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1950-07-24 第8回国会 衆議院 文部委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十八日       岡延右エ門君    小西 英雄君       圓谷 光衞君    小林 信一君       松本 七郎君  が理事に当選した。      ――――◇――――― 昭和二十五年七月二十四日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 小西 英雄君    理事 圓谷 光衞君 理事 小林 信一君    理事 松本 七郎君       柏原 義則君    甲木  保君       佐藤 重遠君    坂田 道太君       平島 良一君    若林 義孝君       井出一太郎君    笹森 順造君       志賀健次郎君    坂本 泰良君       今野 武雄君    小林  進君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         全国選挙管理委         員会事務局長  吉岡 惠一君         文部政務次官  水谷  昇君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     森田  孝君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     辻田  力君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      西崎  惠君         文部事務官         (調査普及局         長)      關口 隆克君  委員外出席者        專  門  員 横田重左衞門君         專  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 七月二十日  教育財政確立等に関する請願水谷長三郎君紹  介)(第八号)  新制大学における厚生補導対策に関する請願(  圓谷光衞紹介)(第九号)  新制大学農学部総合農業学科設置等請願(  若林義孝君外一名紹介)(第一〇号)  標準義務教育費に関する法律制定促進請願(  圓谷光衞紹介)(第一一号)  同(若林義孝紹介)(第一二号)  同(鍛冶良作紹介)(第八三号)  大学管理法案要綱中一部修正に関する請願(若  林義孝君外一名紹介)(第一三号)  旧制各師範学校附属校新制大学附属校に切替  の請願若林義孝君外一名紹介)(第一四号)  国立大学附属学校教員の諸給与改善増額に関す  る請願若林義孝君外一名紹介)(第一五号) 同月二十二日  六・三制校舍整備費国庫補助増額並びに標準義  務教育費に関する法律制定請願池見茂隆君  紹介)(第一四三号)  六・三制校舍整備費国庫補助増額に関する請願  (水田三喜男紹介)(第二〇九号)  同(田中豊紹介)(第二一〇号) の審査を本委員会に付託された。 七月二十日  文化財保護委員会委員人選に関する陳情書  (第三四号)  六・三制校舍整備費増額陳情書  (第四一号)  六・三制校舍整備費に対する国庫補助継続の陳  情書外二十三件  (第四六号)  元号廃止西暦採用に関する陳情書外一件  (第六四号)  六・三制校舍整備費に対する国庫補助継続に関  する陳情書外四件  (第六五号)  標準義務教育費確保に関する法律制定陳情書  外四十一件  (第六六号)  六・三制校舍建築整備費に対する国庫補助継続  の陳情書外五十一件  (第七三号)  標準義務教育費確保に関する法律制定陳情書  外六十一件  (  第七四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  昭和二十五年における教育委員会委員定例  選挙期日特例等に関する法律案内閣提出  第五号)(予)  文部行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしたいことがございます。今期中も衆議院規則第九十四條により国政に関する調査承認を得ておきたいと考えます。ただいまその承認要求書を朗読いたします。    国政調査承認要求書  一、調査する事項 標準義務教育費に関する件           宗教法人に関する件           国宝保存に関する件           社会教育に関する件           学校教育に関する件  二、調査目的  標準義務教育費設定のための基礎的実体調査宗教法人法立案のための実情調査国宝保存措置に関する調査及び教育問題の実情調査  三、調査の方法  関係方面よりの事情聴取参考資料要求、小委員会設置等  四、調査期間  本会期中 右によつて国政に関する調査を致したいから衆議院規則第九十四條により承認を求める。  昭和二十五年七月二十四日      文部委員長 長野 長廣  衆議院議長  幣原喜重郎殿 ただいま朗読いたしました要求書議長に提出いたしますに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長野長廣

    長野委員長 それではさように決しました。     —————————————
  4. 長野長廣

    長野委員長 次に昭和二十五年における教育委員会委員定例選挙期日特例等に関する法律案議題といたします。本法案は去る十三日予備審査のため付託せられた法案であります。これより提案理由説明を聴取いたします。     —————————————     —————————————
  5. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 ただいま議題となりました法律案提案理由を御説明いたします。  すでに設置されておりますところのすべての都道府県と一部の市町村教育委員会委員定例選挙並びに本年新たに設置せられる市の教育委員会最初選挙は、公職選挙法並びに公職選挙法施行及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律によつて、本年十月五日に行われることになつておりまして、教育委員定例選挙は、半数改選関係もありまして、二年目ごとにその年の十月五日に行われることに相なるわけであります。  しかるに本年は、十月一日現在で全国一齊に国勢調査が行われることになつておりまして、この教育委員選挙国勢調査期日とが接近しているため、種々の支障を生ずるおそれがあると考えるのであります。  すなわち第一には、十月五日の教育委員選挙は、都道府県市町村同時選挙でありますので、選挙期日告示は三十日前になされ、従つて十月一日以後は選挙運動終盤戦に入りまして最もはげしい時期であります。しかるに今回の国勢調査は、全国約四十万人の調査員が、各人五十世帯を担当いたしまして、各戸を戸別に訪問して所定の事項調査表に記入する方式で行われまして、十月一日から数日間が調査員の活動時期となりますので、これが選挙運動に利用されるおそれがありまして、もしそのようなことになりますれば、とうてい選挙の公正を期しがたいと思われるのであります。  第二に、各市町村におきましては、選挙、統計、調査事務は、大体同一の仕事でありますので、国勢調査選挙とが同時に行われるといたしますと、その繁忙にたえず、いずれの事務も正確と迅速を欠くのではないかと思われるのであります。  第三に、ちようどこの時期は、選挙人名簿調製の時期に当つておりまして、国勢調査がなくても、市町村選挙管理委員会繁忙期に当つているのでありまして、選挙事務の執行上、その支障は少くないと考えるのであります。  以上の理由によりまして、教育委員選挙国勢調査期日とは、相当期間、少くとも一箇月ぐらいこれを隔てる必要があると考えるのでありますが、国勢調査大正九年以来常に十月一日現在で実施せられて来ておりまして、これが将来ともに十月一日に行われることは、わが国勢の累年比較の上から非常に重要なことであつて、この施行期日を変更することは適当でないと考えられるのであります。従つて教育委員選挙期日を変更せざるを得ないと考えるのでありますが、期日を繰上げることはどうかということを検討いたしてみますると、八月には十五日に海区漁業調整委員会委員最初選挙が行われる予定で本月十七日までには各選挙管理委員会で、すでに期日告示しているはずであります。また九月は十五日現在で選挙人名簿を調製することになつており、さらに九月下旬には国勢調査予備調査を行います関係上、各都道府県及び市町村当局は、相当事務に忙殺せられるものと考えます。従つて選挙期日を八月または九月に繰上げることは困難と思われるのであります。それゆえに選挙期日は繰延べざるを得ないことに相なりまするが、もし十一月五日以前に行うといたしますと、さきにも申し上げましたように、選挙期日告示が三十日前に行われる関係上、十月五日以前より選挙運動が可能となりまして、前にも申し上げましたように、国勢調査員調査時期と重複し、また選挙人名簿調製事務とも重なつて支障がありますので、これらの支障を避け、かつ教育委員会成立があまり遅れないようにする必要等、彼此勘考いたしますと、結局本年に限り十一月十日に行うように決定するのが一番適切であると考えるのであります。以上がこの法律案提出ずるおもな理由であります。  次に法律案内容について御説明いたします。法案は三箇條からなつておりまして、第一條及び第二條第一項におきましては、すでに成立している教育委員会及び本年新たに設置される市の教育委員会選挙期日を、本年に限り十一月十日と定めまして、これに伴つて、第二條第二項において、本年新たに設置される教育委員会成立期日を十二月一日に繰延べることとし、第三條におきまして、現に教育委員会委員の職にある者の半数は十月四日にその二年の任期が満了しますので、十一月九日まで在任するものとし、また本年十一月十日に行われる選挙により選出された委員任期起算日は、同年十月五日といたしまして、次回の選挙は、この日から起算して二年目の十月五日に行うことによつて、現行の制に復する建前をとつているのであります。  以上がこの法律案趣旨並びに内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願いする次第であります。
  6. 長野長廣

    長野委員長 これより質疑に入ります。今野君。
  7. 今野武雄

    今野委員 これはこの前からも申しておつたのでありますが、大体教育委員会を市にまでずつとやるということについては、いろいろと問題があろうと思うのであります。今度は選挙が行われるその期日を延ばすというだけの法案でありますが、これに関連いたしまして、現在たとえばこういうことをやるための財政的な基礎がはたしてどういうふうになつておるか、そしてこれは選挙についても申せますけれども、選挙行つて委員会をつくります。そうすると、それが活動するためには、やはり地方財政というものの上で、相当いろいろな今までとかわつたことが出て来るだろうと思います。そういう点についてはたしてどういう見通しがあるか。今までも当然そういろ疑問はあるわけでありますが、特に朝鮮問題などもあつて相当大きな負担が国民にかかつて来る、こういう際に、はたして教育委員会ができて、それがちやんとりつぱに活動できる見通しがあるかどうか、この点がはつきりいたしませんのでお伺いいたします。
  8. 關口隆克

    ○關口政府委員 現在市で教育委員会を置いておりますのが二十一ございます。それから町で教育委員会がありますのが十六、村では九つあります。合計しまして四十六の市町村委員会が設置されております。本年新しく委員会を設置する市がおよそ二十一と、現在のところ予想されております。これらの市につきましては、いろいろと問題もあるようでありますが、委員会を設ける予定であるところから判定して、二十一の市においては、委員会を設置することが、財政上その他に非常な困難を生ずることはないだろうということは想像されると思います。
  9. 笹森順造

    笹森委員 岡崎官房長官にお尋ねしたいと思いますが、近来私ども国会で審議しなければならない法律が非常に多くて、むしろ煩累を感ずるような状況であります。これは従来のドイツ流法律の考え方でなくて、最近は英米流方式国会においても取上げられたというような傾向になつておることとも了承されるのでありまするが、立法はできるだけ簡潔で、これを適用することができるようなことにしておいた方がよいのではなかろうかという観点から、お尋ねをしたいと思うのであります。  今度の御提案の御趣旨は、ただいまの長官の御説明でよくわかつたのであります。特に昭和二十五年度における教育委員会委員定例選挙期日特例として、これを御提案になつたのでありますけれども、先ほどの御説明によると、国勢調査大正九年以来十月一日に行われるということが、累年比較のためにもよろしいという御説明のようであつたのであります。従いまして将来ともあるいは四年に一度であるとか、あるいはまた必要があると、その間でもこの種の国勢調査が行われる機会相当あろうかと思うのであります。そうして教育委員会は二年ごと選挙があるとするならば、今日御説明なつたと同様な困難が将来ともあるという見通しがあるべきはずだと思うのであります。でありますから、二十五年度のこの機会に根本的にこの問題を処理しなかつたら、あるいは二年後、四年後に同じ困難が起るということが予想せられる点において、どういうわけでそういう根本的な処置をおとりにならなかつたか、その点をお聞きしたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 ただいまの笹森さんのお話、まことにごもつともだと存じます。われわれも御趣旨のような意味で研究をいたしたいと考えておりました。将来にわたつてこういう時々の法律を出すよりも、やはり一つ法律で一番いい時期をあんばいしてやるのがよろしいと考えるのでありますが、すでに法律で十月五日ということがはつきりきまつておりますので、これを根本的に変更するには、いろいろの関係を十分考慮した上で、間違いのないところにする必要があると考えまして、とりあえず本年はこういたしまするが、関係当局において、十分御趣旨の点は考慮したいというふうに考えております。
  11. 長野長廣

    長野委員長 官房長官に対する御質疑は別にありませんか。
  12. 今野武雄

    今野委員 文部省に対する質問を続けたいと思います。さつき希望をするところでやるのだから、予算の面は大丈夫だというお話でありましたが、実はこの前の国会でも図書館法というものができて、それに対して予算がなかつたわけであります。そういうような予算が非常に不十分な場合とか、いろいろの場合に、どういうことが起るか。これは従来ともいろいろ問題があつたのでありますが、たとえば教育委員会の場合には、取締り的な面は相当やられるけれども、予算を伴う実際実利を与える方面は、なかなかやりにくい、こういうことにどうしてもなるわけでございます。それで図書館法などの運命は一体どうなつておるか、現在実施状況はどうか。それから、そういうことから考えてみて、たとえば教育委員会が今までに重荷になつておる市などの例はないかどうか。そういう点について、もう少し詳細な話を聞かせていただきたいと思います。
  13. 關口隆克

    ○關口政府委員 教育委員会の現状から見まして、町村につきましては、多少財政上の裏づけがしつかりしていないために、教育委員会としても困難があるということは聞くことがございます。しかし市につきましては現在実施しているところで、これはもうやめなければならぬ、これではとうていやつて行けそうもないというようなお話も、あまり聞かずにおります。しかし将来について、教育委員会財政上充実し、これを強化することが非常に必要だということは、皆さんから伺つておりまして、その方面につきましては、われわれの方としましても、いろいろと対策研究中で、よく御存じのことだろうと思います。簡単でございますが一応これで……。
  14. 今野武雄

    今野委員 それではお伺いしたいのでありますが、方々の市で——神奈川県ですけれども、神奈川県であちらこちらでもつて、いわゆる財政困難をなくすために、競馬が最初ですが、今度は競輪を盛んにやり始めております。このことが道徳的にも、また個人生活の上にも、非常に破壊的な作用を及ぼしている。そこでそういうものを使つてまで教育費その他の市の費用が足りない。そのために今度はまた、できれば宝くじというものもやりたいというような希望も持つている。これもやはり賭博的なものです。そういう教育に逆行するようなものをやつてまで市の費用を出さなければならぬ、こういうことが行われているわけです。それからそればかりでなく何か今度の地方税法実施伴つて、何でも寄付金相当詰められるということであります。しかし現実には、現在のところ学校の運営はほとんど寄付金で行われておる。実際に市から出る費用だけでは、通信簿をちやんと備えることさえもむずかしいというところもあるようであります。それさえもやはりPTA寄付金でまかなつておるというような状況で、非常に負担が重い。そのために、この間も文部省にトラツク二台でたくさんの教育費増額陳情が来ておつたようでありますが、こういうようなことと照し合せて考えてみますと、何か大して支障はないと言われるけれども、どうも少し感覚が麻痺しているのじやないかしらとさて考えられるわけであります。そういう点は大体教育委員会をつくるのでも、教育りつぱにやるためにつくるわけでございましようから、そういう点がどうも形ばかりできて少しも実を伴わないものになつて、形さえできればこれで安心だ、その責任を預けてしまつて安心だ、こういうようなところがありはしないかと思うのであります。そういう点で文部省でも苦情やらいろいろなものが来ているだろうと思うのですが、そういうものについて、やはり率直にお答えを願いたい、こういうように考えている次第なのです。幾つかの問題がありますが、教育に反するような競輪賭博行為、そういうものをもつて教育費をまかなうという傾向はないかどうか、もう一つPTA寄付などはこれをやめることができるかどうか。
  15. 森田孝

    森田政府委員 最初教育費收入の問題であります。これは御承知通り教育委員会はみずから收入源を探索し、あるいはまたこれの増額なりをはかるということはいたさないつもりでありまして、すべて県知事の責任において收入をはかつておるわけであります。従いまして教育費が県費の中の相当多額を要する部分になつておりますので、教育費も頭に置いて、県の收入増加のために競輪とか、あるいはその他の計画を立てることはあるかもしれないのでありますが、教育委員会なり、あるいはまた教育費用を特にまかなうということを目的にして今のような事業の計画というものは、いまだ聞いていないのであります。  それから第二番目の寄付金の問題でありますが、この点は御承知通り地方税改正の場合におきましては、シヤウプ勧告におきまして、昨年までのPTA寄付金の総額は全部で二百四十億になつておると聞き及んでおりますが、その中の三百億は地方税に織り込んで税としてとるというような改正趣旨が織り込まれておると聞いております。従いまして、もし地方税法成立いたしまして、この趣旨が徹底されることになれば、PTA寄付金もおのずから減少するものと考えております。
  16. 長野長廣

    長野委員長 本問題はあとにまわします。他に御質疑はありません——本案に対しては他に御質疑もないようでありますから、本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  17. 長野長廣

    長野委員長 次に文部行政に関する件を議題といたします。質疑を許します。坂田委員
  18. 坂田道太

    坂田(道)委員 私は来年度の教科書製造資金に関する若干の質問をいたします。去る七月十日の新聞であつたと記憶しますが、今のような状態であつたならば、来年度の教科書は間に合わないのではないかというような話が出ておつたのでございます。そういうような事情から、私若干調査をいたしましたところが、昨年度の資金需要と今年度の経済の状態とを比較いたしまして、非常に金融が詰まつておりますために、本年度においては、とうていまかない得ないという状態でありまして、このままではとうてい来年の四月から、ある学校においては、教科書が間に合わないというような状態が出て来はしないかということを憂うる一人であります。こういう点につきまして、どういう状況になつておるか、あるいはその状況に関してどういうような対策を立てておられるかということを、お伺いしたいのであります。
  19. 關口隆克

    ○關口政府委員 お答えいたします。大臣は少し所用があつてよそに行つております。まず第一に教科書需給状況について簡単に申し上げます。去年までは大分需給のことで問題がありまして、手に入らないという話も聞きましたが、今年は大体二億三千五百万冊というものを供給いたしまして、百パーセントということになります。なお、ものによりましては返本があるということになりましてこれは終戦後初めてのことでございまして、返本のあるのはありがたくないのでありますが、とにかく全部間に合うようになつたということは、非常にありがたいことだと思つております。  融資状況でありますが、来るべき二十六年度、来年春から入用の教科書は大体千七百十八点、二十五年度においては九百五十六点でありますから、かなりふえておるのでありますが、見込み需要数が二億七千七百万冊、二十五年度では二億五千万冊であります。これに必要な用紙代印刷代製本代を合せますと、これを一番たつぷり見ますと、約四十九億円、ごく内輪に見ても四十億円ぐらいということが今から予想されております。ところが御承知のように教科書最初製造準備に着手しましてから、実際に代金が製造者の手元に返つて来ますまでは、短かいもので六簡月、長いもので十二箇月にわたるような融資状況にございます。昨年までは比較的金融がよかつたことと、教科書業に対する世間の見込みがよかつたせいがありますが、さしたる困難なく資金がまかなわれて参りました。もつとも昨年は日銀の特別の融資あつせんをお願いしまして、日銀のお口添えで、市中銀行から各会社が融通を受けておりました。それが末端の供給業者の方でも似たような資金融通を受けておつたようでございます。しかるところ最近になりまして、中央の資金関係が少しきゆうくつになつたということからして、資金の短期の方のものがよくて、長期は好かれないと申しますか、なかなか話がつかないということから、この五、六月ごろから急に問題が起つて参りました。私の方としましても、事情がわかりましたので、大蔵省にお願いをいたしまして、銀行局長から日銀並びに市中銀行に対して、教科書融資について特別とりはからい方について通牒を出していただき、なお再々日銀等に伺いまして、あるいは業者の方と一緒に伺いまして詳しく事情お話し、また対策について力添えを受けておるという状況にございます。
  20. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま政府委員お話で、大体事情はわかつたのでございまするが、教科書の冊数といたしまして大体二億五千万冊、所要用紙として大体八千万ポンド、それに対するたつぷりの資金が四十九億円ぐらい。ところが私が聞きましたところによりますと、この用紙が、今年は製造ができた。ところがその第一・四半期の配給があつたにもかかわらず、それの用紙代さえも払えないという状態である。それぼどまでに金詰まりで逼迫しておるというような状態でございまして、ただいまの政府委員お話にもありました通り、昨年度においては若干の日銀融資あつせんもあつた。ところが今年度においてはそれもほとんどできないような状態にあるというわけでございますが、日銀文部省あたりでどういうふうに折衡されたか、その折衝の内容をもう少しお話になれましたら、ひとつ御説明いただきたい。
  21. 關口隆克

    ○關口政府委員 お答え申し上げます。こまかい事務的な打合せは、われわれ事務当局日銀事務当局といたしております。最近業者の方でこしらえております団体がございますが、そちらの方の金融関係の代表委員の方六名が、日本銀行の総裁と親しくお目にかかつて、いろいろとお話を聞いていただきまたお話を伺いました。なおそれに引続きまして事務的に話を進めつつあるというのが、日銀関係でございます。
  22. 坂田道太

    坂田(道)委員 検定教科書になりまして、直接の責任文部省にないと思うのであります。しかしながら教科書が児童の手に入らないということは、文部行政として一つの重要な問題であると考えますので、せつかく大蔵省と日銀の方にも御努力をいただいて、そうして最小限度製造に間に合うだけの資金は、ぜひとも確保していただきたいということを要望しておきます。一面におきまして、この製造資金を大蔵省なり、あるいは日銀にあつせんしてもらわなければならぬところに、一つの問題があるのではないかというふうに考えます。その点になりますと、やはり製造業者における資金の蓄積というものができておらない。これはもちろん一般経済事情にもよることながら、なおかつある程度教科書の発行に関する臨時措置法によつてその資金の蓄積をはばんでおるというような状況もあるように考えられるのであります。この点について、たとえば改正されるというような御意思があるかどうかという点が一つと、もう一つは、何か保証金制度というものがあつて、発行部数がきまると、ただちにその三分を出さなければならぬ、こういうような金融逼迫の時期において、発行部数の三分を、来年のほとんど六箇月先でなければ金が入つて来ないという状況では、現在の経済事情から考えますと、矛盾しておるというような面もあると思いますが、こういうような臨時措置法を改正する意思があるかどうかという点をお伺いいたします。
  23. 關口隆克

    ○關口政府委員 お答え申し上げます。あとの問題についてでありますが、教科書の発行が非常に金融上苦しいのに、保証金を三分とるということは、むりではないかというお話でございますが、このことはしばしば三分がよいか二分がよいかというようなことについては話を聞いております。この問題と先の方でお話のありました問題とからんで参るのでありますが、大体教科書は、昔は非常に、統制経済というものがない時期にも、いわば統制的に、計画的に国が関与してへ生産して来たのであります。終戦後は、思い切つて一般の自由競争にゆだねるというような傾向をとつて参りました。これにはいろいろの事情があつたかと思われます。そこでたれか人がありまして、その人が非常にいい教科書のプランを編纂するということになりますと、その人が経済的に発行するだけの能力があるかないかということとは無関係に、その品物がよいか悪いか、その教科書がりつぱなものであるかどうかということを検定委員会に出すことができるのであります。検定委員会で見て、これはりつぱな教科書である、これなら合格であるということをきめますと、その事は発行する段取りになるわけであります。自分で発行するかどうか、よその人に頼むかどうかということは別でございますが、とにかく発行することになります。発行する段取りになつて、いよいよ発行する人が、もし経済的な実力がなかつたならば、これは発行することはできないことになりますので、そこでいよいよ発行する段取りになりますと、発行する人は非常な資力を備え、経済的実力を備えておるということを保証するために、保証金をとるということが制度になつておるのであります。実は保証金を納めるときは、いよいよつくるときでありますから、つくる方にすると両方に金がいるということになり、話は一応むずかしくなつて来ておると思います。そうかといつて計画するときに、最初に保証金を納めるということも、これもプランをつくるときに金を用意するということはどうかということで、現在の規則になつておるわけであります。しかしこのことについては、いろいろ御議論もあります。なおかつ現在の原価計算の方式等についても、いろいろ御議論がありますので、これは目下教科書に関する審議会というのがありますが、その審議会で詳細審査しておるのであります。
  24. 坂田道太

    坂田(道)委員 昨年度も大分わいわい言つて、この資金の問題について文部省にたしか押しかけただろうと思いますが、しかしその結果は、本年度は非常に順調に運んだというわけで今年もまたわいわい言つておるけれども、実際は何とかなるだろうというふうに軽くお考えになつたのでは、来年度も非常にとんだことになるのではないかという気がするのです。と申しますのは、先ほど申しましたように、経済事情が一変しておりますし、何しろこういうような長期資金に対しては、なかなか銀行も出せないような状態にございますので、その点はよく認識を深められまして、ごあつせんをしていただきたいというふうに考える次第であります。  それからもう一点、これは教科書ではございませんけれども、全国新制大学ができたわけでありまするが、その中で非常に設備が不十分であるというようなところが、ずいぶん多いというようなことで、今度また再審査をやつてこれを落して、そうして短期大学に格下げをするというようなうわさを聞いて、また地元の各新制大学等においては、ずいぶん心配もしておるところもあるようでございますが、どういうお考えであるか、そういうことをひとつ伺つておきたい。
  25. 森田孝

    森田政府委員 新聞紙上におきまして、仰せのように、新制大学の再審査、並びに審査に合格しなかつたものを二年制の大学にするかもしれないということが、載つておりましたが、これは実は若干誤り伝えられた点があるのでありまして、文部省といたしましては、御承知かもしれぬと思いますが、新制大学の設置審議会におきまして、その設置を決定する際に、無條件で決定したものはごく少数でありまして、それぞれ、新制大学としてのレベルに達しておると認めるにはなお幾多の改善の要綱があるのであります。この條件がすみやかに改善されることを文部省においてもまた希望し、努力いたしますと同時に、各地元におきましても、あるいはそれぞれの大学当局におきましても、努力すべき点が條件となつておるのでありまして、これらの條件をどの程度満たしておるか、また今後その条件を満たすのには、見込みがあるかどうかというような点につきましては、文部省といたしましても、また大学設置審議会におきましても、常にこれを調査し、これが條件の成就を促進するような方法を講ずることが、当然の義であると考えておるのであります。従いまして、これらの條件の成就に関して必要なる調査を行い、それにまたその促進を特にこの際すみやかに行いたいということを宣明いたしたのであります。これらの條件がすべて成就していなければ、全部二年制に格下げをするとか、あるいはまたそれに関連して必要な措置をただちに講ずるというようなことは、現在のところ文部省は持つていないのであります。しかしながら、将来万一このような大学としての條件がどうしても備わらないというような場合におきましては、そのとき問題になることがあるかもしれぬと思いますが、少くとも現在の段階におきましては、さような意思はないのであります。
  26. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいまの條件と申しますのは、今年の秋とか、あるいは来年の四月までとか、そういう條件になつておるのでありますか。
  27. 森田孝

    森田政府委員 これは各大学によつて、それぞれ全部條件が違うのであります。しかしながら年限を限つてつけられた條件は一つもないと考えております。
  28. 坂田道太

    坂田(道)委員 それではもう一点だけお聞きいたしたいのでありますが、預金部資金がずいぶん余つておると思うのですけれども、これを預託をして、そうしてその中から日銀があつせんをするというようなことについて、御努力あつてしかるべきだと私は考えますけれども、その点お見通しはどうですか。
  29. 關口隆克

    ○關口政府委員 先ほどから教科書金融のことについて将来非常に重大であろうということにつきまして、御忠言をいただきましてありがたく考えております。どうも教科書というものは、品物が手に入らなくなりますと大騒ぎが起るのでありますが、しかしどうにかなつているときは、だれもかまわないというようなところがございます。また教科書がたいへんもうかる商売であるというふうに感違いをして、仕事を無手で始めた方が、非常にきゆうくつになつたというようなこともございます。どうも私は新米で、やつとこのごろ様子がわかつて来たのでありますが、伺つておりますと、ことのほかにたいへんな仕事なのでありまして、ことに長い長い間持ちこたえて行かなければならないのであります。好況のときも不況のときも、少しもかわりなく続けて行かなければならない、そういう仕事として、非常に困難な仕事でございます。これを完全に自由企業に移して行くということが、ほんとうにできるのかどうか、このことについても、いろいろ問題が起こつているように伺うのです。現在のところはとにかく検定を受けるところと、それからつくるところまでは、それぞれの審査にパスして、それぞれの條件を備えさえすればできるということになつて来た。ところがこういう金融界の事情の変化によつて、先行きが非常に心配されるということになつたのです。それで根本的に一体どういうぐあいにしたらいいかということも、実は寄り寄り相談をしておるところでございます。さしあたりの問題としまして、従来の御縁故によつて日銀にまたお願いしましたところが、総裁も非常に快く業者の方に会われまして、文化事業には十分のことをしなければいけない、自分たちは十分バツクアツプする、しかし業者の人も、商売として実際に引合うような、りつぱな営業をやらなければならない。そういうふうにすれば、われわれとしては長期だとか、短期だとか言わないで、できるだけの御援助をしようという、力強いお話がございました。なおその際に、今お話に出ました預金部資金、あるいは見返り資金のことも、われわれは考えまして、当局とそれぞれ打明けていろいろお話合いをいたしましたが、現在の状況では、あるいは預金部資金にしても、見返り資金にしても、この仕事には困難だという見通しでございますが、すつかりあきらめてしまつたというわけではございません。これもちよつとお答えしておきます。
  30. 今野武雄

    今野委員 ただいま教科書金融の問題について、いろいろなお話しがあつたわけでありますが、教科書をやつている業者が非常に困難している問題は、一つは、やはり検定が非常に煩瑣であつて、そのために危際率がずいぶん多い。もう一つは、文部省でもつて始終コース・オブ・スタデイをかえている。今のところ始終動かしている。だからせつかくいい教科書をつくつても、去年のものは一年か二年しか使えない、こういうことでもつて、せつかくの努力がまたやり直さなければならぬことになつている。その結果は、また検定が通るか通らないかわからない。かようなことがありまして、その上資本をたくさん長い間寝かさなければならぬ、こういう悪條件が重なつているわけでございます。その結果として、よほど超過利潤がなければ、これはとてもやりきれないわけでござがます。どこから金を融通してもらうにしても、とてもその利払いやなんかには耐え得ない。またそれだけの元手があれば、ほかのことに使えばずつと利益があるわけでありますから、自然教科書の方は、ただ体裁をつくろうということになるわけです。聞くところによると、やはりある一部の業者の人たちは——これは私はほんとうでないことを願うのでありますが、文部省のお役人の人たちと、いろいろな点で打合せというようなかつこうかもしれませんが、いろいろと関係を持つて、コース・オブ・スタデイの変化とか、いろいろなものをずつと以前にキヤツチして、手早く手を打つ。それによつて競争者を圧倒する、こういうような手段さえもとられている。その結果、さつき資本がないと言いましたが、相当資本のある、たとえば北陸系のある会社のごときも、とてもこれはやりきれないということで、教科書事業を断念しようというようなことになつているのであります。こういうことになりまして、ごく少数の会社に独占されるということになりますれば、これはいい加減な教科書が気ままに横行する危険さえある。現に今年などは教科書の展示会が開かれる前に、すでに入るのがきまつておるものさえ出て来ている。その間にはいろいろなうしろ暗いことが予想されるわけです。そういうこともありますので、この金融の点などは、特にはつきりしていただきたいと思います。  それ以上に私お伺いしたいのは、文部省で検定手続をもつと簡便にゆるやかにすることを考えていないかどうか。そしてほんとうに自由な能力を発揮せしめることを考えていないかどうか。それからコース・オブ・スタデイをもういいかげんに固定させる。いろいろなことがある世の中ですから、もう完全なものを追つていたら、毎年毎年かえていなければならぬから、当分の間固定する方法は考えていないかどうか。その二点について特にお伺いしたいと思います。
  31. 關口隆克

    ○關口政府委員 私実は所管外のこともまざつておりますので、はつきりと御答弁いたしかねるかと思います。今のコース・オブ・スタデイも、だんだん落ちついて行くという状況にあると思います。そのために検定を始終かえて、お困りになるようなことは、必ずしも私はそういうふうに聞いておらないのであります。なおよく調査いたしまして、御答弁申上げます。私所管でないために、あるいは気がつかないのかもしれません。聞いた上で御答弁申し上げます。  なお検定がこのごろ少し通り過ぎるという批評をする方もあります。ほとんど九〇%通つておる、あんなに通すのだつたら、採択だけやればよいじやないかという批評もある。それに対しては、やはり検定があるということから、それでむずかしいのだということで、よく調べて、よつてつて来るから、九〇%も通つて行くので、これを全然取払つてしまつたら、どんなものが出るかわからない。検定と採択と二つの関門が、それぞれ独得の味わいがあるようです、そういうふうに聞いております。少しお考えと違うようなところを私は聞いておりますが、なおよく調べました上でお答弁申し上げます。
  32. 今野武雄

    今野委員 その点ですが第一回でみんな懲りごりした。だからよほどこれは文部省と連絡をとつてやらなければ、どうにもなならぬということになつてしまつて、そういう連絡が十分とり得る者だけやつているという傾きが相当あると思います。その結果また通り過ぎるということになります。どうもそういう点で、私どもわきから見ると、何かかえつて独善的なものができる原因がひそんでいるように思われます。そういろ点もあわせて御調査願いたいと思います。
  33. 長野長廣

    長野委員長 坂田君、よろしいですか。
  34. 坂田道太

    坂田委員 私の質問は、文部大臣が来られてから継続いたします。
  35. 長野長廣

    長野委員長 文部大臣は十分くらいで来られますから——。それでは小林君。
  36. 小林信一

    小林(信)委員 私は教職員の認定講習の問題で、どなたからでもよいのですが、お聞きしたい。第七国会にその改正案が提出されたときに、免許法とその施行法によつて行われるところの認定講習が、非常に一般から歓迎されて、非常に喜ばしい現状にあるというような提案理由のもとに、一部改正提案されたわけなんです。そのときにも、しかしこの方法については各方面にもいろいろな要望が来ておる。従つて大分根本的に検討しなければならぬという考えがあるけれども、この際はきわめて重要な面だけ改正する、というようなことが言われておつた。従つて提案されるときにも、これはただちに根本的に検討して、なるべく早い機会にこれはもつとりつぱな法にしたい、こういうふうな意向で、私もその当時非常に不満を申し上げておつたのですが、最近この夏休みに入りまして、教職員の講習が始まりました。しかしその事前に教職員の方から文部省に対して、その認定講習をめぐつて、いろいろな注文があり、そのために新聞あるいはラジオ等で、容易ならざる事態が一般国民に報道されたのですが、これに対して、これがどういうふうな経過で、文部省並びに教職員との間で話がなされたか。それが今度は文部省の方としては、この法に対してどんな考えをお持ちになられたか、今後どういうふうになされて行くかというようなことについて、なるべく詳細にお伺いしたいのです。これに対しては、国会も開会中でありまして、当然この文部委員会としても、委員長はただちに招集して、事情を聴取し、これに対して何らか対策を講ずるようなことを、私たちも希望しておつたのですが、委員長もその間非常に御多忙のようで、委員会が開かれなかつたのは、私は遺憾に考えているのです。文部委員会としましても、この問題はまだ全国的には解決されておらない情勢にあるので、私は相当政府のお話を聞いて、委員会としても、単にここで事態を聞くだけでなく、相当現在行われている講習等に対して、文部委員がその実際を調査し、研究することが必要だ、こう考えて、どうでもその点で文部委員会相当重大視していただきたいと思うのです。最初、先ほど申しました経過、それに対する文部省の態度というようなことについて、一通りお聞きしたいのです。
  37. 長野長廣

    長野委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  38. 長野長廣

    長野委員長 せつかく御希望ですから、実は文部当局としては、関連するところがいろいろな方面へ及んで行くので、速記をとめることを希望しておりましたけれども、答弁の中において、さようなところをしかるべく処理することにして速記をすることにいたします。速記を始めて……。
  39. 稻田清助

    ○稻田政府委員 日教組中央執行部におきましても、この問題について先般来いろいろ討議いたしておつたようであります。地方の日教組関係においても、拒否すべしという論もあり、またしからずという論もあるようでありまして、中央執行部における論議も、非常に紛糾しておつた様子であつたのであります。文部省におきましては、日教組との数次の折衝におきまして、この免許法施行改正の問題については、施行法第七條の期限の延長の問題については、法改正の用意があるということを申しまして、さしあたり今期も短かいこの国会においては、同法改正をもつて処置をして、爾後相当期間をかけて、免許法全般の検討を行うというような方針をもつて、日教組の了解も求めて来たわけでございます。その結果、日教組といたしましても、先般新聞にも報道されましたように、相当論議の結果受講拒否をやらない、つまり受講するという中央執行部の決定を見たわけでございます。そうしてこの中央執行部の決定を地方にも通達するというようなことになつてつたのでありますが、ただこの間従来拒否しようかという動きがありました関係で、地方の状況におきましては、多少混乱があるようでございますが、これらにつきましては、日教組からも地方に連絡する。またちようど先日、教育委員会委員全国協会と申しますか、名称ははつきりいたしませんが、そうしたものの結成会がございまして、各県から教育委員の方の上京がありましたので、これらの趣旨教育委員の側にも、大臣初めお話をされまして、両方からこの受講拒否というような事態の起らないように努力するということにいたして進んでおるわけであります。一応お答えといたします。
  40. 小林信一

    小林(信)委員 きわめて雑駁な御報告で、私どもはもつと内容について詳しくお聞きしたいのです。従つて私の方から、そういう点を列挙してお尋ねいたしますが、まず拒否という態度に出た教職員側の理由、これはどういう理由で拒否したというのか、これをひとつ文部省で把握したものをお聞きしたいと思います。
  41. 稻田清助

    ○稻田政府委員 それは具体的に各県県において、県の当局と大学と教員側との合同によります協議会によつて、この認定講習の計画を立てて実行しております。その計画を是正しようという声が、教員の側から起つておる点が幾つかある。従いまして、その計画是正に対する教員側の要望というのは、県県によつて事情が異になるであろうと思います。ただ全般的に言われますることは、結局教員が過労に陥るというようなことが、教員の側から言われておるのじやないかと思います。また具体的に個々の問題として、講習の内容についての不満があるというような声も聞いておりますけれども、これは個個の問題であつて、一般的には言い得ない問題だと思います。
  42. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、結局個人的ではあつても、これが全般的な問題として、当然拒否の態勢に出たと思うのですが、要するに一年中を通じて土曜日、日曜日、そしてこの夏休みという期間をこの講習のために使われるということが、肉体的な過労となることは、これはやはり共通的なものだと思うのです。それから講義の内容、これはやはり私たちが聞くところも、大分教職員諸君は不満を持つておるようです。さらに、今御説明がなかつたのですが、一般教職員は、非常に経費の負担が多くて困るというような点を言つておるようです。これに対してまだ文部省の御見解を承つておりませんが、これに対して文部省はどういう見解を持つておられるか、お伺いしたいと思います。
  43. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は初めてこの委員会に出席いたしますので、最初にちよつとごあいさつ申し上げておきたいと思います。私はどうか自分が日本の文教のために、おのれをむなしうして役に立ちたいという熱意は、十分に抱いておるつもりでございますけれども、しかし何と申しましても、私はこういうことには全然不なれで、また力もないものでございますから、どうか皆さんに、すべての点において御助言をいただいたり、また御援助をいただきたいと思います。そのことをまず初めにお願いいたしておきたいと思います。  それからただいまの問題でございますが、私はこの認定講習については、第一に金が非常にかかる。その土地の者はとにかく、距離の遠い者は、非常に金がかかるということ、それからまた非常に体力を要する。今もお話がありましたように、土曜、日曜毎週やつている、それからまた休みにいつも講習を受けていることは、体力上も非常に過労になる。それからまた従つて自分の受持つている生徒を十分に教えて行くことができないという教授上の支障、こういうことが共通している原因だと思つております。けれども、その上になお、場合によれば、教授内容に対する不満もあながちこれを不法だとは言えないものがありはしないか。一体これは受ける方ばかりではなく、その講習をする方の教授力というものにも、いろいろむりがあるように私は考えておりします。そういう考えを持つておりますから、私は日教組の諸君から言われない前から、これは何とかしなければならないという考えを抱いているものでございます。従つて今さしあたつてこの短かい国会において根本的なことはできないから、一応七條の改正を行つて、三年の間にするという講習を六年にする、三年延ばすということにしておいて、さらに委員会をつくつて、全面的に検討して、もしも改むべきものがあるならば改めるように持つて行きたい。また地方で実際この講習をやつた人たちのうち、おもな方にお集まりを願つて、これを運営して行くのには、どうしたらよいかということを検討して、そこに適切な成果が得られますならば、これを都道府県に通知して、委員会の御参考にしたいというふうに今は考えて、そのことを日教組の代表者の方に申して、そういう一つ法律改正ということに自分は努力するということを申して、今日に至つているわけであります。
  44. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま文部大臣の御説明をお聞きいたしまして、教員諸君が、この問題は非常に重大な問題として、深刻なものを持つてつたようです。従つてああいうような問題が生れて来たと思いますが、とにかく教職員は、自分たちの資質を向上するのだ、そして新しい教育制度を確立し、教育内容を充実して行くという一つの自分たちの責任というものに立ち上つているのでありますから、ただいま文部大臣が種々説明されましたような、学校教育上に支障があるとか、自分の経済上あるいは肉体上の負担というふうなもの、これがまた社会問題まで出て来るというふうな点を押し切つて、とにかく受講をするという態勢に一応なつたということは、やはり文部大臣教育に十分理解を持つておられ、しかも今度の問題に対しましては、十分な熱意を持つて、教職員のためにはかられるというその誠意から、受講するという態勢に一応なつたと思うのですが、しかしそれに対する御処置として、今国会期間がないから、これに対して十分な審議をすることができない、これは非常に私賛成するものであります。しかし第七條の修正をこの国会に上程する、こういう御説明なのですが、この第七條をこの国会に上程するというようなことは、ただいま受講する人たちにとつて、何ら影響のないものだと思うのです。しかしそれをなされて、何か教職員をなだめるというようなことだとすると、非常にこれは私軽率だと思うのです。もつと誠意を持つて、根本的に大臣の考えておられる、これに対するものを説明される、あるいはこれを具体化されることが、私は必要だと思うのですが、これに対して御説明願いたい。
  45. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまお考えを承りましたが、私は七條を改正するといのではなくて、改正するように努力するというのです。言葉の上のことでございますが、努力する、努力してみても、何ら得るところがないではないかというお話でございますが、私は得るところがあると思つております。それはどういうことかというと、法律がさつそく改正されますならば、まだこれから暑中休暇の講習というものが残つているのですから、その現在の講習計画を、従来は三年でやるというのですが、これが六年間にやればいいということになれば、ある程度のモデイフイケイシヨンをすることが可能になつて来ると思う。私は現に都道府県からお集まりになつ教育委員の代表者の方方に向つて、もし都合よくこの改正ができるならば、どうかひとつその計画についても、何かの修正をしていただけないものだろうか、また予算措置については、私は補正予算の出せることが起これば、ただちにこの点について補正予算要求したい考えを持つておるけれども、さしあたつて何とか方法のつく都道府県におかれては、教員諸君のために何か予算的措置も、考えられたら考えていただけないものか。これは私が都道府県教育委員に向つて要求できる筋合いではなくして、ただそういうことがしていただければ、非常に都合がよいと思うかということを申したようなわけで、私はここでさつそく、もし改正ができるならば、それはこのことに対して何ら意味がないことではない、非常にあるという考えを抱いております。
  46. 小林信一

    小林(信)委員 もちろん法全体からすれば、第七国会におきましても「二十八年三月三十一日」というその期限を三十一年の三月三十一日に延期すべきだというように主張された方が、たくさんあるのですから、これに対しては、最も重大な点であつて、法の上から行きますと、大きな効果のあるものだと思つております。しかし今日教職員たちが悲痛の叫びをあげておるその直接の問題は、やはり経費の問題とか、あるいは講義の内容、講義をしてくれる人たちの質をよくするというような点に、私はかかつておるのじやないかと思うのです。そういう直接な問題をもつと考慮して行くべきだ、こういうように地方の実情から見まして、私考えておるものであります。そこでもう一つ私が三年を六年に延期することは、そう大して重大な問題でないと申し上げたのは、私はこの法律は、もつと一般社会の問題とあわせ考えて検討する必要がある。要するにこれは教職員が持つておる既得権というようなものを阻害したものであつて、そこに生れた社会機構の破壊というような点から生れて来ておることを、根本的に考えるものです。この法律はそういうところまで行かなければ、ほんとうに教職員の不平をなだめるということでなくて、ほんとうに日本の民主化をはかる大きな役目を負担しておる教育行政を、確立することにはならないという点まで私は考えておるので、かく申し上げたのです。  そこで先ほど来は教職員だけからの要望というようなことについて、文部省の態度をお聞きしたのですが、この問題につきましては、教育刷新委員会の方からも、文部省に対して何か意見を開陳してあるように承りておりますし、教育委員会からも、各府県の実情等を考えて、文部省にいろいろ注文をしているように聞いております。またそうした関係方面ばかりでなくて、一般輿論もこれを相当に重要視している、これらに対して、その要望している点並びに文部省の見解を、この際承つておきたいと思います。
  47. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいま小林さんから承りましたことは、実にごもつともなことだと思います。私もこの三年を六年に延ばすことで、問題が解決されたとは決して考えておりません。今の既得権ということも、私もまことにごもつともな意見で、その点については十分考慮をしたいという考えを抱いております。いずれにしても、この差迫つた際に、すべてのことをやるということはできませんから、ただいま申し上げましたように、急速にひとつ委員会をつくつて、そこでもつて十分な検討をしたいという考えでございます。これは決して日教組の諸君が言うから、それを熱心にやろうというのではなくして、今おつしやる通り、この免許法にはまだ欠点があるのではないか、これで十分とは言えないのではないかというようなお考えは、すべての方からも承り、私自身も持つているのでございます。自分らは、できるだけ誠意を傾けて、この問題の解決に努力いたしたいと考えております。
  48. 小林信一

    小林(信)委員 文部大臣でなくて、どなたからでもよろしうございますが、ただいまお伺いした教育刷新委員会あるいは教育委員会等の意見は、教職員の意向とはまた違うかもしれません、これらがそれぞれ文部省に対して何らか意向を具申しているようですが、これに対して、御存じであつたら御答弁願いたい。
  49. 稻田清助

    ○稻田政府委員 教育刷新審議会におきましては、この教職員養成とか、免許制度の全面的の改善という問題について、特別の委員会を設けて先般来審議しておられます。その委員会におきまして、さしあたりの認定講習の問題について政府に建議されましたことは、大体五項目にわたつております。第一項目は、これは非常に包括的な内容でありまして、認定講習には改善を要すべき事項がある、改善しろというような御趣旨であります。第二点は、この免許法施行法の第七條の期間を五年間延伸した方がいいだろうというふうな意見であります。第三点は通信教育の開講をすみやかに実施しろというような御趣旨であつたと思います。それから最後の点は、認定講習の経費的な措置を政府において考慮しろという御趣旨であります。  それから各教育委員会は先ほど申し上げましたように、それぞれ事情が異なつております。また別に委員会の協議会等におきまして全体的な御決議等もなかつたかと思います。大体問題となつておりますのは、先ほど申し上げました教育刷新審議会の答申に載つております諸点の範囲である、このような記憶でございます。
  50. 小林信一

    小林(信)委員 大体同じような意見が出ているようなわけですが、私は実はそういう方面、あるいは一般輿論の方面は、そういう不満があつても、文部省はこれはぜひとも強行しろということは、かえつてこの法律、現状を支持するような主張が何らかありはしないかというふうなことがあつたらと、こういう考えをもつてお聞きしたのですが、そういうものがないとすれば、教職員が一般父兄からも、それほどまでしなくてもいいというようなことを言われながらも、拒否の態勢に出たということは、これは単に教職員がその間なまけるとか、あるいは自分の個人的な考え方からでなくして、やはり教育行政の欠陥から生れたものであつて、これに対しては、十分な文部省の善処ということが必要だと考えるのであります。そこで、さしあたつて省令等の改正は、文部省自体においてできるものと思うのでありますが、こういう面からして、この際社会的にも要望されておる、また当事者である教職員からも熱烈に要望されておるような点を改正して、何とかこの問題に善処するというふうなことは考えておらないかどうかということをお伺いしたい。
  51. 稻田清助

    ○稻田政府委員 今日出ております省令は、認定講習につきまして、文部大臣に認可を申請する手続等に関します規定のみであります。従いまして、法律改正を急ぐことが問題でありまして、法律改正によりて期限が延長せられませんのに、省令をもちまして実施を延期するとか、あるいはそのほか法の規定の内容と違うような趣旨には改正しがたいと思つております。われわれといたしましては、すみやかに法それ自身の第七條の関係におきまして改正せられることが、緊急であると考えております。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 経過並びにこれに対する文部省の態度というものをお伺いして、大体わかりましたが、最後に、先ほど私は三年を六年に延期するという法の改正は、今国会に必ずできるものというふうに伺つてつたのですが、努力しておるのでどうなるかわからぬというふうな御説明があつたのですけれども、もう一ぺんこの点ができそうか、できそうでないか、今のところの見通しをお伺いいたします。
  53. 長野長廣

    長野委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  54. 長野長廣

    長野委員長 それでは速記をはじめてください。  この際ちよつと先ほど小林君から委員会開催に関する件等についてお話がありましたので、私の職責上にも関係しておりますから、一言申し上げたいと思います。今回の認定講習の問題につきましては、小林君も私もともに非常に憂えまして、すでにその当時小林君、岡君、松本君などとともに連合軍の関係当局に面会をしまして、当時のせつぱ詰まつた問題について、できる限りの説明その他懇請をいたしました。幸い文部当局の非常な御努力の結果、当面の危機は脱したのであります。なお調査云々のお話もありましたが、こちらも現在許す範囲におきまして、いろいろ調査を進めております。それから今後における委員会のこれに対する問題につきましては、幸いここに本日からだんだんこの問題について御質疑もあることでございますから、これらに順応しまして、極力問題の円満解決をするように努力いたしたいと思いますから、どうかかれこれお気づきの点がありましたならば、御指示御援助をいただきたいと存じます。
  55. 坂田道太

    坂田(道)委員 先ほど政府委員から御答弁いただいたのでございますが、この際文部大臣の御出席をいただきましたので、文部大臣からも御答弁いただきたいと思います。と申しますのは、来年度の教科書製造資金についてでございます。これは一般の金融逼迫の状況とともに、非常に困難な状況にあると考えられるのでございまして、このまま放置して、文部省が何らかの金融のあつせんなり、何なりいたさなければ、来年度の四月におきましては、あるいは児童の手に教科書が渡らないというような状態が起るのではないかということを憂えるものでございます。初等教育におきまして、教科書が児童の食糧であるということは、今さら申し上げるまでもないことでありますが、いかに検定制度になりましたにいたしましても、教科書が確実に児童の手に渡るための責任というものは、当然文部大臣におありであるというふうに考えるのでございます。御承知のように教科書製造は、来年の四月以降の間に合せるためには、この七月から製造にかかつて、来年度の二月ごろは発送しなければならないというような、特色のある一つ製造過程を持つておると思うのでございます。そういうような関係で、先ほど伺いますと、大体来年度の教科書二億五千万册に対しまして、大体その製造資金として四十九億の金がいる。しかしながら昨年度におきましては、とにかくこの製造資金が間に合つたけれども、本年度においては、御承知のような非常な金融逼塞によりまして、とうていこれを自己資金その他でまかない得ない、最小限度において三十億ぐらいは融資のあつせんをいただかなければ、とうていやつて行けないのじやないかというような実情にあるのでございます。しかも昨年度におきましては、わずかではございましたけれども、日銀文部省のごあつせんによりまして、大体十億近くのあつせん融資をされたというふうに聞いております。そのために非常に助かつたわけでございますが、聞くところによりますと、本年度においては、この日銀のあつせんということも、なかなか困難な事情にあるというようなことを聞いて、私はこの点非常に憂えておる一人でございます。こういう御事情をよく文部大臣は御了察いただいておるかどうか。またそれに対してどういうようなお考えを持つておられるか、できますならば、たとえば預金部資金の中からこの金を預託いたしまして、業者に対してあつせんをしていただく労をとつていただきたいということも考えておるのであります。これに対する文部大臣の御見解を承つておきたい。
  56. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまお話教科書のことは、事務当局からよく聞いております。もし教科書ができないというようなことが起りますならば、それは私の重大な責任であることも自覚いたしております。そのために、今事務当局をして日銀等にいろいろ話をさせております。以上お答えいたします。
  57. 長野長廣

    長野委員長 それでは午前はこれをもつて一応打切りまして休憩にいたします。 それから幸いに文部大臣が本日は午後おひまがあるようでございますし、また一方行政に関する質問相当輻輳して来ておりますから、午後は一時半から始めまして、大体四時ごろまで勉強いたしたいと存じます。何とぞ皆さんの御出席をお願いいたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  58. 長野長廣

    長野委員長 休憩前に引続き会議を開きます。笹森順造君。
  59. 笹森順造

    笹森委員 緊迫せる内外の情勢にかんがみ、国内の思想の傾向に照して、特に文部行政と直接関係を持つ点について、少しく文部大臣の所見についてお尋ねを申し上げたいと思います。  それは教育の基本法において示されますごとく、真理と平和を希求することが、私ども日本の将来を建設する上において、最も大事な教育上の責任の点であると思うのでありますが、この二つの兼ね合せは非常にむずかしい現段階に逢着しているかに思うのであります。すなわち真理の希求に関しまして、これがその問題を取扱います人によつての判断が、必ずしも意見の一致を見ないというのが、世界の今日のありさまのように考えられるのであります。いずれもこれは真理なりとして主張することが、完全に普遍的に一致いたしますならば、問題はないのでありますが、ここに対立した二つの大きな意見があるとした場合に、当然そこに相剋摩擦が起るというのは、やむを得ない結果であろうかと思うのであります。この意味において、今世界が二つの大きな相剋摩擦の中に陷れられていることは申し上げるまでもないのであります。最近の朝鮮の三十八度線を越えての紛争も、せんじつめてみますと、おのおのが真理と考えております点の意見の不一致から来ている一つの問題ではなかろうかと察せられる点がなきにしもあらずであります。そうしてこれが国際の大きな紛争の原因となり、あるいはまた国内における思想の不一致のわかれるところとなるわけであります。しかしてまた、この教育基本法において、あるいは学校教育法において、大学においてはどうしても民主的な国民の将来の中堅指導者をつくるためには、良識のある政治教育をして行かなければならない。この意味において、あらゆる思想のすべてのものに対する公平無私なる、もつと民主的でまた自由なる教育の仕方が、行政の上においてなされなければならないと思うのであります。この点に関しまして、必ずしも最近における学校状況が、私どもの満足すべき状態にあろうとは考えられません。従いまして、この根本の問題について、一体真理と平和を追求する問題、現段階に託ける世相に対して、文部大臣はどういう御抱負をもつて学生一般を指導なさろうというお考えであるか、まずこの根本の問題をお尋ね申し上げたいと思います。
  60. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はこういう考えを抱いております。学生はとにかく、ことに大学の学生は、将来社会の指導的な階級になる人たちなんですが、そういう人たちは、将来社会に出た場合にはどういう方面かのエキスパートにならなければならないと思います。そのためには、大学でそれぞれの学科において、基本的な知識を十分研究して行かなければならない。初めからこういう思想がよいのだとか、こういうものでなければならないとかいうのでは学問でない。一体どういうことが真理であるかということを追求するのには、よほどの準備がなければ、学問的には追求できないのです。ただわれわれの個人的な感情とか、個人的な一つの私見とか、そういうものは幾らでも立てられますけれども、学門的に真理を追求するというのには、よほどの準備がなければできない。そういう意味で、私は、学生はそういう準備の時期だと思つております。だから学生の学問の研究熱をできるだけ奨励して、そうして学問的に、思想の問題でも、どこまでも追求するようにして行きたい。大体そういう考えを抱いて、学生を指導しようと思つております。
  61. 笹森順造

    笹森委員 ただいまの大臣の御説明によりますると、学生は将来ある一つの問題に関して、少くとも專門的なエキスパートとならなければならない。 従つてある一定の思想に対して、最初からこれがどういうものであるかという一つのわくをはめた指導の仕方はしないのだ、ここに大学の教育の自由があるのだという御意思であろうかと察するのであります。この点については原則的に御説明通りだと考えられます。しかるにそれならば最近において行われておりまする大学における特殊なる思想を持つておる主義者、特殊なる政党に加わつておる者等に対して、追放するあるいはこれは大学の教授たるの資格なしという態度を示しております。この点についてただいまの御説と矛盾がないか、また矛盾するような取扱いをしたことがないかどうか、この点について御説明を願いたいと思います。
  62. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はそういう考えでありますから、大学の教授がほんとうに、どこまでも学生というものは準備期なのだという建前で、学問的に学生を指導しておられる方を、別に追放しようなどと考えたことはございません。そういう意味で私の前の主張と現在私がとつておるところと、何も矛盾していないと考えております。
  63. 笹森順造

    笹森委員 そこで具体的な問題についてお尋ね申し上げたいのでありますが、せんつて来、あるいは新聞の所報においてこれを見、あるいはまた本員自身もそういう機会に接したこともあるのでありますが、司令部の代表の方が教育を代表して、公の責任において大学をまわつて歩いて、大学の自由に関する一つの問題をとらえて、いろいろと講演をした際に、これを妨害した事件があつたことは、すでに御承知のことであります。この問題の取扱い方は、すこぶるデリケートな問題であり、またさだめし御苦心をなすつた問題だろうと思うのでありますが、日本の将来、及び今後においては私どもが国民の思想を確立するという意味ばかりでなく、正しい方向に誘導するという面において、これが一つの範例ともなる問題でありますので、この問題に関する処理について、これをただいま関係の方からお尋ねをしたい。もつとはつきり申し上げますならば、ドクター・イールズの講演妨害に関する文部省のとりました処置について、またその処置を正しいとする理由について、現在に至るまでの行政上取上げられた事実について、御説明願いたいと思います。
  64. 稻田清助

    ○稻田政府委員 お話の事件の起りました場合に、文部省といたしましては、いずれも大学自体で御処理になりますことが、建前として自然である、当然であるという見解のもとに、大学学長及び学校当局の御処置におまかせいたしました。それらの御処置につきましては、逐一御報告を受け取つておるような次第でございます。
  65. 笹森順造

    笹森委員 その処置について、監督の責任にありまする文部省において、知つておりますことで、私どもにこの問題の処理について、明らかにされておらぬ点がたくさんあると思いますので、事実の結果についての概略の御発表を望みます。
  66. 稻田清助

    ○稻田政府委員 両大学におかれまして、それぞれこの問題に関する調査委員会というものを学内に設けられまして、詳細にその事実の状況調査いたして、その上において各学部教授会及び大学評議員会で決定を見まして処置されたのであります。その結果として、北海道大学におきましては学生四名が退学処分になり、四名が無期停学、一名が一年の停学、一名が譴責という処分を受けたのであります。さらに東北大学におきましても、同様な手続の結果、三名が退学処分を受け、二名が無期停学となり、四名が一年停学、二名が戒告、二名が譴責、それぞれそうした処分のあつたという事実の報告を受けております。
  67. 笹森順造

    笹森委員 ただいま処置の結果についての御説明があつたのでありますが、これに対しては、必ずそれぞれの軽重に関する理由がなければならぬと思うのであります。特に文部当局とされましては、将来日本の大学の学生の希望をも、これを絶たれないように指導して行く、またこれを完成せしめるのが念願でなければならぬことは申すまでもない。従いまして、そういう処置をとらなければならなくなつた報告を各大学からおとりになつたことは、これは了承いたしますが、それについては、文部当局においても、なるほどこれは適当であるということに対する理解が必要であるかと思います。従いまして、どうしてそういう処置をしたかということに対する判断の基準に対して、文部当局が受取りました報告による判断を御説明願いたいと思います。
  68. 稻田清助

    ○稻田政府委員 いずれも法規の適用といたしましては、学校教育施行規則によつて学園の秩序を乱るとか、学生たるの身分、本分を逸脱するという場合においては、学校長において譴責処分ができるという法的基礎がございますし、その趣旨にのつとりましてそれぞれの大学の学則があり、ことに先ほど申しましたように、本件につきましては、事の性質にかんがみまして、十分その調査には適正を期する意味において、両大学においても、学内に特別の調査委員会を設けて、相当、時日をかけまして、事実について各種の証言あるいは証拠等を基礎といたしまして、事実の的確なる把握に努められて来、それらの処置につきましては、いずれも十分手続を尽されたものと、われわれは解釈いたしたわけであります。そしてその処分の量定につきましては、先ほど申し上げました学則の範囲で、それぞれ軽重がございまするし、今の調査委員会の事実の認定に基いて、講演妨害の行動の有無、あるいはその行動の性質等によつて量定したものと考えておりまして、われわれといたしましては、一応これら学長の処分は、十分慎重を期して行われたものと認定いたしておるわけであります。
  69. 笹森順造

    笹森委員 最初大臣にお尋ねをいたしましたのは、すべての学生が学問の自由、真理の追求に対しまする熱意を持つために、あらゆる思想の研究を自由にしなければならない、こういうことの御答弁を受けて、しかもまたその道において、ある学生が今のような不幸な結果になりましたことについて、私どもは大きな矛盾を感ずるのであります。そこにこの結果を来したことが、おそらく学生自身は、——自分の真理追求に対して悔悟しておるかおらぬかということについては、私はわかりませんけれども、もしも大学の処置に対して全然これが悔悟して、あるいは昔の言葉で申しますならば、転向をするというところまで来たならば、このことは真理に対する明らかな反省でありましよう。しかしながら、おそらくそれらの人々の動向は、かえつてこれから逃避するといつたような結果になりはしないかということを疑うのであります。そうしますと、最初に申し上げた真理の希求ということと、絶対の平和という問題との間に、大きな相剋が起るということについて、非常な心配を持つがゆえに、私はお尋ねをするものであります。何ゆえに私がそれを申し上げるかというと、そういう事件が起つた当時の教授の態度が、どういうものであつたかということであります。学問の自由、真理の追求に関する熱意を鼓吹することは、けつこうでありますが、そうした態度に出るときに、あらかじめその徴候を知り、あるいはまたそうした業績、実績、ありさまをよく察知して、未然にこれを善導するというくふうがなかつたか。事実そういう動乱に類したようなことが起つても、ほとんど拱手傍観しておつたというのが、大学教授のはなはだ無責任な態度であつたかのごとく伝えられておるのであります。ここにいろいろ指導者たりし者の確信を欠いている面がありはしないか、この面に向つて昔と違つて、今日文部行政の府にあります者が、大学教授を指揮命令し、訓練するということは、あるいはその任でないかもしれませんが、少くとも行政の任に当ります者は、この大学の教授に対しまして、正しく学生を指導し得るような素質を与えるように、いろいろな考え方をしていただかなければ、今後の学生の指導は非常にむずかしくなるのではなかろうかと思います。大学が、そういうことをした学生に対して処置をとられたことは、今の通りでありますが、こうした事態を起さなければならなくなつた指導者自体に対して、文部大臣は一体どういう態度をおとりになつたのか、この大学の責任及び教育責任に対する文部当局の考え方について、また処置された点がありますならば、その点についてお尋ねしたいと思います。
  70. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまお話のありました学生に自分のすべき範囲のことを逸脱した者があつた場合に、それは教授が悪いのだということは、形式的には言えるかもしれませんが、今の日本の置かれている歴史的現実というものを考えるならば、学生を扱うことがどんなにむずかしいことであるかということを、自分も多年大学にいた者としてよく知つているものでございます。でありますから、たとえば東北大学について言うならば、高橋学長などは、自分はよく存じあげておりますが、りつぱな人格者であり、また実力を持つた方でありますから、ああいう方を信頼して、すべてその方の処置にまかせておりました。また教授方については、ただいま申されましたように、それは人によれば、自分たちは研究者なんだというわけで、言いかえれば教育者としての資格が稀薄だというようなうらみがあるかもしれません、そういう人も決してないわけではないでありましよう。しかし学長はそういう方をも督励して、できるだけこの学生の指導を十分にやるということを考えておられるのであります。またこれは、皆さんも御承知のことかもしれませんが、大学と申しましても、七学部の中では、学部によつていろいろ事情を異にしております。法科、経済というものになれば、非常に多数で幾千という人を扱つておりますから、なかなかこれは教授の手に負えないところがあります。ただ文学部の者とか、理学部などになりますと、それぞれ教室が小さくて少数の学生ですから、その学生については実に詳しく知つておる。ですから、そういうところならば十分指導できる。そういうところで学生が十分指導できないということだと、その教授の責任を問うということも、ある程度まではできますけれども、法科、経済などということになると、非常にそれがむずかしくなるといわざるを得ないと思います。数日前だと思いますが、毎日新聞に東大教養学部の教授をしておられる竹山道雄さんが学生運動と学校とかいう題で、いかに今の学生を導くことがむずかしいかということについて書いておられますので、笹森さんももしおひまがあつたら、御一読していただいたら、どんなにこれがむずかしいことであるかということがわかると思います。ですから、私は教授諸君に向つて、ただの研究者ではなくして、大学教授は教育者だということを言うと同時に、どうか若い学生の学問研究熱というものを盛んにしてもらいたいと言つておるのであります。大学時代は準備期なのです。具体的な例をあげることが許されるならばマルクスといつてみたところで、マルクスのキヤピタルを勉強するということはたいへんなことであります、よほどの勉強をしなければできないことです。人は軽く、やれカントだとか、へーゲルだとか言ますけれども、カントについての一册の本でも、初めからおしまいまで勉強するということはたいへんなことです。そういう意味から、学生時代はできるだけ学問の研究を盛んにして、基礎的な知識を養うというように教育すると同時に、教授は、自分は一個の研究者であると同時に、教育者だという自覚を持つて学生を指導してもらうように、学長と相談し合つておりますので、そういう学生が出たからただちに教授の責任を問うということは、今の日本の置かれている歴史的現実においては、これはむりな話だという考えでございます。
  71. 笹森順造

    笹森委員 高橋学長がりつぱな方であり、また学生の指導について信頼を置かれる方であるという点については、私は別に異論がないのであります。ただ私の申し上げます点は、そういう事象が起つた場合すなわち講演妨害をするというような事象が起つた場合、そこに列しておりましたごく少数の教授が、これを勇敢にという言葉を使う必要もありませんが、ほんとうにまじめにこれを防止したならば、防止し得た状況にあつたかのごとく伝えられておるのであります。また問題のなかつた大学においては、そういう事実を私自身が現実に見ているのであります。つまりふだんから学長が教授と一緒に協力して正しい指導をやつておりますと、そういう学生を不幸に陥れるような事象なしに終つていたというような事実を、私は知つておりまするがゆえに、そういう結果に陥つたという事象をつくり上げた者に対する反省を、実は求めているのであります。それがむずかしいということは、御説の通りでありましようから、私もいつまでもそれを追究するわけではないのでありますが、再びかかることを起さしめざるためには、ただいま文部大臣が言われましたように、教授自体にもう少し教育に対するところの熱意を持つというような方面に同調していただかなければならないのであります。学問の真理探求に関しては自分の責任だ、しかしながら、学生の福利は自分に関係したことではない、それはどうでもいいのだというような考え方が、今日までの日本の学者が大きな弊害をかもした一つ理由であろうかと思うのであります。大学生と申しましても、実はまだ年が若いので、教授の学問の深さに対して憧憬を持つと同時に、人格的な感化に対しては、喜んでこれに従うものなのであります。ところが今日年齢が若くなりました二十五才以下の学生に対して、人格的な感化を及ぼすことができないということは、むずかしい世相と申します以上に、教授自体の学生に対する熱意の欠如のせいだと思うのであります。学生に対する熱意がもつとなければならぬではなかろうか、つまりある特殊の專門の学問、技能を教えるということが、大学の唯一の目的ではありません。先ほども大臣は、特殊の專門家として養成するのだと言われた、その目標については異存はないのでありますが、しかし教育自体は、大学の教授職員一切の者が協力一致して、一人の学生をもあやまらしめないようにするのが、教育でなければならないのであります。御承知ごとく、法科、政治科のごときは、数百人、あるいはそれ以上の学生を大きな講堂に集めて講演のやりつぱなしである。そういうところに、今日までの日本の教育の欠陥があつたと思うのであります。幸いにして、このごろは学生の自治的な活動等が出て参りましたので、この方面に向つて、学生のよい自治的な一つの活動を育成して行かなければならないところがこの面に向つても、このごろ内外の情勢によつて、よほど何と申しましようか、引締めて来る。引締めるということは、よい意味ならよろしいのでありまするが、昔の時代に逆もどりするような、非民主的なことが行われる危険もあるのであります。この点に関して私がここでお尋ねいたしたいのは、この内外の緊迫した一つの情勢と事象によつて、急に逆もどりして、せつかく進んで参りました学生の民主的な芽ばえを切り去るというような一つの心配がありはしないか、スライドバツクするような傾向がありはしないかということを、実は心配するのであります。あくまでも大国民の教育の根本に立ちまして、この方面にぜひとも進めていただかなければならない。従いまして私のお尋ねしたい点は、最初の專門家を養成するということと、文部大臣の今言われました教育というものが人格の陶冶の一切なのだから、この福祉を増進するということが学問最終の目的であり、この理論をわれわれ人間の個人生活、家庭生活、社会生活に具現することにならなければならぬ、主義自体が主義でないのだというところまで御指導いただかなければならぬと思います。この心ばせが従来の学者においてはまだ不十分でなかろうか、こういう意味で新しいこの世紀の動向にかんがみて、教育自体が人間性になるのだという大臣のお持ちになつておる人道主義的な観点から、どういう御抱負を持つて、今後の学生をして遺憾なく満足して安心して勉強するように、いかなる事象にもこれに心を動搖されず、しかして理想的な方面に日本の平和にしてしかもまた真理の追求のできる学問の姿をつくることができるかということについて、もう少しふだん御抱懷なさつておる御抱負について承つて、私のこのたびの質問を終りたいと思います。
  72. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今仰せられましたことは、すべてごもつともなことだと思います。ただ私は、專門家を養うというようなことを言いましたけれども、従来の考えの非常な間違いは、知識を持つということと、人間育成とか、人格の育成とかいうことを別のことのように考えることが非常な間違いで、專門家を養うことがすなわち人間を養うことだ。そういう点において、私は大学はどうしても学問中心なんだ、学問を十分やることがその人間を養う意味だというふうに考えております。しかし、人間は申すまでもなくただの精神でもなくして、肉体を持つたものですから、ただそういうやり方では足りない。一方においては育英制度を完備して、学生が安んじて学問のできるような道を講ずるとか、あるいはさしあたつたこととしては、白線浪人の救済をするとか、そういうような方面にも自分は十分力を注ぐと同時に、先ほどから申しますように、学問をやることによつて人間を養う、そういう建前でやつて行こうと思います。しかし今のむずかしい現実の中にいて、少しも動搖せずとか、そういうことは不可能のように私は思います。どんなにも動搖する、どんなにも疑う、けれども、本筋は忘れぬ、その大道はつかんで行くというような道で行きたいという考えを抱いております。
  73. 長野長廣

    長野委員長 それでは松本君。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 新しく大臣に就任されましたので、現在いろいろな問題が山積しておりますが、大臣の基本的な考え方を少しお伺いして、それから具体的なお話に入りたいと思います。  ただいま笹森委員からも御指摘になりましたように、戦後、学生の自治の運動が相当活発に行われて参りましたが、最近のいろいろな事件からこの学生運動について、何らか制肘を加えるようなことが行われるのではなかろうか。また現に学校によつては、学生の会合を禁止するとか、いろいろ行われておるわけであります。また一方教員の政治活動の問題も、やがて地方公務員法が出て来れば、また問題になるのではないかということが、世間で心配されておるわけであります。そこでわれわれが考えまするところは、学生の政治運動にしても、もちろん大臣の言われますように、学生は将来指導者にならなければならない。勉強が必要でありますけれども、学生という身分があると同時に、一面ではやはり社会人という身分がある。学生であるがために、社会人としての身分が全然抹殺されたのではおもしろくない。ここの調整が問題であろう。そこで学生が政治運動をやるのも、こういう情勢になれば、当然政治的関心が高まつて来なければならない、政治運動は当然起らざるを得ないわけであります。それについて、民主主義の根本原則からいえば、政党を支持する自由と、政党に反対する自由というものが守られることが、私は根本でなければならぬと思います。それを、たとえば学生運動にしても、あるいは学校の教員の運動にしても、一方で共産主義なら共産主義の運動が非常に活発だ。そうなれば、もしそれに反対ならば、それに反対する事由に基いて反対の運動も活発にやつて、これを克服するということならば、われわれ民主主義の原則を守つた運動として、これは納得できる。しかし片方の運動が強い、これに反対する運動が少しも起らない、あるいは弱いからといつて、強い方を法的に、あるいはいろいろな規則でもつて一方的に押えるということは、民主主義の根本原則を破壊するものじやないか。この点についての大臣のお考えをまず承つておきたい。
  75. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 学生は社会人でありますけれども、私の考えでは、まだ指導を受けておる身分だと思うのです。学生のあり方というのは、人を指導するあり方ではなくて、指導を受けるあり方だと思います。そういう意味から、今は指導を受けて、将来社会を指導する人になるというのが、学生の本来のあり方だと思います。その意味において、一般の社会人と違つた一つの制約を受けるということは、当然の話だと私は思う。学生からすべての政治的な活動、たとえば投票とかそういうことまですべて取去ろうというのではございませんけれども、学生が被指導的な一つの身分であるということを忘れては、学生の本質はつかめないと思う。その意味において、私は学生の政治運動というものは、非常な制限を受けるのがよいのだ。もしそうでないと、今松本さんは、一方が盛んなら他方も盛んにしたらよいという話でありますが、そうなると、政治活動や党派的な争闘というものを学内に持ち込んで来て、ほんとうの学問研究はできなくなると思う。私は学園というもは、できるだけ政治的に中立性を持つておるのがよいと思う。そうしてほんとうの意味において学問をやるということでなければ、そういう学生のときからすでに政治運動に狂奔しておつたら、社会に出たときは社会のわいわい連になつてしまつて、少しもはつきりした世界観、人生観をつかんで社会を指導して行くことは不可能だと思う。そういう意味で、私は学園はぜひ闘争に巻き込まれないようにしたいという考えであります。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいまのお話で、文部大臣の考え方はよくわかります。ただわれわれとしては、それには大いに異論があるのですが、質問を続けたいと思います。そこでそういう考えのもとに今後大臣がやられる場合に、それならば何らか具体的にそういう方向に持つて行く措置を考えておられるのですか、この点はいかがでありますか。
  77. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 それにつきましては、一方においては、先ほど笹森さんにお答えしたような方法でもつて学問研究を非常に盛んにしたいということを考えております。それから他方においては、私はやはり学生がそういう政治活動にふけつて、学生としての将来活動する基盤がつくれなくなることを防止する道を考えるというのも、これも一つの考えではないかと思つております。現に大学の学長諸君が、私に向つて、そういうものをぜひつくつてほしいと言われる。私自身は本来自分の考えをもつてすれば、大学というところは一つの学園なんだからして、学生というものは法律に触れなければ何をしてもよいというのではない。たとえば社会に出てどんな放埒なことをしても法律には触れないが、学生としては困る。そういうことで、大学管理権とか教育の原理ということで学生を指導して行くのが理想だと思うのです。ただ、今の社会で、そういう教育の原理だけではやれないところがあると言われるのも、一理ありはしないかと私は思うのです。そういう意味で何らか法律的な処置によつて、学生が安心してといいますか、気を散らさないで学問研究に従事できるようにする道があるなら、それを考えるのも私たちの任務だ、そういうふうに思つております。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題は、結局そういう政治活動をしなければならない社会情勢——もしも文部大臣の言われるように、学生が学問に專心して、なるべく実際の政治運動というようなものにはタツチしないということに向わせる方法としては、結局そういう政治活動をしなくても済むような状態にならなければ、そういう状態は来ないと思う。そういう状態を持つて来られるために、文部大臣はどういう具体策を持つておられるかということが私の聞きたいところだつたのです。具体的に申しますと、教育基本法の問題、この第八條第二項に学生を加えるというようなことも、世間に伝えられておるのですがその点はそういう御方針で臨まかれるのですか。
  79. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私も法律に暗いから、よくわかりませんが、基本法をさしあたつて改正するということは、非常に研究した上でなければしてはいけないという考えを持つております。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 それから午前中に小林さんから御質問になりました認定講習の問題ですが、関連してごくわずかだけお聞きしたいと思います。  大臣は、この三年間を六年間に延期したいという御希望で、今非常に御努力していただいておる御様子を先ほど伺つて、たいへん力強く感じたわけですか、その場合、幸いにそれが早急に実現できるようになつた場合現在計画されておるのも、当然計画を変更することになる。従つてそれを地方にもよく伝えたいというお話がございました。法律改正なつた場合、それに服するのが当然でありますが、計画変更ということになりますと、必ずしも六年延期と必然的な関係はないわけであります。法律改正なつたから従つて計画は必ず変更しなければならないということになるまいと思う。そこで地方によつては、そういう趣旨法律改正されたにもかかわらず依然計画をかえないでそれを強行するというところが起り得る。そういうことがないように、幸いにしてこれが通りましたならば、その改正趣旨を十分徹底して、計画変更をどこでもやつて、教員の負担を転くできるというような御努力を、十分に事前にやつていただきたい。これは今まで、いろいろな問題で中央から地方に対する指示が徹底しないうらみが多いので、特にこの点を要望いたしておきます。  それから大臣御自身も、全面的に改正する必要を認めておられるようでありますが、私どもいろいろ感ずるところでは、関係方面の一部にもそういう御意向があつたようですが、何しろこれは去年できた法律で、そうすぐに全面的な改正ということはよろしくないというような考え方があるように考える。しかし私どもは、この法律を制定する当時からそういう困難な事態になるということは予想しておつた。その予想しておつたところが現実となつて今日現われて来ておる。いくらごく最近にできた法律であるからといつて、その悪いところがあつた場合にはただちにこれを改めるのがほんとうであろうと思う。そういう意味で、先ほど大臣もよほど強い決意を持つて、正しいと信ずるところにはどこまでも進むと言われたので、非常に力強く思つておるのですが、そういう点についても、ひとつ強力に推し進めていただくことを切望いたします。ただ現在問題になつております受講拒否の問題、これは何かすなおに受講すれば改正しよう、しかしそういう状態が少しでも続く間は絶対に改正まかりならぬ、そういう態度で政府が出られるのではおもしろくないと思うのですが、政府の心構え、政府として多少の受講拒否の問題がくすぶつてつても、やるべきところはどんどんやる決意があるかそれとも受講が円満に全国的にスムースに行くまでそういう意思表示はされないのか、その点を一応明確にしておいていただきたい。
  81. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 初めの、教育委員会に対して、三年が六年になつたんだから、そこに何らかの改正をするようにということを、私が命令をすることはできませんけれども、しかしそういうことを私は望むということは十分伝えたいつもりで、その点については松本さんの要望に十分こたえ得ると考えております。  それから第二の点でありますが、私は不備だというふうには思いますが、しかしここをこう改正しなければならぬという研究はまだいたしておりません。だから、それを研究した上でこうかえるべきだという成案を得ればそうやるべきだ。まだこことここが悪いからこうだという議論は、私はいたしておりません。その点お含みおき願いたい。  第三番目に、別に私は、あなた方が静かにすればこれを改正するというような態度では臨んでおりませんけれども、一方において改正ということが行われるならば、幾分の不便は忍んでもそれをやつてやるというのが、教員諸君のまず行くべき道ではないかと思うのです。改正はしろ、おれたちはかつてに何でも元通りやるというのでは、私はそれが正しいという考えにはなれないのです。私は問題はどういうふうに談判するかということでなくて、それに先だつて自分の主張することが正しいのだ、こつちにちつとも無理がないのだという確信を持たなければならぬ。自分たちは元通りだけれどもお前は司令部に行つてやれというのでは、私は確信が持てないということを松本さんに御承認願いたいのです。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 次は、先般新聞にもちよつと出ておりましたし、午前中どなたからか質問があつて政府委員のお答えがあつたのですが、例の短期大学の問題です。これによると、文部省としては、現在十分に資格の整つておらないものを全部短期にするというわけじやない、審査のときすでに條件を付しているから、その條件が整わない場合に、そういうことがあり得るというふうな御答弁だつたかと思うのですが、その條件には期限が付してないということでございました。そこでまず短期大学というものの構想について、文部大臣のお考えを一応伺つておきたい。
  83. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はただいま私の短期大学というアイデアを申し述べますけれども、その前に、もうすでに四年ということを前提として出発してしまつている大学を、むりに二年に切り下げるとかいうような考えはないということを、まず申し上げます。  私の考えでは、日本のような戦後経済の非常に不自由なところで、たくさんの大学を一ぺんにつくるということは、非常に無理がある。一体経済だけではないので、人はよく経済さえ整えば学校はできるように思う人もありますが、もつと必要なものは教授力です。教授力のないところに学校をつくることは、いろんな禍根を将来に残すと思います。しかしすでに出発した以上、しかたがないという考えです、ただそのアイデアを述べろと言われれば私はこういろアイデアなんです一体日本の非常な弊害は、すべてが形式主義であつて、大学は六・三・三・四という四でなければいかぬ、四を出た者でなければ社会が用いない、そういう形式主義を打破しない限り、社会はよくならない。私はそうでなく、すでに六・三・三・二くらいの学校を出た人が、一度社会に出て銀行なら銀行、新聞社なら新聞社、学校なら学校で働いて、そして実際に仕事をやつてみて、そういう人がさらにその現場からして現職のままでさらに上のシニアー・コースとかグラデユエイト・コースとかいうものへ進むことが非常に望ましい。たとえば経済学にしても、自分は少しもそういうことには興味がないのだけれども、ただ資格をとるために四年やつているというのではなく、二年やつて社会へ出て、銀行なら銀行へ入つて働いて、一体貨幣というものはどういう哲学的意義を持つておるか、あるいは経済学的にどういうものであるかという生きた問題をつかんだ人間が現職のまま派遣されて、そして大学で学ぶということになれば、ほんとうに知識が生きて来る、こういう考えなんです。少し長くなつて申訳ございませんが、一体私がこういう考えを抱いたのは、京都大学におりましたとき、私は二年間学生課長をやりましたが、そのとき法科、経済の学生のうちのよほどの部分の人は、少しも学問的関心がないのです社会に出て働きたい——大学の方では、みんなを学者にするような扱いをしている。講義が悪いというのではない学生にそういう学問的追求の、要求がないのです。何もそういう学問的要求のない人を、ただ資格をとるために大学へとめておいて、血の出るような親の学資で、自分は若いからだを持ち扱いながらふうふうやつておるというくらい、国家の大きな損失はない。全国学校にいる生徒、学生の数を言つたら、どれくらいの数だかわからない。そういう人は早く社会へ出して働かせたらいい。だから私は実際活動のできない学生の修業年限は、一年でも短くする。学問の追求を人間の一生の使命とする人の修業年限は、一年でも短くというのが、私の大体の構想でございます。
  84. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、大学設立審議会で審査した場合に條件を付した、その條件が満たされない場合には、そういうものから短期大学にして行きたいという御計画はあるのですか。
  85. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 計画というよりは、私はそういう希望は持つておりますけれども、しかしせつかく出発したので、もう学生も四年やるつもりで入つているのを二年にするということは、無理がありますから、できるだけ文部省も助け、地方でも奮発して、そういう線で進む方が、現在となつてはよいのではないかという考えを抱いております。
  86. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと、地方で新制大学をつくりたいというので、県費でどれだけやるというような計画を立ててやり始めた。しかし現在の状態では、国費の方は割合出ておるにかかわらず、県費の方が十分に出ておらないところが多いのです。そういうところは県費をなお十分に出させて、りつぱな大学にする方針で進まれるのか、あるいはそういうところはもうこの機会にやめるようにするということなんですか、そのところをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  87. 稻田清助

    ○稻田政府委員 先ほどお話がありました設置の際の設置審議会の條件につきましては、時折その実現状況調査いたしたいと考えております。その結果、個々の具体問題になりますけれども、でき得る限り当初の計画で條件充足を、もとより中央も地方も協力いたして参りたいと思います。しかしながら、もしどうしてもその條件充足不可能な事実がそのときにございますれば、その際は学校当局あるいは地元等と十分協議して処置を決定いたしたい、こういう考えでおります。
  88. 松本七郎

    松本(七)委員 次は教育制度と財政の問題ですが、教育委員会というものができて、教育もまた地方の分権制度に歩調を合せて来たわけですが、依然として財政的に非常に苦しい。そこで前国会にも問題になりましたように、ああいう標準義務教育費の確保の法律案というものが、とうとう出なかつたわけですが、そういう問題が起きたわけです。私考えますのに、一方で教育制度というものが地方分権になり、地方の自治というものの建前を推進して行きながら、財政的には地方で負担しきれない、ここに現在矛盾があると思うのです。それをどのように調整されるのか。前文部大臣のおられたころの政府の方針では、一応標準義務教育費確保法律というものの趣旨でどこまでも行きたい、再度提出に努力したいという御方針のように伺つてつたのですが、新大臣のこれについての方針をお伺いしたいと思います。
  89. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私も前大臣と同じことに、つまり標準義務教育費を確保するということは、ぜひとも必要だという考えを持つております。けれども、これを国会に提出するについては、いろいろのまだ、障害と申しましようか、未解決の問題がありますので、それを解決してぜひ国会に提出したいという考えを抱いております。
  90. 松本七郎

    松本(七)委員 これについても、私は新大臣に要望しておきたいのですが、前国会では、提出する前に、すでにこれは閣議でも通過しておつた問題であります。それが意外な障害にあつて出すことができなかつた。これは国会の自主権の問題、並びに日本政府の自主権の問題にも関係する非常に大きな問題になるわけでもちろん占領下の民主主義というものにすでに矛盾があると私は思いまするから、ある程度の制約というものはやむを得ないと思います。しかしながら問題は程度であります。どの程度のものならがまんができるかということが、大切な点であろうと思うのです。閣議でも承認された、すでに大臣はこの委員会ではつきり提出すると明言した。そして閣議承認なつたものが出すことができない、審議することもできないというようなことでは、これは相当な問題だろうと思うのです。そこであの認定講習、あるいは免許法の問題でも相当強い決意を持つて進んでおられる新しい文部大臣におかれて、ひとつこの問題も極力力強く推進していただきたい、われわれも大いに御協力をしたいと思つておりますから、この点特に要望しておく次第であります。  その次は、前国会で御承知のように文化財保護法というものができましたが、残念なことに保護委員が任命される前に、金閣寺がああいう火災にあうというような状態になつて、はなはだ遺憾でございます。幸いこの方面に非常な熱意を持つておられた水谷さんが政務次官になられて、今度われわれは大いに期待しておるのでありますが、その委員の任命について、当時から問題になつておりましたように、委員を任命するについては国会の意思を十分尊重するということを、再三与党の側からも念を押されておつたのであります。ところが、はたしてそれだけの努力をされたかどうかということについては、国会でも相当問題になつておるように聞いておる。どのような御考慮があつたか、この点と、それからこういう委員会というようなものは官僚の捨場にならないようにということも、これはこの審議の途中に各委員から非常に注意されておつた。そういう点についても、どの程度の御考慮をされたのか、これらの問題について御返答を願いたいと思います。
  91. 西崎惠

    ○西崎政府委員 お答えいたします。文化財保護法に基きますところの委員の任命につきましては、御承知のように、法律では国会の同意を得て文部大臣が任命するということになつてをりますが、この委員会の際に、ただいまおつしやいましたようなごもつともな御意見もありましたので、文部省だけでこれが任命をいたしますのはいかがかと考えまして、その人選に慎重を期するために、衆参両院の文部委員長と、芸術院長であり博物館長であるところの高橋さんと、それから現在の国宝保存会の会長であるところの細川君、この四人の方にお集まり願いましてこれに文部省の方からは政務次官と事務次官とが入り、それに文部大臣もオブザーバー的に出席されまして、数回にわたつていろいろ委員選考について意見を交換していただきました結果、ただいまおつしやいましたような、いろいろごもつともなお注文の線を勘案されまして、そのもとに審議が進みまして、ようやくおちついたということになつていますので、文部省といたしましては、ただいまおつしやいました点には、遺憾なきを期したつもりでおります。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 まだ問題はたくさんございますが、あまり長くなりますので、最後に一つだけ文部大臣に伺つておきたいと思います。それは大臣が就任される前に、学界の有力なメンバーとして、全面講和を唱えておられたことは、世間にもよく知られていることと思います。もちろん学界におられて、それから実際の政治界に入られたのですから、学理上あるいは道徳運動としての論と、実際政治の面におけるそれとに相違のあるということは認めなければならないので、とがめだてするわけではありませんが、現在の政府は、御承知のように、全面講和ということを政策面では引込めて、出してはおりません。そこで全面講和をあれだけ強く主張されておつた天野さんが、文部大臣になられて、一体どういう考えなのかということを、世間では言つておるわけであります。実際の政治を担当されまして、その実際政治上これができないのか、あるいはどういう論拠で全面講和というものを主張され、そして現在なおも閣内におつて、これに少しでも努力しようという心境が、それともそうでなしに行動されるのか、その論拠をひとつはつきりさせていただく政治的責任があると思いますので、この点を明らかにしておいていただきたい。
  93. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私は初めから、全面講和か、単独講和かという問題の提出が間違つておるという考えを持つております。実は朝日新聞社から、初めに全面講和か、單独講和かという問いを受けたことがあります。そのときに私は答えられないからと答えませんでした。そうしたら、電話で朝日新聞社から問合せがありましたから、私は理想としては全面講和であるが現実の問題として全面講和がどうしてもできないというときにも、単独講和はどうしてもいけないという考えはないから、これには御返事できないということを言つております。ですから、朝日新聞の多くの人の回答の中に、私の名前が出ておらないのは、そのためであります。その後平和問題懇談会というのかできました。平和問題懇談会は、平和について懇談する会であつて、決して単独講和を否定するという会では少しもございません。みんなで平和に関する意見を述べたわけであります。しかし最後に宣言を出すというときに、私は、この宣言をこの通りやるのだということでは、自分はとうてい署名できないと言つたところ、そうではなくて、これは願望であるということなので自分らは願望を述べるならばこういうことだということから、当時新聞に発表されたのも、願望としてはこうだということが出ております。私はそういう意味で、願望ならば全面講和にきまつておるというような考えでございます。もし諸君が私の「世界」四月号に書きました、「永久平和への熱願」という論文を、ただ題目だけでなくして、これをしさいにお読みくださつたら、よくわかると思います。私はその論文において、われわれはまず自分から歴史的現実を知らなければならぬ、自分らが置かれている現実と遊離した論をするのは、とうてい空想にすぎないということを論じて、自分らはこの講和の問題に対しても、やはり歴史的現実に立つてこの問題を考えなければならない。しかしながら、私をして率直に私の願望を語らしめるならば——私はそういうことを論文にわざと書いておりますから、皆さんもし興味ある方は、お読みになつていただきたい。願望を率直に私をして語らしめるならば、私は当然全面講和でなければならないという考えである。けれども、同時に私は、そういうような当然の願望など語る必要は何もないではないかという世間の論に答えてこれは自明の論だ、だれでも全面講和を欲しない人はない、願望としては全面講和という自明なことを、なぜわざわざ宣言などをする必要があるかということに答えて、私は自明な——ゼルブスト・エヴイデントな願望と言つておりますが、その願望をなぜそれならば語るかというと、世界ではまだ日本をもつて好戦国だと思つている人も少くないのではないか、だからわれわれはほんとうに心の底から平和を願つているのだ、できることなら世界全体との全面講和をしたいということの願望を述べることは、日本人に対して一つの疑惑を取去る意味があるのではないかということを、私はそこで論じております。そういう意味で、全面講和がどうしてもできないという場合には、単独にいずれかの国家と平和を結んではいかんというのも一つの考えだと思います。しかし私はそういうことは主張しておりません。また平和問題懇談会の諸君の中でも、そういう徹底した論をしている人は、私は非常に少数ではないかと思います。平和問題懇談会は御承知かもしれませんが、安倍能成さんから羽仁五郎君までおられる一つの団体であつて、そこにはさまざまな意見を持つた人があるのであります。私はそういう意味で、吉田総理の平和論というものも、総理は全面講和はどうしてもできない、実際にあたつてできないからこういうことをするのだというならば、私とそこに幾らかのずれがあるかもしれませんが、私は吉田総理の考えに賛成して行けるという考えを抱いております。ことに吉田総理の、表現はおかしいけれども、エデンの園という考え方です。日本では何にも防備はなくとも、大丈夫という自信です。またこの日本は再防備はしないのだという考え方です。また義勇兵は出さないのだという考え方です。そういう考え方は、私は吉田総理とまつたく考えを一にしているものでございます。けれども吉田総理の考えに自分が同意できないときには、いつでも総理に異議を申し立てようと考えております。私の考えはそれだけでございます。
  94. 長野長廣

    長野委員長 それでは今野君。
  95. 今野武雄

    今野委員 私も最初に全般的な考え方についてお尋ねしたいと思います。昨年の第五国会で実は音楽学校が芸術大学になるという問題がございまして、そうしてその問題がこの委員会でも相当問題になりまして、当時の音楽学校の校長であつた小宮さんが議会に参考人として来られました。そのときに小宮さんは、專門家としてのいろいろな意見を述べられて、芸術大学に邦楽科を設けることが適当でないということを專門家的な立場から述べられたのでございます。それに対して与党の諸君からは、いやそうじやない、少くともこれは設けろという話が出て、小宮氏を二度も呼んだほど議論が切迫したのです。そのときに、これは速記録を調べていただいてもよくわかりますが、与党のある委員の方から文部省に対して、一体文部省は專門家としての小宮さんの意見を尊重するつもりか、それともこの委員会で議決されたことを尊重するつもりか、こういう手きびしい質問があつたわけであります。当時大臣は出席していなくて、政務次官であつた柏原君がそれに対して、民主主義というものは多数決できめるものでございます、しかし必ずしもそれが真実とは言えない。たとえば地球が太陽のまわりをまわるか、あるいは太陽が地球のまわりをまわるかということすら、多数決できめると考えられた時代がある。——これは歴史上の事実としては正確でない。つまりガリレオの宗教裁判のことをさしているのだろうと了解したのでありますが、そういうようなことが言われて、ともかくその場はそれで治まつた。結局そのときにこの委員会の決議として、多数決で邦楽科を設けるという要望が文部省に対してなされたわけでございます。私はそのときに、現在の日本において真実を守るということのいかにむずかしいかということを、じかに感じたわけでございます。あの三百年前にガリレオが地動説、コペルニクス説を唱えて宗教裁判にかけられた。それを守り通すために、やはり生命の危険を冒さなければならなかつた。それと同じことが、ごく最近まで日本においてあつたのでございます。ところが現在また再び戦争後においてそういう風潮が、ほかならぬ民主主義という美しい名のもとに、そういうことが行われるおそれがあるのではないかということが、各方面から指摘されている次第でございます。現にこの委員会でそういうことがあつた。そういうような問題に対して、天野さんとしては一体どういうふうにお考えになるか、あくまで真実を守り通すか、それとも多数の言うことはしかたがない、あるいはどこかの言うことならしかたがない、こういうことでやつて行かれるつもりか、その点をはつきりとお答え願いたいと思います。
  96. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今、今野さんのおつしやることで、真理性というものは必ずしも多数によつてはきまらない、少数の主張がかえつて真理だということもあると言われましたが、それはその通りであつて、少数者の方がかえつて真理性を主張して、多数者がそれに反したことを主張するということは、当然あり得ることです。しかしそれならばどうしてそれをきめるか、実際の問題について、どういうことが真理性を持つているかということをどうしてきめるかという場合に、それのきめようがないから民主主義制というものは、多数決というものでやるのだと私は思う。多数決以外にそういうことをきめる道がない、だから多数決というものでやるのだ。だから民主主義というものを採用して、議会政治でやる以上は、多数に従うよりしかたがないと私は考えております。しかし、それならば、多数決というものがいつでも間違つたことをきめるかというと、決してそうでもない。一人の者がきめることがよいこともあるけれども、一人の者がきめるために国家をあやまる例は、近くはヒトラー、ムツソリーニが適切なる例であつて、多数によつてきめるということは、あるときはそういう間違いもありますけれども、大体としてはこの方が無事なやり方だということを認めざるを得ないと思います。なお多数ということは、決して真理性の象徴ではありませんけれども、しかし多数の人によつてきめたということは、そのおのおのの人がそれに対して責任を持ち、責任を感ずる議会によつてきめたことは、必ずしも自分らの意思でなくても、自分らの選び出した人たちがきめたのだ、そういう責任感ということに関連して、多数決というものが、政治の原理として重大なる意味を持つておるというふうに私は考えております。だから議会に関する限りは、多数決によつて従うより方法はないけれども、ただいまの邦楽の問題については、これは私が少し言い過ぎかもしれませんが、委員会でもつてその邦楽がいいか悪いかということをおきめになるという、その問題の提出に異議があると思うのです。委員会は、この問題はもつと適切な他の学術專門家の委員を設けて、これを研究せよということをおきめいただいたらいいのであつて、この問題をただちに委員会でおきめになるというところに、問題がどうかと私は考えます。今後どうかそういう方面へ行つていただきたいと希望いたします。
  97. 今野武雄

    今野委員 もう一つそういう問題に関連して一般的な点をお伺いしたい。そういたしますと、やはり正しいか正しくないかということを、いろいろと定める方法があるとき——いろいろ実証したり、その他のことによつて定める方法があるときには、それに従う、天野さんはそういうことに従う行動をする、こういうふうに解してよろしいと思うのであります。そうすれば、かりにいろいろな実証できること、あるいはすでに実証されたことによつて、正しいということが否定された場合には、それが通らなければ、やはり責任をとつてちやんとおやめになるという覚悟を持つておられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  98. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はよく知りませんが、今野さん、そういう文部大臣の心境まで、やはりこの委員会はお尋ねになつておく必要があるのでしようか。
  99. 今野武雄

    今野委員 これから質問をするにしても、言つておられることが、一体どこまでわれわれが当てにしていいのかどうか、その辺がわからないと言つては失礼な話でありますが、やはりこれは公のものとして、はつきり確かめておきたいからです。
  100. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 人間が考える力を持つておるということは、実に人間のいわゆる偉大性でありますが、しかし考えたことが間違うということがあればこれまた人間の運命だと思つております。だから、そういう人が、おれはこう思うから、お前らはこれに従え、真理性はこれだということは、なかなかむずかしいと思います。けれども、自分はいかなる場合にも、自分の良心に従つて行動しようかという考え方だけは抱いておるということを、申し上げておくにとどめたいと思います。
  101. 今野武雄

    今野委員 先ほど認定講習の問題でいろいろ答弁があつたわけでありますが、それを締めくくる意味でお伺いしたいと思います。いろいろな教員の態度や何かを見て、それが必ずしも円滑に行かないかもしれないというようなお話でありまして、非常に心細いと考える次第でございます。しかしそういうような場合について、できるかできないかわからないというような返答も、中に一ぺん聞いたわけなんですけれども、どうもこれははなはだ心細い次第なんです。そうではなくして、必ずこれを貫徹するというようなお覚悟を持つておられるかどうか、その点をひとつ聞きたいのであります。
  102. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今野さんのように、実際の問題について知つておられる方方から、そういう質問を受けることが、私は何か意外のような気がいたすのです。学問上のことか何かなら、はつきりとこれはこうだ、こういうふうに言えますけれども、このむずかしい日本の歴史的現実の中に生きていて、自分は努力をしますけれども、努力は、必ずできるのだ、こういうことを約束しなければいかぬと言われると、私は約束できないことがたくさんあると考えております。
  103. 今野武雄

    今野委員 では、その点はわかりました。  その次に、先ほど財政の問題の質問があつたわけでありますが、今度地方税がすつかりかわりました。そうして標準教育費の問題がやはり非常にあぶないような状態になつているわけでございます。この場合、たとえば地方税法をつくつた建前によると、最初寄付金などはすつかりなくするというようなお話で、その次には全部はなくせないから、百億円ぐらいのわくではとつておくというようなことが出ておりました。しかし現在ともかく学校では、授業料をとらないということが、義務教育の建前であるにもかかわらず、PTA会費というものを必ずとつておるわけであります。それもだんだん額がせり上つて来ております。それでこの間、文部省で標準教育費を算定なさるときの勘定を大体拜見いたしますと、生徒一人当り三十円ないし三十五円くらいに見積つて、それを吸收するというようなことでもつて、この標準教育費のことを今考えておられたようでございます。私どもの考えでは、ともかくああいう寄付金全体が非合法なものであるということをはつきりさせることが、結局において、その財政をいやでもおうでも整えなければならなくなる道になると思います。その点いかにお考えになりますか。PTAの会費というものを全廃する御意思がないかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  104. 辻田力

    ○辻田政府委員 PTA関係のことで御説明いたします。PTA寄付金につきましては、いろいろ計算が言われておるのでありまして、大体百億ぐらいこれはその資料がはなはだ得にくいのでございますが、そういうような説もあり、あるいは九十億だろうということもありますが、先般の標準教育費の確保に関する法律におきまして法定いたしましたのは、その中で六十億ぐらいでございます。これは御存じの通り児童一人当り三千二百円という基準によりまして、そういう計算になるわけであります。われわれといたしましては、この点を一層精細に調査いたしまして、できるだけ義務教育無償の原則を確立いたしたいというふうに考えておる次第であります。
  105. 今野武雄

    今野委員 そうするとまだ全廃にするとかしないとかいうことは、わからないというわけですか。
  106. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいま申し上げましたように、標準の最低六十億は確保いたしたい。なおその上に三十億ないし四十億というものがありますれば、これらにつきましては、財政ともにらみあわせまして、だんだんに無償の原則を確立いたすように努力いたしたいと思つておる次第であります。
  107. 今野武雄

    今野委員 次に今度十一月にまた選挙があつて教育委員会が新たにできるわけであります。そうすると、どうしてもやはり教育を充実したいという気分になるわけです。ところが、教育費は御承知のように足りないわけです。これはさつきも御質問したのでありますが、方々で宝くじを出したり、あるいはまた競輪などをやつたり、いろいろそういうことをやりますが、どうも宝くじもそうでありますが、競輪で、私川崎とか横浜とか、いろいろな実例を知つておりますが、教育上非常に悪影響がある。そういうものをもつて教育費をまかなうというのは、何か非常に門違いのような感じがするわけでございまするが、こういう競輪とか宝くじ、そういうもので教育費をまかなうという名目でもつてやることがいいか悪いかというよりも、今後もさせる気かどうか、許す気かどうかといつた方がいいと思うが、その点ちよつとお伺いいたします。
  108. 辻田力

    ○辻田政府委員 お答え申し上げます。県の收入のことにつきましては、県知事が責任を持つて、いろいろな方法を考えておりますことは言うまでもないことでありますけれども、ただいまお話がございましたような、いろいろな、たとえば宝くじをもつて教育費に充てるというようなことも、ある県では考えておられたこともあるように聞いておるのであります。これが教育的にどうであるかということにつきましては、直接文部省からこれを指示するというようなことはできませんが、そのために弊害が起るというようなことがはつきりわかりますれば、ある程度意見を言うことはできると思つております。しかし收入自体につきましては、県知事の責任においてやつておる次第でございます。
  109. 今野武雄

    今野委員 それから大学の問題について少しお伺いしたいと思います。学生の生活が非常に困難になつている。そこで私この前の国会でも、高瀬文部大臣にいろいろとお尋ねしたわけです。育英資金が十分でないということも大臣は認められておつた。それからアルバイトがこれまた不十分で、とても問題にならない、その実情もよく知つておられたわけです。そしてそれに対して何らかの方法はないかということをお聞きした際も、どうも方法はないと思う、将来日本の経済が安定したらというようなお話でした。私どもとしては、そういう安定という意味が、いろいろ術語的に使つているようですからわかりませんが、もしもみんなが楽な生活ができるようにという意味なら、そういうときには、こんな問題はなくなるわけです。従つてそのお答えには満足できなかつたわけです。この学生生活が困難なために、もはや学校教育、大学の教育というものは、非常な行き詰まりを来している。先ほどもいろいろな問題が出ましたが、やはりその底にはこういうような学生生活をも脅かしている現実があるわけなんです。そういう問題に対して、今度の天野さんの方針として、どういうようにやつて行かれるつもりか、その見通しや何かがあるかどうかをお伺いしたいと思います。
  110. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今野さんの先ほどのお問いですが、競輪とかああいうたぐいのものは、ここに私は個人として言わせていただくならば、私はああいうものはいらぬと思うているのですけれども、文部省でどうこうということは、なかなか行かぬのじやないかと思つております。ああいうものに対しては、今野さんのお考えに同感であります。一体国民の心を腐敗させておいてそれを教育するというのは、あなたのおつしやつたように非常に矛盾した話だと私も考えるのであります。  次に育英会のことであります。この間本会議でもちよつと申したことでありますが、そういう一つの奨学資金を受ける人の数をよほど増そう、それからまたできるなら一人当りの金額を増すように、この際次の通常国会において、私もできるだけの努力をいたしたいと思つております。そういう道で学生が安心して勉強できるようにしよう、しかし他方において、私は世間の人には言いませんけれども、私はこういう考えを抱いておる。憲法に教育機会均等ということが言われておりますが、しかしこれは能力に応じてということが憲法に書いてあります。それをだれもがみな四年の大学を出て、その上に諸方に大学院ができればその大学院をみなやるのだ、こういう思想がある限りに、奨学資金をたくさんとつても、とうていこれは足りない。ですから、先ほど私が申したように社会が幾年の学校を出たということではなく、どうかその人のアビリテイによつて使うという習慣をつけて、活動的な人は早く学校を出るということになれば、奨学資金の活用ということもよほど楽になつて来る。私が短期大学というアイデアを抱いているのも、一つはそういう点も考慮に入つているのであります。いずれにしても、奨学資金増額して、多くの人を勉強させたいと思つております。
  111. 今野武雄

    今野委員 学生の問題について、よろしくお願いしたいと思うのでありますが、もう一つは、先ほどから学生の政治運動その他について問題があつたわけです。文部大臣のお考えでは、学生はあくまで準備期であるということでございまするが、そういう趣旨をかりにずつと貫徹するならば、準備期であるというなら、相当これはいたわつて見てやらなければいけないということが、出て来ると思うのであります。ところが実際に私も方々の大学へ行つてみますけれども、そのときに、まるで大学当局と学生とは仇敵視し合つているというようなこと、特に学校当局の学生に対する敵愾心というものは非常に強い、こういうのを見て、非常に残念に思うわけであります。そして割合簡単に退学とか、その他学生生活にとつては致命的な処分をする。こういう事実を見て、私ども非常に残念に思うわけでありますが、そういう点について、先ほどのあくまで準備期であるということと矛盾しはしないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  112. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今野さん、そういう点については、実際大学のことに当つている人と、そうでない者との立場で、よほど見方が違う。人間はどんなに公平に見ようと思つても、あなた方の学説がよくそれを証明するように、自分のおる環境からどうしてもものを見るようになる。大学としては、一人でもほんとうにけが人は出したくないと私は思つております。けれども、よんどころないというところ、どこがよんどころないかということの見方が違つて来るという点をお考え願いたい。先ほどもあげた竹山道雄の文章をもしあなたもおひまがございましたら読んでいただきたい。いかに学校当局というものは、学生の指導ということに苦労しておるかということが、よく書いてあるように思います。
  113. 今野武雄

    今野委員 そうすると、たとえば非常にむずかしい事態だということ、ことに今はむずかしい事態だということは、よく承知しているのです。ところが、この間中の事件を見ると、あまりにも私どもから考えてみて、これはひどいと思うのです。たとえば、ドクター・イ—ルズがあつちこつちへ行つて言われている。そうすると何か戦争前のような気がする。共産主義というものは天然痘みたいなものだ、あるいは共産党員というものは毒蛇みたいなものだ、こういうものを学校に置いておいてはいけない、こういうことを学校はやらなければいけない、こういうことを言つて歩いておられるわけです。そうして非常にそれが強く出ている。ことに北海道大学などで先生方との間に会話をなされているのを聞いても、理学部の数学の先生あるいは物理の先生とお話しているその筆記を見ましても、ずいぶんこれもひどいことが出ておるのです。たとえばソビエトという国はけしからぬ国で、真理を曲げる、たとえば二足す二は四にならない、そういうことを言つている。そうすると、それに対して物理の先生から、とんでもないことですね、そういう自然科学をやつている国なら、飛行機もできなければ、原子爆弾もできないはずである。だからそうロシヤを恐れる必要はないではないですかなどと言われているのですが、こういうように、私ども常識的に考えてみて、どうも受取れないことがたくさん出て来ているわけです。それに対して学生が学生らしい気持で反撥するということは、いたし方がないのではないか。いやしくも学校で真実を教わろうとしている心構えの者が、それに対して何か反対的な感情を持つというのは、しかたがないのではないか、こういうふうに考えられるわけでございますが、はたして天野さんは、イールズさんの言うことがもつともだ、従つてそれに反感を持つのはけしからぬとお考えになるのですか、その点ちよつと伺いたい。
  114. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今野さん、私はあなたに対して、いつもわれわれの議論は、やはり日本の置かれている現実から論議をするよりしかたがないということを申し上げておるのですが、今の御批評に対しては、私が意見を述べるということができないものがあると思います。
  115. 今野武雄

    今野委員 できなければいたし方がないわけでございます。しかしながら、そういうできないということと、学生あるいは学生の自治団体に対して強硬な処置をとるというような方針とが、やはり結びついていると思われるので、そういうところに私は問題があると思うのです。一番最初に申されましたように、自然科学の分野においては、幸い今日ではガリレオのような事件は起りません。しかしながら社会科学においては、ややもすればそういう事件が起りがちである。そういう際に、今のままで行けば、やはりそういう大学の学問の自由などというものは、まつたく沒却されるようなことになりはしないか、こういうことを識者はみな心配しているわけでございます。これをいかに守り通すか、ここに文部大臣としての一番重要な役目があると思います。天野さんが特に文部大臣になられたのは、やはりそのためではないかと私どもは考えておつたのですが、その点いかがでございましようか。
  116. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ただいまお話のありました自由ということについて、私はこういう考えを抱いております。政治上の自由というものは、何も制約のないところにあるものではない。政治上の自由というものは、いつでもある制約のあるところにある。その制約というのはどこから来るかというならば、私は、歴史的現実からその制約というものは来る、かように思つております。だからわれわれの社会にある制約があつて絶対自由でないということは、当然のことだと思うのですけれども、そうなればわれわれの大学は自由を持つていないかといえば、たとえば哲学を例にとるならば、どういう研究をしてもちつともかまわない、ドイツのことさえも、どんなに研究してもちつともかまわないと思う。今自由ということを言われる声が大きい割りに、その自由というものがはたして活用されておるだろうか、日本の大学はほんとうに自由々々というほど学問に精進しておるだろうか、そういう点で自分たちは大いに反省したいと思つております。私は自由をたつとぶことにおいては、人後に落ちないつもりですけれども、自由というものを観念的、抽象的に考え、そうして現に自分の手に握つている自由を活用していないというおそれはないだろうか、そういう点について、自分たちは反省を加えて行きたいという考えでございます。
  117. 今野武雄

    今野委員 私もその点でやや同感するところがあるのでございます。しかしながら、戦争前の時代もそうでありますが、その自由を活用せんとして一生懸命、勉強した者は、たとえば社会科学においては、この世の中の矛盾を十分感じて、そういう矛盾についてはつきりとまつしぐらに研究したいというような人々だつたと思うのであります。ところがやはり一番風当りの強いのがそこである。たとえば文学者がボードレールを研究するとか、あるいは哲学者がカントやへーゲルを研究するのに、自由がどうであるとか、どうでないとかいう問題は、おそらく起らないと思うのであります。おそらく自由という問題は、権力者がそれに対して自由を押えるから、自由という問題が起るのである。そういうことを考えてみれば、やはり依然として問題があるように考えられるわけでございます。そういう点について、ここで論争していてもしかたがありませんから、私はいいかげんにやめますけれども、ともかく政治運動々々々々と言いまするが、たとえば学生は準備期だから、政治運動は、選挙のときに投票するくらいはいいけれども、そのほかは思わしくないと言う。ところがこの間の選挙のありさまを見てみても、どの候補者も、どの候補者も——私はこれを必ずしも悪いと言うのではありませんけれども、いわゆるアルバイト学生、これを自動車などにたくさん乗せて、そうして一日二百円とか三百円とかいう賃金を払つて、食事などもみな支給して選挙運動をやらせている。最も俗悪な、と言うては失礼でありますが、その意味における政治運動が行われているわけでございます。しかも大学において、学生にとつて最も重要な大学校の問題、たとえば大学の程度を引下げるか引下げないかというような問題、そのほか平和の問題、原子爆弾を禁止するかしないかというような問題、こういう問題について学生が演説会をやつたり、あるいはまたそういう投票を集めたりすると、それは政治運動だからいけないというふうに言われるのであつて、いかにも何か一方に片寄つたへんぱなような感じを与えるのであります。こういう点についても、もつとけじめをはつきりしていただきたい。何をやられたのだか、さつぱりわからない。要するにじつとして黙つていればいいのだろう、こうやつて学生が、覇気を失つてしまう。覇気を失い、魂を失つたところからは、ほんとうに学問を勉強しようという熱情は生れて来ない。ただ書斎の中にこもつておりさえすれば勉強できるかというと、そうではない、居眠りが出るだけである。ほんとうに世の中の動きに目を注ぎ、熱情を感ずればこそ、そこに学問に対する熱情も生れて来るわけであります。そういう点に何か割り切れないものがあるのでございますが、はたして学生の政治運動は絶対にいけないのかどうか、あるいはそれがどの程度まで許されているのか。もしはつきりしたけじめがあるならば、教えていただきたいと思います。
  118. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 今、今野さんが言われたようなことも、確かによく考えなければならないと思つておりますけれども、先ほどから申していることを繰返すようになりますが、私は研究内容について干渉しようということは、何も考えておりません。一体今の学生諸君がどれだけ研究しているか、学生諸君ばかりでなく、一般にそういう研究熱が足りないのではないか、そういう点から、もつとほんとうに研究して行くということを、私は奨励いたしたいと思つております。  政治活動の限界というのは、政治活動という概念が非常にあいまいなものでありますから、今私ははつきり申しませんが、ぜひそれもはつきりさせたいと思つております。大体そういう考えを抱いております。
  119. 今野武雄

    今野委員 研究していないと言われますが、私は自然科学関係や何かの人たちを知つているが、非常によく勉強する。ところが、勉強しようにも図書一つそろえることができない。給料は安いし、研究室も十分に完備していない。そのために実験する場合でも、もう試験管を買うだけで一ぱいだというようなありさまだ。外国の図書など買う金は少しもない、こういうのが現在のありさまであります。従つてこれは教授の人も、あるいは助手の人も、あるいは学生の人も——学生は特にいろいろな実験費や何か高くとられますから特に痛切に感ずる。そういう点を研究できるようなかつこうにしてもらいたい、こういうことで方々へ陳情に行つたりするわけです。それが実は政治運動だと言われるのです。そういう点ははたしてどうなのか。そういう点が円滑に行つて、ちやんと勉強できるようにしてくれていれば、まだ話はわかりますが、それがないからこそ政治的な問題にまでなるわけです。
  120. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 そういう点については、私は研究してないというわけではないのですけれども、研究が今十分だとは言えない。それについては、今、今野さんのおつしやるように、設備とか、いろいろなことで不十分だということは、私も当然認めます。だからできるだけ設備もいたしたいと考えておるわけでございます。
  121. 今野武雄

    今野委員 大臣のお答えは、やはりある点は希望的なところに立つておられる。つまり勉強しなければいけないというのは、勉強できる状態を考えて言つておられる。それから他の点については、今度は現実を考えて言つておられる。非常に便利に現実と理想とが使いわけられているように私は考えて、残念でならないのです。しかしその点を長く言うことはやめます。  次にやはり大学の問題、さつきの認定講習の問題にも関連することでお尋ねしたいのですが、この間中野区の教員の認定講習があつた。ところがこの認定講習を受けている人たちが集まつて、一人前五百五十円ずつお金を出して講師を饗応し、かつ若干の金品を差上げる。それによつて、まあいわば点を甘くしてもらおうというようなことがあつて、二人の者が、そういうことは絶対にいやだということを申した。そうするとその仲間たちから、そんなことを言うのはどうもけしからぬ、お前たちは講習は来るな、こういうことをその二人は言われた、こういう事件が起つたのであります。ところが聞いてみると、東京のあちらこちらでそういう事柄が多少ともある。そうして教員から出さないまでも、PTAから出すとか、いろいろなかつこうで行つている。東京でもそうであるから、いなかへ行けば、もちろんそういうことは普通でしようというような話も聞いたのであります。確かなことがわかつておるのは、中野の事件だけでありますが、こうなりますと、先ほどの認定講習というものも、せつかく大騒ぎをして法律までつくつてつておきながら、非常に頼りないものになることは明らかです。こういうことは認定講習の存否を決するような重大問題だと思うのでありますが、この点についてお調べになつておるかどうか。またお調べになつているとすれば、それをどういうふうに処置なさるお考えであるか、お伺いしたいと思います。
  122. 稻田清助

    ○稻田政府委員 お話のような事実につきましては、私どもまだ承知いたしておりません。ただお話ごとき事実がありといたしましたならば、それは認定講習の本旨にももとることでございます。もとより認定講習は、地方教育委員会が自主的な主体となつて、教員代表あるいは大学その他と協議会をつくつて、運営をしておられるのでありますが、そういうような事実がございますれば、東京都として善処せられることとは考えられますけれども、われわれとしても、よくその事情調査いたしたいと考えております。
  123. 今野武雄

    今野委員 次にもう一つ大学についてお伺いいたします。これは小学校でも、港区の南山小学校など、出て来ておるそうでありますが、文部省直接に御関係の直轄学校で、今度外人の教師を大体五十人限度でお雇いになるというお話でございます。それで大体これの予算はどのくらいかということを文部省にお尋ねしましたら、宿舍なんかについては、半数ほどは戦前からのがある、それを修繕して入れる。それからその他のものについては、百五十万円ぐらいの予算で建てるつもりだ、こういうお話でした。それでは給料はどのくらい出すのかと言つたら、大体月三万五千円ぐらいであるというお答えでありました。しかしどうも事務当局から聞いたのは、間違いではないかと思つているのです。というのは、この間の進駐軍の将校の家を建てるときも、あれは二千戸で五十二億円でありまして、一戸当り二百六十万円です。そうするとどうもアメリカあたりの習慣から考えてみて将校よりもずつと大学の教師の方が社会的な地位は高いように考えられる。それがどうも腑に落ちない。それからもう一つは、それよりもつと大きい問題は、給料が三万五千円だというのでありますが、大体向うの大学教授の給料を調べてみましたら、月に見積ると最低一千ドルから一番高いのは三千ドルくらいあるようであります。もつと高いのもあるかもしれません——たとえば湯川さんがノーベル賞をもらつてから三千ドルというような話であります。初めは一千ドル、朝永君が大体一千ドルちよつと下まわるというような話でありました。一千ドルといえば、日本で三十六万円ですから、三十六万円ないし百万円というところになるわけであります。それを三万五千円しか予算をとつてないというのは納得できないのです。ほかの会社の例や何かを調べてみましたら、大体四十万円とか五十万円、あるいは丸善石油のある技師のごときは五千ドルとその上に手当がつく、それで手当を含めると二百八十万円ということになつておるようであります。しかし粗漏の点もあるかもしれませんが、とにかくまるでけたが違うのです。そういう点は、一体ほんとうはどうでありますか、率直にお聞かせ願いたいと思います。
  124. 稻田清助

    ○稻田政府委員 実はただいまのお話の点は、まだ相談中でございまして、こういう計画であるといつて、まだ国会に御報告するような段階にも到達していないのでございます。従つて今日予算要求するにあたりましても、要求予算の根本を文部省といたしましても、まだはつきりきめてないような状態であります。ただ大よその考え方といたしまして、今日各大学につきまして、修繕可能な外人用の家屋がどのくらいあるか、これを調査いたしております。あるいは借上げとかその他の方法でどのくらい使えるかと、いうことを考えております。それでもし年度内に予算的ないし予備金的の処置ができますれば、多少でもこの計画がきまりますれば、そうした宿舍の修繕にとりかかりたいと考えております。お話の計数は、おそらくこうした修繕費の坪当たり単価等についていろいろ検討しておる点が、お耳に達したのじやないかと思います。まだ未定であります。  それから俸給の問題、これは実は私どもまだ詳細につかんでいないのでございますけれども、ある部分はアメリカの方で持たれると思います。一部は日本政府の方で予算化するという問題が、おそらく起るだろうと思います。その場合の年額等もまだ未定でございますけれども、もう少しはつきりいたしましたら、できるだけ早い機会にお答えいたしたいと思います。
  125. 今野武雄

    今野委員 その点も占領費や何かもあとで払わなければならないということは、この間も阿波丸の事件ではつきりしたわけでありますが、結局われわれ国民にとつて大きな負担になり、特に非常にコントラストのはげしいのは、今の大学の教授や何かは、非常に貧乏です、学校も貧乏です、研究費もない、書物も買いがたい、こういうような條件があります。それで外人の教師が来たら、これによつて日本の教育が向上できるかというと、とてもとてもであります。それだけの金があるのなら、大学に十分な施設をする、それから研究費も増してやる、こういうことが先になされなければならないと思うのであります。この前の国会でも、図書館法がしかれていながら、予算が少しもない、これは私はどうも腑に落ちない。それに反してC・I・Eの図書館の方はさつそく各地につくる。こういうようなことで、日本の図書館に対しては一銭も金を出さないで、あつちの方は見返り資金から出す。これはどうも、やはり均衡を失するように思うし、われわれとしてはもう少し自主的にできないものかと思う。その点あまり均衡を失すると、国民に対しても、学生に対しても、非常におかしな感じを与える。そうしてかえつて教育目的に沿わなくなるおそれがあるわけでございますが、この点を十分考慮していただきたいと思うわけであります。
  126. 長野長廣

    長野委員長 文部大臣は四時が来ますと必ずお出かけの面がありますから……。
  127. 今野武雄

    今野委員 実は大学の問題で、もう一つ公務員特例法に関係した問題をお聞きしたいと思つておるのでありますが、ちよつとめんどうで……。
  128. 長野長廣

    長野委員長 大臣は今日は絶対都合がつかない御事情があるそうです。
  129. 今野武雄

    今野委員 それではこの次にまわしていただければたいへん好都合だと思います。
  130. 長野長廣

    長野委員長 それではまわします。
  131. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 ちよつとよんどころない用事がありますので、途中でたいへん失礼でありますが、委員会には、いつでもまた出席いたしますから……。
  132. 笹森順造

    笹森委員 小さな問題ですが、実際の問題でひとつお尋ねしたいと思うのです。それは新学制制度が日本に行われまして、新制中学が実施せられることになりましてからは、国民あげてこの整備のために、必要な国家的予算に対する希望を出しまして、歴代の内閣において努力をしつつあつたので、昭和二十五年度においては前の補正予算と加えて約六十億、この金をもつて一応完備せしめるというかつこうになつて来ておるようでありますが、これでもつては、とうてい私どもは満足するわけにはいかない。今後やはり一般会計の中から逐年的にこの問題を整備して行くのでなければ、とうてい満足な状況にはならぬということは、私から申し上げるまでもないことだと思います。ところで、このことに関連して初等中等教育局長にぜひ御苦労をわずらわし、お尋ねしておきたいことは、特にこのわずかな金をもつて学校の整備をしなければならぬのですから、この金はきわめて緊急必要な教室においてのみ使用することが許される。であるが、特に積雪寒冷地帯においては、この金は単に教室というのみではなくて、体操場自体がすなわち教室であるという面から、長いこと、この方面関係しておりまする者から、痛切に要望のあることは御承知通りであります。そうしてようやく、ごく若干の坪数のものが、この方面に向けることができるようにきめられたと聞いておりますが、二十五年度の予算施行するにあたりまして、この面に向つて実際に文部省が今責任を持つてつておる実態について、御説明を伺いたいと思います。
  133. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、実はお尋ねの件につきましては、管理局の方が直接関係しておりますので、詳細なことは私からお答えできかねるのであります。ただわれわれとして今努力しております点についてだけ申し上げたい、と申しますのは、実は一人当り小学校については〇・七坪を基準にいたしまして、御承知通り前年度と本年度におきまして六十億の予算をいただきまして、それによつて充実して行くようにしておるのでありますが、なおこの〇・七坪を完全に実施いたしまするためには、なお四十三億余りの金が足りないのであります。それで文部省といたしましては、この問題を解決するために、できれば補正予算等におきましてお認めを願うようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。なお〇・七坪だけでは、十分なことができませんので、次の計画といたしましては、小学校については一坪でございます。それから中学校につきましては一・二坪という基準といたしまして、それに達するようにいたしたい。その場合に、それぞれの地方の実情によりまして、ただいまお話がございましたように、雨天体操場、雪天体操場というようなものにつきましても、十分考慮いたしまして、この点の遺憾のないようにいたしたいと考えておる次第でございますが、現在の六十億の実施状況ということにつきましては、関係局長より適当の機会に御説明をするようにいたしたいと思います。
  134. 笹森順造

    笹森委員 管理局の局長が直接の責任であることは承知しておるのでありますが、実際に使います初等局長の方から実は伺つたわけであります。適当な機会に管理局から聞き、あるいは資料を提示していただきたいと思います。  もう一つの点をお聞きしておきたいと思いますのは、特に積雪寒冷地帯における教員が、北海道においては石炭の特別手当を受けることができるように、前の内閣のときにも、ずつと前のときにも、これが問題となり、北海道だけは実施されておるのでありまするが、北海道と比較して少しもかわりがないと思われる隣接した県において、非常に痛烈な要望が実は出ておるのであります。この問題に関しまして、当局は今どういう配慮をしておるか。その点を簡単でよろしうございますから、実際においてやつておりまする点について、また見通しについて御説明を願いたいと思います。
  135. 辻田力

    ○辻田政府委員 ただいまお話がございましたように、北海道と東北の関係でございますが、その東北地方におきましても、北海道と同様、あるいは北海道以上に寒いところもあるわけでございます。また雪の関係におきましても、考慮しなければならない点がございまするので、文部省といたしましては、従来大蔵省等に要求をしておる次第でございます。明年の予算におきましても、この点についてできるだけ努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  136. 笹森順造

    笹森委員 それでは、本年のことにはならぬのでございますか。その点特別措置の配慮はないのでございますか。そこをはつきりしていただきたいと思います。
  137. 辻田力

    ○辻田政府委員 本年度予算には、その点が解決していないようでございます。     —————————————
  138. 坂本泰良

    ○坂本(泰)委員 大臣がおられなくなつたから、質問機会がなくなつたのでありまするが、認定講習の問題については、政府当局も非常に努力しておられますし、委員長その他理事の方々も司令部に行かれて努力しておられると思いますが、この問題は非常にせつぱ詰つた問題であります。しかし今までの政府の答弁を聞いてみますと努力はするけれどもという程度で、はたして第七條が改正になるかどうかという問題が、はつきりしていないわけであります。そこで三年が六年になるというので、全国的に六年に延ばすという計画で、この認定講習を始めたところは、円滑にやつておるのでありますが、各府県においては、三年の計画によつて、そのままとにかく講習を行う、改正は別に考えておる、こういう態度に出ておるところが、やはり実際上拒否しておるというような結果になつておると見られないわけでもないのです。そこで、これは何としても、この国会期日もあと一週間くらいしかないのですが、この一、二日のうちに政府としてこの改正案を国会に出されるのかどうか、二十一日の持まわり閣議で、この改正案は決定したというお話も聞いておるのでありますが、これはうわさです。そこで、もし政府側でその用意ができなかつたら、委員長初め理事の方々の御配慮によつて委員会案としてでも、国会の運用上出せないわけではないのでありますし、條文の改正も技術的に簡単なものでありますから、ぜひこれだけはお願いしたいと思います。しかし裏にはいろいろ御苦労なめんどうがあると思いますけれども、ぜひともこれだけは改正案を出して、本国会で通過するようにいたしたい念願でございますから、そういうふうに政府の方と委員長並びに理事の方方にひとつ御配慮を願いまして、ぜひとも改正を実現できるよう要望いたしたいと思います。
  139. 長野長廣

    長野委員長 ちよつと速記をとめて下さい。     〔速記中止〕
  140. 長野長廣

    長野委員長 速記を始めてください。  それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時十一分散会