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1950-07-20 第8回国会 衆議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員   委員長 前尾繁三郎君    理事 生田 和平君 理事 川本 末治君    理事 塚田十一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       門脇勝太郎君    河原伊三郎君       小玉 治行君    清水 逸平君       高塩 三郎君    田中不破三君       中島 守利君    野村專太郎君       吉田吉太郎君    龍野喜一郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    大矢 省三君       久保田鶴松君    立花 敏男君       米原  昶君    松本六太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方財政委員会         事務局長    荻田  保君         地方自治庁次長 鈴木 俊一君  委員外出席者         参考人日本自         治体労働組合協         議会委員長)  占部 秀男君         参考人日本農         民組合総本部中         央執行委員)  大森眞一郎君         参考人(新潟県         知事室長)   西田 徳長君         参考人(全日本         中小企業協議会         会員)     平林 讓治君         参考人日本自         治団体労働組合         総連合副中央執         行委員長)   泰平 国男君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君 七月二十日  委員田中豊君及び中島守利君辞任につき、その  補欠として小玉治行君及び田中不破三君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方税法案内閣提出第一号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、地方税法案を議題といたします。ただいま参考人の方々がお見えになつておりますが、法案の審査の便宜上、昨日の市町村民税目的税及び都税の特例に対する質疑を続行いたしたいと思います。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 最初にお聞きしておきたいと思いますことは、大臣にお聞きした方がよいと思いますが、一応次長意見を聞いておきたいと思います。これは何も市町村民税に限つたことではありませんが、特にこの方でお聞きしたいと思いますことは、この前の第七国会で、公聽会に大体二十七人ばかりおいでを願いまして、三日間の公聽会を開き、さらに各方面からの陳情その他が非常にたくさん参つてつたのであります。ことに問題にしなければならないと思いますことは、農林であるとか、あるいは水産関係であるとか、あるいは運輸関係であるという本院の各委員会からの意見が、相当強く文書によつて参つてつたのは御承知通りであります。ところが今回のこの改正案を見ますと、ほとんどそれらのものがいれられておらない。一体政府は、この国民全体の一応の声として公述を聞き、さらに各関係委員会意見というものが出て参つておりますのと、それから国民階層にわたる全般の陳情というものはほとんど何百となく出ておると思いますが、これらの国民の声がせつかく改訂されます今回の法律案の中に、ほとんど反映していないと言つてよいほど前国会と同じものが出て来ておるのでありますが、その点に対してどのようなお考えをお持ちになつておりますか。
  4. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 前国会におきますいろいろの御論議、また各委員会等の御論議につきましては、政府といたしましても十分これを拜承いたしまして、そのような各種の御論議の中で、今回提案いたしましたような姿におきまして、現在の客観情勢のもとに取入れられることが可能でありますもの、また政府といたしまして、これを取入れた方がよいと思うものを実は取入れまして、先般来申し上げておりますように、大体提案の時期の遅れました関係調整と、例の附加価値税の一年実施延期関係、また固定資産税税率なり、償却資産評価方法なりというようなものにつきまして調整を加えまして提案いたしたような次第でございます。
  5. 門司亮

    門司委員 至つて抽象的な御答弁でございますが、まずそういう御答弁でありますならば、たとえば附加価値税の問題にいたしましても、あるいはこの次の問題になると思います固定資産税の問題にいたしましても、大体公述人意見、それからさらに各方面意見といたしましては、実際の課税額というものの把握が非常に困難ではないか、従つてこれらのものは、たとえば固定資産税で申しまするならば、この資産評価終つた後やつたらどうかというような意見も相当あつたのでございます。しかるにそういうことがほとんどくみ入れられないで、同じような姿で出て来ておりまするが、そういう議論は別といたしまして、今の御答弁でありまするならば、具体的に一体どれだけ国民意見がこの中に入れられておるか。もし今の鈴木さんの御答弁のようでしたら、ひとつ具体的にその事例をあげておいていただきたい。
  6. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は附加価値税実施を一年延期いたしまして、そのかわりに事業税特別所得税をとることにいたしておるわけでございますが、附加価値税実施の一年延期ということに関しましては、先般来申し上げましたように、技術上の問題もございまするが、同時に前国会等におきまする論議考えまして、準備等につきまして万全を期するというような含みを持ちまして、延期いたしておるような次第でございます。また固定資産税の問題に関しまして、標準税率原案におきまして百分の一・七五でございましたものを百分の一・七にいたしました点は、この税につきましての税率がいかにも高いではないかというような各方面の御論議を参酌した次第でございます。また償却資産につきまして、あのように仮決定方法をとつたのでございまするが、これも実は、ただいまも御指摘がございましたように、再評価等との関係考え、またできるだけ簡便に、かつ実情に即しまするようにいたしたいという考え方から、償却資産に対しまして仮決定方法とつた次第でございます。また同時に本年度固定資産税税率につきまして、五百二十億とれるかとれないかということによりまして、最終的に税率をきめるというふうにいたしておるわけでございますが、これに関しましても、前国会等におきまして、固定資産税はもつとよけいとれるのではないかというような御論議が非常にございました等の点にかんがみまして、五百二十億とることが財政計画上の要求であるからして、それ以上上まわるような場合におきましては、この税率をさらに引下げてもよろしいというような形の案にいたしたわけでございまして、これらもやはり前国会等の御論議を十分しんしやくいたした結果でございます。大体そのほかに地方財政法行政技術問題等もございまするが、政府といたしましては諸般の情勢考えまして、現下の段階におきまして可能なる最大限の考慮を拂いまして、このような原案提案いたした次第でございます。
  7. 門司亮

    門司委員 今の次長の御答弁は、非常に私は不満足であります。それは何かというと、大臣は、たとえば問題になつております附加価値税延期等は、今の鈴木さんのような御答弁ではなかつた。ことに参議院における答弁を見ますと、これは実際上の問題として賦課することができない。同時に流通税である関係のために、これをこのまま一月にさかのぼつてかけるということは、売つてしまつた物の値上りというものはできないのであつて、これは事業主が全部背負わなければならぬのであつて、そういうことはできない、従つてこれを延ばしたというようなことが、実は参議院答弁されておるのであります。そうなつて参りますと、鈴木さんの御意見とまつたく逆な話であつて、全然趣旨が違つておるとわれわれは考えるのでありますが、この点私どもといたしましては非常に遺憾に考えておる。さらにもう一つ、そういう御答弁がありまするならば、住民税に入りまする前にもう一応聞いておきたいと思いまするが、この前の国会におきましては御存じのように、政府当局は必ずしもそういう態度ではなかつたという御答弁があるかもしれませんが、国会の審議というものは非常に無視されて、そうしてほとんど修正意見が取上げられない、実は押し切られて参つておるのであります。ところが今回それがここにいれられたという事実があつたからというようなことになると思いまするが、一体当局はその当時においてすらやはり修正の声があり、さらにその当時同じような情勢にあつたということは御存じ通りであります。そのときに絶対に修正はできないということで、これが押し切られて参つたのが、わずか三、四箇月の間に住民意見がいれられたというようなことになつておりますが、一体そのときの客観情勢と今日のこの修正をされた間にどういういきさつがあつたのか、その点をもう一度お聞きしたいと思います。
  8. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 附加価値税実施を一年間延期したことに関しましては、大臣参議院の本会議におきまする御答弁がどういう御答弁でありましたか、私その席におりませんでしたので的確に今存じておりませんが、大臣がこの提案理由の中に申し上げておりますことも、今御指摘のように技術的に困難な点もございまするし、同時に準備について万全を期するという意味のことも申し上げていると思うのであります。この準備について万全を期するという意味含みの問題につきましては、今まで明確に申し上げませんでしたけれども、やはり前国会等におきまするいろいろな論議にかんがみてという気持で私たちはいるわけであります。  第二点の前回の国会で出ましたいろいろな御意見なり、修正の御案なりに対しまして、政府としては当時こういうものを受入れないようなかつこうを示しておりながら、今回何ゆえにそれらの中のあるものを取入れたかというお尋ねでございますが、これは政府といたしましても、前国会におきまして不幸にして地方税法案が不成立になりました経緯にかんがみまして、さらに愼重に考慮をいたした結果でございます。
  9. 門司亮

    門司委員 今の御答弁では水かけ論になります。私どもはつきりした結論を出すところまで議論するということになると非常に長くなると思いますが、何と言い訳をされましても、そのときの客観情勢とそうかわつていない今日においてこれだけくらいの修正ができるのなら、この前あまりむりをしなくても、この前でも修正がやれたのではないかと思う。  それから多くの人の意見をいれて附加価値税を延ばしたというお話でありますが、ちつとも延ばされていないのであります。法律はそのまま出されております。ほんとうにお延ばしになるというならば、なぜこの法律案の中に書かれておるのか。削除したならばあるいは延ばしたということが言えるかもしれませんが、ただ実施が延びているだけであつて、これではほんとうにこれを延ばされたとは考えていないのであります。税自体本質論がこの前の議会ではやかましかつたのであります。また世間で今やかましく言われておりますのは、この税の本質論がやかましいのであつて、納得はできないものであるから、その結論を得るまでこれを当分延ばしたらどうかということが世間で言われている。それがこの税金に対する延期理由であります。ところが今の鈴木さんの御答弁は、その点に触れていないのであつて、もし政府ほんとうに延ばす御意思がありましたならば、この法律の中から附加価値税だけを削除しておいてもらつて、一応これを引込め、さらに研究してその後に出すかもしれないというようなお話なら、一応これは延ばしたということがはつきりわかるのでありますが、これでは決して延ばされてはいないということだけは、私どもはつきり言えると思います。  その次に聞いておきたいと思いますことは、市町村民税に関する問題でございますが、この問題はすでにしばしば聞いておられまするし、また大臣にも私どもは聞きましたので、これの大まかな点につきましては一応省きまして、各條文ごとに疑義の点だけをただしておきたいと思うのであります。それに入ります前に一応配られました資料について御質問をしておきたいと思います。この前も実はこれと同じような資料を出されたのであります。それで私どもが非常に奇怪に考えておりますのは、この税負担関係で、従来の住民税国民負担関係との比較でありますが、所得税がこれの引合いに出されている。しかし今度の地方税というものは、ただ單に住民税と従来の直接国民負担しておりました所得税との比較だけでは、住民負担が軽くなるとか、重くなるとかいうことは言えないのであります。しかるに政府から出されておる統計を見ますと、これはどういうわけか知りませんが、従来の所得税はこれだけとつてつて、今度の住民税はこれだけだから、これだけ軽くなるのだというようなことで、むやみに比較されておりますが、これは一体どういうわけでこれだけ比較されなければ悪いのか。住民税と従来の所得税との比較なら、すべてのものを一応比較してもらつた方が国民にはわかりやすいと思う。ところがどうもこの住民税税負担比較を見ますと、むやみにこれを所得税比較をされている点は一体どういうわけであるか、その点をもう一度お聞きしたいと思います。
  10. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいま御指摘の点は、私どもといたしましては、国税において所得税を減税いたしておるわけでございますが、この所得税の減税というのは、私どもといたしましては、やはり市町村民税につきまして、所得割を中心といたしましたところの、実質的には市町村所得税、あるいは地方所得税というような性格のものと考えておりまするので、いわば国税所得税について軽減されました部分のある部分だけは、市町村に対して税源として委讓せられたものである、こういうふうに私ども考えておるのでございます。従つてそういう見地から負担比較をいたしまする場合に、もちろん全体として、国税地方税をひつくるめて負担考えるのが一番合理的でございますけれども、さしあたつて、今のような国税としての所得税と、いわば地方所得税というような性格を持つておりまする市町村民税とを合せて負担比較をするということにやはり意義があると存じまして、そのような資料を用意いたしたような次第でございます。
  11. 門司亮

    門司委員 もう一つこの資料についてのお話を聞きたいと思います。これはこの前の委員会でもずいぶん聞きただしたのでありますが、また同じような統計が出ておりまするので、重ねてこのことを聞いておきたいと思うのであります。この統計の表によりますと、住民税の欄と所得税関係とが書いてあります。従来の住民税、いわゆる都道府県税並びに市町村民税というものの納税の額でありまするが、これは統計を見まするとほとんど同じように書いてある。たとえば年額六万円の所得の者に対しましては、独身者も、三人の家族を持つている人も同じように三百九十八円というように書かれておる。それから所得税の方では、これがずつと逓減されておりまするので、扶養家族その他の逓減率が書いてあつて、実におかしな統計が出ておるのであります。おそらくこの市町村民税統計をお書きになつた人は、悪く言いまするならば、市町村民税を知らない人だと思う。一体自治庁はこの市町村民税ということをほんとうに御承知になつておるかどうか、私はそのことのために一例をはつきり申し上げておきたいと思いますが、従来の市町村民税のかけ方というものは、市町村に大体これが一任されておつて、そうして法律できめられておりまする額は、御承知のように一千四百五十円でありまして、そのうちの七百円が都道府県税であつて、七百五十円が市町村民税である。しかもその内容徴收方法につきましては、東京におきましても、あるいは神奈川県におきましても、ほとんど同じような数字が出ておるが、個人に割当てておるものが六四%、法人に割当てておるものが三六%、しかもそのうちで、個人に割当てておるものは、均等割として、百分比にいたしまして一七・二八%、さらにいわゆる資産割に該当いたしまするものが一四・〇八%であります。所得割にいたしておるものが三二・六四%になつており、三六%の法人に割当てられておりまするもののうちで、五・四%というものが均等割であつて、さらに資産内容に割当てたものが一二・二四%、資本金割に当てられておりまするものが一八・三六%、こういうふうに大体東京都では計算されておる。さらに神奈川県における状態を見て参りますと——これは個人の分だけを申し上げまするが、個人の分だけを見て参りますると、均等割として大体かけられておりますものは二三・四三六%、資産割は一二・七八九%、さらに稼働割といたしまして二・七〇九%、所得割といたしまして二四・〇六六%というようなこまかい数字にわけられておりまして、しかもこの段階はそれゆえ三十段階くらいにわかれておると私は思う。必ずしもこの表に現われておりますような一律な税金は納めていないのが実情であります。これと比較をされたのは一体どういうわけか。もし市町村民税ほんとう自治庁御存じになるならば、こういう統計表は出ないはずであります。どうして一体この表が出ておるのか。この点をもう少しはつきり私は聞きたいと思う。
  12. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいまの御指摘の点でございまするが、全体の税の総額から申しまするならば、市町村民税と、従来の住民税との比較におきましては、二倍強程度でありますることは、これはすでに御説明を先刻来申し上げておることと存じます。ここに書いてございまする各所得階層別の数は、この備考にも書いてございましたように、東京都の特別区の存する区域の例によつて算定をいたしたものでございまするし、また均等割計算方法等も一応この備考のところに計算をいたしてございまするが、これはある程度抽象的な事例として書いておりまするので、御指摘のように個々具体的の場合においては、そこに多少の差異が出て参るであろうと存じております。従つてそういう点から個々具体の実例になつて参りますと、あるいはこの資料では不完全ではないかというようなことになるかも存じません。あるいは減免等措置が従来ありましたものと、そうでないものを、いきなり比較いたしますと、いろいろ問題が出て参ると存じておりまするけれども、ただ市町民税は、市町村のやはり自治と申しますか、その基本になる一つの税と考えまして、均等割につきましては、負担均衡というような考え方から、これを考えておる次第でございまするから、こういうようなものもこれは標準税率でございまして、さらにそういうようなものに関しましてはなはだしく負担が多い、苛酷であるというようなものにつきましては、それぞれ減免措置等もあわせて規定をいたしておるような次第でございます。そういうようなことによりまして、それぞれの市町村において、できるだけ実情に即するように行われるようにいたしたい、さように考えております。
  13. 門司亮

    門司委員 今の御答弁で、実情に即するというようなお話でありまするが、実際は実情に即しないのであります。旧の税法によりまするならば、先ほど私が申し上げましたような、こういうこまかい数字を一々出しまして、そうして均等割は、いわゆる所得の割合から申しましても、たとえば五千円の所得のある人に対しては、均等割はこのくらいにする、三万円の所得者にはこのくらいにして行こうということで、相当市町村実情に即した徴收方法が実は考えられるのでありまするが、今度の税法から行きますると、まつたくそういう余裕はないのであります。昨日の中島参考人の申しましたように、防空壕に住んでおる者も八百円は八百円、どんな大きな邸宅に住んでおる人も八百円は八百円ということに規定づけられておる。ここに私は今度の税法に対する非常に大きな間違いがあるのではないかと思う。従つて先ほどからの御答弁のようなことで、この統計表が出されておりまするので、われわれから見ますると、この統計では承認ができないのであります。比較にならないのであります。  それからもう一つお話を願いたいと思いますることは、政府答弁でも、またいろいろ話しておいでになります住民税と従来の市町村民税との負担関係であります。二・五倍ということ、あるいは二・六倍であるということを盛んに宣伝され、またそういうことを申されておるのでありますが、この数字ははたして正しいのかどうかということであります。これは政府のお考えになつておりまするように、昨年度の二百七十何億かの徴收と、本年度の五百何十億の徴收との、この大きな比率の問題から見まするならば、なるほど政府の言うように、二・五倍であるとか、二・六倍というような数字が出て参りまするが、実際の住民税というものは、先ほど申し上げましたように、個人負担しておりましたものが大体五〇%であり、法人並びに資産に割当てておりますものが五〇%であります。これは先ほど私が申し上げましたもので御存じ通り、いわゆる法人に三六%をかけて、そうして資産割東京都におきましては一四・〇八%をかけておる。これを二つ合せますならば、やはり五〇・〇八%になるのであります。神奈川県の例を見ましても、やはり資産割が一二・七八九%かけておりますのと、法人三七%を合計いたしますと、それも五〇%になる。大体五〇%というものが法人並びに資産割にかけられておりましたものが、これが除かれて、均等割になつて参りますと、政府数字の面から見まするならば二・五倍になるのでありまするが、実際に納めるのはこれの倍になるのであります。こういう大きな矛盾が私はあると思うのであります。一体この点はどういうふうにお考えになつておるか、これでも政府はあくまで二・五倍とお言いになるかどうか。
  14. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 二・五倍という数字は、今御指摘のように総額に対する比較でございます。ただ私どもといたしましては、この市町村民税住民税だけを相互に比較いたしますると、今御指摘のような事態があるいはあるかも存じませんけれども、しかし全体といたしまして、全体の地方税による負担、あるいは国税地方税を通じましての負担ということで考えて参りまするならば、すでに御案内のごとく、それぞれ軽減になつておるわけでございまして、結局負担をしまする者は一個人であり、法人であるわけでございます。これらのものはそれぞれ国税地方税全体を引受けておるわけでございますから、そういう各種税負担を引受けております個人といたしましては、総体的に負担が軽くなるという見解に立つておるわけでございます。個々一つ一つの税をそのまま比較いたしますと、それは固定資産税におきましても明瞭でありますごとく、ふえて参るわけでございますが、私どもといたしましては、あくまでも全体の一つの国、地方団体負担考えておりまして、それが一人の納税者にかかる。それを軽減する。そしてまた全体の各種の税の負担を通じましての均衡化をはかつておるというふうに考えておるのであります。
  15. 門司亮

    門司委員 それはどうも答弁がおかしいのでありまして、税金を納めるのは個々に納めるのであります。総額で納めるのでは決してございません。従つてとられるものは、個々に納めるものであります。私は先ほど総額において大体五・二倍になるということを申し上げましたが、実際上の問題としては、住民税は従来の十倍なりあるいは二十倍になるものが必ずできるのであります。あなた御自身が計算をされても、おそらくそういうことになりはしないかと思う。一体こういう納税をいたしまする者の側から見ますると、五倍になり、十倍になる、あるいは二十倍になるものが少くないようなものを、どこまでも政府はただ單に税の総額の点から押して行つてこれは二倍半であるというような宣伝をされることは、間違いではないかと思う。国民はおそらくそういうことで徴税令書が来たときに、こんなはずはなかつた、去年三百円だから、ことしは六百円で済むと思つていたところが、何千円、こんなはずはなかつたということで、こういうことから税の混乱が起るのであります。末端の町村役場におきましては、おそらく今回の住民税の徴税令書が参りますれば、必ずそういう大きな混乱が私は起つて来ると思う。ことに今日非常に困つておりまする勤労階級が、一ぺんに何千円というような税金をとられるということになつて参りますと、その負担に耐え得るか々うかということであります。税の総額の面ではあるいは減つたと言われますが、減ることに直接関係のありまするのは所得税だけでございます。あとの取引高税であるとか、あるいは織物消費税であるとかというようなものが減額されて参りましても、これは取引高税の化けて出て来たものが附加価値税であり、決して国民負担が軽くなつたということは言い得ない。私どもはそういう点をもう少し政府は正直に、明確にひとつ知らしてもらいたい。しかもわれわれの目の前に持つて来られます参考書が——こういうでたらめだと私はあえて申し上げておきまするが、でたらめな参考書では困るのであります。ほんとう東京都において六万円の收入の人が、三人家族でこれだけの税金を納めておるかどうか。もう少し資料につきましては、数字の魔術というか、数字だけでごまかさないで、実際の実情というものを調査してもらわなければ、私は税金の問題に対してはほんとうの質疑はできないというふうに考えておりますので、どうかその点をひとつ考慮願いたいと同時に、私がこの問題について当局答弁を最後に求めますることは、政府は二・五倍と申されておりまするが、実際はこれは個人々々に割当てるならば平均五・二倍になり、さらに十倍、二十倍になるものがあるということをはつきりお認めになるかどうかということであります。
  16. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 いろいろ市町村民税負担実情についての御意見でございまするが、私どもといたしましては、くどいようではございますけれども国税地方税全体を通じまして三百億余の減税になるという数字を持つております。これにつきましては、もちろん税でございますから、それぞれ一人々々の納税者に対しまする当り方につきましては出入りがあるでございましようけれども、全体としてはそういうことでございますし、また税等につきましても、いろいろ廃止なつておりますものもたくさんございまするし、また結局におきまして、それぞれの各種の税を総合的に勘案をいたしまして、一人の納税者が税について負相するという面は、多くの場合においては少くとも軽減されておるであろう、こう考えておるのであります。ただもちろん例外的にはいろいろあろうと存じまするが、市町村民税がいきなり十倍になり、二十倍になるというふうな事例は私どもまだ的確に把握いたしておりません。これは従来の行き方につきまして、あるいは全然市町村民税負担していなかつたような人が今度新たに負担するというようなこともございましようし、あるいは附加価値税につきましても、事業税として従来負担していなかつた人が、今度は新しく附加価値税負担しなければならぬというようなことが出て参るのでありまして、そういう意味では、あるいはむしろ何十倍ということになるわけでございますが、そういうことの結果として、今までの不均衡でありました税の負担が公平になり、均衡化せられる、こういうところを私どもはねらつておるわけでございまして、その均衡化をはかりまする現段階におきまして、あるいは個々納税者に対しては過去の税負担比較いたしまして、非常に当りの強い場合もあろうと存じますが、その点はやはり大きな税負担の軽減、公平化という点から忍んでいただきたい、こういうようなつもりで立案をいたしておる次第であります。
  17. 門司亮

    門司委員 ひとつ委員長から当局に注意してもらいたいと思います。私は何も税の負担の全部を今お聞きしているわけではありません。住民税の実態はこうなるが、政府はこれをお認めになるかどうかということを聞いておるのでありまして、税負担の全般についてはちつとも議論をいたしておりません。この点は委員長から特に当局に御注意を願いたいと思う。私の質問だけにお答え願えばいいのでありまして、私はさつきも申し上げておりまするように、納税貯蓄ということにつきまして、横浜におきましては住民税がこういう形になるから、今から住民税についてはひとつ納税が完全にできるように勤労者も貯蓄してもらいたい。これを完遂するためには、おのおの貯蓄するようにしてもらわなければ納税が困難になるであろうということの注意書まで出しておる。しかもその内容住民税がこういう割合でかかつて来るから、今度五倍かかつて来ておる、それまではつきり書かなければならぬのである。私ははつきりこの点を聞きたいのである。いわゆる政府資料に出しておりまする二百七十数億の去年の市町村民税と、ことしの五百七十五億としなければならないという、この大まかな数字比較対照によつて政府は二・五倍、あるいは二・六倍というふうに言つておりますが、その二百七十億の五〇%であつたいわゆる資産割法人に賦課をしておりますことのために、今年は当然それの倍額を納めなければならない。個人の平均は大体五・二倍くらいに私が政府の案をそのままうのみにすると言えると思います。その点はもう少し国民に明確にしておきませんと、納税をいたしまする場合に、必ず混乱が起るということであります。地方自治体の必要に応じて税金をとられることでありますれば、あえてこれまたやむを得ぬということは一応考えられますが、その場合においても、單に政府の宣伝のように、住民税が二倍半になるということの宣伝を盛んにしておいて、実際は五倍以上あるいは十倍、二十倍になるというと、国民をだましておるといつてもさしつかえないと思います。こういうことでは納税に協力せよと言いましても、協力しようがないじやありませんか。政府ほんとうにまじめに国民納税の義務を完全に果させることのために資せんとするならば、もう少し内容はつきりさしていただきたい。そうしてこういう参考書の場合におきましても、実際はこうなるのだということを納得の行くようにしてもらいたい。私の申し上げておりまするのは、そういう理由で事実上の問題といたしまして、最低五・一倍ないし五・二倍になるということを政府は一体認めるかどうかということであります。
  18. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 門司君に注意しておきますが、あなたの質問は長く続きますか、そうしたら参考人の方が見えておりますから、参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  19. 門司亮

    門司委員 それはどちらでもよろしゆうございますが、一応それの答弁だけこの際伺つておきます。
  20. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の門司委員の仰せになりました点は、ひとつお用いになつております資料を拝見いたしまして、私どもといたしましてもさらに研究を加えたいと存じます。
  21. 門司亮

    門司委員 やや逆襲のような形に出ておられますが、私の資料を見せてもちつともさしつかえありません。この資料を知らなかつたということの責めは当局は負いますか、その点をはつきりしておいていただきたい。
  22. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私どもといたしましてはもちろんできるだけの努力はいたしたつもりでございますけれども門司さんのような練達の者ばかりがそろつておらない次第でございまして、私ども非常に貧弱な陣容でできるだけのことはやつたつもりでございまするが、なおただいまいろいろ御指摘のありました点につきましては、私どももさらに研究を重ねたいと思います。
  23. 門司亮

    門司委員 私はただ研究を重ねたいというだけでなくして、言質をはつきりしてもらいたいと思います。現実の問題として資料を示せというお仰せでありましたが、今読み上げた資料を差上げてもよいと思います。また東京都に行つてみましても、神奈川県に行つてみましても、同じ数が出て来ると思いますから、私のところに東京都から来た書類がありますので、お見せしてもちつともかまいません。ただ数字の概念から申し上げましても、いわゆる資産割であり、法人割が五〇%入つておるということは事実でありますので、これを除きますと、政府の案よりも倍にならなければならないという理論上の問題を今お聞きしておるのであります。こまかい数字が間違つておるがどうかということの説明と、そうしてその政治責任を私は追究いたしたい。
  24. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 先刻来門司さんの仰せになつておりますることは私もよく承知いたしております。ただ先ほど来いささか意見が食い違つたようなことで申し上げておりまするが、私どもといたしましては、かりに今門司さんの仰せになりましたことをそのまま受入れて考えましても、やはり資産割がなくなりましたことは固定資産税との関連においての問題としてやはり私ども考えたいと思いまするし、また所得割がふえて参りますこと等も、これは所得税との関連において考えたいというふうに思つておるのでございまして、住民税に限りましてのただいまの御意見は十分拜聽いたしたつもりでございます。
  25. 門司亮

    門司委員 どうもわからぬのですが、私はこれはこれつきりしか長くなるから聞きませんが、聞いておりまするのは、ただそういう意見を聞いてもらつただけではだめなんです。問題は理論上そういうものが住民税に関しては出て参りますので、それで一体五倍をちよつと越えるということを政府は認めるかどうかということであります。私どもの申し上げておりますことは、税の総額においては固定資産税がどうであるとか、あるいは附加価値税がどうであるとかというようなことを実は申し上げておるわけではないのでありまして、この住民税に対してどうかということでありまして、問題はこういうことをひとつ考えを願いたい。地方の実情としては、政府言つておいでになりまするように固定資産税でとられる。固定資産税を非常にたくさん納めるような階級は比較的少いのでありまして、住民税を納めるような階級が非常に多いのであります。その場合に、それらに対して一々説明いたしますることのために、これは資産割計算上の負担がこれだけ大きくなつたのだから、住民税においてもそれだけ負担をふやそうというのかどうかということであります。住民税に対する従来の政府の説明は、従来の住民税の二・六倍という数字が書かれておるだけでありまして、従つて固定資産税に直接関連を持つておりません多くの庶民階級は、やはり住民税だけを議論するのであります。またそれでなければならぬのであります。現実において住民税はこうなつておるということがはつきり政府から説明されない限りは、おそらく実体というものはつかめないだろうと思う。従つてこれきりしか質問いたしませんが、先ほどから幾たびも申し上げておりますように、倍率の関係を御訂正なさる御意思があるかどうか。
  26. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 重ねての御意見でございますが、この点は十分拜承いたしました。今の市町村民税税率の点でございますが、これは本年度の地方財政計画におきまして、税としては一千九百八億を予定いたしておるわけでありまして、市町村民税につきましては五百七十五億、ただいま御指摘通り数字を見込んでおるわけであります。この五百七十五億の数字を得ますためには、やはりこのような税率を押えませんと、私どもといたしましては困難である、かように考えておる次第であります。
  27. 門司亮

    門司委員 その点は私もよくわかつておるのであります。それははつきりそういう数字を出しておりますのでわかつておりますが、個々内容について実際の場合には違います。五百七十五億をとろうとすれば、どうしても住民税に対しては五・二倍という数字をかけなければその数字が出て来ないのであります。去年の二百七十億の徴收額と五百七十五億の徴收額との間には、明らかにその数字が出て来るのでありますが、これだけでは済まされない。というのは、今まで法人が納めておつたもの、資産家が納めておつたものを、先ほど申し上げましたように、この中から除かれておるというために、当然住民税はそういうふうにふえて来る。従つて固定資産をお持ちになつておる金持の人はこつちで安くなつたからといつてバランスがとれるかもしれませんが、貧乏人の方ではそれではバランスがとれないのであります。従つてさつきから申し上げておる数字を認めてくだされば、それで私は事足りるのであります。
  28. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 市町村民税につきましては、資産割が拔けまして所得割が中心になつておるわけでございますから、そういう点から申しますと、ことに今年度所得税額そのものを押えておりますから、所得税負担のいたし方が前国会通過いたしました所得税法において均衡を得ておるかどうかということにからまつて来ると思うのであります。今年度は前年度所得税額を押えておりますから、その意味ではある程度まだ不均衡は免れませんけれども、そういうような点につきましてはそれぞれ地方団体におきまして、一面標準税率でありますし、標準均等割でございますから、そういうようなものと実際の負担実情等とを勘案いたしまして、そこにそれぞれの団体における自主性を生かした調整は、私どもとしても可能であろうと思いますし、この点がまた国税地方税の特質の違う点だろうと思うのであります。市町村民税との比較につきまして、今御指摘のように一般的にみなすべて五倍になるんだというようなことは、私どもとしてはそのまま受取りがたいのでございますが、特定の事態につきまして従来の市町村民税住民税比較いたしました場合において、その間にそういうような事態がある場合もあるであろうと私も想像いたします。
  29. 門司亮

    門司委員 だんだん近くなつて参りましたが、先ほどから申し上げておりますように、住民税にありましては均等割であります。所得割でもなければ何でもない。均等割が税の中心になつておりますし、大臣はこの前の答弁でも、これは公課的な性質を持つておるということを私の質問に対してはつきり御答弁になつておる。従つて住民が居住をいたしておるために、当然負担しなければならぬ公課的な性質を多分に持つておるという御答弁であればあるだけ、やはりわれわれは公正を期さなければならぬと考えておるのであります。しかも税金の性質といたしましては、そういう性質を持つております以上は、やはり地方の住民がおのおのの生活を限度といたしました徴税方法が講ぜられなければ、一つ自治体の円満さというものはなくなるのであります。ところが、この場合においては何ら考慮されておらない。従つて先ほど鈴木次長答弁では、はなはだ不満足ではございますが、これ以上責めましても、時間が非常に長くかかるだけで、同僚各位に御迷惑だと思いますので、私はそういうことがあるかもしれないというような御答弁によつて、この総合的の住民税に対する先ほどの資料に基く私の質問だけは一応終りたいと思いますが、政府になお申し上げておきたいことは、資料をお出しになるのでしたら、もう少し明確な実情に沿うた資料をぜひとも出していただきたい。そうでありませんと、私どもこれを審議する上におきましても実は迷惑しますので、その点を注意してもらいたいと同時に、できれば、鈴木さんは先ほど大分強くお出になつておりましたが、東京都の実際の徴收方法がどういう徴收方法がされておるかということについての、政府側の資料をまとめていただきたい。東京都は大体二、三十段階くらいあると思いますが、かりに六万円の收入を得ておる者の段階も非常に多いと思いますから、これ一つだけでも段階はつきりしていただきたい。そうして同じ六万円の收入の中で独身者はどれくらい納めておるか、その独身者もアパートにおる者と独立の家屋におる者とは違うわけであります。それから家族を持つております者でも、三疊の間に住んでおる間と大きな邸宅におる者とは、同じ六万円でも違うわけであります。そういう実情も十分注意していただきたい。このことは私は資料として要求をいたしておきますので、はつきりした数字を出していただきたい。市町村民税の各條文にわたります質疑と、さらに目的税の各條文にわたります質疑は一応これで保留いたしておきたいと思います。
  30. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それではこれより参考人の方々の御意見を聽取することにいたします。ただいまお見えの方々は泰平国男君、平林讓治君、大森眞一郎君、占部秀男君、西田徳長君であります。  この際参考人の方にごあいさつを申し上げたいと思います。今日は酷暑の折柄、また御多忙中にかかわらず、本委員会のために御出席くださいまして、地方税法案について忌憚のない御意見を承ることは、本委員会として今後の法案審査の上に多大の参考になるとともに、一層の権威を加えることと深く信ずるのでありまして、委員長といたしましても、委員会を代表いたしまして厚く感謝の意を表する次第であります。何とぞあらゆる角度から忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いいたします。  それではまずおいでになりました順序で、日本治団体労働組合総連合会の副中央執行委員長の泰平国男君にお願いいたします。泰平参考人
  31. 泰平国男

    ○泰平参考人 ただいま御紹介を受けました自治労連の泰平であります。私は地方税徴收する任に当ります都道府県市町村職員の労働組合を代表いたしまして、若干意見を申し上げたいと思います。  前回の第七通常国会地方税法案が提出されました際に、私どもといたしましては、この改正案は大衆から收奪でき得るだけ收奪しようとするきわめて悪い税制である。もしこれが通りましたならば、第一に地方自治体がこの税制による苛斂誅求の先頭に立たなければならない。第二番目には、地方自治体の機能は相当麻痺する。さらに第三におきましては、地方自治体の民主化あるいは地方財政の自主化ということはとうてい期することができない、こういうような見地に立ちまして、反対運動を展開いたして参つたのであります。今回さらに国会に提出になりました地方税法案を見ますと、前国会において不成立となりました政府案に、部分的には若干の修正が加えられておるのであります。しかし問題の附加価値税の例をとつてみましても、これは結局においては実施するのでありまして、ただその実施の時期が明年の一月までに延期されておるにすぎない、あるいはまた固定資産税につきましても、税率は少々引下げになつておるのであります。しかしこの税率も、税收五百二十億を確保するということが前提となつておるのでありまして、これも本質的には何らのかわりはない。全体を通じまして、この新しい法案地方税收入の千九百億円というものの確保を前提にいたしておるのでありまして、そのわくの中で若干の税の配置やあるいは税率の上下はありましても、私どもといたしましては、この修正は單なる申訳にすぎないのである。そうして本質におきましては、つまりこの地方税に盛られたところの税制が非常な重税であり、大衆收奪の税制であるということの本質においては、前回の法案と何らかわるところはない、かように考えておるのであります。  これを個々の点について若干申し述べたいと思います。まず第一番に附加価値税についてでありますが、この附加価値税に対する課税は、経営が成立つか成立たないかというようなことを全然考慮に置かない。従つて純益のない赤字の工場や商店に対しても、いやしくも企業が存在する限りすべて課税される、こういうことになります。ところで現在のこういう対象にされますところの中小企業の状態は、新しく申し上げるまでもなく、非常な危機に直面しておるのであります。この多数のものが崩壊し、あるいは工場を閉鎖し、その他の多くのものが赤字経営に悩んでおる、こういう実情にあるわけであります。そういう中で附加価値税の創設は、経営の困難な企業に対してはいよいよ致命的な打撃を與えることになり、従つて今日までこういう中小企業あるいは地方自治体の基礎でありますところの地方産業の復興ということにつきましては、業者はもちろん地方自治体においても、非常な熱意と希望とを持つておるわけでありますが、しかしこういうような課税によりまして急速に崩壊過程が始まることになりますと、これらの努力が水泡に帰することになるのであります。特に地方の中小企業におきましては、その経済的な地盤はいわゆる地方の産業であります。これらの産業は、先ほど申し上げましたように非常に経営の困難な状態にありますので、この附加価値税の課税によりましてさらに一層困難になるならば、これは地方財政の基礎をさらに脆弱なものにする、かように考えるのであります。また企業によつて支拂われますところの労賃も附加価値に見られますので、今後の企業におきましては、労賃の切下げあるいは企業の一方的な合理化ということが相当強力に進められる、その結果労働の強化あるいは首切りがさらに引起つて来る、こういうふうに考えるのであります。またさらに、協同組合や労働組合が現在やつておりまするところの厚生施設についても課税されるという結果になりますので、この方面の均霑に浴しておりますところの労働者は、今後さらに実質賃金の低下にあつて、この方面からもさらに窮乏化に拍車をかけるのであります。こういうことは結局において大衆の窮乏を促進し、そして大衆の担税力を低下させることになり、今後の徴税はますます困難になつて行く、かように考えられるのであります。また徴税技術の点から申しても、この税金はまた世界でも実施されたことがない、かように言われておるのであります。従いましてかような税を、今日のような経済情勢の非常に複雑な混乱した時代に、現在の徴税機構のままで実施されるということはきわめて危險である、こういうふうにわれわれは考えるのであります。  次に市町村民税についてでありますが、これまで住民税に対してさえ負担が非常に重過ぎる、あるいは課税が不当であるというような理由によりまして、ほとんど全国を通じましていろいろな形で反対運動が起きているのであります。こういう事情に直面いたしまして、われわれ地方自治団体の職員は事務量の非常に大きいこと、あるいは人員の不足、あるいは地方行政の中におきますところの非民主性、そういうような中にありながら、非常な困難な労苦を拂つて来ておるのであります。これが今度の改革案では、従前に比しまして一躍三倍ないし十倍というような大幅の引上げが起るのであります。これによりまして住民の受けますところの負担がいかに過重であるかということは、想像に余りあるのであります。特にこの課税におきまして高給所得者、いわゆる大体において年所得二十万円以上の人に対しては非常に課税が少く、さらに所得が上昇するに従いまして逓減いたしておるのであります。最も多くの該当者がありますところの年所得五万ないし十万程度の人に対しては、課税率は最も高くて八倍ないし十倍というような重税となつて現われておるのであります。ここにもこの税金の持つところの大衆課税的な性質、あるいは大衆收奪的な性格がむき出しに現われておる、かように私ども考えております。さらに税について問題になりますのは、課税の対象を非常に広げておる。従来世帶主だけであつたものが、今回の改革案では妻子も一律にかかる。従つて課税対象は昨年の一千二百万から今年は二千二百万に達する、こういうふうに言われておるのであります。われわれは一方において国民生活が非常に窮迫化し、これに対する十分なる措置が講じられていないときにおきまして、他方税の負担の面においては、非常に広汎な大衆が課税の対象とされるところに、この税の非常に深刻な大衆課税の性質を見るのであります。  第三番目に、固定資産税について申し上げたいと思います。これは土地、家屋に対し、政府資料によりますと従来の二倍半以上の引上げになる。とにかく大幅の引上げが行われることは間違いないのであります。このことがただちに家計に影響することはもちろん、家賃、地積の値上り、さらに商品の値上り、こういうような形をとりまして、今後究極においては勤労大衆の肩に転嫁されることが明らかであります。ことに今日の住宅が非常に拂底しておるという状況と相まつて考えてみますとき、これによつて受けるところの大衆の苦痛は非常に大きいものがある、かように考えるのであります。さらに機械設備その他の償却可能な財産にも課税されることになつておりますので、たとえばわれわれの生活と最も関係のある電気、ガス、交通、そういつた方面への課税が行われ、従いまして電気、ガス料金の値上げ、あるいは交通費の引上げというようなことも想像にかたくないのであります。そしてこれらのものは、結局においては一般大衆の肩に転嫁されるのであります。これによつて労働者の生活はさらに低下し、一般大衆の税金に対する苦痛は一層深くなつて来るのであります。  第四番目に入場税について申し上げたいと思います。入場税の税率を三分の一だけ下げるが、それと同時に課税範囲を広げておるのであります。全員を無料で入場させる場合も、その経費を入場料金とみなして入場税を課し得るもの、こういうふうに規定されておりますので、このために労働組合を初め民主的団体による催しものは、古今に例のないと言われるこの入場税によつて、非常に多くの束縛を受け、民主団体の文化活動はこの辺から大きな束縛を受けることになるのであります。  以上四つの点について申し上げたのでありますが、これを要するに、今回の改正案は、前回の税案と同様に、本質においては何ら異なるものではない。そしてそれはすべて究極において大衆の肩に転嫁される。そのことによつて大衆の窮乏が急速に進み、担税力はさらに極限に達するものである。こういう見解におきまして、われわれは今度の法案に反対するものであります。  次に現在の財政機構の中におきまして、中央財政が非常に厖大な国家予算を持つておるのであります。この厖大な国家予算を維持するためには、最も強力にして徴税の容易な所得税や消費税を確保することが中央財政にとつて必要なのであります。従いましてこの中央財政を守つて行くためには、地方財政に残された財源というものはきわめて貧弱なものしか残らないのであります。そこで地方財政は当然大衆收奪的な方向に向わざるを得ない、こういう実情にあるのであります。今回の地方税改革案はまさしく国家財政の支柱としてのこうした役割を演ずるものである、かように考えておるのであります。しかしながら大衆課税は、一方においては大衆の窮乏化のために、多くの困難なくしてはこれをやり途げることはできないのであります。地方財政の自主性を確立することはとうていできないのであります。そこで起債の許可、あるいは大蔵省預金部の資金の借入れ、あるいは地方財政平衡交付金の操作、こういう操作を通じまして、地方財政が勢い中央財政に依存せざるを得なくなる。ここに地方財政の自主性は失われる危險が十分あるのであります。かように考えまして、厖大な国家予算を中心とする現在の財政機構の中にありまして、今回の改革案は地方財政の自主性を著しく妨げるものである。財政の中央依存をもたらすものである。こういう理由が私どもがこの法案に反対する第二の理由であります。  次にわれわれといたしましては、特に地方税徴收に当る職員の場合といたしまして、二つの点について考えてみたいと思うのであります。  まず第一番目はこの法案によるところの税金が、はたして徴收がうまく行くのであろうかどうかという点であります。最近におけるいろいろの事情は、徴税成績の非常な低下を伝えております。たとえば長野県におきましては、県税の納入率におきましても、一昨年の九三%から昨年は八六・九%に低下しておるのであります。これは他の県におきましても、さらに市、町村と末端に行くに従つてこの傾向は非常に強いのであります。それでは納税者であるところの一般大衆の状態はどうであるか、これは申すまでもないのでありますが、失業者は非常に増加しておるのであります。労働者は賃金の切下げに困つております。中小企業は経営難で困つておる。農民も窮乏に苦しんでおる。こういう状態の中で、大衆の担税力はすでに限界点を越えておる。たとえば京都では五月中に配給米のとれない市民が一割五分に達しておる。その大部分が四月、五月に急にふえた生活困窮者があるためである、こういうふうに言われておるのであります。また毎日の新聞紙上をにぎわしておるように、この大衆の窮乏化は生活苦のための自殺者や心中者を出す、こういうような状態になつております。こういう中におきまして、本年は昨年よりさらに四百億という多額の租税の徴收を増加するのであります。従つて徴收が前年度よりはさらに一層の困難を増すことは明らかであります。その上地方財政の危機は非常に深く、自治体は、税の收入や起債や借入金のほかに苦しい財政をまかなうためには、佐野市に見られるように税金の前借りというような方法に訴えておりますし、また納税債券の発行といつたような方法もとられております。さらに強制寄付、強制労働というような方法をとることによつて、今日の地方財政の危機を切り拔けておるのであります。こういう実情からいたしまして、大衆の負担がさらに苛酷となり、これによつて徴税は一層困難になる、かように考えられるのであります。従つてたとえば京都市会におきまして一議員の前年度帶納処分が計上されておるが、これをどうするつもりかという質問に答えまして、理財局長は悪質の者に対してはぴしぴし強制執行をやる、かように回答をしておるのであります。今後この重税の負担、徴税の困難という事態にあたつて、強権によるところの徴税が非常にその数を増して来るということは考えられるのであります。特に最近における朝鮮の問題、あるいは警察隊の増強の問題、こういう問題と考え合せまして、今後の徴税におきますところのこういう動向は、われわれの非常な関心を持つところであります。さらに今年の租税の徴收期は八月以降に片寄るということが起きて来るために、今申し上げましたところの徴税の困難は、さらに拍車をかけられるのである、こういうふうに考えるのであります。たとえば国税地方税との間には、いろいろの競争が行われております。徴税吏員がキヤラメルを持つて納税者のうちに行く、こういうふうな形において、この国税地方税との競争、あるいは県税と市町村税との間のはげしい競争が展開されておるのであります。今後におきまして、さらにこの趨勢が強化されて、そのことが徴税の困難を一層増すものではないか、かように考えておるのであります。  さらにまた、今後台風期を迎えるにつきまして、これまで戰時中、戰後の混乱時代に、治山、治水ということがかなり放棄されて来た。そのために少し雨が降ると、水害が発生する、こういうことが予想されるのであります。すでに今年におきましても、先般二、三日の雨が降つただけで天龍川を初め、大小の河川が氾濫して、田畑の冠水、その他が相当の被害となつて現われおります。今われわれは台風期の近づくことにつきまして、こういう災害が起きるということも考えられるのでありますが、その場合におきますところの徴税の困難は、先ほど申しました事情と重なりまして、さらに強いものがある、かように憂慮されるのであります。  次に第二点といたしましては、徴税機構——現在地方税徴收するところの機構の側における困難についてであります。徴税職員は職制の圧力の強い職場の中におります。そうして非常にたくさんの事務分量を負担しております。繁忙期におきましては、たとえば地方事務所の職員においては、一人で事業税の調査に一日二、三十件を受持つというような事例も起きておるのであります。そういうことになりますと、当然正確な調査は不可能であります。そこでああだろう、こうだろうといういわゆるだろう税金というものも起きざるを得ないのであります。こうして彼ら税務職員は、担税能力の限界に来ましたところの一般大衆と、徴税を強行しようとしますところの職制の圧力、この両者の板ばさみになつて非常に苦慮いたしておるのであります。しかし一方において厖大な失業者の群れがあるという中におきまして、彼らはみずから職場を放棄することもできず、結局法律にも十分に沿いかねるような税の賦課と徴税とを強行するというようなことになつておるのであります。こうした強行がいかに徴税職員にとつて苦痛であるかということは、先ごろ京都市役所の税務職員が、この両者の板ばさみに耐えかねて、遂に自殺をするというような悲劇が起きているのであります。さらに税務職員に対しては、重税からのがれようとしますところの、一般業者からいろいろな誘惑の手が延びて来るのであります。税務職員はこういう誘惑の手に落ちまして、腐敗と不正の邪道に陷る者も出て来ておるのであります。今政府は六十億の予算をもちまして、県あるいは市の税務職員三万数千人の増員をしようということをはかつております。しかしこれは單に人間の増員だけをもつて解決される問題ではないのでございます。一方におきましては職制の圧力、他方におきましては一般大衆の反対、こういう中におきまして、真に事務の能率を上げて行くためには、税務職員の生命と生活権とを守らなくてはならない。同時に職場の民主化なくしては十分に任務を行うことができないのであります。今日町村の職員の中には六三ベースはおろか、いまだに三千七百円ベースももらわないたくさんの吏員がおるのであります。また各地の地方団体の職員のうちには、超過勤務手当も十分にもらつていない者があるという状況にあるのであります。こういう実情の中におきまして、職場を民主化し、そうして税務職員の生活権を守つて行くためには、われわれの組合の強化が何よりも必要であります。しかるに今、この組合の強化に逆行しまして組合を骨拔きにし、そうして職場の民主化を阻止しようとする目的をもちまして、地方公務員法あるいは地方公労法の制定が政府によつて企図されておるのであります。しかしかかる地方公務員法あるいは地方公労法によりますところの組合の抑圧は、決して今日におきますところの徴税吏員の能率を増加するゆえんにはならないのであります。以上両方の方面から申し述べまして、私ども今後のこの法案によりますところの徴税が、非常に困難であるということを結論として見出したのであります。  以上の見地に立ちまして、われわれは結論としまして、第一に今回の改革によつては地方財政の自主性は確立されない。第二番目に大衆の收奪と窮乏化に拍車をかけるものである、地方財政の基礎を危うくするものである。第三番目に、地方財政の行政機能は麻痺する。第四番目に、地方自治体の民主化は妨げられる、こういうふうな見解を持つものであります。従いましてわれわれは所得税を地方に委讓すると同時に、少くとも民主的な納税調査機関を地方自治団体の中に設けるという意見をつけ加えまして、今回の改正法案には、われわれは前回と同様に、全面的に反対であるということを申し上げまして、私の意見を終りといたしたいと思います。
  32. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次に日本農民組合総本部大森眞一郎君にお願いします。
  33. 大森眞一郎

    ○大森参考人 日本農民組合総本部の大森であります。私は農民の立場から今回の地方税法の改正案に対しまして、二三の意見を申し述べたいと思うのであります。  地方税改正案に対しまして、日本農民組合といたしましては、機関の決定によりまして遺憾ながら全面的に反対の立場を明らかにいたしておるのであります。これから申し述べますことは主として農民の立場からどういう点が問題になるか、二三の点を指摘いたしまして、若干の意見を加えたいと考える次第であります。  まずわれわれの立場といたしましては、今日農家の経済が非常に逼迫しておりまする実情を把握いたしまして、農民課税につきましては特段の御配慮をいただきたいというふうに考えるのであります。詳しい説明は申し上げませんが、一、二安本の数字を拾つてみましても、昭和十七年と二十四年を比較しまして、その間における農家経営の四囲の状況を見ますと、経営費の点から見ましても、総経費に対する農業経営費は十七年におきまして三六・二%、これが二十四年に至りますと急激に減りまして一五・一%というような経営の縮小を見ておるのであります。一方においては農業外の経営費の面から見ますと、これは逆に上りまして一・九が四・三%にふえておるのであります。ここに農業経営の現在の不健全性があるのでありますが、さらにこれに加えまして、租税公課の面から申しますと、二・九%が一一・五%にはね上つておるのであります。こういう実態を御掌握いただきまして、農民課税につきましては特に御考慮をいただきたい。これをあらかじめお願いいたす次第であります。  次に第一に附加価値税についてでありますが、私ども附加価値税という税制を創設することをやめまして、事業税法を改正いたしましてこれを実施すべきであるという見解を持つているのであります。私ども附加価値税に対する反対理由の第一点は、事業税におきましては、言うまでもなく利潤に対して賦課いたすのでありますから、担税能力に一応妥当なる査定が行われる限りにおきましては、これに相伴つておるはずであります。しかしながら今回の附加価値税におきましては、主として事業の量に課する関係から、担税能力のない事業に対しましても、これに課税されるという矛盾があると思うのであります。  反対の第二点は事業税では支拂給與額は必要経費としてこれを控除いたしておるのでありますが、附加価値税におきましてはこれを課税対象にいたしておるのであります。従つてこの点から資本の有機的な構成が高度化されております。大企業、あるいは労力を少く使うところの企業におきましては、比較的有利な條件を得るのでありますが、中小企業のような労力に多く依存する、人件費を多く使うところの小構成の程度の企業におきましては、これは非常に重い負担となるのであります。これが反対理由の第二点であります。  第三点といたしましては、本税がやはり勤労大衆の負担に転嫁される可能性が非常に多いということであります。これは詳しく申し上げるまでもなく、前述いたしましたように、附加価値税に相当むりがあるのでありまするから、企業者側におきましては、何らかの形で自己の負担からこれを転嫁しなければならぬというので、まず考えられるのは、やはり製品価格の中にこれを織り込むという形になると思うのでありまするが、そうすればこれも一般大衆の負担、消費者大衆の負担に転換される。さらに市場関係から見まして、有効需要の関係から見まして、この点から不可能となりますれば、やはり企業整備あるいは労働強化、賃金の低下というような線で、労働者の犠牲が多くなるのではないかと私ども考えざるを得ないのであります。さらに失業者が出ますならば、これは農村に流入いたしまする関係から、農民といたしましては、やはり負担過重にもなるというような関係考えざるを得ないのであります。  第四点といたしましては、特にわれわれ農民の立場からいたしますると、農業協同組合が、この附加価値税を課せられるといたしますれば、ほとんど破綻するのではなかろうかというふうに考えざるを得ないのであります。と申しまするのは、農林省の調査によりましても、調査対象十四組合中、余剰金から附加価値税を拂い得る能力のあるのは、ただ一組合にしか過ぎなかつたというような調査結果もあるのであります。ことに現在の農業協同組合は、利潤を目的としておるのでなく、農民の一つの自営組織でありまする関係から、利潤追求が目的でないのでありまして、現在全国の状況を見ましても、約四〇%程度は多かれ少かれ赤字を持つておるというような実情にありまするので、この脆弱な事業に対しまして、附加価値税が課せられるといたしますれば、協同組合自体の破綻になるのでありまして、この点から、私ども農民の立場といたしましては、附加価値税に対しまして賛意を表することができないのであります。  事業税の改正点、これはこまかい税率、その他は私どもの專門でありませんが、基礎控除額あるいは免税点を引上げるというような措置を講じていただきたい。また一般事業税には、比較的軽く、法人税には相対的に重く課するというような形において、税率をお考えいただきたい。第三には農業協同組合に対しましては、非課税としていただきたい。この三点を大体の希望として申し述べておきたいと思うのであります。  次に固定資産税についてでございますが、この固定資産税について、農村関係で一番大きく響いて参りますのは、やはり農地価格を引上げまして、これを標準として地租を決定し、地租を引上げるという形が出て参ると思うのであります。この地租の値上げに対しまして、私ども賛意を表しがたいのであります。大体経済事情が変動いたしますれば、これに相応じて農地価格や小作料も、当然変化するのが妥当であり、原則であるというような見解を農林当局はとられ、そして農地価格を一般物価の引上げに即応しまして、引上げようというようなお考えのようでありまするが、こういう考え方にはただちに私ども同調できないのであります。なぜかと申しますると、農地改革後におきまする農地は、売買を禁止されておるのでありまして、一般の自由商品とは異なる性格を持つておるのであります。ことにこの農地を主たる生産手段として生産します農産物、米麦を中心といたしておりまするが、これもまた統制によりまして、国家の力で押えられておる性質の品物であります。従つて、これを一般の物価水準に適応できるような、自由商品と同じような形で、地価を値上げするという行き方には同調できないのであります。私ども考えるところによりますれば、本来ならばやはり農地価格は、土地の收益価格を標準にして決定さるべきではなかろうか、現在のように物価水準を基準とすべきではないのではなかろうか、このように考えておる次第であります。  さらに今回の地租の値上げに対しましては、地主は小作料の値上げによりまして、この税の負担部分を小作人に転換することができるのであります。小作人は、小作料の値上げによつて地租分を負担しなければならぬ。もう一つは農地改革後の自作農というのは、農地改革以前の自作農と違いまして、非常に経済的基盤が脆弱であると思うのであります。この脆弱な経済基盤に立つておる一般農民の負担を、非常に重くする結果になるというふうな考え方から、地租の値上げにつきましては、反対の態度を表明せざるを得ないのであります。  次に農家の宅地並びに家屋の点についてでありまするが、これは農家の特殊性に基きまして、減免措置を講じていただきたい。宅地の点につきましても、農家におきましては、申し上げるまでもなく一時的な農作業のために、宅地を非常に広くとつておるのでありまして、従つてこの宅地のいわゆる利用度というものは、非常に低いのであります。こういう点に特異性を認めていただきたい。また家屋の点でありまするが、これは多くの養蚕地帶においては、戰前に養蚕をやつておつたところの農家は、今なお厖大な養蚕のための家屋を持つております。蚕の乾燥に使うというような、一時的な、臨時的な農作業の面から、大きな家屋を持つておるというのが通例であります。従つてこういう利用度の少い土地、建物に対しましては、減免措置をお考えいただきたいというのがわれわれの希望であります。  さらに農業用の償却資産でありまするが、これも何らかの形で減免措置を講じていただきたい。農具類は、これは大小にかかわらず利用度が非常に低いのであります。一般工業に使いまする機械、器具類は毎日使つておるのでありまするが、動力機にいたしましても、年一、二回使う、あるいは数回使うという程度のものでありまして、これが固定資本として固定化します関係から、農業では非常に負担の重い部分になつておるのであります。こういう農具類を維持すること自体負担が重いのでありまするから、さらにこれに重い課税が、一般の工業における機械、工具類と同率にかかるといたしますれば、さらに重い負担となる関係になろうかと存じますので、この点につきましてやはり減免措置をお考えいただきたい。また償却資産の価格につきましては、固定資産税では時価主義をとつておると考えられるのでありますが、これは国税の方で資産の再評価が行われたものに対しては、再評価価格を基礎にいたしていただきたい。また再評価をなさなかつた部分につきましては、取得価格によつて決定いただきたいのであります。以上が固定資産税に対するわれわれ農民側の大体の希望意見でございます。  次に市町村民税でありまするが、これはもちろん均等割、人頭税の形をとつておりまするので、少くも所得税法で、扶養控除を受けている個人には均等割をかけない、原則といたしましては、むしろ私どもは以前の住民税のように、世帶主を中心として課税するという方法をとつていただきたいのであります。また均等割税率は、大衆の負担が重くなる関係になりますし、零細なる農民の方により重くかかるというような結果になりますので、税率も引下げるよう御考慮いただきたいのであります。  次に所得割関係でありまするが、これは法人税を所得割から除いておりますけれども、やはり法人も、これを課税対象にいたしていただきたいのであります。  大体今回の税法では、法人税を非常に軽くして、資本の蓄積をはかろうというような意図があるやに考えられるのでありまするが、しかしながら、国民大衆の購買力が低下いたしますれば、結論におきまして国内市場は狭隘化するのでありまして、こういう措置で一般勤労大衆の負担を重くし、一方法人に課税を軽減するという方法は、私ども農民の立場からは承服できない点でございますので、ぜひともこれは法人も課税対象にいたしていただきたい。また所得額につきましては、当然民主的な考え方からすれば、累進課税をなすべきでなかろうかと存ずる次第であります。  最後に同じく市町村税のうちで、電気ガス税について簡單に申し上げておきたいと存ずるのであります。電気ガス税中でことに農用電力、農用電力の中でも灌漑排水用の電力は、課税を免除していただきたい、こう考えるのであります。なぜかならば、灌漑排水のごときは、これは農業の採算上の点で使うのでないのでありまして、農作物を確保するという建前から、利害を度外視して行うところのものでありまするから、これに対しましては、ぜひとも私どもは非課税としていただきたいのであります。現在このように使われる電力、これは決して米価やその他の農産物価に含まれる性質のものでないのでありまするから、むしろ国家が電力料金そのものをも負担すべきであるというのが、われわれの考え方でありまするから、少くともこれに対する課税だけは非課税としていただきたい。もしこれは本法で修正できないといたしましても、少くとも政令等その他の方法によりましてでも、ぜひとも実行していただきたいと、強く要望申し上げたいと思うのであります。  以上簡單でございまするが、われわれ農民も立場からいたしまして、問題とされる点、考えられる点を二、三御指摘申し上げまして、私の意見を終りたいと存ずる次第であります。
  34. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次に全日本中小企業協議会、平林讓治さん。
  35. 平林讓治

    ○平林参考人 私は全日本中小企業協議会の平林讓治であります。私は主として中小企業の立場から意見を述べさせていただきます。  まずこの本地方税法案の骨格となつたところのシヤウプ勧告についてでありますけれども、先ほどここで政府委員門司委員といろいろ議論があつたようでございますが、シヤウプ勧告が資本蓄積ということに非常に重点を置いた点と、それから税の負担の公平化ということに非常に力を入れられたという点については、私たちは非常に感謝いたしておるのであります。しかしながら、シヤウプ博士の言う資本の蓄積あるいは公平化の問題と、われわれが考えているそれとは、内容的に非常にずれているということであります。それはたとえば税の公平化ということについても、シヤウプ博士の考えておられるのは、税の負担均衡化ではなくて、税額を均分化する。税の総体的な観点から見れば、均等化されておつても、個々負担というのはかえつて非常に不公平になつた。それを具体的に言うならば、市町村民税均等割の問題、あるいは一律な所得割を設けたというような点、あるいは国税における所得税の最高税率を五五%にして、高率累進税率を当てはめたというような点、そういう点で公平化がむしろ不公平になつたというような印象を受けるのであります。それから資本蓄積の問題でございますけれども、シヤウプ博士らの日本産業の実態を把握する認識が欠けていたのではないかと私たちは思います。ということは、日本産業の後進性というものは、日本の資本主義が持ついわゆる構造的な欠陷であつそて、れを是正しないで、ただ税制の面からだけ企業を合理化して行こうとすることは、非常なむりではないかと思うのであります。ことに日本の非常に貧弱な資源、それから非常に過剰な人口、こういう人口と資源のアンバランスがますます尖鋭化し、それをどう調整するかというようなことが、あるいはますます狹隘化して行く海外市場の問題、非常に低い国民生活、そういう問題を解決しないで、ただ税制の面からだけ企業を合理化して行こうとするならば、必ず産業構成上の混乱が起り、社会的な不安を釀成することになると思うのであります。そういうように根本的にシヤウプ勧告に誤りがあつたのではないか。ですから本地方税においても、そういう誤りは認められるのではないと思うのであります。  具体的に言いますならば、附加価値税でありますが、先ほどもここで述られた方がすでに問題にしておりましたように、附加価値税が労務費にも課税されるということと、赤字の企業でも負担しなければならないという二点が特に問題になつておるようであります。それは、しかしながら私の考えでは、附加価値税が企業を合理化しようという意図は、日本客観情勢というものを度外観して考えた場合は、税法という面だけから見れば、確かに進歩的でかつ合理的であると思うのであります。しかし日本の特殊的な事情を勘案して考えた場合には、現状にそぐわないという印象を強く受けるのであります。なぜならば、日本産業の発達はよい意味でも、悪い意味でも労働力に非常に負つておるのであります。労働力に依存することが非常に多いのであります。特に繊維工業とか雑貨工業、精密機械工業等にありましては、労働力に依存する度合が非常に大きいのであります。繊維工業などにおきましても、特にこれはメリヤス企業などにおきましては、原価計算の中における労務費の割合は六五%ぐらいを占めておるのでありまして、この労務費に課税されるということは、結局にはチープ・レーバーを強行することとなり、あるいは人員整理をするというようなことに、自然的になるのではないかと思うのであります。つい先日の私たちの調査によりますれば、中小企業における給料の遅欠配状況は、約三百五十億ぐらいに推定されるのであります。人体全企業の三割八分ぐらいは、現に遅欠配をやつておるのであります。そういうようなときに、この労務費に課税されるということになれば、自然的に労働強化なり、あるいは人員整理ということが行われるのではないかと思うのであります。それからもう一つ、新聞によりますれば、先ほど門司委員も言われておりましたが、附加価値税性格流通税的なものであるから、商品として一般に転嫁することを予想しているというような政府側の答弁だそうでございますが、私どもから言わしむるならば、非常に有効需要の減退している現今、そういうことは絶対に考えられないのでありまして、もしそれができるとすれば、それは一部独占的な大企業、基礎産業を立場とする大企業は、その商品原価の中に附加価値税を織り込んで、そうして中小企業に転嫁することは可能であると思いますが、中小企業がこれをさらに大衆に転嫁するということは、ほとんど不可能なことではないかと思うのであります。ですから、そういう附加価値税によるしわを、全部中小企業の負担において背負わされてしまうという結果が起るのであります。そういう点について、私たちは附加価値税をもし実行するならば、政府は物価体系あるいは給與体系などを動かす気があるのかどうか、そういうような点についても非常に疑問なのであります。そういうような観点から、私たちは附加価値税を現在の日本において実施することは、絶対に反対でございます。どうしても附加価値税実施しなければならないのであれば、労務費を課税客体から削除する。それから研究費だとか交通費、そういうようなものも当然課税客体から控除するのが至当だと思います。もしこの附加価値税実施延期いたしまして、事業税を存続するとすれば、現行の事業税をやはり改善してもらいたいと思うのであります。それは先ほど日農の大森さんも言われましたように、基礎控除を引上げて、少くとも基礎控除を四万八千円程度にし、現在の大体百分の十七くらいの税率を百分の十二に引下げてもらいたいと思うのであります。それから特別法人をやはり百分の十というふうに事業税税率を引下げてもらうことを要求いたします。  それから次に市町村民税でございますけれども、私が一番先に言いました、税が非常に不公平であるということは、市町村民税などに特に現われておるのでありますが、均等割標準税額九百円というようなことは非常に不均等でございまして、この均等割は最高制限税率を五百円くらいに押えるべきだと思つております。そうしてその所得割税率についても、これは個人だけが負担するのでなくて、法人に対しても賦課する。しこうして法人負担は基礎控除を設けまして、それから資本構成なり規模によりまして累進税率にして行く。たとえば資本金百万円の会社には何千円というふうにして、あまり複雑にならないように、簡便にできるように、累進税率によつて所得割税をきめて行くということを特に主張したいのであります。  それから固定資産税でありますけれども固定資産税のうち、土地、家屋の倍率の九百倍というのは実情に沿わないのでありまして、東京などの大都市におきましては、現在賃貸価格の七百倍ないし八百倍くらいが普通でありまして、地方に行きますと四百倍、五百倍というところがほとんどでありまして、これを九百倍で押えるということは非常にむりだと思います。土地家屋の倍率は六百倍くらいにするのが一番適当ではないか、そういうように考えております。  それからそのほかにまだありますけれども、私は特に中小企業の立場から申し上げます。固定資産税でありますけれども、償却固定資産に対する課税は、課税標準の査定をどうするかということが非常にむずかしいのでありまして、同一メーカーの同一製品で、耐用年数が同じであつても、必ずしもその性能は同じでないのでありまして、これをどういうように査定するか。現在帳簿上では減価償却をしておりましても、実際はなかなか機械などの設備の更新などはできない実情でありますから、固定資産税税率とか倍率というものは非常に低くするか、あるいはその実施延期してもらいたいというふうに、中小企業の立場からは考えております。特に工具とか備品などに課税するということは、全然現状にそぐわないのではないかと思うのであります。先ほど日農の大森さんは、農業などに課税するということは、工具備品の中で固定化するものは、資本が固定化してしまうから課税しないようにという主張でありましたけれども、徴税技術的にわれわれから言わしむるならば、工業などでは一つの機械工具を買つても、それは一年中なり二年中なり使えるわけではないのでありまして、一箇月くらいで使えなくなつてしまう機械、備品、工具もたくさんあるわけであります。それをどうしてその課税標準を査定するかということが、技術的に非常にむずかしいのではないかと思います。こういう工具だとか器具や備品などは未稼働資産などとともに、非課税対象としてもらうことを強く希望いたしたいのであります。  具体的に今の固定資産税税率は、政府法案では一・七になつておるようですが、一・五にしていただきたいと思います。できれば一%程度にしていただきたい、かように考えております。それから固定資産税の中でございますけれども、そのほかにもう一つ、工場の中にあるところの堤防でございます。特に深川だとか城東方面においては水害が非常にあるために、堤防を会社の負担によつてつくつておりますが、これも企業採算を追求するという立場でなくて、これは災害を防止するという観点からの固定資産でございますから、それらは非課税とするように御配慮願いたいのであります。  それからもう一つ、これは各党の、特に国会の議員の方々にお願いしたいことでございますけれども、前国会地方税法案が廃案になつて、今上程されておるのでありますが、もしまたこれが廃案になつてしまうというようなことになれば、これを納税者側の立場から見れば、結局は負担をしなければならないものでありますから、いつかまとめて負担するというようなことになつてしまうわけでありますから、各党とも協同して、なるべくわれわれ国民の要望をいれていただいて通過させていただきたい。その場合、もちろん国民の要望するところを十分しんしやくしていただきたい。そういうふうに思つておるのでありまして、政党とか政策とかいうものにとらわれまして、これがまた廃案になるようなことのないように特にお願いいたしたいと思います。
  36. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それでは次に日本治体労働組合協議会占部秀男君。
  37. 門司亮

    門司委員 政府当局はちつともいないが、一体どうなんですか。
  38. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 今、鈴木君は井上良二君と立ち話をしておりますから、すぐ参ります。——占部参考人
  39. 占部秀男

    ○占部参考人 私は全国自治体労働組合協議会委員長をしております占部であります。東京都の職員労働組合の委員長も兼ねておりますので、地方税法案に直接関連のある職員の立場からの意見を申し上げたいと思います。  この法案が目標としております地方税收入を拡充し、地方税制の自主性を強化して、地方自治の根基をつちかう、そうして地方税制を根本的に改革して、国民地方税負担の合理化及び均衡化を確保する、こういう目標に対しては、われわれは賛成であります。しかしながら、問題はこの法案内容と、この法案内容によつて起るところの結果が、はたしてこの目標に沿うものであるかどうか。こういう点に問題があると思うのであります。特にわれわれ地方庁あるいは市町村の側からいたしますと、四月にこの法案の成立かなかつたために、四、五、六、七と四箇月にわたつて非常な不利益な立場に立つて、收入もないというような現状に立ちまして、少くともそうした面についてのいろいろな條件、あるいは今後八箇月の間に一箇年分を徴收しなければならないというむり、こうしたむりも相当合理的に解決できるというような法案の形がとられなければならない、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。  ところで、この法案を見ますと、地方自治体の方の收入の大きな問題といたしましては、ただいま内容的にはいろいろと論議をされましたけれども附加価値税——今度は一時的には事業税になつておりますが、それと市町村民税あるいは固定資産税、こうした問題が最も大きな問題でありまして、その他の税金がこれらの三つの基本的な問題を取巻いておるように見受けるのでありますけれども、このうち第一番に事業税の問題でありますが、この問題につきましては、四百十九億という附加価値税がそのまま肩がわりされておるような状態になつておりまして、内容的に見ましても、たとえば附加価値税においては赤字企業のところまでとるというようなものがとれなくなつた、あるいは原始産業の人たちに対する税金が除外された。そういうような相対的な関係から、少くとも中小商工業者を中心としたところの事業税負担する人たちは、相対的に比重の重いものを受けておるように感じます。そうしてこの税金は私たちが申すまでもなく、前年の所得を基礎にして税金をかけることになるわけでありますが、昨年でもわれわれはそうした方面税金徴收についてはひどく困難をきわめたのであります。しかも昨年より以上に本年は悪い状態に中小企業者は置かれておる状態でありまして、はたして自治庁言つておりますような、四百十九億の税金がとれるかどうかということについても、われわれは非常に危ぶんでおるところであります。  また市町村民税にいたしましても、すでにこの内容はこの委員会でも明らかになつておりますように、個々の大衆的な基盤におきましては、五倍、六倍、十倍の値上りになつておる。こういうような実情で、昨年でも東京都のような場合は、都民税をとるのに相当困難を来した。しかもそうした大きな増額を余儀なくされたところの税金というものは、はたして真実とれるだろうか。少くともここには五百何十億というような予定額になつておりますが、それがはたしてとれるかどうか、こういう点でも非常に危ぶんでおるわけであります。  また固定資産税におきましても、東京都の場合は入場税、あるいは遊興飲食税、そうした部面の税金が相当な額になつておるのでありますが、こうした税金は、景気不景気が直接に影響する税金でありまして、非常に不安定な税金なのであります。しかもこうした部面をある程度カバーしようという平衡交付金にいたしましても、従来から地財委と各自治体の当局の間には、要求と査定において相当のずれがあるのでありまして、こうした面は非常な不安定な問題になつて来ておる。従いまして、総括的に見ますと、本法案を実行することによつて、それが目標として掲げておるところのものを、はたして達成できるかどうか、こういう点になりますと、悲観的に考えざるを得ないのであります。端的に私をして言わしむるならば、形だけはそうした方面に整えてはおりますけれども、実体的にはむしろ大きな未徴收の多いような形がつくられてしまつて、今年度の地方財政が相当混乱するだけではなくて、将来におけるそうした問題へのしわ寄せ的な禍根が残るだろう、こういうような見通しを持つておるのであります。従いましてこうした状態をいろいろ演繹いたしますと、たとえば職員の給與の問題につきましても、あるいは待遇の問題につきましても、あるいはオーバー・ワークのような問題につきましても、相当の影響があるということを、われわれは注目しておるわけであります。  第二には、個々税金内容の点でありますが、これはすでに三人も前に話されまして、ほぼ同じような観点から同じようなことを言つておりますので、私は重複を避けたいと思います。ただ二、三の点につきまして特に申し上げたい点を簡單に申し上げます。  それは附加価値税の問題でありますが、ここでは赤字経営においてもとられるというので、こういう点を相当前三人がついたわけでありますが、特にこの附加価値税が労賃をも対象としておるということから、一般には人を雇う量の少いところの中小企業は割合によくて、人をたくさん雇うところの大企業にこの税金がかかるのである。従つてこれは非常によい税金であるというようなことが言いふらされておると思うのでありますが、こういう点はわれわれはまつたく反対の見解を持つておるわけであります。すなわちこうした問題が、單に事業主そのものの所得の中から引去られるならば、われわれは何とも申しませんが、結局はそこに勤めておる者の労賃の中から引去られる、大衆層に転嫁される結果になることは一見明瞭でありまして、しかもこのことによつて必然的に労働者の首切りであるとか、あるいはオーバー・ワークに対する未拂いであるとか、そうしたものがますます多くなるという見地からいたしましても、こうした税金は撤回すべきである、こういうふうにわれわれとしては考えております。  市町村民税につきましては、すでにいろいろと御意見がありましたので、私は理由は省きますが、少くともここにあるところの均等割というものは廃止すべきものである、こういう見地に立つておるわけであります。  さらに固定資産税につきましては、これは特に住宅問題について前参考人からも述べられましたが、私もそれとほぼ同じような考えを持つておるのでありまして、少くとも評価倍率及び税率を大幅に引下げて、一定の限度においては、たとえば評価委員会などのいろいろな事情の参酌というものを非常に重く見なければならぬということ、特にまた地代及び家賃への転嫁を防止するような方法を明確に定めるべきであるということ、そうしたことを意見として申し上げたいと思います。  なおこの他につきましても、この地方税にからみまして、たとえば金庫税、あるいは余裕住宅税、あるいは使用人税等は存置すべきである。あるいは社会保障税のようなもの、教育税のようなものを創設すべきである。そうしたわれわれの意見もございますが、この範囲からやや飛び出した形になりますので、この問題はここら辺で終えておきたいと思います。  最後に第三の点は、業務の関係並びに手続の関係についての問題でありまして、特にわれわれ地方庁あるいは市町村に勤めておりますところの職員といたしましては、非常に大きな問題なのであります。と申しますのは、すでに今度の税法の立て方が、地方の方では独立税の形を持つておる、こういうようなこと、その他から非常に事務的には大きな量をここにとられるわけであります。しかもこの税金の振合いの姿というものは、たとえば源泉課税のごとく徴收の簡單でしやすいものは、主として国税にまわされてしまつており、徴收の非常に複雑で、しかもやりにくいものが地方税にまわされておる。こういうような情勢もこの中に勘案いたしまして、地方庁あるいは市町村の職場では、この問題は非常な重荷になつておる現状であります。たとえば調査一つするにしても、あるいは税金課税額あるいは標準額を把握するにいたしましても、非常に困難をきわめております今日、われわれの職場では相当の人員を増員しなければならない、こういう立場に立つておるのでありますが、昨年の行政整理、そうしたものによつて人員は相当に減らされております。労働組合としても、やはり仕事の部面は仕事の部面で、これに対しては相当協力するところは協力も惜しみませんで、現存はわが自治労協の傘下の各組合では配置転換その他を理事者との話合いで強力にやつておりますけれども、とうてい今度の改革によるところのすべて準備、あるいは事務をまかなうだけの人員はないのでありまして、結局はオーバー・ワークになるというような実情にあることは自治労連の方が申し述べられた通りであります。しかもこの問題についての仕事の部面だけではなくて、その仕事をさせるために裏づけとなるところの給與の面についてもまつたく考えられていない現状であります。たとえば国におきましては、一般公務員と税務に関する公務員とは給與においても根本的に違つているわけであります。ところが地方庁あるいは市町村においては同一の形をもつてとられておつて、少しもいい形ではない。しかも税務に関係する人は、非常に忙しくて、連日のごとく超過労働をやつておりますが、この超過労働に対する手当の支拂いも満足に行われておらないというのが現状であります。しかも最近の税金のとりにくい実情から、税金を出すところの大衆層もあるいは首切り、あるいは給與の遅配、欠配、そうした点からいらいらした気持があるのだろうと思いますけれども、徴税員に対するところの暴行事件、あるいは威圧事件等が相当起つております。今日では、ピストルの一つも持つて行かなければ、ほんとうに大きな税金もとれないのではないかということをわれわれの間で話し合つている実情でありますが、これに対する安全保障のいろいろの問題が何ら考えられておらない現状であります。こうした点を少くとも業務の上では徹底的にやらなければ、この案ができ上つても、案が所期するような目的はとうてい達成し得ない、こういうふうにわれわれは考えております。また手続の問題にいたしましてもそうでありますが、青色申告その他の問題もありますけれども、これは非常に複雑な問題でありますので、取扱い面としては、われわれはこれ以上申し上げませんが、たとえば納税者の協力を得るために、しかもそれの意思というものを合法的に伸ばすためにも、勤労者の代表でできたところの民主的な税務調査委員会のごときものを設けて、そこでそうした問題も一応取扱う必要があるのではなかろうかと思います。さらに紛争処理の問題にいたしましても、たとえば裁判所にわれわれが更正決定は不当である、こういうことを持ち出しますには、その前に国税庁または国税局に所属する協議団、こうしたものに持つて行かなくてはならぬのでありますが、その協議団の性格がはたして民主的なものであるかどうかということも、いまだ不明な現状であります。こういう点につきましても、もつと明確な形を打出さなければ、税を納める人も不安でありますし、またその不安な人を相手にするところの地方庁あるいは市町村の職員も、非常に税金の問題では困難をきわめる、こういうふうに考えられます。  非常に意見の開陳が簡單でありましたが、以上のような観点からいたしまして、この地方税法案の行き方につきましては反対であるということを表明いたしたいと思います。
  40. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それではただいままで陳述されました四氏に対して御質問のある方、どうぞ御質問願います。
  41. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 私は日本治団体労働組合総連合の泰平さんにお尋ねしたいと思います。泰平さんのお説は全面的にこの法案に反対である、その反対の一番大きな理由は、本法は人民に対する收奪であるという結論のもとに反対されたようにお聞きしたのであります。この人民に対する收奪ということについて、いかなる計算あるいはデータの上に立つてそういうことを主張されるか、その点をお伺いしたい。政府からわれわれに提出されました資料によりますると、泰平さんが言つておられる十万円見当の者について見ますれば、十万円といえば十級、八千円程度だと思いますが、その程度のものについて見ますれば、かりに勤労者で扶養家族が三人、そうして十五坪の家に入つて、宅地としては二十坪、そういう家に住んでいる標準の勤労者でありますが、その勤労者の今までの税金と本年すなわち二十五年度税金を比べてみますと——この際私の申し上げます税金というのは、国民のふところから出すすべての税金言つておるのでありまして、地方税国税と別に札が違うわけでございませんから、国民負担という立場から申しますれば、現行の税法改正前の国税地方税標準にして言いますれば、国税についてはすでに本年当初予算に比べまして九百億、さらに補正予算に比べて七百億減税しておることは、陳述人も御承知と思いますが、その国税について、改正になる前のその所得税を、十万円の勤労者について見ますれば、九千六百円でございます。それが所得税の減税によりまして、二十五年度は四千八百円になる。それから固定資産税、これは家賃ともなり、地租家屋税になるわけでありますが、それが従前の通りでありますれば、千七十二円、それが今度の改正法では二千七百三十四円、ざつと二倍半以上つております。それから市町村民税、これは現行法によれば八百円のものが二千三百二十八円、これは相当上つておるようでありますが、総計いたしまして、改正前の税法によりますれば、十万円の勤労者は一万一千四百七十二円納めていたのが、今度の地方税国税を通ずる改正法によりますれば、九千八百六十二円、約一千五、六百円の減税になつております。一割五、六分ぐらいになりましようか、そういうふうな減税になつております。なお商業者についてみましても、現行法によりますれば、同じく十万円の所得で、三人扶養家族があつて、二十坪の住宅に住んでおる、そういうものについてみますれば、現行法によりますれば、所得税が一万二千四百二十九円、それが今度の改正後は、二十五年度は五千六百五円、それから今までの事業税をそのままとりますれば一万五千二百四十円とられる。それが今度の附加価値税によりましては一万百三十一円。それに反しまして、地租家屋税としていままで千四百八十円とられておつたのが、今度の改正の結果は、三千七百七十九円、住民税が八百七十八円納めておつたのが、改正の結果二千六百九十一円、合計いたしまして、今までは税全体が三万二十七円納めておつたのが、今度の改正の結果は、二万二千二百六円、約八千円ばかり減つております。工業者も大体そういうふうな——数字をあまり申し上げるのはめんどうになりますから申し上げませんが、大体そういう程度の減税になつておる。この資料を基礎にしてわれわれは考えまするならば、むろん地方税だけについて申し上げまするならば、農業者から見ますれば相当の税の増額になつておることは、われわれも十分承知しておりますし、またそれが今度の税の改正の主眼点でありまして、要するに、今までの附加税中心主義をやめて、その県民もしくは市民から相当の税金をとつて、この税金を今までは大部分は税務署が持つてつたのを、今度はその市町村内で使うようにするのだ、そうしてその自治体の健全なる発達をはかるのだというところに、ねらいどころがあるのでありますからやむを得ぬと思いますが、国税地方税を通じて見ますると、明らかにこの数字が示します通りに、一割ないし二割、三割の減税になつておる。この事実から見ますれば、私は御説の通り、これが人民に対する收奪であるという言葉でもつて、簡單に片づけられないように存ずるのでありますが、参考人のこの点に対する見解を承りたいのであります。
  42. 泰平国男

    ○泰平参考人 御承知通り、中央の予算におきましては相当の減額が行われておるのであります。しかしそれはそのまま横すべりして、地方税の中では増徴になつておる。特に地方財政の中では、従来法の形式によります税金だけが唯一の財源でなくして、その他にいろいろの形におきまして、この財源が捕捉されておつたという点から考えまして、全体的にはやはり減つていないのだと、こういう考え方であります。特に先ほども申し上げましたように、今日のいわゆる一般大衆の担税力が——これはもちろん個人々々によつていろいろの差はありますが、全体として見まして、担税力は限界に来ておるし、漸次下つておる。そこでそういう数字は絶対的な意味だけでなくて、相対的にも非常に重い税金である。たとえば住民税につきまして、われわれの方でいろいろ調査してみたところによりますと、政府の方のいろいろの資料もありますが、いろいろの点で食い違つておるような事情がはつきりしておるのであります。そういう意味から、決して一般勤労大衆の負担が軽くなつたのではない。むし現在の担税力においては非常に重くなつているということを、われわれとしては考えておるのであります。
  43. 龍野喜一郎

    ○龍野委員 この点もどうも意見の相違でありまするから何とも申し上げられませんが、次に農民組合の大森さんにお伺いいたしたいのでありますが、大森さんのお話は大部分は希望でありまして、われわれも述べられました点につきましては、必ずしも反対の点もございませんが、その中でただ一つ特にお伺いいたしたいのは、この際附加価値税のような税はやめて、従前通り事業税をとるべきであるというような御意見であつたのでありまするが、われわれの今度の税法に対する考え方は、先ほど申しました通りでありますが、少くともあなたが代表されておる農民に対しては、この地方税の改正はわれわれとしても相当都合のいいような税法ではないかと考えております。と申しまするのは、今まで農家は主食の供出代金については事業税をかけられなかつたのでありまするが、その他のほんとうの農家の現金收入であるところの副業收入については事業税を納めておつた。今度事業税が廃止になりまして、二十五年度は別でありまして、この改正案は暫定措置として事業税をとりまするが、附加価値税におきましては、御承知通り農業及び林業に対しては非課税対象といたしておるということになりまして、昨日の農林中央金庫の理事長のごときは、県税を農民が一銭も負担せぬということは、農民地方を代表する県会議員としての職務を遂行する上においていかがかと考える。やはり県税においても農民は幾分の負担をするということによつて、初めて県政の円満なる運営を期し得るのではないかという御意見さえあつたのであります。しかるにこの際大森さんは、そういうような農業に対しては附加価値税はかからない。非課税対象になつておるということよりも、むしろ従前通り事業税として農民は税を負担すべきである。それがまた今日農民の負担の上からいつてもぐあいがいいというようなお考えでございますか。その点のことを、不明瞭でありまするから一応お伺いいたします。
  44. 大森眞一郎

    ○大森参考人 簡單にお答えいたします。附加価値税の問題は、直接には農民とはあまり多くは関係なかつたと思うのでありまするが、私は事業税を従前のままで実行していただきたいというのでなく、これを合理的に改正して実行していただきたい。もちろん附加価値税で非課税になつている農林関係のものは非課税で行くというような考え方であります。
  45. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ほかに御質問はありませんか。なければただいままでの泰平、平林、大森、占部四氏の参考人の方の陳述はこれで終りといたします。まことにありがとうございました。  午前の会議はこの程度にいたしまして、午後は二時から再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  46. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 再開いたします。  休憩前に引続き、地方税法案について参考人の方から意見を聽取することにいたします。それでは新潟県知事室長西田徳長君より意見を承ることにいたしたいと思います。西田参考人
  47. 西田徳長

    ○西田参考人 私はただいま御紹介にあずかりました新潟県に勤務しております西田徳長でございます。実は突然のお呼出しをいただきまして、準備が不十分だつたために、地方税に対するこれからの意見が十分でないかもわかりませんけれども、常に考えておりますところの税の負担の公平化につきまして、急遽考えをまとめまして意見を申し上げる機会を得ましたことを心から御礼申し上げたいと思います。  私は今次の地方税法案に対しまして、全国面積の約六〇%、人口にいたしまして総人口の三九・七%を占めております積雪寒冷並びに單作地帶の地方団体の立場から、今度の地方税法案に対して意見を申し上げたいと存じます。お手元に簡單な資料をお配り申し上げておきましたから、それについて御説明をいたしたいと思います。  この資料を提示いたしました理由は、地方税も要するに国民負担でありまして、国税と県税と市町村税と三つを合せてながめる必要があると存じたからでありまして、この表にございますように二十三年度を押えますと、県民一人当りの国税は戰前に比べて三百四十六倍、県税は百十倍、市町村税は八十五倍、平均一一一・四倍となつております。また二十四年度と二十五年度の税制改革の前後の比較でありますが、その左に書いてありますように、本県の場合はむしろ二九%の減收になる見込みでありまして、市町村はその下に書いてありますように、三五%の増であります。これは自治庁がさきに資料として出しておりますものに比較いたしますと、県の場合はむしろ減るのではなくて、百分の一・二がふえる。市町村の場合は四五%ふえるということからいたしまして、特に本県の状況が大体東北各県と共通な数字が出ておることから推しまして、新しい地方税法の性格が表日本か、あるいは大きな都市か、あるいは大府県へ財源が集中偏在するようなことが前から唱えられておりましたが、大体それはこの計数によつて御了解いただけるのではないかと考えます。従いまして富める府県はますます富み、貧しい府県は窮乏の度が緩和されて行かないということが大体予想されるのではないか。もう一つは、こうした財源の乏しい農村や原始産業県におきましては、こういう状況でありますから、地方税法ができましても、他の地方に比して嚴格以上の実施をされるということが大体予想されるものでありまして、これは実際徴税の面に当つておりますと、窮乏のところほど、なかなか嚴重な取立てが行くということで、住民負担に差が出て来るような状況ではないかと考えますが、ただ問題になりますのは平衡交付金の交付でありまして、これは標準行政費を算出して、それに予定收入を控除いたした残額が平衡交付金になるわけでありますが、これは最初から本年度千五十二億になつておりまして、はたしてこの数字に合致するか、あるいはもつと巨大な交付金として計算されるものがあるかどうかという問題でありまして、この交付金のあり方いかんによりまして、今申し上げましたような嚴格な地方税法の実施ということが、さらに深刻になるかならぬかというようなことが、大体予想されると考えておるわけであります。  次に、国土と資源の半ばを喪失しました日本が、再建の途上、戰前以上に国民負担を強化し、国民もまた納税にこたえることは、きびしい現実に対する国民の義務と責任であることはもちろんでありまして、われわれ自覚するものとしましては、地方税法の案そのもの全体に対して、負担が大衆課税なりとして一言に排撃するということは、まつたく考えておらぬのでありますけれども負担を強化すればするほど、公平でなければならぬではないか。このことはお手元の資料国税の方を重ねてもう一度ごらんいただきたいと思うのであります。それは本県の場合、国税は昭和十二年が一人当り十円であり、二十三年度が三千四百六十八円ということは、結局三百四十六倍でありますが、全国の国税総額は約三千百十四億でありまして、約二百三十四倍であります。いわゆる單作地方、課税対象が單純で捕捉しやすい雪積寒冷地方は、例外なく本県のように三百倍ないし五百倍に肩を並べて大きな指数を示しておる事実は見のがし得ないことでありまして、どうしてかような国税の傾向が出て来るか。現在こうしたような形である限り、国民負担国税に蚕食されて、地方税法が出ましても、地方税法の規定通りには、地方側といたしましては賦課が実際にはむずかしい。国税に食い込まれるパーセンテージが多いというようなことからいたしまして、住民はもちろん、その所属の府県市町村団体もまた窮乏するというような傾向が、今でも、また将来でも考えられる問題であります。これは地方税関係なく、国税の問題というように考えられますが、しかしながらこれは地方税自体の問題でもあるわけです。それはなぜかといいますと、こういうような前提となつている負担の不均衡というものが、底にひそんでおりますために、比較的わずかな地方税の不合理でありましても、こうした地方には、手痛いような響き方を與えるものでありまして、この点はぜひよくお察しいただきまして、これからこの根本にひそんでいるものを前提にして、これらの地方の側から出すところの地方税法案に対するところの意見を述べさせていただきたいと思います。  まず固定資産税の問題でありますが、お手元の第二の資料をごらんいただきたいと思います。これは政府案が実施された場合、固定資産税の課税標準が、現在は賃貸価格のアンバランスの関係で、田と畑の間に大きな開きが出て参るのでありまして、ここの一番最後の欄にありますように、田は百分の七・三ないし九・四に対しまして、畑は一・二%ないし三・六%の負担率になつて現われます。これは反当の土地收益力を農林省資料によりましてここに掲げたものでありますが、かように負担の不均衡が相当はなはだしいのであります。その結果、畑地の多い地方は比較住民負担が軽くなつており、また田の多いわれわれの地方団体においては、重い地方税負担をこうむるというようなことになるのでありまして、この措置に対しましては、一応われわれとして理論的に考えられることは、第一に、畑に対する適用倍率を田と同じくらいに若干引上げる。それによつて得る財源で田全体に対する軽減措置を講ずべきではなかろうか。田も畑も共通の負担率に引直して考えるべきではないだろうかということであります。また田自体について考えてみますと、單作地方と多毛作地方との負担の不均衡は明瞭でありまして、ここには昭和二十二年度の反当收益額更正決定分をあげてありますが、昨今調べました昭和二十四年度の農林省調査、東北地方の一毛作田は反当一万九百四十五円、近畿地方の多毛作田の反当收益は二万五千三十五円というような数字でありまして、昭和二十二年も昭和二十四年もこの相互の関係にはあまり変化はありませんので、結局單作地方が重いような状況に考えられておるのであります。日本の食糧自給率を高めんとする最重要の国策から考えましても、見のがし得ないことでありまして、穀倉と称せられる單作地方のこれらの住民が、固定資産税の田畑に対する最も重い部分の税を背負い込むという結果になるのは、かえつて食糧国策に逆行するような感じをわれわれは持つものでありまして、これが適用課率を引下げて行くことが負担の公平化になるのではないかと存じます。  次に三枚目に参りまして、宅地、家屋につきましては、お手元にお配りしましたこの資料によつて説明を省略いたしますが、ただ申し上げたいのは、立地條件から来る面積建坪の増加のため、積雪地方の坪当り税率は、ここにありますように一円五十二銭、一円八十五銭と比較して低いようではありまするが、構えの大きさが大体二〇%ないし五〇%のことを考えてみるならば、かえつてこの率は高い結果に現われるのであります。  次に固定資産税として新たに課税対象となりました償却資産中の灌漑用排水機の問題であります。全国で約三万一千七百台、その評価額は六十四億と称せられます。かりにこれを新しい税法でかけるといたしますと、推定税額は一億一千二百万円ということになるのであります。これはその公共性の趣旨からいいまして、課税外の扱いとすべきではないだろうかと存ずるのであります。これは、全国における揚排水機の灌漑面積は約五十九万町歩といわれ、特に濕田の多い裏日本のわれわれの地帶は、ことのほか大規模の馬力が各所にありますために、従いましてその財産評価は非常に大きいものがあるのであります。満潮時にはそうした関係耕地が水面以下となりますために、耕地から排水する機能として絶対不可欠のものであり、むしろ人工の河川流域と見なされるようなものではないかというような考えからいたしまして、その公共性を強くわれわれは認めておるような次第であります。  これと関連しまして、地方税中の電気ガス税でありますが、この法案の規定の中には非課税対象がきわめて数多く列記されておりますが、しからばかかる公共性の強い灌漑用排水機の使用電力に対する電気ガス税は、同様に非課税とすべきではないだろうかと考えるのであります。かりに本県の例を考えますと、年間使用料金は四千百万円でありまして、反当九十円に相なつております。税額は一割でありますから、全国を寄せても大した金額にはならないのではありますが、むしろかかる軽微な財源によつて、こうした負担均衡をはかられてしかるべきであると実は考えておる次第であります。  最後に目下の一般の地方団体の財政現況についてお話を申し上げたいと思います。さきの国会で成立いたしました徴收停止の法律によりまして、おもな税目のほとんど全部が徴收の道を絶たれまして、従いまして、年間を通ずる計画的財政の執行が困難となり、予算的に大きな事業は確定財源の見通し難ということから、停止したまま今日の現状に及んでおるのが、ただいまの地方財政の現状であります。特に積雪地方である裏日本地方団体は、春の融雪期を待ちまして行わなければならぬ事業が少くないために、二重の窮況に陷つておる状況でありまして、たとえば新潟県下の四百市町村の実例を取上げますと、四月から七月までの予定支出計画二十億九千三百万円のうち、約三分の一の六億八千四百万円が執行停止をしておるような状態であります。しかも、平衡交付金の暫定交付や、あるいは預金部応急融資を受けての話でありまして、今次の国会におきまして、この地方税法案がともかく一日も早く通りまして、地方団体の財源付與ができ得ますように心から待望して皆様にお願いを申し上げますことは、地方庁並びに市町村を代表して実は私からもお願いいたしたいところでございます。ただ委員会の各位がこの地方税法が実施されんとする際に、あるいは御心配になつておられる点を私推測して一、二申し上げたいことがありますので、その意見を申し上げて、この結びといたしたいと存じます。  それは今日の徴收停止に伴い年度後半期へ集中的に徴税がまとまるために、これが円満なる運営をもつて徴税ができるかどうか、納税者の協力が可能かどうかの見通しの問題であります。私どもの裏日本地方では、県税が大体二割以上減收する結果、かりに市町村税の負担が増額になろうとも、それを通算するならば、住民負担は飛躍的に増加し、従つて産業は破滅する、あるいは大衆課税だというような異論を生ずる余地がないではないだろうかと考えるのであります。二十四年度の四月から七月までの徴税の状況は、大体年間徴税額の約五%が普通の状態でありますので、このたびも年間総額の五%の額が一応八月以降にとるべく持ち越されたということが一つと、それからもう一つは今度の県税並びに市町村税を合算しての地方財源の増加がわずかに七%程度でありますので、それを合算しても、一割二分が今後八月から年度末まで、普通の年よりは増徴される程度の額であります。従いまして問題は徴收期の平分化の問題でありまして、三月年度末までに巧みに徴收期を組み合せるならば、むしろ昨年度の徴税が非常に山の高低がはげしかつたの比較して、納税者側から言うならば、かえつて便宜を與えるのではないかということを考えて、まずこの点の御心配はないのではあるまいかとも考えておる次第であります。  なお徴税上の諸準備につき先ほどの参考人からいろいろ問題もありましたが、まさしくデータ関係準備など、幾多の問題がありましようとも、ともかく前国会当時からすでに数箇月を経て、各団体ともむしろ普通の場合よりは十分な時間を持ちまして、準備を完了しておるのでありまして、償却資産評価基準がどうというようないろいろ困難な問題がありましようけれども、これらも順次準備が完了して行く予定であります。シヤウプ税制が高度の徴税技術を前提としておりますので、今度の地方税法案通りましても、われわれとしてはかような高度の徴税技術に追いつくようになさねばならぬ義務を感じております。一例をあげますと、アメリカにおける固定資産評価人の制度さえも、十数年を経た今日ようようその軌道に乗つたというようなことを聞き及んでおりますが、われわれも最善の努力を盡しまして、何としても今度の地方税法の技術に対して努力を続けまして、地方税源の拡充にあたたかい理解と協力をかけていただきました国会の皆様に対して、おこたえできますように、十分やつて行ける確信と見通しを持つていることを申し添えまして、この徴税の見通しに対しますところの説明を終りまして、簡單ではありましたが、一応私の意見を終らせていただきたいと思います。
  48. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 西田参考人に対して御質疑はありませんか。
  49. 門司亮

    門司委員 西田さんに対して一、二お聞きしておきたいと思うのであります。これは西田さんが幸いにして県庁の立場においでになりますることのために、徴税をなさる方の立場にあるということを前提にしてお聞きをしたいと思うのであります。ただいまお話になりました中で、農業用の灌漑揚排水機の電力でありまするが、これが非課税になつていないということは、非常にわれわれも遺憾に考えております。一昨昨日かの委員会で、約一時間近く、私も議論をいたしましたが、当局は依然としてこれを非課税にしようということをなかなか言わないのであります。非常に困つておるのでありますが、幸いに総則の六條に、公共性を持つもの、あるいはそれに準ずるものについては減免ができるという規定が実はあるのであります。そこで徴收されるあなた方の立場といたしましては、一応非課税にはなつておりませんが、この條文の適用が可能であるかどうかということについての見通しをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  50. 西田徳長

    ○西田参考人 自治庁の御見解を承りましてわれわれの態度をきめたいと思いますが、かりにただいま非課税規定がはつきりしない場合でも、われわれとしては対処する方法はあると考えております。その方法は、具体的にお話するならば、町村有財産に切りかえるということであります。しかしながらこうしたことは、あるいは部落有あるいは組合有というものについて、程度の問題がありますので、むしろこうしたものをはつきりすべきではないかという考えを持つております。
  51. 門司亮

    門司委員 大体お考えは了承できるのでありますが、われわれもでき得るならばこれを非課税の対象として、法律の中に当然記載すべきである。ことに農村の諸君が生産費を度外視した品目でありまするために、でき得れば電力料金についても国が負担すべきではないかというところまで、実はわれわれは考えているのでありますが、これに税金をかけるということについては非常に不合理だと思いますので——おそらく自治庁に聞かれて自治庁は何と言われるか知れませんが、でき得れば私どもはやはり公共団体の一つの公益的性格といいますか、国全体に対する非常に大きな性格を持つ性質のものと考えておりまするので、先ほどお話のありましたように、できる限りこうしたものについて課税しないように法の善用をぜひ希望しておきたいと思うのであります。  もう一つお聞きしておきたいと思いますことは、先ほどのお話の中に、高度の税の徴收ということが望ましい態度であるというようなお話であつたと思いますが、この税の徴收に対して、徴收をいたされまする方の側としまして、まず最初に聞いておきたいと思いますのは、内容よりもむしろ税制のことであります。御承知のように事業税が制定されましてからわずか二年ばかりでありまして、そして県当局は、おそらくどの県当局も全部そうだと思いますが、事業税徴收に非常にお困りになつておつたと思います。これがどうにか目鼻がついて来てやや徴收にもなれて来て、納める方もなれて来た時期に、また新しい税金がかけられて来る、こうなつて参りますと、納税者あるいは徴税の方も実際の経験を持たない者であつて、非常に新しい納税の上に困難を来す危險性を持つておるというように考えるのでありますが、こういうふうに税金に関することがねこの目のように一体かわつていいのか悪いのか、現実に現地で行つておられますあなたの御意見を承つておきたいと思います。
  52. 西田徳長

    ○西田参考人 事業税は御承知のように定率課税でありまして、結論といたしましては、実際の徴税の関係から行きますと、結局上に安く下に厚い税金のように考えられておるのであります。それで実情お話申し上げますと、実際にこの事業税の徴税決定というのは、現在の府県の徴税機構ではとうていなし得ないところなのです。それで結局国税所得税の対象になつておりまする税務署の指令を援用いたしまして、それから落ちたものだけを直轄に調べるというようなことにしておりますが、しからば税務署が十万円と決定したものに対して、地方庁としては十万円をかけられるかということは、ほとんどの各県が非常に困つておる。これは特に單作地方の県をながめますと、国税の蚕食がはなはだしいために、十万円の決定がなし得ぬで、二割ないし二割五分の低めの決定をもつて課税対象とするというのが共通の状況であります。そういうことでありますので、結論としましては、配付税の方では課税を怠るという理由で、ある程度引かれるというようなことも間々あるというように聞いておりますが、そうしたような状況で、われわれとしましては附加価値税によりまして、たとい赤字事業でありましても、むしろ税の面から経営の合理化を進めて行く、将来に生かすということ、それからさらに上下の階級の原簿の問題から行きましていろいろ試算してみる結果、附加価値税は非常に大きな増税になるとはいいますけれども、実際まじめに納税をしておる方々は、むしろ大きな減税を與えられるようであります。従いましてわれわれとしては、附加価値税実施がむしろ社会政策に合致しやしないだろうかということを考えております。あいにくここにこまかいデータがございませんので、詳しい御説明ができないのは残念でございます。
  53. 門司亮

    門司委員 参考人と議論することは私、避けたいと思いますので議論はいたしませんが、私の聞いておりますのは、今の附加価値税事業税その他との比較ではありませんで、附加価値税については、ただいまのような御意見もございまするか、私どもの立場からいたしますと、従来の事業税は收益税であつて、收益のあつた中から納めて行つたということで、ある程度担税能力があるということを一面考えるならば、この附加価値税はそうでなく、まつたく担税能力のないところにかかつて来る、これの徴收は困難だと思います。この問題についての議論は避けたいと思いますが、ただ私が聞いておりますのは、税制がこういうようにめちやくちやにかわつて来ることによつて、一体県の徴税というものは満足にできるかどうかということをお聞きいたします。
  54. 西田徳長

    ○西田参考人 御親切な御質問をいただきまして、まつたくその通りでございます。
  55. 門司亮

    門司委員 その次にもう一つ聞いておきたいと思いますのは、先ほどの徴税が非常に遅れているということについて、われわれは実は懸念をいたしておるのであります。徴税は遅れておりまするが、遅れている徴税で非常に困つているということと同時に、われわれから考えて参りますと、遅れておりまする税制が新しい税制であつて、ことに附加価値税は来年度に延ばしましたが、固定資産税のごときは償却資産がどれだけあるのか、まだ把握できていないと思う。おそらくどこの市町村に参りましても、今どんなに準備をいたしておりましても、固定資産評価というものが明確になつた県は一つもないと思います。これからこれがかけられて、一体完全な徴收ができるかどうかということについては、私も非常に大きな疑問を持つているのであります。疑問というよりは、むしろ不可能ではないかと考えております。小さな町村は別でありますが、少し大きな市になつて参りますと、たとえば横浜あるいは東京のようなところで、かりに固定資産といいますか、償却資産を調査いたしますには、相当長い間の実績といいますか、調査が必要でなければならない。しかも課税客体から課税額をつかみ出しますまでに、非常に長い年月と言うと語弊がありますが、時間を要すると思います。こういう準備が一体完全にできるかどうかということ、従つてわれわれ心配いたしておりまするのは、非常に納税者がしわ寄せされることによつて負担が増大する。負担の全体的な増大ではございませんが、一時に四回分を三回に住民税のごときは納めなければならぬということで、非常に増大して来るという苦痛と同時に、当局におきましてはとうていこれの調査に困難であろう。従つて公平な課税が行われないだろうということを実は心配いたしておるのであります。ところがあなたのお話を聞いておりますと、それも大体できそうだというようなお考えでありますが、この点について、一体今どの程度の準備市町村においてはなされつつあるかということであります。もしおわかりでございましたら、ひとつお話を願いたいと思います。
  56. 西田徳長

    ○西田参考人 一番基本になります手続、規則、條例関係は、一切の研究が積まれてでき上つております。だだ公布を待つておるという状況であります。それから徴税吏員の訓練は、いろいろ税務署あるいは国税庁あるいは町村役場吏員を県庁と交流いたしまして訓練をいたしておりますが、ただ問題になりまするのは、ただいま御指摘償却資産評価の問題なのです。これも、私の地方は、課税物件件数は大府県ほど多くはありませんので、不可能とは考えられませんが、しかし御承知のように、これは初年度におきましてはかなりいろいろの問題が発生することは、実はわれわれも力の足りないところではありましようけれども、ある程度予想されている状況であります。
  57. 門司亮

    門司委員 ごもつともな御答弁だと思いますが、実は自治庁から、地方の市町村税賦課徴收に関する條例の準則ですか、こういうものを出しておりますのは六月の十四日付であります。これが六月の十四日から今日までの間に準備はおそらくできていると思いますが、先ほど申し上げましたように、問題になるのは評価の問題であります。條例ができておりましても評価員を定めて、さらにその評価員の下に補助員を定めて、これから評価して行くことには、相当私は時日がかかると思いますが、こういう点が完全にできておるかどうかということは、私は今はつきり認めるわけには参らぬと思う。條例ができましても、それは要するに單なる事務的の條例であつて、おそらく市町村会を開かなければはつきりしたものはできて来ない。その上で初めてそういう手続の問題が起つて来る。それはそれといたしまして、最後に聞いておきたいことは、私どもはそういう観点から実は非常に心配をいたしておるのであります。そこで問題になるのは、当局として——これは私自身も非常に愚問とは考えておりますが、一応念のために聞いておきたいと思いますことは、この法律をどうしても通してもらいたいというあなた方の御苦心はよくわかるのであります。しかしわれわれからいたしますれば、そういういろいろな複雑な徴税の面において、手続上の問題、あるいは査定の問題等がまだ残されておりますので、これの完璧を期することのために、むしろ本年一年といいますか、ある一定の期間は旧法を存続したらどうかという考え方が一面持たれるのであります。旧法の存続は、御承知のように法律できめればいいのでありまして、地方税法の一部を改正する法律の二條を大体削除すればいいと思うでありますが、この点に対するお考えは一体どうであるか。
  58. 西田徳長

    ○西田参考人 地方税に財源拡充の中心を求めている現在、ことにシヤウプ税制を希望しておるような次第でありまして、今のところ旧法でするということは、実はまつたく考えておりません。
  59. 門司亮

    門司委員 これだけでやめます。旧法でやるということは考えておらないというお話でございますが、もう一つ私は非常にこの中で疑問がありますので、お聞きいたしておきたいと思いますことは、固定資産税の中の償却資産に対する税金であります。まだはつきりこの課税額をつかむことができませんので困つておいでになるようでありますが、政府の出しました資料によりましても、大体一兆三千億というような数字が出て参つております。そうしてこれに、今度は一・七になりましたが、この税率をかけて参りましても、大体二百七十七億くらいの税金はとられることになります。それにさらに八〇%の課税率をとつてみましても、百八十億内外の税金はとらなければならない。そういたしますと、これの所要額は本年度は九十三億でありまして、そこに非常に大きな開きが出て参ります。そこでこれは固定資産税の問題——私はまだよく質問しておりませんが、概括的にもこの前の議会で私どもが聞きました場合には、過年度收入として来年度にこれを徴收するといつたような当局の御説明であつたように聞いておりますが、税を取立てられて行政の運用に当られますあなた方といたしましては、一体そういうことができるかどうかということであります。所要額以上の財源がここにはつきりしておる。財源が——これはむりにこしらえた財源でありますが、はつきりしておつて、それを来年度に繰越すということは、一体そういうことが技術的にあるいは道徳的にできるかどうかということであります。
  60. 西田徳長

    ○西田参考人 それは地方の事情によりまして、決算残の帳じりの問題に帰着するのではないかと思うのであります。従いまして今お話の道徳的というよりは、むしろ帳じりの技術的な問題ではないだろうかと考えまして、別にわれわれとしましては、どちらもよしあしということは実は考えておりません。
  61. 大矢省三

    ○大矢委員 私は行政方面に特に関係のある西田参考人にお聞きしたいと思います。  今度の税法は、御承知通り府県税と、それから市町村税の二つになつておりまして、今までの附加税を廃した。従来の附加税でありますと、これは国の税務署その他国が必要でそれに賦課したもので、市町村理事者とかそういうものは、国が必要だから、あるいは直接自分のところでとらないということで、別に納税攻勢といいますか、税金攻勢には直接出なかつた。ところが今度のこの税制の改革によりますと、非常な地方住民に対して増税になる。全体はいろいろ論議がありますが、そこで徴税する方も、これは特に小さな農村、町村応対する場合でありますが、そういう場合の実情がわれわれによくわかる。今度増税になつて徴收が非常に困難なときには、市町村民が役場に向つて、町村に向つて、あるいは理事者に向つて非常に風当りが強くなる。いわゆる税金攻勢ということであります。そういう場合にせつかくこの平和な村が、この増税のためにあるいは徴税のために差押えをするとか、あるいはほんとう実情が困難なことがわかつておりつつも、平衡交付金をもらう立場からして、相当の成績を上げなければならぬというのでむりをする。その結果市町村会議員を通じたりあるいは直接役場に向つて陳情に行くとか、いろいろな徴税行政に対して正面衝突が起る。私はこれが幸いにして杞憂であればけつこうでありますが、相当にそういう摩擦が起る可能性が多いと思う。そういう心配がないかどうか。やはり従来通りかわりがないか。しかし今度は全然市町村税ということが明らかになつて、しかも相当に増額されておるのだから、その交渉なり折衝というものには相当に町村長が困つて、遂には町村長になり手がないだろうというところまでわれわれは聞いておる。そういう心配がないというのならばけつこうです。そのような可能性があるかどうか。あなたは非常に経験があり、よく事情を知つておられると思うから聞いておきたいと思います。
  62. 西田徳長

    ○西田参考人 これは終戰後の地方自治団体の行政の内容が、年とともにふえたということを思い出していただくと簡單にわかると思いますが、最初今お話のような御心配の点を町村に責任を持たせてやらせてみると、やはり耐えられるもので、中には紛擾の原因とか、あるいは町村の理事者と役場吏員あるいは町村住民との争い、リコールの問題が多少ありましても、全体としては高い水準に順次に上つておるようであります。ただいまこの附加税の場合と、独立された場合、この体系の問題から申し上げますならば、私はいつまでも現在の町村を不完全自治体に置くべきではなくて、むしろ完全自治体として、町村住民の自覚的意識を高めるようにやる。むしろある程度以上のものを與えて、極力それに追いつかせるということこそ、現在の日本の再発足には緊急必要なものと考えておるのであります。御心配の点はまことにごもつともでありますけれども、われわれの行政吏員としての今までの体験からいいまして、さほど御心配には及びますまいと考えております。
  63. 大矢省三

    ○大矢委員 もう一点だけ……。最近地方で非常な強制執行が行われて、嚴重な方針がとられている。御承知の今度の農地改革によつて、土地は持つておるがそれが売られない。従つてこれを差押えしても売買が禁止されておる。しかも差押えられたものがどこへも移るわけには行かぬ。どこで競売したところでだれが小作するかわからぬ。これは大都市、大事業においては、ほかの土地、建物、その他いろいろありましようけれども、特に農村地帶の多い府県においては、そういう滯納の処分に対して、土地を押えても売買ができぬということを法律に規定してあるが、押えて、しかも小作はだれがやるのか、取上げてどうするのかわからないようなものがある。そういう実際の困難まで起きやしないか、もしそれを農民が知つたら土地でもとつてもらいたい、米価は押えつけられ、一切の税金だけは高くなつている。それじややりきれぬ。ことに今まで納税していない人で、新たにかかる人が相当ふえて来る。金の多寡は別として、今までなかつた税金をとられるということになると、非常な重圧を感ずる。しかもそれまた滯納もできましようし、そういう処分のことについて、土地に対するそういうような差押え、それの処理、これはむしろ大蔵省に尋ねるべきことだと思うが、実際は県として納めなければならぬ、とつておくわけには行かぬのでそういう処分も行われて来ると思いますが、そういう実情自治体員としてどうするか、何か案でも持つておるのでありますか、はなはだ愚問かもしれませんが……。
  64. 立花敏男

    ○立花委員 平衡交付金の問題で非常に不安に思つておる。実際の地方自治団体の標準行政費を十分埋め合すだけの平衡交付金が出るかどうかが、やはり非常に御心配のようでございますが、この問題に関連いたしまして、地方の今後の標準行政費の見通しが、新潟県におきましてはどういう見通しがございましようか、御説明願います。
  65. 西田徳長

    ○西田参考人 平衡交付金の問題でありますが、ただいま新潟県の場合をお尋ねありましたが、正直にいいまして見込みがつきません。それはなぜかといいますと、平衡交付金の算定の基準になりますところの行政標準費用の單価の問題であります。これは現在各府県一万一千町村の資料を集めて地財で非常に努めてやつておりまして、その結果がいかに出て来るかによつて、各地方団体の財源の目途がつくのではないかと思うのですが、ただ概括論から言いますならば、現在千五十二億平衡交付金がありますが、その中には四百億の国庫補助が肩がわりに入り、それからそのうちでの配付税の四百九十五億が入つて、結局純増の配付税が九十五億かと考えますが、それだけであります。そうなりますと、この平衡交付金の増というものは、きわめて純増が少いために、はたして今度の行政標準費用の算出によつて、一応各地方団体が財政的に安定を保つかどうかということは、私は不可能ではないか、あるいはそうした費用が三千億あるいは五千億というような数字が出ないとも限らぬ。その場合に本年度の国家予算によりまして、千五十二億ときめられてしまつたとすれば、各地方団体の最低生活費に相応する標準経費というものは、きわめて微々たるもので一向改善されない。特に財源を多く失いますところの北国方面、つまり産業形体のごく單純な府県の窮乏は、これは相当考えてやらなければならぬ問題でありまして、本県といたしましては、そういうような事例を予想した一切の追加予算を、実は差控える措置を講じてやつております。
  66. 立花敏男

    ○立花委員 追加予算をいろいろな関係から差控えるようになることはやむを得ないと思いますが、しかし追加予算を差控えて済ませる問題ならばいいのでございますが、済ませない問題が多々起つて来るんじやないかと思うのでございます。その辺のお見通しはどうなのですか。
  67. 西田徳長

    ○西田参考人 一応考えたいと思いますのは、二十四年度の財政予算のわくの範囲内にとどめるならば、平衡交付金の現状から行きまして、大体間に合いはせぬかということで、各府県おそらく各町村ともそうした目途で膨脹させたところで、大体二、三割のふえ方の程度が現在われわれの中の常識論に相なつております。
  68. 立花敏男

    ○立花委員 その二、三割ふえましても、総額になりますと相当額になるのでありますが、これの見通しはどういうふうな見通しですか、歳入は……。
  69. 西田徳長

    ○西田参考人 歳入の見通しは、目下のところはすべて、から財源で上つております。それは平衡交付金の名であげておりまして、地方税法案が通過するとともにそれを補正がえするということで、実は各県とも臨時県会なり臨時町村会というものを大体八月の初めに予定して待機の姿勢がとられております。
  70. 立花敏男

    ○立花委員 二、三日前のこの委員会の席上で、大蔵大臣は預金部資金が余つてつておるのだ、地方に貸したいが、地方は借りに来ないのだということを言つておられますが、そういうことを地方は御存じなのでありましようか。また御存じでありますとすれば、なぜ預金部資金がだぶついておるのにお借りにならないのか、お聞きしておきたいと思います。
  71. 西田徳長

    ○西田参考人 借りたいのはやまやまであります。ところが御承知のように年九分四厘というきわめて高利息です。それで今新潟県では約二億の金を借りておりますが、月額百五十万円の利息を拂つております。これはたまたま地方庁側の言い分でありますが、政府措置の遅延のために、とるべき道が開けなかつたために、その利子だけ負担せねばならぬ。このことが地方としては非常にきつい。従いまして現在税金が入らぬということの主たる理由をもちまして、一応、対輿論的にはあらゆる大きな事業が停止するところの一つ理由建になつておりますので、むしろそういう押え方をいたしまして、財政の健全化をはかり、そしてその不要経費を省かんとするものと、それからもう一つは、県で一番大きな問題は、災害復旧工事の支拂金の問題であります。これをある程度停止するかしないかによつて、かなり大きな金額が浮くのであります。本県の場合は大体三億くらいの支拂いを次々に延ばしてやりくり算段をしておる。各県とも先ほど意見陳述の際に申し上げました通り、支拂い計画の三分の一程度つまり四月から七月までの間の予定額の三分の一は切つて落しておるというのが実態、だろうと思います。
  72. 立花敏男

    ○立花委員 借入金の利子の問題はこの委員会でもたびたび問題になつておるのでありまして、何とかするという基本的な方針は大体きまつておるような様子なのでございますが、公共団体といたされまして、この問題を政府にもちろん折衝されたことと思うのでありますが、どの程度まで話が進んでおるか、お聞かせ願いたいと思います。
  73. 西田徳長

    ○西田参考人 預金部利息はなぜ九分四厘でなければならないかということに地方庁側として疑問を持つのです。なぜならば、預金利子はたしか三厘に満たないかと思います。これは預金部に言わせると、零細資金を集めるためにコスト高になると称せられておりますが、実態はそうではありません。それは国債の引受け、あるいはきわめて低利な政府資金の運用をやつているがために、預金部会計の赤字という傾向を示すのでありまして、地方側に対する何らの責任はない。この点が大蔵大臣意見と地方側の意見とが食い違つているわけです。われわれとしては、これは一日も早く改正していただきたいと考えております。
  74. 立花敏男

    ○立花委員 さいぜん御答弁の中に、災害復旧工事は支拂い金の三億なり何なりを繰延べてつじつまを合せているとありましたが、これは悪く言いますと、県が土木請負業者を食つていることになるのでございます。しかもそうした金のある間はそういうあれもとれるのでございますが、大蔵大臣が二、三日前のこの委員会で申されましたのは、災害全額国庫負担を来年度からはやらない、閣議決定でそうなつておるということを言つておるのでありますが、この点は地方にとりましては、財政上の重大問題だと思うのでございます。この重大問題にそういう狂いが参りますと、来年度の予算あるいは今年度の予算にも当然響いて参ると思いますが、そういう点で地方団体として、全額国庫負担法の廃止がなされた場合に、どういうふうに対処なさるおつもりでございますか、お伺いしたいと思います。
  75. 西田徳長

    ○西田参考人 災害復旧工事の問題は、本年度から單行法令によりまして、全額国庫負担の建前になるのであります。ところが問題は過年度分、つまり前々年度、前年度で、これは地方費で立てかえているもの、あるいは請負業者が立てかえてやつておるものがある。なぜそういう現象が出たかと申しますと、アイオン台風で堤防に大きな口が明く。その場合に、国から来る工事というもので、その年度に済まし得るものは総額のわずか〇・〇七%の復旧率にすぎない。従いまして第一線を担当しておるところの町村、県として自分の立てかえあるいは業者の支拂いをあとに延ばすという契約のもとに施行されている場合がありますが、これが全国各地方団体の財政重圧の原因になつておる一つであります。これが今度の全額国庫負担によつて、過年度の分が入るか入らぬかという問題のはつきりした返事をわれわれとしてはまだ聞いておらぬ。これはきわめてデリケートな問題になつており、今後の問題だろうと思います。
  76. 立花敏男

    ○立花委員 新潟県といたされましては、米の問題が大分大きな問題だろうと思うのでございますが、米価の値上げの問題につきまして、県としては米価の値上げを要求される御意思はないのかどうか。御承知のように、固定資産税は大企業にかかります。固定資産税は統制価格その他の問題で価格の面に転嫁されることができることになつておりますが、農民にかかります固定資産税は転嫁の方法がありませんので、今でも農村経済は多分に赤字が多いと思うのでございますが、この場合に重大な負担になつて参ります固定資産税の問題あるいは電気税の問題、こういうものをカバーいたしますためには、どういたしましても米価の値上げが必至であろうと思うのでございますが、県といたされましては、米価の値上げに対しましてどういう態度をおとりになりますか。
  77. 西田徳長

    ○西田参考人 その問題について、深い研究をしておりませんので、回答がむずかしいのでありますが、大体新潟県としてはこれはむしろ上げてほしいという態度であります。しかしあまり強くは考えておりません。ただ問題になるのは、かつて自由経済時代に新潟県に工場ができましたのは、食糧が安いという立地條件からですが、今はその立地條件がなくなつており、こうした意味の統制を今でも残された問題としてわれわれは問題にしておるのであります。
  78. 立花敏男

    ○立花委員 この問題は非常に重大な問題だと思います。と申しますのは、税金が九月以降にだぶつて参りましてもとれるというお見通しでございます。準備も十分完了しているというお話でございましたが、しかし実際に納める方になつて参りますと、かかつて参りました税金を出すところがありませんでしたならば、拂えないのが当然であります。従つてこれは出す財源の問題を県としてお考えにならないと、今言いました米価の引上げによつて農家の收入がふえる。そういたしまして初めて税金を拂う余地が出て参ります。いわゆる担税力が出て参りますのでこの点をあわせてお考えにならないと、いくら事務上の準備ができ、あるいは徴税の準備ができましても、あるいは不可能になるのではないかと思うのでございます。また結局ここから県の財政と申しますものの帳面は合いましても、農民からの徴税が思うように行かないという事態が起ると思うのでございますが、この点どういうふうなお考えでございましようか、簡單に承りたい。
  79. 西田徳長

    ○西田参考人 先ほどの意見陳述は、かりに米価を上げましても、單作、多毛作地帶におきます收入が異なるので、その点の負担均衡化を申し上げたのでありまして、実は今お尋ねの点はちよつと研究させていただきたいと思います。
  80. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これをもつて昨日、本日にわたる参考人の方々の陳述は全部終了いたしたことといたします。まことにありがとうございました。  それではこれより市町村民税目的税及び都等の特例に関する質疑を続行いたします。門司亮君。
  81. 門司亮

    門司委員 私この各條文について一応お聞しておきたいと思うのでありまするが、この前の定義いろいろ大臣にも聞いておりますので、主として條文についての御答弁を願いたいというふうに考えておるのであります。  第一にお聞きしておきたいと思いますることは、法の第二百九十四條に市町村内に居住する個人ということに相なつておるのであります。それで大体市町村内に居住いたしておりまして、前年度に收益のあつた者ということになるかと考えておるのでありまするが、問題になりますのは、この前年度所得者の問題であります。最初にお聞きしておきたいと思いますことは農村におけるこれらの関係であります。農村では御存じのように世帶主が大体所得税を納めておりますし、その他の、自家労力を主体といたしておりまする店舗その他におきましても、やはり所得税というものは、大体世帶主が納めておることには間違いはないと思います。しかしその経営の規模によりましては、当然家族は手伝いをしなければならないということに相なつて参るのであります。そうなつた場合に一体これをどういうふうに取扱うかということであります。所得税は納めておりませんが、稼働いたしておりますので、一方においてこれが收益がなかつたとは実は言えないのであります。それらの取扱いはどういうふうにされるおつもりであるか。
  82. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 世帶の中の扶養家族と申しますか、そういうようなもので、事実世帶主と一緒に家業に従事をいたしておりまして、相当の收入があります場合におきまして、今お話のように、所得税といたしましては、世帶主の所得として税がかかつて来ている場合が多いであろうと思うのであります。もしも独立にその個人に対しまして所得税がかかつて参りました場合におきましては、ここに言われますように、前年の所得があつた所得税納税者でございますから、これは当然に納税義務者ということに相なると思いまするが、そうでない場合で、納税者所得計算されたときのもので、事実所得があつたという場合におきましては、やはり一応所得税法の市町村民税の対象になる、かように考えております。
  83. 門司亮

    門司委員 そのことを具体的に申し上げますると、農村ではおやじさんが働いておる、子供がそこに手伝うというか働いておりまするが、その子供には所得税をかける算定の基礎はなるなると思うのです。これにはどういうふうなかけ方をされるか。
  84. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 所得税を納めていないで事実所得がありましたものに対して、どういうふうにこれを捕捉して行くかということは実際むずかしい問題であろうと思います。しかしこれはやはりそれぞれの市町村実情に即しまするように、各市町村におきまして、なるべく適切な処置が行われるように指導いたしたいと考えております。
  85. 門司亮

    門司委員 ひとつ明確にしておいてもらいたいと思いますことは、市町村で適当にやると言いますが、さつき申しましたように、農家の人、あるいは店舗等におきましては、同じ所で同じように働いておりますから、收入を別にしようといつても別にしようがないのであります。ただ働くというからには收入がないとは言えないのでありまして、そういう面で非常にめんどうな問題を起すのではないかと思う。従いまして前年度所得税を納めた者にかけるということになつておればそれで問題は片づくのであります。農村では世帶主だけが拂つているというので、あとは、家族に收入があつて、前年度所得税を拂つたのであればそれでけつこうと思いますが、もう少しはつきりしておいてもらいたい。
  86. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 所得税を前年度納めた者だけに限るということにすれば、お話のようにはつきりいたしますけれども均等割等の性質から考えまして、前年度所得のございました者に対しては、やはり個人主義的な立法の建前をとるように改めた次第でもございまするので、前年度事実所得があつたかどうかというところを押えて参りたい。その運用については、それぞれの市町村において実情に即した処置をするようにさせたいと考えております。
  87. 門司亮

    門司委員 そういうことだから実際弱ると思うのです。均等割を一体どういうふうにかけるかということは実際問題になるのです。そこで、所得がおやじさん一本で届けられる、これは農村においても普通の店舗においても当然そういうことになりますが、そうした場合に村でかつてにいいようにしろということになつておりますと、これはなかなかそう簡單に行かぬと思う。そこで大体これの所得——地方所得税というようなことを言われておりますので、これを地方所得税ということに解釈して参りますと、農村においてはおやじさんだけがそういう形に当てはまつて参りますので、やはりそれだけに均等割所得割もかかつて来るということが正しい。さつきからのお話の、地方所得税と解釈してもいいのだということであれば、それが妥当だというふうに私は考えるのでありますが、その点はいかがですか。
  88. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 御見解は一つの御意見と存じますが、それぞれの市町村市町村民税でございますから、今の事実所得があるかないかということを押えました場合におきましても、当該の市町村におきましてそれぞれ実情に即するような自主的な課税をすることは可能であり、そういうふうに自治のためには努力してもらいたいと考えておる次第であります。
  89. 門司亮

    門司委員 なお申し上げておきますが、これはただ單に事務的にお考えになつておられるようでありますが、実は問題になるのです。といいますのは、男の場合はそんなに私はむりはしていないと思いますが、成年に達した女子の場合、これは娘でありますから嫁に行くまで家に置いておかないわけにも参りません。実際の商業を営みます場合にも必要の人手ではない。農業経営をいたします場合にも耕作に対しまする必ずしも所要なる労力ではない。しかし嫁に行くまではやはり家に置いておかなければならない。家におれば何か仕事をするにきまつておるのであつて、それらの問題が必ず起つて来る。これをどう処置するかということについて明確にしてもらいたい。前年度所得税を納めた者だけでいいとはつきりしておきませんと、具体的なそういう事実に対しては村で必ず論議になると思う。
  90. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 それぞれのケースにつきまして、結局におきましては各市町村で自主的に決定することになると思います。たとえば嫁入り前の娘さんが家の中で働いて、ある程度の收益を上げたというようなものでございますならば、これを所得のあるというゆえをもつてただちに課税の対象にするという必要はないのではないかと考えております。
  91. 門司亮

    門司委員 それではこういうように解釈してよろしゆうございますか。前年度所得税を納めなかつた。あるいは所得がなかつたという場合は——私が先ほど申しました所得がないというのはごく常識的にものを考えて、働いておるから大小はないという解釈が一応成立ちますので、むしろ個人所得として特別のものはなかつたはずだと思います。それに全部主人のものに合算されておりますので、従つてそれらのものに対しては、市町村民税はかけないというように解釈してさしつかえございませんか。
  92. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 所得のあるかないか、またそういうことの認定でございますが、これは御指摘のようにいろいろな場合によりまして、それぞれ多少の微妙な差異があるであろうと思いますので、一概に一方の面のみを見ましてああなる、こうなるということはちよつとにわかに断定することは困難ではないかと思います。しかし市町村民税性格から考えまして、それぞれの市町村において適切なる処置が行い得ますように、指導をして行くべきであろうというふうに考えております。
  93. 門司亮

    門司委員 どうもはつきりしないのでありますが、これも押し問答しておりますと長くかかりますので、自治庁意見としましては、できるだけそういうトラブルを起さないようにひとつ御指示を願いたいと考えております。こういう点はもう少し次官なり大臣からはつきりきめてもらつておかないと、この條文だけでは相当疑義がありますのでお聞きをしたのであります。従つて、できまするならば、政令か何かでこういうものに対する一つの明確な指示を與えておいてもらいたい。そういたしませんと、人口一万以上もあります市町村におきましては、まちまちな税金をとることになつて参りまして、せつかく新しい税法ができても、割合効果か薄いようなことになりはしないかと考えますので、その点をぜひ考慮していただきたいということを一応申し上げておきたいと思うのであります。  それから、その次には同じ條の中の三は「市町村内に事務所又は事業所を有する法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定のあるもの」となつておりますが、私は、村なら村の農業協同組合の支所というようなものは方々に必ずあると思います。また生活協同組合におきましても、同一市町村内におきましてそれぞれ支所を持つていると考える。それから中小企業等協同組合法による中小企業協同組合には支所、営業所が非常に多いわけであります。しかもこれらのものは従来いずれも特別法人として取扱われ、さらに性格といたしましては、政府が特別の法令を設けてこれを保護しておる。しかるに、非課税の項目でありまする二百九十六條を見て参りますと、これらのものは非課税の対象になつていないのであります。従つてそういうものはこの二百九十四條の三号の中に含まれておるかどうか承りたい
  94. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の農業協同組合でございますが、これは御指摘のように二百九十六條の例示の中に列記いたしてはおりませんけれども、それぞれの具体的なケースにつきまして、市町村として自主的に考えるべき問題であろうと存じます。大体この非課税の範囲として掲げておりますのは、公共的な性格の団体でございますとか、あるいは労働組合とか、そういうような事業をしない性格のもののみを非課税として列記しておりますので、農業協同組合のようなもので公共的と申しますか、そのような性格のないものは一応ここには列記しなかつたわけであります。しかしそういうものに対して課税をするかしないかということについては、一般の原則から考えまして、一律にこれを非課税にするところまで持つて行く必要はないのではないかというふうに考えた次第であります。従つてこの二百九十四條の三号の事務所なり事業所という中に入つて来るわけであります。
  95. 門司亮

    門司委員 もしこの二百九十四條の三号にこれが含まれておるということになつて参りますと、御承知のように、農業協同組合は特別法人であつて、しかもその利益の範囲は制限を受けております。それから生活協同組合は、これは購買の範囲に一応制限を受けております。また中小企業等協同組合に対しましても、やはり中小企業等の保護、育成のために、特別に保護規定を政府が設けたのであります。これらの必要があつて特別の法人として政府が保護、育成すべきものであるとして認めておりまする団体は、実質におきましては非常にたくさんの支所、たくさんの出張所を持たなければならない。中小企業協同組合のごときは、おそらく一つの協同組合の中に十三も十四も、あるいは二十を越えるようなものが地域的に私は必ずあると考えているのであります。これらのものに対して一々二千四百円ずつかかつて来るということになると、この税金は非常に大きなものになつて来る。これはあとで税率のところで聞くつもりでおりましたが、ついでにここで聞いておきます。同じように税金を拂わなければならぬということになつて参りますと、非常に大きな不公平ができ上つてくるのであります。従つてこの点は事業所を有するというようなことでなく、実際問題といたしましては、主たる事務所を設けているもの、たとえば市町村内の生活協同組合に対しましては、平たく言えば、本部とでも、申しまするか、あるいは主たる事務所くらいにしておかないと、全部にかけてくるということになると、せつかく法律で設けた保護規定が逆な効果を来すようになると考えますが、この点の見方は一体どうであるか向いたい。
  96. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは三百十二條の第四号で、市町村内に二以上の事務所または事業所を有する法人につきましては、軽減が可能でありますようにも規定をいたしております。従つて、ただいま御指摘のように、農業協同組合につきましては、これを軽減して行くという道が開いてあるわけであります。
  97. 門司亮

    門司委員 先ほども申し上げましたように、税率のところで申し上げればよい問題でありますが、ここで申し上げたいと思います。軽減ができるということになつておりまするが、法律で一回定めてしまいますと、なかなかそうは参らぬのであります。ことに中小企業等の協同組合におきましては、御存じのように、一つ法人組織にはなつておりまするが、おそらくおのおのの店舗がこれの事務所あるいは作業所に当てられていると考えるのであります。従つてこれらは非常に大きな数字になつて参りまして、作業所としての均等割がかけられ、さらにそこに住んでおります主人に対しては均等割所得割がかけられるということで、実際上は二重の課税になつて来る。法人の事業所としての税金を納め、さらに自分はそこに住んでいることのために均等割所得割がかけられるということで、二重の課税になるということが考えられるのでありますが、これに対してはどういう考えを持つておりますか。
  98. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 そういう見地から申しますれば、法人に対してはむしろ均等割をかけない方がよいではないかということになると思うのでございますが、昨日も申し上げましたように、別個の理由から、やはり法人に対しても均等割をかけた方がよいのではないかということで、シヤウプ勧告を訂正したような案を考えておる次第でございます。ただ農業協同組合の性格等から考えて、それは不適当ではないかという御議論と存じますが、私どもといたしましては、農業協同組合もやはり市町村の中にあつて社会的な活動をし、一定のサービスの利益を受けるわけでございますから、同じような建前にいたした次第であります。
  99. 門司亮

    門司委員 どうも鈴木君の答弁は納得が行かぬのであります。私は、何も法人にかけぬことがよいとは申し上げておりません。法人にかけるにいたしましても、そういう特別の保護をするように立法しておりますものにむりな税金をかけることはどうかと考えるだけでありまして、法人にかけないということは毛頭議論をいたしておりません。あまり挑戰的な御答弁をいたしますれば、私の方もそのつもりで、質問をいたしますから、さよう御承知を願います。  今、鈴木君からそういうお話がありましたので、少し時間が長くなりましてほかの方には御迷惑だと思いますが、ひとつ大臣に御答弁願つたことをむし返してお尋ねを申し上げますから、御答弁を願いたいと思います。  大体住民税性格から申し上げたいと思います。住民税はどういう性格を持つているものであるか、はつきりした御答弁を願います。
  100. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 前会来申しましたように、市町村民税は従来の資産割なり、所得割なりあるいは均等割というような考え方を改めまして、所得割を中心とし、これに負担分任の意味を加味した所得税的な性格のものといたした次第であります。
  101. 門司亮

    門司委員 一昨日の大臣答弁には、負担を公平にするという建前の上に、徴税の形の上においては非常に所得を中心としたようなかけ方をしたけれども、その他の均等割で、所得の少いものも多いものも全部八百円、六百円、四百円というに均等割をかけるのであると大臣はつきり御答弁になつておる。公課的の性質を持ち、均等にこれを負担すべきであるという理論の根拠は、少くとも、私は地方公共団体における共同の生活を営む上においてのお互いの義務的の観念が現われておるのではないか。そうなつて来ますと、なぜ一体法人におかけにならないか。法人は地方公共団体の中で、ある意味におきましては、非常に有数な地所を大きく占有して商売をしておることに間違いはない。また法人一つの大きな会社を設立いたしますことのために、その地方の農民の土地を取上げておることは間違いない。そして彼らが農民諸君の生産といいますか、生活を圧迫することに間違いはない。そのことのために道路の必要もございましようし、橋梁の必要もございましよう。その工場の利潤を生むことのために多くの使用人が使われまする場合には、それに匹敵いたしますところの衛生の設備もしなければならない。また学校の増築も行わなければならない。これらのものは法人といえども地方公共団体に非常に大きなめんどうをかけたり、あるいは財政的の出費をかけたり、あるいはその他の保護を受けておるということは事実でございます。もしこの市町村民税性格が公課的の性質を持つものとするならば、一体なぜ法人にもはつきりした税金をおかけにならないのであるか。法人は一億の資本の大会社も二千四百円、五万円の法人も二千四百円、一体これで均等だと言えるかどうかということであります。その点もう少しはつきり言つてもらいたい。
  102. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 市町村民につきましては、すでに申し上げたように、均等割に関しましては、負担分任の考えと合せて、応益という点を加味しておるわけであります。所得割につきましては、所得税なり、法人税なりの軽減の方針が、法人から個人所得が移りました際に、そこにおいて課することを大体の建前として改正をいたしておりますので、そういうような性質にも沿い、かつはシヤウプ勧告の趣旨をそのまま取入れまして、法人に対しては所得割をかけないようにしたわけであります。
  103. 門司亮

    門司委員 私は一向にわからない。法人所得割をかけない理由について私は説明を聞いておるわけではありません。私は性格を聞いておるのであります。法人性格をもう少しはつきりしてもらいたい。  さらに住民税に対する性格であります。私は何度も申しますように、同じように地方公共団体に迷惑をかけておるという点からいえば、個人の迷惑よりも法人の迷惑の方が非常に大きいと思う。法人には二千四百円ばかりかけておりますから、あるいは二千四百円かけたとあなた方はおつしやるかもしれませんが、この二千四百円というものは、一億の資本を持つ大会社も二千四百円、五万円の法人にも二千四百円というのは負担の能力の関係から比較して参りますと、大きな開きを持つております。こういう不均衡な不統一な税金がかけられておつて、これで一体法人市町村民税をかけておるということが言えるかどうかということであります。われわれの考えから参りますならば、今度のこの市町村民税性格から考えて参りますと実に不都合である。個人が地方の公共団体に迷惑をかけるというと語弊がありますが、やつかいになつておる程度と、法人が地方公共団体に庇護を受けておる程度というものは非常に大きな開きがある。ある場合におきましては、戰争中の実例でありますが、横浜において一般の人人の税金でこしらえた道路を、一つの会社が事業を運営することのために專用して、一般の交通人を通さないというようなことまで会社当局はやつておるのであります。これは一定の個人が自分の利害関係のためにこの道路を使いたいと願い出ても、おそらく許可にならないと思う。それだけ地方の公共団体というものは、やはり大きな法人に対しては便宜も與え、また保護育成をしておるのであります。それに対してこの住民税の性質が先ほどから申されておりますような性質を打つておるとするならば、なぜこれにもう少しはつきりした税金をおかけにならなかつたか。
  104. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 応益的な見地から法人に対しても所得割をかけるべきであるという御意見は十分拜聽いたしましたが、政府原案におきましては、もちろん応益的な見地から附加価値税でございますとか、あるいは固定資産税でございますとか、関係地方公共団体との間を考えまして規定を設けております。ただ市町村民税につきましては、均等割というところにおいて応益的なつながりを設けた次第でございます。
  105. 門司亮

    門司委員 あとは固定資産の條文のところで、これ以上の質問をいたしたいと思います。逐條的に申し上げますが、次に申し上げたいと思いますことは、二百九十五條でありますが、二百九十五條の個人の非課税の範囲であります。現実の問題として考えてもらわなければならないことは、現在の失業者の場合であります。ここに書いてあります不具者であるとかあるいは寡婦であるとかいうものはもとよりその通りでありますが、実際上の問題といたしまして、商業を営みあるいは多少たりとも資産その他のある人は考えられないことは申すまでもありませんが、失業者に対して前年度所得税の一割八分を徴收し、さらに均頭割をかけて参りますならば、これは納税負担力を持つていないことはあたりまえだと考えます。これらが非課税の対象になつておりませんが、それはどういうわけであるか。
  106. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 失業者等に対する問題でございますが、これはそれぞれの実情に応じて、納期の延長でありますとか、あるいは減免措置等がそれぞれできますように規定を設けておる次第でございます。
  107. 門司亮

    門司委員 減免の規定などよく存じておりますが、しかし実際上の問題としてこれらのものはやはり非課税であるということをこの機会にはつきりすべきでなかつたかということであります。  それから次に聞いておきたいと思いますことは、二百九十六條は聞きましたので、次の二百九十八條でありますが、この中のいわゆる市町村民税にかかる徴税吏員の質問検査権、この質問検査権でありますが、この中の2のところに「前項の場合においては、当該徴税吏員は、その身分を証明する証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。」と書いてあります。これは一応これで何事もないように見えますが、警察官の職務執行に関する法律の中に、これと同じような法律の條文があるのであります。この場合に警察官が職務執行をいたします場合に、警察官であるという身分を証明して質問をいたします場合においては、先にこれを呈示しなければならない。これは国会において修正をしたから、大体記憶いたしておりますが、これは税務当局だけに限つて、請求のあつたときにこれを見せればよいのだというように書かれておりますが、これはそれらの法律比較して非常な不均衡だと思う。もちろん徴税吏でありますならば、先にこれを呈示して、納得の行つた上でこれを調査するというようにしておきませんと、悪い意味で申し上げますならば、ここににせの徴税吏その他ができて来る余地があるのではないかと考えますが、この点はどうお考えになりますか。
  108. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ごもつともなお尋ねでございますが、この第二項は最小限度の條件として、請求があつたときには必ず示さなければならぬという義務づけをいたしたわけでございます。お話のように実際の運用の問題といたしましては、徴税吏員が出かけて参りました場合にはあらかじめこれを呈示いたしまして、納得を得た上で処理するということが、実際の運用方針としては適当であろうと考えます。
  109. 門司亮

    門司委員 私はこれは特にひとつ運用の面で何らかの指示をしておいてもらいたい。ということは、これもわれわれは削除したいと考えておる点でありますが、今度の税法には国税犯則の取締法をくつつけておりますので、国税犯則取締法から参りますと、徴税吏は、差押えその他をいたします場合には、従来のように司法警察官を伴わないでもよいということになつている。そういう徴税吏自身が入つて錠前をはずして調査したり、あるいは封印を切つて調査することができるようになつている。その前に身分を呈示しませんと、そういうことをされては困る。やはりこれは事前に自分の身分を呈示して、安心と納得の行つた上でこういうことをやられる方が間違いが起らないと私ども考えております。これはやはり他の法令、似たような法律と歩調を合せる意味におきましても、法律の改正ができますならば即時にこれを改正してもらいたい。そうしてそういう形のもので国会を通してもらいたいと考えておるのであります。この点について改正される御意思があるかどうか伺いたい。
  110. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私どもといたしましては、ただいま仰せになりましたような趣旨を十分体しまして運用することによつてその実をあげたい、かように考えております。
  111. 門司亮

    門司委員 もう一つこの点で聞いておきたいと思いますことは、よく地方でこの点は問題になりますので聞いておきますが、これは昔のずつと以前の法律では、大体日の出から日沒というような規定になつてつて、差押え等はそれによつてでなければできなかつたのでありますが、これには時間が書いてないのですが、一体徴税吏はいつでもこれができるかどうか。
  112. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 お話のようにそういうような立法令もあると存じますが、多くこれは公衆の出入りをしますような所に入ります場合には、そういうような條件が警察官の入る場合等についてあると存じます。ただこの場合は、もともと個人の邸宅に入る場合でありますから、実際の運用といたしましては、御注意がありましたようにあらかじめこれを呈示して入るように運用をさせたいと存じますが、そういうふうにいたしまするならば、必ずしもその時間を法の上にまで明らかに書く必要はないのではないか。実際問題といたしましても徴税吏員はいずれも地方公務員でございますから、おのずから執務時間の制限もございますし、その範囲内でこの法規が行われることになると考えております。
  113. 門司亮

    門司委員 私は実はその点を心配するのです。執務時間なら執務時間、日の出なら日の出から日沒までというふうにきめられておれば安心できるのでありますが、これがいつでも適用できるということになつて来ますと、質のいい者であればよいのでありますが、中心には質の悪い者がいて、とんでもない時間に、おれはこういうものだという身分証明書を出して、いやがらせをするというような危險性が——今まではあまり考えていなかつたのでありますが、われわれは危惧するのであります。従つて、これには明確な服務規程というようなものをぜひはつきりさせておいてもらいたい。もしそれが法律で書けなければ、市町村の條例にこれを入れるように指示をしてもらつて、明確にしておいてもらいたいということを申し上げておきたいと思うのであります。  さらにその次に二百九十九條でありますが、二百九十九條の三に「前條の規定による徴税吏員の質問に対し答弁をしない者又は虚偽の答弁をした者」ということになつておりまして、これらの罰則規定は、実は非常に重い罰則規定がつけられております。いわゆる一年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処する、こういうことになつておる。これは新しい刑事訴訟法によりましても、御存じのように取調官の質問に対しては黙祕権が一応認められております。これは人権を尊重する意味において、こういう権利が認められておるのでありますが、この徴税吏に対して質問に答えなかつたからといつて、これにただちに一年以下の懲役であるとか、あるいは二十万円以下の罰金であるとかいうようなことが書かれているのでありますが、一体これは今の刑法との関連はどういうふうにお考えになつておりますか。
  114. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは大体国税徴收法、国税等の規定と同じような形の規定をいたしたものでございまして、これの運用は裁判所の裁判なり、あるいは検察官の手を煩わすだけでございますが、実際の運用におきましては、そういう刑法上の規定との調整をはかり、それに対してはもちろん特別的な規定ではございますけれども、その趣旨をくんだ運用にすべきであろう、こう考えております。
  115. 門司亮

    門司委員 何か非常に抽象的なお言葉で、私にははつきりわかりませんが、問題となりますのは、先ほどから申し上げておりますように、單に刑法上の問題というのではなくて、この問題は答弁をしなかつたということについては、私は限界が非常にむずかしいと実は考えておるのであります。それからさらにもう一つの問題は、従来なら、先ほど申し上げましたように、いろいろな場合において立会人あるいは証人等の証言ができるような規定になつてつたのでございますが、実際は今日は徴税吏は一人で行けて、そうして一人の人との話合いの場合に答弁があつたか、なかつたかということについての何らの証人の証言がないのでありまして、この点はもし悪用されるとなつて参りますと、非常に大きな問題でありますし、同時にまたこれを先にふりかざして、答弁をしなければ一年以下の懲役、二十万円以下の罰金に処するかと言つて、さあ言いなさいということになりますと、これも一つはかなり人権を蹂躙した問題になるということが言えるのであります。従つてこの点はもう少し私は明確にしておいてもらいたいと思うのでありますが、当局は一体どういうふうにお考えになつているか。  それからもう一つ、ついでに聞いておきますが、もちろん不当な者に対する罰則のあることは当然でありますが、しかし税金の場合におきましては、最後に更正決定ということになつて来ておりまして、本人の申出あるいは本人の示した書類等に間違いがある場合におきましては、これは当然更正決定をすることができることになつておる。そういたしますならば更正決定をするということになつて参りますと、ここでこういうふうに当然刑法で認められておりまする黙祕権までも否定して、何もむりなことをしなくてもいいのではないかというように私は考えられるが、この点のお考えは一体どうであるか。
  116. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この法の立案をいたしました建前といたしましては、国税の運用と同じようなことになると存じますが、ただこれの実際の発動は、地方の徴税吏員がこの事実を検察官の方に通告いたしまして、その結果発動することでございますし、地方の徴税吏員につきましては、それぞれ地方でありますだけに密接なる住民からの批判なり、その他の声があるはずでございますから、私は実際の運用におきましては、そう御心配になるような結果にならないのではないかというふうに考えております。
  117. 門司亮

    門司委員 罰則の点でもう一つ。これは私の多少考え違いかもしれませんが、お聞きしておきたいと思いますことは、先ほど鈴木さんは、いずれ裁判所その他の関係だとお言いになつておりますが、地方自治法の中には、明らかに市條例あるいは町村條例に違反した者は罰金あるいは体刑に処することができるというような実は條例になつていると私は承知しておる。それとこの法律との関連であります。従つて地方自治法の中にそれがはつきり明記いたしてあります以上は、條例でそういうものが規定されて参りますと、法律にも規定されて参つておりますので、必ずしも本人が不服があつて、あるいは行政訴訟を起せば別でありますが、起さなくても罰金はとられるのではないか、裁判所の指揮を仰いでも罰金はとられるのではないかというふうに考えておりますが、その点はどうなりますか。
  118. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は條例の規定によりまする罰則でありましても、また法律によりまする場合はもちろんのことでございますが、いずれも国の検察官あるいは国の裁判所の手によつて最終的な措置がとられるわけでございまして、そういう検察権の発動をいたしまする前提といたしまして、公務員が犯罪の事実を発見した場合においては、これに通告するという規定上の義務があるわけでございまするから、徴税吏員といたしましては、そういう通告をいたすわけでございまするが、これは徴税吏員の、はたして答弁をしないという事実に該当するかどうかということの認定の問題でありまするし、またそれを発見しました場合に、はなはだしい答えがあるというような特殊な場合以外は、おそらくは実際の問題としては、これを通告するということがないでございましようし、また検察当局の運用方針といたしましても、そういうようなものについては、特別の場合を除きまして、單なる答弁をしないという程度の、大した故意の認められないものにつきましてまだ行くようなことはないようになるのではないだろうか。そういうふうに、この税法の全体の建前といたしましても、運用せらるべきものであろうと考えておりまするし、関係当局に対しましても、そういうふうに運用につきましては要望して参りたい、かように考えておる次第であります。
  119. 門司亮

    門司委員 ここでずつと先の條文になつておりまするが、罰則のことにつきまして、ついでにお聞きいたしておきたいのでありまするが、納税者側に対する罰則が非常にたくさん書いてあります。滯納の処分を受けたときにどうだとか、いろいろ書いてありまするが、徴税吏の方の不当な干渉というようなものに対する罰則は一向ないようでありますが、これは一体どうなんでありますか。
  120. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は、やはり地方の公務員といたしまして、結局法令によつて公務に従事する者でございまするから、刑法上の公務員といたしましての涜職に関する各種の罪の規定等が動いて参りまするし、またこの税法案自体といたしましても、業務上知り得ました各納税者の祕密に属する事項等を漏洩いたした場合におきましての罪を規定いたしているような次第でございます。
  121. 門司亮

    門司委員 どうも実はその点はわれわれにははつきりしないのであります。何だか全部納税者側の罰則だけであります。たとえば「証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない」というだけでありまして、呈示しなくても、これは何らの罰則に触れていないのであります。呈示しなかつたらどうなるかというても、別にどうにもならない。罪にはちつともならない。また納税者は、うそを言つても、ものを言わなくても、体刑あるいは罰金を課せられるがここでは呈示を請求されて呈示しなくても、何ら罪に問われていないというようなことでありまするが、これは法の運営の上には、実質上の問題として大きな欠陷ではないか、というように考えておるのでありますが、この点に対してどういうお考えであるか、もう一度伺います。
  122. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この税法自体といたしましては、特にその点は規定いたしてございませんが、しかしながら、刑法の二十五章の涜職の罪その他それぞれの該当の規定につきましては、当然にこれが適用せられるわけでございまするし、また公務員につきましてのいわゆる服務規程がございまするが、府県の吏員にいたしましても、市町村の吏員にいたしましても、この服務紀律に違反をいたしました場合におきまする懲戒という措置もございます。こういうような法令に従わずして職務を執行した者に対しまする措置もございます。そういうようなものによりまして、全体としては官紀を振粛して行くこともできるのではないかと考えております。
  123. 門司亮

    門司委員 もう一つ最後に、この項で聞いておきますが、もし請求しても呈示しなかつたという場合、たとえばこの第二百九十八條に書いてありますような、直接いろいろ調査をしたりすることが必要な場合に、税務吏員がこれを呈示しなかつたという場合における納税者側としての処置は、一体どうすればよいのでありますか。
  124. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は、徴税吏員たる者は、法令なり條例なりに従つて行為をしなければならぬわけでございまして、ここに規定いたしてありまするような規定に違反をして職務を執行したという場合におきましては、やはり服務紀律違反ということになりまして、その事態のいかんによりまして、懲戒上の措置を受けることになると思います。
  125. 門司亮

    門司委員 それでは、もし納税者の方が呈示を請求いたしましても呈示をしなかつた場合には、それを拒否することができますか。
  126. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は刑法の百九十三條の涜職の罪との関係があると存じまするが、関係人が請求をした場合には、これを呈示しなければならないということが徴税吏員に対する法律上の義務でございます。これを呈示いたさずして職務の執行をいたしまするということは、違法なる職務の執行でございますから、従つて刑法百九十三條の運用の問題になつて来るのではないかと考えております。
  127. 門司亮

    門司委員 しかし今申し上げましたことは、やはり徹底するようにしてもらいませんと、これから来る弊害は必ず出て来るというように実は考えておるのであります。従つて、拒否することができぬのだというように、やはり納税者側にも一つの権限を與えておいてもらいたい。検査されてしまつて、あとで涜職の罪がどうのこうのと言いましても間に合わぬ。実際は訴訟してといつたつて、こういう問題で訴訟する人はなかなかありません。そういうふうに考えておりまするので、ひとつ十分御注意を願いたいと思います。  それからさらに課税の問題でありまするが、これについて一応お聞きしておきたいと思うのであります。先ほど来いろいろ申し上げておりまする、法人に課税しなかつた点その他については、一応省略いたしたいと思うのでありますが、ただもう一点よく聞いておきたいことは、源泉徴收関係でありまするが、実際上の徴税の面から見て参りますると、前年度所得税というようなことでなくして、やはり国税を納めました年度において、いわゆる收益のあつた年度においてこれを徴收するということの方が、納税もしよいのではないかというように考えるのでありますが、いろいろ議論はございましようが、これを前年度所得税というようにしたことについての御説明を願いたいと思います。
  128. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 その点はまことにごもつともな御質問でございまするが、当該年度所得を押えるということにいたしまするためには、やはりこの源泉において徴收するというような徴税方式とからみ合せて、これを考えることになりはせぬかと思うのでございます。そういうようなことにいたしますると、源泉徴收に伴いまするいろいろな税率調整の問題でございまするとか、関係市町村相互の間の税額の相殺の問題でございまするとか、いろいろの問題が起つて参りまするので、源泉徴收方式をとらなかつたわけでございますが、源泉徴收方式によらずして、市町村が独自にその年の所得税等の調査、調定と並行してやつて行くということになりますると、これまたなかなかめんどうでございまして、一方において固定資産税等の問題もございまして、一時にそういうことを両者やりますことは、なかなか徴税能力の問題としても困難ではないかというふうに考えまして、一応一番簡單に把握できまする前年度所得というものを押えることにいたしたのであります。この点につきましては、若干の御指摘のような問題がございまするが、実際問題としてそれを押えた方が徴税上簡便である、かように考えた次第であります。
  129. 門司亮

    門司委員 今御答弁もございましたが、実際はやはり担税力を持つておる当該年度の方が納めやすい。それから徴税も比較的容易ではないかということは、もう一つ申告の義務がありますし、従つて年度所得税の申告というよりも、当該年度の申告でありますならば、そうむずかしい問題は起つて来ない。ことに源泉徴收をされております者といたしましては、明確にすぐわかるわけでありまして、そうむずかしいことはいらぬ、こういうふうに実は考えるのであります。それと同時に、もう一つここでお聞きをしておきたいと思いますことは、前年度所得税の一割八分ということにいたされましたことのために、税全体の面において、本年度御存じのように五百七十五億の徴税ができるが、来年度になつて参りますと——平年度でこれを申し上げてもよいと思いますが、来年度になつて参りますならば、これが四百六十億ないし四百七十億しか徴税ができないということになつて参ると思うのであります。そこで各町村におきましては、ここにやはり百億の税の減收が当然起つて来る。こういうものは自治体の実際の運営上におきましても、来年度は一体この百億の穴埋めを何でするかということが、一応考えられなければならない。その面においては、私は技術上の問題も非常にめんどうな問題を起すのじやないかというように実は考えられるのであります。これが当該年度でありますならば、国税所得税がどんなに減額されて参りましても、予算を編成する上においては大して困難はないかと思いますが、前年度でありますことのために、そういう事態を繰返して行わなければならぬのじやないかと私は思います。来年の予算においてさらに所得税か減額されるというようなことを言つておりますが、もし所得税が減額されますと、さ来年はさらにまた減收をしますが、その穴埋めをどこかでまたとらなければならないというようなことで、住民税はだんだん下つて行きますが、一方の固定資産税か何かでどうしても穴埋めをしなければならないということが必ずできて来ると思う。従つてただ住民税だけの税率で済まないで、他の税種目に対しても税の変更をして行かなければならない問題が必ず起つて来ると思いますが、それに対してのお考えはどうですか。
  130. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいまの点はまつたく御指摘通りでございまして、市町村民税につきましての減收の分が、二十六年度以降におきましては、固定資産税につきまして、償却資産等の新たなる所得その他のことによりまする固定資産税徴收額がふえまするので、そういうようなもので大体つじつまが合うようにいたしたい、かように考えております。
  131. 門司亮

    門司委員 事務的には私はおそらくそういう答弁でいいと思いますが、実際的には、もし来年度固定資産税その他が現実の問題として、政府考えておりますように百億以上余分にとれれば、もうそれで穴埋めができるということになると思いますが、もしこれができないということになつて参りますと、税率を変更しなければならなくなつて来る。そうなつて参りますと毎年地方税税率というものが法律で改正されるような、実にやつかいなものができて来るというようにわれわれは考えるのでありますが、こういう点は自体そういうふうに流れているのだから、やむを得ぬと言えばやむを得ぬようでありますが、市町村にとつては、はなはだ迷惑になると考えざるを得ないのでありますが、十分この点についてもお考えを願つておきたいと思うのであります。同時に先ほど申し上げました——来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、来年度の百億の減收に対しては、先ほどの御答弁だけでは私は満足するわけには参りませんから、何か特別に国民所得がどのくらいふえるとか、あるいは償却資産がどのくらいふえるとかいうようなお考えがあるなら、それだけをひとつ示しておいてください。
  132. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 地方財政計画は御指摘のごとく地方税なりが最も中心になるわけでございますが、そのほかに全体の課税力の均衡を期しまするための平衡交付金の制度が、すでに御制定を願つておりまするし、また国からのいろいろな交付金補助金あるいは地方債といつたようなものとそれぞれ見合いまして、全体のわくを考えて処理して行くわけでございますから、かりに今の市町村民税の減の分が、固定資産税の増によつてもなおカバーできないようなところがありますならば、これは第一次的には平衡交付金の交付等の方法によりまして調整ができることになるわけであります。
  133. 門司亮

    門司委員 平衡交付金で調整すれば、実際はそういうことになるかとも思いますが、どうも税の関係からいいますと、きわめて不安定であつて、そのたびごとに税率をかえるということは、私はあまり芳ばしくないと考えておるのであります。それで市町村民税に対する各條文にわたります質問を終りたいと考えておるのであります。ただ私がここで申し上げておきたいと思いますことは、われわれといたしましては先ほど申し上げましたように、この課税の標準並びに税率等につきましては、実は非常に不満を持つておるのであります。昨日も申し上げましたように、防空壕の生活者も大邸宅の生活者も、同じような形で税金をとられるということは、明らかな悪平等でありまして、決して平等でないということを申し上げておきたいと思うのであります。  それからその次に聞いておきたいと思いますのは、目的税関係でございますが、目的税は、従来これが市町村において賦課されましたものは、大体受益者負担というような形で行われておりまして、一応税制の建前の上から申しまするならば、従来の受益者負担であつたようなものは目的税というようなことになつて、そうしてこれがはつきりした線の下に包含されておつたということに相なつて参りますので、一応進歩のように考えておるのであります。この條文の中で特に伺つておきたいと思いますことは、七百三條でございます。いわゆる「市町村は、共同作業場、共同倉庫、共同集荷場、汚物処理施設その他これらに類する施設に要する費用に充てるため、当該施設に因り特に利益を受ける者に対し、共同施設税を課することができる。」と、こういうことに相なつておるのであります。この共同作業場であるとかあるいは共同の倉庫であるとか、共同の集荷場であるとかというようなものの、この共同の範囲でありますが、これは市町村を單位とする共同の範囲であるかどうかということであります。
  134. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この共同と申しますのは、市町村の特定の区域ならば特定の区域の人たちに対しまして——あるいは関係住民でもいいと思いまするが、そういう者のために共同作業場をつくろうという場合におきまして、その共同作業場の設置維持に必要な経費に充てまするために、共同施設税をとるわけでございます。従つてその共同作業場を利用いたします者に対しまして、その利用の受益、厚薄の程度によりまして、それぞれの税をかけて行く、こういうふうになる、いわば受益者負担的の考え方のものでございます。
  135. 門司亮

    門司委員 受益者負担には間違いはないのでございますから、そういうことは一応言えるかと思うのでありますが、ここでもう一つ聞いておきたいと思いますことは、現在あります水利の利用組合のようなものが各町村にはあるわけであります。そういうようなものはこれに当てはまつて税金のような形でとることができるかどうか。これは單に市町村の行いますものでありましようが、そうでなくて、今日組合組織でやつておるものがないわけではないと思います。これはどうお考えですか。
  136. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは市町村がみずから必要とする経費に充てるための目的税でございますから、水利組合等が同様な農業水利のための施設を設けました場合におきまして、市町村目的税としてその必要な経費をとるということはできないと考えます。
  137. 門司亮

    門司委員 その次に聞いておきたいと思いますことは、七百四條の非課税の範囲であります。この中には日本專売公社及び日本国有鉄道というように書いてあるのでありますが、これを除かれた理由をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  138. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 日本專売公社及び日本国有鉄道につきましては、この地方税法案におきましては、すべての税につきまして非課税の扱いにいたしております。この理由は、專売公社も国有鉄道も従来は直接政府が経営をいたしておりました事業でございますが、先般のマツカーサー元帥の書簡等を基礎にいたしまして、国家の行政組織から公共企業体という形に切りかえられました関係がございますので、特にこの二つだけは、従来国が直接やつておつたということも勘案いたしまして、非課税の扱いにいたした次第であります。
  139. 門司亮

    門司委員 これは固定資産税のところでも申し上げようと考えておるのでありますが、国のやつておる仕事であるから、これに税金をかけないということは、国税方面においてはそういうことが言えると思いますが、地方の公共団体の部面に対しましては、国がやつておるから税の対象から除くということは、地方公共団体にとつてはかなり大きな迷惑だと思う。いわゆる受益者負担のようなものは当然專売公社であれ、国有鉄道であれ、そのことによつて利益を得るということになつて参りますならば、やはりこれも応分の負担をすべきではないか、ことに国が株主であるからと言えば言えるようなものですが、実際独立採算制をとつております今日の現状から申し上げますと、これを受益者負担から除くということは不穏当ではないかと考えておりますが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  140. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点の御見解は十分拜承いたしまして、非課税の問題につきましては、政府といたしましても、今後大いに研究をしてみたいと存じております。ただこの案におきまして、このような非課税にいたしておりますのは、先刻申し上げましたような意味からでございます。
  141. 門司亮

    門司委員 それからこの目的税の中に課税標準が実は定められていないのであります。一体どのくらいまでこれを課して行くのでありますか。
  142. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 これは目的税がどういう形の税がとられますか明確でございません。ただここにございますように、特に施設により受ける利益の限度を越えることができないという押え方をいたしまして、それだけで、あとはそれぞれその市町村実情に即応するような課税標準なり税率なりをとるようにしたらいいだろうという考え方でございます。
  143. 門司亮

    門司委員 そこで元にもどりますが、七百三條の問題で所有権の問題が出て来るのであります。市町村の共同作業場とか共同倉庫とかいうものができて参りますが、賦課いたします標準がきまつておりませんので、これに必要な所要経費を全部受益者が負担するということになつて参りますと、受益者の負担いたしまして建てたもの、市町村はただ計画しただけでできたものが、ただちに市町村の所有に帰してしまうということになりますと、寄付金を税金の形でとり上げたようなことになつて、あまりいい結果にならぬと思います。従つてある限度が必要ではないか、総額の何パーセントというものを押えて、それ以下のものをこういう税金の形で受益者から取立てることができるという限度が必要ではないかというように、所有権の問題と考え合せて考えるのでありますが、この点はどうですか。
  144. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 そういうような意味目的税につきましてのわくをさらに設けるということも一つの案だと存じますが、私どもといたしましては、この目的税はまつたく共同的に設けて行こうという性格のものでございますから、やはりそれぞれの受益に応じまして共同にその利益を利用する者が、その厚薄に応じて額を負担して行くという制限を設けただけで、あとはそれぞれの自治にまかした方がいい結果になるのではないかというように考えた次第でございます。
  145. 門司亮

    門司委員 これは非常にめんどうなようでありますが、われわれといたしましては、さきに申し上げましたように、ぜひこれには何らかの制限がなくてはならない、これを当局は何でもかんでも地方の自治体にまかせるというようなお話でありますが、それなら一切地方自治体にまかしておけばいいのでありまして、ややこしい法律をつくつて罰則をきめたり、税率をきめたりしなくても、課税客体だけ示して、あとは課税額についても地方自治体にまかしておけばいい。ことに他の條文については、地方団体の権限に対する干渉といつていいくらいまでのことが書かれておりますのに、この目的税だけに限つてそういうことがちつとも書かれておらない。ここに目的税の今度制定されました形から見まして、大きな一つの欠陷があるのではないか。これはひとつ目的税に対しましても、税率の範囲というようなものを定むべきである、そうして地方住民負担の限度を一応これで定むべきである。この法案を見ますと、まつたく住民負担の限度がわかりませんので、従つてほとんどこれが市町村の所有でありながら、大体それを利用する者が全部これを負担してしまう、そうして所有権は市町村にあるというようなことについては、われわれといたしましてはあまり感心ができないのであります。ことにこの中に水利とか林道とかありますが、都市計画事業その他に対しましては、ある場合におきましては当然これは市あるいは町村が負担すべき筋合いのものである。そこで私当局実情を知つておいてもらいたいと思いますことは、これらの事業に対しましては、当然市が行うべきであるが、市に予算がないということのために、やむを得ず今日までは、受益者負担なら何とかしてやろう、お前の方で金を出して来るならひとつこの道路をこしらえてやろうということが、大体われわれが地方議会の議員をやつておりました当時において通例となつてつたのであります。お前の方で金を出すならこの道をつけてやろう、あるいは下水を直してやろうということが往々にして行われておるのであります。これが今度はつきり法文化されて目的税としてとられて来るということになつて、地方の住民はただ便宜のために必要以上の負担をしなければならないような形ができて来る。ここに地方のボスといいますか、ことに全部の住民の利益になる事業なら別でありますが、ある種の、今までよくいわれております、地方的利害に沒頭しておりますような諸君の跳梁する場所をこしらえるのじやないかというように実は考えられるのであります。従つて当局は、これについてただ市町村にまかせるということでなくして、これらの負担の限度をぜひこの條文の中に入れていただきたいと思うのであります。再度お尋ねいたしますが、そういう御意思があるかどうか承りたい。
  146. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 目的税はまつたく文字通り応益的な税と考えることができると思うのでございまして、それぞれその施設を当該関係の受益の対象になります住民が欲するか欲しないかということが、やはりそういう施設を設けるか設けないかということにつきましての決定的な要素になるであろうと思うのでございます。そういうような点から申しますと、むしろこれはそれぞれ関係受益者なり市町村議会なりの自主的なる決定にまかしておきました方がよろしいのではないかと考えたのでございまして、御意見とはいささか違うのでありますが、政府といたしましては、このような形でやつて行けるのではないかと考えておる次第でございます。
  147. 米原昶

    ○米原委員 市町村民税については各委員から詳細な御質問がありましたので、私は若干補足的な点だけお尋ねします。  第一に、今まででも住民税は非常に彈力性のある税金というか、たとえば制限税率を突破して、中には最高の所は一万円水準は切れましたが、平均九千円とつているのだとか、長野県あたりでは平均七千円くらいとつているのがざらにあるそうであります。そういうような今までの状態と比べて、今度こういうやり方にかわりまして、はたして標準税率程度で実際やつて行けるものか、制限税率あるいは制限税率を突破するような場合だつて相当起るのじやないか、という点を一応聞きたいのであります。この法律を見ましても、この制限税率を突破するような場合、これを絶対制限税率以上出させないという規定にはなつていないようでありまして、こういう点は、実際上はどういうふうになつて行われておるか、その点を第一にお聞きしたい。
  148. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 標準税率を超過して課税しなければ、所要の財政需要に見合いまするような税額が得られないようなことはないか、というような趣旨のお尋ねと存じまするが、これは、一般的な傾向といたしましては標準税率によりまして計算をいたしまして、全体の財政計画の收支とバランスを合せるようにいたしております。従いまして、一般的に申し上げまするならば、標準税率を超過して課税をするということはあり得ない、かように考えております。
  149. 米原昶

    ○米原委員 しかし実際問題としては今までそういう例がずいぶん多いのでありまして、この前もそういう方が私の方に見えておりましたが、静岡県浜名郡におきまして、たとえば中学校——六・三制の中学でありますが、これを建てる問題で、補助が出ないので、すぐに村民税を四百万円引上げるという形に持つて行く、こういうものが実に多いと思う。実際問題としては今さきに言いましたように、地方によつては平均七千円もとつているのがざらにあるというような県もあるわけでありまして、そういうようなことが今後なくなると思つておられるかどうか、実際はなかなかそうは行かないと思う。この標準で——今度は相当の額で、五百七十五億円でありますが、それを突破するような村も実際上は起るのじやないか。全体的に言えば、政府言つておられるようなこともあるいは出て来るかもしれないけれども、非常にこれは不均衡な点が起つて来るのではないか。今までもそういう例が非常に多いのでありますが、今までのそういう傾向が完全に阻止されるというような保証はどこにもないので、これに対して、政府はどういうふうな方針でおられるのか、聞きたいわけです。
  150. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 私どもといたしましては本年度の全体の財政計画考えまして、地方税といたしましては千九百億あれば、これで全体の財政需要とのバランスが合う、かように考えております。その基礎といたしましては、今御指摘がございましたような市町村民税、さらにこれにプラスをいたしまして、いわば一種の税にかわるような財政寄付的な強制寄付をやつておつたという例があつたかも存じませんが、そういう強制寄付の三百億というようなものも全体の計画の中に組み入れまして、これを解消するようにいたしておりまするので、またそれぞれ一々こまかい税をとりませんでも、法定税目だけで大体千九百億の線を維持できるように考えておりますから、標準税率を超過いたしまして、さらに相当とらなければならぬというようなことは、まずまず今後はなくなるであろう、またそういうふうにしなければならぬと私ども考えております。
  151. 米原昶

    ○米原委員 私は総額の点を聞いておるのではありません。総額の問題でなく、今まで、地方によつて均衡があるのであります。先ほど新潟県からいらつしやいました参考人お話を聞きましても、裏日本方面、ことに農業地のようなところでは、固定資産税というものはあまりとれない、そして結局憚力性のある住民税にそれが行くのではないかと思う。それで今までもこの住民税において標準税率を突破する例が一番多かつたと思うのであります。そういう点で、全体の総額として千九百億という問題じやないのでありまして、そういう地方が相当出て来るのじやないか、これに対する政府措置があるかどうかということを聞きたいわけです。
  152. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 個々市町村におきましても、地方財政平衡交付金法によりまして、基準の財政收入額あるいは基準の財政需要額を見合す場合の一定の方式が定められておるわけでございまするが、その際基準の財政收入額を見合す場合には、標準税率の七〇%程度というところで押えております。従いまして、今の標準税率を超過いたしまして課税をするようなことをいたしませんでも、教育費とか、その他必要な経費につきまして、基準財政收入をもつてまかない得ない部分につきましては、平衡交付金が行くわけでありまして、そういう点から個々市町村につきましても、そういうような標準税率をさらに超過してとるというような手段によらなくてもやつて行けるのではないか、こういうふうに考えております。
  153. 米原昶

    ○米原委員 結局交付金ということになりますが、その平衡交付金の総額が、実際上は、先ほどの参考人の話で承つたところもそうであつたように、今までの配付税と比べて実質的にはあまりふえていない。ことに以前の配付税の三〇%のときと比べると、事実は非常に少いわけでありまして、その操作でどのくらい行くかということにつきまして、はたしてそううまく行くかどうかについて非常に疑問なんであります。  その次にもう一つ、この委員会でも何回も問題になりました点でありますが、所得という意味が先ほどから何回も問題になりましたが、所得税がかかつている人というだけでなくして、いわゆる所得のある人でありますから、結局は生活費というものを税務署の見ている所得では見ないわけであります。收入から必要経費を差引くと所得であります。そうすると、ほんとうに一年間に八百円收入があろうと一千円所得があろうと全部均等割がかかる。こういう点が先ほどから何回も問題になつているわけでありますが、これを見ましても何らこれを是正するものはないように思う。この法文の中には、一つもそういうことは認められていないようでありますが、これが実際問題としてどうなるかという点であります。八百円でも一千円でも二千円でも、そういう過少の所得の人に対しても、また先ほどから何回もお話がありましたが、大邸宅に住んでいても、防空壕の中に住んでいても同じ均等割がかかつて来る。この問題でありますが、これについて今までのお話では、ただ地方団体にまかす、地方団体でこういう点は適当にやるだろうとおつしやるけれども、しかし昨日からの政府お話を開いておりましても、地方税住民税を課税する人員は大体二千万人近くなつているわけであります。今までと比べて数百万人ふえるわけであります。そういうことを考えて、標準税率にしてとつて千九百億円という総額を出しているわけでありますが、そうすると政府の方針ではそういうふうに説明なすつて地方団体が適当にやるとおつしやるけれども、実際はそういう計算をしておられないから、実際は全部地方団体がそういう人を免税にするということにすれば、標準税率というものは絶対にこれだけとれないことになる。どうしても各地方団体標準税率を突破して行かなければ、予定通りとれないことになると思いますが、この点はいかが考えておられますか。
  154. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の点でございますが、この原案におきましては、生活の困窮者生活保護法による保護を受けておりますような者につきましては、これは非課税にいたしておりますし、また生活の困窮をいたしております者、その他特別の事情ある者につきましては、減免措置を講ずる方法も規定しておりますし、また同様な場合におきましては、納期限を延長するという規定をいたしております。これらの方式の運用によりまして、それぞれの市町村におきましては、実情に即するような措置ができるものというふうに私ども考えております。
  155. 米原昶

    ○米原委員 規定は一応そうはなつておりますが、ところが実際には今までと比べて二百万人なり、来年になると五百万人ほど課税する人員がふえる予定で、この数字が出ているわけなのであります。そうしますと規定ではそうなつておりますけれども政府の大体どのくらい標準税率でとれるかという計算をしておる数字であります五百七十五億円ですか、この数字はそういう人たちが減免されないという計算でやつておられるように思いますが、そうではないのですか。たとえば今の二千万人ほどに課税人員がふえるという数字でありますが、この中にはそういう減免される人たちをどのくらい見込んでこの数字を出しておられるのか。そういう人たちを全然見込まないで、所得のある人、いわゆる八百円でも一千円でも所得のある人は、全部均等割をかける。そうして計算してみて、この五百七十五億という数字が出ておるのではないですか。この点をお聞きしているわけです。
  156. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 市町村民税納税義務者千九百万という数字は、この法案において規定をいたしております未成年者、寡婦あるいは不具者というような非課税の該当者を除いた数でございます。
  157. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、実際問題としては、今言いましたこの法律で免除されている者以外の地方団体で軽減または免除し得る人、そういうものはこの基準には入れていない、こういうことが明らかになつたわけです。そうしますと実際問題としては、標準税率でとつて行つて政府の先ほどから説明しておられますように、地方団体が実際にはそういう八百円とか千円の人に均等割をかけることができないというので、かけないことにすると、標準税率でとるときには絶対に五百七十五億円とれない。どうしてもそれ以上——制限税率を突破することにはならないかもしれませんけれども、この法律できめられている標準税率ではなくて、それ以上税率をかけなければならぬという計算と、それをやらなければ総額としての千九百億円も出て来ない、こういうことになると思いますが、そう解釈してよろしゆうございますか。
  158. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 政府といたしましてはそういうことの結果、納期の延長なり減免なりの措置を講じまして、よつて減じまするところの額はさほど大きな額にならないだろうと考えております。
  159. 米原昶

    ○米原委員 そう多くならないとおつしやいますが、これは前に取引高税の問題が起りましたときにも同じようなことがありまして、一割が特別に措置されて、三万円の免税点が設けられたことがあります。あのときに一割が免税される。大体三十万人が全国で免税されるという話がありました。そのときも三十万人は免除されるけれども総額では一文もかわりがない、こういう説明があつた、実に不可解なことがありましたが、それと同じようなことでありまして、二千万人課税する、大体一千九百六十九万人ですか、それほどになるということになりますと、この二百万人ないし、三百万人ふえた人は、大体所得税のかからない人が、その二百万人のうちに入ると思うのです。現在所得税のかからない人というのは、たとえば基礎控除が、所得税は二万五千円です。そして扶養控除にしても一万五千円、それ以外は何も引かれはしないのでありまして、そうすると一年間に二万五千円で生活するということになりますと、一月何ぼですか、問題にならないです。二千円か三千円で一月の生活をしなくてはならない。一月が三千円ないし二千五百円くらいの人、そういう人たちにまで課税することによつて、二百万人、三百万人ふえると思うわけでありますが、そういうことになると、これは非常に重大問題だと思います。そういう人たちは、地方団体の場合だつたら、とうていそういう人たちには税金はかけられないという気持が起つて来るのは当然でありまして、そうするとどうしても標準税率を突破しなければならぬということになると思いますが、この点はそういう人たちと別なものを含んでおりますか。その点を説明願いたいと思います。
  160. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今お話のように現実にどうしてもとれないというようなことで、それぞれの税につきまして標準税率以上にとらなければ、財政の需要がまかなえないというような事態があるいはあるかもしれませんが、先ほど来申し上げますように、平衡交付金につきましては標準税率の百分の七十というところを基礎にして考えておりますから、標準税率を超過するというところまで持つて行きませんでも、平衡交付金の措置によつてどもはやつて行ける、かように考えております。
  161. 米原昶

    ○米原委員 税率の問題と平衡交付金の問題とはちよつと別だと思いますが、もう一点聞きます。税率もあまり上げることができない。その場合にもう一つ問題になるのは、市町村による所得計算ということ、これを見ますと、過少な場合、つまり税務署の計算しました所得が、これは過少だと見積られる場合だけ市町村所得計算するとなつておりますが、なぜ過大に税務署が計算した場合——これは非常に全国各地で問題が起つておる通りに、税務署が不当な決定をやつて、非常に過大に所得計算して来ることが多いのであります。それを過少に計算した場合、安く税金をかけた場合だけ市町村計算し直すことができる、そういうことになつておるのは非常に不合理であると思うのでありますが、この点について、いかなる理由で過少の場合だけ計算することにされておりますか。
  162. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この法案の三百十五條の、市町村が独自に税務署の行いました所得額を訂正をして決定する場合のことでございますが、これはその次の三百十六條を見ていただきますと、市町村は著しく適正を欠くというような場合においては再計算をする方法が規定してあるわけであります。こういう規定の運用によりまして、今のような場合におきましても、実情に即するような措置を講じて行くものと考えております。
  163. 米原昶

    ○米原委員 その場合に三百十五條の方は、つまり過少の場合で、この場合は市町村独自に計算してどんどん修正することができる。税金もどんどん高くとることができるようになつている。ところが過大に税務署がやつてつて、これを訂正する場合に、一々地方財政委員会の許可を得なければできない。こういうことになつてつて、実際上はなかなかそういう所得計算を一々全国の市町村がやるということは、手間がかかりましてできないことだと思います。なぜ過大の場合も——ある範囲を設けられることはよいと思いますけれども、過少の場合だけ市町村がかつてに直せて、過大の場合は訂正することができないか。むしろたとえば農村の場合なんかにおいては、大体あの家は非常に税務署が重い税金をかけたとか、あの家は軽過ぎるとか、こういうことは常識的にわかる問題であります。この問題をむしろ市町村が独自にできるようにさしておけば、相当運用上うまく行くのではないかと思う。ところが過少の場合だけこれができるということになりますと非常に問題が起る。税金をますます市町村が高くとるということが自由にできることになる。税率を上げなくても、その所得計算をやり直しまして重い税金をかける。税務署がかける場合も重くかけることができるようになつておる。この点は非常に不都合だと思うわけでありますが、なぜ過大の場合だけ地方財政委員会の許可を得なくてはならぬか、この点御説明願いたい。
  164. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今御指摘の点は一応ごもつともと存じまするが、全体の負担の公平を期する方法といたしまして、過少の場合を正当の額に引上げまして、全体の調整をとる。なおそれではなはだしく適正を欠くという場合におきまして、今お話のような過大のものにつきましては三百十六條の運用によつて善処いたしたい、かように考えている次第であります。
  165. 米原昶

    ○米原委員 それはまつたくとる方の側の御見解でありまして、とられる方を保護する方策が一つも講ぜられていないと言わざるを得ない。そういう点からみると、昨日も問題になりましたが、所得税を納めてない家族の人からも今度は均等割税金をとることになりますが、そういう場合に納められない。その場合に差押えする場合もあるかということが昨日問題になつたわけですが、あのときの主税局長の御説明によりますと、非常に言葉を濁しておられましたが、要するに差押えにあたつては、食糧とか、生活必需品は差押えることはできないという規定だけしか御説明になつていないが、これは差押えられる場合、あらゆる税金の場合に通用することでありますが、この場合にはちつとも当てはまらない。実際には家族税金を納められなかつたような場合には、すぐに連帶責任で全部を差押えできることになるわけでありますが、そうするとますます均等割というものは不合理なものと考えざるを得ないのでありますが、この点はいかに考えられますか。
  166. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 過大の場合におきましては、やはりこの市町村民税は、前年の所得を押えておりますから、その前年において所得税法の規定に基くそれぞれの救済の措置を本人としても発動いたしまして、過大なるものを適正な線に持つて行くような努力をせられるであろうと思うのであります。ただ過小なるものはそのまま納まつてしまうというようなことでございますので、その点につきましての調整措置をこういうようなことで考えようというわけです。しかしなお過大のものにつきましては、さきに申し上げましたような三百十六條の措置も講じてあるわけであります。  それから今の国税徴收法の規定によりまする親族の者の差押えでありますが、これはきのう主税局長からも説明をいたしたと存じますが、それぞれの納税者の持つているその財産についてでございまして、納税者が他の者と共有しているというようなものがございました場合においては、その限度においては差押えの対象になろうと存じますが、納税義務自身をやはり独立に考えて差押え財産の範囲というものもきまつて来る、そのように主税局長は申し上げたように私は了解しております。
  167. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと第十一條には連帶納付義務という問題があるわけであります。たとえば共有物、共同使用物、共同事業によつた場合は連帶の義務があるわけであります。そうしますと、農家で農業をやつておれば共同事業だというふうに考えられるわけです。それでその一家の中のだれかが拂わないと押えられるということがすぐ起こつて来るのではないかと思いますが、その点はいかがでありますか。農業ばかりに限らず、この共同事業の解釈を非常に拡張して行きますと、いろいろな場合にそういう不都合が起つて来るのではないかと考えるわけでありますが、その点はいかがですか。
  168. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この十一條の規定の適用があります場合は、たとえば固定資産を数人の者が共有しているというような場合におきましては、まさにお話のようなことでございますが、これはやはりその数人の者が納税義務者であるわけでありまして、その数人の者の使用物であるわけであります。しかし市町村民税等の場合におきまして、そういう納税義務自身は、世帶主なり、あるいは世帶員のそれぞれに対して課せられる義務でございますから、その持つておりますものが共有物でございましたならば、その共有の持分の限度においてのみ差押えの対象になる、かように考えなければならぬと存じております。
  169. 米原昶

    ○米原委員 では市町村民税についてはその程度にしまして、一点都の特例についてお聞きいたします。東京都の場合、地方自治法によると、大体区は市町村に準じたようなものになつているはずでありますが、課税の場合には、この特例によると、條例によつてきまるということになつておりまして、区の課税の自主権というものが非常にないように思われる。この点については、現在東京都内の各区で非常に問題になりまして、区によつては、独立した市になりたいというような要望が非常に強いわけであります。この限界が非常に不明瞭でありますが、この点をどういうふうにお考えになつておるか、お尋ねしたいのであります。
  170. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 東京都の特別区の課税権の問題でございますが、この法案におきましては、特別区の問題の本質的な点は別にいたしまして、現在地方自治法上定められておりまするところの特別区の性格をそのまま一応持つて参りまして、なお現在の地方税法案の建前を大体踏襲するような形で、都の條例の定めるところによつて、都から特別区の方に税を委讓できる、特別区の課すべき税の範囲を都の條例できめる、こういうことにいたしたのでございます。この点につきましては、特別区の性格、都の性格等の問題からいろいろ御論議があると存じまするが、政府としましては、今後の問題として研究を重ねて参りたいと存じております。
  171. 米原昶

    ○米原委員 この場合、現在の都内の各区が要望しているように、はつきり法律で範囲をきめまして、課税に自主権を與えることが私は望ましいと思うのであります。しかし実際問題として起つて来るのは、本日の都の職員組合の参考人の方がおつしやいましたように、大体今度新しく一千人の税務員を増加して、一億円の費用をかけて税務行政を拡張するということである。こういうことになつて来ますと、各区に出張所が置かれるようでありますが、そうすると、各区の税務課との競合という問題で、ますます各区の自主性が失われて行く、そうしてここに非常に問題が起つて来るのではないかと思うのであります。そういう意味から言つて、区にもつと大きな課税の自主権を與えることが望ましいと考えるのでありますが、実際問題としては、けんかのもとになつて、都と区の対立をますます激化して来ると思います。そこでこの問題をいかに処置されるか、ただ單に都の條例にまかせるというだけでは、今までの行き方から見て非常にまずいのではないかと思うので、むしろ法律でもつと明確にするという方針をとるべきだと思いますが、この点についての考え方をお聞きしたいと思います。
  172. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 特別区制度、あるいは都制等につきましては、地方自治法上の大きな問題でございまして、政府としては今後の研究にまつて行きたいと存ずるのであります。この案におきましては、現行地方税法の建前を大体踏襲いたして参りたいと考えてかように立案いたした次第であります。
  173. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ほかに御質疑はないですか——それでは市町村民税目的税及び都等の特例に関する質疑に関しましては、通告された方々の質疑を一応終りましたので、この件はこれで終了といたします。
  174. 河原伊三郎

    ○河原委員 明日固定資産税に関する質疑をあげるという方針のもとに、本日はこれにて散会せられんことの動議を提出いたします。
  175. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 河原君の御発議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議なしと認めます。  それでは本日はこれで散会いたします。     午後五時三十一分散会