運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-11-13 第8回国会 衆議院 文部委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月十三日(月曜日)     午前十一時七分開議  出席委員   委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 小林 信一君       坂田 道太君    佐藤 重遠君       高木  章君    若林 義孝君       井出一太郎君    笹森 順造君       坂本 泰良君    渡部 義通君       小林  進君    浦口 鉄男君  委員外出席者         文部政務次官  水谷  昇君         文部事務官         (大臣官房総         務課長)    相良 惟一君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     寺中 作雄君         文部事務官   上野芳太郎君         文化財保護委員         会委員     矢代 幸雄君         文化財保護委員         会委員     有光 次郎君         文化財保護委員         会事務局長   森田  孝君        專  門  員 横田重左衞門君         專  門  員 石井  勗君     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員調査報告聽取  学校教育に関する件  教育予算に関する件  文化財保護に関する件     —————————————
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  この際御承認を得たいことは、過日災害国宝及び国宝管理状況実情調査ため委員を派遣してはとの御発議がありまして、去る八日委員長において委員派遣承認申請書議長に提出いたしておきました。委員会の御承認を願いたいと存じますので、この際御了承を願います。     —————————————
  3. 長野長廣

    長野委員長 次に議事日程の順序を変更し、まず派遣委員より報告聽取の件を議題といたします。当委員会は、去る七月三十一日、教育委員認定講習に関する調査災害国宝及び国宝管理状況実情調査ため委員を派遣するに協議決定いたし、八月二日議長承認を得ましたので、これが調査行つたのであります。これより第二班の東海北陸班若林義孝君より、順次御報告を求めます。
  4. 若林義孝

    若林委員 今回の東海北陸地方におきます調査ため、私と小西委員、それから專門委員室からは大中臣君が同行いたしました。調査概要を御報告申し上げますが、詳細にわたりましては、ここに書類をこしらえておりますので、これを速記録に御掲載願うことにして、朗読を省略いたしたいと思うのでありますが、特に要点だけを二、三申して御報告いたしますと、認定講習に関しましては、大体今まで論議せられましたところの要望が、地方から出ておるのでありまして、これは将来教職員免許法審議改正その他を御考慮願いたいことと、それから予算的措置を至急に講ずることの必要があると思うのであります。  それから国宝文化財保護状況に関しましては、大体静岡県は、われわれが予想しておりますより以上、的確なる保存状況でありまして、いま一般国家の力がこれに加わりますならば、ほとんど他の県の模範となり得るのではないかと思われるのであります。ただ一点登呂遺跡につきましては、大体今年度で予算が打切られておるようでありますが、これは関係者の言葉をかりて申しますと、いま一歩進めまして——その当時の墓場の状況を知るためには、いま一歩進んで発掘をするならばという意向がありますので、できればそれが移されるまで国家補助を要請するという声が多かつたように思うのであります。  それから岐阜県におきましては、文化財保護については遺憾な点が多々あるのでありまして、文化財保護委員会の一段の御考慮を煩わす点が多々あつたように思います。  それから福井県におきます文化財で、私たち拜見いたしましたのは、柴田邸と丸岡の霞城であつたのでありますが、霞城は過般来から県、国両方のなんで出ておるのでありますが、また聞くところによりますと再建の運びになつておるようであります柴田邸室町時代の邸宅をそのまま保存してあるのでありまして、ほかに場所によりますと、これはそういう形体がなくなるおそれがあるのでありますが、幸いにいなかに、いわゆる町を離れておるために残つておるのでありまして、これが農地改革その他によつて個人の持つておりますものも、これを維持して行く経済力を失つたような感じで、進駐軍から借りましたシートを屋根にかけて雨漏りを防いでおる。しかも台所その他の状態は動かして相ならぬという命令を出しておるわけでありますが、国家の施策から来ます経済的変動ために、これを維持することができないようになつておるのでありますから、保護委員会特段のお力添えを願つてやまないのであります。  それから全体を通じまして痛感をいたしましたことでは、職業教育に関してであります、これはどの班の御報告にもあることだと思いますから、これもあまり詳しくは申しませんが、本委員会といたしまして、将来この職業教育振興に関しましてひとつ御考究を願つて文部省の御善処を願いたい、こういうことを申し添えておきたいと思うのであります。  それから宗教法人法を設定することを予想せられておりますために、宗教法人に関する意見を聞いて参つたのでありますが、静岡県におきまして、最も新しい宗教といわれますところのPL教団を訪れまして、いろいろ関係者意見を聞いたのでありますが、時代に即した新しい宗教といたしまして、人心を正しく把握しつつ隆盛の道をたどつております姿に対しては、敬意を表したのであります。なお宗教法人法その他によつて、この種の宗教は大いに伸ばし得るようにしたいものだという感じを持つた次第であります。  なお岐阜県におきましての宗教活動は、教育委員会と緊密な連絡をとつておられまして、他に比べて非常に宗教全体が活発に動いているような気がいたしました。  それから福井県では永平寺を訪れて、永平寺中心宗教関係者との懇談会を開いたのでありますが、この点PL教団新興宗教であり、永平寺は最も古い形を行かれます宗教で、両方ともいいところが私たちあるように思つたのであります。  石川県では、宗教全体の人たち懇談会を行いまして、一日も早く宗教法人法の確立を希望せられておつたのであります。  他はこの書類がこしらえてありますから、これを速記録にお載せを願うことにいたしまして御報告を終りたいと思います。     —————————————     —————————————
  5. 長野長廣

    長野委員長 第三班近畿方面であります。これは私が中西調査主事を帶道して参りました。簡單に御報告を申し上げます。詳細のことは別紙報告書專門委員室保存をいたしておきますので、ごらんを願いたいと存じます。  去る八月十日より十日間にわたつて近畿地方調査いたしました。なかんずくここに特に御報告を申し上げておきたいと思いますことは、国宝管理ということにつきましては、京都市において相当能力のあるポンプを新たにつくりまして、その実演も見たのでありますが、最高の伽藍屋根の上まで水が十分に集中されまして、みごとな成績を見たのであります。これは将来国としましても、相当補助獎励をいたしまして、特別な大きな伽藍等については、急いで復旧をされたいものであると思います。なおそれに件う水だまりでありますが、全国的に見ましても、今後相当考えなくてはならぬと思います。京都においては、すでにこの点について特別な灌漑用水の中から分水をしまして、一種のプールのようなものをつくつて行こうという計画があるようでありました。おしなべて国宝は山の中腹以上にあるものが多いのでありまして、この点特に将来留意をする必要があると思います。  それからこれはただ近畿だけでなく、全国的に白あり等が、相当従来惨害を及ぼしておるのでございますが、最近非常に進んだ防虫剤というようなものもあるので、これらの点を初めとして、新たに修理するにつきましては、建築の方法等にもくふうを加えまして、特にこの点については政府の側において調査を進められ、研究も遂げらてて、従来のような不成績に終らないようにせられたいものだと思いました。  それからその次に、京都大学学長に面会しました際に、実業教育に対するあの地方実情並びに国として今後いかなる力を注ぐべきかという点について、意見を徴しましたが、実際問題としまして、農、工、商、水産、山林等等実業教育は、戰後非常に衰頽のおそれがある、ことに大衆教育におきまして、その傾向が著しいのであります。これは本教育の性質上、政府として経費の増額もするし、また必要ならば法律も新たに制定をいたしまして、これが徹底をしてもらいたいということでありました。なお、職業教育を、單に実業的な学校においてするのみならず、小学校、中学校、場合によつて大学に至るまで職業教育、ことに大地基調とするところの職業に向つて相当施設をして、この教育を徹底する必要があるのではないかという点につきまして、私も自分の意見を述べましたが、鳥養学長も特に共鳴をせられまして、あの関係地方実情からしましても、それを認める。少くともこの天地自然の生成化育を対象として、全身全霊をこの大地を通して生成発展方面に傾注する、その力と魂を注ぐ、そこにおいて初めて生れ出るところの生産物、すなわちそれが全人類を養うて行く、この尊い宗教的な仕事に基調を置いた訓練を加えるということは、ただに従来いわれた実業教育のみでなく、あらゆる職業的教育根本訓練として徹底すべきものであるということに、御共鳴をいただいたのであります。今後政府におきましても、これらの点に向つて十分なる研究と、最近ややもすればほとんど顧みられざる状態に対しましては、何よりもまず第一にこれに力を注ぐくらいのお考えで進んでいただかなければならぬと感じた次第であります。大体以上でございます。  それから次に中国班
  6. 若林義孝

    若林委員 坂本委員にかわりまして、御報告をいたしたいと思います。  大体概要につきましては報告書が作成されておりますから、それを速記録に御掲載を願つて委員各位ごらんを願うことにいたしまして、要点のみを申してみたいと思います。  教育職員免許法におきます認定講習に関しましては、大体岡山について——これは山口、島根も地域的に共通いたしておりますので、同じでありますから、要点だけを申し上げます。  その要望の第一としましては、單位数軽減ということであります。第二が、受講者経済的負担軽減。それから各県に設置せられました大学の協力がきわめて好意的であつて認定講習及び現職教育は、大学のエキステンシヨンとしての構想で行つておりますので、講習によつて取得した單位数は、大学に編入された場合には、大学所定單位数の中に加算してほしいということであります。第四は、教育職員が過去に再教育その他の理由で、公の講習会受講した部分については、今回の認定講習單位として追加してほしい。それから第五が、認定講習実施に関する費用受講者の経済的、健康的負担学校授業日数支障等より考慮して、今後通信教育を拡充してほしい。それから第六として、一般講義内容が低いという声があつたのであります。これはどの御報告にも大体こういうことが出て来るだろうと思いますので、三県をとりまとめて申し上げておきます。  それから国宝に関しましては、三県とも国宝管理については、きわめて良心的に行われております。国宝の中でも、特にその維持修理に多額の費用を要するのは、社寺等建造物でありまして、三県ともそれらの修理はきわめて熱心であり、また比較的国庫からも今まで御配慮願つておりますので、その目的に向つて邁進はいたしておるのでありますが、なお一層国費補助を望むということなのでありまして、特筆いたしますと、相当困難で行き詰まつておるものもあるのでありますが、新しく発足せられました文化財保護委員会の御活動を期待してやまぬのであります。一例をとつてみますと、岡山市の岡山城天主閣などは非常にいい例でありまして、これは今まで池田家個人の所有であつたものが、経済的変化によつてこれの維持はまつたくできぬ。物によれば分割してこれを処理して行かなければならぬというような窮状にあるのでありまして、特に御考慮を煩わしたいということであります。  それから宗教活動については、新しい宗教も古い宗教も、岡山県、山口県などには相当つておりまして、しかも学術思想研究等の有意義な文化活動が活発に行われておるのでありまして、宗教法人法の設定によつて一段の活力を與えるべきだと思います。  実業教育に関しましては、各県とも要望は同じであります。ただいま委員長の御報告せられました京阪地区近畿地区におけると同様だと思うのでありますが、しかし特に申し上げておきたいと思いますのは、岡山県におきましては、特に異色ある学校として、機械化農業教育重点を置いておるのでありまして、県立の興陽高等学校、あるいは文部省指定工業課程研究校であつた県立老松高校などがあるのでありまして、先ほど来の委員長の御報告のような趣旨に基く実業教育に対しての格段の御配慮を煩わしたいと思うのであります。  それから特に岡山県におきまする盲聾教育についての施設の御報告がここにあるのでありますが、特殊学校として格段の御配慮を煩わしたいと思うのであります。六・三制の充実その他に重点を置きますために、ほんとうに社会から天與の幸福を奪われております盲聾人たち教育に、一段と御考慮を煩わしたいのであります。熱心にやられております割合に、財政的に苦しんでおるところがある。なお特に盲聾唖教育に関して、これは厚生省の問題であろうと思うのでありますけれども理療科を習得いたします者については、一般社会免許制度というので、資格に制約されておりますが、現在の盲聾学校理療科施設はきわめて不完全な状態でありますので、この免許法を嚴格に当てはめられますならば、せつかく盲聾学校において受けました職業教育も、そのまま役に立たぬという感じがあるのでありまして、小さい時から長年特別の教育を受けております盲聾学校の卒業生に対しては、格別の免許制度というものを御考慮願うにあらずんば、盲聾教育を受けても何にもならぬというような感じを、父兄にもまた本人にも與えるかと思うのであります。一方免許制度に一つのゆとりを持たすということと、盲聾学校施設それ自身を拡充せられまして、要は盲学校に就学いたしますということは、一は出ましてから後の生活自体を安定するということにもあると思うのでありますから、その卒業と同時に免許が得られ得るような御配慮を、ひとつ煩わしたいと思うのであります。  他は大体報告文書にも、またいろいろ資料專門員室保存いたしておりますからそれについて御高覽を願うことにいたしまして、御報告にかえたいと存じます。
  7. 長野長廣

    長野委員長 次に第五班。
  8. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 九州班は私と小林信一委員、それから坂本泰良委員熊本県だけに参加したのでありますが、この三委員及び石田調査主事及び伊藤文部事務官、この一行で福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、長崎県、この五県七市——七市と申しますと五県の県庁所在地の市及び宮崎県の延岡市、長崎県の大村市でございますが、その状況調査いたしたのであります。その詳細は報告書として速記録に載せていただきたいと思いますが、簡單にその要点だけを申し上げます。  まず教育職員認定講習についてでありますが、ちようどあのころは日教組受講拒否指令を出した直後で、それは大体解決の緒についたというような状況でございましたが、そういう中央の状況であつたにのもかかわらず、この五県の受講者及びその講師の諸君は、あの八月の中旬で一番暑い折りであり、かつまた一番暑いところであるあの地域の方々であるにもかかわりませず、きわめて真摯なる受講及び講義をやつてつたことは、まことにわれわれとして欣快に存じたような次第であります。その要望といたしましては、先ほども申された通り、この科目を少し整理してもらいたいこと。あるいは旅費等につきましては、大幅に何とか国庫等においてこれを負担していただきたいこと、これは相当強い要望でございました。  それから宗教活動についてでありますが、これは終戰後全国的に見られる現象でありますが、特に鹿児島県のごとき、いかがわしい新興宗教が拔扈いたしまして、迷信の風潮とうとうとして風靡しているというような、きわめて憂慮すべき状況でございましたので、今後宗教法人法等を制定する場合には、こういう面を深く考慮する必要があるということを痛感いたしたような次第であります。  それから職業教育につきまして、委員長あるいは若林委員より報告がございましたが、この点につきましては、御案内通り非常に大学等もふえまして、学者といいますか、高級な技術者がたくさん今後輩出するであろうにもかかわりませず、その下級の、たとえば高等学校程度、あるいはそれ以下の職業教育というものが非常に振わない。この現象は、あたかもこれを軍隊にたとえますと、将校のみ多くて、かんじんの下士官兵がおらないというような、こういうびつこの状態でありまして、きわめて憂慮すべき現状でありますので、国家といたしましても、この職業教育振興については、特段考慮拂つてただきたい。こういう熾烈な要望があつたのでございます。  それから国宝保存でございますが、国宝保存は、御案内の新しい法律を制定いたすために、その新しい指定がストップされ、あるいは事務的にもいろ運行上円滑を欠きましたために、その修理保存等が停滞をしておるという状況も現認されたのでありまして、たとえば長崎国宝である大浦の天主堂のごとき、その一例でございます。この天主堂長崎シンボルとまでいわれるものでありますが、もう数年間も要しておる。しかもわれわれが行きました際は、その工事はストップされておつた長崎シンボルとまで仰がれるゆえんは、あの天主堂の中でも、特に尖塔にあるのでありますが、その当時醜悪なるカバーをつけておつたカバーというのも、テントか何かならいざ知らず、板で打ちつけた、きわめて醜悪なるカバーをかけておる。今年は幸い台風をのがれましたけれども台風の多い県でありまして、もし台風一たび至らんか、あの天主堂は完全に吸き飛ばされたであろうということを思うときに、はだえにあわを生ずるのであります。それは使いながら修理をいたしておるというような、條件としては非常にむずかしいのでございますけれども、遅々として工事が進まぬ。それで工事のおそいのを、あの地方では文部省式工事とまでいわれております。それがため雨漏り等が生じて数年間のうちに数回設計がえをしなければならぬ、それがため国費も少くて済むものをたくさん要し、しかも結果において、その内部の貴重なもの等も非常に汚損してしまう、こういうような悪い面が重なつておるのであります。ここに委員の方もおられますが、実はこれは八月中のことでございまして、まだ文化財保存委員会というのは発足していなかつたのでありますから、決して新しい委員の責任ではございませんけれども、九月以来新しい厖大なる組織が発足したのでありますから、今後はこういうことがないように、ぜひ特段の御考慮をしていただきたいのであります。     —————————————     —————————————
  9. 長野長廣

    長野委員長 以上一応各班にわたつてその報告を聽取いたしたのでありますが、これより質疑を許します。
  10. 笹森順造

    笹森委員 ただいま各派遣委員から概略の御報告を伺つたので、詳しいことは速記録において拜見しなければわからぬのでありますが、この際特にお尋ねしておきたい一点だけをお伺いしたいと思います。それは教育職員認定講習実施に関することであります。その実施期限が延長になりましたことによつて講習の未完了者便宜を與えられたことはもちろんでありますが、しかるところ、すでに認定講習單位を完了した努力者に対しまして、すみやかにその資格免許証を発給する措置文部当局その他においてとるべきだ、こういう要求を私どもは各地から聞くのでありますが、そういうような要求を今の委員方々でお聞きになつておらなかつたかどうか。詳しい報告書の中にそういう点が出ておるかどうか。これは今相当重要な問題として取扱われているようでありますが、関係になりました方がありますならば、お答え願いたいと思います。
  11. 若林義孝

    若林委員 今笹森委員からの御質問でありますが、不幸にいたしまして、その声は私どもの県におきましても聞かなかつたのであります。しかし正当な声だと思うのであります。たまたまわれわれが面接いたしました人たちは、その中途にあつた人たち代表者が多かつたからだろうとも思うのでありますが、その要求を直接聞きませなんだことを御報告いたしておきます。
  12. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 ちようど先ほど申し上げました通り、われわれの参りましたのは、あの日教組受講拒否指令を出しまして、それが治まつて、それで県によつては、これから受ける態度をきめようかどうしようか、こういうような県があり、すでに受けておるところもあつた。こういう状況で、まだ今御指摘の点に対しては、特にどうという要望は、われわれの班に関する限りございませんでした。これは今後の問題として起つて来るのではないかと思います。
  13. 笹森順造

    笹森委員 ただいまのことで、大体おまわりになつ地方における教員の態度及び空気はわかるのでありますが、そうでない、すでに受講を完了した者の意向というものが、やはり表わされておらなければならぬと感じたから申し上げたのであります。これは今委員にお尋ねしたところの資料のほかに、いずれ文部当局にも、この問題についてはお尋ねしたいと思いますので、私は委員に対する御質問はこれで終ります。
  14. 長野長廣

    長野委員長 この際文部当局も見えておりますが、もしありましたら……。
  15. 笹森順造

    笹森委員 幸い今委員長からの特別なおとりはからいで、文部当局に尋ねてもよろしいということでありますから、関連した問題として、ただいまの点をお尋ねいたします。すなわちこの講習が行われるにあたりましては、これを非常に喜んで、多くの犠牲を拂つてこれを完了した者がすでにあるのであります。ところが、この講習実施の年限が延長されたということによつて、当然努力者に対して與えられるべき資格を、もしも講習完了者が阻止するというようなことでもありますならば、たいへん努力する者がますます困つて、努力しない者がかえつて便宜を與えられるというような不公平の結果になることを憂えるのであります。私どもは、すでに努力した者の要望を聞いておりまするがゆえに、現在文部当局におきましてこの努力者に対して、精励した者に対して報いるという、そういう正当なことをお考えになつておるかどうか。またそういう措置をとられるために、現に何か措置でもしておるかどうか、関係当局からのお答えを願います。
  16. 上野芳太郎

    上野説明員 今の御質問の問題は各府県で検定事務を開始しておりますので、條件とされている單位数が全部修得されれば、すぐに出願することがてきます。出願されれば、すぐに手続の終了次第授與することになつております。従つてこれをどこでも抑制することは現行法ではできなくなつておりますから、單位数を取得した者が先に上級の免許状をもらう、そういうふうに現在なつております。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 視察をした者として、視察の中からこの際特にお尋ねしたい点を、文部省にお聞きするのですが、やはり認定講習の問題で、先ほど岡委員から報告がありましたように、当時日教組受講拒否というような態度に出て、非常に不穏当であるというようなことが、世間一般に流布されておつたのですが、私たち九州方面視察してみますと、やはりこれは計画的なものでなくて、受講の途次においてそういうことが一般から痛感されて起つたというような情勢が多分に見られたわけです。それは御承知のように、九州方面は、離島関係のところが多く、また地勢的にも、講習会場に通うのに非常に困難なところが多い所があつたのです。これは教員諸君が受講するに対して、單に不平を訴えただけでなくて、離島等から受講に出て来た方たちが、もう一日か二日で財政的に耐えられなくなつて受講を当然拒否しなければならぬような状態に入つた。これら一般の空気が察知されまして、これは非常に重大な問題であるというところから、各府県におきまして、その実情を見るに忍びず、県の財政的な措置によりまして拒否等を指令したところがあるのです。その府県等のわれわれに要望するところは、ぜひとも認定講習の問題については、特別な予算措置をして、各府県の財政を援助してもらいたい、これは当然援助すべき性質のものであるから、一応ここでわれわれは県内で予算措置をするけれども、ぜひとも当局に要望して補正予算等で今回の講習に要した旅費等を支給してもらいたい、こういうことをたくさん言われて来たのです。一例を申し上げれば、長崎県あたりで、もし当局で国家の財源で足りない場合であつても、わが県は実情を見るに忍びないから、一人五百円ないし六百円を平均して支給すると、こういうふうな決意まで固められて、講習を重視され、その実情に対して措置をしておるのです。これに対して文部当局は、各府県の実情等を聽取されておると思いますが、何か補正予算等において考慮される点があるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  18. 上野芳太郎

    上野説明員 旅費の補助の問題が、一番中心であろうかと思いますが、旅費の問題につきましては、本年度の補正予算で、一億九千万円程度の補助を計上して準備いたしております。それから明年度以降につきましても、政府として五箇年計画を今計画中でありまして、それに伴う旅費の補助を計上して準備いたしております。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると本年度当初に組んだ予算でも、相当にまかない得られる。そして来年度からそういう五箇年計画というような面で相当考慮するというお話ですが、各府県で実際府県の立てかえのような形でもつて組まれておるものが、その当初組んだ予算でもつてまかない得られるか、あるいは各府県で今回夏期において組んだところの県独自の予算というものは、やはり県の方の支弁によるよりほかないような状態になるのかその点をはつきりお伺いたいと思います。
  20. 上野芳太郎

    上野説明員 本年度の補正予算は、本年度府県で計画され実施されたものに対しての補助でございます。従つて今まではそういう形の経費は政府から出ておらなかつた。今までやりましたのは主として大学の公開講座の実施に必要な経費を出しておりまして、受講者に対する補助に関するものは今度の計画で出るのが一番はつきりしたものであります。今まで平衡交付金で交付される旅費というのはあるのでありますが、それは一般旅費とそれに経費を含むという程度のものでありますので、今度の補正予算によつて、明確に本年度実施した講習に対する旅費が出るわけであります。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 その点了解いたしますが、やはりそれに関連するのでありますが、各府県の教育委員会等の意向を聞きますと、これを完全に実施して行くためには、相当予算教育委員会で持たなければならない、おそらく政府においてもそういう措置をとられなければ、十分な講習を継続することはできない。問題は教員の資質の向上であるけれども、もし資質向上のために、今の構想でもつてこれを実施するためには、相当予算考えなければならない。そういう相当予算を使用するとすれば、ねらいが教員の資質向上であるならば、われわれはこういう認定講習というものでなくて、もつと有意義な教員の資質向上をはかつて行く方がよいと考える。この点文部当局相当考慮してほしいというようなことを言われておつたのでありますが、現行制度によつて教員の資質を向上するためには、相当予算を計上しなければ目的を達することができない。こういう点からして、地方要望をわれわれは聞いて来たのであはりますが、この点当局としてはどのようにお考えになられるか。
  22. 上野芳太郎

    上野説明員 今の研修の方法の問題でございますが、その問題については、やはり今年認定講習実施いたしましたが、それは初めての計画でもございますし、いずれの大学においても、これで十分だという確信はないわけであります。これは大学協会の方でもいろいろ研究しておられますし、また文部省で今政令に基く教員免許等審議会というものを開いていろいろ御審議をいただいておりますが、その方の研究に基きまして、さらに有効な方法、あるいは認定講習を現在よりももつと有効に実施する、よりよくするための計画なり、あるいはその他現場の先生方のより有効な研究に対して、單位を與える方法があるかないか、その問題を現在検討せられておりますので、その結果によつて、さらにこれを改善して参りたいと考えております。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 その問題は、実は国会においても論議されたところでありまして、第八国会で教育委員会法の一部修正をいたすときに、そういうことが各委員から要望されたのです。それに対して文部大臣は、ただちにこれが検討をいたす、そうしてなるべく早いうちにその修正、あるいは新たなる方途等と考究するということを言われておつたのですが、ただいまの意見で、そういうことは文部当局でも進行されておるやうに伺われたのですが、事実どの程度までそれが進行されておつて、そういうことが今度の臨時国会あたりに上程される運びになつておるかどうか、その進行状態をお伺いしたいと思います。
  24. 上野芳太郎

    上野説明員 免許等審議会の問題につきましては、ちよつと速記をとめていただきたいと思います。
  25. 長野長廣

    長野委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  26. 長野長廣

    長野委員長 速記を始めて。  午前はこの程度にとどめ休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  27. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  委員長がちよつとさしつかえがありますので、私が委員長の職務を行います。なお御質疑は、文化財保護委員会の方が見えておりますので、これに対する質疑を許します。若林義孝君。
  28. 若林義孝

    若林委員 国政調査国宝保存状況につきましての、各委員の御報告があつたわけでありますが、大体におきまして、国宝保存状況というものは、御報告通りであります。今回議員提案にたります文化財保護委員会が発足をせられたのでありまして、その間いささか空白状態があつたようにも思うのであります。それを補うべく文化財保護委員会が極力陣容を整えられまして、この空白を補うばかりではなく、一歩進んで文化財保護委員会の使命を達成せられることだろうと思うのであります。あの文化財保護法に基きまして、発足以来今日まで種々御配慮つたことだろうと思うのでありますが、どういう陣容で進まれるか、ここに資料が大分御提出されておりますが、これに基いて内容の御説明を承りたいと思います。
  29. 矢代幸雄

    ○矢代説明員 本日は、高橋委員長が出席いたすはずでありましたが、ただいま出張中でありまして、不在のために、委員長代理の私及び有光委員、その他が参つたのであります。  文化財保護委員会は、八月二十九日に任命になりまして、それからただちに委員長を選出いたし、それから委員長代理は委員長の指名でありまして、その他の委員は任期を定め、すでに御承知と思いますが、高橋委員長、それから私が委員長代理、細川委員、一萬田委員が任期二年、有光委員が任期一年、こういうふうになつております。それから委員会を継続開催いたしまして、この文化財保護法の実施についての仕事を進めておるようなわけであります。事務所は文部省内に設けるとともに、分室を国立博物館内に設けております。委員会の運用は原則的には一週間に一度委員全員のそろう委員会を開きまして、その他の日には各自委員会の仕事の準備なり調査その他に当りまして、文部省委員室におる人もあり、あるいは国立博物館の分室に行つておることもあるのであります。なおその委員会によりまして、この政令あるいは委員会規則などを順次準備のでき次第決定して参つたのでありますが、それについては事務局長から報告をいたさせます。
  30. 森田孝

    ○森田説明員 ただいま矢代委員長代理からお話がありましたように、委員会といたしましては、毎週一度総会を開きまして、その他の日には随時本省または博物館に御出席を願うのでありますが、大体各委員ともほとんど連日お顔出しを願いまして、事務の遂行には支障なく参つている現状であります。  今までにいたしましたことは、事務局といたしましては、事務局員の構成と並びにその内部の部課の編成が最初の問題であります。事務局の中に総務部と保存部を設け、各部に三課ずつを設置いたしまして、それぞれの定員を定めたのでありますが、御承知の通りに、本年は予算の中途で成立いたしました関係上、他の費目から人件費の予算を転換すべき費目がありまして、この転換が、補正予算の成立を待つて初めてできる関係上、人員の完全な補充ということは、補正予算が予定通り成立いたしますれば、来年の一月以降において完全に補充ができるという現状であります。その点で、事務局の整備はなお若干不完全なところがあるというような現状になつておるのであります。しかしながら、事務の方は、その足らざる手を補いまして、委員会の各委員の御指導によりまして、できる限り最大の能率を発揮して進めつつありまして、ただいまお手元に配りました、さしあたつて法律上必要な法令的な措置にまず努力いたしておるような次第であります。  文化財保護法に基く政令は、ただいまお手元に配つてある專門審議会令が最大のものでありまして、他に簡單なものが一つありますが、これは專門審議会が成立いたさないとできない関係上、政令といたしましては、文化財保護委員会の專門審議会というものが一つあるのであります。委員会規則は、文化財保護法で非常にたくさんの委員会規則が要求されておりますが、これはそれぞれお手元に配つてあります五件につきましては、すでに制定発足いたしましたし、あと七件につきましては、目下委員会で審議中でありまして、不日成立する運びになつております。なおその他に十数件委員会規則を制定いたさなければならないのでありますが、これも最近の機会には立案し公布することができる運びになるかと考えておるのであります。  なお予算の問題について、若干触れておきますが、本年は委員会が成立してただちに、すでに要求予算の提出後でありましたが、新しい予算を若干補充編成いたしまして、大蔵省との折衝を重ねて、それに相当の努力と日時が必要であつたのでありますが、はなはだ不完全でありますが、これは先日の文部委員会資料としてお配りをいたしたはずであります。いずれまた国会が召集されますと、本会議なり、各委員会において、それぞれぐ御議を願うことになると思うのであります。  なおジエーン台風及びキジア台風につきましては、ただちに重点的に各調査員を派遣いたしまして、また現地から報告を求めまして、現地との連絡会議も数度開いたのでありますが、はなはだおそまつではありましたけれども、若干の災害復旧費を補正予算で御審議願うことになりましたので、目下一応その資料を調整すべく、現地と災害復旧計画を樹立中でありまして、この国会において、補正予算が審議せられる場合におきましては、ある程度の見通しを持つて御審議を願うことができるようになると考えておるのであります。  さらに文化財保護委員会といたしましては、文化財の防火防災施設が非常に重要であると考えまして、今回全国的に防火防災施設についての各現地の完全なる施設計画をつくつて行くように、地方に対してお願いをいたしたのでありまして、この調査が出て参りますと、今まで文部省においてやつておられましたときには、重点的に特殊なものを選び出してやつておりましたが、全国の国宝重要文化財についての防火施設の年度計画を立てまして、これを消化して行くことによつて防火の完璧を期して参りたいというように考えております。しかしながら防火防災についていかに努力いたしましても、文化財を尊重するという国民の意識が高揚されない限りにおきましては完全な文化財保存、保護はできないのでありますし、また同時に、個々の国民の意識を強めるという意味におきまして、われわれ祖先の残してくれました文化財というものの価値を、それぞれ国民が十分に認識することが前提であると考えまして、文化財に関しての普及宣伝に大いに力を入れて参りたいと考えまして、来年度の予算においては若干の経費を計上いたしておるのでありますが、さしあたり各種の団体なり、あるいはまた地方公共団体と、展覧会あるいはまた講演会というようなものを協力、あるいは文化財保護委員会が後援して、行つて行きたいと考えておりまして、すでに大阪あるいは静岡で、これらの展覧会が開催せられておりますし、また東京におきましては、朝日の文化事業団と協力いたしまして文化財の講演会も開催をいたして、逐次このような講演会なり講習会なりを徹底して参りたいと考えております。なお来年度は予算が若干いただけることになりますれば、その他の仕事にも普及宣伝について行つて参りたいと計画をいたしております。  以上のような点が、大体成立いたしましてから現在に至るおもなる点であります。簡單でございますが、一応御報告申し上げます。
  31. 若林義孝

    若林委員 急速に発足をせられました文化財保護委員会の使命は、きわめて重大なものでありまして、承りますところによると、着々その使命に向つて進みつつありますことを喜ぶものであります。そういうやさきにジエーン、キジア台風などの被害がありまして、予測せざる不測の事態を招来したのでありまして、これを適当に処置せられることの使命も、きわめて大きいものだと思うのでありますが、ここに私たち特にお願いをいたしておきたいと思いますのは、従来は文部大臣ただ一人の責任において、今回の陣容から申しますれば、きわめて小なる陣容だつたのでありますが、今度は厖大とまでは行きませんけれども相当その使命が遂行せられるに従つて、今局長からのお話のように、私は予算も獲得できるのではないかと考えるのでありますから、ただ事務的の費用ばかりがかさむことのないよう、実質の活動面において、事業面において予算を活用せられますよう特にお願いをいたしておきたいのであります。そうでなければ、文化財保護法を立案いたしましたわれわれといたしまして、非常な責任を痛感いたしておるのでありますから、どうぞその趣旨において極力最小限の予算で最大の効果があがり得ますよう万全の措置を講じていただきたいと考えるのであります。  それから專門審議会の專門委員の定員法がここにできておりますし、それに対する政令ができておるようでありますが、この委員の任命は御決定になつたのでありましようか。
  32. 有光次郎

    ○有光説明員 文化財專門審議会は、ただいまお手元にお配りいたしました政令で御案内のように、定員九十人以内ということになつております。これが四つの分科会に分属するわけであります。この專門審議委員の人選ということは今後の文化財保存及び活用につきまして專門的な、かつ技術的な事項を調査審議して委員会にアドバイスをしてくれます最も大切な專門審議会であると考えるのであります。従いまして、この專門審議委員の人選につきましては、十分愼重なる検討をいたしまして、各方面の権威あり、しかも実際に活動願えるような方を広く御参加願いたいと思いまして、各委員でいろいろ協議をいたしまして、さしあたりまして、九十人の定員ではありますが、その中約八十名ばかりの方の人選を終りまして、目下就任を願いますにつきての交渉をいたしましたり、また諸般の手続を整えているという状況でございます。できるだけ早くそういうようなことを完了しまして、実質的に專門審議会が活動できますようなぐあいに進めて参りたいと思つております。
  33. 若林義孝

    若林委員 專門審議会專門委員の選任についての経過を承つたのでありますが、おそらく事務局を中心として推進するでございましようが、この專門委員各位のアドバイスこそが、文化財保護委員会活動の中心のものになるのではないかと私たち考えるのでありまして、法隆寺のあの災禍を生みましたのにかんがみて、その弊害のよつてつた理由を排除することを、この專門委員をお選びになるときの重大な基礎においていただく必要があるのではないかと思うのであります。言葉ははたなはだ不穏当だと思いますが、今までの国宝の保護に関しての官僚的な行き方を脱却いたしまして、国家文化財、国民の文化財、民族の文化財という気持が盛り得ますか得ないかということは、かかつてこの專門委員の選び方にあるのではないかと思いますので、あくまでも愼重に、検討の上にも検討を加えられまして、法隆寺のごとき不測の災害を惹起することのないような陣容をお立て願いたいと思うのであります。これは私個人だけでなく、委員各位の気持がここに含まれておるだろうと思うので、この点格別の御留意を希望してやまないのであります。  それからジエーン、キジア台風の被害について、もう少し詳しく承ることができたらと思うのであります。京府あたりを見て参りますと、とてもひどいことになつておりまして、先ほど国宝の国政調査に、この委員会から委員派遣のことが決議されておりまして、大体そのことの目的のために出て行くのではないかと思うので、概要でもよいから、もう少し具体的に承ることができたらと思います。
  34. 森田孝

    ○森田説明員 お手元にジエーン、キジア台風被害状況という書類を御参考に差上げてありますので、それをごらん願いたいと思うのでありますが、ジエーン、キジア台風の被害総額は四億五千五百六十万円になつておるのであります。これはもちろん非常に軽微なもの、たとえばほんの五千円とか六千円というような軽微なものを加えました総額であるのでありまして、これが復旧の対策につきましてはそのうちの特に緊急を要するものから先に手をつけて行くという考え方で、本年さしあたりほうつておけばただちに腐朽をするとか、あるいはまた種々の木が倒れましてさらに大きな被害をこうむるような状態になつて来るというような緊急を要するものから先に手をつけるべきだと考えて対策を講じたのであります。この被害の内容につきまして一々御説明を申し上げますとよろしいのですが、非常に厖大なものでありますので、資料ごらんを願いたいと思いますが、壁が飛ぶとか、かわらが飛ぶとか、あるいはまたへいが倒れるというようなものも非常に多いのであります。大きな被害をこうむつたものは、主として周囲の木が倒れて、その倒れた木が国宝の重要文化財になつております建造物にかかつて、そのためにその建造物が非常に大きな被害をこうむるというのが多いのでありまして、この点につきましては、文化財保護法の環境整理の條文ともにらみ合せまして、調査をさらに徹底して、被害の予防的な措置をも考慮の上に置いて、今後防災対策を講じて行かなければならぬと考えておるような次第であります。  なお史跡名勝につきましては、この対策について、非常に困難な部面も種種あると思うのであります。たとえて申しますと、その名勝の指定の範囲がどの程度か、あるいはまた復旧の見込みがあるかどうかというようなことで、非常に問題になる点が多いのであります。さしあたり具体的に取上げましたのは、建造物を主といたして、その復旧を急がなければ、これが復旧は困難になるというようなものからまず手をつけるというような考えでおるのであります。その他、中にはほとんど復旧が困難である。たとえば天然記念物などで、その天然記念物に指定せられております木そのものが倒れてしまつたというような場合におきましては、もちろん復旧はほとんど不可能な状態でありまして、これらにつきましては、将来專門審議会において御審議を願つて、解除するなりあるいはその他の対策を講じていただかなければ相ならぬと考えておるような次第であります。  なお詳細なる点について御必要であれば、專門の課長の方からでも御説明いたします。
  35. 若林義孝

    若林委員 私たち專門的に承つてもわからぬ問題でありますが、将来予算審議のときに、これは非常に有力なものになると思うので、一刻も早くもう少し正確なものをお出し願つて、お示し願いたいと考えるのであります。  それからちよつと一点伺つておきたいと思います。金閣寺が燒けて、あの復旧を今やつておるが、これが将来国宝にでもなるというのならば金がたくさん集まるらしいが、国宝にならぬというならば、あまり集まらぬらしいというようなことが新聞に載つておるのであります。一度燒けたものについて、新しくそのときの原形を残すということは、国宝的な価値として文化財保護の対象になると御承知になつておられるかどうか。もしこれを再建いたしまして、これが国宝となつて保護の指定になるものだとするならば、いろいろのものが復興されるのではないかと考えるので、この点今ここで論議申し上げるのではございませんが、一応のお考えを承つておきたいと思うのであります。寄付を集めますときに、なるつもりで集めたが、それがおじやんになつたとすると、全部詐欺罪に問われるようなことになりかねぬことでありますから、今ここではつきりお示し願つておけばよいと思うのであります。
  36. 森田孝

    ○森田説明員 ただいま若林委員から仰せのように、鹿苑寺金閣と申しますか、あの堂の方でありますが、堂の方は完全に燒失いたしておりまして、新しく同じ型のものができましたといたしましても、国宝としての指定は不可能ではないかと考えておるのであります。なおしかしながら鹿苑寺の庭園、それから中の島というのがありますが、これをも含めました庭園は、名勝に指定せられておりまして、この点につきましては、若干の樹木に被害があつたのでありますが、これは復旧が可能でありますので、名勝地としてなお保存いたして参りたいと思いまして、来年度の予算におきましても、この点を考慮して参りたいと考えておるのであります。従つてこの名勝を主としてこれを保存して行く関係上、でき得れば金閣寺が従来のような景観をもつて復興せられることが望ましいとは考えておりますけれども国宝としてこれがさらに指定せられ、従つて国がその点について、国宝保存修理と同じような立場から助力して参ることは不可能であろうと考えておるのであります。なお、従つて観光事業として観光方面において大いに力を入れていただき、また入れる機運にあるということは、かねがね承つておるところであります。
  37. 若林義孝

    若林委員 もう一点だけお伺いいたします。登呂遺跡についてであります。これは駄弁は弄しませんが、けさ御報告の中にもちよつと述べておいたのでありますが、将来墓場を発掘し得るような程度まであの発掘事業を御継続になる御意思ですかどうですか、ちよつとそれをお漏らし願いたいと思います。
  38. 森田孝

    ○森田説明員 御承知の通りに、登呂遺跡は埋蔵文化財の発掘という点からいたしますと、文化財保護委員会の主管になつておるのでありますけれども、従来の発掘事業そのものは、日本学術会議の学術研究として、研究費をもつてこれを発掘いたしておるのであります。従いまして、現在におきましても学術研究会議の方の研究、つまり文部省の学術研究の部面において、これが発掘、調査を遂行しておるのであります。従いまして、今お話のありました墓場の問題が学術研究費として将来継続せられるやいなやということが一つの問題であつて、これが研究費として継続せられる場合におきましては、埋蔵文化財の発掘として、文化財保護委員会においても、十分の助力をして参りたいと考えておるのでありますが、文化財保護委員会の埋蔵文化財発掘事業としてこれをやるかどうかという問題になりますと、なお相当研究の余地が実はあるわけでありまして、全国の埋蔵文化財の発掘事業といたしましては、われわれの方へ相当数の大きな遺跡が調査になつておるのでありまして、これらの関係と、登呂遺跡の墓場の存在がどこにあるか、あるいはどこの近所を掘つたら出て来るだろうかというような調査も、なお、してみなければならぬということを私は聞いております。そういう点ともにらみ合せまして、文化財保護委員会の事業としてこれを取上げる場合には、さらに研究した上で決定いたしたいと思つております。
  39. 若林義孝

    若林委員 目下文部省におきまして、博物館法制定のためにいろいろ準備を進められておると聞くのでありますが、わが国は古い歴史を持つておりますから、国土全体が私はリビング・ミユージアムであるという気持があるわけであります。先ほど局長のお話の中にも、文化財尊重の観念、それを通じて文化向上ということのために力をいたしたいというお気持を吐露せられたことに対して、敬意を表するのでありますが、この博物館法制定のときにあたつても、われわれもその意味において、ひとつりつぱなる博物館法を制定し、博物館事業を通じて文化向上に資したいと考えておりまするので、文化財保護委員会におきましても、どうぞこの意味においてこの博物館法制定については、一段と御協力といいますが、サゼストといいますか、そういう気持をもつて見守つてただきたいということをお願いいたしまして、文化財保護委員の各位に対する私からの質疑を一応打切りたいと思います。
  40. 笹森順造

    笹森委員 先般文化財保護法が制定せられまして、同委員会並びに事務局の組織ができて、いよいよ事務が開始せられますことは、日本の文化財の保護並びに価値の宣揚に対して、まことに適切であると思うのであります。その取扱いの対象は、相当広汎にわたつておるようでありますが、きよう特に私どもの手元に配付になりました、この文化財保護委員会の美術的刀劍類等の登録事務の所管についてということについて、若干お尋ねを申し上げたいと思います。御配付になりましたものを瞥見いたしますと、従来の刀劍類が、凶器としての取扱い方から、文化財としての取扱い方に大きく重点がかわつて来たということは、これは私当然のことだと思つているのであります。今までこれが非常な誤解をせられておつたということに不満を持つてつたのでありますが、しかしこうなりましたということは、いずれにしても適切なことだと考えられます。そこでその結果として、従来の許可制が届出制にかわるということもまた当然なことだと実は考えるのであります。ただいまも若林委員から日本国全体が大きなミユージアムであるというようなことを仰せになつたのでありますが、私も同感の節が多いのであります。おそらくは石器時代から青銅時代、あるいはまた鉄器時代になりまして以後の最も大きな文化の価値のあるものは、日本の刀剣であることは、何人も疑わないであろうと思うのであります。私どもも、あるいは北欧、南欧から出ております刀劍等を見ましても、とうていそれは日本の刀劍には比べることのできないものであり、日本の刀劍の優秀さというものは、單に外人が見て、その外装が彫刻として美しいとか、あるいは金をちりばめたところが美術的であるとか、つばがどうであるとか、ふちがしらがどうであるというような問題ではないので、むしろ刀身そのものの中に打込まれた民族的なあの鍛錬と精神的なものと、しかもまた研究の味わいが出て来ておる。これは日本民族でなければアプリシエートすることはできないというところに、日本の刀劍というものの文化的価値が非常に大きく存在するであろうと考えておるのであります。しかるに戰争中には、むろんこれは武器としての一面が活用せられたということから、凶器として取扱われたということも、その当時においてはやむを得ないことであつたでございましよう。従いまして、戰後において、占領下にあつて、刀劍所持者は一応だれでも届け出なければならないということで届け出ましたときに、その最初の取扱い方は、今日と比較しては非常に不適切であつた考えられます。というのは、今日国宝的な価値のありますものでも、十ぱ一からげに警察を通してこれが取集められまして、現に某所に山積しておるところのものが、ちりまみれになつて、そのままあるということは、おそらく委員の諸賢も御承知だろうと思うのであります。これは国宝保存の点において、重大な問題であろうと思つておりますが、今日までこれが禁止令の中にあつたという関係から、だれも声を大きくして言わなかつたということは、残念だと思つております。この際、せつかく凶器から文化財なつたという機会に、こうしたもので個人の手に取返すことができないようなぐあいにすでになつておりますあの多数の刀劍を、少くともこの委員会においては、適切なる取扱い方によつて、これを全部回收するようにして、これを保存するようなことを、ぜひしていただかなければならぬのであるが、この点について、一体この委員方々はどの点までお考えなつたか、現にそのことをお考えになつておるかをお尋ね申し上げたいと思います。
  41. 森田孝

    ○森田説明員 ただいま笹森委員の御指摘になりました、累積しております刀劍の処置でありますが、これは随時所持者のわかつておるものにつきましては、再三再四通牒を出しております。しかしながら、戰後の住所の変更その他によつて、なお取りに来られないものが相当にあるということと、持主のはつきりしないというものが相当あるのでありまして、これはある程度の時期に至りますれば、関係方面ともなお十分協議しなければならぬ関係がありますので、その協議をしてよいような時期の来るのを、またそのような事態になるように、ただいま努力をいたしておるわけでありますが、これもある程度の時期が来ないと、事実上関係方面との交渉は困難であろうと考えておるのであります。
  42. 笹森順造

    笹森委員 さらにまたこの文章を読んでみましても、委員においても御了承のことであるがゆえに、こういう文意が出ていると思うのでありますが、今日までなお届出をしておらぬものが相当たくさんあるように想像されます。これには二十二万本が許可を受けているとありますが、こういう数ではない、まだまだたくさんの数があるだろと想像せられます。これはあの当時届出制に対する理解が十分になかつたということと、ある種の愛着と申しましようか、そういう気持にかられて、脱法的なことをしておつた者もあるでありましよう。あるいは事実ほんとうにいろいろな疎開等において、これを発見し得なかつた者もあるかと思います。これらに関しましては、今後むろんやはり審査を受けることでございましよう。この審査をする者の構成は、現在のあの各地方における審査委員の構成あのままでやるつもりであるか、あるいはもつと緩和するつもりであるか、この届出をしました刀劍の価値の審査に関する手心を、一体委員はどう考えておるか、お尋ねしたいと思います。
  43. 森田孝

    ○森田説明員 これは速記をやめていただきます。
  44. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 速記をやめて……。     〔速記中止〕
  45. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 では速記を始めて……。
  46. 森田孝

    ○森田説明員 刀劍の審査は、都道府県の教育委員会自体がやるのではなくて、必ず審査委員を任命することになつておりまして、各地における具眼の士を選びまして審査委員を構成しまして、ここで審査しますので、この点に関しましては、十分所期の目的が達し得られるだろうと思います。従つて現在ある刀劍が全部許されるということはあり得ないと思つております。     —————————————
  47. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 それではただいまから文部省会計課長の寺中説明員より補正算予につきまして、その概略を伺うことにいたします。
  48. 寺中作雄

    ○寺中説明員 本年度の補正予算といたしまして、まだ関係方面の了解を得ておりませんが、閣議決定として決定いたしておるところの状況につきまして、御説明申し上げたいと思います。  文部省関係の補正予算としましては、十三億七千四百七十九万円が計上されておる次第でございます。そのおもな項目を事項的に申し上げますと、事務的な経費といたしまして、国家公務員共済組合交付金が増額になりました。これは職員の掛金のパーセンテージが上りまして、甲種については千分の百四から千分の百十二に、乙種については千分の二十八から千分の三十六に上りました関係で、二千九百三十九万四千円が共済組合の交付金として補正に要求された次第でございます。  その次が適格審査に必要な事務費が千二百六十八万四千円でございまして、これにつきましては、教職員の適格審査を全般的に新たに行う必要を生じましたために、中央教職員適格審査会並びに府県の教職員の適格審査会、大学の教職員適格審査会に追加の金額を要求する次第でございます。府県に公吏三人、雇員ニ人、計五名を増員配置することになる次第でございます。  それから昭和二十四年度すなわち昨年度の臨時年末手当の補助金が七億二千七百四十三万三千円ございます。これは御承知と思いますが、昨年一般の職員に対しまして年末手当を支給したのでありますが、府県の小、中学校の教職員に対しましては、その際財源がなかつたために、ただちに財政的措置ができなかつたのでありまして、補正予算要求の際にこれを確保したいという約束のもとに府県において出してもらつて、辛うじて年末手当を支給したという形になつておるわけであります。それは大体一人三千円程度の金額で、約四十六万人の小、中学校の先生に年末手当を出したわけでありまして、その二分の一を国庫から補助する形になるわけでございます。その金を府県においては一種の欠損の形で出しておるわけでありますから、それを手当するためにこの際補正予算として要求し、これを地方に流すという予定になつておる次第でございます。  次に教育職員免許法施行に伴う教員研修費の補助の経費でございまして、来年度の予算にもこの経費があがつておりますが、本年すでに例の認定講習会あるいは大学における現職教員講習会の形におきまして、講習会実施しておるのでありまして、それの研修旅費を一部補助するという形になるわけであります。その金額は一億九千四百二十万円でありまして、来年度の一億五千万円よりむしろ今年の補正の方が多いのであります。と申しますのは、獲得單位が今年の方が多くなつておるのであります。その大体の計算の根拠を申し上げますと、一人が一單位をとりますために、大体五日間の講習を受けるわけでありまして、一人一日の旅費が八十円という計算でありますから、年に一人で大体八單位ぐらいとる予定になると思いますので、旅費として一人当り、八十円の五日の八單位で、三千円くらいになるわけであります。單位数全体としましては、百六十一万九百八十四單位でありますので、その金額を計算いたしまして、その三分の一という補助率によりまして一億九千四百二十万円を研修旅費として計上しておる次第でございます。大学学術局関係の経費としましては、教職員指導者講習会すなわち米人の講師が特に日本の教育指導者に対して、二十六科目について講習会を本年実施したわけでありますが、これはすでに他の経費をまわして現在実施をしておるのでありまして、進行中であります。そのために三千二百二十五万四千円を計上いたしまして、受講者は九百五十人、年二回、一回三箇月の期間で実施される予定であり、また現在実施中であります。本年は九、十、十一の三箇月に第一回、来年の一、二、三の三箇月間に第二回を実施する予定にいたしております。  それから次が私立学校の災害復旧費の貸付金でございまして、例のジエーン台風の被害を受けました大学、專門学校、中学校、小学校、幼稚園に至るまで、ジエーン台風の私立関係の復旧費の貸付としまして七千七百十四万七千円を計上いたしております。その内訳も、おのおの被害を受けた坪数によつてこまかく計算した次第でございます。  本省関係といたしましては、大体それくらいでありまして、その他に、ただいま文化財保護委員会の方のお話がございましたが、文化財保護委員会関係で、その事務費の一部並びに刀劍類所持許可登録の事務、あるいは文化財関係の災害復旧費等合せまして約五千万円を補正予算として計上しております。  それから非常に事務的な経費でございますが、国立学校関係では、人件費が足らなくなる見込みになりましたので、人件費の補足といたしまして九千二百十六万八千七百円、それから病院の運営費といたしまして、一億五千九百七十七万五千円を計上いたしております。その総額が十三億七千四百七十九万円なるわけであります。これは比較的重要な項目として補正予算とて要求するわけでありますが、その他に、本年度実は一般の経費の中から五%の経費を節約いたしまして、それを最初から一種の予備金のような意味で、経費の足らなくなつたところへ充当するという見込みを立てておりましたので、非常にこまかい経費で、ぜひ本年度急に必要を生じたような経費、そういうものに一々事項をあげまして充当する、すなわち五%の節約額によつて充当するものが、一億五千万円ばかりあるわけであります。でありますから、補正予算要求は十三億七千万円でありますが、実はその節約によつて補充するものを合せますと、十五億二千四百万円になるのであります。  文部省関係の補正予算はそれくらいでありますが、そのほかに地方教育費の関係といたしましては、例の教員の一月以降の待遇改善費の一部を、平衡交付金として補正予算要求しておるのが約九億あるのであります。これは直接には文部省の経費ではありませんが、教育関係の経費で、重要な補正予算の項目になつておる次第であります。大体そういうふうな概要であります。
  49. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 ただいまから会計課長の補正予算に関する質疑に限つて質問をお許しいたします。——先ほども申しましたる通り文化財保護委員方々は帰つたのではなくて、会計課長がやむを得ざる時間の都合がございますので、繰上げてこの説明を願つたわけで、大体三時半ぐらいに終る程度に御質疑を願いたいと思います。そうしてそのあとでまた保護委員の出席を求めて、数名御質疑希望の方があるようでありますから、その後質疑を続行いたすことにいたします。さよう御了承願います。
  50. 小林信一

    小林(信)委員 時間がないようですから、おもなる点だけ御質問申し上げます。本来なら、なるべく機会をつくていただいて、もう少しこの補正予算の問題について聞く時間を持ちたいと思うのですが、委員長にその点おはからい願いたいと思います。  ただいまのベース引上げの問題は、今までの地方教育費に対する国庫の支弁というようなものは、一応平衡交付金で行つて、半額国庫補助の制度というものは、そのために一応解消されておるような形ではありますけれども、これが国庫費用で計上されたということを聞いたのです、最近一般公務員に対しまして、本年の年末賞與を各省で計上しておるようでありますが、文部省では教職員の年末給與というものは、どういうふうにお考えになつておられるか、その点をお尋ねいたします。
  51. 寺中作雄

    ○寺中説明員 教職員に関する年末手当の問題に関しましては、私ども実は非常に悩んでおるという状況でございます。と申しますのは、一月以降のべース・アツプの関係につきましては、辛うじて現在の財政状況から手当をし得たという状況でありますが、年末手当に関しましては、これについて適当なる措置をとり得なかつたのであります。今説明をしました文部省関係の経費、補正予算のほかに、全体の国家公務員の年末手当に関しましては、補正予算で手当がしてあるのでありますが、その財源は主として現在の一般の経費の節約というものから割出して出したという事情になつておるわけであります。国家予算に関しましても、そういうふうな形で辛うじて年末手当を捻出したという形でありますので、地方におきましても、地方の全体の経費の中から、節約できるところは極力節約をいたしまして、地方として教員の年末手当の財源を出すという建前でやつてもらうということが、この際地方としてとつてただく最後のお願いでありまして、それ以上国の方から年末手当のため補助金的に金を出すという余裕はどうしてもできないのであります。しかし何と申しましても教職員の数は多いことでありますから、單に府県の財政の中から捻出するといいましても、非常に困難なことだと思います。文部大臣としましても、非常にその点を苦慮されまして、いろいろ大蔵省に対し現在も交渉を続けております。政府の方でも何とか方法を見つけて、その財源が出るようにいたしたいということで、文部省と大蔵省と現在具体的方法について研究中でございます。いまだその方向としてはつきりしたものは見出せないのでございますが、国の方でも節約して出しておるのだから、地方でも節約して何とか出してもらうというところが、最後の線だということになつておる次第であります。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 ただいまのお話を聞いておりますと、財源がないのか、そういうふうなものを支出する方途がないのか、ちよつとはつきりしないのですが、その点をもう少しはつきり伺いたいという点と、もう一つは地方の財源でもつて、何とかまかなつてもらわなければならぬというようなお話ですが、地方の財源でもつて職員の半箇月分か一箇月分かしりませんけれども、そういう財源を捻出するということは、もう今までのいろいろな問題でもつて、はつきりわかつておるのであります。もしこの際国庫がこれを支出することができないというようなことになつたら、これは非常に重大な問題だと思うのです。極力努力されるということでなくして、どうしてもこれは貫徹してもらわなければならないのですが、今のできないという問題は財源がないのか、あるいはその支出する方法がないのか、こういう点をはつきりお伺いしたいのです、今どこの県会でも迷つておられるのです。
  53. 寺中作雄

    ○寺中説明員 どちらかということになれば、財源がないということを申し上げるよりほかにないと思うのでありまして、出すべき筋合いの点から言いますれば、これはできれば出さなければならないものだと思いますが、財源の点でどうしても方法がつかない事情でございます。
  54. 小林信一

    小林(信)委員 各省が経費の節約から生ませるというのですが、経費の節約で、はたして一箇月分あるいは半箇月分というものが出て来ることが、私はふしぎだと思うのです。やはり各省においては、あらかじめそういうことを考えておるか、さもなければ、そういうふうな予算の余裕が相当組んであつて、初めからそういうものがとつてある。決して封筒の節約とか便箋の節約でもつて、この経費が出つこないと思うのです。ところがそういうふうな何らかの方法でもつて、各省の国家公務員というものは、一応支弁せられるけれども、今のところ教職員の立場というものは、半額国庫負担であり、半額県費支弁という従来の制度がそのままあるものですから、そういう制度の上からして、経費の節約は、地方の自治体でもつて出つこない。これは当然放置せられるようなことになるのじやないかと思います。教育の重大だということは、これはきのう、おとといも、そんな話をしたのですが、総理が主としてその点を力説されておるのです。そういうあやふやな状態で給與面がさしおかれたら、これは教職員の立場とすれば、非常に不安な状況に置かれるわけであります。例の教育使節団の報告の中にも——きようその報告書をもらつたのですが、その中にはつきり書いてある。もつと教員を優遇しなければいけない。そういう点からしても、これは大きな責任問題になるわけです。ことに先ほど御説明の中に、昨年の年末手当の問題が、あらためてこの補正予算に計上されておるような状態、日本の教育行政の実体を暴露しておる状態だと思うのです。これは各府県で今まで犠牲になつて支弁しておつたようなことを言われたのですが、実際においては、教職員の個々が犠牲になつておるところが多いのです。一応そういう形でもつて国庫から半額支弁されるということが、各府県に通達されたものですから、各府県ではその財源が来れば渡すというようなことで、一応年末の情勢から、どうしても教職員にそれだけの額は與えてやらなければならぬというような点で、教職員に当然支弁しなければならぬ旅費を、その方にかえて支拂つておる府県があるのです。そしてごく最近になつて政府から補正予算で何とか支弁するというふうなことがあつたものですから、各府県ではそういう教員自身の当然もらわなければならぬ旅費の方の差繰りを、今度は県費支弁で差繰りしてあげようというふうなことが言われたのですが、こういう状態でもつて今後教育財政というものが継続されるとするならば、教職員はいよいよもつてその生活に不安を感じなければならないし、また父兄の立場からしても、日本の教育ははたしてこのまま行つていいかどうかというふうなことになると思うのです。教育委員会教育委員選挙等に照してもわかると思いますが、財政権の確立がないために、教育委員になり手がないというふうな点から考えても、今度ここでもし年末手当の問題が教職員に限つて手離しされるようなことがあつたら、これはゆゆしい問題だと思うのです。その点ひとつ何とかこの際見通しをはつきりしていただきたいと思うのです。ただいまお伺いすると、文部大臣は相当御苦労なさつておるようですが、私たちの漏れ承つておるところでは、非常に不安のように承つておるのです。大体その地方の県当局あたりは、これに対して応じ得られるようなことをいつておるのですか、それとも得られぬというふうに悲鳴をあげておるのですか、その点もお伺いしたいのであります。
  55. 寺中作雄

    ○寺中説明員 年末手当その他待遇の関係で、財政の窮迫のために、教員自身が非常に個人的に窮迫するというお話でありまして、たとえば他の公務員については年末手当が出たが、教職員については出なかつたというようなことがあり得るのではないかというふうに、今お伺いした次第でありますが、私はその点は絶対にあり得ないと思うのであります。教職員が日夜教育ために盡瘁しておるにかかわらず、他の公務員の待遇と同様の方法で待遇を受けないということはあり得ないのでありまして、地方においても、必ず何らかの方法で出す。出すことは出してもらえるということを確信いたしておりますが、その始末であります。始末の関係については、ただいま文部大臣も、必ず何らかの方法で解決がつくようにするという意気込みで交渉されておる次第であります。大蔵省としましても、教職員だけを見殺しにするという意図は、絶対に持つておるわけではないのでありますが、今日財政の状況から、ただいま即刻の問題としてはどうにもならないけれども、やむを得なければ他の財政的措置、たとえば私個人考えておるところでは、預金部資金の融通というようなことで、とにかく方法をつけるのではないかというふうに考えるのであります。その他にあるいは適当な方法があるかもしれませんが、要するに教職員だけが、他の公務員に比べて非常に冷酷な待遇を受けるというようなことは、あり得ないということを信じております。
  56. 小林信一

    小林(信)委員 もちろん冷酷な扱いをしておるとは認めません。これは私も考えておらないのですが、制度上からしてそういうふうな結果になることか多いため教育の成果が阻害されるおそれがあるから、その点を私は相当今後事前において善処されるように要望するのです。今も例をあげましたように、昨年度の年末手当を今になつて計上して、たとい県の方の責任支弁にしても、あるいは教職員の犠牲的な支弁にして、今においてこれが補給されるようなことでは、とにかく不安は一応感ぜられると思うのです。そういう制度的な面からして冷酷視されるところを、この教育視察団の勧告にもあるように、もつと善処していただきたい、こういう考えであります。  それから次にお伺いしたいのは、免許状を與えるために研修費が計上されたのであります。これは先ほど視察報告等の中でつけ加えて私申し上げたのですが、非常に地方は喜んでおると思います。しかしほかは大体ニ分の一を負担されるのに、これに限つて三分の一の負担という計数は、どういうお考えからであるか、その点もお知らせ願いたいと思います。
  57. 寺中作雄

    ○寺中説明員 研修旅費の補助の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、キロ数によつて割出しました必要な一日の旅費、それの三分の一を補助するという形になつておる次第でございます。教職員が研修を受けますのは、その必要なる資格をとることによりまして、正式の免許状をもらつて、公式の学校職員としての正当な位置に納まることができる資格をとるためでありまして、これは教員である以上は、必ずとることが必要でありますけれども、それをとらなければ教員としての存在は許さないというわけではないのでありまして、一つには個人としての教育資格の向上、すなわち自己の利益になる点もあるわけであります。そういう意味で、一面的には法律による義務として資格をとらなければならないと同時に、また個人的にもみずからが向上するために受ける講習でありますので、それに必要な経費は国費並びに公費が大部分を持つて、そして個人もまたその一部を持つということが適当ではないかという関係から、国費の負担分を三分の一ということにいたしたわけであります。こり研修の仕事、講習の仕事は元来府県の教育委員会の責任として課せられておるのであります。でありますから、府県がその責任を持つというのが建前でありますが、もちろん府県だけに責任を持たせるわけではないので、国費からもこれを補助し、他の三分の二につきましては、もし府県においてそれを全部負担する余裕があれば、実は持つてもらいたいのであります。もし三分の二の全部を持ち切れないところは、個人でも幾らか出してもらうことがあるかもしれないというような気持から、国が三分の一を負担するという形で、補助されるような事情になつております。その点を御了解願いたいと思います。
  58. 小林信一

    小林(信)委員 二分の一を三分の一にした点が、非常にわずかな金でありながら、国家が出ししぶるというようなことで、わずかな金で教育を阻害するというまずい傾向だと私は思うのであります。それは理由をつければ本人がとらなくても——とろうがとるまいが本人のかつてだということにして、とらなくてもさしつかえないのだというような点をむりに見つけて経費を節約するということは、これは非常に遺憾なことだと思います。思い切つてこの点はやはり二分の一という今までの建前をここに適用して、二分の一出されることが、ほんとうに教育行政の本道だと思うのです。現在の実際の教育の立場からするならば、自分の資質を向上するのだから、自己研修の意味でもつて自分で多少は支弁することが当然だといいますけれども、実際教職員の生活状態というふうなものを考えてみますと、決して余裕があるわけじやない。私たちが今回視察して参りまして、午前中申し上げましたけれども九州方面の離島なんかにある方々たちは、非常な経費を支弁してこの講習に出なければならぬ状態なんです。わずか自己研修だという意味でもつて三分の一を支弁されるというようなことは、非常に私は考慮がないのじやないかと思います。できるならば思い切つて二分の一の建前をここにも適用してもらいたいと思う。  それからもう一つお伺いいたしますが、私立学校の災害復旧費の貸付費、これを計上されておるのでありますが、私立学校以外の一般学校の災害復旧も、相当にあるのじやないかと思いますが、この点はいかがですか。
  59. 寺中作雄

    ○寺中説明員 補正予算として文部省関係で計上されたのは、私立学校関係でありますが、一般の国立並びに公立学校関係は、公共事業費の関係で別個の項目で出ておるのであります。これも本年度起り得る災害の予算というのが百億ありまして、それを約五十億使つておりますが、あと五十億残つておるわけで、足らないので補正予算として約四十一億、合せて九十一億が国立並びに公立学校施設を含めた全公共事業の災害復旧の経費ということになつておるわけであります。それについて、その配分をどうするかということで、経済安定本部を中心に、各省が寄り集まつて協議をいたしました結果、大体今日きまつておるところでは、公立関係で一億八千万円、国立題係で五千八百万円、合せて二億三千八百万円が決定いたしておる次第であります。これを災害復旧の経費に充てる予定にいたしております。
  60. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つ重大な問題でありますが、これもやはりその方面に属する問題と思いますが、政府は来年度の六・三建築予算として大体四十何億かを獲得したように聞いておるのであります。しかし当初文部省が最低の予算として計上したものが六十三億というふうな数字であつたと聞いております。してみれば、その差額をこの補正予算で獲得しなければならぬというふうに聞いておつたのでありますが、それはどういうふうになつておるか、その点をひとつお伺いいたします。
  61. 寺中作雄

    ○寺中説明員 六・三建築のために各児童当り〇・七坪の施設をやりますために、六十三億の経費を要する。そのうち四十五億が来年度予算として確保されたという状況でございまして、あと十八億の確保につきまして、実は来年度予算をやりますときに、非常に論議になつたわけでありますが、これにつきましては、もちろん十八億がぜひ必要なのでございまして、大蔵省の四十五億の算定の基礎といたしましては、〇・七坪の施設をやる事業、それが実際は、昨年と今年で約六十億、その他地方の寄付、あるいは起債というようなことで、その計画以上に多少進捗しておる、計画よりも進んでおる点があるから、その点を見込めば四十五億でいいのではないかという見込みで、そういうふうにきまつたわけであります。これについては、もつと実情を把握して、実際をつかんだ上でなければ言えないことでありますし、いずれにしても国費だけで建つわけではないので、地方の経費、その他を含めてやらなければいけませんし、また〇・七坪では完全な学校ができるわけもない、ただ教室と廊下と便所だけがついた校舎にすぎないわけであります。そういうふうな点を勘案いたしまして、さしあたり来年度は四十五億でやつてみる。その差額の十八億は、できれば補正予算で見たいということで行つてつたのでありますが、ただいま申しましたように、実情をもう一度把握いたしまして、そうしてこれをその後の問題として研究したいというような面もございます。ともかく六・三建築の問題は本年度で打切りだ、これで終りになつた、六・三はこれで完全で、万々歳になつたということではないわけであります。〇・七坪の基準そのものが非常に低いのでありまして、全体としますれば、小、中学校を通じて少くとも一坪の基準を持つということが、学校の体裁を整えるだけの目的からいいましても必要なのであります。そういうような点を勘案いたしまして、来年度以降に、さらに実情を把握した上の基礎資料に基いて、六・三建築の問題を将来に残して置くというような意味で、本年度の補正予算にはしんぼうしようということになつた次第でございます。
  62. 小林信一

    小林(信)委員 一つだけ私のお願いを申し上げて終りにいたしますが、確かにおつしやる通り〇・七坪ということは、これは最低限度であつて、職員室のないというような学校はないのです。私たち今度国政調査いたしました折りにも、岡委員の方から詳しく報告があると思いますが、うまや学校というのを見て参りました。かつての軍隊の馬小屋を改造して、まことに光線のぐあいの悪い、衛生的にも非常にまずいところで勉強しておる状態を見て来たのですが、これらも一応〇・七坪の中に入れられておる状態からすれば、地方においては相当認証外の建築の補を助計上してもらわなければ、ほんとうに満足、な〇・七坪という最低限度のものもできない状態であるというふうなことを聞いて来たのです。できるならば、来年度ということでなくて、補正予算の中に、この最小限度である十八億も当初の文部省の構想を貫徹されて計上されるように努力されたい。そうしてやはり額は少いのでありますが、非常に教員諸君の気持の上からして重大な関心を持たれておる年末手当の問題、これはただいまのお話によりますと、文部省の方の努力によつて一応金は渡るだろう、しかしそれをどういうふうに始末するかという問題でもつて苦労されておられるようです。この点は非常に明るいものを持つておるのですが、こういう点も将来とも心配のないように、ここでもつてりつぱな措置をされて、前例をつくつてただきたいということを要望しまして傾向を終ります。
  63. 小林進

    小林(進)委員 関連事項になりますが、ひとつお伺いいたします。それは学校地区付近に歓楽街ができ上つて、非常に文教上重大なる影響を及ぼしておるという問題であります。現に東京でも、池上、高田馬場、池袋、王子、立川などという、ほとんどあらゆる地区でこの問題が持ち上つております。その具体的な例といたしまして、ただいまここに一つ陳情書が参つておりますので、これを読み上げまして、文部当局の御意見を伺いたいと思います。    陳情書  池上特殊喫茶街設置反対学校連盟   目下東京都内池上、高田馬場、亀有、調布等の各地に起つております学校付近に歓楽街を設置することをめぐる数々の紛争は、文教上ゆゆしい問題でありまして、一刻もこれを放置することは許されないと存じます。これらの反対運動は世論の支持を得て活発に行われておりますが、この問題を根本的に解決するには、法が不備であるために肝腎のところで空しく手をつかねるほかはないというがごとき状態でありまして、まことに遺憾千万であります。国家百年のための文教政策を確立するためには、国会の力で教育環境を守るに十分なる法的根拠を作成していただくことが焦眉の急であることを痛感いたしまして、ここに衷心より諸賢の御善処をお願いいたします。   昭和二十五年十一月十三日        池上特殊喫茶街設置反対学校連盟 こういうことで池上小学校のPTA会長以下そういう関連の学校が十二学校関係者の連名で陳情書が参つておるのであります。それにやはり同じくついておりますが、これはサン新聞でありますが、サン新聞に池上小学校のそばにおける学校と歓楽街との関係が、写真に一目瞭然とするように明らかに出ております。この写真によつてもわかりますように、子供が教室の中で勉強しているその窓から見ると、まさに二百メートルぐらい隔たつたところに、歓楽街が並んでおるということでありまして、これは実にゆゆしい問題だと思うのであります。この陳情書にもありますように、これに対しましては、世論一般が非常に反撃を加えておりますし、また各紙もあげてこの世論に同調せられまして、かようなことは断じて禁止すべきである、こういう空気が盛り上つております。これに対しその最も中心としてこれが指導ない上は確然たる態度に出ずべき文部省から、寡聞にして今までまだはつきりした御意見を承つておりませんし、これに対する御指示についても私はまだ聞いておりません。幸いに次官もお見えになつておりますので、次官を通じて、はつきりした文部省の御意見、またこれに対して、おとりになりました処置がありますならば、その処置をつまびらかに御説明願いたいと思います。
  64. 水谷昇

    ○水谷説明員 ただいま小林委員からお話の件でありますが、実は私のところへも同様の陳情書をいただいておりますので、私もその陳情者は読ませてもらつたのであります。それにつきましては、私といたしましても非常に関心を深くしておる一人であります。教育は環境を整理するということが最も大切でありますから、教育上おもしろからぬ環境はこれを整理したいと考えておるのでありますが、ただいま法制上から申しますと、その歓楽街なるものの内容が十分はつきりしておりません。そこで文部省におきましては非常に関心を深くしておりますので、都の当局とも、実は本日文部省施設部の係の者が、ただいまこの件について協議をしておる次第であります。明日にも実地を視察いたしまして、その視察の結果、これに対して文部省といたしましても熟議を凝らして参りたいと考えておる次第であります。ただいまのところ内容が十分わかつておりませんので、そういうふうな準備をいたしておりますが、要は東京都内のことでありますので、東京都関係者意見も聽取しておるような次第であります。
  65. 小林進

    小林(進)委員 ただいまの政務次官の御説明は私了承いたしました。もちろん直接これを禁止し、廃止するような権限を文部省がお持ちになつていないということもわかるのでありますが、ただしかし、今も都の方々とせつかく御連絡をおとりになつたというにもかかわからず、都当局がまだこれに対してその対策を研究しておる、あるいは協議しておるというようなお言葉を聞きまして、非常に私は時に対処する動きの緩慣なのに実は驚いておるのであります。これもよく新聞紙上でいわれておりまするように、一大行政部でその処置をまごまごしておるうちに、どんどん建物が建つて行く。そしてすつかり準備ができ上つてしまつて、初めて行政関係庁で対策を練つても、既存の事実としてそれがどうにもならなくなつてしまう、このようなことが往々にしてあるのでありまして、この問題に関する限りは、私は文部省のお立場もありましようけれども——ましてや明日あたりまた現地を視察されるとのことで、実に私は適宜の処置と思いまするが、視察をなすと同時に、ひとつ断固たる決意を持つてただきたい。そして早急に手を打つてただき、既存の事実だからしかたがないというような言い訳めいた言葉を将来政務次官からお聞きすることのないように、どうか断固たる御処置をおとりくださらんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。     —————————————
  66. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 渡部義通君。
  67. 渡部義通

    ○渡部委員 文化財保護委員会の役割は、言うまでもなく民族的な文化遺産を保護してこれを後世に伝えると同時に、さらに日本の将来の文化の発展に資するということにあると同時に、他面では過去の文化財について正しい評価を與えて、この文化財に関する国民の正しい関心を持たせるという点にあると思うのです。ところで法隆寺焼失に関して、文部委員会調査ために出かけて、その間、奈良地方を中心とする国宝、重美の関係について調査したわけでありますが、その際非常に痛感した一つの問題がありました。それは国宝、重美やその他いわゆる名所旧跡の問題につきましては、御存じのようにそれについて説明したところの立札があるわけであります。私は歴史学を專攻しており、今日もその学問に没頭しておるわけでありますが、そういう立場から見ますと、従来国宝、重美、あるいは名所旧跡に説明されておる立札というものが、幾世代も前の人たちが伝説の中から——ある部分は伝説的なものが非常におもになつてその説明の内容になつておるわけであります。これは伝説は伝説としまして、われわれの民族的な伝説としては意味もあることであり、興味もあることでありますから、それはいいといたしまして、それと同時に、今日のわれわれの学問の発展の上から見ますと、この説明というものが非常に非科学的なものであり、当然修正をしなければならぬものだと思うわけです。同時にまた、問題の国宝、重美その他の注意すべき点についても、必ずしも妥当な点が正しく説明されているというような状態ではありません。たとえば一つの仏像の下に敷かれている板にしましても、現在の美術をもつてしては鋳造できないものであり、またその下の、ある絵画を見ますと、これは明らかに東南アジア、ことにインド文化の非常に深い影響を受けているということがはつきりするわけであります。ところがそういう事柄については少しも説明されないで、われわれのおじいさんやおばあさんが聞いたような伝説がそのまま書かれておるために、あれを幾百万の修学族行者や見物者が見ました場合にも、今日の国民の文化的な知識あるいは過去の文化的な遺産についての正しい見方、考え方というものを、少しも向上させる役に立つておらない。そういう点から、もしもあれが正しい科学的な見地から、多くの各專門家を動員しまして、国宝、重美、名所旧跡等の立札を、今日の科学的な立場から、また日本文化全体の見方の上から、正しい形で評価も與え、またそれに対する認識も深めさせるような手段を講じますれば、幾百万の修学旅行者や見物人がそこに行きました場合に、日本の過去の文化というものについて非常に深い関心を持つばかりでなくて、それ自身が、單なる過去の文化としてではなくて、今日の文化発展の上に非常に寄與するような重大な意味を持つわけであります。それで私は、ぜひともこの文化財保護委員会におきましては、こういう点に関心を持たれて、今日から—相当困難な仕事ではありますが、全部について、ほんとうに科学的な調査研究をされまして、それに対する正しい立札に書きかえられて、そうしてこの文化というものがその時代とどういう関係があり、世界の文化とどういう関係があり、今日の文化とどういう意味を持つたものであるかという点までもつけたようなものにしていただきたいと思うわけであります。これはそうすることによつてのみ、過去の文化的な遺産というものが、今日にはつきり生命を吹き返して、日本の文化の発展に役立つことになるわけであります。私はこれを非常に痛感しまして、このことは国として、日本の文化を保存、発展せしめなければならぬという立場からは、ぜひともこれをやる必要があると思う。そうするには相当予算も必要であり、また学者の選定も必要であり、相当長い期間にわたらなければならぬ仕事でありますが、しかし今日からそういうことをやる必要があるということを痛感いたしましたものですから、そういう点について、委員会の諸君がどういうふうに考えておられるか、この点をまず御質問したいわけであります。
  68. 矢代幸雄

    ○矢代説明員 ただいまの御提案あるいは御注意は、はなはだ適切なものでありまして、私、心より同感いたします。私もいささか美術の歴史を專門とする者として、ことに奈良の辺、京都という、日本文化の中心地をしきりに歩いておりまして、あの辺の立札というものが、ほんとうはそこの寺あるいは神社あるいはその宝物を、国民文化の貴重なる遺品として十分説明すべきものであるにもかかわらず、非常にまちまちなものであることを、私自身痛感しておりまして、またその実情もよく知つておるのであります。今まで国宝あるいは重要美術が、もとの法律でここ二、三十年指定されている間におきましては、本来はその国宝あるいは重美に指定することは、その国宝あるいは重美が国民文化の象徴として教育の重要資源であるため指定されたことは申すまでもないのでありましたが、政府の手によつてその指定されたものに十分なる学術的説明を加え、教育的意義をその説明の立札に十分認めて立てたということは、あまりなかつたのであります。今までの立札は、そういう学術的な説明を加えて立ててあるものもあるし、あるいは寺あるいは神社の縁起をまぜて、そのお寺で説明書が立ててあるそれに多少学術的なものが加わつている、こういうのがまざつていてまちまちになり、しかも近年はそういうふうに、中では良心的に立てた立札すらも消えてなくなつたり、落ちて失われたりしているような実情であることは、最近あの方面を見て来たのでも私よく存じておるような次第であります。このたび文化財保護法ができて、旧来の国宝及び重要美術の法律が始められたその趣意は、今度の法律にはつきりうたつてあるごとく、今まではいわば多数指定のしつぱなしをして、それを国民教育的に、あるいは世界に対する文化高揚のために、つまり現代的利用をするということに行き届かなかつた点があるので、これを重点的にもう一度ごく大事なものとそうでないものとをわけ、ごく大事なものから始めて、それに対して行き届いた方針を加えると同時に、これを国民文化的、あるいは世界文化的に利用する、こういう趣意で今度の法律ができたと承知しており、文化財保護委員会も、そういう趣意で運営しております。それは具体的に言えば、そういう国宝あるいは重要文化財建造物、宝物に適切なる説明を加えて、国民にそれを徹底させるということになるのでありまして、そういう方法が非常に重要な一つになるのでありますから、これは十分力を入れたいと思うのであります。  先刻事務局長から、本委員会の事業について御説明をしたときに、普及宣伝ということを心がけ、そして国民の心に働きかけることに努力するつもりだということを申した、あれは主として出版物、講演会その他を意味したものと思いますけれども、それはもつと、やはり今のような説明の立札などにもよく注意を加えて、それに時勢遅れでない、そして国民教養に資する、そしてまた世界的な見地から立つた説明を十分に加えるべきだと考えているのであります。御趣旨のところは、はなはだ私も同感いたしまして、実現することに努めたいと思います。
  69. 小林信一

    小林(信)委員 先ほど笹森委員から刀劍の問題で御質問があつたのですが、それに関連してそのときにお伺いしようと思つたのですが、なるほど文化財保護という基本的な問題については、いろいろ御意見もあるでしようが、最小限度保護すること、これを確保することが私大事な問題だと思います。私たち視察の中で、特にこの点を要望してもらいたいということを聞いておりますので、その点を申し上げ、これに対する御善処方をお願いしたいのです。例をあげて申しますと、九州の鹿兒島県の問題です。確かに刀劍を三ふり国宝として指定されてあつたものを、その登録をするために一応提出して、その後それが行方不明になつておる、しかもその一ふりは、ある個人のところへこの刀が保存されているというような実情にある、従つてこの登録という問題が非常にでたらめになつておる事実があるのです。これは鹿兒島県の問題だけでなく、全国至るところにそういう類例があるのだそうですが、これらについて調査されているところをこの際お伺いしたいと思います。
  70. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  71. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 それでは速記を始めて……。
  72. 小林信一

    小林(信)委員 どうも文化財保護の問題は、財政的な裏づけがなくて、重要であるといいながら、実際これがめちやくちやになつておる。つるの渡来地なども、一つの指定地になつておりますが、指定地にされたために、その附近の作物が非常に被害をこうむつておる。その指定はいいけれども、そのために受ける損害を考えれば、何とかこれにほかの方法を講じてもらつて、渡来は喜ばなければならぬが、そのための被害を避けなければならぬ。これは全国的な問題だと思うのですが、この点に対して当局はどういうふうに考えておられるか、お伺いしたい。
  73. 森田孝

    ○森田説明員 さような点は、実は他にも二、三例があるように聞いておりますので、当局といたしましては、国宝や重要文化財保存ため補助費を計上して、そのうち一部分を割つて来年度においてこれがための適当な処置をして参りたいと考えております。
  74. 小林信一

    小林(信)委員 その損害を補助する費用を計上するなら、当然わずかなものだと思う。やはりもつと実情に即して考究されなければならぬと思う。たとえば、つるだけが保護されれば、それに便乘して他の鳥類がたくさんに来てこれらの被害は多くなる。非常に広範囲にわたつて一郡ぐらいにわたると思うのです。麦の芽の出るころだつたそうですが、その被害が非常に大きい。従つてこれに対してはその地方人たちがごく浅い科学的な知識から割出した方法ですが、えさをたくさん国家の方から補給していただいて、そのえさによつて一定のところに集結させたらどうかというふうな問題、あるいはそこは禁猟区だから撃つことはできないのですが、他のものは撃つてよろしいというふうな特別な禁猟区にしてもらつたらどうかというようなことを言つておりましたが、そういうふうなこまかいところを検討されなければ、わずかな補助費を出してそういうところを保護するなどということはとうていできないと思う。そういう点についていろいろお考えになつておることだと思いますが、お伺いいたします。
  75. 森田孝

    ○森田説明員 十分研究いたしまして、処置いたしたいと思います。
  76. 笹森順造

    笹森委員 今の小林君のお話に関連して先ほどお尋ねしようと思つたのですが、継続してお尋ねいたします。これは速記をとめてください。
  77. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 速記をやめて……。     〔速記中止〕
  78. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 速記を始めて……。
  79. 笹森順造

    笹森委員 それからもう一つ、刀劍を文化財として今後保護するという意味において必要なものの一つは、研磨工の問題であろうと思うのであります。過去において刀鍛冶あるいは研磨工というものが相当衰えた時代もあり、また盛んになつ時代もある。今後相当程度これを奨励するか、あるいは保護して便宜を與えるのでなければ、なかなか容易でないと思うのであります。幸いこの取扱い要綱にも、研磨工に研磨させるに届け出なくてもいいような簡單な御処置のように出ておるのでありますが、将来この研磨工というものを、一つの職業としてどういうことに思つておられるか。日本全国には相当研磨工がおりまして、この点関心を持つておられますから、研磨工に対する最近のお取扱い方のお気持だけでも御発表願いたいと思います。
  80. 矢代幸雄

    ○矢代説明員 ちよつと速記をとめてください。
  81. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 では速記をやめて……。     〔速記中止〕
  82. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 速記を始めて……。
  83. 森田孝

    ○森田説明員 御指摘になりました研磨工につきまして、文化財保護委員会におきましては、お手元に資料として配られました專門審議会の中の第四分科会の中に工業技術部門を置く予定にいたしておりまして、この工業技術部門の中におきまして、研磨工も取上げまして、必要なる技術をそれぞれ保存する措置を講じて参りたいと思つておるのであります。
  84. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 文化財保護に関する質疑はございませんか。     —————————————
  85. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 それでは認定講習についての質疑を許します。高木章君。
  86. 高木章

    ○高木(章)委員 認知講習に関連いたしましてちよつと質問いたします。認定講習実施前におきまして、教員の再教育の意味において、講習会がしばしば行われたのでありますが、その時期に修得いたしました科目を、ただいまやつております認定講習の所定單位の一部として追認してくれという要求が多々あるのであります。文部当局としての御見解を承りたいと思います。
  87. 上野芳太郎

    上野説明員 ただいま御質問免許法実施以前の講習でございますが、それにつきましては、免許法の施行規則にも、終戰後の講習についていろいろ單位を與えることができるというふうに書いてございまして、さらに通牒で、今まで文部省で企画いたしました相当講習は、全部單位を與えるように指示を出しております。それからその他の委員会あるいは大学等、あるいは知事が開催いたしました講習につきましても、三十時間以上の講習については、單位を與えることができるというふうに通牒で出してございますので、今までもらいました証明書を持つて委員会の方へ参りますれば、その單位の追認が委員会の責任においてなされるようになつております。
  88. 高木章

    ○高木(章)委員 わかりました。
  89. 岡延右エ門

    ○岡委員長代理 ほかに質疑がなければ、本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつて御通知申し上げます。     午後四時十五分散会