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1950-07-31 第8回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月三十一日(月曜日)     午後三時四十分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 足立 篤郎君 理事 池見 茂隆君    理事 小西 英雄君 理事 玉置 信一君    理事 坂口 主税君 理事 受田 新吉君       青柳 一郎君    伊藤 郷一君       北川 定務君    中山 マサ君       細田 榮藏君    小林 信一君       堤 ツルヨ君    苅田アサノ君       松谷天光光君  委員外出席者         外務事務官         (管理局総務課         長)      高野 藤吉君         外務事務官         (管理局引揚課         長)      武野 義治君         大蔵事務官         (主計官)   岩動 道行君         大蔵事務官         (理財局次長) 酒井 俊彦君     ————————————— 本日の会議に付した事件  在外資産に関する件  海外同胞引揚問題に関する件  閉会審査事件の追加申出に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  本日は在外資産に関する件並びに海外同胞引揚に関する件について議事を進めることにいたします。  在外資産に関する件につきましては、過日の委員会におきまして当局より説明を求めたのでありまするが、なお問題が多々残つておりますので、引続き政府当局より説明を聴取いたしたいと存じます。過般の委員会においてお申出がありましたのが政府当局から届いておりますので、平和條約における在外資産取扱い先例等に関する資料といたしまして御配付を申し上げておきましたから、これについて大蔵当局から御説明を願いたいと思います。
  3. 酒井俊彦

    酒井説明員 それではこの前御要求のございました在外財産が第一次大戦あと平和條約、あるいは今度の大戦におけるイタリア條約でどう取扱われておるかということを簡単にまとめて御説明せよということでございましたので、お手元資料としてそれぞれ配付してございます。これについて簡単にお説明を申し上げたいと存じます。  まず第一は、この前の第一次大戦後の平和條約、これは対ドイツ関係ベルサイユ條約、オーストラリア関係についてサンゼルマン條約、あるいはハンガリーに対するトリアノン條約、ブルガリアに対するヌイイ條約、トルコに対するローザンヌ條約というようなな個別條約がございますが、これは全部ベルサイユ條約と原則は同じになつておりますので、ベルサイユ條約について一括して御説明申し上げます。  まず第一に、連合国内にある対ドイツ財産取扱い、これは連合国と申しますのは、もちろん英、仏、米、日本その他第一次大戦における連合国側国内にある財産であります。このドイツ財産につきましては、国とか、地方公共団体の持つております財産賠償として連合国に引渡しております。もちろんこれは主体が国その他でありますから、補償の問題は起つておりません。大体ドイツ個人及びドイツ系法人、これの持つておりました財産連合国内にございますものは、原則として連合国において換価処分されまして、連合国側賠償その他の請求権支払いに充てられております。この賠償引当財産につきましてはドイツ政府補償したわけであります。現実の補償は、これは御承知マルク暴落後に行われましたので、実際の額としてはノミナル補償なつてしまつたという実情であります。  それから次に戦前成立いたしました金銭債権、これはこの(2)原則に反しまして、それにかかわらず存続を認められて、清算支払いを受けることができるということになつておりました。このやり方といたしましては、ドイツ各国清算所を設けまして、それぞれの戦前成立しておる金銭債権、これに対する債務のあります国の清算所から債権を持つております国の方に送金をいたしまして、清算所を通じて決済されております。なおドイツ人が持つておりました戦前金銭債権は、すべてのドイツ債務が完済されるまで支払いは停止されておるというかつこうになつておりますが、ドイツ国内におりましたドイツ人連合国内戦前からの金銭債権を持つております場合には、これは一旦ドイツ政府から清算所を通してその国に送られて、金銭債務の確認を得まして、それで清算決済されたというかつこうになつております。  それから工業所有権でありますが、これはたとえばドイツ特許権を持つておりまして、それの実施権英国に与えておつた。そういう場合には、工業所有権ドイツに復活を認める。英国実施権を施行しておつたという場合には回復を認めまして、戦時中にもしそれを英国なら英国換価処分をしておつたという場合には、その代金について戦前成立した金銭債権があるものと認めて、(3)と同じように清算所を通じて清算支払いをされ得るというかつこうになつております。  それから次に割讓地にあるドイツ財産取扱いでありますが、これは第一次大戦あとで、御承知のようにアルサス・ローレンといつたような、ああいう割讓地がございまして、そこにあつたドイツ財産がどうなつたかということであります。  まず公有財産はその領土を継承した継承国に引渡されております。それからドイツ国内所在ドイツ国人及びドイツ系法人でございますが、これは條約の結果、新しくきめられた領域内のドイツ人、これが割讓地私有財産を持つてつた。これは(一)の(2)、(3)、(4)、つまり私有財産原則として換価処分されて、賠償その他の債権に引当てられた。そうしてそのしり政府補償した。ただ戦前成立しておつた金銭債権はそのまま存続を認められて、清算支払いを受ける。それから工業所有権等は回復する、こういうことで、連合国内にあつたものと同じように扱われております。  それから第三番目といたしまして、割讓地域内に住んでおるドイツ国人及びそこに本店を有するドイツ系法人に対しては、その財産をそのまま持つておることを認めた。そうしてもしそういうドイツ人本国引揚げるという場合には、動産携帯していいということが認められております。不動産は売却をいたしまして、動産として持ち帰つております。  それから次に旧ドイツ植民地でありますが、これは連合国委任統治に付せられたのでありますが、アフリカその他に植民地を持つておりまして、そこのドイツ財産取扱いといたしましては、公有財産委任統治国になつた国に引渡されております。  それからドイツ人及びドイツ系法人が旧ドイツ植民地内に持つておりました私有財産は、これは委任統治国の適宜の措置に一任されております。  それから次にドイツオーストリアハンガリア等の旧協商国、つまりドイツ承継国の中に持つてつたドイツ財産取扱いでありますが、これは連合国オーストリアハンガリアその他協商国との各国の協定にまかされて、その措置がきめられております。  それから中立国にあるドイツ財産取扱いにつきましては、ベルサイユ條約には何ら規定はございません。従つてこれは沒收その他のことをされておりません。  なお最後アメリカ合衆国はこのベルサイユ條約のあとドイツと條約を結びまして、国内法といたしましてはウインズ・ローと申しますか、これで一万ドル未満の財産ドイツ返還しております。これはアメリカだけの措置でありますが、ドイツ平和條成立後に新しい措置として返還をいたしております。  以上が第一次大戦後の平和條約における在外財産取扱いであります。  次に今後のわが国在外資産につきまして、非常に参考になります第二次大戦後の平和條約でありますが、これはイタリアとの條約のほかに、ブルガリアハンガリー及びルーマニア等の條約がございますが、大体原則イタリア條約によつてうかがわれると思いますので、まずイタリア平和條約の取扱いの御説明をいたします。  まず連合国内にあるイタリア財産取扱いでありますが、公有及びイタリア国人及びイタリア系法人私有財産は、原則として連合国によつて換価処分されまして、連合国側賠償及びその他の請求権支払いに充当されております。この場合に、條約には一項補償規定がございまして、賠償引当財産については、イタリア国政府個人または法人に対して補償しろという一項が入つております。なお換価処分して賠償その他に引当てて、余剰が出ました場合には、その余剰財産イタリア側返還引渡しをするということになつております。  それから次に戦前成立いたしました金銭債権でありますが、これは第一次大戦後のベルサイユ條約の扱いと同じように害されない、つまり存続を認められております。これもやはり清算決済という方式がとられておるようであります。  それから次に工業所有権でありますが、これは第一次大戦扱いと非常に扱いが違うのでありまして、この場合にはむしろ沒收という規定がございます。第一次大戦では、工業所有権は復活されたのでありますが、今次の大戦におきましては、沒收措置が講ぜられております。  以上が原則的な処理規定でありますが、これに対して免除されるものといたしまして條約に明記してありますのは、領事館または外交官の用に使用されるイタリア国政府財産、つまり各地にございます領事館あるいは外交官のオフイスなり、その附属の官舎なりというものが、その沒收を免れております。また宗教団体または私設の慈善施設に專属する財産、これもいわゆる換価処分を免れております。それから連合国内居住を許されたイタリア国人、これは個人でありますが、これの財産、たとえばフランスの国内にずつと居住を許されておつたイタリア人財産はそのまま保有することを認められております。  それから次に貿易等再開後の取引から生じた財産権、これは当然でありまして、イタリアが降伏いたしましたあと連合国側貿易その他の取引関係を生じております。その降伏後にそういう経済関係が生じたものは、一括してこの原則からはずすということは、これは当然であります。  それから次に文学的及び美術的著作権の類も沒收措置を受けておりません。  次に割讓地におけるイタリア財産取扱いでありますが、公有財産継承国に引渡されております。これも第一次大戦の当時と原則は同じであります。  それから割讓地域内に住んでおつてイタリア国籍を選択しない者の私有財産は尊重せられる。たとえばエチオピア——エチオピアの例は適切じやありませんが、たとえばトリポリターニヤというようなところに住んでいるイタリア国人が、自分はイタリア国籍を放棄しないというような場合にも、私有財産は尊重せられまして、その私有財産を持つて国に帰ることもできるということであります。  それから次は割讓地域居住イタリア国人財産もまた保有を認められ、本国への引揚げに際しては動産携帯も認められる。これは同様に不動産等については換価処分の上、動産として携帯期間が認められておるという意味であります。  それから割讓地域本店を有する法人財産は尊重せられる。  以上二と三は個人財産でありますが、四と五は法人財産でありまして、割讓地域本店を有する法人、これはイタリアに住んでおるイタリア人によつて支配されていない法人、しかし本店はもとイタリア領土であつた地域、そして割讓されておる地域本店のある法人、この財産はそのまま尊重される。同様に割讓地域本店を有するイタリア系法人財産もまた保有を認められ、本店を新イタリア国内に移転することも認められる。この本店を新イタリア国内に移転することについては、四の原則と同じように、財産権は一応尊重せられております。  それから新しいイタリア国、つまり條約によつて還付を定められた戦後のイタリア国内に住んでいるイタリア国人、及びそこに本店を有するイタリア法人私有財産は一と同様、すなわち連合国内にあるイタリア人財産と同様の措置をとられております。  それから次は新独立国及びトリエスト自由地域内におけるイタリア財産取扱いでありますが、ここに新独立国と申しますのは、エチオピヤでありますとか、アルバニアでありますとか、そういう国でありますが、そういうところにあるイタリア財産取扱いにつきましては、大体割讓地にある財産と同じ扱いを受けております。他国に割讓された場合と、それから新たに独立された場合と同じ原則で貫こうとしております。  それから旧同盟国にあるイタリア財産取扱い、これはドイツ国内にあります分については、ドイツ占領諸国決定にまかされておりまして、これはまだ具体的に最終決定には至つておらない模様のようであります。それからブルガリアハンガリー及びルーマニアの旧同盟国国内所在分はソ連に対する賠償に引当てられております。そしてその損失に対しましては、政府においてこれを補償するという條項がございます。  なおその次の中立国にあるイタリア財産取扱いでありますが、これは何らの規定がされておりませんので、返還可能性があるようであります。  以上がイタリアとの條約でありまして、ブルガリアハンガリールーマニア、フインランドとの條約はいずれも、イタリアの條約と同じ原則で扱われております。ただ日本及びドイツがどういう扱いを受けるかということは、イタリア日本並びドイツとを同じように扱うかどうかという点について、まだ若干の問題が残つておるようでありまして、将来いかなる取扱いを受けるかは、この條約からだけでははつきりしないのでありますが、今次の世界大戦における在外財産処置というものに対する原則がここに現われておると思いますので、一応ごく簡単でございますが、御説明を申し上げた次第でございます。  それではわが国在外財産がどのくらいあるかというお尋ねがこの前でございましたが、これは昭和二十年の大蔵省令第九十五号によりまして、日本銀行を通じまして御報告を頂戴しておるのでございますが、まだ最後しりが締まつておりませんし、国際的の関係もございまして、ただいまのところまだ申し上げられる段階にありませんので、その点御了承を願いたいと思います。     —————————————
  4. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと途中でありますが、お諮りをいたしたいと思います。休会中の審査に関しての申請を、この前の委員会で御決議を願つて出しておるのでございますが、過般来未復員給与に関する件がたびたび御発言の内容の中にあるわけでありまして、それも未復員給与法の改正というようなことに関連を持つものだと思いますので、休会中の審査の中にこれを入れておくことが必要ではないかと思うのでありますが、皆様方の御意見を伺いたいと思います。
  5. 池見茂隆

    池見委員 その問題はけつこうでありまして賛成をいたしますが、その審査の要項の中で、在外公館借入金返済のことにつきましては、これは前国会から在外公館借入金についての申請をきることの時期が、本年の三月十九日でもつて満了することになつておりましたから、本委員会ではそれをさらに延長したと心得ておるのであります。それのその後の状況はどういうふうになつておるかということをお尋ねしたいと同時に、その事項も審査の項目の中に入れておいていただけたらけつこうかと思います。
  6. 若林義孝

    若林委員長 ただいまの在外公館借入金支払いに関する件と、先ほど私が申し上げました未復員者給与に関する件、この二件を含めて申請することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 若林義孝

    若林委員長 御異議なきものと認め、その手続を早速とることにいたしたいと思います。     —————————————
  8. 若林義孝

    若林委員長 ただいま酒井説明員の御説明もあつたのでございますが、委員長手元在外資産に関する調査がなされた結果について、ここに資料政府当局から提出されておるのでありますが、部数が少いために皆様方に御配付するだけありません。委員長手元にこの資料を持つておりますから、必要ならば随時資料として御利用を願いたいと存じます。この資料昭和二十一年九月に在外財産調査会を設置いたしまして、昭和二十年大蔵省令第九十五号に基く在外財産に関する報告書及び在外公館持帰り資料等を主として鋭意調査を進めて来たものであります。昭和二十四年一月、この調査が完了したので、同調査会が解散をせられたのであります。調査の結果についてはまだ研究中で、現在のところ発表段階に達していないというのであります。こういう気持でこの資料を御利用願つたならばけつこうかと思うのであります。  次に在外財産は、戦時中または終戦直後すべて接收管理された模様であります。関係各国がとつた処置並びに現況については、すでに総司令部に対し情報入手方を依頼しておるのでありますが、いまだ右を接受するまでに至つておりません。現地在留邦人財産については、寛大ですでに返還もしくは凍結解除され、またはされんとしているものが多いのであります。不在邦人財産につきましては、比較的嚴格な接收管理が行われておる模様であるということであります。この報告政府の方から書類をもつてつておりますから、ただいま御報告を申し上げた次第であります。  なお続いて酒井説明員説明に対する質疑その他を続行いたしたいと存じます。
  9. 受田新吉

    受田委員 自由党の方々から、在外公館のことについてお尋ねがあるようですが、私は在外資産に関する問題をつけ加えてお伺いをしたいのです。ただいま理財局次長からベルサイユ條約の取扱いや、イタリア平和條約の取扱いについて御説明をされたのでありますが、これに関連して、私は在外資産というものはやはり憲法に保障する財産権に当るものだ。従つて財産権不可侵規定に基いて、在外資産であるといえども、当然憲法規定に基いて国内問題としてこれを考えて行かなければならぬと思うのです。これは一昨年でしたか、アメリカウオー・クレームズ・アクト取扱つた精神そのものがやはりこれに一致しておるのではないかと思うのです。講和條約締結の際に在外資産を考えるというような立場でなくして、これを国内問題として、憲法規定の擁護をするという方へ政治的な動きをする必要はないか。講和條約ということを考えると、長い先のことのような気がするので、財産権を侵害されたこの人たちに対して、ただちに打つべき手として、国内問題としてこれを考えるべきであるという点について、次長さんの意向を聞きたいと思います。
  10. 酒井俊彦

    酒井説明員 ただいまお述べになりました御意見その通りでありまして、憲法上はやはり財産権であろうと思います。ただ在外財産がどういう運命をたどるか。これが返還されるかされないかということは、やはり講和條約を待たなければわからない。そこで返還されない場合には、補償の問題も起るだろうと思いますけれども、それ以前に、これはもう返還されないものだというふうに規定してしまうこともいかがかと存じますし、その辺の法律的な扱いがまだきまつておりませんので、講和條成立までは、そういう財産について補償がなされるかどうかという点が未決定に終らざるを得ないであろうと思います。
  11. 受田新吉

    受田委員 アメリカウオー・クレームズ・アクト内容は、やはりこれを国内問題として措置すべきような暗示を与えたようなものではないかと思うのですが、これに対して次長さんは何かお考えがないでしようか。
  12. 酒井俊彦

    酒井説明員 その点は、まだ私は詳しく研究いたしておりません。
  13. 坂口主税

    坂口委員 これはまあ條約のことになりますが、今度のイタリア講和條約は、実際どういう始末になつたか。たとえばどれだけの在外資産というものに対して、どういう方法でどれだけ支払つたか。これはあるいはまだおわかりになつておらぬかもしれないと思いますが、少くとも第一次大戦ベルサイユ條約の際のドイツに対する支払い方法ドイツ国の負担、そういつたものは多分おわかりになつていると思いますが、そういう点をおわかりになつているだけ少し詳しく参考までに御説明願いたい。
  14. 酒井俊彦

    酒井説明員 今度のイタリア條約の結果、実際にどれだけのものが在外資産として換価処分され、それに対してどれだけの補償が行われたかという点につきましては、私どもまだ完全な資料を入手しておりませんので、ちよつと数字的にお答え申し上げかねるのであります。  前大戦補償のことにつきましては、手元数字を持つて参りませんでしたが、先ほど申し上げましたように、補償をしましたけれども、例のマルク暴落後に補償いたしましたために、一兆分の一というような非常にノミナルなもので補償されたというような結果になつていたようであります。なお詳しい数字はもし御必要でございましたら、閉会中でも委員長のお手元まで提出いたしたいと考えております。
  15. 坂口主税

    坂口委員 今のことはそれでわかりましたが、しかし相当に詳しいことは、ドイツの国の実情に沿うて——あなたの言われたように、ノミナルな価格でそのまま支払われたということは、それはあるいはそうかもしれぬ。しかしドイツが負担した全体の額、あるいはまた戦後どれだけの期間でそれを払つたかというようなことは十分御研究なつておるはずだと思うのですが、そういう点も今わかりませんか。
  16. 酒井俊彦

    酒井説明員 前大戦のことに関しまして手元資料を持つて参りませんでしたので、いずれ持つて参りましてお答えいたしたいと思います。
  17. 坂口主税

    坂口委員 ではなるべく近い機会に、なるべく詳しくお願いいたします。
  18. 玉置信一

    玉置(信)委員 先ほどの次長の御答弁によりますと、日本在外資産調査に関しては、まだ国際的な関係もあるし、発表の時機でないようなお話でありましたが、しかしはつきりわかつておる在外資産の面については、相当調査が進んで、わかつておる面もあるということですが、その点はいかがでしようか。
  19. 酒井俊彦

    酒井説明員 その点につきましては、はつきりわかつておるものと申しますのは、ごくわずかでありまして、それでも方法論的に問題がございます。たとえば通貨の換算率がどうなるかというような問題でありますとか、終戦時におけるほんとうの姿のバランス・シートはどうなつておるかというようなことは、現地との連絡がとだえましたために、たとえば満鉄のような会社でも必ずしも最終的にはつきりした、これで間違いのないという数字にはなつていないのです。これは在外資産報告の書面によりまして、御報告をいただいておるものを目下調べつつありますので、それがまとまりましたら結論を得たいと思います。
  20. 玉置信一

    玉置(信)委員 そうしますと、わかつておる分があつても、その処置はかかつて講和條約後にまたなければいけないことになつておるわけですか。
  21. 酒井俊彦

    酒井説明員 さようでございます。
  22. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はこの在外資産に関連いたしまして、樺太における北拓預金昭和二十年の大蔵省令第八十八号でありましたかによつて支払い停止をされたものに対して、第五国会から引続き第七国会の初頭にわたつて、私は大蔵当局にこの解除方努力を要求いたしたのでありましたが、幸いに大蔵大臣以下関係各係官の非常な努力によつて、約五千万円ほどの解除をされたということを承つて、引揚者の預金者一同とともに私非常に感激し喜んでおるものでありまするが、その後まだ相当額が残つておるわけでございまするが、これに対する第二次的な解除の面に対して、大蔵省はどういうふうに考えておられますか。引続き努力をされておられますか。この点をお伺いしたい。
  23. 酒井俊彦

    酒井説明員 お尋ねの点でありまするが、昨年の六月二日以前に持ち帰られました分につきましては、ある程度の払いもとしをいたしております。それ以後の分につきましても、それ以前の分と同じように支払いが可能になりますように、その後も関係方面に折衝を続けておるような次第であります。
  24. 玉置信一

    玉置(信)委員 昨年の六月までに持ち帰つたものとなりますれば、その金額はどのくらいでありますか、同時に解除された金額は何ほどになりますか、御説明を願います。
  25. 酒井俊彦

    酒井説明員 件数が約五万件ございますが、資料を忘れて参りましたので後刻とつて参ります。件数は約五万件であります。
  26. 玉置信一

    玉置(信)委員 資料が集まつたときでけつこうでありますから、御説明をお願いすることにいたしまして、第一回支払い解除後も引続き解除に対して御努力を願つておるようでありますが、その見通しについてお伺いしたいと思います。
  27. 酒井俊彦

    酒井説明員 六月三日以後の点について、せつかく努力いたしておりますが、なかなかたやすくは参らぬような状況にございます。
  28. 玉置信一

    玉置(信)委員 まだたしか一億九千万円のうち三五%でしたか、切捨てても二千万円、まだ相当つておるはずでございますので、関係者も爾来解除の一日も早からんことを熱望しておる次第でありますから、どうか大蔵当局におかれましては、あらゆる機会に関係筋と折衝されまして、早く解除されるように御努力せられんことを要望いたし、この問題に関して私の質問を打切ります。
  29. 若林義孝

    若林委員長 理財局次長に御質疑がありましたらこの際許します。御質疑はありませんか。——ではしばらく休憩いたします。     午後四時二十三分休憩      ————◇—————     午後四時五十分開議
  30. 若林義孝

    若林委員長 引続き開会いたします。受田新吉君。
  31. 受田新吉

    受田委員 それでは外務省当局に対して一般邦人の引揚げ問題でお尋ねいたします。特別未帰還者給与法ができて、未復員者給与法のほかに特に一般邦人でこれに準ずるものを救済する道ができたのでありますが、この一般邦人の未帰還者に対する給与の問題は、当然厚生省の所管になつておると思いますが、外務省として、一般邦人がまだこちらに帰つていないために、家族の生活が、收入の主体がいないために非常に窮迫しているときに、その收入の主体である本人の給与がわずかに三百円にとどまつておる。これでは、政府職員の最低線でさえも三千三百円であるから、非常に差異があるので、この際大幅に特別未帰還者給与法の給与を引上げることについて、外務省当局としていかなる見解を持つておるか、お伺いしたいと思います。
  32. 高野藤吉

    ○高野説明員 お答え申し上げます。外務省といたしましては、未帰還邦人の給与の問題に関しては、該当者であるかいなかということについて認定をいたしまして、実際の給与の面は御承知の通り厚生省でこれに当つております、御指摘の点はわれわれも考えておるのでございますが、厚生省と連絡いたしまして、厚生省の方から御答弁申し上げた方が適当であろうかと思います。
  33. 受田新吉

    受田委員 特別未帰還者給与法に該当する一般邦人かいなかということについて、その適用が非常に狭められておる感じがするのです。事実こちらへ帰還して来た昨年一箇年間の一般邦人の数を見ても、届出をする数は帰つて来た人の三分の一にすぎないという実情です。そのように届出をしていない一般邦人が非常にたくさんあるわけです。こういうものに対して、この際調査に乗り出す必要があると思うのですが、この点に対して外務当局はいかなる見解を持ておるか伺いたい。
  34. 高野藤吉

    ○高野説明員 御指摘の点は、われわれとしてもできるだけ未帰還邦人の調査にあたつていろいろの手を講じておりますが、この調査に対しましては、まず第一に留守家族からの届出が一つの根幹をなしておりまして、留守宅届出の該当者は外務省に届出るように、現にあらゆる方法をもつて周知宣伝してやつておりますが、現在のところまだ百パーセントというふうには行つておりません。また向うには留守宅もないし縁故者もない未引揚げの方もおられるかと思うのでございますが、この点は現在国内においてはなかなか手の打ちようがないので、既引揚者からいろいろの情報を集めまして、それの徹底を期しておる次第であります。
  35. 受田新吉

    受田委員 無縁故引揚者ですが、昨年あたりも樺太地区から帰つて来た人なども、こちらに帰つて来てたよりのない人が大多数であつたというような実情があるのですが、こちらへ帰つて来てまだ届出をしていない帰還者が相当数あろうと思う。外務省当局が言つておる三十七万何がしという数字は、その中に今のように無届で帰つた人の数の方がむしろ多いという実情を含んだ未帰還者数であることを、われわれは知らなければならぬのです。これに対して届出をした数と届出をしていない数を早くはつきりしないと、外務省当局は三十七万何がし残つておるということをしきりに言いたがらも、その数字の究明をまだしていないのです。これに対してその後どういう努力をしたか、その努力の経過を申していただきたい。こういう逼迫した段階なつて来ると、一か八かきめてもらわなければ、家族にしても困るので、実際の調査によつてはつきりした数字はこれだけあるのだ、これが正確な数字だということを早く外務省当局発表してくれないと、国民の不安は解消しないのです。管理局長も、昨年何回か近く発表すると繰返しながら、今日に至つて発表していないのですが、その発表のために努力した過程を言つていただきたい。
  36. 高野藤吉

    ○高野説明員 お答え申し上げます。後ほど引揚課長も見えることと思いますので、大体のありましは、今ほど申し上げた留守宅届を基本といたしまして、留守宅届を全国に周知宣伝をして、これを一つの数字をして集める。それからもう一つは、引揚者から種々の情報をもらうというのが、大体数字を集める基礎になるわけであります。外務省といたしましては、軍人軍属については厚生省がやつておりますから、一般邦人だけについてその調査究明を行つております。現在のこまかい数字につきましては、まだ調査を続行中でありまして、パーセンテージはまだ申し上げられる段階にはありませんことを残念に思います。
  37. 受田新吉

    受田委員 中共地区の方では、まだ残留者なしという発表をしていないのですから、私たちは中共地区との何らかの交渉で、あそこから帰ることに対しては相当の期待が持てるのですが、この点について総司令部を通じてのみ帰還促進をはからなければならないという行き方も、これは本筋ではありますが、一方において中共地区からは、すでに船賃等を払つてこちらへ帰つて来ておる事実もあるのですから、こういう問題について外務当局が、公式でなくて、そういうようなできるだけ可能な限りにおける帰還促進に対して、最善を尽すという点において何らかの道はないか、ただ総司令部を通じての帰還促進ではなしに、もつとうがつた裏面作戦でもやつて、同胞救出をはかるという渉外的な腕前が外務当局にはないのですか。これはちよつと言いにくいかもしれぬが、外務省としてもつと親心がいると思うのですが、管理局長にかわつて総務課長より答弁願います、
  38. 高野藤吉

    ○高野説明員 ただいまの御質問につきましては、御承知の通り現在日本が占領下にあり、従つて諸外国との正式な外交関係がございませんので、正式の外交的なチヤネルを通じましては交渉はできないのであります。それ以外の技術上の問題といたしましては、外務省といたしましても、いろいろ考え、また考慮いたしておりますが、なかなか正式の外交交渉ほど大量に、かつ即効のあるような方法はございません。  今御指摘の中共から帰つて来られた方が二、三ございますが、これは個人が自分の金を払いまして帰つておるのでありまして、外務省としても、この道が大量的に開けると、非常にけつこうだと思いますが、直接外交交渉ができませんので、なかなか即効藥と申しますか、そういう手がないのは遺憾に存ずる次第であります。
  39. 受田新吉

    受田委員 個人的に船賃を払つてつて来るという帰還者がある。そういう道が個人的にでも開かれているということがわかつている今日、これらに対して何らか手を打つて、そういうことを奨励するというよりも、そういうものを利用して、帰還促進をはかつて行くような手を打つて、そういう者に旅費を国家が負担してやる。旅費を個人に負担させないで、個人が支払つた場合でも国家がこれを補うというような方法で、この裏道を利用するように、この際外交的に全力を尽す。そういう渉外的な腕前を発揮することはできませんか。
  40. 高野藤吉

    ○高野説明員 御質問の御趣旨はよくわかるのでございますが、現状におきましては、法的な建前上、また予算上も、そういう支出の方法が現在のところありませんので、国家が補助するということはちよつと不可能だと思います。
  41. 受田新吉

    受田委員 それでは同胞引揚費というのが五十億以上計上されておりますが、そういうものはほとんど今年などは帰還ができないということになりますと、大部分が余るのです。そういうものを流用というか、事実帰つて来たのは間違いないのだから、その帰つて来た人の要した費用を国家が負担するという意味で、これを補つてやることは、法的にも可能ではないかと思いますが、これはどうですか。これを引揚費の一部と見て、いかなる方法をとつてつて来たにせよ、その実費を補償するというのが、私は必要ではないかと思う。正式に向うからもどつて来た者にのみ費用を使う、それはもちろん表向き当然でありますが、同時に実際に帰つて来た、しかもそれは非常な困難を経て帰つて来た者に対して費用を弁償してやるということは必要ではないのですか。
  42. 若林義孝

    若林委員長 この際受田君の質疑に対して、私の考えを補足いたしますと、そういう者が請求したケースがあるかどうか。もしあればこれをよく審議せられて、便宜的に舞鶴なら舞鶴に引揚げた者に払う方法もあるのではないかと思います。こういうことを補足申し上げたら御説明しやすいと思いますが、今までそういう場合があつたかどうか。
  43. 高野藤吉

    ○高野説明員 現在までのところ、請求したケースはないようであります。それから今お話の、国内的には引揚費が何十億余つておるから、それを流用したらいかがかということですが、国内的にもちよつとまだ解釈上疑義があるのじやないかと思いますが、その点はさしおき、実際は外国船ないし外国の飛行機で帰つて来ておりますので、外貨の問題となりますと国内のそれでなく、外貨予算の流用ということになりまして、この点も法的に若干の疑義があるのではないかと思います。しかし御質問の趣旨はよく研究いたしたいと思います。
  44. 松谷天光光

    ○松谷委員 ただいま受田委員が御質問になつていらした点に関連したことになるのですが、先ほどの御説明で三十七万の数字の裏づけというものは、留守宅届と引揚者の情報の聞込みであるということを承つたのでありますが、今日まで当局としていわゆる行方不明者というものに対して、どの程度までの御努力を払つて調査を進めておられるのでございましようか、お伺いしたいと思います。
  45. 武野義治

    ○武野説明員 御承知のように未帰還者というものの内容が非常にはつきりつかめるものと、それから今申されましたように行方不明の者と、死亡した者というふうにわかれるわけでございますが、われわれの調査のやり方といたしましては、帰つて来た者のいわゆる記憶を求めまして、できるだけ正確にそれを陳述していただくことになるわけでありますが、なかなかわれわれが希望するような資料が得られないのであります。それは向うを出るときに乗船地においてすべての資料沒收されてしまいますので、われわれの聞きたいという希望の資料の割合が非常に少くなつて来るわけでございます。従つてわれわれといたしましては、上陸者からできるだけ正確な数字をつかむというほかに、国内にすでに引揚げて参つております方々で、特に現地の事情に詳しいと思われる方々に特にお集まり願つて、できるだけ詳細な情報を聞くように努めております。従つて行方不明になつた者について、特に具体的な探し方はないかということの問題になりますと、最終的に死亡とか生存とかということの判明した以外は行方不明ということになるわけであります。
  46. 松谷天光光

    ○松谷委員 当局とされて、生存か、あるいは死亡か、あるいは行方不明かという点だけは、大体はつきりと——はつきりと申してはお答えがいただけないかもしれませんが、推定はできる段階に行つておられるのでざごいましようか。
  47. 武野義治

    ○武野説明員 これはわれわれの努力のごく限られた範囲内でわかつただけは、そのようになつております。生存もある一定の、調査したその当時における生存推定でございますから、今現在どの程度にプロポーシヨンがあるかということは、きわめて困難な問題でございます。
  48. 松谷天光光

    ○松谷委員 概算でけつこうなのでございますが、大体生存か死亡か、それのはつきりしております数字はどのくらいなものでございましようか。
  49. 武野義治

    ○武野説明員 この点はまだ申し上げる段階なつておらないのでございます。はなはだ残念でございますけれども、まだ大体のところも申し上げかねるわけでございます。ただシベリアのごとき、あるいは総司令部のシーボルト議長が百二回の対日理事会で申されましたように、ソ連側の説明のない限り、約三十七万は死亡と推定するというふうに仮定的ながら申されたこともございましたが、いずれも抑留後の説明がないということが致命的な点でございます。われわれはまだわれわれの調査の内訳も申し上げられない段階でございますので、この点は御了承願いたいと思います。
  50. 松谷天光光

    ○松谷委員 中共地区へ移行した数も相当あると聞いておりますが、その数字は、三十七万のうちから移行して行つた当局はお考えになつておられますか。それとも中共地区に存在するものは三十七万以外だと推定なさるのでございましようか。
  51. 武野義治

    ○武野説明員 ただいままで政府がたびたび申し上げました数字約三十七万というものは、満州六万三百十二と思いましたが、それ以外はシベリア及び樺太その他でございまして、満州の六万は現在までのところ一応終戦時満州におつたということで、残留したものとわれわれは推定をしておるわけでございます。その後どの程度がその他の地域に移行したかということは申し上げられないのでございます。
  52. 松谷天光光

    ○松谷委員 先ほど受田委員との応答を伺わせていただいておりましたが、御当局とされては、もちろんこれは正式にはその通りでございましようが、司令部数字一本をただただ一つのたよりにして御調査を進めておられる、こういうふうに承つたのでありますが、これは場合によりましては、速記に載つて悪い場合には、委員長にお願いして速記をとめてでも、当局では実はこういう名案を持つておるのだということがございますれば、伺わせていただきたいと存じます。
  53. 武野義治

    ○武野説明員 特別に名案はございません。ただわれわれは国内でできるだけの努力をいたしまして、ちようどれんがを一つ一つ重ねるようにやつて行くということでございまして、特別な名案によつて、今までわからなかつたそういつた大きな数字がすぽつとわかるというようなことは全然ございません。国内的には一つ一つを下から積み上げて行く調査でございますので、また総司令部数字を唯一の手がかりとしてと申されましたが、われわれの調査というものた、調査の結果どうなるかという問題はいろいろございますが、それとの直接の関係なしに、われわれとしてはできるだけの資料によつて国内調査を進めて行く、こういうことでございます。
  54. 松谷天光光

    ○松谷委員 参考までに伺わせていただきたいのですが、先ほど受田委員もおつしやつておられたように、特別に自費でもつてつて来られた方々を、当局とされては、非常に数の少い例でございましようが、個々にでも招致なすつて、その実情をお聞き取りくださるだけの熱意を今までお示しくださつたことがございましようか。
  55. 武野義治

    ○武野説明員 上陸地においては、必ずわれわれの同僚が参りまして、その方々がどういうふうな状況において、どういうような手続によつて引揚げられたかということを、できるだけ詳しく調査することになつております。この努力は、最近においてますますその重要性を痛感しておる次第でございますけれども、この努力は絶えずやつております。
  56. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと松谷君にお願いしますが、大蔵省の主計局から参つておられますので、時間を急がれますから、このことに関して質疑をしておいて、そのあとからまた御発言を願いたいと思います。
  57. 松谷天光光

    ○松谷委員 それでは今の最後の一つだけ資料をお願いしたいのです。ただいまの説明で、今回のそうした個人的な自費によつて帰られた方の調査も進んでおられるというふうに承りましたので、閉会中でたいへん恐縮でございますが、当局が御調査になりました帰還に対する径路、そういつた点の御調査内容資料にしていただきたいと思います。それをいただけますでしようか。
  58. 武野義治

    ○武野説明員 さしつかえない限りまとめてみたいと思います。いろいろ事情もございますので、調べた全部を出すというわけには行かないと思います。
  59. 若林義孝

    若林委員長 ただいま大蔵省主計局主計官岩動道行君が御出席になりましたので、この機会をかりまして、各委員にかわつて委員長からお伺いをいたしたいと思います。過般来当委員会におきまして、未復員者の給与に関する件がしばしば発言をされておるのでありまして、厚生省の関係当局からも、これに対してきわめて好意的な説明があつたのでありまして、当委員会におきましても、あとう限り給与を高めたい意向を持つておるのでありますが、大蔵省といたしまして、現在三百円の給与を、どのくらいの程度まで現在の予算そのままで高めることができるかということについて、御説明を願いたい。
  60. 岩動道行

    岩動説明員 ただいま委員長からお話のありました点でございますが、実は昨年十一月から百円の給与を三百円に引上げたわけでありますが、これは特にどういう基準で上げたといつたような、非常に確かな基礎に基いた上げ方ではなかつたのであります。そのときの情勢と財源の問題から、三百円というふうにきまつたわけであります。ただこれは、本来的には正常な政府との雇用関係、あるいは勤務状態にあるという性質のものとは非常に異なつた立場にありますので、これを幾らにしたらよいかということはきわめて困難な問題であると考えております。従つてただいま三千円程度に上げたらどうかというような御希望の言葉もあつたのでありますが、どちらにしたらよいかということは、さらに私ども研究をいたしてみたいと思いますが、重ねて申し上げますように、財源との関係で今ただちにどれくらいまでの余裕があるかという点については、もう少し先の見通しがつきませんと、私どもとしては見当がつきかねるという状態になつております。せつかく委員長の御発言で、どのくらいの余裕があるかというお話でありましたが、引揚げの状態がまだ不確定の状態になつておりますので、現在組んである予算でどのくらいの余裕が出るかということにつきましては、もうしばらく時日がたちませんと、私どもとしても見当がつきかねるというのが現状であることを遺憾としますが、でき得る限り将来そういう時期において、この問題をまた検討いたしたい、かように考えます。
  61. 若林義孝

    若林委員長 ちよつとこれに関連してもう一点お伺いしておきたいと思いますが、舞鶴へついた場合、過去にさかのぼつて留守家族に渡してもらいたいという陳情が来ておるようでありますが、聞くところによると、前渡しをしておる箇所もあるように思われるのですが、この点現状はどうなですか。
  62. 岩動道行

    岩動説明員 前渡しにつきましては、昨年の十一月のときに問題になりまして、本年の四月分からこれを特定の者に対して行うというように、法律に基いた省令で改正をいたしたわけであります。つまりこれは、内地に扶養家族を持つておる本人の俸給については、希望があれば前渡しをする。内地に帰還した際に全額渡すのが原則であり、法律の建前になつておりますが、特に扶養家族を持ち、また前渡しをしてほしいという希望のある者に対してこれを前渡しするというので、現在その範囲において実行をいたしておるのであります。
  63. 若林義孝

    若林委員長 なおこれに関連してでありますが、現在の予算そのものは、大体幾人帰還するということを基本にして設けられたわけですか。
  64. 岩動道行

    岩動説明員 予算の基礎といたしましては、三十六万人帰つて来る、すなわち全員帰還するという建前で立てたわけであります。
  65. 松谷天光光

    ○松谷委員 ただいまのお話で、ここしばらくの間は見通しがつかぬというお話がございましたが、その時期は大体においてどのくらいと考えたらよろしいのですか、大体の見通しがございましたら、お聞きしたいと思います。
  66. 岩動道行

    岩動説明員 毎年引揚げの終了、あるいは一応の見通しがつきますのが十一月から十二月ごろになります。つまり先方の港の状態などが條件となりまして、大体冬の初めごろに引揚げがもうないか、あるいはあつてもごく少数しか期待できないというのが今日までの例になつております。大体私どもは、そのころが二十五年度において帰還する人間の数が推定できる時期になると考えております。
  67. 若林義孝

    若林委員長 なお外務当局に御質疑はありませんか。  では本日はこの程度で打切りたいと思います。  なお最後にごあいさつを申し上げます。第八国会は炎暑のみぎり、各委員におかせられましては熱心に引揚げに関する各般の問題を政府当局とともに御討議くださいまして、回数は少く、期間はきわめて短時日であつたのでありますけれども、その成果は大いに期待し得るものがあつたことは、委員各位に敬意を表する次第なのであります。なお閉会中も、この委員会において御審議、御討議くださいましたことを基本といたしまして、活動を続けたいと存じます。各委員諸君の各段の御協力をお願いいたしまして、第八国会における委員会最後に、委員長としてのごあいさつといたします。  それでは本日はこれをもつて散会をいたします。     午後五時二十五分散会