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1950-10-20 第8回国会 衆議院 経済安定委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月二十日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 圖司 安正君    理事 志田 義信君 理事 多田  勇君    理事 勝間田清一君       金光 義邦君    寺本  齋君       細田 榮藏君    宮原幸三郎君       村上 清治君    有田 喜一君       森山 欽司君    松尾トシ子君       高田 富之君  委員外出席者         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         大蔵事務官         (理財局見返資         金課長)    大島 寛一君         大蔵事務官         (銀行局預金部         資金課長)   加治木俊道君         通商産業事務官         (通商局長)  黄田多喜夫君         通商産業事務官         (資源庁電力局         需給計画課長) 佐伯 貞雄君         経済安定政務次         官       小峯 柳多君         経済安定事務官         (産業局電力課         長)      澤田  達君         経済安定事務官         (財政金融局         長)      内田 常雄君         経済安定事務官         (物価庁第三部         動力課長)   藤田  勇君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      一萬田尚登君         專  門  員 圓地與四松君         專  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 十月二十日  委員川上貫一君辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長の指名で委員に選任された。  同日黒田寿男君が委員を辞任した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  経済緊急政策に関する件  電力問題に関する件  参考人招致に関する件     —————————————
  2. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまより会議を開きます。  この際お諮りいたします。経済現況と最近の金融事情について参考人として日銀総裁萬田尚登氏を本日の委員会に招致いたし、御意見をお伺いいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めます。それではただいまより参考人萬田尚登氏より経済現況と最近の金融事情について参考意見を聽取いたします。一萬田参考人
  4. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 最近の金融情勢につきまして若干お話を申し上げます。最近の朝鮮事変契機といたしましてどういうような変化日本経済に起つているか、従つてこの金融政策というものが、これに順応してどういうような変化をしておるかというような筋書きでお話をしてみたいと思います。そのそめには、この朝鮮事変の起る前の日本経済状況はどうであつたかということを、一応ごくかいつまんでお話しておかないと、どういうふうに変化したかわかりにくいと思いますので、それについてまず申し上げます。  朝鮮事変前の日本経済は、御承知のように二十四年度の予算の執行以来、いわゆる経済の安定ということを中心に押し進めて行つたのです。そうしてその目的とするところは、輸出振興によつて資本蓄積をはかり、日本経済復興をさらに進めて行く、こういう段階、こういう方針にあつたのであります。これがすべてドツジ・ラインであります。ドツジ・ラインというものは、何も緊縮予算とか、あるいは金融の引締めというようなことではないのであります。結局輸出振興資本蓄積機会を求めて日本経済復興しようというのがドツジ・ラインであります。言いかえれば、ドツジ・ラインは非常な彈力性を当初から持つている。そうしてそういう方針の実行は朝鮮事変前におきまして、おおむねそういう方針で進んで参つて、特に経済安定——経済の安定というのは少し言い過ぎかもしれませんが、通貨の安定、インフレ收束ということは十分効を奏したのであります。ただ、さらに進んで輸出振興という段階におきましては、これは相手の国があることであります。また今日日本が置かれている状況等からいたしまして、除除に伸長を見つつあつたのでありますが、思うように必ずしも伸びないという状況にある。これは経済的にはどういう現象形態になつて現われておるかと言えば、当時いわれておりましたように、滞貨がある。メーカーの手元滞貨がある、あるいは問屋の手元滞貨があるという現象形態を呈しつつあつたのであります。金融の面における現象といたしまして売掛金、他の言葉で言えば、同じでありますが、未拂い、こういう状況が起つてつたのであります。こういう場合に、結局輸出振興をいかにはかるかということは、産業合理化を一層推し進めて、生産コストを下げ、そうして海外において日本商品は十分に競争し得るということで、輸出振興して行く。そのためには当時の状況からいたしまして、金融政策としては、やはり締めなくてはならない。いわゆる合理化を推し進める。物価もなるべく低位に持つて行く。こういう政策が、当時やはり見通されておつたのであります。こういう状況は端的に申し上げれば、当時こういう状況がもしも進むとすれば、日本経済はどうなるであろうか、という心配がありましたことは御承知通りであります。むろん、であるからといつて日本経済が非常な混乱に陷るとか、崩壊するとかいうことは、私の当時の考えでは絶対にあり得ない。ただ苦しさが一層増すであろう。一層苦しいという状況はこれはやむを得ない。輸出打開のためにやむを得ない。こういうのが当時の日本経済の大まかな状況でありました。このときに朝鮮事変というものが起つたのであります。そこで、輸出に悩み、あるいは海外商品の売りさばきに悩んでいるところに、需要増大して来るという、非常にいいチャンスに恵まれた。いわゆるこれが特需という形で、日本物資需要を喚起したのであります。むろん、そればかりではありません。この朝鮮事変の性格というものは、要するに国際情勢が大きく動いている。その一つ現象にすぎない。不幸にして、今日世界が二大陣営にあることはいうまでもありませんが、このはげしい闘争といいますか、その争い——これは何も今に始まつたことではないのでありますが、この闘争が、朝鮮事変契機としてアメリカの決意がはつきりして来たという点において、非常に重大な意義がある。そうしてみると、今後の世界情勢見通しとしては、経済的には、どうしても防衛態勢強化から来る物資需要というものが、相当持続的に続くであろうということが想定されるに至りました。そこで日本物資に対しましては、特需という形で、当面朝鮮事変によつて直接に需要が喚起されるばかりでなく、国際情勢から、この輸出という形で、相当持続相に、いい機会に恵まれて来るであろうということをも十分想像ができる。従いまして、当時、朝鮮事変直後は、どちらかといえば少し浮足気味日本経済があつたのであります。言いかえれば、先物に走りがちな状況であつた。ともするとインフレが再び起るのではないか、そうずると物価が上る、早く早くというので、先物……、こういう状況が当時あつた。同時に、その当時までありました滞貨は、おおむね一掃を見たのであります。のみならず不足なもの、足らないという部面も現われた、こういうふうな変化をした。言いかえれば、デフレという状態のもとに、日本経済を建て直して行くという状況から、物が需要されて、どちらかといえば、その限りにおいてはインフレ的な状況のもとにおいて日本経済を建て直す。しかもその規模は国際的な規模においてこれが行われる、こういうのが朝鮮事変後の状況であります。従いまして、こういう場合にどういうことが最も関心すべきことかと申し上げれば、せつかく日本商品が売れるのでありますから、売れるものを売るということが第一であります。言いかえれば、物が売れないときに日本の物を売るというためには、日本物価が下る、そういう苦しい過程を必要とするのであります。物が売れる場合には、やはり売れる物をつくるということが、まず第一であります。しかしながら物が売れるということは、やはり今日の事態では強く分析しなくてはなりません。これはドツジさんが日本に来られる早々、声明書にいわれておりますように、朝鮮事変によつて日本の物が売れるということは、これは何も日本商品が、国際的に見て、価格においても安く品質においてもいいので、十分競争で勝つから売れるという意味では必ずしもないのであります。これは第一に、朝鮮日本が非常に近い。しかもこの戰争が予期しない時に起つたともいえる。また戰争という特殊の消耗である、いわゆる緊急であるということである。従来売れなかつたような滞貨がどしどし売れるということは、このことを示していると私は思う。しかし、この朝鮮事変が一応終息した後の日本商品に対する需要と申しますものは、要するにこれは先ほど申しましたように、国際的な防衛態勢強化から来るのであろうところの物資需要でありまして、これは戰争しているのとは違うのであります。日本商品がいい品質で、かつ価格が安いならば、言いかえれば国際市場十分競争にたえる、そういうものでなくては売れない。言いかえれば、これはいわゆる普通の輸出貿易、こういうことになるのであります。そうしてみると、当面、今物が売れるからといつて、特に朝鮮事変の直接の需要で物が売れるからといつて日本産業界がいささかでも慢心をすることがあれば、すぐに将来において輸出がうまく行かないということに当面するのであります。それは、せつかく世界的に物を買う、あるいは物を需要するという好機に恵まれながら、これを逸するおそれがある。いい物ができないと売れない、やはり日本の物は、しいて買う必要がないという事態が生ずるのであります。そこでこの際において合理化ということが、前に劣らず強く要請されるのであります。合理化ということは、一口で言えば、物の生産の費用を少くする。いわゆる生産費を低下させる。それはいかなる方法をとるかということになるのであります。これは品質をひつくるめて、そういうことが一貫で言い得るかと私は思うのであります。そういう意味においての合理化、しかも合理化デフレ、いわゆる景気の悪いときに推し進めることは非常に苦しいのであります。あまりむりすると、いいものまでいかなくなる。そういう場合の金融は締める傾向をとらなくてはならない。ところが物が売れる、この事態での合理化は、比較的しやすい。物が売れる場合は金融的にもそれはやりやすい。同時にまた国石混淆のおそれがある。そういう、物が売れる場合でも、なおかついかないという、そういう事業は非常に存立が乏しいのであります、そういうものは、かりに整理をしても、他の事業影響を及ぼすことが、きわめて稀薄なのであります。ほかのいい事業は、決してその影響を受けることはない。こういう事態もあるのであります。のみならず、物が売れるという事態で、生産費をなるべく下げるということにおいては、海外に売る値段は何も下げる必要はない。安くつくつたからといつて、安く売る必要は必ずしもないと私は思う。今日においてはその幣があるのである。安くできたからといつて無用な競争をして安く売りさばく、これは日本の国をますます貧乏にする以外の何ものでもない。私ども要するところは、生産費をできるだけ下げて、売るのは、外国商品競争し得る値段でひとつ売りたい。そうするとその間に差額のもうけというものが、たくさん事業にある。そのもうけをもつてこういう場合は主として海外に売れるということが今日では前提でありますから、外貨が取得できる。その外貨でいい機械を入れ、いい技術を入れるということで、さらに合理化を進めて行く。こういうような方向日本経済を持つて行く必要がある。従いまして合理化ということをこの際やる。のみならず物が売れるから何でも商品をつくれはいいという今日の日本経済ではないわけでありまして、やはり国際的にマーケットを持つて、そうして品質価格も国際的なものであるという、そういう商品をつくるということをやはり目標にしなければならない。これがいわゆる輸出貿易目標でありますが、そういう商品増産ということが今日何をおいても必要である。こういう事態におきましてインフレ的な傾向に対してこれを抑制する。インフレに陷らないようにするというのは、金融を引締めることではない金融を引締めることによつてこのインフレを抑制することは、私は誤つておると思う。売れる物の増産という、そういう部分は、先ほど相当條件をつけました。先ほど言うたような條件のつくような商品生産増大する、こういうことがインフレを抑制して行く基本的な線として今日必要であると思う。その点はデフレのときは違う。物をつくつて物が売れないというときとインフレ抑制対策は違うのである。今日といえども人は往々にして金融を引締める、そういうことがインフレ抑制の手段であるかのごとく思つておる。また私どももそういうことをやつておるかのように誤解されやすいのであるが、これは客観情勢変化ということについての勉強を怠つておる人の言葉であると私は思う。従つて金融政策におきましても、そういう意味の物の生産増大に必要となる資金は出さねばならぬ、また出すべきである。その結果、今日の資本蓄積状況からいたしまして、かりに日本銀行発券高がふえましても、こうも心配することはないのである。これは結局日本経済活動がそれだけ大きくなつたというしるしにすぎない。むろんそういうふうにいたしますためには、真に必要な方面資金が流れる、無用なところに資金が流れることによつて通貨の増発はむろん抑制しなければならぬ。しかしながら今言いましたような生産増大に必要な資金というものは、これは供給にやぶさかであつてはならない。こういうのが今日の金融政策基本であります。ただこの際に具体的に一番問題になる点は、物の生産増大は、今言うたように必要であることは申すまでもないのでありますが、不幸にして今日の日本はきわめて資源に貧弱であります。物をつくろうといたしましても原料がない。その他の資材にも乏しい。また今申しました通り生産増大ということも、そう一朝一夕に、きようからあすと増産ができるとは限らない。ある程度輸入にまつものも少くない。そこで今日では輸入ということが非常に大きな問題になつて来る。むしろ輸入というものを基本考えて、輸入がうまく行つて、そうして輸出される物の生産ができさえすれば、そこに利潤を生じ、資本蓄積が生ずる、こういう過程が繰返されて行くのである。それでまた他の言草でいえば——先ほど私が申した金融政策ということも、今申しましたような意味商品生産増大ということに置きますが、また一つ言草でいえば、現実にいかに輸入というものがうまく行つておるかという、その質、量に応じて金融政策をとつて行つても、大きなあやまちはないのであります。そういうふうに金融政策というものは、今後におきましてはいわゆる先走らない。経済の実態の動きに順応して金融をやつて行つてもよろしいという、きわめて本然な姿、あるいは明朗な姿に今日立ち返りつつあるのでありまして、これは日本のみんなが喜んでいいことと私は思います。ただ先ほど言うたように、忘れてはならない点が多々ある。それを忘れてはならないということだけは、はつきり頭に入れておかなくてはならぬ。私どもはこういう金融基本線に沿つて具体的にいかにそれがうまく行くかというふうに、いろいろと——たとえば輸入促進のためのユーザンスの問題、あるいはまた自動輸入といいますか、輸入が自動的にできる、そういうふうな金額をふやし、あるいはまた貿易に関する、外貨に関する輸出入の予算というものについても幅を持つ、あるいはまた長期先物取引を可能ならしめる、こういうふうないろいろな措置が今日講ぜられておるのも、そういうふなことから発足しておるのであります。なお今後において貿易について改善する余地は非常に多い。また私の考えでは、なるべく大きなわくを政府でおきめになつて、それを実際輸入するような場合には、やはり專門の商売人にまかしたがよろしいと思う。それが一番輸入増大の道である。商売というものはなかなかしろうとがわかるものではない。商機というものはやはり商売人がよろしい。商売人責任においてやれというふうな方向に、やはり切りかえて行かなければならぬ。言いかえれば外貨予算というようなものについても、あまりにきゆうくつである。今日でもたとえば物によつてはなお四半期ごと輸入計画というものもある。そういうものがあると、すぐ海外市場では、何月から何月までは、日本の関係でどういうものが幾ら買いつけられるということがはつきりして、すぐ上る。従つて不当に高い物も買わなくちやならぬというようなことも起りがちなんであります。そういうことは商売人に、一年なら一年についてこういうものをひとつ責任をもつて輸入させる、そうしてそれに応ずる外貨はやるということにしておけば、商売人は実に上手に商機を見てそれを適当に輸入する、こういうふうになるのでありまして、今後私はこういう点は一層拡大し、またそういう方向がとられつつあることを申し上げてさしつかえはないと思う。輸出につきましては、これも金融面では今回おそらく輸出貿手については二厘くらいに金利を下げることになると思います。今日二銭二厘でありますが、二銭くらいな日歩になる。こういうふうにして、できるだけ私ども金融面から量並びに金利という質において、今後日本生産が今申しましたような、今日日本が必要とする生産で、そうして国際的な資格を持つ、そういう生産増大に一層の力をいたしたい、こういう点が今日の国内金融政策基本であると思う。  簡單でありますが、大きな線と流れを申し上げ、なお具体的な御質問でもありますれば質問を受けまして、そうして擱論にいたしたい、さように思つております。
  5. 圖司安正

    圖司委員長 ただいまの一萬田参考人の御意見に対して、質疑があればこれを許します。
  6. 有田喜一

    有田(喜)委員 ちよつと総裁にお伺いしたいと思います。特需見通しでございますが、これは各方面でいろいろと検討されておるようでございますが、なかなか困難な面も実はあると思います。大体日銀総裁といたしまして大よそ来年度の三月までに、特需というものはどのくらい生ずるであろうか、今までどのくらいの特需があつたであろうかという見通し意見簡單にひとつ伺いたい。
  7. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 これはどういうふうに申し上げますか、今日大きな援助を受けておる、それでこういう特需がかりにふえることになる、日銀総裁もそういう見通しをしているということになると、援助は少し減らしてもいいじやないかというように考えられる、非常にこれはデリケートな問題である。私はこの委員会はどういうふうな性質か知りませんから、どういうふうにしていいか私わからない。それで私はいたずらに尋来の見通しは立てませんか、今日までのところは申し上げてもいいかと思います。これは四百億円くらいな特需はあるでしよう。しかしこういうことは非常にむずかしいデリケートな問題である。来るべき予算の全貌が、日本援助してあげようという財政的見地から——それでなくてもアメリカでは増税もしなくてはならぬ、予算が膨脹する、なるべくこれを緊縮しなければならぬ。アメリカでも今日金利はとても上げており、やはりインフレ的懸念は強い。そういうさなかでも、大きな国際的な動きからいうと、やはり日本を助けなければいかぬという、いろいろむずかしいデリケートさが私はあると思う。あまりこれは触れたくないのですが、しかし朝鮮事変特需と申しましても、今日では応——おそらく平壞の占領も近いというように考えられる、そう今後は大きくないだろう、むろん朝鮮復興ということも、日本商品の必要は朝鮮だけに限つても起つて来ます。しかしこれはやはり戰争と違うので、朝鮮でほかのものよりも日本のものがむしろいいのだという選択的な見地で来ますから……。それでもおそらく朝鮮復興については、アメリカが特殊の機関を持つと思つておる。アメリカ援助以外に朝鮮復興の道はないのです。そうするとやはりそう何でもかんでもでなくて。嚴しいひとつの監理的なことが来るだろう、そうしてみるとあまり特需々々ということはどうか、ただしかしりつぱなもので、安いもので、しかも朝鮮に今後用いられるであろうもの、これはやはり利用されると思う。たとえば従来肥料というものは相当増産が過ぎておつたというような傾向があつたのであります。日本の農村にはけきれないで少し余るという状態であつた。しかし今度の戰争の結果は、おそらく北鮮肥料工業というものは大きく損害を受けているだろう、そうしてみると肥料というものも今後は違つた方向をとる、こういうふうな行き方で行くのじやなかろうか。特需と申しましても、たとえば麻袋が非常に多い。これは砂を入れて野壕なんかに使うのですが、こういうものは利用がなくなつてしまう。いろいろありますが、そういう程度で御勘弁を願います。
  8. 有田喜一

    有田(喜)委員 この問題は担当デリケートでありますから、これ以上深くお尋ねすることは総裁としてもお困りの面もあるでしようし、われわれもまた他日適当な機会をつかまえて研究してみたいと思います。  次にお伺いしたいことは、総裁も言われるごとく、今後の日本経済をより大きく希望を持つて。しかも真に日本経済の基盤を強くするには、何といつて生産費を安くする、いわゆる企業合理化をすると同時に輸入促進ということがただいまも強調されましたが、私もまつたくその御意見に賛成するものであります。今日の金融状況から見まして、実際問題としてやはり企業合理化のための、いわゆる合理化資金というものが流れていない面が相当あると思う。今日企業合理化合理化といいますけれども、結局首切りをやつて生産費を幾らか安くした程度であつて、真の機械技術の改善という点は、日本経済戰争後その面が遅れておるのですが、相当今後金融の面で、真の合理化の方に進んで行かなければならないと思います。それに対して実際の日銀としてとられようとしておるいろいろの金融政策具体化の一面、あわせて輸入促進に対して、口でこそ輸入促進とか担当やかましく言われておりますが、あまり原材料が思うように入つて来ていないのじやないかと思うのでありますが、この点に対する見通し、並びに対策のようなものがございますれば、総裁からお伺いしたいと思います。
  9. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 合理化資金、これはしよつちう言われるのです。お前は合理化合理化と常に言つているが、一体その資金はどうするとしよつちう責められている、むろん基本的には日本資本蓄積というものがきわめて乏しい。こういう戰争をやつてあれほど資本を破壊して、そうして経済活動がああいう状態ですから、こういうことは当然なのです。であるからこそアメリカのタツクス・ペイヤーの負担で日本援助を與えている。あの援助なくしては、日本経済は、運行が今日の水準においてできない、こういうことを端的に示されている。そして安定経済をここで進めている結果、大体国民蓄積部分の調達というものは、財政に入つている。国民所得のうちからお互いに銀行に預けようという金は、税金を拂つた後は乏しいのです。ですから長期設備資金は、国民所得のうちから財政に入つてつて余裕になつている、その資金をまわす。大体において財政というものは、歳出が正しいか正しくないかは別個でありますが、これだけの歳出は必要だこれだけするのだといえば、それを支出ができるように歳入をとればこれが健全財政だ。それほど余計な金を取上げなくてもいい。ただしかしあれほどのインフレを一時にとめてしまおう、しかもインフレ財政から来ている。これは私がしばしばの機会に比喩的に申しますように、いわゆるなだれのときに、山から雪だるまが落ちるというような状態、それをせきとめようとするのには、いいかげんな柵でははね飛ばす、だからコンクリートの大きな柵が必要だ。そういう意味において一時は非常な歳入の余る予算を組む、そうしなくてはインフレはとまらない。しかしそれを繰返されては——雪だるまが山から落ちてコンクリートの柵で麓まで来れば一層いい、かりに麓まで来なくても、麓に近いところで雪だるまはとまつておるのです。もう加速度はないのですから、それから先は私の考えではそう大きなコンクリートをまたつくらなくとも、第一回目につくつたコンクリートが少し弱まつておれば、それを修繕しておくくらいでいい。またインフレが走り出すこともないというのが私の基本的な考えで、そこで今財政はどういうことになつているかといえば、見返り資金勧定というものが主としてある。それからもちろん預金部の金も財政資金になつてつておる。むろんこの見返り資金というものは、一般の人がいうようにアメリカ援助物資のかわりである。従いまして、財政とか政府とかいう立場から見れば、これはアメリカのものと見てもよろしい。財政は昔から有してるものだ。援助ですから、政府もこれだけは、ただでもらつたといつてもいい。しかし国民経済から見ますれば、自分の所得から代金を拂つておるわけであります。皆の月給から輸入物資も買つたわけです。その代金をまた国民経済に返してくれて初めて援助という実が上ると私は思う。ここのところを、国家政府というような立場と、国民経済というような立場を区別せぬ結果、あれは何でも援助だ、援助はなかなか使つてはいかぬという見解が強いのです。しかし私は国民経済の方から見ている。これは自分たちの所得から出ても、もしもそれが援助だから——歳出もかりに昔のように立て得るとすれば、これは銀行預金の増加とか——むろん全部ではありませんが、そういう形で現われて来て、これがまた産業資金になつてまわるはずなのでありますから、こういうような関係から、むろん二十四年度の予算においてあの見返り資金が十分使われなかつたということは、私はりくつを拔きにして、あれほどのインフレを一時にとめるというのだから、そう政府から金が出てもいかぬ、民間からあまり出てもいかぬ。これによつて副作用がいろいろと起るだろうが、インフレを抑制しようという大きな目的を達すれば、あとささいないろいろなことがあつても、これはがまんしなければならぬ。そう何もかもああいう場合にうまく行くというようなことを言われると、つぶれるおそれがある。しかし、二十五年度以降は、もう一度インフレ抑制の手術が済んだあとの、むしろ静養期にいる病人というのが日本経済、言いかえれば手術というのではなくて臨床的な、脈搏であるとか、熱かげんとか、顔色とか、食欲であるとか、そういうものが病人をなおす上において非常に必要である。だから非常に繊細な神経で見ていただきたい。ただ見返り資金がいるというようなことでは、なかなか病状の回復というものはうまく行かぬ、これは二十五年度について見れば、さういう点を考慮して、繊細な神経でもつて十分使つてもらいたい。ここらは相当な金がいる。むろん預金部もおそらく私は数百億の余裕は年度にできる、千億に近いような余裕ができるだろうと思う。むろん一応見たところでは、食糧証券というようなもので運用されておりますから、残りはないというような見方がある、しかしここが非常に金融的には大事な点で、そうして政府の引上げの分は、政府が引上げた分だから、他方日本銀行でそれだけの資金を出せばいいじやないか、インフレにならぬからそうすればいいじやないかという素朴な議論が往々にして行われる。しかしそれは金融論ではない。政府の引上げている資金というものは、これは何も引出しを受ける金でもない。これは長期に運用できる資金で、これを短期の食糧証券などに運用されておつて事足るとすれば、これは金融になつておらない。そうして日本銀行の方から出る金は短期のもの、これを市中銀行が借りてこれを長期に向ける。ごくわかりやすく言えば、男が女の仕事をしている。男と女は人間として二人で、いつの場合でも量は同じだが、女は女の仕事をし、男は男の仕事をすることで、男と女は同じ一人で分量は同じで、ある程度はやり得るが、しかし限界がある、たとえば男に子を産めといつてもできません。そういうふうな状況が今日においてしばしばある。そういうようなことでは金融とはいえない。やはり長期に向う金は長期、短期に向う金は短期、そういう意味において、私は設備改善等のいわゆる合理化資金は見返り資金、そうしてこれは預金部資金、見返り資金というて区別する必要はない。見返り資金はどう、預金部資金はどういうが、見返り資金は見返り資金で性質が違い、預金部資金は預金部資金で性質が違う。しかし私は、それは財政資金という一つの観念で一緒にしてしまうというのははなはだ乱暴な話だが、たとえば見返り資金を公企業に使うという場合、見返り資金をお使いにならず預金部資金をお使いなさい。それだけ見返り資金が浮いて来るから、それだけ私企業に見返り資金の運用をふやせばいい。預金部リスクのあるところは出さぬという考え方は、それは政府の関係の仕事で、こういうふうになつて来て、そこで相当巨額の長期設備資金ができる。そこで今民間は非常に不振でありますが、しかし社債にしろ株式にしろ、相当国内における合理化資金は私は出ると思う。これは何としても出さなければならぬ、日本経済の国際競争力を増加して、同時に先ほど申しましたように、今日は外貨ドルを相当持つている。それで特需輸出の伸張いかんによつて、ますますここにドルがたまる。同時に会社においては生産費が下つてくれば、もうけも多くなり、ドルのもうけがある。貿易外国機械を買い入れ、技術も入れる。こういうふうになつて私もいいと思う。今日長期資金の問題になつてくると、何としても私は見返り資金をもつと上手に動かして行く。それが一番いいと思う。それを中心にしてまわつて行けば、決してさような調達にそう心配することはない。私の見通しはだんだんそういうふうになるだろうと思つております。  それから先ほどちよつと申し上げましたが、輸入の件で、たとえば金融面ではユーザンス手形が、それから取引の上では長期先物も買える。あるいはまた自動的に輸入ができるという、そういうようなものがだんだんと金額もふえまして、そういうような計画的な輸入計画、これは私の考えでは、先ほども申し上げましたようなごく大わくにして、数量と商品の種類ぐらいにして、あとは專門の、それで飯を食つておる人が多いのですから、そういう商機を十分つかみ、また向うの商人とも取引を十分持つておる、そういう人にまかす。あまり輸入などを計画的にやると、どうしても相手方の商人の方に利益を與える。輸入する方が不利益になるおそれが多いのですから、そういう点もひとつ十分考えていただきたい。輸入促進につきましては、具体的な貿易行政でありますから、むしろ通商省の問題であると思います。
  10. 有田喜一

    有田(喜)委員 抽象論としては、日銀総裁のお考え方は、私十分うなずける。しかし実際問題として、たかたか長期設備資金が流れて来ない。ことに大蔵省預金部の金は、私から申せば、普通の民間投資も堅実な投資をやらなくちやならぬので、民間投資として、長期資金がどんどん流れていい性質のものと思う。それをあたかも財政資金だというような考え方をして非常なきゆうくつな運営をやつている。そういう点はいち早くこれを解いて、実際の金業の合理化の面に邁進して、あるいは金融の面においても、ロスばかりやつている、こういう状態であります。われわれも国会を通じまして相当政府にも働きかけるつもりでありますけれども日銀総裁は関係方面とも常に折衝されておる方なのでありますから、一層の御盡力を煩わしたいと思うのであります。  次に一点具体的問題について伺いたい、今日日本といたしまして、やはり船舶の建造ということを相当やらなくちやならぬ、今回第六次船の建造計画が進められつつあるわけでありますが、今までの大体の行き方といたしまして、本年度は御承知通り見返り資金が七割出て、あと三割が民間金融機関から出る。そういう方針で大体造船計画を考えておつたようであります。最近はそれが半分になる、いわゆるフイフテイー、ケイフテイで、こういうふうに関係方面の意向もある。こういろ行き方をすると、はたして本年度の造船計画が予定通り進むかどうか、予定の半分くらいより建造できないのではないか、こういうわけで業界その他関係方面でこの問題を深刻に憂慮されておるわけで、最近日銀総裁もこの問題について相当御盡力をたまわつておるように漏れ承るのですが、何とかして金融方面から打開して、この第六次造船計画を円滑に遂行してもらいたい。といつてもこれがあまり遅れてしまいますと、今日の造船業者というものは、御承知通り仕事が途中で切れてしまうという非常な総合工業であるので、労働問題その他関係するところが非常に大きいのでございます。迅速にしてかつすみやかに、いい結論が出るよう、昨日あたり日銀総裁が関係方面お話におつたようにも承つておるのであります。そういうことにつきまして、おさしつかえのない範囲内においてその結果なり、見通しお話し願えれば仕合せだと存じます。
  11. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 今の点は折衝といいますか、私は強い態度で今臨んでおります。お話の筋はその通りである。私は同じ考えでありまして、何としても七、三とか、五、五とかいうようなことは私には意味がない。何で七、三でなくちやならぬか。何で五、五でなくちやならぬか。何だかお互いが飯を食つて割勘でもするような、そんなふうなことでは困る。一体今日長期資金はどこから出し得るか。見返り資金から一つ——見返り資金は造船の資金ばかりじやありません。従つて見返り資金からできるだけたくさん造船に割当て、今日でもたとえば予算面では、来年の三月まで六十三億ですか、六十億前後のものがもう内定しておる。それならそれが最高なら、それでも出したらどうですか。私どもの今日出す長期資金というものは、きわめて乏しい。しかし今日の日本の造船というものは必要である。将来の日本考えても、何としても船というものは持たなくてはならぬ。私どももできるだけたくさん、出し得る限り出しましよう。それでつくるが、その結果が七、三になろうが、八になろうが、お互いができるだけのものを出し合う。初めから七、三とか、五、五とは何のためにするか。それは貧乏な今の金融機関は、先ほど申しましたように長期資金がない。しかも第六次でありますが、まだ七次、八次と来る。見返り資金は、今後においてむしろ減るおそれがある。いよいよもつてそうなると、金融機関がいやでもまかなつて行かなければならぬ。そうして比重が今後加わる情勢にある。それで見ると、一層こういうときに見返り資金から出してもらわなければ、ならぬ。できるだけひとつ出してほしい。そういうように金持ちと貧乏人——私たちは貧乏人なのですが、金持ちと貧乏人が一緒に飯を食つて割勘では合わぬ。主人と運転手が飯を食つて、運転手も同じ割勘で出すというのでは困る。私は率直に出しておる。だからはつきりはせぬか。それでよくわかるとは言つてくれる。しかしいまだにきまらぬことは遺憾ですけれども、私は金融機関としては、今日第六次造船としては、四十億が最高と聞いておる。来年の三月まで見返り資金の六十億に匹敵するものとしては、これは造船工程が本年度——いわゆる三月末までには六割くらい進むという仮定で、六割とすれば、来年三月までは二十四億。むろん金額としては若干できる。それでひとつ行く。それ以外にはもう行けない。かりにやると、もう金融機関の状況というものがきわめて悪くなる。一方には出す金があつて何もそれを引込ませることはないじやありませんか。それを引込ませれば、一方金融機関の業態が悪くなつて、そして七次、八次と来る。それを金融機関でやらせる。そういうことをやるのは、中央銀行総裁としてはこれ以上できません。やれというおさしずならばやりましよう。さもない限りはそれ以上はできませんということをきのうあたり話しておいた。何とかこれは適当なところで、見返り資金から大体七になるような程度の量は出してもらつて、その他の條件で少し考えて、何とか早く妥結したいというふうに考えております。これは向うの方でも非常にお困りになつておる。これにもまたいろいろな問題がある。非常にむずかしい理由があるように思う。そういうふうなところを考えて妥協——量だけは見返り資金から出してもらう、そのほかの点で何か調整する、私はその一案をきのうも向うに書きもので出しておいた。至急にきめてもらいたい。十二月には一応工事に乗るように持つて行かないと、これは造船の方でいろいろと大きな問題を生ずる、かように話しておいた、そういうわけであります。
  12. 有田喜一

    有田(喜)委員 量では大体既定通り進む、あと條件、そうおつしやつたように承りましたが……。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 これは行くかわかりませんが……。
  14. 有田喜一

    有田(喜)委員 具体的に申せば、こういうことでございましようか。たとえばヒフテイーは見返り資金であの條件で出す、あとの三割というものは見返り資金から出すのだが、金利その他の條件があるいは国内金融並になる、こういうような意味合のものでございましようか。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 そういう考えも入れて——しかしそれもなかなか見返り資金の運用の要件が区々でありますから、どうでありますかわかりません。
  16. 有田喜一

    有田(喜)委員 そこで大蔵省の預金部の金を使うという問題は、これにからんで起つて来ないのですか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 それは前にそういうことに預金部資金が使えるという頭になつてくれれば、従来とも長期資金が非常にうまく行つた。私どもは預金部資金は單に日本の特殊事情から、山間僻地もあるので郵便局のようなところで一番便宜的に集めた、それ自体の資金はむろん産業資金銀行資金で、しかもこれがほんとうの蓄積資金で、ほんとうの長期資金である。それだから普通産業にまわして、それも預金者の方はいつでも資金化もしなければならぬ、それで国債、長期債はもちろん、その他銀行の出す債券くらいは持つてもらつてもいいじやないか。またできれば、たとえば発送電みたいな日本一つしかない、しかも日本産業の根幹になるようなものの社債くらいは持つてほしい、こういうのが長年の主張であります。しかし政府の機関が零細な預金を集めて、いやしくもそれがリスクが予想されるというようなところには運用してはいかぬという意見が有力なのであります。これは結局そうでありまして、従つてそのリスクというのも、私ども経済的に見たリスクでいいじやないか。りくつはいろいろあるが、物理的のリスクまで来ると、国というものもどうなるかわからない。リスクはあり得る。それでは何にもできない。だからいやしくも金融に関しては経済的なリスク、たとえば興業銀行の債券というようなものは、あれが償還ができなくなる。さようなことは経済的リスクのうちに入らぬだろう、私自身はそう考えるのであります。そのくらいは考えぬと、日本が荒廃から復興するのに、資金的に非常に支障を生ずるというように申しておるのですけれども、これはやはり私どもどうも微力で、リスクのあるところはいかぬという。それで先ほど申しました、それはけつこうだから、それならたとえば見返り資金の運用を見ても、公企業に四百億、私企業に四百億、その公企業の四百億の中で、たとえば国鉄とか、あるいは通信とか、こういうようなものがいろいろあります。そういうものの資金は予金部でひとつ出す。そうすると公企業の見返り資金の四百億の中から浮いて来ます。それを私企業に対する四百億に加えて、それは五百億になるか、六百億になるか、実際やつてみなければわからぬ。そういうようにして、見返り資金からリスクがあると思う産業界に出して行く。それでけつこうである。預金部の金とか、見返り資金の金とか、そんなに区別しないでよろしい。金にかわりはない。とにかく見返り資金の勘定から出て来る。それで預金部の資金の運用を考えて行けば、そういう形でおそらく私は出る、こういうふうに思つておる。大体方向はそういうふうに向いておりまして、それはおそらくどなた様も御異論がなくて、今後そういうように長期資金を出すようにしようという方向考えております。それで預金部の関係も片ずく、こう私は考えております。
  18. 志田義信

    ○志田委員 総裁にこの際せつかくのおいででありますから、三、四の点についてお專ね申し上げたいのでありますが、ただいまお話を承つておりますと、客観的な情勢変化に伴つて日銀金融政策基本の線も、漸次かわつて来るというお話がありました。つきましては最近またドツジ氏がこちらに参つておるのでありまして、日銀から日本金融事情、あるいは今後の金融政策につきまして、意見書を提出されるやに聞いておりまするが、これを提出いたしましたかどうか。あるいは提出したといたしますれば、ないしは提出するといたしまして、その内容がどういうような点で意見書を出すつもりであるかどうか、これをちよつとお尋ね申し上げたいと思います。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 むろんドツジさんに私の方から出した事柄も、今私が申し上げた事柄とかわりはありません。ここで申し上げた趣旨のものが出たというふうに御了承願いたいと思います。
  20. 志田義信

    ○志田委員 最近の問題はやはり財政のしわを補うというところに、金融政策の重点があるように思うのでありまするが、最近ドツジさんの来たことにつきましても、相当私は現在の金融政策についての総裁の見解が明らかにされておると想像いたすのでありまして、先ほど来お尋ね申し上げたり、お伺い申し上げたことが、大体その内容であるということでありますれば、それをもつて了承いたしたいと思いまするが、日銀では最近貸出しにつきまして、むしろ量から質に転換を考えておる。そうして日銀の追加信用というものを嚴重に選別するというようなことが伝わつておるのでありますが、ドツジさんの意見書その他を通じて、従来の日銀金融政策と今後の金融政策との間に、どんな特色のある変更を来そうとするのか、その点をひとつこの機会にお伺いをしておきたいと思うのであります。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 日本銀行金融政策基本というものは何ら変更はありません。これは結局安定経済の上で輸出振興をはかつて、そうして資本蓄積をはかつて行こうとする、そういう大きな目的を達する場合に、客観的な情勢変化を応じて打つ方法が違うというだけにすぎません。非常に物が売れない場合に、どういうことをやるか、結局目的は大いに輸出振興しなければならぬ。物が売れるような場合は、輸出振興させるにはどうするかということでありまして、これは今日のような激しい客観情勢変化の場合においては、あるいは極端に、日々に考えを新たにしなければならぬ。世間では往々そういうことを何だか非常に朝令暮改とかいうようなことをいうのですが、私から言えば、そういう人たちこそ客観情勢変化にうといいわゆる勉強が足らぬ。今日頭を澄まして、勉強しておれば、実に変化が激しい。同じ目的を達する場合にでも、その地盤が変化すれば、やる方法は常に新たでなければならぬ、こういうわけであります。この前と今日とすぐかわることもないのでありますが、しか上先ほどもその点にちよつと触れました朝鮮事変前のように、物を生産すれば、その生産されたものが売れない。滞貨になるというような状況では、物が売れるに応じての金融というものはやり得ない。いたずらにそれは合理化しない形において、物の生産増大されて、滞貨がふえる一方、ますます金融は詰まる。そういう場合にはどうしても物が売れるような研究をしなければならぬ。従つてそういう場合は締る。つくつたものが売れないのですから、売れるようにくふうしてもらう。合理化もやる。同時にその合理化というものは、生産費を下げて、従つて製品の価格も下げる。値段が高いために売れないのなら、下げるというくふう以外に輸出振興する道はない。品質が悪いということのために売れないのなら、品質をよくする、努力して持つて行く、こういうふうなことになるわけであります。そういう場合の政策というものは、やはり金融面においても締る。一層苦しまなくちやならぬ。つくつたものが売れない場合に、いかにこれを売れるようにするかというときに、苦しまぬで行くわけがない。その苦しむということは、金融面においてもやはり苦しむということである。これはもうやむを得ない過程であります。しかしつくつたものが売れるという今日の情勢であります。ますます品質をよくし、生産費を下げて、利潤を高めるようにして、そうしてそういうものをふやす。物が売れれば、従つて金もいるのですから、生産増大するには金もいる。それは金を出しても今度はよろしい。先ほど量と質とが問題になりましたが、質という意味——そういう場合において、たとえば量と言いましたが、そういうような合理化を進めて物価を下げる場合、どちらかといえば、金があまりたくさん出てはいけないという意味で量という。しかし物が売れるにつれて金を出してあげようという立場の場合には、量よりも、ほんとうに売れるものをつくるかどうか、そういうつくるような金なら出してあげようという意味で質という。私どもの商売の上からいえば、いかにして貸した金が返つて来るか、いわゆる回收率がうまく行つておるかという意味で、これを質というので、もし物がほんとうに売れておれば、回收は当然順序よく行われるのはあたりまえであります。もしも回收が悪ければよく売れていない、売れる売れるというのはうそである。そういう人には依然として合理化を求め、こういうふうにやつていただかぬとなかなか金も出ませんぞ、こう言うのはあたりまえである。そういうふうにやはり出す資金について変化がある、そういう見方がどつちに重点を置くかというような意味合いにおいて申されております。そういうふうに御了承願います。
  22. 志田義信

    ○志田委員 朝鮮動乱その他が国際経済の上に影響を與え、また日本経済の上にも、徐々ではあるが、各方面影響を與えて来ておる。そこで今総裁がおつしやるように、売れる、しかもいいものをどんどんつくつてつたらいいじやないか、量より質をやつて銀行側からいえば、回收率がうまく行くものを大いにやらしておる。これはもちろん同感でありまして、いたずらにインフレの軽減を考えて萎靡的な金融政策をとられることよりも、むしろこの経済上の変化に乘つて総裁の言われる客観的な情勢変化として、これに対処する金融政策をとるということは、私も大賛成であります。しかしそういたしまする場合におきまして、特にお尋ね申し上げたいのは、一体日銀は今後こういう経済上の変化の現われに対処して、何を適正通貨量と決定して、そして今後の適正通貨量の問題を処して行かれるつもりであるかどうか。一体どの程度通貨量を適正だとして——客観情勢変化に対処する適正通貨量としてお考えになつておるかどうか。この点をひとつ特にお尋ね申し上げたい。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 適正通貨量というようなことは非常にむずかしいものです。單にいろいろな資料で、そのときにおける適正通貨量を出しても、翌日は違つておる。なかなかある一定の適正通貨量を出すということは、ある一定のときにおいて、こういうふうな資料からすればこのくらいがよかつたであろうという、むしろ私に言わせれば懐古的なもである。毎日々々の日本銀行の発行高について、適正通貨量なんて言うてみたところが、神様でない限りは私は不可能であると思う。しかしそれだからといつて、全然見当がつかぬというわけではない。ある程度の見当がつくという意味でやるのであります。それをやるのには、私の考えでは、やはり手形取引というものを円滑にする。言いかえれば、大体商売をする上において手形が出るのであります。その手形取引を円滑にして、これが期日に落ちる。それに要する資金は出して言いかえれば取引の上に経済活動が反映するようにして、そして自動的に自然の形において、日本銀行から、かりに出ておる通貨——かりにというのはおかしいが、毎日日本銀行から出ておる通貨が、そういう自然の形で適正な形をとるようにもつて行くというのが、私は一番いいという考えであります。むろん適正通貨量も、これは安本が中心でお考えになられておる適正通貨量ということになると、これは生産計画、経済活動、信用取引の状況、現金がどうなるかとか、これは実に日々変化するような條件を前提にしないと、なかなか算出が困難でありますから、適正通貨量という点はあまり私は重きを置かれない方がいいというふうに御答弁を申し上げておきます。
  24. 志田義信

    ○志田委員 適正通貨量はきわめて懐古的なもので、神様でないとよくわからぬというお話でありましたが、それで神様でなければわからぬことをお尋ね申し上げることも不本意でありますので、それでは人間でわかる、今年の年末の通貨量がどういうふうな形で増大すると見ておられるか、日銀の現在の通貨量から見まして、この年末の通貨量の問題が、どの程度増大するように日銀では推定をしておるか、この点をひとつお伺いしたい。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 非常に何としても答弁をある程度具体的に求められておるようですが、やはりお考えを願つておきたいことは、私が年末の通貨量はこのくらいだと言うと、いい面もあるのですが、なかなかまた悪い面もある。総じて申し上げれば、年末だけで相当日本銀行の発行高もふえるということだけはそうである。しかし私の見地からすれば、何も心配することではない。それだけ日本経済活動がよくなつたということを意味する。そういう意味合いにおきまして、相当ふえるという程度で、今はすでに米価がおきまりになつたかしりませんが、かりに米価もきまらぬとなると、これなんか大きな今後の問題である。それからまた今日農村の経済状態がどうなるか、今から年末にかけての一番大きなフアクターは、何といつても供出米の代金、いわゆる政府支拂いの代金が、農村の経済状態から幾らの歩どまりが生ずるか、どのくらいな預金勘定になつて現われるかというようなことが、大きく作用します。それくらいのことはわからねばならぬ、年末のことがわかつてしかるべしというようなお考えかもしれませんが、やはりなかなかこれも困難で、まあ相当ふえるだろうというくらいで、ひとつごかんべんを願います。
  26. 志田義信

    ○志田委員 大分総裁通貨の問題になりますと、嚴重に防波堤を築かれるのでありますが、この通貨量と物価との関係でちよつとお尋ね申し上げます。  日銀あたりでは物価は国際水準のいかんにかかわらず、極力押えるように金融面から努力するというようなことが、いろいろ日銀の出しおられるリーフレツトのようなものでも最近拜見するのでありますけれども通貨量の問題は、一面やはり物価の動向と、非常に大きい関連を持つておるものと思われますので、物価動き通貨量について、総裁基本的にお考えになつている点をお尋ね申し上げます。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 通貨考える場合におきまして、物価考えることはむろんであります。特に日本経済は、原料の輸入を大きく海外に仰いでおりますので、海外物価の動向——今日海外でも相当物価が騰貴しておる。私の考えでは、原料が海外で騰貴すると、これが日本物価に入り込んで来て、それだけ現われる。これだけは私はどうもいたしかたないと思う。これは補給金でも出さぬ限りは、とうてい排除はできない。むろん補給金なんかはなくするのがよろしいし、なくしておるのですから、これも期待できない。そうすると海外の原料高だけは日本物価影響する。ほかの條件が同じだとすれば、それだけは影響する。そうすると、そういうふうな原料高のものを使つて生産したその日本商品価格というものが、同じ商品海外価格よりは上らないようにしなければ、日本輸出というものは振興しない。そうして私は、生産費の点からいうと、なるべくそれが安くでき、そして輸出価格はそれほど安くする必要はない。日本の商人同士で無用な競争をして輸出価格を引下げるということは必要ない。貧乏人がありもしない財産を、いたずらに安く売るという必要はないので、海外に売れる限りにおいては、何ぼでも高く売りたい。しかしそれをつくる生産費は、高い原料を入れて、しかも生産費はなるべく安くしなければならぬ。そうするとその海外の売値との間のもうけというものが利潤でありまして、これが資本蓄積の基である、そうするとここに事業合理化をする資金も、自分の力でできる、いろいろと雇用をされる関係からもよくなる、こういうふうに持つて行かなくてはならない。私は物価についてはそういうふうな考え方をしております。
  28. 志田義信

    ○志田委員 一萬田総裁への質問は以上をもつて私は打切りますが、次に安本次官にお尋ね申し上げます。今日銀の一萬田総裁がお見えになりまして、長時間にわたつて見返り資金の運用の問題についてお話があつたのでありまして、かなり重要な点まで掘り下げて、財政資金として今後考えて行くべきだというような発言をしておられるのでありますが、現在の見返り資金は本来の目的に投下されてないような状況もあろうかと思うのであります。政府は当初の計画がむりであつたために、そういうことになつたのか、あるいは途中から計画を変革せなければならぬような、何かの特殊事情があつてそういうことになつているのかどうか、あるいはさらに見返り資金が、今後預金部資金のような長期資金に適する資金として、食糧証券などの短期証券の操作をやつておる点もあるのでありますから、何かそこに特別な理由に基いて見返り資金の運用の問題が、そういう方向に来ておるのであるかどうか、その点をひとつお尋ね申し上げたいと思います。
  29. 小峯柳多

    ○小峯説明員 見返り資金の使い方が緩慢であります理由は、いろいろあるだろうと思いますが、一つは債務償還に引あてられているものが、割に動いてないということがあると思います。これは御承知のようにオーバーローンの問題が最近やかましくなりまして、この債務償還というのが、やはりその間接の原因になるということになります。しかしそれだけではございませんで、御承知のように百四十何億の例の電力の開発資金であります。再編成の問題もからみ合いましてこれが遅れております。その他私企業に関する手続も、相当進んではおりますが、まだ手続上の遅滞のために残つておるものもあります。全体から見まして債務償還の問題、一般の金融情勢、またその対象になります国債が、御承知のように一般市中銀行から非常に減つておりまして、そんな関係で少し使い方が遅れておるというふうに私ども考えております。
  30. 志田義信

    ○志田委員 この産業資金の問題に関連いたしまして、外資の導入のその後の実情を、簡單でけつこうですが承りたいと思います。
  31. 小峯柳多

    ○小峯説明員 ただいま正確な資料は持つておりませんが、ここ最近の状態ですと、かなり外資の導入といいますか、技術関係の問題がはかどつているように承知いたしております。また懸案になつておりますものが相当ふえておりまして、実際の実現までに至つておりませんが、外資導入といいましても、技術投資の形で入れるというふうなものが、相当進んでいるように承知いたしております。資料はまた後刻適当な機会に調製いたしましてお届けいたします。
  32. 志田義信

    ○志田委員 安定本部がドツジさんに何か報告書を、特需との関連において出しておるようでありますが、それは最近の日本経済現況というか、動向というふうなものを報告されておるのだと思いますけれども、それには安本の見た動乱後の日本経済現況分析も、説明をつけて入つておるのかどうか、もし入つておるとすれば、それについての御説明を承りたいと思います。
  33. 小峯柳多

    ○小峯説明員 御承知のように私どもの方で経済白書というものを出しておりまして、これを英訳しましたものをドツジさんの手元へ私の方から出しました。その前に篤志家があつて、これを翻訳してドツジさんの手元に送つてつたようであります。実は私も大臣と一緒に、先般ドツジ氏にお目にかかりましたが、そのときに白書を非常におほめいただきまして、客観的に見て小さい点ではいろいろ問題があるが、よくできておる。朝鮮問題もあることだから、白書以後の資料を見たいということでありましたので、白書以後の日本経済の最近の動向というようなことにいたしまして、資料をまとめて提出いたしております。もちろん特需の関係も入つております。私どもは、特需の問題はすでに日銀総裁からもお話になつたのではないかと思いますが、これが本格的なもので、未来ずつと続くというふうに考えることは非常に危險である。よしんば風の吹きまわしで、そういうことになりましても、経済の計画を立てます場合に、確定しないものはアンフエバラブルなものである、これはアブノーマルのエキスポートだというふうに解釈しております。私どもはそれを時間的に大きく評価いたしておりません。ただ申し上げたいことは、朝鮮の問題を生んだその背景というものは、先ほども日銀総裁からもふれられたようでありますが、朝鮮問題自体といたしましては、時間的にも空間的にも、そう大きな影響はないといたしましても、その朝鮮問題を生んだ世界的背景というものは、日本経済に対して十分織り込まなければならない。その一つとしまして、たとえば国際物価の問題があります。日本物価は国際物価に非常に依存度が高いものでありますから、どうしても国際物価が上昇傾向をたどる場合、これを防ぎ切ろうといたしましても、経済のヴオリユームが違いますから、これを食いとめる方法はないと思います。従つて世界的な、世俗にいわれるような再軍備競争というようなものを中心としての物価高の点は、やはり相当長い期間、日本経済に対して影響があるということも、実は読み込んで付言いたしておる次第であります。
  34. 志田義信

    ○志田委員 特需現況が、いろいろな産業に相当な影響を與えることは、もちろん安本当局もおわかりだと思うのでありますが、今次官がおつしやるように、これがどの程度の空間と幅を持つておるかということについては、相当検討をしておかなければならぬのではないかと思うのであります。ことに国際情勢変化、今後の日本財政金融に対する影響というものを考えなければならぬ時代におきまして、朝鮮特需の継続期間といいますか、いつごろまで、どの程度の幅で特需があるだろうという見通しをつけなければならぬと思いますけれども、その見通しがついておりましたならば、ひとつお漏らしを願いたいと思います。朝鮮の動乱が起りましてからすでに四箇月もたつておるのでありまして、特需の内容も、あるいは物価資材の流れも、大体わかつておるのでありますから、その点については相当に御検討があつてしかるべきだと思うのであります。ことにこの特需輸出増大の点などにつきましても、いろいろ国内の物資に與える影響も大きいのでありますから、その期間や幅をどの程度に御見当なさつているかを承りたい。
  35. 小峯柳多

    ○小峯説明員 私どもでは正式に特需の先行を見通すような材料、言いかえれば戰局の様相を知るよすがもありませんので、戰局の見通しはこうだし、特需はこうなるという見通しは立たぬのであります。ただこのオーソリティーの問題は別問題でありますが、私どもで自立経済審議会などをやつておりまして、一応の目安といいますか、それを知つている者からいいますと、極地的に解決できるものであるし、特需の内容は軍需資材から建設資材に移行することはあつても、なお担当期間続くのではないかというふうな見方をいたしております。その担当期間をどのくらいに読むかという、こまかい点になりますと、先ほど日銀総裁がおつしやつたように、私どもも総合計画をやつている建前上、権威のないことを申し上げるのも非常に残念であるし、また影響も大きいと思いますから申し上げにくいのでありますが、特需の内容は、軍需資材から建設資材にかわるというようなことはあつても、相当期間続くと思います。先般おいでになつたドツジ氏は、これを異常輸出という言葉で言つておりますが、そういうものは本来の輸出にプラスして行く、そういうふうにいえると見ているわけであります。
  36. 志田義信

    ○志田委員 そういう異常輸出という形で相当に現われておるのでありますから、この特需が国内のいろいろな産業に相当影響を與えると思います。輸入原料の確保の問題が、最近非常にやかましくなつて来ておりますが、そういう場合にユーザンスや外貨予算の増額だけでは、この現実の輸入不振の問題を解決することにはならないという議論も多分にあるのでありますが、こうした外貨予算の処置の問題を初めといたしましてこの点につきましてどういう打開策を安本当局は考えておられるか、承りたいと思います。
  37. 小峯柳多

    ○小峯説明員 御指摘の通り外貨の扱い方に対しましても今までは問題があつたと思います。たとえば外貨の余裕金の読み方につきましても、財政金融局長が見えておりますから必要とあれば補足していただきますが、相当の額が残つておりましても、それが支拂いに引当てられておつて、その引当てた額の読み方で、外貨の余裕資金の額もかわつて参るはずであります。しかしこの点は、積極的に輸出して入つて来る物まで読み込んで、この外貨の余裕はしぼり出すように考えておるのでありまして、この外貨の使い方については責任を持つてつているつもりであります。また輸入の方式につきましても、御承知のように民間貿易に移つたといいましても、管理貿易の形できゆうくつなんでありますが、自動承認制というか、物資も地域もかまわずに品目をふやしましてこの品目は自由に買つてもよいということで、最近非常にふやしたのであります。また一般論からいいましても、外貨資金は相当あるぞというようなことを申しても、御承知のように輸入市場というものがセラスマーケツトにかわつておるのでありまして、世界的な物価高というものをつくり出したその背景は、やはり世界の市場をセラス・マーケツトにかえているように思います。買手の手足を直接に持つていなかつた今までの輸入機構といたしますと、なかなかそこまで手が及ばなかつたのではないか、商社の支店の設置とか、在外事務所の問題とかいろいろありまして、現に商社の支店の設置問題も許可にはなつておりますがなかなか今までの輸入商社の実力では、相当費用のかかる商社の支店を、積極的に出すというところまで至つていなかつたようであります。しかし輸入問題がはかどらなかつた原因は一つだけではありませんので、そういう問題を小口にせり上げまして、よほどその点は改善されて来ているように思います。ただ輸入品の中で綿花の問題は、アメリカの綿花の生産市場のために相当むずかしいといわれ出したのでありますが、全体といたしましては、テクニカルないろいろな手が打つて、一ころよりか輸入問題はよほど進んでいると思います。来るべきものはその点で相当期待が持てると思いますし、また先行き取引なんかも奨励いたしておりますので、今までよりも輸入問題は、特別のものを除けば好転して来ると考えております。御指摘の通り原材料の輸入問題が、これからの日本経済の実態に非常に強く影響いたしますので、私どもとしては輸入問題には特に重大な関心を拂つて、どんな小さな原因でも取上げて打開の策を講じて行きたいという熱意を持つております。
  38. 志田義信

    ○志田委員 特需原料の補償の問題は、今次官もお話しのように非常に重大だと思いますが、ドツジさんは、特需で得た外貨は、できるだけ国内の資本のよくまわらない設備、あるいは輸出原料の買入れに充てた方がよいというような御意見のように私たちは聞いておるのでありますけれども、こういうことをするために何か特別の方法をとつておられるかどうか、承りたいと思います。  いま一つは、今おつしやつたように原料輸入の問題が解決上ませんと、資源外国に依存している日本経済といたしましては、ただアメリカドルを抱いて眠つているという経済状態になると思いますから、これについても相当に御努力を拂つて方途を講じていただかなければならぬと思つております。この特需で得た外貨を、どんな方法で資本設備や輸出原料の買入れに充てようとしておられるのか、その具体的な方法について、ぜひひとつお知らせ願いたいと思います。
  39. 小峯柳多

    ○小峯説明員 異常な輸出というふうなもので得られた資金を、将来に備えてなるべく蓄積しろということは、ドツジさんの御意見であるように承つております。しかしその場合に、これも御指摘のように、なるべく原材料をしつかり買い込むということもありましようし、特に私どもが非常に関心を深くしておりますのは、設備の更新をするについては、その異常な輸出で買上げた收益を利用したらどうかという点であります。私ども産業設備というものは、一応キヤパシテイーの余裕があるものが相当にありますし、労力の点その他から考えて、むしろこれは余裕のある方だとは考えますが、全体から見て、ここしばらく産業機械生産機械というものに対する国の政策が留守になつてつたような点もありますので、日進月歩であるべき生産機械というものが、日本では相当遅れているような感じがいたします。そこでその異常の輸出で得られた資金というものを、新しいモデルの生産機械輸入に充てたい——もちろんこれは国内の機械工業との抵触もありますので、全部輸入するというのではなく、モデルになるようなものを入れる方法を考えてしかるべきだと思いますが、なるべく生産機械輸入をはかりたい、またそれに付随いたしまして、新しい技術輸入もしなくちやいかぬというふうに考えております。そのためには、まだ具体的な日程には上つて来ておらないかもしれませんが、いずれ通産省でおつしやつているような、設備更新のいろいろの処置などにも、ある程度の強制力を持たせ、特別の扱いができるようなもの考えて行きたいという気分で実はおります。  なお原料の輸入につきましては、市場をなるべく広くあさつて——自動許可制になつたような品物につきましては特にそうでありますが、広く市場をあさつて行くよりほかに方法はないと思います。原料については、特にこれという名案があるわけではありませんが、ただ全体的に見て、封鎖的な貿易が幾らかずつでも広がつて行く、その一般的な傾向の中に、活路が見出せるような気がいたします。
  40. 志田義信

    ○志田委員 広く市場をあさつて特需の関係をやつて行くというお話は、私も非常に賛成なんであります。ところが現実はこれとは反対の方向に向つているのではないかと思つております。むしろ狭く特需方向が向いて行つているということは、大企業に集中しているのじやないかということなのでありまして、現実には中小企業等はもう見向きもされないで、特需は大企業に集中する方向に向つておるように私たち聞いているのでありますが、それについてお考え、及び対策がありましたら承りたいのであります。
  41. 小峯柳多

    ○小峯説明員 ただいまの問題は、中小企業対策の問題だろうと存じますが、特需のものが期限的に非常に忙しいというような関係もあるし、相当量まとまるとすれば、あまり小さい所には自然の形としても行くまいと思います。そういう点では、御指摘のような傾向があるのではないかと思いますが、しかし中小企業のあり方というものは、いろいろ議論はありますが、やはり大企業との関連において協力関係を持たせる、これは戰争中の協力工場のことを連想していただくと多少向きが違いますが、やはり系列をつくることが、ほんとうの意味において中小企業考える場合において、かなめではないかと思います。しかして特需の関係でも上手に協力工場を使つておる方もありますし、そういうふうに仕向けて行けば、中小企業の問題は、表面は大メーカーに集まつて行つても、中小企業の方に行く。ただその結びつき方において、いわゆる大企業が中小企業から搾り取るようなことのないような方式としては、金融なんかの点でも手心ができるのでありまして、たとえば今までの輸出手形の割引の問題でも、生産者との裏書でやるというようなやり方は、中小企業の行き方を、大きな全体の中で生かすようなやり方だというふうに考えておりまして御指摘のような傾向がありますことも承知いたしておりますので、かじは上手にとりたいと考えております。
  42. 志田義信

    ○志田委員 ありがとうございました。私は今のお話は、中小企業の力が足らなくてどうも特需の波にかからない、落ちるというような御見解のようにもとられるのでありますけれども、むしろ最近の特需の波にひつかからぬで、落ちる大部分の原因というものは、特需品の価格や原料の騰貴に伴う生産者の採算割れ、あるいは納期には入れられないというような遅延の問題等にひつかかつて、こういう問題が出て来る面が多いのじやないかと思います。そういうことに対しましては、安本当局としては、具体的に何かこれを救済してやる方法を通産当局と考えておられるかどうか、その点をお伺いいたします。
  43. 小峯柳多

    ○小峯説明員 原材料入手の問題が、どうしても大きな所に片寄つて、小さい所へ薄いというふうな意味の御指摘ではないかと思いますが、この問題は実はなかなか面倒な問題で、綿布の問題でも、糸の問題でも、中小の機屋さんが非常に困つたことは事実であります。従つてこれに対する扱いとしましては、私どもは、統制経済に逆行するという意味でなしに、暴利取締りの問題、いわば指導によつてその問題を片づけるような方法をとつております。しかしこれにある程度までの限度があるとすれば、特別な一つのレザーブシートを考え意味で、全面的な統制でなしに、ある程度の指定生産資材ということを考えることも、場合によつては必要ではなかろうかと思います。要すれば買上貯蔵会社のごときものも、将来の傾向いかんによつては準備いたしまして、中小メーカーの原料入手難を、その貯蔵会社によつてつて行くということも考えていいのではないか。いろいろ方法は考えております。といつて統制経済に逆行する印象は與えたくないと思つております。その点愼重に、あの手この手の準備だけはいたしておるつもりであります。
  44. 圖司安正

    圖司委員長 午前中の質疑はこの程度にいたしまして、午後は一時半より再開いたします。     午後零時二十六分休憩     —————————————     午後三時四十二分開議
  45. 圖司安正

    圖司委員長 午前に引続き会議を開きます。  電力問題に関し、物価庁第三部動力課長藤田勇君より説明を聽取いたします。
  46. 藤田勇

    ○藤田説明員 現行の電気料金は、御承知の通の昨年の十二月十三日から実施されたのでありまして、それはその当時の十二月十二日までの料金に対しまして、値上り率が三割二分二厘、こういうことに相なつております。  原価の内容を簡單に申し上げてみますと、大体五百五十億に相なつておりますが、そのうちで、御承知通り企業三原則が、一昨年の十一月の十六日に出ておりまして、その企業三原則の発表以来、公式な価格の計算の上においては、賃金の値上りを認めないということに相なつております。当時の電気料金に織り込みました電産賃金は、五千三百五十八円ベースであつたのでありますが、昨年十二月十三日におきましては、政府の勧誘して決定いたしました電産賃金が、八千五百円ベースと相なつております。従いまして十二月十二日の現行料金決定の中の原価の中に、人件費の織込み不足というものが、大体四十五億ございます。これが一番大きな問題でございましてなお石炭費は、その当時の四百六十五万トンというのが、石炭の値上りその他によりまして、事実上は四百五万三千トンしかたけない、こういうことで決定されております。なおこの場合原価がそうでありますと同時に、原価計算上必要なものは、ハイドロの——水力発電をどの程度に見込むかということが一番大きな問題でございます。これは水力発電所の設備の形式、たとえば故障修理、こういつたものをかみ合せると同時に、他面におきましては新増設の分を考慮いたしまして十二月十二日以降一箇年における水の出方を推定いたしたのであります。そういたしました結果、なお送配電ロスを考慮いたしまして、販売炭における電力量が二百三十一億というような数字になつております。そうしましてその結論といたしましてそのときの平均価格は二円三十七銭何がしということになつております。その二円三十七銭何がしを、その当時における電灯料金の価格差に応じて大体開きました。そうして今日の電気料金の金額というのができておるのであります。なほ新料金が旧料金の制度に比しまして異なつておりますのは、時間的に料金差を設けたということでございます。結局夏の料金と冬の料金という二つの制度を設けた。それから標準料金と超過料金、火力料金というものの設定があつた、こういうことでございます。そのほか電気使用の合理化をはかる、こういう意味合いにおきまして、負荷率の割引條項あるいは変圧器の割引條項とか、こういつたいろいろな割引條項が入つております。これはこの前の委員会の席上で、一件書類全部資料といたしましてお手元に差上げたのでございますから、ごらんになるとおわかりになると存じます。そういうことで地域的な料金、あるいは時間的な料金の違いが出て来た。それからもう一つ、地域的の料金は従来もございましたが、今度は電灯及び小口料金にも、十二月十二日以降地域差を設けた。これがまた異なつております。大体従来の料金制に対しまして今度の料金制の違つたところは、要するに値上りが三割二分二厘、それから地域差料金、季節的料金、標準料金と超過料金、これだけが違つたのだということになつております。料金表はお手元に差上げてありますから御承知のことと思います。一応簡單に御説明申し上げまして、御質疑にお答えした方がよろしいかと思いますので、この程度にいたしておきます。
  47. 圖司安正

    圖司委員長 引続いて経済安定本部産業局電力課長澤田達君の説明を求めます。
  48. 澤田達

    ○澤田説明員 安本の電力課長でございますが、連絡不備のためしたくをして参りませんでしたので恐縮でございます。大体電力割当について、現在問題となつておるところを、需給の見通しについて御説明申し上げます。  電力の割当は二十二年の十二月から、当時物調法的な感覚から、産業生産計画に適用するごとく、電力の割当制を実施して参つた次第でございまするが、昨年の十二月の料金改訂からは、総供給力の割当でなく、そのうちの標準料金の割当ということに、割当制度の性格が変革せられたわけであります。それから第三・四半期の今月の十月から、その割当制度の方法が改正になりまして、九月三十日付の割当改正の安本訓令と、需給調整規則の改正が行われた次第であります。今度の割当改訂の趣旨は、今年の七月ごろから関係方面との話合いもございまして、一般産業経済の統制撤廃の客観情勢にも対応し、電力割当制を実施して来たいろいろの経験上の諸事態にも対応いたしまして、主としてねらいは電力割当を簡素にし、安定化することによりまして、割当に携わつておる人の節減をはかること、それから産業界に対しましては、割当の量を長期にわたつて安定して通告することによつて生産計画をあらかじめ長期にわたつて立てることができるようにしてこれによつて経済の安定に寄與しようという目的がねらいなのであります。その方法といたしましては、三千キロの契約の工場へ線を引きまして、三千キロ以上の約三百四、五十の工場でございますが、これは従来通り割当をする。三千キロ以下の工場はもちろん、大口電灯、業務用電力につきましても、今後はことしの大月以前一箇年にさかのぼる当該毎月の当初割当が、実績の九五%ないし八〇%——冬は八〇%でありますが——のいづれか大きい方を選択させて、これによつて固定してしまうという方法にかわつたわけでございます。かようにかわりましたために、十月の第三・四半期からの割当といたしましては、まず総供給力の中から火力料金分を差引きまして、標準料金で割当られるものを想定いたしまして、その中から供給規定できまつております定額電灯、従量電灯の引当分を差引きまして、さらにその残りから特殊進駐軍需要と、それから大口電灯、業務用の電力、産業用の三千キロ以下のものの、今度の規則で割当てられるものの量を機械的に計算いたしまして、それを差引いて残りのわくを三千キロ以上に配分する、こういうことになつた次第でございます。そういたしますと、実は三千キロ以上のわくが大体第三・四半期におきまして十九億くらいになりましたので、これは昨年の三千キロ以上のわく及び実績に比較いたしますと、昨年の三千キロ以上のわくは十九億八千万台でございます。昨年の第三・四半期の実績は二十一債ほどでございました。従いまして、昨年から今年までのその後の産業の延び等を考えますと、必ずしも三千キロ以上の残されたわくが十分であるとは考えられないようになつた次第でございます。特に地区別に見ますと、北海道等におきましてはその傾向がやや強烈でございましたので、これらの地域につきまして、つまり割当制度改正後直面いたしました第三・四半期の具体的な割当計画の数につきまして、当時から今日まで実は折衝している次第でございます。少くとも今月末前は妥結いたしたいつもりで、鋭意努力いたしている次第でございます。三千キロ以上の需要家に対しましては、切符がないということは困りますので、とりあえずの暫定措置といたしまして昨年の十月当初の切符だけを発券いたしました。しかしながら昨年の十月の切符ではいろいろ実情に沿わない点がございますので、その後なにがしかこれを修正しなければならない。どの程度修正するかについてただいま申したように、検討中でございます。  なおその検討前の割当の数を、若干こまかく御参考までに申し上げますと、第三・四半期の水力の供給力は、年間計画におきましては七十四億六千万と想定いたしましたが、第三・四半期の計画を立てまする際に、さらに水力貯水状態等を検討いたしまして、七十五億六千万と想定し直しました。さらに火力の発電といたしましては、標準料金に含まれる石炭量として、年間三百三十万トンと想定しまして、これに対して第三・四半期分の計画量は七十八万四千トンでございますが、これに冬季までの豊水による石炭量を考慮いたしまして、約二十万トンを加えまして九十八万四千トンを標準料金の火力発電に量込んだ次第でございます。かようにいたしまして、水火力を合計いたしますと、八十五億五千万キロワット、これは前年同期の計画に対しまして一〇二・五%、前年同期の実績に比べましては九〇・四%に当つております。これから所要のロス、擅用等を差引きまして、需要炭といたしましては六十億千四百万キロワット、これは前年同期の計画に比べましては一〇〇・五%、実績に比べましては九三・一%に当つております。この数から先ほど申したようにそれぞれの部門、電気料金の告示できまつているもの、今度の割当規則の割当で機械的にきまつているもの等を差引きまして、三千キロ一以上の大産業に割当ててみたところが、先ほど申したような問題にぶつかりまして、みな今折衝中で、近日中に第三・四半期の割当計画の最後版が決定する。いずれ最後の資料は本委員会にも御提出できる、かように考えます。  簡單でございますが、以上で終ります。
  49. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大体今度の割当制の変更なり、料金というものは、九分割案の準備じやないでしようか。むしろそれの準備的行為と見てよろしいでしようか。
  50. 藤田勇

    ○藤田説明員 全然関係がございません。
  51. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この地域差の関係も、今言つたような御訂正があつたようでございますが、これはかなり日本経済に及ぼす影響が強いと思うのであります。特にマージンの影響が非常に強いかと私は思うのであります。先ほど北海道のお話もございましたが、九州の場合も相当問題があろうかと思いますが、地域的な一つの問題を、大産業の実態から御説明できたらお願いしたいと思います。
  52. 藤田勇

    ○藤田説明員 大体計画といたしましては、御承知通り標準料金を使う場合と、それから電力の割当以上を使う——要するに火力料金を使えば電力の單価というものはずいぶん違つて参ります。たとえば関西方面におきますと標準料金に相応するものの割当が、総使用の九〇%の場合、そうしますとあと一〇%というものは追加使用料金をとられる。そうしますと標準料金を平均しますと、ちようど倍になります。こういうことで違つて参りますが、まず標準料金だけの場合の地域差は大体どのくらいになつているか、これを申し上げてみますと、中小企業方面を一応申し上げますと、総平均を一〇〇といたしまして、北海道は一一六、一割六分高くなつております。それから東北は五%高くなつております。関東は大体二%——これは大体一〇〇という数字を一番最下位といたした場合でございますが、大体今のようになつております。中部が七%、一番安い北陸が一〇〇%、関西が一四%、中国が二二%、四国が一八%、九州が二六%一こういう地域差になつております。それからもつと少し大口の中どころ、五日キロワツト前後のものを申し上げますと、これは北陸は、水力でございますから一番安く、百といたしますと、北海道は四割五分高になつております。東北は二割二分、関東は一割三分、中部が一割九分、関西が三割六分、中国が五割六分、四国が四割九分、九州が六割二分になつておりまして、九州が一番高くなるわけであります。  なおこれは電気の面ではこうなつておりますが、この高い地域については、御承知のように追加使用料金はまた安くなる。関東は八円ないし八円八十銭拂わなければならないが、九州などは五円何がしでよいということになつております。従いまして追加料金は多く使えば使うほど比例的に九州は安くなるし、関西あたりから東北、関東、中部、北陸方面が高い、八円の料金を拂わなければならぬからずつと高くなる、こういうことになつております。  もう一つ電気のコストだけではそうなりますが、各産業の使う動力費あるいは熱源、こういう面から考えますと、この電気料金の地域差が高いところほど熱源は安くなつております。たとえば一番高い九州あるいは比較的高い中国に行きますと、大体発電あるいは工場に使つております石炭が、四千五、六百から五千二、三百で、大体平均いたしまして、トン当り二千五、六百円、それに対して一番安い北陸、関東、そういうところは三千八百円から四千五百円程度の石炭を使う、こういうことになつておりまして、電気料金の地域差はそういうことになつておりますが、総体的に見るとこういうふうになつて参りますから、産業に及ぼす影響は、特に電気でなければならない化学肥料のようなものについては、担当影響がございますが、さもないものには大した影響はないのではないか、こういうふうに考えております。
  53. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほどいわゆる給與ベースの値上りというものを織り込むことが計算されておつたように思いますが、五千何百円のものを八千何百円をするが、その八千何百円というのはどうですか、今度の政府の給與改訂というものと比率をとつてみると、どういう関係に立つておりますか。もう一ぺん再検討することになるのか、ならないのか。官吏の給與ベースとの関係ですね。
  54. 藤田勇

    ○藤田説明員 これは電産賃金は御承知通り産業界におけるレーバーの中心的なベースになつておりまして、現在のところ全然物価庁あたりでは考えておりません。むしろそういうものに当時の八千五百円のベースに電産賃金があつたのに較比しまして、官公吏の給與ベースがあまりに低い、それを少し調整する意味で引上げる、こういうように承知いたしております。
  55. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つ、さきに三千キロのところで切りましたが、上の方が私はかなり少くなると思います。今までの三千以下と三千以上との比率がどうかわつて来るか、北海道の場合だと十九億でしたか、十九億の水準のところで約一、二億減るという話で、ずいぶん窮屈な点が出て来ると思いますが、その点についてもう少しお話を願えれば……。
  56. 澤田達

    ○澤田説明員 先ほどの数は、北海道がその中でも程度が強く現われるというので、あれは全国台の数でございますから、御訂正願います。あれで申しますと、総供給力が先ほど申したように若干ふえておりますのに、去年の十九億八千万に対して、保留を入れますと約二十億近くになりますが、制度そのものが、三千キロ以下のものは、機械的に去年の割当なり実績なりをベースにしまして割当の数がきまつてしまいますから、それを積み重ねれば機械的に出てしまう。その残りを三千キロに割当てるわけでございますので、三千キロ以上が小さくなるか、あるいは三千キロ以上が大きくなるか問題でございますが、また特に水が計画よりよけい出るることが想定せられる場合には、三千キロ以上に行くわけでございまして、制度そのものとしては決して三千キロ以上を圧縮する、下だけをとつて三千キロ以上が小さくなることを予期してきめたものではないのでございますが、やつてみると、当初案では若干三千キロが割りを食つたような形になりましたので、折衝しておるわけであります。データーをとりまして、三千キロ以上も以下も、そう不公平にならないように考慮しつつ、また不公平にならないようなデーターが出て来やしないかということで、供給力は初め三千キロ以下の復興につきましても、再検討を加えておるわけであります。しかしこれから第四・四半期等供給力が減る場合を考えますると、三千キロ以下の範囲が、場合によるとせばまるかもしれぬということも予測せられますから、これらは割当実施後の——今度初めてこういう制度をしたわけでありますので、実施後の実績データー等をつぶさに検討いたしまして、かりにさようなことが起る場合には、本制度の中には規定されておりませんが、別途の何か三千キロ以下の圧縮率等を研究いたしまして、按配いたしまして、三千キロ上と下との不公正の起きないように努力しなければならぬ、かように考えております。また十月実際に発見した量、つまり三千キロ以下は二つの数を選択させるわけであります。これを一々数十万件のものを積み重ねて行くのであります。一応安本が計算いたしましたのは既往のデーターをできる限り分析して想定したわけでありますが、実際に相手の方をもう一ぺん取直して、数日前に集まつて来ておりますので、それらを見合つて、その中には切符はそれだけいりますが、その中には使わないのもあります。三千キロ以下の発見量と所要の量を地域別に検討いたしまして、はたして三千キロ以上が縮まるかどうか、今鋭意検討しておるわけであります。かりに将来縮まるとなれば、何らかの処置を講じたい、かように考えておる次第であります。
  57. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは私、おそらく誤解だろうと思うのですけれども、最近盛んにいわれることは、九分割を促進するために、九分割に反対しているような大口需用者というものが、非常に不当に今度の割当制度で圧迫される、こういうことを聞いておる。そういう事実はおそらくないだろうと私は思うのですけれども、そういう誤解を受けるということは、私は非常に重大な問題であると思うのです。だからそのためにかえつて九分割案に反対の者が、今度は賛成しなければならぬというはめに電力の面から追い込まれておる、こういうことを聞くのですが、もしそんなことがあれば、日本の民主的な政治というものは御破算になる、私は非常に注意すべき問題じやないかと実は思つております。  それからもう一つ、むしろ私のお願いといつていいのですが、さつきの地域差の問題は非常な私は大きな問題だと思う。特に一〇〇として、しかも九州あたりが六十幾つとか、あるいは北海道が四十幾つとかいうようなことになつて参りますと、たとえば一つの例を硫安工業なら硫安工業にとつてみますと、これはほとんど各県にそれぞれ需要者に応じて、今まで北海道は一つつくる、新潟の方へも一つつくるとか、秋田の地域も一つつくるとか、それから青森辺に日東化学をつくる、それから関東地方としては日東化学なり、昭和電工なりをつくるというように、地域的配分をして、そうして日本の全体的な硫安肥料なら肥料工業というものの一つの配分を考えて行つたわけですね。そういう面から合理化されて行つたものを、今度逆に、電力料金の地域差というような問題から、それが非常にゆがめられて来る。こういうことになつて来ると、私はほんとうに今までの日本行つて来た政策の、大きなマイナスの面が出て来るのではないかと思うのです。こういう点についてやはり依然としてそういう地域差の問題をそう強く出して行つていいものかどうか。これは私電力局にお聞きするのはかえつて酷なんだと思うのですけれども、しかし日本産業としては非常に重大な問題じやないだろうかと私は考えるのですが、御意見があれば聞かしていただきますし、なければけつこうでございますけれども……。
  58. 藤田勇

    ○藤田説明員 電気料金の計算は、御承知通りアロケーシヨンの方と密接不可分の関係にございます。従いまして、地域差の割合もどの程度超過料金を使うかによつてつて参ります。標準料金の場合において六割の差があると申し上げましたが、かりに関東あるいは関西の方面で一割の超過料金を使つた場合、それから九州で一割の追加使用料金を使つた場合は、その差はずつと縮まるわけでございます。いずれにいたしましても、産業に至大の影響があることは当然でございまして、特に電解法による化学肥料分については相当深刻なものがあるのでありますが、しかし現実の状態におきましては、今度のストライクチヤーにおきまして、いわゆる余剰電力というものがございますので、現在の肥料工業は、各地域とも原価計算に組み入れました電気料金よりも安くなつております。というのはサープラス・パワーは御承知通り大体二十五・六銭前後で供給しております。化学関係の肥料におきましては、そういつたものがうんと使える。今年のように雨が多くて、オーバー・フローで流れるものを電気にして、それを安く売るということになりますと、五分の一あるいは四分の一の安い電気が使えますために、一つの例を申しますと、川崎の昭和電工あたりになりますと、非常に安く電気料金を使つており、従つて今日の昭和電工のあの業績の改善は、一にかかつて電気料金にあるのじやないかと言われるくらいに安くなつております。その他あらゆる地域における硫安工場は、電解法によるものは相当に利益があると考えておりますが、ただ肥料部面だけにおきますと、御承知通り、すでに電気料金の地域差の問題もそうでありますが、その製法のガス法との比較において、相当の懸隔がございます。そういう点から参りますと、ガスは御承知通り石炭を原料とする、コークスを中必としてやつておりますが、その方は御承知のように非常に高い。そこで電解法では非常にもうけて、ガス法では同じ関東にあつても非常に損をする。たとえば四国の新居浜の日新化学も、ガス法をやつておるために非常に損をしておる。こういう状況になつておりますので、今日のこの物価のアンバランスな状態におきましては、地域差も肥料のようなものには相当に影響がありますが、それよりも製法の違いによる影響の方が、もつと大きいのじやないかと考えます。それからまた肥料は非常に多くの電気を使いますが、あまり多く使わない他の方面でも、電気を動力として使つておりまして、こういつた面の価格に及ぼす影響価格の中に占めるパーセンテージというものは、電気料金はきわめて小さいものです。一応現金支出になつて月々きちんきちんととられるから大きい考に感じますけれども、その実原価計算上ではどのくらいかと申しますと、大体ほとんど二、三パーセント以下のものが多いようでございます。そういう点で地域差もこの程度はやむを得ないのではないかと思いますが、御承知のように再編成後における電力料金をどうするかということと重大な関係がありますので、例の水力調整金といつたようなものを設けまして、現在は水力発電が非常に安くて、石炭が高いために火力料金が非常に高い、そこで水力に一定の賦課をいたしまして、火力発電の地帯の発電電力に対して補助をしようということで、再編成後における電気料金の地域差を、なるべくならばこれ以上大きくしないようにしたいと考えております。
  59. 圖司安正

    圖司委員長 他に御質疑がなければ、電力問題に関する審議はこの程度をもつて一応終了いたします。  なおこの際お諮りいたします。事業者団体法に関する件について、参考人として食糧・配給公団総裁梶原茂嘉君を、明二十一日の委員会に招き意見を聽取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 圖司安正

    圖司委員長 御異議なしと認めましてさようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。  明二十一日は午前十時より本委員室において開会いたします。     午後四時二十二分散会