○
八木委員 一般の
方針通り踏襲して進むということでありますが、
森農相の手によりまして、
蚕糸業は
統制から自由への切りかえを断行いたしたのであります。この
統制から自由への
移りかわりに対処すべき問題として、今日
森農相の手によ
つて解決せられなか
つたために、
政府が本腰でこの仕事に
保護奨励を加えておるかどうかを疑う
農民すら出て来た、これが事実であります。その問題は何であるかといいますと、特に私が
指摘したいのが三つあります。
その
一つは、
統制の
時代の売れ残りました、
生糸、
閉鎖処理委員会の手に持
つておるという
滞貨生糸の
処分の問題であります。これは概算三十億円、糸にして二万八千俵ほどでありますが、この
統制時代の子供ともいうべき
滞貨生糸の
処分の適切に行われないために、本年の
春繭にたいへんな問題を起しましたことは、
連絡会議その他で
農相も
承知であろうと思いますが、この
処分は本年の
春繭の
出盛期に、新繭が出ようとする際に、かかる数年前の古糸を
市場に放出いたしまして、繭の値をたたくのに都合いいような一方的な処置を、
政府はうつかりして知らないでお
つたという
態度で、これは見のがそうとしたのでありますけれ
ども、ほうはいとして起る
全国の輿論は
承知できません。その筋の非公式に発せられた
メモランダムの
取消し緩和を懇請いたしまして、ようやくその問を糊塗することができたのでありますけれ
ども、結果として問題は残
つておる。どう残
つておるかというと、八月十五日までに放出する糸は、場違いの
繊度はずれ等の糸であるから、それまでにしかるべく
代案を持
つて来いということにな
つておるのであります。しかるべく
代案を持
つて行つて、明朗たらんとする
蚕糸業の上にかぶさ
つておる笠を取除く
措置として、これはほかにもありますが、
閉鎖処理委員会の手にゆだねられておる。かかる
自由市場を圧迫する
商品を
政府の手によ
つて適切にするかいなかということは、他の
商品に対しても幾つもあることでありますから、先がけて自由の
方向へ切りかえた
蚕糸の問題といたしまして、それをひとつ解決してもらいたい。これを解決する用意と意思があるかどうかということが問題の一点であります。私
どもは前
国会、前々
国会から、この問題は
蚕糸業の
安定政策とあわせて、これを財源として
蚕糸業安定に関する
立法措置をもあわせ行おうといたしまして、
目下継続中でありますが、これも
一案であります。
政府の
特別会計に移すのも
一案でありましよう。現物として
政府に納めさせるというのも
一つの
方法であります。
方法はいろいろありましようけれ
ども、この問題は八月十五日までにという
期限付メモランダムを非公式ながらもら
つておるという
状況にありますから、
実行に移して行くかどうかということを明言願いたいのであります。
問題の第二点は、
統制時代の
差益金の
焦げつきについて、
全国百万
農家は非常に迷惑しておる。これはどういう問題かと言いますと、
繭値が
マル公を変更するたびに、二百掛が七百掛、千六百掛、三千掛、六千掛と切りかえている。
統制時代に
マル公を切りかえるたびに起きて来た。
差益は不労
所得である。何らの
労力を用いずして
上つた金であるから、これはいわゆる
価格差益処理規則によ
つて政府が三分の二分持
つて行く。残りの三分の一は
業者がと
つてよろしいという
措置を行われて参りましたが、
蚕糸業についてはその三分の一はたれの
所得に帰するかということが問題であります。
生糸を
製糸業者は
自分のものだという。糸の原料である繭は七割ないし八割を占めている。七割、八割を
占むる農民のものであるということになりまして、八割を
占むる農民の
所得に帰すべきか、二割、三割を
占むる製糸業者の
所得に帰すべきかということは相当問題になりまして、同時にまた不労の
所得というか、臨時の
所得であるから、これは
全額税金にと
つてもいいのだというような問題もあ
つた。幸いに時の
蚕糸局長平田氏が、一種の
行政措置として
振興会なるものをでつち上げて、
蚕糸振興会に、
——その両者の手に帰すべき三分の一の
差益金は、
振興会へ一度出して、これで
蚕糸業の
振興を自主的にはか
つたらいいじやないかということで妥協いたしまして、
養蚕、製糸その他関係業会にこれを移して利用することにな
つたのでありますが、ところがこのごろ
政府の言われたのは、同じように三分の一の臨時
所得を
業者みずからのふところに入れるとすれば
税金として
——臨時
所得税として八割五分くらいとるから、
税金にかわるような意味で快く協力しろという言辞をも
つて、これを取上げておるのであります。私
どもはこれに賛成をしておるのであります。
全国の
養蚕農家、
養蚕にいそしむ婦女子三百万は、この
蚕糸業に関する
振興費が、やがて上から奨励費、
振興費としておりて来るということで、いろいろ立てかえ金をしたり、あるいは
施策をしたり、施設をしたりして今日に及んでおるのでありますが、その金が平田
事件をめぐ
つて当時の刑事
事件にもなりまして、この
事件に関連したところの製糸業等が、三分の一に相当する
振興会への醵出金を納めないで、
焦げつきにな
つております結果はどうな
つておるかというと、正直に、
政府の言う通りに聞いて納めたところの
業者はばかを見て、不正直な者は
税金を免れ、しかも
税金にかわる
振興会の醵出金はしない。名は
蚕糸業の不況に云々して納めないという事実であります。私
どもは、これは
政府が先に立
つてつく
つた蚕糸業振興会であり、
政府の裏づけによ
つてできた約束手形のような感じを事実持ちまして、系統
養蚕農業協同組合においては、この金を
蚕糸業の
振興に充てようとして立てかえ払いまでいたしておるのでありますが、この線が未解決のまま、焦げついたまま、正直な者がばかを見て、不正直な者のみが得々としておるような
事態に立ち至
つておるのでありますが、この
蚕糸業振興会は、
蚕糸業不
振興会という事実に当面しておる。これは
政府が責任をと
つて、この問題を一刀両断に解決しようという熱意と誠意があれば、とうに解決するはずであります。解決の
方法はこうでなければならぬと確信しておる。
答弁には及びませんけれ
ども、熱意のほどを言明願いたいというのが問題の第二点。
第三の問題は、技術員の身分安定と繭の値ぎめの問題であります。
蚕糸局は、今日一大製糸家のビルの中に依然としておりまして、売買対等の地位で公平に値ぎめをしなければならないのに、繭は、本年は
春繭が過ぎて、もう夏秋蚕が出まわろうとしておる今日、まだきまらない
実情であります。私の県のごときは、数日にわたり
協議懇談を遂げて、大いにひざを交えて
製糸業者と話しましたけれ
ども、なかなかきまらず、容易にきめようとしないのであります。これは悪く言えば、
製糸業者のビルの中にとぐろを巻いておる
蚕糸局が、値をきめては困る、値をきめてもらわなくてもいいんだという意図さえ見え、
農民は色をなして私
どもに迫
つております。私はさようなことはないと信じておりますけれ
ども、かような誤解を受けるのはなぜかというと、繭が自由
取引になりました今日、繭の
取引を
統制から移りかわるこの期間だけ団体協約で行こうときめた。
養蚕農家多数の
農家は、
農業協同組合を單位として、個々の工場との間に
取引契約をしたので、この団体協約に基いて約束をして調印しておりますけれ
ども、それで標準掛目、標準値段というものは何に依存したかというと、
政府の
指導いたしまする主任官
会議において、二月十日に適正なる標準加工費を
調査をして示す。こういうことを言
つておる。この責任ある言葉に信頼いたしまして、そのうちに
政府から標準値が示されるであろう、同時に標準の加工費が出るであろうということに依存しておりまして、これを口実にいたしまして、相手である
製糸業者はこれに応じない。売手である
養蚕家は、生繭を渡してしま
つた後、二割以上値が上
つた今日、なおそれを主張しておるにかかわらず、
政府はほほかむりをして、標準になるべき
生産費のお示しがないというので、
全国におります
蚕糸局の主任官は、公然と
政府の不誠意をなじ
つておるというのが
実情であります。このことで
養蚕家が困
つておるだけではないのであります。もつと因
つておるものは何であるかというと、
統制から自由にかわ
つた結果として、
自分らの身分を、第一線におります町村の技術員の身分を、内外から取立
つて来た
統制の
時代の人件費が、自由にな
つた結果として、団体協約に基いて、
製糸業者、買手側から賃金をかりに払
つてもらうというような形にな
つておりますので、売手である
養蚕家の
指導に当る技術員は、買手である
製糸業者の立てかえ払いによ
つて、その費用を出してもらうというような、妙な形にありますから、強く繭
取引の
指導に当ることができない。
自分のパンを買手に預けておるというかつこうにな
つてしま
つておるのであります。これが
対策につきましては、
統制から自由にかわ
つた今日の
措置としては、自由
時代にございましたように、これは広く財政負担において国が三分の一を持ち、地方が三分の一を持ち、団体が三分の一を持つというようなことによ
つて、その身分を安定してや
つて、
取引問題を解決していただく。そうでないと、本山である
蚕糸局は標準の値もきめないで、標準値を聞いてももう公言し得ない
状態に置いておいて、出先の第一線はおる一万人の
指導員諸君は、パンを買手に預けておるというような形にな
つておる事実、こういう形をそのまま見のがしておるということが、一万の第一線におる町村の技術員が、六十万人の調印をも
つて、請願運動をして迫
つておる事実として今日現われておる。これは予算
措置の伴うものでありますが、その数字は大したものではありません。そこでこの問題は
簡單に解決できるはずだと信じております。
以上三つの問題を、
統制より自由へ率先して
実行いたしました
蚕糸政策の
方針を踏襲される
廣川農相におかれては、逐次解決される誠意と熱意があるか、お伺いしたいのであります。