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1950-07-17 第8回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十七日(月曜日)  議事日程 第四号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ――――――――――――― ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑(前回の続)     午後一時九分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。井上良二君。     〔井上良二登壇
  4. 井上良二

    井上良二君 私は、日本社会党を代表しまして、朝鮮事変をめぐる東亜の緊迫せる情勢下に、農村の恐慌のあらしの中に立つ農民の切実な要望と――全国民の不安を一掃するため、吉田内閣総理大臣施政方針演説に対し、朝鮮事変見通しと、特に農政並びに食糧政策について、以下数点質問せんとするものであります。(拍手)  まず質問の第一点は、今回の朝鮮事変見通しと、国際情勢の変化に伴うわが国食糧政策についてであります。去る六月二十五日、朝鮮に動乱が勃発いたしますや、韓国との貿易は杜絶し、韓国米の輸入は中止され、株式と米のやみ相場ははね上り、北九州から神戸にわたつて室員警報の発令があり、海岸線の警戒は強化され、警察官の大増員による国警予備隊の設置、日本共産党に対する警戒等々から、わが国自体がすでに朝鮮事変の危險にさらされているのであります。この情勢を感受したすべての国民、わけても五年前、あの太平洋戰争の空襲を身をもつて経験しておりますところの、都市に居住している国民は、朝鮮事変は一体どうなるであろうか、再び日本が戰場化されるのではないかという、深刻な不安を抱いて事変の動向を見守つている実情にあります。またこの事変の動向いかんは、わが国の政治、経済、国民生活に重大な関係を持つて来るのでありますから、政府は、本国会を通し、朝鮮の動乱に対する見通しを明確にされたいのであります。  この朝鮮事変見通しについて、総理大臣は、一昨日、参議院本会議における岡田議員の質問に対し、占領下日本政府としては在外機関を持つていない関係上、何ら資料を持つていないので、動乱がいつ終るかわかちない、軽々に見通しを述べることは不謹慎であると答弁をしているのでありますが、日本の最高の政治責任者たる総理の答弁としては、まことに不謹愼きわまる答弁でございます。(拍手)日本の庭先にひとしい隣国の動乱に対し、すべての国民が不安を抱いているとき、日本の総理大臣が動乱の動向がわからない見通しは言わない。どうしてそういうことで国民の不安を一掃することができるでありましようか。総理大臣がそんな考えで、一体国民はどうすればよいのか。白たびをはいて大磯や箱根の山荘に涼を求めているひまがありますならば、政府は進んで国民の不安を一掃するとともに、国民の向うべき政治的、経済的対策を立てる責任と義務が政府にはあるのであります。(拍手)私は率直に、重ねて朝鮮動乱見通しについて、特にこの動乱が日本の産業と経済に影響はないのか、また日本が戰場化される危險はあるのかないのか、このことについて総理として明確な見解をこの際明らかにしてもらいたいと思うのであります。(拍手)  次に伺いたい点は、たとい朝鮮事件が早期に解決されたとしても、政府は絶対量の不足する食糧を今後国内の自給態勢を確立して確保せんとするか、それとも輸入食糧に依存せんとするかについて質問したいのであります。  私どもは、朝鮮動乱が一日も早く解決されて、平和な民主国家として立ち上ることを切望いたしますが、事変が万一長期化した場合、政府は武装のない日本国民の安全をいかに保障せんとするか、またその場合、日本の経済財政をいかに策定せんとするか、この際明らかにされたい。  また年間二百万トン、約三箇月分の不足食糧を海外から輸入することは相当な困難が予想されますが、その場合、政府は国内の食糧の確保についていかなる対策を持つているか。また国際情勢がきわめて緊迫せる今日、絶対糧の不足せる主要食糧の配給を民間業者にまかせ、油糧の統制を廃止しても、一般消費国民には絶対迷惑をかけない自信があるか、この点農林大臣にお伺いをしたい。  昨年二月吉田内閣が組閣されまして以来今日までの政府の食糧政策を検討してみると、農業の近代化農業経済安定の上に食糧自給態勢を確立せずに、昨二十四米穀年度末においては、年間不足量たる一千四百万石をはるかに上まわりますところの千六百万石の繰越食糧を政府みずから保有しながら、本年度予算において四百五十一億の補給金を計上いたしまして、三百七十万トンの外国食糧を輸入せんとしているのであります。また最近政府が朝鮮動乱に伴つて発表した七月から十月に至る需給推算においても、需要二千百万石に対し、供給は実に四千十万石に上り、差引き明二十六米穀年度への繰越高は実に千九百十三万石に達し、そのうち輸入食糧は一千四百万石を上まわる見込みであります。かくのごとき大量の輸入食糧とストツクは、国内農家経済に重大なる影響を與え、他方配給辞退は月五万トンを越え、営業倉庫での長期の滞貨により、金利、倉敷料は巨額に上り、食管特別会計の赤字は増大し、国内の財政負担消費者負担を激増している現状でございます。しかも国際農産物価格は現に暴落しつつあるとき、貿易の自主性なき現状のもとに民間貿易商社の買付を自由に許している結果、安く買える條件にありながら、国内産価格よりもはるかに高い価格で買わされ、貿易勘定の赤字を日々増大している事実を、政府は一体何と見られるかであります。(拍手)一方輸入食糧に対し、われわれが真劍に考えねばならぬことは、アメリカ終戰以来今日まで日本の国民経済の安定と復興のために続けて来ましたところの対日援助による輸入食糧も、いよいよ一九五二年限りで打切られることが伝えられておるとき、現在わが国産業の現状と国民経済の力をもつて、一体この不足する食糧を、民間貿易貿易收入で輸入ができるかどうかという問題でございます。政府は、アメリカよりの援助輸入が打切られた場合、商業資金をもつてアメリカまたはカナダ、アジアの米を不安なく継続輸入する自信があるかどうかということであります。同時に政府は、アメリカを中心とするドル地域に、日本から一体何を輸出して貿易の帳じりを黒字にせんとするか。従来アメリカへ輸出いたしておりました生糸は今一体どんな状態にあるかは、政府みずからが御存じの通りであります。またアジア地域への輸出も、従来の雑貨軽工業の製品から漸次重工業の機械製品に移行しつつある今日、日本の重工業生産力国民経済全体の水準を急速に高めることができるかどうかというわが国産業経済全体の立場から考えるとき、コマーシヤル・フアンドによる食糧の輸入の前途は実に不安定な経済的性格を持つており、漫然と不足食糧を海外より輸入するということは、單に農業経済の問題ではない、国民経済全体の問題としてきわめて危險な食糧政策といわなければならぬのであります。(拍手)そこで政府は、日本の輸出産業が種々なる制約によつて急速に発展し得ない状態にあるとするならば、アメリカの対日援助輸入が続けられるここ数年の間に急速に国内食糧供給力を増大する大規模の農業政策を断行すべきであると考えるが、農林大臣の所見を伺いたい。またドル地域アジア地域への貿易の見通しと、これに対応する輸出産業の振興と貿易政策について通産大臣の説明を求めるものであります。次に私、本年度産の麦の問題、肥料、農業用の電力問題について簡單に質問したい。政府は、本年度産麦がすでに供出期に入つておるのにかかわらず、今日に至るもいまだ供出について減額補正を行わず、生産者価格の決定もされていないのは、一体いかなる理由によるのか。政府の怠慢もはなはだしいのであります。(拍手)政府は本国会を通じて本年度産の大小麦について、その補正減額量と買入れ販売価格を発表していただきたいのであります。また本年度産麦は災害、病虫害等の被害が甚大で、規格検査に合格しない産麦が相当多く、供出完納できない農家のために、政府は二十四年度産米に適用しました特別規格制を設けて買い上げる意思があるかどうかということを伺いたいのであります。さらに政府は、来る八月を期して肥料の配給統制を廃止せんとしておる。統制廃止後は当然自由競争になることが予想されるが、その場合における肥料価格を明らかにされるとともに、肥料取扱機構はどう改組せんとするか。その運転資金は、いかなる方式をもつて、生産と配給面にどれだけの金額を融通せんとするのか。また肥料生産者が将来横の組織をもつて肥料価格の市価をつり上げ、商業資本による農村搾取と相まつて農家に重圧を加える可能性ありと信ずるが、政府にいかなる対策があるか、これを伺いたいのであります。また農業用電力、特に灌漑、排水用の電力の料金についてでありますが、電力による灌漑、排水の面積は全国で六十万町歩に達し、電力料金は実に七億円の巨額に上つておるのであります。この電力料金が米価には加算されていない今日、政府は水田が旱害、洪水等の天災を受けた場合、灌漑、排水用電力料金全額国家が補償すべきであると考えるがいかん。さらに農業用電力には、年間最低料金使用量の有無にかかわらず徴収し、しかも三箇月分も料金を配電会社に前納せしめているが、かくのごとき不合理きわまる料金制度を即時撤廃する意思があるかどうか。またこの農業電力に対して地方税が課税されることになつているが、大工場の電力の場合と同様免税する意思があるかどうか。さらに灌漑、排水の問題はきわめて重大でございますので、特にこの電力料金について政府の所見を伺いたいのであります。次に私は、農業危機突破農業生産確保に関し、政府の対策について質問したいのであります。さきに私が朝鮮動乱と食糧輸入問題に関する質問で明らかにしたごとく、今日わが国農業生産力の発展がいかに重大な段階にあるかがわかると存じますが、はたしてわが国農業が、この国家的な要請にこたえて農業の生産力を発揮する実力を持つているかどうかということがきわめて今日重大でございます。今日わが国農業は、諸君もすでに御存じのごとく農業恐慌あらしの中にあり、その経営は破壞に瀕しているのであります。何ゆえに農業経営が破壞され、たれがわが国の農村を窮乏のどん底に追い込みつつあるかを明らかにしなければなりません。農村窮乏の原因は、基本的には資本主義経済の発展に適応することのできない原始的な過小農制のままに日本農業の経営が放任されているところに問題がある。この原始的な過小農といえども、進んで独立生産者としてその生産物を商品化し、近代市場経済的競争の中に巻き込むと同時に、これら過小農を中心とする農村を資本主義産業の復興と発展の犠牲に供せんとする政治が行われて来たところに農村窮乏の原因があるのであります。特に昨年から今年にかけて、吉田自申党内閣は、日本経済再建のために国民のすべてが平等な負担と犠牲を拂うべきドツジ・ラインに基く経済政策を、働く勤労大衆、わけても農民の一方的な犠牲の上に強行し来つた結果、農産物価格は急激に下落し、農業以外の收入また激減しつつあるとき、政府はわずか十指に余る肥料資本に対して莫大な助成を行つて来たにかかわらず、価格調整費の削減を余儀なくされるや、ことごとくこれを消費者たる農民に転嫁して五百万農家の苦痛を顧みず、他方農業電力については、その使用の有無にかかわらず年間最低料金を収奪する等、実に非農民的政策を平然として行つて来ておるのであります。また農業に対する国家資金の投下は年々削減され、特に農業関係公共事業費のごときは、昭和二十一年から二十二年には、公共事業費の総額の三八%から三五%を占めておりましたものが、本年の政府予算による公共事業費の総額の九百七十億のうち、農林関係は、わずかにその一六%の百五十七億しか計上されてないのであります。また昨年度までに発生せる農業災害で復旧のいまだできないものは、事業費において二百九十億に達し、国家の補助額だけでも百七十億が予算化されていないのであります。また農林金融面においては、今日農業関係長期資金の需要は組合関係だけで百五十五億に達し、そのうち年七分五厘という高利にもかかわらず、融資を必要とするものが九十六億に達しておるのに、わずか見返り資金から六億五千万円の融通しか確定せず、あと農林中金から十五億の融資がようやく予定されておるだけであります。しかるに、現に農民が預けた農林漁業者の預貯金は、昨年の六月において千五百十二億と推定されておるにかかわらず、農業に対する貸付はわずかに二十八億円で、総額のわずか〇・五%にすぎないのであります。  かくのごとき国家資金の支出の削減と金融の引締めは、耕地を消耗老朽化し、年々増加しますところの災害の復旧は進まず、農地改革と開拓は停頓し、農業協同組合組合経営難に陷つておるのであります。一方国税たる農業所得税の軽減は地方税たる固定費産税及び住民税に肩がわりせられんとしており、かくて農家は復員、引揚げ、失業等による多数の扶養家族をかかえて窮乏の一途をたどり、やむなく、かわいい娘を人肉のちまたに売り、祖先から相続した田畑を放棄し、あるいは生活苦によつて自殺をしなければならぬという悲惨な事実が日々に増大しておるのであります。(拍手)政府は、この深刻な農村窮乏を一体何と見られるか。農村を犠牲として顧みないところの資本主義的な自由放任政策をあえて行い来つたところの政府の見解を承りたい。今日農業が直面しておる経済的な危機は、農家自身の経営の不手際、これによつて起つたものではない。農業に対する政府の政治的貧困と、ドツジラインの一方的犠牲に基因する以上、米麦の価格のわずかの引上げや、申訳的な減税や補助金、金融によつてもはや解決される段階ではないのであります。(拍手)政府は農業に対してすみやかに社会保障的な考慮を拂うとともに、農業経営の内部に対して生産力の発展の基礎條件を確立する責任があると考えるのであります。(拍手)すでにアメリカのごとく農業を近代化し、大規模経営を行つておる国においてさえ、政府は小麦価格の急激な下落に対し国費十億ドルを支出いたしまして、その価格を維持して農業を保護し、農民経済を守らんとしておるではないか。しかるに、零細な経営の亀とに資力乏しく、辛うじて日々生産を続けて来た日本の農かに対し、政府及び自由党の政策は、まことに貧困、冷酷な放任政策といわなければなりません。  私ども日本社会党は、昨年来、同僚議員とともに、農業危機突破に必要なる要請をしばしば政府に行うとともに、特に第七国会においては、院議として農業生産確保に関する決議案を満場一致で可決したのにかかわらず、政府は本決議に対して何ら積極的な対策を講ぜず、本院の院議を無視し、国会の権威を冒涜するがごとき態度を明らかにしておるのであります。(拍手)国家の最高機関で満場一致可決された決議を無視するがごときは、民主国家の行政府として断じて許されません。政府は本院の決議を今日までいかに具体化し実行に移したかを、私は本国会を通して明らかにする責任があると考えるが、この決議に対し特に総理大臣及び農林大臣の所見を伺いたいのであります。  次に伺つておきたいことは、計画経済の最もきらいな自由党内閣の與党が、本年の四月、食糧自給態勢の確立及び農業経営の改善安定政策要綱なるものを発表し、その要綱によれば、十箇年計画をもつて国家資金七千七百八十億を投じ、百八十八万町歩の既耕地水田土地改良と、六十万町歩の畑灌水と、さらに七十万町歩の開墾干拓を行うという、まことに厖大な食糧自給対策でありますが、この計画を明年度から実行せんために、明年度予算に対し、その予算化を政府に要求せんとしておるが、政府はこの計画を真劍に具体化し予算化する用意ありや、大蔵大臣農林大臣の所見を伺いたい。政府與党の計画が万一具体化されず、その予算化がされない場合は、それは單に自由党の與党たる面目問題ではないのであります。全国四千万の農民に対し公党としての裏切り行為であるとともに、特に農村恐慌がやかましいとき、この問題に対しては、自由党総裁であります総理大臣の答弁を要求したいのであります。われわれがこの際政府に要求することは、單なるペーパー・プランや作文ではない。抽象的な公約発表ではありません。また米麦価格のわずかな引上げや、申訳的な補助金や金融でありません。農業危機突破のための具体的な政策を急速かつ断固として実施することにあるのであります。(拍手)すなわち、農業近代化基礎條件を確立するために、まず五箇年または十箇年の長期計画をもつて、年額五百億以上の国費と、これと同額の低利資金を別途に活用して、原始的な過小農制を打破し、大規模な土地改良耕地整理交換分合災害復旧等開墾干拓事業を断行するとともに、従来の米麦偏重自給主義から蛋白、脂肪を含む総合的な栄養食糧に改善するため、適地適作農家経済の安定を目標として、育種育苗施設の改良、科学技術指導普及網の確立、渓流、河川等の利用による農業用電力の拡充、農業機械化有畜化の促進、酪農奨励生産品販路確立、大豆、菜種の増産による油脂資源の確保、農産物倉庫加工工場の増設、かくのごとき基礎的な重要問題を確立するとともに、農業災害補償制度を確立して、保險金の増額、共済目的共済事故の範囲の拡大をなすとともに、保險掛金を引下げ、農民に対する社会保障制度の確立をはかり、さらに当面の危機を突破するに必要な金融措置、なかんずく農業協同組合の経理の徹底的整理を行い、貯拂い資金、滞貨処分資産譲渡資金等に必要なる金融の道を講じ、農業手形制度を拡充し、畜産、養蚕、林産に適用してその利子を引下げなければなりません。特に長期の金融については、見返り資金預金部資金の農業への導入と、その利子補給の道を講ずべきであります。これらに……。
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 井上君――井上君、申合せの時間が参りましたから、簡單に結論をやつてください。
  6. 井上良二

    井上良二君(続) これらに必要な措置を講じなければなりません。  政府が真に農村の窮状を憂え、迫り来る国際情勢緊迫下において、わが国農業食糧生産重大性考えますならば、すみやかに本臨時国会延長措置をとり、ただちに、ただいま申し上げました農業政策に必要な補正予算どその法制措置を講ずべきでありますが、これに対して、廣川農林大臣及び大蔵大臣はいかにお考えでございますか。廣川農林大臣は、一昨日川崎君の質問に対して、本国会において農林関係補正予算は出さぬと申しておるのでありますが、大臣就任早々でござやますから、農政問題に関しての検討が十分にできないといたしましても、これは吉田内閣全体の問題でございますから、吉田内閣が、真にわが国農業が立つておりますこの国際情勢緊迫化実情を達観されて、農村窮乏現状考えますならば、すみやかに農政全般に対する基本的対策を立てられて、いわゆる追加予算、すなわち補正予算国会に提出するか、さもなくば、この国会に引続いて農村窮乏突破のための臨時国会政府は開く意思があるかないかということをお伺いいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  朝鮮事変見通しについて重ねて御質問でありますが、これは一昨日も申した通り、不完全なる資料をもつて隣国南北紛争の予言をいたすということは、当局者としては差控えたいと考えます。但し、日本に及ぼす影響については、政府としてはこれに善処する用意のあることをここに言明いたします。  その他の御質問に対しては主管大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  8. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 井上さんの該博な農政知識を拝聽いたしまして、非常に参考になつております。朝鮮問題に関して、食糧確保のことについてどういうことをしておるかということでありますが、現在政府の手持は、あなたは十分数字的に御存じだろうと思いますが、四箇月分あるのでございまして、十分これに間に合うと私は思つております。なお、いも、あるいは麦、米等が順次入つて参りますので、あなたの御心配のようなことはないと私は確信いたしております。  それから食糧自給態勢確立についてのお尋ねでありますが、これもあなたのおつしやる通り、農林省といたしましても、政府といたしましても、十分やらなければならぬことでございます。アメリカの対日援助資金は本年七月から始まりまして、一九五一アメリカ会計年度においては、その前に比して減額されることは、あなたの御存じ通りでございます。それでわれわれといたしましては、貿易の伸張は極力これをはかわりまして、この方面によつて補うと同時に、国内自給度を高度に高めたいと存じておる次第であります。  なお農業危機突破についてのことでございますが、この農業危機突破のことについては、お話通りいろいろあるのでありますが、さしずめ肥料の問題についても非常に心配だろうと思うのでありまして、肥料統制をはずしたあとについてのことを、あなたが知つておる通りのことを少しお話申し上げたいと思います。肥料統制撤廃後の経過は、完全に自由になるが、その形態としては、生産者から全購連を通じて農業系統機関に流れるものと、生産者から卸小売商、農協を通ずるものと、生産者が直接販売網を設けて地方卸小売に売つて行く場合の三通り考えられるのであります。この場合の金融については市中金融に依存しなければならぬのでありますが、とりあえず七月末までの肥料生産量は、ほとんど大半肥料公団が買い上げて、原則といたしまして来年の春肥まで預金部資金を流用することにいたしておるのであります。そうして融通資金といたしましては、農業系統機関に対する農林中金資金の活用、生産者の元金に対する倉庫証券による金融、及びこれらに対する日銀の融資あつせん等考えておる次第でございます。  それから次は農業電力についてのお話でありましたが、これは関係省と十分現在打合せ中でありまして、あなたのお説の通りでございます。これを米価価格決定について織り込まないということは、これもあなたの言われる通りであります。これは現在私たち研究をいたしております。  それから次は麦の価格の問題でございますが、麦の価格は、あなたも御承知の通り、ただいま審議会にかけておるのであります。この価格と、それから等級を設けることでありますが、今年の作柄を見ますと、各地方によつて非常に違つております。特に五等と申しましようか、一段下げた格を設けてこれを買入れるような仕組みをもつて現在考えておるような次第でございます。  その他たくさん該博な知識を仰せのようでありますが、これを一括して申しますと、あなたの方の農業専門家である前の農林大臣和田君が、私を岡田君と一諸に呼んでの話でありますが。農業政策というものは奇想天外の策があるものではない。一つ一つのことを着実に実行することであるから、あなたもそういうようなおつもりでやつてもらいたいということを、和田君が私に懇切に教えておるのでありまして、あなたがお述べになられたことをわれわれは着実に実行して行くつもりでありまするから、どうかさよう御承知願います。     〔国務大臣横尾龍登壇
  9. 横尾龍

    国務大臣横尾龍君) お答え申し上げます。輸出貿易振興について、近事将来米国の対日援助が打切られることを前提といたしまして、食糧その他必要物資輸入のため相当量資金が必要となり、これがために相当大きな輸出計画の達成が必要であることは、お説の通りであります。終戰以来わが国輸出貿易は、年々関係方面の御協力のもとに順調に伸びて来まして、昨年度五億一千万ドルが、本年度に至りましては六億五千万ドルないし七億ドルになると思われるのであります。つきましては、対日援助費の減少を予想して、他面輸入の方も、協定貿易等により、市場の転換に鋭意努力中であり、貿易振興のために各国との通商協定を改善し、また非協定国とは、バーター制取引を盛んにし、さらに民間商社の海外渡航、輸出の拡充、政府在外機関の設置、貿易金融の円滑化等の施策を強力に進めることによつて、将来自立経済達成のために必要な輸出貿易の実施は十分可能と思われるのであります。  肥料の問題につきましては、化学肥料生産は大体順調に参つております。将来全然輸入しないでも国内生産をもつつて十分と考えるのであります。今回配給統制がなくなりましても、価格統制を撤廃することによつて価格があまり不当に上るとは思われぬのであります。  その他については農林大臣の説明通りであります。     〔国務大臣池田勇人君登壇
  10. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 本国会には直接農村関係のありまする補正予算は出さない考えであります。その他食糧増産、土地改良米価の問題につきましては、われわれが最も関心を拂つておる重要な問題でございますので、来年度の予算場編成にあたりましては十分注意してやる考えであります。
  11. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 井出一太郎君。     〔井出一太郎君登壇
  12. 井出一太郎

    ○井出一太郎君 私は、国民民主党を代表いたしまして、吉田総理大臣施政方針演説に関連し、総理並びに関係閣僚に対し若干の質疑を開陳せんとするものであります。今や世界の視聽は、わが国と一葦帯水の朝鮮半島に集中せられ、同一民族が相互に殺戮しあう悲劇は、背後にある二つの世界の相剋を象徴するもりとして、その帰趨は第三次大戰の契機をはらむものとしてわれらの最大の関心事でございます。一方また占領五箇年にわたる日本経済を顧みまするときに、その安定と復興とはいまだ遅々として進まず、経済自立の日なお遠きにもかかわらず、今や一大転換の時期に際会しておると申さねばなりません。終戰後最大の危機であり難局であるこのときにあたりまして、わずか十数分にして終つた総理の御演説は、老宰相の気魂と熱情とに期待をいたしました私どもとして、いささか失望を禁じ得なかつたのであります。しかも示された諸施策につきましては、時期と方法とにおいて明確を欠くところ多く、具体性すこぶる乏しきうらみがありまするので、以下私は、これらに関し掘り下げてお尋ねいたしたいと思います。わが党がつとに提唱しておりまする超党派外交につきましては、今やあまねく輿論の支持するところとなつて参りましたが、かかる点につきましては、一昨日、同僚川崎君から申し述べました通りであります。国歩銀難なるときにあたりましては、強い国論の統一が望ましいのはもちろんでありまするが、国政の当面の責任者たる政府自身がまずイニシアチーブをとり、誠心誠意事に当るのでなければ、とうていでき上るものではございません。総理演説の中で、国民及び政党があげて一致協力、既往の行きがかりにとらわれることなく、小異を捨てて大同につくべきことを要請せられました。しかしながら、その答弁においては、苫米地委員長をして社会党を説得して来いというような放言をいたしております。首相は、自己の好みに合わざるものはことごとく曲学阿世であつて、全面講和や永世中立論は危險思想である、かように心得ておられるのでありましよう。これらは驚くべき独善であり妄断であります。反対党といえども、別な角度から憂国の至情に燃えておりますることは、あえて巡庭がないはずであります。私はここに強い不満の意を表し、これに反省を促して質問に入りたいと思うのであります。私は、主として経済問題を中心に、農村対策、文教問題等に及んでお尋ねをいたしたいと思います。  今回の朝鮮動乱の突発と、これが長期膠着状態を予想いたしまするときに日本経済は著しく変貌を来すであろうことは容易に予想せられるところでございます。占領下に欝屈しておりましたところの人心は、一つの刺激を與えられたもののごとく、中には奇貨おくべしとなす一旗組も騒動しておる気配でございます。政府筋の言動も、隣国のこの不幸なる事態が日本経済に好影響を與えるがごとき表現を用いちれ、その不謹愼さを野党によつて指摘せられたほどでございます。われわれは兜町方面で、いわゆる金偏が急反撥をしたというようなことに対してさえも苦苦しく思つておるのでございますが、この際政府自体は、最も冷静にかつ沈着に事に当らねばならぬと思うのであります。かりにもしもこの動乱が早期終結をなされずして、米国側の厖大なる物量が投入せられるというようなことに相なり、対韓援助が巨額に上りまする場合には、日本がその補給基地として好條件を備えていることは考慮し得られることであります。このことは、ドツジ・プランによる安定計画を別な方面からゆすぶることになり、デフレ転じてインフレの誘発と相なるかもしれません。しかして軍需工業が復活せんとする様相は、日本をめぐる国際間のトラブルを一瞬激発いたしまして、わが国は戰争街道へ一歩接近することに相なるでありましよう。首相並びに蔵相は、この新たなる事態にあたつて日本のこの経済段階をどのような見通しと決意で乗り切つて行かれようとするか、この点をまず伺いたいのであります。  首相が述べられました、国連の行動に対する可能な限りの協力という表現はまことに抽象的でございますが、さらにこの内容を問われて、精神的云々という言葉で逃げておられます。私は、そんな生やさしいものではないと考える。朝鮮動乱はまことに不幸なことでありまして、短期終熄を願つてやまないのでありますけれども、戰局の実相はむしろ逆な方向へとおもむきつつあります。  いわゆる特別需要見通しての産業界は、今活発化せんとしておる。一旦冷静に復しました証券界も、ここ両三日、また熱況相場を現出しておる。海運界などは、もちろん直接好影響のもとに入つて来ております。食糧関係におきましても、米のやみ値がはね上つたり、カン詰等が備蓄せられるというようなことも伝えられております。戰争という要因が経済に向つて作用するときには、当然インフレとなつて現われまするが、一方現内閣の安定政策はデフレ傾向の強いものであります。日本経済は、この相反するところの二つの方向をいかに調和するか。  池田さんは、一昨日の答弁におかれまして、ドツジ・ラインはさほどにきゆうくつなものではない、彈力性を持つた考え方をしてほしいと述べられました。君子豹変と申しましようか、強情がまんの大蔵大臣も、速に客観情勢の前に屈服したと申すべきでありましよう。(拍手)私は後ほど詳しく触れるつもりでありまするが、ドツジ・ラインは、朝鮮動乱というこの経済外的要因が生れなくとも、それは本質的に内在する矛盾が今やおおいきれず、当然修正を余儀なくされる段階に入つたと思うのであります。かてて加えて今回の動乱という材料が出ましたために、日本経済は現事態に適合するところの再調整が必要と相なります。少くとも企業の自由放任に対しては何らかの計画性が必要となつて来るのでありましよう。このような点に対する大蔵大臣の御見解を伺いたい。  また一昨日の答弁の中で、大蔵大臣は、財政金融に関して相談相手を設けるというような意向を表明せられましたが、わが川崎君の質問の趣旨はそうではなくして、現下のごときこの財政経済の転換期にあたりましては、政界、官界あるいは金融界、産業界、学識経験者、かようなものを網羅したところの、もつと大きな機関を設置して金融産業施策の調整をはかるべきである、こういう主張であつたはずであります。決して蔵相のプライベートな機関ではなかつたはずである。これに対する御答弁を、もう一度煩わしたいと思うのであります。政府並びに與党は、先般の参議院議員選挙において形勢が一たび不利を伝えられまするや、投票直前に相なりまして、新たなる公約五項目を発表して選挙民に媚態を呈しました。国民は、さきに一たび公約不履行の苦杯をなめさせられておりますので、今や眉に唾をつけて、これらの公約を監視いたしておる。ところが、現にこれらの新公約の中には、野党の意見に完全屈服をいたしたところの地方税の修正もある。あるいは債務償還の停止もある。この上予算の改定などは、鬼も笑うところの来年度分でようやく行おうとしておるのであります。さらにまた国際小麦協定参加のごときは、その後において英国や涙淵側から一蹴せられまして、国際感覚の喪失を暴露いたしたのであります。従つて、これら公約は大分虫が食つておりますけれども、当面の政府施策はこれに基くはずであり、私はこれに対して二、三お尋ねをいたした  公約の第一点には予算の削減がうたわれておりまするが、政府は先ほどの御答弁にも、この国会には予算を提出しないと言うておられる。しかしながら、公務員の給與ベースの改訂は、前国会におけるところの人事院勧告のいきさつにもかんがみまして、すみやかにこれを実施すべきが当然であります。従つて、これは予算補正に響いて参る。あるいはまた最近の警察力増強の問題をとりましても、これに対する予算措置は、当然国会にその費用を計上しなければならない。なるほどこの基本法は、あるいは法的基礎をポツダム政令にゆだねるということもありましようけれども、予算は、国会開会中である以上、当然この議場において審議せられなければならない。こういう違法をあえて現内閣は犯そうとされるのであるか。法務総裁はおられませんが、これに対する大蔵大臣の御答弁を煩わしたいのであります。  すでに債務償還費の一部はこれを流用してもよろしいというようなマ指令が発表せられております以上、現内閣がこの予算において鉄則として守つて参つたところのこのドツジ・ラインの一角は今や崩壞したとわれわれは認識いたし、われわれは地方税の軽減を叫び、これが補填を平衡交付金の増額に求めまして、その財源としては債務償還費を減額してこれに計上せよ、かように提唱いたしまして、今回の地方税の修正を主張いたしつつあるのでございます。この観点からも現行予算は大幅に修正を要求せられるのでありますが、その意図政府にありやいなやを伺いたい。  補正の問題は單に歳出の面ばかりでなくしに、私は歳入の面からも非常な欠陷が出て来ておると思うのであります。たとえば本年の税收入のごとき、はたしてあれだけの額を確保できるかどうかということになりますると、すこぶる心もとないのであります。一例を申しますれば、所得税に次いで国税の大宗である酒税のごときは、昭和十五年に比較しまして、税率は千倍以上に上るものもございます。その高率なるあまり、本年第一・四半期の庫出し状況を見ますと、一前年同期から見ますと非常な激減であります。シヤウプ勧告では八百億を予定したというものを千三十億計上しました。この机の上の苛斂誅求は大衆のボイコツトを食いまして、現在の酒価というものが消費者の購買力の限界外に置かれておるということを意味するのであります。一方において密造や脱税はとうとうとして全国を風磨いたし、法秩序の軽視は目にあまる状態であります。蔵相は近き機会において酒税の値下げを実行するお考えがあるか。現在国税の滞納が一千億にも上つておる状況でありまするが、これら現行税法の欠陷に対しまして、シヤウプ税制全体を再検討する意思がおありであるがどうか、この点をあわせ伺わんとするものであります。  地方税につきましては、本国会におけるところの最大の法案でありまするが、前国会以来の経過にかんがみまして、政府は附加価値税の一年延期と、固定資産税の税率軽減とをもつて国会に臨んでおられます、先程私は、これを野党側の主張に屈服したと申しましたが、誤つてはすなわち改むるにはばかることなかれ、虚心坦懐に政府は輿論に聞いたものと考えます。但し、われわれの主張とは、いまだ相当の距離があるのでありまして、かかる点は漸を追うて審議が展開せられるはずであります。  しかして私がここで伺つておきたいことは、もしも万一前国会同様に本案が不成立に終つた場合には、一体政府はいかなる措置考えておられるか、これをまず岡野国務相にお伺いをしたい。また岡野さんは、附加価値税を廃止した理由につきまして、これは時期的なずれによつて、今日に至つては一月までさかのぼつて徴収することは不可能である、かような純徴税技術的な見地から答弁をせられておりまするが、しかしながら総理演説の中には、明らかに各方面の意見を尊重したと、こう率直に述べられておる。本税延胡の積極的意義を総理は述べられておりまするが、岡野国務相は、一体このような事務官僚的な答弁でよろしいのかどうか。また同時に岡野さんは、一昨日のこの議場において、附加価値税は流通税であるということを言い切つておられる。私どもは、従来の学説からいたしましても、流通税的性格と収益税的性格とを兼ね備えておるというふうに了解をいたしておりますが、この点、専管国務相たるあなたが、ほんとうに流通税であると、こうの入込んでかかつておられるのかどうか。一年延期の理由とともに、この点をお答え願いたいのであります。先ほど私は、新たなる極東の軍事段階に処してドツジ・ラインの修正が余儀なくせらるべきことを申し述べましたが、かかる新事態によらずとも、日本経済は大きな危機に直面いたしておるのであります。過去一年余りにわたつて指導原理となつて参つたところのドツジ安定計画が、今や一応限界点に達しました。各方面から政策転換の要望が生れつつあるのであります。先刻申しましたところのこの五つの公約も、政府側における苦悶の象徴であると考えられるわけであります。なるほど、ドツジ氏によるところの日本経済起死回生のプログラムは、均衡予算、健全金融の線を貫きながら、経済の自動的調整による資本主義的合理化を敢行し、三百六十円レートを設定することによつて国際価格にさや寄せし、国内価格体系を正常化した、こういうことは、まさに当時にあつてはオーソドツクスな行き方であつた。こう考えてよろしいでありましよう。しかし問題は、日本経済の脆弱な基盤に対して單なる貨幣的安定だけを施して、実体的安定を顧みない処方というものは、真の意味の対症療法ではないということを、私はかつてこの議場で強調したことがございます。過去一箇年間において通貨の増発は停止せられ、物価はむしろ低落ぎみになつて参つた。表面上のいわゆる経済誌指標の上に表われた安定の條件というものは、なるほど実現したでありましよう。それゆえに大蔵大臣は、得意満面を通り越して、ますます傲岸さを加えて来られたようであります。しかるに現状は、購売力は低下し、滞貨は激増し、失業は増大いたしまして、あらゆる面に副作用が顯著になつて出て参つております。今まではインフレというカーテンに隠されておつたところの日本経済の本質的な弱体性が赤裸々に露呈をして参つたのであります。日本が、資源や人口の点に内在しておるところの宿命的な悪條件のもとに、この八千万の国民を、ある程度の生活水準と雇用機会とにおいて維持するためには、海外貿易によるのほかはないのであります。しかるに、戰時中のこの貿易の空白は、技術水準をまつたく国際的レベルから立遅れさせてしまつております。生産設備は、戰災をこうむるか、あるいは老朽化してしまつております。さらに海外のマーケツトや保有海運力の問題を考えまするときに、まことに容易ならぬものがあるのであります。総理貿易振興を特に強調せられましたが、三十四年度五億一千万ドルの輸出実績は決して芳ばしいものではございません。かくいたしまして、ドツジ・ラインの目標とする経済の自然的均衡は、このような基盤の上に急速なスピードをもつて実施されまするときに、そのしわを寄せられる部分に対しては猛烈な社会、経済犠牲が生じて来るのは必然であります。朝鮮動乱をしばらく別問題と考えましても、ドツジ・ラインのこれ以上の強行は、わが国経済基盤や産業構造がとうてい耐え得られるものではないとわれわれは考えておるのであります。その目的とするオートマテイツクな経済的均衡が達成せられないうちに、デフレの拡大深化のために、内包しているもろもろの矛盾が激発する危機に遭遇をいたしております。総理大臣は、この期に及んでもなおかつ国民全体が誇るに足る安定計画の成功であると呼号せられております大蔵大臣総理よりも経済については明るいと存じますが、あなたは相かわらずドツジ・ラインを金科玉條と考えておられるかどうか、現在の危機危機として認識せられないか、この点をただしておきたいと思うのであります。(拍手)ドツジ・プランによるところの影響を最も深刻に受けつつあるものは農民である。中小商工業者である。また勤労者でありまするが、それのみにはとどまらずしてたとえば重工業の面などにおきましても、今や非常に悲鳴をあげつつある。銑鉄、鋼材に対する補給金の撤廃によりまして、国産コストは国際価格の二五%高にも及び、せつかく回復しつつあるところの機械工業、造船業等を窮地に追い込んでおります。ソーダ工業などもまたしかりであります。これでは勢い、戰後日本産業構造は再び軽工業を中心とする方向へ逆転をするでありましよう。しかしながら、今日アジアの諸地域は、日本の軽工業製品のマーケツトとして昔の比でばございません。それぞれの地域に紡績、雑貨工業等が勃興しておるのでありまして、日本産業を重化学工業中心に再編成すべきことが経済発展の当然の方向でございます。これをはばむものがドツジ・ラインであるという結果に相なるのであります。横尾通産相はその方面のエキスパートと聞き及んでおりますが、日本産業構造について、いかように考えておられるか。かつまた、あなたが直接タツチされるところの重工業振興策にどのような経綸をお持ちになつているか、お伺いをいたしたい。もう一つ、ついでに私は海運問題について伺いたいのでありますが、多分これも通産大臣の管轄であると思います。わが国の海運は、現在内航においては多数の低能率船が市場を圧迫している。激烈なる集荷競争の結果、運賃は不当に低落をいたしておりまして、一つ方外航におきましては、新造船の竣工、戰時標準型の改造等によりまして、漸次船体が整備せられつつありますが、配船上の諾制約によつて、いまだ十分なる活動に至つておりませんそこで、この海運業は申すまでもなく国際的な企業であり、各国ともに、これに対しては相当の補助政策を行つております。政府は現在、この海運業の危機に対しまして低能率船を整理するということをお考えなつておるか、あるいは新造船に対してどのような助成のお考え方を持つておられるか。今朝鮮問題等によつて、この注目を集めて参りましたところの海運界の現状にかんがみまして、この急務に対する具体策をお示し願いたいと思うのであります。中小企業の問題につきましては、現内閣は黒星続きである。さきに蜷川長官罷免問題が起り、また池田通産相放言問題も、いまだ世人の記憶に新たなるところでございます。こうした事柄は、この内閣の性格にひそんでおるところの本質がしからしめておるのであつて、(拍手政治が民衆の感情から遊離したところで、からまわりしておるからであります。今日、中小企業の賃金未拂いは、労働省基準監督署の調査を見ましても、四月末におきまして一十八億円余に上つておる。ドツジ・ラインを貫く健全金融の立場というものは、資金の安全確実を本位とするときに、どうしても大企業中心に相なる。政府は従来とも中小企業に対しつて金融措置などをその都度約束して参りましたし、今回の政府の公約の中にも、これを大きくうたつております。しからば私は、この公約を具体的にどのような構想をもつて施そうとしておられるか、これを横尾通産相に伺つておきたい。ドツジ・ラインの重圧が最も強く加わつたのは農村である。戰前五百五十方農家に対して六百万町歩耕地がありましたものが、現在では六百二十五戸戸の農家に対して五百万町歩しか耕地がありません。従来、耕地面積は平均一町一反あつたのでありますが、今日はわずかに七反九畝である。そうして国内人口の過半を占めておりながらも、農民所得というものは、国民所得全体の約二五%にしか及ばない。この貧困日本農業に対して、経済の合理性を追求するドツジ・プランというものが、いかにむりであるかということは、言をまたないのでございます。かかる日本農業の本質からいたしまして、農政は純粋な経済政策の範疇に入るべきものではなくして、多分に社会政策的意義を持たなければならぬと思うのでございます。国際的水準からかけ離れたところの低価格を農産物にしいながら、しかも供出制度をもつてつておるのが現状であります。今日の農家経済余剰の出ているようなものはきわめて少く、農業恐慌は今や現実の声となつております。この際に、このときに、政治力をもつて天下に鳴るところの廣川新農林大臣が、どのような構想を抱いて農村の善男善女を済度されますか、けだし興味、刮目に値するところであります。(拍手)以上私は、ドツジ・ラインを中心に若干の批判を展開いたしたのでありますが、要するに自然的均衡を計画的均衡へ切りかえるべき時期が来たと信ずるのであります。経済安定本部が最近発表せられました経済白書が、自画自讃の感もございまするが、その冒頭におきまして「インフレの収束と国家保護の後退によつてあらわとなつ経済回復の現実の姿を直視すれば、窮極の目標たる経済自立への途は決して平易なものではない。」、こううたつております。賢明なる安本官僚諸子は、エチケツトを心得て表現をしておりまするが、周東安本長官もまたこのことを是認せられますかどうか。さきに安定本部がその知能を傾けて作業をいたした五箇年計画のごときは、今いずこに姿をくらましたでありましよう。聞くところによれば、経済復興審議会が再開される由でありまするが、これはいかなる構想と使命を持たるるものでありましよう。私どもは、資本主義の体制下においても資本主義に計画性を付與することの可能なることは、米国のニユー・デイール以来歴史的事実と相なつておると存じまするし、ソ連のヴアルが教授さえもこれを認めておる。單なる私企業的な観点からぺーイング・ベーシスを貫ごうとするのではなくして、基礎的な経済計画を樹立し、その上に資金の導入や設備の改善の計画化が行われまするとき、日本経済の合理的にして効率的なる再建があると考えるのであります。この点、周東さんはいかようにお考えになり、またドツジ・ラインの政策転換の時期とおぼしめされるかどうか、この点を伺いたいのであります。総理演説の中におきまして、農業関係に対して一言も言及しておられませんでした。これはおそらく全農村の失望と憤激とりを呼んでおると思いますが、総理をしてあのような演説をせしめたところに私は農林大臣の怠慢があると考えておる。(拍手)そこで私は、農村関係問題につきましていろいろ伺いたいのでありまするが、すでに社会党のエキスパート井上さんが、今るる農業関係問題に触れられました。そこで、きわめて簡單に一、二点お伺いをいたしまするが、まず第一に価格の問題、農産物の価格政策でございます。何といたしましても、この四千二百五十円という低米価を修正することが出発点でございます。給與ベースの引上げを一方でやるということは、他方において農村にバランスを合せるために米麦の値段に考慮をめぐらさなければ、これは不均衡である。早場米の奨励金や、追加供出に対する特別価格を撤廃せんとするような方向に対して、われわれは承認するわけには参らない。食糧価格のみが国際価格に比べてはるかに下まわつておることは、農民の大きな不満であります。現行パリテイ方式は、農民に対しては著しいデイスハリテイになつておる、農相は、米価引上げ、またパリテイ計算方式を改める意図をお持ちになるかどうか、これを伺いたい。第二点といたしましては、農林業に対する国家資金の放出について伺いたい。現在こそ三百六十円の為替レートが防波堤の役をなして、国際農業の重圧が、直接的ではありませんけれども、近き将来、必ず日本農業には、農産物の流入によつて圧迫が加わるでありましよう。現在の低劣な労働生産性を向上するためには、日本農業の装備を強化して、そうして抵抗力を養わなければならない。これはもはや農家個個人の私経済の範囲の外の問題でございます。すなわち、土地改良災害復旧や干拓や潅漑排水等が大規模国家事業として推進せられなければならないのでございます。さらにまた、戰時中あるいは戰後を通じて濫伐、過伐のために、山林資源等は極度に枯渇をいたしておる。近年の水害のごときも、その多くの原因を林野の荒廃に求めなければなりません。この自然的災害の脅威から国土を守るということは、政治の最もプリミテイヴな段階であるのでありまするが、これさえもできておらない。治山治水に対して国家資金がもつと大規模に投入せられることが必要であります。こういう点に関しまして、廣川農林大臣のお考えを伺いたいのであります。第三点として、私は農業金融について申し上げたい。かつてわれわれは農林漁業復興金融といつたような特別措置を施したことがございまするが、元来農業金融長期低利を本則とするものであつて、ドツジ・ラインに基く健全金融の線からは最もきらわれる性格のものであります。見返り資金のごときは、ほとんど農村方面には入つておらない。ことに農地改革の結果、生産手段の主体である農地の担保力が完全に喪失してしまつております。政府は不動産抵当信用というようなものをどのように考慮しておられますか。さらに農村に特別な復興融資考えるつもりはないか。これを第三点として伺いたい。肥料問題につきましては、井上君がるる蘊蓄を傾けられましたので、これを省略いたします。そして私は、その次の問題として農業協同組合の強化という点を特に政府に対して要請いたしたい。今農村は、国際農業の圧迫を外において受けようとしており、内においては販売品安、購買品高のシエーレ現象を通じて起りつつある農村恐慌に際会いたしまして、日本農業を守りまするためには、農民の民主的経済組織であるところの農業協同組合の強化発展をはかる以外にはないと思います。過去の農業会から、新しい理念によるところの農業協同組合に切りかえられましたものの、現在過渡的な困難に悩まされていまだ本格的な立上りをしておりません。それどころではなく、ドツジ・ラインの影響は至るところに農協の破局的危機を現出いたしております。これに対して筋金を入れまするためには、やはり財政金融的援助を講ずるのほかないのであります。特に生産指導面等につきましては強力な助成政策があつてしかるべきであると考えます。この点に対する農相の見解を伺いたい。最後に私は、総理が特に力をこめて述べられましたところの愛国心、独立心に関連をして、国民精神の問題ないしは文教問題に及んで総理並びに文相にお尋ねをいたしたい。あえて本問題を最後にまわしましたゆえんは、事柄がきわめて重大だからであります。首相が愛国心を振い起すようにと希望される御心情には、私もまつたく同感であります。しかしながら、国民に対しては、首相の御期待通りはたして響いて参るかどうか。この点を私はおそれる。今日、世はまさにとうとうとして道義頽廃、敗戰とともに一切の権威は否定せられ、あらゆる価値の基準は転倒してしまいました。世の道学先生をして末世澆季であると嘆かしめるに十分であります。今日の青年の心理のごときは、私ども比較的世代が近いのでありまするけれども、とうてい了解に苦しむ。かの三鷹事件の竹内景助のごとき、金閣寺放火の青年僧侶のごとき、これらは精神の分裂症という以外には了解に苦しむのであります。アフレ・ゲールとアヴアン・ゲールの相違であろうなどと簡單に片づけるわけに参りません。私は、今日の青年の代表である大学生を例にとつて、しばらく申し上げてみたい。この人々の大半が今日反米的な考え方であるということは、容易に推測せられるところであります。天野先生が「今日に生きる倫理」を強調せられようとも、今日の青年はなかなか食いついて参りません。しかしながら、戰争中の青年学徒は、天野さん、あなたのお書きになつた「道理への意志」一巻を背嚢の中に納めながら、わだつみの奥深く沈んで行つた幾人かの若者がおりました。この相違を究明することが文教政策の根本であらねばならないと私は信じます。今日の学生の多くはアルバイトをしております。父兄の経済も楽ではありません。卒業はすなわち失業を意味するのであります。希望も理想も夢もない学園の生活こそ、思うに全学連の組織の温床たるに好個の條件を備えております。レジスタンスの精神は、若者特有の正義観から出発しております。これをくみとつて愛国心にまで昇華せしめなければならないというのが要諦であると私は信ずる。六・三制は、制度としては、なるほどりつぱなものであいましよう。しかしながら、その内容はきわめて不整備であります。学生の欲求は、校舎において輪突の美を欲するよりも、むしろ魂のアルト・ハイデルベルヒを求めてやまぬのであります。大学の先生の何人がよく今日学生にアツピールし、真理探求の情熱を堅持し、学生の尊敬を受くるに値する人でありましよう。  かく考えるときに、根本はやはり政治貧困がその責任を負わなければなりません。ちまたに歩む浮浪兒の姿に、また倫落一歩手前の女性に、はたまた一家心中の記事に、政治がどれだけ直接手を差伸べておるでございましよう。政治は冷厳なリアリズムであり、ときにはマキアベリズムである必要もありましようけれども、底を流れるものは愛情でなければなりません。はだ温かいヒユーマニズムでなければなりません。(拍手)願わくは首相は、道学先生のような立場を捨てられ、国民精神作興を命令する東條方式ではなくして民衆とともに憂い、ともに楽しまれる態度でもつて臨まれたいのであります。(拍手)  天野文部大臣に申し上げますが、今日、日本の代表的知性であるあなたが入閣いたしましたことに寄せられた各界の期待はすこぶる大きかつたのであります。歴代文相は、いわゆる件食大臣として予算獲得においてその政治力の底を見すかされるのが落ちでありました。あなたがあえて政界に入られ、泥まみれを覚悟せられました以上、私の申し上げたこの国民的情熱の炎をいかにしてかき立てるか、それが文教の根本問題でありまするので、あえて御抱負を伺いたいのであります。(拍手)  ついででありますから文相にお伺いいたしたいと思いますが、新制大学の制度の中で、シニア・コースとジユニア・コースをわけた旧制高等学校の構想を大臣はお持ちになつておられる由に伺いましたが、具体的な方針をお示し願いたい。さらにまた現在行われておりまする教員免許法による認定講習のごとき、実に愚劣きわまるものとして、各方面の非難が高いのであります。これに対し何らかの修正の御用意をお持ちになるか、これを承りたい。  最後にもう一点、先ほど申しましたところのアルバイト学生などの現況にかんがみまして、能力を抱いて学窓に上り得ない青年のため、育英資金制度の確立と、その予算についてお尋ねをいたしたいのであります。  以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  国連への協力について、具体的にその内容を示せという御希望でありますが、今日、日本の立場といたして積極的にまた具体的に、こうこうかくかくの点について協力するということを言い表わすべき立場におらないのであります。ただ平和主義あるいは平和擁護の運動にはあくまでも協力し、また日本国として、日本国民として平和擁護に終始いたしたいという点から、国連のこのたびの世界平和擁護のためにする行動に対しては満腔の敬意を表するとともに、国民として、なし得べくんばこれに協力する機会を得たい、こういう精神的の希望を申し述ぶる以上に、何ら具体的に、こうする、ああするということを言明する立場におらないことを御承知願いたいと思います。  また独立心、愛国心の振興について特に言及なされたことについて、私ははなはだ欣快に存じます。この点については、文相において特に抱負もおありになることでありますから、これに対する答弁は文相に譲ります。  その他の問題については、主管大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇
  14. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ドツジ・ラインということを盛んにお使いになりまして、しかも自分でお考えなつたドツジ・ライン、その規格を大蔵大臣において変更したのか、あるいは将来変更するのか、こういうお話でございまするが、先般も申し上げましたように、インフレを収束して、わが国経済を安定し、そうして自立化へ持つて行く政策がドツジ・ラインの政策であり、われわれがのつとつている政策であるのであります。従いまして、インフレが収束し、経済が安定の度を加え、自立経済に向つて行く段階におきましては、いろいろな、かわつた手を打つのは当然であります。かわつた手を打つのが、安定から自立、復興のこのドツジ・ラインであるのでありますから、この点は誤解のないようにお考え願いたいと思います。従いまして、今回朝鮮事変が起きて、このわれわれの安定自立政策をゆすぶつてはいないか、再調整をする要はないか、こういう御質疑でありまするが、わが国経済は安定から一歩々々自立に向つております。しかして朝鮮事変経済的に見ますと、必ずしも悲観する問題ではないのであります心もちろん協定貿易によりまして六、七千万ドルの協定ができておりました。これは中途で挫折いたしまするが、事変によりましてわが国輸出は相当ふえることを期待するのであります。しかして、ふえた場合におきましては、これによつてインフレの起らないように必要物資輸入をはかる等、いわゆるドツジ・ラインによりまして安定から自立に向つて行くのであります。決して再調整とか、ドツジ・ラインの強行をやめるとか、変更するとかいう問題はございません。次に、先般の選挙前の吉田総裁の五大公約についてのお話がありましたが、私はアメリカから帰りまして各政党の選挙スローガンを見まするに、過去のことをとやこう言つたり、あるいは目先のことばかりを選挙の題目にしておられるような気がしたのであります。従いまして、われわれといたしましては将来の財政経済政策を掲げて選挙に望むことが必要であり、当然の処置と考えましたので、来年度中心としたところの財政経済政策を発表したのであります。従つて私は、来年度におきましては、この五大公約を極力実現することに努め、本年度におきましても、できるだけ早い機会に実現しようといたしておるのであります。  次に、大蔵省に大規模の調査会を置く必要はないか、こういう御質問でございますが、大規模の調査会、顧問会を置くことは考えておりません。  次に、予算案を提出しないということを言つたと言われまするが、先ほどの井上君の御質問に対しましてのお答えでは、直接農林に関係したところの追加予算は本国会に出す考えはないと言つたのであります。その他の問題につきましての補正予算のことにつきましては、ただいまお答えできません。  次に歳入の問題につきまして申し上げまするが、来年度におきましては、先般申し上げました通り相当の減税をする考えでおります。またできれば本年度においてもやりたいという意思は持つております。しかし減税をいたします場合においては、何を先に減税をするかという問題になりますると、私の意見としては、まず所得税に手をつけ、しかるのちに酒あるいは物品税の軽減に行きたいと考えております。なお酒につきをてはいろいろな種類の酒がございまして、清酒の売れ行きは思わしくございません。しかし思わしくないと申しましても、大体予算くらいには行つております。しようちゆう、ビールその他につきましては予想以上の相当の売れ行きでございまして、歳入には心配ないと考えております。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪君登壇
  15. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 井出君の御質疑に対して御答弁申し上げます。その第一は、地方税法案が不成立の場合にはその対策いかんという御質疑でございますが、昨日も申し上げました通り、今回の地方税法案は現下の段階において最良の案と確信しておりますから、必ず通ると思つております。従つて、ただいま不成立の場合の措置を言明する限りではございません。  次には附加価値税の一年延期に対する理由について、総理演説の中に言明されました、各般の情勢にかんがみということと、私が委員会において申し上げました、徴収が困難であるからということに食い違いがあるがどうかという御質問でございますが、世論、各般の情勢にかんがみて、すなわち困難な事情がありましたものですから、一番大事なところの事業者に対しても非常に苦痛を與え、同時に納税者に対しては負担の転嫁ができない、こういうような困難な事情の例示として私は申し上げたのでございますから、何ら食い違いはございません。  第三点に移りまして、附加価値税が流通税であるか収益税であるかについて学問上の議論があるというお説でございます。そういうことも私伺つておりますが、私といたしましては流通税であるということを確信して、その意味において附加価値税を提案しておる次第でございますから、御了承願います。(拍手)     〔国務大臣横尾龍登壇
  16. 横尾龍

    国務大臣横尾龍君) 私は、補給金の温床に企業をいつまでも置くことは企業が発展するゆえんではないと考えるのであります。現在世界水準の価格に対して幾らか高いものがあるかもしれません。しかしながら、これはその原因をよく討究いたしまして、そうして企業の合理化あるいは技術の向上等によつて、これを近寄せて行き得るものであると信ずるものであります。  それから外航船の問題であります。わが国の船舶は、不幸にして外航に適するものがはなはだ少いのであります。それゆえに、見返り資金の多額の融資を得て、昨年もまた今年も適格船の建造中であります。これによりまして漸次外航ができ得るような方向に進みますようにしたいと考えるのであります。  中小企業につきましては、御承知の通り金融で困つておることは事実であります。しかしながら、一面中小企業者におきましても、受入れ態勢を確立いたしませんければ金融の面は梗塞せられるのでありますから、その方面につきましてよく討究をいたしたいと思うのであります。これをもつてお答えといたします。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  17. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 井出さんにお答えいたします。  総理大臣演説の中に農村問題を入れておらないのはけしからぬじやないか、こういうお話でありますが、農村の個々の問題はすべて常日ごろ大事でありますので、特に臨時国会において取上げなくてもよろしいと考えておる次第であります。  次に農産物価の問題でございますが、これはあなたが御承知のように、パリテイ計算のみではむりであるということは、みんな承知いたしておるのであります。それがために、超過供出に対するいろいろな手当であるとか、あるいは早場米奨励金というのを出しておるのでありますが、今年度米価決定につきましては十分考慮いたしたい、こう考えております。  次は食糧自給対策についての問題であります。農地改良土地改良、あるいは災害復旧、治山治水等に対して国家資金をどしどし投入したらどうかというお話でありますが、これも予算の許す範囲においてどしどし投入するようにいたしたいと思うのであります。  次は農業金融のことでございます。この農業金融は主として農林中金をしてやらしておるのでありますが、これは農林中金のみでなく、今後やはり市中銀行の対象となるように努力しなければならぬと考えておるような次第であります。  協同組合に対しましては、これはこの前第七国会において組合法の改正がございましたが、これに基きまして指導、検査等を十分いたすと同時に、資金の注入等に関しましても十分注意いたしまして、健全な協同組合発展のために努力する次第でございます。  なお肥料の問題につきましては、先ほど井上君に答えたと同様でございますから、御了承を願います。(拍手)     〔国務大臣周東英雄君登壇
  18. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私に対しては復興計画についてのお尋ねであります。まず前に出ておつた復興五箇年計画の成行きはどうなつたかということでございますが、これはまだ今日以上に不確定の條件が非常に多いものを前提として立てられておりますので、これはとらなかつたのであります。しかし、今日の事態におきまして、インフレは防止され、価格も、また賃金もやや安定の道に乗つた今日において、積極的にこの際は産業復興計画を立てることが必要でありますし、先ほどもお話がありましたように、来々年から援助資金等もあるいは打切られるのではないかというときにおいて、自立経済に対して総合的に、まじめに、真の国家の将来に対する計画を立てるべきものと考えておりますので、その線に向つて、ただいま計画委員会、審議会等のものを進めようと考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣天野貞祐君登壇
  19. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) お答えいたします。  ただいまお話のありましたように、いろいろ社会に不健全な現象が多いということは実に残念なことでございますが、これは一方から言えば、戰争の必然的にもたらして来る現象とも言えると思います。しかし、これを思想的に考えるならば、私はわが国の教育がまだ真に個人の完成ということについて十分な仕事をしていないと思うのであります。現在私どもが受取りました民主主義政体というものは、西洋が近世文明において個人主義的な教育を十分にして初めてこれができて来たもので、ここにそういう形態はできても、それを受取るだけの力がわれわれにないと、一般的には言えるのではないかと思うのであります。それゆえに、私は教育において――学校教育においても、社会教育においても知性の開発ということに力を用いて、そうして個人の自覚、すなわち人がみずから自分考えをもつて決断をし、その決断に対してはどこまでも責任を負うという自由の主体としての自党をみんなが持つて行くように努めて行きたいと思います。平たく言えば、社会一般の教養水準を高めるということがこの不健全な現象を救つて行く根本だというふうに考えております。ことに大学の学生についてお話がございましたが、大学の学生につきましては、一方においては育英制度を充実して、経済力がないけれども能力のある人たちは安心して勉強のできるようなことを考えて行くと同時に、他方において、私はもつとはるかに学問的な研究情熱というものをかき立てなければならないと思うのであります。この際、学生がほんとうに学問研究ということをまだ十分に知つていない。それを十分に奨励して、学問というものが一体どういうものであり、学問研究というものに対する意欲というものがもつと充実するようにしたいと思つております。それについては、いま井出君の言われたような政治が大きな教育である。確かに、だからそういう、ほんとうにまじめな考えを持つて政治をやつてつていただくということが、これが最も教育の根本であるということには同感でございます。  さらに個々の問題について、ジユニア・カレツジについては私は構想を持つておりますけれども、しかし、すでに日本の大学が四年制のカレツジという建前でもつて出発しておりますから、いまさらこれを切り下げるというようなことは不可能であります。ただ私は、従来日本において活用されなかつた転学の自由という制度をもつと活用して、ある大学は下が広くて上が狭く、ある大学は下が狭くて上が広いというようなことに形成いたしますと、もつとはるかに人材の教育ということに適する方向に向つて行くと信じております。  第二番目に免許法のことにつきましては、私もこれは不十分な点があると思つて、十分これを改善したいという考えを抱いております。第三番目の育英資金の問題について、これは実に重大な問題であつて、現在十五億幾らの育英資金が計上されておりますが、その金によつて九万の学生が就学することができております。十五億の金によつて九万の人が養えるというようなことは、実に金というものを適当に利用すれば国家のためになるということを示すのでありますが、しかし、さらにそれは非常に不十分であつて、高專学生のわずかに一〇%であり、高等学校生徒はわずかに二%であります。これをどうしても高專については三〇%、高等学校については少くも一〇%にしなければならない、そういう考えをもつて進んで行こうと思つております。  以上お答えいたします。
  20. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 井出君再質問がありますか。――なければ風早八十二君。     〔風早八十二君登壇
  21. 風早八十二

    ○風早八十二君 私は、日本共産党を代表して、吉田総理大臣並びに関係各大臣に質問するものであります。  朝鮮における新たな事態の発展がどういう結果をたどりつつあるか。これは私がここで述べるまでもなく、日々の新聞、国際放送によりましてもすでに明らかなところであります。これによつて国際独占資本の一切の計画が大きく齟齬して、計画自体が多くの障害にぶつつかつておることは、これまた事実の示す通りであります。朝鮮の事態の発展は世界史今後の発展を示唆するものであり、勝利は人民の側にあることを明示するものであります。(拍手政府がいかに日本人民の支柱であるわが日本共産党を弾圧しようとも、人民とともに闘うところのわれわれは、人民の偉大な力が無限に頑強であり、無限に不屈であるということを、われわれはよく知つておるものであります。遠くはソ同盟の発展、近くは新中国、ヴエトナム共和国の成立は、これは一体何を意廃するか。  今やアジアの人民は、その頭上に、はえある旗を掲げて、勝利に向つて邁進しつつあるのであります。しかるに、この場合に及んでも、世界史の向うところに逆行して、急速━━に一途をたどりつつある国際独占資本の側に、━━━━━━━━━━━━━━━━━の前に周章狼狽のはめに落ち込んでおるのは、まつたくむりもない次第であります。吉田総理大臣の施政演説は、このことを端的に暴露しております。平生大きなことを言つて来た吉田総理は、この施政演説の中で財政経済問題を恐る恐る避けておりますが、━━━━━━━━━━━━━━━━政府がもはや財政経済政策について何らの方策も目途も持ち得ないことは当然であります。朝鮮情勢に便乗して、政府は今までは多少なりとも━━━━━━━━━━━━━への協力を、遂に公々然とやり出すに至つた。すでに日本産業は、━━━━態勢から━━━━態勢へと急速に推進させられておる。旧飛行機工場の接収、旧海軍工廠の民需転換のストツプ、各種車両の徴発準備、スクラツプにすると言われておつた多数船舶の傭船、しかも日本産業経済の能力の限度を越えての━━━━━━━━━━、強行されんとしておるではないか。(拍手)公共事業にましても、軍事基地建設工事拡張のために、民間工事は中止の状態にあります。基地建設そのものについても、砂利にしても、セメントにしても、その調達限度を越えて要請されておる。あれほど国際独占資本の要請だといつて、しやにむに強行しようとした電力事業再編成はどうだ。まつたくあやしくなつてしまつた。見返り資金その他一切の資金資材は、ただただ目先の南鮮向けの輸送と軍事設備の建設に熱中せざるを得なくなつているではないか。それ以外の産業部門に至りましては、大中小を問わず切捨てごめんというのが嚴たる実情ではありませんか。しかも、これら一切の負担犠牲は労働者と農民に転嫁せられ、人民大衆は文字通り餓死するか、豊富かつ格安な軍事労働力にさせられておるのであります。(拍手)  こう見て参りますと、最近取ざたされておるいわゆる軍需景気なるものがいかにインチキであり、はかない幻想を大衆に與えるための宣伝にすぎないかは明らかであります。一体軍需景気などというものがもしありとすれば、そのことは第一に軍需産業の復活を自己暴露したものであり、これはそれ自身ポツダム宣言にまつこうから違反したものでなければなりません。(拍手吉田首相並びに大蔵、通産大臣にこの点のお考えを承りたい。  第二に、しかしながらここで大事なことは、これは日本経済再建のしるしとしての好景気では断じてなく、一切の平和産業犠牲にして産業構造の恐ろしい不均衡を生じたことを告げておるのであります。飢餓輸出、ダンピング輸出によりまして、やつとかつとかき集めたドル資金に加えて、最近確かに米軍の物資調達によつてドル資金が流れ込み、従つて業者の間に円資金が散布されたことは事実です。しかし、とたんに食糧にしても、石油、石炭、ゴム、鉄鉱石、非鉄金属など、これらの貯蔵戰略物資の輸入が強行せられて、せつかくの散布資金はたちまちに吸収されてしまつておる。造船、鉄鋼などの独占価格にしましても、どれだけ、またいつまで維持せられるか、少し頭のある業者には、ちやんとわかつておる。八幡製鉄所ですら、橋梁用の型鋼であるとか、あるいは有刺鉄線の、注文を受けても、頭をひねつておると言われておる。なぜならば、発注は生産能力の限度を越えており、しかもむりをしてつくつても、先行きがどうなるか、何の見通しも立たないからであります。現に経済団体連合会も、大資本家を代表して、いわゆる軍需景気なるものの危險警戒して、政府の戰争協力政策に対しては不満の意思を表明しているではないか。(拍手)また個々の資本家代表の中には、はつきりと中国やソビエト同盟を抜きにした講和はナンセンスであると言つているものさえあるではないか。(拍手)  このような軍事動員計画の事実上の開始によりまして、今や一切の財源はあげてこれらの戰略的用途に投入せられつつあるのであります。対日援助費は、軍用備蓄品である食糧と石油に集中しておる。見返り資金預金部資金など目ぼしいと思われる資金は、あげてみんな戰争協力の費用に充てられておる。ドツジ・ラインの根幹といわれた債務償還費までが、御承知のように憲法と国会を公然と無視して、警察あるいは海上保安庁費に振り向けられようとしておるのであります。一体、今回の国家警察予備隊の予算内容はいかなるものであるか、またその総額は幾らであるか、この総額の中には装備、建築施設等の物件費が含まれておるか、もし含まれておらないとすれば、これらの費用は幾らであるか、私は大蔵大臣の詳細かつ明確なる御答弁を求めるものであります。  なお財政法第三十三條の但書によれば、経費の支出については、各部局間または各項の間においてかれこれ移用融通するについては、あらかじめ予算をもつて国会の議決を得ることを要すると規定してある。今回の措置は、ポツダム政令をもつてこの但書を抹殺するものである。これは明らかに財政史上かつてない暴挙でなくてはならない。(拍手)私は、この点で吉田首相並びに大蔵大臣のお考えを伺いたい。  かくのごとく、戰略的用途に日本国家財政を奉仕せしめんとする限り、この戰略的用途は底なしに、また急激に拡大するから、財源をどこでどれだけ求めるか、計算も何もあつたものではない。ところかまわず、むしりとるというのが実情であります。こうなつては、池田蔵相好みの均衡財政どころか、これこそまさにどろ沼財政であると断定してよろしいか、池田大蔵大臣所見を伺いたいのであります。(拍手)  吉田総理大臣は、この国会の根本問題をそらすために、地方税法案の通過に注意を向けさせようとしております。地方税法案は、要するに国家財政のしりぬぐいという本来の役割をより一層強化せしめんとするにあるだけであります。いやしくも戰費調達の政策に従う限り、厖大な地方税もまた單に大衆収奪の一つの手口にすぎない。現に大蔵大臣は、国税滞納一千三百億をしやにむにとると放言しているではないか。また税務署は税務署で、所得税の減額申請をも事実上拒否しているではありませんか。朝鮮の民族統一闘争に際して、公然化した日本政府の積極的な戰争協力は、單に国税、地方税などを通じて財政的に大衆収奪を強化するにとどまらない。人民大衆を直接ソ同盟、中国、朝鮮に対する反ソ、反共戰争の肉弾に供せんとしておるのであります。(拍手)日魯漁業が、見返り資金の援護のもとに沿岸漁業者を一気に破滅させ、すぐその手で、これらの失業漁民をミツドウエー漁場へかり立てておる。また意識的につくり出された職安の失業者に対して、一方においては登録を拒否しながら、他方においてすぐその足で軍用道路の建設にかり立てでおる。農村に氾濫している失業者については、もう言わなくてもわかつておる。  吉田総理大臣は、去る十一日の内閣の記者団会見におきまして、次のようなことを言つております。吉田総理大臣の言葉通りであります。「朝鮮問題は日本経済によい影響を及ぼすのではないかと思つている。国内的には今まで米国の兵隊が引揚げてしまうのではないかとの心配があつたのが、アメリカは進んで平和確立に敢然と乗り出した。国民は安心したものと思う。経済再建には国民の安心感が必要である。従つて日本経済の再建は安心して可なりである。」吉田総理のこの論理を用いるならば、アメリカの兵隊がいつまでも駐屯すること、その下請として巨万の警察官をふやしてもらうこと、これによつて国民に安心感が生れるそうだ。この安心感が日本再建の基礎だという。重税をしぼられても、金は詰まつても、飯は食えなくても、自由はなくても、外国の兵隊とその下請警官さえおれば日本経済再建は安心して可なり、これこそ豚箱の中の安心感以外の何ものでもないのであります。(拍手)口に平和のためと称しながら警察軍隊を創設し、諸国人民の頭上に爆弾の雨を降らせたヒトラー、東條の使い古した古い手口とこれは同じことであるということを、国民はよく知つております。吉田総理大臣の、この点に関する所見を伺いたい。  どんな名目にせよ、日本国民の収奪と肉弾化とを犠牲として日本を第三次大戰への発火点たらしめんとしておる政府政策は、日本経済を再建するどころか、ソ同盟、新中国その他世界の平和愛好諸国からまつたく孤立した植民地的な戰時経済日本を突き落し、また今突き落しつつあるのであります。吉田総理がどんな大きなことを言つても、お気の毒ながら、その総理自身にも蒋介石や李承晩の運命が待つているだけであります。(拍手)  日本共産党は、平和と独立のために、政府のかかる戰争協力政策を即時中止せんことを要求する。日本共産党は、全面講和の早期締結、締結と同時に占領軍の即時撤退、この基礎の上に平和産業の無制限なる拡大、ソ同盟、中国などとの貿易打開を主張するものである。この政策は、また中ソ両国を初め世界の平和愛好諸民族が心から待ちかねている政策であり、従つて実現可能性のあるただ一つの政策であります。これによつて初めて日本経済は正常なる平和的発展を急速に達成することができる。日本民族の真に生きる道はこれのみであります。日本及びアジアの将来は、帝国主義者とその手先のものではなく、日本及びアジアの人民のものでなければなりません。(拍手政府朝鮮の民族統一闘争に対する不介入を声明する意思ありや、吉田総理大臣の明確なる答弁を要求するものであります。  わが日本共産党は、すべての愛国者とともに、すべての民主的諸政党とともに民主民族戰線を結成して、アジアアジアの人民の手に返し、日本日本の人民の手に返すためにあくまで闘うことを、ここにかたく声明するものであります。(拍手
  22. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 風早君に一言申し上げます。風早君の先刻の発言中、━━━━━━━━━━━━━━━━と申された言葉があります。不穏当な言葉と認めますから取消しを求めます。風早君はこれをどうなされますか。     〔「懲罰々々」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  23. 風早八十二

    ○風早八十二君 議長に一任します。
  24. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 不穏当なものと認めますから……(発言するもの多く、議場騒然、聴取不能)なおそのほかに……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)議長はその点の取消しを命じましたから、この際取消しの命令に従いますか、従いませんか。
  25. 風早八十二

    ○風早八十二君 ……     〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  26. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) なおその以外にも不穏当な言葉があれば、速記録を取調べの上適当の処置をとることにいたします。  池田大蔵大臣。     〔国務大臣池田勇人君登壇〕    〔「取消したのに答弁する必要ないじやないか」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  27. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 議長は……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)答弁は要しません……(議場騒然、聴取不能)ただいま私が申しましたのは、総理に━━━━━━━としているといつたような言葉を使われましたのはきわめて不穏当な言葉でございまして、議会で用うべからざる言葉だと思います。(拍手)それに対して取消しを望んだのでありますが、議長に一任するということでありますから、議長はこれの取消しを命じたのであります。何も私は登壇を要求したのではありません。  次に総理大臣にも質疑があるということでありましたが、総理大臣答弁がないということであります。     〔「なぜ答弁をしないのだ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  28. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 総理大臣は御答弁がないそうであります。大蔵大臣答弁がありますか     〔国務大臣池田勇人君登壇
  29. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 風早君の御質問にお答え申し上げます。風早君は、わが国の置かれました国際情勢に全然無とんちやく、ある一つの目的のもとに悪意と欺瞞に満ちた質問をされたのでありまするが、私の所管事務に関しまして簡單にお答え申し上げます。  警察予備隊の予算並びにこれが内容につきましてはお答えいたしません。  次に滞納徴収の問題でございまするが、租税の公平観念から申しまして、適時適当な方法によりまして、滞納税額の徴収をいたしたいと存じます。(拍手
  30. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 河口陽一君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔河口陽一君登壇
  31. 河口陽一

    ○河口陽一君 私は、農民協同党を代表いたしまして、過般行われました吉田総理の施政方針の演説に対しまして、若干の質問を行わんとするものであります。総理はもちろん、関係各大臣の確信ある御答弁を前もつて強く要望いたすものであります。  まず第一にお尋ねを申し上げたいことは、これは総理に対してであります。あなたは開会の冒頭、施政方針の演説で、本国会地方税法案を成立させるための国会である、かようにお述べになつたのでありますが、これに先だち、第七国会の末期に、われわれは野党各派の諸君と共同して、農村危機突破の臨時国会の召集を決議要望しておるのでありますが、もちろん地方財政の混乱ぶりを解消する上にも、地方税法案はきわめて重要であり、その内容が真に地方自治の発展に大きく利益をもたらす限り、われわれもまた協力審議に応ずるに決してやぶさかではないのであります。しかしながら、三千五百万、全人口の四割に及ぶ人口を擁して、農村は低米価による金詰まり、税金等によつて恐慌の一歩手前に呻吟いたしておるのであります。あえて農村危機の突破を目標に置いて、臨時国会召集を要求いたしました理由は、すなわちここにあるのであります。われわれは、この農村危機地方財政の確立のその重要性を天秤にかけるがごとき意向を有するものではありません。しかし、国会における国民の代表によつてなされた農村危機突破の決議を一片のほごのごとく捨て去られ、吉田総理施政方針演説において農村問題に一言も触れなかつたことは、総理みずからが説かれるデモクラシーの精神とまさに正反対のものであることは申し上げるまでもありません。これが質問の第一点であります。  次にお尋ね申したいことは講和の問題であります。全面といい單独という点につきましては、すでに各党代表諸君によりまして十分論議がかわされておりますので、私はこれを省略いたします。しかし一言申し上ぐれば、国民全体の希望は言うまでもなく全面講和であります。ただこの希望は、客観情勢がこれを許さないだけでありまして、従つて経理が説かれるところの早期講和にしても、全面講和へのワン・ステツプであるということを承知の上の発言と、かように信ずるものであります。  さて総理は、過日の施政方針演説におきましても、また一昨日の川崎君、鈴木君あるいは本日の井出君の質問に対しても、ただ早期講和の気配が濃くなつた、その実現を促進するためにも国連の韓国援助のための出兵に協力とたい、それが戰勝国に対するわれわれの誠意の表現であろう、このように申されておられるのでありますが、そこでお尋ね申したいことは、どの程度、またいかなる範囲において国連の方針に協力するのかという点であります。たとえば総理は、軍隊の国内輸送の便をはかるとか、その他精神的云々ということでありますが、それだけでありますれば、これは被占領国家としての占領軍に対する当然のあり方でありまして、ことさらに国連協力などと、ぎようぎようしく騒がれる理由とはならないのであります。しかし、軍隊輸送に協力することにより、もつと重大な事実を、総理はなぜはつきりしようとはなさらないのかと申し上げたいのであります。  申し上げるまでもなく、現に国内各所に設けられた軍事基地の問題であります。あるいは伝えられる武器工場への転換であります。これが戰争を放棄した日本国におきまして憲法違反になるやいなやの問題は別といたしましても、すでに九州方面におきましては警報の発令など、人心はきわめてきようきようたるものがあるのでありまして、事態はもはや精神的協力などという、なまやさしい段階ではないと信ずるのであります。このアメリカに対する現実的協力と講和問題との間に何らかの関連ありやなしや、総理はこの事実がいかなる反響を與えていると考えられるや、それをお伺いいたしたいのであります。  韓国に対する国連の出方をもつて、ただちに安全保障に光明を得たとする論もまたきわめて皮相のそしりを免れ得ないと思うのであります。といつても、国連の保障を否定するものではないことは申し上げるまでもありません。しかし他力にたよる前に、われわれはみずからを守る――攻めるのではなく、他からの侵入を防ぐに足る力を持つことは、はたして不当でありましようか。現に憲法第九條におきまして、軍備こそ完全に放棄はいたしましたが、自衛権には何ら触れていないのであります。自衛権の問題と、そのあり方について、総理の確信ある御答弁をお願いするのであります。  質問の第二点は共産党対策であります。共産党が公党の立場を忘れ━━━━━に終始しておりますことは、私が喋々するまでもありません。従つて、その幹部の追放及びその一連の処置に対しては、むしろおそすぎる感すらいたすのであります。しかしながら、ここに容易ならざる現象が起きつつあることを、総理並びに大橋法務総裁は、はたしてお気ずきであるかどうかということであります。すなわち、その一つは恐るべき特高の再現であります。去る五・三〇事件を契機に、一般の善良な市民の集会や、たとえばソ連タス通信の報道の掲示までがすべて官憲の新圧によつていためつけられておる。この事実は一体何を物語るものでありましようか。健全な労働組合の集合に至るまで警察官の立合いを申し入れた事実を、われわれは幾つも耳にしておるのであります。しかしてこの組合は、かかる暴力的法令の施行されていない隣県に逃げて大会を開いたとのことでありますが、これが穏健なデモクラシーの国家において許されることかどうか、まず法務総裁の所感をお伺いしたいのであります。  また、このたびの追放された徳田球一君など共産党幹部の捜査にあつての、連日新聞をにぎわしている特審局の動きであります。だれが見ても、これは特審局の醜態以外の何ものでもないのであります。みずから追放し、その追放後の行動監視の責任を持ちながら、これは官吏としての仕事でありながら、遂には彼ら幹部の隠れ家に関する情報提供者に賞金を出すなど、まことにもつてのほかの所業と断ぜねばならぬのであります。氷山は水面に出た部分よりも水中に隠れた部分が恐ろしいと申しますが、このたびの共産党のあり方が、すなわちこの氷山の例を痛切に物語つておるのでありまして、かつての非合法時代の共産党を知る者のひとしく口にするところであります。すなわち、地下にもぐつた共産党に対する人心の動揺は今やきわめて大なるものがあるのでありまして、この点いかに対処されるかお伺いしたい。  政府のやり方は、出るくいはたたくの方式以外になく、画一主義に流れたその政治性の欠如がこの原因をなしておることはあまりにも明白でありますが、この問題と関連して私どもの杞憂いたしますのは、このたびできるところの国警に対してであります、よもや軍隊化などとは考えではおられないだろうと信じておりますが、吉田内閣の、特に弾圧の一手しか知らない治安政策の無能ぶりからして、その運用によほど戒心いたしませんと、好むと好まざるとにかかわらず、右翼思想の擡頭と、また警察国家への道をたどることは、あまりにも明白であります。従つて、本問題を政府はポツダム政令で処理する方針のように漏れ承つておりますが、これは絶対に反対であります。会期中の国会の総意においてこそ最善の運用方式をとるのが望ましい、かように考えるのでありますが、総理の御方針を承りたいと存ずるのであります。第四の質問は失業対策でありますが、生れまた同僚議員諸君の重ねての質問で大体了解いたしましたので略します。ただいろいろな公団が廃止されておりますが、その公団廃止後の失業人員の処理についてのみ保利労働大臣からお示し願いたいのであります。八月一日より廃止されますところの肥料公団に例をとつてみましても、肥料取扱業者や、あるいはまた農業協同組合の連合会に就職申入れが殺到している状態で、これが放置はきわめて重大であろうと信ずるのであります。  次いで厚生大臣にお伺い申したいのでありますが、いわゆる社会保障制度の問題であります。すでに審議会におきまして相当の研究が進められていると聞いているのでありますが、その結論及び実施に移す範囲などにつき詳細な御説明を要望するものであります。都市における問題は別として、農村におきますところの医療施設は、まさに十年以前といささかもかわりないのであります。はなはだしきは無医村すらいまだ数多いと聞いておるのであります。しかしてこれが解決の方法でありますが、今ただちに農村に医者を出せと申しましても、これは諸般の事情からむりであるのは当然でありますが、しかし最少限度の対策としての国民健康保險は拡充いたしまして――経済的に恵まれない農村にとつてはまことに大きな福音でありまして、この点厚相はいかなる抱負をお持ちになるや、計画がありますれば、あわせてお答え願いたいのであります。  最後に、農業政策に関しまして廣川新農相にお伺い申したいと存ずるのであります。冒頭にも申しましたように、今日農村の窮状ぶりは、真に死の一歩手前にまで追い詰められているのであります。ことに日本経済復興へのしわ寄せが、すべて農民に転嫁されております。この実情については、先般の参議院議員選挙を通じて、あなたとてもよく御承知のことと存じますが、新農相はいかなる構想を持つて大臣をお受けになつたか、私は広く農民を背景といたしますところの農民協同党の立場において、特にお示し願いたいのであります。  このたびの地方税法案におきましても、一応農民負担軽減が説かれておりますが、その内容は、決してそんななまやさしいものではないのでありまして、一例を申しますれば、想像によりますところの寄付金までが計算の中に入れられて、ようやく当初の減税計画につじつまを合せているのであります。市町村税におきましても、世帯主ばかりでなく家族まで課税されるので、引揚者、復員者をも多くかかえ、多人数に悩む一般の農家負担は、実に想像に絶するものがあるのであります。また固定資産税の面におきましても、農業協同組合に課税することは、とやかくの理論はやめまして、率直に私はやめていただきたいと申し上げるのであります。農業協同組合を企業体として解釈するところに人なる間違いがあるのであります。ただでさえ資金難に基く赤字経営にあえぐ農業協同組合は、これまた破産を早めるに至るであろうことは、火を見るより明らかであります。一昨日、池田大蔵大臣は川崎君の質問に答えて、債務償還はすべて銀行に入る、銀行はその金を一般に融資すると、かようにおつしやつたのでありますが、今日農民が銀行に行つて金が借りられるなどとは、よほどのドン・キホーテでも考える者はありますまい。かく農村は、またしても軍部独裁時代のように、生かすべからず殺すべからずの苛酷な桎梏のもとに拘束されつつあることを、声を大にして新農相に訴えたいのであります。(拍手)  次に食糧安定の問題であります。現在の安定は、これが国内自給によるものでなくして、総司令部、アメリカ国民諸君の好意による輸入増によるものであるところに大きな問題があると信ぜられるのです。ことに朝鮮における紛争の早期解決が危ぶまれている今日、もし世界的な動乱にまで発展したとき、それでもなおこうしたアメリカの友愛による輸入増が続くかという点につきましては、これはおのずからわかり切つたことであります。われわれは、今日一日を争つて国内食糧自給体制の確立を追られておると申しても過言ではないのでありましよう。農相は、この問題をいかに考えられるか、是とするならば、いかなる対策をお持ちになられるか、具体的方針を明示せられたいと考えるのであります。  いま一つ農民組合法制定に関してでありますが、過般の新聞報道によりますと、総司令部の見解要領が提示され、農林省はこれに基いて、農民団体代表者を招致して意見を聞いておるとのことでありますが、農民組合を必要とする社会的意義及び具体的方針をお伺い申し上げて、私の質問演説を終ることにいたします。(拍手
  32. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの河口君の発言中不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上適当なる処置をとることといたします。     〔国務大臣吉田茂登壇
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  政府農村安定のために万般の努力を拂つておるのであります。また国会の意見を尊重して、実現し得る政策は着々これを実現いたしておるのであります。しかしながら、なお臨時国会を召集する必要があると考えました場合には、いつでもこれを召集する用意があるのであります。  また国連援助の具体的方針、これは先ほどまでもしばしば私がここにおいて答弁いたしております通り、私の申す精神的に協力する、これ以上に政府としては今日の立場において積極的に援助するとかいうような具体的の方針は述べることはできないのであります。  また軍備を放棄したわが国における自衛権のあり方はどうだというようなお尋ねでありますが、自衛権なるものは武力のみではないのであつて、国の自衛権なるものは、武力以外の自衛権は、いかなる方法によつても国を守るために行使し得るのであります。  また軍事基地のお話でありますが、これはしばしばお尋ねをこうむりますが、今日政府とし、あるいは日本国として、占領国の占領目的のためにある施設を要求せられた場合には、これに協力するのが條約上の義務であります。ゆえに、その協力によつてでき上つた施設がいかに利用せられるか、いかに使用せられるかということは占領国の自由であります。  その他の問題については主管大臣からお答えをいたします。     〔国務大臣保利茂君登壇
  34. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えをいたします。八月一日から肥料公団が廃止せられますが、この廃止に伴いまして整理を受けられる方々は、多くは肥料関係の会社から出向いておられる方が多うございますから、肥料配給公団廃止によりまする配置転換の就職状況から見ましても、大体関係の会社に吸収せられるのではないかと思いますが、なお就職困難な方につきましては、政府としては一般失業者と同様の考え方をもつてこれに対処して行きたいと思つております。     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  35. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 河口君の質問にお答えいたします。  食糧の安定並びに農業全般に対することの御質問でございましたが、農村に対する指示の点は、今まで農林省としてやつておりましたことを着々実行して行く以外に農村恐慌を防ぐ方法はないのでありまして、これを一々みな実行に移して行きたいと考えておる次第であります。  なおまた地方税改正について税金が非常に上るというようなお話でありますが、国税と地方税と両方総合いたしますると減税になるようになつておる次第であります。  また農村金融に対しましては、先ほども井上君その他にお答えいたしましたが、どうしても農林中金等でなく、もうちよつと市中の銀行まで農村が貸出しの対象になるようにわれわれは努力したいと考えておる次第であります。  それから食糧自給度確立でありますが、これも先ほど井上氏その他にお答えした通り自給度確立のために治山治水、土地改良、あらゆる方途を講じまして、自給度確立に全力を盡す次第であります。  それから最後に農民組合の問題でありますが、農民組合の問題は、私たちは農民の最も欲する組合をつくろうと思いまして目下研究中でございまして、あなたのおつしやる社会的あるいはその他のことにつきまして、実質的に検討中でございます。     〔国務大臣大橋武夫君登壇
  36. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 第一に共産党に対しまする措置は、いずれも法規の命ずるところに従いまして必要となつたものでございまして、これらの措置をとるにあたりましては、国民の基本的人権を阻害するようなことのないように嚴に留意をいたしておるのであります。従いまして、かつての特高警察のごとく国民の思想統制は絶対に行つておりませんし、また政府といたしましては、さような考えのないことを、御了承願い上げるのであります。  次に、先般追放せられましたる日本共産党中央委員らに対しましては、政府におきましても、他の多数の追放者と同様に、その動静を監視することに努めて参つたのでありまするが、最近徳田球一外八名が、その所在並びにその行動を不明ならしめております。団体等規正令による出頭命令に応じない事件が発生いたしておりますので、同令の違反といたしまして同人らを検察庁に告発いたしまするとともに、目下その所在につきましては鋭意調査をいたしておるのであります。  また警察隊の新設に際しまして右翼の擡頭について御心配をいただいたのでありますが、このたびの事態を契機といたしまして、わが国におきまする少数の左右両極端分子の活動がようやく活発化するおそれがありまするので、政府におきましては、これら極端分子の動静に対しましては嚴にこれを監視いたしておるのでありまして、いやしくも不法越軌の行動に出でます者は、左右いずれたるを問わず断固これを禁圧する方針であることを御了承願います。     〔国務大臣黒川武雄君登壇
  37. 黒川武雄

    国務大臣(黒川武雄君) 河口議員にお答えいたします。  社会保障制度審議会からは試案の答申がございますが、いまだ決定的の答申がございません。具体的実施方法につきましては、その答申に従いまして、十分にその趣旨に沿うように努力したいと思います。  それから無医村並びに診療所の拡充とか、あるいは国民健康保險等の問題につきましても、ただいま鋭意努力中でございます。しばらくお待ち願いたいと思います。
  38. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 中原健次君。     〔中原健次君登壇
  39. 中原健次

    ○中原健次君 私は、労働者農民党を代表して、施政方針演説に対し首相並びに関係各大臣に質問をいたしたいと考えるのであります。  今日われわれは、日本が再び戰争に巻き込まれ、破滅の道を進むか、それともその反対に、平和のかがり火を高くかざし、この世界の破滅を防ぎ、かつて太平洋戰争の罪を犯したわが日本が、今日屈強な平和の戰士であることを全世界に認めしめ、日本の国際的信用を高めるとともに、うち国民生活の繁栄をかちとる道を進むか、二者まさに択一の重大な岐路に立たされておるのでございます。今、全アジアないし全世界は、日本がそのいずれの方向をとるかについて、きわめて真劍にその動向を見守つておるのでございます。  しかるに、このわが国の運命を決する重大なときにおいて、政府は従来常に特定国との單独講和を独断的に放送し、かつまたこれを宣伝して来ておるのであります。今回の施政演説においてもまた吉田総理は、最近ことに米英等の連合国において早期講和の機運が擡頭して来たということのみを強調し、あたかも連合国の他の大国であるソ同盟あるいは新中国等の両国が講和を望んでおらないかのごとき印象を国民に與えんといたしておるのでありますが、これらの国もまたいかに対日講和を望んでおるかにつきましては、両国当事者の屡次の声明や談話によつておのずから明らかであるばかりでなく、本年二月締結されました中ソ友好同盟條約の第二條において、できるだけ短期間に全連合国と共同で対日講和を結ぶというその旨をすでに明文化しておることによりましても、おのずから明らかなるところでございます。  今日国民は早期の講和を望んでおります。しかしそれは、吉田首相の言われるがごとき早期單独講和では断じてございません。新聞その他によるいわゆる輿論調査によつても明らかなるごとく、今日国民の圧倒的部分が中ソ両国を含む全面講和を熱望しておることは、おのずから明瞭でございます。資本家階級ですら、中ソ貿易推進の必要から、これら両国との平和状態の実現を期待しておるのでございます。講和問題に関する政府の態度は、このような国民多数の意思と期待を完全に無視し、蹂躪し、ソ同盟と新中国を極端に恐れるきわめて少数の支配者階級、買弁的な独占資本家たちの講和論であり、吉田内閣が、このためにだれの内閣であるかということを、みずから暴露するものでもあると考えるのであります。  さらに、従来から講和問題と関連して、特に講話後のいわゆる軍事基地のことが問題になつておりますが、これについての政府の態度は、また国民の危惧心を一層深める一方であり、とうてい納得せしめ得ないものであります。ポツダム宣言と日本国憲法に照してあまりにも理非曲直の明白なこの問題に対する政府の不明朗かつ怪奇きわまる態度こそ、その真意の奈辺にあるやをうかがわしむるに十分でございます。わが国の軍事基地化に反対する労働者、農民、それと広範なる全勤労大衆の運動は、まさにポツダム宣言とわが日本国憲法を守ろうとする健全かつ正義の運動でございます。(拍手)しかるに政府はこれを弾圧しておるのであるが、首相は現在、ポツダム宣言とわが憲法がその効力を喪失あるいは停止してでもあるかのような判断をしておいでになるのではなかろうか。これらの忠実な遵守のための大衆運動を、何がゆえに弾圧するのであるか。この点に関して総理大臣の明快なる御答弁をお願いいたしたいと考えるものであります。(拍手)終戰すでに五年にして、今日このようなことをなお問題にせざるを得ないわが国政治の実態こそ、海外における対日感情が一般に好転せず、諸外国のわが国に対する警戒心がいまだ跡を絶たないゆえんといわなければならないと考えるものであります。  次に、首相のいわゆる自由国家、自由国家群にわが国が入るということは、どういうことであるのか、これについてお尋ねをしておきたいと考えるものであります。最近の記者団会見においても、首相は日本が反共圏に入つたとか、あるいは入るとかいうような意味のことを述べているのであるが、これらのことは、今日の緊迫した国際情勢のもとにおいて、ソ同盟や新中国その他の人民民主主義国を敵にまわすということを意味するのであるか。ソ同盟、新中国を含めた全連合国に対し日本はポツダム宣言を無條件に受諾して降伏したのであつたということを、われわれは決して忘れてはならぬ。少くともいまだ講和さえ締結されない今日、はたしてこのような言説と態度が許され、かつそれが正しいものであると思うていられるのかどうかこの点に関する総理大臣の御明答を要求いたすものであります。われわれは、このような政府の態度は、連合国たるソ同盟、中国に対するまさに反抗であると見なければならぬと考えるのであります。  首相は、口に反米運動に対し云々と言うているが、みずからは、かくのごとく反ソ、反中国的行為を犯し、国民大衆にこれを押しつけんとしておるのである。われわれは、今ここに日華事変勃発一年前の昭和十一年、広田内閣が、国民に対してまつたく独断で、まさに突如日独防共協定を結び、これを国民に押しつけ、一路戰争街道を驀進した、のろうべき歴史的事実を、ここに想起せざるを得ないものであります。(拍手)今日の事態は、まさにこの十四年前の強盗的侵略戰争突入直前の状態とまつたく相似通つておることに気づかざるを得ない次第であります。  政府は、今回の朝鮮における紛争に関し、新聞紙の伝えるがごとく、去る四日の閣議において、アメリカの軍事行動に当然協力すべしとの建前から協議をしていると伝えているが、もしそれが事実であるならば、これは実に重大なることであり、驚くべきことであると考えます。この態度には、まさに時にこそ来れ的な好戰的物腰がありありとうかがわれる。さすがに四日付の都下各新聞紙は、このむき出しの軍国的態度に対して批判の筆をとつているが、まさにこれ吉田内閣のまごうかたなき本質ではなかろうか。まごうかたなき実体ではなかろうか。これはエデンの花園などという一片の言葉や文句でごまかしきれるものではございません。  さらに施政演説の中で、首相は、朝鮮問題への介入を公然と表明し、これは可能なる範囲においてきわめて当然とさえ言い切つておるのである。可能なる範囲とは、具体的にいかなる内容のものであろうか。また事物がすべて働いている以上、可能なる範囲は一定不動のものではないはずである。われわれは国民とともに、このような危險きわまる包括的な委任を吉田内閣総理大臣に対してなした覚えは断じてございません。これは明らかに政府の独断行為であり、フアシズムへの方向である。  朝鮮問題は、これは明らかに朝鮮国内問題であつて、かつて日本帝国主義が長年月にわたり朝鮮に植民地的支配を行い、朝鮮人民の反感と恨みを買うて来たのであつたが、今日朝鮮人民一般のわが国及びわが国民に対する感情は、そのため決してよろしくないのである。われわれは、今日朝鮮人民に対して特に謙虚であり反省的でなければならないと考えるものであります。政府朝鮮問題介入政策は、将来の日鮮友好を阻害するものであり、われわれは国民とともに、このような人のしり馬に乗る好戰的政策に絶対に反対するものである。(拍手)いわんや、かかる介入政策の結果当然予想されるわが国土と国民のこうむる損害を、そうしてその犠牲を思うならば、政府は印刻朝鮮問題から手を引き、不介入を表明し、かつそれを堅持すべきであると考える。吉田総理大臣は、このことに関して御所見いかがであるか、この点を伺つておきたいと考えるものであります。  朝鮮事件の勃発に対して、国民のたれよりも興奮し、いきり立つた吉田首相は、今日国民の願望である全面講和と永世中立の主張に対し、これは現実から遊離した危險思想であると断じ、そうして自己の早期單独講和への一致協力をしい、早期講和の機運を阻止せんとするもののあるを遺憾とすると言い、さらに政府としては法の示すところに従い特に治安維持のため善処する云々と述べておるのであるが、これはまつたく東條政治の再版であり、民主主義とはまつたく似ても似つかぬものであるということを、われわれは銘記しなければならぬと考えるのであります。(拍手)そこには政府の早期單独講和に反対し、全面講和と永世中立、朝鮮問題不介入の主張とその運動に対する取締りと弾圧を準備し合理化しようとする魂胆がうかがわれるのであります。(拍手日本国憲法のもとにおいて、このようなことが許されると思うのか。さらに首相の言う法の示すところとは、どういう意味であるのか。法の規定という意味なのであるか。去る六月、東京都を初め全国にわたつて行われました集会及び行進に対する禁止措置は、いかなる法的根拠に基いたものであつたのであるか。これは明らかに憲法第二十一條とポツダム宣言に対する背反行為以外の何ものでもないと考えるのであります。(拍手)  さらに政府は、従来の国家地方警察及び地方自治体警察並びに海上保安隊の上に陸海警察力の増強を計画しておるようであるが、その構想、そしてまたその性格はどのようなものであり、具体的に何を目標とするものであるかを伺つておきたいと思つております。政府は共産党に対して弾圧を加え、首相は二口目には共産勢力の脅威を云々しておるようであるが、共産党に対して脅威を感ずるものは、首相とその政府一連の支配階級であつて、決して国民大衆ではないのであります。国民大衆が最もおそれをなしております問題は、何よりも戰争に巻き込まれることであり、失業と破産と飢餓に国民を追い込み、戰争を準備しつつある政府政策に対してであるのでございます。(拍手)  今回の警察力増強と、これに伴う財政支出はポツダム政令でやるかのごとくに言い伝えられておりますが、その点を明らかにせられたいと要望するものであります。またこれに関して、財政法との関係については一体どのような御所見を持つておいでになるのであるか。何がゆえにこの問題を法律並びに補正予算によらないのであるか。この点に関して関係大臣の責任ある答弁を求めておきます。  政府の今日とりつつある政策によりましても明らかでありますように、そのすべては戰争への政策である。今や吉田内閣は、爾余の一切の政策をあげてその道に沿うて進んでおる。過般の第七国会において、政府とその與党が強引にこれを通過成立せしめた本年度予算の内容を見ても、それはおのずから明らかでございます。いわゆるドツジ・ライン第二年目予算の実施は、当時われわれがすでに指摘いたしたことく、全面的な金融情勢の悪化を招来し、経済のデフレ的諸様相を深刻化して参つておるのでございます。  最近におけるいわゆる金詰まり現象の深刻化は、金融機関の資産内容の悪化の事実と結びついており、政府の従来とり来つた財政のしりを金融にしわ寄せするという政策の行き詰まりを示すものでございます。しかして、従来いわゆる超均衡予算の実施をささえて来たその政策の破綻は、政府の全財政経済政策の全面的な破綻をもたらすものであるし、その結果、中小企業と平和産業農業に対し、その危機を乗り切るための犠牲が倍加されて参るでありましよう。今日すでに都市においては、経営工場の倒産、閉鎖、休止あるいは縮小状態あるいは麻痺状態が、今やまさに一般化して参つておるのでございます。農村におけるデフレ的諸様相は、肥料の値上りと米価の抑制によつてますます尖鋭なものとなつて参つておるのであるが、今後における鉄鋼補給金の減廃、肥料統制の撤廃に伴う運転資金問題を中心とする事態の発展並びに政府が再び強行成立をもくろんでおる地方税法案の実施によつて、今やまさに危機は噴火山上において爆発せんとしておるのであります。このような事態は、中小企業を含む平和産業農業犠牲において軍事的産業を育成再建せんとする戰争への財政経済政策の直接の結果である。われわれは、政府のこのような産業経済の軍事的再建コースに対しまして、徹底的に反対し、債務償還の即時停止と地方税法案の根本的改案を主張し、見返り資金の自主的運用を要求するものでございます。この点に関して関係諸大臣の答弁要請いたすものでございます。  今日労働者は、このような事態の中に苛酷な労働強化と奴隷的賃金を強制され、その上首切りと失業の不安にさらされておるのであるが、官公庁労働者に対する政府の賃金ベースくぎづけ政策は、民間企業における低賃金を保証し支持するものである。また国家公務員法による組合運動に対する禁止と制限は、民間企業における組合運動一般に対する同様な圧迫と弾圧を保証し支持するものでもあるのでございます。政府は、みずからつくつた公務員法と給與法の規定に基く人事院の賃金ベース勧告をさえ常に拒否し続けておるのであるが、団結による……
  40. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 中原君に申し上げます。時間が参りましたので、結論をお急ぎ願います。
  41. 中原健次

    ○中原健次君(続) 闘争を禁止されておる労働者たる国家公務員の生活は、かくて一体どのようにして保障されあとうのであろうか。このことは、公共企業体における労働者においてもまた同様である。  今日、官公庁労働者と公共企業体関係労働者は、今までの苦難に満ちた自己の体験から、労働者としての団結こそ打開の唯一の道であることをますます強く意識しつつあるのである。政府は、さきの選挙に前後して、賃金ベース改訂につき思わせぶりな放送を続けて参つたが、このような態度は、生活苦にあえぐ労働者を欺瞞するものであり、本問題に対する無準備と無誠意とをみずからさらけ出すものにすぎない。はたして政府が誠意をもつて賃金改訂をやる意思があるのであるかどうか、あるとすれば、いつこれを行おうとするのであるか、また給與金額については人事院の勧告に従おうとするのか、それとも別の方針を持つのか、この点に関して関係大臣の明答を要請するものであります。  最近、最低賃金制について検討中であるということを聞くが、その内容、構想はどのようなものであるか、低賃金と労働強化と弾圧とを筋金とする吉田内閣の労働政策が打ち出す最低賃金制は、フロア・プライス廃止に伴う内外のダンピング懸念に対するゼスチユアであり擬装であるとともに……。
  42. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 中原君、結論をお急ぎ願います。
  43. 中原健次

    ○中原健次君(続) はい、もうすぐ済みます。――現在の低賃金状態一般を固定しようとするものであると思うが、この点に関して当局の御答弁要請するものであります。  時間がないから飛ばして参ります。最後に失業対策について伺つておきたいと考えまするが、今日失業問題は重大をきわめておるのでございまするが、労働省の公表するところによつてさえ、完全失業者は五十万といい、潜在失業者は八百数十万といわれておるのであります。     〔発言する者多し〕
  44. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 中原君、もう時間が参りましたから、これで発言禁止、降壇を願います。     〔発言する者多し〕     〔中原健次君降壇〕     〔国務大臣吉田茂登壇
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  全面講和はけつこうであるが、できないからいたし方ない、こういうことはしばしば申しておるのであります。また局外中立云々ということが言われるが、日ソの中立條約を破つたものはソビエトであります。ゆえに、條約を尊重しない国と局外中立條約をこしらえても、その不実行であることは明らかであります。ゆえに全面講和ができないから申すのである。     〔発言する者多し〕
  46. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君)(続) 諸君はできないことをしいたところが、いたし方ないのである。結局は、局外中立をしいることは、日本と外国との間の戰争状態を中止して、なるべく早く平和状態に持つて行くことを妨げる意思以外の何ものでもない、こう言わざるを得ないのであります。  軍事基地の問題については、しばしば説明いたした通りであります。  また私は、特にソビエトに対して、もしくは中国に対して反対するような政策はとつたことはないのみならず、なるべく渉外関係等については言葉を慎んで、これに言及いたさないようにいたしておるのであります。  朝鮮問題については、かつて戰争に介入することを申したことはないのであります。平和を愛好し、平和擁護のために国連が立つた。ゆえに、これに対して賛意を表しただけであります。  その他の問題については関係大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇
  48. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 中原君は、今の財政経済状態をデフレ恐慌であるという断定のもとに非常な心配をして御質問なすつたのでありますが、私はデフレ恐慌とは考えておりません。あのインフレを収束しまして安定自立経済に持つて行きますためには相当の困難があることは、われわれ承知しなければならないのであります。中原君が、こういう安定自立の経済がやすやすにできると前もつて考えになるのが、根本的な誤りでございます。(拍手)われわれは、とにかくできるだけ早く安定自立の経済に向つて努力しておるのでります。その間にいろいろの困難が出て来る問題につきましては、極力これをなくするように努力して参つており、またなくし得ると私は考えております。  次に警察予備隊の予算の問題、給與の引上げの問題につきましては、先ほど来お答えした通りであります。警察予備隊の経費については、ただいま申し上げられません。給與の引上げにつきましては、財源の許す限りにおきまして、できるだけ早く引上げたいと考えて努力いたしておるのであります。(拍手)     〔国務大臣大橋武夫君登壇
  49. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 六月二日以降の東京都内におけるデモ、集会等の禁止に関しまする警視総監の措置は、五月三十日の占領軍兵士に対しまする暴行事件を契機といたしまする東京都内の不穏な情勢にかんがみまして、総司令部当局から指示がありまして、その指示に基きまして特別の事態に対処いたしまする臨時の措置としてなされたものでございます。また国警長官が同様の措置をいたしておりまするが、これも、かかる情勢全国的に波及するものと認められましたところから、同様総司令部当局の指示によつてなされたものでございまして、憲法第二十一條に違反いたしておらないのでございます。  次に、警察力増強に関しまする立法並びに予算的措置をこの国会に出すか、あるいは出さないか、また出さないとすれば、その理由はどうであるかというお尋ねでございまするが、警察隊の内容につきましては、ただいま総司令部と緊密なる連絡のもとに検討中でございまするりで、お答えすべき時期ではないと考えます。
  50. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 小林進君。     〔小林進君登壇
  51. 小林進

    ○小林進君 私は、社会革新党を代表いたしまして、吉田総理大臣並びに関係閣僚に対し御質問いたしたいと存ずるのであります。  私は、常に政治の根底には道徳的、宗教的信念が槓杆とならなければ世代人心に銘する歴史的成果を上げ得ないという確信を持つておるのであります。まして敗戰のどん底より立ち上つて正しい姿の日本を再建せんとするわれわれは、偉大なる理想、純正なる道義性の必要なることは言をまたないのであります。しかし他面、政治は現実問題であります。日常不断の戰いであります。観念の世界に飛躍して理想の夢を追うものでもなく、ひとり理論をもて遊んで神の世界を頼むものでもありません。平和、独立、全面講和の理想と、二つの世界の対立激化をいかにしてかみ合せ、どこで調和するかに日本政治の当面の課題があるのであります。  吉田総理大臣は、過去の経歴において、外交官としてはまつたくの専門家であり、特に第二次世界大戰末期において、東條軍閥の政策に消極的ながら反対して身の自由を拘束されるに至つた、その識見とその勇気に私は深く敬意を表するものであります。しかし、当時の吉田首相の親英米理論あるいは感情が、まつたく国情を一変した今日、そのまま持続せられて、いわゆる山に入るもの山を見ずの弊を犯しておるのではないか。すなわち、かつてナチスに心酔した外交官が、ただドイツとの提携のみに盲進した誤謬を犯しておるのではないかということを、はなはだおそれておるのであります。世人はこれを称して吉田総理の古典的親米論と呼び、一抹の危惧の念を抱いておることを率直に申し上げたいのであります。少くとも私は、首相の單独講和論はあまりにも現実に圧倒され過ぎておると考えざるを得ぬのであります。全面講和、永世中立こそは、自由と平和を求める日本国民の最大の熱願であり、これが世界平和への大道であり、ポツダム宣言を忠実に履行する正道であり、特にアジア大陸と結びついて日本経済を自立化するための絶対條件であることは、総理といえどもこれを否定されぬことと信ずるのであります。  しからば、これらの国民的情熱の実現を困難として、單独講和によるのほかなき現実が具体的に存在するものとするならば、その不幸なる事実を国民に知らしむることこそ総理の唯一の責任なりといわなければならぬのであります。もう一歩具体的に言うならば、私は日本憲法の立場からと、占領下の特別態勢の立場からと、二つの立場に照らして、総理の言われる單独講和論がこの二つの基本法則に抵触するおそれが十分あるにもかかわらず、その違反をなお犯しても單独講和によらなければならずとする現実が存在するかどうかをお伺いいたしたいのであります。  まず憲法の立場から考えますならば、憲法第九條において、戰争と武力の行使を永久に放棄し、国の交戰権を否認いたしたのであります。しかし、これが放棄の前提條件として、憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べているのであります。しかしわれわれ日本の生存し得るの道は、ただ諸外国の公正と信義に依存するのほかはないのでありまして、特定国にして、もしわれわれの信義と公正を裏切つて、あくまでも中立を維持せんとするわが国を無謀に侵入せんとするものがある場合には、そのときこそ、われらは総理の言われる單独講和もこれを承認せざるを得ないと思うのであります。この現実があるやいなやを率直に具体的に御説明願いたいと思うのであります。  そもそもこの憲法は、成立の当初、連合国の意思をも多分に含んででき上つたことは、これを認めざるを得ぬのであります。特に戰争の放棄、交戰権の否認のごときは連合国軍によつて提出せられ、日本がこれを受け入れたということは、偽りなき事実であります。従つて日本がこの憲法を正しく守り抜かんとする努力に対してこそ、連合国は日本のこの中立と戰争不介入を擁護する当然の責任があるものと私は信ずるのであります、この連合国軍の中には米英はもちろん、ソビエトも中国もまた当然含まれているのであります。その後、米英がもし自国の都合により、みずから提出した日本憲法を蹂躙して日本を戰争に参加せしめ、ソビエトがもし自国の野望のために、みずから提出した日本憲法を蹂躙して日本を侵略せんとするがごときことがあらば、そのときこそ日本の憲法は実質的に廃棄せられたものと断ずべく、われらは世界の輿論に従い、みずから正しいと信ずる陣営にその庇護を求むるの自由を獲得したと断ずべきであります。はたして現実がこの段階まで来ているかどうかを、私はどうして総理の口を通じてお聞きいたしたいのであります。首相をして單独講和を余儀なくせしむるものはたれぞ、憲法の精神を蹂躙するものはたれぞ、エデンの花園を侵略せんとするものはたれぞ、これを国民の前に率直にお示し願いたいのであります。  第二は、現在日本の置かれておる占領下という特殊の態勢にあつて、はたしてこの單独講和論が妥当であるかいなかということであります。日本を占領いたしております主体はもちろんアメリカでありまするが、このほか、日本を管理する最高機関の中にソ連邦もまた含まれておるということであります。日本は米、英、中国に降伏するとともに、ソビエトにも降伏して、ポツダム宣言の條項を無條件に受諾いたしているのであります。従つて日本は、日本占領の実勢力たるアメリカを初め連合国に対し最大の信義を盡さなければならぬとともに、ソビエト、中国に対しましても、日本が降伏している事実と相反する行動をとることは、断じて許されないのであります。従つて日本が一方の陣営に協力することは、他方に対してポツダム宣言條項の違反になることなきやを、私ははなはだおそるるのであります総理が施政演説において、国際連合に対し可能なる範囲においてこれに協力することはきわめて当然であると信ずると極言されたその協力が、いかなるものをさすか。ここにあえてポ宣言を踏みにじつた行き過ぎがなきやいなやを私は率直に御回答願いたいと思うのであります。もちろん私は、広い意味におきましても連合国軍が占領目的に沿うてとられるその処置に対し、あるいは指示、命令に対し、被占領国日本が協力することは、当然の義務であると信ずるのであります。しかし、みずから進んで自律的に日本意思によつて一方に協力することは、ポツダム宣言の違反なりと断ぜざるを得ないのであります。  もう一点つけ加えてお伺いいたしたいことは、総理大臣の言われる單独講和論は内閣の一致した意見であるかどうかということであります。総理は、全面講和や永世中立の議論は共産党の謀略に陷る危險千万の思想であると言われたのでありまするが、矢野文相は、平和問題談話会のメンバーとして、全面講和、中立不可侵、軍事基地絶対反対の決議声明に署名し、「世界」四月号に書いた「永久平和への熱願――死して生きる覚悟」にもこれを強調されているのであります。これをもつてすれば、天野文相もまた危險千万な思想の所有者といわなければならぬのであります。この危險分子をみずからの閣僚となし、文教の最高長官にすえられたるの矛盾は、国民のとうてい納得し得ざるところであります。講和問題という重大な問題に対し、よもや天野文相が、野にあると台閣にあるとによつてその主張を豹変されたということは考え得られぬのでありまして、この点に関し、総理大臣並びに天野文部大臣の明確な御答弁によつて国民の疑惑を一掃されんことを切望する次第であります。特に文相には、あわせて教職員の政治活動を禁止する意思ありやいなやを伺いたいと存ずる次第であります。  次に地方財政について若干お伺いいたしたいのであります。現在国税においてなお一千余億の滞納あるを初め、地方税においてもそれぞれ滞納の重積していることは、蔵相の十分承知せられておるとろであります。私は町村税の納税実績調査を行い、六月末現在において四割、三割、五割という未納町村がざらにあることを知つて国民生活窮乏が想像以上に逼迫しているのに、まつたく驚愕いたしておるのであります。こうした現状に対し、この新しい地方税法を施行する場合、その結果がどう現われるかは、もはや説明の余地がないのであります。政府の原案が実際に実施されたものとして、これを人口約一万内外の町村に計算してみましたところ、昭和二十四年度に比較し、住民税において五・二倍、固定資産税において五・五倍という平均倍数を見るに至つたのでありまして、これを全国的に集計してみた場合を推定すると、われわれはどうしても政府の説明を納得することができないのでありまして、この点に関し蔵相の具体的な御説明をお願いいたしたいのであります。  現在の所得税が、地域、気候等の自然現象を度外視いたしまして、同比率によつて課税されている矛盾と不公正は、もはや論ずるまでもないところであります。これに対し、積雪寒冷地帯の一道十一県が主唱者となり、積雪寒冷に基く生活損耗並びに事業増嵩経費を、行政処置により所得税においては特別控除をなし、地方税においては固定資産税において係数を十五、倍数において八割に低減せられんことを国会に提出し、第七国会においては衆参両院において全会一致可決いたしたることは、自治庁長官も十分御存じのはずと信ずるのであります。しかるに、このたびの地方税法案に、この決議の趣旨がいささかも現われていないのは、国会決議を軽視した不当な処置と断ぜざるを得ないのであります。これに対する地方自治庁長官の明確な御言明をお願いいたしたいのであります。  次に、労働政策について一言お伺いいたしたいのであります。失業対策については、すでに労働大臣より繰返し承つたのでありますが、私はどうしても納得できぬのであります。失業対策としての基本をなすものは、失業者の実態を把握することが第一の先決條件であります。これに対する労相の数字の示し方がどうも承服できぬのでありまして、願わくは失業者を分類して農業失業者、商業失業者、雇用失業者というぐあいに御提示願いたいのであります。しかも商業、農業の中には、表面家族従業者の形をとりながら、実質は失業者である、適当な就職の口がないために、余儀なく親兄弟に寄食して農業、商業の無報酬従業員となつている者が実に多いのであります。これらは失業保險の恩典にも浴せず、実に精神的には悲惨なる暗い生活を続けているのでありまして、かようなものを放任した失業対策などというものは、真に浮き上つた対策と言わなければならぬのでありまして、これらの潜在失業者だけでも約一千万人に近いものと推定されるのでありまして、これに対する責任ある数字を、どうぞ労相よりお示し願いたいと思うのであります。  第二にお聞きしたいことは、政府が一枚看板のように宣伝される一千億の公共事業費をもつて失業対策とされるということでありますが、これだけの費用でこの厖大な失業をまかなうことができるかどうか。あるいはまた、その一千億の公共事業費の具体的な使用方法、救済方法についてお伺いいたしたいと思うのであります。  次に農林大臣にお伺いいたしますが、国民所得のわずか二五%をもつて人口の約五割を養つておる農村こそ、日本経済自立の最大弱点であります。吉田内閣一年有半の批政により、農村はすでに救いがたい転落の淵に投げ出されておるのであります。こうした重大なときに廣川農相を迎えたことに対し、農民は、はなはだ残念ながら危惧の念を抱いております。  まず第一にお伺いいたしたいことは、昭和二十六年度農村予算編成方針の大要であります。従来の自由党農業政策をもつてしては、農村はどうしても立ち上れないのでありまして、この際は少くとも工業第一主義の伝統的政策に並立する農業第一主義の二元論を基調として、農地改革食糧増産、農村人口の解決に抜本的な施策をぜひともお願い申し上げたいのであります。  第二に、食糧自給の最も可能な処置は、單作地帯の二毛作化にあると信ずるのでありますが、この單作地帯の土地改良について農相の具体策をお示し願いたい。  第三に酒類の密造についてでありまするが、このために消費される米穀は概算三百五十万石と推定されるのであります。この厖大なる数字を放任して適正なる食糧計画を論ずることは不可能と思うのであります。この密造の主たる原因は、一に酒税の高率にあるのでありまして、神代の昔より……
  52. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 小林君に申し上げます。時間が参りましたから結論を願います。
  53. 小林進

    ○小林進君(続) それでは結論に参ります。――神代の昔よりお神酒を召し上らぬ神様のない酒と生活の国民生活から見て、酒税は断じて他の国とはこれを同一に論ぜられないのでありまして、酒税についての蔵相の見解、密造防止についての農相の具体策をお伺いいたしたいのであります。  第四は報奨物資の措置についてであります。報奨物資の損失補償法案の行方はどうなつたか。これを早急に解決する意思ありやいなや、お伺いいたしたいのであります。  まだ厚相あるいは法務総裁にお伺いしたい質問がたくさんあり、わざわざお待ちを願つておるのでありますが、不幸時間がありませんので、これで失礼をいたします。     〔国務大臣吉田茂登壇
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。全面講和、單独講和論については、ずいぶん時間をとつて説明をいたしておりますから、さらにこれに加えませんが、しかしお話の要点は、單独講和はポツダム宣言の精神に反するじやないかという御質問のようであります。また朝鮮問題に関して、国連の態度、政策に協力することもポツダム宣言の違反ではないかという御質問と思いますが、ポツダム宣言なるものは、要するに平和の増進であり擁護であります。ゆえに、全面講和であろうが單独講和であろうが、一種の平和の増進でありますから、これはポツダム宣言の精神に反するものとは考えられないのであります。また国連の平和擁護の政策に協調いたしたから、あるいは協力するという態度を新たにしたとしても、これがポツダム宣言の精神に違反したとは言えないと私は断言いたします。(拍手)     〔国務大臣天野貞祐君登壇
  55. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 御答弁いたします。  私は、自分の願望を語らしむれば全面講和であるということを述べたことはありますけれども、全面講和ができない場合にも單独講和をしてはいけないということを述べたことは一度もございません。  第二に教員というのも一つの社会的な身分であつて、その教員のあり方について何らかの制約が伴うということは当然のことで、論議を要しないことと思います。     〔国務大臣保利茂君登壇
  56. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。失業者の数を正確に捕捉することはきわめて困難でございまして、特に潜在失業者の数を捕捉推定いたしますことは不可能であると存じます。政府総理府統計局並びに労働省の機関を通じまして、先般川崎君にお答え申し上げました通りの大体の失業状況の趨勢を捕捉いたしまして、これに対処いたしております。この今後の対策につきましては、今後の失業情勢にも応じまして、政府といたしましては十分対処して行くつもりであります。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇
  57. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 小林君にお答えいたします。  二十六年度の農林行政の計画の要綱を示してもらいたいということでありますが、今具体的に示す準備をいたしておる最中でございます。  次は土地改良等に対してのお話でありましたが、先ほども申し上げました通り土地改良に対しましては、どしどし予算の許す範囲において国費を投入する考えであるのであります。  それから酒の密造についてのだんだんのお話でありますが、これは大蔵省並びに経済調査庁その他と相談いたしまして、なるべくこれを防ぐように努力いたしたいと考えております。  報奨物資の件は、速急に出すように目下大蔵省とも了解済みでありまして、なるべく早く出すようにいたしたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇
  58. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  地方税が非常に増徴になる。すなわち、お言葉によりますと五倍あるいは六倍に上るというようなお話でございますが、これは特殊の場合にはそういうこともございましよう。しかし全体としては、そういうふうには上らぬことに相なつておるのであります。詳しくは委員会でお答えしてもよろしゆいございます。  次に積雪寒冷地帯につきまして所得税の軽減をやるべきだというお話でございます。積雪地帯、寒冷地帯につきましても、また暖かいところにつきましても、所得税は收入金額から所得を得るに必要な経費を控除することになつておるのであります。非常に雪が多かつたり、そうして被害をこうむつたときには、災害として引いております。お話のように寒いところの人の所得税を軽減するということになりますと、暖かいところの人の所得税を増徴することに相なるのであります。こういう例は外国にございませんので、まあわが国の特殊事情と言えば言えるのでありまするが、ただいま政府においても検討をいたしておるのであります。  第三に酒造税の問題でございますが、来年におきましては所得税をまず第一に軽減いたしまして、そうしてその次には酒造税あるいは物品税の軽減に当りたいと考えております。(拍 手)
  59. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) この際小林君にちよつと申し上げますが、岡野国務大臣は渉外用務のため退席されましたので、同大臣の答弁は適当の機会に願うことにいたします。  世耕弘一君。     〔世耕弘一君登壇
  60. 世耕弘一

    ○世耕弘一君 私は、時間がありませんから、ごく簡單に要点を数点述べて、総理並びに関係大臣から御答弁を願いたいと思うのであります。  首相が、このたび七万五千の警官の増員と、八千名の海上保安隊員の増員を明示されたことは、本議場で承知いたしたのでありますが、これは時局柄まことに適当な処置だとわれわれは考えるのであります。むしろおそきに失するような感がある。しかし、これが装備についていかなる整備をなすかを、さしつかえない範囲において私は御発表願いたいと思うのであります。  なおこの際、現在の装備の状況はどうであるか。最近の警察力は非常に低下しておるように思われる。警察隊員その他の装備の欠陷による能力の低下であるか、あるいは警察隊員の素質の低下にあるかということが問題になろうと思うのであります。この点について関係大臣の御答弁を願いたいと思います。私は警察官並びに保安隊員の増員がただちに警察力の増加とは思わないのであります。すなわち、現代的な、機動的な装備の完備こそ警察力の充実を意味するものだと思うのであります。この点について関係大臣の御所感を承りたいと思うのであります。  なおまた装備については経費が伴うのでありますが、現在の行き方にいたしましても数百億の費用の支出を要すると思うのでありますが、この点に関して、大蔵大臣は他の議員からの御質問に対して御答弁がなかつたようでありますが、少くとも総理から増員の数を明示された以上、心構えが━━予算の上について概算でも説明なさることが当議場に対する儀礼である、私はかように思うのであります。この機会に御親切な御答弁を願いたいと思うのであります。  要するに、機械化を実施するか、増員の形をとるかという問題は、一つの例をとつてみたらわかると思う。これは悪例として非難を受けるかもしれませんが、一万人の暴動に対しで一ちようの機関銃、一台の戰車が臨めば鎮圧される例は幾つもあるのであります。ところが、ただいまのような二尺足らずのこん棒で、はたして今日暴動の起つた場合対策ができるかということは、いやしくも治安を憂える者のひとしく考えることであろう、私はかように思うのであります。  ただいま各国の動乱の状況を見ますると、スパイ戰術とゲリラ戰術が横行しておるのであります。国民生活の根幹を破壞し、政府の転覆あるいはその他の手段を用いる方法として、交通、通信、動力源の破壞ということは、各国の動乱につきものであります。現在の日本の警察力と海上保安隊によつて、もしこの治安が侵された場合に、はたして防止する可能性があるかということの力強い政府の御答弁を得たいのであります。治安は、要するに未然に防ぐということが大切であります。動乱が発生して後に鎮圧していただいても、それは効果はありまするが、第二義的のものであります。われわれの望むことは、かくのごとき動乱を未然に防ぐというところに、警察力の偉大さを求めるものであります。  次に綱紀粛正と亡国思想に対する首相のお考えを伺いたい。現在ほど綱紀、官紀が紊乱したことはないと思うのであります。各官庁の首脳者が犯罪行為によつて逮捕される状況は逐次増加しております。まことに遺憾千万であります。しかも官僚の横暴が、いろいろな会合において、遊興、はなはだしきは選挙運動にまでこの地位を利用するがごとき傾向があることは、もし国民がかようなことを実際に見聞きした場合に、その思想的に及ぼす影響の大なることを、私は特に戒心を加えたいと思うのであります。この点について総理のお考えを伺つておきたい。  次に文教問題について、さきに総理大臣が曲学阿世の大学総長のあることを指摘されたことが世間の話題となつております。私は、この総理の率直なる言に対しては双手をあげて共鳴するものであります。しかしながら、その後の措置について、いかなる御処置をなされたか伺つておきたいと思うのであります。最近国立大学では、学生細胞関係の学生が処分されております。この学生細胞を処分することは、場合によればいたし方ないと思いますが、その学生を指導する教職員の責任をどう処置なされておるか。これは新任ではあるが、硬骨漢をもつて自他ともに許されておる現文部大臣の御所信を伺いたいと思うのであります。ことに大学に無断で警察官を侵入させておるということが問題になつておるが、大学の自治とか、大学の自由とか論じられておる場合に、かくのごとき事態を引起した学校当局に対して、文部省はいかなる処置をとつておられるのであるか。聞くところによると、大学当局と事前に相談すれば、かえつて検挙に漏れるきらいがあるから、こつそりやつたというようなことをときどき聞くのであるが、さような事実があるのであるか。もしさようなことがあるとするならば、大学当局の不信任もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。文教問題は幾多の問題が起つておるのであります。たとえば標準教育費等に関する問題もありますが、文部大臣は何かこれについて大きな御抱負があろうと思いまするから、この機会に御説明を願いたいと思うのであります。  次に、六月の中旬に朝鮮の京城の軍法会議で死刑に処せられた一韓国女性は、米軍の憲兵司令官ベアード大佐の秘書であつたということが報ぜられております。また、さきの朝鮮進駐米軍総司令官ホツジ中将が帰国したら、かれの使つていた二十人名の召使のうち十九名が共産党員と判明して逮捕されたと報ぜられておるのであります。しかも憲兵司令官ベアード大佐の秘書は、報酬を北鮮側から、日本金に換算いたしまして数百万円提供されたということが暴露されております。また日本の学生の細胞運動に対して一日三百円ないし五百円の費用が提供されておるということも聞き及んでおるわけであります。現在日本の共産運動に厖大な資金が活用されておるということは、この一事においてもわかることと私は思うのであります。  私は、この機会にごく簡單に御参考までに、共産主義の一大指導者であつたレーニンの言葉を引用してみたい。レーニンの言葉の中に、われわれは虚偽、隠謀、法律違反、そうして事案隠蔽の用意なかるべからずということを示唆しておるのであります。(「その文献を発表しろ、何ページだ」と呼ぶ者あり)共産運動がいかなる指導のもとにあるかということは、この四点を考えれば、おのずから共産主義の内容は明らかになろうと思うのであります。これは私はここにでたらめを申し上げるのではありません。りつぱな文書により、文献によつて私は申し上げるのであります。ゆえに、いわゆる過激思想の対策に対しては容易ならざる政府の決意が必要であるということの一端をここに申し上げるにすぎないのであります。日本の諸官庁、あるいは学校は大学、中学、小学校に至るまで、特に国立大学方面においては細胞組織が徹底しております。しかるに、これが今日は地下運動と化しておるのであります。ゆえに、政府対策はよほど決意を要するということを私はつけ加えて申し上げたい。  最後に、吉田内閣は過般総辞職をしたように新聞に報道されております。もしこれが総辞職をされた結果第四次内閣が組織されたとするならば、私は、この機会に議会に信任をお問いになることが、政治道徳の上からまことに円満な処置ではないかとかように考えるものであります。この点について総理のお考えを伺いたいのであります。  共産党に対するいろいろな対策については文献の要求もあつたようでありますが、お入り用でしたら、もつと深刻な御披露を申し上げてもいいと思いますが、時間がございませんからこの程度にいたします。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  警察増強の問題につきましては、今政府はしきりに研究いたしております。これは單に治安問題のみならず、あるいはこれによつて、さらに警察国家というようなうわさの立ちやすい問題でもあります。また再軍備というようなうわさも立ちやすい問題でありますから、はなはだ微妙な問題として、政府はその組織その他についてはしきりに研究いたしております。その研究の結果成案を得ましたならば、さらに御披露いたすことにいたします。官紀の弛廃については、今御指摘のありましたような事実がしばしば現わるるので、政府といたしては、はなはだ憂慮にたえないと考えておりますが、官紀の粛正についてはますます考えるつもりであります。  それから曲学阿世の問題は新聞に出ましたが、これは新聞の記事でありますから、私は責任を負いません。文教の問題は文部大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣天野貞祐君登壇
  62. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) お答えいたします。  学生の中に学校の規律を乱したり秩序を乱したりする学生のおることは非常に遺憾とすることでございますけれども、しかし、それを一々教授の責任だといつて教授の責任を問うというわけには行かないと思います。今の時世でありますから、そういう学生がおるということも、またいろいろよんどころない点があつて、すべての責任を私は教授に帰するというわけには行きませんけれども、よく教授その他とも相談をいたしまして、そして――先ほども申しましたことですが、学問研究というようなものを奨励して、そういう学生を、どうか間違いのないようにいたしたいと努めております。  それから第二の標準義務教育費に関する法案につきましては、私はこういう標準義務教育費を確保するということは、ぜひとも必要だと考えております。今その点について研究をいたしております。  それからまた大学に警察力が入つたということは遺憾なことでございますけれども、これは純然たる一つの刑事事件でございまして、私は学長方に対して、大学の管理については一層注意をいたすよう申しておる次第でございます。お答えといたします。(拍手
  63. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会