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1950-03-28 第7回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十八日(火曜日)    午前十一時十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員安達良助君、原虎一君、黒川 武雄君、及び小林英三辞任につき、 その補欠として淺井一郎君、内村清次 君、島津忠彦君及び池田宇右衞門君を 議長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○理事補欠選任の件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 只今より委員会を開会いたします。  この際お諮りいたします。昨日理事内村清次君の委員辞任に伴う理事補欠を行いたいと思います。先例により委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 御異議ないと認めます。それでは指名いたします。内村清次君を理事に指名いたします。通告順によつて発言を許可いたします。岩間君。
  4. 岩間正男

    岩間正男君 昨日に引続いて質問を継続したいと思います。石油の問題ですが、石油元売り業者に対して、今度マージンを上げるということを聞いておるのでありますが、それは本当でありますか。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨年の四月から民間の取扱いにいたしました。そのときに一応販売価格を決めておつたのでありまするが、輸入価格との間に開きがございまして、損失を來して参りましたので、マージンの改訂をいたしたと考えております。
  6. 岩間正男

    岩間正男君 いつ頃から上げるのであるか。つまりいつ頃というのは、上げるのは今度でしようが、遡つて上げるのであるか、それからどのくらい上げるのか、それからそれによりまして、今度の値段はどういうことになるのか、この点をお伺いいたします。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他の政府委員より答弁さした方が適当かと思います。数字の点只今記憶いたしておりません。
  8. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 後に答弁があるそうですから、外の項目で御質疑を願います。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 我々の手にした情報では一キロリツトルについて八百八十円上げると、それからこれを昨年の七月に遡つて支拂うと、こういうことを聞いておるのでありますが、この点は如何でございましようか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一キロリツトルについて幾らということは私存じませんが、多分遡つて拂うということにいたしたと思います。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますというと、大体これについて貿易会計の中で、その総額が、マージン支拂う額というものが、必要になつて來るのですが、その額、こういうものについては、これはどうなつておりますか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今お答え申上げましたように、はつきりした数字は私記憶いたしておりませんが、とにかく業者の方で赤字が十三、四億あるというので、遡つて貿易会計の方から出しますのが、七、八億ではなかつたかと思います。関係政府委員から後刻答弁さした方が正確ではないかと思います。私の記憶では大体そのくらいの数字であつたと思います。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 正確な、細かい数字はそれでは後で関係政府委員からお伺いしたいと思いますが、大体今の通産省の御答弁では七億程度、我々もそのように聞いておるのであります。七月から十二月までの額で七億四千万円というふうに聞いておるのでありまするが、大体まあ数字が合うのじやないかと思います。  それからもう一つ運賃値上げによつて今度撥ね返りがあると、そういうことを聞いておるのでありますが、この分は、これもやはり今資料はないのでございますね。これは私の方から申上げますと、これでもやはり相当な値上げということを聞いております。そこでお伺いしたいのでありますが、先程の通産省の御説明では赤字があるからマージンを上げるのだ、こういうようなことでありますが、單にそれだけの理由でございますか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体私はそういうふうに聞いておるのであります。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 この点もこれはいつそういう数字を示して貰えますか。これは非常に差迫つておるのですが非常に重要だと思うのです。昨日も実は係官の人が見えまして石油の問題について質問することは予め申上げて置いたのでありますけれども、いつ頃いらつしやいますか。
  16. 河野一之

    政府委員河野一之君) 本日の午後取調べまして申上げます。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 それでは細かいところはそういうところに讓つて、尚それと関連して質問することにいたしますが、大筋についてだけ伺います。これは七月に遡つて上げるということになるのですが、なぜ七月に遡る必要があるか、この点伺います。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その理由については後刻お答えいたします。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 今までの赤字総額、こういうものもお分りになつていらつしやらないのですね。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十三四億だつたと私は聞いております。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 三十三四億……次に伺いたいことは、マージン引上げるについて財源が要ると思うのですが、その財源はどこから出すのでありますか。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 貿易会計の方に多分黒字があるかと思います。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 貿易会計はたしか二百億の全体として赤字になつておると思うのでありますが、なぜ石油だけにこんな措置をとるのか、この点伺いたいと思います。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その問題については、先程お答えした通りに、その仕事に当つてつた政府委員から詳しい御説明をさせた方が適当だろうと思います。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 通産相は最近兼任されたのでありますから、余りこういう細かい数字について質問をするのは或いは酷かも知れないのですけれども、大体この荒筋だけはお掴み願いたいと思うのであります。私達の憂うるのは、貿易会計赤字になつて、そうしてこういうような会計が、今まで特別会計赤字になりますというと、一般会計からこれは繰入れる、こういうようなことがしばしば措置としてとられたのであります。併し石油の方には、石油だけの分については幾分の黒字があるようでありますが、その黒字、大体我々は九億くらいの黒字があるということを聞いておるのでありますが、その九億を、これはどうも現在の石油状態を見ますというと、石油業の約七〇%はスタンダード・シイル・カルテツクスというようなこれは外国商社によつて殆んど独占的になされていると思うのでありますが、そうしますと貿易会計のそういう黒字はそれらの会社に大部分これは配当される、こういうことになると思うのでありますが、この点如何でございますか。
  26. 河野一之

    政府委員河野一之君) 貿易会計赤字ということでありますが、貿易会計赤字ではございません。外国為替会計の方にも繰入金はいたしておりますが、全体といたして赤字には相成つておりません。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 これもはつきりした数字は示して貰えるのでございますか。赤字でないというそういう何はそのとき示して貰いたい。
  28. 河野一之

    政府委員河野一之君) 御承知のように貿易会計は相当のストツクを持つておりますので、岩間さんのおつしやる意味現金の問題であるかという、現金赤字であるかという考え方に対しましては、私といたしましては現金上も赤字でない。ストツクの点を考慮いたしますれば勿論黒字でございます。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 この石油の問題については尚今の資料が不足しておりますので、この点でもう少し細かに我々はお伺いしたいと思うのであります。とにかく今申しました我々の観点からしますと、非常に今度のマージンを七月に遡つて上げるという問題は、なかなか納得し難いところがあるのではないかというふうに思います。今更なぜ七月に遡るのであるか。そういうことはなぜここで大きな問題になるかというと、石油は一体果して世界の国際的な価格というものは、これは上つておるのであるかどうか。私達はこの情勢については非常に値下り現象が起つておるのじやないかと思いますが、通産大臣としてはこういう情勢についてはどうお掴みになつていらつしやるか、この点お伺いいたします。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今石油価格外国ではどのくらいしておるか私承知しておりませんが、この問題につきましては、係の政府委員からお答えいたさせたいと思います。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 肝心なところがどうも残念ながら通産相から示して頂かないのでありますが、例えばこうなつておるのじやないですか。ガソリンの場合を見ますと、CIFでは去年の六月一キロリツトルが三十四ドル七十三セント、それが十二月には二十九ドル二十八セントに下落している。つまり五ドる程下つておる。それからスピンドルは同じく百十三ドル八十九セントであつたものが百三ドル四十二セントで、十ドルばかり下つておる。こういうような数字があるのでありますけれども、これは御承知ないのでありますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 正確な数字承知いたしておりません。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 正確な数字は一応措くとしましても、世界石油国際価格が今下つておるか、上つておるかというあらましの点を、通産相としてこれはお掴みになつていらつしやると思いますが、如何ですか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 通産省政府委員その他は知つておりましようが、私は不幸にしてそれを今はつきり承知していないのであります。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 これは重大な問題だと思うのであります。日本石油対策というものはやはり大きな意味を持つと思うのでありますが、通産相世界に大勢を現在荒筋だけでもお掴みになつていられない上に立つて、こういうような政策を採られておるということは、非常にこれは由々しい問題ではないかと私は考えるのであります。これと連関して蔵相通産相の兼任問題が非常にやかましく言われておるのでありますが、(笑声)やはり故あるかなと言わざるを得ない、こういうように考えるのでありますが、この点通産相は兼任に堪えられますか、お伺いします。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは私は臨時的に兼ねておるつもりであるのであります。適当なときには吉田総理が何とか措置せられると思います。(笑声
  37. 岩間正男

    岩間正男君 これは総理の方に責任を持つて行かれたのでありますけれども、これはすでに稻垣通産相が辞められてから一ケ月以上になると思うのでありますが、その間相当な空白があつたというふうに我々は解釈せざるを得ない。この通産対策の上におきまして、そういうような大臣認識状態が本当に滲透していないところからいろいろな施策がなされて來たのでありますか。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は空白があつたとは考えておりません。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 事務官が知つておるからそれであとはまあ何とかやつて行ける、こういうような御答弁だと思うのでありますけれども、やはりこれでは適切な日本産業体制を本当に確立して行く上には不十分だということが、今の蔵相答弁から明らかになつた、こういうふうに私達は把握したいと思うのであります。この石油の問題ですが、とにかもこのような世界国際価格値下り、こういう現象が起つておるのに、国内価格はそのままに措置いて、そうして差額をこの收奪に委している、こう言わざるを得ない、更にそれだけではなくて、マージン引上げて、そうしてそのような利益も、今度は大きく外国商社にこれは配分されるというようなことになりますというと、日本石油業自主性というものは維持されるかどうか。この点は実に重要な問題だと思いますので、蔵相見解が伺いたいのであります。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世界石油価格の問題と、今まで輸入して参りました場合におきまする取扱業者赤字補填の問題とは別個の問題と考えております。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとこういう意味ですか。今の御答弁はこのように石油国際価格は下つておる、併し今までは高いものを買入れたので、それを昨年の七月まで遡つてその差額に対する損失をそういうような貿易会計で以て埋める、こういうことは当然だ、止むを得ないのだ、こういうような御答弁に私は聞かれるのでありますが、そう我々は受取つてようございますか。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その問題につきましては、後刻政府委員より答弁さす、こう申上げておるのであります。
  43. 岩間正男

    岩間正男君 これは政府委員答弁の段階じやないと思います。私は今お伺いしたのは、非常に政治的な、これは通産相としての見解が表明されなくちやならない問題だと思うのであります。政府委員が今の問題について、政治的な見解について、これは恐らく答弁を私はできないと思うのでありますから、重ねて蔵相答弁をお待ちしたいと思います。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は買入価格販売価格とに差がございまして、不当に取扱業者損失を蒙りましたので、特別会計黒字を以てこれを埋めることにしたと聞いておるのであります。詳しい事情は政府委員より答弁さすことが適当と考えております。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 まあ満足できない御答弁でありますけれども、これ以上追及してもこれは無理かと思いますから、資料を貰い、政府委員答弁を聞いた上で尚蔵相のこれは政治的な見解を伺いたい。この問題は私は保留いたしたいと思うのであります。  次に石油のやはり問題について、非常に重要な問題は、この輸入量が殖えておる。非常に殖えておる。然るに国内消費量はどうかというと、国内消費量現状維持か或いはそれよりも減つておる。こういうふうに思うのでありますが、この実情如何になつておりましようか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体ストツクは二ケ月半程度ストツクを持つておるのであります。私はこの程度ストツクは適当と考えております。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 これも或いは資料が今お持ちにならないのかとも思いますが、まあ輸入量ですね、それから国内生産量配給量在庫量というようなものについて同時にお示しが頂けるかどうか。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体毎月の消費は十五、六万キロリツターであるのであります。我が国の生産量消費の大体一割程度生産であるのであります。ストツクは五十万キロリツター税度ストツクがあるのであります。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 大体我々もそのような情報を伺つておるのであります。ここに私達が聞いておりますのは、これは正確かどうか確かめたいと思いますが、千九百四十九年の五月の輸入量を見ますと、大体十八万七千キロリツター国内生産量が一万二千キロリツター、そういうことになつて合計十九万九千キロリツターでありますが、十一月になりますと、輸入量は十九万二千キロリツター国内生産量は二万二千キロリツター、結局合計二十一万四千キロリツター、こういう形で非常に増加しておると思うのであります。ところが配給量は一四万九千キロリツターで抑えられておる。で、こういう結果在庫量は昨年の五月が十五万九千キロリツターであつたものが、十一月になりますと、五十一万六千キロリツターで、大体今蔵相ストツクは五十万キロリツターというような荒筋の点が一致するのじやないかと思います。併しこれに小売業者在庫量を加えると、七千万キロリツターぐらいに及ぶのじやないか、こういうふうに私達は情報として掴んでおるのでありますけれども、大体こういう線でございましようか。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 小売業者ストツクの点は私ははつきり聞いておりませんが、大体二ケ月半から三ケ月分ぐらいのストツクと聞いておるのであります。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 消費量に対してでございますか、今のあれは二ケ月半か三ケ月というのは……。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) さようでございます。
  53. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩間君にちよつと申上げますが、よく数字をお分りのようですから、成るべくお分りのことを駄目を押すようなことをおつしやらずに、他に質問者も多数控えておるのでありますから成るたけ御簡潔にお願いいたします。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 ただ我々のは官庁のしつかりした機構の方から集める統計じやありませんので、これが一応我々の耳に入つておる程度のものをやはり確かめるということは非常に重要だと思うのであります。そういう点から申上げておるのでありますから……。
  55. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 成るべくはそういう問題は分科会でお願いいたしたいと思います。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 それはできるだけそうしたいと思いますが、ただそれは数量の細かい問題じやなくて、一つの正確の問題でありますからその点御承認頂きたいと思います。私はここで大いに問題になると思うのでありますが、このように輸入量は非常に殖え、在庫量ストツクが非常に多いのに拘わらず、この配給量消費量が少い、こういうことのためにこれは日本一体産業のため、それから消費のため、生活向上のためにこういうものが使われていないというふうに思われるのであります。例えば私は去年の七月に北海道を国政調査のために旅行したのであります。そのときあの根釧原野のような全く不毛の地にトラツクを入れまして、一日百キロぐらい入つて行つて、あの農村の開拓状態を視察したのでありますが、そのとき一番驚いたことは、ああいう村々に入つて行きましても、石油配給量が非常に少いということであります。もう一年に二升か三升ぐらいしかない。そういうことのために無燈村が全く夜は太陽が沈むともう寢てしまい、朝は太陽が出ると働くというような鷄生活をしておる。そういうような形で、例えばこれは学校も見たのでありますが、学校あたりには燈火がないのでもう先生になりてがない。勉強ができない。石油が足りないものですから、勉強ができないので、どうしても一年に一斗二升の石油が要るというのでありますけれども、その五分の一にも足らない配給量で非常に苦しい生活をしておるのであります。こういうような実情を見て來たのであります。若し日本石油輸入量が殖えるとすればそういうような国民生活利益のために使われるということでありましたならば、我々はこれを了解することができると思うのであります。又機帆船の様子を見ますというと、最近は石油が足りないために機帆船は停船しておる。こういう実情が出ておるのでありまして、これは非常にやはり私は国民として深い関心を持たなければならない問題じやないか、食糧もそうであります。食糧の問題につきまして、輸入食糧の量につきましてこの前蔵相にもお伺いしたのでありますけれども、この量は前年度のすでに輸入済のものについても発表がなされなかつた。今年度については無論これは見通がはつきりしないというような形であります。併し予算にははつきり組まれておる。いつの間にかそういう形で厖大食糧石油が我々の一体生活に本当に直接それが利用されない形で以て、いつの間にか厖大輸入されておる。而も世界情勢を見ますというと、国際価格というものは非常に下つておる。むしろ生産過剩になつておる。生産恐慌が起つておる。それらの恐慌品日本は押付け輸入の形でどんどん入れられる。そうしていつの間にかそれがためこの日本石油食糧に対しましてこれは東洋の倉庫というような感じになつて來る。こういう形になるとすれば、これは重大な問題じやないか、我々はやはり今日本の置かれておる立場というものを考えたときに、日本平和態勢というものを考えて、平和的にこれが処理されるのでなくて、これが非常に蓄積される、こういう形を採られておることに対しましては、これは軽々に見逃すことができない問題だと思うのでありますが、講和を一日も早く促進したいと口で言つておられるところの吉田内閣におきまして、こういう態勢に対しましてどのような対策を持たれるのでありますか。私は石油並びに食糧のこのような最近の傾向についてお伺いしたいと思うのであります。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り石油は非常に不足いたしておりますので、輸入いたしましたものをできるだけ産業の復興、或いは国民生活の安定の方に向けて行きたいと考えておるのであります。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 尚石油の問題は先程の資料が頂けたら、もう少し細かに検討したいと思つて保留します。  次に税の問題であります。二十五日の本委員会におきまして、木村委員質問に答えて蔵相は、減税税法上の減税であつて、税金は飽くまでも税法通り正しく取るというふうに答えられたと思うのであります。この点はそうでございますな。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 租税は税法に從つて取るべきであると考えております。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 ところが、今度地方税法案が出されたのでありますが、それと関連して吉田首相の談なるものが発表されておるのであります。行き過ぎの点があればこれを調整するに吝かでないというような趣旨の声明なんでありますけれども、そうしますと、これは私は、非常にこの点問題になるのでありますが、先ず第一の從來、そうしますと吉田首相のこの言明をそのままに取りますと、行き過ぎというのはあつた、しばしばそういうことがあつたんだ、こういうことがなければこの言明はいけないわけでありますけれども、そういう事実は蔵相は認めておられますか。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行政上の手違いがあることは私は認めておるのであります。即ち更正決定その他課税上見込違い決定を個々の人にいたしたような場合もあるのであります。異議申立その他によりまして訂正いたしておるのでありますが、そういう場合におきましては、これは早急に訂正しなければならんもんだ、こういうことを言つておられることと考えるのであります。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 この原因はやはり今の税務機構全般の中で、税務署やそれから税務官吏に対するところの事前割当、こういう問題から非常に起つておるように思われるのでありますが、この点は如何でしようか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 事前割当というようなことはないと考えております。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 これは今までやられなかつたというのでございますか。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は大蔵大臣をいたしておるうちはやつておりません。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 この点大蔵大臣はこれはまあ、つんぼ答弁をされておるようでありますが、こういうことは余りにも明々白々で、天下で誰でも知つていることを大蔵大臣が、今公式な席上だからでもありましようけれども、そういうことをなされなかつたとこういうふうにおつしやるとおかしくなると思いますが、如何でしようか。我々はそういう沢山の例を知つており、そういうまあ何もあるのですが、どうでございますか。事前割当というものはなされなかつたはつきり言い切れますか。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他の機会にもはつきり申上げております。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 どうもこれは蔵相の……。それでは我々はそういう趣旨が末端でごまかされておるのであるか、或いは蔵相言明通りのことがひそかに行われておるのであるか、その解釈に苦しむのでありますが、ここにいろいろのそういう言明がございます。これは一々ここで読み上げる必要もないことと思うのでありますが、これは蔵相の今の御答弁は非常に事実に反しておるのではないか。そうすると、いろいろそういう割当制をやつておる実例が沢山ありますけれども、そういうのに対しては、蔵相はどういう処置をとられるとお考えになつておりますか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 税というものは割当てるといつたつてなかなか割当てられるものではないのであります。又税法上からそういうこともできませんし、私としては各財務局、或いは各税務署幾ら幾らを取れ、こういうふうな割当はいたしていないのであります。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 ここに三月二十五日の日本経済新聞がございます。これについて、やはり今後の政府徴税態度を表明したという中に「担税力に応じて徴收するとの原則を確立し、從來行われた税務署地方税務吏員に対する徴税割当は今後絶対禁止する」これは政府基本方針のように思うのでありますけれども、これは如何でございますか。そうしますと、こういうものを変更したい、こういうのだと思うのでありますけれども、從來そうするとこういうものは行われなかつたというと甚だこれはおかしいのですが、その食違いをどう説明されますか。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が大蔵大臣になつてから、先程答えた通り割当いたしておりません。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 大蔵大臣はされないかも知れんけれども、あなたのこれは部下ですね。私は部下と言うことは余り好きじやないのですが、併し蔵相はよく部下という言葉を使いますから、私も使います。部下がそういうことをやつておる、こういうふうに見られるのでありますが、こういうことを大蔵大臣はやはりぬけぬけとどこまでも、蔵相としてはそれは指示した覚えはない、だからそういう現状は起つていない。現実的には起つていない、こうおつしやいますか。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が指示したこともございませんし、そういうことはやるべきでないということも言つておりますし、国税庁長官におきましても、国税局長におきましても、やつていないと考えております。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、そのような大臣の意向に反した部下は断乎として処分されますか。
  75. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の言うことに反して割当をしたような者がおりましたならば、処分いたします。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 全国の税務官吏を首切つたらどうです。税務署長を皆切つたらどうです。(「質問じやないじやないか」と呼ぶ者あり)
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 首を切る理由を認めておりません。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 今の蔵相の意向に反して皆割当をやつているというのは実情だと思います。(「質問の本旨に外れている」と呼ぶ者あり)やはりこれは重要な質問なんであります。このことは国民はやはり聞きたい。これがすべての原因なんであります。この割当制でもつて、実際担税能力があるかどうか分らないところに、それを割当てて取る、こういう形で來ておるから、今の破壞的な徴税の方法が行われておる。併し蔵相はこれに対して、どうしても自分の方針じやない、やつたとすればそれは部下がやつたんだ、こういうことでありますから……。併し実際はどうかというと、これは天下周知のことなんだ。こういうことになりますと、日本の政治というものがどういう政治であるかということが一般がはつきりして來るのでないかというふうに思います。そこで私は、それじや重ねて追及、お伺いしますが、それでは池田、いや吉田首相行き過ぎの点があればこれを調整するに吝かでないというのでありますが、どういう形で行き過ぎか出たのでありますか。若し蔵相の方針で飽くまでも税法通り取るんだ、こういうことになりますと、これはそういうことが起らないと思うのでありますが……。それからこの調整の内容というようなものはどういうものでございますか。この点を伺います。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことは吉田総理にお訊きになるのが適当かと思います。私は総理の言われたことはこういう意味だろうということは、先程答弁した通りであります。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 無論総理は午後から見えられますから、この問題は無論重大な問題ですからお伺いしようと思うのですが、併しやはり担当大臣としまして、この点をお伺いしているのであります。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先程答えた通りであります。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 この点は重大な問題じやないかと思う。やはり蔵相としては法的根拠のない割当方法というものを便宜的にやつておる。こういうようなやり方をここで認定することはできないというのだと思いますが、併し現実はまるで蔵相の声明とは反した方向で行われておる。併し今の答弁によつて我々の確約できることは、このような割当制、過大な見積りによつて税收をなされておるならこれに対しては、我我自身と雖もはつきりこれに対して異議を申込むことができるというこの点を明らかにし得たことは、今後の税金問題に対して一つの大きな收穫じやないかというふうに考えられるのであります。そこで更にお伺いしますが、この税金の徴税と連関して何か苦情処理機関というようなものを設置するということが伝えられておりますけれども、この機構はどのようにお作りになるのでありますか。それからその仕事の内容はどうなのか、こういうことについてお伺いいたします。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 苦情相談所とか、或いは紛争処理機関を早急に設置いたしまして、異議申立に対して早急に決定をいたしたいと、こういう考えであります。只今一税務署一個所というわけにも参りませんので、大体県であれば二、三個所、又大都市であればこれは相当の相談所を設けなければならんと考えております。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 県で二、三個所といいますと、これは実際になかなか使えないと思うのでありますが、どうでしようか。これは実際区域が一つの県に二、三個所の苦情処理機関ということになりますと、遠い所では十里、二十里と行つて、いろいろ恐らく繁雑な手続も履まなくちやならない。こういうことになると思うのでありますが、こういう形で現在の税金のいろいろな紛争問題を解決するには役に立つとお考えになつていらつしやいますか。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全国に五百余りの税務署がありますので、この税務署へ皆置きたいという気持は持つておるのでありますが、差向きやはり重点的に置きまして、そしてその機関は出張その他で移動し得るような機構にいたしたいと考えております。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 私達のここで問題にしたいのは、前例が沢山あることでございます。例えば大きく言いますと、労働対策の場合に、公務員の争議を禁止するというために人事院を作る、併し人事院がどういうような役割を果しておるかということは一番よく勤労階級は知つておる。つまりあれは直接政府との交渉を緩衝する緩衝地帶になつておる。そうしてその結果は現在においてそれらの勧告は少しも顧みられない、いわば盲腸的存在になつておる。こういうものを作ることによつて如何にも行政機構が民主化されたという幻想だけを與える。むしろ問題はそれによつて解決するのでなくて、却つてこんがらがつて來る。こういう形になるのでありまして、その点から考えると今の苦情処理機関というものは、非常に似た性格を持つのではないか。どうしても自分で納められない税金の状態で苦しんでおる人がある、何とか今まで税務署で直接解決しておつたものも、今度はそこへ何とか問題があるなら持つて行きなさい、併し行つて見れば手続は面倒だし、そこで即決にやられるわけではない、時間がかかる、時間をかけておるうちには問題は解決しない、棚上げされてしまつて、いわばごまかされる、こういうようなことが非常に考えられるので、これは今までの例があるから私は非常に憂えるのでありますが、この苦情処理機関というようなものを作つて日本の徴税機構は民主化されました、これだからこれに訴えて下さい、これで皆さんの問題が解決つくでありましようという政府の宣伝としては意味がありますかも知れませんけれども、実情を解決するようなものにはならん。こういうふうに心配される節が非常に多いのでありますが、蔵相はこういう点についてもつと現実的にこの問題を把握しておられますか。
  87. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 実情に副つた制度として考えております。又実情に副い納税者の申立てを十分聽き得る機関としてやつて行きたいと考えております。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 我々は苦情処理機関の設置、この問題は今私が申上げたような点から非常に関心を持つものであります。單に盲腸的存在にならないように、いやならないと言つてもなるというふうに私達は考えられるのでありますが、そういう点についてこの性格を十分に今後検討しなくちやならないと考えておりますが、とにかく徴税の現在の機構を見ますと、この前も蔵相に申上げたと思うのでありますが、桐生の税務署のような例が実際あるのであります。ちよつとさつきの割当制の問題と連関して考えられるのでありますが、蔵相は知らない、蔵相はそういうことを指示しないと言つておりますけれども、下級機関の方では全く別なことをやつておる。だから税に対しては適当に緩和するというようなことは政府は謳つておりますけれども、そこへ行つて見ますと、物淒く職務に忠実だ。忠実過ぎる程忠実だ。そうして実に徴税を苛酷にやつております。だからその町の人はまるで惡代官だと言つておる。鬼税務署長だと言つておる。こういうような実情がある。ところが税務署長に聽いて見ますと、自分は飽くまでもやはり上司の命令には忠実でありたい。これは現在の公務員法が作られた理由でもありましようから、公務員法の範囲だつたらやはりそういうことになつて飽くまでもそれを守つて自分の職務を励行するということになります。この署長はどういうことを言つたかというと、この前も申上げましたように、若しそういうことをやつて自分が仮に戰犯として追放されても自分としては何ら悔ゆるところがない。こういうような、いわば戰争前のような信念で以てやつておる。併しこのような信念で以てやられて果して国民大衆はいいものであるかどうか。これは私は多くを言う必要がないと思う。ところがこの税務署長は明らかにジレンマに陷つておるわけです。政府の、これはどういうふうな形で通達されたり、方向を指示されるのか分りませんけれども、そういうものに忠実ならんとすれば国民に忠実であることはできない。国民に忠実たらんとすれば上司に対して忠実であることはできない。こういうことに追込まれておるので、実は惡代庁、その税務署長を私は気の毒に思つた。その原因はどこにあるかというと、今言つて池田蔵相のような態度、自分では知らん、そうして指示した覚えもないと言いながら、いつの間にかそれは指示され実施されておるというところの二重性、ここに大きな問題があるのでありまして、ここに現在国民大衆を搾り上げておる税の收奪機構がこういう形で民主的な偽裝を持ちながらはつきり現われておると、こういうふうに解釈せざるを得ないし、又現状は正に然りと思うのでありますが、蔵相はこの点を一体どう考えておられますか、このような実態に対してどんな対策を持たれるのか、その点明らかにお伺いして置きたいと思うのであります。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点が分らないのでありまするが、私は先程來答弁いたしましたように、割当制なんかはやつていないのであります。それが証拠には予算上今問題になつておる申告納税のなんか予算程取れない、若し割当なんかして無理なことをやるなら予算通り取れる、私は取れなくていい、こう言つておるのであります。
  90. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩間君にお諮りいたしますが、午後の委員会の都合もありますので、この辺で中断して残余の……。
  91. 岩間正男

    岩間正男君 もう少しですから。後そんなにとりませんから。
  92. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 中断をして打切るわけじやない。
  93. 岩間正男

    岩間正男君 何か都合があるのですか。
  94. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 午後の委員会を始める都合によつて……。
  95. 岩間正男

    岩間正男君 じやようございます。又出て頂きます。大臣の都合を伺つて下さい。
  96. 山田佐一

    委員長山田佐一君) よろしいそうであります。
  97. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、資料ですね。さつきの石油資料ですね。その資料を、直ぐ分る方に何して、成るべく早く出して貰いたいと思います。それだけであります。
  98. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先程岩間委員が貿易特別会計についてお尋ねした際の御答弁が、どうも納得行かないのです。その点についてちよつとお伺いしたいと思います。河野政府委員答弁によりますと、貿易特別会計現金においても黒字である。それから手持を入れればますます黒字であるという答弁であるりすが、それはどういうわけなんですか。今外国為替特別会計の方で金繰りが非常に弱つておる。その原因はやはり貿易特別会計の方からの繰入れが順調に行われないというところにあるので、目下その金繰りの打開について検討中じやないのでしようか。そういうことが新聞に出ておりますが、このことは事実と相違しておるかどうか。
  99. 河野一之

    政府委員河野一之君) 貿易会計外国為替との両会計において入り繰りがありまして、資金繰りが相当窮屈な時代があつたことは事実であります。併しながら現在の段階におきましては、そういう事情は解消いたしまして、支障なく決算ができるのであります。
  100. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それからこの前私がやはりこの問題についてお伺いしたのですが、貿易特別会計の日銀或いは政府からの一時借入金ですが、これは年度内に返済するということになつておるのですが、河野政府委員の御説明によると、三月三十一日までない、又或いは四月か五月頃に延びてもいい、そこまで行けば返済できると、こういう御答弁であつたようでありますが、そうでございますか。
  101. 河野一之

    政府委員河野一之君) 法律にあります一時借入金は、年度内に償還しなければならないというのは、年度は整理期間を含むのでありまして、整理期間は四月まででございますので、三月三十一日に返済できなくても、整理期間中には返済できる、こういう意味で申上げたのであります。
  102. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私の財政法の見間違いかも知れませんが、財政法では会計年度内としてありますが、会計年度というのは三月三十一日だと思いますが、そういうふうに何か規定したものがございますか。
  103. 河野一之

    政府委員河野一之君) これは、大蔵省証券等につきましては、年度内に償還しなければならないとありますが、年内を越えまして、四月中に償還しておるというのでありまして、年度内の意味は、整理期間を含むというふうに私共は考えております。
  104. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは慣例なのでありますか。何かはつきりしたそういう根拠がございますか。財政法がどこかに……。
  105. 河野一之

    政府委員河野一之君) それは從來と申しますか、そういうふうに年度内という意味は、整理期間を含むという解釈でございます。
  106. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでよろしうございます。
  107. 小川友三

    ○小川友三君 税制機構の問題でちよつと大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  108. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩間君にお諮りいたしますが、さつき切りましたけれども、総理の御出席が一時半に延びましたが、お続けになりますか。
  109. 岩間正男

    岩間正男君 小川君のは関連質問のようですから……。
  110. 小川友三

    ○小川友三君 実は税制機構の問題ですが、この間予算委員会では委員長さんを初め我々が数名で、桐生税務署が非常に惡辣であるというニユースが入りましたので調査しましたのです。委員長さんもいらしたわけですが、岩間先生も、我々七名くらい参りましたんですが、この税務署長は、実に私は変えなくちやならない存在であるという我々は感じを得ました。それは戰争犯罪人と同様な待遇を受けて首切られても構わないのだと言つて徴税の強行を断行しております。これは実に恐るべき問題であつて、公式に我々委員が行つて、その席上でみずから戰争犯罪人の処罰をされても構わないということを放言するやつです。それでその土地の業者を沢山集めて聞いて見ますというと、税金が高いからといつて再審査の願いを出すと、三倍、五倍とふつかけて來る、そうして皆破産してしまう。それで織物業者は桐生では八〇%が倒れております。強制執行にされておる者が一千軒あります。こうした横暴を極めておるということは、これはもう惡代官どころじやないと非常に悲鳴を挙げております。これは自分は長野県の人間で山奥から來た、拔擢されて税務署の署長になつて來たということで、もう話にならないわけです。これは我々委員としては何とかしなくちやならんというわけで、早く結論を出そうと思つていたときに、岩間委員から丁度質問中に出ましたので、この点につきまして大蔵大臣としまして、本当に実情をお調べ願いたいと思うのであります。これは日本中の税務署長のうちで一番惡いと思う。みずから戰争犯罪人のうちの一人と口にしておる。これは不都合でありますから、この点につきまして、どうか大蔵大臣はこれは北海道かどこか遠くの方へ廻して頂いて、修業をしなくちやいかんと思いますので、ちよつとこの点につきまして、委員長さんもいらしていますから、よく一つ御連絡を賜わりたいと思います。
  111. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 事実をよく調べまして善処いたしたいと思います。
  112. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それではこの際休憩をいたします。午後は一時二十分から開会いたします。    午後霊時七分休憩    —————・—————    午後一時四十七分開会
  113. 田村文吉

    理事(田村文吉君) それでは午前中に引続き会議を開きます。総理大臣に対する質問。内村君。
  114. 内村清次

    内村清次君 吉田総理に御質問いたしますが、先ず国鉄に対するところの仲裁委員会第二次裁定でありまするが、この問題はすでに国会にも政府が議決を求める件として提出されて大きな政治問題になつておる。どうしても第二次裁定はいわゆる政治的に解決しなければならない。而も又法の精神を尊重されて解決しなければならない。 こういうときに当の監督責任者であるところの大屋運輸相は新聞によりますと、今日からはいわゆるこの委員会答弁にもお出でにならない、或いは又分科会答弁にもお出でにならない、或いはこういうような事態を解決しようとするような努力をされずに選挙のために選挙区に帰つておられるというようなことが書いてある。こういう点につきまして行政の責任者であるところの総理が先ず大屋運輸相のこの施行につきましてどういう点で許可されたかを一つお聞きしたい。  その次は私は二十四日の日に総理も御承知通りに緊急質問をこの問題についてやつております。この問題はいわゆる総理がこの第二次裁定だけは第一次裁定の轍を踏まないように、ああいうふうな違法行為をとられないようにと思つて私は質問をやつておるのでありますが、この問題につきまして一体政府はどういうような即ち解決策を考えておられるかどうか。この点につきまして篤と一つ総理のお考えをお伺いしたいのであります。
  115. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えしますが、大屋運輸大臣の旅行中の理由については、私も聞いたことがありますが、今ちよつと記憶がはつきりいたしませんから調べた上でお答えいたします。  それからいわゆる第二次裁定につきましては、政府の成るべくその趣意に副いたいと思いますが、本日のところは予算その他の関係からいつてみて、すべて直ちに呑むといいますか、その裁定に從うことができないので、その趣意は酌んで成るべくその裁定に近い何かの方法を講じたいと思つて関係各省において暫く考究中であるのであります。お答えいたします。
  116. 内村清次

    内村清次君 私の本会議の質問終了後におきまして、関係閣僚が関係方面の方に、只今総理が言われたような御交渉をされたということは、新聞で承わりました。ところが、この結果がよくなかつた。而もこの結果がよくなかつたという点につきましては、どういうような御報告があなたにあつたのであるか。同時に又、こういうような重大な問題につきまして、総理御自身が何とかこれを解決しなければならない。こういうような御努力がまだ見えておらないようでありますが、この点に対する、即し御努力の点をされるかどうか、これを一つみずから関係方面あたりに行つて御努力されるかどうか、この点をお伺いしたい。
  117. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答をいたします。只今は主管閣僚において專ら交渉をしておるのだと思います。併しながら、その結果については私はまだ承知いたしておりません。只今交渉中であろうと思います。無論交渉の経過によつては、私が話をした方がいいということになれば、喜んで交渉をお引受けしますが、只今のところは主管閣僚において專ら交渉中であると御承知願いたい。
  118. 内村清次

    内村清次君 目下は主管閣僚が交渉中とおつしやいますが、もうその段階は昨日労組の代表の方々と、それから増田官房長官との会見の席上では、もう自分達は矢盡きてしまつたんだ、こういうようなその御答弁でありました。これは最も私は危險性があるところの御答弁であつたと傍におつて聞いておりました。民主的労働組合がああやつて、法律を守りつつ、今まで御承知のごとく、これは約半年の間本当に涙を飲んで法律に從つてつて來ておる。而も又その結成というものは、御承知のごとくこれは世界的な、即ち連繋もできておるというような状態、こういうふうな労組の正しい動きというものが、この内閣によつて、そうしていわゆる経済闘争というものが限界に來るというような事態に立至るということを私達は心配するが故に、もうこの段階においては総理御自身が、いわゆる御努力なさつて、そうして解決して行こうというその点に來ておると思うのでありますが、総理はどうお考えになるか、交渉の段階につきましてどう考えるか、或いは労組と御会見なさるのであるか、或いは又関係方面あたりにみずから出掛けてお出でになるかどうか、この点を承わりたい。
  119. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 主管閣僚から私に、交渉した方がいいというような話はまだ聽いておりません。故に只今のところは、これまで通り主管閣僚において交渉中であるのであります。
  120. 内村清次

    内村清次君 総理にお尋ねいたしまするが、国鉄のこの從業員が、いわゆる勤労條件におきましては、国家公務員の勤労條件と違つておるのだ、而も又この公社の企業内容というものは、これは生産性を持つところの企業内容であるということはどうお考えになるか。その点も一つ御認識の程度について先ずお聽きしたいのです。
  121. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは主管閣僚からお答えいたしますから……。
  122. 内村清次

    内村清次君 主管閣僚はおりません。そこで主管閣僚たる大屋運輸相がおいででも何でもない。そういう点を総理が御認識になつておられて、同時に又この第二次裁定の内容を今御存じないようである。ただ單にあなたは給與ベースを改訂しないということだけをお考えになつて、公務員の給與のベースの改訂と、これから公共企業体のベースの改訂というものは意味が違つておる。その意味の違つた点を御認識になつておらない。この点を総理一つよく主管閣僚からもお聽きになろうが、或いは又総理自体も御勉強して頂きたいと私は思う。この点につきましてどうですか総理は。
  123. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私も相当勉強しているつもりでございます。私の勉強が足りないという御認識なら仕方がありませんが、私としては相当研究をいたしております。
  124. 内村清次

    内村清次君 勉強をしておられる総理大臣にお尋ねいたしまするが、それでは、この国鉄の二十五年度の経理というものが、今二百三十億の益金が出るのであります。儲けが出るのであります。こういうような事態におきまして、そうして人件費におきましても七十一億の節約ができておる。こういう経理が非常に好転しているときにおきまして、その人件費の節約も……、今回の裁定を尊重するというお考えがあるとしたならば、この節約した人件費だけでも向けて裁定を御履行になるといいのであります。それをお考えになるか、勉強しておるところの総理大臣一つこの点につきましての御所見をお伺いいたしたい。
  125. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 代りまして御答弁申上げます。途中でございましたが、ほぼ内村さんの御質問の概要は御想像申上げることができるのでございまして、即ち国鉄の今回出た裁定はできる限り政府においてはこれを尊重し、予算その他の措置を講じてこれを具体化せよ、こういう意味の御質問と推察いたしまして、御答弁申上げます。  政府におきましては国鉄の第二次の裁定がありましたとき、もとより内村君と全然同感でありまして、できるならばこれを尊重し、これを具現化いたしたい。こういう見地の下に考えましたが、併し御承知通り裁定は一、二、三の三つに分れておりまして、その第一は八千二百円ベースを設定せよという裁定でございまして、これは経済安定政策施行の上、又一般公務員の六千三百七円給與ベースとの関連から観察いたしまして、又現に提出されておる予算面から見ましても不可能である、こういう結論に閣僚一致到達いたしました。それから第二項につきましては内容が特定されていないことは、この問題について御造詣の深い内村君の御承知通りでありまして、現在内容が特定されていないのであるからして、どういうふうに予算措置を講じてよろしいか分らない。而もあの第二項を実施するに当りましては、労働組合と協議して云々というようなこともございましたから、只今のところでは予算面から言いましても、資金面から言いましても、不可能であるという意味合におきまして、国会に対しましてこの前同様の付議の手続を取つた次第でございます。
  126. 内村清次

    内村清次君 増田官房長官にちよつとお伺いしますが、総理にお伺いしますると、昨日私は労働組合とあなたとの交渉を見ておりました。そのときのあなたのお考えではもう関係方面との交渉も本当にもう最後になつた。だからしてもう矢折れ彈盡きてしまつたというような答弁、全く無情な答弁、そこでそれでは総理の方の御努力をお願いしたいというようなことが、これは労働組合の絶大な頼みである。それにも拘わらず総理の御会見も約されない。而も又総理にそういうような状態も御報告になつておらない。それで一体今回の第二次裁定を完全に執行しよう、或いは労働組合とよく了解の行くような解決をしようというようなお考えは政府には一つもないという証拠が総理大臣からもはつきり言われている。なぜああいう事態になつたならば総理大臣の方に御申告になつて、そうして総理大臣みずから出るような方策を講じられないのであるかどうか、この点を長官から一つ……。
  127. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 前の御質問私よく存じませんが、昨日のお話でしたら、私、内村君も御臨席でございまするから、明瞭にお答えできます。即ち專売公社の裁定は我々全面的にこれを受諾いたしました。ところで国鉄公社に対する第一次裁定の問題と関係してあらゆる公平の原則を適用した方がよろしいのではないか、或いは片手落になりはせんかというような問題が起き得るというわけで、政府においてももとより苦慮いたしましたのでございますから、努力もいたしました。併しながら内村議員も御承知通り專売公社の裁定は公労法第十六條第一項に該当せざることに至つたのであります。予算上経理上会計年度末である三月三十一日を控えたその十日前である三月二十二日の現在において明瞭になつた事態は、專売公社裁定は第十六條第一項に該当せざるに至つたのである。即ち一億三千二百万円の人件費において流用をいたさずとも、人件費において余裕を生じて参りまして、裁定を呑んでも尚且つ四百万円の予算があるのでございます。でございますから、我々は法規の則つて合法的な態度をとるべきことはこれ当然でありまして、專売公社については唯一の例外といたしましてこれを全面的に受諾いたしました。併し予算上資金上不可能であることを許さざるところの他の会計にも、專売公社と同様の扱いをするということは許されないことでございまして、法規上不可能なことは許されないのでございます。併しながら社会常識に見まして、若しできるならば予算面或いはその他から流用しても多少余裕が出るならば何とか国鉄諸君の労働條件の維持改善には努力をいたしたいという、政府といたしましてはもとより親心を十二分に持つておる次第でありまして、関係方面にも折衝をいたしましたけれども、その結果は内村君も御臨席になつて明瞭であります通り、我々は肚を打割つて国鉄労働者諸君にもお話をいたしまして、種々の話はもとより、労働組合員もおりましたが、我々の意のあるところを諒として下さつたというように私は理解いたしております。
  128. 内村清次

    内村清次君 專売公社の即ち人件費の問題につきましては、私は相当資料も持つておりますが、この点は今日あなたと討論いたしますのも時間の制限がありますから止めますが、最後に総理大臣は、この問題はただ国会に第二次裁定をお委せになり、国会の審議にお委せになる、このことだけで、いわゆる責任を国会に転嫁しようというお考えで今日出されておるのであるか、いわゆる第一次裁定と同じような関係で出されておるのであるか。この御意思をはつきりとして頂きたいと思います。総理大臣に特に最後に……。
  129. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 代つて答弁申上げます。とにかく政府といたしましては、盡し得るところを盡し、予算面資金面においてなし得るかどうか検討に検討を加えました。即ち十五日に裁定が下りまして以來、十日間に亘つて主務大臣はもとよりのこと、関係閣僚において、又公社総裁その他公社事務当局とも鳩首協議いたしました結果、予算上資金上の措置はとり難いという結論に到達いたした次第でございます。そこで我々は決して国会に責任を転嫁しようとは考えておりません。国会は国会といたしまして、公労法第十六條第一項、第二項に関する所定の審議権はあるのでございますから、十二分にこの審議権を御行使下さることを期待いたしておる次第であります。
  130. 木下源吾

    ○木下源吾君 総理大臣一つお尋ねいたしますが、先ず第一番に、二十五年度予算案ですが、特に国民の経済生活状態から見て、労働者と言わず、中小企業と言わず、農民と言わず、漁民と言わず、非常に困窮しておるのですが、これはひとえにドツジ・プランによる現内閣の財政方針によるところであつて、一口に言えば大衆から收奪して、そうして政府の権限を以て銀行を保護し大金融機関を保護し、これを通して大産業のみが保護されておる、こういう現状だと私は見るのであります。それは又事実であります。又シヤウプ税制によりまするというと、これ又大産業或いは産業、この方面を緩やかにし、そうして大衆をやはり收奪するという方策に出ておる。このような方策が採られる以上、日本の経済の安定も再建も私は不可能だと、かように考えますが、総理大臣はこの事実に対してどんなお考えでありますか承わりたい。
  131. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。二十四年度予算も、二十五年度予算も、しばしば私がここで申す通り、企図するところはインフレを防止する、日本の経済を再建するというのが大目的であつて、そのためにその方針で予算を編成されたのでありますことは、しばしば申した通りであります。而してそのために或る段級が非常に困難に陷る、苦境に陷る……これはその結果を見て政府としては適当に是正をいたしますが、今日のところは主たる目的が今申すようにインフレを防止する、抑制する、そうして一応財政経済を常に直す、その目標のために、この方針のために編成せられたので、その結果或る一部において不公平が起り、或いは苦境に立つ、これは適当に今後是正はいたしますが、今日のところ予算を改変する考えはございません。
  132. 木下源吾

    ○木下源吾君 一部の犠牲を認めておらるるようでありますが、これは決して少数の一部ではなくして大多数であるということをお認めになるのであろう。この点を一つお聽きいたして置かなければならん。これは私から申すまでもなく、今まで採られている御政策から現実にそうなつておる。これを一つお答えを願いたい。
  133. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 政府としては少数多数……多数を目標として政策を立てているのでありますから、その結果多数が困難に陷つた、或いは不当な不公平な取扱を受けたという事実が顯著であれば、政府といたしては無論是正をいたします。今日その段階にあるや否やということについては、私は尚答弁を留保いたします。
  134. 木下源吾

    ○木下源吾君 政府は先に通産省の蜷川氏を、直接審議したかどうか分りませんが、辞めさせたということになつた。そこへ今回のベース改訂を繞つて人事院総裁並びは人事官は正面からこの政府を攻撃しておる、不満足だと、そうしてベース改訂を主張している。政府がこれに対してベースは改訂せんと言つておる。どうも我々のみならず国民が、同じ政府の中においてかかる喧噪を來しておることは非常に不可解を感じておりますが、この機会に希くば総理を通し国民に明確にして頂きたい。
  135. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 政府政府の見るところに從つて、又権能に從つて政策を司掌いたしておるのであります。人事院又人事院の立場において司掌いたしておるでございましようが、これは政府の承服せざるところであります。
  136. 木下源吾

    ○木下源吾君 政府の承服せざるところであるならば、少くも総理大臣としては承服しないことを具体的に何らかの方法によつて示さなければならないと考えますが、その点を一つお聞きしたい、総理大臣に。
  137. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 代りましてお答え申上げます。政府が人事院の勧告を受諾し難いということにつきましては、給與ベース白書におして、極めて木下君の御指摘のごとく、具体的詳細に亘つて我々は論駁いたしてあります。
  138. 木下源吾

    ○木下源吾君 この政府のいわゆる給與白書なるものぐらい出たらめなものはありません。私は別の人事委員会においてこれを検討し、あなたも一昨日でしたか同僚委員質問でよく分つておられるでございましようけれども、発表しているからといつて、それは只今私がお尋ねしている政府の責任とは無関係だと考えるが、この点についてはもう少し責任のある御答弁を願いたい。
  139. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 先ず第一に総理大臣の施政方針演説において、その次に大蔵大臣の財政演説において、今政府といたしましては、九原則の実施並びにドツジ・プランの実施が国民生活安定、経済復興のため不可欠の要件であるということを、極めて明瞭に謳つております。それからこれを裏書きするものとして、いわゆる給與ベース白書を出しております。これに関しましてはもとより木下君の御指摘のごとく、人事委員会において論議を交わしておりますが、政府は原則として、あの給與ベース白書というものは間違いがないという確信を持つている次第であります。
  140. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は貴重な時間を今長官に御答弁つているということは誠に不愉快であります。私は先程も長官が言われておつたのだが、自分がやろうと思つたけれどもなかなかうまく行かん。    〔理事田村文吉君退席、委員長着席〕  これは関係方面の了解が得られないということを言われている。これは今に始まつたことではない、あらゆる問題でそうであります。そこで総理大臣にお伺いしたいのは、あなたは常に現内閣自主性があるということを強く主張されているが、只今官房長官の言われるようなことで、果して現内閣自主性ありや否やということを疑わざるを得ない。かかる点について総理大臣の御見解を願います。
  141. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 私が内村君にお答えしたところは、給與ベースの問題ではありません。裁定の問題でありまして、而も第二次裁定の中の第一項には給與ベースについて言及されております。この点は明瞭に我々は予算上資金上受諾し難いということを内村君に対する答弁においても私は指摘いたしております。その間何らの矛盾も間隔などもございません。
  142. 木下源吾

    ○木下源吾君 人事院の勧告を政府は無視しているという点については、多数の識者も、国民も、これはいわゆる憲法の生存権を守る労働者の立場をこのような状態に追込むことについては、憲法違反であると言う。かように言われているのでありますが、総理大臣はかかる憲法違反の疑義あることをも尚強行せられる。今後ともそういうお考えであるかどうか。
  143. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 代つて答弁申上げます。人事院の勧告というものは我々はできればこれを尊重いたしたいという点につきましては、政府は挙げて同じ態度をとつております。併しながら経済安定政策が折角効を奏して來ております。現に物価は下落の傾向を辿つております。又消費者生計指数も下落の傾向を辿つております。そのトツプであつたときに六千三百七円が設定されております。爾來約一年間でございまするが、段々下向きの傾向を辿つているときに、給與ベース変更ということは経済安定政策を採つている今日は矛盾した方策になりまするから、我々は受諾し難いのであります。ただ一般論といたしまして、将來経済安定政策が完全に奏功した、そうして日本産業が復興の段階に顯著に躍進して來たという時代におきましては、もとより我々は昭和五——九という実質賃金を目標として、そこまで公務員の賃金ベースなり実質給與を増して行きたいという心持は十分持つておる次第でございます。
  144. 木下源吾

    ○木下源吾君 経済安定をよくしばしば言いますが、それは言うまでもなく、大衆、勤労段級の犠牲においてこのことを強行しようとしておる。その過程においてこの問題が起きておるのであることを銘記して頂きたいのであります。  次に総理大臣は年度末において何らかの手当を出したい、出してやりたい、こういうことを言われておつたのでありますが、実は最近になつてこのことが行われないであろうことの見通しが強くなつて來た。ところが昨日もここで大蔵大臣にお尋ねしまするというと、各省におけるところの人件費、物件費の不用額が百億近くもあるということを言われておるのでありますが、このような不用額を以てこの一時の給與、年度末給與をやるということに対して御努力なさる御意思がありますかどうか、そうでないとするならば、いつも総理の言わるることは單なるゼスチユアであつて、僞善的な言葉である、かように思われても止むを得ないではないか。かように考えまするので、総理大臣の御答弁を願います。
  145. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 木下君の御指摘の数に近い予算の執行の残があります。これは併しながら政府職員が一生懸命努力しましたり、或いは行政合理化を図つたり、或いは節約を図つたりした結果、捻出した額でございまして、我々はやはり予算の執行に関する法律の命ずる通り、これは大蔵省に返しまして、或いは負担の軽減に現段階におきましては充つべきものであるという確信を持つておる次第でございます。
  146. 木下源吾

    ○木下源吾君 それでは私はこれ又総理大臣にお尋ねするのであります。昨夜八時半に炭絋労の組合のストライキがいわゆる強制調停を命ぜられたのでありますが、このことについては通産省側においては、このストライキをやつても別に我が国の国民生活に惡影響を及ぼすようなことはない。かように言われておつたのでありまするが、労働省は敢てこの強制調停をなされたということについては、同じ内閣において不統一を暴露したものではないか。この点を一つお尋ねします。
  147. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) お答え申上げます。労働大臣は御指摘のごとく昨夕労働関係調整法第十八條第五号によりまして、いわゆる強制調停に炭労争議を付したことは事実でございます。而して通産省方面においてストライキがありましても、産業復興に余り妨害がないということを言つてつたというような事実は私不幸にして聞いておりません。そういうことはないのでございます。即ち炭労ストによつて国民経済に受くる被害ということは甚大でございますから、公益的の見地から労働大臣において強制調停に付した次第でございます。
  148. 木下源吾

    ○木下源吾君 然らば労働大臣は一方的に炭絋労働組合に対してのみ強制調停をなして、経営者側に対して何らの意思表示をなさらないということの片手落に対してどういうお考えを持つておらるるか。
  149. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) この調停の指令というものは、木下君もよく御存じの通り法第十八條第五号によるものであります。両者にそれぞれ効果を及ぼすものでございます。
  150. 木下源吾

    ○木下源吾君 両者に効果を及ぼすと言いますけれども、ただ黙つていては効果は及ばないと私は思います。殊にしばしば今日まで現政府のとりました資本家に対する手心は非常に緩やかである。一方において労働者にのみ苛酷な行き方をとられておる。これでは労働者はみずからの生活を維持するために、その向上を図るために一生懸命やつておるものを、全くそれの手足をもいで窮地に追込むようになるのではないか。火を見るよりも明らかであるが、この点についてはどうお考えになるか。
  151. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 労働関係調整法第十八條五号によつて労働大臣が所定の手続をとつた場合は、中労委に対してとるのであります。而してこれが通知は炭労及び使用者側にそれぞれ出してあります。而して強制調停によつて若し利益を受くるとすれば、外ならぬ労働組合である、炭絋労働者であるということを政府側として明言し得る次第であります。
  152. 木下源吾

    ○木下源吾君 すでにこの争議が起る前にかかる事態の起ることを却つて労働者の側からしばしば経営者、並びに政府にこれを警告している、にも拘わらずこのような事態を起されたことが政府の責任であると私は考える。而も労働省又は政府はみずからの手でこれを解決する能力がなくて、最後的にエーミス課長のあのような措置に出なければならないという、このような態度は私は現政府が労働政策に対する無智無能力を暴露したものと考える。この点については総理大臣はどういうふうにお考えになつているか。
  153. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 政府において労働行政については、木下さんに褒められる程ではございませんが、決して失敗しておるとは思いません。その証拠を申上げます。即ち重大基幹産業である日鉄関係は労働大臣の斡旋によつて先般円満に妥結に到達いたしました。その次は全鉱連であります、即ち石炭以外の鉱山労働争議、七万五千人の人がおつたと思いますが、これも労働大臣の斡旋によつて立派に解決いたしております。それから第三に起きているのが電産でございますが、これも通産大臣及び労働大臣が今懸命に斡旋いたしておりまして、不日円満な解決に到達し得る見込であります。残るところは炭労でございます。これも実は労働関係調整法により解決しようとして一生懸命努力いたしますが、木下君は北海道でありまして、事情に非常に精通いたしておりますから、私とあなたの関係において申上げるのでありますが、労働組合側がむしろ要望した、ともかくもストを回避して、そうして産業平和を招來して早く生産に從事いたしたいという心持は労働組合も持つておられる、その結果できる限り立派な労働條件を維持決定するために今回の中労委の調停が行われた次第でございます。
  154. 木下源吾

    ○木下源吾君 如何に長官が陳弁されようとも労働者の賃金を守るために、生活を守るためにはストという一つの武器がある。このストを止めさせておいて、今度資本家との自由な交渉に委せたならばどんな結果になるかはこれは万人が答えが一つである。万人の答えは労働者に不利だということである。この事実を否定してあなたはいろいろな今までの日鉄の例とかいろいろ言われておるが、日鉄の例もそうだ、これは決して政府の功名でも政府の努力でも何でもありはしない。労働者自身がこんな無能な政府に対しては非常な不満を持つておるが片手に自分達は今やはり建設をしなければならないのである。この自覚の上に立つてあの不満なところの要求に対する不満足の回答で一先ず手を引いているのである。今のような炭労のような場合でもスト権をとつておいてそうして強制調停をする、そうして自由に資本家との交渉に委せる、こういうようなことは決して労働者の満足の行くような、労働者の利益になるような、そういう労働者の主張が通るような結果が断じて生れない。私は今までの経過をずつと見て來たならば分る通り、今度の問題などでも強制調停がエーミス課長から勧告されたならば、労働省が、本当に政府が労働者を保護せられる立場にあるならばそれを突つ返すぐらいの勇気がなければならん、これには断じて実情では從がわれない、私はそれくらいの態度をとつてこそ初めて労働者は政府を信頼するであろうと思うのである。若しもそういうような事実を行動を以て示したことがあるならばこの機会においてはつきり言つて頂けばあなたのさつき言われたことが本当であるということを国民が知るであろう。
  155. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 昨日の午前でございましたか、労働課長から示唆のあつたことは木下君御指摘の通り事実であります。そして強制調停に付したいというわけで、居中斡旋を夕刻八時半まで続けましたけれども、昨日一日の間においては妥結に到達し得なかつたので、そこで二十四時間以内というようなこともありましたからして、尚四十八時間なり七十二時間かけたら妥結に到達し得る見込はあつたのでありますけれども強制調停に付しました。このことを御報告申上げて置きます。  それからもう一つ強制調停によつてストライキの権利を奪う、或いは経営者側のロツク・アウトの権利を奪う、そうして不自由な立場において調停をする、そうして意思表示をせざるを得ないから妥結に到達せざるを得ない、こういうことは面白くないという言葉でございますが、勿論いわゆる強制調停はそういうことではございません。昔の意味の強制調停ではございませんで、すでに木下君よく御承知通りクーリング・タイムは経過しておりまして、でございますから、ストライキは自由になし得る状態であります。又経営者としてロツク・アウトをなし得るのでございますから、言葉の濫用でありまして我々はただ調停と言つておりまするが、世間の人が強制調停と言つておるに過ぎない。
  156. 木下源吾

    ○木下源吾君 総理大臣にお尋ねする。最後ですから……私は二十五年度予算を見、又いろいろ労働者、農民、中小企業に対するところの現内閣の政策を靜かに考えて見ると、結論として曾て総理大臣は労働者を「不逞の輩」と抑せられた、大蔵大臣は中小企業は五人や十人は倒産しても、死んでも止むを得ないと言われた。これは私は本心であろうと考える。そこでお尋ねいたします。この予算遂行の過程においては必ずや閣僚のどなたかの口からか私は農民や漁民は生かさず、殺さずにして置くということを言うであろうと思うが、その時期はいつであるかをこの機会にお伺いして置く。
  157. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 政府におきましては、経済安定政策遂行の過程において副作用が起るかも知れません。併しながら副作用はできるだけ起したくない、これが防遏その他善後策のために縣命の努力を捧げなくてはいかんというのが政府全体の考えであり、まして、大蔵大臣におきましても若しプレスにおいて全部大蔵大臣の言われたことを報告して下すつたならば、いわゆる誤解はなかつたであろう、こう思つておる次第でございます。それからもう一つ農民は生かさず、殺さずというようなことを或る閣僚から必ず将來発言するであろう、この時期はいつのときであるかという御質問は、これは実はお答えいたしかねるのでございますが、併しお答えいたします。我々は農民は生かし生かさんとする政策を堅持しております。
  158. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩崎正三郎君。あなたの持時間がもう十分分でありますからどうかそのおつもりで御質問をお願いいたします。
  159. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 簡單に質問いたします。  昨日大分帆足君から縷々講和問題、平和問題についてお話がございましたときに、総理日本の立場としては、飽くまで平和運動の先鋒に立つてやるのが日本の立場であるとお答えになつたように記憶しておりますが、然らば実際には具体的にどういうことをやろうとするのか、ちよつと先ず承わりたいと思います。
  160. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これはしばしば申します通り、外務大臣として責任の地位にあるものが、こういうことをいたす。ああいうことをいたすということを前以て私にはここで以ておしやべりをすることは差控えます。
  161. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 それでは具体的に伺いますが、まだ日本の国は地方に参れば参る程、何か戰争でも起れば戰争に便乘して一儲けしたいような、又それに便乘して日本の国の復興を図りたいような空気もあるように見受けられるところがありますので、さようなことは新憲法下における日本としては誠に由々しき大事と思うのであります。かような世間の風潮に対して総理は何か国民運動として、平和の急先鋒の国家となるべきであるという御趣旨から何かお考えを持つておりますか。伺いたいと思います。
  162. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) ちよつとお尋ねいたしますが、何ですか。お尋ねの要点は再軍備とかその他の運動をする風潮がある、これに対してどうするかということでございますか。
  163. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 そういうこともありますが、まだまだ日本の国はそういう軍国主義的な風潮が残つていて、第三次世界戰争でも起ればそれに便乘して一儲けしたいとか、いろいろな風潮がある、そういうものに対して総理はどういう考えを持つて指導するか。
  164. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) そういう風潮があるかも知れませんが、併しながら今日において事実として現われていることは何もないのであります。のみならず、そういう風潮に対しては政府としては極力これを抑止するなり、又その根本を除くことに断然たる処置をいたすつもりでございます。
  165. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 断然たる処置とは具体的にどういう処置ですか。
  166. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは法律の命ずるところによつて、治安を紊すものがあれば治安を維持する法律があります。又その他適当ならざる言論をなして、そうして社会の治安を紊すとか、或いは又国の利益を損するなり、国の憲法その他に反する、例えば軍備を主張するというような不穏な言動をいたす者があればこれを法に照して処置する。これらが起つた場合の問題の形勢によりますからこれは一概にこういう場合、ああいう場合ということは申しかねます。
  167. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 とにかく首相も昨日申されたように、日本の自立を図るために飽くまで平和主義を以て、世界平和の先鋒に立つてやるべきであるということを言つているのであります。それに関連してでありますが、最近世界連邦政府樹立運動なるものがあちらこちらに起きているようでありますが、政府或いは総理はこの運動、そういう方向に対してどういう見解を持つておられますか。
  168. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 政府としては末だ具体的に交渉を受けておりませんからして、ここでのお答えは差控えます。
  169. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 木下委員、内村君らからベース問題、裁定問題について詳しく論じられましたが、この日本の労働不安と申しますか、社会の動搖と申しますか、これは必ずしも日本国内だけの問題でないと私は考えるのであります。これは言うまでもなく世界的な規模におけるところの冷い戰争の影響が沢山に現われておる。從つてドツジ・ラインもさような面からして日本に向つて相当に強硬な、いわゆるアメリカ式の方式を日本の政治の中に注入して参つておるということが我々考えられるのでありますが、さように見て参りますというと、この日本の労働不安、社会不安というものは、前じ詰めれば世界の平和というものを最後の目標に置かなければ相成らん問題だと思うのであります。從つて私は繰返して政府はこの際ドツジ・ラインによるところの諸般の政策を、先程からも從來からも繰返されておるところの中小企業の問題も農村の問題もひつくるめて、この政府の反大衆的な、反勤労大衆的な、犠牲を大衆に負わせて金融資本を擁護するところのさような方式を或る程度まで修正する考えはないか。最近新聞紙においても政府が何か行詰つた政策を転換するために政策転換の方向に向いつつあるということが新聞に出ております。参議院の選挙を目当てにして看板の塗替えをやろうということでなかろうかと思いますが、さような考えからであろうとなかろうと、私共はそういう世界的規模におけるところの問題において日本が飽くまでも平和主義に徹して、そうして世界の平和に対して一縷の貢献をする。又そこに日本の生きる道がある。そういう強い関心があるならば私はここに断乎として、政府はたとえ私共には飽足らないことであつても政策の転換をして、少くとも人事院の勧告を呑むだけの覚悟がなければならんと思うのでありますが、そういう意味において何か政府は政策の転換を考えておることがありますか。さようなことについて何か具体的な御答弁があれば承わりたいと思います。
  170. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 先程からしばしばここで申す通りでありますが、とにかくインフレを防止する、財政経済を安定せしめる、そのために二十四年度乃至二十五年度の均衡予算を作り上げたのでありますので、その執行の結果補正予算をただ一度実施しただけであります。又二十五年度の予算はこれから実施するのであります。この実施によつて、或いは実施以前においても、若し政府として從來の方針を転換すべき必要に迫られた場合には政府としては喜んで転換いたしますが、今日のところまだ二十五年度の予算も成立しない今日においては、直ちにこれを変更する、政策転換と言いますか、或いは予算の変更をする考えはないのであります。
  171. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 次に承わりたいことは、この前の総選挙においては民自党は、今日の自由党は、いろいろの政策を掲げた中で、大いに我々は社会政策を実行して勤労大衆に報ゆるのであるということを申しておつたように記憶するのでありますが、一体最近の予算面を見ましても、この社会政策的なこがと誠にどこにあるかと心配する程のものなのであります。千二百億のこの債務償還その他今度は二千六百九十億に達するところの物価調整費や公共事業費と、鉄道、通信、電力、そういつた産業設備に対する支出、こういうものが大半でありまして、漸く捜してみても誠に微々たるものが、民生施設の中に百数十億くらいあるというわけで、私共思うに今日程社会政策の必要なときはなかろうかと思うのでありますが、さつぱりそういうものが見えない、見えても誠に雀の涙程である。私は社会政策というものがどういうものであるかということについて勿論総理、或いは民自党諸君とは見解の相違はあると思いますが、とにもかくにも社会政策を銘打つている以上、どうかこの際この点について特にお考えを願いたいと思うのであります。中小企業の救済問題も單に商業的な、経済的なベースによるところの救済方式ではもはや中小企業の救済はできない。やはり社会政策的に考えることのみによつてこの中小企業の救済はでき、從つて日本の健全なる産業の発展もできると思うのであります。かように思うのでありますが、総理見解はどうですか。
  172. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今社会政策の問題についての御意見と御質問でございますが、自由党におきましても、いろいろとそういう点につきましては意見等を開陳いたしております。内閣といたしましても、御承知通り失業問題等について財政上特に、公共事業費等の転換を考えまして、又その外直接には当面の失業問題の対策として、労働大臣もしばしば述べているような点も考慮いたしておりますが、なかんずく住宅政策等の問題については、これは一面におきまして、住宅の建設、復興とか、又他面におきましては、失業問題の解決の一助でもあると考えております。又その外中小企業の対策につきましても、これは特に皺寄せされておりました金融問題等について。只今のお言葉のように、主としてこのコンマーシヤルの、商業的な方面における金融措置を講じ、又その外特別な金融面における配慮を行いつつあるような状態でありまして、決して我々が社会政策面を等閑に付しておるというわけでございません。
  173. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三君 社会政策に関連いたしまして、実は今日も地方から陳情に参りましたのでありますが、今市の震災、又これに附随する、附随するのではありませんが、似たような問題で瀬戸内海の地盤沈下の問題、この問題はもはや法的な措置によつては救済の手段が今日ないのであります。例えば今市の震災におきましても、政府が金を貸すと、栃木県の知事に三億の金を貸すと言つたが、結局は五千五百万円の金を貸した、而も貸しても金利が高くて、又條件がやかましくて、貸りたい人が三千件もあるのに、その一部しか貸りられない。これではさような天災地変によるところの困窮民に対して、何らの実際的な救助にならない。私はこれこそどこから見ても社会政策的に考えて見なければならんと思うのでありますが、こういうものに対して政府は何か頭の転換をして、ただ法律的な救済の面だけでなく、一歩前進した意味において、真に国民を愛するという意味で、何か別途のお考えを持たれるか、持とうとしておるかということをお伺いしたいのであります。
  174. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 今市における震災、その他四国における沈下地帶であるとか、そういう問題は政府としてはこれを取上げまして、できるだけ今後とも善処して参りたいという考えでございます。ただ法的に多少制限がございますので、今後尚これらの点も検討の上、できるだけこれらの措置を善処して参りたいと考えております。
  175. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 委員長 もう一つ簡單であります。  これは前に農林大臣にも質問して、農林大臣は誠に頼りない御返答で残念であつたのでありますが、私共新農村を建設するためには、何といたしましてもこれは食糧問題、或いは米価の問題、さようの問題があるけれども、農村の骨組、新らしき農村の骨組については農村の協同組合の本当の意味の協同組合、生産協同組合を主とするところの、生産物を中心とするところの協同組合を確立する外ない。これが新農村の骨組であると、かように私は信じておるのでありますが、これに対してもさつぱり農林大臣は、農業協同組合は自主的にやつているのだから、それが自主的に困るのは自主的に解決すべきだ、かようなことを言つているので、さつぱりこれも何だか分らないのでありますが、本当に農村を新らしく作り上げて日本産業の重要フアクターであるところの農村を活かすためには、私は断じてこの農業協同組合を健全なものとするより外途はないと存じております。総理はこれに対して農業協同組合を活かすために何か本気になつて手を打つ気はないか。農業協同組合は今正に脊髄カリエスと言いますか、殆んど脊髄が腐つて來て、折角できた、新らしき農村の抱負としてできたこの協同組合が、皆潰れかかつておる。ここで見殺しにしておつて、どこに農村復興があるかと私は言いたいのでありますが、どうかこの点一つ我々に安心させるような御答弁をお願いしたいのでありますが、一つお願いしたい。
  176. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 農村の唯一の頼りにしておる協同組合、農協等の問題が、我々も極めてこれは重要であると考えておりまするので、これについての何らかの配慮を農林大臣等ともよく検討をいたし、尚当面の問題となつておるような報將物資の滯貨をどうするかというような問題についても、早急にその措置決定いたしまして、これも善処いたしたいというふうに考えておる次第でございます。    〔内村清次君「議事進行」と述ぶ〕
  177. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 内村君。
  178. 内村清次

    内村清次君 委員会の審議はこれは相当急いでおりまするが、併し総理の即ち出席如何というものは大体限られておるのですね。で、折角委員総理の責任のある御答弁を聞きたいという点で総理の御出席を要望し、要望しておるわけです。でこういうときにですね。一つ一つ所管大臣答弁するというようなことは、これは一つ委員といたしましても、どうも私達側におりましても非常に聞き苦しいことであつて、やはり責任者が答弁をするようになつて……。(「異議なし」と呼ぶ者あり)で分らないならば分らない(「その通り」と呼ぶ者あり)というようにはつきり言われなくちや、一々所管大臣答弁させるということは一つ御注意して頂きたい。(「異議なし」「議事進行」「委員長総理一つやらせて下さい」「できそうでしよう、これは」と呼ぶ者あり)
  179. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私は主管大臣からして答弁を望みますのは、私よりも主管大臣の方が数字その他を詳細に説明ができまするから、私に代つて、私よりも便宜だと考えて主管大臣答弁をいたさせるのであります。併しながら主管大臣は私に代つて答弁でありますから、その言葉は私において十分取ります。    〔木下源吾君「議事進行」と述ぶ〕
  180. 山田佐一

    委員長山田佐一君) もうそれで御了承願われませんか。    〔木下源吾君「議事進行でございますよ。」と述ぶ〕
  181. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それじや木下君。
  182. 木下源吾

    ○木下源吾君 我が党の質問は私さつきから計つておりますが、まだ三十五分より質問しておりませんので、そのうちで総理大臣答弁は五分くらいのものです。ですからあとまだ一時間ですから、五十五分総理大臣に保留して置きますから……。
  183. 山田佐一

    委員長山田佐一君) そんな工合には承つておりませんが、私と見解が違います。まあここでその議論を討わさずに、あとを急ぎます。川上嘉君。
  184. 川上嘉

    ○川上嘉君 私は吉田総理に対して税金の問題と、これに関連しまして給與ベース問題、最後に奄美大島の帰属の問題について質問をいたしたいと思います。  税金問題は具体的な質問は、関係大臣に讓ることといたしまして、政治常識で答弁でき得る範囲内で、吉田総理質問を行うことにいたします。  吉田総理は第七国会の施政方針演説の中におきましても税制は政治の源である、かように述べております。それから第五通常国会におきましても收税に国民は未だ曾て見ざる苦痛を感じつつある、かように述べております。非常に税金に関心を持つておられるようでありますが、目下年度末を控えまして更正決定並びに徴收事務、更に滯納整理、差押等をめぐりまして非常に不安な情勢がすでに各地において発生しておるのであります。かかる事態が発生しないように二十四年度予算審議の当初から第五通常国会以來、たびたび私は本会議におきましても、委員会におきましても、速かに緊急対策を講ずべきであるとかような進言をして、常に政府に警告を発して來たのであります。現在各地におきまして御承知通り市民大会が数百名、数千名を動員して開かれています。尚デモ隊が税務署に押掛けまして更正決定を白紙に返せと叫び、更に令書の一括返上運動が展開されておるのであります。遺憾ながら税金の負担故に自殺したとか、一家心中したとかの数々の悲劇が起きております。尚差押物件を購入するな、購入してはいけないという、つまり不買運動、更に税務署員に物を売つてはいけないというような運動、更に税務署員と口を利くなというような、実に世にも哀れな運動が最近激しさを加えておるのであります。こうした表面に現われた、つまり悲惨な運動の背後にある国民大衆の苦痛を果して吉田総理は口で言われるように本当に分つておられるのかどうか。尚常に政府と納税者の板挟みになつて無理な仕事を続けており、而も今や国民から蛇蝎のごとく嫌われ非難の的となつておる税務署員の苦しい職場の立場をよく分つておるのかどうか。更に国民大衆をこの苦しみの中に追込んだのも、又更に税務署員を今日のごとき立場に押込めたのも一切は政府の責任であるとかように私は考えておるのでありますが、こうした点に対する吉田総理の御所見をお伺いいたしたいのであります。
  185. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。私が施政の方針演説その他においてしばしば述べております通り日本の今日までの税制その他においていろいろな不都合のところがあり、又戰争遂行等のために随分苛斂誅求と申しますか、無理な徴税の方法を採つておるということはこれは事実と考えまして、私の就任以來課税の方法についての解決、又税そのものについての検討及び一般財政において、財政支出面において、歳出面において政府としては行政費を極度に小さくして、そしてそれを減税に持つて行くという方針でやつておるのでありますが、併しながら尚終戰後間もない今日で混沌たる状態であるために税制においても、又課税の方法等においても我々が希望する程度に改正ができておらないことは私は認めざるを得ないのであります。故にその收税については政府は当局者を督励いたして改正といいますか、いわゆる是正に努めております。又最近におきましても、苦情処理委員会という新らしい制度を四月一日から発足せしめて、從來課税に対する苦情を公平に、而も迅速に判断せしめ、そうして不当な課税、或いは又間違つた課税については直ちに是正するというためにかくのごとき委員会も特設いたしております。又收税税務署員等についてもその素質の改善のために種々方法を講じ、或いはその適当ならざるものを何十人でありましたか罷免した。或いは新らしい税務署員を再教育の上採用する等幾多の応急の施設をいたしております。併し尚長きに亘つての課税の方法、或いは又收税の税務署員というものの素質の改善については当局者において十分考慮を加えて改善することに盡力をいたしております。要するに收税においても、課税においてもでき得るだけ国民に迷惑をかけないように、そしてその負担を軽減せしめるために政府といたしてはこれまで十分の努力をいたし、今後も十分の努力を続けたいと考えております。尚お気付きの点等については十分政府に対して御忠告を願いたいと思います。
  186. 川上嘉

    ○川上嘉君 いろいろと措置を講ぜられたということでありますが、そういつたものが直ちに間に合うかどうか。又どの程度の効果があるかどうかというのが問題になるわけであります。軽減々々ということは随分長い間の現在の政府の掛声でありまして、果して積極的に軽減しようとする努力をされたかどうかといつたようなことは、今回の予算を見ましても、又今回の税制改革を見てもはつきりしておるのであります。実はシヤウプ使節団が我が団に來て税制視察を行なつておる際に国民を挙げて先ず税金を、我が国の税負担は非常に過重であるからして是非軽減して貰いたい、かような陳情が活溌に行われたのであります。ところがこの問題についてはシヤウプ使節は税金が、果して日本国民の税金の負担が過重であるかどうかというような点についてははつきり結論を出していないのであります。併し税金の重い軽いといつたような点につきまして、大体その注目すべき考え方を示唆しておるのであります。尚自分は税制の問題だけであつて予算面には絶対触れないとこういうように言うていたシヤウプ使節が政府の支出に関しての事項について、つまり使節団の任務の範囲外にあつたにも拘わらず支出面の基準について解決しなければならない困難に直面しておることを大体次の通りに指摘しております。  第一点は、若し多量の金額が不用な使途に充てられて消費され、或いは必要な使途に充てられておるとしても、非能率的に使用されるとしたならば、租税は過大であるということになる。第二点は、支出が必要であり、且つ能率的に使用されようとしても、その支出が租税制度に無理と軋轢を惹き起してまでなされなければならない程緊急不可欠なものであるかということである。  以上の二点を指摘し、更に政府の支出に関する本年度の計画と來年度の予想の中から、來年度において本年度と同率の国債の償還をすることの必要性は、国債償還に利用し得る他の方法を考慮に入れるならば、それ自体は現行税率を無視してまで維持しなければならない程緊急なものではない。かような結論を出し報告しておるのであります。ところが今年の債務償還を眺めて見ますと非常に厖大に計上されておるのであります。こうまでして果してこんな厖大な国債の償還費を計上しなければならないものであるかどうか。その緊急の度合についての吉田総理の御見解をお伺いいたします。
  187. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) これは昨日でありましたか、一昨日でありましたか、私は同じ問題について答弁いたしておりますが、この際政府の最も関心を持つところはインフレの防止であります。インフレを防止するためには、国債の償還は一つの常則になつております。常にいたす方向であります。いわゆる常則に從つて予算を立てる。從つて又国債償還については、過大とお考えになられるかも知れませんが、政府は只今の観点からしてこの償還を適当と認めて計上いたしておるわけであります。
  188. 川上嘉

    ○川上嘉君 只今の御見解から見ますというと、今回の税制改革はシヤウプ税制改革に基いてなしたものである。かようなことに相成つておりまするが、然るに只今のこの支出面に対するシヤウプの結論を積極的に活用しようと努めていない。つまり政府は常に今回の税制改革はシヤウプ勧告案に基いて行われたものである。かように宣伝をしているのでありますが、実は勧告案の中で大口所得者とか資本家に都合のよい面は忠実に嚴格に実行して、都合の惡い面は修正削除している。かように結論づけることができるのであります。  次にいわゆる世上に叫ばれておりますところの割当目標課税について質問を行います。勿論税法上にかかる制度はありません。目標割当課税なる制度はありませんし、又シヤウプもかような目標額を作るというような技術は世界中どの国でもない。かように皮肉つております。若しかかる割当目標課税を行わずして、若しその機能を発揮できなければ、よろしく所得税は撤廃した方がいい。かようにきめつけております。尚大蔵大臣もしばしば本年度以降は絶対に割当目標額なる制度はない、割当は行わない。かようなことを言明しておるのでありまするが、名目は別といたしまして、実質においては目標割当なるものの圧力に苦しめられている。これが現在の状態であります。これは納税者だけでなく税務職員もそういつた割当目標の枠の中で非常な圧力を受けている。かようなことが見受けられるのであります。実はこれは先月の二十日に京都で行われた京都の全旅館業者の大会でありまするが、この席上におきまして、観光京都市の旅館の設備を潰滅される税金の撤廃、適正課税の要求などが決議されたのでありますが、その業者の言い分は、二十四年度所得税の更正決定に対して、昨年末税務署と折衝した結果、大体昨年の十七割増が税務署から通知されたのでありますが、これに対して折衝した結果、大体十六割増という線に落ち着いたそうであります。ところがその後国税局からの強い支持によりまして、これが大体二十一割増になつた。而もその間においてそれ程の実額調査が果して行われたかどうか。これには各京都税務署職員が一年間挙げて調査した結果が十六割増なるものが、その後僅か一ケ月かそこら国税局の協中が來てあちこちかき廻して、そうして実額調査をやつたという理由を以て二十一割の増になつたのであります。それで京都の業者大会におきましては飽くまでも税務署の調査を支持するのだ、上からの割当は支持しないのだ、これは一括返上するのだ、かような運動が起きておるのであります。同じような運動が料飲組合でも起つておるのであります。常に政府割当はやらないのだと言いながらも、実質においてはこうした事実がすでに現われておる。そうした現在税金問題を繞つていろいろな問題が起きておりますが、その最も大きな癌、その最大の点はこの割当目標額なる不可思議なる課税方法に原因がある。かように断定せざるを得ないのであります。これに対して吉田総理見解並びに今後の対策等についての御意見をお伺いいたします。
  189. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 割当課税は今後は必ずいたさないことにいたす方針であります。又過法において割当課税があつて、そうしてそのために納税者が迷惑を蒙つた。これが不当であつたという場合には、苦情処理委員において早速取上げて研究いたすことになつております。又京都の場合においては、私はよく存じませんから、取調べさして後お答えいたします。
  190. 川上嘉

    ○川上嘉君 今後はやらない、今後はやらないということをいつでも聞かされるのでありますが、それで強引に事は済んだかのごとくになるのでありますが、次から次へ大きな問題を孕んだままこれが行くというと、終いにはどういう恐るべき事態が起るか分らない。こういう点は十分に認識して頂きたいのであります。只今の吉田総理の御答弁には極めて不満足でありますが、この点は又細かい点は大蔵委員会等或いは関係大臣質問することにいたします。  次に奄美大島の帰属問題、並びに全面的な交通復旧問題について質問を行うことにいたします。  本問題につきましては第五国会並びに第七国会の本会議におきまして、尚文書等によりまして再々質問を行なつたのでありますが、重ねて帰属問題、更に日本本土と奄美大島の交通の全面的復旧問題について吉田総理の御所見をお伺いいたします。
  191. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。奄美大島の帰属問題は、これは結局講和條約において決定せられる問題であります。  それからもう一つは何ですか……。
  192. 川上嘉

    ○川上嘉君 もう一つは全面的な交通復旧の問題であります。送金とか、交易とか、或いは学徒の進学とか、日本本土との往復とか、そういつた一切のことを含めた全面的な交通復旧の問題についてであります。
  193. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 奄美大島については只今のところ関係方面に交通の願いをする、從つてその一応調査をして許可をするということになつております。許可制度によつて交通は開始されるというようになつております。  それから交易の問題でありますが、これは今のところ、御承知通り海外との交通は一応杜絶しておるのであります。併しGHQが承認をして許可をされたものは交通はすでに開始されております。
  194. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 川上君に御注意申上げますが、大体あなたの持時間は來ましたので簡潔に願います。
  195. 川上嘉

    ○川上嘉君 もうちよつと……、先刻の奄美大島の学生生徒の日本本土留学に関する質問と、それから奄美大島と日本本土との交通、貿易、送金等に関する質問書、これを提出してこれについての政府対策を求めたのでありますが、肝心の対策問題につきましては何ら触れずに、吉田総理の言われたようにこれまでの経過を報告して來たに過ぎないのであります。私はこれまでの経過と現在の実情といつたものはよく承知しております。吉田総理よりも却つてつております。從いましてそういつた経過じやなくして、本問題はどうして解決されるのか、その対策、並びにこの対策の実現に対する積極的な努力をしておられるのかどうか、これが伺いたいのであります。つまり帰属問題、或いは交通普及問題については、從來吉田総理は努力するという言葉を避けて、できるだけ成るべくそうなるように希望する。かような表現をしておられますが、希望する、そういつたことでなくて、もつと積極的に努力をして貰いたいのであります。一体奄美大島を日本本土の一部と考えておられるのかどうか。輸入食糧の増配に関連いたしまして、農村恐慌問題が大きく最近採り上げられております。こういつたとき、日本の本土の一部である奄美大島から日本本土へ移出し得る大量の黒砂糖、それから鰹節、更に牛、こういつた物をそのまま手を着けず、見逃がして置くつもりかどうか。尚この外に日本本土へ移出可能に物資は、我が国でも絹織物の最重要部門を占めておりましたところの本場大島紬、更にこの外百合根、枕木とか、マンガン等がありますが、我が国の自主経済を促進する点から見ましても、当然奄美大島と日本との現在あるところの一切の制限は、早急に緩和撤廃せらるべきであるという、かような見解を持つておるのであります。奄美大島には約三十万の人口があります。尚奄美大島出身者で日本本土に居住しておる者約十五万、これらの人達は勿論一人一人、一人残らずこの帰属問題、交通問題が一日も早く解決することを念願しておるのであります。この問題は、單に南海の一孤島の問題でなく、日本経済をどうして安定するか。或いは日本財政をどうして健全にするか。或いは生産をどうして復興するか。或いは貿易をどうして振興するかという、こういつた重要国策に直結する問題であり、又これらの重要国策と同様な重大性を持つ問題である。かように私は考えるのであります。吉田総理はこの問題の重大性を、果して認識しておられるかどうか。尚本問題につきまして、積極的な努力をする用意を持つておられるかどうか。尚本問題の解決についての対策等について御所見をお伺いしたいのであります。
  196. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。この奄美大島との交通は、終戰直後第一次吉田内閣の当時においては、交通は許されておらなかつたのであります。それをいろいろな事情を述べて、とにかく只今申した程度まで交通が開かれるに至つたのであります。私は努力をするという以外にお話しのしようがないのであります。何となれば、今日は占領下にある日本であつて、これは講和條約後において完全な解決が、帰属問題については完全な解決ができるでありましようが、外交を持つておらない、独立を失つた今日においては、努力をする、こういうことを承諾せしむると言つて見たところで、これはいたし方ないことであります。速かに講和條約ができて、独立を回復して、そうして交通が元の通りに復帰する。積極的にどうするかああするかということは、外務大臣としてここに積極的に考えておりますけれども、言明することは差控えたいと思います。
  197. 和田博雄

    ○和田博雄君 総理一つ二三点簡單なことをお聞きしたいと思います。  大分同僚の諸君がいろいろの問題をお尋ねしたのですが、講和問題はこれは非常にやはり微妙な私は情勢にあると思います。殊に世界情勢が、今のような東南アジアを繞つて非常に鋭くなつておる。或いはヨーロツパにおいて又非常に両方の対立が鋭くなつて來ておるときに、日本の立場というものが非常に微妙になつて來まして、講和問題は総理がしばしば言われておるような、なかなか見通しが私は付かんのではないかと思う。ただ併し私はこの際余り問題にならなかつた点でありますが、講和のやはり内容として産業水準、言い換えると日本が年々非常に殖えて行く人口を、この小さな島の中で養つて行く。それにはどうしても生産力が、国の生産力というものを高めて行かなければならない。言い換えると産業が或る程度生産の水準を持たなければ、言い換えると食糧幾ら、それから外に鉄は幾ら、石炭は幾らというような生産物量、或いは働く労働力の、人間が皆働いておるといつたような、或る一つの経済の生産する力の高さというものを、どうしても我々は講和條約の内容としては考えて主張しなければならんと私は思うのであります。そういつたような問題については、これはただ時の政府が、政策が自由主義であるからとか、統制であるからということを超えて、私はやはり日本産業生産力の高さというものについては、これをどの程度に主張して行くかということが、私はやはり非常に大きな問題だと思うのです。というのはこれは結局言い換えると外国貿易においても、各国、イギリスなり、ドイツなりその他の国々とのやはり競争の力の基本になるものだと思うし、我々日本人の国民生活が、結局どの程度に一体将來は維持されて行くかということの基になるだろうと思うのです。そういう点について恐らく政府としては、内々研究されておるだろうと思うのですが、それらの点について、やはり政府として相当の準備をしておるかどうかという点を一点お聞きしたい思います。  それに関連して私は最近における税制の問題について、生産力との関係総理にお聞きしたい。総理はしばしば今度の二十四年度の予算なり、二十五年度の予算なりについては、これはインフレーシヨンを止めるのが目的だと、こう言われておる。私もそうだと思う。二十四年度の予算は少くともそうだと思います。併しそこが私は非常に必要だと思うのでありまして、税ですね、予算というものは均衡を得るということが私は目的ではないと思う。均衡を得るということは、インフレーシヨンという現象を止めるための一つの大きな手段である。財政の赤字というものがインフレーシヨンの大きな原因であるからこそ、政府はとにかく非常な負担を国民大衆に負わせながら、多くの税を取つて超均衡予算を組み、超均衡予算というものは一つの手段であつて、目的では私はないと思う。そこのところを政府は余程お考えにならないといかんと思うのでありまして、予算は均衡するが、産業は非常に收縮して來ると、国民生活は非常に楽にならない、苦しくなる、こういうことでは、これは予算の均衡ということを、それ自体が非常に大きな目的であるように考えられておるようでありますが、この点は考え方を改めなければならん点だと思う。殊に二十四年度の予算は、これはインフレーシヨンを止めたという点において大きな大斧を振つた。それで一応の目的を達したと思う。併し一年間に非常にデフレ的な、或いは経済收縮の過程がもう現に出て來ておるわけですから、この間からの総理の御答弁によれば、そういう現象がどんどん出て來れば自分としても考えると言う。よほど讓歩されて來ておると思うのでありますが、私は二十五年度の予算については、その点は政府としてもう一遍考え直す必要があるのじやないか。その点をもう一遍諄いようですが、重ねて一つお聞きしたい。  もう一つは税の制度というものを、何も税金を取るためのこれは制度でないのであつて、私は税制というものが、日本の殊に産業経済に取つて、非常に大きな影響力を持つておるものだと思う。税の如何によつて生産力が殖え、或いは殖えることが阻害されるという結果が現に出ると思います。その点に立つて考えて見ますというと、今度の地方税の改正であります。例えば固定資産税、或いは附加価値税といつたようなものを取つて見ますと、これは新聞の伝えるところによれば與党内部においても、政府においても今度の原案は満足でないようでありますが、これは日本産業生産力というものを非常に高めることを阻害すると思う。何故ならば非常に高い税金が課かつて來て、結局最後は労賃に課けるよりしようがないことになるのです。そうすると生産力、人間の労賃を非常に低いところに切下げておいて、そうして税金は重い税金を取つて生産の力を高めて行こうとしても、これは私は限度があると思うし、それから殊に固定資産税なんかになつて固定資産に対して多額の税金が課かつて來れば、どうしてもコストが上ると思う。今日本で必要なことは、コストをどうやつて切り下げるかということで、それを資本家がやるのでは首を切る、それから操業度を高めるということでやつておるが、併し首を切り、操業度を高めるということだけでは限度があると思う。どうしてもそこには余程産業の近代化をやつて、設備を新しくしたり、機械の良いのを入れたりして、そういう面からもやはりコストを下げて行かなければならん。そのときに税金というものが非常に大きな阻害をなすことになれば、日本産業全体の世界産業に対する競争力というものが、これはコストの切り下げという点で負けだと私は思う。どうすれば日本が今独占禁止法、或いは過度の経済力集中排除法、それから今度のような一つの地方税の体系、こういう一連のものを以て日本産業がいわば、大きな枠をはめられると、今占領下でありますから、私共は占領下という條件は勿論考えなければなりませんが、そういう大きな流れを一つ考えて來るというと、我々が一つの税制制度を議論する場合においても、そこのところは、政府当局としては余程愼重に御研究なさつて頑張るところは最後まで頑張らなければならんのじやないかと思うのであります。税が高い低い、これは国民生活の、個人生活についても非常に重大な問題でありますが、日本全体の立場に立つて考えて見ますときにも、今度の地方税はその点非常に大きな影響力を持つておると思う。そういうような点について政府としては、今後一体どういうようにその点を仕向けて行かれるのであるか。総理とされては全般を総合されて、今非常に困難な政治をやつておられる時期でありますが、その点についての一つ信念なり、或いは御構想なりがあれば一つ御意見を伺いたいと思います。
  198. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。日本が外資の問題について……。産業水準の問題でありますが、日本産業の水準、或いは生活水準を無理に下げしむるということになれば、日本自体が不安になり、從つて極東全体が不安になりますというか、国際関係が不安になる、こういう関点からでありましよう、日本に対する早期、成るべく早く講和をさせる、講和條約の締結を英米等が急いでおる主なる理由はそこにあるのであります。從來と違つて、八千万余りの人間をこの小さな島に閉じ籠めて、そうして無理に生活せしむる、その結果生活水準が下る、或いは産業の水準が下る。こうなることは世界の平和繁栄によろしくない。成るべく早く日本に独立を與えて、そうして更に自由な方式で、海外発展なり、貿易なりをせしむることが、世界の平和、或いは世界の貿易等に貢献するゆえんである。そこに論点があつて、英米において殊にアメリカにおいて、日本に早く講和締結に至らしむるがいいというのはそこにあると私は承知いたしておる。のみならず、又現に明らかにそう言つて私のところにいろいろ意見、手紙を寄越してくれる外国人もあるような次第であります。故に成るべく早く日本が独立を回復する、或いは交通を回復するということが日本生活水準なり、産業水準を維持せしむるゆえんであります。貿易が発展することによつて日本産業水準が高まる、そのためにも、政府としても、又関係国においても日本の貿易奬励のために、講和は締結いたしておりませんが、事実上の講和として通商の協定を図つて、そうして日本の貿易の発展を図るという趣意がそこにある、この点については内外共、と申しましても大き過ぎますが、少くとも連合国の主なるものは、日本政府と意見を同じうしてその点に向つて努力をいたしておるわけであります。  只今予算のことについてお話がありましたが、無論均衡予算のみを作るということを以て能事終れりといたしておるわけではなくて、インフレを防止すること、財界、経済の安定を図る、そこに重要な目的を置いていろいろ予算の検討をいたしております。そのために財界、その他において非常に苦しい面ができた、この苦しい面については、政府としては、予算実行の間に、立法を予算成立後において適当な措置をいたすつもりでおります。又当局者においても、その点については十分注意をいたして、是正するに決して吝かでないのであります。これはしばしば申した通りであります。又地方税の問題について資産税その他については政府としても決していい完全な税とは考えておらないのであります。從つて今後尚税制については研究を重ねて、改めるべきものは必ず改めて御覧に入れるつもりであります。お答えいたします。
  199. 和田博雄

    ○和田博雄君 私がなぜこういう問題を質問しておるかといいますと、とにかく日本の場合には人口の増加力が非常に大きい。そうして戰争によつて非常に経済自体が傷められておるわけです。そこで我々がやはり生きて行こうという国民的な力というものは、これは否定できない。どんなに大きな枠をはめて見ようが、民族が生きて行こうとする上において、生産の力の発達というものを阻止するような政策というものは、私は長続きはしないと思うのです。これは日本全体を考えて見ても、現に政府の取つておる政策自体を見てもそうだと思う、そこでそういうように私はやはり日本の人間の全部が、八千万の人間がやはり一人の飢える人もなく、すべてが完全雇用の状態において生活して行くというためには、どうしてもいろいろな政策の重点というものがそこに集中さるべきであろうと私共は考えるのであります。そのときに、例えば今言つたような、地方税のような、今度の地方税の場合のように、殊に日本産業の構造を考えて見れば、大きなものより小さなものが多い、どつちかというと資本的な集約というよりも、労力的な集約というものが多い。併しそのときに全部が労賃の負担にならないような税金、そうしてコストの切下げの点も考えればそれを阻害するような税金、その税態勢をそのまま呑んで、そうして国税とこれと両方併せてこれが減税になる、こういうことを政府として言われることは私共としては非常に矛盾だと思うし、日本の国の将來を考えて非常に寒心すべきことであると思うから御質問申上げておるのでありますが、総理は只今この点についてはまだ今後も十分努力すると言われておりますので、私は時間も余りありませんからこの程度質問を終りますが、あとで各農林大臣なり或いは安本長官に質問いたしまして非常に満足いたしませなんだらもう一遍総理を煩わすこともありますから御了承願います。
  200. 岩間正男

    岩間正男君 私の質問はこれで三回であります。(笑声)実は同僚諸君の熱烈な要求がございましたので、私は事前にやつておる関係から今までお讓りして参つたのであります。今後時間も余りないように聞いておりますが、昨日の総理のお話のようにできるだけ協力してやりたいと思いますから、総理も直接答弁を願いたいと思うのであります。  第一の問題は供出の問題であります。食糧政策の政府は転換をする、こういうことを言つておるのでありますが、これに対しまして最近政府と與党との間にこの供出制度について検討がなされた、それによりますというと、伝えるところでは與党側におきましては供出後の米は自由販売にしたい、こういうことを態度として表明されておるのでありますが、今朝のニユースによりますというと、安孫子食糧庁長官は、これは單に與党側の考えで、政府としてはそういうことは決定していない。こういうことを言われておるのであります。併しこの問題は日本食糧政策にとりまして、今後重大な関連を持つものだと思います。吉田総理はこれに対してどのような見解を持たれておるか、つまり問題になつておりますところは、供出後の自由販売をどのように考えておられるか、この点について明らかにして頂きたいと思うのであります。
  201. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 與党側の研究としていろいろ提案がありますが、政府としてはまだ決定いたしておりません。只今研究中でございます。
  202. 岩間正男

    岩間正男君 今のような御答弁でありますが、この供出制度に対しては重大な関心を農民は持つておると思うのです。從來の、今までの供出制度を見ますと非常に苛酷である。負担に耐えられないような苛酷なものに戰前、戰後からこれに協力してやつてつておるのであります。こういうことが現在の世界的な食糧の価下りの、いわゆる世界食糧過剩生産恐慌の前に、農民は丸裸のように投げ出されておる、これに対してここで供出制度を、供出後の自由販売というような形で、そのあとのものについては責任を持たない。こういうふうなことになりますと、事情はまるで世界情勢との関連におきまして変化しております今日、一体食糧の自由販売制度、これは大きな問題になつて來ると思うのでありますが、これに対して総理はどのような見解を持つておられるか、お尋ねしたいと思います。
  203. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 政府としては目下研究中でありますので、研究後におきまして御報告申上げます。
  204. 岩間正男

    岩間正男君 今の問題については、これはまだその問題について徹底的に我々は究明しなければならないと考えておる次第でありますが、次に手当の問題についてお聞きしたいと思うのであります。吉田首相は公務員のベース改訂は行わないが、年度末手当についてはこれを何とかして支給したい、こういうことを屡々言われておるけれども、併し現在の情勢ではこれは殆んど不可能のような形になつておるのであります。從つてこういうような言明に対するところの吉田首相の責任はどういうふうにお取りになりますか。この点について首相の見解を伺いたいと思います。
  205. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私はしたいと申して、成るべく賃金ベース、手当は増してやりたいという考えを持つているというだけの話で、これに対してこの方法ができるかどうか、或る方法ができるかどうかということを提案したこともないのでありますから、私はこれに対して責任は負いません。
  206. 岩間正男

    岩間正男君 今になつてこういう情勢になるというと……、それは逃げ言葉に聽えるのであります。つまり総理がそういう意向を持つておるということは、この前の年度末手当の場合もそうであつて、あのような形で実現された。無論今日公務員は非常にこのような間に合せのやり方については不満は持つているように思いますが、生活が急迫しておりますから、このような臨時的な措置に対しても或る種の期待を持つている。ところが今そのように総理が突放すことは重大な問題であると思いますが、総理の今のような答弁で公務員諸君は満足されるかどうか。この点を伺いたいと思います。
  207. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) この会計年度末のことについては政府は考えたことはないのであります。
  208. 岩間正男

    岩間正男君 大分こういう段階になりまして、政府はひたすらにこれに対して頬かぶりの態度を取つておられるけれども、これは非常に重大な問題だと思います。これは專売裁定その他の公務員の給與ベース、国鉄裁定の問題について重ねてこれは質問をいたしたいと思います。  次にお伺いしたいのは、政府の最近の金融政策は全く行詰つた。農村対策も又中小企業も、貿易対策も全く行詰つて、今や政府の政策は危機に直面しておると思うのであります。これに対して最近政府は全面的に政策を転換し、閣僚の入れ換えをやるというようなことが屡々これは情報として出されておるのでありますけれども、こういうような事態に対しまして、吉田首相はどのような見解を持たれるか。お伺いしたいと思うのであります。
  209. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 只今のところは改造、或いは政策転換はしないということは先程申した通りであります。
  210. 岩間正男

    岩間正男君 これはしばしばそのようなことが言われているのでありますけれども、併しそれと連関して最近やはり国民は非常な重大な関心を持つていると思うのであります。これは現実の認識の問題だと思いますけれども、時間の関係がございますから、この点について細かな論議をすることはこれは一応避けますが、ただ伝えられますところの池田蔵相並びに本多国務相が渡米されるということと、政策転換の問題は非常に重要な関係があるということを国民は考えているのであります。池田蔵相と本多国務相、つまり現職のこのような大臣が渡米されたというような例は未だないと思うのでありますけれども、このような重大な問題を強いて行われることには、決して簡單な物見に行くとか、向うの様子を調べに行くとか、そういうことではないと、そういうふうに国民は判断していると思うのでありますが、これに対してどういうふうな実情になつているのか、これは政府の御意向を質したいと思うのであります。
  211. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 只今両大臣の渡米というお話でありますが、併しながら政府としては只今研究中であります。
  212. 岩間正男

    岩間正男君 研究中というお話でありますが、この研究がいつ頃具体化されるというような見通しでございますか。
  213. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 只今のところ見通しはございません。(笑声
  214. 岩間正男

    岩間正男君 多分そういうようにお答えになると思つたのでありますけれども、この問題は非常に国民が重大な関心を持つているし、又今後の吉田内閣の政策の方向と深い関連があるのでありますから、こういう問題について我々は政府の今後の態度について見守りたいと、こういうふうに考えます。  次にしばしば問題になつております中小企業の問題であります。この前の池田蔵相の放言問題と連関しまして、中小企業対策が大きな問題になつたことは私共がくどく申す必要もないと思うのであります。併しあの池田蔵相の話そのものは非常に正直な話ではないか。つまり我々の感じで以て見ますと、吉田内閣の最も正しく持つている性格をそのまま正直に吐露したのじやないか、こういうふうに考えられるのでありますが、これは首相はこれについてどうお考えになりますか。
  215. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) この問題はしばしばお答え申し、又衆議院においては信任投票で以て結論がついたのでありますからお答えいたしません。
  216. 岩間正男

    岩間正男君 問題はただこれに対する対策が非常に不十分であるということ。そうして政府のこのような手緩い糊塗的な対策では全然この問題は解決しない。果して然らば中小企業の面でどういうことが起つているか。この実際の実情について首相は認識されているのかどうか。例えば最近我々は国勢調査のために桐生の方の機場の視察に参つたのであります。その業態におきまして、向うでは自転車経営というようなことが言われている。この自転車経営ということはどういうことか。これは首相は恐らく御存じないと思うのでありますが、こういうわけであります。もう今ここで自転車を止めてしまつてペダルを止めてしまえば自転車は倒れる外はない。そこで採算は取れないけれども、間に合わないけれども、生産の原価を割つているけれども、何とか税金と金融のためにこの仕事を進めて行かなければならんという形に追込まれております。又金融状況を見ますと非常にもう逼迫している。更にその結果がどういうことになつているかというと、伊勢崎あたりにおいては支拂いの停止が一部現れている。こういうようなところに追込まれて、又最近の休業状態は非常に甚だしいのであります。こういう状態に対しまして首相は、無論、先程の委員会において中小企業の懷減というような言葉をお使いになつたのでありますが、こういう現状を十分御認識になつていらつしやるかどうか、この点伺いたいと思います。
  217. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済安定樹において中小企業の方々がお困りの事情は知つているのであります。我々はできるだけ金融の円滑と租税の適正に向つて努力いたしている状況であるのであります。
  218. 岩間正男

    岩間正男君 ただここで大きな問題になるのは、今政府が取つておられる糊塗的な間に合せの対策でありまして、何とか金融をここでやりたい、中小企業の金融をつけてやる、そうしてこれに対する対策を唯一の打掛りと思われるのでありますが、併しこのようないわば対症療法的なやり方だけでこの問題を解決されるとお考えになつていられるかどうか。私はこのことをお伺いするのは、單にこの中小企業の崩懷の問題というものは、金融の面からだけ起つておるのではない、金融もその一つの原因でありますけれども、無論金融だけからこの問題は起つておるのではない。一番大きな理由は国内における購買力が非常に減退しておる。賃金は押えられる、農村はあのような状態に追込まれて、最近の闇米の価段というものは非常に低下している。こういうような逼迫の中におきまして有効需要が非常に減少している。このことのために滯貨が激増し、ために中小企業はいろいろな形で追込まれておる。この点の関連的な政策の大きな転換、つまり生産をどのように今後これを振興するかというような全面的な対策なしには、この問題の解決はつかないと思うのでありますが、政府が今とられておるような燒石に水のような対策を以てこの状態を果して切拔けることができるとお考えになつていらつしやいますか。この点をお伺いしたいと思います。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戰後のインフレ政策によりまして我が国の経済は正に潰滅せんといておつたのであります。幸いに我々は国民大多数の支持を受けまして内閣を組織し、経済安定に向つて邁進いたしておる次第であるのであります。何と申しましても即ち大企業にしても中小企業にいたしましても、又農民の方々におかれましても、日本の経済を安定させることが第一であり、而して安定の見通しが付きましたので、只今御審議願つているこの復興予算によつて安定の度を高めて行きたいと念願し努力しておるのであります。
  220. 岩間正男

    岩間正男君 蔵相は又この自画自讃を始められたようであります。(笑声)終戰後において非常に今のお話を聞きますというと、吉田内閣つて初めて日本産業が復興しておるというようなお話であります。併し私は昨夜も蔵相にお伺いしたのでありますが、いつた蔵相の現状認識は甚だ疑わしい。中小企業はいつたい今後どれだけ倒れるか、失業者はどれだけ出るかという問題について、はつきりしたところの把握がなされていない。そうしてただ一筋にそういうことの起らないようにしたい。まるで神がかりのようなことを言われておるのでありますが、こういうようなことで、いつたい果して現実に起つておるところの事態をよく掴んでおられるのかどうか、この点池田蔵相には先にもお伺いし、又後の質問でも又お伺いする機会があるのでありますから、総理からこれに対しどのようないつたい認識を持つておられるのかお伺いしたいと思います。
  221. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今の御質問に対しましては昨夜答弁した通りでございます。総理も同じようにお考えになつておると考えております。
  222. 岩間正男

    岩間正男君 総理の腹中を察しての御答弁でございますが、これは併し大分食違いがあると思うのであります。総理は中小企業は潰滅というふうにお話になつた、併し池田蔵相は潰滅というふうには考えていない。この間に食違いがある。これは総理にお聞きした方が私ははつきりすると思う。池田蔵相の御答弁は聞いておるのでありますから、総理はどういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。
  223. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理は中小企業が潰滅しないようにと御答弁になつたと思うのであります。潰滅するという御答弁総理はなさらなかつたと私は考えております。
  224. 岩間正男

    岩間正男君 これは委員長から一つ注意して頂きたいのですが、そういう推測的なことを私はお聞きしておるのではありません。速記録を調べれば分るのでありますけれども、これは多分木村委員質問に対する御答弁だと思いますが、潰滅的な状態であると御答弁であつたと思うのであります。併しこの問題にいつまでこだわつている気持はありませんが、総理から中小企業の現状に対してもう一度改めてお伺いいたします。どのような認識を持つておられるか、この点一言御答弁願いたいと思います。
  225. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 大蔵大臣の考えは即ち私の考えであります。
  226. 岩間正男

    岩間正男君 誠に琴瑟相和した仲のよい御答弁でありまして、私はこれ以上この中に入つて聽く気持もありません。この中小企業の問題につきまして、この対策は單に金融措置だけやつたつて、これは問題にならぬ。どうしても国内の購買力を増進させなければならぬ。この問題と連関しまして給與の問題、これは先程同僚の社会党の諸君からしばしば繰返えされた問題なのでありますけれども、今日これをどんなに繰返えしても、繰返えし過ぎるということはないと私は考える。單に労働階級だけの問題ではなくて、実は日本の今後の生産を復興させるために最も重要な基本的な問題である。こういう観点に立つてくどいようでありますが、もつと私は首相の見解を質したいのであります。專売裁定の問題は、あのような形で政府は專売裁定を呑んだ、こういうことになつたのであります。併しながらここで問題になりますのは、そんなら国鉄裁定その他一般公務員給與問題はどうするのか。本当か、正しいか。そうして私のお聞きしたいのは、專売裁定でああいうような措置をとられたのでありますから、当然国鉄の裁定、それから国鉄從業員並びに公務員についても同じようなこれは方法をとるのが正しいのではないか、こう思いますが、政府はどういうように考えておられますか。
  227. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 專売公社の裁定を政府が全面的に受諾したゆえんというのは、予算上、資金上これが支出が可能になつたからであります。国鉄はそうではないのであります。
  228. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういうような御答弁を今しらを切つて話されても、そのままはいと言うて引上るわけにいかん。官房長官と蔵相にはこの前もお聽きしたと思う。併しながら総理からもお聽きしたい。これはこの前の年末給與の問題のときに、政府は何故いつたい国鉄裁定を履行して行く。この国鉄だけをそこで増すことはできない。その理由の中にどうしてもこれは公平の観念によつて国鉄の從業員も、專売或いは一般公務員もやはり同じような措置をしなければならぬ、こういうような公平の一つの原則があるから、これに從つてこれはやらなければならないところの重要な一つの関連があるのだ、こういうことをしばしば繰返えされたと思う。然らば過去に言われたそういうようなことを今日弊履のように捨てられるのですか。この点について公務員は甚だ疑問に感じていると思うのでありますが、総理もそういうことをおつしやつたと思いますけれども、これに対して総理は今どのように考えておられるかお伺いいたします。
  229. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 我々は公共企業体労働者諸君の労働條件を、国家公務員諸君の勤務條件とは必らずしも同一でなければならぬとは考えておりません。もとより給與は若し許すならば、将來経済復興の段階においては特に配慮いたしたいということを考えておりますが、今日のところ私共は原則的に一致しなければならないということは考えていないのであります。
  230. 岩間正男

    岩間正男君 何といいますか、やはりしらを切る答弁ということを私は繰返えしたいのでありますけれども、これはそういうところは時勢によつてあなた達は説明の態度を変える、時代によつて変えるということをはつきりここで確認したいと思うのであります。あのとき説明したのと現在説明する態度は、まるで違つている。これは政府は若し説明用のテキストというようなものがあれば、それを調べて御覽なさい。それは随分違つているのではないかと思うのであります。あのときはやはり公平の観念ということは、非常に重要だということを説明で言つておりますけれども、今日は国鉄と公務員諸君の勤務状況は必らずしも同じでない。こういうような立場に立つておられる。そうしますと、非常にそこのところが何と言いますか、七面鳥的な答弁になつたと言わざるを得ないのであります。これはよく明らかなことだと思うのでありますが、例えば年度末の手当でこれを出すような措置をされて、資金を何とか操作されて、而もこれに対してはつきりしたことは、関係方面からこれは出していかんということになつて、そうして出さないというような措置になつたのでしよう。そうすると今のような理由で、事態の変化によつて如何ようにも政府の態度は変えられるのですか。この点は甚だ納得が行かないのでありますから、もつと自主性を口にする政府は、やはり日本の勤労大衆の現実に立つて、現実の必要を貫くという態度が非常に望ましいと思うのでありますが、いわゆる客観情勢の変化によつて態度を変えるというようなことでは頼りないのじやないか。この点について細かないろいろ原因的なことは挙げませんけれども、こういう点ははつきり指摘することができると思いますが、これに対してどのような責任を負われるか。
  231. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 繰り返して申上げます。  政府は專売公社裁定は予算上資金上可能であるから受諾いたしました。而して関係方面に我々が折衝いたしました国鉄関係につきましては、金額は岩間議員の御承知通り極めて零細なものであります。併し予算上資金上法律的に支出することが可能でございませんから、我々は支出しないのでございます。公務員全般についての給與は、若し将來経済の復興が飛躍的になりましたならば、我々は成るべくベースも上げるということは考えておるのでありまするが、公共企業体労働者諸君と国家公務員との給與條件、即ち勤務條件乃至労働條件は、原則的に一致しなくてはならんということは考えておりません。それとこれとは別問題でございます。即ち公共企業体において大いに利益を上げたという場合においては、将來の問題といたしましては、公共企業体の労働者諸君の労働條件は公務員の労働條件と変り得ることにあり得ると考えておる次第であります。これは政府全体として考えておる次第であります。
  232. 岩間正男

    岩間正男君 私は先程申しましたように、去年の十一月頃からいろいろな政府言明を検討して、その間の喰違いを質せば明らかなのでありますが、今の御答弁は、これは政府の御答弁のテキストでもあるのでありますが、いつでもそういう紋切型である。併しいつまでここで議論して見ても埒があかないと思いますから、これは私は分科会なりに持込みたいと思うのであります。ただ一つここで私はどうしてもこれは政府の意見を質しておかなくちやならないのは、政府が未だにとつておられる物価と賃金の惡循環の問題、これについては……、併しこの理論的な問題につきましては、この委員会におきまして木村委員から吉田首相に対して十分に話されて、その根拠は殆んど破れておると思うのであります。これはもう理論的な根拠についてこんなことを言う必要はないと思う。政府は何故物価と賃金の惡循環を現在まで一つ覚えのように繰返さざるを得ないか、こういうところに問題があるように思うのであります。これは成る程終戰後の状態におきましてはこういうことが言われた。労働階級と、それから農民、市民の置かれた環境というものは、終戰後においては随分違つてつたと思います。生産があのような形で殆んど破壞された、そうして日本生産は全くこれは全滅的な形になつた、ところが中小企業者それからことに農民でありますが、そういう場合においてはまだ生活的な余裕があつた。ことに農村では、食糧関係から農村においては金廻りも非常によかつた、こういうような段階におきまして、公務員労働者の賃金を上げるということは、これは国民の負担を非常に重くすることである。だからこれは賃金は上げない方がよいのだということは、一応耳に入つたのでありますが、併しながら問題は今政府が繰返されておるところの、あの惡循環を繰返しても、誰もこんなことを本気にする者はないと思います。(「あるよ」と呼ぶ者あり)私が先程述べましたように、今日国内の有効需要を増す、こういうことを真劍に考えなければ、どうしたつてこれは中小企業の復活もないし、それからこうしたものの救済の方法もないのであります。言うまでもなくこれは農民も、中小企業者も、労働者も同じ運命に現在は立至つておる、こういう段階に達したということは、政府が一方的に労働者を国民大衆から孤立させて、そうして水をさすというような宣伝をおとりになつたのでありますけれども、こういうものを信ずる者はない。あるとすればそれはどうかしていると思う。ある人もこの中にはあるというお話もありますが、その人は現状を本当に認識しておるのかどうか。やはり労働者の生活を確立する最低賃金を本当に保障することは、これはどういうふうに生産の復興に大きな意味を持つかということ、こういうことは中小企業者も農民もはつきり分りかけておるのであります。こういう現状に対して吉田内閣がドンキホーテ的なこういうような一つの現実に合わないところの説明をどんなに繰返しても、今やこれは間に合わないのだ、こういうふうに思うのであります。このような低賃金、低米価では、これを基にやつて來たところのこのような政策を、政府は今後も飽くまでこれは強行されるつもりであるか。私は先程質問いたしました通り、政策の転換ということは、下からの大きな声として今や中小企業者の中からも、農民の中からも、労働者の中からも、いろいろな政策の面からこれを要求されておる現実がはつきりこのことを示しておるのだということを強調したいのであります。これに対して政府はどのような見解を持つておられるのでありますか、御答弁を願いたいと思います。
  233. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十五年度の予算案並びにこれの政府の諸方針を御覽下さいますれば分ると思うのであります。我々は経済安定の見通しがついて参りましたので、減税をすると同時に、又予算面で有効需要を殖やす、又金融の円滑を図り経済復興へのあらゆる手段を講じておるのであります。
  234. 岩間正男

    岩間正男君 私は時間がありませんのでできるだけ総理答弁を……、答弁です。蔵相についてはまだ時期がございますのでお聽きする機会があるのであります。この際やはり明らかにして頂きたいと思うのであります。とにかく政策転換の問題は、これは総理のお話の中にも相当含みのあることを言われざるを得ない、そういう段階に追い詰められておる現実があるのでありまして、この点ははつきり時間が解決する問題だと思いますから、これ以上言つても仕方がないと思います。  そこで最後に二、三点小さい問題でありますが、併し、性格は大きい。(「簡單にやれ」と呼ぶ者あり)先程吉田総理の御答弁によると、川上君に対する答弁によりますと、税の事前割当については今後はいたさない方針である、こうおつしやいましたね。このことは間違いございませんか、この点先ず質して置きたい。そうおつしやつたか、これはちよつと……蔵相にお聽きしておるのではない、総理が言われたかどうかということです。
  235. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理は今後も……、こういう意味でおつしやつたと思うのであります。割当ということの意味を、岩間君はどういうような考えでおつしやつておられるのでしよう。
  236. 岩間正男

    岩間正男君 事前にこれだけ大体或る税務署では取るのだ、というような、実情に即さないところの目標を立てて割当てている、このことを私は言つている。午前からそのことを聽いている。(「午前からね、答弁している」と呼ぶ者あり)
  237. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今までも今後もそういうことはいたしません。私は午前中はつきり大蔵大臣として申上げておるのであります。(「了解」と呼ぶ者あり)
  238. 岩間正男

    岩間正男君 蔵相がこうして不精不精言わざるを得ないところに問題がある。私は総理の言葉尻をとるというのではないのでありますけれども、今後いたさないということは、今までしたということの裏返しなんだ。だから総理は今笑つておられますけれども、そういうふうに言われた。ところが池田蔵相は、未だ曾てそういうことを言つたことがないという一点張で頑張つておる。併し現実には合わんのではないかと私はいろいろ例を上げ、まだ上げる資料も沢山あるけれども、こういうものを用意して答弁を求めた。併し依然としてその点については触れなれなかつた。この点喰違いがあると思うのでございますけれども、蔵相はいいです、総理から伺いたい。(「答弁の限りじやないよ」と呼ぶ者あり)
  239. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 午前中も申上げましたように、税が大蔵大臣になつてから、即ち吉田第三次内閣になりましてから、そういうことはいたしておりません。今後はしないということは今までやつたということだというのは、あなたのドグマでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういうふうに総理は考えておられんと思います。
  240. 岩間正男

    岩間正男君 総理の発表としてですよ、税の、ドツジラインによる税の徴收方法を改める何はないけれども、併しこれについては、今後その行き過ぎについてはいろいろ是正したい、そういうことを言われたわけなんだ……。又逃げちやつた。(笑声)(「しようがないでしよう」と呼ぶ者あり)これで三回逃げられた。
  241. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 外の大臣がおりますから……。
  242. 岩間正男

    岩間正男君 外の大臣に質しておるのじやない、総理に対してお伺いしておる。
  243. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 総理は御退席になりました。
  244. 岩間正男

    岩間正男君 委員長措置して下さい。
  245. 山田佐一

    委員長山田佐一君) あなたの方で外の大臣質問がなければ、他の委員から、他の大臣の対する質疑の順位がありますから、他の委員にお讓り願いたいと思います。
  246. 岩間正男

    岩間正男君 私は保留しておきます。まだ質したい事項が二、三点あつたのですけれども、これは保留しておいて、この委員会を切替えて頂きたい。(「討論でないから、議論に亘つちやいけないと」と呼ぶ者あり)
  247. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 和田さん、お諮りいたしますが、農林大臣が本会議へ緊急質問で出ておられるそうですが、安本だけおりますから、安本から願えませんか。
  248. 和田博雄

    ○和田博雄君 農林大臣から行つた方が質問の順序がいい、それから安本に行きたいと思います。(「休憩」と呼ぶ者あり)
  249. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 暫時休憩をいたします。    午後四時三分休憩    —————・—————    午後四時五十九分開会
  250. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 休憩前に引続きまして会議を開きます。通告順によつて発言を許可いたします。田村君。
  251. 田村文吉

    ○田村文吉君 経済安定本部長官に簡單な問題を二、三お尋ねいたしたいのでありますが、御承知のようにこの一月から電力料金が改正になりまして、約三割強の値上げに一応なつたことになつておりますが、それには相当地域差がついております点は、私共も分るのでありますが、ただこの地域差のつけ方が問題になると思うのであります。  第一に同じ同北、関東と申しましても、関東の方は電力の利用地でありますし、北陸東北方面は電力の供給地になつておるのであります。然るに、東京で電力を使います料金も、福島、新潟のような山の中で電力を使いますものも、料金が殆んど同じに相成つておるのであります。非常にこういう点は、地域差がついたと申しておりながら、準備料金と使用料金を合算いたして計算いたしますと殆んど違わない。即ち、雪の深い中で仕事をしております所で、電気を使つております料金も、天候のいい東京方面で、或いは極端に言えば、銀座の真中で使う電力料金も同じだ、こういうことは甚だ不合理に考えるのでありますが、これについてどういうふうにお考えになりますか。お伺いしたい。
  252. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 田村さんのおつしやる通り、火力の料金を火力地帶のみに委せるということは、これは非常に苛酷になるということにもなりますし、電力料金をも、著しく増大させます。從いまして、火力発電地帶においては、電力料金が非常に高くなつて、その地域の産業とか、或いは民生に及ぼす影響が非常に大きいということでございますので、或る程度電力料金を火力地帶と水力地帶とに平均をし、即ちプールいたしまして、そうして我が国の現状としては、そういう方法で料金を保つというのが妥当であろうかと考えます。
  253. 田村文吉

    ○田村文吉君 ちよつと的が外れた御答弁つたと思いますが、火力と水力の問題は後にお伺いするのでありますが、大体電力は原価主義に考えられて料金が決められるのが至当であると私は考えておりまするが、今お話のように火力と水力をプールして使う、だから関東と北陸、信越というようなものは、料金が大体同じであるというふうの御解釈になると、長官としてもお困りになる御答弁だと考えております。  私の方上げるのは、同じ東北、関東方面で地域が違いますためと申しますか、東京のような所で電気を使います一キロの料金も、雪の中の福島や新潟のあたりで使う電気料金も同じだということは、甚だ不合理じやないか、こういうことを申上げておるのであります。その点についてどうお考えになつておりますか。
  254. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) その生産のコストというような点を考えますと、誠におつしやるように不合理な感じがいたしますけれども、併しながらこれはやはりその発電、発送、変電という、それらそれぞれの状況に応じましてこれは定めるということになりましようが、とも角も、現在の日本におきましては、電力というものが十分に行つておらん、予定通りには行つていない。從いまして、各種の産業等も一般的に分布の状態が違つております。若しこれを我々がいわば、大きな意味で国土計画とでも申しますか、そういう点から申しますれば、電力のある所、その発電地帶等に立地條件が極めて適当するというような産業が多々あるというようなことは、基礎産業的な立場から見て、当然そういうことが考えられますけれども、現在の状況としては止むを得ないのではないかというふうに考えております。
  255. 田村文吉

    ○田村文吉君 それじやその問題に私はひつかかるつもりじやなかつたのですが、東北、関東、中部、北陸、関西、中国等、それぞれ火力によつておる方面は、水力によつておる方面に比べて、遥かに高くなつておるのであります。高くなつていないのじやなくて、高くなつておるのであります。ただ私の申上げたのは、東北が標準料金が五十六銭である。関東が五十一銭であるというようなこの矛盾を、私はお尋ねしておるのでありまして、地域差が石炭を焚くところが、水力のところより高い。これはもう当然な話と私は考えておりまして、あらゆる産業というものは、水力電気が安いからそこに肥料工場を作るとかというので、産業というものは分布されて行くので、石炭が安いから石炭を使う産業がその方面に集中する。これは天地自然の理でありまして、産業の発達は当然そういうふうに行われて行くのでありますから、それは当然この地域差が、程度の差は別問題でありますが、あるのが正当なので、現在も今度の改正料金もそうお付けになつておる。なつておるが、今私が伺つたのは、関東が五十一銭で、東北が五十六銭だ。標準料金が基本料金を合して大体同じようになります。でありますが、それが非常に矛盾じやないかということをお尋ね申上げておるのであります。若し長官が何でしたら、電力專門の方から御説明を頂ければ結構であります。
  256. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) その点は生産局長から……。
  257. 増岡尚士

    政府委員(増岡尚士君) 今の田村さんの御質問にお答えいたしますが、大体現在の電力料金は地域原価で料金を決めるという原則には立つておりますけれども、一時に地域原価でやるということが、現在の産業の分布から考えて甚だしい変化を與えるということで、或る程度のプールを見込んで決めておりますので、それらの地域原価にはなつておらないのであります。尚、今の東北、関東の問題でありますが、成るほど関東と新潟あたりとが料金が同じだという点については、相当研究をすべき点があるということは考えるのでありますが、ただ発電の原価だけでなくして、発電の原価というものも含めますると、御承知のように東北のような地帶においては、非常に配電経費が沢山かかるということのために、配電と発電との両方の原価を含めて考えますると、一応ああいう数字が出て來るということで、只今のような料金の決定に相成つておるわけでありますが、将來の問題といたしましては、田村さんの御意見のように、発電地帶に極めて近いというか、発電地帶と、それから発電地帶から遠い所というのについては、もう少し地域的な考慮をすべきだというふうに考えられますので、現在のような、東北を一本にした料金制度というものがいいのかどうかということは相当疑問があるので、東北全体としては今のような計算が出ておりまするが、その地区内において、発電地帶と発電地帶でない地帶とにおいて差別を設けるというような方向に持つて行かなければならないのではないか。只今のところでは、先程申しましたような、一応配電も入れた意味のコスト計算ではああいうことになりますけれども、公益事業委員会等ができまして、料金でも検討するということになれば、そういう事情も考えるべきじやないかと私は存じております。
  258. 田村文吉

    ○田村文吉君 大体御説明分りましたが、この問題について二つの御注意を喚起しておきたいのでありますが、それは戰争中に電力は管理になりましてから、料金はすべて成るべく同じにするということで、ABCの三階級に分けまして、ABCの差というものは極めて少いものであつたのでありますが、これは戰争中における一つの統制で、肥料を作るのにわざわざ山の中でやるのでないというので、電気を持つて來ればいいというので、川崎で電気を使つても同じ料金だ、こういうようなことは非常に間違つた政策であつたのでありまして、そのために今日一年間に日本で失つておりまする、空中に消える電気というものが御承知通り十六億キロワツト・アワーの電気が消えているのでありまして、この十六億キロワツト・アワーというものは、日本の肥料工場全部を廻す電気なんです。それが途中で消滅しておる。何故こういう不経済なことが起つておるかといえば、東京のまん中で船の便利が都合がいい。作業が楽だという所の電力料金も、新潟県の山の中でやる電力料金も同じだというような、こういう非常に矛盾があつたればこそ、かような矛盾が又起つて來た。これは戰争が済んだ後の我々は合理的な経営をする。殊に戰争の始まる前に如何なる産業が電力を余計使うか調査して見ると肥料工場、カーバイト工場など石炭の安いところに石炭を余計使うような工場ができるのはこれは当然のことでありますが、それが全部戰争で壞されておる。でありますから今後戰争が済んで、これで合理的な経営をするというようなことはこれは当然そこにお考えがなくちやならない。第二に御説明がありましたが、生産原価が非常に違うだろうが、配電の費用において東北の山間僻地でも費用が要るということのお話がありましたが、これは電燈に対するお話で、電燈は成る程、都会のまん中で隣近所に沢山の電力を使うところの配電の経費と、山の中の地帶でぼつぼつ電燈をつけておるところでも同じだ。私の質問しているのは動力の根元をなすところの動力の問題です。動力の問題がさような点にあるということは甚だ不都合でありますので、この点についてのこれは御答弁は要りませんが、十分御考慮になつて、もつと簡單にもつと分り易く、而も合理的に電力料金というものを決められなければならない。十分割案が出たということも、新潟県、福島県、長野県の一部を加えて一つの電力料金でやる。そういうものをまとめて推計に從つてこれを作るということで、私は非常に合理的であると思う。それがいつの間にか又九分割に逆戻りした。こういうようなことは少しくその事情の内面を立割つてお考えになれば分ることです。判然とする問題であるのであります。今のような関東と東北がこんなに矛盾をしておるというようなことは起らん。こういう点を十分に御考慮願いまして、この問題に対する質問は終ります。  次にもう一つ奇怪なことは、御承知のように一月、二月、三月は渇水する。渇水するから当然石炭を焚かなければならないというので、火力料金というのが決められたのであります。從いまして、その火力料金も極めて僅かな量にだけ適用されるものであればよろしいのでありますが、産業によりましては御承知のように五割、六割甚だしいものに到つては七割五分も高い火力料金を使うようになつた。その火力料金が一円五十六銭に対して二割高いとか、三割高いとかという程度のものなら、これは問題はないのでありますが、驚くなかれ、中には十倍から十五、六倍にもなる高い料金、即ち一キロに対しまして八円八十九銭というような料金を取られる。それで実に産業界は一二三月は困つた。ところが仕合せに天が雨を降らして我々を助けましたので、実際の発電の状況は水力が三割五分も余計に一月は出た。こういうようなことで実は火力料金はお取りにならなくても済んだわけであります。併し一応全部これは拂つた。今日各産業が非常に金詰りで困り拔いておる際に、この高い火力料金でありますから、一躍いたしまして大体四倍から五倍の料金を皆拂つた。これは実に血の出る思いでこの料金を拂つた。併しこの金は今申しましたように水力が三割五割も余計出たのだから、実は発送電なり、配電会社としても、この金は浮いて來たのだから、一月に石炭で私が勘定いたしますと、約五十億ばかりの金が浮くと、こういうことが算定できるのでありますが、これは果していくらになつたか。今日では計算が出ておりますが、或いは二十億とおつしやり、或いは三十億とおつしやつておいでになりますが、私共の計算から行きますと、五十億近まの金が余つておる。そこで一体その金はどうするか。血の出るような思いで出した金を、こういう金詰りの際だから、この金をせめて半分でも需要家に返して貰うことができないか。こういうことを考えておりますが、この点についての先ず御意見を承わりたい。
  259. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) お言葉のように、第四四半期におきましては我々も非常に心配をいたしまして、一体予定の通り賄い得るであろうかどうかという心配がありましたけれども、幸いに非常に豊水でございまして、只今お言葉のように日発、配電会社等におきましては、その豊水の結果、相当に利益をいたしておる。これは黒字になつておるということでありますが、二月、三月の関係でどれくらいになつておりますか、まだその計数的な数字が明白になつておりません。併しながらこれを直ちに消費者に向つて返すかということになりますと、これは大体返さない方針でございます。と申しますのは、これまで相当赤字が出ておりますので、それを補つて尚余りのある部分につきましては、第一四半期の方へその一部分を繰延ばして行くというような考えを持つておる次第でございます。
  260. 田村文吉

    ○田村文吉君 それは甚だ困つたことだと考えておりまして、こういうものは大中小工業が皆受けた損害です。そういう金を、火力を焚くから料金を高く取ると言つて置きながら、火力を焚かんで済んだら、その金を需要家に返すのは当然です。今まで損害だからねこばばをするというのでは、一割三分お上げになつた意味をなさない。相当料金をお上げになつた。それ以外にそれだけの余裕ができたとすれば、需要家にお返しになるのが当然だと私は考える。ただ返さないということは余りに少しく強引過ぎると考えますが、もう一度一つ……。
  261. 増岡尚士

    政府委員(増岡尚士君) お答えいたします。お話のように第四四半期は最初に計画しました水力発電量以上に出ましたので、從いまして発送電配電会社共に、予定よりも沢山の收入があつたのであります。それでそれを戻すかどうかという点でありますが、期内に戻すといたしますと、追加割当という形でやればよいと思いますが、追加割当につきましては、いろいろ却つて期内にやるということで混乱を生ずる虞れもありますので、二月については一億キロワツト・アワーだけは追加割当をしたのでありますが、その他の月につきましては追加割当をいたさずに過して來ております。実際にどれだけの余分な收入があつたかということはまだ諦めて見なければ分りませんので分りませんが、相当の金額であつたということは言えると思います。それでこれをやはり消費者に均霑せしめるということは、お話のように然るべきことでありますが、これをお金で取り過ぎたから返すという方法はとりませんで、第一四半期において安い料金、即ち標準料金で割当てる量を多くするという形で消費者の方にお返しするというか、均霑せしめるという形で割当をするという考え方の下に、第一四半期としては年間の見通しといたしまして、標準料金でやれる火力発電に見込むところの石炭よりも多くしまして、即ち第四四半期で焚かなかつた分の石炭を第一四半期へ繰越して焚くということにいたしまして、標準料金で割当をいたしますその電力量を多くいたしまするから、それによつて消費者は第一・四半期に通常割当られる料金よりも安く供給が受けられるという計算になりますので、そういう形で消費者の方に戻すという恰好になります。
  262. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題は実は誠に重要な問題だと思うので、一月仕事をしていた人が果して三月仕事をするかどうか分らんのでありまして、使つた人に返すのがやはり一番公平な分割方法です。あとで安いものを割当てるからいいじやないか、こういう考え方は私は取らんと思いますが、政府一つ御一考を促しておきまして私の質問を打切ります。
  263. 和田博雄

    ○和田博雄君 農林大臣にお聽したいと思うのですが、今日本産業はどの産業をとつて見ても、いろいろな問題を中に含んでいると私は思います。政府の取つておりまする超均衡予算を中核にした経済安定政策が、恐らく日本の経済全体をゆすぶつていると思うのですが、その中でやはり非常に大きな危惧をもつて日本の人口の中の半分以上の人達が見守つているのは農業のやはり問題であるので、政府日本の農業に対してどういうような政策をとつて行く、又現に起つている各種の問題に対してどういう措置をとつて行くだろうかということであろうと私は思います。中小企業と農業とがやはり日本産業構造の大きな基盤でありますだけに、この点について少し農林大臣の御見解をお尋ねして見たいと思うのであります。  昨日の新聞、今日の新聞を賑わしております食糧政策の転換の問題から話を進めて行つて見たいと思うのでありますが、これは今日の新聞で見ますと、実は農林大臣は、湯河原で安本と、農林と、それから自由党の諸君との話合いの結果については、自分は反対であるというような意見を述べられておつたと思うのでありますが、もとよりこれは政府として決つた案ではありませんから、今日も岩間君の質問に対して総理は研究中だという御答弁でありますが、私は政府として決つたものではなくとも、農政のことを担当されている農林大臣としては、日本の今いわば非常に転換期に立つている農業については、やはり一つの構想なり方策なりを持たれていると思いますので、その点から聽いて見たいと思うのです。差当つて問題になつておりますのは、これは供出制度の問題が大きく取上げられていると思うのであります。そこで私は農林大臣は、供出制度というものについて、二十六年度からは或る人はこれを止めと言い、或いはもつと続けて行けと言い、いろいろな議論があるのでありまするが、一体農林大臣としては今の供出制度というものは、日本食糧事情から言つてやはり存置して行くべきものであると考えているのかどうか、それとも與党の諸君が考えておるようにこれは止めてしまう、できるだけ早い機会に止めてしまう、殊に二十六年度から止めてしまうということで農業政策を考えておられるのか、そこの基本的な考え方について一応お尋ねして見たいと思います。
  264. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。食糧の供出制度は戰争以來御承知のように継続して参つたのでありまするが、どうしてもこれが理想的に下部に供出をせしめるということができ得ない悩みがありますので、何とかこれを改正したいという気持でずつと考えを続けて來たのであります。御承知の臨時措置法ができました当時は、ただ一応の割当はするけれども、それを再び修正することが容易にできないような情勢であつたのでありまするが、これとても末端の各戸の供出量をその地方を合せて供出せしめることはでき得ない、こういう情勢でありますが、而も日本食糧がその当時は非常に窮迫いたしておりまして、早場米の奬励をやり、早掘りの藷を出して貰わなければ端境期を越えられないような情勢であつたのでありますが、尚そのときも配給基準量が非常に少いために、ガリオアによつて入ります食糧で漸く僅かな配給が行われておつた情勢であつたのでありますが、その後援助食糧は相当殖えて参りましたのと、幸い戰争後三年、四年と豊作型が続きましたために、昨年は非常な風水害、病虫害はありましたけれども、大体豊作型が三ケ年継続いたしましたので、農民諸君の協力によりまして食糧事情がやや緩和して参つたのであります。併し御承知の供出制度と課税問題がひつかかつておるのであります。超過供出の制度を設けておりますけれども、どうも超過供出をやればそれに從つて課税される。どうかこの原泉課税なり、超過供出に対しての課税を免除して呉れというような空気も相当あるのでありまして、政府の施策に從つて供出はしたい、供出したいが供出するとそれだけ又課税が多くなつて來るのでどうも闇で流すという空気ができる。ところが経済九原則を示された当時におきましても、アメリカから非常な食糧援助をしておる。それに日本が闇で食糧が動いておるというようなことではいけない。これは非常に覚悟せなければならないというきつい指令を貰いまして、政府といたしましてはこれに対して返す言葉もありませんので、食確法の臨時措置法を改正いたしまして、そうしてあらゆる食糧はこれを供出せしめる。その作柄によりましては、その事前割当以上の供出をして貰うというような制度を取つたのであります。併しながら藷類の統制を外してはどうかという思想も昨年の六月出たのでありますが、藷というものは申上げるまでもなく、戰争中非常な農村経営の上の比重が高まつておりますために、これを今打切つてしまうということは、農村の経営を非常に困惑に導くものであり、又今日日本食糧事情から申しましても、藷類の相当の生産が国内需要から申しましても必要であるので、この生産力を落さないように食糧の一環に加えて行きたい。かように考えて來たのであります。併し昨年の末に二十五年度の米の生産計画をいたしまして供出の割当を一応樹てたのであります。併しそれは非常に無理がある。そういうふうな割当をされては全く裸供出をせざるを得ない、こういう声が相当あるのであります。これは今日の供出制度の欠陷であり、何とかこれを緩和するか、或いは根本的に理想的にこれを変えるか、何とかせなければならんということを痛感いたしておるのであります。併し今回これは表面的な指令でも勧告でも何でもないのでありますが、そう供出制度に政府としても苦しんでいる。そういうことであつて政府食糧を責任を持つて配給しておるというと、非常な困惑を來たすのであるから何とかいい方法がないか、自分としてはこういうふうなことを考えておるがという思想がありまして、それがいい問題となつて、自由党の政調会ではこれを取上げまして、安本の事務当局或いは農林省の事務当局等の意見を徴して研究が進められておるのであります。從つてまだ政調会の方におきましても、これを正式に取上げたわけでもありませんし、又党の方針を決定されたわけではないのでありますので、先般湯ケ原でああいうような協議があり、政府の事務当局も参加はいたしておつて意見の開陳はいたしたようでありますが、その結論といたしましてはまだ私として責任を持つべきものでない、勿論農林省といたしましても責任を持つべき筋合のものではないのであります。從つて今お尋ねの二合七勺の配給を政府が責任を以てやるような供出制度を持続する意思ありやどうか、こういう御質問でありましたが、これは仮に自由にいたしますとこの日本食糧を誰が集荷し、これを責任を以て扱うかという問題であります。この統制のために全くこの市場というものがなくなつてしまつておるのでありまするから、これを今直ちに供出を止めまして、そうして自由の立場に持つて行くということは、経済組織の上から申しましても不可能なことであるのであります。殊に今回商品取引所の制度を設けまして、農産物の取引所もできることになるのでありますが、それにしましても、この戰争以來各地に存在しておりまするところの倉庫が非常に荒廃に帰しておりまして、とてもこれは商品を預かつて信用を高めるような倉庫ができておりません。こういう事業をやるとしますれば、先ず倉庫というものの完備を、政府の力によつてこれはやらなければならん問題でありますし、こういう変化をいたします場合においては、相当の準備がなければ簡單にこれを変えることはでき得ないと存じております。從つてこの供出制度におきましてもやはり或る一定量、二合七勺なら二合七勺というものを配給し得られるものを政府が確保する方法を立てまして、そうして政府が二合七勺の配給を責任を持ち、この制度は今直ちにこれを止めてしまうというわけにはいかんのではないか、かような考えを持つておるのであります。從つて供出後の自由販売という言葉も使用されておりますが、この自由販売をいたしますについては、供出制度と市場制度と二道に持つて行かなければならないのであります。それでありますから今日直ぐ自由販売をいたすことが、農業の経営の上にいいということに考えましても、これを実行するだけの措置を先ず以て作るということが必要であると考えております。從つて私といたしましてはこの二十五年度の食糧問題につきましては、先に生産計画を立てて農家にその供出の事前割当をいたしております。その食糧を確保いたしまして、そうして二合七勺の配給はこれを責任を以て政府がやらなければならん。かような考え方を持つておるのであります。而して明年の三月三十一に食糧臨時措置法も一応法律の効果を終るわけでありますので、それに基きまして新らしき制度を設けることについて研究を進めておるのであります。若しこの食確法に代る法制を出すといたしますれば本年の秋、十月頃に蒔くところの麦からが二十六年度の食糧に引掛つて來るわけでありますので、いずれにいたしましても、三月三十一日にその効果を失う法律の代替といたしまして、適当な措置を速かに作り上げたいということを考えて、今研究を進めておるようなわけであります。
  265. 和田博雄

    ○和田博雄君 いろいろ御答弁があつたのですが、簡單に話を進めて行きたいと思うのですが、やはり供出制度を考える前提にしましても、今森さんがお触れになつたように、或る一定の配給量政府が確保するという、そこに一つの目標があるわけですが、やはりその立てた前提は、食糧の需給関係だろうと私は思うのです。食糧の需給関係について成る程今は世界的に農産物は非常に豊作になつて來ておりまするが、併し日本食糧の需給が今年から來年、又は再來年とかけて常に今のような状態であるという予想は、これはなかなか私はできにくいことと思います。殊に日本の場合にはガリオア資金で今相当食糧輸入しているわけでありますが、ガリオア資金による食糧輸入、或いは恐らくガリオアの資金というものは、もう一二年後にはなくなつてしまうのでは……、一九五二年マーシヤル、プランの何がなくなると同時にやはりなくなつて來るのではないかと私は思う。そこで食糧需給の関係について非常に楽観的な考え方が彌漫していると思うのでありますが、やはり食糧の需給について、そういう点について農林大臣としては、日本食糧の国内生産と、そうして外国からの輸入とが加つて、大体総供給量になるのですが、その点について将來の見通しというものは、どういう程度にいつたい持たれておるのか。それからアメリカからの援助がなくなつて、だんだんにコンマーシャル・ベーシスに米の輸入なんかも切り変つて來る又來つつあるわけですが、そういうようなことになつて來たときに、僅か二合七勺という程度のこの配給基準というものを確保するだけについても、これは相当の私は苦労がいると思いますが、これらの自給についての見通しというものをいつたいどの程度に考えられておるのか。三年も豊作が続いたから、又先も豊作だろうというように、こういう事柄はそう簡單に言い切れないところがあると思います。殊に日本生産基盤が農業においては弛んでいるときに、天候に非常に支配されるものであるけれども、やはり農業については非常に不作があるということを考慮に入れなければならぬと思いますが、そういう供給確保という点についてもいつたいどういう見通しを持つておるのか、その点を先ず一応伺つてそれから次に進んで行きたいと思います。
  266. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) これは和田委員もこの御体験を持つておられると思いますが、日本食糧がいつたいどれだけ生産されておるかということであります。これが昔から百姓というものは、自分の生産額その他を得るのは、大体小作人の関係もあつたでせうが、なかなか実態を掴むことに非常に困つたのであります。六百五十万町歩の田畑を持つて、どれだけの食糧生産されているかという実態を掴むことは非常に困難な実情にあるのであります。殊に供出制度をやりましてから、一層食糧生産額の実態を掴むことが困難になるのであります。六千五百万石近く、或いは七千何百万というような予想も立てて立てられないことは、大体米でありますが、できぬことはないのでありまするが、それが六千三百万、六千二百万というような結論を下すようになつて來る。こういう全く砂上に楼閣を描くような食糧政策を立てるわけでありますので、ここは大まかに考えて実際の統計数字に現れて來ます数字が、どの程度に割引していいか割増していいかということは、なかなか簡單に結論は出せないと思うのであります。併し人口も八千二百二十万というふうに凡そ予想されておりまするが、これが現在の二合七勺という食糧で考えて行きますならば、海外からの食糧をガリオアで或いはコンマーシヤルで入るにいたしましても、百七八十万トン、二百万トンぐらいのもので何とか賄えるのではないかということも一応推定がつくのであります。併し二合七勺というものが果して適量であるか、こういう問題であります。二合二勺でも我慢したこともありますし、二合五勺で生きたこともあるのでありますが、今日二合七勺ということでこれで完全であるか、決して私はそうでないので、先般來から衆議院におきましても、せめて三合くらいにしたらどうだというような要求も出ておるようなことでありますので、この量は食糧事情が将來におきましては質の向上、量の向上という両面から考えて行きますときに、日本食糧生産実態を、七千万石なら七千万石と見込み、そうしてここに二千五百万石程度外国食糧というものを考えて行く場合におきまして、大体二合七勺から三合ということの食糧が配給できるというめどがつくと思うのでありますが、先ず日本の内地における食糧生産の実態を掴むということが非常な私はむずかしい問的であると思うのであります。曾て和田委員の責任をお持ちになつておるときには、五千五百万石くらいあれば二合五勺の配給ができるという推算をお立てになつたことも私承知いたしておりますが、今は二合七勺に止つておるわけでありますが、この二合七勺におきましても、麦類の質を良くし、又米の精白度も高めて行くということになれば、これが今までの二合七勺は二合八勺の配給量というようなことになりますので、漸次我々の食生活の向上の上から申しましても、全体の必要量が増加して行くという経路を迫ることは当然でありますが、先ず第一に七千万度石程のものが日本で米として生産されている。從つてこの外にいろいろの食糧になるものもあり、今後外国から日本の力によりまして輸入するガリオア物資が來年、再來年になくなりましても、輸入の力によつて少くとも二百四、五十万トンの食糧輸入するところの、日本国民自身の努力によらなければならないのではないか、かように考えておるわけであります。
  267. 和田博雄

    ○和田博雄君 生産の正確な把握ができないということは、それは非常に正確な一分一厘も違わん把握はできない。或る程度、統計ですから、統計上のエラーがあると思うのでありますが、併し日本の殊に米麦の食糧生産については、或る程度の正確さを持つた私はやはり数字が出て來るのだろうと思います。それなくしては恐らく政府のやつておられるこの食糧配給の仕事は、全く宙に浮いた根拠のないものであるということになる。若しもそこに根本的な非常に大きな誤差があるとすれば、それは供出制度の割当なり、いろいろな点において、又非常に不公平が出て來るのでありまして、その不公平をなくなそうという努力はして來たが、或る程度私は正確さを持つたものを前提にしなければ、こういう食糧政策は立たないと思うのであります。そこで今言いましたように、日本食糧供給というものについて、森さんは正確な数字が出て來ない、将來仮にアメリカからの援助による食糧供給がなくなつた場合においては、自由な輸入によつて、二百五十万トンか何か輸入して総数量を賄つて行くと、こういうふうに仰せられるのですが、ガリオアがなくなればそうする外に仕様がないのでありますが、私のむしろ聽きたいのは、食糧についてはこれは当分の間はやはり自由ということよりも、むしろ計画的な配給、言換えると国民の食についての主たるものについては、少くとも計画的な政策というものをとつて行く見通しであるか、そういうお考えであるというのであるかどうか、そうではなくして、これはもう早く自由にこの部面もしてしまつて、そうして政府としては別個の農業政策、自由制度の下における食糧政策を立てるということにお考えになつているのか、そこのところを農林大臣としては、どういうように一体食糧政策自体については持つて行こうとしておるのかという点をお聽きしたいのであります。
  268. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) いつまでも食糧の統制を続けて行くという考えはありません。できるだけ早くこれを自由な立場に置変えるという気持は持つておるのでありますが、今日の食糧の内外の事情から申しまして、今急にこれを自由にすべてをやるということは非常に困難であると、かような考えを持つておるのであります。
  269. 和田博雄

    ○和田博雄君 そこで私はその点についてもう少し突つ込んで聽いてみたいと思うのでありまするが、農林大臣がそういう考えを持つておられるちようどそのときに、世界的には殊にアメリカは非常に生産は過剩になつておる。アメリカから見れば、又世界の小麦の食糧の輸出国から見れば、恐らく日本という市場は非常に狹い市場であつたと思う。併し最近のように食糧が非常に殖えて來て、そうしてその始末にむしろ困つている、こういうようになつて來ると、日本という市場も、やはり或る程度の重さを増して來るのじやないかと思うのであります。そういうときに、ちようど直接には今政府が採つておられる超均衡予算において政府赤字が出ない、赤字を出さないと言う。ところが日本の国内から言えば、いわば食糧管理の特別会計の面からいえば、配給辞退であるとか、或いはいもの問題とか、いろいろの点でやはり特別会計に或る程度赤字が出て來るような情勢にもなつて來ておる。そうして來ると、この辻褄を一応合せるためには、何かそこにそういう赤字を解消するための方法が差当つて食糧政策としても必要になつて來る。そういう面が今あなたが非公式に言われたような、或る程度肥料を輸入するか、或いは食糧輸入するかというような、妙な形で出て來ておるようにも考えられるのでありますが、そこで私はやはり今の日本としては、これは当面よりももう一つ先の食糧自体の政策については、農業政策の、或る程度一つの大きな部門としては食糧政策ですから、食糧政策については政府としてこの際確呼たるやはり方策を立てて、そうして早くそれを一般に決めておく必要があるのだろうと思う。というのは、食確法の問題を通して見ましても、森さんはやるような或いは今年の何からには適用しないとか、常にぐちぐちしておつて、非常に地方では迷惑しておると思う。農民はその点で非常に迷惑しておると思うのでありまして、その面からいつても、食糧政策自体について、よく内地の供給を殖やすとか、いろいろなことを言われておりますが、若しも供出制度という一つの管理的な制度というものを根本にして、たとえ今後自由になつてもその管理制度というものは、やはり中心に置いて全体の食糧政策というものを考えて行くという建前を採られるのであるならば、そういう見地から供出制度のやはり惡い所は直し、そうしてこれをうまく運営して行く前提條件である輸出入関係の管理であるとか、いろいろな一連の政策を早くやはり決められて置く必要が私はあるのだろうと思う。そこの根本がぐらぐらしておつて、将來はもうそういうものは外してしまつて、自由にして行つて、別のどういう政策を採られるか知りませんが、ただ流通面における価格政策だけでそれを補つて行こうという考え方に立たれるのであるならば、そうするとその準備をやはり今からやられなければならん。私はここのところは非常に政府として重要な点だと思うのであります。その基本的な確立が対アメリカ、司令部との関係のみならず、やはり世界の農業との関係という点から見ても、国内においてどういう一体将來食糧政策というものを、どういう制度の下に運営して行くかという基本がやはり或る程度の管理制度、それに結び付いた供出といいますか、そういう制度であつたのか、そうでなくして唯單に自由な昔米穀統制法があつたように、価格面においてだけ、例えば今アメリカにおいてやつているように、最低価格価格の保障で買上げるという点でやつてつて、後は自由市場に主たるものは全部任してしまうか、そこらのところを農林大臣としては、もう私ちやんとしたものが、アメリカから言われるまでもなく、態度がはつきりしておるべきだと思うのであります。その点になつて來ると、非常に今の御答弁だと曖昧であつて、当分今の事情を続けて行くより外にはしようがないというようなお考えでありまして、その点はそういうようにまあ私において理解して、次の質問に移つてみたいと思いますが、そこで私は農業の全体の問題として大きな問題がここにあると思うのであります。  それは日本の農業が、農業生産が非常にこの主食にどちらかというと遍しておると思います。外の農芸作物なり、その他のいわゆる農産物というものは、戰争の結果極めて生産回復が遅れ、むしろ桑なんかについては、農林大臣が御承知のように、非常に減つていると思います。これは外国、アメリカの戰争中及び戰後における競争製品の生産力の発達のために、これは打負かされてしまつたわけでありますから、その影響でありますが、とに角日本の農業の回復が非常にかたよつておる。それから農業の生産構造が、戰争の前と戰争の後で比べて見ると、非常に農産物の、それを取つてみても、非常にかたよつておるという点が一点あろうかと思うのであります。そこで何といつても今主たる作物は、これは米と麦でありまして、それに甘藷、馬鈴薯となるのであります。主食物なんであります。そこで食糧政策で一体どういう方策を採るかということが、大体私は日本の農業の構造というものを、或る程度決定して來るのじやないかという気がいたすのであります。そういう点について、森さんとしては日本の農業というものをどういうふうに一体その点をお考えになつておるのか、又どういう方向に一体日本の農政をその点で持つて行こうとしておるのか、そこらのものは政府の政策の如何によつて非常に大きく農村側は影響を受けて、それに対する適応が相当掛つて來るだろうと私は思うのでありますが、その点どういうようにお考えでありますか。
  270. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お説のごとくこの食糧確保のために、農業が食糧生産に非常に遍重を來たしまして、場合によつては農家の経営を犠牲にしても、食糧生産ということが敢て行われて來たような実態であります。併しかようなことは、今日食糧というものが需給度が高まつて、自給自足ができる立場になつたとは申しませんけれども、農家の経営の面から申しまして、麦を作り、甘藷を作るというこの点を、或いは桑園に切換えて行く、或いは園芸作物に切換えて行くということが、その個人の農業経営の上においていいという場合におきましては、これはその経営の面として許すべきものであつて、当然さようになるべきものと思います。今までは遮二無二生産計画を立てて農家に強いて行つたのでありますが、その間に犠牲を拂わしておつたわけであります。併しながら日本食糧が自給自足できないということは当然でありますが、主要食糧生産というものに、與え得られた耕地に対しましては、飽くまでもその主要食糧、その他の食糧生産に加重的に考えて行かなければならんと存じますが、その地方的……、過去における……、今一例をお挙げになりました養蚕等の問題につきましては、蚕糸業の非常に盛大であつたという地方におきましては、この蚕糸業に転換せしめるということが、その地方の農業経営の上において妥当なりと、かように考えるときにおいては、そういう蚕糸業の振興もこれは当然指導して行くべきものであると、かように考えておるわけであります。
  271. 和田博雄

    ○和田博雄君 私がなぜそういうことを聞くかというと、このすべて政府が指導力をなくなして自由にしたときに、一体農民というものはいつも損するのであります。一番いい例は、今現にいろんな方面で残つておるのですが、例えばいわゆる疊表の原料に使う藺、藺が非常にいいと言つて、百姓がすぐ藺を作つたところが、たくさん物ができたときに、価格はすぐに暴落する。そして損をするのは農民に決つているのです。それは個々の零細な生産者が個々ばらばらに、ただ市況如何によつて生産をやつてつたのでは常に遅れてしまう。いつもいい目は、見ないのです。これは自由経済の一番の弊害なんです。そこでやつぱり農林省というような農政全般を取扱つている役所が、全体として或る程度の方向を示して指導して行くことが必要になつて來る。それ以外は自由であつても、農業自体の全体の運営については、政府一つの大きなやはり計画性を持たなければならん。そうして百姓にうまくそれに合わさして行くという方法を採らなければ、てんでんばらばらで、これは森さんも農業を昔やられて身を以て体験されていると思いますが、昔は例えば狸を飼うと、皆が又狸を飼つて、直ぐ狸が過剩になつてしまう。そういうように日本の市場というものを考えずに、自由な市場に任したままで農村というものを放置しておくという形になれば、将來と雖も日本の農村はその面からでも惡くなると思う。どんなに価格面だけで防止策を立てても、それだけじやとてもいけない。そこで今の日本の農業の状態では成る程度主食に偏つておる。併し日本の農業は生産する生産物は非常に多種多様であると思います。バラエテイーが非常に多いと思います。而もそれをうまく組合わして行けば、全体としての農業、その個々の経営としても、或る程度その面で農村というものが成立つて行くような形の政策が私は採り得ると思う。そこのやはり根本を政府としてはこれは農業部門だけでなくて、外との関連がすぐ出て來ると思うのでありますが、少くともそういう事態においては、そういつたような考えで将來指導をされる必要が僕はあると思うのでありまして、その点恐らく農林大臣も御同感だろうと思うのであります。これは是非そういうように日本の農業について、もつと計画性を採入れて貰いたい。ただ供出制度が今まで価格であるとか、どうとかいうことでもつて、供出制度自体を批判するのでなくして、こういうような零細な農民で、而もそのほか生産物というものが各種のものに亘つており、地域的にも非常に偏差の多いものについては、政府全体としてはやはり根本にちやんと柱を立てる政策を立てて貰わんと、これは農民としては非常に不利な状態に立つと私は思います。そこで私はもう一つお伺いしたいのでありまするが、仮に食糧政策について、まあ民自党の言うように自由な政策が、すべて自由な市場に任す政策が仮に採られるとしても、私はやはり日本はその場合に或る程度輸入を見なけりやならんと思います。それを輸入する政府のためにはこれはどうしても僕は管理制度を必要とすると思うのです。殊に幸いに日本では外資予算を組んで、輸出入についてとにかく一応の予算を作つておると思う。これが民自党の言うような自由主義というものをやつても、仮にもう放任の自由主義でないならば、何かここで全体の物量的な、数量的な需給を合せる操作をやり得る余地がここにあるのだろうと思うのです。そういう点について農林大臣は、一体外貨予算の編成のときにですね、輸入される食糧自体について全体の需給を睨み合わしてやつて相当補助金を出さるべきであり、政府としてはこの外貨予算を少くとも自主的に、アメリカ連合国軍の手を通ぜずして日本だけでこれをやつて日本全体の経済復興の上に、復興という立場からこれは組まれて來るということに、これは是非そういう方に持つて行くべきだと私は確信するのでありますが、輸入米についてはどういう、政府としてはどういう一体政策を今後採られるつもりであるのか、ただ輸入米が日本の内地産米について価格がだんだん接近して來ると……、從つてその接近して來るから安いものだけを入れて、そうしてそれを基礎にして全体の産業の復興をやつて行けばそれでよいのだという資本家的な考え方でなしに、日本経済全体を見て見た場合に、輸入米に対する操作というものが、言い換えますと入つて來食糧に対する操作というものが将來の農業政策として、又経済全体としての政策としても大きな意味を持つて來ると思うのでありますが、その点については政府は将來やはりガリオアがなくなつても、自由な貿易になつても、食糧については一つの管理制度をやはりとつて行くという態度であるのかどうか、そういう点について考えを一つお聞きして見たいと思います。
  272. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 只今はいろいろの制約があるのであります。併しながら外資の輸入に対しましては、閣僚審議会というものがありまして、関係の閣僚が集まりまして、そうして外貨輸入に対する予算に基きまして、その適量を定めるという働きをいたしておるわけであります。
  273. 和田博雄

    ○和田博雄君 現在はその通りなんです。ところがそれが極めて余り感心しないので、将來の御抱負を聞いたのですが、余り抱負もないようですから次に行きます。  私は日本農業の問題で一番今欠けておる点は、農業方面に対する投資、言い換えると国家的な資本の導入だと思うのであります。この点については、日本は御承知のように今まで農村がとにも角にも非常に或るときは窮乏しながらも何とか生産量を増して來たのは、やはり国家による投資が私はあつたからだと思う、(「全くだ」と呼ぶ者あり)農村自体の零細な金が、むしろ農村に還流する部分が非常に少かつたのでありますが、国家が何らかの形で、国家投資というものを行われておつたというのが大きな支えになつたと私は考えるのであります。農地改革をやりまして曾ての地主はなくなつてしまつた。昔は地主が明治の初年或いは中期ぐらいまでは、地主自体が或程度農業方面に対して企業者的な役割を果したと思う。その後地主は單なる自作農に殆んどなつてしまつたのであります。今度は個々の農民が非常に小さく、人口も増えて、耕地は一戸当り八反というふうに非常に小さくなつてしまつたのであります。ところが肝腎の農業方面への投資というものが今度のドツジ予算で非常に少くなつてしまつたと思うのであります。よく政府は農業の近代化とか、それから自給度を殖やすとかといわれておるが、農民の食糧の自給力を殖したり、近代化をやるというときに、ただ働けば働くだけでそういうものができるのではないと思う。やはり農業の近代化をやるなら、機械を入れるにしても、新らしい技術を入れるにしても、やはり国の資本投資というものが非常に必要になつて來ると思うのであります。そういう点について、農業に対する補助政策というものが、ドツジの考え方によつて是正されて、ここに私は日本の農業が今直面しておる非常な不況なり、将來の農業の実際の不安定の根本的な原因があるのだろうと思う。ただ政府に補助しろというのではなく、農業と工業と比べて見た場合には、農業の方が立ち遅れておると思うのですが、その立ち遅れは、国家が全体の中からやはり産業投資として農業方面に、土地改良にしても、開墾にしても、開拓にしても、水利施設にしても、機械の導入なんかにしてもやつて、そうして国民経済全体を上昇させて行くという政策をやはりとらないと、これはただ自由にするとか何とか、又均衡予算というようなことだけでは、私は農業振興はできないと思う。そうやつて生産のコストを下げて行くということをやはりやつて行かなければならんと思うのですが、この点になつて來ると、私は從來農林大臣のとられた政策が非常に微弱だと思うのです。これは止むを得んと言えば止むを得ないのだけれども、もつと私はその点は堂々とやつて農林大臣としては鬪われて、その点については職を賭しても私は頑張るべきだと思うのですよ。この点についてこれは農林大臣としては今後どういうようにお考えになつておるのか、その点を一つお聽きしたいと思います。
  274. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 農村に対する国家資本に投資に対しての御意見でありましたが、誠に御尤もに考えるわけでありますが、今日の予算の編成の根本方針も御了承になつて頂いておることと存ずるのでありますが、この範囲内におきまして、農村に対してのできるだけの事業に投資をやつておるのであります。昔のように何をやつたから補助しろ、かにをやつたから補助しろというこの補助政策は、ドツジの勧告によりまして昨年來打切つておるわけであります。殊にお話の、農村が非常な小さい規模に陷りまして……、これは農地改革の結果でありますが、僅かな土地しか持たないというので、これではとても資本的企業体として考えることはでき得ないのであります。ここにおきまして、私は一昨年來作りましたところの協同組合の力によつて、これが資本的企業的に活動をなし得るということによつて、商工業者と同じ立場で起ち上るというように指導すべきである、かように考えておるわけであります。
  275. 和田博雄

    ○和田博雄君 どうも申されることはお座なりの答弁だと私は思うのです。というのは、私たちは昔のように農民に対して手を引張り足を引張るような、ただ人数だけを殖やすような、そういう補助をやれとは決して言つてない。そうではなくして、やはり工業で言えば、いい工場設備を作つたり、いい機機を買つたり、外国からいい技術を導入したりする、そういう長期の本当の資本の導入をしろと言つておる。農業において協同組合でできるかどうか。今の日本の協同組合というものは、すべて少ない投資でやつておるに過ぎません。本格的な投資は一つもやつてないのです。だからそれを私は言つておる。それをやるには国家的なものでなければ入つて行けないのです。農村には……。これは日本の農業だけではなくして、ヨーロツパの主要国であるフランスにしたつてドイツにしたつて、皆そうです。アメリカでもやはり国家的な資本というものは農業方面に入つて行つておるのです。ところが日本のように千八百万も、千九百万も農業に從事しておるような農業国で、こういう農業国という状態を脱却して工業国になつて行くために、私は農業の生産力を高めなければならんと思う。そのためには個々の農村の協同組合だけでは私はできないと思うのです。殊に協同組合については、今のような協同組合では、少なくともそういう方法では働き得ないと私はこれは断定して間違いないと思うのであります。それだからこそ今の協同組合では非常に問題が起つておるのだと、かように考えるのでありまして、その点は十分農林大臣においてはお考えになつて、これは余程将來の日本の農業だけの問題ではなくして、国民経済自体の問題としてもお考えになつて然るべきだと思います。それから協同組合の話が只今出たのでありまするが、協同組合へ入る前に、農村方面における今言つたように投資の問題と離れて、ここで私は農林大臣にちよつとお聽きしたいのでありまするが、農林大臣は一体農業政策の目標を何処に置かれて、如何ような農業政策をやつておられるのですか。その点一つお伺いしたい。
  276. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 日本の農業政策といたしましては、今日本の農業に依頼しておるところの問題は食糧生産であります。この国家目的に農業者が協力し、而もその農業者の経後が合理的に進んで行くという政策を持つて行く、こういう考えであります。
  277. 和田博雄

    ○和田博雄君 私は農業が国民食糧生産する産業であるという意味において、少くとも農業に從事している農民の人達が食糧生産を確保するということは、これは国家が或程度一つの目標にしていいと思う。併し、私はそれだけでは足らんと思う。やはりそういう産業を担当しておる農民の生活なり、所得なりが上つてつて、そうしてやはり国民、農民の生活が楽になるように経営が合理化されて來るということがやはりなければ、政策の目標にならんと私は思う。そうしますと、私は今見てみますと、農業方面における所得というものが総体的には年々低下して來ていると思います。年々低下して來ているということは、言い換えると、一方では農業方面への人口が、それだけ殖えておるわけであります。一人当りの農家の所得というものが下つて來ていると言わなければならない。言い換えると、農民というものは段々貧乏になつて來ているということだと思うのです。所得の面から言えば、これは非常に今までやつている農業政策というものが、一つの破綻を示して來ているんじやないかと、こう思うのですが、その点については農林大臣はどういうようなお考えを持つておられますか。
  278. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お手許に出してある予算案の内容につきましても、決して農業の生産額が前年とは減つておるとは思わないのであります。農業に從事する農業者数字におきましては、二十三年度よりは幾らか減つておりますが、農業全体から申しますれば、決して收入は減つておらないと思つております。
  279. 和田博雄

    ○和田博雄君 農業全体からの收入は減つておらないのではなくて、農業全体の所得は絶対的には、貨幣面では殖えておる。併し從事しておる人間が殖えておるだけに、一人当りの所得というものは減つておる。これはもう農業経営調査を見られても、外の何を見られても分るのであつて、これはごまかすわけに行かんのであります。そこで安本長官に聽きたしのですが、所得の問題で、この木村君の予算要求資料の、二十五年度分の分配国民所得の概要についてという材料が出ておるんですが、この推計の基礎條件になつたものについてちよつと御説明願いたいと思うのです。これは事務の方でも結構でございますが、一応これを説明して置いて下さい。
  280. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) この国民所得の材料はお手許へ参つておると思いますが、大体国民所得の推算というのは、いろいろその基礎については問題があるところもありましようけれども、御承知通り経済安定本部では、分配国民所得を便宜上発表し、その推定を出しておるのであります。その資料としましては、お手許にございますと思いますが、二十五年度分配国民所得第一次推計というものを出しております。  それから今ここで特に申上げますが、御承知通り国民経済のうちにおきまして、一定期間中において、新らしく生産された物財、或いはサーヴイスの貨幣価値の純計というふうに定義づけておりますし、内容もそういう考えで作られております。御承知通り各国共国民所得の実績と予測が、経済政策上重要視されているのでありまして、日本においてもその点は同様でありますが、その場合に全体を説明しろと言うのですか。
  281. 和田博雄

    ○和田博雄君 そうじやありません。例えばこれは物価ならば二十五年九月が物価水準のベースになつております。それから雇用なんかはどういうふうな計算をされたのか、それから生産なんかはどういうような数字を基礎にされたのか、その国民所得を出すについての條件がありますね、いろいろな。それをちよつと御説明願いたいと思うのです。
  282. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 御承知通り大体物価、賃金、それから生産、それからその主なるフアクター等は決つておりまして、各国とも大体同様でありますが、尚その基礎資料、そうして今おつしやるような、どういう材料によつてつたかということであります。これは一般のとり上げている指数に基いたものでありますが、尚詳細につきましては財政金融局長がおりますから、できるだけその基礎材料について詳細に御説明申上げたいと思います。
  283. 和田博雄

    ○和田博雄君 簡單で結構です。
  284. 内田常雄

    政府委員(内田常雄君) 事務的に御説明申上げますと、農業方面につきましての国民所得が、実績として一応計算されておりますのは、現在のところ概ね昭和二十三年度分でありまして、これは現実には農家生計費調査とか、或いは農業資産等による農家の所得なり、支拂賃金なりというものと、それから農家の地方別戸数というようなものを基礎といたしまして、不完全なんでありますけれども、二十三年度の実績を抑えているのであります。それに対して二十四年、二十五年は、今安本長官からお話がありましたように、結局農業労務者に賃金指数なり、或いは農業に從事する労務者の雇用指数なり、更に又農家の所得といたしまして、農産物の価格なり、或いは農林水産物等の生産数量の推移を予想した指数を適用して考えるのであります。この場合、お手許にお配りしてあります二十五年度の国民所得の資料においても明らかなように、農業労働者の二十五年度の勤労所得は、二十四年より若干落ちる計算になつております。それは特に賃金の面におきまして、農林省の作成いたしております数字が、現在までにおいて示す傾向によりますと、農家の男子の日傭い賃金というものが、二十四年の過程において若干落ちて來ている。その半面雇用の方は、農業においては若干被傭者は殖えておりますけれども、水産業等において減つている。從つて賃金の上昇指数と雇用の上昇指数とを相互にかけ合せたものが若干減りますために、今申上げますように、二十五年度は二十四年度よりも農業の日傭者勤労所得というものは若干減つている。これに反して農家自体の所得の方は、結局農産物水産物等の価格生産数量にかけるわけでありますが、価格につきましては農家の生産いたしますものが、例えば食糧について申しますと、供出されるもの、それから闇で現実には売られるもの、更に又国民所得を計算いたします場合には、自分で消費されるものも計算されます。その場合供出される価格、言い換えますと、パリテイ指数は御承知のように形式的ではありましようけれども上つております。昨年十月はそのパリテイーが百五十六、その前が百四十三、その前が百三十二というふうに上つて來ております。国民所得に現われます価格に関する限り上つて來ております。生産数量につきましても農業自体においてはそう殖える面もありませんけれども、水産業産業等におきまして生産数量が可なり殖える傾向が見られ、又二十五年度の私共が現状から見まする推定におきましても、農林、水産、畜産等を通じて二十三年度に比しますと七%ぐらいの生産の増加、二十四年度に比しましても五%ぐらいの生産の増加が見られる、その結果今申しますような農林水産物の価格と数量と掛け合わした指数は殖えますために、お手許に配りましたような農家自身の業種所得といいますか、事業所得が或る程度殖えて來ておる、併しその殖え方は昭和二十四年度に比して二十五年度は殖えておらない。これは国民所得全般を通じて私共は可なりいろいろな條件を想定いたしまして、楽観的に見た面もありますけれども、結果といたしましては二十五年は、二十四年に比べまして全体としても六%ぐらいの国民所得の増加しか見ておりません。その中でも農業所得は大体全体の国民所得の伸び方と同じ程度に、ややそれを下廻るくらいの程度しか伸びておらない。一応かようなことになつております。尚価格等につきまして、闇で売るもの、供出で売るもの、或いは自分で消費するもの等につきましては、それぞれ数字的のウエートを付しまして、計算をいたしております。更に又闇で売りますもの等も最近御想像のように、可なりウエートが変つて來ておりますために、それらのウエートも一応二十五年度を予想いたします場合にはなるべく見ておるわけであります。技術的にはそういうことであります。
  285. 和田博雄

    ○和田博雄君 内田君にちよつと訊きたいのですが、この農林水産業についても、おのずから所得は絶対的に一応二十三年、四年、五年と段々殖えておるのですが、やはり経営の個人業種というものの数は殖えておるのでございましようね。
  286. 内田常雄

    政府委員(内田常雄君) 詳しい資料は今手許にございませんけれども、農業につきましては、農業経済の戸数は若干殖えております。給料を貰つておる、いわゆる日雇労務者も先程申しましたように若干殖えておりますが、家族從業者と申すものが相当の殖え方をしておる。国民所得で見まする場合には、農林、水産業等の勤労所得に現われて参りますものは今はもう少ししか殖えていない。日雇労務者、外の労務者の給料が対象になつて参りまして、私が今余計に殖えておると申します家族從業員等は、これは農家の業種所得の中に入つて、その方で計算されておるのであります。
  287. 和田博雄

    ○和田博雄君 農林大臣に訊きたいのですが、私は何故細かい数字をお訊きしたいかと言えば、農林水産業、殊に農業というものが段々総体的に日本では地位が低下しておるのです。インフレーシヨンのときには一応所得でも三〇%ぐらいだつたと思うのですが、これはもう非常にアブノーマルなときなのであつて、平常時においては農業というものが段々……、これは資本主義の社会では総体的に放つておけば必ず低下するのです。  ところが日本では農業の方へ大抵のものが皆しわ寄せされてしまう。雇用の面でも、人口の面でもみんなしわ寄せされてしまつて、而も所得が非常に下つて來る。そうすると全般的に農業の地位というものが国民の地位の中で実質的には非常に低下して、非常に経済の基盤が又下つて來るのです。こういう傾向にもう必ずあるし、又現実にそうなつて行きつつあるのです。だから農業政策としてはやはり少くとも農業面における所得というものは、これは外の部門と釣合のとれた、国民経済全体が今は戰争後力が弱いのですから、そう高いことは要求しないが、やはり釣合のとれたところに農業の所得を置く、こういうところに一つのやはり農業政策の目標は置くべきだと思うのです。それについて農林大臣としては一体どういうようなお考えで政策というものを考えられておるか、その点一つお聞きしたいと思います。
  288. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 御意見誠に御尤もであります。農業に今の過剩人口が包容されやすいという過程にあるのでありまして、どうしても農業者がその生活幾らかでも高めて行くということに指導して行かなければならんと思うのでありますが、今までは農業者の経営ということを第二義的に考えて政策を行なつて來たという傾きがあるのでありますが、今後これを農業の実態に合うような農業経営をやらしめる、御承知の、日本におきましては一概に農業経営と申しましても、その四囲の環境によつて非常に違うのでありまして、近郊農業もあれば、山村農業もあるわけでありますから、その地区的に合う農業の経営を指導して行くということによつて、農家の生活基準を高め得るように、收入の増加の途を図つて行くということを考えて行かなければならんと思います。今まではこうした山間や近郊も画一的な食糧問題についての政策が行われて來たわけでありますが、その特殊の地域を利用して、そうしてその地域に適応し、その地域をうまく取入れて行くところの農業政策をその地区的の事情によつて立てて行くという方針で進むべきであると、かように考えております。(「そうその程度で止めて下さい」、「七時まで続けて……」と呼ぶ者あり)
  289. 和田博雄

    ○和田博雄君 何なら休憩してもいいです。まだ相当ありますから……。
  290. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 七時までという打合せですから、七時までやつて頂きましよう。
  291. 和田博雄

    ○和田博雄君 もう少し農村の内部についてちよつとお聽きして置いた方がいいと思います。尚七時までやつても止めてもいいのですが、もう少しお聽きして置きます。  農林大臣にちよつとお聽きしたいのですが、今の御答弁は非常に不満足ですが、次へ進みます。大体農林大臣も御承知のように、日本の農村の経営が供出面から見ると、いわゆる自給農家と申しますか、自分で食つて殆んど売らない農家が相当多くなつて來ておりますね。それから兼業農家がやはり日本では相当おると思います。これはもうあなたもよく農村のことは御承知なんだから、余り詳しく言わなくてもいいのですが、大体日本ではやはり兼業の收入が減つて來ると、これは農家としては非常に困つて來状態のものが相当多いと思います。殊に最近の調査によれば、闇値段が下つたこと、そういう外の兼業農家の兼業の賃金が機会がなくなつた、賃金が下つた、或いは働く機会がなくなつたというので、非常に困つて來ておると思います。一体そういう兼業農家というか零細な農家に対して、これは政府として誠に数が多いだけに日本の農村問題を取扱うときには、何かやはりそこにそれらの農家に対する対策というものはやらなければならんと思います。そういうような農家について、一体どの程度にどういうことを将來なり、今お考えになつておるのか、経営面の改革というよりも、そういう零細な農家をどういうふうにして行くかということが相当大きな問題になつて行くので、農業から脱落してしまえばいいのですけれども、或る程度農業に残つておる面が出て來ると思います。それらの点について一体どういうお考えですか。
  292. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 今お話のような農業階級が相当多いのであります。農業者達が俸給生活をしている。或いは他の商売をやるとか、いろいろこの兼業的な農家が非常に多いのでありますが、これはこの兼業それ自体が非常にいろいろの事情によつて縮少されて行く結果は、非常にこの経営の面が……、経営よりむしろ生活の面に窮するという、こういう問題が起つて來るのであります。ここで今政府といたしまして、こういう面に対しての考え方は、この相当の労力或いは技術というものを持つておる者をうまく集めまして、そうしてここにこの副業的な、一面工業的なものを取入れて行くということも一つの政策と考えておるわけであります。相当農村におきましては工業の技術を持つておるものも相当おるのでありますが、そういうものが農業の片手間に働いておる。或いは極端なのは日雇稼ぎをしておるものも相当ありますが、土地の瘠地のためにやつておるものもありますが、そういう農業者が相当数を占めておりますので、そのいわゆる生活の、何と申しますか、上において非常に苦境に立つというものに対しましては、そういう面から指導すべきであると、かように考えておるわけであります。
  293. 和田博雄

    ○和田博雄君 どうも余りはつきりしないのですが、私はもう或る程度結論的なことをお聞きして私の質問をやめますが、私は農林大臣に、実はですね、今のように農村を、あなたのやられているように、或る意味からいうと放置して行くと、何もこう農業全体について計画を立てずに、ただ供出だけについての計画を持たれて、そして農業方面についてはいわば出たとこ勝負という行き方が、これは私は非常に危險だと思うのです。それはやつぱり農林大臣とされては、農業全体についてやはりちやんとした計画を立てられて、それで農業政策というものを進めて行つて僕は貰いたいと思う。これはもう政府自体が五ケ年計画を放棄しちやつたわけだから、農林大臣がどうすることもできないというてしまえばそれだけですが、私はやつぱり仮にそういつた自由のような態度をとつて見ても、農業全体についてはもつとやりようがあると私は思うのです。むしろ体系を持つた政策は可能だと私は思うのですが、そういう点について我々は農村を見ておつて非常に不安に感ずる。その点について農林大臣としては、私は是非これはもう少し農業方面については、やつぱりちやんとした一応の、全体的な農業政策を持たれる必要があると思うのですがね、もう今になると……。例えば生産面についてもちよつと奨励すれば増産になるものもあるだろうし、それから価格なんかについても、例えばパリテイーというものをそのまま受取らずに、もう農業生産費の方に移つて行く準備をされることが増産になると思います。予算全体としての農業全体についての組み方その他については、農林大臣に伺つてもしようがありませんから、他の大臣に適当な機会に聞きますが、農業自体の中にも相当改善される情勢が今の情勢にあると思いますが、そこのところを最少限度あなた方自作の立場に立つて考えるべきではないかと思います。私共は自ら別の立場に立つておるから別の考えを持つておりますが、その点を僕は農林大臣としてはやつて貰いたいという感じが強いのであります。  そこで最後に私はお聞きして置きたいのは、農地問題でありますが、農地改革は一応計画通りまあ曲りなりにも私はできたと思うのでありますが、何といつても農業の最後の問題は土地問題だと思うのです。土地の分配なり利用なりが合理的でないと、これはやはり農業的に組織的に欠陷があるわけですからうまく行かないと思いますが、その点について農地改革自体すべての農業問題は解決するわけではありませんが、少くとも農地改革という経済民主化のこの線は、これはどういうことがあつても破られん。この線だけはむしろ押し進めて行くのだと、こういうようなお考えに農林大臣は立たれておると思うのですが、その点は一体どうですか。
  294. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 農地改革もお説の通り一応ここで纒つて來たと思うのであります。これは申上げるまでもなく、折角ここまで相当の努力を拂つて來た成果でありますから、これはあくまでも維持して行かなければならんと思うのであります。然らば今後残されておる問題はどうかということにつきましては、土地の利用力を高める上において、交換或いは分合等の問題が起つて來るのであります。これはいつかもここでもお答えいたしましたが、なかなか容易に……、理想的に考えますと、なかなかその実現に困難な問題がありまして、土地改良法によりまして、これを施行し得るような計画も立てておる訳でありますが、この日本の峽隘な土地を交換分合いたす上につきましては、いろいろ困難な問題があるのであります。併しながらこの土地改良をやり、農地改革をいたしました終局の目的といたしましては、その能率の更に向上するようなあらゆる努力を拂うことは当然でありまするから、その方面においても可能の分については、できるだけの実現を図りたいと思います。ただ時に第三次農地改革というようなことを説かれる向きがあるのでありまして、その内容を聞いて見ますというと、小作農業を止めさして、全部自作農にする。小作制度を廃止するということが所論らしいのでありますが、これは日本の農業が自家労力で経営いたしておりまする状況から見まして、全然小作制度を止めてしまうということになりますと、その労力の転位、移動によりましては、絶えず土地の移動があるということになり、又自家耕作させて置きたいという、この自由を奪われるのでありますから、現在制度とされておる程度の自作農、又地主の制度は設けて置くべきものであると存じますが、この折角できた農地の改良は飽くまでもこれを維持し得られるように一つ政策を持つて行かなければならない。かように考えるわけでります。その点につきまして、土地の担保力等も今日はないのでありまするから、その点につきましても将來考えて行かなければならんと存ずるわけであります。
  295. 和田博雄

    ○和田博雄君 農地改革の成果はこれは維持して行くとこういうお話しでありまして、これは当然のことだとまあ思うのでありますが、小作制度につきましては、これは今日は自作、小作混淆であつて、小作制度を全然なくしてしまうとこういう何ではないのであつて、多少今小作は残つておるのでありますが、併しやはり第三次農地改革ということも全然否定されてはいかんと思うのです。というのはなぜかというと、やはり一町歩の保有限度はあつても、その一町歩の保有限度が非常に農地改革を阻害しておるところがあるというところに、当然第三次農地改革というような問題になつて來ると思います。その場合に小作制度というものが、やはりあなたの言う通り、労力の多寡によつて或る程度全部売らなくとも一部は小作に売るし、売られれば小作制度というものはとつておいてもちつとも構わない。これはアイルランドの制度にしても、その他の国にしても全部自作にしても小作制度そのものは改められて來れば残つておるのです。その点は余り強調されても却つて自家撞着に私は陷ると思うのです。だから土地改革そのものは今後は情勢によつてやはりこれは或る程度は進めて行くということでないと、私は土地改革の目的は達しないと思います。併しこれは意見になりますからなんですが、ただこの維持されるということについての点でありますが、やはり金融の問題にもあなたは触れられましたが、長期金融の点が直ぐ問題になつて來る。そのときに土地の担保力を一体持たせるという考えでは私は駄目なんであつて、やはり農地改革のその土地そのものが生産手段として、むしろ担保力そのものを持たせずに、そうでなしに長期に金融をする、特別の金融機関を作るという行き方でありませんと、土地の担保力を持たせてやつて行くのでは、又自作農創設の折角いいところが流れてしまつて、元も子もなくなつてしまうのであります。その今の制度として逆の効果を得るから、そうでない長期の金融の制度をこの際私は設けられてはどうかと思うのでありますが、そういう点については農林大臣はどういうふうに考えておられますか。
  296. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 農地の担保貸付に対しては御意見の通りであります。農業を経営するというそれ自体に対して、資金を利用するということでなければならんと私は考えております。
  297. 和田博雄

    ○和田博雄君 そこで大蔵大臣に聞きたいのですが、今のやはり農地に対する長期金融の考え方は、これはやはり大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになつておるか、ちよつとその点だけ……。
  298. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農地自体を担保にして金を融通するということは、今お話にもありましたように、農地改革の趣旨と牴触するところがあるのであります。從いまして和田君の言われておる農業に対しまする長期金融という問題は、あなたの言つておられる長期資金の用途によつて考えて行かなければならんと思うのであります。先般來農業金融については余り考えられていないではないかというふうなお話でありましたが、御承知通り私は農林中央金庫を主にいたしまして、農家の長期金融につきまして十分な措置を講じたいと計画いたしておるのであります。
  299. 和田博雄

    ○和田博雄君 それはぜひ至急にやつて貰いたいとこう思います。最後に一言お聞きしたいのですが、農林大臣は來年度の、これはまあ今年出來る米ですが、米価の決定についてやはり今年もパリテイでやられるというお考えなんですか。それとも今年は、もう今年の米については少くとも生産力を反映した価格というような考え方を入れ、又その他農家の所得というものの確保といつたような考え方も入れてずつとやられるというようなお考えで御準備されているのか。その場になつていつも米価が速急の間に決まつてしまうということは、私は非常に遺憾に思うのでありまして、やはりこの米価の決定というものは、予め分つていることであるから、殊に米価の決定は政策の基本をなすものでありますから、その点についてどういう準備をしているか伺いたい。
  300. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 現在は御承知のパリテイ指数でやつているわけでありますが、これについては相当の議論もありますし、欠点もあるわけであります。本年の米価を決めます場合におきましては、生産の状況を、生産費というものを一部加味して決定いたしたい、かような考えを持つているわけであります。
  301. 山田佐一

    委員長山田佐一君) もうよろしゆうございますか。
  302. 内村清次

    内村清次君 予算審議に当りましても、通告者はまだ残つておりますので、あと二十名ばかりあると思います。年度も相当差迫つておるというような関係もありまして、今後の審議をどのようにするかということも当然考えなくちやならんと思います。それで明朝理事会をお開きになりまして、今日はこれくらいでお止めになりまして、明朝しつくりした(笑声)計画を建てる、こういうような動議を出します。今日の審議はこの程度で打切つて頂きたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  303. 和田博雄

    ○和田博雄君 明日又安本長官に少し伺います。
  304. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それでは本日はこの程度において散会いたします。    午後六時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            内村 清次君            岩木 哲夫君            伊達源一郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            木下 源吾君            下條 恭兵君            和田 博雄君            羽生 三七君            森下 政一君           池田宇右衞門君            石坂 豊一君            岡崎 真一君            小串 清一君            島津 忠彦君            團  伊能君            城  義臣君            横尾  龍君            堀  末治君            深川タマヱ君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            藤野 繁雄君            帆足  計君            川上  嘉君            藤田 芳雄君            小川 友三君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    大蔵大臣通商産    業大臣     池田 勇人君    文 部 大 臣 高瀬荘太郎君    農 林 大 臣 森 幸太郎君    郵 政 大 臣    電気通信大臣  小澤佐重喜君    建 設 大 臣 益谷 秀次君    国 務 大 臣 青木 孝義君    国 務 大 臣 本多 市郎君    国 務 大 臣 増田甲子七君   政府委員    内閣官房副長官 菅野 義丸君    行政管理政務次    官       一松 政二君    地方自治政務次    官       小野  哲君    大蔵事務官    (大臣官房長) 森永貞一郎君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (外資委員会事    務局長)    賀屋 正雄君    大蔵事務官    (主税局調査課    長)      忠  佐市君    通商産業事務官    (大臣官房会計    課長)     大堀  弘君    経済安定事務官    (総裁官房長) 平井富三郎君    経済安定事務官    (総裁官房次    長)      河野 通一君    経済安定事務官    (生産局長兼動    力局長)    増岡 尚士君    経済安定事務官    (生活物資局    長)      東畑 四郎君    経済安定事務官    (財政金融局    長)      内田 常雄君    経済安定事務官    (貿易局長)  谷林 正敏君    経済安定事務官    (建設交通局次    長)      山崎小五郎君    経済安定事務官    (物価庁第一部    長)      渡邊喜久造君    経済安定事務官    (物価庁第三部    長)      川上 為治君    経済安定事務官    (総裁官房労働    室長)     石井 通則君