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1950-07-16 第8回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十六日(日曜日)     午前十一時三十四分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 塚田十一郎君 理事 門司  亮君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       河原伊三郎君    清水 逸平君       野村專太郎君    益谷 秀次君       松本 善壽君    床次 徳二君       大矢 省三君    久保田鶴松君       立花 敏男君    米原  昶君       松本六太郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         地方自治庁次長 鈴木 俊一君  委員外出席者         総理府事務官         (地方自治庁財         政課長)    奧野 誠亮君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 七月十六日  委員門脇勝太郎君及び田中豊君辞任につき、そ  の補欠として松本善壽君及び益谷秀次君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方税法案内閣提出第一号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  本日は、地方税法案を議題といたしまして、総則及び附加価値税事業税につきまして、質疑に入りたいと存じます。質疑通告順に行います。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 私はもつぱら附加価値税並びに事業税に関連いたしまして、若干御質問を申し上げたいと思います。  第一に、附加価値税を一年延期されました理由といたしましては、附加価値税転嫁を予想しているにもかかわらず、半年以上もこれをさかのぼつて実施することは不穏当である、また新税実施相当準備を要するということも御説明になつているのでございます。過般附加価値税提案されましたときにおきましても、すでに数箇月の遡及を認めて、その前提の上において出されたので、当然予定通り実施せられましても、遡及して行われることはわかり切つてつたことでございますが、この際、遡及することがいかぬから、事業税にかえるということの理由については、多少納得行きがたいものがあるのであります。ほんの数箇月のことなんでありまして、これだけが理由になるということは、私ははなはだおかしいような気がしますが、その点について政府の御意見を聞きたいと思います。
  4. 小野哲

    小野政府委員 お答え申し上げます。今回の税法案によりまして附加価値税実施を一年延期いたしたいと思つておりますのは、実は第七国会において提案いたしました地方税法案が三月中に成立するものと期待をいたしておりましたところが、御承知のような事情のために不成立と相なりました結果、今回この地方税法案が成立いたしましたあかつきにおいて、これを実施いたします場合におきましては、当時の事情とは相当かわつて参つているのは、御了察が願えると思うのであります。半年以上も経過いたしました今日において、この税の性格から申しまして、転嫁性を持つておるという点から考えますと、遡及してこれを実施するということは、納税者に対しましても相当負担の過重になるという点をおもんばかりまして、なおまた種々議論になつた点等をも考え合せまして、今回はかような措置をとるようになつた次第であります。なお新税であります関係上、明年四月一日から実施いたします場合におきましては、準備の点から申しましても万全を期し得るのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  5. 床次徳二

    床次委員 ただいまのお言葉の中に、種々情勢変化考えてかえられたのだというお話でありますが、種々情勢変化というのは、どういうことを意味しているか、国会その他の意見等もやはりあわせ考えられたことに解していいのかどうか、その点について重ねて伺いたいと思います。
  6. 小野哲

    小野政府委員 お説のように、前回国会におきまして、附加価値税についていろいろ御議論のありましたことは、われわれも十分に理解をいたしておるような次第でございまするが、同時に税法実施に関しまする種々の技術的な面につきましても、あるいは申告納税のような制度を今回もとるようになつておりまするので、全体を総合いたしますと、この際遡及して行うというとは妥当でない、かような結論に到達いたしたような次第でございます。
  7. 床次徳二

    床次委員 この点は臨時国会を召集されるのが非常におそ過ぎたということも大きな理由だと思うのです。参議院の選挙後ただちに議会を開かれますならば、時間的の差というものはそれほど大きなものではなかつた地方税法案不成立の当時において、当然予想せられたところの時間のずれであると考えられるのでありますが、いささか政府措置がおそ過ぎたということも、私どもは大きな原因であると思うのであります。しかし本質的には、やはりこの附加価値税がはたしていいかどうかということに対して大きな疑問があるというところに、私どもは今度研究を進めて参りたいと思うのであります。  今回附加価値税事業税に改正せられましたが、この事業税の特質に関しまして、政府におかれましては、事業税というものについての欠陷を強く見ておられたのであります。今回新しく事業税をこのまま本年度において代行いたしまする際におきましては、過去の事業税欠陷を十分是正して実施されることが適当であると思われるのでありまするが、今度の新しい事業税、修正されました事業税におきまして、過去の事業税欠陷をどの程度まで是正しておられるかどうか、これについて御説明を承りたいと思います。
  8. 小野哲

    小野政府委員 御指摘のように、事業税種々欠陷を持つておるということは、たびたびこの委員会においても御説明を申し上げたような次第でありまして、政府としましては、できるだけこれらの欠陷是正する意味をもつて附加価値税に置きかえることが妥当であるという考え方は、今もつてかわりはないのでございます。ただ御承知のように、今回附加価値税実施を一年延期いたしまする場合における暫定措置といたしまして、事業税を復活する場合におきまして、政府といたしましては、今回訂正いたしまして御審議を願つておる程度以上に出ることは、現在の段階におきましては困難でないかと思うのであります。ただ事業税が御承知のごとく法人個人との企業組織相違による税負担の不均衡の点から考えますると、これらの点についてある程度是正を加えることが必要であるということと、附加価値税の本来の考え方を、この際事業税についても、ある程度織り込んで行くことによつて納税者負担均衡を保ち得るのではないか、こういうふうな見地からいたしまして、事業税及び特別所得税につきましては、一率に税率軽減をいたしますほかに、あるいは農業または林業、あるいはその他主として自家労力によつておりまする原始産業につきましては、これを附加価値税といたす、のみならず、従来の——言いかえれば現行免税点である四千八百円を二万五千円に引上げること等の措置をとることによりまして、可能なる限度において是正をいたして参りたい。かような考えを持つておる次第でございます。
  9. 河原伊三郎

    河原委員 ちよつと議事進行に関して……。この日曜にもかかわらず審議を続けまするのは、本法案が非常に大切であり、しかもこの短い期間において審議をなさなければならぬからで、従いましてこの貴重な時間は最も有効に使用すべきであると思います。つきまして議員の方では欠席等関係で今まで質問されたことをも重複して質問することがあるかもしれませんけれども当局におかれては前に答弁したことはよくわかつておるはずでありますから、重複した質問に対しては遠慮なく前にお答えした通りといつたように簡明にお答えになることが、議員の方でもそういつた重複した質問をすることが恥という気持で、よく勉強することになりまするので、そういうふうに簡潔にひとつ答弁願いたいと思います。
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ただいまの御発言もありますから、その点なるべくむだを省いて御答弁願いたいと思います。
  11. 門司亮

    門司委員 今の河原議員意見一応もつとものようには聞えるのでありますが、政府答弁内容その他については多少違いますし、また質問をする者もおのおの個人意見を持つておりますので、他の議員質問お答えなつたことが必ず妥当適切であつてこれが絶対に、それでいいというわけには私は参らぬと思います。私が承知いたしましても、隣の人がその答弁では承知ができないという場合には、やはり同じことを聞き返すので、従つてその場合に前と同じようなことだというような御答弁で、突つぱなされるということになりますと、何度でもそれを繰返すことになり、かえつて議事の妨害になりますので、できるだけ簡明に御答弁を願うことは自由でありますから、それでけつこうだと思いますが、今の河原君の意見のようにしろということになりますと、かえつて議事に紛糾を来すということになりはしないかと考えております。その点は当局もひとつ適当にやつていただきたい。
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員長 必要にして簡明にだけはやつていただかなければなりませんから、それは当然だと思います。
  13. 床次徳二

    床次委員 ただいま事業税の問題に関して御答弁がありましたが、この前のときにおきまする附加価値税事業税との比較の問題、これをきようむし逃すことはあるいはよけいかもしれません。しかしながら今回は事業税が非常に修正せられた形におきまして、ここに提案なつた。このいわゆる修正せられました事業税と、かつて提案されました附加価値税との間の利害得失を検討するということは、今日きわめて重要なことである。ただいま政府委員のお言葉もありますが、これは従来の事業税に対する抽象的なことをそのままお述べになつたのでありまして、新しい事業税、修正せられた事業税におきまして、どれぐらい変化があつたか。たとえば個人法人との比較に関しまして、従来は法人に非常に軽くて個人に重かつた。今回にある程度まで修正が行われましたので、当然個人の分が減つて法人の分が重くなるべきである。しかしながら事業税本質から申しましても、それがそれほど適切に出て来ないということもあるかと思うのでありますが、そういう点に関してもう少し具体的に御答弁が願いたいのであります。
  14. 小野哲

    小野政府委員 お答え申し上げます。今回の事業税を活用することによりまして、大体法人個人との比率は現行事業税比較して一割くらい法人の方によけい課税する、こういうふうに考えております。
  15. 床次徳二

    床次委員 事業税におきまして何ゆえかかる法人に対する負担が少いかということにつきまして、御検討なさつておるかどうか。法人に著しく軽いという点について御答弁願いたいと思うのであります。元来事業税所得に対してかかつております関係上、所得のないものに対してかからないというのは、事業税本質上当然なことでありますが、個人にこれほど重くして、法人に軽いということは事業税本質上の欠陷であると思うのであります。事業税そのもの欠陷であるか、あるいは徴収上の欠陷であるかについてはいろいろ御意見があろうと思うのでありますが、これはいかようにお考えになつておりますか。
  16. 小野哲

    小野政府委員 ただいまの床次さんの御意見法人個人との間に差等をつけるべきでないか、そこに事業税欠陷がある、これはごもつともと思うのであります。ただしかし事業税本質から申しまして収益を本体といたしますような関係から、その経営上の関係において、従来法人が割合に軽く課税されておつたということの事実が、これを明らかにしておるであろうとかように考える次第であります。
  17. 床次徳二

    床次委員 従来の法人所得比較的少かつた、だから課税が少かつたということになりますれば、これは当然やむを得ないと思うのであります。しかしながらなお事業税の一面から考えまして、外形標準によつて相当課税しておる。この場合におきまして法人個人との間にどういうようなアンバランスが出ておるかということについて重ねてお尋ねいたします。
  18. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の外形標準をとつております場合におきましては、収益を直接押えておりませんから、お話のように収益をとつております場合ほどの事業税附加価値税両者の違いはございません。しかしながら売上金額を押えますのと附加価値額を押えますのとは、その間性質の違いがありますから、附加価値税の方を押えました方が、地方団体との受益の関係におきまして、より合理的に納税がうまく行くのではないかと思うのであります。
  19. 床次徳二

    床次委員 ただいままでの私ども資料におきましては、外形標準において課税したところの事業税、あるいは実際の所得による事業税がどのくらいあるかということは、ちよつとわかりかねるのでありますが、これはあとで資料を出していただきたいと思います。現行事業税がかような趣旨において課税されておりますと、実質上においては附加価値税と近いような性質も持つて参るわけであります。結局問題となりますのは、事業を経営いたしておるところによつて、地元に対して応益的の意味におきまして、たとい赤字でありましても、これに対して税を負担せしめるか、せしめないかということに、本税における本質的の意義があるのではないかと思うのであります。しかしながら今のような経済事情におきまして、赤字産業に対して負担をかけるということは、法人個人を問わず適切でなかろうというのが、私どもの前からの一貫した考え方なのでありますが、この考え方につきましては、あるいは意見相違であるかと思います。しかしながら私は赤字産業に対して今日負担をかけるということは、やはり適切でないという考え方を持つておるのであります。この意味におきまして、でき得る限り過去の事業税のよいところは採用して行つてよろしい。少くとも今年度暫定的の意味におきまして、政府において事業税実施せられるのでありますならば、最善を期したところの事業税実施せらるべきであると思うのであります。先ほどからの政府の御答弁によりますと、今度の事業税についても非常に自信がないようなお考えを持つておられるのでありますが、同じ実施せられますのなら、もつと最善を期してしかるべきものであると、私は考えるのであります。どうも悪いところがありますならば、どんどんともう少し徹底的に直した事業税を出していただきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、今度の改正法案全般について前から問題になつてつたのでありますが、課税客体に対して、いわゆる公益事業に対する非課税という点について、十分議論してあつたにもかかわらず、ほとんど参酌せられていないのであります。たとえば過般陳情がありましたが、新聞事業に対する非課税、あるいは一昨日も赤十字社事業に対する附加価値税非課税陳情がありましたが、こういうようなものに対しても前から残された問題でありまして、この際地方税全般を通じまして、公益事業その他必要なる基礎産業に対しましては、相当の減免をはかるという方針を明らかにすることが必要であると思いますが、これに対する政府のお考えはいかがでありましよう。さらに今日の経済事情から見まして、地方税制を一貫いたしまして、公益事業に対しましてはこれを軽減する、あるいは非課税にする方針を貫かれる必要があると思うが、いかがでありますか。
  20. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 公益事業について地方税控除を考慮せよ。いろいろ日赤や新聞事業につきまして御指摘でございますが、この政府の原案におきましても、その点はある程度考慮いたしておるわけであります。たとえば特別法人等あるいは公益法人等公益事業のために支出をいたしました場合においては、附加価値額から控除をいたしまして、全体としてこの税の軽減をはかるというようなことも考えておるわけであります。しかしながらこの非課税の問題は今後さらにいろいろ研究をいたすべき点があろうと、政府といたしましても考えておりまして、地方財政委員会の一つの任務といたしまして、この非課税の問題を検討するようにいたしておるわけでございます。ただ非課税の範囲をあまりに拡張いたしまして、その結果課税されますものがいきおい税率が高くなるということは、やはり全体の負担の公平を期するという意味から申しまして、必ずしも適当と存ぜられませんので、そういうようなことも考え、かつ公益事業におきます公益性の尊重というような、この両者をかみ合せまして、今後さらに政府におきましても研究をいたしたいと考えておる次第であります。
  21. 門司亮

    門司委員 今大体床次君からいろいろの問題について聞かれたと思うのですが、附加価値税事業税との関係でありますが、附加価値税実施が困難だということで事業税を設けた——設けたというよりもむしろ存続するという形であつたと私は考えておりますが、その事業税内容を見ますると、ただ單に従来の事業税に対してその欠点であり、欠陷であつた点の是正がほとんどされていないで、單に従来の附加価値税税額の問題だけが一応考慮されて、彌縫的と言いますか、数字つじつまを合せるということが大体主題になつて、その中で固定資産関係を持つておるもの、いわゆる附加価値税対象の中でも農業であるとか、あるいは水産業であるとか、畜産業であるとか、林業であるとかいうものが一応除かれておつて、その他のものにつきましてはほとんど一律に二割ぐらいの税の軽減をするということで、單に数字つじつまを合せるということだけのように考えられるのでありますが、そういう意味であつたかどうか。
  22. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今年度附加価値税先ほど来申しましたような理由によつて実施を一年延期いたしまして、事業税実施いたしますことは、あくまでも臨時的な暫定的な措置でございます。従つて事業税内容自体について、あまり多方面にわたつて改善を加えて実施するということは、やはり非常に困難が伴うと思うのであります。そこで徴税団体便宜等考え合せまして、かつできるだけ一面におきまして附加価値税の持つておりました内容にマツチさせる。この両者の要求をにらみ合せまして、ただいま提案をいたしましたような案の地方税考えた次第であります。
  23. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、大体今度の事業税附加価値税をとることが困難であるから、單につじつまを合せただけだということに解釈してよろしゆうございますね。
  24. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 單につじつまを合せるという軽い意味のものでもないのでありますが、とにかく現行法といたしまして事業税をずつと今までとつて来ておるわけでありますから、ただそれをそのままとりますと、税額といたしまして財政計画以上の税をとることにもなりますし、またすでに附加価値税の延期が国会提案せられまして、一般にも発表せられておりますし、農業なり、林業なりの非課税の面もある程度期待をせられておることでございますから、できるだけ附加価値税に関しまして、一応その税の本質として取入れておりますような点で、事業税を持続いたします上に支障がないと思いますところは、それを取入れておるような次第であります。
  25. 門司亮

    門司委員 そうなつて参りますと、私は与えられた資料の面でちよつとお伺いしておきたいと思いますが、この前にわれわれの手もとに参りました資料によりますと、大体附加価値税相当する額、いわゆる事業税特別所得税との関係といいますか、事業税関係は六十五億くらいと書いてあつたようでありますが、今度の与えられた統計によりますと、七十三億の数字が出ておるように見受けられるのでありますが、これから考えてみますと、この事業税というものは一体どこにはつきりした根拠をお持ちになつておるかということに、私どもは迷うのであります。従つてこの点をはつきりした資料によつて大体この程度減額されるので、附加価値税税額と匹敵するのだという数字の明確な根拠をいただきませんと、何かまだこの事業税に余裕を持つておるのではないかというように考えられるが、資料について答弁をお願いしたいと思います。
  26. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 事業税等につきまして前回に御参考に御配付いたしました資料と多少違つておりますのは、だんだんと時期の経過に従いまして前年度の所得等が明確になつて参りましたので、そういう関係よりある程度調整を加えておる次第であります。なお財政課長から詳しい説明をいたさせます。
  27. 奧野誠亮

    奧野説明員 前回のときにはまだ二十四年分の所得税法人税が決定していなかつたわけであります。従いまして当時の推定で計算いたして参つたわけでありますが、二十四年分の所得税法人税決定額がわかつて参りましたので、それを使いまして計算いたしたわけであります。そういうわけで若干数字に違いがあるわけであります。
  28. 門司亮

    門司委員 今の御答弁でありますが、この前の資料日付と今日の資料日付のものとは、相当かわつてはおりますが、政府から出された資料を見て参りますとき、しかもそれが税の基本をなすものである場合に、私どもは非常に迷惑をするのであります。そういたしますると、今度の修正された額というものは前の資料によらないで、この新しい資料の七百三十五億八千三百万円というものが大体確定的の数字である。それから今所要額として要求されております例の四百十九億六千四百万円の差額だけが大体減額されておると解釈してさしつかえないのでありますか。
  29. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 七百三十五億と申しますのは、現制度のままで今年度徴収を持続して行きました場合の見込み数字でございます。これは事業税を訂正しましたような案によつてとりますと四百十九億という見込みになるのでございまして、これの出て参りました主たる理由は、税率軽減でありますとか、免税点引上げでありますとか、あるいは農業林業課税対象から除きましたことの結果でございます。
  30. 門司亮

    門司委員 その次には附加価値税に対しまするいろいろなこまかい点の質問をいたしたいと思うのであります。大要につきましては税の性質その他をすでに聞いておりますので聞きませんが、この法律の中の法人附加価値に対する申告納付制度についてであります。これは非常に煩雑な手続が書いてあるようでありますが、一体法人の中で——法人と申しましてもいろいろありまして、実際上の経理行つておりまするもので、相当の経験と実力を持つておるものもありまするし、きわめて小さい規模でやつておりまして、実際の経理あるいは簿記等に通じておらないものもたくさんあると考えております。この法律で定められておりますようなことで、一々これを届出なければならない、もし届出なければそれには嚴重な罰則がつけられるということになつて参りますと、事業を営んでおりますものは非常に大きな負担になることが一面考えられるのであります、がこの点についての政府考えは一体どうであるか。
  31. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 申告納税制度は、すでに御案内のごとく、国税につきましてはこれが採用されておりまするが、地方税に関しましては申告納税制度国税におきまする成績等考えまして——これをただちに取入れるのがいいかどうかにつきましては、いろいろ論があるところであろうと存じます。ことにこの附加価値税は何分新しい税でございまして、單に徴税をいたしまする機関、徴税当局のみで一方的に賦課をいたしますというような形では、なかなか実施が困難であろうと思うのであります。やはり徴税者側からの申告によります協力が一面ございませんと、附加価値の把握は非常に困難であろうと考えるのであります。そういうようなことからいたしまして申告納税制度をとつたのでございます。なるほど申告に関しましてはいろいろめんどうな負担をかけるわけでございますが、地方財政委員会を初め各都道府県、市町村それぞれにおきましては、この点につきまして、特に各納税者に対しまする申告用紙の配付とか、その他の指導につきまして十分努力するようにしてもらいたい、かように考えておりまして、政府はさような趣旨のもとに、地方財政委員会を通じまして、指導をしていただきたい、かように考えておる次第であります。
  32. 門司亮

    門司委員 その次は更生の問題でありますが、従来国税において更生決定は非常に大きな問題になつております。従つてこの場合におきましても、やはり更正につきましては相当な問題を必ず起すと一応考えられのであります。それはどこから来ておるかと申し上げますると、さつき申し上げましたように、実際上の問題として非常にふなれであるということが、大体主たる原因であると考えるのであります。更正決定については、今の国税所得税の更正決定と同じような形にして参りますると、やはりこれは一方的にほとんど処理がされるのであります。先ほどお話のように、納税の協力ということを考えて参りまるすと、あるいは本人の公正なる課税をすることにしすまと、本人が申告をいたしましたものを正しいものとして、それに課税をして行くことが順当であると思いますが、今の国税徴収の方法を見まするときに、この更正は相当大きな問題を、国税と同じように起すのではないかと考えられるのであります。法の四十七條でありますが、これについて、今の国税で起しておりまするような問題を起さないように、何か特別の方法をお考えになつているかどうか、お伺いいたします。
  33. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 申告納付につきましての更正決定の問題でございますが、建前は国税の場合と同様でございます。第一に、青色申告制度国税に採用いたしておりまするが、大体それと同じような方式で、納税者負担をあまりかけないような形におきまして、附加価値税に関しましても来年度から青色申告制度を用いますようにいたしております。従いまして、みだりにこれに更正決定をすることはないということが反面出て参るわけでございます。また一度課税をし、決定をいたしましたものを再度更正をいたします場合、すなわち再更正につきましては、特に金額が過大である場合は、むしろ課税するのが納税者の利益でもございます。逆に非常に過小でありまして、その過小であることが納税者の詐欺というようなことから結果しておる場合に限りまして再更正をする、こういうような形にもいたしておりまして、再更正につきましては特にまた愼重を期しておるような次第であります。
  34. 門司亮

    門司委員 この税金が延期されましたので、この前の議論と多少かわつて来ると思いますが、私が心配いたしておりますのは、さつき申し上げました更正決定と申告の訓練といいますか、すべての納税義務者の納得の点であります。これについて特別の教育の機関といいますか、周知徹底せしめる方法を現在おとりになつているかどうかということであります。これは法の上にはそういうことは書いてないのでありますが、この申告納税と更正決定とは非常に大きな関連性を持つた重大な問題である。従来行われております国税の面を見て参りますると、実際の所得の把握が非常に困難である。同時に基礎の調査が十分に行われておらない。私はこの場合ぜひ一応聞いておきたいというよりも、むしろ意見として申し上げておきたいと思いますことは、附加価値税という新しい税金ができたことについての政府納税義務者に対しまする態度といいますか、教え方といいますか、これがほとんどなされていない。いきなりこれを出されて来ましても、大体税の本質から申しまして、納税義務者がほんとうに納得してこの税金を納めるということは困難であると考えておる。それほど困難なものがただちに実施されて参りますると、そこに必然的に起つて参りまするものは税の混乱といいますか、税金がわからないことのためにいろいろな疑義を持つて来る。たとえば申告をしなければならないと言われておつても、一体なぜ申告をするのであるか、どうしてこういう税金を納めなければならないかということに疑惑を持つて来る。この点については、前の会議でも大臣にただしたのでこれ以上聞きませんが、税の本質がはつきりしないのに、ただちに納税義務者に申告をせよというところに大きなむりがあるということと、もう一つは、従つて政府がこれの税率をきめて参ります場合におきましても、実際はわかつていないのであります。申告納税の行き方というものは、正しく申告してそれによつて税金の大体の見積りを把握するところに一応その原因がなければならない。従つて原則から申し上げまするならば、税金を徴収する前に、大体こういう税金を徴収するつもりだ。従つておのおのの附加価値に対する申告をこういう状態でしてもらいたいということで、大体課税額というものが一応把握されて、その上で課税率の決定を見ることが私は正しいと思う。ところが今までの政府の行き方というものは、所得税でも同じでありますが、税率をきめるときと申告とが同時になつておりまして、政府におきましては、課税額がどのくらいになるかはつきりつかんでおらない。従つて税率がぴつたり來ておらぬ。そこで更正決定をどうしてもしなければならない。いわゆる見込みの税金をとらなければならないということになつておる。そこで必要以上の税金が今日とられておることは御承知の通りであります。所得税においても百何十パーセント徴収したと言つておりますが、このくらい不都合な話はない。自然増収だと一面言つておりますが、自然増収のほかにまだ徴収しない、いわゆる残つておる税金も相当あるはずである。しかるに国民全体が納税を完納しない場合に、それが百パーセント以上見込額よりも徴収ができたという行き方自体に、非常に大きなむりがあつたのではないかと私は思います。この地方税の場合には、その点をひとつ特に重要視して、そういう税の混乱の起らぬように、むりな税金をとらないように、見込額というものによつて税金をとらないようにするには、どうしてもこの税金というものを——まあ来年からと言つておられますが、しかし実行するにはまだ早いのではないか。来年度に実行されますならば、申告と更正決定の間に、いろいろの問題を起して、納税の上に必ず支障を来すというふうに考えております。これも大臣に御答弁を願つた方がいいと私は思いますが、この税金はむしろ一応研究すべきものとして、今日ただちにこれを法律として出すということについては、一応お見合せになつたらどうかということと、さらにこれは立つたついでに聞いておきますが、政府にはそういう心配はない、実はこういう具体的の措置を講じておるというようなお考えがあるなら、それをひとつお示し願いたい。
  35. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。何を申しましても、新しい税法を施行いたしますときには、納税者の方においても、またこれを徴収する立場の方面におきましても、いろいろむずかしいことがあるだろうと思いますが、しかしこの画期的の税法を施行するということは、わが国の自治団体を強化して行く上に最も必要なことでございまして、どうしてもこれを実行しなければならぬ。そうすれば結局少しむずかしくても、まずこれを施行して行こう。その準備のために一年延期した、こういうことになつておるわけでありますから、その一年延期している間に、政府といたしましても、いろいろ指導をして行きまして、できるだけそういうような混乱とか紛争のないように、またうまく行くように準備しようと考えておる次第でございまして、私の確信といたしましては、この際やはりこのまま実行して一年延期したのちに実行に移したいと存じます。またそれに対しましては、準備期間もあることでございますから、相当の成績をあげてやつて行けるという自信を持つております。
  36. 小野哲

    小野政府委員 ただいま大臣から答弁申し上げましたように、一年延期後における附加価値税実施を目途として、政府といたしましては準備に万全を期したいと思つておるのでございます。門司さんも御指摘のように、新税でございますので、これが実施についての諸般の準備が最も大切であろうと思います。つきましては、地方自治庁といたしましても、地方団体の税務吏員に対しましてあるいは講習会を開くとか、または納税者に対しましては、できるだけ内容を熟知していただきますように、前もつて手を打つて参りたい、かように考えております。
  37. 門司亮

    門司委員 さつきの大臣の答弁でありますが、私はあまり追究はいたしませんが、ただ申し上げておきたいと思いますことは、準備その他の期間のことについての大臣のただいまのお答えと、それから実施が来年まで遅れたという理由には、大きな食い違いを生じておる。この点はどうお考えになつておりますか。大臣の今のお言葉によりますと、新しい税金であるから、準備その他のために、何かこの施行が遅れたように聞き取れたのでありますが、実際はそうではなくして、施行ができないのだということが原因で、そうして延ばされておる、こう私は考えておるのであります。そこでさつき申し上げましたような、準備ができない——準備と言いますか、徴税が困難であるということのために延ばされておるにもかかわらず、今の小野さんのお話によりますと、万全を期したいというお話でありますが、実際は何らの手が打たれてはいないというように私は考えておるのであります。おそらく政府はごく短かい期間のうちにいろいろな書類をこしらえて、地方の公共団体にこれを配布して、それが納税義務者に配付されて、そうしてこれが実施に向われると思いますが、ここでこのことを特に私は申し上げておきたいと思うのであります。たとえば今回国税の形がかわつて納税の期日がかわつて参りましても、その納税の期日というものがどういう形になつておるか。農業所得に対しましては、六月十五日までにこれを出せということになつておる。その著しい収穫に開きのあるものは六月十五日までに申告せよということが大体規定せられておつた。ところがその当時税務署に参りましても、実際用紙すら参つておらない。農民が参つて、税務署でどういうことを書くのかと聞いても、その用紙が来ておらない。また農民全部に配るほど来ておらない。それで私は国税庁に直接参つたのでありますが、国税庁に行つて聞いても、やむを得ないから今年の収入はこれだけだ、去年の収入はこれだけだ、差引これだけ減収だということだけでも、届けてもらわぬと困る、こういうことである。国税においてこんなことでありますことのために、しかも今までやつております申告すらそういう状態でありますときに、ことに新しいこういういろいろ複雑な要素を持つておりますものについて、そういう行き方をされたのでは、再び混乱を起すということが非常に危惧されるのであります。従つて聞いておるのでありますが、いまだそういうものについてのはつきりしたことは、私どもには示されておりませんので、ありますなら、具体的に示してもらいたい。これはこの前のこの税法審議するときにも、私は聞いたのであります。ところが、やはり今と同じようなお答えであつた。どこまで行つても同じであつて、二箇月余裕があつても、半年余裕があつても、同じようなお答えでは困ると思うのであります。その点は特に御注意を願いたいと思うのであります。  そのほか罰則の問題につきましては、いろいろ罰則が書いてありますが、これはここで申し上げないで、いずれ一括して希望を申し上げたいと考えておるのであります。  それから先ほど床次君からもお話がありましたように、附加価値税については迷惑をするというか、普通の業者よりも特に迷惑をいたします新聞の業者であるとか、あるいはその他から陳情その他がたくさん参つておりますが、せつかくこれが一年以上延期されましたときに、そこに何らの修正が加えられておらないということを、私は非常に遺憾に考えておる。もしこれが一年延期されるという余裕がありますならば、その間にいろいろな問題について親切に政府は国民の意思を取入れて、そうして新しい税法でありますことのために、これを修正されることが、私は正しい政府の行き方ではなかつたかと考えておる。国民の声というものをまつたく聞かないで、むりがあるということを知りつつ、これを強行されるという点については、私は非常に遺憾に考えておるのでありますが、そういう処置がどうして一体講じられなかつたか、この点をもう一応お伺いしておきたい。
  38. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 最初の、事務的の附加価値税実施準備が一体できておるか、できていないかという点でございますが、これはもちろんまだ法案国会を通過する段階に至つておりませんし、政府として表向きた公にこの準備をするということは困難でございますが、ただ従来も府県なり市町村の当局あるいはその代表の人たちに時折会合を求めまして、研究的な態度で、これを施行する場合にどうするかというようなことにつきましては、十数回にわたりまして研究のための会合を開いております。また事実この税を将来施行いたします場合に、担当いたします者の何と言いますか、教養的な、研究的な会合、講習会のようなものを開いておる次第でありまして、そういうようなことから徴税団体としては逐次心構え、準備ができておると思うのであります。ただ第一線の人たち、あるいは納税者に対しましてはこの趣旨が徹底しておらぬわけでありますが、これにつきましては何といいましても国税と違いまして地方税でありますから、地方議会は頻繁に開かれまするし、住民とのつながりというものはより密接なわけでありまして、この税の実施についての協力ということは、やはり地方団体のそれぞれの当局が總がかりでやるというようなことになりますならば——ことにまだ時間的に余裕もあるわけでありますから、むろんこれだけの新税でありますから、最初から完全には参らないにいたしましても、ある程度の実績を収めることができるのではないか、また私どもとしてはそれを念願して努力を続けておる次第であります。  附加価値税に対しましていろいろ陳情その他がありましたものを、一体政府ではどう処理しておるかという点のお尋ねでありますが、私どもといたしましても、その陳情趣旨は十分これを了解し、承知いたしておりまするが、もちろん中には取入れ得べきものと取入れ得ないものとがあるわけであります。しかしながら今回は何分早急にとにかく地方税法案審議を願つて国会を通過させていただきたい。こういう念願に燃えておるわけでありまして、関係方面との折衝につきまして、それらすべての点において満足の行くようなふうには参りませんでしたけれども、現在の段階におきましては、附加価値税をこういう形において実施することが、政府としては適当である。かように私ども考えておる次第であります。
  39. 門司亮

    門司委員 今の次長の答弁は非常に奇態に感ずるのであります。なるたけ早く通してもらいたいからということでありますが、国民の声というものが十分に反映していない法律案を早く通すわけには参りません。もしそういうものの考え方があるといたしますならば、至つて事務的なお考え方でありまして、こういう税金の問題がそういうふうに事務的に考えられるということは、私は非常に遺憾に考えておりますので、この点については意見相違でありますが、私どもはできるだけ国民の声というものが政治に取入れられて、そうしてそれを審議することが、審議の過程の上におきましてもよけいな文句を言わないで済みますし、早く済むと考えておる。一年これを延ばしておるということを、政府は何か非常に大きく宣伝されておるようでありますが、その内容はまつたく同じものであつて、ちつとも考えられておりません。ただ事務的に何でもいいから早く通せばよいのだというようなお考えでは、私どもこの税法をただちにそういう気持で審議するわけには行きませんので、さよう御承知を願つておきたい。われわれはさつき申しましたように、できるだけ国民の声というものを政治の上に反映させて行くことが、むしろ審議の過程においても早いのだというふうにお考えを願いたいと思います。  その他のことにつきましても、いろいろこまかいものはいずれ一括いたしまして、罰則その他についてもお話いたすことにして、ちよつとあとにもどりますが、總則の面の地方団体課税権の問題であります。第二條によりますと、「地方団体は、この法律の定めるところによつて地方税を賦課徴収することができる。」ということになつております。この第二條から見ますと、地方公共団体の課税権というものはこの法律の定める範囲で行われておるのでありまして、課税権というものはほとんど認められておらない。ところがきのうでありましたか、おとついでありましたかの答弁によりますと、何か課税権が認められておるようなことに書かれておつたのでありますが、この二條にはさつき申し上げましたようにはつきり書いてある。ただ三條が地方税の賦課徴収に関する規定の形式ということだけであつて、地方公共団体は規定を形式的に定めるということだけでありまして、まあ課税権を持つていないというふうに解釈されるように條文はなつておりますが、これはそういうふうに解釈してよろしゆございますか。
  40. 小野哲

    小野政府委員 昨日もこの問題を御質問になつたのでありますが、その際に地方団体といたしましては基本的な権能として課税権を持つている、かように答弁を申し上げたのでございます。この点についてはその通りと考えております。ただこの地方税法に掲げられておりまするあるいは賦課徴収の問題、あるいは第三條にございまするような点につきましては、課税権自体は地方団体にあるのでございまするが、これが運営にあたりましては、やはり地方税法によつて統制をはかる必要があるようなものにつきましては、その法律の定めるところによる、こういう解釈ができるものと考えております。
  41. 門司亮

    門司委員 私はその点が一向まだはつきりしないのであります。そういたしますると、たとえば課税権の問題についての字句の解釈というよりも、むしろ根本的の問題になつて来ると思いますが、もちろん地方公共団体が一つの法人として立つておりまする以上は、そこに課税権がなければならないことは、法人という建前からいえば一応私は言えると思う。しかし実質的の問題としては、この法律に書いてありまするように、地方税の賦課あるいは徴収ができるということになつて参りますると、課税権はありましても、賦課あるいは徴収することができなければ、実際上の問題としてはこれは役に立たないはずであります、ここに非常にこの法律の疑義があると申しまするか、課税権との関係が明確になつていないようでありまするが、この点をもう少し詳しく御説明つておいた方が、この法律を定める上において私はわかりいいのではないかと考えます。さつき申し上げましたように、一つの法人としての権限はもちろんあるわけでありまするので、これが自主的に生きて行く上においての課税権というものは当然なければならないと考えております。しかしこの法律によりますと、それが非常に困難であるように書かれてありますので、その点をもう一度承りたい。
  42. 小野哲

    小野政府委員 先ほどの私の答弁申し上げたのが多少言葉が足りない点がございますので、補足いたしたいと思います。今門司さんからの御質問がございますように、地方団体課税権を持つているということの根拠は、地方自治法によるものと考えているのであります。地方自治法によつて地方団体課税権を持つている、基本的な権能が与えられているのでありまして、その税の徴収その他の方法等につきましては、地方税法による、こういうことに御解釈を願つてよいかと考えております。
  43. 門司亮

    門司委員 そうすると、この地方税法による地方団体課税権という言葉が、私は先ほどから申し上げておりますように必ずしも適切ではないのじやないかと考えられるのでありますが、この辺もう少し明確になりませんか。これは課税権であるのか、一体徴収の方法であるのかということについて……。
  44. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 いろいろ地方団体課税権の問題についてのお尋ねでございますが、これはただいま政務次官から申し上げましたように、地方自治法の第二條によりまして、地方団体はその公共事務を処理するのである、こういう一つの基本的な権能があるわけでありますが、その公共事務を処理いたしまするためには、これに必要なる経費を調達し、またこれを動かすべき組織を持つ、すなわち自主的な組織権あるいは自主的な財政権というものが、そこから当然に生れて来ると思うのであります。そこで地方自治法の財政の章におきましては、地方団体がとりますところの地方税については、地方税法の定めるところによる、こう書いてございまして、その基本的な権能をどういうふうに行使するかということに関しましては、地方税法の定めるところにもつぱらよつているわけであります。この税法の第二條の、「地方団体は、この法律の定めるところによつて、」こうありますのは、要するに法律の運営と申しますか、わくと申しますか、地方団体がそれぞれ基本的に持つておりまする課税権を、どのようにして行使するかということ、その行使の方法はこの法律の定めるところによつておるのだ、こういうことを明示しているわけでございまして、見出しのところに地方団体課税権と書いてありますのは、課税権をどういうふうに行使するかという意味で、少し言葉をはしよつてございますけれども意味といたしましては地方団体課税権の運営の基本をこの法律で書いておるのである、こういうふうに御了解を願いたいと思うのであります。
  45. 門司亮

    門司委員 それでわかつたのでありますが、課税権を持つているということは、地方自治法ではつきりしておりますのを、ここで重複して書かれている。その内容は必ずしも法人であるという建前の上の課税権でなくても徴収賦課あるいは徴収するということだけしか書いてないので、その点にわれわれは非常に疑義を持つてつたのでありますが、この点は今の鈴木さんの御答弁で大体了解をすることができたのであります。しかし法律の上に書いた文字といたしまして、この課税権という文字については、何らかの疑義をまだ持つておるように考えられておりますので、でき得ればこの点はひとつ御訂正が願えればいいのではないか。いわゆる地方税法における課税権と、自治法における課税権とに多少の解釈をつけなければならないような問題は、ひとり何とか改めてもらつた方が読みいいのではないかというように考えられるのであります。これは先ほどから申し上げておりまするように、地方自治法が大体の基本法でありまして、基本法の中には課税権というものは当然書かれてよいと考えます。それから生れて参りました一つの税法の中に、さらに課税権を書くことは、実際はどうかと考えておるのであります。従つてこの点についての御研究をひとつお願いしたいと思います。  その他の問題につきましては、この中にありまする目的税の問題でありますが、目的税を課することは、総則の中に、できる目的税として書いてありまするが、一体目的税の範囲というものは、どの範囲にお考えになつておるか、もし具体的にお考えがありますならば、御説明を願いたいと考えておるのであります。
  46. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 目的税は、従来特定の施設を維持し、あるいはそれに必要なる経費を得るために、これを徴収をするという建前になつております。やはり精神としてはその受益というような限度を相当考えて行くべきものであつた考えます。現在一般的なものとしてとつておりまするのは、御承知のように都市計画割であります。都市計画割につきましては、必ずしも受益の限度によりませんで、一般的に課しておるような状況であります。これはやはり目的税の本来的な性格から申しますると、受益の限度を越えないという一つのわくをはめまして、そういう範囲でこれを真に目的税にふさわしいような形にいたしたい、かように政府としては考えておるわけであります。目的税として今後とられまするものは、それぞれの地方団体の実情によつてつて参ると思うのでありまするが、たとえば現在大都市等で、屎尿のくみとり等に要しまするものを、一つの共同施設税という形でとつておりましたり、あるいは農村地帶におきまする共同の営造物につきまして、こういう形でとるというようなことが考えられるわけでありますが、なお政府としては、都市計画事業等につきましても、やはり同様なことで、この目的税として水利地益税というような形において、必要なる場合はとる。但しその場合も、従来のように一般的にかけるのではなくて、やはり受益の限度というわくをきめて考えたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 門司亮

    門司委員 そうするとこの目的税は、大体の趣旨は、従来の受益者負担というような形でいいというお考えでありますか。
  48. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 従来の観念の分析から申しますると、ただいまお話になりましたような、そういうような見地に立つた税、かように御了解願つてけつこうだと思います。
  49. 門司亮

    門司委員 その次に第五條の三項でありますが、「市町村は、前項に掲げるものを除く外、別に税目を起して、普通税を課することができる。」こういうことになつておりますが、この普通税の範囲というものは、県税も同じでありますが、非常に問題になるものがあります。たとえばきのうも問題になつておりましたような、青森におけるりんご税というようなものは、普通税に新属すべきものであつて、決して目的税でないと私は思うのだが、そういうものに対して許可と言いますか、認可と言いますか、それは中央の地方財政委員会で行われると思いますが、これらについての政府の、範囲と言いますか、その範囲をこうしたいというような具体的なことがおわかりになつておりますならば、その例を示しておいていただきたいと考えるのであります。先ほどから私が目的税並びにこういう税金を申し上げておりますのは、寄付金を限定いたしておりますので、往々にして苦しい町村になつて参りますると、寄付金がとれないとなると、むりな税金をかけて来る可能性が必ずしもないではないように考えられますので、実は念のために聞くのであります。この目的税の方は一応わかりましたが、普通税の方でもし政府に具体的に何かお考えがあるなら、お示し願つておきたいと思うのであります。
  50. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 法定外普通税につきましては、昨日申し上げましたように、むろん市町村がその財政自主権からいたしまして、特別な財政需要がありまして、一般の法定税目等によりまする税をもつてしても、なお財政需要をまかない得ないというような事情がありまして、しかもそれを中央の地方財政委員会の方に申し出て参りました場合においては、その財政自主権をあくまでも尊重するという建前から、地方財政委員会においては、これを処理するということになると思います。しかしながら現在の地方財政計画において、千九百八億という財政需要に見合う数字を法定税目等によりまして一応考えておるのでございますから、さしあたつて来年度の問題として、そうこの法定外普通税というものの運用によりまして、まかなわなければならぬということは、一般論として申しますならばまずあまりないのではないかと考えるのであります。ただ非常に特殊な市町村等において、このような法定外普通税によらなければならぬようなことが、あるいはありやせんかと存じますが、一般論としましてはそういうふうに申し上げたいと思うのであります。
  51. 門司亮

    門司委員 この問題ですが、今の御答弁では、大体財政需要額から来るものでやむを得ぬというお話がありましたが、実際は市町村においては、そうでなくても、何か一つの特殊事業その他によつて、これが特別に地方の公共団体に迷惑をかけておる場合は別でありますが、そうでなくてもあそこからとればとれるのだという感じで、普通税というものが起される危險性があると思うのであります。それは一面から言いますと、特殊の事業と言いますか、そのことのために特殊の利益を受けておるかしれぬが、税の負担均衡の上から行きますと、必ずしも正しい行き方ではないように考えられる面があるのではないかと考えておるのでありまするが、今の御答弁のように——繰返すようでありますが、重要なことだと言うよりも、むしろ将来問題を起す問題と思いますので、念のためにはつきりとお聞きしておきたいと考えるのでありますが、あくまでも目的税あるいはその他の普通税を起す場合においては、財政需要を主として考えるということに解釈してよろしゆうございますか。
  52. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 その点はこの地方税法案の六百七十一條、府県の方も同様でありますが、二百六十一條、ここに法定外普通税の許可の條件といたしまして、はたしてその税がとれるかどうか、税収入が確保できる税源があるかどうか、これが一つの許可の要件であります。いま一つの要件といたしましては、その収入を必要とする当該地方団体の財政需要があることが明らかであること、この二つの要件を具えていなければならない。この二つの要件があればこれを許可しなければなりません。但し内国関税的なもの、その他国の経済施策上適当でないものは許可しない、こういうことが明確にうたつてありますので、御心配になるような点はないと存ずるのであります。
  53. 大矢省三

    ○大矢委員 ちよつと具体的な問題ですが、御承知のように、大都市では特に道路占用料とか道路使用料とかいうものをとつておる。特にガス会社あるいは配電会社の埋没線、ガス管等について、道路使用料としてとつておる。ところが今度の地方税法の改正によりまして、埋没線あるいはガス管は固定資産の償却資産として地方税に入るが、それに今度はさらに従来のように道路占用料として課することができるかどうか。これは目的税と言いますか、相手に能力があり、また地方の財政に応じてとるということになつておりますが、そういう具体的な場合においてはどうですか。今までは償却資産は地方税に入つておらなかつたが、今度は入りますから、占用料をとつて、さらに償却資産として地方税に入るということになると、そういう特別な目的税と言いますか、受益者税と言いますか、そういうのをとつていいのか悪いのか。
  54. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 自動車の場合でございますが、自動車が道路を損傷いたしますことの代償と言いますか、反対給付といたしまして、道路損傷負担金と申しますか、道路法の規定によりまして、道路を維持いたしております府県に対しまして負担金を納めることは、これは現行の道路法の建前から申しましても、あり得ることと思いますし、現に地方団体である程度つておると思います。またそういう会社に対しましては、国定資産税は、これまた別に市町村が課税するものでございますから、団体が違いますので、これはやはりそれぞれ法域の原則に従いまして、地方税は納めなければならない、かように考えております。
  55. 大矢省三

    ○大矢委員 はつきりしませんが、道路損傷と言いますか、掘鑿してあと修理するというのは当然です。しかし埋沒線を配電会社なりガス会社が使つておるということで、損料以外に特別税として占用料を現に払つておる。ところが今度の税法の改正によりますと、埋沒しておつても、ガス管なりあるいは配電線に対してちやんと税金を納める。そこで原形に直す修理に必要なものは当然納めなければならぬが、占用料として従来通り課することができるのか、あるいはそれを今度もし申請した場合に許可するのかせぬのか、これをお伺いいたします。
  56. 奧野誠亮

    奧野説明員 道路占用料などは、道路を使用しているという意味における使用料であります。新しく生れます固定資産税は、使用しているとか、あるいは特に受益しているとかいうようなことを別に考えませんで、やはり税でありますので、応能を本体とて課税して行くわけであります。従来道路占用料というようなものの費用を負担していなかつたというものは、たくさんあるわけでありますけれども、償却資産に対してはみな新しく課税されるわけでありますから、従来道路の占用料を負担している人に対しましても、また何ら負担していなかつた人に対しましても、償却資産に対しましては、あくまで応能的な税が課税されることになるわけであります。占用料ではなく使用料の性質だということにお考え願いたいと思います。     〔松本(六)委員「それを聞いているのじやない、それがかかるのに、さらに目的税がもう一度とられるかどうかということです」と呼ぶ〕
  57. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 どうも御質問趣旨を私ども取違えて御答弁申し上げたかもしれませんが、ガス会社が道路を占用するというか、仕事の関係におきまして、たとえば報償契約によつて一定の金を市の方に納めるというようなことは、従来からずつと一つの公法上の契約という形で、やつて来ていると思うのでありますが、そういうようなものと別個に、道路損傷負担金というような形で、道路の損傷に対する負担金という意味で、道路法の規定によつてつておりますものと、やり方は二通りあるのではないかと思いまするが、そういうようなものが、あるいは競合して行われているということもあり得ましよう。そういうことももちろん可能であると思います。ただ御指摘の点は、そのように同じような客体に対してダブつていろいろな方面から税がとられるというのは、適当ではないじやないか、こういう点がお尋ねの核心であろうと存じますが、その点はりくつから申しますと、あるいは課税団体が違つてつたり、あるいは法律上の根拠が違つてつたりいたすわけでございまして、それぞれ収納し、あるいは徴税いたすべき理由があると思いまするが、そういうような具体的の問題に関しましては、それぞれ各徴税の衝に当ります地方団体におきまして、具体の事情を判断いたしまして、適当の措置が行われるだろうと思うのであります。何分地方税でございまするから、地方議会との関係は密接でございまするし、地方民の意思が議会を通じて反映せられますならば、その辺は適当なる考慮が払われることも期待できると思うのであります。
  58. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花敏男君。
  59. 立花敏男

    ○立花委員 ちよつと今のりんご税に関連いたしましてお聞きしておきたいのです。鈴木君の答弁では、財政需要が主たる理由であり、またしかも地方団体の議会あるいは理事者側のはつきりした要請があれば——それが唯一ではございませんが、重大なる許可、不許可の目安になるだろうというようなことでしたが、実際青森県のりんご税の問題は、非常に複雑な問題をはらんでおりまして、やはり地方の自治体と生産者との間に、大きな対立ができているようです。内容を聞いてみますと、りんごが下りました時分には、五貫近く入つているりんごの中身だけが十円だというときがあつたようです。ところがこれに対しまして、県で十五円、市町村で十五円、合計三十円のりんご税がかかつている。そのほかに五円二十八銭の検査料がとられております。この検査料は八千万円近くになりまして、しかも実際の費用は三千万円くらいしかいつておりませんので、五千万円くらいはやはり税的な性格を持つている。そうするとりんご関係だけで二億五千万円ばかりの税的なものがとられておるのでありますが、これが果実類の値下り、あるいは長野県との競争等におきまして、生産者にとりましては非常に大きな負担になりまして、耐え切れないというところまで来ているわけであります。それを県の方ではやはり財政需要の見地から地方に対して存置の運動をやつているようです。この関係で、実は県会の分野がかわりまして、民主党の知事が自由党に入党した、そうしてりんご税の温存をはかつているというようなうわさも私ども聞いておるのでございますが、こういう形で進められまして、かつての独立税の存置が許されましたならば、県内に大きな生産者と県機関との対立が生れて来るだろうと思う。しかもこれからの地方の財政需要が緊迫して参りますと、あるいはこういうことが至るところに起つて来ると思います。たとえば土佐では、すいかがたくさん出るからすいか税、あるいは私どもの方は、みかんがたくさん出ますからみかん税、こういうことになつて参りますと、たいへんなことになつて参りまして、実際生産に従事する連中と、地方議会あるいは地方理事者との対立が大きくなつて参りまして、重大な問題をはらんで来るのではないかと思います。この問題はやはり今はつきりした根本的な態度をおきめになることが必要ではないかと思いますが、その問題に関する見通しをひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  60. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 りんご税の問題は、昨日も申し上げましたようにこの六百七十一條の税法の規定の運用の問題でございまして、地方財政委員会がその自主的な立場から、許可をするかしないかを決定するわけであります。ただその許可の條件としては、先ほども申し上げましたように税源がある。またそれを必要とするところの特別の財政需要があるということが明確になつておらなければならぬのであります。そういうような條件に該当いたします限りは、これは財政自主権を尊重するという建前から、地方財政委員会としては許可するわけでございますが、ただそれに書いてありますような各種の要件——国税地方税と重複しはしないかどうか、あるいは経済施策全般から言つて適当であるかどうか、あるいは内国関税的な作用があるかどうか、こういう点は、これらを許すことによつて生ずる利益と、これを許さないことによつて生ずる不利益との相互比較の点から申しまして、決定されることであろうと考えるのでありまして、そういう御趣旨地方財政委員会の方に、私どもといたしましても連絡をいたしますが、その運用は地方財政委員会において行われることになつておるわけであります。
  61. 立花敏男

    ○立花委員 次官にお伺いいたしたいと思います。これは一般的な総括質問の部類に属するかと思いますが、税法をおきめになる場合に、やはり将来を見通しておきめにならないといけないと思うのでございます。現在だけをごらんになつておきめになりますと、この税法がいざ実施になります場合に、非常に大きな矛盾が起つて来ることは当然でございまして、そういうようなはつきりした見通しを持つて税法をおきめになる必要があると思うのでございますが、こういう問題に関しまして、政府としてはどういうふうに今後の地方財政の見通しというものを、お持ちになるのでございましようか。簡單でよろしゆうございますから、ちよつとお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  62. 小野哲

    小野政府委員 お答えいたします。地方税法によりまして税収額をあげて行くためには、何と申しましても地方の財政が計画的に運営されなければならない。計画的な運営をいたしますためには、地方の財政計画が必要でございますと同時に、地方の政財計画はやはり国家の財政計画とも関連を持つておるわけでありますので、政府といたしましては、全体を総合的に勘案しながら、将来の問題を考えて行かなければならぬ、かように考えておるのでございます。ただ地方税自体の問題として考えますならば、将来において、たとえばただいま論議がございました法定外普通税の問題であるとか、あるいはまたこの法律案において非課税対象になつておりまするものについて、将来これをどうするかというような問題につきましては、実施の状況を勘案いたしまして、地方財政委員会において十分に検討を加えて行きたい、かような考え方を持つておる次第でございます。
  63. 立花敏男

    ○立花委員 国家の財政計画との関連で行くということをおつしやられましたが、私どもはその立場から、実はこの地方税制に対しまして非常に危惧の念を持つておるわけなのであります。たとえばここに益谷前建設大臣がおられますが、災害の問題でございます。これに対しましては、過年度分が三百七十億、今年度分といたしまして百億、合計四百七十億と承知しておりますが、こういう金額が、ことし国家財政の方から災害に対する施設に出されております。しかしこれは、政府自身が御発表になりました千六百億という災害の累積に対しましては、数分の一でしかないわけであります。しかも前年度におきましても、九百億近い災害が一箇年に起つております。これに対しまして新年度といたしましてわずか百億、こういう形が現在の国家財政でも出ているわけでございますが、しかも現在聞くところによりますと、見返り資金から出ますところの公共事業費は、ほとんどもうないというような状態だと聞いております。こういう形になつて参りますと、現在でも足りないこの災害費などが非常に食い込まれまして、結局災害が起りました場合の負担は、地方の負担になるというおそれが多分にあるのではないかと思うのです。これはただ災害の問題だけに限つたのでございますが、こういう見通しを産業あるいはその他の問題につきまして、ずつとお立てになつて税法をおつくりにならないと、いざ税法で税金をとるという段になりまして、そろばんが合つても金がとれないという状態が起るのではないか。あるいは計算の上では災害が防げるということになつているが、実際はもう災害を防ぐ財政的な力が、地方にはなくなつているという状態が起つて来るのではないかと思うのであります。この間の建設白書を見ましても、災害は三十年経たなければ治まらない、河川の修理は三十年経たなければできないということがはつきりと出ておるのでございますが、これがこの秋ごろには、非常に大きな問題となつて現われて来ると私は思うのであります。そういう問題でどういう見通しをお待ちになつておるのか承りたいと思います。
  64. 小野哲

    小野政府委員 御指摘のように、国家財政と地方財政の有機的な関連におきまして、国全体の財政運営をやつて行かなければならないということは、私から申し上げるまでもないかと存じます。特に地方財政が御承知のような経過をたどりまして、十分な裏づけをされておらないということのために、今回地方財政の強化をはかる方途として、地方税法の改正をいたすことに相なつておるのでございますが、ただいま例としてお話になりました災害復旧費の問題につきましても、二十五年度においては災害土木についての全額国庫負担の特例を認めているような次第で、これによりまして多少なりとも地方団体負担軽減をはかるという方途に進んでおることは御承知の通りでございます。将来の見通しいかんという問題でございますが、政府といたしましては、これは地方財政の確立、自主性の確保という点に向つて進んでいるという、大きな基本的な方針に即応した見通しを立てて行かなければならぬのと、具体的には経済その他国家財政の現況とのにらみ合せにおきまして、どの程度地方財政の確保をはかり得るかということについて、十分な検討も加えて行かなければならぬことと思うのでございまして、單に個々別々に切り離してこれを考えないで、地方財政の確立を目途とする基本原則に立脚しつつ、これが確立の方向に進んで行く、こういうことが基本的な考え方だろうと思います。従つてただいま御質問のありました具体的にしからば来年度はどうなるか。さ来年度はどうするかということを、ここでただちに御答弁申し上げることは、二十六年度の予算編成等と考え合せまして、政府といたしましては、特に地方自治庁といたしましては、地方財政の確立のために一層の努力をいたして参りたいということを申し上げておきたいと思います。
  65. 立花敏男

    ○立花委員 この問題は、私どもが前国会附加価値税に反対いたしました根本的な理由であつたわけなのです。今後の日本の産業の進み方が、この附加価値税をもつてしては、さらに階級的な分化を促進するものだというふうな建前から私ども反対いたしました。そういう見通しが、最近の二、三箇月におきましても、はつきりと数字の上で現われて来ておると思うのです。こういう点をはつきりとお取入れになつて附加価値税を修正されることが、私ども実は非常に望ましいと思つてつたのでございますが、依然としてこういうふうに、もとのままの形で出て来ているわけですが、こういう点を資料の上で検討なさつたのか、なさらなかつたのか、またなさつたが、やはりそういう傾向を是正する立場ではなしに、より促進するという立場で、この税法をお出しになつたのか、そういう点をひとつ承りたいと思います。政府がお出しになりました経済白書の中にもはつきりと私どもが危惧しておりました形が現われて参つておりまして、これでは結局何と申しますか大企業、軍需産業を一層促進することになりこそすれ、決して日本の必要とする平和産業あるいは中小企業を——今非常に困難な立場にあるそれらの産業を何とかするという立場には、決して立つていないのでございます。こういうことを御存じの上でおやりになつたのかどうかということを、はつきりしておいていただきたいと思います。
  66. 小野哲

    小野政府委員 繰返し申し上げるまでもないのでありますが、附加価値税本質は、特に附加価値という考え方は、国民経済に附加された価値、他の言葉をもつてするならば、国民所得に対して加えられました増加分ということに御解釈願つてよいかと思うのであります。従つてこの附加価値が生み出された場合に、これを対象として課税をいたします考え方は、必ずしも大企業に偏してこれを保護するというような意味ではなしに、むしろ全体としての負担均衡を維持して行こうということが、本来の目的でありますので、ただいま御指摘になりましたように、いたずらに平和産業——おそらく立花さんのお考えになつておられるのは、中小企業の問題ではないかと存じまするけれども、むしろ中小企業に対しましては、この附加価値税の適切なる運営によりまして、將来好転する形に持つて行くものではなかろうか、かように考えておるのでございます。この点につきましては、さらに附加価値税自体の御論議において、十分な御検討を願いたいと存じまするが、ただいま申しましたような考え方で、負担均衡をはかる意味合いにおいての附加価値税についての御了解を願いたいと思うのでございます。
  67. 立花敏男

    ○立花委員 次官の御説明によりますと、国民所得の増加分でございますが、とにかく増加分に課税したのだとおつしやいますが、これは決してこの税の本質ではございませんで、課税の便宜上の一つの標準でございまして、実際はこの間から大臣も言つておられますように、これは転稼を予想した税金であることは明らかである。その建前におきまして、形の上では増加分に課す税になつておりますが、実際は転稼されるものが負担することは明らかである。こういう建前におきまして、私どもは実はこの附加価値税は労働者に対する三重の課税と申しますか、労働者の賃金部分に対する課税を含み、あるいは次官が言われます中小企業には特に弊害にはならないとおつしやいますが、最近見返り資金などの産業への注入は、たとえば炭鉱業者などに対しましては、機械設備、企業の合理化を條件といたしまして、新しい機械設備をするという條件のもとに、どんどん炭鉱業者へは金が入つております。しかも中小企業にはほとんど入つていなくて、大企業にどんどん入つているわけなんでございますが、こういう場合に、この入りました見返り資金で買いました機械の額は、いわゆる増加分から除かれるわけであります。附加価値税対象から除かれるわけであります。こういうものはほとんど大企業に限られております。ところがいわゆる中小企業の方では、困つておりますのは運転資金でございまして、設備を新しくするとかあるいは新しい機械を入れて合理化するということはほとんど不可能だ。こういう場合の例をごらんになつても明らかなように、決して附加価値税負担均衡とか、あるいは公平な課税であるということは言えないと思うのでございます。こういう傾向が第一回国会のときにもあつた。しかも今後そういう傾向がますます増大されるであろうという建前のものとにおきまして、そういう見通しに立ちまして、私どもはこの附加価値税に反対したわけであります。ところがその見通しが今ではもつと激しい形になりまして、いわゆる中小企業と大企業との形が、軍需産業的なものと平和産業との破壊的な開きになつて現われているわけなんです。この際にもやはり附加価値税をもとのままでお出しになるということが正しいかどうか、これはわれわれといたしましては納得できないのでございますが、前の国会における場合と今とでは見通しをつけます場合にも、非常に大きな事実の相違がございます。しかもそれはごらんになりましてもわかることでございますし、資料の上でもはつきり現われておるのでございますから、これをやはりお取入れになつて附加価値税を修正されるか、あるいはこういう税を全面的に撤回されることが正しいのではないかと思うのでございますが、こういう具体的な問題に対する見通しをどういうふうにお持ちか、御説明願いたいと思います。
  68. 小野哲

    小野政府委員 立花さんといたしましては、いろいろ御議論もおありになることと拝察するのでございまするが、政府といたしましては、諸般の情勢を勘案いたしまして、附加価値税を施行することが妥当である。かような結論に到達いたした次第でございます。
  69. 立花敏男

    ○立花委員 非常に簡單なお答でございますが、私ども経済白書などを見ますと、企業整備の状況が出ておりますが、たとえば工業でございますと、これは二十四年の二月から本年の三月までですが、整理件数が八千三百七十四、首を切られた人間の数が三十二万四千で、その比率は六三%に達しております。こういうふうに企業整備は、数字の上で見ますと、非常に恐ろしいような数字になつておりますが、こういうふうな企業整備がどんどん行われておるわけなんです。しかもこれを促進するような税法をお出しになるのが正しいかどうか、その点政府としてどうお考えになつておるのか、あくまでもこういう傾向を進める税法をお出しになるのか、政府としての根本的な方針はどうか、それをひとつつておきたいと思います。
  70. 小野哲

    小野政府委員 附加価値税の本来の目的の一つといたしまして、負担均衡をはかりますと同時に、企業の合理的な経営を目的といたしておりますので、この税の施行によりまして、わが国の産業の構成なりあるいは経営等につきましては、おいおい立花さんの御指摘になりましたように合理化の方向に向つて促進されるものであろうと考えております。
  71. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花君、なるべく総括の質問と重複しないように願います。
  72. 立花敏男

    ○立花委員 今日の新聞を見ましても、産業新聞でございましたが、非常に株が上つております。その上つております株は、船舶、鉄、石炭というような株であります。これらの株は現在の朝鮮事件を契機として、どんどん上つておる株なんですが、こういう問題がはつきり毎日の新聞の上にも現われておるわけであります。しかも従来としてもこういう産業に対して、どんどん企業の合理化が行われ、機械設備が行われ、そういうものにのみ見返り資金などが集中されて参つたのですが、そういうものが実はこの税法で助かる、それ以外のものはあまり助からないという形がはつきり出て来ておるのでありまして、そういう問題はやはり今の次官のお答弁のように簡單に片づけられずに、もつと愼重にお考えになる必要があると私は思います。そういう点で政府の再考をお願いしておきたいと思う。  それから附加価値税の問題につきまして、これが審議の過程におきまして、勤労者に対する課税事業家に課する税とにわけたらどうかというような御意見があつたように聞いておりますが、私ども前の国会で反対いたしました主たる理由は、やはりこの附加価値税の中の人件費に対する課税なんです。これが非常に大きいこの一兆幾らになります一箇年間の人件費に対しまして四分、最高で言いますと八分かかつて参るのでありますから、数百億の賃金部門に対する重荷が来るわけでありますが、これはやはり何とかお考え願わないといけないと思うのでございます。これがそのまま今度の附加価値税に取入れられております。しかも最近の傾向を見ますと、失業者の数がやはりどんどんふえておりますし、さいぜんも少し企業整備の問題で、解雇者の数に触れましたが、この統計の中にもはつきりとその数が現われておりまして、こういう問題がもはや明々白々な事実であるにかかわらず、しかも賃金部門に対するそういう負担の面に対しまして、何ら考慮を加えられていない。審議の過程におきまして、人件費に対する課税を別にしろというような意見があつたと聞いておりますが、それがなぜこういう元のままの形で出て来ておるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  73. 小野哲

    小野政府委員 これはしばしば本委員会におきまして、前国会並びに本国会においても御所見の御開陳があつたのでございますが、附加価値の性格なり本質から考えまして、生産所得の方面からこれを見、あるいはまた分配所得の方面からこれに検討を加えますと、やはり労賃というものが附加価値を生み出すための要素として考えざるを得ないのであります。従いまして国民経済に附加されました価値の中の重要な一部門として考えることに相なるわけでございます。ただこの税を実施いたします場合におきまして、新税でございますので、あるいはその経過的な事態といたしましては、いろいろの問題が起り得るかとも考えますけれども、これは單に地方税法のみの問題ではなしに、全体といたしまして、あるいは社会保障制度の拡充の問題であるとか、その他総合的な施策によりまして、この問題の解決に対処すべきではないか、かように考えておるのでございまして、附加価値税そのものの基本的な考え方から申しますと、労賃を除外するということは、政府としては考えておらない次第でございます。
  74. 立花敏男

    ○立花委員 少し方面をかえたいと思います。現在平衡交付金を概算でお渡しになつておられますが、これの精算はどういうふうになさるおつもりなのか、また精算ができる見通しがあるのかどうか、承つておきたいと思います。
  75. 小野哲

    小野政府委員 今回臨機の措置といたしまして、地方財政平衡交付金の概算交付をいたしておるのでございますが、今後地方税法が成立施行いたされました以後におきましては、これらの点につきましては適当な調整の措置をとりたいと考えております。
  76. 立花敏男

    ○立花委員 現在お持ちの資料では、概算で、多分かつての配付金の割合によつてお出しになつているのだと思いますが、でこぼこがございますので、返さなければならぬ所があるだろうと思いますけれども、おそらく使つてしまつて返せないのじやないかと思います。こういうものに対する処置をどういうふうにお考えになつているか、承つておきたいと思います。
  77. 小野哲

    小野政府委員 お答えいたします。かりに地方団体におきましてもらい過ぎであつたというようなことが起きました場合においては、精算いたしまして還付してもらう方法をとりたいと考えてなります。
  78. 立花敏男

    ○立花委員 還付が可能であればいいのでございますが、おそらく私は現在の地方の財政交付金の状態から申しまして、還付は不可能だと思います。そういう場合に、平衡交付金の増額というようなことをお考えになつていないのかどうか、お伺いしたい。
  79. 小野哲

    小野政府委員 重ねてお答え申し上げますが、もし地方団体において過剰に受入れておるというような場合がございますれば、法律の定むるところによつて還付をいたさなければならない義務がございますので、これに基いて正規の手続をとつて参りたいと考えております。
  80. 立花敏男

    ○立花委員 農業專従者に対する課税の問題でございますが、農業專従者に対して住民税をおかけになる場合に、專従者は非課税なのかどうか、承つておきたいと思います。
  81. 小野哲

    小野政府委員 もしそういうことがございますならば、この点につきましては、地方財政委員会において十分に検討いたしたいと考えております。
  82. 立花敏男

    ○立花委員 今の御答弁ちよつとわからなかつたのですが、農業專従者でございます。これは課税対象になるのかならないのか。
  83. 奧野誠亮

    奧野説明員 專従者というような形において所得税が運用されるものでありましても、客観的に見まして所得があると認められるようなものでありました場合には、均等割は課税されます。しかしながら現実に所得税を納付いたさないものでありました場合には、もとより所得割は課税されません。しかし專従者が扶養親族であります場合には、地方税法の規定に従いまして、均等割を減免することができるということになつております。
  84. 立花敏男

    ○立花委員 大体所得税を納めていない農業專従者は、所得割は課せられないと考えていいわけですね。  次にお伺いいたしたいのは、八月、九月以降の国税、府県税、市町村税の徴収の競合でございますが、これは私おそらくたいへんなことになつて来るだろうと思います。私どもの計算によりましても、六千億から七千億近い金が秋から年度末にかけましてとられるのでありますが、これに対しまして国と府県と市町村とが税金の取合いをやるわけであります。これに対しまして、今までは府県と市町村ははつきりわかれておりませんでしたが、今度ははつきりわかれまして、これが三つともえになつて差押えの強行、あるいは徴税の強行をやるわけであります。これに対して対策を立てておかぬと、とられる方は一つでありまして、たいへんなことになるだろうと思います。これに対する見通しはどういうふうにつけておられるか、またそれに対する対策はどういうふうにお立てになつておるか、お聞きいたしたいと思います。
  85. 小野哲

    小野政府委員 二十五年度の特殊な事情に鑑みまして、提案いたしておりますこの地方税法中において、納期の点におきましては一応調整をはかる道を開いておるような次第でございます。なお後半期において徴収等の関係をも考慮いたしまして、前の委員会で御説明申しましたように、ただいまからこれに対する心構えをもつように、各地方団体においてもせつかく努力をいたしておるような次第でございます。
  86. 大矢省三

    ○大矢委員 時間が経過しておりますから、ごく簡單に二、三お尋ねいたします。  先ほど来立花君からお話がありましたように、今度の附加価値税で、労働賃金は経費としてこれを認めないということでありますから、販売業と加工業との間に不公平がある。一例を申しますと、加工業あるいは修理業、特に理髪業のごときはほとんど労働賃金でありますので、販売業と比較して修理、加工、理髪業に対して重圧になると思いますが、この矛盾について何か考えておられるのか、あるいは、これは附加価値税性質から見て当然であると考えられるのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  87. 小野哲

    小野政府委員 大矢さんの御指摘になりました御意見はごもつともと存じますので、この法律案におきましても、その業態について、あるいは十分な措置とは言えない点もあるかとは存じますけれども、これらの点も考慮いたしまして、あるいは税率等において差等を設けるとか、そういうような方法を講じたいと考えておる次第でございます。
  88. 大矢省三

    ○大矢委員 それから前の事業税あるいは特別所得税の中に特に衛生、保健、医療のごときは非常に負担率が軽減されております。特にこの事業税なんかは、医療衛生関係はついてなかつたのであります、特別所得税としてはついておりましたが……。今度は第三種ということにはなりましたが、事実上前の第二種の事業税と同様のかつこうをとられている。これもまた何か公平のためにこうされたのか、特に何らかの配慮があるかということを承つておきたいと思います。
  89. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいまの点は、御指摘のように従来特別所得税ということで、別わくになつてつたわけでございまするが、しかし事業税特別所得税の性格としては、名前がかわつておるだけでございまして、同じような性格のものでございましたので、今回この附加価値税にいたしました場合におきましては、一本にして第三種の事業といたしまして、特別所得税の第一種、第二種を加えたわけでございます。税率につきまして、同じ税の中にはございまするが、特に考慮をいたしてありまするので、このような形でやりたいと思つておるわけでございます。
  90. 大矢省三

    ○大矢委員 それから第三十四條、いわゆる免税点、これはここに九万円とありますが、九万円になりますると月に七千五百円です。これは家族四、五人で実際上従事しておるところの工場とか、あるいはまた販買業などがありまするが、こういうものの免税点をもつと引上げる必要があるのではないかということを、私は考えるのです。さらにこの但書に、これよりもつと下げてとつてもよろしいということが書いてありますが、どうしてこういうことをつけたかということが、私にはわかりません。この但書を削除する意思があるかないか。
  91. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この附加価値税免税点の十二箇月分として九万円といいますのは、事業税現行免税点が四千八百円でございますが、それとの関係並びに取引高税の同様の点などを考慮いたしまして、今の四千八百円というのを——これは純益について押えているわけでございますが、これを大幅に引上げまして、大体一年分として九万円というところで押えよう、こういうわけでございます。そういう関係がございまして、一応但書はつけてございまするけれども、それは地方団体のそれぞれの実情に応じて処理せられるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、それぞれ地方議会等におきまして、これらの運営につきましては遺憾のないような措置が行われるもの、かように考えております。
  92. 大矢省三

    ○大矢委員 この法文をずつと見てみますると、各條、各章にわたつて相当な罰則その他いろいろ厳重な規定が設けられておりますが、税務吏員に対する責任性の問題が一つも書いてない。それでこれは別な法律でつくるのか、これに何かつけ足して、かりに更正決定その他の取扱いで、非常に不正なことがあつた場合には、やはり何か責任を持たなければならぬ。こういうことがしばしば現実としてあるのです。現に非常に苛酷な推定をしまして、そこに更正決定を求める。しかし期間が来て差押えすることが決定されておる。それで差押えをし、公売して物がなくなつてなる。これは税務吏員の推定が誤つた結果、そういう迷惑がかかる。こういう場合に、何ら制裁規定といいますか、責任をとらないということになりますと、これはまつた納税者の迷惑だけでありまして、別に何らかのそれに対する規定を設けられるのか、今日もうこれでよろしい、税務吏員の教育その他監督によつて、それが除去される確信があられるのかどうか。納税者もまつたく迷惑しておるところがたくさんありますから、この機会にちよつとお尋ねしておきたいと思います。
  93. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 徴税吏員は、申すまでもなくそれぞれ地方団体の地方公務員でございますから、地方公務員に関しましての一般的な服務についての規定その他各種の制度が、当然動いて来るわけであります。従いまして刑法の公務員に関する罪と申しますか、涜職の罪とか、そういう規定は必然的に動いて参ります。と同時にこの税法案におきましては、特に徴税吏員が徴税に関する調査の事務に従事しておつたような場合におきまして、その事務上知り得ました秘密を漏洩いたし、あるいはこれを利用した。こういうようなものにつきましては、特にこれを処罰するような規定を設けておるような次第でございます。
  94. 大矢省三

    ○大矢委員 今私が申しましたように、そういういろいろな地方税の迷惑をこうむつておる地方、あるいは市町村に対しても——これは多分大蔵省関係でないとできないことかもしれませんが、更正決定がなされるまでは——差押えはやむを得ません。しかしこれを公売に付することを延期するということの何か弁法があるのかないのか。これは新しい行政措置で出ているのか、あるいはまた地方自治体で條例か何かでそういうことができればけつこうだと思いますが、せめて地方税法に対しても、そういう措置が行政措置としてできるようにしてもらいたい。差押えはやむを得ないが、公売だけは、更正決定ができるまではこれを許可しないように……。
  95. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 この点は、やはり国税地方税におきましては、おのずから運用の実際におきまして違う点があると思うのであります。と申しますのは、先ほど来申し上げますように、それぞれ地方団体徴税吏員が、その地方団体の区域の中から徴税をするのでございますから、やはりそれだけ納税者の実情についてもよく了解をいたしておりまするし、また地方議会におきましての批判というものが相当直接的でございまするから、その措置その他につきましては、できるだけ條理を盡した措置が行われ得るであろうということを、私どもとしては期待をいたしておるわけであります。ただいま御指摘なつた問題に対しましても、その点は各地方団体において、おのずから納まるべきところに納まつて来るのではないかというように私ども考えております。
  96. 前尾繁三郎

    前尾委員長 大泉寛三君。
  97. 大泉寛三

    ○大泉委員 たいへん時間が遅れましたから、簡單に申し上げます。附加価値税の一年の延期に対しては、きのうも不満を申し上げましたが、しかしこの附加価値税を一箇年延期するについて、やはり二十五年度の事業税に対しては、附加価殖税の精神を織り込んで徴収する意思があるかどうか。たとえば私どもが非常に附加価値税実施期待しておつた。また産業界はこれによつてつたく更生するものと私どもつてつた。ところが延期されたということは——いいことを一刻も急ぐということは、私どもは必要だと思う。ところが政府の都合でこういうことになつた。そこで従来の事業税に対する欠点あるいは不満は、あげれば幾らもありまするが、ともかく全然今まで事業税というもの、あるいは所得に対しても、税務署の調査決定にまつたく依存性を持つてつた。今度は各府県がこれに対して独立の調査機関を設けて、いわゆろ独自の立場においてこれを決定されるというところに非常な妙味がある。今度また前通り事業税をやるとすると、そこにきのうも申し上げたのだが、混乱を生ずるばかりでなく、事業界としては相当見越して製造しておつたものが、不満ばかりではなく、不公正が生ずる。そこで政府としては、何らかこの附加価値税に近寄つた一つの事業税を課することが適当じやないか。たとえば二つ以上の府県にまたがつて事業をやつておる法人、会社などはともかく、一方の側において利益を上げておるが、一方において非常に欠損をしておるというような場合に、本社が中央の東京とか、あるいは大阪とかいうところにあつて、いわゆる総益金というものを総損金によつて一切解決されてしまう、つまり結果が赤字か、もしくは赤字にならないものでもほとんど地方税負担しない結果に陥つてしまうということがある。こうした場合、各県知事が話合つて、税の公正を期するために何らかの適切な手段をとる必要があるじやないかと思う。こうした考えがあるかないかを私はお伺いします。
  98. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 事業税につきまして、附加価値税において考えておるような長所をできるだけ取入れて行つたらどうかというような御意見のように拜聽いたしましたが、この点は私どもといたしましては、御見解のようにできるだけ附加価値税の点を取入れるようにいたしますとともに、附加価値税実施を一年延期いたしまするかわりといたしまして、事業税をいま一年継続して行く、こういうようなことでございまするから、やはり思い切つてこれを切りかえるということは、附加価値税のかわりにとるという点におきまして、やはり行き過ぎになるので、従来の状態を本質的にはかえませんで、附加価値税の、たとえば課税対象でありまするとか、あるいは免税点とかいうようなものにつきましては、同じような調子にそろえたわけであります。何分事業税収益課税と申しますか、所得を押えておりますし、附加価値税の方は附加価値というものを押えておりまするので、どこまでも調子をそろえるということは非常に困難でございます。私どもといたしましては、税総額を附加価値税と同様程度に押えるということを一つの目安にいたしまして、調整を加えたような次第でございます。
  99. 大泉寛三

    ○大泉委員 それからもう一つ、徴税機構の問題であります。これはやはり一事業場だけでしたならばまつたくそれでよろしいが、事業場が国内に幾箇所もある。多いのは十箇所も二十箇所もあるような場合において、その一事業場においては決定のでき得ない事業がある。いわゆる他の事業と関連しておつて、総合的でなければ決定できないというような事業がある。たとえば鹿兒島県下で事業をやつておる、あるいは北海道で事業をやつておる、その他の県でもやつておる、二府県の総合的な事業で初めて法規の申告もできるような場合においては、各府県の独自的な調査によつてのみではでき得ない。そうした場合は、今までは本社、いわゆる主たる事務所においてそれは総合的に見られてあつたのだが、今度は別個の機関においてやるとすると、片ちんばなものができて来る。こうした場合に総合的な調査機関を設ける必要があるのじやないかと思うのです。こうした処置に対する当局考えはどうか、伺います。
  100. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 二府県以上にわたりまして、事務所や事業場を設けておりまする事業に対する附加価値税の問題で、これの分割でございますが、従来の事業税では御案内のごとく、主たる事務所所在地の道府県知事がこれを決定をいたしたわけでございますが、附加価値税におきましては本店といいますか、会社の方から各県ごとにこれを分割いたしまして申告するようにいたしておるわけであります。これの分割につきまして異議のございますような場合におきましては、これは主たる事務所所在地の道府県知事が決定をいたすのでございまするが、これは地方財政委員会の指示に基いてやる、こういうふうにいたしております。今御指摘のような、ばらばらになつてうまく行かぬじやないか、従つて何か総合的な調査機関のようなものを置いてそういう心配のないようにしたらどうかというようなお話でございましたが、それも一つの案と思いまするが、大体そういう役目にかわるものとして、地方財政委員会が調整をする、またそういうことが可能であるように私どもとしては推測をしておる次第でございます。
  101. 大泉寛三

    ○大泉委員 それは同じ業種の、同じ業の中でありますが、今度は全然違つた業務を別個の名目でやつているというような法人はどういうような処置をとるか。たとえば戰時中によく方々の宿屋をみな買収して、自分のところの従業員の寮にしておつて、しかもそれはやはり従前と同じようにある特定の社員、従業員に対して宿屋の行為をやつている、こういうような行為はやはりその業務々々において課税すべき性質のものであると私は思いますが、それは一法人の一つの事業内にみな総合されているから、現在では課税されていない。こうした場合に、その業種別に分割して課税すべきであると私は思うのでありますが、当局のお考えはどうですか。
  102. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 ただいまのお話のように、同一の納税者が一種、二種、三種と税率の異ります事業を一緒に経営しているような場合におきましての附加価値の算定方法といたしましては、それぞれ全体の附加価値額を、出しまして、それぞれの業態の、たとえば、売上金額であるとかいうようなものにより、これを接分して、それぞれの税率をかけて行くというふうに考えている次第でございます。
  103. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  104. 床次徳二

    床次委員 ただいまの大泉さんの質問に関連して、事業税の問題でありますが、従来の事業税を今度の新しい方法によりまして、改正または修正されたのでありますが、同じやられるならば欠陥をできるだけ是正してやつたらいいじやないか、これは大泉さんも私も同じ意見であるわけでありますが、ただいまお話がありました各府県にわたる事務所、事業場を持つている場合の取扱い等につきましても、政府においてほんとうによい案を出したいというお考えがあるならば、こういうことは十分に考慮できるじやないか。なぜそれだけのことをなさらないかということを、私は非常に疑問に思うのであります。なおそればかりではなしに、附加価値税そのものにつきましても、この前の国会において十分審議した問題がたくさんあるにかかわらず、その問題となりましたことについて、一向改正のあとが見えない、あるいは反省の意思がないと申しますか、しかも繰返してここに議論することは、時間の関係上避けたいと言われますが、何をか言わんやと言いたいのであります。この点につきましてはよくお考えをいただきたいと思います。少くとも事業税につきましてはこれから実施するものでありますから、直し得るものにつきましては、できるだけよいものを持つて参りまして、ここ一年間国民に対して迷惑の最も少い方法を講ずる建前がよいと思うのでありますが、ただいまの政府委員のお言葉は、その点に対してまことに不親切なお考えのように思いますが、もう一回お考えを承りたいと思います。
  105. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 事業税附加価値税は、やはり税の本質と申しますか、性格が、一方は収益税でありますし、一方は先日来御意見がございましたように、流通税的なものでありまして、そこにおのずから性格上の差異がございますので、事業税を本年度限り継続いたします場合におきまして、附加価値税について考えましたとまつたく同じような調子で、これを調整するということは、性格上やはり困難な点があるのであります。と同時に、従来の税を継続して附加価値税のかわりに、穴埋めにとつて行くということでございますので、これを根本的にかえてしまうということでありますならば、むしろ附加価値税を施行するというような考え方も出て参ります。やはり従来の建前はこれを踏襲をいたしまして、それを税額の点、その他ごく主要な点について調整を加える、こういうような考え方に立つた次第であります。
  106. 松本六太郎

    松本(六)委員 この附加価値税固定資産税の関連を持つ問題でありますが、たとえば鉄道、軌道等のような、数箇町村にまたがるところの固定資産、ないしは附加価値を生じまするところの償却資産、かようなものについての各町村に所属を決定いたします。あるいは評価をいたしまして、その町村の取り前としての価格の決定をいたしますことは、地方財政委員会がやるのでありましようが、この場合に、この委員会の決定は、絶対的のものであるかどうか。これに対して関係町村は相当意見があろうと思うのでありますが、その意見をいかにして反映せしめるか、さような方法についての配慮が払われておるかどうか、この点を伺います。
  107. 鈴木俊一

    鈴木政府委員 今の二府県以上にわたります附加価値の分割につきまして、主たる事務所所在地の都道府県知事が決定をいたします場合に、地方財政委員会の指示に基いて行うわけでありますが、もしもその指示に基いて行いました知事の決定について異議がありますならば、これは地方財政委員会に訴願できます。同時にその訴願の裁決に対しましては、もちろん一般訴訟の手続によりまして、行政事件訴訟特例法に基きまして訴訟が通常裁判所に出し得るわけであります。
  108. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ほかに御質疑がなければ、地方税法案中、総則、附加価値税及び事業税に関する質疑は、これにて一応終了いたします。  本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時より、大蔵委員会、農林委員会及び通商産業委員会との連合審査会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十三分散会