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1950-07-21 第8回国会 衆議院 通商産業委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十一日(金曜日)     午後二時十五分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 阿左美廣治君 理事 中村 幸八君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君       今泉 貞雄君    江田斗米吉君       小川 平二君    神田  博君       澁谷雄太郎君    高木吉之助君       田中 彰治君    永井 要造君       中村 純一君    福田  一君       南  好雄君    村上  勇君       河本 敏夫君    高橋清治郎君       田代 文久君    小平  忠君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (通商鉄鋼局         長)      中村辰五郎君         通商産業事務官         (資源庁炭政局         長)      中島 征帆君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 大石 主計君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 七月二十日  中小企業対策に関する請願水谷長三郎君紹  介)(第一号)  横浜繊維製品検査所川俣支所本所昇格並びに  小高支所設置促進請願大内一郎紹介)(  第二号)  木材防腐加工処理法制化に関する請願(木村  公平君紹介)(第七九号)  北海道特産品取引所上場商品指定並びに小  樽市に商品取引所設置請願苫米地英俊君紹  介)(第八〇号)  電気事業分断反対に関する請願外一件(佐々木  更三君紹介)(第八一号)  同(庄司一郎紹介)(第八二号)  復元又は新規の無登録織機設置許可に関する請  願(大野伴睦君外三名紹介)(第一一三号) の審査を本委員会に付託された。 同日  中小商工業振興対策強化に関する陳情書  (第一号)  信用保証制度法制化等に関する陳情書  (第一二号)  横浜繊維製品検査所川俣支所本所昇格等の  陳情書(第  一三号)  福島県絹、人絹織物協同組合に対し商工中央金  庫より資金貸付陳情書  (第一四号)  信用保証制度法制化陳情書  (第三二号)  中小企業対策に関する陳情書  (第三三号)  中小商工業者救済に関する陳情書  (第五五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本製鉄株式会社法廃止法案内閣提出第三  号)  特別鉱害復旧臨時措置法施行に関する件     ―――――――――――――
  2. 小金義照

    小金委員長 これより通商産業委員会を開会いたします。  ただいまより日本製鉄株式会社法廃止法案議題といたします。この際補充質問の通告がありますので、これを許します。河野金昇君。
  3. 河野金昇

    河野(金)委員 事務当局に事務的のことを一つお伺いして、それからあと首藤政務次官にお伺いしたいことが一つあります。現在日鉄管下にある溶鉱炉の数と、そのうち現在使つている溶鉱炉の数、つまり鋼材二百万トンを目標にしておりますが、現在幾つ溶鉱炉があつて幾つ使つてこの目的を達しておるか。まずこれからお伺いしたいと思います。
  4. 中村辰五郎

    中村政府委員 富士製鉄の所属の溶鉱炉は、広畑が二本、釜石が三本でございますが、この三本のうち一本はちよつと使いものにならないので、二本とお考え願います。それから輪西が六本、それが所有溶鉱炉でございます。そのうち動いておるものは、広畑が一本、釜石が一本、輪西が二本でございます。それから八幡製鉄が全部で九本でございまして、そのうち五本動いております。
  5. 河野金昇

    河野(金)委員 朝鮮の動乱によつてアメリカが準戦時態勢に入つたりすると、その影響は当然日本にも来ると思うのでありますが、そういう影響を受けて、鋼材などの生産を高めなければならない場合の御用意は、どういうふうになつておりますか。この日鉄法廃止して、こういうふうに分離しても、十分その目的を達することができるお見通しでありますか。
  6. 中村辰五郎

    中村政府委員 昭和二十五年度の鉱炉銑生産目標は百九十三万トンでございますが、そのうち大体二十五万トンが日本銅管になりますと、残りが約百七十万トンになります。かりに今後の輸出状況あるいは国内の需要増加等を見込み、あるいはスクラツプとの関連を考えまして、これをさらに引上げなければならぬというような問題がございます。現在の百九十三万トンは鉄鉱石あるいは良質のコークスを供給する、そういつたことによりまして、釜石を動かさないという前提で二百十万程度の実績をあげ得る確信を持つております。従いまして今後の需要増加に対します所要の銑鉄を生産するためには、さしあたりのところ釜石溶鉱炉を第三・四半期のできるだけ早い機会に入れるという建前で、進みますならば、現在考えられる程度需要には応ぜられると考えております。
  7. 河野金昇

    河野(金)委員 広畑製鉄所は今賠償の対象になつておるのじやないでしようか、違つておりますか。
  8. 中村辰五郎

    中村政府委員 日鉄関係溶鉱炉に関します賠償能力指定になつておりまして、その面から広畑も当然賠償指定に含まれております。賠償には指定されておりますが、これを稼働するためには指令部の了解をとりまして、許可を得ますればできる建前になつておりまして、現在二基ございます千トン溶鉱炉のうち、一基を三月二十八日に火入れいたしまして、今日続いて操業いたしております。
  9. 河野金昇

    河野(金)委員 これは首藤さんにお聞きしたいのでございますが、広畑が完全に賠償解除ということになつたような場合に、広畑は一体今の富士につけておかれるつもりか、それともまた別の一つ会社をおつくりになるつもりでございますか。聞くところによりますと、吉田総理外国資本とともに別会社をつくりたいというようなことを漏らしておられるというように聞いておりますけれども、一体解除なつた場合にどうされるのか、この点はつきりしておいていただきたいと思います。
  10. 首藤新八

    首藤政府委員 ただいま事務当局から御説明いたしました通り、現在のところは富士製鉄の中に含まれまして操業いたしておるのであります。そこで将来帰属をどうするかということでありますが、これは一応賠償解除になりました場合、そのときの情勢その他を考慮いたしまして、あらためて検討するというような考え方を持つておるのでありますが、できるならばわれわれといたしましては、現在の富士製鉄の姿そのままを持つて行つたらいいのじやないかというふうに考えております。総理がお説のようなお話をされたそうでありますけれども、われわれはその点は承知していないのであります。
  11. 河野金昇

    河野(金)委員 そうすると政務次官の考えとしては、解除なつた場合には別会社をつくるということよりも、今の帰属のままでやつて行きたい、そういうふうに承りましたが、それでよろしゆうございますか。
  12. 首藤新八

    首藤政府委員 その通りであります。
  13. 小金義照

    小金委員長 これにて補充質問は終りました。  引続き本案議題といたしまして、討論に付します。小川平二君。
  14. 小川平二

    小川(平)委員 自由党を代表して本法案賛成の意を表します。  本法案集中排除法及び企業再建整備法によつて日鉄が本年三月末日限り解散し、第二会社が発足するに至りました結果、日本製鉄株式会社法は存続の意義を失うに至りましたため、その廃棄を規定し、同時にこれに伴う経過的措置を講ぜんとするものであります。その経過的措置の主たるものは、官営八幡製鉄所から引継いだ従業員退職手当に関するもの、第二に第二会社に対して従来日鉄に対して適用せられておつたと同様な一般担保制度を適用しようとするもの、この二点であります。このうち退職手当に関する問題は二つありまして、第一の点は日鉄法によつて官営八幡製鉄所から引継いだ従業員が退職いたしました場合には、両社の在職期間を通算して退職手当を支給し、政府が負担すべき分は政府の持株に対する配当金から控除することとなつておりますが、途中で配当がなくなり、日鉄がかわつてこれを支払いましたために生じた損失約三百万円を、政府において補償せんとするものであります。  第二の点は、官営八幡製鉄所から日鉄へ、さらに日鉄解散によつて第二会社へ引継がれる従業員は、企業再建整備法によつて官営八幡製鉄所時代在職期間が通算されない。かつ第二会社へ引継がれる際、退職金の支給ができないことになつておりますために、日鉄法廃止によつて失われるこれらの既得権に対する救済手段として、官営製鉄所在職期間に対応する退職手当を、この際日鉄から支払わせ、この金額約四百万円を政府が補償しようとするものであります。また一般担保制度適用に関しましては、日鉄社債を発行する場合には、一般担保制度が適用せられておつたのでありますが、第二会社にはこれが適用せられないため、合理化資金調達等のために社債を発行するにつきましては、工場財団を組成する必要がある。しかるにこれが手続には二年ないし二年半の長日月を要する。従つて財団が設定されるまでの間、これらの第二会社に対して一般担保制度を認め、同時に見返り資金及び復金貸付金についても同様の措置をとらんとするものであります。以上が本法案の主たる内容であります。  退職手当に関しましては、そもそも日鉄会社創立の際に、将来無配当の場合をも生ずることを予想して、これに対する措置をあらかじめ講じておくべきが当然ではなかつたかということも当然考えられるのでありまして、今回の法案においてこれに対する措置を具体的に規定しましたことは、きわめて至当のことであると存ずるのであります。一般担保制度の問題に関しましては、一方において資金調達の強い要請が存在する。他面刻下の金融事情のもとにおきましては増資が困難である、あるいは不可能であるために、資金調達はもつぱら社債に仰がなくてはならない以上、これまたやむを得ない措置であると言わなければならないと存ずるのであります。かような見地から見まするときに、本法案の規定するところの措置はいずれも必要やむを得ざるものであると考えられますので、この意味からしてこれに賛成の意を表するものでございます。  この際関連いたしまして特に一言いたしておきたいことは、日鉄法施行令第一条の第二項に関する八幡製鉄所共済組合年金の増額の件でございます。本件については第七国会において国家公務員共済組合法の一部が改正され、国家公務員共済組合年金受領者もまた六千三百円ベースに改正増額されることとなりました際にも、衆参両院大蔵委員会において熱心な論議が行われ、強い要望があつたのでございます。当時政府はこれに対して至急研究の上善処すると答弁をいたしておるのでありますが、その後いまだに具体化を見るに至りませんことはまことに遺憾に存ずるのであります。日鉄が解散され日鉄法が廃棄せられ、八幡製鉄所から引継いだ従業員退職手当等に関する問題がほとんどすべて解決を見ましたこの際、ひとり本件だけが依然未解決のまま放置されておりますことは、きわめて遺憾に存ずる次第でございます。しかしながら本委員会における中村幸委員質問並びにこれに対する通産、大蔵両省当局の御答弁によりまして、近く政府においては、これら従業員に対し、十分の理解と同情のある措置を講ずる意思を持つておられることが判明いたしましたので、一応これに信頼をいたしまして、すみやかにこれを具体化せられるよう強い希望を付しまして、本法案賛成いたすものであります。
  15. 小金義照

  16. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 私は国民民主党を代表いたしまして右首題になつておりますこの法案に対して賛意を表するものであります。  その理由といたしまして、すでに小川委員から申し述べられました通り、諸般の事情にかんがみ、この法案廃止することは、やむを得ざるものとして、これに賛意を表するものであります。簡單ながらこれをもつて賛成討論といたします。
  17. 小金義照

    小金委員長 次は今澄勇君。
  18. 今澄勇

    今澄委員 本法律案については、日本社会党は、元来製鉄事業等のごとき国家基幹産業は、政府の強力なる助成と保護によつてこれを盛り立つべきものであるという基本的な態度を持しておるものでございますが、現下の過度経済力集中排除法並びに企業再建整備法に伴う日鉄株式会社の運営、その他当面の諸情勢より、この法案に対しては強い条件を付して賛意を表する次第であります。われわれはこの法律案意味するところは、法律案のみの問題ではなくて、少くとも今後の製鉄事業に対する政府の積極的な金融並びに技術援助、その他全般的な保護助成を希望するものであります。特に先ほどもありました八幡共済組合等の問題につきましては、大蔵省主計局長の言もあつたが、ただちに法文化して、これを次期国会に提出することを条件として賛意を表する次第でございます。
  19. 小金義照

    小金委員長 次は田代文久君。
  20. 田代文久

    田代委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本案反対するものであります。その反対理由は、單に条文上の問題ではなくして、日本鉄鋼生産というものが、日本の全国民経済立場から、実際にわれわれが希望しておる方向から、そうされつつあるということが根本的な反対理由でありまして、今までの委員会質問いたしまして、それに対する政府側答弁によりましても、それがはつきりいたしておるのであります。  すなわち繰返して申しますと、この鉄鋼産業発展というものは、あくまでもこれは平和産業発展という観点が第一。それから第二は、あくまでもこれは日本自主経済、これが根本でなくてはならない。外国資本からリードされるという立場に立つ場合においては、日本経済を非常に危機に瀕せしむる。鉄鋼産業のごとき重要産業が、そういう事態になるということは、日本立場から非常に危険であるということから、この二つの大きな柱というものを徹頭徹尾堅持するのが、鉄鋼政策基本であるはずであります。しかも鉄鋼産業発展過程から申しましても、これはある民間の財閥が長年の苦労によつてこれを発展し育成したというようなものではなくして、日本国民の血税によりましてこれが保護育成され、とにもかくにも現在までの段階発展して来たのであります。そういう歴史的な特殊事情を持つておる。従いましてこれはアメリカ鉄鋼産業、あるいはベルギーやイギリスなどの鉄鋼産業とは違つておるのであります。そういう事情を考慮することが、われわれにとりましては決定的に重要な意味を持つのであります。しかるに現在の政府のとつておる鉄鋼産業に対する政策というものは、この基本線からはるかにそれつつあるのである。たとえば委員会答弁によりましても、開らん炭のような非常に安い超粘結炭を輸入することは、これを押える。答弁によりますと、それは質が落ちるということを言われたのでありますけれども、私たちが調査したところによりますと、必ずしもそうではないのでありまして、一トン十一ドルで入るような安い開らん炭を押えて、それよりも五割も八割も高いような外国の石炭をなぜわざわざ入れねばならないのか。この点におきましても私たちは非常に理解ができない。あるいはまた鉄鉱石においてもそうであります。鉄鉱石の輸入などにおいても、これは近い中国には非常に安い鉄鉱石があるのでありまして、そういう意味から申しましても中日貿易ができるだけ早く成就するように持つて行き、そうしてそういう原鉱を入れるという労策に持つて行くのが政府政策であるにもかかわらず、そういう努力が十分なされているということは言えないのであります。また、第二番目におきましては、第六国会におきまして日鉄法の一部を改正するということになりまして、政府手持の株を全部民間に放出するという形をとり、先ほど申しました日本の自主的なそういう歴史的な性格を持つている鉄鋼産業というものをそういう形に野放しにする、同時にそれは外国資本がどんどん日本鉄鋼産業に入つて来る道を開いたのであるということを私たちは主張し、警告を発したのでありますが、今やこの日鉄法廃止されるということになりますと、名実とも外国資本家日本鉄鋼産業株式を自由自在に持つていいということになつて来たのであり、また技術導入にいたしましても、あるいは外資の導入にいたしましても、それには明らかに自主性のないひものついた形で、これがなされて来つつあるという危険が明らかに出ているのでありまして、こういう点から申しましても、私たち日本の正常なる鉄鋼産業発展から申しましても、政府政策が非常に間違つているということを断言せざるを得ないのである。結局いろいろ質問いたしますと、この鉄鋼産業合理化によつて日本鉄鋼産業発展させる。一体どこにコストを下げるというようなねらいを持つて来るかというような問題におきましても、一番はつきり言えることは労働者の首を切る、あるいはまた労働賃金を安くする、労働強化をやるというようなことが端的に現在なされつつある、これが合理化の実情であり、実際において政府が説明されましたような形におきましての合理化というものは現実上の問題からして大して進んでおらない、行き悩んでいるということがはつきり言えるのである。そのことが非常に日本鉄鋼産業製品コスト高となつて現われている。昨日の答弁によりますと、日本鉄鋼産業というものは十分一本立できる、ベルギーあるいはドイツその他外国のあらゆる鉄鋼産業と太刀打できるような状態にもう三年もすればなるように確信するという御答弁がありましたけれども、それは何らの具体的な根拠はないのでありまして、事案は日本鉄鋼産業はごく最近まで頭打ちになつてつて、四苦八苦の状態になつてつたのであります。日鉄法の一部改正法にありましたその提案理由といたしましても、政府がそういう株式をたくさん持つているということは非常に財政的に困難するということが理由になつてつたのでありますが、そういう点からいたしましても、これを十分育成し助長するという線からではなくして、もてあましておつたというような形が出ておつたのでありまして、いわゆる鉄鋼政策に対する政府の方策というものはまつたく失敗している。ところが、朝鮮事変というものが勃発いたしまして、そうしてこれによりまして政府はほつと息をついたような形になつているのであります。すなわち基本的なそういう政策が終始一貫なされたがために、鉄鋼産業発展しつつあるというのではなくして、そういう朝鮮事変の勃発というようなことを契機にして、それに便乗して鉄鋼産業が息を吹き返さんとしつつある。またこれをさせようとしておるというようにも言えるのでありまして、これは明らかに先ほど申しました日本鉄鋼産業基本政策、これに反するものであり、またはなはだ危険なものであるといわざるを得ないのであります。昨日の答弁によりましても、首相は今度の朝鮮事変に対しまして、この連合国に協力する。それは精神的な形であるということを言われましたけれども、実際上におきまして、昨日も首藤次官の説明によりますと、そういう特需に対しましては、鉄鋼産業がどんどん応じて行くような緊急措置をとるというのが現在の手であるということをはつきり答弁されたのでありまして、あくまで平和産業で行かなければならないこの鉄鋼産業というものが、今や戦時経済態勢はつきり切りかえられたということが言えるのであります。すなわち戦争をやめねばならない、戦争反対という立場を強調しなければならぬにもかかわらず、むしろ実際的に経済面からこれに具体的な裏づけとして、どんどん参加して行くという手が打たれつつあるということが言えるのでありまして、これは、私たちははなはだ危険であると言わなければならないのであります。  以上の点から申しまして、すなわち日本鉄鋼産業自主性という問題、あるいはまた平和産業育成発展という、その基本的な面から申しまして、政府のこの施策、また日鉄廃止するというこの行き方そのものが、こういう重要なる政策に対する反対方向をとりつつあるということがはつきり言えるのであります。また従業員退職金の問題でありますが、こういう手を打つことは当然でありますけれども、その金額はきわめて微々たるものであり、またそういう問題がこういう形をとること自体政府政策としましてこういう方向へ持つて行つた結果であり、事実この鉄鋼産業日鉄八幡などの労働者退職金なるものは、二十五箇年間からだを骨にして働いて、その得る退職金というものが現行ではわずかに十一万五千円余りであります。二十五年間働いて十一万五千円、このインフレの時代に、二十五年間働きまして十一万五千円余りもらつている。これで生活ができるかどうか。これがその多年の労働に対する報酬と言うことができましようか。少くとも現在日鉄労働者諸君は、三十万円から三十六万円見当二十五箇年間の勤務に対しまして要求されておりますけれども、私はこれすら少きに失するのではないかと思う次第でありまして、そういうあらゆる面から申しまして、日本共産党はこの案に対しまして徹底的に反対する次第であります。
  21. 小金義照

    小金委員長 次は小平忠君。
  22. 小平忠

    小平(忠)委員 本法案に対しまする農民協同党態度は、基本的には反対ではありますが、本会社昭和二十三年二月八日、すでに過度経済力集中排除法によりまして、鉄鋼部門が分割の指令を受け、すでに本年三月末をもつて廃止段階になつております現段階におきましては、警告づきをもつて本案賛成をいたしたいのであります。簡單にその理由を申し上げますと、基本的には、日本鉄鉱資源というものは御承知のように絶対量不足であります。特に戦前、戦時中、戦後を通じまして、強力なる統制下に、製鉄事業というものに対し日本産業復興のために各関係方面においてあらゆる努力をなして来たことは周知の事実であります。特に私は鉄鋼部門のごとき一つ日本基本産業と申しますか、そういう重要な部面におきましては、強力なる国家助成、もつと簡單言葉で申し上げますならば、国自体が責任をもつて、いわゆる官営企業をもつてやらねばならぬという考え方が結論的に生れるわけであります。しかし私は現段階において大きな反省してみる点があるのではないかと思う。と申しますのは、戦時中、戦後を通じまして、実は官僚の都合のよい統制簡單言葉で言いますと、官僚統制この官僚統制に対しまして、中小企業なりあるいは農山漁村の真の近代化復興のために、われわれは政府当局に対していろいろ意見を具申して参りました。しかしそのことが遅々として進まないことは、これまた事実であります。そのような今までの誤れる官僚統制を、ここに思い切つて是正するという観点を考えてみまするならば、ここにこの行き方民間企業に移して、その自由競争の中に、よりよき生産、よりよき配給に、一旦そういう機構に持つて行くという、そういう切りかえの対策も必ずしも悪くない、かように考えるのであります。そこで私が最初警告づきと申し上げましたのは、今日日本の置かれておりますところの立場、あるいは国際的事情、そういつたようなことを総合いたしまして、日本は今どういう点に重点を置かなければならぬかというと、すなわち食糧の増産を期し、さらに工業復興し、さらに日本天然資源を可及的すみやかに増産して、日本を真に自給自足の態勢に持つて行くという観点、さらに第七国会におきまして、日本にただ一つ残された北海道開発、これにつきましては御承知のように北海道開発法が通過し、現に北海道開発庁が設置された、この尨大北海道開発をする場合におきましても鉄鉱資源のこの面において持つ役割というものは非常に大きな部門を担当するわけであります。その場合に、たまたま民間企業に移されたこの会社が、ややもすれば独占企業家によつて、これが自由に支配されるということになる場合においては、おそらくまた中小企業あるいは農山漁村の真に欲する日本再建の方向に一大支障を来すのではないかという観点から、私はここで民間企業に切りかえて新発足する場合においてもやはりあくまでも現実に即応するところの配給統制、さらに価格統制というものを常に考えて行かなければならぬ。特に現在配給部門においては、ある程度統制解除され、価格の面においては、まだ公定価格というものが維持されている。しかし私は今後において、この配給面、あるいは価格の面において、政府民間企業に移されたこの会社の運営においても、従来のような官僚統制行き方をここに根本的に是正をして、真に中小企業あるいは農山漁村開発、振興のために役立つような、この会社発展をこいねがつて本案に対し警告を発しまして、賛成をするものであります。
  23. 小金義照

    小金委員長 以上をもちまして討論は終局いたしました。引続き採決いたします。本案に御賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  24. 小金義照

    小金委員長 起立多数。よつて本案は可決いたしました。  この際本案委員会報告書の作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。委員長に御一任いただいたものと決しました。  横尾通商産業大臣より発言を求められましたからこれを許します。横尾通商産業大臣
  26. 横尾龍

    ○横尾国務大臣 日本製鉄廃止法案の提案をいたしましたるところ、暑い折柄にかかわらず御熱心に数日御討議いただきまして本日可決をしていただきましたことに対して厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  27. 小金義照

    小金委員長 次に特別鉱害復旧臨時措置法施行に関する件を議題として調査を進めます。まず政府当局から本法の施行状況について御説明を願います。
  28. 中島征帆

    ○中島政府委員 特別鉱害復旧臨時措置法のその後の施行状況について御説明申し上げます。  この法律は前国会において成立いたしまして、去る五月の十二日に施行になつております。これに基きまして特別鉱害復旧公社の設立手続を進めまして、五月の二十九日に登記は完了いたしております。なお法律の施行と同時に関係官がそれぞれ現地に参りまして、法律の内容の説明と趣旨徹底をはかりまして、できるだけすみやかに申請書の提出の手続をするように話を進めております。ところがこの復旧公社の運用でありますが、これに関連する国庫補助金一千万円、これも前国会の予算で認められておりますが、この復旧公社自体が、公団等の予算及び決算の暫定措置に関する法律という法律、これも前国会において成立しておりますが、この法律の適用を受けるという解釈をとられまして、そのために復旧公社の事業予算そのものを別個にまた国会に提出して承認を受けなければ事業ができないというふうになりました。従つて公社は設立いたしましたけれども、現実にこの事業予算の支出ができない、従つて人員の補充等もできないというかつこうになつております。これに対しまして、私どもの見解といたしましては、これは復旧公社という名称から申しましても、またこの公団等云々の法律の適用を受けるものは別表に書かれてあるというふうな関係からいたしましても、この法律の適用を受けないのだ、従つて一千万円の予算はすでに使えるのだという見解をとつておりましたが、この点がどうしても関係方面との折衝が通りませんので、やむを得ず本国会に、今の公団等の法律の適用を受けるという意味の修正案と、それから復旧公社の予算案を提出いたまして、国会の承認を経て、できるだけすみやかにこの事業を開始したいというふうに考えておりましたが、この点に関しましても、法案あるいは予算の提出というようなことが非常に困難になりまして、これもやむを得ず今のところ見送つているという状況でございます。しかしながらこれはどうしてもすみやかに動くようにしなければいけませんので、次の臨時国会には冒頭に提出できるように準備いたしたいと考えております。  それから公社自体の活動は、今のような状況でほとんどストツプしておりますが、この法律に基く鉱害賠償の申請書が五月十二日から九十日以内に政府に提出することになつておりまして、現在約百件ほど参つております。その中で鉱業者から出ておりますものが五十件、被害者から出ておりますものが五十四件であるのでございまして、それだけのものが提出されております。そしてまだ大手炭鉱等で、当然予想されるものが大分残つておるという状況であります。これはいずれにいたしましても九十日の期間でありまして、八月九日が最終でありますので、それまでには全部出そろうわけでありますが、その上で逐次この審査をして認定しなければならぬのであります。認定いたしました後に、今度は実際の公社の事業が始まるわけであります。つまり認定によつてこの復旧公社に参加するものは、状況によつて十円ないし二十円という例の法律の負担金を納付することになるのであります。従いまして、公社の実際の活動も現在のところ何らできないような状況でありますけれども、まだこの八月、九月の初めくらいまでは実際的の害はないと考えております。それから現在申請を手控えております炭鉱の意向といたしましては、この法律自体にいろいろ問題がございますが、今後の法律の取扱いいかんによつては申請を出そうというような気構えもありまして、そういう点で迷つている向きがあるのであります。そういう関係からいたしましても、本国会に法律の修正案を出しまして、最後的な見通しをはつきりつけたいと考えておりますが、これに対する問題といたしましては簡單に申しますと、現在の法律で予定されております收入の総額が、国家の公共事業費等の補助金を加えましても、現在一応五十億と予定されております被害総額を復旧するのに不足しておるというようなところから、いろいろな考慮が出て来るわけでありまして、この点をどういうふうにするかということが、今後次の国会に修正案を出すときまでに十分検討してきめなければならぬ問題であります。この点は、この法案自体が、最初の政府原案とかわりまして、国会で修正された関係もありますので、なかなかいろいろのむずかしい問題もありまして、当委員会の御協力によりまして、また修正案等も十分考えたいというふうに考えております。
  29. 小金義照

    小金委員長 これにて一応当局の説明は終りました。これについていろいろ御質疑または御意見等もあることと存じますが、この際懇談会の形で進めたいと思います。  明二十二日は午後一時からさらに調査を続行いたしまして、地方財政委員会、大蔵省、文部省、厚生省、農林省、建設省及び経済安定本部等、各省所管の問題につきましても検討を加えることといたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十九分散会