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1950-07-27 第8回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十七日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 青柳 一郎君 理事 大石 武一君    理事 松永 佛骨君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       高橋  等君    中川 俊思君       原田 雪松君    松井 豊吉君       丸山 直友君    亘  四郎君       柳原 三郎君    堤 ツルヨ君       福田 昌子君    苅田アサノ君       松谷天光光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 黒川 武雄君  出席政府委員         厚生事務官         (兒童局長)  高田 正己君         厚 生 技 官         (公衆衞生局長三木 行治君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     森本  潔君         厚生事務官         (社会局保護課         長)      小山進次郎君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君     ――――――――――――― 七月二十五日  委員堀川恭平君辞任につき、その補欠として大  西禎夫君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十五日  地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、  検疫所設置に関し承認を求めるの件(内閣提  出、承認第二号)  外地引揚歯科医師免許に関する請願田渕光一  君紹介)(第四七〇号) 七月二十六日  らい患者療養生活改善に関する請願苅田ア  サノ君紹介)(第六〇三号)  引揚無縁故者住宅建設促進に関する請願苅田  アサノ紹介)(第六〇四号)  岩手六幡平周辺の山岳高原地帶国立公園に  指定請願山本猛夫紹介)(第六一八号)  三陸海岸を国立公園指定請願山本猛夫君  紹介)(第六一九号)  日本医療団清算剩余金都道府県営移管病院整  備費に配分交付並びに国庫補助請願山本猛  夫君紹介)(第六二六号)  国民健康保險運営に関する請願山本猛夫君  紹介)(第六二八号)  国立栃木病院敷地買上げに関する請願佐藤親  弘君紹介)(第六四〇号)  未帰還者家族の援護に関する請願坂田英一君  外五名紹介)(第六五〇号)  引揚医師国家試験受験回数制限緩和に関する  請願玉置實紹介)(第六五二号)  舞鶴港に検疫所設置促進並びにその暫定措置に  関する請願大石ヨシエ紹介)(第六五九  号)  外地引揚歯科医師免許に関する請願淵上房太  郎君紹介)(第七二五号)  がんの治療法研究費国庫補助に関する請願(倉  石忠雄君外五名紹介)(第七六二号)  温泉法の一部改正に関する請願中村又一君紹  介)(第七七四号)  薬事法改正に関する請願外五百六十三件(有田  二郎君外二名紹介)(第八五七号)  同外二百六十六件(山口喜久一郎君外二名紹  介)(第八五八号)  同(池田正之輔君外二名紹介)(第八五九号)  同(有田二郎君外二名紹介)(第八六〇号)  同(山口喜久一郎君外二名紹介)(第八六一  号)  同(池田正之輔君外二名紹介)(第八六二号)  同(有田二郎君外二名紹介)(第八六三号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十五日  優生保護法の一部改正に関する陳情書  (第八一号)  国民健康保險国庫負担増額陳情書  (第一一〇号)  災害救助法による経費全額国庫負担陳情書  (第  一二〇号)  医療国営に関する陳情書  (第一三二号)  らい患者生活改善に関する陳情書  (第一四〇号)  国立阿久根療養所病床増設に関する陳情書  (第一四四号) 同月二十六日  国民健康保險制度強化対策に関する陳情書  (第一六一号)  結核患者待遇改善に関する陳情書  (第一八二号)  外地引揚歯科医師免許に関する陳情書外十四  件  (第一八三号)  国民健康保險法の一部改正に関する陳情書  (第一八四号)  社会福祉主事設置費全額国庫負担に関する陳情  書  (第一八五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、  検疫所設置に関し承認を求めるの件(内閣提  出、承認第二号)  狂犬病予防に関する件  公衆衞生に関する件  婦人・兒童保護に関する件     ―――――――――――――
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所設置に関し承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。まず政府側より提案理由説明を聽取することといたします。黒川厚生大臣。     —————————————
  3. 黒川武雄

    黒川国務大臣 ただいま議題となりました検疫所設置に関し承認を求めるの件について、その提案理由説明いたします。  現在東京港に出入する外航船舶は、横浜港に寄港し、横浜検疫所検疫を受けるという不便を忍んで運航されており、また羽田空港には、横浜検疫所から職員を派遣し、出入航空機検疫を実施しているという現況であります。  しかしながらこのような臨時的措置は、決して東京港の発展に寄与するものでないことはもちろん、緊急措置を必要とする検疫業務の円滑なる遂行も期することができないのであります。特に最近東京港に出入する外航船舶増加は、従来のように横浜検疫所に依存しきれないほどに業務の膨脹を来し、さらにまた最近の羽田空港における出入航空機の著しい増加は、横浜検疫所負担をもちましては、とうてい完全な業務遂行を望み得ないほどの繁忙を来しておるのであります。  かかる危惧すべき現情にかんがみ、当局といたしましては、伝染病予防に万全の態勢を確立すべく、今般東京港に羽田航空検疫を兼ねる東京検疫所設置し、両港における業務運営に遺憾のないようにいたしたいのであります。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに承認せられんことをお願いいたします。
  4. 寺島隆太郎

    寺島委員長 本件についての御質疑はございませんか。
  5. 丸山直友

    丸山委員 検疫所をつくられる必要性のあることは、私どもも了解し得るのでございますが、この検疫所を新しくつくりますについての建物、設備及びその所員の数、これに関する予算措置等においては、何らの心配がないかどうか、もう少し詳細な点を御説明願いたい。
  6. 三木行治

    三木政府委員 ただいま御質疑になりました東京検疫所経費でございますが、これにつきましては横浜検疫所の百四名の中から、二十六名を東京の方に割愛いたしまして、これに従事せしめるのでございまして、人間の増はないのでございます。また所要の経費につきましては、約七百万円をすでに計上いたしておりますので、その方もさしつかえなくやれるわけでございます。また場所につきましては、一応候補地といたしまして、芝浦海岸に、東京都の協力を得まして適当な土地が得られそうでございますので、その方もうまく行くであろう、かように考えておる次第でございます。建物については約百坪の建物を新営いたす必要がございますが、この経費も準備いたしておりまするし、そのほか、その場所にございまする建物の使用を、東京都の方で厚生省側に提供してくれますので、その点も十分やつて行けるわけでございます。  ただ御存じのように、検疫所といたしましては、いわゆる停留施設ということが必要になつて来るのでありますが、尨大経費を要しますので、当分の間横浜検疫所停留施設を使つて行きたい、かように考えておる次第でおります。
  7. 苅田アサノ

    苅田委員 最近東京港に出入りする外国船舶の数が非常に増加いたしたというのですが、これの原因につきまして、少しお話願いたいと思います。
  8. 三木行治

    三木政府委員 これは御存じのように航空機羽田でございまするが、航空機及び船舶、その船舶はいわゆる貿易増嵩に伴いまして、最近は毎年一・六倍ぐらいの割合をもつて出入船舶がふえておるのであります。その内容等につきまして、いわゆる貿易の伸長ということ以外に、私どもの方はただいまは資料を持つておりません。
  9. 苅田アサノ

    苅田委員 今度の朝鮮問題等に関連して、こういう横浜等から出入する船舶増加したというようなことについての実態は、おわかりにならないでしようか。
  10. 三木行治

    三木政府委員 いわゆる軍事行動に伴います軍用船につきましては、これはこの検疫所権限外でございますので、それは関係ございません。
  11. 寺島隆太郎

    寺島委員長 他に本件について御質疑はございませんか。——他に御質疑がないようでありますので、この際お諮りいたします。  本件に関してはすでに質疑も終了しておると存じますので、質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なければ質疑を打切ります。  引続き討論に入るのでございますが、本件についての討論は別に通告もございませんので、これを省略し、ただちに採決をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  13. 苅田アサノ

    苅田委員 この件につきましては、文字上のところだけでは、別に異議はございませんけれども、もう少し別個の方面から考えて参りたいと思いますので、採決につきましては、次の機会までお延ばし願いたいと思います。
  14. 寺島隆太郎

    寺島委員長 了承いたしました。討論については次回にこれを譲ります。     —————————————
  15. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に優生保護に関する件を議題といたし、質疑を許します。福田委員
  16. 福田昌子

    福田(昌)委員 優生保護法は二十三年九月十一日から実施になつておりますが、これが施行されましてから今日まで、強制断種手術というものは何名行われておりますか。またその断種手術男女別とか、あるいはまた疾病とかいつた概略の内容をお知らせ願いたい。
  17. 三木行治

    三木政府委員 強制優生手術の数でございますが、これは昨年度において男子三十九名、女子九十三名、計百三十二名でございます。
  18. 福田昌子

    福田(昌)委員 その病名、その適用理由になりました條項を、大別でけつこうでありますから、お知らせ願いたいと思います。
  19. 三木行治

    三木政府委員 これは強制は三十九名でありまして、その内訳は資料をただいま持つておりません、後ほど調べてお答えいたします。
  20. 福田昌子

    福田(昌)委員 後ほどお知らせ願いたいと思います。  この優生保護法は、御承知くださいますように、その根本の趣旨は、悪性遺伝を防止しようというところに、その根底があるのでございますが、年間わずかに百三十二名というような強制断種手術で、十分だと厚生当局はお考えですか。
  21. 三木行治

    三木政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、強制優生手術の場合でございまして、そのほかに任意のものが男子につきまして二十九名、女子につきまして五千五百九十一名、計五千六百二十名と相なつておるのであります。もとより優生保護法施行いたしますと、いわゆる受胎調節、あるいは妊娠中絶という機会も多くなりますし、また現実統計面から見ましても、出生率が低下いたしておるのでございます。でございますから、こういう状況になればなるほど、優生手術は積極的にやつて行かなければならぬことは申すまでもないところであります。私どもとしても、この面につきましては、任意五千六百二十、強制百三十二の数をもつて、決して足れりとしておるわけではございませんので、この方面については、一層の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいま局長さんの御説明によりまして、まつたく了解できたのでございますが、そういう御趣旨にもかかわりませず、地方に参つてみますと、強制断種手術ということに関しては、地方衛生当局がほとんど無関心な状態にあり、ことに精神病院、あるいはまた精神異常者を扱つております刑務所関係におきましても、ほとんど優生保護法、ことに強制断種條項を存じておりません。そういうことを私が申し上げましても、めんどうくさいという気持を持たれておる向きが、非常に多いのであります。もし厚生当局で、優生保護法というものが、真に国民悪質遺伝を防止することに役立たせたいというお考えであるならば、もう少し積極的な強制断種に対する啓蒙を、地方衛生部、あるいはその他の所管のところに対して御通達願いたいと思います。またこれに対する予算的措置におきましても、私どもは非常に不服なものを持つておるのでございます。大体一昨年は、強制断種につきまして、どれくらいの予算のもとにおいてこれが行われたかをお知らせ願いたいと思います。
  23. 三木行治

    三木政府委員 優生手術、ことに強制優生手術等につきまして、地方も大いに督励しろという御意見でございます。私ども衛生部長会議等においても、強くこれらの点を指示いたしておるのでありますが、なお不徹底の向きがございますならば、さらに強くこれらの指導及び必要なる指示をいたしたいと存じます。なお、これらに要する経費でございますが、昨年度におきましては、二百人分といたしまして——強制優生手術だけについてでございますが、百九十二万円、本年度は三百人分ということに相なつております。もとより御承知のように、これらは実績に基きまして要求をいたす法律義務費でありますので、途中でも追加が要求できる、こういうことになつておる次第でございます。
  24. 福田昌子

    福田(昌)委員 よくわかりました。これは希望でございますが、地方衛生当局の方が、もう少しこれに積極的に活動すれば、日本全国には強制断種手術該当者が、相当な数存在しておると私は考えるのであります。そういう意味におきまして、この悪性遺伝防止のために、もつと活発に、厚生当局地方関係庁に対して御通達願いたいと思います。  それとあわせて、刑務所医官などは、強制断種というものに対してまつた関心がないというほど、ないのでございます。こういう刑務所医官あたりに対して、厚生省としてはどういうような御通達をしていただいておるか、伺いたいのであります。
  25. 三木行治

    三木政府委員 刑務所医官でございますが、これにつきましては、法務庁の方と打合せをすることになつておりまして、実はまだやつておらないのでございます。従つて、これは法務庁の方から通達をしてもらうということになるわけでございます。癩療養所長会議、あるいは衛生部長会議等におきましては、これらの点について強く指示いたしておるわけであります。なお、ただいま御指摘のありましたような法務庁関係等についても、連絡をし、協力してやつて行くという努力をいたして行きたいと思います。
  26. 福田昌子

    福田(昌)委員 ぜひそうお願い申し上げたいと思います。私たち地方に参りまして、刑務所医官あたりにお話申し上げますと、まつたくめんどうくさいことを言われるという顔をしておりまして、ほとんどこれに対する御協力がないのでございます。法務庁からも、何らの通達がないということを申しておられます。そこで実施されて二年近くになりますが、こういうような頼りのないことでは、私どもは非常に不満なのであります。何のために優生保護法をつくつたかという、その意味をなさないのであります。これでは前の優生法時代とかわらないのでありまして、改正案をつくる必要はなかつたと存じます。日本立場というものもかわつて参りましたし、また日本の人口問題に対する考え方も、今日においては、戰前とは大いに観点をかえて考えて行かなければならないところに到達いたしておるのでありますから、厚生省におきましては、優生保護法というものに対して、もつともつと積極的な御関心処置をおとりになるよう要望する次第であります。それについては、何と申しましても、もつと予算的措置においても、強力なお考えを推し進めていただきたい。私たちといたしましては、今日のような優生保護法の行政上のお取扱いに対しては、きわめて不満であります。  それからもう一つお尋ね申し上げたいのは、人工流産は大体どういう数において行われておるか伺います。
  27. 三木行治

    三木政府委員 昨年度の統計によりますと、第十二條関係におきまして、十一万七千七百三十六、第十三條の関係におきまして十万一千八十三、合計いたしまして約二十一、二万という数に相なつております。
  28. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は真偽をよく存じませんが、聞くところによると、やみ手術が非常にたくさん行われておる。私ども年間四十万くらいは、やみ手術が行われておるのではないかということを聞くのであります。その数の真偽のほどは全然わかりませんが、うわさにそういうことを聞くのであります。厚生当局もこのやみ手術が行われておるということは、お認めでございますか。
  29. 三木行治

    三木政府委員 やみ手術が行われておることを知つておるかというお尋ねでございますが、これは私どもは、そういううわさを聞いたことはございますけれども現実やみ手術が行われておるかどうか、責任を持つて答えろとおつしやいますと、どうもわからないというお答えをするよりいたし方がないと思います。
  30. 福田昌子

    福田(昌)委員 うわさはお認めだそうでございますが、私も現実に見たわけではございません。しかし相当な数のやみ手術が行われておる。ことに優生保護法におきましては、人工流産をするのは、指定医に限られておるわけであります。それにもかかわらず、眼科とか耳鼻科とか、あるいは内科のお医者さんとか、あるいはひどいのになると、産婆なり、あるいは学生がアルバイトに人工流産をしておるということを聞くのでありますが、厚生当局においては、こういうことを御調査遊ばしたことがおありになるでございましようか。
  31. 三木行治

    三木政府委員 私どもといたしましては、府県に命じまして、法施行状況等について、それぞれの意見を徴したことはございますけれども、いわゆる調査をやるということにつきましてはやつておりません。ただ、ただいまも申し上げましたように、さようなうわさがあるように、優生保護法というものの施行以来、もう子供を生むといなとは両親の自由であるというような、非常な誤解がございまするので、それらの点につきましては、十分地方の注意を喚起し、法の施行に対しては、誤りなきを期してやつてもらうような指示をいたしておる次第でございます。
  32. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまの御説明で、非常に御心配をいただいておることはわかつたのでございますが、どうかもう少し積極的に、進んでこういつた方面指定医ならざる医師が、不正に人工流産をやつておる、また適応症でない人が人工流産を受けておる、こういつたやみ人工流産について、厚生当局においては、もつと徹底的な御調査をお願い申し上げたいと思うのであります。そうしてそれに対しまするところの適切な御処置をお願い申し上げたいと思います。それでなければ、何のために優生保護法があるかということになりまして、その立場を失うのであります。優生保護法による手術よりも、むしろやみの方が多いということであれば、こういう法律存在理由がないのでありまして、その点十分に御調査をお願い申し上げたいと思います。  次にお尋ね申し上げたいのは、優生保護法におきましては、現行のいろいろな細則におきまして、ことに第十二條、第十三條に対しまするところの厚生当局施行細則というものが、私どもといたしましては、あまりにも煩雑に過ぎる傾向をとつておるのでございますが、これに対しまして、厚生当局は今後改めて行こうというようなお考えがございますでしようか。
  33. 三木行治

    三木政府委員 十條、十三條の法を施行いたしますにあたりまして、その法の施行を適切にやりますために、必要な細則を、定めた次第でございます。煩雑に失するという御意見でありまするが、どういう点が具体的に煩雑であつて、どういうふうに改善しろという具体的の御意見がいただけますならば、たいへん仕合せだと存じます。
  34. 福田昌子

    福田(昌)委員 たとえば十二條におきましては、その疾病状況が、母体の生命危險を及ぼすおそれのあるものというようなことになつておるのでありますが、そういうおそれのあるものに対するところの、厚生当局の御解釈というものが、私どもといたしましては、時には行き過ぎであり、時には聞違つた解釈をしておられるのではないかということを感ずるのであります。たとえば、これは十二條適用の場合でありまするが、それに対しまする次官通牒としてお出しいただきました病名の中には、重症結核とか、あるいは狭窄骨盤とかいうようなものを十二條取上ぐべきだというような條項なつておりましたが、これは專門的医者立場から見ました場合、こういう不合理な病名條項というものを十二條でお取上げいただくということは、はなはだおかしな問題だと思うのであります。こういう十二條適応症として專門的病名を御羅列いただきます場合には、どうかそれぞれ專門の学会に御相談いただきたいものだと思います。結核というものは、重症であれ軽症であれ、妊娠によりまして重症結核は必ず病状が悪化し、軽症なものは必ず悪化しないということは断言できないのであります。また狭窄骨盤というようなものは、十二條でわざわざ規定していただくには及ばないものであります。そういうような病名に対しまして、よく專門的学会と御相談を願いたいということが一つであります。  それから第二点は十二條事後届であります。これは法律の本文におきましては、事後届でありまして、これを厚生省にお届けするようにはなつていないはずでありますが、十二條の届出におきましても、各地方保健所におきまして、実に嚴格なことを申しております。かような必要以上に嚴格行動、監視的な行動というようなものは、優性保護法の前の国民優性法時代とまつたく同じでありまして、あえて法律を新しくつくつただけの値打がないのであります。ことに十三條の適用を、地方保健所においては非常に指定医に勧め過ぎております。ほとんど人工流産の対象は十三條で取上げて、半ば強制的に申して参つておる保健所があるやに聞き及ぶのであります。十二條、十三條の判断というものは、これは專門的指定医であれば、おのずから医学的常識において判断できるのでありまして、保健所長の行き過ぎた御監督というものは、結局厚生当局の行き過ぎた御干渉にあるといわなければならないのでありますが、そういう点に対しまして、もつと妥当な措置をおとり願いたいと思います。  それから十三條の一つ社会的適用條項には、経済的に貧困な者が、貧困のゆえにからだの栄養失調を起すということが、適応症にあげられておりますが、そういつた人に対しましても、手数料として一件二百円ないし三百円の審査料をとることになつております。もつともこの手数料生活困窮者あるいはまた医療法該当者においては国庫補助または減免ということになつております。事実規則はそうでありますが、今日とり行われておる面からいたしますと、なかなかそういうようにうまく行つていないのであります。生活保護法適用を受け、あるいはまた医療法適用を受けるには、なかなかめんどうであり、またそういうことを知らない人が相当あつて、この手数料の点におきまして個人の負担——貧困者に限らず、生活に困つておる庶民階級負担が増大しておる傾向にあるのであります。從つてこういうような手数料を、私どもは願わくは全廃していただきたいと思います。これは厚生当局でおとりになる処置ではないかと思いますが、地方官庁に対しまして、これを全廃できる処置をとるような御勧告をいただきたいものだと思うのであります。そういつたような点に対して、一応お考えを願いたいと思うのでございますが、厚生当局におかれましては、どういうお考えでいらつしやいますか。
  35. 三木行治

    三木政府委員 具体的にいろいろなお話がございましたので、お答えをいたしたいと思いますが、十二條につきまして、疾病状況のところで、生命危險を及ぼすおそれのあるものという解釈が、厚生省側解釈は弊害があつて、特に例示してみると、重症結核であるとか、あるいは狭窄骨盤とかいうような、いささかおかしな解釈がしてあるではないかという御意見でございますが、これは私どもの方で、さような通牒をいたした覚えはないのでございまして、何か間違いではないかと存じます。ここにございます次官通牒におきましても、さようなことは毛頭ございません。第十二條と第十三條との関連において、母体の生命危險を及ぼすおそれのあるものと、母体の健康を著しく害するおそれのあるものとの限界点については、生命危險を及ぼす場合とは、当該具体的状況において医学的常識経験から見て、死亡の結果が予想される場合であつて、これについては嚴格に考慮せられたいというような指示をいたしておるのでありまして、具体的な病名をあげるというようなことは、いたしておらないのでございます。なお学会とも相談しろという御意見でございますが、私どももまつたく同様に存じておるのでありまして、谷口先生のお入りになつております産婦人科学会等とも相談いたしまして、これらのお医者さんが実際におやりになる場合におきまして、一歩誤ると刑法上の堕胎の罪に問われるのでございますから、それらについては、最もわかりやすいようなスタンダードをきめて行こうというように考え努力をいたしておるところでございます。  それから十二條の問題でございますが、これはどの程度に解釈するのが適当かということは、知る必要がございます、法を執行いたします上に必要がございますが、しかし嚴に失するというようなことは、これは適当でないので、もしさような事実がありますならば、改めて行きたいと存じます。  それから十三條の適用指定医に勧め過ぎているという御意見でございますが、この点につきましては、私どもそういう事実があるということは、初めて知るのでございます。それから厚生省側で、そういうことは医者にまかせて置くべきことであつて、行き過ぎた干渉をする必要はないではないかという御意見でございますが、御存じのように、この優生保護法によります妊娠中絶は、刑法の除外例でございまして、この刑法の規定が嚴として存在いたします以上、法に触れるという問題が当然にあるわけであります。從いまして、私どもといたしましては、検察庁とも相談をいたしまして、一応見解はこういう見解であるということを、地方通達をいたしておるのでございまして、これは干渉というよりも、むしろ親切でそうやつておるのでありまして、その点につきましては、御了承を得たいと存じます。  なお最後の経済的云々の問題で、手数料をとることは酷ではないかという御意見であります。これは私どももさように存ずるのでございまして、この減免の規定を十分に活用するようにということを、指示いたしてございます。なお御意見に従いまして、さらに再度さような指示をいたしたいと存じます。
  36. 福田昌子

    福田(昌)委員 次は産兒制限についてお尋ね申し上げたいのであります。一時、避妊薬が公認になりまして、出ました当時におきましては、非常な勢いで民間に避妊薬の使用が流行したように考えられたのでございますが、最近はどうも失敗が多いという観点に立ちまして、バース・コントロールというものに対する関心が、また薄れて来たのではないかという気持を私ども持つのでありますが、厚生当局においては、この間の輿論というものを、どのようにお考えなつておりますか。
  37. 三木行治

    三木政府委員 避妊薬が一時ほど売れなくなつたということは、私どもも聞いておるのでございます。またその失敗の例も聞いております。たとえば膣坐薬を飲んだけれども、きかなかつたという話を聞いておるのであります。從いまして、これらにつきましては優生結婚相談所、あるいは保健所の活動によりまして、十分に受胎調節の知識の普及に努めて行くということをやつて行きたい。現にそういうことで、いろいろ努力をいたしておる次第でございまして、妊娠調節の薬が売れなくなつたから、避妊という問題についての輿論が薄くなつたとは私考えておらないのであります。現に統計面から見ましても、今年の四月の出生統計で見ますると、千対二十九くらいに下つておるのでございます。こういうことは、私は輿論も大いに要求し、かつ実行しておるもの、かように考えておる次第でございます。
  38. 福田昌子

    福田(昌)委員 厚生当局にたいへん御心配をいただいておることは、私どもも了解して感謝いたしておるのでありますが、願わくは保健所あたりがもう少し御活発に御運動願いたいと思うのであります。これは何と申しましても、予算関係で、足がなくて動けないという実情にあるのでございますから、そういう点、十分予算的措置においても、積極的なお考えをおとり願いたいと思います。さらにこのバース・コントロールに対しまする啓蒙と申しますか、社会を指導するためには、お医者さんを使うということもけつこうでございまするが、指導婦といたしまして、保健婦とか、あるいは助産婦を指導婦に充てたら、非常にバース・コントーロルの正しい指導ができるのじやないかと考えるのでございますが、厚生当局は、これに対してどういうお考えでございましようか。
  39. 三木行治

    三木政府委員 私どももさように考えておりまして、この次の保健婦講習会等には、受胎調節に関する科目も入れて行きたいと考えまして、そういう準備をいたしているような次第であります。もとより保健所におります母子関係のお医者さんが中心になりまして保健婦、助産婦がこれに協力してやつているというのが現状でございますけれども、さらに保健婦、助産婦等につきましても、もつと適切な知識を与えて行くというような努力をいたしたいと存じております。
  40. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういつたバース・コントロール專門の指導婦というものを、特別に保健所あたりに増員されるお考えはございませんか。
  41. 三木行治

    三木政府委員 特に受胎調節の專門家である指導婦を置くという制度は、ただいまのところ考えておりません。
  42. 福田昌子

    福田(昌)委員 最後のお尋ねでございますが、優生保護法の現行の制度を現在の状態におきまして、厚生当局としてこれを修正するような御意見をお持ちでありましようか。
  43. 三木行治

    三木政府委員 その点は、むしろ私の方からお伺いいたしたいと考えるくらいでございまして、この優生保護法改正せられました当時の改正趣旨等につきましては、私どもも伺つておるのでありまして、要するに母性を保護するということが、この法の目的であるという御説明であつたのであります。しかしその後立案者におかれましても、人口問題と深く関係を結びつけてやつて行きたいという希望であるということを、しばしば伺つおるのであります。輿論もそれを要求しておるように、私どもも聞いておるのであります。從つてどもといたしましては、この法を施行するにあたりまして、できるだけ広い解釈でやつて行き、それらにこたえて行きたいと考えておるのでありますけれども、そこにはおのずから私ども法施行者といたしまして、法に規定せられております以上のことも、以下のこともできないのでございますからして、もしこれを積極的に、たとえば医者の主観に全然まかせてやつて行けばいいじやないかということを実行することが必要であるということになりますならば、当然法体系の改正を必要とすると考えるのでありまして、もし国会においてさようなお考えがございますならば、それもけつこうじやないかというように考えておるのであります。
  44. 福田昌子

    福田(昌)委員 局長のお考えは、まつたく私どもも同感でございまして、よくわかつたのでございますが、重ねてお願い申し上げておきたいのは、どうか現行の優生保護法におきましても、なるべくその解釈を広くしていただきたいということが一つと、それからこの産兒制限に対しまして、もつと活発なる積極的な指導ができるように、人員を整えていただきたいということが一つでございます。もう一つは、法務庁との打合せを早急に実施していただきまして、各刑務所医官に対して、優生保護法に対する関心を呼び起していただきますよう、お願い申し上げたいのでございます。
  45. 三木行治

    三木政府委員 ただいまの御意見に対しましては、私ども賛成でございますが、ただ現行優生保護法解釈を広くしろという御意見に対しましては、私ども考えを一応申し上げておきたいと思うのであります。  先ほど申し上げましたように、輿論の要求するところ、及びこの立案者のお考え等に從いまして、私どもは検察庁と緊密な連絡をとつて、あとう限り広義の解釈をいたしております。從いまして、これ以上の解釈をやるということは、法律の外に出ることになりますので、私どものあたわざるところでございます。從いまして、もし現行以上に広義の解釈あるいは施行をやれという御注文がございまするならば、よろしく法の改正を必要とするものである、かように私ども考えておるのでございます。  なお法務府と打合せをとげて、刑務所等の医官の知識の徹底、あるいは法の施行協力せしむるということにつきましては、十分に努力をいたしたいと思います。
  46. 福田昌子

    福田(昌)委員 法の広い解釈ということに対しましては、現行法を改正するかどうかということは、私ども考えておることでありますが、私がお願い申し上げましたのは、現行法に基く広い解釈ということを、お願い申し上げたのでありまして法律のらち外に出たところの適用をしてくれということを申し上げたのではないのであります。その一例としては、先ほど申し上げましたように、次官通牒でいろいろな專門的病名において、どうも腑に落ちない点が発表されているというようなことを考えていただきたいと申し上げたのでありまするが、局長におかれては、そういうものを御存じなかつたというお話だつたのでございまするから、いかんともしがたいのでありますが、私が地方衛生部におきましてそれを見たのでございます。今書類を持つておりませんので、いかんともしがたいのでありますが、そういうものが出ております。それからまた地方保健所においては、人工流産を十三條でなるべく取上げるようにということを、盛んに奨励をしておるところがあるのであります。この点も局長におかれましては、さようなことは御存じないというお話だつたのでございますから、深くお尋ねを申し上げなかつたのでありますが、局長の御意思に反して、地方におきましては、そういうことが間々行われておる。そのことに対しまして、どうか広い解釈のもとにおいて御善処願いたいという意味で、私はお願い申し上げたのでございます。     —————————————
  47. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に公衆衛生に関する件に関連し、集団赤痢発生の問題に関する発言を求められておるのでこれを許します。苅田委員
  48. 苅田アサノ

    苅田委員 それでは、前回すでにこの問題が取上げられたことがありますから、私も簡單にしたいと思います。  防疫課から出ております統計によりますと、七月八日までに、昨年に比して約八倍に近い増が出ております。つまり昨年は七月中に一千四百三十一名なんですが、今年は一万一千四十人というような大増加をしておるので、これには、やはり特別な理由がなくてはならないと思うのです。その点につきまして、今年の赤痢のこうした流行の原因と申しますか、それをお聞きしたいと思うわけです。
  49. 三木行治

    三木政府委員 赤痢が非常に増加した原因はどうかというお尋ねでございますが、ただいま苅田委員からお尋ねのございました十倍というのはちよつと間違いでございまして、この七月八日現在の、お手元に差上げました統計では、昨年同期が三千七百三十二名、今年が一万一千、約三倍というのが実情でございます。ともあれ三倍にもなつて来たということは、たいへんな問題でございまして、ことにこの三、四年というものは、いわゆる法定伝染病が非常に減つておるのでございます。にもかかわらず、今日かようなことになりましたことは、防疫当局といたしまして、非常に遺憾に存じておるのでございます。  この原因でございまするが、これにつきましてはいろいろございまして、たとえばズルフアミンという薬が非常によくきくのでありますが、この薬をのんで不完全に直つた——大体二、三日で直るのでございます。そのためにそういう人たちが横行いたしまして、感染源になるということ、あるいは外食の機会が非常に多くなつて来たというようなこと、まあそういうことの結果といたしまして、赤痢菌が非常にふえて来たと、私どもは見ておるのであります。それ以外の理由もあると存じますが、たとえば鼠族、昆虫を退治するというような問題、それらにつきましても、昨年よりも今年の方が強くやつておるのでございますから、それが昨年よりもふえたという理由にはならぬと思う。まあ地域によつて多少の相違はあると思いますが、とにかく以上申し上げましたような外食の機会が非常にふえたということ、不完全治療をした人が感染源になるということが、そういうことになつたのではないかと思います。ことにごらんいただきますとわかりますように、集団赤痢というのは非常に少くて、ちらりほらり出ているというものが、一番圧倒的に多いのでございます。
  50. 苅田アサノ

    苅田委員 資料によりますと、栃木県では引揚者あるいは戰災者の寮に、かなり出ております。それから福岡県では坑夫とか、あるいは鉄道の寮などに出ておる。こういうことを見ますと、やはりこれはただ予防措置をするとか、あるいはワクチンが不完全だという以上に、やはり一般的なそういう住宅問題であるとか、あるいは不健康の原因であるところの生活水準の非常な低下というような面を、もう少し問題にしない限り、ただ予防的な措置、あるいは罹病してからの措置だけでは、こういつた猖獗というものには、十分な対策ではないと考えるのですが、この点どうでしよう。
  51. 三木行治

    三木政府委員 この赤痢の大流行については、生活水準の低下というようなことが、大いに関係があるのではないかという御意見でありますが、その点は、私ども関係があるとは存じます。しかし、ただいまも申し上げましたように、本年におきます赤痢は、昨年ごろからようやく頭をもたげて参りまして、いわゆる赤痢菌が相当に広く分布をいたしておるのでありまして、從つて感染の機会が非常に多い。そうして集団生活をしておりまする場合におきましては、これがただちに広く広がるというような実情でございまして、もとより生活水準の低下ということも、一つの因子にはなると思いますけれども、決してそれだけではない、感染源が至るところにあるということが、一番いけないことだと私ども考えておるのであります。
  52. 苅田アサノ

    苅田委員 こういう質問は前回にもすでに行われたというふうに私は聞きますので、あとでこれは個人的な局長とのお話といたしまして、集団赤痢の問題につきましては、私はまあただいまの御答弁を伺つておくだけで、これ以上続けることをやめます。
  53. 寺島隆太郎

    寺島委員長 他に三木政府委員の所管事項について御発言はございませんか。     —————————————
  54. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に婦人、兒童保護に関する件を議題とし、本件に関連して、人身売買問題についての発言を求められておりますので、これを許します。苅田委員
  55. 苅田アサノ

    苅田委員 最近生活の困難あるいは失業等から、兒童が長期にわたつて学校を欠席いたしましたり、長期の契約でもつて売られて行つたり、そういうような事件の発生していることが、新聞紙等に載つておるわけであります。たとえば九十九里浜は、日本でも有数ないわしの漁場でありますが、最近ここに軍関係の演習が始まつたために、非常な不漁続きで、そのために子供たちが長期に学校を欠席したり、あるいは学業をやらないで働かされたりしていると言われておるわけでありますがこういう場合の対策について、政府当局はどういう処置をしておるか、お聞きしたいと思います。
  56. 高田正己

    ○高田政府委員 ただいまお尋ねのございました千葉県の九十九里浜沿岸の問題につきまして、簡單に私ども調査しておるところを御報告申し上げます。千葉県の九十九里浜沿岸漁村において発生いたしております兒童の長期欠席問題、その他の全般的な状況に関しましては、主として千葉県山武郡の白里町と片貝町及び豊海町においてこれが一番顕著でありますので、概略申し上げたいと思います。  九十九里浜沿岸におきましては、最近数年間著しく漁獲量の減少を見るに至つておるのでありまして、そのため從来主として漁業をもつて生計を維持して来ました家庭の中には、相当経済的貧窮の家庭を生ずるに至つたのでございます。一方本年の五月に、第二回の青少年保護育成運動というものをやつたのでございますが、そのときに実施いたしました長期欠席兒童の調査によりますと、相当数の不就学並びに長期欠席兒童が発見いたされました。不就学及び長欠の原因は、主として家庭の経済的貧困に原因しておつて、かつそれらの兒童の保護者の大部分が漁業関係者であるという事実が、その調査で明らかになつたのであります。また不就学及び長欠児童の中には、他町村に出稼ぎに行くとか、または他人の家庭に預けられている兒童も若干あるということも、明らかになつたのであります。これらに対しまして、私ども関係者といたしましては、本年一月ごろから、もつぱら生活保護法適用によりまして、とりあえず応急の施策を講じて来たのでありますが、なかんずく要保護兒童中、不就学及び長欠兒童につきましては、その原因が、主として家庭の経済的貧困にある点にかんがみまして、本年四月以降、新生活保護法の実施に伴いまして、生活扶助並びに教育扶助の両者を、実情に即して適用いたすことになり、現在該当町村を督励して、早急に実施中でございます。このような保護対策によりまして、山武郡の白里町及び片貝町における長欠兒童の数は、本年五月現在より大体半減いたしております。白里町が約九十名ばかり、片貝町が二百名ばかりになつています。なおその他片貝町等から他町村に、主としてこれは八街方面でありますが、そこに出稼ぎに行つている者があります。この児童の問題につきましては、兒童が現在他人の家庭で雇用または養育されている該当町村に対しまして、現存の保護者に、先般の国会で御改正を願いました児童福祉法第三十條による届出を励行せしめて、この届出によりまして、関係当局協力して、兒童の就学その他の福祉について遺憾のないように配慮しておるわけでございます。  大体私ども関係当局といたしまして、県、町村等と協力をしてとつておりまする措置の現状は、さようなものでございますが、なお今後とも関係方面と十分なる協力をいたしまして、この問題の解決に努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  57. 苅田アサノ

    苅田委員 それではついでに伺いますが、昨年度大きな争議をしまして、たくさん失業者を出しました常磐炭鉱の矢郷炭鉱にも、同様な事件があるということが報ぜられておるのでありますが、この問題につきましても、一応御説明をお願いしたいと思います。
  58. 高田正己

    ○高田政府委員 御質問の矢郷炭鉱は、福島県の石城郡内郷町というところだつたかと思うのでありますが、かねてからの経営難のために、從業員の一部を解雇したところから、ストを続行して、その結果遂に閉山したと言われている炭鉱でございます。そしてそれに伴い職場を失つた労務者等は、多数の家族をかかえて、しばらくは失業保險、日雇い、行商等で細々と生活をつないでおつたのでありますが、幾はくもなく行き詰まつて参りまして、極度の生活困難に陥つたということでございます。たまたま同地区居住の武藤なつという人と、それから浅香某という者が、千葉県の船橋市附近の農家から出稼ぎの子供の周旋方を依頼されたことを縁といたしまして、これら失業労務者の家庭を訪問して、児童養育の仲介あつせんをなし、また他に縁故関係からの出稼ぎ兒童も若干ありまして、これらによる問題の兒章が、大体五十名くらいになつておるようでございます。この問題の直接的原因は、兒童を他家に出すことによりまして、生計費の軽減をはかるということを目的として行われたものと推定されておるのでありますが、これらの子供の年齢は、大体十三才から十八才までのものでございまして、現に学籍にある者が十七名という、私どもの方の調査なつております。この問題に対しまして、私どもといたしましては、千葉県及び福島県につき若干の調査を行つて、大体次のような措置をとつておるわけでございます。第一に、当該兒童の親権者の家庭の状況、及び兒童本人があまり帰宅を希望しておらないというふうな点からして、労働基準監督署及び公共職業安定所と連絡をいたしまして、法的な手続による雇用関係を結ばせて、就学の適正化をはかりたいということであります。これがまず一つ。  次に学齢期にある不就学兒童についてでありますが、その学齢期にある兒童の不就学につきましては、通学させるように、本人自体にも説きまするとともに、雇用者側の自覚と反省を促すということ。  それから第三は、兒童福祉法の第三十條によりまして、これらの兒童を預かつている者の方から届出をさせまして、児童福祉司及し兒童委員等の適切なる指導監督をなして、児輩の補導のために十分な目を届かせて行きたいということ。大体この三つに施策の重点を向けておるわけでございます。  それで、この問題につきましては、現地の預かつておる人たち並びに関係当局との理解なり協力なりが、非常に必要でございますので、現在子供や預かつた方々を、月一回ほど集まつてもらいまして、大体以上の三点の方向でもつて懇談会をいたしまして、雇用の適正化、就学の奨励、届出の励行という三つの方面に向つて、着々と成績をあげておるつもりでございます。  大体以上の通りでございます。
  59. 苅田アサノ

    苅田委員 説明を承つたわけですが、第一番にお伺いいたしたいのは、九十九里浜のそういう不漁の原因につきまして、これはいろいろな原因があると思うのですが、これにつきまして、なお一応御説明願いたいと思います。
  60. 高田正己

    ○高田政府委員 不漁の原因はいろいろあると聞いておりますけれども、私の立場といたしましては、詳細を存じておりません。
  61. 苅田アサノ

    苅田委員 これにつきましては、千葉県の当局の方から私どもつたところによれば、軍隊の演習等による被害によつて、魚が寄りつかなくなつたというのが最大の原因だというふうに聞いておるのですが、そうだとすればこれは災害救助法ですか、これの適用が当然行われると思います。こういう点に関しまして、現在どういうような措置が講ぜられておるかということをお聞きしたい。
  62. 寺島隆太郎

    寺島委員長 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  63. 寺島隆太郎

    寺島委員長 速記を始めてください。  それでは委員長から苅田委員の御発言に関連いたしまして、ただいま御質疑のような、きわめて広汎にして特殊な原因、関係方面の射撃の理由によつて予測せられざると言うも過言ならざる広汎なる救済を要する事態に対して、生活保護法適用所管官庁である厚生省、なかんずく社会局長代理小山保護課長に本件に対する御答弁を願いたい。
  64. 小山進次郎

    ○小山説明員 ただいまの御質問のうち、関連した事項についてだけ申し上げます。  第一に、災害救助法によつてこの問題の解決ができないのかという問題でございますが、これは災害救助法内容から申しまして、たとえば人がけがをするとか、あるいは家がつぶれるとか、その他財産に損害があるとかいう積極的な形で現象が現われるというようなことがありました場合には、もちろん災害救助法によつて応急的な救助が講ぜられると私どもも思いますけれども、ただいまのように、別段そういうことがなく、ただ収入が得られなくなつて来たという事態では、この災害救助法適用対象には、なりがたいものと思つております。  それから第二の問題としましては、すでに先ほど高田兒童局長が申された通りでありますが、そういうような事態によりまして、あの地域一帶に生活困窮の問題がいわば慢性的な問題として広がつて来ているということの処置でございますが、これは現在の制度としては、さしあたりのところ、生活保護法を効果的に適用して、とりあえずの応急措置をつけて行くということが定石であると思います。ただこの場合、これが非常に長期に及びました場合は、この生活保護制度で解決するというのには、あまり向かない問題でございます。特に生活保護法で解決をするという場合に、いつも問題になりますのは、それぞれの地域におきまする市町村の一割負担の問題でございます。あの地域は、おそらく今のような状態が継続いたしますと、もうその日から生活ができなくなるという人は、もちろんのことでありますが、そうでない人も、おそらく租税の負担能力は非常に低下してしまつてつて、町村自体の財政力が非常に微弱になつておる。おそらく平衡交付金等で若干の処理はしましようけれども、そこに何としても処理しきれない問題が出て来て、形式上は、生活保護法で十分救済できるはずだが、町村の負担能力関係からうまく行かないということから、今のような事態が非常に長期間続くということになれば、そういうことが出て参るだろうと思います。厚生当局はむしろそういうような問題について、何かこういう事態が恒久的になるとすれば、考えなければなるまいということで、目下研究しておるところでございます。
  65. 苅田アサノ

    苅田委員 それでは質問を別個の面から申し上げますが、兒童の不就学の原因は、生活困窮からという今のお話でありますが、そのための生活保護法にいたしましても、やはり非常に支給額が少いということは、特にわれわれは、教育扶助が非常に低額であるということが、その重大な原因だと思うのです。ことに今年からは完全給食が始まつたということになれば、その点でも、やはり教育扶助は著しく低額にもなるのですが、その点につきまして、御当局はどういうふうにお考えですか。
  66. 小山進次郎

    ○小山説明員 現在の教育扶助の基準が非常に低過ぎるということは、お説の通りであります。これはなるべく早い機会において、もう少し筋の通つたものに引上げるように、せつかく努力中であります。完全給食等の問題につきましては、これは必ずしも御懸念をいただかなくてもいいのでありまして、現在の制度として、給食費は教育扶助の一般基準の、いわばわく外になつておりまして、必要な実費だけは出すということになつておるわけであります。從いまして、給食費の問題については、全然問題はございません。  なお関連して一言申し上げたいと思いますのは、私ども今まで生活保護制度の根本的な問題としては、基準が低過ぎるということが第一の問題であるということで、常に基準の引上げということに努力しておつたのでありますが、実は最近の状況としましては、この問題のほかに、保護を必要とする者の数が非常に増加して参りまして、昨年あたりは毎月一・五%程度の増加であつたのでありますが、今年の二月ごろからはそれが三%から四%近くに伸びて参つております。そういうふうな事態のもとにおきましては、基準の引上げももちろん努力いたしますが、同時に現在の低い基準でも、実際に保護を必要とする者があつたら、この人たちに漏れなく救いの手を差延べることに努力いたしたいと考えておるのであります。
  67. 苅田アサノ

    苅田委員 その場合の予算的措置についてお伺いしたいのですけれども、これは原則的に言つて、新しい生活保護法も、これに要する予算は必ず義務としてとることになつておるわけでありますけれども、問題は、府県あるいは市町村の負担の点だと思います。これは言うまでもなく、現在の市町村は、各般の支出に非常に困つているので、そういう生活困窮者がふえるのに対しまして、十分の一ずつの負担がとうていできないということも考えられるのでありますが、国から特別の措置を講ずるということについて、何かお考えはないでしようか。
  68. 小山進次郎

    ○小山説明員 非常に保護を受ける者の数が増大して参りますれば、あるいは特別な措置考える必要が出て参るということも、考えなければならぬと思います。たとえば、一昨年のごときは、生活保護費が、年間で約十五億不足するという見通しが立てられたのであります。そういう見通しに基いて、冬の臨時国会で十五億の予算追加をお願いしたことがございます。その場合には、国の予算十五億に見合いまする地方負担分を特に当時は配付税でありましたけれども、配付金の中にそれに見合うそれの四割分を組み込んで手当をするということを実施いたしました。それから今年度は、現在のところ非常に増加が多いということは、今申し上げた通りでありますが、現在程度の状況ならば、生活扶助、教育扶助、住宅扶助に関する限りは、今年度の予算としてお願いしたもので処理できる見通しであります。医療扶助の今後のふくれ方がどうかということが、今度の予算の足りるか足りないかのわかれ目になつておるのであります。これに対する見通しには、若干の時日を要するという状況であります。それでこれに対する予算措置を、かりに講じていただくとしても、おそらくは一昨年のように十五億というような多額のものは、現在のところ想像されません。平衡交付金も非常に多額に計上されておることでありますので、まず現状をもつて推定いたしますならば、地方負担関係で、地方がどうにも行かなくなるということはないものと考えております。
  69. 苅田アサノ

    苅田委員 最近厚生省におきましては、兒童憲章というようなものが考案されて、立案が進められておるわけであります。私もその試案を拝見したことがありますが、そういう兒童を守るという根底は、両親の生活保障が確立されなければ、憲章だけをやつてもしようがない。ほんとうに兒童を保護するという意味からも、現在の失業問題や、低賃金の問題についても、厚生省としても、もつとそういう面に対して関心を持つてもらいたい、かようにお願いするわけであります。
  70. 寺島隆太郎

    寺島委員長 本件審議の中におきます発言の中に、もし不穏当なる言辞がございましたら、委員長において速記録より削除いたしますから、さよう御了承願います。  本日はこれをもつて散会いたします。次会は明二十八日午前十時より開会いたします。     午後零時十六分散会