○小杉繁安君 私は院議に基きまして、社会福祉、社会保険、医療の
実情及び国立公園管理
状況等の厚生
施策全般に亘りまして、山形、秋田、新潟の二県を
視察して参
つたのであります。
視察の結果につきましての詳細なことは
関係者より提出されました書類を御覧願うことといたしまして、極く簡單に御
報告申上げたいのであります。
先ず山形県の政情につきましては、農業単作地帯でございまして、県民の所得は非常に少いのでございまして、全国平均の約五〇%に位する貧弱財政の県でありまして、
一般の県民の生活水準も低いのであります。
生活保護法による保護の
状況は被保護者の数は八千九百六十五
世帯、人数は三万一千二百五十七人でございまして、
人口千人に対しまして被保護者の数は二十三人の割合でございまして、全国平均より相当低いことが窺われました。又本年四月一日より施行されました身体障害者福祉法に基きまして、身体障害者の実態調査の結果、六千七百一人の身体不自由者を数え、このうち二千六百三十四人は手帳交付申請手続によりましてすでに身体障害者の手帳が交付されておりました。厚生省の計画によりまして八月十一日、十二日の両日、東大高木博士外六名の権威者を山形県に派遣いたしまして、身体障害者を対象とする巡回診療、職業、生活相談に応じ、相談を受けました人員は百一名でありますが、そのうち整形外科手術等によりまして機能回復する見込のある者が六十二名に達する好成績を挙げておりました。山形県では今後ともこのような実施を継続されたいという強い要望がありました。
次に
一般引揚者更生施設は山形県では四十三施設でございまして、千九百十七
世帯、四千八百五十二人を収容しておる
状況でございますが、本年度引揚者住宅の設置の割当要求三百二十戸に対して百十戸の割当だけでございますから、この点私はもう少し殖やして頂きたいように感じて来ました。
又樺太無縁故引揚者収容施設は二十八施設でございまして、二千七百七十四人を収容しておりました。この収容施設のうち福原新生寮外十一施設は国有の建物でございますが、この建物を収容施設に改造整備するに当りまして、近く
地方公共団体へ無償で拂下げすることを口約して来まして、改造その他に要したる相当の経費を全額
地方費で負担されております。現在尚経営管理費、火災保険料まで
地方が負担しておるのでございますが、この不合理の点を是正する意味におきましても速かに口約の実行を要望しておりました。
次に引揚者並びに生活困窮者の更正資金は、
一般経済情勢の影響によりまして増加の一途を辿り、申込の僅か四〇%を満たし得るに過ぎないので、名実伴わざる現況を見て参りました。現在では、貸付最高額が一万五千円でありますが、これを三万五千円に引上げ、又国民金融公庫支所を県單位に設置し、事務の円滑を図られたいという要望もございました。
次に公益質屋法による公益質屋は山形県には五ケ所設置されてあるに過ぎないのでありますが、現情勢下における庶民階層の唯一の金融機関であるこの種質屋の設置は、各
方面より強く要望され、現在各地に設置気運が活発でありますが、創設費、その他運転資金の獲得に隘路があり、国はこの点について張力に
援助をすべきであることを痛切に感じたのであります。
次に公共事業による児童福祉施設の設置認証が非常に遅れている。寒冷
地方の特殊事情を考慮して促進すべきである。本件については山形県のみならず新潟県でも同様の要望がありました。
次に政府管掌の健康保険におきましては、平均標準報酬月額五千七十四円で、全国平均標準報酬月額八千円に比較して非常に低いのと、健康保険の利用者が多くな
つて保険経済は相当赤字を出しておる現況であります。国民健康保険の現勢は県下二百二十三、市町村中、国民健康保険の保険者は二百十六、即ち九四%の普及率を示しており、尚本年中に一〇〇%になるように普及徹底に当事者が
盡力されているのであります。この国民健康保険の普及は、山形の県民性と経済面の
一つの現われであると伺
つたのであります。この国民健康保険の育成強化のために一、国民健康保険事業に対する国庫補助の増額、事務費に対し全額、給付費に対し三割以上、保険施設費に対し五割、診療施設創設費に対し五割。二、国民健康保険税を創設すること。三、国保事業に対する融資については組合及代行法人を含め且つ長期融資の途を開くこと。四、
連合会の事務費に対し当分の間一
連合会当り百万円を助成すること。五、社会保険を一元化する暫定措置として被用者の被扶養者を
一般国民健康保険に包含すること。六、医療報酬の支拂方法は定額拂を原則とすること。以上のような要望がありました。
次に衛生部面においては、公衆衛生の指導取締機関であり、
伝染病予防の中枢機関でもあり、更に性病、結核、歯科、疾病の治療機関として衛生行政の第一線機関である保健所の整備拡充に努めておりました。この保健所の運営に当る医療従事者を確保するため、医育機関のない山形県においては医師の待遇改善に留意して、県職員として採用する医師である技術吏員に対して一人月四千円宛の医学研究費を支給しておりましたが、尚質的、人的内容を充実するに至
つていない
実情でありました。医療
関係者の待遇改善については、厚生省でも大いに
努力して頂きたい。又結核予防対策として本年春期BCG接種を実施すると共に、教職員の結核対策、家族の検診及び「ツベルクリン」陽転者の指導を行な
つておる。尚在宅患者に対しては「療養ノート」を配付して、医師と保健婦と患者の密接な連繋を図ると共に、九日一日より滋養品の加配が実施されておりました。結核病床は山形県の総
人口百三十五万に対し、結核療養所二、結核病床を有する病院二十六でありましたが、病床数の
人口割は、他の県に比較して非常に低率を示している現況でありました。従
つて病床の増加の急務なることを痛感しましたので、厚生省においても
努力して頂きたい。県内における唯一の国立の山形病院を
視察いたしましたが、患者の定員百九十名に過ぎない小規模のものでおりました。この病院は院長以下職員が一体とな
つて献身的に運営に
努力しておりましたが、
予算がこれに伴わないため相当困難の模様で、次の
事項について特に要望されておりました。一、戰時中、間引疎開病棟の復旧。二、看護婦寄宿舎の新設。三、職員宿舎(現在は院長以下皆無)の整備。四、医師の待遇改善。五、医師の内地留学。(医育機関が地元にないため)六、社会保険の統一簡素化。以上であります。
秋田県では医療機関の整備の一環として県立中央病院の建設計画が進められておりました。この計画は現在の県立病院が
あまりに貧弱なので、
昭和二十五年度より二十八年度に亘る総工費二億二百九十四万八百円の年次計画が樹立されておりました。この財源のうち
伝染病予防法による国庫補助九十万三千円、区医療法による
一般病院国庫補助七千二百万円合計七千二百九十万三千円を
昭和二十六年度より二十八年度の年次区分により、国の財政的措置即ち補助が強く要望されておりました。
現在の秋田県の病院には完全看護を実施し得る実習施設の完備している病院は殆んどないため、病院の業務遂行上看護婦の補充に支障を来しておる
現状で、今後一段と厚生省におかれても力を入れてや
つて頂きたいと思います。
次に保健所の整備拡充は逐次軌道に乗り、A級二、C級八、合計十ケ所開設されておりますが、いずれもその内容充実には尚一段の
努力が必要と思います。
次に結核予防対策の病院、療養所等の施設は療養所四ケ所と、
一般病院で結核病室を併置しているものが二十、及び個人経営の診療所六で、計三十ケ所で、結核病床は一千七十一床に対し、現在入院患者数は一千百六十四名で、
一般病院では結核病室以外の病室にも収容し、結核患者にと
つては正に非常時
状態で、各施設とも患者の収容には相当苦心しており、患者の大部分は家庭で療養しておる。これでは結核予防対策上憂慮すべき
実情にありますので、療養施設の拡充等適当な措置を講ぜられるように政府に対して要望がありました。
次に上水道
関係については、秋田県内の飲料水源は、上水道簡易水道によるもの約一一%、井戸によるもの約七〇%、流水によるもの約一四%の比率でありまして、県内の主要市町村において飲用に供されている井水の水質検査を実施した結果、飲用不適の井戸が非常に多くて水道敷設について国の助成が強く要望されておりました。公衆衛生の根本問題である上下水道の整備拡充について、厚生省はもつと真剣に取組み、適切なる措置を講ずべきであると思います。
次に児童福福
関係事項については、県首脳部の強力な推進により、延五百七坪の児童会館、約五百坪の児童遊園、及び児童動物園を一挙に建設して、現在新装の施設を
一般に開放して、県民は
感激を新たにしている
状況を見て参
つたのであります。他に児童福祉施設として、教護院一、養護施設二、乳児院号、母子寮四、保育所二十六で、収容人員三千二百四十三名でありました。
次に身体障害者福祉法の実施
状況は、この対象人員は四千百二十九人で、すでに手帳を交付されたものが四百十人でありました。事業計画としては身体障害者福祉司の設置、及び秋田県中央身体障害者更生相談所設置、並びに秋田県義肢修理所の整備拡充等が挙げられておりました。
次に新潟県では
生活保護法の施行に当り、冬季間生活保護費基準額の増額について、特に被保護
世帯にあ
つてはその保障された生活は最低限度であるために、その基準を暖い
地方と同一に律せられることになると最低生活の維持も不可能となるのが
実情であるから、今後生活扶助費基準額限定については、この地理的特殊性を十分考慮願いたいとの要望がありました。又授産事業について、授産事業の刷新の結果、二十四年度において二十四ケ所あ
つた授産所も適格と認定されたものは十一ケ所となり、この健全な社会事業施設の円滑なる運営を図るために県費を以て社会事業運転資金貸付制度を設け、事業資金の貸付を実施している。
社会事業団体の
活動は事業の裏付けとなる経済的基礎が薄弱のため、全般的に積極性がなく、各団体の整備統合が提唱されてその動きが具体化しつつある
状況であります。
次に国民健康保険の普及の
状況は、市町村公営のものが三百二十五市町村で、全市町村の八五%、その他普通組合、農業協同組合代行特別組合によ
つて事業を行うものが十二とな
つており、合計三百三十七市町村で、全県の八九・六%の普及率とな
つておる。国保の被保険者数は百九十万人とな
つており、県内総
人口の約八〇%に相当する現況でありました。保険経済は収納
状況が低率であるために、診療機関に対する未拂額二千八百万円が集計されておりました。
次に衛生部面において、特に本年は東京に次いで赤痢及び疫痢の発生を見ている。その原因は上水道設備のない
地方は天然ガスが発生して井戸水の使用が不可能のため、流れ水を飲み水に使用することに起因する
実情にありますので、簡易水道施設を設ける等、適切な対策が必要と考えられます。
次に国立内野療養所を
視察しましたが、この施設は未完成のまま患者を収容し、医療団から厚生省に移管にな
つたもので、二十四年度に看護婦寄宿舎と、増床に伴う職員官舎が新築されているが、未だボイラー設備もS・K消毒器もなく、結核療養所の運営に甚だ寒心に堪えない
現状でありました。結核予防対策として増床計画も重要な問題でありましようが、同時に内容の整備にも重点を置くべきであると考えます。これに関連して医療団解散に伴う清算剰余金を施設買収都道府県に還付方の請願もありましたが、この問題に関しましては本員といたしまして他の機会に取上げたいと考えます。
尚附加えて秋田県に対しましては、井上議員も参加せられまして
視察頂きましたについて、井上議員からも御
視察の
報告を願いたいと思います。
それから私が一番お願いしたいことは、三県を見ましたが、との厚生という仕事は皆が重要だということを知
つておりまするが、私は山形県から出ておりますので、山形県に
行つて見ましても、非常に虐待されているような
現状を私は見て来ました。というのは、外の土木部とか、或いは外の部は……、自動車の部で言いますれば、とうからこの自動車は
一つあてがわれておるに拘わらず、民生部なんてものは去年あてがわれた。
予算の点においても非常に少い。それから県
会議員なんかも、選挙に絡んで
あまりぱつとしないので、委員になることも避けているような
現状で、私自身も又この国会に臨んでも、そういう感じが実際しておるので、私としてもこの点は非常に遺憾だ。殊にこういうふうな戰後文化国家だとか叫んでいる最中に、私は厚生国家を作りたいというような考えを持
つておるのでございまして、どうしてもこの厚生事業というものを盛んにして、強力な皆の力でこの厚生をやりたい、こういう念願でございます。殊に秋田県においてもそういう
実情を体験して来ました。ただ新潟県に行きましたところが、
知事、市長初め非常に厚生というものに対する熱意がございまして、是非とも厚生大臣を通じて、この県下の県民に、厚生事業が実際大切だということを反映させて頂きたいというわけで、今度厚生大臣もその煮を酌んで頂きまして、二十三日に新潟県に参ることにな
つて、厚生のことに対しては、大臣初め非常に力を入れるというようなことでございます。私もこれから三年ございますが、厚生をみつちりやりまし、
一つ皆さんと一緒にこの厚生という仕事を日本の国政に反映して行きたいと思いますが、どうぞ御協力
願つて御指導を賜わらんことを、この
視察に対しつくづく実感して参りましたから、どうぞお願いいたします。私の
報告はこれで終ります。