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1950-07-29 第8回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十九日(土曜日)    午後三時五十八分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○講和に関連する諸般の基本方策樹立  に関する調査の件   ―――――――――――――
  2. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 只今から外務委員会を開きます。  本日は外務大臣に対する質疑を行ないます。質疑通告順によつて許可いたします。伊達源一郎君。
  3. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私は講和問題その他二三の問題について外務大臣にお尋ねしたいと思います。  第一に、講和の問題でありますが、セパレート・ピース、マジヨリテイ・ピースとか言いますものは、早期に締結されることの必要なことは痛感いたしているものでありますが、ここにお尋ねしたいことは、單独講和を締結いたしますと、それが米国、英国その他ソ連勢力の外にある国々によつて單独講和が締結されますと、その後で今度はソ連側から單独講和を申込んで来ますと、そのとき日本はそれを拒否することはできない立場にあると思ひます。そういう場合に英米日本のために不利なる講和が締結されないように努力して興れることができますかどうか。ポツダム宣言及び降伏條約等によりまして、日本立場というものはそういう場合どういうふうになるものであるか。單独講和なるものが一方で締結され、他方要求され、その間に又食い違いが起つて来ましたときにどういうことになるか。例えば英米側におきまして、或る領土を日本に与えてもいいというような話合いができたときにあとで他の側においてそれに反対要求が出ましたとき、果してどういう工合にそれを持つて行くか、先ず第一にその点についてお尋ねしたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申す單独早期講和というものがどういう形で出て参りますか、或いは今お話したような場合にどうなるかということは、全然前途に対する見通しだけの話で、今日、私はこうなるであろう、こういう事実があるからこうなるであろうという確としたお答えはできませんが、併し思うに想像いたしてみますと、全面講和であれば、誠に結構な話であります。併しながら、第一連合国が共同をして日本国單独でやるか全面でやるか、とにかく講和連合国連合してそうして日本に対して提案せられるものと私は想像いたします。その場合に全面でやるか、單独でやるかということであつて、問題は先ず第一に連合国の間に議がまとまらなければ、日本に対する提案というまで進まないだろうと思います。  さて連合国の間にどういう何が話になるか、現在はややソヴイエト、中国と対立しておるといいますか、とにかくソヴイエト英米とは対立しておるような状態でありますが、その間にどう話がまとまるか、それは私においてこうであろうと想像だもできないような状態でありますから、お答えしにくいのであります。
  5. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 次に、日本の無防備状態についてお尋ねしたいのでありますが、武力を持たない日本ということが憲法に規定されますときに、私想像いたしますに、国際連合というものが考えられたであろうと思います。それを考えずしてああいう憲法ができる筈がない、国際連合が成長し、発達して行けば、他日日本がそれに係わればそこで日本防衛ができる、安全保障ができるという考えくらいはあの憲法を作るときに考えられたことであろうと思いますが、それがソ連拒否権発動等によりまして、国際連合成長発達が非常に遅れて、そうして世界の危険な状態はどんどん進んで来たのではないかと思いますが、その国際連合加入ということが日本のように武力を持たない、国際連合武力給付によりまして立つて行く団体でありますが、この武力なき日本講和條約ができて独立の状態になれば国際連合に入れろという見込みがあるか、どういう理由によつて入れるのか、或いは入ることが非常に困難であるか、その点について大臣にお尋ねしたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在の憲法制定のときには、国際連合に入れるや否やというような問題をも考え憲法を制定したというのではなくて、とにかく日本としては戰争争を放棄するがいい、戰争を放棄することによつて自由国家及び平和を愛する国家日本に同調する、日本を加勢する、或いは、今まで日本軍国主義であるとか、或いは再軍備をするとかいういろいろな懸念、若くは誤解を持たれ、又疑いを持たれたこの国家として、とにかく平和に徹底するという憲法を作ればいいというので出発いたしたので、然らばその安全保障はどうするか。これはお話のように、国連によるか、或いはその他の方法によるか。講和條約がある場合に安全保障のない條約は想像ができないのでありますから、この講和條約の際に如何にして日本安全保障をせられるかということは、講和條約のときに列国の間で討議する問題であろうと思います。とにかく国際連合というものは国際連盟と同じように世界の平和を擁護し、若くは助長するという目的で出たのでありますからして、その考えておるところは世界の平和、世界が誠に平和を楽しみ得る、申せば理想的の状態になるということを最局の目標として国際連合ができ、その連合には国際連合作つた人も、それから又日本が平和に徹底する国になつて欲しいという希望結論において一致しておるのであります。併し、そこに到達するのにどういう道を通るかということについては、日本憲法制定の当時にはむしろ議論を慎んでおつたのであります。徒らに将来のことについて議論をいたした結果、列国疑いを招いてはよろしくないという考えで、当局者としても言論は慎んでおつたのであります。故に、連関があると言えば、思想的には連関があるとも言えます。併しながらその当時は国際連合に入るということを條件としてあの憲法を作つたわけではなかつたのであります。
  7. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 次に、基地の問題についてお尋ねしたいと思いますが、基地を提供すればそこに軍備ができるということは必然のことでありますけれども、外国軍備基地を有効に動かすということであつて、その目的日本を守るということではないと思います。基地によて日本は安全を保障されるかどうかということが非常な疑問であると同時に、基地を置くということは大きな戰略上から出て来る問題でありまして、若し基地日本に設けるうちに戰略に大きな変化を生じて、その基地が不用になつたときは、安全保障と何らの関係なく引揚げてしまうのが当然であろうと思います。そういうときに基地考え安全保障という問題はどういうふうに結び付けられておるのであるか、この点を……。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本防備を撤廃して、そうして戰争を放棄するということを希望した。若し連合国において希望したとすれば、それは日本において基地を設けたくないという国の話なのであります。即ち日本をして戰争に介入せしめないようにという考えを持つてつたろうと想像します。現にこういう話があつたということは私は申せないけれども、併しながら日本戰争に介入せしめたくない。従つて基地の問題も考えたくないという国が、日本防備を撤廃ということを希望するという結論に到達しただろうと思います。そこで基地の問題になりますが、この基地安全保障とどうなるかということは、これは具体的の議論が起つたときに、例えば講和條約において安全保障列国が保障すると申しますか、或いはその場合に傑作として云々ということがあれば、そこで軍事基地が問題になりますが、今日においてはまだ軍事基地日本要求する国もなければ、又むしろ軍事基地を設けない方がいい。少くとも日本の四つの大きな島には軍事基地を設けたくないという国の議論の方が多いのであります。従つて日本に、この土地を、例えば横須賀なら横須加軍事基地として貰いたいという要求提案は少しも出ておりません。故に将来のことを想像いたして私が安全保障基地はこういう関係であるということは申し難いのであります。
  9. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 次に、警察の問題でありますが、今度警察予備隊が作られて、それによつて日本の混乱を防ぎたいということと思います。又一面には微弱ながら防備の用意を持たせたいということもあろうと思いますが、仮にその警察が或る武力を持つたといたしましても、大体警察なるものは本当の意味における武力でありません。従つてこの武力裏付のない警察というものが日本の安全のためにどれだけの役に立つものであるか、非常に心細い感じがするのであります。今後の日本は可なり心配状態にあると思いますが、殊に内部撹乱ということが相当強く起つて来ることが想像されますが、そのときに武力裏付のない警察というものに日本の外的でなくしても、内部撹乱を防いで安全なり得るというお見込みがありますかどうか、その点を伺います。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この警察予備隊の設置の目的は、新聞その他で政府も廃表いたしておりますからお分りと思いますが、朝鮮においてのごとく、突然いわゆる挑発せられたる、侵略軍隊が入つて来た。そうして今のような状態なつた。それに対して国際連合警察的措置としてあの軍隊を送つてそうして警察的措置以上のことになつておるのでありますが、併しながら性質は警察的措置ということを言つております。よつて以世界の平和を維持しよう。若し挑発されたる侵入が行われた場合にこれを看過して置く、うつちやらかして置く、そうして既成事実の成立するに任せるということをしたのりが第二次世界戰争の勃発したゆえんであるが、第三次世界戰争を防止するためにはうつちやらかして置くわけにいかん。国際連合として警察的措置として軍隊を繰り出すという現在の状態になつておるのでありますが、そこで国際連合及びこれに加わつておる加入国世界の事相を擁護する、うつちやつておかない。断然たる措置をとる、敢然としてこれに向うというのが現在の気分であろうと思います。この集団的平和保障といいますか、この気持が存在しておる限りは、日本の安全も一応これによつて保障せられるわけであると私は思うのであります。従つて今度の予備隊ということは、全然日本国内における治安維持国内安全保障という意味合で、いわゆる侵略的のものでもなければ、或いは又いわゆる国際紛争を解決する手段として置くわけではなくて、全然日本自身日本国内の秩序を維持するという目的で以て政府として置くつもりでおります。
  11. 櫻内辰郎

  12. 金子洋文

    金子洋文君 吉田総理施政演説で、全面講和と中立を唱えた人々を空念仏だ、こういうふうに揶揄された。私の考えでは單独平和に傾いておる人々議論はどうも平和の山を見失つて、鹿を追つておる愚鈍な猟師の行為とよく似ておるような感じがする。社会党全面講和笑つておりもしたが、どうもよく分つていないような気持がするのです。我々としては飽くまで中和の山を見失つてはならない。日本を戰場化したくない、こういう考えから、これが一点、もう一つ講和によつて経済の自立を確保したい。この二点だと思います。我々の主張する点は……。で、衆議員彌次においては、それじや君らはどつちに行くのだ、すぐアメリカかに付くのか、ロシアに付くのか、こういうような彌次が飛びますが、我々の考え方は結局この対立と呼いうものは、まあなかなか永久に解けないもの、であるからむしろ我々は争いがなくなつて、政治的な妥協ができて併存するという形が非常に日本にとつてもよい。であるから併存するということを乱さないような講和を我々は望んでおるわけであります。飽くまで平和を守りたい、こういう観点から二、三の質問をいたしたいと思いますが、本会議における質問中で、吉田総理大山郁夫君の質問に対しまして特定の国に軍事基地を貸した、貸すという言明もしないし、何人にも約束しない、こうおつしやいました。それは当然であるし、その通りと思いますが、にも拘わらずどういうものか、内外とも吉田さんは軍事基地を貸すつもりでおるのだ、肚はそう決まつておるのだという声は消えて行かない。而も反対吉田さんはそういう考えを持つていない、飽くまで平和を守る、軍事基地を貸す気はない。こううい声が一向に起つて来ない。これは内外に不信と不安を高めて非常に遺憾なことだと思いますが、どうもこれはこれまでの吉田総理言明の何か繋がりがあるように思うのですが、その点総理はどういうふうにお考えになつておるかということと。もう一つはこの際勇気を振つて軍事基地は貸すつもりはないと、こういうお考え内外に声明なさつた方がよいように思いますが、この二点についてお考えを伺いたいと思います。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は軍事基地は貸したくないと考えております。はつきり申しますが、併しながら今日実際問題として社会党の諸君が宣伝して下さるようにですね。單独講和の餌に軍事基地を提供したいというようなことは、事実毛頭ございません。従つて又今のようなお話に対して実は答える勇気もないのでありますが、私は、故に、日本只今お話したような軍事基地要求するという気持連合国においても先ずないものだと、ただ世界の平和をどうするか、東洋の平和をどうするかということについては考えがありましようが、併しながら日本にこの点あの点と、例えば横須賀軍事基地に貸すとかいう話が新聞に出ておりますが、そんな要求は一度も受けておりません。それで個人の希望とか意見は別としまして私の想像するところでは、要求する気もなければ、成るべく日本戰争に介入せしめたくないというのが日本平和憲法といいますか、戰争放棄憲法を拵えるがいいと希望した連合国希望だろうと思います。これを全体から言えば世界を平和な世界にしたい。戰争を再び起させたくないという考えから先ず日本が率先して戰争放棄をするがいいと、それで世界のいずれの所にも戰争は起らないように戰争防止及び中和擁護をする。日本がその先駈けになる、その先駈けになる日本に対して戰争に捲き込まれるような虞れのあるような問題は出さないのが常識であろうと思います。故に軍事基地の問題について具体的な交渉は曾て受けたことはないのであります。
  14. 金子洋文

    金子洋文君 実はそのお答えを得たいために今まで何遍もこの質問を重ねるたびに、総理は仮定の問題であるからこれは答えられないとお逃げになつたんですが、今日のお言葉はつきり、いたしまして私もこれ以上追求いたそうといたしません。ただ何となく総理がこの軍事基地を貸すような考えを何か隠蔽しておつて、そうしてその心理的なものがこう非常に搖曳するような感じがするので、国民はどうも吉田さんは軍事基地を貸す気でいるんだ、こういう考え方が非常にあると思うのです。この今日のお答えで、これが国民全体に伝わると、又考え方が余程違つて来ると思うのです。その意味で私は今日の御答弁に敬意を表します。もう一つは、これはさつきの衆議院の総理お答えでもよく分つていることですが、まあここは別個ですから改めて聞きますが、義勇軍の問題です。どうも義勇軍という言葉は、大国が言うと聞えがいいのですが、今占領下にある日本の人間が義勇軍なんと言うと、何か植民地軍国主義でも何か象徴しているような感じがして、甚だみつともない、こういうみつともないことを閣僚が法律上でしようが、迂濶に言つておる。憲法に背反しないようだなどと言つておる。これはこれまで総理が、日本安全保障はむしろ軍備がない方がいい、これが一番の安全保障だ、これは私も賛成なんです。そういう総理のお考え方と全然大橋法務総裁の発言は食い違つておると思う。これは是非一つお叱りを願いたいと同時に、尚総理のお考え一つ聞かして頂きたい。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) どうも内閣不統一でありまして、(笑声)叱つてもなかなか何ですが、私の義勇軍に対する考えは国会でもしばしば申しておりました通り政治的に、專ら政治的に考えておるのであります。法律的に考えておるのではないのであります。大橋君や何かの考え法律的に考えておるのだろうと思いますが、私はさつき議場で申したように、日本に対して非常な疑惑があります。極く端的に申せば、オーストラリアにしても或いはニユージーランドにしても、近マニラにしても、日本太平洋戰争のときに酷い目に遭つた国々から見ると、いつ何時ぱかつとやつて来るかも知れない。再軍備とか何とかいう話が、今お話のように肚の中にあるんだろうと言つて顔付想像せられる場合も随分ありますし、又不用意にでありましよう、話をする人も少くとも戰前においてはあつたであろうと思います。そこで日本は成るべくそういう疑いを増す、若しくは再発せしめないようにするのが得策中であり、これによつて日本が真に国際団体の一員として歓迎せられるに至ると思いますから、義勇軍のごときことは、問題は政府としては取り上げたくない、こういう私の考え方であります。
  16. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 曾祢益君。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 先だつての本会議質問お答えを余り頂いていない点について若干御質問申上げたいと思います。  第一は、講和條約と安全保障関係でありまするが、これは実は総理答弁の中には、まあ講和條約を先にやつて安全保障は向うから何かやつて呉れると、こういつたような言葉があつたと思うのでありますが、これは結局言葉の問題であつて只今総理講和條約の場合に、安全保障がないような條約は考えられないというふうにも言われておるわけであります。そこでこの点については政府当局としては余りはつきりした具体的なことを言うのは、ちよつといろいろな関係上困るというような顧慮もおありだろうということは我々も分ります。併し日本国民としてはやはり安全保障がどういうふうに与えられるだろうか、又日本としてはこういうことを少くとも国民希望としてです、予め伝えて置きたいと、こういう強い希望があることはこれは総理も御承知であろうと思います。だから国民希望としては活撥に述べていいということは、これは総理もこの間言われておる。そこでこういう機会を通じてやはり安全保障については、国民はこういうことを希望するのであるということをどんどん言つて行つた方がいいんじやないかと思うのでありますが、私は若干の点につきまして、ずつと続けて御質問申上げまするから、あとお答え願いたいと思います。  そこで第二点は、正しい安全保障であります。これについても実はこのたびの総理施政方針演説、爾後における総理のいろいろな答弁を伺つておりますると、この点は思想的にははつきりしておる。国連安全保障集団安全保障というものをいずれはやつて呉れるだろう、こう言う。又これに期待を繋いでおり、日本もこれを望み、従つてこれに協力的な気持で行きたいということをはつきり言われておるのでありまするが、それをですね、もう少し端的率直に日本国民希望として打出して行きたい。尚又本日金子君の質問に対して、こればかりではありませんが、従来も総理演説等において言われたそうでありまするが、自分の気持としては、特定国に対して講和軍事基地を提供したくない、この線は我々にも全然同感でありまして、これは安全保障の問題に関連してどきつくなく、日本はそういつたような世界的集団安全保障希望するのだ、従つて特定国に対する軍事基地提供ということは希望せんということは尚明確にして頂きたいと思うのであります。その点について改めてお答え願いたいと思うのであります。  第三に、この国連の問題につきまして、やや先走つた心配であるかも知れませんが、国連安全保障の場合に考えられるのは、やはり大きく言つて二つある。一つは御承知のような一般的な世界的集団安全保障と思います。今一つのはいわゆる地域的集団保障であります。地域的集団保障ににもいろいろな美点もありますが、同時に地域的集団保障国連の憲章に認められているという理由の下に、例えば北大西洋同盟條約のごときものを見れば、やはりこれは一つグループの他のグループに対する軍事的対立という恰好になつておる。これはもう事実であります。従いまして、平和日本といたしましては、さような地域的の名におけるいわゆる太平洋反共同盟というような恰格でない、すつきりとした世界的集団安全保障を欲するんだという考えを持つべきではないかと思いまするが、その点に関する御意見を伺いたいと思います。  同様な観点からのことではありまするが、御承知のごとくアメリカ等におきましても、国連が運用のいろいろな困難から見まして、いつそのこと西欧陣営だけの国連にしてしまつた方がいい、例えばフーヴアー氏のごとく、こういう思想もあるようでありまするが、他方におきましては、ダレス氏のごとくやはり一つ世界へのかけ橋としての一つ国連を飽くまで欲すると、こういうことを言つておるようでありまするが、私達も殊に日本憲法の理想と、日本特殊性から見まして、是非とも一つ国連を保持して行きたい。日本としての力は限度がございましようが、こういつたようなはつきりした世界平和思想にいたしたいと存するのであります。それに関する御意見を伺いたい。  尚又、国連から安全保障を受ける場合、これは加入する場合もありましようし、加入前の場合もございましようが、そういう場合におきまして、やはり日本特殊性、この憲法守つて、当然にこの日本といたしまして、只今はまだ国としての協力の問題は私は起つておらないと思いまするが、或いは政府としての公の協力の問題が起るにしても、そこにはつきりした非軍事性という限界があると思うのでありまするが、その点は朝鮮問題等につきましても、常にその点を考えつつ私はやつて行く必要があると思う。即ち慎重に日本希望條件限界ということを決めて行く必要があるというふうに存じまするが、その点に関するお考えを伺いたいと思います。  次に、警察と再武装或いは義勇軍の問題でたびたびいろいろ質疑応答があつたようでありまするが、最近特にアメリカ等におきまして、やはり日本防衛軍を持たすべきじやないかといつたような意見がぽつぽつ擡頭して来ておるし、これが相当今後も擡頭して行く傾向があるんではないかと思われるのでありますが、この点に関しましては、総理はつきり言われたように、やはり日本としては、再武装反対と、これは南洋諸国等に対する政治的の顧慮というのではなくして、はつきりした国の建前として、それはやらないという線で行きたいと思いまするが、その点を確認して頂きたいと思います。勿論先程の金子君に対する答弁でも非常にはつきりされたいと思いまするが、対内治安維持は、これは日本の責任である。これは警察でやる。それから対外的な、外敵からの侵略に備えることは、これは安全保障の問題であつて、その安全保障国連等による世界的な安全保障に求めるのである日本は決してみずからの武力によつて外敵に対する、対外的安全保障を図るつもりはないということに考えるのでありまするが、その点を確認願いたいと思います。  その意味で今一つ些細なようでありまするが、先般の奥むめお氏に対する総理答弁の中に、共産軍に対するというような言葉がありましたが、これはどこまで行けば軍隊であつて、どこまでは武装団体私的武装団体、暴動か分りませんけれども、言葉としては、やはり外国軍隊というような感じを与えますので私はそういう意味で言われたのではないと思いますが、先程の趣旨から見て、外敵に対する防衛警察隊の当るところではないという趣旨を、はつきりして頂きたいと思います。義勇軍の問題につきましては、非常に観念の混同がある、多くの人は朝鮮即ち外国に出す義勇軍というようなことを考えておる人もあるようですが、これは仮に国連の下に行われるにしても、これはもうとんでもないことであつて、これは全然問題にならない。はつきり総理が政治的に判決を下しておるので、それで十分だと思う。ただやはり法律的解釈とはいいながら、日本自衛に関連して、何らかいわゆる陸海空軍の戰力というものにならない程度のものじやないかといつたような思想法律的にはそれでもいいんだということは、そういう曖昧なことは残さない方がいい。飽くまで日本自衛のための自衛と申しまするのは、対内治安維持については警察安全保障外国からの安全保障についてはやはり国際的な安全保障体系に求め、みずからの如何なる名前にせよ、みずからの戰力に頼らない、この方針を尚更はつきりして頂きたいと思う次第であります。私は以上の点につきまして総理お話を伺いたいと思います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。安全保障の問題について、私から具体的に、或いは積極的にお答えをするということは、これは條約の内容をなすものでありますから、これは難きを責められるものてありますから、消極的のことよりしかお答えができない、例えば軍備は持ちたくない、軍事基地は持ちたくないとかいうような、ないないずくしの程度以上のお答えはお責め下さらないように願いたい。そこで日本安全保障をどうして保障するかということも、これは先程私が申した通り、安全保障の伴わないような講和條約は、法文として直ちに破棄されるか、或いは行われないことでありますから、安全保障という問題は講和條約の一要綱をなすものであると確信いたします。然らばどう何するか、今お話のように、地域的の保障か、或いは全般的な世界的集団的保障にするか、いずれを取るか、これも相手方の提議次第であつて、こちらからこの方がよかろうと注文するわけに行かないことは、曾祢君もよく御了解だろうと思いますから、これは今後の世界客観情勢に待つより外仕方がないと思うのであります。ただ私のここにはつきり申したいことは、例えばこの警察隊を設ける、この警察隊は決して再軍備にあらず、飽くまでも憲法の條章に従つて治安維持だけの話であつて、これによりて国際紛争の解決の手段にするというようなことは全然いたすべきものでないと確信いたします。  それから共産軍に対して云々とお話がありましたがその当時私は何と申したか、今記憶はありませんが、私の申した趣意は、韓国において三十八度線を、突然いわゆる挑発せられざる侵入が行われたというような今日国際情勢であるから、日本においても治安維持のために予備隊を設けて、そうして治安維持を図ると、こう申したので、共産軍の征伐のために予備隊を設置するということは言わなかつた。言うつもりはないのみならず、言わなかつたろうと思います。ただ朝鮮の例を引いて、そう予備隊の設置の必要ありということの例として、共産軍の侵入を例に取つたのでありますが、然らば共産軍に対してどうするか、直ちに戰争をどうするか、併しながら予備隊目的は一に治安維持であり、日本における秩序の維持でありまして、征伐でもなければ、又共産軍を追つかけて行つて朝鮮まで行こうという趣意で設けられる筈は毛頭ないのであります。それだけですか。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 国連に対する……。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連に対する何でしたか。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 一つ国連に対する……国連は二つに分れる国連と、一つ国連と……。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連が二つに分れるということは、私はちよつと想像できない。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 つまり西ヨーロツパだけの国連と、西欧民主主義だけの……。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはいわゆる仮定の問題でありますから……。(笑声)
  25. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 杉原荒太君。
  26. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 講和の問題に関連する二、三の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  第一点は、今の段階における講和問題の取扱の重点をどこに置いているべきかという点であります。従来我が国における講和問題の取扱方を見まするに、多くほいわゆる全面講和單独講和かというふうに取上げられ、論議されているようであります。然るに今日の段階におきましては、全面單独の方式の論議を指摘する前に、先ず講和の中味、内容とその時期ということを取上ぐべきではないかと思うのであります。即ち内容の点におきましては、講和の中味をなす実体関係、具体的には講和関係を規律する政治條項とか、或いは経済條項とか、その他各般の事項につきまして、成るべくその中味、内容をばよくなるように、又時期の点におきましては、現在の占領の状態講和との間に、使えば戰争状態終了宣言といつたような中間的な措置が挾まらないで、成るべく早く講和が実現するようにということを目途にしまして、そしてこれがために役立つ、又は害にならないというところにあらゆる準備施策をこの一点に集中して行くというところに問題の取扱方の重点があるように私は思うのであります。講和問題それ自体は言うまでもなく我が国の運命を決する重大な問題でありまするからして、これが取扱の各段階における重点を誤らないようにすることは極めて大事であると思いますので、今の段階として、そして日本側としてのこの講和問題の取扱の重点をどこに置いているかという点についての政府の御見解をお聞きしたいと思います。  それからもう一つ簡單にお尋ねしたいと思います。それは国際連合の主義と永世中立主義との関係についてであります。講和後のいわゆる安全保障を、日本の安全をどういうふうな具体的方式によつてこれを保障して行くかということは極めて重大な問題であり、又極めて困難な問題であります。今日からして予め成る特定の方式を構想して、それ以外には絶対にあり得ないというふうな考え方なり主張は、複雑な国際情勢の現実から見て実際に適しないと私は思つております。従つて私はこの点については立入る意思はございませんが、ただ世間ではややもすれば永世中立主義を唱えながな、又それと同時に国連の主義を唱える者がややもすればあるようでありまするが、併しながら国連の主義と永世中立国の地位というものは両立しないものであると思います。その辺のところを明らかにして置きますことは、我が国の正しい外交輿論の形成の上に非常に重要な関係があると思いますので、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話のいわゆる講和條約の内容について、重点を置けというようなお話でありますが、今日は講和條約はそこまでも進んでおらないのであります。今日御承知の通りイギリス、アメリカにおいて示されておることは、成るべく早ぐ講和は開きたい、対日講和は早くしたいという観点から最近研究や準備が進められておるということは新聞承知しておりますが、併しながらそこで何が内容をなすか、我々の方からこれだけのことを決めて貰いたいというのは、これは講和條約のときに提出すべき問題でありますが、今日からしてこの点あの点について研究して貰いたい、日本希望はここにあるのだといつて話をする以前に、先ず第一に我々が考えておるところは成るべく早く講和をしたい、講和における日本の地位を確かめて、そうして交戰状態を止めて、国際団体の一員に入つて国際的活動ができる、その自由を早く得たい、これを得ることが第一である。然らばこれをどういうふうに対日講和を早めるかということが重点であるべきだと思う。そうしていよいよ講和條約になつた場合、やはり今の内容をなすものについての議論が始まるわけでありますが、対日講和の場合は内容は存外簡單なものでありはしないかと思うのです。終戰後ここに五年になつて、問題は事実上解決された問題も随分あります。従つて内容なるものが甚だ簡單であるが、併しながら簡單なるが故に重大な問題が含まれておる。使えば安全保障のごときは重大な問題でありますが。その他数えてみるとそう大した問題はない。何しろ早く講和を促進する、そうして日本が独立し自由を回復する。自由を回復せずにこのままで行つたら、日本は八千万の人口を養い切れなくなつて餓死するとまで言えませんけれども、復興はむずかしい。講和を促進ずる上から言つても早期講和が必要で、成るべく早く自由を獲得し、独立を獲得するというのが大切です。それにはどうしたらよいかということが重要であります。どういうことが内容をなすかということは第二段として考えるべきものであつて、今日は成るべく早く早期講和というものに持つて行くべきだと私は思います。そこで今の戰争終了の宣言というような考え方も、これは專門家としてあるであろうと思いますが、併しこれも相手によることであつて、イギリスではそういう宣言というようなことをせずに直ちに講和條約に入りたいという希望のように存じております。アメリカも又そういうふうな中間的措置はとらずに講和條約に入りたいという考えを持つておるように私は想像しております。  そこで国連及び永世中立の問題でありますが、それはお話の通り、永世中立と国連加入ということは相容れない問題でありましよう。然らばどちらをとるか、こういうことになれば、私は第一に永世中立ということは日本の地位においてむずかしい、故に私はこれをお念仏であるという意見であります。永世中立を仮に條約で保障されても、條約を尊重する国ばかりならば永世中立も行われるでありましようが、條約を無視して顧みない国もある以上は、永世中立というステータスは確かまつたところで、これによつて我々は安心することはできないと思うのであります。  さて、国連加入するとして、それでは加入條件でありますが、その條件は何か、使えば軍隊軍備のことは日本はこれを禁じておりますからできない事柄でありますし、望むべからざることであります。そうすると国連加入するとしても、国連日本に対して特別な條件を許して呉れるか、呉れないかという問題が起りますが、とにかくこのままでは国連に入ることのできないことは御承知の通りであります。そう考えます。
  28. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) 團伊能君。
  29. 團伊能

    ○團伊能君 私二、三の点につきまして外務大臣のお考えを承わりたいと思います。  只今までの講和條約の法理的な立場、或いは考え方と少し違いまして、或いは杉原君の言われる講和会議の実体というものに少し触れるかも知れませんが、尚同時に今日の日本の生活としてどうしても無視できない問題でございます点におきまして、外務委員会として、又外務大臣としての御関係にあることを伺いたいと思います。  その第一は、終戰以来日本人の生活に今まで余りありませんでしたが、非常に関係をして来る少数民族というような問題とまあ呼ばれるべき問題がありまして、我々国内の生活におきまして、その中に殊に東洋方面の他民族と共に暮さなければならん。その間にいろいろ社会秩序の問題、或いは経済問題も一本で行かない非常に複雑なものを生じておるのでございます。その中に曾ての日本であつた国が多いのでありますが、殊に一番数が多いのが朝鮮との関係でありまして、これは今日去る三月二十日の外国人登録令によりましても、朝鮮人として登録されている者が約五十一万ありまして、その外大韓民国の国民として登録してあるのが約三万八千ばかりありまして、丁度五十五万ばかりございますが、尚国警その他で調査いたしましたところでは、登録されていない朝鮮人が十五万ばかりあります。約七十万ばかりの在住の朝鮮人がございます。これらの取扱いはすでに首相におかれましても御承知のように、多方面の問題がございまして、一方には外国人として取扱われ、すでに外国人登録令のごときはさようでございますが、先日来起りました神戸の学校問題のごときは、これは学校教育は日本人となつており、刑法その他の適用がある場合は日本人であり、或る場合は外国人であり、いわゆるこの取扱いに困つて日本人という一つの取扱い方で扱われておるようなところがございますが、実はこの問題は勿論講和会議で決定されるものと思つて国民は今まで講和会議を非常に待望いたしており、講和会議の結果これらから来るいろいろの影響はなくなるものと考えておりましたが、今日の情勢を考えると、その帰属する本国の状態における政体、国の形の決定もなかなか容易でない状態でございましてこの取扱いにつきまして、今日講和会議を待つということは非常に遠くを望むような形になりますので、ここにおきまして外務大臣には何らかこれらの取扱いにおきまして、一つのお考え、御構想をお持ちになつておるかどうかを承わりたいと存じます。  実はこの朝鮮人の大体三割が大韓民国人で、七割は北洋系統でありまして、殊にいろいろな商工業的な活動でも、或いは女性運動でも、その他解放運動というようなものに北鮮系は非常に活撥でございます。日本に在住している朝鮮人には必ずしもこのはつきりした北鮮、南鮮という差別を持つていない人もありますと考えられますが、その中でもう長く日本の環境に育ち、或いは生れ、或いは日本の教育を受け、現に日本人となることを望んでいて、又なつたことにおきまして日本人にとつて少しも惡くない、同胞として共に暮し、又その権利義務を持つて日本人として暮して参ります方がいい人もありますが、そういう人の帰化問題というようなものが、或いは何らかの方法で解決する途は開いているのでございましようか。この辺お考えを伺いたいと思います。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。朝鮮人の問題については御指摘の通り政府としても非常に困つておる問題であります。これが治安を紊す、或いは又密造をする、密輸入をする等いろいろな問題が殊に山口県、福岡、九州方面においては起つておるので、一時は御承知の通り人別書、身分証明書を渡して、そうしてその証明書のない者は国へ帰す、送還するというようなこともしてみたのでありますが、数が多いものですからなかなか送還し切れない。その間に九州のどことかに送還するために宿舎等が設けてありますが、そこで乱暴を働らくとか、いろいろな細かい問題が起つて、この問題については終局的の処置を取るつもりであつたところが、このたびの朝鮮事件が起つたというようなのが事実なのであります。  さてこれをどうしたらいいかということになると、何しろ百万に近い、勘定において百万以上という、そうしてそのうち御指摘のように、南鮮の人よりも北鮮の人の方が多い。その北鮮の人間が政治的にも乱暴をする、或いは治安を紊す。で何十万をことごとく送を還すということについては、船が要るとか、いろいろの実際上の故障があつて実行は今日まで甚だ手緩いのであります。政府としても甚だ遺憾に思うのでありますが、事実如何ともできないというのが事実である。  今後これをどうするかというのが残された問題であります。又これを政治的に考えてみましても重大問題だと思います。例えば例をよその国に取るのはおかしな話でありますが、例えばフランスのごときが、あれは確か第一次戰争の後で、四十万か五十万のポーランド人をいわゆるレジオン・デヴアステーの恢復のために連れて来て、それが土着して多くは共産党になつた。或いはその他いわゆるフランスの政界が安定をせず小党分立したというような因をなしたのも、多くのポーランド系の人が土着して議会に入つたというのが原因だと承知していますが、同じような問題が日本にも将来起り得ると思うのであります。戰争中に炭鉱の労働者として日本の労働不足を補うために朝鮮から出嫁して来ておるところの、それが土着したのが今の九州における炭鉱問題の一つの現象であるように承知していますし、その他日本海沿岸等においては密航者等が治安を紊すいろいろな問題があるので、治安の上から言つてみても更に遠いと言うか、近き将来における日本の、若し万一フランスの国情、政治が安定しないと同じような原因が日本において生ずるならば、重大な事件だと考えますから、この朝鮮人をどう取扱うか。これをうつかり取扱いますと少数民族圧迫というようなことにもなるし、今日講和條約の締結せられない日本としては、徒らに国際的の問題を提供したくないという考え方もあるのでありますから、甚だ始末に困つておる問題で、これはただに政府ばかりでない、参議院においても、その他においても十分御研究を願いたいと思います。今日は甚だ遺憾でありますが手が付けられない状態にあります。
  31. 團伊能

    ○團伊能君 次に、これに連関した問題でありますが、従来密入国、その他の関係で入国して参ります者は、その数においては非常に沢山ではございませんですが、又その他も或る一つの政治的意図を持つておる者も数においては非常に僅かでございました。例えば元山、鬱陵島、或いは隠岐島というように従来入つて来る、元来思想的な系統の入国等も数は少いのでございますが、この度の朝鮮事変の状態におきましてまだ始まつておりませんし、海上の警戒等も厳重でございますので、数は少いのでございますが、或いは形におきまして、生活できない状態に置かれた朝鮮人が避難民の形を以ちまして、九州、山口県或いはその他の方面へ入つて来るものが相当多く予想されております。殊に対馬等は僅か五時間で参りますので、大きい集団は或いはなさないかも知れませんが、時間的にどんどんと多くなつて参りますが、これを従来早島に集めまして朝鮮に送り還しておりましたものを、今度は送り還す先がないような形になつておりますので、そこでこれらの人々が今日現地におきまして、九州、山口県その他におきまして現地における心配はいろいろな治安上の問題とか経済上の問題、つまり皆裸で参りまして、これは失業者でありまして、何か職を与えなければならない、日本人の今失業問題が切迫しておるときに更に同じような何十万か避難民に職を与えなければならない問題も起るかも知れませんが、それと同時に天然痘のごとき病毒の伝播ということに非常な恐怖を感じられております。何故かと言ひますと、これらの朝鮮人が上陸すると、直ぐに日本全国に大体ルートがありまして散つてしまいますので、病毒の伝播ということも非常な大きな問題と存じます。これらにつきまして、この避難民として入つて来ると考えられる朝鮮人に、厚生省その他におきまして援護の途を作つて頂き、又一には人道上相互扶助の考えから助けてやるというお考えの施設につきまして、まだこれからの問題でございますが、何か御施設がございますか。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の避難民として、難民として日本に入つて来たようなものに対しては、これは常識でありますが、人道上保護を加えるべきであろうと思います。又関係方面でも当局者もそのつもりでやつておる、地方地方でやつておるのじやないかと思いますが、最近聞くところによると思つたよりも逃げて来る難民、入国した者は少いそうですというのは海上封鎖がされておる結果、曾て事件の初めに山口県知事、その他から聞いたところでは大変だと考えましたが、事実においては左程問題が切迫しておるようにも考えられませんし、併しながら若し入つて来る者があればこれはやはり人道の上から、又善隣の関係から言いましても、政府としてもこれは相当の保護を加えて、事変後に還すという措置をとるべきではないか、これは閣議で決定したわけではないのでありますが、私は秘かにそう考えております。
  33. 團伊能

    ○團伊能君 最後に小さな問題でありますが、これは昨年の十二月参議院の外務委員会が各辺境に出張いたしまして、現に壱岐、対馬、種子島、山陰沿岸全部調査に歩きましたわけでありますが、その場合でも東京その他東北、或いは関西等で考えられておるのと全く違つた島嶼住民の考え方があります。殊にボーダー、国の国境にある対馬のごときは住民の不安は非常に大きいものがございます。それは同時に南北十八里に亙る非常に大きな島に国警が僅かに八十五人しかいない、而も村村の間に全く道路がございませんで、小さな船で通うというような、島民の離島の生活で、僅か八十五名で五万八千人ばかりの日本人がおりますが、その不安は非常に大きなものがございます。現に朝鮮人は三千人ぐらいその中に入つて日本人と一緒に暮しております。そういうところを考えまして、尚それに続きまして、今日は非常に大きな治安的に国警の配置その他に稀薄であるが北海道であるかと存じます。北海道は只今いろいろな問題が起るとは考えられませんが、この地方は従来は間接に外国と接しておりましたが、今日は非常に近く、而も目に見える程度の近さで外国と接しております関係で、地方民の不安というものが非常に大きい、而もそれが、現に何か裏から安全に保障されておるというような実際の証明がございませんために、勿論これは連合軍のこれらに対する警備は、別でございますが、日本といたして非常に稀薄である。殊に北海道の情勢といたし、鉄道を切断いたされましたときには、殊んど交通は不可能な分離したような形になりますので、国警のこの度予備隊等は非常に大きな期待を持たれていると存じますが、然るにに国警の配置を見ますると仙台が支局になつております。北海道が甚だ……いずれ又分局のごときものにお取扱になると存じますが、国警予備隊の分布の上から北海道の民心安定と申しますか、又治安の上からも配置について御考慮を頂きたいと思います。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) さつきお話の、人口五万にして国警が八十五人というのはどこですか。
  35. 團伊能

    ○團伊能君 対馬です。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、国警警察予備隊の配置等については、全然成案を得ておりません。第一、組織、それから中心になる人物等の選定からして、得べくんば予備隊というものは全く独立した何と言いますか、新らしい思想で、新らしい誇りを以て日本治安予備隊が責任を以て背負つているのであるというような、一種のプライドを持つた新らしい警察隊にしたいという考えから、多少高遠な理想を以て考えておるものでありますので、成案がなかなか得にくいのと、従来の国警その他自治警察とどういう連関を付けるか、お互いに協力せしめるとしてどうするか、或いは全然別個のものにするかというような原則等についてもまだ十分研究が積んでおらないために、日々議論をしておるような状態で、成るべく早く何しますが、結論を得たいと思いますが、従つて対馬、北海道、辺境にあける配備をどうするかというようなことはまだ具体案を得ておりませんが、お話は伺つて置きます。
  37. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) お諮りをいたします。御質疑は尽きないことと存じまするが、大臣の御都合もありますようでありますから、本日はこの程度で打切ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 櫻内辰郎

    委員長櫻内辰郎君) それではさようにいたします。これにて散会いたします。    午後五時九分散会  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            徳川 頼貞君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            加藤シヅエ君            金子 洋文君            伊達源一郎君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君   政府委員    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務事務次官  太田 一郎君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條約局長 西村 熊雄君    外務省管理局長 倭島 英二君