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1950-11-08 第8回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月八日(水曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○協同組合による金融事業に関する法  律の一部を改正する法律案衆議院  提出) ○租税行政に関する調査の件  (最近の徴税状況並びに徴税方針に  関する件) ○金融政策並びに制度に関する調査の  件  (貿易金融並びに金融一般に関する  件)   —————————————
  2. 小串清一

    委員長小串清一君) これより大蔵委員会を開会いたします。  本日は議題として、かねて継続審査になつております協同組合による金融事業に関する法律の一部を改正する法律案、これは衆議院提出でこちらに可決送付になつた案であります。皆さん承知のことと思いますので、今日は船山銀行局長その他特殊金融課長が見えておりますので、大体政府におけるこの案に対する御意見説明をして頂き、それから皆さんの御意見を伺おうと考えております。  それでは大蔵省側から一つこの法案改正に対する御意見を御説明を願いましようか。
  3. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 衆議院議員提案になりました信用協同組合による金融事業に関する法律の一部を改正する法律案が参議院に廻付になつておるのでございますが、これは法文で明瞭でございます通り、若しこの金融事業を営む信用協同組合、これを簡單に申しまして、信用協同組合免許申請がありました場合には、その申請が、「定款事業方法又は事業計画が法令の規定に違反し又は政令の定める基準に適合しない」ときを除いては、大蔵大臣免許しなければならないという規定でございまして、従来は監督官庁の裁量によりまして、免許するかしないか、自由に任されておつたのでございます。この改正案によりますると、大体申請書が一定の規格に合つておりまするならば、これを大蔵大臣は是非とも認可しなければならないということになるのでございます。これは衆議院におきましてもいろいろの論議があつたのでございますが、特に当初提案になりましたものとは若干の修正がございまして、只今読み上げました中に、「又は政令の定める基準に適合しない」ときを除いて、免許するということになつたのでございます。そこでその政令の定める基準と申しますものを、事務当局において用意いたしまして、これを衆議院にお目にかけておるわけであります。それによりますれば、これもお手許に届いておると存じますが、従来当局におきまして免許をするかしないかを決定いたします事務的な、内部的な基準というものをここに成文化いたしまして、且つこれを政令において定めようという構想でございます。  それではこれを読みながら若干の御説明を申上げたいと思いますが、まだ政令の形にはなつておりませんけれども、その内容となるべきものを列挙した次第でございます。  事業免許申請書提出された場合において、特に左に掲げる事項を考慮して、組合事業が健全で公共の便益を増進するものであると認めたときは、事業免許するもとする。その第一は、信用需要に応ずるため必要であること。この意味いたしますところは、その地方において信用協同組合に対する資金の借入れ希望相当額に上つておるということでございます。第二は、その地方における金融実情に適合すること。これは主として言外に含んでおります意味は、その地方に同種の信用組合或いはその他の金融機関がございまして、その地方に更に信用協同組合設立いたしますことは必ずしも必要でない。或いは弊害があると認められる場合は、これを免許しないという趣旨を間接に謳つたものでございます。次に、組合員数が、設立当初三百人以上であること。これは簡單でございますから御説明の要はないかと存じます。次に四は、出資金が、預金者の保護に充分であることを要し、設立当初においては出資金が少くとも、大都市におきましては五百万円、市制施行地大都市以外の市制施行地におきましては三百万円、その他の地域におきましては三百万円を超えるものであること。銀行等におきましても、最低資本金の定めがございますが、この精神を織込みまして信用協同組合につきましても、自己資本最低限度規定しようとするものでございます。次に、預金額が、一ケ年後において少くとも、大都市においては五千万円、大都市以外の市制施行地においては二千五百万円、その他の地域においては一千万円となり得る確実な見透しを有すること。なお、預金総額のうち定期性預金の占める割合は五〇%以上であること。これは組合設立せられましても健全に存続し発展して行く見通しがない、赤字決算を続けるようなことがありましては忽ちに経営が行詰りますので、こういうような見通しを持つておるものに限つて認めたいという趣旨でございます。次は六、事業計画において貸出金に運用する金額は、定期性預金の八〇%に相当する金額と、要求払預金の六〇%に相当する金額との合計額を超えないこと。ということによりまして、組合堅実経営ということを期待したいのでございます。それから七、経営收支の均衡が保たれる見透しがあること。これは店舗配置その他につきまして、経営支出というものが過大でございますると、やはり同じく組合経営が行詰りますので、これをこの点について十分の見通しをつけしめる要があると考えたのりでございます。次に八は、役職員金融業務に関し充分な経験及び識見を有すること。金融業務経営につきましては、この信用協同組合におきましては、ともすれば純然たる素人が関与いたしまして、この経営上の失敗をもたらす憂いが多いのでございます。とにかく役職員金融業務に関する專門家でなければならないという趣旨謳つたのでございます。それから九は、他の信用組合との競合により、不当な競争を惹起する虞れのないこと。ということを特に謳いまして、人口十万未満の都市においては、二組合以上を認めない。先に申しました他の金融機関との競合関係のうち、なかんずく他の信用組合との競合関係を十分に検討したいという趣旨でございます。一〇、組合が政治的に中立であつて、特定の政党のために利用される虞れのないこと。これにつきましては、御説明申上げるまでもないかと存じます。それから一一、設立の手続が適法に履践され、また定款事業の種類及び方法書内容が適当であること。これも申すまでもないかと存じます。  このうち四にございますような点、或いは五にございますような点は、これまでの自由に免許を決定するときにおきましても、実は当局において内規としてこういうような方針はとつてつたものを、ここに明らかに成文化しようとするものでございます。  こういうような修正案が出たのでございますが、事務当局におきましては、信用協同組合を初めあらゆる金融機関設立につきましては、この資本充実、或いは将来健全に発展して行く見込みというようなことは十分各種資料審査しなければならないということで、免許が成る基準によつて機械的に当然きまつて行くということを、事務当局といたしましては必ずしも好まないところでございます。免許制度があります以上は、免許いたしました後において、その組合経営についてはやはり監督官庁責任を負わなければならないのでございます。そうでないにいたしましても、大蔵省免許、或いは大蔵省公認というような肩書を使いまして、そうして世間の大衆を惑わすという事例もあるわけでございます。そこでこの免許につきましては、十分当局責任を負えるものに限つて免許をいたしたいという考えであつたのでございますが、まあ衆議院でこういうような修正案が出まして、それにつきましては、従来の内規としておりました基準、これを政令化するということで、従来の自由免許規則免許にするという程度のことは、或いは止むを得ないことかと考えておるような次第でございますが、これにつきましても、この免許基準を辛くいたしますればこれに該当する組合は少くなるであろう、これを甘くすればこれ又弊害が起るというところが相当問題を孕んでおるのではないかと考えておるのでございます。これに関連いたしまして、こういうような改正案提出されました原因といたしましては、去年の法律改正後、信用協同組合新規免許が少いではないか、これは監督官庁が徒らにむずかしい基準内規としてこしらえまして、そうして実際の審査に当つてこれを適用するために、この組合新設が少いのであるといつたような考え方から出ておるかと思うのであります。御参考までに信用協同組合設立状況を申上げますれば、最近までの実績は、従来の市街地信用組合から組織変更になりましたものが四百二十三組合、従来の産業組合から組織変更になりましたものが百三十三組合商工組合から改組になりましたものが十六組合総計五百七十二組合、これは組織変更によるものでありますが、その外に法律施行後新たに設立免許いたしたものといたしましては、免許済みのものが五十九組合、これは内免許済みのものが二十五組合、この総計が内免許を含めまして六百三十一組合でございます。全国に亘りましてこの程度の数の組合がありますれば、私共の計算といたしましては、もう十分信用協同組合は普及しているものである、又信用協同組合業務区域相当広汎なものもございますので、これを十分に活動せしめますならば、金融相当の効果があるかと考えておるような次第でございます。  以上で大体の御説明をいたした次第でございます。
  4. 森下政一

    森下政一君 銀行局長は今預金が一ケ年に少くともどれだけなければならんというときに、市制施行地二千五百万円、それからその他の地域一千万円と言われたけれどもそうなんですか。
  5. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) そうなんです。
  6. 森下政一

    森下政一君 私共の手許に頂いておるのは、三千万円と二千万円のものになつておりますが、これは間違つておるんですか。
  7. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) これは先に差上げましたものよりも基準を下げてございます。
  8. 森下政一

    森下政一君 これは資料が古いわけですね。この下に書いてあるのは、免許済みのものは……、全然違うのですか。
  9. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 只今指摘の点は、当初そういう原案でございましたが、お話合いの結果若干基準を下げたのであります。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと伺いますが、只今の御説明を伺いますと、この法案趣旨がよくわからないのですが、……趣旨はわかつておるんですが、今の局長お話とこの法案提出趣旨とがどうも食違つておるように思うのですが、今までのお話ですと、大体内免許を含め六百三十一ある。大体この程度ならよいのですが、これ以上殖やす必要もないというような御意見つたと思うのです。この法律案議員提出法律案ですが、これは成るべく免許を容易にして貰いたい、こういう趣旨法律案だと思うのです。そこでお伺いしたいのは、この内免許基準をこういうふうに作りますと、これまでより甘くなるか、辛くなるか。で、大蔵省のほうの今の局長のお考えでは、余りこれ以上殖やしたくないというように御説明が受取れるのです。そこでこの基準相当辛いのじやないか、辛くしてあるんじやないか、どうも我々が拝見しましても決して甘くないと思う。その点はどういうふうにお考えなんですか。
  11. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 信用協同組合の現在あります数を以て、私は相当組合金融の円滑を期しておられると思うのでございますが、それ以上に規則免許になりまして、自働的に免許しなければならないということになりますと、内容的に見て、成るほど基準は合つてるかも知れませんけれども、内容を精密に検査して免許したものに比べて、やはり若干免許の数が殖えまして、取扱が甘くなりはしないかというふうに考えております。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近銀行新設免許があるようですが、それはどの程度に最近新設免許されておるのですか。
  13. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行新設につきましては、正式免許をいたしたものが一行、内免許いたしましたものが二行であります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどことどこですか、ちよつと…。
  15. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 正式免許をいたしましたのは岩手県盛岡の東北銀行、それから内免許をいたしましたものが、大阪府下におきまして大阪不動銀行と泉州銀行であります。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでは、局長も御承知のように、大蔵省では銀行新設に対して殆んど免許を与えて来なかつた、むしろ銀行の数をだんだん減らして来たわけです。今度ここで新しく銀行新設を認めるということは、非常な大きな方針転換だと思うのです。それについて信用協同組合の問題も変つて来ると思うのです。こういう金融機関を殖やして行くという方向に向いているわけです。銀行のほうはこういうだんだん殖やす傾向にある。ところが今のお話ですと、信用協同組合のほうは余り殖やしたくないお考のようです。その点はどういう、銀行を、そういう金融機関を今まで制限していたのを緩和して殖やして行くという根本方針で、どういうふうにお考えになつておりますか。
  17. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行につきましては、資本充実とか或いは経営事業充実とか、或いはその銀行が発展し存続して行くための基盤を持つておるかどうか、こういうことを十分審査をいたしまして、事務当局においてその確信が得られました場合においては免許をして行く。従つて新設も認めて行くという方針転換しておるわけであります。信用協同組合につきましても、決して現在の組合数を以て十分であるとは考えません。やはり免許申請をして参りまして、それが銀行と同じように健全に発達して機能を充たして行くというような確信が得られますものについては免許をするわけでありまして、現に法律施行後も新たに免許をしておるわけであります。それを機械的な規則免許ということになることについては、事務当局といたしましては必ずしも同感を表し難い。と申しますのは、やはり免許をいたしました後の、免許いたしました監督官庁責任というものを考えますと、良心的に考えましてその点がちよつと問題があるということを申上げて置きます。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもそういう御鮮明ではよく了解できないのすが、健実なものは……、そういう御説明だけなのですが、これまでいわゆるだんだん銀行数を減らして一県一行主義をとつて来ておるわけですね。それがここで初めて変るわけなのです。これは日本の金融上大きな転換になると思う。そういう意味で、ただ銀行を三つ許すという、そういう問題でなく、今後銀行の数について金融機構制度、そういうものについてどういうようにお考えか。どの程度銀行を殖やしていいのか。今まで銀行が足りないのか、或いはもつと殖やすべきであるか。これまで一県一行主義つたものを逆戻りして前のようにだんだん自由に金融機関を殖やして行くのか、その根本考え方は非常に変つて来ているはずだと思うのですね、これは初めてなんですから、そうなんですね、今回初めてなんですね、新らしく……。そこで恐らく大蔵省でも検討されたと思うのですね、これまでだんだん減らして来ているのを、今度は逆に殖やして行くんですから、ここで非常に根本的な転換が行われて来ているんだと思うのですね。その背景ですね、どういう根拠でそういう金融機関の数を殖やすふうなお考えなつたか、この点をお伺いしたいのです。
  19. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行につきましては、いわゆる一県一行主義でありますと、独占弊害も出て参りまして、サービスにおいても劣るところがありはしないか、又制度上から申しまして、免許するという建前になつておりますから、いやしくも銀行設立希望のある者は、これは申請をいたしまして、ただ免許制度でございますから、これは監督官庁におきまして、その設備というものを判断する。然る後に適当と思われるものは免許をして行く、初めから新設は全然クローズしてしまうという考え方はいけないということでございます。それでありますから、全国的にそれでは銀行をどのくらいの数までに持つて行くか、或いは一県について何行くらいまではこれを認めるかというような基準はないわけでございます。ただ新設免許いたします際には、十分その後存続し且つ弊害がないと認められるものに限つて免許して行くという立場をとつているわけでございます。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと根本考え方は、銀行独占を排除して行く、そうお考えですか。それと、それから今後どの程度に殖やして行く考えか。
  21. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) この銀行新設を認めることになりました趣旨は、御指摘通り独占を排除する。尚既存金融機関で十分の機能を発揮しておらない部面につきましては、それを埋めるような銀行新設はこれを認めて行くということであります。それでありますから、或いは地域的に、既存銀行だけでは機能が不十分であると認めたところにつきましては、その地域について銀行新設を認めるでありましようし、又すでに既存銀行がありました場合でも、それだけでは機能を果すに十分でないということであれば、その地域に又銀行新設することになるだろうと思います。初めから数を限定して、それだけは認めるとかいうような考え方はとつておらないわけでございます。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この内免許を与えた以外に、まだ申請しているのがあるのですか。
  23. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 信用協同組合のお尋ね……。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 銀行のほうです。
  25. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行新設申請は、この外に数件、或いは書面を以て、或いは口頭で当局内意を伺うという程度のものがございます。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 北海道一つあるそうでございますが……。
  27. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 北海道について、現在地元銀行一行しかございませんが、その外に一つこしらえるという動きがございます。発起人において当局内意を伺うという程度になつております。
  28. 小串清一

    委員長小串清一君) 外に御質問ありませんか。
  29. 木内四郎

    木内四郎君 私誤解してはいかんと思うから、ちよつと伺つて置くが、銀行局長は、さつき信用組合産業組合或いは商工組合等から転換したものはこれだけある、これは新規免許したものもこれだけある、内免許したものもこれだけあるというお話ですが、それは、それだからもう十分だという御趣旨でなくて、適当なものはもうすでにこれだけ認めているのだという御趣意なんですな。
  30. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 大体御指摘通り法律施行後もすでに或る程度新規免許を与えております。決して従来の方針によりましても新設は認めないという趣旨ではない。必要な箇所には信用協同組合新設も十分のチャンスを持つておるものだということを申上げたのであります。
  31. 木内四郎

    木内四郎君 大体わかりましたが、要するにこれだけのものを、すでに法律施行後も認めているし、今後においても適当なものは認めて行く、それだから機械的にすべて免許するという制度にしなくてもいい、こういう御趣旨ですね。
  32. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) さようでございます。逆に機械的に免許をして行くことになりますると、組合競合その他によりまして弊害のほうが大きく現われることを恐れているのでございます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今一般銀行定期預金のうち、定期性預金というのはどのくらいですか。
  34. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行におきましては、大体三〇%程度になつております。組合のほうではもう少し高く大体五〇%になつてつたかと思います。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは今実際にそうなつているのですか、組合のほうでは。
  36. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 全国平均であります。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体どうなんです。これで今まで大体余り変りないということになるのですか。この程度基準を与えればですね、そう甘くするということもないし……。
  38. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 従来と余り変ることはないかと思います。併し当局の意図せざる地域に、或いは不必要と思われる地域組合ができるというようなことはあり得るかと存じます。
  39. 森下政一

    森下政一君 銀行局長さつき木内さんの御質問にお答えになつて、今後においても適当な信用組合新設ということは考えられる状況に置けるし、その他只今構想でお示しになつておる第一、第二の点なんかに抵触しない。大体信用実情に適合しているか、或いは必要であると思われるというようなものは免許されるのだけれども、六百三十一というものは現在すでに免許せられておる、大体現段階においてはこれ以上のものは必要としないというお考えがあるのではないのですか。
  40. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 只今申上げました総数以上に免許を必要でないとは考えておりません。現に少しずつでありますが申請が出まして、これは免許いたしております。
  41. 森下政一

    森下政一君 それでよくわかるのですが、新設が必要でないとは考えていないとおつしやるのですけれども、大体政令に盛りました免許基準ですね、その第一、第二の点では、どのようにでも、私は免許せずに置こうと思えば、他の條件はどれほど適格に整備しているものに対しても、その地方信用需要がそんなにないということも言い得ることになるでしようし、或いは又その地方金融実情から考えて新しいものは必要としないということも、理窟を言えば言えぬこともない。だから当局の肚がこれは如何にもできそうに、全然不必要だとは考えていないとおつしやいますけれども、折角こういう基準ができても、只今申しましたような第一、第二の点のような、考え方如何によつては、免許せずに済ますことができる。そうなつて来ると、折角こういつたことができ上つて見たところで、実際にはこの法律の恩恵に浴して免許を得る者が甚だ少いことになるのではないか。何でこんな法律を作る値打があるかというような気持がするのですが、そこはどうですか。現段階においてどう思われるか、もつと信用組合があつていいと思われるか。各地方金融事情信用実情と睨み合せて、今の数は大体ここらで一ぱいに来ておると考えられておるのか、そこの見通しはどうですか。
  42. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) その信用協同組合総数につきまして、これで十分だとは考えておりません。この外にも免許すべきものも相当あるだろうと思います。それでありますから、今後の免許については、これを非常に辛くするという気持は持つておらないのであります。ただつまり重複して或いは弊害を現わしておるといつたような地区につきまして、更に新組合設立申請というようなものが出るかと考えるのであります。そういう際に機械的に免許するという制度をとりますと、そういうようなことも阻止できない。そして漫然と競争弊害というものを目の前に見て行かなければならないといつたような事態が起ることを抑えるわけであります。本当に必要だという心証を得ました所に免許を与えないということは決してないのであります。それからまあこういうような基準をこしらえますと、どうしても十分念を入れたいということになりますので、又組合実情は、個々の具体的事情というものは非常に違いますので、ここに抽象的に基準をこしらえますと、そこに考え方がいろいろ違うということはあり得るかと考えております。
  43. 森下政一

    森下政一君 大体銀行局長の御心配の点は私はよくわかるのです。ただ機械的にやつたんではいかんと、この点はわかるのですが、こういう懸念も一面においてはあるかと思います。例えば第一、第二の点は、理窟つけ方によつてはどうにでも考えられると思いますが、そこで政治的勢力の重圧なんということをあなた方がお感じになつて、よんどころなく、実際は余り必要でないのでありますが、許すというようなことが出て来るんじやないかということまで心配されますが、だからこれは理窟の上においては一応筋の立つた説明ができるけれども、そこのところが甚だあいまいなことになる慮れが却つてあるんじやないかというふうな懸念があるのですね。まあそれは水掛け論になりますからなにしますが…。  それからもう一つ、私はこの間大蔵省行つて飯田課長に具体的なことを信用組合についてお尋ねしたことがありますが、大阪の或る信用組合設立認可申請をしておるものが、産業組合法によつてかねて免許されておるものは非常に事業がよろしくない、そこで殆んど事業停止の状態に行つておるとか、又事業停止を命ぜられておるとかいつたようなことがあると聞いておりましたが、それの整理を引受けさせられて、その整理ができたらお前のほうを認可してやるということで、一意専心整理にかかつて、今日尚数名の人間をそれ專門に雇つて整理にあくせくしているということでありますが、こういうふうな事業免許基準案に照し合わして見ると、余分の仕事をさせられておるということになりはしないか。
  44. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) その具体的な事実については私共存じませんが、そういう余計な仕事をさせられるというようなことは、必ずしも要求をしておらないわけであります。
  45. 森下政一

    森下政一君 それで私が非常に不思議に思つたのは、免許申請をしておりますが、適格だと思う、例えば出資金の点、一年後においての預金見通し、それらの点については何らの事務局あたりでも異論がないことらしいのですが、併し大阪には随分いかがわしい信用組合があるらしいのですが、たまたまそこで或る信用組合が停止の状態で、多数の預金者が迷惑をしておるから、君のほうの組合は大変に能力があると思うから、その整理をやつてくれないか。整理ができたら君のほうをこれに取つてつて認可をすることにしようということらしいのですが、私は先般又財務局に行つて財務局長に会いまして事情を聞いて見ると、全く気の毒な余分の仕事を頼んでおります。これは多くの人に迷惑をかけないで、整理後にその仕事を引継いで貰おうという考えのようですが、これはまあ大阪という地域から考えて見て、いかがわしいものを抹殺して、而も迷惑を蒙むる者を成るべく少くしようという趣旨からはよくわかるのですが、初めから新たなものを作ろうというので新設免許申請をしておるものが、かねてから存立して営業の甚だ振わない、事業が殆んど停止状態にあるものの整理を引受けさせられて、それと交換條件免許してやろうということは、どういうわけでそういう考えが出て来るのかわからなかつたのですが、財務局長に会つて大分趣旨がわかつて来たのですが、こんなものは今後においては余りないことだと考えていいわけですね。この免許基準から考えると、余分な仕事を託しておる。言い換えますと、産業組合法によつて免許した人の不明を尻拭いさせられておる感じになつておるのですが、丁度今銀行局長が言われる通り大蔵省免許というような看板をかけて機械的に認可をしておつたのでは、免許したあとの大蔵省責任が慮られるということは、これは非常に愼重な態度だと思うのですが、併しながら産業組合法によつて免許させられたものにせよ、その業績が面白くないので、その尻拭いをせよ、そうしたらお前のほうを許してやろうということは、これは或るものの失態を新設免許申請しているものが尻拭いをさせられておるということになるかと思いますが、そうではないですか。
  46. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 御指摘のような事実があるかないかは私は存じませんが、まあ金融機関の整理ということにつきまして、或る機関に他の機関の整理を手伝うように話合うことはままあることであります。併しこれは飽くまでも強制ではございません。その悪くなつ金融機関を整理いたしまして、他の金融機関がこれを統合するというようなことになりますれば、又地盤の拡張にもなるし、又競争相手を整理するというようなことにもなるというような場合もございます。これはそういう場合がないとは申せませんが、これは飽くまでも合意の話合いでやつておりますので、これを條件に引かけまして認可するとか、免許しないということをきめることは行き過ぎであると思います。
  47. 森下政一

    森下政一君 それからこれははつきりしたことではないのですが、新銀行法の構想がだんだん進んで参りまして、信用協同組合も大きなものは信用金庫とか、無盡は相互銀行とかいうようなものに移行しておるようですが、その外の信用組合等において、大蔵当局考え方がだんだん変つて来ておるかのごとくに伺うことがあるのですが、その辺の事情一つ説明願います。
  48. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 御指摘になりました点は、実は私共相当重要な点と思つておるのでございまして、それに先立ちまして、現在信用協同組合と申しております組合は、中小企業等協同組合法に基いて設立せられ、そうして信用事業のみを営む組合である。従つて従来と変りました点は、従来は市街地信用組合というような信用事業だけを営む組合があつた。これは組合員外貯金、つまり組合員以外の者からの貯金も預つてつた。これは銀行に準ずるような機関でございますので、特に設立等につきましても厳重な規制があつた。この外に産業組合法に基きます組合がありまして、これは組合員からだけ預金を扱い、員外貯金、それから手形の割引というものは扱わない組合があつた。それから商工組合につきましてもほぼ同様であります。これらを一緒にいたしまして、協同組合理念ということを非常に強く出しまして、組合員の意思に基いて経営をして行くという色彩を強く出しましたものが現在の信用協同組合であります。そういたしますと、この金融機関としては必ずしも適切なものとは言えないということになつて参りましたので、この次の機会には又これを或いは元の形に直す、そうして本当に銀行に準ずる組合であるところの員以外貯金も扱う組合は厳重な免許制度にする、組合員からだけ預金を扱うものにつきましては、この設立は比較的簡單にいたしまして、別な系統で扱つて行くということを考えたらばいいのではないかということに考えておるのでございます。これは大きく申しまして、私共が信用金庫なりその他のことを研究いたしております一つの動機でございます。
  49. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 この際伺つて置きたいのですが、今まで免許された信用協同組合内容がどうも思わしくないというようなことによつて免許を取消した例はどのくらいありますか、おわかりでしたら発表願いたい。
  50. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 一度信用協同組合ができますと、多数の預金者の関係もございますので業務停止をしたり、免許を取消したりすることは非常に大きな社会的シヨツクを与えることになりますので、実に非常に内容が悪くなつて経営不振であるという組合につきましても、そういうような手段をできるだけ避けまして、十分に整理に専念さす、或いは或る程度まで整理が進行いたしますと、只今も話題になりましたように、他の組合へこれを引受けさすというような内面指導によりまして前後措置を講じておる場合が多いのであります。最近この免許取消というところまで参りませんけれども、業務停止というものをはつきり出しましたのは東京に三組合大阪に一組合ございます。
  51. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 業務停止は東京に三組合大阪に一組合あるのですが、それに近いようなところは現在ではどのくらい残つておりますか。
  52. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 実はこの市街地信用組合と申しておりました組合は、大蔵省の専管で、これにつきましては銀行と同じく検査も実施して参りましたから、これは比較的内容は堅実でございますが、この産業組合から引継ぎましたものにつきましては、破綻に瀕しておるという程度ではございませんけれども、内容相当悪く、経営も不振であるというものが全国に亙りまして若干ございます。特に東京、大阪等の大都市には若干あるわけでございます。
  53. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこで今の衆議院のほうから提案されておるこの改正案を見ましたが、尚修正案が更に出ておるのですけれども、若しこの修正案によつてしまうと、結局改正案というようなものが必要なくなるように私らはちよつと見受けられるのですが、局長としてはどんな工合に考えられますか。
  54. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 修正されましたものが改正案としてこちらに廻つて来ておる、こういうことであります。
  55. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 修正されたものですか。
  56. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) されたのです。
  57. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そんならもうこんな原案のままで以て、今まで通りでいいということになつてしまうようにちよつと考えられますね。当局としてはどうでしようか。單なるこれは体面というか、面目を立てたというふうになつてしまいやしないかと思うのですが。
  58. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 衆議院で当初この提案せられました内容は、ここにございます「政令の定める基準に適合しない」ときというのがなかつたわけでございますが、それでは余りに行き過ぎである。ただ申請書が一応の形式を備えておれば全部免許しなくてはならんというのは余りにも行き過ぎである、だからこの政令基準を定めまして、それに合致した場合に限つて免許するというふうに修正されて来たわけでございます。この点に対しまする事務当局の見解は、先ほどから申上げております通りでございまして、この免許基準というものを相当辛くしたい、厳格なものにいたしたいと、そうしなければ、設立後の経営につきまして相当責任を感ずるということになるのでありますが、又一面この基準を非常に辛くいたしますと、こういう法律改正をする趣旨がなくなる、そこに撞着がある。そこで私共研究いたしました結果、お手許にありますような事業免許基準案、こういうものにしたらばまあ一応の満足は得られるかというように考えたのでありますが、そういたしますと、尚先ほども御指摘がありましたように、この一、二の項目のごとく、相当字句も抽象的なものが出て参りまして、やはりそこに見解の相違というものが若干起るのではないかということが心配されるのであります。
  59. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 尚この一、二の点ですが、新しく申請をした組合設立に対して、よく銀行側が余り喜ばないということが耳に入るのですが、そのためにそういうふうな方面からのいわゆる当局に対する圧力が加つて免許がなかなか思うようにならない、こんなようなことも聞くのですけれども、そうなりますというと、こういう基準案を作つても結局は当局考え方次第にもよるし、又各地方におけるところの強い銀行間の意思ということも現れるということになつて矛盾を来すという点も出るのですね。今までにおいてはそういう点はどの程度つたのでしようか。
  60. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 信用協同組合設立について、銀行側で反対するという事例はございません。従つて私共も銀行方面の意向によつて動かされることは絶対ございません。成るほどまあ同業である信用協同組合については、同じ地区に組合新設されるというようなことについて相当関心は持つでございましようけれども、私共はそれに対しても少しも左右されることはなく、これまでの免許というものは行なつてつております。
  61. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 ではこの基準案は、以前からこういう問題を大体基準にされておつたのですか。それとも今度辛くしたものがこれなんですか。
  62. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 従来免許の内々の方針としておりましたものに尚若干の項目を加えたわけでございます。
  63. 森下政一

    森下政一君 先ほど局長に私がお尋ねした件でございますね、御答弁によりますと、今組合というものは、市街地信用組合とか或いは産業組合法等によつて免許されているというものは組織を変更する、そうして一本になつてしまつておるわけですね。それを今度更に何ですか、組合員以外の預金も扱うというものを、普通銀行と同じようなものを作り出すという構想を持つておられるのですか。一本のものを更に分化するというふうな考え方を持つておられるとこう伺つていいのでございますか。
  64. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) そういうような考えを以ちまして目下研究中であります。
  65. 森下政一

    森下政一君 そうすると、大体銀行と同じようなものができることを予想しなければならないわけですね。そうなんじやないですか。
  66. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行とは違いまして、やはり組合金融という本質はこれを存続せしめたい。まあこれを一言にして申しますれば、やはり従来の市街地信用組合の行き方といつたものを骨子とすべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  67. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 具体的の点でもう一つお伺いしたいのでありますが、この基準というものは、今度公表されることになるのですね。若しこの法案というものが通れば……。そうすると今までは大体この辺でいいだろうというふうな大蔵当局考え方で以て免許したのが、先ほどのお話によつて相当責任を感じられて検査でも審査でも厳重にやるということになると、今までよりももつと強いいわゆる制約が加わるというふうにも考えられるのですが、当局としては、当然この基準案によつてそういうふうな方向へ進まれる可能性が多いのですか。
  68. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 事務当局としては、今後の免許も、従来と変える意思はないのでございます。ただ衆議院でこの改正法律案提案せられまして、ここで何とか基準を作らなければならないということになりましたので、従来実際取扱つておりますのを骨子として、これに若干の條文を加えて現わしましたものがこの免許基準でございます。成るほど従来はこの免許の裁量が当局の自由でございましたが、若しこれが法律になりますれば、この免許が羈束せられるわけでありますが、或る場合には従来やつておりましたよりも甘くなるかも知れません、或る場合には却つて辛くなるかも知れませんが、その辺はこの組合設立希望、それから当該地域の実態というものが区々まちまちでございますので、こういうように扱い方が変りましたから必ず免許が殖える減るということは一概に申せないと思います
  69. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこでこの免許に当つての、いわゆる申請者と当局との意見が、どうしても食違いが出て一致しないということによつて免許が非常に遅れるということと、或いはその当局考え方が、場合によつては正鵠を得てなくて申請者が多分の迷惑を蒙るというような場合の、何か裁定と申しますか、それを調整するというような機関の設立ということは考えておられないのですか。
  70. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 現在のところまだそこまで考えておりません。
  71. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そういうことはなくても十分に話合いで目的が達成せられますか。今までそういつたようなトラブルは起きたことはないのですか。
  72. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 従来におきましてもいろいろお話して解決しておるのでございまして、今後も同じくお話合いによることと思います。或いは両方が固執し合いますと、なかなか解決が遷延するということはあり得ると思います。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 免許基準案の十ですが、「組合が政治的に中立であつて、特定の政党のために利用される虞れのないこと」、これは先ほど説明するまでもないとおつしやいましたが、併しこれは具体的にどういうことなんですか。今までそういう弊害があつたのかどうか。
  74. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) これは最近どうこうということは特にないかと思いますが、古い金融機関の歴史を見ますというと、銀行などにおきまして、一党一派の人が経営の衝に当るというようなことで、この内容を悪化せしめるというような事例はしばしばあつたことでございます。もう金融機関免許ということにつきましては、第一にこれを考えているような次第でございます。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういたしますと、金融機関経営者に若し党派に属している人があつたらいけないわけですか。
  76. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) その党派、政党に属しているということがいけないという意味ではございませんで、政党のために利用せられる、経営者が左右されるということは、これは戒しめて行かなければならんことだと考えております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあこれは非常にデリケートな問題になるんですけれども、例えば今の社会党系の人が組合設立の認可申請をした、自由党の人が認可を申請した、まあそういうような場合に、我々通念だと、そのときの政治情勢によつて、社会党のほうはいかん、自由党のほうは認可する、こういうような危險はないか。政治的中立、と特にこういうものをお語いになつたのは、これは当り前のことなんですが、当り前のことであつて、特にこういうふうにここに出たのでお伺いしたのですが、これは本当に書く必要はないくらいに当り前のことなんですけれども、特に書かれましたからお伺いしたわけなんです。
  78. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) まあ根本観念は、私共は常識として持つてつたところですが、例えば中小企業等協同組合法の中でも、四條の三項に「組合は、特定の政党のために利用してはならない」というような規定もございまして、まあこれを念のため謳つたようなわけでございます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か特にそういう必要があつて入れられたのかと思いまして伺つたわけです。
  80. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 この免許基準の三から六あたりは数字ではつきりしているんですが、これは免許基準であると同時に、結局現在あるものを指導監督もする、大体こんなことも無論頭に入れておるのでありましようが、四、五なんというのは何でございますか、現在組合も大体これに合つているのでございますか。現在の組合はこれに及ばないようなものが相当あるのでございますか。
  81. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 現在あります組合のうち、特に産業組合から転換したというような組合についてはこの基準に合わないのがありますが、それはこの春新法に基く免許を与えますときに、一定の期間実施いたしましてこの基準に合うように約束せしめているのでございます。従つてその範囲においては單独でこのレベルに達することができなければ、或いは近隣の組合と合併するというような必要が出て来るものもあると思います。
  82. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 この際関連してお聞きして置きたいんですが、この六の八〇%、六〇%というような規定を設けられておるんです。今オーバー・ローンというものが非常にやかましく言われておりますけれども、今まで信用協同組合ではこの基準に基いてオーバー・ローンを絶対に認めておられないのですか。それともやはり現在の趨勢上或る程度のオーバー・ローンを認めておられるのか。これを今後においてもこの基準通りにオーバー・ローンは絶対に認めないというような方針でありますか。
  83. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 組合につきましては、その外部の障害に対する抵抗力が非常に弱いものですから、資産の運用は極めて厳格にするように指導しておりまして、最近にも一定の基準を与えまして、その枠の範囲内で資金を、資産を運用しろという指示を与えております。その指示はこれとはちよつと違つてつたと思いますが、その数字は励行しております。この数字の通りを励行しております。
  84. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それで一方においては、銀行関係のほうはオーバー・ローンになつても止むを得ないというふうな一つの現状になつておるわけですね。それは一体当局から見て、信用組合にはそれほどの固い規定を設けて置きながら、金融機関に対しては止むを得ないというふうな態度を示されているのは、何を以てそれは基準とされておられるのですか。
  85. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 商業協同組合につきましては、おおむね規模も小さいし、抵抗力が非常に弱いものでありますから、例えば支払い準備のごときも、十分に用意して置かなければ、非常に困つた場合にもこれを外部の借入れに仰ぐということができないので、又小さい組合ほど少しの経営の蹉跌でも破綻に立ち至るというようなことがございますので、特に厳重にしておるわけでございます。
  86. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 銀行がオーバー・ローンをすることに対しては未だ黙認の形をとつておるのですけれども、それに対する根拠ですね、当局としては根拠があつて黙認されているのかどうかということです。
  87. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 銀行のオーバー・ローンの形自体は、金融機関経営としては必ずしも放任しているのではないと思いますけれども、これは財政経済を併せ考えますると、銀行が日銀の借入資金によりまして貸出を殖やして行くということの止むを得ない事情、それは産業資金の供給という面から止むを得ない事情があるかと考えます。これは機械的にこれを是正するということはいたしておらないのであります。
  88. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 その点なんです。機械的に規制をしないというような方針なら、何かというと産業資金は枯渇してもどうなつてもいいというふうに、金融機関を通じていわゆるオーバー・ローンの規制というような資金の引締めということをしよつちゆう行うのです。そのため日本の産業界が非常な混乱を来たすような場合がしよつちゆうあります。こういう点に対しては、一体銀行当局あたりへどこからどういうふうな指令で来るのか、或いは銀行局はそういうことにはもうタッチしないのか、そういう点についてこの際一つ発表願いたいと思います。
  89. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) このオーバー・ローンの限界、どの程度になればこれは非常に警戒しなければならんかということにつきましては、必ずしもはつきりした結論は出ないわけでございますが、過度に借入金に依存して貸出を多くしておるというような銀行につきましては、銀行検査のときにこれを戒告するというような方法をとつておるわけでございます。
  90. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それは個々の銀行についてやるのであつて、まあオーバー・ローンになつてつても、内容がよいと認めればそれはかまわないというふうな方針なんですか。
  91. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) オーバー・ローンの形自体、それは銀行の健全経営という面から見ては適当でないというふうに考えております。併し現状におきましては、資金供給の必要上、現在においてはどの銀行もオーバー・ローンの形になるということは止むを得ない点もあるのかというふうに考えておりまして、それを機械的に抑えるということはやつておらないわけでございます。
  92. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それがちよちよい新聞に現われておる通り、産業界で以て今資金難で非常に苦しんでいる際、銀行が適宜の処置で以て、銀行責任においてオーバー・ローンをやつておる。そういつたようなこともこれは当然なんです。ところが一片の例えば日銀当局の談であるとか、或いは大蔵当局の談であるとかで、今度は金融引締めをやるといつたようなことで以て、相当経済界に大きな影響を与えるのです。あの出る一体根拠ですね、どういつたような場合に、そういうふうなことをどういう筋の指図で以て出されるのかということの我々は真実を知りたい。
  93. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) オーバー・ローンになるから銀行にこれ以上貸出をしてはいけないとか、抑制をせよということは、大蔵省においても、日本銀行においてもやつておらないわけであります。ただ銀行が日本銀行の借入に漫然依存しをして、日本銀行の貸出が非常に伸びて行くということにつきましては、これは経済界に対する信用供給量の調整の問題として、或る一定の限界があり、又それは日銀の信用政策として調整をとつて行くという現状であります。單にオーバー・ローンの形だけでこの信用を規制するということはいたしておらないはずであります。
  94. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 この免許基準案は、この両文が政令になるわけでありますか。
  95. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 先般の衆議院の御審議のときに急遽内容本位といたしまして條文いたしたのでありますから、このままが政令になるかどうかはまだ十分研究いたしておりませんけれども、内容的には両部入るべきものと考えます。
  96. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 そうすると今度は将来情勢によつてはこの政令大蔵省として変更されるわけになりますか。
  97. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) さようであります。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料の要求なんですが、この九月決算で銀行の業績ですね、大体わかつていると思いますが、日本銀行、六大銀行につきまして、その決算のうち償却前の利益、それから税引前の利益、税引後の利益、資本金、それに対する收益率、これを資料として提出して貰いたいのです。もう一つ、日銀からの借入金を各六大銀行についてお願いしたい。
  99. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 承知いたしました。
  100. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 いま一つ伺いたいのは、設立免許の問題よりも、むしろ協同組合金融事業の発展のためには、中央機関の問題が私は重要ではないかと思いますのですが、それに対する当局側の考えを伺いたい。
  101. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 信用協同組合の中央機関をこしらえました場合に、一体どういう仕事をさすか、又如何なる仕事をさすために中央機関が必要であるかということについていろいろ問題があつたのであります。差当つては現在この信用協同組合の両国連合会の形で中央機関をこしらえまして、そこに一定割合で資金をプールいたしておりまして、例えば政府預託金の回收の場合の共同の保証とか、或いは特に整理資金を要する組合に対する一時の融通金の融通、そういうことをいたさしている次第でございます。その他どうしでも中央機関がなければならないという仕事がございますれば、尚これも法制化するといつたようなことにいたしたい。只今のところは暫くそれで様子を見ているわけでありまする
  102. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 もう一つ最後に伺いたいのですが、先ほど来の質疑応答で大体わかるような気もするのですが、この衆議院提案法律案改正案によつてこの事業免許基準政令できまるということになると、現在大蔵省免許に対してとつておられる態度と結局何ら変更のないことが継続されることになるのであつて、その点からいいますと、これはむしろ提案者に伺わなければならんと思うのでありますけれども、最初この衆議院提案された趣旨と、それからこの政令云々という修正案を入れたことによつて、最初の衆議院提案趣旨がすつかり変つて来たように考えるのですが、これは提案者に伺うことのほうが適当だと思いますが、当局側のお考えはどうなんですか。
  103. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 免許基準に若干抽象的な基準がありますために、やはりこれだけは当初提案者の本当に持つておられたそのままが実現するとは考えられんかと存じます。
  104. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 そうすると当局側のお考えとしては何ら協同組合金融事業については変更しないでもいいということに結局なるのだと思うのですが、その点は如何ですか。
  105. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 私共はこの免許が担当者の私意によつて、人によりましてまちまちになつたり、或いは法律の狙つております狙い所が外れたりすることは、これは戒しむべきことであると考えますが、併しさればといつてこれをこういう形にしてそういう点がなくなるかということにつきましては相当疑問を持つております。この内規その他を公正なもの、嚴格なものを拵えまして、担当者がそれに則つてやるという何らかの措置を講じますれば、これまでの自由裁量による免許ということで、却つて実情に適した行政が行なえるのではないかというふうに考えております。
  106. 小串清一

    委員長小串清一君) 午前中の審議はこの程度で休憩いたそうと思いますが、御異議ございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは午前中の審議はこれを以て終ることにいたします。午後は一時半に再開いたしまま。    午後零時三分休憩    —————・—————    午後二時八分開会
  108. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは午前に引続きまして大蔵委員会を開会いたします。  かねてやつておりました租税行政に関する調査の継続審議をいたしますが、今日は徴税状況並びに徴税の方針について、国税長官の高橋君から御説明を求めることにいたします。
  109. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 最近におけるところの今年度の租税收入の状況について御説明を申上げたいと思います。  十月末までの本年度の租税の收入済額は千九百六十八億円でありまして、予算額でありまする四千四百四十六億円に対しまして四四・三%ということに相成つております。昨年の同期の実績が予算に対しまして四四・二%でありまするので、大体昨年と同じ程度の收入を見ておる次第であります。従いまして租税全体といたしましては、收入の状況は大体において順調に行つておると申上げていいかと存ずるのであります。併しながらその内容について仔細に検討して見ますると、源泉所得税並びに法人税におきましては非常に收入状況がいいのでございまするが、パーセントを申上げますると、源泉所得税におきましては、今年度の十月末の予算に対する割合が六三・四%でありますので、これに対して昨年は五七・三%でありまして、約六%程度今年が上廻つております。又法人税におきましては昨年が五一%でありましたのに対して、今年は七七・六%と相成つてあります。約二六%程度今年度は法人税においては收入状況がいいわけであります。併しながら申告所得税の收入状況は必ずしもよくないのでございまして、予算額千五百三億円に対しまして、十月末の成績が三百三十四億でございました。二二・二%にしか達していないのでございます。昨年は二三・四%でありまして、昨年よりも更に一%程度低くなつておるという状況でございます。而もこの内容について検討して見ますと、三百三十四億円のうち過半の金額が前年分の滯納を整理いたしました結果として入りました金額でございまして、今年度の申告所得税の第一回の納入の時期であるところの七月の納税に対する税收入の割合、又はこの十月末が納期でありまする第二回の税收入の割合というものは昨年に比較いたしまして相当悪く相成つておるのであります。尤も十月末のものにつきましては、実は報告等が相当遅延いたしまするので、十一月の初旬の実績を取つて見ませんとその成績は十分に今直ちに判断することはできない次第ではありまするが、とにかく今年は地方税の納期が下半期にかたまつておるというふうな関係もあろうかと存ずるのでありますが とにかく昨年の繰越滯納の分の收入済額を除いて考えますと、今年の申告所得税は非常に成績が悪いということを申上げてよいかと思うのであります。税法によりますると、本年春において税法の改正がありまして、今年度は予定申告に対するところの仮更正決定はいたさない建前に相成つております。言い換えますると、昨年度の所得金額に対して新しい税法による税率を掛けまして、その金額を第一回、第二回におきましてはその金額の三分の一ずつを納付して頂くという建前に相成つておるのでありますが、これが納入成績が非常に悪いということを申上げざるを得ないのであります。大体十月末までの税收入の状況只今申上げました通りでありまするが、滯納金額状況はどうであるかと申しますと、九月末現在におきまして、滯納になつておりまする税額の総額は一千一億五千万円と相成つております。而して又滯納の件数は七百二十万件に上つておるのであります。そのうち過年度分、即ち前年から繰越になつておる分で残つておりますものが七百三十七億円であります。又今年度新たに納税義務が発生しましたものにつきましての滯納になつておる金額が二百六十四億円であります。昨年度の繰越滯納の分につきましては、実は年度を越しました当時において、即ち五月の一日におけるところの滯納の総額は約千二百億円に上つておるのであります。それが成るものは課税そのものにつきまして実は審査の請求がありまして再調いたしました結果、誤謬訂正を要するものがありましたり、又は課税義務として争いがないけれども、併しながら実際上支払能力がなくなつておるというので不納の欠損の処分をいたしましたり、又はその後税の納付をされたもの等が約四百六十億円余りに相成りまして、結局千二百億円の年度を越しました滯納額が九月末におきましては七百三十七億円ということに相成つておる次第でございます。而してその繰越滯納にかかりまする件数は五百五十二万件という尚非常に尨大な数に上つておるのであります。御承知通り二十四年度の税法は税法自体におきまして非常に大きな重い税率でもございましたし、又二十四年度当初から大体物価の上昇の傾向が止まりましたので、既往年度におけるがごとくインフレの上昇によるところの時期的なズレ というものから割合に既往年度においては税收入が楽な面があつたのでありますが、昨年度におきましてはそれがぴつたり止まりましたので、結局現実にその年度にあつた所得に対する税額がそのまま賦課されるという結果もありまして非常に徴收面におきましても困難を感じておつたのであります。納税者の納められる側におきましてもそういう面から相当に税の重さを痛感せられたことと存じますし、又実際上納付が非常に困難であるという方も相当あろうかと考えておるのであります。併しながら一方この滯納税額のうち大部分を占めますものは申告所得税なのであります。その次が法人税、第三番目に滯納の多いのは源泉所得税と相成つております。それでこの滯納税額をやはり確実に納めて頂くのでなければ、先ず第一に源泉において徴收されておりますところの勤労所得税、俸給生活者との負担の均衡がとれません。負担の均衡を図ることもできません。又同じ申告納税義務者の中で早く納められた方との均衡もとれませんので、これは課税についての妥当でないものがあります場合においては、これは修正を随時していくことにいたしたいと考えますが、課税において妥当であるという場合においては、相当苦しい場合におきましても税の納付をして頂くという建前を以て実は滯納の整理については今年の七月以来非常に力を盡して参つておるのであります。勿論最近こそ相当特需関係のことが原因いたしまして物価その他一般の取引も活溌に相成つてつたような傾向もございますが、一般的に経済界は相当に下向いておるというふうな状況であり、又金詰りも相当深刻であるというふうなこともございますので、実際の運営に当りましては何とかいたしまして納税義務者の財産状況であるとか、又はその他経済状況であるとかいうふうなものを十分に調査をいたしまして、そうして実情に副わない運営はできるだけ避けるという建前は堅持して参つておるのでございますが、何分にも非常に厖大な滯納の税額であり、而もこれをできるだけ早く整理することが今後の税務行政を円滑にする上においてどうしても必要であり、又公平の観念から申しましてもどうしてもこの滯納の整理をいたさなければならないというような観点からいたしまして、相当に滯納処分に当るところの職員も一般の、例えば直税でありますとか、その他の間税の関係でありますとかいう方面から廻しまして、そうして徴收関係の職員を増員いたしまして、この滯納の整理に相当力をいたしておる次第でございます。尚今後の税務行政に対するところの方針でございますが、実は昨年度までは、先ほどもお話いたしましたように、年度途中に申告所得税につきまして仮更正決定ということをいたしたのでございます。この仮更正決定という仕事が税務署の手数を非常に食つておりましたのが、今年は前年度の所得に対して今年の税率を掛かけてその三分の一を七月の予定申告の際に納めて頂く、又更に三分の一を十月に納めて頂くというふうに法律の建前が変りましたので、我々の税務行政の上から申しましてそういうふうな仮更正決定の仕事を省略することができるように相成つた次第であります。従つて今年は当初から仕事のやり方も変更いたしました。先ず第一に資料調査を十分にいたす、いろいろ所得の基礎になるところの資料を各方面から非常に力を盡して集めておるのでございます。その資料を基礎にいたしまして確実な所得を把握するというような努力をいたしますと同時に、昨年度は実額調査の割合が営業に関して申しますと、営業の納税義務者に対して一割八分の調査だけしかできていなかつたのであります。あとのほうにつきましては例えば店構えでありますとか、従業員の数であるとか、又は商品の在庫高というようないわば簡單な外形標準を基礎にいたしまして、我々のほうの術語で申しますと権衡調査方法によりまして簡單調査をいたしまして、それによつて各納税義務者の所得を算定いたしまして、そうして更正決定の通知を差上げるということにいたしておつたのであります。今年度はそれの実額調査の割合を四〇%まで引上げたいという考え方をいたして仕事の計画を作り上げ、すでにこの十日からその仕事を積極的に進めておる次第でございます。従つて今年度は税務の調査自体は一方において資料相当整いましたことと、又時間的にも余裕がある、又非常に税務官吏が若くて経験の浅いのも多いのでありますが、それでもともかく一年々々と訓練を積んで参りましたので、調査能力も又相当充実して参りましたので、今年は昨年よりも相当いいところの調査ができ上る、従つて確実な調査に基いて申告もお願いするようにいたしまするし、又更正決定を止むを得ずするというふうな場合におきましても、そういうふうな調査に基いて確実な調査ができるということを期待し得るかと思います。併しながら根本の問題といたしましては、申告納税制度というのはこの前も申上げたかと存ずるのでありますが、調査をしないで申告を信頼して行くという方法相当多数持つということが申告納税制度の本来の趣旨なのでございます。米国におきましては五千三百万の納税義務者に対して僅かに四%しか調査をしない、それで尚且ついろいろな統計その他見本的数によるところの調査によりまして殆んど九六・七%あるべき所得額がちやんと申告され、そうしてそれに対する税が納まつておるということに相成つておるのでありますが、日本といたしましても何とかして調査をする人を僅かにし、全部を調査するということは到底現在の税務陣容においては不可能でございますので、できるだけ調査の対象を少くし、而も尚且つ全体が公平に行くという建前に進んで行くまでには納税義務者の善意な方、正直な方を尊重して、特別に待遇して差上げるというふうな事柄を是非今年から始めて行きたい。今年度は青色申告の制度が開始されたのでありますが、青色申告の制度は帳簿をつけることその他において相当面倒が伸うのでありますが、それらの面倒を敢えてして、尚且つ何とかして正確な帳簿を作りたい、又正確な申告をしたいというほうでありますので、只今のところではまだ営業につきましては僅かに七%ちよつとの申告者の数しか出ておりませんけれども、そういうふうな申告をなさつた方は特に尊重して差上げて、そうして調査の対象は税について誤りがありそうなところに專ら集中して行く、そういうことによつて負担の公平を期して行くということを是非いたしたいと考えておる次第であります。それを年々続けますることによつて、将来はアメリカのように四%というような程度調査ではなかなか済みますまいけれども、せめて二割なり三割の程度調査をすることによつて全体の公平を期し得られるというところにまで極めて近い将来において持つて行きたい、そういうふうな考え方を以て鋭意税務官吏の訓練に当つておる次第でございます。  尚今年に入りましてから税の收入面において非常に顕著な動きを見せて参りましたのは、法人税の申告の状況が非常によくなつたということでございます。先ほどもお話いたしましたように、十月までの実績から申しますと、予算に対して昨年度が五一%であります。今年は七七・六%という数字に相成つております。これは勿論御承知通り査察の働きというものが主として法人税に向けられておつたということも原因しておるとは思うのでありますが、同時に法人税の税率が非常に下りまして、あの程度の税であるならばそれを隠すとか、又は誤まつた申告をするということが如何にも損であると申しますか、面白くない、こういうふうな感じからか、非常に申告の状況がよくなつてつたのであります。従つて既往年度の分につきましてはやはり調査をいたしますると、相当に税務署の見解と違いまして、税の増額決定をせざるを得ないケースがあるのでございますけれども、最近の年度におきましてはそういうふうな増額の決定をしなければいかんところの金額も非常に減少して行く傾向を見せております。勿論法人を作つておられる方々は記帳についての、会計についての知識の程度も非常に上の方が多いのでございまするし、又そういうふうな納税についての観念もおのずからよく理解される方が多いということは相当大きい原因ではあろうと思うのでありますが、こういうふうに申告所得税の申告の成績が非常によくなつてつたということは、私共として非常に申告納税制度の将来に希望を与えるものでございまして、こういうふうな方向に何とかして一般の個人についての申告所得税につきましても、そういうふうな状況に持つて行きたいということを専ら念願しておる次第でございます。  尚税務官吏の態度その他につきましては昨年以来累次訓示もいたしまするし、又監督官等をいたしまして嚴重な監督をいたさしておるのでございますが、尚且つ汚職事件等も相当に存在いたしておりまするし、又態度その他につきましても、相当私共この監督の立場から見まするとよくなつたのではないかというような感じは持つておるのでございますが、まだまだ到底満足し得る時期でないということを反省いたしまして、今後もますますその点について力を盡して行きたいと考えるのであります。汚職事件等の数も最近非常に多いのでございますが、これも内容を仔細に検討して見ますると、むしろ今年春から監察官に対して警察権を与えたりいたしまして、監察の機構を相当拡充いたしたのでございますが、それらの監察関係の機関が活動いたしました結果、例えば二十三年度とか二十四年度とかいうふうな非常に古いものについての汚職が表に出て来たという数が非常に多いのでございまして、そういうふうな犯罪の行われた、汚職事件の行われた時期別に見てみますると、最近これも相当大幅に減少して来ておるという傾向を見せておりますので、これ又更に今後監察活動を活撥にいたしまして、これが改善を図つて参りたいと考えておる次第でございます。非常に簡單でございまするが、最近の情勢を御報告申上げまして、尚御質問がございましたらお答えいたしたいと思います。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十月末の申告納税三百三十四億のうち、過年度分の收入を除きますとどのくらいになりますか。
  111. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) これは十月末についての数字はその月にはないのでございますが、十月二句末の数字まで出ておりますから、その数字を申上げたいと思います。十月二旬末におきましては收入総額が三百億九千万円ということになつております。予算が千五百三億円でありますが、それに対して三百億九千万円となつております。そのうち過年度分の收入済額は、これは予算は御承知通り二百七十五億円となつております。これは千五百三億円のうち、過年度分、つまり繰越分として予算に計上しましたものは二百七十五億円でございます。これに対して十月の二旬末に入りました金額は百六十三億八千万円ということになつております。パーセントで申しますと五九・五%が入つておるということに相成つております。従つて差引本年度の分として申告所得税が入つております金額は百三十七億円であります。それでついでに昨年との割合を申上げますと、過年度分、繰越收入分の十月二句末までの割合は昨年度が五七%でありましたが、今年は五九・五%であります。今年のほうが少し滯納になりました分の收入は多くなつております。ところが今年度分の予定申告に対する收入の割合は、昨年が一五・七%に対して今年は一一・二%でありまして、今年度のほうがずつと成績が悪くなつておるのでございます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから先ほどのお話で過年度分の滯納ですが、これは十月十二日の時事新報に出ておつたのですが、大体これを全部取るのは困難で、時事新報によりますと八百六十億の申告所得税滯納のうち、二百億円は決定補正としてこれを六百六十億として、更にこれが困難の場合には半分くらいの三百億程度で一応打切る。それから更に今年度の滯納も出て来ておるので、今年度の申告所得税予算額一千五百三億を二百五十億落す。そうして結局その不足を源泉徴收分の増收、これが九百八十三億円を一千百億とする。それから法人税の増收、こういうものによつてカバーするということが出ておるのですが、これはこの新聞の記事は間違つておるんですか。
  113. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) その記事は恐らく今年度の補正予算についての報道であろうかと考えるのでありますが、予算額について確実な数字は私今記憶しておりませんが、大体その通りではないかと存ずるのでありますが、ただ滯納額の処理につきましては実は私共非常に慎重な態度をとつておるのでありまして、お話の二百億円の誤謬訂正減というものにつきましては、これは審査の請求が相当ありましたものをその後ずつと調査いたしました結果、課税所得におきまして二百億円の減が最近までに大体出ておるのであります。課税の面につきでましては、審査の請求の処理は全部完了いたしましたので、これ以上の減はあるまいかと思います。それでこれは大体どういうことかと申しますと、二十四年度の申告額並びに更正決定によるところの増差額、その合計が約千九百億円と相成つております。申告所得税につきまして、その千九百億円と当初決定いたしましたものについて相当大きな割合で以て審査の請求が出ておつたのであります。その審査の請求に対して一々調査をいたしました結果、減になりましたものが約二百億、従つて千九百億円が訂正されまして誤謬訂正の結果、千七百億円余りになつたかと存ずるのであります。而して今後然らばこの残つた滯納金額というものが完全に取れるか取れんかという問題でありますが、あとは誤謬訂正によるところの減は殆んど多くはあるまいかと存じますので、結局各納税義務者の財産状況その他の点からいたしまして、不納欠損になるものがどれだけあるかということが問題になるかと思うのであります。丁度昨年度におきまして相当不納欠損額が出たのでありますが、これは実は非常に收入を急ぎました関係もありましたし、又税務署の手数が十分なかつたというふうな関係からいたしまして、納税義務者のいわば財産調査が十分に至つていなかつたというふうな欠陷を今年度になりましてから調査の結果見出したのであります。それで従つてそういうふうなものにつきましては一旦不納欠損の処置をいたしましたけれども、更に追及するという措置をとつておるのでございます。従つてそういうふうな昨年度相当出ました欠陷を今年度は再び繰返さないという考え方を以て、不納欠損につきましては実は非常に愼重な態度をとつておるのであります。相当十分に調査した上で、本当に払うべき能力がないという場合に初めて不納欠損の処置をとるという考え方でおりますので、従つて今後どの程度不納欠損が出るかということにつきましては、今のところ見通しが立たない次第でございます。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほども長官からお話がありましたが、その後物価の騰貴その他で生計費なんかも膨脹して行く、こういう問題は源泉徴收者でも申告納税者でも同じだと思います。それでこの申告納税のほうの減を源泉徴收のほうの増でカバーするという仕方、どうも最近のやり方は申告納税のほうでどうも取れないのを、源泉徴收の自然増でカバーする傾向で、だんだん国民所得から見ますと個人業種所得のほうが勤労所得よりも多いのに、だんだん勤労所得税のほうが、即ち源泉課税のほうが殖えて来て、申告納税のほうがそれに近付いて来ておるのです。これは非常に不均衡だと思うのですが、本当はやはり勤労者のほうにも均霑がなければならないと思うのですけれども、若しこれが伝えられておるように正しくすれば千百億、本年度勤労所得千百億になつて非常に近付いて来てしまうのです。それに違いないのですね。申告納税とこういうようなバランスの問題ですね。これはどういうふうにお考えですか。
  115. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) この問題は生計費の問題、その他から考えまして、一つは税法の問題に相成るかと思うのでございますが、税務行政面の問題といたしましては、その比較は実は滯納者が全部整理されました結果を既往年度の予算に追加して比較して頂くということによつて、国民勤労所得との権衡もとれるかと思うのであります。実は申告納税の所得税につきましては、暦年を過ぎましてからその年度の所得の計算が初めてできるのでございます。従つてそれに対して調査をし、又御本人にもお調べ願つて申告をして頂く。その上で納税をする。勿論予定申告の段階において或る程度納めて頂くということに相成つておるのでございまして、従つて相当期間的にズレができるということは、これは止むを得ざるところであると考えるのでございます。むしろ今まで税務行政のやり方はその年度内に何とかして申告所得税につきましてもその收入を上げたいということに余り熱心でありました結果、例えば昨年度一割八分の実額調査をいたしたのでありますが、その一割八分の実額調査というものも前年度やつたものは極めて僅かであります。例えば八割とか、九割とかいうふうな調査しかできていない。それを一年引延ばして推定をして課税をするというふうな建前をとらざるを得なかつたのであります。ところがこれは税務行政の本来のやり方から言いまして、むしろ何と申しますか余り適当でないというふうに考えられます。殊に十二月という月は営業に関しましてはどうしても相当取込みが多いのでございますが、十二月の月を除いた調査ということが困難になるのでは、どうしても推定の分が多くなつて本当に適切な真実に合つたところの所得は把握しにくいというような面もございますので、できるだけ調査を繰延べいたしまして、そうして或る一定期間の中には必ず公平を期し得られるというふうな方向に持つて行きたいというふうに考えておる次第でございます。又滯納の整理につきましても今まで実は非常にあせつてつて来た実情にあるのでございます。これは歳入の確保を何とか早急にいたしたいというような考えもございまして、そういうふうな気分が出ましたのも止むを得ざるところであつたのでございますが、これも歳入の状況と見合いをいたしまして、何とかしてもう少しゆつくりと、併しながらその年度だけにおいては成るほど数字の上で公平に行かないかも知れないけれども、その次の年度一ぱいを勘定に入れてお考え願うならば、必ず相当公平を得たところの負担になり得るというところに持つて行きたい。そういうふうな考えを以ちまして滯納に関しましても年度が多少過ぎましでもこれを打ち切る、又不納欠損の処分をするというようなことをしないで追及するというふうなことをしたいと考えております。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ伺いたいのですが、最近、今日のお話を聞きましても、法人が税制改正によつて非常に税金が安くなつて来たために最近個人が法人に組織替をするという傾向ですね。これは何か具体的にどの程度というようにお分りですか。
  117. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 二、三年来法人の数が非常に殖えて参つております。お話通り……。これは税法の点もあろうかと思うのでありますが、一つは法人の調査につきましては、実は割合ゆつくりやつてつたのであります。大体一年分なり二年分なり溜めてやるというふうなやり方で、而も全部調査をするという建前をとつて参りましたために、相当期間が遅れた。それで法人を作りました当初においては、すぐには、つまり事業年度が経過して申告が出ました後において、初めて調査に行く。従つてその期間では税務官吏が来ないというところから、年度内に法人が軽くなるのだという感じを与えておることが相当原因しておるのではないかというふうに考えておりますので、実際の税法の比較は我々のほうで始終やつておるのでありますが、地方税を除いて考えますと、個人と法人の負担は大体期し得られると考えておるのでありますが、ただ或る種のものにつきましては、例えば事業税であるとかいうような面から、或いは法人のほうが負担が軽いのじやないか。これは所得階級によつて相当上下がございます。そういうふうな嫌いも見えまするが、今後地方税法の改正が行われるというようなことになれば、その間の負担の均衡も十分得られるのじやないかと考えております。とにかくそういうふうに税務行政上の仕事のやり方と申しますか、仕事の手順からいたしまして、一年なり一年半なり時期が延びるというようなことのために、結局法人が非常に利益だという感じを与えておる点が相当あるように感じられるのでありますので、私共の、法人といたしましては、今後新設法人については、先ず最初に調査をするという建前をとつて、成るべくそういうふうな欠陷をなくして行くように、そういうふうな感じが起ることをなくすような方向に進んで行きたいと考えております。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し只今地方税を除いてはとおつしやいますけれども、今度の税制改革で住民税の所得割は法人はなくなるのですから、そうしてその附加価値税をかける筈であつたのが、事業税、事業所得税の存続ということで、これは非常に法人はその点でうんと軽くなる筈です。ですからそれは個人が法人に組織替えすることによつて、所得税の收入に今後影響があるのじやないか、こういうふうに考えられると思います。相当常識から考えても法人に組織替えしなければ非常に損だと思うのです。我々考えて、特に住民税が所得割がなくなるという点が随分大きいと思うのです。百万円納めるところが、二千四百円でいいのですから、その点は非常に差があると思うのですが、そういうう影響はどうなのですか。今後相当急速に個人経営が法人経営に組織替えする傾向があるのじやないかと思います。最近の実情はどうなのでしようか。
  119. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) お話通り事業税の関係において差当り今年度としてはそういう現象があるということは、これはお話通りじやないかと存じます。併しながら国税の範囲におきましては法人税、それから給料その他として支払う者に対する個人所得税、そういうものを全部ひつくるめて考えますと、大体公平を得ておると思います。それで尚法人になります件数につきましては、実はこれは手許調査書を持つておりません。実はこれは非常に困難な調査でございまして、いろいろ統計されましたものの写しを税務署で取りまして、そうしてそれを大体写しを取りに行きますのは月に一回、二月に一回ぐらいしか行つておりません。或る一定の時期を画して全部どの程度できたかという調べができにくいのでございますが、相当数に上つておることは確かでございます。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも国税については考えておらないのじやないですか。それならシヤウプ税制改革の意味がないわけでして、あれはそういう任意的資本蓄積をやるために三割五分の法人税、普通税だけで、超過所得税をなくし、清算所得税もなくして、非常に有利になつて来るわけです。国税面においても有利でなければおかしいと思うのです。その点どうなるのですか。
  121. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 大体個人と法人と比較されますのは少額所得者に…、少額と申しますか、中小の程度の所得者に多いのでございますが、それらの人につきましては、多くは例えば同族会社であるとか、又はそういうふうな関係の人が多いのでございまして、従いまして税法上同族会社に関しまして、税務署の認定をなし得る権限が相当与えられておりますので、そういうような運用によりまして十分個人との間に国税につきましては権衡をとり得るというように考えております。これは勿論税法の問題でございまして、私がお答えするのは如何かと存ずるのでございますが、とにかくそういうふうな、つまり同族会社に関するところの特別な規定というものの運用によりまして国税に関する限りは公平を期し得られるというふうに考えております。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは個人組織が法人組織に今度の税制改革の結果組織替えする結果として、所得税のほうの收入には今後そう影響はないと見てよろしいのですか。
  123. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 影響がないということは申上げかねるのであります。これは法人になる傾向はここ数年来の傾向でございまして、年々大体一万乃至一万五千くらいの法人が殖えておるかと思うのでありますが、そういうふうな観点から申しまして、而も法人になる方々はどちらかと申しますと個人の中でも高額又は中程度の所得者に属する人が多いという関係からいたしまして、どうしても申告所得税がその分だけ減りまして、その分だけ法人税が殖えるという結果になることは自然的の勢いであると考えております。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法人税の最近の増加か何かの数字がございますか、ございましたら今でなくてもよろしいですが、あつたらお願いいたします。
  125. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 承知いたしました。
  126. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 昭和二十四年度の租税及び印紙收入の予算は五千百五十九億となつておりますが、これの決算はお分りでしようか。
  127. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 決算はちよつと今ここに持合してございませんが、たしか十数億円程度予算を上廻つておるかと考えております。
  128. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 十数億ですか。ああそうですか。それじやもう一つ、二十五年は推計実績でどれくらいというお見込ですか、今のところ……。
  129. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) この問題は非常にむずかしい問題でございまして、実は私共として今後の経済の見通しというものについて確実な予想ができんものでございますから、勿論来年度の予算を、来年度と申しますよりも今年度の補正予算等の関係からいたしまして、或る程度の推定をせざるを得ないのでございますが、非常に困難な問題でございまして、而もこの所管は、予算の見積りということは主税局に属しますので、私のほうからお答えするのは如何かと存じますので、差控えさせて頂きたいと思います。
  130. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 さつきからの御説明を伺つたのですが、昨年度は今年度と比較してそう今までのところ徴收実績というものは余り変りないというふうに聞いたのですけれども、ところが今年は地方税が非常にウエイトが重くなつて国税のほうは軽くなつております。そういう点から見ると、我々はこの数字を拜見してもつといい成績になつていなくてはならないじやないかと思いますが、そういう点について国税庁の努力が足らないというか、或いは国民の実際の納税に対するところのいわゆる力が足らない、いずれかと思うのですが、これに対しては長官はどういうふうにお考えになつておりますか。
  131. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 地方税と国税と総合的に見た徴收実績というものは、実は私共数字を持ちませんので見当が付かないのでございますが、地方税が殖えて国税が減つたのだから国税はもつと割合がよくなけば、昨年程度でないじやないかというお話でございますが、実はあつちこつちの地方で聞いて見ますると、むしろ地方のほうは非常に手数が多い、又役場の人が顔見知りであるというような関係からでありましようが、地方税の徴收成績が非常にいいところが多いのでございます。むしろ地方税につきましては六割とか七割とか納まつておるのに、国税の、例えば第一期分の收入が三割とか四割しかまだ納まつていないというようなこと、これは個々の例でございますけれども、あつちこつちの税務署で見本的に聞いて見ました結果が、そういうふうな実績が出ております。従つて地方税のほうが少くとも十月末等におけるところの徴收実績は相当によくて、国税のほうが悪いというふうな点からいたしまして、全体としてそう成績が悪いんだというふうには考えていないのであります。
  132. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のに関連して……その点は十月以降はそういうことが言えるかも知れませんが、少くとも九月までくらいは油井さんの言われたようなところが妥当するんじやないでしようか。
  133. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) この問題は同時に日本の経済全体の見方というものに関連するかと思うのでございますが、我々の見方からいたしますと、少くとも朝鮮の特需関係ができまして、それが廻りますに至りますまでは物価は統計によりますと、或る程度つておりますし、又金詰りの状況も非常に深刻な状況にあるというふうな点からいたしまして、ただ税務官吏の努力が昨年に比較して足りなかつたというふうにも感じておりませんし、国民の協力の程度も特に悪くなつたというふうには感じない次第でございます。
  134. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 もう一点、最近第三国人に対する徴收状況を今分つておりましたら御説明願いたいと思います。
  135. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) これは特別に調査を取つておりませんので……。
  136. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 大体で結構です。
  137. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 漸次第三国人につきましても徴收につきまして相当徹底したやり方をとつてつておるのでございまして、抽象的に申上げますならば、昨年よりも余ほど徹底したやり方をやつておるということを申上げていいかと思うのであります。ただ数字的にはまだ区分して最近取つておりませんので、ちよつと数学的に御答弁申上げる資料は持合せていない次第でございます。
  138. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それでは昨年度と今年度の第三国人に対する課税状況資料一つお調べになつて出して頂きたいと思います。
  139. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) これは極めて大ざつぱな調査になるかと思いますが、それで御了承を願いましてできるだけ早く提出いたしたいと思います。
  140. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これはなぜこういうことを申上げるかというと、最近街を歩いても例の三万台の自動車というのが非常な激増です。そういう点から見ても、いわゆる第三国人は経済的に非常に惠まれていて、そういう方面の納税負担というものはどの程度になつておるかというのを一応我々知りたい。若しああいう方面に大きな脱税というようなことがあるなら、これは国民としては甚だどうも感心した点じやないと思います。或る程度そういう点も国税庁のほうでよく御調査になつて、日本人対第三国人の間に較差がないように御努力願いたい。こういう点で調査表を出して頂きたい。こう申上げたわけであります。
  141. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 外国人の中には、いわゆる第三国人と然らざる人とおる次第でございますが、三万台の自動車はその双方にある問題でございます。而して今まで納税義務のなかつた外国人に対しても、この七月から非常に低い率ではございますが、税を納めて頂くことに相成りました。この税務の仕事は特に国税庁で以て直接に直轄をして、相当愼重な調査をして行くということにいたしておりまするので、その後の権衡も今後は漸次とれて公平な負担になり得るかと考えるのでございます。
  142. 松永義雄

    ○松永義雄君 徴收の方面から見て所得の分布とか、動きというものは徴收の成績ですか、例えば法人がよくなるとか徴收が非常に成績がいいとかおつしやつたのですが、平均に関係したことですけれども、徴收の方面からどういう結論が出ましようか。
  143. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 差上げました資料の中にたしかそれに該当するのが一つあろうかと思うのでありますが……これは続常にむずかしい調査でございますが、これは東京、大阪に関しまして都会地の主なる税務署二十五署のみについて調べて見たのでございますが、これで非常に顯著に分りますことは、例えば二十万円以上大体五十万円未満の程度になつているかと思うのであります。大口の所得者としては滯納者は別途に表を作つておりますので、その全体のパーセントから申しますると、納税義務者の数としては二十万円以上の人が二割九分になつているのであります。ところが滯納金額が六三%占めているという数字が出ているのでございます。こんな点から考えまして、やはり二十万円まで、以上の何と申しますか、少し中産階級に近いところの税の負担が非常に重い、従つてその階層が、例えば実際上社会的に相当経費が、生活費その他もかかるというふうな関係もあるかと考えるのであります。そういうふうな階層が一番滯納になつている率が多い、而もなかなか徴收も困難である状況になつていることがこの表によつて窺えるのでございます。
  144. 松永義雄

    ○松永義雄君 最近はどうですか。そのごこれはまだ出て来ないでしようか、朝鮮問題以来……。
  145. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) この税に現われます数字は実際の経済界の状況相当時間的にもズレができまして初めてはつきりするのでありまして、まだそこまではつきりと出て来ておらないのでございまして、税の面からはそれを判断し得るところの材料を得られない状況でございます。
  146. 松永義雄

    ○松永義雄君 先ほど法人税と個人の所得税との話合がありましたけれども、今日の一体輿論では法人になつたほうが安くて個人のほうが重い。これはもう通論になつていると言つても過言でないと思うのですが、あなた方のほうでないでしようが、決定のほうの問題になるでしようけれども、個人のほうの経費は見てくれない、法人のほうはどんどん経費を見る。こんなことは常識的にもう殆んど誰しもが考えているところでありますが、考えていることが、それが法人の決定のときには経費を見てやつて、個人のほうはちつとも経費を見てやらないということが個人のほうの負担が、税金が重くなつて来て、感じでなくして実際数字の上にそれが現われているんじやないかと思うのですが、それが故に最近もうどこの個人の商店でも我慢ができなくなつて来て、そしてもう法人にしようしようともう一つの流行のようになつた。昨年以来殊にそうですけれども、最近に至つて地方税の問題もかかつて来る。もう法人にしなければ家は立たないというくらいもうみんな考えているんですがね。決定の場合に経費の面というようなこと、差別をつけているんじやないのですか。
  147. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 所得税法におきましては、收入を得るに必要な経費は、全部を経費として見たわけでございます。又法人の場合におきましては、総益金から総損金を差引くという建前になつておるのでありまして、その原則そのものは何ら差異がありません。ただ法人の場合は、そこに働いている人の経費が結局給料が経費として認められる。ところが個人の経営の場合におきましては、その主人の給料に当る分が所得として算入されるという点が変つているだけであります。
  148. 松永義雄

    ○松永義雄君 そう簡單に答えられてしまうと……(笑声)実際面においては非常に苦しいですよ個人は……。それは新らしい民法から言えば、みんな加算して行けば、親父が死んだとき平等に振り分けて、株券が渡つて、そういう面では便利かも知れない。併し実際問題としては決定係の方は非常に不公平ではないか。
  149. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 実際の調査としましては、法人は個人より多く、実は税務官吏を振り分けまして、割合から申しますと。そうして、できるだけ徹底した調査をいたしたいと考えておるのでございますが、そういうことで、大体新設の法人等について、同族関係のものが非常に多いのでございますから、そういうふうなものにつきまして十分に調査をするということによりまして個人との間の均衡は、実際の運営上は十分にとつて行けるというふうに考えておるのでございます。ただ先ほど木村さんの御質問に対してお答えいたしましたように、ただ従来どうしても決定が遅れる。而も新設のものは、登記所に行つて初めてその法人の在存を掴みました。そして会社の事業年時が済みまして二ケ月後になつて初めて申告書が出て来る、それに対して調査して行くというふうな、どうしても、一年から一年半くらいの期間、ブランクができる。その間結局税を納めんで済むというふうな期間ができるのでありますから、それが一つの大きな魅力になつているのじやないかという感じがするのでございます。従つて我々といたしましては、そういうふうな新設法人につきましては、一方同族会社に対するところの加算の税率を、十分に的確に適用するということ、並びにその他認定規定等を十分に働かすということ。いま一つは、できるだけ優先的にそういう人の調査をいたしますということによつてそういうふうな時間的なズレの間隔もなくして行きたいというふうに考えているのであります。
  150. 松永義雄

    ○松永義雄君 同族会社のことを言われましたのですが、私の言うのは同族会社じやなくて大きな会社の、まあこの頃は何十万人とか株主があるというふうな会社がある。そういう会社における経費というものは非常に寛大に見て、そうして個人の場合においては、見ないという場合が、どうも我々として感じられる。もう一つ言えば、貯蓄ということにもなるでしようし、法人のほうは濫費しているということです。半面個人のほうは割合にまじめにやつている。自分の仕事であるのですから。まじめにやつている。一生懸命檢約してやつているのにどんどん持つて行かれる。法人のほうはどんどん濫費しておつても経費と見られる。そうして小さい所得だ、こういうふうに見られている傾向があるのではないか。そういう点は、調査が足りないというのか、いろいろの関係があるということを……。
  151. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 大法人につきましては御承知通り法人の経費として、例えば交際費というふうなものが一番審査の対象になるのでございますが、こういうものはシヤウプの勧告にもありましたかと存ずるのでありますが、できるだけ嚴格に調査して行く、アメリカ等の実際の調査状況を見てみましても、交際費、旅費というものを一番調査の対象にしている。こういう状況でありまして、やはりお話のように若しもそういうものが濫費されているとか、やはり現実に個人の交際費であるのを会社の交際費であるというふうな面については十分調査を徹底して行く方針で以てやつておるのでありまして、お話のように大法人の場合は寛になつておる、個人の場合は非常に酷になつておるというふうなことは絶対にないように心掛けるつもりでございます。
  152. 小串清一

    委員長小串清一君) 本日は三時までというお話でございまして御通知して、すでにあとの方も見えておるのでございますから、如何でしようか……。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと希望だけ……。
  154. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは簡單一つ
  155. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この間国税庁長官のところに行きまして、二十四年度の滯納処分が非常に行き過ぎの点があるということをいろいろ陳情したわけですがね。その後そういう点についてはどうなつておりますか。特にここで長官に希望したいことは長官自身はわからないで、末端のほうで相当行き過ぎがあるように我々は感じられますので、その点について何か方針を下部に徹底するようにやつて頂きたいですし、又おやりになつたらどうか、その点ちよつと。
  156. 高橋衛

    説明員(高橋衛君) 滯納処分につきまして、ままそれに当る者が実際存在しましたことはこれは事実でありまして、誠に遺憾に存ずるところでございます。先般木村議員の御指摘になりました事件は、実は調査いたしました結果、結局滯納者の対外信用等を考慮して正式の滯納処分によることなく御本人の希望というか、お話合をしました結果、よろしいということで実はやつたということを税務当局は言つているのでございます。併しながらその際に御本人の承諾書を得てなかつたということは、これは重大な手落ちでございますから、今後は必ずそういう場合に承諾書を得てやるというふうに嚴重に注意を促して置きました次第でございます。どうも滯納処分をいたします際に、例えば水菓子でありまするとか、野菜であるとか、魚屋さんであるとかいうような方々がありまして、而も商人が商品しか差押えるものがないというふうな場合におきましては、やはり納税者の御協力を得て、その人の売上げをできるだけ上げて、それを税金に少しずつ廻してやるという方法より考えざるを得ない場合もありますが、それを正規の滯納処分の方向に持つて行きますると、結局全部が無駄になつて收入が得られない、双方に利益じやないというふうな観点からいたしまして、できるだけ御本人の承諾を得て御納得の上でやつて行くということにいたしたいと考えております。
  157. 小串清一

    委員長小串清一君) どうも御苦労様でございました。それでは租税行政調査はこの程度にとどめまして、かねて御通知しました貿易金融並びに金融一般について、元の正金銀行の取締役の加納久朗君をお招きしておりますから、これからそれをお伺いいたすことにいたします。
  158. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) 今日お招きにあずかりまして今委員長からお話になりました貿易金融一般及び今の敗戰後における日本の金融というものをどういうふうにしたらいいのかということについてかいつまんで私の意見を先に申上げまして、後から御質問にお答えする、こういうふうにお願いしたいと思います。  第一に日本が敗戰後の非常に頽廃して貧弱になりました経済を復興し、且つ富国にまで持つて来るには非常にいい時期が来たという点を第一に触れたい。それから第二にそれにはどういうふうにしたらいいかというと、これは減税と外資導入ということしか途がないということ、それからその次に日本に欠けている長期の資金の金融というものはどういうふうにすべきかということ、それから輸出輸入の金融というものは今の形体では極めて不満足な状態にあるから、こう組織をこういうふうに変えなければいけないという問題について、大体そういう順序でお話して行きたいと思います。  朝鮮事変が勃発いたしまして、日本の経済がドツジ・ラインで、息を拔きそうになつてつたものが、非常に息を吹返して形体が違つて参りました。丁度第一次職事の起りました前夜には日本の在外資金というものは非常に欠乏いたしておりまして、当時綿花を輸入するということの資金さえなくて、どうしたものだろうかといつて非常に案じたものでございます。それが第一次戰爭が勃発いたしますと非常な輸出が起つて参りました。それから従つて日本の輸入というものも活撥になつて参りました。又輸出が出て行くということで大変な活撥な輸出を日本がいたしました結果が五年間に二十七億円の金を日本が獲得することができたわけでございます。当時私は二ユーヨークの正金銀行におりましたのでございますが、毎船太平洋から出します船に金を積むのでございますが、金というものは一船に積む量が大体きまつております。それ以上積むと保險がつきませんですから、極めて限られております。それで太平洋から船の出ます、毎船金を積んでも間に合わないというくらいに日本がお金を儲けた。それでもまだ足りないで一方今日起つておる問題と同じような為替銀行に円の不足という問題が起つて参りました。今日のように全般に円不足というものが起つたのではなくて、為替銀行手許に円の不足が起つて来て、当時横浜正金銀行はイギリス政府、それからフランス政府、ロシア政府、こういうもののために日本で円の公債を発行いたしまして、そうして円資金を賄うというくらいに日本がお金を儲けたのでございます。当時の為替相場が二円に対してほぼ一ドルという為替相場でございましたし、当時のドルは一オンスが二十ドルしておつたときであつて今日は三十五ドルしておるのでございますから、当時の儲けというものはアメリカのお金でも五年間に二十億ドルをきれいに儲けたというわけでございます。そのくらいに日本があの戰爭で儲けられたのであります。ところが今度のこの朝鮮事変から続いて、これが大戰爭に勃発してしまえばもう万事窮すでございますけれども、仮に今のような軍事競爭というものが英米の陣営とソヴイエトの陣営に続いて行つたならば、どういうことになるかというと、アメリカが今年に使いまする軍備の費用というものが四百七十億ドルと申しておりますので、来年は五百億ドル、再来年が五百二十億ドルという金を使います。フランスもイギリスも大きな金を軍備に使う予算を出しております。ソヴイエト自身もそれからソヴイエトの衛星国も同様にお金を使う。これを併せて見まするというと恐らく幾ら内輪で見積りましても世界で軍備に使つて行く、つまり無駄遣いをするために使つて行くお金が一千億ドルあると私は思います。仮にそれが三年続いたといたしまして、日本がその三分を儲ける。儲けるというのは何も直接軍需品を売るわけではありません。彼らのすべき商売は我々の手に来て、東亜の圏内に来て商売をするとこういうことになりますから、三分として、楽に百億ドルもの金が儲かると思うのでありますであるからしてこの機会にうんと日は儲けて、そうして單に経済の回復をするというばかりでなしに、世界の富国にするというチヤンスが日本に与えられているとこういうふうに私は信じております。従つてこの貿易に対する金融というものは、余ほど円滑に行つて支障のないようにして行かなければならない、こういうふうに私は信ずるのであります。その点において今日の輸出、輸入貿易というものは、非常に不満足なものであるというふうに感じております。で、私はこの為替管理委員会が今持つておりまする四億ドルのドル貨というものが、恐らくこれが忽ちのうちに五億になり、六億になり、七億になるのだと思うのです。それは輸入するために計画を立てましても機械とか技術とかというものは六ケ月先、或いは八ケ月先でなければ入つて来ない場合がありますから、今買うという計画を立てましても、そのドル貨が溜り、又更に輸出が続いて来て溜るとこういうことになつて相当多くの金が溜るものと思うのです。それでございますからこの際どうしても日本は原料がどんどん上つて参りまから、上らないうちにできるだけ日本に入れて置く、そうして同時に日本の遅れておりまする二十年以上も遅れておる技術、及びその機械を改め、そうして二年又は三年の後には国際レベルの機械技術にして、そうして軍備競争が終つたときには、日本はどこの国に対しても負けないだけの技術と、それから機械を以て、国際水準で以て堂々と向つて行くという態勢に、この際こそとつて行かなければならないものだと思つております。ところでこの為替管理委員会の持つておるお金のことでございまするが、商売としてはこれは全く落第なんであつて、安いときに売つてしまつた、そのお金が三億ドル以上も溜つて、そしてそれを今度は補充しなければならないという、原料を買おうとしたときには、原料が上つてしまつた、というのでは、商売としては極めて拙劣なるやり方だと思います。でこれはやはり後家さんのお金を大事にするような考えで、輸出は成るべく奨励するが、輸入は成るべく少くする、というような考えからこのお金は溜つたのであつて、そういうけちな考えではいけないのです。とにかく借金をしてでも原料を輸入して、日本は出さなければならない、という考えで行かなければならないのですが、遺憾ながら日本銀行でも、為替管理委員会の当局でもが、そういうような考えでなくて、今のようにお金が溜つたと、これは私は大変拙劣なやり方だと思うのですけれども、実際はそういうふうなわけなんであつて、こんな馬鹿馬鹿しい下手な商売はないのでございます。だから前のことは仕方がありません。三億円の犠牲を払つたとするならば、今後起るべき十億ドル、二十億ドル、三十億ドルといつて来るものは、そういうへまをしないように皆様方も御後援願つて、そうして当局を鞭撻して頂く必要があると思うのであります。  それから外資導入という問題に第二に触れて見たいと思うのでございます。この戰爭が終りましてから、外資導入という問題が非常に多く言われて、やあ只見川の水力電気に外資が入る、どこの会社に外資が入る、どこに日米共同でやるのだという話がございましたけれども今のところそういうようなところへ来た外資というものはニツケルもない、五銭の金も入つて来ていないと思うのでございます。それで外資というものは一体どういう形から入つて来るのかというと、丁度個人がお金を借りますのに、初めからこの金を君一つ二年間貸してくれ、三年間貸してくれと言つたらとても貸してくれない。けれどもここで私は仕入れをしまして、そうしてこの仕入れたものを二ケ月先、三ケ月先ですから三月だけお金を貸してくれないかと言えば、それはいいから貸して上げましようというふうに金を貸してくれる人があるというようなわけで、外資の導入と言いましても、長いものを初めから貸さんかと言つても初めから無理なんで、これは短資のものから外資というものは入れて行かなければならない、こういうわけでございます。ところが昨年の八月に二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクのレオ・チエンバレンという人がこのチエンバレンという男は戰爭前から日本におり、又戰後直ちに日本に来て、二十年の経験を持つておるものですから、見渡すところ如何にも日本の銀行屋さんたちが知識が薄くて気の毒だ、何とかしてこれはアメリカの金を入れて日本のファイナンスというものを、輸入金融というものをして上げたいということで、自分のところの資金をつまり外資導入の初めとしてここに先ず六百万ドルばかりの金を日本の銀行のために短資として上げて、そうしてこれだけで自分のところの銀行の金で日本の輸入というものを賄つて上げたらどういうものであろうか、一体それが賛成されるかどうかと考え、一万田総裁を訪ねまして、木内為替委員会の委員長も一緒に話をした。それでその話を持出したところが、そのときに余りはつきりした御返事がなくて、まあ結構でしようというお話で、一週間経つてもはつきりした返事がない。それはどうも余り話がよ過ぎるので、自分のほうは嘘じやないかと思つて御返事しなかつたけれども、本当なのかと言う、それならばやつて貰いたいということで、又チエンバレンが日本の為替銀行全部を訪ねまして、十一行の銀行に成るところは七十五万ドル、或るところは百万ドル、或るところは五十万ドル、或るところは二十五万ドル、成るところは十五万ドル、おのおのこちらから見た、この銀行にはこのくらいの信用を与えてもいいというくらいにものの信用をお与えするという約束をして、それだけの限度においては常にアメリカから輸入して来る為替の金融は私のほうの金でして上げましようということを言つてくれたわけであります。それが三ケ月の手形で、そうしてアメリカのお金を四分で貸してくれます。そうしで日本の銀行に一分差上げる。日本銀行は一分輸入商から取る。そうすると輸入商は五分で輸入ができるというようにしたのでございます。それで一体日本の輸入の状態はどうであつたかというと、すでにこの占領が始まりましてから、昨年の八月までのやり方というものはすべて参着払のやり方で、つまり物が来てしまえばすぐそこで現金を払わなければならん。現金を払つて物を受取る、こういうわけであります。現金を払つて物を受取るというのにはその銀行は市中で借りなければいけない、日本銀行から借りなければいけないということになると、八分七厘というような利息でなければお金ができない。だから輸入は今まで九分近いお金で輸入しておつたものが、それだけの途が開かれただけで五分で輸入する途が少いけれども開かれた。これが短資の外資導入というものをやりました始まりであります。それで二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクがそれをやりましたので、これはこうしちやいられないというので、チエース・ナシヨナル・バンクというのが私のほうでもやつてもよろしいということで、全体から言いましても恐らく四、五百万ドルの信用を与える。それからバンク・オブ・アメリカ、これもやはりこうしちやいられないというので、信用を与える。結局今日ではバランスで約百億円に近いものが今の外国銀行信用を以て日本に安く輸入できた、こういうわけです。それがつまりこの間うちから問題になつていたユーザンス・ビルというものの一番初めで、外国銀行がユーザンス・ビルで信用状を出してやつて日本の輸入をやつて上げましよう、こう言つてくれたものを日本のほうでがたがたがたがたと、まあ為替委員会では賛成でありましたけれども、そんなものは、三億ドルも金があるのに外国銀行の金を使う必要はないじやないかとかいう意見もあつてちよつととまつているわけです。けれども日本のように輸入超過を続ける国で以て、而もこれだけの貧乏な国が、人が今短期であろうが五分で金を貸してやろう、それで輸入を助けてやろうというものを断るという手は私はどうしてもないのだと思う。それをしているのであつて、これはもうできるだけ早い機会にこの門を再び開けて、これだけの外資を導入して行かなければならないものだと私は思つている。こういうことで嫌やがらせをすればどういうことになるかというと、長期の資金も入つて参りません。もう一つ、この外資導入ということに対して日本の銀行の態度はどうであろうかというと、これは非常に結構、これはどうかしてやつて貰いたいということを言つておりますけれども、日本の銀行ではまだこういう疑いを持つている銀行がある。外国銀行がどうもドルを売つて、そうしてここへ円を持つて来られて、それで日本で以て貸付けなんかをやられたひには日本の銀行はたまつたものではない、成るべく外国銀行はそういうことは進出して貰いたくないという考えを日本の銀行で持つておられる方がある。ところがこれは全く御心配無用なんです。まだ外国から見ますというと、日本の円というものは安定した通貨だとは思つておりません。ですからドルを売つて円を買うというような外国銀行は一軒もありません。そういうことをしたら本店のほうが、そんなことをしてはいけないと言うのでやりません。ですからできたら結構です。若しドルを売つて日本銀行から円を貰つて、それで日本の中に投資するとか、或いは貸付けをするという銀行があつたならばこんな結構なことは私はないと思う。併しそんな危險を冒す銀行はないです。それからもう一つは非常に哀れなお話を申上げますけれども、日本の今全国銀行預金を合せて八千八百億円と申しております。これを三百六十円の為替相場でドルに直して見て、そうしてここにあります二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクなり、或いはチエース・ナシヨナル・バンク、或いはバンク・オブ・アメリカなり、どの一行でもよろしうございます。一行だけの預金の総額というものを比べて見ますならば、一行の預金額が日本の全体の預金額の先ず二倍から三倍あるのです。それでございますから、そんな銀行が日本へ来てこの危險な為替を冒して円を買持ちをして、そうして而もこの日本の商社の信用というものが全然分つておらないのに、日本で貸付けをするというようなことはございません。その点において外国銀行は日本の銀行競争をしないのである。むしろ先ほど申上げたような短期の外資導入というようなことで、日本の貿易を助けろという立場で来ているということを御了解願いたいのでございます。それからその次に、いよいよ長期の投資、外資導入ということ、これが非常に日本の工業の技術を改良する上から見ましても、資本の足りない日本に外国の技術と、それから機械を入れて来て、それを十年なり、十五年なりで貸して貰つて、漸次日本で儲けたお金でそれを返して行こうと、これが外資導入の形式になりまするが、それをするのには日本の外資導入受入態勢というものが全くできておりません。この間も吉田さんにお目にかかつたとき、吉田さんは、何よりも外資導入というものが大切だと、こうおつしやつていましたけれども、私は、日本政府も、それから日本の官庁にしても、外資導入を受入れるという能勢ができていませんよ。今のままで置いたら、ちつとも来ませんというお話を申上げました。今のような税制、それから今のような日本の気持では外資は入つて参りません。税制のほうの問題から云いますと、漸く今年から外国法人も、内国法人も一様に法人税が三割五分かかつて来ておるのでございますが、それ以前はどうかというと、外国法人には四割五分かけて、日本のほうは三割五分だつたので、漸く今年から日本は三割五分に下げたわけでございます。ところが外資導入を願つている中南米の国々、メキシコにしてもコスタリカにしても、それからブラジル、そういうような国にしましても、どういうことをしておるかというと、外国法人に対する税、殊にそれは外国法人といつても、アメリカの法人のことを言つておるのですが、その税というものは大体五分から、高くて一割というところが、外国法人に対する税率であつて内国法人とは全然別にしておるのでございます。そのくらいにしなければ、外資というものは入つて来ない。又アメリカが百数十年に亘つて、建国から一九一七年くらいまでの間に、あれだけの未開発の土地を開発して、あれだけの富を作つたのは、何によるかというと、外資導入ということでやつたのであつて、アメリカは百何十年に亘つて外国資本をのべつに入れて、そうして先ず太平洋と大西洋を繋ぐユニオン・パシフイツクの鉄道を作つた。その作つたときも、それから続いて外資を入れるために、鉄道の沿線の両方十マイルだけの土地はただでやるのだというくらいにして外資を導入したわけであつてそれから南北戰争のあとで、殆んどアメリカの信用が地に墜ち、一時ヨーロツパの資本が来なくなつたときに、困つたものだから、ドル勘定はやめる。ここへ作る会社の資本金はスターリングの勘定で、つまりイギリスの通貨で会社をお作りになつて、イギリスの通貨で利益を持つてつてもいい。だから何とかしてここに資本を持つて来て仕事をして貰いたいというくらいまでに、アメリカは外資導入を歓迎したということも歴史上あるのでございます。そういうことから考えて見ると、破壊されたこの経済で、この貧弱な日本が起ち上るために、大いに努力しなければ外資というものは入つて来るものじやないということを我々は考えなければならないと思うのであります。  それから外国人に対する課税の問題も、日本人と同様に課税するわけじやなくて、今じや五〇%だけを取つて、その残りを日本人と同様の課税をする。こういうことになつて、大層大蔵省では外国人に対しては優遇しているようにお考えになつていますけれども、実はそうならないのであつて、極く近い例を申上げますと、サンフランシスコあたりで、本当にハイスクールを出て、銀行会社の小僧になつて日本にやつて来るのは、年に一番下で三千ドル取る。年に三千ドルということは日本の金にして百二十万円くらいのものです。それで半分は課税するけれども、あとの半分は……こういうことになると、先生たちの生活は日本ではやつて行けない。これは趣く上のほうで一万ドル以上二万ドルも取るというようなところは、それは半分に割つてつてもいいのですけれども、極く当り前の大体一万二、三千ドル以下で以て日本でやつて行こうというようなことになると、今の税率では日本に来て働きたくなくなる。だから外資導入と一緒に来る技術者及びその会社員に対しても、今のような税率では高くて日本に来るのはいやだと、こういうことになる。であるからして、これもどうしても日本の国を富まさなければならんと、それには外資導入が必要だということであれば、思い切つて外国法人の税率を下げること。それから同時に思い切つて個人の課税というものをうんと少くして、それも少くとも十年間これで行くという一つの保証を与えない限りは、外資導入の回復ということはなかなかむずかしいものだ、こういうことを私は考えます。  それからその次に申上げるのは、輸出輸入の金融の問題でございまするが、輸出輸入金融というものは、特別会計で予算の中に入れて、そうして今までのやり方が為替管理委員会で以て韓出ビルを買取るというときに円を出してやらなければなりません。それはその会計のほうから入つて来る金で円を出してやる。それから輸入ビルを売つて円をそのほうの会計に入れてやる。こういう考えで、そしてその差額が五百万円までは日本銀行から借りられるのだと、こういうことになつてつたのです。ところが朝鮮事変が始まつて以来非常に蔵出が出て来たために、もうすでに五百億円金がなくなつてしまつた。そこでおかしなことが起つたのですが、輸出をしなければ死ぬかというようなこの大事な蔵出をするのに、輸出しますからと言つて輸出為替を持つてつたところが、円が足りないから輸出為替は買わない、こういう現象が数ケ月前に起つたわけであります。それで漸くそれを日本銀行が為替を買取るというような為替資金はどうかするというようなことで、その難関を通り拔けたのでありまするが、私はどうしても予算の外に輸出輸入金融というものは入れて、そうして日本銀行と、それから為替管理委員会で以て輸出に関する限りは幾らでも円は出してやる“輸入に来たものは円は取り立てるのだということにしてやつて行きたい。これを予算の中に入れたかというと、輸出というものがひどくなればこれはインフレーシヨンになる。つまり輸出が大きくなるに従つて円が足らんのはインフレーシヨンだ。そして蔵入がその間に来て、通貨を收縮すればよいのですけれども、收縮できない、物が足りないということになるとインフレーシヨンになる。であるからして、輸出して、輸入するまでのそのギヤツブがインフレーシヨンになるのだからというような細かい考えで、こういうようなおかしな方法になつてつたのですけれども、これはどうしても改めて輸出に関する限りは幾らでも出して、輸入に関するものには幾らでも吸收するというような組織に直さなければいけない。これはどうしても輸出輸入金融の特別の勘定を作つてそれをやつて行くか、或いは以前にあつたように為替銀行というものを、輸出輸入銀行というものを作つて、それに一手に責任を持たせて、他の日本の銀行のビルがそこに来て売つて、それを買う。それから今度は輸入が来たときには、日本の銀行が取り立てたもので円がそこに行くということにして、その金が日本銀行と為替管理委員会で見ていてやつて行くというふうにして、輸出輸入金融というものを非常に円滑にして行くということが今日の場合必要であると思う。ところが実に繁文褥礼と言いますか、レツド・テープと言いますか、手続が煩瑣であつて、通産省に許可を得て、為替管理委員会に行つて、それから今度は信用状を出してといつてつております間に、商売のことですから、一日で似てものがどんどん上つて行くというようなわけで到底今のやり方で間に合わないです。ですからこれはどうしてももつと敏速に輸出輸入の金融を改めて、銀行或いは金庫というものを作る必要がある。こういうふうに存じております。  それからもう一つ皆様の御注意を喚起したいことは、外国為替銀行という一つの階級を作つたという間違いがあります。つまり貿易が民間貿易に移つたときに、それで單一為替ができましたときに、外国為替というものをどの銀行にもやらせるということはどうも多過ぎたからこれを五行にとどめる、それから今度は七行にとどめる、それから九行にして、それから十一行にした。今度はそれを今じやAクラスと言つておる。それから今度はそのあとで来た地方銀行、北陸銀行、埼玉銀行この間興業銀行がBクラスになつたのですが、それから信託銀行そういうふうなものがBクラスと言つてそれがまだあと六行ある。そういうふうに変な階級を銀行へつけた。これが大変な間違いであつて、いやしくも外国為替が取扱える銀行つたらどこでもやらせる、そうして輸出輸入というものを活溌にさせるというようにしないと、とかく日本人の悪い癖は、一つの特権を得た銀行というものが一つ自分たちのものを作つて置いて、他のものを排斥して、自分のほうだけでやろうとするからここに自由競争というものはなくなつてしまう。だからこれはどうしても為替業務を取扱う銀行を特にきめるというようなそういう差別待遇を一切やめてしまつて、どこの銀行でも外国為替が取扱えるものは取扱つて、それを為替管理委員会でどんどん売つて行くという形式にこれを直さなければいけない。どうぞ又そういう点で皆さんの御協力をお願いしたいと思うのでございます。  それから先ほどお誘いたしました外国銀行の持つておる資金から、円じやありません、向うにあるお金、ドルなり或いはスターリングなりそういうものは向うが融通してやろうと言つたときには幾らでも借りるということでなければいけないのである。こういう点をお考えになつて頂きたいと思います。  その次に私は長期資金の問題にタツチして見たいと思うのでございますが、昨年の二月にドツジ氏が来られまして、日本の安定計画というものを立てて四月の終りに三百六十円の為替相場というものが立てられた。それから先ず五月から安定計画というものがだんだん進行して参りまして、企業の合理化それから金融を引締めて行く、こういうことで来たわけであります。そこで金詰りの問題についての日本の銀行屋さんと昨年ドツジさんとの会合の際の話に、どうもお金がなくて困ると言つたときに、ドツジさんは日本の銀行を叱つたわけです。どういうふうに叱つたかというと、あなた方はアメリカの銀行もこれは昔やつた過ちなんだが、インフレーシヨンが進んでおる間は物はどんどん上つて行くのだから物を持つていますから金を貸して下さいと言うが、貸して置いたつてちつとも心配はない、必ず金が高くなつて返るのだからいいものでも悪いものでもどんどん貸して、借手というものの品性、素質というものにはちつともお構いなしに、金を貸して行つた。それだから今度はいよいよ安定期が来たというときに必要なところへ出すべき金が手許には皆悪いものが入つて来た、そうしたときに悪いものは少しつぶれるかも知れないからまあまあというので悪いものにも少しばかり、いいものにも少しばかりというのだから本当の合理化というものはできない。これは皆あなた方が悪いのじやないか。とにかく金融機関、というものが本当の金融業者としての使命を全うしていないのしやないか。こういうふうにドツジさんが言つたのであつて、今でもそういうふうに彼は信じていると思います。これは銀行の日本の業者というものの誤りでどうしてもオーバー・ローンというようなことが問題になつておりますが、これは銀行それ自身の力によつて徐々に直して行くより外に途はございません。ところが日本の悪い癖で自分の銀行だけやつてもそんなことをしていたら皆お得意が逃げてしまうからできないというようなことで、皆が共同して悪いことをしておるというわけではありませんが、共同してサバタージユをやつておるということになる。一行が先がけをして自分のほうの仕事の合理化と、それから内容充実ということに努力するということが足りない。こういうふうに私は見つております。それからドツジ・ラインが昨年五月に始まつて今日まで来て、どういうところがドツジ・ラインとして欠けておつたか。つまりどういうことがまだ手が着いていなかつたかというと、これは長期資金の問題が手が養いておりません。それは何故かというと、ドツジさんが来たときには何しろインフレーシヨンが進んでいて、こいつをとめなければいけない。そのために先ず予算の均衡から行け。政府という最大の消費者の経費を小さくして行かなければいけないということから始まつたのでありますから、長期資金なんという問題に触れている暇がなかつた。今度はあります。そこで私は今度はドツジさんに持つて行く問題は、長期資金を如何にすべきかということが問題であつて、そうしでその長期資金というものは、即ちどうしてファイナンスすべきか、つまり工業のほうは興業銀行、勧業銀行をして金融社債券を発行さして、そうしてそれを預金部のほうで買つて貰うなり、外の銀行に買つて貰うなりしてファイナンスするということ。もう一つは農村、漁村に対する金融はどうしても民間から金を預かることができなければ、財政部面から何十億か、或いは何百億かの金を出して、そうして一つの農漁業金融勘定というようなものを作つて、そうして極く公平な委員がそれを管理する、委員が六人か七人かでそれを管理して、運用は農林中央金庫に……帳面つけて、払う、貸出をするというようなことを考えて行く必要があるのじやないか。どうしてもドツジ・ラインの修正じやなくて、一年間のやつたのに今度あとをどういうふうにしてこれを結末をつくべきかということを、私は長期の金融を如何にすべきかということを政府及び民間がドツジさんに持つて行かなければいけない。こういうふうに考えます。もう一つは日本は何かにつけて今見返資金、見返資金というのですけれども、自主性をとれないやり方はもうやめて貰いたい。それは占領軍費に相当すべきだけのドルをアメリカでそつくりドルで払つてつて、それを日本銀行の見返りにするならば、日本銀行はそれに対するノートを出して来る。ですから造船の資金にしても七分三分で行く、或いは五分五分で行くとかいう問題は起らない。もう造船は何ぼで行くという……日本が自主的に決定すべき問題だ、こういうふうにして行きたいのでありますから、この点も占領軍費というものの代り金はドルで以てそのまま払つて貰いたい。ドルで払つたものに対して、ドルができたに対して日本銀行の札が何千億出たつてそれはインフレーシヨンじやありません。何故かというと、ここにドルと金の裏付けがあつて出して行くのだから、そういうふうに日本の金融行政というものをできるだけ早く自主的にしなければいけない。だからもう来年見返資金でお金を借りたいという話を聞くと私は気持が悪い。来年のことはよして貰いたい。来年は見返資金はないと思つて頂く。再来年は勿論ない。そういうふうにして日本の自主性、金融においても自主性を回復して日本の産業の再建、それから富国にするということに進んで行かなければならない、こういうふうに私は存じております。そこいらで一つ……。
  159. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 大変結構なお話を承わつて啓発されるところがたくさんあるのですが、ただ外資導入の面で五年間に亘つて全く吾々が期待したような外資導入ということは行われていないのです。それで只今お話のように本当に日本の経済界を根本的に建直すような一般の人が続々来て貰うような方策を何とか立てなくもやならんと思うのですが、今日は遺憾ながらそういう実例が余りないのは残念であります。これについて具体的にもう少し外資導入を徹底的に図るような工夫を加納先生お持合せがあつたらお示し願いたいと思います。
  160. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) お答えいたします。五年間外資導入という声ばかりで来なかつたということは、先ほどお話したように全く受入態勢がなかつたということ、それから地図の面から日本のほうを見ますと、東洋のこつちのほうにこういう小さい鳥がある。そうしてそこの向うのほうにコンミユニティ・チヤイナで赤く色付けられておる。朝鮮のほうはこの間のように攻めて来て、今の様子は、又非常に悪くなつております。中共が入りかかつておる。こういうよう国際情勢から見て、日本にお金を持つて来るということはどうも極めて危險だと思うのは当然である。そういうようなことでよい企業家が何度か来て調べますが、どうも気乗りがしないのです。もう一つは先ほどのような税金が高いということ、それからまだ日本の役人でも、日本の全体でもが非常に敗戰の後の経済というものが悪いのだということを本当に自覚していない。ですから未だに外国人が金を持つて来るのは怪しからんじやないかというようなことから非常に窮屈なところがあるのです。ですからこれを考えて、よいものに対しては先ほどお話したように税金を少くするなり何かする必要がある。むしろ一旗上げする者が悪いことをするというのは、これは外国人に限らず日本人にしても悪いことをする。これはそんなことは外国人が悪いことをするということを言わないで、悪いことをするのは外国人でも日本人でも取締るのだという自主性を回復して行きたいなあと私は思います。これは何としても講和條約ができて日本の自主性というものを回復しなければいけない。それから單一為替につきましても、單一為替ができてから初めてこれが二十ドルで向うが買いたいというときに、こつちはコストは八千円かかつておる、二十ドルなら七千二百円だからとても辛い、三百六十円だから……お前のほうで二十一ドルまで行つてくれないか、そうすれば俺のほうも八千円を七千五百円までしてもいいがという交渉に入つて初めて日本の商売というものは自主性なものになるわけです。それを單一為替が作られていなかつたときには、海産物一ドル百円以下のエクスチエンジ、瀬戸物は大抵五百円のエクスチエンジ、成るものは九百円のエクスチエンジ、それで盲貿易なんです。いわゆる向うのほうがドルで決めただけでこつちは知らない。こつちは円さえよければいいのですから、エクスチエンジをよくしてくれればいいというので来たのがつまり盲貿易というものの非常な欠点です。これがドツジさんが来られて、昨年三百六十円という為替ができたときに私は非常に喜びました。そういうようなことでつまり何とかして早く自主性を回復しない限りは、本当の日本の富を作つて行くということはできないのですから、こういうふうに私は考えておるわけです。
  161. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の問題に関連すると思いますが、朝鮮動乱が起きてすぐに、今おつしやたように急いで輸入をすべきだつたのに、荏苒日を送つて今まで殆んどそれらしい実績が行われていない。この点はもつと具体的にいうとどこいらにそういう支障があつたというふうにあなたはお考えになりますか。
  162. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) やはり日銀とか為替委員会の考えが成るべく輸出を盛んにして輸入を倹約してお金を溜めるということにあつたのですね。ドルが溜つたから喜んでいたのですね。宮嶋清女郎君が、大変お目出度いことがある、ドルが溜つたというのです。だが僕はそんな馬鹿なことはないじやないか。ドルが溜つて何になるのか、原料を輸入しなければ何にもならないじやないかとそう言つたのです。又他の人の意見によりますとやはり日本が国際仲間に入るのにはドルを五億ドルなり十億ドルなり持つていなくちやいけないだろう、見せ金を持つて国際基金に入ろうじやないか。或いは輸出輸入銀行から、アメリカから金を貰うにしても幾らか見せ金がなくちやいけないだろうというような意見があつたのです。そこで今私はちよつと考えが変つたのです。ここまで来てどんどん輸出が出て行きましようから、私は国際通貨基金の中へ四億ドルでも五億ドルでも日本は入れてメンバーになつたほうがいいと思います。なぜかというと仲間になつたから日本の金がなくなつたというわけじやないのです。今度は輸入がずつと多くなつて資金も要るときになつたらそれを担保にしてどんどん借りられますから、いずれにしてもこうなつたらあれに入れて貰つて、それだけのものを借りるということにしたらいいじやないか。いずれにしても商売人じやなかつたということだけは事実ですよ。だから国内に溜つちやつたのです。
  163. 高橋龍太郎

    ○高橋龍太郎君 その問題は私はこういうことを考えるのです。輸入が思うようにできなかつたという問題ですが、あの時分に政府も日銀も思惑に金を使うことを非常に恐れておつたのです。ところが商売人に全然思惑を禁止するといつてもそれでは動かんのです。多少思惑を許せば、決して思惑といつても皆儲かるのじやない。見込違いで損をするやつがあるので、とにかく危險をその人に負わせなければ動きはしない。そうして政府が思惑をしているのです。あの当時盛んに輸入をするということは……。それで思惑を民間には禁じているが、自分一人で独占して思惑をやる。それでは輸入が円滑に行くわけではないということをその当時感じたのです。
  164. 松永義雄

    ○松永義雄君 結構なお話でございますが、僕らの新聞の知識によりますと、先ほど濱口内閣のときに二十七億円で、それで結局満洲事変になつて、そうして日本がここまで落ちて来たということなんですが、あなたのお話をさつきから聞いていると、経済の道徳感、経済を道徳的に進めて行かなければ民主主義にならんということですね。問題は、そういうところを我々も心配いたしております。輸出だけではインフレーシヨンになる、そうして働く者は困る。ところが商売やつておる指導者が、二十七億円で満洲事変を経てそれで今日の日本まで持つて来たその過失の自覚がないと、又日本が百億できたときに日本は亡びますよ。今度亡んだら立てませんからね。
  165. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) これは私は一万田日本銀行総裁にもお話したのですけれども、今日の中央銀行の使命というものは、一つの大きな道徳運動を起すということだと私は思います。つまり金融機関の首悩者になつておる人及び金融機関に働いておる人は非常な大事なことをしておるのだ。これはパブリツク・サービスをしておるのだという自覚の下に金融というものをやつて行かなければいけない。それが足りないので私はこういうような今のオーバーー・ローンの問題でも、それからいろいろな不都合が起つておるのだと思います。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどドルが溜つて、それで早く物が買えないという問題は、日銀とか或いは外為の委員会あたりでとにかくバランスが輸出超過になつて、そういうものが溜ればいいという考えだけでなく、これは本当かどうか分りませんのでお尋ねしたいのですが、アメリカの援助がなくなるから、来年或いは再来年くらいに、そのときの用意にその程度の外貨を持つておる必要があるというので余り使わせない、こういうようなことはあるのでございましようか。
  167. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) それはございません。そういうことはございません。要するに国際貿易の金融というものは輸出すれば輸出しただけは買つて来られる、それからこちらの生産が上つて来て又輸出する、又たくさん輸入できる、こういうことでございますから、その御心配はないと思うのです。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 お話は分りますが、問題は早く輸入できないということですね。現実の問題としてその一番のネツクですね。
  169. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) それがですね、今日になりますと、物がどんどん上つておりまして、そうしてこつちの手続がのろいものですから、向うで十銭と言つて来たものを、すぐ電信を打つてよろしいという場合、もう十二銭、十五銭と上つて来るわけです。そのうち、困つたなと言つているうちに、だんだん時期を失するということもあるのです。それからもう一つは、セールス・マーケツトになつて、売手になりましたが、こつちが買おうと言つても向うがそう乗つて来てくれないのです。それからもう一つは、日本に必要なものは何かというとこれは製造品ではなくて、原料か技術か機械なんですね。機械なんというものを注文しましてからやはり六ケ月も九ケ月もかかるのです。ですから勿論許可があつて注文しても暫らくは、機械が来るまではそのお金がそこにあるわけなんです。そういうようなこともあるのです。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局経済的な條件ですね。経済資本になつている、それ以外のさつき私が申上げましたような……。
  171. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) 政治的に用意をしたか……。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 特に使わせないという……。
  173. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) そんなことございません。今言つたように援助なしにしてくれている。日本の船を自由に海外に出してくれる。そうして日本で使つたお金だけはドルでちやんとお払いをしてくれるというなら結構なんです。そうして今度は日本人の信用によつて外資導入というものをやつて行くのです。だから日本というものが輸入国なんです。どうしても輸入国でそうして外資が来ないで済むというわけに行かないのです。ですからどうしても日本人の信用を回復して個々に向うと話合で個々の外資というものを入れで来るという状態に早く返さなければいけない。こういうわけなんでございます。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つちよつと……。先ほどのお話ですと、日本はこの際に外資を稼いで日本経済の規模を拡大して発展さして行くにいいチヤンスだというお話でございましたが、最近世界的にも経済復興の段階からデフエンス・エコノミーの段階に入つて来ているわけです。最近の日本の実情を見ますと、成るほど外資は溜つて来ておる。ところが今の日本の経済は特需とかそれから輸出にしましても……そういう政治的なデフエンス・エコノミ一に必要なものの輸出ですね。それで成るほど日本の最近の生産水準は上つてます。併しながら日本の本当の平和的なエコノミーの部面がどうかというと、そういうほうに圧迫されて来ておるのですね。従つて生産水準は最近は下つて来ておるのです。生計費を見ますと、七、八月頃は戰前の七五%くらいが、九月頃には七〇%くらいになつて来ておる。そうなりますと、成るほど外資は溜つて行く。併しながら日本経済の中身はだんだんデフエンス・エコーノミーに編成替されて行く。そうして特需とか輸出とかは殖えますけれども、又乏しい日本の経済の下でそういう国防的経済というのですが、そういうほうになつて行きますと、成るほど外貨は溜つたけれども、日本の経済の問題が一時停頓しやしないかということを心配するのですね。
  175. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) それは勿論心配でございます。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 特に朝鮮動乱を……一応まあドツジさんの政策によつて安定して来て個々の段階に入ろうとしておるときにあの問題が起つて、そうして滯貨も一掃されて一時景気のいいように見えたわけですけれども、そのいい景気というのはデフエンス・エコノミーから来るところの景気である。そうなると、どうも我々の思い過ぎかも知れませんが、例えば最近のオーバー・ローンの問題でも、政府資金を余り使わないようにして銀行貸出を受けるとか、そうしますと、それは特需と国内需要と輸出の需要、この三つの関係を成るべくデフエンス・エコノミーに都合のいいように、例えば電源開発をさせるとそつちのほうにセメントが多く行き、特需のほうに間に合わなくなる、こういうようないろいろな調整があつてああいうことも起つているのじやないかとも推測されますので、そうなれば成るほど生産水準は上る、外貨も殖えていいように見えるのですけれども、一時ここでいわゆる自立再建の問題がそういう点から一つ示唆される、こういう点はどうなんですか。
  177. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) こういうことになりましよう。世界の多くの国は軍備競争のエコノミーになつております。それから日本はその間に介在しまして東南アジアのマーケツトに進出して行くというチヤンスを余計作られるわけなんです。それで日本のエコノミーそれ自身はデフエンス・エコノミーでも何でもないのです。この際当り前のエコノミーを動かして行つて、よその国の要求をするものを作つて行かなくてはいけない。ですから生活水準が下つたということは非常に悪いことであつて、水準はどうしても少しずつ上げて行かなければならない。それには物を輸入するにしても、内地にはこれだけ使う、セメントでも内需にこれだけの物は必ず使つて、あとは輸出するのだ、而もその輸出は赤字の輸出はいけない、必ず外国の水準から見ても輸入して来たコストに労力金利を加えても常に黒字になつて行く輸出でなけれだならない。そういうふうにそろばんの合う経済にして日本の生活水準を上げて行く。これだけ一つ按配しなければなりませんですね。
  178. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 あれですね、円で物を輸入するというような途は開かれる可能性はあるのですか、ないのですか。
  179. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) それはありません。円で輸入するというのは、どうしても物を輸入するにはこつちから持つてつた物があつて、そこで外貨が溜つて、その外貨で物を輸入して来るのだからいきなり円を向うへやつて見たところで向うは紙屑と同じことなんです。
  180. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこでさつきの外資導入ですね。必ずしも日本では外資を、アメリカのドルを獲得すればよいという考え方は間違つておる。物を豊富にするのが日本再建に一番よいと思う。好意あるアメリカ人なら日本に物を持つてつてやる。そこで円を受取つておいて適当な機会に又その円で物を買つてつて来る。こういうようなことはないのですか。
  181. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) 私の申します外資導入という、ドルを輸入するということは物を持つて来るということなんです。ドルなんかこつちへ持つて来たつて使えない。それは物でドルを借りるということは、ドルで何億円の機械を向うで作つてくれて、その機械が日本へ入つて来る、そしてこれが水力電気なり、紡績の機械やなんかになつてこれが運転します。物を生産して輸出したり、国内に入れたり、そうしてこれの儲けたお金が十年なら十年経つと、これを買つて来たドルを返せるようになる。ですからその間十年なり五年なり機械を借りて置くというのが外資導入であつて、それを通俗的に言えばドルを借りた、こういうことになるのです。
  182. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そこでもう一つ、映画のフイルムなんかどんどん来ておりますね。これを円で輸入を現在しております。それで向うへ持つて帰ることはやかましくされておる。あんな消費物件でなしに生産物件をああいうふうな調子で向うから持つて来る好意がアメリカにないかどうかということですね。
  183. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) それはあるのです。それはつまりこちらがそういう受入態勢があつて、これが安全な情勢だということなら喜んで来るののです。だから私はこの外資導入を受入れられるような態勢に一つしたい。外資導入は我々は歓迎するのだ。つまり外資導入ということは資本、つまり機械と技術のことなのです、それを受入れられるような態勢にすれば参ります。このリーダース・ダイジエストのお金とフイルム会社のお金が溜つたということは、これは二つの例外です。それで彼らはすぐ円をドルに替えて持つて行こうというふうにはできもしないしやりもしない。とにかく日本の投資になつたわけです。  それからもう一つはこういうことなのです。よく通俗的に言いますと、外資導入ということはドルが入つて来るとすぐこう思う。ドルが入つて来るのじやなくて、物が入つて来る。併し機械を作つた会社が日本にこの機械を借してくれるわけじやない。ここに別にバンカーがありまして、リロンレトア・クリバツサンの会社、或いはクリフローブとかいうような投資会社があつて、それがこれにキヤツシユで払つてくれる。すぐ作つた人のほうに払つてくれる。そうして日本のほうには、お前俺のほうで利息をつけて五年で返してくれればいいよと言つて、このバンカーは結局安くお金を借してくれる、こういうことになるのです。こちらは輸入した機械で作つたお金で漸次ドルにそれをコンヴアートしながら返して行く、こういうことになるわけです。ですから外資導入する場合でも日本でそれは全然消費されるものを作るのか、或いはどの程度までそれは輸出するものを作るのかということで、外資委員会のほうはそれで外資導入をきめるわけです。現に例を申上げますと、レミトン・レイト・タイプライター・オブ・カンパ二ーはこちらで、日本でタイプライター会社と共同して今度は会社を作るわけです。そのときにレミントンが先ず一番先に二百台ばかりの機械を持つて来まして、そのときに外資委員会の考えることはどういうことかというと、そのタイプライターを日本の役所なり会社なりにただ売つてしまつて、それだけ円で以て取つたということでは困るのだが、いつになつたらタイプライターを輸出することになるのだ、こういうことと、レミントンのほうでは一年では三分の二は日本で消費されるでしよう。日本はタイプライターが少いのだから三分の一は外国へ出します。日本で作つたタイプライターは安い。労賃が安いのですからドルが二年後になつたらそのパーセンテージが多くなつてフイフテイ、フイフテイになります。三年になりますと輸出の三分の二になつて日本の商品が三分の一になる。それですから、この外資は輸出しても、結局は自然と利益によつて日本が返すこともできますというようなわけです。そういうようなプランはやつぱり立てなければならない、外資導入の。
  184. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 為替レートの問題です。ドツジさんが来朝されたときでも、一時レートの引上げ、円を上げるというその問題が噂されたのですが、国際物価が今後相当上るような場合、この為替のレートの問題は研究の余地はないものでごさいましようか。
  185. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) 私は今のところじや今のレートでいいと思いますが、それはドツジさんの来られましたときはまちまちでありまして、大体紡績業者は二百七十円でよかつたのです。輸出が十分できたわけです。併しいろいろなものを総合して三百三十円できめようというところだつたのですけれども、日本の企業というものを少し助ける意味からいつて、この為替相場を甘くしようというので三百六十円という相場にきまつたわけです。ですから日本の輸出業者には大変に都合のいい為替レートがきまつたわけです。勿論輸入するのに高くするなという理窟もありますけれども、輸出しても現にそれが全部がすぐ向うに行くわけじやなくて、幾分何パーセントかは日本で消費されるのですから、三百六十円で行つても紡績業者は大変な利益なのです。コツトンは三百六十円で買えますけれども、綿糸紡を出すのには三百六十円でも儲けがあるということで行つたわけです。ところが昨年の九月にイギリスの方面でこの切下げがあつて、そうして三十何ケ国が一時に切下げをやつたわけです。あれで日本は非常に困りまして、丁度朝鮮の動乱のあります前まで、やはり為替相場では相当苦しんだわけです。そうしてこれはどうしても四百五十ぐらいまで直さなければ駄目だ。殊に鉄鋼業、造船業ということになりますと四百五十ぐらいにしなければいけない、そういう考えを私持つておりました。到底三百六十円は無理だ、これは何とかして改革をしなければいけない。ところが朝鮮の問題が起つたわけです。今日では三百六十でやつておりますと、アメリカの物価と日本の物価とは特別のものを除いて、ニツケルとか何とかいう特別のものを除いては大体水準は同じなのです。  それからもう一つ、それについてお話するのですが、日本はアメリカに比べて非常に有利な地位にあることは、若しアメリカと日本との値段が今のエクスチエンジから見て同じだとする。この品物が同じ値段でできたというときには日本のほうが断然得です。アメリカのほうは運賃をかけなければならん。東亜に持つて来なければならん。朝鮮に持つて行かなければならないが、日本はそれだけ近いのですから得しておるわけです。
  186. 森下政一

    森下政一君 さつきのお話で、直接ドルでくれると、それならばそれを見返りにして日本銀行が借してくれるというようなら大変結構だと思つています。そうするとそれは結局アメリカのタツクスペイアーの金になるのですか。
  187. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) いや、なりません。当然見返資金ですね。見返りのもとは何かというと食糧であり、燃料であり、それなんかはタツクスペイアーの負担で来ておるのです。
  188. 森下政一

    森下政一君 タツクスペイアーの負担にしてもそれは比較的軽いという感じがするが、現実にドルということになると今のでは駄目だが、実際には向うではヘビーになる感じもあるのですね。
  189. 加納久朗

    ○参考人(加納久朗君) ところが、ドルがあるということは、日本がドルを使つて綿花や何かを好きなものを買えるということです。こつちはいい物でないと買いませんから、それは大威張でどんどん欲しいと言うて差支えないと思います、もう今日では。
  190. 小串清一

    委員長小串清一君) それではこ の程度で散会いたします。    午後四時三十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            佐多 忠隆君            木内 四郎君   委員            愛知 揆一君            黒田 英雄君            松永 義雄君            森下 政一君            小林 政夫君            杉山 昌作君            高橋龍太郎君            油井賢太郎君            木村禧八郎君   説明員    国税庁長官   高橋  衛君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君   参考人    元横浜正金銀行    取締役     加納 久朗君