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1950-09-20 第8回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年九月二十日(水曜日)     午後一時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 大澤嘉平治君    理事 岡田 五郎君 理事 米窪 滿亮君       尾崎 末吉君    片岡伊三郎君       黒澤富次郎君    玉置 信一君       畠山 鶴吉君    前田 正男君       滿尾 君亮君    山崎 岩男君       江崎 一治君    石野 久男君  委員外出席者         運輸政務次官  關谷 勝利君         運輸事務官         (大臣官房長) 荒木茂久二君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      足羽 則之君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     中村  豊君         海上保安庁長官 大久保武雄君         海上保安庁次長 柳澤 米吉君         海上保安庁警備         救難部長    松野 清秀君         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 堤  正威君 九月二十日  委員堀川恭平君辞任につき、その補欠として畠  山鶴吉君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  海上保安に関する件  地方税制に関する件  運輸省の機構改正に関する件     —————————————
  2. 岡田五郎

    岡田(五)委員長代理 それではこれより会議を開きます。  本日も委員長が欠席されますので、私が委員長の職務を行います。  まず海上保安に関する件を議題といたしまして、海上保安庁関係台風による被害状況並びに海上保安庁現況につきまして、保安庁長官から説明をしていただきます。
  3. 大久保武雄

    大久保説明員 海上保安庁現況につきまして、マツカーサー書簡に伴う海上保安庁強化準備状況並びに今日の体制につきまして、御説明を申し上げます。  海上保安庁マツカーサー書簡によりまして、八千人の増員を指示いたされておるのでございまして、目下これが計画具体化努力をいたしておる次第でございます。     〔岡田(五)委員長代理退席大澤委員長代理着席〕 御承知のように海上保安庁は、職員の数によつて保安庁強化の全貌を卜するわけには参らないのでございます。この職員数に伴うところの船舶、その他の装備、施設等強化と相まつて行かなければならない次第であります。さような関係からいたしまして、まずこの職員を配乘せしむべき船舶状況について申し上げますると、現在海上保安庁は六十三隻の巡視船を持つておりまするけれども、この船艇をもつていたしましては、とうてい長大なる日本の沿岸の哨戒警備は困難でございます。かような観点からいたしまして、巡視船建造は何をおきましても、これを至急建造しなければならない次第でございます。目下予算折衝におきまして、巡視船並び警備艇建造計画折衝中でございまして、約百五十隻程度の要求に対しまして、百隻程度巡視船艇が認められるように、目下折衝が進められておる次第でございまして、これらの予算はとうてい今年度半箇年において使用し盡すわけには参らないのであります。すなわち巡視船建造等は、一年余の期間を要するものもございますので、これらの費用を二箇年度継続予算にするということについて、何らかの特例を認める必要がございますので、この点は海上保安庁強化に関する政令等に、これをうたうことといたしたいと考えておる次第であります。  なお海上保安庁職員の充実につきまして、目下海上保安庁の第一次充員計画に属するもののうち、一千百五十名を募集試験中でございまして、幸いにして応募者が非常に多数でありまして、平均いたしまして約四十人に一人の競争率を持つておる次第であります。最も困難なる職種におきましては、二百人に一人といつたような激甚なる競争率を示しておる次第であります。これらは海上保安庁に対する青年の輿望というものが、おのずから集まつておる証左とも考えられる次第でありまして、はなはだ意を強うする次第ではありますが、その選考にあたりましては十分愼重にこれを行いまして、いやしくも海上保安庁の将来にとつて災いをなし、あるいは海上保安庁の精神と相反する者を採用しないように、措置をいたしたいと考えておる次第であります。  また海上保安庁職員制度に関しましては、海上保安庁船舶業務その他の仕事が、相当肉体的な消耗を伴います関係上、停年制を置く必要があろうかと考えております。これらは公務員法の一部例外をなすわけでありまして、適当なる措置を講ずる必要があると考える次第であります。なおまた海上保安庁学校等ができました際に、その学校卒業生に対する義務年限設定等につきましても、若干の例外を設ける必要があろうかと考えております。なお海上保安官は、十一階級に職階がわかれておりますが、この海上保安官職階給與とが、現在の公務員法によつては必ずしも完全に一致いたしておりませんので、これらの点を改正いたしたいと考えておる次第であります。なおまた食料、被服等現物給與制等につきましても、今回これを適宜創設いたしまして、海上保安官の活動に支障なからしめたいと考えておる次第であります。なおまた停年制を設けます関係上、恩給、共済等年限において相当短縮する必要があろうかと考えられる次第であります。これらの点につきましても適当な例外を設けなければならぬと考えておる次第であります。  かような次第でありまして、海上保安庁の八千人の増加計画は、おおむね昭和二十五年度において約四千人、残り昭和二十六年度において増員することになろうかと考えておりますが、これらは今年度予算成立等見合つて、最終的には確定するものと存ずる次第であります。現在海上保安庁定員法による定員は約八千六百人でありますから、年度内に一万人を越える数字になることは、ほぼ間違いないと考えておる次第であります。  以上のような状況でありまして、現在の海上における治安、あるいは保安任務の広範なる対象を控えております面からいたしますと、とうてい十分とは申されないのであります。  現在の密航状況を観察いたしてみますと、朝鮮事変以来、密航者は比較的多数に上つておるとは申しがたいのであります。すなわち不法入国八件、八十一名、不法出国六件、九名、合計九十名を朝鮮事変以来逮捕いたしております。これらは朝鮮から来る者を対象としての統計であります。これらの数字事変前と比較いたしますると、むしろ減少した傾向にあるように考えられまするが、これらは海上保安庁が朝鮮海峽方面相当船艇を増強配備しておりますのと、国際連合軍艦艇警戒をいたしておりますこと、あるいは南鮮艦艇警戒いたしておりますること等の、嚴重なる最近における警戒網をくぐり切れないせいであろうと考える次第でありますが、将来のことを考えますると、南鮮における難民等状況から考えまして、まだまだ予断が許されない次第でありまして、海上保安庁といたしましても、十分今後とも警戒を嚴にいたす方針でございます。なおまた沖繩方面との密航密輸につきましては、密輸入十五件の百三十八名、密輸出二件の十二名、約百五十名でございまして、沖繩方面との密航密輸相当の数に上つているように見受けられる次第であります。なおこのほか海上保安庁は、航海の安全に関する船舶遭難救助業務を行つておりまするが、これらにつきましても海上保安庁任務並びに日本近海における遭難船舶の多数である現況にかんがみまして、今後ともこれらの人命救助に関するあらゆる努力を続けなければならぬと考えておる次第であります。  ジエーン台風に対する被害は、後ほど次長から御説明をいたしますが、一応マツカーサー書簡並びに治安状況につきまして概要を申し述べまして、私の説明を終ります。
  4. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの保安庁長官説明につき御質疑がございましたら、これを許します。岡田委員
  5. 岡田五郎

    岡田(五)委員 保安庁長官のおられる間に、ちよつと簡單質問いたしたいと思います。今大体二十五年度、二十六年度継続工事で約百隻の巡視艇建造したい、こういうお話でありましたが、大体標準型でいいのですが、この百隻というのはどういうトン数程度の船で、総トン数どのくらいになるのか、簡單に御説明願いたいと思います。
  6. 大久保武雄

    大久保説明員 ただいま予算閣議も進行中でございまして、最終的には申し上げられないのでありますが、一応考えまするのは、四百五十トン型並びに二百七十トン型を合せて、巡視船におきまして約四十隻ないし五十隻、それから二十三メーター内火艇、すなわち約五十トンぐらいある大きな警備艇でありますが、これを中心といたしました警備艇約五十隻程度、合計して約百隻と申し上げた次第であります。トン数巡視船におきまして、ちよつと計算違いがあるかもしれませんが、一万七千トンばかりになるかと思います。もちろん警備艇は除いてでございますから、このほかに警備艇が加わるのであります。
  7. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいま長官説明を拜聽いたしまして、私の聞き違いでなかつたならば、現在八千六百人定員があるように承つたのですが、それに間違いありませんか。
  8. 大久保武雄

    大久保説明員 先般の定員法によりまして、八千六百人と規定されております。八千六百六十三人だと思いますが、あるいはこまかな数字間違つているかもしれません。
  9. 玉置信一

    玉置(信)委員 今度マ指令によりまして、さらに八千人を増員いたしまして、二十五年度四千人をふやすというただいまの御説明でありましたが、この四千人を募集いたしまして、これが完全に任務を途行できるというのは、訓練その他を経ることでありましようが、大体どの時期においてこれが完全に一人前の仕事をするということになるわけですか。
  10. 大久保武雄

    大久保説明員 海上保安庁はただいま御質問にもありました通り船艇に配乘いたしますために、しろうとをただちに乘せるわけにはなかなか参らない。そこで第一回の採用試験経験者をとる、かような方針で出発いたしておりますが、非常に希望者が多数ございまして、全然経験のない者をもう少し募集してもらいたいという希望が非常に多いのでございます。そこで次回以後の募集につきましては、若干未経験者も当然加えるようにいたしたいと考えておりますが、二十五年度にふえます人間熟練配乘をいたします度合いは、結局船舶建造されて行く時期とにらみ合せまして措置をいたしたいと考えております。すなわち二十五年度にできます船舶は、おおむね年度末になるわけであります。そこで昭和二十五年度に採用いたしまする人員は、昭和二十五年度の末に大体船舶に配乘されるものと御予定を願いたいと思います。
  11. 玉置信一

    玉置(信)委員 それでは後ほど台風被害状況の御説明を承りまして、さらに運輸状況についてお伺いいたしたいと思います。長官に対する質問はこの程度で一応打切つておきます。
  12. 岡田五郎

    岡田(五)委員 海上保安庁関係の二十五年度における予算増加というものは大体どの程度になるのか、また二十六年度におきます海上保安庁関係拡大に伴う予算増加は概算どの程度になるのか、その点を御説明願います。
  13. 大久保武雄

    大久保説明員 お答えいたします。ただいま予算折衝をいたしておりますので、的確に申し上げますことは困難であり、あるいは若干の違いが起きて来るかも存じませんので、ある見込みをもつて概数でお答えすることをお許し願いたいと思います。海上保安庁の二十五年度公共事業費を除きました予算は、三十五億円程度であると考えております。これに対しまして二十五年度債務償還費の繰りかえで増加される分が約五十億円見当であると一応想定いたされます。すなわち二十五年度におきましては、合計いたしまして約八十億円ないし八十五億円程度ではないかと考えております。昭和二十六年度におきましては、極力昭和二十五年度において使用するように努力いたしました関係上、約五十億円程度に圧縮できるのではなかろうか、かように考えております。
  14. 大澤嘉平治

  15. 柳澤米吉

    柳澤説明員 海上保安庁におきます台風被害状況並びにこれが対策につきまして御説明申し上げます。  海上保安庁といたしましては、八月末から台風による海難防止対策というものを決定いたしまして、これが実施をいたしたのでございます。昨日お手元にこれが資料をお配りしてあると存じますが、簡單にこの防止対策を申し上げますと、大体台風によります海難ということに対しましては、昨年のジユデイス、キテイ、パトリシア等におきまして、横浜港その他におきまして大なる海難が起きまして、これが損害は約五十億円と推定されておるのであります。これらのことを基礎としまして、事前にこれら台風を予報いたしますと同時に、これらを末端の船舶乘組員にいかにして早く徹底せしめるかということを第一として、第二に船舶台風時に対しまして、安全上いかなる注意をすべきかということの注意を、その都度喚起すべきではないかということを考えました。と同時に船舶設備、たとえば救命設備あるいは航海要員の点検というようなことにつきまして、十分な注意を喚起する必要がある。また台風が参りました場合の避難の方法の周知ということを、いかにして徹底せしめるかという点でございます。これらの点につきまして、台風の来ます事前にこれが処置を行い、早く各地方機関を通じまして、現地の各港湾その他に周知徹底せしめておつたのでございます。こういう場合に台風性質その他をよく見きわめねばならぬ、特に小型船舶に対しましては、台風性質があまりよくわかつていないであろうということで、八月末には各現地船舶、ことに小型船に対しまして、台風の内容をわかりやすく書きましたパンフレツトを配付いたしました。これは費用関係で全部にわたるというわけには参りませんでしたが、これを配付いたしまして、台風に対する知識を喚起しておるのでございます。同時にこの実施要領によりますと、台風が起りまして、それによつていかなることが海難事故として起つて来たか、その原因はどういうところにあるかということを、台風直後において調査をし、来るべき台風に対してこれが対策を講ずべきであるという、海難原因調査ということをただちに行い、これによつて次海難を救うという趣旨でもつて、ここに海上保安庁といたしましては、台風による海難防止対策実施を行つて来たのであります。この実施要領はお手元に配つてございますが、この実施要領によつて行いましたけれども、ジエーン台風によりまして、大阪港におきましては相当被害が起つたのであります。ジエーン台風被害状況は、別册ジエーン台風被害状況報告というものがお手元に配つてあると思うのでございますが、これをごらんになりますと、大体海上保安庁関係におきますところの台風に対する被害状況が、おわかりになると考える次第でございます。このパンフレツトの第五ページをごらんいただきますと、阪神地区気象状況管区本部及び保安監部のとつた措置月日別、時間別に各船に対する指示、及び各船がとつた行動、これについてこまかく時間別に書いてございます。海上保安庁といたしましては、暴風雨特報の発表と同時に、これら船舶に対する状況連絡徹底をはかつてつたのでございます。なお第七ページにおきまして、大阪港におきまして、大阪における同様な状況について月日別、時間別に羅列してございます。次に第九ページに参りますと、神戸港における被害船舶と無被害船舶を比較して掲げてございます。九ページの表をごらんになりますと、五百トン以上の船舶が、在港船三十八隻のうち、被害船七隻、無被害船三十一隻というような数字になつております。その次の十ページをごらんになりますと、ここにその当時即日現地及び中央から人間を派遣いたしまして、これが原因あるいは、状況調査しました報告によりますと、参考としてそこに書いてあります通り、当時米船LSTが二十隻港外に碇泊し、これが警報発令と同時に、そのほとんどが港外はるか遠くの方に避難した。これがために被害がちつともなかつたということでございます。なお二に書いてあります通り辰春丸の件は、全船員が乘つておりまして、これが救助には相当努力したようでございますが、遂に沈沒のうき目になつたというやむを得ざる事情をここでくみとれると思います。第三番目に、港内在港船荒天準備は、台風来襲までにはほとんど完備しておつたということが言えるのであります。こういうふうに大体におきまして神戸港におきましては、その処置その他は海上保安庁連絡が徹底したばかりではございませんで、去年の横浜その他における今までの被害を勘案いたしまして、各船舶とも相当努力を拂つておることが見受けられるのであります。十一ページに参りまして、大阪港における被害船舶状況が並べてございます。これに対しましても十二ページの参考というところに書いてあります通り、第一に各船は機関を発動し、繋留索嚴重にしておつたということが、視察報告によつていわれております。第二に上陸中の乘組員は自発的に帰船し、各船とも不在者が皆無の状況であつたということが報告されております。これは船のボーイに至るまで、あの暴風の中をほとんど船に帰つておるという状況でございまして、船舶人間はまず相当台風に対して警戒しておつたということが言えるのではないか、かように考える次第でございます。なお関西汽船所属の船が相当にいためつけられましたが、この船につきましても、第四に書いてあります通り機関を発動し、避難用意をしておりました。このうちあるものは沖へ出ようとして出発しましたが、その出口を大型外国船によつてふさがれたために出られずに、災害をこうむつたというような状況でございます。なお第五に書いてあります通りさくら丸等は、危險の増大とともに北港に避難して被害がなかつたということで、各自相当努力を拂つておることが見受けられるのであります。それにもかかわらず、十一ページに書いてありまするような相当被害が起つたわけでございます。  第三に、被害状況全国にわたりまして表といたしましたのが、十三ページにございます。結局全国といたしましては、大小の船舶を合せまして、七百十一隻というものが被害をこうむつておる状況でございます。そのほか十四ページに入りまして、人命救助したもの九、行方不明四という数字が出ております。十五ページにはこの被害船舶のおもなものを羅列しておるわけでございます。  なお海上保安庁といたしましても、航路標識被害相当ございます。この航路標識被害状況は二十一ページから二十二ページにかけまして書いてございます。これの数字災害復旧費として、いずれ公共事業費災害対策費の中から出していただかなければならぬものが約八千万円とここに書いておりますが、その後けさまでに集計しましたところでは、八千五百万という数字になつております。  次に各管区本部施設被害状況は約四十九件ございまして、千四百万円という数字になつております。  以上が大体におきますところのジエーン台風被害状況でございます。  キジア台風につきましては、別册キジア台風被害状況報告というものがございます。これにつきまして簡單に御説明申し上げますと、三ページに参りまして全国の今まで集めました被害状況は百九十七隻という数字になつてございます。人命が大体二十二名、なお海上保安庁所属船舶状況は六ページにございます。施設状況は今のところはつきりまだ集計がとれてもございません。航路標識といたしまして大体八ページの最後に、千八百万円という被害状況があるのでございます。  現在これらの台風に対しまして、ジエーン台風につきましては最終的に現地におきまして、昨日現地の各経験者及び関係の各官が集まりまして、これが実情及び今後の対策その他につきまして検討を遂げている次第でございます。あすないしあさつてにはその会議に列席した連中が帰つて参りますので、詳細なる実情がわかることと考えます。  以上大体海上保安庁のとりました処置台風による被害状況の御説明を終ります。
  16. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの海上保安庁柳澤次長説明につき、御質疑がありましたならば質問を許します。
  17. 岡田五郎

    岡田(五)委員 一つだけ簡單に御質問いたしたいのでありますが、ジエーン台風による航路標識損害が八千五百万円見当ある。キジア台風による航路標識損害が千八百万円程度のように表に出ておるようでありますが、この航路標識は私から言うまでもなく、船舶航行の日であり、また道じるしであると考えるのであります。この航路標識災害復旧に対しまして、海上保安庁関係はどういう方針で進んでおられるのか、また現在の復旧状況はどういう状態になつておるか、御説明を願いたいと思います。
  18. 柳澤米吉

    柳澤説明員 航路標識台風による被害につきましては、御説の通りただちにこれが復旧をいたさねばならぬ。従いましてこの復旧に対しましては、大体八千五百万円のうち三千六百万円は今年度ただちに着手し、復旧しなければならない金額になつております。残り金額につきましては、たとえば燈台の人々が住む宿舎の倒れたもの、あるいはがけくずれ等で、ただちに直さなくも、来年度になつて直しても燈火の保守には、直接すぐ影響があると考えられないものでありまして、ジエーン台風被害の三千六百万円は今年度すぐやらなければならぬというので、現在関係方面折衝中でございます。
  19. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 関連の質問でありますが、御説明はよくわかりましたが、八千五百万円に達する被害を、三千六百万円で一応間に合わせる、こういうのでありますが、そうすると標識そのものよりも、たとえばこれに勤務をいたしておる人たちの住居とか、その他の附属物の方の損害が多かつた、こういうことになるのでしようか。
  20. 柳澤米吉

    柳澤説明員 御承知通り燈台は僻地にございまして、非常に危險な土地にございます。従いまして建つております塔の基礎等がゆらいで参りますと、非常なる危險にさらされるわけでございます。しかしながらこれはすぐ今年直さなければ塔がひつくりかえるという程度のものは、すぐ今年直しますが、しかしながらまずこれはもう一回くらいの台風までは何とか持つであろうというものは、これは予算関係でどうしても出ないというならば、これを来年度にまわすという意味でございます。従いましておもに燈火保守、すなわち燈籠あるいは火口のこわれたもの、ガラスのこわれたものというような緊急のものだけを、今年度にやることにいたしておるのであります。従いまして金額といたしまして多くかかるものは、どうしても後年度にまわるということになります。
  21. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 次長の御説明一応わかつたのでありますが、これは他の災害ももとより大事でありますが、航路標識の問題は、先ほど岡田委員が申されましたように、影響する範囲と申しますか、程度というのは、非常に大きいのでありますから、わずかくらいの予算関係であとまわしにするというようなことでなしに、僅々これが三千万円とか八千万円とかいう問題でありますから、来年度になるまでは持てるだろうというような——災害があつてから復旧しようというような考え方から、一歩も数歩も前進いたしまして、前もつて、いわゆる予防と申しますか、それらの対策が非常にかんじんであろうと思うので、関係筋との了解を得るためには、むしろ進んでそういうことを強調していただきまして、万全を期する。いわゆる災害を待つて復旧するというのでなくして、積極的にその対策を立てて行く、こういう構想で大いに御盡力を希望いたしたいと思うのであります。大体この議論は再々前から繰返しておりますし、特に私は予算委員会におきましても繰返して参つておりますが、災害復旧でなくして、災害予防対策に移つて行くことが、すべての方面から考えても必要でありますが、中でもこの航路標識の問題は、その性質上今申すことが肝要かと思いますので、そういうつもりで大いに積極的に御盡力を希望申し上げておきたいのであります。
  22. 柳澤米吉

    柳澤説明員 お説の通り今後積極的に努力することにいたしたいと思います。
  23. 岡田五郎

    岡田(五)委員 私は尾崎委員とまつたく同感でございまして、尾崎委員希望をさらに強めると言つては言葉が変でありますが、同意見のものでありますが、あらためて政府にお願い申し上げるわけであります。  過般行政調査のために現地へ参りまして、海難その他の問題をいろいろ聞いて参りますと、航路標識燈台の不備に基くものが大多数を占めておるのであります。日本の現在の航路標識及び燈台は、はなはだいまだもつて不完全な状態になつておると、私は認識を強くして帰つて来たのであります。かような状態にある航路標識燈台が、しかも八千五百万円の被害を受けて、なおこれを復旧するにわずか三千六百万円しか復旧できないというのは、はなはだもつて私は遺憾であると考えるのであります。陸上で言えば——燈台にしろまた航路標識にいたしましても、鉄道にたとえてみれば信号であります。安全装置であります。この安全装置を完全に整備せずして、どうして航海の安全が期待し得られようかと、私はかように痛感するのであります。大いに努力するばかりでなしに、ぜひぜひこの八千五百万円の予算獲得と、さらになおこの方面の充実に一層努力あらんことを、くどいようでありますが一応申し述べまして、私の意見の開陳といたしたいのであります。
  24. 玉置信一

    玉置(信)委員 次長にお伺いいたしますが、海上保安庁所属の船舶被害はきわめて少いようでありますが、この程度であるならば、保安庁の運営上、その機能の上において支障はないのでありますかどうか、この点をお伺いいたしておきたいと思います。
  25. 柳澤米吉

    柳澤説明員 ジエーン台風あるいは今回のキジア台風等につきまして、保安庁の所属船舶もある程度いたんでおります。そのキジア台風によるいたんだ状況ジエーン台風被害状況は、状況報告に書いてあります。これらの船の損害を受けたものは、大体港内における小船が主体となつております。元来保安庁における船舶の数の不足ということは、これは特にわれわれも痛感しておりますと同時に、皆様方も御存じと存ずるのであります。これだけの船舶で、一体台風その他に万全な処置ができるかという点につきましては、はなはだ寒心にたえない次第でございます。現在持つております船舶のできるだけの利用をいたしますと同時に、通信施設その他をできるだけ利用いたしまして、これが万全の策をとるよう努力中なのでございます。
  26. 玉置信一

    玉置(信)委員 先ほど長官の御説明の中に、巡視船建造年度百隻というようなお話でありましたが、百五十隻が計画の中に織り込んであるようでありますが、この百五十隻というものを建造し終りますと、大体保安庁において考えております仕事を、完全になし得らるるものであるかどうか、この点をお伺いしておきたい。
  27. 柳澤米吉

    柳澤説明員 大体におきまして、来年度におきます予算要求その他につきましては、保安庁といたしましての要求の額は相当上まわつてつたのであります。しかしながら今の状態から考えまして、先ほど長官からお話のありました約百隻というものが建造できますならば、現在における状況を非常に拡充し得る。しかも裏日本その他重要な箇所にある程度の配船がし得る。しかしそれによつて太平洋沿岸その他の警備が薄くなるという危險がありますが、大体においてこれなら何とかなるという数字でございます。万全を期すという数字につきましては、なお相当船舶を必要とする、かように考えます。
  28. 玉置信一

    玉置(信)委員 現在行つております警備の状況をお伺いいたしたいと思います。これは分類いたしますといろいろあるわけでございます。私、かつて他の委員会において、長官の御説明を聞いたことがございますが、今日の情勢の変化に伴いまして、あらためてこの機会に、その全貌をお伺いしておきたいと思います。
  29. 松野清秀

    ○松野説明員 先ほど長官からもお話があつたのでありますが、現在海上保安庁が保有しております巡視船は、合計六十二隻であります。従来から九州方面は、いろいろ密航密輸とか、そういう犯罪の多い地域でありますので、事変勃発前から、重点的に巡視船を配備いたしまして、警備に万全を期しておつたのでありますが、事変が勃発いたしましてから、太平洋岸から若干の船をまわしまして、現存は最も重要と思われる敦賀以西、鹿兒島までの海岸に、巡視船六十二隻のうち、二十五隻を配置いたしております。なお何分にも総隻数六十二隻でありますし、太平洋方面もまつたく無視するというわけには参りませんので、現状におきましては、大体今申し上げたような配船をいたしまして、警備の万全を期しておるという状況でございます。その六十二隻のうちには、本年度繋船することになつておりました二十隻というものが含まれておるのでありますが、これにつきましては、事変勃発と同時に、これを全面的に復活、使用するということにいたしまして、大蔵省関係の了解を得まして、これを全面的に今使用しておる状況であります。
  30. 玉置信一

    玉置(信)委員 あまりつつ込んだ御質問もどうかと思いますが、今日の朝鮮動乱から考えまして、沿岸警備の点において、かつて新聞に報道せられておりますように、国籍不明の船が現われたというようなこともあつたのでありますが、そうした方面警戒、警備の状況、それから一面におきまして、水産資源保持のための取締りの状況、それから戰争中において、その沿岸に沈められております機雷その他港外の掃海の状況等、これは海上保安庁仕事の重要なる分野だろうと思います。港外の問題につきましては、これは両面にわたるのでありますが、そうした方面の今日までの活動状況及び将来の方針をお説明願いたいと思います。
  31. 松野清秀

    ○松野説明員 漁業の取締りにつきましては、もう一つ、拿捕船関係がありますが、この問題につきましては、海上保安庁巡視船は、現存基地を中心として百マイルの間をパトロールするということに、極東海軍司令部から指令が出ておりまして、通常の業務をやるためには、百マイル圏内、但し緊急の場合、たとえば遭難船があつたとか、その他緊急の用事がある場合には、事後承認を得ることにして百マイルを出てもさしつかえない、かようになつておりまして、たとえばマツカーサー・ライン附近の漁船が、マツカーサー・ラインから出ることを監視するというような業務はできない現状でありまして、ただ漁業関係としましては、沿岸哨戒区域内におきまして、できるだけ水産行政を助長するような方針で、水産庁と十分連絡をとりまして、漁業の保護に当つている。なお密航密輸につきましては、晝夜の別なく、できるだけ哨戒を嚴重にし、情報の收集にあたりましては、国警あるいは自治警とも十分緊密に連絡をいたしまして、その取締りに全力をあげておる次第でありますが、何分にも現在持つております巡視船のうち三十五隻は、旧海軍の特殊船艇でありまして、非常に性能がよくないというような事情もありまして、十分な成果をあげるまでに至つていないのでありますが、おいおい海上保安庁が今計画しておりますような新造巡視船ができて参りますれば、哨戒も思うようにできるようになると存ずるのでありまして、そのあかつきには御期待に沿うような成果が上るようになるのではないかと、かように考えておる次第であります。なお掃海につきましては、次長の方から申し上げます。
  32. 柳澤米吉

    柳澤説明員 掃海につきましては、現在瀬戸内あるいは裏日本等の、枢要の地点を掃海しておるわけであります。掃海のおもに実施しなければならない点は、大体瀬戸内が主体というふうに考えられるわけでございます。他の地区におきましては、分散的に掃海をするということになつております。従いまして現在におきましては、裏日本諸港を近く完了いたしまして、その後瀬戸内の枝線を完了する、かような予定で進んでおります。
  33. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいま水産行政を助長する方針で、水産方面に協力しているようなお話でありますが、現在の六十二隻をもつてしては、とうてい海上保安庁本来の使命を果すに、万全を期することは容易でないという先ほど来の御説明に対しまして、水産行政を助長する面に働くという点については、私は多少の疑問を持たざるを得ないのでありますが、その水産行政を助長する面に活動するという仕事は、海上保安庁所属の船が、航行中にたまたま見つかつたものを消極的に、取締りその他の処置をとるのであるか。それとも水産庁の要請によつて、そうした部面まで活動しているのであるかどうか。私ども聞くところによりますと、海上保安庁の水産行政面にタツチする仕事が、ややもすると行き過ぎであるというような非難を耳にしておるのでありますが、これに対して保安庁の所見をお伺いしたいと思います。
  34. 松野清秀

    ○松野説明員 今お話がありましたように、哨戒の途中に見つかつたものを取締るということは、これはあらゆる法令の違反を取締るという面から行きまして当然でありまするが、なおそのほかに県の水産課なり、あるいは中央におきましても水産庁と連絡しまして、やはりたとえば水海道方面の機雷現場とか、あるいはその他内海におきましても、ある地域におきましては特にこういう点は取締りをしてもらわぬと困るというような事例が多々あるのであります。かような場合には、今申し上げましたように水産関係当局とよく連絡をいたしまして、この要請に応じまして特に取締りをやるというようなケースはやはりあるのであります。
  35. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの問題に関連いたしまして、特に掃海の点でありますが、海上保安庁は非常に掃海をされておる。特に日本方面におきまする掃海につきまして、單にそうした敷設機雷をどうこうということだけではなしに、港湾内におけるところの掃海作業が、その港湾を使用する上に非常にいろいろな問題を残しておる。たとえば舞鶴港のようなところでは、掃海作業が相当程度進捗しておるということは実質的には認められておつても、事実上その筋からの安全保障か何かないために、港湾に対する外船の出入りが非常に困難になつておるような実情があるように聞いておるのでございますけれども、はたしてそういう実情があるのでございましようか。同時にそれに対して当局はどういう処置をとろうとしておるかということについて伺います。
  36. 松野清秀

    ○松野説明員 現在におきましては、日本側で掃海が済んでおりましても、アメリカの方のチエツク・スウイープが済まないと、外国船の出入は許さない。かようなことになつておりまするが、従来の実績から見まして、日本側のやつた掃海水路において事故を起した例はないのでありまして、むしろチエツク・スウイープの済んだ所で事故があつたというような経緯もございまして、日本側としましてはできるだけそういうような事情を関係の筋へ申しまして、日本側のスウイープの済んだ所へは外国船も入れてほしいということは、極力折衝して参つて来たのでありますが、現在におきましてもなおチエツク・スウイープが済まない所は、いたされないというような現状にあるわけであります。その点につきましては、将来におきましても政府としまして、できるだけ早くチエツク・スウイープを済ましてもらうなり、あるいは済まない所でも、日本側の掃海の済んだ所へは入れてもらうというような方向に努力いたしたいと思います。
  37. 石野久男

    ○石野委員 その点につきまして、特に舞鶴では市当局で、その点極力早期に向うの安全保障を得られるようにしてほしいというような希望を、視察の途中聞いたのでございます。もし市当局の言うようなことで、事実上掃海も完了し、そしてあそこを市が商港とし、あるいは漁港として使おうとするならば、どうしてもそれは経済上の見地から言いましても必要なことだと思いまするので、当局はそれについて早急に何らか措置をされるような意思がありますか。それとも現在どういうふうに進めておられるのかを、ちよつとお尋ねしたいと思います。
  38. 松野清秀

    ○松野説明員 但しこの舞鶴につきましては、これは日本側の掃海が完了しました後に、米側での確認掃海を実施してはいないのでありますが、昭和二十三年の二月十一日の米側の指示によりまして、特に危險を各船で負担するという條件のもとにすべての連合国の船は入つてよろしいということになつているはずであります。
  39. 石野久男

    ○石野委員 次長にお尋ねいたしますが、このジエーン台風報告等を見ましても、またわれわれが視察をいたしましても、確かに神戸港と大阪港とにおける被害の間には、格段の相違があるように見るのでございますが、これについて海上保安庁では、なぜこういうような大阪港と神戸港の間におけるところの被害程度の差が出て来たのかということについて、当局のお考えになつておることになり、あるいはこういうことであろうというようなことについての御意見をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  40. 柳澤米吉

    柳澤説明員 この点につきましては、いろいろ意見があると思います。しかしながら大阪港及び神戸港の港湾の位置の問題等が、相当大きく響いておるのではないか、かように考えられるのであります。台風時におきまする高潮の高さその他も、神戸大阪とでは現地調査によりますと違つておりまして、大阪の方が多少高いように見受けられます。なお風向き等も、大阪の港に突き当るように吹いておりますので、この点が大阪においては神戸よりやや不利な状況にあるのではないか、かように考えられるわけであります。風の強さその他につきましては、大同小異のように考えられる次第でございます。これは被害程度の差というものが、いかなる原因であるかということにつきましては、的確なお答えはできませんが、概略そのような点にあるのではないか、かように考えております。
  41. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 この際海上保安庁の責任者にお伺いしておきたいのでありますが、実はわれわれ一行が北海道に現地調査に行つたのです。その際漁民の口から直接聞いた話でありますけれども、特にオホーツク海沿岸の漁民は、マツカーサー・ラインを越えないと商売にならぬ。たとえばかにでも、マツカーサー・ライン以内と以外を比較すると、大体外へ出ると五倍から六倍の漁獲があるという。特に色丹、歯舞方面のあの近辺におけるかにというものを考えると、どうしても出ないと漁民が成立たぬ。そういうわけで危險を冒して出ることが建前だ、こう言うておるのです。特に根室におけるかにのカン詰工場なんかは、マッカーサー・ライン以内のかにの漁獲では、あれだけの工場は動かせない。当然これは外に出てとつて来るということを前提として、あれだけのカン詰工場を計画したらしい。こういう点について、海上保安庁は防犯上どういうお考えを持つておるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。特にマツカーサー・ラインを越えますと、いつも拿捕される。これは非常にソビエトが日本に対して悪感情を持つて拿捕したがごとき印象を與えているような報道をしておりますので、この際明確にしておいていただきたいと思います。
  42. 柳澤米吉

    柳澤説明員 マツカーサー・ラインは嚴としてあるわけでございまして、これに対して保安庁としては、やはりマッカーサー・ラインを確保するという点をとらざるを得ないであろう、かように考えます。なおマッカーサー・ラインの拡張につきましては、水産庁その他と主務官庁と連絡いたしまして、これが努力をすべきではないか、かように考える次第であります。
  43. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私の聞いたのはそんなことじやなくて、海上保安庁としては防犯上、どういうように取締りをしておるかということをお伺いしておるのです。
  44. 松野清秀

    ○松野説明員 海上保安庁といたしましては、やはりマツカーサー・ラインを越えるというような船がある場合は、出ないように勧告もし、必要な取締りはやつております。これは当然であろうと思います。
  45. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 具体的に、オホーツク海の海面において、巡視船をどれたけ出しておるかといつたような問題にまで触れて、御回答願いたいと思うのです。
  46. 松野清秀

    ○松野説明員 現在あの方面には、釧路にただいま巡視船が一隻おり、それから根室に港内船がおる、大体その程度であります。むろんこの方面に早くに巡視船なりあるいはハーバー・ボートを増強しなくちやいけないのでありますが、今は先ほどから申し上げたような実情でありまして、現状においてはその程度よりやむを得ないということでありますが、先ほど長官からお話がありましたような、今明年度中の造船が実現しますれば、大体あの方面の基地、たとえば釧路あたりにも巡視船三隻くらいは配置する予定でおります。なお根室は、これは御承知だと思いますが、大体あそこは港長事務をやつておるということになつておりますので、巡視船を配備するということは困難でありますが、少くともやはりハーバー・ボートの二隻くらい、なお今年度におきまして、網走にも基地を開設する。大体あそこは冬季は凍結いたしますので、冬季は稚内あたりに引上げる必要がありますが、しかし大体網走を主として使うために、少くとも巡視船二隻くらい、港内艇若干は配備する考えでおります。現状におきましては、今申し上げましたような勢力でありますので、マツカーサー・ラインを常時まわるということはとうてい望み得ないのでありまして、むしろ現在は根室から釧路の間、あの辺を巡視するという現状であります。
  47. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 この際特に要望しておきたいのですが、防犯上の立場から、不必要の犯罪を、国際的な紛争を増加させないように、特に海上保安庁では努力されんことを望む次第です。
  48. 松野清秀

    ○松野説明員 わかりました。できるだけ御趣旨に沿うようにいたします。     —————————————
  49. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 次に地方税制に関する件を議題といたします。運輸省所管事業に対する地方税について、足羽監督局長より説明を求めます。
  50. 足羽則之

    ○足羽説明員 運輸省の所管に関する地方税についての御説明を求められたのでありますが、全般といたしましては、従来しばしば御説明も申し上げ、その線に沿つてずつとその意見を運輸省の意見として進めて参つておりますので、国有鉄道関係の問題についてだけ、私としては御説明をさせていただきたいと思います。  国有鉄道に地方税を課税してはどうかという意見が、新しい問題として提起されて参りまして、いろいろ検討され、論議をされておる次第でございます。仄聞いたしますと、地方財政委員会では国有鉄道に対して、むしろ課税をするということが妥当であろう、こういう考え方が強いように私仄聞をいたしております。いかなる理由によつてそういうような結論が出ておりますのか。実は内容についてはつまびらかにしないのでございますが、結論としては国有鉄道に課税すべし、こういう考え方が強いというふうに私たち承つております。ただこの国有鉄道に対する課税という問題については、国有鉄道の監督の衝に当るわれわれとしては、單に国有鉄道の問題としてのみならず、もつと大きな問題として十分考えなければならぬ。こういう気持を持つておりますと同時に、直接の関係の者として、強くこの問題を考えさせられておるわけであります。私たちが国有鉄道に対する地方税課税の問題について結論を申し上げますと、国有鉄道に課税をされるということは適当でない、こういう結論を持つておるのでございますが、その点について簡單にわれわれの考えを申し上げてみたいと思うわけであります。  まず第一に、現在の制度におきましては、日本国有鉄道は御承知のように公共企業体として、昨年新しく設立せられたのでありまして、政府の全額出資によつてできておるのであります。現行法上も、経営上において生じた利益は、政府の一般会計に納付しなければならないということになつており、また原則的には法令の適用についても、国と同様にみなされておるように書かれておる條文もございます。いろいろそうした現行制度をのぞいて見ます場合に、国有鉄道は税の上においても国と同様に、特殊な鉱産税とか入場税とか、あるいは遊興飲食税とかいうような税を除いては、地方税も国税も全部免除されております。公共企業体に移行をする前と、それから公共企業体に移行したあとと、実態においてはその取扱い方はかわつておらぬわけであります。そうした国有鉄道の性格というものには、今申しましたように、国有鉄道が公共企業体として発足する前後においての変更は、大体において実質的にはないと考えます。また現在その性格の変更がさらにないのでございまするが、これに対して特に現行の税関係の制度に変更を加えて課税をすることは、いささか私どもとしては奇異な感じがいたします。大体そういう感じが一番先に頭に来るのであります。  次には、国有鉄道がこの公共企業体として発足いたしましてから、独立採算制という言葉が非常に強く世間の人に印象づけられて、そのためにあたかも国有鉄道が利益を追求する一つの母体であるかのごとき印象が非常に強いのでありますが、しかし国有鉄道の現在主眼といたしておりますところは、利益を目的とするものではございません。その使命とするところは、公共的な、国家的な一国の交通を担当するということでありまして、従つて国有鉄道の運営に関しましても、あるいは法律の適用の面においても、あるいは予算などを国会に提出をして御審議を仰ぐとか、そうした運営におきましても、国会あるいは政府の監督というものは相当嚴重になされております。そこで独立採算制という言葉が與える印象は別といたしまして、われわれはそうした言葉を、国有鉄道の中の企業としての能率的な運営、こうした面において強調されておるもの、こういうふうに考えておるのでありまして、現在の国有鉄道の企業というものが、実質的には官庁経営の、たとえば郵政とか、あるいは電気通信事業とか、いろいろあるのでありますが、そういつた官庁経営の企業と同様に、従来扱われておつたこの国有鉄道が、單に公共企業体として発足したということによつて、その取扱いを異にするということは、著しく妥当性を欠くのではないか、こういう考え方を持つているわけであります。  それから、しからば現在の国有鉄道の実際の動き方はどうかという点でございますが、現在の国有鉄道の一国の交通網を形成しておるという点から考えますと、しばしばいわれておる公共的使命という点を分解して考えますと、一つ一つの線について考える場合には、著しい不採算線も相当あるわけであります。しかしそうした線も含めて、全国的な一つの交通網というものを形成して経営をされている。大体現在約一万九千キロ、約二万キロ近い国有鉄道の路線があるのでありますが、そのうちで、いわゆる採算線と申しますか、経済線と申しますか、とにかく一応原価計算をいたしまして採算の合う線というものは、約八千キロ余であります。いわゆる不採算線、原価計算をして経営上引合わないという線が、一万一千キロくらいある、こういうふうに推定をされております。そういつた大きな、約二万キロになんなんとする線を、全体として経営をしておる。こういう点から考えます場合には、これは国有鉄道が單に営利を追求する企業性のみを持つた一つの経営体だ、こういうふうに考えることはおかしいのではないか。また運賃なんかの面について考えます場合にことに著しいのは、定期旅客運賃であります。御承知のように定期旅客運賃は、大体六割二、三分から、最高は九割二、三分までの運賃の割引をいたしておる。普通の運賃で計算をいたしますよりは、約六割二、三分から九割二、三分の割引をいたしておるというのが、現在の定期運賃の実情であります。これに対しては、あるいはこれは営業政策の面から、そういう割引をしておるのだろうという議論、あるいは考えをもつて質問された方があるのですが、しかしそれは、そうした高率な割引が当然証明するように、そうではないのでありまして、長い間の運賃がしばしば変更されたときの沿革の集積として、大衆に対する関係から定期運賃というものは、普通の運賃が上りました場合にも常に比較的低位に据え置かれて、だんだんと割引の率がふえて参る。こうしたことはどのくらいに一応見積れるかと申しますと、普通運賃をとつた場合と、それから現在のそうした定期運賃と比較してみまして、二十四年度で約三百二十億余、こういつたものは運賃の面で割引をしておる、こういうふうに考えられる。大体定期の旅客というものは、比較的短距離の地方旅客が多いのでありますが、そうした意味では、国有鉄道はそうした定期運賃政策を通じて、むしろ地方に対して寄與している面が相当あるということも、これは実情でありますが、むしろ主張ができるのではないか、こういう点も考えられるのであります。あるいは先ほど申し上げました地方的に不採算線であるものも、全体の総合経営において、地方的にはむしろ寄與している、こういうことも強く主張できるのではないか、こういつたような考え方もされるわけであります。  それから民営鉄道との公正競争の見地から、国有鉄道にも課税をすべきでないかという議論もあるのでありますが、しかし今まで申しましたように、国鉄は本質上全国にわたつての総合した交通網というものを形成しておるのでありまして、むしろその点から考えます場合には、一地方交通を担当している地方鉄道というものは、多少例外は実際問題としてはあるのですが、国有鉄道との競争的な地位に立つよりは、むしろ支線的な地位に立つ、原則的にはそう考える方が、大体としての観察は当つておるのではないか。また本質的に考えます場合に、地方鉄道も、あるいは定期運賃の割引の点、あるいは非常に嚴重な国家の監督に服しており、もし採算が合わなくても、なかなか容易に廃止ができぬというような企業としての非常にきゆうくつな点はあるのでありますが、しかし一つの企業として考えられて成立しているのが私設鉄道だと思うのでありますが、国有鉄道は先ほど申しましたごとく、利益を追求する一つの企業として成立しているものでないので、その点から申しましても本質的な違い、あるいは競争線として同様な課税をすべしという議論も当らないのではないか。こういつた感じがいたす次第であります。  以上いろいろ申し上げたのでありますが、しからば現在の国有鉄道について税を負担する余地があるかないか、こういう問題でありますが、国有鉄道の経営につきましては、できるだけ経営の合理化ということに努めるという考え方でずつとやつて参りまして、その点につきましては、いろいろな点について御印象の新たな問題がたくさんあると思うのでありますが、現在非常に多額の経費を節減するという余地はあまりないのではないか、こういうふうにわれわれは考えております。大体課税額がどのくらいになるかということでありますが、固定資産税及び附加価値税を合計いたしまして、おそらく百十億前後の課税という数字が出るのではないか、こういうふうに考えております。百十億の地方税というものは、現在のそうした非常に彈力性の少い、経費の節減という点についてはあまり余地がないのではないかと思うのでありますが、そうした国有鉄道にとつて考えます場合には、当然運賃の値上げという問題と必然的に結びつけて考えなければならないのじやないか、こう思うわけであります。現在の段階において運賃値上げをどう考えるかということでありますが、これはわれわれといたしましては、一般大衆に対して地方税の値上げによる百十億の税の運賃に対する転嫁ということは、一番初めに申しましたごとく、單に国有鉄道あるいは国有鉄道に関係するわれわれ関係の役所としての立場だけでなくて、相当愼重に考えなければならぬ問題ではないか、こういうふうな考え方を強く持たれるわけであります。  以上申し上げましたいろいろな点を考えます場合に、国鉄に対する地方税の賦課という問題は、簡單に結論を出して、賦課すべしという結論に行くべきものではない。そういつた感じを私たち強く持ちまして、今まであらゆる機会に関係のところと折衝はいたしておるわけでありますが、むしろこの機会にそういう事情を申し述べて、何分の御応援を願いたいと考えておるわけであります。
  51. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの足羽監督局長よりの御説明に対し、御質疑がありましたら質問を許します。
  52. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 足羽監督局長の御説明はそのまま了承するのでありますが、もちろん他の審議会等においてどういう審議の進行いたしましようとも、ただいま御説明なつたこの線は、一歩もまげてはいけないことだと思うのであります。私どもから言わせますならば、今日のような時代においては、なおますます鉄道の敷設をいわゆる採算の合わない所といえども鉄道の敷設を延長いたして、そうして経済の開発なり交通の至便なりに盡さなければいけない。そのためには鉄道ほど公共性を持つたものは他にそう多くはないのであるから、むしろ一般会計の公共事業費の中から、この鉄道の建設には相当予算を出せ、こういうことが私どもの考え方であり、また今日まで機会あるごとに主張いたして参つて来ておるのであります。そのような見地から考えましても、この国有鉄道に地方税を課する。こういうようなことは、はげしい言葉で申しますならば、もつてのほかの考え方でありますので、これは今御説明なつた線をもう少しさらに積極的に強調せられまして、国有鉄道に地方税を課するようなことがあつては絶対に相ならぬ、こういうことを私は強く希望をいたしておきますが、これに対してどういう程度の決心を持つておられるか、これをまず伺つてみたい。
  53. 足羽則之

    ○足羽説明員 ただいま申し上げましたような考え方で、私たちとしてはあゆる機会をつかみ、このわれわれの考え方を了解してもらうように努力をいたしておりまして、地方税をかけてもらうということについては絶対に困る、こういう気持でやつております。
  54. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 ついでに局長にもう一つ伺つておくのでありますが、先ほど御説明なつた言葉の中で——私は決してあげ足をとるわけではありませんが、私設の地方鉄道と国有鉄道は本質的に違うところがある。本質的にという言葉をお用いになつたようでありますが、私は別に地方鉄道に関係しておる者ではありませんけれども、鉄道はやはり国有鉄道といえども私設鉄道と本質的には違いはないので、地方鉄道もむしろさつき御説明なつた中にありますように、国家の強い監督を受けて、採算が引合わないから料金を上げるとか、あるいは不採算の線をやめてしまうとかいうこともできない。強い国家の監督を受けて、国有鉄道と同じ公共性を持つたやり方をやつておるのでありまして、その結果におきましても、この私設鉄道を設けた地方においては、その地方の経済の開発なり、交通の便益なりを受けておりまして、本質的には国有鉄道と違わない。ただ一つの企業会社として、営利会社として組織をつくつたというところが多少違うというのでありますが、本質的には私は違つたものではなかろう、こういうふうに思いますので、従いましてこの地方鉄道に対しましても、同様に地方税等は免除すべきものだ、こういうふうに考えております。さつき局長が御説明なさつた中の、国有鉄道と地方鉄道と本質的に違うかのような御答弁があつたのでありますが、この点をもう少しはつきり伺つておきたいと思います。
  55. 足羽則之

    ○足羽説明員 ただいまの御質問は、補足的に説明をさせていただく機会を與えられました意味で、お礼を申し上げたいと思います。あるいは言葉が足りなかつたかと思うのでありますが、私の申しました意味はこういうわけであります。国税とは少し違つて、地方税の問題につきましては、特に従来の沿革なり、あるいは現状なり、あるいはそれが改正された場合の影響なり、そういつた点を個々に考える必要も十分あろうかと思うのであります。それから企業としての成立ちということももちろん考える必要があり、あるいはその企業としての成立ちについての一部分としましては、どういうふうに運賃がきめられておるかというような点も一例ではありますが、考慮する必要があろうかと、こういうふうに思うわけであります。そういう場合に先ほど申しましたように、国有鉄道につきましては、従来原則として国税あるいは地方税が課せられておらぬ。その時代と何ら取扱いを異にすべき理由がないという点を申し上げたのでありますが、地方鉄道、軌道につきましては、従来税金が課せられておつて、これをこの際免税すべしという議論は、いささか困難なように思うのであります。やはり旅客貨物を輸送する重要なる交通手段であるという意味での公益性の見地からは、国有鉄道も地方鉄道も同様に考えられる、こういうふうに思うのであります。その公益性という意味は、あるいはこの交通機関としての不当なる競争を制限をし、そしてその交通機関の存立をはかる。よつて地方の便益と申しますか、利用者の利便をはかるという点から、あるいは運賃の面においても嚴重な監督をし、あるいはその経営の個々の施設その他の面についても、非常に嚴重な国家の統制がある。そういつたような点が一般の産業と、それから地方鉄道、軌道というような交通業と違う点の、一番大きな点だと思うのでありますが、そういう点がいわゆる公益性の強い企業、こういうふうに言えるのではないか。そういう意味ではこの国有鉄道も地方鉄道も、そうした点では多少濃淡の差はありましても、公共性という共通の考え方は当然妥当するのでありまして、もしその意味で本質的に違うという点を御追究になるならば、私の言葉の使い方が悪かつたということをおわびしたいと思います。ただ地方鉄道あるいは、軌道は、そのときどきの一般の経済事情なり、その当時の法律制度とか、補助金政策があつたとかなかつたとか、あるいは税の関係、そういつたようないろいろな点を考慮して、一つの企業として計画をされて、ある地域々々にこれが企業として成立するという前提でおそらくできたものである。こういうふうに考えるのでありますが、国有鉄道の場合には、むしろ全国的な一つの交通網を形成している。そういう点で本質的に少し違う点がある。こういう意味のことを申し上げたのであります。  たとえば国有鉄道については、あるいは全国的に見れば採算線もあり不採算線もあるのですが、しかし全国一律の賃率を採用している。地方鉄道につきましては、貨物運賃については連帶運輸の関係から、国有鉄道と同一の賃率を採用はしておりますが、しかし営業キロについて割増しというものを設定しまして、そうしてその会社の企業計算上から見た観点で、現実の運賃がいかにあるべきかという程度のきめ方はいたしております。あるいは旅客運賃につきましても、あるいは北海道の一番多い所は、キロ当り四円二十銭の運賃をとつております。内地の鉄道にいたしましてもあるいは一円四十五銭、一円六十五銭、あるいは二円、それぞれ個々の私鉄会社の実情によつて原価計算をいたしまして、それぞれ異なつた旅客運賃を定めておる。そういう意味ではいわゆる地方税という点に着目いたしますと、国有鉄道と地方鉄道とは、いささかはつきり違う点がある。こういう意味のことを先ほど実は簡單に申し上げたわけでありまして、あるいは言葉が足りなくて誤解を招いたかと思いますが、一応そういう意味で申し上げたのだということで御了承願いたいと思います。  結論としましては、われわれは国有鉄道に対しては課税をすべからず、それから地方鉄道に対しては非常に收益性の少い企業であり、かつ非常に公益性の強い企業でありますから、現在地方鉄道が負担をしておる税金程度以上に、非常にふくれる税負担をすべらず、こういう考え方で、この地方税の関係に対してはわれわれの意見もまとめて、それぞれ意見を開陳してやつておるというわけであります。
  56. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 ただいまの足羽監督局長の御説明でよくわかりました。大体私の考えておるところと同様なものであるということで、満足をいたしておきます。もとより私設鉄道、軌道等に対する税の問題等については、他日あらためて御質問申し上げたり、私見を申し述べることにいたします。ただいまの御説明で本日は了承いたしました。
  57. 玉置信一

    玉置(信)委員 私簡單に政務次官並びに足羽局長に所見をお伺いし、この際要望しておきたいと存じます。ただいまの局長のお話の、国鉄を非課税とすべしということについては、根本的に意見を同じくするものであります。そこでどうしてこういうことが出て来るかということを——これは私の想像でありますが、おそらく地方の輿論がここへ反映したのではないかと思うのであります。どういうわけかといいますと、もとより国家が全額出資をいたしております国鉄企業体でありまして、しかも公共的使命を果す上に利益を追求していないということは明らかではございますが、今日の国鉄の経営方針を見ますと、私は最近運輸委員会に参りまして、まだはなはだ知識も乏しいのではありますが、しかしながら新線建設の地方からのいろいろな陳情が参りますときに、頭から国鉄は独立採算制であるから、黒字のない、もうけのない所には敷くわけには行かないのだということを主張せられる。これは地方にとつては非常に大きな響きをもつて、国民は受けておるわけであります。ただいまの御説の採算の立つものは八千キロで、不採算が一万一千キロある。この不採算の一万一千キロというものは、今日までの経過のものでありまして、国鉄が独立採算制をとつて以来、新設を入れたものではないのであります。従つて国鉄が主張することは、やはり独立採算制をとなえる以上、当然のように思うのであります。しかしそうしたことを強く主張するというところに、地方の一般国民といたしまして税を納める場合には、固定資産税はともあれ、附加価値税のごとき、今年はもとより一箇年延期されておりますが、当時の委員会等における質疑応答、あるいは世間一般の議論等を観察いたしまして、もうけのないものでも税を拂うということが、附加価値税の建前になる。もうけがあるから拂うのでなく、もうけがなくても国民は納めねばいかぬという、こういうところから採算の合わない国鉄であつても税を納めるべきでないか。独立採算制をとられる以上は、そこに国民一般の頭が待つておるように、私は今日までのいろいろな折衝面において考えておるわけであります。従つて私は劈頭に申し上げましたように、国鉄企業体運営の本質から考えまして、当然非課税とすべきであると考えますが、同時に国鉄自体もう少し経営面に頭を切りかえて、不採算の所も、必要があれば政府の方でやれというならやるというような一点張りを主張されないで、もう少し政治性を持つた考えを持たせるように、運輸省としては国鉄に対して何らかの措置をする考えはないか。こういう点について政務次官並びに局長の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  58. 關谷勝利

    ○關谷説明員 ただいまお話のありましたごとく、国鉄内部におきましては、この独立採算というようなことに非常に重きを置いておるのでありますが、決して公共性ということを無視しておらないのであります。運輸省といたしましても、国鉄は公共事業費をもつてこの新線建設をやつていいというのが希望でありますけれども、今回の予算の編成においても、そのような点があるいは困難ではないかというふうな状態に相なつておるのでありますが、運輸省といたしましては日本の経済を開発する上に、不経済線でありましても、それが国家全般の経済の向上にプラスになるものであれば、これはどうしてもやつて行きたいと考えておりますので、何らか他の財源によつて、公共性のあるものは、国有鉄道で新線を建設せしめるというような方法をとつて行きたいと考えております。
  59. 玉置信一

    玉置(信)委員 昨日の委員会におきましても、管理局設置問題について決議をされたのですが、私ども昨年でありましたか、北海道旭川管区の管理局の設置に伴いまして、その管区を定むる地域的の問題について、国鉄当局の特に天坊氏にもお会いしたのでありますが、当時の国鉄当局の話などを伺つてみましても、やはり独立採算制の問題と、さらに地方住民の輿論を聞く必要はない、かようなことを放言されている。私は適当の機会に運輸大臣の御出席を求めまして、大臣直接の御意見をお伺いしようと考えているのでありますが、実は私と佐々木秀世代議士と二人行つたんですが、代議士がついて来てそうした陳情をする場合に、いかにも政治的運動を加味したごとく口吻を漏らしまして、何ら政治的問題を考える必要はないのだ、私ども何も政治的にどうこうと言わないのに、頭からそういう放言をされた。しかし私は、その政治的にもおのずから限度があるのでありますが、経済は政治を離れてはないということは、何人も否定できないと思うのでありますが、そうした観念で国鉄のしかも幹部が経営の面に当つているということは、非常に運営上に将来危險な面が出て来やしないか、かように考えておりますので、実は先ほど所見を申し上げまして、運輸省の政務次官並びに局長の意見をお伺いしたのでありますが、これに対してもひとつあらためてお二人の御意見をお聞きしたいのであります。
  60. 關谷勝利

    ○關谷説明員 どのように国鉄の一部の者が申しましたか知りませんけれども、かつても加賀山総裁も議会でよく皆様方にはつきり申し上げております通りでありまして、議会の決議というものに対しましては尊重するのでなくして、絶対服従する、こういう意見も述べておりますし、議会は輿論を代表しているのでありますから、決して輿論を聞く必要はないというようなことをたといだれが申しておりましても、そのようなことはないのでありまして、皆様方の御意見をよく聞きまして、適切なる御意見に対しましては従うべきものである、かように私は解釈いたしております。
  61. 足羽則之

    ○足羽説明員 いろいろお話があつたのでありますが、私の考えでは、十分にいろいろな御意見のあるところはお伺いすべきはお伺いをして、それに対してでき得るだけの考えをめぐらして、そうして結論を出す。こういう謙虚な気持が望ましい、こういうふうに考えております。あるいは問題によりましては、お言葉を返すようでありますが、御意見と違つた結論が出る場合だつて、もちろんあり得ると思うのでありますが、しかしすべてのいろいろな御意見に対しては、十分に誠意をもつて検討をして、そしてこれを考える、こういう態度、考え方が望ましい、こういうふうに私考えております。従つてただいまのようなお話の点につきましては、私の方としては十分に注意をしたい、こう考えております。
  62. 玉置信一

    玉置(信)委員 よく政務次官並びに局長の御意見を了承いたしましたが、重ねて要望しておきたいことは、ただいま局長も申されたように、謙虚の気持で地方の輿論を受入れて検討するという態度は、きわめて望ましいことなのであります。それをやらないで、頭から国鉄は国鉄の方針によつて、われわれは独自の立場からやるのだという観点から、国鉄経営の面に当りますがゆえに、今回委員各位が全国的にまわりまして、四管理局はどうしてもつくらなければならぬという地方の輿論を反映して、昨日の決議になつたようなわけでありまして、決して国鉄自身の考え方が私は万全であるとは申し上げられないと思う。やはり地方の輿論というものをある程度まで検討し、忖度しなければ、万全なる行政は行われないという考えを持つておりますので、重ねてどうか監督の任に当ります運輸省当局といたしましては、国鉄に対して常にそうした御方針を反映さしていただくよう要望して、私の質問を終らせていただきます。
  63. 石野久男

    ○石野委員 地方税法の問題に関しましても、足羽監督局長のお話は非常に私ども了とするところでありまして、特にこの問題は、鉄道の持つ公益性と独算制との、何と申しますか、矛盾しておる面を露呈しておるもののように私は思つております。この問題は本質的に言えば、昨年のコーポレーションに移行のときにおけるわれわれの主張であるところの問題にも、さかのぼつて来ると思つておます。しかしこういうところでそういう議論をいたしましてもしかたがないのでありますが、とにもかくにも鉄道の持つ公益性を守るために、地方税法等に対する御当局のお考えを、私どもはやはり国会において十分反映して行くようにして行きたい、こういうふうに考えております。その際私は最もこの問題が現在の機構の上で大きく出ておるところとして、これは次官にまた御所見を承りたいのでございますけれども、いわゆる省営自動車の問題は、特に地方業者との間における問題点になつて来ておるのではないか。ここにおけるいわゆる独算制の施行ということが、非常に困難な状態に置かれて来ておると私は思うのであります。この問題について私は運輸省としても、また国鉄としても、今後省営自動車と一般の地方の自動車の営業者との間におけるところの今日起きておる問題点を、どのように公益性と独算制とをかみ合せた線として、打開して行く考え方を持つておられるかということについての御所見を、一応お承りしておきたいと考えます。
  64. 關谷勝利

    ○關谷説明員 運輸省といたしましては、御説の通り公益性と独算制とをかみ合せて考慮いたしたいと考えております。
  65. 石野久男

    ○石野委員 ただいま非常に要領のいい御答弁をいただいたのでありますが、ちよつとわからなくなりましたが、私その点を聞きたかつたのでありまして、いま一応關谷次官にお尋ねいたしますが、特に私ども今回の視察を通じまして各地で聞きましたことは、この省営自動車の独算制の問題と地方の同業者との問における問題点を、どういうふうに議会は解決してくれるかという質問を受けました。もちろん議会——われわれも当然これについて考えなければなりませんが、特にこれの監督官庁であるところの皆さん方がどのように考えておられるかということを、私は聞きたかつたのであります。公益性と独算制の問題を兼ね合せるといいますけれども、実際片方はいろいろな法令で縛られておりますし、地方業者の方がどんどん営業権を拡大して来るために起きて来るトラブルが、各所に見られるのでございます。そういう具体的な問題についての一応御所見を承りたいと存じます。
  66. 關谷勝利

    ○關谷説明員 国鉄がやつておりまするのは、大体国有鉄道と関連性のあるもののみをやつておりますので、独立採算、こういうふうな面のみを考えておるのではなくて、公共性、鉄道の連絡というような立場に立つていたしております。
  67. 石野久男

    ○石野委員 従つてその見地から行きますと、相当程度自動車営業をやつておられるところで出る採算制の問題における困難性ということについて、公益性という立場から、いわゆる財政的処置、あるいは国家的な補助というようなものをお考えになつておるという意味でありますか。そういう点から補備して行こうというお考えがあるのかどうかということであります。
  68. 足羽則之

    ○足羽説明員 実はこの問題は、具体的な事例によつて御返答を申し上げることが一番適当な問題でありまして、あまり抽象的な論議では、実は核心に触れぬというような感じがするので、ちよつと御返答も困難かと思うのでありますが、国営自動車には、その使命としての一定の限界があるはずでございます。すなわち国有鉄道の経営に関連をした使命というものがあるはずだと思うのであります。従つて具体的な問題について、どういう問題で御質問になつておるかわかりませんが、推測いたしますと、独立採算制という声が非常に強く叫ばれるあまりに、あるいは末端の自動車区におきまして、あるいは臨時の運転をする場合に、それが程度を逸脱するような場合があるとか、あるいは運転回数の問題とか、いろいろ多かつたとか少かつたとか、そういつたような問題、あるいは現在民営路線があるところに対して、新しく国有鉄道のバスが路線を伸長したいというような意見が地方的にあつて、そういうことをやられちや困るというので、そういうことに対する予防的な非難とか、そういつたようなものが実際的な問題として方々にあるのじやないか、こう私は思うのであります。それらの問題につきましては、あるいは路線の延長等につきましては、これははつきり私たちのところまで参りますので、私たちこれに関與をいたして、十分に論議はいたすつもりでございます。個々の、あるいは運転回数の増加の問題などにつきましては、あるいは地方を刺激するような問題が実情として多少あるかもしれませんが、しかしそれらについては、ふだんかねがね国有鉄道に関連する国営バスの運営の使命という問題については論議をいたしておりますから、大体の大綱としてはそう踏みはずさないで運営をされるもの、あるいは実際問題としてそういうことが多少ありましても、そうでなく運営されるように進んで行くものと考えておりますし、なおそういう点につきましても十分に気をつけて行きたい、こういうように考えております。
  69. 石野久男

    ○石野委員 私はただいまの局長の御説明で、大体のお考えはわかつたのでありまするけれども、今局長が申しておられるように、具体的なものは話を聞かないと、やはり御返答をいただくことは非常に困難だろうと思うのであります。従つてこの具体的な問題については、他日いま一度この問題について御意見を承りたい。本日はこれで打切ります。
  70. 滿尾君亮

    滿尾委員 ただいま国営自動車に関する政府委員の御答弁でありますが、私その点について少しお尋ねしたい。国鉄の独立採算制というものの動きを見ておりますと、国鉄プロパーの部門と国営自動車の部門と、それぞれ別に一応独立採算制を考えて運営せられておるきらいがあるように見受けられる。ところが今日の国営自動車の路線の大部分は、建設線の代行もしくは先行の性格を持つてスタートした線である。従つて初めから採算に合わぬことは明らかである。さるしかいないような山の中を貫通して環状線を形成して、ここに鉄道と自動車を連ねて交通網を形成しておるのである。そういう線に向つて、むりに自動車だけで採算を何とかしようという努力をしておるように見受けられる。そこに今日の国鉄自動車の経営の上に非常なむりがある。従つて監督官庁としてかような末端の技術的な考え方を拔け出て、どうしてもこれは国鉄全体としての独立採算制のわくの中に融け込むように御指導になつたらどうか、この点についてのお考えを承りたい。
  71. 足羽則之

    ○足羽説明員 その点につきましては、ただいま滿尾さんのおつしやつた考え方と、私たちはまつたく同意見でありまして、国有鉄道と国営自動車というものは、おのおの独立して別個に考えらるべきものではない。この点は一番初めにおのずからそこに使命があるべきはずだという言い方の中に、実はその気持を含めて、はつきりとは申し上げませんでしたが、私たちはそう考えておるわけであります。従つてお話の点は同意見でありまして、今後そういうふうに考えていろいろやつて行きたい、こういうふうに思つております。ただ実情といたしましては、現場の末端で、国営自動車が独立採算制という名前で、全体の経営能率を上げるというやり方を施行いたしましたのは、まず国営自動車の部門から始まつたわけであります。その点で現場の末端が非常に気負つておるという感じは、われわれとして看取されるのでありまして、むしろその点についてもう少し統一をして、今滿尾さんのお話になりましたような考え方ではつきり行くべきではないか、こういうふうなことをかねがね話し合つています。こういうふうに御承知願いたいと思います。
  72. 滿尾君亮

    滿尾委員 大体のお考えは私どもと同意見でありますが、しからばそのお考えを監督行政の上で現実に現わしていただいて、国鉄の指導の上にその方針を吐露していただきたいということを要望しておきます。  さらに民営バスとの競争の問題になりますと、民営側からいうと、国鉄バスは免税の特権に隠れておる。従つて国家の資本による不当競争をいどんでおるという問題になつて来る。これはなかなかむずかしい問題になつて参りますが、これは結局わが国の陸上交通の体系をどういうふうに組み立てるかという問題にかかつて来ると私は思う。従つて国鉄の自動車というものが、鉄道と自動車とをくつつけて、一環経営によるところの一つの交通のシステムを打立てるというところにありますならば、私は今の不当競争論を排除して、ある程度まで交通網を完成していただきたいと考える。従来はとかく民営の不当競争論に押され、片方は独立採算制に押され、まつたく最近数年間におけるところの国鉄自動車の運営、ないしは新しい企画に対する意欲を非常に消沈してしまつている。ところがわが国は相当交通が普及しておるようでありますけれども、まだ山間僻地に行けばいくらか足りぬところがある。従つて同僚尾崎委員からもお話が出ましたように、新線建設の要望は非常に強い。これに対しまして新線建設ができればよいが、これは資本的に技術的にいろいろな制約があつて、急速には延びない。してみれば、やはりある時期に新線ができるまでの間、国鉄自動車の経営というものが、そこの穴を埋めるだけの働きがあると思いますから、これについて民間の今申し上げます角度からの非難のみにおびえて、いたずらに萎薇退嬰に陷らぬように御指導願いたいと思いますが、御所見を伺いたい。
  73. 足羽則之

    ○足羽説明員 ただいまのお話の前段の問題は、自動車局とも関係しておるのではないかと思いますので、あとで答弁していただくことにいたしまして、あとの新線をつくれ、そして鉄道と総合した考え方で新線をつくつて行くという点についてのお答えをいたします。  もちろん国鉄のバスに対する希望というものは非常に強うございまして、これに対してはもちろん適当な程度に、何とかこれに対応するということは当然考えられるのでありますが、御承知のような関係方面の意向が、国営自動車に対する新線というものは全然認めない。こういう行き方が非常に強いものでありますから、ここ一、二年そうした面での活動が非常に沈滯しておることは、事実であろうと思うのであります。しかしこれも実際問題といたしましては、あるいは既存の国営自動車の路線のある所そういう所でこれを少し拡張をするとか、地方の御希望に沿い得る所などは少しずついたしておる。そういう実情でありまして、よく具体的な問題について検討してやりまして、御趣旨のような方向に行くべきではないか、こういうふうに思つております。
  74. 中村豊

    ○中村説明員 国鉄自動車と民営自動車との関係についていろいろ御質問がございましたが、それに関するこちらの考えは、ただいま政務次官及び鉄道監督局長からお話になつ通りでございますが、自動車局としての考えをさらに敷衍して申し上げますならば、ただいまいろいろこちらで御答弁申し上げましたように、国鉄自動車というものはその性格は国有鉄道に関達する路線である。従つてこれは鉄道建設線の先行、代行、短絡ということがいわれておりますが、そういう性格を主として持つているものでありますから、おのずからその使命が限定されております。従つて各地において国鉄自動車を開業しろという御陳情や請願がありました場合に、その條件に該当するものはもちろんさしつかえないのでありまするが、そうでない場合には相当問題が起る。各地でいろいろ問題を起しておりますのは、現に民営業者のあるところに、新しく国鉄自動車が延長して来るという場合と、それから民営自動車も国鉄自動車も何もない新しい路線、そこに新しい交通需要が生れまして、両方が競願になる場合が一番問題になるわけでありますが、最初の場合においては民営自動車がすでにある。ただそれが十分のサービスを提供しないために、住民の不満を買つている。そういう民営のバスにとうてい期待できないから、国鉄自動車にぜせ入つてくれ、こういう要望であるわけです。これについては、なるほどサービスの悪い点はなはだけしからぬと思うのであかますが、終戰前後のあの資材の状況では、当時としてはある程度輸送力の低下はやむを得なかつた。しかしながら最近の事情においては、そういうことは認むべきではありませんから、そういう場合には十分こちらとしてはやかましく実情を調べ、輸送力をふやす、バスの回数をふやすことを指導しまして、できるだけすでにある民営自動車でもつて需要をまかなわせるという方法をとつて、国鉄自動車がさらにそれに出ることによつて、トラブルを起すことを避けたいというふうにやつているのであります。また新しい線について両方が競願になつた場合いかんという問題でありますが、これは新しい線といたしましてどちらでもよろしい。むしろ国鉄自動車の方が信用もあり、実力もあるからいいんじやないかと考えられるのであります。そこでついてまわるのは、国鉄自動車の性格論として、国有鉄道と関連するものであるかどうかということが、一つのブレーキになるわけであります。また民営自動車がそこに申請をしたのは、その付近にある民営業者が、さらに自分の線を近所から延ばすというような問題であるならば、ある程度そこにおける民営業者の地盤といいますか、領域、分野というものを考えてやつて、民営自動車にそれだけの事業をやる資力、信用、興業力があるならばそれに許してやつていいじやないか、こういうように考えるわけでありますが、第二の問題については、これは具体的な事例について考えなければいけない、かように思つて、いろいろ問題に当るごとに、鉄道監督局の方と御相談しながらやつているわけでございます。なお先ほどお話のありました独立採算の問題でありますが、これまたしばしば答弁がありましたように、結局独立採算制を国鉄自動車だけでとるべきであるとは、われわれも思つておりませんので、日本国有鉄道が鉄道、自動車を通じて、全部で独立採算制であればいいのである。だから独立採算制ということを大きく言うのである。ただでさえ非能率になつて不採算的になるような経営を激励する意味で、高能率の経営をしろという旗じるしのために、ああいう言葉を使つておるのだとわれわれは理解しておりますし、国鉄当局に対しても、そういうつもりでやつてくれということを、われわれの立場からも申しておるわけでございます。私の方からもそれだけ申し上げておきます。     —————————————
  75. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 次に運輸省の機構改正に関する件を議題といたします。荒木官房長より説明を求めます。
  76. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 運輸省の機構改革につきまして、今日の段階におきまして具体的な案、たとえばどの局をなくするとか、どの地方の機構のどれをなくするとかいうような、具体的な案が提示されておるという段階には来ておりません。そうかといつて運輸省、その他行政官庁の機構の改正問題が消えてしまつてなくなつているかといえば、そういう関係ではないのでございまして、御存じのように内閣に行政制度審議会が設けられまして、今年の春その審議会が、政府に対して答申をいたしておるのでございます。政府としてはこの答申を参考として、目下行政管理庁において、機構の改正ということが研究されておるようでございます。行政制度審議会で答申されました案は、大まかに申しますと、本省につきましては船員局を改組する。それから港湾の関係仕事はこれを建設省に移管する。それから観光部と厚生省にあります国立公園部とを統合して、内閣に観光庁というものをつくる。それから気象台を建設省に移すというような案が、政府に答申されておるわけでございます。それにつきましては、われわれはこの案は賛成することができないということにつきまして、根拠を示してわれわれの意見を開陳しておる次第でございますし、前々国会のときでございましたか、それに関する運輸省の意見を申し述べておいた次第でございます。その後におきましては、具体的に進んでおるということはないのでございますが、ただ御存じのように行政制度調査委員会議におきまして、国でやるべき事務と地方公共団体でやるべき事務との、いわゆる行政事務の再配分ということがその委員会議におきまして、目下研究検討されておる状態でございます。シヤウプ博士がやがて明日でございますか帰られるということで、急がれまして、中間段階の意見として、行政制度調査委員会議からシヤウプ博士に提示された案があるということを承つております。その内容は、仄聞するところによりますと、いわゆる道路運送に関しましては、二府県にまたがらないもの、一府県内に限定されておるものについては、これは国政事務ではなくて、地方の事務にしてしかるべきではなかろうか。あるいはまた地方鉄道、軌道に関しましては、御承知のように現在法律上、地方鉄道と軌道とわかれておりますが、地方鉄道であるべき性質のものが、できたときの事情その他から軌道ということに相なつておるものがたくさんあるわけでございますが、そういうものを本来の姿に直して、いわゆる軌道であつて地方鉄道的なものは地方鉄道に返還して、その残りの軌道、いわゆる市電のようなものは、地方にまかせたらよろしいのではないか、こういつたような意見がシヤウプ博士のところに提出されておるやに聞き及んでおるわけでございます。以上が大体現在までの経過でございまして、この行政制度調査委員会議の案は最後的なものではございませんで、行政制度調査委員会議の最後的なものがきまりますと、その案を内閣と国会に提示して勧告する、こういうことになる段取りと拜聽いたしております。そこでわれわれといたしましては、今具体的に案が提示されておるという段階でございませんので、積極的にどこに働きかけまして、われわれの意見を具体的に開陳するという相手がないというような実情でございますけれども、将来行政管理庁その他において目下研究されておりますから、あるいは行政機構改革の案が具体的なものとして提示される場合があり得るのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  しからば運輸省の意見はどういうふうであるかと申しますと、道監事務所の問題等のときにも、すでにつくりました部分も多々あるわけでございますがー応総論的にまとめて申しますと、大体この交通運輸事業に対する監督行政というものが必要であるということを、ます強調したいと思うのでございまして、これはあまりにもりくつめくようでございますけれども、いろいろの統制事務は、御存じのように戰時中に起りまして、戰争中の必要がなくなつたならば、これはなくなつてしかるべきものであり、逐次なくなつて来ておる状態でございますが、この運輸事業につきましては、これを自由放任にして、濫立を許す、あるいは運賃も自由にするというようなことでありますと、あるいは共倒れになる、あるいは公衆に非常に圧迫を加える。特に交通事業がいわゆる競争線で、幾つもあるというような場合にはよろしいのでありますが、地方鉄道というようなことになりますと、独占的企業になりますことは当然でありまして、従つてこれに対する運賃等の規制を行わないと、民衆に対して非常に不便を與えるという場合が起り得るわけであります。アメリカにおきましても、最初は自由企業としての鉄道が入つて来ることを歓迎しておつたのでありますが、できてから、独占事業になりましてから、独占の威力を発揮するということで、運賃を上げる、かつてな不平等取扱いをするというようなことから、反対の声が広まりまして、この鉄道に対する規制を始める。こういうような実情でありまして、この運輸行政に対する監督行政、いわゆる運輸行政を規制するとともに、その保護育成をはかるということは、運輸行政の、いかなる時代においても儼然として存在すべき線であるということを、まず考えておるわけでございます。  次に運輸事業の活動範囲は、御存じのようにますます広くなつて来ておるわけでございまして、自動車の行動半径、地方鉄道、軌道におきましても、その行動半径というものが、非常に伸びて来ておるわけでございます。経済活動の範囲がだんだん広まるに従つて、運輸事業の活動範囲が広まつて来ておる。こういう事情でございまして、県の行政区画、県の境でもつて自動車の運行がとまる、あるいは鉄道線路をぶつた切るというようなことができないということは、もう私から申し上げるまでもなく、きわめて明瞭なことであるわけでございます。従つてこの運輸事業に対する行政というものは、その経済実態に応じて、広い地域を單位として、それをまとめて眺めてみなければならないということは、申すまでもないのでございまして、特に御留意を願いたいと思いますのは、現在シヤウプ博士その他によつて考えられております地方制度というものは、アメリカの考えを取入れるということが非常に強いのでございますが、御承知のようにアメリカは、合衆国が、国が先にできて、それから自治体的な州ができたという関係ではございませんで、州がまず独立国としてできまして、それが合さつて合衆国になつた。だから州の方が先に独立国としてできて、それが集まつて一つの国ができたという事情でございまして、しかもそのアメリカの地域は実に広大なものであります。わが日本の国は、アメリカの一州であるカリフオルニア州よりやや小さいというようなわけでございます。そういつた歴史的な沿革があるからこそ、アメリカでは依然としてその交通行政に関しましても、州というものが強い力を持つておるのでありますが、その歴史的な事情を無視して、アメリカ式のものをわが国に入れるということ自体が間違いであると同時に、また交通行政というものが、常に地域と関連して行かなければならないにもかかわらず、カリフオルニア州よりも小さいような日本の国を、四十六の府県にぶつたつて、小さくわけて、それによつて個々別々な行政を行うということは、まことに実情に即さない。むしろアメリカの制度を、わが国の実情を認識しないで移し植えるということであつて、さようなことになりますることはまことに遺憾にたえない、かように考えておる次第であります。今申し上げましたのは、運輸事業というものは広い地域にわたつて行動しておるからして、それに対する行政は、一つの県というような境によつて、ぶつたつてつてはいけないということを申し上げたのであります。さらにこの運輸事業は、御存じのように鉄道、自動車、船、やがて出現するでありましようところの飛行機というようなものが、相互に競争しておりますと同時に、相互に依存関係に立つておるわけでございまして、これを一体的にながめて、一つの場所から総合的に調和的に育成し、規整して行かなければならないと考えるのでございます。たとえば運賃について、二府県にまたがるものはこれは国が運賃を見る。一府県内だけのものは、県が運賃を免許するということになりますと、まことに下自然なことが起るのでありまして、県内だけに限つておるというものは非常に少いのでございますが、かりにそういうものに関しまして、運賃をきめるということになりますと、地方が独立して運賃をきめる、そうすると運賃がキロについてごくわずかの金額違いでありましても、その旅客の移動に不自然なものが起りまして混乱を起す。こういうことが多分にあり得るわけでございます。アメリカにおきましてもそういう事例があつて、非常に困つておるという事例がございますが、その事例はあげることを省略いたしますが、この点をぜひ御考慮に入れていただきたいと、かように考えるわけであります。  なおもう一つ、この問題についてお考え願わなければなりませんのは、運輸交通に関しましては、人命に関する場合が非常に多いのでございまして、その運輸交通機関の検査、取締りということを嚴重にしなければならないわけでありますが、その検査、取締りをするにつきましては、あるいは電気とか、車両、保安、信号装置というような專門的な技術者を必要とするわけでございます。一人の技術者が何でもやれるわけのものではございませんで、相当数の各分化された專門の技術者を持つておらなければならないわけでございますが、それを府県單位にぶつた切るということになりますと、自然——府県においてさように各種專門家を相当数收容しておるということは、事実上できないことで、この技術的監督面の陣容が低下するということは、きわめてゆゆしき問題であると考えるのでございます。以上のような考え方からいたしまして、どうしても運輸行政は国の事務として、地方にわけて個々別々にやり、府県の行政に移すべきものではない、こういうことを主張いたしたい、かように考えておるわけでございます。  なお運輸省の本省の機構に関しまして、船員局を廃止し、陸運局と自動車局と鉄道監督局を一緒にするというような議論も一部にあるようでございますが、そういつたことも実情に即さないものであるということは、すでにしばしば申し上げておるところでございます。この点につきましてもわれわれは強くそういうことを主張したいと、かように考えておる次第であります。  なおこの行政のあり方ということに関しましては、どうしても能率を上げるということになりますと、責任の範囲を明確にして、責任を持たせるという態勢をとらなければいけない。かように考えるわけでございますが、とにかく局を減らせばよろしい、こういう程度でありますが、局を減らしても人間の数の減ることはきわめて少いのでありまして、人間は逐次全体的にふやして行くことは当然でありますが、その手段として、責任の限界を不明確にして、能率の低下を来すような行政機構のつくり方は、これは戰争前の考え方であればとにかく、現在のように能率と責任を強調する時代におきましては、まことにそういつた局の数をめちやくちやに減らすというような考え方は、能率と責任という点から考えまして、まことに時代逆行的な残念な考え方であると考えております。この点についても十分御認識をいただきたいと考えておる次第であります。  大体現在までの経過と私たちが考えておりますことを申し上げた次第でございます。
  77. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの荒木官房長よりの説明に対し、御質疑がありましたらこれを許します。
  78. 滿尾君亮

    滿尾委員 質問でもないのでありますが、実は動議を提出したい。ただいまの御説明によつて、大体地方税並びに行政制度の改革が進行している模様を、おぼろげながら承つたのでありますが、結局こういうものはすべて具体的に案ができ上る前に、いろいろ意見を開陳しなければ何にもならない。固まつてしまつたあとでは手遅れであります。従つで当委員会としては、なるべく最近の機会に、地方自治庁並びに地方財政委員会、行政管理庁の方々にここへ来ていただきまして、現在草案としてどういうふうなことを考えておられるのか。それに対しましてわれわれも質疑をいたしまして、多少の意見の交換をし、その意見の交換を通じて、これらのところにおいて作成せられる原案に、当運輸委員会の意向を織り込んでもらうように努力することが、一番有効適切であろうと考えられる。願わくば次のできるだけ早い機会において、さような措置委員長においてとられんことを希望いたします。
  79. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの滿尾君の動議に御意見ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 ただいまの動議を決議いたしまして、適当の機会に委員会を開くことにいたします。     —————————————
  81. 大澤嘉平治

    大澤委員長代理 畠山委員より、三島駅を東京鉄道局管内に編入されたいとの意見につき、発言を求められておりますので、これを許します。
  82. 畠山鶴吉

    ○畠山(鶴)委員 ただいま委員長が御指示になりました三島駅を東鉄管内に編入してもらいたいということは、すでに七月の委員会におきまして、この機構改革のときにも申し上げてあることでありますが、私どもはこのたび地方をまわつて参りましたいろいろな関係からいたしまして、各地にも実質上かような必要な所がたくさんあることを認めて参りましたが、特に三島駅を東鉄に編入してもらいたいということは、申すまでもなく伊豆半島という大きな島は、この熱海の線と三島の線によつて、いわば裏と表のような関係からいたしまして、交通から産物から、あらゆる人事の問題をこれによつてつておるのであります。ことにこの伊豆半島は、温泉地ばかりで二十八箇所という、全国まれにみるところの観光温泉地であります関係上、おのずからこれを取扱うお客様にいたしましても、諸物産にいたしましても、同一の所から東京方面の観客を相手にしております関係上、これが取扱い上裏と表になつたのでは、非常に不利益である。同時にまた鉄道の收入方面におきましても、大きに欠陥ができるのではないかということを考えまして、私どもは地元全部の人の要望によりまして、この機会に東鉄管内に編入されたいことを重ねて御希望申し上げ、御理解をいただきたいと思います。  それからただいま荒木官房長が、機構改革の中に観光面のことを申されましたので、この機会に私の考えております観光面のことについて、一言申し上げてみたいと思います。ただいま荒木官房長のお話の中にもありましたが、まずアメリカの観光行政というものが、どういうふうになつておるかということをお尋ねしてみたい。日本の観光事業におきましては、私は第六国会におきましては、厚生省が非常に国立公園問題と観光という面を主張されておりますので、実際にどこに真意があるかということを見届けるために、厚生委員になつたのでありますが、しかし行つてみれば、何ら施策もなく、ただ国立公園が観光地を独占しているような立場からして、これを主張しておるのであります。また私はこのたび運輸委員となりまして、この運輸の観光面を調べておりますが、運輸省におきましては観光部ができて、つまり交通面等には非常に力を入れておりますし、在来の実績もありますので、この点におきましては何人にも劣らないところでありますけれども、ただここに観光面を確立させようという場合に、何が必要だかということを考えますと、言うまでもなく道路の整備、あるいは衞生施設であり、この問題を解決する場合には、運輸省にはこの施策がないことと、また私どもは運輸省に施策がないから、運輸委員会の中に観光小委員会をつくりまして、皆さんの御協力をいただいて、どういう方向に進んだら観光面が確立するかということをひそかに検討いたしておりましたが、しかし実際問題におきましては、一つも現われておりません。観光の仕事をするには、そこにまず予算という大きな裏づけがなければ、何事もできないのでありますが、ただいたずらに在来の交通問題をひつ下げて観光面をとなえたところで、この観光運営問題が進まないことは明らかであります。このたび私どもは、いろいろ視察をするために、北海道及び九州の南端まで、あらゆる交通問題、あるいは道路問題、観光問題を視察して参りましたが、日本の観光問題ということは、いまさら申し上げるまでもなく前途洋々たるものがあります。この日本の天然資源を活用いたしまして、言いかえますならば日本を建直さなければならない立場にあるこの観光事業が、口だけとなえられておりまして、一つも実質的に進んでおりません。しかし日本のすみずみまで歩いてみましても、どこへ行つてもバスができれば観光バス、何かができれば観光何とか、観光みやげ、あるいは観光協会というようなぐあいに、文字だけは非常に使われておりますが、実質的におきましては、道路が一つもできておらない、また衞生問題が一つも整備されていない、また観光に従事する従業員と、接客に直接関係のある人たちが、観光の意識、教養というものが少しもできておりません。これでは国際観光をとなえる日本の立場からいたしまして、ゆゆしき問題であると思う。また内閣におきましては観光審議会をつくり、運輸委員会におきましては観光小委員会をつくり、これがどうもきつねとたぬきのにらみ合いみたいな結果になつておりますし、ただいま官房長が言われたように、このたび地方行政委員会におきましては、どうしても内閣の所属として観光庁くらいつくらなければならないという声が高いのでありますが、これは当然のことであります。しかし運輸省としてはこれに不賛成のようでありますが、私ども決して内閣の外庁として観光庁をつくるということを、別に固執するものではありませんけれども、現在のような状態で、運輸省がいたずらに観光部を設けて観光をとなえているということは、国際的の信用の見地からいたしましても、今後日本が世界を相手に平和国家を建設する上におきましても、非常に欠けているのじやないか、こういうような点をいろいろ考え合せますと、どうしてもこの機会に、運輸省が観光部をいつまでも保持しておるならば、それだけの予算の捻出なり、それだけの機構を確立さしてもらわなければ、私どもとしては観光事業の発展はでき得ないことと思う。またこの観光という問題につきましては、いろいろの面が横たわつておりますけれども、現在の国家の経済問題からいたしまして、そう一概には大きな予算をもつて、りつぱなものをつくるということはできません。私はいつも地方をまわつてつているのでありますが、観光事業といえばホテルか娯楽場をつくつて、それらで金もうけをするんだというふうに、地方の百姓やあるいは企業家の方はそう言つておりますが、私は決してそういうものではないと思う。観光事業というものは、まず道路とか、あるいは衞生問題の解決とか、また外国人が来てもはずかしくないものをつくるという、その裏づけに一番必要なのは、まず食糧問題を解決するのに、農業の方がもう少し観光意識を持つてもらつて、外国のお客様が来ても、化学肥料によつてつくられた野菜が食べられるようになり、また順次食糧もくだものも、あるいは現在発達しております酪農等も、もう少し改善して、外国からはるばる来たお客様に、珍しいものを上げる、新鮮なものを上げるようにすることであつて、そういうことができなかつたならば、いくら観光事業をとなえても、これは何もならないことであります。戰争中ならカン詰でも持つて来いということも言えましようが、今の場合これらの問題を解決するのだということを、私ども力は足りませんけれども、各地でとなえてまわつております。しかるに根本問題が解決しない今日でありますから、私どもがただいたずらにとなえましたところで、これが実現しないのははなはだ残念の至りでありますが、私どもは決して内閣の外庁へ観光庁を持つて行くとかどうとかいうことでなく、せつかく運輸省が観光部を置いて、観光行政を確立させようという立場にあるならば、もう少し確実性のある、予算のある、実行力のあるものをつくつていたたきたい。さもなくばこれはただかんばんをもらつているにすぎないのじやないかということを考えますので、この機会に、官房長はアメリカの観光行政をいろいろ御視察なさいましたが、アメリカでは観光部面の予算というものは、一体どういうふうに捻出しているかということの御研究と、どういう運営方法をしているかということをお伺いしてみたいと存じます。
  83. 足羽則之

    ○足羽説明員 三島駅を東京鉄道管理局に編入してほしいという御陳情でございますが、よく御趣旨のほどを体しまして研究をさせたい、こう考えております。
  84. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 今畠山委員から、運輸省で担当しております観光行政について、御叱正と御鞭撻をいただきましたことは、まことに恐縮に存じ、ありがたく考えます。ぜひともわが国におきましては、見えざる輸出としての観光を盛んにするということは、もう何人もその必要性を認めるものでありますし、また国をあげてこれに力を注ぐべきであるということはよく考えておるわけでありますが、その行政面におきまして、道路は建設省に属する、あるいは国立公園は厚生省に属する、輸送その他の観光一般は運輸省に属するという実情でございまして、これを統合するということはまことに望ましいことだと思います。しかしながら道路に関しましては、御承知のように観光のみに使うというような面でもございませんので、あるいは道路まで包攝するということは、実情から見てなかなか困難ではなかろうかと思いますが、少くとも国立公園に関する行政は統合すべきものではなかろうか、かように考えております。内閣に付属せしめるということは、従来の実績から見て適当でないし、そういうことによりまして、さらにまた関係が運輸省に残り、厚生省に残り、建設省に残るという関係でございますから、そういうことのないように直接に運輸省に統合できる部分は統合すべきものだと確信いたしておるわけであります。なお予算その他をとつて強力に推進しろというお話でございますが、この点につきましては山崎大臣を初め、今回の予算折衝につきましても、大いに努力をいたして来ておるわけでございますが、御存じのように国家財政の見地から、にわかに多額をとるということもできないというような実情であるわけでございます。なおアメリカの観光行政について話をしろということでございますが、実は私はこの方を十分研究したわけでもございません。ただアメリカにおきましては、国際観光事業というものを奨励するというような国策はないのでございまして、御存じのようにアメリカは非常に受取り勘定になつておりまして、むしろアメリカ人が外国に観光に出かけるということを、国としては奨励しておるというような実情でございまして、観光行政に関しましては、われわれ日本として参考になるのはヨーロツパでございまして、イギリスが貿易が思うように進みませんので、見えざる貿易を推進せしめるという意味で、国をあげて力を入れております。品目別に繊維とか鉄とかいうようなものを輸出しておりますが、その金額は観光客の落す金額からいいますと、観光の分が一番高くなつておる。いわゆる見えざる貿易としての観光收入を、貿易の面で一体的に言いますと、日本では繊維が一番多いというようなことでございましようが、イギリスでは観光收入が多い、こういう実情になつておるようであります。その他スイス、フランス、イタリアというようなところも、非常に国際観光というものに力を入れてやつておるようでございまして、ぜひわれわれ国際観光行政を推進する上におきましては、輸出が振わない、ドルが足りないで困つておりますところのヨーロツパを参考にいたしたいというように考えておるわけでございます。従つて観光部長がアメリカに行くということを聞きまして、私はただちに手紙をやつて、すべからくヨーロツパに行つて見るべしということを申し述べたいと思つていたのでありますが、遂にアメリカに行くことになりまして、イギリスはあとになつたような状況でございます。なお国立公園の問題は、外客を誘致するために国立公園を整備するというような考え方は、アメリカには全然ないのでありまして、風光を保存し、国内の国民の快楽に供するという考え方から、整備しておるようでございます。なお道路は陸運省がある程度発言をいたしておりますが、これは各州が指導権を持つておるというような状態でございます。観光に関する助成というものはほとんどないのでございますが、しいて探してみますと、商工省の一部にあるという状態でございます。御存じのようにアメリカには運輸省がございませんので、商工省でやむなくごくわずかな部分で、あるかないかの状態でやつているというような状態でございます。
  85. 畠山鶴吉

    ○畠山(鶴)委員 荒木官房長から御説明をいただきまして、大体わかつたようなわからないようなことで、今官房長が欧州の観光事業は非常に発達しているが、アメリカの観光事業は発達しておらないというような話でありますが、もちろんそうでありましようが、現在アメリカのあの文化国家の人を、日本の風光明媚の地にどうして呼ぶかということが、まず先決問題であると思います。     〔大澤委員長代理退席、岡田(五)委員長代理着席〕 私はアメリカの観光部面の確立はよく知りませんけれども、私どもの聞き及ぶところによれば、道路の問題にいたしましても、ホテルの問題にいたしましても、あるいは国立公園の問題にいたしましても、完備していることは明らかであります。私はホテルの問題につきましてこのたびいろいろ視察をして参りましたが、日本のホテルはもう問題になりません。先般ホテルの主務官庁の問題にいたしましても、どうしても運輸大臣が主管となるべしだということを主張して参つて、ようやく第八国会の終りにしぶしぶながら、主務大臣は運輸大臣とすることに決定したのであります。第五、第六国会を通じまして、いささかこの点について私ども努力をいたして参つたのでありますが、しかしホテルの主管を運輸大臣にしたということは、言いかえますならば観光事業は運輸大臣の主管にあるということを裏づけた言葉とも言えると思います。そういうような点から考えまして、私はもう少し力を入れてもらいたい。公園問題は厚生省だ、衞生問題も温泉も厚生省だ、道路や家は建設省だ、外国のホテルを監督しているのは通産省だ、文部省は天然資源を監督しているのだというようなことでは、とうてい進歩できません。私は別に外国の例にならえというわけではありませんけれども、運輸省にかりに主管がある程度つている以上は、この機会に運輸省がもつと奮然と立つていただいて、この機構を確立させてもらうというところに、一番必要なことがある。しかし運輸省は非常に間口ばかり広くして、いわば少しけつの拔けているようなところも私はある部分においてあるように思われますが、せつかくこの運輸委員会はお互いに協力一致いたしまして、機構をりつぱにしようというやさきでありますから、おのおの多少なり專門々々がありますから、この機会にこれらを多少運営し、活用して、もう少し人情的なと申しますか、そういう点をぜひ取入れていただいて、りつぱなものをつくつていただきたい。われわれ運輸委員なつた以上、やはり運輸省において、すべての機構なり改革なりができれば、これ以上のことはないのであります。どうかこの点も御理解していただきたい、と同時に今後の観光面につきましては、数限りのないむずかしい問題が横たわつておりますが、業者におきましても、また一般観光業者におきましても、運輸省をたよりにしているのであります。そのたよりにしております運輸省が、どうも羅針盤がない船みたいな観光事業をやつていただいたのでは、はなはだ心細いような気がいたしますので、この際所管は違いましようが、アメリカ帰りの官房長にぜひひとつお力添えをいただきたいと思つて、私はくどくこの点をお願いする次第であります。また詳細につきましては、今後の機会に譲りたいと存じます。
  86. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 畠山委員のおつしやることは、全部われわれの念願しておるところでございまして、ぜひそういうことに強力に進んで行きたいと思いますので、当委員会におかれましても御叱正と御鞭撻と御後援をいただきたいことを切にお願いしておきます。  なお言葉がちよつと足りなかつたかもしれませんが、アメリカには国策として外客を誘致する国際観光という事業、従つてその要請がないということを申し上げまして、ただヨーロツパにおいては、ドルが足りないものだから、むりをしてでも客を引いて行こうという努力をしておるので、そういつた努力をしておるヨーロツパを見るということが、非常に参考になるであろうということを申したわけでございまして、決してアメリカのホテルの設備とか、その他国立公園の設備とか、道路がよくないという趣旨ではございません。ただヨーロツパ諸国は非常な努力を拂つて、アメリカのお客を誘致して外貨の受取りを多くしようと努力しておるから、ぜひわれわれはその苦心をしておることを見、その方法を見て参考にして、日本の国際観光事業を推進したいと考えておるということを申し上げたわけでございます。御了承願います。
  87. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 足羽監督局長に一言お伺いしたいのですが、今回私たちは北海道に参りまして、内地より一足先に機構改革を断行しました国鉄の運営の実情を見て来たのであります。これについて問題は多々あると思いますけれども、そのうち将来かなり問題になるのじやないかという一つの事実がある。それは営業所と管理局の対立の問題であります。たとえば営業部門が業者から貨車の割当を懇請されて、これを引受けたといたしましよう。ところが管理局はこれを承認しないというようなことは起り得ることでありまして、やがてこの問題がこの二つの部門の勢力争いに発展いたしまして、遂にこれに支配の手が及ばなくなる可能性は十分ありと見たのであります。現にわれわれ運輸委員会の委員の目前で、すでに両者の勢力争いだと見られる甲論乙駁の論争が展開されるというような場面がありました。そういう始末でありますので、監督局長はこのことをよく御存じかどうか、御存じだつたら将来はどういうふうにしたらよいか、これについての御見解を伺いたいと思います。
  88. 足羽則之

    ○足羽説明員 ただいまの御質問でございますが、そうした具体的な事例がありますかどうか。実は私まだ寡聞にしてよく承知しておりません。ただそういうことがあり得るのじやないかという議論は、前からあるのであります。しかしながら新しい組織になりまして、すべり出しの当初の不なれな場合には、いろいろな摩擦なり、あるいはうまく行かぬ点も、種々の場合においてあろうかということは、想像もされると思うのであります。ただそうした点も克服するように努力して、今回の改正の大きな長所を生かして行く。こういう大乘的な考え方から、かすにしばらく時日をもつて、その実績がいかに推移して行くか、どういうふうに推進して行くべきものかということが逐次考えられて行く、こういうふうに私考えておる次第でございます。今回の改正がそういう意味でよい実をだんだんと結んで行くように祈つており、またそういう点について折に触れてよく観察をいたし、検討して行きたい、こういうふうに考えております。
  89. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 この際政府にお伺いしたいのですが、これは実は外務大臣が運輸大臣にお伺いしたいことでありますが、本日は出席しておられませんので、政府委員の方でひとつ責任を持つてお答えを願いたいと考える次第です。  まず政府はずつと一貫して、朝鮮問題に関しましては国連に協力するという線を持ち続けて来られたのでありますが、その後情勢は大きく変化して参つたのであります。第八国会の当時は精神的協力と言つておられたのであるけれども、現在でもやはり政府は精神的な協力の限界を守つておられるのかどうか。運輸関係につきまして言いますと、第八臨時国会当時は、占領軍の徴用について私がこの委員会で政府に質問いたしましたときにも、その回答は、これは單なる商取引でありまして、決して強制徴用ではないというお答えであつたのであります。ところが近ごろ政府は、朝鮮問題は占領政策の一環であると答えておられますが、こういう点につきまして、政府の国連協力の限界が相当かわつたのではないかという感じを受けるのでありますけれども、政府の見解はどういうものでしようか。その点をお伺いしたいのです。
  90. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 そういう問題はきわめて重要な国策に関する問題でございまして、遺憾ながらわれわれ事務官においてはつきりした御答弁を申し上げられませんので、大臣なり適当なる方から御聽取願いたい。まことに申訳ございませんが、お許し願いたいと思います。
  91. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 ついでにもう一つお伺いしたいのです。奴隷狩りという言葉がありますが、これは一九六一年の南北戰争以来、アメリカにおいて奴隷制度がいまだはなやかであつたころ、未開地のアフリカで行われた非人道的な行為であつた。私はこれは昔物語りとして承知しておるのでありますが、最近日本にも一九五〇年型の奇怪きわまる奴隷船の実相が、多くの日雇い労働者によつて明らかにされて参つたのであります。実例は幾多あるのでありますけれども、その代表的な一例をあげますと、富山県に滑川というところがあります。ここの職業安定所の人集めに呼応して集まりました失業者、貧困な労働者や農民、大体三十名ほどでありますが、この人たちが職業安定所の職員から、一箇月働いて一万余円は保証する。それから勤務地は横浜である。仕事船舶の荷役である。條件といたしましては、寝具とか住宅、赴任地へ行くための手持資金は一切不要だということであります。こういうことを聞かされたので、非常に條件がいい。そこで一行は喜び勇みまして、指揮者に引率されて横浜の目的地に着いてみると、まず嚴重な体格検査が始められまして、一人々々建物の中に呼び込まれて行つたのであります。あとへ残された一行があたりの雰囲気から不吉な予感を感じまして、そこらにおります武装した警備員に、一体われわれはどんな仕事をするのかというように尋ねたところが、警備員いわく、君、朝鮮行きだよ、マツカーサー・ラインを越えたら給與は二〇〇%、こういうふうな回答であつたのであります。これを聞いた残されたその一行の顔色はさつとかわつた。おれには妻もある、小さい子供もある、戰鬪地に行くのはまつぴらであるというわけで、逃げるようにしてその場所を立ち去つた。神奈川県のある労働組合に救いを求めたのであります。これは去る九月五日のできごとであります。その後先に体格検査を受けた人たちは、やはり朝鮮に行つたものと考えます。何となれば、その人たちから家族に対して、朝鮮に行くんだという手紙が届いておるのであります。奴隷狩りの主人公は日本の政府の労働省であり、そうしてこの計画は大体全国的な規模をもつで行われております。しかも被害者は貧困な日本の人民大衆であります。今や真実を語るのに勇気を要する時代が来たのであります。しかしながらこの勇気は、日本の民族にとつて非常に必要なものであります。本件は運輸行政にもかなり関係があるのであります。こういうことを御存じかどうか、この点について官房長の御意見を伺いたい。
  92. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 われわれといたしましては、さような事実を聞いておりません。なお申し上げますが、職業紹介の事務は運輸省の所管事務でございませんので、われわれとしてはそれに対して御回答申し上げる権能も責任もございません。
  93. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 こういう人たちが船に乘せられて海外へ行つておるのです。運輸行政を担当するあなたがそういうことを知らぬということだつたら、きわめてこれは怠慢だと思う。国家が非常な高給を拂つて皆さんを雇つておる。こういうことを知らぬというようなことでは、まことに申訳ないことじやないか。もつとこれは現地をよく調査して、運輸関係のこういう諸問題は、的確に把握しておいてもらいたいと思う。  それからあるいはまた答えられぬかもしれぬが、こういつた人たちが戰鬪地域へ参りまして、この戰鬪行為に巻き込まれ、やがて負傷する、あるいは戰死する。そうなつたときに、これに対する手当はどうするか。あるいはまたその残された遺家族に対して、どういう処置をとろうとしておるのかというようなことについても、はなはだ、これは大きな問題だと思うのであります。そういう点について、政府の一員として、これははつきりひとつ記憶しておいてもらいたいと思う。またこういう人たちの賃金はどういう形で拂われるか、どういう勘定科目で拂われるかということを御存じだつたら、御説明を願いたいと思います。
  94. 荒木茂久二

    ○荒木説明員 そういうことも知りませんので、はなはだ遺憾でございますけれども、御答弁申し上げることができません。
  95. 岡田五郎

    岡田(五)委員長代理 それでは本日はこの程度をもちまして散会いたします。次会は、先ほどの滿尾委員の動議のごとく、地方財政委員、行政管理庁その他関係者を本委員会に呼びまして、地方税制及び運輸省関係機構改正に関しまして協議いたしたいと存じます。日時は大体二十六日火曜日の午後一時の予定でございますが、正確なところは公報をもつてお知らせいたします。     午後四時三十三分散会