を図る所存であります。  尚本件は皇室経済法第一條第一項の規定に基き、昭和二十五年五月八日皇室経済会議の議を経たものでありまして、ここに国会の議決を経るため提案した次第であります。  何とぞ御審議の上速かに御承認あらんことを御願いいたします。
  35. 小串清一

    委員長小串清一君) この案に対して御質疑ありませんか。
  36. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今政府委員からの提案理由をお聞きしたのですが、誠に御尤もだとは思つておりますけれども、この外に国有財産で以て国民が実際に拂下げを受ければ非常に役に立つとか、或いは要望しておるというようなものが沢山あると思うのです。又それは国家としても非常に有効に使える、又国家の財政が今日窮乏せる際に不用な国有財産はどんどん拂下げて、まあ財政的にも一助にして貰いたいという要望も高いのであります。国有財産の内訳の最近の資料がありましたら出して頂きたいと思いますが、何か最近お配りになつたものがありますか。
  37. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは先般の前国会に国有財産総計算書というものを出すことになつておりまして、この三月のときに、この四月頃でございましたか、総計算書並びにその分類書というものを国会に提出してございます。尚国会の御承認を、これは決算委員会であつたかと思いますが、御承認を得ております。
  38. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 その国有財産で処分されたものがどのくらいあつて、どのくらいの金額になつておるか、そういうことはお分りになりませんか。
  39. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 二十三年度、二十四年度の分については相当詳しいものがございます。その後のものは大体月別のものは概括的なものでございますが、一応出出ております。
  40. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 国有財産の拂下げはどういう一体基準で以て、又どういうふうな場合に拂下げをすると、そういういつたようなことの明細を今承りたいのです。
  41. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 御承知の通り国有財産は大別いたしますと、行政用の財産と普通財産に分れます。その行政用財産の中にいわゆるここに議題になりました皇室用財産と公共福祉用財産、これは例えば宮城前の広場でありますとか、或いは新宿御苑というようなものでございますが、そういう公共福祉用の財産、それからいわゆる公用財産として実際に国が行政目的に使つておるというようなものがございます。こういうものは勿論これは処分はされないのであります。それ以外の普通財産につきましては、これはできればまあ全部直ちに処分したいということにしておるわけであります。ただ只今情勢では相当部分が賠償施設でありますとか、或いは進駐軍が接收しておるとか、そういうものがございます。こういうものについては直ぐに処分ができないのであります。その他のものについてはできるだけ、勿論これは適正対価でなければなりませんが、適正対価で以て処分をすることにしておるわけであります。
  42. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうすると、普通財産にあつて希望者があれば拂下げをするという事態が起ることになるのですか、それとも国で積極的に入札等によつて売渡しをしたいというような方針になつておるのですか、その方針を一つお聞きしたい。
  43. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは大体において希望者のある場合に相当沢山あるものでございますから、希望者のないものをいろいろ入札しましても、手数が掛りますので、一応希望者のあるものについて折衝いたしまして、随意契約でできるものは随意契約でできますし、随意契約でできないものについては入札をしまして処分いたしております。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このような天皇、皇后、皇太后、皇太子の御滞在のときに使つておつたものは外にこういうものはございませんか。  もう一つは有効適切に活用を図る、こういうお話で、これはどういう方面に活用いたすのか。その点と、台帳価格というのは相当安いものですね、台帳価格が一番安いのですが、これを拂下げるという場合にはどのぐらいになりますか。
  45. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 現在のところは、一応只今のような点はないと思うのでございますが、これの尚今後の使用の問題でございますが、これは現在は関係筋の方で接收になつております。一応まあ何といいますか、向うの住宅管理事務所というものが使つておるわけであります。これを接收解除したならば、葉山町あたりの公共施設的なものにでもすれば一番いい場所ではないかと我々は考えております。  尚ここに台帳価格がございますのは、これはいわゆる台帳価格と申しますのは、大体これは取得時の価格を付けておりますので、従つてこれが現在の時価とは非常に離れております。勿論処分のときには台帳価格でなしに、時価でやるわけでありますが、この場合には用途廃止の場合だけであります。ただこれを移管という手続を取つただけであります。それ以下のことは触れておりません。
  46. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 台帳価格と時価と大分違うという話ですが、民間において再評価ということは現在行なつておるが、国有財産も一応時価に適当するだけの再評価をされて国民に発表して置くというようなお気持はないのですか。
  47. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 誠に御尤もなお言葉でございますが、この点につきましては、実は国有財産法規定がございまして、一応とにかく台帳で整理をしろ、併しこれは国有財産については別に総合評価と言いまして、お言葉のような時価で評価をやれというような規定になつております。ただこの時価評価というものは非常に手数がかかりますし、大変なことでありますので、大体五年目に一遍ということになつておるわけでありますが、その最初の総合評価は昭和二十七年の三月三十一日の現況によつてやれということが現在の国有財産法規定になつております。昭和二十七年の三月三十一日の現況によりまして、全体を調整しようということにしておるわけであります。
  48. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうすると、それから逆算して二十二年の三月三十一日のは発表になつているわけですね。
  49. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは国有財産法は当時まだできておりませんで、その最初のやつが昭和二十七年、こういうことになつております。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 財産を引継ぐわけですから、そんな大きな負担にはならないと思いますが、差当り何か負担するような問題が起きるのかどうかという点と、これを活用するのは、どういうふうに活用しようとお考えになつておりますか。
  51. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これについては負担の問題は全然起きないと思います。尚現在は私が先程ちよつと申上げましたが、関係筋の方で接收されておりますので、向うの住宅管理事務所がこれを使つております関係上、直ちにこれを処分することはできないわけでございますが、若しこれが解除にでもなつたような場合におきましては、大体地元の葉山町辺りの公共施設等に使用されるのが一番適当じやないかというふうに考えております。
  52. 小串清一

    委員長小串清一君) 質疑はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは質疑を打切りまして地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の支署及び出張所の設置に関し承認を求めるの件、これに対してまだ質疑をやつておりませんが、これを議題として質疑を続行いたします。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これについて政府側の御説明があつたのですが、非常に細かくてよく分らなかつたのですが、要するに「最近における外国貿易のすう勢に対応し、」こういうことが必要だというまあお話なんですが、そこのところの「外国貿易のすう勢に対応し、」というのは具体的にどういうことなんでしようか。最近の外国貿易の趨勢というものが何かそこに非常に変化が出て来て、こういうことが必要になつて来たと、こういう意味だろうと思うのですが。
  55. 石田正

    政府委員(石田正君) 非常に抽象的に「外国貿易のすう勢」と書いてございますが、細かく申しますと、いろいろな事情がございます。一番根本的な原因は外国貿易が段々量的に殖えておりますということが第一点であります。それから第二点といたしまして、貿易の形態が政府貿易から民間貿易に変つて来たということが一つの事情でございます。これは政府貿易でございまするならば、非常に大きな量のものを一括的に買つたり売つたりするというふうに相成るのでありますが、民間貿易に移るに従いまして、量そのものに変化がございませんでも、取扱います件数というものは非常に増加して参る、こういうことが一点ございます。それから尚第三点といたしまして、占領下におけるところの貿易状況が段々と平常状態に近付いて来るという点があるのでございます。この点は特に羽田の場合においてそういうことが言えるだろうというふうに存じております。
  56. 小串清一

    委員長小串清一君) 御質問はありませんか。……別に御質疑がないようでありますから、質疑を打切りといたすことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議なしと認めまして質疑は打切りました。今までの会議はこの程度で止めまして、暫く休憩をいたしたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 小串清一

    委員長小串清一君) 然らばさよう取計らいまして、これより暫時休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩    —————・—————    午後二時九分開会
  59. 小串清一

    委員長小串清一君) 午前に引続きまして会議を開きます。  関税法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。
  60. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 政府委員にお尋ねいたしたいのですが、第五十九條、第六十條によつて税関の官吏が武器を携帶することができるようになるわけでありますが、この使用に当つては事人命に関することでありますから、十分な規制をいたさなくてはならないと思うのであります。すでに鉄道の公安委員、或いは海上保安庁あたりの保安隊と申しますか、そういう人々に武器を携帶させるときにおいても、主務官庁においてはどういう場合にどういうふうに取扱うというような具体的な例も詳しく示してあるというようなことを伺つております。勿論この点につきましては、大蔵当局においても十分厳重な規制をされると思いますが、それについて如何なる当局のお考えがおありになりますか。この際御発表願いたいと思います。
  61. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) 先般提案のときに御説明申上げましたように、最近特に凶惡化しつつある密貿易の状態でありまするが、この取締りをするために第六十條に謳いましたこの條項にございますように、自己又は他人の生命若しくは身体の保護、又は公務執行に対する抵抗の、止むを得ざる場合、必要があるということを認めた場合においてのみ、これが使用ができるということがはつきり六十條に織込んでおります。この今日凶惡化しつつある密貿易の状態と、この六十條のこの制限によりまして万遺憾なきようにやりたいと存じております。
  62. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 六十條の趣旨はよく分るのでありますけれども、この最後の方の「合理的ニ必要ナリト判断セラルル限度ニ於イテ」と、その判断するというのは結局武器を携帶する上ころの税関官吏の主観に基いてすべて行われると思うのであります。これを客観的に見ました場合には可なりそこに差違が出るような場合も多々あると思うのです。そこで、税関官吏も勿論人間でありますから、或いは行き過ぎというようなことも生ずるかと思いますが、予めこの点について大蔵大臣が厳重なるいわゆる武器携帶或いは使用についての注意或いは訓示というようなものをなさらなくてはならないと思うんです。そういうことなしに簡單にこれだけ通して参りますというと、結局どんな事態が発生いたしましても、この條項によつていつでも税関官吏の主観によつて行われたことが正当防衛というようなことになつてしまつちやうんです。その点をどういうふうに大蔵省としては具体的な措置をなさるか。まあ大蔵大臣は今日お見えにならないんですが、大臣に代つて政務次官からお答え願いたいと思います。
  63. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) 国警の方にこの武器の、ピストルですが、その使用法というのがございます。制限規程がございますが、それをやはり配付いたしまして、そうして十分に徹底いたしたいと思つております。
  64. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうしますと、国警の訓令そのままを大蔵大臣から携帶者に対して配付する、こういうことだけで大蔵当局としての独自の見解は別にないのですか。
  65. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) 私今申上げましたのはピストル取扱法の制限の小さいパンフレットがございます。それをこの問題に適用するようにいたしまして、大蔵省から又特に今油井委員の言われる御心配の点は十分責任を以ちまして、そうしてこれが徹底するように訓令いたしたいと存ずるのであります。
  66. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 大臣からはつきりとその訓令をお出しになる、こういうふうに我々了承していいですね。
  67. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) さようでございます。
  68. 小串清一

    委員長小串清一君) 外に御質問ありませんか……。他に御発言もないようでありますから、質疑は盡きたものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  70. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私は原案を一部修正の上賛成したいと思います。第一に「刑事訴訟法第二百十三條ノ規定ニ依り逮捕状無クシテ現行犯人ヲ逮捕スルコトヲ得」という規定を特に挿入しているのでありますが、これは刑事訴訟法第二百十三條において何人と雖も逮捕状なくして現行犯人を逮捕することを得るのでありまして、従つてこの條文を特にここに挿入する必要がないと考える次第であります。  第二の点は、原案は「私設の保税地域その他関税法規の適用上特殊の取扱をする場所に常時派出するため、税関に、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、必要な職員を置くことができる。」ことにしておるのでありますが、行政機関の職員定員法の精神は行政機関の職員の数を法律によつて明確にして置くことにあるのでありまして、たとえ特殊の事情によつて例外を認めることといたしましても、この限度はやはり法律規定しておるのを適当と思われるのであります。そして政府とのいろいろな質疑応答の結果、その限度はこの際二百人の動員を以て足れりと考える次第でありまして、以上の理由によりまして原案に対しまして次のように修正したいと考えます。   関税法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  本則中第百一條ノ三以下の改正規定を次のように改める。  百第一條の七を第百一條ノ八とし、第百一條ノ六の次に次の一條を加える。  第百一條の七 税関長ハ私設ノ保税地域其ノ他関税法規ノ適用上特殊ノ取扱ヲ為ス場所ニ税関官吏ヲ常時派出スルコトヲ得   附則第二項を次のように改める  2 行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。   第二條第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同條第三項とし、以下一項ずつ繰り下げ、同條第一項ノ次に次の一項を加える。  2 大蔵省の本省の職員の定員は、前項の規定に拘らず、私設の保税地域その他関税法規の適用上、特殊の取扱をする場所に職員を常時派出するため必要がある場合においては、二百人以内において、政令の定めるところにより、増加することができる。  以上を修正いたしまして、その他は政府原案通りにいたしたいと考えます。
  71. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは只今の大矢委員の意見は、原案の一部を修正して他は原案に賛成するというのでありますが、他に御意見ございませんか。
  72. 松永義雄

    ○松永義雄君 私は社会党を代表しまして、意見を申上げたいと存じます。  私共社会党としましては、原案には反対いたします。尚、修正部分についても無論反対いたします。その理由は、第一点、税関吏に武器を携帶せしめる点でありますが、この点につきましては、過日政府委員がここで説明しでおりましたように、警察官が武器を携帶しておりまして、その使用につきまして職務執行法の規定によつておるばかりでなく、上司の指示に従つて使用しているわけであります。ところが過去二年間におきまする警察官の武器使用に関する経過を見ますと、問題が約四百四十八件起つて、その中死亡者が十四人、負傷者が三十九人に及んでおりまして、拳銃につきまして大小さまざまな事故が頻発しているということであつたのであります。而も拳銃につきましては、やはり同じく政府委員の説明のごとくに、まだその拳銃の操作につきましての熟練性が著しく欠けている。尚又、感覚が甚だしく鈍いということを認められているのであります。しばしば拳銃の使用につきましては、只今議題になつております関税法の一部を改正する法律第六十條に記載してありまする規定によつても明らかでありますように、如何なる人と雖も拳銃の使用については、いわゆる防衛の限度を越えてはならないというのがありまして、その点に関しまして、警察官が正当防衛を、超えて事故を起して検察庁に問題になつていることもあるのであります。このように過去の経過を見ますと、未だ今日の段階におきましては、警察官ですらも武器を使用するのに適当しておらないということを実証されているのじあります。御承知の通りに、拳銃は飛道具でありますから、これによつて起る人権というものの侵害される虞れが多々あるのでありまして、これには十分の教育と十分の適応性を持つに至らなければ、拳銃の使用は許し得られないものではないかと思うのであります。ましてやその経験のない税関吏の方が拳銃を使用するのでありますから、壁を懐いて罪ありという言葉がありますが、却つてこうした危険を持つために、みずから澄んで思わず罪を作るようなこともなきにしもあらずということを考えるのでありまして、只今政府委員の御説明がありましたように、警察官の教えをそのまま頼みにしておるという話がありましたが、警察官に対する拳銃の使用操作に関して立派に職務執行法という規定があるし、又実際に一々具体的な場合においては訓示があるようでありますが、それにも拘わらず警察官は問題を起しておるのでありまして、そうした方面から眺めて見ましても、今日の税関吏の諸君に武器を持たせるということは非常に危險があるのでありまして、未だその段階に至つておらないということを私は考えるのであります。  それから第二の定員の問題でありまするが、これは幾らかはつきりしたようでありますけれども、政令に一任してある点を尚存しておる点は甚だ遺憾でありまして、これはどうしても法律でやつて行かなければならんということを考えるのであります。  以上の二点から政府原案並びに大矢さん提出の修正案、いずれに対しても反対の態度を持つておる次第であります。社会党といたしまして、反対をいたします。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も税関吏に武器を携帶させることを規定する関税法の一部改正案に反対するものであります。反対理由は、大体松永委員の言われたことと同じでございますので、重ねて申述べる必要はございませんが、ただこの審議の過程において、過日国警の警務部長中川淳氏を招んで、警察官の武器使用状況について聴取いたしたのでありまするが、相当厳重な訓練をしておりながら相当事故があるということを聞いたわけでありまして、この武器の携帶については非常に慎重に考えなければならないと思うのです。特に最近政府においては警察予備隊、或いは海上保安隊、こういうものを殖やすということになつております。大蔵省の意見を聞きましても、密貿易を取締るために税関吏に武器を携帶させる以外の方法において何とかこれを取締りたいということをいろいろ研究したような話でありまして、できるならば武器を携帶させずに取締りたい、こういう意図も相当あつたようであります。私は、武器を携帶させずに、この密貿易を取締る方法についてはまだ何らかの対策がある筈であると、こういうふうに考えます。而も又、段々武器使用の範囲が拡がりまして、警察予備隊とか、海上保安隊その他を含めて、何らか又日本が再軍備をしておるような、再軍備の準備の一環であるような感じを国際的に與えるような憂えもないとは限らないと思うのであります。従つて、成るべく武器使用についてはそういう観点からも、これはできるだけ制限すべきでありまして、そういう観点から私はこの法案に反対するものであります。修正案につきましても反対でございます。
  74. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私は民主党を代表しまして、甚だ遺憾ではありますが、この関税法の一部を改正する法律案賛成する者であります。先程来拳銃或いは武器の取扱いについてお二人の委員から詳細述べられましたが、全く同感であります。併しながら最近の関税の收税について、密輸事件が相当あつて而も大口の密輸が検挙されていない、僅かに細かい金額に達するような検挙しかできておらないというのは誠に残念であります。而もその内容を見ますというと、一九四九年、即ち昨年度におきましても、五千百四十五人の犯人数があり、その内朝鮮人の千三百二人、台湾人が四十五人、沖繩人が五百七十三人、中国人が二百二十八人、その他百七十五人ということが記されている。更に又今年に入りましてもすでにもう五月まで、たつた二ヶ月で七百五十件の件数に対して、朝鮮人が三百人、中国人が百五十人、その他の大島、沖繩、台湾というような犯人も相当あるのであります。そういう点から見まして、結局日本人にあらざる人人に対して、日本法律が無規される。そのために国の全体の財政的にも或る程度影響を及ぼしているというのは甚だ遺憾であります。こういう点から見ましても、今回止むを得ず武器を携帶させて、こういうような事件を少しでも減じようとするのはいたし方ない時世だと思います。併しながらこの武器の使用に当りましては、先程も政府委員に申上げましたように、大蔵大臣の訓令等によつて厳重にその使用法等を熟練させて、而もその使用に当つての判断というものの正確を期せられまして、たとえ一人たりとも尊い人命の正当でない失われ方をすることのないように十分に当局において注意をせられんことを希望するものであります。  以上の條件を附しまして、この原案に賛成するものであります。又大矢委員から提出されました修正案は却つて原案よりもこの修正の点については優れておるように見受けられますから、これは修正案に対して賛成いたすものであります。
  75. 小串清一

    委員長小串清一君) 別に御意見もないようでありますから、討論は終結したものと認めて、直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないものと認めまして直ちに採決に入ります。関税法の一部を改正する法律案についで採決をいたしますが、先ず討論中にありました大矢委員の修正案を議題に供します。大矢君提出の修正案に賛成のお方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  77. 小串清一

    委員長小串清一君) 過半数と認めます。よつて大矢君提出の修正案は可決せられました。  次に、只今採決せられました大矢君の修正にかかわる部分を除いて内閣提出にかかわる原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  78. 小串清一

    委員長小串清一君) 過半数と認めます。よつて関税法の一部を改正する法律案は多数を以て修正可決せられました。  尚本会議におきます委員長口頭報告内容は本院規則第百四條によつて予め多数意見者承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において、本案内容、本委員会における質疑応答要旨討論要旨及び表決の結果を報告することとして、御承認願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 小串清一

    委員長小串清一君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書には多数意見者署名を附することになつておりますから、本案を可とせられた方の順次御署名を願います。   多数意見者署名     大矢半次郎  木内 四郎     愛知 揆一  山崎  恒     杉山 昌作  油井賢太郎     森 八三一
  80. 小串清一

    委員長小串清一君) 御署名洩れはございませんか……。御署名洩れなしと認めます。   —————————————
  81. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは、これから油井委員の御請求になりました国税庁長官の出席を求めたのでありますが、国税庁長官は差支があつて徴收課長の田所正幸君が出席しておりますから、田所徴收課長より国税の徴收状況についての説明を聞くことにいたします。国税徴收課長説明を始めてよろしいと思います。
  82. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) お求めによりまして、国税の徴收の一般的な状況お話いたしまして、それから現在の滞納の問題の概略を御説明いたします。  先ず昭和二十四年の税收の関係でございますが、これはもうすでに皆様方もあらましは御承知のことと思いますが、国税庁所管の分、つまり郵政省とか税関分を除きまして一般租税につきまして国税庁所管分の税收の関係を申上げます。二十四年度は国税庁所管分の予算五千三億円に対しまして、收入済額は五千二十二億、大体十九億程度の歳入超過と相成つております。これは目下最終的な決算事務を取急いでおりまして、その結果は或いは多少の誤差が生ずるかも知れませんが、先ずほぼ確実なところで概ね二十億程度の、予算に比べましては国税庁としては歳入超過になつております。こういう状態でございます。そのうち申告所得税につきましては、これは予算額が一千七百三億に相成つておりますが、五月末の收納の総額は一千三百七十二億という数字でございまして、その間におきまして大体三百二十億程度の歳入不足に相成つております。  次に二十五年度の歳入状態でございますが、これは本年の国税庁所管分の予算の総額は四千三百十億と相成つております。このものに対しまして、七月の一旬までの收入の合計は七百八十三億となつておりまして、この予算額に対しまする割合は一八%二と相成つております。前年同期の成績は同じく二十四年度補正予算の数字に対しまして、一九・九%でございましてやや低下いたしておりますが、ほぼ順調に行つております。この低下しております原因は昨年は申告所得税の納期が六月末でございましたが、本年におきましては七月ということにいたしました関係で、従いまして若干の收納歩合の低下を見ておるのであります。これが收納状況の概況でございますが、次に、滞納の概況を簡單に申上げます。六月末の滞納の総額は一千百四十億程度に相成つております。これが中に申告所得税が七百六十五億円を占めておりまして、割合にいたしまして六九・二%と相成つております。その次は源泉所得税でございまして、この滞納の総額が八十八億でございまして、滞納全体の一千百三十九億に対しましては割合が七・八%でございます。次に法人税でございますが、これは六月末滞納が百七十億でございまして、割合が一五%を占めております。この三つが主たる滞納でございます。なかんずく申告所得税の割合が先程申上げましたように、大体七〇%の程度の割合を占めているということが、滞納の増加する理由の最も大きな原因に相成つておるのであります。先程申上げましたように、二十四年度におきまして予算に対しまして約三百億の歳入欠減を申告所得税が来たしておりますが、その関係もこの滞納に直接響いて参つておるのでございます。大体申告所得税の滞納関係につきましては、この七百六十余価円の内訳は、二十三年度以前からの繰越しました滞納額が、これが百億ちよつと上廻つておりますが、大体百十億かそこらの、ラウンド・ナンバーで申上げますが、数字がございます。その外は二十四年度内に発生したものでございます。そうして二十一四年度内に発生いたしました滞納の概況を申上げますと、確定申告をいたしました分について未納税額、申告はしたけれども、その後の経済界状況変化によりまして、完全に申告税額を拂えなかつたその不足額が大体三百億程度ございます。それから更正決定によります分、大体二十四年の二月から、つまり今年の二月から三月にかけまして本更正決定をいたしたのでございますが、その額が概数で六百億程度ございます。その部分につきましては、期間が短かい関係で收納歩合が低下いたしておりまして、その部分の收入未済額、いわゆる滞納額と相成つておりますものが大体において四百億程度ございます。従いましてこの確定申告までの收入未済額の三百億と、更正決定によります收入未済額の四百億と、これが先程申上げました申告所得税の滞納の大きなフアクターを占めておると言えると思います。  で私共といたしましては、然らばこの滞納をどうするかということでございますが、租税の公平という事柄は、賦課と徴收と合して見た上で考えなければならないと考えております。如何に多く賦課いたしましても收納歩合が惡うございましたならば、決して納税者におきまして具体的な公平を図ることはできないのでございまして、私共といたしましては、これを租税の公平な負担という見地からいたしまして、滞納処分その他の方法によりまして、納付をお願いいたしまして、歳入を埋めたいと考えておるのでございます。特に巨額の滞納が発生いたしまして、将来の減税という問題にも大きく惡い影響を與える慮れがございますので、今後七月から九月間の間は特に力瘤を入れまして、これが整理に当りたいと考えておるのでございます。十月以降につきましては、これは二十五年度の新年度の又滞納が相当発生する関係もございますので、その後は新年度の滞納に重きを置いてやりたい。それまではこの繰越額の滞納を少しでも減らしたい。こういうように考えて、今全国の税務署もこの線に沿いまして、滞納整理に懸命の努力を拂つておる次第でございます。以上簡單でございますが概況を御説明いたします。
  83. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今お話中これは政務次官も主税局長もおいでになつておりますが、滞納が減税に惡い影響があるというのでありますが、まあ我々が考えますと、滞納があるということはこれはやはり国民内容がよくない。従つて成るべく減税してやつて、滞納というようなことのないようにするのがこれが政治じやないかと思つておるのですが、まあ今朝の新聞等によつてもこの滞納があるということを政府当局としては減税に惡い影響がある、こういうふうな見解を持たれておるようですが、その点大変相違があると思うのですが、どうしても滞納があるから減税ができないというふうにお考えになるその根拠はどういうわけですか。
  84. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 私からお答えいたします。お話の通り私は二つの見方があると思います。お話の通りこの滞納が多いのはやはりなかなか税の負担が高くて実際納めにくいから滞納が多いのだ。そういう点から申しますると、むしろ税の滞納が多いからこそ今度は逆に軽くすべきだと、こういう見方も確かに一つの見方だと思います。それからもう一つの見方は滞納が多いということになりますと、仮に税を軽くしますと、又軽くした税が予想通り入つて来ないのじやないか、やはり決まつた税金というものは国民としましては決まつただけきちんと拂うということをする。こういうふうになつて初めて減税と申しますか、税率を軽くすることができるわけで、税負担を軽くすると、又同様に滞納、納税思想が惡くて滞納になりますと、所期の收入が確保できなくなる。そうなりますと減税ということはむずかしくなるのではないか。こういう歳入の確実なる確保という見地から申しますと、そういう考え方も出て来るわけでございまして、私共まあいろいろ両面から物事を考えておるわけでございますが、やはり決まつた税法でまあ国民が当然納むべきものはやはり納めるというようなことに行きまして、初めて税率なり排除も改正いたしまして、更に軽くするということによつて確実に入つて来るということになりますと、それに応しまして計画としましても軽くすることができ得るのではないか、こういう考え方であろうと思います。確かに御指摘のような面もありますことを私共伏して看過いたしておるわけではないのでございます。
  85. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そこで滞納処分に対する政府の、まあ今度は督励をしてでさるだけ早く滞納をなくしたいというお話のようですが、どういうような具件的の方策をお持ちなんですか。
  86. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) 滞納処分といいます事柄は非常に地味な事柄でございまして、特別に妙手というものは考えられておりません。ただ我々といたしましては、失ず具体的には滞納をしておられる方に対しましては督促状を全面的に出す。これは法律上決められました当然の事柄でございまして、これはすでに発行いたしております。尚財産の差押並びに公売、こういう問題でございますが、これは財産権を直接制限する行為でございますので、相成るべくならばそういうような直接的な強行手段は差控えたいと、こういうような気持で従来参つたのでございます。その間におきまして催告状と我々は読んでおるのでございますが、何月何日までにお納め願いたい。あなたの何年度のどういう税金がどの程度私の方では滞納になつておる。従つてこれに対しましては何月何日までに御納付を願いたいと、そういうようないわゆる我々は催告状といつておるのでありますが、そういう手段をとりまして、自主的に成るべく強制的な差押物件の引揚げ、公売そういうような手段をとります前にお納め願う機会を與えておるのでございます。それを與えましても、まだお納め願えない部分が相当に実は実際問題としてございます。従いましてこういうものに対しましては、いつまでも放置するということは却つて惡い結果をもたらしますので、そういうものに対しましては、法に従いまして財産の差押をいたすのでございます。尤も差押をいたします際に、現金を御調達願いましてお納め願いましたならば、勿論差押をいたしませんで帰つて参るのでございますが、その場合におきましてもお納め願えない場合には、法に従いまして差押をいたします。そうして差押をいたしまして、それから物件の引揚の通知ということを、今はこれは法規にはございませんが、実際の慣例として多くこの方法をやつております。何月何日にあなたの差押物件の引揚がある、そういう御通知を滞納者に差上げております。従いましてそれまでに御納付願えますれば勿論差押は解除いたしまして、物件の引揚はいたしません。その引揚通知をいたしましても、まだお納めにならないものがあります場合、これが相当に多いのでございますが、その場合にはこちらから参りまして物件の引揚をいたすのでございます。引揚げました物件につきましては、所定の公告をいたしまして、そうしてこれを公売に付する、その公売代金を以て租税に充当する、こういう手段を取つておるのでございます。結局今言いましたような手段を適時適用して、始終万遍なしにこつこつとやつて行く、こういう手段以外に実は方法がないのでございます。今そういう方法でやつておるのであります。
  87. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 新聞で見るというと、滞納処分を今度は特に嚴重にやるというふうなことが出ておるのですが、何かその情勢に応じて緩急よろしきを得ておるようなふうにも見えるのですが、随時そういう指令が本庁より各地方の税務署に行くのですか。
  88. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) お答えいたします。実は緩急をつけるということはさして作為的にはやつておらないのであります。これは私の方の事務の都合によりまして、事実上できない問題がございます。例えば人員の不足という問題でございます。又四月、五月の時期におきましては、いわゆる先程申上げました決算事務という大きな仕事がございます。徴收課長の大きな責任の一つは完全なる決算を議会に提供するという事柄でございます。先程申しました五千億に達する歳入をやつておるのでございます。その年度の途中におきましては多少の誤謬というものも生ずるのでございます。そういうものを年度末におきまして最終的にぴしつと合せる、これは日本銀行の方の台帳その他とも合せる、これがためには相当の手数が要るのでございます。一つ間違つておりますれば、細かい伝票を加えまして、一枚のために千枚も二千枚もそういうような伝票を加えまして、そうして白銀の方の台帳と合せる、こういう仕事があるのでございます、従いまして四月から五月頃にかけましては、非常にそういう事務のために人員を割かなければならないのでございます。実際問題といたしましては職員を滞納整理の方に専心多数を向けるということができないのでございます。七月以降になりますれば、その事務も峠を越して参りますので、従いましてその期間におきましては相当の人員をそこに出せる、従いまして中央といたしましてもその事務の繁閑を見まして、今度はこういう仕事に重点をおいてやれ、こういうふうに申しておるのでございます。又滞納の状態は昨年の事例を見ましても、実は恒常的な傾向に相成つておりまして、特に年度末には更正決定をなします関係で、一時に膨脹することはございますが、大体その間におきまして、完全に滞納がなくなるということはございません。普通七百億、八百億というような数字が恒常的にあるのでございます。従いまして、滞納整理につきましては、結局年間を通じまして專門的に、熱心に、且つ責任を以て当るというものを置かなければならない。そういう見地から今回国税徴收官を九百名新らしく増員いたしまして、人事院と共同いたしまして、採用試験も済みまして、目下人事院からの提示を待つておるわけであります。これを提示されましたならば、採用いたしまして、これを各国税庁の方に配置する考えであります。こういう職員を配置いたしましたならば、これらの職員が年中廻つて行く、そういう建前を立てるつもりであります。
  89. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 次に申告納税ですが、申告納税というものは、本人が今年の收入をどのくらいあるということを予想して出すのが当然だと思うのですが、最近の申告納税の方法を見ますというと、大変税務署においては手廻しよく、何の誰それはこれくらいの申告納税をして貰いたいという納税者の金額まで書いて、これに判を押して貰いたいというようにやつておるそうですが、果してそういうような事実を本省あたりでは御存じなのかどうか、又そういう指令でもお出しになつておるのか、この点について伺いたいと思います。
  90. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 申告納税はお話の通り、自分で計算して申告するのが建前でございます。私共一刻も早く税法通り申告だけで税金が納まりまして、税務署等の手数なりを必要とするような事態がなくなるか、或いは少くなることを期待しておるわけでございますが、ただ遺憾ながら、現状におきましては、まだなかなか税法の徹底、或いは納税者の納税思想がそこまで到達しておりませんので、なかなか思うような申告が出て来ないのが多いという実情も恐らく油井委員御存じだろうと思います。従いまして、戸別的に所によりましては、成るべく税務署におきましても事前に所得状態等を調べまして、確定的ではございませんですが、大体これくらいはあるのじやないかというところを、昨年の予定申告あたりでも言つた例があるようでございます。又本年の確定申告に際しましても、できる限りそのような方法によりまして、後で更正決定をしなくても済むような、何と申しますか、よく言えば指導、惡く言えばお話のように予定の押売ということになるかも知れませんが、そういうことをやりまして、結局申告で税金が納まるよう、完全な意味における申告では納まらないのですが、実際上そういうような実態になるように努力しておる。これは必ずしもそれがいかんというのはどうも如何であろうか、ただ受取られる側では事前の通知なり事前の指導を更正決定と、そういうふうに受取つて反感を巻き起しておるところもあるようですが、或いは税務署の通知等の仕方が惡かつた場合に、そのようになる虞れがありますので、注意の仕方なり、通知の仕方については注意する必要があるかと思いますが、事柄自体はそのようなことでありますから、勿論、納税者は自分の考えるところに従つて所得を申告して頂けばいいということを併わせ徹底を図る考えで、私はやはり弊害よりもむしろいい面が多いのじやないかということも考えますので、こういう方法を全部一概にいけないということは如何であろうか。やはり或る程度はそういう面も併わせ行いまして、申告納税を理想的になるように持つて行くという努力は必要じやないかと考えます。本年におきましては予定申告は前年の所得で申告して貰う、細かく言いますと、前年の所得金額か、或いはそれ以上で申告して貰う、それ以下で申告しようとする場合においては、御承知の通り六月十五日までに税務署に申請して貰いまして、事前に承認を受けて貰うということになつておることは御承知の通りでございます。そういう申請をされなかつた方に対しましては、前年の所得金額はあるものという、こういう通知を私も受けたのですが、して来る、こんな例があるようです。これもやはり私は考えようによつては親切でありまして、その注意の仕方も注意してやりますれば、むしろ親切だということに相成るかと思うのでございまして、私はそういうようなことはいけないというのは、どうも必ずしも賛成し難いので、むしろ場合によりましたならば、そういう注意を加えまして、極力予定申告は成績がよくなるように努力するのがいいのではなかろうか、このように考えておるのであります。勿論前年実績による更正は、御承知の通り相続所得とか、山林所得とか、一時所得等は除きまして、それ以外の分で所得金を計算しまして、便宜通知を発して申告の慫慂をいたしておるようでございますが、これはやはり一概にいけない、或いはそれで非常に誤解を受けて変になるような場合がありますれば、誤解を受けないような注意の仕方を十分備考等に書いてやるということによりましてやるのがいいのじやないかと思います。尚、理想から申しますと、申告納税につきましては、更正決定をするのはむしろ例外でありまして、飽くまでも申告で納めるのを本筋にすべきだ、今は止むを得ない状況で、原則と例外が実際問題は転倒いたしております。非常に多くのものに更正決定をやつておる、而も短時間の間に余り個別調査をできないでも止むを得ないという状態でございますから、こういう制度は将来は成るべく早く理想的方向に持つて行くべきだ、そういうふうに持つて行くためにはどういうふうにすればいいか、これが余程今後の私共の制度上、運用上の最も重要な問題じやなかろうかと考えておるのでございますが、そういう基本的な考えを持つて起ることを附加えまして御了承願いたいと思います。
  91. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今の局長のお話の通りになつておるならば、大変それは結構なんですが、実際申告納税に当つて、去年はこれだけの申告所得があつたのだから、これだけ申告したらばいいということにして、親切心と見られるのですが、今年は多分このくらいだろうといつて、非常に多額の増加をした数字を申告納税の紙に書いて、これに判を押させる、そういつたようなことが現に行われているのです。これがいわゆる割当制というのは全然やつておらないのだといつても、実際は割当が各税務署に行つているんじやなかろうか。こういうふうに思われる大きな原因になるんじやないかと思いますが、その点について、局長はまだそういうことはお耳にしてなかつたようですが、現実にそういうのがあるのですから。
  92. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 若しもお話が今年のお話でございますと、私はそういうことはないじやないかと思うのでございますが、去年は御承知の通り、予定申告は所得を見積つて出す、而も大体去年と一昨年と比べますと、所得が或る程度増加すると去年の五、六月は予想されました。やはり予定申告の成績を上げるために、昨年からできるだけ上げたところで申告をして貰うと、こういうようなことをやつておる場合があるのでございますが、これは一昨年におきましては大分あつたようですが、これは一昨年等におきましては、もつとひどかつたと思いますが、所得の変動は甚しかつたのでそういうことをやつておつたかと思いますが、今年に関する限りにおきましては、今お話しましたように、予定申告は前年度実績を元にしてやるという建前にしておりますから、尚それよりも更に適当な見込みを立てて余計に申告して貰うようにするというので、むしろ中央としましては余り言いません。すべて予定申告は法律にあります通り、少くとも前年度実績、できればそれ以上くらいのところで申告指導をいたしまして、余り深入りしないで置いた方がいい、一年の実績を見た上で来年の確定申告のときしつかり所得に申告して貰うように努力して貰う、このような方針にしておると思います。お話の今年の点でございますが、尚よく調べましてお答えしても結構かと思います。
  93. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これはお膝下の東京都内にあつたということをつけ加えて、一応後の方もありますから終ります。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先程御説明ありました国税庁所管分の徴税実績の概況の数字についてちよつとお伺いしたいのですが、最初の二十五年度の予算五千三億、それに対して実績が五千二十二億、約十九億の歳入超過、その次、申告の方の内訳を聞きましたが、これは源泉はどうなつておりますか。
  95. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) 予算が千二百九十四億でございます。それで五月末までの收納実績が千四百十五億になつております。プラスして百二十億程度でございます。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから滞納概況の中で、源泉八十八億という滞納ですね、これはどういう形なのですか。法人の中で勤労者からとつてですね、一応これを納めないという、そういう形のものですか。
  97. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) 源泉は、大体これは申告書というものは出しませんで、源泉徴收義務者から徴收報告を受けまして、窓口に拂込むという形を毎月とつているのでございます。従いまして、税務署の大体の原則といたしましては、いわゆる事後調整、拂込みましたもので、徴收決定額を受けて行くという恰好に相成つておりますので、これがまあ原則でございます。併しながら一応税務署の方で調べまして徴收検査に行きまして、支拂いまして決定すると、そういう場合もございまして、従いまして源泉の滞納が出て来るのでございますが、これが先程御質問になりました実態につきましては、今言われましたような事態が相当にあるであろうと考えられます。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから地方税の方の、滞納はどのくらいになるか見当つきませんか。
  99. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) この件につきましては、所管が全然違つておちますので私共の手許に今数字がございません。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先程お話伺いますと、七——九月頃滞納処分に非常に力を入れられるというお話ですが、地方税の方についても相当滞納があるように開いておりますが、そうしますと、地方税の方の滞納処分それから国税の方の滞納処分、その上に今度地方税方案が仮に通りますと、又ここで地方税の徴收が重なるわけですね、その七—九月頃にそういうものがしわを寄せて来ると、滞納処分は大変なことになるのじやないかと思うのです。相当困難になるんじやないかと思うのですが。例えば国税の方で思い切つてうんと滞納処分すると、地方税の方の滞納処分が困難になる。今度は地方税の納入が又困難になる。そういうふうなことを合せますと、七—九月頃に千百四十億ですか、約一千億に上るこの滞納処分を強行されるということになると、非常に大きな問題になると思うのですが、又非常な深刻な、前の税金整理というような騒ぎですね、差押えていろんな社会不安も起きたようですが、ああいうふうなことをちよつと予想されるのです。その頃みんなしわが寄りますので、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  101. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 私からお答えいたしますが、お話の通り、国税につきましては約一千百億ぐらい滞納がございます。地方税につきましても地方税の二十四年度の総額が約千四、五百億でございますが、やはりそのうち正確な数字はございませんが、一割五分か二割ぐらい滞納が残つているんじやないかと思います。そういう滞納を全部一遍に片付けますと、お話のような影響が出て来る御心配誠に御尤もなわけでございますが、実際問題といたしまして、私共千億の国税の滞納が二、三ヶ月の間に一遍に納つてしまうようなところまで持つて行くということは、これは幾ら努力いたしましても不可能なことでありまして、やはり現実の問題としましては、滞納整理に幾ら努力いたしましても、入つて来る額はそれ程多くないのではないかと考えております。それから又納付に当りましても、納税者にはいろいろあると思いますが、納税資金を実際持つておりながら税金の方は後に廻わしておる納税者も相当ありますから、こういう納税者の方々には強力に督促いたしまして、納めて貰うことが何よりも必要なことだと考えます。併し本当に資金に困つてなかなか納めにくいというような納税者が非常に多いということも御指摘の通りでありまして、こういう納税者の場合におきましては、いわゆる分割納付と申しますか、一遍に納めさせないで、事実上一部ずつ納付して貰うというような方法も講ずることにいたしておりまして、従いまして御指摘のように八、九月頃にこれがために非常に重大な影響があるというふうには実は見ていないのでございますが、併し前例もありますように、相当滞納整理に努力をいたしますれば、或る程度影響はあるだろうと考えております。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 或る程度というお話ですが、実際問題として非常に深刻なものになるのではないかと思います。その点、滞納に向つて努力すればする程、非常な困難を伴い、そこのところは非常にむずかしい問題と思います。これはそのときになつて見なければ分らない問題ですが、十分この点はその時期にいろいろなものがしわ寄せになるということを考えておやりにならないと問題になるのではないかと思います。  それからもう一つ簡單なことですが、お伺いしたいのですが、大体予算としては国税庁所管では徴税の実績は約二十億の超過になつておる。そしてその結果から二十三年度からの繰越を残して約一千億があつて、この滞納が完全に取れたとしましたならば、これは非常な予算超過になる。これは技術的の問題でよく分らないけれども、政府は予算を組むとき、大体千億もの予算超過を最初から予定して組んでおるのかどうか、大体これだけ滞納があるから、これだけ余計税金というものを予算として計上して置くのかどうか、この点よく理解がつかない。これはどういうことなんですか。それでこの滞納が処分できた金は、予算を越えた金はどういうことになつて行くのであるか、この点よく分らないから聞きたい。
  103. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 御尤なお尋ねでございますが、大体予算を見積ります場合におきましては、木村さんよく御存じの通り例えば申告所得税でございますと、その年度中に全部入つて来るという見積りをすることは收入の上では危険でございますので、そういう見積りはいたしていないわけでございまして、申告所得税の場合におきましても、二十四年度分でございますが、当年度中に決定額のうち、七四%が入つて来るという計算を二十四年度にはいたしたわけであります。二五%近くは翌年度につまり滞納として繰越されるわけでございます。そういうことをいたしております。と申しますのは、この申告所得税は何しろ一月が申告の時期でございまして、その後調査決定をいたしまして更正決定をいたしますのは二月の末で、納期を三月末ということで従来大体やつて来ておりますが、納期までに全部納まるということを予定しますのは、実際問題としましても困難でございますのでそのように見積りを抑えております、従いまして、昨年度の予算でありますと、大体賦課額が約二千億と申告所得税で見ておつたわけでございますが、二千億の二割五分即ち五百億程度はこれはもう止むを得ず繰越されると、その程度くらいの従いまして滞納の繰越しでございますれば今の申告所得税の状況、それから制度の立て方等からいたしましてまあ止むを得ないぐらいのところじやなかろうかというふうに私共は計画の上におきましてもそういう算盤を弾いておるわけでございます。ただ今年はそれに対しまして若干殖えたというところに非常に問題があるのじやないかと、実際入つて来ましたのは六二・三%程度でありまして約一二・三%程度余計に申告所得税が翌年に滞納として繰越された。そこに一つの問題があろうかと考えておることであります。これは従いまして余計なものでございます。尚二十三年度から二十四年度に繰越しました申告所得税の滞納がございます。これも予算の上におきましては二百億程度、実は二十四年度の予算に見込んでおりましたのが、実際は成績振わないで百三十億しか入つておりません。七十億程余計にこれも二十五年度に持越されたような例もございます。このように或る程度予算で今の実情において止むを得ずとして見込みますものと、それに若干プラスになりまして実は今年の滞納が殖えている。そのプラスになつておる分が私共非常に問題にしている点でございますが、そのような内容になつております。従いまして結果から申しますと申告所得税が若しも予期のごとく入つて参りますと、これは歳入全体としてもつと自然増が出て来たということになるわけでございますが、その他の事項になりますると、例えば勤労所得の源泉課税はこれは若干見込が不十分であつた、過少であつたということを私共は確かに言えると思います。約百二十億程度増收を来たしたわけであります。それから法人税の方も補正予算で或る程度増收を見たのでございますが、その成績の方もそれ以上あがりまして百億程増收になつて来ました。酒税も年末の売行きがよかつたために八十億ぐらい増收になつて来た、その三つの税で三百億程予算の面で、その低かつたと申しますかそれが成績がよくて増收があつたと申しますか、そういうことによつて増收になりましたので、申告所得税が約三百億程へこみましたが、全体としては約二十億程度の増收になつたと、こういうことに結果としましてはなつているわけでございまして、滞納の、元へ戻りますが、千二百億自体が見込よりもオーバーしたというわけでございませんので、その中の申告所得税の分が予想よりも多く滞納として繰越された。その滞納が予定通り入つて来れば勤労所得税、法人税、酒税に対する予算の増收がそのまま自然増收として出て来た、こういうのが実情であろうかと思います。そのことが見積りの仕方、その他でいいか惡いかということは、まあ御議論があるかと存じておりますが、御判断の資料までに大体の体系を申上げた次第であります。
  104. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 ついでにお聞きしたいのですが、予算をお組みになるときは捕捉率というのはどの程度に見ておられるのですか。
  105. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) これは前回にも御説明申上げたのでございますが、例えば二十五年分の申告所得税でございますと、二十三年分の決定実績というのでございます、税務署で決定いたしましたのですが、この二十三年分の決定実績なり課税所得に基くオリジナルになる、例えば原表ができますから、それに対して生活品物価、雇用賃金がどういうふうに動くかという予想を立てるわけでございます。その予想を立てる場合におきましても、すでに予想を立てるまでに相当実績が出て来ておりますから、そのできる限り出て来ている実績を基にした指数を取りまして、その指数を乗じまして二十五年分の課税所得というものを見積りまして、それに税法を当てはめて計算するわけでございます。そうしましてその際に二十五年度の予算を見込みます場合におきましては、税法の合理化と税務署の徴税能率の向上等を考えまして農業所得は自然な所得の増收の外に三%余計課税洩れが捕捉できる、営業所得は六%課税洩れが余計できるという、それにプラスいたしまして今年の予算は例えば申告所得税の見積りをいたしております。勤労所得税につきましても、やはり税法の合理化と調査の徹底等によりまして課税洩れが大分見つかりますので、これも三%程度余計自然増の外に捕捉できるという計算をして二十五年度予算は見積つておるのであります。そのときの情勢によりまして、そういうものにつきましてはいわゆるフアヤターを調べまして、できる限り適正な見積りを立てるべく努力をいたしておるわけでございますが、法人税等は予想よりもやはり利益の増加状況がよかつたようでございます。勤労所得税の方もやはり雇用賃金の指数が最初予測いたしましたより若干よくなりまして増加しております。酒税等も年末の売行きが非常に比較的よかつたために予算よりも多くなつておる、こういう結果になつておるのであります。
  106. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 徴收洩れの見積りがそれはどのくらい見込まれておりますか、税目ごとに御発表願えたら、若し何でしたら資料として提出願いたい。
  107. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 徴收洩れという問題はなかなか簡單でございませんで、課税になつたもののうち普通ならばこのくらいは入つて来べきものがこれだけしか入つて来なかつたという……
  108. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 いわゆる脱税ですな。
  109. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 徴收洩れで分りました捕捉洩れが幾らあるかと申しますと、率直に申しましてなかなかむずかしい問題で分りません。便宜安本で計算しております国民所得課税と営業所得課税のほんの一つの参考材料でございまして、国民所得自体が御承知の通りそれ程精密な計算の上に立つておりませんので、年々の指数を見ます場合におきましてはこれは同じような方法でやつておりますから相当貴重な資料になるかと思いますが、絶対額がどの程度正しいかという問題になつて来ますと、まあなかなか問題がございます。仮に二割違つておりましてもそれによつて非常な違いが出て来るということにもなりますから、いろいろそういうふうな角度から研究しておりますが的確なことはなかなか申上げにくいのでありますが、最近まで国民所得について安本で二十四年度分についてこの間計算して作つたようでありますが、この間の見積りと今度の見積りと少し狂つたために営業所得の把握率と国民所得のそれが丸きりがらりと変つて来たといつたような事情もございます。正確なところはなかなか責任のある見当を申上げることはむずかしうございます。
  110. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 大体どの程度ですか。
  111. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 大体ということになりましても責任あることを私から申上げることはちよつと申しにくいのでありますが、大体これを見ますと勤労所得が一番よく把握されておると思います。その次が農業所得、その次が営業所得と見ていたんですが、国民所得の比較では、最近安本では二十四年度の所得の見積りをいたしましたところ、それによりまして却つて営業の方が案外よくて農業よりも上廻つておるというような計数も未定稿ながら出て来ております。その辺更に検討いたしておりますが、傾向としましては私共はやはり勤労所得は一番よく把握されておる、その次は農業、その次が営業じやなかろうかとこういうふうに見ておりますが、大分接近して来つつあるようでございます。
  112. 野溝勝

    ○野溝勝君 簡單に二点ばかりお聞きします。先程局長からお話がありましたが、前年度の所得以下になる場合には一応税務署長の了解を得る、こういうわけですね。それはどういう意味なんです。大体所得が前年度よりはあるものというまあ断定の上に立つて、さような通牒というか命令ですか出したのですか、どういうお考えですか。
  113. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) これは野溝委員は本年の税法を御審議になりませんでしたので私から補足して申上げておきますが、今年所得税法の建前を変えまして、予定申告の段階におきましてはまあ成るべく相互の紛争を少くするために、見積りによらないで、前年度実績で原則として所得を見積ろうという建前に法律改正いたしたのであります。と申しますのは理想を申しますと、飽くまでも予定申告でありますれば六月現在でその人が今年幾らになるだろうか、これを正確に見積つてそれで納めるというのが税法から行きますと理想的なことになるわけでありますが、実際問題といたしましてはなかなかこの見積りというのはむずかしい。今までの見積り方法は、上期つまり六月でございますと六月までの実績を元にして、その後は大体状況が同じだ、継続するものだとして算定するような方式で見積り方法をいたしていたわけでございますが、これもなかなか実際問題としてむずかしい。そうしますと納税者は勢い低い見積りを主張する、税務署はそれじや成績が振いませんのでもつと高く出てし貰いたいと、仮更正決定をせざるを得ない。そうしますと非常に紛争が起る、問題が起る、そういうことがございますから、先ず予定申告をする、予定申告は本当の一種の事前納税でございますから、その段階におきましてはまあお互いに総見積り所得が幾らかということをやかましく議論しないで、まあ一先ず前年の所得金額を基準にしてものごとを考えたらどうか、これがスタートでございます。そういたしまして原則としまして従つて前年の所得金額か、或は勿論それ以上は構わないですがその以上になるものでございますかで申告して貰う。そうしますと仮更正というものはもうできないことになります、今までと違いまして。従いまして前年度の所得金額か或はそれ以上で申告をして頂けば、もう税務署も仮更正決定はできない法律になつておるのでございますが、まあそういうようなことにいたして行きますのが一番予定申告納税システムとしてはいいんじやないか、こういう考えでございます。  併しそれを飽くまで貫きますと納税者に非常に酷になりますので、どうもいろいろな原因で所得が減ることが明らかな場合、例えば災害でやられたというような場合、或は農業でも作付反別を減らしたような場合、営業者の場合でも営業の一部を廃止した場合、全部廃業した場合は勿論であります、そういう場合は勿論法律に基きまして減額申請して来た場合には、税務署長は認めなければならないような規定を設けております。それから更にそういう外形的な原因がなくとも、どうも上期の実績で二割以上減りそうだというような場合におきましてはやはり減りそうだということを、納税者から或る事例を出して貰いまして申請して貰いますとこれも税務署長は認めなければならない。併しそれまででない程度のところでございますとまあ結局見積りは水掛論に終る、精密に申しますとできる筈です。けれどもなかなか実際問題としてはむずかしうございますので、先ず予定申告の段階では前年度の所得金額を元にして一応税金を納めて貰う、そうしまして確定申告の際に一月から十二月までの実績が全部分りますから、そのときに全部正しく申告して貰う、或は税務署が調べまして正しい更正決定をすることによつて過不足を調整する。こういうような制度を今年からお願いいたしたようなわけでございまして、経済も大分今までと違いまして落ついて或る程度横這いの数字が大分出て来ておりますから、まあそのような制度の方がより実際に即するんじやないかとい意味で、こういう制度を今年の新税法で実は設けたような次第でございます。運用につきまして若干新法でございますので周知徹底が不十分であつたり或は不馴れなところがありまして、うまく行つてないところも確かにあるようでございますが、私はやはり経済状況が著しく変らぬ時代におきましては、こういう制度が予定申告制度としてはいいんじやないかと考えておる次第であります。
  114. 野溝勝

    ○野溝勝君 先程油井さんにも同様な質問があつたのですが、私は平田さんの施策のうちこれ程失敗はないと思うのです。と申すのは、これがためにまあ地方の農村を初め勤労者が非常な恐慌を受けておるわけです。それで私は後でこれは徴收課長の方からお聞きしますが、一体農村あたりは前年度よりは所得が多くなるということは今ないのです。最近朝鮮事変で少しばかりぼやぼやしましたけれども実際においてはもう農村などは日を経るに従つて苦しくなつて来ておる。それがこの前年度の申告或いはそれ以上というようなことになつておりますので、農村といたしましては非常にまあ不安に駆られておるわけであります。そこで先程来数字によつても示されて知ります通り、地方財政におきましてもまあ一割七分ですね、私の見当の滞納が。まあこれによると一千有余億とこういうような滞納の状況のある際に、前年度より所得が多くなるというこの考え方です。如何に徴税技術の上からかような方針がいいという政府当局の御見解でも、どうも今のような実態から見て、私は却つてそういうような無理な認識を與えるよりは合理的な外の方法で、この徴税方針を考えることがいいじやないかと思うのです。この点に対して特に局長からお聞きしたいのは、大体国税庁ができて各地区々々に局ができまして、その局には大体このくらい徴收しなければいかんという枠を與えるわけですか。
  115. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) お答えしますが、先ず農業所得の点でございますが、これは私は前年実績と申しますのは昨年の所得金額のことでございまして、税額は飽くまでも今度の新らしい税法で計算するわけでございます。従いまして恐らく実際農家は前年の所得金額で申告して貰いますれば、税金に相当猛烈に減りますから、具体的に申告なさいます段階になりますと、私はそれで少くとも問題がないのじやないかと考えておるんでございますが、御承知の通り農業の所得税は昨年は約五百億と調査決定いたしておりますが、新税法によりますとそれが百八十億ぐらいに減りそうで、約三分の一までにはなりませんが半分以下になる。これは税率の引下と控除等によりまして所得税がそれほど減るのでございます。従いまして前年の所得金額で農家が申告されるということになりますと、税額を計算しまして今年に関する限りは大して問題はないんじやないか。ただお話の通り自分は減つたと思うのに前年の所得金額で申告しなければならん、これはどうも主観的におかしいじやないか、まあこういう議論をお懐きになる納税者の方もおいでかと思いますが、これは都会近郊の農家で作物の値段が明らかに半分にもなつておる、相当下つておる、こういうところではさつきの事前承認を出して頂けば私は認めるかと思います。ただ普通の一般の田のごとく事実供出によつて販売しておる場合におきましては、御承知の通り米価は今年も昨年に比べますと或る程度引上げの予定で殖えて行きます。まあ作柄がどうなりますか申上げられませんが、全体としてそう多く減ることはなくむしろあまり減らないところが大部分じやないか。全般的に一律に減りそうな場合におきましては、法律ではもう一つ規定がございまして、前年の実績から平均して何%減といつたような措置を講ずる途も残しておるのでございますが、まあ今年といたしましては、そのような規定を発動する必要を実は認めていないのでございます。大体そのようなことを御参考までに申上げて置きたいと思います。尚今お話になりましたもう一つは目標の問題でありますが、これは二十二年度と二十三年度は止むを得ずですが、一種の特に目標を示していることは御承知の通りであります。二十四年度におきましては見込を一応とつておりますが、中央からその見込を目標として指示することは止めたのでございます。でございますが、見込をとつているためにやはりその見込に捉われまして、目標と同じように重きを置いて問題を起している所がたしかにあるようであります。従いまして、見込をとること自体も今後止めるか止めないか非常に研究しなければならない問題じやないかと思いますが、ひきますればそういう見込もとらないで税金がスムースに入つて来るような方向に行くのが理想だと考えております。少くとも本年度に関する限り今までのところ別にそういうような措置をとつておりませんので、その点は御了解を願いたいと思います。今後見込をとるかとらないかということ自体につきましては、余程慎重にすべきではないかと考えております。
  116. 野溝勝

    ○野溝勝君 これは議論になりますから私は議論は避けますが、この点局長から十分お考えを願いたいのですがね。先般も大蔵大臣の池田さんと意見を交換したのですが、とにかく農村所得に対する見解が違うわけです。というのはあなた方の方では四千二百五十円に米価をしたから三千数百円から見ると五、六百円上つたとこう見ておりますが、肥料代の方が七割も上つている。そういう点から換算して又電力料が上つたりその他諸費用が相当上つていることは物価指数から見てお分りになつておると思います。そういう点の検討を十分一つ掘下げて御研究を願わんと、農村の税額はどの程度では容易であるというふうにお考えを願うと、それは僕は大きな間違を起すと思うのです。特に中央税としては減りましたけれども今回の地方税においては相当の負担になるので、結局懐から出るうちは同じことだと思うのです。そういう点で中央税の方において、あなたのおつしやるようなふうに見受けられるかも分りませんけれども、農家の懐から見れば以上のようなわけなんですから、一応こういう点は一つ農村に同情の眼を以て一つ検討願いたいと思います。  更に今一つお聞きして置きたいことはこの仮拂いの問題ですが、シヤウプ勧告によると仮拂金というのがありますがあれは所得税にそれを加算しないということを聞いておつたのですが、その点はどうですか。例えば事業なら事業をやつております場合に仮拂金という費目があります。そうするとそれを所得の方へ算入して税金をかけられる、こういうのですが、その仮拂金制度に対してはどういうふうに見ておられるのですか。
  117. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 農業所得の課税につきましては勿論御注意の趣旨もよく考えて適正を期するつもりでございますが、特に農家は営業者に比べまして納税率は非常に低いのでございます。御指摘の通り特に私共課税につきましても十分注意してやりたいということはよく御注意を承わりまして善処いたしたいと思います。  それから尚仮拂金の問題でございますが、これは所得税、法人税同様でございますが、すべて收入と支出を見る際におきまして、具体的に経理が確定したかどうかということによりましてその期の收入と経費を見ているのでございます。従いましてそういう見地からそれぞれその会社の計算等の内訳を調べまして仮拂金のうち或いは仮拂金借受金等につきましても内容を精査しまして、それぞれ收入に見るべきものは見て経費と見るべきものは経費と見る、というような仕分けをいたしてこの課税をいたしているような次第でございます。従いましてお話のどういうものでありますか、少し具体的な問題でございますから、具体的な内容をお聞きしまして一つお答えしたいと思います。
  118. 野溝勝

    ○野溝勝君 時間がありませんから又。
  119. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この滞納額で二十五年度千百三十九億、二十四年度七百三十一億となつておりますが、これは前年度おのおの繰越が入つていると思いますがどのくらい入つておりますか。
  120. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) 今のお尋ねはそれぞれの只今申上げました繰越の総額に対して如何程前年度分が入つているか、こういうお話でございますか。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いやその総額の中にさつきは何か二十五年度の申告分について、ちよつと前年度の繰越をお示しになつたのでありますが、総額で前の年の七百三十一億の中に前年度分の繰越が入つているか、二十五年度にも入つているか。そのおのおのにどれくらいずつ入つているか。
  122. 田所正幸

    ○説明員(田所正幸君) 大体概算でございますが、五月末におきまして大体前年の繰越が二十五年度につきましては百十億くらい入つていたように推定されております。それから二十四年度につきましては今手許に資料を持つておりませんので調べまして……。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この二十四年度には七百三十一億の滞納額で、二十五年度には千百三十九億の滞納額、又滞納額が非常に殖えている。率にすれば五六%くらい殖えているということになるのですが、この滞納額の増加は課税額が多かつたために、それに相応してこんなに殖えたのか。いやそうじやなくてそつちの方は前年度と余り違わないのだけれども、経理状況といいますか所得関係その他が非常に惡くなつたために滞納が非常に殖えたのか。その辺はどういうふうな判断ですか。
  124. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) これは精密には相当精細な計算をしてお答えする必要があるかも知れませんが両方ある、確かにあると思つております。税額全体は御承知の通り二十三年度の税額よりは相当二十四年度は増加いたしております。二十三年度は確か三千七百億でございましたか、それから二十四年度は五千百億でございますから、その税額が相当殖えておりますから、それに伴いまして滞納が或る程度増加してもそれはまあ特に惡化したものとは言えないということは確かにあると思います。併し先程申上げましたようにそれだけではないのでありまして、申告所得税の滞納は確かに余計に殖えております。これは私はやはり二百億くらいは余計に殖えているのではないかというふうに見ておりますが、必要でありますればもう少しその辺精細に調べましてお答え申し上げます。
  125. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点で法人税あたりも相当、七十二億から百七十一億に殖えている、或いは申告税が三十億から八十八億に殖えているというような点を考えると、ただ單に税額が殖えた、それに相応して殖えたというのではなくて、やはり経理の状態なり経済状態が相当惡化している、こういうことを反照しているのじやないかという気がするのですがね。この点においてあとでこれは大臣との問答になると思いますが、大臣は非常に楽観しておられるけれども、経済状態はそんなに楽観すべきものじやないということが租税滞納からもはつきり現われているのではないかという気がいたします。
  126. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 法人税の方は、御承知の通り二十四年度は税額全体が非常に殖えましたので、この税額の増加と比べてそう余計に甚だしく殖えているとは見ていませんが、若干あるかも知れません。問題は申告所得税は明らかに課税額増加よりも遥かに滞納が余計殖えたということは、これはもう言い得るかと思います。荷必要がありますればお話のような点を分析しまして、お答えしたいと思います。
  127. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 さつき聞き洩らしたのですが、野溝さんからのお話があつた農業課税の問題ですが、捕捉率が大分明確なことは分らないと言いながら、或る程度まではこれはもう明瞭なわけです。ところが捕捉率が殆んど一〇〇%の葉煙草の收納金に対する課税ですけれども、これはまあ杉山さんが專門家なんでしようけれども、これはまあ大体現在生産費として必要経費が四〇%ぐらいしか各税務署で認めてないのです。併し実際においてはこれは五〇%なり六〇%かかるであろうとこういうふうな見解になつておるのです。そういう捕捉率一〇〇%のものに対して正確に生産費が六〇%もかかるものを四〇%にしか見積らないというのは、これは非常に不合理だと思うのですが、何か主税局としてはそういうような点について特に指令でもなさつておるんですか。訂正するつもりはないのですか。
  128. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 煙草につきましてはお話の通り收入は非常にはつきりしております。従いまして先般もそういう角度からいろいろ煙草の耕作連盟の方から申入がございまして、その経費の見方についても従いましてできるだけ細かく適正化を期するようにということで、中央で国税庁も相当研究したかと思いますが、研究の要領を具体的にはつきり一々中央で指示することもできませんが、大体の方針につきましては地方に指示いたしまして、できるだけ適正化を期しておるのであります。経費は今幾らになつておりますか私は記憶しておりませんが、理由の付く経費は極力認めるという方向で行くように、中央からも会議等も開きまして指示したいと考えております。
  129. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 それから最後に一点、シヤウプ博士が最近参られる筈になつていますけれども、今までの実際の租税の徴收その他実績等によりましていろいろ訂正すべき点であるとか、或いは資料に応じて修正を要する点なども多分当局においては認められておられると思うのです。そこで今度シヤウプ博士が参りましたらそういう点についていろいろ資料を御提出になると思うのですが、その提出される書類というものはまあ我々にもお示し願いたい。そうでなければ実際において我々大蔵委員として正確な、まあ国家の財政或いは国民経済というものに対するところの完全な検討というものができないのです。これは一つこの際主税局長にお約束願いたいのですが。
  130. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) できる限り御要求の趣旨に即応するようにいたしたいと思いますが、いろいろ交渉の都合上時期等については先方からやかましく言われておるのでなかなか私共思うようにできない場合もあるのですが、できるだけお話趣旨のような方向で仕事を進めて行きたいと思います。勿論その中で当然確定的な資料で公表して差支ないようなものは、これはできるだけそのように取計らいいたしたいと思います。
  131. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これは新聞なんかには我々よりも余程早く発表になつてよく知られておるのですが、そういう資料は大蔵委員長の手許に新聞発表前にどんどん届けて貰つて、そうして大蔵委員の方に配つて貰う。こういうふうな手続を今後とつて頂きたい。
  132. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは大体まだ何でしようが銀行局長が見えておりますから、金融政策並びに制度に関する調査に関連いたしまして、舟山銀行局長から最近の金融状況及び金融業法の交渉経過について説明をお願いいたします。
  133. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 銀行法の改正につきましては、終戰後各方面の制度改正されますに伴い、銀行だけが遅れておるのではないかということで改正が問題になつてつたのでございます。昭和二十三年度には司令部の方から非公式の提案もあつた次第でございますが、その後実施を見るに至りませんで今日に至つております。併しインフレも漸く收まつて参りまして金融問題の仕上げとしては金融制度に手を著けるべきではあるまいかということで、今度の通常国会を目標にいたしまして一つ法案を捕えるようにという指示もございましたので、当局におきましては先般来急遽一案を草したわけでございます。これは終戰後たびたび金融制度調査会もございまして、いろいろな考え方は一応披露されておりましたので早急にこの度案をまとめたのでございますが、尚通常国会までには余日もございますので、できるだけ輿論その他各方面の意向も取上げまして司令部と折衝して参りたいという考えで、先般非公式に内容が発表せられたような次第でございます。この金融制度改正につきましては、單に銀行法の改正でなく、その他の従来の特殊金融機関、現在残つておりますのは農林中央金庫、商工中央金庫というようなものがございますが、更に範囲を拡げ保険業法等も含めましてできれば次の通常国会改正案を提出したいという心組でございます。  今般試案ができましたのは銀行法を中心とし、これに信託業法、無盡業法、それから市街地信用協同組合法、これを織込みまして一つの体系を形作つたわけでございます。別途特殊金融機関ができますれば、それに対応いたしまして一般的金融機関に関する法律というようなものができ上るのであります。尚この組織に関しまする規定の外に、例えばあとで御説明申上げますが、金利調整とか日本銀行に対する支拂準備の問題とか、金融機関の運営に関する規定等も織込みまして、金融機関並びに金融事業に関する法律とも申すべきものを試案として作成したわけでございます。従いまして試案は相当條数も多い厖大なものでございますが、その中には最近の立法例にならいまして、特に従来であれば省令その他の施行細則に謳いましたものでも法律に語おう、それから商法辺りに規定してありますことも念のためにこの法律に謳うといつたような最近の例にならいましたので、相当條数も厖大になつております。そこで本日はこの改正の主要点につきまして要点を確認いたしましたものにつきまして御説明申上げたいと存じます。  尚この取運びといたしましては、大体銀行局におきまして一つの成案を得ましてこれを司令部に報告いたしますと共に、司令部の指示によりまして、日本銀行政策委員会意見とそれから法務庁法制局の意見だけを取敢ず司令部に伝達しておるという関係にございます。今後内容につきましては紆余曲折がいろいろあることと考えております。配付いたしました資料を読上げながら補足説明をさして頂きたいと存じます。  先ず第一に「この法律による規制の対象たる金融機関は銀行、外国銀行、信託会社、相互銀行及び信用協同組合とし、この法律の基本概念で免許の対象となる「金融業務」とは預金の受入れ及び資金の貸付又は手形の割引を行う業務をいうものとする。」これは只今申上げましたように、銀行法を拡大いたしましてその他の信託会社、相互銀行、これは現在の無盡会社を改組いたしまして、簡易なる銀行といつたようなものを捕えたいといつたような構想でありますが、これを入れまして尚現在協同組合による信用事業に関する法律というのがございまして、俗にいわゆる信用組合というのがございますが、これもこの法律の中において規制しようとするものでございます。  先ず第一に銀行につきましては、「(一)資本の最低限度を引き上げ、これに伴い必要な経過期間を設ける。外国に支店を設置する場合については新たに資本について特別に最低限度を定める。」この銀行の資本金は現行法では原則として百万円、東京、大阪に営業所を持つておるものについては二百万円となつておりますが、その後の通貨価値の変動に伴いまして現在では低きに失しますので、現在内規といたしましては三千万円程度の限度を置いておるのでありますが、一応新法におきましても三千万円くらいが適当ではないかと考えておる次第でございます。これに入りません銀行は現在数行ございますので三年間くらいの猶予期間を設けたらどうかと考えております。但し外国に支店を設置する場合につきましては、国際信用力という関係もございますので一億円以上という最低限度いたしたらばどうかと思うのであります。尚新商法では無額面の株式の発行が認められるのでありますが、銀行についてこれを認めますことは適当でないと思われますので、銀行についてはこれを禁止する予定でございます。  尚ここにはございませんが、銀行の役員につきましては取締役五人以上、監査役二人以上といつたようなことで、できればいずれも日本に国籍を有し且つ日本に住所を有する者でなければならないといつたような規定にしたらばどうかと考えておるのであります。更に監査役につきましては関係方面の示唆もございまして、取締役会に対しまして監査役会というようなものも拵えてその会長といつたようなものを拵えまして、銀行の監査機能をもつと積極的に活発に行わしめるといつたような構想も考慮中でございます。  「(二)不動産担保貸出は、当該不動産の評価額の一定割合以内とし、その総額は定期的預金の総額及び実質資本の金額を標準として制限する。債券発行によつて得た資金はこの資金の別枠とする」ということになつておるのでございます。ここに実質資本という新らしい言葉がございますが、これは従来の公称資本金、或いは拂込資本金、或いは積立金も加味しました自己資本金という観念から一歩進みまして、そのうち銀行検査の結果によりまして欠損と認められたもの、その他償却を要する資産を考慮したものを実質資本ということにいたしまして、これを以下いろいろ出て参ります基準にいたしたいという考えであります。これは関係方面の示唆によるものでございます。併しこれにも一利一害がございまして、成る程銀行資産内容を堅実に見るという意味においては至極妥当でございます。併しこれは実質資本というものは表面に現われない、外部からは窺い知れないために銀行の業務上支障も来やしないかということで、これに対する反論もございます。現在のところはまだ研究中の域を脱しません。それはれ不動産担保貸出は当該不動産の七〇%以内が適当ではないか、個々の不動産につきましては評価額の七〇%以内というような規制を置きました。そうして担保貸出の総額が定期的預金の六〇%と実質資本の金額、これは全額のいずれか高い金額を超えてはならないという規制を置いたらどうかと思うのでございます。  従来日本の銀行の破綻の原因が長期不動産貸出というものが固定して不良化するということにあつたに鑑みまして、最近銀行につきましては商業銀行主義をとつて資産の流動性ということに相当重点を置かなければならないという思想に出たものでございます。一面これに対しましては非難もございまして、やはり日本においては不動産は有力な担保である、且つ最近の検査方針による貸出については原則として担保をとらなければならないという思想をとりますと、不動産担保貸出について制限を設けることはそこに矛盾が出て来るのではないかといつたような疑問も起つて参るのでございます。以上申上げましたようなことが大体一応の考え方でございます。但し昨年できました銀行等の債券発行に関する法律によりまして債券発行を認められまして、債券発行といたします銀行につきまして債券発行によつて得た資金というものは、これは元来長期の資金と見合うものでございますから、この制限の枠外とするということになるのであります。  「(三)一人に対する貸出は実質資本の二五%を限度とする。これに必要な経過期間を設け、又ある種の貸出についてはこの限度に算入しないものとする。」これは一銀行の一人に対する貸出が余り大きくならんようにということからこの限度を設けようとするものでございます。二五%ということにつきましてはいろいろの見方もございましようが、又現在銀行がどの程度の貸出をしておるかということとも睨み合せて考えなければならないかと思います。それで又一方におきましては、早急にこの限度まで引下げるということが非常に無理な場合もございますので、大体本法施行後三年間には実質資本の五〇%まで下げ、そうして施行後五年間の経過期間にはこの基準にまで引下げるということの経過規定を設ける予定でございます。この限度に算入しない貸出といたしましては、この貸出につきましては債務の引受も含むのでありますが、社債又は株式の保有はこれを除く、それから他の銀行又は地方公共団体に対する貸出も又この制限から外す、それから期限が短く、或いは倉荷証券、国債、当該銀行の預金等によつて十分に担保されておる貸出というものは、この制限に算入しないということにいたしたいと考えておるのであります。併し如何なるものをこの制限から外すかということにつきましては、又極めて多くの意見が出るところかと考えております。  それから次に「業務用不動産の所有額は原則として実質資本の七〇%を限度とし、業務用以外の不動産の所有は例外的な場合の外認めない。」これはこの前段につきましては現在も大体の指導におきましてこういうことに相成つておるのであります。公団につきましても、例えばビルデイングの所有は、賃貸目的であつてもそのビルデイングの所有といつたようなことは、これを認められていないということになるのであります。  「(五)銀行等の債券発行等に関する法律と同様の基準で銀行に債券の発行を認める。」これを一言に申しますれば、この銀行の預金と発行しておる債券の合計額が自己資本の二十倍に満たない間は、その債券の発行ができるという規定が、ここに掲げてあります法律によつて認められておるのであります。これは今度の金融業務に関しまする規定をもこの新法に同一的に盛り込むという趣旨において、こちらに移し替えることを予想しておるのであります。  それから「法定準備金は、原則として従来の銀行法におけると同様とするが、預金と債券の総額が実質資本の二十倍をこえているときは、より多くの法定準備金の積立をすべきものとする。」法定準備金は原則として従来の銀行法の規定と申しますのは、毎期收益の一〇%以上ということになつておるのでありますが、預金と債券の総額が実質資本の二十倍を超えているときはこの率を殖やす、これも後に出て参ります銀行等債券発行関する法律に調われておるのであります。これを移し替えるのであります。  それから次に「(七)検査を一層励行する。」とございますが、ここに一つ立法上の問題といたしまして、毎年少くとも一回は銀行の検査をする、さようなことを語うことが適当であろうという有力意見があるので、これにつきまして当局における検査機能、検査能力という問題と睨み合せまして、こういう毎年一回といつたような義務付けをするかどうかについては尚研究中でございます。それからこれに関連いたしまして、この銀行につきましては金融検査官によります検査の外に、その最も顕著な例は税に関する検査、調査、その他いろいろの検査、調査が行われるのでありますが、これは金融機関並びに金融制度の信用保証上、法律を以て一定の場合に限つて、これが銀行に対する検査ができるという規定を盛り込む方が適当ではないかというふうに考えておるのであります。それからもう一つ検査に対しましては、これはアメリカの例によりまして、検査の場合に一定の基準を以て検査を受ける金融機関から検査の手数料を取るという規定を設けたらどうかという意見が出ておるのであります。日本の通常観念を以ていたしますればこれは少し変な感じがいたしまするが、この点については尚研究折衝をしておる次第でございます。  次に「(八)業務管理の制度を新設し、銀行の業務又は財産の状況により銀行の資本保全等のため業務管理人に銀行の業務を管理させることができるものとする。」これは銀行が破産その他によりまして店を閉じる一歩手前におきまして、或いは店を閉じます前の段階といたしまして、大蔵大臣が適当な業務管理人を派遣いたしまして、銀行の公正を図り或いは債務の償還、債券の保全ということを監督しながら、これをやらすという仕組をここに設けるのでございます。  次に「(九)銀行の破産の場合において一預金者につき、その預金のうち一定金額以下の部分につき優先的取扱をする。」現在銀行の預金について、この国家的に補償する制度はございません。又金融機関経営については、飽くまでそれは経営者が責任を負い、預金者がその経営者を信用して預金をするという建前で行つておりますので、国家補償はないのでございますが、零細預金を保護する意味において、例えば一定金額以下とありますが、例えば十万円以下の部分については優先的に取扱をするといつたようなことを考えて見た次第でございます。  次に「外国銀行については従来は日本における外国銀行の各店舖をそれぞれ独立の店舗として、取り扱つてきたが、この法律においては、日本における主たる営業所を本店とする銀行として取り扱い。性質上適用されがたいものを除き、原則として銀行に関する規定を適用する。」特に御説明は要らんかと思いますが、従来は日本における外国店舗はそれぞれについて報告を徴し、一個の独立の店として扱つてつたのであります。これを日本内地における総括店ともいうべきものを認めまして、これと対政府との関係で話をするということにいたしたいと思うのであります。  次は今度の信託会社に関する規定であります。信託会社に関しましては現在信託業法にございまして、この銀行が信託業務の兼営をできるという建前を採つております。そこで現在ありますいわゆる信託銀行なるものは銀行でもつて信託業務を兼営するという性格を有しておるのでありますが、今度の新法におきましては四にございますように、信託会社については、従来の業務の範囲を若干拡張し、銀行に信託業務の兼営を、信託会社に銀行の兼営ができるということにいたしたらどうか。若干の業務の範囲を拡張、何といいますか、例えばエスクロウというようなアメリカあたりで行われておる例を採入れるのであります。それよりもやはり銀行が信託業務を兼営するという場合の外に、独立の信託会社というものも認めてもよろしいのではないか、これについては銀行業務の方を兼営させるということにいたしたらどうかということで、ここに新法に特に信託会社に対する規定を設けたいと思うのであります。  五が「従来の無蓋会社は、物品無盡を除き、健全な相互銀行への転換を認める。その責木の最小限度は従来の無蓋会社におけるものを引上げる。」無盡会社は現在戰時中特例を以て預金の取扱を認められておるのであります。その意味において銀行と同じような機能を営んでおるのでありますが、ところが一部からは無盡会社からはやはり預金の業務を外すべきであるといつたような意見もあるのであります。現実に預金を取扱つておる、これを元に戻すことも非常に至難であります。かたがた無盡会社は現在の銀行の取扱つておりません中小金融というものにつきましては、まあ極めて恰好なものであると思われますので、ここに一つ普通の銀行に対しまして簡易なる銀行ともいうべき一つの銀行のタイプを作りまして、そうしてそれをこれへ引上げますと同時にその新法にそれを盛込むことにしたらどうかということを考えたのであります。一方貯蓄銀行というものが従来ございました。これは例えば定期積金というものを扱つてつたのであります。こういう專門の貯蓄銀行がなくなつたことによつて、こういう機能がが停止されておる。非常に不便を感ずる向きもありますので、かたがた従来のごとく銀行に対して貯蓄銀行を認めるごとく、この無蓋会社を昇格さして相互銀行といつたような一つのタイプに仕上げまして、そうして普通の商業銀行と相互せしめたらばいいのではないかというふうに考えたのでございます。  「六、信用協同組合は、この法律に基いて大蔵大臣が監督するものとし、詳細な規定を設ける。」これも特殊金融機関に対しまして、普通の金融機関はこの新法に統一的な規定を網羅するという思想から出たのであります。現在この協同組合による信用事業に関する法律の中に盛つてありますことを、この新法に移し換えようということでございます。この中にも若干の内容の修正もございます。例えば現在信用協同組合が困つておりますことは、その役員としては出資者相互間におきまして選挙によつて選ばなければならんということになつておるのであります。この選挙によるということは、ともすれば多数を頼んで金融機関経営者として適当でない人が選ばれるという弊害もございますので、これらの点は新法においては改めたい、則ち候補者を定めまして議決の方法によるといつたような扱いにいたしたいということを考えておるのでございます。以上が金融機関の組織に関する條項でございます。  次に「七、信用の調整につきましては、(1)リザーブ・システムをとり、銀行はその預金に対して、一定割合の金融の日本銀行預け金を保有しなければならないものとする。」この中央銀行の信用の調整方法といたしまして、市中銀行から預金を強制的に預けさす、そうして信用の緩急に応じましてこの率を上げ下げして信用を調節するということが、最近の中央銀行の行き方になつておるのであります。これを日本においても採用いたしたいということでございます。この支拂預金の準備率をどうするかといつたような問題につきましては、まあ大体大都市銀行、地方銀行に分けて、それぞれ率を変えなければならないだろうと考えておりますが、なお現在ではどの銀行も日本銀行の借入が非常に多額に上つておりまして、借入をしておる一方において預金をするということは或いは意味のないことでございますので、この実施の時期についているいろいろ研究を要する点があると考えます。  「(2)マージン・リクワイアメントに関する規定を設け、銀行等は、貸出しをする場合に担保として徴する有価証券の種類及び担保価格の限度が定められた時は、これに従わなければならないものとする。」これもアメリカの制度を採用いたしまして証券金融に対する信用量を調節するということを狙いとしたものでございます。  それから「(3)銀行等の預金又は貸出の利率の最高限度又は最低限度が定められた時は銀行等はこれに従わなければならないものとする。」現在金利調整法によりまして、この預金又は貸出の最高限度というものは決められておりますのでありますが、これを恒久法であります新法に織込んだらばどうかということを考えたのでございます。これについては勿論いろいろの意見がございまして、金利のこの規制は別途の法律体系に織込むべきであるといつたような意見もありまして、又金利等についてはこれを自由にすべきであるという意見もありました。なおいろいろ研究中であります。この要目に書上げました事項につきまして、一応甚だ簡單でございますが御説明申上げる次第でございます。
  134. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今のお話のうちで不動産担保の評価額の七〇%というのですが、これは評価額というのは再評価額意味するのですか、それとも何か規定があつて時価評価額意味するのですか。
  135. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) それは担保に取らんとする不動産の銀行の評価額ということで大体まあ時価を基準とする、こういうことであります。
  136. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外国為替業務はこのうちに入るのですか。
  137. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) それは銀行の営む業務というところに列挙される予定であります。実は従来の銀行法等にありますのを大体において移し替える、内容についてはここに省略してございます。
  138. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 この問題につきましては前回の委員会でも申上げたのでありますが、相当時間に余裕をおいて当委員会としても慎重に取上げて研究をいたしたいと思うわけであります。幸いに国政調査の関係で継続審査のお許しが出たわけでございますが、今日この内容について質問をいたしましても時間の関係で如何かと思いますが、別にこの金融制度の調査としての適当な機構を当委員会内にお作り頂きまして、継続審査が具体的に尚且つ能率が上るようにして頂きたいと思うのであります。従つて今日のお尋ねは根本的な、この問題が何故にこういうふうな時期において取上げられつつあるかというような点について主としてお尋ねをすることにいたしたいと思います。そういうことでよろしければちよつと簡單に一、二だけお伺いしたいと思います。  第一は、一昨年の八月に関係方面から非公式の金融機構の整備改善についての示唆があつたわけでございますが、その後いろいろな関係で、中には必ずしも日本の実情にそぐわないというような点もいろいろございました関係で、今日まで極めて必要な点が応急に取上げられただけであつて、恒久的な金融制度の立法については見送られておつたように承知いたしておるわけでございますが、改めて政府側においてこの問題が取上げられたということについては、特に関係方面或いはアメリカ本国等の関係において、何か特別の理由が発見されて改めて大きく取上げられたものであるかどうかということを第一にお伺いしたいと思います。  それからお伺いしたいことを続けて申しますと第二の点は、一昨年の司令部の示唆と、若し今回改めて何らかの示唆があつたといたしますれば、その示唆の両案の中において前回の案と今回の案とで如何なる点において考え方の相違があり、或いは多少具体的な問題にも触れるかも知れませんが、どういう点が違つておるかということをお聴きしたいと思います。それから若しお伺いできましたならば速記を止めてでもよろしうございますが、関係方面からの示唆について、政府側としてはどういう点が問題であり、どういう点については非常に適切だとお考えになつておるかという点について、お伺いいたしたいのであります。  それからその次は、これは銀行その他金融業務を行う機構についての問題でありますが、その基本の中心の機関でありますところの日本銀行制度、中央銀行制度等についてはその改善策等について、何らかのお考えがあるかどうかということであります。  それから最後にこの案は銀行及び金融業務等に関する法律案ということに仮称されておりますけれども、大体が銀行中心に考えられておることが多いのではなかろうか、又そういう点についての関係方面の意向と、日本国内の実情とにそぐわない点が或いはありはしないかと思うのでありますが、それらの点につきましては例えば無盡業でありますとか或いは信用協同組合等についてどういうふうな考え方の経緯になつておるのですか、その点をお伺いいたしたいわけであります。  それでそれに尚関連いたしまして、例えば信用協同組合は過般の中小協同組合法に基いて、従来の市街地信用組合等が改組されたわけでありますが、これは中小企業等協同組合法というものは極めて最近に立法せられたものでございますが、改めてこの法律において大蔵大臣が監督をするものとするということになつておりますが、それらの点について、政府部内の他の例えば通商産業省或いは農林省等とのお打合せの経過、そういう点がどうなつておるかということをお伺いしたいと思います。大体極く抽象的でございますがそういう点についてお伺いしたい。
  139. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 先ずこの法律案の全体の扱い方でありますが、先程も申上げましたように、新法ではいろいろの事項を盛込んでおりますために相当厖大なものになつております。そこで今日もその原案をお示しいたすのでなければ、新法の趣旨を十分に御説明できないのでありますが、何分厖大でございますので印刷その他の関係上極く要点だけをお示ししたようなところでございます。併し私共は今度銀行法の改正を行いまして、相当基礎法として恒久的続くものができるのでありますれば、これはできるだけ早い機会に天下に公表いたしまして世論の力によつて理想的なものにして参りたいと考えますので、いずれこの原案について御意見を伺うことがあろうかと考えておるのでございます。本日は極く簡單に要綱しかお託しできなかつたことについての御了承を得たいと思います。  次にこの数年の問いつも問題になりかけて流産になつておりました銀行法の改正問題が、この度相当本腰を入れて取上げられているように見られる点につきまして、司令部関係の意思はどうであろうかというようなお尋ねかと拝承するのであります。昨年来銀行等の債券発行等に関する法律ができまして、銀行制度の一端にも触れた改正がされたのであります。これは最近はインフレも大体において落着いてそうして金融の運営というものも常態に復して来た、そうして金融制度について若干の手を入れてもここで動揺とか或いは経済界に対する不便の起ることはあるまい、こういつたような気持から司令部が最後の仕上げをするというような気持でこの提案をなして来たようでございます。尚それに関連いたしましては特に銀行の資産構成、或いは業務の運営方法というようなことについて、やはり日本制度にできるだけ外国の国際的な慣行を取入れるといつたようなことを要請して参り、その動機としてはやはりその方が日本の対外信用が増すというようなこともその理由として示されておるのでございます。司令部の内情はもとより非常に的確なことは分りませんけれども、大体におきましての金融に関する司令部の最終的な指導段階として、銀行法に手をつけてもいいのではないかというふうに考えておるのであろうと推測せられるのであります。  次にすでに一昨年司令部の非公式提案がございました、それと今回の新しい法律案との相違点というようなことにつきましては、私、遺憾ながら一昨年の提案につきまして記憶がおぼろになつておりますので、具体的な点につきまして、この場でお答え申上げることができないのでございます。いずれこの詳細な対照表でも拵えてお目にかけたいと存じます。併し今般大きな動きといたしましては、大体において司令部の考え方が次第に寛大になつたと申しましようか、従来の銀行法その他に盛られておりました形式を、できるだけ沢山そのまま取入れて来るというような動きが見受けられるようであります。尚細目につきましては今申上げましたようにいずれ御報告申上げたいと存じます。  次に中央銀行について今度の法律改正と関連してどう扱うかという御指摘でございますが、司令部からの話では中央銀行に関しましては、今年も別に何も申して参つておらないのであります。併し私共といたしましては、この新銀行法と申しますか、金融業法と申しますかこの制定に当りましては、この際日本の金融制度全般について再検討をし、そのあるべき姿を検討しなければならないという気持を持つておるのでございます。いずれ試案とも申すべきものを作つて見たいと考えております。  それから次に新銀行法におきましては銀行が中心になつておる、その他の金融機関とこの銀行との関係はどうであるかといつたような御質問でございますが、大体無盡会社は先程申上げましたように相互銀行という形にする、それから信託会社につきましては又信託会社というものを復活するという建前の下に出ておるのであります。大体において銀行について非常に詳細な規定を設けまして、この両者につきましては大体準用規定というものによつて参れば、この制度に関するものとしては十分にこれを規定ができるというふうに考えておるのであります。これと肌合いの違いますものは信用協同組合でございます。これは別の法律でありまするのをこの法律に移し替えるということをいたすのでございます。信用協同組合を取上げますと、例えば農業地における今の農業協同組合その他の問題と非常に併せて考えなければならん要素が出て参るのであります。それから又昨今も問題になつておるのでありますが、この信用事業を営まない中小企業と協同組合との関連も出て参るのであります。実はこれらは考え方によりまして、どういう制度にするかいろいろの考え方が分れるのであります。併しこの協同組合に関する法制はこれも戰後の而も強力なる指導を受けてできた法制でございまして、我々の目から見てもいろいろの批判の余地はあるのであります。これらにつきましては尚現在のところこの新法自体が大体銀行局の原案といつたような程度のものでございまして、通産省、農林省あたりとまだ十分の連絡はとつておらんのであります。今後連絡をとり且つ原案に盛つてありますことも相当変つて行く可能性が多分にあるというふうに考えておるのであります
  140. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 愛知委員の先刻の御提案のこの問題は非常に重要であるので、特に特別の小委員会なり何なり作つてみつしり審議の準備をするということについては勿論賛成で、是非そういうふうにお取計らい願いたいと思います。特に今の銀行局長の御説明によりますと、銀行局から原案を作つて司令部にお出しになつて、そうして司令部の方はお出しになつたものを更に日銀の政策委員会とそれからもう一つ法制局の意見もお聴きになるようなふうに拝承したのですが、そうしますと、政府の方ではこれを作り上げるまでの過程において、例えば曾て銀行法をお作りになつたときに銀行制度調査会ですか、特別な機関をお作りになつて非常に長い間御審議になつたように記憶しておるのですが、そういう用意を少しもなさらないでそのままお出しになるお積りなのかどうかという点を一つお伺いしたい。そうだとすれば、殊にこつちの先刻愛知委員の御提案になつたことは非常に重要な問題になると思うのでその点もお願いしたい。それから二十三年に非公式な向うからの一応の案と申しますか提案になつて、その後それに類したようなものがどういう形でどういうふうなものが来ておるのか、来ておるとすればそれらを若しお差支なかつたら全部資料の形でお示しを願いたい。それから日銀法のことについては例えば信用の調整についてリザーブ・システムをとるというようなことをおやりになるとすれば、これは必然に日本銀行制度の問題に関連する問題でありましようし、日銀法はあの文面の第一條からして非常に非時局的なといいますか非常に変つた性質のものだから、この際これとの関連において是非やはり一緒に改正をするようなお運びを願いたいと思うのですが、これは希望でありますが。
  141. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) こういうふうな根本的な制度改正を考えるに当つては、何か制度調査会のようなものを設けてこれに付議すべきではないかというような御意見には些の異論もないのであります。実は次の国会あたりにお願いをいたしまして、そういう調査会を設けるなり或いは制度的には正式のものといたさんでも朝野の御意見を伺う機関を設けるなりいたして、是非とも日本国内の輿論を盛つた新法案を捕えたいというのが我々の念願でございます。現在のところは先程申上げましたように、銀行局原案を司令部に示している、その意見を聴いているという程度と御了承願いたいのでございます。  それから金融制度改正につきましては、実は終戰後累次の金融制度調査会がございまして、それから業界からも十分たびたびの意見の具申もあつた、産業界からもいろいろの批判もあつた、こういうことで当局といたしましては大体の意向というものは、その輪廓は今特に改めて集めませんでも、大体は把握していると思われるのであります。取敢えずその内容法案に盛つたわけでございます。併しこれはまあその意味におきましてこれまで立案に当りましていろいろの調査会等の手数は省略したわけでございますが、今後只今申上げましたような手続をとつて行くということについては、即ちいろいろの機関に諮問いたしまして輿論を盛り込んで行くということについては十分の用意があるのであります。  次に司令部の金融制度に関する考え方といたしましては、二十三年に一般的銀行法といつたものに関する試案の呈示がございました。その後は私は殊に包括的な提案があつたようには承知しておりませんが、昨年春の日本銀行政策委員会に関する提案、それから昨年冬の銀行の債券発行に関する提案、これがいずれも法律化せられておりまして今日に至つております。これらもその経緯等につきましては又参考資料としてお届け申上げたいと存じます。日本銀行制度につきましては、司令部の担当官がその方の專門家でないせいか、今回現在までのところはまだ何らの示唆がないのでございます。これも我々といたしまして自主的に一つ草案を拵えて見たいと考えている次第であります。
  142. 野溝勝

    ○野溝勝君 舟山局長さんに一つお聴きしたいのですが、過般農林関係の金融についてその筋と折衝をしたときに、その筋では農林金融はこれは別のものにしなければいかんと考えている、こういう御意見があつたのですが、その後農林金融について私共たびたび関係方面に折画しているのですが、今お話によるとこういう農林中央金庫というような特殊の銀行なども大体は一つの枠に嵌めようというような御意図のように窺えるのですが、そういうような傾向があるのですか。
  143. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 司令部の一部の意見として、農林中央金庫も組合金融という特殊の金融形態を認めないで、これを普通のバンクに改組しても差支ないではないかということを考えている向もあるようでありますが、併しそれについてはこちらは十分説明いたしましてとにかく問題があるからいうことで今回の一般的銀行法の中には盛り込まれていないのであります。この農林中央金庫につきましては私共特殊性は十分分つておりますが、ずつと農林省とも協議いたしましてこの法律の系統外の別個の法律になると思いますが、これも事態に即応いたしまするように是非とも改正したい、できるだけ適当な機会に実現したいと考えております。決してこの法律の中に織り込んでしまうということは現在のところ考えておりません。
  144. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 先程愛知委員から御尤もなお話があつたのですが、愛知さんは前銀行局長であり、つまり最近までこういうことに特に健闘なされた方だと思うのですが、その方から今回の案を出すいわゆる準備のいろいろの政府の見解について、いろいろお尋ねがあつたのはちよつと意外なんです。してみると、急に銀行の内容等においてこの際法律改正して行かなくてはならないという事態が起きたかどうかというふうな点も疑問として湧き起つて参るのでありますが、その点は現銀行局長はどういうふうにお考えになつておられますか。それで只今愛知さんからも御提案になつたように、銀行業に対する恒久的な施策を今度考えなくてはならないというふうな点が突然として湧き起つたという点、その点をよく一つ御説明願いたいと思います。
  145. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 銀行法の改正といたしましては昨年来引続き当局と関係方面と折衝して草案を練つてつたのであります。そうしまして昨年の暮に一応の成案ができまして国会に提案しようかというようなところまで参つたのでございます。そのとき荷練り足りないところもある、或いはこの実情に副わんところもあるというようなことで国会提案を延期して貰いまして今日に参りました。従つてこれは突如として今般この問題が起つて来たのではなく継続的に起つて参りましたのがのびくになつた、それを兼ねこの税法に対する公約もございますので、来議会にどうしても出さなければならないと考えておる次第であります。
  146. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 その点よく分りましたが、大体現在の日本金融機関というものの内容が今までの法律では余り芳ばしくないのですか。それともこの新しい法律によつて金融機関内容がずつと向上するのか、或いは又金融機関の相手方となるべき事業であり産業であるというものと金融機関との結び付きを改正することによつて、更に一段の便宜或いは効果を得られるというようなことになるのですか、その点を一つ
  147. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 率直に言いまして、銀行法に基く銀行自体については、今度の改正に基きまして新しい仕組が入りますけれども根本的な精神というものはそう変るものではないと思うのです。即ち銀行を監督いたしまして預金者の保護を図るという思想におきましては、従来も今度の新法によりまする考え方も大体同じであります。併し手続規定その他につきまして何分銀行法が昭和二年の制定という古いものでありますから新しい時代に即応させるという必要な面もございます、大約申しますれば銀行につきましてはそういうことが申せるかと思います。ところが無盡会社或いは信用協同組合という方面につきましては、これはいわば銀行と相並んで中小の金融を担当する重大なる役割を持つておる、これにつきましてはますますその機能を発揮せしめる必要がある、いろいろ現行法に手を入れたい所がありますが、これを銀行と並べまして一環として金融業法というものに拵え上げるということは、この際として非常に意味のあることと考えておるのであります。
  148. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この春金融機関のことにつきまして銀行の代表者等から銀行業務の変更についていろいろな意見なども我々伺つたのであります。併し只今の局長のお話によると、この法案によつて別に金融政策そのものについて根本的に大方針を改めるというようなことはないように聞こえるのですが、そう了解していいのですか。
  149. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) この銀行業務の機能の発揮ということにつきましては大体変るところはないものと考えております。
  150. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 銀行機能でなく、金融のいわゆる政策ですね、そういう面についての何かこの法律を出したために変るというようなことはないのですか。
  151. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 銀行の認めます業務と政府とどういう関係に立つかということにつきましては、変るところはないのであります。則ちこの現行法におきましても銀行は特にその融資その他の機能につきまして政府から干渉を受けるわけではございません。新法におきましても同じく政府が銀行の業務に対して金融政策上のいろいろな指示をするというようなことはないわけであります。
  152. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 それは今までの法律で以てどういう点が一番欠陷があつたか、改めなければならないという一番重大な点二、三挙げて頂きたい。
  153. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) それはこの要綱を御覧頂きますと分りますが、例えば差当つて非常に大きな問題となると存じますことに二の(三)にありますように一人に対する貸出の制限、それからまあ資本金のい限度が現行法では法律上の規定が非常に嚴に失する、それから不動産担保貸出についても一定の制限を加えるといつたようなことはこれは銀行の内容を堅実にしますために、延いては預金者保護という見地から特に取上げておる問題でございます。又(三)のごときは一つの銀行の一個人に対する金融の限度を下げしめるといつたような具体的な考え方を織り込まれておるかと思うのであります。それからこの五や六につきましては昨年の暮の債券発行の法律によりまして、従来の考え方から一歩進み出たわけでありますが、これらは新銀行法に統一的に規定されることであると存じます。その外いろいろ業務管理の規定を設けましたということも畢竟するに非常事態における預金者の保護といつたような趣旨に出るものと思います。
  154. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 最後にもう一点承わつて置きたいと思うのですが、一人に対する貸出が実質資本の二五先を限度とする、二五%というと相当のパーセントを占めるものと思うのですが、現在中央地方を通じての銀行でもつて二五%以上の貸出をしておるような事例があつたのですか。
  155. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) これは大都市銀行及び地方銀行を通じて若干の例があるのでございます。まあ一例として御想像がお付き下さると思いますが、従来の大銀行が旧同資本系統の銀行に対して比較的多額の貸出をしておるということが現在においても若干残つておるのでございます。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一つだけお伺いして置きたいのですが、先程愛知委員から言われたことについては賛成でして、細かいことについてはいろいろ御質問したい点が沢山あるのですが、ただ一つ政府の大きな金融政策についてどうも我々割切れないものがあるのですからこの点だけちよつとお伺いして置きたいのですそれはまあ銀行に関する法律改正についても問題になると思うのですが、証券業法の例の六十五條におきまして、大体証券市場を育成する目的が、重要会社の長期の設備資金については成るべく直接投資をやらせなければならん、そういう意味で株式投資というもの、或いは社債というものを育成して行くという点にあつたと思うのです。それでまあ商業銀行は短期資金、運転資金そういうものを主として調達するような方向に持つて行くということになつておると思うのです。その六十五條の証券業法の精神はアメリカの前のパニツク以後においてアメリカの銀行法の改正から関連してああいうことが起つて来たと思うのですが、どうも只今お話を承わりまして結局今度の銀行法の改正におきましても、銀行の金融支配を避けしめるというようなことも一応その精神になつているといわれておりますが、最近の実際は逆に銀行の産業支配を強めているような方向に来ていると思うのです。実際には証券会社でも増資を沢山引受けて増資株が売れないものですから銀行から金を借りて、そして最近は証券業者はやはり大銀行の隷属を受けなければならないというようなことになつて、最近は又証券業界が不振ですから結局銀行の貸出というものは大きいわけですね。貸出という形において非常に資金が出ておると思う。本来短期資金を扱うべき銀行において非常に長期資金を賄う、こういう変態的な形になつていると思うのです。その大きな線としては長期産業資金、設備資金は大体この証券市場において賄うようにする、それから短期運転資金は普遍銀行において賄うことにする。こういう方向にあると思うのですが、政府の最近の政策はそういう方向を育成して行くのか、或いはそれと又逆の方向に行くのか。最近ではどうも逆の方向に行つているように思えるのですが、その点はどうなんですか。今後の金融政策の基調ですね、その点どういうふうにお考えになつておりますか。
  157. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 産業会社につきましてやはりその必要とする長期資金は、株式の発行その他自己資本の調達或いは社債の発行等によりまして調達して参りまして、銀行はこれは商業銀行主義に基きまして、短期の商業運転資金を供給する、この大きな建前は最近の目標とするところでございまして又今日でも少しも変つておらないと思います。ただ昨年末銀行の債券発行を認めることにいたしましたが、この点につきまして産業会社に対しまして長期資金を供給するこということもございますが、決してこれは銀行が産業会社に対してまあ金融的な支配をするということではないと思うのでございます。資本市場、起債市場の不振ということは結局民間における資金の不足ということに結着するのかと思うのでございます。大きな方向は決して変つておらんということでございます。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 銀行が今度は増資をしたり或いは債券を発行してそしてまあその債券を見返資金等に引受けてもらつてそれを融資する、これはちつとも銀行支配の精神に反しないと言いますけれどもそれはどういうわけなんですか。ただ反しないということはどういうわけで反しないかということですが、見返資金が銀行に行つて銀行が長期資金を貸すわけです。六十五條の精神で長期資金証券市場で賄えということは、株式発行をすれば大衆が買うとかそういう形において調達しろとこういう意味だろうと思うのですが、併し銀行支配の形にならないというのはどういうわけですか。あれはやはり直接投資ではなく間接投資になると思うのです銀行が中へ入つて。それは六十五條の考え方と違つて来ると思うのですが。
  159. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 金融債の発行によりますいわゆる間接投資の方法は、現在において過渡的な方法として必要とせられておるところである、この産業会社の自己資本の調達ということが非常にむずかしいから、さればといつてこれに資金を供給しないわけに参りませんから、これも合せて用いるということであると思います。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは原則としてはその今の金融債発行はまあ応急的な過渡的な措置であつて政府の長期資金証券市場で成るべく直接投資で賄え、そういう方針は変らない、それで銀行に債券を発行させるということは、これは臨時的な措置である、こういうふうにお考えですか。
  161. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 私は必ずしも臨時的な措置とは考えないのです。自力で資本を調達できるものにはおのずから限界なり段階があると思うんです。資本市場の活動が活発になつて参りましてもやはり資本の自己調達ができないような中小の企業もあると思うのです。これらにつきましては銀行の金融債発行によります間接投資ということが今後も必要であろう、又適切ではないかと考えておる次第であります。
  162. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この際銀行局長に承わつて置きたいと思いますのは、銀行というものは一体世人から信用の深いものだと我々は思つておるのです、その一番のバロメーターは、何といつても銀行の株式がどの程度で取引されておるかということによつて見当がつくのですが、而も現在の銀行株というものは額面を皆割つておるのです。五十円のものは大体四十円見当で如何に相場が外の株が上つても一向上らないという状態になつておる。これは一体どういうところに原因があるか。而もその銀行の株なるものが一昨年或いは去年にかけて大分増資をしておる。その増資をしたときも大衆の力によつて増資をするといつたような方向で以て行つたわけなんです。その株を引受けたとたんに五十円拂込んで四十円の時価の値打しかないということは、これは現在まで取つた政府の銀行に対する政策の誤りであるか、或いは銀行の配当というものが実際的においてはあまり芳しくないためなのかこういう点についての局長の御見解を聽かして頂きたいと思います。
  163. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 銀行は最近まで配当が認められておりませんでしたが、二十四年度の下期に初めてこれを認めたのであります。併し他の事業会社と比べまして大体八分が標準的な率になつておると思いますが、他の事業会社に比べて非常に低位であります。そんなようなことと又銀行の株式につきましては将来の景気変動に対する妙味というものは事業会社に比べまして非常に少い。それから銀行株を持つというような人は大体これを資産株として持つのであつて、売買の数が極めて少いというようなことで、銀行株の株価というものはあまり動かないのであります。それからまあ最近ここ一両年の間に銀行が急激に増資をいたしまして、今申しましたような妙味の比較的乏しい銀行株について増資を行なつたのでありますから、そこで不自然な若干の株もたれというものもあるように思うのであります。これが株価の上昇なこともあるかと思います。これらを総合いたしまして結局銀行の株価は甚だ振わない、決してこれは銀行の内容を反映しておるものとは考えておりません。
  164. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 とにかく増資をした途端にもう五十円拂込んだものが四十円の評価しかされなしというような銀行株に対する状況というものは、これは何とか政府辺りでも方策を講じてせめて五十円拂込のものは五十円を維持できるぐらいのことを考えてやるのが至当ではなかろうかと思う。局長としてはそういう点については将来どういうふうにして行くべきかというお考えはないのですか。
  165. 舟山正吉

    政府委員(舟山正吉君) 銀行の株価がもつと上りまして増資も容易になるということは望ましい状態でありますけれども、株価について特に工作をするというようなことは今のところ考えておりません。
  166. 小串清一

    委員長小串清一君) 今日は局長の話も、大体、これはまだ相当調査しなければならんと思いますからこの程度で終りたいと思います。如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 小串清一

    委員長小串清一君) それにつきまして愛知委員から御発言がありました、この相当調査期間を設けて長期に亘つて調査するということはすでに皆様も御賛成のようでありますが、それはつまり先般長期調査をするために金融の調査とそれから財政、租税等の調査と両方の問題ができたわけですが、これらの小委員を如何に決めようかというようなことは今日はちよつと人数が少いからどうかと思いますから明日午後一時に本会議がありますから十一時に委員会を開いて残つた小さなあれを決めまして、同時に今の御意見の小委員の方も決めるようにいたしたいと思います。  もう一つ大きな問題があるのですが、大きいかどうか分らんがこの調査をやる半面、議員派遣というようなお考えが皆さんにありますとすると、これも明日そのときに決めて議運の方の了解を得て明後日までに決定して貰わんとできないのでありますが、これもお考え置きを願つて明日調査委員をこの休み中に派遣しようということと、今の小委員を、そうしてこれも金融調査の面と、それからもう一つ別々の小委員を作るか、或いは一つでやるか、そこらのことを明日もう少しお集りになつたときにはつきり相談いたしたいと思います。御異議ありませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 小串清一

    委員長小串清一君) さよう取計らいます。本日はこれを以て閉会いたします。    午後五時十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            佐多 忠隆君            山崎  恒君            木内 四郎君    委員            愛知 揆一君            九鬼紋十郎君            黒田 英雄君            清澤 俊英君            野溝  勝君            松永 義雄君            森下 政一君            小林 政夫君            杉山 昌作君            高橋龍太郎君            油井賢太郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省主税局税    関部長     石田  正君    大蔵省管財局長 吉田 晴二君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    証券取引委員会    事務局長    湯地謹爾郎君    証券取引委員会    事務局次長   三井 武夫君   説明員    大蔵省管財局総    務課長     宮川新一郎君    大蔵省国税庁徴    收課長     田所 正幸君