○川西
委員 近畿班における
農地改良造成並びに
災害復旧等に関する
国政調査の
概要並びに結果につきまして
簡單に御
報告いたします。
近畿班は私のほか五名をもちまして、去る八月二十一日より二十五日の五日間にわた
つて、滋賀県並びに京都府の
土地改良、
開拓、
災害復旧等の
事業を
視察調査いたしました。まず第一日は、滋賀
県庁におきまして、県当局並びに
耕地協会、農協連合会等の
農民団体出席のもとに
調査事項に基く
説明を聽取いたしました後、大津市外鳥井川量水標地と南部洗堰の
現地を
視察いたしました。
第二日は野州川上流、甲賀郡鮎河村における大規模な
国営事業たる農林省野州川
農業水利事業のダム建設場をさらに神崎郡御園村において愛知川
災害事情の
陳情と同総会開発
計画の
説明を受け、さらに同
地元飛行場の
開拓地を
視察いたしました。次いで蒲生郡安土村に至りまして、
国営事業琵琶湖干拓の
一つであります中之湖
地区の既干拓地及び未干拓地の
計画を
視察いたしました。
第三日は七箇所の
現地を
視察いたしました。すなわち、彦根市外松原内湖及び入江内湖の両
国営干拓地、長浜市南部用水
改良事業の
説明及び
陳情と
現場視察、伊香郡北富永村地内高時川上流井堰の
視察、琵琶湖北岸伊香郡塩津村地内塩津内湖
国営干拓地、高島郡百瀬村地内百瀬川
災害復旧事業及び高島郡広瀬村安曇
川沿岸災害復旧事業の
視察等七箇所であります。同日をもちまして滋賀
県下の
調査を終りまして、京都府におもむいたのであります。
第四日は、京都府当局より本
調査事項の
説明を受け、ただちに府下久世郡愼島村巨椋ヶ池干拓地の
事情を聽取し、
陳情を受けました後、
同地内排水ポンプの
状態を
視察いたしました。次いで綴喜郡大住村地内の八幡郷用水
改良事業並びに同
災害復旧事業の
説明を受けました後、
現地を
視察いたしました。さらに同郡八幡町附近に参りまして、幣原建設
事業の
説明を聽取いたしました。
第五日は京都市外伏見
地区内の洛南推水
改良事業並びに同
農地開発事業を
視察し、次いで京都市右京区内洛西
農業水利改良事業の
説明及び
陳情を受けました後、桂川の梅津
災害復旧事業の
現場を
視察したのであります。さらに
同地内嵐山附近一ノ井堰の
現場を
視察いたしまして、京都府下における本
調査を終了いたし、同日解散したのであります。以上が
調査日程の大要であります。
次にその
調査の内容について若干申し上げたいと思います。まず
土地改良農地開発等の
事業について申し上げますと、滋賀県におきましては、総
耕地面積は約六万八千
町歩、米の生産は約百五十万石でありまして、
全国の中以上に位しております。また反当実收高におきましても
全国平均二石一斗をはるかに上まわり、平均二石四斗とな
つております。このような
状態より、
土地改良事業を見ますと、
国営のものは野州川上流のダム建設と、琵琶湖周辺の干拓
事業でありまして、他に
県営、団体営を合せまして
完了四
地区、
実施または
計画中十二
地区と相な
つております。また開墾は千六百八十二
町歩、
入植戸数五百八十八戸であり、干拓は
完了、未
完了合せまして約一千
町歩となり、以上の増收石数は約十一万七千石となるのであります。またこのほかにこの種
事業の可能なる面積が約四万
町歩残されているのでありまして、これらを開発いたしますことにより、実に莫大な増收が期待されるのであります。なかんずく干拓にありましては、ただちに
経済効果がもたらされ、琵琶湖の有効な利用とともに、大いに助成することが適当であろうと思います。
次に京都府について見てみますと、総
耕地面積は約四万八千
町歩、米の
生産額は約八十一万石で
全国でも中以下でありますが、反当收穫量は三石一斗七升でほぼ
全国平均と同じであります。このような概観から、
土地改良事業等を見ますれば、国電
事業はなく、府営のものが
完了、未
完了合せて十
地区、その面積が八千
町歩、団体営が一万二千
町歩とな
つております。また開墾、干拓
事業は約二千
町歩を
完成し、約三百
町歩を
実施中でありまして、以上の増收
見込みは約九万八千石とな
つております。さらにこのほかに可能なるものが約六千五百五十
町歩ありまして、すべてを
完成しました場合には、約十三万石の増收量が期待されるのでありまして、米の全
生産量の二割に達することが可能なのであります。以上が滋賀、京都における本
事業の
概要でありますが、何としましても、
国庫補助金の打切りや、制限によ
つて遅々として進捗を見せないのは遺憾でありますし、また
現地諸君が最も強く
要望されましたのは、本問題でありました。
次に両府県の
災害復旧事業について申し上げます。滋賀県における
災害は
昭和二十二年九月、二十三年七月、二十四年七月及び本年六月、七月と毎年
台風による
水害を受けまして、その
被害総額は約九億に及んでいるのであります。これに対する
復旧費は、約七億円を要しまして、二十四年に一億二千万円を投じ、二十五
年度に約二億円を予定し、残り約四億円は持ち越すの止むなきに至
つているのであります。本県大小二十の河川は、ことごとく
被害を及ぼし、特に愛知川、安曇川がはなはだしいのでありまして、愛知川のごときは、本年七月の
水害で決壊十
五箇所、水没
耕地等が四郡下にわたり、
農民諸君の苦難のほどが察せられるのであります。また百瀬川のごときは、本年八月の
豪雨によりまして井堰はほとんど破壊され、堤防は決壊し、河床が
耕地より二メートル以上も高いありさまで、さながら道路の観がいたしました。次に山林につきましては、本年のみの
水害が三回もあり、約一億一千万円の
被害を受け、約一千万円の
復旧費も充てて、これが
復旧に充
つております。しかしながら荒廃林が約六千
町歩もあり、加えて里山濫伐の影響等、
治山治水上まことに憂慮すべき
状況にありますので、
総合開発計画を立てて、これら
災害の積極的
防除をはか
つておりますが、ここでも財政上その他の問題で
実施が停頓いたしております。よ
つてこれが積極的
援助をなす必要があるものと思う次第であります。
次に京都府における
災害の
状況を申し上げますと、滋賀県同様、
水害は毎年ありまして、その
被害総額は約五億二千万円に及び、その
復旧事業は、二十四
年度までに一億一千万円しかはかど
つておりません。残り約四億一千万円は二十五
年度以降に持ち越している
状態であります。また山林の
水害は、特にヘスター
台風のときにはなはだしく、その額は約二億円でありますが、大なるものを除き、他は本
年度中に
復旧する予定であります。京都府においては、
災害の未然防止をはかるため、造林及び林道の開設
計画を立て、本
年度において二千三百
町歩の植林と、約二万メートルの林道開設を行い、二十六
年度以降も引続いてこれを行い、
治山治水問題を早急に解決しようといたしております。
以上が両府県の
災害復旧事業の
概要でありますが、
土地改良事業と同様、
国庫補助金の不足を訴え、早急に
復旧せしめる
措置をとるよう強く
要望されたのであります。
さて次に重要なる問題といたしまして農事用電力に関して申し上げます。滋賀県におきましては、電力利用設備が三千数百箇所、容量約二万キロワツトで、その受益面積が総面積の、二割に達しているのであります。また脱穀調製用として約六千、容量約一万五千キロワツトであります。京都府におきましては、
灌漑排水用として小口百二十八、大口四でありまして、その容量は約七千八百八十キロワツト、受益面積は七千二百
町歩に及んでおります。両府県の大要は右のようでありますが、料金について申し上げますと、
電力料金は終戰以来五回にわた
つて改訂され、特に昨年十二月の
改訂で従来の特典たる三割引制度及び未使用期間の基本料金免除等の
措置が廃止されまして、実質料金は二ないし六倍ぐらいとなり、しかも米価決定の品目にあげられていないという不合理を蔵しているのであります。京都府は巨椋ヶ池組合の例をとりますと、
昭和二十年のときに比較して、何と百三十九倍にはね上
つており、現在反当三百五十二円六十一銭の
負担とな
つている
状態でありまして、両府県ともに従来の特典を復活するよう強く
要望せられたのであります。
最後の問題といたしまして、以上申し上げましたほかに、
土地改良区設立の問題、
交換分合促進の問題、
災害補償制度改善に関する問題等がありますが、これは省略いたすことにいたします。
次に本
調査に基く府県当局並びに
農民諸君の
要望事項が数多くありますが、これはほとんど私どもが本
委員会で常々論議いたしておる点でありますので、この際これは省略して、
結論を申し上げたいと存じます。すなわち、
(1)
土地改良事業施行に対する
地元負担金を軽減し、府県の起債に当
つては優先的に承認し、あるいはまた低利(年四分)長期(三十年)の
融資の
措置を講ずべきであると思います。
これらにつきましては
現地において強く
要望され、
食糧確保、民生安定等の見地より、妥当なるものと思うのであります。
(2) 開墾、干拓
事業においても同様でありますが、特に
入植農家に対しては、すみやかに自作農たらしめるべく、営農の助成を行うべきであります。
(3)
土地改良区を設立するにあたりましての問題としまして、手続を
簡素化し、予備審査の省略、総代数の制限等、
実状に即するよう、法の改正が妥当と考えられます。
(4)
災害復旧につきましては、
農家経済の現状、
地方財政の貧困等より、
全額国庫負担とし、過
年度災害を一掃し、積極的に開発
計画を助成して、国家資源の損失を防止すべきであると思います。
(5)
電力料金につきましては、従来の特典たる三割引制度の復活、使用しない月の料金免除、電力割当制度の廃止等を
実施し、維持管理費、新規
工事等についても適当の助成をすることが必要であります。滋賀県の場合は干拓等が多く、勢い料金もかさみますので、特に強く
要望せられたのであります。
(6) 以上のほかに
農業災害補償制度の改善を行うため、法の改正を行うことが適当であると思います。
以上が、今回
調査いたしました近畿班の
調査の内容及び結果でありますが、現下内外の要請に基く国内
食糧の自給度向上にあたりまして、本
調査は時宜を得たものと確信いたしておるのであります。
土地改良、
災害復旧、
農地開発等の
事業は、ただちに右の要請にこたえられるものでありまして、滋賀、京都ともに一割以上の増收が示されておりますし、
関係農民も不断の努力を約束いたしておるのであります。またちようど
予算編成の期でありますし、この好機を逸せず、これら
事業の所要
資金を確保すべく、先般
委員会において決議いたしました
予算確保の案件を強力に推進すべきであると存じます。
以上をもちまして、
簡單ではありますが、御
報告を終る次第であります。