運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-07-19 第8回国会 衆議院 通商産業委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十九日(水曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君    理事 中村 幸八君 理事 河野 金昇君    理事 今澄  勇君       今泉 貞雄君    江田斗米吉君       小川 平二君    澁谷雄太郎君       高木吉之助君    田中 彰治君       永井 要造君    中村 純一君       福田  一君    南  好雄君       村上  勇君    高橋清治郎君       加藤 鐐造君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (通商鉄鋼局         長)      中村辰五郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局共済課         長)      磯田 好祐君         通商産業事務官         (通商鉄鋼局鉄         鋼政策課長)  小山 雄二君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月十八日  委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として  加藤鐐造君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本製鉄株式会社法廃止法案内閣提出第三  号)     —————————————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより通商産業委員会を開会いたします。  ただいまから日本製鉄株式会社法廃止法案を議題として審査を進めます。質疑をお許しいたします。中村幸八君。
  3. 中村幸八

    中村(幸)委員 日本製鉄株式会社過度経済力集中排除法により分割を命ぜられまして、企業再建整備法に基き、本年三月三十一日解散し、八幡製鉄富士製鉄等の四会社が、第二会社として新しく誕生いたしましたにつきまして、主として日鉄に対する政府の権限、監督というようなものを規定いたしておりまする日本製鉄株式会社法は存続の意味がなくなりましたので、今回これを廃止するのであるという御趣旨のようでございまするが、これにつきましては何ら異論をさしはさむべき余地はないと思うのであります。で私は本法案附則規定いたしておりまするところの、経過的の措置につきまして、二、三簡単にお尋ねをいたしまして、政府の所信をただしておきたい、かように考えるのであります。  まず第一に官営八幡製鉄所から日本製鉄に引ついだ従業員退職手当の問題でありまするが、この退職手当の問題につきましては、先日ちようだいいたしました資料のうちで、「日本製鉄株式会社法廃止法案について」というものによりますると、日鉄法第十六条、それから同法施行令の第一条の二、第一号によりまして、日本製鉄におきまして、従業員製鉄所在職期間日本製鉄所期間とを通算いたしまして、退職手当を支給する。そうして政府負担分日本製鉄負担分とを計算いたしました上で、日鉄法第十七条、それから同法施行令第二条、第一項第三号によりまして、政府負担分日本製鉄政府に支払うべき配当金より控除することになつておる。そうして昭和十九年の三月三十一日までの退職者に対する退職金については、すでに清算ができておる。しかしながらそれ以後における退職金については、政府配当金がないので、未決済になつて、いわば日鉄の立てかえとなつておる。そこでこの際この損失政府において補償しよう、というように承知いたしておるのであります。この点はしごくごもつともな立法であると思うのであります。ところが日鉄法その他の関係法令をしさいに調べてみましても、政府配当金から控除することができなかつた場合には、それ以上はどうするかという規定が何にもないのであります。そこでこの点に関する政府の終局的の責任というものがはたしてあるのかないのかという点につきまして、多少の疑問が起つて来るのではないかと思うのであります。私は本来政府に対する日鉄求償権というものを、もつとはつきりと明文にしておかなければならなかつたのだ、いわゆる立法のミスではなかつたかと思うのでありますが、政府においてはこの点いかにお考えになつておりますか、お伺いしたいと思うのであります。つまりこの点に関しましては、政府にどこまでも責任があるのだということ、この根本的な考え方、この点をひとつはつきりとこの席で御言明になつていただきたい、かように思うのでありますが、いかがですか、お伺いいたします。
  4. 首藤新八

    首藤政府委員 ただいまの中村委員の御質問に対してお答えいたしたいと存じまするが、御説のごとく、当時の日鉄法におきましては、単に配当の中から差引くということのみが規定されておるのでありまして、配当のない場合にはどうするかということが明記してありません。これは御説の通り法の不備だと存ずるのであります。ただ当時は、少くとも民間会社をかように一つ会社に集中するということは、一種の企業合理化でありまするから、多分配当は継続するであろうという気持が非常に大きかつたために、こういう法ができたと私は了解しておるのであります。そこでこの配当のない場合に一体政府は最終的な責任を負うかどうかという御質問でありまするが、これはあくまでも責任を負うものであるというふうに御了解願つてさしつかえないと思うのであります。
  5. 中村幸八

    中村(幸)委員 そういたしますると、附則第二項によりまして、政府が補償する人員の数と金額、それから同じく第四項によりまして補償する人員金額というものは、それぞれどの程度になつておりますか、お示し願いたい。またその金額については予算的措置はどうなつておるか、この国会にお出しになるのか、あるいは今出さなくても、次の臨時国会でもいいとかいう、そこの点をお示し願いたいと思うのであります。
  6. 首藤新八

    首藤政府委員 日鉄に合併いたしまして、昭和十九年四月一日以降日鉄が解散までに退職しました従業員は六千名であります。そしてこの退職手当も、先ほど中村委員の申されたような比率によつて計算いたしまして、政府負担となるべき金額が三百万円であります。なお今度の第二会社に引継がれました従業員の中で、製鉄所から引続いて勤務しておりまする者は五千名であります。そこでこの五千名でありますが、ただ御承知通り企業再建整備法規定によりますれば、日本製鉄株式会社時代在職期間は通算されまするけれども、その前の製鉄所時代在職期間の通算は行えないということに再建整備法でなつておるわけであります。しかも第二会社に引継がれた際も、これまた整備法退職金は支給できないということになつておりまして、その該当しまする従業員に対しましても非常にお気の毒な立場にありまするので、何らかの処置をもつてその権利を確保する必要があるということから、今回それらに対しましても、製鉄所時代在職期間に応じた退職手当をこの際支払わせるということにいたしたいと思うのであります。この政府負担金が大体四百万円であります。合計七百万円を今度の法案ができますれば、別個に予算措置が必要となりますので、それぞれ処置をとりたい、かように考えておるのであります。
  7. 中村幸八

    中村(幸)委員 今のお話で、人員金額の点はわかりましたが、いつこの予算をお出しになるか、その点をお伺いいたします。
  8. 首藤新八

    首藤政府委員 この臨時国会の間に合わぬと思いますから、次の本国会に提案いたしたい、かように考えております。
  9. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの御説明によりまして、退職手当支給による損失政府において補償するということにつきましては、大体了承いたしたのであります。  次に本件に関連いたしまして、財団法人八幡製鉄共済組合年金増額の問題について、主として大蔵省の方の方にお尋ねしたいと思います。この問題につきましては、八幡製鉄所共済組合年金受給者並びに年金受給資格を持つておる者が一万人ほどあるのであります。この多数の方々が非常に心配いたしておりまして、前国会の開会の際にも、その代表者たちがかわるがわる国会陳情に参りまして、あるいは大蔵委員会あるいは厚生委員会その他関係方面陳情請願を続けて参りまして、その苦衷を訴え、年金増額を嘆願しておつたのであります。御承知のように、官営八幡製鉄所従業者は、恩給法適用を受くるところの判任官以上の職員と、恩給法適用を受けないところの雇用員職工というこの二種類の者があつたのであります。雇用員職工につきましても、将来における生活保障という必要からいたしまして、恩給法にかわる、恩給法に似たような何か年金制度が必要だというような声が強く叫ばれまして、その結果、大正八年に八幡製鉄共済組合年金制度というものが創立せられまして、大正十一年には勅令第四百九十五号によりまして、法的の根拠も与えられまして、政府共済組合員双方、この両者から責任準備金の基礎であります保険料をそれぞれ支払つてつた、こういうことでありまして、昭和九年に製鉄所官制が廃止せられまして、日本製鉄が創立せられるにあたりましては、全面的にこの八幡製鉄共済組合というものは日鉄に引継がれまして今日に至つておるのであります。そうして昭和九年一月三十一日以前の旧官業八幡製鉄所共済組合時代年金受給資格の発生した者の年金額というものを調べてみますと、わずか年平均二百七十七円でありまして、官業共済組合時代に決定いたしたままの年金額に据え置かれておるのであります。さらにまた昭和九年二月一日以後、すなわち民営移管後に年金受給資格の発生した者も、平均が年三百六十円となつておるのであります。ところが一般公務員の方はどうかと申しますと、再度の国家公務員共済組合法改正によりまして、現在六千三百七円ベースによつて年金を支給せられておりまして、平均一万数千円の年金を受領いたしておるのであります。同じように過去におきまして国家事業に携わり、老齢あるいは廃疾によりまして労働能力の減退しておるという、こういう気の毒な方々の、この両者の間でかように著しい高低の差があるということは、矛盾も非常にはなはだしいものである。これもまた一面由々しき社会問題であるとも考えるのであります。この点につきまして、私は官営八幡製鉄所日本製鉄株式会社に引継がれました沿革、それからまた当時の帝国議会におきまして、中島商工大臣言明せられました答弁等に見ましても、八幡製鉄所共済組合年金については、官業共済組合とまつたく同じ取扱いをするのだという方針であつたように承知しておるのであります。そこで国家公務員共済組合法の再度の改正によりまして、一般公務員年金額が増額せられましたのに伴いまして、当然かつて製鉄所に在職しておつた者年金についても、これと同率に引上ぐべき責任政府にあるのではないか、かように考えるのであります。そこでまずその点について政府のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  10. 首藤新八

    首藤政府委員 お説の通りこの問題については、政府といたしましても重大な関心を持つておるのであります。そこで大蔵省の方に対しましても、引続き現在なお折衝いたしておるのでありまして、本日大蔵省主計局長が出席されておりますから、いずれ主計局長から御説明があるだろうと思いますが、通産省といたしましては、当時この法案にも織り込みたいと考えたのでありますが、別途にこれと同様の立場にありまする陸海軍共済組合あるいは台湾の專売局の共済組合、こういうような一連の同じ性格のものがありますので、こういうものはまだ一つも解決しておりませんので、一応法案に織り込むということは除外いたした次第でありますが、大蔵省措置がきまりますれば、至急に法に織り込みまして、單行法として提出いたしたい、さように考えております。
  11. 磯田好祐

    磯田説明員 ただいま御指摘されました八幡製鉄所共済組合員に対しまする旧官業時代から引続き勤務いたしておりますところの者に対する共済給付金引上げの問題につきましては、この前の国会以来たびたびこの国会において問題になりましたところでありまして、先ほども御指摘になりました通り、旧八幡製鉄所時代において官吏であつた者につきましては、すでに官吏恩給制度引上げてあり、また共済組合員につきましては、他の共済組合員につきまして六千三百円ベースに切りかえられたのに伴いまして、これまた引上げられておるにもかかわらず、旧官業共済組合でありましたところの八幡製鉄所時代におきまする組合員給付金というものは、依然として据置きになつておる。この間のバランスをとるべきではないかというお説であると思うのであります。これにつきましては、この前の国会政府委員からもたびたび御答弁いたしました通り、その後政府におきましては、他の外地共済組合海軍共済組合あるいは陸軍共済組合などの問題とともに、鋭意研究して参つたのでありますが、未だこの問題に対しまする最終的な結論を得るに至つていないのであります。それにつきまして問題になります点は、なるほど恩給法によりますところの旧官吏に対しまする恩給は、恩給法改正に伴いまして引上げられたのでありますが、この場合は御承知のようにこの恩給納付金というものは国庫に直接納付されておるわけでございます。従つてそれに相当するところの歳入というものは国庫に入つておるわけでございまして、これに対する引上げは、他の官吏と同じように引上げられたのでありますが、八幡製鉄所の場合におきましては、この共済組合に対しますところの共済組合掛金というものは、いわゆる積立金といたしましてこの旧官業八幡製鉄所共済組合から日本製鉄共済組合に形をかえました場合におきまして、それに相当いたしまする責任準備金の全部を八幡製鉄所に引継がれておるのでございます。従いまして純理論的に申しますならば、その後の事情に基きます共済組合給付金というものは、その積み立てられましたところの責任準備金を引継いだところの製鉄所においてすべきだというような議論も一応成立つのでございます。しかしながらこの間の問題につきましては、一方が国庫に直接その恩給掛金を納付しておるのであるから、これは直接国でめんどうを見てやるべきものである。あるいは一方はこれは旧官業八幡製鉄所から日本製鉄株式会社にその責任準備金が引継がれておるから、従つてこれは日本製鉄においてその共済組合給付金引上げはその後の事情においてやるべきであるということには、一概に言い得ないのでありまして、その間の調整をいかにするかという問題につきまして、現在政府の中で研究中でございます。従いまして以上申し上げましたような事情におきまして、この旧八幡官業共済組合、今の八幡製鉄所組合給付金引上げということにつきましては、まだ最終的の結論に至つておりませんので、一応そういうことを御報告申し上げたいと思います。
  12. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの御答弁によりますと、まだ研究中であるというようなお答えでありますが、前国会における大蔵委員会におきまして、前尾委員質問に対しまして水田政務次官からこの問題については十分善処する。至急に着手して御希望に応ずるようにしたいというような御言明があつて、おるのであります。私は先ほども申しましたように、官営八幡製鉄所日本製鉄所に移管いたしました沿革、歴史というもの、あるいは当時の国会におきまする中島商工大臣答弁から見ましても、これは当然官業共済組合と同様に取扱わなければならぬ、こう考えるのであります。また先ほど首藤政務次官から、官営八幡製鉄所に在職した者の退職手当については、はつきりと通産省、いな政府において責任を感じているんだ、それで今度の法律出して来たんだ、こういうように承つておるのであります。これはこの退職手当の問題と意味はまつたく同じであり、条件もまつたく同じであると考えるのでありまして、一方退職手当だけはこの際認めるが、共済組合年金についてはまだ研究中だということでは、はなはだ物足りないように思うのでありまして、それから来る八幡製鉄共済組合年金についても、その責任準備金の限度におきまして、政府においてはつきりとこの際責任をお認めになつていただくのが至当じやないかと思うのであります。特にこの年金を唯一のたよりとして生活を送つておりまする年金受給者にとりまして、現在のごとく、先ほど申しました二百円そこそこの年金——これはタバコを二つ、三つ買えばなくなつてしまうようなわずかな額が年金額であるということは情ないじやないかと思うのであります。年金受給者生活の困窮を考えますると、これは一日もほつておくことができない、かように考えるのであります。どうか政府におきましても、先ほど首藤政務次官は、通産省としてはまつたく同感である。極力善処すると言われておりますので、大蔵当局においても、あたたかい親心をもつて、この問題を速急に取上げて解決せられるように、特に希望する次第であります。いま一度、この点についてのお答えを承つておきたいと思います。
  13. 磯田好祐

    磯田説明員 この問題につきましては、先ほど答弁いたしましたように、大蔵省政府部内におきましても、まだ最終的な結論に至つていないことは事実でございますが、この前の国会におきまして、できるだけその実情に合うように十分研究をいたして善処するという御答弁がされておるのでございますが、私ども事務当局といたしましても、そういう方向において研究いたしておるのであります。できるだけこの実情に合うように研究いたしたいと思います。
  14. 中村幸八

    中村(幸)委員 もうすでにこの前の大蔵委員会以後において相当日時もたつていることでございます。一方において二百数円の年金を受けている気の毒な方々の身の上を考えまして、即刻研究するならするで着手せられまして、ただちに結論出し、でき得べくんば次の臨時国会には法的措置あるいは予算的措置をとられんことを特に希望いたしまして私の質問を終ります。
  15. 南好雄

    南委員 同僚中村委員から、大体私の申し上げようとすることをほとんどしていただきましたので、別に蛇足を加える必要はないと思うのでありますが、一、二私の質問だけをいたしておきたいと思います。  第一点は、この附則の第二項の従業者の範囲であります。これはもちろん広い意味だろうと思うのでありますが、念のために通産省意向をお聞きしておきたい。  それから第二点は、一応今大蔵省説明員からお話を承つたのでありますが、中村委員が言われたように、単に考慮するという程度の問題ではないと思うのであります。結局のところやはり同じ役人であつて形式上の区別にすぎないのでありますから、ほつておくということは、いかにも私は乱暴過ぎる結論ではないかと思うのであります。結局やはり通産省がもう少し真剣になつて日本製鉄なり、あるいは引継がれた会社に、政府になりかわつてやらすような措置を、行政上の監督でもなさつてしかるべきものじやないか、こういうふうに考えるのであります。この点における通産省の御意見をあわせてお聞きしておきたいと思います。
  16. 首藤新八

    首藤政府委員 南委員の御質問に御回答いたします。御質問の第一番の附則の二の問題は、広い意味だということを御了解願いたいと存じます。  第二の共済会の問題でありますが、まつたくお説の通りでありまするので、今後通産省といたしましては、全力をもつて強力に大蔵当局と折衝しまして、なるべく早い期間に御趣旨に沿うような法案を提出するように運びたいと存じておる次第でございます。
  17. 南好雄

    南委員 もし大蔵省一般の場合の形式的解釈従つて官吏官吏でない者との区別をするならば、その際においては、これは当然承継しておる法人責任を持つべきものじやないか、こういうふうに私は考えるのであります。従つてやはり行政上の監督によつて日本製鉄が当然責任を果し、さらに日本製鉄が解体されて、いろいろの会社に分割される際は、その会社責任を持つて行くべきものじやないか、こういうふうに思うのであります。願わくば大蔵省責任を持つてくれればいいのでありますが、国家財政の見地から見まして、さらにまた先ほど説明がありましたように、台湾、その他の同種類共済組合の点もありますので、なかなか通産省努力では早急に解決がしにくいと思う。そういう場合には、少くともここに日本製鉄という実体があり、さらに日本製鉄が、名前がかわるにすぎないのでありますから、これらの官吏官吏にあらざる者の差異を一日も早く解決させるためにやるのが通産省責任ではないかと思うのであります。第一段の責任と第二段のいわゆる責任とを明確に御認識くださいまして、万遺憾なきよう措置せられんことを重ねてお願いしておく次第であります。
  18. 首藤新八

    首藤政府委員 大蔵省が交渉の結果できないときにはどうするかという第二段の御質問でありますが、通産省といたしましては、あくまでも他の官吏と同様に扱うのが至当だという確信をもつて交渉しておるのでありまして、できないということは現在の場合考えていないのであります。従つてもしできないということになりますれば、また別途の考え方をしなければならないと考えております。今のところあくまでできるものなりという確信のもとに折衝を進めたいと存じます。
  19. 今澄勇

    今澄委員 この日鉄法廃止法律案の審議に当つて、私はまず通産大臣に、就任最初のことで今までゆつくり質問する機会がなかつたのでありますが、お尋ねしたいことが一つあります。それは大体この製鉄事業あるいは肥料産業あるいは繊維工業等わが国の重要なる産業行政をつかさどる商工省通商産業省と名前がかわりまして、この吉田内閣のもとにおきましての歴代の通産行政を見るに、御承知のように大臣のかわること最もはなはだしい省でございます。さらに外務省関係の者が通産省に非常に入り込んで、通産省の中で講和条約のできるまでのいろいろな問題に対して、通商貿易その他のことによつて非常に力を得つつあり、大蔵関係の方も来ておるようでありますが、先ほど中村幸委員質問の共済問題でも、ほとんど通産省意向がなかなか通らない。金融に関しては大蔵省に占められて、通産省は何ら独自の見解がない。そういうときにあたつて大蔵大臣が兼任したり、文部大臣が兼任したり、伴食大臣的な兼任の大臣が二代も三代も続いて、しかも通産行政に関する吉田内閣の今日までの政策は、まことにお粗末きわまるものであつたということは、横尾さんもおそらく御承知であろう。今までの通産大臣任命のごとき通産行政あり方においては、金融からは大蔵省で締められ、それらの外交官僚就任によつて外務省的な勢力も台頭し、通産省日本の最も重大な産業管理の省として有名無実に帰そうとしておる際にあなたは通産大臣の職を引受けられた。われわれは大蔵大臣の推挙であつたとかあるいはどうとかいうような問題は問わないが、今後の日本通産行政を預かる横尾大臣は、これまでのあり方をどのように考え、そうして日本重要産業並びに産業行政についていかなる決意を持つておられるかということをまず最初に伺いたいと思います。
  20. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいま私に対して通商行政についての意見を言えというお話でございますが、私は日本産業通商もありますけれども、まず産業を正常の道に直してこそ貿易もこれに伴い得る、こういうふうに考えます。従つてただいまお話のように、産業方面に関しましては一段と努力をしたいと考えます。現在のように戦争のために世界の水準から数等遅れておるところのわが国産業をとりもどすことが第一歩ではないかと考えております。これに対しましてはいろいろの試験設備も、あるいは研究機関も今までありましたけれども、そういうものでなしに、ほんとうに業界に寄与できるものをつくることが第一に私のなすべきことではなかろうかと考えております。もちろん製鉄もあるいは石炭も、個々に言いますれば個々にいろいろ問題があろうと思います。しかし何といたしましても、わが国は人口が多くて土地が狭いということは御存じの通りでありますので、この多数の労力を世界市場に製品として出し得るように指導することが私の任務なりと考えておるのであります。いろいろのことにつきましては、その業務々々をよく討究して行くということをお話して御了承を得たいと存じます。現在のように、せつかくつくりましたところのものを世界市場に出しましても、クレームとして受取られないというような産業はいかがかと考えます。その点もよく討究いたしまして、どういうところにどういうクレームがあり、どういうわけでこういうクレームができたかという原因を討究してみたい。まず手初めに先刻お話いたしましたように指導機関の拡充、すなわち生産の指導と、商品を市場に出し得るような指導をして行きたいと考えるのであります。これで御了承を願います。
  21. 今澄勇

    今澄委員 専任の稲垣さん以来伴食大臣ばかりでありましたが、このたび専任の横尾さんの就任にあたつての決意はなかなか賛意を表します。その考えでひとつ大いにやつてもらいたいのですが、現実は今般の地方税の問題にしてもあるいは貿易方面においても、ドツジ・ライン下の国内産業の設備資金の問題においても、あらゆる方面において通商産業省の意見は閣議においても現実に通つておらぬ。そうして日本通産行政というものはまことに深刻な打撃を受けつつあるということは国民がひとしく知つておるところでございます。私は歴代の通産大臣がいま少しく地方税の問題においても発言権を持ち、努力したならば、今日この国会にかかつておるがごとき地方税法案は出なかつたであろうと思います。われわれはそれらの点について大臣が卒直に歴代の通産大臣あり方を反省して、日本産業行政あり方を示すという意味で、党派を超越して御努力されることを希望いたします。  そこで日鉄法の問題に入りますが、まず最初に終戦以来、政府の強力な補給金政策によつて回復して参りました鉄鋼業も、御承知のように七月一日の補給金の全面的撤廃によつて大きな試練期に入つたものであるということは、これは申すまでもないと思います。今後鉄鋼業が、機械企業合理化によつて、激烈な国際競争場裡に打つて出るわけでございますが、現在のわが国の鉄鋼業は、いまだ戦争中の創痍が回復しておりません。設備が老朽し、非能率であることも御承知通りであります。さらに配炭公団廃止に伴う日本の石炭の自由販売から高炭価に悩まされているということは、今日の鉄鋼業の一番大きな問題であります。このような悪条件のもとにおいて、朝鮮の事変その他開らん炭、撫順炭等の輸入の上における大きな障害、わが国の石炭価格と鉄鋼業の問題等々をわれわれは全然等閑に付してこの日鉄法の審議に当ることはできません。このような現在の状態のもとにおいて、鉄鋼業の自立、これが自由企業として成り立つかという問題、その他全般的な大臣の御構想とお考えを承りたいと思います。
  22. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいま製鉄業に対してのお話を承りましたが、実は私は専門じやないからはつきりは申し上げられません。しかしながら八幡の製鉄所は廣畑に比べて機械も古いということもよく承知しております。そして八幡のものよりも廣畑のものが生産コストが安いということも承知しております。つきましては開らん炭が入りにくいのではないかというお話でありますが、あるいは事変の推移においてはそういうことも考えられなければならないかと思います。そういうことに対しましては目下本省において討究中でありまして、御懸念のないようにして行きたいと思います。また製鉄業に対しましてはまだ残されたるところの技術的方面に多々問題があるのではないかと考えるのであります。私はよくはわかりませんけれども、私の友達の製鉄業者は酸素製鉄ということも考えているようであります。また重油の使用ということも考えているように聞いております。それが適切であるかないかは今私は判断申し上げかねますけれども、しかし幾らかづつ効果があるということを聞いておりますから、こういう方面でも討究いたしましたならば、まだコストを引下げることができはせぬかと思います。ことに私はすべての工業に対しまして、補給金の温床にいつまでもなれるということになりますると、どういたしましても自立経営が漸次遅れて行くものと思われます。われわれもそういうような径路をたどつて来ているものであります。あるときにおいて多少の一時的の混乱を来すことありといえども、補給金制度というものは思い切つてやめることが業界のためになるものなりと信ずるものであります。でありまするからただいまお話製鉄業に対しましても、そういうようなことで技術の向上、そうして経営の合理化を極度に進めるように指導して行きたいと考えるものであります。
  23. 今澄勇

    今澄委員 卒直な御答弁であまりつつ込んで申し上げるのもどうかと思いますが、結論としては具体的のものは何一つないということになるわけであります。そこで政府日本の鉄鋼政策というような根本的なものをもつて、今日の日本産業再建の上に乗り出さなければならないのであるが、歴代の通産大臣わが国の鉄鋼行政についての一貫した政策がないわけである。今日横尾大臣就任間もなくで、卒直な御答弁、私も深くは追究しませんが、結論としては今の内閣は鉄鋼業なら鉄鋼業に関する場当り的な問題で、一例をあげれば、高炭価と製鉄の製品の値段の引下げというものについても、ただ単なる合理化を行うということだけで、要素はない。たとえば補給金を打切るということだけで、ただ補給金を打切つて、そうして外国の製鉄業と太刀打ちすることはできないが、これをどうして行くかという、産業合理化資金の運用その他についても具体的な方策がない。すべて場当り的なものがあるから、何らの結論が出ないということになると思います。私は一例を申し上げますならば、産業合理化審議会が先般行われて、この産業合理化審議会において鉄鋼業のあり方についても意見が出ておるはずであります。これらの審議会が出し結論に対して、大臣はどうお思いであるか。さらに大臣があまりお詳しくないならば政務次官はどう考えておるか。さらに局長はこれに対してどういうふうなあなたの御見解であるかということを、あわせてこの際聞きたいと思います。
  24. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいま場当り式の計画とおつしやいましたが、私はできますならば定めましたる基準は永久にそれによつて行くようなものを考えたいと思つております。場当りは、これはお話のように私は好まないものであります。それから審議会の答申は今日に相なりましてまだ見ておりませんので、これに対してお答えをし得ないことをはなはだ遺憾に考えます。
  25. 首藤新八

    首藤政府委員 私から足りない分を御説明いたしたいと思います。今の鉄鋼の補給金打切りによるところの打撃は、今澄委員も言われたごとく、相当深刻であつたのでありますが、幸いに朝鮮問題を契機といたしまして、最近需要が非常にふえて参つたのであります。従つて八幡製鉄所におきましては、六月までは販売値段を一万八千円にいたしておつたのでありまするが、今月からは二万四千百二十円という値段に引上げまして、大体補給金をもらつてつた場合とかわらないような状態に現在なつておるのであります。なお将来の問題でありまするが、これに対しましてはあくまでも設備の改善、その他企業合理化を急速に、かつ強力に進める必要があり、御承知のごとく先般企業合理化審議委員会ができまして、省内におきましても関係当局におきましても、鋭意現在研究中であるのでありまして、一応の成案は現在得ております。なおこれを最終的な決定をいたしまして、次の本国会に提案いたしたい、かように考えておる次第であります。
  26. 今澄勇

    今澄委員 局長もあわせて事務当局の立場から、これに対してひとつ意見を述べていただきたい。一番古くからやつているのだから……。
  27. 中村辰五郎

    中村政府委員 ただいまの今澄委員の御質問につきましては、大臣、政務次官のお答えの線に従いまして、事務当局としては今日まで、また今後においても進んで参るつもりでございます。しかし二、三私の率直な意見を申し上げて御了承を得たいと考えるのであります。国際的な競争力から見ました日本の鉄鋼業の自立の問題でございますが、これにつきましては、私過去一年半になりますが、補給金の問題について関係いたしました経験から推論いたすのでありますが、昨二十四年度の終りごろから二十五年度の今日、鉄鋼業の歩んで来た道をたどつて考えますと、生産の上昇カーブにおきましては、非常な急カーブで上昇いたしております。この上昇に伴いまして、技術的な進歩の程度も非常に当時とかわつて来ております。もとより操業しております各プラントも、できるだけ近代的なものを積極的に動かす。たとえば厚板におきましては、廣畑の再開、あるいは戸畑におきますプラントの拡充という問題、製鋼部門におきましては、先ほど大臣が一言触れました酸素製鋼の実施、神戸製鋼、尼崎製鋼、近く川崎重工業の工場においても実施いたす予定にいたしております。こういつた重要なる技術的な進歩ということがこの期間に行われております。こういう意味合いにおきまして、鉄鋼業の国際的な競争力というものは、当時に比べて倍加しておるのではなかろうかと考えるのであります。補給金の削減の足取りからいたしましても、二十五年度の当初計画におきましては、相当厖大な国家補償を必要とするような程度でございました。しかしながら二十五年度の実際の歩みは、これらの補給金を半分程度削減して、なおかつ鉄鋼業の自立性というものを失わないで来ておる。また今後におきまして七月一日の補給金の削減問題も、大体合理化の線で削減されます補給金の約五〇%を吸収せしむる目標で、われわれの指導を行つておるのであります。今後に残します問題は、国内の鉄鋼に対する措置の問題が一つつたという実情でございます。このような補給金の削減の足取りからいたしましても、鉄鋼業は強く国際競争力に対応して参つておると考えるのであります。鉄鋼業の将来の問題に関連いたしまして、われわれが考えております一つを申し上げますと、昭和十年を一つの基準にいたしまして、われわれ国民経済の重化学工業化ということの線がいかような足取りをしているかという点に触れて一言申し上げますと、昭和十年に銑鉄百九十万トン、鋼材にいたしまして約三百七十万トンの生産をいたしております。当時の日本の鉄鋼業は、満洲にある程度の足場を持つておりました。しかし今日の鉄鋼業は、この足場を外にいたしまして考えなければならぬのでありまして、この線が昭和二十五年度の現実の姿から申しますと、高炉銑で百九十三万トンの予定をいたしております。普通鋼鋼材で二百五十万トンの最初の計画をいたしておりまするが、現実の足取りは三百万トンをちよつと切れるかというのが現在の見通しであります。しかしこの足取りはさらに二十六年度の目標から考えてみますると、もう一歩普通鋼鋼材といたしまして今日一応三百二十万トンの線を考えております。しかし諸般の需要関係考え、特に輸出におきます将来の発展を考慮の中に入れますと、この三百二十万トンの今日の一応の考えは、さらに三百五十万トンを越える程度に持つて行かなければならぬのではないかと考えられるのであります。これに対応いたしまして、国内の銑鉄の生産目標も、最初の百九十三万トンの計画を一応二百四十万トン程度に高めたい。しかし普通鋼鋼材をさらに三百五十万トン程度に持つて参るという考えからいたしますと、この高炉銑二百四十万トン計画をもう少し上げる必要があるのではなかろうかというぐあいに考えております。このような線が出て参りまするならば、大体において日本の鉄鋼業は昭和十年のベースまで参る。このラインが実現いたしまするならば、日本の鉄鋼業の生産性と申しますか、コストから見ました著しい低下というものも想定できますし、技術的な改善ということもさらに一段と進みまするので、日本の鉄鋼業の国際的な自主性も、このときにはほぼ実現できるのではなかろうかという一つの見通しを考えております。これに対しまする原材料の獲得ということが非常に大きな問題になりまするが、これにつきましては、先ほど大臣よりお答えなつ通りに、われわれといたしましては全力を尽して鉄鋼業の安定、増強のために努力して参りたい、こう考えている次第でございます。
  28. 今澄勇

    今澄委員 事務当局の鉄鋼生産計画並びに鉄鋼業の将来に対する計画については、詳細に承りましてよくわかりました。私は事務当局が立てたそれらの計画は、資金の面において、あるいは原材料である電力、石炭その他等の資材の面において、あるいは政府の政治力の面において裏づけがされておらないということを先ほどから質問をしているわけでございます。いかに鉄鋼局で案を練つても、これに対するそういつたあらゆる方面の裏づけを、通商産業省の責任者がするところに日本の鉄鋼業の安定がある。計画だけではどうにもならない。鉄鋼業は古来王者か、しからずんば乞食かと言われているくらいの産業でありまして、この言葉は鉄鋼業がいかに不安定な企業であるかということを、長い世界の産業発達史のその中で雄弁に物語つていると私は思う。われわれはアメリカの鉄鋼業を見ても、過去数回にわたつて深刻なるパニツクに襲われた経験をながめておりますが、その都度莫大な資本の注入があつた。その間莫大な資本が投げ入れられて、近代化への長年の努力が続けられて来たということも御承知通りであります。しかるにわが国の鉄鋼業は、その成立自体が国家の大なる保護と助成政策によつて育成されて来たことは、大臣といえども御承知通りであります。これがドツジ・ラインの要請によつて、今度鉄鋼業を他の一般産業と同じく、これには何らの重点度も与えないで、企業の自主性と合理化だけで自由経済のまつただ中にこれを放任して、しかも今言つたような事務当局の計画が完成されなければならぬというところに、この内閣の無計画性を私は言わざるを得ない。今の鉄鋼局長のいろいろな御説明と、先般の産業合理化審議会において出た結論との間には、天地雲泥の逕庭のあることを私から指摘いたします。産業合理化審議会において出た結論は、鉄鋼業に対しては少くとも今後数年間に四百二十億円程度合理化資金を投げ入れなければ国際価格には太刀打ちできない。それから石炭鉱業がこの鉄鋼業の自立を達成するような安いコストの石炭を提供するためには、昭和二十七年度までに、これまた四百億円程度の資金を投げ入れなければ、炭価の引下げを行うことは不可能であるという結論が出ております。しかもここ当分依然として補給金の継続なくして、これらの広大なる国際場裡において鉄鋼業の自立ということは困難であろうということが、この審議会の結論でございます。われわれはそれらの審議会が出し結論と、今の大臣答弁といい、事務当局の計画といい、思い比べてみて、日本の鉄鋼業の将来を思うときに、まさに冷水三斗の思いがするわけであります。そこで私は再度大臣にお伺いしたいが、大臣は鉄鋼業に負荷されている責任とその使命に対して、今後助成金がなくなりまして、とにかく自由経済に放任されて、十分今言われた技術の向上や、あるいは合理化の線でこの鉄鋼業がずつと自立して行き得るようにお考えになつているか。それともそれではどうもだめだ、こういつたような手を打つて、あるいは産業合理化に関する資金については、今の大蔵省のやり方ではまずいから、産業合理化金融金庫をつくる、こういうふうな手を打つとか、復興金融金庫の改組をやるとか何とかいうような御抱負があるならば、それを承りたい。具体的なそういう鉄鋼業に対する今後大臣としての打たれるべき方策があるならば承りたいと思います。あわせてもし大蔵省政府委員の方が来ておられるならば、それらの鉄鋼業が要求し、あるいは石炭鉱業が要求しているところの資金——先般第七国会閉会以来、この通商産業委員会が夏場の貯炭に対するところの当面六十億の金と、将来の石炭金融についてだけここで取上げた委員長処置については、私は非常に不満を禁じ得ないのであります。われわれは日本産業のためには、鉄鋼といわず石炭といわず、あらゆる産業が今日合理化資金、資金難にあえいで、今日のドツジ・ラインの影響下に非常に苦難の道をたどつているのでありますが、私はこの際大蔵省関係の方から、それらの鉄鋼業に対する設備資金四百二十億、さらに石炭鉱業に対する昭和二十七年度までの四百億の資金、これが大蔵省の見通しとしてまかない得て、これを十分保証し得るものであるかどうかということも、あわせてこの際ひとつ御答弁を求めたいと思います。
  29. 横尾龍

    横尾国務大臣 補給金がなくなつてどうかというお話でありますが鉄鋼業に対しましては一部なお補給金の残つているものがあります。またその他の補給金に対しましてはよく討究をして万やむを得ざるものは何とかしなければならぬのではないかと思います。事業の上におきまして私は考えますのに、資金の調達もさることながら、金利の高いことを何とかしなければいかぬ。これをやることがわれわれまず手をつけるべきものではなかろうかと考えるのであります。
  30. 小金義照

    小金委員長 ちよつと委員長から申し上げますが、大蔵省磯田共済課長だけで、政府委員が来ておりませんので答えがありません。  なお石炭の金融その他についてだけを取上げて、産業のその他の点を取上げなかつた委員長措置について不満を表明されましたが、あれは閉会中の調査の問題でありまして、石炭の合理化を取上げたのであります。そうしてたまたま金融問題を中心に論議が続行されました。しかしながら、私は一般金融問題について非常に多くの時間を費したことは認めましたが、今、今澄委員のおつしやつたような趣旨において一応そこを検討したい、委員会としても取上げたいと思つたので、あえて発言を制限せずに全般の問題を論議していただきましたから、その点を御了承願います。
  31. 今澄勇

    今澄委員 大蔵省の方の答弁がありませんが、大体大蔵省は、いかなる委員会においても出席が大体一時間ぐらい遅れるというのが今日の通弊なんです。税金をとつて、そうして金融の王者にすわつて、今日大蔵省が特権的な考えにふけるということは、あるいは凡人の常かもしれぬけれども、私どもは少くともこういつた重大な問題に対して、大蔵省の態度はまことに遺憾千万であると思います。  それから今の委員長お話であるが、先般も私ははるばる選挙区から休会中に現われて来たのでございますけれども、この石炭の合理化の問題については与党である自由党の皆さん方が全部質問をして、野党であるわれわれは関連質問として私がわずか、しかも少数党にも発言の機会を与えなければならぬという神田委員の附帯言葉付で、二分間質問をしただけです。これでは決して十分なる時間を与えて全般の産業金融に関する問題を討議したとは言えないことを、ここにあわせて委員長に申し上げておきます。  それから今の大臣の御答弁でありましたが、何ら具体的なお話がございません。しかし私は率直な大臣答弁についてこれ以上どうも言いにくいのでありますが、鉄鋼業を語るにあたつて、これと一体不可分な関係にあるのが石炭でございます。すなわち石炭の価格が鉄鋼の運命を左右する。この高炭価問題が、最近のわが国産業のキー・ポイントであるということは、今日の経団連、あるいは石川一郎氏の仲裁、その他毎日々々の石炭業者と鉄鋼業者との対立の問題が一番雄弁に物語つている。これに対して通商産業大臣として、これらの石炭の値段と、鉄鋼業との紛争の問題について、まだ調停に立たれたという話を聞かない。しかも炭価の引下げは、外国の強粘結炭の輸入によつて引下げるのか、国内の石炭産業合理化資金を与えることによつて、これを近代化し、合理化して引下げようとしているのかという根本的な対策については、政府の明確な所信を伺つたことが不幸にしてございません。そこで私は大臣に重ねて聞きます。わが国のこのような鉄鋼業に対する建前から、一体石炭はどういうふうにして値段を引下げられるおつもりであるか。外国炭の輸入の見通しについて私は聞きたい。さらに鉄鋼業と石炭鉱業とが対立しておる問題について、通産大臣がこの間に立つて両者の円満な妥結と十分なる協力態勢を築き上げられる方針があるかどうか。この点について足らざるところを、炭価の問題その他についても、政務次官から詳細に補足していただきたいと思います。
  32. 横尾龍

    横尾国務大臣 外国炭を引入れて内地の炭価を引下げる意思があるかどうかというお尋ねでありますが、現在外国炭は御存じの通り強粘結炭でありまして、内地のほとんど北松浦のみに依存している強粘結炭では足りませんので、余儀なく輸入しているような次第であります。それで普通石炭に対する圧迫ということにはならぬのじやないかと私は考えます。  それから今の石炭業者と製鉄業者との紛争の間に立つて、何か調停の意思あるかということでありますが、実は私まだその事情をよく知らないので、事務当局に聞きまして、できることならば争いをなくして、両々相立つて行くように話を進めたいと考えます。
  33. 首藤新八

    首藤政府委員 私からもお答えいたしたいと思います。ただいまの今澄委員の御質問でありますが、いかにして石炭を安くとるか、御承知通り昨年配炭公団が廃止されました場合、石炭の価格は大体四千二百円になつてつたのであります。これには公団の手数料あるいは実際よりも相当高いところのプール計算で算定されて、それがマル公として四千二百円となつたのであります。しかも当時貯炭が非常に大きく、生産力もまた相当ふえて参つたような関係上、配炭公団が廃止になつた後におきましては、良質炭が相当安くなるであろう。要するに配炭公団のあつた場合の冗費が節約されますから、少くともその分だけは必ず石炭価格は低下するであろうということが、一般需要者の気持であつたのであります。ところがその後実際は、意外にも石炭価格は日に日に騰貴いたしまして、現在においては良質炭が五千何百円、六千円というような高値が出て参りましたので、重要工業におきましては、コストに重大な影響をもたらす、しかして輸出貿易にこれまた大きな暗影を投じておるというようなわけであります。そこでただいま大臣から申されましたごとく、一部には、この際外国炭を相当輸入して、そうして供給をふやし、もつて炭価を引下げたらいいじやないかという意見もなきにしもあらずでありまするけれども、通産省といたしましては、ただいま大臣が申し上げましたごとく、特に強粘結炭はやむを得ないのでありますが、その他のものはそういう手段はとりたくないという考え方を持つております。しからばどうして値段を引下げるかという点でありまするが、先ほども御説にありましたごとく、企業合理化審議会で一応審議いたしました結果、大体四百億円の資金をもつて設備の改善をやる。しかしとても目先の問題には間に合わぬと思いますので、その他におきましては、今まで復金あるいは見返り資金等々で、相当巨額な資金が投入されておりまして、これの償還あるいは利子、それらの負担が現在の石炭価格を騰貴せしめている大きな要素となつておるかとも考えるのであります。そこでこの際できるならば、復金あるいは見返り資金の償還期間をある程度延ばしてもらう。さらにまた一面において金利をできるだけ引下げてもらうというような、当面の応急措置をとることも、炭価引下げの一つの方法ではないか、こういうふうな考え方を持つておるのでありまして、近く関係方面と折衝を始めたい、かように考えておるわけであります。
  34. 今澄勇

    今澄委員 今の大臣の御答弁並びに政務次官の御答弁は、石炭に関する金融についての昨日のこの委員会の結果を振りかえるだけでも、まさに噴飯にたえないのであります。石炭に関する金融についての昨日の委員会で、私は発言しなかつたのでありますが、炭鉱業者が六十人もこの委員会へ傍聴に詰めかけて、うしろでひしめいておりましたが、その前で、日本銀行の副総裁並びに舟山銀行局長は何と言いましたか。舟山銀行局長は日本銀行におまかせすると言い、日本銀行はできる限り努力するということで、昨日の石炭に関する金融の問題は打切られたのであります。われわれは、少くともそういつたやり方でこの合理化を行い、石炭の値段を下げ、しかもそれが鉄鋼業が十分採算がとれるような措置であると信ぜられるとするならば、あなた方はまことにドン・キホーテと言わざるを得ません。われわれは、政府の自由販売——あるいは肥料その他の公団が廃止になつた結果、肥料においても、今日肥料が自由販売になつて、資金の需要量は厖大なものである。大蔵省の方はまだお見えになりませんが、大蔵省の方がお見えになつたら御存じのはずである。石炭においても、鉄鋼業においても、あらゆる方面におきまして厖大な資金が必要になるような態勢に、漸次わが国の経済態勢は移りつつあるにもかかわらず、これを行う政府の方針は、大蔵省の銀行局長は、日銀に一任した、日銀はできる限りの努力をするということで行こうというのでありますから、どうか大臣並びに次官はそのような今日の日本金融情勢、それから大蔵省の態度、日銀の態度等についても、よほどの御決意をもつて、よほどの監視をし、努力をされなければ、国家の基礎産業である鉄鋼業のために努力しようとしている民間業者の怨嗟の的になるだろうということを、ひとつ御覚悟を願いたい。私は、鉄鋼業自体の合理化は、現在においては、先ほど来述べたいろいろな要素から、もう限度に来ていると思う。そこで私は、大臣、次官でなしに鉄鋼局長から、これらの鉄鋼業の合理化で、今度の補給金の七月一日からの分をほとんど吸収するという話がさきにございましたが、この鉄鋼業自体の合理化の現在のくわしい説明と、できれば合理化はどの程度まで来ておつて、しかもどういうふうになつておるという詳細な資料をいただきたいのでありますが、とりあえずこの席で、鉄鋼業の合理化はどの程度まで来ているか、あるいはあとまだうんと合理化する余地があるか、それとももはや限界であるか、それらのことについて御説明をお願いしたいと思います。
  35. 中村辰五郎

    中村政府委員 鉄鋼業の合理化の現状についてのお話がございましたが、先般七月一日の価格改訂の際に、銑鉄の価格が、それ以前におきまして大体五十一ドル、七月改訂の数字が四四・六ドルくらいかと記憶いたしますが、これは一面原材料関係の値下りの問題も関係しております。それから作業費その他の合理化の数字も織り込んでここまで来ております。今後の問題といたしましては、もとより原材料費の値下りも相当考え得る問題の一つでございます。それとさらに作業費その他の経費の合理化、労働生産性の向上と申しますか、それから技術的な、たとえば先ほど来申し上げました技術の改善、熱管理の徹底というような問題がございますが、これらの問題を総合いたしまして、さらにこの線をもう少し引下げて参りたい。こういうことで指導して来ております。製鋼部門の問題になりますと、先ほど申し上げましたように、一つには酸素製鋼、あるいはその他のアメリカ調査団がいろいろ指摘しております計器の採用によりますコストの引下げ、それから先ほど申し上げた熱管理の問題、こういうものを織り込みまして補給金の全部ということはさつき申し上げておりませんので、削減されます補給金の半額程度合理化は、ここしばらくの期間で行い得るのじやなかろうか。こういうぐあいに製鋼部門の方は考えております。こういつた目途から申しますと、数字的にあとどのくらい下がるかということは、ちよつと私として申し上げかねる問題でございますが、二十五年度一年、あるいは二十六年度というものを頭に描きまして、そして鉄鋼業の合理化をそういつた期間においてたゆまずやつて参る、こういうところにわれわれのねらいがあります。鋼材補給金をはずすことが、鉄鋼業のために非常な危機を招来するものであるかという問題も、ごく最近まで論じられておりましたが、私個人の率直な気持から申しまして、二十四年度の鉄鋼業の歩み、あるいは二十五年度の現在、あるいは近き将来というものを織り込んで考えましたことから、鋼材補給金をはずすことは、鉄鋼業を自主的に強力にするてこにはなるけれども、決して弱体化するものではないという確信を持つておりましたし、今日においても持つております。そういう意味合いにおいて、残る問題は銑鉄補給金の問題だけでございます。これは政府関係各省間その他で目下検討中でございまして、この点については私から結論的に申し上げられない段階でございます。世間には鉄鋼と石炭との問題に関連しまして、あたかも対立あるがごとくに論議されるのでありまするが、今日までの石炭、鉄鋼業の長い間におきます発達を考えてみますと、大体昭和七、八年の不況時から石炭鉱業の歩んだ道、またその当時からの鉄鋼業の足どりというところから今日の問題を考えますと、その当時の詳しい数字は忘れましたが、日本の石炭鉱業の操業度上昇と、石炭鉱業の安定操業というものは、鉄鋼業の拡充ということが行われ始めました昭和十年ごろと記憶しますが、要するに粉炭の価格が塊炭に対する割合から見て、高く売れる状態になつたという時が、石炭鉱業の著しい操業度の上昇時期であります。そのことから考えまして、鉄鋼業の発展は石炭鉱業自身の発展でもあり、安定の操業を可能ならしめる基礎である、こういうぐあいに歩んでおります。そういう意味合いから、今日の石炭と鉄鋼の問題をあわせ考えますると、鉄鋼業の安定操業ということが、ひいては石炭鉱業の安定操業になるという業者間の実際の協力関係をつぶさに見て参りますると、そう深刻な対立問題ではない。今日の段階においては、鉄鋼業者も石炭業者もともにこの両産業の両立するために、お互いにできるだけの合理化をして、国際競争に負けない鉄鋼の価格をつくり上げるというような歩みになつております。また鉄鋼業の立場から申し上げましても、われわれは、日本の石炭価格が、アメリカの炉前のあのような安い価格でなければ、鉄鋼業が成り立たないのだというような弱音は申し上げておりません。もとより日本の鉄鋼の原料面から来ますいろいろの不利な条件は、今日の段階に来るまでにおいても味わつた問題でございまして、この面から申しまして、石炭鉱業をアメリカ並の石炭にしなければならぬというのでなしに、日本の石炭鉱業としてできる程度の石炭価格をできるだけ鉄鋼業も取入れて、その上でともに両産業が成り立つような限度を発見しようというのが、先般通産省に設置されました産業合理化審議会の歩みでありますし。そういう意味合いからいたしまして、国際並の石炭価格よりも少し割高なものでも、日本の鉄鋼業は、製鉄部門においても、あるいは製鋼部門、あるいは圧延部門においても、総合的な合理化の線でこれを吸収して参りたいというのが真の考え方でございまして、こういう意味合いから申しまして、私は鉄鋼業と石炭鉱業の対立ということを考えることはできない。意見の相違はございましても、実際の足どりから申しますと、漸次両企業の存立を可能ならしめるような線に到達して参ると私は確信しております。
  36. 今澄勇

    今澄委員 できれば局長から、設備改善についての具体的な方策と解決策、それから高炭価問題について、抽象的な過去の統計や将来の見通しではなくて、一体日本の石炭の値段をどの程度にいかにして引下げるかという具体的な問題、さらにもう一つは雇用量の多い、鉄鋼産業は重大な労働問題を含む産業であるが、企業合理化のための人員整理とか、その他の問題についての的確な見通しと、日本の鉄鋼業界における労働問題は、合理化の面からみてどの程度の問題になるかということを私は伺いたかつた。あとで鉄鋼局長からこの問題についてもう一度御答弁を煩わしたい。  それから鉄鋼と石炭の値段の問題についてはそうなるだろうという理論的推定を伺いましたが、自由経済の中における鉄鋼業と石炭鉱業というものは、理論的に推定すればそうなるだろうと私も思いますが、それは推定であり、理論である。しかしながら現実の鉄鋼業と石炭の問題は、石川一郎氏がここ半歳にわたつて努力しつつある姿が最も雄弁に物語つておるのでありまして、私が大臣にお伺いしたいのは、一体わが国の将来の産業構造というものをどういうふうに考えておられるか。すなわち鉄鋼、石炭等重化学工業を中心に日本産業構造を考えておられるか。それとも軽工業によつて輸出をして、鉄鋼業や石炭鉱業やその他は相当な出血をして、海外との競争力が相当落ちても、軽工業的な繊維を中心に、従来の日本がとつてつたような方向で行かれるのかというような問題について、日本の今後の産業構造と、それに対する大臣の抱負をお伺いいたしたい。鉄鋼局長からは、設備の改善と炭価の引下げに対する具体的問題、さらに労働問題を含めた鉄鋼業への従業員数の問題等々をひとつ伺いたい。
  37. 横尾龍

    横尾国務大臣 今澄さんの今の御質問は、大臣は繊維工業と重工業——重工業というのは機械工業のことだろうと思いますが、そのどちらかを重んずるかという意味にとりましたが、私は両方とも——どちらを重く見る、どちらを軽く見るということはなしに、両立して行きたいと思います。ことに私の考えておりますのは、繊維工業よりも重工業の方が労力をよけいに使用しますので、わが国としてはその方をもより以上にしたい。今まではあまり海外に販路を持たなかつた。これからは海外に販路を開拓したい。そうして日本でつくりました重工業の製品が、海外に信用を博して売れるようにして行き、また一面繊維も現在の市場よりも、なお一層の市場を開拓することを望むものであります。
  38. 中村辰五郎

    中村政府委員 今澄委員の御質問のうちの設備資金の問題でございますが、これについては先般の産業合理化審議会におきまして、鉄鋼部会が一応結論出しましたのは、先ほど今澄委員も申しました三箇年二百四十億という数字でございます。われわれの最初の年度におきます所要額は、おおむね百億程度でございます。これの充足が今日の問題でありますが、これについてはエイド・フアンドあるいは社債増資あるいは自己資金の調達というようなかどで充足して参りたいと考えております。今日まで個々会社がどの程度に充足して参つておるかという数字を持ち合せておりませんが、鉄鋼業に対します一般考え方も大分安定して参つておりまして、金融上の明るい見通しも一面相当あるわけではなかろうかと考えております。  それから従業員の問題、労働問題のお話でございましたが、鉄鋼業に従事いたします労務者の数は、大体二十万と記憶いたします。これらの労務者が今後どうなるであろうかという御質問のように考えますが、今日鉄鋼業に対します需要関係の推移、輸出状況の見通し等も含めて考え先ほど来私の申し上げました鉄鋼業の生産計画の上昇カーブということを念頭に置いて考えますと、今澄委員の仰せられましたような労働問題、お考えになる労働問題というようなことは、これは考えなくてもよろしいのではなかろうかというぐあいに、明るく私は考えております。
  39. 今澄勇

    今澄委員 それで引続き質問を申し上げますが、私は今の御答弁で、一点念を押しておきたいのは、今後日鉄法の廃止その他諸般の措置から、もし鉄鋼業界において人員整理等の問題が起きた場合は、今の局長の見解からすると、それは政府責任ではない。政府としてはかような状態で、大体人員問題が明るいということになれば、それは経営者の無能に帰するか、経営者の欠点になるのだから、製鉄事業従業員は安心しておつてよろしいという結論になるものと断定を下しておきます。それから今の設備改善、高炭価問題についても具体的な結論が出ませんでしたが、これも今日の委員会では時間もかかりますし、同僚議員の質問もありましようから、追究するのをやめて、このお尋ねはこれで打切ります。  これから法案に入りますけれども、その前に委員長にお願いしたいのは、製鉄所全般の問題の最後の逃避行は金融である。これこれこういうような設備資金というようなことで、通産省は資金々々と言いますが、かんじんの大蔵省は、これにこたえて、その裏づけをしたためしがない。委員会に呼んでも出席しないという状況である。だからこの法案の審議をしておる間に、もし委員長において誠意をもつて処置されるならば、鉄鋼に関する限りでもけつこうでございますが、資金を提供する大蔵省責任者から、先ほどからの通産省方々答弁を裏づける一切の言質を私は得たいと思いますが、お呼びを願いたいと思います。  そこで結論として、これまで私がお尋ねしたことでは、日本の鉄鋼業に関する大きな問題は、どうも具体的にこれはこうだ、これはこうするのだということはなかつたようでございます。私はそのために、産業合理化から生ずる失業を恐れたが、その失業については、鉄鋼局長より太鼓判を押されたので、もう一応本法案の審議に入ります。法律の中でも、すでに中村委員から大分質問がありましたので、重複を避けて、簡単に以下五、六点をお尋ねいたしたいと思います。そこで私は、先ほど政務次官その他からもいろいろ答弁がありましたが、日鉄法の第十六条について、一ぺん明快な御説明を、この際政府委員の方に煩わしたいと思います。
  40. 小山雄二

    ○小山説明員 日鉄法の十六条の説明を申し上げます。政府日鉄をつくりました際に、いろいろの問題で、金の計算上、政府負担すべきものを、一応日鉄にかわりに負担さしておいて、あとの相殺は政府株に対する配当から差引くというような方法を考えたわけであります。十六条はそういう、かわりに立てかえを命ずる根拠の規定であります。政府が第四条によつて出資をなす場合には、出資をするわけだから、そういう立てかえの義務を命ずるわけでありますが、主務大臣は大体二つのことに関して命ずることができるわけであります。一つは、日本製鉄株式会社に対して、政府の官営製鉄所から引継いだ従業員がやめました際の退職手当は、これは政府の出すべきものであるが、一応日鉄に出させることを命ずる根拠をここに置きまして、その命じ方の詳細は勅令の方に書いてあるわけであります。もう一つは、昭和四年法律二千八号、及び昭和五年法律第三号により、政府の債務の弁済、——これはよほど古い話でありますが、明治時代に中国の大冶鉄山に対しまして、政府が預金部から金を借りまして投資したわけでありますが、それに対する政府の預金部に対する支払いの債務を、やはり日鉄に一応立てかえさせまして、それもあとで配当で差引くという、こういう余地を残した規定でありまして、そのために毎年その償還の計画に応じまして、日鉄にこの債務の支払いを一応委任した、その命ずる根拠の規定でございます。
  41. 今澄勇

    今澄委員 たいへん懇切な御説明でよくわかりましたが、その中に「その他」と書いてありますが、これはどういう意味なのか、もう一ぺん御説明願います。
  42. 小山雄二

    ○小山説明員 当時の速記録その他を調べてみましても、当時も「その他」についての質問が出たようであります。退職手当の方ははつきりしておるのでありますが、当時日鉄合同に際して従業員が待遇その他について不安を持つたが、そういうことは全然やらせないのだ、退職手当そのもの以外にもいろいろこういう問題があるだろうというわけで、「その他」を置いたというふうに説明されております。具体的に申しますと、共済組合の引継ぎ、その他の問題につきましてこれを適用するという意味で、これに基きまして勅令の方でそのように定めたのであります。
  43. 今澄勇

    今澄委員 しさいにそういうふうにお話を承つてみると、先ほど政務次官は広義の意味だというようなお話でありましたが、ともかくも退職金については、第三項、第五項ではつきり保証されている。しばしば問題になつた共済年金についても、今の解釈から行くと、当然これは十六条の中に載つているものとわれわれは見なければならぬと思います。先般中村委員質問並びにこれに対する政府委員答弁によつて共済組合年金に対しては何らか法的なものをつくつてやりたいというようなことを聞きましたが、これに対する大蔵当局側の答弁は、これと全然一致しているとは思われないような節が多々ございました。われわれは法律の基本であるところの日鉄法から判断して、これらの問題を感情的な内閣の打合せ問題ではなくして、法律の目的とし、意味するところによつて明確にこれはきめる必要があると思う。そこで私は、これらの問題を退職金の問題と合せて、この日鉄廃止法につけて明文化する必要があると考える。それがまた法の建前としては当然なことである。その法の決するところによつて大蔵省はこれに従つて行くということが、私は日本の現在の立場からいえば当然でなければならぬと思う。その意味において、ここでいろいろ修正をするということになると、この短い議会ではとても大きなことはできないし、また日鉄さんも社債の募集その他のことで製鉄業にも困ることになると思いますので、最小限度の修正という意味で、共済組合年金については別途の法律にてこれを定むというくらいのことはこれに明記をしまして、この際そういつた建前をはつきりさせるということが、この法律を提出する通産省側としては当を得た措置であると私は思う。そこでこれらの問題について一ぺん政務次官の見解を承りたい。そこでわれわれがこういう修正を施すということになれば、政府はそれに異存があるかどうか、それによつて非常に大きな支障があるか、大蔵省としてもそれではまことに困るというような理由があれば、この際ひとつ御答弁を承つておきたいと思います。
  44. 首藤新八

    首藤政府委員 今澄委員質問お答えいたします。先ほど申し上げましたごとく、通産省といたしましては、あくまでも他の官吏と同様に扱うことが至当だという確信を持つておりまして、この確信のもとに大蔵省と折衝を進めておるのであります。少くともわれわれの考えといたしましては、大蔵省の方でも同調していただけるものというふうに考えておりますから、ただいま別個にこの法案を修正するという意向は持つておらぬわけであります。
  45. 今澄勇

    今澄委員 大蔵省はどうですか。
  46. 磯田好祐

    磯田説明員 先ほど小山説明員から御説明がありました「その他」について、必要な事項を命ずることができるという規定がございますが、その勅令規定に基きまして出された命令書に、製鉄所共済組合その他の福利施設をつくるべく、会社は前項の共済組合に対し、政府が従来製鉄所共済組合に対してなしたる給付の割合を下らざる割合の給付をなすべしというような命令が出ているのであります。この解釈の問題でございますが、その当時第十六条の規定に基きまして出ましたところの勅令は、その共済組合の福利ということと、その共済組合に対しまして、従来政府共済組合員とはその負担を半々にいたしていたのでありますが、その半々の割合をもつてその給付をなすべしという規定があるのでございます。しかしながら現在問題になつておりまする共済組合給付金の額を増額しろという問題は、勅令で出ておりまする規定と異なりまして、その後の経済事情の変更に基いた新しい事情に基きまして発生いたした問題でございまして、この勅令趣旨とは違うのではないかと思うのであります。従いまして、この問題につきましては、政府の方といたしましては、先ほども御説明いたしましたように、今これらの問題について研究いたしておる段階にあるわけでございます。
  47. 今澄勇

    今澄委員 どうも一枚の紙に裏表といつて、りくつをこねれば何ともりくつがつきますか、今の説明は何とも了解がつきかねるのであります。ちようど大臣が御出席になつているから私は大臣にお願いがあるが、少くともこういうような問題を政府の部内において折衝したときに、通産省意見が通つたためしがない。今政務次官は確信を持つておると言われるけれども、今の大蔵省意向によるとその確信たるや危いものである。いつも通産省は腰折れでだめだ。大臣就任された最初に、せめてこういうことぐらいは意向を通して、そうしておれが責任を持つてやるからというような御答弁でもお願いできればと私は思いますが、どうですか、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  48. 横尾龍

    横尾国務大臣 私はこの法案を見たときに思つたのですが、何といたしましても、われわれが今まで取扱つて来た形式もあるのであります。たとえば甲の会社を乙の会社に引継いだというようなときの形式もあるので、そのことについてよく説明を求めたのであります。しかし何分古い、日本製鉄政府からかわつたときのことであるし、現在において非常に貨幣価値もかわつたときでありますので、これが事情をよく討究いたしておりません。だからこれをもう少しよくして、各人が損失にならぬように努力をしたいと思います。それが不満であるかもしれぬけれども、今私はここに確信を持つてやるというようなことは言い得ないのであります。
  49. 今澄勇

    今澄委員 政務次官は絶対に責任を持つて確信を持つていると言うし、大臣は今ここで明言はできないというようなことを言う。だから私は通産省はだめだと言うのであります。大きな国策的な問題についても、こういうような問題については確信はない、これが審議会のことはまだ聞いておらないというようなことでは、これは私がむきになつてつつ込んでみても、のれんに腕押しで、とてもどうにもなりそうもないような気がいたしますが、少くとも私はこの日鉄法の廃止にあたつて共済組合の問題も本法律案に含めてこれを解決するということが正しいと思うし、通産委員各位のこれに対する今の空気も御賛成のようであるが、御意見があれば、われわれは委員会においてこれを修正して、少くともこういう問題について国会が守つてやるという態度をとりたいものであるということをここに留保しておきます。  その次に日鉄解体後の八幡及び富士の製品別の生産能力及び生産設備について、お手元に何かもしありましたならば御説明を願いたい。できれば後刻資料の提出を希望いたしますが、ついでに製品別の全国比についても、その資料でもけつこうですが、手元にあれば御説明願いたい。
  50. 中村辰五郎

    中村政府委員 今の八幡、富士の生産比の問題ですが、一応手元にある数字で申しますと、二十五年度の第一・四半期の生産計画では、銑鉄の部門で八幡の全国に対する割合は三八%、富士は三七・八%程度でございます。それから鋼材の生産の方から申しますと、全国比は二三・二、富士は九・五というような実情になつております。
  51. 今澄勇

    今澄委員 今簡単な御説明を願つただけでも、大分わが国の鉄鋼業界における地位が大きいことがうなずかれますが、なお今後のわれわれの研究の課題の資料として当局でつくつていただければ仕合せであります。われわれはこのような大きな産業の規模からいつて、なるほどこういつた大きなスケールは必要であろうと思います。だがしかしこれはやはり独占的な傾向がなきにしもあらずといわなければならぬ。そこでこれら二大会社の今後の動きは、日鉄法の拘束がない現在どうなるかということに国民も大きな関心を持ち、占領下の今日においてもいろいろ客観情勢からも関心が持たれるだろうと思う。そこで私は、政府はこのように重要産業である鉄鋼業に対して全然野放しにして行くか、あるいは石炭において石炭企業助成法、鉄鋼業においては鉄鋼企業助成法というような特別法でもつくつて、これらの調整指導等を、少くとも自由主義経済を標榜される現内閣においても最小限度おやりにならなければ、これは非常に大きな障害を招きはしないかと人ごとながら憂えるものでありますが、これについての政府責任ある答弁を承ります。
  52. 首藤新八

    首藤政府委員 お答えします。先ほど大臣からもお答えいたしましたが、こういう産業をいつまでも政府がいたずらに保護する、あるいは助成金を交付するということは、結果的に見て決して好ましいやり方ではないと考えておるのであります。いわゆる温床といいますか、一つの箱の中に入れてごく新しいうちに育つて行くというやり方よりも、ほんとうに国際水準に達せしめて、いついかなる場合でも競争し得る態勢に持つて行きまするのには、ある程度野放しにして、創意くふうというような点を強調して行くことが、結局において日本産業を堅実に発達せしめる上から有利だというふうな確信を持つておるのであります。今回の補助を打切つたの一つはそういう見解から打切つたのでありまするけれども、今後の情勢いかんによりまして、政府がどうしても保護しなければならぬ客観情勢ができましたならば、そのときの状態に即応して適当な方法を講じて行きたいと考えておるのであります。
  53. 今澄勇

    今澄委員 いつも自由主義経済論でございますが、私はこの法律案を審議するにあたつて、この前の石炭の場合においても、配炭公団の廃止は重要な石炭産業の上に大きな弊害をもたらすであろう。社会党であるわれわれの言うていることが全部通らなくても、最小限度のわくの中に、少くとも石炭業者の出炭を買い上げる、その他のものは自由販売というぐらいな措置を漸進的に講じなければ、日本の中小炭鉱が壊滅することは当然である。政府はそれらに対する金融とか、占領下の今日において全幅的の約束はできないだろうということを追究したときに、ちようど今の政務次官と同じような答弁でございました。しかして石炭業今日の姿は、この前の委員会から金融の問題の一つを取上げてみても、まことにこんとんたる実情である。私は製鉄事業をして再びこのようなことにいたすことを恐れるのであつて日本の重大な基礎産業である、しかも重工業の中心をなすものである、また化学工業の振興から機械の製造、その他将来のわが国の輸出の部面に占めるその地位を考えるときに、私は今の政務次官の答弁をどうか速記録に十分とどめて、私どもがとなえておるこういつた警告に将来必ず政府が狼狽して、鉄鋼業についても大きく彌縫策を講じなければならぬであろうことを恐れる次第であります。大臣から御答弁がございませんが、少くとも鉄鋼業については、私はこれは日本の一番基幹産業として、この際大臣は少くとも最小限度の国家の助成なりあるいは指導を与えるところの方策を考えられるように希望します。  次に移りまして、第五、第六項は従来のごとく無担保でも社債の募集や資金の確保を行い得るという規定になつております。八幡や富士のごとく巨大な資金をしかも長期にわたつて必要とする企業体においては、将来とも無担保でも政府の承認があれば社債の募集等ができる処置を、政府は鉄鋼業に対する金融についても講ずるくらいのことは私は当然であろうと思う。重要基幹産業も何もかも同じだというようなあり方ではいかぬ。日本の鉄鋼業が金融の部面においても十分資金を調達し得ることが困難ではないか。単に二、三年ということではまことにお話にならぬと思いますが、この点について大臣なり政務次官から重ねて御答弁を願いたいと思います。
  54. 首藤新八

    首藤政府委員 お答えいたします。御説の通り三年間従来の通り行くということを規定いたしましたのは、八幡製鉄所も富士製鉄所も今日まで特殊会社でありました関係上、設備が一つも登記してないのであります。従つて今後一つの私法人となりました関係上、一応全部登記しなければならぬ。御承知通り非常に厖大な設備でありますので、登記に二年ないし三年の期間がかかる。かような推定から一応この間だけは従来の通りつて行こうという考え方でこの法案をつくつたのでありまして、一応登記ができましたならば、他の一般法人と同様の取扱いをすることが妥当だ、かように考えております。
  55. 今澄勇

    今澄委員 政府はすべて日本重要産業を保護し助成するということは何か大きな罪悪であるかのような判断と答弁でございますが、われわれはそれらの登記その他の問題を除いて、こういつた日本の特に重要な産業に——たとえば復興金融金庫を産業合理化金庫というようなものにかえて、昭和二十五年度中のいわゆる債務償還五百億なり、あるいは復金に返つて来る七、八十億の金を中心にこういつた製鉄事業に流すか、それができなければ、担保なくとも国家の保証なりあるいは政府の承認のもとに、それらの調達ができるという措置を講ずるという考え方が、大蔵省の今日のごとき強力な発言権の時代においては、通産省としては当然国民の納得すべき、産業を守る正当な立場からしなければならぬ。これはほんとうに筋の通つた主張であるということを重ねて私は申し上げておきます。  それから本法律案の有効期限について重ねて私は申し上げておきます。本法律案の有効期限について何も言つておりませんが、一体いつまでであるか。  私はまだ夜更けまで質問したいと思つておりましたが、お暑いのでなるべく簡単にいたしますが、最後に輸入補給金の問題が残つております。輸入補給金は将来ともずつと続けて出されるおつもりであるかどうか、政府答弁を希望します。
  56. 中村辰五郎

    中村政府委員 大体附則規定されております要綱、特に一般担保の問題に関連いたしまして工場財団の設定が可能になりますれば、当然この法律は失効するという考えであります。  輸入補給金の今後の扱い方、あるいは見通しという問題になりますが、輸入補給金の一応の実際上の推移から考えまして、大体輸入補給金は今後は原則として支給しない、大体鉄鉱石、石炭の今日の推移を考えますと、銑鉄の織り込み価格から見て同一ないしはそれ以下というのが実情でございまして、この線から物価庁の方では原則として支給しないという建前をとつております。私から答弁するのはちよつと筋違いかと思いますが、主管官庁は物価庁でございますが、大体われわれが接した面の今日までの結論はそういう方向であります。
  57. 今澄勇

    今澄委員 いろいろ御質問をいたしたのでありますが、結局するところ鉄鋼業全般に関する大きな問題については、大臣は率直にあまり詳しくないということで、私もつつ込んだ質問を留保した形でございます。しかしながら今の重大なる石炭の炭価の引下げであるとか、鉄鋼事業の合理化であるとか、国家が鉄鋼事業に与える保護指導の問題などについては何ら政府としては措置がない。それから法案の問題についても、今の共済組合の問題についても、その他いろいろな問題について、私どもは通産大臣から責任をもつてそれではこうしてやろうという御答弁は得られなかつた。この法律案を全体的に見たときに、簡単な法律ではあるが、この法律案一つをとつてみても政府は一貫した態度に非常に欠けておると私は思います。なおこの際、石炭鉱業の四百億の資金、それから肥料産業、これは過燐酸石灰、窒素、硫安を含めた自由販売態勢のもとにおける市販態勢確立のための流動資金と、将来の合理化資金、むろん繊維工業の今日の状態は、政府は先般織機一台当りの融資をやつて非常に成功したつもりでありましようが、困難な情勢も御承知通りである。今の通産省が管轄しておる傘下の各種の問題は、非常に困難でございます。さらに電気事業の分団をもし政府がやるということになれば、電気料金の値上り、その他の問題も含めて、私は質問の最後に、横尾通産大臣は少くとも日本の現下の通産行政を眺める限りにおいては、通産大臣たる職というものは、ほんとうに決意を新たにして、自己の全力をあげて国家に奉仕するポストであるということを最後に御注意を申し上げて、一段と御勉強を望んで質問を打切る次第でございます。
  58. 小金義照

    小金委員長 本日はこの程度にとどめまして、残余の質疑は次会にお許しいたします。次会は明二十日午後一時から開会いたします。  これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会