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1950-07-21 第8回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十七日  北澤直吉佐々木盛雄竹尾弌君小半次君西 村榮一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和二十五年七月二十一日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 佐々木盛雄君    理事 竹尾  弌君 理事 小川 半次君    理事 西村 榮一君       伊藤 郷一君    植原悦二郎君       大村 清一君    小川原政信君       尾関 義一君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    仲内 憲治君       中山 マサ君    橋本 龍伍君       並木 芳雄君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    猪俣 浩三君       田中 堯平君    渡部 義通君       中村 寅太君    中原 健次君  出席国務大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務次官  太田 一郎君         外務事務官政務         局長      島津 久大君  委員外出席者         外務事務官大臣         官房会計課長  千葉  皓君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月十八日  委員福田篤泰辞任につきその補欠として水田  三喜男君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員栗山長次郎辞任につき、その補欠として  尾関義一君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員武藤運十郎君及び玉井祐吉辞任につき、  その補欠として猪俣浩三君及び中原健次君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員猪浩俣三君及び中原健次辞任につき、そ  の補欠として武藤運十郎君及び玉井祐吉議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十日  專任外相設置に関する決議案小川半次君外十  六名提出決議第二号)の審査を本委員会に付  託された。 同日  海外胞引揚促進陳情書外二件  (第一六号)  海外胞引揚促進陳情書外三件  (第四〇号)  在外資産補償促進に関する陳情書  (第四七  号)  講和條促進陳情書  (第五四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 これより会議を開きます。  日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。草葉政府委員。     —————————————
  3. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  さきの第七国会におきまして、日本政府在外事務所設置法が成立いたしまして、まずアメリカ合衆国内の五箇所に在外事務所設置されたのであります。政府といたしましては、これ以外の場所にも在外事務所設置することを強く希望しておる次第でありますが、最近総司令部の好意によりまして、アメリカ以外の数箇国に在外事務所設置話合いが進捗いたしまして、近い将来に実現するであろうという見通しを得るに至つたのであります。  在外事務所の増置に関しますこの話合いが成立いたしましたあかつきには、国内措置といたしましては、まず日本政府在外事務所設置法に必要な改正を加えるわけであります。すなわち設置箇所規定いたしますることはもちろん、職員支給いたします給與に関しましても、設置箇所物価水準を考慮いたしまして、適当な修正を必要とするのであります。  しかるにこの話合い国会の開会中に成立いたしました場合には、法律改正ができまするが、閉会中に成立いたしました場合には、日本政府在外事務所設置法二條第二項の「特別の必要がある場合においては、政令の定めるところにより、予算範囲内において、前項に規定するものの外、在外事務所を増置することができる。」という規定によりまして、在外事務所設置自体予算範囲内で政令で定めることができるのであります。  ただこの特別の規定によりまして設置されます在外事務所職員支給されまする在勤手当及び住居手当に関しましては、日本政府在外事務所設置法別表に定めます額では不適当であることが予想されるのであります。このような場合において、法律範囲内で手当の額を所在国事情に適応させるように措置をしておく必要があるのであります。これが本法案を制定する理由であります。  すなわち本法案によりますると、日本政府在外事務所設置法二條第二項の規定に基きまして、政令によつて設置される在外事務所については、在勤手当及び住居手当支給年額は、当分の間同法の別表各号に掲げる額の九割から十一割までの額の範囲内において外務大臣が定めることにしたのであります。外務大臣がこれを定めるにあたりましては、その在外事務所所在国の通貨の対米為替相場及びその所在地の物価水準を基準とするわけであります。このようにあらかじめ別表手当額を、一割の範囲内で増減し得るように規定しておきましたならば、実情に即した手当の額を定めることができると思われるのであります。なおつけ加えて申し上げておきますることは、すでに設置されておりまする在米五つ事務所につきましての手当額は、本件改正によりまして何ら変更があるわけではないことを御了承願いたいのであります。  以上が提案理由の大要であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 これより質疑を許します。北澤君。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 二、三点御質問いたしたいと思います。  第一点は、ただいまの御説明によりますと、アメリカ以外の数箇国において、日本在外事務所設置し得るように話が進んでおるというのでありますが、一体どの程度話が進んでおりますか。それを承りたいと思います。
  6. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在総司令部を通じまして、正式に話合いの進んでおりますのは、フランススエーデンブラジルパキスタンインドの五箇国であります。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 日本におきましては、外国において領事館が設けられないが、西ドイツの例を申しますと、西ドイツはロンドンとパリワシントン領事館を置いております。日本におきましてはそういうようなところまで進んでおらないのでありますが、日本西ドイツと同じように、外国領事館設置し得るような見込みがありますか、お伺いいたします。
  8. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在までは、その程度まで進んでおらないのであります。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 日本占領軍占領下にありまするけれども、この占領下におきましても、なるべく日本自主権と申しますか、自主性を強化することは、われわれ日本国民から申しましても、これは当然必要であります。従いまして政府におきましては、西ドイツの前例もあるのでありますからして、なるべく早く日本外国領事館設置し得るように、今後とも特段の御留意をお願いいたしたいのであります。  次に伺いたいのは、日本政府在外事務所設置法によりますと、別表において住居手当在勤手当というものが規定されておりますが、どうもわれわれの経験から申しますと、これは非常に不十分である。一つの例を申し上げますと、ちようどわれわれがアメリカワシントンにおつた時代の例を申し上げますと、日本全権大使は俸給から在勤手当から全部合せて月二千ドルぐらい。ところがトルコの大使日本大使よりもつと多いのであります。そういうように日本在外事務官というものは、外国においてもらう手当が非常に少い、しかもその任務は非常に重い。どうしても日本在外公館活動を十分にするためには日本在外事務官手当てをもつともつとふやさなければならぬと思うのであります、従来のような状態では、せつかく外国日本代表者を置きましても、ほとんど栄養不良のような状態であります。従いまして、もしほんとうにこの在外事務所活動を十分にし、そして日本政府がこの事務所外国に置きました目的を達するためには、私は手当はもつともつと増加する必要があると思うのであります。もちろん日本予算都合もあり、また日本の持つております外貨の制限もあろうと思うのでありますが、ほんとう日本自主権を獲得し、国際的に発展して、そして日本貿易発展をはかるというためには、私はこの在外事務官手当ををもつと大幅に増加する必要があると思うのでありますが、これに対しまする政府のお考えを伺いたいと思うのであります。
  10. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問政府といたしましても御同感でございます。現在の手当等におきましては、十分であるとは存じませんが、ただこの算出の基本といたしましては、各国の最近の生活費の動向なり、あるいはその指数に合せまして、随時改正されております。最近のアメリカ在外文官標準給與規定というようなものを参考にいたしまして、当分の間一応一割前後におきましての増額をいたしておる次第でございます。ただいまの御質問の御説に対しましては、将来政府におきまして、十分な支給のできるような方法を考慮したいと存じておるのでございます。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺いたいのでありますが、それはこの在外事務所設置法によりますと、在外事務所が十分に活動する、あるいは調査費と申しますか、活動費と申しますか、そういうものをあまり十分に考えておらぬように思うのでありますが、たとえば、アメリカ在外事務所を置きましても、アメリカの各機関と十分の連絡とつて、そして調査の完璧を期するためには、これは相当多額の調査費なり、運動費というものが私は必要だと思うのであります。もし日本予算関係でそういうものができないと申しますならば、これはアメリカ領事館だとか外国でやつているように、民間貿易業者、そういうものからある程度寄付をさせて、そういう調査費を調達するということも私は考えられるのであります。在外事務所活動というものは、日本外国貿易と非常に関係がありますので、私は貿易業者も喜んで出すのではないかと思うのでありますが、そういうような在外事務所調査費民間業費から寄付させる、もちろんこれは強制するわけではありませんが、その希望によつて出させるというようなことをお考えなつておりますかどうか、その点を伺いまして私の質問を終ります。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの点につきましては、信用調査等の場合には実行いたしておりまするが、先ほども申し上げましたように、政府自体におきましても、なお手当等も十分考慮したいと思つております。
  13. 仲内憲治

    仲内委員 在外事務所経費の問題について、今北澤委員からるるお話がありましたが、各事務所から得ました私の通信によりましても、自動車がない。アメリカの個人の生活でももちろんあるのに、いやしくも日本在外事務所事務官が、自動車の設備なしにはたして仕事ができるのか。今度の改正案でも、アメリカの方の事務所費は別に影響ないということですが、そんなことではたして事務所活動が全うできるかどうか、どうお考えになりますか。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの点につきましては、近いうちに考慮いたしたいと考えております。
  15. 竹尾弌

    竹尾委員 簡單にお尋ねいたします。ただいまアメリカ以外の数箇国に在外事務所設置する、こういう政務次官のお答弁でしたが、フランス等々の国のどこに大体置かれるのか、その点お伺いいたします。と同時に、正式に今司令部と交渉中なのはそれだけであるか、また正式でなしに交渉されているところがあるのか、その点をお伺いします。
  16. 島津久大

    島津政府委員 先ほど政務次官からお答えいたしましたフランススエーデンブラジルパキスタンインド五箇国の国内設置箇所でございますが、フランスは、パリ予定いたしております。スエーデンはストツクホルム、ブラジルはリオデジヤネイロ、サンパウロの二箇所、パキスタンはカラチ、インドはニユーデリーと、カルカツタとボンベー、この三箇所に予定いたしております。ただこのブラジルインドの場合、事務所の規模についてはまだ問題が残つております。それ以外の国で非公式の話合がございますのは、大体オランダとベルギー、ウルグアイというようなものもぼつぼつ話が進んでおるような状況でございますが、まだ正式な話合というところまでは行つておりません
  17. 並木芳雄

    並木委員 それらの在外事務所設置される時期はいつごろですか。
  18. 島津久大

    島津政府委員 ただいま正式の話合いが進んでおります、五箇所につきまして、正式の話合いができ上つた上で準備を進めまして開設するという段取りになりますので、正式の話合いが、どの国についていくつあるかということはちよつと正確な日取りは予測が困難でございます。きわめて最近の機会に次々に実現することと思つております。
  19. 並木芳雄

    並木委員 こうやつて在外事務所がふえて行くのはけつこうですけれども、すでに設置された五箇所の実績はどうですか。私どもあまり活発な働きをしているということも聞きませんし、あるいは中には神経衰弱なつているような人もいるのじやないかと思うのでありますが、そういう点について実際にどういうふうな活躍をしているか。さつきお話があつたように、自動車もないようでは、ろくな働きもできていないのじやないかと思いますが、その点をお伺いします。
  20. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問のように、神経衰弱なつているような事実はないのでございます。(笑声)そのひまもないほど活躍をしている実情でございます。この事務所ができますと同時に、各地で非常な関心を寄せまして、ことに各地商業会議所、そういうものが密接な連絡とつて参りまして、資料や情報の交換を現に行つております。また一例といたしまして、サンフランシスコ商業会議所貿易部会というものが五月の十日に日本貿易デーというものを設けまして、歓迎会を開催いたしております。六月の二十日には、対日貿易研究会というようなものを開催いたしまして、事務所員日本貿易に関する説明を聽取いたしております。ロサンゼルスにおきましては、商業会議所で同地の指導的銀行家や、輸出入業者会員といたしまして、ジャパン・トレイド・コミティーという特別な委員会を組織いたしまして、六月の二十三日に第一回会議を開催いたしまして、会員約五十名というものが出席しまして、在外事務所員も同時に出席しまして、事務所目的実情等説明いたしております。サンフランシスコにおきましても、スタンフォード大学主催研究会というものがございましたし、六月二十七日にはロータリー・クラブ主催で、日本貿易研究会が催されました。一、二の例でございますが、そういうような反響がただちにあつた状況でございます。また業者依頼関係から申しますと、新聞、ラジオその他で事務所設置を広めましたところが、米国貿易業者銀行、いろいろな会社、そういう方面から各種照会商品輸出入に関するあつせん依頼信用調査依頼、そういうような申込が殺到いたしたそうであります。取扱つた件数の主要なものを申し上げますと、日本から輸入のあつせん依頼があつたものが百十件、日本輸出のあつせん依頼があつたものが十三件、対日投資のあつせん関係が四件、商社の各種調査依頼というものが十七件、そういうような実情なつております。また事務所自体各種市況調査をいたしまして、人数が少いために十分なことはまだできておりませんけれども、輸出入業者製造業者各種照会依頼に対して応接するとともに、大体次のような調査報告行つております。こういうことは盲貿易の解消に相当寄與しておると考えられます。二ユーヨークの関係では日本の生糸の将来、米国におけるカメラ市況サンフランシスコにおきましては放送に関する研究、陶磁器に関する調査、そういうものをやつておりますし、ロサンゼルスでもカン詰市況調査ロサンゼルス貿易調査、シヤトルにおきましてもまたカン詰市況調査ホノルルにおきましてはホノルル貿易に関する研究、一部商品ホノルル輸出見通し、そういうような調査行つております。  以上のような関係在外事務所から本省に照会、引合いが参つておるのであります。これにつきましては通産省初め、関係各省に一応それを送付いたしまして、回答を要するものは回答をまつて、ただちに在外事務所に指示をいたします。また在外事務所からの報告で一般に知らせることを適当とするものは、在外事務所情報というものを毎週二回発行いたしまして、これに掲載をいたしております。なおこれらの情報新聞関係の協会、団体の機関誌にも轉載をされておる状況でございます。  次に在外事務所の権限のうちで、以上は経済関係でありますが、在留邦人に関する事務がございます。この関係準備都合上七月一日から受付を開始いたしておりました実情でございまして、ただいまのところまだ具体的な状況を御報告するまでの段階に至つておりませんけれども、この面におきましても極力在留民の要望に沿う心組みで努力いたしております。
  21. 並木芳雄

    並木委員 そこで問題はスタッフですけれども、吉田総理大臣講和会議までは專任外相を置かないと言われて、すこぶる気乘薄状態ですから、勢いスタッフの方も手薄になつて来ていると思う。こういう在外事務所ができて、これに即応する用意ができておるかどうか。それからまた家族は連れて行ける段階なつておるかどうか。私たちはなるべくならば家族を連れて行つて、そうしてじつくり腰を落ちつけてやつていただきたい、こういう念願を持つておりますので、家族関係はどうなつているか。  それから婦人外交官の養成をやられましたが、その方面から採用するような予定はあるかどうか。  なおこの間人事院行つた試験の中で、特に民間の方からこういうものを希望して受験されて、これにパスして、今回加わる予定なつているような人があるかどうかといつた要員に関する点についてお伺いしたいと思います。
  22. 草葉隆圓

    草葉政府委員 家族の問題につきましては近く解決いたしたいと存じております。  なお婦人はすでに現在向うへ行つて仕事をいたしております。  最近の人事院試験等におきます問題は、これとは趣を異にいたしております。さよう御承知願います。国内的に処理されております。
  23. 並木芳雄

    並木委員 予算範囲内ということがありますけれども、大体予算はどのくらいとつてあつて、今残つているのはどのくらいか、その額をお尋ねします。
  24. 千葉皓

    千葉説明員 二十五年度の予算におきまして、在外事務所に使い得る経費として三億五千万円のものを計上してございます。現在の在米保管分といたしまして必要な経費は一億七百万円、従いまして約二億五千万円ばかりの金が残つております。この金でもちまして今後できます予定経費に充てたいと考えております。従いまして今年度におきましては、予算上問題はないと考えております。
  25. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、大ざつぱに考えてまだ十箇所くらいできるとして、今年度の予算範囲内で大丈夫ということが言えますかどうか。その大ざつぱな何箇所ぐらいという見当をつけてもらいたい。
  26. 千葉皓

    千葉説明員 今後八箇所予定されておることは、先ほど御説明があつたところでありますが、その上にさらに数箇所が経費の上で増加できると考えております。
  27. 並木芳雄

    並木委員 ではもう一点だけお聞きしますが、さつきもちよつと話が出ましたが、私もこの手当というものは、なるべく多い方がいいと思うのでありますが、今まできめられておるものの九割として一割遠慮しておる。これは遠慮しなくてもいいのじやないですか。最低として今まできまつておるものをむりに遠慮して、一割増減をするということは、かえつて何かおかしいような感じを受ける。今まできめたものを最低として、それ以上一割とか二割というふうに、ぐんぐん手当をふやして行くように要望するのでありますけれども、どういうわけで一割という遠慮をしたのか。この点を伺います。
  28. 千葉皓

    千葉説明員 ただいまのお話は非常にけつこうと存じますけれども、実は現在の給與アメリカについてきめられておる問題でありまして、今後も大体アメリカに與えているものを標準といたしたいという考えでありますが、国によりましては生活費アメリカよりも比較的安く行くところもあります。また国によつて若干アメリカよりも生活費が高いというようなところもありますので、その調整をいたしたいために、上に一割、下に一割というように今度御改正を願うわけであります。従いまして、一割安くなるところもあるわけでありますが、その国はアメリカに比べまして相当に生活費の低いところであるというふうに御承知願います。
  29. 田中堯平

    田中(堯)委員 二、三御質問いたします。まず第一に、日本政府から司令部在外事務所設置について交渉なさるときには、まず相手国日本政府から希望的に指定をされますかどうですか。
  30. 島津久大

    島津政府委員 日本側から指定という関係にはできないのでありまして、在留民関係貿易実情、また可能性というような点を考慮いたしまして、司令部十分連絡の上、事を運んでおるという実情であります。
  31. 田中堯平

    田中(堯)委員 今まではアメリカにだけ在外事務所があつて、今度はフランススエーデンパキスタンインドブラジルというような国であります。これはいずれも米国経済的勢力の侵透した地域だと考えられます。ところが日本貿易は、そういう面だけではなしに、早い話が、すぐ近所にある中国、あるいはソ同盟という方面とも、大いに貿易をしなければならぬと思うわけであります。そこでお尋ねしたいのは、こういうふうな国々に対する在外事務所設置の必要を総司令部に交渉なさいましたか。
  32. 太田一郎

    太田政府委員 ちよつと補足いたしますが、大体極東委員会は十三箇国がございまして、講和條約ができる前の事実上の措置として、在外事務所というものをつくる場合におきまして、それに反対しておる国が一国ございました。その国はそういうことはいけないということを極東委員会で申しておりますので、その国には申し入れておらない次第であります。
  33. 田中堯平

    田中(堯)委員 さらにお尋ねしたいのですが、在外事務所設置された以後のいろいろ実績説明がありました。その御説明によれば、歓迎会があつたとか、いろいろ調査の委託があつたとかいうことが主たる説明でありました。ところが私のお尋ねしたいのは、実際に日本貿易とつてどういうふうにこれが影響を及ぼしておるかという点であります。私の了解するところでは、在外事務所設置されたのは四月の終り、たしか五月の初めだつたかと思いますが、日本貿易は、輸出入とも大体四月が最高点で、それ以後は下り坂ないしは停滯状態にあります。してみると、在外事務所五箇所を設置して、相当な経費を使つているが、実益は上らなかつたという結論にもなると思いますが、その辺の事情を御説明願いたい。
  34. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは先ほど政務局長からも申し上げましたように、たいへんな成績を上げておる次第でありまして、具体的の内容は先ほど申し上げた通りであります。
  35. 田中堯平

    田中(堯)委員 その点についてもう一つ伺いますが、それは非常に不十分なる御説明だと思います。何か特別に事情があつて貿易がそれほど振興しないというのであれば、納得が行きますけれども、せつかく在外事務所を設けて、相当国民期待をかけておつたと思いますが、にもかかわらず期待がはずれて、さつぱり成績が上らないということになれば、政府としましてはもつと責任ある御答弁をしていただきたいと思います。     —————————————
  36. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいま吉田外務大臣が御出席になりましたから、一応中止いたしまして、これより国際事情に関する件を議題といたします。  それではこれより質疑の通告がございますので、これを許しますが、その前にちよつと申し上げます。実は質疑の通告が十二人参つておるのでございますが、時間の関係上どうしても質疑の時間を制限しなければなりませんから、公平に各質疑者五分当てが質疑をなさる時間であります。誤解を避けるために繰返して申しますと、質疑をなさる方が五分の間続けてやつていただきまして、再質問は許さない、こういうことにいたしたいと思います。それから中原君と中村君は二分半当てでございますから、御承知を願います。それでは通告順で質疑を許します。植原委員
  37. 植原悦二郎

    ○植原委員 実は五分という制限では、ほとんど委員会質疑応答としては質疑にならぬと思います。委員会は一問一答をもつて質疑の原則とし、真相をつかまえることにありますけれども、そう委員会においておきめになつたならば、それに従つて参るよりいたしかたがない。なおこれがために、委員長のおさしずの通り、要点だけを連続して申し上げることを、総理においても御承知を願いたいのであります。  本国会を通じて一般の国民が最大の関心を持つておることは、地方税の成立いかんということではないと思います。今日全国民の視線を集中しておるのは朝鮮の動乱そのものである。しかもこれにはつきりとした見通しを持ちませんゆえに、国民は非常な不安にかられておる。ある場合においては、恐怖に襲われておると言うても、はげしい言葉ではないように思われます。北鮮の共産軍が開城に突入して以来、間もなく京城を侵し、水原を占領し、天安に進み、今日では大田もその手に帰したではなかろうかと思われるような状態で、わずか三週間余にしてほとんど南鮮の大半が北鮮軍の手に帰したではなかろうかというような状態であります。従つて国民は不安にかられて、ある場合においては、北海道から千島にソ連の軍隊が躍動しておることがあるとか、九州において警戒警報になつた、燈火管制が行われておるとか、実に種々雑多のデマも飛んでおります。それゆえにやがては北鮮軍のためにダンケルクのごとき問題が起るではないかというような言さえ吐く者があります。この場合に政府としては、朝鮮動乱に対する見通しをはつきりと国民に声明して、国民の不安を取除くことこそきわめて重大なることであると思う。私どもの見るところによつていたしますれば、北鮮軍がかくも無人の境を行くがごとき状態なつたのは、ほとんど南鮮が無防備の状態であつたからである。しかるにその後御承知のごとく米国が率先し、国連が、この北鮮共産軍は侵略行為である、不法行為だ、これを撃破しなければならないと、迅速なる行動をとり、すでに五十二箇国もこれに共鳴いたして、協力を惜しまない態度になつておる。ごく最近において、浦項において二個師団が成功裡に上陸したと傳えられておる。遠からずアメリカの一番優秀なマリン軍も到着するだろうと思います。かような立場から考えますれば、ひとり米国のみならず、国連五十二箇国は、その面目にかけても迅速に北鮮軍を三十八度線の以北に追放し、朝鮮の動乱を鎮定すること請合いである。あまり遠からざる機会にこれができるだろう、かように私ども考えてもおる。今朝の——これで時間が参りましたか。それではやめておきます。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、私の見通しは、今植原君からしてたいがいお話くだすつたので、さらにつけ加えることはあまりないように思いますが、私がここで、常に申しておることではありますがつけ加えたいと思うのは、結局今日の状態におきましては、今日の日本の地位としては、外交問題について、あるいは海外の客観情勢等について、何らの調査機関を持つておらないのでありますから、結局植原君等が御承知になつておることだけをわれわれは承知しておるだけの話であつて、従つて見通しなるものも結論は同じくなりますが、ただあまり見通しといつて先走つてもどうであろうか。ことに事は隣国の朝鮮に関係することであり、また朝鮮からひいて中国とかその他の関係に及ぶので、私としてあまり深くこの見通しを言い、もしくは自由に言うということは、どうであろうかと考えますから、絶えずこの点については注意いたして、意見を発表することを差控えておるわけであります。しかしながらそのために、国民の不安が一方にあることは確かであり、ことに朝鮮事件はあたかも勃発の体で、突然三十八度線が侵された。従つて日本国に対しても同じような状態が起りはしないかという国民の不安はもつともな不安であり、また従来といえども、北海道はアメリカが引揚げる結果、あるいは軍隊を移動したときであつたと思いますが、アメリカは北海道を引揚げる、その北海道を引揚げる原因は、他の国がここに侵入する形跡があるから引揚げたというようなうわさが、北海道あるいは東北においては生じたように記憶しておりますが、しかし今度の事件によつて、私はこれだけのことはあると思うのであります。朝鮮においてこのたび勃発した事件に対して、国連が動き、米国が動いた。また米国は国策として、平和擁護、平和増進のために、国力をあげて平和の維持に努めるという政策は、かねてから公言されておつたのでありますが、はたして実行がこれに伴うかどうか。そこで日本におきましても御承知の通り、局外中立とかあるいは軍事基地云云あるいは全面講和というようなことが論議されておる。その論議されておるゆえんは、その背後に、日本の安全はどうして保障するか、軍備を撤廃した日本としては、日本の安全をどうして保障するか。また保障されなかつた場合はどうするかというような不安があつて、そうしていろいろな問題が起りましたが、今度の朝鮮事件によつて、少くとも国民は、かかる場合には、突然外国の兵が上陸するとか、日本の平和を脅かすとか、安全を脅かす場合には、国連その他がただちにこれに対して実行に移つて、平和の擁護なり増進なりをはかり、平生の議論は決して一片の空論ではないのであるということが、事実によつて立証せられた結果、日本国民に、日本国の安全については、相当安心感を與えたのではないかと、こう私は考えます。これをもつてお答えを終ります。
  39. 守島伍郎

    ○守島委員長 小川君。
  40. 小川半次

    小川(半)委員 吉田総理はしばしば、目下のわが国には外交がないと申しておられるのでありますが、これはまつた吉田さん流の議論であつて、わが国民の渡航が認められなかつた三、四年前の状態においては、あるいは一応その議論が認められたかもわかりませんが、すでに終戰五年を経過し、特に昨年来より水泳選手の渡米を初め、スポーツ代表、学界代表、実業家代表、労働界代表の海外視察、あるいは国会議員団の渡米等、人の面から見ましても、すでに外交が開始されており、また民間貿易が認められ、国と国の貿易もなされており、また日本政府在外事務所設置が行われておる今日、わが国は完全に外交の域に入つたと言えるのでありますが、これでもなお吉田総理は、わが国には外交がないと言われるのであるか。私がこんなことを申し上げるのは、およそ国に外交がないほど、その民族を退歩させ、また国民をして暗い感じを持たしめるものはないのであります。吉田総理の、わが国に外交がないというようなあの言葉は、国民に暗い感じを與えておることは事実であります。国民に明るい感じと希望を持たすために、吉田総理からもはや今日は日本は外交の域に入つたということを明らかにしていただきたいのでありますが、この点総理のお考えを示していただきたいのであります。以上が第一点であります。  次に講和に関連して申し上げたいのでございますが、吉田総理は外交のことは專門外の政治家や国民にはわからない、ただ專門家である自分だけがわかつておるのだという言辞をしばしば口外されたのでありますが、これは非常に独善的であるばかりでなく、最も危險な考え方であると思うのであります。民主国家における外交方針というものは、一人や二人の外交專門家によつてなされるものではなく、国家の現状と将来を憂うる国民大衆の意思を基本に置いてなされなければならぬと思うのでございます。かつてわが国でフアシヨ政権といわれたところの内閣では、ほとんどふしぎに総理が外務大臣を兼任したのであります。たとえばここ十数年の歴史を見ましても、廣田弘毅は、後には有田八郎に譲りましたが、初めは外相を兼任しております。林銑十郎、阿部信行、近衛文麿、東條英機等、いずれも後には議会の都合や客観情勢によつてそれぞれ專任外相を置いたのでありまするが、最初ある時期までは総理大臣が兼務して、国民国際事情を知らしめなかつたのであります。これらの独裁宰相の手によつて日本は不幸な戰争に押し流されて行つたのでありますが、この外相の兼任という各総理に一貫する性格は、ふしぎに国民に向つて外交のことはお前たちにはわからない。おれの動くままについて来ればよいというような独裁的性格のあつたことであります。かくのごとくして私たちは今日の講和に臨む日本の立場においては、まず広く海外情報日本の講和に対して諸外国はどういう意見を持つておるか、これをまず知らしめなければならぬと思うのでありますが、この点海外の講和に対する情報をいかにしてキヤツチしておられるか、そうして今日諸外国日本に対して全面か單独か、どちらが世界の人の意見が多いか、こういう点をも国民に知らさなければならぬと思うのでありますが、総理におきましてこの点いかにお考えであるか、お尋ねしたいのであります。  要するに結論として全面か單独か、しかしてまず講和の時期は、私としては一応朝鮮問題によつて時期はずれたと思うのでありますが、この点、時期的の問題について御判断があればお示し願いたいのであります。
  41. 植原悦二郎

    ○植原委員 議事進行について……。こういう行き方は委員会がほとんど意味をなさないものでございますから、ひとつ委員長としては、公平に五分ずつでたいへんいいようなことだけれども、実際委員会の審議を効果あらしめないことで時間を費しても無意味ですから、ひとつ委員長として再考慮をなさつてはいかがかと思います。
  42. 守島伍郎

    ○守島委員長 この次の機会に理事会で相談いたします。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。今日も五年前も日本の外交については同じことであります。何となれば、降伏文書によつて制限せられておるのでありますから、ないと言えばないという議論も立ちます。しかしながら事実上外交が開かれたというのは、御指摘の通りであります。また事実上條約がなくとも外交が開かれ、外国との間の交通がなるべく自由になるように努め来つたのでありますが、法律的に申せば、あるいは三百的に申せば、ないということは今なお言い得るのであります。  次に講和は專門家たるわれわれだけが承知しておつて、しろうとはくちばしをいるべからずと申したことは決してないのでありますが、民主党の幹事長、その他から絶えずそういう非難を新聞に発表せられておることはよく承知しておりますが、本人はそういうことを申したことがないのみならず、そういう考えもございません。今度の事件によつて講和がどう影響したか、これはただいま申す通り、私としては正確な情報をつかんでおりません。つかむ方法がないのであります。ゆえに講和の時期その他については、單なる見通しにすぎないのであつて、この点について特に私がこういう見通しを持つておるということは言い得ないのであります。しかし常識で考えてみまして、朝鮮事件のために対日講和の時期が遅れたか遅れないか、これは常識の問題でありますが、一日も早く平和関係を増進したいというもし世界の輿論であれば、日本との間の講和條約と平和関係をなるべく早く増進したいということが、朝鮮問題が起つたために、かえつて早くなつたとも考えられ得るのであります。私は早くなることを希望いたしますが、現在における輿論はどうでありますか知りません。世界の輿論と申すか、実際における風潮がどうであるか知りませんが、私の常識から考えてみて、日本との間の平和関係はなるべく早く條約によつて打ち立てる、たとい事実上の平和関係が打ち立てられたとしたところが、これを法的にその根拠を與えるということは、結局世界の平和を増進するゆえんであるから、対日講和はなるべく早くしたいということを考えるであろうと私は想像いたします。全面かあるいは單独かということは、始終議論を重ねておりますから、平素の議論で御承知を願いたいと思います。
  44. 守島伍郎

    ○守島委員長 北澤
  45. 北澤直吉

    北澤委員 時間がありませんので二点につきまして総理大臣にお伺いいたします。  第一点は、ただいま総理大臣のお話によりますと、日本としましてはやはり朝鮮事件のいかんにかかわらず、対日講和が一日も早く締結されることを希望するというお話でありますが、私もそういう希望を持つております。ただ問題は、アメリカの国務長官のアチソン、あるいはダレス最高顧問の言葉によりますと、講和條約あるいは他の方法によつてというようなことを言つておりますので、あるいは正式の講和條約のほかに戰争終結宣言とかいうようなことも考えられておるのではないかと思うのであります。しかしながら日本の立場から申しますと、やはり戰争終了宣言というようなことでなく、日本の独立国としての性格を明確にできますところの講和條約という方式によりたいと思うのでありますが、これに対します総理大臣のお考えをお伺いいたします。  もう一点は、講和を促進することはもちろんでありますが、講和條約の締結以前におきましても、できる限りすみやかに日本自主性を強化するということが必要であろうと思うのであります。現に西ドイツにおきましては、軍政から民政に転化されまして、たとえば外交関係におきましても、ロンドン、パリワシントン領事館を置いており、それから国内の立法の問題につきましては、ある種類のものは連合国のハイ・コミツシヨナーのアドミツシヨンを要しますが、それ以外のものは全部西ドイツ政府にまかしてあるということになつておる。さらに最近のロンドンの外相会議におきましては、西ドイツに関しまして、占領法規の改正ということも考慮されておるということであります。私は日本においても、講和以前においても、占領政策を緩和しまして、日本自主性を強化するように、この上とも御努力願いたいと思うのでありますが、これにつきまして、総理のお考えを伺いたいと思うのであります。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 戰争終了宣言というような議論も、現にドイツで起つておるのでありますが、しかし私の承知するところでは、お話のように戰争終了の宣言というようなことでなく、ただちに講和條約に入りたいというのが、少くとも米英両国の政府考えであるように承知しております。今ドイツの領事館がロンドン、パリ等にすでに開設せられたのでありますが、日本に対しては許されてない。これも考え方によりますと、これは事実日本に対してはなるべく講和條約に入つて、しかる後に正規に領事館を置くことにしたいというのが、イギリス、アメリカ等の考えではないかと思います。そのために領事館設置ということの議論がありませんが、しかし対外事務所というもの設置については、これをむしろ歓迎する向きのもありますから、対外事務所設置は、その国が許す、同意をしてくれる限り、なるべく早くたくさんこしらえたい、こう思つております。  それから自主性の強化ということは、結局講和條約ができない限りは、自主性なるものはどうしても制限せられるのであります。ただ一つここに申しておきたいことは、自主性外国もしくは連合軍に要求する前に、日本国民自身が自主性を持たなければいけないと思うのであります。またマツカーサー元帥等においては、私にしばしば、行政干渉はいたしたくない、こう言つておられるので、干渉するのは万やむを得ざるときに限られており、またわれわれの方から、これはお話と違うじやないかというようなお話をいたしたりするような場合には、筋が立つている場合にはたいがい承知してくれるのであります。ただここに申さなけれげならないことは、自主性はむしろわれわれの方が失つてつて、われわれの方で、たとえば、ごく極端に申すと、政府のある省、あるいはある一部の局、課等において、あることをしたいと考えると、マツカーサー司令部の命令なりというような御託宣をもつて、われわれに迫る場合がある。これははなはだ残念なことでありますが、かくのごときことは事実であります。調べてみると、存外こちらから輸入したものを逆輸入されるというようなことになつている。この点から考えて行きましても、なるべく早く講和條約を締結しなければならぬ。日本自主性のみならず、日本の独立心を害するような行動が、不幸にして中央、地方を通じてあるのであります。これはただに役人ばかりではない。地方においては一層ひどいように聞いております。そういうわけで、まず国民自身が自主性を持たなければならぬと思うのであります。往々にして自主性を放棄して、司令部の名をかりてわれわれに押しつけるというような内輪の事情がありますから、これはなるべく矯正することに努めておりますが、しかし国民全体として独立心を持ち、自主心を持つということが、講和を早くするゆえんであるということを申し上げたいのであります。
  47. 守島伍郎

    ○守島委員長 西村君
  48. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 講和方式は申すまでもなく、わが国千年の運命を決する重要な問題でありますから、單にイデオロギーや従来の政党の主張にこだわるべきじやないということは論ずるまでもないのでありまして、その重点は、わが国の安全保障と日本自主権回復という二点に重点を置かれて、講和方式というものを論議せられなければならぬと思うのでありまして、この意味において全面講和が是か、單独講和が正しいかということは、十分朝野両党が論議を盡しまして、その最大公約数の一致による国民感情と意思をもつて関係諸国に当るべきだと考えるのであります。しかるに本日の外務委員会においても、五分間に論議を制限せられておる。植原さんが指摘せられたように、これでは十分にその目的は達成し得られないのでありまして、これはいずれかの機会において、その自主権回復と日本の安全保障を重点とする講和方式がいかにとらるべきかということにつきまして、機会を改めて総理大臣の御所見を承りたいと思うのでありますが、時間がございませんから、緊急の問題として、私が御質問申し上げたい点はただ一つであります。  それは今回マツカーサー元帥によつて指令された日本警察予備隊の設置であります。これは私といたしましては、日本の治安維持能力の確立と同時に、従来まであいまい模糊になつておりましたところの、正当防衞的自衞権の再確認という見地に立つて、私は賛成いたしたいと思うのであります。但し問題は、この警察予備隊の設置というものは、明らかにこれは法律案によつて国会の審議を経てこれを決すべきである。私は事の順序として、それが日本の憲法を擁護し、わが国財政法の見地に立つて、その事の手順をふまれることが当然であろうと思うのであります。その点は、新しく官庁が設置され、同時に財政法第三十三條によりますならば、これはたとい同一官庁の中においても、その部局等の費目の流用を嚴禁いたしているのであります。もつて立法府が審議いたしました予算の審議権を尊重して、行政府を監督しているということが、財政法第三十三條であるのであります。特に将来警察予備隊の設置によつて、二百億円から三百億円の厖大なる費用を予想されて、それが国民負担能力にいかに影響するかという重大な問題は、現実において国民経済の見地に立ち、あるいは財政法の明示せられるところに従い、あるいはわが国憲法の擁護という立場に立つて、これは当然国会に提案せられ、その可否を決せらるべきである、私はこう考えているのであります。このことは、しばしば先般来の政府の御答弁の中にも、明確になつておらないのであります。マツカーサー元帥のこの書簡の中においても、いずれの点を拜見いたしましても、これはポ政令でこれをなすべしということが明示されておらないのでありまして、ポ政令に従うか、あるいは国会提案によつてこれを決するかということは、日本政府国会の意思にまかされているのではないか。要はマツカーサー司令官の目的は、予備隊七万五千の設置が実現すればいいのであつて、それは日本憲法と財政法に従つてなすべきことが当然であることが、含まれているのであります。従つてこの意味において、従来ぼけておりましたポ政令でやらなければならぬという根拠はございません。同時に日本憲法の問題は、私は時間がございませんから省略いたしますが、マツカーサー元帥の今日言われている、日本管理に関する無制限な権限というものにつきましては、一応検討を要しなければならぬのじやないか。これは敗戰国の国民といたしましては僭越であるという観点も成立する反駁論もあります。私は簡單に申しますならば、マツカーサー元帥が連合国から日本占領並びに管理に関する指令を受けられましたのは、昭和二十年九月六日であります。これには日本政府並びに天皇陛下は貴官の隸属下に置かれると書いてあるのでありますけれども、それから二箇年たつてアメリカを初めとして連合国の懇切なる指導によつて、わが国の現行憲法が制定せられたのであります。従つて昭和二十二年五月三日にわが国の憲法が制定せられた上からは、国内統治の問題は、この憲法を一応尊重し、憲法の基準に従つて、占領政策を行わるべきであつて、この瞬間において、従来言われておつたマツカーサー元帥の無限大な権限は、外交と国防の問題にやや限定せられるのであつて国内統治の問題はわが国憲法に準拠すべきである、私はこう考える。この見地に立つて、この警察予備隊設置問題も、わが国の憲法と財政法の擁護のために、国会提出されることが当然ではないか、こう思うのでありまして、先ほど冐頭に申しましたように、私は講和会議の方式の目的は、わが国の自主権の回復と安全保障に重点を置かれるといたしますならば、自主権回復という一見地に立ちましても、この警察予備隊設置の問題は、当然国会に提案されてしかるべきものと考えるのでありますけれども、総理大臣の御所見はどうでありますか。いろいろ特急で走りましたが、懇切なる御答弁を承りたいと思います。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 懇切なる答弁をいたしたいと考えますが、問題自身ははなはだ簡單でありますから、答弁も簡單にいたさざるを得ないのであります。警察の組織については、政府としては新警察組織ができて以来研究を重ねており、現在の警察制度であつては、日本の治安を維持するに足らぬというので、いろいろ研究をいたしておるのであります。しかるに朝鮮事件が起つた結果でありましようか、マツカーサー書簡を受領いたしたのであります。爾来研究を重ねておるのであります。しかしてこの警察制度は日本の治安維持の上からいつてみても、国民生活の安定の上からいつてみましても、重大なことであり、治安の責任は政府にあるのでありますから、十分完全なるものを考えたいと考えて、ただいま熱心に研究いたしております。従つてその組織あるいは予算等についてはまだきまつておりません。正確なる知識と申しますか、用意が十分できておりませんから、いずれこの組織、予算等が決定した上で御質問にお答えいたします。それまでは遺憾ながらお答えすることができません
  50. 守島伍郎

    ○守島委員長 菊池君。
  51. 菊池義郎

    ○菊池委員 質問と申しますよりも、教えを受けたいのでございますが、私は今度の朝鮮の南北戰争を、国際法規に照しまして、はつきりした戰争であると解しておりますけれども、アメリカその他の国連参加の国々は、匪賊の侵入に対する警察阻止であると言つております。そうであるといたしますならば、日本人が義勇隊としてこの戰鬪に参加することもこれは一向さしつかえない。憲法に抵触するものでも何でもないと思うのでありますが、もし国連側からそういう要望がありましたときにおいては、これを日本政府としてはどうするつもりでありますか。これが一点であります。  それから総理は参議院におきまして再軍備を考えてないとおつしやいましたが、もしアメリカその他の反共列国が熱心に日本の再軍備を要望して来た場合においても、なおかつこれを拒まれるつもりであるかどうか。これが第二点であります。  それから第三点は、台湾の将来の措置に関しまして、六月二十九日のトルーマン声明は、台湾の将来の地位は太平洋における安全の回復、対日講和等国連による検討のあるまで待たねばならない。いかにも意味深長な言葉でもつて結んでおるのでありますが、これはつまるところ、このカイロ宣言は無効になつたということをアメリカが確認しておるように思われるのでありますが、わが外交界の偉大なる先輩である総理大臣はどうお考えなつておられるか、教えていただきたいと思うのであります。  さらに最後に、これはどなたでもよろしゆうございますが、ただいましきりに流説が飛んでおります。公然ととうとうとして流布されておる風説でありますが、北鮮の方に大陸に残つてつたところの日本の軍隊約一個師団近くが加わつて、それでもつていくさも強い。その戰法も日本軍の戰法とまつたく同じであるということが公然と流布されて、これが人心に非常な疑惑を抱かせておる次第でありますが、政府としてはその真偽を明らかにして、内外の疑惑を一掃していただきたいと思うのであります。どなたからでもけつこうでありますから、お答えを願いたい。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。義勇兵の問題については、いまなお何にも政府に対して申入れがございません。またもし申入れがあつた場合にはどうするか。私どもとしては許さないと考えております。というのは、しからざるも、日本が再軍備であるとか、あるいはまた再び世界の平和を脅かしはしないかという疑惑が、日本の対日講和、早期講和の成立を妨げておる原因であると考えます。少くとも一つの原因ではないかと思います。従つて義勇兵のごときことを政府自身が賛成する、あるいは同意を表するということは、私は政治的に考えてみてよろしくないことと考えますから、私は義勇兵の問題が起つた場合には許さない、許したくない考えであります。  それから再軍備のことでありますが、軍備は御承知の通り憲法において明らかにこれを放棄いたしておるのであります。私はこの憲法の軍備放棄、戰争放棄という條項は非常にいい條項であつて国民としてこれはあくまでも守るべきものであると考えますから、たとい再軍備の要求がよそからありましても、これは日本国民としては受諾しないがいいと考えるのであります。  台湾の問題については、私はあまり実はよく存じませんから、もし外務省の係官において承知した人がありましたら、それからお答えさせます。
  53. 守島伍郎

    ○守島委員長 渡部君。
  54. 渡部義通

    ○渡部委員 いろいろ質問したいことが多いが、時間がないので二、三の点だけ申し上げます。  第一は、総理はソ同盟や中華人民共和国は対日講和を望んでいないから、全面講和は不可能である。だから、單独講和以外に道はないんだということをしきりに強調されておられますけれども、しかしすでに一九四七年のロンドン外相会議でモロトフ氏が、強固な全般的世界平和の確立のためには、ドイツ及び日本との講和を結ばなければならないということを主張しております。またパリ外相会議でもヴイシンスキー外相が対日講和の準備を急ぎ、そのために大国の代表が相談する機関をきめよという提言をしております。中華人民共和国の対日講和に対する態度も同様であります。そこでお尋ねいたしたいことは、一体総理は何を根拠に中ソ両国が対日講和を望んでいないということを言われるのか。その具体的な根拠を明示してほしい。それからまた吉田内閣は全面講和のために努力されておるのかどうか。單独講和のためには血道を上げておられるけれども、全面講和のための努力をされたことがあるのかどうか。その点をお聞きいしたい。  第二の点は、全面講和の否定は、実はソ同盟や中華人民共和国の対日講和の基本的な原則が総理の気に食わないのではないか。中ソ両国は対日講和のことについて三大基本原則をあげております。一つは、日本帝国主義の再建を防止すること。第二は、日本またはいかなる形式にせよ侵略行為において日本と結びつく他の国家による侵略の復活を防止すること。第三は、極東と世界の恒久平和と普遍的安全とを強化すること。この三つをあげておるのであります。この対日講和理念というものは、日本の非軍事化と民主化とを要求しているポツダム宣言の精神及び原則、あるいは極東委員会における対日基本政策の精神及び原則と完全に一致しておるのであります。かつ日本の憲法の精神とも一致しておるのであります。そこでお聞きしたいことは、中ソ両国が早くから提唱しておる対日講和原則のどの点に首相は賛成されがたい点があるのか。またポツダム宣言を基準とする講和に努力される意思があられるのかどうか、この点をお聞きします。  第三は、首相は中立はから念仏なりと言つて、中立否定の態度をとつておられます。私も確かにそうであると思う。今、中ソ両国を除いて帝国主義国家と單独講和を結んだなら、中ソ両国はもとより、帝国主義の東洋侵略に心から憎しみを感じておる東洋諸民族をおのずからあえて敵にまわすことになります。だから日本の全土、全生産力、全人口をあげて東洋侵略の道具にしようとしておる帝国主義諸国家のやつかいになつ日本の安全を保つほかはないんだと、首相の中立放棄論のほんとうの意味は、こういうふうに理解するのが正しいのかどうかということについて御教示を願いたい。  それから第四は、首相は参議院で、日本とソビエトとの間における中立條約は、ソビエトによつて侵害されたという言明をされた。しかし百万の関東軍を持つていつも中国やソ連の侵略を企図し、また実際侵略を行つたのは日本政府又び軍閥である。また日ソ中立條約の調印の交渉の間にドイツと防共協定を延長するという交渉を行い、しかもドイツとソビエトとの間に戰争が起つたのに……。
  55. 守島伍郎

    ○守島委員長 渡部君、時間ですから、お打切り願います。
  56. 渡部義通

    ○渡部委員 もうちよつとです。このように最初、また実際に中立條約を無視した行動をとつて来たのはソビエトではなくて、日本の反動政府である。これは極東軍事裁判の判決の速記録が余すところなく暴露しているのである。対ソ関係においても……。
  57. 守島伍郎

    ○守島委員長 渡部君、やめてください。大分時間が超過しております。
  58. 渡部義通

    ○渡部委員 対ソ侵略行為であつたということは、国際裁判の権威においてはつきり……。
  59. 守島伍郎

    ○守島委員長 渡部君、うんと時間が過ぎましたから、おやめ願います。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 全面講和とか、中立論は今日まで口をすつぱくして申したことによつて御承知を願いたい。いつまで議論いたしてもあなたと私とは考えが違い、またイデオロギーも違うようでありますから、お答えいたしません。  それからいろいろお話がありましたが、結局、中国、ソビエトは全面講和を主張して、その証左としてはこういうことがある、ああいうことがあると言われますが、私はソビエトのいわゆる宣言あるいは政策としてかつて述べたことは、多くは宣言にすぎないというふうに考えられるのが、それが輿論であり、常識であろうと思いますから、その声明等を根拠として議論いたしたくないと思います。
  61. 守島伍郎

    ○守島委員長 中山君。
  62. 中山マサ

    ○中山委員 引揚げの問題につきまして、私どもが主張する三十万と、タス通信の主張する点について判定を求めるために、第七国会の最後の日に、私どもは国連に提訴をいたしましたが、その提訴してから今日までいかなる動きがこの問題について国連からあつたか、お尋ねしたいと思います。  またこのたび引揚げて来ない人たちの家族の代表が東京に参りましたが、その人たちの中から、中共地区から、旅費があれば帰れるが、旅費がないので困つておるから、旅費を何とかして送つてもらえないかという手紙をもらつた人が大分ございます。もしこれが事実——手紙ですから事実に相違ございませんが、この点につきまして、中共地区のことで私どもとは連絡がつきませんので、英国を通じてこの問題を解決していただいて、日本の港に着いたときに支拂うというようなことをしていただくことができるかどうかということをお尋ねしたいと思います。  また総理は、このたび北鮮軍が南の方へ参りましたことに対して、国連に対して精神的の援助をするというお話でございましたが、万一南鮮の方から日本に避難して来なければならないという場合があつたときには、この難民を拒否なさるか、あるいは精神的の援助を拡張して、これをしばしお受入れになるか、その点をお伺いしたいと思います。  また次には、大阪においては、この朝鮮の動乱のために、商売人が非常に動揺いたしまして、九州に向つてはキャッシュでなければ品物を送らないというような動きが始まつておりますが、こういう精神的動揺をいかにして鎮撫していただくことができるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。去る五月十日の第十三回対日理事会において、シーボルト議長がこの問題を取上げて、国連に伝達し、またその配慮を要請するという措置とつたということは御承知の通りであります。その後の経過については、いまだ何ら聽取いたしておりません。むろん司令部として、もしくはシーボルト議長としては、その件について督促をし、もしくはその実効のあるように努力しておつたとは思いますけれども、しかし今日ここでもつて私があらためてこういう結果であつたとか、こういう措置がとられつつあるということを申す時期に達しておりませんから、しばらくこの点についての答弁はお待ちを願いたいと思います。  それからただいま中共地方におる在留者が、旅費さえあれば云々というお話は、事実を調べた上で、実行ができることであれば実行いたすよう努力いたします。  それからもし朝鮮から難民が来た場合にはどうするかというお尋ねでありますが、これは現実問題になつておりませんから、何ともお答えはできません。しかし人類の道義上から申しましても、その場合においてはでき得るだけの保護を與えると申しますか、救助をするというのが、これが人道であると思いますから、その場合になつてみませんと、難民がどういう形で参りますか、どういう難民が参りますかということも問題がありましようが、原則的に申せば、うつちやつてはおけない人道上の問題であろうと思います。現実は非常に密入国者は少くなつておるそうであります。  それから九州地方の不安についてのお話でありますが、これはあまり北鮮軍が突然起つて、その進出が早いということから、九州ばかりでなく、日本海沿岸も相当に不安に感じておつたようでありますが、しかし最近において北鮮軍の進出が大分鈍つて来たのみならず、一方においてはアメリカ軍の上陸勢がだんだん多くなる。こういうような事実のために、不安は相当除かれつつあるのではないか、こう考えます。なおしかし実際の状況については取調べております。
  64. 守島伍郎

    ○守島委員長 山本君お願いいたします。
  65. 山本利壽

    ○山本(利)委員 最近の朝鮮問題を見ましても、同じ民族が南北にわかれて相殺戮しておるということは、まことに悲劇のきわみであります。われわれ日本民族はいかなる場合にも総力を結集して。同一方向に行くように政治を進めていただきたいと考えるのであります。現在公職追放になつておる者が、約二十万六千人あるということを聞いております。これらの人々の中には、その追放になつた原因がまことに同情すべきものもあり、あるいは追放になつた後の行動が、非常に民主主義の国民としてりつぱな者があり、さらにその能力からいつて、もしこれが解除せられるなれば、われわれの現下における国民総力の結集ということに非常に力強いものがあると考えるのでありますが、特例な者を除いて、現在の日本において解除してよいと思われる者の大幅の解除方をマツカーサー元帥に向つて吉田総理大臣は懇請していただくことの意思がありましようか、もしそういう方向にすでに進んでおるとすれば、いかなる程度のものであろうか、その見通しについて承りたいと考えます。このことが第一点。  第二点は、われわれは無条件降伏をいたしたのでありますけれども、ポツダム宣言は日本人を人種として奴隸化するものでもなく、国民として滅亡させようとするものでもないことをうたつております。あのベルサイユ條約が第二次世界大戰の原因となつたということを聞いておりますが、今回の講和條約はほんとうに世界中の人が考えてもつともであると思い、日本民族も感謝するような程度にいたしてもらいたいと思うのであります。そこで日本民族がいかに生存するか、及び将来世界の平和と、文化向上のために貢献するには、最小限度いかなることが必要であるかということを、ポツダム宣言のわく内において十分に研究して、これを正直に率直に大胆に連合国側に訴え、あるいは世界の輿論に訴えるということは、われわれに課せられたるところの義務でもあり、また道徳的な権利でもあると私は考えるのであります。この講和論議は無用であるというような言葉をなす人もありますけれども、それはわれわれ民族を奴隸的にしようとする考えであると私は思うのであります。今この衆議院における外務委員会等もそういうことをいろいろ研究する機関であるべきでありますけれども、外務大臣の御出席は、一会期に一回か二回ということでありまして、たまたま御出席を願えれば、一人の議員の発言時間が五分間というような状況でありますから、このことを十分に研究するために超党派的に政界、学界、その他各界の代表者をもつて、あのポツダム宣言のわく内において、われわれやまと民族をいかにして生きさせるか、世界の平和にいかに貢献させるかという條項を、いろいろと研究する機関を設けることが、私は必要であろうと考えるのであります。こういうことをすること、及びこの態度がわれわれに残されたるところの自衞権の一つであると私は考えるのでありますが、この点について吉田総理大臣外務大臣の御所見を承りたいと思います。この二つを御質問申し上げます。
  66. 吉田茂

    吉田国務大臣 追放解除については、追放の制度が設けられて間もなくと思いますが、訴願委員会をつくつて追放の行き過ぎもしくは実質的に追放すべき理由のない追放に対しては、解除するために訴願委員会をつくつてつたのであります。ところが途中いつのころでありますか、訴願委員会はやめになつて、第二次吉田内閣ができたときにこれを発見したものでありますから、さらに訴願委員会を再設いたして、その訴願委員会が訴願の審査に当つております。約三万何がしかの訴願の審査を受付けて、この審査もやがて終了いたすと思いますから、その結果については自然公表され、もしくは解除される者が相当あろうと私は想像いたします。ただ訴願委員会については、政府は何らの指示も與えなければ、干渉もいたさない建前をとつております。ゆえにどういう審査がどういう状態において行われておるかということは、政府としてはつとめて知らないようにいたして、訴願委員会独自の立場で審査するようにということを申し入れてあります。従つて詳細は存じませんし、また知らない方がいいと考え政府が自分の党に都合のよい者だけをというような疑いを持たれることは、たとい追放が解除せられても、その結果においておもしろくない、訴願委員が公平な立場で、しかも独自な立場で自由に審査をして、その結果解除せられるというのがよいと考えますから、なるべく干渉いたさないようにいたしてあります。しかし聞くところによれば、審査は相当進んで、近く結了するに至るであろうと思います。その結了を待つて自然調査の結果は明らかになろうと思います。  それから第二は、講和に関して超党派的の研究審議の機関を設けてはどうかということと考えますが、これはしばしばその話もあり、そういう点も承知いたしますが、これは設ける方がいいか悪いかということは二つの議論があります。いいという議論も立ちますが、同時にそのために政府講和会議を左右するための運動として、あるいは講和会議日本政府の意思を押しつけるという一つの運動なりととられて、その結果超党派的研究審議の機関決議と逆になるような結果もあることはずいぶん前例があるのであります。たしか第一次世界大戰のあとでドイツにそういうような機関が設けられた結果、連合国から逆にとられたということがあつたように承知いたしております。ゆえにこういう審議機関を設けることがいいか悪いかということは、二つの議論が成立ち得ると思います。現在のところは、私はかえつて政府なりあるいは日本国民が、講和会議を指導するとか左右するために、一つの運動として、あるいは講和会議に対して一種の圧迫を加えるというような感じを與えはしないかと考えますから、これは私としてはこういう機関は設けずに、しかしながら国民として講和に関して自由に意思発表することについては、政府は何ら異議がないので、むしろ自由なる発表をせられるがいいということは、しばしば議会においても私は述べております。
  67. 守島伍郎

    ○守島委員長 佐々木君。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 北鮮軍の南鮮侵略に際しまして、アメリカを初め国際連合が国際正義の立場からとりました毅然たる行為というものは、われわれの非常な喜びでありますと同時に、これによつて日本の進むべき道がおのずから開かれたかのごとき感を深くするのであります。しかしながらこれと同時に先ほど植原委員から指摘されました通り、国民の間には大きな不安と脅威の念が一面高まりつつあることも、また否定できないと思います。私は次に三つの点を取上げまして、この際総理の見解をただしたいと思います。  まず第一には朝鮮事件が全面的な米ソ戰争ないし第三次世界大戰に突入するというような危險性について、いろいろ論議が行われておりまするが、総理はこの危險性に対してどのようにお考えなつておるかということが第一点であります。  第二点は、新憲法第九條の交戰権の放棄でありまするが、これは決して日本の自衞権の放棄までをも意味するものではないということは、今年年頭のマツカーサー元帥のメツセージによつて日本に與えられた通りであります。しかしながら万一の場合におきまして、日本の領土が朝鮮の場合のごとき侵略を受けるという場合におきまして、現実には新憲法によつて軍備のない日本がいかにしてその自衞権を発動するかという点、その自衞権の問題をめぐつて先ほど来ありました再軍備の問題や、あるいは軍事同盟の問題が起つて来ると考えるのでありますが、この自衞権をどうして発動するかという点につきまして、総理の所感を伺いたいと思います。  第三点は、先ほどお話になりました超党派外交に関連する問題でありまするが、私は超党派外交というようなものは、今日の日本の置かれておりまする立場からいたしますならば原則的には大いに賛成するのでありまするけれども、しかしながら社会党はすでにこれに対して反対を表明しておりまするし、かつまた政党のよつてつて立ちまするところの主義綱領というものが根本的に相反しておりまする社会党、いわんや共産党を加えた超党派外交のごときものはあり得ないし、また考えるべきではない、こうわれわれは考えまするが、総理はこの講和の難局突破のために、いかなる政治形態をもつて臨まんとするのか。連立政権のことも伝えられておりまするが、これに関する総理の所感を求めたいと思います
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は絶えず申しておるのは、第三次世界戰争はまず当分ないであろうという考えをもつてその意見を発表いたしております。なぜないかと申すと、第三次世界戰争が始まつた場合には、これは文明の破壞であり、人類の破壞であり、非常な問題を起す。兵器の発達とともに非常な結果になる。その結果の責任を背負うだけの人があるかどうか。ソビエトといえどもその責任は負い得ないと思います。ソビエトと申すと少し語弊がありますが、いかなる国といえども第三次世界戰争を開始する責任を負うだけの国はないであらうと思います。いはんや今日朝鮮事件において証明せられた通り、国連の主張は五十何箇国がこれを支持するというような状態で、戰争をいとい、平和の擁護のためには世界の輿論がこれを支持しておるのでありますから、これによつて見ても、第三次世界戰争はまずないと私は考えております。またそう信じております。  また今度の朝鮮事件によつてただいまも申した通り、国連なりアメリカが実力をもつて警察行動を起した。世界の平和擁護のために、世界の第三次戰争に至らないようにかくのごとき大規模な行動を開始したということによつて見ましても、同じような場合が日本に起つた場合には、決して国連その他は捨てておくはずはないと、私は今度の事件によつてますます確信を強むるに至つたのであります。日本の安全は結局国連その他の国際機関か、あるいは世界の輿論が日本の安全を保障するだけの運動を起す、こう私は確信いたします。  さらに講和態勢、政治態勢として社会党を加えた連立政権ということであまりすが、私は連立政権については従来しばしば考えておりましたが、失敗もいたしておるので過去の経験にかんがみまして、連立政権はよろしくない、こう考えております。政策を異にし、また思想を異にしておる党派の間における連立政権というものは、結局連立しておる各党派が国民の非難を受くるという結果になりますから、私としてはかかる構想はただいまもつておりません
  70. 守島伍郎

    ○守島委員長 仲内君
  71. 仲内憲治

    仲内委員 私少し遅れて参りまして重複する点があると思いますが。時間がわずかですから簡單にお尋ねいたします。  第一にお伺いいたしたいのは朝鮮事件に対する日本の協力の問題であります。この点につきましては総理の施政方針演説において日本の現情からいたしまして、積極的にこれに協力する立場にはない。しかしあとう限りの努力を惜しまないという力強い声明をせられたのであります。問題のこの協力の内容がどういうものであり、どの程度であるかという点でありまして、たとえば日本人義勇軍の募集については、そういうことはないということを官房長官からも言明せられておるのでありますが、一方国際連合に対する協力が主であると思うのでありますが、国際連合においては国連事務総局で目下国際義勇軍の募集を考慮中であるというような報道もあるのでありまして、こうした国連の対北鮮行動についての協力に、どの程度まで日本は参加する用意があるのであるか。  さらにこの北鮮の事件に協力するということは、日本の基本的な外交政策として論議せられましたる永世中立の問題に関連して、この中立を放棄したという意味にとられると思うのであります。そういう意味にとつてよいものであるかどうか、この二点であります。  さらに朝鮮事件が日本の講和に対していかなる影響を及ぼすかという点でありますが、先ごろいわゆる外交白書なるものが発表せられたようでありまして、これによりますと、日本は現実に講和を結んでもらえる條件を備えて来ておるということを、外務省みずからが表明しておるのでありまして、非常に喜びにたえないのでありますが、この講和の時期並びその資格ありと認定せられたる外務省として、具体的にいかなる講和促進のためのステップと申しますか、今日の日本の力の範囲で許された方法において促進の手続が進められておるか、さしつかえない限り承りたいと思うのであります。  要するに今日国内に外交問題をめぐつてあらゆる論議がかわされておりまするが、内外の問題を通じて日本の今日の最もわれわれの関心を持つ問題は、講和促進の一点にあると思うのであります。すべての問題は、講和の達成、独立と自主権の回復によつてのみ解決し得ると思うのでありまして、その意味におきまして、早期講和の促進こそは、わが国国民の今日最も待望する問題であると思うのであります。総理はこの講和促進のために、たとえば一大国民の運動を展開するというようなお考えはないか、以上お伺いいたします。
  72. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、早期講和を持ち来すためには、常に私は日本があくまでも平和に徹する、日本国民あげて平和に徹するという態度をとるべきである。この観点から国連のこのたびの運動はまつたく平和維持のためであり、平和増進のためである。ゆえに日本国民としては国連に協力する、こういう意味で協力を申しておるのであります。しからばどういう協力をというお尋ねでありますが、これは今日日本の立場としては、積極的に義勇兵をつくるというようなことはできない立場にあるので、あくまでも精神的に、国連の主張する平和擁護に対しては、国をあげてこれに賛成するという精神的の言い表わし方以外には、今日のところ言い表わす方法がないのであります。また国連に協力するということは、中立放棄ではないか、今日日本としては、中立を放棄するとか、中立を維持するとかいうような外交的行為ができない立場にあるのであつて、放棄もなければ、また中立の設定もできないのであります。  対日講和について、いかなる促進の手続をとつたか、これは私がここに、外交を休止されておる日本としてこういう手段をとつた、ああいう手段をとつたといつて、具体的に申すことができないのみならず、かりにとつたところが、外交交渉の内容を発表するということは、国際慣例として許されないことでありますからして、ここにお答えは避けたいと思います。  このために国民運動を起してはどうかと申されましたが、これは先ほど超党派的の講和審議会を設けたらどうかということに対する私のお答えと同様に、国民運動を起して、将来構成さるべき講和会議、もしくは連合国に対して、一種の圧迫を加えるというようなふうに、万一誤解が生ずれば、これは決して日本のためによくないと考えますから、政府として今日国民運動を起す考えはありません。しかしながら国民の早期講和を希望しておることは明らかであり、その早期講和の内容は、日本の独立なり、自主なり何なりを含めた講和であることは明らかであると思いますから、特に国民的運動を起すというような考えはしない方がいいと考えております。
  73. 守島伍郎

    ○守島委員長 中原君、あなたの時間は二分半です。総理とのお約束の時間はあと十分しかありませんから、その二分半をぜひお守りください。
  74. 中原健次

    中原委員 総理のわが日本の安全保障の道に関する理念とでも申しますが、考え方がはたして妥当適切なものであるかどうか、これにつきましては私は遺憾ながら適切な理念ではない、こういうふうに申し上げなければならぬのであります。たとえば早期單独講和、あるいはいわゆる言うところの自由国家群にいわば偏属するというようなやり方、あるいは講和後における軍事基地化をまさに受諾せんとするがごとき言動、あるいは書契、あるいはそれらのことに関して、それを国連協力という名のもとに、着々それを推進しつつある。こういう一連の言動を通して考えまするならば、首相の安全保障に対する考え方が、きわめて危險なものである。むしろそれは安全保障とは逆に戰争へ導入するの余儀なきに至る道である。こういうふうに私は考えるのであります。私どもは安全保障のことに関しましては、国民が再び戰争に巻き込まれることのなき状態、すなわち戰争からの安全保障を希求いたしておるのであります。従いまして戰争に導入されることのなき状態、そういう方向への努力が必要になつて来る、こう考える。ことに今日の国際関係考えますると、いわゆる二つの勢力圏の対立事情なつておりまするが、今われわれ日本国民といたしましては、この二つの間に立ちまして、いわゆる中立的な立場による安全保障の保持、このことがきわめて適切な方向ではなかろうかと考えておるのであります。ここに私は首相の見解と、国民の希求しておる安全保障との間に、非常に大きな齟齬矛盾があるということを指摘せなければならぬのでありますが、この点に関して首相は責任ある立場から御答弁を願いたい。
  75. 守島伍郎

    ○守島委員長 中原君、もう時間です。
  76. 中原健次

    中原委員 さらに私は占領政策ということにつきまして、今度の朝鮮に対する米軍の行動を、占領政策のそれに符合するものであると見ているのかどうか。この点に関する総理の見解をお伺いしておきたいと思うのでありますこれからすべての問題の考え方が発生すると考えるからであります。
  77. 吉田茂

    吉田国務大臣 全面講和はかえつて日本の安全を害するものであるとか、單独講和は軍事基地化するものであるとかいう御議論は、私として承服ができない。これはしばしば私は本会議その他委員会等において述べておりますから、それについて御承知を願いたいと思います。  そして朝鮮における米軍の行動は占領政策と思うかどうか。これは日本国には関係がないことであります。
  78. 守島伍郎

    ○守島委員長 中村君、二分半でどうぞ。
  79. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 時間が二分半でありますから、要点だけを申し上げてお尋ねしたいと思いますが、今度の朝鮮事件によりまして、北九州におきましては地理的にきわめて近接している関係から、相当人心に不安な空気を與えておるということは事実であります。現在の情勢から考えましても、北九州地帶がいわゆる連合軍の基地であるというようなことは、世間の周知しているところであります。そういう点から考えましても、北鮮軍の侵入が考えられないことはないと思うのであります。そういうことがどうしてもあり得ると考えなければならぬと思いますが、そういう場合に対して総理兼外相としては、いかなる方法によつてこれを防止するということを考えておられるのか。あるいはこの点は占領治下でありますから、占領軍によつて防止せられるもの、こう考えられますが、そういうことについてマツカーサー司令部との間に打合せを促進せられたことがあるかどうか。これが一点であります。  それから近く政府では警察隊を整備するということでありますが、過日の新聞によりますと、主として北海道と九州に配置するやの記事を見たのでありますが、そういうことを考えておられるのかどうか。さらに最近の国内治安の問題から考えても、あるいは朝鮮事件から考えましても、すみやかに一つの治安確保の態勢が必要だと思うのでありますが、発表せられて今日に至るまで見ておりますと、具体的に進んでおる速度がきわめて鈍いようでありますが、もう少しすみやかに整備する必要があるのではないかと考えますので、そういう点に対しての首相の見解を伺いたい。  もう一点は今度の朝鮮事件は首相もしばしば申しておられますように、一方的に侵略行為として国連がこれに制裁を加えることになつたようでありますが……。
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 中村さん、時間が参りました。
  81. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 これに対しては世界の平和に貢献するという立場において、たとい敗戰国といえども、積極的に協力の意思を表示すべきだ、これは将来わが国が武器を放棄して安全保障を考える場合に、当然問題になつて来る点であります。私はそういうことを考えるときにも、たとい負けた国であつても、世界の平和に貢献するために、国連の態度に積極的に協力するということが必要である、かように考えるのであります。首相は当初でき得る限りの協力をするということを言つておられましたが、過日の答弁によれば、精神的の協力であるというようにお答えになつたようでありますが、私はあらゆる面においてもつと積極的な意思を表示する必要がある。かように考えるのでありますが、首相の見解を承りたいと思います。
  82. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。九州の人心がはなはだ不安定だということは私も想像いたしますが、アメリカ軍がだんだん北上するに従つて人心は安定するであろうと思います。しからば将来どうかということでありますが、そういういわゆる仮定の問題について私は論議いたしたことはありません。具体的にそういう危險が生じました場合には善処いたす考えであります。  警察予備隊について、九州及び北海道に置くとかいう新聞の報道があるというようなことでありますが、これは政府としては何ら関知いたしておりません。今日はどういうふうな組織でいたすかということについて研究をいたしており、またGHQ側の希望もありますので、互いに打合せ研究をいたして、万全を期した装備にし、組織にいたしたいと考えておるのであります。そのためには早急に組織いたして、そのために不完全な組織をこしらえることのないようにいたしたいと思います。現在警察組織はできておりますが、この警察組織に対して、従来われわれはその不完全なることを考えて、どう改めるかということについて、また改めるにはどうするかと、いろいろな場合を想像して、十分な研究を遂げて、そうして設けたいと考えて、愼重な審議はいたしておりますが、まだ結論には達しておりません。  それから国連との協力をもう一層はつきり積極的にやつたらよかろうというお話でありますが、今日占領下にある日本としては、私の言い表わし方以上に言うということは穏当ではなかろうと考えますから、精神的に協力するということを申して、積極的にとは申しておらないわけであります。
  83. 守島伍郎

    ○守島委員長 次会は明日十時から開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時十二分散会