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1950-11-06 第8回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月六日(月曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件社会保障制度に関する調査の件  (社会保障制度審議会勧告に関す  る件)   —————————————
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより厚生委員会を開会いたします。  委員会継続審査事件といたしまして社会保障制度を本日の議題に供します。社会保障制度審議会会長大内兵衛先生にお出席を求めまして、先般審議会から政府に渡されました勧告書に関しまして、会長としての御意見等を先ず聽取させて頂きたいと存ずる次第でございます。大内会長の御説明に対しまして、御質疑等がございますれば後ほどどうぞ御質疑を願うことといたしまして、大内会長の御説明を求めます。
  3. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) 私が大内でございます。それでは山下委員長さんの御指示によりまして、社会保障制度に関する勧告趣旨、或いはその沿革、或いは勧告の現在の地位、こういう話を二、三申し上げますけれども、委員長から承わるところによりますと、この委員会ではすでに社会保障制度に関してはいろいろ御研究がおありのようでありますし、それからもとより皆さんにおきましてはその道の専門家でありますから、勧告に関する十分の御理解があることと思いますから、初歩的なことは余り申上げる必要がないように思いますので、むしろ特殊的なこと、重要な問題というようなものを取上げて二、三申上げまして、その上で御質問に応じて私の今までの経過その他についての所見を述べる、そういうことにいたしたいと存じます。  この社会保障制度審議会は凡そ一年半前にできまして、総会は毎月、二十回ほどやりまして、各委員会というのを百何回やりまして、恐らくはこういう種類審議会では最も勉強した審議会であると存じます。それから参考資料というのが或いは御手許に行つておるかとも思いますが、こういう大きさの勧告文勧告参考資料がありますが、それに今まで研究したすべての結果が集まつております。尤も参考資料ですから非常に正確でない点もありますけれどもとにかく一応日本資料が印刷されておるということが大変便利だと思いますから、十分御利用を願います。  それでその勧告がどういう趣旨において、どういう位置でにあるかとうことですが、御承知通りイギリス社会保障制度というのが範囲が一番広い。広いのみならず行届いておるというのが特色でありますが、その行届いておるのには、国家が非常にたくさんな費用負担してやつておるということ、言い換えれば、イギリスでは国民から租税を取つて、特に金持から重い所得税その他によつて得る金で以て全国民最低生活保障する。その最低生活というのは、病気でも、子供費用でも、葬式の費用でも、或いは教育でも、食べるものでも、すべてそれらを含んでありますから非常に広範囲であります。もう一度言い換えますれば、イギリス社会主義という思想に基きまして、社会保障制度を通じて社会の富の再分配をする。建つて富の平均化を図る。行く行くはこれによつて社会主義を実現させるという思想が非常に明瞭に現われております。これは一九一一年のロイドジヨージの改革から始まつて、一九四二年のいわゆるリバリツヂ案というもので、そういう考えが具体化して、一九四八年七月五日において先ず全部が実行されたということになつておる。ところがこれに対しまして非常に違つた色彩を持つておるのはアメリカでありまして、アメリカも一九三五年から社会保障制度というものが発達をしております。そうしてこれは全国の制度となりつつありますけれども、その思想は、決して富の再分配をするというのではなくして、全国民失業をさせないようにする。それから失業した場合及び労働者として年が寄つた場合に、非常に豊かな生活ができるようにしてやる。この二つを主に狙つておる。従つて国家が金を出すということは余りないので、そういうことをやらなければならんということについては政府世話をするけれども、それをやるのについては資本家労働者とが両方金を出してそうしてやつて行く。而もやつて行くには、いわゆる最低生活というものを保障するのでありますし、それから失業もしないようにする。失業したならば失業保險金をやるというのでありますけれども、そのいわゆる最低生活なるものは、イギリスとは非常に違います。とてもイギリスの何倍か、四倍か五倍くらいの收入を得て豊かな生活をして行く。つまり社会の実情に応じて豊かに楽にするというのがアメリカ思想で、而も相互の金をふだんから溜めて行つてやる。国家がやるというのではない。イギリスと非常に違つておる。これに対しまして日本は如何つなる思想でこの勧告ができておるかと申しますと、日本は第一貧乏の程度英米とは非常に違う。従つてこの社会保障の問題にたる必要が、英米の何倍か緊切である。而もその問題が英米よりは非常に広い。つまり貧乏人種類英米よりはずつと多い。而も病気とか、不具廃疾とかということによつて、生きる人の苦痛なるものが非常に大きい、つまり生活程度が低いから。その上に戰争惨害英米と比較しますというと問題につならずひどい。そこで戰争惨害の次に起つた問題は、社会制度改革従つて日本に従来あつた家族制度なるものが念に破壊されて来た。そこで家族制度の破壊に基く社会の弱者の救済ということが特に重要になつておるというにとが一方においてある。もう一度申しますというと、社会保障制度なるものは英米のようなものではないので、最低生活を保証するといつたところが、それはその最低生活保障というような瞥沢な問題ではなくして、死ぬか生きるかということで、何とかして助けて行くという問題になつておるということが一つ他方において、御承知通り財政が非常に貧弱でありますから、問題の大きさに対しては、非常に困難な問違が多いということがあります。そこで結果といたしましては、非常に広い範囲に対して少しずり分けてやらなければならない。先ずいわば薄いお粥を皆さんに食べさせる、窮民に配給するというような昔からの日本の非常に社会的困難のときに行われる方法を、今度は全国家的に全資力を盡してやるというような形になります。そういう意味で、日本社会保障制度というものは、やはり世界の他の国とは違つたものであります。而も最低生活保障ということを目標にはしておりますけれども、その最低生活なるものも実際の最低生活には遥かに及ばない。実際の日本最低生活幾らであるかということは、これはなかなかむずかしいですが、月三千円ということも考えられるし、月六千円ということも考えられますが、そういう程度にはとてもならないので、すべての人にそういうふうには行かないので、程度ももつと低いし、それから今度はすべての人に及ぶという、そのすベての人の範囲が非常に限定された。特に社会の貧困なる人々の中で特に低い人ということにしかならない状態であります。そういう意味においては甚だ世界的にはまずい。まずいと言いますか、程度がひどい。併し緊切な問題であるということ、世界の他の国に比較しまして、社会保障制度が緊切な国であるということの二点、これで全部の勧告ができております。  そこで今度は、今度の勧告の立て方のお話をいたします。今度の勧告の立て方は、アメリカのように失業とか、或いは養老年金とかというものに、たくさんな金を皆の人にやるというようなことにはできていないので、日本人としましては、貧と病ということを申しますが、その貧と病を直接に目標といたしております。病は社会保險方法でやつておる。貧は主として国家扶助という形体でやる。それから病気貧乏人、即ち誰も助けることのできない、或いは寄る辺のない人間を助けるというその二つの問題が先ず最初に出て来る。その次に予防的な面と、それから福祉的な面とがある。従つてこの勧告書を御覧下さるとわかりますように、第一編が社会保險、第二編が国家扶助、第三編が公衆衛生及び医療、第四編が社会福祉、第五編が運営機構及び財政、とこういう形になつておりまして、社会保險というものを、つまり病気に対する方法を前に押し山して、その次に寄る辺のない貧乏人を助ける方法、それから社会全体の公衆衛生及び医療、そういうものをよくして行くという、そういう形になつております。こういうふうになつておるのがやはり欧米と違うところでありまして、又日本性質が表面に出ておるのであります。その中で社会保險の話をいたしますと、社会保險日本では相当広い範囲に長い間試みられておるのでありますが、今申上げたような原因によりまして、大体失敗であります。まあ少くとも十分成功しておるということが言えない。それは今日の医療健康保險におきましても、健康保險というのは労働者に対する保險でありますが、それから国民健康保險、これは主として農民に対する、農村の保險でありますが、いずれも成績が非常に悪いのです。悪いという意味はいろいろありますけれども、だんだん普及をしておるという点においては非常によくなつておりますけれども、普及をすればするほど経営主体財政状態が非常に悪くなつて来て、負担が重くなつて、今や困難に瀕して、瀕死の状態にある経営が非常に多いのであります。これを亡ぼしてしまうのがよいか、或いは亡ぼさないで改善をするのがよいかということが当面の問題になつておる。この勧告はこれを亡ぼさないのみならず、これを改良して行くということに力点をおいております。改良して行く方法は、申すまでもなく技術的に言いますと医者診療手数料の問題でありますし、又保險料の問題でありますが、保險料幾分か軽くして、そうして医者にはもう十分報酬を現在よりは早く拂えるようにしたいというのが改良の方法であります。従つて保險制度費用を全部国家負担するという一つの原則を立てておるわけであります。それから第二には、大体医療給付の二割を国家負担するのでありまして、更に肺結核その他結核一般につきまして、これが非常に今の日本保險制度を悪くしておる原因でありますから、結核患者が出ますと、或る一つ保險経営は、患者が少し多くなると、保險経営自体がすぐに参つてしまう。そういう意味において結核国民的病気であるのみならず、社会保險を亡ぼす病気であるのでありますから、この結核につきましては五割まで国家負担するという制度を拡充する、そのことによつて現在の社会保險各種社会保險制度はよくなる、必ずうまく行くという見込を立てているわけであります。この点が議会その他においてはこの見込が正しいかどうかということが大問題になると思いますが、審議会給付についての二割の国庫負担、それから結核についての五割の国庫負担をやれば、大体よくなるという見込であります。ここで経営主体の問題があるわけですが、これらにつきましては、大して現有制度を改める考えはないのでありますが、ただ現在労働者保險会社労働者、そういういわゆる被用者の保險は、組合保險ではない場合は国営になつておりますが、それを今度は組合保險でない場合には府県営にしようというのであります。この点は審議会でも非常な問題でありまして、現在の通り国営主義がいいか、府県営主義がいいかというのが大問題でありましたが、多数の意見として、経営を民主化する必要上府県でやるほうがいい。というのは、つまり将来この医者制度、特に病院公営病院というものは府県單位にする考えであります。あとのほうで詳しく述べますが、つまり国立病院主義というものは成るべく少くして、これを府県立病院にする、それが府県衛生施設中心になるという考え一つであります。それとマツチする意味におきましても、社会保險の中で 組合でない部分は、国家がやるより府県がやるほうがいいという考え、県がやれば県民としてそれに利害関係を感ずるから、ザモクラテイツクに運営できるという考え、これは大問題になつておりますが、今そういう意見が、県営主義が勝利を得ております。もう一つ問題になつたのは、一般国民の、この第二章の、老齢、遺族及び癈疾に関する保險、としてありますが、この老齢者に対しては、今ある養老年金制度を変えて進歩さして行くということ、それから一般国民に対しても、年寄りに少し金をやつたらいいじやないかというのです。これは家族制度関係におきまして、そういう考えがあります。七十歳になりますというと、一月千円くらい、少くとも千円くらいでもやるような……七十歳のお爺さん、お婆さんになれば、所得がない、特別な所得がない者にはやるのが日本国家としての義務ではないかというのが我々の見解でありますが、併しながらノン・コンパルソリ、ノン・コントリビユートリの……保險料をふだんから拂わないでそういうふうにやるということはデモクラシーに反する、反しはしないかというのがGHQの意見であります。この点がやはり大問題になると思います。が、我々は、日本のヒユーマニテイ、日本の従来の国家というものに対する考え及び人道というものに対する考えから申しまして、やつぱりそれほど年取つた人、而も家族制度が今日懐われているときにおいては、それほど年取つた人に場対して、それくらいのことを国家がするのはいいという考えでありますが、併し報告書ではその点を幾分か和らげまして、財政に余裕ある場合はその制度をやるというふうに書いてあります。ここが政治的な問題として将来十分御考慮を願いたい点であります。  その他の点について、財政のほうを先に説明いたしましよう。その他国家扶助の点は、もう皆さん承知のいわゆる現有生活保護法、大体あの精神を少しく拡大するだけであります。それから公衆衛生のほうは、結核対策というものに特に重点を置いておりまして、現在のところは結核を封ずるために、結核の蔓延を防ぎ且つ少くするために、一方においては予防衛生を盛んにすると共に、他方においては結核ベツドを多くする、で五ケ年間に十九万ベツドという目標でやるという考えであります。これは開放性結核患者が今数十万ある、百五十万乃至二百万の結核患者がありまして、そのうちの半数或いは三分の一くらいは開放性といたしまして、これを若し家の中に閉じ込め得たならば、即ちベツドの中に収容して置いて、彼らの生活保障し得たならば、日本においては結核社会病としてはもうなくなるということは確実なのでありますが、そこまでは行きませんが、まあとにかく十九万床というものを目標としてやつておる、そういう考えであります。  それから社会福祉のほうは、これはいわゆるケース・ワークというものを大いに発達させよう。これはつまり従来のような素人が不具廃疾その他子供、お産、そういうものの世話をするのでは不適当である。それよりは専門のそういう社会技師を養成する、それをソシアル・ワーカーといいましようか、或いはソシアル・サービスをする人を特に養成して、それを発達させる。それによつてそれぞれの親切な指導をする、そういうことが中心になつておりまして、非常な金のかかるような特殊なことを考えておりません。ただ方向はそういう確定的な方向をとりたいということであります。  結局のところ一番大きな問題は、現在の社会保險を改良しつつ発達させるということ、それから新たに国民一般養老……老齢年金法を作るということ、それから国家扶助公衆衛生についての現在の考え方をもう少し拡大し組織的にするということ、それに帰するのでありますが、それらをまとめ一つ社会保障制度として考える。そうして日本社会保障制度として考える。従つて日本社会状態に応じたように、與えられたる金を最大の能率あるようにして使いたいということが勧告趣旨であります。従つてそれに対する官庁、政府の組織といたしましては、社会保障省というのを作る、勧告一等おしまいの第五編のところに書いてありますが、社会保障省というのを作る、その社会保障省にすべての今申上げたような四つの部門、即ち保險国家扶助公衆衛生とこの社会福祉、これらを総合した一つのものりにする。従つて実質的には、現在の厚生省というものは大体全部その中に入つてしまう。それから労働省の中で、特に失業その他に関する保險制度部分は、こちらに入れるというのが一つで土あります。そういふうなのが、やはりこの参議院その他議会において特に御審議対象になり、又御考慮対象になると思いますが、つまり現在の行政制度の変わるということがあるわけであります。  それからそれらについてまだ細目は、いろいろの問題がありますが、改めて申上げます。それを集めまして、今度は一つ重大なことは、現在では各保險が別に保險料を取立てておるのを、保險料は全部一まとめにして、各種保險を一まとめにして被保險者から取る、その取るのは、今までのように各保險主体が取るのではなくして、それを租税として大蔵省世話をして取るという、そういう考えであります。これは重大な変革でありまして、取られる方から申しますというと、大蔵省から取られるのだから租税であるという意識が非常に強くなるわけであります。この点が非常に問題になると思いますが、是非ともこうしなければ、今のままでは、先ほど申上げましたような、保險経営機関が、金がないために、保險の実際に当るお医者さんその他に十分報酬が拂えないというような、従つて保險経営が非常に危險であるということ、保險料の徴収という問題が困難でありますから、これを租税として取るということになれば、非常にやさしいということが一つであります。それからその次に、各種保險に対する積立金及び保險料金というものは非常な巨額になります。特に積立金相当になりますし、それから保險のお金も相当に成る場合には残る場合があります。それから又足らん場合もありましよう。それらを一つ特別会計にいたしまして、そうして国家制度として、それを大きな制度として運用し、目的にかなうように使つて行くということであります。これは今日各保險において試みられておるところでありますが、保險性質によりましては、大蔵省預金部がそうであるように、必ずしも保險目的のためには使われていない、社会保障目的のためには使われないということがあります。で、それらは成るべく社会保障目的のために使う、併しながらそれを財政的に健全なる使い方をしなければならんということは間違いないのですけれども、とにかく社会保障の、即ち社会の貧乏な人の生活の安定のために使うということを確立して行きたい。そういうふうになつております。  それらにつきまして、それぞれの委員会なり、あれを作つて行くということが主な基本的な考えになつております。勧告通りフルにそれを全部やりますと、約八百数十億、八百五、六十億の、年額それだけ国庫負担になるというわけであります。現在この範囲において政府が然らば幾ら使つておるかというのを計算しますと、この範囲に限つて計算いたしますというと、およそ三百五十億ぐらいでないかと思います。従つて五百億そこそこが増額されるという計画であります。日本の現在の財政で五百億増額されるということは、相当大きな新しい要求になりますので、これがまあ政府にとつても重大問題であると思います。併しながらこれは審議会でこういう意見が出たわけじやないが、私個人考えによりますと、日本たばこの税だけでも九百億でありますから、たばこを吸う人の而も税です、たばこの税額ぐらいを国家社会保障の金に使うということは、決して多いのではないと考えております。又これは全予算に比較しますというと、一五%ぐらいでありまして、イギリスよりは遥に低いのであります。考えようでありますけれども、日本においては貧と病の問題は、貧乏な国でありますから、国家的な重大問題であると考えますならば、割合においてイギリス相当するくらいのパーセンテージを、国家拂つてもいいんじやないか、特に軍備を持たない国としては、そのくらいのことを社会保障にしなければならんのじやないかというのが、私個人の考であります。これは審議会考えではありませんが、余り不当に大きな要求であるというふうには私は思つておりません。これは併しながらフルにやつた場合でありまして、フルにやるということは、勧告要求でありまして、勧告者としては、即ち社会保障制度審議会としては、絶対にこれを支持したいのでありますが、併し多少の余裕、何といいますか、フレキンビリテイといいますか、伸縮性をこの勧告が持つておることは疑いないのでありまして、その他そこはまあ政府との関係及び政府受入態勢の問題になると思います。  次に政府との関係を申上げますと、政府に対しましては、この勧告を受入れてくれということ、即時に実行してくれということはたびたび申入れました。岡崎官房長官にも申入れましたし、それから私から関係閣僚諸君にも説明をいたしております。併しながらまだそれらについては確たる返答は受けておりません。何らかの御挨拶があることと予期しておりますが、今のところありませんです。慎重に考慮して、十分敬意拂つて受入れのことを考えるというくらいが彼らのお答であると思つております。  それで次の段階といたしましては、第一は、私共としては、審議会としては、政府答えが欲しい、而も全部これをこの通りやるという意気込を示して貰いたい。その次に、それをいつまでも放つて置かないで、来年度、即ち二十六年度からすぐに着手し、二十七年度にはフルにやつて貰いたいというのが本当の要求であります。で、それをやるにつきましては、どうしても次の問題としまして、立法をどこでするかというのですが、この立法は非常にたくさんな問題を持つております。これには医薬分業のこととか、或いは共済組合の資金を将来どうするかとか、そういうような問題については何らまだ答えをしておりませんので、そういう点については、具体的にはこれからであるというふうにしております。  それから現在の保險が非常に緊急状態にあるので非常に急ぐこともあり、立法範囲という問題が非常に多いのでありますから、我々の経験によりまして、又皆さん御推察の通り審議会というものはそういう立法をするのに適当なところではないのでありますから、政府としては主管、誰がこの責任者であるかというふうに政府としてはきめるべきであると思いますし、それから又その責任者がきまつたならば、即ち主管大臣がきまつたならばこれを立法にすぐやらせるような一つ態勢を作るべきであると思つております。このことも政府に申上げたのでありますが、まだ返事はありません。  それから次に司令部との関係ちよつと最後に申し述べて置きます。司令部との関係につきましては、世上多少の誤解があります。この誤解労働省労働次官が誤つてでありましようか、故意でありましようか、とにかく流布した説明間違つておりますので、それは政府に訂正を審議会として申込んでありますけれども、とにかく司会部が著しく反対である。反対なのは、これが社会主義であるからであるというような説が行われたのであります。放送もされたのでありますが、これも全く間違いでありまして、大体のところ総司令部本案賛成であると見込んでおります。それは特に賛成を求めたわけではありませんが、総司令部意見は、相当十分に愼重に考慮しておりまして、主な点ではもう反対のないような点まで考慮してあります。個々の技術的な問題、小さい問題は無論これからいろいろのことがあると思いますが、これは折衝するしかないのであります。それで決して司令部本案反対であるというようなことではなくて、むしろ本案がこんなに早く立派にでき上つたということに大いに驚歎しておる程度であると思います。  その他個々の問題については申上げたいことは幾らもありますけれども、大体そういうところで私の一応の御説明を終りまして御質問にお答えいたします。
  4. 山下義信

    委員長山下義信君) 大内会長の御説明に対しまして御質疑ありませんか。
  5. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 ちよつとお伺いいたしますが、政府に対して二十六年度から始めて頂きたい。二十七年度をフルにやつて頂きたいということを申入れをしておられますが、若し政府がこれを早速に受入れてくれませんようなことがございましたら、審議会はその次の手はどういうようにお打ちになるのでございましようか。
  6. 大内兵衞

    参考人大内兵君) 審議会としましては、政治力の問題でありまして、政治力は全く具体的にはありませんので、先ずこういうところへ出て説明をしたり、それから方々の輿論をバツクにしまして、やはり議会その他から促進して頂くしかありません。ただ幸いに殆んどすべての新聞、それから関係専門の雑誌は、勧告が非常に適当である、丁度よいぐらいな実行案であるというのに傾いておると私は見ております。
  7. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 早く主管大臣をきめて貰つて立法して貰いたいという勧告をしておられますが、審議会としては、大体どこの大臣でこれをやつて貰いたいというような御意見は出なかつたのでございましようか、承わりたいと思います。
  8. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) 審議会の希望ですか。審議会といたしましては特に申上げたことはありませんが、ただ厚生省と労働省との関係か、或いは厚生省を主体として労働省その他相当面倒でありますから、そういうのに関係のない大臣がそれを主管して下さるのは大変都合がいいということを申上げました。そうしたところが、池田大蔵大臣の意見、これは池田大蔵大臣の私に対する質問でありますが府県健康保險主体になつて、今の国営健康保險というものが府県に移りますというと、厚生省の仕事が非常に減りはしまいか、独立の一省としての分量に足らんのではないかという質問がありましたが、私はこれに答える能力がありませんでした。そんなところであります。
  9. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 今度の勧告案を見ますと、社会主義的な色彩が非常に濃いというような批判があるというお話がありましたが、私たちの立場としては、却つて逆で、資本主義社会の欠陥をカバーするような非常に不満足な勧告案じやないかというふうな感じを持つておるのです。具体的にいろいろな点で不満があるのですが、二、三拾つて見ますると、先ず社会保險について申しましても、医療保險の問題ですが、いろいろな制度の統合が行われますから、そのためにレベル・ダウンと申しますか、そういうことが起つて参ります。起つて来るのじやないかという心配が非常にある。それから全国民対象とするというふうなことが謳われておりますけれども、国民医療保險国民年金制度国民年金保險というものが非常に不徹底ではないかというふうに考えております。それから医療制度のいろいろな公の機関、私の機関というふうなものの関係が非常に不明確であります。例えば医療国営のような考え方があちこち見られるのでありますが、具体案を見ますると、具体案については非常にあいまいにされておるように思うわけであります。従つて診療報酬支拂制度というものが非常に不明確であるというふうに考えるわけなのです。それから医療給付に対する国庫負担というものの割合が非常に少い。ああいうものでは恐らく特に国民健康保險というものの運営は不可能であろうというふうに我々考えるのであります。それから分娩、死亡等の給付の定額というものが、この勧告では非常に低いのではないかというふうな、それから私は社会党に席を置く立場から申しましても、医療保險経営主体を都道府県に置くということに対してはどうしても腑に落ちない。これは将来我々が医療国営というふうな立場から、考えましても、政府みずからがこれに当るべきじやないかと考えます。余り細かく申上げますと何でございますが、次の年金制度について申上げますと、この年金制度はもつと被用者年金制度とか、或いは国民年金制度、或いは公務員の年金制度とかいうふうに、こう三本建くらいにしてやつたらどうか、そしてこの一般国民の年金でございますが、極めて僅かな人に無拠出年金をやるというのでは、年金制度というものが全然死んでおるのではないかというふうに考えるのであります。それからいろいろ申上げたいのでありますが、被用者の養老年金でございますが、日本労働者の年齢から申しまして、男子六十歳では非常に年齢が高過ぎるのではないか、少くとも六十歳では非常に無理であるというふうに考えるのであります。それから女子の脱退手当金でございますが、こういうものは結婚の手当制度というふうな立場から考えましても、女性の労働者階級のためにもこういうふうな制度があるということを主張したいと思います。それから失業保險については我々いろいろ申上げたいのでございますが、まあこのくらいの数ヶ條について先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  10. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) 堂森先生の勧告に対する批評的見地に対しまして、私のほうで特に間違つておると、勧告はそういう趣旨ではないというふうなことを申上げる点は少しもございません。ただ勧告の苦衷を御察し願いたいのは、勧告は、今までのところ全会一致でこの勧告が成立しております。特に社会党とか、或いは特に進んだ社会保障制度を作りたいという希望は自然十分には実現されておりません。それから又諸種の事情によりまして、これはお察しを願いますけれども、日本の現在でこれを実行するのに特に社会主義で行つたほうがいいかどうかということについての適、不適の考慮もありまして、この問題にはさほどに社会主義的色彩がないというような立場をとつております。実際の話になりますと、これは幾分社会主義的にならなければ、現在の社会制度を維持することができないという、そういう事情にありましようから、私はこれは解釈の問題はどつちでもいいのでありますけれども、とにかく勧告といたしましては、そんなに社会主義的でないという立場をとつております。従つてそういう不十分であるという堂森さんの御意見は甘受しなければならんと思つておりまする  それから最初のレベル・ダウンの問題ですが、これは個々の場合につきましては、極く少しぐらいあるかも知らんけれども、一般にいいますというと、現在よりは悪くなる、悪くなるというのは、国民負担が重くなる、社会保障に関する限り国民負担が重くなる、それから待遇が悪くなるということは絶対ありません。極く例外は別でありますが。それから医療国営で、国営程度が十分でないというのは、今言うような理由であります。従つて一般国庫負担の問題、その他につきまして、すべて今の御批評としては当然ある御批評であると思つております。詳しい一々につきましては尤もであります。
  11. 松原一彦

    ○松原一彦君 委員の一人として、私はかねて希望しておつた社会保障制度をば、この国情に照らしてここまでおまとめ頂きました大内会長に敬意を表します。一点お伺いしたいのでありますが、今度の保障制度の試案の冒頭にもありましたように、これは従来の封建的な特権というものを一切取除いて、社会公平の原則に従つて平等に国民の福祉を増進するという御趣旨に立つたものであるというふうに了解しております。が、そのうちに公務員に対する態度について、一部に一般の被用者と区別せられた点があると思います。養老年金のところにおいて、それがはつきり出ておりますが、これはこの事務局で編纂せられました二百三十八頁にあります第一の、国家公務員の勤労に対する報償としての退職金的性格のものと、老後の生活保障としての社会保障的性格のものとの二つをば、従来の恩給というものの中にお認めになつてつて、その解釈を三つの点からその光に括弧をつけてお挙げになつておりますが、これが全部の御意見でございましようか。この点についてお伺いしたいのであります。何故に公務員だけを一般被用者から取除いたか、そうしてその公務員だけには民間における退職金的なものが恩給の中に入つておるからと、そういうだけのお考えでしようか、その点についてお伺いしたい。
  12. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) その点を御説明申上げたかつたのでありますが、時間の関係で省略いたしましたが、丁度御質問ありましたからこの機会にお答え申上げます。  日本の公務員の今の月給制度、俸給制度というもの及び恩給制度というものが非常に不合理である、よくない、よくないという意味は、公務員に適当な人を得るのにいい制度でない。それから公務員に特権をいろいろ與えて悪い点ができるのであるということを社会保障制度審議会が認めておると思います。ただそういう思想審議をしておりましたところ、公務員の待遇に関することをきめるのは人事院であるという意見がありまして、それで法律をよく調べましたところが、社会保障制度審議会でその点を審議するのは悪いとは書いてないのでありますが、併しやつぱり人事院がイニシヤチブをとるのが適当であるという結論に達しまして、その点は将来人事院が立案をして、社会保障制度審議会の同意を求めるというように交渉がまとまりまして、従つてここでは官吏の恩給制度及び月給制度改革すべきものであるという意見だけが出ておるわけで、何にも結論は出ておりません。ただその場合に、社会保障制度の年金制度というようなものは、公務員にも当然適用されるべきであつて、若し公務員に特別の恩給をやるとか、或いは特別の加俸手当をやるというようなことは、その特別としてこれを人事院で考えて貰いたい。一般的には社会保障制度の年金制度その他が原則である、その原則の上に立つて官吏としての特別な給與を人事院で考えて貰いたい、そういうことになつております。
  13. 松原一彦

    ○松原一彦君 公務員に対するその根本的な見解をお尋ねしたいのですが、日本の公務員は、一般の被用者、労務者としてはよほど苛酷な條件の下に置かれておる。例えばやはり労務者であるにかかわらず非常に法律の上に制限を受けておる、制約を受けております。御承知通りに団体協約も許されないし、或いはストライキも許されないし、政治上の行動も非常な大きな制約を受けておつて、單に選挙の場合などにおいても投票だけは自由であるが、一切政治的な行動としては許されておらんのであります。かような夥しい制約の下に忠実に一般国民に対して奉仕しろという特別な條件を以て律せられておるこの公務員に対する、何といいますか、反対給付とでも申しますか、精力の損耗、又あらゆる試験によつてこれが身分を制約せられて、そうして多年忠実に勤務することを要求しておる、これに対しての特別の保障は決して特権ではなくしてそれは当然の一つ給付ではないか、反対給付的なものではないかということを私は考えるのでありますが、この点に対する会長の御所見を伺いたいのであります。
  14. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) お答えします。それは全く御意見通りでありまして、一方において制限があれば、他方においてそれに対する十分な報償をするというのは適当であろうと思います。それらの点について社会保障審議会はまだ一度も十分な……外の問題につきましての意見の交換は相当ありましたけれども、結論的なことは何も考えておりませんので、いずれ人事院のほうから原案が出ましたらば、それについての意見は述べると思いますけれども、今それらの点を拘束するようなことは少しもきまつておりませんし、従つて官吏の俸給その他をこうしたほうがいいという具体的な意見は少しもありませんですが、お説そのものは私は御尤もであると思いますし、必ずそうならなきやならんと思います。
  15. 松原一彦

    ○松原一彦君 御意向大体わかりましたが、すでに法律となつて決定しておりますこの国家公務員制度における、忠実に多年勤務したる公務員に対しては、その晩年の生活保障せなければならん義務が国家に負わせられておりまするが、その條件として、退職当時の條件に応じてその後の適当なる生活を維持するに足る給與を與えねばならんと、こういうことになつております。これらが今は恩給の名を以てしておるのでありますが、この名は適当でありますまい、恐らくかような古い名称は撤廃せなくちやならんのでありますが、あの国家公務員法に規定しておりますところの、公務員に対する退職後の生活保障に対しては、單なる形式的な定額制の保障でなく、その退職当時の條件に応ずるというあの一項についてやはり会長は妥当であるとお考えでございましようか、この点一つ伺いたいのであります。
  16. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) それは無論妥当だと思います。ただこの点につきましては、この恩給制度という名前は変りましようが、恩給制度をどういうふうにするか、年限をどういうふうにするか、恩給を受給する年限をどういうふうにするか、どのくらいの率にするかということについて問題はあると思いますが、今その点は私は審議会としては何にも申上げることはありません。必要があると思います。
  17. 松原一彦

    ○松原一彦君 了解いたしました。
  18. 山下義信

    委員長山下義信君) 両か事務局長から答えさせましようか、何か補足することがあれば。
  19. 松原一彦

    ○松原一彦君 官房長官おいででしたらば……。
  20. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつとお待ち下さいませ。大内会長への御質疑のかたございませんですか。……社会保障制度勧告に関しまして官房長官の出席を求めたのでありますが、先ず委員長から伺いたいと思いますのですが、先般審議会から政府社会保障制度勧告がされましたのでございますが、これに対しまして政府は如何なる態度を以てこれに臨まれるお考えでございますか、その点を先ず伺いたいと存じますのでございますが。
  21. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 社会保障制度と申しますか、日本の憲法第二十五條に規定されているような、国民は、健康で文化的な最低生活を営む権利があるということと、それから社会福祉社会保障公衆衛生の向上及び増進等は国としてこれに努めなければならんということははつきりしておるのでありまして、社会保障制度に関する勧告も、この趣旨に則つておるものと了解しております。従いまして政府としては、何と申しますか、主義上といいますか、原則的にといいますか、こういう諸制度を推進することは必要であり、又しなければならないと考えております。そこで今般社会保障制度に対する勧告社会保障制度審議会のほうから提出されたのでありまして、これは新しい観念の下に新しい制度を作り上げることでありますから、政府としてもその必要は十分認めておりますが、いろいろ愼重に考えて見なければならないこともあることは勿論であります。従いまして先般大内会長の御出席を求めまして閣僚、殊に関係のありと考えられる閣僚でこの御説明を詳細に聴取いたしまして、更にその御説明に基きまして勧告を研究いたしまして、各閣僚の考えがまとまつたところでお互いに意見を交換し、どういうふうにこれを取扱うか更に協議をし合うということに只今なつております。
  22. 山下義信

    委員長山下義信君) 先般一部の新聞に掲載されましたのでございますが、政府のほうにおかれましては、社会保障制度の企画官庁のようなものを作つて、要すれば専任の所管大臣を置いてやるというようなことも伝えられておつたようでございますが、一部にはそういうようなお考えもありますのでございましようか、或いは長官としましての御意見としましても、そういうような方向に行くのがよいというようなお考えもありますのでございましようか、その辺を承わりたいと思いまする
  23. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 政府若しくは関係閣僚におきましては、只今申上げたように、愼重にこれを研究しておる段階でありまして、これについて正式に何らかの意見を発表したということは聞いておりません。恐らくないだろうと思います。私自身も研究中でありまして、まだ何とも申上げる段階に達しておらないと自分でも考えておりまする
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) 愼重に御考慮相成りまする点から、只今の政府考えておられますることは御尤もと思うのでありますが、すでに長い間世論も待つておりました勧告が出されまして、政府とされましても、前からそういう勧告のありますることも予期せられてあつたのでございますから、すでに勧告が正式になされました以上は、やはりそれに対しますることも迅速に御態度もおきめになるのではないか、御方針もおきめになるのではないかと考えるのでありますが、これから愼重にお考えになるということでありますれば、それもそういう一つのお運び方だろうと思いますが、社会保障制度審議会の今後の何と申しますか、存置と申しますか、そのあり方等につきましては、政府は何かお考えがございますでしようか、その点から……。
  25. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 私の了解するところに……これもちよつと今書類を持つておりませんので間違つておるかも知れませんが、社会保障制度審議会は單に勧告をするだけでなくして、祉会保障制度に関するいろいろの施策その他に対して意見も表示し且つ実行を監視すると言つちやおかしいのでありますが、とにかく今後とも社会保障制度の推進に対して、社会保障制度審議会はこれの実現に努むべき立場にあるだろうと考えております。従いまして今後ともこの審議会は存続して種々この問題について貢献されることを期待しております。
  26. 山下義信

    委員長山下義信君) もう一度念のため伺つて置きますが、政府はこの勧告の受人態勢でありますか、受入御態度でありますが、いろいろ閣僚の説明を受けられて考慮中ということでありますから、まだまとまつてはおらないだろうと思いますけれども、大体の御方針としてはどういうふうにお取扱になるというお考えでございましようか。又いつ頃までに大体政府のお考えをおまとめになるお考えでございましようか、その辺一つ承わりたいと思いまする
  27. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) この社会保障制度というものは勿論前から考えられておりまして、一部は実行されておつたのでありまするが、総合的に一つのきちんとした制度として行うということになりますると、これはいわば百年の大計とでもいいましようか、非常に大きな一つの政策であろうと考えております。従いまして、いろいろの点から検討し、又十分準備をしないでこれを実施に移すということは、どのようなものであろうかというふうにも考えられますので勢い愼重に研究するということになつてしまうのであります。他方におきましては、政府としてできるだけ行政費の節約ということも図らなければならない関係上、いろいろの意味で研究すべき点が多いと思うのであります。それでこういう大きな制度でありますから、いつまでに結論を出すというような、日を限ることも無理であろうと思いまして、できるだけ速やかに考えまとめたいというのが僞らざる現在の考え方であります。尤も只今やつておりますることは、閣僚等がおのおの研究すると同時に、関係各省の次官が集りまして、内閣の官房が中心になりまして、事務的にも取扱方を研究しておりますと同時に、閣僚のほうも懇談会を開いてお互いの意見を交換して行く、こういうようなことにしてやつております。
  28. 山下義信

    委員長山下義信君) 最後に、長官の御答弁は御尤に思うのです。この段階としては、その程度しかこのことはできないと思うのですが、今御答弁になりました取扱方について、関係各省の次官等にも研究させるようにしたと、こういうことであります。新聞でもその記事が出ておりまして拝見したのでありますが、これは少しおかしいのではないかと思うのであります。と申しますのは、第一点としましては、審議会は法律によりまして設置されて、二ケ年近く非常に愼重に調査をいたしましたその勧告を、或る意味においてその内容を吟味するために、同程度の研究を試みるということになりますれば、政府としましても恐らく長い日子をかけなければならんことになりまして、審議会の愼重審議は何のために愼重審議をしたのか意味をなさないことになりますることが第一点であります。勧告を尊重するという建前におきましては、できるだけ御信用になりまして、ただその実現を如何にするかということについて、政府としましては御考慮下さるということにスピード化して頂かなければならないのではないかと思うのであります。これは私の誤解かも知れませんが、殊に関係各省の次官に更に検討さすというのはおかしい話でありまして、審議会の委員には一応各省の次官が出ておるわけであります。後には一部委員の顔ぶれも若干御変更に相成つておるようでありますが、大体各省の事務責任者が出ておつた建前になつておるのであります。初めからその勧告につきましては、政府側もタツチしておるものと見なければならんのでありまするので、それを再び次官級にお下げになるというのはおかしいことであります。でき得るだけ政府の閣僚或いは長官等がその実現について、速かに具体化するという、上のほうで一つお取りまとめをお進め願うものでなければ、勧告が逆戻りをする、扱い方が逆戻りをすることに相成ります憾みがあると考えられますので、その辺を十分一つ迅速に、具体化の方向をどうするかという大綱だけでもお進め下さいまして、でき得れば臨時国会等にもその御所見が正式に承われるようにお運びを願いたいと思いますことも第一点でございます。  第二点は、こういう勧告政府のお取扱になりまする態度でありまするが、ただに審議会勧告のみでなく、従来各種勧告が、近来は諸制度によりまして、或いは委員会の権限等によりましてなされることがございますが、おおむねそれが何と申しますか、非常に軽視される傾向にございます。いわゆる勧告のし放しというようなものもまま散見されるのでありますが、勧告はできるだけ政府におかれましても尊重されるという一つの建前をおとり願いたいと思うのでありまするが、右の二点につきまして長官から重ねて御所見を承わりたいと思います。  尚最後に十月の二十五日附でございますが、政府部内の一部の官吏、具体的に申しますと労働次官が、この勧告に対しまするいろいろ所見を発表いたしまして、審議会政府との間に申入れ的なことがあつたということでございます。政府において適宜これに関する措置を願いたいという審議会の申入れがあつたようでございます。政府におきましてはどういう措置をおとりになりますお考えでございますか、これも附加えて御意見を承わつて置きたいと思います。
  29. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 只今委員長のおつしやいました第一点についには、おつしやるような意味は私も大体においてお説に同感でありまするから、できるだけ御意見を尊重いたしまして努力しようと考えます。尤も、やはりそれにしましてもいろいろ事務的に検討しなければならん事項もあるのでありまして、主として次官に研究して貰うというものは、この中の事務的の方面であることは無論でありますが、できるだけ今おつしやつたような御意見を尊重いたしましてそのほうに向いたいと考えております。  それから第二点につきましては、過去においてそういう例があつたかも知れませんけれども、今回の勧告につきましては、政府としては相当これは重要な、又非常に深く研究された結果であることは十分承知しております。又社会政策としてこのいう制度考えるべきであることも、これは政府としての責任の一部であろうとも考えております。これを何と申しますか、いい加減に扱うということはいたさないのは当然でありまして、尚政府のみならず、私の属しておりまする自由党におきましても、最近に社会保障制度に関する特別の委員会を設けようという議も起つておりまして、政府、党両方面からまじめに研究して行こう、こういうふうに考えております。  労働次官云々の件につきましては、ここにおられる大内会長からもお話がありましたが、労働次官の話も、私も聞いて見ましたし、又労働次官社会保障制度審議会に出席しまして自分の立場をいろいろ話したようであります。新聞に伝えられておることと、労働次官の言つておることは必ずしも一致しない点もあるのでありますが、今のところどうしようということも考えておりません。無論只今委員区長のお話のように、それは関係閣僚の研究事項であり、又担当すべき事項でありまして、事務次官は事務に関係する点のみにおいて関連があると考えておりまして、ちよつと新聞に出ておるところは誤解されておる点もあるのじやないかと思いますが、今のところ今後こういう誤解のないように努めたいという程度考えております。
  30. 山下義信

    委員長山下義信君) 外に御質問ございませんか。
  31. 松原一彦

    ○松原一彦君 官房長官にお尋ねしますが、今度の社会保障制度は画期的に旧弊を破つて、特権をなくして、社会公平の原理の上に立てられたものであつて、どんなにそれは不満足なものであつても、日本の今日の経済事情、富の程度から勘案して生活保障をすると言つても、それは最低の生活保障にも足らないような低いところに甘んじねばならんという説明を今聞いたのでありますが、御所管の公務員の今日までの待遇は非常に稀薄なものであつて、而も重い制約の下に忠実に勤務して参つたのであります。その公務員が低い稀薄な生活に甘んじながら尚やつて来ましたものの一つには、老後の生活保障というものがあつたからであります。勿論それは待遇に応じてのことでありますが、とにかく多年勤務すれば老後の生活は国が保障してくれるというところが、公務員の稀薄な待遇に甘ずる一つの大きな條件であつたのでありますが、原則として、これは取除かれる。そうして平等に国民一体の標準において、生活保障は老後の養老年金としてこれを扱うべきであるという原則をお立てになつておる。併し公務員については若干の考慮を要する点を只今も大内会長からお話があり、又この勧告案の説明の中にもいろいろな点が挙げられております。この点につきまして、公務員はすでに既得権を持つております。又現在退職公務員は既得権を持つておる。現在勤めております公務員は大きな期待権を、期待を抱いて今日まで生活して参つておるのでありますが、この既得権並びに期待の権益に対しまして、政府は確実にこれをば保障するというお考えをお持ちでございましようか、この点につきまして伺いたいのであります。
  32. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 原則的には只今おつしやつたようなことになろうとも考えておりますが、そういう点も含みまして只今研究中でありまするから、はつきりした御り説明はもう少し全般の研究ができ上つてからというとにお願いしたいと思うのであります。
  33. 松原一彦

    ○松原一彦君 その全体の研究をおやりになります前提條件として私は申入れて置きたい点があるのでありますが、それは四十数万に上る退職公務員というものがございますが、この人々が與えられておりますところの現在恩給という名を以てする退職年金、これには非常な不均衡があるのであります。幾度かの給與べースの改訂に伴うそのときどきの大蔵省から示された給與の比較対照、新旧対照による是正は行われておりますものの、恩給面においてはそれは非常に低いものでありまして、数十万の退職公務員には、この老後の生活安定ができないでおる事実が現に存在しておるのであります。この不均衡に対しましては、前官房長官増田国務大臣から参議院の本会議においてそれを認める。これはやがて適当に是正するという言質を與えられておるのでありますが、この点につきましてまだ何らの措置が講ぜられておりません。明年度予算の若干の給與べースの改訂に伴うところの数字は挙げられておるやに聞いておりますけれどもが、この給與の不均衡に対する御用意をまだ欠いておるのではないかと私は疑念を持つのであります。これは大きな問題でありまして、官房長官は必ず引継事項として御承知のことと思うのでありますが、これは問題の所在として申上げて置きますから、これに対するところの今用意中、準備中であるということであるならば、どうぞ御念頭にお入れになりまして、いずれこれは明年度か明後年度には旧制度は全部改定になつてしまうのであります。改定になつてしまつてからはもう追付かない問題であります。改訂になる前にあらかじめそういう大きな残されたる問題のあることをば御考慮にお入れになつて特別の措置をお図り願いたい。そういう点につきまして問題の所在を申上げて置きますが、官房長官におきましては何かこれに対する御用意があるでございましようか、承わりたいと思います。
  34. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) 只今このお話は私も事実を認めます。これは恩給局等においてずつと研究しておるものでありまして、なかなか数字その他でむずかしいのであると考えておりますが、その点はよく頭に入れて置きます。
  35. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 先ほどから官房長官のお話を伺つておりますと、愼重研究、こういうような御答弁に盡きると思います。もう申上げるまでもなく、日本には非常に生活困窮者が充満しておるのでありまして、この社会保障制度審議会勧告がなされ、政府が一日も早く具体的な話をきめるということになつておるはずです。そういう意味政府は二十六年度には一部実施する。二十七年度には審議会勧告をフルに動かして行くという確固たる御決意で臨んでおられるかどうかということを官房長官から御答弁願いたいと思います。研究ということじやなしにどれくらい、いつになつたらフルに動かして行くかというおつもりがあるか承わりたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) お話でありますが、これは相当大きな予算を伴うものでありまして、只今はつきり二十七年度からやれるとかいうふうにお答えする段階にはまだ至つておらないと思います。これはやはり予算その他いろいろの方面から十分研究さして貰わないと、まだ政府としていつということができないのであります。もう少し籍すに時日を以てして、頂きたいと思います。こう考えるのであります。
  37. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 非常にくどいようでありますが、さつき委員会からも質問しておられましたが、一年半かかつたですね、審議会の経過中には政府には何らそれに対する受入れ的な準備というものがなかつたと同様だというふうに認められますからして、そういうふうな状態でございましようか。
  38. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) この審議会審議に当りましては、政府側の職員も出席しておつたのでありまして、その都度状況は聞いておつたわけであります。一応勧告案は、大内会長から御説明があつたかも知れませんが、一度案を作られまして、又これを研究し直して一部変事されたと了解しておりますが、そういうわけでどういう案ができるのであるか、やはり最終的に決定するまではわからなかつたのであります。従つて部分的にはいろいろ情報を貰つて考えておりましたけれども、全般的にはこの勧告が出てから本格的に考え始めたというのが事実であります。
  39. 堂森芳夫

    ○堂森芳夫君 それじや政府としては社会保障制度審議会勧告案は案としまして、何らかの、自由党にもあなたの言うておる通り何か案がなければならんと思います。今までの考え方というものを、そういうものが実際にそれではなかつたのかというふうに思われるのですが、どうですか。
  40. 岡崎勝男

    説明員(岡崎勝男君) それは自由党におきましても政府関係閣僚においても意見は持つておつたと思います。持つておつたと思いまするが、こういう立派な人々を委員としまして審議会を構成したのでありますからして、この審議会意見を今後は尊重しまして、これを基礎として考えて行きたい、こういうことになると思います。
  41. 松原一彦

    ○松原一彦君 官房長官に申上げて置きますが、実はその地方公務員のほうは、昨年の一月以来退職後の生活保障というような面のものは空白状態になつておるのであります。今何物もないのでございます。今度地方公務員法もできますし、これが国家公務員と同様に今日まで恩給制度という名の下に一本に律せられておりましたけれどもが、それはもう今日はございません。従つて新しくできる地方公務員法においても、この面においては非常に大きな不安があるのであります。それは夥しい公務員を擁しておる日本の現状としては、特に重く御考慮を願わなければ、今後の勤務の上においても非常に大きな支障を及ぼすと思います。一面に今日のような重い制約を取のけるか、然らざればこれに対するところの退職後の保障を重く見て、この生活の不安を取除くかという重大問題があることを特に御考慮にお入れになることを申上げて置きます。
  42. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 先ほどからの官房長官のお話を伺つておりまして、私過日新聞で健康保險料の値上をするということを新聞で見ましたので大変不思議に思つたのであります。社会保障制度勧告もされましたし、やがて二十六年度から社会保障制度勧告案に副つて社会保險が統合されますのに、こうした値上ということを通常国会に持出すということでありまして、私は不思議に思つたのであります。只今のお話を承わりまして政府の態度がどんなであるかということもよくわかりましたので、厚生次官もあの審議会においでになつておられたのだから、厚生省のかたもよく御在じと思うのでありますが、実際に現在国民が要望しておるものは、社会保險の一本になつた線に沿うて疾病の予防をして頂くということが大きな要望であります。この間国立の或る病院を訪ねましたときに、外来者の診療所の名簿を見せて頂きました。岡崎官房長官もよく御存じのことと思いますが、判こが五つも六つも押されておりました。健康保險生活保護法、未復員者給與法、それから二つ、三つ忘れましたが、随分たくさん繁雑な判こが押されております。それで実際保險料が三月、四月しないと出て来ない、これは大きな国立病院でありますから大した支障がないかも知れませんが、街の開業医になりますと、実に大きな影響を及ぼし、延いては国民に影響を及ぼすのでございます。そうしたように病気と貧困ということは国民にとつても誠に大きな悩みでございますので、この社会保障ができて、せめて社会保險が一本になるだけでも、この社会保障制度審議会の大きな手柄、と皆言つておるのでございます。こういうときに当りまして、政府はもう少し社会保險というものを考えて、この社会保障制度を監督しておられますが、全体も勿論でございますけれども、もう少しこれを早く検討して頂きたいと思います。この新聞にございますように、明年一月一日より健康保險料が又値上になる。国民健康保險も値上になりましよう。厚生年金も値上になりましよう。船員保險も値上になると思います。そういうことになりますと、これが第一回国会から第七回、第八回の国会に至るまで健康保險の値上の審議を当厚生委員会でいたしております。こうした病気に対して膏薬を貼るような姑息的なことでなしに、もつと政府が何か突込んで保險料の統一と、国民の本当の福祉、社会的、文化的生活のできますように御研究が願いたいのでございます。こういう意味におきまして、二十七年度からできるかどうかわからない、二十八年度からできるかどうかわからない、それならちよちよい法律の改正をやつたらいいじやないかというようなことでは余りにも情けない思いますので、すでに岡崎官房長官は実情をよく御承知だと存じますけれども、その末端の実情を知つておる者には耐えられない苦痛なのであります。どうぞこういうことのたびたび起りませんように、新聞記事に値上になるぞというようなことのたびたび出ませんように、早く御審議を願つて、早くこの勧告従つて、一部でもよい、社会保險一つでもよろしいから、実現方を促進して頂くよう要望いたして置きます。
  43. 山下義信

    委員長山下義信君) 外にございませんか、御質疑に……。大内会長には本日御多用中のところ御出席下さいまして有難うございます。各委員より御了承を得て委員長として御挨拶を申上げます。  会長大内先生には長い間審議会会長として、その社会保障制度勧告作成のために御心配下さつておりまして、その御苦労に対しましては当委員会といたしまして誠に感謝に堪えないところでございます。この際厚く謝意を表します。
  44. 大内兵衞

    参考人大内兵衞君) 只今山下先生から御鄭重なるお言葉を償いき有難うごさいました。私は山下さんとは社会保障制度審議会で初めて御面識を得たわけでありますが、この制度のために非常に力を盡して下さいまして、特に総合委員会委員長として非常に御盡力をせられたことを有難く存じます。のみならず本日はこの会に出ましてこの社会保障制度一つのモニユメントになるであろうと考えられる社会保障制度勧告について説明をする機会をお與え下されて深く感謝いたします。どうか一つこの制度が一日も早く実行されるように皆さんの御盡力を得たいとお願いいたす次第であります。
  45. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは本日はこれを以ちまして散会いたします。    午後零時十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            小杉 繁安君            井上なつゑ君    委員            河崎 ナツ君            堂森 芳夫君            藤原 道子君            藤森 眞治君            松原 一彦君   説明員    内閣官房長官  岡崎 勝男君   参考人    社会保障制度審    議会会長    大内 兵衞君