○
参議院事務総長(
近藤英明君)
議員団といたしまして、いろいろ調査いたしました
事項等につきましてお話しろいうことでありますので、申し上げたいと存じますが、実は出かけます前に、
議員団としてはこれこれの問題をとにかく調べようというというので
調査項目をつくり、それにまず重点を置いた次第でございます。しかしながら実際向うに
行つてみると、直接聞かなくてもいいことが多い聞いてもむだであるということが相当ある。もう
一つは、これ以外に調査しなければならぬ面があ
つたということが、一番大きな問題であると思います。それは御承知の通り、徹底した
三権分立主義をと
つておる
アメリカ議会と、一方
議院内閣制がとられておる
日本との間には、大きな開きが当然あ
つて、こちらの
議院内閣制のもとで、
アメリカのこういう点はどうな
つておるかという疑問にぶつか
つた点、これが非常に
違つておるじやないかということが、
感じました
一つの大きな点であります。
第二としては、
法規的に調べました場合には、私
どもが突き進んで聞けば聞くほど、
制度そのもの、あるいは
法律そのものから申しますと、必ずしも完備していないという
感じを受けた点であります。逆にその完備しない
法規が、きわめて円滑に、きわめてうまく
運営されておる。こういう点が一番目についた点でございます。一番はつきりいたしましたのは、
参議院において
懲罰権の発動の問題について、非常に御研究を続け、
継続審査までや
つておりました
関係から、
懲罰委員長からこの点についてかなり細目にわた
つて調査を要求されて参りまして、向うにも資料を要求し、あるいは個々に問い合せましたのでありますが、どうも懲罰のもとになる
議長の
議院規律権というような点が、
法規の面で当
つて行きますと、きわめて簡單に、
ハウスは
懲罰権があり、除名もできるという点がありますだけで、
細目的には非常に大ざつぱで、穴が多い。しからばこれでうまく
行つておるかというと、非常にうまく
行つておるという結論が得られる。幸い
カナダへも呼ばれましたが、
カナダにおきましても、
アメリカの
各州においても、全部その点を当
つてみますと、大体同じことが言えるのであります。
一つは
議長の
院内規律権というものが絶対と
言つていいくらい強い。
従つてまず第一次的には、
議長の
権限をも
つて、あらゆるそういう面が措置できるのじやないかと
感じました。特にその
議長権限の強さというものは、
アメリカも非常に強いのですが、
カナダの場合でも、
議長の
地位は
尊嚴そのものじやないかということを、
議場において現われた面だけでも第一に
感じました。それは
議場において
議長が黒い
ガウンを着てすわ
つておる。
事務総長も黒い
ガウンを着てその横にすわ
つております。
議長が起立されますと、全員何人といえ
ども沈黙して着席しなければならない、こういうことにな
つておる。そこで私は、これがやはり今の懲罰問題にも
関係する点だと思いまして、追究して聞きました。かりに
議長が立
つた場合、なお
討論に熱するあまり、立
つたままで発言してお
つたら、どういう処置をおとりになるかと聞いたら、そういうことはまずないが、もしあるとすれば、
議長はその場合に、どこそこ選出の
議員さんという
言葉で注意を與えられる。その場合には必ずその人は着席しなければならない義務がある。のみならず必ずそれに従うということでありました。なおもう一段突き進んで、その場合になおかつこれに応じない場合には、いかがなされるかと言いましたら、そのときには、どこそこ
選出議員という名誉ある
言葉を使わない。
議長はただちにミスターだれそれという
言葉を使います。これは重大なる事件である。
議長がミスターだれそれということは、通常の場合は考えられない。もし
議長が言われたときには、すぐこれを
守衛長が引出してしまう。これは
議長の職権として、
守衛長がただちに
職務執行を
行つて、その
議員を退場させる。その場合はどうなるかといいますと、ただちに退場を命ぜられる。
守衛長が、どうぞ私について出てくださいという鄭重な
言葉を使うそうであります。そうしますと、それについて出なければならぬ。もちろん
議場に大勢の
守衛がおるわけではございませんから、その点も実は心配して、もし
守衛長がひつぱ
つても出ないときにはどうするかということを聞こうと
思つたのですが、そこまでは遠慮して聞かなか
つた。
守衛長がこちらについて来てくれと言うて連れ出す。そうなれば、その人は再び
ハウスの議決で復席を許されるまでは、一切の
議員としての権能を停止されて、議席に帰れないということを申されました。それから
アメリカの
各州議会におきましても、
そうい点をいろいろ聞いてみていますうち、サウスカロライナのコロンビアの
州議会を見ておりますときに、
守衛長といろいろ休憩中に懇談いたしましたが、あなたの方で
議長の
権限を行使する場合に、何か困ることはないかと言いましたら、非常に考えておりまして、そうだ、三年に一回くらい非常に手をやくことがある。あそこは夜
議会を開くが、夜の会食後に出て来られて、ややごきげんがよくな
つて出席して、発言された場合に、あなたは今夜御遠慮を願いたいと言うと、
自分はきようは大丈夫だからと
言つて続けようとする。そのとき失言をして、酒のせいだということになると、とんでもないことになるからと
言つて、遠慮願うということがある。こういうことを申されました。
そこで
議長の
権限でございますが、
院内においては非常に強い
権限を持たれると同時に、
議長の
権限を表わす態度といいますか、これが非常に厳粛に行われております。と申しますのは、
州議会でも
議長の入場される場合には、
守衛長が
議長の権標、メースと言いますが、
議長の
権威を表わす金の
りつぱな飾り物、王冠のついたものや、劔の形をしたもの、こういうようなものをみな捧持して
議場に入ります。そうして
議長が入られる場合には、全員起立してそれを迎えます。そして
議長が入ると、続いて所薦をする人が入
つて参りまして、その日その日の
祈りをささげます。
ちようどこの日は
日本議員団も来ておるし、
日本国との間に
りつばな
関係を確立するというような、その日その日によ
つてかわ
つた折りの
言葉を使うそうであります。
祈りをささげて、それから
議事に入る。こういう情景のもとで行われますので、やはり
議長の
権限というものが、
法規に現われた以上に強く行われ、
議長の命令によく従わなければならぬという環境に置かれるのではないかということを、特に
感じました。
議長というものが議院の
権威そのものである。一番重要な
機関として、国権の
最高権威が
議長によ
つて表わされる。
議長が一たび
議場に入れば、
議長の職権が行われて、
権威がそこにあるのだという
建前でや
つておるのを見ますと、なるほど
懲罰委員会のような
常任委員会はなくてもよい。
日本の
懲罰委員会のことをつい申しましたら、それは一体どんな
委員会だということで、実はスタンデング・コミテイだと
言つたら、非常にふしぎそうな顏をされまして、これはよけいなことを
言つたと、後悔したくらいでありました。そういう点は確かに
議場の風景がすでにそういうふうにな
つておるのじやないかということを
感じました。
それからもう
一つは、これは皆さん行かれた方が感ぜられた点であると私は思うのでありますが、
議場内における対立的な空気というものが非常に少く感ぜられる、それは、何が原因だろうという点を見ますと、その原因が二つあると思うのです。
一つは独立していて、ま
つたく
行政府と
関係がない。
行政府の
役人は
議場へ出席することができない。
大統領がメッセージを読むことができるだけであ
つて、
議場に
行政府の
役人が現われることはできない。
委員会で証人として呼び出して、
行政府の
役人の
証言を聞くだけであるということで、
行政府との
関係が非常に薄く、またかりに
行政府をいかにやつつけることができても、そのかわりに
行政府をとるという
関係がない。
議院内閣制でないという点から来るのが一点だろうと思います。
それからもう
一つは、
政党組織の点が非常に問題になる。それは
投票がよく割れる。重要な
法案に対してかなり
投票が割れるという状況を見ております。現に私
どもが
ワシントンにおりますとき、二月二十二日は
ワシントンの
誕生日でございまして、正午から祝典が行われ、午後引続いて
会議に入
つた日でございますが、その日はほとんど夜が明けるまで
会議が行われた。
ちようど私
どもは
カナダへ行く予定で、飛行機に乗る
関係から、その
議事には列しなか
つたのでありますが、翌日の新聞で見ますと、たいへんにぎやかであ
つた。しかも
フィリバスターが行われたということが大見出しで出てお
つたのであります。おそらく共和党と民主党との
フィリバスターが行われたのだろうという想像で中を読んでみますと、そうじやなくて、
デモクラットが、二つに割れての
フィリバスターであ
つた。それは
南部諸州と北部との対立であ
つたわけであります。就職に関する
差別撤廃の問題が
法案にな
つて論議された。
南部諸州がその問題については非常に強い関心を持
つておる
関係で、
南部の
デモクラットの諸君が
反対の
立場に立たれて、そして
議事を延ばすために動議を次々と出して、その動議の採決と
討論とのために、ほとんど夜を徹して論議された。こういうことにぶつかりましだが、そういうことを見ますと、
党議拘束というものがきわめて弱いのではないかという疑点に達しました。
そこで一党の
党議拘束というものは、一体どの程度行われておるか、どういう措置をおとりになるかという点を、突き進んで
質問いたしますと、
党本部というものは、
党所属議員団とは別個に存在しているということであります。そして
党本部には
議員に入
つていない。そして
党本部は何をするかというと、これは党の
政策を樹立すること、それから
議員の
選挙に関する一切のおせわをする。そしてまず
候補者を選定する。それから
候補者として公認した人を
議員にあげる場合の
選挙費用を集め、
選挙費用の支出をすること、これが一番大きな仕事であるということ、これは
デモクラットとレパベリカン両
党本部で一致した御
説明でございました。両党の
ナショナル・コミテイに参りまして、そこのチェアマンにも会いましたが、これが事実上党の総裁というような
地位だそうでとざいます。ところが
党総裁というような
地位の者は筆際にはないわけであります
ナショナル・コミテイの
委員長がそういう
地位であられるそうでありますが、党の
最高機関はと申しますと、
党大会が
最高機関であり、常時執行する
機関は
ナショナル・コミテイである。その
委員長が一番
権限を持
つておる。
委員長と
大統領はどういう
関係にあるかと聞きますと、
大統領は
政策樹立については党の
委員長と協議して定める。それでは
議員に対してはどういう働きかけをなさるかというと、
議員に対しては、わが
政策はこういうように定めておる、その方針に
従つて立法してもらいたいという連絡をするだけで、
院内では
議員の自由であるということでありました。そういうように
党本部と
議員との
関係が
違つておる。そこで今度は
議員に関してですが、
選挙区と約束されたことについては、党議できま
つたことについても留保ができる。留保して
自分の
選挙区との約束を守るということを申しておりました。そういう点で、党議が常に
南部なら
南部という地区的な
関係で、非常に割れるという問題が起るのではないかと思います。それからついでに党の本部のことについて聞きますと、
党本部のことは
党員の直接
選挙でございまして、これは
各州から
党員の直接
選挙で選んだ方が出られて、
党本部の役員にな
つておられる。
議員は
議員で別個に、
党員の
投票によ
つて、
選挙民が
投票して出て来られる。全
部分業であるというような
感じがいたします。分業にな
つておる
関係で、
自分の
受持分だけで闘えば済むという点で気が楽らしい。それから
地方議会へ参りますと、
地方議会はさらに政党の
関係が薄くな
つておる。市会などは
選挙のとき以外には、まず
関係がないと
言つていいくらいだと
感じます。
それから
運営の面で見て参りますと、
委員会がやはり一番大きな役割を演じておるように
感じます。
行政府が立案に
関係しないために、ほんとうに
議員だけで
重要法案が全部立案されておるかどうかということは、私
どもとしても
一つの大きな疑問であり、注意すべき点だと思いましたので、この点をいろいろ当
つてみますと、
図書館にも、
立法考査局に非常に大きな
組織をお持ちにな
つております。そしてこれが有能な
専門家を持
つて活動をされておりますし、また各
常任委員会には四名のコミテイ・スタッフがついております。そのうち一人が
ディレクターにな
つて、
委員長と直接交渉なさる、他の三人は
ディレクターの下についておる。四人がばらばらでなしに、一本のピラミッド型に
組織されたスタッフがついております。これは
委員長の直接選任される
機関であり、
委員長だけが
任命権を持
つておるという
建前にな
つておりまして、俸給の支拂い、その他人事は
事務局が持
つておりますが、
選任権は
委員長がお持ちにな
つておる。この
専門員が非常に活動をされおりますし、なかなかよく勉強されておると思う点もあります。また発言な
ども非常に自由になさ
つておる、
公聽会で
商務長官が
人造ゴムの問題で証書をしたときに、
委員長の
質問が一番多か
つたし、特に相当辛辣な
質問を続けておりましたが、その途中から前の方におりました
専門員が盛んな
質問をやり出しまして、かなり鋭く追究されておりました。
一体専門員は何の
権限で、どういう
法規で
質問が許されるのかといいますと、これの
権限はない、
法規は何もないが、やはり
専門員にも、
専門の
立場で聞いてくれることを一番利益たと考えて、
委員長が希望されておる。また
委員も希望しておるから、私
ども専門員は
質問いたします。こういうことでありました。そういう
機関を持
つておりますから、むろん
専門員を使い、それから
図書館をお使いになれば、相当の立法はできるはずですが、大体立法する場合に、それだけじやできないかというので、聞いてみますと、やはり
行政府が原案は作成しておるそうであります。政府がこういう法律を出したいというときには、各省にある
法制局で法制化しまして、それを
予算局の中の
法制局といいますか、そういう
立法局のようなところへ持
つて行きまして、ここで
一つの
国家的立場で統制したものにして、
行政府として原案をつくる。それをドラフトとして、その所管されている
委員長にお願いして、
委員長の名をも
つて委員会案にしてもらうか、あるいは
委員長からさらに他の
委員に委嘱してもら
つて、その姿見からお出し願う。ですから、今のように
大統領と
ハウスの多数党とが同じであれば、もちろん
委員長におやりにな
つて、
委員長は
自分の党に属される
委員に帰属されて、
行政府の希望するような法律ができて来る。
原案そのものについて、各省で必要であるというものは、やはり
行政府がお手伝いする。あくまでこれはお手伝いであ
つて、国会がこれをお取上げにならぬ限りは、
法案としての日のにあうことはできない。そういう点で、
常任委員長というものは非常に高い
地位を保持なさ
つておるのではないかということを
感じたわけであります。
それからもう
一つは、
委員長が非常に
専門家になり切
つておられるという点を
感じました。というのは、今の
商務長官に対する
委員長の賛同が非常に鋭くて、
商務長官は
人造ゴムの
証言に出ながら、しまいには本日は私は
証言のために出席いたしましたが、
委員長からきわめて有益なお話を
伺つて感謝にたえませんと
言つて、握手して
帰つて行つた。あのくらい鋭くつつ込まれて、感謝の意を表して出て
行つたということを見ますと、
委員長はそうした
専門の面に対しても、相当
専門的な知識をお持ちにな
つておるのではないかと思います。
委員長はどういうふうにして、そういうふうに
専門家に
なつたかという点をいろいろ当
つてみますと、シニュオリテイ・システムと申しますか、
委員中の最
古参者が常に
委員長になる。
古参者が欠員となる、あるいは次の
選挙に出られない、あるいは老齢のために、どうも
委員長は務めにくいというようなことでお譲りにならなければ、次の
委員に行かない
組織だということであります。
従つて何回当選しても、
議員は同じ
委員会に所属している。決して
委員の所属をかえないという
建前をと
つておるようであります。そこである年数を経れば、もちろんその
委員会においては非常なエキスパートになられる。
従つて行政府の長官が来て
証言をされても、これに相当鋭い
質問をすることができるのじやないかと考えられた次第でございます。
それから
特別委員会というようなものがあるかどうかということは、この前
立法機能増進法で、
特別委員会廃止ということが決定されておりましたので、ないのじやないかということで調べてみましたが、やはり現在も
特別委員会は存在いたしております。
それから
定足数の問題が今日
日本でも非常にやかましくな
つて来て、今度
参議院あたりは
改選期にな
つて、
定足数の問題でずいぶん心配いたされましたが、
定足数の問題はあまり問題にされていないという肉情でございます。見ていますと、
議長が入られ、
祈りがあ
つて議事を始める。
最初自由討議が毎日二人一分間ずつ許されます。
自由討議をや
つていますと、そのうちにだんだん集ま
つて、それから本論に入る。
自由討議をや
つておる間に人手はそろう、始ま
つてもまだ相当
プライベート・ビルをや
つている間は、少数でおやりにな
つております。
常任委員会を始めても、
常任委員会の方も
定足数がない。
定足数が問題に
なつたらどうなるかと聞いてみますと、そのときには入るのだと言う。
登院数というものは常にわか
つておるのかというと、
議場で呼んでみなければわからぬということでありました。私たちは玄関で調べておるし、ことに
標示器を
使つて事務総長の部屋では知
つておると申しますと、そんな必要があるか、
日本では必要かしらぬが、
自分の方は
議場で
ロール・
コールするまで何人登院しておるかわからないということでありました。これは建物の
関係もございます。やはり控室がありません
関係で、数えにくいのだと思いますが、
議場で問題が起れば、そのときに
氏名点呼をいたします。
氏名点呼をしたときの数があれば、それですぐ退席してもよろしいということになるわけであります。通常は必要がなければ
氏名点呼に入らない。
投票の場合には、まず
氏名点呼に入るわけでありますが、
重要法案のときの一本の
記名投票に当るもの、演壇へ
投票を持
つて集まるという
方法は行われておりません。
投票の様式は
ロール・
コールの
方法でありまして、
リーディング・
クラークが
議長席の前から
議員の氏名を順次呼びます。呼ぶと、その番に当
つた人が立ち上
つて、
賛成だとか
反対だとか
返事をします。ずつと呼ぶのを見ておりますと、これで
一体指名投票をや
つているのかと
感じられるくらいで、呼び始めるとその途中から続々と入
つて来る、次々入
つて来られて、ずつと一ぺん呼んで、もう一ぺんあと返りして呼ぶ。初めに
返事のなか
つた人をしるしをつけておいて、また呼んで、あなたはどちらですか、私は
賛成だ。もう漏ればございませんか。私はまだだ。どちらですか。
賛成です、という調子で、中にはそうしておるうちに、初め
返事をなさ
つた方で、私は
さつき賛成と
言つたけれ
ども、
反対だからとりかえてくれ、
反対の方でございますか、よろしゆうございますとい
つて反対につける。いかにも気楽な、
記名投票のときのようなきゆうくつと言いますか、緊張した気分を
感じなか
つたのであります。非常にゆ
つたりした、
投票が
間違つたから直そう、はい、よろしゆうございますというような調子で
投票が行われておる場面に数回接しました。
指名投票はずいぶん頻繁に行われますし、そのためにずいぶん時間もかけておるようであります。ときには自然に数がふえる。それでもし
指名投票をやるときに、数が少なければ
投票が無効になる。それでかりに地域的な
関係で、この
法案は何とかじや
ましようと思
つておるときには、
ロール・
コールを要求する、あるいは
定足数を要求する。そのときたまたま土曜日の午後であ
つて、相当きようは欠けておるというときには、完全につぶすことかできる。これはよい
フィリバスターであるということを
言つておりました。フィリバスーにどういうことがあるかと
質問いたしましたら、
ロール・
コールを要求すること、
討論時間を千分に、なるべく長くとること、これ以外には
方法はない。上院では
討論時間の
制限はしてないから、何時間もやれる。しかし実際
制限の必要はないので、
制限はしなくても、上院では一人が一時間ずつしやべ
つても九十六時間しかかからない。ですから一切
討論には時間
制限をしておりません。下院は四百三十六名の多数であるから、
制限を加えるということで、大体
重要法案につきましては、一時間とか二時間とか時間をきめて、両党が平等にやる。それは両党のフロア・リーダーが持
つてお
つて、
自分の党の
所属者を指名して発言させる、その時間の範囲で適当な方にやらせる。その場合に地域なことで、
フィリバスターとして、じやまをしようといえば、一時間しかないのを承知で、相当長くしやべる、それが
自分の
立場からじやまする結果になるというわけでありました。それで
ロール・
コールの
方法をよく見ておりますと、かなりおもしろい
投票方法じやないかと思います。もう
一つ、
ロール・
コールに入らない場合には、上から
賛成か
反対か聞いて、声の大きさで判断する、そのアイという声がたくさん聞えれば、大体
賛成と見てそれで通す。また小さな
プライベート・ビルがかかりますと、そのときには声がなければ
賛成とみなして可決いたします。これを見ておりますと、一応書類を
リーディング・
クラークの前に置いておきまして、どんどん議案を読みます。そして声がないと可決と認めますということで、どんどん可決の方へ行きます。異議のあるものは、この次の機会にしてくれという声がありまして、横へ
行つて、いつまでも進まないという
方法をと
つております。
従つて全般的に
議事がやわらかい
運営じやないかという
感じを受けました。
これは
連邦の
議会と州の
議会、市の
議会、おのおの特色がある。
連邦は
連邦、州は州と、少しずつ
組織も
運営もみな
違つてお
つて、画一的なものはございません。
討論の
方法でも、
委員会の
組織でも、ことごとく相違がある。みな
違つておると
言つていいくらい
違つております。基本的な原則だけが同様であると言える程度だと思います。それで
連邦の
議会では
議場の
規律がやかましくて、
タバコなんかも持
つて入
つておられないのですが、州の
議会では、
サウス・カロライナあたり、これは
デモクラットの非常に強いところですが、ここでは
議場がコカコーラや
タバコを飲んでおるのを、常に目撃している状況であります。私もわきで見てお
つて、あまりその風景がのんびりしておるので、スケッチをして皆に笑われたのですが、横を向いたり、雑談してお
つたり、何か問題があればまつすぐ向くが、大体そんな状態です。横を向いてお
つていいのかと聞くと、大した
法案がないから横を向いておるのだという
返事でありました。なるほど大した
法案もなか
つたのであります。ほとんど横を向いて聞いておられない。それでさしつかえないかというと、大体さしつかえのあるなしは、最後には
選挙民が判断するという
返事でした。ことに大きな州、ニューヨーク州あたりの有力な
議員は欠席が多い。それで一体因らないかと聞くと、やはり
議事としては困ることもある。しかし困るかどうかをきめるのは
選挙民がすることであ
つて、
ハウスのきめることではないという
返事を、向うの人たちはいたしました。これはニューヨーク州のりつぱな、有力な
議員であれば、おそらく用務も多いだろう。そういう人たちに、常に
ハウスに出てお
つてくれというのはむりだろう。そこでその人が州へ
帰つておればよいと思
つたら、州へ
帰つている。それがいやなら次に出てもらわねばよいのだから、あえて
ハウスで文句を言う筋はない。まあこういうお話でありました。
それからやじが
アメリカの
議会にあるかないかということが、途中で問題になりまして、どうもやじ
つているんじやないかという話が実は出たのです。ところがよく聞いてみますと、やじという
言葉が当らないのであ
つて、他人の発言中に発言する者がありやいなやといえば、あるということなのです。決してやじではないわけです。やじというべきではないと
言つています。ある人が
議場で
討論しておりまして、他の方が、その発言途中で疑問が起れば、「ジェントルマン・ウイル・ユー・イールド」と手をあげて、ちよつと私にゆず
つてくれぬかと
反対党なり味方から合図する。よろしいというと、そこで、あなたはこういう数字をあげておるか、これは間違いじやないか、私の州はこうな
つておるか、これでよいかという、きわめて簡明な発言をいたします。これが相当上手に使われれば、やはりかなり発言妨害にもなると思うのです。そういうようなことが行われて、解説を加えられ、論議を進められるようなことが頻繁に行われては、迷惑になるのじやないかと聞きましたら、その場合には応じない自由があるから、そつちを向かなければよろしいということでありました。私
ども法規集をと
つたり、いろいろ
説明を求めたりいたしましたが、
法規集に現われているそのものよりも、
運営という面で非常に
法規の穴がふさがれている。結局三百年間や
つていて、不自由がないからよろしいという
返事を受けました。
法規の
質問を詳しくや
つて行きますと、大きな欠陥があるということに同意はいたします。
日本の
法規はどうな
つておるかと聞かれて、
説明しますと、なるほどそれはよろしいと
賛成されるので、もう少し聞いてみますと、こつちはこれでよろしいと言う。なぜかというと、三百年や
つてちつとも不自由がなくて、これで動いているから、これでよろしいという
返事を受けました。何というか、自信を持
つた、板についた
運営、あるいは歴史を基礎にした
運営ではないかという
感じを受けました。
最後に、ちよつと申し落しましたが、両院協
議会の
関係は、向うのものを開きますと、これは両院の議が完全に一致した場合でなければ、両院協
議会は成立たないという制度をと
つております。
日本では三分の二の多数で両院協
議会の成案が得られますが、向うは全然全会一致でなければ、両院協
議会の議を得ない。それでは得ないときの方が多いじやないかと聞くと、いやにたびたび得られていえだと言う。ではどういうようにして得られますかというと、得られるまで何べんでもやるんだ。一ぺんでだめなら、二へんでも五へんでも十ぺんでもやる。その場合に全期切れに
なつたらどうするかと聞くと、それはやむを得ぬから、またこの次続けてこの問題をやればよろしい。こういうことでありまして、両院協議をやれば、それがまとまるところまで続ける。それを見ますと、会期末のとことんまで両院協
議会を開く状況ではないかと
感じたのであります。
日本の今のように、政府から
法案が遅く出る状況になりますと、その点でむりがあると思います。
そこで改革意見などにつきましても、
議員団としていろいろこの間から御協議になりまして、それについて私
どもも起案するように命じられ、この間から用意をいたしました。まだその起案したものを皆さんのお円にかけてきめておりませんか、その第一に私が申し入れておきたいと思いましたことは、
日本と
アメリカとは、いろいろ條件が違う。向うは
三権分立主義が徹底しており、こちらは
議院内閣制をと
つていること。歴史の違いかあること。また現在の段階において、
政党組織と
議員との
関係が
アメリカと違うということ。あるいは
議員のサービス
機関である
専門員制度、
図書館制度、それらの点でいろいろ條件の違いがある。そこででき得ることはやるとしても、そういう條件の違いを念頭においてやらなければ危険がある。形のまねの方はできるとしても、
運営のまねは困難だ。形のまねは、しいてやらなければならないようなものは見つけ得ない。精神のまね、
運営のまねということになると、よほど慎重にしなければ、かえ
つて逆な効果が起りはしないか。それでは
運営の面でいいものを取入れようとすれば、どういう点を取入れるかということで、この間も立案したような次第であります。雑なことを申し上げましたが、他に御
質問がありましたら……