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説明員(
中川淳君) 私
国家地方警察の
警務部長でございます。
拳銃に関する
事務を所管いたしております。
辻公安委員長に代りまして御
説明申上げます。
只今松永委員より
警察官の
拳銃携帶に関連いたしまして、大変御
心配の御
質問がございました。私もこの点につきましては非常に憂慮をいたしております。
事故のないことを常々念願しておるのでございますが、
只今ここにお挙げになりましたような
事故が遺憾ながらときどき発生いたします。誠に私共の
指導監督の力の及ばないのを痛感いたす次第でございまするが、私共といたしまして
警察官の
拳銃の
携帶並びに使用につきまして
日常どのような
措置をと
つておりますか、一応お聽き取り頂きたいと思います。
御承知頂いておりますように
終戰直後から
警察官は
拳銃を常時
携帶いたすこととな
つたのでありまするが、昨年の夏に至りますまでは大体
警察官並びに
自治体警察吏員と平均いたしまして四人に一挺の
割合で
携帶をいたしておりました。ところが昨年夏以来総
司令部の方で
日本の在来の
拳銃を修繕のために回收されまして、それに代りまして
米軍の
武器としての
拳銃を貸與せられることになりました。その数もこちらから出したのに加えまして貸與せられることになりまして、現在その数を申上げる自由は持たないのでありまするが、大体
皆様方が街頭でお見受けの
通り国家地方警察に関しましてはこう申せばお分りと思いまするが、大体
從前の四倍という銃を持
つております。それでお言葉にありましたように
拳銃は非常に
危險な
武器でございますので、これの
使用には、
携帶をさせるに当りましては非常にやかましい
訓練をいたしておるのであります。
警察では
教養を非常にやかましくしておりまして
警察官になりますについても先ず六ケ月間の
初任教養をいたしますが、この期間におきまして
拳銃に関しまして四十一時間の
訓練をいたします。それから
警察官は、その最も多数を占めておりますところの
巡査、
巡査部長は毎年三ケ月ずつ
管区警察学校に入りまして
検察庁の再
教養を受けるのでありますが、この場合におきましても
一般警察官は二十一時間の
拳銃の
指導等を行う。
指導監督の
責任にありますものにつきまして五十六時間という時間を
拳銃の
携帶、
手入れ、
操作、そうしたものにつきまして
指導、
訓練をいたしておるのであります。
警察官に
拳銃を初めて交付いたします場合には、先ず
拳銃の
安全規則というのがございまして、五
ヶ條の
安全規則がある。それを
十分拳に服膺させまして、その他
使用すべき場合、或いは
取扱方法等を丸一日かけて
指導いたします。その後三日間
府県庁の所在地に集めまして必ず三日間二十四時間の
訓練をいたします。この場合には実彈を十五発発射いたします。この場合にも單に
操作術の
指導だけに止まらない、
使用すべき場合のこと、或いは
安全規則等を
嚴重に
指導いたしておるのであります。その他に全国的な
指導者の
講習会を総
司令部の係官の
指導の下に毎年実施いたしておりまして、私共といたしましては
警察の
指導、
教養の面におきまして、
拳銃の取
扱い、或いは
操作、
使用、そういうものにつきましては
教養の面におきまして最も大きな
部分を占めておるのであります。然るに現在率直に申しまして、
拳銃に関しましては大小さまざまな
事故が頻発いたしておるのであります。これにつきましては、まあどうも
日本人が
拳銃の
操作につきまして誠に不熟錬である、下手である、感覚が鈍いということを世界的に言われております。
アメリカの
指導者達からも非常に
日本人は
扱いが下手であるというようなことを毎度言われておるのでありまするが、一例を挙げますと、上海の
工部局の
支那人の
警察官と
日本人の
警察官、
日本人の
警察官は絶対数におきまして非常に少いのでありますが、
事故の発生におきましては
支那人よりも遥かに多いというような
状況で昔もあつたそうであります。そういうようなことで誠に
拳銃の
扱いにつきましては
日本人は不得手でありまして、
事故が多い。それだけに私共特に
拳銃につきましてはやかましくいたしまして、本年は四月五月におきましても全国的に
拳銃の
取扱使用規程その他技術がどんなに
なつておりますか、全国一斉の監察を、総
司令部と一緒になりまして実施いたしたのであります。問題を出しまして
安全規則等を全
警察官がどのくらい熟知しておるか等の
実地試験等もいたしたのであります。
相当徹底をして参
つておるのであります。然らば具体的に最近におきまして
事故がどんなようなふうにあるか、御参考にお聞かせいたしたいのであります。私共は
拳銃の
使用を
職務上の
使用、その他の
使用、それから
盲発、
暴発とも申しますが、それの場合、こういうふうに分けておりますが、
拳銃の
使用につきましては一昨年の七月
警察官等職務執行法、あれによりまして初めて具体的な
根拠法規を與えられました。その
警察官等職務執行法の施行以来本年六月までのこれらの
統計を
ちよつと申上げますと、
職務上の
使用の
件数、即ち
職務上の
使用といいますれば
只今申述べました
警察官等職務執行法第
七條によりまして少くとも
警察官といたしましてはそれによつたものとして
使用いたしました
件数が、二年間に四百四十八件、それによる
死亡者が十四人、
負傷者が三十九人、これは必ずしも少い
数字ではないのでありまするが、ここで申上げたいのは私共が見ておりまして一昨年までは非常に
警察官の
拳銃の
使用の場合が多いのであります。非常に憂慮いたしまして
警察官等職務執行法第
七條の許容しておる
範囲ではありまするが、私共といたしましてはもつとこれを嚴格に制限をいたしまして自粛いたしたいと存じまして、昨年の七月に
警察官拳銃使用取扱規程、これを
改正いたしまして、一番大きな点はいわゆる
威嚇射撃を禁じたのであります。これは
威嚇射撃は
警察官等職務執行法によりまして認められておる
拳銃の
使用法でありますが、ところが
威嚇射撃が誠に遺憾でありますが、よく人に当る。そうして而も
威嚇でありまするからしてこの場合そう射たなければならんといつたような場合でないにも拘わらず空を向けて射つ、まあおどかすのであります。それでその銃声で怯みまして
被疑者が逃げるのを止めればいいのでありまするが、どうも追掛けながら
拳銃を
威嚇射撃をいたしますると、これはよく当
つてしまう。それで
警察官等職務執行法第
七條によ
つて許されておる
範囲ではありまするが、我々といたしましてはこんな
被疑者を殺さないでも、或いは怪我させないでも、逃がし
ちやつてもよかつたじやないかというような
被疑者までやはり殺してしまうというようなりことが多か
つたので、昨年の夏から
国警におきましては
威嚇射撃を禁じて
しまつたのであります。そのためにそれ以来
警察官の
職務上の
使用件数が
激減をいたしました。それまでは大体月に平均で四十件でありましたが、念のために申上げますが、これは全部
国警だけの
統計であります。その後昨年の夏以来月十件ぐらいに
激減をいたしました。而も先程申述べましたように昨年の夏以来
国警の
拳銃の
所有数は
從来の四倍に
なつておりますにも拘わらず、
使用の
事例は
從来の四分の一に
なつた。
從つて一人当りから言いますと十六分の一に
減つたと申し得ると思う。その結果は
警察官といたしましては、この犯人は場合によ
つて撃殺して
しまつても、
警察官等職務執行法第
七條後段に、
危害を與えてもいい場合がありますが、その
危害を與えてもいい、撃殺して
しまつても
法律上は正当である。その場合にしか絶対に発射してはいけないということにいたしたのであります。併しその後も尚もつとこれを徹底いたしたいと存じまして、今年の四月には更にこの
範囲を縮小いたしまして、そうして
警察官が先ず
拳銃をこのケースから抜き得る場合、それを先ず
規定いたしまして、そうして撃ち得る場合を更に又これから限局するということにいたして、
規定の上からは
警察官は滅多の場合これを扱き出すことはできない。而も撃ちますのはこのまま即死さして
しまつても
法律上正しいという場合に殆んど限られておるので、最近におきます
職務上の
使用につきましては非常に少いのです。よく
第一線警察官に理解して貰いまして適正であると存じております。
警察官等職務執行法が
国会において
審議されました際、
議員各位より御希望のありましたこの御
趣旨によく合致するように
職務上は
使用いたしておるものと私は存じておるのであります。問題はこの
職務上の
使用の外に
警察官が誤
つて、或いは又その他の
民衆が
好奇心等によりまして
拳銃をいぢくりまして、そのために発生する
事故が非常に多いということに存ずるのであります。その他の
使用というのは、
警察官或いはその他の者が
拳銃を
使用する、撃つ目的の下に撃ちました場合を挙げておるのでありますが、これは一昨年の夏以来十一件、この十一件は誠に遺憾な話でありまするが、全部自殺であります。中には心中というような醜いのもございまして、これによりまして十人が死亡いたし、一人が負傷いたしております。
第三の
盲発でございます。これは
拳銃を
警察官若しくは
一般の人達が
拳銃を撃つつもりでなく、彈が飛び出して
しまつたことを言うのであります。これが百六十六件、それによります
死亡者が四人、
負傷者が二十人、こういう
状況であるのでございます。又
盲発は
終戰後非常に多か
つたのでありまするが、昨年
所有数が四倍になりましてやはりそれに伴いまして四倍という比例には
なつておりません。非常に
嚴重に
指導されておりますので、四倍には
なつておりませんが、やはり
携帶の数が増加いたしましたりすることに伴いまして
盲発が殖えておる。この
盲発につきまして先程申上げましたように
日本人はどうも機械の
扱いが不得手であるということを痛感させられるのであります。彈を入れたまま
手入れをいたしまして、そうして手が誤
つて引金にかかりまして彈が飛んで
しまつたという場合が最も多い。幸いこれによるところの死傷というものが極く僅かでありますが、最近多いのは
警察官が
拳錠を壁に掛けておりますと、その家族なり、或いは
地方の人が物珍しくそれを手にいたしまして、そうして誤
つて彈を発射して
しまつたという場合が最近非常に多いのであります。毎月二三件ずつこうした
報告に接しているのであります。私共といたしまして今日最も憂慮いたしておりますのは、先程
松永委員が仰せになりました
通り、
警察官の
拳銃の
携帶と飮酒の
関係でございます。それで率直に申しまして、
警察官が常時
拳銃を
携帶するということは必ずしも望ましくもないように存ずるのでありまするが、併しながらこれは現在
警察官は全員常時
拳銃を
携帶せよということに
なつております。それで私共も常時
携帶いたしているのでありまするが、從いまして
日常は、勤務にあります
間等は全然
心配ないのでありますが、やはり
社会生活におきまして、宴席などに出なければならない場合がある。特に
地方の
駐在巡査等においてはどうしても外し難い場合がある。その場合に
深酒を飮んでしまいまして飛んでもない間違いをいたす場合がございます。
只今新聞につきまして
お話になりました件につきましては、実はまだ私
報告を受取
つておりませんが、遺憾ながら他府県にも同様な件がございまして、中には何ともお詫びのしようのないような失敗もございます。その点につきましては酔つ
ぱらつた警察官が
拳銃を弄ぶくらい
危險なことはございません。十分予見されておりますから、かねがね
拳銃を
携帶して
職務に差支えるような
深酒を飮んではならないということは特に
嚴重に
指導いたしているのであります。尚そういう
事例が絶えませんことは実に遺憾であります。勿論かかる場合には直ちに
懲戒免官になりますので、各
警察官等も十分心得ているのでありますが、これにつきましては今後も一層
嚴重にやかましく申しまして、昨日も実は
埼玉の件なども
新聞でも見ましたのですが、皆で諮りまして今後は本人だけでなく、
監督者等の
責任の糾彈等も一層
嚴重にすべきである。何としてもかかる
事故の絶無を期さなければならん。かように存じまして、一層きつい
措置をとりたい、かように存じております。