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中村政府委員 鉄鋼業の
合理化の現状についての
お話がございましたが、先般七月一日の価格改訂の際に、銑鉄の価格が、それ以前におきまして大体五十一ドル、七月改訂の数字が四四・六ドルくらいかと記憶いたしますが、これは一面原材料
関係の値下りの問題も
関係しております。それから作業費その他の
合理化の数字も織り込んでここまで来ております。今後の問題といたしましては、もとより原材料費の値下りも相当
考え得る問題の
一つでございます。それとさらに作業費その他の経費の
合理化、労働生産性の向上と申しますか、それから技術的な、たとえば
先ほど来申し上げました技術の改善、熱管理の徹底というような問題がございますが、これらの問題を総合いたしまして、さらにこの線をもう少し引下げて参りたい。こういうことで指導して来ております。製鋼部門の問題になりますと、
先ほど申し上げましたように、
一つには酸素製鋼、あるいはその他のアメリカ調査団がいろいろ指摘しております計器の採用によりますコストの引下げ、それから
先ほど申し上げた熱管理の問題、こういうものを織り込みまして補給金の全部ということはさつき申し上げておりませんので、削減されます補給金の半額
程度の
合理化は、ここしばらくの
期間で行い得るのじやなかろうか。こういうぐあいに製鋼部門の方は
考えております。こうい
つた目途から申しますと、数字的にあとどのくらい下がるかということは、ちよつと私として申し上げかねる問題でございますが、二十五年度一年、あるいは二十六年度というものを頭に描きまして、そして鉄鋼業の
合理化をそうい
つた期間においてたゆまずや
つて参る、こういうところにわれわれのねらいがあります。鋼材補給金をはずすことが、鉄鋼業のために非常な危機を招来するものであるかという問題も、ごく最近まで論じられておりましたが、私個人の率直な気持から申しまして、二十四年度の鉄鋼業の歩み、あるいは二十五年度の現在、あるいは近き将来というものを織り込んで
考えましたことから、鋼材補給金をはずすことは、鉄鋼業を自主的に強力にするてこにはなるけれども、決して弱体化するものではないという
確信を持
つておりましたし、今日においても持
つております。そういう
意味合いにおいて、残る問題は銑鉄補給金の問題だけでございます。これは
政府関係各省間その他で目下検討中でございまして、この点については私から
結論的に申し上げられない段階でございます。世間には鉄鋼と石炭との問題に関連しまして、あたかも対立あるがごとくに論議されるのでありまするが、今日までの石炭、鉄鋼業の長い間におきます発達を
考えてみますと、大体
昭和七、八年の不況時から石炭鉱業の歩んだ道、またその当時からの鉄鋼業の足どりというところから今日の問題を
考えますと、その当時の詳しい数字は忘れましたが、
日本の石炭鉱業の操業度上昇と、石炭鉱業の安定操業というものは、鉄鋼業の拡充ということが行われ始めました
昭和十年ごろと記憶しますが、要するに粉炭の価格が塊炭に対する割合から見て、高く売れる状態に
なつたという時が、石炭鉱業の著しい操業度の上昇時期であります。そのことから
考えまして、鉄鋼業の発展は石炭鉱業自身の発展でもあり、安定の操業を可能ならしめる基礎である、こういうぐあいに歩んでおります。そういう
意味合いから、今日の石炭と鉄鋼の問題をあわせ
考えますると、鉄鋼業の安定操業ということが、ひいては石炭鉱業の安定操業になるという業者間の実際の協力
関係をつぶさに見て参りますると、そう深刻な対立問題ではない。今日の段階においては、鉄鋼業者も石炭業者もともにこの両
産業の両立するために、お互いにできるだけの
合理化をして、国際競争に負けない鉄鋼の価格をつくり上げるというような歩みにな
つております。また鉄鋼業の
立場から申し上げましても、われわれは、
日本の石炭価格が、アメリカの炉前のあのような安い価格でなければ、鉄鋼業が成り立たないのだというような弱音は申し上げておりません。もとより
日本の鉄鋼の原料面から来ますいろいろの不利な条件は、今日の段階に来るまでにおいても味わ
つた問題でございまして、この面から申しまして、石炭鉱業をアメリカ並の石炭にしなければならぬというのでなしに、
日本の石炭鉱業としてできる
程度の石炭価格をできるだけ鉄鋼業も取入れて、その上でともに両
産業が成り立つような限度を発見しようというのが、先般
通産省に設置されました
産業合理化審議会の歩みでありますし。そういう
意味合いからいたしまして、国際並の石炭価格よりも少し割高なものでも、
日本の鉄鋼業は、
製鉄部門においても、あるいは製鋼部門、あるいは圧延部門においても、総合的な
合理化の線でこれを吸収して参りたいというのが真の
考え方でございまして、こういう
意味合いから申しまして、私は鉄鋼業と石炭鉱業の対立ということを
考えることはできない。
意見の相違はございましても、実際の足どりから申しますと、漸次両
企業の存立を可能ならしめるような線に到達して参ると私は
確信しております。