○下岡会計檢査官
会計検査院といたしまして、
公団の
会計検査は、その会計
経理の適正を期し、是正、
改善をはかる目的をも
つて、
公団経理の実態に即応しながら実施して参りました、ただいま
事務官以上五十一名、書面の
検査を常時や
つているとともに、随時実地
検査も行
つております。今日まで疑問の点に関しまして
公団当局または
監督官庁に対しまして文書をも
つて照会を発した
事項はおよそ千三百件に及んでおりまして、このほかにもときどきに実地
検査の者がその場所に参りまして、質疑あるいはまた口頭をも
つて絶えず注意した
事項、これは非常にたくさんある次第でございます。今まで
検査員が
会計検査の主眼としていた
事項及び
検査成績の
概要については、詳しいことはお手元に差上けた書類をごらんくださればおわかりと思いますが、
公団の発足当時は、実は御
承知の通り、人件費、
事務費をまかなう財源とか、あるいは
業務用の固定資産の保有限度とか、いろいろな
公団に関する
経理の基本
事項が定まらなか
つた。そういうようなことで非常に
事務がこんとんとしておりまして、
検査院といたしましては、その
経理制度を整備確立させるという必要を認めまして、ときには
監督官庁に対してこれが
改善方の意見なども表示したりいたしまして、
経理を軌道に乗せるということに非常に力を尽してお
つたのでございます。その結果、いろいろな
法令制度に違反している
事項とか
法令定款に違反している
事項とか、あるいはまた不当と認める
事項なども相当あけたわけでございますが、詳しくはお手元に差上げましたものでごらん願いたいと思います。それには御
承知の新聞などもよく賑わしておりますが、收納が非常に遅れている、
支払いが非常に遅れている、そんな
関係でも
つてやはりとかくいろいろ不正
事件の生ずる温床になるというようなこと、あるいはまた資金が
公団に滞留していることのためにやはりいろいろな不正の
事件の温床に
なつているというようなことを
検査の結果摘発したものも相当あるのでございます。それからまた
公団の現品の把握が十分でなか
つたために、現品と実際の
帳簿とが食い違
つている、その管理が妥当を欠いていたという
事件も相当たくさんございます。そのおもなものについてはお手元に差上げたものでごらん願います。また
事業費についても、ややもすると
法令または
定款の
規定などに違反してこれを目的外に使用したり、あるいは放漫な使用を行う傾向がいちじるしくございましたので、その節減と適正な使用を期するため嚴重な検討を加えさしております。そういう事柄についておもな
事項もお手元に差上げたものでごらん願います。そのほか商品などの売却に当つれ、
価格の改訂あ
つたにもかかわらず昔のままの安い値段でも
つて売
つてしま
つたとか、そのほかいろいろ
措置が妥当でないために、会計
経理の適正を欠いて
公団に損失をかけているというようなものが相当ございます。これもお手元に差上げた書類でおもなものはごらんを願います。もちろんこれ以外にもこまかいことについては相当たくさんあるわけであります。
公団の
決算の概況もお手元に差上げたもので大体おわかりと思います。
会計検査院は
法令の
規定によりまして
公団の
決算を
承認するということに
なつておりまして、二十四年度についてはまだこちらの手元に参りませんから
承認、不
承認というところまでに至
つておりませんが、二十三
事業年度について申しますれば、
検査院が違法あるいは不当と認めて
承認を与えなか
つた事項が各
公団を通じて合計百三件ございます。お手元の資料にも書いてありますが、二十三
事業年度において
承認を行わなか
つた事項にはどんなものがあるかということを分類別にして見ますと、第一に資金を目的外に使用したもの、十七件、商品
代金の
徴收措置が妥当でなか
つたもの九件、経費の使用が妥当でなか
つたもの十五件、たなおろしが妥当でなか
つたもの十三件、
決算の整理が妥当でなか
つたもの四十一件、その他八件、合計百三件と
なつております。もちろんこういう中に
検査の結果気がつきまして事前に是正をさせたという
事項もたくさんあるのでありまして、それについてもお手元に差上げたものの中におもな一、二の事例を書いてありますがそれをごらんを願います。先ほども申し上げましたように、
公団の二十四
事業年度の
決算はまだほとんど結了に
なつておらない
状況にあるので、
会計検査院としてはその促進方について厳重注意を与えておりますが、二十四年度の会計に対する
検査はできるだけ早く済ませたいと存じまして目下努力中なのであります。今残存しておる
公団も
清算中の
公団も、御
承知だと思いますが、
職員が動揺いており、あるいはまた有能かつ
責任に富んだ
職員が減少しておるということや、定員が縮小しておるというようなことのために、
事業面も
経理面も
事務能率の低下が著しくございます。特に合計
経理措置の不円滑と
事務の渋滞ははなはだしいように認められております。二十四
事業年度及び油糧配給
公団については二十三
事業年度の後期の分が
承認を留保してありますので、その後今日まで行
つた検査の結果について見ますと、すでに
検察当局で摘発したたくさんの不正
事件はしばらく別といたしまして私が先ほど申した資金の
経理については、正規の
帳簿外に個人名義の預金口座を設けて運用したものとか、資金を
職員の生活資金として
貸付けたもの、資金が取扱い
銀行に入金済に
なつておるのに、長い間
公団の預金として記帳整理を遅滞したものとか、二重
支払い、解約などによ
つて、返還を受けなければならない保険料金などの
回收をわざと遅らせて
業者に資金の融通をするものも相当たくさんあります。また商品の方を見ますと、商品の管理処分について、
公団が保有または保管しておる
物資を
業者に委託して保管させ、
監督よろしきを得なか
つたため
業者のほしいままに処分することに
なつてしま
つて、その
代金の
回收が困難に
なつておるものとか、あるいは
価格の改訂後に低廉な
価格で売り払
つたものとか、特定産業向けの安い石炭に対する
価格調整補給金の
廃止の前後において、割当て発券を予定を越えて石炭を値引きして、
業者に利益を与えたものとかいうような
事件も相当にございます。また商品の
代金の
徴收とか
支払い及び経費の使用というような点について見ますと、
予算を著しく越えて使用したもの、諸掛りなどの
支払いにあた
つて、これと
売掛金とを相殺して払わなければならぬものを、
支払いだけの方は済ましておいて、
売掛金の方の
回收はそのままにして、
回收を困難ならしめているようなもの、あるいはまた
事業費を
予算の目的外に使用して、
職員の
給与を増加したというようなこと、あるいはまた
公団の
解散の直前に、不要な物品をわざわざ買
つて、
公団のために損失を与えた、あるいはまた物価事情の変化などを考えないで、運送費などを昔の高いままの運送費を払
つて平気でお
つたというような
事件、そのほか商品のたなおろしとか、
決算の整理が妥当でないものが相当多うございます。
さて各
公団を通ずまして、その会計
経理に関しまして不正
事件が続出いたしましたことは、会計
監督の
責任にあるものとして、
会計検査院としてははなはだ遺憾にたえないところでございますが、元来
会計検査におきましては、会計の
経理の適正を期し、是正
改善をはかることを会計
監督の第一目的としているのでございまして、不正
事項の摘発ということは実は副目的であ
つて、第一目的ではないのでございます。従
つて公団の
検査につきましては、初めの間はその会計の
経理を軌道に乗せることが先決問題であ
つたのであります。これに重点を置かざるを得なか
つたのでございまするが、しかしながら最近
公団の
解散も次々に行われ、不正
事件の頻発もあるので、
検査の重点をこの不正事犯の検討、精査ということに向きをかえまして、たとえばある
事件について疑わしいと思えば、
公団の内部の
帳簿とか物品を調べるばかりでなく、たとい
会計検査院に権限はなくとも、相手方の取引先などに行きまして、その協力を得まして、金錢、商品の
調査、取引の真正かどうかという
調査なども徹底的にや
つて、も
つて不正
事件などの究明を期している次第でございます。
会計検査院として二十五年六月末現在で
公団当局から
報告を受け、または
検査の結果摘発をしたものだけでも、
公団の
職員等により、
横領または騙取されたと思料される総
被害金額は概算六億七千万円、これはごく内輪に見積
つているのでございますが、このうち
回收済額を除いた実損額は概算二億二千余万円、こう踏んでおります。不正
事件の一千万円以上のものについてはお手元に差上げてありますから、それでごらんを願います。
次に、それでは
会計検査院としてこれから将来どういうところに重点を置いてやるかということについて申し上げまするが、従来のやり方のほかに、特に留意を要する
事項といたしましては、御
承知の通り
公団が次々に
解散されて参る。その
解散前後の会計
経理の秩序が保持され、
解散公団の
清算事務が迅速的確に処理され、そうして
公団会計の損失が国の財政負担となることのないように、会計
監督上私どもは最善を尽して行かなければならぬことはもちろんでございますが、これらの観点から特に一、二重点を置きたいことについて申し上げると、第一に滞貨の処理、
昭和二十五年の三月末における
公団の滞貨のおもなものは、これも新聞で御案内と思いますが、二十五年の三月末で見ますと、
鉱工品貿易公団二百九十四億、繊維
貿易公団三百八十四億、油糧、砂糖配給
公団百億というような、そのほか非常に莫大な額に達しておるのでございますが、この滞貨の処分の適否ということが、
公団の損益に重大なる結果を及ばすことは明らかなのであります。こういう巨額の滞貨を生ずるに至
つた原因については、いろいろやむを得ない事情があるとは申せ、この保管による品いみだとか、保管費、その他諸掛の増大のため、
公団が受ける損失というものははかりがたいものがあるというべきでありまして、特に滞貨の処理が適正に行われるかどうかということについては、厳重に
検査をして行きたい、こう期しておる次第であります。
それから次に
売掛金の
回收の問題でございます。各
公団を通じた
売掛金の二十五年の三月末の見込みの
残高によりますと、全部で四百八十億円ばかりの
売掛金がございます。内訳について見ますと、繊維貿易が一番多くて百三十四億、
鉱工品貿易公団百四億、配炭
公団百七億、
価格調整公団五十三億というような相当大きな
売掛金がそのままに
なつております。
売掛金の
回收促進について、絶えず嚴重に今までも注意を与えておる次第でございますが、その成績は必ずしもよろしくございません。お手元に差上げました資料でも、おもなものについてごらんになる通り、遺憾ながら妥当でない
事項が相当多いのでございます。
売掛金の
回收措置が適切でなか
つたため、
公団債権の確認上支障を来しまして、特に
解散公団の
清算事務の円滑な処理を阻害している事例がはなはだ多いのでございます。そういう点については、今後特にまた意を用いて
検査をして行きたいと思うのであります。以上御
報告いたします。