運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-11-16 第8回国会 衆議院 通商産業委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月十六日(木曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君    理事 中村 幸八君 理事 今澄  勇君       江田斗米吉君    澁谷雄太郎君       高木吉之助君    永井 要造君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君       風早八十二君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  委員外出席者         通商産業政務次         官       首藤 新八君         資源庁次長   岡田 秀雄君         通商産業事務官         (資源庁炭政局         長)      中島 征帆君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君         通商産業事務官         (鉱山局鉱政課         長)      讚岐 喜八君         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局長)    小野儀七郎君         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局鉱山課長) 小泉  進君         通商産業事務官         (資源庁鉱山保         安局石炭課長) 荒木  忍君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越山 清七君 十月二十六日  委員田中彰治君辞任につき、その補欠として田  渕光一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  鉱業法案内閣提出第一九号)  採石法案内閣提出第二〇号)  若沖炭鉱災害に関する件     —————————————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより通商産業委員会を開会いたします。  鉱業法案及び採石法案を議題といたします。前回の委員会に引続いて質疑を続行いたします。  なおその前に多武良哲三君より鉱山保安問題について発言を求められました。その内容は先般発生した山口県の若沖炭鉱災害についての発言でございます。これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小金義照

    小金委員長 御異議がござませんから、これを許します。多武良哲三君。
  4. 多武良哲三

    ○多武良委員 若沖炭鉱災害につきまして緊急に御質問をいたします。  客月三十日の晝過ぎに宇部炭田沖炭鉱におきまして、突如坑内出水のため従業員三十二名が水没殉職したとのことでありますが、この変災に関しますその実情並びにその原因について政府当局の御説をお願いいたします。
  5. 小野儀七郎

    小野説明員 ただいまの多武良委員からの御質問に対しましてお答えいたします。  ちようど昨年春鉱山保安法が制定に相なりまして、夏から全面実施に移つたわけでありますが、ちようど昨年の秋時分から、従来終戰後急激に多くなつて参りました災害相当減少の傾向になつて参つておりまして、ひそかに喜んでおつたのでございますが、ただいま御質問にございましたような、実は鉱山保安法施行以来の大きな災害をでかしまして、当局といたしましては、世間をお騒がせいたしました点、尊い犠牲を出しました点、陳謝いたしたいと存じます。ただいまもございました通り、また新聞紙上等災害概況を、ほぼ御承知のことでございますが、予期せざる坑内出水を突発いたしまして、しかも従来海水流出等によりまする前兆等もほとんどなく、突然に水が出まして、しかもきわめて猛烈な噴出でございまして、たちまち坑内が水びたしになりまして、三十二名という尊い犠牲を見ることになつたのであります。これらの直接の原因といたしましては、従来鉱業権者にもまた役所側にも予期されなかつたところの古洞につきあたつたのではないかというように推測されるのでございまして、それらの点につきまして、ちようど災害直後私どもの方の技術課長現場に急行いたしまして、多少事情を調べて参つております。また図面等も用意しておりますので、担当の石炭課長からなお現場実情を御説明した方が適当かと思いますので、さようにとりはからいたいと存じます。
  6. 小金義照

    小金委員長 ちよつとお諮りいたしますが、石炭課長説明員として発言をさせることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小金義照

  8. 荒木忍

    荒木説明員 若沖炭鉱変災概況及びその一因について御説明申し上げます。若沖炭鉱と申しますのは、匿名組合会社でありまして、資本金二千万円になつております。頭取は藤原善七郎という人でありまして、ここに図面を掲げておりますが、この図面の下の方にありますこの線であります。ここは旧新沖ノ山炭鉱というところの採掘跡でありまして、その旧新沖ノ山炭鉱から分讓されまして、昭和十六年にこの上の地区の赤いしるしでありますが、この赤いしるしのまん中を掘つておりますのが若沖炭鉱であります。昭和十六年の一月から若沖炭鉱が始まつたわけであります。  災害状況でございますが、災害前には、この炭鉱は月産二千トン、職員を含めまして、百六十四名おりました。そのうち坑内夫は百名であります。掘つております石炭は、この地区は一重石層という石炭と七甲層と二つありますが、現在は一重石だけ掘つております。若沖炭鉱はここに斜坑がありまして、ここに竪坑がありまして、この二つは地表に続いておるところであります。多少申し上げますと、これからこちらの方が海であり、こちらが陸であります。堤防がここにあります。ここに防波堤が出ております。この中は防波堤が出ておりまして、こちらは海でありますが、この線が防波堤であります。向うにこう続いております。こちらからまた防波堤が出まして、ここに燈台が二つあります。ここは小野田の港であります。ここに船が入つて来ます。港であります。港の中を掘つている、こういう形になります。斜坑が入りまして、百五十三尺の竪坑があります。両方が下の方で一緒になつておりまして、これからほとんど類似の坑道がこちらに参つております。なおこれから坑道がこちらに入つております。現在掘つておりますのはこの地区であつたわけであります。この斜坑の口からこの一番先まで五百十五間になつております。災害のありましたのは五百十五間先のこの箇所であります。この点線のところは掘つてないところで、この黄色いのが掘つた跡であります。そういう箇所で、お話がありました十月三十日の午後十二時四十五分——零時四十五分に出水があつたわけであります。  そのときの状況でありますが、坑内には六十七人の人間が入つておりました。そのうち、その分布状況と申しますのは、この上の方と、この近所、この上の方といいますのは、この坑道の周辺であります。それからこの近所と、ここに二人入つておりました。この二人の人間が、朝七時にこの坑内に入つて参りまして、この箇所石炭と、普通のぼたといいます岩石とを合計四貫掘りまして、晝飯にしました。晝飯にしたあと、この箇所採炭を始めようとしたわけであります。この箇所坑道の大きさが、高さ四尺、幅四尺の小さな坑道であります。その上の方に一尺五寸の石炭があります。その一尺五寸の石炭にコール・ピツクという圧搾空気で掘ります機械、つるはしをつつ込んだときに、水がどつと出て来た。出て来たのと同時に、本人たちのカンテラが消えまして、まつ暗になつたのでありますが、出水の水に流され、あるいは自分でこちらにはい出して参りまして、この坑道に行きますと、電気がついておりますので、ここは明るくなつております。これから逃出して参りまして、この近所坑内の詰所という事務所があります。係員にそのことを知らせまして、本人たちは逃げ出して来た。係員はただちに現場におる者に知らせるために、急遽こちらに帰つて参りました。この近所に来ましたときには、非常な水がやつて来まして、ほとんど坑道の天井まで水がつかえておりましたので、それ以上は進めない。こういう状況引上げて参つたわけであります。そういうことでここに残つておりましたこの箇所の三十二人は、急に水が出たことを知らせるひまがなくて、そのままになつた。こういう状況であります。あとでいろいろ計算いたしてみますと、このとき出ました水の量でありますが、出水当時は、毎分四千立方メール程度であつた。こういうふうに推定されます。出ました水は、この水が出ましたときから二十二時間ばかりたちまして、ここは縦坑でありますが、堅坑坑底に水がやつて来たわけであります。途中にポンプ小屋がこういうふうにありまして、ポンプは当然動かしてはおりましたけれどもポンプ能力ではとても水を吐くことはできなかつたポンプ能力合計一分間百立方ぐらいしかありません。四千立方も出て来た水にはたえ切れなかつた。こういうことで、ポンプは水の中につけたままになつて引上げて来たよう状況になつております。災害状況はそういうことでありますが、係員及び逃げて来ました者たちに私会いまして、いろいろ話を聞いてみたわけであります。ここに保安監理者という保安監理最高責任者がおりますが、保安監理者はこの災害前二十七日にこの現場を見ておるのでありまして、異常を認めておりません。直接責任係員は当日ここに午前九時ごろは巡回して参つております。巡回した状況は、異常はなかつた、こういうふうに申しております。そのことは現場から逃げて来ました坑夫係員が何を言つたかということを質問いたしましたところ、あと十間くらいで——赤い線がここに出ておりますが、これは保護炭層であります。この堤防を保護するために掘つてはいけないという地域であります。この掘つてはいけない地域あと十間くらいで到達するのだ、あと十間くらい行つた採炭はやめるのだ、こういう話で何ら保安上の異常はなかつた、こういうふうに申しております。なお現場から逃げ出しました坑夫現場状況を聞いてみたわけであります。先ほど申しましたように、現場においては炭層が一尺五寸ぐらいであります。それが少し固くなつてつた。それ以外に水がよけいに出ておつた、あるいは距離盤が悪くなつてつた、そういう状況は認められなかつた。水の出方もほとんどかわりはなかつた。こういうことでわれわれも全然注意していなかつた、こういうことを申しております。なおこれは役所関係でありますが、監督官は二十七日の午後にここへ参つております。本人も異常なかつたということで、別に応急措置も何もしておりません。そういう状況であります。  原因考えてみますと、この水の出方が初めは四千五万メートルぐらいでありましたが、急にこつちへやつて参りまして、この近所まで来ましたときに水の進み方が非常に少くなつて来た、こういうことが記録に残つております。それでほんとうを言いますと、水が出ますとこの旧坑に入つて来ますから、こういう旧坑に水が入ることは遅くて、一本坑のところは早くなつて来るわけであります。逆な現象であるということは、初め急に水が出まして、あとは出なかつたという状況であります。それから第二の点といたしましては、水の出方から申しますと、実はこの旧採掘場、新沖ノ山炭鉱を掘りましたときに、この掘り方はここに竪坑をおろしまして、これから斜坑を置きまして、ここに来ております。この旧坑とこの竪坑は続いているわけであります。この旧坑の水位が、この災害があつたときに六十尺ばかり急に下つた、こういう現象が出て来ております。第三点といたしましては、この水がここに押し寄せて来ましたときに、係員ポンプ処置をしたりして帰つて来ましたが、古洞と私は申しますが、非常に炭酸ガスのにおいがした、こういうことを申しております。なお鉱業権者藤原という人は、災害があつたというのですぐにこの事務所のそばの港から船を出しまして、この採掘場所近所の海上を船でいろいろ調査したわけであります。もし海底が陷没して海水坑内に入つた、こういう場合は宇部の実例といたしまして坑内から気泡がぶくぶくと浮んで来たり、あるいはうずを巻いて来るわけであります。そういうのを遂に見出すことができなかつた。そういういろいろな状況から判断いたしまして、鉱業権者もわれわれ監督官庁の方も、これは海水坑内に入つたのではない、こういう結論を出しました。そういたしますと、この近所にあります水は、この旧坑の水であります。この緑色で示されておりますこの炭層との炭層は同じでありまして、続いておるわけであります。この防波堤を保護するために、この赤い線をこれだけ掘つてはいけないというところがあるのであります。これとこれとが連続しておらぬとしますれば、この水はここには来ないはずであります。何かの間違いでこことここと連絡しておつた、こういうふうに判定する以外にはなかつたのであります。そういう判定をいたしまして海水調査にとりかかつたわけであります。ここに出ております水も、海水よりも塩分が少いのであります。それからなおこの水がだんだんふえて参りまして、この堅坑が百五十三フイートありますが、この堅坑の水がふえて参つて、その最後にとまりました水とこの海水の高さを比較いたしますと、こちらがうんと低くなつております。そういう観点から海水の浸入ではない、こういうふうに考えたのであります。  なお現在における排水状況でありますが、この坑内に入りました水と、それからこの旧坑にあります水とを合計いたしますと、三百七十三万立方メートルの水が一応考えられる。それを揚げてしまわなければここまで行くことはできない、そういう観点からポンプ対策を練りました。この会社が持つておりますものは全部幸いに埋めてしまいましたので、附近の炭鉱からの応援を得まして現在排水中であります。その排水状況は、ここに出ております若沖の竪坑はこの竪坑であります。新沖ノ山竪坑はこれであります。この水はこの旧坑の水の水位にあります。災害が起りました十月三十日の十二時四十五分にはこの位置にあつたわけでありますが、こなは竪坑の一つの深さとお考えになれば、おわかりになりやすはわけであります。それが五日、六日、七日、こうやつて参りまして、十三日の夜までの現在、ポンプをすえた結果こういうふうわ下つております。この新沖ノ山竪坑水位も下つております。と申しますのは、ここから水を出しますと、ここの水が減るということは、この坑内の水を吐きますのでこの水位も下つて来る。それでここの水も下つて来るということは、完全にここからここに通じておつたということがこの点からも証明されております。こういうことで大体排水も完了いたしまして、ここまで排水ができるというのはあと一箇月ぐらいはかかるのではないか、こういう状況で、現在極力排水中であります。
  9. 多武良哲三

    ○多武良委員 ただいま御説明を承りましたが、若沖炭鉱災害は、要するに最も安全だと確信していた旧坑に浸水したためでありまして、その旧坑に関しては、当該炭鉱図面は前の水害のために流失しており、しかも監督官庁図面もまた戰災のために焼失していたというふうに承つておりますが、炭鉱ほんとう図面が流失しており、著しく事実に反する図面が保存されておりまして、これに基いて虚偽の書類が提出されていたということは、いささかふに落ちないところがあるのであります。ともかく本事件のために教えらなるところはまことに少くないものがございます。ついては今後におきますこの種災害防止対策につきまして、二、三政府にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に旧坑の探知についてであります。炭鉱が正しい図面その他の記録を保存することは、自衛上からいいましてももちろん当然のことであります。しかしながら鉱業権者が転々する間におきまして、正確な図面の引継ぎが行われぬ場合もあり、また特に意図するところがあつて故意にごまかされることもあり得るだろうと思います。また実測上の誤りもあり得るでありましよう。特に測量陣容の薄弱な中小炭鉱などにおいてはなおしかりであると思います。従いまして正確な図面を極力收集するとともに、実測し得るものは実測によつて正確な旧坑の位置を認定すること、同時にボーリングあるいは物理探坑等方法によりまして、旧炭坑並びにその流水状態を知悉する必要があろうと存じます。またこれを励行せしむるためには、かの探坑奨励金のごとく、経費の面から何らかの補助政策をとる必要がありはせぬか。なおまた物理探抗装置に関しては、特に学界を動員する等、すみやかにこれを研究、完成する必要がありはせぬかと思います。この点どのようにお考えになつておりますか。
  10. 小野儀七郎

    小野説明員 お答え申し上げます。今度の災害原因と申しますか、結局のところは排水が終りましてから実際のことが判明するわけでございます。先ほど御説明申し上げましたように、大体わかつておらなかつた旧坑に貫通したということであります。実は今の御質問にもございましたが、図面その他がはなはだ不完備でございます。戰災あるいは高潮のために流失したる等事情がございまして、まことに心細い次第でございます。従いまして現状におきましては、あるいは若沖炭鉱のごとく第一、第二の災害が生れないということは保しがたいのでございまして、はなはだ寒心にたえない状況にございます。そこで今回の尊い犠牲を意義あらしめるためにも、ただいまもお示しがございましたような、根本的な策を進めたいと存じておる次第でございます。  ただいま旧坑の探知に関しましてきわめて適切な御意見がございましたが、私どももさつそく現地を督励いたしまして、旧来の関係者等からできるだけ正確な聞込み、あるいは図面の供出をお願いするといつたようなことで、これを科学的に研究調査を進めるために、一体どういう地点をどういう方法調査を進めたらよいかというよう事柄調査を進めておるのであります。やはり電気探坑あるいはボーリングというようなこと、結局これを励行するということがこの問題のきめ手だ、かように存じます。  そこでこのボーリングでございますが、実はただいまの保安法の建前から申しますと、古洞に向つて近づいて参つた際は先進ボーリングというものを行わねばならぬということになつておるわけでございます。今度はこの古洞、旧坑を全然予知しなかつたのボーリングもちようどその箇所ではやつておらなかつたのであります。  なおこれを組織的に旧坑の所在しておると思われる、また危害が予想されるよう危險地域につきましては、組織的にボーリングを進めてみたからどうかというように段取りを考えております。ただいまも御意見の中にございましたように、たとえば長坑ボーリングをなし得る機械宇部鉱山一台しかないよう実情でございまして、それに危險と目される炭鉱を約八十もございます。かようなわけでございまして、特に中小炭鉱にはそういつた新たな負担等の点も考えねばならぬのでございまして、できれば何らか助成の方法考えたいと目下研究中でございます。またこういう災害につきましては、結局技術の点をもつて解決するより方法がないのでございまして、学界の動員につきまして適切なお話がございました。われわれとしましても考究して善処したいと存じます。
  11. 多武良哲三

    ○多武良委員 第二は危險炭鉱指定についてであります。この種の災害発生のおそれある炭鉱につきましては、ガス炭塵爆発に対すると同様、危險度に応じまして、これら指定炭鉱に対しては旧坑の測定、保安係員の任命、先進ボーリングの励行、非常時に対する諸政策措置等々と、それぞれ法規によつて励行せしむべきではないかと存じますが、その点いかにお考えですか。
  12. 小野儀七郎

    小野説明員 お答え申し上げます。炭鉱方面災害対策といたしまして、従来もつぱら大きな災害原因となります、ガスあるいは炭塵爆発という事柄に主力を置いていろいろな施策を進めて参つて来ております。そこで今度は水でございますが、水の災害はたとえば前年の統計によりますると、件数もきわめてわずかでございます。またこれによつて死亡というものも二十四年の統計はたしか十八名、全体の約二%程度でございます。しかもおもにこれは台風とか洪水というものに関連しての災害が多かつたのでございますが、海水の場合は冒頭にも申し上げましたように、いろいろ予兆と申しますか、前兆が必ずありまして、従つて退避する余裕があつた事例が多いのでございます。ただいまお示しがございました通り、今回の海底、しかも旧坑の水によつてかほどの災害を見たのはあまり前例を聞かないのでありまして、従来保安規則等によりまして対策を講じておりますのは、かつてのいろいろな災害の場合を実情によりまして、ケースをキヤツチしまして、それをアレンジして、規則等ができておるのでございますが、今回の事例に対しましては、実は若干不用意だつた点がないわけではなかつたのでございまして、私どもとしましてもこの事件を鏡といたしまして、いろいろ新たな対策を用意せねばならぬと存じております。ただいまの指定制度でございますが、やはりガス等事例に準じまして、旧坑の錯綜した危險地帯は、特別に監督部指定下に置きまして、特殊な管理、監督のもとに置くことが必要ではないかと考えております。これらの点もいずれ御指導をいただきまして進みたい、かように存じます。     〔委員長退席中村(幸)委員長代理着席
  13. 田代文久

    田代委員 先はどの説明を聞きますと、私どもしろうとから考えましても、堀つてはならないところを堀つて盗掘した結果、旧坑にぶち当つたということが言えると思うのですが、もしそうであるといたしますと、これは監督官庁としましても、政府としても重大な責任を負わなければならない。この盗掘をはつきり認められるかどうか。鉱業法により、あるいは保安法によりますと、掘りてはならないところに出ない限りは、当然これは旧坑にぶつかるわけはないのでありまして、新沖ノ山と今度の若沖炭鉱がくつついて、片方の旧坑から水が来るということはとても考えられないのですが、それが来ているということは、明らかに盗掘という事実があつたということになると思うのですが、その盗掘を認められるのかどうかということを、まず質問いたします。
  14. 小野儀七郎

    小野説明員 お答え申し上げます。予期せざるところに水が出たのでありまして、この実情先ほど答弁中にも申し上げましたように、結局揚水が終りまして実地に当つて実際の事態が判明するのでございますが、先ほど来御説明申し上げた点によりまして、ほぼ推測できますことは、ただいま掘つております地域図面通りであるといたしますれば、かつての十数年前の採掘跡に、ただいま御質問にもありましたような侵掘ということが考えられはしないかということに相なつて来るわけでございます。一切の事態揚水が終つて判明することでございますが、さように推測されるのであります。
  15. 田代文久

    田代委員 どうもそういうことでは、実際に坑内に命をかけまして働いている従業員にとりましては、安心して日本の石炭産業のために掘ろうということはできないのであります。先ほどの説明によりましても、政府なり監督官庁としては、大体図面だけでこれをまかせられておるのかどうか。とにかく提出して来る図画によつて、大体行つてはならぬところまで行つていないと、あつさり片づけられておるのかどうか。実際に現場において、こういう危險区域だから、人民に対してこういうことがあつたらたいへんだ、そういう重要な観点から、詳細に監督をされて、適切な処置をとつておられるかどうか。図画だけの処置によつて安心されておるかどうか。なお犠牲者に対して大体どういうふうな措置をとつておるか。それから責任炭鉱の個々の責任者だけに負わせようとしておるのか、そういう点についても御質問いたします。
  16. 小野儀七郎

    小野説明員 お答え申し上げます。実はただいまも申しましたように、古い新沖ノ山採掘昭和十五年に終つております。ほぼ十年以前のことに属するのでございますが。当時の鉱業警察と申しますか、当時の監督からいたしますと、今日のように一々現場監督官が巡回しして、掘つておるすみずみまで足を運んで、現地に突き詰めるという監督の仕方は、以前はなかつたわけでございまして、そこらの点に実は役所に出ておりますところの図面と、実際の掘採と、これが吻合しなかつたよう事例が多々あるいはあつたかと思われるのであります。それらの点は監督のやり方といたしましては、多少遺憾の点があつたということが言えるかと存じます。それらの遺憾の点をなくなすと申しますか、尊い犠牲を生ずるよう事態を引起さないがために、保安法というものができまして、今度は監督官が定期に、かつ坑内のすみずみまで足を運びまして、図面と実地と突き合せて監督して参つておるので、今後はこういつた事態を引起したくない、かように存じておる次第でございます。  またただいまお話のございました死亡者に対しましては、まだ総体としましての的確な措置は報告して参つておりませんが、当面応急の家族等に対する手当等の措置は進めて来ておるように聞いております。  また責任問題でございますが、これは結局のところ事態原因等が一切判明して、調査が進んだ上のことでございますが、先ほど来御説明申し上げました通り、現在の権利者等も、この旧坑であるというようなことを全然予知せずにおつた事柄でございますので、そういつた方面の責任もあるいは問題にならぬのじやないかと思われます。また役所といたしまして、一般的に図面の不備等をおろそかにして参つた点はあるのでございますが、戰災等ございまして、図面等も焼け、あるいは水害で流出するといつたよう実情もございますので、役所方面といたしましても、はなはだ遺憾ながらいたし方なかつたよう実情でございます。
  17. 今澄勇

    今澄委員 今のいろいろのお話を聞いて大体明らかになつたのですが、第一点として伺いたいのは、若沖炭鉱の問題のみならず、桜山炭鉱沖ノ山炭鉱も、宇部、小野田地区における炭鉱は、そういつた被害がこれまで頻発したことは御承知の通りであります。幸いにしてあまり従来人的な損害がなかつたのでありますが、これまでも頻発しておる。沖ノ山炭鉱のごときは、相当これに対して国家的な立場から援助もしておるし、相当な金もつぎ込んでおる。こうした事態が頻発しておるにもかかわらず、今度こうした事態が起つたということについて、首藤政務次官なり、通産省全般の立場から、一体どういうふうにお考えになつておるかということを伺いたい。  それから第二点は、最近の中小炭鉱は御承知のように落盤その他で非常に生命の危險が多いことは、新聞にこのごろ連続出ております。そこに元の鉱山保安局長さんもおられるが、今度できた新しい保安法は、その保安法のきめられている通りに大体これが実施されておるかどうか。最近のこのようないろいろな災害について、この保安法では不備な点があるかどうか。現実に保安法が施行しているところを実現するのを拒むものは、その炭鉱の経理状態なのか、あるいはこの保安法に予算が伴つておらないためなのかというような点について、前局長も新しい局長さんも御意見があればこの際承りたい。  それから人命というものは非常に大事なことで、こういう鉱山の災害によつて人命が失われるということについては、今の御答弁によると何らこれに対する責任のことについては、はつきりしたことは出ておらぬようですが、労働省とあなた方の方とは、これらの犠牲者の問題について協議をなさつておるかどうか。  それからこれらの保安関係の仕事は、労働省へ移管したいという意見が労働省側から出ておるが、今日このようないろいろ出て来るこれらの問題が何ら正確に今後もやれないということになりますと、これらの行政と労働行政をにらみ合せてどういうふうにするかということも問題があるが、それらの点について御見解があれば、政務次官なり資源庁長官なりから御意見をお聞かせ願いたい。以上四点御質問いたします。
  18. 首藤新八

    ○首藤説明員 ただいまの今澄委員の御質問のうち、事前に予知し得なかつたかどうかということが第一点だと思いますが、これは先ほどから保安局長から詳細に御説明申し上げました通りに、今回の災害に対しましては、まつたく予知する方法はなかつたということに帰着するのであります。従つて鉱業者に対しましても、あるいはまたその現場監督者に対しましても、責任を追究するところの基準がないというふうに政府では考えておるのであります。しかしながら、それだからといつて今後このまま放任するというようなことでは、幾多の災害を惹起するおそれがありますので、これは先ほど局長から申されました通りに、今日までの保安対策の目的が主としてガスであるとか、あるいはまた炭塵であるとかいうような過去において事故の起つた原因を対象とした法案をここにあげておるのであります。従つてこの災害にかんがみまして、近く水という問題に適応するような法案を修正いたす時期があり、またそうしなければならぬと考えております。  最後のこの保安行政を労働省の方に移管したらどうかという問題でありますが、これは御意見として拜聽いたし、今後愼重に検討して行きたいと考えております。
  19. 岡田秀雄

    ○岡田説明員 ただいま政務次官より御質問に対してお答えいたしたのでありますが、私からも若干補足させていただきたいと思います。宇部地区におきまして水による災害が頻発いたしておりますことは御指摘の通りでございます。従いまして保安法といたしましては、海の底を掘る炭鉱に対しましては、特別に危險予防の必要があることを考え、單なる普通の炭鉱におきましても、いかなる方法で掘るかということにつきまして施業案というものを出させておるのでありますけれども、海の底を掘る炭鉱につきましては、特に特別掘採契約というものを出させまして、さらに詳細なる検討を加えることにしておるわけであります。海底からどのくらいのところまでは掘つてはならぬとか、あるいはもう少し種々雑多な特別な規定が設けられているわけであります。  それから海の底を掘る炭鉱でない炭鉱でありまして、宇部特有の事例、先ほどの御質問で御指摘がございました桜山炭鉱と申しますものは、海の底を掘つている炭鉱ではないのでございますが、陸上の炭鉱でありながら、その炭層が何枚もあります。すでに上の炭層は掘りまして、さらにその下の部分を掘つておるのであります。そうすると水を頭の上に置いて掘つておりますので、やや海底炭鉱に似ているのでありますけれども、これはいわゆる古洞の関係の炭鉱になりまして、これは従来の規定から申しますれば、先進ボーリングをやることによつて被害の防止をするをいうことが唯一の規定のようになつていると思うのであります。その海底炭鉱——海底という今度の場合も海底炭鉱でございますけれども、被害は海底炭鉱のゆえにできたのではありませんので、古洞から水が出たという意味から申しますれば、かつての桜山炭鉱災害とやや似ている申してよいと思うのであります。従いまして、私の考えから申しますれば、古洞による水の災害ということが、ちようど現在の保安法に基きまする保安規則の盲点じやないかと思つておるのでありますが、海の底の炭鉱はやや万全の態勢ができております。沖ノ山炭鉱がかつて水を出しまして、人命には被害はございません、でしたけれども、国家の宝ということからいいますれば莫大な損害を出したのでございますが、この方に対する諸規定を、古洞炭鉱に対しましてさらにどの程度に適用できるか、また根本としてどこに古洞があるかを調査する点につきましては、すでに保安局長から御答弁いたした通りであります。それらの点をにらみ合せまして、法規的にも整備すべき点があるのじやないかと考えておりますので、特に保安法におきましては鉱山保安の審議会がございまして、各界の專門家がおられるわけであります。この方面と十分に連絡いたしまして、最も早き機会にこの点についての法制を完備いたしたいと思うのであります。  それから、保安法の施行上、これがちやんと法律にきめてある通り保安が行われているかどうか、もし行われておらぬとするならば、何がこれをじやましておるのかという御質問がおつたと思うのでありますが、この保安法は、従来の鉱業警察規則から申しますならば非常にレベルの高いことを規定いたしておるということが第一点。次に第二点といたしましては、戰争中特攻的な採掘を各炭鉱、鉱山に命じておりましたために、その山の状態は非常な荒廃を出しておつた。従つてこれを急速に回復するためには、どうしても職員を含めまして中において働く労働者の方々みなの人命を安全にすると同時に、国家の公利を失わないようにしなくちやならぬというよう観点から、この鉱山保安法をつくつて参つたのでありますが、何しろそこに現状と法規のねらいとの間に大きなギヤツプがあるわけでありますので、法律ができましたその日からただちに法規の要求しまする通りに強行いたしますることは、山の経済、山の資力、またひいては国家的に考えましても、かえつて逆効果を来すこともあり得ると考えられましたので、一定の施行期間を置きまして、その間もつぱら法規の精神の宣伝なり普及なりに努めておつたわけでありまして、現在でようやく一年たつたわけであります。大体は緒についておると存ずるりでありますが、ただガスが中にございまする炭鉱に例をとつてみまして、その切羽並びに切羽に関連しまする区域における一切の機械を、保安法にきめておりまする通りに全部耐爆型に直せということを強行いたすといたしますなば、こなは現在の山の資力の点からいつて非常にむりでありまするし、また受けるメーカーの方でつくりきなぬという問題もございまするので、これらの点につきましても、切羽において最も危險なところにおきまする機械は、どうしても短期間に直せ。それよりやや危險度の少いところにおきましては、今の検定規則からいえば多少不十分であるけなども、まずまず耐爆的にできておるものなら、しんぼうしてやろうというようなぐあいに、大体の経済の状況とにらめ合わしながら、最短時間に所期の目的に持つて行こうと努力しておるわけであります。お聞き及びと存じますけれども、目下鉄と石炭に関連いたしまして、石炭の合理化をやろうということから、合理化資金を山の方へ出したいということで、着々と準備を進めておるわけでございます。これがもし実現することに相なりまするならば、この炭鉱の合理化資金というものの中には、保安に必要なる施設の改善費は不可分に含まれておりまするので、この経済上の問題も、これができますれば、あるいは一挙に解決し得るということも期待されるわけであります。従いまして、保安法施行後大体一年有余を経たということと、漸次緩急に応じて施設の改善を命じておるという点と、今私どもの方で各方面の御盡力を得まして進めておりまする合理化資金が実現いたしまするならば、さらに保安法の設備上の問題は完璧になり得るようになるのではないか。残る問題は労働者の教育の問題でありまして、これは一朝一夕には参りませんけれども保安法に基きまして保安職員の講習会等もいたしておりまするので、これも日ならずして成果を見るだろうと考えておるわけであります。     〔中村(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  20. 今澄勇

    今澄委員 いろいろ詳細な資源庁次長の御答弁でよくわかりました。私はこの鉱山保安法ができるときも、これに対する経済的な裏づけがない、さらに中小炭鉱に対する政府がそのとき言明した復興金融金庫の貸出しとか、あるいは日銀の別わくの融資とかいつた合理化資金、並びに保安設備に関する資金の融通についても裏打がない。さらに政府が派遣される職員についても、もう少し有能にして、しつかりした人間を数多く派遣しなければならぬのであろう。鉱山保安行政に関する政府の予算も、この法律から見る限り少いであろうという数々の点を、この保安法成立のときに質問したのであるが、そのときの速記録には、それからの点には心配ないという答弁でございましたが、今の次長のお話を聞いて、われわれが杞憂しておつたものがやはり依然として残つており、しかもそれらのものが、いろいろの問題はあるけれども、こういつた災害を起す原因になつておるということは明らかになつたと思います。われわれもこれらの鉱山保安について今後そのやり方を検討し、政府の方の改正案についても至急出していただいてこれをわれわれは十分論議したいと思いますが、最後にこれらの鉱山保安の問題は、やはり中小炭鉱などに関する特にこれらの設備並びに保安費用の調達ということが問題なんで、今の合理化資金が実現すればうまく行くであろうというお話でありましたが、これらの合理化資金はうまく行く見通しが一体あるか、どうか、政務次官からお伺いしたい。  もう一つは、現在の局長からこの三十数名の災害者に対して、これを鉱業権者がどのようにするかということとは別に、これらの者に対して政府として何らか対策をお持ちになつておればお聞かせ願いたい。これは全部鉱業権者に一任で、何ら政府はこれにあずかり知らないということであるのかどうか。それをひとつはつきり聞きたい。  もう一つは、この問題についてこういつた炭鉱労働者の災害関係が現在通産省にあるゆえんは、鉱山技術並びに特殊ないろいろの知識が労働省の職員にはないであろうというところで、それらの技術があるからということで通産省に置かれておるわけであるが、それらの技術を持つておる通産省において災害が防ぎ得ないということになると、これは労働者の保護を專門に担当する労働省の方がぐあいがよいのではないかという結論になつて来るが、労働省といろいろ局長はこれらの問題についてお話をされたことがあるかどうか。それから今の技術と労働者保護の立場から、局長は虚心坦懐に今後の行政の上にあつて、もし通産省に置かれれば、技術的見地から十分これらのものを防止し得るという確たる自信と、労働省にあるのと通産省にあるのとでは、これこれこのような得失があるというようなことがおわかりならば、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  21. 首藤新八

    ○首藤説明員 合理化資金の問題でありますが、まだ最終的な決定はいたしておりませんけれども、安本並びに大蔵当局と再三折衝を進めておるのでありまして、今日までの折衝の状態から考えますと、ごく近いうちにこちらの起案しておるこの問題の予算が決定するのではないか、かよう考えておるのであります。
  22. 小野儀七郎

    小野説明員 ただいま災害者の事柄に関しまして御質問でございますが、今回の不幸にあいました方々には、それぞれ所定の労災保險が支給されるわけであります。たしか一人五十万円と存じますが、なお会社等も応分の見舞等の処置がとられているはずでございます。  また労働省の関係でございますが、実は私まだ新米でございまして、労働省の幹部の方とも実際のお話合いの機会があまりないのでございますが、ただいま御質問になりました、特別な技術を要するので、通産省においてやはり所管して行くことが、今後の炭害を減少あるいは防遏せしむる道であろう、かよう考えております。
  23. 岡田秀雄

    ○岡田説明員 労働省との関連につきましてちよつとお答え申し上げたいと思います。私、実は昨年の五月に鉱山保案局が初めてできましたときに局長を拜命いたしたのでありまして、この鉱山保安行政が当時の商工省にあるべきであるか、労働基準法を所管いたしております労働省にあるべきかということにつきまして、二十二年の暮から二十三年一ぱいにわたつて、各方面の角度から、また各方面のお立場からいろいろと論議を盡されました結果、鉱山におきましては生産と保安というものは一体不可分をなしておるのであり、これを二つわかれたところで所管して行くことは、保安を確保するという見地からのみ考えましても、非常に不可能なことだ。従つてやはり生産を所管しております商工省においてやるべきである。しかしながら、生産と技術とは不可分だとは申しながらも、その増産あるいは生産ということがやはり山の見地から申しますれば直接経済にひびきまするので、往々にして生産のために保安が遅れをとる。あるいは目先の十円の方が先の百円よりはよろしいというふうな考え方も往々にしてありがちでありまして、それではどうもなりませんから、やはり生産を担当いたしまするところの部局と独立に保安を所管いたしまするところの部局をつくつて、そして保安責任者をちやんと設けまして、その配下に直結の部下を各地域地域に持たせて、保安は一つの一貫した系統をもつて遂行して行く。しかしながら先ほど申しましたように、生産と保安とが不可分一体であるという関係から、あるいは資源庁長官あるいは商工大臣という最高の方がその両者の上におられまして、寛嚴よろしくこの両者のあんばいをとるということがこの鉱山保安の最も理想の形であるというふうな意味合いから、結局昨年の五月の十六日に議会を通過いたしました鉱山保安法におきましては、この所管を商工省、現在の通商産業省に置くということに御決定を願つたように承知いたしておるのであります。その後ちようど今度の議会で御審議願つておりまする鉱山法の改正法律に関連いたしまして、七つの追加鉱物が出ておるのであります。これは従来から申しますると、労働省の所管になつてつたのであります。ただいまの鉱業法と鉱山保安法の関係からいいますと、指定鉱物になりますと自動的に鉱山保安法の所管に入りまして、労働基準法からはずれることになつておるのであります。その間に関しまして、労働省と多少の意見の相違を来したのでございまするが、先ほど来、るる申し上げましたような私どもの信念、ならびにその鉱山保安法が施行後、われわれが努力しておりまするところの実情をるる御説明いたしましたところ、労働省の方におかれましても、なるほどということで、その七つの鉱物もこの御審議願つておりまする鉱業法が通過いたしましたあかつきにおいては、鉱山保安の分野に入つて来るような了解が非常に明朗なうちにできたのであります。従いまして、私どもといたしましては、この労働省との従来の経緯から考えましても、また生産と保安との関係から特に労働基準法と別にわれわれが保安を願つております建前からいいましても、全技術人を動員いたしまして、さらにさらに保安のために邁進しなければならぬと確信いたしておるのであります。保安法ができました当時、陣容といたしましては二百九十五人の陣容で出発いたしたのでございますが、現在は四百六人に相なつておりまして、来年にはさらにそれが四百三、四十人になるような状態になつておりまして、陣容におきましても逐次整備いたしておりますし、その粒におきましてもさらに優秀者をとりそろえまして、御指摘のありました保安の欠陥なきように努力して参りたい、かように存じております。
  24. 多武良哲三

    ○多武良委員 次にそれでは旧坑の探知その他この種災害の予防、災害発生時の措置等に関する共同研究と申しますが、相互扶助等のために、府県地区における関係官庁当局、業者、学識経験者等を打つて一丸といたしました、かりに名前をつけてみると水害対策協会というようなものをおつくりになつてはどうかと思いますが、この点政府はどのようにお考えになつておりますか。
  25. 首藤新八

    ○首藤説明員 多武良委員の御説は非常にごもつともだと存じているのであります。政府の方におきましても愼重に考慮いたしまして、なるべく御趣旨に沿うような何らかの機関をつくることにいたしたいと思います。
  26. 多武良哲三

    ○多武良委員 最後にただいま同僚今澄委員からもいろいろ御質問がありましたし、それから次長からもるる御説明がありましたが、近ごろ世間の一部では保安局廃止の声もあるやに承つておりますが、元来保安局というものは鉱山保安行政を確立するために、ただいま次長が説明されたように、生産に関する行政機構と独立した保安行政機構を創設すべきである、これは労働組合を初め業者、技術者等の熾烈な要望に基いて設立されたものであると存じておりますが、はたして所期の目的を達成しつつあるか、創立後における保安の成績はどうであるか、目的達成のためには、さらに拡充強化する必要があるのじやないかと思います。若沖炭鉱の天災のごときも、いろいろと先ほど来御説明を承つておりますと、前後の事情を判断いたしまして、一応やむを得ないというふうにも思われるのでありますが、広島の鉱山保安監督部をさらに強化せられておつたならば、災害の予防あるいは発生時の善処等によつて災害を未然に防止し得られたのではないかと思います。ここでこの種災害の絶滅を期するために、保安監督官庁の陣容を強化し、通商産業省のもとにおいて、保安関係官庁の拡充、強化が私としては非常に大事じやないかと思いますが、その点ひとつ政務次官からしつかりした御返事を承りたいと思います。
  27. 首藤新八

    ○首藤説明員 保安局廃止の問題が行政管理庁の方で取上げられているということは、かすかに聞いたことはありますが、正式にさような交渉を受けた事実はないのであります。と同時に保政局の必要性がいかにあるかということは、ただいま岡田次長からるる御説明いたしましたので、御理解になつたことと存ずると同時に、ただいまの御説のごとく、この重要性にかんがみますと、今後ますます強化しなければ相ならぬと存じているのであります。さらにまた、この保安局が発足以来、日なおわずかに一年にすぎないのでありますけれども、先ほども局長から申しました通りに、昨年八月以来の事故は非常に減つて参つているのでありまして、この事実に徴しましても、保安局の設置が非常に有意義であつたということははつきりいたすのであります。かたがた今後一層内容を充実いたしまして、所期の目的達成に邁進する措置を講じて行きたい、かよう考えております。
  28. 風早八十二

    ○風早委員 非常に巨大な問題でありますから、私も関連の質問をしたいと思う。まず先ほど通産次官のお答えの中に、予知する方法はなかつた。これは通産次官がそう言われるわけでなくて、大体そういうよう事態だということなんでありますが、これははなはだ無責任な話である。予知する方法は必ずあつたと、私どもしろうとから見ても考えられるのであります。これは今まで幾多の炭鉱出水の問題、特にまたガス炭塵の場合、それからこの前尾去沢の——これは大分古い話でありますが、昭和十年であつたか十一年であつたかはつきり記憶しませんが、そのころ秋田県の三菱の尾去沢鉱山で、やはり炭滓のプールが決壊して、そして何千名の家族が犠牲になつた。ああいうふうなときでも、たいがいの場合、やはり当該炭鉱のエンジニヤでありますとか、あるいは労働者でするとか、これは大体わかつている。もうあぶないあぶない、ここにひびがいつているからいまに欠壊するぞということはみんな言つており、また会社にも訴えておる。それでもやらない。むしろそういうところに問題があるのでありまして、これは今度の場合でもわれわれは予知し得たか予知し得ないかということについては、やはりこの若沖炭鉱の技師や、それからまた当該採炭区域にあつた採炭労働者でありますとか、そういう人たちからもう少し証人としてはつきり聞かない限りは、これは容易に予知し得なかつたということは断定できないと思う。私は予知し得なと思う。そういう点でこれは予知し得なかつたということから、しかも責任の問題については、その責任の回避をなされるということになれば、これは非常に問題だ思う。現に今通産次官は責任追究の基準がないではないかというようお話でありましたが、それははなはだ無責任なお答えではないかと私は思う。これは絶対に予知し得たという点も考えて、ひとつどこに欠陥があるかを考えていただきたい。旧坑の水が入つたというのですが、その間がどうなつてつたかということが、先ほどの御説明では十分わからないのでありますから、これは今むしかえしておつてもしようがないのですが、そういう点に一つの大きな穴があると思います。しかしそれだけではなかろうと思う。まだまだ私はいろいろな方面からこの予知し得たということを、立証するような事実が出て来るだろうと思うのでありますが、この点は特に保安局長にお願いして、十分に手を盡していただきたい。先ほど多武良委員から水害対策のための委員会をつくつたらどうかという発育がありましたが、政府もこれに不賛成ではなかつたようでありまして、けつこうであります。しかしその場合にも、何よりも当該の当面そこに当つております技師や、さらに労働者、こういう人たちが参加してやらないと、やはりこれはほんとうのものにはならぬと思います。その炭鉱のあらゆる條件を一番よく知つているのはやはり当該炭鉱の人たちでありますから、そういう人たちも入れた委員会をつくる、これは非常に私どもも賛成であります。ぜひそうしていただきたいと思います。  それからもう一つは、採炭計画そのものに相当むりがあつたのではないかということを感ずるのです。つまりどうでもこうでもある納期までにこれだけのものを掘らなければならないというような非常にむりな注文があり、そうしてこれを行うためにまた労働者、採炭夫を猛烈に先へ先へと切羽をつつ込ませて行つた。こういうことも考えられるわけでありまして、そういう点はいかなる事情なつつたのでしようか、この点をお伺いいたします。
  29. 小野儀七郎

    小野説明員 ただいま風早委員からまことに適切な御指摘がございまして、私どもといたしましても、責任の所在を明確にするために、災害当初は救い出しということに全能力を集中しておつたのでありますが、幸い先ほどの説明にもありましたように、水も漸次減水して参つておりますので、最近ようやく捜査の段階に入つておりまして、嚴重に事実を究明し、責任があれば所在をはつけりさせたい、かように存じております。ただ本件の災害の数日前に、沖ノ山が一部水没しております。その際等におきましては、附近の地面がある時を経て続々陥没しておりますので、大体危いということが予知し得たわけであります。また従来ございました海底の陥没からの海水の湧水、これなどは最初水がかなり多くなつた。また時を経てそれが泥水になつて出て来るといつたような兆候があつたように聞いておりまして、それで沖ノ山等の大きな陥没出水の場合にも、四百人も退避して犠性がほとんどなかつたといつたよう事例もあつたわけであります。今度の災害におきましては、先ほど石炭課長から御説明申しましたように、当該の現場におつた二名の話によりますと、水は多いには多いのであるが、よその切羽の面から比べて、特にその場所が多かつたということは言えないというようなことも聞いて参つておるのでありまして、それらを考えまして、今回のケースは予知しにくかつたということがあるいは言われやしないかとかように存じます。  また第二点といたしまして、防水対策でございますが、それにつきましては、御指摘のように、結局現場の人が、何と申しましても力があるわけでありまして、十分御意見の点を取入れて考えたいと存じます。  第三の採炭計画にむりがなかつたかどうか、この点につきましては、石炭課長から御説明いたしたいと存じます。
  30. 荒木忍

    荒木説明員 御説明申し上げます。出炭状況は七月二千九十トン出しております。八月に千二百九十トン出しております。九月に八百トン出しております。先ほどは約二千トンと申しましたが、二千トン出すのがこの山の採炭計画になつております。災害の起りましたのは十月の三十日であります。約二千トン出る形でやつてつたわけであります。むりであつたかどうかという御質問でありますが、二千トン出すのが大体の平均の形でありまして、別に二千トン以上を出そうとしておつたというようには聞いておりません。
  31. 風早八十二

    ○風早委員 一番最後の点からちよつともう一度明らかにしておきたいのですが、二千トン出すのが計画であつたのに、九月には八百トンしか出ておらなかつた。これはやはりいろいろな條件を考えなければならないと思います。いろいろ首切りやその他のことで、労働人員の面でもいろいろな変動がありはしないかと思う。そういうような点、その他いろいろあると思いますが、特に実際の作業の面で、労働者側にいろいろなそういう事情があるというようなことも十分に考慮した上で、むりであるかどうかということは考える必要があるのじやないか。そういう意味ではちよつと今のところではわかりませんが、しかしこれは通常の状態でやつてつたという場合には、それはもちろん計画にむりがあつたということは言えないと思う。その点ではたして通常の労働状態であつたかどうかということは、ひとつよく検討していただきたいと思います。  それからさつき保安局長が、予知し得なかつたわけではないということを率直に申されましたことは、われわれはきわめて了とするわけでありますが、それだけにやはり保安局長としても十分な責任があるということは、これは認められておるのだろうと思います。結局予知し得たものを予知することができなかつたというのは、結局は監督の問題であります、しかしそれにつけては、はたして現在の保安能力というものが、人員の面でも費用の面でも、実際十分な保安をやつて行く面に欠けるところがあるというようなことであれば、これはまたこれを要求するのがむりだろうということもあると思います。従いまして先ほどいろいろ人員の点もありましたが、人員も前よりはずつとふえておるように思われますが、実際にそういう鉱山保安法に基いた所期の目的を離し得るのに今の費用で十分なのかどうか、そういう点でこれは大蔵当局との関係もあるでしようが、どういうふうな見解を持つておられるか。この点に関連してさらに先ほどから一番問題になつております合理化資金の問題、これについて資源庁次長にお尋ねいたしますが、合理化資金が十分に保障されておるのか。これはこの前の例の小滝炭鉱、われわれから見れば明らかに不正なる融資資問題もあるわけでありますが、しかしああいうふうなボロ炭鉱に二千五百万円の見返り融資が出るというふうなこともありますから、大いに潤沢に、これは中小炭鉱にも一般に出るものと考えてもいいように思いますが、こういう点で満足しておられるかどうか、こういう点はわれわれ通産委員の立場から、やはり通産省の行政事務が十分円滑に行くように、われわれとしても十分な関心を持つものでありまして、そういう点で率直に現状を吐露いたしていただきたい。以上一応お答えをお願いします。
  32. 小野儀七郎

    小野説明員 ただいまあるいは私の言葉が足りなかつたかとも思いますが、本件が予知し得たということは申し上げていないのでございまして、本件に類似の沖ノ山出水事故等が、いわゆる前兆がはつきりしておつたがために人命の損傷がなかつたという点を申し上げて、かえつて本件が予知し得なかつたのであるという点を、切羽の出水の場所におつて現場員からの口裏を引用いたしまして申し上げたつもりでございます。その点誤解のないようにお願いいたたのます。  また保安の関係の要員並びに予算との関係でございますが、現状におきましてはなはだ意に満たない点はその通りでございますので、せつかく予算その他で努力しておるのでございます。先ほど次長からもちよつと御説明がございましたが、来来度の予算におきましては、人員におきまして五%程度の増、経費におきまして約二割の増加というものをようやく予定されておりますので、これらの点を御協力をお願いしたいと存じます。また特に本件に関連いたしまして所要の経費等も考えておるのでございますが、この点はまだ折衝等に至つておりませんので、よろしく御了承願います。
  33. 岡田秀雄

    ○岡田説明員 合理化資金の関係につきましてお答え申し上げたいと思います。炭鉱に対しまする長期の設備資金といたしましては、各会社等におきまして銀行から若干のものは借りておるかと思いますけれども、現在のところおおむね見返り資金にたよておるよう状況でございます。本年度におきましては二十二億円というものが炭鉱に対する見返り資金として予定され、おおむねこれが貸し出されておるのでございますが、現在の見返り資金は、直接炭鉱に国が貸すという形をとつておるのでございます。私どもが目下鉄鋼並びに炭鉱の若返り合理化、そしてこれを国際的な基礎において石炭を出させようという意味のことを考えまして、合理化三箇年計画に基きまする資金を算定いたし、そして安本なり大蔵省なりと数字を検討いたしまして、この資金を確保いたそうと考えておりまするのは、直接われわれが炭鉱へ金を貸そうというのばでございませんで、大体三箇年間に日本の炭鉱を健全なものにするためにはこのくらいの資金が必要であろうというわくを押えまして、そのわくを銀行に預託するなり、あるいはたとえば興業銀行の割興でございますが、ああいうふうなものを引受けるのでも何でも形はよろしいのでございますが、銀行に長期資金の源をつけてやりまして、それを炭鉱に対してこれだけのわくということ、あるいは貸出しの期限をどうするとか、あるいは金利をどうするとかいう程度のことはあらかじめきめるわけでございますけれども炭鉱等に対します貸出しは、銀行と炭鉱との間におきまする商業取引によつてきめてもらうという筋道で進めておるわけでございます。従いましてこれは従来の見返り資金のやり方とは根本的に考え方をかえてあるわけでございます。われわれが現在構想しておりまするように実現いたしまするならば、先ほど申し上げましたように、炭鉱の合理化は保安の関係を無視いたしましては絶対に不可能な次第でございまするので、合理化のために金が出ますれば、保安の物的な設備はおおむね完了し得る、かよう考えておるわけでございます。
  34. 風早八十二

    ○風早委員 予知し得なかつたという問題でありますが、これはやはりこの問題の責任関係にも非常に重大な影響がありますので、もう一つここははつきりしてもらいたいのです。これは今まで現場員に聞かれたというのでありますが、それはある程度信憑できると思う。しかし現場員がどういう状態にあるか、その能力にも限度があるのでありまして、われわれ今まで落盤の場合であるとか、ガス炭塵の場合であるとか、こういう場合にはたいがいそれは客観的には予知し得るのです。しかし労働強化で非常に疲労しておつて、そのために予知し得ない。これはおそらく保安局長も認められると思いますし、実際現場での実情なんです。でありますから落盤なんかでも大体五分くらい前には、正常な頭を持つておればわかる。しかし非常に疲労困憊し、無我夢中で掘つておるためにわからなかつたというのが今までの実際の状態だといわれておる。ガス炭塵の場合でも、これは臭い臭いというところまでなつてつてもなかなか予知し得ないわけでありますが、これを的確に把握するような、つまり科学的に把握するような設備を置いておらない。たとえばインター・フエロメーターみたいなもの、これは高いからそういうものは省いて、たいがい勘でやつておるというふうなことであれば、これは現に危險が追つておるのに、そのまぎわまでやつておるからぱつと来るということになるのであります。そういうふうな実際の現場の労働條件がやはり最後に問題になると思います。そういう意味で予知し得なかつた現場員が言つたから、それを根拠にして予知し得なかつたということを言われるのは、監督官庁としてははなはだ早計ではなかろうかと思います。そういう点ではわれわれも材料を持つておりませんからあえてどつちとも断定することはできないが、あなたの態度の問題として予知し得なかつたのだという結論を出しておられるところに問題があると思う。そういう意味で将来の問題でもありますから、愼重に断定していただきたい。先ほど多武良委員も水害対策といいますけれども、その前に今度のほんとう原因究明のための委員会がまず必要じやなかろうかと考えております。  第二に保安資金と合理化資金との関係であります。なるほど合理化資金の中には保安資金が入つておる、入つておるべきはずなのだけれども、実際費目として計上されるにしても、それが実際に保安資金として使われるかどうかということは、実情を御承知の皆様方はよくおわかりだと思いますが、なかなか使われない。実際上は費目に上げておりました場合でも、保安資金というものはなるべく節約してほかへまわすというのが実情なのであります。これはどこの経営でもそうでありますが、特に炭鉱資本家が今までとつて来た態度、これは一貫しておる。そういう点、どこで保障を求めるか、これもやはり今の仕組みでは鉱山保安局がしつかりしなければやりようがないわけであります。そういう点でこれらの保障がなければいくら費目をこしらえても——費目をこしらえることは非常にけつこうでありますけれども、こしらえても実際はそうは行われない。災害の起る根本原因というのは、つまりこういう固定資本というものの節約に基いて超過利潤を得るという資本家根性にあることは明らかでありますから、その点を一体どこで抑えて行くか、そういう点について保安局長、保安監督官庁責任を持つておらなければ、実力を持つておらなければ、これはおそらく無効になつてしまう。そういう点は重ね重ね嚴重に要望しておきたいと思います。
  35. 小金義照

    小金委員長 お諮りいたします。今澄委員より特別鉱害に関する件につきまして発言の要求があります。鉱業法及び採石法に関係がありますのでこれを許したいと思います。いかがでありますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 小金義照

    小金委員長 御異議はありません。今澄君。
  37. 今澄勇

    今澄委員 時間がないので今日は簡單に政府側の御見解を聞いておきます。特別鉱害の問題は当通産委員会において、議会独自の案をもつてこれを通過せしめ、時の神田委員長代理の私案を中心に今日までやつて来たのでありますが、私が首藤政務次官に聞きたいのは、首藤政務次官は責任をもつてこれらの特別鉱害を断じて行うという話であつたならば、今日の段階においてその認定額は一体いくらになつたかということ、さらに総認定額の上において足らざるところを寄付金でやるというような話があつて、通産大臣からそれらの話が業者に伝えられたということであるが、これらの事実の有無、並びに通産省として一体どういうふうな目的にこれを処理する方針であるか。以上全般的な問題について伺いたい。
  38. 首藤新八

    ○首藤説明員 特別鉱害のその後の情勢は先般の委員会で一応御報告申し上げたと記憶しておるのでありますが、その後鉱害地の調査、並びにこれに対する判定等々、大体一応の終了を見たのであります。しかるにその鉱害の総額は当初の予定よりも相当増嵩いたしまして、結局従来の予算では四億前後の不足を告げるというような状態に相なつて参つたのであります。従つてこの際鉱害の復旧を縮小するかどうか。あるいはまた全般の單価といいますか、要するに見積り金額を低くして、つじつまだけを合わせるかどうかというようなこともあつたのでありますけれども、やはりこの際やる以上ははつきりやつた方がいいんじやないか。そこでどうしても足りないという金額の四億に対して、一応鉱山業者に寄付ということで醵出していただいて、つじつまを合わせることが一番安易な方法ではないかというふうに実は考えまして、一応鉱山業者に四億の御寄付をお願いしたのであります。その後まだ鉱山業者の方から御返答を得ておりません。この前の会合で実は私その席に出席していなかつたのでありますが、大臣がお話を申し上げたそうであります。大体趣旨は御了承願つておるそうでありますから、何とか御返答が近く来るのじやないかと考えておるのであります。もしこれがわれわれの予想に反しまして、御寄付が得られないということになりますれば、現在あります予算の範囲内で復旧事業を開始いたしまして、これは御承知の通り六箇年間の期限がありますので、今後の情勢並びにいよいよ不足すると確定したときにおきまして、またそれに適当するよう方法を講じたらどうか、一応かよう考え方をもつて進めておるのであります。なお詳細にわたつては炭政局長から御報告いたさせます。
  39. 中島征帆

    ○中島説明員 ただいま政務次官から御説明がございましたが、数学的に申し上げますと、これはきのう新しい集計ができた数字でございまして、全体の認定を予定しております金額は、前国会当初におきましては五十億という程度説明しておきましたが、大分ふえまして、七十五億余りになつております。内訳といたしまして、近く臨時国会で特別会計に直していただくつもりでありますが、その特別会計が本来的に復旧の責任を持つというものが、その中で五十七億であります。それからそのほかに、いわゆる自己復旧をいたしますのが一億四千万、合せまして五十八億七千万ほどが当初五十億ないし五十一億と言われておりました数字に相応するものであります。そのほかに十六億余りの金額が出ておりますが、これは認定の現地作業をやりました際に、特別鉱害と隣接いたしております地区でありますとか、あるいは従来配炭公団時代から工事を継続しておりますもの、そういつたようなもので、嚴格な意味で特別鉱害のレベルを高く切りますというと、入り切れないものでありましても、この際むりに切り離すということは非常に実情に沿わないといつたようなものでありまして、しかも特別鉱害の認定をすればば、相当多額の公共事業費としての政府の補助がもらえる。その残りのものはこれは一応予定されております特別会計の收入金額と別途に、関係の炭鉱等におきまして、これは市町村もございますが、そういうところにおきまして、いわゆる受益者負担としていくらか負担するというような話合いをつけましたものが十六億五千万円ほどございます。従つてこの十六億五千万円につきましては、特別会計に直接負担がかからないものでありまして、数字的には相当ふえておりますが、結局国費と受益者負担金でまかなうということで、それだけのものを特別会計の收入と別個に計上したわけでございます。これによりまして、全体の帳じりがどうなるかと申しますと、七十五億の鉱害復旧をしますために要する公共事業費が三十九億八千七百万円、約四十億ということになります。それから地方公共団体の負担いたしますものは五億四千百万円、残りが特別会計の負担になるわけでありますが、これが二十九億八千百万円、この中で、受益者負担金、自己復旧に関する炭鉱から若干余分にとることになりますが、その分を引きまして、結局関係炭鉱から十円ないし二十円の割合で徴收いたします金額が五年間に二十二億と予定いたしておりますが、そういう数字等をにらみ合せまして、最終的に特別会計において不足分の生ずるものが三億八千八百万円と一応予定されております。この三億八千八百万円につきまして、先ほどお話のありましたように、一応寄付金でまかなうということになれば、大体全額復興できるという見通しが立ちますので、そういうような行政をいたしたのであります。これは寄付金以外にもいろいろな方法がございますが、もしこれが最後の五年目にまで持ち越されるということになりますと、どれだけの工事が残るかという予想でありますが、これはかりに現在それぞれ事業別の認定額がありますが、この事業別の割合をそのままにし、たとえば土木事業につきましてもあるいは学校、鉄道、家屋、墓地、こういつたものに現在認定保証をされております金額の割合をもつて、ずつと一律に最後まで残す、こういうことになりますと、全体の工事額といたしましては約九億の工事額が残る。それから全然国家補助がないものだけ、たとえば家屋、墓地だけを残しますと、この三億八千八百万円、これだけの数字が最後に残る。最小限三億八千八百万円でありますが、これだけに圧縮することになりますと、結局非公共であります家屋、墓地だけが残る。もし公平に残すとすれば、金額がふえまして九億になる。こういうよう事情になるわけであります。最後に残りますものだけを、できるだけ初めの予定通りに工事を完成したいために、ただいまのところといたしましては、最も考えやすい方法として、寄付金のことを申し上げておるわけでありますが、もしこれが十分に参りませんでも、政府といたしましては、認定いたしました金額だけは、この五年間に使用できるように、いずれは何らかの措置を講ずる必要があると思うのであります。その点につきましては、また特に国会方面の御援助を仰がなければできないと思つております。
  40. 今澄勇

    今澄委員 あと質問がありますので、これで私はやめますが、今の特別鉱害の昭和二十五年度の工事については、その寄付金のあるなしにかかわらず、十分やつて行けるのじやないかと私は思うが、やつて行けるのかどうか。  それから今の寄付金の申入れについては、大体これは業界として快く出してくれるという見通しがあるかどうか。それから寄付金は、特別鉱害の修正案にも明らかにそのまま残つておるから、別段問題ではないが、これは強制力を伴うものであつてはならないのであるが、政府はこれに強制力を伴わしておるものであるかどうか。以上炭政局長に聞きたい。  それから首藤政務次官に聞きたいことは、この寄付金の申入れや、あるいはあしたお聞きしますが、肥料の価格の決定に対する通産省の態度等は、現在の自由経済社会にあつて、法律できめられない、一つの強制力を持たしたそういう寄付だとか、あるいは価格の決定における一つの抑圧というようなことによつて、乘り切つておるように見える。通産省はこれらについては特別鉱害のみならず、根本的な現在のそういう自由経済のもとにおける矛盾を、そういつたもので補つて行くということでは、少し国民の了承が得かねると思うが、これに対する政務次官の御見解を承りたい。  それから炭政局長にもう一つ、この三億八千八百万円の寄付金がもし集まらない場合においては、昭和二十六年度以降の計画を組み直して、修正案を出される意思があるかどうか、お伺いいたします。
  41. 中島征帆

    ○中島説明員 二十五年度の工事契約は、もしも寄付金もとれて、しかもこれが当初の年度から平均的に入つて来るという予想が立ちますならば、その場合と比べまして、寄付金がとれない場合には、九億の五分の一、一億八千万円ほどを工事額として計上するという程度でありまして、寄付金においては、全体の七十五億の五分の一の二十五億に対して、一億八千万円が落ちる、こういうことであります。それから現在寄付金に対しまして、業界ではそれぞれはかつて考慮中でありますが、情報といたしまして、必ずしも簡單にこれが進むようには考えられませんけれども、しかしできるだけ協力するという気分も一部にございまして、今後どういうふうになるか、ちよつと私推移を見ておるわけであります。なおこれに対しましては、もちろん当時大臣からお話をいたしましたときにも、寄付でありますので、決して強制的なものではないということをはつきり申し上げてあるわけであります。また法律上から申しましても、今後の取扱いにいたしましても、強制的にこれを推し進めるという意思はございません。なおこれが全然見込みがないという場合におきまして、計画を変更するかというお話でありますが、もし計画という言葉が数字的なことをお考えにあつておるとすれば、一応もう認定をいたしました以後であれば、この数字を不当に圧縮するということは、これは不可能だと思つております。もし計画ということが現在の制度そのものであるというふうなお考えであるとすれば、これはまたいろいろな点で考える余地があろうかと思いますが、認定額そのものを、全体の予算が足りなかつたということでさらに圧縮するということは、途中においては、すでに完了したものとの均衡を考えましても、非常に困難であると思います。
  42. 首藤新八

    ○首藤説明員 ただいま御質問の寄付を申し込んだ点でありますが、これは強制かどうかということは、炭政局長が今御説明申し上げた通り、まつたく懇談的でありまして、ただ鉱害復旧という点から、わずか四億円の不足することによつて、全面的に非常に大きな影響を及ぼすよりも、この際このくらいのことは共在共栄という点から、御寄付を願つた方がいいのじやないかという、ごく穏やかな気持から実はお願いしたわけであります。  同時に、もう一つの肥料の問題でありますが、これもなるほど今澄委員の言われる通り、自由経済に価格をすえ置かせるという措置は、事実問題として非常に矛盾があると思います。これはまつたくわれわれも同意見でありまして、好ましく考えていないのでありますが、ただどうも輸出の問題が非常に重く取扱われておるのでありまして、なかんずく農林委員会におきましてはこれがきびしく批判されておるのでありますが、われわれの通産省の考え方といたしましては、肥料はあくまでも増産いたし、内地の供給を十二分にいたすとともに、さらに飛躍して輸出を増進いたしたいという念願に燃えておるのであります。にもかかわらず、抽象的な数字を根拠といたして、内地の供給が不足するから、絶対に輸出はまかりならぬという意見が、非常に強いさ中に、いよいよ輸出問題に対して関係筋からメモランダムが出た。どうしてもこれは輸出しなければならぬという状態に立ち至りましたので、なるべく内地の市価にも影響を及ぼさないように、さらにまた一方において内地の販売価格よりもはるかに高い、輸出という一つの穴をあけることが、業界にとつて非常なプラスだ、そういうふうな考え方から、ここしばらくの間前値でごしんぼう願えぬか、そのかわりここに九万トンなりあるいは十万トンの輸出という一つの大きな穴があけられるのだから、これを一つの動機として将来積極的な輸出が継続されて行くことになりますれば、一面において二箇月間のしんぼうによるマイナスよりも、多量の輸出によるところのプラスの方が非常に大きいという実は考え方から、一応当面の輸出に対する批判を冷却せしむるといいますか、一応そういう批判を緩和するという建前から、こういう措置をとつた方がいいんじやないかという考え方をいたしたわけであります。幸いにいろいろ今日も農林委員会で鋭くこの問題は批判されておりますけれども、メモランダムの出た関係もありまして、近く九万二千トンの輸出が出ることになつておるのであります。従つて多少内地の売値をすえ置くことにはなりますけれども、それも十一月、十二月の一箇月間だけを実はお願いしたのでありまして、一月にはそれは及んでいないのでありますから、一方における九万トンの輸出の方が私ははるかに業界のために明朗なプラスになると実は考えておるわけであります。その点はひとつ御了承願います。
  43. 小金義照

    小金委員長 それでは鉱業法案及び採石法案について質問の留保せられたものがありますので、これが継続をいたします。中村幸八君。
  44. 中村幸八

    中村(幸)委員 私は先般の通産委員会におきまして、いろいろ御質問したのでありまするが、その際質問を留保した点がありますので、前会に引続きまして、若干お尋ね致しまして、その見解をただしておきたい、かよう考えます。  まずその第一は、多治見地区の耐火粘土の件でありますが、この多治見地区の耐火粘土につきましては、前会質問いたしました際に、鉱山局長は十分研究をするということでありましたが、その後どういう結論を得られましたか承りたいと思います。この地方の耐火粘土は前にも申しましたごとく、耐火度も低くその価格も低廉でありまして、その用途もさほど重要なものではないのであります。かつまな零細な企業家が大部分を占めておるというよう事情でありまして、これに鉱業法あるいは鉱山保安法を適用いたしまするときは、かえつて業者の負担が過重となり、その経営が困難となるおそれがありますので、耐火粘土は品質によりまして区別して、製鉄用副資材として用いられるような、耐火度が高い三十番以上のものは鉱物として、それ以下のものは鉱業法よりはずしまして、採石法の採石とする方が実情に合つておるように思うのでありますが、いかがなものでしようか、お尋ねいたします。三十番以上と以下とを区別して取扱うということは、実際問題としてたかなか困難だ、こういう御意見もありまするが、それならば耐火粘土というものは一体何番以上を言うのかと申しますと、学説では二十六番以上を耐火粘土としておりまするが、二十六番以上と以下とをいかにして区別するか、その区別が困難だという点から行きますれば、三十番以上と三十番以下の問題も、また二十六番以上とそれ以下の問題も同様だと考えるのでありまするが、お答えを願いたいと思います。
  45. 徳永久次

    ○徳永説明員 ただいまお尋ねになりました耐火粘土の範囲を三十番以上に限定したらどうかという問題でございまするが、この問題の起りとして出ておりまする多治見地区の特殊の事情ということは、私どもも十分承知いたしておるわけでございますが、それを法案でどういう調節をはかるかという点に問題の所在があるわけでございますが、いろいろ検討いたしましても、法案においてぜひ調節をはからなければならないということに相なりました場合には、ただいま御提案のありましたような三十番以上と未満のものとで線を引くということが法律技術的なり、また実際問題として一番弊害の少いやり方ではないかというふうに考えておるのであります。前に小委員会等でお話申し上げましたのですが、原案通り押しますことの現地に及ぼす影響というものも、私ども御了解で相当行ける点もあるのじやないかと考えますけれども、しかし非常に特殊事情でございますので、その案も、国会側の十分尊重しろという御趣旨もございますので、そうなりますれば、法案におきまして何らかの妥協をはからなければならないわけでございます。その際の手段として、ほかにいろいろな手もございますが、一番法体系その他に影響を及ぼさなくて、また実際上の支障の起らない限度の案としましては、最も妥当な案ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  46. 中村幸八

    中村(幸)委員 次にお尋ねいたしますが、現行鉱業法の四十一條には、鉱区税を納めないときは、主務大臣は鉱業権を取消すことを得という規定がありますが、本改正案におきましては、鉱区税を納めないということが取消しの原因となつておらないのであります。その理由をひとつ説明願いたいと思います。
  47. 徳永久次

    ○徳永説明員 鉱区税を納めない人に対しては、鉱業権を取消すという制度これは目的はあくまで税の完納を確保するというその便宜の手段として、鉱業法の中に従来入れられておつたものでございます。     〔委員長退席、多武良委員長代理着席〕  従いましてその性質から考えますならば、あくまでも税体系、税法規の一部を鉱業法が分担しておつたというかつこうに相なつておるわけでございます。法の整理の意味から申しまして、税金の滞納の分をとることは、税の体系の方でしかるべき措置というものもあるわけでございまして、現行法でありますような、納めなかつたらすぐ取消すというような行き方は、いわばいかにも権力を容易に振りまわして行つておるというような感じでもございますし、ほかの法令が税のことに触れることは体系上適当でないという趣旨と、それから国家権力の使い方が少し非民主的過ぎるというような意味合いから、新法におきましては、それを削除いたしまして、税の方の建前としまして、それぞれ税法を主管しておりますところで完納のための督促その他の規定を定めていただくという趣旨において削除したわけであります。
  48. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に土地の使用、收用の目的についてお尋ねいたしますが、現行法はこの第五十六條第一項第五号に「其ノ他鉱業上必要ナル工事又ハ工作物ノ施設」とありまして、例示主義をとつておるのでありますが、改正法案におきましては、国民の財産権の保護というような見地から目的を限定しまして、列挙主義をとつておるよう考えるのであります。そのことはまことにけつこうなことと思うのでありますが、改正法案におきましては、鉱業上ぜひとも必要であるところの大切な施設などを落してはいないかということを心配するのであります。たとえば百四條の使用の目的でありまするが、三号のところ探鉱のための必要なる機械設備の設置、それから四号に重油、カーバイドなど重要資材の置場、それから六号に、保安設備、石油及びガスの輸送管というものを追加する必要があるのではないか。それから百五條の收用の場合におきましては、四号に保安施設を追加する必要があると思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになりまするか、ちよとお尋ねしたいと思います。
  49. 徳永久次

    ○徳永説明員 ただいま御指摘ございました鉱業実施のために必要な各種の目的が、提案申し上げてある法案の中に漏れておるのではないかという御趣旨でございまするが、たとえばその中の探鉱あるいは工事の掘採作業に必要な設備の設置等は新法案の中でも、解釈で入る意味で実はつくつてつたのでございます。それからあるいは石油、ガス管等についても入るようなつもりでつくつてつたのでありますが、しかし代表的な鉱業の基本的な作業に該当します事項が明確に正確な字句で現わしておりませんということは、いささか不適当なきらいもございまするし、その点は字句におきまして修正することが適当ではあるまいかというふうに考えるわけであります。  なおただいま御指摘ございました鉱業用資材の置場の問題とか、保安施設等の問題につきましては、実は原案そのものにはその点までは入る意思で立案されてはいなかつたわけであります。しかし鉱業の実施のための基本的な作業の面でございまするが、その点までは入れることにする十分な理由もあるのではなかろうかと考えまするので、ただいま御指摘がございましたような点につきましては、政府部内としましても、原案をより明確にするとか、あるいは範囲を広げる点につきまして、所有権の尊重という点等も考え合せまして十分考慮いたしたいとえ考ておるわけであります。
  50. 中村幸八

    中村(幸)委員 次にお尋ねいたしますことは、試掘権の採掘転願の場合の処置のことでございまするが、試掘鉱区におきまして試掘の結果、鉱物の存在することが明らかとなりまして、かつその鉱量、品位が非常に優秀であるということで、採掘権の設定の出願をいたした場合におきまして、この採掘出願の許否が決する前に試掘権の存続期間が満了するということがあるのであります。この場合におきまして、採掘権の設定の出願が許可せらるるまでは、せつかくの事業も一時中止しなければならない、こういうおそれがあるのであります。そこでかような試掘権の採掘転願の場合には、第二十條にもありますように、存続期間の延長の申請の場合はやはり試掘権が存続するというような規定がありますが、これと同様に採掘出願が拒否が決するまで、または採掘権の設定の登録があるまでは、その試掘権は存続するものとみなす、こういう規定を置く必要があると思いますが、いかにお考えになりますか。
  51. 徳永久次

    ○徳永説明員 ただいまの点でございますが、十分に探鉱が行われておりまして、その事実に基きまして、採掘転願がなされました場合には、それの処置そのものに時間がかかるということも、実は予想されますし、また試掘権の期限が切れます直前になつて、初めて採掘転願が行われるということは、理論的にはないわけではありませんが、まれなわけでございまして、いつでも転願はなし得るということにもなつておりますので、業者側からの転願を、試掘権の存続期間がいつ来るかということも頭に置いて出してもらいますのとあわせまして、政府側も一日も早くそれを処理するということで、事実上そのブランクがなくなつて、まともに仕事をなさる人の御迷惑になるようなことは、十分防げるじやないかと考えるわけであります。これを今お話のごとく採掘権の転願の拒否が決するまでは試掘権をして存続するものとみなすというような規定を入れますことは体系の問題になり、理論構成の問題になるわけでありますが、実は試掘権の問題につきまして期限が切れましたあとは、すぐ満了後におきましては出願の優先順位においてこれを処理するといふような仕組みもとられておるわけでありますし、またその優先主義をとられておることの建前から考えてみまして、採掘転願の拒否が決するまでということになりますと、一つの行政処分に時期がかかるということになりますので、いつ期限が切れたかわからないということになりまして、次の先願者を選ぶことが人為的なものによつて左右されるという、非常に好ましくない結果が出るのではなかろうかとすう、そういう理論的な不合理な点が予想されるわけであります。それからさらにまたそういう道を開いておきますと、法の関係といたしましては悪い場合も考えなければいけないわけでありまして、至当とみなされるようなかつこうをとつておきまして、若干でも延ばすということに利用され、あるいはそれが次の出願の関係の順位に影響を持つ。そういうことのないようにということも、法律をきめます場合には考えなければいけませんので、ただいまのお尋ねの点は私どもとしてその方が非常によろしゆうございますとは簡單に言いかねるものと考えておるわけであります。
  52. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの問題は政府の運用の面で試掘権の存続期間中に必ずやる。こういうようお話ですが、試掘権の満了まぎわになつてよい鉱脈に当つたというので採掘転願をした場合に、はたして政府の思う通りに存続期間中に採掘出願の処置ができるかどうか、これは非常に疑問だと思います。むしろそういう例も相当あるのじやないかと思つておる次第であります。それに今の優先順位の体系を乱すという話でありますが、これも法律をもつて特例を認めればよいわけであります。それからまた悪用するという場合もなきにしもあらずと思いますが、さればこそただいま鉱山局長からお話のあつたように、こういう出願に対してはでき得る限り早く処理するということによつて悪用するものも防ぎ得ると考えますので、なおこの点は十分御研究願いたいと思います。  次にお尋ねいたしますることは、租鉱区の鉱害賠償の件であります。租鉱権はその存続期間は五年でありますし、しかも残鉱などを掘採するために設定せられるのでありまするから、勢いその経営方法も無責任になりがちであります。租鉱権者は資力等も薄弱な者が多いと思うのであります。従つて租鉱権者の作業によつて発生した鉱害につきましては、租鉱権者と鉱業権者が常に連帯して責任を負うということにいたしますれば、地元の住民も非常に安心すると思うわけでありますが、この点いかにお考えになりますか、お尋ねいたします。
  53. 徳永久次

    ○徳永説明員 原案は御承知のように租鉱権につきまして、租鉱権の存続期間中は租鉱権者の責任で、租鉱権がなくなりましたあとにおきましては、その鉱害につきましても鉱業権者が連帯して責任を負うというような構成をとつておるわけでございます。今御指摘がございましたことは、租鉱権のある間も鉱業権者に連帯させるということにして、被害者側の安心感を強化したらどうかという御趣旨だと思われます。そういたしますれば鉱害賠償の責任が、より確かになるということは明らかでございますが、しかしバランスの問題として私ども考えまして、鉱害の責任というものが鉱業においてためておる割合を考えてみました場合に、前に鉱害賠償の積立金の金額をどういう基準で定めたかという際に、数字的に御説明申し上げましたが、重ねて申し上げますると、石炭の最近の鉱害の割合というものは、平均的にみましてトン当り三十六円くらいの負担になつているわけであります。特殊の地帯において、鉱害のはなはだしく多い場所におきましても、六、七十円程度ということでございますが、その程度に相当する鉱害賠償の支拂いを、現に鉱業を行つておる人は、石炭の例で考えますと、その生産物が最近のあれで申しますれば、トン当り三千円見当はいたしておるかと思うわけでありますが、トン当り三千円程度の品物を出す仕事をしておる人が三、四十円くらいの鉱害賠償責任を拂う資力がないというふうに見るのは、いささか不適当ではなかろうかというふうに考えます。また租鉱をしておる人が、現に仕事をしておる人でございますし、その人は仕事をしておる限りにおいて責任を持つということが、バランスとしても妥当なところではないだろうかというふうに考えまして、仕事をしておる間は、すなわち、租鉱権のあります間は、租鉱権者の責任に対するというのが最も妥当なところではなからうかというよう考えておるわけでございます。
  54. 中村幸八

    中村(幸)委員 今お話ようにトン当り三、四千円もする石炭に対して、鉱害賠償の額は平均三十六円だ、わずかなものだということでありますが、しかし租鉱権者というものは先ほど申し上げましたように、資力も非常に薄弱な者も多いわけでありますし、それから石炭の値下りその他いろいろの事情によりまして、租鉱権者がむりな採掘方法をすることもままあるわけであります。従つてそういう租鉱区に起きました鉱害等につきましては、これを連帯して責任を持つということにすれば、非常に地元の者も安心するわけでありますし、この点はそう額が大きいものでなければ、鉱業権者といえどもそうむりが行かないことでもあろうと思うわけであります。さらに鉱業権者が一応鉱害賠償をしたとすれば、租鉱権者に対して、その求償権も行い得るわけでありますから、これは、私はすべからく連帯して賠償責任を持つべきではないか、かよう考えるわけであります。この点についてもなお御研究願うこととして、さらに次の問題に移りたいと思います。  採石法案には賠償規定がありませんが、鉱業法案と異なり、特に賠償規定を置かなかつた理由はどこにあるか、この点をはつきり御説明願いたいと思います。
  55. 徳永久次

    ○徳永説明員 鉱業法の中に鉱害賠償についての賠償責任が特に掲げてありますのは、申すまでもございませんが、これは一種の司法的な損害賠償の責任義務の問題でありますが、基本法としての民法の不法行為の規定が司法事件全体をカバーしておるわけでございます。ただ鉱業につきましては、民法の一般規定によりますれば、いわゆる無過失の責任というものは加害者に追究できない。故意または重大な過失という制限があるわけでございますから、それによりまして被害者に何ら求償の権利を與えないということは不穏当であろうというようなことから、日本の法令として唯一と申しますが、法体系の上からいえばいわば非常に進歩的な規定として、鉱業権者に義務を負わした規定に相なつておるわけであります。これは地面におきまして鉱業がその公共性から見まして、おる種の保護も受けておりますのと総合的に考えられたものと思うわけでありますが、採石業は事業の形態は鉱業と若干相似たところもあるわけでありますけれども、その権利の性質その他から考えまして、本質的に鉱業につきましては、いわば国の持つておる特権を鉱業をやりたい人に、鉱区の支配権を與えるというような特殊の建前のものに相なつておるわけであります。採石業はそういう建前のもとにできておるわけではございませんし、非常に平たく申しまして、採石法に鉱業法と同じような無過失賠償責任を負わすというような特別の規定を設けるということになりますれば、たとえばより重大な司法上の賠償問題を起します製鉄事業とか、あるいは化学工業というようなものとのバランスから考えまして、非常におかしいと思います。採石業に鉱業法ような特殊の責任を課すということなら、もつと先に課せられるものがある。常識的に申しますればそういう関係に相なるかと思うわけであります。その他一般はすべて民法の規定によりまして律せられて、平穏に処置されておることでありますので、それによつて採石から起りますところの損害も、司法事件として適当に、合理的に処置されるものという判断のもとに、それ以上の特殊の規定を設けなかつた次第であります。
  56. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に鉱業権設定の出願がありました場合には、二十四條に、通産局長は関係都道府県知事と協議しなければならない、こういう規定がありまするが、採石権の設定の許可の申請があつた場合には、採石法案にはかような協議に関する規定がありませんので、その理由をお尋ねいたします。
  57. 徳永久次

    ○徳永説明員 採石法におきまして、採石権の設定と一口に申しますと、鉱業権設定と似たような印象を持たせるわけでございますが、しかし法の体系は、採石は、土地所有者との話合いで原則として仕事が行われるという建前のものでございまして、やむを得ない特殊な公共的な必要がありました場合に、初めて、ただいま御指摘にございましたように、採石権の強制設定というよう事態に相なるわけでございます。しかもその運用につきましては、土地所有権の尊重ということに大きなウエイトを置きまして、土地所有者の意思にかかわらず設定するという場合でございますので、半面においてそれを強制設定することの公共的な必要性というものは、より大きな公共的の利益があるという場合に限定さるべきものであるわけでございますが、この提案されております法案は、そういう考えのもとに、しかもその所有権の尊重というものを大きく見て参るというような趣旨から、その強制設定それ自体を、採石法を主管しておる通産省では処置できないような仕組みに相なつておるわけでございます。すなわち案によりますれば、強制設定をいたします場合には、土地調整委員会の承認を得まして初めて通産局長が設定の勧告をし、また最後に強制設定にまで持つて行けるという建前をとつておるわけでございます。鉱業権の設定の場合におきましては、先願主義で行われるわけでありますが、事業を行うことがその土地々々の地方府県にいろいろな影響を及ぼす点をあらかじめ見るというような建前をしておりますが、採石の場合は、土地所有者との話合いで、もともときまるべき性質の問題であり、それを土地所有者の意思に反してやるという場合に、より高い土地調整委員会の判断に基いて処罰をきめるという仕組みをとつておりますので、法律の構成としましては、府県に協議するという段階を入れますことは、いささか不適当に相なつて参るわけでございます。ただ土地調整委員会がこの認定をいたしますとき、公共的な性質その他を判断いたします際に、場合により府県等の意見を聞くということもあろうかと考えておるわけでございますが、法案としては、通産局長が、土地調整委員会の承認を経て行うというよう方法をとつております関係からいたしまして、協議の規定を入れることはむしろ不適当と申しますか、適当でないのじやないかと考えております。     〔多武良委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に採石法案の第八條に、「採石権が消滅したときは、その土地を原状に回復し、又は原状に回復しないことによつて生ずる損失を補償して、土地を返還しなければならない。」こういう規定がありまするが、大体私は採石料というものの中には、現状に回復するに要する費用、あるいは原状に回復することができないために生ずる費用というようなものも織り込んで、採石料というものが契約されるのではないかと考えられるのであります。そういうのがむしろ常態ではないかと思いますので、この規定は不要じやないかと思うのでありまするが、この点をひとつ説明願いたいと思います。
  59. 徳永久次

    ○徳永説明員 ただいまの御指摘ございました條文は、実は解釈の問題といたしまして、強行規定とは解していないのでございます。従いましていま御指摘ございましたように、採石料をきめまする場合に、当事者の話合いによりまして、採石が終りました跡始末のことも織り込んで、採石料をきめておくというような了解があり、それがはつきりいたしておりまするならば、この規定が同時に働かなくなるということにも相なりましようし、またそれをより明確にするという意味におきまして、原状回復の要求はしない、あるいは損失の補償は要求しないというような、当事者間の特約がありますれば、特約の方が効力を持つものだと考えるわけであります。ただ念のためでございまするが、原案は原状回復するか、あるいは原状回復できない場合には、なにがしかの損害を賠償するというような規定に相なつておりますが、この岩石をとります場合、土地の構成物をとることでございまするし、当然に原状に変更が起るということは予想されることでございますが、原形そのままの回復という意味で書いておると申しますよりも、原状回復という言葉が、一つの法律用語と申しますか、そういう特殊の幅の広い意味を持ちました言葉でございまして、この條文で特殊の字句を使いますことは、ほかの法令との関係から見ても適当じやないというような意味で書かれておるだけでありまして、ほかの法令におきましても、原状回復の原状という意味は、原形にもどすのだというほどきゆうくつなものじやないという解釈がとられておるようでございます。なお山地が岩石をとりました結果平らになる、あるいは逆に平らになつた結果として、耕作可能な土地になるかもしれませんし、あるいは住宅地になるというようなこともあり得るわけでございまして、元にもどすことより、もどつた後の方が土地の利用価値も高まるというようなこともあり得るわけでございまして、常に損害賠償が伴うというべき性質のものでもないというふうには了解いたしておるわけであります。しかし法の体系といたしまして、採石料は採石料であり、その原状回復なり、あるいはそれによりまして損失を與えました場合には、それを拂う責任は採石した人の方にあるのだということは明確にする必要があるのだという意味で書いてあるだけであります。ただいま御指摘ございましたようなふうに、事実問題として採石料だけで済まして、その損害賠償は拂わないというように特約ではつきりときまつておれば、拂わないで済む場合も多かろうと思うのでございます。
  60. 中村幸八

    中村(幸)委員 最後に一つ、これは非常に大切なことでありますので、特に通産大臣からお答え願いたいと思います。鉱業法の第百十一條には、金銭賠償を原則とすることがうたつてありますが、金銭賠償によりまして被害者は一応満足するといたしましても、農民にとりましては、先祖伝来の土地に対する愛着というものが非常に深いものがあるのでありまして、金銭だけでは決して解決できるものではないと思うのであります。しかも被害をこうむつた土地が、北九州地方に見られるように永久に荒廃したままで放置せられるということは、食糧増産その他土地利用の見地から申しまして、まことに遺憾にたえないものであると思うのであります。さればといつて、原状回復を原則として、鉱業権者にのみ多額の費用を負担させるということは、鉱害賠償が先ほど御説明がありましたように、もともと無過失賠償であるという点から見まして、不合理でありますとともに、他面また鉱業権者としてはとうていその負担にはたえられるものではないと思うのであります。戰時中の強行出炭に基く特別鉱害については、別途特別鉱害復旧臨時措置法によりまして、国家の特別の助成によつて復旧することになつたのでありますが、この特別鉱害以外の一般鉱害、それからまた将来発生を予想せられますところの普通の鉱害につきましても、ただいま申し上げましたような理由と、さらにまた石炭鉱業が基礎産業としての最も重要なものであるというような点にかんがみまして、国家が国土計画の一環として原状回復に特段の措置を講ずるようにしたい、そしてそのために必要であれば、早急に特別立法なりあるいは予算的の措置を講ずることを特に希望するものでありまするが、この点に関する確たる政府の御見解を承りたいと思います。
  61. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 鉱害につきましては、御質問の御趣旨まつたく同感でございます。ことに炭鉱地近くに住いしておりました者にとりましては、より多くその必要を痛感するのであります。つきましては、石炭鉱害地の原状復旧については、国家において相当の財政支出を行つて、被害地の復旧をはかるべきものと考えるのであります。ただ單に業者に負担をかけることは、あまりに大きいかと存じます。ただこの問題につきましては、財政上の問題もあり、関係方面との打合せもする必要がございますので、時期その他諸般の事情考えまして、何らか別途の特別法を制定実施することの必要ありと考えるのであります。これにつきましては愼重研究をいたさせるつもりでございます。
  62. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの通産大臣の御答弁でたいへん満足いたしました。定めし北九州方面の被害者においても満足することと考えます。どうかひとつ大臣におかれましては、早急にこの問題を愼重に取上げられまして、特別立法なり、あるいは予算的措置を講ぜられるよう特に希望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  63. 小金義照

    小金委員長 明日は午後一時より本委員会を開きまして、鉱業法案及び採石業法案の質問を続行いたします。なおそのあとで、化学肥料の値段及び輸出等について質問政府にいたしたいということを理事会で先ほど決定いたしました。それだけお含みおきを願います。  本日はこの程度にて散会いたします。     午後四時二十六分散会