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1950-07-25 第8回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十五日(火曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件 ○船舶公団共有持分処理に関する  法律案内閣送付) ○金融政策並に制度に関する調査の件  (最近の金融情勢に関する件) ○連合委員会開会の件   —————————————    午前十時三十八分開会
  2. 小串清一

    委員長小串清一君) これより委員会開会いたします。本日は船舶公団共有持分処理等に関する法律案について質疑を続行いたします。御質問ありませんか。
  3. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 現在持つておる船を国家肩替りするということは或る程度了解ついたのですが、今後日本の海運界というものは相当発展させるべき段階にあると思います。そういう際において、新しい、能率のいい船をどんどん作らなくてはならないと思いますが、それは今までの船舶公団というようなものがないということになると、国家としてどういうふうな助成方法とか、或いはそれに対する将来発展の策というものを講じられるのですか、若しあなた方でお分りでしたら発表願います。
  4. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは恐らく運輸省海運局の方からお答えするのが筋かと思いますが、一応我々の方で承知しております範囲内では、船舶公団が從来やつておりましたような機能については、特にこれは見返資金の方で融資をするということに昨年から切替えをしたわけでございまして、その点においてこれが公団の解散ということも行われたように承知しておる次第であります。尚これは或いはまだ申上げるのは早いかも知れませんのでありますが、新聞紙上等に出ておりますように、低能率船舶につきまして、これをすスクラツプ化して買上げるというようなことむ何か立案中のように聞き及んでおります。
  5. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今のスクラップの問題が論議されておるのですが、若しお分りでしたら、どういうふうな値段で、具体的にどういうふうに処理するわけですか。
  6. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 実は只今の点につきましては、大体そのやり方等については、我々の方でも協議を受けておるのでございますが、その船舶の買入れ価格等については、まだこれは運輸省の方でやつておりますので、詳細なことは確実なことは聞いておりません。
  7. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今度の肩替り分の船でもスクラップにした方が余程気がきいておるものが相当沢山あると思う。そういうのは国としてはやはり何か処置をとるのですか。
  8. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今申上げました層化の問題につきましては、これは船主の方でこれをやつてくれという要望のあるものの中から国家買上げるというような建前になつております。この船舶公団が今共有持分を持つておるような船舶につきましては、これは大体少くとも修理を加えておる、或いは割合に新しいものであるというような船でありますので、まあ船主の方からこれを買上げてくれ、スクラップにしてくれというような船は割合に少いのでありまして、現在見込としましては、これは全体で船舶が、最初御説明いたしましたように六十万トンばかりでございますが、その内該当するものは恐らく二万トン程度のものではなかろうか、実際はそうこれについては大した影響はないだろうと、こういうふうに考えております。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつとお伺いいたしますが、第一條の第四項はどういう意味ですか。ちよつと御説明願いた
  10. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これはこの條文字句で見ますと、非常に分りにくいのでございますが、この数字で申上げますと、共有契約に基いて引継いだ共有持分価格と申しますのは、この間御説明申上げましたのですが、百二十一億あるわけであります。そうして第二項により引継いだ船舶公団復金に対する債務金額というのは七十億あるわけであります。そうしてその七十億を超える金額というのは、百二十一億から七十億を引きますから五十一億、そうしてこの船舶公団基本金というのは五十六億九千万円ございますので、その超える金額に相当する金額基本金減少を行うというのはつまり超える金額が五十一億でありますから、五十一億だけ基本金減少を行う、從つて五千六億九千万円から五十一億を引きますので、約五億八千万円になるのでありますが、五億八千万円まで基本金減少を行うということに数字的になるわけであります。この意味は、つまり船舶公団からこの資産に当ります共有持分、つまり財産を国の方に持つて参ります。それに見合う債務である復金債務を三項により国に肩替りする、同時にその残りである基本金部分五十一億というものを国が、船舶公団としては一応債務に持つておりますので、それを弁償してなくして、つまり公団の持つております資産を国の方へ引継ぐと同時に、公団の持つている債務を、そこでそれに相当するだけの債務を減らして行く、こういう措置をしようという意味であります。
  11. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 ちよつと資料の方ですが、共有船舶明細表を拝見するときに、トン数が書いてないですね、トン数と、それから各般毎のトン当り肩替り金額、これを済みませんが、一つ出して頂きたい。……今のは分りました。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この国の方の收支としてはどうですか。復金に、まあ復金出資復金に対する出資を減らしているわけですね。そうすると復金出資というものは我々から税を取つて出資したわけですね。それでまあ落ちる。それから他方において何か見合うものができるわけですね。それはどういうものですか。
  13. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは第三項によりまして公団復金から借りておりました債務が国へ肩替りされまして、国がまり復金からそれだけ復金に対して債務を負う。そこで復金に対して債務を負うと同時に出資をしておる。そこでそれをまあ相殺するという恰好になりまして、別に公団からは船つ舶の共有持分は国に入つて来る。その代りに又国に共有持分が入つて来るのであります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは分るのですがね。そうしますと、併し債務引継ぐと、それで復金に対する政府出資が落ちるわけですね。落ちちやうんですけれども、そのままで行くと我々がその債務引継いで、我々が出した税金が、税金として財産があつたわけですね。それが貸付としてなくなつてしまうわけですね。ですからそれだけ損失になるわけですね、国としては……。ですからそれに見合うものがどこかにあるわけでしようね。その財産です。
  15. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) それはこの第一條の一項の方で、船舶公団から船舶共有持分を国に取つて参りますので、それが今のプラス部分に、国としてはプラス部分になるわけです。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどのくらいの価額こなるのですか、実際において。
  17. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これはいわゆる簿価におきまして百二十一億でございます。もう一度御説明いたしますと、結局共有持分として百二十一億のものが公団から国へ入つて参ります。そこでそれに対して、何と申しますか、代金的に考えれば、いわゆる物を買うというような考え方をいたしますると、公団はこの百二十一億をどういうふうにして持つているかというように考えますと、国から五十一億の出資を貰い、それから復金から七十億の債務を負いまして、七十億借金をいたしまして、合計百二十一億にしてこの共有持分を持つておる。こういう恰好に現在なつておるわけであります。そこで国の方へ共有持分を百二十一億持つて来ると同時に、復金の方の債務も国で引受け、国の公団に対する出資もそれだけ減少させる。つまりそれだけ共有持分という財産が入つて参りますので、復金に対する債務を国が負つてもそこでマイナスにはならず、又基本金減少いたしましてもそれに見合う財産が国に入つて来るわけですから、それで差支なかろうと思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういたしますと、これでとんとんだというわけですね。そういうわけですね、帳簿の上では。
  19. 吉田晴二

    政府員員吉田晴二君) そうでございます。
  20. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 字句の解釈のことを伺いますが、第一條の其他の権利義務というはどういう意味ですか。
  21. 吉田晴二

    政府員員吉田晴二君) この一項の意味は、この船舶公団船舶所有者との間の共有契約当事者になるという結局意味になると思うのでありまして、この持分価額と同時にこの持分のいろいろな運営方法等について権利義務はいろいろございますが、これを引継いで行く。国がこの船舶共有契約当事者になる、こういう意味でございます。
  22. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 持分に伴う権利義務ということですが、そのもの評価ということは別に考えなくてもよろしいのでございますか。
  23. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今申上げましたその共有契約という中には、これは持分の問題が大部分になつておりますが、その外にやはりこれに附随いたしまして多少いろいろな権利義務が入つておるのですから、それを全部国が引継ぐということになります。
  24. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 第一條の第四項に「その引き継いだ共有持分価額」としてありますが、この「共有持分価額」には当然今私が質問しているその他の権利義務の分も含んでおると、こう解釈するんでありますか。
  25. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 四項に書いてあります「共有持分価額」というのはこれは共有持分のこの簿価帳簿価格という意味で使つております。
  26. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 そうしますと、その他の権利義務というものは別に評価の必要がないというお考なのですか。
  27. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 一応この四項の操作におきましてはこれは帳簿価格でやつて行く。その他の権利義務につきましてはこれは一般清算の場合にこの処理をして行くということにして参ります。
  28. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 その他の権利義務を国に引継ぐとしてありますから、ここで引継がなければ一般清算でやつて行つていいと思いますが、引継ぐからして何かそれを代表する措置をとる必要があるとかように思われますが、その点如何でしようか。
  29. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは只今の御質問通りでありまして、引継後にいろいろな問題が起つて来ると思うんでありまして、その措置は勿論するわけでざごいますが、一応とにかく四項ではこの帳簿価格処理をして置いて、その後において、引継後においてこの只今共有持分を、今度は又国として処分するという場合においては、当然この権利義務が附随して参りますので、そのときにおいて、その処分価額等についてはその権利義務の制約を受けると申しますか、影響を受けるわけでございます。
  30. 野溝勝

    野溝勝君 お伺いしますが、この帳簿価格というのはなんですか、私はよく知りませんが、時価価額の場合もあるし、それから仕入当時の帳簿価格ということにも考えられるのですが、どちらを対象にしての帳簿価格ですか。
  31. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは当時の各船舶毎に違つておりますわけでございまして、各船舶建造のときにおける価額を元にして作つておりますので、その後それを減価償却を見て算出したものでございます。
  32. 森下政一

    森下政一君 この法案に関連してですね、極めて常識的に直ぐ分りますことは、共有持分を国に引継いだ、それから相手方が何どきでもこれを買取ることができるということになるわけですが、而もその買取りの価額というものは帳簿価格ということに船舶共有契約書でなつておる。ところが時価は今日の状態においても、先日の御説明によると大体三倍ぐらいになつておるというお話であつたが、そうすると買取る方も相手方が非常に不当な利益を得るというふうに考えられるが、これは艦船共有契約というものが締結されており、その第十二條第十三條等によると、どうにも不当の利益というものをチエツクする方法がないというふうに考えられるのですが、そこにちよつと得心の行かないところがある。これに対して何かあまり不当に利益を得せしめるということをチエツクするという手段はないものでしようか。
  33. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今の御質問の点はまことに御説の通りの点もございますように我々も感ずるのでございますが、これを船舶共有契約と申しますか、船舶公団を作つた場合の成立らと申しますか、その際にこういう方針を探られたということに原因があるわけであります。現在のところこれを法的に強制するとか、或いは特別の手段を使うということはなかなか困難のように考える。ただ我々といたしましては少くとも一応これは国に引継ぎまして、今後の交渉によりまして、船舶所有者の方との交渉によりましてできるだけそういう点を少くする。例えて申上げれば現在共有契約の内容について考えて見ますと、著しく船舶所有者の方に有利であると思われるのは、只今御指摘のような十年間は他へ転売できない、また十年間は簿価で買取り得るというところにあると思う。一方においてこの利率は可なり高い利子を払うことになつておる。そういう点を調節いたしまして、将來の問題といたしましては利子の方は標準まで下げる。併し只今特約條項というようなものはなるべく短い期限に変えさせるどいうような点を向うとの交渉によりまして処理するということにいたしたいと考えておる次第でございます。
  34. 野溝勝

    野溝勝君 私がお聴きした心配の点は、今森下委員質問した点なんです。というのは。これが帳簿価格ということになつて処分するということになりますと、それに減価償却見込むのです。そうするというと買つた当時の、建造当時の価格よりもつと安くなる。そうして現実においてはどうかというと船舶株は非常に上つておる。売買をあなたが提唱する十ケ年間ぐらいはこれはやめさせるというような考を持つておりましても、現実の株の動きに対してまでこれをあれすることはできない。そうすると船舶所有者というものは株の動きだけでもマーケット・オぺレーシヨンするということによつて利益を得ることができる。こういう点についても細心の注意をここに裏付けしたような点が出ておらん。そういう点をお互い心配するのである。そういう点について深い考慮が払われておりますか、政府の、国家の金だから何でもいいのだというような安価な考ではちよつと我々としては困るわけですが、そういう点までも考慮が払われておるかどうかということを一つあなたからお聴きしたいのですが……。
  35. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今質問の点は、先程の森下委員からのお話と同様に、先程も申上げましたようにその点についても十分いろいろと案を練つたのでございます。ただ法律以つて、この何と申しますか、一種の既得権でありますか、それを変えるということは、これはやはり法律によつてしてもその既得権を変えるということはまあできない、こういう結論になりましたので、一応とにかく国へ引継ぐことは引継いで置いて、その上で相手との交渉によつて善処して行くということにするより外にしようがないということで、この法律案そのものにはその点は現れておりませんが、只今の御質問のような御趣旨の点については十分注意をして今後において善処して行きたいと、こういうふうに考えております。
  36. 野溝勝

    野溝勝君 我々といたしましては人民の経済を少しでも楽にしたいという気持から質問をしているわけですが、大体個人の商業行為といいますか、かような場合における讓渡のような問題に対しては、時価というものは現実時価を大体施行しているのですが、政府時価という判断が建造時における時価ということになると大きな喰い違いを起すわけです。そうすると結局人民としては最もよい機会に利益を得られるものを、無理に安くさように処分をする必要はないじやないか、まあ法理論定はいろいろ意景あるでしようけれども、一応そういうことが考えられる。そこで政府におきましても、政府の何か機関、建造物などを買收する場合には、相手方は建築当時の値で売るというようなことは大体行われておらんで、現実時価によつて売買をされて、政府がそれを買上げている場合が相当あるのです。一方においては時価現実相場で買う、政府で今度売るものは、その安い当時における建造価格で売るというようなことになると、ちよつと我々としてはそこに肯けない点があるのですが、そういう点を一つ留意願つて、何とかあなた方の方で納得のできるような方法を講じて貰うかして、我々に知らして貰わんとどうもちよつと困るのですが……。
  37. 西川甚五郎

    政府委員西川甚五郎君) 実は皆さんもよく御存じの通り、この船舶関係は最近まで大変不況にありまして、丁度繋船が約半数ぐらいあるという見込でございます。それでありまするから、今直ぐにこの船主共有分を買取るというようなことは却つて今逃げているような恰好でございまして、そのためにそれともう一つは今価額が大変安くなつておりますが、これが又逆に、或る期間の中に、今は高いですけれども又下る時期がある、こういう問題も起つて来るのでございます。それでありまするからして、現在におきましては今の帳簿価格では買取れないというのが現実でございます。そういたしますというと、何年かの先を見ますと、この船が或いはもつと高くなるかも知れない。或いはもつと安くなるかも知れない。でありますから、その点もやはり一応考えて行かねばならんと思います。
  38. 野溝勝

    野溝勝君 そういうことを言うと、僕は相当議論があるのですね、これはそういうお答だとすると、らよつともつと質疑を交さなければならんと思うのです。勿論それは相場というものはあります。変動いたします。併し、今程船舶に対する激変動というものはないと思います、私は……。私はこの激変動期に、時価建造時の価格であるということについては、余りにも私共としては肯けない点があるのです。確かに相場上り下りはあります。併し、今日我が国の造船陣が、今後続くものとして、最も船舶に大いなる事業界が期待を持つておる際に、これが一つ法律の然らしめるところでありますから、船舶公団の解消も、これは法規上致し方がないのでありますけれども、であるからと言つて、成るべく私は、政府法律の許す、規則の許す範囲内で所得を多くしたいというところに着想があつて、私の意見を言うのですから、あなた方のように相場上り下り見通しの上に立つて私は言うわけではないのです、現実が余りに多く開き過ぎておるという点において、政府はもう少し考慮を払つて行かなければならないのではないか、こういう意見なんです。
  39. 西川甚五郎

    政府委員西川甚五郎君) 今おつしやいました通り国民の負担においての支出でありまするから、この点は政府といたしましても、真劍に国民立場を考えてやつておるのは勿論でございます。まあ今後この契約がこういうふうになつております関係上、一応これでやつて行きたい。併しながら、この間におきまして、その時期に応じて、一応何か政府もよいし、そうして又船主立場にもよいような條約に直して行つたらどうかというような考を持つております。
  40. 森下政一

    森下政一君 先刻局長のお話で、私の指摘した点、政府側でも認めておいでになる。それについては、まあ話合いの上で相手方といろいろ協議をして善処したいと、こうおつしやるのですが、これはそういう御希望があるにしても、相手方もやはり利害関係の伴う問題でありますから、恐らく船舶共有契約書を楯に取つて、そう簡単に承服はしないと私は思うのです。それで話合いの上で努力されるというても、恐らく今日政府側でも、必ずさような不当の利益を得せしめないのだという確信を持つたお約束をするということはできないと思う。見通しとして困難ではないかと私は思います。お言葉は非常に結構なのですけれども、実を伴わないという結果が出て来るのではないかと思います。この契約條項文を見ましても、只今も民間でそんな話が出たのですが、例えば第二十三條の「本契約條項を変更する必要あるときは甲乙協議上海運総局長官の承認を経て行うものとする。」ということがあるけれども、このようなところにも引掛けて、條項を変更するというようなことを、仮に政府側が提起するにしたところが、これは容易に相手方が承服するものだとは私は思えない。法律的な手段を以て向うが対抗して来るということになつたら厄介な問題になつて来る。それは単にあなたの希望的な観測、希望的な意見であつて、実を伴わないと思う。  そこで今度は大蔵当局一つお伺いしたいのですが、そういうふうな不当なる利益を、仮に契約條項に関する相手が獲得したという場合に、これは現行税法の下において、税でこれを政府の手に回收するという方法はないものですか。今の税法だと一体どういうことになりますか。どういう税法が適用されて、船主の獲得した不当な利益を税の形において、国庫に回收するという手段がありませんですか。
  41. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 先程私の上げました点で多少或いは誤解の点があるかと思うのです。私の申上げましたのは、現在のこういう、何と申しますか、船舶公団が発足しましたときにこういう契約を以て開始されたわけであります。それを今になつて見ますと、多少或いはそこでいかんと申しますか、何となく船主の方に刺激過ぎるのじやないかという点について、実は森下委員のおつしやることには御同感であると申上げたのでありますが、果して然らば船主利益と申しますか、利益が起るのでありますが、それが非常に不当なものであるかということについてのこれは多少疑問があるのではないかと思うのでありまして、これはそういう契約になつておる以上、やむを得ないものである。そこでこれを変える上におきましては、契約である以上、当然相手方との交渉を要するわけであります。その見通しとしてはお説の通り非常に困難な問題であると思うのでありますが、ただ多少我々として考えておりますのは、現在この相手方に対する金利割合に高い金利を払わせることにしております。その点については割合にこちらが有利な立場にあります。そういう点を利用して現在の只今お話公団買取権期間を成るべく短くする、成るべくこの履行について相手方義務不履行があつた場合には、契約解除ができるというような点については可なり船主側の方でも同意をしておるような状況でありますので、そういうような條項にいたしまして、義務不履行なようなときには直ぐ他へ転売できるというようなことを考えておる次第であります。  尚税法の点については、これはやはり專門の方から申上げる方が或いは適当かと思いますが、恐らく私は再評価の場合にはそこに相当差が出て参りますので、その面においての税の補正があるのではないかと思うのであります。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どなたか御質問したかも知れませんけれども、第一條の「船舶共有契約に基く持分其の他の権利義務を国に引き継ぐことができる。」というところの「其の他」ですね。これは船舶共、有契約書の中で何條か、それを具体的にお示し願いたい。
  43. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは先程大矢委員から御質問のあつた点と同じ点だろうと思いますが、これは先程も申上げましたように共有持分、其の他の権利義務と申しますのは船舶共有契約当事者になるということと大体同じでございまして、條文で申上げますれば、ここにありまする殆んどの各條文が全部該当して来るというように考えております。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全部……。
  45. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 契約書の各條文殆んど全部だろうと思います。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 船価……船の価ですね。これの過去三、四年の変化の状況なのですか。
  47. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 只今ちよつと手許に資料がございませんので、大体のところでよろしうございますか。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今大体のところをお示し願つてあとでもう少し正確な資料か何かで調査して報告して頂けば結構です。—
  49. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは船のその大きさによりまして、各トン数の単価が変つて参ります。それから型によりましても変つて参りますので、非常にこれを概括的に見ることが困難でございますが、仮にF型の船ですが、八百トン未満の小さな船について見ますと、昭和二十三年度の分については七万六千円という数字が出ております。それから二十四年度はこれが大体十万円ということになつております。これは総トン数当りでございます。これは從り量トンの方で申上げますと、從量トンの方は二十三年度が、今のE型が五万七千円、それから一十四年度はこれが七万三千円、普通のあれで行きますと、やはり從量トンの方が或いは間違いないかと思います。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから今後はどういうふうに変化するかというような予想ですが、この点について伺います。
  51. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 大体現在亡の一十四年度の七万円程度のところが現在もそう変化してない状況でございます。
  52. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、二十四年度の簿価に比べて、現在の時価が二倍くらいだというようなお話はそれはどういう違いから出て来るのでしようか。
  53. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは二十四年度の分は大体ですが、現在の時価とそれ程変つてないわけございますが、昔の、昔と申しますか、從来から、戰時中からずつと引続いて建造しておるものもございます。そういうようなものについては可なりの倍数が上つておりますので、それを全部引つ括めて見て参りますというと、まあこれが例の地方税の場合の評価のときに比したのが大体三倍というような数字が出ております。これは非常に正確なことではございません。
  54. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると新造船の方では余り簿価時価と変化はないわけでございますか。
  55. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) そうでございます。
  56. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それからこの共有持分価格、ここに出て来ておりますのは共有蘭始のときにおける持分価格と相当変化して詰るのでしようか。
  57. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) それは例の最初に御説明いたしました貸借対照表の数字がございますが、この中の百三十五億という数字がございます、これが最初建造の時の簿価でございます。それから償却したときの十三億一千一百万、これが減価償却に当つております。それを差引いた百二十一億が現在の船舶の総額になつております。從つて最初の建造当時の合計いたしましたものは百三十五億であるということでございます。その間の差は十三億だけが変つております。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この十三億の減価償却をした後は共有開始があつて以後ずつと累積したものであるわけですが、そうすると百三十五億の方は共有開始の時における簿価なんで、それから減価償却を引いたものが今の共有持分価格になつておるので、その間の減価償却のマイナスがあるだけで、価格自身についての変化はないわけですか。
  59. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) その間の価格の変化はございません。
  60. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、共有船舶の総価格というのはどのくらいでございますか。
  61. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは船舶所有者の方の共有持分が大体八十億になりますから、それを加えましたもの、現在百二十一億が二百一億という数字になるわけです。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると船主が持つている持分よりか、今後は国家が持つておる持分の方が多いということになるのですか。こういう共有船舶が稼ぎ出した利益金はどういうふうな処分になるのですか。
  63. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これはつまり共有契約の内容になつて来るわけでございまして、一応船舶の運行によります管理上の損失というものは、これは政府の方では分担しないことになつております。先ず最初にそういうことになつております。そうしまして、收入があつた場合、その益金は先ず船主金利をそこから払う。それからその次に国の方の金利を払う。それを超えまして更に益金があります場合には船主の方の償却を払う。更に益金がありますれば公団の償却に当てる。更に益金がありましたならば前年度の只今金利償却というようなものが不足して繰越しておるものがあればそれを払う。若しそれがない場合にはその分はこれは船主の方の收入になる、こういうような規定になつておるのであります。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その利益は、自営になて以後の利益の実績なるものは分つりておるのですか。
  65. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは從来は御存じの通り船舶運営会で運行いたしておりまして、船舶運営会の方から殆んど、何と言いますか自動的に公団の方に入つておつたのであります。この四月から自営になつて参りまして、これは決算期母に見るわけでありますのでまだその時期になつておりませんので、現在のところは数字はまだ分つておらんわけであります。
  66. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 大体今までの説明で要点は分つたのですが、十年経つたとき、例えばこの契約によるというと船主が売りたいときは売つてもよいし、それから自分の方が利益が相当あるというような場合に買取りが自由になつておるのですね。そうすると国家から見るというと、国家利益のある場合には皆船主の方に引き取られてしまうし、デフレ傾向でも相当強くなつて船がどんどん安くできるような時代になると国家がそれを背負わなければならない、こういう結果になるのですが、そういうふうに我々は今から了解していていいのですか
  67. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 建前の問題として考えて見ますと、まあ十年後にそういう時期が来れば或いはそういうことになるのも止むを得ないような契約、協約になつております。ただ当時の立案者等から伺つて見ますと、海運界状況というものは十年を一期にして上り下りする。もともと海運界は非常に上り下りがあるわけですが、十年の間には、必ずその間には非常なる好況が来る。從つてそのときには両方の有利になるような解決ができる。それを目当てにする、こういうことで立案されたわけであります。こういう説明を言つておるわけであります。
  68. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 そうしますと、インフレでも又いろいろな関係で増進した場合、そういう場合にはいわゆる船舶業者は自由に十年経たなくてもその共有分の船を代価を払つて引き取ることができる、こういうふうに解釈していいのですね。
  69. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 十年間の間に引き取つて差支ないと思います。
  70. 松永義雄

    ○松永義雄君 これは、持分は讓り受けた政府と共有者の関係は、民法の契約が適用するのですか。私法関係ですか。公法関係ですか。
  71. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) これは商法の適用があります。と折衝いたしてお
  72. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 いつかどなたか聴かれたようですが、そうすると船舶公団が解散になりますと、大蔵省にすべてが移るということになれば、船舶公団の從業員というのは大体が大蔵省に移されて行くのですか。それとも今の大蔵省の人員だけでこの仕事をそつくり引き受けてもやれるということになつているのですか。それからその人数はどのくらいになつておるのですか。
  73. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) 船舶公団は、非常に多いときには一時百八十人くらいおつたような時代もあるのでありますが、更に昨年からその船舶の新造の方は停止になつておりましたので、その解散になりましたときは大体百人ぐらいの人数になつたわけです。更にこれがだんだん清算が進んで参りますと、人は殆んどなくなつて来るわけでございまして、この共有契約の運行だけの問題になつて参りますと恐らく四十人程度の人で済むことになるわけです。それ以外の人は大体他に転職して行くということになつております。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この船舶共有契約書の十二條の二ですね。この説明をちよつと……。「乙は何時にても甲の持分を買取ることができる。この場合にその買取価額は甲の持分帳簿価額に未払の金利及び諸掛を加算した額とする。その価額が零の場合は甲はその持分を無償にて乙に讓渡するものとする。」
  75. 吉田晴二

    政府委員吉田晴二君) この「乙はいつにても甲の持分を買取ることができる。」これは当然はつきりしていると思います。その次のその買取価額はその場合に、原則としては帳簿価額である。ただこの、先程申上げましたような共有契約書の裏にございます第十條の「別に定める基準」によりまして、つまり運行上利益が出なかつた場合に、金利及び諸掛が払えなかつた場合には、これが段々あとへ積み重なつて来るわけです。從つてその分はこれを買取る場合には、その分も払つて貰わなければならない。それからその逆に非常に順調に行きまして漸次償却しておるというような場合には、公団と申しますか、政府持分が償却されまして、帳簿価額か零になつているというような場合があるわけでございます。そういう場合には、これはもう何といいますか、その運行している間には乙が段々にそれだけの支払をして行つて償却額を払つているのですから、全体の船価を一部ずつ償却で払つていたということになるわけです。毎年運行利益を挙げて払つていたということになるわけです。
  76. 小串清一

    委員長小串清一君) 只今大蔵大臣が見えましたから、この質疑を暫らくこのままで休みまして、先般から聴いておつた金融的な問題について、大蔵大臣への質疑を続行したいと思います。
  77. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この委員会に掛つております証券取引法の一部を改正する法律案に関連して大臣にちよつと所見を伺いたいのですが、大体昨年の十一月あたりから有価証券が非常に値下りをして、各方面、経済界に及ばず影響が大きい。これに対して何らか政府において、殊に大蔵大臣として対策をお講じになつているかどうかというようなこともその当時伺つたのでありますが、その当時は単に金融的な措置を以て何とか善処して行きたいというような御回答があつたと思つておりましたが、その後又更に株価が暴落し、七月の上旬まで継続したわけであります。その間においで証券業者が非常に内容が惡化いたしまして、相当の倒産者もでき、又倒産に近い業者も数多くできている、こういうような状態になつておるわけであります。幸いと申しますか、昨今急に朝鮮事変等において株価が上つて、一息ついたような形にはなつておりますけれども、それに対して新聞紙上等においては株価が上つたから、何かこれに対して投機的なようなことのないように処置をしなくてはならないというようなことも発表され、日銀当局などからそういうような意見も出ておつたわけであります。そうしますと、一貫して考えて見ますというと、まあ現内閣においてはディスインフレの線を非常に強調されておるのですが株価の値下り等から勘案しますと、非常なデフレの傾向を示しておるのであります。そのデフレ当時においては何とかしよう、何とかしようと言いながら、何もしないでどんどんデフレの傾向が強まつて行くのを放置し、多少デフレが立直ろうというと、それに対しては、投機的傾向があるからこれは何とかしなくてはならないというふうなことになつて参りますというと、ディスインフレでなくして実際はデフレになつて、而もそのデフレの傾向を強く強く推し進めて行くというふうにしか我々考えられないのですが、将来政府としまして、いろいろ昨今のような突発事件等によつて多少デフレが変更されるというふうな形を示すような場合に、果してどういうふうな対策をお示しになるのか、その根本基本をこの際明確にされて、今までのデフレが惡いんで、これを是正する方がいいというふうなお考を持たれておるのであるか、或いはそれとも多少でもインフレ傾向になるのは好ましくないというふうにお考えになつておるのか、この際明確にされたいと思います。
  78. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話通りに、昨年の夏の終り頃から株式過剩によりまして株価が相当下つて来たのであります。我々としましては、これが対策についていろいろな議論も聞きました。或いは証券引受のために相当の金額を出すべきではないかとか、或いは株式金融についてもつとやつたらどうか、こういうようないろいろな話があつたのでありますが、御承知の通り株価につきましての策ということはおよそ困難な問題で、至難中の至難の事項であるのであります。私はその当時から株価と言いますか、保有会社を作るということは、これは最後の手段であつてやるべきではない。それよりお株式金融の方に力を注ぐべきである。又引受会社というものを新たに設けて、そうして新規発行に便ならしめると、こういう方法で行くより外に手はないというような考を持つておつたのであります。その後銀行も或る程度変つておりますが、日本証券金融会社、或いは大阪証券金融会社、中部証券金融会社を着々促進させまして、又これに金融の道をつける等、私の前申上げました方針で、やはり、金融をつけるということを第一主眼とし、そうして取引員の資産内容をよくするためにできるだけの方法を講じて行こうというのでやつて来ておるのてあります。然るところそれが相当期待せられましたところへ持つて行つて、朝鮮事変が起りまして、これをきつかけに相当上向いて来ておるのであります。株価の上向と申しましても、最低六十二円幾らが十八日に七十九円八十九銭になりました。二割六分程度の上り方でございます。二月の十四日、ちよつと景気が出たときは八十円になつております。昨年十一月の平均は百円を超えておりますので、七十八、九円になつたからといつてそう驚くことはないのであります。然るところ新聞に政府並に日銀の方で、過当投機があるのではないかということを心配し、何かあるのではないかということが、新聞にあつたようであります。又持株整理委員会の方で持株を売出すのではないかというようなことが、取引関係者の人に噂された。こういうふうなことを聞きましたかち、私は持株整理委員会の株は、今売出すときではないと、係りの者によつて電話さしたのであります。そうして過当投機の嫌いがあるというか、これは成る程度注意を喚起しなければなりませんが、一番できましたときの九百万株のでき高にいたしましても、今の一株平均の金額が非常に下つておりますので、そう大して心配はない、又取引の状況を見ましても、そう沢山バイカイを付けるということもなしに、びしつと取引が済んでしまう、私はそこに過当投機が行われておるこは思いません。で持株整理委員会の株を今売り出すべきときじやない、この際やはり今の取引の状況はなんら心配することはないからこのままで放つておいていいという、こういう考でいつておるのであります。ただ御承知の通りに、先般三菱化成の権利株の問題で解け合いというような状態が起つて来ました。そうして最近において神岡鉱業ですか、その他三つ、合計四つの会社で権利株の売買が又起りつつあるような状態でございますので、これに対しましては前の苦い経験から考えまして、取引を制限するような方法を採つたのであります。併しその外に、伝えられますところによると政府が今の株式の取引の状況を抑えられておるのではないかというような噂をされておるようでありますが、私はそういう考は、全然持つていないのであります。從いまして、機会があるときには、私の気持を言つておりますが、私の気持以外のことが浸れたといたしまして心にもない風評が立つということを遺憾に思つておるのであります。  最後に政府がデイスインフレの線でなしに、デフレで行くかとこういうあれでありますが、私はデフレで行こうということは毛頭考えておりません。やはりデイスインフレの線で行くのであります。ただ一つの線の中にインフレを止めようという根本的考に変りはないのであります。從いまして今一部に朝鮮事変からインフレになるのではないかというふうな危惧の念を抱く人があるやに、新聞紙上で聞くのでありますが、私はこれは証券界の坂越しだと思つております。朝鮮事変が或る程度影響を及ぼしますが、日本が今インフレになるということはないと思います。我々としまして、又そういう兆候が起きればあらゆる手が打てるのであります。私は今までのディスインフレの政策を堅持して参りたいと思うのであります。ただディスインフレの政策、まあ普通ではドツジ・ラインということを言れておりますが、併し経済は生きものでありますから、そのときどきの状態によつて適当な処置を講じ、そうしてインフレの收束から安定自立へ進んで行きたい、こういう考であらゆる施策をやつておる次第であります。
  79. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 只今大臣のお話の中で、ディスインフレの線を堅持したいとまあお話があるんですが、実際になるというと、あらゆる商品が相当値下りを示して、而も国家的の事業であるとか、或いは価格補給つ金を出すような大産業というようなものは価格補給金を外ずしたり、或いは、国家的の事業、いわゆる国鉄の値上りをするというのことで、そういうことは相当価格が騰貴するという半面、一般中小企業の経営に属する生産業とか、販売事業というのは相当暴落を重ねてデフレの様相を示しておるのはこれは事実であります。而もその間にあつて、日銀の発行せるいわゆる通貨の量というものは三千億見当を堅持いたしましておるにも拘らず、世の中は金詰りであつて経済界が非常に困難を来たしておる、そういうことが続いたのであります。今回朝鮮事変等を契機といたしまして、各産業界にちよつと活気を呈して参つておるのであつて從つて多少デフレのいわゆる是正というような形が行われて参るのでありますが、そういう際には必然的に通貨の増発が必要となつて来るのは当然だと思うのです。これに対してやはり通貨は三千億なら二千億に固定させて行くお積りであるのか、或いは情勢に応じていわゆるインフレではなくて経済界が活気を呈して、その活気に対して或る程度の通貨というのも増量さして行かなくてはならんというふうにお考えになつておるのですか。その点が今国民の相当懸念して見ておるところですが、この際大臣の所見を伺いたいと思います。
  80. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 通貨の分量を幾ら幾らに規制するとう気持は持つておりません。これは経済界の状況によりまして通貨は動くものであります。從いまして昨年の、まあ日によつて違いますが、三、四日前に私見ましたが、昨年の三、四日前と今年の分とは大体八、九十億通貨は上廻つております。私は生産の状況その他から見まして百億か或いは百五十億上廻るのが本当ではないかぐらいに考えておつたのでありますが、まあ大体百億程度に上廻つているのでありまして、でお話のように朝鮮事変が起りましてからECあその他の働きによりまして相当ドルが入つて、そのドルが円に換算されて出るということになるとそれだけ通貨の膨脹になるわけでありますが、その膨脹を抑えるために輸入を急ぐとか何とか手を打つておるのでありまして、朝鮮事変がどれだけ通貨の発行に影響を与えておるかということにつきましては、まだ十分な統計を調べておりませんが、その影響を見て今調べ中であるのでありますが、只今のところ通貨の発行によつて見ますと大した影響はないようでございます。併し今後ドル輸出が非常に沢山ある、即ち朝鮮事変に対するドル資金の獲得が沢山になつて来るようになりますと、その分だけは今のストックとか或いは生産増強にしる通貨の増ということになるのでございます。併しこの通貨の増につきましては先程申上げましたような理由によつて緩和できると考えておるのであります。  以上、いろいろな事件で非常に先々を見る議論があるようでありまするが、まあそう急いでどうこうという取越苦労をするよりも、その場その場で状況を見ながら適当な措置をなすべきではないかと思います。併し問題は輸入につきましても、外貨予算を作つたからといつて直ぐその場で輸入ができるわけでもありません。その間に一ケ月半のずれがあるのでございますが、そういうずれも少くするような方法で今不当な物価の騰貴、或いは通貨の膨脹ということにつきましては緩和するようなことを考えておるのであります。
  81. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 次にドルの手持関係でありますが、大臣の御説明によるというと、上半期は大体三億ドルからの国内蓄積があるというふうなお話です。併しこれに関連いたしまして、例のローガン構想によりますれば、日本の経済界の建直しはむしろ輸入優先を図つて、次に輸出の増進を図るような方法でドル資金の運転をした方がいいと、こういうふうな勧奨を受けたと考えておるのでありますが、三億ドルといえばこれは非常に多額に上るドル資金の積蓄になつているのですから、としてこういうふうなことになつてしまつたんですか、それともローガン構想というものは、もう日本においては考えなくてもいいというふうに経済界が変つてしまつておるのですか、その点大蔵大臣のお考を一つ聞かせて頂きたいと思います。
  82. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は日本の外貨資金が三億ドルあるとは申した記憶はないと思います。相当のドルが殖えておることはこれは油井さんの御想像通りであります。御承知の通りに一月以後からにおきましても一億ドルまではございませんが、相当の輸出超過になつておるのであります。而も又政府管理貿易から民間貿易に移りました場合の管理貿易時代のドル預金はあることはありますけれども、これは又未払にまだ支払わなければならない金もあるかと思います。はつきりこれだけ外貨資金があるということを言つた覚えはないと思うのですが、いずれにいたしましても或る程度の輸出超過によりまするのと、前からのたまりのドルはあるのであります。又貿易以外の勘定におきましてもドルの受取超過に相成つておるのでかなりな部分がございます。從いまして外貨預金につきましてもこのドルを十分活用するようにいたして留るのであります。どうしても我が国の産業の状態から申しまして原料輸入が非常に多額に上るのでありまするから、ローガン構想のように輸人を先にして、そうして輸入されたものに加工して輸出する、こういう基本原則に変りはない。從いまして七—九の外貨予算につきましても、この意味によりまして思い切つて四—六の外貨算よりも輸入を沢山するような方法を構じておるのであります。尚又一応七—九の外貨予算を作りましたその後の状況によりまして緊急輸入の要のあるものにつきましては、尚これを輸入し得るような措置を構じたいと只今検討を加えておる状況であるのであります。
  83. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 もう一点、まあ最近の企業整備に関連するのですが、証券取引所等につきましても大臣のお話によれば、最近整備が着々進行して、大体予定の線に行つたようなお話もあつたのであります。併し四、五、六、三ケ月間で五%のいわゆる証券業者が廃業し、更にそれに倍するところの証券業者が廃業の瀬戸際にあるというような状態になつております。外の産業についても同じようなことが言い得られると思うのでありますが、結局は或る程度のそういうふうな廃業とか整理とかいうようなものが進行して、そこで大体この辺でいいだろうというふうに政府は企業整備をお考えになつておるのか。例えば今の例を以てしましても五%は廃業してしまつたが、廃業になんなんとしておるものはまだ一〇%も残つておる。而もその上の者も決して内容のいいものではないというふうなことになるというと、この辺で整理が進捗してもう十分だというのはどこまで行つても現在の政府の探つておる施策の下においてはきりがないのではないかと、かように思われるのですが、そういう点を勘案せられても、これは一刻も早くそういうふうな整備の仕方ではなしに、根本的に全体がよくなるというような経済政策に転換されるというふうなお考は持たれないのですか。その点を明確にされたいと思います。
  84. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これ亦言葉を返すようでありますが、証券業者の整備がもう大体これでいいんだというようなことは言つたことはございません。ただ先程申しましたように証券業者のうちにはお話のように内容のよくない者もあるのであります。而して証券流通の円滑を図り、或いはいろいろな証券対策としての根本をなすものは取引員が大衆から信用を受けるような状態にあることが必要だ、こういう観念の下に不良の取引員につきましては整理をしなければならんということで指導して参つておるのであります。どれだけ倒れたか、どれだけ倒れつつあるかという数字については存じませんが、この私の趣旨によりまして証券業者は各自各様な整理案を今作成中であると聞いておるのであります。今回の取引所の活況によりまして非常に困難であつたのが或る程度緩和されたところもありましよう。併し私は証券対策の基本は、やつぱり証券業者がしつかりした内容を持ら、大衆から信用されるような態勢を整えることが大切なんだと考えておるのであります。どこまで行つたらいいんだというふうなことはお言葉にもありまするように、皆がうまく行くようになるのを理想にして、それに向つて進んでおるのであります。
  85. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 これは独り証券業者関係ばかりでなしに、国内の中小産業というものを検討いたしますると、大体同じようなパーセントで同じような方向を辿つておるわけです。話は元に還るようですが、結局政府のいうディスインフレの線と、実際に世間に現れた、経済界に出現したところのデフレの線との、これは相違であると思います。そこで大分国内においては表向は派手に何とか事業を経営しておるようにも見え、又発展しているように見えても、内容においては相当に惡化していまして、僅かに金融資本の応援を得て今日余命を保つているというような形が相当多いのではないかと思うのです。これを根本的に政府としてはメスを入れまして、もう今の金融資本下にあるところのいわゆる産業というものを、やはり事業資本によるところの産業に復活させるというようなお考はお持ちにならないのですか。
  86. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 他の機会にも申上げたのでありまするが、非常な敗戰をいたしまして、その後世界歴史の例に洩れずにインフレを辿つて行つたものを、早急に安定から自立に持つて行きますということは並大抵の仕事でないということは、油井さんも御存じだろうと思うのであります。これは本当に有史以来の難事業であるのであります。生易しくこれを切抜け得られようということは、考え方が楽観過ぎる、甘過ぎるのであります。非常な困難を伴うことは、我々は覚悟して行つておるのであります。この過程におきましていろいろ苦しい立場に置かれる人があることは想像しておるのであります。それを皆で助け合つてその安定自立への関所を乘越えようとしておるのであります。その間におきまして、金融の非常な援助を受けて、そうして何とかして切抜けようとしておる状態は相当あると思います。それを今ここで金融資本を止めて事業資本に変えると言つても、これは理想でございまして、そう一概にできるものじやございません。ただ建前といたしましては事業が設備資金、その他固定資産等につきまして金融機関から借りておるということは事業経営上好ましいことではございません。從いまして、昨年来企業整備で増資その他をやる、そういうのが株式にも影響する、今度社債にしようと言つても、社債の発行の限度がある、こういうような関係でその間にいろいろな摩擦もあつたのでありますが、大体の方向としてはお話通りに事業金融というのは、概ね固定資産その他の長期資金は自分で賄う、こういう方法で行くべきだというので、資産評価をやり、社債の発行の金額を殖やしたのであります。これは過渡期でございますので、一つの理想は持たなければなりませんが、やつぱりその事態々々めよつて個々に考えて行かなきやならん問題だと思います。
  87. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 最後にもう一点、金融資本下に現在各産業共左右されておるような形は、これはもう止むを得ないのですが、そこで金融資本の金利の引下げですが、これを大幅に図つてこそ再建の近道のように私は考えられるのですが、金融業者も立つて行き、又事業の方も安い金利でペイされて行くというふうなように、政府の方で何とか対策を講ずる現在絶好の機会じやないかと思います。大幅の金利引下げの方策をお建てになるお考はないのですか。
  88. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 金利引下げにつきましては、御承知の通り昨年の八月以来約三回に亘つて下げたと思うのであります。私は全く同意見でございまして、機会ある毎に金利の引下げにつきまして勧奨したり慫慂いたしたりしております。殊に三月期の決算におきましては相当の利益を挙げておるのであります。今後債務償還をして行きますならば、この利益はまだ上るでしよう。而も又預金が予想通りに殖えて行きますれば、利益も相当出ると思うのであります。併し銀行の内容につきましても、今企業整備その他で不如意の会社があるとすれば、貸倒れ金も成る程度殖えて参りましようし、そういう点を勘案いたしまして、とにかくできるだけ早い機会にできるだけ多く金利を下げたいこういう気持は変りはないのであります。この方面に努力しております。從いまして、昨日も、外の委員会でございましたか、預金部の金利只今九分乃至九分四厘の高利であるのでありますが、これを六分五厘或いは六分六厘程度に引下げよう……。
  89. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 いつから。
  90. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 八月一日から引下げよう、こういうことをやつておるのであります。金利引下の先鞭をつける意味におきまして政府みずからそういうふうにやつて行こうという考を持つておるのであります。
  91. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 今のお話は大変意を強くしたのですが、それは既契約の分も八月一日から金利を引下げることになりますか。
  92. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 既契約分も、全部についてであります。例えば只今長期債は五百三十億でございます。短期債が三百億程度あります。先程申上げた九分乃至九分四厘は長期債でございます。短期債は七分五厘であつたと思います。これも下げます。而も又地方公共団体が預金部以外の一般金融機関から借りておるのは一割を越えております。これは三十億円ばかりございますが、預金部に肩替りいたしまして、これも又六分五厘程度に下げたい、こういうふうに計画いたしております。八月一日から実行いたしまするが、期限の関係で九月一日からの分も一部ございます。
  93. 野溝勝

    野溝勝君 大臣に抽象的ではありますが、先にこの点をお聴きして置きたいのです。大臣は各委員会で度々経済安定論を説いておられますし、見通しにつきましても、今の方針で経済界が安定して行くものという見通しの上に立たれておるような御意見を吐かれておるのでありますが、あなたの考えておられる今の財政金融の御見解並びに先般合同委員会における委員会の発言の中でお聞きした内容では、私は日本の経済界の将来への明るみというものは見えないと思います。この際経済安定に対する見通し、御所見、それを一つ骨子だけで宜しうございますから、この際お聴きしてみたいと思います。
  94. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 見方でございまするが、私はあの敗戰、インフレから、非常に物価騰貴をいたしまして、勤労階級を初め各種の階級の方が非常にお困りであつた。インフレによつてうまいことをしたのは百人中二三人、こういう状況であつたのであります。それがインフレが止つて物価も安定し、賃銀も大体安定の遂に入つて来た。昨年からいわゆる消費者物価指数というものは非常に下つて来た。いろいろ議論はありますが、本当に胸に手を置いて考えたならば、生活は楽になつた。何も買溜めをする必要はない。売惜しみをする必要はない。本当に消費者が支配する経済になつた。いわゆるバイヤース・マーケットになつたということは見逃がせないと思うのであります。全体といたしましては生活が楽になつたと言えるのであります。そこで楽になつたがその楽になつた度合が違うところがあるのであります。それを安定から自立への途上において合わして行こう。けれどもそれが一年半前に較べまして段々軽くなつて来たと信じております。
  95. 野溝勝

    野溝勝君 大臣は、戰後インフレが澎湃として起つたために国民は非常に苦しんでいる、それを防いで今日は物価賃銀がすべて安定に向つて来た、こう言われておるのでありますが、それはどの層を指してさようなことを申されるのか分りませんが、今日国民のうち勤労者の層は日増しに窮迫を告げて来ておるのであります。ただ私はこれは概念的に言うのではないのです。中小企業の統計資料を見ましても、或いは農村におけるところの経済的な資料に基きましても、資金の関係或いは生活費の増強、こういうような支出と收入とのバランスの関係から見ましても、非常に窮迫を告げて来ておるのであります。大臣の考え方というのは、この物価賃銀が安定することには私は勿論賛成でございますが、併し物価賃銀が安定をするということは私は何と言つても生活が基礎なんで、生活の安定なくしての物価賃銀の安定ということはむしろ強圧的な釘づけでありまして、自主性を持つている物価安定、賃銀安定ではないと思う。その点に対する見解が大臣と違うのではないかと思います。と申すのは、今日我々も、日本が再建する上におきましては、日本の経済蓄積、資本蓄積ということは日本再建復興の上においてやらなければならんことだと思います。経済再建復興等に対するところの経済蓄積、資本蓄積を我々は承認いたしますが、単に部分の蓄積であり部分の貯蔵であつてはならんと思います。あなたは安定したと申しますが、それは国民的に生活が安定したというところの確たる根拠があつて申されるのでありますか。一応概念的に日本の資本の蓄積を見て、或いは貿易の超過を見てかようなことを言い得るのであるか、その点をまず大臣にはつきりしておいて頂きたいと思います。更に私はあなたにお答えを願う前に申上げておきます。戰後におきまして日本は一国経済では成立ちませんから、外国の援助を得つつ今日経済再建をやつておりますが、併し私は経済再建ということは先程も言つた通り数字ではなく人間なんであります。人間を無視した数字的の再建であつてはならないと思います。そこで今日日本のこの再建というのは、人民の生活を無視いたしましてただ数字の上のバランスによる再建を意図する現内閣の構想というものは、日本の真実なる再建を遅らせるものだと思つております。あなた方の資本蓄積のお考では、少数の有力な者が資本蓄積をしても蓄積論になるという偏狭な考え方でありまして、かような部分の蓄積安定論というこの考え方は結局日本の再建になりません。日本を再建しようというならば、納得の行く上に再建をするのでありまして、民主化した方針と、内容を以て再建しなければならん。過去におけるような軍閥財閥が優越支配をしておつた当時のような日本を再建するというこの再建の構想とは違います。日本をこのような廃墟の姿に至らしめたその因というのは、日本の財閥軍閥によるところの支配政治がかく結果をあらしめた。それに代るには、何といいましても大衆の納得する経済施策の上に立つた再建の方途というものを考え、資本の部分的蓄積を拜しまして、資本の国家的蓄積、人民的蓄積、民主的な余力という上に立つた経済構想の上に立つて日本の再建を図るようにしなければならんと私は考えておる。かような意味で池田さんの安定感というものには、私は社会不安がそれに伴つて来ると思います。現にあなたが身を以て経験されておりまする通り、今日労働階級は釘付賃金の安定策を強行されておりますが、今日みずから立上りまして賃金ベースの改訂を要求しているのであります。中小企業におきましては金詰りから倒産をし、今日朝鮮事変によつて、やや重工業の下請中小企業が少しばかりの明るみを見たということだけでありまして、中小企業の将来への希望というものはこれ又暗黒であります。更に農村におきましては、あなたが毎日陳情を受けていることによつても御承知ではありませんか。三万有余もある協同組合は一万有余は今日半身不随の農村の状態でございます。農村におけるところの経済機関としての協同組合は行詰りの状態であります。農村の経済は全く暗黒であります。更に農村におきましては、闇と言いましようか、弾力価格と言いましようか、さようなもの、がなくなりまして、今日收入のないところから非常なる窮迫を告げ、更に金融難に陥りまして二進も三進もできないという状態であります。この点、私は、時間がありませんから、ここで一々数字を以て示しません。委員長の了解を得まして、農村及び中小商工業における金融状態についての数字的の問題は、速記録に載せて あなたに御検討を願うことを委員長に了解を得まして、この点は省略して置きます。こういう状態で全勤労者層というものは今日安定したということは申されんのであります。あなたの言う安定感、この考え方は非常に危險であります。私はむしろあなたから聴かんとするのは、かような状態までに現実は来ているが、この面においてはまだまだ政策の実践において欠けておるから、こういう点についてはこういうふうにする。中小企業においてはこういうふうにする、農村の金融に対してはこういうことをする、労働者の給与べースに対してはこういうふうにする、かくして独占的なる資本の蓄積を抑えて行く、かような具体的なお話をあなたから聞くならば、あなたの安定感なるものを一応認めるに否かならざるものであります。私とても戰後における日本がそんなに急によくなると言いますか、共産党の言うように天井からぼた餅が落ちて来るようなことは私は思いません。併し同時に又あなたの言うような安定感をも私としては承認はできません。かような私の見解に対してあなたが数字的に言わなければ話が分らんと言うならば、ここに材料を持つて来ておりますから数字的に申上げます。かような私の見解に対してあなたが如何ように考え、且又おなたの安定感に対する考え方を今少しく具体的にお話を願いまして、私は質問の続行をしたいとかように思つております。
  96. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は日本の経済が不安定なインフレから安定に来ておるということは、生産、貿易等のことから申上げても言えると思います。又生活の状況が、生活費が非常に下つて来たということも、これは統計局で調べておりますがC・P・——が非常に昨年から、一割も下つておるということが言えると思うのであります。数字でどうこうと申されても、私は数字がやはり実態をものがたるものだと考えておるのであります。日本の経済が安定しておるとか、いや不安定だと言われても、これは議論になりまして、私は今日安定の度を、加えつつあるということは動かし得ない事象だと考えているのであります。ただインフレ時代におきましては見たところほ皆楽のようであります。中小企業もどんどん物を買えば、それがどしどし高く売れる、非常にうわべはいいようであります。それで農家も亦どんどん米価は上つて行く、そうして闇値もだんだん高くなる、うわべはいいようですが、後でどんなことになるかというと、これは非常に危險に勝りつつあるのであります、そういう不安定のインフレはこれは空威張りのことでございまして、これは問題にならんと思うのであります。そういうインフレから安定に行くときには、それは今お話のように困つている階級も相当あります。併しこれは明るみに出る場合のいわゆるトンネルの状態であるのであります。今少し御我慢を願い、政府はその間における困難さを徐々に直して行く、これよの外はないのでありまして、私はインフレ時代よりも、国家的に見まして、非常に安定を加えておると考えておるのであります。  資本蓄積の問題がございましたが、私は一部の人に資本蓄積を願つておるのではありません。勿論国民的資本の蓄積を要望いたしておるのであります。資本の蓄積はないと言われましても、私は相当資本の蓄積が昨年来行われておると考えておるのであります。インフレ時代の預金の増加とは違いまして、相当物価が安定し、通貨の信用ができてから、而も荷資本の蓄積は相当各方面に行われておると考えておるのであります。  農業協同組合の問題につきましてはお話通り、私も昨年末及び又先の国会等におきましても、お話し申し上げましたし、又これが対策につきまして検討を加えておるのであります。預金を停止した組合もございます。又半身不随の状態になつているのもありまするが、これが原因を究明いたしまして、政府といたしましては、これが活動し得るように適当な措置を講ずべく関係各省と協議を進めておる状況であるのであります。
  97. 野溝勝

    野溝勝君 私は、具体的にあなたからこの際二三伺つて置きたいと思います。あなたが六月の十六日に財政金融の所見を新聞に発表されております。この新聞には、あなたの意見の内容でございますが、財政金融の措置といたしまして第一に掲げられたのは、市中銀行の貸出が非常に増加しておる、併しこの市中銀行の貸出が増加しておるということは、私も一応数字の上では認めることができるのでございますが、これがどういうような階層に多く融通されておるのか、私共の知つておる範囲の百人以下の中小商工企業の方方に融通しておるという面は非常に少いのでございます。このような市中銀行の貸出が多いというあなたの言われるその内容ですが、これについてはどういうような階層に多く市中銀行の資金が流用されておるかという点を一つ具体的にお示しを願いたいと思います。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは市中銀行でもびんからきりまでございます。預金を五百億以上持つておる銀行もありましよう。又二十億ぐらいしか持つていない銀行もあるのであります。從いまして大きい銀行におきましては大きい融資をやつておりますが、又少額の融資もやつていないとは限つておりません。地方銀行等におきましては、概ね五十万円以下の貸出が相当の歩合を占めておるのであります。從いまして一概には言えないと思うのであります。殊にお聴きになつた点は、中小企業に対する金融をどうしておるかという問題だと思うのでありますが、政府が見返資金の三億円を踏台にいたしまして、中小企業金融にこの一月から六月までに六億、先月になりましてから又一億七八千万円出ております。これがその倍額でございますから十五億円ぐらいはこれに連れて出ると思うのであります。それから預金部資金を預けましたのは銀行の方の割合によつて無尽とか信用組合の方に多く廻しまして、そうして中小企業金融に廻しております。又一般市中銀行におきましても、六大都市に福岡を加えまして七大都市に、六十四の銀行が中小企業專門の支店を設けまして、そうしてこれに対しまして中小企業金融をやつておるのであります。それから又商工中金とか、或いは農林中金、勧銀、北拓、興業銀行等を通じまして見返資金による長期債を発行して中小企業金融の方に乘出すように担当いたしておるのであります。細かい点から申しますと、ありまするが、国民金融公庫にいたしましても、十二億の出資は殆んど出しておるというふうな状況であるのであります。
  99. 野溝勝

    野溝勝君 大臣は、市中銀行が貸出を多くしておると言われるのであるけれども、市中銀行の金融が、これは特殊のものに使用されているのでありまして、一般的にはこれは使用されておらない。だからあなたの考えておる貸出を多くしたということは、どういう面に多く貸出をしたのか、これは監督の立場にあるところの大蔵省において、市中銀行の百万円以上の資金融通者の名簿を作成いたしまして、それをこの際委員会資料として出して貰いたいことを申上げて置きます。  私が聴かんとするところは、中小企業の問題に対しまして、政府は非常に努力されておるような答弁がありましたが、政府筋で、見返資金中中小企業融通を三十九億円計上してある、枠に入れてある、こう言われております。そのうち現実としては、十八億円近くを融通しておる、こう言われております。併し今の資金の関係から言いまして、大蔵省におきましては、預金部資金も、一千億以上もあり、その他政府資金としても相当額に上つておることを言われまして、預金の状況にしても、非常に好転しておると言われておりますが、併しそれらの政府資金から見ても三十九億、これも十五、六億融通した程度ですね。一体中小企業のためにこれ位の資金を融通して、それで努力しておるということが言われるでしようが、成る程一億でも、五千万円でも融通努力には違いありません。併し政府資金を相当持つておりまして、その中十六、七億くらいを融通して、それで一体中小企業の対策として事足りたと思つて、これでいいでしようか。更に大蔵大臣は国民金融金庫の問題も言われました。更に私が一昨日聴くところによりますと、本委員会におきましてあなたは輸出金融公庫の話もされました。更に政府は中小金融の特別店舗貸出しをやつていることも聞いております。この一つ一つの内容を検討して見るならば、皆これは半身不随の状態ではありませんか。私は大蔵大臣の言うように数字を否定したということはありません。私は或る程度数字はやはり根拠にしなければならんと思います。先程は数字を否定したようにあなたはお取りでありますが、私は否定いたしません。併しあなたの方で示されている数字的根拠が全部正しいと思いません。併し政府で示した二十五年五月の統計から一つの例を挙げますならば、中小企業の特別店舗なども申込件数が三千八百七件ある。この中で承諾されている件数は千八百八十三件でございます。三分の一でございます。それも内容を検討上しますと、預金の吸收に力を入れ貸出上を抑えているのであります。更に又内容を検討して見ますと、各銀行のうら、特殊にこれを扱つているものは富士銀行ですが、千代田銀行のごときにおきましてほ殆んど問題にならん数字でございます。こういう内容におきましても、どういうふうにこれを監督され、運営されているかということに対して私兵は、政府並びに大臣の御答弁とは余りにも違い過ぎていることに対して一驚せざるを得ないのであります。更にあなたの言われております、今後日本の経済は貿易に俟つ、一万田氏も朝鮮事変の景況は動ともするとインフレなる傾向があるから、輸入を多くして物価高の傾向を抑えなければならんということを言つております。両者共意見は大体一致しているらしいのでございますが、一体それならばその能率を増進するために意図しましたところの、あなたの一枚看板であります輸出金融公庫は、本議会において具体化して皆さんの協力を得ると言いましたが、具体化しておらんじやありませんか。かようなことでは先程あなたが楽観しているところの、朝鮮事変によるところのインフレの危險ということが防止するということは不可能になつて来ると思うのであります。更に中、小企業の諸君は政府の指示によりまして協同組合なども盛んに作られておりますが、協同組合に対するところの資金的措置なども僅かでございまして、新らたなるところの商業事業の近代化に対するところの企画なども殆んどできないという状態でございます。かような点から見まして、あなたの言われるところの中小企業に対するところの経済的措置、金融的措置というものは、私から見るならば問題にならんと断定せざるを得ないと思うのであります。私はこの際政府資金もあり、そうして債務償還流用などにしましても、連合国側の示唆にも基くので、勝手にはならないが、既定予算外に向けることができるならば、この際日本の経済情勢をよく分つている大臣といたしましては、思い切つて連合国と折衝いたしまして、金融資本家に奉納するところの、奉納と言つては言葉が強過ぎるかも知れませんが、とにかく金融資本家、その他特殊の方面に今慌てて国債を支払わなければならんという必要はないと思うドツジ・ラインの原則方針をあなたは踏襲すると言われているかも知れませんが、日本の経済分析がよくできておりますならば、先ず私は安定よりは復興、資本の蓄積よりは人民の安定、この二大スーロガンの下に経済再建を企画しなければならんと思うのであります。かような点に対しましてあなたは、もう少しくこの中小企業に対しましてその再建的施策、経済的施策を考える用意があるか、又考えなければならんというならば、それに対する具体的な所見を一つ聴いておきたいと思うのであります。
  100. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 政府委員がどんな説明をいたしましたか存じませんが、あなたのお話の三十九億円というのは、日銀から商工中金、勧銀等を通じました別枠融資だと思います。この三十九億円はこの六月の初め頃まで三十九億円でございました。然るところ一時日本銀行総裁談として中小企業に別枠融資は増額しないということが新聞に出ましたから、私は一万田総裁に、そういうことはよくない、これは自分と総裁との間では必要に応じてどんどん殖やすということを言つておるので、從つてこれを取消しして貰うと同時に、その意味においても別枠融資を殖やすべきだというので、六月中に二億殖やしたのであります。而してこれからが別枠融資でございますから、これは私は殆んど全部出ていると考えておりますが、若し政府委員がそういうことを言つたとすれば半分しか使つていないとするならば、私はもう一遍調べてお答えいたします。  次に、今六十四店舗の中小企業專門の支店が、三千八百件の申請があつて、千八百の許可だ、こういうお話でございまするが、これはいつ頃現在でございますか。四月の頃ではなかつたかと思います。大体六十四は初め二十四から出発いたしまして、四月二十日から出発したのであります。六月末までにおきましては、一方件の申請に対しまして六千四百五十件の貸出しをしております。要請は三十九億円でありまするが、十五億九千万円の貸出しだつたと思つております。こういう点は数字を十分お調べを頂きたいと思うのであります。で、この問題は、中小企業金融に対しまして普通銀行が特別店舗を作つてこういうことをやるということは、これは特別の措置でありまして、今の法制上銀行に命ずることはできません。併しこの事情を各銀行家に話をして、少くとも大きい都市においてはこういうことで中小企業に対するサービスをして貰いたいということを勧奨をいたしまして、できたのでありまして、相当効果が挙つております。併し中小企業の問題は、こういう別枠融資だとか、中小企業特別店舗だけでお考えになつても困るのでございます。これは各市中銀行がこういう中小企業金融につきましてできるだけ出そうという熱意の一端であるのであります。勧業銀行その他の銀行につきましても通産省とか中小企業庁が全国的に調べました長期資金につきましても、これを土台にして、これを銀行に渡して貸出しのときに私が役所で判を捺して証明する、立派な貸出し先だからこういうところへ出してくれということを言つておるのであります。我々といたしましてはとにかくできるだけの努力をしておるということを御了承願いたいと思うのであります、  それから輸出金融公庫を本議会に出すか出さんかという問題でございますが、これは毎日のように向うと折衝を続けております。若しこの輸出金融公庫が予算の補正その他の関係で出せないといつた場合におきましては、只今見返資金に四百五十億からの金がありますので、これを何とかいい方法を講じて民間に流し出すような方法を考えておるのであります。それで次の国会で輸出金融金庫が、或いは輸出金融公庫と申しますが、特別の制度が設けられるまでの繋ぎの方法を講じて行こうといたしておるのであります。  又債務償還を云々ということがございましたが、私は一般会計の方から債務償還は減税を或る程度しまして、この際残りのものは一応の債務償還にしようというのでやつておるのであります。又見返資金から債務償還の五億円を私企業に対しまして投資いたしまして、そうしてその残りは銀行に金を渡して、そうして適切なる金融政策の基盤にいたしたいというのでやつておるのであります。  安定より復興と、こう申されますが、復興をいたします場合におきましては安定を先にしなければいけない。泥の上に家を建てることは、これはできないことは分つておるのであります。安定が先、而して安定の度を加えて参りましたから、今度は復興に向つて行つておるのであります。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 中小企業金融について関連して御質問したいのですが、過日政府は中小企業金融について拔本的な対策を講ずると言われまして恐らく五項目の一つではないかと思うのですが、特別な金融機関に代る……大蔵大臣のお話によりますと、この見返資金の方から出すとか、或いはその市中銀行が店舗を設けて、何か問題をそらしておるような感じがしまして、これは本格的な中小企業対策ではないのであつて政府が信用保險基金、パブリック・コーポレーシヨン、こういうものを作ると言われた筈であります、或いは信用保証協会もこれを含めるとか、含めないとか、いろいろ議論があつたようですが、この問題はどうなつておるのですか、立消えになつたように思うのですが、これが一番重要な中小金融対策としての機関であつた筈と思いますが、これは国会に、こういうパブリツク・コーポレーシヨンという形になるかどうか分りませんが、特別な政府保証を伴つたような、そういう機関をお設けになるというようなことを言われた筈と思います。これはどういうふうになつておりますか、一つお伺いしたいと思います。
  102. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 輸出金融金庫を作るということは、これは大企業のみならず輸出に適合した中小企業金融も図つて行きたいということは五項目に載つておるのであります。それから中小企業の保証制度、この問題につきましても、只今検討を加え、関係方面と折衝いたしております。信用保証制度、こういうふうにいたしますと、御承知の通りに輸出補償制度のようになりますと予算を伴いますので、予算を今議会に出せないということが確定してはおりませんが、予算を出せない場合についての適当な措置としては、何か日本銀行を使つてやるような方法はないかと、昨日の朝も私検討いたしまして、そうして申込んでおるのであります。輸出金融公庫同様に中小金融企業の保証制度の問題も関係方面ります。今までの公共団体でやつております信用保証制度は、政府で企図いたしております全国的に中小企業金融保証制度、これをどういう恰好で持つて行くかということが向うでも問題になつております。こつちでも問題になつておるのでありますが、私としては、只今のところは両立し得るものと、行く行くは合体してもよいけれども、今のところ両立した形で行きたいと思つておるのであります。ここでは只今答えませんですが、考え方としてはあらゆる方法を採るべく努力をいたしておるのであります〇
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、今まで補正予算を伴うことになれば、次会には、この次の国会には出すお積りでありますか。
  104. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は補正予算を組まなくても、只今考えている構想を認めて貰えれば、これは早くできるのじやないかと思います。これは一般会計の出資でなしに見返資金から基金を提供いたしまして、こういう基金を提供してやるということにすれば予算はなくてもできるのじやないか、こういう考え方もあるのです。併しその考え方を呑むか呑まんかということは別問題でございますが、補正予算を組んでやるのかどうかということになつて、恐らく今国会に補正予算がどうしても出せないということになりますと、次の国会に出したいと思つております。大体の考え方は関係方面も相当了解を得たものと思つております。併し何分共各セクシヨン、各セクシヨンでいろいろな議論がありますので、ここではつきり了解を得たとは申上げられません。併し我々としては是非共このことは実現したいというので、只今努力いたしておるのであります。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはパブリック・コーポレーシヨンという形で輸出金融金庫についても、それからこの中小金融機関についても、どららについてもそういう考えなんですか。
  106. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) いろいろな考え方がございまするが、輸出金融金庫につきましてもちよつと考え方はむずかしい点がある。金額も多いのでございます。はつきり私法へというようなことにも決まつておりませんが、同様な問題でありますが、問題の程度は中小企業の保証制度の方が楽なんじやないかという考え方であります。
  107. 野溝勝

    野溝勝君 関連質問がありましたので、聴き洩しましたけれども、先程の中小金融、特別店舗の問題につきましては、五月三十日の統計でありますから、或いは政府でありますから大蔵大臣の今言われた方の数字が新しいかも知れません。それにつきましては一応は私の方でも調査し、その点についてはお聴きすることにしまして、先程大臣は私の質疑の中で、安定か復興かという私の質問に対して、安定が大事だと言われましたが、一体安定は現在ないという私の意見、あなたは安定であるというこの意見、かようなことをいつまでも論争しておつても結論がつきませんから、この点は見解の相違ということにして置きましよう。そこで問題は市中銀行始め各金融機関から援助をさせるようなことを盛んにあなたは言われておりますが、このオーヴァ・ローンに対しましては金融機関についても相当大蔵省に対して反撃の意見があるのであります。これはあなたも御承知の通り一体政府は資金の融通をせよというようなことを盛んに言うけれども、併し金融機関としては見込のないようなものに対してはそう簡単に融通はできない。政府は金融機関が何か簡易に措置できるようなことを盛んに広めかされるけれども、それは誠に困る、有難迷惑だ。政府みずからが、持つている政府資金を産業方面にコンマーシャル・べースをすることをみずからして、その上に立つて金融機関に対するところの援助を要望して来るならば、我々も考える用意がある。更にその場合は、国なら国にその裏付けをはつきりして貰わなければできないと、こういうことを言つておるのです。だから政府におきましては、今後金融機関に対して、金融的措置をやらせる場合におきましては、ただ抽象的で、どららにも解釈のできるような勧告ぐらいではだめでございます。そういう点は明確に、金融機関との間に話をよくつけられまして、金融措置につきまして、金融機関がもつと公共的な機関としての役割を果すように大蔵大臣としては十分御留意を願いたいと思うのであります。これは希望として申上げて置きます。  次に私は大臣に対して御所見を伺つて置きたいのでございますが、農村に対しまして、一昨日の本委員会では農林中央金庫に長期二十億円の資金を融通したというお話を聞いたのでありますが、一体今の農村に対しまして私はそのぐらいの金融的措置で農村が経済的に建直ると思われておりますか。私はこのくらいの金融的措置では到底今日の農村の経済的な再建はできないと思うのであります。それではどのくらいあつて経済的再建ができるかということになるというと、これは問題が相当多くあると思うのでありますので、私はかような数は示しませんけれども、一応今日の農村においてこの金詰り、御承知のごとく肥料購入資金にも事を欠いておるような状態であります。更に単作地帶におきましては、伺と言つても供出価格のみが唯一の收入でありまして、殆んど金融は途絶えております。農業手形も少くて殆んどどうすることもできないような状態にあります。大蔵大臣は農村に対しまして、各農業団体からの要請に対して金融的措置をどういうふうにお考えになつておりますか。この際御所見をお聴きして置きたいと思います。
  108. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先程のあの市中銀行の独立店舗、中小企業に関係の独立店舗は、あなたの数字は四月二十日から五月二十日までの一ケ月間の数字であります。私の申上げたのは六月末現在の数字であります。お調べになるまでもなくここに数字が出ております。で私の申上げた分はこれは違いはございません。それから農業金融についてどういうふうな方策を取るかという点でございますが、これは御承知の通りに昨年来……一昨年からでしたか、農業手形制度をやりまして、昨年におきましては農業手形による融資が百四五十億円ではなかつたかと思います。今年におきましては私はこれが倍以上になるのではないか、或いは三百億を超えるのではないかという工合に考えております。これが方策といたしまして、農林中金の方に見返資金から二十二億円出しました。これを基本といたしまして長期債の発行を計画いたしておるのであります。御承知の通り農林中金は八億円の資本に増資したのでありますが、他に預金を相当持つておりますので、二十二億となりますと、普通ならばそれの二十倍の四百四十億円の債券の発行ができるのでありますが、預金が相当ありますので、二百億か二百五十億くらいの債券発行ではないかと思います。而も又その債券発行は、先月も十億田一出しましたが、全部売切れでございまして、予想以上の好成績を示しております。從いまして私は二百億以上のいわゆる貸付資金が殖えることに相成つたと考えておるのであります。で本年、特に問題になりますのは肥料でありますが、肥料資金につきましてもこの農林中金の長期金融債を活用すると同時に、日本銀行からも肥料の資金といたしまして農林中金には全幅的の支持をさすように話済みであるのであります。肥料問題で御心配の点もありますが、殊に公団廃止後におきまする肥料への金融は大体来年の三月が山でございまして、二百三十億円成いは二百六十億円ぐらいの肥料資金としての金が要ることを予想して施策を講じておるのでおります。勿論農業手形は肥料ばかりではございません。外の農業関係への資金融通の方法として非常に便利な方法でございますので、農業手形の制度を活用し、又これが対策といたしましては県連或いは農林中金を十分活用して行きたいと考えておるのであります。
  109. 野溝勝

    野溝勝君 今大臣はこの肥料資金に長期債を或る程度活用すると、こう言われますが、あなたも御承知の通り、肥料資金というものは二百三十億要るのです。そうすると今の長期債を二十二億、それにいろいろ合せましても、私はまあ五十億そこらぐらいのものじやないかと思う。それは殆んど私の概算でございまして、表向きに出たのは二十二億円ぐらいのものでしよう。それでも全部肥料資金に廻すわけには行かんと思います。そこであなたは非常に楽観せられておりますが、日本銀行においてもの措置を講ずるように言うて置いたと言われますが、どういう措置を一体講ずるように言うて置いたのか、できたらここでその内容を明かにして頂きたいと思います。
  110. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 野溝さんの申された通りに、二十二億の出資をいたしますと、これは農林中金の預金等の関連もあります。前の八億円の増資と二十二億円で三十億になります。三十億円の出資金がありますと六百億の預金並びに債券ができるのであります、よろしうございますか。而して農林中金の預金は非常な変動がございまするが、大体預金が四百億程度になりましても筒二百億の長期債の発行ができるのであります。先月も十億円の長期債を発行し、二十倍の限度まで長期債が発行できる。私は二百億円程度の長期債によりまする資金の獲得ができると思うのであります。お話通りに肥料資金というものは二百三十億と言われますが、私も大体そのくらいだと思います。来年三月がピークで、二百六十億円程度要ると覚悟いたしておるのであります。而して肥料資金というものは、これは全部農協を通じて行くとも限りません。私は二つの流れを以て行くと思うのでおります。肥料会社が県連、農協を通じて出す場合と、肥料会社が直接に肥料の卸売商を通じていわゆる商業者の方から行く手と二つあります。その割合がどのくらいになるかということは商売人の努力、或いは農協の勉強というものによつてつて来ると思いまするが、それがたとえ農協が六割、肥料の卸売商が四割にいたしましてもこの二百三十億円、或いは二百六十億円の分は適当の方法で賄いをつけようと思います。而して農協を通じたものは農業手形だから農林中金へ参りますから、その分の融資は日本銀行から全部いたします。どういうような方法かと申しましても、全部資金に涸渇の行かないように、そのときどきの様子によりまして貸出その他の方法でやらすのであります。而して又一般卸売商或いは小売商、こういう方面は手形の割引きをやつて行きたい、そうして大部の方はいわゆる倉庫へ入れて置けば、それが営業倉庫ならば倉庫証券割引、いろいろな方案やつて行く。それから又肥料会社の方につきましても或る程度のストックは公団買上げ、逐次適当な時期に売出して行く、そういう方法で肥料の金融につきましては、御心配ないように手配は進めておるのであります。
  111. 小串清一

    委員長小串清一君) ちよつと申上げますが、小林君からもちよつと質問で、時間が大分経つておりますから、あなたの方、少し端折つて頂きたい。
  112. 野溝勝

    野溝勝君 今肥料資金の問題で心配ないお話がありましたが、中央農林金庫に聴きますると、それは長期債はできるということにはなつておるのです。併し全部それを属期債にして肥料資金の方に全部廻すというわけには行かないというのですよ。実際はそれはあなたのおつしやる通りだと心配なくできることになつておりますが、実際上の中央農林金庫の運営といたしましては、その他協同組合の滯貨に対する赤字の問題もありますし、いろいろあつて、全部を肥料資金に当てる処置、はできないと、こういつておるのです。ですからそういう点は十分大臣が農村におけるところの肥料の資金涸渇に対しましては、積極的な便宜を図つて貰いたいということを希望しておきます。  最後に一つ御伺いして置きます。日本銀行では朝鮮事件で連合国からの発注品に対する手形につきましては大きい再割引をしていますね。
  113. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 存じません。三割引というのはどういうようなことで三割引か分りません。
  114. 野溝勝

    野溝勝君 発注品に対し市中銀行がその手形に対し日本銀行はその手形に対しては再割引をするそうです。
  115. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そんなことはないと思います。
  116. 小串清一

    委員長小串清一君) 小林委員にちよつと申上げますが……。
  117. 小林政夫

    ○小林政夫君 大臣が明日でも来て頂けるのでしたら、今日はお疲れでしようから……。
  118. 小串清一

    委員長小串清一君) 若し簡単な問題でしたら今お聴きになつたらどうです。
  119. 小林政夫

    ○小林政夫君 証券金融の点について、先程のお話では相当金融面は積極的に配慮したということでございますが、具体的にもう少し内容をお聞かせ願いたい。そうして特に株式担保による貸出し、これがどの程度枠が拡げられたかということを伺いたい。
  120. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 株式取引に対する金融につきましては、先程申上げましたように日本証券金融会社等の増資をいたしまして、それから株式担保貸というのが從来非常に制限を受けておりまして殆んど銀行はやつていなかつたのであります。これを丙種から甲種に移しまして、そうしてできるだけ融通を図るようにしておるのであります。昨年来段々これが活用されておりまするが、戦前のように株式担保の貸出が総貸出の二割というふうなところまでにはまだ行つておりません。又株式金融とは違いますが、一般市中銀行も相当去年の暮頃から今年の二、三月頃までに回收済みをいたしておりまして、この株式金融につきましてはやることにはなつておるのでありますが、やはり株式が値下り状況になります時には、これは制度として認めても実際は動き得ない。從いましてそう沢山期待はできんと思いまするが、これから株価が上向きになつて来ますと、これは非常に殖えて来る、こういう考でございます。
  121. 小林政夫

    ○小林政夫君 次に中小企業の問題並びに農村方面の金融についても、私も大いに心配しておる一人でありますが、水産金融のことについて大臣の所信をお伺いしたいのであります。漁業手形制度という制度も一応できますが、併しその利用の状況は甚だしく利用価値が乏しいということ、それは事務当局の方に聴くことでしようが、如何ような需要の現況になつておるか。そうしてこの漁業手形制度を強化するお考はないのか。特に水産部面におきましては、水産資材に対する補給金も撤廃をして大巾な値上りをし、更に最近の棉花の値上り、上昇によつて月二割五分程度の棉花の値上りを予想されておりまして、ますます資材が上つて行き、魚価も資材代金の値上りに伴わず、漁村の多くのものが非常な苦悩に直面をしているのであります。今まで農林中金等の融資もありましたが、この農林中金等水産業に対してどの程度のパーセンテージを以て融資をされるかお伺いしたい。
  122. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 漁業の必要さは今更申上げる必要はないのでありまするが、我々といたしましてもできるだけいわゆる農林中金のお金を沢山にしようというので興業銀行等には十億円しか出しませんでしたが、農林中金には二十二億円の出資をしておる状況であります。漁業手形もお話通り、農業手形に倣いましてその制度を拡充いたしまして、ただ農業手形の大宗をなしまする肥料とは違いまして、漁業というものは或る程度の、何と申しまするか、危險性があるとか、或いは長期性とかいろいろな問題がありまして、農業手形のように非常に多額を期待するわけには行きませんが、併しこの制度も漁業全体から考えて行けば、何も不確実なものではないのでありまするから、今の原棉の値上りによる漁網の値上りを来たす、そうして從つて資金が多量に要るというときには、やはりこの漁業手形を十分今後活用して行きたいと思います。從いまして農業手形と漁業手形をどれだけの割合にするかということは、別にその割合はないと思います。やはり状態によつてそのときどきに変ることだと考えておるのであります。まだ相当漁区の拡張とかいろいろな問題がありまするから、需要も相当多くなつて来るのでありまするから、今後漁業手形の拡充のためには特に力を入れたいという考でやつておるのであります。
  123. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは大蔵大臣の御説明はこの程度で終ることにいたします。ここにお諮りしたいのは、本委員会金融政策並びに制度に関する調査に関連しまして最近の金融情勢について日銀総裁の説明を聴きたいということで交渉中でありましたか、予算委員会においても同様趣旨の説明を聴くことになつておりまして実は明日予算委員会に午後一時から二時まで日銀総裁が見えるそうでありますから、便宜上予算委員会と連合委員会を開いてこの説明を聴こうと思うのですが、御異議ありませんか。「異議なし」と呼ぶ者あり
  124. 小串清一

    委員長小串清一君) 然らばさように取計らいます。尚日銀総裁は午後一時から確実に二時までに出席をさして貰いたい、外のときにはやはり時間が都合が惡いということですから、皆さんも御欠席がないように、必ず時間通りおいでになるよう願います。それと共に、尚予算委員会に申込んで置きましたが本委員会の諸君からも質問が若しありましたらどうぞ質問さして貰うように、これは話してございます。  それから先刻野灘委員から大蔵大臣に質問の際の御発言のうちに、農村経済に関する計数資料を本日の委員会会議録に掲載するようにして貰いたいという御要求がありましたが、これを掲載することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 小串清一

    委員長小串清一君) 異議なければさよう取計らいます。  それでは本日は午後どうしますか。今付つ託されておる案は、証寡取引法だけが本付託になつておりますが、これは二十六日に直接証券取引関係者の民間人を喚んで意見を聴くことになつておりますから、その後に審議した方がいいのじやないかと思います。それであとの一つの法案はまだ予備審査でありますから、本日は午後やつてもそう大してないと思いますので、これにて延会にしたいと思いますが……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 森下政一

    森下政一君 一つお願いして置きたいのですが、先刻来大蔵大臣が野溝委員の質問に対して、特に中小企業に対する金融方策としてやつておることについていろいろ具体的な実績を挙げられましたが、これは参考資料になると思いますから、委員会の全員に大蔵省側から一つあの実績を印刷にして廻して貰うようにお願いして置きたいと思います。
  127. 小串清一

    委員長(小串清一君) さよう取計らいましよう。  それではこれを以て散会いたします。    午後一時十一分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            佐多 忠隆君            山崎  恒君    委員            九鬼紋十郎君            黒田 英雄君            野溝  勝君            松永 義雄君            森下 政一君            小林 政夫君            杉山 昌作君            油井賢太郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省管財局長 吉田 晴二君    証券取引委員会    事務局長    湯地謹爾郎君