運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-11-01 第8回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十一月一日(水曜日)     午後一時十八分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君       伊藤 郷一君    大村 清一君       菊池 義郎君    尾関 義一君       仲内 憲治君    橋本 龍伍君       並木 芳雄君    武藤運十郎君       今野 武雄君    中村 寅太君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  委員外出席者         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務次官  太田 一郎君         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 十月二十日   黒田寿男君が議長指名委員に選任された。 十一月一日   委員田中堯平君辞任につき、その補欠として  今野武雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員調査報告に関する件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず派遣委員より報告聽取の件を議題といたします。当外務委員会におきましては第八回国会閉会後、九州北海道、近畿・中国四国の三班にわけまして委員を派遣いたしたのでありますが、ただいまからこれら各班より報告を、なお九州方面は私から報告いたすことになつておりますので暫時佐々木理事にこの席を讓ります。     〔委員長退席佐々木(盛)委員長代理着席
  3. 守島伍郎

    ○守島委員長 九州班といたしましては、自由党から私、社会党から西村榮一委員、共産党から渡部義通委員が派遣されましたが、九州班につきましては、私が代表いたしましてここに報告いたします。  今般は九州地方における密入国及び密貿易状況、並びに同方面における韓国動乱影響等について、現地実情を視察する目的をもちまして福岡県、長崎県及び鹿兒島県の各県におもむきました。短期間でありましたが、その間馬対、種ケ島にもおもむき、また要送還者收容中の針尾收容所にも参りまして、現状を視察して参つた次第でございます。詳細なことは追つて文書をもつて報告いたしたいと思いますが、本日は計数等を除きまして、各地において受けました印象的事項簡單に申し上げまして一応の報告といたしたいと思います。  まず密入国の問題でありますが、歴史的にいろいろと特殊のつながりを持つております関係がありますので、朝鮮人密入国は、対馬基点といたしまして、その周辺の各県にまたがる地域圧倒的数字を示しており、大体全国総数の七割ないし八割が同方面によつて占められているという状況であります。  終戰直後に比べますと、最近はその数は減じているようでありますが、しかしながらそれは、別に取締り機関の拡充された結果とのみ見るものではなく、またその見通しがどうなるかということは、必ずしも減少して行く傾向にあるとは思われないようでありまして、この密入国方法たるや、きわめて巧妙でありまして、その取締り強化に伴い、その手段もこれに正比例して巧妙になるという実情であります。またその大部分がほとんど密航ブローカーの手によつて操作されている模様でありまして、このブローカーは、わが方の警備の陣容、装備、活動事情から監視所の所在地でも、一々知つているような状態で、まことに注目の要があるものといわなければならないのであります。地方取締り機関末梢陣営に至るまで積極的に整備する必要もあり、さらに政府としては、この対策について根本的に検討の必要があることを痛感いたした次第であります。  なお取締り機関として、国警とともに、その主要な役割を持つている海上保安部当局側から、私どもが行く先々において、その整備、陣容施設等が低調なるために、十分な活動がはばまれているという、きわめて切実な苦情が、訴えられた次第であります。それら具体的事項につきましては、いずれこれをとりまとめた上、政府の注意を喚起いたしたいと思つております。  また時局により、韓国より避難者の殺到も予想されたのでありますが、韓国側海面警戒等影響したのでございましようか、今までのところ、実際においては予想したほどのこともなく、最も懸念されている、避難者を装う者の中に、第五列またはゲリラ部隊に属するがごときもの、あるいは武装兵避難等、政治色濃厚なものは、表面的には現われていないとのことであります。  さらに南九州においては、台湾人朝鮮人等、すなわち外国人密入国のほかに、日本内地への渡航制限を受けている南西諸島に本籍を有する旧沖繩県人、及び三十度以南を境にして行政権の停止されている旧鹿兒島県大島郡に属する諸島に居住している両旧県民の、内地への入国というきわめて複雑な問題があります。許可を受くるに数ヶ月を要する。その他いろいろの不便が訴えられており、簡便な手続と敏速な許可が叫ばれているのでありまして、私はも非常にそういう人たちに気の毒千万だと感じたわけでございます。  ここでちよつと申し上げますが、南西諸島よりの密入国と申しましても、また密貿易の場合も同様でありますが、三十度線を境にして行政権が停止せられた旧沖繩県人、旧鹿兒島県人でありまして、他の地域のように外国人入国ではないのでありまして、何とかしてもう少しこの人たちの便宜になるように、事をやらなければならないということを痛切に感じました。現地におきましても各方面より訴えられ、南西諸島の問題は領地の問題ではない。講和條約とは関係なく、すみやかに自由な交通、自由な貿易が実現するよう努力されたいという、切実なる要望がありました。  密貿易については、地理的関係で、北九州基点とする対韓国のものと、南九州基点とする対南方貿易とに大別することができます。取締り機関たる税関、国警海上保安部地方当局が、それぞれ苦心努力の結果、検挙件数は漸次上昇的計数を示しているのでありますが、これとても、はたして検挙率のみが上つているのかと申しますと、現地実情より推測してみるに、これまた密入国の場合と同様、取締り上にも種々困難があるように思われ、総体的には密貿の方も増加の傾向にあつて、なお相当数密貿易当局の目から漏れているのではないかと思われるのであります。九州方面における韓国動乱の及ぼした影響等についても視察して参りましたが、一般にさほどの影響は認められません。ことに動乱によつてクローズアツプされた対馬のごときも、私どもが参りましたところには、至つて平靜でありまして、地理的には朝鮮にきわめて接近していますが、政治的には本土、東京あたりよりも遠いところに置かれているという感じさえも持つた次第であります。  要するに、朝鮮問題が北九州に及ぼした影響というものは、当初は多少の影響はあつたと思いまするが、その後きわめて平靜になつているという実情でございます。  はなはだ雑駁でありましたが、詳細は文書をもつて報告することといたしまして、これをもつて九州班報告といたします。(拍手)
  4. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員長代理 伊藤郷一君。
  5. 伊藤郷一

    伊藤(郷)委員 千島歯舞諸島国境調査について、本員のほかに自由党北澤直吉君も参りましたが、本日は北澤団長が不在のため、私がかわつて報告いたします。     〔佐々木(盛)委員長代理退席委員長着席〕 詳しい報告はここに文書をもつてつくりましたので、あとで提出いたしますが、ただいまとりあえずこのたび調査しました、北海道における本外務委員会として関連する諸問題だけについて、簡單に御報告しておきます。  まずわれわれ北海道班視察目的は、北海道における密出入国、密輸入及び朝鮮事件に関連して、道民一般動向がどうであるかとか、あるいは歯舞諸島及び千島返還懇請に対する動き等に関しまして、現地状況を視察するということがそのおもなる目的でありました。  まず密入国に関しましては、ただいまのところさしたる顯著なる変動は見受けられず、本年に入りましては密入国件数わずかに三件で、その密入国者の国籍はいずれも朝鮮人でありました。また密出国は本年の一月根室において一件発生いたしました。これは未遂に終りましたが、日本人でありまして、目的は勉強のためとのことでありました。  それから世間でちよちよいうわさされたことがあると思うのでありますが、千島に残つておる日本人の中で一度根室に渡りまして、それからまた千島行つて、いわゆる行き来しておる者があつた、あるいはあるといううわさがあつたことがありますが、これはその家族は現在北見の国の上斜里という村におりますが、その人が択捉方面において村長をしておりまして、終戰後取残された多数の村民島民せわをしておりましたが、だんだん物資欠乏を来した、しかし物資欠乏を来したけれども日本軍の置いて行つたところの米が非常にたくさんあつて、その米が北海道方面に足りないということを聞きまして、その米を船に積んで千島にやつて参りまして、それから酒とかその他の物資をまたその船に積んで、家族には会わなかつたそうでありますが、それからまた択捉帰つたということで、これは事実のようであります。この人の考え方は、残された島民せわ村長としてあくまでして行こうという職責に忠なるところから出たもののようでありますが、その後一度帰りましてから、いまだに帰つて来ない、杳として消息を知らずというような事件が起つております。  一般外国人動向はきわめて平穏で、取立てて申し上げるほどのこともございませんが、朝鮮人のみは、どこでもそうでありますが、二派にわかたれて、それぞれの目的活動しておる模様でありますが、特別に着目するほどの事件は起きておりません。  次に密輸出入に関しましては、これも別段の事例はなく、ただ一般的な事件が散発する程度のものであります。ただここにちよつと注意すべきことは、現在まで密輸出入根源地でありました九州とか京阪神地方取締り嚴重になるにつれまして、漸次その目的地が北上する傾向が見られるということで、このことにつきましては、当局といたしましては、将来一層警戒嚴重にして行く意向であるとのことでありました。歯舞突端の納沙布にも警察が行つて嚴重監視しております。  次は漁船拿捕の問題でありますが、そのおもな発生地域根室及び稚内でありまして、現地漁業民の最も頭痛の種となつているものでありまして、出漁にも少からぬ不安を抱かしめる結果となり、一日も早くかような隘路が取除かれるよう切望して、やまない状態でありました。これが打開策としては第一に取上げられるべき問題は漁区拡張、すなわち現在のマツカーサー・ライン拡張をいうことでありまして、この問題につきましては、各関係官庁におきまして研究し、かつ妥当なる結論が出た場合にはすみやかに関係方面に懇請折衝すべきものと思われるのであります。大体二三箇月置かれまして、情報をよく開かれて、危害も何も加えられないで、次々帰つて来ておる現状であります。しかしながら、そういうことに対する村民の恐怖というものは非常なものでありまして、濃霧が深く、またマツカーサー・ラインが眼の前に追つているというような関係からいたしまして、ラインの拡大を心から熱望しておる次第であります。  さらに歯舞根室地区視察状況を申し上げますと、従来当地の漁業民の多くは、根室中心といたしまして歯舞、色丹、国後島附近近海漁業とオホーツク海のかに漁業がそのおもなものでありましたが、これらの諸島及び漁区はすべてソ連軍の占拠するところとなるか、あるいはマツカーサー・ラインによつて制限されております関係上、まつたく漁撈は不可能となつております。わずかに沿岸漁業は可能でありますがこれからの漁獲高戰前とは比すべくもない。さらに領海線があまりにも接近している歯舞納沙布岬附近ではガス、風、海流等の悪條件のもとでは航行すら困難なありさまで、これを冒して出漁する場合には、前にも申し上げました通り、領海線侵害というかどで拿捕される結果となるのであります。こんぶ歯舞村だけで戰前は、ほしたもので二十万石とれまして、対支貿易の大宗を占めておりましたが、現在は昨年の豊作をもつていたしましても三万石、今年のごときは、わずかに一万五千石でありまして、村民の多くはせめて千島かあるいは離島が帰らない場合においても、漁区拡張を心から熱望しておるのであります。御参考までに申し上げておきますが、根室突端納沙布岬と現在占領下にある貝殻島の距離はわずかに三・四キロで、その中間である一・七キロのところが領海線となつておりますが、この貝殻島というのは、こんぶ採取にも最適な浅瀬になつているのみならず、この附近海流の強い箇所でありますので、ここでの漁撈及び航行の困難は想像にかたくないのであります。われわれが参りましたのは、八月の二十五日の午後三時過ぎでありまして、納沙布岬燈台に立つたときは、ちようどアメリカ軍用機が、おそらく青森県からかと思いますけれども、哨戒に参りまして、納沙布岬燈台の上空を旋回して一時間前に去つたというときでありました。眼前には国後島と水昌島との間にソ連監視艇が二隻ばかり浮んでいるのがはつきり見え、前面の水昌秋勇留勇留志発というような島では、くつきりとソ連監視兵のいる監視哨の望楼が見えた、そういうような、何か非常に悲壯な、差迫つた、緊迫した感じを與える日でありました。八月は四、五日しかガスが晴れる日がないということでありましたけれども、秋が近かつたせいか、幸いにその日は一片の雲もなく、まことに離島の全容を一望にして集めることができる快的の日でありました。  今般朝鮮において勃発いたしました事件に関連しまして、根室地区一般住民動向は種々困難な條件の下にあるにもかかわらず、たいへん平靜で何らの動揺の色もなく、家業に專念していることはきわめて力強く感じられたのであります。ただしかし歯舞という村の入口から三、四十キロあるところに友知という村落がありますが、そこの部落民だけはいわゆる神がかりの巫女言葉を信じまして、朝鮮事変の膠着したあの八月中、どうせソ連軍が上陸して来ればえらい目にあうのだ、何もかもなくなる、働いても金をためても何にもならぬということからして、その部落の近くにある山の中へ入りまして、くまでもあるまいし穴を掘つて、七、八人でありますが、絶対働かぬ。これには村長も非常に困つておりましたが、ソ連軍が上陸するという八月十六日にも上陸して来ず、それがまた十日ばかり延びたという巫女言葉を信じまして、また戰々きようきようとしておる。こういう者がおりまして、村長もこれには困つたものだと非常に慨嘆しておりました。  それから根室町におきまして、もう一人かつて公共事業などに寄付をしたことのないある商人が、ソ連が上陸すると何もかもなくなるというわけで、根室町としては小さいお祭り——町の片すみに行われたお祭りでありますが、そのお祭の子供の相撲に三十万円、あり金を全部出したのでしようが、そのために非常ににぎやかだ。われわれがきようは何があるのかと言つたら、町長はくすくす笑つて語らぬ。よく聞いたところが、そういうばか者がいて、とにかくふだん寄付しないのにこの町はずれのお祭りに三十万円も寄付したので、賞品が山になつて、それでにぎやかなのだ。こういうことが一、二ありましたけれども、しかしながら先ほど申しましたように、一般の大衆というものは非常に平靜でありまして、生業に熱心に従事しておりました。それから歯舞村及び根室町においてそれぞれ懇談会を開催し、種々質疑応答がかわされたのでありますが、その席上一部の者の傾向といたしまして、もし講和條約がさらに後日に延期され、漁夫の人たちの置かれておる不明確な状態が長く継続するようなことがあるならば、遂に自己の生活に対する絶望感から虚無的な方向に走るやもはかりしれぬという雰囲気が、かすかながらも感ぜられた点は注目すべき点だと思います。このことはまことに危險でありまして、当局者はこのことに深く留意して、淳朴な漁民をしてかような境遇に陷らしめないよう万全の策を講ずべきでありまして、いたずらに虚構の希望を抱かしめず、むしろ国際情勢日本の今日置かれておる地位を正確に把握せしめて、さらに継続するやもしれぬ困難な現状に耐え忍ぶよう指導することが肝要であると痛感する次第であります。  終りに臨みまして歯舞のさびしい国境の村に一夜を明かしましたときに、この漁業協同組合の人が非常によいのどを持つておりまして、歌を歌つてくれましたが、その歌を一つ紹介いたします。追分でありますが、この追分の中にあの国境の村の人々の離島復帰のやみがたい悲願の声をお聞き取り願いたいと思います。「あの島恋しやソ連にとられ、ヤンサノエー、夢の間忘れず還る日を指折り数えて暮せどむなし、ネエー。平和会議ぞ待ち遠し、台湾、樺太及びもないが、せめて千島占守まで、ガス納沙布岬に立てば泣いてくれるか浜千鳥。」みなまことに慟哭した次第であります。  以上はなはだ簡單でありますが、初めに申し上げましたように、詳細は書類によつて報告申し上げたいと思います。これをもつて終ります。
  6. 守島伍郎

    ○守島委員長 次は佐々木盛雄君。
  7. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 佐々木盛雄菊池義郎並木芳雄の三委員は、第八臨時国会終了後、外務委員会から中国四国地方における賠償指定工場視察に派遣され、八月十七日東京出発視察日程全部を終了、同月二十六日に帰京いたしましたが、私はここに派遣委員を代表いたしまして、きわめて簡單にその結果を報告いたします。  八月十七日は名古屋中日本重工業株式会社の大江、岩塚賠償指定工場を視察いたしました。両工場とも民需転換、前者は進駐軍用バス及び小型の自動車の車体を、後者はスクーターを製造中であります。古見工場は閉鎖、大幸工場はミシンに転換しております。  八月十八日神戸川崎重工業株式会社造船部を視察いたしましたが、賠償指定工場のため、社債募集に困難を感じておることと、労働基準法職業安定法等労働法規の適用は造船のごとき特殊企業には非常な困難をもたらすことの二点につき陳情があり、賠償全面的解除を要望しておることはもちろんであります。  八月十九日広畑日鉄並びに網干日本セルロイド工場を視察いたしましたが、いずれも賠償指定解除を要望しておりました。  八月二十一日倉敷紡績株式会社倉敷工場を視察いたしましたが、同工場は能率良好にして操業度高く輸出に貢献するところ大であるが、工場の一部分のみ賠償に指定されておるために非常なる不便を感ずる旨の訴えがありました。  午後は高松の野田産業光洋精工、及び坂出の東亜合成を視察いたしました。  八月二十二日 日新化学株式会社新居浜工場を視察いたしましたが、硫酸、苛性ソーダ、合成ゴムの三工場のみが賠償に指定され、いずれも民需転換許可を受けて作業中でありますが、全面的解除を希望しております。  八月二十四日 中日本重工業三原車両工場を視察いたしましたが、朝鮮事件のために特需関係の受注があり、現にシヤム向け機関車を製作中であり、全面的解除を要望していることもちろんであります。  八月二十五日 新扶桑金属工業株式会社和歌山工場を視察いたしましたが、同工場は戰時中に計画された銑鋼一貫製鉄所で、広畑に匹敵するものでありますが、終戰のため製鋼設備のみが完成しております。同工場は新式、高能率で、その製造している車輪は全国生産額の八〇ないし九〇%を占めております。  以上をもつて報告を終ります。     —————————————
  8. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは次に国際情勢等に関する件を議題といたします。  まず外務当局より国際情勢に関する説明を求めます。
  9. 草葉隆圓

    草葉説明員 最近の国際情勢の中で特に重要と思われます動向を御報告申し上げたいと思います。  まず国際連合でございますが、第五回総会が先月の十九日から目下開催中でありますが、今回の総会におきましては朝鮮問題が中心となつた感があります。ことにこれに関連いたしまして、国際連合総会権限強化案が強く取上げられて、目下審議をされておる状態であります。先々月の末に朝鮮統一及び復興に関するイギリスを含む八箇国提案が出されまして、先月の七日の本会議で四十七対五票をもちまして通過され、この問題がその後国際連合強化案を強く示して参つた次第でございますが、実は今回の総会の翌日、九月二十日にアチソン・アメリカ代表から四項目国際連合強化案が提出されまして、これを基として平和のための統一行動決議案が七箇国の共同提案として、ただいま申し上げました十月七日の本会議に上程されました。翌日から政治委員会で検討され、十月十八日、各項別の表決によりまして多数でこれを採択され、その翌日の十九日に平和監視委員会集団保障処置委員会構成国が決定されますとともに、これが一括上程されまして、五十対五票の絶対多数をもつて可決されて、総会の本会議に回付されておる状態であります。その内容は前文と十五項目からなります内容と、最後に付属書で現在の総会手続規則の改正がなされておりますが、その中で特におもなる二、三の点につきましては、第一項にあります平和に対する脅威が発生して、あるいはまた平和の破壊なり侵略行為が行われました場合、安全保障理事会が五大国の意見の不一致でその責任を果し得ない場合におきましては、安全保障理事会の七箇国の單純投票または国際連合加盟国の過半数の要求に基きまして、二十四時間以内に緊急総会を開くことができるといたした点。第二の点は、第三項にあげておりまする十四箇国からなる平和監視委員会を設置しまして、国際的緊急状態が存在いたしまするいずれの地域にもこれを派遣して、監視報告させること。第三の点は、第八項に出しております全加盟国は自分の国の軍隊の中に、安全保障理事会または総会の指令のもとに、国連軍として行動し得ます部隊を各国の憲法に即した方法で設置するという点。次の点は、第十一項に出しておりまする十四箇国からなる集団保障処置委員会を設けまして、国際平和と安全保障を維持するための方法を検討し、来年九月一日までに安全保障理事会及び総会報告する。こういう点が現在内容といたしておる問題であります。これによりまして従来の国際連合総会が、場合によりましては安全保障理事会動きがとれぬようになつた場合に、これに肩がわりをし得る情勢を呈し得ることと相なりまするので、総会相当権限強化と相なることと存ずるのであります。  次に朝鮮問題の最近の情勢でございますが、九月十五日に仁川に上陸いたしました国際連合軍作戰がその後着着と成功いたしまして、現在のような軍事的には成功を收めている次第でありますが、これは九月三十日に国際連合特別政治委員会に上程されました、ただいま申し上げました朝鮮統一及び復興に関するイギリスを含む八箇国の提案が七日の本会議で圧倒的多数で可決されまして、従つて国際連合軍北鮮三十八度線を越して進んで参る情勢に相なり、去る二十日には北鮮の首都でありました平壤が遂に陷落しまして、これで一応軍事的段階は終末に近づいて来たと観測される次第でございます。今後は主として経済再建統一政府樹立の準備に重点が移つて来ておると見てさしつかえないと存ずるのであります。八箇国の提案朝鮮戰後処理に対しまする国連の方針を決定いたしたもので、この決議具体化には今後なお多くの問題が残されておりまして、国連軍事的勝利政治的勝利に発展させますることが今後の課題であると思われるのであります。  北鮮に対する行政権の問題でありますが、三十八度線を越しましたその後韓国政府北鮮相当行政官を派遣したようでありますが、国連朝鮮中間委員会の勧告によりまして、韓国政府の権限は認められないことになり、また国境地帶の占領につきましては、数日前トルーマン大統領の記者団会見におきまして、主として韓国軍が当るだろうという言明をなされたようでございまするが、南北統一の選挙によつて朝鮮に自由に選挙された政府を樹立することが、今後の国際連合の最終の目標と考えられるのであります。さきに申し上げました決議に規定せる総選挙は北鮮だけでなさるべきものか、北鮮だけを意味しておるものか、あるいは全鮮を通ずる選挙であるかという点につきましては、なお明瞭でない。今後に問題が残されておると存じます。アメリカは御案内の通り、朝鮮処理六箇條で、一応選挙は北鮮だけで行われ、南鮮で行われました百の議席を満たすというように伝えられておつたのでございますが、最近のこの問題に対しまするオースチン・アメリカ国連代表の言辞にもありまする点から察しますると、李承晩政権の将来につきましては、至つて消極的態度であるのではないか、ことに国際連合中間委員会が十二日の会合におきまして、北鮮韓国政府の権限下に置かずに、統一政府の構成を決定する全朝鮮を通ずる総選挙まで、国連軍総司令官の権限下に置いて、国連北鮮民政機関に各国連軍代表が参加するという趣旨の勧告を決定いたした。そしてそれをマツカーサー元帥に勧告通報したようでございまするから、従つてその選挙の問題につきましては朝鮮委員会の任務に関することでございますし、かつまた朝鮮統一再建委員会も発足しておらない現在であり、軍事行動の終結もまだはつきりいたしておらないところでございまするから、今後の朝鮮委員会の任務において検討されることと相なると存ずるのであります。最近インド支那の情勢につきましていろいろ伝えられておりまするが、例年十月の雨季明けになりますとこのような情勢を呈しておつたのでございまするが、ことに本年はホー・チミン軍が九月十六日の拂曉に、中国との国境にあります仏軍の前哨拠点となつておりますドンケーに、約四、五箇大隊からなる攻勢を開始いたしまして、十八日にそれを占領、続いて九月二十六日にパカー、十月三日にカオバン、十月十七日にはドンダンと次々にだんだん占領いたしまして、二十一日には国境方面仏軍司令部のありますランソンを占領されるに至つた。だんだんと国境方面を占領して参つた。この今年のホー・チミン軍の攻撃状態を考えますと、従来は多くゲリラ戰法を主としてやつておりましたのに、今年は大砲もあり、その他相当の重装備の大部隊による攻撃をしておる。しかしこの攻撃をもつて全面的な仏軍に対します総攻撃を意味するということよりも、むしろ国境地帶から仏軍を排撃するというのが眼目ではないかと考えられるのであります。この状態に対しまして、フランスの政府は事態の重大性にかんがみて、本国から、あるいは軍首脳部あるいは増援部隊を急派し、またアメリカ政府におきましてもこの問題に相当重大なる関心を拂いまして、マーシヤル長官は十月十三日にインド支那に対する軍事援助物資の急速な引渡しに全力を盡すことを保障したと伝えておりまするし、その他軍事援助費等の援助もいたしまして現在に及んでおるようでございまするが、しかしこの状態に対してアメリカの軍隊を派遣するかどうかという点につきましては、十月十一日フランス政府は米軍の派遣を要請する計画はないと言明いたしておりまするし、また先般十五日行われましたトルーマン大統領、マツカーサー会談におきましても、インド支那にアメリカ軍は派遣しないという政策に変更はなくして、中共がインド支那に侵入した場合にのみアメリカの態度は変更し得るということに意見が一致したと伝えられておりまするような点から考えまして、現在の情勢において、ただちにさようなことはないものではないかと考えるのであります。フランス及びホー・チミン軍のこの動きに対しまする————中共の動向につきましてはフランス首相のプレヴアンは十九日の議会におきまして、中共がホー・チミン軍に積極的援助を行つておると言明はいたしておりまするが、しかし中共軍が参加しておるという情報はないのでありまするから——現在国府筋の情報によりますと、国境地帶に中共軍が十五万程度集結しておるような情報もございまするが、参加をしておるということはいまだ考えられないのではないかと存じます。従来ホー・チミン軍は正規軍が約八万、ゲリラ部隊が約十万ないし二十万と称せられております。国境地帶だけでもよく訓練されました武装された約三万の兵備があるといわれておりまするのに対しまして、仏軍は十五万のうち約三分の二が北部インド支那に投ぜられておるようでありまするが、その装備は必ずしも良好ではないようでございます。  西ドイツの再軍備の問題はいろいろな意味におきまして相当論じられておるのでございまするが、御案内の、九月ニユーヨークで開かれました三国外相会議、第五回北大西洋理事会、また三国外祖国防相会議というような方面におきましてこの問題が活発に討議され、先月の二十四日にワシントンでの北大西洋條約軍事委員会でさらに討議されましたが、結局は具体的結論に達せずに、現在は去る十月二十八日から開かれておりまする国防委員会が引継いで、国防委員会で討議を続けておるようでございます。この西ドイツの再軍備につきましては、アメリカは大体西欧防衛態勢を急速に活発化するという観点から、西ドイツを含む強力な西欧防衛軍設置を主張いたしておりますのに対して、フランスはドイツの復活を恐れる根強い国民的感情から、まず英仏軍の強化を第一に主張いたしまして、西ドイツ再軍備反対の立場をとつておるようでございます。イギリスはその両者のちようど中間的な立場をとつておると考えられます。フランスは去る二十四日の国民議会におきまして、プレヴアン首相が西ドイツ再軍備にかわるいわゆる西欧防衛軍設置というものを提案し、国会で可決いたしました。現在この案が防衛委員会の討議に付されておると思われますが、そのプレヴアン案の内容といたしておりまするところは、第一は政治的、軍事的に單一な指揮系統のもとに、欧州諸国の兵力を統合いたしまして、統一欧州軍を各国の国防軍のほかに設置する。第二の点は、三箇国政府で欧州防衛相を任命する。第三の点は、各国が供給する部隊はなるべく最小限度にとどめる。第四は、財政は三箇国の共同予算でまかなう。第五は、欧州軍の目的は、北大西洋同盟の任務を遂行するにある、いわゆる任務にのつと行て行動する。これが大体ただいま申し上げましたプレヴアン案の内容と思われますが、これが実施にあたりましては、あるいはシユーマンプランの協定の調印なり、あるいは防衞相の任命なり、あるいは西欧防衞相の上に立つ議会の設置なりというのが前提各條になると考えられますので、それがない限りにおきましては、簡單に西ドイツの再武装の可能性はないことになると存じます。二十六日終了いたしました軍事委員会は、一九五三年を目標にいたしまして、西欧に七十箇師団設置の勧告案を作成いたしたのでありますが、ただいま申し上げましたフランスの提案に対しましては、意見が一致せずに、二十八日から開かれております防衞委員会に持ち越されながら、現在討議を続けられておる状態と存じます。  これに対しまして、去る十月の二十日から二日間プラーグでいわゆる東欧八箇国外相会議というのが開かれまして、主としてソ連の衞星国及びソ連を含んだ東欧八箇国会議でございますが、ソ連からはモロトフ副首相が出席しておる点が特に注目される点を思います。今回の会議は、九月にニユヨークで開かれました三国外相会議の西ドイツ再武装に関連します問題が中心問題と思われておるのであります。それが済みましてからの共同発表のコミユニケによりますと、三国外相会議は、ドイツの戰争状態停止を宣言することによつて、三国のドイツ駐兵継続をカモフラージして、対独平和状態の遷延を策するものである。また軍需産業の再興、警察組織の許可、ドイツに再軍備等を與えて、これによつてドイツの軍国主義の排除と、平和民主国家としてのドイツの再興を目標として来た米、英、仏、ソ四箇国の申合せを、まつたく蹂躪してしまつたというような意味の、長々としたことを申しながら、特に左の四点について、強くその急務を述べておるようでございます。  その第一点は、いわゆる米、英、仏、ソ、の四箇国政府が、ドイツが再武装し、侵略的計画へ参加することを許さないこと、及びポツダム協定を嚴重に履行するという声明をする。第二はドイツの平和経済の発展を妨げる一切の障害を除去いたしますとともに、ドイツの軍事能力の復活を禁止する。第三は統一ドイツの再建をする。第四は全ドイツ連邦政府の樹立と、講話條約審議への参加。今回のこの東欧八箇国外相会議は、前回一九四八年六月、ポーランドで開きましたものと、ほぼ同様でありますが、西欧の動きに対しまして、ドイツ再軍備が中心に取上げられ、これに対抗するために全力をおげておることを宣言した点が、今回の中心の一つの目標であるようにも思われます。  最後に対日講話の点について一言申し加えておきたいと思います。この問題につきましては、いわゆるアメリカの草案というのが、交渉の基礎として七項目をあげられ、その第一は手続の問題、いわゆる対日戰に参加したすべての国は條約調印の権利を有するというような意味の手続の問題。第二は国連加入の支持、日本国連加入の資格を得次第、日本の加盟を支持する。第三は領土の帰属の問題、小笠原、琉球はアメリカの信託統治にし、朝鮮は独立する、この点を日本は承認する。台湾千島、樺太は米・英・仏・ソ・中で決定して、それが一年以内に確定を見ない場合は、国際連合総会で最後の決定をする。第四の問題は、日本安全保障の問題、日本が自分の軍隊で保障できるまでは、これについては日本はアメリカと協力をする。第五の問題は国際條約を遵守する。第六の問題は、賠償については、一九四五年九月二日以前発生したあらゆる賠償権はその請求権を放棄する。第七は賠償に関する今後の紛争は、国際裁判で解決する。こういういわゆる基礎七項目に対しましては、まだ各国の反響は十分に現われておらないのでありますから、申し上げる点もないのでございまするが、ただ再軍備の問題につきまのてフイリピン、ニユージランド、オーストラリア方面に難色があり、インドは米軍あるいは国連軍が調印後日本にとどまることは、主権の侵害であるというようなふうに伝えられておる程度でございます。  以上その三、四につきまして申し上げました。
  10. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではこれより質疑に入るのでございますが、質疑は通告順でやるのでありますが、実は大橋法務総裁に御質疑のある方がございまして、総裁の方に時間の御都合がありますそうでございますから、大橋法務総裁に対する御質問だけに関する限り、順序をかえまして質問を許すことに御異存ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 守島伍郎

    ○守島委員長 それじや佐々木君。
  12. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は大橋法務総裁に対して、衆議院の解散権の所在の問題と、もう一つは憲法第九條戰争放棄の規定に対する解釈論について政府の考えておる所見を求めたいと思います。  民主党の最高委員長の苫米地君は、超党派外交の提唱に自由党がもし同調して来ない場合には、吉田内閣に対して衆議院の解散を要求するという声明を出し、また社会党の書記長の淺沼君も同様、吉田内閣に衆議院の解散を要求する旨の再三にわたる声明をいたしております。ここでこれらの主張がもし正しいとするならば、彼らはいずれも衆議院の解散権というものが内閣の手にあることを前提條件として認めなければならないと私は考えます。ところが第二次吉田内閣の解散に際しましては、民主党、社会党をも含めた野党の議員は、衆議院の解散権は内閣にあるのではない、国会みずからの手にあるのであると強硬に主張いたしました。遂には関係方面の意向をもしんしやくいたしました結果、形式的には野党側の主張通り内閣不信任案を可決するという形式をとりまして、憲法第六十九條の規定に従つて衆議院の解散を継行した次第であります。しかるにわずか二年くらい足らず前には内閣に解散権がないと主張した当時の責任者が、今日におきましては吉田内閣に対して解散継行を要求するに至りましては、まことにもつてその態度豹変にわれわれは唖然たらざるを得ないのでありますが、何はさておきまして、私は憲法第七條の規定により考えまして、衆議院の解散権というものは、言うまでもなく、内閣の権限であると考えまするが、第二次吉田内閣解散の際の経緯もございまして、この点につきましては、一般には今なお疑問の全地がないわけではないわけでありまするから、われわれ国会におきましても、この点に対する解釈を確立する必要があると考えております。従つて私はこの際政府当局特に法務総裁である大橋国務大臣のこの解散権の所在に対する見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  13. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法によりますと、衆議院を解散いたしますることは、天皇の国事に関する行為でありまして、もとより天皇がこの行為をなされるにあたりましては、内閣の助言と承認によらなければならないのでありまして、その責任は内閣が負うということとになつております。すなわちこの意味におきまして、衆議院の解散は実質的には内閣が決定し、形式的に天皇の行為としてなされるのであつて、このような意味合いで天皇の一つの権能となつておるわけであります。しかしてこの衆議院の解散につきましては、御承知のように憲法第六十九條に規定した場合に限つてなし得るものであるか、それともその他の場合にも解散をなすことができるかどうかということにつきましては、かねていろいろ議論のあるところでございます。政府といたしましては、現在の段階におきまして、衆議院の解散ということを考えておるわけではございませんので、この点は法律問題といたしましても、なお十分に研究を盡しましたる上でお答えをいたすことにいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  14. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 解散権に対しましては、大体私の考えておることと同様の趣旨でございまして、それでけつこうでございます。  次に新憲法第九條の、戰争放棄の規定に対する解釈論について承つておきたいと思います。それは第九條によりますと、「国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定しております。そこでこの規定から考えますると、私は第九條というものは、決して無條件なる戰争並びに武力行使の放棄を規定したものとは考えません。すなわち「国際紛争を解決する手段としては、」という前提條件が明らかに示されているからであります。そこでしからば、国際紛争を解決する手段としての戰争や武力の行使ということは、どういうことかと申しますると、通常の場合におきましては、日本の勢力を政策的に外国に伸張するというような場合や、あるいは侵略戰争ないし侵略的な性格を持つた武力の行使ということを意味するのであろうと考えます。たとえば日本の大陸に対する武力的進出のごとく、あるいは今度の日米戰争のごとき場合であろうと考えます。国際紛争が起つた場合においては、その紛争を第三者の判定や調停あるいは国際裁判にゆだねるというのが正しい行き方であると思います。しかるに国際連盟の当時におきまして、満州に対する日本の武力行使ということが、明らかに侵略行為であるということを、国際連盟によつて断定をされたのにもかかわらず、日本がその後も引続いて大陸に対する武力的進出を続けた、遂にはこれが日華事変にまで発展したのでありまするが、その後日本中国進出や南方進出をめぐつて日本とアメリカとの間には長期間にわたる紛争が続きまして、この紛争を外交交渉によつて解決しようとして、ワシントンにおきまして約半年に及ぶところの外交折衝が続けられたことは明らかなところでございます。ところが外交交渉によつて日本目的を達成することができないというので、遂に日本はこれを戰争の手段に訴えたわけであります。従つて国際紛争というものを解決するための戰争や武力行使というものは、一国の勢力を政策的に外国に向つて伸張する、ないしは侵略をするという場合のことを現実に私はさすものと解釈をいたします。従つてそういう意味の戰争や武力行使というものは永久に放棄することを第九條において宣言をいたしたのでありますけれども、決して無條件な武力や戰争の放棄ではない、と、私は考えております。従いまして、たとえば侵略に対する自衞のためや制裁のための武力の行使ないし戰争というものは、決して第九條の規定によつて放棄されたものではないと私は考えますが、この点に対して政府当局はどのように考えておられるか。  さらに第二点といたしましては第九條の後段に書いてあります「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」という規定は、明らかに「前項の目的を達するため」のものであります。すなわち国際紛争を解決する手段として戰争や武力行使に訴えないという目的を達成するために、国際紛争を武力や戰争によつて解決する戰力はこれを持たない、そういう交戰権はこれを認めない、こういうふうに解釈をいたすのであります。従つて戰力を保持しない、国の交戰権を認めないということは、前段の規定を当然受けたものと私は解釈をいたすわけでありますが、これについてもあわせて御答弁を願いたいと思います。
  15. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 佐々木君にお答えを申し上げます。憲法第九條第一項におきましては、ただいま御指摘の通り、国際紛争を解決する手段といたしましての戰争あるいは武力行使等を放棄するという規定がございまして、いわゆる自衞戰争あるいは国際條約によりますところの制裁のための戰争というようなものには、一応触れていないような形になつておるのであります。しかしながら第九條の第二項によりますと、戰力を保持しない、また交戰権はこれを否認するということを明らかに定めておりますので、この関係から申しまして、自衞戰争であるとか、あるいはまた制裁のための戰争であるというようなすべての戰争を行うことができない、こういう結果に相なつておるわけであります。特にただいま佐々木君から憲法第九條第二項には「前項の目的を達するため」という言葉がある、これは国際紛争を解決する手段としての戰争を否認するという、それだけの目的のためではないかという御指摘があつたのでございますが、しかしこの第二項におきまする「前項の目的を達するため」とあります言葉は、第一項にあります「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に」日本国民が希求しておる、この言葉を受けておるのでありまして、このことは当時の議会におきまする憲法審議の経過等から見ましても、そのように考えられる次第でございます。従いまして政府といたしましては、第二項で規定してありますことは、国際紛争を解決する手段であるといなとを問わず、すべて戰争を遂行するところの戰力を保持しない、交戰権を否認する、こういう趣旨に解すべきものと、かように考えておる次第でございます。
  16. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もう一点念のために承つておきます。ただいまの答弁をもう一度確認するためにお聞きしておくわけでありますが、自衞のための戰争や制裁のための戰争ないしその武力行使の問題は、憲法第九條の中には含まれていないと解釈をしてよろしいかどうか、お伺いいたします。
  17. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 第九條第一項におきましては、御指摘のように、含まれていないように見えますが、第九條第二項におきまして、すべての交戰権を否認する、また陸海空の戰力を保持しない、かような趣旨の規定がございますので、第九條全体、すなわち日本国憲法全体の趣旨といたしましては、一切の戰争を日本国としては否認せられておるものである、かように解釈をいたしておる次第であります。
  18. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 これはまたもう一度確信する意味で申し上げるのですが、第九條第二項の「前項の目的」というのは、明らかに私は前段すべてのことをさすものと考えるわけでありますが、ただいま法務総裁は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという点だけを「前項の目的」とされておるように聞えるのでありますが、そのように解釈しておるわけでありますか。
  19. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、憲法制定の経過にかんがみまして、さように解釈をいたしておる次第であります。
  20. 守島伍郎

    ○守島委員長 今野君、発言を許します。
  21. 今野武雄

    今野委員 法務総裁にお伺いしたいのでありますが、PD工場あるいはLR関係の労務者、これは日本人でございますが、この人たちの基本的な人権その他の人権を保護するために、政府はどういうような具体的な方法を現在までとつておられるか、あるいはその手続などについても、もしあらましのことがわかつたら、ひとつ教えていただきたいと思います。
  22. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 PD工場と申しましても、これは日本人の管理いたしておる工場でございますので、従いまして、これは一般工場におけると同様の労務者諸君に対する保護が存在するわけでございまして、特にかわつたことはない、かような次第でございます。LRの場合におきましてもまつたく同様でございます。
  23. 今野武雄

    今野委員 どうもよくわかつておらないようなんで、ひとつ具体的な例をあげますと、一つはPD工場の例でございますが、東京都の北区に住んでおります大工職の松永さんという人が、赤羽の日本製鋼というPD工場に勤めております。ところが去る十月十二日に突然夜勤に出たまま姿を消しまして、二十一日に至るまで行方がわからない、それでそのお母さんとお父さんが非常に心配いたしまして近所の人も大騒ぎしまして、この工場行つて工場長や何かに尋ねたのでございます。そういたしますと、行方はわからない、理由はちよつと赤いからだろうというようなことを聞いているが、こういうような話だつたわけであります。その後にもいろいろと努力したのでありますが、なかなかわからない。そうして本人からは突然、「父上様、母上様、御心配かけて申訳ありません。私は元気ですから、食糧も豊富ですから、御安心ください。あまり心配してからだをこわさぬようにしてください。さようなら。」こういう何だかわかつたようなわからないような、なぞのような手紙が封書で参りまして、封筒には裏書きがなかつたのであります。そうしてこの本人の両親は、非常に貧乏で、おやじさんも日雇い人足をやつておりますし、それから兄弟なども肺病などで非常にひどい状態にあるので、生活なども困るわけであります。明らかにこれは人権が擁護されていないという一例のように見られるわけであります。これが一つの例であります。  それからLR関係について、ちよつと一言つけ加えておきます。それは九月の初めに、全国の職業安定所から、横浜で荷揚げ人足に働かせるからというので、労務者を募集いたしました。これは私が調べたところでは、特別調達庁であつせんしたようであります。  そうして横浜に行つたところが、船に乗せられて海外に連れて行かれた。そのときに承知しないで帰つた者もありますが、体格検査の際に大分手間取りまして、その間にその事情がわかつて帰つた者もあるのであります。ところが船に連れて行かれた者は、もうなかなかとても帰れそうもないような状態で、とうとう行つたわけであります。これは後に帰つて来た者の話では、仁川へ行つたと申しております。このことについて、私は特別調達庁の労務部へ参りまして、部長さんにお会いして、いろいろお伺いしたのであります。そしたら自分の方もまつたく知らなかつた。向うさんの方に渡してしまえばこつちの手が及ばないので、どうなるのかわからないのだというお話であります。これはLR関係であります。これもやつぱり本人から簡單な手紙などが参つておりまして、家族ども非常に心配しておりますが、そうするとまつたくどうなるかわからない状態のもとに働かされた、こういうことになるわけであります。こういう点もやはり人権が蹂躪されているように考えるのであります。これらの点をどういうふうにして、つまり日本政府として保護する用意があるか。今後ますますこの種の件が起つて来る可能性もあるわけでありますからお聞かせ願いたいと思います。
  24. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在のわが国としては、強制労働というものは絶対にあり得ないはずでございまして、これはPD工場でありましようと、あるいはLR関係の労務者でありましようとも、そういうことはあり得ない、またあるべきものではないというふうに考えておるのであります。ただいま御指摘のような事件につきましても、おそらく何らかの行き違いあるいは誤解等から生じた問題ではないかと、かように確信をいたす次第でございます。しかしながら人権に関する重大な問題として御指摘がありました以上は、私どもといたしましては、最善の努力をもちまして、事案を調査いたしてみたい、かように考える次第でございます。
  25. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は先ほどの質問で一つ落した点があつたので、この際もう一度承つておきたいと思います。  憲法第九條第二項の「前項の目的を達するため、」ということに対する政府側の解釈は確かに承りました。しかしこれに対する解釈は、国会は国会として独自の立場から大いに研究をいたしたいと考えております。もとより新憲法制定、当時の審議の状況というとが、法律解釈の重要な参考の意見にはなるのでありまするけれども、それのみによつて正しいかいなかを決定することは、私はできないと考えております。われわれはわれわれとしての解釈を持ちたいという考えからこの際承つておきますが、この前の第八臨時国会が終ります直前に、私とわが党の植原委員の二人が、大橋法務総裁に質問をいたしました際には、大橋法務総裁は、万一日本が不正なる侵略を受けた緊急な事態に対処するために、本来固有であるべき自衛権発動の手段として、日本が義勇軍ないし防衛軍というようなものを組織して、外敵に対抗するということは、決して新憲法第九條の戰争放棄の規定に対する違反でもなく、また国際法規にも抵触するものでないと考えるという意味の御答弁があつたことを、私は記憶をいたしておるわけでありまするが、そういたしますると、ただいまの御答弁との問にはやや食い違いの点が出て来るように考えるわけでありまするが、その点はどのようにお考えでありましようか。
  26. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御指摘の点は、要するに憲法第九條第二項の問題でございまして、憲法第九條第二項によりますると、陸海空軍その他の戰力を保持しない、こういうことになつております。従いまして、自衞措置としての義勇兵であるとか、あるいは防衞軍というような組織をいたしまする場合に、その保持いたしまするところの交戰力といいますか、これが近代戰争を遂行するに足りるところの陸海空の戰力という範疇に属するかいなかということによつてきまると思うのでありまして、近代戰争遂行の要素と考えられます程度の戰力という程度に達しました軍事的装備をいたします場合におきましては、これは憲法第九條第二項によりまして許されない。しかしその程度に達しないところの方法によつて、防衛的措置を講ずる。これは憲法第九條第二項の関係するところではない。かような意味で申し上げた次第でございます。
  27. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 その戰力なりやいなやという問題は、いかなる基準によつて判定するのかどうか。
  28. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは要するに、近代戰争のあり方というものを基本にいたしまして、これが戰争を遂行するに足りる十分なる戰力であるかどうかということは、社会常識によりて判定するのほかはなかろうと考えるのであります。
  29. 並木芳雄

    並木委員 大橋法務総裁にお尋ねします。ただいまの判定の当事者はどこになるわけですか。将来日本が、そういう近代的装備に達しておる戰力を持つようになつておるかどうかという判定をする当事者というものは、どこになるのでしようか、お伺いいたします。
  30. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは判定という問題でなく、社会通念として客観的にきまるべきものではなかろうかと考えるのであります。
  31. 並木芳雄

    並木委員 それはたとえば日本政府なら政府、あるいは国会なら国会というものが、日本だけの立場から社会通念上ということを建前としてきめることができるようになるのかどうか。これをお尋ねいたします。
  32. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本憲法の問題でございまするので、これは日本政府あるいは日本の国会等において判定をすべきものであろうと考えますが、しかしこれを判定するにあたりましては、世界的な戰争についてのあり方というものを基準といたしました社会的な一つの通念というものがあると存じまするし、また国際戰争法規等に関する慣習といつたようなものをも加味して解釈すべきものではないかと存ずるのであります。
  33. 並木芳雄

    並木委員 そういう場合においてこそ、国際連合のたとえば安全保障理事会とか、そういうものが出て来て判定しなければならないものじやないかというふうに、ちよつと今私は思いついたのですけれども、ただいまの大橋法務総裁のお話ですと、日本政府あるいは日本の国会などにもそれを判定するような裁量権があるようにも聞きとれたのですが、誤解を招くといけませんので、その点もう一度はつきりお尋ねしておきます。
  34. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本憲法の解釈の問題といたしましては、これは日本国内において判定すべきものと考えます。ただしこれが将来かりに国際條約等に同趣旨の規定がある、その国際條約の解釈が問題になるというような場合におきましては、当然国際的機関の判定をまつべきものと存じます。ただいま私のお答えいたしましたのは、日本憲法第九條の解釈、日本国内法規の解釈の問題という趣旨でお答えしたのでございまして、この場合におきましては国内機関によつて判定すべきものであろう、こう存ずるのであります。
  35. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、先ほど政務次官から報告がありましたように、対日講和條約の下交渉が行われておるようですが、その中に、将来日本が軍隊を保有するに至るまではというような條項も含まれておつて、従来私どもが堅持しておつた、また夢にも思わなかつたところの再軍備の問題というようなものが出て来るのではないかと思うのです。再軍備がいいとか悪いとか、やるべきであるとか、やらざるべきであるとかいうことを私はただいまここでは論じません。ただそういう問題が起つて来たときに、今のお話によりますと、二つの場合があるように思うのです。つまり日本の憲法の建前から、この程度のものであるならば軍備とは言えないものであるという場合と、それからどう考えてもこれなら軍備、戰力の保持であると判定される場合と二つあると思うのですが、この点まずいかがでしようか。
  36. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御説の通りであると存じまするが、ただしかし、日本の国内的に判定される場合、あるいは国際的に判定される場合、これは観念的には二つであると存じますが、しかしながらどちらもやはり世界的な通念を基準として判定をされるべきものと存じますから、正しい判定が行われました場合には、この二つの判定は当然同一に帰着すべきものということが考えられるわけであります。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それはそうだと思います。そこでこの問題が具体化して参りますと、先ほど来大橋法務総裁から言われました日本の憲法の建前、精神、そういうものから言つて、今後講和條約とともに日本がもし許されることがある場合、そうしてもしつくることがある場合の再武装というものは、おそらく憲法の先ほどの條項、これと抵触するものではないかと思うのです。抵触した場合には当然憲法の改正が必要となるわけですが、その場合に條約にそういうものが盛られることがわかつて参りまして、日本としてその條約に調印をする、こういう段階になつたときに、憲法の方を先に改正して條約調印に臨むべきものだと考えますけれども、この点いかがでしようか。
  38. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 憲法の改正というような問題はきわめて重要なる問題でございます。政府といたしましては、さしあたり憲法改正というような問題については考えておりませんので、将来の仮定の問題になるわけでございますから、この点につきましては、さらに十分に研究をいたしまして、適当なる時期と方法等によつてお答えをいたしたい、かように存ずるのであります。
  39. 並木芳雄

    並木委員 あるいはちよつとむりかもしれませんから、その点はとどめておきまして、もう一点だけお伺いしておきます。それは日本安全保障の場合、外部からの侵略に対しては国際連合というものが守つてくれるということが、朝鮮動乱の例をもつてみてもはつきりしたということを政府でもしばしば言明しております。そこでその点はいいと思うのです。ところが内乱の場合です。仏領インド支那におけるバオダイ政権対ホーチミンの場合のような内乱の場合には、現に国際連合としてもなかなか腰を上げないようですし、そのうちの国にしても援助はするけれども、軍隊を送るというところまではなかなか行かないという点が、日本の場合に当てはめてどういうふうに解釈して行くか。つまり講和條約が結ばれて、日本の再軍備ということは現在ではもちもん考えられもしないことですから、結局警察力が日本を守るということになるでしよう。そうすると、もしこれは内乱である、外部からの侵略でないということで、国際連合でこれに対して全然援助をしないとか、あるいは制裁行動に出ないという場合には、相当深刻な場面が起るのじやないかということを心配するのですけれども講和條約締結後の日本における内乱の場合にどういうふうに備えて行くか。警察力をさらに増強するようにして行くのかどうか。そういう点についての法務総裁のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  40. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 日本といたしましては、憲法におきまして軍備を否認いたしておりまする以上、あくまでも国内におきまする治安の維持につきましては、日本国固有の対策といたしましては、警察力というものでもつて秩序の維持をはかつて行くということが建前であると存ずるのであります。現在におきましては普通警察のほかに警察予備隊を設置いたしたのでありまするが、将来これで十分であるかどうかという問題は、これは将来の問題でございまして、その場合にあたつて考慮することが適当であろう、かように存ずるのであります。
  41. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 関連して大橋法務総裁に伺いたいのですが、大橋法務総裁の答弁を聞いておりますと、いやしくも軍隊であれば、それが自衛のためであつても、制裁のためであつても、これを持たないということが憲法の精神であるというふうに答弁されまして、そのあとから、しかし近代的装備のものでない程度の義勇軍とか、防衛軍ならば、これはさしつかえないという御趣旨でありますけれども、しかしいやしくも軍という以上は戰争行動をやるのでありまして、その間にこれは近代的装備がある、彼は近代的装備がないということによつて差別することは、理論的に間違つておるのではないかと思う。禁ずるいうことになれば、義勇軍であつても防衛軍であつても、すべてこれを禁ずるという趣旨がほんとうではないか。もし総裁の言われるように、自衛のためとか、義勇軍とか防衛軍というのは、それが政府の予算によつて設置され、それから政府の機関として政府の命令によつて動くというようなものは、すべて近代的装備があるのでも、ないものでも、これを禁ずるということが憲法の精神である、私はこう考える。そうして初めて理論が一貫をいたしますし、憲法の精神にもかなうと思います。ただ大橋法務総裁の言われることは、むしろそういうところにあるのではなくて、突然に侵略が行われたような場合に、国家の機関としてではなくして、国家の予算なり国家の命令に従うことなしに、人民が自然発生的に何かのえものをとつて防衛に当るというような場合に、それがやや組織的なものになつても、それはしかたがないというようなことであるならば、これは理論も一貫いたしますし、筋の立つ話であると考えるのでありますが、私の伺いたいのは、近代的装備のあるかないかも、差別は非常にむずかしいと思うのでありますが、かりにその区別ができるとして、政府の予算をもつて国家の機関として政府の命令によつて軍事行動をするものであつても、近代的装備のものでない低い程度のものは、憲法にさしつかえないと言われるのかどうか、この点を伺いたいと思うのであります。
  42. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはあるいはこまかくなりますると、單なる用語の差別というような問題に帰着するかもしれませんが、憲法において禁止をいたしておりまするのは、陸海空軍その他の戰力を保持しない、こういうことになつておるわけでありまして、軍隊というような言葉は憲法としては触れておらないことは御承知の通りであります。普通私どもは軍隊という言葉を考えまする場合には、これは單なる国内の秩序を維持するためにのみ存在するものではなく、当然外国軍隊との交戰を予想をいたした場合が多いのでございまして、さようなものは、その性格上当然外国との近代的戰争に必要な装備をなさなければならないし、またなさなければ役に立たない、そういうふうなものは当然憲法において禁止されておりまするからして、わが国としては軍隊というものを持つことができない。しかしながら治安のために必要なところの武器を装備いたしましたるところのある程度の警察力的な部隊は、これは憲法第九條に関係がない問題である。かような趣旨に私は考えておるのでございます。
  43. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 どうも御答弁が徹底しないと思うのでありますが、警察力は警察力で、また義勇軍とか防衞軍とはおのずから違う範疇だと思うのであります。いやしくも軍隊という以上は、これは相当な装備も持つでありましようし、それからまた軍隊として警察力とは別に国家の予算なり、機関として設置されるべきものだと思うのです。でありますから、私が伺いたいのは、装備の低いもの、たとえば非常に高いものとすれば、水素爆彈、原子爆彈もあるでしよう。低いものなら竹やりということもあるだろうと思うのでありますが、その中間にある軽機関銃程度のものを持つておる防衞軍なり、あるいは義勇軍の形で、国家の予算によつてまかなわれ、国家の機関として国家の命令によつて動くというようなものは、総裁はさしつかえないと言われるのかどうかということです。
  44. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は軍はいけないということを申しておるのでありまして、軍というものは当然外国との交戰を予定しての戰力でありまするからして、これは交戰権が否認せられておりまする以上は、日本国憲法のもとにおいては許さるべきものではない、かように考えます。
  45. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 そうすると義勇軍と防衞軍というのは、外国からの侵略に対することを考慮した名前のように考えられますけれども、そうではなくて義勇軍、防衞軍というのは総裁が先ほど言われた程度の低い、国内治安に関するのみのものというふうな意味でありますか。
  46. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 当然さような意味であります。
  47. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは元の質疑に移ります。仲内君。
  48. 仲内憲治

    ○仲内委員 ただいまの問題にも関連が多少あると思いますが、私は国際連合日本との関係、さらに言えば加入の手続の問題について少し外務当局に伺いたいと思います。日本が講和を間近に控えて、かねてから一番問題になつておつたのは、安全保障の問題でありまして、この問題につきましては、自衞的な保障、あるいは警察というような方面の問題もあると思いまするが、ある特定国との條約によつて安全保障を維持するという方法も考えられるのでありますが、一番関心の強く深い日本の将来の安全保障としましては、いわゆる集団保障と申しますか、ことに国際連合の保護にまつということが今日では一番多く期待せられておる点であると思うのでありますし、最近の朝鮮の事例にかんがみましても、ますますこの国際連合の保障に依存するという期待は強まつて来ておると思うのでありまして、先ほど国連の記念日にあたりましても、政府も、またわが党にしましても、広く国民に国際連合への期待を呼びかけておるわけでありまするが、さて講和が近づき、また先ほど政務次官の報告にもありましたように、国連加入についての好意的な考慮も拂われておるということを伝えられるにあたりまして、問題は、国連加入の手続がどういう條件のもとに行わなて、そうしてその條件を突破し得る見通しがどの程度まであるのか、これらの点について伺いたいと思うのであります。すなわち憲章の規定によりますれば、四條第二項でありますか、新しい加入のためには安全保障理事会の勧告と総会の三分の二以上の決議が必要となつておるわけでありまするが、この点について一番問題は、はたして日本が講和後に加入をする場合に、理事国の満場一致の同意を得られる見通しがあるか、具体的には、結局いわゆる拒否権の問題にかかると思うのであります。今日講和につきましても、申すまでもなくいわゆる全面講和が見込みがないという予測のもとにある以上、これと同じように、あるいはこれ以上に拒否権の問題は日本国連加入にあたつては大きな難関となるのではないかと思います。この拒否権というものがどうしても動かせないものであるかどうか。先ほどの政務次官の御報告に、憲章の規定改正の問題にも触れられたようでありますが、その内容についても、この拒否権というものがどうしても避けがたいものであるか、これが正当に行使されない場合には、何とかこれを避けられる方法、いわゆる改正の問題でも実際に起つておるのかどうか、これらの点をまず伺いたいと思います。
  49. 西村熊雄

    西村説明員 国連の加盟につきましては、ただいま仲内委員から御説明のような種々の困難な問題が起つております。この困難な問題が起つておるがために一番困つておりますのは、国際連合それ自体でございまして、何とかしてこの困難な問題を解決する方法はないかと、ずいぶん努力はされておるようでございますが、今日までのところ、あまり事態の改善を見ておりません。まず取上げられた問題は、国連の加盟には安全保障理事会の勧告が必要でありますが、総会というものは安全保障理事会の勧告がなくても、加盟を三分の二の多数で議決する。そういうことが可能であるという案も取り上げられたのでありますが、これは成立いたさなかつたように記憶いたしております。それからまた現在約十二箇国が加盟を申請しておりまして、それがみな実現いたしませんのは、東西二つのどちらかのグループに属しておる。こう見られておる関係上、相手方の方で拒否権を行使いたしまして、結局安全保障理事会の勧告が成立いたさないような現状であります。それで拒否権の制限という面でこの問題を解決したらばどうであろうかというような考え方も取上げられておりますが、これまた今日まで成功いたしておりません。それからまた国連内部の動きでは、加入問題だけについては東西ともにその拒否権を自制して、あるブロツクにひとつ全部認めてやつたらばどうであろうか、こういうふうな動きもあるようでございますが、これまた全然実現いたしておりません。国連加入の問題は将来の日本にとつてもなかなか関係の深い問題でありますから、私どもも十分興味をもつて、今申しましたように、この問題が国連自体の手によつて解決される日が来るようにと思つて、こいねがつておる次第であります。
  50. 仲内憲治

    ○仲内委員 もちろん国連には今加盟国として入らなくても、国連の保障は得られないという事例が、今日朝鮮の事実によつて考えられるのであります。何としても日本が講和によつて独立して、連合に依存して、安全の保障を全うしようという上におきましては、堂堂とやはり権利も義務も一人前に負担するというところに意味があり、国民の安心も強まろうと思うのでありますが、ただいまの御説明によりましても、いわゆる加入の條件相当の難関があるということを、われわれは覚悟しなければならないと思うのであります。さらに国内的と申しますか、加入の他の一面におきまして、先ほど来お話のありました憲法との関係、憲法第九條の戰争放棄、これに伴う軍備の撤廃という規定から、国際連合には一面軍事的な協力の義務を規定されておるわけであります。これとの関係、すなわち憲法改正の必要があればすればよいわけでありますが、それらの法律的な——国際連合日本憲法との、連合加入の場合の憲法上の面について御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  51. 西村熊雄

    西村説明員 第四條から見ますれば、日本としては加盟する場合に、規約に基く義務を履行する意思と能力がなくてはならぬ、こういうことになつております。ここに憲法第九條との問題において、規約の四十二條、四十三條が自然問題になつて来るわけであります。四十二條、四十三條は国連がとります武力制裁措置に対しては、加盟国は戰力、援助及び便益を提供しなければならないということになつております。そうして四十三條で安全保障理事会と各加盟国との間に提供する戰力と援助と便益の範囲についてとりきめをしておく、こういうことになつておるわけであります。もつともこの四十三條のとりきめはまだどの国ともでき上つておりません。ですから憲法第九條によつて一切の戰力を持たない日本は、要するに規約の四十二條に基く少くとも戰力を提供するという義務を、かりに負うだけの意思を持つてつても、その能力がありませんので、この点につきましては、少くとも日本の加盟につきましては、国際連合との間に事前の了解が必要となるのではなかろうか、こう考えております。事実問題といたしましても、現在の国際連合には、アイスランド共和国のように陸、海、空軍の一兵も持つていない国も加盟国になつております。従つてそういつた事前の了解は必要でありましようけれども、憲法第九條が日本国連加盟を不可能にするようなものではないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  52. 仲内憲治

    ○仲内委員 いろいろ御説明があつたのでありまするが、要するに国際連合というものはこれから非常に大きく世界平和のために発達するという上から、平和愛好国民の期待は大きいのでありますが、同時にまたわが国が国連に加入するという希望を達成する上においても、すべてこの問題は根本的には結局拒否権という問題にひつかかるように考えなれるのであります。もちろん国家がこの自主権、独立権を持つており、それが連合するという建前であるのでありますから、いわゆる世界国家というものがない以上は、独立主権の関係上、拒否権というものは、なかなか捨てがたいものであるかもしれませんが、また一方国際的な立場から考えれば、この拒否権というものは非常ながんであるというように考えられるのであります。道理のある拒否権の行使は、今の国際生活の段階では、これを否認するということはできないかもしれませんが、非常にわがままな拒否権の一方的な行使、解釈というものをだんだんと押えて行くということは、国際協力を増進し、世界平和を維持する最も大きな基本的な條件ではないかと思われておるのでありますが、いわゆるこの憲章の改正問題その他について、拒否権を濫用する場合に、これをいかに制裁するかというような問題が今まで起つておるか、また憲章の規定ないしは解釈の上で、拒否権を濫用するような国に対しては、これを除名するというような解釈のできる余地はないものか。はなはだ突飛な質問のようですが、ついでにひとつ西村局長の御答弁をお願いしたいと思います。
  53. 西村熊雄

    西村説明員 私どもの知つておる範囲内では、今日までの傾向は、要するにある一国が拒否権を濫用して、それがために安全保障理事会の運営がうまく行かない。これは何とかしてその国の反省を促したいという意味におきまして、大国による拒否権の行使の制限という方向で強く主張されているようでありますが、何しろそういうふうなたとえば決議案その他が成立するについても、また拒否権が行使されるようなわけでありまして、今日のところまでまだ成功していない状態でございます。しかし同時にまた仲内委員がお尋ねになりましたように、拒否権を濫用する国に対して、何らかの処罰的な措置をとる、ひどく行けば、規約の條項に除名の規定ないし加盟国の権利の停止という條項もありますから、そういうふうな処罰的な規定を適用したならどうかという声は、今日までまだかつてつておらないように見ております。いずれにしても拒否権の問題は、強国による拒否権の自制というような形で漸次改善されて行くのではなかろうか、こういうふうに見ておる次第でございます。  なおまた先刻の私の説明の中に、東西二つにわかれておる今日、西の方の国も、国連の加入につきまして拒否権を行使したかのような意味にとられる文句を吐きましたけれども、西の方の国は、どの大国も加盟についてはまだ拒否権を一度も行使いたしておりません。その点はちよつと訂正いたしておきます。
  54. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは菊池君。
  55. 菊池義郎

    菊池委員 私、西村局長その他外務省一連の官僚政治家諸君に対して、国際連合協力協会に所属しておられる方方にお伺いたしたいと思うのであります。この協会の会長である参議院議長の佐藤尚武氏、この方が方々で国際連合協力協会会長の名において人的資源云々という講演をせられた。連合側から戰争の場合に要求せられたならば、人的資源を供給すべきであるというようなことを言つておられます、この佐藤さんの意見は前とかわつております。最初のこの人の新聞に散見せられました意見は、ちよど私たちが前の国会において述べました意見とほとんど同じでありまして、国連から軍備を持つことを要求せられるならば、日本は財政にさしつかえない申訳程度の軍備を持つたらよいではないかというような意見と、まつたく同じようなことを言われておつた。最近においては、またそれが一転して、軍備ではない、人的資源、つまり義勇隊と似たり寄つたりの意見を発表しておられるのでありますが、総理大臣兼外務大臣は、われわれの国会においての質問に対しまして、義勇隊はたとい要求されても出さないつもりである、それから軍隊もまた要求されても持たない方がいいということをはつきりと答えているのであります。ところで外務省におられるところの局長諸君は、この協力協会にお入りになつて、しかも最高幹部として活躍、運動をおられるのでありますが、佐藤会長の言われることを皆さんが承認しないとおしやつても、世間はそう考えないのであります。いかにも日本政府の意見が二つにわかれているような印像を世間に強く與えるのであります。会長の意見は協会の意見である、従つて協会の幹部であられるところの西村局長その他の意見に違いないというように世間ではみな見ているのであります。皆さんももちろん、自分たちは外務省の局長として参加しているのではない、個人として人つているのだとおつしやるかもしれませんが、それは小りくつであつて、世間はそうは見ないのである。総理大臣兼外務大臣と外務省の中堅幹部とは、意見が対立をし抗争をしているのではないか、佐藤尚武さんという人はその名前の示すがごとく尚武的な精神を持つている、(笑声)諸君もこの人を支持するのではないかというように世間はみな見ているのであります。私の大学に行つているせがれですらも、そういうふうに考えておるのでありますから、推してもつて世間の人の頭を判断することはできるわけであります。この点に関しまして、りくつは拔きにして、偉大なる政治家としての西村局長さんの御答弁をお願い申し上げます。
  56. 太田一郎

    ○太田説明員 西村條約局長その他外務省の局長は——私はもちろんそうではありませんが、国際連合協会の理事でも何でもありません。特に私は会員でも何でもないので、この点はお断りしておきます。ただこの日本国際連合協会というのは、いわゆる昔ありましたような、ある一つの省の外郭団体とかなんかという性質のものでは全然ありません。ただ私どもといたしましては、国際連合の精神を説明するという意味において、国際連合協会の活動というものに対しては、非常に興味を持ち、関心を持つておりますし、またそれとは全然関係なく、私ども各地で国際連合の精神を講演したり何かしております。しかし外務省と国際連合協会というものは、外務省の職員がそこの幹部でも何でもないということをお断りしたいと思います。  それから人的資源云々の問題でございますが、これはこの前もお答いたしました通り、今われわれの関知しておりますところは、要するに新聞情報によりますと、先ほど政務次官から御報告がありました通り、七項目というものが新聞に伝わつておる。その七項目の中に、対日講和條約において、日本の武装を禁止するという條項を設けないことにする、こういうふうな一項目があるということであります。はたしてそういうことを規定しない講和條約ができるのかどうかということは今わかりませんが、かりにそういう講和條約ができて、その中に日本の武装を條約の上では禁止しないということになりました場合に、憲法第九條の関係を、どうするか、あるいは人的資源をどうするかというようなことはそのときの問題でありまして、そのような問題につきましては、国会あるいは一般の輿論というものの御意見を十分徴して、それによつてきまるものでありまして、人的資源云々ということにつきましては、これは連合協会の会長である佐藤さんが、国際連合の趣旨を徹底せられるために、おそらくいろいろ説明しておられるのであろうと思いますが、そのことにつきましては、外務省とは全然関係がないということを御了承願いたいと思います。
  57. 菊池義郎

    菊池委員 新聞にもでておりましたが、熱海において協会の会合を開いて、西村局長その他が集まつたということは、はつきりと私は見ておるのです。何もそういうことを隠す必要はない、公表しても少しもさしつかえない。それでも入らないとおつしやるならばどうでもよろしいのでありますが、確かに入つておるということをわれわれは見ておる。新聞が書いておるのであります。会長の意見とともに、西村局長の意見も堂々と発表せられておる。そういうわけでありまして、これから拔けられるかどうかわからぬのでありますが、入つておらなければ入つておらぬように、政府の意見が二つにわかれているような印象を與えないように、佐藤さんに対しまして、今のところ講和会議が結ばれるまではそういうことは言わぬ方がいいじやないか、英国初めフイリピン、濠州、ニユージーランドその他を刺激するからということで、そこらを押える必要がある。そのくらいの政治力がいると思うが、どうでしようか。
  58. 西村熊雄

    西村説明員 質疑はまつたく善意でおつしやつておると思います。菊池さんの善意はちつとも疑いませんが、私の善意もまた信頼していただきたいと思います。私は国際連合協会の役員その他一切をやつていない。ただ條約局長をいたしておりまして、国際連合関係の仕事を幾分やつております関係上、毎年秋にあります国際連合で、その他には協会の御依頼がありまして、講演に出たことが一回ございますし、ことしもまた国際連合全国大会に吉田総理の祝辞が出ましたので、その祝辞を読むために出席いたしましたような次第でございまして、次官のおつしやつた外務省の幹部——私初めだれ一人として、(「会員にもなつていないか」と呼ぶ者あり)私会員にはなつていないで、たしか評議員という名前をいただいておりますが、まだ一回も会合に出たことはございません。実は公務多端で、そういう会合に出たことはございません。佐藤会長の御意見に対しましては、外務省の事務当局の意見を反映しておるというような点はまことは善意の誤解でございまして、私また善意をもつてそうでないということを御説明申し上げます。
  59. 菊池義郎

    菊池委員 評議員にはなつておられるのですか。
  60. 西村熊雄

    西村説明員 評議員は、一方的に辞令をいただいたのであります。
  61. 菊池義郎

    菊池委員 それでものがれることはできない。責任は確かにある。
  62. 西村熊雄

    西村説明員 それは会長の御意見によつて……。
  63. 菊池義郎

    菊池委員 それではお伺いいたしますが、佐藤会長の意見に対して、どういう見解を持つておられるでしようか。
  64. 西村熊雄

    西村説明員 先刻太田外務次官が申し上げた通りであります。
  65. 菊池義郎

    菊池委員 ここにも出ておりますが、沖繩その他小笠原の領土復帰の運動が猛烈に行われております。最近の情報によりまして、沖繩と小笠原とが国連の信託統治になるということを非常におそれまして、これら島々の人々が猛烈なる運動を展開しております。私も小笠原のために、これは同郷の連中ですから骨を折つておりますが……(「選挙区ではないか」と呼ぶ者あり)選挙区ではない。たいてい小笠原の人はわれわれ八丈島のわかれでありまして、それがためにどうしてものつぴきならぬ情に引かれてやつておるわけでありますが、大西洋憲章の中にも、関係国民の任意に表明した希望しない領土の変更を行わないということが書いてありますし、カイロ宣言にも、暴力及び貧欲によつて日本が奪取した地域云々ということが書いてあります。これは暴力によつて奪取した地域でも何でもありません。また島民国連に入りたいという考えも毛頭ありませんで、あくまでも日本の国籍に残りたい、領土を日本のものに確保したい、そういう熱意を持つてつておる運動でありまするが、外務省としてはこれに対して協力しておられまするか。協力しておられるならば、どういう形でこれまでどういう折衝、陳情をやつておられますか、一通り経緯を御報告願いたいと思うのであります。
  66. 太田一郎

    ○太田説明員 それらの島と直接関係のあります方々の切実なる御希望というものについては、私もたびたび拜聽いたしております。またそれらの方々が関係方面に陳情になるということについても、でき得る限りのおせわをいたしております。ただその結果がどういうふうになるかということについては、私としては今何とも申し上げることができない、こういう実情でございます。
  67. 菊池義郎

    菊池委員 もう少し具体的に、司令部に対してどういう折衝をしておられますか、そういう点をお伺いいたします。
  68. 太田一郎

    ○太田説明員 その点につきましては、ちよつとここで申し上げることを差控えたいと思います。
  69. 菊池義郎

    菊池委員 終りました。
  70. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは佐々木君。
  71. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は講和條約の締結を間近に控えまして、新憲法下におきまして條約締結に関する新しい手続とその解釈等について、主として法律論上の立場から政府のお考えを求めたいと思います。  第一は、憲法第七十三條の第三号におきまして、内閣の行う事務として「條約を締結すること。」という規定があります。この條約を締結することという規定は、具体的にはいかなることをさすのか。すなわち條約に対する署名調印、批准、並びに批准書の交換、寄託といつたようないかなる範疇をさすのか、御説明を願いたいと思います。
  72. 西村熊雄

    西村説明員 第七十三條の第三号に、「條約を締結すること。」とあります。この「締結すること」という意味は、私はきわめて広い意味に解釈いたすべきだと考えておるのでございます。條約につきましては、大体二国間の話合いだけでできるものと、国際会議によつて多数の国の代表が一堂に集まつてできる條約と二つあります。また條約によりますと、署名するだけで効力が発生する條約もありますし、また署名したあと、批准、批准書寄託または交換というものがありましてから効力を発生する條約もございまするので、概括的に御説明申し上げることにいたしますと、結局ここにいう條約を締結するということは、そういうふうに交渉を始める最初の段階から、交渉を継続し、まとまつた條約書に署名し、批准が必要とされている條約につきましては批准をし、批准をしたあと、批准書交換または寄託が必要とされている場合には、批准書を交換しまたは批准書を寄託する、こういう全般を含んでいるものと解釈いたします。もつともこの第七十三條の三号にもすぐ但書がありますように、但し、事前または事後に国会の承認を経ることが必要であるとありますし、また第七條でありましたか、天皇が国事に関してなされます行為を列挙してあります中にも、たしか批准書の認証という文句があつたように記憶いたしております。そういうふうに政府が條約を締結するにつきましては、憲法上内閣が一切やれるのではありませんので、その過程の中において、署名と同時に、條約を締結するについては国会の承認が必要だから、承認の手続をとること、それからまた批准書をつくる場合に、その批准書を内閣だけでつくつてはいけないので、その批准書には陛下の御認証が必要である。従つて御認証の手続をとるというようなことは、むろんやらなければならないと考えております。
  73. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そうすると、批准権というものは明らかに内閣にあるということになるわけであろうと考えますが、そこで、憲法第七十三條第三号の後段に規定されておりまする「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とある。しからばこの事前とはいかなる段階をさすのか。つまりかりに署名調印し、批准をし、批准書の交換または寄託をするということが必要であるという條約については、その署名調印から批准書の寄託に至るまでのいかなる段階をもつて事前というのか、それを承りたい。
  74. 西村熊雄

    西村説明員 その点につきましては、その條約が日本に対して確定的に成立するときを標準として考えたらよいと考えております。先刻申し上げましたように、條約に二種類あります。あるものは署名と同時に効力を発生するものがあります。あるいは署名後批准を待つて効力を発生するものがあります。前者につきましては、署名前が事前であります。後者におきましては批准前が事前だろうと思います。
  75. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは「時宜によつては事後に、」とありますが、しからば時宜によつてというのは、具体的にいかなる場合のことをさすのか、特に国会の事後承認の場合を規定したいということはどういう意味を持つているのか。主権在民の新憲法の根本原則から申しますと、すべての條約はいかなる場合においても、締結の効力発生の事前において国会の承認を得ることを必要とするのが、当然であろうと考えるわけでありますが、一体時宜によつてということはどういうことを意味するのか。
  76. 西村熊雄

    西村説明員 大体事後承諾ということが考えられるのは、署名と同時に実施される條約の場合と考えております。と申しますのは、批准という條項がある場合には、大体その批准について設けられる期間も一年、二年と長うございますし、またほとんど批准期間について規定がないような場合が多うございますので、時宜によつて事後の承認を必要とするというようなことはほとんど生じない。これは理論的にあり得るということだけでありまして、全然生じないと私どもは考えております。しかし事後の承認というものは、署名と同時に実施される條約については、これは相当頻繁に起りはしないかと思つております。と申しますのは、條約と申しましても、ここに言うのは、いわゆる国際條約というきわめて広い意味のものと考えております。これは憲法制定当時からそういうふうに解釈されております。ところが政府の締結されるいわゆる国際條約と申しますのは、きわめて内容の軽微のものから、いろいろ雑多な内容を包含しておりまして、それがために、たとえば国会の休会中に交渉がまとまりましたようなときに、一々署名前に国会の承認を得るために、特に国会の召集をするというような重要性のないものが相当ございます。これは今後平和條約がかりにできまして、日本の外交権が回復いたしますと、皆さんはよく実際問題についておわかりくださると思いますが、私短かい経験によつても、一年に三十ないし四十のそういつた條約をつくつたことがございます。そういうふうになるのであります。それで今大体の問題として佐々木委員から、事後承認ということを認めるのは少し不当ではなかろうか、こういう御意見が出ましたけれども、私はそう思わないのであります。と申しますのは、大体近代の立憲主議的憲法をごらんになりますと、條約の締結権というものは国の元首または大統領が持つておりまして、その中の重要なものだけについて立法府の承認を必要としているという憲法制度が大多数でございます。日本のように條約を締結する場合にその條約全部について立法府の承認を心要としているという制度をとつている国は、私の記憶する限りにおいては、アメリカの憲法が、たしかに大統領は上院の三分の二の数のアドヴアイス・コンセントをもつて批准することができるという規定がありますのと、中華民国の憲法がたしかそうだつたと思います。その他は全部大体條約締結権者が條約を締結する場合に、立法府の承認を必要とする條約の種類を限定するのが通例であります。たとえば今度の戰争後のイタリア共和国の憲法を見ますと第八十條でありますが、それは国際條約にして政治的性質を有するもの、仲裁裁判及び司法的規則を定めるもの、領土の変更、財政的負担、または法律の変更をもたらすものの批准に関しては、これを両院の承認を必要とするというふうにやつております。フランスの新しい憲法を見ましても、大体六、七種類これを列挙いたしております。一々詳しく申しませんが、むしろ日本国憲法のとつておる第七十三條第三号の立法方式といいますのは、條約締結に関する各国の憲法の法制に比べまして、国会の権限を大いに尊重していると言つていいと思うのです。いわゆる国際條約については全部国会の承認を必要としておる。こういう意味であります。従つてそういうふうになりますと、今申し上げましたように、内容軽微なとりきめであつて、それが非常にたくさんできる、通商、財教、文化、社会的と、いろいろな関係内容のものができる、そういうものについて一々事前の承認を得なくてはならぬという制度では、とうてい動けないということを考慮に入れられまして、時宜により、すなわち万やむを得ない事由があるときには事後でもよろしい、こういうことを言つたものだと私は解釈しております。
  77. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もとより時宜ということの解釈は、ただいま西村條約局長の言われた通りであろうと考えるわけでありまするが、しかし條約の調印から批准から一切の権限が内閣にあるといたしますると、この憲法第七十三條の第三号の規定に従つて、かりにここに独裁的な性格を持つた内閣ができるという場合においては、一切合財條約を締結してしまつてから後に国会の承認を得るということにならないとも、法理論上は考えられないわけでもなかろうと思う。そこで来るべき対日講和條約のごときは、一体時宜によつてはの範疇に属するのかどうか、すなわちこれはもとより考え方によつては無條件降伏という基盤の上に打立てられ、今度の講和條約の持つ特殊事情から考えまして、国会の論議の余地なしとして国会の承認は事後に求めるということも、また時宜に適するということも言えないことでもないわけであります。またこれとは逆に講和條約の内容いかんというのは、申すまでもなく、国家民族の運命に及ぼす致命的な影響から考えまするならば、條約の調印、少くとも批准に先行して、まず事前に国会の承認を求めるということが、絶対必要であると言わなけばならぬと思います。政府はこの講和会議の切迫を前にいたしまして、どういうふうな態度をもつてこれに臨まんとしておられるのか、御所信を承りたい。
  78. 草葉隆圓

    草葉説明員 この問題は條約のときの状態、そういうことによつていろいろここではつきり申し上げかねることもあろうと思います。しかしただ政府といたしましては、時間的にいろいろそこに余裕があります限りにおきましては、十分国会の意見を尊重すべきであると考えております。
  79. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 まだ外務省得意の仮定の問題が現われて来たようでありますが、この期に及んで講和條約が仮定の問題であるということになると、世人の嘲笑の的になる以外の何ものでもないと思います。私はこれに対する政府の考え方を聞くのでありまして、連合国の意向を聞いておるわけではないのであります。従つて政府は大体どういう所信をもつてこの講和條約に臨もうとしておるかという点について、もう一度反省をしていただきまして、御答弁を願いたいと思います。
  80. 草葉隆圓

    草葉説明員 私の記憶違いか存じませんが、イタリア等の條約の場合は、相当期間があつて、また意見も一応述べることができた。従つて国会等におきましても、いろいろそのことが打合せられた場合もあつたように記憶いたしますが、さような情勢が今回の対日講和にも現われまする限りにおきましては、国会の意見が十分現われて来る。それによつて締結という順序になつて来ることは当然だと考えております。
  81. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは今度の講和條約は国会の事後承認を求める場合も考えられ得るわけでありますか。
  82. 太田一郎

    ○太田説明員 先ほど條約局長から詳細御説明いたしましたように、事前とか事後とかいう問題は、條約の効力発生を基準としてやる、このことを御説明いたしたのであります。そこで対日講和條約の効力がどういうふうにして、いつ発生するかという問題になりますと、私どもとしては、イタリア條約、その他の前例にかんがみ、今日の段階においては、いつ効力を発生するような條約の規定になるのであるかということについては全然わからない、従つて事前とか事後とかいう問題についてお答えすることはできないと考えておるわけであります。
  83. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私の質問に対する答弁はピントはずれになつております。私は條約の効力発生の問題を問うておるのではなくして、国会の承認との関係を問うたわけなのでありますが、それでは條約に対する国会の承認というものは、内閣がかりに批准を必要とする條約においては、その批准を行うための絶対條件であるのかどうか、もし国会が承認を拒否しても、内閣はこれを批准することができるかどうか、七十三條第三号によつて批准の権利も当然内閣にあるとするならば、国会が條約の承認を拒否しても、内閣はこれを批准することができるということも、法理論的には可能であるということになりはせぬかどうか。
  84. 西村熊雄

    西村説明員 これは、まつたく佐々木委員の御質問は仮定の問題と思われるのですが、佐々木委員の仮定されるような事態は新憲法のもとにおいては、ほとんど起り得ないと考えておるわけであります。新憲法のもとにおきましては、英国式の純粹に百パーセントの議会内閣制度でございます。内閣はいわゆるそのときの国会の絶対の信任を持つておる内閣でございますから、その内閣が締結いたしまして承認を求める、この場合に議会において承認を拒否されるというようなことはめつたにあるまいと考えるわけであります。しかしまた万一そういうことがあつたと仮定いたしまして、それじや憲法の明文で内閣は條約を締結する権利はあるけれども、締結するについては国会の承認が必要だと規定されております。その憲法のもとにおきまして、承認を拒否された條約を、内閣が批准するということがあろうとも想像されません。
  85. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 條約に対する国会の承認や、天皇の認証ということは、これはもつぱら国内法上の條件にすぎないものと考えます。そうするとかりに国会の承認が得られないという場合においては、その條約は国内法的には無効であり、国際法的には有効となるわけであるが、そういう場合においては、実際問題としてどういうふうに処理されるか。また事後承認を求めて来たときに国会がこれを拒否した場合において、一体どうなるか。
  86. 西村熊雄

    西村説明員 前半の問題、要するに事前に承認を求めたときに、国会が承認を拒否した場合そうしたときは、すでに御答弁申し上げた通りでありまして、そういう場合はあろうとは思わない、かりにありとするならば、おそらく内閣というものは承認を拒否された條約を批准するということはいたしますまい、こうお答え申し上げたわけであります。それでおわかり願いたいと思います。問題は事後の承認を求めた場合に、万一これが国会によつて拒否された場合に、さてその承認拒否を受けた條約の運命はどうなるであろうかという問題であります。この問題は、いまさら私の方から御説明申し上げなくても、憲法制定議会で質問が出ておまりして、その当時の国務大臣からの御答弁もあります。国務大臣の御答弁の趣旨は、そういう場合が起つたとするならば、国内的には政府の議会に付する政治上の責任の問題が起るであろうし、外国に対しましては——全文を読み上げてみます。「もし事後に国会の承認を得られませんときは、どうなるかという問題が起りますが、それはこの憲法は直接に解決しておりません。相手方との相談とかあるいは国内における政府の責任というようなことの方法で解決する、そういうふうな趣旨であろうかと考えております。」というその当時の国務大臣の御答弁でございますが、私どもも一介の事務当局としてそういうふうに考えておる次第であります。国内的には内閣の議会に対する政治上の責任の問題が起る、相手国に対しては、将来に向つてその條約から拘束されないように交渉して、円満に解決しなければならぬというふうに考えておる次第でありますが、いずれにしろこういう問題は、まつたく仮定の問題でありまして、将来こういうふうな事態が起らないようにと、事務当局としては念願しておる次第であります。
  87. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私最後に、これは重大な点であるから参考までに伺つておきたいと思うのですが、一体イタリアの場合におきまして、講和條約の締結にあたつて、イタリアの国会がかなり承認を長引かせておつたというふうに記憶をいたしておるわけですが、その間のイタリアにおける事情等御存じでございましたら御説明願いたいと思います。
  88. 西村熊雄

    西村説明員 不完全でございますが、私どもの知つている範囲内のことを御答弁申し上げます。イタリアの平和條約は、イギリスが四月三十日に批准いたしました。アメリカは六月七日に批准いたしました。フランスは六月十三日に批准いたしました。イタリアは八月三日に批准いたしました。ソ連邦は八月二十九日に批准いたしました。ソ連邦は結局イタリアの批准よりもあとになつたわけであります。それで批准寄託の日付が九月十五日ということになつたわけであります。イタリア議会での平和條約批准に対する討議は、七月二十二日から三十一日まで継続して行われまして、そのうち二十七日が日曜で休会になつただけでございいまして、その間晝間も夜間もぶつ通しで議論をいたしております。大体わけてみますと、批准延期論とそれから准批論者と二つにわかれておるわけであります。この批准を延期しろという議論をやつておる人たちは、大体このイタリアで批准法案を出しましたときには、米、英、仏三国は批准はむろん済んでおりますけれどもソ連がまだ批准するかどうかが確実になつていなかつたわけであります。それで少くともソ連の批准が確立いたしまして——平和條約の規定によりますと、イタリアも批准しなければならないことになつておりますが、イタリアの批批というふうなものが、効力の発生の條件になつておりませんで、英、米、仏、ソこの四大国の批准寄託書によつて効力が発生するということになつておりますので、少くともソ連の批准が成立して、イタリア平和條約の効力発生が確実になるまで批准を延ばすべきだという趣旨の延期論と、もう一つはイタリア平和條約がきわめてイタリア国民にとつて苛酷な條件を含んでいるので、イタリア国民は要するにこの平和條約を拒否するという態度を明示することによつて、イタリア国民感情を現わすべきである。そうしても結局平和條約は合法的に実施されるから、何ら連合国としても痛痒を感じないではないか、要するに平和條約に対するイタリア国民感情を反映させる方法として、批准を延期しろという二つの議論があるようであります。それに対して政府は、批准論を大いにやつておりますが、イタリア政府としては、ソ連の批准も間近であるという確実な情報を握つておる、それからこの平和條約というものは、四大国の批准があれば実施されることになつておるのだから、イタリアとしても結局平和條約の効力を発生させる以外に道がない。従つてイタリア国人としては、まず将来において、この苛酷な平和條約の條件を緩和する道を開く、国際連合によつてこれを緩和してもらうその第一段階として、イタリア国会は、この平和條約を批准すべきであるという主張で行つておるわけです。そういう議論を三十一日まで繰返しまして、三十一日に表決いたしましたが、そのときには批准延期派が二百四票、それから批准承認派が二百五十二票、その差、四十八票であります。それで批准派が勝ちました。その次に、今度は、批准法案をそれに引続いて採決いたしましたが、その際には、批准反対論の一部の議員が退場しておりましたので、批准派が二百六十二、反対が六十八、これで成立いたしておるようであります。それだけしか伝わつておりません。
  89. 並木芳雄

    並木委員 スピード・アツプして御質問いたします。第一は超党派の問題です。これは今與党の佐々木委員のお話を聞いていればおわかりになる通り、與党の佐々木委員ですら、場合によつては反対の投票をすることがないとも限らぬというような内意を含んだ質問に行われておる。これに対して西村條約局長はまつたく架空の問題であるというふうに答えられておつたけれども、ことほどさように今の政府というものは、国民をつんぼさじきに置いて、これは講和條約に押し切つて行こうという空気が見えるわけです。私はこの点について太田事務次官にお尋ねしましたところ、事務局としては関知するところでないというまことにすげない答弁でございました。きようは幸い政務次官が見えておりますので、政府としてはわれわれが一生懸命やつておる超党派外交というものに対して、どうお考えになるか。アメリカ政府では現にダレスさんを顧問にまでしてやつておる。そのまねをしろというわけでありませんけれども佐々木委員すらもう間近に迫つた講和條約という形容詞を使つて、ほんとうに間近に迫つた講和條約を前提として議論をしておられるのです。政府次官のこれに対する所見をまずお伺いしたいと思います。
  90. 草葉隆圓

    草葉説明員 超党派外交問題につきましては吉田総理から発表いたしておりまする通り、これは御存じの通りだと思います。それで御了解願いたいと思います。今超党派外交そのものは決してかれこれ言う問題ではなし、もちろん外交としてはけつこうなことでございます。ただ今の情勢において、超党派外交をただちにとつて来るということにおいての問題が残されている点は、総理が発表した通りであります。
  91. 並木芳雄

    並木委員 そうするともう少し機が熟して、事が具体化したあかつきにおいては、超党派的にこれを話し合うことが必要であるというわけですか。実は私この間幣原議長をおたずねして、幣原さんが吉田さんに会つてつて来たときにどうやら元気がありませんでしたから激励に行つたわけです。あなたは長老と言われておるのに、吉田さんからあんなことを言われても、逆にこれをおたしなめになる位置にあるのではありませんか、信念を持つて出発した超党派外交であり、廣川さんの前へ行つて、時期の問題であつてつておれないのだという信念に基いて、幣原さんはどうしてこれを強く推進されないのですか、私はそういうように激励し、お願いに行つたわけです。そのとき幣原議長は、かつは驚き、かつは喜んだのでしよう。私の顔を見ながら、並木君、お年はお幾つになりましたかと聞いたから、年は四十三になりましたと言つたら、お年に似合わず元気ですねと言つて、喜んで窓の方え立ち上つて歩いて行かれた。幣原さんとしては、にこにこしながら、結局これは富士さんへ登れますという希望をつないでおられるのです。それを思えば今の政府というものは、あるいは吉田さんあたりの気持が国民にぴつたりわかつておらない。ほんとうに今はまだ早い、もうしばらくしたらざつくばらんに皆さんにお話してきめますよというのか、全然その途中を拔きにして、すつとゴール・インしてしまうのか、そこのところを政務次官からお伺いしたいと思う。
  92. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは先ほど佐々木さんから條約のないしは締結についてゐる御質問があり、また外務省からそれぞれお答え申し上げましたように、全体といたしましてはこのままずつとゴール・インという形でなしに、国会の十分なる意見が條約に反映し、また批准前には十分そうさせらるべきものである。ただただいまのお話の超党派外交は、その前にいろいろな党派的な態勢を整えて行く方がいいではないかというところに問題が起つて来ると存じます。それなら将来はある機会になつたら、すぐそういうふうに政府は考えておるかという御質問であつたと存じまするけれども、それならばこれはやはりもう少しそういう時期が来たら超党派外交の形をとるかということは、必ずしも時期というような問題じやないと存じます。條約の内容につきましては今申し上げた御質問があつた通りであります。さよう御承知を願いたい。
  93. 並木芳雄

    並木委員 これは希望にもなりますが、ぜひ政府としてもこの前の太田次官の答弁のように、関知したところじやないというお考えでなく、われわれは挙図連立内閣などをつくつて政権にありつこうというようなさもしい根性から出ているのじやないから、そのところを外務省の諸君もとくと念頭に置いて御処理願いたいと思います。  次にお伺いしますのは、さつきの内乱の場合でありますけれども国際連合が守つてくれるから、いかなる場合でも安全だというような印象を、やや国民の中に強く植えつけたような感じがする。国際連合は国際間の紛争にしか出動しないのか。当事国から願い出があれば、たとえば内乱であろうとも、やはり平和を乱すものとの観点から、至急出動すべき性質のものであると私どもは理解しているのですが、この点いかがなものでしようか。
  94. 西村熊雄

    西村説明員 ちよつと思いつきの御返答で相済まないと思いますが、憲章の第三十四條、これは安全保障理事会の警察権に関する規定でありますが、それに「安全保障理事会は、いかなる紛争も、」まず第一に紛争を言いまして、その次に「国際的摩擦に導くか又は紛争を発生せしめるようないかなる事態も、」という紛争でない事態も、安全保障理事会としては取上げられるという規定を設けられてあります。そういふうに私ども国際連合によつて取上げられる事件、いわゆる国家と国家の間の紛争事件だけじやなく、一つの事態が、その事態を放置すれば、それから世界の安全または平和が撹乱されるような危險が生ずる場合には、一つの事態それ自体も、また国際連合によつて取上げられ得るものであるというふうに考えております。
  95. 並木芳雄

    並木委員 そうすると仏印においては、どうして国際連合がさような機能を発揮しておらないでしようか。
  96. 西村熊雄

    西村説明員 その点は、私どもとして答える立場にないのでありますが、おそらくこういうような実情があるのではないかと考えております。それはインドネシアの事件国際連合に取上げられましたときに、オランダはあれは国内問題であつて国際問題でないといつて国際連合が介入することに極力反対いたしましたが、アメリカその他の強い干渉があつて、局オランダも承諾して、インドネシア問題が国際連合の調停委員会の介入を認めて、同委員会の力によつて円満な問題の解決を見ることになつたのです。おそらく仏印の問題なども——これは私にはわかりませんが、フランスから言えば今いつた国際紛争ではなくて、国内の問題である、国際機関の介入を許すべきじやないという考えがあるのじやないかとこう思うのでありますが、その点は何ら自信を持ちませんで、ただ一つの推測にすぎません。
  97. 並木芳雄

    並木委員 それでは次に中共の関係についてお尋ねして行きたいと思います。対日講和條約の予備交渉が進むに従つて、この当事者として私どもは当然国府蒋介石政権というものを前提としておりますけれども、情報というものは必ずしもそうばかりでもないような、中共政権というものがそれにかわつて来るのではないかというような点もうかがわれますが、政府としてはこういう方面に対して、どんなふうに観測をされておりますか。
  98. 太田一郎

    ○太田説明員 先ほど政務次官から御報告がありましたように、極東委員構成国十三箇国のうち、アメリカが十二国に対して話をしておるのであります。そのうち国民政府の代表として、国際連合に来ておりますものに対して、一応二十二日に話があつたということは、外電で知つております。しかし中共が対日講話條約に参加するかどうかというような問題につきましては、今のところ全然わかつておりません。
  99. 並木芳雄

    並木委員 日本政府としては、中共貿易あるいは中共からの引揚げの問題などもございます。そういう点とからみ合せて、ただいまの御質問をいたしました点というのは、非常に重要性を持つて来るのではないかと思います。最近大分中共貿易などに関する情報がとだえておるようですが、この間のアメリカと中共との間の貿易でしたか、外電でちよつと見ましたが、三倍くらいにふえておるというような——私ははつきり覚えておりませんが、そんな情報が見えた。これに関連して、日本の中共貿易はどういう傾向を示しておられますか。それからきのう引揚促進委員会で、同胞引揚特別対策委員会で証人が喚問されて答弁していますが、中共にはあの通りかなりの残留者がおるようであります。これに対する引揚げというものに対して、政府はどういうふうにやつて行く御所存であるか。また現在やつておるか。それからソ連からの引揚げにも関連して、先般三名の者がアメリカへ行きましたけれども、倭島管理局長あたりから何かその方面に対しての便りがあつたかどうか。その動靜などについて引揚げの見通し、対策、中共貿易をどうして行くかお知らせ願いたいと思います。
  100. 太田一郎

    ○太田説明員 対日講和條約はどれだけの国が参加いたしまして、いつできるかということにつきましては、これは私どもとしては全然わかりませんので、われわれのいかんともできないところの客観情勢によることでありますからして、何ともその見通しについて申し上げることはできないのであります。  それから中共の貿易につきましては、この前の外務委員会で申しました通りであります。  それからシベリア及びソ連領、並びに中共地区からの引揚げ促進の問題につきましては、随時総司令部に対して一日も早く帰つて参りますように懇請を続けておりますし、またその交渉の裏づけとなりますところのいろいろな調査を熱心にやつております。そういうような調査の結果につきましては、詳細な資料をとりそろえて、先般三人の方が持つて行かれたのでありますが、三人の方々はまずワシントンに着かれまして、国務省のその方の係官といろいろ打合せをいたしました後に、目下ワシントンからニユーヨークの方に行つております。御承知の通り今度はどの委員会で日本人の引揚げ問題がとり上げられまするか、まだはつきりいたしておりませんが、この提案は新聞にも出ております通り、英国、濠州及び米国の三国の共同提案になつております関係上、これらの三国の方々にいろいろ実情を詳細説明しておくということであります。
  101. 並木芳雄

    並木委員 中共貿易傾向は現在はどうなつておりますか。この前の外務委員会のときは別といたしましても、政府はこの前東南アジアの貿易さえよければまあ大したことはないというふうにも私聞いておつたのですけれども、中共貿易に対する重点の置き方などはどんなふうになつておりますか。
  102. 太田一郎

    ○太田説明員 最近の数字については今承知いたしておりませんので、いずれ取調べた上でお知らせいたしたいと思います。
  103. 並木芳雄

    並木委員 中共貿易に対する重要性をどの程度に認識しておるかどうか。
  104. 太田一郎

    ○太田説明員 これはこの前の委員会のときに申し上げました通り、われわれといたしましては一日も早く、また一国でも多い国との問に講和條約ができることを希望しておる。しかしどの国との間にできるかということについては、われわれとしてはわからない。そこで中共の問題につきましては、従来の日本中国との貿易関係については、この前の席上で御説明した通りであります。それから同時に交戰八箇年、その後の中国の内乱が五年以上も続きました関係で、中国の購買力というものは非常に減つているのではないか、それでかりに中共との間に貿易ができるということになりましても、一般に伝えられたり、あるいはまた宣伝されているような大きな期待はできない、われわれとしては中国で失つたところを新しい南方の市場で開拓し、そういう方面に努力をなすべきである。こういうふうに考えます。
  105. 並木芳雄

    並木委員 それでは最後にもう一点お伺いします。それは朝鮮動乱に関連して、最近密入国者というものはふえているのではないか、この前もお伺いしましたが、あれからちよつと日にちがたつておりますから、その後の数字などについてお伺いしたいと思います。  それから動乱によつてかなり耕作地帶が荒されて、食糧が不足をしておるようですけれども、向うの農産物の減作状態、そういうものがわかつておりましたらお知らせ願いたいと思います。それは私どうしてお伺いするかと申しますと、やはり本日の会議の冒頭、委員報告がありました通り、相当密貿易が行われておる。その密貿易の中に日本から食糧——そういうものがずいぶん行つているのではないかと思います。そういう点とからんでお伺いいたすわけであります。  それから密入国者のみならず、日本から向うへ出て行く、いわゆる密出国者、こういうものはどんなふうになつておるか、これはこの間朝鮮動乱日本人が従軍をしておるというようなことが報ぜられたので、政府にこの機会にお伺いしておきたいと思います。  以上で終ります。
  106. 太田一郎

    ○太田説明員 朝鮮からの密入国につきましては、七月ごろが多かつたのでありまするが、それからずつと減つておりまして、われわれの予想以上に減つておるのであります。これは一つは日本国内の取締りが整備して参りましたのと、もう一つは韓国側において、十分手配をしておりまして、そういうことのないようにしておるという関係だと思います。それで想像しておりましたよりもよほど密入国者は減つておる。それからまたこちらから出て行きます者につきましては、嚴重にやつておりますのと、今は船の関係が人の乗つて行く船が逼迫しております関係で、人間は行つていないと思います。またお尋ねの日本人北鮮軍に従軍しておるのではないかというような御質問でありますが、われわれが承知する限り、そういうことはありません。全然そういうことを承知しておりません。それから朝鮮復興に関しまして、日本からいろいろなものが出ておるのではないか、食糧品などが出ておるのではないかという御尋ねでありますが、大体事変勃発後十月の中旬くらいまでの数字は、一億三千万ドルくらいに達しておりますが、金額から申しまして、そのうちで一番多いのはやはり機械類でありまして、食糧などが非常にたくさん行つておるということについては承知いたしておりません。
  107. 並木芳雄

    並木委員 食糧事情の逼迫状態は……。
  108. 太田一郎

    ○太田説明員 それについては詳しく勉強しておりませんので、ちよつとお答えいたしかねます。
  109. 守島伍郎

    ○守島委員長 それでは本日はこれで散会いたします。     午後四時三十一分散会