○西村(榮)
委員 講和方式は申すまでもなく、わが国千年の運命を決する重要な問題でありますから、單にイデオロギーや従来の政党の主張にこだわるべきじやないということは論ずるまでもないのでありまして、その重点は、わが国の安全保障と
日本の
自主権回復という二点に重点を置かれて、講和方式というものを論議せられなければならぬと思うのでありまして、この意味において全面講和が是か、單独講和が正しいかということは、十分朝野両党が論議を盡しまして、その最大公約数の一致による
国民感情と意思をも
つて、
関係諸国に当るべきだと
考えるのであります。しかるに本日の外務
委員会においても、五分間に論議を制限せられておる。植原さんが指摘せられたように、これでは十分にその
目的は達成し得られないのでありまして、これはいずれかの機会において、その
自主権回復と
日本の安全保障を重点とする講和方式がいかにとらるべきかということにつきまして、機会を改めて総理大臣の御所見を承りたいと思うのでありますが、時間がございま
せんから、緊急の問題として、私が御
質問申し上げたい点はただ一つであります。
それは今回マツカーサー元帥によ
つて指令された
日本警察予備隊の
設置であります。これは私といたしましては、
日本の治安維持能力の確立と同時に、従来まであいまい模糊に
なつておりましたところの、正当防衞的自衞権の再確認という見地に立
つて、私は賛成いたしたいと思うのであります。但し問題は、この警察予備隊の
設置というものは、明らかにこれは
法律案によ
つて国会の審議を経てこれを決すべきである。私は事の順序として、それが
日本の憲法を擁護し、わが国財政法の見地に立
つて、その事の手順をふまれることが当然であろうと思うのであります。その点は、新しく官庁が
設置され、同時に財政法第三十三條によりますならば、これはたとい同一官庁の中においても、その部局等の費目の流用を嚴禁いたしているのであります。も
つて立法府が審議いたしました
予算の審議権を尊重して、行
政府を監督しているということが、財政法第三十三條であるのであります。特に将来警察予備隊の
設置によ
つて、二百億円から三百億円の厖大なる費用を予想されて、それが
国民負担能力にいかに
影響するかという重大な問題は、現実において
国民経済の見地に立ち、あるいは財政法の明示せられるところに従い、あるいはわが国憲法の擁護という立場に立
つて、これは当然
国会に提案せられ、その可否を決せらるべきである、私はこう
考えているのであります。このことは、しばしば先般来の
政府の御
答弁の中にも、明確に
なつておらないのであります。マツカーサー元帥のこの書簡の中においても、いずれの点を拜見いたしましても、これはポ
政令でこれをなすべしということが明示されておらないのでありまして、ポ
政令に従うか、あるいは
国会提案によ
つてこれを決するかということは、
日本政府と
国会の意思にまかされているのではないか。要はマツカーサー司令官の
目的は、予備隊七万五千の
設置が実現すればいいのであ
つて、それは
日本憲法と財政法に従
つてなすべきことが当然であることが、含まれているのであります。従
つてこの意味において、従来ぼけておりましたポ
政令でやらなければならぬという根拠はございま
せん。同時に
日本憲法の問題は、私は時間がございま
せんから省略いたしますが、マツカーサー元帥の今日言われている、
日本管理に関する無制限な権限というものにつきましては、一応検討を要しなければならぬのじやないか。これは敗戰国の
国民といたしましては僭越であるという観点も成立する反駁論もあります。私は簡單に申しますならば、マツカーサー元帥が連合国から
日本占領並びに管理に関する指令を受けられましたのは、
昭和二十年九月六日であります。これには
日本政府並びに天皇陛下は貴官の隸属下に置かれると書いてあるのでありますけれども、それから二箇年た
つて、
アメリカを初めとして連合国の懇切なる指導によ
つて、わが国の現行憲法が制定せられたのであります。従
つて昭和二十二年五月三日にわが国の憲法が制定せられた上からは、
国内統治の問題は、この憲法を一応尊重し、憲法の基準に従
つて、占領政策を行わるべきであ
つて、この瞬間において、従来言われてお
つたマツカーサー元帥の無限大な権限は、外交と国防の問題にやや限定せられるのであ
つて、
国内統治の問題はわが国憲法に準拠すべきである、私はこう
考える。この見地に立
つて、この警察予備隊
設置問題も、わが国の憲法と財政法の擁護のために、
国会に
提出されることが当然ではないか、こう思うのでありまして、先ほど冐頭に申しましたように、私は
講和会議の方式の
目的は、わが国の
自主権の回復と安全保障に重点を置かれるといたしますならば、
自主権回復という一見地に立ちましても、この警察予備隊
設置の問題は、当然
国会に提案されてしかるべきものと
考えるのでありますけれども、総理大臣の御所見はどうでありますか。いろいろ特急で走りましたが、懇切なる御
答弁を承りたいと思います。