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1950-10-19 第8回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月十九日(木曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 足立 篤郎君 理事 池見 茂隆君    理事 受田 新吉君       青柳 一郎君    伊藤 郷一君       小川 平二君    門脇勝太郎君       菊池 義郎君    佐々木盛雄君       庄司 一郎君    天野  久君       小林 信一君    岡  良一君       堤 ツルヨ君    高田 富之君  委員外出席者         外務政務次官  草葉 隆圓君         外務事務官         (管理局引揚課         長)      武野 義治君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局援護課長) 山本淺太郎君         運輸事務官         (海運局監督第         一課長)    吉行市太郎君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部業務課         長)      下島 留夫君         日本国有鉄道運         輸総局輸送局旅         客輸送課    岩岡 俊作君 十月五日  委員竹村奈良一君辞任につき、その補欠として  山口武秀君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員深澤義守君及び山口武秀辞任につき、そ  の補欠として高田富之君及び砂間一良君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ○中共地区残留同胞引揚促進に関する件  ○参考人招致に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  去る十月三日及び四日の本委員会におきまして、さきに院議によりそれぞれ現地につき実情調査せられました委員各位が、各地方の定着援護実態に関し調査結果の詳細なる御報告があつたのであります。その後今日まで委員長といたしましては、この御報告の中にありました引揚者住宅その他の問題に関しまして、今後の審議を進めますために必要と感じました若干の調査等の措置をいたしました点もありますので、議題に入るに先だちまして、その中の二、三の事項を含め、前回委員会後の経過概要につき、御報告をいたしたいと存ずるのであります。  第一には明二十日の議題といたしております引揚者住宅の問題でありますが、前述の御報告によりますれば、各地におきまして現在なお住宅でない場所に居住を余儀なくされておる引揚者相当数あるのみではなく、既設引揚者集団住宅の中にもすでに腐朽に近く、大規模補修か、またはむしろ疎開するを必要とするものが多数あるということであつたのであります。これらの点につきまして、まず全国的の状況を握るため、住宅困窮のありさまを表わしている本年三月十五日調査政府の統計を見まするに、引揚者にして今日なお学校、公会堂、国立病院隔離病舎神社仏閣壕舎、仮小屋等本来の住宅以外の場所に居住している者、及び同居、間借りの形ではあるが、やむを得ぬ事情のために立退きを迫られている者などを合せますと、約六十万人という状況にあるようでありまして、かかる状態は今日なおおおむねそのまま持続いたしておると見なければならないのであります。  住宅の確保はあらためて申すまでもなく、ことに引揚者に対しましては、生活安定の第一條件でありますにもかかわらず、この実情はと申しますれば、ただいま申し述べたように、既引揚者総数六百万のうち、約一割が文字通りただわずかに雨露をしのぐという状態に取残されておるのであります。この事実は国の住宅政策の全般に関しまして、今後厚生社会政策という面をさらに強く打ち出して行かなければならぬことを物語つておると存ずるのであります。もちろん既引揚者の他の部分は、それぞれの住宅に落ちついて、そのうちの五十一万余人が昭和二十四年度までに国で設けましたる施設に收容されておるのであります。それまでに国庫から支出されました補助金は十七億七千六百万円と相なつておるのであります。なお昭和二十五年度は五億円の予算をもつて三万七千人を收容できるよう工事が進行しておるのであります。  次に補修関係につき調査いたしましたるところ、既設引揚者收容施設中、補修を必要といたしておりますものが、現在七百六十三施設に上つておるのでありまして、その実情は各委員が親しく実視せられ、報告せられた通りであります。加うるに過般のジエーン台風キジア台風による損害をも見積りますれば、補修必要度相当に加重したと見なければならないのであります。  以上が引揚者住宅今後の新築及び補修の必要を示す状況概要でありますが、この状況に対し、本年度内にさしあたつて引揚者集団住宅の疎開、補修を取急ぎ実施するため、二十五年度補正予算の中には、主務当局努力によつて、約三億三千万万円が見込まれるようになつておるのであります。しかしさきにも申しました建物の老衰、腐朽状況台風による損害をもあわせ考えますれば、補正予算相当増額をいたさなければ、当面の急を救うにも事欠くように相なるのではなかろうかと、私自身最近二、三の施設につき調査いたしました所見からも憂慮いたしておるのであります。なお明二十六年度の引揚者住宅新築等につきましては、主筆当局においてもいろいろと計画いたしておられるようでありますが、いまだこれを明年度予算中に具体化するまでに立ち至つておらざるやに聞いておるのであります。  以上申し述べましたごとく、引揚者住宅問題につきましては、当委員会といたしましてこの際積極的にその促進に力を盡さなければならぬ点が多々ありますことは、調査の御報告の中にもありましたる通りでありまして、特に住宅問題を今回の委員会として取上げましたるゆえんもここにあるのであります。委員会当面の問題といたしまして、さらに一段の御盡力をお願いいたす次第であります。  なお今回の委員会議題とはいたしておりませんが、この際先日の定着援護実態調査報告に関連いたしまして、急を要する問題としてさらに若干簡單につけ加えます。その一つ更生資金の問題であります。更生資金がとにかく引揚行の更生に役立ち、各府県がこぞつてその増額を要望しておる現状は、報告者が述べられた調査結果についても明らかであります。御報告の中には明年度から更生資金が廃止されるとのうわさが流布されて、引揚者に動揺を與えたという事実さえもあつたのであります。今日の引揚者実情が、これまで通り更生資金制度を依然必要とする点は明らかでありまして、援護庁当局更生資金に関する各種異論を廃して、明年度も引続きその制度が存置せられるよう努力せられましたることに対し、その労を多とするものであります。しかしその予算額におきまして、二十五年度の五億円に対し三億円というように減額されるのではなかろうかとも聞いておるのであります。申すまでもなくこの厚生資金につきましては、一般的な資金枯渇という状況とともに、償還金の問題その他あわせ考究すべき点が多々あるのでありまするが、各委員におかせられましても、御研究の上、必要とする点はこれを強く推進いたすよう御盡力を賜わりたいのであります。  次は御調査を煩わしましたる各府県から、異口同音に陳情せられましたる未復員者給與法改正と、これら給與金に関する過誤拂い処理の問題であります。御承知通り復員者給與法改正につきましては、従来からすでに問題とせられておりましたる経緯もあり、去る十月四日の特別委員会におきまして、小委員会にその立案を付託せられたのであります。私が小委員長を兼ねることになりまして、ただちに審議を開始し、十月六日以後は法制局側をも加え、法律案立案を急いでおりますので、法律案は近くお手元に差上げ御審議を願うはずであります。今後の交渉上の必要もありまするので、今日までに政府側予算等に関する意見も聽取し、さらに同じ趣旨をもつて研究せられておりまする参議院側とも緊密に連絡をして参つたのであります。小委員会として各種状況を見て一応決定いたしましたる改正の要点は、もちろん先般の委員会におきましての御所論と大差はないのでありまして、これを申し述べますれば、一、俸給月額三百円を千円とすること、二、遺骨引取経費千七百円を二千二百円とすること、三、遺骨埋葬費千五百円を三千円とすること、及び恩給法等により支給を受けた後、病気を再発して療養を必要とするに至つた引揚げの患者が、療養を受け得るようにすることなどであります。詳細はさらに改正法律案について御承知を願います。  なお給與に関する過誤拂い処理につきましては、未復員者給與法改正法律案と並行して研究中であります。これらの法律案につきましては、またあらためて委員会を開きまして、御決定を得ましたならば関係方面との折衝に移り、来る臨時国会早々提出し得るよう努力いたしたい所存であります。  以上をもつて定着援護に関する調査報告を聽取いたしましたる前回委員会以後今日までの経過につき、未復員者給與法改正等に関する小委員長といたしましての中間報告を含めまして、私からの御報告を終ります。     —————————————
  3. 若林義孝

    若林委員長 最後に去る十月六日受田委員とともに千葉の復員局留守業務部調査業務実情を視察いたしましたので、その状況についてさらにつけ加えて御参考にいたしたいと思います。  御承知通り去る十月九日、海外残留同胞引揚げ促進の目的で、三人の代表国際連合会議に列するため出発されたのでありまするが、これに関連し、今後国際連合から調査団が来朝されることも予想されているのでありまして、その場合残留者等の大部を占むる陸軍関係調査に專念いたしておりまする留守業務部が、調査団調査の主要なる対象と相なることは当然に予期せらるるところであります。かような観点から視察をいたしたのでありまするが、留守業務部生死等状況の不明な残留者実情を究明することを主要任務とし、その業務遂行の要領は、残留者あるいは現地死歿者状況について相手国から通報がないので、主として既引揚者から得られる資料基礎として調査業務を進めている、またその資料から判決を得るためには、きわめて組織的に、順を追いつつあらゆる方面からの総合的判断を進め、正確なる判決がなるべくすみやかに得られるよう努めているという二点に要約できるのであります。しかしてその執務ぶりはきわめて真劍でありまして、その成果も着々と現われ、国連調査団にも十分調査していただきたいとの感想を得たのであります。  しかしながら実情を申しますれば、調査究明基礎となつている引揚者からの資料も、その詳細なる報告が得られる合同調査に招致した人員は今日までわずかに引揚者の約一割にとどまる程度でありまして、相手国からの情報が得られぬというきわめて不利なる状況下に、最後の一人に至るまででき得る限り調査の手を盡すという国としての責を果すためには、この調査は今後もさらに周密広汎に進めらるべきものでありまして、調査に当る人員調査経費等引揚げて来る人員の減少に比例して減少せしめるがごときは、大いなる誤謬であり、国の責任において相当の期間、相当規模をもつてますますこれを進められなければならぬことと確認いたしたような次第であります。機会を得まして委員各位のこの方面の御調査機会をもつくりたいと存ずるのであります。  次に、本日はこれで一応私の前回委員会から今日までの御報告を終りますが、本日は中共地区残留同胞引揚げ促進に関する件について議事を進めることといたしますが、最近中共地区残留同胞よりの通信の中に、集団引揚げの可能な情勢にあるということがしばしば報告されておるのでありまして、新聞などでは、この様子が掲載されまして問題となつており、また個別引揚げも可能な状況であるのであります。聞くところによりますと、帰国許可は得られるが、船賃等旅費がなくて帰れない者がおるということでありますので、本委員会といたしましては、これについて政府当局説明及び意見を聽取するとともに、最近の中共地区引揚者より実情を聽取いたし、これら残留同胞引揚げ努力いたしたいと思うものであります。これにつきまして中共地区残留同胞引揚げ状況を聽取するために、最近引揚げて参りました人を数名参考人として本委員会に来ていただくことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 若林義孝

    若林委員長 御異議ないものと認めます。それではさよう決しました。  なお人員氏名呼出し時日等につきましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 若林義孝

    若林委員長 それではさよう決します。     —————————————
  6. 若林義孝

  7. 草葉隆圓

    草葉説明員 中共地区残留邦人引揚げにつきましては、当委員会におかれましては御熱心に御促進願つておりますことを感謝を申し上げる次第でございます。御承知のように、従来発表されておりまする数は六万三百余名という数字を一応の目標といたしましてとりはからつてつておるのであります。最近、ただいま委員長の御報告のように、通信ができましてから、いわゆる中共地区におられまする方々留守家庭に対する通信の中に、最近引揚げが可能であるというような通信が盛んに行われておりまするような状態でございますので、留守家族といたしましても、近くそういう状態が現われて来るということをたいへん希望を持つておいでになるようでございますが、この点につきましては、実は前々から委員会等でも申し上げました通り政府といたしましては、第一に集団引揚をぜひとも実施していただきたい。これにはいろいろ困難な事情がございまするし、直接中共地区との連絡も困難でありますので、従つて日本政府といたしましては、それぞれ関係方面に強く熱望いたしまして、その実現方のとりはからいを懇請いたしておる次第でございます。しかしまだ本日まで、皆様に具体的に御報告申し上げるまでには相なつておらないような次第でございます。その間におきまして、個人引揚げ方々が大体今日まで約三百近くそれぞれの方法をもつてつて来ておられる実情でありまして、これらの個人引揚げ方々は、いろいろ苦労しながら、中共区におきまして引揚げ機会引揚げ手続等をいたされまして、そうして便船を利用しながら帰つて来ておられます実情でありまして、この場合においては、一切の費用自分負担をし、費用の調達、便船問題等にずいぶん苦労しながら帰つて来ておられますから、これらの費用等についても、何か政府の方で、個人船賃等について方法がないかという点については、実はいろいろ目下研究いたしておりますが、なかなかこれが政府負担といたしまして、そうして引揚げ促進に資するという方向が現在までまだ具体的にはつきり決定方法を持つておらないような次第であります。いろいろ問題がありますので、その点が現在までには国家が費用を出しまして、個人引揚げ方法を講ずるということははなはだ困難な状態にありまして、従つてどうしても集団引揚げ全力を注いで行く方が最も妥当であり、また必要であろうと存じまして、むしろその点に主力を注ぐ意味におきまして現在進めております。一応大体の点を御報告申し上げます。
  8. 若林義孝

    若林委員長 何か御質疑がありましたら、どうぞ。
  9. 堤ツルヨ

    堤委員 ただいまの政務次官の御説明の中で、集団引揚げにもつぱら力を注いでいるとおつしやつたようですが、そのお言葉を聞いただけではあんまり私たちにはつきりいたしません。おさしつかえがなかつたならば、具体的にどういうふうな努力をしているかということの御説明をしていただきたい。
  10. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは結局船をこちらから出しまして、ある地区に迎えに行つて、そして、そこに向う集団的に集まつてもらつて、そこから引揚げて来るという方法の可能な方法をとつてもらいたいということを、関係方面に実は懇請いたしておる次第であります。
  11. 堤ツルヨ

    堤委員 それで、その交渉を初めてなすつたのはいつごろで、どういう回答がありましたか、その辺をひとつ……。
  12. 草葉隆圓

    草葉説明員 最初始めましたのは大分前からでございますが、ことしの春ごろからと記憶しております。具体的にだんだん話を熱心に進めつつありまするのは、ここ数箇月の間であります。
  13. 堤ツルヨ

    堤委員 それで関係筋ではどういうふうに……。
  14. 草葉隆圓

    草葉説明員 熱心にこちらの——日本政府並びに国民の要望を了解されまして、それぞれの方法で大分熱心に進めていただいておると私どもは感じております。
  15. 堤ツルヨ

    堤委員 私がそういう御質問を申し上げますのは、どうも政務次官のお言葉が抽象的でございまして、おそらく留守家族は、そういうお言葉では満足できないであろうと思うのであります。でありますからできるならば、委員会でやはりもう少し、抽象的な言葉をお並べにならないで、もつとうがつた御答弁を聞かなければ満足できない。もう少し詳しくどうぞ。
  16. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは実は具体的に申し上げると申しましても、そういう具体的な資料をあまり私の方では持つておりませんが、結局具体的に申し上げますと、現在は中共との直接の国交関係がございませんので、従つて日本政府関係方面を通じてこの熱望を訴えながら、関係方面はそれぞれの関係国なり、機関を通じて進められておると、私どもはかように存じております。
  17. 池見茂隆

    池見委員 今次官の説明の最初にあたりまして、中共地区抑留者は六万三百余名ということをお話になりましたが、これは政府で的確にこれだけの数字を把握されておるものとして予承してよろしいですね。
  18. 草葉隆圓

    草葉説明員 六万三百たしか十二名かであつたと思います。今まで政府が発表しておりまする正式数字はそれでございます。
  19. 池見茂隆

    池見委員 今の集団引揚げについては、政府としてそれぞれの機関なり、あるいはその方面に懇請しておるということにつきましてはわかりますが、すでに御存じと思いますが、今から三、四日前と思います。新聞紙名ちよつと忘れましたが、上海におけるところの日本人のいわゆる在留者氏名等が明確にわかつた者の発表があつたと思います。これは外務省の方に通知をして、適当の引揚げ方をひとつ促進してもらうようにというふうな懇請があつたという記事を拜見しましたが、この点につきまして外務省の方は、その新聞記事によつて、ないしはその通知によつてどういうふうな処置をとられておるか。
  20. 草葉隆圓

    草葉説明員 ただいまの御質問の点、あるいはちようどそれと同じような情報引揚げて来られました個人方々というような方面からいただいておるのであります。それで最近十九名になつたというのも、詳しく調べますると、十一名の名前は分つておりましたが、あとはあるいは向うでその後生れたというようなことで、従来私どもがつかんでおりまする状況よりも、新しいそういう報道なり情報なりが参る、これをつとめて愼重に取扱い、これを資料にいたしまして、第一には集団引揚げ全力を盡したい。ことに上海とか天津とかいうような地域的な方面を考え、その間に個人的な引揚げがただいま申しましたようにして、徐々にあるいは数度にわたつて行われる、従つてできるだけ早く集団引揚げ熱望いたしておる次第であります。
  21. 池見茂隆

    池見委員 その点はわかりましたが、あとでその新聞記事参考までに届けておきます。それは東北地区ないしは関東地区中国地区九州地区といつたような地区別にその出身者氏名まで書いてあつた通信ですが、そういうふうなものに対しては、集団引揚げが不可能であつた場合においては、外務省としては適当に向う連絡をとつて一つの慰安でも與えるということは、これは最も必要と私は思います。これは三、四日前の新聞ですからきわめて新しい情報であると考えます。
  22. 草葉隆圓

    草葉説明員 ただいまの点につきましては、十分御趣旨を尊重いたしまして、さようにいたしたいと思います。
  23. 天野久

    天野(久)委員 先ほど聞いておりますと、帰国許可が出ても旅費がないために帰れないとか、あるいは帰る人は自分旅費を出し、便船を求めて帰つて来た。それで集団引揚げということのみに非常に力を入れておられるようですが、そういう道が少しでもあるならば、集団引揚げのみならず、個々に帰れる方法努力してやるべきだと思うが、その点についてはどんな方法でやられておりますか、どんな考えでおられますか。
  24. 草葉隆圓

    草葉説明員 実は個々引揚げになりますと、ずいぶんこちらから向うに、たとえば定期航路の船に何とか話をするとか、どこのどの辺におられる方がどういうふうな動きでやつておるという点につきまして、いろいろと情報はとつておりましても、事実はそれほど詳しくこちらが資料を持たないわけであります。従つてお帰りになつた人たち状態をいろいろ聞きましても、いろんな苦労をしながら、幸いにチヤンスができて、何万かのうちのごく帰る機会に恵まれ得た人たちが帰つて来たというようなことであろうと思います。なかなかいろんな意味において、具体的に進めて参りますると困難なような状態がありますから、従つてそのような個人引揚げがなるべく可能に行く方法、そこに阻害しておりまするものはなるべく取去り得る方法を算段しながら、同時に根本は集団引揚げ全力を盡して行くという方法が結局一番必要ではないか、またそれ以外にはこれの具体的な方法はないのではいか、両方を進めますと同時に、やはり主力集団引揚げというものに進めて行くことが必要ではないかと考えております。その方法をとりつつあるような次第であります。
  25. 天野久

    天野(久)委員 集団引揚げ主力を注ぐことは最も妥当なことであると思います。そこでとにかくすでに五年になんなんとしておる中共地区におる人を、われわれがどうして引揚げさせるか、どうして呼び出そうかということについては、非常に苦心しておつた。ところが去年あたりまでは、中共に対しては何らの手がかりをつけることができないで困つてつた。ところが幸い、とにかくあすこにおる人は帰国許可がとれる。しかも個人でくふうしてでも帰つて来られる、自己の力で帰つて来られるという道、また帰つて来た人があつたということ、これは非常にわれわれとしましても、また中共におる人、中共に人をやつておる留守家族人たちに対しては、これくらいいい知らせはないと思います。そこで何か非常に向うに宝の山があるが、その宝の山を外でさすつておるような気がするのです。これは国連などにも幸い引揚委員会からも代表がオブザーバーとして出席ができる、こういうようなことになつておりまするので、何かその手を通じて、今少し突き進んで積極的な、つまり個々なりあるいは集団なりあるいは何なりによつて引揚げ得るよう、私はもう少しつつ込んで外務省に手を盡していただくことができはしないかと思うし、またできる道があるだろうとも想像できるので、今一歩進んでいただきたいと考えるが、その点どんなものでしようか。
  26. 草葉隆圓

    草葉説明員 ごもつともな御質問だと存じます。これは御本人も熱望し、それからまた留守家族はもちろん、国民全体が熱望に燃えておるのでございますから、できるならば、あるいは特定の船会社がそういう方を運んで来られた場合には、その船賃はどうだというようなことの何か方法がとれたらけつこうだと存じますし、また現在、最近帰られました一、二の方からいずれ証人喚問で御聽取になるようですが、一、二の個人引揚げ事例等もございますから御参考に申し上げたいとは存じまするが、個人引揚げの場合には、普通の集団の場合と違いまして、そういう知らせる方法なり、あるいは手続の問題にいたしましてもなかなか困難な状態で、たまたまそれが都合よくそろつてつて来たというような人は、ごく少数というような状態になつております。それで集団の場合は今申し上げました通りでございますが、個人の場合には個人で帰り得る、また帰り得る情勢にある場合には、なるべくその方法を御本人もとつていただき、またそれを阻害しておる点は、こちらの方でそれが除去されるなら除去する方法をとつて行く。しかし政府が全部個人引揚げの方向に主力を注ぐという方法も、なかなかこれは具体的にはとれない状態で、いろいろな関係にひつかかつて参ります。結局どこまでも引揚げ促進はやはり集団引揚げ全力を注ぎながら、その間に個人で帰り得る状態なつたらつとめてお帰りを願うということが熱望だと存じます。この個人引揚げの問題につきましても、今申し上げました障害になつておる点を除去し得るなら、それを除去する方向にわれわれも政府もあらゆる努力を注ぐべきものであるというので努めてはおりますが、今日までそれが具体的にこれならどうというところまで進んでおりません点を、はなはだ遺憾に思つておりますが、以上お答えいたします。
  27. 天野久

    天野(久)委員 それは集団引揚げができるなら一番いいことでありますが、しかし今中共におる人たちが、集団引揚げをするために、一体あちらに残つておる人と連絡がとれておるかどうか、こういう点を考えなければならぬ。おそらくわれわれははつきりと集団引揚げは——何月何日に船を持つて迎えに行くからここに集まれということがはたしてできるかどうか、こういうことを考えなければならぬと思います。そこで集団引揚げはいいということは、あなたのおつしやる通りわれわれもそう考えるが、しかしこれは個人で帰つても、そそに対して政府はこういうことにして、こういう方法をもつて個人でも帰り得るようにする。今あちらに残つておるわれわれ同胞は、おそらくその日の食すらとれないというような状態ではないかと思う。従つて蓄積などがあろうとはわれわれは思つておらない。そういうことになつたときに、政府集団引揚げがいい、そうして個人引揚げは至難であるといつて個人引揚げを何とも手をつけておらなかつたならば、ばらばらに散らばつた人たちに対して一体いつ引揚げができるか、こういうことになりはしないかと思う。  それから今はラジオなり、国連を通じてなり、通信機関がいろいろありましよう。そこでばらばらにおる人にラジオその他の宣伝によつて、日本の政府がこういう方法をとつておるから、君たちはこういう方法で帰つて来い。旅費は途中で借りて来ても、日本に帰ればこういうような方法で拂つてやる道がある。こういうふうに何らか中共地区に残つている人たちに対しては、いわゆる帰還の愛の手をさしのべることに私は最大の努力を拂つてやるべきではないか。こんなふうに考えております。それで集団引揚げがいいことはもちろんであるが、集団引揚げになかなか行けないところに非常に悩みがありはしないか。しかしそれに漏れる人、あるいは個々に帰れる人に対しては、何とか方法をすぐ即座に講じてやる必要があるではないか。こんなふうに考えるのでありますが、どうですかそれは。
  28. 草葉隆圓

    草葉説明員 ごもつともな点だと思います。個人引揚げ地区によりましていろいろ手続も違つておるようでございます。上海地区は、あるいは新聞公告を出して異存がなかつたならば初めて許可が出る。地区によりましていろいろ許可が違つておるようでございます。中支地区、北支地区と違つておるようでございますが、いずれにいたしましても、個人引揚げでは相当苦労しながらその手続あるいは金の相談等をなされておるようであります。最近帰られました十九家族等も、いよいよ帰るという見通しがつきましてから、向うに雇われておる方から物質的な援助等もずつと得たというような状態でありまして、地区並びに職業、個人ということによりまして、おのおの違つておるようでございますが、最近帰りました一、二の引揚げ事例等は引揚課長より申し上げますが、個人引揚げの一番の眼目は、大体具体的に申しまして船賃だと思います。こういう点につきましても、何とか現地において金がなくとも乗れる。帰つてから支拂われる方法がとれるような方法はないかどうかというような点につきましても、もつと実は政府におきましても具体的に研究をしなければならない問題が大分残されておると思います。御説のように個人引揚げにつきましても、できるだけの方法を講じたいと思います。
  29. 天野久

    天野(久)委員 今の次官のお話、私大いに共鳴します。そこでやはりいろいろ施設をするにしても、どのくらいの費用がかかつて、どういう経過で帰れるかということ、それには幸い引揚課長向うから引揚げられて来られた方の話を聞いて、事情がお詳しいならば、承ればいろいろ参考になると思いますから、どうか委員長そういうお話を聞けるようにおとりはからい願いたいと思います。
  30. 武野義治

    武野説明員 最近帰つて参りました方に、実は私じかにお会いすればよかつたのですが、私所用がありまして、このたびは会いませず、従来の例並びに特に私の方から人を派しまして調べた結果について若干御報告申し上げたいと思います。主として舞鶴の援護局に入られました奥寺さんからの情報でございまして、いずれ本委員会で奥寺さんをお呼びの上、詳しいことをお聞きになることが一番いいことだと思つておりまするが、この十九名の方々は従来まで五年間非常な苦労をいたしまして、帰国努力をして来たことは確かでございます。しかしながら、御承知のように日本の技術者は非常に重用されておりまして、特に技術者は相当程度の低い技術者でも中共側の方では非常に重要視しておりまして、これを確保するためにあらゆる懐柔の方法と、それから若干の手当の増額とか、あるいは絶対にその帰国について断念させるような方法を講ずるとか、その確保にはやつきとなつてつたようであります。特に今回の引揚者は、今までその帰国方法がわからなかつたけれども、意を決してこの四家族全部が留用機関の長、北京の方の関係方面集団的に留用解除と帰国の意思を発表いたしました。非常なる努力の結果、この帰国の嘆願書に許可をもらつたということが報告されてございます。大体華北の方では、この留用解除に関しましてはある程度寛大のようでありまするが、それでも帰国について何らか申し出たような場合には、非常な脅迫を加え、現実に減俸するとか、いろいろな方法でこれをチエツクしておつた。ところで華北においてもそのような程度にチエツクされたけれども、たとえば満州の方になりますると、若干でも帰国言葉を言うと、それは反動分子として批判され、帰国の念は悶々として押え得ないけれども言うわけには行かないというような状態で、満州関係においては、嘆願書の提出とか嘆願書の許可というようなことは、ほとんど考えられないということが伝えられておるわけであります。またこちらからのラジオ放送による帰国の件も、最近は特に嚴重になつたようで、表面上は禁止はされていないけれども、現実にはラジオ聽取を禁止されているような実際的な効果をもたらしておる。すなわちわれわれの同胞はラジオを聞くことはできない。短波のごときは聽取はできない。また日本人のみの集会は禁止されておる。こうしてこの引揚げの問題についての残留しておる日本人相互間の連絡も、きわめて祕密裡な連絡方法しか許されていない。手紙のごときも、表立つた帰国の問題というものが出ている場合には、没收されてしまうというような、きわめて不便な状況のもとにおいて、この嘆願書の提出の努力をしていたというふうに報告されておるのであります。従つて非常に惠まれた留用者につきましても、この程度に困難の情勢がある。それから一般の民間人の生活は、あるいは伝えられるように、非常に困難なものがあつて、これはとても集団引揚げという方法をもつてするのでなければ救われない。たまたま上海なりあるいは塘沽なりで拾われるようにして来る幸い僥倖の方もあり得るけれども、大部分はとうていそのような機会もない。従つてこの引揚げというものは、われわれ日本船がかりに自由に貿易船として中共の地域に行けて、この日本船に対して日本側政府の方も、また全国民が救済の努力を頼むというふうにすれば、非常に便利があるのでありますが、現在のところは何分にも外国船でございまして、われわれの方としては簡單にその救出方について御依頼もできないというような状況もございます。従つてこちらから現地に残留している方々に対する連絡も困難であるし、現地に残つておる人々の間においても、引揚げに関する連絡情報の交換というものはきわめて制限せられておる。いろいろな状況が重なりまして、われわれの方といたしまして気持ははやつても、なかなか連絡がうまく行かないというような状況にあるわけであります。また先ほど政務次官が言われましたように、われわれは懸命に調査の方も進めておりますが、今度の十九名の者を私どもで調べましたところが、十九名のうち届済みの者は十名ございまして、あとの九名は実は届け出てない。今度帰つて参りました四家族については、われわれ届けを得ておるのでありますが、その同伴いたしました子供——終戰後生れた子供も一人、二人ありましたが、その家族については届けがないのであります。従つて確保した人員には相当こうしたアルフアーを考えなければならないということも言い得るのでありまして、こういうふうに帰還者によつてだんだんと現地の情勢がわかつて来るということは、われわれとして非常に幸いなんでありますが、何分にも現地におけるいろいろな困難な情勢のために、こちらで考えるほどには、現地の残留日本人の間には帰国方法についての周知方法が、思うように行かぬということが現実にございます。まとまりませんが、若干の報告といたします。
  31. 小林信一

    ○小林(信)委員 やはりそれに関連してお伺いするのでありますが、ただいまのお話を聞きますと、非常に中共からの引揚げ許可も悲観的なように聞かれるのであります。しかし前にお伺いしたところでは、中共政府が非常に好意的に許可するようにも聞かれたのですが、そのいずれが真であるか、ただいまのお話によると非常に表面的であつて内面的なものはそれと反しておるというふうなところもあつたように伺いますが、外務省当局の方はどういうふうに中共の態度を見ておられるか、お伺いしたい。
  32. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは非常に引揚げる希望の人によつても違いましようし、その人がごく重要なポイントにおつてちよつと余人をもつてかえがたいという場合もあります。それからさつきもちよつと触れましたが、地域によつても大分違つておるようであります。それで手続というものが、また地域によつてつておる、あるいは旅費さえあればだれでもすぐにごくスムースに手続ができるかというと、必ずしもそうじやないように私どもは地域を調べまして承知いたしております。一概には言いにくいのであります。
  33. 小林信一

    ○小林(信)委員 私はやはり政府が当然この際力を入れなければならぬ点は、集団引揚げの問題だと思いますが、そういうように政府が仕事を運ぶ点からしてお伺いしたいのでありますが、中共政府相当帰国許可は自由にさしておるというようなところであれば、これがなぜ集団引揚げの形に運ぶことができないか。こういう問題で検討して行かなくちやならぬわけなんですが、かりに中共政府相当自由に許可するというように考えるならば、問題は何が困難な問題かということになるわけですが、それは中共自体の問題であるか、あるいは中共の対外的な問題がからまつておるのかというようなことに、おのずから考えて行かなければならぬわけなんです。しかしそこで單にそういうことによつて集団引揚げの問題が促進されないとすれば、われわれ関係のない国民が、またその個人あるいはその家族が非常な悲劇の中に置かれて、そういうもののために犠牲にされるということは、非常に人道的に問題になることなんで、その人道上の問題からして世界の人たち、あるいは中共あるいはこれに関連する人々に強力に訴えるというようなことが、最も大事な道になるわけなんですが、そういう経緯を私先ほどお伺いしまして、ただ困難だというように御説明があつたわけなんですが、その困難な理由は何であるか。結局帰するところ、どういう道をもつて行くかというような点で、外務省当局のお話を聞きたいのです。
  34. 草葉隆圓

    草葉説明員 それで全体といたしましては、ただいま並びに以前からのお話の通り、また私も御答弁申し上げました通りに、いわゆる日本の船が迎えに出まして、そうして正式な方法で、ある地点に集まつて、そこから従来の通り引揚げを実施するというのが、これが正面切つて方法であり、また実際はこれをやらないと、ずつとまんべんなしな方法はとれないと思います。現在一方におきましては、個人引揚げがごく軽くできたところはすぐできるようなことも考えられますし、またたいへん困難なところは、なかなかただいまの報告のような点であります。しかし全体として見ますと、必ずしもそう簡單には行かぬのじやないかと思います。それでやはりその人、その地位、その地域というものによつて、ずいぶん左右されておるようでございますが、なかなか簡單には一概に行き得るとは申し上げかねると思います。それで先ほど申し上げましたように、正式の立場からも引揚げを要請します。その方法によつて中共国民の理解を得、同時に世界の御支援を得て、この問題にすみやかな解決を一方にはとつて行かなければならない。一方には具体的な方法をもつて、あるいは事務的に、あるいは政策的に進んで行かなければならぬ。かように考えて進んでいる次第であります。
  35. 小林信一

    ○小林(信)委員 具体的に困難な問題ということがお伺いできないのは非常に残念なんです。最も国民の関心を持つているのはそこだと思いますが、こういう点をはつきり解明していただいて、政府の態度というものをこの際留守家族の方たちに明示することが最も重要なことだと考えます。  そこで先ほど御説明の中に、中共地区に残されている人たち六万三百十二名というお話があつたのですが、これは一応の数字であるという補足のお話がありましたが、最近の情勢からして、この数字というものはふえる傾向にあるか、あるいは大体政府が予定した数がこれが確定的なものであるか、最近いろいろ通信等の点からして、もしこれが多いとなれば、またここに希望的なものが出て来るわけなんですが、その点もお伺いしたい。
  36. 草葉隆圓

    草葉説明員 前段の問題につきましては、お話の通りに——従つて政府といたしましては、十分関係方面を通じまして、最もすみやかな機会に具体的な方法が実現されるように熱望して進んでいる次第であります。  それからただいまの数の問題につきましては、私もさきちよつとふれましたが、ただいま引揚課長から申し上げましたように、今度帰つて見えました十九名につきましても、すでに数名はこちらの帳簿には載つておらなかつた方でございます。六万三百有余の方々が、おそらく今までの総数以上に現地にはもつと相当な人数がおられるのではないか、あるいは最近十三万とか八万とかいろいろ報道はされておりまするが、その確実な数字をつかむということは困難であり、また確実な数字をここで申し上げることは早計であろうと存じまするが、相当数上まわるような情勢にあるだろうと一応考えられるのであります。
  37. 小林信一

    ○小林(信)委員 私もそういうことを予想しておつたのですが、そうなると一応政府調査したものが予想外になるとするならば、そこに何か理由というものが発見されなければならぬと思うわけです。その理由というようなものが、また家族の方たちと、ソ連地区あたりの数字等の問題も大分国民には疑心暗鬼のものがあるわけなんです。それとも関連しまして解決されて行く点も出て来るわけなんですが、今のところその数字が多くなつて来るというその理由というものは、おわかりになりませんか。
  38. 草葉隆圓

    草葉説明員 これは実はその後の出生等の自然増の数ももちろんあろうかと思います。これは当然あるのではないかと思います。最初の終戰後の総数から相当年月がたつておりますから、これは相当数字の動きがあろうと思いますが、それ以上の増加等がもしや今後確実に現われて参りましたら、結局最初の集計においての問題が起つて来るわけでございます。実はまだそこまでは具体的につかみ得ておらない状態でございます。
  39. 青柳一郎

    ○青柳委員 手元に参考資料が来ているのでありますが、これはどこから得たものかわかりませんが、これをちよつと拜見いたしましたら、たとえば華北石家莊の状況でありまするが、これを見ますと、どうも中共地区におきましては、一般的に出国の手続について規定があるのではないか、こう思うのであります。ただその帰国手続が一般に周知せられておらない、中共の役所もよく知らない、また中共地区におる日本人もよく知らないのが遺憾であるというふうなことが書いてある。また山東省からの状況も大分ございますが、これを見ますと、日本内地において、村長の入国許可証があればよいというようなことが出ているのです。事は国際問題でもございますし、中共政府相当な組織的な整理が終つたと思うのでございまして、全般的に何か規定があるのじやないか、そう思われるのでございます。その辺につきまして外務当局におきましては、こういう資料によりまして十分御検討しておられると思いますが、その辺につきましてどういうふうにお考えになつておられるか、その点を承つておきたいと思います。
  40. 若林義孝

    若林委員長 この資料は——資料のみについて説明いたしますが、これは国民運動総本部の手を経まして收集してもらつた参考書類でございます。これはお渡しするときに御説明を加えておくべきだつたと思います。
  41. 武野義治

    武野説明員 外国人というもの——日本人を含めまして、外僑出国便法というものが出たそうでございます。これは出た日付はわかりませんですけれども、それ以来日本人が公安局の方に嘆願書を提出いたしますと、それから数箇月の間新聞に、この者の帰国に対して異存なきやという一般公告をするそうであります。その数箇月の間に異存を唱える者がなければ、それに対して許可を與える、外国人全部をまとめました出国便法というものがあるそうでございます。  それから入国許可証という問題でございますが、これは公安局並びに現地の機関では、これを要求したり、また船会社がこれを要求するということはございますけれども、日本人については全然これは不必要なのでありまして、これは家族等の通信でこちらから現地に残つておる方々連絡する場合には、こういうものはいらないのだ。といつてもやはり船会社なり、中共側の機関がやはり何だかんだと要求するものではないかと思います。実際にはそれはいらない。今度帰つた方々も、そういうことについては、全然われわれはインフオーメーシヨンを與えられておらぬ、そういうことでも非常に苦労したということでございまして、この点は遺憾ながらその程度しか私どもの方では申し上げられないのであります。
  42. 青柳一郎

    ○青柳委員 そういたしますると、最近までに三百余名故国に帰つて来たというのは、すべて外僑出国便法によつてつて来たものと思つてよろしゆうございますか。
  43. 武野義治

    武野説明員 私はそう考えております。
  44. 青柳一郎

    ○青柳委員 そういたしますると、この中共地区にあります中共政府の外僑出国便法というものが、この際中国の日本人の唯一の引揚げて帰つて来る道でございます。この法律はある程度国際的なものでもあろうと思うのでございますが、こういうものに対応して、やはり日本政府といたしましては、どこから行つたらいいか私はわかりませんが、関係方面を通じまして、この便法によつて——ただいまも天野委員からお話がございましたが、一方集団引揚げを策すると同時に、逐次この便法に対応する措置を日本政府としてとつて、少しでも外地におつて苦労しておる日本人の数を減して行く道を日本政府は講ずるべきだと思う次第でございます。
  45. 草葉隆圓

    草葉説明員 ただいまの御意見、まつたく私どもも同様に考えております。ただ先ほどるる申し上げましたように、今度十九名帰られましたが、ただいまの便法が最初からあつたか、途中であつたか、地域によつて取扱いが事実違つているようでございますが、幸いに最近はそういう傾向にあるようであります。十分御期待に沿つて進んで行きたいと思います。
  46. 若林義孝

    若林委員長 ほかにありませんか——それでは私からお伺いしたいと思います。引揚げ状況につきましては、時日がだんだん経つに従つてつて来ておるだろうと思いますが、このごろ引揚げて来る者の荷物その他携帶品というようなものについては、最近はどういうふうになつておりますか。
  47. 武野義治

    武野説明員 携行物件といたしまして、まずドルでございますが、大人一人三十ドル、六歳以下子ども十五ドルの携行を許されて一ドル三万元で銀行でかえたそうでございます。荷物は制限がなかつた、各世帶は四個ずつ携行した、こういうことになつておりますから、大体帰るということになりますと、向うにいたときのことはあまり悪く言つてもらいたくないという気持があるのか、相当優遇された、こういつた報告がございます。
  48. 若林義孝

    若林委員長 それから引揚げて来る者について、政府としては、連絡のない者は仕方がないでしようが、やはり一応、この間の新聞など見ますと、舞鶴へ行つておるようですが、どういうふうな径路で手続を経るのですか。
  49. 山本淺太郎

    ○山本説明員 現在われわれが承知しておりますところでは、寄港の便船は全部外国船でございます。日本船は密航船が小さいのが一隻あつたかと記憶しておりますが、全部外国船であります。そういう船が日本の検疫所のあります港に入りますと、日本人が乗つておるということでありますれば、その身元を調査いたしまして引揚者であるということがわかりますれば、私の方で取扱い検疫所と申しておりますが、全国で六つの港におきましては、少数の人員でありますれば、引揚物資等を持つておりますので、そこで普通のソ連の引揚者と同じような物資の交付、援護金の支給、帰郷旅費の支給等をいたしております。  なお二十人、三十人とかいう数がまとまりますれば、現地軍の意向もしんしやくいたしまして、舞鶴に持つて行きまして、所要の調査等もいたしまして、帰郷せしめる。引揚者の処遇につきましては、ソビエト等からの既往の引揚げとまつたく同一に扱つております。
  50. 若林義孝

    若林委員長 現地との通信などはどういう方法で行われておりますか。
  51. 山本淺太郎

    ○山本説明員 中共との通信は、正式には認められておりません。日本の郵政省の知つております見解として私の承知しておりますのは、非公式な通信が許されておる、従つて途中事故があつても、それは差出人の危險負担であるというようなことであります。しかし一般の外国郵便として、留守家族から出しましたものは、大部分着いておるようでございますし、向うから出しますものも相当たくさん来ておるような状況に聞いております。
  52. 若林義孝

    若林委員長 草葉政務次官にお尋ねしたいと思いますが、委員各位が先ほど来、手をかえ品をかえと申しますか、いろいろな観点からお尋ねをしておつたようですが、申し上げたいと思う心持を私こちらで察しておりますと、帰りたくも帰れないところの者に対しては、日本政府からとにかく運賃先拂いで返すような方法を、連合国を通じて中共政府に正式に通達をしてもらうというようなことが可能ではなかろうかというようなお気持も、具体的の文の中に含まれておるのではないかと思うのです。これは日本の国からは正式にできますまいが、連合国を通じてこれをやつてもらうということ、あるいはできれば集団的に返してほしいということを、政府としてそれが交渉できなければ、本委員会などを通じて要請をしてみるということができたら、——それから欲を言えば、今度次会に中共地区から帰りましたところの人たちにその実情を聞く。今日は政府当局から拜聽したわけでありますが、今度は現地から帰つた人たちから直接聞いて、それを資料にして、できれば現地調査のために中共地区へこちらから行くことを許してもらいたいというようなことを懇請できるかどうかというような気持があるのではないかと思いますので、ひとつ外務省として——われわれ外交関係のことは詳しくわかりませんから、その点をひとつお伺いをいたします。
  53. 草葉隆圓

    草葉説明員 いわゆる個人引揚げの障害の中心は、やはり費用の問題だと思います。しかし必ずしも費用の問題だけではなしに、手続とかいろいろな問題で困難な場合もありましよう。いよいよできるときまつても、費用がなかつたら帰れないという場合が結局ぎりぎりの問題だと思います。そういう場合において、費用は内地帰航の場合、政府負担するからという交渉の点については、これは簡單には行かないのではないかと考えられますので、簡單に実現は困難じやないか。しかしそういう点もやはり解決の方法としては一つ方法であります。もちろん十分な研究方法とを講じてみたいと思います。それにあわせ、それより以上に強く——とにかく引揚げて、そうしてそれが数は多い場合もあるだろうし、少い場合もあるだろうし、とにかく従来の引揚げ方法をもう少し中共地区にも早く実施する具体的な方法というものは、これは十分政府も国家も、あるいは国民も懇請し、私もまた懇請して参つたわけであります。一層の皆さん方のお力添えを大いにお願い申し上げたいと存じます。そのために中共地区に議員の御派遣という問題につきましては、十分研究をいたしましてまた後刻お返事を申し上げたいと存じます。
  54. 若林義孝

    若林委員長 運輸省の海運局関係の方にちよつと私からお伺いいたしたいのですが、もし上海からこちらへ帰るといたしまして、個人船賃などはどのくらいになつておるのでしようか、もちろん外国船ですが……。
  55. 吉行市太郎

    ○吉行説明員 ちよつとその資料を持つていないのでございますが……。
  56. 山本淺太郎

    ○山本説明員 最近帰りました実例を見ますと、先ほど申し上げましたように、全部外国船でございますが、十四ほどのケースを調べてみますと、半分ぐらいは先方負担、留用機関で負担してくれております。あとの半数くらいは本人が出した、こういうふうに言つております。大体帰りました出港地は上海、天津、北京、青島、大沽、いろいろございますが、二、三の例をあげますと、上海から横浜にノールウエー船で帰つたのは七十五ドル拂つております。それから青島から神戸に入りました、これは船籍がちよつとわからないのですが、百五十ドル拂つております。それから大沽から神戸へ参りました米国船では八十ドル、一番安いのをとりますと、天津から神戸に帰りました英国船四十ドル、こういうふうに非常にでこぼこがございます。非常に高額拂わなければ乗れないという状況になつております。なお日本と中共との間におきましては、御承知のように定期船がございませんので、これらの船も事前に日本側でキヤツチすることはもちろんできません。またこういう外国船の商社が日本にエージエントを持つておるかどうかというような点につきましても、十分わかりません。持つておらないところが大部分であるかのように運輸省からお聞きしたことがあるのであります。
  57. 若林義孝

    若林委員長 日本船が外国航路に就航することを許可することがあればというようなことになつておりますが、その点、中共地区に対して、あるいは台湾などに対して日本船の就航ということの申出もあるのでしようか、あるいは許可せられておるのでしようか、あるいは将来日本船がそういう方面に就航するという状況については、あるいは講和條約が済まなければわからぬということになるかもしれませんが、現在の機運といいますか、それをひとつ承りたいと思います。
  58. 吉行市太郎

    ○吉行説明員 今お尋ねの点につきましては、現在許可されておらない状況でございます。ただ許可されておりますのは、内地と沖繩の定期航路だけでございまして、台湾、中共地区に対しましては、現在のところは許可されておりません。ただ開らん炭の積取りその他貨物船としての配船が近く許されるのではないかというぐあいに考えられておりますが、定期航路の問題は、ことに中共地区などにつきましては、かなり先の問題ではなかろうかというぐあいに考えられます。
  59. 若林義孝

    若林委員長 なおほかに御質疑はありませんか。——なければ本日はこの程度で散会いたしたいと思いますが、御意見はありませんか。——では明日は定刻より定着援護、特に住宅問題を議題として委員会を開きたいと思います。さよう御承知を願いたいと思います。  では本日はこれをもつて閉会いたします。     午後三時二十八分散会