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1950-07-26 第8回国会 衆議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十六日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 島田 末信君 理事 福永 健司君    理事 早川  崇君 理事 赤松  勇君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    佐藤 親弘君       篠田 弘作君    塚原 俊郎君       平野 三郎君    船越  弘君       松野 頼三君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    石田 一松君       川崎 秀二君    青野 武一君       前田 種男君    柄澤登志子君       土橋 一吉君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         運輸政務次官  關谷 勝利君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      足羽 則之君         労働政務次官  山村新治郎君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  委員外出席者         日本国有鉄道厚         生労働局長兼職         員局長     小林 重國君         参  考  人         (国鉄労働組合         中央執行委員         長)      齋藤 鐵郎君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 荒井誠一郎君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 七月二十六日  委員武惠市君辞任につき、その補欠として平  野三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員平野三郎辞任につき、その補欠として吉  武惠一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十五日  失業緊急対策に関する請願(今澄勇君外六名紹  介)(第五三二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  失業救済事業拡充等に関する陳情書  (第九四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  失業保險法の一部を改正する法律案内閣提出  第九号)  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、第  七回国会議決第三号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  まず失業保險法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。柳澤義男君。
  3. 柳澤義男

    柳澤委員 政府にお尋ねいたしたいのですが、私はここに提案せられました法律案の中で、きわめて具体的な二、三の問題をお尋ねいたします。  この改正案要点の第一が、受給資格要件を緩和することになつておりますが、これが失業前二月におきまして三十二日以上というのを、最近の日雇い労働者稼働状況にかんがみて、これを緩和する。そうして二十八日以上稼働した場合に、失業保險支給を受け得るように直す。こういう点でありますが、この三十二日以上を二十八日以上というように変更しましたことは、確かに受給者にとりまして、それだけ有利になつたわけでありますが、その日数の根拠はどういうところに置かれたのでありましようか。まずその二十八日という、改正されんとするところ日数を割出された基礎をお尋ねいたしたいと思います。  それからもう一つは、このことによりまして、保險料負担者にとりまして、いかなる影響を来すか。保險料負担との関係、それからこれが予算面とのつながり、その関連を明らかにしていただきたいと思うのであります。まず第一にそれだけお尋ねいたしまして、その御説明いかんによりまして、少しく補充いたしたいと思います。
  4. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  受給資格要件を三十二日から二十八日に短縮いたしましたのは、まず実際的な問題から申し上げますと、最近の民間事業における就労等もあわせまして、大体全国平均にいたしますと、一六・三くらいの稼働日数なつております。従いまして地方によりましては、十五日程度に下つておるものもあります。しかし一般的に申しまして、一月十四日以下に下つておるという例は、ほとんどない実情であります。従つて現在の段階におきましては、実際問題として一月十四日、二月二十八日ということになりますれば、常時安定所を利用し得る者につきましては、あぶれました際に失業保險資格がつく、こういうふうな実際問題が一つ理由でございます。  もう一つ理由は、保險経済関係でございまして、資格要件のみでは申せないことでありまして、後に三十八条の問題でありまする待期との関係と、からみ合つておる問題であります。けれどもども考えといたしましては、失業保險経済、特に日雇い失業保險におきましては、できるだけ短期保險料收入で得ましたものを、それに国の負担分をも加えまして、できるだけすみやかに日雇い労働者の方に還元するというふうな、短期保險の実を発揮するということが一つと、それからもう一つの問題は、保險経済において、保險料收入をこれ以上増加せしめないという二点に立つて保險経済の許し得る限りの最高限度までその資格を緩和しよう、こういうことから、二十八日という計算を出しておるのでございます。もし必要がありますれば、詳細は資料によりまして提出いたしましてもけつこうでございますが、待期資格とからみましての保險数理に基きまして現在の保險経済の許し得る最高限度まで緩和しよう、こういう考え方でございます。  それから第二点の保險料負担関係はどうなるかというお尋ねであつたのでありますが、保險料は現在におきまして、この保險料をさらに上げようという改正考えておりません。現在の保險料收入のままでひとつやつて行こう、こういうことでありまして、保險料負担増額は一切ない、こういうことでございます。以上簡單でございますが、お答え申し上げます。
  5. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまの御説明で大体わかりましたが、そういたしますとこの改正によりまして、どれだけの金額でどのくらいの人員を救済し得るか、はつきり申し上げますと、旧来より稼働日数が減つている、その関係からこれを短縮するということしありますから、この稼働日数の減少と比例をとつて考えられたものかどうか、一言に言えば、積極的に受給者救済が旧来以上に増されるかどうか、救済の積極的な増大ということが見られるかどうかという点を、御説明願いたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。支給資格を今回の改正法律案におきまして、短縮いたしました場合の結果の問題でございますが、大体現在安定所を常時利用いたしておりまする日雇労働者は、二十七万人程度あるのであります。この二十七万人のうち、現行法すなわち三十日分以上ということで資格考えて参りますと、その約二十七万人のうちの六〇%きり、現在のところでは資格がつかないという状況でございます。その六〇%きり資格のつかないものが、今回の二十八日ということに短縮いたしますと、正確なことはまだわかりませんが、大ざつぱに申しまして七〇%以上のものが資格がつく、大体こういう計算なつております。そのほかまた待期の問題その他もありますけれども、大体において安定所を常時利用するところの人々でありますならば、一応あぶれたときには失業保險金をもらえる。もちろんあぶれたときに失業保險金等支給するには条件等がございますが、まあまあ何とかあぶれたときには失業保險をもらえることになろうかと思つております。保險数理から申しますと、現在では六〇%程度のものが七〇%以上資格がつく、こういうふうに積極的に緩和されて参ることと存じております。
  7. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまの御説明で、この改正は結果から見て、積極的に一〇%以上の救済増大する結果になるというお話でありまして、その点はよくわかりましたが、今日の失業状態から行きましては、実にこの一〇%の増大ははなはだ心細い限りでありまして、私どももつと積極的に効果を上げる方法を切望いたしております。  そこで、この改正がわずかにこういつた一点だけでなく、もう少し全体的に——もとより創設日浅い制度でありますけれどももつと積極的な受給増大をお願いいたしたいと思うのであります。これは希望でございます。なおただいま申されました御説明が、数字として資料をもつて示されることにやぶさかでないというようなお話でありましたが、今後の希望といたしまして、こういつたような改正につきましては、やはりできるだけ詳細な資料政府において頒布していただきたい。これを資料として前もつて検討いたしまするならば、もう少し積極的に改正の点を掘り下げて行くことができるのではなかろうかと思います。これを希望いたします。  それからもう一つ、これは御提案改正要点そのものについて、具体的な問題でありませんけれども、どうも失業保險というものが日雇い失業まで拡張せられまして、今日大分完備したかに見られますけれどもわが国失業は單なる経済の変動に基く失業でなくして、もつと深刻なものがあるということは、おそらく何人も認めるところでありまして、これらにつきましては、單なるわずかの部分の改正にとどまらずして、もつと積極的に保險法を活用せられますために、事業そのものの拡大とか、地方自治団体に対するところ起債認可の拡張とか、いろいろな大きな問題もあろうかと思います。もつと根本的には、日本経済の本質に掘り下げまして、失業対策というものは立てなければならない大きな筋があろうと思いますが、山村政務次官がおられますので、そうした失業応急事業に対するところ政府のお考えを、この失業保險関連して、簡單けつこうですから、御方針を御説明願います。
  8. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいまの柳澤委員の後段の問題につきましては、まことに御説のごとく、現下失業問題は、わが国の現状といたしまして最も重要な問題でございまして、何といたしましてもこれが解決に万全を期さなければならないのでございます。今回のこの保險法改正も、その一翼を担うのでございますが、同時に確かにこの失業保險のみをもつていたしましては、失業問題の根本的な解決は、とうていこれを期することが不可能でございます。従いまして一面におきましては失業対策費増額、なおまた公共事業費運用面におきますところの雇用の面は、ぜひとも失業者を大巾に吸收いたす等の方針をもちまして、積極的な失業者救済方法をとりたいと考えておる次第でございます。
  9. 赤松勇

    赤松委員 失業問題に関しましては、二十五年度予算執行の問題、あるいは地方財政との関連性、その他恒久的な失業問題対策に関する政府の諸対策について、お伺いすることは多々あるのでありますが、昨日の理事会でも決定いたしましたように、本日は大体午前中でこの法案を本委員会で上げることになつております関係上、ごく二、三点要約して御質問をしてみたいと思つております。  まず第一点でございますが、政府が本年度予算に計上いたしました失業対策費の四十億の期別配付案、あるいは各期の配付金額、こういうものにつきまして、どうなつておるかということをまず最初にお伺いしたいと思います。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまの赤松委員の御質問にお答え申し上げます。本年度失業対策事業費四十億につきましては、第一・四半期におきましては十億を支出いたします。第二・四半期におきましては、繰上げ支出関係がありまして、十三億ということになつております。先般の閣議決定の趣旨に沿いまして、残額は大体三・四半期、かようになるかと存じております。
  11. 赤松勇

    赤松委員 大体その数字承知しておるのでございますが、第一・四半期分の十億の分から七千万円、それから第二・四半期の分から八千万円、第三・四半期の分から七千万円、計二億二千万円というものが、退官手当流用されておるということを、私どもは大蔵省の責任ある者から聞いておるのでありますが、この点に関しましてはいかがでありましよう。
  12. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいま御指摘の通り政府職員退職手当に一部の金額流用いたしております。すなわち政府職員退職手当は、本年度の四月十五日から、安定所において現金を支給することに相なりました。各省各庁からの退職手当を、一応安定所の方の退官退職手当の中に注ぎ込みまして、そして安定所支給するというやり方になつておりまして、その予算を一応九千二百万円計上しておつたのであります。しかしながら現実に支拂つて参りますと、九千二百万円ではとても足りないということになつて参りましたので、失業対策事業費から七千五十万円を第一・四半期分として流用いたしております。さらに第二・四半期分として七千九百五十万円、計約一億五千万円を流用いたしております。しかしながらこの金は、御承知のように各省各庁の退官退職手当の残部に入るべきものでありまして、財源はすでに各省各庁にあるわけでございます。そこで一応失業対策事業費から流用はしておきますけれども財源はあることでありますので、次の補正の際にこれを返還する。こういう約束のもとにこれを一応流用しておる、こういうことに相なつておる次第であります。
  13. 赤松勇

    赤松委員 次の補正の際に返還すると申しましても、次の補正が可能であるか不可能であるか、またどの程度されるかということも、実際未知数である。ことに今日失業問題は——本日は参議院におきまして、緊急失業対策に対する決議案が上程せられることになつております。おそらくもう提案理由説明を終つておると思います。昨日はまた本院におきまして、共産党を除く各派の共同提案によりまして、政府に対して強い要望をした。参議院決議は、議運で決定いたしましたその案文を見ますと、審議会の要求しております九十億の補正予算を、必ず出せというところの強い決議であるのでございます。このように現下失業状態が、非常に喫緊な問題として論議されておりますときに、こういうような流用をやつてよいかどうかということは、きわめて問題であるのでございます。しかもこのことが、一般日雇い労働者の間に広く喧伝されまして、政府は口で失業対策の重要を強調しながらも、実際は予算面におきましてはこのようなことをやつている。このことは結局失業問題に関して、ほとんどこれを軽視するような状態であるということが、広くいわれておるのでございます。ことに私一番不満でございますのは、先般労働省が出しました労働白書でございます。この労働白書を読んでみますと、われわれと基本的に考え方が違う。政府統計によつていろいろな趨勢を洞察されるのでありましようが、われわれはむしろその統計の底にある日本経済の動向というものを考えまして、そこからこの次の失業問題はどういう形をとつて現われて来るか。さらにこの失業問題というものは、緊急失業対策でもつて慢性的な失業状態が解消できるかどうか。これは朝鮮事変の問題にも関連しましようし、あるいは国内の生産計画、あるいは資金、国家の財政、こういう全般の問題と関連するのでございます。労働省統計によりますと、こういう面がほとんど考えられていない。そうして單なる数字のもてあそびをやつておるのでございます。現に労働白書の中には、本年においてはなお多量の過剩労働力がある。従つて失業労働者増加が危惧されていたが、既述のごとく完全失業者増加は軽微であつた、こういうことがうたわれておる。これこそ官僚のデスク・プランである。実際の状態とはなはだしく相違している。東京都における労務手帳配付数を申し上げますならば、二十五年度の一月におきましては二万二千九百六、二月においては二万六千四百三十、三月においては三万一千六百五十四、四月においては三万四千四百二十九、五月においては三万五千八百八十五、六月においては三万六千二百三十九、こういうように次第に増加の傾向を示しておるのでございます。また東京都は、少くとも都自身が緊急に一応失業対策の形を整えようとすれば、十億円の金がいるということも、都自身が申しておることは、御案内の通りでございます。こういうように失業問題が非常に急迫した問題として今日国会で論議される。こういうときにいかような理由がありましようとも、国の既定予算によつて国会承認を経て決定されましたものが退官手当流用される、補正の際には返すことになつておるから心配するな、こういうことでほんとうにまじめに失業対策というものをば当局が考えておるかどうかということが、はなはだどうも疑われるのでございます。これは片々たる法規の問題でなくて、問題は労働行政に関してどのような熱意を持つておるかということに相なるのでございます。むしろ労働省はそういうものをば他に流用することよりも、流用を避けるばかりでなく、積極的にこの予算面をば拡充して行く。言いかえれば、この四十億の予算というものは十二月に繰上げ支出をするというくらいにまで、情勢はなつて来ておる。従つてこの十二月までに四十億で足りなければ、さらに政府に対して補正追加を要求する。昨日私が説明いたしました決議案の中におきましても、補正追加をなすべきであると申したが、これは自由党の諸君も御賛成でございましたし、他の会派の諸君も御賛成であつたのでございます。従つてむしろ積極的にこの四十億の予算支出をば繰上げにするとか、あるいは大巾に広げるとかいたしまして、さらに一月からの補正予算につきましては、国会もまた政府ほんとうにこの面で努力をいたしまして、でき得る限り可能な限り補正予算を多額に計上いたしまして、現下失業対策に対処する、こういう努力、こういう熱意労働行政内外にあふれておりますならば、ある程度失業者諸君協力もし、納得もするのであります。しかるに政府は、国会承認を経てつくられました既定予算のうちから、二億に上るこういう多額の金を退官手当流用して、補正の場合には返すようになつておるから、それでいいのだという態度には、われわれは納得できないのでございます。一体補正ができなかつた場合には、あなたはどういう御責任をお負いになるか。はたして補正ができるということを、確信を持つてあなたはこの委員会に御答弁なさることができるかどうか。もし補正をするとするならば、本日参議院において決議されるであろうところの、あの決議案に示されておりまする九十億の補正追加というものが可能であるかどうか。こういう点について明確に御答弁をお願いしたいと思います。
  14. 保利茂

    保利国務大臣 赤松さんの御所見に対しまして、私はまつたく同感に存じております。政府職員退職資金に一部流用せられたということは、財政操作の上からどうもやむを得ない事情もあつたようでございますから、このことは非常に遺憾には存じておりますけれども、その面からいたしまして、政府職員で退職せられた方々に対する資金扱い方としては、やむを得なかつたのではないか。ただし先ほどから安定局長も申し上げておりますように、これにつきましては、そういたしますにつきまして十分の善後措置は、政府といたしましてとる方針でおりますから、さよう御了承を願つておきたいと思います。なお今後の日雇い労務者に対する緊急失業対策費補正方針につきましては、御承知のように、多少複雑な様相を呈して来ている面もございます。昨日の衆議院の御決議もございますし、私どもといたしましては、できるだけ御趣意に沿い得る努力をしなければならない、かように考えております。ただ参議院の方で九十億の金額補正を、ただちにやるべしというような御決議があつたかどうか、私まだつまびらかにいたしませんけれども、私はこの緊急失業対策並びに失業保險をもつて、御心配の点に対しては十分対応して行き得るような方法を講じなければならぬ、さように決心をいたしている次第でございます。  なお緊急失業対策事業費から、そういうようにほかの方に資金流用するようななまぬるい、だらしのない考えでどうするか。ごもつともでございまして、私どもの方といたしましては、大体お考えのような線で進んでおりますし、それにつきまして、今度見返り資金になる公共事業が行われると、扱い方によつては、この事業相当数日雇い労務者を吸收することが可能ではないか。そこでこれにつきましても、従来の一般公共事業における日雇い労務者吸收率では、私ども満足できない。閣議でもいろいろ御相談をいたしまして、関係省とも連絡をいたしまして、できるだけこの吸收率を高める。思い切つて高める。特に都市周辺見返り資金による公共事業に対しては、いろいろ事業執行の面において、まだその方になれない労務者が多くて、その面からは非常に支障もあると思うけれども、しかしながら失業問題の重要性にかんがみて、思い切つて高い就労をやつてくれるようにということも要請いたしまして、大体その方針で進むことになつております。御所見に対しましては、私ども大体同感でございます。
  15. 赤松勇

    赤松委員 御承知のように、政府の方は見返り資金及び公共事業費の方に、大分お期待をされているようでありますが、実際問題といたしまして、この間島田君の演説にもありましたように、なかなか見返り資金がうまく行つていないということ、つまりその支出がうまく行つていない。それから公共事業費でございましても、これはほとんど物件費でございまして、たまたまその中に政府の期待するようなパーセンテージ、いわゆる吸收率も、いろいろなデーターによりますと、必ずしも政府希望しておられるような数字に達していない。従いまして、この面でも相当議論の余地が残されていることは事実でございます。それにつきまして、私どもいろいろ資料を持つております。それは別といたしまして、端的に労働大臣にお伺いしたいことは、今後このような流用は絶対にしないか。これは財政操作だということで簡單に済まされません。このことはやはり対外的な、労働者に与える影響は非常に大きいから、こういう政治的な影響も十分考えて、この大きい問題を單に事務的に処理するということに対しては、私ども賛成しかねるのであります。そこで十二月までに大体四十億を使うといたしますれば、今度は一月から三月までの補正予算につきましては、労働大臣として現下失業状態とにらみ合して、大体これくらいはいるだろうというお見込の数字を示していただきますれば、私ども野党といたしましても、保利労働行政にひとつ積極的に御協力をしたいというふうに考えておりますから、その点が明白にならなければ、この予算流用の問題も、これはこのままにしておくわけには実際は参らないと思う。一月からどうするのだということに、やはり問題があるのでございまして、当然労働大臣としては、一月から三月まではこれくらいの所要の予算が必要であると思う、こういうお見込みは、りつぱな労働大臣でありますから、私はすでに立つておると思うのでありますが、ひとつそれをお示し願いたいと思うのでございます。
  16. 保利茂

    保利国務大臣 失業対策事業費残額の繰上げ支出につきましては、先ほどお話なつておりましたが、実は十二月一ぱいはどんな事態が来てもこれでしのいで行くのだというような、きゆうくつな考えは持つていないのであります。事態に即応いたしまして、機動性といいますか、——一方において今までの一般公共事業における吸收率というものはこうであつたが、しかし今度やろうとしております見返り資金による公共事業吸收率は、こういうふうにやつて行きたい。それらがどういうふうに実際の面に現われて参りますか、その現われて参りました面とにらみ合せまして、できるだけ残額の分を機動的に効率を上げるように使つて行きたい。しかも御趣意の線に沿うて使つて行きたい、かように考えております。一月以降についてのものは、実はただいまのところ私まだ腹案がございませんけれども、少くとも一月以降を今日より、あるいは第二・四半期、第三・四半期よりも事態を悪くするようなことは、絶対にいたさないつもりでおりますから、さよう御了承願います。
  17. 赤松勇

    赤松委員 私の聞こうとしておることはそこにあるのではなくして、先ほど労働白書の問題を取上げましたが、労働省の見解は、完全失業者というものの増加は軽微である。ところ経済安定本部の発表によりますと、これから失業者は相当増加して来るということを言つている。このように政府に二つの意見があるということは、結局経済安定本部は日本経済の現在及び将来、あるいは国家財政資金、金融、そういうもの全体を総合して、経済はこのように発展するだろう。従つてそこにはこういう形で雇用量がむしろ減つて、そうして失業者はふえて来るかもわからない。こういうことを言つている。労働省の方ではそうでなくして統計にたよつて、その統計から問題を割出して行く。こういうふうなところに私は違いがあるのではないかと思う。そこで保利労働大臣は、いわゆる事務官僚的な考え方ではなくして、これからの失業状態を十分お見通しなさつて、この程度失業対策でいいかどうか。これは二十五年度予算を立てたときに、これでいいということをお考えなつ政府の方でお立てになつた。ところが実際にやつてみると、これでは足らないということで、結局繰上げ支出をするということになつたのでございます。この面からだけいつても、これは前の鈴木労働大臣の大きな責任ではないかと思うのであります。従つてこの際四十億の予算でもつて、十二月まで十分にまかなつて行けるかどうか。さらに一月からは、大体現下失業状態とにらみ合せて、どの程度予算を必要とするか。こういうことを一言言つていただけますならば、幸い八月からは二十六年度予算の編成もございますでしようし、われわれ労働委員としては非常に参考になると思うのでございます。ぜひひとつ政府の御見解をお述べ願いたいと思うのでございます。
  18. 保利茂

    保利国務大臣 ただいまお尋ねの、来年度予算にこの事業費をどう扱うか、並びに一月以降の補正予算については検討を加えておりますけれども、御承知のように相当情勢に変化の徴も現われておりますし、十分の検討を加えまして措置を講じたい、かように考えております。先ほども申しますように、ただいまはなはだ恐縮でございますけれども、一月以降の補正を幾ら幾ら、二十六年度予算事業費を幾ら幾らと的確に申し上げられないことを、非常に遺憾に思うのでございますけれども、大体先ほど申し上げたことによつて御了承願いたいと思います。
  19. 土橋一吉

    ○土橋委員 私はきわめて簡單な問題からお尋ねいたしたいと思いますが、今年の三月一箇月間におきます失業保險印紙発売総額と、これに対する同月中の失業保險金支給総額について、もし知つておられれば伺いたい。三月といわず、四月、五月、さらに六月等についても、資料をお持合せならば、御説明を願いたいと思うのであります。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 失業保險保險料收入と保險金給付でありますが、保險料收入の方は昨年の十一月から開始いたしておりまして、五月末までに保險料收入として約二億二千万円を徴收いたしております。保險金給付は、御承知のように本年一月から開始いたしております。五月までに約一億四千万円を給付として支給いたしております。
  21. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいま議題の中心となつておるのは、失業保險に関する受給資格の緩和、あるいは待期日数の緩和ということであろうと思います。そこで今お話なつております内容を承りましても、失業保險に関しては、すでに政府が発表しておりますように、日雇い労働者に対して、三億七千二百四十三万円という失業保險予算が計上されておるのであります。なおかつ今の答弁によりましても、二億二千万円程度の收入があるのであります。しかるに保險金額の支拂いの総額は一億四千万円程度である、こういう御説明でございますが、私の知つております資料によりますれば、少くとも今年三月一箇月間を取上げましても、失業保險の印紙発売総額は四千四十七万余円であります。これに対しまして同月中の失業保險金支拂い総額は一千四百九十万余円であります。こういう計算から見ますと、かりに三月一箇月の計算を見ましても、政府失業保險の印紙発売総額におきまして、二千五百万余円の收入と相なつておるのであります。こういうような積算をいたして参りますならば、失業保險というものは、日雇い労働者に関する限りは、現実に失業救済していないのではないか。こういう点が計算の推算から出て参りますが、労働省がここにあげております三億七千二百四十三万余円というものを補助することになれば、今あなたが御説明なつたことと違うのではないかという点が考えられますが、これについて明確な御答弁を願いたいと思うのであります。
  22. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまの土橋委員資料は、何を根拠にされておられるのか、私どもには不明でございます。保險料收入は印紙として納めておりまして、そちらの方からちやんと報告が来るのであります。先ほど申し上げた通り五月末には約二億二千万円、給付としては五月末に一億四千万円、それ以外の資料は私の方はございません。土橋委員資料は何を根拠にされておるのか、私どもわかりませんので、それ以上お答えすることは困難であります。
  23. 土橋一吉

    ○土橋委員 齋藤局長のお話は、私はきわめて不親切な御答弁であるように思います。なぜかなら私が申し上げておる基本的なものは、国家が少くとも日雇い労働者に対しましては、ここにも数字がありまするように、年間を通じまして三億七千余万円という厖大な資金を出しております。それに加えまして実際の支拂いの内容を見ますると、今日七月でございますが、五月までに今の御説明によりましても一億四千万円であります。そういうものを積算してみますと、この失業保險に関する問題については、政府は真剣にこの問題の救済を十分やつていないということが考えられる。こういう点を私は申し上げておるのであります。  次に質問を申し上げますが、今改正要点なつておりますることは、先ほどあなたも柳澤委員質問に答弁されておりますように、この資料は四月であると存じますが、全国的には少くとも一六・三日の稼働日数である。こういうことをあなたは今仰せになつたのであります。そうしますと、東京都のような場合におきましては、少くとも今日普通常識におきましては、稼働日数は二十日前後であろうと私は考えるのであります。ところが今もいろいろ質問しておりますように、現在就労手帳を持つております者が、赤松君の資料によりましても、三万六千三百有余でございます。ところが現状では概括的に申しまして、約三万七千程度の手帳を持つておるものと考えられます。ところが今日少くとも登録を要する失業労働者は、東京都だけにおいて十七万あるといわれております。これはすでに林東京都労働局長が申しておることでありまして、私はこれを本人から直接聞いております。そういう状況下において東京都におきましても五万の就労手帳を下付するものが必要だといわれるのであります。そうすると全国的な基準においては一六・三の基準でありますが、これが東京都だけを考えましても、五万の就労手帳を下付して、なおかつこれによつてあぶれる者が相当あるのであります。そうすると少くとも失業労働者に対しまして、就労手帳を全部まわすということになりますならば、あぶれると申しましようか、働くことのできない日数の割合は非常に拡大して来るのであります。全国的な平均が一六・三であるのに、東京都の場合の稼動日数がかりに二十日といたしましても、それがさらに五万人の手帳を要するということになれば、現在東京都の持つております失業対策の費用のわくがきまつておりますので、そうなつて来ると失業自由労働者のあぶれる率が非常に多くなつて来る。そこであなたが今根拠にしておりまする失業保險の給付資格の制限の緩和に、二月間を通じて三十二日というものを、二月間を通じて二十八日にするという、この比率の根拠がきわめてあいまいになつて来るのであります。なぜかなら、今申し上げたような状況でありますから、少くとも稼働日数は一二・七くらいに落ちて来るだろう。これは今までの林労働局長その他の言を積算をして計算してみますと、こういう状況になる。そうするとかりに二十四日ないし二十五日の場合を考えましても、なおあぶれる者が増大するという計算になるわけでありますが、なぜそういうものを計算上においても考えられ、金額の点においても明瞭でありますのに、今度の改正では、あなたの方の御意見では二十八日としておるかという点を、いま一度私は明確にお聞きしたいと思います。
  24. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、稼働日数は本年四月の全国平均一六・三というところであります。ところが五月になりますと、一六・八というのが、全国平均稼働日数なつております。しかも御承知かと思いますが、四月、五月というのは全国的に申しまして、例年過去の例を見ましても、公共事業事業量が少い月であります。しかして特に本年度におきましては、いろいろな地方税等の関係等もありまして、特に公共事業関係が非常に少いということで、一般の就労日数が非常に少い月であつたのであります。そういうふうに最近におきましては、一番就労状況の悪い月が四月、五月であつたと思います。そういうものを資料として計算いたしまして、大体保險経済の許し得る最高限度をとりますと、今回の改正法律案のような比率になるのであります。しかしてまた将来の問題といたしましては、先ほど大臣からお答えがありましたように、対日援助見返り資金公共事業が始まる。それから本年度の九百数十億の公共事業も始まつて来る。どんどん始まつて来るということから考えまして、四月のような全国平均一六・三というようなことにはならぬものというふうに私ども考えて、少くとも全国的に見ますれば、大体二月に二十八日、十四日ということでありますならば、まあまあ資格はたいていつけて行くことができるというような状況とにらみ合せ、保險経済最高限度というものとにらみ合せて、一応今回の改正法律案のような二十八日というようにいたした次第であります。
  25. 土橋一吉

    ○土橋委員 齋藤局長のお話は、非常に都合がよくなつて行くであろうという見通しの上に御説明なつておりまするが、このような御説明は、前の鈴木労働大臣の御答弁のみぎりにも、十分われわれは拜聽しておるのであります。たとえば外国貿易の振興によつて雇用量の増大は非常なものである。であるから失業者はいよいよ救済されるというようなことは、本委員会におきましても、第七国会におきましても、劈頭あるいは会期中を通じて、鈴木労働大臣は強調し、なお説明をしておつたのでありまするが、私はあなたの御説明も、そういうふうな方向のものではなかろうかと考えるのであります。それは先ほど赤松君からいろいろ指摘されておりまするような点から考えましても、私は安本の方の現在の労働情勢に対する見通しは、顯在労働者約五十万、あるいは潜在的なものを加えるならば相当数でございます。そういうものを、今あなたが仰せになつたようなものの内容で雇用量が増大することによつて、全部吸收するというような考え方は、いささか自由労働者の場合にも私は適応できないものである、こう申し上げたいと思います。そこで待期日数の点でありまするが、今までの待期日数を七日から五日というのを改正しまして、あなたの方の御意見によりますると、通算した者は六日、連続してあぶれた者は四日、こういうふうな案が出ております。ところが実際自由労働者諸君の生活を考えてみますると、御承知のように平均の扶養家族は三人であります。これは労働省の方でもお認めになつておると思いますが、三人の家族をかかえておる者が、かりに連続して四日間あぶれた場合を例にとりますと、いわゆる俗に二コ四と申しておりますが、二百四十円で連続四日間あぶれて一日の日当が幾らになるか。まずこの点を私は考えていただきたい。いかに東京で、政府が申しておりますように、物価が下つたといたしましても、日常生活の配給は非常に円満な状態に行つておると考えましても、三人家族をかかえておる者が、四日間連続あぶれて、その次に二百四十円をもらいまして、どうして食べて行けるでございましよう。そういう待期期間を考えておることが、私は非常に不都合であると思う。また六日の場合を例にとりましても、かりにうち一日働いて、次の日を働いた場合を想定しても、六日間を通じまして二コ四が二つ重なつたといたしましても、実際は二百四十円全部現金手取りにはなりません。東京の場合、あるいは三鷹方面を例にとりましても、手取りはおそらく二百円前後であろうと考えられるのであります。そういたしますと、三人家族をかかえまして、六日間を通じて二百円、合計四百円でありますが、四百円で一日の生活がどういうことになるでありましようか。こういうような状況において、なお失業保險がもらえる額は、これの百分の六十であると記憶しておりますが、そうなつて参りますと、少くともあなた方は失業保險法の第一条をこういうふうにつくつておいでになる。第一条を読み上げてみますと、「失業保險は、被保險者が失業した場合に、失業保險金支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」とあります。ところがこの失業保險に関する限りは、生活の安定はあり得ないのであります。そういう待期期間をことさらに自由労働者諸君に設けておるというところに、私は非常に異議がありますが、少くともこういうようにして失業保險を頂戴した場合は、その百分の六十でございます。それで平均三人家族が食べて行けるかどうか。二コ四で四日間三人家族がやつて行けるという実績を見せていただきませんと、この改正失業保險法の第一条に規定するところと背反する、かように思いますので、事務当局の御見解を一応承つて、さらに労働大臣もおられますので、二コ四で一体ここに書いてあるような連続して四日、次に百分の六十もらつて食べて行けるかどうか。この点明確に御答弁を願いたいと思います。
  26. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 まず御質問の中に、多少数字等で食い違つておるのではないかと思われる点がありますから、そこから申し上げますと、東京におきましては失業対策事業の賃金は、二百四十五円でございまして、所得税はかからぬことに相なつております。保險料の三円を差引きまして二百四十二円を支給することに相なつております。それから保險給付は、百分の六十とおつしやいましたが、それは一般失業保險のことでありまして、日雇いの方は定額制の百四十円ということになつております。なお二百四十五円の金額の問題でございますが、これは御承知のように一般職種別賃金によりまする重労働の標準賃金をとつておるものでありまして、私どもといたしましては生活の問題は一応別として、一応賃金形態といたしましては、東京における重労働の標準賃金をとつておるということにおいて、私どもは適当である。かように考えておる次第であります。
  27. 土橋一吉

    ○土橋委員 今齋藤局長のお話を聞きますと、日雇い労働者諸君には、一箇月間を通じまして全部の稼働が許されるという状況においては、あなたの御説も一応政府側としては立つでありましようが、稼働日数が二十日、よくて二十二日という程度であろうと思います。そういう状況から考えまして、なおかつこの支給の総額を考えましても、今あなたがお話しになつたような重労働者の一般の賃金の標準に合致するというような説明は、いささか言い過ぎではなかろうかと思うのであります。なるほど形式的な方面におきましては、そういうふうに考えられまするが、二コ四を二十二日あるいは二十日加えましても、これが重労働者の平均賃金に該当するという説明は、これはいささか私はあなたの言い過ぎではなかろうかと存じております。そこで問題の中心点はそこにあるのではなくして、問題は失業保險のこの法律を審議中でございますから、私が特に申し上げたいと思うことはたくさんある。あるのではありますが、連続して四日間あぶれて、そうして今あなたがお話なつたような百分の六十よりもなお下まわるもので、平均家族三人の者が食べて行けるかどうか。食べて行けると言うならば、その資料を私は拜見したいと思うのであります。私が申し上げておることを勘違いしないで御答弁願いたいと思います。なお労働大臣山村政務次官もおられまするので、一体二百四十円というようなものを毎日もらいまして、なおかつ保險金がもらえるなら問題ではございません。連続してあぶれて四日目に、今申されましたように百分の四十五でございますか、そういうものを頂戴して三人家族がやつて行けるという資料をもしお持合せがあれば、参考のために拜聴しておきたいのであります。その点を私は申し上げておるのであります。でございますから労働大臣も今の失業保險金額で、通算して五日、六日、あるいは継続的に四日で、この失業保險で平均三人家族の者が食べて行けるという資料があれば、私寡聞にしてよく存じませんので、後学のために聞かしていただきたいと思います。
  28. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 御承知のように失業対策事業就労するところの賃金は、先ほどお話申し上げましたように、一般職種別の重労働の賃金が百九十五円から二百九十五円であります。その中間をとつて二百四十五円、こういうことになつているのでございます。これは民間事業の一般標準賃金ということでありまして、プレヴエーリング・ウエージによるものでございます。私はその賃金は必ずしも低いものだとは考えておりません。  それから生活云々という問題でありますが、生活保護法等に比較いたしますと、現在のところ大体一月に十六日かりに働くと計算いたしますと、全国平均百九十三円の賃金でありますので、その総額が十六日で四千百二十二円になるのであります。日雇保險の收入を大体九日分と見まして、四千百二十二円ということに相なるのでありまして、御承知のように国民の最低生活を保障いたしております生活保護法から比較いたしてみますと、それよりは十分上まわつているものと考えている次第でございます。
  29. 土橋一吉

    ○土橋委員 働いている自由労働者諸君が、今の安定局長お話によりますと、生活保護法よりは多少上まわつているから食つて行けるじやないか、こういう説明に聞き取れるのでございますが、ほかの委員諸君もそういうようにお聞きになつたと思うのであります。しかしながらこれらの諸君は、一体自分の希望によつて失業したものではございません。これは政府の政策やあるいはドツジ・ラインを通ずるところの、経済的な基本的なものから起つているのでございます。そういうようなものに対して今のような御説明で、生活保護法よりは若干上まわつているからやつて行けるということでは、われわれには了解できないのであります。でありますから、われわれは今ここに書いてありますような改正の、少くとも通算をして六日、継続をして四日間の待期期間を、失業労働者、自由労働者諸君に付与するという規定は、決して緩和ではないということを申し上げたい。なお労働大臣山村次官は御答弁ないようでございますが、私はこの御答弁ないことは決して善意にはとれません。少くとも労働大臣が御出席になつておりまして、今私が御質問申し上げているような内容は、常識的な問題であります。そういう内容について御答弁ないことは遺憾でありまして、この失業保險改正は、かかる意味合いにおいて、私たちの見るところからするならば、政府現下の情勢を考えまして若干の修正はしておりましようが、根本的な解決にはなつておらないということを私は申し上げたいのであります。できるならば、この待期期間というようなものはなくして、あぶれたら即日ただちに保險金を支拂うというような体制にすることが必要じやないか。なお受給資格の要件につきましても、先ほどの答弁を承つておりますといろいろな点がございますが、この二十八日につきましても、今あなたが本委員会において御答弁なさつておられますように、一六・三というものが現実にはもつと下つて来るのであります。でありますから、こういう二十八日というような稼働日数を見込んでの印紙添付は、実際問題として不可能であるということが考えられるのであります。でありますから、もつと大幅にこれを下げることが絶対に必要であるということを申し上げて、そういうものに対して一体労働大臣は将来善処されるお考えがあるかどうか、この点を承つておきたいと思います。
  30. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいまの土橋委員の御質疑にお答えいたしますが、要は待期日数をなくするようにすればいいじやないかという御趣旨のように拜聴いたすのでありますが、なるほどその点は私どもといたしましても望むところでありますが、一応保險経済の運営上から、最低のところをただいまのところ出したわけでございます。  なお先ほど来食えるか食えないかという御質疑がございましたが、これは非常にむずかしい問題でございまして、かつて土橋委員が全逓の委員長のときに、私逓信参与官をしておりましたが、よくこれで食えるかということを言われて、あなたに怒られたこともございましたが、これは非常にむずかしい問題でございまして、ただいま齋藤局長から御説明のように、自由労働者の平均賃金から割出しておりますので、ただいまのところでは妥当なものであると考えておる次第でございます。
  31. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際石田一松君から関連質問を求められておりますから、これを許します。石田一松君。
  32. 石田一松

    ○石田(一)委員 簡單にちよつとお聞きしたいと思います。実は本修正案に直接関係があると言えないかもしれませんが、まことにこれは重大問題だと思うのであります。それは自由労働者が職業安定所に最近非常に押しかけまして新聞の報ずるところによりますと、忌まわしい事件も起きておる。この点について、保護立法を改正なさる政府の趣旨もわかるのでありますが、この自由労働者が押しかけることによりまして、職業安定所に勤務しているところの従業員が、朝早くから夜おそくまでくぎづけになる。中には身の危險を冒してまでも、何とかおとなしく話をつけようというようなことで、非常に過労な勤務をしておる。これに対して労働者として、特に職業安定局長あたりは、これら従業員に対して、そうしたことのあつたとき、あるいは全国的なこういう傾向にあるのですから、職業安定所の職員に対しては、特に何かの手当を支給されておるか、あるいは超過勤務手当が規定通りに出されておるか、この点を一応関連質問としてお伺いしたいわけであります。
  33. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私からお答え申し上げます。安定所の職員が非常に苦労をしておるということでありますが、私といたしましてもこれが待遇改善につきまして、目下努力をいたしておるような次第でございます。特に俸給の問題につきまして、何と申しまするか、一つの特別職的な号俸調整というものをやつてみたいというふうなことから、目下人事院と折衝を続けております。できる限り早い機会にこうした問題が解決されるよう努力して参りたい、かように考えております。  なおお尋ねの超過勤務手当につきましては、本年度予算におきましては特別に大幅に認められておるのではありますけれども、これで十分とも申せませんので、将来の問題といたしまして、大いに努力をいたしまして、安定所の職員の労に報いたい、かように私存じておる次第であります。
  34. 石田一松

    ○石田(一)委員 善処なさつておるということで安心したのでありますが、私たちの耳に入りますところによりますと、疲れからぼつぼつ不満等がでて参りまして、もし職業安定所の職員と職を求めるいわゆる自由労働者等が、一つグループになつて騒ぐなどというような事態が発生いたしますと、これはゆゆしい問題であります。ぜひこの点については十分なる処置を講ぜられたいと希望いたしまして私の質問を終ります。
  35. 倉石忠雄

    倉石委員長 柄澤君。
  36. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先ほどから今度の改正につきましての根拠について、柳澤委員や土橋委員から御質問があつたのでございますが、どうもその点が納得されておらないと思います。保險経済の建前からということでございましたが、そうだといたしますれば、厖大な厚生年金などは、まつたく遊んでおるわけでありますし、また労災保險などになりますと、これは保險経済が成立とうと成立つまいと、災害がふえまして拂わざるを得ないというような状態なつておるわけでありますから、こういう問題をただ保險経済の観点からだけに根拠を置かれて、今度の改正をおやりになつたのであるかどうか、あるいはもつとほかの、諸般の事情というような、よく政府の使われますところのほかの事情で改正なさるようになつたのか、あるいは生活の問題を解決しなければならないという点でおやりになつたのか、その点をはつきり伺いたいと思うのであります。
  37. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、今回の改正は諸般の事情などというものではございません。日雇い労働者就労状況を見まして、日雇い労働者の保護を現在よりも徹底させよう、こういう気持から出ておるものであります。
  38. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 東京都の場合だけではないと思うのでありますが、六月の十七日の事業所の課長会議では、いろいろそういうものに対しまして相当つつ込んだ会議がなされておるということは、きのうも本会議で反対討論のときに申し上げたようなわけであります。むしろ東京都の場合には、新しい登録を受入れろというのが方針だそうでございます。そういたしますと、登録者がふえるということは、結局はあぶれが多くなるということが予想されますが、それに対応した一つの処置と考えましてもよろしゆうございますか。
  39. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 東京のそういうようなあぶれが具体的に出ておるの、どうのとこうのという問題ではございません。全国的な日雇い労働者就労状況というものをもとにして考えております。
  40. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 全国的な失業者状態から、失業者の生活の安定というようなことが根拠になつておるようでございますけれども、一般の賃金の標準は、最近では專売局ですらも七千三百幾らというべース上げが行われておりまして、專売の場合には女工が大半でありますが、これらが七千数百円というような賃上げを実施されておるような状態でございます。あぶれが多くなり、失業者の登録も多くなる。東京都なんかでもいろいろな事態が根本にはそこから起きて来るわけでございますが、そういう中で一日くらいの待期日数を減らしたということで、この改正が実際生活を保障するということは、どうしても考えられないのであります。伝え聞くところによりますと、婦人とか年寄りというような者を除いて、今後は新規の登録をもう一ぺんやり直すというようなことが伝えられております。それが具体的に各職安では問題になつておるわけでございます。生活保護法を適用されるそれらの人たちの保障ということが、引きかえ条件として言われているようでございますが、その点はどうなのでございましようか。
  41. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 この問題につきましては、先般の委員会のときにもお答え申し上げましたが、失業対策事業は要するに労働の意思と能力を持つた者を対象とするものでありまして、具体的に今東京でどういうことがやられておるか承知いたしませんが、要するに当該労働市場の要求する労働能力を備えた者を失業者として使つて行く、緊急失業対策法がそうなつております。その趣旨に沿うて東京都もおやりになつて行くものと考えております。
  42. 倉石忠雄

    倉石委員長 一般失業問題については次会に日を讓つてやることになつておりますし、あとまだ中原君も残つておりますから、その程度にお願いいたします。中原健次君。
  43. 中原健次

    ○中原委員 私はこの場合一般失業対策問題についてお尋ねして行かなければ、この失業保險法の一部を改正する法律案に対する私ども考え方をきめがたいのであります。そこではなはだ恐縮でありますが、きわめて簡單に一般論的な点を一、二点申させていただきます。そして当面の法案に直接入りたいと思いますが、幸い新労働大臣が御出席でありますので、労働大臣としての労働行政に対する根本的な考え方を、この場合承つておきたいと思うのであります。とりわけ当面の問題といたしまして、失業問題に対しての御見解をただしておきたいと思います。政府失業者を消化吸收する方法として、いろいろ指摘して来られたと思いますが、その中で一番大きな問題としましては、いわゆる輸出産業を中心とする民間産業の振興によつて失業者を吸收し消化する。こういうことを総理大臣も言うておつたようでありますし、労働大臣も当然そのことについての御見解を持つておいでになると思いますが、はたして今日のような国際事情の関係の中で、しかも政府の対外的な方針と申しますか、それをもつてして、はたして輸出産業の振興による民間産業の隆昌を確保して行くことができると考えておいでになるのかどうか。それはひつきようするに、関連いたしまして保安問題にも及ぶのでありますが、わが日本の貿易経済政策の基礎といたしましては、けだし従来までのわが日本貿易産業の相手国としてのアジア圏におけるそれぞれの国であろうと考えますが、そういうような国々に対する考え方がきわめてゆるくて、ゆるいというよりも、中国等を初めといたしますこれらの国々に対しまして、まつたく相反し、あるいは対立するような態度を最近政府は見せておるようでありますが、そういう情勢において、輸出産業を中心とする民間産業の振興ということが、單なるお題目でなく、現実に具現されるという考えをお持ちになるかどうか。これは労働大臣として失業者吸收の基本的な恒久策と考えますから、これに対する労働大臣所見をまず伺つておきたいと思うのであります。
  44. 保利茂

    保利国務大臣 政府失業問題に対する根本的の対策考え方は、御指摘の通りでございましておそらくこれは日本の国民経済全体が、できるできないということよりも、そう行かなければ日本の国民経済従つて国民生活の安定、向上が期せられないということは、私はおそらくどなたにも御異論のあろうはずはないと思います。と申しますことは、要するに輸出産業の上に立つて日本の国民経済の前途は期待できるものがあるのではないか。これはいろいろ困難な状態に置かれておりましても、国策として強く推進されて行かなければならない。そうすることによつて失業問題も根本的には解決せられて来るであろう、こういうことを申しておるのでございます。
  45. 倉石忠雄

    倉石委員長 中原君に申し上げますが、先ほどお話申し上げました通り、一般失業問題については、次会に一日ゆつくりすることにお話をしてありますし、もう申合せの時刻も過ぎておりますので、なるべく本日は本法の関連事項だけにとどめていただきたいと存じます。
  46. 中原健次

    ○中原委員 もう一言だけつけ加えさしていただきます。労働大臣の御答弁のように、輸出産業の問題はだれもがこれを承認するところであろう、もちろんそうであります。私もその点を重要観するから申し上げたのですが、ただいまの国の動き方から考えまして、あるいは国と申しますよりも政府方針から考えまして、日本の海外貿易を推進して参りますための最もよき条件、有利な要素を破壊しつつありはしないか、こういう見解なのです。従つて有利な要素を破壊するような政府方針が推進されて参りますことによつて、貿易産業の振興は單なるから念仏になるわけであります。従つてそういうことに対しても、やはり閣僚の一人として、少くとも閣僚会議に出席せられる労働大臣としては、相当の御見解があると考えましたので、この点を申し上げたわけであります。従つて失業保險法に関する諸種の問題を決定いたしますときに、おそらく私は将來のわが日本の産業、それに関連しての失業問題、あるいは労働問題を解決するための根本方針というものが、間違いのない線の上に乗せられておらなければ、どのような法律案を決定いたしましても、それは現実の問題として大きな矛盾を生じて來ると思うのであります。これはけだし労働行政に対する根本的な労相の態度が、いつの場合も最初に必要だ、こういうふうに考えたので御質問申したわけでありますが、委員長からの御注意もありますので、そういう総括的な大きな問題に関しては、また次の最近の機会において話を進めて行きたいと考えるのであります。従いまして私は委員会の御意向を尊重して、その点はあとに残すことにいたします。  さて、先ほどから失業保險法との直接関連問題としまして、職安における日傭い労働者諸君の問題がいろいろ取上げられておるのであります。この点に関しまして政府考え方の上に、必ずしも妥当適切でない点がある、必ずしもというよりも、むしろ私から申しますならば、はなはだ遺憾な点があるように思うのであります。この職安に集まつて参ります日傭い労働者諸君は、みずから事を好んで騒いでおるのではない。なぜ騒ぐか、なぜ職よこせの主張をするか、なぜ輪番制に反対するか、その日のあぶれに対して日傭い労働者が悲痛な、まつたく言い知れぬ生活に対する恐怖から、いろいろなことを要請しておるということについて、政府がこれに対して適正な認識をまず持たなければ、この日傭い労働者諸君の当面する問題の解決はできないと思うのであります。従いまして労働大臣としてこのあぶれを中心とする職安現場における日雇い労働者諸君の要請に対する御見解をまず最初に承りたい。
  47. 保利茂

    保利国務大臣 先般の会議で柄澤さんに詳細にお答えいたしましたところで、御了承を願いたいと思います。
  48. 中原健次

    ○中原委員 それではさらに、その職安の現場で、そういつたいわば紛争的なことが発生して参りまするたびごとに——というよりむしろ労働者が職安に集まりますたびごとに、警察官憲が非常に多数動員されて、しばしば昔の取締り的態度が、あの職安を中心とする一角に毎日のように現われておるのでありますが、これは職安に集まりまする労働者諸君が、みずから責任のある労働組合をつくりまして、その労働組合の統制のもとに行動しておる。その正当な労働組合運動の動靜に対しまして、警察官憲がそういうことをあえて繰返すことが許されていいものかどうか。こういうことについて労働行政の責任者としての労働大臣の御見解をただしてみたい。
  49. 保利茂

    保利国務大臣 その点につきましても、私の考え方は申し上げたわけでありますが、要は今日の経済状態のもとで、仕事を失われて失業をせられて生活に追われている方々が多数職安にお見えになつて、その方々をできるだけ多く就労させる。就労の機会をおつくりするということが、私ども一番大事な仕事だろうと思いまして、政府としては全力をあげてそれの改善に当つておりますけれども、仕事をいたしたい、つまり労務を提供して労銀を得るという目的以外の少数の分子の方が、それらの方の生活の弱点に便乗して、そしてそれらの人を煽動されて、職業安定所の秩序をことさらに破壊せられるというような事例も私はなくはないと存じます。警察官がどのような態度をとつておりますか知りませんから、詳しくは存じませんが、そういうほんとうに生活に困り、そして日々の労務を提供することによつて生活をしのごうとせられておる多数の方々のために、その秩序を守つて行くということは、すなわち公共の福祉を守つて行くこととして、ある場合にはやむを得ないことであろうと私は存ずるのであります。
  50. 中原健次

    ○中原委員 労働大臣のお立場が、そういうふうな御見解を持たれるようになつておるのではありましようが、しかしそれは関係労働者の立場から考えますると、了承のできないことであります。特に最近の警官のやり方を、私は先日もみずから目撃したのでありますが、一種のテロリズムの徴候なんです。おそらくあの大衆を平静な状態に維持して参りますためには、これに挑戰するような、いわゆる感情を挑発するような取締り方式というものは、許されてはならぬ。従つて万一のことをおもんぱかつての動員ならば、それを思わしめるような態度で終始しなければならぬ。私が目撃した範囲において考えましても、むしろ手を出したのは警察官である。こういう現実を労働大臣は無視されてはならぬ。私が考えますのは、むしろこれはひとり労働大臣の責任というのではなくて、願わくはこの労働委員会がせつかく国政調査の権限もありますので、これは委員長に申し上げますが、そういう問題についての見解が非常に開くはずはないと思う。だれが見ても同じ目で見るのでありますから、そう開くはずがないにもかかわらず、見解が違うということは、現場に対するほんとうの調査、実際を目撃しておるという経験の有無によるのではなかろうか。こういうことは独断してはいけない。私は現実をほんとうに責任ある立場でよくつぶさに調査検討して、そうして判断を下すべきものだと考える。單に現実に対する実際の動きを独断して結論的なことを言うことは、お互いに愼みたいと思うのであります。そういう意味から、万一警察の官憲の取締りの方式が、私の今申しますように、警察が事を激発するような行動が、もしあるということが立証されましたら、労働大臣としてはどういうふうなこれに対する——労働者を、守る立場の労働省としては、どういうふうな御方針を持つておられるか、これも一應伺つておきたいと思います。
  51. 保利茂

    保利国務大臣 労働者を守るということは、私は單に一労働省の役目であるとも存じません。これはやはり政府全般の使命がそこにあると思うのであります。従いましてただいまのような警察官の行為がどういうものでありますか、御指摘によりますと、ずいぶんひどいように聞えますけれども、私はそういうふうな事例はまだ伺つておりませんから存じませんが、要するに警察官が労働者を彈圧し、正当な労働組合運動を彈圧する、抑制するというようなことは、今日の日本の事態において、あり得べからざることと思つておる次第であります。もしさような事態があるといたしますならば、十分私は政府内部において注意いたして行きたいと思います。
  52. 倉石忠雄

    倉石委員長 中原君に申し上げますが、中原君のただいまの御質疑は、すでに今まで、あなたが御出席なさらなかつたときかも存じませんが、しばしば繰返されて、同じような答弁をしておるのでありますし、またもう一つ先ほど申しましたように、この前の各党の理事会では、本日午前中に打ち上げようというふうに、すでにリーチがかかつておるのでありますから、ひとつただいまのような一般労働関係に関する御質疑は、次回の失業対策をやるときに讓つていただきたいと存じます。どうなさいますか。
  53. 中原健次

    ○中原委員 ただいまの労働大臣の、実際を知らないという言葉は、ちよつと私は無責任だと思う。万一……。
  54. 倉石忠雄

    倉石委員長 中原君に発言を許しておりません。私に対する御回答をお願いいたしておるのであります。
  55. 中原健次

    ○中原委員 それは私は発言を求めたつもりなんです。
  56. 倉石忠雄

    倉石委員長 いや、私が今御相談申し上げておりますことに対して、一般質問はこの次の一般失業対策を一日やるときに讓つていただけないかと言つておるのでありまして……。
  57. 中原健次

    ○中原委員 その点はよく了承しております。
  58. 倉石忠雄

    倉石委員長 しからば本案に関する御質疑だけを許します。
  59. 中原健次

    ○中原委員 失業保險法の一部改正とこの問題は、先ほど申しましたように重要なんです。その判断ができないから申し上げたのでありますが、しかし委員長のそういうお言葉でありまするから、時間はそのためにさくといたしまして、この問題はあとに留保させていただきます。  さて先ほどから数次にわたつて論争されたようでありますが、いわゆる待期日数の問題と、それから労働者の手取りの問題でありまするが、これはこの法律案としては相場当重点的な、重視すべき問題だつたはずなんです。ところがその見解が非常に開いておるということについては、もう少しお互いに考究を要する問題ではないかというふうに思うのであります。待期日数を必要とするということについてひとつ御説明願いたい。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど政務次官からもお答えがありましたように、待期はあるいはないのが理想かもしれません。しかし実際問題として、たとえばきよう来て、すぐ当てにしていた仕事があるということも不可能であります。最近におきまして特に一般の失業者を煽動いたしまして、そのときだけ求職をするということも相当ございますので、その通りには実際問題としてはできないかと存じます。
  61. 中原健次

    ○中原委員 そういう事実がもしあるとすれば、それを具体的に——いわゆる煽動して云々というような言葉は、労働省の行政責任者としてちよつと言い過ぎたと思う。そういうことがあるとすれば、具体的にどういうふうな場合に、どういうふうにあつたかということが指摘されなければならぬと思うのでありまして、そういうことを前提として物事を判断なさるから、やはり結論の適正を欠くのではないか、こういうように私は判断をいたします。なるほど時間を置くということは、いろいろ事務上の処理からいえば好都合であるかもしれませんが、時間を置くということのために受ける失業者のあぶれた者の被害、これはまた非常に大きいのです。そこでその間の調節をどうするかという問題が、ここに問題として取上げられるだろうと思うのでありますが、ことにあなたの方——と申しますと、語弊がありますが、局の方から出されております労働時報ですか、あの中に現われておりまする数字から判断いたしますると、当然資格者でありながら、大体四五%ないし五〇%近い者は、給付を受けておらぬ、給付から漏れておる、こういうことを御発表になつておると思うのです。これはもちろんあなたの方の数字を信頼して申し上げておるのであります。そうなりますると、当然の資格者の中の半数に近い者が、その給付を受けることができない。そういうことは何に起因するのか。従つてそれから発生する余剩金、当然給付すべき予定額が、余剩として利用されておる。こういうことは先ほどからのいろいろな質疑の中にも想像されまするが、そういういわゆる余剩の留保されておる金額等があると考えられまするならば、先ほど次官が言われた、要するに保險に対する充当の資金とのにらみ合せにおいて云々ということも、必ずしも合つてないというふうに思うのでありまして、従つて給付の問題について、これは局長からでけつこうでありますが、一応精細な御説明を求めます。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいままで給付が非常に少かつたことにつきましては、要するにいろいろ理由があつたと思います。すなわち一つは、最近の就労状況から申しまして、資格要件が二月に三十日にしてあつたということ、待期日数現行法のように七日、五日といつたような点であつたというところから、当然そういうように給付を受けた者が少かつたのであります。そしてまた保險料收入の方の残も相当出ておりますので、できるだけこういう残は、国の負担分と合せて、できるだけすみやかに、できるだけ多くの人に保險給付として支給するということが望ましいという観点からいたしまして、今回のような資格要件を緩和して、できるだけ多くの人に資格をつけさす。なおまた待期も必要によつては短縮できるようにしておいて、できるだけすみやかに給付を行つて行こう、こういう改正案考えた次第であります。
  63. 中原健次

    ○中原委員 待期日数を今度の改正法案で少し減らすことになるわけでありますが、この日数を一日あるいは二日ずつ減らしたということによつて、大体今までの実績から計算した類推計算で、どれくらい給付状態が改善されているか、これについての何か数字がありますれば、お聞きしたいと思います。
  64. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほどもお答え申しましたように、これは資格待期といろいろ重なつておるのでありますが、資格要件だけを申し上げますれば、先ほどのように現行法では六〇%の者が資格がつく。これが今回は改正案によつて七〇%、こういうふうになるのでありまして、さらにまた待期の方も一日短縮するというふうなことになつて参りますれば、おのずからそこにまた大幅に資格がついて来る、こういうことになろうかと考えている次第でございます。大体のところ、この改正法律案が成立いたしまするならば、現在の常時安定所を利用する者は大半資格がつくようになるのではないか、かように存じておる次第でございます。
  65. 中原健次

    ○中原委員 大体法律家らしい御判断だつたと思いますが、待期日数は、原則的にこれをなくすべきものだという点については、局長の御見解もわれわれと同じだつたと思います。そうであれば、それへの努力として、ここにそれぞれ二日ずつ減らしたということになるでありましようが、今日のきわめて重要な問題は、これらの失業者諸君に、安定とまではもちろん行きませんが、安定に近い状態をつくり上げて行くということが、国の熱意を込めての方針でなければならぬと思います。そうなりますると、ようやく九%くらいの改善というのでは、その原則的な考え方にこたえるには薄いのではないかというのが一つ、もう一つは保險給付をいたします場合の基礎計算としては、やはり給料ということが問題なのでありますが、私の承ります範囲によつて判断いたしますると、政府は最近最低賃金制の確立、最低賃金制を実施する、こういう御用意があるかのように承るのであります。そこでこの保險金の給付を受けます者の立場から考えますると、先ほども二百四十五円、あるいは二百四十円のことについて質疑応答がかわされておりましたように、この最低賃金制の実施ということと、この保險給付の問題は、非常な深い関連を持つておるわけであります。従いまして労働大臣の方で、この最低賃金制に対する実施のための御用意、そしていつごろこれを国会に御提議になるのか、あるいはそのための最低賃金法の制定に関するいろいろな具体的な、あるいは数字的な御用意等についてこの際承つておきたいと思います。
  66. 保利茂

    保利国務大臣 最低賃金制の問題は、先般の本会議で川崎議員の御質問に対してお答えいたしました通り、まず労働基準法の規定にのつとりまして、中央賃金審査会というものをできるだけ早い機会に設けまして、諸般の情勢から愼重な御検討を願うつもりでおります。
  67. 島田末信

    島田委員 私はこの際動議を提出いたします。  ただいま議題となつておりまする失業保險法の一部を改正する法律案につきましては、足かけ一両日にわたり、すでに質疑応答も十分行われたと思いますから、この際質疑を打切り、討論の上、採決せられんことを望みます。
  68. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの島田君の動議について採決いたします。  本動議に賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  69. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて本動議のごとく決定いたしましたので、失業保險法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。引続いて討論に入ります。討論は通告順によりこれを許します。島田末信君。
  70. 島田末信

    島田委員 ただいま議題となつておりまする失業保險法の一部を改正する法律案に対しまして、私は自由党を代表して、賛成の意見を述べたいと存じます。  この改正案は、その骨子は、日雇い失業保險法制度の改正でありますが、特に日雇い失業保險制度につきましては、昨年十一月より失業保險料の徴收事務を開始いたしまして、保險給付については、本年一月より実施して参つたのでありますが、その実施の状況を見まするに、現下日雇い労働被保險者の保護は必ずしも十分でない点がありましたが、今回これが改善せられる状況に至りましたことは、まことにわれわれの意を強うするところであります。これが法律案につきましては、すでに提出理由の中においても明らかになつておりまするように、まず第一点は、日雇い保險の受給資格要件を緩和することであつたのであります。この詳細はすでに提案理由の中で明らかでありますから、私はこれ以上申しません。さらに改正の第二点のおもな点は、日雇い失業保險の待期日数を緩和し、短縮したことにあるのであります。いわゆる失業保險経済の現状にかんがみまして、その最大限度にこの改正をいたしましたことについて、われわれは心から賛意を表するものでありますが、ただせつかく改正されたるこの法律案を、今後十分維持実行して行けるかどうかということは、今後における保險経済の維持確立ということが問題になると思います。それにつきましては、雇用量を増大するとか、あるいは失業者を少くして行くとかということが、いわゆる保險経済を十分に確立して行けるゆえんであると考えますし、政府におきましては、この点については十分御考慮の上、強く施策を実行されんことを望んでやまないのであります。  以上私は簡單でありますが、本案に対する賛成意見を述べた次第であります。
  71. 倉石忠雄

    倉石委員長 早川崇君。
  72. 早川崇

    ○早川委員 私は国民民主党を代表いたしまして、本一部改正法律案に対しまして、賛成いたしたいと思うのであります。  日雇い労働者失業状態に対しまして、本法律案の一部改正は、根本的な解決ではありません。しかしながら、焼け石に水の程度でございますけれども、少しでも労働者の擁護になるような法案に対しましては、私たちは野党の立場でございますけれども、一歩の前進として賛意を表する次第であります。  しかし根本的には、現在の政府の雇用問題に対する考え方に対しては、私は非常に疑問を持つておるのであります。言いかえれば、ただ何もやらないで、多数の失業者がおるということは、だれかが彼らの生活を負担しなければならない。この事実を考えた場合には、総合的な国民経済全般の立場から考えるならば、少しばかりの赤字公債あるいは赤字財政をもつてしても、なおかつ何らかの事業をつくつて、遊ばしておくよりは、使わせるということの方が、より日本全体の総合経済からいつて、私はプラスになると思うのであります。言いかえれば、失業者が全部死んでしまうのであれば、これは国民経済としていいかもしれませんが、そういつたことがない以上、ただ遊ばして、だれかが負担しなければならないという、この現状をすみやかに脱却する。かような政策が必要であるのでありまして、かような考え方に立つて、われわれは完全雇用政策を強く主張しておるわけでありまして、ビヴアリツジ案に見られるような政策が、現下の日本に必要なゆえんもここにあろうと思います。従つてわが党といたしましては、この改正法律案賛成をいたしまするが、政府は今後この雇用問題、失業問題に対しても、根本的な考え方の展開をされまして、失業問題と取組まなければ、何ぼいろいろな場当り的な政策をとりましても、基本的に片づかないと思います。この点に対して一言警告を申し述べまして、本案に関する限りは御賛成いたす次第であります。
  73. 倉石忠雄

    倉石委員長 前田種男君。
  74. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、左記数点の意見を申し述べまして、本案に賛成いたします。  まず、直接法案の改正要点なつております内容につきましては、質疑のときにも申し上げましたように、われわれはできれば待期期間は廃止してもらいたいという希望を持つております。最小限度の事務上の問題がございますならば、改正されました六日、四日を三日、二日というところまで切り詰められないかというように、現実として考えられるのでございます。それから二十八日の日にちも、もう少し緩和できないかという点を考えております。それから基本的には、日雇い労務者が一日働いて、二百四十円ないし二百四十五円という日給でございますが、その程度の給料で、はたして今日の生活の最低が守れるかというと、守れないのです。食えないような状態に置くということであれば、せつかく働く気持になつても、能率が上らないということになつております。私は何とかして、最低の生活を確保してやるという意味から言つても、日雇い労務者には一律に二百四十円という給料を、もつと思い切つて上げる。要するに最低に食えるような程度にまで上げるということを保障すべきだ思います。それとともに日雇い労務者には、一律に二百四十円というやり方は、当局の立場からいえば、一番安易な人の使い方です。私はこうした使い方に反対です。もつもつと上げて、やはり差等をつけるべきだ。能率の上る者は、二百四十円のものを四百円やる、五百円やる六百円やつてもいい。同じ働いても、能率の上らない者には二百四十円でとめるというように、やはり仕事の内容、成績によつて差等をつけるべきだ。大事な国費を使つて働いてもらうという関係においては、真に働いてもらえるような環境に置くとともに、最低の生活を確保するという点に重点を置くべきだと私は考えます。それから給付金も、百四十円ではこれはむりです。やはりこの給付金もおのずから引上げて、失職した場合には、被保險者として最低生活が確保できるようにする。そのために国家の予算増加されてもやむを得ないと思います。また三円の保險金がこれで足りなければ、四円にしても、五円にしてもいい。今の三円から五円にするということは、日雇い労務者は必ずしも反対しないと思います。やはり給付金を上げて、内容がよくなるということでありますれば、政府負担とともに、被保險者も一部負担してもらうことを考慮してもらえると思いますから、要はこの内容をよくするということに、重点を置かなくてはならぬと思います。  それから基本的には、吉田内閣の労働行政全体の問題、失業対策の全体の問題であるわけです。私は常に言つておりますが、吉田内閣の一番弱い面はやはり労働対策失業対策の面であると私は見ておるのです。むしろわれわれは、吉田内閣にやめてもらいたいという意見の立場から行けば、弱い面をもつと露骨に出してもらつて、早くその政権を明け渡してもらいたいのでございますが、国家的に見ますと、国家の経済の建直し、あるいは勤労大衆の当面の生活問題等から考えますと、やはりここに重点をおいて、善政をしてもらわなければならぬと思います。その面で、めんどうな労働行政の問題でございますし、失業対策の面でございますが、ほんとうに進歩的な諸政策を吉田内閣でやるべきだと私は考えるのです。その面で、さしずめ補正予算が問題になつておりますが、この補正予算もつと思い切つて次の議会には上程して、そして来年の三月までは心配かけないという具体的な案を出してもらうとともに、来月から審議にかかりますところの二十六年度予算の編成にあたりましても、この労働行政の面失業対策の面において、ほんとうに進歩的な善政といわれるような内容の面を強く出していただきたいと、要望いたします。そうすることによつて、この問題がもつと明るくなると考えます。さらに具体的な問題のことにつきましては、五大市長から出されておりますところの要請書の項目の中にも、具体的にあげられておりますが、ただ單に人件費だけを予算に組むというのでなくして、やはり全体の面から見たところ失業対策が十分織り込まれなくてはならぬと考えます。こういう点等につきましても、ひとつ一段と労働大臣を中心にして御考慮願つて、次の議会あるいは来年度予算には、今私が申し上げましたような進歩的な十分な予算を、労働行政失業対策の面に織り込んで実現するように、万全の努力希望いたしまして、本案に賛成します。(拍手)
  75. 倉石忠雄

    倉石委員長 土橋一吉君。
  76. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいま議題になつております失業保險法の一部を改正する法律案には、私は日本共産党を代表しまして、反対の意見を表明するものであります。  御承知のように今日といわず、過去におきまする失業もそうでありますが、将来におきます失業についても、これは吉田政府を通ずる資本家並びに内外的な反動勢力が考えた政策によつて失業者が出るのであります。失業者自身が、自分の自主的な考えや願いによつて失業が出るのじやないのでありますから、まず第一番に失業保險に関する問題は、資本家及び政府の全額負担によるところの保險制度が、社会保障制度として確立されることが必要であります。ところが今までの大臣及び政府当局の答弁を承りますと、保險経済上の問題から云々ということを常に申しておられますが、少くとも失業保險に関する限りは、世界いずこの例を見ましても、これは純然たる社会保障制度であることは明瞭であります。でありますから、私は労働者諸君から掛金を徴收するというような態度が、根本的に誤つておると思うのであります。でありますから、失業保險に関する限りは、社会保障制度の拡大、しかもこれに対する無制限的な態度をとりませんことには、政府が自分が首を切つておいて、自分が失業者をつくつておいて、少くとも救済することについて、彼自身が熱意を示していないということを、第一番に指摘しなければならぬのであります。  第二番目といたしましては、昨日本院におきましては、失業に対する緊急対策が、日本共産党を除く全野党及び与党の諸君によつて決定したのであります。こういう決議案が昨日本院において決定したばかりでありますにかかわりませず、この法律案の内容を見ますと、これは羊頭をかかげて狗肉を売るにひとしいのであります。なぜならば、今までわれわれが承知しております失業者の総数は、顯在失業者はおそらく六十万にも達すると思われるのであります。ところが現在まで政府就労手帳を認可しておる者は、約十万であろうと考えられる。ところが第二・四半期において政府考えております失業者に対する就労手帳は、大体十二万七千程度であろうと考えるのであります。六十万程度の顯在失業者に全部就労手帳を渡すような態度が、私は好ましいと考えておりますが、今現実に職安においては、就労手帳についても非常な制限をしておるのであります。でありますから、ここでもし六十万の顯在失業者就労手帳を渡すということになると、現在のわくは十二万七千程度失業救済のわくでございますから、どうしても現実は失業労働者があぶれざるを得ないのであります。そこで労働者は輪番制ということを考えて来たのであります。これに対して日雇い労働者諸君が、東京でありましようとも、あるいは神奈川でありましようとも、川口でありましようとも、この輪番制の問題については、まつ向から反対をするのでございます。当然なことでございます。こういう点から、あるいは寄せ場、事業所において就労の切手を切るというような問題も起つておりますが、私の申し上げたい点は、このようなものをつくりましても、今私が申し上げたような顯在失業者の数と、就労手帳を下付する者との間には数において非常な差があるのであります。もしこの者に当然失業者就労手帳を下付するということになりますと、いやでも応でも輪番制ということになりますれば、現在政府考えております一六・三の稼働日数は、まだまだ落ちて来るのであります。現実に落ちざるを得ないのであります。あるいは一二・五とか、あるいは一〇というような稼働日数にまで落ちて来る危險性が十分あるのであります。そうすると第一政府が今ここで提案をしておられますような改正の二十八日、つまり失業して二箇月間に二十八日の日数が、切手が張つてあるという問題につきましても、これはまだまだずつと下げなければならぬということが考えられるのであります。あるいは待期期間の問題にいたしましても、先ほど私が政府委員やあるいは齋藤局長にもお尋ね申し上げておるように、現実の問題として待期日数はあなた自身もこれを了承されておりますように、これは廃止すべきことは言をまたないのであります。特に失業労働者がとつております二コ四というものは、重労働者と同じ給与であるというような論弁を弄しておりますが、今どこの労働者にしても、重労働をする者が、なるほど基本賃金はあるいは二百四十円かもしれませんが、その他あらゆる生活補助、特に家族手当、勤務地手当、特勤手当、超過勤務手当というようなものが支給されております。でありますから現実の生活は、決して日雇い労働者諸君がもらつておりまする金額のようなものではなくしておそらくその二倍ないし三倍というようなものが、今日日本の全労働階級の基準的な標準と相なつているのであります。もちろんこれもきわめて不十分なものでございますが、一応こういう状態でございますから、今のような御答弁によりましては、この問題は解決をしないのでありまして、こういうような趨勢にあることを労働省は見越しまして、一応三十二日の問題を二十八日に切下げ、あるいは通算して七日のものを六日に切下げ、あるいは連続して五日のものを四日に切下げたということは、これは政府が今のような状態を察知してからの、一応の緩和策をとつているようなゼスチユアを国民に示さんとするものであります。実質内容においては、何ら日雇い労働者諸君に対しては緩和どころでない。もしこういうことをいたしまして今私が申し上げたように、六十万の労働者就労手帳を下付するという問題になつて来るならば、当然失業保險における問題でなくして、失業対策における基本的な態度を政府が十分考慮いたしまして、今補正予算でも組むとか、追加予算を計上いたしまして、この面を強く強化しないことには、失業保險のこのような改正では、結論的に龍頭蛇尾に終ることは、言をまたないのであります。だから特に吉田政府が労働階級を欺瞞し、賃金ベースを上げないという方策は、本日の午後の労働委員会においても、なぜ国鉄裁定を自由党の諸君政府はこれを認めることをがえんじないのか。あるいは過日の十五日において、人事院総裁は参議院の本会議においては、来週中に人事院勧告を発表するということを明言したのであります。ところがどうでございましようか。十八日には人事院総裁はすでにこれを撤回しまして、本委員会におきましても同様であります。こういう趨勢は、明らかに吉田政府が人事院の基本的な態度、少くとも国家公務員法が規定しておりまする第一条、第三条、第五条というようなものを無視して、政府が一方的に人事院の勧告すらやらせない。この態度が実は国鉄の第二次裁定に、きわめて明瞭に現われて来るのであります。でありますから、米価の問題につきましても、労働賃金の問題にいたしましても、失業労働者のあの保險法改正の問題についても、明らかに吉田内閣は勤労階級を愚弄し、労働階級を欺瞞し、そうしてこのような方策によつて一応の緩和策があるやに見受けられる態度をとられておるのであります。こういう吉田政府がきわめて労働階級を愚弄し、勤労階級を破局窮乏のどん底に陷れまする失業保險法案なるものに対しては、私は全面的に反対であります。とにもかくにも失業保險制度につきましては、社会保障制度の大きな一環として、私は当然待期日数は廃止すべし、かつ給与額についても前田君と同様であります。なるたけ多くの失業保險金を給与すべきである。同時に私はこの二十八日という問題につきましても、全体の失業者の数と現在の登録数との割合を考えまして、これを割つた数字解決するところまで、この日にちは引下ぐべきである。こういうふうに私は考えておるのであります。なお私は失業労働者に対しましては、保險金を絶対に徴收すべきでない。同時に現在の二コ四はきわめて低いのでありますから、できることならば、当然私は三百五十円ないし四百円は支給するのが妥当と考えておるのであります。かかる見地に立ちまして、現在の改正法は決して日雇い労働者のためになるのではなくて、失業増大ということと、就労手帳の関係と、保險経済学上の関係理由といたしまして、一応改正らしきものを出しまして、そうして実際には日雇い労働者諸君の窮状をさらに倍加するところの、最も悪い法律であると指摘して、日本共産党は反対せざるを得ないのであります。(発言する者あり)君は発言を許されていない。でありますから、かかる観点から本案には反対をいたします。
  77. 倉石忠雄

    倉石委員長 中原君。
  78. 中原健次

    ○中原委員 私は労働者農民党を代表いたしまして、この案件に対する所信を申し述べたいと思います。現在の吉田内閣が、いわゆる経済安定政策なるものによりまして、失業者を救つておらないことにつきましては、もはや自他ともにこれを否定することができないのであります。失業者が街頭にあふれ、しかもその失業者がさらに失業救済事業の中におきましてあぶれを食い、重ねての失業状態に追い込まれておる現状でありまして、これらの政策に対しまして、政府はこの失業者を吸收、解決、消化、処理するための具体的な方針対策を持つておりませず、ただようやくいわゆる公共事業その他応急の失業対策事業等の名によりまして、むしろ労働階級の要望いたしておりますような失業消化の対策をとることなく、ひたすらに一つ誤れば国を、あるいはわが国労働行政を再び平和的ならざる方向へ追いやるところの危險性をはらみつつ、そういう各種の事業を取上げて、いわば失業対策事業としての根源が、これらの公共事業費、あるいは応急失業対策費等の中に盛り込まれましたような、そういう事業に終始することが、究極において労働階級を失業から救い、健康にして文化的な生活を確保せしめるような条件をつくることにならない。そういう方向へひた走りに進みつつあります政府の今日の失業政策は、われわれ断じてこれに承服することができないのであります。従いましてこの失業政策は、今回上程されております失業保險法の一部改正という部分的な改正によりまして、その間の国民の窮迫、あるいは労働階級の憤激というものに対して、一つの便法的な、麻酔剤的な役割をこの中に織り込んでいるということが、遺憾ながら指摘されるのであります。といいますことは、このような法律を通しまして、真実に失業問題が解決されないからであります。  さらに私が先ほども質疑の中でちよつと触れましたように、いわゆる標準賃金の問題であります。その標準賃金の問題は、政府が近く立案するとか称せられております最低賃金制の中に当然織り込まれて来るであろうと考えますが、この政府の最低賃金制そのものに対する底意は、決して労働階級に労働再生産し、あるいは文化的にして健康な生活を保障するということをねらうものではなくして、今日までひた押しに押えて参りました低賃金を固定化し、いわば飢餓賃金の名のもとに労働階級をくぎづけする内容を持つていることがうかがわれるのであります。そういうものを根幹としての標準賃金を基礎とする失業保險の給付には、われわれは遺憾ながら期待を寄せることができがたいのであります。そのような根本的な構想の上に立つて失業保險法が施行され、あるいは今回の改正を見たのであります。従いまして、これがその表面に列挙するような、失業をなくし、あるいは失業状態労働者の生活を安定せしめることをほんとうにねらう施策であり、法律案でございますならば、われわれは何でこれに対して異論をさしはさみましようか。これらの諸点を総合して考えまするときに、この失業保險法一部改正に関する法律案は、單にこの急場を糊塗するところの、いわゆる注意を外にそらすための欺瞞的な方策であるということを、遺憾ながら指摘せざるを得ないのであります。このような観点に立ちまして、はなはだ遺憾でありますが、労働者農民党はこの政府の反動的な政治の一環としての本改正法律案に、反対を表明せざるを得ないのであます。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより失業保險法の一部を改正する法律案について採決いたします。原案の通り賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  80. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決いたしました。  なお報告書の作成については委員長に御一任願いたいと思いますが、いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  それでは午後二時三十分まで休憩いたします。     午後一時九分休憩      ————◇—————     午後三時二十九分開議
  82. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日は御多忙中にもかかわらず、重ねて御出席を願いました参考人各位に対しまして、厚く御礼を申し上げます。  これより公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(第七国会議決第三号)を議題として質疑に入ります。赤松勇君。
  83. 赤松勇

    赤松委員 本日は国鉄第二次裁定の第一項並びに第二項について、重大な関係のございまする加賀山参考人の御出席がございませんことは、はなはだ遺憾でございます。従いまして本国会におきましては、この第二次裁定に関する第一項、第二項について、十分国鉄公社の意見を徴するということは、きわめて困難であると思うのでございます。従つて私は加賀山参考人に対する意見の聴取はこれを留保しておきます。委員長はきわめて近い将来、後ほど理事会で、おそらく次期委員会が決定されるでございましようが、その際は必ずひとつ加賀山参考人の御出席をば煩わしたい、この点を強く要求しておきます。  まず第一に、政府にお尋ねしたいのは、第七国会におきまして、本労働委員会に再度付託されておりまする公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるということで、この裁定が出て来ておるのでありますが、第七回国会におきましては、御承知のようにこれは継続審査ということに相なつたのであります。われわれ委員会といたしましては、はなはだ怠慢でございましたが、その間十分なる継続審査をば行わなかつたということは、委員会の重大な責任であると思うのでありまするが、第八国会に入りまして、政府は再度この案件を国会議決を求めて参りまして、本委員会に付託になつたのでございまするが、政府はどのような手続を経て本国会に提出になつたのであるか、提出の手続、時期、理由、そういうものにつきまして、一応確めておきたいと思うのでございます。
  84. 關谷勝利

    ○關谷政府委員 お答えいたします。この問題は前に提出せられたままで継続審査がいたされておりまするので、過去においては別段かわつた手続はいたしておりません。
  85. 赤松勇

    赤松委員 再度国会に御提出なさいました手続はふんでいない。第七国会から自動的に継続審査になつておる。その御答弁で間違いございませんですか。もし間違つているとすれば重大な問題でございまするから、——おそらく私は間違つておると思うのでございますが、もう一度ひとつお答え願います。
  86. 倉石忠雄

    倉石委員長 赤松君、その点は議院の運営のことでありますから、委員長から本案を受理いたしました手続を御説明申し上げます。
  87. 赤松勇

    赤松委員 委員長、私は委員長から議院運営に関する手続につきましては、十分お伺いすることにいたします。私は委員長にお尋ねしておるのではなくて、政府に対して——政府資金上、予算上不可能である、いわゆる公労法第十六条第二項に基いて国会に提出されたのでありまするから、政府の責任をただす意味におきまして、私は政府当局に質問しておるのでありますから、政府みずからお答え願いたいと思うのでございます。
  88. 山村新治郎

    山村政府委員 政府側といたしましては、先ほど關谷運輸政務次官から御答弁いたした通りであります。
  89. 赤松勇

    赤松委員 七月十三日に再提出の手続をとつておられることは、すでに公報に明らかになつておるのでございます。これはいかがでございましようか。
  90. 倉石忠雄

    倉石委員長 赤松君、この間の委員会でもちよつと再提出というお言葉がありましたけれども、これは第七国会で継続審査になりまして、そのまま本院にとどまつてつたのでありまして、それを再び本院から労働委員会に再付託という手続をふまれて、同一のものが付託されたということになつておるのでありまして、手続上の問題はそれで御了承願えませんか。
  91. 赤松勇

    赤松委員 この点につきましては、お互いに運営委員を長くやつておりまして、いろいろ議論のあるところでありまするが、せつかく委員長がそう申されますから、一応委員長の顔を立てて、この点につきましては、また後日運輸大臣なりあるいはその他の方々の御出席なさいました際に、事態を明確にしたいと思います。  そこでさらに私はお尋ねいたしたいのでございますが、第二次裁定書の第一の賃金関係でございます。第一項の国鉄は公共企業体であつて、これは国家公務員の給与とは異なるものである。おのずから業態も違うし、経済活動、生産活動が違うのであるから、そういう行政機関と企業体の従業員とは、おのずから給与の形が別個でなければならぬということが第一にうたわれておるのでございまするが、この点につきまして、政府の御見解はいかがでございましようか。
  92. 山村新治郎

    山村政府委員 政府といたしましては、裁定の御趣旨は十分尊重いたしたい考えを持つております。
  93. 赤松勇

    赤松委員 裁定の趣旨を十分に尊重するということは、これを確認されたものと解釈してよろしゆうございますか。
  94. 山村新治郎

    山村政府委員 その通りでございます。
  95. 赤松勇

    赤松委員 しからば続いてお尋ねいたしまするが、同じく第一の賃金関係にございまする、この裁定の出ました当時は、昭和二十五年度予算案の執行につきまして、当然この執行の過程においては、あるいはこの予算執行のために物価が上るかもしれない、消費者の実効価格はあるいは上るのではないかという予想を立てておりますし、他面におきましてはシヤウプ勧告によりまして、所得税法の改正によつて当然勤勞労所得税も、これまたわれわれは改悪と考えておりまするが、これが政府のお言葉に従えば改正になる。この裁定は必ずしも減税になるとは考えられない。さらに物価や生計費の見通し等につきましても、はつきりここに言つておる。それは民間賃金と国鉄職員との開きが、名実ともに著しく縮まる見通しを持ち得ないということだけはつきり言えるということをば、この裁定は言つておるのでございます。この点につきましては、政府はどのようにお考えでございましようか。はたして所得税の改正あるいは二十五年度予算執行、その他現在の物価の変動等、あるいは消費者実効価格の変動、こういうものに伴つて現在の賃金が実質的に下つておるか。それとも実質的には上ておるか。こういう点についてはいかがでございましようか。
  96. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げますが、実質上の賃金が上つておるか、あるいは下つておるかという御質問でございますが、この点の認定は非常にむずかしい問題でございまして、いろいろの角度から検討されなければなりませんが、しかし大体におきまして、一応インフレの收束その他から言いまして、実質上の向上をたどつておると考えます。
  97. 赤松勇

    赤松委員 この点につきましては、私とその見解はまるで違うのでございます。しかしながら労働政務次官にこの点をいろいろお尋ねするというのもどうかと思われますので、これはまた後日いろいろ質問したいと思います。  続いてお尋ねいたしますが、やはり裁定の賃金関係の第四でございますが、公共企業体職員及び政府職員の給与の引上げが行われたとしても、今日の現状においては、民間賃金や物価に大きな影響を及ぼすとは認めがたい。仲裁委員会はこういう見解をとつておりまするが、これも政府はそのままお認めになるでございましようか。
  98. 山村新治郎

    山村政府委員 お答え申し上げます。この問題は各業態々々によりまして、いろいろな程度の相違があると思います。
  99. 赤松勇

    赤松委員 先般池田大蔵大臣は本会議の席上、給与を引上げても、これは現在のデフレ下においては、民間の給与あるいはまた物価にさしたる影響がないということを明白に言つておるのでございますが、この点もまた、しばらく御質問をば避けましよう。これはまた後日御質問をすることにいたします。  そこでやはり賃金関係の第五でごいまするが、第五の中に、国鉄の経理状態が著しく改善されることは事実である。しかしながらこの裁定の出た当時、まだこれは初年度にすぎないから、今からそれを予測するということは困難ではあるが、少くとも仲裁委員会の見通しとしては、二十五年度における国鉄の経理状態が著しく改善される。この改善されるということは、従業員の国鉄輸送力増強に関する非常な努力がものを言うだろうということも、やはり裁定の中に言つている。あるいは石炭費の節約その他の問題も含まれておりまするが、この間加賀山参考人が本委員会において御証言なさいましたその中に、八月か九月になれば明確なる見通し、つまりこの裁定にうたつておりまする国鉄の経理状態が著しく改善されるという見通しが立つ。願わくばひとつそれまで待つてもらいたいということをば証言したことは、これは速記録に載つておる通りでございます。そこで加賀山参考人の申しまする、たとえば今四月の決算がまだ行われていない。この四月の決算は大体七月もしくは八月にはその決算が終る。そうして二十五年度における国鉄の経理改善に関する見通しが立つということを言つておる。言葉をかえて申しまするならば、裁定のいつておりまする第一項、第二項は可能であるか、不可能であるか、いわゆる公労法第十六条第二項の資金上あるいは予算上可能であるか不可能であるかということは、この七月か八月になつてみれば大体の予想は立つ。その際はわれわれはできるだけのことはしたいと考えるということは、この間加賀山参考人がここで言つている。私はそれまで延ばすという意味じやございません。国鉄公社の総裁がそう申しておる、もしこのことが明白になりまして、そうして経理状態が著しく改善されるという仲裁委員会のこの考え方と一致した場合には、政府は本年四月からこの裁定精神にのつとつて、そうして賃金べースの引上げの措置をおとりになるお考えがあるかどうか、これをお尋ねいたします。
  100. 足羽則之

    ○足羽政府委員 ただいまの御質問でございまするが、仲裁委員会が御指摘になりました、国鉄の経理状態が著しく改善されるという意味と、昨日加賀山総裁が述べました本年度の経理の状況が明らかになるであろうという意味とは、多少言葉の意味しておりますところが異なるのではないかと思うのでございまするが、いずれにいたしましても八月、九月を過ぎますれば、本年度予算執行状況が相当の見通しを持つということにつきましては、加賀山総裁の述べた通りでございます。その際におきまして、この裁定が四月一日から実施できるか、あるいは他の期日から実施できるかという点につきましては、これはやはり当時の経理状況の見通しのいかんによることでないかと考えております。
  101. 赤松勇

    赤松委員 まるつきりあなたの言うことは違うのです。あなたはよく聞いていなかつたと思うのです。きのうでしたか、加賀山参考人の言つたことは、私の記憶によれば——もしこれが誤りであれば、速記録をあとから見ればよくわかる。それはこう言つている。国鉄公社は公労法に対するところの義務を負つている。従つて国鉄公社はこの公労法の示す義務を果すために、企業予算の中においてできる限りの努力をする。そして増收策を講じ、経費の節約をはかる。損益勘定の中において財源があるかないかということは十分に検討する。五月、六月はあまり成績は芳ばしくなかつたが、七月はよくなつて来た。支出の面で、第一・四半期の石炭の節約、これは消費量においても單価においても、一年のけりをつける段階ではないが、このことは非常に明るい見通しを持つことができるようになつて来ている。大体八月、九月ころには目途がつく。こういうことを言つているのです。これはあなたの今おつしやつたこととは違う。加賀山参考人は公労法に対する義務を負つておるということを前提にしている。国鉄公社は仲裁委員会の裁定に対しては、これを実施しなければならない、これを受諾しなければならない義務を負つておる。けれども十六条の豫算上、資金上不可能であるということから、政府は本国会にこれの議決を求めて来た。しかし国鉄としてはできる限り今言つた増收策を講ずるとか、あるいは経費の節減をはかるとか、損益勘定の中から財源が何とか見つからないかということで、今一生懸命に検討しているという、きわめて積極的な言葉なんです。あなたの今おつしやつたのは、公労法に対しては何ら義務も責任も感じていない。まつたく一事務屋の、それこそ事務官僚的な御答弁でございまして、そういう答弁をしてもらうということは、はなはだわれわれ迷惑であります。これから気をつけてください。加賀山さんはもつもつと積極的な意味で、熱意をもつて答弁している。あの人の熱意が実現するかどうかは別箇の問題であるが、少くとも本委員会の証言としては、非常に積極的なものであつたということは、みな各委員の認めるとこうなんです。そこで続いて私はお尋ねいたしまするが、今加賀山参考人が言つておりまするように、仲裁委員会の裁定いたしました裁定書を実施するような、そういう条件が生れて来るという場合におきましては、もちろん政府はいやおうなく、国鉄公社のそういう希望に沿わなければならぬと思うのですが、もつと積極的に申しまして、第一工事勘定というのは裁定書をごらんになればわかるように、これは国鉄の従業員その他の努力によつて黒字が生じた。あるいは首切りその他によりまして出来たところのそれなんです。きのう仲裁委員の今井参考人も、民間の企業と比較をされまして、その損益勘定、つまり收益でもつてそれを工事勘定にまわすというような会社は、民間には一軒もないということを強調しておる。それをやつているのは国鉄だけだということをきのうも指摘している。そこで仲裁委員会が示しておりまするように、工事勘定の中から、なぜ第一項、第二項の裁定を生かすような措置がとれないか、工事勘定を使うということはなぜいけないか。御承知のようにすでに專売は国鉄とは別箇にこれを受諾いたしまして、ある程度の賃金が上つている。国鉄の場合は、予算上、資金上不可能であるというので、議会にかけられてあるものをほつたらかしている。損益勘定からなぜこれが出せないのであるか。これが問題だ。仲裁委員会の言つているこれがなぜ実行できないのだ。この点をひとつ明確に御答弁を願いたい。加賀山参考人にも後ほど聞きまするが……。もしこういうことが、今出ておられる公社の人の口から、責任をもつて御答弁ができないということになりますれば、私は答弁を求めません。これは加賀山参考人がおいでになりました際に答弁を求めます。そこで続いて政府に対する質問を続行いたします。
  102. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちよつと待つてください。国鉄側あるいは政府側から答弁ありますか。
  103. 赤松勇

    赤松委員 いや、私委員として、私自体が答弁を辞退いたします。  そこで次にお尋ねしたいのでございますが、昨日の本委員会におきまして、今井参考人が、こう証言しておる。この裁定の中に、そういう余剰金ができるように、できる限り公社と従業員が協力をして、そうしてそういう余剩金を積極的に実質賃金向上の方に振り向ける、そういうシステムをつくれということをば、この仲裁委員会が指示してある。これを政府あるいは公社は何ら今までやつていない、こういうことを言つておる。今まで公社のやつて来たことを見ますと、私は、公社も働いておる従業員に対しては、何とかしたいという気持があるということは、よくわかる。しかしながら政府が一般公務員の賃金ベースの改訂の問題と関連いたしまして、もし国鉄だけをこの裁定に従つて賃金値上げをするというようなことになるならば、一般の公務員に対する影響が非常に大きいというので、躊躇しておるというのは常識なのです。ところ先ほど政府の答弁によれば、これが一般の物価にもあるいは賃金にも影響しない、その通りでございますという答弁がただいまあつたわけであります。さらに賃金関係の第一点の、国鉄の従業員は、政府職員とはその仕事の量においても、あるいは生産活動、経済活動においても、まつたく違つたものである。従つて賃金形体そのものも、これは異つたものでなければならぬという仲裁委員会の、この賃金関係の第一点についても、明確に政府はその通りである、それを確認しますということをただいま答弁されている。それが確認されて、そして工事勘定というものがちやんとあつて、その工事勘定からまわせば、この裁定はすぐ実施できる。なぜこれが実施できないのか、工事勘定からまわすことがなぜいかぬのか、こういうことを聞きたいのでございます。これは公社の方にも聞きたいのでございますけれども、加賀山参考人がおりませんから、公社の方はよろしゆうございます。政府の方としては、今裁定を実施する面で、この工事勘定からその財源をまわすということに対しては、どのようにお考えなつておられましようか。
  104. 足羽則之

    ○足羽政府委員 お答えいたします。御質問が二つあると思うのでありますが、一つは今井仲裁委員が昨日おつしやいました、経費に余剩を生じた場合に、これを職員に還元すると申しますか、第一次裁定の第三項であつたかと思いますが、この措置を講じてない、その点についてのお尋ねではないかと思うのであります。この点につきましては、裁定にもございますように、この方法は制度の設定でございまして、そういう制度を設定するには、組合側と当局側とで協議の上できめるようになつておるのでございます。ところが一応その点に関しまして、今年度の問題といたしますれば、予算総則の給与総観の問題がございますが、この点との関連がどうなるかとの質問を、国鉄当局より私どもの方は受けております。これに対しましては、具体的に制度の内容がきまらなければ、この給与総額のわくの中に入れるべきか、あるいは経費の節減として、報奨的なものとして、別個の資金考えてしかるべきものか、わかりかねるから、具体的な内合を早く示してもらえば、それに応じて政府としての意見を述べる、こういうふうにしておるのでございます。これは政府自体がつくるものではなくて、国鉄と組合側とが協議の上、まずそういう制度のやり方を考えるといういきさつになつております。政府においてはそれ以上御答弁を申し上げる材料を持たないわけでございます。  それから工事勘定を給与にまわせないかという御質問でございますが、これは人的支出と経費的支出とはまつたく別個のものでございまして、それを自己資金でまかなうかどうかということについては、それはその当時の経理状態、あるいは企業経営上の健全度の建前から、いろいろ御議論はあり得ると思うのであります。ただしかし本年の予算はそういう形でもつて国会の御承認を願つておつたわけでございます。しかも大体におきまして、今度の工事勘定の内容については、ほとんど実体資本の維持に使われる。いわば減価償却的性質の工事に対するものに自己資金を充当いたしまして、新らしいコンストラクションにつきましては、これも前国会で御承認を得ました見返り資金よりの交付金によつてまかなうという予定に相なつている次第でございます。従つて、これを経費の方に流用いたすということは、国鉄の現在の予算上不可能と一応相なるものかと考えております。
  105. 赤松勇

    赤松委員 損益勘定のことはあなたに聞いてもしかたがないので、これは運輸大臣が御出席になりました際にお尋ねいたします。ただ私は国鉄の労組の方にお尋ねしたいのですが、ただいま政府委員から御答弁がございましたが、このシステムをつくるために組合側と団体交渉、協議をされた事実があるかどうかということが第一点。第二点といたしましては、この裁定書の中に、收入の増加が主として運賃の改正によるものと言い得るとしても、仕事量の増加もまた事実であつて、特に二十四年度において十万人に及ぶ整理の結果、ますます職員一人当りの仕事量を増加せしめている点は見逃しがたい、こういうことを裁定書は言つているのでございます。私最近聞くところによれば、朝鮮事変影響を受けまして、輸送面が非常に増強されまして、一段と労働強化がひどくなつているということを聞いているのでございます。定員に縛られて、このようなさらに一段と——この仲裁委員会の裁定書が出た時分はまだ朝鮮事変はなかつた。その当時でさえも十万人の整理によつて、二十四年度は十万人の整理によつて、職員一人当りの仕事量が非常に増加して、労働強化になつていることは見逃しがたいと言つている。いわんや最近朝鮮事変影響もございまして、仕事の量はますますふえつつあると思うのでございますが、それに対しまして国鉄公社がどのような待遇をしているか。どのように労働条件を改善して、それに報いているか。この二点につきまして御質問をしたいと思うのでございます。
  106. 齋藤鐵郎

    齋藤参考人 第一点のことしの予算を組むにあたつて、その内容の編成について、組合に相談があつたかという点でございますが、私その点については何も相談がなかつたというように聞いております。それから仕事量の増加の問題でありますが、私今数字をもつて申し上げることができませんが、昨年度よりも本年度の仕事量は、予算その他の面から増加するということが出ております。  なお最近の朝鮮事変関係するものと推察するのでありますが、ある関係の方面の列車等について見ますと、約三倍に増加しておるということは申し上げることができると思います。特にこの点について、国会の皆さんにも御認識いただきたいのでありますが、仕用量が増加するのみではなく、ある一部の者は、生命の危險にされされておる。ある列車が通りますと、どういう間違いかわかりませんが、ときどきピストル等が発射される。そのときに線路の見まわりあるいは鉄橋の警戒という仕事に徹夜して当つている者が、そうした危險にさらされるということで、組合のわれわれとしても事重大でありますので、何とかしなければいかぬ。当局としてももちろん考えてはおると思いますが、いまだ具体的な指示あるいはこれに対する交渉には入つておりません。  ところでこれらの仕事量が増加した、あるいは生命の危險にもさらされるというようなことに対して、何か待遇上かわつたことがあるかというようなお尋ねでございましたが、御承知のように現在の待遇面については、昨年度の延長でございまして、現在のところこの面に改善があつたということを申し上げる具体的事例がないのであります。以上御答弁申し上げます。
  107. 赤松勇

    赤松委員 国有鉄道公社の方では、ただいま労組側から御答弁がございましたが、昨年、昭和二十四年度ですらも十万人の首切りが出て、一人当りの仕事量がふえている。まして最近におきましては、朝鮮事変のために、ますます仕事量がふえるばかりでなくて、生命の危險にさらされ、中にはピストルが発射されて、その生命を保障しがたいという重大な事実もあるのであります。実は私国鉄の下部の諸君にもいろいろ会いまして、よく聞くのでありますが、実際に最近列車事故が非常に多い。それから仕事の量も今お話があつたように三倍になつておる。これに対しまして、何らの積極的な待遇対策というものが立てられていないということになりまするならば、これはきわめて重大な問題だ。今われわれがここで審議しておりますものは、これは一般的な、たとえば物価、民間賃金あるいはその他と比較いたしまして、国鉄の従業員の給与が著しく低い。低いからこれを一般的なものにまで、何とか引上げる一つの準備過程として、この仲裁委員会が示したような条件をひとつ満たしてもらいたいということが論議になつておる。ところが最近におきまして、この裁定をいたすどころか、実際は今実質賃金、どんどん労働強化によつて切下げられつつあるという状態なのであります。これに対しまして一体どのような対策を立つておられるのでありましようか。
  108. 小林重國

    ○小林説明員 今お話のございました朝鮮の問題に関連しました点でございますが、これにつきまして最初に問題になりましたのが、アメリカ軍による、別道の元関釜航路に就航しておりました船の傭船がございました。その傭船につきましては、大体民間における傭船と同じような手当をいたすことになつております。それから国内の輸送につきましては、部分的には当初のうち、相当輸送も繁忙でございましたが、最近は常態と申しますか、ある程度一定の形態をとつて参りましたので、そうひどい強化にはならないのではないかと思つております。もつとも組合側からこの点につきまして交渉がございますれば、われわれといたしましても、その点について十分協議をいたしたいと存じております。
  109. 赤松勇

    赤松委員 ただいまの答弁に対して運輸省側、それから国鉄労組側の御見解を伺いたいと思います。
  110. 足羽則之

    ○足羽政府委員 運輸省といたしましては、事給与の実施に関することでございますので、国鉄当局と組合側との協議によつて参りたい、かように考えております。  それから朝鮮事変関連いたします輸送量の増加でございますが、これはただいま正確な数字を申し上げるものを持つていないので、はなはだ遺憾でございますが、六月末におきましては一時輸送のふえましたことはございましたが、昨今におきましてはほとんど平常輸送と大差ない状態であることを、数字をもつてお答えできると思います。
  111. 齋藤鐵郎

    齋藤参考人 仕事量の問題でありすが、これはいろいろな関係がありますので、数字をもつて申し上げることは私差控えたいと思うのでありますが、その方面の関係の仕事は約三倍になつた。きのうきようどうであるかという確認をされますと、私は答えかねますが、とにかくその方面の仕事は約三倍になつたということは、申し上げられると思うのであります。この点について、ただいまの赤松委員の国鉄公社に対する確認によりまして、国鉄当局はこうした問題について相談に応ずる用意があるということでございますので、われわれ組合はさつそくこのことについては何らかの措置をしてもらう、給与的な措置をしてもらうということについて交渉に移りたい、そう考えます。
  112. 赤松勇

    赤松委員 御承知のようにこの裁定書の中には、人件費については損益勘定だけでも行政整理による九万六千余人の人員減の結果、基本給だけで十九億二千万円が節約になつている。昇給その他を見込んでも、二十五年度にはなお十八億九千万円程度の節約になる。こはれ昇給が行われるかどうか、私はよくわかりませんが、かりに昇給が行われても、その他を見込んでも、二十五年度においては十八億九千万程度が余つて来る。それから退職手当については、四十五億五千万円程度から五億二千万円に減少するから、差引四十億三千万円の余裕となり、その他を含め人件費総額は七十一億円の節約になる。この財源に関しましては運輸省すなわち政府の方では、とかくいろいろ国有鉄道公社を牽制する。あるいは労組側に対しましていろいろ圧迫する。ところが今言つたようにこういう客観的情勢が非常に切迫して参りまして、占領軍の輸送状況がきわめて重大化して参りました。国鉄従業員の生命の危險あるいは労働力の強化、こういうことが現実の問題になつて来て、われわれ労働委員が今御質問しますというと、これは国鉄公社と従業員との間の団体交渉でやるべきであつて、われわれの方は知らない。こういう御答弁はきわめて不親切であるばかりでなくて、これがほんとうの反動政策である。だからもつとそういう面については親切に考えなければならない。  なお私いろいろ質問したいのでございますが、どうも運輸大臣もいない、あるいは公社の責任者でありまする加賀山総裁も来ていないので、ほとんど質問をいたしましても、まるでのれんに腕押しのような状態でございまして、これ以上私質問をする勇気をはなはだ残念ながら持ち合せておりません。従いまして運輸大臣、加賀山総裁、これらに対する私の質問は留保いたしまして、次回の委員会に再度質問をしたいと思います。なお私の質問を補充する意味で、前田委員から質問があると思いますが、私の質問はこの程度で留保をしておきます。
  113. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際委員長から政府当局にお尋ねをいたしておきたいのでありますが、先ほど赤松勇君の御質問のうちで、明確な点についてお答えが不明瞭であつたようであります。先ほど赤松君は、工事費の中から余裕があつたならば、待遇改善にまわすことができるではないかというお尋ねをなさつたのでありますけれども、それについて政府側は明確なお答えがありませんでしたので、これは委員長からあらためてお尋ねいたすのでありますが、もし国鉄当局が待遇改善を考えられた場合に、人件費の余裕以外のところからこれを流用しようとする場合に、運輸省は運輸省だけでこれを許可することができるのかどうかというお答えがなかつた。その点について私の方から念を押しくお尋ねいたしておきたいと思います。
  114. 足羽則之

    ○足羽政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、人件費の余裕以外の点でもつて、給与の改善に国鉄の予算流用いたさなければならない場合は、運輸省なり、あるいは大蔵省という、政府部内だけの行為ではできませんので、これは予算の変更という形でもつて国会の御審議を経なければならぬ筋合いのものでございます。
  115. 前田種男

    ○前田(種)委員 私も質問を留保いたします。
  116. 赤松勇

    赤松委員 はなはだ残念でございますが、本日の委員会はこの程度にいたしまして、できれば会期も切迫しておりますから、明日開いていただきたい。なお加賀山総裁、運輸大臣はぜひとも御出席願いたいということを希望しておきます。
  117. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日はこの程度に止めます。  なお次会の労働委員会開会の際は、参考人各位の御出席を再びお願いして、審査を進めたいと存じますから、本日御出席の参考人各位は、御足労ながら次会にも御出席をお願いいたしたいのであります。右御了承をお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時十五分散会