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1950-11-20 第8回国会 衆議院 建設委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月二十日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長代理理事 天野  久君    理事 鈴木 仙八君 理事 前田榮之助君       逢澤  寛君    淺利 三朗君       宇田  恒君    小平 久雄君       内藤  隆君    西村 英一君       三池  信君    中島 茂喜君       増田 連也君    佐々木更三君       池田 峯雄君    砂間 一良君       高倉 定助君  委員外出席者         議     員 山本 久雄君         建設事務官         (管理局長)  澁江 操一君         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         建設事務官         (都市局長)  八嶋 三郎君         建 設 技 官         (道路局道路企         画課長)    佐藤 寛政君         経済安定事務官 石田 政夫君         專  門  員 西畑 正倫君         專  門  員 田中 義一君     ————————————— 十月二十四日  委員砂間一良辞任につき、その補欠として、  中西伊之助君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員中西伊之助辞任につきその補欠として砂  間一良君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員調査報告聽取に関する件  閉会中審査事件報告書に関する件     —————————————
  2. 天野久

    天野(久)委員長代理 それではこれより会議を開きます。  委員長不在のため、私が委員長の職務を代行いたします。  日程によりまして、派遣委員より報告聽取の件を議題といたします。まず熊野川班報告を求めます。西村英一君。
  3. 西村英一

    西村(英)委員 ただいまより調査報告をいたします。 去る八月二日、衆議院規則第五十五條により議長より承認を受けまして、内藤君並びに私は京都奈良国際観光都市計画並び琵琶湖十津川熊野川北山川総合開発計画等調査のため、八月八日より十七日まで十日間にわたり調査をいたして参りましたので、その概要を御報告申し上げます。なお專門員室より今野調査員建設省より木村技官、吉兼事務官が同行いたしました。  ただいまより申し上げますところの調査報告は、時間の関係もありますので、現況等につきましては文書に讓ることといたし、調査結果の所見について主として申し上げることといたします。  最初京都及び奈良国際観光都市計画について申し上げます。過ぐる第八国会におきまして、京都奈良国際観光文化都市建設法が通過いたしまして、過ぐる九月二十日それぞれの住民投票によつて成立、公布されましたことは、御承知通りであります。この両都市都市計画に関しまして所見を申しますならば、第一に両都市はそれぞれの特別法に示されてあるごとく、日本文化の象徴であり、爆撃の目標から特に除外された、世界平和の生きた記念像でもあります。従いまして、本法律の精神に基いて、都市計画的に管理し、発展せしめることはきわめて有意義なことであります。しかして本法に従いまして、京都奈良国際観光都市として整備いたしますには、單に都市計画法にいう、いわゆる都市計画では十分でなく、文部省、厚生省、運輸省その他関係官庁の協力が必要で、国際観光関係するあらゆる機関の努力が結集して、初めて達成されるものと信ずるのであります。この点従来の特別都市に対しまして、関係各省が協力的でなかつたようでありまして、特別法行政上有効に生かしておらないとも言えるのであります。  第二に京都奈良国際観光都市計画施行にあたつては、京都奈良を含む総合地域計画考慮すべきではないかと考えられるのであります。すなわち單独京都奈良のみを対象として計画を樹立いたしましても、本法にいう国際観光文化都市として不完全であります。やはり琵琶湖を含めた総合地域計画の中で、全体的な関連のもとに両市の都市計画を総合的に推進すべきものであろうと思われるのであります。  次に琵琶湖総合開発計画の所感について申し上げます第一点といたしまして、現在のところ建設省においては、一応中間的結論として、第一に琵琶湖利用水深鳥居川量水標マイナス一メートルまでとする。第二に最大使用水量は、毎秒二百三十ないし二百八十立方米とするとしており、その開発型式としては、新宇治堰堤案瀬田川電源拡充案の二案が最も有力に考えられておるようであります。一方経済安定本部資源調査会におきましては、湖面マイナス三メートルまで利用する独自の案を樹立しているのであります。以上の三案がただいまのところ有力なのでありますが、新宇治堰堤案瀬田川電源拡充案は、湖岸既存利用施設のため制約され、琵琶湖のけた違いに大きい包蔵エネルギーを利用し得ず、現在瀬田川洗堰で行つておりますところの湖面プラス三十センチメートルよりマイナス一メートルの調節、これをそのまま遵守しているのでありまして、單に瀬田川筋の常時平均電力増加のみを考えているともいえるのであります。この点京阪神電力需用の型とにらみ合せ、再考を要する点があるのではないかと考えられるのであります。資源調査会の案は、琵琶湖既存施設に制約されることなく、琵琶湖の持つエネルギー最高度に利用し、しかも既存利用事業に対しては根本的な改修を施し、積極的に生産の増加住民の厚生をはからんとするものである点、しかも渇水期補給用電力、並びにデイーリイ・ピーク電力の発生を目的とし、関西需用に応ぜんとしている点などは、前二案に比して一大進歩であると思われるのでありまして、琵琶湖総合開発にあたつては、この考え方を尊重すべきであろうと考えます。  第二点といたしまして、これらの総合開発により、栗田郡大石村は戸数五百戸中約四割が水没することとなり、当村においてはダム建設には反対ではないが、残る六割にては経済的に村が成立しないゆえ、水没家屋に対してはもちろん、残存者に対しても十分な考慮を與えてほしい旨の陳情があつたのでありますが、水没地住民に対しては、総合開発一環として十分なる考慮を與うべきであり、單に金銭による補償のみで終ることは避けなければならないと考えるのであります。 次に十津川熊野川総合開発計画に関する所見について申し上げたいと存じます。最初十津川上流部流域変更について申しますと、第一にこの分水計画は、発電力については熊野川による発電より有利であり、さらに分水量熊野川筋ダム水位回復関係するところ僅少であり、熊野川に対してほとんど影響がないのであります。しかも多年の懸案であつた奈良大和平野の灌漑が可能になるのでありますから、早急に実現の道を講ずべきであると思います。  第二に、この十津川流域変更によつて奈良平野の早魃が救われるのでありますが、奈良平野の早魃対策としては、明治当初よりあらゆる機会研究されたが、いずれも既得水利権との折衝がつかず、今日に至つたのであります。この原因は、根本的には河川国家のものであり、治水が根本であるとする河川法建前から来るのでありまして、利水に関する基準等というものを国家が立てておらないということに根本的な理由があるのではないかと考えられるのであります。従いまして早急に河川法改正し、利水に関する規定を整備する必要があるのでありまして、河川法改正は最もむずかしいのではありまするが、一番むずかしいものをいまだに手をつけておらないというところに私たちは多大の不安を持つものでありまして、河川法改正に関しましては、建設省といたしましては十分の考慮を要すると私は考えるのであります。  次に熊野川についての所見を申し上げます。第一に、建設省当局におきましては、冬期補給電力の供給という観点から、小鹿ダム中心とした三つの案と小鹿ダムを放棄した一案、計四つの構想を持つているのでありますが、これは結局のところ小鹿ダム施工の問題とからんで来るのであります。この小鹿地点は川幅が百メートルで、工事中には毎秒一万立米以上の洪水に遭遇するは必至でありまして、加えて河床砂利厚は三十メートルに達し、岩盤はマイナス二十メートルの個所にあり、その間に一立米程度の転石が数多くあるのであります。このような條件でいかなる締切工事によつてダム築造ができるかということが技術的問題ではなかろうかと思うのであります。当事者は目下のところ潜凾基礎を持つたコンクリート・ダムによつて締切ダムをつくり、巨大な排水トンネルによつて洪水に対処しようと考えているのでありますが、実際にケーソンをおろして作業の難易、方法等について十分調査をいたさねば確信が持てまいと思うのであります。この小鹿地点熊野川水力開発中心になるのでありまして、この調査の結果いかん開発の見通しも可能になるのでありますから、十分なる調査費をもつて早急にこの調査費をもつて早急にこの調査を完了すべきであると考えます。  第二点といたしまして、北山川流域変更の問題であります。技術的には流筏に対して毎秒十五米程度水量を本流に放流しさえすれば、流域変更はきわめて有利な案であります。しかもこの北山ダム築造すれば、小鹿ダム施工が容易になる一方、資金面よりも、当初開発にあたつては経済的に有利なものを選ぶ必要もあろうと思われるのであります。しかしながらこの北山川流域変更水利権申請が現在一企業者によつてなされているのであります。この有利な地点のみを一企業者にゆだねたのでは、残された小鹿風屋等ダムはどうなるのかということが問題であります。小鹿北山風屋等の各地点は非常に條件を異にしておりまして、これらの開発は統一ある機関開発経営することが望ましいと思われるのでありますが、検討を要する点が多々あるのであります。少くともこの北山川流域変更熊野川総合開発一環として検討され、施工さるべきものでありまして、單独にこれのみを取上げることはどうかと思うのであります。  次に第三点といたしまして現在十津川筋山地の崩壊のたため相当に荒れており、河床砂利厚は十メートルに達し、砂礫の流下がおびただしいのであります。しかも技術的にダムの土砂吐きの能力が限られている現在、砂防等治山事業によつて土砂流下を阻止しなければダムの埋没は必至であります。わが国におきましては、ダム壽命がなくなりつつあるものが相当数に上つておりまして、かかることのないよう治山を相呼応してダム建設をいたす必要があろうかと考えるものであります。  條四点といたしまして、水没地に対する処置について申し上げます。従来ダム建設による犠牲者に対しましては何がしかの補償金を與えて解決して来たのでありますが、このような社会問題を金銭をもつて解決することは不合理であり、総合的な地域開発によつて、あるいは社会政策によつて解決をはからなければならないと思うのであります。本地域水没地帯人々は一ころはダム建設反対をとなえ、特に北山川地域においてはなはだしく、国会に対して多くの請願があつたことは御承知通りであります。しかしながら昨今、ダム築造に賛成し、これによつて生活の更生を期待する人々増加して参つておることは注目すべきであります。従いましてこれら住民に対しては、新しい土地の造成による移住、あるいは工場建設による雇用の道を開くとか、いずれにしてもこれら住民生活程度等が向上するように、総合的な見地から計画を遂行する必要があると考うるのであります。  以上簡單ではありまするが、調査結果の所見について御報告申し上げました。調査内容の詳細につきましては文書にしてごらんをいただくこととしまして、報告を終ります。  なお以上申しました所見に対し、関係当局の御意見があれば承りとう存じます。
  4. 天野久

    天野委員長代理 この際熊野川班西村君の報告に対する政府の御意見を伺いたいと思います。
  5. 伊藤大三

    伊藤説明員 まず第一点に琵琶湖河水統制の問題でございまするが、現在におきましては瀬田川の開門の下のところを掘鑿いたしまして現在の既存発電力をとりあえず増加するという方向に進んでおるのでありまするが、これで満足しておるわけではなく、現に各方面において調査を進めておられることは先ほど説明がありました通りであります。建設省といたしましても二十二、二十三年と調査費増加し、最近におきましては引続いてその調査を進めておるのであります。ただこれにはいろいろな案がございまするので、これらの案につきましては、われわれといたしましても各方面意見を聽取いたし、できるだけ有利な方向に進みたいとせつかく案をいろいろと調べておるようなわけで、目下調査中というところでございます。  次に法制の問題でございまするが、現在の河川法におきましては、事実のところ利水の面が非常に強く出ておるのでありまして、利水面に関する点において非常に欠けるところがある。こういう御意見でございました。もとより従来の河川法というものは利水の重要な、必要な点に立脚してできております。利水面におきまして欠けておることはわれわれも相当承知いたしておりまして、この面に対する改正の問題につきましては、いろいろと考究いたしておるのでありまして、できれば何か利水面だけとりあえず法規を考えてみたいというような線を今進めておるわけであります。ただ先ほど仰せになりました通り河川法という問題につきましてはその影響するところが非常に多岐にわたりまして、その法規改正いかんによりましては国の基盤としてのいろいろな條件にも大なる影響があり、地方の自治との建前から行きましても、河川の問題は非常にむずかしいので、決しておろそかにしておるわけではないのでありまするが、なかなか成案を得るのに困難をしておるけであります。決しておろそかにしておらず、目下それを研究し、もし河川法全般の問題として即座に手をつけられなければ、せめて水利関係につきましても詳細なる一つ法規を考えてみたいというので目下研究いたしておるのであります。  次に熊野川開発問題につきましてでございまするが、先ほどからいろいろお話がありましたように、熊野川につきましてもその開発方法につきましていろいろA案B案C案とございまして、この熊野川発電をどういう点に使うかという問題でございまして、あるいはこの熊野川電源を、特に冬季の渇水時におきまするところの関西発電用に使うという建前を強く反映した案と、それから常時の発電相当ふやそうという案と、両者を混合してつくつて行こうといういろいろの案がございますが、何しろ金額が非常に大きいのと、特に小鹿ダム建設には先ほど仰せになりましたように、技術的にもいろいろ困難な問題がありますので、特に資金面問題等からいたしまして、北山川の問題をどう改革するかというような点を今研究もいたし、私の方といたしましてはこの問題についてどの案がいいかということについていろいろとやつておるのでありまして、先ほどお述べになりましたいいとおつしやいました案は、私の方におきましてはB案という程度でありますが、この案を目下一番有力ではないかと考えておるようなわけでございます。これにつきましては調査の面におきましてなお十分というわけには至つておらないのでありまして、現に私どもの方においてこの点は相当いたしておるのであります。今年までに大体六万円程度調査費を入れておりますが、なおいろいろの点からいたしまして、大ざつぱではありますが、なお二千数百万円の調査費を投ずる必要があるのではないか、こういう点を考えておるわけでありまして、調査といたしましても先ほどお話になりましたような水源山地の状況、それから流砂量流水量並びに雨量あるいはダム地点の地形とかいろいろな問題についてなお十分研究をしなければならぬ問題が多多あるのでございます。  なお北山川開発につきまして一会社をしてやらしめるのはどうか、これは総合的に考えてやるべきではないか、こういうお話もございましたが、まだ私どもといたしましてどれに許可するかという点まで進んでいるのではないのでありまして、開発にあたりましては、熊野川総合開発一環として当然考えるのでありまして、これだけ一つ切り放して考えようという考えは毛頭ないのであります。ただどこをもつてこれを開発するかということは、現在の電力事情の非常にきゆうくつな折柄、早急に電源を早く開発したいというような点を考えますときに、資金面において十分その手当のできるというようなところを優先的に考えなければならぬような事情も生ずるかと思います。しかし先ほど申し上げましたように、その開発にあたりましては決してその一会社に龍土断させる、そういうようなことはせず、全体かな見まして最もいい有効適切な方に開発をして参りたい、こう存じておるのであります。なおこのダム建設にあたりまして、水没地点あるいは犠牲となるものに対する補償の問題につきましてもまことに仰せ通りでございますから、そういう線についてわれわれも十分研究し、御趣旨に沿つて今後の開発には進んで参りたい、こう存ずる次第であります。
  6. 西村英一

    西村(英)委員 他のことは他日に讓りますが、今の中で熊野川水系のことについてちよつと申し上げますと、これは建設省その他でもいろいろ御計画があることと思うのでありますが、とにかく北山川は書物に書いたような、教科書に書いたような有利な地点でありまして、これは早く開発することが必要であります。しかも電源地点が非常に電力需給地点関西方面に近い。ですから電力の意味から考えても非常に有利な地点です、それで北山川たけ電力としては非常に有利ですから、それによつて利益をあげて、その利益によつて他の不利な地点開発にあたる、これは企業会社に許してもよければ、また公的なものに許してもよいが、一番有利な北山川開発を急速にすることが、私は非常に必要ではなかろうかと思うのであります。電力需給地点が非常に近いから有利である。しかも関西方面はことに有利地点がないのであります。調査々々ということはもう相当にやつておるのですから、この点急速にあるプランをきめて、その計画のもとにひとつやつていただきたい、これだけを希望として申し述べておきます。
  7. 天野久

    天野(久)委員長代理 次に只見川班報告を求めます。砂間一良君。
  8. 砂間一良

    砂間委員 只見川地域調査報告につきましては、田中委員がやつてくださる予定になつておりましたが、きようお見えになつておりませせんので、私がかわつて報告申し上げます。  衆議院議長承認を得まして、去る八月九日から十日間、最近とみに世間の注視を浴びるに至りました只見川流域につきまして、電源開発のみではなく、広汎な未開発地域開発問題を主題目といたしまして、委員長及び田中委員とともに、つぶさに現状調査して参つたのであります。その調査の結果につきましては、時間の関係もありますので、詳細につきましては、書面によりまして議長報告に讓ることといたしまして、ここでは調査の結果に基く所見と、それに附帶する当局の御意見を主といたしたいと存じます。  今回私たち調査いたしました地域は、新潟県及び福島県にまたがる広汎な地域で、建設省経済安定本部と協議の上、開発地域として総合的開発を最も必要とする全国十四地域一つに取上げられた奥会津銀山平地域でありまして、昨年度より調査が実施されている地域であります。この地域の特徴は、何と申しましても第一に、本地域を貫流する只見川が、わが国最大の未開発包蔵水力を有しており、この開発わが国電力事情に多大の影響をもたらすものであるということとともに、その開発が法についての諸説が論争されていること、及びこの開発資金に外資の導入が問題になつていること等がまずあげられるのでありますが、また電源がきわめて豊富に包蔵せられているばかりでく、林産資源わが国有数大原始林開発地帶に属しておりまして、さらにまた地下埋蔵資源も豊富かつ多様であること、そしてさらに開発が容易であること、すなわち鉄道、道路等幹線交通路が一応完成しているので、支派線の建設によつて開発効果がとみにあがること等があげられるのであります。  電源開発につきましては、わが国最大の未開発地帶でありまして、今回の調査によりましても、奥只見堰堤地点田子倉堰堤地点等、すべて予定地点の箇所は、最近ようやく調査を始めた程度でありまして、いまだ結論を出すに至つておらないのであります。しかし客観的情勢は、その結論の一刻も早いことが必要なのでありますが、政府は昨年河川総合調査費をわずか出した程度でありまして、あとはすべて解体寸前日発にその調査をまかせているようなありさまであります。政府として、もつと積極的に調査費を出し、調査完璧を早急かつ詳細にすべきだと考えるのでありますが、来年度以降における当局調査に対する方針及び態度について、御見解を覆りたいと存じます。  調査の大切なことはだれでもよく知つているところでありますが、日本におきまして、実際調査のため支出される費用というものは、ようやく全工事費の五%にも満たない実情であります。只見川のような、その開発はあたかもアメリカのTVAにおけるごとく、上流、下流の間におきまして、一滴の水の及ぼす影響もきわめて大なるところにおきましては、少くとも一〇%くらいの調査費を支出して調査完璧を期すべきであると思います。特に本川の開発方法について、新潟案福島案、あるいは群馬案と俗に称せられる種々なる案がありまして、今日判定の最も基礎となる科学的資料を得るためにも、調査の徹底は、政府がこの開発に関心を持てば持つほど、実行しなければならない点であろうと思います。  さきにも申したのですが、この只見川開発については、福島新潟群馬案といろいろの案がありまして、各有識者の間でも論争されているのでありますが、政府としても軽々に断定を下十べきではないと同時に、国土総合開発審議会に部会を設置しまして、大局的検討を加え、同会の答申を受けるべきものと考え、その点を強く要望しておきます。  次に、この特定地域総合開発の問題を中心として、所見を申し上げます。本地域特定地域となりましてから、すでに三年余を経ているのでありますが、政府は何らこれに特定措置を講じておらないように見受けられます。一例をあげますと、新潟県におきまして、二十四年度の公共事業費中、特定地域に投下された公共事業費は、わずか六・六%にすぎません。また本年度は四・二%でありまして何ら以前とかわりないような実情でありまして、特定地域にせつかく指定されましても、実際におきましては有名無実になつているような状態であります。特定地域の指定につきましては、建設省総合調整機関である安本の了解のもとに指定したものでありまして、当局安本建設省も、この地域について指定した責任を持たなければならないのでありますが、これまで両当局は特別な措置あるいは考慮を拂つて来たかどうか、この機会に承りたいと存じます。  かかる実情では、全国十四地域はみな同様のことと思うのでありますが、今度国土開発法施行によつて、今後別に新たに特定地域が指定されることでありましようが、実際現状から推すならば、国土開発法に基いて指定されたとしても、その法の精神行政当局によつて抹殺される懸念が多分にあると思われるのであります。特に国土開発法行政当局の提出をまつたので、その法の内容空々漠々たるものとなつておりまして、実際の効果は期待し得ない実情であるがため、近時各方面国土開発法の不十分な点を、一定地域について裏づけせんとするような空気、あるいはさらに一歩進んで優先せんとする法案を作成するような企図があることもしばしば耳にするのでありまして、当局相当愼重かつ可及的すみやかにそれに対する措置を講ずべきであると考えるのでありますが、この点についての当局の方針もこの機会に承つておきたいと思います。  本地域の当面の開発は林道の開発でありますが、その国庫補助は不徹底であると考えますので、来年度におきましては、福島県側の白戸川林道新潟県側の銀山平、北又川林道の画期的延長のために、安本当局相当の予算を見込むべきであります。また鉄道におきましては、只見線及び宮下線中、少くも路床の完成している分だけでも開通させまして、さらに両線の連絡をすみやかにするとうに努力すべきものであると考えるのでありますが、当局の来年度の目標に入つておるかどうか承りたいと思います。  以上今回調査いたしました結果に基きまして当局意見な聽取したいのでありますが、最後に特に重ねて委員長初め委員諸君に御協力を得たいことは、われわれ建設委員が第一国会委以来主張して参りました国土総合開発に関する基本法は、行政当局の成案をお手並拜見という立場から、われわれ独自の法案を準備しながら提出せず、政府案を可決成立せしめて来たのでありますが、その後法の内容があまりにも机上的であるため、国土開発法の権威は今や輿論のため危機に立ち至つております。われわれは国土開発法その名のごとく、あくまで国土の開発はこの法を中心として、不備な点あるいは細部はさらに実施法的なものを考えるべきものと考えますので、最近一部に起りつつある地域法などをすべて包含する一般的実施法について早急にわれわれの手で研究すべきものと考えるのであります。この点につきましては委員長においてしかるべくおとりはからいくださいますように、最後に希望いたしまして、簡單ではごいますが、報告を終りたいと思います。
  9. 天野久

    天野(久)委員長代理 只見川班報告に対する政府側の説明をお願いいたします。
  10. 澁江操一

    ○澁江説明員 ただいま砂間委員からいろいろ御意見の開陳がございましたが、第一点の問題は、只見川の問題に関連いたしまして、特定地域に対する政府の処置について十分でないという点の御指摘がございました。その点は総合開発計画を担当いたしておりまする私どもの立場といたしましては、さらに多額の調査費を実は考えたいというふうに存じておりますが、御承知のように、この只見川以下十四地域特定地域問題は、総合開発法の実施前から指定にかかつておる地域でございまして、その限りにおきまして、法律の裏づけのない特定地域といたしましては、政府としてはできるだけの処置を講じて考えておつたつもりでございます。もとよりこれで満足しておるわけではございません、将来の問題といたしましては、幸いにいたしまして総合開発法が、本委員会等におきまして御審議願いまして、実施の運びに至つたわけでございますから、これらにつきましては、総合開発法に基く特定地域としての指定を願い、それによりましてさらに多額の調査費等を割当てるという方向に考えて参りたいというふうに存じております。特定地域の取扱いにつきましては、御承知のように、法律の十條によりまして、総合開発審議会等の審議を経てきめる問題でございますので、この審議会の決定によるわけでございますが、建設省の立場といたしましては、従前からかかる調査をやつて参りました関係もございますし、またそれだけ嚴選した地域と実は考えておりますので、こういつたような地域を引続き実は考えておりますので、こういつたような地域を引続き法律に基く特定地域としての取扱いを受けるように努力して参りたいと考えておるわけでございます。  それから第二点といたしましては、個々の法律による特定地域総合開発の実施的な法律を各方面においてお考えになつているようであるが、これに対する意見はどうかという問題でございます。この点は、先般の建設委員会においてもきわめて貴重な御意見が出たわけでございますが、私といたしましては、やはりかかる地域の取扱いは、全国的な立場からいろいろ地域の選定をして行くという総合開発法の線は沿つて解決して行くことが正しいと考えておるわけでございます。従いまして個々の特別法によることなく、この法律をあくまで強力に実施運営して行くということが望ましいというふうに考えているわけでございます。ただ現在の段階では、先ほど申し上げましたように総合開発審議会、並びにこの運営の衝に当つております経済安定本部、並びに建設省といたしましては、この審議会に統一したような地域の指定をできるだけすみやかに進めて行くということが一方必要でございますので、そういつたような点につきましは、御承知のように、今審議会におきまして、特定地域の選定をする基準等についていろいろ審議をいたしておるわけでございます。この基準その他を検討いたしました上で、できるだけすみやかにかかる地域の指定をし、計画を推進して行くという方向に持つて行くべきだというふうに考えますので、この点につきましては、私どもとしてできるだけの努力を拂つて行きたいというふうに考えておるわけでございます。
  11. 天野久

    天野(久)委員長代理 それでは次に四国班の報告を求めます。前田榮之助君。
  12. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 昭和二十五年八月二日、衆議院規則第五十五條により、衆議院議長承認を得まして、四国西南及び那賀川総合開発計画並びに地盤沈下に伴う災害の実情調査のため、中島茂喜君並びに不肖前田が現地に派遣され、專門員室より井上調査主事、建設省防災課より関技官が同行いたしまして、八月二十三日より十日間にわたり、徳島、高知、愛媛、香川の諸県をつぶさに調査いたして参りました。  今回の調査において特に重点的に視察いたしましたのは、那賀川及び四国西南開発地域実情、南海大地震による四国各県における地盤沈下並びにこれに伴う諸種の災害状況、幹線道路網、特に未開発道路の現況等でありますが、現地状況の詳細につきましては文書に讓ることといたし、以下調査団といたしましての所見の一端を申述べ、あわせて当局よりの明確なる答弁を求める次第であります。  所見の第一といたしまするのは、特定地域総合開発法制定に関する問題であります。まず一点といたしまして、先般制定されました国土総合開発法第十條第六項の規定によりますれば、特定地域総合開発事業について、国が負担すべき経費の割合に関し、別に法律の定めるところにより特例を設け、または地方財政法弟十六條の規定に基く補助金を交付し、その他必要なる処置を講ずることができるとありますが、本規定こそ国土総合開発法第十四條中、財政的処置を裏づける唯一のものであり、特定地域総合開発の存在を実質的に価値づけるゆえんのものでありまして、ある意味においては国土総合開発法の眼目は、この一点にかかるとも言い得ると思うのであります。しかしながらさらに一歩を進めて申しますれば、その中心眼目とも称すべき規定も、その内容をなしますところの国庫補助に関する立法措置その他の基本的措置を講ずることなくしては、現実に生きた効果を発揮することができないのでありまして、もしかかる措置を閑却するときは、せつかく発足を見ました国土総合開発法も形式にとどまり、実質的には弊害に終るおそれが多分にあるのであります。従いましてこの際時宜を失することなく、特定地域総合開発事業に対する国庫補助に関する法的措置を裏づける必要があると思うのであります。  次に第二点といたしましては、特定地域総合開発計画のねらいが、公共事業の総合調整による経済効果の効率的発揮にあることは申すまでもありません。しかしながら現行のごとく、中央の各省、各局と地方都府県の各部各課とを縦に結ぶ予算制度のもとにありましては、一応観念といたしましての机上の総合調整は可能でありますが、予算的裏づけに立脚いたしましたそれが、ほとんど不可能に近い状態にありますことは、本事業の実地に携わつて来た者のひとしく痛感いたしておるところであります。今回視察いたして参りました那賀川総合開発、四国西南総合開発地域におきましても、これら両地域の埋蔵資源の主たるものが林産資源でありまして、林道の開設が第一の急務とされておるのでありますが、一方仕向け先の関係よりしまして、海上輸送を有利といたしておるのであります。すなわち林道、道路、港湾を通じて、阪神方面に搬出されるのでありますが、これらはおのおの行政所管が異なります関係上、その間の総合調整を欠き、現地における実施計画に齟齬を来しておりますことは、ただこれら両地域のみに限られたことではないと思われるのであります。しかしてこの縦の系列のみかたく結ばれた現行制度の行き過ぎに伴う弊害を是正せんとするところに、特定地域総合開発の存在意義があるのであり、国土総合開発法中、特定地域制度を特に認めた以上、さきに述べました国庫補助に関する法的措置をも含め、強力に事業の総合調整をはかり得る特定地域総合開発法の急速なる制定化の必要性が痛感されるのであります。  次に地盤沈下並びにそれに伴う災害について申し上げます。昭和二十一年十二月の南海大地震及びその後の余震に起因する地盤沈下並びに高潮による災害につきましては、地盤沈下対策国庫補助事業として、昭和二十三年度以来事業の推進をはかつているようでありますが、国庫負担年度割額に制約せられ、いまだに完成に至らず、建設省関係事業のみにても、その査定額、徳島県四億六千万円、高知県十一億八千万円、愛媛県七億七千万円、香川県三億四千万円、計二十七億五千万円余に対しまして、二十五年度末までに完成を予定されておりますものは、徳島県において二億五千万円、高知県五億円余、愛媛県三億六千万円、香川県二億円余、計十三億一千万円にすぎざる状態でありまして、多数の関係民は脅威と不安にさらされ、本事業完了の一日も早からんことを熱望いたしているのであります。従いまして関係当局におきましても、本災害の特殊性にかんがみ、これが対策完成にいま一歩の努力を傾注されんことをまずもつて要望いたしておきたいのであります。  次に、地盤変動に伴う愛媛県沿岸及び島嶼部一帶における井戸水に対する塩害についてであります。すなわち現在までに判明いたしておりまするもののみにても、本県における井戸水の被害は、海岸線及び島嶼部にわたり、八十四箇町村、被害戸数二万二千戸、被害人口約十二万人余に及んでおるのでありますが、さらに下水の排水が不能となり、これが人家及び田畑に浸入いたし、衛生上捨てがたきものもまた三十八箇町村、被害戸数三万三千戸、被害入口約十万人余に達しておるのであります。しかしてこれが対策といたしましては、簡易上水道の敷設及び排水施設の完備以外に道はないものと思われるのでありますが、これに要する費用は、簡易上水道敷設費四債六千万円余、排水施設事業費一億八千万円、計約六億四千万円余の多きに達するものと推定されるのでありまして、現在における県並びに地元市町村の緊迫せる財政のみをもつてしては、これが対策に万全を期することはとうてい不可能と思われるのであります。しかしながら事は飲料水に関するものでありまして、住民の死活問題として、人道上一日もこれを放置することはできない問題と思考されるのでありますが、当局はこれに対していかなる具体的な計画を用意しておられるか。また一方地元におきましては、この際ぜひとも本事業を、地盤変動に伴う被害対策事業として、国庫の援助をいただきたい旨強く要望いたしておるようでありますが、これに対して当局はいかなる見解を有しておられるや、以上二点に関して明確なる御答弁を求めたいのであります。  次に災害の際、海岸堤防等に対して行う緊急仮工事に対する国庫負担に関する問題であります。すなわちこれら緊急仮工のための県並びに地元市町村の立替金は、徳島県の例で申しましても、年間約二千万円の多きに達しておる模様でありますが、現行の制度をもつてしましては、これら緊急的な仮工事につきましては、そのほとんどが国庫補助の対象として認められぬために、地方財政窮乏の今日、地元といたしましてはこれが負担に耐えかねておる現状であります。しかしながら何といたしましても地元といたしましては、被害を最小限度に食いとめるべく、緊急やむを得ざるために行う措置であり、一方地盤変動等特殊の悪條件に際会いたしておる当地方といたしましては、少くとも完全なる海岸堤防の完成せざる限り、その必然的結果といたしまして、例年にわたり繰返さざるを得ない措置であろうと思うのであります。従いまして現状においては、当然これらに対する補助の道を講ずべく考慮の必要があろうと思われるのでありますが、これに対する当局の御見解を承りたいのであります。  最後に四国中央産業開発道路の改修促進に関する問題であります。本路線は愛媛県西條市を中心とし、その東西に新居浜市と今治市とを控えた東愛媛の工業地帯と、高知県高知市を中心とする一帶、すなわち四国中央狭部を縦貫する延長百十二キロの道路でありまして、戰時中の突貫工事により、そのほとんどを改修いたしたのでありますが、終戰とともに愛媛県加茂村より高知県本川村に至る延長二十六キロの未改修部分を残して工事は中止となり、ために本路線は、その大部分の改修を完了いたしておるにもかかわらず、未改修部分がまつたく昔のきこり道、すなわち樵路にすぎざる状態のままに放置され、縦貫道路としての機能をまつたく衷失いたしておるのであります、しかしてこれが改修に要する費用は、随道延長八百五十メートルの開鑿も含め、約三億五千万円と推定されるのでありますが、これが改修完了後の経済効果の大なるにもかかわらず、本路線の性質が従貫道路であります関係上、いわゆる一般道路の補修あるいは改修の場合のごとく、その年々の工事の進捗に比例して、效果をあげ得るものと異なり、全線の完通を見ざる限りその効果を期待し得ない点にかんがみ、現下の道路予算の実情等よりして今日まで放置されて来たものと思われるのであります。しかしながら本路線改修完了による効果は、單に四国南北側を最短距離で連絡し得るという運輸上の效果のみでなく、その沿線に含有する豊富なる資源の年当り増産量のみにても木材二十万石、木炭二百万貫、銅鉱三万五千トン、金額にして合計約三億三千万円等の経済效果をも期待し得るのでありまして、当然本改修工事の促進に関しましては、これを三箇年、あるいは五箇年計画等一定の継続事業として早急に着工する必要があると認められるのであります。  以上はなはだ簡單ではありますが、所見のおもなるものを申述べ、視察の御報告にかえる次第であります。
  13. 天野久

    天野(久)委員長代理 前田君の四国班報告に対して政府の御意見を求めます。
  14. 澁江操一

    ○澁江説明員 四国西南地域に関します総合計画についての御意見につきましてお答え申します。先ほど砂間委員から御指摘になりました御所見に対しましてお答えいたしましたが、それと相関連する部分も大部ございますので、その点は前会に申し上げました点で御了承を願いたいと思います。ただ一点総合特定地域に関します国庫補助率を明確にすべきであるという点についての御発言がございましたが、その点は私どももその必要を実は考えています。御承知のように国土総合開発法の制定実施を見たわけでございますが、先ほど来御指摘もございましたように、現在の法律をもつてしてはまだ未解決な問題が多々ございます。すなわち実質上総合開発計画を実施して参ります上に必要な問題といたしまして、第一は多目的な施設に関します量の振りわけの問題それから国庫予算をかかる計画に対しまして優先的に配置するという点、あるいはダム建設等の場合に下流施設の利益を受けます区域に対する利益負担の問題、あるいは開発実施機関の問題、かような問題がいろいろ実施上に関連しまして出て参る、国庫補助率の問題もその一つであります。これらにつきましては建設省といたしましても現在の法律をもつてしては解決のできない不備な問題はいわゆる実施法と申しますか、そういつたような問題を取上げる必要もあるかと考えましてただいま研究をいたしております。従いましてそれによりましてただいま御指摘になりました、国庫補助率等の問題も、その法律等に織り込む必要が実施法を考える場合には出て参るかと存じておるようなわけでございます。  それからもう一つ経済効果のとり方につきましていろいろ御意見がありましたが、これも特定地域を指定いたします基準の問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、審議会等におきまして検討をいたしておりますわけでございます。総合計画の実施によります経済効果は、比較的長期にわたることはこれは当然でございまして、そういつたような意味からいたしまして、経済効果の取り方には相当な幅を持たせて行くべきではないか。そういうことがいろいろ論議されておるのでありまして、さような点につきましてもこれまた検討をいたして参るつもりであります。
  15. 天野久

    天野(久)委員長代理 次に北海道の報告を求めます。増田連也君
  16. 増田連也

    ○増田(連)委員 北海道における建設事業調査に関しましては、去る九月一日本委員会におきまして災害復旧に関する件を議題として討議いたしましたる際、同僚議員小平久雄君より、北海道における道路河川の災害復旧に関する件につきまして概略の視察報告をいたしましたので、今回は同地方の総合開発計画の面につきまして、調査の結果に基く所見の一端を御報告申し上げたいと存じます。  去る第七国会におきまして、北海道開発法が成立しましたが、その目的は北海道の資源開発に基く国民経済の復興と、人口問題に寄與するためと規定されてありますが、われわれもこの見地より、主として公共事業の方面を視察いたして参りました。朝鮮、満州、台湾等を喪失いたしましたるわが国にとりまして、北海道が唯一の未開発地域であり、人口問題の解決地域であるということはおよそ周知の事実であります。戰前日本の平均人口密度は、一平方キロにつき百五十人でありましたが、今では二百十人に達しています。しかるに北海道の人口密度は約五十人で、本州で一番人口稀薄な岩手県の八十人に比べても、はるかに余裕があります。その面積もわが国全面積の約二割を占め、四国の二倍と九州を合せた広さに匹敵するのであります。また北海道はわが国の最北端に当りますが、これを満州あるいは欧米各国に比較しますと、必ずしも酷寒地帶とは申されません。たとえば札幌の年平均温度は七度で、夏季の温度はパリー等より平均三度も高いのであります。かつてわれわれは朝鮮、満州において僅々三、四十年間にあの輝かしい開発の実積をあげ得られました。しかるに開拓八十年の経歴を持つ北海道の開発のみが何ゆえにかくも遅々として進展しなかつたのか。それには行政機構、拓殖計画内容、あるいは移住民が出かせぎ根性を脱却し得なかつた等種々の理由があげられているようでありますが、いずれにしろ敗戰後の今日わが国経済再建の基盤として、本道の開発にかかつて北満の荒野の資源開発に示したわれわれの経驗と実力を発揮すべきではなかろうかと思うのであります。北海道第二期拓殖計画の目標としては、昭和二十一年まで耕地百五十万町歩、牛馬百万頭、総人口六百万人を企図したのでありますが、現在の状況は既墾地七千四万町歩、牛馬三十一万頭、人口約四百万人にすぎないのであります。従つて河川、道路港湾等のごとき公共事業も既定計画の半ばにも達せず、今後の開発計画に計上される事業量は莫大な額に達しているのであります。  まず開発計画の第一に考慮される点は、河川改修計画と土地改良の問題であります。耕地七十四万町歩はほとんど河川改修と土地改良によつて造成せられた土地でありまして、今後とも泥炭地、火山炭地、重粘土地、酸性土壤の改良等幾多の問題が残されています。河川改修計画とこれに伴う経済効果は道庁の調査によりますと、改修費四百十八債円により新規開発耕地十一万町歩が造成せられ、浸水除去面積は二十二万町歩に達すると称しています。新規開発耕地は主として本道三大河川たる石狩川、十勝川及び天塩川の流域に集中し、経費約百七十六億円で九万町歩の開田が予想せられ、一町歩当りの経費は約二万円でありまして、この点よりしましても、本道における河川改修工事はすこぶる有利であります。また河川流域に発達している約二十万町歩の泥炭地の改良計画も重要な問題であります。これに対し河川改修工事の掘鑿箇所にポンプ式浚渫船を使用し、その浚渫土砂をもつて客土すれば一石二鳥の効果ありと称しています。あるいは洪水時に洪水を泥炭地に誘導しても自然客土が行えるとも考えられています。  第二は電源開発の問題であります。発電設備は水力二十九万キロワツト、火力二十三万キロワツト、計約五十二万キロワツトでありまして、未開発水力は百二十五万キロワツトであります。電力の不足はわが国の常識でありますが、本道は特に極端で、その不足率は全国平均の二三%に対し、本道は三四%であります。この電力不足が本道開発の一大支障となりまして、本道における各種工業の立遅れの主因となり、道民生活の向上発展を阻害しているのであります。この電源開発の要望は最も熱烈でありまして、洪水防止、灌漑用水、工業用水等の総合的見地からも、雨龍川、幾春別川等各河川においてその発電計画は強力に推進されるべきであります。  第三は住宅問題であります。本道民に出かせぎ根性が幾らかでも残存するとすれば、これを最も明確に表現するものは、本道における貧弱な住宅でありましよう。亜寒帶地域でありながらその家屋は粗末なバラツク式であり、内地の府県と異なるのはただストーブがある程度であります。これが改善にあたつては、壁の厚さとか、窓の構造とかの部分的考慮よりも、目を一転して朝鮮のオンドル生活、満州のピーズ家屋等を検討する必要があると思います。われわれが嚴冬の候、鮮満地方の民家に宿泊して、内地におけるよりもはるかに温暖な一夜を過し得た事実を想起すべきでありましよう。  最後に建設事業に関する行政機構の問題であります。本道開発機構の二大特長は、中央にあつては総理府の外局として北海道開発庁があつて総合開発計画の立案と事業の調整推進に当ることと、地方にあつては実施機関一つである土木部が府県の土木部所管業務以外に、北海道に関する限り、地方建設局、港湾建設部及び地方農地事務局の事務を一括所管する点であります。しかして本部の実施機関として道内十箇所に土木現業所が設置せられ、河川、道路、砂防、都市計画以外に土地改良、港湾及び水力発電等に関する工事を一括施工し、建設行政一元化の妙味を遺憾なく発揮しておるのであります。開発庁の運営に関しましては、なお今後の経過によつて批判すべきでありましようが、この土木部ないしは土木現業所の運営に関しましては、その過去数十年間の実積を参考として、建設省及び各中央事業官庁の直轄工事の一部を地方に委讓する点、あるいは建設行政の一元化等を再検討すべきではなかろうかと思考するのであります。  以上簡單ながら北海道の建設事業に関する所見の一端を述べて調査報告といたします。
  17. 天野久

    天野(久)委員長代理 増田君の北海道班の報告に対して政府の御意見、御答弁を願います。
  18. 澁江操一

    ○澁江説明員 北道海の総合開発の問題につきましては、私どもも人口の收容力を増大する意味におきまして、きわめて重要視すべき地域だということはただいま御意見にもございましたように、考えているわけであります。主として現在問題になつておりますのは、石狩川を中心といたします石狩川の治水計画並びにそれと関連いたします土地改良計画、この両者をあわせて計画いたします総合開発計画が重点になつているやに聞いております。これらにつきましては、御承知のように、北海道開発庁が設置されました現在におきましては、この機関中心となりましていろいろの計画に当つているわけでありますが、何と申しましても、相当調査を現在では必要とするのではないかというふうに私どもは考えているわけであります。その結果による計画によりまして十分検討して参るつもりでおります。総合開発の問題につきましては大体以上の点を考えております。
  19. 天野久

    天野(久)委員長代理 なお先ほど四国班の報告の中に道路とそれから地盤沈下に対する問題がありましたが、これに対して御答弁がなかつたようですが、政府側の御答弁をお願いいたします。
  20. 伊藤大三

    伊藤説明員 先ほどの四国班の御報告に対します私どもの方の一応のお話を申し上げようと思いましたけれども、次に移りましたので、河川関係につきまして申し上げたいと思います。  先ほど南海の震災のお話がございましたが、南海の震災につきましては、二十一年の暮れに、起るとすぐ震災の対策といたしまして災害地において応急の措置をとりまして、一応震災による災害復旧としての処置をいたしたのでありますが、その後調査の進むに従いまして愛媛、徳島、香川方面相当な地盤の変動がございました。いわゆる災害復旧として査定いたしましたのから漏れたのが非常に多かつた。従つてさらにこの点につきまして査定をいたしまして、予算費目といたしましては、地盤沈下対策の費用といたしまして、先ほど説明のございましたように査定をいたしたわけでございます。そしてこれに対する措置といたしましても、先ほどお話がございましたように、相当の金額がまかれたのでございますが、この査定金額に対する国費の点につきまして非常に差があるということは、確かにお説の通りでございます。ただ何を申しましても、国庫財政の都合上、十分なる金が出せないというような現状で、遅々としておりまして申訳ないのであります。しかしできるだけ重点的な点からこれを施工いたしまして、なるべく早急にこれを片づけたい、こう存じておるわけであります。  それから、いわゆる仮工事の費用の問題でございますが、現在におきます災害復旧の補助の対象といたしましては、仮工事は実は触れないことになつておりまして、この点につきまして各県から相当要望があるのであります。われわれの方といたしましては、この仮工事が、災害復旧の一環として役立つものであるという点で、これを災害の方において取上げておるのであります。それは、あくまで災害復旧の一環となり得るという点から、これを取上げておるのでありまして、これと関連がないものにつきましては、今のところ国庫補助の道を講ずることができない立場にあるのであります。従つてこの問題につきましては、常にそういう意味合から予算の折衝をいたしておるのでございますが、なかなか財政上の都合で、これが認められておらないような現状でございます。しかしこれにつきましては、将来とも何らかの手を打ちたい、こういうように存じておるわけでございます。  なお海岸の問題につきましては、單なる復旧のみならず、将来の問題といたしまして根本的な対策も考えたいというので、あるいは防潮対策あるいは海岸修築というような方面に対しても考慮して行きたい、こういうふうに存じております。
  21. 八嶋三郎

    ○八嶋説明員 地盤沈下問題といたしまして、上下水道のお話がございましたので、この点につきまして私から簡單にお話申し上げてみたいと思います。お話のございましたごとくに、地盤の沈下によりまして、飲料水の問願として非常に大きな問題を起しております。これにつきましては、この委員会におきましても再々の陳情もございまして、実はさつそく私の方も現地に專門家を派遣いたしまして、いろいろ現地査定をいたしたのでございます。南海の地盤沈下といたしましては、大体四国の四県が中心でありますが、そのほかに実は和歌山県もあわせてございますので、これにつきまして、先ほどお話のございましたように、大体四億七千万円余を現地査定いたしたのであります。これに対して、さつそく安本方面にも要求いたしました結果、実は来るべき本年度の補正予算におきまして、八千四百万円をとりあえず出していただく、あとはまた来年度予算等において考慮をしていただく事業費といたしましては、大体一億六千八百万円という数字になるので、その半額をとりあえず本年度において出そうということに、内輪の話は確定いたしておるのであります。しかし補正予算の全般がまだはつきりいたしませんので、はつきりした数字を申し上げることはいかがかと思いますが、今大体の打合せとしてそういうふうになつておるのであります。  下水道の問題に対しましては、実は本年度の予算といたしましては、非常に計画が狭小であつたから、まだ決定はいたさないのでありますが、来年度の予算といたしましては、ぜひとも出していただくという話合いは、今いたしておる次第でございます。
  22. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 今の上水道の問題ですが、私らが現地視察中に、中央の地方庁に対する情報ともいうべきものとして入つたのは、いわゆる災害復旧の百億円のうち、一応災害に対する費用として幾らか出すように、関係閣僚の方からの了解を得たからというような報道が入つているということを承つたのでありますが、今当局お話を承りますと、補正予算の中に、本年度八千万円余を計上してあるということでありますから、その点たいへん現地の者が考えておるのとは違つた報告のように思われるのであります。私が申すまでもなく、従来上水道等は厚生省関係の予算でまかなつておる、これは災害による工事か、あるいは單なる他の地にもある上水道工事としての取扱いかという点に、いろいろ政府のお考えがあつたのではないかと思われるのであります。しかしながら実質的には今お話のあつた通りに、災害で塩害をこうむり、その問題から起つた現地の住民の日常必要なものが非常な窮迫になつておるという現状なのでありまして、当然災害によらなければならぬという性質を持つているところに、地方の希望があるわけで、その点がどうも今承りますと、現地のお話とはちよつと違つておるのではないかと思うのでありますが、今の報告通りであるかどうかという点を重ねて確かめておきたいと思います。  もう一点、この総合開発河川の問題として希望を申し上げておきたいのでありますが、熊野川流域の報告にもあつたのでありますが、総合開発をやる場合において、今政府の方では予算的処置等について、その実施方についての計画を進めつつあるようにお話があつたのでありますが、すでにこの問題は総合開発を推進して行くところの基本的な根底をなす重要な問題で、早くこの計画が実施されるような状態に置かなければ総合開発は活発に行かぬと思うのであります。ことに熊野川あるいは四国の徳島、高知等の河川は、私が申すまでもなく非常に雨量の多いところに特殊性があるのでありまして、只見川の水源につきましては雪解け水が中心になり、それからたとえば香川、愛媛の方は年間雨量は千五百ミリ程度であるが、今申し上げました熊野川あるいは吉野川、那賀川、渡良瀬川等の流域は三千ミリ降るという非常に雨量の多い地域で、この雪解け水の期間と、この降雨による水の期間との相違というようなことを考えて、総合的に日本の水利を利用するというところに特殊性を持つておるので、早くこういうような有利な地点開発することこそが、日本電源開発はもちろんのこと、水利の利用等について非常な急速を要する問題であると思うのでありまして、その点十分御考慮の上に実施が一日も早く活発に推進されるようにひとつ希望を申し上げておく次第であります。
  23. 石田政夫

    ○石田説明員 最初の御質問の、地盤沈下の上水道の予算上の取扱いにつきましてのいきさつをお答え申し上げたいと思います。この地盤沈下の上水道に対する国庫補助の問題といたしましては、お説の通り非常に急を要する問題である。四国四県並びに和歌山県におきまして非常に箇所も多く、飲料水の問題で一刻の遅延も許さないという事情にございまして、私ども実は本来は当初予算に計上すべきだつたのでございますが、要望の資料が本年度の当初予算に計上いたしまする財源的な配分の時期に間に合わなかつたのでございます。その後本年の三月、四月ごろからその資料をとりまとめました各種の御要請が出て参りましたので、至急私どもの方でこの対策について協議いたしました結果、御承知の本年度災害予備費の百億の中から第一次二十七億の支出を決定いたします際に、一応この地盤沈下の上水道も八千四百万円を計上して考えたのでございます。ところがいろいろ予算技術上の問題といたしまして百億の予備費が本年度発生災害復旧費と相なつておるのでございまして、そういたしますと、本年度発生災害復旧費という点から考えますと、嚴密に申しまれば、これは井水の涸渇によります上水道施設の新設工事なんでございまして、大蔵省方面からも、そういう予算技術上の問題として百億の予備費の災害復旧費に該当しにくいという強い要請が出て参りまして、かたわら水の問題で一刻も早く事業計画を進めなければならないという段階にございまして、やむを得ず私どもの方で八千四百万円の県別、箇所別の事業費をきめまして、これに対して財源的な配分といたしましては、この百億の本年度発生災害復旧費という費目から出しにくいので、一応補正予算に計上するが、補正予算の時期を待つてつたのでは非常に遅くなるというわけで、一応大蔵省預金部資金から箇所別に短期融資をいたしまして、事業の准捗には全然さしつかえないようにという財源的な取扱いをいたして参つたのでございます。そうして今度補正予算に、災害でなく地盤沈下による上水道施設費として計上いたしまして提出いたしております。これは予算の技術上の問題でございまして、ただ現実には、先ほど申し上げました箇所別の最も緊急を要する工事はすでに着手しておりますし、また預金部資金の短期融資を実施いたしておりますから、事実上の問題としては一向支障を来しておりません事情でございます。
  24. 天野久

    天野(久)委員長代理 この際お諮りいたします。議員山本久雄君が発言いたしたき旨通告がありますが、これを許すに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕
  25. 天野久

    天野(久)委員長代理 御異議なければこれを許します。山本久雄
  26. 山本久雄

    ○山本久雄君 ちよつとお尋ねしてみるのですが、今前田委員から、四国地方の地盤沈下その他の災害についての報告がありました。当局もそれについての答弁があつたのでありますが、この地盤沈下については、四国並びに中国地方——岡山県の一部、山口県の一部、広島県は特に沿岸島嶼部が非常な惨害をこうむつておる。先般のキジア台風の際におきましても、塩田のみでもおよそ百町歩に余るところの塩田がすつぽり水浸しになつておる。そのほか市街地に近いところも、みなそのままになつております。今報告を聞いてみますと、もちろんこれは四国地方の派遣でありますから、四国方面に重点を置かれた報告はもちろんでありますが、中国地区の方面についてはほとんどお話がないのであります。当局には広島県のあの大きな惨害について、あるいは山口県の一部、岡山県の一部、こういう方面についてのお考えはどうでありますか。まるきり等閑視されておるのではなかろうかと思いますが、それについて十分な御答弁を願いたい。  それからなお広島県には御承知の地すべりのエロージヨンというものが島嶼部に担当被害がありまして、先般四国と中国五県とでこの地盤沈下とエロージヨン、その他の総合的陳情を出したはずでありますが、中国方面について何らの答弁もありません。それについて、今承りますれば、県別、箇所別で補正予算に予算も盛られておるということでありますが、全体広島県、岡山県、山口県はどうなつておるのでしようか。それをお聞きしたい。
  27. 石田政夫

    ○石田説明員 先ほど私が申し上げましたのは、地盤沈下による上水道の問題だけでございます。これは四国各地と和歌山県でございます。中国広島の方には上水道の問題はございません。
  28. 山本久雄

    ○山本久雄君 上水道もこれは緊急欠くべからざるものでありますが、今の広島県の状態等について、答弁があるのですか、ないのですか。
  29. 伊藤大三

    伊藤説明員 今私が述べましたのは、四国班に対するお話でございましたのでそれを申し上げましたので、今度のキジア関係などの災害復旧の問題につきましては、大体今月中に査定が全部終ることと思います。報告はすでに受けておりますが、大体その査定に出ました連中もその査定を終つて帰る時期に到達しております。特に今回のキジア台風におきましては、ジエーン台風と同じように海岸の堤防がやられたのが非常に多いのでございますが、山口につきましても広島につきましても、海岸の災害につきましては査定をいたしまして、それの要求は安本の方へある程度出しております。従つて残りの百億の中でそのうちに割当があるものと考えます。なお海岸堤防の修築といたしまして、本年もらいましたわずかな金でありますが、その中から広島、山口の方にも若干の金は支出しております。
  30. 山本久雄

    ○山本久雄君 若干の金と言われますが、大体全額合せて今度の補正予算で今御説明になつておる九千何万円、事業費が一億何ぼということでしたが、広島県のみでも五億からの地盤沈下によつての経費がいるのでありますが、それを和歌山県なり四国四県、中国方面三県、こういう方面へ全体振りあてられるというのではどうにもこうにも処置のしようがなかろうと思うのですが、いかに補正予算で応急措置とはいいながらあまりに少額ですが、全体広島県あるいは岡山県、山口県というような中国側の方面への割当はここで言明はできるのですか、できぬのですか。
  31. 伊藤大三

    伊藤説明員 現在のキジア台風に対する割当につきましては、まだ今安本で審議せられておりまして、建設省へ幾らまわるかということがまだ決定いたしておりません。それから補正予算につきましては、約四十一億の災害費を計上せられておるのでありまするけれども、これもまだその四十一億そのものがどうなるかわからない。従つてそれによりまする各省への割当もまだ決定いたしておらないことと存じまするので、確たる数字をどの県幾らというところまではちよつと申し上げかねるのであります。
  32. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 ちよつとこの際地盤沈下に関する問題でお聞きしておきたいのですが、これは四国でもあつたのですが、私は四国を一周いたしてみまして中国地方がどうなつているかということを中国の建設局で聞きましたところが、地理調査所の調査等がまだ中国の方ははつきりしておらない。はたして三十センチ沈下しておるか、五十センチ沈下しておるか、一メートル沈下しておるかということは——地球の変動とかいうことは科学的に非常に調査がむずかしいので、その点明確になつておらぬから、この点まだはつきり中国地方の問題については各府県等の調査もまとめておらないが、至急にまとめるようにする、こういうことであつたのであります。私はその地盤沈下の問題、ことに海岸、河川等の問題につきましては、そんな地理調査所等の調査の科学的な地球の変動云々ということよりも、現実に潮の干満が従来どうなつているかというようなことで、その雨量、高潮の影響が現実にどうなるかということを見ればわかるのであつて、それに対処するのが建設省の仕事ではないかと思うのでありますが、従つて私はそういう点を建設当局にもよく言つて、至急にやりますということであつたのでありますが、大体建設省といたしましては、やはりそういう考えでおられるか、または今申し上げましたように、現実に潮の関係、あるいは流水の関係で、ただちに現実に即したことによつて、これらの災害復旧等を考えるのかどうか、この点と、今中国建設局からのその方面調査の結果が、すでに建設省へ来ておるかどうか、この点を承つておきたいと思います。
  33. 伊藤大三

    伊藤説明員 地盤沈下の問題でございますが、もちろん今お話にありましたように、根本的な調査を進めておるのも事実でございますし、また私の方の対策といたしまして、潮の干満から見まして、災害の発生を防ぐという点につきまして進んでおるのと、両面をとつてつておるのでありまして、特に地盤沈下の問題は四国のみでなく、査定いたしましたのは本土にわたりまして岡山あたりもやつております。和歌山にもやつております。また愛知県にもやつております。これは現実に即しまして、現に潮の満干に対しまして、あぶないところは現在地盤沈下に対して工事をやつております。そうして今四国の方で、お話になりました将来の根本計画を立てる問題につきまして、そういうふうな調査というものを十分にする必要があるのでこれをやつております。
  34. 山本久雄

    ○山本久雄君 今前田委員から言われましたのは、まことに私も同感なんです。科学的にとかあるいは地球の変動とかいうようなとは第二義的の問題で、実際問題として潮の満干が大して従来とかわりがないにかかわらず、満潮時におきましては広島県あたりの沿岸島嶼は月のうち満潮時に備えるために土俵をとりあえず築いて、土嚢で防いでおるような状態です。そこで恒久施設としての科学的調査も必要でありましようが、とりあえず応急処置というようなことに重点を置かれてやつてもらいませんと、非常に県民はおびえておりますし、またそのこうむる損害は著しい問題でありまして、田畑にしましても、塩田にしましても、市街地にしましても、今單に上水道という言葉が上つておるのでありますが、上水道のみではありません。いろいろの面から等閑視できぬ問題でありますから、どうぞ恒久施設も必要でありますが、それよりか焦眉の急としてまず応急施設をやつてもらう、こういうことに重点を置いてやつてもらいたい。
  35. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 今回の本委員会の調査から北陸地方が除かれておりまするので、この方面の御報告が聞けないのでございますが、去る十八日各新聞紙上をにぎわしておりまする石川県手取川にかかつておりまする天狗橋墜落事件について当局にお伺いしてみたいと思います。この事件は單に司法上の問題としてきわめて重大であるというばかりでなしに、根本的には建設行政上の重大問題だと私は信ずるものであります。従つてこの問題を中心として災害復旧についての根本的な検討をし、改善の方法を見出すべきである、こう考えまして御質問申し上げるものであります。従つてこの天狗橋事件、すなわち業者が県の土木部と結託をして、橋梁の補修予算を増額せしめる目的をもつて橋をこわして、これをさながら天災のためにこわれたように見せかけて、予算を獲得しようとして両者が結託してこの橋を墜落せしめたという報道であります。その結果この橋の破壊工作と申しましようか、そういうものが不手ぎわであつたために、不幸にしてこれは通行人があるときにおいて墜落したために数人の人が死傷した。これはきわめて人道上から申しましても、建設行政の上からも、一大不祥事件といわなければならないと思うのでございます。従つてこれに対する当局の十分の御調査がすでにあると思われますので、この際真相をこの委員会に御報告願いたいということが第一点であります。  第二点は新聞紙上の記事そのままをうのみにいたすようでございまするが、これは明らかに、この事実によつて、災害予算に当つては災害便乘というものがあるということを確証づけておるということが一つであります。そしてかかる災害便乘の予算に当つては県吏員と業者が結託しておるところの不正が存在しているということが第二点でございます。この問題は従来もしばしば論議せられたところでございますが、私の記憶によりますると、当局はそういう事実はない、こういうことを答えてもらつたような記憶があるのでございます。しかしこの天狗橋墜落事件が証明しているように、災害便乘の予算獲得があるということと、災害便乘の予算獲得に当つて、業者と県の土木部とが結託して不正をやつている。この二つの事実がもはや歴然として白日のもとにさらされた以上、当局においてももはやかかる事実や傾向はないとはおつしやらないだろうと思うのでございまして、一体こういうことに対しまして当局には従来どういう調査をなされ、どういう監督をなされたかということについてひとつお聞き申し上げると同時に、将来かかる不祥事件や、かかる不正の予算獲得という事実がないように、当局はいかなる対策を持つておられるか、そういう準備がありまするならば承りたいと思います。本日ここに安本の方が見えられておるかどうかわかりませんが、安本の中にはたしかこれらの監督機関があると思うのでございます。従来地方に査定等にもからんで、たくさんの監督官が参つておられるのでございますが、こういう問題に対して一体どういう監督が従来地方においてなされたか、こういうことをまず第一番にお聞きいたしまして、次にもう少しこの点について御質問申し上げたいと思いますので、ただいまの点をひとつ御答弁願いたいと思います。
  36. 伊藤大三

    伊藤説明員 私の方の土木災害として災害復興の対象といたしますのは、規定にありますように、豪雨とか暴風とか地震とかいうような原因に基いて発生しました土木の復旧でありまして、人為的にことさら破壞したというものはその復旧の対象とはいたしません。従つて人為的に破壞されたものを災害復旧費としてわれわれが採用することは絶対にございません。問題は一体災害復旧については、暴風が起るとかあるいは豪雨で起るとか、地震で起るとか、それらの原因がある場合におきまして、その原因に基いて発生がありまして、県から申請があり、査定官を派遣いたしまして査定官によつてその原因並びに方法等いろいろな調査をしているのであります。従つてこれは災害の発生した後において行くのでありますので、的確にはつきりと必ず水で出たというような痕跡が十分にある場合はわかりますけれども、時としてその点が不明な場合がなきにしもあらずと私は考えるのであります。しかしながらわれわれは県当局を十分信頼いたしまして、県の申請を一応神聖なものとみなして査定に参るのでありまして、その原因が今のようにはつきりいたさない場合——おれが人為的にやつたということがはつきりいたします場合は格別、それがわからない場合には、四囲の状況を判断して一応査定いたすよりいたし方がないと存じておるのであります。なお工事につきましては方法について事前に査定をし、なお後において工事の完成について監督に参つておる次第でございます。
  37. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 非常に不徹底な御答弁でございます。第一に私は天狗橋事件の真相を当局調査したかどうかとお聞きしたのであります。調査したとすればどういう真相であるかということをここで御証明願いたい。  第二点はこのことが立証しておるように、災害便乘予算があるということがこれではつきりしたわけであります。まさか次長さんといえども、そういうものはないとおつしやらないだろう。このことがもし新聞紙の報ずるごくほんとうだとしますならば、少くともただ一つそれのみかもしれませんが、それがあるということがはつきりした。従つて従来ともこの委員会でもしばしば問題になつたように、そういう傾向があることは当局も当然知つておらなければならぬはずであります。少くともこういう災害便乘の予算獲得というもの、あるいは県吏員と業者の結託による不正があるに違いない、こういううわさを聞かれたに違いない。こういうものに対して建設当局とか、あるいは安本の監督機関とかいうものが、従来一体どういう注意を拂い監督をされたのか、こういうことを私は聞いておるのであります。次長が申されますように、災害が起つてから後に監査いたしますから、むろん人間の乏しい知識においては事前に発見できない場合も多々あることと存じますので、その点は次長のおつしやることを了解するのでありますが、しかし人智の及ぶ限りにおいてそういう不正がないように監査をすることのために、建設省が上級機関としてあり、あるいは安本の監査機関があるだろうと思うのであります。見つけることができないからそれでおれの責任がないんだということは、はなはだ監督官庁あるいは上級機関として不誠意きわまるものだと私は考えるのでありまして、従来どういう注意を拂い、どういう調査をしたか、こういうことをお聞きすると同時に、将来どういう対策を立てるのか、こういうことを聞いておるのでありますから、質問のポイントをお間違いなくお答えを願いたいと思うのであります。
  38. 石田政夫

    ○石田説明員 安本の監査について一言申し上げたいと思います。私は安本の監督課の当該の担当者ではございませんが、公共事業全般に対して、現在安本において監督機構をつくり、この監督課の者が現場に手わけをして出て参りまして、数多い公共事業の対象箇所について、可能な範囲において詳細な調査をいたします。この調査の目的といたしましては、まず公共事業の実施について、各種のいろいろな弊害あるいは各種の調整上の問題その他現場において種々矛盾を是正いたしますと同時に、本省自体が各種財源配分の点について何か矛盾がないか、こういつたような点について反省の資料といたし、あるいは翌年度予算の準源配分の参考といたすという意味合いにおいて、従来も少数の陣容でございますが、手わけして出て参つておるのでございます。従来の結果のごく概要を私の知り得る範囲で申し上げますと、まず事業主体に対して財源関係の対策がはたして円滑に行つておるかどうか、具体的に申しますと、国庫補助金がいろいろの経由機関の手によつて非常に遅延しておるじやないか、こういつたような問題、あるいは地方費負担分の起債がどうなつておるかといつたような点、こういつた点について箇所ごとに一応当つております。なお事業の実施について、事業の進行状態が非常に十分でない、あるいは年度末を控えましてまだなかなか十全の効果を発揮していないといつたような点につきましては、監査に参りまして、その都度警告を発し、帰りまして当該関係官庁主務官庁並びにその府県庁あてに警告を発し、ときにはその当該の担当者を呼びまして、この監査内容についての詳細な討検の結果を連絡いたしております。そういたしまして、実は今まで認証上の問題といたしまして、事業の進行上あるいはその他矛盾を感じました場合には認証変更あるいは認証取消し、こういつた措置を若干実施いたして参つております。今回も天狗橋事件につきましては、当該官がどういう態度をもつて臨みますか実は担当ではございませんので、詳しく存じておらないのでございますが、安本の監督全体といたしますと、従来ともそういつた調整上の問題としまして現実に若干監査の結果を反映いたし、場合によつては認証変更、認証の取消し、あるいは各所に箇所別の詳細な警告を発しております。  なお実は現地の問題といたしますと、災害と一般と一応分類しておりますが、一般から災害の方になるべく便乘したいというような傾向がないかという点を非常に注目しておりまして、こういつた点も従来個々に検討して参つて、これに対する対策を現実に是正いたした点もございます。  私の知り得た範囲でお答え申し上げます。
  39. 天野久

    天野(久)委員長代理 佐々木さんにちよつとお諮りいたしますが、実は今調査報告で、これをまずまとめて行きたいと思いますが……。
  40. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 当局はこの問題はまだ調査をなさつておらないようでございますが、さつき申し上げましたように、今回の当委員会の北陸調査がなされれば、当然こういう問題も究明されたと思うのでございますが、そういうことがなされなかつたところに、この問題が今日まで当委員会としても放置されたような形になつたものだろうと思うのであります。そこで当委員会といたしましては、ただいまの建設省当局の御説明では、何か天狗橋事件の真相というものについては何ら御答弁がないようでございますので、委員会の責任におきまして、この問題を、土木部長を呼ぶなり、こちらから委員が参るなりいたしまして、やはりこの問題の真相を究明すると同時に、災害便乘の根本対策をはかることが必要である。将来こういう不正事件を防止することをやはりやるべきだと思うのであります。そこで委員長に申し上げますが、この問題のほかに、ちよつとあとでまた時間が許せば質問がもう一つあるのでございますが……。
  41. 天野久

    天野(久)委員長代理 私の考えは、あなたに御相談をして、今は報告が議題になつておりますので、もう一つ四国班の道路に対する御答弁を願つて、それからこの報告結論を得て、あとでまた時間を見て御質問を願いたいと思うのであります。
  42. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 その意味で、私あとでもう一度これを議題にさせていただきます。
  43. 天野久

    天野(久)委員長代理 それでは四国班の道路に対する御答弁がありますか。
  44. 佐藤寛政

    ○佐藤説明員 先ほど前田委員から四国の中央産業道路について御報告がございましたが、これに対しまして、当局の考えを若干申し上げます。お話の西條市から高知市まで達します約百十二キロの道路でございますが、これは四国の瀬戸内海側と太平洋側を直通するというまでにも行きませんが、四国の中で一番くびれている細いところを結んでいるもので、横断道路としましては、非常にいい大事な路線でございます。幹線連絡道路として非常に重要であるばかりでなく、先ほど御指摘がありましたように、鉱産、林産、農産のために非常に大事な路線だと私どもは思つております。そういうわけでありますから、戰時中におきましても、この道路の開鑿につきましては、相当手をつけたのでございますが、これがまとまるに至らず、現在では中央部分約二十キロ程度不通部分が残つてつて、自動車が完全に通れないという状態になつているようでございます。私どもといたしましては、この道路を一日も早く使えるようにいたしたいと存じまして、一昨年以来年々公共事業を振り当てている次第でございますが、何分二十キロを完成いたしますのに、ただいまのところではやはり三億以上のものがかかる予定でございまして、今までの公共事業の振当ての程度では、なかなか三年とか五年とかいうわけには行かぬようでございます。そこで実は最近いろいろ考えまして、あそこの路線を二度ほど実地に徒歩で歩かせまして、いろいろな調査資料を調製いたしまして、もしできるならば二十六年度の見返り資金あたりに持ち出したらどうであろうか、そうして長くとも三年ぐらいの間にあれが使えるような状態にしたらいかがか、こういうように考えまして、いろいろ現在そのしたくをしている状態でございます。なおまた見返り資金ということに対しましては、本線路が幹線道路ではございますが、現在のところ府県道であるというような関係で、いろいろまたそういう方面からの難点がもしございますれば、公共事業として引続きやつて行くようにしたい、その際にも従来のごとくあまりまとまらないことでなく、相当まとまつた工事費をもつて、できるだけ早く開鑿するようにして行きたいというふうに考えております。
  45. 天野久

    天野(久)委員長代理 それではこれで各班の調査報告は終了いたしました。なお閉会中審査事件につきましては、当委員会におきましては、本日まで愼重に審査いたして参つたのでございます。この際議長に対して報告書を提出いたさねばなりませんが、報告書の作成と提出手続等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 天野久

    天野(久)委員長代理 御異議ないものと認めましてさようとりはからいます。それでは佐々木君。
  47. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 先ほどの天狗橋の事件でございますが、当局が何かの御事情調査が十分でないようでございますから至急ひとつ調査をなさつて、真相をこの委員会に報告していただきたいと思います。本委員会でその真相を承つた上で、これに対する調査方法等も考えて参りたい、こう思うわけでございまして、さようおとりはからいを願います。  次には河川敷地の買收にかかる補償の問題でちよつとお聞きしたいのでございますが、これなども委員会から各地を調査してみる必要があろうかと思うのであります。近来河川改修に対する地元民の熱意と協力とが非常に涙ぐましいものがありまして、このごろは改修反対運動というものがなくなつたことはまことに喜ばしい現象というべきであろうと思うのであります。しかしそれだけにその陰には非常な犠牲が伴つていることを見逃すわけには参りません。すなわち河川改修による敷地買收のために耕作物の大部分を失つて、租先伝来の農業から他に転業を余儀なくされるものとか、あるいは営業を中止したり廃止したりしなければならないような、余儀ない事情に置かれておる中小商工業者の犠牲というものは、まことに大きく、むしろ悲惨きわまるものがあると思うのでございます。これに対する政府補償法規とか慣例とか、その他現在社会、経済の実情に即して最大できるだけの措置を講じて、こういう人々の中から犠牲者の人数をなくして、喜んで国家社会の要求する国家政策に協力するような措置が講ぜられなければならぬことはいうまでもございません。しかるに実際についてこれを見まするに、こういう犠牲に対する政府補償は不十分であり、現実の社会実態から見ますと、残酷とさえ見られるものが多々あるのでございます。すなわち第一に耕地買收の実態にこれを見ますと、買收価格は法規上最高価格といたしましても、離作補償になりますと純益の三年分ぐらを見込んでおるようでありまして、しかもその純益が反收五千円ぐらいしか見ておりませんために、反当の総額の補償は一万八千円ぐらいにしかならないようであります。しかしこの金をもつて他に転業等ができるかといいますと、現在の社会経済事情ではおそらく不可能でございます。もしこの金額をもつて新しい耕地を求めようといたしますならば——むろん法規上新しい耕地を求めることは不可能でございますが、たとい何らかの方法でこれを手に入れようといたしましても、大体反当十万円ぐらいを要するようであります。つまり一万八千円で政府にとられて、新しいものを得ようとしますれば、十万円以上を必要とするということは、こういう河川改修の協力者の犠牲がいかに大きいかということが、これをもつて想像せられるのであります。ことにこれを宅地等に見ますと、十万円、十五万円というような多額のものを出さなければ求め得られないような状態にあるのであります。これが一例をとつてみますと、北上水系の中の江合川の改修によりまして、涌谷町を中心とする沿岸の町村民が、この改修には大賛成をいたしております。一人といえども反対しておる者はありまん。みんな耕地を提供し家屋をとりはらつて、立ちのき決議をいたしておるのでございますが、その数は大体において涌谷町だけで三百三十戸、沿岸町村民を加えますと、約六百戸近い人々が、この土地の大部を失い、店舗の多くのものをとりはらつて立ちのかなければならない現状にあるのでございますが、ただいま申し上げましたような、買收価格や補償価格ではとうてい新しい生活を建設することはできない。こういう悲惨なる状態になつておるのでございますが、おそらくこれは代表的なものの一つでございまして、全国至るところの公共事業の陰にはこういう大きい犠牲が隠されておる、こう思うのでございまして、政府におきましても、これに対する十分な新しい対策が必要かと思うのでございます。そこで承りたいことは、現在政府は田畑、宅地、こういうものに対する買收価格及び補償価格というものは、大体において法規とか、慣例の上から最大どれくらい出せるものであつて、どういうような方針であられるかということを、まず明らかにしていただきたいということが第一点であります。しかし政府の御答弁だけではとうていこの事態の解決ができにくいだろうと思うのでございまするが、政府はさらに積極的に責任をもつて、とうてい金では解決し得ないこういう人々に対して、政府の責任で新しいかえ地を提供するようなことを考えておるかどうか。またはかえ地の提供ができないといたしますれば、現在の社会経済の実情に即応する補償額を出すというようなことについて考えておるかどうか。従来のものではだめであります。新しい貨幣の変動による、新しい実態に即応したところの補償額を出すというようなことをお考えになつておられるかどうか。もしそういうことは法規上できないのだと、こういうふうに政府がお考えでございまするならば、当然これは新しい法規をつくつて、新しい法律を制定して、單にこれらの犠牲を個人に対する不当な犠牲というような形で負わせることがないように、社会的の公平なる補償制度の確立が必要である。こういうことによつてこれらの協力者に対する十分の救済がなさるべきものである、政府として当然こういうことを考えていただかなければなりませんし、本委員会でもこの問題をここで取上げて行かなければならないかと思いまするので、新しい法規の制定によるこういう犠牲者の救済ということを政府が考えておられるかどうか、この点についてお伺い申し上げます。
  48. 澁江操一

    ○澁江説明員 具体的の事例の問題は別問題といたしまして、一応制度的な問題として若干考えております点を申し上げてみたいと思います。  公共事業の推進の上にまず大きな問題となつて参りますのは、御指摘のように、関係しております土地の取得並びにこれに関する補償の問題であるということは、私どもかねがね考えております。これが公共事業の成否をきめる上に重要なポイントであるというふうに考えておるわけであります。従つてこの補償を適正にやり、公共事業の施行を円滑にやるという根本的な前提のもとに立つて制度を考え、運営して行かなければならないように考えてはおります。現在の制度の上で考えられておりますことは、御承知のように土地收用法の規定でございまして、この規定の上で取上げておりますことは、相当の損失を補償する、こういう前提のもとに立つておるわけでありますが、問題はこの相当の損失を補償するという補償額の運営の方法でございます。御指摘になりましたように、現在までの慣例なり、実際に買收価格を査定いたす場合におきまして、相当犠牲がある場合もあるかと存じます。実は土地価格につきましては、なかなか各地域々々の事情によつて異なつておるわけでございまして、全般的な基準というものをきめることはやはり依然として困難ではないかというふうに考えられます。そこでこの通常国会に、私ども実は土地收用法の改正案を考えておりまして、これを提出いたす準備といたしておりますので、その際に十分審議を願いたいと考えておりますが、その案によりまして考えておるところを若干申し上げて御参考にいたしたい、かように考えます。  まず現在行つております。補償価格でございますが、これは御承知のように、農地調整法の規定、あるいは自作農創設法の規定によつて、農地の賃貸価格の大体四十二倍と考えておりましたが、これが一応公定価格の基準になつております。しかしながらこれはこれのみで補償を盡したということになりませんので、ただいまお話しになりましたように、三箇年分の離作補償、これをあわせて加味いたしまして、おはむね反当二万円程度補償を実はいたしておるのであります。しかしこれも所によつて非常に違うということは一応御了承願いたいと存じます。しかしながら、問題は金銭補償だけではおそらく解決しないという点が考えられますので、ただいま申し上げました新しい土地收用法の改正案におきましては、かえ地補償ということを実は考えております。これは現在の法規の根拠によりません実際の運営の面におきましても、ある程度のかえ地のあつせんその他につきましては、それぞれ施行の衝に当つております担当機関で実行はいたしているとも聞いておりますが、これを制度的なものにしたいというのが、この改正案のねらいでございます。そこでかえ地問題としてどういうものを一応考えるかと申しますと、先ほど御指摘になりましたように、総合開発計画によりまして土地の造成をして、これによつてこの限られたる土地の取得を円滑にするということも一つであります。それからなお企業者が持つております土地に対する犠牲者のかえ地の請求権、こういうものを考えますこともその一つでございます。さらにまた必要に応じましてはかえ地のあつせんを制度的に勧告し得るということを、收用の衝に当ります機関がなし得る権限を與えますことも一つでございます。これによりまして、たとえば国が公共事業をやります場合には、国有地に対するある程度犠牲者の請求権というものが制度的に認められることになるかと存じます。それからもう一つは、このあつせん勧告によりまして、企業者が土地の造成あるいは他の適当なそれに相当しますかえ地を取得いたしまして、これを提供するということを勧告に基きましてやる道も開かれて来るかと存じます。以上のような方法におきまして現在の金銭補償制度を現物制度、すなわちかえ地による補償にまで問題を広めて行く、こういうことを新しい改正案としては考えて行きたいというふうに考えております。なおかえ地問題の未解決の場合におきます適正な補償ということにつきましては、これは先ほど申し上げました通り、土地価格を一々決定することははなはだ困難でありますので、実際問題といたしましては近隣地あるいは土地の收益率、利用状況、そういつたものを勘案いたしました時価によります適正な補償価格を算定し得るという道を、規定の上に明らかにするという方法よりほかにないかと存じます。その実際の運営につきましては、あるいは專門家の鑑定人制度を充実いたしまして、それによつて土地の適正な価格を算出する、こういつた方法が考えられるのであります。ただいまそういつたような諸点につきまして法案を準備いたしておりますので、提出の際には十分御審議願いたいと存じております。
  49. 淺利三朗

    ○淺利委員 ちよつとこの問題に関連して一言聞きたいと思います。今佐々木委員から、私の年来疑問としている点について御質問があつたのでありますが、なおこの問題について一言確かめておきたいことは、この補償の問題についての予算化の問題であります。従来災害復旧の関係上堤防を拡張する、あるいは河川の幅を拡張するという関係上土地を買收するというような場合に、この買收費は災害補助の中に含まず、地元負担にするという原則をとつておられるやに聞いているのであります。現にその例が一、二あるのであります。そうしてその最も弊害のあつたのは、先年問題になりまして当委員会でもその意見が明らかにされたのでありますが、岩手県の一関のあの磐井川の堤防の問題であります。一関は目下二町二箇村が合併して市になりましたが、あの当時は四箇町村にわかれておりました。そこで磐井川の堤防を復旧するために山目町というものがその土地を買收されるという場合に、その買收費三百万円というものは地元負担である、こういう方針であつたようであります。ところが貧弱なる一町において三百万円の負担はできない。工事費は当時千八百万円であつた。そのために工事が延びて、遂に、本省にいろいろ陳情されまして、他にもその例があるからということで、これは国庫の補助の対象になるということにおちつきましたが、そのときにはすでに物価が七割上つておりまして、千八百万円の予算ではできない、二千八百万円の予算がなければならぬ、こういうことでまた主務省に補助の問題を交渉しつつあつた際に、第二次の災害が来て、そうして結局二億一千万円の金をかけなければ堤防の復旧強化ができない、こういう結果になつたのであります。こういう点から見ますと、当然こういう場合における買收費というものは地元負担にせず、災害復旧費の一環として補助の対象にすべしということは当然であると思うのであります。これは今日まだ政府の方針であるのか、あるいは法規上それができないのか、もしできないとすれば、これを法規化するということは必要だろう。これに対して将来政府はどういう方針をとるか、これが第一点であります。  第二には、直接土地の買收ではないけれども、災害復旧工事の結果、その地方に非常に不利を與えた、これも補償の対象にならないという実例があるわけであります。それもただいまの磐井川の堤防が二メートル半もかさ上げをした、これが市内に連接しております。かさ上げをした結果、とりつけ道路が八尺ないし十尺高いのであります。そうするとそのとりつけ道路が市街に面しているために、その市街に沿うて商店があつたものが、八尺以上も店の前が高くなると、その土地の者が現状の家屋ではどうしても商売ができない。これをかさ上げするか、あるいは今の計画は橋の延長としてコンクリートでずつと橋を延ばすのでありますが、そうすれば基礎として橋と同じ高さに地下室的にコンクリートの柱なり何なり設けてかさを上げて、地下室をくぐつて、その道路と同じ高さにおいて商店街を建設するということにならなければ、土地の人はほとんど営業はできないという実情であります。ところがこれに対しては現在何ら補償の道がない。災害復旧の附帶工事としてそれを計画しておらなかつたために、今日になつては補助の対象にならぬ。県もまたその根拠がないからこれは何ら補償しないということで、四十何戸というものはほとんど営業ができなくなつて非常な犠牲を受けなければばならぬ、こういう現状であります。こういうものはどうするか、政府の公共施設のためにそういう不利益を與えたものをいかにして救済するかという問題は、今日の現状においては不備である。この問題について現行の法律の上においてこれを補償することができるかどうか、もしできないとすれば、法律を改正する意思があるかどうか、この問題について明確なる御意見を承つておきたいと思います。
  50. 伊藤大三

    伊藤説明員 災害復旧の建前から行きまして、土地の補償ができるかという問題でございますが、実は災害復旧の規定から参りますと、原状復旧というのが原則でございますので、その点から行きますと、今のようにこれを拡張して大きく幅を広げるという場合の問題につきましては、一応は災害復旧の補助の対象にはする。しかしその工事をやられることについては、県が地元との間の打合せにつきましては、われわれの方としてはいろいろなことを申すわけではないのであります。実は原則はそういう建前でありまするので、従来におきまして、原則として災害復旧としては原状復旧、それから程度を超過するという問題につきましては、一応は見るにいたしましても、これを大体補助の対象から除いて、工事に対する補助を継続しておつたようなわけであります。磐井川の問題につきましても、従来の川幅においてこれを復旧するにおいては水害の補助はできない。しかし災害復旧の建前から行けば応急の復旧である。しかしながらもう少し広げなければ災害を防げないというので、拡張工事をする。従つてこの工事に対しては補助するが、現行の建前から工事に対しては県なりそれらのところにおいても適当に相談の上、補助の対象から除く。そちらで持つことについてとやかく、私の方で申したわけではないのであります。今のような災害復旧の建前から申しますと、原則としては今申し上げましたようなわけでありますが、ただ特殊の場合につきましては、この問題について災害復旧に何とかして入るまでに考えて行きたい、こういうような建前をとつております。将来こういうような場合をどうするかという問題につきましては、災害復旧ということについて相当嚴格な批判がございまするので、原状復旧を一般の改良まで持つて行けるか、それとも災害復旧は災害復旧としてそれをやり、それ以上のものは一般の復旧ということから、復旧でなく、根本的な費用で持つて行く。別途の予算で考えるべきではないかというような二つの意見がございます。これはいろいろ比較検討いたしておるわけでありまして、現在確たる方針はあるわけでございません。従来の方針を踏襲しているようなわけであります。
  51. 淺利三朗

    ○淺利委員 災害復旧を原状に復するという場合には、この問題は起らぬのであります。原状に復することは不適当であり、あるいは不可能であるという場合に、初めて今の河幅を倍にするとか、あるいは堤防の高さをかさ上げするという問題が起るのであります。そういう災害の場合は原則としてその補助の対象にしないとか、あるいはそのことを見ないということでは、とうてい災害の復旧は円滑に行われないと思うのであります。  ただいま申し上げたのは一つの例でありますが、当初三百万円の金を憎んだために、千八百万円で堤防ができ上るものが、遂に二億一千万円の国費を使わなければならないというような、こういうことは一文惜しみの百失いであります。そういう問題について、ただりくつの上で災害復旧は原状復旧であるから、そういうものは見ないのだということでは、これはほんとうの行政じやない。ことに今のように二メートル半もかさ上げをした結果、市街地はほとんど道路の下に沈んでしまうという場合には、これは個人の犠牲になる。こういうことは憲法の趣旨からいつて、国の事業のために、個人の利益を侵害するということを幇助するということは趣旨ではないと思います。でありますから、そういうことについては現行法が不完全であれば、これを改正するなり、あるいは法律を改正しても、いつでもこれに附帶する工事として政府当局が善処するという道を考えるということでなければ、これは救われぬと思うのであります。全国的にこの問題は起るのでありますから、ここでは局長も大臣もお見えになりませんが、この問題は相当重要に取上げて御検討を願いたい。この問題は残された問題であります。目下その土地の者は司法権によつてあるいは賠償の問題を法規的にやろうかという問題もあるのであります。県においても、それは裁判を仰いで来ればしようがないけれども、現行法ではしようがない。こういうことを言つておる。こういうことでは正しい政治は行われぬ、こう思うのでありますから、これはここだけでなく、政府当局においても十分に御検討を願いたいと思うのであります。  それからもう一つついでに、先刻佐々木君が言われました石川県か福井県、あの橋をこわしたという問題でありますが、こういうことはまことにゆゆしき問題であります。これは理事会等において当委員会ではこれをどう処理するかという問題、あるいは国会としてもこれに対して何らか手を打つかどうかということは、委員長においてしかるべく、これは理事等にお諮りなつて善処されることを希望申し上げまして私の質問を終ります。
  52. 天野久

    天野(久)委員長代理 ただいま淺利委員からの発言によりましても、橋の墜落調査の問題は、理事会を開いて諮りたいと思いますから、どうか御了承を願いたいと思います。ほかに御意見ありませんか。——それではこの程度で散会いたします。     午後一時十六分散会