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1950-07-15 第8回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十五日(土曜日)  議事日程 第三号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  議員請暇の件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時十一分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) お諮りいたします。議員二階堂進君から、立法制度調査研究につき渡米のため本日から本会期請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。川崎秀二君。     〔川崎秀二君登壇〕
  6. 川崎秀二

    川崎秀二君 私は、国民民主党を代表いたしまして、吉田内閣総理大臣施政方針演説に対し総理並びに関係閣僚総括的質問を行わんとするものであります。  参議院議員選挙後、わが国内外の情勢は著しく変貌を来し、講和問題の進展、共産党幹部追放問題を経て、最近隣邦韓国北鮮軍侵入を受けるに至りまして、わが国を囲繞する四辺の情勢は、まさに終戰以来最初の重大なる異変に包まれているのであります。このことは、世界のいずれの国にも劣らぬ平和国家たることを最高理想とする日本にとりまして。試練の日が眼前に迫りつつあることを意味するのであつて、このときこそ、一国を率いて立つ総理大臣は、世界平和に対する燃ゆるがごとき熱情と、遠大雄渾なる抱負と、その根底をなす経済自立について具体的な解決策を吐露すべきであつたにかかわらず、昨日の施政方針演説国民の心底をゆすぶる共鳴を感じさせなかつたことは、はなはだ遺憾にたえません。(拍手)  私は、朝鮮問題突発の寸前まで、国民最大関心事が、講和條約の締結と、その内容に対する検討に隻中されていたこと、また現在も朝鮮事変の進捗につれ、当時とは異なつた角度から早期講和、あるいはこれにかわる措置についての関心が依然として強いことを指摘するものであります。特にダレス氏の来訪以来、講和問題の論議は、全面講和單独講和かという講和形式論ではなく、講和内容、すなわち日本安全保障問題を中心とする検討に移つた感じがあります。今日わが国におきまして、依然として講和の形式問題について單独講和全面講和の両論が大きく分裂をいたしておりますることは、その端緒を開いたものは何であつたにせよ、すこぶる遺憾なことであります。  もとよりわが国は、新憲法において戰争を放棄したる非武装国家でありまして、しかして永久の平和国家をもつて理想とするものでありますから、国民大多数の理想全面講和の達成にあることは原則として当然であるべきで、極東十三箇国あるいは多数の関係各国が、講和條締結の必要を認めて相互に会談と討議を行い、これによつて最終的な段階を迎えるまで、わが国としては新憲法の精神に即し連合国全面講和への努力を要請することは、断じて間違つてはおらないのであります。(拍手)もとより情勢は著しく変化を遂げております。講和の遷延を不可とする多数の国家との早期講和は考えられることであり、これを拒否すべき理由はありません。しかし、先般来朝したダレス外交顧問と、わが党苫米地委員長との会見の際も、ダレス顧問もまた全面講和へのアメリカの努力を言明して、善意にして忍耐強きアメリカ世界政策を示しておるのであります。われわれ日本国民の大多数は、明らかに共産主義者の挑発による世界的規模の騒乱と行動を目のあたりにして、これこそ世界平和を阻害するものと感じております。しかして、明白に議会政治の真髄こそ、暴力革命の排撃に立つ西欧デモクラシー思想を擁護せんとするものであります。にもかかわらず、われわれは講和條約を前にして特定の一国を対敵国として考える立場にはないことは、はつきりと銘記しなければならぬのであります。(拍手)  施政方針演説において、吉田総理大臣は、国民関心日本安全保障にあることを説いておられます。この点はまさにその通りでありまして、講和会議基本的な條件は、條約後に来るべき日本安全保障である。これこそ国民の最も聞かんとする切実な問題であります。施政方針演説並びに首相談話などが、最近あたかも国際連合の手によつて日本の安全を守られることが望ましいというニユアンスを受け、またそのごとく伝え聞いているのであります。これは向米一辺倒アメリカ一国の軍隊の駐兵を希望した、かつて首相の言辞から、やや転換した感じであり、確かに国際連合への加入による集団保障の形式は考慮さるべき一つの対象でありましようが、政府はこの場合、前途幾多の起伏があることを予想しつつも、これをもつて最良の道として考えておられるのでありましようか。いずれにしても、これらに関し政府は明快なる方式を示唆すべきものと考えるのであります。  また朝鮮事変突発以来、講和條約そのものは遠のいたという観測も、国際間にかなり有力に行われております。朝鮮問題の未解決のまま連合国が対日講和條約を促進して、いかなる処理をするであろうかということは、これまた日本国民の最近のきわめて緊迫した情勢に処しての表情であります。最近の情勢に即して、講和條約にかわる何らかの措置、たとえば戰争終了宣言や、その他のいわゆる中間的な措置も有力に伝えられている折柄、首相早期講和條約の確信を披瀝されているが、その根拠とするものを具体的に明示願いたいと思うのであります。  次に総理大臣は、早期講和の実現について政党の一致協力を説き、小異を捨てて大道につくことを要望されております。これは参議院議員選挙後にわかに政府側から叫ばれた超党派外交を示すものと思います。超党派外交は、過ぐる第七国会の終末にあたりまして、吉田内閣不信任案提案理由説明に立つたわが党の苫米最高委員長が、吉田内閣の内政を糾襌しつつも、外交のことは政争の具に供すべからずとして、その超党派的取扱いを提唱したことに始まるのであります。不信任という政党間における最悪的対立のさ中におきましても、わが党は、外交問題の処理に対しては内政問題と明確に一線を引き、国家、民族将来の運命を第一義的に考慮して、かかる提唱を行つて来ているのであります。(拍手)しかるに、最近これに対し、吉田総理大臣はしばしば、超党派外交はしろうとの議論であり、何のことやらさつぱりわからぬ、勉強が足りないから、かかることを言うのだと揶揄したり、笑殺しておつたものでございます。しかるに、いかなる御心境の変化でありましようか、参議院議員選挙後、政府側より超党派外交が叫ばれ、吉田首相、芦田前民主党総裁との会談が行われ、幣原議長の老躯を押しての熱意ある行動となつて現われるに至つたのであります。われらは超党派外交の必要を感ずるがゆえに、既往をとがめず、率直にこれを受入れるものでありまするが、一体超党派外交の主軸となるべき総理大臣は、本心からこれを叫び、熱意を傾けて行動されておるのか。最近の言動のごとき、はなはだ疑問に思わざるを得ないのであります。(拍手)  もちろん超党派外交は、ひとり日本に始まるものではありません。ことにアメリカにおける民主、共和の両党は、一九四四年のダンバートン・オークスの会議以来、幾多の国際條約の締結や、国際会議において密接な協力收めております。イギリスでも、戰時中の連合内閣はもとより、戰後国内の経済社会問題ではげしい対立を示しておる保守党と労働党が、対米外交対ソ外交に対する外交政策一貫性国家的見地から認識し合つて外交政策の手法についてはそれぞれ異なつた色彩を持ちながらも、外交基本、大筋において、多くの場合超党派の支持を與えつつあることを、われわれは見のがしてはならないのであります。  元来超党派協力なるものは、反対党すなわち野党としては政治的誤謬であり、得策ではないという説も、アメリカ共和党の中に有力であります。しかしながら、ヴアンデンハーグ氏やダレス氏が、これはノーマルな時代のことであつて、現在並びに今後数年間は、アメリカ外交政策はその主要な面で統一を確保する必要があるという見地からこれに協力している点は、占領下にあるわが国としては最も耳を傾けなければならぬ方式であつて、特に国民の待望久しい講和を控え、外交政策政府の更迭することに著しく変化することは断じて避けなければならないのであります。  外交政策一貫性と、国論の動向の大同的帰趨を目ざして発足すべき超党派外交に対しては、政府は虚心坦懐、謙虚な態度をもつて当り、最初から政府の結論を押しつけるがごとき高飛車な態度では断じて成功するものでないにかかわらず、過ぐる十一日の記者団会見における吉田首相談話と昨日の演説は、他党に挑戰し、みずからぶちこわしの態度に出たものとしか受取れないのであります。(拍手)すなわち総理大臣は、全面講和永世中立はから念仏である、社会党の内部には共産党の分子がいる、共産党の謀略に陷らんとするところの危險なる思想である、これが首相協力を求めておられる相手方に対して放つた言葉であります。超党派外交の法衣の袖から、独善われに続けというよろいが見えるのでは、だれがまじめに耳を傾ける者があるでありましようか。(拍手一体総理大臣は真劍にこれを考えておるのか。みずからイニシアチーブをとつて当る熱意なくして、何でこれができるか。私は、これらの点に関し、首相の率直にして偽らざる本心と、もしこれをやられる場合においては、どんな構想を持つておられるか、これをお伺いいたしたいのでございます。  さらにこれと関連をいたしまして最も不可解なことは、超党派外交さき内閣改進問題に関連して政府の一味がしきりに利用したことであります。ことに参議院に多数を占むるための緑風会工作や、はなはだしきは、さき不信任案を提出したわが党の與党化工作関連を持つがごとき、不純なる印象を国民に與えたことは、政治の公明をとうとぶ吉田首相としては、はたしていかがなものでありましようか。ましてや閣僚のいすを空席にして、これがあたかもわが党との連立工作の前提を意味するがごときは、明らかに公党に対する侮辱であります。迷惑これに過ぐるものはない。高潔なる吉田首相は、よもやこれらの問題とは御関係がありますまいが、この際政治明朗化のため、明快なる回答をほしいのであります。  次に私は、不幸なる隣邦の紛争に対する政府所信総理談話に対し、一言その真意を伺わんとするものであります。去る六月二十五日、北鮮人民共和国の軍隊は、国境を越えて韓国侵入するに至り、韓国北鮮人民共和国とは、ここに民族の血を一にしながら干戈をもつて交わるという悲劇を展開するに至りましたことは、これにより起る国土の荒廃、無辜の良民の死傷等に思いをいたすとき、隣邦としてまことに痛惜の念にたえません。一日も早くその紛争の解決を祈らずにはおられないのであります。そうして今回のことは、いずれも相手国が侵略の火ぶたを切つた、こう宣伝しております。しかし、自由にして広汎なる世界情報網の伝うるところによれば、大規模の侵入北鮮軍によつて計画されたことは明らかであり、北鮮軍は平和を愛する国際連合停止命令をも開かずして越境侵入を続け、遂に国際連合安全保障理事会の決議により軍事制裁を受くるの立場至つたのであります。  日本は、新憲法により明らかに戰争を放棄している国であります。戰争に超越すべき立場にある。戰争に介入すべき国ではありません。ただしかしながら、われわれは平和を愛するがゆえに、正義と人道と條約を蹂躪する不法の行為に対しては、これを排撃することに断固たる信念を吐露すべきでございます。この点、昨日の吉田総理大臣演説に対し私は賛意を表するものでございます。  平和を愛する国際連合は、安全保障理事会において八対零の警察行動発動の決議をなし、特にいかなる世界戰争にも今後は絶対に不介入であるという立場をとるところのインドのネール首相がこれに参加していることは、国際連合行動がすみやかに北鮮軍の三十八度線への後退を目標とし、その達成後は和平措置に出でんとする前提行動であることが圧倒的に世界共鳴を呼んでいることと私は信ずるのでございます。しかし、私がここでお尋ねしたい点は、積極的には参加はしないが、あとう限り協力するとは、一体何を意味するのか。進んで戰争の渦中に入るようなおそれがある行動は絶対に避くべきであります。さらにまた、いやしくも朝鮮問題はわが国にとり好影響であるなどという先般の首相談は、隣邦の不幸を対岸の火災視するなと言いながら、実に不謹愼きわまる言辞ではないかと思うのであります。(拍手)  朝鮮問題突発以来、国内の人心は異常に緊張をいたしております。この内外の重大時局に際して、吉田首相日常行動は、必ずしも国民によい心証を投げてはおりません。マツカーサー元帥日夜軍政務に精励し、身をもつて戰地との往来もされている。この問にあつて、老躯ではありましようが、首相には多少御反省を願うべき筋があるのではなかろうか。衆議院の外務委員会は第七国会において十七回も開かれておるにもかかわらず、外務大臣の出席はわずか一回である。かくては、講和を控えて日本国民の願望であり関心の的である外交政策に対する国会論議はきわめて低調となるを免れず、政府の責任ある所信も聞かれないではないか。この際首相専任外相設置方針をとつてはいかん、明快なる答弁を望むものであります。  次に、私は国内問題につき質問をいたしたいと思います。内政問題の最重要問題である金融政策の転換について、昨日の施政方針演説は何ら触れるところがございませんでした。單に財政金融の調和をはかるとのみうたつたのは、国民の目を外政にそらして、目下の国内経済問題最大の苦悩をおおわんとするのではないかとさえ疑われるのであります。金詰まりの声を聞くことすでに一箇年半に及んでおりますが、その声は解消するばかりか、ますます深刻となり、過去一箇年間相当企業整備が行われましたが、近い将来再び企業の倒壞が続出する危險は十分に予想され、深刻なる情勢を引起しているのであります。ことに、去る五月の日銀の対民間融資引締めの政策採用以来、これまで日銀貸出しでともかく息をついて来た民間金融機関は、その糧道を大きく抑えられる結果となつたのであります。このままで行けば、民間金融機関による企業融資は今後一段と逼迫化し、金詰まりが急速に新たな金融梗塞の段階に突入することは明らかであります。これは昨年ドツジ・ラインに基いた二十四年度予算の超均衡予算の実施によつて財政面における政府資金引上げ超過は、二十四年度六百二十五億に及び、その財界に與えるところの影響の大きさを考慮した日本銀行が、貸出しの増大をもつてこれを緩和する政策を実行しておつた。その実行しておつた政策を五月に至り違に変更するに至つたところに大きな原因があります。言葉をかえて言えば、日本銀行は、政府のしりぬぐいは、もはやごめんをこうむるという態度をとるに至つたのでございます。  昨年は、ともかくも日銀の信用放出によつてささえられていた梗塞が、過去一箇年の貸出し政策の結果、民間金融機関、特に市中銀行資本構成に著しい変調を及ぼしました。全国銀行勘定に見る預金増加は、本年四月に終る一箇年において三千十三億に対し、貸出しの増加は三千五百億、すなわち貸出しの増加預金増加を一割七分も超過する不健全さであり、かかる貸出しの内容が悪化しておる状態では、日本銀行が勢い引締めを断行しなければならなかつたのも必然の帰趨であります。  しかし、この深い原因こそは、超均衡予算の実施並びにドツジ・ラインのいささかの修正をも懇請しなかつた金融財政の分離という政策にその根がきざし、池田財政の致命的な苦悩と申さなければなりません。通貨は現に三千億すれすれであり、また八月以降地方税徴收開始、肥料、鉄鋼の補給金が廃止され、さらに過年度分の税金の滞納は一千二百億を越えておると思いますが、この徴收が強行されるならば、政府資金のおびただしい吸上げとなり、ここにデフレ恐慌は必至と見なければならぬのであります。この現象に対し、大蔵大臣はいかなる手を打とうとしておるのか。これをしも池田大蔵大臣はデイスインフレと呼ぶのでありましようか。また日本銀行と見解を異にして、財政金融の調整がはたしてうまく行くであろうか。私は池田蔵相の従来の楽観説に対しこれを肯定するわけには参らぬが、金融政策全般にわたる蔵相所信を述べられたいと思うのであります。  元来、現内閣財政政策はマネタリー・スタビリゼーシヨンに堕しておる。すなわち、通貨の安定のみを重大視し、産業助成による経済復興構想を捨てて顧みない。経済政策基本をなす金融政策が弱肉強食の自由資本主義に立脚していることと、経済安定の犠牲を農民や労働者中小企業者に対ししわ寄せをしておることは、われわれがしばしば指摘した通りでございます。單に自由経済に復帰することをもつて金科五條とするならば、戰前においてもそうであつたように、それは自然に農村の不況を呼び、中小企業の不振を招き、失業者の激増を見ることは必至であつて、これこそ自由経済固有の疾患と申すべきでありましよう。従つてわれわれは、資本主義計画性を與え、公共性社会福祉性を中軸とし、その大わくのもとに自由なる経済活動を促進することが資本主義経済の新たなる進路であり目標であると主張しているのであります。  しかるに、昨年以来の財経政策はまつた計画性を喪失している。安本五箇年計画の破棄といい、有効需要減退に対処する措置といい、はなはだしく成行きまかせであります。暗礁にぶつかつて初めて訂正するというやり方である。一貫した計画性を持たないところに真の国民生活の安定がはかり得るでありましようか。特に有効需要の振起に対し、政府はいかなる方途を持つか、この際明示されたいと思うのであります。具体的問題として次にお伺いいたします。本年度の債務償還千二百七十六億は、二十五年度予算の審議においてその繰延べを要求する声は、ひとり野党の各派だけではなくして、遂に輿論とまで化した問題であります。政府は、来年度予算では債務償還は行わない、こういうふうに内定しておると発表されました。しかし、この際私は本年の債務償還残額も打切るべきであると考えておるのであります。すでに、不測の事態とは言いながら、警察予備隊の経費は債務償還費の組みかえをもつて充当するものとマ書簡によつて指令されております。すでに債務償還費は絶対的に延期してはならぬという性質のものではなくなつた以上は、債務償還一般会計よりする分の残額はこれをとりやめ、警察力増強はもとより、中小企業倒壞防止を初め、地方税減税農村復興費の充実に振り向けるべきであると考えるのであります。(拍手蔵相は、この際面目にとらわれるときではありません。すでに二千億に近い預金部資金活用は、この際その資金運用の範囲を拡大して、建設公債はもちろん、金融債、社債を初め、公共企業債券への投資にも拡充すべきものであります。また余裕金を生じたときの金融機関への預託をも考えるべきであります。預金部資金活用円滑性を欠いたところにも今日の禍因があるのではないかと見ておるものでございます。さらに見返り資金残額使用についても一層迅速な措置が要望されるのであつて輸出産業の基幹たる船舶の金融に対する見返り資金活用がこの際最も望まれるところであります。蔵相並びに運輸大臣の見解はいかがであるか。これらを通じて、私は金融政策の転換、特に債務償還費の繰延べ、政府資金の迅速なる放出なくしては、十月デフレの観測は事実となつて現われるのではないかと憂慮しておるのであります。それは大正年代における爆発的なパニツクではなくしても、靜かなる恐慌の拡大によつて日本経済の機能を麻痺するに至るのではないかと憂えられるのであります。この際金融界の危機を乗り切るため、わが党は、日本銀行政策委員会大蔵当局を中心として各界の有識者を集めて経済会議を創設し、財政金融を調整することこそ必要であると考えるのでありますが、この建設的対策に対して、蔵相は明快なる所信を述べていただきたいと思います。今回の施政方針演説が、参議院選挙の際に発表されたいわゆる五大公約なるものに触れるところが少かつたのは、きつねにつままれた感がないでもありません。選挙の公約、特にあの際の具体的な約束でありまするから、常識として臨時国会に何らかの形で現わるることを国民は期待しておつたものであります。しかるに、輸出金融金庫の創設といい、中小企業資金対策といい、これは一体どうなつたのでありましようか。また昨日の総理大臣演説によると、官公吏給與ベースの改訂を約束されました。けつこうなことであります。しかし、これも一体いつから実施するのか、予算措置はどうするのか、少しも明示していない。この際最もはつきりしてもらいたい問題であります。過ぐる国会におきまして、池田大蔵大臣は、野党質問に対し、この問題に関する限りは、まことに見るも涙ぐましい勇壮な論議を展開しまして、公務員給與引上ぐべきではない実質賃金は向上しておる、消費者実効価格は下つているから、本年中は断じて上げる理由はないのだと言われたのであります。今回給與ベース改訂を認めたことは、公務員法制定の精神を尊重し、従来の説を訂正されたものと解釈いたしますが、それではたしてよいものでございましようか。今後人事院の再勧告がありました場合においても、またこれを尊重するものと考えますが、これらの問題の処理のため、当然ここに補正予算の提出は必至と感ぜらるるのであります。(拍手)新情勢にかんがみて、二十五年度総予算もまた補正予算の提出を伴うものと見られまするが、大蔵大臣ば近い将来補正予算国会に提出する意思はありませんか。五大公約関連して最も重大なる点でございます。次に、厚生、労働の行政は今日最も密接な関連を持つておりますので、両大臣にお伺いをいたします。失業状態は次第に重大化しつつある傾向であります。これを見のがすことはできません。さき労働省から発表されました失業の実相から見まして、完全失業者は今年四月五十万、全国の職業安定所に求職する人数は四月に百二十一万、そのうち未就職者は七十一万人で、その半数四十一万人が失業保險金でかろうじて生活しておる状態と言われます。そのほかに潜在失業者は八百万人に及ぶと言われておる。金融情勢の逼迫したこととともに、企業に対する重圧が加われば、新たな失業者の発生を見ることは避けがたい状況であります。保利労働大臣が、就任早々、これに応急手当として緊急対策費の繰上げ支給三十億を支出したことは一応の成果であります。しかし、問題はそれで片づいたのではありません。繰上げ支給後当然予見される不足と、本格的な失業対策を講ぜねば、社会不安の大きな種はここに爆発の危險を包蔵しておるものといわねばなりません。(拍手生産的施策としての公共事業活発化、あるいは緊急失業対策費の増額、あるいは見返り資金預金部資金の運用などということも考えられまするが、私はこの際臨時措置としての失業保險給付期間條件付延長をも考慮される必要がないかと思うのでございます。特に日雇い労務者待遇改善保險制度改善は目下の急務でありまして、輪番制となりました今日の日雇い労務者就職状況では、各地の日雇い労務者最低生活の線を割つております。危險なる思想を持たない者でも、生活苦のために矯激なモツブに出ないとも限らぬ情勢であります。またいま一点、最低賃金制の問題で伺いたいのでありまするが、最長労働時間、最低年齢制、しかして最低賃金制こそは、労働基準法を制定いたしましたときの三基本構想でございます。このトリオがそろつてこそ労働條件の規定が整備されるものでありまして、今日の状況は、まさに画龍点睛を欠いておるといわねばなりません。いわんや最低賃金制は、世界の五十三箇国までが今日これを採用いたしておるのでございます。エーミス勧告をまつまでもなく、インフレが終熄した今日では、これを断行すべき好機と信ずるのでありまするが、労働大臣のこれに対する抱負と構想はいかがなものでありましようか。單に審議会をつくるというようなことでなしに、政府の持つ構想をお聞かせ願いたいと思うのであります。次に、社会保障制度に関する国民有識層の関心が日に高まりつつある折柄、私は新しい厚生大臣に、その確立に対する信心と基本的な考え方を伺つておきたいのであります。もとより社会保障は憲法第二十五條による国民の権利でありますが、いまだにこの制度をもつて恩恵的な慈善施策の感覚をもつてする考え方も、相当有力な人々の間に沈澱をいたしておるのであります。アメリカの保障制度調査会の勧告によつてマツカーサー元帥は、日本における最高理想は社会保障制度の実現であるとされております。しかして、いわゆる揺籃から墓場までの安全感を確保するためには、国民をして困窮者の扶助、医療の公共化、公衆衛生の確立を初め、社会福祉の向上に努めることを将来の大理想として培養することが望ましいのであります。この意味で、日本の将来は、漠然たる文化国家ではなくして、むしろその実態は福祉国家を目標とすべきものではなかろうかと考えるのであります。(拍手)これは国民が社会連帯の観念に徹しなければ断じてこれを達成することはできない。またこれを通じて富の再分配をも断行する資本主義制度の修正された能率的な発展こそ、広汎な社会保障を実現するかぎであり、同時にいわゆる社会保障制度の行き過ぎをも是正し得るところの唯一の力と私は思うのでありますが、厚生大臣はいかなる見解をお持ちでございましようか。また現在審議会での試案なるものは、現実と理想を調和したものでありまして、この秋には、政府にこれの勧告があるものと私は考えております。そういたしますると、政府はこれを立法化する義務がありまするが、通常国会に上程する用意があるかどうか。この点をお伺いいたしておきたいと思います。またこの案による予算措置は、大略初年度経費国庫負担五百億、民間負担八百億と推定いたしておりますが、政府は、この点どの程度まで実現いたす気構えを持つか。またこれらの問題に関連し、七十年来の紛争を続けておりました医薬分業の問題も、当事者間に歩み寄りができたと言われまするが、漸進的解決の方途について政府はいかなる施策を用意されているか、あわせてお伺いいたしたいと思います。次に農業政策については、後刻同僚井出君より詳細な論議があると思いますので、私はこの農村不況の際における農林大臣の施政の骨子と心構えをお伺いいたしておきたい。昨年来、農業政策は明かに一貫性を欠いております。農業経営の方向においてまた食糧政策においてしかりであります。しかして税金の課税は迫り、農村建設復興の補助費はすずめの涙しか投下されておらない。この状態が続くならば、明らかに日本農村は経済安定のための最大犠牲者と申さなければなりません。昨年度の国民所得の面よりするも、農林業の所得は個人国民所得の二五%である。所得が二五%でありながら、これによつて扶養する人間は全人口の約五〇%に当るというありさまであつて、このことは勢い農民の生活水準が低下して行くことを免れないのであります。耕作面積に惠まれず、経営規模の縮小に苦悩する農民の姿は、日に深刻なる様相を呈しております。生産條件を改善するための土地改良、水利の開発、技術の高度化、機械化に対する投資はきわめて僅少であります。われわれは、ここに生産費を償うに足るところの米価のすみやかなる決定を要望するものであります。すでに賃金ベースの改訂は公約され、新たなる勧告も出ようとしておるというときに、何ゆえに米価だけがすみやかに改訂されないのか、非常なる疑問を持つところでございます。また、朝鮮問題以来一層その必要を痛感される食糧自給態勢の確立をどうするか。これらの問題について新農林大臣の抱負を聞きたい。給與べースの改訂であるとか、所管違いの仕事に飛びまわつたり、與党化工作に血道を上げるひまがあつたら、今やデフレと税金にあえいでいる日本農村復興政策に真劍に取組んでいただきたいと思うのであります。まず広川農政の輪廓なるものをここに御提示を願いたいと思うのでございます。私は最後に、今国会の唯一の重要法案でありまする地方税法改正案の内容と、これに関連して国会における審議権の自主性についてお尋ねをいたしたいと思うものでございます。わが党はさきに、附加価値税は、経済の安定を見ない今日、赤字企業への課税をも断行し、この税金制度は、さらに沒落、崩壞にあえぐ中小企業の倒産を招くものであるとしてこれに反対し、少くとも実施期間の一箇年延長、これにかわる事業税の改善、存続を主張し、前国会における地方税法案の否決後の情勢によつて政府修正案は、今偶然にもわが党の主張と接近し来つたのでありますが、政府は、世界で初めてのこの附加価値税のごときはさらに精密に調査をし、その実施時期に検討を加える所存はございませんか。一体政府は、何ゆえ来年一月一日を期してこれを実施しなければならないか。また固定資産税の倍率や税率は、税総額の捕促見込みによつてかわるものと考えまするが、建設的な修正には進んで耳を傾けるべきであると考えます。さて地方税法案の前国会の審議は、その終末期において、国会の審議権に重大なる拘束を受けたものであります。すなわち、国会法に明記されている、議員二十名以上の発議による修正案提出の自由までが不可能なる状態に追い込められたことは、国政運用の点において、ぬぐうべからざるところの汚点を残したものと言わなければなりません。昨年から経済政策においてしばしば修正案提出の自由が制限されつつあることは、第三次吉田内閣になつてからの不可解なる現象でありまして、二十四年度予算も、二十五年度予算も、あまつさえ地方税法案も修正が許されなかつたのであります。これはすべて政府の自主性なき経済政策の結果、累が遂に国権の最高機関たる国会にまで及んだものと確信してやみません。もとよりわれわれは、今日占領治下にあることを忘れるものではない。嚴として守らるべきポツダム宣言の履行はもとより、経済安定の九原則に対しても、われわれが連合軍特にアメリカの好意ある経済援助によつて今日あるを得ておるのであります。またそれが寛容にして善良なる占領政策の一部であるがゆえに、これに全面的に協力を惜しんで来たものではないのであります。しかしながら、九原則に立脚してその遂行を果すためのドツジ・ラインあるいはシヤウプ勧告などは、これらの基本方針に賛意を表するわれわれも、これが法案となつて現われた場合、いかにすれば国民生活に適合し、日本経済の実態に即応するかいなかという最後の判断こそは、われわれ国会議員の崇高なる役割であり、国民の負託に対する義務であり、日本国会に與えられた当然の自由でなければならぬと思います。(拍手)ましてや、国民の血に通う税金問題である以上、政府原案がいささかの修正をも許されないというならば、国家の存立意義は重大なる支障を来すものと言わなければならぬのであります。これらは、ことごとく、原案の作成に当つた政府が、シヤウプ勧告の線に沿いつつ、国民経済の実態と国民負担の軽減に思いをいたした自主性ある成案の確立に努めなかつたところに端を発しておると言わなければなりません。  ごらんなさい。参議院が、国民の中にほうはいたる法案反対の声を反映して、勇気をもつて地方税法案を否決した結果、情勢はここに変化を来し、現に地方税法案は修正されて国会に提出されておるではないか。参議院の良識と野党側の真摯な叫びが今日の地方税法案審議に変化を與えたものと断言してはばからぬ。それゆえに、あの悪税法の原案を前国会にそのまま通過させようとした政府は、この問題に関する限り、何の面目あつて今日議場にまみゆることができるか。国民に対し何のかんばせがあるでありましよう。  地方財政の確立を目途とするこの法案のねらいは、われらも、その本義に反対するものではありません。ことに、わが党の反対は無責任なる反対ではなくして、第七国会以来最も建設的な修正案を堅持しておるのであります。もしわが党の主張が通るならば、地方財政空白の折柄、一日も早く本法案の成立を望むものであります。断じて破壞的行動でないことは、五月二日、野党連合は、地方税法案否決の直後、現行法の提出をはからんとしたこと、地方財政空白に対する臨時措置として預金部資金と平衡交付金の繰上げ支給を政府に先んじて提唱いたしておるのであります。私は、第七国会から今回の修正案提出まで、しばしば言明をかえられたところの池田大蔵大臣は、今後一体経済政策の自主性ある確立をはかる決意があるか、その自信があるか、はつきりとお伺いをいたしておきたいのであります。  また最後に、このことが日本の自主独立への道について真の民主化をはかる基礎條件でもあると考え、あえて多数党の首領たる吉田総理大臣は、国会審議権の高揚についていかなる感懐と抱負を持つか、この際特に最後にお伺いをいたして、私の質問を終るものでございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  7. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  早期講和の確信いかんというお尋ねでありますが、これは今日在外公館等を持つておらない日本政府としては、單に新聞に伝わるところの事実をもつてお答えするよりしかたがないのでありますが、コロンボ会議以来、英連邦の外務大臣は、しばしば対日講和條件その他について、ロンドンその他において会合したということであります。また、これに基いてアメリカの国務省その他においては、しばしば対日講和條件について協議が行われた。またこの問題をめぐつてアチソン長官等がロンドンに行かれたというような事実を総合いたして、私は、講和は早期にできるものであろう、最近の動きが一層この確信を強めつつあるのであります。  また国連との関係、国連によつて国の安全を保障せしめるつもりであろうというようなお話でありましたが、私はそこまで申しておりません。国連は世界の平和を念とする、あるいは平和のために設けられた国際機関であり、従つて日本の安全についてもむろん考えておる一つの世界機関であると考えますから、日本の安全あるいは保障について全般考えのほかに置いておるとは考えませんが、今ただちに日本として国連によるとか、国連によつて安全を保障せられることを求めるとかいうことは、日本の現在の外交に対する発言権のない今日、私としては、外務大臣としてはお答えを差控えます。  超党派外交なるものは、お話によると苫米地君の御発案であるそうでありますが、まことにけつこうな御発案である。ゆえに、その趣旨について、われわれは毛頭異存はないのであります。私が申しておることは、超党派外交というよりは、早期講和のために国内態勢をすみやかに整頓すべしということを申しておるのであります。その中には、外交をどうか鬪争外に置きたいという観念ももちろんありますが、社会党の諸君は、同調しないということを幣原議長に回答せられたそうでありますから、社会党工作は一に苫米地君の御盡力にまちたいと思うのであります。また超党派外交をもつて政党に挑戰をいたしたというような気持は毛頭ないのみならず、従つてまたこれを與党工作に利用いたすという考えもないのみならず、施政の演説においても、與党工作のため、もしくは各政党に対して挑戰的意思をもつていたしたこともないということを、ここに断言いたします。  また国連との協力いかん、協力はどういう実質を備えるものであるかというようなお尋ねでありますが、国連は世界の平和を維持し増進する機関であり、その目的から、このたびの朝鮮事変に対処しているということであります。その趣意において、わが国としては、国民あげてその趣意に賛同すべきものと考えておりますから、その国連の行動国民は賛意を表するのみならず、その目的を達するように精神的に協力するが、積極的にわが国としては何らの行動を起す理由がないのでありますから、精神的に協力する、あるいはできる限りにおいて協力するという考えであります。  朝鮮問題、朝鮮事変のために日本は利益いたしたというか、喜ぶというようなことを私が申したようなお話でありますが、これはよほど趣旨が違います。朝鮮事変によつて日本の安全はどうして保障せられるか、国防のない日本がいかにして日本の安全を保障するかということが、国民の不安の中心であるのであります。しかしながら、朝鮮事変によつて朝鮮の一点において内乱が起つたと申すか、紛争が起つた戰争が起つた、これに対して、国連はこれを全然閑却いたしておらないのみならず、南鮮のために、あるいは三十八度線を守るために行動を起したということはまことに顕著な事実であり、この顕著な事実によつて、万一日本が同じような場合に際会いたした場合には、国連はもちろんのこと、世界の輿論も日本の安全を保障する、あるいは安全を保護するために協力するということがあり得る、また国民もそう考えて、日本の安全に対して国民の安心が非常に増加したのであろうと考えまするから、この朝鮮問題は、日本の人心に及ぼすところは非常にいい結果を及ぼした、こう申しておるのであります。  また、今日専任外相を置かないかというお尋ねでありますが、これは始終お尋ねを受けますが、専任外相は講和條約のできるまでは置く必要はないと考えるのであります。何となれば、日本外交は今日停止せられておるのみならず、外交と申せばすなわち内政であります。国内態勢を整えることがすなわち外交であるのであります。今日の外交において内政が最も大事な役割を勤めておるのでありますから、私が兼任いたすことが最もいいと考えるのであります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  8. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は、最近の金詰まり状況から考えて金融政策を変更する意思なきやという御質問でございます。昨年来均衡予算を編成し、これを実行して参りましたために、従来の日本財政とは違いまして、相当引揚げ超過になつていることはお話の通りでございます。昨年度も相当引揚げ超過になりました。本年度第一・四半期におきましても引揚げ超過になつておるのであります。今年度の引揚げ超過は第一・四半期におきまして三百四億円でございますが、これを調整するために日本銀行のマーケツト・オペレーシヨンその他貸出し政策によりまして、ちようどこの引揚げ超過を補つて日本銀行の信用供與は三百二億円と相なつておりまして、その差が二億円であります。  何ゆえにかかる引揚げ超過を起したかと申しますると、第一には、地方税法案が否決になりましたために、正常なる国並びに地方の財政の運営ができなかつたことであります。次には、法人税が予想以上に入つたということも感ぜられます。また第三には、金融情勢が、従来は四月には預金は減少するのでありまするが、五月におきましては相当預金増加するのが通例であるのであります。昨年は五月におきましては二百八十億円の預金増加でございましたが、この計画のもとに銀行は貸出しを計画して、それを実行したのであります。しかるところ、貸出しは実行いたしましたが、預金ば二百八十億円の十分の一足らずしかできなかつた。ここで一般産業界の金詰まりと同時に銀行界も金詰まりの現象を生じ、日本銀行が貸出しの増加をせざるを得なくなつたのであります。しかし、この傾向を長く続けて行くことはよくないという考えのもとに引締めにかかつたのであります。しかし、これは一時的な現象で、ただいまは引締め政策をとつておりません。かるがゆえに、昨年の六月は七百億円台の貸出しがあり、本年の六月は倍額の千四百六十億円になつており、財政の引揚げ超過を金融でぬぐつておるのであります。しかして、財政のしわを金融でぬぐうことはいやだという議論がございまするが、これはとんでもないことでございまして現下の状態では、財政金融が一体となつて産業資金をまかなわなければならないのであります。この点につきまして、大蔵大臣日本銀行との間にいささかの考え方の食い違いもないということをここで申し上げたいと思うのであります。  今後の見通しにつきましては、第一・四半期には三百億円の引揚げ超過になつておりまするが、今七月には大体二百数十億円の散布超過になる子守でございます。その原因は、平衡交付金を二百億円出すのみならず、預金部資金運用を初め、政府の支拂いを急速にいたしまして大体七月におきましては二百億円余りの散布超過を見込んでおります。しかして八月、九月の引揚げ超過を考えますと、第二四半期におきましては大体とんとんの計画であります。第三・四半期におきましては、御承知の通りに供米代金の支拂いその他政府安排いの増加によりまして相当の散布超過を見るようになつて越年いたします。そうして第四四半期にまた第三・四半期の散布超過の分を引揚げる、こういう段階になつて行くと思うのであります。  金融財政とが一体となつて運用せられるべきものでありますので、お話の通りに、金融界あるいは財界の人とひざを合せ、そうして今後の金融財政問題を審議するように、調査会と申しましては語弊がございまするが、私の相談相手になつていただく人を、ただいま選考いたしておりまするので、今後私の施策がうまく行くようにと一段くふうを凝らして行きたいと考えております。  次に債務償還の問題でございまするが、債務償還を打切つて地方税の軽減に充てる意思はないかというお話でございまするが、この税というものは国税と地方税を一体として考えてやらなければならぬ問題であるのであります。従いまして私は財政経済五公約と申しまするか、五政策、このうちに、来年度は国税と地方税をあわせて減税いたしたいと思います。少くとも国税におきまして七百億円という目標を立てておつたのでありまするが、私は、警察費等に費用がいりましても、また社会政策的費用を出し、いろいろな費用がありましても、でき得れば——七百億可の国税はお約束できるのではないかという考えを持つておるのであります。ただ地方税におきましては、これは所管が違いますので、今はつきりしたことを申し上げるわけには行きませんが、とにかくわが党の政策は第一に減税であるということはここに申し上げられると思うのであります。(拍手)従いまして、今年度におきましてしかも債務償還を減らして、ただいま地方税を減税するということは申し上げられません。私もこれは反対でございます。  ただこの債務償還費は、財政状況によりまして——来年度は一切しないのでありまするから、今年度も一切しないということは申し上げられません。すなわち五大政策を来年からやりまするが、今年からでもなるべくやつて行きたいという考えでありますので、あるいは既定の経費を節約するとか、あるいは状況によつて債務償還に手をつけることがあるかもわかりませんが、原則としては既定経費の節約によつて減税あるいは給與の引上げをはかる、しかし足らざるところは——何も債務償還費は絶対に手をつけるべきものではないということは、今度の警察費に出すことからお考えになつてもおわかりと思うのであります。  もともとドツジ・ラインというものは、あなた方がお考えになるほど非常なきゆうくつなものではないのであります。弾力性がある。それは昨年度におきましては債務償還を千五百億円やりました。今年度は債務償還を千二百億円、来年度はやはりドツジ・ラインに乗つてつても、一般会計からの債務償還は一切しない。債務償還をそのときどきによつて考うべきものであるのであります。給與の引上げもしないと言つておりましたが、あのときの状態ではできない。しかし、できるようになつたならばやるべきだ。これはやはりドツジ・ライン経済政策の一つでありますから、情勢によつてかわつて行くことは当然だと思うのであります。  次に預金部資金運用でございます。財政金融とを一体として取扱います場合におきましては、預金部資金並びに見返り資金におきましても、これを適時適切に使わなければなりません。しかして預金部資金におきましては、従来からこれを政府、いわゆる国の費用、あるいは地方債の費用、あるいは公団にしか償えないことに司令部の勧告がなつておるのであります。従いまして、預金部の金を政府並びに地方機関以外に出したのは、昨年の暮指定預金として使いました百億品に限つておるのであります。しかし、私は何とかしてこの預金部の資金運用し、金融の円滑化をはかつて行くべく努力いたしております。もしこれが国庫でないと使われない、地方団体でないと貸せないとすれば、見返り資金運用預金資金にかえても、できるだけ有効に使つて行きたいと今検討を加え、関係方面と折衝を続けておるのであります。  次に五公約の問題でございますが、先ほど触れました、あの自由党総裁としての吉田総裁の言は、来年度からあれを絶対にやります。しかし今年度におきましても、できるだけ早くやりたいと考えておるのであります。そのできるだけ早くやりたいというのは三点ございます。第一点は輸出金融金庫でございます。第二点は給與の引上げでございます。第三点は減税でございます。今年は、総裁の談話にありましたように十五箇月予算をつくることにいたします。前年と同様に、また前年よりも早く予算を編成いたしまして十五箇月予算をつくることにいたし、その十五箇月予算の場合には、輸出金融金庫も、あるいは給與の引上げも実行できると確信いたしております。しかし、この第八臨時国会において給與の引上げができるか、輸出金融金庫の御審議が願えるかということにつきましては、いましばらくお待ちを願いたい。日夜努力しておるということによつて御了承願いたいと思います。  なお補正予算の点は、先ほどお答え申し上げたと思うのでありますが、十五箇月予算をつくることにいたしました。給與の引上げが認められました場合におきましては、本国会補正予算を出すことになると思うのでありますが、ただいまのところ、補正予算は大体出しにくいのではないかと考えておるのであります。  なお船舶の建造について、どのくらい見返り資金を使つておるかというお話でありますが、昨年におきまして、船舶の建造に見返り資金から八十四億円出しております。しかして建造中のものがありますので、今年の予定は、八十四億円になお七十六億円を出す予定になつております。しかしてそれは、今建造中のものが七十六億円であります。新たに造船することになりますと、また数十億円出せることになると思うのであります。  以上お答え申し上げます。     〔国務大臣保利茂君登壇〕
  9. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 失業問題に対する数点にわたる川崎君の御質問にお答え申し上げます。  現在の失業者数を正確に捕捉することがきわめて困難であることは御承知の通りであります。政府労働失業対策の基礎的な資料に用いております数字は、労働省におきましては、職業安定所に職を求めて参ります求職者の数、これに大体基礎を置いております。その数は、常用労働者におきまして現在約八十万内外と目せられます。日雇い労務者において約四十万と目して間違いないと存じます。そこで、この失業問題の根本的な解決は、御承知のように輸出を中心とする民間産業の振興による雇用量の増大を期待するほか解決の道はないと私は存じます。しかしながら、今日最も緊急を要しまする日雇い労務者の救済、この就労につきましては、政府は最も心配をいたし、力を入れておるところでございまして、今年度四十億の失業対策予算、この残余の分をできるだけ繰上げて支出いたしまして、一般公共事業及び見返り資金による公共事業実施とにらみ合せまして、機動的にこの失業対策費を使うことによりまして当面の緊急事態に対処して参るつもりでおります。  なお失業保險の問題でございますが、一般失業保險は、御承知のようにわが国状態におきましては、まず世界的なレベルに達していると存じまして、ただいまのところ、これを改正する考えは持つておりません。ただ日雇い労務者失業保險につきましては、就労状況とにらみ合せまして、また失業保險、経済の実態をにらみ合せまして、受給資格、待機日数について相当改善いたしたい。しかしてその具体案を今国会に御審議を願いたい、かように思つております。  最後に最低賃金制の問題でございますが、これは川崎君の最も御承知であられるように、労使及び一般産業界に及ぼす影響きわめて深刻なものを持つております。私は、この最低賃金制の問題に関しましては最も愼重な態度をもつて臨むつもりでおります。ただ、すでに御指摘のように、労働基準法による中央賃金審議会の予算措置もできておりますから、できるだけすみやかに各方面の権威者を網羅して賃金審議会の設置をいたし、そしてわが国のこの問題の取扱い方の御審議を願つて入るつもりでおります。     〔国務大臣黒川武雄君登壇〕
  10. 黒川武雄

    国務大臣(黒川武雄君) お答えいたします。  社会保障制度につきましては、御承知の通り社会保障制度審議会におきまして愼重に研究をされております。と同時に、われわれ政府におきましても、一日も早く社会保障制度の増進確立ができるように努力研究しておるのでございます。そうして、もしも審議会の決定案がきまりましたならば、一日も早く国会提出したい所存でございます。先般審議会におきまして研究試案が示されましたので、私はさつそく大内博士にお目にかかりまして、いろいろと御教示をいただきました。できるだけその研究試案に基いて社会保障の施策を促進して参りたいと思うのでございます。予算につきましては、どうしても予算の裏づけがなくてはなりませんので、この点はどうぞ皆様に超党派的に御支援を願いまして、たくさんの予算がとれますように御後援を願います。  なお医薬分業につきましては、ただいま二つの調査会が設立されんとしております。臨時医療報酬調査会、医薬制度調査会の二つの調査会が設立されんとしております。医療報酬調査会におきましていろいろ審議いたしますが、医薬分業をすべしという決定になりましたあかつきには、医薬制度調査会におきましていかなる方法においてこれを実施するかという決定をなすのであります。政府は、その決定に基きまして愼重審議の上、敢然と医薬分業の問題を決定し、そうして皆様の承認を求める次第でございます。     〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
  11. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 川崎君の食糧自給態勢強化に関しましての御質問にお答え申し上げます。  わが国の現在の食糧生産状況におきましては相当量の輸入を必要とするとは御存じの通りであります。国内産業生産力の拡充をはかりまして、でき得る限り国内における自給自足に近づきたいと考えておる次第であります。従つて、農業生産力の基盤となります農地の保全改良、水利開発等に対しましてでき得る限り資金を投ずるとともに、技術の改良普及等に努めまして、食糧自給態勢の強化に盡したいと考えておる次第であります。但し、本国会にこれに関する補正予算提出する考えは持つておりません。  なお生産費を償う米価価格の早急決定に対しての私の考えはどうかということでございますが、これに対しましては、米麦価格の決定につきましては、農家の購入物資の価格とのパリテイによる従来の方式を踏襲はいたしまするが、具体的決定にあたりましては、生産費との関係を十分考慮いたしまして値段をきめたいと考えます。なお早場米の奨励金は本年度も引続き交付する考えでございます。超過供出については、特別価格で買上げたいと考えておる次第でございます。     〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
  12. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 地方税法案についてお答え申し上げます。  まず附加価値税一年延期につきましては、これは御承知の通り、あれは流通税でございまして負担を転嫁しなければなりません。もう今となりましては、この一月一日から今日まで延びておりますから、これを遡及してとることはできません。その意味におきまして、流通税の性質上不能でございます。またもしこれを強行しますならば、これを納税する事業者が不当の負担を受けなければならぬ。もう一つ徴税の面から申しましても、これは新税でございまして、十分なる準備期間がいります。ただいまとなりましては、準備の期間がございませんから、一年延期したことになつております。  なおこの新地方税法案は、前国会以来内外のいろいろな論議を参酌いたしまして、政府といたしましては、できる限り可能なる修正をいたして、現下の情勢上これ以上の最良の案はないと存じております。従つて皆様方の満場一致の御賛成が得られるものと確信をいたしておりますから、どうぞよろしく御審議をお願いします。
  13. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 川崎君、再質問はありませんか。     〔川崎秀二君登壇〕
  14. 川崎秀二

    川崎秀二君 大蔵大臣の御答弁の中で、債務償還残額は、本年の分も、あるいは事態によつてはこれを繰延へることがあるかもしれない。ほかに使うことがあるかもしれないという御答弁は、きわめて注目すべき答弁であります。この債務償還の問題につきましては、吉田総理大臣並びに池田大蔵大臣が、先国会において、これは国際信用上どうしてもやらなければならぬ問題である、日本の信用に関する問題であると言われたのでございます。また同時に債務償還費の追究をされまして、いろいろ議論をしました結果、これは公共事業費を本年は千億も組んでおる、しかして減税も千億もしておる、これはインフレ要素である、だから反対にどこかでやはりデフレ的な要素もとつて、ここにデイスインフレーシヨンの調和ができるのだという御答弁があつたと記憶をいたしております。勝間田君及びわが党の中曽根君の追究によつて、そういう議論をされたと思いますが、債務償還費は他に使う、ことに警察隊の消費的なものに今日使つておるのであります。従いまして、今後この部面からするデイスインフレーシヨンの議論は御訂正をなさるのがよろしいと思いますが、大蔵大臣の御所信はいかがであるか。私はこの点を十分に聞いておきたい。  それから地方税の減税はいかぬと言われるが、それならば、ひとつ建設的な方面、たとえば農業復興費であるとか、あるいは中小企業の救済等、この緊急を要するところの経費に投ぜられたいと思うのであります。これは自由党の諸君も御賛成であろうと私は思うのでありまして、債務償還費の中止がありまするならば、当然その方面に振り向けられると思うが、その点に関する御所見を伺いたいと思うのでございます。  次に黒川厚生大臣は、社会保障制度をどういう角度で実施するかということについての御答弁がなかつた。もう一度お伺いをしたいと思いますが、社会保障を超党派的に扱うということは、これはまつぴらごめんをこうむりたいと思います。それでは民主党も社会党も存在理由がないことになります。ただいまのは虎屋の御主人としてのお話でありますならばお伺いいたしますが、厚生大臣の答弁としては私はどうかと思います。この際もう一度はつきり社会保障制度の理想についての御答弁を承りたい。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政経済は生き物でございますので、何もかたく考える必要はないのでございます。従いまして、情勢変化があつたならば補正予算も組まなければなりません。また予算の流用もしなければならないのであります。物事をあまりきつくお考えにならないことをお願いいたしたいと思います。  なお警察費に債務償還費を出した場合にデイスインフレの線が守れるかという問題でございますが、これは守れます。債務償還の問題は、減税に充てるかどうかということが問題なのだ。債務償還費として銀行からいろいろな方面に金が出るのも、警察の方に出るのも、デイスインフレの線から申し上げますれば同じこであるのであります。     〔国務大臣黒川武雄君登壇〕
  16. 黒川武雄

    国務大臣(黒川武雄君) 社会保障制度というものはなかなかむずかしいものでございまして、一生懸命勉強しております。追つてまたゆつくりと御答弁いたします。(拍手
  17. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 鈴木茂三郎君。     〔鈴木茂三郎君登壇〕
  18. 鈴木茂三郎

    ○鈴木茂三郎君 昭和二十年九月二日、東京湾上において連合国の降伏文書に署名いたしまして以来、われわれは近く第六年目の降伏記念の目を迎えようといたしております。今日われわれの置かれておる国際的並びに国内的な情勢は、きわめて重大なるものがございます。われわれが、もしも、かつて金融資本のもとに資本家と軍閥と官僚により支配された東條内閣とその議会の犯した過失と同じように、今日ここで一歩方針を誤まるようなことがあつた場合は、われわれや、われわれの子供、孫の安危にかかわるものがあると信じますので、私は日本社会党を代表して吉田総理大臣施政方針に対し、主として日本民族の自主と自立、国家の独立と平和、すなわち、われわれとわれわれの子孫の自主と自立と、わが国土の独立と平和をいかにして確保するかというこの一点を基点といたしまして、ここに質問を展開せんとするものであります。  質問の第一は、自立経済、独立経済の確立に関する問題について総理に二点お尋ねいたしたい。第一点は、いかにして自主、自立、独立経済を確立することができるかという問題であります。民族の自主と自立国家の独立と平和を基礎づける根本は、自立経済、独立経済の建設、すなわち日本がひとり歩きのできるようになることでございましてこれについては、今日まで吉田総理もしばしば、国家の独立は自立経済を建設することが第一だと主張されたように記憶しております。特に昭和二十三年十二月十九日、マツカーサ上元帥は、諸君の御承知のように、日本の経済の自立と独立のために経済九原則を行うように指示され、その際元帥から政府に與えられた書簡のうちで、こう言われておる。この措置の根本目標は、それのみが政治的自由を正当化し保障し得るような程度の経済的自立を早急に達成することである、元帥はこう言つてというのは、民衆の生活が他人の贈りもの、恵みに依存している限り政治的自由はあり得ないからである、こう言われております。私は、元帥のこの言葉を、この際諸君とともに思い起したいのであります。  われわれは、他方においてこうした外国の贈りもの、恵みを受けてはおりまするが、一方において日本国際的に独立をさせるための講和が、外国の事情になつて延びております。そのためばかりではないにいたしましても、進駐軍の費用として、昭和二十一年度から二十五年度までの約五箇年にわたつて四千四百四十億円の終戰処理費を、われわれは神の前に贖罪する誠実な心持をもつてその負担に耐えて参つたのであります。この終戰処理費は、私が便宜上ドルに概算的に換算してみますと、五箇年を通計して約十九億七千万ドルに達するのであります。他方、マツカーサー元帥が信愛をこめて注意を喚起されたアメリカからの援助費は、これも同じ期間を通算すると、終戰処理費よりはやや少く、十五億八千六百万ドル、円に概算的に換算してみると四千八百億円、すなわち、一方終戰処理費を負担しているとはいえ、われわれはこれだけのアメリカからの贈りもの、慈悲に依存をしていることになるのであります。私は、ここで繰返し、元帥がわれわれに注意を呼び起された、生活の援助を受けておる国に政治的の自由はないという、この書簡の一節を思い起さねばならないのであります。この援助は、政府も承知されているように、一九五二年あるいは五三年をもつて打切られることになつておる。  私が総理にお尋ねしたいことは、こうした情勢に対して、政府はいかにして、いつごろ、元帥の言われるように日本の自立経済を確立して独立国家としての経済的な基礎を再建できるお見込みがあるかどうかという点でございます。私の見るところによりますと、政府の政、策は、盲が暗やみに手探りで歩いているように、足元もお先もまつ暗である。従つて国民は現在と将来への光明と希望を失つておる。明るさがどこにありますか。希望はどこにありますか。  こういうことになつた一つの事情は、政府の唯一の政策であるドツジ・ラインという名前によつて強行されて来たデフレ政策の結果であることは明白でございますが、(拍手)幸いにして、ただいまの政府の御答弁により、今日までかたくなにドツジ・ラインを堅持され。固執して来られた政府は、ドツジ・ラインの強行は不可能となつた今日、事実の前に屈伏して、われわれの主張をいれて、ドツジ・ラインは幅のあるものであつて固定的なものでない、屈伸性を持つたものであるという御趣意の御答弁があつて、ようやくドツジ・ラインの誤りを是正されようとしておることを喜ぶものであります。ドツジ・ラインのもとに、今日まで労働者や農民あるいは中小企業等を犠牲とし、国民の一般に出血を強請し、自立経済を目ざす産業復興五箇年計画を政府はやめてしまいました。計画経済の実行を捨てて、ひたすら銀行資本保護のための通貨の安定に政策の重点を置いて来られた結果、外電によつても論ぜられておりますように、総司令部経済科学局企画統計部の経済統計第四十号の経済概観によつて明らかにされておりますように、今日は十六の大銀行が金融資本の四分の三を聖断しておる。中小企業や農民への金融はほとんど無視されてこの十六の大銀行が重要な産業と都市の支配を行つておるという金融資本支配の実情が明白にされておるのであります。  今日の規模は、第二次世界大戰当時の日本金融資本の時代に比べて小規模ではございますが、私は、かようにドツジ・ラインの強行を通じて金融資本の支配が確立されて参りました状態を見て現在国内国外の情勢上、重大なる示唆をここに思い起さなければならぬものであります。  大規模な金融資本が、軍閥や官僚、資本家をかり立てて日本を第二次世界大戰にぶち込んだように、小規模ではございますが、デフレ政策を通じてここに確立された現在の金融資本が、再び日本を第三次戰争へかり立てるおそれがないかということでございます。あるいは政府の誤つた政策のために明るさと希望を失い、独立心や愛国心を政府政策のもとに失つた資本家の一部の中には、一時のがれの苦しさから戰争にあこがれる危險思想が起るようなことはないかということをおそれるものでございます。  ジヨセフ・ドツジ氏が本年三月初めにアメリカ国会の下院歳出委員会に提出いたしました対日政策に関する証言の文書にまつて見ると、ドツジ氏は、現在の日本においては、一人当り食糧は、配給とやみ食糧と合計した購入量は六五%に相当する二千百十カロリーに達するが、しかしドイツ、ヨーロツパ諸国に比較するとはるかに及ばないと、こう指摘しておるのであります。日本経済の再建は、ヨーロツパ諸国はもとより、敗戰したドイツに比べてさえ今日はるかに低い状態にあるのでありましてこういう状態で、どうして自立経済、独立経済が確立できましようか。  私はかたく信じます。自立経済、独立経済を確立するための根本的な問題としては、現在のような十九世紀的な大資本、大産業の私利私欲本位の自由主義経済による現在の日本経済再建の方式をやりかえなければならないと信じます。国民の一人々々がすべて生産面に喜んで働き、現在と将来への明るい、はつきりとした見通しを持つた社会主義的な計画経済に置きかえなければならないと信じます。(拍手)そうでなければ、ほんとうの自立経済、独立経済の再建は不可能だと信ずるのでありますが、こうした根本的な建設は、わが社会党の政権による以外に実現はできないと信じますが、さしあたつての問題といたしまして、外国の援助たる贈與と慈悲を打切つて、自立経済を確立して独立国家の基礎をどうにかつくりますについては、何といつても輸出貿易を再建する以外にその道はないのでありますが、しかるに自立経済を基礎づける輸出は、大体一年に十五億ドルが必要だと信ぜられております。  最近政府は経済白書を発表されましたが、それによると、輸出貿易は自立経済を條件づける十五億ドルにはるかに遠く、わずかに五億一千万ドルでございまして、戰前の二割八分九厘にすぎない。輸出貿易の市場は何といつても中国——たとい中国の支配者はいかようであろうとも、中国を含むインドその他アジア諸国との間に貿易関係が円滑に回復しない限り、日本の独立を條件づける自立経済の確立は不可能であります。しかるに、アジア貿易は戰前のわずか一割にすぎない。総理大臣施政方針演説において経済自立への規模に到達するには貿易はほど遠いものがあると率直にお認めのようでございまするが、政府は、いつ、いかにしてこの現状を打破して、マツカーサー元帥の言われる他人からの贈與と慈悲を受けないで真の政治的自由の確保を條件づける自立経済、独立経済を再建する方針であるか、明瞭に具体的にお示しを願いたいのであります。  第二点は、大蔵大臣に三つお尋ねをいたしたいのでありますが、さしあたつての問題はいわゆるドツジ・ラインでございまするが、政府野党の意見に聞かれてこれを是正されたようであることは、日本の経済再建の当面の問題のために喜ぶべきことであります。ドツジ・ラインの修正の方向を示す参議院選挙最終戰に政府国民に公約をされた五つ、六つの問題、これはすでに川崎君によつて政府との間にいろいろな質疑応答がございましたから、私はそれに簡單に触れておきたいる  ドツジ・ラインの修正というようなことで、現在の資本主義的な方式による経済再建途上の根本的な矛盾と欠陷をいかんともすることはできないと存じまするが、ともかくこの公約を実施されることによつてドツジ・ラインを修正され推進されることは明白でございます。ただ問題は、先ほどから論議されておりまするように、ドツジ・ラインの修正をいつ行うかということでございます。大蔵大臣は、いつものように、きわめて楽観的な御意見を述べておられたのでありまするが、今日国民のたれ一人として大蔵大臣の楽観論を信用する者はなかろうと存じます。(拍手)このドツジ・ラインは、すでに金融操作、信用インフレによつて弾力的に調整するという問題の限界を失つて、すでに大蔵大臣の足元である金融資本家や産業資本家からさえ、ドツジ・ラインの修正が強く要望されておるのでありまして、こうしたもとに、絶望的な資本家の中には、一もうけしようなどと、やがて爆弾が自分を吹き飛ばすことを忘れて戰争を待ちかまえておる憂うべき状態も見られるのでありますが、特に下半期は、ドツジ・ラインによるどん底に落込む危險がある状態に対しまして、政府は、このドツジ・ライン修正公約の実施は、いわゆる来年でなく——こういう政府が来年まで続かれたのでは、政府より先に日本の経済がつぶれるでございましよう。来年でなく下平期を前にして、この公約を即時ぜひとも実行しなければならない。  ただいま承りますれば、特に公約のうちの国債の償還の問題に関しましては、つとにこの問題に関しましては、本年はわずかに八億円しか償還の期限が来ていないのに、ただいま川崎君も述べられたように千二百八十五億円も償還しようというのであります。しかもこの償還は、できるだけ低利公債を償還する方針をとつておられますから、われわれが年来主張しおる元利を支拂う必要のないという軍事公債が、多分にこれによつて償還されておる。われわれの拂つた重い税金から、外国から恵みを受けて来た見返り資金から、こういうものを重要な財源として拂う必要のない、あるいは期限の来ない軍事公債その他の償還に充てられておることは、最近アメリカにおいてもようやく注意を呼び起して参りまして、政府がいかにがんばつて来年までこの政策を保持しようとしても、私は、こういうばかげたやり方は、とうてい秋以後は保持することができないと確信をいたします。(拍手)  同時に、官公吏給與の改訂、」この官公吏給與の改訂に関しましては、われわれは、多数の人たちの不当に低過ぎる賃金の給與を改訂して、生活を幾らかでも安定させる、それと同時に、民間産業における不当な賃金の切下げ、これに対する食いとめも行い、あわせてこれらの多数の人たちの消費面における有効需要を高めて、ここをドツジ・ラインに対する大幅修正の突破口とせんと決意したのであります。私は、この給與の問題は、財源があるのにこの臨時議会に提案しないということは、いわゆる政治の不誠実を表白する以外の何ものでもないと思うのであります。(拍手)これらに対する大蔵大臣の御答弁を求めたいと存じます。  第二は講和問題でありまするが、講和問題に関しましては、私の質問の第一点は、憲法講和関連いたしまして総理所信をただしたいと思うのでございます。私は、対日講和の問題を中心として最近国民の間に報道され論議される状態を見てその中には、新憲法精神、民主主義国家基本がいつの間にか忘れられているのではないか、軍閥と官僚と資本家のための金融資本の支配いたしました、かつての帝国主義時代の旧憲法とはき違え、錯覚を起しておるのではなかろうか、周辺のきびしい国際情勢に戸惑いをして自分の立つておる平和の足場を踏みはずそうとしておるのではなかろうかということをおそれるものでございます。新憲法精神、特に憲法の前文に「政府の行為によつて再び戰争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」、こう憲法精神が明白にされておる。第九條においていわゆる武装を放棄し、交戰権を認めないという厳粛な規定が行われておることが、私はだんだんと忘れられているのではないかということをおそれるものであります。この憲法は、連合軍最高司令官の占領下において起草し、かつ決定されたものであつて言葉をかえて言えば、米、英、ソ及び中国等の連合諸国の意思を反映してつくられた憲法であり、さればこそ、われわれは平和を愛する世界国民の公正と信義を信頼して、日本国民国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な憲法理想と目的を達成することを誓うことができたのであります。  憲法において戰争と武力を放棄し、交戰権を否認したということは、われわれの知る政治史の上から見て、これは平和を目ざす特有の新しい国家の形でありまして、こうした日本の特殊の立場から申し上げますれば、講和後独立国となつてから、たとえば一方の特定の国に軍事基地を提供するとか、軍隊の通過を許すとか、あるいは武器の製造その他戰争はもとより国際紛争に介入するようなことは、一切は明らかに憲法に違反することが明白であります。(拍手)われわれは、どこまでも中立と平和の立場を堅持して、特定の一国でない、国際連合による集団の安全保障のもとに、日本の領土と民族世界紛争と内乱と戰争の痛ましい惨害から防衛しなければならない立場に置かれている。  こうした憲法基本と、最近の国民の感情である、二度と戰争に省き込まれたくない、平和を心から念願したい、戰争はもういやだという国民感情は、あたかも憲法精神と符節を合致するように相通ずるものがあるのであります。この国民の感情によつて、冷たい、きびしい国会の議事堂は、熱くなるほどゆさぶり続けられ、全国の国民の声はこれであるということを、われわれははつきりと知らなければならないのである。(拍手政府国会国民も、新憲法の嚴粛な精神の前に粛然とえりを正し、現下の複雑な国際情勢を正しく見きわめて日本の進む道を誤つてはならない。私は、かような意味において、憲法と時局との関係に関し総理の御所見を承りたいのであります。  第二点は、かような基本的な観点の上に立つて政府講和問題に対する態度であります。どんな講和であつても、講和でさえあればよい、一日でも早くさえあればよいというわけのものではございません。あるいは長いものに巻かれろ、泣く子と地頭にはかなわないなどという卑屈なる講和に対する態度であつてはならないのであります。(拍手)  吉田総理は、張る五月八日に正式に意見を発表されて、講和問題について全面講和は最も望ましいことである、この方向に進めて行くために、お互いは努力すべきである、こう言われております。軍事基地の問題については、マツカーサー元帥は、日本憲法に反するようなことをわれわれにしいるような人でないことだけは申し上げ得る、こう断言されております。これは去る五月八日であります。吉田総理全面講和のためにその後いかように努力されたかは知りませんが、ともかく最近まで総理全面講和論者であつたことは、これによつて疑いないところでありますし、また総理は、この施政演説において、全面講和論が危險思想であるようなことを言われておりますが、そういたしますると、総理総理みずからその危險思想を宣伝されて来たということになるのであります。(拍手)  全面講和が最も望ましいことであることは、吉田総理もすでに認められているところであつて全面講和が望ましいということは、その反面におきまして、全面講和の裏から見て、單独講和は望ましくないということになるのであります。なぜ望ましくないのか。單独講和ということになると、講和後において軍事同盟による軍事基地の提供は必至となり、日本国際紛争や内乱や戰争にたたき込み、そうして憲法の中立、平和、独立が蹂躪されて、連合国による国連の安全保障がむずかしくなるからであります。ことに、われわれの自立経済の確立は不可能になる。と申しますのは、單独講和を結ぶことになると、当然日本及び日本と結ぶ国家を敵対国家とするところのソビエトと中国の中又友好相互援助條約にぶつかることはもとより、せつかく英国、インド等の連邦八箇国の国際連合を通ずる世界平和への努力に背反することになり、ひいては私が第一問に質問をいたしましたように、アジアの経済の復興とアジアの貿易市場を基礎としての日本の独立と平和を條件づける自立経済の確立ができるのに、それができないことになるのでありまして、それができないことになると、日本政治的自由は保障されないことになるのであり手から、われわれは、ここに重要な問題としてこの問題を取上げざるを得ないのであります。  しかるに吉田総理は、全面講和を広めて行くためにお互いは努力すべきである、こう全面講和を強調してから二十四日過ぎ、韓国問題が起つた日から二十五日の前、すなわち六月一日に、外務省から「戰後日本の移り変り」という外交白書なるものを発表させられて、その結びによりますると、わが国を独立対等の国として認めてくれる国との間に一日も早く講和條約を結び、順次相手国をふやして行くことがわれわれの進むべき道である、こう言つておられる。これはいわゆる單独講和論でございまして同じ單独講和論であつても、多数講和に比べてもつと極端な單独講和論と見なければなりませんが、総理は、平和的な全面講和から危險單独講和へ——馬から牛へ乗りかえるという言葉はございまするが、総理大臣は、馬と牛から、戰争のにおいのする戰車に乗りかえようとせられておる。(拍手)しかも、その方針国民に強制する態度をとられたことは、私はまことに怪訝にたえないものであります。(拍手)  元来、軍事基地の問題に関しましては、われわれの承知いたすところによれば、アメリカの公式の方針としては、本年一月十日のアメリカの上院外交委員会並びに一月十二日の全米新聞クラブにおけるアチソン国務長官のアジアに対する具体的な方針と、国務省極東アジア部長アリソン氏が、できるだけ対日講和を早期に行いたいと述べられた、それだけであります。アリソン長官の具体的な方針は、ここに詳しく申し上げることを避けますが、問題の軍事基地に関しましては、琉球諸島を信託統治に置いて、ここに防衛点を置く、こう言われておるのであります。なるほど、その当時から最近朝鮮問題の起るまでの期間、アメリカ防衛という軍事的な見地から日本全土を軍事基地化するような問題、あるいはこれと対蹄的に日本を放棄するような問題など、いろいろな意見や情報が報道されたことに対して、また情勢の展開に対してわれわれはこれを決して軽く見のがすものではございません。しかしながら、アメリカの公式に表明された見解としては、アチソン長官の具体的な方針以外にはないのである。対日講和の責任を帯びて来朝せられたといわれるダレス顧問でさえ、出発に先だつて、来朝の目的を—対日平和條約を現在締結することは時を得ているかどうか、もし時を得ているとすれば、どのような平和條約を締結すべきかという、ただこれだけの二つの問題を検討するために視察するという趣意を明らかにされ、続いて来朝された当時、私は対日戰に直接参加した国が全部出席する会議をもつて審議すべきであるという考えを持つている、これはつまり全面講和の形をとろうということを明らかにされたのであります。ことに、われわれが見のがしてはならないのは、イギリスを中心とするインドその他英国連邦八箇国の情勢についてであります。すなわち、英国連邦の対日講和運営委員会の決定に現われたところによつてみても、英連邦においては、いまだかつて單独講和を可なりとする意見なり主張は絶対になかつたのであります。(拍手)そればかりでなく、対日講和に入る前提として、国際連合におけるソビエトとの紛争解決するために中共の国連加入の承認を強く主張しておるのでありましてこうした英国連邦の国際連合を通ずる世界平和への努力は、韓国問題が起つて以来はさらに熱心に執拗に続けられており、われわれのひそかに意を強くするところでございます。従つて、ここに時を得て対日講和條約を締結することとなつたといたしましても、この講和会議の形式が必ずしも單独講和を必至ならしめ、講和後わが領土内に特定の一国の軍事基地を設けるための軍事同盟を不可避とする状態にはなかつたと見るべきでございます。  エデンの花園は、平和国家たらんとする日本の花園である。その花園に、禁断の実を食べて戰争を引入れんとしておるものは、ほかならぬ吉田総理それ自身ではなかろうか。(拍手、発言する者多し)もし單独講和を必至とする何らかの具体的な事実があり、政府方針を豹変しなければならない事実があるとすれば、総理は、なぜ国会を召集して、十分に国会において審議した後に決定をしないのであるか。(拍手)これが私の質問の第二点であります。かりにそうした必至の情勢があつたとしても、特定の一国に軍事基地を提供し、憲法と中立を蹂躙した上必然的に戰争に省き込まれるおそれの多い單独講和をわれから進んで主張するがごときは、われわれの断じてとらざるところでございます。(拍手)  第三点は、ダレス国務省顧問も、日本の各方面の意見が聞きたい、日本の意見は考慮に入れられる、こうも言われておるのであります。西ドイツにおきましては、国民の東西ドイツの統一の強い要望があつて、この統一ができない場合に講和を取上げられたくないという国民の意思が取上げられて、今日いまだ現実の問題とはなつておらぬようでありまするが、日本国民といたしましても、戰争はいやだから憲法と中立と平和を守りたいという率直な国民の念願を、はつきりと国際的に言うべきである。私は言わすべきであると信じます。(拍手政府はなぜ国民にそれを言わせようとしないで——国民に言わせようとしないばかりでなく、政府が卒然として、かつて全面講和論から單独講和にみずから国論を分裂さぜて、單独講和のわくの中に、国民の真実の声を代表する唯一の野党をも引込もうとするいわゆる超党派外交の提唱に関しまして、われわれはこれを言語道断なりと考えるものであります。(拍手)  超党派外交の問題に関しましては、吉田総理は軽く逃げておられるようでございますが、五月十日の外務省における記者団との会見で、総理はこう言つておる。民主党の苫米地君が超党派外交などということを述べておるが、それはアメリカのまねであつて外交がないのに超党派外交とはおかしい、こう言つて苫米地氏の超党派外交論を笑殺して、同じように国論を積極的に統一するようなことはしない、そういうことはフアツシヨ的なことだと一蹴されておる。その吉田総理が、ダレス顧問が来朝されたとなると、政府單独講和に対するわくをはめ、いわゆる総理みずからフアツシヨ的な統一を行おうとされ、ダレス氏に対する政府の地位をよくしようとでも考えられたのか、あるいは国会対策の必要上、重ねて民主党の切りくずしをねらわれたものか、いずれにせよ、ついこの間までは超党派外交を笑殺し一蹴されて来た吉田総理が、超党派外交を企てて民主党の芦田氏と会見をしたり、それはともかく、社会党の抱き込みを策し、それができないとわかると、今度は、たなごころを返すように社会党に悪態をついておる。そういう不遇なことであるから、世間は吉田総理を指して入道平清盛だといつておるのであります。(拍手)  日本の安危の運命を決する講和問題を、民主党の切りくずし策や、内閣の壽命の延命策、あるいはできないとなると毒づくなど、きわめて不謹愼であるというほかはありません。(拍手平和国家千年の大計の礎石を築いて脈脈として、とこしえに連なるわが民族の運命を背負つて立たんとする内閣総理大臣として身を挺してこの国難におもむこうとする気魄と信念と努力が吉田総理のどこにあるのか。政府参議院議員の選挙にあたつて敗北を喫したために、総理政策は、すでにその信念において、気魄において、努力において、この国難に耐えるものがないとすれば、政府は適当の機会において国会の解散を断行して国民の民意を問うべきであると思うがいかん。  第三に、最後に、国際上の問題である、現実の問題である国内行政並びに国際上の自主性回復に関する問題と韓国の問題について簡單にお尋ねをいたします。  第一点の対日講和の問題は、隣国に起つた韓国の南と北の民族の不幸な問題でありまして、こういうことがあつて、対日講和が、引続き外国の事情によつていかようになるにいたしましても、われわれと同じ敗戰の運命の星のもとに置かれておる西ドイツの今日の状態をわれわれは考え合せなければならないのであります。  ドイツの管理方式は軍政でなく、高等弁務官制度の民政であつて、一九四九年四月の占領條例によつて、国内の行政に関しては限定的な列挙主義によつて、そのほかの広汎な行政はドイツ政府国会の自由にまかせられておる。列挙された、限定された権限を行使するために、連合国側は高等弁務官会議という民政の建前がとられております。こうした民政のもとで列挙主義的に限定されたもののうちには、外国貿易、外国為替管理とか外交問題等は、ドイツ政府あるいは国会にとつて重要な問題であるが、自由は許されておりませんでした。しかし、本年一月三十日のペテルスブルグ協定以後になつてからも、ドイツ、西ドイツは通商及び金融協定の締結権と領事の派遣、欧州協力機構への参加、欧州議会への参加等が許され、去る六月には、国際協定の締結に関する、一定條件のもとではあるが広汎な国際的な自由、すなわち自主外交が許容されたのであります。  わが日本におきましては、マツカーサー元帥の好意によつて、終戰後今日に至るまで、わが民主主義の発展につれて次第に自由は許されて参つておりますが、しかしながら外国の事情によつて講話が延期されおる今日、こうした條件のもとにおいて自立経済が要求されておる今日、日本民族の自主と自立、国家の独立と平和のためには、国内の行政並びに国際上の外交、貿易、船舶、航行、移民、漁業、通商等の自由が許されなければわれわれは自立できないと思うのであります。今日第八臨時国会が召集された現在においてさえ、この国会において国会の自主権、国会の審議権が論議されるような状態にあることは、はなはだ遺憾でございます。われわれの領土の上空を飛ぶ旅客機、こういう平和的な、経済的な重要なものが今日まだ日本の商社に許されないということで、自主経済のために営々として努力をしておる国民の勇気をくだくおそれはないか。私は、国内の行政上、国際上の自主性の回復に関していかように考えられるかということについて総理大臣に所見を承りたいのであります。(拍手)  第二点は韓国問題でありますが、韓国の問題に関しましては、日本の帝国主義の隷属からせつかく解放された韓国民族が、なぜ南と北に運命の三十八度線を画して分割されなければならぬか、ドイツにおいても、西と束に、一つ血につながる民族が何ゆえに分割されなければならないのか、こうしたことを考えるについても、われわれは日本民族が一つとなつて独立と平和、自主と自立のために建設に努力することのできることを、その幸福をわれわれの子孫のために感謝するとともに、不当な北鮮の武力的統一に対する事態は一日も早く解決して、進んで平和的な民族統一が行われて、これが第三次世界大戰への口火となつて日本の領土と民族が重ねてさらに悲惨な戰火に襲われることのないように、われわれは心から念願してやまないのであります。  この不幸な韓国の問題を契機として満州事変より太平洋戰争に至る時代の再生、それを再び呼び起すかのような、新憲法を忘れた、血を好む好戰的な言辞や、むきだしな軍国主翼的な動向や、あるいはフアツシヨ的な言動は、近来いよいよますます目にあまるものができて参りましたことに対し、われわれは、ちようど東條軍閥のもとに起つた情勢を現在ほうふつさせるような仕相の一部を見まして慨嘆にたえないものがございます。それと同時に、他方におきましては、良識ある国民の一般から憂慮されておりますように、日本共産党は、韓国の問題を利用して、労働階級を反米と反占領軍の闘争にかり立て、ひいては連合国間の対立抗争を激化させ、国内に騒擾を巻き起そうとする意図のもとに非合法的な運動を行わんとするようなことがあるにおいては、これらをあわせて中立と平和と憲法を守るために断固抑圧しなければならないことは言うまでもないところであります。(拍手)  しかしながら、こうした問題に対する政府の対策としては、こういうことの起らないようにすることが根本であるのであります。起つたといたしましても、できるだけ国民の良識による正しい批判と合理的な手段を通じて効果を上げることが望ましいのであります。しかしながら、それにはわれわれはまず政府みずからあやまちを正さなければならぬものが多々あると信ずるのであります。聞くところによれば、岡崎官房長官は、六月三十日の記者会見において、次のように語つたということである。     〔議長退席、副議長着席〕  国連の警察権行使という意味で武力を行使する場合には、日本人義勇兵はこれに協力してもいいし、また当然協力すべきである、軍事基地も同じ意味から、日本の基地を提供することは少しもさしつかえないと思う——これは外電を通じて世界にも伝えられておるのでありますが、私は、こういうことを官房長官が発言するということま、さたの限りであつて、東條内閣の書記官長であるならばそれでよかろう。しかし、戰争を放棄することによつて中立と平和を全世界に約束した新憲法の上に立つ民主主義国家政府の官房長官としては、まことに不適格でございます。(拍手)  もつとも、これはひとり岡崎官房長官だけの問題ではないのである。韓国問題の起つた当初、韓国問題に対する政府の軽々しい態度を、わが党が声明によつて注意を促しました結果、吉田総理は、この壇上において、国連に対しては精神的な支持である、こう考え方を訂正されたのでございます。総理は、今回の国会開会を前にいたしまして、一方では、中立はから念仏だと、とんでもない間違つたことを言い、他方では、ふと思いついたように、平和運動などと、しかつめらしく、この際わが国態度としては、極東平和のため進んで力をいたすべきであると、こう言われておる。私は総理のこの言葉を聞き、総理單独講和に対する見解と思い合せ、第二次世界大戰の当時、東條軍閥が国民に歌わせた、東洋平和のためならば何で命が惜しかろう、こういう歌詞の進軍の歌が思い起されるのであります。かように、取締る者は国民から取締られなければならない。弾圧するものがまず国民から弾圧ざれなければならぬのである。今回の警察予備隊の問題にしても、その法制化、予算化とともに軍隊化すること、特高化することを憂慮し、特に内閣の直属のもとに置くという機構われわれが特に問題として検討いたしておりまするのは、そもそも政府のかような時局に対する態度方針に信頼しがたいものがあるからでございます。韓国問題については、われわれは国際連合の旗のもとに、武力による侵略を不拡大の方針をもつて制圧されんとしつつある国連の方針精神的に支持するものである。しかしながら、日本は現在連合軍の占領下にあつて国家の意思を発表する地位にない。政府及び国民は、降伏文書に基く占領軍の命令に服する以外に他の態度及び措置はあり得ないのであります。かかる服従の義務以上に、総理みずから東洋平和のためならばと進軍ラツパを吹奏して、好んで国際紛争に介入せんとする態度は、わが憲法精神と、日本の置かれた情勢から見て不謹愼と断ぜざるを得ないのであります。総理は、われわれの中立平和、全面講和論に対して、から念仏だなどと言つておるが、馬や牛から戰車に乗りかえて、極東平和のためと進軍ラツパを吹く、さような平和論こそ、私は鬼の念仏だと見なければならぬと存じます、政府のなすべきことは、連合軍の命令に服して、黙々として各種の事業に従事し、日本のため苦難と危險な仕事に従事している労働者諸君の、労働者としての正当な利益と権利とを鼓舞し擁護する、ここが政府の正協力をなすべき点と思いますが、これに関する総理の所見をただし、以上私の日本民族日本の独立に関する質疑を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  19. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  わが国の独立経済、自立経済の確立の必要であることは御同感でございますが、しかしながら、日本が独立を回復して後初めて完全なる独立経済、自立経済ができるのであります。ゆえに、まず早期講和なり全面講和のごときできない相談をなさらずに、すみやかに講和の確立することに社会党もわれわれと同調されんことを希望いたすのであります。  また全面講和にあらずんば遂に戰争に介入するに至る、これは独断であります。これに対して私は御同感の音は遺憾ながら表することはできない。  また講和條約については、講和條約が早くできるというよりは、問題は内容いかんである。その通りであると思いますが、その内容はいまだ明瞭でないのであります。その内容が明瞭になつたときには議論をやりますが、今日はとにかく早く講和の気運を醸成すべことが。わが国としては努むべきことであつて、いたずらに議論をいたすべきときではないと思うのであります。また、そのために議会を解散しないかというお話でございますが、講和の一日も早からんことは国民の熱望するところであり、この点について国論の異論はないのであります。ゆえに講和のために解散するとか総選挙をするということは、私としては考えておりません。  超党派外交についてのいろいろな解釈がありましたが、これは先ほど私がここで説明いたしました通りであります。  また国会の自主権、あるいは貿易の自主とか、経済の自主とか、西ドイツはどうこうといういろいろな御質問がありましたが、それもまず日本が独立を回復して後に自主権が完全にできるのであります。今日においては日本が独立を回復することが第一であります。共産党のごときが講和の成立を妨害すること、われわれの最も遺憾とするところであります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  20. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 鈴木議員の御質問はいかにしてまたいつ自立経済が達成できるかという御質問が第一であつたと思うのであります。自立経済はいかにして、いつできるか、まことにごもつともな御質問でありまして、私はしばらく時間をかりてお答えいたしたいと思います。  自立経済は何をおいてもインフレをやめて正常な経済にもどし、しかして正常な経済の基盤の上に経済の復興をはかることにあるのであります。しかしてこの自立経済が社会主義でなければできない、資本主義はだめだ、こういう問題ではありません。社会主義を持つ内閣におきましては、インフレがますます、激化いたしたのであります。私は、自立的経済はインフレをやめて正常な経済に持つて来るよりほかにないと考えまして今までこの自立経済に向つてつておるのであります。  今後どういうふうにするか、こういう問題は、経済財政五大公約に盛つておりますように、減税をすると同時に直接税をふやし、あるいは貿易を振興さすということよりほかにないのであります。このことをやりましたならば、早急に自立経済ができると思うのであります。往々にして今日の経済の困難はドツジ・ラインの結果であると、ドツジ氏の政策を非常に悪いもののようにお考えになりますが、自立経済に持つて行くのは、このドツジ・ライン、すなわちデイス・インフレの線よりほかにないのであります。もし自立経済を早急にお望みになるならば、ドツジ・ラインの批讃者になるよりほかにないと思うのであります。今後におきましても、私は経済の自立に向つてドツジ・ラインをどんどん展開させて行きたいと思うのであります。ドツジ・ラインの修正ではありません。ドツジ・ラインは、先ほど答えましたように、非常に弾力性のあるものであります。しかして私はこの政策を実行して行きますならば、援助資金が一九五二年からなくなると言われておりまするが、一九五二年までには大体自立経済ができると思うのであります。  さき国会におきまして貿易が不振だとか何とかいう議論がございましたが、貿易は本年に入りまして一億ドルの出超であります。しかしてまた今後におきましてもこの政策を持続しまするならば、輸出は相当ふえて参ります。私の見るところでは、本年当初六億一千万ドルの輸出を見込んでおりましたが、うまく行けば七億以上になると思うのであります。また来年度におきましてはこれが八、九億となり、そうして輸入超過の二、三億は一、二年のうちに回復して自立経済が達成できると考えておる次第であります。  次に、経済の五大政策を早くやる必要があるのではないか、早くやらなければ下期の見通しがつかない、こういうお話でございます。来年度におきましては、あれをやります。しかし、本年度においてどれだけのことができるかということになりますと、今後の経済事情の変遷、財政状況を見てでないと、はつきりお答えできません。われわれは、財政の許す限り、経済の認める限りにおいて早急に実施いたしたいと思うのであります。  なお給與を引上げない理由がどこにあるか、こういう御質問でありまするが、給與は、確実なる財源を握り、またインフレを二度と起さないということをすつかり見きわめなければなりません。ただいまのところ、大体引上げてもいい見通しはつきまして、関係方面と話合いを進めておる状況であるのであります。(拍手)     〔政府委員岡崎勝男君登壇〕
  21. 岡崎勝男

    政府委員(岡崎勝男君) ただいま鈴木議員は、外電によれば私が新聞会見で義勇軍を認めるというようなことを言つたと申されたのでありますが、さようなことはございません。このことは会見に立ち合つた新聞記者諸君が十分説明することと信じます。(拍手
  22. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君)川上貫一君。     〔川上貫一君登壇〕
  23. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表して吉田総理大臣質問したいと思います。  今日極東の情勢は、中国人民の偉大なる勝利と、フイリツピン、仏印、ビルマその他東南アジアにおける民族解放闘争の急速な発展によつて帝国主義勢力は動揺と後退の一路をたどつております。また海一つ隔てた朝鮮での新しい事態の発展は、人民勢力の一層の増大、第三次世界大戰への危機をはらんでおつて日本をして今日民族存この岐路に直面せしめているといわなければならぬと思う。われわれにとつて、この重大なときに、吉田総理大臣が施政演説国民の前に明らかにされたことは一体何でありますか。それはたつた一つのこと、外国への奉仕と、自分自身の政権欲のほかには、何一つとして日本人民のための何の政策も持ち合せておらぬという、これだけだ。 (拍手)  特に重大な問題は、吉田総理大臣が、このたびの朝鮮事件に対して、みずから進んでこれに介入し、朝鮮の人民の民族統一と独立のための闘いに、━━━━、戰争放棄の憲法を蹂躙して、国際独占資本のために一役買おうとしておることであります。(拍手吉田総理大臣は、この冒険を正当づけるために、朝鮮民族の解放戰争を、かつてに北鮮の侵略であると断定しておる。国連に協力するのは当然のことであると公言しておる。総理大臣は、一体いかなる確証によつて、またいかなる根拠によつてこれを北鮮の侵略であると断定されるのであるか、答弁をお願いしたい。いまだ独立を許されず、自主権も認められず、一切の戰争行為を禁じられており、国連の参加をも承認されていない日本が他国の戰闘に進んで介入するがごとき、かような無法な行動が、正義と道理と国際法を重んずる世界の民主的人民から承認されると思うておるのであるか。  しかもこの介入は、当然のこととして日本の軍事化を推し進めるだけではありません。日本の全人民と全産業を外国の戰争のために犠牲にするものであると言われてもしかたがありますまい。それゆえにこそ、現に日本の人民の多数は、この内戰への介入に反対しております。日本だけではありません。全世界至るところの平和を愛する諸民族が、この事件から即時手を引くことを要求しております。朝鮮人民みずからの手によつて民主的統一を達成することを支持しているのは、全世界の平和愛好諸民族であります。(拍手総理大臣は、この全世界にわたる人民の声を無視し、日本人民と祖国を犠牲にし、みずから買うてこの事件に介入することによつて、朝鮮民族のみならず、極東と全世界の民主的諸民族から帝国主義の走狗とののしられ、日本軍国主義の復活者として永久にぬぐいがたい烙印を押されることをあえて辞さないつもりであるか、私は日本人民の戸を代表してはつきり申し上げたい。吉田総理大臣は、この壇上から、東亜諸民族民族解放の闘争と、その自主的発展に対しては、日本は決して介入しないし、また決して介入せしめられないということを明らかにされんことを要求するものであります。(拍手)  第二に、私は吉田内閣のいろいろな政策を一貫する戰争への協力と軍事的性格を明らかにしたいと思います。政府は、すでに長い間、旧軍事潜勢力の━━━━━をはかつて来ました。警察の強化と武装化を企てて来ました。海上保安庁の━━を企図して来たのであります。また吉田総理大臣は、日本の人民が平和と独立とのために希望つする全面講和を頭から妨害し、否定し、みずから進んで━━━━に導く危險のある單独講和を主張したのであります。しかもその陰で、総理大臣は進んで━━━━━に協力し、自主性を放棄し、祖国を━━の方向へ推し進めて来た。これは日本の人民周知の事実つである。  その結果、日本はどんなことにされたか。どんなになつたか。国をあげて━━━━━されようとしておる。軍事産業は復活され、平和産業と農業が根本的に破壞されたことは、もはや国民周知の事実である。これがわからぬのは與党だけである。このむごたらしい国土の上にもたらされたるものは何か。破産と失業と飢餓と重税、たつたこれだけだ。この重圧に苦しむ人民が、帝国主義のための豊富で安い軍事植民地的労働力としてつくり出された、たつたこれだけだ。これが厳然たる事実であります。この事実を前にして、吉田総理大臣は、なおかつこれが日本の軍事的植民地化でないとおつしやるのであるか。  吉田総理大臣は、かつてわが党の質問に対し、日本にある基地は占領管理のための占領基地であると答弁されました。今日外電の伝うるところにより、日本の新聞に書かれておるところによれば、朝鮮の事件に対して、日本の基地から飛行機が飛んでおるという記事が新聞に書かれておる。吉田総理大臣はこれもやはり占領管理のための占領基地であると御答弁なざるのであるかどうか。(発言する者多し、拍手)  吉田総理大臣日本日本の人民をこのような状態に突き落しながら、さらに一歩を進めるために、いわゆる超党派外交なるものに藉口し、事実上挙国一致の戰争協力態勢をねろうておられる。この超党派外交構想こそは、政党政派を抹殺し、政党政治を否定するフアシズム態勢樹立の陰謀以外の何ものでもありません。(発言する者多し、拍手)かつて東條は、大東亜共栄圏ということを唱えて国民をあざむき、いわゆる翼賛態勢をつくり上げ、侵略戰争を始めたのであります。吉田総理大臣とその一味は、今日外交問題に藉口し、またもや東條と同じことを企てていると思う。これは一体何のためでありますか。だれのためでありますか。これこそ国際独占資本のために朝鮮問題に介入し、反ソ、反中国戰争に加担する準備以外の何ものでもありますまい。(発言する者多し、拍手)ここで私は吉田総理大臣に聞きただしておきたいことが三つある。第一に吉田総理大臣は、日本を反ソ、反中国戰争の基地として提供し、日本人をソ同盟並びに極東の諸民族に対する軍事下請人とし、日本の人民をその人的資源にさせるおつもりであるかどうか。現在外電は、日本すなわち吉田総理が喜んで基地を提供するのであろうと、はつきり伝えておる。元第八軍司令官アイケルバーガー中将は、日本人は勇敢で、かつ豊富低廉な人的資源であると言われておる。  第二に総理大臣は、かような政策によつて生れる一切の犠牲と負担を、ことごとく日本の人民に背負わせる御所存であるか。現にちやんと出ております。すなわち、朝鮮事件への積極的介入によつて、終戰処理費はもちろんのこと、鉄道、海運、通信その他軍事的経費は、もはや無際限に厖大化いたそうとしておる。しかもこの協力費の増大によつて国民の負担は底なしに増大するであろう、企業は軍事的に動員され、労働者は軍事労働を強制されるであろう。日本の産業と経済が収拾すべからざる混乱に陷ることは、火を見るよりももはや明らかであります。国民は何よりもこれを恐れております。国民は、広島や長崎のようなあの悲惨から守つてくれる政府を望んでおるのです。国民は生活の安定と、拂える税金をかけるような政治を望んでおるのです。政府はこの事態に直面し、国民の前に、この経済のこんとんと破局をどう切り抜けるのであるか。どういう確信と自信があるのであるか。このことは明らかにする義務があると思います。  第三に、七万五千の特別警察予備隊と海上保安隊の大拡張、これは一体何事でありますか。極東委員会においては、十二万五千以上の警察力を認めておりません。戰前における日本軍国主義の常備軍はわずかに二十万であり、そのときの警察力は六万五千でありました。しかるに、今日政府がこのような厖大な特別警察をつくる必要がどこにあるか、政府は国連協力への前提処置と称しておるが、政府の真意はきわめて明らかである。この七月の十一日、地方行政委員会において、大橋法務総裁は、その目的は国連協力のための国内治安維持であると、はつきり答弁しております。これは一体何か。この警察は、治安維持に名をかり、ありとあらゆる人民勢力を弾圧する機関である。同時に政府は、これによつて━━━━━━━━━━━━をも企図する下心ではないか。  しかし私は、ここではつきりと申し上げておきます。このような政策が何を意味するものであるかを、国民大衆はもはや身をもつて知り始めた。現に人民の多数は、全国至るところにおいて戰争に反対し、單独講和に反対し、軍事基地化に反対し、民族解放闘争への介入に反対し、日本の独立と平和のために立ち上つております。このたびの参議院選挙をごらんなさい。(「負けたじやないか」と呼ぶ者あり)国民の多数は、戰争と軍事基地化に反対の投票を行つておるのだ。総理は、この事実をどうお考えになるか。また総理は、以上私が指摘しましたところのいろいろな政策がポツダム宣言に忠実な政策であるとお考えになるかどうか。総理大臣は、かようなことが極東委員会の対日基本政策に違反しないとお考えになるかどうか。  第三に、政府国際独占資本の手先になり、平和破壞の政策を強引に推し進めるために、人民の先頭に立つてつている日本共産党の大弾圧と非合法化にやつきになつておる。しかも政府は、地方税法案が参議院で否決の場合言を予想して衆議院で三分の二の多次を確保するために共産党を追放しようということを考えておるという風説さえある。(笑声)かつてドイツにおいては、ヒトラーが自己の戰争政策に反対するものを一掃するために第一にやつたことは、共産党の禁止、(発言する者あり)それに次いでやつたことは、共産党本部の襲撃と、共産党員の虐殺であります。日本においては、一九二八年、天皇制侵略者が、満州侵略の序曲として第一にやつたことは、共産党の弾圧と投獄と虐殺である。それ以来、日本にはどんな状態がもたらされたか。監獄は、戰争に反対し、民主主義を守ろうとする人民によつて一ばいになつたのであります。思想統制は全国をおおい、言論は封殺され、基本的人権はことごとく踏みにじられ、自由と民主主義の最後のかけらまでもぎとられ、労働者は一つのストライキさえできなくなつた。どこの国でも、いつの時代でも、共産党弾圧の内容と結果はこれであります。歴史の上に、たつた一つの例外もありません。私はこれ以上申し上げない。  しかし、ただ一つ言うておきます。日本の支配者は、またもやこれと同じことをたくらんで来ておるということであります。しかしながら、今や労働階級は、人民大衆は一九二八年の人民ではないということを、吉田総理大臣は銘記しておかれるがよろしいと思う。吉田総理は、共産党弾圧の口実として、暴力で日本の復興を裏切り、列国の信用を失わしめ、早期講和を妨害するのは共産党であると公言されておる。私は申し上げたい。暴力行使者は一体だれだ。(「共産党だ」と呼ぶ者あり)日本の復興を裏切つておる者は一体だれだ。(「共産党だ」と呼ぶ者あり)いわゆるドツジ・ラインの名によつて日本の全産業を麻痺状態に追い込んでおるのはだれですか。(「共産党だ」と呼ぶ者あり)外国のために恐慌を輸入し、外銀、外商に巨利を與え……。     〔発言する者多し〕
  24. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 川上君にちよつと申し上げます。この際皆さん御静粛に——特に発言者に申し上げておきます。やじの発言を誘発するような言辞は、嚴にお慎みを願つておきます。
  25. 川上貫一

    ○川上貫一君(続) 外国のために恐慌を輸入し、外銀、外商に巨利を與え、日本を軍事的植民地とするために、低賃金と低米価を力ずくで押えておるのはだれであるか。(「共産党だ」と呼ぶ者あり)破滅的重税の張本人はだれか。一千数百万人の失業者を出し、奴隷労働へ突き落しておるのは、吉田総理その一党であります。法律の根拠も明らかにせず、一官吏の一片の声明で議員の国会報告までも禁止したのは、一体政府ではないか。みずからつくつた憲法をみずから蹂躙しているのは政府ではないか。権威と欺瞞をもつてしてもおおうことのできない厳然たる事実が、これにこたえております。  日本共産党は、平和と独立と生活の安定を囲い取るために、世界幾億の平和を望む諸民族とともに国際独占資本への隷属化に反対し、軍事基地化に反対し、フアシズムに反対し、侵略戰争に反対し、すべての愛国者を含む民主民族戰線に呼びかけておるのであります。それゆえにこそ、またわが党は、世界平和のとりでであるソ同盟を先頭とする中国その他世界平和愛好諸民族及び諸勢力との親善と提携を主張しておる。それに上つてポツダム宣言の完全な履行による全面講和締結と、全面講和後における全占領軍の即時撤退を主張しておるのであります。さらに国民生活の安定と経済の復興発展のために、軍事潜勢力の一掃、平和産業の無制限拡大、ソ同盟、中国との自由なる貿易を主張しておるのは、わが日本共産党であります。真の民主化と非軍事化のために言論、集会、出版、結社の自由と、デモとストライキの自由を主張し、基本的人権の完全なる尊重を主唱しておるのは日本共産党のみであります。これが日本共産党の主張であり政策である。だからこそ、わが党の主張を支持し、わが党の呼びかけに応じ、労働者農民、市民、インテリゲンチヤ、科学者、芸術家、婦人と青年、民族資本家までも含め、国を愛する広汎なる人民が、今日平和の擁護と民族解放の闘争に版起しておるのが事実であります。この厳然場たる事実こそ、だれが暴力者であるか、だれが裏切者であるか、だれが講和の妨害者であるか、だれが国を救う者であるかを証明して余りある。  平和と独立は、社会主義と人民民主主義の側にあるのであります。世界は二つである。帝国主義の陣営と、社会主義並びに人民民主主義の陣営であります。さきに鈴木君は全面講和を唱えられ、反共の主張を明らかにされた。反共で全面講和ということはナンセンスである。中立は欺瞞である。問題は二つである。戰争か平和か、ソ同盟並びに中国との親善による全面講和か、戰争に導く單独講和かの二つである。この実際の真実を恐れ、人民勢力の発展におののくものが共産党を暴力と誹謗し、共産主義の侵略を叫ぶのであります。  共産主義は他国を侵略したことはありません。現に中ソ両国は他国の内政に干渉せず、終始一貫平和政策を堅持し、現に原子兵器の製造並びに使用の禁止と軍備の制限を主張し続けております。事実、中ソ友好同盟條約は嚴として東亜の平和と独立を保障し、日本に対してポツダム宣言の完全なる履行を約し、全面講和の早期締結を提唱しておるのは、中ソ友好同盟條約であります。ソ同盟と、この中国のこのような態度政策こそ、日本人民を含めて、すべての平和愛好諸民族の利益とまつたく合致するものであり、わが日本共産党態度政策もまたこの基調の上に立つものであることをはつきり申し上げたい。  最後に私は、吉田内閣総理大臣に対し、日本の人民及び世界の平和愛好諸民族の意思を代表しまして、次の質問に明確な答弁を要求するものであります。去る三月去る三月、ストツクホルムにおいて開かれました平和擁護世界大会常任委員会総会の原子兵器使用禁止のアツピールに応じて、ソ同盟、中国、東亜人民民主主義諸国は言うに及ばず、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアその他性界幾億の平和愛好人民の間に大署名運動が起つております。  そこで私は総理大臣にお聞きするが、原子爆弾による惨禍を身をもつて味わされた日本首相として、総理大臣は、このストツクホルムのアツピールにこたえ、原子兵器の絶対禁止に賛成なさるかどうか。  第二に、禁止措置が確実に実行されるための厳格な国際管理に賛成されるかどうか。  第三に、原子兵器を━━━━━━━━━━━━━━とみなすことに賛成されるかどうか。吉田総理大臣にしてこれに反対ならば、総理大臣は━━━━━━━━━━━━━━━と言われても仕方があるまいと思います。総理大臣の明確な答弁をお願いします。
  26. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの川上君の発言中不穏当の言辞がありますれば、速記録を取調べの上適当な処置を講じます。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  27. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  私は、いわゆる国際連合の平和政策協力すると申すか、同意をする、あるいはこれに対して協力するということは申したが、戰争に介入するということは断じて申しておりません。  また軍事基地云々とかいうようなことをしきりにお話でありますが、軍事基地の提供を━━まだ私は受けておりません。従つてまた、その費用等を国民の犠牲による云々、転嫁せしめるということでありますが、この交渉もまた受けておらない。  また警察増強の必要なることは、その当時政府としては発表いたしておりますが、日本の治安の維持上、ことに現在の状況において治安はますます━━治安の維持には政府としては全力を盡すべきでありますから、警察機関の充実は、当面の問題から申しても必要なことであります。あえて共産党のみを目がけておるのではないのであります。  また共産党の首領の追放についていろいろお話がありましたが、要するに風説を土台にするとか、あるいは臆測を土台とするのでありますから、答弁はいたしません。(拍手)     —————————————
  28. 今村忠助

    ○今村忠助君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明後十七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  29. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会