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1950-07-31 第8回国会 衆議院 厚生委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月三十一日(月曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 青柳 一郎君 理事 大石 武一君    理事 原田 雪松君 理事 松永 佛骨君    理事 金子與重郎君       中川 俊思君    堀川 恭平君       松井 豊吉君    丸山 直友君       亘  四郎君    堤 ツルヨ君       苅田アサノ君  出席政府委員         厚生政務次官  平澤 長吉君         厚生事務官         (社会局保護課         長)      小山進次郎君         厚 生 技 官         (医務局長)  東 龍太郎君  委員外出席者         厚生事務官         (官房国立公園         部管理課長)  森  直一君         厚 生 技 官         (官房国立公園         部計画課長)  石神甲子郎君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 七月三十日  委員高木章君辞任につき、その補欠として大石  武一君が議長の指名で選任された。 同月三十一日  理事原田雪松君の補欠として青柳一郎君が理事  に当選した。 同日  大石武一君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  厚生行政に関する件を議題とし、本件に関連し、死体解剖の問題について発言を求められておりますので、これを許します。苅田アサノ君。
  3. 苅田アサノ

    苅田委員 問題は、この六月九日に深川職業安定所で起りました事件ですが、深川職業安定所から配置を受けました人夫広田松之助という五十九才になる人が、深川愛隣舘附近工事場におきまして急死した。こういう事件があつたわけです。この原因について調べますために、この本人解剖に付した、こういうことになつておるのであります。これは東京都文京区大塚仲町の東京監察医務院死体解剖に付したのでありますが、その際に死体解剖法律によつて、当然通知されるはずであるところの家族に対しまして、何ら同意も得ないで死体解剖に付したということで、遺族並びに一緒に働いておりました自由労働者側から、訴えがあつたわけです。この事件につきまして、厚生省としては、御存じになつておりますかどうかということを、まずお伺いしたいと思うのであります。
  4. 東龍太郎

    東政府委員 ただいま苅田委員お話になりました事実については、私どもは報告も受けておりませんし、承知いたしておりません。
  5. 苅田アサノ

    苅田委員 それでは、ただいまのような事実が実際に行われたといたしまして、これは現在行われております死体解剖法に照し合せまして、明らかに違反であるというふうに考えるのでありますが、御当局の御意見はいかがでありますか。
  6. 東龍太郎

    東政府委員 結論として申しますと、私は違法ではないのではないかと存じます。それは死体解剖保存法の第七条には、明らかに「死体解剖をしようとする者は、その遺族承諾を受けなければならない」とございますが、その但書の中に、「左の各号の一に該当する場合においては、この限りでない」このような遺族承諾を受けなくてもやれるという一つに、今お話になりましたような監察医が行います解剖がございまして、同じ死体解剖保存法の第八条には、「政令で定める地を管轄する都道府県知事は、その地域内における伝染病中毒又は災害により死亡した疑のある死体その他死因の明らかでない死体について、その死因を明らかにするため監察医を置き、これに検案をさせ、又は検案によつて死因の判明しない場合には解剖させることができる」というふうな条項があるのでありますが、この第八条の規定により解剖いたします場合には、遺族承諾を受けなくてもいいというふうに私は解するのでございます。
  7. 苅田アサノ

    苅田委員 私は本日ここに死体解剖保存法条文を持つて参りませんでしたので、今日条文について私は申し上げることはできないのでありますが、私がその際調べましたときに、遺族通知を経ないでする場合として、三箇条書いてあつたと思うのであります。それによりますと、ただいまお話になりました死因の調査の場合にいたしましても、東京都内遺族があつてその同意が得られるということに対しまして、何ら支障がない場合に、そういう遺族同意を経ることをしないで、すぐそのまま解剖しなければならぬというような特例には、これは値しない。そういうふうな場合には、当然遺族通知をしまして、遺族同意を得て解剖をやりましても、さしつかえない事例であるというふうに、理解いたしておるのでありますけれでも、そういう場合に、たとい監察医解剖する場合であつても、遺族通知するひまもない、そういう処置をとられないような事態にどうしてなつておるかということにつきましては、なお納得が参りませんので、さらにお聞きしたいと思うのであります。
  8. 東龍太郎

    東政府委員 個々の特殊の場合につきましては、私どもの方で、先ほど申しましたようにその内容を存じておりません。しかし私が推察いたしますのに、その解剖を行わせました者、あるいはそれを行いました監察医におきましても、死体解剖保存法の第七条の但書第三によつて、合法的に行つたということであろうと存ずるのであります。この問題は、東京都で起つておりますので、東京都庁の方の問題と存じますが、今まで伺いましたところでは、私としては、これは少くとも違法ではないということは、申し上げられると思うのであります。なお今のような、もつと思いやりがあると申しますか、親切なと申しますか、かゆいところに手の届くような手続をとつてもらつたらよかろうじやないかというふうな御意見に対しましては、これはなるほどそういう見方もあるかと存じますが、なすべきことをやらなかつた、あるいはやつてはならぬことをやつたというふうには、解されないのではないかと存じます。
  9. 苅田アサノ

    苅田委員 そういたしますと、監察医というようなところに持つて参りますれば、どういう死体であつても、そのまま遺族通知しないで解剖に付してもいい、そういうような法律解釈をしてよろしいわけなんでございましようか、その点をさらにもう一ぺんお聞きいたしたいと思います。
  10. 東龍太郎

    東政府委員 この法律の第八条は、どんな場合でも監察医のところに持つたら、かつて解剖ができるというふうには、読めないようにできておると存じますが、もう一度申し上げますと、都道府県知事は、その地域内における伝染病中毒または災害により死亡した疑いある死体、その他死因の明らかでない死体というふうなものについて、その死因を明らかにするという目的のために、監察医というものを置いてある。従つて監察医に送られる死体は、そういう特殊の目的のある場合に限られていると思います。どういう死体でも監察医のところにかつぎ込むというのではなしに、監察医というものの当然行うべき職分を行わせる必要があるという判断のもとに、監察医のもとに送られて、そうして監察医がやります場合には、今のような、普通の場合とは違つて遺族通知する、遺族承諾を得るというようなことをしなくてもよろしい、こういう規定になつておると存じております。
  11. 苅田アサノ

    苅田委員 法律条文によりまして、そういう解釈ができるというようなことを、私は今初めてわかりましたようなわけでございまして、私どもは、何か非常に火急にその死因を知らなければならない、あるいは遺族が遠くにおりまして、その死亡の通知を待つておられないというような、やむを得ない事態が起つた場合に限つて遺族に対する通知というふうなものはしなくてもよろしい、そういうような条文の建前であつたというふうに理解しておつたわけでありますが、そうではなく、急死者がある、その死因がわからないというときには、たとい手近に身内がありましても、同じ東京都内遺族がおりましても、その許可を得ないで、これを死体解剖にまわしてもいいというような法律条文であるのだということでございますれば、私はそういう法律に対しまして、大きな疑義を持つものでございます。それによりまして、当局の責任の当否は、一応これで解決されると思いますが、私どもとしましては、そういう法律に対しまして、今後何らかの措置を講じなければ、今回の場合のように、明らかに遺族が手近かにおりながら、何ら通知を受けられない、しかもその人たち職業安定所でその日その日を暮らしておるような、非常に力のない人たちであつた場合には、どこにもこれを持つて行く場所がないような事件が起る場合が多々あると思うのであります。この点に関しましては、さらに御当局の方でも、そういう法律であれば、この法律に対しまして、もつと普通の妥当な措置が講ぜられるような御考慮を願いたいと思うのであります。これは今の問題ではございませんが、御当局としては、そういう処置が随所に行われるということに対しまして、これはやむを得ないことであるというようなお考えを御持ちでございましようか。その点につきましても御答弁を一言お聞きしたいと思います。
  12. 東龍太郎

    東政府委員 死体解剖に際しては、遺族承諾を受けなければならないということが、法律条文の本文になつておりますことから見ましても、遺族承諾を得るということは、きわめて重視いたしておるのであります。従つて遺族承諾を受けないで解剖をするという場合は、この但書の四つに限定いたしておるわけでありまして、今苅田委員の言われます通り、遺族承諾を受けるということが本筋であります。ただ、どうしても遺族承諾を受けられないような状況である場合に限つて、その承諾を受けなくてもやれるというようなふうに、例外規定を設けてあるのでありまして、今の監察医の問題は、その目的がとにかく死因を明らかにするということを主体としておりまする関係上、この場合には、遺族承諾を受けなくてもやれるという条文になつておりますので、その条文に照して、これを解剖いたしますときの実際上の手続として、どういうふうなことが行われる方が、より好ましいかということにつきましては、御意見が多々あろうと存じますが、私どもといたしましては、この法律の上では、とにかく監察医解剖に対しては、その解剖目的から考えまして、遺族承諾を受けなくてもやれるのだというふうにきめてあるのみでございます。その中へ、なおもしできれば、遺族承諾を受けてやれというふうなことを加える方がいいのではないかという御意見ではないかと推察いたしますが、私の方といたしましては、そこまでは考えておりません。
  13. 寺島隆太郎

    寺島委員長 国立公園の問題について発言を求められておりますので、これを許します。金子委員
  14. 金子與重郎

    金子委員 厚生省公園関係の方で、今年の夏ごろだつたかに承つておりますが、皇居外苑整備保存協力会というものをつくらなければならなかつた動機、あるいは今後の行き方ということにつきまして、厚生省計画をお聞きしたいと思いま。
  15. 石神甲子郎

    石神説明員 皇居前の苑地は、昭和二十二年十二月二十七日の閣議決定によりまして、当時皇室より物納になつておりました苑地を、国民の慰楽、保健、教養のために、国民公園として公開するという決議もありまして、お手元にお配りいたしました図面が皇居外苑厚生省に引継ぎました区域であります。いわゆる二重橋前の外苑、あるいはまわりの濠の部分でございまして、総計三十万坪でございます。その皇居外苑及びそのほかの旧皇室苑地運営いたすにつきまして、この閣議決定要領二によりまして、旧皇室苑地の利用、運営及び文化的諸施設整備については、権威ある委員会を組織して、その総合計画を樹立する。そういうことによりまして、実は内閣に旧皇室苑地運営審議会というのができまして、それぞれの学識経験者及び関係省より出まして、数回の会合を重ねまして、その答申を得たのでありますが、その答申は、要するに、国民福祉に寄与するために、次の要領によつて運営する。一、由緒ある沿革を尊重し、つとめて原状の回復保存をはかること。二、必要に応じ、史蹟名勝天然記念物、または風致地区として指定すること。三、各苑地特性を生かし、国民生活に適合した整備運営を行うこと。四、緑地計画の一環として、街路その他都市計画との調整をはかり、周辺地域整備をもあわせて行うこと。五、各苑地特性に照し、これと関連のない施設はこれを設けないこと。特に営利を主目的とし、または利権を伴う諸施設の設置は、これを認めないこと。六は関係ございません。七、所管官庁学識経験者をもつて組織する審議機関を設け、重要事項を審議し、各苑地運営に遺憾のないようにすること等であります。  皇居外苑といたしましては、一、国民広場として公開する。二、さしあたり照明、管理所水飲み場便所等所要施設整備する。三、将来は迂回道路を設ける等、交通制限上、所要整備を行い、広場としての価値を向上する。四、史蹟として指定する。こういうような基本方針を示されたのであります。これによりまして、厚生省におきましては、当地の土地所管省でありまする大蔵省と交渉いたしまして、本年の春、正式に公共福祉用財産として厚生省に引継いだのでございます。厚生省といたしましては、昭和二十四年、二十五年、引続きまして予算を計上いたしました。時節柄不十分ではございますが、本年度は皇居外苑のほかに、新宿御苑京都御苑を含めまして、総額七百八十何万円という予算をもちまして、ただいま維持管理をいたしておる次第でございます。ところが何分経費が不十分でございますし、現状のように施設も古いものでございますが、先般美術工芸社というのを経営しておられまする小林さんという方が来られまして、皇居外苑街燈寄付をしたい、便所寄付をしたい、ベンチ紙くずかご等寄付したいというような申入れでありました。但しその寄付者名前も入れてもらいたいというような希望もございましたので、いろいろ私の方と話合いまして、結局におきまして、信用のある団体をつくつて、私の方の必要と認めるものを寄付していただきたい、但し名前等の広告にわたるようなものは出さないということの了解ができまして、皇居外苑整備奉仕会というものをつくりまして、これは前の厚生大臣一松定吉氏が総裁になつてつておりますが、昨年の十二月ごろに、一部の寄付許可いたしまして、この団体は微力ではありますが、目下その事業をやつております。名前を出さないということによりまして、寄付等も受けておりますが、その関係者のみずから獲得した資金によりまして、ベンチ、そのほかの軽微なものを設置しております。その後さらに、二重橋前におきまして、宮城案内というようなものを、以前宮内省から頒布を許可されておつたという岩隈という方が私の方に参りまして、やはりいろいろな施設に関して協力したいというお話がございましたので、皇居外苑整備奉仕会があるということを申しました。これと同様な趣旨のものならば私の方で受入れられますが、何分皇居外苑につきましては、閣議決定の旧皇室苑地運営審議会答申がありますので、施設についてはすこぶる制限があります。その辺よく打合せをして進めていただきたいということを意思表示しておきました。その後岩隈氏が、各参衆議員の方の署名運動をされておるということは承知しておりますが、その後学童皇居国旗掲揚、あるいは学童宿舍というようなものを、二億円ほどの計画をもつて建てたい、ついては応分の寄付をしていただきたいという印刷物を配つておるということがわかりましたので、本人岩隈氏を呼びまして、ここに書かれてあるような施設は、目下のところ皇居外苑建設することは困難であるので、寄付等もなさらぬ方がよかろうという勧告をいたしましたが、勧告いたした後にも、なおそういう印刷物によつて寄付を募集しておるということを承知しております。さらにそれを中止するように、いま一度注意をしたことがあります。数日前にラジオをもちまして、その寄付に対しまする批評があつたようであります。皇居保存協会総裁は、参議院の大隈信幸氏がなられたということでございますが、私の方には、正式に寄付願も参つておりません。先ほどの皇居外苑整備奉仕会は、正式に許可しております。  私たち厚生省におきまして現在行つております仕事は、皇居外苑整備でなく、清掃でございます。維持管理——草を刈りましたり、濠の藻を刈りましたり、石垣の草をとりましたり、あるいはそのほか苑路苑地濠等清掃でございます。これにすこぶる手が要します。先般の五月一日のメーデーのごとき、非常な乱雑状態で、降雨等関係清掃も十分できません。注意を受けたというようなこともありました。なお皇居外苑は、晝休みを中心といたしまして、あの付近の勤労者が野球もしくは排球等を盛んにしておりまして、すこぶる不体裁でありますけれども、これは苑地において行うことは、苑地を毀損するので、やめていただくようにいたしました。現在車の交通しておりません迂回道路のみに限りまして、十二箇所ぐらいだと思いましたが、場所を区切り、球戯をすることを許して、現在すでに私の方の係職員許可制でやつておりますが、これらの関係会社等におきまして、清掃協力したいという意見がありました。皇居外苑整備保存協力会というものは、清掃関係を勤めておりまして、前の皇居保存協会皇居外苑整備奉仕会施設をするということであります。一応御答弁をいたしました。
  16. 金子與重郎

    金子委員 閣議決定におきましてこの一から三以下まで、たとえば「国民公園として国が直接管理するとともに、史跡、名勝または天然記念物として価値あるものはこれを指定し、これが保存をはかり、あまねく一般国民享用に供すること」この文以下、特殊な利権の対象にしないこと、あるいはこれをもつて何かこの土地を私ないしは広い意味の私的にこれを使うことをなくするというような決定があつたことは、まことに私は同感だと思うのでありますが、ただそれをその目的に沿う範囲内において、民間団体のそれに対して協力するもの、かりにたとえば先ほどお話になつた一松氏が総裁になつておる整備奉仕会というようなもの、あるいはその次に皇居保存協会というものがあるというふうな上に、あなた方の役所中心になつて——清掃とおつしやいますけれども、その規約を見ますと、清掃ばかりでなく、やはり施設保存とかいうような、いろいろな項目もあるようであります。そうなると、当然金も要することになると思うのでありますが、そういうふうな似通つたものが幾つもある上に、また役所関係であつせんして、そういう団体をつくらなければならないという理由は一体どこにあるのですか。
  17. 石神甲子郎

    石神説明員 前の二つの皇居保存協会皇居外苑整備奉仕会というのは、便所をつくりますとか、あるいはそのほかの施設をする団体のように承知しております。そこで次の皇居外苑整備保存協力会の方は、保護清掃とでございまして、施設といたしましても、たとえば立入禁止の札を立てるとか、あるいは外棚をまわすとかいうような、もつぱら苑地保護施設及び清掃という、いわゆる掃除という非常にじみな方面の団体であります。他の方は、比較的積極的に施設をするというふうな団体であります。そこに差がございます。結局あとの整備保存協力会という方は、草刈を協力してやる、あるいは水藻の除去を協力してやるということが主眼でございます。
  18. 金子與重郎

    金子委員 その点、どうも私には腑に落ちないので、その保存をする、あるいは清掃をすること、整備をするということ、たとえば清掃をするにいたしましても、きたない話でありますけれども大小便の始末が、非常に乱れて困るということを、清掃するということになれば、当然便所をつくらなければできないことであるし、芝生の中に入つては困るからというので、柵を入れるということは、これは設備をするということになるのでありまして、それをはつきりわけて、私の方はほうきとかまでやる仕事、一方は金のかかる仕事ですというようなことは、こじつけて理由づければ、そういようなことにならぬこともないのですが、私どもが第三者的に考えたときに、それだけの相違のために、特に団体を新たにつくらなければならぬというようなことは、納得しかねるのであります。やはり厚生省は、建設一般民間団体にやつてもらう、あなたの方でつくつた団体は、あくまではうきとかまでやるのだ、こういうふうなことで今後もやつて行くつもりでありますか。
  19. 石神甲子郎

    石神説明員 この前に皇居保存協会岩隈氏が参りましたときに、団体をつくるにつきましては、清掃等協力していただくことはわれわれとしては非常に望ましいことである。但し、これは非常にじみな仕事でございまして、人夫を出していただくとかいうようなことで、少しも目立つたことではないのであります。清掃というものは、十分じみな仕事でありますために、従いまして、その会費等も非常に集まりにくいのであります。おそらくそういうようなことも、連絡としても出すのでございますが、その後二億程度の建設物をおつくりになるという計画を持つておるわけであります。それから皇居外苑整備保存協力会も、便所とか街燈とか施設をつくるということでございまして、じみな仕事目的としておりません。そこで私たちの今最も希望いたしますところは、国費の不足の分、ということは、結局人手が足らないということでございまして、草が伸びる、紙くずを散らかす、これも協力を得たいということが、私たち一番今熱望しておるところでございます。そういう趣旨におきまして、現にあの附近銀行会社のあそこを利用しております方々からも、もう少し何とかしたいというような要望もありましたし、私たち希望もそこにございますので、あくまでも清掃協力するというふうに運営して行きたいと考えております。
  20. 金子與重郎

    金子委員 そうしますと、どうも今後それでやつて行く、この皇居外苑整備保存協力会というものは、あくまでも清掃主体としてこの協力団体をあなた方の示唆のもとに持つて行きたい、こういうように受取つてよろしいのでございますか。
  21. 石神甲子郎

    石神説明員 そうです。
  22. 金子與重郎

    金子委員 それですと、お伺いしますが、この団体を結成いたしまして、今日までにどのくらいの金額の事業をおやりになつておりますか。
  23. 森直一

    森説明員 まだ実は七月一日を目標にいたしまして、ようやく規約でございますとか、そういうようなものを、私ども話合いがございまして、東京都あるいは千代田区役所等人たち協力して、規約をつくつたようなわけでございます。予算は三百万圓ほどありますが、実質的には何も仕事はしておりません。
  24. 金子與重郎

    金子委員 まだ実質的に何も仕事をしておらぬということになれば、こういうふうな直接私の利益にならない仕事であつて趣旨に賛同して公共仕事をやるという団体がかりにあるとするならば、これを人のつくつたものだから、自分はこういうふうにするということでなくて、施設あるいは整備清掃という一括した関係において、これらのものを統括あるいは統合いたしまして、ことに区役所関係団体だとか、民間のあつちの派だとか、こつちの派だというような関係でなしに、一本にしてこの目的を達成された方が、いいのではないかということが考えられるわけであります。もう一つは、これを特殊な利権や何かに使わないということは、厚生省自体が監督できる立場にあるのでありますから、そういうふうな方に流れる心配はないと思いますので、むしろ厚生省がこういうことをやつてほしいと言うて、それは私どもはできないと断るような非協力的な団体であつたときに、初めてそれではこういうふうな方法をとるほかないということが成り立つのでありますが、私の知る範囲といたしましては、ことさらに新しいものをつくらなくとも、それらの幾つかの民間団体があるとすれば、厚生省自分で新しい団体をつくるだけの意図もあるのでございますから、その前にそれらの団体話合いをさせて、閣議の目的に対して順調に、強力にそれが進められるようあつせんをすべきじやなかろうか。これは私見でありますが、それに対してどう考えておられますか。
  25. 森直一

    森説明員 お話の通りでございますが、実は二、三日前に各団体の主脳者の方、これは整備奉仕会の方の一松先生、それから保存協会総裁であられる大隈先生、それから整備保存協力会、つまり清掃目的とするだけの団体である高橋龍太郎先生、それから厚生大臣、この四人の方がお集まりになりまして、いろいろ意思の疏通をはかるというふうな話になり、中に一松先生あたりから、同じような目的だから、何か方法を考えてみたらどうかというような意見も、実は出たような次第でございまして、その辺は、なおひとつ研究してもらいたいというふうに、私ども命ぜられておる次第でございます。将来はどうなりますかわかりませんが、今の段階では、そういうようなことで、同じようなといいますか、あそこを舞台とする三つの団体が、おのおの目的は違うからどうかというような意見もございまして、研究しておるのは事実でございます。
  26. 金子與重郎

    金子委員 そこでもう一点最後にお伺いしますが、そうすると、皇居の外苑の整備保存会というあなた方のつくられた団体は、皇居の外苑の清掃をするというじみな仕事をするだけだというようなお話でありますから、この前の二者の団体が、お互いに話合いをして協調し合つて、そして厚生省の監督のもとに、まず清掃をやる。そしてそのうちに協会の資金ができたならば、それに伴う設備も整備する。あくまでもこの閣議の決定に基いてやるということになりますならば、当然あなた方の方の清掃ということはいらなくなる。すると話が完全につくわけになりますな、そう承知してよろしいですか。
  27. 森直一

    森説明員 いらなくなるということになりますか、その辺のことは、おのおの団体目的仕事等もありますので、私どもの方で集まるなり何なりしまして、相談をして行きたいというふうに考えておるので、まだはつきりそれがいらなくなりますかどうか、その辺のことは、実は保存協会のこまかい規約等は私ども知らぬので、整備奉仕会というものも規約というようなこともなしに、ただとりあえず便所をやるとか、紙くずをやるとかいうようなこともありますので、いろいろ行きがかりがあろうかと思います。その辺をよく伺つてみませんと……。
  28. 金子與重郎

    金子委員 私のは、一つの仮定を申し上げたわけです。要するに皇居外苑整備保存会というものは、じみな清掃あるいはほうきやかまを使う仕事をやらなくちやならぬから、前の二団体があつても、これができるというような説明でありますが、それならば民間団体が統一して、そのじみな仕事もし、同時に民間の経費を集めて設備あるいは施設までする、そしてあくまで厚生省の意図に従つて協力するという団体が二本化されるならば、当然皆さん方の、あとで清掃のためにつくつた団体というものは、いらなくなるじやないか、こういうことなんです。
  29. 森直一

    森説明員 それは、とりあえずの問題といたしまして清掃をやるというふうなことになりますれば、お話のようになると思います。
  30. 寺島隆太郎

    寺島委員長 堤ツルヨ君。
  31. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいまの金子委員の御質問に関連して、私も承りたいと思います。実は金子先生も、これについていろいろ相談を持ちかけられたので、御質問になつたかと思いますけれども、せつかくできておりますところの民間団体というものを、私は厚生省はお育てになる立場にあると思うのであります。少しその辺の空氣がおもしろくないのではないかと思うのですが、あなたの方で、率直にどういうふうにお考えになつているのですか。
  32. 石神甲子郎

    石神説明員 一松先生の会は、私の方も緊密なる連絡のもとに、計画を進めております。従いまして、これについては問題はございません。大隈先生の会は、岩隈氏が数次私の方へ参りましたが、十分なる了解を得ずして、会を発足されたというふうに私考えております。従いまして、その印刷物にあります計画書は、私たちの関知しない事項が——学校に配つた印刷物ですが、羅列してあるのです。その点私たちとしましては、きわめて遺憾に考えております。
  33. 堤ツルヨ

    ○堤委員 大体私了承いたしましたが、厚生省の立場としては、了解を求めずにそういう発足したものであるならば、一応注意を促されて、そして官僚的な圧迫を加えるということなしに、もう一ぺんやり直したらどうかと率直に言われたらどうですか。そうでないと、私今後うまく行かないと思いますが……。
  34. 石神甲子郎

    石神説明員 私先ほど申し上げましたように、寄付を募集しておりまする印刷物を学校に配りましたのを、私たちが承知いたしましたのが、二回あります。最初配りましたのは、日の丸の旗のついた印刷物でありました。このときは岩隈氏を呼びまして、閣議決定そのほかを全部お見せしました。こういう関係で、この印刷物に述べられてある建設は、厚生省としては許可困難である、いま少しわれわれの方をよく連絡をとつて仕事をしていただかないと困る問題がある、寄付などをおとりになるのは、早過ぎはしないかということは申し上げました。それであらためてよく連絡をとつていただきたいということも、はつきり申し上げました。しかしその後にさらにまた他の印刷物を持つて参りました。そのときには、都の寄付許可の番号が前のとさらにまた違う寄付の募集をしておられましたが、内容はやはりほとんど同じようなものでありました。そこでその際にもいま一度呼びまして、前に警告したように、これは困難である、おやめになつたらどうかということを申し上げました。その後岩隈氏は私の方に連絡がないのであります。都の方にも許可番号がありましたので、私の方といたしましては、これを建設する土地の管理者は厚生省であるが、厚生省に連絡なくやるということは、都としても手落ちではないかということの注意は促しました。
  35. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私ちよつとおそく参りましたので、まことに重なつて恐縮でありますが、一松先生の方の会は密接なる関係をもつてやられた、それからもう一つの方のは、そうやらずされて、しばしば厚生省としても、どうかと思うことがあるというので、注意を促しながら来ておるというのですが、そういたしますと、密接なる関係をとられながら来られた一松先生の方の会の性質と、この会の性質と、根本的にどこにあなたの方にいわくがあるのか、もう一ぺんちよつと説明していただきたい。
  36. 石神甲子郎

    石神説明員 一松氏の会ができましたときにも、皇居外苑施設寄付につきましては、整備奉仕会の決して独占ではないということを、はつきり申してございます。他に同様な団体があつて厚生省として受入れ得るならば、他の団体からも受入れるかもしれない。それはあらかじめ了承してもらいたいということで、整備奉仕会の方にも話してございます。それで岩隈氏のおいでになりましたときにも、やはり同様のことを、はつきり申し上げております。民間団体におきましておつくりになるということは、私どもとしては、決して妨げない、それは御自由である。しかし寄付の条項につきましては、私たちの方におきまして受入れ得るものと、受入れられないものとがある。受入れ得るものを目標としておやり願いたいという意思表示はしてございます。従いまして、私の方として、それが一つになるというような意思表示をしたことはございません。ただ会の運営の形におきまして、一方は緊密な連絡をとつておりますし、一方は連絡がきわめて不十分であるという差異がございます。
  37. 堤ツルヨ

    ○堤委員 そうすると、問題の中心は、寄付の問題にあるわけですね、そのように拜聴してよろしいですか。
  38. 石神甲子郎

    石神説明員 問題は団体計画施設の内容が、第一に問題になります。はたして皇居外苑建設してよい施設であるかどうかということが、一つの問題であります。寄付の方法は、それに附帶した問題だと思います。
  39. 堤ツルヨ

    ○堤委員 少しわかりにくいのですが、それであなたの方でいかがかと思う施設をしてしまつたのですか。
  40. 石神甲子郎

    石神説明員 いや、まだしておりません。
  41. 堤ツルヨ

    ○堤委員 同じ一つの今皇室の延長をめぐつて、こうした問題が、一つの方から言わせれば、官僚が不当な圧迫をやるというような言葉があるらしいですし、それからこの皇居保存協会にいたしましても、私も委員でありますが、趣旨けつこうだというので、何もそんなことは考えずにはんこを押しておるわけです。そういうこともございますし、おのおの一つ一つの会からいろいろな申分があつて、今後おもしろくないということは、いかがかと思いますので、どの会のいかんによらず、公平な立場から、ひとつ再検討を加えて、どれもこれも御破算して再発足して、打つて一丸となつて、いわゆる政府の施策に協力して、皇居外苑の特質及び価値を保存するようなほんとうの団体を、官民一体となつての美しい協力態勢というものを持つた一つの会にまとめて行く必要があるのではないかと思うのですが、厚生省の方ではどうでございますか。
  42. 石神甲子郎

    石神説明員 まことに御趣旨の通りであります。打つて一丸となりまして行きますということは、望ましいことだと考えております。
  43. 堤ツルヨ

    ○堤委員 よく了解いたしましたが、これはひとつ国会議員がうしろから押すとか、こつちは官僚の部課長連中が中心になつてつているんだとか、これは名声高いだれだれがやつているというような、つまらない封建的な思想を捨てまして、根本的に出直してもらわなければならぬ。それで三つながら私は公平にもう一度再検討をするように、ひとつ厚生省も公平な立場でイニシアチーブをとられまして、私たち自体もこれを検討し直しまして、もつと明朗なものにまとめ上げるように、お互いに努力するという点については、厚生省当局といたしましても、異議がないようであります。これについて、特に私は指摘するのではございませんけれども、いろいろな団体というものが——これを特にさすのではございませんが、往々にして官僚の独断によつて、しかも官僚のイニシアチーブによつて、大いに他のものに圧迫を加えて、いろいろな会合を肩書きでもつてつくられて、しかもいろいろな事情に詳しい関係上、漁夫の利を占めるというような官僚の立場がしばしば指摘されて來ております。そういうものの中に、この皇居保存という問題までも数えられるということは、私たち残念に存じますので、その点厚生省の官僚としては、特によろしく愼んでいただきたい。厚生省国立公園部の方で、そうした色彩を持つておいでになるということを指摘するのではございませんが、しばしばそういう目で見られるようなことがたくさんございますので、今日官僚独善時代を現出しておりますが、これは国会議員にも大いに責任がある。そうした一つの事例にならないように、ひとつ厚生省といたしましては、十分公平な立場に立つていただきたいということを、私希望しておきたいと思います。
  44. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、生活保護について発言を求められております。これを許します。苅田アサノ君。
  45. 苅田アサノ

    苅田委員 私は直接生活保護に入ります前に、まず第八国会の最後の委員会におきまして、しばしば政府の責任者といたしまして、厚生大臣並びに、それでなければせめて厚生次官の出席を要求しておつたのでありますけれども、最後までここに出席されないということに対しまして、私はこれは政府が現在世上に行われておるたくさんの厚生行政の不始末に対しまして、責任を回避するものである、こういうそしりを受けても弁解の余地がないじやないか、はつきり私はこのことを政府当局に対しまして抗議したいと思うのであります。せんだつてからの集団赤痢についての質問も、しばしば行われたのでありますけれども、なおこれに対しまして終息の傾向が見えないばかりでなくて、本日の読売新聞等を見ましても、また新たに荒川区等におきましては、四十七名というような大日本紡績の寮内の女工さんが集団的な赤痢のために病気になつたというような、そういう状態までも報ぜられておるのでありまして、こういう事態に対しまして、厚生省としてはもつと責任のある処置をぜひお願いしたいと思うのであります。
  46. 寺島隆太郎

    寺島委員長 平澤政務次官が見えましたから……。
  47. 苅田アサノ

    苅田委員 まず第一にお聞きしたいことは、現在東京都内職業安定所におきまして、特に大森の職業安定所では、新規採用の登録にあたりましては、全然婦人を除外しておる事実があります。あるいは澁谷の職業安定所等におきましても、従来就労手帳を出しておる人たちの中から、さらに妻であるとか、あるいはむすめであるとか、そういう人たちは、新たに再調査をいたしまして、登録から除外しようといつたような傾向が顯著になつておるのであります。そういうことは、他の職業安定所でも多かれ少かれ起つておるという報告を受けております。そしてそうした失業対策からはみ出した人に対しましては、これを生活保護法の対象にするのだということを申しておられるということを聞いておるのでありますが、この関係につきまして、厚生省といたしましては、当然労働能力を持つて、そして就職の希望を持つている人たちを、そういうような生活保護に当てはめるという問題に対しまして、どういうような見解を持つておいでになりますか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  48. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまの問題に対しましてお答え申し上げます。ただいまおつしやいましたようなことに似た事実は、あるのでございますが、ただいま申されたのと多少事実が相違しておりますので、その点から申し上げたいと思います。  御承知のように、職業安定所を通じまして、失業対策による特別な就労のあつせんをいたしておるわけでありますが、この就労あつせんをするについては、いろいろな順序があるわけであります。もちろん失業対策ということが、根本のねらいでありますから、最も効果的な選び方をしなければならぬわけでありますが、同時に、これが一つ事業として行われますために、たとえば道路の補修工事でありまするとか、あるいは水路の改修工事というような事業としての形をとりまするために、あまりに事業に対して非能率的である人々は、希望者が多ければまず遠慮してもらうというようなことが、就労あつせんの方針としてとられておるわけであります。ただ、たまたま、私どもこれは非常に遺憾に思うところでございますが、昨年のある時期におきましては、現在失業保險金の給付を受けておるとか、あるいは生活保護法によつて保護を受けておれば、それで一応その人の問題は解決されているはずなんだから、従つてそういう人々は、もう初めから就労あつせんの対象から除いてしまうというような、きわめて間違つた考えが労働当局においてとられて実、はこれが全国的に実施されたということがあるわけであります。そういうような事実がありましたので、厚生当局としては、この点嚴重に話合いをいたしました結果、労働当局でも、ただちにその間違いを改めることにいたしまして、現在ではその点は是正されたのでありますが、問題として結局残ります点は、失業対策事業に最も効果的である対象を逐次選択して行く、こういう方針をとりますと、勢い生活保護法の対象にはならないような子供を多数かかえた母親であるとか、あるいはこれに類する人々は、いろいろの事情からも順位に入りにくいということで、最近のように失業対策事業のわくと、失業対策につきたいというものの希望者との数の間に、相当な開きが出るような情勢のもとにおきましては、これらの人々は、勢いはじき出されるというような傾向があるわけであります。そういつた傾向が、おそらくただいま苅田委員がおつしやいましたような傾向であると思うのでありまして、これは根本の問題としては、もちろん生活保護法は、いかなる原因でありましようとも、現在生活困窮であるという事実があれば、当然保護するのでありますが、国の施策の立て方としては、失業というような理由で、生活保護法による保護を、きわめて短期間でありまするなら別でありますが、たとえば一年とか、二年とかというふうに相当長期間にわたつて生活保護法によつて保護を受けさせるということにしたのでは、これはおそらくやはり就労対策なり、あるいは社会保障の対策全体としては、適当ではないだろうと思うのであります。ただ現在起つておりまする事象は、必ずしもそういう永続的なものではなく、いわば臨時的な編成がえの過程であるという意味合いにおきまして、生活保護法である、程度こういう人々が保護されるというふうになることはいたし方がない、同時にまた、その保護に遺憾のないようにしたい、こういうような考え方をいたしておるわけでございます。
  49. 苅田アサノ

    苅田委員 ただいま小山政府委員からお話がありましたような、労働省と厚生省との間の食い違いのことは、承知いたしております。しかし私が申しましたのは、そのことではなくて、ごく最近に東京都内の各職業安定所を私どもが手わけをして調べまして、その要求を聞きました結果、申し上げたものでありまして、明らかに婦人の就労を拒否しておる、登録を拒否しておる職業安定所がある。それから再調査によつてそういう事業場の人たちが、婦人でもできる仕事がある、こう言つておるにもかかわらず、職業安定所の方におきまして婦人の就労を拒否している、こういうような事態が実際あるわけであります。一歩讓りまして、もしそういう事態があつて、これに生活保護法を適用するのだというようなことを、もしも職業安定所の方で申しておりましたならば、それは生活保護法を適用しておる厚生省の側からは、明らかにそういうものは、自分たちとしては受けられない、こういうことをはつきりと主張なさいますかどうか、その点をなお私は念を押しておきたいと思うのであります。
  50. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほど申し上げましたように、厚生省側の態度といたしましては、最後に生活保護という制度があるのだというような構えで、失業対策の仕事を扱うということは、どうしても間違いである、こういう考えを持つております。生活保護法によつて、失業しております人を保護するということは、まことにやむを得ぬ措置としてやることでありまして、あたかも生活保護法の保護によつて、それらの人々の失業問題が解決されるような錯覚を、職業安定所仕事に携わる人が持つたとすれば、これは非常な間違いである、こういうふうに考えておる次第であります。従いまして、現在東京都で行われておりますことにつきましては、実は私どもも荒筋は承知しております。大きな筋の問題としては、あのようにいたすこと以外に、今の場合失業対策のわくに限りがあります以上、仕方があるまいと思いますが、これを非常に機械的に、たとえば子供のある未亡人は、もう当然に生活保護の対象であつて、失業対策事業の対象ではないとか、あるいはこれに類する者も同様だというふうに機械的に考えることは、ぜひ改めなくてはいかぬ、またこれは失業対策事業からはずれたならば、当然に生活保護法で同じ程度のものが形をかえて生活扶助費として受取れるのだというように考えて行うことも、これまた生活保護制度の根本の趣旨からして、受入れがたいところでありますので、それでは困る。やはり問題は、あくまで失業対策事業として、どれだけの人をどういう順位で就職させることができるか、ただ結果としてこれだけの人が当分の間は就職できる見込みがないということで出て参りましたならば、これに対しては躊躇するところなく、必要に応じて生活保護法によつて救済をして行く、こういうふうな考えなり構えなりをしておるわけであります。
  51. 苅田アサノ

    苅田委員 そういたしますと、現在の場合、当然これはこの失業対策事業を拡張して、そうしてその人員をその中に收容すべきだけれども予算との関係上やむを得ないので、そういう措置ができておることについても、自分たちの方としては、臨時の措置としてはやむを得ないとして、厚生省の方は現状を認めておるのだ、このような御答弁と理解してよろしゆうございますか。
  52. 小山進次郎

    ○小山政府委員 現在の事態と特に結びつけて申し上げることは、一応御容赦を願いたいのでありますが、いかなる場合も、根本的な考え方として、生活保護制度で、同じ人で、しかも労働能力のあるような人を、しかも本人も労働の意欲が十分にあるという人を、一年も二年もささえて行くということは、決して制度としていいことではない。少くとも生活保護制度というものは、そういう前提の上にはでき上つていない。ただ、たまたま経済変動のまにまに、あるいはいろいろな事情で、一時的に失業のために生活困難に陷つて本人としてはどうにもならぬというような場合は、躊躇するところなく保護をする。しかし、それをいかにも生活保護法によつて保護を行うことが、常道であるかのごとく扱うことがあつてはならぬ。こういう趣旨においては、これはいかなる場合においても、厚生省としてはそういう考えを持つておりまするし、これは厚生省だけではなく、生活保護制度という制度の根本の建前がそうでありまして、どなたがお考えになつても、そうだろうと思います。そういう趣旨において、ひとつ御理解を願いたいのであります。私は抽象論をしておるのではなくて、実際の事実として大森の職安は、すでに婦人に就労手帳を出さぬとか、登録しないと、こう言つておるのであります。このことにつきまして、厚生省としては、そういう人たちを全部生活保護法で、收容して、そうしてこの生活を保護する、こういう建前なんですか、このことを端的にお伺いしたいと思います。
  53. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまのような方法で、職につけなくなつた人が、生活保護法で要求しておりまする若干の要件、たとえば扶養義務者もなければ、特別の收入もない、さしあたり本人の生計を維持して行ける見込みもないというような場合でありますれば、これはもう躊躇するところなく、生活保護法によつて保護しなければならぬ、そういうふうに考えております。この点は、すでに東京都の方でも、そういう考えのもとに民生局においても準備を進めておるはずであります。
  54. 苅田アサノ

    苅田委員 その場合に、働きたいと言つている人たち——今一日の出づらが、大体が二百四十円ですが、大体そういうような失業対策事業としてきめられておる最低の生計費を非常に下まわると思うのであります。生活保護法による給付は、成年女子は千五十円ですか、そういう低いものでは、これは病気でうちでじつとしておるか、ほんとうに生活する意欲のある人間が、自分の家族をかかえて生活して行くにふさわしい生活費ではないということが明らかなわけなんで、そういう場合も、ただこの失業対策からはみ出させて、生活保護費で養つているというだけでは、非常にこの人に対して不公平な処置ができて来ると思うのでありますが、そういうことに対しまして、当局としてはどういう御処置をなさいますつもりでございますか。
  55. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまおつしやいましたような傾向は、一人対一人を比べますと、かなり顯著に現われるのでございまして、おそらく日雇い労務によつて生活しておる人で、それだけで自分一人だけをささえて行くというような場合でありますれば、おそらくはおつしやるような事実になりかねないと思います。しかしながら、実際問題として、現在までのところ、調べておりまするところによれば、日雇い労務により生活をしております人々は、たいてい三人ないし四人程度の家族をかかえておるわけであります。それに本人を合せまして四人ないし五人という家族構成を見てみますと、事実は必ずしもお話のようにはならぬのでありまして、大体において日雇い労務によつて得られます收入のうちから、たとえば電車賃その他を控除いたしましたものと、生活保護費の基準額で算出しましたものとが見合うという程度の見当になつておるのであります。私ども現在の基準額で、もちろん十分だとは思つておりませんが、たとえば、五大都市における基準額、五千二百円と言われておりますが、これに対して、この人がかりに所得税を納めている、あるいは住民税を納めているという前提をとり、若干の医療費を自分で支拂う、さらに交通費も支弁するというような前提をとつてみますと、実際の金高で五千二百円程度の生活ができますためには、名目所得はおよそ八千円から八千五百円程度ありませんと、五千二百円程度の実際の内容のある生活はできないという計算になるわけであります。そういうふうなことを考えますと、一番問題の多い四人ないし五人という日雇い労務者の未亡人母子の世帶等につきましては、ただいま御懸念になりましたような事実は、ほとんどなかろう、こういうふうに考えます。
  56. 苅田アサノ

    苅田委員 それは非常に机上の空論だと思うのであります。もしほんとうに今日の婦人の自由労働者が、どぶさらいであるとか、あるいは砂利運びであるとか、そういうふうな非常に困難な苦しい仕事をしても、やはり自分で働いて生計した方がいい。どうしてもそれでなければ生活がしにくいのだ、生活保護法にかかることでは、生活はできないと言つているのは、ただ救済事業にかけてもらうのがいやだというだけでなく、実際にそういうふうなことをやれば、たとえば働いているために得られるいろいろな特殊な配給であるとか、あるいは加配米であるとか、そういうふうなものも含めまして、確かに現在失業救済事業で働く方が、はるかに生活保護法で、じつと保護を受けるよりもいい、というよりも、生活保護ではやつて行けないのだという、実際の体験に基いた苦しい体験がなければ、こういうことを大勢の人が訴えるわけがないと思うのであります。そういうことは、数字だけで、ただ生活保護法にかかるのも、失業救済事業で働いて得られる賃金というものも、ほとんどかわらないのだから、そういう人たちはどんどん生活保護法でやつたらいいじやないかという御答弁に対しましては、私はこれは実際と違つておると思う。直接働いている人たちのところに行つて、あの人たちがどういうことを要求しているかということを、もう少しごらんになれば、私はやはり生活保護法がどういうふうに適用されなければならないか、どういうところにその欠陷があるかということが、もつとおわかりになると思いますので、ぜひそういう点は、実際やつている人たちが困つて訴えている声を、実際について聞かれて、是正されたいということを希望として申し上げておきます。  それからもう一つお聞きいたしたいのでありますが、そういうふうにして、どんどん失業対策事業からはみ出されておる人々に対しましては、ある期間内といたしましても、政府は無制限にこれを生活保護の中で十分にかかえる、こういうことを責任を持つてお引受けになるおつもりですか。ただ、これは御存じのように、二割というものが、府県なり市町村の負担になつておるのでありますが、地元においてそういう負担ができなくて、これをもしも生活保護にかけないという場合には、厚生省としては、どういう処置にお出になるかということも、あわせてついでにお伺いいたしたいと思います。
  57. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまの問題につきましては、常に機会あるたびに、おそらくこれは大臣からも、その他の政府委員からも申し上げておるところでありますが、日本に生活保護法が嚴存しております限りは、必ず実施いたします。この点は、何かの事情によりまして、国会で生活保護法を違つた形に、たとえば一部新聞紙上に伝えられておりますように、生活保障というようなことについて、国が責任を持つ建前をやめてしまつて、地方自治の尊重というような名目のものに、これを全部市町村の責任に移してしまうというようなことにでも切りかわれば、またその際は話が別だと思いますが、少くとも、現在の生活保護制度が、現在の形で維持されます限りは、必ずそれは保障される、この点は私ども毛頭疑いを持つておりません。  それから地方負担の関係で、地方がこれを実施しない場合はどうかということでありますが、この点は、いかなる手段を用いても実施させる。そのために、今度の第七国会で議決されました生活保護法は、監督について種々の規定が設けられてあるわけでありまして、形式的に申しますならば、どうしても單なる地方財政の事情ということだけを理由として、地方が聞かないという場合には、地方自治法で認められました最も強力な措置厚生大臣がとつても、地方に実施させなくてはいけない。少くとも法律で国の責任ということをはつきり明言をしており、しかもその限度として、たとえば五大都市については五千二百円の生活水準を下まわるという事実があつたならば、必ずやる、こういうふうにきめておるわけでありますから、この法律が守られないなどということは、毛頭考えなれないという考えを実際持つておるわけであります。
  58. 苅田アサノ

    苅田委員 ただいまの小山政府委員の御答弁は、はなはだ事実に相違しておると思いますけれども、しかしこれはそういう事実を持つて来て、一つ一つこの問題の解決をしていただくということにいたしまして、今日はこれ以上問答しないことにいたします。  ただ、もう一つお聞きいたしたいことは、現在そういうふうな失業対策事業からはみ出した人々が、どんどん生活保護の中にかかえられて行くとすれば、当然これは二十五年度の当初予算は——これは累年の増加傾向によつておる予算であるということを、はつきり言つておられるのでありますから、予算が大幅に足りなくなるということは、予定されるのでありますが、九月の臨時国会に対しまして、この追加予算を計上なさるおつもりがあるかどうか、この点をひとつお聞きしておきたい。
  59. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいまの問題は、見積りの問題でございますので、現在の段階では、まだはつきり申し上げることはできません。ただ前回申し上げましたように、二月以降における保護の人員の増加は、相当急激なものがございます。それまで毎月一万五千前後の増加でありましたのが、一挙に三万五千から、多いときは五万程度増加しておるのであります。この趨勢を現在しさいに点検しておりますが、今までつかめております傾向は、四月の末まででありまして、五月以降はまだ出ておりませんので、従つてこれによつて今後の見通しを立てまして、万一不足するというようなことになるといたしますならば、これは臨時国会になりますか、あるいは通常国会の際にお願いすることになりまするか、時期の点はいろいろございましようけれども、不足であるとすれば、不足分はぜひとも御追加願わねばならぬ、かように考えて、財務当局とも一應こういつた点についての荒筋の意見交換は、現在しておるところであります。
  60. 苅田アサノ

    苅田委員 この生活保護に関連いたしまして、厚生次官にお伺いしたいと思うのであります。それは前回におきましても、現行のいろいろな社会保險や生活保護等を含めまして、そういつた社会施設の全部をとりまとめまして、一本として国民の最低生活を保障する意味での社会保障制度の草案というものが、大体社会保障制度審議会にできまして、そしてそれが本委員会でも、研究的に大内会長に御来席願いまして、これについての研究が行われたわけであります。ところが、私どもがその席上で非常に疑問に思いましたことは、現在の政府が現在の厚生行政のいろいろなあちらこちらの破綻に対しまして、何とか手を打たなければならないというこの処置はわかるのでありますけれども、いよいよ社会保障制度審議会から出されました試案は、大内会長に言わせれば、少くともこれは最低の案であつて、いかに吉田内閣といえども、この程度の社会保障をしなければ、とうてい現在の日本人の最低生活は保障されないということを言明されておられるのでありますが、これによりましても、大体これは七、八百億円の予算を必要とするということが言われておるのであります。はたして私この試案を審議会に対して研究させておいでになる政府、特に厚生当局は、どれくらいの、ほんとうにこれを実行する、実行しなければならないという熱意を持つてこれをやつておいでになるか。もしそうであれば、七、八百億円の予算につきましても、これを現在の政治のやり方の中において実現し得るという、はつきりした見通しを持つておいでになるか、大蔵当局との間の交渉はついておるのかどうか、こういう点につきまして、ひとつ政務次官から聞きたいと思います。
  61. 平澤長吉

    ○平澤政府委員 お答えいたします。仰せられる通り、政府といたしましては、社会保障制度審議会の答申は、やがて八月の末には大体出るであろうということを承つておるのであります。従つて御承知の通り、この答申が出ますれば、これを参考にいたしまして、政府としてはこれが具体化、実現をはからねばならないというので、審議会は審議会といたしましても、私ども寄り寄りこれに対して研究をいたしております。従つてただいまの御質問は、七、八百億円は最低であつても、必ずかかるであろう、それでなければ、この社会保障制度というものが実現せられても効果がないであろうというような、御意見としての御発言のように私存ずるのであります。そこで私どもは、大体審議会の御意向がその辺にあるということをそれとなく予想いたしまして、それを目標にして、ただいま各方面と折衝をいたしております。でありまするから、政府といたしましては、少くとも、最低限度においてもこれが実現を期待しなければならない。しかしながら、社会保障制度のことは、御承知の通り財政等勘案いたしまして、これを一本にしてやると申しましても、財政とにらみ合せてやることが必要なことでありまするから、目標はそこに置きまして、私ども努力をいたしておる次第でありますけれども、現段階では、必ずしも七百億、八百億という金が、ここで準備せられるやいなやということについては、私どもまだ確信をもつてお答え申し上げる段階には立ち至つておらぬ次第であります。
  62. 苅田アサノ

    苅田委員 そうしますと、この社会保障制度審議会の答申を参考として、政府ではそういう一元的な社会保障制度を実施する。これはただそういう研究ではなくて、はつきりと実施するという腹で研究を進めておいでになるというふうに伺つたのでありますが、そういたしますると、これは昭和二十六年度から実施されるおつもりでありますか、それとも二十七年度から実施されるおつもりでありますか。その点についても、ただいま厚生当局として審議されております状態につきまして、お聞きしたいと思います。
  63. 平澤長吉

    ○平澤政府委員 ただちに理想的な完成にまで参るということには、行かないと存じます。従つて本年は答申を受けます、そうしてこの通常国会においてこれらを段階的にやつて行くかどうか、これを年次的に申し上げますれば、二十五年にはこれが理想の達成のためにどの部分を二十五年度に企画し、あるいは二十六年度には何をやるかというような、財政とにらみ合せまして、段階的なくふうについても検討しておると、御了解願いたいと思います。
  64. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に堤ツルヨ君の発言を許します。
  65. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいまの生活保護に関する苅田先生の質問は、非常に大事だと思います。私も具体的な例を持つて来て、厚生省に、こういうのがある。あなたは委員会ではこういう答弁をしておられるが、実際とこう違うじやないかという実例を持つて参ります。幾ら應答しても切りがありませんから、実際私ども実例をたくさん持つておりますので、どこどこの何々が、どういう民生委員のところへ行つてどうとかいう実例を持つて参りますから、それを御解決願えますか。  それから、次にもう一つ社会保障制度の御質問がございましたが、答申を待つて実現なさると思うのでありますが、私といたしましては、答申を待つて実現なさるまでの期間があると思うのであります。この穴をどういうふうに埋めるかということは、この失業問題、なお現行生活保護法が不十分であるという点から勘案いたしまして、この空白、今日からこの社会保障制度確立までの期間が問題だと思います。その間に対するところの政府の暫定的な処置というものを、政務次官としてお考えになつておるかどうか、ちよつとお伺いいたしたいと思います。
  66. 平澤長吉

    ○平澤政府委員 お答えいたします。その面については、社会保障制度の問題は各般の施策がありまするけれども、これをまとめようとするまでの間の段階については、現行の制度を最大限に活用して参るということ以外、ただいまのところ政府としては考えておらぬのであります。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤委員 現行法下におけるところの、何かといえば、あらゆる社会保障の問題を百パーセント運用するとおつしやいますけれども、生活保護一つにいたしましても、百パーセント運用をするおつもりで、厚生省が今日までやつて来られたでしようか。私たちの目から見れば、はなはだ微々たるもので、今日の民主政治の目的というものは、人命を尊び、生活を安定せしめ、職業を擁護するものでなければならぬと思うのですが、これをあずかるところの厚生省自体が、これをなし得ておらぬという今日の急迫した社会情勢というものを十分お考えになつたならば、私は政務次官としては、もつと責任ある御答弁を伺いたかつたのであります。少くとも福祉のために暫定的な予算を政府に要求されて、厚生省としては、厚生大臣以下懸命な努力をされて、この暫定的な空白時代を埋めるための処置をしていただきたいということを、私は社会党を代表してお願いしておきます。     —————————————
  68. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に理事補欠選任の件についておはかりいたします。去る七月二十九日理事大石武一君が委員を辞任せられ、本日さらに理事原田雪松君が理事の辞任を申し出ておりますが、原田雪松君の申出を許し、理事二名の補欠選任につきましては、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なければ、大石武一君の補欠には再び委員に選任せられた大石武一君を、原田雪松君の補欠には青柳一郎君の兩君を理事に指名いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後一時十九分散会