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1950-10-19 第8回国会 衆議院 建設委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月十九日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長代理理事 田中 角榮君    理事 内海 安吉君 理事 鈴木 仙八君    理事 天野  久君 理事 前田榮之助君       逢澤  寛君    淺利 三朗君       今村 忠助君    瀬戸山三男君       内藤  隆君    西村 英一君       三池  信君    中島 茂喜君       増田 連也君    佐々木更三君       池田 峯雄君    砂間 一良君  出席国務大臣         国 務 大 臣 周東 英雄君  委員外出席者         建 設 技 監 稲浦 鹿藏君         建設事務官         (大臣官房会計         課長)     植田 俊雄君         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         建設事務官         (河川局防災課         長)      賀屋 茂一君         建設事務官         (都市局長)  八嶋 三郎君         建設事務官         (住宅局住宅企         画課長)    鬼丸 勝之君         建 設 技 官         (河川局長)  目黒 清雄君         経済安定事務官         (建設交通局公         共事業課長)  中尾 博之君         專  門  員 西畑 正倫君         專  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  ジェーン及びキジア台風関係派遣委員調査報  告に関する件  国土総合開発に関する件  災害復旧に関する件     ―――――――――――――
  2. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 昨日に引続き、これより会議を開きます。委員長が不在のため、私が暫時かわつて委員長の職を行います。  ジエーン及びキジア台風関係派遣委員調査報告に関する件を議題といたします。この際まずキジア台風関係報告を聽取いたします。派遣委員中島茂喜君。
  3. 中島茂喜

    中島(茂)委員 昭和二十五年九月十五日に衆議院規則第五十五條により、議長承認を得まして、キジア台風による災害状況並びにこれが復旧対策調査のため、内藤委員瀬戸山委員並びに、不省、中島現地に派遣され、九月二十六日より十日間にわたり、福岡熊本鹿兒島宮崎大分の各県をつぶさに調査して参りましたので、ここにその概要簡單に御報告申し上げます。  まず気象の概要について申し上げます。昭和二十五年九月四日、マリアナ諸島のサイパン島付近に発生いたしました熱帯性気圧は北西に進み、同月七日、台風に発達するに至り、キジアと命名されたのであります。その後北西進を続け、十一日朝、室戸岬の南方五百キロの洋上に達し、中心気圧九百四十五ミリバール、中心付近風速五十メートルとなり、進路を西北西に転じ、十三日十三時ごろ鹿兒島県志布志付近に上陸いたし、中心示度九百六十ミリバール、中心付近風速三十メートル以上をもつて都城市を通過九州縱断北上して、十四日朝、日本海に出、裏日本沿岸を北々東に進行いたし、十五日には北海道の北部を通過してオホーツク海に去つたのであります。  次に被害の概況について申し上げますと、本台風通過によりまして、九州四国、中国及び和歌山北海道の諸地方に甚大なる災害を発生いたし、土木関係復旧工費のみにても、優に百七十億円を越えるに至つたのであります。ことに今回の台風風速等関係により高潮を生じましたため、海岸施設は特にその被害がはなはだしかつたのであります。われわれの視察いたしました熊本鹿兒島福岡大分及び宮崎諸県の災害状況を各県別に御報告申し上げますと、まづ熊本県におきましては、九月十三日十六時には、台風球磨地方に達し、十九時熊本市の東方、阿蘇の西方を風速三十メートル、時速十五キロで通過いたしましたため、十六時ごろより大暴風となり、山間部においては、降雨量三百五十ミリないし三百八十ミリ、平地部においては百ミリないし二百ミリの豪雨を伴い、強雨による高潮と相まつて、土木関係被害のみにても十億円に達し、農林、水産及び建築物等その他の被害を合計しますと四十六億円を越える状況であります。ことに馬見原におきましては、五百四十五ミリ、宮地におきましては五百三十ミリの連続雨量によりまして、阿蘇谷の崩壞三百箇所、十五万立方メートルの土砂の堆積を見るに至つたのであります。その他、交通杜絶道路は二十八路線橋梁流失十三に及んでいるのでありますが、球磨川上流人吉方面及び海岸地帶におきましては、大潮と台風とが合致しましたるため、被害は特に著しく、破堤には至らないまでも、法面決壞及び海岸道路決壞箇所はおびただしい数に達しておるのであります。河川におきましては、球磨川佐敷川等、破堤による被害が多いのでありますが、県当局におきましては、とりあえず一億円の応急費を立てかえ、重要箇所応急復旧施行いたしておるのであります。地元における要望といたしましては、海岸堤防は一度破堤いたしますと、その復旧はきわめて困難なるため、急速に恒久的対策の講ぜられることを望んでいるのであります。また球磨川下流八代附近におきましては、直轄河川改修遅々として進まぬため、年々被害をこうむつておるのでありまして、これが早急なる改修要望いたしておるのであります。  次に鹿児島県につきましては、本台風は十三日午前七時三十分には種子島中部に迫り、中心示度九百七十ミリバール、毎時十キロをもつて北上し、十二時ころ大隅半島、内の浦に上陸、中心示度九百七十ミリバール、時速二十キロ、中心附近最大風速三十三メートルをもつて志布志都城を経て北上したのであります。このため降雨は十二、十三日の両日にわたり、特に大隅半島南部より霧島山脈附近にかけましてははなはだしく、三百七十ミリを示し、その他の地方におきましても百五十ミリないし二百五十ミリの降雨をみたのであります。しかして土木施設被害は十億円、そのうち国庫負担関係は七億円でありますが、さらに一般被害を加えますと、約五十三億円の多きに達しておるのであります。ことに被害のはなはだしかつた地方は、川内川上流地区志布志附近でありまして、昨年の台風による災害復旧箇所で、さらに再び被害をこうむつ箇所相当数に達しておりますことは注目を要することと思われるのであります。河川災害の多いのは川内川天降川等でありますが、本県におきましても、福山町の海岸道路を始め、鹿児島湾沿岸道路等海岸関係被害は甚大なるものがあります。本県要望中、特に重要なる問題は、本県は、その地質が水に軟弱なるシラスより成つておりますため、降雨による災害がことにはなはだしく、シラス状地質に対する根本的対策が特に要望されているのであります。  次に宮崎県でありますが、十三日、大隅半島に上陸いたしました本台風は次第に北上いたし、都城附近を経て宮崎側沿いを北上いたしたのであります。このため十二日よりは豪雨に見舞われ、次第に暴風雨となり、県中部山地連続雨量六百ミリを越え、その他の地域もほとんど二百ミリ以上の降雨量を示しております。一方、風速も二十メートルに及び、瞬間風速は都井岬四十八メートル、宮崎三十三・二メートル、油津三十六・五メートルに達したのでありまして、強風気圧の低下による海面の上昇は、本県南部においては激浪となり、海岸地帶に甚大なる被害を惹起したのであります。  本県土木被害は十七億五千万円でありますが、その他、一般被害を合せますと、六十五億円に及ぶものと推定されるのであります。  河川関係災害といたしましては、都城附近及び宮崎市以北が甚大でありまして、五ケ瀬川、小丸川、一ツ瀬川、大淀川、及び川内川上流出水ははなはだしく、その多くは計画洪水位を突破いたしたのでありますが、一万、本県木橋の多い関係もあり、主要路線長大橋梁流失による損失もまた甚大なるものがあるのであります。  なお綾町附近の綾南川、綾北川は流木の影響を受け、被害を倍加いたし、延岡市も五ケ瀬川決壞によりまして、市の大半浸水を見たのであります。  本県台風進路にあたり、年々災害を受けている状況でありまして、今回のキジア台風による被害も最も激甚であります。  本県における要望事項といたしましては、第一に、都城盆地は耕地も広汎でありますが、大淀川下流狭窄部があり、排水の不十分なるに加えて、日発轟ダムにより排水をさらに悪化し、本年の出水によりましても、氾濫冠水による農作物の被害は大なるものがあるのでありまして、これが急速なる解決方法要望する声が大きいのであります。  第二には、本県中、鹿児島県寄りの地域シラス地帶をなしておりまして、鹿児島県同様、これが根本的な対策要望いたしております。  また本県河川改修工事は、比較的遅延いたし、しかも年々台風洪水に悩まされる関係上、河川工事促進に対しては県民は特に熱心であります。  次に福岡県について申し上げますと、本県におきましては、台風中心が、ほとんど県中央部を縱走いたしましたため、その被害は全県下にわたつております。たまたま年間高潮期に遭遇いたしましたため、海岸線被害は甚大で、特に周防灘沿岸海岸堤防はずたずたに寸断せられ、数十箇所決壞箇所より海水は流入して、耕地、家屋、漁舟、漁網等を無惨にも流失損傷せしめたのであります。  土木災害は、海岸堤防決壞箇所百八十六箇所河川六百九十九箇所道路三百二十八箇所に達し、被害額は約十六億二千万円でありまして、その他、一般災害を累計いたしますと、約四十七億円に達しておるのであります。  災害は特に周防灘沿岸が激甚でありまして、潮高五・五メートル、波高二メートルの激浪雷音を立てて護岸に激突し、僅々三時間にして、えんえん数十キロに及ぶ海岸堤防随所に寸断して、耕地約四千町歩にわたり塩水の被害を及ぼしたのであります。特に行橋町、苅田町、小波瀬村一帶の厖大なる干拓地帶は一面に低地でありますため、海水は一面に浸水し、田畑余町歩の收穫皆無が予想せられ、惨状まさに目をおおうものがあるのであります。  本県における要望事項のおもなるものは次の通りであります。  すなわちキジア台風の例に徴しますると、海岸堤防は約一メートルないし二メートル蒿上げ補強する必要があり、従つて、その復旧工事にあたつては原形復旧のみにとらわれず、十分今回程度の波浪に対抗し得るよう、強固なる構造復旧したいと申しておるのであります。  また明治以前に築造した堤防でも、防災工事等により修繕を怠らなかつた堤防は破壞を免れているのにかんがみ、今後とも海岸堤防改修費、あるいは維持費の増加を熱望いたしております。  また本県悩みの種である戰時中の強行採炭に基く鉱害地復旧工事は、さきの第七回国会において特別鉱害臨時措置法は制定されたが、これが認定事務等は極度に遅延いたし、復旧工事はさらに進捗せず、逆に降雨ごと炭鉱地における河川道路耕地等沈下し、その被害を累増しておりますので、これが復旧工事の実際的促進方要望しています。  なおこの鉱害地を流下する西川の改修工事促進もあわせて要望しているのであります。  次に災害に関連しまして、口の原橋浦島橋室見橋大川橋等早期架設が切望されております。すなわち浦島橋、口の原橋は戰時中架設した木橋の仮橋のまま放置せられ、現在重量制限をしながら一日数百台の車馬を交通せしめております。室見橋幅員狭小にして、福岡縱貫路線中の隘路となり、また大川橋昭和二十二年以来の懸案事項であります。  最後に大分県につきましては、台風は県の南部より日田地方を経まして玄海灘へ拔けましたため、烈風豪雨が襲来いたし、一方地盤は再三の豪雨のため軟弱化しておりましたため、甚大なる災害を全県下に惹起したのであります。  降雨量出水量は五十年来の記録を示し、県下における最大連続雨量は五百五十ミリに達したのであります。また烈風のため、海岸線高潮津浪を誘致し、堤防護岸決壞続出いたし、海水により数百町歩水田は收穫皆無となつたのであります。しかして、土木被害は約二十億円でありまして、その他の被害総額は約五十四億円であります。番匠川、大野川、大分川、玖珠川等も四百ないし五百ミリの豪雨のため随所に破堤を生じ、また高潮津浪のため、別府湾杵築湾等の凹状になつ部分は破堤決壞を生じ、特に杵築町は町の過半数が浸水するの惨状を呈したのであります。別府市の海岸道路も約二キロにわたり、コンクリート護岸及び、鋪装がほとんど決壞いたしており、宇佐郡、下毛郡一帶の干拓地域堤防決壞のため、数百町歩水田がときならぬ黄金色を呈しておるのであります。  県民要望といたしましては、福岡県同様、海岸堤防復旧にあたつては原形にとらわれることなく、民心を安定せしめ得る強固なる構造を切望いたしております。  また今回は、水防に対しては、十分に人力の限りを盡した結果の破堤でありまして、これ以上は河川改修工事、植林、ダム等の根本問題の解決に努力いたしたいと申しているのであります。次に、視察日数制限により、現地視察は行い得なかつたものの、なお相当被害を蒙つております佐賀山口愛媛の各県の災害概要簡單に御報告申し上げます。  まず佐賀県につきましては、土木施設被害、約八億七千万円余、その他一般被害を合せますと、二十二億円余に達しております。ことに被害の大なる河川といたしましては、玉島川、城原川があげられるのでありますが、一方築後川を初め有明海に注ぐ各河川川口部における増水期年間高潮期とがたまたま一致しましたため、有明海海岸堤防もまた甚大なる被害をこうむつております。  次に山口県につきましては、本県におきましてはキジア台風通過後、これに引続いて十六、十七日の両日にわたり、さらに低気圧による豪雨に見舞われましたため、その被害も甚大でありまして、土木施設被害額のみにても四十億円余、一般被害を合計いたしますと、実に百二十一億円余に達する被害をこうむつておるのであります。河川関係災害といたしましては、錦川、宇佐川、島田川、佐波川等県東部より中部にかけての各河川がそのおもなるものであります。また本県におきましても、台風時と満潮時とが遭遇いたしましたるため、岩国附近を初めといたしまして、徳山、防府附近下関附近海岸堤防並びに海岸道路もまた甚大なる被害をこうむつております。  次に愛媛県についてでありますが、本県におきましては、南海地震による地盤沈下影響の最もはなはだしい新居郡、越智郡一帶にわたりまして、本台風による高潮に遭遇いたしましたため、甚大なる災害をこうむつたのであります。また河川関係災害といたしましては、金生川、銅山川、加茂川等県東部における河川による被害がおもなるものでありますが、重信川、肱川等県中部西部における河川もまたそのほとんどが警戒水位を突破しております。しかして本県における土木関係被害額は二十五億五千万円余でありまして、さらにその他の一般被害をも合計いたしますと、五十六億円余に達する災害をこうむつておるのであります。  以上現地災害状況につき、その概要を御報告申し上げたのでありますが、次に、調査団としてのこれらの災害に対する所見を申し上げます。  その第一は、災害復旧工事促進と、復旧費支出促進の点であります。これは国土復旧に関心を有するほとんど全国民の声と申しましても、過言ではありますまい。終戰後台風豪雨は激増の傾向があり、宮崎県の実例によりましても、日雨量百ミリ以上の豪雨回数は、昭和二十二年度四回、二十四年度は実に八回、本年度に入りましてもすでに六回に達し、さらに豪雨量記録におきましても、日雨量五百八十七ミリに及んでいるのであります。従いまして、災害は頻発いたし、政府及び地方公共団体の懸命の努力にもかかわらず、二十三年度及び二十四年度災害復旧工事遅々として進捗せず、その五〇%以上は災害発生以来荒廃のままに放置されているのであります。しかして災害はさらに増派して、災害災害を生むの現象を生じ、既成田荒廃のまま收穫皆無の状態になつている場所が、各処に散在していると称されてをります。災害復旧国庫補助額をさらに増加して、少くとも復旧工事を、二箇年間程度にて完了したいというのが災害民一同の声であります。特に今回は、海岸堤防一般河川と異なりまして、決壞箇所より毎日二回、満潮時には海水が浸入いたしますので、決壞箇所応急締切り工事は一日を争う絶対的の急務でありまして、地方公共団体はあらゆる手段を講じて、数日間に締切り工事のみは完成いたしておるのであります。従いまして、国庫補助費の一日も早からんことを鶴首しております。また本年四月の融雪災害等に対し、本年度予備費より、国庫補助額支出がようやく先月決定せられたるがごときは、いかに政府が弁明せられても、国民一般のとうてい理解し得ざるところであります。  第二は、今回のキジア台風を契機として、海岸堤防復旧費及び維持改修費を増額していたたきたいというのであります。元来、わが国は地域狭小にして、山地多く、耕地はわずかに河川沿岸海岸一帶に散在しているにすぎません。しかもその中でも祖先以来数百年来の干拓工事によりて造成せられた地域が、收穫最も豊沃な地域でありますが、これらの大半は、満身創痍と称してもさしつかえのない、老朽せる海岸堤防によりて海面より防護されているのであります。これらの堤防が一度破堤すれば、海水は毎日二回ずつ浸入し、数百町歩の美田が一朝にして不毛化するのは自明の理であります。また海水にさらされた田畑は、数年間、收穫困難と称しております。海岸堤防改修費が本年度より河川予算費目に計上せられるに至つたのは慶賀すべきことではありますが、その額が僅々三億ではいかほどの期待もかけられません。従いまして二十六年度よりは相当工事量を期待できるよう、増額いたすべきであります。  第三には、海岸堤防災害復旧にあたつては原形復旧に拘泥せず、相当に強化すべきであるという点であります。一般海岸堤防は数十年、はなはだしきは数百年来の遺物に属するもの多く、これを今回の潮位に対照してみまするに、高さのみでも一メートルないし二メートル高上せしめる必要があり、その復旧費原形復旧費をはるかに超過する場合多く、在来の観念のごとく原形復旧のみにとらわれる場合は、とうてい民心を安定せしめ生産の復興に邁進せしめることはでき得ないと思われるのであります。また災害箇所のみを復旧いたしましても、残存部分もあわせて補強いたさなければ、再度災害の原因となりやすく、従いまして相当量改修工事はあわせて実施いたさなければならないと思うのであります。  以上をもちまして今回の報告を終る次第でありますが、ただいま申しました三点に対し、当局の責任ある答弁を求めたいと存ずるのであります。
  4. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 以上の報告に対する政府側の意見はあとまわしにいたしまして、引続きジエーン台風関係報告を求めます。派遣委員瀬戸山三男君。
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 昭和二十五年九月十二日、衆議院規則第五十五條により、議長承認を得まして、ジエーン台風による災害状況並びにこれが復旧対策調査のため、藥師神委員長並びに不肖瀬戸山現地に派遣され、九月十六日より七日間にわたり、大阪和歌山兵庫徳島等の各府県を調査して参りましたので、ここにその概要を御報告申し上げます。  ジエーン台風は九月三日午前四国東部をかすめ、正午には紀淡海峡を通つて大阪湾にかかり、十三時神戸附近に上陸いたしました。当時の気圧は九百六十ミリバール、中心附近最大風速は毎秒四十メートルで、昭和九年の室戸台風に比すれば、その強度はやや劣つていますが、進行速度が遅かつたために、強風の持続時間が長く、かつ大阪湾通過のときが満朝時にほぼ一致いたしましたため、海岸堤防を破壞し低地浸水し、人口稠密なる阪神地方に甚大なる損害を與えたものであります。  次に視察の順に従いまして、主要なる土木災害につき述べ、後に一括して建築災害について述べることにいたします。土木被害の額は大阪府の八十二億円を筆頭に、徳島県は二十二億円、兵庫県は十一億五千万円と見積られ、被害を受けた二十一府県の合計は百六十億円に達しております。これを種類別に見ますると、河川関係百八億円、海岸堤防が三十一億四千万円、道路が十五億六千万円、橋梁が六億四千万円、砂防が五億円となつております。  まず大阪市につきましては、台風に伴う高潮のため海岸堤防並びに入海の堤防を溢流いたしまして、また船舶の激突によつて破堤し、西部一帶の六十平方キロメートル、全市の約三分の一に浸水をみました。高潮防禦対策等につきましては、低地区を区分して高潮堤をめぐらす方法と、全体の地盤を地上げする方法とが行われておりますが、これらを完全に施行した区域は今回の災害を免がれております。しかし何分にも完全なる施行には多大の経費を要するため、一部は臨時的な施設をもつて施行中、これも未完成のうちに今回の災害をこうむつたものであります。従つて府、市当局におきましては、恒久防潮堤の急速な施行要望しており、かつ今回の災害にかんがみ、堤の高さも従来のOP、四メートルから四・五メートルに引上げることを希望しております。かかる重工業地帶災害から守り、人心を安定させることは、国家的見地からも重要なことで国家財政の許す限りできるだけ完全なる施行をいたし、援助すべきものと考えます。ただし防潮堤施行地盤の地上げとは相互の関連において十分利害得失地区的に勘案し、かつこれに要する土砂は港湾内の浚渫土をもつてする等、技術的な計画を十分に練つて各種土木工事の緊密な連繋のもとに、最小の費用で最大の効果を発揮するようなくふうをしなければ、この大事業を早急に完成することは至難であろうと思われるのであります。このほか低地区内における避難道路兼用横断堤建設道路河川復旧卸売市場防禦のための防潮堤築造等に関しても要望がありました。  次に堺市におきましては、南部防潮堤完成した区域は、今回の災害を免れたのでありますが、西北部防潮堤完成箇所から浸水いたしました。従つてこの防潮堤の早急なる完成及び低地区に対する排水施設及び樋門完成要望されております。  次に和歌山県について申し上げます。本県においては台風に伴う豪雨により河川が増水し、橋梁道路等被害を及ぼしたのがおもでありますが、海岸地帶には一部高潮被害も見られております。和歌山市を貫流する和歌山川及びその左支川和田川高潮により堤防を溢流いたしまして、本川は中小河川改修工事として、堤防嵩上げ施行要望しております。海南市の海岸昭和二十一年十二月の南海地震以来地盤沈下を続けておるため、防潮堤の高さが満潮面上より五十センチの余裕しかなくなり、今次の高潮で市街地に溢水を見ております。本堤防高潮防禦対策の一環として、嵩上げを要するものと認められるのであります。  次に阪神間諸都市状況について申し上げます。現在阪神間に続く防潮堤の高さは、尼崎においてOP三メートル、一部四メートルもあります。鳴尾村四メートル、これは一部六・五メートルもあります。西宮市五メートル、蘆屋市五メートル、本庄村は無堤であります。今回の高潮尼崎において四メートルになつ箇所溢流破堤上浸水を見ております。特に尼崎市の被害は著しく、潮位昭和九年より若干低かつたにもかかわらず、浸水面積がかえつて増加いたしましたのは、地盤沈下の結果であると認められるのであります。これが対策としましては、完全防潮堤が最も強く要望されていますが、外海に面する堤防は高さOP五・五メートルとし、上端に波返しとして一メートルの胸壁をつけたもののみが今回の高潮を防ぎ得ている点から見まして、相当に広範囲にわたつて嵩上げを要すると思われるのであります。この地帶も重要なる工業地帶であり、完全防潮堤完成には国庫からできる限りの支援をすべきであります。また今回の災害海岸堤防よりむしろ入海の河川堤防の溢流によるものが多い点にかんがみ、その堤防を強化するとともに、要所に逆水防止の樋門を設け、また停電時も使用できるデイーゼル・エンジンのポンプを増設する等、実際的な措置が必要と認められます。  次に淡路島について申し上げます。本島は海岸から山岳が屹立して、海岸沿いに部落があり、それをつなぐ道路が唯一の交通路となつております。これが今回の高潮及び波浪によりまして甚大な被害をこうむつたのであります。対策としましては地形上道路のつけかえが困難であるので、上部舗裝並びに漂砂防止等の措置を講ずべきであります。なお明石海峡の浸蝕作用に対しましては、十分なる調査を行つて根本的な対策を立てる必要があるものと認められます。  次に徳島県について申し上げます。本県被害区域は吉野川流域と海岸一帶であります。特に川内村、鳴戸村、多家良村寺の海岸堤防は、背後に数千町歩田畑を有しておりますが、今次の台風に基く高潮によりまして破堤し、また破堤寸前の状況にある箇所も少くありません。原因としましては、地盤沈下も考えられますが、土取りの関係上砂質土で築堤されているため、波浪の洗掘によるものが多いと認められます。この地方は波浪が高いので堤防天端を七メートル五十とするとともに、波浪の洗掘を防止するため上部並びに背部に水たたきとしてコンクリートをおおう必要があります。また基礎が砂質でありますので、漂砂を防止するため、砂どめ突堤を増設することも有効であると認められます。  次に香川県について申し上げます。本県地盤沈下対策工事が約五〇%進捗し、特に危險箇所堤防かさ上げ工事がほぼ完了していましたので、キジアジエーン台風に対しましても比較的損害が少かつたことに対し、地方民は深く感謝しておりました。従つて災害復旧と並行して引続き第四次の地盤沈下対策工事促進するよう、強い要望があつたのであります。  次に建築物の被害に関し一括して申し上げます。被害の大きかつた理由としては、強風の継続時間が比較的長かつたこと、戰争以来家屋の補修が怠られて、耐用年限に達した建物が少くなかつたこと、及び終戰前後に建てられた建物は極度に質を落していたことなどが数えられております。工場その他の工作物の被害も少くありませんが、最も緊急な対策を要する住宅に関して数字的に説明いたしますと、全壞または流失したものが一万八千余戸、半壞したもの八万一千戸、中破十三万戸、小破二十六万戸、被害総額は百八十二億九千五百万円に達しております。但しこのうち公営住宅の被害は全壞または流失が六百三十四戸、半壞が八千二百五十七戸、その他中破、小破を合せて、損害額は七億五千四百万円と見積られております。  被害の最もはなはだしかつたのは、大阪和歌山兵庫府県で、特に大阪市や尼崎市の海岸地帶では高潮による浸水、または流失により甚大なる損害を受けております。これに対しては、とりあえず災害救助法に基く応旧收容施設建設されておりますが、これは将来公営住宅等に切りかえられねばならないものであります。一般民衆の再建または大規模の補修に対しては、低利資金の貸付が要望されておりますが、これは一部住宅金融公庫よりの融資を充てるとともに、この條件に適合しないものに対しましては、昭和二十三年の福井震災のときと同様に、預金部資金融通の措置を講ずることが有効ではないかと考えられます。罹災した公営住宅の復旧は当然早急に行われなければなりませんが、なお民間貸家の復旧は著しく困難な状況にありますので、被害のはなはだしかつた地区には、さらに若干の公営住宅を増設して、罹災者を收容する必要があると認められます。大阪尼崎等低濕地において高潮被害をこうむつたところでは、地上八尺にも達する浸水のため、木造平屋の住宅では天井へはい上つて妻壁を破つて脱出したような状態でありました。かかる低濕地帶に対しては、前に述べました通り、防潮堤の完備がぜひ必要でありますが、さらに万一の場合に備えて復旧住宅の一部は鉄筋コンクリート四階建のアパートとすることが適当と考えられます。但し罹災者の中には現在の鉄筋アパートの家賃千円余りを負担し得ない階層も若干含まれており、これに対しましては別途家賃補助を行うか、あるいは建設費に対してさらに高率な国庫補助を行うなど、特別な配慮が必要であると考えられます。  以上現地災害状況について概要を御報告いたしましたが、次に調査団としてのこれら災害に対する所見を申し上げます。  第一に、高潮防禦対策は徹底して行わねばならぬという点であります。今次の災害にかんがみまして、海岸堤防などは單なる原形復旧では間に合わない部分が多々あるのであります。しかし国家的に重要な工業地帶を守り、再びかかる災害を繰返さないためには、地元の要望するごとき完全なる恒久防潮堤の築造に対し、国費の許す限り強力に援助すべきものと考えます。  第二は、前項と関連いたしまして、非常時における電源施設確保の問題であります。これに対しましてはディーゼル機関を増設するとか、あるいは電源よりの変圧器、送電線の強化等の特別の措置を講ずる必要があるものと考えられます。これに対しては相当の経費を要すると思いますが、この点まで徹底しないと、非常時に対応すべき排水機などが非常時に使用不能となつた例は枚挙にいとまありません。  次に大阪市を中心とする罹災地の住宅対策に関して二、三の所見を申し上げます。その一は災害救助法に基く応急收容施設は可及的少数にとどめ、むしろ公営住宅の建設促進すべきではないかという点であります。応急收容施設は一戸当り五坪程度の長屋建で、これを大阪市においては三千戸もつくる計画だそうでありますが、かかる施設は長期の居住には不適当で、将来スラムとなるおそれが十分にあります。従つてかかる施設は必要最小限の数にとどめ、むしろ一定の基準に従つた恒久性ある公営住宅を早急に建設することの方が国家経済の上からも有利であると考えられます。  その二は低地区に建設する公営住宅は、なるべく鉄筋コンクリート四階建程度のアパートにして不時の災害に備えるべきではないかという点であります。もちろんかかる地区に対しては防潮堤や避難道路施設も行わなければなりませんが、非常災害の場合に備えて少くとも一街区に一、二棟の恒久建設物を有することは、附近住民の避難にも役立ち、その安全感を強める効果は大であると考えられます。  その三は生活困窮者に対する住宅対策に関する問題であります。罹災者のうち若干の者は生活困窮者であり従つて上述のごとき公営住宅が供給された場合も家賃を支拂い得ない者若干を生ずることが考えられます。これに対しましては家賃補助の方法によるか、あるいは建設費に対してさらに高率の国庫補助を行つて家賃を引下げるか、何らか特別の措置を講じなければならぬものと考えます。その四は対策の急速実施に関する問題であります。寒冷の冬を間近かに控えておる現在、いたずらに審議に手間取つて、実際の住宅建設が一向に進捗しないというようなことがあつてはまことに遺憾であります。県や市の住宅対策が進まないのは、国の補助が確定しないことに大きな原因があると聞いております。災害予備費などから支出すべき分は急速にこれを決定し、対策促進に万全を期すべきであります。  以上をもつて今回の災害視察報告を終りますが、さきに述べました諸点については、政府当局より責任ある答弁を求めたいと存じます。
  6. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 以上報告二件につきまして、建設省側より技監稲浦鹿藏君、河川局次長伊藤大三君、河川局防災課賀屋茂一君、住宅局住宅企画課長鬼丸勝之君以上四君が出席せられております。ので、これについて政府の意見を聽取するとともに、今次災害に対する政府の予算的措置、なかんずく予備費等について意見を求めます。河川局次長伊藤大三君。
  7. 伊藤大三

    ○伊藤説明員 ただいま瀬戸山議員並びに中島議員からジエーン台風キジア台風被害報告を詳細に拝聽いたしたのでございますが、お話の通り、ジエーンキジア台風被害はきわめて甚大でございまして、各県の報告に基きましても、先ほど御報告がありましたように、大体私の方の河川関係におきましては三百三十億余円に上る被害なつておるのでございます。今回のジエーン台風が起りますと、御承知の通りすぐ内閣におきましても災害対策委員会をつくられまして、早急にこの対策に臨まれたわけであります。続いてキジア台風も起り、その被害額の甚大にかんがみまして、使い残りの五十億の予備費ではどうにもならないというところから、さらに補正予算の問題まで進みまして、いろいろ審議の末、先般閣議におきましても災害復旧費といたしましてなお四十一億円ほどの予算を盛るということに決定を見たわけであります。従つてこの補正予算の問題は関係筋との交渉もありますので、現在におきましてはこの方面につきまして、政府において盛んに折衝をいたされておるわけであります。この折衝の経過におきまして、もしこの補正の問題が認められるとなりますならば、さしずめすぐ五十億の予備費から災害復旧キジアジエーンに対してすぐさま手当をいたしたい、こう存じておるわけであります。河川局といたしまして、すでにジェーン台風につきましては査定を終りまして、その結果を向うの方にも要求いたしております。キジアにつきましては、目下査定を晝夜兼行で急がしておるのでありまして、現地の査定の終りまするのは、今月一ぱいで必ず終了する、こう思つておるのであります。次に、ただ今回の災害におきましては、河川道路のみならず、海岸堤防災害が非常に大きいのでありまして、これが今回の災害における特異なものということもできるかと思います。従つて従来の復旧程度におきましては、将来の問題といたしまして、気がかりなものが非常に多いことは先ほども視察の方々からお述べになつた通りであります。従つて当方といたしましては海岸堤防の問題につきましては、單なる復旧のみならず、高潮に対する根本的な対策、改良面も加えた対策を今回においては十分考慮して行きたい、こういう気持のもとに、ジエーン台風につきましては、すでにその方針を決定いたしまして、できれば今後補正予算に、また二十六年度の予算にも相当計上して行きたいというので、この折衝も今進めておるわけであります。またキジア台風につきましても、調査完了次第計画を立てまして、これも一緒に進めて参りたいと存じております。なお河川につきましても、相当被害甚大な河川につきましては、復旧のみならず、災害助成費についても十分来年度予算において考慮していただきたいというので折衝中でございます。なお海岸堤防の問題につきましては、先ほど中島委員からもお話がございましたように、本年度において初めて予算の費目を出すわけでございまするが、国費としてわずか一億五千万円程度でございまするので、これでは全国の危險な堤防の補強ということもなかなか困難であるというので、来年度予算につきましてはこれも相当増額するような方針のもとに、せつかく政府においてもこの点を考慮していただいておるような実情でございます。
  8. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 住宅関係についてお答えいたします。ジエーン台風並びにキジア台風関係の住宅の被害は、それぞれ御説明のございましたように、相当甚大でございまして、住宅局といたしましては、被害状況を正確につかみますとともに、これが対策を急速に立てることに努力いたしまして、ただいまそれぞれ予算案を編成いたしまして、すでに要求中でございます。第一に御意見がございましたように、救助法による応急收容施設はなるべく最小限度にとどめて、公営のいわゆる災害応急住宅をできるだけ多数建てることが望ましい次第でございまして、この点につきましては、ジエーン台風関係で六千戸、キジア台風関係で四百四十戸の災害応急住宅の新設を要求いたしておる次第でございます。この災害応急住宅はすでに御承知と思いまするが、応急住宅とは申しましても、最近はよほど質的には改良されまして、いわば普通の公営住宅と違いまするところは、規模が小さいというわけでありますが、都民住宅の規模を小さくした程度でございまするので、ことに今回のジエーンキジア台風に伴う応急住宅は規模も従来よりやや広げまして、單価も上げて、一層質のいいものにいたしたいと考えております。すらわち一戸建九坪、單価一万八千円程度のものを要求いたしておるのでございます。  次に大阪のような被害のひどい、ことに低地区におきまして、なるべく恒久性のあるコンクリート・アパートのようなものを建設することが望ましいという御意見でございますが、この点もまつたく御同感でございまして、できるだけそのように今後計画し、指導して参りたいと思つております。ただ御承知のように、鉄筋コンクリート造は工期が相当長くかかるので、急速に間に合わせるというわけに参りませんので、一部は木造をもつてしなければならないと考えられます。しかしその場合も、木造の災害応急住宅は、なるべく罹災地のうちでも安全な場所に持つて行きまして、たとえば防潮堤のできておるところとか、あるいは土木のできておるところに木造の住宅を建てる。さらに鉄筋コンクリートの庶民住宅は、御案内のように、災害の生じやすい低地区にこれを建設するように考えて参りたいと存じておる次第であります。  次に生活困窮者、ことに災害を受けました者のうちには、相当所得の低い、生活に困難な人も多いのでございますので、これらの人々を入れる住宅につきましては、厚生省方面ともいろいろ打合せておるのでございますが、家賃補助につきましては、厚生省方面において考究していただくことになつておりまして、建設省といたしましては、現在の庶民住宅のうちでやや規模の小さい、しかし質の点では現在の庶民住宅に劣らないものを、来年度から具体的に建設するように計画して参りたいと思つております。  なお御参考に申し上げますと、現在また今後計画されておりまする災害応急住宅につきましては、四分の三の国庫補助がございますので、家賃は普通の庶民住宅に比べまして非常に安くなつておりまして、大体三百円程度で入居できる見込みでございます。
  9. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 以上の政府側の説明に対して質疑を行います。今村忠助君。
  10. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 ちよつと災害復旧に関してお尋ねしておきたいのでありますが、国直接のものと、県においてやるものとありますが、この技術的の監督はどういう方法をもつてされておるかということであります。実は災害対策委員会の松井委員長以下、長野県の天竜川流域における災害復旧状況を見られて、御承知の通り、松井氏は職業的にも土木の経験者であります。つまり計画書と実情とを照し合せてみたところ、まつたく計画書通りでない。委員長として視察した際直接それを見て、これを指摘して、これはこのまま完成したのでは、つまり請負者側において指図書通りのことをしていないという結果になり、やり直せということをその場で命令するわけに行かぬから、一応注意した。わざわざ私の家まで尋ねてくださつて、天竜川流域における復旧状況は、かくのごときものであるから、建設委員会もしつかりしなければまた流すことになる。こういう好意ある連絡をしてくれたのです。建設省の方にもこのことは申し出るからということでありましたが、今各地にある災害復旧工事、これを一体建設省は技術的にどう監督するのか。過般私は河川局次長にもはつきり申し上げておいたのでありますけれども、今までのような堤防のつくり方、砂を盛つて豆板式のセメントでとめたという程度のものであれば、今後の災害にも必ず流すということを指摘して、技術的にこれが改善方を要望しておいたのでありますが、現在の復旧状況を見ておりますと、依然として旧態が改まつていない。しかも巷間伝えられるところによれば、災害復旧費の二割から三割までは政策費に使われると請負業者ははつきり豪話しておるような状態であります。これらに対して一体建設省においては技術的にどういう監督をしておるか、ひとつそれを御説明願いたい。
  11. 賀屋茂一

    賀屋説明員 災害復旧工事の監督でございますが、直轄工事は国で国の機関が一体でやつておりますので、別に監督は直接にはいたしておりません。  府県工事でございますが、これは国が補助をいたしておりますけれども、工事主体は府県でございますので、実は府県の監督にまかしておるわけでございます。しかし国といたしますと、災害査定ではつきりと設計はでき上つておるわけでありまして、その通りに実施さすのであります。たとえば災害復旧の設計通りできておらぬ面がありましたならば、これはその後に時々中間検査も国としてはいたしておりまして、設計通り行つておらぬものがありましたならば、手直しを命じておるわけであります。手直しを現在命じておるものもたくさんございます。しかしながら国の監督は工事を実施するときに終始ついているわけではございませんので、工事の内容にまでも実は触れかねるのであります。この点は府県の監督員の監督にも、実はわれわれは指導しまして、嚴重な監督をさしておるわけでございますが、もし府県の監督の方で不十分な点があると、工事のでき方が惡いのでありまして、これが表面に現われますと、完成したものでも、さらにわれわれの方で手直しを命じております。こういうように嚴格にはやつておるのでありますが、終始監督はつき切つておらぬのでありますから、国としては不十分な点があるかもしれませんが、この点は府県の監督員に責任を持たしておるわけであります。われわれの方では、完成したところはまとめてこれを見ておりまして、不充分なところは直さしております。だが戰前のごとく破壊検査までもして、工事が設計通りできておるかどうかというようなことは、戰争中から実施しておりません。しかし最近におきましては、ぼつぼつこれをやつてみねばいかぬということで、工事が不十分だということが外面から見えるようなものにつきましては、破壊検査までも実はぼつぼつやりまして、手直しを命じておる。こういうふうに戰前に比べますと相当嚴格にしております。それと終始ついておる県の監督員の方が工事不なれの人が多いのでありまして、これの技術上の指導を現在やつておるわけであります。
  12. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 大ざつぱなことはわかりましたけれども、私のお尋ねしておる点は、建設省においてはどういう機構というか、担当者がそれを担当しておるかということをもう一つ明らかにしてもらいたい。第二段には、河川局長に過般申しておいたのでありますが、従来通りの堤防をつくれば、似たり寄つたりの風水害があれば、再び流すのであるが、何か技術的にこれを改善する必要があると思うが、一体建設省においてはそれに努力しておるかということを申したのでありますが、その後具体的にこれら堤防改善の実際的努力はどういうふうになつておるかお聞きしたいと思います。すでに数箇月たつておるのでありますから、当然責任ある当局者として、そのくらいの処置をとつておらなければ、国会において、いろいろわれわれ要求したことが行政官庁に滲透しておらぬことになります。この責任を私は問いたいのであります。この二つの点をひとつ明らかにしてもらいたい。第一はどういう組織において工事監督というか、技術的な監督をしておるか。第二点は、過般私がこの席上ではつきり、従来の堤防では必ず流す、技術的に不完全であると指摘したのでありますが、これに対して当局としては具体的にいかなる処置を現在とりつつあるか、これをお尋ねするのであります。
  13. 賀屋茂一

    賀屋説明員 今お尋ねになりました第一の組織でございますが、さつき申しましたので大体おわかりかと思うのでありますが、これは国の方の監督は防災課の技官をもつて実は中間検査を実施いたしておるのであります。中間検査は御承知のように年に二回ないし三回という案を立てまして、竣工までには全箇所の竣工状態を見るという計画で実はやつておるわけでございますが、御承知のように災害が頻発しますし、そのために災害の検査の方に追われまして、実は中間の検査が手薄になつておる状況でございます。国の方の組織と申しますと、以上でございます。
  14. 伊藤大三

    ○伊藤説明員 この前のお話を聞きましたが、実は天龍のような荒川につきましては、従来のような堤防ということではなかなか持たないというお話でございました。それで実は天龍のような川におきましては、大体普通の堤防ではなしに、固い二重堤のような形をとつたものを設けまして、なるべく全部の水の当りの強い所につきまして十分なる堅固な工事をやるというふうな方法と、それから天龍のようなああいう荒川につきましては、まず上の砂防の問題というような問題から十分考えて行かなければならぬ。いろいろ総合的な考え方も入れてやつております。  それから荒川の場合につきましては、護岸の問題、水制の問題というようなものは、川の状況によりまして同じような川にしてもその彎曲の仕方とかいろいろな問題によりまして必ずしも同じものではない。従つて冨士川なら冨士川の問題についてはどういうふうな――透過水制がいいか非透過水制がいいかというような問題は常に研究いたしておるわけでございまして、決して研究を怠つておるわけではございません。ただ具体的な問題となりまして、天龍の問題につきまして、今のような土堤でいいかという点については十分今確信を持つておりません。そのために工事についてはかえつて堤防は石づくりの丈夫なものをつくつて水当りの強いのを防ぐ。しかしこれでは全部守り切れないからあるいはこれを二重堤防のようなものにして、そうして水の勢いを緩和するというような点についていろいろと考案もいたしておりますが、具体的の場所々々によつてでないとそれがわかりませんので、一概の方式では決定しかねる、こう存ずるわけであります。
  15. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 はなはだともに不十分なんです。第一は組織と申したのですけれども、どういう人たちで構成されて、技術者がどれくらいおるのか、それを聞きたかつたのです。第二段は私は天龍を一例にとつたのでありますが、ここの写真をごらんになればわかる通り、中国においてもまた四国においても同様であります。この堤防なら私はくずれると思います。技術的な面はわれわれしろうとが見たつてはなはだなつておりません。このくずれやすい堤防をくずれない堤防にするにはどういう努力をしているかということを聞いておるのです。常にやつておつてこの程度なら、あなた方は国費を濫費しておるのだということはこの前申したのであります。こんなのなら昔の通り石を入れてじやかごをつくつておく方がいいということを私ははつきり申しておきます。この点次の機会までに、建設省はひとつどのくらいの数字であるということを明らかにしてもらいたい。できなければできる人にかわつていただくよりほかにない。  この際委員長並びに委員諸君に申し上げたい。これは災害対策委員長の松井氏から非公式ではありますが、私に建設委員会へという意味で、今申した通り災害対策工事のあとを見ると、実に不完全であるということを指摘しておる。これに対してはひとつ建設委員会並びに災害対策委員会、決算委員会等において何か新たにかような地方事業に対して査察するというか、検査するという委員会のようなものをつくつたらどうかということを当時互いに語つたのでありますが、この点特に考えませんと、今後地方税法によつて地方のまかなう仕事が順次ふえると思います。それを実際見ますと、今言う通り相当の金額は使われておるが、完全なものはできておらぬという実情にあると思う。ことにこれは災害建設復旧関係に多いと思うのでございまして、われわれ建設委員会においてもこれが査察というか、国会として予算が技術的な面を含めてうまく行つておるやいなや、これを検討する必要があるような気がいたすのでありまして、適当な時期に懇談等において、これらについて御相談をいたしたいと思います。  以上希望を述べておきます。
  16. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 了承いたしました。
  17. 砂間一良

    ○砂間委員 ただいま今村委員の申されました技術的な監督が不十分であるということにつきましては私も同感であります。まつたく技術的な指導及び監督がなつていない。そのために莫大な国費が濫費されるというふうな実情は、單に天竜川ばかりではなしに、全国方々で見たり、また聞いたりするところであります。そこで私はこれらの不十分な原因が一つは技術者が少いということと、もう一つは技術者の質的低下ということにあるのではないかと思うのです。聞くところによりますと、一工事一技術者もいないというふうなのが最近の実情のようであります。これは政府が行政整理にかこつけてどんどん首切つて行つて、優秀な技術者を捨てておるということも一つの原因だと思いますが、さらに給料が安いために、正直に役人をやつていても食つて行けないというところから、技術者がほかの方へ逃げて行くということ、それからまたそこに就職しておりましても生活が非常に困難でやつて行けないものですから、勉強する機会がない。專門の技術書を購入して研究するような費用もない。たまたま講習なんかもやつておるようでありますが、まつたくお座なりでありまして、最近における技術者の質的低下ということが大きな原因をなしておる。全体として技術者が非常に少いということ、一工事を最後まで完成するに一人も技術者がいないというような現状で、りつぱな工事ができつこないと思うのです。この点について建設当局として、現状をもつて満足しておられるかどうか。これが不十分だとするならば、どういう対策を持つておられるかということを、私はこの機会にお聞きしたいと思うのです。
  18. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいまの今村委員の発言は天竜川の問題だつたのですが、しかしその問題はひとり天竜川に限らず、これは一例だという話があつた。そこで私は問題は根本にあると思うのです。工事がいいとか惡いとかということは、何によつて、どこから生ずるかという、その根本をたださなければならぬと思います。一体請負制度というものはどういうようなところからできて来ておるか。人間の知能において、安い單価をもつていい仕事がどうしてできるか、ここにすべてが出発すると思う。そこで私は第一の点は、受渡しをする場合にいかなる方法で受渡しをするかということに起因すると思う。かりに百万円の予算を持つておるものを、今の請負制度からいえば七十万円でできる。百万円で計画しているものを七十万円で請負わして、百万円の仕事ができるかできぬか。工事が惡いとかいいとか、あるいは災害をこうむつた場合に、災害に対する力があるかないかということは、そこから出発して来ると私は思う。そこで第一番に、技術者はむろん技術はあります。この技術をもつていたしまして、良心的に仕事をやつておるということは、これは私は買つていいと思う。特にめげるような仕事をやろうというような非常識な人は、私は今の技術者の中にはいないと思う。これは買つていいと思う。しかしながら制度というものが惡いから、安い金でいいものを買おうとしても、これはできない。従つて適正なる金で請負わして、あるいは適正なる金を投じて、適正な仕事をして行くという、この制度を私はつくらなければいかぬと思う。従つて、適正な命を出すような制度を、ひとつ皆さんの御協力でやつていただきたいと思う。  それから、なぜ災害によつて大きな被害を受けるかということについて、私はもう一つ原因があると思う。それは私は国会にも責任があると思う。それは今までのやり方というものは災害復旧を主としてやつていた。めげたところを直すのを主としていた。これはめげたところを直すというのではいかぬ。めげる前に直す必要がある。ここはめげるというようなところは、見たらわかる。ところが、めげる前に直すということをやつていないから、少しの欠陷があればすぐめげるということになる。橋でもそうでしよう。もうやがて落ちるということは見たらわかる。ところが落ちる前に直すことができない。私はこの意味で、政府の方におかせられましても、危險な箇所に対しては、相当迅速にこれは補修し、あるいは修繕して行く、あるいは補強して行く、こういうような予算を私は計上していただく必要があると思う。われわれが一、二の被害があつたところを拝見して行くだけでは、こういうことはなかなか充実しない。政府当局には各県からいろいろの要求があるが、要求があつた場合に、ここは危險箇所であるということは皆さんよく御承知になつておる。そこで建設省の関係係官におきましては、そういうような危險箇所に対しては、早急に予算の計上をしていただきたい、そうしてその予算の計画を出して、これを国会が承認しない。あるいは関係各省が承認しないならば、承認しないところに私は責任があると思う。これはいろいろ国の費用の関係がありますから、なかなかそうすべての要求は通らぬと思います。しかしながら建設当局は、今申し上げました関係の技術官としては、それだけの責任があると思う。だから出たものは、これは良心的にやらなければいかぬ。直さなければいかぬ、こういう問題に対しては、ひとつ遠慮なしに計画していただいて、これを関係の各省あるいは国会に出していただきたい。その予算を承認しないなら、承認しないところに責任がある。従つて私は、今までの多くの大きな災害のあとをよく研究してみると、何にあるかというと、いわゆる防災的の仕事の努力が足らぬ。もうめげるということが、わかりきつているのだが、費用がないからやれなかつたということがその大部分であります。そこでお尋ねいたしたいのは、そういうようなことに対しては、今までの経過において、防災的な予算は、こういうふうに計上したのだけれども、大蔵省が、あるいは安本が、これを承認しないというような実例がありますれば、その説明をひとつお願いしたいと思います。
  19. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 諸君に申し上げます。今村君、砂間君、逢澤君、三君の発言に対しましては、本問題は非常に重要であります、了承いたしました。なお具体策につきましては、後刻委員と相談いたすことにいたします。質疑を続行いたします。
  20. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいまの諸君の発言に関連して、私も質問したいと思つております。しかし本日政府側の出席のお顔ぶれを見ますと、いずれも課長として優秀な方でありますが、この災害対策の根本の問題について、御質問申し上げるには、その責任の所在がいかがかと存ずるのであります。ことに本日は、委員会において災害地を視察して、その報告をするという会議であります。しかるに建設当局が、報告簡單に聞くというだけの心構えでありますか、局長も次官もお見えになつておりません。国会の意見というものを尊重するならば、国会の視察報告に対して、相当重点を置いて、これを考慮に入れるべきが本来の筋だと私は信ずるのであります。従つてこの災害対策については、私も多々意見を持つておりますが、しかしここで申し上げましても、政府の根本方針、将来の方針に関することでありますから、私はこの席において論議することは徒労であると思いますので、大臣あるいは局長等の出席を待つて質問いたしたいと思います。ただいまの御質問も、あるいは御出席の当局が一応御答弁はできるでしよう。しかし問題は相当重大であると思います。でありますから午後において、ぜひ局長以上の御出席を要求するように、委員長の方で、おとりはからいを願います。
  21. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 ただいまの淺利君の発言に対しましては、了承いたしました。午前中に大蔵、建設、経済安定本部の各大臣の出席を要求しておつたのでありますが、関係方面との定時会見の都合上、一時までどうしても出席しがたいとの報告があつたのでありまして、午後は出席を求めておりますから、午後引続き御質問願いたいと思います。  政府に対する質疑は午後一時からこれを続行することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  22. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 午前に引続き会議を開きます。  ジエーンキジア台風災害関係の質疑を続行いたします。
  23. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 先ほどジエーン台風並びにキジア台風災害地の視察報告を行つたのでありますが、午前中は河川局長が見えておられなかつたのでおわかりないかもしれませんけれども、しかしすでに御承知のことでありますので、簡單に所見を伺つておきたいと思います。  大阪、それから阪神間の海岸堤防、いわゆる防潮堤が非常に破壊され、また今日まで不備な点があつたために、甚大なる損害を受けたことは、御承知の通りであります。この防潮堤は必ずできるだけ早く完成しなければならない事態に相なつておるのであります。そこで当局としては、この大阪並びに阪神間の恒久的な防潮堤としてどの程度のものがいいというふうに考えておられるか、またそれを完成する経費はどのくらいと見積つておられるか、さらにその経費の国と地方との負担の割合はどういうふうに考えておられるのか、その計画がもうすでにありとすれば、その完成に要する期間、それから来年になるでしようが次の台風、そういう危險時期までにどのくらいな処置をいたすという計画があるか、そういうことについての所見を伺つておきたいと思います。
  24. 目黒清雄

    ○目黒説明員 ジエーン台風及びキジア台風の今度の特色といたしましては、大体海岸堤防の破壊が多いのであります。すなわち高潮による破壊でありますが、この海岸堤防の破壊は、御承知の通りにその及ぼす被害が大きいのであります。これに対して單に上流河川の氾濫によります減收はある程度でとどまるのでありますが、海岸堤防の破壊によります被害は、場合によると塩のために收獲が三年くらいまで影響するというようなところもありますし、また兵庫大阪のような大都市を控えたところの被害は想像にあまりあるものであります。従つてわれわれがこの際今までやつておりまする災害復旧のごとく、いわゆる原形主義にこだわらず、さらにこれに加えて恒久対策を樹立して予算を要求しておるのであります。その額は大体において百三十億前後と思いますが、その中で最も大きいのは、大阪の八十億、兵庫の四億九千であります。その他徳島、香川、愛媛、あるいは九州方面の各県の海岸堤防もその予算の要求の中に含まれております。それでこの中の一応の災害としてみなし得るものは、大阪におきましても約三十億というような非常に少い金でありますので、大阪を例にとつてみますと、さらに五十億をプラスしなければならぬというのが恒久対策に属するものであります。われわれとしては、要求の方針としては今後三箇年間にこれを完成したいというのが現在の指針でありますが、まだこれが予算折衝中でありまして、はたしてどの程度の予算がこれに割当てられるものか、未決定であります。しかしながら海岸の応急措置としての仮締切りの工事は、土俵その他によつて一応の仕事をした関係がありまして、すぐにこれが腐つてくるという関係も起りますので、これだけはただちに復旧しなければならぬ。本工事を行わなければならぬというので、本年度中くらいにはそれを行わなければ、また水が入つて来るというような状態に相なるのであります。それを一応災害復旧費として要求したいと考えております。
  25. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 百三十億要求されるというのは、来年度の予算のことだと予解するのでありますが、要求することは毎年やつておるのでありますが、あとはほつたらかしておつたのでは今お話のように毎年困るというような状態であります。要求はするが、できるかできないかわからないということでは困るので、もう少しそのことをはつきりお答え願いたいと思います。
  26. 目黒清雄

    ○目黒説明員 われわれ施工する当局といたしましては、どうしてもこれをやり遂げなければならぬという意気込みでやつております。しかも応急的にやつて、ただちに腐りそうだという仕事に対しては、これも当然やりませんとまた水が入つて来るということでありますので、これはどうしてもやりたいと思つておりますが、今の恒久対策の百三十億の点、これは来年度に百三十億ほしいというわけでありませんので、これは今後三箇年くらいに恒久対策を完了したいというのがわれわれの気持であります。それは財政の都合もありますし、また工事の消化能力というような点から考えまして、また一方大阪のような各ブロツクにかこわれている部分につきましては、これを全面的に片ずけて行くということになりますと、予算の関係で全部が不完全な形に残されるという心配もありますので、できるだけ重点的に一ブロツクずつ片ずけて行きたい、そういうような施工方針のもとでやつて行きたいと考えております。そういうことを考えますと、三箇年くらいが妥当だろう、こういうふうな判定で進んでおります。災害復旧費は今年度は全額国庫で、今のようにこれはプラスする高潮対策は、地元が二分の一、国庫が二分の一というのがわれわれの原則になつております。
  27. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 この際瀬戸山君に申し上げますが、ただいま午前中から出席を要求しておりました周東経済安定本部総務長官が御出席になられたのでありますが、二時からちようど別に重要会議があるために、三十分間くらいしか御出席ができないということでありますので、繰り上げまして周東安本長官に対してのみ、国土総合開発に関する件及び災害復旧に関する件を一括議題といたし、質疑をしていただきたいと思います。
  28. 西村英一

    ○西村(英)委員 安本長官にお尋ねいたします。先日も国土総合開発のことが問題になつたのでありますが、国土総合開発審議会におきましては、目下基礎データーを集める程度だ、こういうような御答弁がありましたのですが、もし国土総合開発審議会におきまして勧告がありましたならば、日本の特定な地域につきまして総合開発の実施を来年度やる意向がございますかどうか、その点についてお聞きしたいのであります。
  29. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点でありますが、これは結局予算との振合いになると思います。今政府としましては、でき得る限り総合的な計画地域的にも立てて行くことがよろしかろうという形で、いろいろ計画しておりますが、予算総額の関係でなかなか十分なことはいたしかねます。しかし大体に予算の総額はきまつております。これにもし国土総合開発審議会の意見がきまつてからそれを参考にして、そのあんばいをすることはできると思いますが、しかし総額はきまつておりますから、多くを期待できないと思います。
  30. 西村英一

    ○西村(英)委員 現在予算のわくが大体きまつているから多く期待することができぬと申されておりますが、実はわが国の総合開発の問題は、非常に古くから計画的にいろいろなことが言われているのでありまして、国民全般といたしましては、総合開発の抽象的な議論でなしに、実施の問題に移してもらいたいということが非常に国民の急な熱望になつております。それでもしかりに勧告に従いまして、あるいは勧告がなくても政府独自の立場でこの特定な地域を取上げまして実施に移すといたしましても、従来から日本の全体の視野で練りましたところの大きい計画といたしましては、たとえば只見川であるとか、あるいは北上川であるとか、あるいは利根川であるとか、あるいは熊野川というような、そういうもうほとんど常識的なところが取上げられるであろうということはおよそわかつているのであります。しかしながらこれをある特定な地域を取上げますと、その地域に対しては非常にけつこうでありまするが、何さまその地域に対して非常に金がかかる。しかも長年月を要するということになりますので、これらの点のどの地点を取上げるかということについては、これは重大な問題であろうと思うのであります。そこではたしてこれらの地点を取上げましても、これを現在の国情に照しまして完成するだけの自信があるであろうかどうか、こう思われるのでありますが、それらの点につきましても、もし取上げられるとしてこれを完成する力がわが国にあるかどうかというような点につきまして、安本長官の所見をただしておきたいのであります。
  31. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話のように、国土総合開発計画ということは、今までもかなり計画、研究されておつたことは事実でありますが、具体的に各府県における実態の調査というか、実態的資料というものは、ようやく最近各地で全部出そろつて、それをもとにしての大きな計画は、今後の研鑚にまたなければならぬと思います。しかしお話のような只見川、あるいは利根川、あるいは北上川というような川について、ある種の問題をとらえて、総合的に計画を進めるということは、その全体がそろわぬでも進め得るものもあると私は考えます。総合計画というものの言葉になると思いますが、その地域内における山林、農業、水産、工業、人口の分布からあらゆるものを含めての総合開発ならば、これはなかなか進むのは困難であると思います。しかしたとえばある種の地点をとらえてダムの建設をすることによつて、利水、水を調節すること、それから灌漑用水を貯蔵すること、しかもそれによつて発電設備を設けること、また進んでは内水面養殖業というような各般の事業について、関係方面が総合して計画するという意味においてのダムの建設というようなことを考えるならば、これも総合計画の一つの部分だと考えていいと思いますが、そういう意味合いにおいて、少いながらも予算の範囲内においてやろうと思えば着手ができるのではないか、かように考えております。
  32. 西村英一

    ○西村(英)委員 最近いろいろ新聞紙上で発表されます利根川の総合開発の問題は、安本で相当力を入れておるようでありますが、あの問題は現在総合開発審議会との関連がどういうふうになつておるのでありますか、その点御説明を願います。
  33. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これはやはり利根川の開発、あるいは北上川の開発ということに関しての総合開発委員会ですか、そこらの意見は参酌して進め得る問題だと考えております。
  34. 西村英一

    ○西村(英)委員 総合開発の問題につきましては、それくらいにいたしまして、もう一点、これはあるいは建設省の御関係の方がいいかと思いますが、実は災害復旧の問題でありまするが、この問題は一方におきましては災害復旧は現在は三箇年を限度として復旧するようにやる。しかもまた一方において災害復旧促進をやらなければ、やりかけておるところが次々にこわれてしまう。早く復旧してもらいたいのだ、こういう要求があるわけでありまして、これももつともなことと思うわけであります。しかしながらまた現在の状態では相次ぐ災害によりまして、これは災害へ追つつかぬ、災害のあとを追つかけておるようなことでは、おそらく国費の濫費だ。災害よりもむしろその改修の方に重点を置いたらいいんではないか、こういう考え方もあろうと思うのであります。また私は現在来年度の公共事業費をきめましたその内訳等を見ましても、経済安定本部等の考え方は、むしろ災害復旧で後を追うよりも、災害復旧の前の改修工事に力を入れるというふうな思想がかなり現われておると私には思われるのでありますが、それらの点につきまして、一体災害復旧に重点を置いて、これを早く完成しようとする予算を組むのであるか、それとも災害は最小限度にとどめまして、改修工事に力を注ぎたいのでありますか、その辺につきまして長官の御所見を承つておきたいと思います。
  35. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話ごもつともであります。私どもの方で考えておるのは災害復旧もこれをすみやかにやるべしという考えであります。但し、それに対しましては、災害復旧に関する計画等につきまして、従来発生いたしました初年度における国家助成等の計画につきましては、何さま早急の場合でありますので、急いで初年度は出しますが、二年、三年以後についてやや計画的でない部分もあつたやに見受けられます。私どもの考え方としては、二年、三年等の過年度災害復旧については、でき得る限り二箇年半とか何とかいうあとをおつかけてすみやかに事業が遂行できるようなことを眼目に置いて予算の計画を立てております。従つてその方の関係事業分量等において減さないで済むような方向をとりつつ予算的措置をいたしております。しかし根本においては、何といたしましても災害防除といいますか、災害が出る前に早く手当をしておいたならば、災害の発生を防止し得たりしなるべしというようなものについては、でき得る限り早く予防的施設をすることによつて防ぐことが資本の蓄積をされたものを流さないで済むものだということで、この点に眼目を置いておることは事業であります。しかしただいまの計画の遂行の途上における予算の組み方等につきましては、今申し上げた趣旨において、復旧工事については過年度災害を一定年の間に復旧し得るように一つの計画を立てて、それに対して従来よりも事業の遂行分量というものを減さないように、むしろ増額しつつ、かつ災害の未然防除の方向に対して予算を少いながらも十分使いたい、こう考えておるのであります。
  36. 淺利三朗

    ○淺利委員 昨日総合開発問題で一応質問応答はあつたのでありますが、きようは長官がお見えになりましたから、念のために重ねて伺つておきたいと思います。それは国土総合開発審議会が発足して以来、いまだその審議は遅々として進まない。これがために各地方においては総合開発計画促進を希望しておる声が多いのであります。もしこれがあまりに遅れることになると、地方の一般の期待を裏切る結果になるのであります。現に昨日配付になりました利根川水系の総合開発計画は立法化されるというような空気も動いておるようであります。本来ならば、数県にわたる地方総合開発というものは、審議会において勧告をする、それによつて地方開発の委員会が成立して、そこで取上げらるべき順序になるとことがこの新法の精神であります。しかるにこれに先行して、すでに地方からこういう個々の独立立法が出るということになると、結局において国土総合開発の審議会の成立の精神というものは没却されてしまう。またひとり利根川のみならず、当然北上川なり石狩川なりその他のものが続々と出て参るということになりますれば、どこに重点を置き、どこに緩急軽重を置くかという広き視野から見るところの委員会の権威というものはなくなる。結局国会の立法の精神がこれによつてくずれるということにもなると思うのであります。こういうことにおいて、もし各地方においてかくのごとき個々の総合開発計画の立法が出た場合には、政府当局はどう処置せられるか、またこれを未然に防ぐために審議会において早く一定の、特に急ぐ地点について総合開発計画を定めて、これを勧告するというような御処置をおとりになる計画かどうか、もちろんこれは審議会の問題ではありますけれども、安本はこの幹事役として事実上の事務の遂行に当つておるのでありますから、その点について大臣の御意見を伺つておきたいと思うのであります。
  37. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今、利根川の水系の総合開発法とかいうものがあるが、そのような個々の立法を許すのかというお尋ねでありますが、まだ私その法律を聞いておりません。私どもは先ほど申し上げましたように、今までのようないろいろな開発関係の仕事がばらばらに相互連絡なく行われることに対して賛成しておりませんので、むしろさつき申しまたような意味において、総合的に、ダムの建設をやるにしても、まとめて有効適切にやりたいという意味については賛成しておるのであります。しかも国土開発に関しては総合開発法もできており、それによつてすべてのことが進められつつあるのでありますから、私どもの考えはそれによつて行けばいいと思うのであります。ただその際に、もし利根とが、あるいは北上とか、石狩とかいうような問題についても、総合的な開発について特殊の必要な措置がいるとすれば、国土総合開発法の一部を改正することもよかろう、こういう気持は持つておりますが、全然今お話のような法律を聞いておりませんので、私お答えいたしかねますが、私どもは少くともそういう考えで取扱つて行きたいと思つております。
  38. 淺利三朗

    ○淺利委員 要するにこういう問題が地方に起るということは、審議会の調査が、発足早々でありまするからやむを得ぬでありましようけれども、遅々として遅れる結果であろうと思うのであります。だからこれは基本的な方針をきめるとか、あるいは資料を集めて検討するということも必要でありまするけれども、目前に迫つて来る問題は早くこれを取上げて、そうしてすみやかに適当な措置を講ずるということにならなければ、自然に各地方要望に応じて、かくのごとき特殊立法を計画するということが起ると思うのであります。そこで昨日も申し上げましたが、現在の国土総合開発審議会の機構という問題であります。予算の上においてもはなはだこれが貧弱であり、また專門委員等も今日すでに設けられたかどうか、われわれはまだうかがい知らぬのであります。ことにこの事務当局となるものは安本の事務員が当つておる。そういたしますると、安定本部自体の仕事がある上に、さらにこの審議会の仕事をするということになれば、いわゆる兼職になりますので、片手間にやるというような結果になつて、自然これの遂行が遅れてしまう。むしろ内閣に審議会がある以上は審議会直属の事務局を置いて、これを強化して、すみやかに遂行をはかるという筋で行くべきではないかというふうにわれわれは考えておるのであります。もちろんその人物は安本の精鋭をすぐつてこれに移すということも一つの方法でありましようが、そういう点から行きまして、こういうことの遂行が遅れるということになると思うのでありますから、これに対してあるいは予算的措置において、審議会の事務遂行をなめらかに、迅速にやるように予算的措置を講ずるか、あるいはまた何か他の方法をもつて、一日も早くこういうことを進めるということが先決問題ではないかとわれわれ考えておるのであります。こういうことについては、きのうも審議会長に聞いてみましたら、現状をもつて満足しておるというような答弁でありましたが、大臣としては、これに対しては何かこれを推進するための強力な予算的な措置、あるいは機構上の改革をなさるというお考えはないかどうか、その点もあわせて伺つておきたいと思います。
  39. 周東英雄

    ○周東国務大臣 淺利さんの御注意はまことに適切な御注意であります。ただ今日まで遅々として進まぬというお話ですが、私どもの承知しておるところでは、よくまあできておると思つております。つまりあなたの方では、ずいぶんいろいろ案がもうできておる、あるいは各地方におけるすでにできておる案、また全然未着手のもの、そういうものをぐつとまとめられて、当然それについて再編するというような事柄まで進んでおるようです。私ども詳しく集められた資料、現況というものを拝見もし聞きましたが、非常に実地的な見取図がよく集められたと思います。急ぐこども必ずやらなければなりませんけれども、大きな計画でありますから、それに対しましては現在の実態というものがしつかり把握されて、その上に立つてどうするということが進められないと、それこそあとで問題が出るのじやなかろうかと思つておりますが、そういう面から申しまして、今日委員会で集められた資料というものは最も貴重なよいものが集まつておるようであります。このものに基いて各地方的にどういうふうにどういうものを取上げて開発するか、また地方においても相当大きくまとめてやるものとしからざるものとあるようであります。これらについて、できる限り今後の計画の樹立と実施については、御注意に従つて促進をさせるようにいたしたいと思つておりますが、今日もう予算の関係等で特別な金があまりないということは、実は御指摘の通りであります。安本当局で、ある調査費はすべてこれを動員し、また一部予備費等の関係を折衝中でありまするが、これらを合せ、かつ今後の動き方に従つては、大事な国土総合開発について万全の処置をとりたい、かように考えております。
  40. 淺利三朗

    ○淺利委員 総合開発の問題は大体この程度といたしまして、さらに災害工事あるいは改修工事その他についての実施上の問題についてお伺いしたいと思うのであります。これは建設当局にも関連しておるのであります。午前中にも工事監督その他について、他の委員からも質問があつたのであります。私もこの工事の実施については当局の手のすいた、従つて工事監督なりあるいは工事実施上について多少の不備も伴つて来るということを薄々伺つておるのであります。そこでこの予算編成の方針について伺いたいのでありますが、従来の予算編成においては、経営費、臨時費というようにわけた時代においては、臨時費として計上された工事費というようなものに対しては、その工事量に応じてその何パーセントかは人件費としてこの中に組み入れられておる。であるから相当多額の工事量を実施する場合におきましては、そのうちに新たなる人間を採用してこの実施の衝に当らせるというのが従来の予算の組み方であつたと思うのであります。しかるに最近においてはこの 工事費は工事費だけであつて、人件費は含んでおらない。人夫その他はありましようけれども、相当のものを担当する技術官というものの費用はその中に含まれておらない。それは一般の行政費の中でまかなう、こういう建前になつておるように伺つております。これは自然工事を実施する上において、技術上の不備があつたり、あるいは監督上の不備があるということになると思うのであります。現に岩手県のそれがしのダムの工事四億円の工事を実施するについても、行政費では足らない。一方において行政費はこれに伴つて定員の増加をしないということになると、工事の実施に支障を来たす。それがために県においてある人員を増加して、これを建設省の方に兼務の形でやらせるというような計画もあるやに聞いておるのであります。そういたしますると、せつかく予算をとりましても、その実施に支障を来たす。またその工事に支障を来すということであつてはこれは不十分だと思います。これについてさらに予算編成について、安本当局なり建設当局はこれを適正に改善する御意思があるかないか、その点を伺つておきたいと思います。
  41. 中尾博之

    ○中尾説明員 今の問題は、実情はお話の通りでありますが、ちよつとお断り申し上げますが、行政部費の点は、現在は大蔵省の方の直接の査定になつております。いわゆる公共事業工事費の方を経済安定本部の方で取扱つておる次第であります。お話のようなことは、その間におきまする調整の不十分な場合に出て参るのであります。従いまして経済安定本部といたしましては、常にこの工事費の査定をいたします場合に、これに必要な事務費なりあるいは設計監督の人員なりというものにつきましては、大蔵当局の方に要求いたす次第であります。その面を通じまして、お話のような点はわれわれとして気をつけなければならぬと考えております。なおそういうような弊害も出て参りまするが、実情いろいろございまして今までの折衝の際にいろいろ検討された事態を見ますと、今申し上げましような点がわかれておるということによつて、完全な結果が得られないという点も、まさに御指摘の通りだと思います。なお一層そういう点は気をつけます。ただいろいろ地方の仕事になりますと、技術者の優秀な方の人の問題、あるいはその土地の状況を古くから知つておる地方の方が仕事に当らなければならぬのでありますが、給與の関係等におきまして、ただちにその人を国の方に振りかえるというようなことが困難な場合もございます。われわれが要望いたしましても、なかなか実際面でむずかしいという点もあるようでございます。現に建設関係の方の国の役人としての定員というものも、必ずしも全部フルに埋まつておるわけでもございません。しかしながらなかなか適材が得られない。しかもその地方の仕事をやるためには、長年その地方の地形なり地質なりを知つておる人に頼らざるを得ないという面から、そういうような形を取らざるを得ないという場合もあるようであります。従いまして、一面におきましていろいろ弊害も出て来る余地があるというような実情であります。かような関係でございますので、経済安定本部の関係といたしましては、今後とも大蔵省の方と密接なる連絡をとりまして、御指摘のような事態の発生しないように気をつけて参りたいと考えております。
  42. 砂間一良

    ○砂間委員 お急ぎのようでありますから、一つだけお伺いいたしたいと思います。実は公共事業費の財源の問題についてでありますが、これは大蔵当局の方がお見えになつておれば、その方からお伺いした方が適当かと思いますが、きようお見えになつておりませんので、周東さんに、安本長官というよりも、国務大臣として政府の御所見を承りたいと思います。と申しますのは、災害復旧費にいたしましても、あるいは住宅建設の財源にいたしましても、その他公共事業費全般を通じて非常に不十分であるということは、しばしばあらゆる機会に論ぜられておる通りであります。ところが、それを突き詰めて参りますと、いつも最後の御答弁は、財源がない、今日の日本の財政経済事情をもつてすれば、これ以上どうにもこうにもしかたがないというのが御答弁の落ちであります。災害復旧事業なんかにいたしましても、過年度災害復旧が非常に不十分にしかなされていない。今年度発生の災害にしましても、補正予算を含めて九十一億をもつてしては、今年度発生災害の一割見当しかできないということを、一昨日の災害対策特別委員会でも政府当局の方が申されておりました。こういうような実情でありまして、日本の災害だけ取つて見ましても累年的に激増して行くような形になつている。そこでその財源の一つとして考えられますのは、預金部資金の運用についてであります。これは国の公共事業の場合にもそうでありますけれども、なかんずく地方地方の公共事業の財源等が非常に窮迫しておる。今年は災害復旧事業は全額国庫負担ということになつておりますが、聞くところによりますと、二十六年度からはまた地方で三分の一くらい負担させるようなことになるような模様であります。ところがこの問題に対しましては、先般の全国知事会議におきましても、今地方財政は非常に窮迫しているので、財源の点で非常に難色がある。公共事業を含めてひとつ返上したいというふうな強硬意見も一部府県の中には起つているようであります。こういう場合にあの預金部資金をもつと有効的に運用できないものか。たとえばこれは災害復旧事業ばかりでなく、住宅の建設にしましてもこの預金部資金の運用、あるいは地方起債というふうな方面にもう少しうまく運用すれば、その財源の問題も、全般的には解決されないにいたしましても、その財源の一つの解決策とはなると思うのであります。ところがこの預金部資金の点に触れますと、いつも地方起債のわくがきまつているからとか、あるいは関係筋の了解を得なければというふうなことを申されるのでありますが、しかし私どもはそういう御説明にはどうしても合点が行かない点があるのであります。と申しますのは、預金部資金というのは日本国民の貯金であります。なかんずく零細な労働者や、農民や漁民等、この零細な階級の貯金が集まつたものであります。それが数百億ある。日本の国民が蓄積したその金が日本政府で自主的に運用できないという実情は、まことに私どもは嘆かわしい。はたしてほんとうにそういう制限が置かれているのかどうか。もし置かれているとすれば、それは占領政策のどういう條文にあるのか。政府としてはそういうわくを撤廃するなり、あるいは解除して、日本政府が自主的に運用できるように今後努力して行かれないものかどうか。この点他の委員諸君はもうわかりきつたことで、いまさらそんなことを質問するのはやぼくさいというふうにお考えの方もあるかもしれませんが、しかし私は国民の一人として、国民の大多数はやはりそういう感じを持つておる。そこで周東さんにひとつ国務大臣として政府の御所見を承りたいと思うのであります。
  43. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点でありますが、今日でも公共事業費その他に関しまして、地方負担になるもの、あるいは地方起債になるものにつきましては、これを認めておるわけであります。地方債を預金部資金が引き受けておる。今お話のあつたわくという問題でございますが、これはその年々における預金部の預け金の増加の趨勢並びに運用計画に基いて、わくがきめられておるのですから、御趣旨の点については、国もそれを使つておるわけです。今年の公共事業費、災害復旧費についての国の助成金のほかに、地方負担がまたふえるのでありますから、その点に関しては、でき得るだけ地方債のわくを拡げて、預金部で引受けてもらうように、私どもは目下努力をいたしておる次第であります。
  44. 砂間一良

    ○砂間委員 その預金部資金の運用計画は、どこで立てられるのでありますか。これは日本政府が自主的に立てられるものでありますか。それともどこか関係筋か何かの指示なり、あるいは干渉といつたものがあるのでありますか。
  45. 周東英雄

    ○周東国務大臣 日本政府が立てるのであります。
  46. 砂間一良

    ○砂間委員 日本政府で自主的に立てられるものであつて、何ら外国の干渉というものがないのであるならば、もつとこれを国民的に運用していただきたいと私は思う。これは重大な問題です。これは單に災害復旧や何かばかりではなくて、他の方面の産業資金にいたしましても、たとえば電源開発の問題等につきまして見返り資金の百四十五億が使えるか使えぬかというところで非常に重大な問題が出ておるようであります。そういう方面についてもいろいろ問題になつておりますが、見返り資金は、これは対日援助見返り資金の法律によりますと、一応日本政府が自主的に運営できるという建前になつておりますけれども、それでも向うのガリオアやイロア資金によつて、援助資金という名目でもつて、内部的に干渉というものがあるいはあるかもしれません。しかし預金部資金は、これこそ純然たる日本国民の蓄積した金でありますから、日本政府が自主的に運用できると今はつきりおつしやいましたが、内部的な干渉というものはあり得る道理はないと思う。今周東安本長官の言われた言葉通りであるならば、さしあたり災害復旧の方面の緊急な費用をもつと有効に運用する道が私はあると思う。これはもう時間がありませんから、こまかに例をあげて申し上げませんが、この点地方府県や市町村等においては非常に有効適切な運営を切望しておるわけなんです。單にこれは表面上の言葉でござまかすのではなくて、周東さんはもちろん私は日本人だと思うのです。そして日本の政府の一員だと思うのですから、ほんとうに腰をすえてやつていただきたいということを強く要望して終ります。
  47. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 安本長官にちよつとお尋ねしておきますが、昨日来国土総合開発計画についていろいろお話を承つたのでありますが、この際大臣の所見としてお伺いしておきたいのは、この国土総合開発ということは、具体的にどう着手して行くかということなんです。第一は来年度の予算に国土総合開発に関する特別の項目でもあげて予算が組まれるかどうか。第二は国家で直接企画経営に当るものか。ここにもありますが、府県計画し実施する場合に、補助金を與えるという形で行くものか。あるいはまた見ようによつては民間の企業として計画を立て得られると思うのですが、そういうような場合において、政府はこれに補助金を出すということも考えておるか。まずこの点をお聞きしたいと思います。
  48. 周東英雄

    ○周東国務大臣 来年度の予算に国土総合開発に関する経費として特別なものを組むかというお尋ねでありますが、まだそこまで行つておりません。というのは国土総合開発審議会における結論も総合的にまとまつたものが出て来ておりません。しかし政府といたしましてはこの途中においても将来まとめられれば国土総合計画というような一貫してなすべきものについては、たとえば先ほど申しました治水、利水、電源開発、用水というような工事を総合的にまとめ得るものについては、具体的に予算を計上しております。従つてもし将来国土総合開発計画として、一貫してまとまつたものが出ますれば、一つの單行法を起すということもそのときにおいて考えられることと思つております。  それから国土総合開発にきまつた計画に基いて民間事業ができたときに、それに補助金をやるかというお尋ねのようでありますが、これは具体的にいかなる企業が出て来るか、その内容によつて考慮さるべき問題だと思いますので、計画的に、こういう民間事業にただちに補助をやるとかやらぬとかいうことは、ただいまお答え申し上げかねるのであります。府県についてもその事業の内容についての国の助成予算、こういうようなことがその具体的問題について決定されると考えます。
  49. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 この審議会から出されておるリーフレツトによりますと、昭和二十八年度を目標とする第一年次計画を作成する。年次別ということであるから一応来年度から入れられるものかという点をただしたのでありますが、そこで実際問題としては現に建設省などにおいては、総合開発という名目には不賛成にしても、実質は総合開発の一環をなすようなものが徐々に着手されておると思うのです。つまり総合開発に関する法律ができたということは、せつかく部分的にかけて現在までできたものを、総合開発という立場からかけなければ結局むだをするというきらいがあるから、どうしても一つは官庁の個々の活動、いま一つは地方的に、ことに治水治山等に関しての個々のやり方との間に総合的連繋を持たすべきではないかという立場から、われわれはこの総合開発という主張をして参つたのであります。そうだとするならば、すみやかに来年度予算にこの点を考えなければ、総合開発計画をわれわれがつくるように主張した点がまことに手遅れになると思うのでありますけれども、この点は今の大臣のお話としては、はなはだ物足りぬものがある。ぜひとも大臣は来年度においても、できるだけ総合開発の線で予算編成等を考慮してもらいたいと思うのであります。そうでなければ従来通りまことに部分的な、総合性を欠いたものとして主張されるおそれがあると思います。この点は特に今の御回答では、できて来ればというようなことでありますが、総合開発法というようなものは、いわゆる積極性を持つて、従来個々別々に使われておつたものを総合化するというところに意義があると思うのであります。これを大臣においては、とりあえず来年の予算から考慮していただきたいと思うのです。
  50. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今村君にお答えしますが、私は全体がまとまらぬ前でも、もし予算の中で総合的に考えなければならぬものについてはまとめて、個々具体的の予算執行について考えておると申し上げたのであります。御了承を願います。
  51. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 そこでちよつとはつきりしておきたい点ができたのですが、つまり伝えられる利根川水系の総合開発というような案は、安本長官も賛成で、明年度の予算の中にある程度計上したいというような意見も漏らされたように聞いておるのであります。つまり総合開発をして行く順序はありますけれども、先ほどもその点を確かめておいたのですが、ご回答がなかつたのですが、総合開発というものは、アメリカのテネシー渓谷開発のように、国が計画して行くという建前をとるか、それとも各府県計画したものに補助して行くという方法もあわせて行くのか、大臣の所見もはつきり聞いておきたいと思うのであります。同時に今言う利根川なら利根川の水系の総合開発というものが出れば、それを最初の計画として国が全力をあげるという方針をとるのか、それとも各府県に北上川あり、また天竜川があるというように、各地域を同時に取上げて行くか、この点を考えてもらわなければならぬ。ことにそれがあるものは、国直轄、あるものは府県管理ということになつて来ますと、非常に厖大な経費も要することになつて来ると思うのでありますが、この点もひとつ明らかにしておきたい。
  52. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点ですが、利根水系の総合開発については、総合的な、まとまつた具体的な計画は進んでおりません。そこで私の言うのは、部分的な予算であつたとしても、一番の問題は、今まで治水の関係においても、山、川別々に動いておりますが、その一番手取り早い問題として農業関係も、河川関係建設関係もみな一緒にやつて、しかもその各部門に対して効果を発生するようなダム建設というものをひとつ中心に考えてみたい。今まで利根水系の方面における洪水の問題も、水を治めることについて大きなダムを建設することによつて、遊水地帯、貯水地帯を設けて水の調節ということを考えることは、同時に農業上の用排水の問題に関連し、同時にそのダム建設従つてそこに発電設備を置くことによつて、電源開発になるということがひとつの計画についての総合性だと思う。ところが利根水系全体についての、工場地帯の建設をどつちに持つて行き、農業地帯の開墾開発をどつちに持つて行く。あるいは山をどうする、川をどうするということも、これは各予算を総合し集めた上で、一つの大きな計画――あなたのお話のテネシー・ヴアレーのごときも、これなんかは日本の利根水系のような小さなものでなくして、日本全体を一つにしたくらいの大きな場所であります。そういうふうなものをそのまま持つて行つていい場所と、しからざるものとを考えて、総合開発を進めるについてもやつて行くべきだと考えておりますが、しかしできるだけ一つのまとめたものを、日本のように小さいところは、小さいなりのものが必要だと思いますが、それについてはまだまとまつておりませんから、しかしその途中においても、今までのような部分的な、セクシヨナリズムで動いておるようなことを、なるべくまとめて、各部門に効果を発生させるような部門をとらえて行きたいというように考えております。また大きな利根水系の総合開発計画がまとまつた場合、それを国でやるか、県でやるか、どういう形態をとるかという問題については、総合計画がきまつてからの問題でありましようし、ある場合においては、国が直接そういう官庁を設けてやるということがいいならば、研究さるべき問題でありましよう。あるいは日本のような小さいところでありますから、各部門がわかれわかれに分担してやるということも、ひとつの行き方かもしれない。この点については具体的計画がまとまつた上において、個々具体的の地方的な計画に沿うて主体性をきめて行つていいのではないか、こう考えております。
  53. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 もうちよつと確かめておきたいのですが、こういうことです。私の質問が不十分でわからなかつたかもしれませんが、第一は現在やつておるところの事業も、これを総合的に持つて行つてしまう必要があるのではないかという点を確かめたわけです。つまり今までは電源開発であつたら商工省だ、砂防でいえば林野砂防だ、河川砂防だと個々ばらばらのことをやつておる。使つた金が生きておらない。だからこれにひとつの総合性を持たせて、来年度予算からやつて行くというように考えたらどうかということが第一です。  第二点は、そういうようなことをするにしても、利根水系とか、あるいは北上川水系というようなものは、テネシー渓谷開発のように、国が計画もし、経営もして行くというようなやり方で行きたいと大臣は考えておるかどうか。さもなければ各府県を單位にして、わずかな予算を北に南にというようにわけて、年々計上される各省の予算を総合開発的に使つて行くか、どれをお考えになつておるか、こういう意味なんです。
  54. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私はすでにお答えしたつもりです。全体のまとまりについて、まだまとまつていない、そこで今までの既存の農業――これはあなたの御指摘の山とか川だけではない、農業の土地の問題がら考えて行かなければならぬとさえ考えております。ただしそういう問題については、総合的に立つていない。ただいまのところではそこまで行つていない、しこうして地方的な問題について、国がまとめてやるか、県がばらばらにやるかということについては、具体的な計画がまとまつてから考えたい。ただいまのところではまだそこまで行かぬ。部分的な問題についても、一つの主体についてまとめるか、あるいは一つの事業について、金の足らぬときに、集中的に建設することによつて、河川における利水計画と貯水計画、灌漑用水の貯水計画、電化というような計画によつてまとめる、個々に通産省、農林省、建設省から要求があつたものを、全体総合的にまとめるということも、一つの総合開発の行き方ではないか、こういう段階があると考える。
  55. 今村忠助

    ○今村(忠)委員 所管が安本長官であるということだから、もう一つ明らかにしておいていただきたいのですが、今言われた安本長官のお考えは、つまり国土総合開発審議会の決定をまつてするという意味であるのか。つまり国土総合開発法ができたから、安本長官みずからはこの際積極的に何か考えて、そうしてこの国土総合開発審議会においての決定をまつにしても、その主体は安本長官みずから考えて、こうして行きたいということを、この国土総合開発審議会にかけるのか。その点をもうちよつと明らかにしてもらいたい。
  56. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御承知だと思いますけれども、国土総合開発委員会における一つのまとまりというものができておりませんので、その具体的な計画を将来どういうふうに急いで推進するかということは、その具体的決定ができたときに考えたいということであります。
  57. 逢澤寛

    ○逢澤委員 総合開発の大綱については、私はもうお尋ねしません。ただ先ほど安本長官から、私どもの一番心配している点なんですが、日本の河川が非常に荒廃している。その河川荒廃従つて毎年の水害というものは、非常に莫大な被害をこうむつている。ところがそれを完全に直すことはできない。午前中の委員会でもお話があつたのですが、工事が非常にめげる。めげるということは何によつてめげるかというと、まだ直すまでに次から次に水害が来る。こういうことになる。そこでこれの回答として、長官は先ほど災害復旧をするとともに、さらに進んで明年度は防災的な――今年やれば一億でできることが、今年一億を惜しんだために、明年度百億の金を費すということに対して、そこに積極性をもつてやるというお話があつた。だから私は言葉じりをとるようではなはだ恐縮でありますが、そういうようなことにどういう予算をおとりになつたかということを尋ねたい。けれどもそこまでは私は申しません。しかし長官は国土保全については非常に薀蓄を傾けておやりになつているように私は考える。そこで願わくば、予算の編成上相当むずかしいこととは思うのでありますけれども、防災的の、今年やれば一億で済むことも、来年は百億ということと対照して、むずかしいことでもこれをひとつ大奮発して、防災的の仕事を、国民があつと言うようなことをやられる勇気があるかないかということをお尋ねしておきたい。実はこの委員会でも、先ほど午前中の委員会では淺利委員からも、皆さんからもこの委員会では今までの伝統のようなおざなりなことでなしに、予算がこれだけあるのだから、これだけやるということでなしに、ひとつ大奮発をした、国民が安心して枕を高くして寝られるような策を講じようじやないか。従つて特別なそういう委員会でもこしらえようじやないかというところまで行つているのです。私はもう時間がありませんから、くどくどしくは申し上げませんが、ひとつこの際何とか画期的な一つの案を立てて、災害を未然に防いで行くというようなことについて、何かお考えがあるかないか、お考えがあればひとつ伺いたいと思います。
  58. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まつたく同感でありまして、私もできれば思い切つた予算を立てて、防災に中心を置くというつもりで、予算編成に当つたのですけれども、今日のところはいろいろな事情で思うにまかせず、思う通りの予算額に達しませんでしたが、今のきめられておるわくの範囲内では、でき得る限り防災を主としつつ、しかも過年度災害復旧に対しては、計画的に二年か二年半のうちにこれを終るような計画を立てて進みたい、かように考えております。
  59. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 周東経済安定本部総務長官に対する質問はこれをもつて一応打切りまして、建設省並びに経済安定本部より、建設交通局公事業課長中尾博之君が出席しておりますので、引続き質疑を続行いたします。瀬戸山君。
  60. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 先ほど大阪市の防潮堤のことについての質疑をいたしたのでありますが、私現地を見ましたときに、大阪市は海水面より低い箇所相当あります。そこで防潮堤が問題になつておるわけで、できるところは地盤の地上げをすべきであるというふうに考えております。その点防潮堤地盤の地上げについて何か総合的な計画をなされているかどうか、もしその計画がなされておりましたならば、地盤の地上げに対する国家の助成というものを何か考えておられるかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
  61. 目黒清雄

    ○目黒説明員 大体大阪のうちで、此花、港、大正がありますが、そのうちの行き方としては、此花は現在防潮堤をやつており、大分進行しておりまするが、これをそのまま進めて行きたい。地盤のかさ上げはやらないで、内水排除で行きたい、こういう方針であります。それから港区は港湾工事と一緒に、これらの浚渫の土砂地盤を高上するために使うということで進めて行く。それから大正区の問題ですが、これは今研究中なんですが、実は予算の見通しをつけませんと、大正区の港湾計画を早く進めることができるかどうかという心配がありますので、あるいは場合によりますると、これは地上げをしないで、現在の堤防あるいはないところは浚渫の土砂で盛り上げをやり、一応来潮を守らなくちやならぬじやないかというふうに考えております。
  62. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 先ほど報告いたしました通り、ジエーン台風の建築物の災害は、昭和九年の室戸台風以来の甚大な損害でありました。そこで住宅の全壊、流出はジエーン台風のみで計算いたしましても一万八千余りになります。先ほどの御説明では、大体六千戸を災害応急住宅という予定を立てておる、それに対して四分の三の国庫の助成で災害地の建設の準備をいたしておるということであります。ところがそれは現在予備費がある程度残つておりますが、今度の補正予算が通過しなければ、その実現ができないじやないかと思うのですが、これに対しては、もう冬も近づいておりますので、応急に相当の住宅を供給しなければならない事態になつております。そこで現在の予備費のうちから、それに対して何千戸かを建設するというお考えがあるかどうか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  63. 中尾博之

    ○中尾説明員 お話の点、住宅問題は緊急を要しまするので、できまするならば災害復旧予備費のうちからなるべく多くをさきまして、これに重点を注ぎたいと考えております。金額それから戸数がどの程度になるかということにつきましては、まだ全体の配分の計画がかたまりませんので、はつきり申し上げるものを持つておりません。いずれにいたしましても補正予算の実施は十一月以後になります。非常に遅れる次第であります。従つてその前に手をつけなければならぬ分につきましては、どういたしましても予備費の方に重点を置かなければならぬ、こういう考えを持つてやつておる次第であります。
  64. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 今度は台風災害全般にわたつて簡單河川局長にお尋ねします。私は宮崎県から出ておるから宮崎県のことを申すわけではないのでありますが、キジア台風でさらに本年相当災害を受けました。そこで詳細なことはまた後の機会に譲りますけれども、気象台の統計を見ましても、昭和元年から昭和二十四年までの統計で、ここに公式なものがあるのですが、これは九州だけであります。ところが毎年九州では、宮崎県が第一の雨降り場所になつておる。従つて第一の災害地になつている。台風通過を見ましても、全部宮崎県をかすめない台風というものはないということが、この図面ではつきりいたしておるのであります。そこで私は宮崎県だけをとるのでありませんけれども、宮崎県はかような特殊な地帯になつておりますので、ただ普通の災害復旧では、とうてい宮崎県の、特に農村地帯は立上りができません。まさにその通りであります。何年目かに来るという災害でありますれば、これはその間にまた立上る機会もありますけれども、御承知の通り一年に二、三回、去年は四回、今年は三回、しかも毎年来ない年は絶対にないということが明らかになつておりますが、この状態に対して建設当局、安本でもけつこうでありますけれども、ただ普通の一般の災害地と同じような対策を考えておられるか、あるいはこの特殊な事情に対して特別な何かの対策を考えておられるか。これだけ簡單でよろしいのですが伺つておきたいと思います。
  65. 中尾博之

    ○中尾説明員 お答えいたします。宮崎県の連年の災害の点は、非常に心を痛ましめるものがあるということは、十分に知られておる事実でありますが、なお場所によりまして、そういう県は宮崎県のほかにも多々ございます。こういう点につきましては、ことに耕地が全面的にやられて、收穫が非常に落ちているというようなところは、事節柄でもありまするので、なるべく災害復旧を急ぎますとともに、農村に購買力をつけるというような見地も加味いたしまして、復旧に重点を置くという考え方をとらざるを得ないということは明らかであります。なお復旧以外に防災的な仕事も、適当なものがございまして、できましたならば、なるべくそれらのものも重点的にやつて行こうとは思つております。但し災害の範囲が広うございまして、数十府県にわたつておる次第でございますので、そういう配慮を十分に加える次第でありますが、やはり全体のことも考えなければなりませんので、多くを期待することは必ずしもできないと思いますが、気持の上におきましてそういうところになるべく適切な処置を講じたい、かように考えております。
  66. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 私は宮崎県の一地方を問題にしたというだけではありません。もちろん全国にあります。明らかにどの図面を見ましても、これは九州だけでありますが、私は全国を調べるつもりでありますけれども、九州のうちで宮崎県が災害としては最大のものであります。これは不幸なことでありますけれども、ただ災害復旧にある程度重点を置くというだけではとうてい助からない。日本から省くというなら別問題でありますけれども、日本の一部分でありますので、特別な計画を立ててこれをやらなければ、とうてい治まらない。それについて建設省の河川局長は何か、計画がないと言われるならないでよろしいのでありますが、将来計画を立てられるおつもりであるかどうか、伺いたいと思います。
  67. 目黒清雄

    ○目黒説明員 先ほど来の宮崎のお話は、われわれも十分承知しております。それで災害復旧以外に積極的にといいますか、あるいはもう少し根本的な防災対策をどうするかということになりますが、もちろんこれはそういう地方には、重点的にやられなければなりませんが、われわれといたしましては、全国的にそういうものがありますので、ものさしをどういうふうにつくるかということで今悩んでおるのであります。従つてわれわれの防災的な重点施工の箇所の選定のものさしといたしましては、荒廃地の面積、收穫減、従つて災害の頻度、こういうようなものを勘案してきめるより方法がないのであります。従つて問題になりますのは、この地方堤防によつて起るだろうと推定される被害の土地の面積の大小が、相当大きなものさしに入つて来るだろうと思います。もちろん災害の頻度はそのうちでも大きく考えられますが、こういうわけでありまして、それらのものさしではかりまして、結局宮崎あたり――宮崎のある地方相当重点になるのではないか、こういうふうに考える次第であります。
  68. 砂間一良

    ○砂間委員 先ほどからジエーン台風や、キジア台風被害調査の報告を聞いておりますと、高潮被害相当あつたようであります。その高潮に関連しまして、地盤沈下防潮堤ということが、派遣委員報告の中にも重要な問題として取上げられております。この防潮堤地盤沈下の問題は、相互に関連した問題でありますが、一応別々にお尋ねしてみたいと思います。地盤沈下のことにつきましては、その原因がどこにあるか、これはもつとも和歌山県とか四国とか全般的に言いますと非常に大きな問題だと思うのですが、特に大阪市なんかにおける地盤沈下等はどこに原因があるか、そういうことを御調査になつたことがあるかどうかということからまずお伺いして行きたいと思います。
  69. 目黒清雄

    ○目黒説明員 地盤沈下の点について大阪だけに限定してお答えいたします。大阪の問題は、御承知の通りに、戰時時代に相当工場があつた、しかもそれが活発に活動しておつた。それであすこに、御承知の通りに工業用水がないので、地下水をくみ上げておつたというような事実から、それによつて沈下したのではないかというような結論が出ておつたのであります。ところが戰後工場がぴたりととまりましたと同時に、その沈下はやはりぴたりととまつたという事実から推しても、これは工場の地下水くみ上げの問題だろうということに結論づけられたのであります。従つてこれに対しましては、将来地下水のくみ上げを禁止するというような問題が起つて来るだろうと思います。しかし單に禁止しましても、禁止だけではいけませんので、別に工業用水を補給する何らかの方策をしなくてはならぬが、これは引水でも補給できますので、淀川からでも水を引くというような問題が起きて来るだろうと思います。
  70. 砂間一良

    ○砂間委員 大阪地盤沈下の原因につきましては、ただいま目黒河川局長か御説明になつたようなふうに私どもも聞いております。そこで問題になります点は、工業用水として地下水のくみ上げをやらなくて済むようにする、そういう施設を講ずることが、やはり災害対策の一つになると思うのです。と申しますのは、先ほど調査委員報告にもありましたように、今度のジエーン台風昭和九年の室戸台風よりもその強度は弱かつた、弱かつたにもかかわらずあれだけの大きな被害があつたということは、防潮堤のこともありますけれども、一つは地盤沈下ということが大きな原因になつておると思うのです。大阪におきましては、最大二・五メートル、平均一・五メートルの地盤沈下をやつておる一方において、工業用水もどんどん地下からくみ上げている。終戰当時はこの地下水をくみ上げることはやんでおつたのですが、最近また工業が活発になるに従つて、どんどんくみ上げをやつて行く。  そのためにまた地盤沈下がはなはだしくなつて行くというような現象が起つておるのであります。従つて工業用水をどこから供給するかという点についての根本的対策を立てるということが、少くとも大阪災害対策としては、一つの有力なテーマとして取上げられなければならぬと思うのですが、これについて建設当局はどういう方針を立てておられるか。工業用水を地下水からくみ上げることが、一つの地盤沈下の原因であるということは、すでに結論が出ておるということを申されたのでありますが、そういう結論が出ておることをもう承知の上で、今度の災害を見ておられると思うのですから、それに対する対策というものも当然これは考えておられると思うのですが、その対策、将来の方針というものをお伺いしたいと思います。
  71. 目黒清雄

    ○目黒説明員 これは大阪当局計画ですが、一応大阪府としては、工業用水の補給をしなければならぬというふうに考えております。問題は御承知の通りに、淀川それ自身の水が相当いろいろの方面に利用されておりますので、この水の利用を工業用水のために補給する量が確実につかみ得るかどうかというような点で、また疑問があるのであります。疑問があるというよりは、これをいかにして使うかということにくふうがあるので、まだ正確な計画、設計はできておらないのであります。いずれにいたしましても、当然工業用水として地下水くみ上げをすることを禁止いたしますれば、それにかわる施設は何かやらなくてはならぬ。しかしこの仕事そのものは、公共事業であるかどうかというようなことになりますと、相当これは疑問があります。公共事業というとおかしいのですが、水道的なものであり、工業用水でありますれば、場合によつては、その建設費は、水の売上げ代金からでも補給できるというような問題もありますので、これは今後相当研究してみなくちやならぬと思うのであります。
  72. 砂間一良

    ○砂間委員 工業用水の取入れを公共事業としてやるかどうかということは、それは十分御検討になつていいと思うのですが、少くともあそこは非常な工業地帯でありますから、今後ますます産業が発展して行きますと、地下水のくみ上げということがますます盛んになつて行くと思います。そうすると地盤沈下ということはどんどん進行して行く。従つて今後発生する災害に対しても、その災害が非常に激甚化するということになるのでありますから、ぜひその点について、ひとつ根本的な対策を考えていただきたい。單に目先の姑息的な手段でなくて、そこまでひとつ考えていただきたいということを要望しておきます。  次に防潮堤のことについてでありますが、さつき瀬戸山委員の御報告にもありましたように、防潮堤が完全にできているところでは、あの高潮被害が防がれた。ところがいずれも高さが低いとか、あるいは不完全であつたためにああいう大きな被害なつたという御報告があつたのであります。でまず最初にお伺いしたい点は、この防潮堤の維持、補修について、これは單に大阪やあの辺だけではなく、全国に海岸堤防、あるいは干拓堤防というものがあると思うのでありますが、この堤防の維持、補修ということについて建設省はどれだけのことをやつて来たか。またその予算は年々どれくらい支出しておられたかということをまず最初にお伺いしたいと思います。
  73. 目黒清雄

    ○目黒説明員 海岸堤防全体のお話をしますと、これはもう御承知かもしれませんが、海岸堤防というのは、戰前はその土地の所有者、いわゆる地主がこれを管理したのであります。従つてそれに対しては国がめんどうをみる必要がなく、地主それ自身がやつておつたということ、しかも貧弱な海岸堤防をそのままにしてあつたという現状であります。終戰後は事情がかわりましたから、これらの維持管理の責任は府県知事に移つたのであります。移つたところもありますし、依然として移らないところもあります。いわゆる府県管理の海岸堤防にかわつたところが多いのであります。そこで大体府県管理の海岸堤防という形で現在はあります。それでこれに対して国は何とかせねばなるまいということから本年度の予算から海岸堤防費というものを計上しまして、一定計画のもとに補助をして改修をして行きたいというのがその計画であります。従つて海岸堤防というものを国として重要に取上げて来たのは本年からということに相なると思います。それでありますから、全国海岸堤防は非常に危殆に瀕しているというのがもう明らかであります。
  74. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 砂間君に申し上げますが、ひとつ……。
  75. 砂間一良

    ○砂間委員 ちよつと関連……。
  76. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 いや、三段論法ではなくて、率直簡明にお願いいたします。
  77. 砂間一良

    ○砂間委員 全国の海岸堤防が危殆に瀕しているということを河川局長は今申されましたけれども、こういう事実を知りながら、それを何うこれまで国が身を入れて維持補修ということをやつて来なかつたというところに、私は政府の大きな怠慢があると思うのです。これは單に関西の地方だけではありません。今度のキジア台風被害報告を聞きましても、風はそれほど強くはなかつた。しかし高潮によつてずつと九州沿岸なんかが非常に大きな被害をこうむつておる。これを府県の管理にまかせつきりにしておくこと、あるいは府県の管理すらもやつていなくて、地元の人たちが非常に不完全なる形で自力でやつておる。それを見てそのまま放置しておく。こういうことが今度の災害の大きな一つの原因になつておると思う。で、これは過去においてもそうであつたし、この現状のままに放置しておくならば、今後起つて来る災害に対しても非常に危險を感ぜるを得ない。割合に河川災害の問題とか、あるいは山林砂防というふうなことは、不十分ながらも一応取上げられておりますけれども、海岸堤防、特に日本は太平洋岸に面し、あるいは日本海方面も全部海に取囲まれておるわけでありますが、年々台風が襲つて来る。そうしてこの高潮ということがあるわけでありますが、それに対して海岸の防備が非常に不完全であるということは、台風国として非常に憂慮すべきことだと思う。こういう方面に対して、もつとひとつ政府は今後積極的に取上げて、海岸堤防の全般的な維持補修、その増強ということをやつて行かれる意思があるかどうか。この点をひとつお伺いしたいと思います。
  78. 目黒清雄

    ○目黒説明員 砂間さんにお答えいたしますが、今までどうも何もしておらなかつたというわけではないのです。たとえば東京あるいは大阪高潮防堤は、農地注ではなく、都市法でありますが、これらはすでに東京都、あるいは大阪府、大阪市というものがおのおの管理しておりまして、これはやつておりました。従つてそれに対してはいろいろな助成の道も講じて来ておつたのであります。ただ干拓しました大きな農地保護の海岸堤防といいますか、これは昔大地主がありまして、これらを一括所有しておつた関係で、これらの管理は地主にまかせておつたのでありまするが、これが農地改革とともに農民の手に渡り、今度は国、県が管理をすることになつた、こういうふうな経過をたどつて来ておりまするので、今まで大地主が管理しておりました海岸堤防府県管理に移つたのが非常に多いしかもこれは相当危險な状態にあるというので、これではならぬというので、この海岸堤防の積極策を本年度から講じておる、こういうふうなことなのであります。もちろんこういうふうなたくさんの海岸線を持つておりますので、将来ともこれに対しては力を入れて行かなきやならぬと思つております。
  79. 砂間一良

    ○砂間委員 とにかくいろいろ申されておりますけれども、不十分であつたということは今度の台風被害によつても明瞭になつていると思うのです。いろいろな言訳はしないで、積極的にひとつ大いにやつて行くというふうに言われたらいいと思います。  その次に住宅の問題についてお伺いしたいと思うのですが、先ほどいただいた資料によりましても、全壊、あるいは半壊その他破損をこうむつた住宅は、ジエーン台風キジア台風の二つの台風被害だけでも、約六十二万戸、二百二十億近い被害をこうむつておるわけであります。この六十二万戸の被害に対して、先ほど企画課長の御説明を聞いておりますと、六千戸の災害応急住宅を建てる予定だということになつておりますが、しかしそれもまだ予算の面等で今年度どれくらいできるかおぼつかないわけであります。しかし六千戸を建てたといたしましても、まだ家のない人が――中には自力で建てて行く人もありましようけれども、勤労階級とか、大多数の罹災者は、やはり家ということについて一番困ると思うのです。そうするとこれから寒くなつて行くときにおいて、まさか野宿もしておられないと思いますが、これを一体政府はどうするつもりなのか、金がないからしかたがないといつてほつておかれるのか、どうするつもりかということをまずお聞きしたいと思うのです。
  80. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 この問題は、同じ趣旨の問題で瀬戸山君から御質問になつて、現在予算折衝中だというお話でございますが、発言者もまだ次に相当あるのです。どうです、もう一ぺんお答え願つて次にお譲り願います。
  81. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 お答えをいたします。午前中申し上げましたように、六千四百戸余りの応急住宅の新設を計画いたしまして、目下それぞれ予算化について折衝中であります。この点は先ほど安本の公共事業課長からもお話がございましたように、すみやかに具体的に決定すべく取運びまするようになお一層の努力をいたします。なおそのほかに既設の公営住宅の被害をこうむつたものにつきまして、復旧の予算もあわせて要求中でございまして、これらを全部合せまして、総額約十四億円の予算を目下折衝中でございますから、御了承願います。
  82. 中島茂喜

    中島(茂)委員 安本の方にお尋ねをいたしたいのでありますが、従来災害復旧費の支出がはなはだしく遅延いたしまして、地方公共団体はもちろん、被害地の人々が非常に困つておる事実は、本委員会におきましてもしばしば同僚委員から強調された点であります。しかるに本年の雪解けの災害復旧費が――雪解けの起りましたのは、四月、五月の初めであつたにもかかわらず、先月決定されたかのように聞き及んでおりますが、こういう事実を私どもが考えてみます場合に、いまだに政府当局におきましては復旧費支出に適正を欠いておると結論せざるを得ないのであります。この復旧費の早期支出に対しての安本の考え方を承りたいと思います。  なお時間の関係で続けて質問事項だけを申し述べておきます。先般のキジア台風に対する復旧費は、新聞紙の報ずるところによりますと、本年度災害予備費の中からこれを支出するというように私どもは聞いたのでございますが、これに対しまする安本の方針を承りたい。  なお災害予備費で不足します分は、補正予算で考えておられるのか。考えておられるとすれば、補正予算は次の国会にかかるわけでありますが、災害の予備費から出すということになりますと、大体いつごろ出される予定なのか。その三点を伺いたいと思います。
  83. 中尾博之

    ○中尾説明員 災害復旧費を早期に出さなければいかぬということは、最近特にその必要を感じておりまして、経済安定本部当局といたしましても一番苦慮いたしておるところであります。しかしながらやはりこれは予算でございまして、災害の調査ができ、それから復旧の設計ができ、しかもこれが末端から順々に出て参りますのを、一応関係の責任省で査定をいたしまして、それが安定本部に集まつて参りまするのを見て金をつけるわけであります。しかも御承知の通り、復旧費の所要額に対しまして、その年度復旧いたしますものの余力というものに限りがございますので、その按分が問題になるわけであります。その際に各府県、各事業部門ごとに同じ速度で、同じような條件でいろいろなものが集まつて参りませんと、なかなかこれが適正に参りません。そうかと申しまして、完全なものを待つておりますると、いつまでたつてもなかなかできない。従つてどこら辺でもつて腹をきめて出すかということが一番苦心を要する点でございます。いささか事務的な御説明で恐れ入りますが、実情はそういう点が一番苦心のいる点なのであります。従来でございますると、大体設計ができ、それを関係各省が査定をいたしまして、それに対して金をつけるという順序でありましたが、現在のところでは、まず被害報告を基礎にいたしまして、それからいろいろな従来におけるところの査定等を勘案しまして――、山をかけておる県もあり、比較的正直な県もあり、そのほか前後縦横からかけてみたり、割つてみたりして洗いまして、おおむね査定をいたさばこういう姿であろうというところの見当をつけまして、さらにそれの緊急性をいろいろ勘案いたしまして、いわば腰だめで出しておるわけであります。しかもこれがあとで調整を要しまするので、ほんとうに出し参りまする結論と著しく食い違いますると、非常にまた困難な問題を生じます。そこでそういう作業のために相当な時間がかかるのであります。そんな関係災害が起きて、すぐそのあとでその金をつけるというわけには参らぬのであります。急いではおりまするが、苦干遅れます。そういう事務の運び方についてはさらに研究を要する点があるかもしれませんが、いわゆる予算でありまして、やはりその配分ということが一応適正公正な形になつておらなければなりません関係上、若干の時日を要するという点につきましては御了承を願いたいと思います。ただしこれらの作業の実施そのものにつきましては、事務当局といたしましてもできるだけ急ぎまして、あらゆる手だてを盡しまして、事務をやつておる次第であります。  次はキジア台風の経費を予備費から出すかどうかというお話だと存じます。これは正直なところ、現在までの災害の発生状況――結局キジアまででございますが、これをとりまとめまして、さらに冬季の風雪害といつたようなものを勘案いたしますと、今年の百億の復旧費をもちましてはあまりにも復旧の速度がおそいという関係がございまするので、補正予算を要求いたしておる次第であります。これはある程度交渉が進んでおりますが、まだ確実な見通しを得るに至つておりません。従いまして、事務的な作業といたしましては、今これの見通しを固めることに努力をしておりますが、いずれにいたしましても、これの見通しさえ得られれば地方でもある程度の仕事ができろのであります。他方におきまして、使えることになつているところの百億円の予備費を、ジエーンキジア、それからそのあとに起る若干の災害とに割りふるという作業を暫定的にやらなければいかぬということで今やつている次第であります。現在のところジエーンの万は各省の査定が大体手元に集まつております。ただしこれはいずれも机上の査定であります。しかも査定をしたその査定官がいずれも違いますので、さらに検討を要するので、これを検討いたしております。近くこの分はその査定額の検討を終えまして、さらにそれに必要ないろいろな調整を加えましてジエーンの分を出すということになつておるわけであります。キジアの分はまだ査定の集まつたものはございません。要するに現地で設計をいたしておるわけであります。大体このくらいいるという分が出て来るわけであります。災害の方の報告は参つておりますが、復旧費の方の査定が済んでおらぬわけであります。これを早急に出さなければなりませんが、ある程度各省で責任をお持ちになつて、査定をしたらこんな姿になるであろうといつたような数字でもまとまつて参りましたならば、それをまた大まかなところでいろいろ検討を加えまして、これも出すことになります。順序はそういうことになりますが、ジエーンの方はそんなようなぐあいでありますから、ここ数日のうちに目鼻がつくと思いますが、キジアの方はそのあとになるという段取りになります。
  84. 中島茂喜

    中島(茂)委員 大体了承いたしたのでありますが、キジアの方の復旧費支出は大体いつごろになる予定かは今のところ見通しはつきませんか。
  85. 中尾博之

    ○中尾説明員 ちよつとまだはつきりいつごろということも申し上げられません次第であります。ただ来月に入りまして、おおむね各省の査定が手元に入つて来ると思います。入つて参りましたら、これを縦横に比べたり割つたりして、すぐに案はできるわけであります。いずれにしても補正予算成立前に、これを何とか早いところ出したいと考えております。
  86. 中島茂喜

    中島(茂)委員 ただいま防災課の方から、各被害地に出張されまして、おのおの査定が行われておるということは、防災課長から承つたのでありますが、緊急やむを得ない復旧工事箇所があると思うのであります。そういうものに対しまして、ただいまの御説明では、来月に入らなければ、はつきりした見通しがつかないというようなことでありまして、地元の方ではそれまで待てないという実情があるのでありますが、これに対しまして預金部資金等を融資されるというような考え方があるかどうか、それを伺つておきたいと思います。
  87. 中尾博之

    ○中尾説明員 緊急部分につきましては、融資でつなぐということを従来いたしておる次第でありますが、この融資の方は、実は非常に急いでやりまするのと、それからその配分その他につきまして、ほとんど的確な資料が得られない時期にありまする関係上、大分内輪に出しておるのであります。融資につきましては、実はもう預金部の短期融資の余力をはき出して、全部つけておる次第であります。もつともこれは、そういうふうに内渡し的な、前貸し的なものでありまするから、すべての県に全部まわるというふうに参りません。被害の重なつたところ、あるいは大きなところにまわしまして小さいところは、これは結局一時県金庫の方で融通をしていただいてやるということを予定いたしまして、がまんをしていただいておる、こういう実情であります。
  88. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私の質問は、本日の議題であるキジア台風その他の被害に対する政府対策を質問する、そういうのとちよつと違うのでありますが、御了解を得て質問したいと思うのであります。  第一には、この間千葉県の東葛飾郡の利根運河の工事に従事しております労働者を、約五百人突如として首切りをやつたのであります。工事を中止して首切りをやつた。どういうわけでこういう大きなことを建設省ではやつたか。建設省の自動車を三台動員して、それに約二百名からの警官を動員して、そうして労働者を五百人うむを言わさずに解雇した。これをお聞きになる皆さんは、そら始まつた、共産党が煽動したからしかたがない、こういうふうに思われるだろうということは、私も知つておる。しかし俗に火のないところに煙は立たぬ。すべて火事が起るには、その原因がある。いかに風が吹いてあふつたからといつて、火事が起きるものではない。風が吹いているところに、たまたま火事が起る原因があつたから、火事が起る。だからして、これを共産党が煽動したからということで片づけるのは、物の本質を見ないところの言であるといわなければならぬ。やはり根本的な問題がなければならぬはずである。工事の現場において、労働者に対していかなる待遇をやつていたか、いかなる実情にあるか、そういう点を建設省としても十分お調べになつていることと思いますから、詳細な御報告を願いたい。これが第一です。
  89. 目黒清雄

    ○目黒説明員 ただいまわれわれのところに報告を受けておりまするのは、利根川の工事がなかなか思う通りに進まぬということと、その労働者の能率が非常に低下してしまつたので、これではいくら金があつても足りぬから、何らか方法を講じなくちやならぬということで――これはずいぶん前からのお話で、おそらく二、三箇月前からそういう話を聞いている。そこで何とかしなければならぬといつて、しかし何とかしなければならぬといいながら、相手が善良なる労働者である以上は、大いに働かして、使つてみたらどうかといつてわれわれは督励しておつた。そうしたら途中で仕事をやめたという報告を受けたのでありまして、あまりその辺の詳しい事情は私どもに報告がありません。あるいは現場の方はわれわれに報告しないでもいい程度のものとして報告しないのかしれませんが、そんな程度にしか承知しておりません。
  90. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 この五百人からの労働者が首切られた、こういう事件に対しまして河川局長が詳細なことはわかつておらないということについては、私はなはだ遺憾に思う次第でありまして、当局として至急にその原因を調べてもらいたいと思います。私調べたところによりますと、これは自由労働者の方が惡いのではなくて、実はここに根を張つている相当のボスどもがいる。これがことしの五月から土木工事を利用して莫大な不正をやつた。ところがここに自由労働者の組合が結成されましてから、こういうボスどもの不正が片つぱしから労働組合の手によつて摘発されて行つた。たとえば運河の近くに大きな料理屋で新川屋というのがありまして、ここで毎晩のように飲み食いをやつておつたという連中が、五月に自由労働者の組合ができてから以来は、この料亭に上つて酒を飲むようなことができなくなつて来た。あるいは幽霊人夫あるいは人夫賃金のピンはね――これはどこの現場にもあることでありますけれども、こういう事件が次々に明るみに出てしまう。さらにまた自由労働組合のできる前は、盛んに枕木の横流しその他の不正も行われていた。それから監督は人夫をまるで牛馬、奴隷のごとくこき使つていたが、組合ができてからというものはそういうこともできなくなつてしまつた。こういうことが原因になりまして、この自由労働組合などができてしまつたのでは困る。大体これはおれたちのふところを暖める種がなくなつてしまつては困る。そこでこれが原因となりましてこれが建設省の現場の役人と一緒になつて自由労働組合を彈圧する。そうして一挙に五百人を首切る、こういうようなことが起つた。私はこういうふうに調べて来ておるのでありますから、この原因につきまして、もしあなた方が、いやそうではない、これはこういう原因であつたのだというならば、やはり事の真相をあなたたちの立場から徹底的に調べていただきたいと思うのであります。さらにまたもう一つ考えられることは、この近所で、特殊の、特需工事というのでありましようか、軍事基地というのでありましようか、こういうものがつくられているそうであります。あるいはつくられる計画なつておるか、とにかくそういうものが今進行中である。そこに働いている労働者に対して、この利根運河の労働者の運動が、波及するというようなことになつてはたいへんだというので、この際これを彈圧してしまおう、こういうことも有力な原因になつているというふうに聞いているのであります。従いまして、この五百名の労働者の首切りという問題は、きわめて大きな政治的な問題をも含んでいるのでありますから、ぜひとも当局においても調査して、本委員会において報告されんことを希望する次第であります。同時に委員長にお願いしたいのでありますが、本委員会におきましても、とにかく五百名の自由労働組合員を全員解雇するというようなことは、これはいまだかつてない事件でありまして、労働者には労働組合をつくつて団体交渉をやる権利は十分あるはずであります。こういう権利をじゆうりんいたしまして、そうして全員首切り、言うことを聞かない者は首を切るぞというような……。
  91. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 池田君、池田君に申し上げますが、聰明なる池田君でありますから、御注意をしないでいようと思つたのでありますが、今日の議題は、ジエーンキジア台風災害関係に対する質疑の続行でありますので、それ以外の件は発言を御中止願います。
  92. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 こういう労働組合というものを彈圧するというような方法によつて、ジエーンキジア台風災害復旧というようなことをやるのでありますならば、これははなはだ至るところにこういう問題が起つて参りまして、そうして工事の進捗を妨害するというような結果になると思いますから、この点につきましても、当局に対して注意をしておきたいと思う次第であります。委員長においてもぜひともその現場の調査を考えていただきたい。これが第一であります。  第二の問題は、これは大臣が来てから大臣に質問した方がいいと思いますけれども、私時間がございませんので、局長あるいは住宅局の人でもけつこうですが、お伺いしたいのは、先ほどから問題になつているように、ジエーンキジア台風で各所に住宅問題あるいはその他の問題で切実な要求がある。これはなかなか政府の方で怠慢でやらない。やらないにもかかわらず、一方この建設省では警察予備隊の庁舎をつくるのに、その設計とか監督を建設省の役人がおやりになつておる、こういうことを聞いておる。先ほど中尾公共事業課長も、実際現在定員にも足りないような手不足だというようなことをおつしやいましたけれども、警察予備隊庁舎というものは、公共事業ではありません。公共事業ではないはずだ、こういうことを建設省が設計したり監督したりしてやつておる。さらにまたこの警察予備隊には予算がないはずだ。警察予備隊に予算がないので、超過勤務手当だとか旅費というようなものは四月から労働者に支拂つていない。労働者もそのために非常に苦しんでおる。こんな仕事を――災害や一般公共事業の、今当然やらなければならないところにやるべき金をやらないで、警察予備隊の庁舎を建設するために、これを立てかえてやるというようなことが許せるかどうか。これははなはだ重要な問題だと思うのです。どのくらい今立てかえたか知りませんけれども、立てかえておるとすれば、これははなはだ重要な問題だと思う。従つてこの問題に関してどういうふうにお考えになつておるか、これは事実かどうか、ひとつお答え願いたいと思います。
  93. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 大臣でなければ答えられないそうでありますから、後刻大臣が参りましてから……。
  94. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 大臣だけ知つておるということはないでしよう。やはりそういう事実があるということだけは、あなただつて知つておるはずだ。知らないはずはない。だからいいか惡いかということを大臣からお答え願います。しかしそういう事実があるかないかは知つておられるはずです。
  95. 中尾博之

    ○中尾説明員 公共事業費につきましては、まず予算の配付をいたしまして、そのほか個々の支出につきましては――予算の実行額、これにつきましては、全部各省別に経済安定本部の認証をもらつておる。その経済安定本部の認証の計画に従わないと、小切手をくれません。金も使えない次第です。公共事業費に関する限り、これを他に流用いたしおるということは制度的に不可能であります。もしそういうような事実があるとすれば、それは何か不可能なことをやつておるということになる。私はそういう話は全然聞いておりません。また方針として政府がそういうふうにやつておるということも承知いたしておりません。
  96. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいま予備隊の庁舎の問題がございましたが、営繕部は御承知の通り公共事業での建設ばかりでなく、たとえば專売公社の建築の委任を受けまして、委任支出によつて工事をいたしておるという制度も従来からあつたわけでございまして、警察予備隊の工事を委任によつていたしますことは法規上にもさしつかえないものと考えておりますが、また私が説明いたしました理由は、ただいま公共事業課長からお話がありましたが、公共事業事業費を立てかえてやつておるのじやないかというふうにお考えになつての御答弁かと思うのでありますが、そういうことはできないはずであります。公共事業費の方の旅費に予備があつた場合に、旅費を使つておるということがありはしないかと思いますが、この点は実は営繕部でないとはつきりいたしません。営繕部で確かめてみたいと思つておりますが、予備隊の仕事を営繕部でやつていけない、制度的にやつていけないというわけではないということだけを御承知願いたいと存じます。
  97. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 その点についてはあとでまた詳細に営繕部からお聞きいたします。  それでは第一の問題である利根運河の五百名首切り、これははなはだ社会問題として重要なんです。ですからそういう意味で事の詳細を御報告願えましようかどうか、御答弁願いたい。
  98. 目黒清雄

    ○目黒説明員 いずれ現地を調査いたしまして御報告することにいたしたいと思います。それはこの次の会議に……。
  99. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 次の委員会ばかりではなく、なるべく早く……。
  100. 田中角榮

    田中(角)委員長代理 次回の開会日時につきましては、追つて理事会にはかり、公報をもつて御通知申し上げることとし、本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時三十九分散会