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1950-11-07 第8回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月七日(火曜日)    午前十時二十八分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (結核予防対策に関する件)   ―――――――――――――
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより厚生委員会を開会いたします。  本日は公報を以て御通知申上げました通りに、結核予防対策につきまして、政府説明を聽取いたしますると同時に、この方面民間権威者の方方に参考人として御出席お願い申上げまして、それらにつきましての貴重なる御意見を拝聴する、こういうことに相なつておるのでございます。御出席を願いました方々は、武見太郎先生春木秀次郎先生島村喜久治先生佐々廉平先生の四名の方でございます。どうかよろしくお願いいたします。  尚議事に入るに先立ちまして、先般の委員会におきまして大阪府下台風被害当時に御活動願いました方々につきまして、委員会といたしまして謝意を表しました件に関しまして、大阪府知事から委員会へ書面が参つておりますので、專門員から報告することにいたします。
  3. 多田仁巳

    專門員多田仁己君) それでは大阪府知事から厚生委員会委員一同に対しましての書簡を朗読いたします。  拝啓   時下爽涼の候貴委員長をはじめ委員各位には愈々御清栄に亘らせられ国務に御精励の御事大慶の至りと存じ上げます。   さて先般本府に襲来いたしました台風の災害につきましては早速実情の御視察をいただき各種の救援施策作定に御奔走を賜つて居りますこと誠に有難く感謝に堪えない次第であります。   又その際救助活動に献身いたしました民生委員協議会日本赤十字社大阪支部関係奉仕団財団法人白鳩会等民間奉仕者団体代表者中央に招致せられ詳さに状況を聴取せられると共に御懇篤なる感謝決議を賜りましたことは国会温情側々として胸をうつものがありまして感謝をいただきました団体はもとより府民一同も深く感激いたして居るところであります。私共各位の御厚志に応え府民一体となり復興に邁進する決意を愈々堅くいたして居る次第でありますが何卒国会におかれましても一層の御支援を賜りますよう御願い申上げます。   茲に衷心より感謝の意を申上げると共に今後の中央における助成の施策を願い上げる次第であります。              敬具  昭和二十五年十月二十五日      大阪府知事 赤間 文三   参議院厚生委員長      山下 義信殿      委員一同殿
  4. 山下義信

    委員長山下義信君) それではこれより結核予防対策につきまして関係局長から大体の御説明を聞くことにいたしたいと思います。先ず三木公衆衞生局長から御説明願いたいと思います。
  5. 三木行治

    説明員三木行治君) 結核予防対策につきましては、これが目下我が国におきまする最も重要な問題であるということに鑑みまして、政府といたしましても非常な努力をいたしておるのでございまするが、殊に今年度におきましては両院の結核予防対策確立に関する御決議もございまするし、且又参議院厚生委員会におかれましては非常に精細なる結核予防対策確立に関する御方策を、結核対策小委員会をお設けになりましてお決め頂いたというような次第でございまして、私共それに関係あるものといたしまして誠に感謝に堪えないところであります。  先ず来年度予算ということが一番問題になると存じますので、来年度予算原案というものにつきまして、勿論これは私共と大蔵省との間で原案として只今意見が一致いたしておりますものにつきまして御報告を申上げたら如何かと存ずるのであります。この来年度予算を編成するに当りまして、もとより私共は参議院厚生委員会でお作り頂きましたこの予防対策確立に関する方策に従いまして、この通り要求をいたしたのであります。今恐らくお手許にあると存じますが、私も頂いております結核予防事業に関する資料といたしまして、この厚生委員会專門員室でお作りになりました資料に従いまして申上げて見たいと存ずるのであります。この資料は大変に精密な正確な資料でございますので、私から蛇足を加える必要はない程度であると思うのであります。  さて二十六年度結核予防事業の案でございまするが、先ず第一は結核病床増加でございまするが、二十六年度予算案におきましては、結核病床増加という点におきましては非常にうまく行つたと私共考えておるのであります。御承知のようにこの四ケ年計画十九万床案というものが大体において承認せられた形になつております。その第一年度といたしまして、明二十六年は二万千三百床の新増設をすることに相成つておるのでありまして、これは私共といたしまして誠に喜びに堪えないと考えておるのであります。若し実現いたしまするならば大変な進歩であるとかように考えております。それから第二番目の結核診断の普及の関係でございまするが、これにつきましては何しろ早期発見早期治療という方針を実施いたしますにつきましても、健康診断の徹底ということが一番必要でございますので、ここの資料にございますように、この点につきまして、定期及び定期外におきまして合計約二千六百万の対象に対しまして、定期及び定期外健康診断をやる。そうしてその三〇%に対しましては国庫から補助が出し得るというような案になつておるのであります。ただ私共の事務当局として勘案いたしますことは、実施上の不便といたしましては、この三〇%の貧乏率をどういうふうに分けるかという問題がこれから研究を要する問題であると考えておるのであります。それからこの健康診断で見付かつた者、及び健康診断におきまして罹患していない者に対する予防接種、並びにこの治療の問題でございますが、それらにつきましても健康診断と同様に国が四分の一の補助をするというようなことになつております。尚家庭におりまする結核患者に対しましては、保健婦訪問指導を強化いたしまして、年四同訪問をして適切に指導いたしますると同時に、パンフレット、リーフレット等を與えまして、予防の適切を期して行くというようにやり得ることになつておるのでございます。  尚十五ページにございます第八番に予防措置費というのがございまするが、これは物件であるとか、家屋であるとかいうものにつきまして、結核病毒伝播の虞れのある者につきましては予防の消毒の措置ができるという費用でございます。  次に医療費の問題でありますが、医療費につきましては保健所事務相当に殖えて参りますために、各保健所事務員を配置したいということであります。それから患者登録をやりますその登録費用であるとか、それから殊に注目しますことは、診定委員会というものを新たに設置することができるようになつておることであります。これは保健所所長医師会代表者療養所代表者……これは療養所長でありますね、それから結核專門医二人、計五人からなる委員会でございまして、私がこの診定委員会に忠告したいのは、この委員会におきまして、命令なり或いは従業禁止というような問題につきましてよく審議をして貰うということ、及び入院の要否等につきましても、主治医と御懇談をして頂くというような働らきをこの委員会に期待いたしたいと考えておるのであります。  それから次は医療療養費の問題でありますが、これはここにございまするように、ストマイ、パス、或いは気胸、外科手術というようなものにつきまして、当初私共の要求いたしておりましたものとは相当に開きができたのでありまするけれども、ともかく国が四分の一ではございまするけれども、補助するというようなことができるであろうというようなこと、それから八番目の従業禁止及び命令入院の者につきましては、これも予算額が小さいのでございまするけれども、單価も且つ小さいのでございまするけれども、ともかくそういうものにつきましても入院及び治療費に国の補助相当出せるというようになつたのであります。これも非常に有難いことであると考えておるのであります。この外特に来年度予算として力を入れておりまするものは、技術向上という面でございまして、第十ページにございまするように、結核予防会に新たに結核研修所を設置して貰いまして、研修所建物を建てましてそこで專門医養成をやる。又レントゲン、保健婦学科というものを更に医学科の外に作りまして、これらの結核対策の中心になりまする技術者養成をやるということであります。それから更に地方別、各都道府、県別にも短期の講習会をやつて行く。保健所におきましては開業の先生方にもお集まりを願いまして講習会をやつて行くというような費用がそれぞれ国庫補助ができることになりまして、技術向上に重要な人の養成につきましても相当予算が見込み得るような状態なつておるのであります。こういう次第でございまして、本委員会でお決め頂きましたこの予防対策確立に関する方策と比較して見まするというと、二十六年度予算におきましても、ベツド以外は相当に私共申訳けないと存ずるのでありまするけれども、国家財政の現状に鑑みまするならば、これで以つて進むより仕方がないじやないか。国会の御審議を経まして、これが予算として確定いたしましたならば、早速にも万全を盡してこの御方策にお示しになりました御期待に副うような施策をやりたい、かように考えておる次第であります。  以上簡單でございますが、御説明申上げます。
  6. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは医務局長から、医務局所管関係につきまして御説明を願いたいと思います。
  7. 東龍太郎

    説明員東龍太郎君) 結核予防対策に関連のあります医務局所管の事項と申しますと、御承知通り国立結核療養所の運営並びに国立結核療養所病床増加と同時に、でき得る限り療養所質的方面整備改善ということに相成ると存じます。昭和二十五年度末の国立結核療養所状況は、療養所の数が百五十一箇所、病床総数が五万四千、並びにこの外に見返資金による病床増加が一千四百あるわけでありまして、二十五年度の終りに相成りますると、大体その両者合せた数になる予定であります。  二十六年度予算についての増床要求は、新設十箇所、それから既設の療養所における増床と併せまして千五百床、その外に現在国立病院として運営せられておるものを国立結核療養所に転換いたします予定のものが六箇所六百五十床あるわけでございます。従いまして二十六年度予算要求がこの通りに参りまするならば、二十六年度においては五万七千五百五十床が国立結核療養所病床となる予定でございます。これに伴います予算方面と申しますか、只今申上げましたような増床といういわゆる量の増加と、そうして内容の整備改善という質の向上という両方面にまあ大別し得ると思いますが、その結核療養所に必要な予算要求は総額で大体五十二億余に相成つております。そのうち最も大きなのは言うまでもなく療養所経営経費、即ちいわゆる経常費でありますが、これが四十七億三千八百万円余りに相成ります。特にまあ質的の向上という方面でどういうことを予算的に表しているかと申しますというと、第一は医師或いは事務職員の再教育とまでは申せませんかも知れませんが、とにかくその中のできるだけ多数の者を講習会等の方法で新らしい知識の吸收、或いは新らしい治療法等に対する医師の再教育というふうなことに充てます経費が二百三十五万余り望んであります。それから又一方看護婦の再教育、これも三百三十一万九千円というものを見込んでおります。それから尚療養所におきましては看護婦養成することが一時関係方面の示唆もありまして止めておりましたが、これを再び国立療養所におきましても乙種看護婦養成を始める計画をいたしておりますので、それを二千四百名の養成を見込みまして、二千二百万円足らずの予算要求をいたしております。  それから治療薬品といたしましては、特にパス購入費医務局の方で二千七百万円余りを計上いたしております。ストレプトマイシンの方のことは後に薬務局長の方からお話があると思いますが、これは医務局の方では見ておりません。  それから現在国立療養所等の中には土地或いは建物がまだ国有なつていないものがございます。府県その他から委託を受けております病床もありますし、或いは土地等につきましてもまだ国有でありませんので、そのためにそういう建物国費を以て修理をするとか、或いは又国費を以て建物を建てるとかいうことができません状況でありますので、この不都合不便を排除いたしますために、それらの土地建物等購入費として七千万円少し足らずを見込んでおります。それから療養所建物或いは設備等整備療養所建物その他の整備に必要な経費も八千万円余り予算なつております。尚先程申上げましたように、増床に伴う整備経費はこれは二千万円余りであります。ちよつと御訂正願いたいのでありますが、先程看護婦養成は二千四百と申しましたのは全数を申上げたのでありますが、一年、二年という区別なく総数を考えて申しましたので、来年度において募集いたしまするというか、養成いたしますのは四百名であります。荷その他の予算の項目といたしましては、器械の購入費というようなもの、いろいろございますが、実は二十六年度予算の折衝の審議を通じまして、あいにく私が出張不在でありましたので、まだ帰りまして間もなく、予算についての我々の消化が十分でございませんので、予算に関する詳細は必要に応じ、その療養所課長から御説明申上げたいと存じます。
  8. 山下義信

    委員長山下義信君) 今度は薬務局関係慶松薬務局長から御説明願います。
  9. 慶松一郎

    説明員慶松一郎君) 薬務局関係といたしましては、薬の生産並びに供給でございます。結核の薬といたしましては、過去におきましては御存じの通り結核に確かに効くという薬がございませんでしたが、ごく近年即ち終戰後に至りましてストレプトマイシン、更に昨年あたりから先程からもお話がありましたパス即ちパラ・アルミ・サルチンサン等が出て参りましたし、又これら以外に今日日本ではまだ許可なつておりませんが、チビオンという化学薬もございます。それ以外にこれも国家として力を入れておりますBCGなる細菌製剤もある次第でありまして、これらにつきまして一般的に申上げまして御了解を得たいと存じます。尚予算の問題といたしましては、私共の局ではストレプトマイシン買上げ予算結核に関連いたしまして組まれておる次第でございまして、本年度におきましては、六億二千四百万円ばかりのストレプトマイシン買上費用が組まれてございます。と申しますわけは、ストレプトマイシン国産いたしますと、これがまだ輸入品に比べまして非常に高くつきます。併しながら一面におきまして、これを国産して供給することが当然必要でございますので、その点国産品を高く国家買上げまして、輸入品とプールいたしまして安い値段で使つて頂くという目的を以て六億二千四百万円の費用が今年度予算に組まれておるのでございまして、又来年度予算といたしましては、大蔵当局から了解を得ましたのは、丁度九億円のストレプトマイシン買上げが認められておる次第でございます。そこでストレプトマイシンにつきまして先ず申上げますと、ストレプトマイシンは一一十五年度におきまして供給いたします予定といたしましては、国産品が八百八十六キロ、輸入品が四千七百キロ、合計五千五百キロ余でございまして、大体の計算が十四万人分となります。で、ストレプトマイシンが十分に効き得る結核患者は的確に掴みますことは、公衆衞生局或いは医務局等と連絡いたしておるのでありますが、的確には掴まえることはできませんでした。一時は九万人と考えられ、又昨今におきましては、二十万乃至三十万ぐらいの人に対しましてはストレプトマイシンが有効であろうと考えておりまするが、ともあれ本年度におきまして私共の供給し得ると考えております量は約十四万人分でございます。その値段患者の手に入りますのが三百三十円でございまして、この値段国産品が非常に高いにも拘わらず堅持して参るつもりでございます。で、国産ストレプトマイシン只今五つ会社即ち明治製菓、これはこの委員会でも御覧頂いたと思います。日本生物化学研究所、これは埼玉にございますが、協和醗酵島根化学、それから化学研究所、前の理化学研究所でございますが、この五社が今日ストレプトマイシン国産することになつておりまして、その中で明治製菓日本生物化学研究所、この二つが目下活発に生産をいたしております。最初国産ストレプトマイシンが出ましたのは、本年の七月十八甲でございまして、それ以来今日までに約三万三千本余、キロ数に直しますと、三十三キロ余のものがすでに出ております。最初値段国産品は非常に高くつきまして、最初値段が千三百円、一本、一グラムでございますね、千三百円ぐらいでございましたが、十月以降からは千百円、段々値段を下げまして、本年の平均單価は七百二十円ということになつております。これを実際の患者の手に入ります際には三百三十円で手に入るようになる次第であります。輸入の実績は、先程計画といたしましては四千七百キロと申しましたが、今日までに入つて参つておりまするのが、本年三月から今日まで約千六百キロ入つておるのでございます。明年度におきましても大体やはり明年度供給計画も十数万人分でございまして、その中の約十万人分ぐらいが来年度におきます公衆衞生局予算に組まれております補助対象になるものと存じております。  次はパラ・アルミ・サルチルサン即ち我が国パスと呼んでおるものでございます。これはアメリカにおきましてはPASと発音いたしておりまして、パスと言つておりませんので、パスという言葉では外国に通用いたしません。我が国ではPASパスに約してしまつたのであります。これは本年の五月の初めに公に製造を認められるようになりまして、製造許可を有しております会社は二十四社ございますが、現在活発に動いておりますのが十一社でございます。その生産されました量は一月から本年の九月一ぱいまでで七十三トン余でございまして、これを若しも一人五百グラム使うといたしますと、約十五万人分のものがすでに九月一ぱいまでに供給されておる次第でございます。その値段は、これが一日に使います量が十グラム乃至十五グラム使いますので、値段は比較的高くつきますことが欠点でございまして、併しながらその値段は漸次下つて参つております。即ち本年の五月に最初供給されました当時は一グラムが三十八円でございましたが、十月末におきましては一グラム十八円にすでになつておる次第であります。で、本年十月から十二月におきますこの製造いたします予定は七十トンでありまして、即ち本年一月から九月までにできました九ケ月にできましたものを三ケ月間で供給するという予定でございまして、非常に原料が沢山要るのでございますが、その原料につきましては、通瀧省その他とすでに連絡済のものでございます。  次はBCG並びに結核検査判断に使いますツベルクリンのことでございますが、BCGは大体本年度予定といたしましては、二千六百万人分供給する予定でございます。でこれは従来はBCGなるものは液体のワクチンでございましたが、そういたしますとその有効である期間が非常に短こうございますので、幸い我が国におきましてこれを乾燥いたしましたワクチンとして製造することに成功いたしまして、それが昨年の五月頃から出るようになりまして、検定その他で実際に人々の手に渡るようになりましたのが十月からでございますが、本年の一月から十月までに生産されました量が約二千五百六十万人分即ち三千六百万人分の予定に近くできているのでありまして、大体本年度内におきましては、三千六百万人分のBCG供給ができると存じております。昭和二十六年度におきましては、四千四百万人分のBCG供給するべく予定いたしております。尚BCG原価といたしましては一人前が六円四十六銭、これにそれを溶かします液が三十銭でございまして、薬の原価といたしましては、一人分六円七十六銭ということに今日ではなつております。結核の判定をいたしますツベルクリンの液、ツベルクリンの稀釈液なるものは本年の一月から十月まで、即ち十ケ月間におきまして約五千万人分すでに生産されております。本年の計画といたしましては、六千万人分くらいのものを供給いたしたいと存じているのであります。すでに五千万人分が十月までに出ている次第でございます。来年度におきましても、大体その程度生産計画されております。尚ツベリクリン稀釈液單価は一人当り六十三銭になつております。それ以外に最近問題になつております結核の薬といたしましてチビオンなるものがあります。チビオンドイツにおきまして発明されたものでございまして、例のズルフオンアミドの創製者でございます、ドイツの世界で一番大きい会社でございますバイエルの会社のドマーク博士一派が造り出したものでございます。併しながらアメリカにおきましてはまだ今日一般的には認められておりませんで、ただ試験的な程度においてのみ使用されているようでございます。我が国におきましては、現在四十八社の製造会社から試製をし、その製造許可につきまして申請が厚生省に提出いたされております。併しながらこのものにつきましては、このもののよい点、効果の点につきましては、例えば腸結核とか喉頭結核等にはよく効くそうでございます。それから今一つは使用料が非常に安うございまして、〇・何グラムということでございまして、これは内服薬でございますが、先程のパス内服薬ですが、一日の極端に申せば数百円、安く行きましても二百円もかかるということに比べますと、桁違いに安いという特長がございます。一面におきまして、副作用の点について十分愼重に知る必要があります。例えば軽いところでは胃腸障害、或いは肝臓の脂肪化、或いは血球の減少等の非常な欠点もあるようであります。それで今日厚生省におきましては、このチビオンにつきましては、科学的な規格を作りまして、その規格に適合する品を試製いたし乃至は製造業者から得まして、そうしてそれを大学病院或いは国立病院におきまして十分な臨床実験を目下やつている次第でございます。その結果によりましてこれは我が国において使用せしむべきや否やということが決定されると存じます。従いまして、これにつきましてはいろいろ新聞紙上の他に、或いはいろいろな方面投書等もないわけではございませんが、併しながら我々の方といたしましては、愼重にこの毒性或いは効力について検討中でございまして、その結果によつて国民に使用されるようになるか、或いはそういう結論にならないかという状況に今日あるものでございます。大体この程度でございます。
  10. 山下義信

    委員長山下義信君) 各局の関係課長も見えておりますので、詳細な御質疑がございましたら御答弁を願うことにいたしておきます。議事の進行の都合上御出席を願いました参考人の方から只今お聞き及びの政府結核予防対策、或いは一般の結核予防対策に関してでもよろしうございますが、それぞれのお立場から御意見を一つ拝聴いたしまして、而して委員審議資料にさして頂きたいと存じます。時間の御都合もおありと存じますので、午前は武見さんと佐々さんとにお願いをいたしまして、尚時間があるようでございましたら逐次お願いをいたしたいと存じます。先ず武見太郎さんから御意見を一つ御発表願いたいと思います。
  11. 武見太郎

    参考人武見太郎君) 只今伺いましたことで、これは全部どれをとりましても大変結構なことだと存じております。今までに新聞紙上その他で画期的な結核対策というものが何回か伝えられましたけれども、その結果は結核の悪循環を断ち切ることができない状態なつております。今度は今までとは全然違いまして、莫大な予算と学問の進歩とが裏付けられておりますので、私は必ず成功させなければならないものだと考えます。それにつきまして少しばかり私達自身の経験と、それから今後の対策についての私自身の考え方をお語いたしたいと思います。  それは今回の日本のような結核の侵襲度の大なるときには、余程ちやんとした予防組織を作つてなければいけないということでございます。殊に予防組織は末端において強力な予防組織をどうやつて作るかということが成功するしないの鍵であると存じます。この問題について少しお話をいたします。末端組織を如何に作るかということは、これは保健所が握るべき問題であると考えます。現在保健所の数は九百余ございまして、三千人の定員がある筈でありますが、千何百人という定員に満たない状態なつております。この保健所状態は現在におきましても甚だ遺憾なものであると考えますが、急激に厖大な予算と大量の仕事が入つて来ました場合に、これを有効適切に使い得る能力があるかないかということにつきましては、疑いなきを得ないのであります。この点の拡充整備がどうやつて行われるかということが問題であると考えます。この点に関しましては保健所職員に対する特別な待遇が私はなされなければならないと考えます。ここが非常に立派な社会医学的な活動があり、その地区の末端組織の中心となつて十分な活動ができるかできないかということが、今度の厖大な予算をうまく消化するかしないかという私は一番大きな重点であると考えております。今日の保健所状態ではそれに対しては極めて不十分であります。この人的の強化という問題の解決は私はまだ伺つておりませんが、急激にこの人的の解決と質的の向上ができるとは考えられません。予算の五ケ年計画、十ケ年計画の初期の二年ぐらいは思い切つて個々の人的質的の確保のために厖大な予算を使用されることが私は将来成功の基ではないかと思つております。それからその組織は末端の結核患者を中心といたしまして、その家族に対する教育が必要であります。現在におきましては、この教育的な組織が一つもございません。これはどうしても保健所を中心といたしまして結核患者の家族を中心とした結核予防に対する協力的な教育が必要であります。この教育の方法に関しましては、農村は農村特有の教育方法が要りますが、工業地帶は工業地帶特有の教育方法が必要だと存じます。この問題をその地区的にうまく解決して行くというのもやはり保健所の責任であると考えます。私は社会保障審議会におきまして、この点を考えまして、末端地区の公衆衞生委員会を提唱したのでありますが、これは御採用は頂けなかつたのでございます。どうしても末端地区にそういうものを作りまして、開業医とか、学校の先生とか、或いは村の相当物の分つた人とかを、その人達を教育して委員にいたしまして、又患者の家族の中から、その看護に当る人の無智というものは将来の患者発生の最大原因でありますから、家族の中から一人の責任者を選び出しまして、その責任者に対して十分な教育を公衆衞生委員会なり或いは保健所が與えるという形になりませんと、末端に対する手当が十分には行き届かないと考えます。それからその末端をどういうふうに観察するか、どういうふうに見るかということは、この地区の公衆衞生委員会にお任かせになつて、その報告をお聞きになつてもいいと思います。例えば消毒薬の入手が不十分であるとか、或いは衣服の消毒が不十分であるとか、そういうふうなことは保健婦訪問だけでは到底手が足りませんから、その地区の知識階級を動員いたしましてこれに充てる。それに対しては必ず何らかの処置が取られるということが私は望ましいと思います。現在の届出が十分に行われませんことは、届出に対する裏付が余りないということであります。これはどうしてもこの裏付を以て十分な届出を要求することと、又その届け出たならば必ずその家の人達は安心して看護ができる。これは日本結核患者の七割、八割は在宅患者であるということの日本特有の重大事実を見逃しはできません。たとえ病床数を如何に増しましても全部の在宅患者をベツドに收容するわけに行かないのであります。どうしても私は日本結核の特質を完全に把握した強力な末端機関を、それの教育に対して十分な責任が持てるだけの保健所の機能を作つて頂きたいと考えるのでございます。それに協力いたします医師会なり、学校医会なりいろいろの方面の協力態勢というものがこれ又十分に行き届かなければなりません。今日はその協力態勢を作るべき中核体としての保健所は甚だその役目を果していないのでございます。保健所状態に関しましては、インターンの学生は大体において失望して帰つて来ておる現状でございます。忙しそうに見えても実際仕事をしているのじやありません。あれじや詰りません。こういうインターンの学生の状態であります。この状態を脱却するには、私は一つの方法があると考えております。それは地区の保健所を選びまして、これは地区の大学の公衆衞生学なり結核專門の教授をその保健所長となさいまして、そうしてその人達が思う存分に野外作業として、将来の立派な、そういう活動ができる医師養成する訓練をそこでされるということであります。これは惰眠を貧ぼつておる一部の保健所に対しては覚醒剤となりますし、又画一的に上の方の命令だけを実施して文書の報告だけで事が足りておるという状態を脱却するためには、どうしても大学がこの野外作業において合法的、有機的な形で参加することが望ましいと考えております。それが先ず私が保健所を中心といたしましてお願いしたいことであります。  それから診定機関の問題でありますが、厖大な国費を個人の治療のために使用いたします以上、どうしても診定機関がなければならないと考えております。診定機関で強制入院と決まりましたものは、その家族なりその人の生活保障が十分になされるということが絶対條件だと思います。只今伺いますと、その保障はないように見えておりますが、この状態では折角の診定機関も十分な活動ができないのではないかと考えております。その保障も生活保護の程度の保障よりはもう少し立波な保障が私はされなければならないのじやないかと思います。その裏付がないとこの診定機関の診定は私は将来鈍りはしないかと考えております。これは極めて民主的な形で診定されますし、又現在の一般開業医や保健所の診定能力は私は決して高く評価しておりません。その中で最も有効にそれらの能力を利用するものとしては診定機関が十分な活動をすることが望ましいのであります。ただここに問題となりますことは、手術の方法その他にまでどの辺のものが強制的なことができるかという問題であります。これは場所によりまして若し間違いますと、ナチスドイツが優生裁判所を二審制で持つておりますのと同一軌道に乗りはしないかという虞れもございます。結核治療に関しましても充填術は余り行われなくなつておりますが、こういうふうなものを一部の人が興味本位に学術上の対象として、こういうことが身体実験的に行われるということになりますと、人権問題ともなります。この点で私は運営は中正妥当な民主的な行き方でないといけない、こういうことが私の一つの希望條件でございます。これはナチスの優生裁判所的には恐らく今日の状態ではなりはしないと思いますが、間違えればならないとも限らないし、そういうふうに受取られますと、折角地区の能力を動員いたしまして、診定に当ろうというのが不可能になる虞れがあるかと存じます。これが診定機関に関する問題であります。  それから集団検診の問題でございますが、私は現在の集団検診はそれに携さわる人達の能力を以てしては早期の診断というものは極めて困難であると考えております。これを急速にレベル・アップさせますためには私は研修が必要であることは十分に認めます。併しながらこの研修期間が私はやはり一年なり二年なりの長期を必要といたしますので、ここにも相当大量な研修費が出ておりますが、これはやはり私は二年ぐらいは思い切つて短期でなく長期の講習をなさいまして、そうして十分な実力のできた人達を配置してやるということでなければならないと存じます。  それから末端の開業医が一番困りますことは、BCG接種の後の陽転化と自然感染の陽転化が実際には区別ができないことであります。これは経過を追うて観察して十分に見ておれば分ることでございますが、そうでないとBCGの陽転と自然感染とを区別できません。それを放つておきます間に或いは又次の病気の段階に入る慮れもございます。BCGが感染防止に対しては私は未知数であると考えますが、発病防止がこのマイナスの面と、プラス・マイナス、どうなるかということは私は專門外の者でありまして分りませんが、こういう点に関しまして、今世界的にも我が国内におきましても、BCG効果に関する異論も相当出ております。これらについては学界との協力によりまして、十分に解明して、そうして末端の医師にその問題が十分な理解ができますような処置を取つて頂きたいと考えます。  それからツベルクリンの問題でございますが、ツベルクリンは実際末端の学校医などが使いますと、或る製造所のツベルクリンはよく出るが、或る製造所のは出ないということはよく皆学校医が異口同音に訴えるところであります。これはツベルクリンの検定規格がプラス、マイナス二〇%の差を許されております関係上、絶対値は四〇プロの差が出ております。こういうものがツベルクリンのような精密であり厳重な管理を要するものの基準に使われるということに対しては私は多少の疑いなきを得ないのであります。この点に関しては、どうも末端の学校医は現在のツベルクリン液に対して全幅的な信頼を持つていないのであります。この点に関しましては、ツベルクリン液に関して将来十分な規格の統一を願いたいと存じます。  それからもう一つ今度は末端の問題から上りまして、中枢部のこれは頭脳的な指導される場合の問題でありますが、私はベツドを殖すことはこれは絶対の條件であると考えますが、いろいろな日本の現状から考えまして、次の政策をどうやつて立てるかということについて、私は今まで十分な資料が集められたとは考えられないのであります。いつもお役所の仕事はなさるときには華々しいが、してしまつた後の結果について十分な把握がなされていないことが多々ございます。で結核の場合に関してもこれは私は例外ではないと思います。殊に統計的の問題になりますと、衛生統計の專門家が少いことと、それからそういうふうな訓練を受けた人達が末端の療養所や病院に少いという点もございますが、患者の現状分析を見ますと、特殊の療養所を除きましては、現状分析の資料は統一的には出ていないのであります。こういうふうな衛生統計やこの現状分折を十分にいたしませんと、次の計画資料を得ることができないのであります。厖大な費用を投じていたしましたことが場当り的になつたり線香花火になりますのは、この基礎的な資料を十分に持つということが一番肝心なことであります。どうしても現状分析の資料がありませんと、医療の治療的な面におきまして、次の段階を、最後の決定をいたしますには私は困難があると存じます。その困難をはつきりと掴まえませんと、薬とか新しいものにだけぶらさがりまして、本質的なものが失われる心配があると存じます。十分に熟練した立派な所でなさいました外科手術相当に成績も挙げておりますが、私共の聞き及んでおりますいろいろな面から考えますと、大体において外科手術の成績は五〇%五〇%でありまして、これはゼロになる虞れもあるのではないかと存じます。現に特定な調査をされた方の結果を伺いましても五〇%五〇%でゼロだということを伺つております。こういうふうなことは次の段階に入ります上において、如何に技術の研修が必要であるかということも教えますし、又その手術、手技そのものが将来更に研究の改良を待つということも考えられますし、強制することの良否も決定されるわけであります。この現状分析か一定の企画の下に統計的に成就されて常に中央部に入つておるということが一番望ましい問題でありまして、実際に療養所に参りますと、忙がしい方は無暗に忙がしいが、盲目的にその仕事をまつしぐらにやつておるということでありまして、それについての批判が加えられていないのが現実の状態であります。こういうふうな点から考えまして、どうしても私は医療統計に関する專門家を療養所に配置なさつて、そうして十分な現状分析の資料厚生省が噛んで頂きたいと考えます。こういうような方法によりまして次の政策なり手段なり、現在やつておることに対する反省が科学的になされなければならないと考えます。厖大な予算が現在の弱体な末端機関の上に覆いかぶさることの危險も、最上層部の計画立案が本当に地面につくかつかないかという統計的に手技、或いは資料に対する経費が比較的見積られていないという点も考えまして、この点について十分な御考慮を願いたいと存ずるのでございます。  私が思いつきました点はその辺でございます。
  12. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは引続いて杏雲堂病院長の佐々廉平さんから御意見の御発表を願いたいと思います。
  13. 佐々廉平

    参考人佐々廉平君) 私は実はそういうふうに袴羽織式のお話でなしに、單純に問答式座談のつもりで実はおりましたのです。ですからお問いを願えれば分ることだけはお話するつもりでおりましたので、別に原稿も何も持つておりません。併し結核予防で今実際できることを何でもいい、一つでも二つでも一番必要というような考え方で考えたことは僅かなんでありますが、やはり結核が蔓延する一番の本はやはり家庭と学校が一番濃厚じやないかと思うのです。今の家庭における病人を隔離する問題は一番必要であります。金の都合でできんとすればやはり一番割合にやり易いことは、保健婦を十分の量抱えて頂いて指導させて頂くことが、そう費用が非常にかからんのじやないかと思うのであります。  それからもう一つ学校医のことでありまするが、これはおかしな話ですけれども、学校医になるという志願者が非常に多くて、競争の有様の程ですから、報酬なしにやつておる人が多いくらいでありますので、それでもあすこに関係をつけることを好んでおります。そういうふうな状態でありますからして、学校医を選定することは非常に優秀な人がいくらでもあるわけなんですけれども、実際見ますると、相当我々以上年とつた旧式の人がおりまして、恐らくは結核問題についての知識も十分に持つていない人がちよつと今私数を言うことができませんが、眼の前に見たところではそうなんであります。これをもう少し優秀な、若いと言つては悪いですけれども、知識のある人に代えて貰えば大分効果がありはしないかと思つております。この二つが私は最も金がかからんで、そうして一番効果が多いじやないかと考えたのでありますが、外にいくらでも指し示してあられるところに改良すべき点がありますが、要するにお金の問題が先ですから、どうも質だけは改良できるにしましても、分量の上を十分に取扱われるには金なしにはできないと思いますので、あとは私はもう実はお話が問答式に行けばお答えするつもりで実は準備いたしませんでした。これで私は御免蒙りたいと思います。
  14. 山下義信

    委員長山下義信君) それではあとの二人の方には午後にお願いしたいと考えましたが、都合によりまして引続きまして国立中野療養所長の春木さんから御意見を一つ承りたいと存じます。
  15. 春木秀次郎

    参考人(春木秀次郎君) 結核対策といたしましては、別に新らしいというものはないのでありますが、これまでやるべきことというのは殆んど決まつているのでありますが、これを実際に行うということが非常に必要だろうと存じます。一般に私共が見ておりますと、大低のことは知つておりますが、どうも実行にいろいろな点から欠けている点が非常に多い。知つてはいるが実行しない。そういうふうなのが今の日本の現状ではないかと存じております。殊に結核のように人類の中に普く滲透している病気でありますと、外の急性伝染病のように医学的の方法で防遏するということは絶対にできないことでありまして、やはり政治経済の面においても非常に関係するところが大きいのであります。つまり生活水準を向上するということが非常な重大な意義があることはもう皆様から言われている点であります。即ち結核対策といたしましてはやはり医学的方面と、それから政治経済方面からの二面戰線が必要である。私は医学的方面だけについて考えついたことを申しますと、これも決まつた事実でありますが、結核対策には医学的の面から三つの基礎的要素があると言われておりますが、これも確実なことであります。それは保健所療養所とそれからアフターケアーを三つの重要点として十分に発達させることです。どこの国でもそうでありますが、結核予防の初めにはどうしましても療養所のベツドを殖やすということが第一番に考えられまして、それができれば結核対策は十分であるというふうに考えておられますが、それでは無論不十分でありまして、次の段階ではやはり保健所が発達をして、最後にアフターケアーが発達する。そういうふうな順序で、日本もやはりそういうふうな傾向をとつているようであります。この三つがどれでも欠けますと結核対策はうまく行かない。それから今日のように外科の療法が非常に発達しました時代には、療養所治療的価値というものが比較統計によつて証明できるようになつたのであります。一九二〇年頃までは外科的療法が非常に発達してなかつたために、比較統計によりまして在宅患者療養所における患者との治療成績というものが比較できません。比較しましても療養所が優れているということが証明できなかつた。併し今日になりますと、この比較統計によりまして、確かに療養所治療的価値が在宅患者よりは優れているということが各国でも証明できております。その前までは療養所というものは隔離という意味が主な目的であつたのです。ところが現在では非常に違いまして、治療ということにおいて非常な有為な目的を果しております。殊に最近化学療法剤が出ましたためにこの点が一増成績がよくなつているわけであります。それから今後作らるべき療養所でありますが、今東局長からお述べになつたのと全く同感でありまして、この質的向上ということが非常に必要であります。つまり今の療養所というのは積極的な治療が十分できるものでなくてはならないのです。單に病床増加だけでは十分の目的を達することはできないのであります。尚その上に今年は沢山の療養所の建設が行われております。その建築の設計におきまして、所員の能率が十分よくできる、それから経常費の節約ができるような設計をして頂きたいと存じます。單に最初の建設費を節約しまして、長い間に非常な金銭上の損失をするというようなことのないようにお願いしたいと思います。  それからやはり今後作られます療養所のヂストリビユーシヨンでありますが、これもやはり余程考えて必要な場所にうまく療養所をヂストリビユートして頂くということも必要だろうと思います。  それからもう一つは、療養所へ入る患者の撰択ということでありますが、外国のように沢山のベツドを持つているところでも患者を無撰択に療養所へ入れるような方針をとりますならば、幾ら療養所にベツドがあつても切りがないのであります。この療養所に入るべき患者の撰択ということが非常に重大な問題だろうと思います。それから結核患者は何でもかでも療養所治療しなければならんという考え方も間違つているのでありまして、先程武見さんのお話がございましたように、非常に療養所治療する患者というものは在宅患者に比べて少いものでありますが、やはり結核患者というものはデイスペンサリーペエーシエントと、サナトリアムペーシエントというものを分けて相談所と保健所療養所と各々と、の適当な患者措置するようにしないといけないと存じます。それから今非常に問題になつておりますが、療養所でベツドが少いからといつて、十分に治つていない患者を退所させるのは非常に不都合である。又出て悪くなつて又入院するのでは切りがないではないかということを言われるのでありますが、この点は二つの意味がありまして、これは誤解が非常に多いと思うのであります。療養所に入つて治る患者なら長く置いても差支えない。ところが非常に沢山の療養所に入つている患者というものの中には、幾ら置いても一生治らん患者というものが随分ある。そういう患者を治るまで置くということにいたしますと、これは療養所治療の機能というものが麻痺してしまう。そういう患者治療をしない特別の費用のかからない場所に入れるということが非常に必要であろうと思います。  それから公衆衞生局長さんから今お話がありまして、早期診断、早期治療というものは必要である、これは昔から合言葉のように言われるのでありますが、今日その言葉の意味が一層必要性を増して来たのでありまして、これは診断の技術進歩しましたし、一方におきましては治療が積極的になりまして、その成功率が非常に高くなつたためであります。治療が手遅れになりますならば、今の状態でも昔と同じことであります。それから結核患者の死亡率が非常に減つたということが注目すべき問題でありまして、これは各療養所で皆そう言つております。これは療養所へ入るのに長く待たせますと、自宅で死ぬためにこの療養所の死亡率が少なくなつたということも言えますが、それだけではなく、全体の死亡率が非常に下つております。この大きな原因というものがストレプトマイシンのためじやないかと私は思つております。それだけではありませんが、その死亡率の少くなつた大きな原因はストレプトマイシンであろうと思います。これは余談のようでありますが、私の方の療養所の近所に葬儀屋が二軒ありましたが、悲観しておりました。(笑声)一方は二階を麻雀クラブにし、一方はコロッケ屋を開業しております。そのくらい死亡率が少くなつたのでございます。この間公衆衞生局長から或る席でお話を聞いたのですが、生命保険会社が三十億円も得をしたということであります。又考えて見ますと、一方では健康保険が損をしているのではないかと思います。これは余り治療を遅く始めるからそういうことになります。治療を早くやれば生命保険の方も健康保険の方も両方儲かると思います。結局衛生局長さんの言われたように、早期診断、早期治療というものが非常に価値があるので、特に重大になつたと思います。  それから各都市に、或いは県別結核連絡会議というものが必要ではないかと思います。東京都などではやつておりますが、例えば保健所と、療養所と、アフターケヤーがあれば、これは大人数でなくてもよいのでありますが、国立療養所は国の経営でありますし、大体保健所は都市、県の経営でありますから、どうも連絡が放つておいてはうまく行かない。つまり結核のセンターというものが必要であろうかと思います。それから、どこの療養所が空いてるからどこに行けということも、やはり結核のセンターでやはりサービスした方がよいと思います。現在でありますと、どこの療養所一ぱいであります。ただ一ぱい程度が違うのですが、一ぱいでも待つている患者が五人の所もあるし、二、三百人待つている所もある。そういうことを結核センターで按配して、患者の配付などをしたらどうかと考えております。  それから保健所の部門につきましては、非常に重要なことがありますが、特にこれは申すまでもないことでありますが、公衆に危險を與えるような業態に対する徹底的の検診というものが必要であろうと思います。佐々木先生からお話になりましたように、これは学校医の話でありますが、それに関連しますが、学校の先生の結核というものは非常に危險でございます。これは非常に多いと思うのです。それから私共昔から言つておりますが、床屋の結核でございます。床屋に行かない男というものは殆んどないのでございますから、結核というものは特別な注意が要るのではないかと思います。  甚だまとまらないことでございましたが、この程度で私の意見は終ります。
  16. 山下義信

    委員長山下義信君) 有難うございました。政府説明並びに大変有益な御意見を御発表して頂きました各先生の御説明に対しまして、御質疑がございましたならばどうか御質疑を願いたいと存じます。政府へでも参考人の方へでも、どちちでもよろしうございますから、そういうふうに議事を進めて行きたいと思います。
  17. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 只今政府の御説明で、健康診断のことについて大変結構な補助が沢山取れておりまして、そうして二〇%の補助が取れて、多数の人に対して健康診断をするとおつしやいましたが、それについて保健所の問題が出て来ましたが、参考人の諸先生からも保健所の問題が出ておりますが、佐々木先生は問題はごく簡單だ、保健婦を沢山に作れ、そうして学校医を増せばよいというお話ですが、私は保健婦の問題について少しお伺いしたいのでございます。御承知のように、これからの日本保健婦は甲種看護婦学校を卒業して、それから一ケ年の課程を経て保健婦になるのでございますが、昭和二十六年におきましては、公営健康診断の大きな計画を立てて、それから保健所増加をなさいますようですが、ただでさえ現在の保健所ですら保健婦が非常に少いのでありますが、この保健婦の充当と申しますか、教育と申しますか、只今のこちらの予算に載つておりますようなものだけではこの目的は達成されないと思うのであります。政府の方におかれましては、これを如何にして充当させる御計画がおありかどうかということが一つ。それから又佐々先生にも又御腹案がありましたら、どういうふうにしてこの保健婦を充当させるかということについて御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  18. 三木行治

    説明員三木行治君) 保健所の来年度におきまする整備計画は、新設は十箇所でございまして、あとは内容の整備をやるということに重点を置いております。内容の整備と申しますのは、従来AクラスとCクラスとございましたが、来年度は一応Bクラスというのを考えたらどうかということを考えております。職員の数は五十三名でございます。従いまして、二十六年度予算が通過、実施いたしましたその暁に、保健所の数は、Aクラスが百八十、Bクラスが六十、Cクラスが四百八十四、計七百二十四となるわけでございます。これらの要員の充足でございますが、先程武見さんからお話もございまして、特に医者の職員の充足はむずかしいのでございまして、これは大いにやらなければならんのでございますが、井上委員からお尋ねの保健婦につきましては、さような次第でございまして、今保健所といたしましては、格別保健婦が特に不足しておるというわけではないのであります。普通の方法でどうにか充足できるであろうと、さように考えておる次第でございます。
  19. 東龍太郎

    説明員東龍太郎君) 保健婦が将来は甲種看護婦でなければ保健婦の資格が得られないということは井上委員お話通りであります。従つてその保健婦の充足は、私共の局で所管しております看護婦、特に甲種看護婦養成をやつて、有資格者を余計に作るということより外に途がないのでございまして、従つてこれは明年度からは間に合わないことで、それよりも後においてのことでございますから、そのうちに一時ギャップができやしないかということが井上委員の特に御懸念の点だろうかと思いますが、如何にもその通りであります。従つてその間を充足いたしますためには、現在、更に二十六年度において保健婦の有資格者であつて、而も保健事業に携つていないような人が、これは今数は持つておりませんが、相当数おると存じております。そういう有資格者の予備軍もでき得る限り動員し得るような方策を講ずる以外に途はないと思いますが、将来については、保健婦になるべき基礎教育を修めた甲種看護婦を成るべく多数養成させるということの方策を立てるより外に途がないと考えております。
  20. 山下義信

    委員長山下義信君) 佐々先生何か保健婦の充足に関して、養成等につきまして何かお考えはございませんか。
  21. 佐々廉平

    参考人佐々廉平君) やはり家庭に対する注意というものが行き届いていないのは事実でございますが、これはやはり保健婦が足らないからだと思うのでございます。保健所保健婦のいない所があるようです、今……。とにかく一番手つとり早いのはそういうことじやないかと思います。家庭が一番危險で、その次は学校と思つておりますからして、一番危險な所を少し注意を與えるように、つまり到底隔離はできませんだろうと思います。貧乏人のところでは……。併し相当の注意さえすれば、相当の注意さえすれば幾らか効能が現われる。その注意を與えるのはつまり保健婦だから、保健婦を増して頂きたい。こういうただ素人考えなのでございます。別に深い考えはございません。
  22. 山下義信

    委員長山下義信君) 保健所保健婦の定員は別に将来増加計画はないのですか、結核予防対策を強力にする意味において何か増員の計画でもありますか、従来の定員通りでやつて行こうというのですか、どういうふうですか。
  23. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 保健婦保健所における充足についてでございますが、現在のところそのために特別に従来の保健所企画に対しましての保健婦増加ということはまだ考えてございませんでございます。格上げによります自然定員増ということにつきまして十分な充足を考慮したいと考えておりますが、尚又一定の保健所結核の仕事が非常に余計かかつて参るわけでございますが、従いましてその他のいろいろな保健婦活動を競合して来る点がございますが、重点的に結核の活動に従事させたいという考えを持つております。
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) 格上げによる自動的な自然増員というものは凡そ何人くらいになるのですか。
  25. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 極く概略でございますが、六百五、六十名でございます。
  26. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 先程武見先生が御提案になりました結核のいろいろな設備の外に、家庭においての治療という問題について、結核衛生委員会ですか、各地に必要だということがございましたが、その委員会は大変結構で、ああいうふうに私共もありたいと思つておるのですが、そういうふうなことで委員会の構成のお話がございましたが、そういう中で一番家庭におきまして、主婦がそういうことに理解を持つておることが一番根本だと私共は思つて、婦人運動の一つに大きく掲げておるのでございますが、そういうふうな意味で保健婦の又それに対する繋がりが重要になつて参りますが、その保健婦増加のことは今井上さんがおつしやいましたが、その主婦に理解を持たして行く、婦人に理解を持たして行くという面におきまして、今日の実状におきましては、非常にそれは全国の様子を見ておりますと、実に結核に対しては無知で、そうしていろいろな宗教に拜んで貰つたりするようなこと、或いは又いろいろな新興宗教などもそれを利用いたしまして、胸の悪いのは心の中で目上の人を悪く思つているから胸が悪くなるのだというような、事実そういうことを宗教の本にも指導しております。それを又読んでおるし、婦人雑誌にもそういうことを書いておつて、それを読んでるし、婦人の心がけというものは非常に封建性と言いますか、落ちて行くような指導の仕方があるというようなことですね。そういう方から保健婦を通して主婦と繋がつて、そうして何と申しますか、先程のような衛生委員会というような名前にしますか、そういう問題というものは厚生省が考える問題でしようか。どこが考える問題でしようか、結核というものについての絶滅を期する上においては、そういうものが非常に大事で、それが今まで落ちておるのですが、それをどうしてするかということについて、是非厚生省も、又結核療養所結核に専心しております方々も考えて頂きたい。私共婦人をどう立たしめるかということを考えております者は、今そんな問題に触れておりますのですが、それにつきまして、前にこの間長野県を視察いたしましたときに、長野県で療養所に入つていない自宅療養者がございます。その自宅療養者の人達は自宅におります患者同盟とかいうものを作つて、それは患者自身が連絡をとり合つておるような形でありましたが、その患者同盟の運営の仕方につきましての内容は、そう詳しく聞かなかつたのでありますが、ああいうふうな問題も一つ考えなければならん。患者自身が、或いは患者の先程お話の衛生委員会の中に患者の家庭の人の代表者か一責任者があつて、その責任者をよく教育して行く。その患者同盟というものはいろいろな赤の運動の方の患者同盟があつて、何とかせよということをいつて来ますが、そういうような意味の患者同盟でなかつたと思います。長野県におきましては、自宅療養者が地域におきまして連絡をとり合つて、それからいろいろ療養の話を聞いたり、保健婦を中心にいたしまして、療養所なんかの話を聞いたり何かしていろいろやつて行こうということでやつておりますが、ああいうふうな患者自身が家庭の人、それが丁度先程の武見先生のおつしやつた患者の家庭の責任者というようなところに繋がつて行くのではないかと思いますが、ああいう一つの考え方と、もう一つは曾つて結核予防会が御提案になつたのだろうと思いますが、戰争前でごさいましたか、東京にもございましたが、結核予防婦人会というのですか、あれがございまして、もう大分前の話でそうしみじみしなかつたし、あれは大事なことと思つておりましたが、そのうちにいろいろ婦人会を方々で作つておいでになるが、だんだん消えてしまつて、東京では名前がありまして消えておりますが、実はこの間北海道に参りましたのですが、北海道の札幌ではそれが非常に生き生きいたしておりまして、それが結核のことをどこからも頼まれていない。自分達がお金を拵えて、そうして援護いたしておりますのですが、その援護の仕方が少し普通の婦人会の仕事的になつておりましたので残念に思つておりましたが、私は外の仕事で行つたものですから、そこまで指導しなかつたのですが、ああいうものがまだ方々に残つておると思つておりますが、ああいうふうなものを結核予防会でやりますか、どこでやりますか、ああいう婦人のそういう問題を中心にいたしました社交的婦人の繋がりというものは、單なる婦人会ばかりでなくして、殊に患者を抱えた家庭の繋がりと申しましようか、そこの婦人と地域の保健婦を中心にした保健婦の方の繋がりと申しましようか、保健婦の方の御指導によつて尚更でありますが、そういうふうな問題につきまして、これは一考を願わなければならんし、又多少そういう何とか衛生委員会と申しましようか、或いは結核予防婦人会と申しましようか、そういうことにつきましての、又経済的な基礎も多少なくちやならんと思うのでありますが、そういうふうな非常に末端であるかのごとく思われておりますが、そういう問題につきまして、厚生省が先ず増床からという、殊に迫られておる問題として増床からということで手をお付けになるだろうと思いますが、今申しましたようなことにつきましては、追追と行くことであるかも知れませんですけれども、或いは実はそういう計画もないことはないのだという、追々であつても考えておるのだということでございましようか、それらのことを重要とお思いになると思うのですが、そういうことにつきましての、厚生省におきましての一つ考え方を伺わして頂きたいと思います。
  27. 三木行治

    説明員三木行治君) 末端組織をどういうふうにやるかという問題につきまして、厚生省の見解をお尋ねになつたのでございますが、只今河崎委員から御指摘になりました、いわゆる先ず宗教的な問題、その問題から私共の考えを申上げて見たいと思うのでありますが、それが療術行為であるというようなことにつきましては、これを取締る方法があると存ずるのでありますが、ただ單なる迷信であるというような場合には、それが署しく疾病治療の上に悪弊を及ぼしたという事実がない恨りにおきましては、これは如何とも仕方がないと思います。それで私共といたしましては、いわゆる衛生知識の普及という面につきまして、何か法的な手を打つ必要があるのではないかということで只今研究をいたしておるのでございます。それから隣組制度というようなものが只今ございまんのでありますが、それについて、いわゆる結核の婦人会でありまするか、そういうものについてはどうかというお尋ねでありました。結核婦人会につきましては、私共も非常に期待を持つておるのでありまして、通牒等におきましても、これの連絡というようなことを十分にやるようにというようなことを地方に通牒いたしております。ただ残念なことは補助金というような点が十分じやございません。全然参りません。そういうことのためにどうも十分に伸びて行かず、いつの間にか消えておるというようなことであつたのであります。只今ございまするのは、家庭療養患者の協同組合というようなもの、これが全国各地に相当数ございます。そういうものもできるだけ支援をしてやつて行く、保健所の下部機構として使つて行くというようなことも考えております。又赤十字奉仕団というのがございます。その赤十字奉仕団というものも下部組織として使つて行くというようなことについて、いろいろと具体的にやつておるわけでございます。要するに先程武見さんから御指摘がありましたように、予防組織の末端組織をどうするかということは一番重要な問題でございまするけれども、我が国の今日の現状におきましては、いわゆる政府の意思が一本に通るような行政機関的な性格を持ちそうな団体はちよつとやり得ないということになつておりますので、いろいろ苦慮いたしておるのでありますけれども、結局只今申上げましたように結核婦人会でありますとか、或いは自宅療養患者の協同組合でありますとか、或いは赤十字奉仕団というようなものを育成して行くという線でやつておるわけであります。このことは結局武見さんの御指摘のありましたように、国民の衛生知識をどういうふうに普及するかという問題にも繋がつて来るわけでありまして、正しい結核予防の知識を持つておりまするならば、さような邪教の問題もなくなるわけであります。且つ又結核予防対策を推進して行きます上にも、自分達の対策であり、自分達のためのものであり、自分達がやつておるのだという自覚にも立つのでありまして、恒久的なよき結果が得られるであろうと、かように考えております。でございまするから、只今のところ具体的には保健所の普及課というのがございます。その普及課におきまして、さような仕事を具体的に進めて行く、そうして保健所との繋がり、温かい繋がりを作らせるというような方向で努力いたしておる次第でございまして、末端組織の重要性というものにつきましては、これはもう私共最も重点を置いており、而もなかなかむずかしくて苦慮しておるという段階でございます。
  28. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 もう一つ伺わして頂きたいと思いますが、結核予防対策の第一項に取上げられております病床増加明年度二万一千三百床、これは誠に結構でございますが、これにつきましても、やはり患者ばかり殖やして職員は少いということでは何にもならないと思うのでございます。現在の、先般富山に参りましたが、富山の国立病院では五十床のときに看護婦が二十名おられました。百床になつてもやはり二十名の看護婦で看護いたさなくちやならないというような現状で、定員を増加して頂くように願つて呉れと言われておりますような現状でございますが、二万何千床殖やされまして、国立療養所に四百名の乙種看護婦をおとりになつただけでは、看護婦の数は十分でございましようか、看護婦を如何にして獲得なさいますか、承わりとうございます。
  29. 東龍太郎

    説明員東龍太郎君) 只今の富山の国立病院看護婦の定員の件でございますが、この定員につきましては、近く訓令の改正で増員になることになつております。ただ定員が増員になりましても、それだけの看護婦が獲得できるかという問題でありますが、決してこれは容易にできるとは申上げ兼ねますけれども、まあ少くとも国立病院系統のものに関します限り、看護婦の充足は全体としては年々によくなりつつあると申しますか、少くとも一昨年あつたりに比べますと、各病院とも看護婦の充足状態は余程よくなつておると、私はそう感じておるのであります。勿論個々の病院を挙げますというと、案外看護婦が少くて困つておるところもあることは事実であります。それには地域その他特殊の事情がありましようが、そういうものはやはり何とかして看護婦の集まらない原因を除去するように努力いたすより外途はございません。まあ併し全体として看護婦の数がやや充足しつつあるという現状を私は喜んでおるもので、決して十分とは申上げかねますが、国立病院療養所は漸次定員にまで看護婦が満つることと期待いたしております。
  30. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつとお諮りいたしますが、看護婦保健所等の問題は、午後特に十分に一つ御質疑願う予定なつておりますが、それでよろしうございますか。
  31. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 病床増加計画に伴う計画はおありだと思いますから、これは看護課だけの問題ではないと思います。厚生行政全般の問題だと思いますので、ちよつと伺わして頂きたいと思います。
  32. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 明年度増床計画二万一千三百床の看護婦充足の問題でございますが、勿論いろいろ困難は考えられると存じますが、私共の方と看護課の方面との研究の結果、一つのデスク・プランでは入るということになつております。但し療養所の配置のやり方或いは待遇その他関連の状況によつて左右されるかと存じます。できるだけ努力いたしたいというふうに考えております。
  33. 山下義信

    委員長山下義信君) この際薬務局長から発言の要求がありましたから……、慶松薬務局長どうぞ。
  34. 慶松一郎

    説明員慶松一郎君) 先程武見先生からちよつとお話がありましたツベルクリンにつきまして、御了解を得たいと思います。それはツベルクリン規格につきまして、その差が戰後プラス、マイナス二〇%というお話でございますが、今日におきましては、今年の初めからこれをプラス、マイナス一〇%にいたしまして、そうして検定をやつております。尚先程おつしやいましたように、ツベルクリンの品質に差があるというようなことは、過去においてはあつたかも知れませんが、今日におきましては、これは結核予防会と、それから北里研究所と、仙台にあります結核予防会の別動団体であります厚生会、この三つしか作つておりませんで、而も只今申しましたように、その検定の規格を戰後一〇%のプラス、マイナスの差にいたしておりますから、従いまして、仰せのようなことは、今日の品におきましては、ないことと存じておりますので、一言御了解を得たいと思います。
  35. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつとパスストレプトマイシンのことでお伺いしたいのですが、これは薬務局と医務局とに所管を分けておる。素人にはちよつと分り兼ねるのですが、それで医務局と薬務局との関係は、例えばパス医務局で買える、ストレプトマイシンは薬務局自身の所管になつておる。この医務局との間はどういうふうに関係付けておられるのでございますか、ちよつと承わりたいと思います。
  36. 慶松一郎

    説明員慶松一郎君) パスは自由販売で売つている品でございまして、何ら統制はございません。それから尚これにつきましては、そのもの自身国産品だけでございまして、値段につきましても、別に国産品輸入品の差がございません。ストレプトマイシンにつきましては、先程来御説明いたしましたように、国産品が高くつきまして、輸入品が安い。そこでそれをプールいたしますために、薬務局で買上げまして、そうして今一つは、これ自身が今日統制品でございますので、その意味でプールをいたす、経済的な点でプールをいたすということで、ストレプトマイシンにつきましては、薬務局で管理しております。ただパス医務局でお買上げになりますことは、医務局で外の薬を買うと同じ意味で、非常に沢山薬がございますが、それを買上げると同じ意味であります。尚薬務局で買上げましたストレプトマイシンは、これはそのまま無償で医務局に、医務局の必要な分は移管いたしておる次第でございます。
  37. 山下義信

    委員長山下義信君) そうしますと、ストの方の配給は医務局の指令であなたの方でお配りになり、医務局でその必要な所へお配りなさるのか。
  38. 慶松一郎

    説明員慶松一郎君) 国立療養所、病院等で使います分だけを医務局に渡しまして、その外の分につきましては、非常に病院がございますが、私共の方から大学病院とか、私立の病院に対して、ストレプトマイシンにつきましては、私共が配付いたしております。
  39. 山下義信

    委員長山下義信君) ですから、配給は医務局と薬務局と二本立てでやつておる、こういうわけですか。
  40. 慶松一郎

    説明員慶松一郎君) そうして国立病院の方は医務局で……。
  41. 山下義信

    委員長山下義信君) 分りました。
  42. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 二十六年度予算を見ておりますと、大体結核対策国家施策として全責任を背負つて立つというふうな鳴物入りのような一つの大きな国策だと思うのです。ところがベツドの増床一つ見ましても、国立療養所に一万床の増設を要求する、それから新設七百五十床、こういうふうな要求があるのでありますが、査定で増説が一千五百床くらいになつている一方、経常費の伴わない健康保険ですか、組合というふうな方面には肩代りされて病床が増設されている。こういうふうな点を見ますると、政府経常費を伴わない方面へはまあ建てるだけで済む、そうして今後経常費が伴うような国立療養所には病床が殖える、こういうことは非常に私は不合理だと思うのです。ただ病院や療養所さえ建てば、建築さえやればそれでいい、あとはそれでいいのだというふうな考え方はいかぬと思うのです。やはり国策としてこれに取組んで行くというならば、飽くまで政府経常費も組み、そうしてこれを飽くまで面倒を見て行くというような考えで、国立療養所最初のように一万以上を殖やして行くというふうな取組方で頑張つて頂かなければいかぬというふうに考えるのですが、局長さん如何でございましようか。これは非常に私は蛇道だと思うのですが、こういうやり方はごまかしだと思うのですが、どうですか。
  43. 三木行治

    説明員三木行治君) 堂森さんの述べた御意見、国立で大いにやつて行くべきじやないかというお話でございますが、厚生省といたしましては、さような方針で参つておつたのでございます。御承知のように結核は国立でやつて行きたいということが厚生省の方針でございました。本年度の当初予算要求におきましても、さような要求をいたしたのであります。ただ併し又一面におきまして、公立等の療養所が自分達の療養所を持ちたいという非常に熾烈な希望もあることも御存じの通りであります。というようなわけで、予算査定に当りまして、大蔵省と折衝をいろいろ重ねておりますうちに、ともかく療養所というものを取敢えず造ることが先決問題ではないか。だから国も地方も一つ力を合せてやつて行こう、こういうことに相成つたのであります。そのためにこの予算面におきましても、公立或いは法人立の療養所に対しましては補助金を出す、そうして経常費は出さないという形になつておりますけれども、これは予算の書き方が適当でないのでございまして、法人立の療養所につきましては、赤字の補助を出し得るように予算を組んであるのでございます。大体今日健康保険その他各種の保険、共済組合というようなもの或いは生活保護法というような制度もございますので、療養所の経営というものは、それ程大きな赤字でなくても済むというような恰好にもなつております。併し若し赤字を生じました場合には、これを国庫から補填し得るというこの予算の組み方でございます。ただ厚生省といたしましては、その方針の面におきまして、従来結核は国でやるのだという考え方、それを国もやるが併し地方もやるんだというような方針に変りましたことそれはともかく国の財政の事情がこういう事情であるからして、できるところは大いにやろうじやないかというような方針を変えたということは、これは否むべからざる事実でございます。
  44. 山下義信

    委員長山下義信君) 他に御質疑がございませんですか。
  45. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 どの委員も言われますのですが、この看護婦の数の問題、これは一体どうするのですか。これは大変なことだと思うのですが、いつも言われるのですが、どういうふうに考えておられるのですか、医者はいないのですよ。どこの療養所に行つても院長一人で二百人も三百人も見ておるような療養所がある。田舎の療養所ですがね。
  46. 東龍太郎

    説明員東龍太郎君) その事情について私から申上げるまでもなく委員の方がよく御存じであります。どうするかと言われましても、結局現在の状態ではそれ以外に途がないということが事実であれば、現在の状態を変えるより仕方がない。その一つは恐らく給與の問題であろうと思います。従つて給與をよくするということについては、今までも給與の方を預かつておる政府の機関といろいろ折衝いたしておりますし、人事院とも給與のスケールの問題でいろいろとやつておるのでありますが、まだその改良の実が挙らんという状況で、私の方としては、とにかく先ず一つ給與の面において若い医者を多少なりとも引付け得るようにすることが、先ず第一じやないかというつもりで、これは医師のみならず、看護婦も含めて医療関係者全部についての問題でありますが、その外にもいろいろ原因はあると思います。殊に療養所等のあります立地條件が、いわゆる文化的の施設から遠いというようなことで、やはり余程篤志家でないと辛捧して呉れないというふうな悪條件が揃つておりますから、それらを全部克服しない限り十分な医師の充足はできないということは、これはもう明らかであります。そうなるというと、私なんか言いたいことは、何故そんなところに療養所を造つて呉れたんだということを言いたいのでありまして、これからの療養所は町の真中に造ろうということを、これは私共は本気でそう言うつもりでおります。ああいう辺鄙なところへ造つたので、今日非常に困難を来している。そこで止むを得ず折角あるベツドも人のために使えないで、そうして一方に増床をやるという矛盾があり、予算の度ごとに大蔵省から突込まれるわけであります。一方にベツドがありながら、尚ベツドを外に造るということは甚だ矛盾であると言われるのです。これは全く人のないということであります。堂森委員の言われることは何回も言われておりますが、言われるたびに立派なお答えができないのを甚だ遺憾に存ずるのであります。
  47. 山下義信

    委員長山下義信君) 尚午後続行したいと思いますので、午前はこれを以て休憩いたします。午後は一時半から再開いたします。    午後零時二十四分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十五分開会
  48. 山下義信

    委員長山下義信君) 午前に引続きまして開会いたします。国立清瀬療養所長に御出席を求めておりますのでこの際島村所長から御意見を聞くことにいたしたいと思います。どうぞ。
  49. 島村喜久治

    参考人(島村喜久治君) 午前中三人の先生方から非常に御立派な御意見がございましたので、私から今更何も附加える程のこともないのでございますが、お招きを受けて参りましたので、私非常に狭い範囲の問題でございますが、二つ私の意見を述べさして頂きたいと思います。  結核対策といたしましては、春木先生もおつしやいましたように、予防治療と後方保護というものが確かに三つとも完成していなければ、結核というものは到底防げるものではないのでございまして、この三つが一つの輪になつてずつと繋がつておりまして治療しなければ、結局患者を感染させることから予防することにならない。治療の途中で放り出すと、又新らしい患者を作るというような悪循環をしておりますので、この悪循環をそこで断ち切る、こういうことが従来日本だけではなく、外国でもこの結核対策の上での苦心するところであつたと存じます。それで今朝頂きましたプリントも、それから又今朝公衆衞生局長や医務局長方の御意見を伺いましても、非常に立派な対策が並んでおるのでありますが、これをどういうふうに推進して行くか、総花的に一つずつ全部やつて行くことは、今の日本ではなかなか実際上から言いまして困難だろうと思います。それで私考えまするのに、結局は結核というものは伝染病でございますので、伝染病の対策は何といつても予防しなければならないと思います。私療養所におりますので、本当を申上げますと、療養所のベツドを造れとか、もう少し患者が出られるようにしてアフターケアを作つて頂きたいとか、或いは療養所の職員の待遇を引上げて頂きたいというようなことを実は申上げたいのでありますが、そういうことよりも、本当に日本結核対策の方から言えば、やはり予防が第一であつて、予防が同時に治療になるということも考えまして、予防こそが第一次だと存じます。予防結核のように、感染してから発病するまで時間を持つておる病気につきましては、そまることを予防する、つまり感染予防でございますが、感染予防、これは感染してから後でもまだ時間がございますので、発病するまでに少くとも何ケ月以上という時間がございますので、発病を予防するという問題があるわけでございます。感染予防の方はなかなか今のように、日本中に百四十万も五十万も結核患者がいるのではないかと言われております時代に、感染させないことは、患者を全部隔離しない限り殆んど不可能でございますので、せめてできる可能性のある問題は発病予防であります。染感したことが分つた患者を発病させない。たとえ発病しても非常に近い時期に見付けて治してしまうことが、この間まで実はできなかつたのであります。早期発見早期治療という何年も言い古されている言葉がありますが、併しながら実際は早期に発見いたしましても、結核が発病してしまつたという患者が何パーセントか必ずあつたのであります。それは專門的な言葉で言いますと、血行性結核であります。感染して、レントゲンの上に大したことがないのに、粟粒結核や脳膜炎を起すという結核があつたのでありますが、これも午前中から問題になつております、ストレプトマイシンが解決したのであります。それでありますから、現在では結核という病気は早く見付けさえすれば治すことができる病気だと言える段階に来ております。そこで例えて申上げますと、こういうテイブル・クロースを結核対策全般として考えますと、このどこを摘まみ上げても全体一緒に上つて来るのでありまして、端を摘まみ上げましても、真ん中を摘まみ上げましても、上つてくる。丁度これ見たいなものでございまして、重点を特にどこかに置いてやらなければならないとすれば、先ず最前線の保健所をどうしても拡充して頂きたいと存じます。保健所を拡充して、例えば現在の人口十五万ぐらいに一ケ所の割らしいのですが、これは素人の夢のようなお話を申上げますと、例えば三倍にもなつて、人口五万につき保健所が一ケ所になりますと、例えば現在の日本患者の比率から申しますと、人口五十人につき患者が大体一人ぐらいの割合の勘定になるのでございます。現在八千万に対して百四、五十万と申しますと、そうすると、人口五万人を管轄しておる一保健所当りの患者数は大体千人でございます。保健所の私達よく一緒になる所長連中に話を聞いて見ますと、大体一千人くらいの患者ならば完全に管理できる。そうしてその八割までは抑えて療養所に送らないで済まして見せると言い切つておるのであります。あとの二割はストレプトマイシン保健所に廻して貰えればもつと減るだろうと言つております。それで保健所を今の三倍、例えば千五百ケ所以上二千ケ所も日本に作つて一体人が足らない。BCGも間に合わない、療養所患者が殖えてベツドが足らないというような問題がどうなるかというような問題から、午前中、今でも医者が足らないではないかというお話が出ているようでありますが、これは私若いからこういう考え方をするのかも知れませんが、とにかく問題を提出して頂きたいと思うのでございます。医者が揃うまで、看護婦が揃うまで、BCGの立派なのができるまで、ツベルクリンの立派な安定したものができるまで、保健所を作らないということでなくてとにかく保健所を拡充して頂く。そうすれば、前に言いましたように、テーブル・クロースのどつかを掴まえておるのでありますから、保健所のベツドが持ち上つて来るのは当然で、それにつれて当然医者も殖やさなければならない。看護婦も殖やさなければならない。療養所も殖やさなければならない。ストレプトマイシンも殖やさなければならないという問題も、当然嫌でも解決を迫られると思うのであります。今朝も問題になつておりまして、私拝聴しておつたのでございますが、例えば現在療養所にベツドがあるのに、あの医者の待遇では医者が集まらないというようなお話があつたようでありますが、実はベツドがあるから、こういう問題が起きておるのでありまして、療養所が現在非常に少なかつたといたしますと、療養所の医者の待遇は、今朝問題になつたような恰好では問題にならなかつたのだと思います。保健所が沢山でき、勿論千五百の保健所を一年、二年で作つて頂きたいというようなお話をしておるのではございませんで、何ケ年計画で作つて頂ければ、その間にいろいろなそれにつれて解決しなければならない問題が当然あとあと出て来る。その一番いい例は、例えば一つの国で結核のベツドが、結核病床の数が、その国の一年間に死ぬ結核患者の数に同じだけあれば、その国の結核対策としては一応完備していて、そうなると、結核の死亡が減つて行くという事実、これは外国でもあるのでございます。それでこの事実を簡單に考えますると、年間死亡数に合せて結核ベツド数を作りさえすれば、あとは放つて置いても結核が減るんではないかというような、一種の結核防止上の一つの効理と言うか原理というものができ上つて来るのでございますが、実はそう簡單な話ではないと思います。そうではないだろうと私は思つておるのでございまして、例えば今の日本で例を引いて見ますと、一年間に十四万人の患者が死んでおるといたしますると、十四万人の結核ベツドが今昭和二十五年に現在の日本にございまして、それが医者、看護婦の不足もなく、一切の不足を解決して、見事に十四万人のベツドが運転されておるとすれば、当然それにつれて保健所も、ストレプトマイシンも、医者の待遇も、看護婦の待遇も、一切は日本の社会というものが十四万のベツドを使用しまして、支障なく運転できるだけの一種の文明と言いますか、国民の叡智と言いますか、そういうものが備わつておるからこそ、結核で死亡する人間の数に相当するだけのベツドがその社会で維持できると思います。そういう意味から言えば、例えば保健所が放つて置いて頂いてベツドを十四万、二十万作つて頂くこともやはりテーブルクロースの端を持ち上げることになりまして、それに引続いて保健の部分も持ち上つて行くことになるのでありますが、今申上げましたように、初めに例を挙げましたように、悪循環の一番弱いところと言いますか、効果の上るところから悪循環を断ち切つて行くのが一番早手廻しと言いますか、効果の上る方法ではないかと考えるのであります。保健所を今から七百ケ所も千ケ所も作るというのは非常に金もかかる。何百億も金がかかるだろう。そんなばかなことができるかとおつしやるかも知れませんが、結核を金なしで解決しようということは当然できないことでありまして、ただその金をどこへ上手に使つて行くか。例えば保健所一ケ所新設いたしますのに、私素人で分りませんが、非常に金がかかるかとも思いますが、結核を主たる目標として本当にレントゲンの診断ができる程度だけでも結核に対しては十分威力を発揮することができるのでございまして、二百万円か三百万円かかるといたしましても、七百ケ所それを作るにしても二、三百億であります。二百億か三百億でありますが、これを保健所の方を拡充しないで、死亡に合せて日本中にベツドを作るとすれば、到底そのくらいの金では間に合わないだろうと思います。例えばアメリカ結核が非常に減つておるのでありますが、減つておるのは実は白人だけでありまして、黒人の間では、黒人が住んでいる何と言いますか、スラム街では結核の死亡はちよつとも減つていないのだそうで、交献にも出ておりますが、日本の現在の結核の蔓延状況アメリカの大都会の裏町の黒人の住んでいる町の結核の蔓延の状態は同じだというお話であります。これは結核予防会の隈部所長アメリカから帰つて来られて、じかに伺つたお話でありますが、そういう点からいたしますと、金をかけなければ結核がなかなか治らないものである。アメリカの金の力を以てしても、アメリカの黒人街の公衆衞生状態と言いますか、文化状態というものは、まだまだ日本以上には引上つていないという事実を物語つておるのじやないかと思います。そういう意味で私非常に荒唐無稽な意見を申上げるようでありますが、保健所を先ず全力を挙げて拡充して頂きたい。そのことがやがて日本結核を解決する第一歩になるのではないかと存ずるのであります。それが第一の問題でありまして、第二の問題は、これも私国立療養所長としてやや口幅つたい言葉でありますが、結核行政を一元化して頂きたいという問題でありまして、これは私前にも国立療養所の所課長会議がございまして、そういうところでちよつと話したことがございますが、実際は私共働いておりまして、保健所療養所の連絡が非常に悪いのでございます。例えば保健所の方から患者を送つて来る場合にしても、或いは療養所でもう治療対象とならないくらい良くなつた、それでも再発する危險が非常にあるのでございまして、これを保健所に連絡して送り返す場合にちよつともうまく行かないのでありまして、送り返しても保健所の方からうんともすんとも言つて来ない、療養所の方では保健所から患者が来ても連絡しない。東京都では保健所長、療養所長連絡会議と申しますものを一ケ月に一遍ずつやつていたのでありますが、これもいつの間にか自然消滅で、ここ一年近く開いたことがございませんで、府県によつては非常にうまく行つておるところもあるようでございますが、なかなかうまく行つていないところの方が多いようであります。保健所を離れて療養所だけで結核と戰うというのは、何と申しますか、目をつむつて何か喧嘩か、相撲でも取ろうというのと同じでありまして、なかなか保健所療養所がうまくくつつかない限り、とても結核対策というものは万全を期せられないのでありまして、どうしてもそのためには上の方で、今度伺いますと、結核対策本部というものができたそうでございますが、是非強力に一つの行政体として、日本全国に一つの体系を持つた結核行政の指令を発して頂きたいと思うのであります。例えば国民の予防衛生知識を向上させるために、いろいろ今朝もお話があつたようでありますが、私こういうことを言つてはやや言い過ぎた言葉かも知れませんが、現在の日本の国民の文化生活と言いますか、実際の生活上の、経済上の逼迫した状態の下では、自分の家に結核患者が出るまでは、絶対に日本の主婦というものも、或いは日本の世帶主というものも結核予防なんぞには見向きもしないだろうと思うのであります。結局は生活にゆとりができ、或いはもつと惨めに自分の愛する家族の中に結核の発病者が出るまでは、どうしても結核に関心を持たないのでありますから、それまでの間はどうしても強い結核の行政力を一本打ち込んだ保健所の拡充というものを以て、国民をどうしても引きずつて行かなければならない。それでなければなかなか国民全盤に結核と戰おうというような態勢を作ることは困難ではないかと思つております。  いろいろまだ申上げたいこともありますが、大体午前中の先生方意見に附加えるといつては失礼でありますが、私の考えから重点的なことだけちよつと……。
  50. 山下義信

    委員長山下義信君) 何か御質疑がございましたら、医務局の看護課長も参つておりますから、看護婦保健婦等の問題につきまして、御質疑がございましたら……。
  51. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 ちよつとお伺いしますが、只今結核予防対策として一番先生の望んでおられますことは、保健所拡充ということで、誠に結構なことだと思うのでありますが、保健所を拡充いたしましても、保健所がその地区の中心となつて、いろいろな医療機関なり、予防機関なりを指導して行くだけの力のない保健所でありますと、只今保健所のように、いろいろな設備、そういうものさえも持たないのでございます。血液検査一つ保健所ができないのがございます。県庁へ送らなければならない、どつかへ送らなければならないということで、その地区の住民が非常に保健所があつてなきがごとしといつて難儀をしておりますような保健所も中にございますが、その保健所が中心になつ療養所やなんかその他のものとよく連絡をとるように、中央において行政の一元化ということを非常に重点的にお取上げになつておられるようでありますが、私は中央における行政の一元化も成る程結構でございますけれども、もつとそれよりも何か保健所に足りないものがあるのじやないかと思うのでございます。それと申しますのは、只今保健所の非常に弱体ということを言われておりますけれども、余りにも保健所が官僚化するということが非常にその地区の住民達は恐れているのでございます。保健所の官僚化を恐れて、人が近寄らなかつたというのが、これまでの保健所でございますので、何らか保健所がもう少し親心を持つて、療養所なり、その他の予防機関なりを吸收したりするだけの力を持つために、何か保健所に欠けたものがあるのじやないかと思いますが、この頃医療は社会事業と言われておりますが、ケースワーカーというようなことも言われております。そういうものをもつと保健所に配属してやるのが必要じやないかと思うのでございますが、それにつきまして島村先生の御意見を伺いたいと思います。
  52. 島村喜久治

    参考人(島村喜久治君) 実際これは私からお答えすると、私は保健所の人間でございませんので、ちよつと悪口めいたことになるかも知れませんけれども、確かに現在の保健所は、私保健所長も可なり知つておりまして、よく話しておるのでございますが、或いは保健所患者が頼んでも、その患者保健所に満足しないで帰つて来るのであります。保健所へ行つても、とてもあれではしようがないから、療養所で見て呉れと言つて帰つて来るのがございまして、おつしやるような点は確かにあるんじやないかと思います。そういう点で私の申上げましたことが、現在の保健所すらああいう状態なのに、あんな保健所を幾ら殖したつてしようがないというような御意見とも思うのでございますが、結局私申上げましたのは、とにかく一歩踏み出して頂きたい。とにかく何もかもすつかりでき上るまで、外の條件も整うまで、そう言つては失礼でございますが、條件が整うまでは満を持して放たないというような恰好ではなくして、とにかく毎日毎日何人かの結核患者ができておる。今朝程も春木先生からお話がありましたが、死亡が幾ら殖えましても、一日に何百人かずつ死んでおるのでございますから、問題の解決に手を付けて行く。現在保健所の設備が悪い点、気胸一つできない保健所がこの間までは東京都内にあつたのでございまして、そういう保健所整備拡充という問題も、当然これは保健所方々にできて行けば、もつと大きな批判を受け、又解決を迫られ、又解決しなければならない問題だと考えております。
  53. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 春木先生に午前中のお話でお伺いいたしたいのでございますが、実は厚生省の方で二十六年度増床されます結核病床の配当の計画を持つておりますか、配置計画をお持ちになつていらつしやるよろですが、地方に参りましても、厚生省の配置案に対して不足な点がございます。例えてみましたら、結核死亡率が日本で上から二番目三番目と言われておりますような冨山県にいたしましても、増床病床が二百なり三百なり、非常に少い。それから山形県のようなところにいたしましても、山の奥の方に結核病床増床しようとしておられまして、先程おつしやいました配置計画が、山形市に配置されるような計画もないというようなことで、その土地方々で大変不満を訴えておられるようなところがあるのでございますが、春木先生におかれましては、今後作られる療養所の配置に注意せよとおつしやいましたが、何かそれに対して具体的な御意見がありましたら伺いたいと思います。それからもう一つ、新らしい療養所の建築に対して、設計に注意をしろ。非常に人的な消耗も多いからと、非常に注意を促しておられました。私も非常に同感でございます。建築設計につきまして、もう少し具体的の腹案がおありになりましたら、お伺いして見たいと思います。
  54. 春木秀次郎

    参考人(春木秀次郎君) 療養所のデイストリビユーシヨンをよくするという問題、これは無論必要でございまして、そこの必要性ということが一つでございます。それからもう一つは東局長からもお話がありましたように、余り不便なところに作りますと、利用価値が非常に悪いので、その療養所を利用する主な都市から非常に交通の便なところに作つて頂きたい。それからどういう地方がどのくらい結核病床を必要とするかということは、私のところでは材料がありませんので、これは厚生省の方できつとお考えになつておることと思います。私が申すまでもなく、その点はお考えになつておると思いますが、念のために申上げたわけでございます。それから療養所の設計が非常に経常費に影響するということは今御質問になりましたが、これは無論のことでございまして、米国の元ニューヨークの病院局長をしておりましたゴールドウオーターというのが、非常に病院建築の大家でありますが、その人の意見によりますと、できるだけ看護婦の歩く歩数を少くするような療養所の設計が必要だ、これは非常に名言でありまして、やはりそれが非常な設計の根本だろうと思います。もう一つは耐火性、それから日常使います蒸気、それからお湯或いは水道なんか、そういうあらゆる鉄管、これはできるだけヘッドに近く配置する。そういうことは、初めはお金がかかつても、非常に人的資源の経済になるだろうと思います。それからこれは望めないことかも知れませんが、できるだけ不燃性の建物、そういう一般的なことが望まれることでございます。
  55. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと伺いますが、保健所長の任命についてはその選考方針はどういう方針をとつておるのですか。
  56. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 保健所所長の任免について何か基準があるかというお尋ねでございましたが、現在のところ特段の基準はございません。ただ保健所法に基きますその施行規則で、医師であるということが條件の一つでございます。私共といたしましては、できるだけ公衆衞生に理解のある医師を求めまして、これを公衆衞生院に入れて教育いたしまして、そうして一般的な公衆衞生対策の実施に必要な方を仕上げて行く、こういう方針でございます。
  57. 山下義信

    委員長山下義信君) 大体それは形式的にはそうでしようが、相当しつかりした、信用のできる、どう言いますか、立派な人を据えようという方針なのでしようが、その待遇の点も伴いましようが、その据え方によりましては、ただ單にそういうことろに勤務せられる医師の給與の改善という意味じやなしに、この人に適合するようなやはり号俸と言いますか、号給というものも伴わなければならんわけであります。俗に言う大物を持つて来ようという考え方で行くのですか、そこまでは考えてないでしようか、一体そういう御選考の程度を高く持つておられましようか、どういうふうなのでございましようかね、その辺を承わります。
  58. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 所管官庁でございませんので、或いは的確を欠くかも知れませんが、私の承知しております点を申上げますと、私共総体の気持としましては、保健所長は必ずしも保健衛生職員以下の者ではないのであります。どんな立派な人でも受入れたい気持でおりまして、勿論適格者がございますれば、その方の待遇は当然できるだけ高くして行くということにつきまして考慮をいたしておるのでございます。たまたま地方によりましては、若干いわゆる公務員給與等の制約された考え方で抑えている向きもままあるようでございますが、中央としては、そういうことは考えておらんのでございます。尚、本日午前中に御論議が出たのでございますが、特に大学教授その他の方を保健所長に兼任と申しますか、併任と申しますか、併任せしめまして活動さしたらどうかというお話も、御意見が出てございましたが、すでにこの事例につきましては私共試みておりまして、私共の方と文部省の方で各大学或いは地方長官に、そうしたことをできるだけやるようにという通牒を出しておるのであります。なかなか学校当局の事情或いは地方庁の事情等で必ずしも成果を得ておりませんのでございますが、そうした気持を持つておりまして、すでに通牒は出ておるわけでございます。今後とも十分にそうした道が開かれて、而もそれが立派な成果を收めるように努力をいたしたいと考えております。
  59. 山下義信

    委員長山下義信君) あれはやはり保健所の運営は言うまでもなく優劣と申しますか、成績の優劣があるのでございましよう。そういう成績の優劣というのは、どういうことを以て優劣とするかという議論もありますが、それは差措きまして、そういう優劣に対しまして何か奨励と言いますか、優劣がはつきりして、優れた業績を挙げている保健所に対してはますます奨励するというような、そういう行政上の何か考え方は持つてやつているのでしようか、どうでしようかね。
  60. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 所管関係でないので分りませんが、只今の地方団体の待遇と申しますというと、これは御案内のように国家公務員法に準じた取扱をいたしておりますが、ややもすれば年齢或いは学歴、経験年数というようなことで支配されておりまして特別な働きをするから格段の拔擢をするといつた方策は講ぜられておりません。立派なお働きをする方は成るべく枢要の地位を占める、或いは地位に当てるということについては考慮が拂われております。又特に昨年度香川県の琴平保健所のごときは、保健文化賞受賞という形で表彰されております。そうした方向でも大いに奨励しなければならんかと考えております。
  61. 山下義信

    委員長山下義信君) それじや保健所は府県営でございますから止して、国立の療養所の成績の優劣に対しましては、どういう信賞必罰と言いますか、その優劣に対しまする対策というものは、どういうふうなものを持つておりますか。
  62. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 只今お話と同時に、先程からやはり国立療養所の運営に関しましていろいろ御意見がございましたので、局長より概括は説明いたしましたが、細かい点を一つ申上げたいと思います。山下さんから御意見通り療養所で、一応隔離收容の場所でベツドだけ殖えただけでいい、そこにより取りをしないで、ただもう寝かして置くということでございますと、貴重なベツドが非常に沢山になりまして、あり余る程あれば別でございますが、必要な患者が入られずに外でだんだんに悪くなつて行く。入つておる患者は必ずしも治療の必要がなく寝ておる。こういう奇妙な矛盾が起りますので、そこで療養所の職員全体といたしましては、いわゆる今の時代に即したと言いますか、非常に結核療養所の運営上優れたことに努力を皆でやつておるわけでございます。そのために一番業績を挙げておりますのは、やはり何と言いましても外科治療に非常に熱心にやつておる、患者の選択に当りましても、入所のときから相当な決心をいたしまして、ただ軽くて家にいれば都合が悪いというようなものを無選択に入れずに、差当り外科治療をすれば直ちに家で非常に多数の菌を出しておつたものが閉鎖する。而も本人は命が助かつて出て来る、こういうものを先ず極力選択する。これに努力するのが非常に療養所として優れた始まりでございまして、入れた患者につきましては、時を移さず逐次手術をして手術をいたしますと、大体ニケ月なり三ケ月で、今まで二三年放つておけば非常に重症のものでぶらぶらしておつたものが、菌が閉鎖されてしまつて外へ出られるというものが相当数あります。こういう療養所が約全体の四分の一くらい、二五%ぐらいは年間を通じましてヘッド数の約半数近くの手術をしておるという療養所でございまして、これらの療養所につきましては、今の委員長お話のように信賞必罰と申しましても、同じ公務員の規格もございますので、特に俸給を上げるとか、或いは一つの賞をするというような形は、只今のところできませんので、取敢えず、ますますそういうふうにすれば研究心も起き、治療も一層できるというので、手術ごとに経費を、現在のところ一手術ごとに千五百円だけ平均経費よりも余計に予算をとつてございます。これによりまして次の患者に対して一層いい治療ができるような研究をする元になります。材料も豊富に使う。こういう手段を昨年度から講じております。これは非常に好成績を上げております。そうなりますと、手術すればするだけ皆の研究心も湧く、こういう形でやつております。幸いこれは各医員から好評を博しまして、そのため治療方法は逐次上つております。一方これはその療養所の職員の熱意が足らんというだけではございませんで、施設そのものが手術に適しないというものは、これは止むを得ざる形で存じております。これは一番問題になつておりまして、設備改善の必要もあるのでございますが、やはり宿屋等を改造いたしました小さい療養所は、如何に手術室を作りましても、それは適正な治療はやはりできないというような絶対的な欠格條件のものが幾つかございます。こういうものは来年度結核対策上から申しますれば、治療療養所でなくて、いわゆる治療を終りまして、併しまだ家に帰れぬというようなものを入れるには適するのでありますが、ただ問題になりますのは、そういうところへ医師が行つてくれるか、看護婦が行つてくれるかということが非常に現在でも困つております。そういう医学的の考慮がないということになりますと、本当にただ看護して見守るとか、治療上から言いますと、ただそれを收容して治るまでの期間を簡單に処置して行くということになりますと、どうしてもこれは若い、結核に熱心なお医者がとかく行きにくい、又そういう施設に限つて田舎にありますから行きにくい。これはおのずから罰のような形になりまして、そういう療養所には次第に意気が消沈して、これはむしろそういう施設のものは気の毒な状況にありますから罰を考えますので、これは何か逆に、そういう所は敢て学問の方を犠牲にするとしても、やはり国家的に必要な施設に行つてくれるという、逆な賞を何か講じなければならん。これは非常に痛切に感じておるわけでございます。  それから尚これに関連いたしまして、実は先般清瀬病院以下を当委員会で御視察を願いまして、いろいろな参考になります又我々が毎日すぐに服膺しなければならんいい御勧告を受けましたのでありますが、その中で最近講じました顯著なことを一つ御報告申上げておきます。  それはその節の座談会にも出ました通り、又先程からの皆様方の御意見にあります通り療養所でもう治療が必要ないというような患者で、いろいろな諸條件で療養所のベツドを無意味に塞いでおるという者がどのくらいあるかということを直ちに調査いたしました。只今まで全国百五十一箇所のうち結核療養所において九十一箇所が正確な報告をよこしまして、大体全施設の三分の二弱が集計できましたが、患者数にいたしましてそれだけのものに約三万名おりますが、その中でもう全然現在のところ療養所において治療を必要としないというものがきつちり三百名一%でございます。この外に現在集計中でありますが、自宅で十分治療を続けて目的を達するという患者が現在集計中の推計から申しますと約この倍六百名約二%、合計いたしますと療養所のベツドを占めなくてもいい者が現在でも約三%存在するのであります。でこの約全体の半数がいずれも生活保護法の適用者でございます。三百名のうち百六十名即ち過半数を占めるものであります。その他いろいろな保護法の者が少数ずつ含まれております。過半数が生活保護法でありますが……。
  63. 山下義信

    委員長山下義信君) 三千のうち千八百……。
  64. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 三百のうち百六十一名生活保護者であります。こういう状況でございますので、大体これには推測に難くありませんでしたので、かねて療養所長の御意見もございまして、こういう患者には極力自宅或いは町村の方に連絡を取つて、極力出て行つて而も生活が続けられるような方法を講じておりましたが、先月の中旬付を以ちましてもう一度私の方から厳重な通知を出しましてそれぞれ自宅に帰るような方途を講じてこれは極力出す、こういうような方針を示して只今この入換えが着々進行中でございます。途中で新聞紙に報ぜられました通り一二事故が起りましてどうしても出ない、一般的な社会政策の欠陷で自分はまあ出たくても出られないのだからというようなことでいろいろ問題を起しておりましたが、これもそれぞれ自宅を調べまして家族とも納得して逐次解決いたしました。少くとも早晩これらの三%の患者数、これも併し全国から見ますと相当貴重なベツドでございます。自宅に停滯しておつて喀血しておる重病患者がこれだけは直ちに入れるというような結果を見まして、これを機運といたしまして療養所を最も最高能率で利用しようというのが療養所職員のみならず国民側にも段々理解がされて来たように思いまして、こうなれば来年多くの金をかけてベツドを作つてもいわゆる無駄な收容所を作るというようなことは、今から逐次教育されて行くのじやないかというふうに存じております。  それから尚先程から療養所が国立であるために一般の治療対策結核対策とマッチしないという点もございます。これは確かに従来ございます。お互いにこの国立の担当者といたしましては、決して看過しておるのでもなんでもなくて経営が国費で出ておるだけであつて、飽くまでその地方の県民市民を人れておるという建前は取つておつたのでございますが、とかくこの指示等に喰い違いが起つたのでありますから府県乃至は保健所長と協議会を作るように、これは三年前程から指導して又皆も努力しておりまして、相当府県はた体できてうまく行つておるのであります。その中で極く最近に非常に成功しておりますのは、福岡県に丁度福岡市の周辺に三箇所大きな国立療養所がありまして、殆んど県内の全保健所に一週に一回ずつこれらの国立療養所から一人ずつ結核專門医官が出掛けまして、その日に限りましては結核專門医が自宅に来てくれるので、多いときは平素の数倍の結核を持つておる患者が権威ある診断を受け、又その医官と保健所の職員と共同して診断する。このために療養所には一番適した重要な患者を送ることができるのでありまして、又療養所から退所した患者保健所内に送り込んだ場合に、事後措置が非常にうまく行きましてこのやり方が非常に成功しております。ただ今のところ交通費がかかるのでありますが、この負担の点でなかなか両方でつまずいておりますがこれは僅かな金で解決する問題でありますので、明年の保健所等が結核対策相当重点が置かれる場合には、国立療養所自身が医官の不足で困つておりますが、それを補つて余りあるというくらいの効果がありますので、これは敢て各療養所長に理解を願つてこの方策を全部やつて行きたい。こういうふうに存じております。
  65. 山下義信

    委員長山下義信君) 成績のまあ優秀な療養所に対しましては、特段に一つ今後共いろいろ御奨励の意味でお考えを私は願いたいと思います。ですから国立のものはいわゆる官吏のやることでありますので仕事には競争がないということが弊害なんですから、こういう治療的なものは余り焦らせてもいけませんが、成績を挙げた療養所に対しましては、中央としてはよくその厚遇ということにつきまして御留意を願いたいと私は思います。  今のいつもやかましく皆さんで言つておられますベツドの回転率の問題、これは今御報告になりましたのでは、大変著々と対策をやつておいでになりますが、そういう患者の退所につきましては何か法的な措置を講ずる必要等がありますか。或いは現在何か適当に合法的な根拠が與えてありますか。或いは今後結核予防法等の改正等に際しまして、この患者の退所に関しましてこれがスムースに合法的に行われるような法的根拠等も考えられておりますか、そういう点はどうでしようか。
  66. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 只今予防法の方の問題はあとから結核予防課長から御説明願うといたしまして、現在の療養所における退所の命令の問題でありますが、療養所の職員の側でこれは入所の必要がないと認めた場合に、命じ得る唯一の根拠は厚生大臣の告示で出ております。元は厚生省設置法に基いておるものでありますが告示で出ております結核療養所の入所規定に基いてやつておるのであります。この点につきましては今まで法律がありませんのでとかくこの解釈が法律家にも問題がございまして、八所というものの契約に対しましての一方的解除は不当であるというような反対意見もございまして、本当のところ法的に確立をいたしておりません。併しながら実際問題としては、誰が見ても入所の必要がないというような常識問題でこれは命じて本人が納得して出て行くと。こういうことでございますのでいざ本人と係争が起りましてどうしてもここにいたい 一方でどうしても出したいというのに身を以てベツトに坐り込んだ場合には、これは合法的に外に除去するには今のところ法律的に療養所の職員が手を加えることは事実上はまだできない。最後の場合には最善いろいろ社会で起つております不退去罪というようなもので、むしろ刑事措置といたしまして別個に処置いたしませんといかんのであります。この点につきましてはこういう療養所の中でそういうような犯罪容疑の形を一々起しましてやることは、全くこれでは角を矯めて牛を殺すというような事態になりますので事実はこれはなかなか困難な状況でございます。できれば本当の結核対策上の問題からいいまして、勿論これは外へ出てからの社会的のいろいろな裏付けがないという問題は残りますが、よの重い患者を收容せねばならんというような社会正義の上から申しますと、より気の毒の方に上げる形である程度の法的措置が事実お願いできたらとこういうふうに思つております。それから今後の予防法の改正のときに盛込むといたしましても、国立の場合には予防法の方に盛込んだ方がいいか、或いは厚生省設置法の法律そのものに織込んだ方がいいか、これは十分研究を盡くしておりませんのでこの点はつきりお答えできません。
  67. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 現在の法律即ち結核予防法におきましては、会所命令を出し得る規定があるのでございますが退所に関する規定がないのでございます。次の国会に御審議願いたいと思う予防法の草案の審議を進めておりますがまだ研究中でここで申上げるまでの結論に至つておりません。勿論今度は入所に関する規定があれば当然退所に関する規定もあつていいのじやなかろうかというような根本的な考え方で検討を進めておりまして、その筋の引き方等についてはまだここに申上げるまでに至つておりません。
  68. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと関連して、先般予防結核法を立案中の大体の重要点だけは聞きましたが、例えばいろいろ医療に関しまして、国が治療費の負担を個人々々にしてやるといつたような措置等もやはり法律上になりましようか。予算の執行に関連しまして、それらの補助に関しまする補助費といいますか国の負担というようなものが規定されるわけでありましような。
  69. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) そういうことでございます。
  70. 松原一彦

    ○松原一彦君 まだ統計や御報告をば完全には読んでおりませんから分らないのですが、結核計画的になくする方面に積極的な努力を拂つてその成績の最も顯著な地方を三三お示し下さいませんか。
  71. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 従来結核対策計画的にやりまして成功を收めた地方について一言申上げますと、一番成績を收めましたのは石川県の例でございます。これは昭和の初から戰争開始頃までに日本の一位を占めておりましたのですが、昭和十六年から特別結核対策を実施いたしまして終戰後第一回の統計を得られました昭和二十二年におきましては全国の十位に下つております。特に年令的に重点をおきました青地少年につきまして半減いたしておるというような顯著な成績も見られております。これと同様な成績は他に栃木県、北海道の札幌、福井県の一部というようなところで若干ございます。
  72. 松原一彦

    ○松原一彦君 こういう地方はございませんか。この予防や衛生の施設若しくは積極的な栄養施設等が非常によくなつた結果無結核村といつたようなところはございませんか。あつてこれを表彰せられるといつたような明るい面からの結核予防の何か道はないでしようか。私は昨晩読んだ新聞に酪農の奬励を実地に見て来てそれを報告してある記事がありましたが、鳥取県の一部には一軒の家で牛乳を一日に二升自家用としてとつておる、各家庭に非常にバターが還元されて戻つて来る、そのバターをとり牛乳をとつておる結果殆んど村に病人がなくなつたと、なくなつたというのは少し大袈裟でしようけれどもそういうふうな積極的な栄養の充実から来る健康の保全が大分見えて来たような気がするのです。日本のこの栄養の充実から又進んで方途を講ずる点からもそういう明るい面が少し見え出したように思うのですが、そういう点から無結核村といつたようなものを拾い上げてこれを表彰するとかいつたようなことがございませんか。
  73. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 只今お話直接該当するかどうか知れませんが、従来と申しましても戰時中でございましたが結核予防会と地方の保健所とタイ・アツプいたしまして、全国で十ケ所ほど都市及び農村におきまして極く小さい地域で特別な実施をいたしたことがございますが、結核の問題は勿論そうした実施した地域では大きな成績を挙げておりますが、大体農村の結核などという場合にはそこにおける発生はやはり出稼ぎ人が帰つて来て起るわけであります。従いましてそこに結核があるかないかということは発生の有無ということに関連いたしますので、無結核村というようなことの材料は只今持つておりませんが、そうしたやり方で細かく掴んで行けば或いは成績を細めて何か又お説のような表彰というような段階に至るようなこともあろうかと思います。今たまたま特別にそういうことはやつておりません、研究いたしたいと思います。
  74. 山下義信

    委員長山下義信君) 結核児童に対して特別の何かこの点のお話がありますか。
  75. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 結核兒童に対する方策といたしましては勿論私共の方と文部省と協力してやる事務でございますが、一般的な対策としましては御案内のように予防接種を実施する、或いは健康診断を実施するというのが一般的方策でございますが、特殊施設といたしましては都市におきまする小兒対策としまして都市小兒結核保養所というのを設置いたしております。現在ございますのは東京、横浜、名古屋、大阪二ケ所、神戸以上でございますが、本年度中に京都が完成いたします。尚明年度予算では福岡を予定いたしておりますが、この都市小兒結核保養所におきましては、いわゆる要療養者というよりも要休養者という、そのままでは学校に来て貰つては困る、併しながら寢つ切りでなくてもいいのだというような要休養者というものを收容いたしまして、所長は勿論医師がなりましてその医師の診断処方によりまして、この子供は二時間ぐらいは勉強してもよろしい、この子供は四時間ぐらいは勉強してもよろしいということを決めまして、そこに附属学院を併置いたしましてこの経費教育委員会の方から出して貰つております。その附属学院は勿論所内にございまして横浜市なら横浜市におきまして各校の分校にいたしております。そうして進級期が参りますと、おのおのの本校の進級免状をやるというような形をいたしておりまして非常に好評を博しております。明年度対策は福岡市ということになつております。
  76. 山下義信

    委員長山下義信君) 二十六年度は福岡一ケ所でございますか。
  77. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 本年京都にできまして明年度は福岡ができます。
  78. 山下義信

    委員長山下義信君) 国立ですか。
  79. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 全部公立です。
  80. 山下義信

    委員長山下義信君) あなたの方で補助を出しますか。
  81. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) さようでございます。
  82. 山下義信

    委員長山下義信君) これに関しまする資料を頂戴したいのですが。
  83. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 承知いたしました。
  84. 山下義信

    委員長山下義信君) これは兒童局関係とは何もないのですね。
  85. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) これは関係ございません。純然たる結核対策施設としてやつております。
  86. 松原一彦

    ○松原一彦君 名称は。
  87. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 都市小兒保養所。
  88. 松原一彦

    ○松原一彦君 結核という字は使つておりませんか。
  89. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 表には出しておりません。予算書には小兒結核として出しておりますが看板には挙げない方が適切かと思います。
  90. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 ちよつと今この問題が出ましたから引続いてもう少し伺いたいのですが、そこに入つておりますのはどういう体のあれですか、生活層はどういう子供でございますか。と申しますのは実は私共が中野にできましたあの結核予防会の婦人会の方で気を付けておるのでありますけれども、家庭でもできるというような子供がやはり理解があるところから利用されておりますが、そういう人達でもつと本当にしてやらなくちやならん、親許へ置いては危險だ、従つて経済的な負担も入りますが、そういうところからは遠いのだ、残念だという声を大分諸方で聞くのでありますが実際の様子はどういうものでございましようか。且つそこは相当多くあるに拘わらず利用されておる收容の子供が大変少いと聞いておるのでありますけれども、実際どのくらい收容されておりますか、実情をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  91. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これは各地によつて情勢が異なつております。東京だけが実は私共率直に申上げますと私共の意の通りなつておらんのであります。東京はニケ所ございまして一つは久留米学園と申します。これは都の教育庁所管になつております。他方は直接東京都の衛生局所管になつております。やはり清瀬村にございます。小兒結核療養所なつております。これだけは私共の意の通り必ずしも一致いたしておりません。横浜、名古屋、神戸、大阪等につきましては只今申上げたように大体要休養者を入れまして、その入れます標準につきましては保健所で身体検査をいたしまして適格者を選択して入れる、飽くまで医療法の建前から入れまして入ります患者さんの生活等につきましては考慮を拂つておけません。大体費用は一日当り八十円ぐらい食料実費ということで市の負担は相当多いと存じております。尚私の方でも大体現在一ケ所当り一万円程度補助を與えておりますが更に最近の市の負担は非常に多い情勢でございます。年額大体一ケ所当り八万円から十万円ぐらい使つておるようであります。  尚保護法の適用者その他につきましては十分それを活用いたして生活保護如何を問わず入れておるようなわけであります。非常に入りの悪かつたのは東京の例でありまして地方では寧ろ押すな押すなで非常に入所に困つておるような実情でございます。
  92. 小川朝吉

    説明員(小川朝吉君) 只今小兒保養所のお話がございましたので、この国立に併設されておりますのが二ケ所ございます、併せてこれも御参考にお話しておきます。一ケ所は国立神奈川にあります、約百ベツトの定員で設けております。もう一ケ所は国立兵庫にあります。いずれも結核発病後のいわゆる結核小見を入れております。大体今のところ義務年限の学童が主であります。両方共その他元の町村の分校になつておりまして、比較的治つて来ましたものは病気休学でなくて治療をしながら大体発病した先生を併せて入れておきまして教育が継続できるようになつております。治つた時には学年が終るようになつております。非常に好成績であります。この両者共大多数は生活保護法の適用家族が多うございます。非常にこれは家庭の負担を少くしておりまして希望者が多うございます。これは療養所としますと最近非常に患者がつかえておりますので子供を入れますと能率が悪いのであります。併しながらこれだけは離さんとして全国二ケ所継続しております。我々もこれを盛立てて行きたい、こういうつもりであります。
  93. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 療養所について質問がございませんでしたら私この際、看護課長出席されておりますが過般十月に行われました甲種看護婦国家試験の状況を御説明願いたいと思います。
  94. 山下義信

    委員長山下義信君) 尚後で結核関係で御質疑ございましたらお差支ございませんからどうぞなすつて下さい。
  95. 金子光

    説明員(金子光君) 保健婦、助産婦、看護婦法によりますそのうちの保健、看護婦に対する部分が九月に全面的に施行されましたので、その甲種看護婦国家試験を十月の十四日、十五日と二日間に亘りまして二十九箇所で実施いたしました。受験を志願いたしました願書の提出者の総数は一万二百三十六人でございます。これは直接厚生省の方に提出されましたので看護課の職員が全部これを受理いたしました。試験を実施いたしましたところが棄権者が比較的多うございまして実際に受験をいたしました者の数は八千五百九十八名でございますが、この数も実は全く正確であるかどうかということはもう一遍調査をしたいと存じております。と申しますことは試験を二日に分けたのでございますが、最初の日の十四日には午前と午後とに試験の問題を分けて出しております。それから二日目が午前だけで三種類に分れて出題したわけでございますが、最初の日の午前だけ出席した者とか或いは二日目は欠席した者とかという数がございますので、二日間共三種類を全部受けた者の数というのが数えましたのが結局八千五百九十八名そういうつもりでございます。例えば一つだけ、第一回だけ受けなかつたとか二回だけ受けたとかいう数が少しずつ違つて来ますので、一番少しずつ受けた者の数を出したのであります。これは受験番号全部併せて見ませんと本当にその人がやつたかどうか分りませんので最後にもう一遍検討いたしますが、大体の数は八千五百九十八名でございます。  試験の内容につきましては御承知のことと存じますが、法律で定められております審議会が試験に関する一切の事項を取扱うことになつております。審議会の組織は法律ができましたときのとは中途で一回変更になりまして、最初審議会と国家試験委員と二種類ございましたのが一本の審議会になりまして、審議部会と調査部会ということになりましたものでございますから、審議部会の十五名の委員国家試験に関する一切の重要事項それから試験事項までお扱いになるということになりまして、專ら十五名の方によりまして試験の問題はすべてが解決されることになつております。  それから試験をいたします場合の試験問題の作り方でございますが、これはやはり審議部会が全面的に運用するということになつておりましたので、十五名の試験委員の方が全員で試験問題をお作り下さいましたわけでございます。これにつきましては実際に当りまして十五名の中から、三省のお医者さんと五名の看護婦と加わりまして八名の出題委員が出題いたしましたものを、全員の十五名で選択いたしましてそして最後的に決定をいたしましたものでございます。試験の種類は学科試験と、それから実地試験の二種類になつております。学科試験は試験の出題の方法といたしまして、審議会が決められましたことは組合せ式と、選択と、それから嵌めこみ、大体この三種類でございます。それから実地試験の方は一万人もの人を、私の方では予算的に一万人と計画を立てておりましたので、一万人の看護婦を二十九ケ所乃至は三十ケ所で試験いたしますのに平均いたしまして一ケ所三百人から三百五十人程になりますので、それだけの大勢の人を一日或いは二日で捌きますのに、実地試験は絶対的と言つてもいい程不可能でございますので、実地試験はいたしますが筆頭でできる実地試験ということになりまして、実地試験はいたしましたが形式といたしましては筆頭ということになりました。  尚試験をいたしますのに私共が一番心配いたしましたのは問題の発送のことでございます。医師国家試験のときのように、問題だけが印刷されておりまして解答は別の用紙に解答されるような形になつておりますと大変便利なのでございますが、今回の看護婦国家試験につきましては出題の用紙に直ちに解答を書込むような形式になつておりますので、非常に大量の問題用紙兼答案用紙になりまして、一名の者がざら紙の大きさにいたしまして三十二枚の解答をする形になつておりますので、一万二百三十六名分の答案用紙というものは莫大なものでございました。これを漏洩をすることないようにその方面にも折衝させて頂きまして発送いたしました。それで無事に問題なく終りまして大変有難いと感謝いたしております。  只今私共ここで採点に取りかかつておりますが、発表の点につきまして御指摘がございましていつ頃発表されるかということでございますが、私の方でも極力早く発表したいと考えております。予定といたしましては本年末に発表したいと考えて努力いたしております。国家試験のことにつきましてはこのくらいでよろしうございましようか。
  96. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 只今国家試験の実施状況を詳しく御説明して頂いて有難うございましたが、いろいろと皆様の批評を聞きますと、この国家試験が案に相違して勉強したようなところが出なくてそうして実地方面と申しますか看護の実務方面が多く出されたというような批評を聞くのでございますが、勿論今回の国家試験は看護婦技術といいますかそういつた面の向上に重きを置かれたということでございましようが、実際は問題の内容はそうでございましようか。例えて見ますと生理とか解剖とかを一生懸命勉強して行つたのにそういう問題は出なくて、むしろ長いこと看護婦をしておつた者に適切であつたような看護の問題が出たというような噂を聞いておりますが、実際はそういうのが事実でございましようか、承りたいと思います。
  97. 金子光

    説明員(金子光君) おつしやいました通り甲種看護婦国家試験は看護の質の向上ということを一番狙つておりますのは事実でございますが、試験の問題の内容につきましては、甲種看護婦養成所の試験規則に決められております学科課程の内容につきまして試験が出されたわけでございます。この学科課程の中で審議会の審議の結果は社会学、化学、心理学の三つだけを外しまして看護に関するいろいろ必要な基礎的なものは全部包含する、こういう方針で問題が作られました。従いまして只今お話がございました解剖、生理につきましては当然問題が出ております。只今何題程出たか覚えておりませんけれども、大体出題いたしましたときはこういうふうな方針で出しました。審議会の委員の中にお医者様が三人その他は全部看護婦保健婦、助産婦でございます。出題のときに三名のお医者さんに基礎的な臨床医学的な方面と解剖医学的な方面を分担して頂くということを、大変御無理でございましたけれども決定いたしまして大変御盡力下さいました。但し医者が作る問題でそれが看護婦に適当かどうかということを皆が審議するということにいたしまして、一つの医学例えば生理解剖ということにつきまして五題以上一人の先生が作りました。看護婦の方もそうでございまして基礎看護、応用看護一人に五題以上作つて貰つたものを皆で審議いたしました結果、それを時間の関係その他と睨み合せましてその一つの課目については大体二問題以上は出ております。それから生理解剖につきましては一番基礎的な問題でございますので是非ともこれは逃がすことはできません。それで医学の問題と看護学の問題と五〇%ずつの重きをおいて出題いたしました。ここに只今問題を持つて来ませんでしたので何の課目について何題ということを申上げることができませんのは申訳ないと思いますけれどもへ出題決定に当りましては全部参眠いたしました。私は全部の課目に亘つて出ているということを申上げて置きたいと思います。
  98. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 試験の内容によく分つたのでございますが、試験実施後の受験者皆さんの感想はどうでございますか。私或る会合に参りますと大変に試験を受けてよかつたという感じを持つておりますという人や、何だか試験の恐怖症にかかつた感じを持つて落ちたらどうしようというので、試験実施後とても夜眠れられないという感じを持つた人もいるということを聽いたのでありますが、厚生省方面でそういう声をお聴きしませんでしたか。
  99. 金子光

    説明員(金子光君) 試験のあとには私共自身も受験者からの感想を聞きたいと思つて努力いたしまして直接聴きましたこともございますし、又当日受験場から出て来ました者をつかまえて座談会などをいたしました雑誌社がございましたのでその記事を編みましたり、直接私共の方へ手紙を寄せて来ました受験者もございますのでそのようなものを取混ぜて御報告して見たいと存じます。大体いろいろなことを言つておりますようでございますけれでも、結論的に申上げますと今度の試験に対する皆さんの意見なりお考えは、ややよかつた、大体よろしいというようなところでございます。と申しますのはこういうようなことを具体的に言つております。例えば今までの試験は非常にむずかしくて理論的に問題が多く出るのでそういうことを勉強していたがそういうところが当てが外れたようで、実際の看護婦の仕事をしている者にはそれ程むずかしい問題とは思えなかつたというような回答がございました。それからやまかけをして勉強したら失敗したという率直な手紙もございました。又試験の勉強の仕方を国家試験を受けた医師、歯科医師に伺つてやつて見たけれどもそういう方法では失敗したというような傾向もあつたようです。要するに看護に関する知識がなければ今度の試験は受けられなかつたという感想が出ております。それからこうこう試験問題だつたならばこれから安心して受けられる、実際は受ければよかつたとあとで思いましたという率直な御意見も出ております。要するに国家試験というものがやたらにむずかしくて振い落すということが目的でなく、看護婦の質の向上を図るということが目的であるということが分りましたというようなことを言つて来ました。実地試験につきましては機械が二十題程出ました。機械につきましては大分苦心をいたしまして印刷で写真を出して貰いましたり、又写真でよく分らないものは絵を描いて貰いましたがこのことにつきましていささか意見が出ておりまして、写真では木かゴムか金属かガラスかちよつと分らなかつたから大変これは不都合だという意見を頂きました。それに対してこれは座談会の記事でしたが或る人がこういう返事をしております。それは実際に使つている人ならば一目見れば木かガラスかゴムか直ぐ分る、結局実際に仕事をしていない人には分らない。それから産科病院で働いておりましたり、病院の中で看護婦管理が十分でなくて例えば内科ばかりに何年もいたり外科ばかりに何年もいたりする勤務状態でありましたならば、外の科で使われる機械が分らないというようなことを言つております。要するに看護婦にあつちこつち勤務交替させてそうして総合的に看護させるということを勉強していなければ、この試験が通らないということが分つて参りまして、私共といたしましてももう少し外にもつと意見が出るかと思いますが、余りこの頃は出て参りませんが大体そんな御意見を聞かして貰いましたので、これからの次の試験をするために大いに参考になると思いまして……。
  100. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 大変試験の状況その後の状況を承りまして有難うございました。それに関連しまして助産婦看護婦の現行法の改正ということが大変今回問題にされておるのでございますが、厚生省で目下これについての研究会をお持ちでありますのでその研究会の審議状況、進行状況と申しますか、ちよつとついででございますからお聞かせ願いたいと思います。
  101. 金子光

    説明員(金子光君) 只今お話のございました制度に関する研究会ということでございますが、これは発足が大変に遅れまして八月の半過ぎにやつと結成いたしまして、これは御承知通り法律に基いた審議会ではございませんでいわば医務局長のための何と申しますか諮問機関のような形になりまして、私共の方で仕事をいたしますために参考にしたい、或いは研究をいたしたいと思いましたために作りました会議でございますので、看護制度審議会という名前を付けております。勿論これは非公式の会議でございますけれども大臣の御決裁を仰いでおります。これはもともと看護制度審議会という名前を付けましたが、現行の法律に基く制度についての再検討ということが目的になつて行つております。審議会の委員はいろいろな方面から御推薦を願いまして井上先生が会長をなすつていらつしやる保健婦助産婦看護婦協会から御推薦を頂きましたし、関係方面からも御意見を頂きまして二十名の委員で構成されておりますが、この委員会は定例会議にいたしておりまして一月に二回ずつ会合を持つております。只今二十名で審議をいたしておりますけれどもこの会合から外にもう少し呼びかけるごとにいたしまして、あらゆる方面からこの審議会に意見を寄せて頂きたいと存じまして、二つのそういう看護婦関係の雑誌がございますがそれにも発表いたしまして皆さん方の御意見を頂きたいと思つておりますし、それから東京都看護婦懇親会と申します看護婦の集まりがございますようですが、その代表の方にお目にかかりました時にそういうような話が出ましてこういう方の御意見を頂き、あらゆる方面から御意見を頂きまして、私達の法律を私達の手で一番守り易い、一番理想に近いものに仕上げて行こうというスローガンを以て今審議をしておりまして、只今御指摘になりましたように、この制度審議会の大きな目的の一つは国家試験の問題と、それから制度そのもののことでございますが、いろいろな問題が出まして大きく浮び上つておりますが一つ一つ片付けて行こうと思つてやつております。丁度今週の木曜日にも定例会議を開きますからその木曜日あたりには国家試験の問題が取上げられるだろうと考えておりましていろいろ考えております。尚審議会の会長は互選でありまして、日本赤十字本社の看護課長の林塩さんが会長になつて会議が運営されております。
  102. 松原一彦

    ○松原一彦君 私は試験制度についてのまだ勉強が足りませんからよく分らないのですが、看護婦さんの優劣は單に物を知つておるということばかりではなく又技術的に優秀というばかりではない、患者から深く信頼せられ医師も又これを信頼して病人に接触する人格的な態度等が非常に大きな條件をなすものだと私は思う。甲と乙と二つの階段に分ける場合に單に一日か二日の紙の上での試験でこれを峻別をするということはどんなもんでしようか。又その試験の結果はこれを二つの階段に分けるとしたときに、これまでの長い経験年数、及び看護婦は独立の仕事でもありますが一種の命令を受けてやるのでありますから、こういう人々に対する上司といいますか、そういう所属の長等の推薦及び或いは成績の証明とかいつたようなものがこの試験に幾らか加えられるものでありますか、その点をお伺いしたいのですが。
  103. 金子光

    説明員(金子光君) 先生のおつしやられた御意見誠にその通りと存じますけれども、このたびいたしました甲種の国家試験は甲と乙とを振分ける試験ではございませんのでして、これは甲種看護婦養成所として指定されております新しい制度に基ずく看護婦養成所の卒業生がこの国家試験を受けませんと看護婦として免許されないことになつております。それで現行といたしましてはこの国家試験は新しい制度に基ずく養成所の卒業生が受けるのが原則でございます。ところが法律には一方又新しい法律ができます前に大正二年にできました看護婦規則というのがございまして、看護婦規則で免許を受けております看護婦が沢山働いております。法律は今年の九月からでございますがこの看護婦が大半働いておるわけでございます。この看護婦の人達が国家試験を受けることができるようにしてございますが、御承知のように前にできました規則で免許を取つておりますので、法律が新しく変りましたのでございますが、この人達が新しい法律に基ずいて仕事をして貰います場合には、前の規則で得られた看護婦さんは全然仕事の上では何の制約もなく、全く今度できました甲種看護婦と同じに扱われております、業務の内容に差別がありませんから。それで乙種看護婦と申しますのは新しい法律でこれから生まれて参りますものでございまして、この人達は国家試験には何も関係がないのでございます。  ただ今度の国家試験に院長その他上司のいろいろな成績証明が付いておるかというお尋ねでございますがこれは斟酌いたしておりません。これは国家試験を今度受けますのは、今のような乙種と指定されました看護婦の学校或いは養成所の卒業生を試験の対象といたします場合には私は不可能と存じます。何千何方とおります沢山の看護婦が自由意思で試験を受けます場合に一つ一つ上司の意見を頂くということは実際上不可能でございます。こういうことは今度の試験ではいたしておりません。
  104. 松原一彦

    ○松原一彦君 私共が中央に行つて病院の看護婦さん達から聞きます実情は、今度甲種の看護婦ができてそうして従来の看護婦のすべては甲種でない、つまり乙種で置いて甲種の人の下について働くという恰好になる。そこに非常に不安を持つ。多年の経験、熟練その他が無視せられて、何十年も勤めた熟練看護婦が甲種看護婦でないがためにその下に使われる恰好になる。そこに非常に大きな不安を持つておるのであります。今のお答えでは何も不安がない、甲乙に拘わらず従来の看護婦は同列の資格を持つておるのだということでありますが、果してそうなんでしようか。
  105. 金子光

    説明員(金子光君) その通りでございます。ただ間違われて誤解して考えておられることは、甲種乙種というのは国に登録いたしまして看護婦の籍が厚生省にございます、従来の看護婦は県の免許を持つておりましたものですから従来からずつと県に登録されております。それで国家試験を受けました場合におきましては国が免許いたしますので国に登録替えになりますが、試験を受けない看護婦さんは業務は甲種看護婦さんと全く同じにしてもよいのでありますが、その人の実力次第では婦長にもなれますし監督にもなれます。本人の実力次第で昇格できますが、ただ取扱いといつてはおかしいのでありますが事務上の手続として県に登録されてありますからそのまま県においてやるというだけであつて、その点が違うのでございます。それでこれからできて参ります乙種看護婦は県が免許を出しますのでやはり県に登録されることになりますので、この点扱いだけは登録は同じ、というのは登録をいたします場所が同じで事務的に同じであるということで、仕事の上では乙種看護婦は制約はございますが、従来の看護婦乙種看護婦より遥かに上に立ちまして甲種と全く同じものでございますから、何もそういう心配はないのでございまして、それは考え方の相違だと考えます。間違つた御解釈だと考えます。
  106. 松原一彦

    ○松原一彦君 それは冷たく考えればその通りだと思います。お説の通りだと思つておりますか、今後甲種の看護婦という国家試験を受けた人は実は標準看護婦であつて、従来の看護婦は甲種にも乙種にも属さないということになるのですが、地方の試験によつて多年看護婦業をやつておつた人が甲種の国家試験を受けようとする場合、そうして自分の資格を專門学校を卒業したと同じ、今の甲種の修業課程を経たと同じようなところまで上げようという希望を持つて努力したいと考えておる者も非常に多いことは御承知だろうと思います。勿論区別がなければいざ知らずあればそういう希望を持つのが当然であります。こういう人々が試験を受けた場合における條件の一つに何か御考慮になる点はないのか。経験とか或いは実績とか看護婦としての最も優秀な者だというような推薦等が、国家試験を今後新しく学校課程を経ないで受けようとする看護婦さん達の上に加わる途はないのでしようかということをお尋ねしておるのです。
  107. 金子光

    説明員(金子光君) 私共が考えましたのはこういうことであつたのです。試験を受けるということは全然自由でございますし何の條件も付けてございません。ただ所属長が推薦書を付けなくてはとか、或いは女学校を出ていなければとか、或いは業務に何年以上就いていなければ試験を受けられないというような制約をいたしますと、既得権か全面的に認めたことになりませんので、既得権は全面的に認めましたので、例えば極端なことを申上げますと、昨日県の検定試験を受けて看護婦なつたばかりの若い看護婦さんでも、それから十年もお働きになつている経験の深い看護婦さんでも、国家試験を受けることにおいては全く同じ権限が與えられておるわけでございまして、そこに差別を付けておりませんのでございます。
  108. 山下義信

    委員長山下義信君) 今松原委員は試験を受けることについての既得権と言うのですが、今あなたの答弁の中に、業務の上につきましては甲種と何ら区別のないことになつておりますから、甲種という資格を設けても既得権看護婦は何もそれをうらやむこともないし、何も差別待遇をされたような感じを持つことはいらない、そういう感じを持つことは誤解だという御説明がありましたがその通りですか。若しそれならば何のために甲種というものを設けてそういう高い資格を要求し、漸次その方に持つて行こうとする制度を立てたかと言わざるを得ないのです。全く同じように取扱うということは私は非常に重要だと思いますけれども、それに間違いございませんか。
  109. 金子光

    説明員(金子光君) 全く同じに取扱うと申しますのは業務上のことでございまして、事務上の手続としては甲種看護婦は国に登録しまして資格免許を貰うことになります。
  110. 山下義信

    委員長山下義信君) その手続は一方はどこに登録し、一方はどこに登録するという登録の場所等は違うでしよう。違うけれども名称は甲種とか既得権とか、甲種ということのない普通の看護婦であつても全く業務上の扱い方は同じというならば、従つて待遇その他においても何ら変りのないことになるかも知れません。業務上は同じように取扱つておいて待遇その他処遇が違つてはおかしな話になつてしまいます。だからすべて仕事のやらせ方も或いは給與その他の待遇等何らの差別がないということに間違いありませんね。
  111. 金子光

    説明員(金子光君) それは既得権を認めます以上は同じように取扱つております。でございますから国家試験をパスしたからといつて急に待遇が上るということも考えられないのでございます。ただ待遇の問題につきましてはその方の基準がございまして、その基準で参りますと例えば国立などの場合におきましては公務員の基準によつて動いておりますので、すべて自分が済ませて参りました学歴その他によりまして本人の待遇が決められることになつております。だから学歴で以て大体初任給が決められるのでございますが、それはこれから出る甲種の卒業生は外の卒業生と比較いたしまして同じように取扱つて行くのでございますけれども、従来の看護婦が処遇されておりましたその待遇につきましては一向に変らない。本人が実際の仕事の能率が上がればそれに従つて上つて行くということになつております。
  112. 山下義信

    委員長山下義信君) いや、学歴で待遇を違えてあることは言うまでもないことと思いますが、その学歴を表示する一つの資格は甲種という国家の認定になつて来るのでしよう。学歴は同じであつても甲種看護婦という国家検定を受けなければ意味をなさないので偽りまして、学歴はなくても同じように甲種看護婦の試験に受かつて登録を受けたものは、学歴のある登録者と、学歴のないものでありましても試験応合格して甲種の認定を受ければ、これは同じ資格でしよう。
  113. 金子光

    説明員(金子光君) そう思います。
  114. 山下義信

    委員長山下義信君) 違いますか。
  115. 金子光

    説明員(金子光君) ただ試験を受けまして合格した者に全く甲種の学校の卒業生と同じ待遇を即日実施するとなりますと、試験を受けることにつきましても全国の何万の看護婦に一年に一齊に試験を受けて貰うこともできませんので、従つてそこに何名という一つの制約が生れて来ると思います。そういたしますとその同名と決められたものだけに対してその年は処遇されるというような結果になつてしまいますので、これは大変に公平を欠くというような考え方をいたしております。
  116. 山下義信

    委員長山下義信君) 人数が多いからできるとかできんじやなくて、やはり甲種看護婦という資格を得たものとそういう資格でないものとは、あなたのおつしやつたように国家公務員の資格が違つて来るのですから、従つてそれによつての正規の給與の標準も違つて来るでしよう。さすれば既得権看護婦は甲種看護婦という資格を得た者と業務は同じようなことをやらしておるのだ、待遇は同じだと言つても実際は待遇も正式に違つて来るのでございましよう。全く同じでございましようか。試験に合格したから直ぐ甲種の待遇を與える、與えないを私は言つておるのじやない。
  117. 金子光

    説明員(金子光君) これは将来の……
  118. 山下義信

    委員長山下義信君) 将来じやない現実に、甲種の試験を受けなくても既得権看護婦は何らすべての業務のやらせ方は違わないから何も誤解することもない、ひがむこともないとあなたはおつしやつたが、実際においては甲種看護婦というものと既得権看護婦というものの国家公務員としての給與その他の待遇は違うのじやありませんかということを言つておるのです。全く同じですかと私は聞いておるのです。
  119. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) その点は只今国立療養所関係が直接影響が大きいと思いますが、現在の旧制度による看護婦の免許を所有して地位を獲得しておるものが今度の試験を獲得しまして、要するに試験を通過したというだけの変化でありますから、これによりましては現在のところでは直ちにその資格獲得が理由になつて給與が途端に変る、或いは将来に亘つてそれを理由にして変る、変えるというようなことは現在のところは進行もいたしておりませんし意図もしておりません。ただそれとは別個に正規の甲種看護婦の新しい制度即ち專門学校を卒業した後にすぐに国家試験を受けた甲種看護婦につきましては、これは従来の專門学校程度の例えば日赤の甲種の養成所でございましたが、これらによりました従来制度の看護婦免許獲得者とは若干差がつく見込でございます。というのがこの履歴にも相違がございますし、それから大体今度の專門学校が従来よりも少し高くなります。そういう意味では甲種の養成所を卒業して甲種看護婦免状を取つたばかりの者が相当な高い地位で採用される見込である。ですから先程からのお話のように非常に微妙でございまして、新制度による正規のものとそれから従来の免許獲得者の新しい試験通過者とで趣きが異なつておりますので、これはまあ一本ではちよつと扱えないような形になつております。
  120. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつともう一つ私はそこのところを言うておきますが、又お答えも願いたいと思うのですが、その直ぐ途端に待遇を変える変えんはこれは別としまして、純理としては素質の向上要求し勉強を要求しそれだけ勉強が積み素質も上つて国家試験に合格した者が待遇が変らんというのが間違つておるのであつて、若し待遇を変えんというならば何人が勉強し何人が向上を志しますか。やはり待遇が変えられて甲種になればなつただけそれだけ向上した人にやはり相当な相応の待遇や又業務上の立場も変つて来てこそ励むのでありますから、何も変らんということが変態であつて変るのが本当であるということを言わなければならないのであつて、いつまでも変らん、待遇も何も変らん、ただ試験に合格して登録国家にして貰うたというだけの形式上の変化に止まる、いつまでもそうであるということは私は少しおかしいと思いますが、おかしいとは思いませんか、あなたはそれが当り前……、その辺を一つちよつと確めておきたいと思います。
  121. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 只今の点公務員関係だけに限定して申上げますが、確かに従来の旧制度の者に新しい甲種程度の内容を勉強させまして向上心を起して試験を通過さすというのが中心でございます。多少おかしいのでございまして日にちと費用を使つてやつて何もないというのだと、実質的にはまあ患者にとりましては高い技能のある者の治療を受けるということは結構なことでそれだけはプラスになるわけでございますが、本人の身になれば人情で馬鹿らしいということで相当向学心を挫くことも確かです。ただ現在のところ既得権を持つておる初任級以上の看護婦が多数おりますものが、果してどれだけこの甲種看護婦の試験のチヤンスを平等に得られるかという問題につきまして、まだ今のところ少くとも療養所病院に働いておる者につきましてはまだ定員を充足しておらん点、それから定員の基準が十分でない点等から一概にこの療養所病院側としては勧め難い点がありまして、そういう機会均等がない以上はうつかりこれを……、又将来確かに委員長お話通り自信が付けばそういうようにいたさなければ当然ならんと思うのでありますが、現在のところちよつとそれが危險を感じておるのでありますから、現在のところと申上げたのでありまして、将来のところは多数の者が受けられるようにいたしまして、受ければ成るべくみんな通るだけの勉強をさせまして、通れば少数の怠けておる者とは区別をするよりになるのは当然だと思いますが、これは数が十分になつた見込がついてから考えて立案しなければ若干危險があると、こういうふうに感じておるような現状でございます。
  122. 山下義信

    委員長山下義信君) 今回の試験は養成所を出た人達の試験ですね、つまり学校を出た人の試験なんですね。
  123. 金子光

    説明員(金子光君) 三百人足らずでございます。そういう人達は大半が既得権者でございます。
  124. 山下義信

    委員長山下義信君) 既得権者、大体試験の御審査中なんですね。
  125. 金子光

    説明員(金子光君) そうです。
  126. 山下義信

    委員長山下義信君) どうですか、合格率はどのくらいありそうな予想がされますか、予感がしますか。
  127. 金子光

    説明員(金子光君) ちよつと本当に見当が付きかねるのでございますが。
  128. 山下義信

    委員長山下義信君) まだちつともお調べになつておりませんか。
  129. 金子光

    説明員(金子光君) もう調べて今のところ二週間日にかかつておりますので……。
  130. 山下義信

    委員長山下義信君) 大体想像は付きませんか、合格率は相当、悪そうでありますか、よさそうでございますか、つまり試験が意外によさそうでございますか。
  131. 金子光

    説明員(金子光君) 大体よさそうでございます。
  132. 山下義信

    委員長山下義信君) 結構ですね。
  133. 松原一彦

    ○松原一彦君 委員長が御懸念になりましたように私も、学校を卒業した者に高い程度の資格を與えるというのは当然のことですが、併し学校を出なくても経験やその他過去の資格を持つておる者は差別をしないということならば、何も今までの看護婦諸君が骨を折つて試験を受ける必要はない。苦労をして試験を受けてその資格を取れば何らかの優遇、処遇を與えるということでなければ意味をなさんと思うのです。それならば私はよき看護婦というものの資格は必ずしも紙の上に書いたものじやない、多年の経験それから人格、人に接するときの態度、病人に與える影響等の総合点でなくてはならない、それが本当の優秀な看護婦であろうと思う。そういうふうな優秀な実績を持つておる人々に対するそういう総合的な観点からよい看護婦を作るというものが考えられないのであろうか。軍に何年間かの学課を学びその知識を得た者のみが優秀な看護婦であつて高い程度の者であるというふうに断定せられて、今までの長い経験の間に苦労を積んで実力を持つた人が差別的な待遇を受けることには、それは怠けた者にはいたし方がありませんけれども遥方に高い者があることを想像して言うのです。それは昔から検定には無試験検定というものがあり今は殆んどがなくなつておりますけれども、真実努力しておる者に対しては今のところでは私は試験を受けるところの余裕が少いだろうと思う。但し今お話のような問題で今日までの経験を生かし熱心に業務に従事した人には受けられる程度のものであるならばそれは結構です。新しい科学的な知識とかいつたようなものを学校で学んだと同じように答案に書かなければならんということになるとこれは困難ではありましようけれども、その辺に対して今後看護婦の質の向上というものが重なる学歴でないということに対する御見解は如何でしようか。又優秀な者は優秀な者だけにやはりよい待遇を與えるというような結果が出るようにおやりになつたら如何でしようか。この点に対する御見解を伺いたいと思います。
  134. 金子光

    説明員(金子光君) 大変結構な御意見であると思いますが、私共も看護婦としてありがたいと思つております。先程御説明申上げましたように今度の国家試験は正規の学校を出た者が三百人でありまして、あとの半数という大きな数が既得権者の看護婦でございましたので、明らかに公にはいたしませんでしたけれども審議会の方で御出題なさいました場合にそういうことを頭に含めての御出題でありましたので、結果としてこういう結果ができたのだろうと私共考えております。そういうふうなわけでございますので、只今御指摘になりました教養の点それからその他の看護婦としての人格の点に触れて採用するようにというお言葉でございますが、御尤もな御意見だと存じます。どういうふうにいたしますかにつきましては、幸い審議会がございますので審議会のメンバーにも諮りまして、又試験の問題に絡めた処遇の問題というものを審議して頂くことにしたいと思います。研究させて頂きます。
  135. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 今の委員長が先程質問なさいましたことは非常に重要なことでございます。又ああいうことから当局のお言葉によりますと、実際問題として待遇の問題につきましての御見解、それから又これまでの今日の看護婦の殊に国立療養所何かにおります人達の勤務状態からいつて、又数の不足の現状からいつてまあ無理なところもないこともないという当局の御理解がありましたことは私は非常に結構だと思うのですが、それらを総合いたしまして、実は実際のところ私共随分諸方へ参りまして又療養所を拝見し又看護婦団体から実に各所で訴えられております。その訴えられておる内容は、丁度根本におきまして厚生省の今おつしやつたいろいろの問題がはつきりしていませんから、受ける方の人達もそこのところが非常にはつきりしてなくて、それは直ぐ待遇に影響して来るというような、或いは又何でもかんでも受けなければこれから先において甲種看護婦の指図の下に今まで長年積んでおつた人達が仕事が変えられて、そうして下についてしなければならんというふうに解釈しておりましたり、その辺のところが下の方が非常に混乱して実に気の毒でございました。而も看護婦さんの数が少くて而も今三交代でありません、二交代制度をなさつていらつしやる、非常に忙がしくてこういう実情であります。  ところで今のことを伺つておりますと、今度は試験をなさいましたけれども今何か学校を卒業なさる方が三百人も国家試験をする、そのとき一緒にするというふうな形になつておるかのごとくに受取れるのでございますが、その下のところ、是非厚生省のはつきりなすつた、そうして受ける人達から見ればこれは本当にことが女の人ですから本気ですから、何とかして受けたいというようなことでありますから心配いたしておりますが、そしてあの忙がしい中から準備もするということで非常に混乱いたしておりますが、こういう状態でありますならば、そういう今の御説明のような様子であつたならば、今の人達は法律が決めたからでありますが必ずしも急いでそういう試験をしなくてもいいのじやないか。私は試験をすることを必要じやないというのではないのです、そういうふうに励んでまあ待遇なんかに関係して将来はそうなつて来るようなこともあり得るならば、適当な試験があるということは結構なんですが、いろいろ実際の看護婦さんの状態からいつて非常にはつきりしない前に試験になつたような状態につきまして、一つ考えて上げなければならんから、少くとも十一万人から十三万ある看護婦さんの種類は幾つもありまして、その人達が一斉に心配しておるということにつきましては考えて上げなければならない。それから又一方これはもう少し試験をしましての状態、勤務状態におきましても考えてもつともう少し研究をしたい、自分達でいろいろ話を聽いたり、勉強をするような機会を與えられるような時間を持つておるような勤務状態にでもして上げなければならん。そんなことも考えて上げて頂きたいとも思います。  それから又試験の仕方につきまして実は先程井上委員がいろいろお伺いしたのは、多少その心配であつたのではないかと思いますが、御説明を伺いまして非常に良心いたしましたのです。と申しますのは、みなその一々の学科についてというと、それぞれの学科のいわゆる基本的な学科としての知識を覚えて行くということで、無暗に頭から暗記して行くというような受験の癖が、看護婦さんに拘わらず今まで試験を受ける人に付いておりました。やはり看護婦さん達もそんなふうでとても必配しておつたのですが、今のようなお話を伺つておりまして看護婦さん自身の感想を今まとめておつしやつた中に、長年いろいろ実際にやつておつてよくやつておれば分るような題の出し方、それは大変結構だと思うのです。そういう試験をよし受けるにいたしましてもそういう試験の仕方ということについてただこれこれを試験するというのではなくて、そういうふうな試験の精神、仕方というようなことについての受け方になつて参りますが、そんなことについても又一応今度の試験を通してみなに座談会で雑誌にあつたら誰か読むだろうというのではなくて、試験をなした当局者として親切な立場から皆に今度の試験で分るごとく、多少無駄なただ知識を覚えるというのではなくて、平常のやり方でこうだというようなそういうことにつきましても一応やつて頂かなければ、あの各地において心配されるというものは、これは女の人達が皆勝手に心配しておるのだといえばそれまでですが、看護婦さんとして曾てない一つの当面した問題でございますからそういうこともして上げたいと思うのですが、とにかく今度の試験につきましてこの次は具体的に試験を引続いてなさるおつもりですが、試験につきましてはいろいろ考えてもう少しはつきりすべきことをはつきりして、試験という問題をもう一度考え直して又そう計画的にはできないというふうな考えもございましようが、尚又一番今の御質問と当局のお答えとのこんがらがつておるところがありますから、当局のお考えのところをもう少しはつきり皆に分らせるような方法を一応おとりになるようなお考えはございませんでしようか。それらのことにつきまして御意見を伺いたいと思います。
  136. 松原一彦

    ○松原一彦君 私の質問と一緒にしてお答え願いたい。今のを要約しますとこういうことであります。十万以上の看護婦さんの心理状態の上に一つの屈辱感となる、或いは腐らせないような指導を今後政府は精神的にもおとり願いたいと思うのです。極く優秀な人間を飛び上がらせて喜ばせることよりも、大多数の人を腐らせないように希望を持たせて明るく仕事をさせるようにお導きにならないと、これは政策的に失敗になるのです。大多数の者が喜んで献身的に病人に接しておるにも拘わらず、ことさらにここにお前さん方は試験によつて甲種にしてやるぞ、そうすれば学校卒業と同じだというようなことになりますと、それは一部の優秀といいますか、頭の良い者には登龍門として喜ぶ者がありましようが、大多数の人殊に忙しく一図に看護に従事しておる人の間には、婦人のことでありますから一種の屈辱感が湧いて来る。やはり我々には乙種だ甲種になれない人間だというような非常に卑屈な感じが湧いて来て働きの上に光明を失うと思うのです、それを私は憂うるのです。どうか真剣に真面目に働く者は将来に明るい希望のあるようなお導き方を政治的にお考え願いたい。学校出というものが必ずしもよくはない、将来はよろしいでしよう、将来は專門学校出よりも大学を出た人々の方がいいという、これはもう大数の統計からいつてそうなりましよう。併しながら学校出の甲種そのものが必ずしも決していいものでないということはもうお医者さんの実例で分つている。卒業したてのお医者さんなんか役に立つものではない、危くて使われるものではない、これはお医者さんがみなそう言つておられるので、熟練な看護婦等が甲種の人に押されるということのないように、堂々とやつて行ける誇りを持つた態度を失わないような政治的な御措置を願いたいというのが私の希望なんです。それには真剣に働いて患者から信頼せられる人々の上には、たとえ試験を受けなくても一つの無試験検定のごときもの、或いは推奬制度のごときものがあつて推薦によつて最高の地位が得られるという途が欲しいと思う。かように例えば現に看護婦さんの中に井上さんのような参議院に御当選なさつた方もおられるし、堂々たる立派な方が現に課長なつてもおられる。だからして試験を受けなくても立派にやつて行ける途のあることも一つお認めになつての御手段を今度お考え願いたい、私はかように思うのです。殺さないようにして頂きたい。
  137. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 只今松原さんからもお話がございまして、まだこれは個人の意見でございますが、療養所の方の看護婦初め職員の今の身分待遇につきまして、今度は職階法に基ずいて人事院がいろいろ資格要件それから待遇の段別を決めております。只今のお二方の御意見を両方共入れなければ実際に看護婦が伸びないのじやないかということは、我々も日常看護婦の監督にも困つておりますし優秀にするのにもいろいろ苦労しておりますから、個人の意見としてはこういうふうにしたらいいのではないかと感じております。と申しますのは既存の療養所の主任とか旧制度による婦長で立派な人もおりますのでその人達のかねて心配しておりますのは、職階の上で若いただ甲種看護婦の資格を得たものが上に来て指揮命令をするということは不合理であるということを非常に心配している、こういうことのないようにという心配をしておるのでありまして、実力主義で旧制度の上でも実力のある者は婦長になり得る者は婦長にして、下に若い看護婦を従えるようにして頂きたい。併しながらやはり甲種の免状を得るという向学心を湧かし、更にそういう一つの患者に安心感を與えるような免状を持つた者に扱われればいいというようなことがあるから、そういう試験を通つた者には若干区別を付けるという意味で、甲種と旧制度との間に将来はどうするか。そういうものが機会均等を得られるようになればいいが、例えば一号とか二号というように若干区別を付ける。試験を通つたときに看護婦でも給與の上で若干の優遇、職階における指揮、命令系統の点は別に考えまして、只今のところはどうもこれは混同して悲観しているのじやないか。こういう感じがいたしますので、それを区別して考えて行けば、或る程度確かに御心配の点はございますので、両者がうまく行くのではないか。こういうふうに思つておるのでありまして、人事院の職階を決める場合においては療養所に関する限りは、こちらを表明しておるこの意向を入れて頂きたいと思います。
  138. 松原一彦

    ○松原一彦君 療養だけではありませんよ。すべてのものに対してその態度でお臨み下さるようお願いいたします。
  139. 山下義信

    委員長山下義信君) 審議会の結論はいつ頃出ますか。
  140. 金子光

    説明員(金子光君) 審議会の方は十二月中には大体の目鼻は一応つけられそうだと思つております。
  141. 山下義信

    委員長山下義信君) 外に御質問ございませんか。
  142. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 この際結核予防課長もおられますし看護課長療養所課長もおられますので、私からも一つ要望いたしたいのでございます。今朝ほど二万一千床の結核病床増床をなさる、それから保健所健康診断をやらせるというお話でありますが、お医者さんより大事なのは保健婦看護婦の問題でございます。現在の甲種看護婦学校には経営難に直面して困難しておるものもございますし、先程申しましたそういつた人員の充当をしますのにもつと甲種看護婦学校を殖やして行かなければならないのじやないかと思うのでございますが、これに当りまして看護課長にも十分御考慮をお願いいたしまして、でき得る限り甲種看護婦学校に国庫補助をして頂きたい。こういう希望を出しておるのでありますが、一応それらの点御研究下さいますように要望して置きます。
  143. 山下義信

    委員長山下義信君) 本日はこの程度にとめて置きたいと思いますが、尚結核予防対策に関しましては非常な重要な問題でございますので、当委員会といたしましては審議を続行して行きたいと存じますので御了承願いたいと存じます。  尚参考人の方には御多用中誠に有益な御意見をお聞かせ下さいまして、有難うございました。ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  144. 山下義信

    委員長山下義信君) 速記を始めて下さい。本日はこれを以て散会いたします。    午後三時四十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            小杉 繁安君            井上なつゑ君    委員            長島 銀藏君            河崎 ナツ君            堂森 芳夫君            藤原 道子君            松原 一彦君   事務局側    常任委員会專門    員       多田 仁己君   説明員    厚生省公衆衞生    局長      三木 行治君    厚生省医務局長 東 龍太郎君    厚生省薬務局長 慶松 一郎君    厚生省公衆衞生    局予防課長   小川 朝吉君    厚生省医務局看    護課長     金子  光君    厚生省医務局国    立療養所課長  尾村 偉久君   参考人    医     師 武見 太郎君    杏雲堂病院    (医師)    佐々 廉平君    国立中野療養所    (医師)    春木秀次郎君    国立清瀬療養所    長    (医師)    島村喜久治君