○野村
委員 第二班におきまする
調査の経過並びに結果について御
報告を申し上げます。
本班は、
四国地方におきまする
ジェーン台風による
被害の概況
調査のため、一週間の予定をもちまして、久野忠治君及び吉川久衛君が派遣せられることにな
つたのでありますが、久野
委員はやむを得ない事情がございまして、私がかわ
つて参りまして、吉川
委員とともども
調査をいたして参つた次第であります。
さてわれわれ
調査団は九月九日に出発をいたしまして、まず香川県より
調査に入りまして、土器川、香東川、鴨部川等の川筋の
決壊箇所及び
海岸線を
調査いたしまして、
海岸沿いに南下をいたしまして、徳島県に入
つたのであります。この間、今次の
ジェーン台風によりまして、香川より鳴門に入る最短唯一の
海岸道路でありまする鳴戸、引田線が、香川県相生村上徳島県の北灘村間の約十二キロにおいて、ほとんど寸断されておるという
状況でありまして、引田より鳴門までやむを得ず船に乗りまして、その
海岸線及び塩田地帯の
被害の
状況を
調査いたしたような次第でございます。
しかしてこのごろより発達し、北進しておりました
台風キジアが、四国に接近いたしましたために、その余波を受けまして、連日
暴風雨に見舞われながら
調査を続け、しかし
調査としましては、
災害の
状況をつぶさに体験をいたしながら
調査ができたことは、絶好の機会だと思
つたのでございます。里浦大手
海岸、松茂村開拓地、川内村、及び六百ミリ近い雨最に見舞われました勝浦川筋の生比奈村、横瀬町等を
調査し、さらに坂野大手
海岸、今津大手
海岸を経て、高知県に入りまして、室戸岬を経て、高知において
調査を終了いたしたのであります。しかして限られた日数のために十分な
調査をなし得なかつたことは、まことに遺憾でありますが、これら
被害は
一般の予想をはるかに凌駕いたしまして、甚大なものがあるのであります。
この際当時の気象概況を簡單に申し上げますと、硫黄島付近に発生いたしましてぐずついていた
台風ジェーンは、九月二日午後四時奄美大島東海上四百キロから一路北進し、三日午前四時には四国足摺岬の南方二百キロ沖に接近し、ここにて方向を北東に転じ、八時には室戸岬の南西二十キロ沖合いに接近、十時には室戸岬の北東十キロ付近を通過して、毎時四十キロの速度で北東または北々東に進路をと
つて、
中心示度九百四十ミリバール、
中心付近の
風速は五十メートル以上に達し、この
中心より二百五十キロ以内は
風速二十五メートル以上の
豪雨を伴う猛烈な風雨とな
つて、室戸岬に午前十一時西の風四十一メートルを観測し、瞬間
風速では実に五十五メートルを記録目し、高知市では二十七メートル、徳島市では三十六メートル七、高松市では最大三十四メートルを記録し、
各地に平均二百ミリ前後の
降雨量を見たのであります。すなわち香川県におきましては、高松において七十三ミリに達し、山嶽部においでは美合村二百八十二ミリ、安原上西村二二〇西ミリ、徳島県におきましては、徳島市において二百二十七ミリ、川内において二百十七ミリ、鬼龍野において三百七十六ミリ、桜谷において三百九十五ミリへ福原において五百八十四ミリを記録いたしまして、高知県におきましては、高知市五十六ミリ、野根百三十九ミリ、吉良川が二百三十七ミリ、田野二百九ミリ、安芸百七十四ミリという
豪雨に見舞われ、また本
台風はまれに見る高波を伴いまして、室戸岬では七・五メートル、高知では五メートル、佐富浦六メートル、徳島県の北灘大手
海岸では四・五メートル、里浦、小松両
海岸が五メートルという
状況でありまして、各
河川につきましても、警戒水位を一倍半ないし二倍半を突破するという状態でありました。これがために各県とも高瀬風害による
倒壊、流出、
浸水等の
罹災家屋を多数出しまして、
土木関係におきまして、東部
海岸地帯にありましては、
高潮と南海地震による
地盤沈下と相まちまして、この大波浪は各所で護岸
堤防を決壊し、また山間奥地部におきまする
豪雨洪水により
道路、
橋梁、護岸
堤防の欠壊流出の
被害甚大をきわめたのであります。平地部においても
河川の氾濫、
浸水のため
相当なる
被害をこうむ
つたのであります。従いましてこれら
被害に伴い、
農地関係においても、
海岸地帯においては波浪により護岸提防を決壊し、
沿岸農
耕地に海水の浸入がはなはだしく、
河川流域においては山間地帯に短時間に多量の
降雨があつたため、急激の出水となり、
耕地の埋没、流出、農業
土木施設に多大の
被害をこうむり、ために農作物に多大の
被害をこうむ
つたのであります。
その他林務
関係、
水産関係、
開拓関係等に甚大なる
被害を受けまして、徳島県におきましては、総
被害額実に八十五億七千九百万円の巨額に達し、高知県におきましては九億七千四百万円、香川県は七億二千五百十万円という
被害をこうむ
つたのであります。ここに注意いたしますことは、四国におきましては
台風と名称のつかない各種の熱帯性低気圧による
豪雨に見舞われまして、昨年のデラ及びジユデイス
台風等の
被害もわずかに二、三割程度しか
復旧しないという
実情にもかかわりませず、本年に入りましても、おもなものでも七月下旬及び八月上旬の熱帯性低気圧る
豪雨により、甚大なる
被害をこうむ
つておりまして、かかる
被害分を含めますれば、各県ともさらに数十億を加算せねばならないのであります。
しこうしてこれら各県の
被害の
原因といたしましては、直接的には、すでに申し述べた通り、短時間に多量の
豪雨に見舞われ、きわめて出水が早かつたことでありますが、間接的には
昭和二十一年の南海地震の影響が四国全般に及んでいることでありまして、すなわち
土木工作物は至るところでゆるみ、あるいは狂いを生じ、これらは表面には現われないが、ささいな衝撃にも耐えられないという状態でありまして、さらに加うるに上流山地が
降雨ごとに崩壊、土砂礫を
流失し、河床の上昇を来したため、河積が極端に縮小し、洪水の包容能力を失
つているごと等が
被害を増大している大きな
原因と考えられるのであります。この傾向は四国全
河川にわた
つて見られるのでありまして、室戸岬
方面において特に、はなはだしく、二メートルくらい河床が上昇し、佐喜浜川、野根川、西ノ川、東ノ川、安芸川等は二・五〇メートルないし三メートル近く上昇しているのが見受けられる状態であります。これが対策といたしましては、河床堀撃をして断面の増大をはかるとともに、上流部に土砂礫の流出を防ぐ施設をなして、河状に悪影響を及ぼす根源を絶つ一必要が痛感されるのであります。
また
海岸地帯においては、室戸
方面においては
地盤が一メートルも隆起しておりますが、その他の
海岸線においては逝に一メートル弱
地盤が
沈下しておりまして、この
地盤沈下と満
潮時の高浪によりまして、高知市及び徳島県の北灘大手
海岸、里浦大手
海岸、小松大手
海岸及び坂野、今津等の各
海岸のごとくに甚大なる
被害をこうむり、また
地盤沈下により香川県の白鳥本町のごときは、潮が吹き出して来る始末で、精が二十
町歩にわたり育成しないという状態であり、これらは
沿岸各地で見受けられるのであります。
さてわれわれ
調査中に当りましても、
ジェーン台風の応急
復旧をや
つておるそばからキジアによる
豪雨に襲われ、応急の土嚢も
流失するという
状況を目撃したのであります。特に開拓者に対しては非常な同情を禁じ得ない状態も拝見をいたしためであります。これが対策には各県及び市町村
当局並びに住民諸君も一体とな
つて不眠不休の努力をいたしておるのでありますが、何分にも窮迫せる
地方財政ではとうていこれが完全
復旧を望み得ない
実情にかんがみて、これが早急に
復旧し得るような予算的
措置を希求してやまないのであります。われわれといたしまして、その
調査の使命の重大性を痛感いたした次第であります。
以下
調査箇所における
被害状況を県別に簡單に申し上げますが、これらは
被害のごく一部分であり、これらの
状況を推定しましても、
ジェーン台風の
被害の激甚なることが御納得がいただけると思うのであります。
まず香川県下について申し上げますと、
本県は東西に細長き半月形の地形でありまして、
河川は阿讃国境の山岳地帯より発源して北流し、河幅狭く、傾斜が急でありまして、常には水利の便はまつたくない状態であります。
林地は
一般に表土が浅く、乾燥地にして
地方が乏しいため、優良林種に恵まれず、加うるに人口稠密のため、戰時戰後を通じ濫伐はなはだしく、用材、薪炭としての伐採量は標準年伐量の五ないし六倍に達し、また行き過ぎた開墾のため、森林の持つ保水機能は失われておるのでありまして、一度二百ミリ以上の
降雨がありますれば、たちまちにして
河川は氾濫をして、多大の
被害を生ずる状態であります。従
つてジェーン台風が
本県の東部を北東に向
つて通過いたしましたため、
河川の氾濫、
堤防の決壊を各所に生じまして、
沿岸農
耕地は高浪のため海水の侵入はなはだしく、また農業
土木施設は八月六日に発生した
豪雨による
被害直後でありまして、応急修理中に今回の
災害が発生いたしましたため、その
被害は予想外の拡大をみたのであります。われわれは香東川筋、土器川筋、鴨部川筋を
調査いたしましたが、
各地で
耕地の流出、埋没、
道路の欠壊を生じておりまして、まず
民生関係においては「行方不明二名、重軽傷五十一名、床下
浸水千七十六戸、
家屋全壊五十四戸、
家屋半壊二百七十四戸を数え、
土木関係におきましては県
工事分といたしまして、
河川百七十一箇所で一億三千二百二十四万二午円、海洋
堤防十三箇所で九百三十六万九千円、砂防設備五箇所で二百九十二万七千円、
道路三十二箇所で千四百四十七万円、
橋梁五箇所で百十九万一午円、その他市町村
工事として九十一箇所、三千六百八十一万円、計約一億九千八百万円にな
つておるのでありまする
農
耕地関係につきましては、農地三千五百万円で、そのうち田千五百万円、畑五百万円、畦畔千五百万円等でございます。
公共施設につきましては五百四十五箇所でありまして、一億六千五百万円、そのうち水路三百五十箇所八千五百万円、溜池三十箇所四千五百万円、井堰八十箇所二千万円、堤壊五十箇所一千万円、農道三十五箇所五百万円、計約二億円であります。
次に農作物の
被害につきましては、
水稻は九千七百十
町歩でありまして七千八百万円、六万石の
減收見込みであるのであります。かんしよは二千五百
町歩でありまして六千万円、蔬菜六千
町歩で一千五十万円、
果樹——かき、ぶどう、なし等でありまするが、六千五百十万円、計約二億二午万円であります。
水産関係につきましては、
漁港は三十九港七千百九十一万円、
漁船は百五隻二千四百三万五千円、
漁具につきましては四十件三千九百二十万円、共同設備十件六十七万五千円、計一億一千四百万円であります。
林地被害といたしましては二千二百八十万円、林道
被害として二千万円、木材、木炭の
流失は九十八万円、木炭施設については九十万円、
一般林等の施設について二十五万円、計四千四百九十三万円であります。
次に徳島県について申し上げますると、四国中最も
被害の多いのは徳島でございまして、
海岸線、平坦部、山間部等の
各地域にわた
つて各
方面にはなはだしい
損害をこうむ
つておるのであります。特に徳島市、鳴門市、名東郡、勝浦郡、板野郡、那賀郡、海部郡等の惨状は激甚をきわめておるのでありまして、特に勝浦川筋の生比奈村、横瀬町、または小松大手
海岸に
関係ある川内村等は非常な惨状をきわめておる状態で、まことに同情にたえないものを目撃したのであります。しこうして全県については
罹災者総数十八万九千六百四十六人を数え、
死者十一名、行方不明十五名、重傷五十九名、軽傷百三十五名の多きに達しまして、
全壊した
家屋は四百四十六戸、
流失九十一戸、
半壊千八百九十七戸、床上侵水七千六百十八戸、床下侵水三万四千四百八十二戸、その他非
住家で
全壊、
半壊合せて二千四十五戸であります。
土木関係につきましては、まず
河川におきまして、勝浦川で破堤箇所十箇所、園瀬川七箇所等でありまして、
堤防、護岸決壊合計四百三十八箇所、約六億一千五百万円、
海岸につきましては、北灘大手
海岸、里浦大手
海岸、小松大手
海岸等、護岸、
堤防決壊百八十八箇所約六億七千万円、
道路につきましては、おもに
海岸沿いのものでありまして、県道鳴門引田線は十二キロの間に十九箇所二千三百万円、木頭徳島線は三十箇所千九百二十五万円、鬼籠野徳島港線は十二箇所五百万円、川井石井線では二十四箇所千七百万円等を初め、決壊、崩壊四百三十七箇所、二億二千万円の
被害を受けておるのであります。砂防につきましては、吉野川流域で中野谷等八十四箇所六千九百万円、
橋梁につきましては、破損
流失したもの四十一箇所四千万円、
港湾被害につきましては、徳島港の護岸決壊六百メートル、及び防砂堤、導水堤の根固め
流失二千五十メートル、また小松島港の護岸決壊千メートル、上屋六棟
半壊、防波堤根固め
流失千七百メートル等約二億七千万円、その他市町村
工事関係分を合計いたしますと約二十五億円に達するのであります。
次に
農地関係について申し上げますれば、農地の
流失埋没は二千九十七
町歩八億五千万円、農道、
橋梁、溝池、井堰、水路等の
流失破壊一千四十九箇所、約十一億五千万円、その他
開拓関係農地
流失埋没二百三町一千三百万円、農道、水路等の
公共施設九箇所三千四百二十万円、
住宅被害四百六十九戸で、合計約二十億七賢万円になるのであります。
農業関係につきましては、
水稻の
被害面積二万七午百九十二
町歩、
被害数量十九万五千石、約九億七千六百万円を数えておるのであります。時あたかも早生の乳熟期、中生出穗開花期、晩生の穂孕期でありましたため、
本県作付の大部分を占むる中晩生の
被害は甚大なるのがありまして、特に
堤防の決壊、崩壊等によりまして、
耕地の埋没、
流失並びに海水、濁水の入つた地帯の稻は收穫がほとんど皆無を予想されるのであります。雑穀の
被害面積は二千九百
町歩、
被害数量八千四百石、
被害総額三千四百万円に上りました。かんしよにつきましては
被害面積三千三十一
町歩でありまして四百六十一万六千五百貫、
被害瀞は一億三千八百五十万円に上るのでありまして、表土の
流失、
浸水等により大なる
被害を受けまして、特に長期間にわたります
浸水のためほとんどが腐敗をいたしておるような状態でございます。その他蔬菜、
果樹等合計いたしましても、約十三億一千万円の
被害をこうむ
つておるのであります。
林業関係につきましては記録的な
雨量と驚異的な時間
雨量によりまして、林野は躁欄されまして、十億四千余万円の
損害を受けておりまして、中でも林野の崩壊一千三十九町、林道の崩壊延長二十八万四千余メートル、その他木材
流失量十万石を生じたのであります。また
水産関係につきましては、
漁船の
流失、大中
小破するもの一千百艘六千四百万円、漁業用
資材の
流失破損するもの、燃料及び
船舶付属品等の
流失によります
被害額は九千二百万円でありまして、
水産施設その他これらの
水産関係の
被害総額は約二億八千万円の多きに上
つておるのであります。また県下主要産業であります製塩業につきましては二億二千万円の
被害をこうむりまして、徳島県総機害額は、全般を通じて前段申し上げました八十五億八千万円の巨額に上
つておるのであります。
最後に高知県について申し上げますならば、まず
民生関係につきまして
死者一名、行方不明二名、
重傷者三名、軽傷者十一名、
全壊した
住家二十四戸、
半壊千六百二十戸、床上侵水六十五戸、床下侵水五百九十五戸、計二千三百十五戸、その他非
住家百七十戸を数えておるのであります。
次に
土木関係におきましては、まず
河川につきましては百三十二箇所で約一億七千万円、
海岸六箇所におきまして四百四十五万円、
道路六十五箇所につきまして二千四百万円、
橋梁十箇所につきまして四百五十万円、
港湾六箇所につきまして一億二千万円、
漁港十五箇所につきまして七千九百万円、合計いたしまして
被害総額は約四億を算えておるのであります。
次に林務
関係につきましては、山地治山施設が百九十六箇所でありまして、千三百二十三
町歩で約五千二百万円であります。防潮林につきましては、十六箇所三百五十五
町歩、約千七百五十万円であります。林道
関係につきましては、路線数百二十七、約五千百七十万円、その他木材
流失は二千五百万石、約二百万円でありまして、計一億二千三百十万円であります。
次に
耕地関係の
被害は、安藝郡の一部に片寄つたために、町村としてはひどいのでありまして、農地、
公共施設合せて一億九千万円に達するのであります。また農産物
関係につきまして建
水稻の冠水七百五十
町歩、風害四千
町歩で、約二万千五百石の
減收の
見込みであります。かんしよにおきましては、約八十一万貫の
減收見込みであるのであります。とうもろこし、大豆、そば等合算いたしますれば、約一億二千五百八十万円の
被害をこうむ
つておる
状況であります。
まだ
水産関係につきましては、三十九箇所約一億三千二百万円を算えておるのでありまして、約九億八千万円の
被害をこうむ
つておるのであります。
以上でありまするが、高知県におきましては、高知市周辺のほか、安藝郡の
被害がひどいようでありまして、甲浦、羽根村及び吉良同時、あるいは安田、馬路を結ぶ県道、久木、奈年利線が幅員わずか二・八メートルでありまして、今次
災害によりましてまつたく
交通不能というような状態になりまして、住民諸君は非常に苦しんでおる状態でございます。
以上が
ジェーン台風によります
被害状況でありますが、この際キジア
台風によります
被害の
状況をもごく片鱗でありまするがあわせて御
報告いたしたいと思います。何分にも電信電話等の普通の箇所が多く、またわれわれの
調査日程の都合等によりまして、全般にわたる
状況はもちろん不明でありますので、これによりまして
ジェーン台風の
被害はさらに倍加されたものと考えるのであります。
その気象概況を簡單に申と上げますると、九月九日硫黄島南方付近から発生いたしまして、毎時十キロで北々西に進み、九月十一日には鳥島の南西約五百キロ海上を毎時二十キロで北西及び北々西に進んで、
中心示度九百四十五ミリバール、
最大風速五十メートル、十二日高知の南方六百キロを十キロで西北西に進んでいたのでありますが、このとき北西から北々西に転向の気配を示しまして、十三日種子島の北端にありて毎時十二キロで北に進み、高知県に接近いたしたのでありまして、この発生以来、その速度が著しく緩慢でありまして、長時間停滞いたしたために、暴風圏内にあつた高知県のごときは、幡多郡、高岡郡北部にありましては三百ないし四百ミリの
降雨を見たのでありまして、これがため各
河川は十三日以来増水を続けまして、仁淀川におきましては十一メートル、渡川におきましては七メートル増水し、各
河川とも警戒水位を突破いたしまして、高知市付近及び
海岸地帯に出水、
高潮のため
家屋、
耕地並びに
土木施設に甚大なる
被害を受けたのでありまして、高知市付近一億円、吾川郡三千万円、高岡郡七千万円、幡多郡二億八千万円、これらはごく予想でございますが、そういう
状況でありまして、その他
相当な
被害を見込んであるのでありますが、これらは十三日現在の
調査でございまして、このときは増水中並びに激浪のために
調査ができないというような状態でありまして、時間が許しまするならば、確報をつかんで御
報告ができるとよかつたと思うのでありますが、時間の
関係でごく概況の一部を追加したわけであります。
以上三県におきましては、その
被害の
状況の御
報告を申し上げたのでありまするが、
調査の結果、
四国地方におきましては、今回の
ジェーン台風のみの
被害額を元といたしまして
災害の実体を推定いたしたならば、大きな間違いでありまして、過ぐる
昭和二十一年の南海地震によりまする
地盤の変動、あるいは各種熱帯性低気圧によりまする
被害をも加算すべきであると申して過言でないのでございまして、
被害額もこれらを合算しますると莫大になるのであります。しこうして今次
台風によりまする
被害の
原因といたしましては、すでに申し上げました通り、特に
雨量の多かつ先ことと、出水のきわめて早かつたことと、河床が上昇し流水の激突溢流によ
つて、裏法の決壊等に起因いたしまして破壊いたしたのでありまするが、間接的には南海地震に起因するところ甚大なるものがあるのであります。従
つてこれが対策も看過し得ないものがあるのでありまして、この南海地震に基く
地盤変動によりまする
被害につきましては、
震災当時はその実体が十分判明しないのでございまして、その後におきまして、漸次
関係各地に現われて来るという
状況で、
四国地方におきましては、約五十億円の巨額に達し、
海岸、
堤防、
港湾、
道路、
橋梁上下水道の
被害はもとより、浸潮によりまする農作物の塩害による
減收四万石、将来
被害を受けるおそれのあるものを含めまして、
耕地の
被害二万
町歩に及ぶ等、まことに甚大なるものであります。これがためこれらの
被害地域におきましては、
耕地の
復旧、排水施設の設置、
道路、
堤防、上下水道の
復旧改良等の
事業を行わざるを得ないような現況でございます。しかるにこれらは
災害に基くものとの認識もきわめて薄いのでありまして、單なる
一般の改良
事業のごとき取扱いを受けている現況でありまして、
民生の安定、国土保全より、これらに対する早急かつ恒久的な対策は焦眉の急と考えるのであります。しこうして
海岸地帯において
地盤沈下対策の完成せざるところは比較的
被害が僅少で済んでおるのでありまして、積極的に
工事促進をはかりまするのは、
災害防止の最善の策と考えるのであります。しかしながら既設
工事の脆弱なるものについて、蒿上げのみを施工しようといたしまするのは、今回の
災害に徴しましても明らかなごとく不適当でございまして、
地盤沈下工事におきましても、
工事施行の際は既存工作物を
調査し、完全なる対策を立てるべきであります。また全般にわたりまして、
河川、
海岸等工作物はその構造やや脆弱のきらいがあり、積極的な工法をとるべきでありまして、具体的には
堤防堤体の増大、蒿上げ護岸
工事はコンクリート工法による永久工法とすべきでありまして、再度
災害を断つために、
復旧対策ととましては、今回の
災害の
実情にかんがみ、原形
復旧にとらわれることなく、
災害原因を精査検討の上、許される範囲内におきまして、一部改良を加味した
復旧を考慮すべきであると思考せられるのであります。
しかしてこれら対策がすみやかに講ぜられま
せんければ、毎年のことながら巨額の国富がただ失われ、来年も同じ災禍を見ることは必定でありまして、文化国家を目ざすわが国にとりましては、自然の暴威を手放ししてこれを傍観することはもちろんできないのでありまして、国土保全に思いをいたしたならば、すみやかに科学的総合対策の樹立の必要がどうしても確立されなければならぬと考えるのであります。
しかしてこれがために各県及び市町村
当局におきまして、
地方財政の許す限りにおいて努力いたすことは論をまたないところでありまするが、
累年相次ぐ
災害のために、
災害復旧等に要する歳出額は
地方財政を極度に圧迫せしめ、
応急復旧費にすら智慮せざるを得ない
実情でありまして、これが窮乏せる
地方財政を考えるときにおきましては
公共事業費の大幅なる増額、
災害復旧費全額国庫負担制度の維持、あるいはまた
起債の
わくの拡張、
融資の拡充等深く考慮いたされなければならないと思うのであります。
地方におきましては、急速に
復旧工事ができるよう予算
措置身希求いたしておるのであります。しかして予算
措置を講ずるに当りましては、中央に反映する政治力の強弱により、
被害の大小を左右することなく、あくまでも厳正公平にその
被害の実態を把握して、も
つて適正なる配分を行うべきであると信ずるのであります。
以上をもちまして第二班における
調査の概要につきまして御
報告を終る次第であります。(拍手)