○岡(延)
委員 過般の
キジア台風による
被害状況並びに
復旧状況の
調査のため、
議長の
承認を得て、
中国四国班として
調査に派遣されましたが、その
経過並びに結果について、
派遣委員を代表いたしまして御
報告をいたします。
われわれ
中国四国班は、
資料によりまして、特に
災害のはなはだしい
中国の
広島、
山口の両県、
四国の
愛媛県を予定の
視察コースとして
日程を立てました。
一行は不肖と
金子與重郎君の二名並びに
委員部の
徳永参事、
建設省の
高橋事務官、
農林省の
畑江技官、以上三名を加えまして、
現地被害状況の
実情を
調査をいたした次第であります。
まず
調査班は十月一日
東京を出発いたしまして、翌二日松山市に
到着、三日、四日
両日愛媛県下の
災害現地を、五、六、七の三日間
広島県、八、九の
両日山口県の
災害現地を順次
調査いたして、十日に帰京いたしたのであります。
まず
視察三県にわたる
キジア台風による
被害の
一般特色について簡單に一言いたしますと、御
承知の
通り、本
台風は初め
関東地方、次いで
東海地方かあるいは
紀伊半島を襲うかのような
予報でありましたが、ついに
九州南端に上陸、
九州を縦断、次いで
視察三県を
通過、暴威をたくましくしたものであります。かように来襲のあるまで数日の
余裕がありましたので、
防災、防水に対しまして、
当局では
予報並びに警報を出しまして、
河川、貯水池の
警戒、
重要物資の
警戒、
疎開等を行わしめ、特に船舶に対しましては嚴重な注意を出しまして、この
方面での
被害は
相当食いとめることができたのでありますが、
高潮に対しましては、瀬戸内海に面した
海岸線がきわめて長く、また
高潮も予想以上の線まで上りましたるため、この面の
被害の甚大であつたことは真に遺憾であります。
愛媛県のごとき、北海道に継ぐ長い
海岸線を持ち、
山口県は三方に海をめぐらして、これまたきわめて
海岸線の長い線であり、
広島もまた島嶼を加え、
海岸線が
相当長いところであり、今次の
台風による
高潮のため、
海岸の
稻作は枯死いたしたのでありまして、今後この面の
施設は特に留意すべきものがあると思われるのであります。なおこの際特に強調しておきたいのは、
地盤変動対策であります。御
承知のように、瀬戸内の各県は
徳川時代以来、
海岸線はその多くが干拓の
耕地でめぐらされておるのでありまして、去る
昭和二十二年の
南海地震以来、その
地盤沈下が七十センチないし一メートルに及び、今日なお
沈下を続けつつあることは、科学的にも実証されるところであります。
高潮による
被害の多くは、この
地盤沈下に起因する
とも考えられるのでありまして、
沿岸住民はひとしくこの
実情を訴えております。この
対策については、一層科学的な
根本対策の樹立こそ急務と思うのであります。
次には風害によるものでありますが、本
年度の
稻作は、さきのグレース、ヘリーン、
ジエーン等々の風のため、平年作を維持することは困難ではないかと思われたのでありますが、今次の
台風は
乳熟期の中稻出穂、
開花期の
晩稻に、まさに時期的に一致して、一晩にして決定的な
被害を與えたのでありまして、前後二、三日のずれで
被害を免れるところであつたようでありますが、品種によ
つては、この風によるも收穫にさほど減收を見ないようであります。ただこの種のものについても、坪刈り等をいたしまして検査いたしましたところ、二割程度の減收を予想される場合があるとのことであります。
次に降雨による
被害でありますが、各
県とも山間部における
降雨量は、気象統計的にも珍しい多量であつたことであります。
愛媛の宇和島、大浜を中心とする南予
地方、
広島の太田川奥地、
山口の佐々並、川上、吉部の
地方でありますが、
山口のごときはキジアに次ぐ豆
台風により、一週間連続
降雨量六百五十ないし七百ミリという空前のものすごい雨量でありまして、
河川の氾濫、
堤防の決壊、
橋梁の
流失、
田畑の
流出、地盤のゆるみのための山くずれの
被害をこう
むつた、のであります。戰前は、
被害の
降雨量は二百ミリの線であつたということでありますが、近年は百五十ミリで
警戒しなければならないそうであります。今申しました地区のごとき、三百、三百五十、七百ミリというのでありますから、山峡は一大
河川の面貌を呈するのは想像にかたくないのであります。
以上、
高潮による
被害、風による
被害、降雨による
被害、その他、これを二重にも三重にも受けた諸地域を
視察して参つたのでありますが、現場は真にさんたんたるものでありまして、いまだに多くの危險地区を残しているのでありまして、たとえば
海岸決壊、
堤防の土嚢によるもの、
河川の仮橋の応急の
施設等がこれでありまして、これがため民生いまだ安定せざる事実とあわせ考えまするとき、われわれ
対策委員といたしましては、寸時もおろそかにでき得ない多くの問題を含んでおると思うのであります。
以上、
現地の
状況の大要でありますが、次にいま少しく詳細にわたり、
調査順路に従
つて、その
被害視察の
実情をここに御
報告いたしたいと思います。まず十月三日、
愛媛県庁におもむき、
県下全般にわた
つての
災害状況について、その
実情を総合的に、各
関係官より聽取いたしましたところによりますると、県下の
被害は大体三様にわけられるのであります。すなわち、
海岸線一帶の
高潮、降雨による
被害、水害は
河川沿岸、特に宇和島、大洲
地方、風害は温泉、越智、周桑という、県下穀倉地帶の
被害が顯著であつた事実であります。
さて、県下の人的
被害は死者五名、重軽傷者九十二名を出しております。住家の
被害は全壊、半壊、
流失、
合計八百十四戸であり、家屋の浸水に至
つては、床上八千百余戸、床下三万一千六百余戸でありまして、住家の
被害は
合計四万六千余戸に上
つているのでありまして、いかに
高潮、降雨、
ともどもに激甚であつたかがうかがわれるのであります。
次に
被害の最も甚大なるものは
土木関係でありまして、
道路六百三十六
箇所、
河川六百一
箇所、
海岸三百八
箇所の
被害をこうむり、その他を合せまして、
被害額実に二十七億に上るのであります。
次は
農産物でありますが、米どころでありますので、
水稻は二十七万四千余石、金額において十四億四千七百余万円の
被害を受けているのであります。その他農地、
公共施設七億三千八万百円、林業
関係において四億円、水産二億五千九百余万円等々、その
合計額実に六十五億九千十七万余円という
巨額に上
つておるのであります。
以上
説明を聽取いたしまして、さつそく
現地に
実地踏査に出発いたしました。
まず主として
高潮と
河川氾濫による
被害をこうむりました菊間町、波止場町、今治市、西條市、和気、松前、郡中町、北山崎村、長浜町、櫛生村等々町、予讃線に沿う沿岸の各市町村に
視察に参つたのでありますが、
海岸堤防は所々決壊し、
道路、
橋梁の決壊による
被害もまた甚大なるものが認められたのであります。このあたり一帶
高潮、降雨のため
農作物が、おもに
水稻でありますが、すつかり枯死し、腐敗して、臭気鼻をつく
惨状でございました。
なお長浜町における
高潮の
現状でありますが、町の中心部の二百余メートルの
海岸防波堤が決壊、破損しております。この防波堤の前に、数年前までは
相当広い洲があつたそうでありますが、
南海地震後
沈下のためなくなり、八十センチないし一メートルの
沈下を来したとの
説明がありました。
視察当日は北の風が吹いており、
相当波もありましたが、この風が真北より吹けば、またまた町全体が浸水するのではないかと、町民は不安におののいておりましたが、これと同様な所は長浜町の隣村、櫛生村沖浦にもありまして、人家数十戸が海沿いにあり、軒先まで沈が打寄せており、一刻も早い
工事施行を
陳情されましたが、まことにその
現状を見て、危險この上ないと痛感いたした次第であります。
次に風水害による地域として周桑郡石根村、中川村、田野村、温泉郡小野村の各部落を訪れたのでありますが、この辺一帶は、
晩稻の千石あるいは農林十八号というものが開花、出穗期を風にたたかれ、かつ
河川の提防決壊をも加えまして、一望すすきの穗を見るような野草の原とな
つておるのでありまして、減收四割ないし七割という驚くべき
説明がありました。一部農
耕地がまつたくの河原と化しているところも見受けたのでありまして、中でも
被害を全面的に受けた
農民は、今やまつたくぼう然として、農
耕地は
被害をこう
むつたまま、何らなすところない放棄の
状態であります。また農村における收穫皆無の
農民については、さつそく
生活保護法の適用を受けねばならぬ、明日の米に事欠くという
状態で、いち早く生業を考えられるよう、転落の一歩手前であるから何らかの救済を願いたいとの
陳情を受けました。この点については他の県についても同様であります。
次に
広島県について申し上げます。五日午後、県庁において、山本代議士を交えて、
県当局者より
説明を聽取いたしましたが、
被害の概要は、連続降両量は県西部において最大四百三十ミリに及び、太田川、木野川、可愛川等、主要
河川は
警戒水位を突発いたし、また沿岸、島嶼部においては、
高潮と波浪のため、提防の決壊となり、
道路、
橋梁の破
流失、農水林産の諸
施設に多大の
損害を與えたのでありますが、その
被害額は、
土木関係二十三億七千余万円、
建築物関係十九億三千百余万円、
耕地関係十六億七千七百余万円、
農産関係九億三千百余万円、林業
関係五億三千四百余万円、
水産関係、一億三千七百余万円、衞生
関係七百五十余万円、以上集計いたしまして、実に七十五億九千四万余円とな
つております。
人的の
被害は、死者四名、行方不明二名、負傷二十八名の
報告がありました。
農作物の
被害は、
海岸線、谷
河川の流域でありますが、特に太田川の流域、安佐郡と西部の
佐伯郡において甚大であるとのことでありまして、減收見込み十万二千余石、金額にして五億三千三百余万円とのことであります。なおまた最近風水害のあとを受け、高田郡、双三郡
方面での虫害が目立
つて来て、
相当の減收を来すのではないかとのことであります。
なおおもなるものは、島嶼部における果実の
被害、あるいは
蔬菜の
被害を合せまして、三億五千万円であります。
次に
水産関係におけるかきの
被害は一億二千余万円に上るのであります。御
承知の
通り広島かきは、二百年の歴史を誇る県下重要産業の一でありますが、このたびの
災害により、八割の設備を
流失し、生産は全滅に近い
被害でありまして、県、市
当局は目下かきの種の獲得に、宮城、
宮崎両県に対して奔走中とのことでありまして、かき專業者三千戸の死活にかかる問題として、鋭意努力中とのことでありました。
六日より県内
視察を始めましたが、
広島市の東西を結ぶ天満川の木橋は、六橋
とも全部
流失、目下仮橋ができて居りますが、
災害当時はこの橋に水道管がつけてあつたため、これまた全部破壊されまして、市民十万に給水ができず、海をまわ
つて応急の給水をしたとのことでありますが、これは市の下水設備の問題と
ともに、将来
広島の国際平和都市の問題
ともあわせ考え、恒久的な
施設とすべく、財政面の難関打開に努力中との由でありますが、またわれわれに対しても、善処方を強く訴えられたところでありました。
ついで太田川上流にさかのぼりまして、可部町、加計画、戸河内町の
被害現場を
視察いたしました。この山間部地域は、近来しばしば起る風水害は主として
河川堤防の決壊でありまして、総合的な
河川改修を
実施すべきものであると痛感いたしました。またこの地域の灌漑用の
井堰はきわめて貧弱でありまして、一度洪水に見舞われるとすぐ破壊されるのでありまして、
地方民の
要望通り恒久的の施工をなす要があると考えられたのであります。また太田川の氾濫を助止するには、
防災ダムの建設を
要望する声が強くあげられておりますが、これまた傾聽すべきものがありました。なおこの流域には九つの発電所がありまして、ふだんの水量は真に貧弱でありまして、ために河床が上
つているのではないかとの言もありましたが、参考のため申し上げておきます。七日は廿日市、八幡川
方面の
災害を
視察いたしました。
次に
山口県の
状況を御
報告いたします。七日夕刻
山口市に
到着、吉武、坂本、青柳各代議士、重宗、中川両参議院議員を交えて、
県当局、県議、市議等より県の
災害事情を聽取いたしました。その大要を申し上げますと、
本県の特色を
台風と満潮時が一致し、
海岸地帶に強烈なる
高潮を越したことと、いわゆる豆
台風といわれた小さな
台風が未曽有の
豪雨をキジア
災害直後にもたらしたため、
河川も減水せず、
応急工事も着手できないうちに再度の
豪雨に見舞われるという結果を招来し、
被害は想像以上に上つたのであります。また地理的環境において、
海岸線がきわめて長いこと、
河川の急流等の特異な地形でありますため、一たび
災害にあえば、現場の決壊、家屋、
耕地の
流失並びに浸水、冠水、主要交通路の杜絶等、各地の
惨状は直に目をおおわしむるものがあるのであります。その
被害の
状況は、人的
被害死者十二名、重軽傷百七十七名、罹災人員は十四万五千人を算しております。
次に
施設、生産
被害は実に百二十一億六千百余万円の
巨額に上り、
視察三県中最大の痛手をこう
むつたのであります。その
内訳を見ますると、
土木関係三十四億一千九百余万円、
耕地関係三十三億五千四百余万円、
農産物関係二十七億九千九百余万円、
山林関係七億二千二百余万円、建造物
関係四億四千七百余万円、
水産関係二億七千七百余万円、一般罹災
関係四億五千八百余万円、その他六億八千余万円の
厖大な額と相な
つておるのでありまして、なお詳細な
説明によりますれば、
土木関係におきまして三億円以上の土木出張所管内が下関、萩、柳井、岩国と四管内、一億円以上が七管内に及んでおるのでありまして、
被害が全県下にわた
つているのが特色であります。
耕地関係の
被害においては、五千万円以上が二十市町村、三千万円以上十四市町村、他の市町村も大半一千万円以上の
被害であります。林道
関係も全県
被害をこうむりまして、薪炭の需要期を控え、県内消費分の生産も危ぶまれる
状態であるとの
説明もありました。次に
水稻でありますが、七割以上の減收三箇村、五割ないし七割十六箇村、三割ないし五割が全県下の大半でありまして、果実、
蔬菜類の
被害も、三割以上の市町村が大半を占めているとのことであります。
さてわれわれ
一行は、八日早朝田中知事、
県会議長、県出身代義士諸君の御案内をも
つて、佐々並村、明木村、川上村、萩市、福川村、吉部村、弥富村、小川村、江崎町、須佐町の順序で
現地視察をいたしたのであります。
道路の決壊、
河川堤防の決壊、
流失田畑の
状況、山津波の
現状を親しく見たのでありますが、その
惨状はまことに想像以上のものがありました。なかんずく川上村の二百八十メートルの
堤防決壊でありますが、この
箇所は去る十九年の
災害で決壊し、今春竣工したばかりで、村では久しぶりにゆたかな稲作を待望し、肥料も標準以上に施し、その待望がまさに実現せんとしたそのやさき、今次の水害で十五
町歩の水田を一瞬にして喪失して生気を失
つていましたが、
農民代表は、
復旧さえ実現すれば、離村することなく、また耕作に従事すると、その決意を語つたのであります。
次は福川村の山崩れの
状態であります。この山間部の多くの農家は、山津波のため破壊され、原形をとどめないものがあり、中には屋根のみを現わして埋没している
惨状を目撃しましたが、高さ二百メートルくらいの急傾斜の山はだがはげ、岩石、
土砂、生木が川原に山をなしておるのであります。一瞬間
耕地七町、林地一町五反を喪失した現場でありますが、これに近い山津波は、福川村、川上村等随所に起つた現象でありまして、降雨による地盤のゆるみの最大のものと思われます。ただ晝間のできごとで、死者のなかつたことが不幸中の幸いでありまして、住民は不安にかられ、一時は離村の議が一部に起つたという話でありますが、今は生気をとりもどし、生業に従事中であります。
当日の行程は主として山間部でありまして、
道路決壊現場を
通過するに難行に難行を重ねまして、宿舎に着いたのが午後十一時というありさまでありましたが、この郡内その他においても交通杜絶のため、
調査不能の地も多数あるとのことでありました。
翌九日よ、
海岸線の
被害視察のため早朝より出発、宇部市、厚狭町、下関王司
海岸の順路をとりました。前段申し述べました
通り、この
地方は
河川決壊、
高潮による
被害であります。
次に宇部市においては、宇部市の
被害並びに西沖の山炭坑を船によ
つて視察いたしました。この地区は高さ六メートル、延長六千メートルの
堤防で囲まれた五百
町歩の干拓地でありまして、石炭の埋蔵量七百万トンの優良炭坑であります。決壊原因は
高潮による波浪でありますが、また專門家の言によりますれば、
地盤沈下も遠因をなしているとのことであり、六メートルの
堤防ではもはや低過ぎ、
復旧は八メートルを計画しているとのことであり、
復旧工費三億円を要するとのことでありますが、この干拓地五百
町歩は、御
承知の
通り宇部鉱産会社が経営しているのでありまして、同社は従業員ほぼ二万人を擁し、硫安、セメント、化学製品、機械、石炭を主製品として、宇部市における産業の一翼をにな
つておるのであります。さきの
災害により阪神間の重要産業の大
被害があり、復興期にあるわが国産業の痛手は遺憾ながら一層加わつたのであります。会社側より、これら主要産業の一刻も早い
復旧に対し、強力なる
国庫補助を與えらるるようにとの熱烈なる
陳情を受けたのであります。
なお現場を見得なかつたのでありますが、防府、徳山、下松、光を中心に県下にまたが
つております塩田がほとんど全滅の形であり、その面積は六百六十
町歩にわたり、
被害額四億七千余万円に達するとのことで、
復旧の一日も早いことを願
つておりました。
最後に岩国市における文化財錦帶橋の
流失であります。
復旧について県下あげて熱望するところでありますが、文部、建設両省の特別な措置をも
つて緊急に
復旧でき得るよう、格段の御助力を願いたいとのことでありましたので、ここにつけ加えておきます。
以上が
愛媛、
広島、
山口三県の
キジア台風による
被害状況の大要でありますが、以上の
調査にかんがみまして、各地の
報告とその事実は大差のないことを認め、これらの
結論といたしまして、まず第一に
災害復旧に要する経費の
増額はもちろんなるも、さらに高率補助による各種
防災事業を公共事業として大幅に取上げることが肝要である。
第二に、
農村関係においては、
耕地の
被害程度は特に甚大なものがありまして、單に
農作物の減收のみにとどまらず、その生産組織をも破壊せしめたところに痛手があるのでありまして、
施設の公共性等を勘案して、諸般の見地から資金の獲得、融資の道を考える。
農作物被害の激甚なる
現状にかんがみ、米の供出割当の減額
補正、水稲
被害に対する農業
災害補償制度による共済金の概算拂い、ないしは早期支拂い並びにこれを見返りとする系統金融機関よりの融資の措置、農業協同組合共同
施設の
復旧助成、
水稻病虫害防除用の薬品購入助成等の項目が特に考えられるのであります。
次に林政
関係においては、濫伐の弊を是正する治山事業については、特に植林事業に重点を置く必要あり、また林道のすみやかなる
復旧と
ともに、木炭生産の支障を来している炭がまの
施設に対し、国庫助成並びに資金融資の措置をとる必要があると思われます。
次に
水産関係においては、両三
年間、自然現象ではありますが、
漁民は不漁に次ぐに不漁であり、打ちのめされた
現状であります。かてて加えてこのたびの
災害であります。至急に漁業
施設の早期
復旧、諸資材の入手及び喪失した漁船、漁具の調達に対しては国庫の補助を強化し、また資金の融通等に対しては根本的な法的措置を講ずる必要を痛感するものであります。
最後に一般的な
恒久対策として、次の観点より考える必要があります。まず今次
台風による
災害がなぜかくも莫大な額に上つたかというに、第一に考えられますのは、降雨の絶対的多量であつた点でありまして、各県下、各地の
土壤の含水率は飽和の
状態となり、前回の
災害を受け、荒廃のままいまだ完全なる
復旧並びに
改修工事の終らぬうちに
豪雨に襲われたため、異常の出水を生じ、各
河川は氾濫、溢水し、
堤防、
護岸を決壊
流出せしめ、
各所に甚大な
被害を生ぜしめたのでありまして、これら脆弱な
箇所は
災害復旧法規の現形への
復旧の観念を飛躍して、一段の恒久性ある施工を断固なすべきであります。脆弱と知りながら現形に
復旧し、洪水ごとに流される愚を再び繰返さぬよう、
関係当局に
要望するものであります。
第二は、
高潮により
災害対策でありますが、瀬戸内海全
海岸は一メートルに及ぶ
沈下を見る所もあり、この
沈下により、平常の満潮時においてさえ
堤防を乗越え、決壊が危ぶまれるという
実情でありまして、特に今次の
災害の最たるものであり、一
箇所数十
町歩より数百
町歩に及ぶ美田も、わずかの間に收穫皆無となるのであります。これを放置しておけばこれら
田畑の荒廃はもとより、今後の食糧
対策の上より見て、重大なる禍根を残すことになるのであります。また瀬戸内海
海岸全線にわた
つて、科学的な研究と相ま
つて恒久的な
対策を要するものと思われるのであります。これには
災害事業費の
国庫補助額の僅少によるものと
県財政の窮迫によるため、十分なる
工事費の支出が思うにまかせず、ためにその進捗が遅々としているのでありますが、この際国としては、この点すみやかなる
国庫補助の増加を考慮されたいと考えられるのであります。また各地においての
要望として、起債の
増額であります。これについては種々制約のあることでありますが、これら
災害各県については、特別の考慮がなさるべきでないかと思うのであります。引続く
災害によ
つて災害各県の農漁村民の苦しみは大きく、民生の安定を欠き、経済は窮迫しておるのでありますが、しかも自主的にあらゆる手を盡して涙ぐましい努力を続けておるのであります。政府はこれら
災害地住民に対し、早急適切なる処理を
要望しまして
報告を終ることといたします。(拍手)