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1950-03-27 第7回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十七日(月曜日)    午前十一時四十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員池田宇右衞門君、島津忠彦 君、小林米三郎君、伊東隆治君、小林 勝馬君、藤森眞治君、波多野鼎君及び 内村清次君辞任につき、その補欠とし て、黒川武雄君、小林英三君、横尾龍 君、木内四郎君、境野清雄君、木内キ ヤウ君、下條恭兵君及び原虎一君を議 長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○本委員会運営に関する件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 只今より会議を開きます。
  3. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 議事進行について……議事進行について委員長にお質ししたい。それは、一昨日当予算委員会理事会におきまして委員長から、明日曜即ち昨日の日曜日委員会を開催したいということの意向が提出されました。我々におきましても、重要なこの予算に対しまして、而も期日が相当切迫した今日、晝夜兼行でこれが議事進行に同調することはもとよりでありまして、何ら異存がありません。ただ併し、今日まで参議院に本予算が送り込まれて、而もこれと不可分関係にある地方税法平衡交付金法律案等提出は、参議院予算審議の問題と別個に、これらの單独法律案参議院審議期間の余裕を與えない短時日提出が、漸く地方税法が先般あつたのでありましたが、まだこの地方税法審議は、衆議院も本日はやつておらない、明日もやらないそうであります。参議院におきましても、地方税法はまだ本当審議に入つておらない、本多国務大臣が、漸く説明をされた段取りに至つたまでであります。又地方財政平衡交付金の問題につきましては、総理大臣が断言しますと二言まで本委員会において言明されたにも拘わらず、即ち今週中、一昨土曜日までに平衡交付金が出なければならない責任を持つた政府当局の声明に拘わらず、これが土曜日至つても勿論提出されておらない。而もこれがいつ出るか判然と予測することの困難なよう事態に鑑み、又もう一点は、今日まで予算案が本参議院に送り込まれてから今日、政府当局閣僚各位審議に対しまする熱意は、国政各般に亘りまする御都合もあつたかも知れませんが、容易に委員会の要望に応えるよう工合の御出席が見えておられない。特に総理におきましては、総括質問から開始して参りたいと申出たに拘わらず、当初数日間は、総理にお差支があるというので出席に応ぜられない。或る一日のごときは、病気だとおつしやつて東京駅頭に現われておる。又、公務差支があると言つたのが、三越お孫さんを二人連れて観覧に行つておられる。かよう工合に、政府当局参議院予算審議に対しましての誠に態度につきましては非常に我々といたしましては、遺憾な態勢を取つて来ておられたことは、委員長はもとより、政府各位の御承知通りであります。かよう事態に鑑みまして、政府当局熱意というものが、甚だ如何わしい、且つ地方財政に関しまする密接不可分法律案完全提出でない、未提出のままにあるよう経緯等から見て、敢えて日曜日に殊更審議するというような行き方よりは、むしろ普通の日を夜陰に亘つても構わない、審議することの方が筋が通るのではないかといつたよう工合に、野党各位方面から熱烈な意見があつたに対しまして、委員長は、その点は御尤もであるから、一応本日の理事会はこれくらいにして委員会を開いて、それから後の問題にしようというのが昨日の朝の理事会経緯であります。かようにいたしまして、昨日我々は委員長のいろいろ今日までのお取りなしやら、円満議事進行ようという建前から国会法を無視してまで、或る意味においては、審議を、少数のもの、極端の場合にはたつた委員が二名しか来ておらないといつたような場合でも、委員会の形式を以て、議事進行を我々は熱意を以て審議して来たわけであります。ところが昨日の朝の理事会約束に反して、委員会あとの問題にしようということは委員会を閉じてか、適当なときに中途にして、そうして理事会を開いて明日曜日予算審議をするしかないかを諮るべき筋合に今日まであつたということは、もう私が今ここに重ねて申上げるまでもなく、明々白々たる経緯であります。これを委員長が無視して、昨日の予算委員会與党と申しますか、同調せられる方々と数を睨んで委員会においてそうして明日曜日予算審議をする決議を取られたそうであります。併しこれは顧みて定数に足らないのでありまするが、今日我々は円満議事進行ようという建前から、委員長努力を我々は大いに買いまして、敬意拂つてそれに応じておりましたが、昨日は突如としてそういう国会法を無視して、そうしていわゆる決議を以て、多数決を以てやろうとした気配でありまするが故に、野党の各委員退席したそうであります。私は止むを得ざる用件のためにちよつと席を外しておつたその間に、野党退席したあと與党側並びにこれと同調する方々決議をして、日曜日委員会を開くということを敢行されたそうでありまして、これに基きまして昨日委員会の招集があつたようでありまするが、今日まで我々予算委員会におきましては、今私が重ねて申上げまする通り、極めて円満議事進行を図つて行こうという建前をとつておるに拘わらず、委員長が突如として一昨日におきまする行為というものは、我々の予算委員会におきまする各委員委員長に対しまする好意というものを無視し、而も国会法を蹂躪して、多数決の多数を頼んで、丁度衆議院におきまする場合と同じよう工合に、委員会のこれらの多数を頼んでこれを強行したということは、誠に我々といたしましても重大なる考えの転換を余儀なくされるということは明白であります。かよう工合委員長のとられた態度というものは、参議院が最も愼重審議をして大いに熱意を以てやろうといつたものに対して、政府各位出席の極めて不熱心な態度、又これと並行すべき不可分地方関係税法法律案等が出ないというようなことまでに対しましても、政府の御意見を信頼して今日まで円満にして来たものを全く破壞して来たことだと私は思うのであります。而も昨日の委員会と称するものにつきましては、我が党の小林君が知らずして出席したときに、すでに定員は足らない、国会法を無視して委員長と名付けて議事進行されておつたことに対して異議を申したそうでありまして、その後懇談会に移したということを今朝聞きましたが、かよう方法をやられるということはどういうつもりでやられたのでありまするか。今日まで委員長がとられた態度につきましては、相当我我といたしましては熱意好意も持つて来ましたに対しまして、かような行動につきましては我々といたしましても重大なる意見を有する段階に立至つたわけであります。かようなことにつきましての委員長説明を承りたいことが一点と、更に昨日の夕刊におきましても、今朝の新聞におきましても、参議院予算を今月中に上げなかつたならば、いろいろの支拂が不能な場合に、それは参議院責任だということを言われておる。これは恐らく政府関係方面から出たことに違いないことは、各新聞の論調が一致いたしておるから、事実はこれ又明白であろうと思うのであります。先程来私が申上げました通り参議院における予算審議につきましてはかよう事態で、極めて同調的な態勢をとつて来たに拘わりませず、かよう参議院を侮辱し、又参議院予算委員会を軽視したのに、その責任は挙げて参議院にあるというような重大な問題を発表されるというようなことは、仮に発表せなくてもそういう意見を吐露されるということは由々しき事態でありまして、私はこの事態に対しまして総理大臣及び増田長官の釈明を伺いたいわけであります。(「必要なし」と呼ぶ者あり)かような次第でありまするので、本日の委員会に入る前にこれらの事態を明白にして、筋の通つたよう方法委員長といたしましては立てて頂きたいということにつきまして、私は一言発言いたしたいと思います。
  4. 山田佐一

    委員長山田佐一君) お答えいたします。岩木君の御名説と御議論を謹んで拜聽いたしました。第一に一昨日の理事会の模様でありまするが、別にこれを押切つてやろうとかどうとかという問題でなしに、今までの審議の状況が、いわゆる各党の理事諸君の御質問及び御演説で殆んどとられてしまつてつて一般の方の質問がそのまま残つておる、特に緑風会方々は非常に御熱心に日曜でも審議をやらして頂きたい、御都合の悪い方は御出席がなくてもいいんだから、質問のしたい人だけが政府から出席して貰つて質問いたしたいということを、特に懇切に御希望なされましたのであります。私委員長といたしましてその御趣旨の方が本当だと存じまして、(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり)そのときに理事会においては結論が出ませんので、理事会で数で争うというようなことはよくないから本当本則委員会においてこれを問うべきものだという結論に立至つたのであります。そういたしまして直ちに本委員会において決を採ろうという理事会の別れでありましたけれども、それは余りにも折角今まで円満に来ておつたものを多数決によつて決するというようなことは面白くないから、一応期日も切迫しておる際でありまするから審議を進めて、その日の審議終つた後に御相談をいたしましよう。その意味におきまして、私は速記を止めて、そうして御出席方々に御相談をいたしました。(「違いますよ」と呼ぶ者あり)或いは岩木君その外の方は御都合があられてその間に御退席になりましたけれども、御出席委員の大多数が残つておりまして、日曜も開催をするということは承諾の上にいたしました。(「十三人ですよ、多数ではないですよ」と呼ぶ者あり)本則の上においては委員長委員長で招集して私は決して差支ないと思つておりました。(「ひやひや、その通り」と呼ぶ者あり)又先刻與党諸君とか、野党諸君と仰せられまするが、私は参議院の本質といたしまして、與党野党と争わず、特に緑風会の方は中立でありまして、純理に立つておられます。緑風会の方は與党とは申しておられません。ところがこれを強いて與党といいますれば自由党だけが與党かと思います。緑風会の人は決して與党ということを声明しておられんと思います。成るべく参議院参議院の特質に感じまして、どうか與党野党という争いを止めまして、円満国家国民のために審議して頂きたいというのが私の真意であります。又先般の御決議に対しましても、一応御説の通り地方税法或いは地方財政平衡交付金の未提出ということは甚だ遺憾であります。又これは変則とは思いまするが、そのときの決議財政予算審議に一応支障がなき程度の地方税法内容につき本多国務相より発表がありましたに徴し、期間も切迫の折柄予算審議を進めるために、変則ながら一応これを了承の上予算案審議に入りたいと思いますということが満場一致を以て決議せられております。決して私は委員長專横でやつたということを思つておりません。不幸にしてあなたの御同調を得なかつたということを甚だ遺憾でありまするが、私は誠心誠意円満議事進行を願つておる次第であります。その外の政策に対しましては、ここに本日本多国務相もおられますから、本多国務相から弁明があられることだと思います。
  5. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 委員長円満議事進行いたしたいということを終始一貫言われておるのであります。それに対して私達も同調し、敬意拂つております。ところが一昨日の理事会におきましては、特に約束地方財政平衡交付金が出ない、而も総理大臣におきましても、当初から何回も出席を要請いたしておるのに、私が先程来申したようなこと等から見て、而もその日の朝刊に、前日三越へ行かれた、その前日の午後というものは総理大臣出席を要求した場合に、止むを得ざる公務のお差支があるということを委員長が言われたのに三越へ行かれた、こういうよう事態等から見て、甚だ遺憾であるという全部の空気であります。これはひとり今委員長與党野党という言葉はいけないと言われましたが、それは仮にそうであるといたしましても、殆んどその場合におきましても、全員がこれでは余り無理も言えないという空気によつて理事会はそれでは一応閉じて、午後の委員会が済んでから後にやろうということになられて、極めて円満態勢委員長としてとられたと私は承知いたしております。ところが最終の委員会が済んだならば又重ねて理事会を開かなければならん経緯のものであります。で特に日曜日というよう異例審議をする、異例方法を採るという場合におきましては当然理事会というものを開かなければならんけれども、そのときの情勢に御都合のいい判断で決を採つたというようなことは如何ようにみましても私は委員長が日頃言つておるお言葉と、只今述べられたお言葉とすべて相背馳しておる、相反しておると、かように私は思うのであります。その委員長のとられたる態度につきましては極めて私は遺憾だと思うわけであります。更に地方財政平衡交付金におきましては、今週中に出るという増田官房長官の言明であります。地方税法に関しまする法律案本多国務大臣から、内容はこうであるということを了承いたしまして審議に入つたことは、今委員長の御指摘の通りでございますが、平衡交付金に関しまする法律案政府約束の、いわゆる一昨日には出ておらないのであります。併しながらこういうことに対して委員長取扱方は若しこれが出ないということになるならば、予算審議については重大な協議が改めて行われなければならんということは百も御承知の筈であります。委員長は。それに対しまして委員長のお考えは如何でありますか。(「答弁の用なし」と呼ぶ者あり)
  6. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 答弁申上げます。理事会におきまして、総理三越へ行かれたということに対しては、非常にその際の理事会空気は險悪でありました。ところが後で承つて見まするというと、テレビジヨンの試写で、これに対してやはり招待を受けられてお孫さんがたまたま別の自動車で行かれたがそこで一緒になつて、而も一緒小澤郵政大臣も共に行かれておりまして、そこに決して半日も何時間という時間もおつたのではなしに、十分か二十分おつただけである。その意味におきまして私は小澤郵政大臣にもここで弁明を願いまして、そうして皆様の御了承を得たいとして小澤郵政大臣もそこに控えておるのであります。ところが同調なさらん方は御退席になりまして、そうしに小澤郵政大臣弁明をしようといたしましたら委員諸公の中で必要なし必要なしというお説が出まして、小澤郵政大臣はその弁明をすることを差控えました。而うして日曜日に開催するということは残つておられました委員満場一致賛成をせられましたのでいたしましたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は決して專横と思つておりません。又先般の岩木君のおつしやる委員終了後に理事会を開くということはこれはどちらの違いでありますか知らんが、私は理事会を開くという意味でなしに、委員会において決することを質問終了後に委員会に諮ろうというのでありまして、ここに悲しいかな岩木君と私との意見の聞きようの相違があつたのだと思います。私は理事会を開くということを約束しながら、理事会を開かなかつた意味ではないのであります。委員会に諮るということを本村君の質問の後に諮ろうといたしたのであります。その外に財政平衡交付金の出る出んというのは、私の責任でないのでありまするから、本多国務大臣から答弁をして頂きます。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 私はどうしてもこの問題は非常に時日が切迫して来ると共に今まで参議院でも例があつたのでありますが、今後の議事進行はつきり円満にするためにここを確かめて置きたいが、重要だと思うので二、三点今の岩木君の質問に附加えたいと思うのであります。委員長はあのときの、一昨日の理事会はつきりこれはあのとき緑風会の堀越君からの申入があつた、つまりこうなつたんでは意見が対立しておるんだから飽くまでもこれを国民に、この責任を明らかにするために委員会に持込んで、そうして委員会で黒白を明らかにして、そこで採決をしようじやないかということを御了解になつて、そうしてその措置をとられたと思う。ところがその日になつてどういうことをされたか、我々ここに臨んでおりますると、いきなり速記を止めて、それでは懇談会に入ります、こういうような話でありました。で、私達は話が違う。委員長の話が、その点でまるで違うじやありませんか。我々はこういう重大な問題を決定するのであるから飽くまでもこれは速記録に止めてこの責任はつきりすべきである。こういう観点から申しましたのに、飽くまでもこれは懇談会でやるということを強行されようといたしましたので、私達は余儀なく理事会約束し違うからと言つて退場したのであります。然るにそのあと残つた三十名の諸君と共にそういう明日、日曜にやるということを決定された。これは第一どのような形で決定されたのでありますか、これを第一にお聞きしたい。私達は定足数の問題がありましたが、これは両派了解の下に問題にしないという場合においてやつて来た。併し私達が退場したときにおいてはすでにもう両派のそれを機会として一つ話合が破れておる。従つて定足数は重大な問題になつて来るのでありますから、定足を充足して二十二人なければこれは当然決められないに拘わらず十三人を以て委員長が日曜強行するということをお決めになつた。これが第一不当であつたということを私は申上げる。それから昨日、その結果十五六人の人が出てそのよう委員会をやつておる(「不当ではない」と呼ぶ者あり)どうして不当でないのですか。それをお聞きしたい。国会法に対してこういうようなことはあり得ない、そうでしよう。そこでその点について確かめたいのが一点であります。  それからお聞きしたいのは政府態度でありますが、この政府態度さつき岩木君からも発言があつたのでありますが、これは丁度この前の食確法のときにもそうである。最後の段階になると審議を遅らしておるのは参議院であるということを吉田総理が放言された。これは重大なる問題であり、あの食確法審議の際にこの問題が究明されたのである。これと同じようなことを徐々に政府は出して来ている。一体サボつておるのは誰であるのか。地方税法法案を配付の約束にも拘わらず三回遅らした。そうして我々が要求してから二週間後に出しているじやないか。それから吉田総理のごときは出席要求を三回も四回もやつておる。一昨日のごときは私の質問中に無断退席されて、大磯に帰られておるという事実がある。一国の総理であるからというなにもあるでしようけれども、我々と雖もそういうようなやり方を政府がやつてつて、不熱心な態度をしてここまで追詰めて、衆議院においては五十日の審議期間があつたの参議院は、本格的な審議はまだ五六日しかやつておらない。そうして今まで迫つたこういう段階において追込まれる。そういうように段々追込んで否応なしに参議院にだけ責任を転嫁してこのよう放送をやつてつて行こうという態度に対しては、(「何が放送をやつている」と呼ぶ者あり)これははつきりした放送じやないけれども新聞を通じこの放送をやつている。放送というのは必ずしもラジオじやない。そういうよう態度に対して、私は政府責任はどうなのか。果して政府はそう考えておるのであるかどうか。これは重大な問題であるから、これは岩木君と同じようにお聞きしたい。もう一つラジオのしばしばの報道を聞きますと、委員長はすでに緑風会諸君話合がついて、そうして今日で審議は打切りとして、明日、明後日は分料会にこれを追込んで、そうしてその次に採決をする、そうして今月中に出すということを決定されたということが、しばしばラジオに報道されたのであります。今朝のニユースでも昨夕のニユースでもそうです。私はこのことは重大だと思う。委員長はそのような一党一派に偏した態度を以てこれを運営されようとするのか。このような数々の無理を以てお進めになれば、果して今後の予算委員会審議が円滑に行くことを期し得るとお考えであるのか、この点について承わりたい。恐らく時日が切迫しているから……今まで参議院の例を見ると、非常に急迫して来ると毎年不祥の事件が今まで起つた例もあるのであります。我が予算委員会はこれを繰返したくない。従つて委員長運営については十分民主的に公平であることを私はここで再確認頂いて絶対そのような不合理なこと、国会法を無視したようなことはしないということをはつきり御言明頂かない限りはこれは本委員会を進めることはできないのじやないか、こういうふうに私は確信いたします。委員長にその点をお伺いします。
  8. 木下源吾

    木下源吾君 附加えて私から申上げます。同じ関連しておるから。今いろいろやつておることは、手続上理事会がどうだとか、委員会定足数が足らんと言つておりましたが、この参議院では、根本的に平衡交付金法案が出なければやらない、これは地方財政は直接でありませんけれども、それが根本なんです。なぜそう言うかというと、御承知通りこれは国民所得関係、総所得関係するもので、従つてこの予算審議では根柢をなすものである。これがなければ、丁度あなたがおつしやるように、参議院衆議院違つて與党野党もない、皆良心に従つて、愼重にやるという建前を通すわけに行かないのですよ。そこで私共がこの法案提出されなければ、予算審議をやつてもですね。これはしようがないものじやないか。こういうようなわけでいつ出るか、一体総理が極めて責任ある一つ御回答を、御返事を承つてから審議おやろうじやないかということで、総理がその後出て参りまして、それではいつ幾日に出すということで、了解で、ぽつぽつやり出した。ところが、その総理提出するという期日には出て来ないのですな。こういうことが根本をなしておるということを、委員長がよくお分りだろうと思うのであります。そこで私はお聞きしたいのはですね、このよう参議院の一切の意思について、この考えについて、委員長が御努力をなさつたのかどうか。御努力をなさつたとすればこの法案がいつ出されるかということも、予めお分りだと思うのであります。この点をお聞きしたい。よく、ここでは與党野党もないと言つておられますが、それは我々もあなたのおつしやることには賛成です。でありますが、委員それぞれ主張を持つておる。この予算案で、小さいところをほじくる問題でない。私共はベースを改訂せにやならないし、農村恐慌を如何にしてこれを克服するか、社会保障制度を一体どうして確立するか、こういう重大な目標を持つておるのであります。これらに関係のない諸君はです、例えば債務償還で潤おう諸君だとか、或いはその他の諸君はこれは関係ありますまい。それは今のやつをいじくつておる諸君予算をいじくつたらいいでありましようが、私共には基本的にそういう問題を持つておるので、これは主張を持つておるのであつて従つて予算案審議する上においては、国民所得に影響ある法案が出ないうちにこれは審議ができないというのは、参議院である故にこそこれを主張するものである。そうしてそのことについては先程もお話したように、委員長においては、この根本の問題に対してその後どういうよう措置を、政府との間に御交渉なさつておるか、その点を承わりたいと思います。
  9. 山田佐一

    委員長山田佐一君) お答えいたします。木下君の御説の通り、私全く趣旨は同一でありまして、本予算案は非常に国民生活の上に重大なる関係を持つております。債務償還と言い、税制改革と言い、国民生活の上において重大なる関係にありますのに徴しまして、日曜にも拘わらず審議を進めるということは、私は木下君の御説を本当に鵜呑みにして、委員諸公のとられた措置だと存じます。而して地方税法、及び平衡交付金の出ないということは甚だ遺憾でありまするので、これは皆さんも御承知通り、何遍も、政府に督促をいたしております。又、最高責任者たる総理大臣からの弁明もあるのであります。本日の……(「約束の日に出ないのはどうだ」と呼ぶ者あり。)本日も出ないから私は大臣室に行きまして、官房長官へも、本多国務相へも言いました。なぜ出ないか。まあ出ない問題は本多国務相から弁明があると思います。私の責任ではないのでありますから。私は委員長はここに出られたものを御審議を願うというのが私の責任だと思いますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)それだけは行きまして、そうしてここに本多国務相もおつて先刻から弁明をいたしたいというのですが、まだ発言を皆さんが止められておりますので、できませんので、無論この問題に対しては本多国務相から答弁があると思います。又岩間君の先刻の問題でありまするが、どうも事実を、私は人間が正直でありますから、出た通りに申上げまするが、岩間君が幾らかその辺を曲解して言うて見えると、私は思うのでありまするが、(「間違つておるよ」と呼ぶ者あり)私はあなたの野党連合だとして、控室に寄つておりまするときに、私が行きまして、直ちにここで本委員会採決をせずに、木村さんの一応質問を承つて、それから後にいたしましようと言うたので、それから後に理事会を開いて決議をいたしましようとは、私は申しませなんだのであります。それでここで速記を止めて皆さんの御協議を諮ろうといたしましたが、悲しいかな、あなた方が御退席になつたのでありまして、決してあなた方を除外して私が話をしようとしたわけではありません。又内村君が出るときには、それでは速記をつけたら、よかろうというお話でありましたから、それでは速記をつけましよう速記をつけてやりましようと言つたときには、もうすでにあなた方は席を立つてつて、お帰りになりましたのでありまして、私は速記を止めたので……(「責任を放棄して逃げたのじやないか」と呼ぶ者あり)それですから私はそこで弁明いたしました。あなた方は審議権を放棄するものと認めます、と申しておるのであります。私は決してその意味ではないと思います。併しこの上はあなたと私とここで論議をいたしましても、大事な国政審議の上において、私は大変いかんと思いまするからこの辺で打切りまして、私は審議に入りたいと思います。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 委員長、私は一点だけ今のお話の中でおかしい。それは最初にとにかく飽くまで委員会でやる、ところがそれを懇談会にされたから私達は退席した。そのとき私はいつでも速記を開くならば戻つて来ますとはつきり言明して行つた。それはここで聞いておられる諸君もあつた。その問題はここでやることを、いつまでやつたつてようがない、その点ははつきりされた。私お聞きしたいのは、今後委員長はかような一体、違法だとはつきり思いますが、違法的なことを強引におやりになる意思があるかどうか。もう一つは昨日の委員会は一体正式にこれは認められるものであるかどうか、認められないとすればどのような処置をとられるか。この点です、この点が明らかでありません。
  11. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 私は決して不合法は強行しようとは思つておりません。ですから定員数が足りないので懇談会にいたしました。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 一昨日は。
  13. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 動議に従つて行きます。
  14. 岩間正男

    岩間正男君 一昨日は定員もない。
  15. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 定員も足りませんから、懇談会にいたしました。    〔「進行」と呼ぶ者あり〕
  16. 岩間正男

    岩間正男君 昨日の日曜はどうされたか。
  17. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 昨日の日曜は委員会ではありません。懇談会にいたしました。(「結構じやないか」と呼ぶ者あり)
  18. 岩間正男

    岩間正男君 途中からじやないのですか。
  19. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 初めから遡つて懇談会にいたしております。
  20. 岩間正男

    岩間正男君 速記も何もとらない……。
  21. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 速記は自由であります。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 それは別に我々の日程の中には全然ないわけですな。
  23. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 打合会になつておりますよ。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 それから私は、もつとお聽きしておるのは、これは政府態度と、尚もう一つラジオ放送の件でありますが、これはどうです。(「問題ない」呼ぶ者あり)
  25. 山田佐一

    委員長山田佐一君) ラジオ放送は、私存じません。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 そういう事実があるかないか。自由党と緑風会の方でそういうことができておるということを放送されておる。これは重大な問題だ。
  27. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 私は本月中に予算を成立せしめるということは本則だと思つております。今でも私はさようつております。四月から実施する予算が、本月中に上げるということが本則だと思つております。或いは議事進行の上において、或いは延びることがあつても甚だ遺憾とは思いますが、本月中に上げるということが本則だから、本月中に上げたいと思つております。
  28. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今本月中に予算を上げることが本則である、これはお話の通りであります。これは財政法にも書いてあります。今までの政府も、本則従つて予算を出そうとしておつたのですけれども、今までは一遍も本則であつたことがないのです、これまでは遺憾ながら。ですからそれは本則であつて必ずしもそこで上げなければならないというものではない。それは今までの慣例です。従つて我々も成るべく今月中に上げるよう努力いたしたいけれども、併しながら十分予算審議したという結果に基いてやるのであつて、従いまして今後の審議の運用につきましては、実はまだ平衡交付金法律案が出ておりませんし、地方税関係、これは遺憾ながら衆議院においてみつちりやらなかつたものですから、特に参議院においてはこの点についてみつちり一つ本多国務相に御出席を願いまして御質疑をやつて頂かないと、これは非常に不十分な審議になると思うのです。ですから今後の審議をお進めになる上において、特に地方税法についての審議は十分みつちりやつて頂きたい。こういうことを希望したいのです。
  29. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 木村君の仰せ御尤も、全部了承いたしました。審議を済ませんで審議終了するということは無論ありません。どうぞ御審議を願いまして、願わくば今月中に上げて頂きたい。審議終了いたしませんで、或いは審議の事情で延びるということは、これは諸君の、委員会委員諸君の権能であります。委員長一人において終了させてしまうというような意思は決して持つておりません。委員会多数決によつてやるのであります。私はその意味において木村君の御意見賛成であります。(「進行」と呼ぶ者あり)
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 一昨日からの問題がかように紛糾いたしましたことは非常に遺憾なことだと思う。このままで参りますというと、やはりまだ地方平衡交付金の問題も出ておりません。この問題が解決されんために、更にいろいろな議事進行の問題について問題が起つて来るだろう。これは非常に遺憾なことだ。で、そのために理事会が設けられて、理事会議事円満進行をやるためにあるのでありますから、一昨日から理事会が機能を停止しておるような有様で、本日も当然朝開かれて、一昨日並びに昨日の問題について理事会において円満に解決して進めらるべきであつたろうと思う。ところがそれが進められない結果、今日このような状態になつた。このまま続けて行きますならば、更にこういう問題が次から次へ起つて来るだろう。これではあなたが考えられておるよう予算審議進行も覚束ないと思う。又與党諸君が意図せられておるところもこれでは挫折することになる。従つてここで理事会の機能をもう一遍復活させることが必要なのだ。従つてここで私は一応休憩に入られまして、理事会を開いて、理事会において今後の議事の進め方を円満に納得の行けるように図つて行くという方式をとつて頂きたいと思う。我々は單に議事進行の問題でここで徒らに論議を繰返して議事を止めようとするものではない。併しながらそれを進めて行くためには、ちやんとやはり進めて行けるよう話合をつけて頂くことが必要なんであります。従つてここで一応この審議を休憩されて、理事会を開催されて、次に円満に進むよう方法を講じて頂きたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)それを提案いたします。
  31. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 了承いたしました。決して理事会の機能を止めておるわけではないのでありまするから、円満にやるということは至極私も賛成であります。理事会を開いて協議して頂きます。もうこの際、十二時半ですから総理も出て見えられますから、この辺で休憩いたしたいと思いますが……。(「賛成」「異議なし」「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  32. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 今委員長は岡田君の御提案の理事会を開催して円満進行するということを協議しようという点に御同意いたしました。それは承知いたします。併しそれより以前に、理事会に入る前に、私は昨日及び本日の新聞記事におきまして、本月中に参議院予算審議を結了しなかつたならば、支出の面においての責任参議院にあるということを放言されておりますことについての政府の御意見を承わりたいことが一点と、それからもう一つは、先程私が申上げました通り、先週中に地方財政平衡交付金に関する法律案を出すと言明されておるのであります。おつたのであります。それが本日に至つてもまだ出ておりませんが、これの責任と、それからこれに関します政府当局のいわゆる弁明を承わりたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  33. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 本多国務大臣。(「答弁は後でもいいじやないか」と呼ぶ者あり)今聽きましよう。ついでですから……。
  34. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 第一段の、本月中に審議が終らなければ参議院責任伝々ということについては、さようなことを政府として発表したということは存じません。又政府としてさようなことを話合つたこともございませんので、これにはお答えいたしかねます。平衡交付金法律案が遅れております事情は、これは、誠に御審議の上に申訳ないと存じております。私がこの平衡交付金法につきまして、関係方面との折衡に当つておるのでございまして、前回申上げましたときから今日まで催促はいたしておりますが、向うからの意見の発表はないのでありまして、察しまするに、最高責任者の最後的御判断にかかつておるのではないかと思われる状況でございます。如何せん、承認が得られない間は提案ができないのでございますが、これは地方財政に密接な関係の法律であり、議会の期間も御承知のことであろうと存じますので、今日にももう承認が頂けるのではないかという期待を持つておるような次第でございます。成るべく早く提案したいという希望的な立場から見込をお話し申上げておつたのでありますが、見込通りに参らないことはこういう事情でありますから、どうか御了承を願いたいと思います。この平衡交付金法のこの制度は、予算の上において御決定願いました平衡交付金の金額を、この平衡交付金法の制度によりまして交付する標準額を定め、その標準額に按分して交付するのでありまして、平衡交付金法に基いて平衡交付金の金額が決定されるというのではないのでございまして、皆様方に御決定額います平衡交付金の金額、その金額を交付標準額に按分するという建前になつておるのでございまするから、政府といたしましてはやはり平衡交付金法の承認が若し非常に遅れたり、審議未了になつた場合のことも考えなければならないのでありますが、そうした場合にはどうして対処するかと申しますと、御決定願いまするその予算をやはりこの精神で政府から交付する。御決定願つた金額を交付する。その措置で行くより外はないものであると考えております。併しこれは万一の話でありまして、現段階におきましては今日にもよろしいという御返事があるかということを期待いたしておる次第であります。(「了解」「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  35. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それでは一時半まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩   —————————————    午後二時二十九分開会
  36. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 御着席を願います。  これより会議を開きます。通告順によつて発言を許可いたします。帆足計君。
  37. 帆足計

    ○帆足計君 総理大臣に対しまして御質問申上げたいと思います。  先般の両院の外交委員会並びに予算委員会等の席におきまして、総理は将来講和会議に臨むべき日本の態勢につきましていろいろ御答弁がありました。なかんずくその中におきまして、将来講和会議を前にいたしまして日本が有利且つ公正な立場に立ちまするためには何よりも先ず日本の民主化というものが重要である。日本の筋道の通つた、世界から理解され、そうして信頼される国になるということが極めて重要であるということを指摘されました。又再軍備の意思はあるかどうかということにつきまして、私共が新聞その他を通じて伺つておりますことに関する限りにおきましては無軍備で通したい。憲法の精神とその趣旨を飽くまで守つて参り、そうして今再軍備などと考えることは却つて日本のために利益になることではないという趣旨の明確な御答弁もありました。私はこの二つの点につきましては深く敬意を表する次第でございます。ところがその他、内外の情勢は御承知ような複雑した状況でございまするので、国民は平和を求めつつも尚かれこれと思い迷いまして、国際情勢に対しまして非常に憂慮いたしております。この困難な国際情勢の中で平和を希求する日本が、今後どのように舟を漕いで参つたらいいかということにつきまして、いろいろな仮定に基きまして国民が心配しておりますことも総理の御存じの通りでございます。そもそも人の論理というものは既成の経験と事実とに立脚し、そこから論理を演繹又は帰納して、そうして将来への予想を立て、道を誤らないようにするということが理性ある人間にとつて必要なことでありますけれども、総理はややもいたしますと、困難な問題につきましては、それは仮定の問題であるからどうも答えにくいというような御答弁が多かつたように記憶いたしておりまするが、勿論只今お答えするだけの條件の備わつていないものや、又お答えしにくいような問題も多々あろうと存じますけれども、国民といたしましては、今日本がどのような目標でこの複雑な情勢の中に処して行けばいいかということにつきましては真劍に考えているわけでありまするから、でき得る限り懇切、御親切なる御答弁を頂きまして、その賛否は国民の判断に委せるといたしましても、現在責任のある政府がどのようにそれを考えているかということにつきましては、成るべく具体的に懇切なお答えを承わりたいと我々は希望している次第でございます。  そこで将来講和会議に臨む日本といたしまして、一番国民の心配しておりますことは、武力なき国がどうしてその独立と自由を守り、且つ安全保障を守り得るかということであろうと思います。この問題につきましては私は極めて重要な問題が一つあると存じます。個人の安全につきましてもそうでありますけれども、国家の安全につきましても、安全という言葉は共通いたしておりますけれども、どのような形で安全を守つて行くかということにつきましては、歴史の各段階によつてつております。曾て日本刀を持つて我々が身を守り、我が国を守つた時代には、御承知ように封建時代というものがございました、この時代におきましては自分の藩を守り、自分の郷土を守ることはできましたけれども、同時に国の中が幾つかに分れておりましたため、民族的国家としての統一というものは非常に跪弱でございました。やがて蒸気機関車が通り、レールが通り、民族が統一される。その時代になりますと、小銃、機関銃を以て祖国を守り、そうして国民の平和と安定を守り、又忠君愛国の思想の下に身を鴻毛の軽きに比してアジア的家族主義の利己主義を押え、社会公共のためには命も捨てる、このような形において祖国を守つた時代もございます。やがて航空機、戰車等が大量生産されるようになりますと、ただ忠君愛国だけで自分の国の幸福は真劍に追求するけれども、他国の利害を顧みる遑がない。このような民族はやがて時代に遅れ、そうして外交において国際情勢に処する上において大きな過ちを侵し、このような原因が一つにまとまりまして、亡国の惨状に導かれましたことも国民周知の通りであります。やがて原子爆彈の時代になつて参ります。この時代になりますと、総理も御承知ように一発の原子爆彈は優に一つの都市を一瞬にして灰燼に帰せしめます。そこにはもはや戰勝の栄光も、夢も詩も歌もありません。一瞬の原子爆彈の展開するものはただ虚無と地獄、こういう時代になつて参りました。この時代における国の安全保障というものはそもそも如何なるものであろうかということを私は先ず考えて見ねばならないのではなかろうかと思うのであります。  従いまして安全保障の問題を過去の小銃、機関銃、又は戰車、航空機の立場から論議して見たところでそれは無益ではなかろうかと存じます。日本の軍隊は解体したと言われておりますけれども、それにしましても私は日本の軍隊は必ずしも解散したのではないものと考えております。若しアメリカなりソ連なりが小銃、機関銃、戰車の大量生産を以て我々に向つて参りましたならば、日本の国も又これに対処し、そして更に愚かに数百万の命がここに損われるであろうということが予想されます。現に最近アメリカにおいて発表されました文書の中におきましても、本土決戰ともなれば恐らく一千万の死傷者が出ることを予想していたということを或る戰略家が伝えております。然るに航空機の大量生産が太平洋を一跨ぎに縮め、戰車の大量生産が満洲の荒野を坦々たるアスフアルトの道路にし、いわゆる日本の特殊性なるものはそれにより一瞬にしてなくなりました。それ故に二発の原始爆彈の落ちましたことによりまして、全く高次元的な戰略的な変化のために日本の軍部は、退散したのではなくして一瞬にして蒸発してしまいました。私は八月十五日の白晝夢の日を思い起しますと、そこに考えねばならん一つの大きな問題があると思います。人類は数十万年に亘りましてその動物的前史がございます。今から十七万年前に人類は火を発見しました。かくてプロメシユースが人類に火をもたらしたことによりまして、私共は文化と理性の一端にかじり付くことができました。更にそれに二十万年近くの努力の結果遂に物質の最微粒子を生み出し、その神祕の扉を開き、一ポンドの精錬されたウラニユームの原料から三千万トンの石炭を爆発せしめる威力を持つ武器を作るに至りました。今日人類は正に原子科学の日を前に迎えようとしております。日本が十年前には想像もつかない国になり、今や全く一人の兵隊も持つていない国になりましたこの事実、そうして十年前には恐らく想像もつかなかつたところの新らしい理念、即ち絶対的平和と文化によつて生きようと今決意をしているこの事実、この背後にあるものは、原子力を生み出し、そして原子爆彈に到達したということ、その原子爆彈の落し子として日本が生れたということ、これは極めて重要な問題であると思います。従いまして今後日本の進むべき進路を考え、世界に対処するところの根本方針を考え、又人類が如何なる段階に到達しておるかを考え、更に人類が火の発見以上の偉大なる変化に今世界史がぶつかつているということを考えますならば、私共国政を審議しますものとしましても、どうしても原子科学並びに原子爆彈についての正確な情報と知識がなければもはや政治を審議することができないのではないかと考える次第でございます。従いまして今後三年後のことを仮に考えて見ましても、三年後にはウラニユームの原子爆彈が世界の二つの極に千発以上も備えられることが考えられるでありましよう。そうして原子爆彈を動力とした原子ロケツトが両方に備えつけられますならば、もはや世界の安全保障はどういう形になるでありましようか。曾ての士官学校の軍部や、小銃、機関銃を基礎にしたところの戰略家は、国技館の相撲取と同じことになつてしもう。ただ世界は二人の愛らしいタイピストがおれば、その指が触れるときに世界の重要な都市は一瞬にして亡びてしもう。火の発見によつて人類は自然への叛逆として自殺ということを覚えました。覚えました。併し今人類は自殺し得る條件を得るに至りました。若し無謀なる政治家に人類の運命を委して置いたならば、地球はみずからを葬り去るような恐ろしい段階に到達いたします。このような観点に立つて考えますと、而も最近に至りまして、水素原子爆彈のことが頻々と新聞に伝えられております。而も水素原子爆彈としては、或る者はこれをウラニユーム爆彈の百倍と言い、或る者は十倍と言い、或る者は千倍というふうに申しておりますけれども、而もこれについて我々は何ら正確な情報を持つていない。そうして湯川博士はアメリカに渡り、原子核の祕密を解いた世界有数な学者としてノーベル賞の栄誉を担つているにも拘わらず、私共は殆んどホツテントツドと同様の盲目の状況に置かれておりまして、原子科学については何ら資料は持つていない。国会においても何ら報告もされておらない。こういうようなことで祖国の安全保障を論じていたところで、お相撲さんが集まつてみて、そうして世界のことをとやかく論議するのと同じような風景ではないかと私は思います。従いまして先ず第一に総理にお尋ねし、又お願いいたしたいことは、今後の日本の進路を決定しまするために、又直接原子科学と関係のある祖国の安全保障の問題について、私共が考え、又理解しまするために、又日本の新憲法を理解し、平和と中立の途が非常に、如何に重要であるかを理解するために、どうしても原子科学に対する最高の調査委員会を設けて頂いて、先ずこれらの專門委員会の報告を国会並びに国民は伺いたい。これを政府に要求いたしたい。その報告に基きまして、私共は祖国の安全についてそれはよく考えて見なければならん。そういうような專門的な知識の前提なくして、この問題を論議したところで私は到底無意味であるとまで考えております。併しながら今私共は原子科学を研究して、それを生産するとか、何とかいう問題では勿論ございません。せめて世界の進歩に対して正確なる認識と理解を持ちたいという趣旨において、而も湯川博士の同僚、その他先輩の方も多数おられる。日本は原子物理学におきましては世界有数の国でありますから、諸外国の資料を集めまして、それによつて極めて常識的、高度の常識的において、それを理解する能力はあるわけであります。不幸にして私共は眼を閉ざされておる。資料を持たず、国会議員でありながらこれに対してほんの常識的な知識しか持つておらない。ましてや一般国民は毎日の生活に追われて殆んど他を顧みる暇はないというような時代でありますから、どうか総理におきましては、原子爆彈に対する理解する、認識するための最高專門委員会を設けてその報告の結果を国会に報告して頂いて、全国民にこれを知らしめて頂きたいということを第一にお願いいたしたい。  第二にこれに関連いたしまして、原子科学の時代に、果して一国の安全保障というものがあるとお考えになつておられるかどうか、これを第二にお尋ねしたい。  第三には、私は日本が永世中立の立場を取り、無軍備の立場を取り、永世中立と申しますのは、私の申すのは、事実的中立という意味でございます。外交技術的な意味ではございません。日本が平和と文化の道を歩こうとすること自体が、私は原子爆彈のあのうろこ雲のできた、その真空の中に、祖国は初めて呱々の、生誕の声を上げた、このことから来た必然的な現象であつて、やがて世界が絶対的平和を追求せねばならん、その前駆としての使命をその瞬間に負わされたものである。かよう考えておりますが、その平和につきまして総理は如何なる所見を持つておられるか、先ずこの三つの問題につきまして総理の御所見を伺いたいと思います。
  38. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。先ず私の答弁が、常に仮定の問題については答えない、不親切であるという御意見ようでありますが、これは、私はしばしば申すように、今日日本の立場として、講和條約を前にしている日本の立場として、責任者である私が仮定の問題について私見をいろいろに述べるということは、害はあつても利益はない。のみならず、その結果いろいろ誤解を與える。例えば日本が再び再軍備をしようというよう考えを持つておるとか、とかく一言半句を捉えていろいろ問題にし易い今日でありますから、私が当局者としてお答えをする場合に、用語については相当愼重にいたさなければならんのであつて従つて私の答えが甚だ不親切とお感じになるかも知れませんが、これは私の立場として、今日止むを得ないところであります。又更に、御承知のごとく、今日は海外の情報、或いは国際の関係は勿論のことでありますが、又原子科学等についての情報は、我が国としては一切持つことのできない事態にあるのであつて、單に新聞雑誌によつてこれを承知する、或いは又旅客その他の人からして承知する以外に方法はないのであります。而してその承知したところの報道なり情報なりというものが、果して確かであるかどうかということを確かめる途もないのであります。故に不確かな資料に基いてとやこや外務大臣として議論をさせるということは、害があつても利益がないと考えますから、御不満でありましようが、私の答弁は御満足を得るようなことが言えない立場にあることを御了承を願いたいと思います。  又原子科学についての調査委員会を進めて、国民にこれに対しての常識を養うようにということは御尤もであります。併しながらこれも原子爆彈、或いは原子科学を研究するということによつて、日本が再軍備を考えておるというような疑いを生ずるということは、日本の今日の立場からよろしくないと私は考えますが、併しながらこの原子科学等の調査については、專門の学者は相当研究いたしておることでありましようし、又学者の間に、それぞれ相当な知識のみならず、これが発表をいたすことによつて、文化は進めても、学術の振興とはなつても、それが徒らに疑惑を生ずる、日本が再軍備等の疑惑を生ずるというようなことのない範囲において、お話のようなことをいたすことも適当な処置であろうと思いますが、この点については尚考えてお答えをいたします。  それから平和の問題でありますが、これは私が絶えず申すように、日本が戰争放棄に徹する、軍備放棄に徹する、日本という国は平和を愛する国であり、その平和に徹する国であるということが世界から了解せられるということが先ず第一であろうと思います。曾て御承知のごとくに、ドイツのごときはソヴイエトに軍隊を置いた、或いは飛行機の研究所を置いた、再軍備の用意をいたしておる。同じように、日本が又、中共等において多少再軍備の用意をいたしておるとか、或いは現に日本の曾ての軍人を途つている、いろいろな噂があります。何もいたしておらないにも拘わらずそういう噂があるのでありまして、こういうことが将来若しも疑惑を持たせるということは、それ自身が日本の将来に対して、講和條約に面白からざる影響を招来するであろうと思いまして、この点については特に私は注意いたしておるのであります。とにかく日本が平和に徹する、日本は平和を愛好する国であつて、徒らに世界の平和を脅やかさんとする国ではないのであるという確信をいたすためには、国を挙げて平和に徹底するという決意をすることが必要であり、その決意が自然現われて連合国その他が確信するに至るというところに持つて行くことが第一であろうと思います。これが即ち日本の安全保障となるのであつて、多少の疑惑なり或いは日本の国民の意思について平和を愛せざる意思があるがごとく思われるということは、日本の安全を害するものであり、世界をして真に日本は平和を愛する国であるということを確信せしむるというふうにいたさなければならんと思います。そのためには日本が世界の平和増進のために先立つて、何ものを措いても平和運動の魁になつて、そうして世界の平和を増進するという決意をし、又行動を起すということはできますまいが、国論をそういうふうに統一するということは、日本の安全を保障するゆえんと私は確信いたします。  それから今日においては御承知のごとくいろいろな噂があります。原子爆彈の問題もあります。又世界が二つに分れて云々というような話もあつて、如何にも平和が明日にも破壞せられ、或いは又戰争状態に入るかのごとき噂が始終新聞に出ますが、これはいつもあることであつて、大きな戰争の後で一時平和を脅やかすようないろいろな事態が生ずるということはいつの世においてもあります。殊に二大戰争をいたした今日において、世界の状態は甚だ不安定の状態にありますから、この間にいろいろな噂が生ずるでありましようが、私は常に申すように、大戰争を二つも起した今日において、再び平和を破り戰争状態に入るということは、人類の多くの欲せざるところであり、欲せざる事態であるにも拘わらず戰争の噂が生ずるのは、世の中が不安定な事態であるからであつて、直ちに戰争が明日にも起るということは私は想像するべからざるところであると思います。にも拘わらずその戰争が起るかのごとく国民考えてとやかく言うということは、それ自身が世界の安全を脅やかすことであり、又日本に対して誤解を生ずるゆえんであり、いわゆる日本の安全の保障にならんと思います。私は国民が戰争放棄に徹して、而も世界の平和を増進するその魁になる、その先鋒になるということを決心することが日本の安全を保障するゆえんであることを確信いたすのであります。お答えいたします。
  39. 帆足計

    ○帆足計君 只今の御答弁を承わりまして、まあ総理から原子科学についても啓蒙的な、そこは一考に値いする、研究は一考に値いするという御答弁でありましたので、その点は至急御研究願いたいと思います。  平和の問題につきましても総理は平和を、極力国民を平和によつて統一的に平和に協力するようにするという御方針、私はその御方針には満足でありますけれども、御承知ように平和の問題については二十年前に国際連盟ができましたときから勿論平和への叫びはありました。併しながら当時におきましては平和は望ましい、戰争は極力避けねばならん、併し戰争が始まればこれ又止むを得ない、人は利己的な動物であり、卑屈な気持を持つており、強暴な本能を持つておるからこれも亦止むを得ない。併しできるだけ平和を守らなければならんと、これでございます。只今それと同じことを私共が繰返しておるとして、そうしてそのよう意味で平和を追求するのでありましたならば私は不十分であると思います。原子科学の原子武器の時代に対処いたしますためには、もう平和が望ましい、極力戰争は避けねばならんというのではなく、人類は如何なる努力拂つても絶対に戰争をしてはならんという決意を国民全部に政府はこれを指導され啓蒙せねばならんのではないかと考えますが、それにつきまして御所見を伺いたのであります。  それから第二には日本の特殊な情勢から考えて見まして、日本の地勢的地位から更に具体的に考えて見まして、安全保障ということが私は極めて曖昧に理解されて、安全保障のために再軍備をせねばならんという議論はなかなか一部には潜在的に強いようでございます。これは如何なる常識論から起つておるかと申しますと、治安を維持するためには武力というものはどうしても必要であるという従来の常識から出発しております。併しこの問題は、私は第一に治安という問題を幾つかに分析して、強盗だとか殺人に対する国内治安、この問題でありますならば警察力を能率化すればこと足りるものと思います。  第二に思想不安に対する治安、この問題につきましては、合理的な政治を行なう、国民生活のうち最低限の生活を保障し、そして生活の安定を図ればおのずから解決付く問題でありまして、思想に対して武力的彈圧をするということは、最も私は拙なるものであり、間違つていると思います。  第三に政治不安につきましては、議会政治が本当に確立されて、そして如何なることも理性と投票によつて解決する。如何なる社会の変革も国民の意思と合理的手段によつて、合法的手段によつて改革されるという保障が、真に可能なように持つて行くようにすれば、それで解決することであつて、再軍備のごとき少しもそこから考える必要はない。  最後に海上の沿岸防備の問題もよく出されますが、これは海上保安を強化すればこと足りる。  然りとすれば、日本の安全保障についてよく考えられて、今再軍備の問題又は再軍備は全然否定しましても、特定の一国又は数国によつて国の安全を守つて貰おうとする考え方、この二つが残るわけでございます。私はその後者につきましては、日本は政治的には只今民主主義を学び、国民の大多数は民主主義の道を歩むことは私は希望しておると観察いたしております。併し経済的には、日本は御承知ようにアジアに属しておる。而も軍事的にはどのようなものであろうか。日本が若しカリフオルニヤやキユーバ島やカナダのような地位にありますれば、経済的にも軍事的にもアメリカの懐に入つて暫し休むこともできると思います。併し日本はアジアの断崖のその真下にある四つの島であるこの日本の地勢的地位から考えますると、一国又は数国の安全保障というものは原子科学の観点から申しましても、第一そういうことは不可能であつて、第二に軍事技術の観点から申しましても、日本の安全を武力によつて守ることは、私はそれは不可能である。不可能のことを可能であるかのごとく宣伝することは国民に対する侮辱も甚だしいことであり、又日本の安全保障というものを考えまする場合に、連合軍は日本に対して非常に懇篤な指導をして下さつておりますけれども、祖国を守る者はやはり国民より以外にないと私は思います。従つてアメリカ又は数国の安全保障ということと、日本の安全保障ということとははつきり区別して考えねばならん。日本の安全保障をすると称する国の安全保障と日本の安全保障とは概念が違うということを明確にせねばならん。然るに我々はややともすると、意思薄弱の国民となり、自分の祖国の安全というものを真劍に考えずに、外の方につい思いが走るということに私はなり勝ちになつておるのではないかと思います。祖国の安全に関する限りは、即ち日本の国土と我々の同胞の生命の安全に関する限り私は第一に考えねばならんことは、軍事技術的に考えて見て、日本は中立以外に絶対生きる道はない。大英帝国の軍艦に対して哀れなインドは手紡ぎの紡績車、乳を出す一匹の山羊がそれに歯向うて見ても何にもならんということから、ガンジーの偉大なる哲学が生れました。原子科学に対して私共一人の軍人も持たず、又持ちたくない。国として私は丁度あの年老いた、そして聰明なインドと同じような立場に置かれていると思います。私共が曾てレアリストとしてインドの無抵抗主義を笑つたことがありました。今無軍備の国になつて、裸になつて生き拔こうとして決意し、そうして世界の軍事技術の最尖端がすでに原子爆彈の段階に立つておるということに思いをいたしましたときに、私はこのガンジーの無抵抗主義、絶対平和主義というものは大いに学ぶべきものである。抽象的理想ではなくして非常な現実主義である。現にインドは、ガンジーの子供達は更にその道を歩もうといたしております。このような観点から考えますると、日本の安全をソ連なり又はアメリカなり、又は一国乃至数国の單一によつてつて貰おうとする観念では地勢的状況から申しましても、原子爆彈の現性能から申しましても、客観的技術的に全く不可能である。これは明白な私は事実であると思います。それをしも尚破つて單一の安全に縋ろうとすると日本の安全を保障すると称する国の安全を守るために日本は犠牲基地となり、原子爆彈一手引受所となり、二つの国が二度とか三度上つたり下つたりしますと、この四つの島は禿山になつてしまう。このようなきびしい状況に置かれておりますから、日本の新憲法がういういしい純真であつた時代、そうしてまだ原子爆彈の匂いが私共の耳朶に響いていた時代に生れたところのあの新憲法が私共の十分な審議の下にできたものでないにせよ、私はこれは神の啓示によるもの、そうして国民生活の立場において支える本当の枠なんであるからこれを守ることは今日においてはリアリズムである。曾て忠君愛国というものが、これ以上に、これ程安全な進むべき道はありません、現実主義である、リアリズムであるとされていた。教育勅語もこれは間違いのないものとされていた。今ではあちらこちらのものがやはり現実に適していない点が沢山あるために時代から葬り去られたであろうと思います。今日では科学の進歩がすでに我々の本能も常識も通り越してしまいまして、科学の方が遥かに理想的、抽象的なものを人類に要求しておるというように、私共の方が遅れてよたよたと理想の後からついて参る状況でありまして、私共が如何に理想主義であり過ぎても尚あり過ぎることはない。それ程現実主義である。従いましてこのよう段階から考えましても、地勢的特殊性から考えましても、私は絶対に日本が永世中立の自主的中立の道を歩む以外に日本の安全を保障する道はない。即ちスエーデンから印度に走り日本に繋がるところの永世中立の道を飽くまで歩く以外にこの国の安全や幸福を守る道はない。このようなことから結論といたしまして日本の安全につきまして戰略的な地勢から見ましたところの安全保障というものについて総理はどのようにお考えになつておられるか。それから先程申上げました通りに戰争は防がなければならん。平和は日本人というだけでなくして我々は如何なる努力拂つても戰争を二度としてはならん、絶対的平和の追求ということ以外にこの四つの島に残された道はないと考えますけれども、総理はこれに対してどのようにお考えになりましようか。
  40. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  御議論の前段は戰争防止に国を挙げて鬪うべきであるということと承知いたしますが、私は世界平和の増進の先駆けをなすべきである。国を挙げてなすべきである。これは恰かも楯の両面であつて、同じことを或いは他の半面からお話になつただけで、私の考え方とは根本において同一論と私は考えるのでありますから特にこれに対してお答えをいたしません。又局外中立と日本の安全保障、日本の安全保障を守る唯一つの道は局外中立である。局外中立に対して戰略的に何と考えるかという御質問ようでありますが、これは私といたしては先程申しました通り戰略的の局外中立というようなことについてはお答えはできないのであります。併しながら御議論は御議論として謹んで伺います。更に附加えて申したいと思いますことは、先程国際連盟のお話がありましたが、今日は国際連合となつてその実質においてはその企図するところは同じであります。ただその言い表し方、又方法等については多少違つておりますが、これもいつもそのことであつて世界の平和ならざるも一国の平和維持についてはいろいろな企画が考えられ、又議論もされたのであります。そうして帰するところは国際連盟となり、国際連合となつたのでありますが、併しながらこれ又決して完全な状態にあるのではなくて、国際連合が真に世界の平和を保障する機関として完成するのには尚幾多の議論の余地が、又考えるべきことが沢山あり、又列国が互いに相助け合つて、そうしてその完成を期さなければ完璧を……、現在の状態として完全と申すべきでありませんから、この連合をして真にその目的を達成せしむるためには、世界各国が協力するということも必要でありましようが、同時に国民としてこの連合を如何に平和機構として活動せしむるか、真に実効を得せしむるかということについては私は日本国民として平和運動の先駆けをなす半面から考えて見ましても、この一歩を完成するために、国民として精細にこれを考えると同時にこれに対して必要な提議をなすというようなことを始終考えておるべきことと思います。私自身といたしましてもこの国際連合なるものを如何にして真にその目的を達せしむるかについてはひそかに考え、又調査もさしております。この点についてはあなたにおかれてもよくお考えを願いたいと思います。又お考えがありましたら喜んで伺いたいと思います。お答えいたします。
  41. 帆足計

    ○帆足計君 只今のお尋ねに続きましてあと一、二お尋ねいたしたいのでありますが、日本が平和の道を極力進んで参るといたしまして、そうして只今総理の御答弁ように国際連合等も段段強化されまして、それによつて私は日本国民が敗戰の中から本当に今日学んでおいたならば歴史はいつまでも同じところに停滯するものではないのでありますから、他日いつの日にか祖国は世界に認められる。そうしてその正当なる権利なり自由なりが主張できる日が来る。そのためにも今理性と友愛の道を十分に学んで置かなければならんということを痛感いたします。併しそれにいたしましても国の安全のために最も必要なものは平和と自主的な中立という外に若し国際的な大きな嵐なり戰争とまで行きませんでも、摩擦の中に日本が生きて摩擦の間を潜つて生きて行かなければならないとしますならば、一番必要なことは国内における和と申しまするか、国民自身の生活に安定があり希望があるということが最も必要であると思います。従いましてこの観点から考えましても、先般来予算委員会におきまして農村代表が口を大にして叫んでおられましたが、食糧の自給度を増大するということ、若し日本の安全保障ということを皆様と共に論議するとするならば、私は中立の問題と食糧の自給の問題とを当然論議しなければならんのではないかと思います。併しそれと連関いたしました、又生活の安定がなくてはならない。ところが日本では政治的には封建遺制から解放され今アメリカから民主主義への道を学びつつある、軍事的には平和の道を進み、無軍備を貫徹する、そして経済的にはアジアと協力せねばならぬ。日本の経済というものは、宿命的にインド、インドネシヤ並びに中国等の東南アジア諸国に結び付けられている。この問題については、日本は政治的には民主主義の道を歩み、軍事的には無軍備と平和を追求する、而も経済的にはアジアと提携しなければならぬ。この三つの接点の均衡点に生きるべき道を見出さねばならぬ。かく考えると、どうしても日本の政治の在り方、外交の在り方、又平和に対する努力の在り方は、少くとも中国、インドやインドネシヤ等隣邦諸国民の信頼を得る程度に民主化されねばならぬ。又ソ連と中国に対し、無用な刺戟を與えるごときは極力避けねばならぬと思います。今日、日本結済の窮迫した状況は、国内の事情によることもあります。このことは後に一言述べさして頂きますが、同時に貿易が停滯しているということに今日の困難の大部分があるのです。日本は、島国であると、ややもすれば一般国民に思われておりますのは錯覚です。日本は、島国というよりは、海の国であり、貿易の国であり、船の国である。世界から理解されることなしには生きて行けない国であるということに問題に極めて困難な本質があるのです。その貿易が、昨年度の実績では、戰前の二割九分というところでありますので、日本の呼吸は正に窒息的な状況にあり、呼吸を束縛しておるこの状況を打開せずして一億の国民が生きて行けるべき道理は絶対にないのですけれども、すでにヨーロツパ諸国は余りに遠く、そうして船の八割五分は海底の藻屑となり、又生糸は尚余命を保ち、大事な商品でありますけれども、とにかく戰前の二割程度に凋落し、織物の輸出や生産も戰前の三割ぐらいになつておりまする今日として、日本の各種の機械、雑品や建設用材や又新興化学工業の製品などを捌くべき市場、そうしてその代償として原材料を獲得すべき地域はアジア諸国をおいて絶対に残されておりませぬ。ところが先般の前々回の国会でございましたか、総理は、不用意に御発言されましたのでありましようけれども、当時中国との貿易は実際上には香港を通じて極く僅かしか出ていなかつたという事情にも立脚されて、中国との貿易の意義を大変小さく考えておられるようにとられる発言をなされた。ところが中国との貿易は戰前におきましても、日本の貿易の三割内外を占めていた。三割と申せば、これは命にかかわる程の比率でございます。体の三分の一が火傷に遭うと、命にかかわると言われております。又生糸その他が減少した今日といたしましては、アジア貿易の全般的な比重というものは、当時より更に大きなものになつて来ております。大英帝国ですら、寸尺の市場をも確保せんとし、その国民の意思に奉仕しようという観点から新中国の政権を承認し、そうして極力無用な刺戟と摩擦を避けるように気をつけておる。揚子江で英国軍艦が砲撃を受けましたときにも、あの大英帝国の尊嚴と自尊心をもつて、尚且つ沈着に、且つ寛大なる態度を以てこれに対処し、立ち上がろうとする若い民族に対していたわりの感情を以て対処しようとした。インドも又中立の態度を保ち、早くも新中国政権を承認しておる。そしてスエーデン、ノルウエー、ユーゴースラヴイア等も相次いでこれを承認した。国際連合の事務総長リー氏も、すでに新中国を承認することが必要であるという意味の発言をされておる。このようなときに、我々国民は、政府態度の中に、ややもすると新らしい中国に無用の刺戟を與えるような発言をちよいちよいされるという印象を受けている。このことは極めて遺憾であると思います。勿論それが総理の御真意ではなくて、我々の誤解等に基く点もあれば幸いですが、私は隣邦諸国に対し、イデオロギーを離れて害せず害されずで、そうして日本が平和に生き拔く国として、無害有益の国として、隣邦諸国と親善関係を結び、経済提携を結んで行く必要がある。現にアメリカにおきましても、聰明なる国務省の路線、即ちアチソン長官、ジエサツプ大使等の考えは文書や論説等を通じて見ましても、話せば分るという線を辿ろうとしておられる。虫が好かないとか、問答無用とかいうような観点で決してないと私は観察しております。先般アメリカのフレンド・サーヴイス・コミツテイー委員長の、ニユートンさんという方が日本に見えられました。この委員会はソ連とアメリカとの共存という報告書を書きましたその代表者といたしまして、一昨年ノーベル賞を貰つた方でございます。私は現在平和を論ずる以上はイデオロギーの賛否は問わず、とにかく二つの世界が共存し共立する以外に平和を確保する途はない。たとえ個人的には猛烈な反共主義者であろうともとにかく二つの世界の共存と協調との途を発見する以外に人類の平和を確保する途はないということを、人々はもはや知るべきときである。曾て回教徒とクリスト教徒が数百年に亘つて無駄な争いと殺戮を続けた時代もありました。併しこの愚かな時代は、やがて自由平等博愛というより高い観点からするスローガンが生れましたときに、止みましたが、私は今日、いわゆる二つの世界のうちの一つを、歴史の上から抹殺することを空想する時代はすでに過ぎ去つたと思います。従いまして平和ということを私共が口にする限りにおいては、二つの世界が共存の道を発見するということが望ましい。個人的又は政治的、乃至思想的限界は別としましても、人類がみずからを救うべく、平和を保とうとするならば、どうしても二つの世界の共存ということを認めねばならぬ。このような不覊豁達なる態度で、恰かも自由、平等、博愛のスローガンが、回教徒とクリスト教徒との対立を乘越えて、より高次元の見地から二つの世界の共存を可能ならしめたような、それと同じ高い観点を平和のために国民は持たねばならぬ。  私の祖母は非常に昔かたぎでございまして、牛乳を飲めばお腹がくだる、ビフテキを食べると胃癌になる、異人さんの座つた座蒲団は裏返しにしなければ気が済まぬといつた風であつた。併しこのような偏見が果して、現在の政府や又国民のものの考え方や習慣の中にないと言い切れるでありましようか。共産主義の思想に関連して、私も一切の暗黒政治や独裁政治には徹底的に反対でございます。又、ソヴイエト・ロシア又は中国というものが、それぞれの政治のやり方で存在しておるという嚴たる事実に対しては、これを頭から抹殺するという態度でなくして、二つの世界は思想も違い、観念体系も違つておりますが、尚且つ、人類がみずからを救うためには、平和と友愛と理性の道を進むように政治家としては努力せねばならぬ、その努力をどのように効果的に実現するかということに、現代の政治家なり、外交官としての資格があるかどうかが分る。一方のものをただ抹殺して、やつつけてしまうということのみ考えるならば、世界の平和は到底もたらされぬ。従いましてニユートン氏がノーベル賞を貰つた趣旨ように、ソ連とアメリカとが共存し得るということについて、このフレンド委員会の報告書は、数百名の証人を尋問し、科学的に綿密な調査の結果の報告書でありますけれども、そうしてこの報告書が恐らくアメリカ国務省の現在の合理的なラインに相当の影響を與えておることも事実でありましようけれども、私は日本のごとき敗戰の国が連邦諸国に殊更刺戟を與えるというようなことは避けたらいい。個人の思想やイデオロギーは、それは明確にせねばなりませんけれども、国と国との関係においては極力無用な刺戟を私は避ける必要がある。現にインドのネール氏が、そのために如何なる苦心をされておるか、又スエーデンが、その安全と中立と、国民の幸福と尊嚴を保つために、大戰中如何にソ連とアメリカとドイツの間に立つて苦労され続けたか。そうして外交的な言辞において愼重であつたかというようなことを考えますると、私はこの問題につきまして過去の経緯は別といたしまして、総理が隣邦諸国との親善、日本の軍事的中立、そうして新らしい中国との間に、すでにソ連が満洲の大部分と協定を結んでしまつて、又イギリスがすでに新らしい中国と貿易協定の準備をしておるというようなときに、どうしても関係方面に懇願して日本と中国との間の経済協定ということが、日本の復興にとつての死活の道であり、曾て生命線とまで、これは余りよくない表現でありまするけれども、その経済的内容においては生命線とまで言われたその地帶に対して、どのように協調を保ち得るかということが課題でありまするので、私は、政府としましてはこの問題につきまして、更に愼重に、更に積極的に隣邦諸国との平和を保ち、経済協定を保ち得るよう措置をとることをお願いいたしたい。これにつきましての総理の御所見を伺いたいと思うものであります。
  42. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 隣邦との関係において、その経済的、政治的、互いに協調して行くというお話は、私において御同感であります。又、私が申したことが、如何にも中国との貿易を軽んずるようにおとりになつたとすれば、これは私の言葉が足りなかつたか、或いは私の言葉が足りなかつたのであるかも知れませんが、私の申したことは、そのときに如何なる表現をいたしたか、はつきり記憶いたしませんが、多分事実を申したであろうと思います。併しながら申すまでもなく、日本と中国その他の隣国との間においては、距離も近いし、又歴史上の関係もある。人種においても同種同文であるのでありますから、若し両国の間に、或いは又中国の政情が落ち着いて、そうして通商貿易が盛んに、又自由にするというような時代が来れば、無論日本としてはこれを最もいい経済、政治その他において、善隣外交を全うするということにおいて、私は毛頭異存がないのみならず、その線に沿うべきものであるということは御同見であります。ただ、現在においては、先程私が申す通り、筋においては遺憾ながら香港を通じて以外に、正当なルートがないのでありますが、併し正当なルートというか、実際貿易のルートとしては香港を通ずるのでありますから、最近の実情を承知いたすところによれば、いろいろな北支那あたりからも貿易の取引の引合いも来ておるそうであります。又、GHQとしても私の承知いたすところでは、中国との間の貿易はますます盛んにする、中国のみならず、その他の隣邦との間の貿易なり、或いは又交通なりは、頻繁にするようにということで、相当調査もし、盡力もしておらるることは承知いたしております。ただ、現在においては、その額は甚だ少い。併しながら将来はと言えば、これは日本政府としては勿論のことでありますが、十分この点には努力いたしたいと思います。
  43. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 帆足君にちよつと申上げまするが、三十分ということで実は岩間君の昨日からの引続きが残つておりまするから成るべく御簡潔にお願いいたします。
  44. 帆足計

    ○帆足計君 岩間君にちよつと了解を得たいのでありまするが、本日は岩間君の発言の順位でありまするのが、ちよつと御中座になりましたので、頂きましたが。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 どうぞ十分に。
  46. 帆足計

    ○帆足計君 余り長時間に亘つては恐縮でありますから、もう一問だけにいたしますけれども、後御了解を得たいと思います。  只今総理から中国との貿易につきましては熱意を持たないわけではないという意味の御答弁がございまして、私は非常に嬉しく思います。併しながら現在すでに私は非常に遺憾と思つておりまするのは、日本の鉄道や電気機関車や、それから機械類などが非常に沢山中国に出ておりまして、又中国の技術者の方々は大部分日本の大学を卒業した方々であります。然るに今度の中ソ協定によりまして、厖大なる物資が満洲から東ヨーロツパ並びに東ドイツにまで送られるようになりまして、又そこから非常に多くの技術や資材が入るようになりまして、その関係はすでに明治三十七、八年の前のような状況に、私共がまごまごしておる間に、戻つてしまいつつあるかのごとくであります。イギリスも又、貿易協定の準備を始めておりまするので、私は一つ総理にお願いいたしたいのですが、もはや国際連合の中国承認というものは時日の問題であり、そうして次の機会に是非御答弁を願いたいのでありまするけれども、アメリカの国務省から非軍需物資に関する限り、日本と中国との直接貿易を認めてもいいというような意向が表明されておるということが、数日前のすべての新聞に大々的に報道されました。この真偽、いやこの真相につきまして、適当な機会に予算委員会で私は政府当局の御報告を伺いたい。現在の情勢からしまするならば、恐らく国際連合がイギリスに次いで中国を承認するでありましよう。従いまして日本といたしましては、一日も早く新らしい中国から責任のある実業家並びに経済当局者の方に視察団でも使節団でも送つて貰いまして、又こちらからも実業家達が使節団として向うへ派遣されて、そうしてお互いに今苦しいときでありまするから、有無相通ずるための、即ち思想やイデオロギーから離れまして、本当に有無相通ずるための貿易について、話合うということを関係方面から許して頂きたいということを、それがつきません限り非常に困難な実情でございます。それをお願いいたします。  最後に、最近の窮迫いたしました日本経済の打開策につきましては、各委員から相当御論議がございました。従いまして私は同じことを繰返そうとは思いません。従いましてただ結論といたしまして、私は日頃痛感いたしておりますることは、歴代の総理大臣が、経済の問題に対して御理解が少いということが、これが日本の宿命的な事実でございます。戰争中におきましても、曾て近衞公は聰明無比なる頭脳をして、尚且つ経済の問題に対しては全くの無智であつた。又東條さんはそれに劣らないものでありました。然るが故に二百五十万トンの鉄で一億トンの鉄と戰争しようというこの早発性癡果症というものは驚くべきものであると私は考えております。ところが戰後におきましても、不幸にして東久邇宮様を初め、芦田総理、片山総理、そうして現総理も、私は経済の問題に対しましては余り御知識が十分でないのではなかろうかと拜察いたしております。従いまして、今、今日経済の問題の分らん人が政治をやるということは、私はこれは非常に一大欠陷だ。従つてこの欠陷を補いまするために、即ちその欠陷を自覚するということが一つの私は治療法の一つではないか。今日この経済の窮状を打開したいという願いは、一自由党、又一政府の問題ではなくして、国民の切なる願いでございます。国民は今正に乞食のような生活をし、望みなき生活に喘いでおるわけでありまするから、この悪い條件の中で、もう少しよく経済の、増産の行くように組立てる方法がないものであろうか。私はそれにつきまして、もう少し優れた経済專門家や、実業家の中で、総合的な観点のある人達を総理の廻りにブレーン・トラストなり、経済審議会なり適正な形でお集めになつて、一週間に一度ぐらいはそういうお話も聞かれて、もう少し実情に即した政治をやつて頂きたいと思います。このような立入つたお話を何故申すかと申しますと、実は私共本会議におきましても、予算委員会におきましても、或いは通産大臣に御質問をし、通産大臣は練達の稲垣さんがおやめになりました後、このような状況であります。故に又大蔵大臣に御質問しましても、大蔵大臣は税金を取立てることと財政のことには、少しばかり御堪能でございまするけれども、日本産業の立体的なこの状況、その構造的崩懷の状況については、余り詳しく知識を持つておられない。又農林大臣にいたしましても、若干そのようなきらいがあつて、農業技術者の方に御質問するような感がある。又青木安本長官にお尋ねいたしましても、まあ大学の大先輩にお話を申上げているような感があつて、今日の日本の現実の復興というこのきびしい仕事をされるよう態勢は私はできていないと思います。果して内閣では今日の日本の構造的瓦解の状況を的確に把握されておるでありましようか。私は曾て社会党の内閣のときに若い優秀なブレーンで作りましたあの五ケ年計画に対しまして、総理が一言の下にあれを退けられたことは、或る意味においてはこれは卓見であると思つております。私もあれですらいわゆる官僚的作文であつて総理のいつも言われるように現実の條件に合つていない。総理の直感力で言われたと思いますけれども、その点には賛成でありますけれども、総理は、あれは新聞の間違いでありましたでしようけれども、余り自給力が強過ぎる、即ちアウタルキーになり過ぎておるというて、あれを新聞で批評されたようでありますけれども、実際はそうではない。実際はあれは余りにも貿易要因に依存し過ぎておる。あれでは全き計画の立てようがない。実際に貿易の方が拡大評価されておる案として欠陷があることを、私は專門家では批評しておるのではないかと思います。  従いまして結論といたしまして、現在の不景気はどこから来ておるかと申しますと、二つ根因があるのでございます。第一は日本が朝鮮、台湾、満洲等をなくし、食糧が三割慢性不足となり、重要なる資源資材を失い、輸出市場を失いまして、そうして国内は三割以上も燒けのが原になりまして、人口は二千万以上殖えております。そうして更に年に三百万以上幼き子達が生れておる。これがこの矛盾を来したところの構造的現実であつて、單なる一時的不景気というものではございません。この穴を埋めますために、アメリカは占領軍といたしまして、年に千五百億円の輸血を私達にして呉れております。一戸当り一万円にも近いものをただで貰つておるような状況であります。これが今後二、三年内に来なくなるとしたならば、来なくなる分だけを国内で先ず自給するか、然らずんば貿易によつて稼ぎ取るか、この二つの途しかないのであります。然りとするならば、これ程大きな困難でありまするから、そのどことどこに一番大きな火傷があり、どこに一番大きな切傷があるかということをよく調べて、大体の目標だけは一応つけて、目標通り物事は行くわけでありませんけれども、大体の目標だけを作りまして、第一は先ず半分の重点は、外に失うものを内に耕し、従いまして食糧問題、電源の開発、産業の合理化に私は重点的な努力を注がなければならないときである。千五百億の資金は援助物資としては食糧及び原材料として與えられておりますけれども、通貨事実としては国民経済の中から千五百億の通貨を吸收しております。従いましてこの吸收したところの通貨を最も上手にこの敗戰の体の中に環元しなければ、行き過ぎのデフレになることは明らかでありますのに、それがただ債務償環に使われ、そうして商業資金として撤布せられておるというところに禍根の一つがあるのでございます。併しながら祖国の再建のために能率ということを考え、或る程度の自由経済によるところのきびしい試練ということを考えることも勿論必要であります。それを相当重要視したことが過去二年に亘つて自由党が人気を博したゆえんであり、その使命を果したゆえんであると思いますけれども、同時にそればかりでは不十分であります。政策の重点を食糧の増産とか、電源の開発とか、鉄道の電化とか又は勤労者住宅の復旧とか、新たに建つている住宅とどんどん火事やその他で消えておる住宅のバランスがどうなつておるかということもよくお調べになりまして、そうして二、三年後に少しでも自給力が増すように、援助物資がなくなつても立つて行けるよう態勢を促進するように、経済政策が行われなければならん。残つた半分の力は、海運と貿易の問題です。この問題は、戰前の二割九分に今なつている月四千万ドルぐらいしかないところの今の貿易をどう打開するかという問題、このためには輸出の振興、海運の振興、並びに日本の輸出工業の大部分は中小工業でありますから、中小工業の振興についてどのように指導したらいいか。自由経済ということは何もかも自由にするということではございません。人の創意と能率と、その自由に対する欲求を尊重して、それが本当に発揮されるような條件を作るということを更に考えねばならんと思います。  そこで結論として私はお尋ねいたしたいことは、この千五百億の見返資金を商業資金にただ流さずに、長期資金に使われ得るような條件を作つて頂きたい。少くともその三分の一の五百億は、食糧の増産と治水治山に振向けねばならん。残つた三分の一は、電源の開発と住宅、勤労者の住宅……待合とか女郎屋とかネオンサインに今使われておりますけれども、そういうものでなくて、勤労者の住宅の復旧と合理化資金に使われねばならん。残つた三分の一は、海運の復興と貿易振興並びに中小工業の振興と能率化のために上手に使い得るような性格の資金にこれを焼直さねばならん。そうして現在七百億近くの公債償還に充てられておる財政部分はよろしく所得税の減税にすべし。それによつて民力を涵養せねばならん。このようなことをせねばならんのに何一つされていない。私は占領軍の政策がこの四ケ年間相当成功して来たのに、今日失敗させては全く申訳ないと思うのであります。政府の輔弼……輔弼と申しますか、補助的な占領軍に対する協力が、私はそれでは十分であるとは言えない。よい部長や重役はただ社長に対してぺこぺこしておるのでなくして、いい事があればやはり直言せねばならん。占領軍を失敗させてはならんという観点から考えましても、この点もはや考えるべきところに来ておる。そこで総理は現在の経済状況を過渡のデフレとお考えになつておられないのであるか。これが第一のお尋ねしたい点であります。  第二には、先年の予算は確かに成功しました。そうしてそれは苦い盃でありましたけれども、千五百億の債務を償還し、あれ程恐しかつたところの悪性インフレをも防ぎ得ました。これは確かに私は司令部の措置よろしきを得、内閣の協力よろしきを得た賜物でありますけれども、今日ではそれが明らかに行過ぎておる。行過ぎの結果、更に逆の効果を来そうとし、そのために失業者が殖え、企業は倒産し、産業の復興が進まないならば、国際收支の一環から再び日本の経済は破れて、再び悪性インフレに転換するわけでありますから、財政の均衡よりももつと大事なものは国民経済それ自体の均衡であるということを、政府は忘れておられる。財政の均衡はインフレ防止の第一の環であります。第二の環は、国民経済自身がその人口と産業構成とが均衡することであります。第三の環は、国際收支が均衡することであります。この三つの均衡がバランスを得て初めて国の再建ができ得るのに、大蔵大臣は財政の均衡だけしか御存じない。このような状況に対して、もはや先年の財政で相当の成功をしインフレ防止の第一の手を打つたわけでありますから、今日はこれを修正する必要がある。その修正をなされる意思が総理におありかどうか。これが第二のお尋ねであります。  第三のお尋ねは、その修正をしましてこの敗戰の祖国を復興に導いて参りますためには、細かな統制経済ではありませんけれども、若干の目標計画というものが必要である。産業界というものは小さなおでん屋さんとか鰻屋さんではありません。一つの企業を作るに十億円なり五億円なりに資金が要るわけでありますから、将来の見通しを持たなければならん。その見通しを持つための産業の目標計画くらいは絶対に必要である。そういう目標計画をすら政府は何らお立てになつておらない。産業界に明示されておらないけれども、その目標計画等というものは、不必要であるとお考えになつておられるのであるか、この三つの点をお尋ねいたしたいと思います。
  47. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。第一にお答えをするのは、ワシントンから中国と直接取引をするようにという慫慂があつたということでございますが、新聞にそうあつたでありましようが、併しながら政府としては直接にそういう慫慂はまだ受けておりません。併しながらそういう交渉を受けましたならば、議会に早速御報告いたします。  それから第二は私の経済に対する自覚と言いますか、これは明らかに申しますが、私は経済については甚だ專門的知識がないと申しますか、知識がないことを常に心配いたしておるのであります。即ちみずから明らかに自認をいたしております。そのためにブレーン・トラストその他を持つてはどうか、これはお話までもなく、絶えず実業家その他について議論を討わし、又意見を尋ねております。併しながらこれはますますその方向に注意いたします。それから閣僚についてのお話でありますが、経済閣僚は現在の状態を憂えて、日々或いはにちにちこの問題の、経済問題についての研究に協議沒頭いたしております。私はやがてその結果が現われるものと考えますが、お示しのごとく食糧の自給とか、或いは電源の開発、その線についても経済閣僚は常に心に悩まして研究したしております。  それから更に三つの御質問でありますが、現在の債務償還を更に緩やかにしてはどうかということであります。これは御承知のごとくインフレを克服するという、インフレを抑制するためには、一応この経済政策を立てなければインフレ抑制ということはむずかしい。又現在において今日まで、少くとも今日まで最も懸念いたしたことは、インフレ抑制ということであります。この抑制のためには何ものも犠牲にして、先ずこのインフレ抑制を図る、この方針で以て進み来たつたのであります。故に一応債務償還に主力をそそぐということが止むを得なかつた。止むを得なかつた措置であります。又その結果是正すべき事態が一層顯著になり、御承知のごとく均衡予算を組んだのは昨年に至つて初めて組まれた。そうして今年度第二回目であります。その効果が、予算の効果が未だ十分認められない間に直ちに是正するということはいたしませんが、併しながら適当に是正するということについては、決して政府はその盡力を惜しまないものであることをここに確言いたします。それから後は何でしたか……。
  48. 帆足計

    ○帆足計君 総理にお尋ねしましたのは、現在の窮迫した事態を過度のデフレとお考えになるかならんか、第二には先年の財政的引締めで、過度のデフレになつておる状況で国民の全部が声を挙げ、財界までも声を挙げておる状況に対して修正するつもりはないか。第三には少くとも目標計画を立てる必要を御理解なさらないか。
  49. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) これはしばしば申すようでありますが、多年に亘つての計画というものは、私今日のごときいろいろな事態が不安定な状態において、又いろいろな関係が甚だ微妙な今日においては、不安定の、或いは不確定の状態が、條件が沢山ある今日においては、長年に亘る計画を立てることは却つて無益であるのみならず、有害であるが、併しながら全然無計画でこの進行を進めるつもりは毛頭ないのであります。予算案についてもその通りであります。一応の計画を以て予算案を作つたのであります。然らば将来如何。計画が無用なりというのではなくて、ただ私の申すのは、長年に亘る五ケ年計画とか、十ケ年計画というものはこの際はいたすべきものでないというだけの話で、無計画で進みたいという考えでは毛頭ないのであります。お答えいたします。
  50. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩間君。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 私は一昨日質問を続行いたしておつたのでありますが、総理都合によつて十一時半頃に総理は無断でまあ退席させた。このことはやはり参議院審議を非常に熱心に続行しよう、そうしてこの重大な予算案を我々はできるだけ精力を傾けてやろうと考えておる者にとりましては非常に遺憾に思う次第であります。私はこのことをここでまあ事改めて追及する時間の余裕を持たないのでありますが、ただ昨日当委員会におきましてこの懇談会、打合会が持たれて、日曜の審議が一部の與党の側の人、緑風会の人の間に持たれたようであります。その後の夕刊の伝えるところによりますと、参議院予算委員会が若しも今月中にこの予算を成立させるようなことがなかつたならば、政府の支拂が遅延する。従つてその責任はこれは参議院が負うべきものであるということを政府側が意向として漏らしておるというようなことが、情報として伝えられておるのであります。このことは甚だ重大だと私は思うのでありますから、予算審議に入る前に私はこのことを質したいと思うのであります。今まで遅延さした者は誰であるか、この点も議論があるところだと思います。地方税法案が約二週間も要求し続けられて、二週間後に出されたということ、総理が再三の出席要求に対しまして、今までなかなかそれに応じられなくて、確か今日来られたのは第四回目じやないかと思うのであります。その四回目もまあ午前中というような形でありますから、十分な審議ができない。更に地方税法案が出されたのでありますが、平衡交付金法案はまだ出されない。こういう形でありまして、又我々今までの連関からしまして、この重大な、この中央の国家予算と並行して考えられるところの地方財政の、この税法の問題につきまして、十分にこれは我々の立場を明らかにし、国民に負うておるところの責任を果さなくちやならない。従つてこの点に……、殊に衆議院があのような形におきましてこういうような問題の闡明なしに一方的に法案が、予算案が通つたのでありますが、参議院としましては今までの行掛りから考えましても、これを十分に明らかにしなくちやならない。こういうような立場に立つているのでありますが、これに対して政府はここに来りまして、衆議院では約五十日の時間を費して審議したのでありますが、我々参議院は本格的な審議をやつてから僅か一週間足らず、こういう形においてあと五日に迫つた段階で、今月中に上げろというような強行手段が講じられているのであります。そしてこれに対して、それに応じなければこれは参議院責任である、こういうことを言われることは非常にこれは不穏当と思われるのであります。この問題は過去の第六国会におきまして食確法審議する場合におきまして、丁度総理が、最後の日だと思いますが、大磯に帰られた場合に、放言的にどうも参議院の連中は予算審議を遅らしておる、こういうようなことを、これは新聞記者に話されまして、これが大きな問題になつたことと連関しまして、今からその責任の所在ということを明らかにして置く必要があると我々は思うのであります。従つて総理は果してそのような意向を以て政府の代表者として我々の予算委員会を見ておるのであるかどうか、この点を明らかにして頂きたい、こう思います。
  52. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今の御質問に対しましては、政府を代表いたしまして私が午前中に詳細御答弁申上げた通りでございます。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 本多国務相の御答弁では満足できなかつたのです。だからやはり政府の最高責任者である総理に質しているのであります。
  54. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) これは私が政府を代表して答弁いたしたのでございますから、総理から御答弁つたのも同じに御了承を願いたいと思います。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 総理の発言を頂いて置くことが非常に重要だと思うのでありますが、やはり国会並びにこの政府関係におきまして、一言でも総理はこれに対する態度の御表明を頂きたい。こういうふうに重ねて要求いたしたいと思います。
  56. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 本多国務大臣は私並びに政府代表としての発言でありますからして、本多国務大臣の発言は即ち私の発言と御了承を願いたい。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 それではそういうことを一応了承しまして進めたいと思います。  一昨日私は五井産業の問題、更に講和問題、それと関連しました国内外の情勢につきまして、ダンピングの問題、台湾への輸出の問題、輸入食糧の問題、それから見返資金の問題、それから更に最近起つておりますところのいろいろな国内の彈圧の問題、殊に朝鮮人の台東会館の強制接收の問題、それと関連して教員の首切りの問題について総理意見を質しているうちに総理は確か退席されたと思うのでありますから、その継続をいたしたいと思います。  私は教員の首切問題は、これは今の労働問題に対する政策の一つの現われとして非常に重要なる問題であるばかりでなく、思想の彈圧の方向として非常に重要な問題を持つていると思います。第六回国会の財政質問演説のときに私はこのことを総理に質したのでありますが、当時この御返答は余りはつきりしなかつた。昨日も殖田法務総裁に対しまして、この点を質問したけれどもこれも甚だ要領を得ない点があるのであります。問題はこうなんです。教員の首切問題は、思想的な問題であるかどうかということについては論議しません。ただそのやり方について私は問題にしておる。つまり京都の問題でありますけれども、京都におきましてどういうことが行われたかというと、教員の退職を要求する場合に依願免官並びに懲戒免官の二種の辞令を差出して、この辞令のどつちを受取るか、これを二十四時間以内に返答せよ、こういう形で迫られておる。これに対しては如何に重罪犯人であつてもこのような馬鹿げた処置はされないんではないか。然るに苟くも日本の教育に従事しておる教育者に向つて、このようなまるで脅迫的な首に匕首を擬するよう方法によつて、この首切りをするということは、これは明らかに人権無視ではないかということを問い、総理にその結果について調査して報告して欲しいと申したのでありますが、殖田法務総裁の御答弁では、その後調べた、併し又どのよう方法で調べたかということを追求しますと、結局手紙によつて向うを聞いた。そこで一方的に聞かれたのかどうか、これは重要であります。全部の意見を総合されることが必要だと思うのでありますが、そうして総理にどうしてもお伺いしなければならんのは、このようなやり方によつて教員の、これは首切りをやつた、こういうようなことについて一体どのよう考えを持たれるか。又これに対してどのよう責任を感じておられるか。このことを先ず最初に伺いたいと思います。
  58. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今お話の教職員の整理の問題でございまするが、これは必ず教職員として適当な者でないという確信の下にやつたことであると存じます。何か思想関係、或いはその他政党関係というようなことのように御解釈になつておるようでありますが、政府はさようには考えておらないのでありまして、いずれにいたしましても適当でないという信念でやつたことと信じております。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 しばしば本多国務大臣総理の代理をされるようでありますけれども、これは総理答弁の権利というようなものは本多国務大臣に託されたのでありますか。私は総理にお伺いしておる。むしろ本多国務大臣から御答弁を聽くよりも殖田法務総裁の御答弁を聽いておるから、その上でのことを聽いておるのですから、総理を非常に疲れておられるかも知れませんが、我々も非常に疲れておるが我慢してやつておるのですから、その点において御答弁願いたい。これは小さい問題のようですが、日本の人権擁護の確立の上から非常に重大問題じやないか、こう考えておるのであります。
  60. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 私が総理に代つて答弁申上げたのでございますが、殖田法務総裁等に更に詳細に御質問になりたいという御趣旨でありましたならば、他の機会にお願いしたいと思います。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういうことを言つておるのではなく、殖田法務総裁に聽いたから、それではつきりいたしませんから今度は最高責任者に聞きたい。こう言つておるのです。そこに大分食違いがありますが、こういうようなやり方で不当な首切りをやつた結果何が起つておるか。総理は実際知つておられるかどうか。実に現在の教育界に暗黒の姿が復活しておるのです。戰争前の教員がそうでありましたけれども、強権に対して非常に卑屈になつて来て盲従的になつて来ておる。最近は非常に職制が強化され、そうして飽くまでも正義を守る上において、そうして権力に屈しない独立不羈の精神でやつて行く、こういうような教育界の体制が非常に破壞されている。こういうことは非常に重大な問題だと思う。日本の民主化のために、或いは平和と講和会議はつきり連関した国内態勢の問題だとしてこれはお聞きしておるのであります。私はそういう点から続けてお伺いしますが、極東委員会の教育刷新指令というものがございますが、総理はこれを御存じでございますか。総理は御存じかどうかを御答弁願います。
  62. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) いずれにいたしましても提起されました御質問の問題は政府は適当な処置であつたと信じております。
  63. 岩間正男

    岩間正男君 私は総理にお伺いいたしておるのであります。総理は御存じかどうか。これはイエスかノーかという非常に單純な何ですからこれについて伺いたい。
  64. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 只今お話の資料は只今手許にございませんので、それにつきましては取調べて御答弁申上げたいと思います。
  65. 岩間正男

    岩間正男君 この問題は非常に人によつて代弁される何はできないでしよう。如何に本多国務大臣総理の懐刀か知らんが、総理が御存じかどうかということについて一体あなたから御返答できるかどうか。総理の御返答を願います。
  66. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 総理は御答弁ありません。
  67. 本多市郎

    ○国務大臣(本多市郎君) 総理と打合せてやつておるのでありまして、総理の手許にもございませんので、取調べてからということでありますから、総理に代つて答弁申上げたのであります。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 総理の御発言がないものとして私は進めます。これは恐らく私は総理は御存じないのじやないか。只今三回も念を押したのでありますから私の断定は間違いがないように思う。極東委員会の教育刷新指令というものは、ポツダム宣言に則つたところの実に重要な指令であると思います。この指令の中に教師と学生は独立不羈の考え方を持つように奬励しなければならない、こういうような條項がございます。このような條項から考えるときに先程申しました不当な権力によつて、人権を無視したやり方によつて首を切るというやり方が果して教育界に大きな影響を與えておると思うのでありますが、只今のような京都に例を見るような首切り、更に東京におきまして最近起つたようなこの首切り、教員の首切問題は、一体極東委員会の指令から見ますときに、これに対して正しい方向を政府はとつておられるかどうか、その点お伺いします。
  69. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 教職員にして、その職務の遂行するについて極めて不適当と思われる者についてはそれぞれ法律所定の手続をとつて、或いは交換、或いは転職、或いは辞職をして貰つている次第でありまして、我々は極東委員会の指令の趣旨に我々のとつている処置が絶対に背反しない、のみならず合致しているとこのよう考えている次第であります。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 その点間違いないとおつしやるのですが、そうしますとこれは今言つたよう方法で、人権を無視したやり方、重罪犯人にもやらないようなやり方でやるのは少しも間違いないと、こういうふうに結論していいんでございますか。政府はそう考えているんだと、よろしうございますか。私は特定の事実を挙げて質問しているんですから、ようございますか、そういうふうに確認して。
  71. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 特定の事実を私今お聞きしておりませんが、特定の事実を更に御指摘下されば、私共の方で調べまして、後刻御報告申上げます。ただ私は総括的にお答え申上げております。即ち教職員に対して、政府或いは地方公共団体、或いは教育委員会等のとつている措置はいずれも法律所定の手続をとつているということを明言して置きます。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 増田官房長官は途中から来られて、そうして如何にも分つたようなことを言われますが、甚だおかしい。こういうことが審議を遅延させている最も具体的な生きた例です。総理が一言お答えになればはつきりする問題なんです。まるで木に竹を継いだような御答弁であります。私は特定の事実を挙げている。それはもう一遍繰返えさせようというのですか。そういうことはあり得ないと思います。もう少ししつかり議員の質問の要点をお掴みになつて、途中からぽかつと、そんなまるで木に竹を継いだような御答弁じや困ると思います。それじや私はもつと進んで行きますが、問題を進めたいと思います。できるだけ総理は御答弁願いたい。
  73. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 岩間君にちよつとお諮りいたしますが、総理は四時から御用があるそうですが、御質問は余程かかりますか。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 先程委員長約束した時間でございます。私は質問の半ばであつて、この前一時半頃でございましたが、今度は一時間半、質問時間は、それは総理質問する時間が入れば二時間ぐらいになるということを委員長約束した。このことは委員長は、はつきり確認されていると私は思います。これはどうなさいますか。
  75. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 私は別に確認はいたしませんが、総理の体の御都合は、私は何とも申上げられませんが、あなたの二時間おやりになることは御随意であります。途中で総理が御退席になりましてもよろしうございますかということを……。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 それでは意味をなさん。それではこの前も退席されたのですね。そうして又今日も退席される。こういうことが参議院予算審議のためにどういうような影響を持つかということをお考え願います。私は御苦労でありますけれども重大な問題を沢山後に控えているんでありますから、是非総理のこれは御答弁を頂きたい。無論私も努力をして……増田官房長官の方からこのように横合からちよいちよいと入らなければこの審議をできるだけ早くやりたいと努力をしているつもりであります。この点……。
  77. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 御趣旨はよく分りますが……。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 以上お計りを願います。
  79. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 総理の御都合があられますから一応あなたの……。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 この前のように肝心なところで総理は無断退席をされるのだつたならば……そういうことを前提條件でなら私は明日なら明日に延ばすより外にいたし方がないでしよう
  81. 山田佐一

    委員長山田佐一君) そういたしますと、今から一時間かかるわけですね。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 まだ二十分でございますから、あと総理答弁を合せて一時間四十分くらいかかる予定でございます。その代り一時間四十分しましたら私は切られても構いません。
  83. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 総理は四時のお約束があるそうですから、それには応じ切れないそうであります。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 明日はどうなりますか。
  85. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 成るべく御都合を願つて出席して貰うようにいたします。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 明日総理がいらつしやることを確認して頂ければ、私は総理の御都合もあるわけでございますから、私は明日適当の機会に、而もこれは代表質問でございますから、各党の代表質問は終つておりませんから、この質問を保留いたしたいと思いますが、総理はつきりその点お確かめ願います。
  87. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 明日は成るべくは出ますけれども、確約はできませんけれども、時間の都合で出て来るというお話であります。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 非常に政府審議を急いでおられるのだと思います。従いまして明日時間の都合でお出でにならなければ明後日ということになります。まさか各党の代表質問演説が終らないうちにこれを打切るということは絶対不可能だろうと思います。そういう点からして、明日できるだけ、我々が審議熱意を示す点から言いましても、総理出席を願いたいと思いますので、この点改めて総理の意向を確かめて頂きたい。
  89. 吉田茂

    ○国務大臣(吉田茂君) 私は外の国務を持つておりますが、委員会には、成るべく出席いたします。又今日も出席のできない出席をしているのであります。でありますから、私の都合は、無論時間の許す限り出席して御答弁に応じます。併しあなたの方もどうか私の方の相当時間の都合のあることを御承知下さつて、余り長く、(笑声)長たらしくやられることは甚だ迷惑に思いますから、お互いに協力して、そうして審議検討して頂きたいと思います。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 この点では大いに協力したいと思います。たださつき帆足君なんかの御質問もございましたけれども、非常に時間的には相当長いのです。その点確認して頂きたいと思います。私はこれで質問を留保します。
  91. 森下政一

    ○森下政一君 年度末が差迫つて参りまして、二十五年度予算の成立に政府にも相当焦慮の色が見えております。我々としても何とか態度予算に対して決めなければならんという段階になつておるわけであります。只今総理と岩間君の質疑応答の中に閣僚の方もいろいろ要務の都合があるから、質疑応答は簡潔にして貰いたいという御要望がありましたが、尤もなことだと思います。成るべく簡潔に私は質問したいと思います。私は他に大蔵委員会との関係予算委員会出席が可能でない場合が少くないので、外の諸君の質疑をよく承つておらないので、重複する虞れがあり、或いは重複するかも知れませんが、さような点は御容赦を願つて、成るべく簡單に二、三要点だけをお質しいたしたいと思います。先ず総合的な問題でありますので、経済安定本部長官にお伺いしたい。青木さんおいでですね。
  92. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 見えております。
  93. 森下政一

    ○森下政一君 只今我々の眼前に展開しておりますところの諸般の経済事情が必ずしも好ましいものではない。これはひとり国民だけでなしに、政府もそのことをお認めになつているだろうと思うのであります。例えば中小企業の倒懷であるとか、農村が不況に陷つているとか、滯貨が増大しているとか、失業及び部分失業が漸次増大の傾向にある。賃金の不拂が続出している。輸出が不振の状態に陷つている。こういうような事柄を列挙して考えて見ますと、誰が考えてもこれを好ましい状態だとは思わない。これは政府と雖も首肯されるところだと私は思うのであります。ところで新年度の予算というものは昨年度の予算と更にそれに続く二十四年度の補正予算を一貫いたしまして、二十四年度のいわゆるドツジ方式によるところの総合金融主義による超均衡予算というものを建前にして編成した予算であるということは、昨年、二十四年度の補正予算が提案されましたときに二十五年度予算の大綱を同時に示されて、いわゆる十五ケ月予算というものを示して、何らドツジ方式が修正されないのだということを当時すでに明らかにされた。その通り今日我々の前に現われております予算というものは、この方針というものが一貫されておりまして、何ら修正が施されていないわけであります。二十四年度の予算は誠に画期的な予算でありまして、いわゆる超均衡予算になつたわけでありまするが、漸く年度末に差迫つて丁度これを実施しましてから丸一ケ年を経過しておる。振返つて二十四年度予算の功罪というものをお互いが眺めて見る必要があると思う。政府みずからも又謙虚な気持を持つてこの予算の実績というものを反省して貰うことが私は必要である、こう思うのであります。二十五年度の予算というものは、二十四年度から一貫した方針で編成されておる。その予算に対するお互いが態度を決めるというところに、二十四年度予算の実績というものを振返つて反省して見て、然る後に同じ方針で編成されておる二十五年度予算というものの態度を決めるということはこれは当然私が取るべき態度じやないかと、かように思うのであります。そこで先程帆足君の御説の中にもありましたが、二十四年度予算というものは或る意味において非常な成功を收めておると私は思う。少くとも二十四年度の超均衡予算というものを国民に押付けられて、国民に対しては相当耐乏生活を要請された。それはインフレを抑制するために国民がこの耐乏生活を忍ばなければならないのだというので洗い浚い国民の購買力を吸收して債務償還に充て、或いは復金をなくする、これまで資金を放出しておつた復金というものをなくして、逆に復金の債権を取立てるという方針に変えて来るというようなわけで、インフレの抑制ということに非常な努力を拂われたのでありましたが、確かにこの面は成功した。鮮やかに私は成功したと思うのであります。併しその結果どういうことが起つて来ておるかということを考えて見ると、今我々の眼前に展開されておる経済界の諸般の情勢、先程私が指摘しましたように軒並みに中小企業が倒懷しつつある。農村が非常な窮乏に陷つておる、或いは滯貨が増大しておる、或いは失業者が増大する、或いは輸出が不振である、こういうふうな好ましくない現象が相次いで起つておるわけであります。考え方によつてはこれらの情勢が今日起つて来きたというとは二十四年度の超均衡予算を実施いたしましてインフレは抑制し得たけれども、予算そのものの中にかような情勢が必然的に起るのであるという因子をすでに包蔵しておるのではないか。包蔵しておつたのではないかということが考えられる。そこでかような好ましくない情勢、これは政府と雖も好ましくないということは承認されると思うのでありますが、こういう情勢が、何故起つて来たか、予算そのもののうちにかような情勢の起る因子が包蔵されておつたのではないか、それは全く予算編成当時には予想されなかつた外部的の情勢によつてような好ましくない、日本経済を袋小路に追込むような情勢が起つたのであるとお考えになるか、或いはそのうちどれとどれは予算を実施した結果、当然起つたことで、而もかような現象の起るのは政府として予め予想しておつたのだとこう言われるのか。これらの好ましくない経済事象の因つて来るところを一体何んとお考えになつておるか。この点について私は安本長官を通じて政府の見解を質したいと、かように思うのであります。
  94. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 二十四年度予算と二十五年度予算とにおきまして、その方針はドツジ・ラインに基いたものであるというその考え方においては変りはないか、その点は勿論森下さんのおつしやいますように二十四年度の均衡予算は成功しておる。そしてその結果二十五年度においてどうなるかということを反省したか、これも勿論私共そういうことについては絶えず注意を拂つておるものであります。尚二十四年度の超均衡予算を実行して参りまいた結果として、一体経済は我々の希望通りしつかりと安定したかどうか、即ちインフレは本当に收束したかどうか、これは見方にもよると思いますが、いずれにしましても若し誤まれば或いは又インフレーシヨンを惹き起さないとも限らないというような不安を今日尚恐らく伴つておるだろうと思います。二十四年度の予算によつて完全にその目的が達成せられたと考えるべきかどうかという事柄も当然私は問題になると思うのであります。この意味におきまして御承知通り二十四年度における公共事業費についても、二十五年度においては約倍額或いは十五ケ月予算と銘打つて皆様御承知通り二十五年度予算におきましても取引高税の廃止であるとか、或いは物品税その他多少ずつ軽減を図つて行く、或いは又すでに御承知通りに価格調整費におきまして段々これを削減いたしまして、そうして実際の状況をその事実に即して改善して行くという段取りは御承知通りでありまするが、尚我々の予定通りの効果が現われておるかどうかということになりますると、もう少し時を籍して頂かなければならんと思います。この予算も決定せられまして、いよいよ実行に移して行くということについても、十分御考慮願わなければならんという立場にあるのではないかと思うのであります。従つて我々といたしましては、よく反省するということにおいては吝かでありませんが、尚このような思い切つたインフレ收束政策を実行いたします場合において、そこに多少それ自身に内在するところの矛盾というものが多少ずつ暴露するということも我々は注意をいたしております。又現に起つて来ておると思います。合理化の線に副いまして、その合理化という我々の主張が具体的に実際の上で現われて来ます場合において、多少の矛盾が起つて来る。或いは我々の予定通りにまだ行つていない、そういつたこともございます。又今年度におきまして、自由貿易に転換するという大きな一つ考え方、例えばローガン構想と一応言われておりますが、昨年の十二月乃至一月から出発しておりまするこの貿易の関係、特に輸出増進等の考え方におきましても、この数字を見ても一月の段階においてはこうであつた、二月においてはこうであつた、三月においてはこうであつたというふうに、変化をいたしておりまするように、すべて経済の事象は御承知ように動態的でありますから、その間いろいろの変化がございます。併しこれを或る期間一貫して見ますと、大体においてこの傾向は現実にこうなつて行くものであるという見通しというようなものから考えて進んでおる次第でございまして、勿論我々も全く満足いたしておるわけではございません。できるだけ欠点を補つて参りたいと努力は今日も尚続けておる次第であります。
  95. 森下政一

    ○森下政一君 只今お述べになりました事柄は、私も大体了承はしております。政府といたしまして思い切つたインフレ收束の政策を実施に移した。従つてその間多少この矛盾したような現象が起るということは回避し難い。但しさようなものが起つたときにはそれぞれに対して善処して行くべきものと思う。併し尚今日インフレがこれで完全に收束したものとして安心はできないから、二十五年度も二十四年度から一貫して超均衡予算を組んでおるのである。併しながら只今おつしやつたように、例えば公共事業費を殖やすというような部分々々においては多少二十五年度は飛躍したところの政策も織込んでおる筈だと、こういう御説明なんです。それは私にはよく分るのであります。ところで私のお尋ねしておるのは、現在起つておりますところの日本経済が本当に窮地に追詰められたというふうな印象を受けます数々の好ましくない現象、現に農村は非常な窮乏に喘いでおる、現に中小企業は日に増して倒産するものが多い、従つて失業も部分失業或いは完全失業が段々増大して行く。こういうふうな現象というものは、然らばインフレ收束政策を思い切つて断行して行く上において止むことを得ないところの矛盾と言えば矛盾と言い得るような現象であつて、これは二十四年度予算を実施するに伴つて必然的に起つて来るであろうことをすでに予想しておつたのだと、こうおつしやるものと理解していいのでありますか。
  96. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 只今おつしやるような農村或いは中小企業等におきまして特段の事象が起つておる、殊に失業問題等について一体それを初めから予想しておつたかと、こういう御質問と思いますが、我々もこの我々の実行いたしまする政策の中でできるだけその犠牲を小さい点で止めて行きたいということはいつでも待望をいたしておるのでありますが、勿論初めからそういうものを起つて来るだろう、起つても構わないというよう考え方は毛頭持つておりません。やはりできるだけそういうことが起りましても軽徴の程度で收束でき、或いは解決ができるということを念願しながらともかくも実行に移しておる次第でございます。
  97. 森下政一

    ○森下政一君 只今安本長官のお答えによると、初めから中小企業は倒産する、或いは農村が窮乏化する、従つて失業者が増大するであろうということを望んでもいなければ、期待もしていない。併しながらそういうふうなことは成るべく回避したいので、これらに対してはそれぞれ善処する、又現にやりつつあるのだというふうな答弁と拜承したのであります。そこで私は二十五年度の予算というものを、今我々がこの予算に対する態度を決めるに当つて政府に望みたいと思いますることは、すでに中小企業の倒産であるとか、或いは農村窮乏であるとか、或いは今日のように、見るがごとき滯貨の増大であるとか、失業の増加というふうな現象は政府としても決して起ることを望んでいないと言われる。若しインフレ收束の強硬政策を実施するためにかような現象が二十五年度においても相次いで起るのだとするならば、これはできるだけ回避するという策を採られることが賢明だと思う。私自身の意見だけではない、もうすでに恐らく政府の各閣僚も御存じの通りに、今日もう世間一般がなぜかような好ましくない経済事象が相次いで二十四年度末に累積するに至つておるか、二十四年度予算を実施しまして漸く半歳を出たか出んくらいですでに金詰りの声は相当頻繁になつて参りました。殊に昨度の暮には相当深刻なものがあつた。本年になりましても一——三月の徴税恐慌によつて金詰りというものは更に深刻の度を加えて参りまして、一向に緩和されていない。政府が、中小企業が倒産するというので世間に非難の声が多くなつたに従いまして、急遽泥棒を手て繩をなうような恰好で、昨度末にも預金部資金百億を市中銀行に預託する、度末の大晦日前僅かに一週間ぐらい前にさような政策を断行されて、如何にもこれによつて年末資金等を中小企業に潤沢に廻したかのようなゼスチユアだけをお示しになりましたけれども、恐らく政府自体が今日どういう実績をそれが挙げたかということはお分りになつておる筈でありまして、さようなゼスチユアに終りまして、実際にはこれによつて救済された者は極めて僅かのものであるというふうなことから考えて見ますると、二十五年度が二十四年度を一貫して同じ方式の予算が今編成され、成立を見んとしておるというときには、政府といたしましてこの際二十四年度予算を実施いたしまして、相次いで起つて参りました政府も好ましくないと思つておりますような経済現象を極力回避するだけの態度をおとりになる必要があるのじやないか、こう私は思うのでありまして、恐らく安本長官も只今お答えになりました御趣旨において、私の言うことに全幅的に御賛成下さるのじやないかと思うのであります。そこで一体こういうような現象が予算編成当時に全く予想されていなかつた外部的の事情に禍いされて起つたものであるか、或いは予算それ自体を実施するに従つて必然的に起ることを余儀なくされておる、運命づけられておるところの現象であるかということを政府自体が、自身の極めて謙虚な気持になつて一歩退いて反省をしなければならないことと思います。もうすでにこの予算委員会でも論が殆んど盡きるくらいに論議されたと思うのでありますが、一つ例を取つて見ましても、債務償還、これが多過ぎる。二十四年度において莫大なる債務償還をやるということのために国民のあらゆる購買力というものを吸上げる、見返資金もその中に入れる、見返資金と雖も国民の懷から出たものに外ならない。これをアメリカから與えられておるというに過ぎない。そういうただ洗い浚いの財源を以ちまして、そうして債務の償還に充てる、債務の償還をするということは、何も将来の健全な財政を残すという意味において無意味なことであるとは思わないのでありますけれども、非常に弱体化しておる日本経済にただ債務償還だけに重点を置いた予算を編成して、これを強行するというところに私はものの行過ぎというものがあるのではないか、こういうふうに考えられる。若し二十五年度予算も同じような方式でやる今度の予算が成立するということになりますと、千二百億というところの債務が償還されることになるわけでありまするが、仮に一般会計からする分か、或いは見返資金からする分かそのいずれかを債務償還に充てることなしに別な部分にこれを割愛するということにするならば、余程私は様相が変つて来るのじやないか、二十四年度予算を実施したことによつて今日起つております、而も政府の政策としていろいろ論議の対象になつておるのでありましようが、もう一つ私共が、極端に言えば政府が非難をされておりますところの今日の好ましくない諸般の経済現象というものが只今申しますように、債務償還の一部を割いてこれに充てられることによつて十分解消するところの方途が行われるのじやないか。ところが若し二十五年度予算において政府が今準備しておられる通りに千二百億の債務償還を断行しようということを強行されるということになりまするというと、中小企業の倒壞は今日以上に深刻なものが出て来るのじやないか。農村の窮乏ももつと拍車をかけるのじやないか。従つて失業者が殖えて来るのじやないか、そうして政府がまだ残つておるかも分らんというインフレの芽は完全に摘むことはできるかも知らんけれども、そのことのために国民が甚だ迷惑するところの事態が、今日以上に深刻なものが現われて来る虞れが十分にあるということを考えて見ますると、政府は私は寛容な襟度を以て、謙虚な気持を以てこれを反省せられて、ここに政策の一部の転換をやられるだけの勇気があつてこそ、私は自由党が天下に迎えられるときが来るのだというふうに思うのであります。若し債務償還が、この莫大な債務償還が、本年度についで来年度も行われる、而もそれが日銀手持ちの国債の償還ということになれば、恐らく通貨の收縮になつてしまうでしよう。或いは預金部の持つておるものということになりますならば、或いは市中銀行の持つておるものということになるならば、一時手許資金が殖えるかも分らんけれども、この手許資金というものを預金部が活用するということになるならば、非常な制限を受けておることは言うまでもないことである。而も先刻も申しましたように、中小企業の倒壞を防ぐとか、或いは年末融資に充てるとかいうふうな措置は講じられましても、これは比較的短期間の融資でもあり、手続きも煩瑣であり、而も末端にまで滲透しないということのために、政府が庶幾されるような、本当の意義のある活用がされていないために、中小企業者は、その恩惠に浴さないということになつてしまう。市中銀行のごときは、先般もこの予算公聽会で、金融機関の権威者を招いて意見を聽いたのでありまするが、少々の債務が国にあるからといつて政府はなぜ恐れるのであろうか。我々の手許に、又二十四年度に引続いて二十五年度に千二百億も債務償還が行われるらしいが、我々の手持公債に対して償還が行われるということになれば、資金がダブついて来る。国債は銀行の立場からすれば有力なる預金準備である。これが償還されなくなるということになれば、我々はこれに代るものとして的確なる商業手形に行くか、或いは一流の社債を買うかというような途を考えなければならんことになるのであつて、これは非常に判断に迷うことになるので、むしろ国債を持つていたい、銀行業者自体がそう言つておる。それにそこへ資金を持込んで行こうということになり、又そのダブついて来た資金というものが、一体中小企業に流れて行くかといえば、或いは産業に環流して来るかといえば、これは甚だ疑問である。産業に仮に環流するといたしましても、極めて確実な一部の大企業だけがその恩惠に浴するのであつて、中小企業に対しては、固く門戸が閉されるということは、火を睹るよりも明らかなことである。今日までの実績がこれを証明しておるということを考えて見ますると、二十五年度予算をこのまま成立せしめて、これを政府が執行するということになるならば、金融面におけるところのデフレ的な傾向というものは、今日以上に深刻の度を加えるということが予想される。その結果なにが起るかといえば、中小企業の倒壞がより以上に極端になるじやないかということが惧れられる。そうであるならば、先に大蔵大臣は一人の倒産する者もなからしめたい、一人の自殺する気の毒な中小企業者もなからしめたい、これが私の本心だということを国会において声明されましたが、さような心持を持つておられるところの現内閣が、若しこの予算をこのまま執行して行くということになるならば、只今私の挙げました債務償還の点一つだけを挙げて見ましても、政府がなからんことを希うておいでになる中小企業の倒産が今日以上に深刻なものを加えると私は思うのでありまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう点にインフレ抑制だけに馬車馬的に進むことなしに、多少国の財源というものを割愛して、而して二十四年度の実績に照らして回避しなければならんと思うところの即ち中小企業の倒産、失業者の増大といつたような中小企業、労働者、こういう面にのみ多くの重圧を加えるような結果を二十五年度に再び繰返させないために、これを回避するところの政策を執るということを私は政府の賢明な方途であると考えるのでありますが、安本長官如何でございましようか。
  98. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 中小企業或いは失業者の問題、その他農業者の問題、いろいろと御説明がございますように、インフレ收束に向つて参ります間における犠牲の問題についてお話がございました。で私共もできるだけ、先程申上げましたように、それが軽微に終るように、できることならなからしめたいということではございますが、今おつしやいますよう債務償還の千二百億について、これを何らか別な形でというふうな御意見でございますけれども、私共といたしましては、この債務償還を履行いたしますことによつて、産業の面におきまして、なかんずく中小企業等に対しましても、日本の中小企業が大企業に属する関連産業であるという観点から、これが金融として相当な効果を挙げて行けるものというふうにも考えておりまするし、又この予算が実行せられることになりますれば、その運用の面におきましてできるだけの配慮をいたして参りたいという考えでございますが、併しながら只今のところこの予算を変更して千二百億の債務償還なるものを別な形で別な方途に向けて行くというよう考えは、只今のところ持つておりません。従いまして予算成立の後におきまして、十分おつしやるような面をも考慮して、運用の面でその方途を講じて参りたいと考えておる次第でございます。
  99. 森下政一

    ○森下政一君 只今の債務償還の点につきましては、これは方針を変える考えがないというお答えを頂きまして甚だ私は失望するものであります。ということは、先刻来申しますように、二十五年度予算が成立して、このまま執行して行かれることになると、二十四年度の実績に徴して今日以上に日本経済が窮境に陷つて行くのじやないかということを惧れる、これを遂に回避することができんということになる虞れがあるとかよう考えるのであります。敢えて政策の転換とまでは申しませんが、然らば安本長官の御所管である価格調整費の削減の点についてもう一遍御所見を質したいと思うのでありますが、二十五年度におきましては前年度の千八百九十二億に対して、約九百億というものが価格調整費として計上されておる。八百九十二億の減少ということになつております。ところで大体この予算で予想されておりますものは、鉄鋼の国内及び輸入補給金、肥料の国内及び輸入補給金、それからソーダの国内補給金、それから食糧の輸入補給金、大体こういうものが予算に計上されて残るよう了承いたしております。この中でも来年の三月まで残るというのが、鉄鋼の国内補給金の中の銑鉄、それから輸入補給金の全額、肥料及び食糧補給金の全額、こういうものが大体来年の三月まで残るのであつて、その他のものは漸次削減されて行くというふうに了承いたしております。そうなつて来ると、漸次この補給金の削減に伴いまして消費者価格が引上げられて来る、こういうことになるのであろうということが容易に予想されるのであります。例えば国内の銑鉄が七月からは昨年十二月の価格の七五%鋼材も同じく七五%の価格の引上げになる。肥料は八月から恐らく七五%の引上げになる。そういつたように価格補給金を削減して行くということは、勢い物価を上昇せしめるという影響をもつようになると思うのであります。而もここで私共が注目しなければならんと思うことは、概して産業基礎資材だと思われるものがだんだん高くなる。そこで大企業といえども、原料高の製品安というような状態に、二十五年度は見舞われて来るのじやないかということが考えられる。そうして補給金を削減することによつて物価が上昇して来るのを、強力な政府の低物価政策で抑圧するという努力が高まつて来るに従いまして、これらの原材料を購入します関連産業であるとか、或いは下請産業というものは必然的に強い合理化をしなければならんということになる。企業それ自体の合理化ということが強要されるということになつて来る。その合理化に従えるものはいいけれども、従えない、従うということのできないものは資金が遍迫する、コスト割れになる、或いは売買代金が凍結する、滯貨の重圧を受けるというふうなことになりまして、企業それ自体が危くなつて来る、企業それ自体が倒産して来る。そうなると勤労者に対しては失業が待ち受けているということになつて来る。企業自体は潰れる、破壞するということが待ち受けておるということになる。そうすると二十五年度予算を価格調整費の面でも、若しこのままこれを執行するということになりますと、企業合理化に成功しない限りにおきましては、恐らくこの予算のために深刻な影響を受ける。かような好ましくないところの現象が随伴するということが予め予知されるというような気持ちがするのでありますが、そういうことにはなりますまいか。
  100. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) おつしやるように鋼材であるとか、或いは肥料、それからソーダ灰、或いは又食糧、そういう主な日本の重要資材、殊に食糧等につきまして、価格調整費が見込まれているのであります。併しながら八百二十二億を減ずるというようなことによりまして、そのそれぞれの物資が値上りを生ずるであろう、これも勿論私共予想しておるところでありますが、併しながら一方におきましてそれに伴つてともかくも生産が上つて行く、そうして消費関係も落着いて来る。こういうことになりますれば、何とかこれをいずれかの段階において吸收するということの目的で、これから作業をし、操作をして参りたいという考えでおりますが、併しながらその具体的な問題になりますれば、尚いよいよこれを外すというときに、予めそういう点を予想して私共の作業を執行し、結局今おつしやるような大きな変化というものをなからしめようというよう考えでやつておりますが、そういう場合において我々の従来の経験と、そうしてやつて参りましたその結果から見て、大体これを吸收して物価体系そのものとしては必ずしも大きな変化なしにやれる、物価体系そのものとしては維持できるであろうかどうか、こういう問題も目下検討中に属しておりますので、尚将来の点については物価庁第一部長が参つておりますから必要でございますればお答えを申上げたいと思います。
  101. 森下政一

    ○森下政一君 先刻私は債務償還の点について、政府が方針をお変えになることができないかということを、私は本当に赤誠を吐露して政府の反省を求めたのですが、御同意が得られなかつた。  もう一つ私は安本長官に質して置きたいと思います。それはもうこれも口が酸つぱくなる程、この委員会でも論議の対象になつたと思いますが、給與ベースの問題であります。私は惜しいことに現内閣がインフレ抑制に成功を收めておりながら、今日のような経済界の混乱、或いは可なり嚴しいところの労働攻勢の矢面に立たなければならぬということは、一つ債務償還の行き過ぎということを反省しないからだということ、もう一つは給與ベースの改訂をしないということを断言して、これを金料玉條のように守らなければ、現内閣の命が断たれそうな危惧をしておいでになる、この二つが一番今の内閣にとつて気の毒な頑固さだと思うのであります。給與ベースの改訂の問題につきましては、もう世間に議論が盡きてしまつておるのであると思うので、公務員法が改正されて、公務員の持つておりますところの罷業権、団体交渉権というものが奪われる。その代りに生活が保障される、保障しなければならぬところの義務が政府に負わされておる、こういうふうに誰しもが了解しておる。而も人事院は、物価が或る程度上昇すれば、政府に勧告しなければならぬというように義務付けられておる、人事院が現在の公務員の給與ベースというものは妥当でないという意味の勧告をしておるに拘わらず、これを顧みようとなさらない。若しこれを顧みるということになれば、結局賃金と物価の悪循環が生れて来るというふうな見解の下に、頑としてこれに応じようとなさらない、或いは政府は二十四年度から一貫したお考えだと思うのでありますが、公務員のベースをここに据え置いておくことによつて、却て民間の給與というものを、公務員の給与に鞘寄せせしめる、こういうような意図が盛んにある。その意味におきまして民間給與をつり上げないところの錘りにしようというお考えように思うのでありますけれども、ここに大きな私は政府が反省をしなければならぬものがあるのだ。これはあまたたび論議をいたしましても、現内閣の反省を促さなければならぬという問題だと思うのであります。人事院側の見解と、政府の見解が全くこの点については対立してしまつておると思うのでありますが、人事院の見解では、今日人事院の勧告する程度の給與ベースの引上げが行われたといたしましても、これがいわゆる物価と賃金の悪循環などということにはならない。そういう影響を来さないのだという見解を持つておる。ところがかたくなに政府はそうではない。やはりこれがインフレを昂進して行くところの一つの素因になる虞れがある。再び消費インフレという現象を起すところの虞れがあるのみならず、物価は大体横這いであつて、むしろ将来下向きの趨勢も強くなるのであるから、民間の給與こそ官公吏の給與にしわ寄せをされるべきものであるというふうな見解を持つておいでになる。そこで完全に対立しておつて、不幸な今日の事情を招いておると思うのであります。このたつた一つのことにこだわつておられることのために、多くの官公吏を犠牲にしてしまうておいでになるわけではないか。それだけではなくして、政府が今日諸般の政治を遂行される上におきまして、非常に騒然たる世情を誘致することに、全く政府責任を負わなければならんような立場に立つておいでになる。裁定に対するところの政府態度のごときも、結局この給與ベースを改訂しないと言い放つたこの言葉を守らなければならんということに、かたくなにとらわれておいでになるということが、今日の恐らく政府を支持する自由党の諸君でも、何とかならんかと思われておるであろうと思う程好ましくない現象が相次いで起つておる。今日のいわゆる三月労働攻勢、更に若し今日目的を貫徹することができなければ、五月攻勢などということが、早くも口走られておりまするが、悉くその原因はここにある。而も政府が、若し先刻私が申しました債務償還に対するところの行過ぎを一部是正するという態度をおとりになりまして、仮に見返資金から充当される筈の五百億は債務償還に当てることなしに、これで給與ベースの改訂に努力する、或いはこれで中小企業に対する、一半を金融のために当てるというふうな態度をおとりになれば、たちどころにこれは解消して行くのじやないかということを考える。例えば給與ベースの問題でも、大蔵大臣の答弁では常に、国家の公務員だけではない、地方公務員もある、これらを包含すれば年額六百億を必要とするということを言われるけれども、人事院の勧告通りにすればそうなるかも知れませんが、これは公務員に対して国家の実情をお説きになれば、必ずしも人事院の勧告通りでなしに納得の行く、妥協の求められないものではないと私は考える。そうすれば仮に二百億の金があるということにすれば、優に解決が可能じやないかと思う。而も二百億という別のものが又余つて来る。そうしてこれを或いは中小企業の專門的な融資に充当するというふうな途が開けるということになりますならば、今日二十四年度予算を実施したことによつて予算実施に必然的に伴つてつたと思われますような、好ましくない経済事象というものはたちどころに解消されて、誰が一体自由党内閣を攻撃するものがあるか、誰が自由党内閣を怨みに思うものがあるか。而もこれによつて心配される程インフレというものが又再燃して来る気ずかいがない、銀行業者自身、專門的な堂々たる一流の銀行の頭取さえもが、なぜ政府がさような債務を恐れるか、我々に償還して貰つて、我々が公債を償還して貰つて、我々はこれに代る国債以上の預金準備を求めるのにむしろ判断に迷うといつておるように、その債務を一応償還することを止めて、そうしてかようなことに充当されるということになるならば、今現内閣にとつて一つの大きな重荷になつておる給與ベースの改訂問題が吹つ飛んでしまう。綺麗に水に流して解決ができる。誰も彼もが喜ぶ。中小企業もお蔭を以て、これによつて資金も得て、倒産せずにその商売を継続して行くことができる、その事業を継続して行くことができる。誰も自由党を恨むものがない。礼賛こそすれ、これを恨みに思うものもない。而もこれによつてインフレも別段助長されないのだということであれば、而も二十四年度予算が鮮かに成功して、インフレが收束しておる、或る程度收束したこの際に、債務償還を一時緩和して、而して給與ベース問題の解決をするということは、政府にとつて遥かに賢明な策であると思うのであります。そこで私は全額債務償還を一部控えられる御意思はないかと尋ねたが、これはそういう方針を変える考えがないと言われた。給與ベースの問題も二十五年度も一向お変えになろうとしておられないようでありますけれども、この点も頑として、ベースを変えないというた言葉にかたくなに執着しておられなければ、政府の面目にでもかかわるとでもお考えになつているのか、この点を私は質したい。かように思うのであります。
  102. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 給與ベースの問題と、それからいわゆる債務償還に廻すところの見返資金の五百億について、いろいろと御意見等は承わりましたのでありますが、現在のところそういうふうな、おつしやるよう考え方はいたしておりませんので、実は政府が物価は横這いであると、こういうふうなことを申しておるのも、大体におきまして根拠がございますので、と申しまするのは、大体御承知ようにC・P・I等の指数を御覽になりましても、十月とか十一月とかはちよつとへつ込んでおりまするけれども、十二月一日以後の数字を見ますと、一三五・五というような数字も出ておりますようなわけで、政府が横這いと言つておりますのは、そういう点から言つておるのであります。併しながら政治とか、経済の実態というものの動きに対しては、今後共十分我々はこれについて検討いたしまして、運用の面等においても、できるだけ善処して参りたいと考えます。併しながらベースの変更で、先程お話がございました五百億の見返資金をこの公務員の給與に賄う廻すというような点につきましては、廻すというような点につきましては、将来の検討の問題としては、考える機会があるかも存じませんけれども、只今のところ、さようなふうには考えないのであります。
  103. 森下政一

    ○森下政一君 予算の総合的な問題で、安本長官に質すべきだと思うことは、大体これで終つております。外は他日に移して質問を続けたいと思います。私の質問を一応打切ります。
  104. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 今大蔵大臣が来ましたが、党代表の質問をしますか。
  105. 木下源吾

    木下源吾君 安本長官にまだ質問があります。
  106. 羽生三七

    ○羽生三七君 私が安本長官にお尋ねしたいことは、ただ一点だけであります。それは先日の私の本会議における総理大臣に対する緊急質問、それから二十二日の当予算委員会におけるやはり総理大臣に対するお尋ねで、私は、日本の政府が将来の日本の経済の計画を想定して、長期の経済計画を立てる必要がありはしないかということを質したのであります。これにつきましては、先程帆足議員も同様の質問をされておつたようでありますが、私はその際総理大臣に質したことをここで繰返そうとは思いません。併し要点だけを簡單に申しますというと、要するにドツジプランによつて日本のインフレーシヨンは收束せしめられるであろうけれども、併し日本のインフレーシヨンが満洲事変以来二十年に亘る累績したインフレーシヨンであるから、これが切られたあとの日本経済は、恐らく昭和六年当時の国民生活水準に戻るであろう。そこでその間に、世界各国は、厖大な国家資本を投下して、そうしてそれぞれ産業の高度化を図り、或いは近代化を図つて来た。内にあつて、日本は逆に沢山な人口の増大を招来し、且つ又植民地的並びに半植民地的な支配をして来た朝鮮、満洲、台湾、樺太等を失つてしまつた今日、たとえインフレーシヨンが一時的に收束せしめられても、或いは又且つ一部の産業が国際経済に鞘寄せさせるために、突角陣地のような特別の企業の合理化をされても、それを発揮するところの日本の国民経済全体が脆弱であるならば、必ずしも日本の経済の再建にはならんであろう。そういう意味で、長期の一つの計画を立てて、それにマツチさせるように個々の逐年の経済計画を立てて行く必要があるということを私は申上げたのであります。それに又随伴して、私は電源の開発、或いは今森下君の言われたように、給與ベースの改訂の問題、或いは住宅対策等の問題を申上げましたが、特に私は電源の開発をこの前強く指摘いたしました理由は、生産コストの中における電力コストの比率を逓減するために、日本の電力開発をやるというだけの意味ではない。これももとより重要でありますが、私の考えでは、日本はすべたの資源を失つてしまつたが、水力だけは持つている。これを早く開発することは、私は今申上げましたように、生産コストにおける比率を逓減するということもありますけれども、日本の国民生活を漸次高めて、その結果国民の一人々々の生活をいろいろな角度で文化的になるという面もありましようが、私は電力の開発によつて、例えば農村の中の家庭の個々の生活を單純化すること。これに非常な大きな使命を私は感じておるのでありまして、多少抽象的な意見になるかも知れませんけれども、兎に角日本の農村の家庭あたりにおきましては、家庭の主婦が殆んど炊事とか、台所の仕事に大部分時間を取られてしまつて、恐らく新聞の論説なんか読むという時間はありません。満洲事変或いは支那事変、大東亜戰争と参りましたけれども、政府のあらゆる政策に追随して何ら国民の中にこれに対する批判の起らなかつた大きな理由の一つは、独裁的指導者に指導されたということもあるでありましようが、やはり批判をするだけの能力を家庭の一人々々が持たなかつた。殆んど日常の仕事に忙殺されまして、新聞の論説はもとより雑誌などを見まして、世界の情勢や、或いは日本の刻々に移り変つて行く社会情勢や、経済や、政治の状態を批判するだけの能力も又余裕を持つておらなかつたことが非常に大きな原因だと私は思つておる。そういう意味で、日本の経済水準を高めるということは非常な大きな問題でありますが、家庭の生活を簡素化する。つまり資源も何もない日本、国際的に言つて見れば貧弱な国でありますが、このことがすべての国民に普及されますならば、徹底されますならば、日本の対外的な、外国と較べて見まして非常に劣勢になつておる国民経済というものが、相当私はカバーされると思つておる。そういう意味も含めて、私は電源の開発を言つておるのであります。その他のことは申上げませんが、そういうようなことは要するに一種の長期計画がなければ立てられないのであります。ところが総理大臣は、すでに安本長官も御承知ように、一年以上の経済計画を立てるということは考えておらないのみならず、それは却つて国民に迷惑を與える。そういう御答弁をなさつたときに、與党方々は、速記録の中にもありますが非常に拍手をされておるのであります。長期計画を立てれば、どうして国民に迷惑を掛けるか。尚又私のそういう長期計画を立てる必要がありはしないかという質問に対して、総理大臣はアメリカのような資源の豊富な国であればできるが、日本のような貧しい国ではできない。これは反対であります。日本のような貧しい国であればあるだけに、或る程度の長期計画を立ててこれにマツチするような個々の政策を立てて行かなければならない。私はそういう意味で、どうしても相当な、何も十年計画というような長いことは申上げませんが、本年一年限りの計画ということでなしに、相当長期の経済計画、計画経済とは敢えて申しませんが、経済計画を実現する必要がありはしないかということを考えておりますが、これに対しまして安本長官は、総理大臣と同様に、一年以上の経済計画は立てられないとお考えになつておるかどうか。その点を一つお伺いたします。
  107. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 長期の計画は私共もできれば必要だと思います。併しながら長期計画と申しましても、我々の経験いたしておるところではその間にやはり時の経緯と言いますか、その時の情勢に従いまして、なかなか実際が伴わない。そういうことが起つて参りますれば、やはりそういう点は改めなければならんということもございますし、又長期計画等におきましても方針といいますか、その根本的な考え方というものに対しても、やはり多少変つて来るということも考えなければなりません。そういう意味で、我々としては一応見通しが可能である。抽象的な言い方でありますけれども、実際にこれをできるだけ努力によつて促進するような計画というものを決して我々は立てることに吝かではございません。従つて現在経済安定本部におきましても、従来できておりまするところの五ケ年計画というようなものも参考には勿論いたしておりまするし、且つ又現在におきましても一年乃至二年くらいな先の見通しの可能な計画は段段と努力して立てつつある状態でございます。これを極めて有効に、而も我我の希望のように実現して行きたいということは、我々も念願しておる次第でございますから、決して長期の計画無用である、或いはそれは全然やるべきものではないというようなことは考えておりませんけれども、我々は成るべく実際に即して行けるというような点に重点を置いておりまするために、今申上げたような方針で臨んでおる次第であります。
  108. 羽生三七

    ○羽生三七君 一年以上の計画が立てられないという場合、必ずしも立てないわけではないが、参考にしておるというような程度の御答弁でありましたが、仮に一年だけの計画であるならば、私は安定本部は要らないと思う。大蔵省だけで結構だと思う。大蔵大臣だけでおやりになればよいと思います。経済安定本部を置いておる限りは、やはり或る程度の見通しを持つた経済安定本部であると私は考えております。これにつきましては先日も申上げましたが、まだ農業の恐慌が必ずしも来ておらないアメリカにおいて、或いはアメリカから帰られた大和田氏、或いはアメリカから帰られた国会議員の波多野氏の報告を聽きましても、或いはフラナン・プランとか、或いはその他の案を以て相当多額な……波多野氏の報告によるというと数十億などというような、私はそれ程多額のものではないと思うが、相当農業恐慌防止のために一応のプランを立てておる。或いはイギリスやフランスのような国におきましても厖大な国家資本を投下して、そうして産業の再建を図つておる。その他世界各国どこの国でも相当の計画を以て進んでおります。若し日本が敗戰国であつて総司令部がおるから計画が立てられないというのなら、又これは話を別の角度から考える必要がありますけれども、そういうことはお答えがなかつた。要するに現実の條件とは別に客観條件がいろいろ狂つて来るから計画が立てられないというけれども、それでは世界各国の計画は意味をなさない。ところが皆成功しておる。又成功するよう努力をしておる。そうでありますから、ここで一年以上の計画は必要がないということであれば、私は安定本部無用だと思う。大蔵省でおやりなさい。おやりになるならば積極的に安定本部を強化して、今の機構がそのままよいとは申しませんが、先程帆足議員も指摘されましたように、安本の計画の五ケ年計画が極めてアウタルキー的性格が強いというので総理大臣がこれを拒否したということも、新聞で当時聞いておりますけれども、若しアウタルキー的要素が強ければそれを変えて行けばよいのでありまして、計画は飽くまで私は必要であると思つております。そういう意味で、私は飽くまで経済安定本部長官が長期計画不要とお考えになるならば別でありますが、少くともそうすることが日本経済の前途に貢献をするとお考えになるならば、むしろ積極的に、現在の経済安定本部の姿でよいとは申しませんが、更にスタツフを強化して、日本の経済が世界各国の経済に敗けないだけの、或いは又そういうふうに必要なすべての政策、施策を集中し得る程度に経済安定本部機構を強化する必要がある。私はこう考えております。従つて若し長期計画が必要ないというならば、私は安定本部不要論であります。若しそうでなければ前途の長期計画を立てなければならん。むしろ安定本部を強化しなければならないと私はそう思つております。これに対して安定本部長官、如何お考えになりますか。これを伺いたい。
  109. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 一年くらい前だけのことを考えて、予想でやつて参ります場合には、経済安定本部のような機構は必要がない。これはお説御尤もでありまして、私共もそうかと思います。併しながら今後我々がすでに建設五ケ年計画とか、いろいろな、五ケ年計画とか、七ケ年計画とか、十ケ年計画とかいろいろある。それは私共もよく分つておりますけれども、我々としてもこれが一応安定して参りますれば、相当なやはり必要な計画性、そういうものはあるべきだと思つておりますが、併しながら現在のところ作業しておりまする範囲を率直に申上げた次第でありまして、尚国土総合開発計画というようなことになれば、ものによつては十ケ年かかるとか、或いは二十ケ年かかるというようなものが開発計画等にはあると存じますが、今後とも十分検討いたしまして、できるだけ必要なものについては長期の計画も樹て、或いは場合によつては総合計画も深く検討いたしまして、我々の任務を果して参りたいと思つております。
  110. 羽生三七

    ○羽生三七君 希望意見を申上げておきますが、国内の個々の政策では、例えば農業政策一つをとつて見ましても、どこに重点を置くかというようなことにつきましては、各党それぞれ意見の相違があります。或いは個々の経済政策について見ましても、それぞれ各党に相違のあるのは、政党のよつて立つ基盤が違う以上これは当然であります。併し日本を永い眼で想定して考えて見た場合に、日本の食糧で言うならば、国内の需要度はこの程度は確保しなければならない。或いは日本の産業、日本の産業水準はこの程度まで持つて行かなければならない。そのためには日本の需給のバランスはこれだけ必要であるというような計画を樹てて、若しこれが日本の個々の政党ではなしに、全政党の力を挙げて、例えば総司令部の了解なり、その他の世界各国の了解を求めるというような場合には、あらゆる政党の協力を求めて政府がこれに当るべきだと考えております。これは一党一派の小さい政策で達成できるものではない。従いまして私は安本が何も個々の経済政策の細かいことまでも立案する必要があるとは思つていない。それは各党の政務調査会等がやればいいのであります。そうでなしに、日本の前途を一応目安にいたしまして、相当国際的にもこれを要請し、或いは相手国の納得して貰えるような必要なる政策を立案して、むしろこれに対しては各政党の全面的な協力を求めて、或いはGHQなり、或いは国際的に関係のある諸国にこれを要請する、そういう態度をとるべきだと思つております。それをやらなかつたならば、実は日本自身に一つの立派な政策を持つてこれに国際情勢をマツチさせることに努力するというのでなしに、向うの立てたものにふだんに日本の政策を当嵌めて行くというふうなことになれば、日本は一体どこに行くと私はいうことになると思います。このことは必ずしもお答えは必要としません。希望意見としてそういう政策を断乎として日本がとらなかつたならば、日本の落ち行く先は、先程帆足委員も言われましたように、恐らくインドネシヤの生活水準にまで下つて来るであろう、私はそう想定しております。そうでなしに世界各国の共通の文化水準を維持し得るためには、その程度の目標を持つて、これに世界各国の協力を求める。又そのためには国内の政党の協力を要求して、対外的に他に要請しなければならない。この意味におきまして、この御答弁は要りませんが、希望條件として申しておきます。
  111. 木下源吾

    木下源吾君 では安本長官にお教え願いたいのでありますが、見返資金の使うのを、あれは安本が計画して主としてやるのですか、大蔵省がやるのですか。どちらですか。
  112. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) これは大体安本が計画を立てまして大蔵省がこの実施面で施行する、こういうことになります。問題はその間にいろいろと話合いはいたしますけれども、形の上ではそういうことに相成ります。
  113. 木下源吾

    木下源吾君 為替レートを設定したことはいうまでもなく、世界の物価水準に持つて行こうとする、そこで当時非常に国内には物価の凸凹がありましたね。コストによつては到底立ち行かなかつた、こういうようなものが随分あつたのですが、これを一体安本の方ではどういう手段で維持したか、そういう業種を、そういう産業を。これを一つお伺いいたします。
  114. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 当時インフレを收束させる。同時に昨年の四月二十五日であつたと思いますが、一本為替レートが設定されました。それまでは御承知通り複数レートでありました。併しその当時におきまして採算の合わないような、輸出不可能のような産業というようなものがあつたかと思いますけれども、ともかくもインフレを收束させるという方の施策と、もう一つ一本為替レートというので、その二つの事柄は極めて重要なる事柄でございましたし、御承知通りそれによつてともかくも一応安定の線に、軌道に乗りかけて来た、こういう過程でございましたので、一方においては合理化を促進するというよう方法によりまして、できるだけ採算に乘つて行くように、この企業面においても努力して頂くような情勢の下にやつて来た次第であります。
  115. 木下源吾

    木下源吾君 非常に抽象的ですが、そういうような採算の合わないような産業もあつたような、何というような非常に軽いのですが、事実はそうじやない。相当ある。この面に対してこういうものを救うというか、それが軌道に乘るようにしてやるためにこそ見返資金が必要であつたのではないですか。
  116. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 企業によりましてはそういうものもあつたかと思いますけれども、必ずしもそればかりではなかつたと思います。
  117. 木下源吾

    木下源吾君 そうすけば当時コストの合わなかつた産業というものは殆んど潰れるか、いわゆる合理化によつてつていると、こういうふうに考えておられるようですが、潰れるか、縮少するか、そういうことになつておるということを御承知でありますか。
  118. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 当時いろいろとこの輸出企業等におきましても努力を拂われまして、その当時御承知通り日本におきましても、いろいろ為替レートについての基準は一体幾らぐらいだろうか、ドル三百円とか、或いは三百三十円じやないか、或いは三百五十円ではないかというような説があつたことは御承知だろうと思います。併しその当時におきましては三百六十円という形で設定せられましたので、一面におきましてはほつとしたような企業も相当あつたと思います。尚それについては進んで合理化を実行したというような企業も相当あつたと思いますし、そういうことによつて採算点を得て、そうして輸出の振興を図つたというような情勢は、極めて抽象的でありますが、一般的な方向であつたと存じます。
  119. 木下源吾

    木下源吾君 一体そういうふうに採算の取れないような産業に対して政府は何らか保護するとか、これに対して手を差伸べたという何か実績がございましたら一つお聽かせを願いたい。
  120. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 経済安定本図として実際に直接どれだけどうしたかというようなことについては只今記憶はございませんけれども、実施面におきまして、例えば通産省、或いはその他の省におきまして、どういうふうなことでございましたか、私は今のところはつきり記憶を持つておりませんが、その方面ではそれぞれ実施面でやつておると考えます。
  121. 木下源吾

    木下源吾君 これは驚くべき話なので、為替一本レートは裏から言えば金本位制に復活したような状態であります。昭和五、六年ですか、井上大蔵大臣がやつた当時でもこの凸凹のためにばたばたと倒れる者が沢山あるために、当時の民情において、生産力において、国民生活の経済状態においてさえこれが維持できないで逆戻りしたのですよ。それ程重要な問題です。今の私の言うところのコストの合わない産業は……。こういうものに対して政府は一本為替レートをやり放しで而もそういうものがある場合には見返資金というものを役立てよう、挺子にしようというようなことが一面において言われておつたのに、それはちつともそういうことをやらない。それは勝手に倒れたのだろう、それは合理化を勝手にしたのだろうというようなことであるから、今日見るように、中小企業というものがもう殆んど四苦八苦でございます。これは非常な怠漫と思うのですが、そういう点に関してあなたはどうお考えになつておるのでありますか。
  122. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 恐らくその当時もできるだけ金融措置を講ずるとか、そういう実施面におきまするところの対策はあつたというふうに思いますが、個々にどういうものがあつたかとおつしやいましたので、記憶はないと、こういうふうに申上げたのであります。
  123. 木下源吾

    木下源吾君 例えば自転車工業であるとか、或いは又ゴム工業であるとか、いろいろあつたのであります。あなたは今白ばくれたつてあきまへんわ。そういうことではありません。沢山あるのですから、そこで私は、これは合理化とおつしやるが、政府はこの合理化に対して何か指導せられたことがありますか。これはただ勝手にその人達の自由に倒れることに、自由に合理化することに任せきりであつたか、指導があつたか、それをお聽きします。
  124. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 見返資金につきましては、それぞれ昨年度におきましては、私企業についても出しておりまするが、何しろ昨年におきましては大分ズレておることもありますが、御承知通りに、こちらは四月から始めておりまするけれども、七月以降というようなアメリカの予算というよう関係もありますために、非常にズレた。そういうことのために、或いはおつしやるような及ばなかつたものが相当あつたかとも思います。併しそれは私としては、今ここに資料を持つておりませんので、抽象的に申上げておる次第であります。
  125. 木下源吾

    木下源吾君 一体合理化ということについて、如何に合理化しても、ただ口だけで合理化と言うてもいけないのですが、只今の産業の合理化は全部労働者の方に皺寄せして来ておる。その点をお認めになるのでございましようか。いわゆる企業の合理化、産業の合理化は、みんな労働者に皺寄せしておる。これはどうですか。
  126. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) これは企業一般から考えまして、資本とか特に労働とか、或いは金融とか企業経営の実態、そういうものにそれぞれそういう点はあつたであろうと思いますが、必ずしも労働のみにこれが皺寄せされた、そういうふうには考えておりません。
  127. 木下源吾

    木下源吾君 考えではない。私は実例を申上げますが、今の函館ドツク、あのドツクが大湊において二百数十名の馘首をやつております。調べてみまするというと、函館のドツクの生産高の一割もこちらへ割当ればそんなことにならないのです。あなたの言ういわゆる元請けにさえやれば下に流れるんだ、こうおつしやるが、ちつとも下へは流れてない。却つて元の方だけを維持するために、下の方をみんな首切りをして潰してしまうのです。これは私は考えるのです。実際のことをいくつもあなたに申上げるのだが、現内閣の今の資金の放出というのはそういう方向なんです。とに角みんな労働者が全部負担しておる。インフレのときもそれはその通り、デフレのときもその通り、何と言つたつてこの娑婆は、あなた方が内閣をやつておる以上は、どちらにしても首を絞められるようにできておるのだから、これは私から申上げるまでもない。何とかしてこれを助けなければならん、これを助ける施策をやらなければならない。そこで助けるというのは、お考えになつたら分るでしようが、できるだけ戰争中の荒廃した設備というものを近代化することでございましよう。勿論その外に技術の面もございますが、この近代化するために、それが労働者だけに皺寄せしないで、生産を維持し、みんなが食べて行かれるのでございます。それをやらないから、先程も羽生君が計画のことを言つておりましたが、この資金をいわゆる設備資金でありますよ。当座の金ではそういう改善はできません。そこで私はお伺いしたいのは、これらに対して設備資金、いわゆる長期資金というものを、重点的にお考えになつて実施しておられるかどうか、それをお聽きしたい。
  128. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 設備の近代化であるとか、或いは老朽化したものの設備を改善する、これは私はもとより、私の施政方針にもそういうことを申上げておりますし、我々はそういうことを考えて、できるだけ資金を設備の上で改善して行くために使う、そういうことには努力しておる次第でございます。併しながら、なかなか我々の思う通りには行つておらんとは思いますけれども、見返資金等につきましても、決してそういう点を無視してやつておるわけではありません。やはりそういう点も勘案をいたしております。併しながら企業によりましては、例えば造船等によつてその一つのケースを採つて見ますと、仮に一千万円の資金をそれに投じたといたしますれば、大体その三分の二は関連産業に廻つて行き、三分の一がそれ以外の仕事の方に融通されて行くというような形のように自分は承知をいたしておりますが、併しながら企業によりましては必らずしもさようには参らんということは、これも分るのであります。問題は、只今おつしやいましたように函館ドツクでありますか、この問題は、勿論私はその点についてはよく存じませんけれども、大体日本の産業というものは、九七・八%まではともかくも中小企業である、こういうのが一般意見でございます。又そういうものであろうと思います。従つてそういう場合に、どういうふうにこの資金を投じたら最も適正に行くだろうか、これはなかなか私はむずかしい問題だと思いますが、一応関連産業に廻つて行くようにという意味では、主たる産業に投じて行くということが一応考えられるであろう、併しながらそれのみでは必らずしも満足でないとは我々も思います。ところが現在、戰争から引続いて終戰以降、長期資金を投資するということについて、或いは設備資金等について相当隘路があるということは、恐らくお認めであろうと思いますが、そういう点について、我々の思う通りには行つておりません。併しながら今後とも長期資金と設備資金の近代化とには重点をおきまして、今後その方面努力して参りたいと考えております。
  129. 木下源吾

    木下源吾君 率直に、そういう設備資金というものには、あなたの方は十分でないというが、十分でないところではない、全くない。このことがいわゆる問題なんです。ですから幾らおつしやつても、現実がこれを証明しておるのでありますから、私はこれ以上そういうことをあなたに追及して見ても、忙がしい体だから、考えてばかりおられるのだろうが、併し見て歩かれたら直ぐ分ると思いますから、追及いたしません。  一体現政府は、ドツジ・プランによつて日本の経済が安定するとお考えになつておるのですか。
  130. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) これは御承知通り、先程いろいろ御意見がございましたが、ともかくも二十四年度におきまして、戰争から戰後に亘つて長い間のインフレの状態が一応收束の形を取つて来た、これは大きな功績であるという御意見がございましたように、私共も、二十四年度の超均衡予算と言われておりますが、ともかくも均衡予算によつて日本の経済はインフレの收束の過程に入つて来た。併し尚これで以て我々は安心してよろしいとは考えませんけれども、そういう状態にある。そこで他の生産とか消費面に対しても、国民経済全体として安定したかどうか、こう言われるならば、或いはまだそこに至る道程である、こういうふうに考えます。併し漸く軌道に乘つて来たのではないか、こういうことは自分は考えておる次第であります。
  131. 木下源吾

    木下源吾君 漸く軌道に乘つて来た、今のお話を聞くと、均衡予算だから軌道に乘つて来た、均衡予算だからインフレを止めることができた、今ちよつと言葉の先に超均衡予算とこうおつしやつたのですが、ここに私は大変な問題があると思う。均衡予算だけならば、あなたのおつしやるようなことも承つて納得行くが、現内閣のいわゆるこの予算というものは超均衡予算でございましよう
  132. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) これはやはりこの二十四年度の予算に対する見方の相違ということにもあると思います。世間ではいろいろ超均衡予算とか言つてそういう言葉もございますが、兎も角も予算の均衡ということを第一の重点として考えて来た、それが同時にインフレを收束するゆえんである、こういうことにおかれたことは事実であると存じます。
  133. 木下源吾

    木下源吾君 私は何故超と言うかといえば、先程我々の同志が聽いておつたように、債務償還を期限も来ないものを拂うというのが私は超だと言う。期限が来ているのと利息だけ拂えばこれは当り前だ。私達はそれも気に食わないけれども、当り前だ。ここで承わりますが、期限の来ておるのと利子さえ拂えばというこの額は一体どのくらいか、それをお聽したい。二十五年度で。
  134. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 私は材料を持つておりませんが、大蔵大臣がお見えになつておるようですから、その方面は大蔵大臣のほうからお聽き下さい。
  135. 木下源吾

    木下源吾君 大蔵大臣とおつしやるが、あなたは本家本元だとさつきおつしやつたから私は聽くのです。見返資金が五百億、一般会計から七百八十億、これはあなたのほうの所管でございましよう、安定本部です。そのところを私は一つ明確に聽きたい。それを聽きさえすれば私はもつと外のほうに考えがあるわけです。凡そどのくらいか、あなたの仲間が沢山おるから調べて聽かして下さい。
  136. 青木孝義

    ○国務大臣(青木孝義君) 今私の仲間が来ておりませんので、恐入りますが、これから調べましてお答えをいたしたいと思います。
  137. 木下源吾

    木下源吾君 もう青木さんも大分疲れたらしいから、ここらでやめて次にします。  大蔵大臣に一つ。年度末の何か手当をやりそうなやらないようなことがこの頃新聞に出ておるが、これは大変皆関心を持つてつて、実際肝が上つたり下つたりしておる問題ですから、ここで一つあなたからいきさつをお聞かせ下さい。
  138. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 年度末に特別の支給はいたさないということに考えております。
  139. 木下源吾

    木下源吾君 やるよう新聞がありましたが、そんなこともあつたのですか。
  140. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 新聞には出ておりましたが、私は具体的になることはむつかしいと、こう考えております。一般公務員につきましては私は考えておつたのでありますが、国鉄のほうにつきましては、先般関係方面の意向を探りましたら、出すべきにあらずということになつておるのであります。
  141. 木下源吾

    木下源吾君 ただ意向を確めただけではなかなかうまくないと思うのでありますが、もつと強くおやりになつて御心配下さいましたか。
  142. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) やつたつもりでございます。私としては。
  143. 木下源吾

    木下源吾君 それではお伺いしますが、年度末に相当人件費や物件費の剩余があろうと思いますが、その点はやはりお調べになつておりますか、若しお調べになつてつたならば一つ材料をちよつとお聞かせ願いたい。
  144. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 国鉄のほうにつきましては保線区関係で約一億円、機関区関係で約一億円、見返資金借入の利拂いのために予定しておつたのが一億円ばかりございます。工事費勘定で人件費が七千万円くらいあります。一般会計の公務員につきましては大体一億七、八千万円くらいではないだろうか、これは各省のことでございますから正確な数字は分りません。省によりまして、例えば外務省とか農林省のほうはかなりございましようが、殆んどない省もあるのであります。
  145. 木下源吾

    木下源吾君 私聞くところによれば大蔵省には、それはあなたの所だからすぐ分ると思うが、十七億くらいあるということを聞いておりますが、人件費物件費、そういうもの、どうですか。
  146. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大蔵省についてでございますか。大蔵省予算に十七億あるということですか。
  147. 木下源吾

    木下源吾君 ええ。
  148. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今申上げたのは人件費だけのことでございまして、物件費のほうにつきましては正確な数字は分りませんが、大体各省を通じまして私は予算の不用額と收入減が、不用額が九十五億、收入減が税を除きまして百十八億くらいと考えております。今のところは税の自然増收がどれだけありますか、五千百億円の中で自然増收が二三十億じやないか、内訳を申しますと、勤得所得とか或いは法人税、酒税のほうでは相当出ますが、中小企業或いは農業者の申告納税のほうで百億くらい赤字が出るのじやないか、こういう見通しでございまして、不用額と歳入不足額との差の二十億余りを税の増收で埋め得るかどうかということを今心配しておる状況であるわけであります。
  149. 木下源吾

    木下源吾君 いや、私はあなたのほうの取り損つた金など聽いておるのじやない。あなたの当初予算に組まれた人件費物件費不用額、それをお聽きしたが、一億なんぼとか言われたから、私は今本当のところを聽いておるのですが、今聞くとやはり百億くらいあるのですね。
  150. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 不用額はそのくらい、九十五億くらいの見積りでおります。併しこれは大体の各省に聽きましての見積りでございまして、正確な数字ではございません。併し片一方に歳入不足額が相当出て来るのであります。
  151. 木下源吾

    木下源吾君 私はその歳入不足は聽いておるのではない。そこで私は今の不用額というものが、あなたの本省関係だけでも九十何億ある。国鉄にも何億ある。こういうやつを一つ補正予算を組んでそうして年度末に支給することを御努力なさつたらどうか、やれませんかどうか、それをお聽きするのです。
  152. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今申上げた通で、私は今補正予算を組む考えはございません。
  153. 木下源吾

    木下源吾君 その歳入不足というやつは今は分らんわけですよ。それはこの間この議場であなたにお聽きしたのですが、五六月頃の年度の最終を見なきや分らんと言われた。私は自然増收が相当ある、こういう見込であなたに何したら、それは分らんというのですが、今聽きとそれは分つておるような話で、差引勘定をしておられるようですが、この点は間違つておりませんか。
  154. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 正確な数字は申上げられんということを前提にいたしておるのであります。例えば歳入不足につきましても、專売益金につきましては、大体今の売行きの状況によりまして、四十億或いは五十億くらいの赤字が出るということはもう見通しがつきました。併し正確な数字は分りません。それから例えば価格差納付金、これなどにつきましても相当の赤字が出るのであります。税のほうはほかのものよりもなかなか困難でございます。各税務署からの報告によらないといけませんし、又三月三十一日までに徴收して四月に入る分がございますので、税のほうの分り方はほかのよりも遅れる、一ケ月余り遅れることになります。
  155. 木下源吾

    木下源吾君 一体申告課税の方が收入不足になるとか、この前から何かいろいろ言つておりますが、私は何もそれを強制的にうんと取りまくれというのではないですが、勤労者の源泉課税というものは、パーセンテージは、予算よりずつと余計分つておるんでしよう。それでどうも腕のいい大蔵大臣の下の人達が沢山おつて、それで收入が不足になるなんというようなことは私はないと思うのですが、何か今どうしてもここで九十億なり百億なりそういうものが出て来れば労働者にやらなければならん、これをやつたのではうまくないのだという別の考えがあつて、あなた方はそういつておられるのではないかと思うのです。これは私ばかりではない、このことが天下に分れば、国民はやはりそう考えるのです。不用額、人件費や物件費の不用額が本省関係だけでも九十何億ある、鉄道にも何億かある。その他の政府機関にもあるということになつて、そうしてそれを給與に向けないで、どうも段々聞いて見るというと、税金の方が歳入不足であるなんといつたつて国民は納得しないと思う。こういう点についてはもつと明瞭に一つ数字を明らかに出して、ここで説明をお願いしたいのです。
  156. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体の見通しは先程申上げましたような状況で、不用額につきまして主なるものは終戰処理費があるのであります。又大蔵省におきましての国債の利拂も四、五億はあると思います。その他いろいろな数字を挙げ得るのでありますが、別に税以外での收入不足額も、先程申上げましたような状況であるのであります。
  157. 木下源吾

    木下源吾君 どうでしようか、その点を一つ何億余るかどうか知りませんが、一つ補正予算を組んで、国民の前に明らかにするお考えはありませんか。
  158. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 單なる私の見込だけでございますので、只今それによりまして補正予算を組むつもりはございません。
  159. 木下源吾

    木下源吾君 私は今日はこの程度にして置きます。
  160. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 資金計画について大蔵大臣の御存じの点についてちよつとお伺いしたいのです。  今度の資金計画に……、金融機関が増資しまして債券を発行しますね。そういう資金は今度の資金計画には見込まれておつたかどうか。資金計画を決めた後にそういう問題が起つておるわけですが、金融機関が増資して債券を発行すれば相当の金額になりますが、その金額はどのくらいになりますか。それが資金計画のなかにその金額が織り込んであるかどうか、その点なんです。
  161. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体そういうことも頭に入れて安本の方で資金計画を作られたようであります。従いましてあれにありますが、問題は長期資金でありますが、昭和二十三年度は千八十億か千百億、昭和二十四年度は千一、二百億です。二十五年度は千八百億と設備資金を計画しておつたと思います。こういうことはやはり特殊の金融機関が長期債券を発行いたしまして、そうして設備資金を供給し得る建前でやつたということを前提にして作られたものと私は考えております。
  162. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その金融機関が増資しまして債券を約二十万円でございますか、発行できるのは、そうしますとどのくらいの資金が上る見込みなんですか。
  163. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) どれだけの増資かまだ決つておりませんので、その数字は申上げるわけには参りません。
  164. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今大蔵大臣の御答弁ですが、この資金計画を作る当時に金融機関の増資の問題、それから債券の問題ですね。これは私は問題になつていなかつたと思うのです。これがまだやはり確定的になつておらないのでございましよう。今折衝中だと思うのですが、それを果して実現できるかどうか、大蔵大臣はこの前御答弁がありましたが、まだ確定的になつておらないのじやないですか。預金部で持つのか或いは見返資金でその増資株を持つのか、そういうこともまだ決定しておらないのじやないですか。
  165. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 預金部で増資株を持つ気持はございません。只今のところは例えば商工中金であれば一億五千万円の出資を、五億円に増資の計画を建てております。これは見返資金を除外いたしまして……。それから農林中金であれば四億円の今の出資金額を八億円に殖す計画を建てております。それ以外の興銀でも適当な機会に考えて見るというようにいたしております。証券以外に見返資金の方から適当な募集をして、そうして長期資金の発行に資するように只今向うと折衝中であるのであります。
  166. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 併しそういう金融機関の増資及びその債券の発行の増額というものは、全体としては資金計画のボリユームには関係ないのでございましようか。全体の資金計画のボリユームには……。
  167. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この国内の出資の分につきましては関係がございますが、後は長期資金なりや短期資金なりやということになりますので、そういう資金計画の内訳には関係いたしますが、全体のスケールとしては大した影響はないと思います。
  168. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この問題については安本長官にも後で……、資金計画を立案の当時、我々に配付されたときには予測されていなかつたようですが、もう少しはつきりお聞きしたいと思います。又そういうものが仮に日本銀行の見返の適格証券となつて、日銀でこれを融資して行けば、これは資金のボリユームは殖えて来るわけですから、そういうことになると思います。そうしますといわゆる信用が殖えるということで、資金計画に狂いが来るのじやないかと思いますが、その点だけ大蔵大臣に最後にお伺いしておきたいと思います。
  169. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体通貨の発行はそう動かないと、こういうので資金計画を建てておるのでございます。従いましてお説のようにはならんと思つております。今正確に資金計画の数字を覚えておりませんが、通貨の発行には余り移動がないものとして計算しておるかと思います。    〔委員長退席、理事田村文吉君委員長席に著く〕
  170. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 まだありますが、今はこの程度にしておきます。
  171. 岩間正男

    岩間正男君 大体池田蔵相兼通産相へ私は以下数点に亘つて質したいと思つております。  先ず第一の問題は、今伝えられておるところの吉田内閣の超均衡財政経済政策が非常に行き詰つておる。それでこのことについては自由党内部からも相当非難があつて、どうしても政策の転換をやらなくちやならないというようなことが情報として頻々と伝えられておるのであります。併し一昨日の木村議員の質問に対しましては、蔵相はこういうことは段階においてはない。一応それは先については弁明の限りではないというような御答弁であつたと思います。併し最近又それと同じうしてドツジ・ラインの調整ということが非常に話題になつておるようでありますが、一体ドツジ・ラインの調整というのはどういう性格のものですか。ドツジ・ラインの修正というものは……。一体修正と調整はどういう点が違うのでありますか、その点について、調整の内容について蔵相の答えをお聞きしたいと思います。
  172. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私はドツジ・ラインの調整とか、ドツジ・ラインの修正とかいうことは考えておりません。先般木村委員の御質問にお答えした通り財政経済の状況によりまして経済自立体制を確立して行こうという経済政策であるのであります。
  173. 岩間正男

    岩間正男君 これは最近の中小企業対策とか、それから供出制度並びにこれについて輸入食糧との問題、更には国鉄裁定を中心にしたところのこの労働政策、こういうような面で非常にこれはもう行詰つておるふうに我々には見られるし、又そういう情報が頻々と伝えられておるのでありますが、これに対して、依然としてそういう形を堅持されるのであるか。その点について今までもいろいろ質問があつたと思いますけれども、尚念を押して蔵相の見解を質しておきたいと思います。
  174. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は二十五年度におきましては、今御審議つておりまする予算案を中心とした財政経済政策で進んで行きたいと考えております。
  175. 岩間正男

    岩間正男君 それじやお伺いしますが、この予算審議する上に非常に重要と思いますが、四月以降から秋までの経済情勢というものですね、これは蔵相はどういうような見通しを持つておられるか。その点をお伺いしたいと思います。
  176. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 四月から秋までにつきましては、引上超もあまりございませんし、予算を執行いたしますると相当有効需要も殖えて参りますし、明るい面が段々殖えて来ると考えております。
  177. 岩間正男

    岩間正男君 まあ十月頃までには経済ははつきり安定するだろうと、今いろいろなドツジ・ライン強行によつてつておる現象も收束するだろうと、こういうようなことを今まで蔵相は言われたのじやないかと思うのであります。併し現実はどうかというと、私はここで多くを言う必要はないと思う。実際中小企業の潰滅状態については、これは吉田首相もこの現状をはつきり認められておるような状態であります。従つて現在そういう情勢が非常に進行しているのであるが、一体このままで今蔵相が非常に楽観的に言われました、秋までには明るい見通しと言われますが、それならばそれまでには企業は一体どれくらい潰れるのであるという見通しを以ておられるか、失業者はそれではどれくらい出るか、これについて蔵相の見通しは非常に重要だと思いますのでこの点質しておきたいと思います。
  178. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 企業ができるだけ潰れないよう努力いたしておるのであります。どれだけ潰れるかということは私が申上げることはできません。自分としてはできるだけ潰さないよう考えております。従いまして失業者の数もできるだけ、失業者が超らないよう努力いたしておるのであります。
  179. 岩間正男

    岩間正男君 希望的な観測を述べられたのでありますが、私は一応の見通しはどうされるかということです。つまり現実が、非常に苛酷な現実についての把握の問題でありますが、しばしば繰返されますが、認識の問題だと思うのでありますが、その点で少しこれは違つているのじやないかと思います。これははしなくも中小企業の問題で蔵相が放言されたああいうものをきつかけといたしまして、我々は余りに蔵相の見解と現実に起つておる、足下に起つておるこの問題が非常に懸隔があると、こういう点で非常に考えを新たにしたのであります。どうしても現在起つておる、そうしてこのドツジラインの強行によつてとにかく現在の、蔵相としては現実そのものが起つているということは認められるわけですね。それがそんならどのような形で、今言われました通りできるだけそういう犠牲は避けたいと言われますけれども、やむを得ない形で進行している。それを秋の安定までに楽観的な見通しまでにどれ程の一体ことが起るか、こういうことをやつぱり認識されることは対策を立てる上に最も重要なことと思うのであります。この点を私はお聞きしておるのであります。
  180. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) インフレが安定いたします場合におきましては、困難な状態があることは私は十分承知いたしておるのであります。この困難の状態をできるだけ少くするようにいたしておるのであります。それで、どれだけの失業者ができるかということにつきましては只今申上げましたように、できるだけそういうことのないようにスムースに難関を突破して行こうというのが私の念願であり、私の希望であるのであります。
  181. 岩間正男

    岩間正男君 どうも念願とか、そういうよう一つの何といいますか、希望的観測というものは非常に危いと思う。つまり現実を直視しないところからこういうことが起つて参るのでありまして、我々は過去にそういう苦がい経験を嘗めたわけであります。戰争前の希望的な観測、そうして現状は見ない。併し足下には物凄いことが起つておる。だから我々が安定しておると思つておるその下に厖大な、暗黒が待つておるということについて、蔵相が掴んでおられないとすれば、そうして蔵相は金融資本の安定ということばかり見られて、それにばかり施策を集めておるということになれば、これに対しては非常な危險があるのではないか。私は戰争前のあの何といいますか、あの一つの誤つた認識、色眼鏡で見、或いは希望的観測、こういうものによる誤りのあることを非常に憂うるのでありますから伺つておるのでありまして、この点どれだけのものを蔵相は掴んでおられるか。この点もう少し、今の失業者とか、中小企業の崩壞状態というものを……、希望するとか、そういうふうに努力しておるということだけでは決して科学的に把握した施策にはならんのでありまして、現在大蔵当局が掴んでおられるこういうような観測につきましてお伺いして置きたいと思います。
  182. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 抽象的な御質問でございますので、抽象的にお答えしたのであります。とにかくなかなか苦しい歴史を通らなければならんということは事実であるのでございます。然らばそれはどの程度の苦しさかという問題でありますが、これは国民努力如何によりまして余程変つて来るのであります。従いまして、只今のところは、先程来お答えした程度にしかお答えできません。
  183. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、そういうふうな資料といいますか、調査というものは、大蔵省にはお持ちになつていないわけですか。それを発表するような、一体そういうものをお持ちになつていらつしやらないのですか。どうですか。現状の企業の崩壞状況とか、失業者がどれくらい出るだろうかと、こういう点を掴んでおられるかおられないかということは、実にこれからの財政経済の政策において重要な意味をやはり持つものだという、この点から私はやはり質して置きたいと思います。
  184. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 通産省等でやつております工業調査、或いは商業調査、そういうものもなかなか調査をしてみますと、どうしても時期的に相当ずれるのであります。今通産省で発表しようとしております商業関係の金融問題は、実は昨年の十一月頃の状態であるのであります。我々といたしましては、できるだけ具体的の資料を集めるよう努力いたしておりますが、中小商工業者がどれだけ非常な憂目を見ておるというような実態調査につきましては、まだ確たる資料を、ここで申上げる程の資料を持つていない。とにかく金詰りの問題もあるし、税の問題もあります。又失業の問題にいたしましても、五十万という見方もありますし、又潜在しておる失業者につきましては、相当ひどいものがありますが、とにかくできるだけ失業者を少くするという方針で行つております。
  185. 岩間正男

    岩間正男君 どうも足下で崩れておる問題、それと日常の数多い現象ですね。全く悲惨な現象が、親子の心中とか、そういう問題が山積みにされております。又最近の社会情勢を見ましても、ここに青少年の不良化の現象とか、青少年の家出、こういうものは非常に大きな犯罪の因をなして、その数は物凄い程になつておる。  最近私は……、少し余談的になるかも知らんけれども、まあこれは文芸作品の系統なんかを見ておるわけなんですが、私は少し歌をやつておりますが、歌の最近歌われている材料というものを見ますというと、非常にそういう文芸の中になんかも滲透して来ている。これは税金の問題、失業で苦しい問題、それから中小企業が崩壞して非常にもう生活が苦しくなつている問題、こういうものがどんどん文芸の材料としても謳われている。私はそういう歌の選をしていたときに、こういう歌が出て来たので、蔵相はどういう感想を持たれるか、これは少し余談めいたことですけれどもお伺いしておきたい。「数千がもくを拾いて生きており、一人が安定をうそぶけるとき」というのです。この一人は結局蔵相になると思うのですが、一人は安定をうそぶけるときに、数千が吸殻を拾つて生きている、こういう歌が痛切な下からの声として伝えられて来ている。蔵相はこういうような歌が歌われているときに、どういうような見解を持たれるか。私はちよつと、これはこの予算審議に非常に重要だと思うので、そういう点から文芸作品の中に現われて来ている傾向、このものから私はお伺いしたいと思います。
  186. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 各人々々の批評を私は十分聞いて、施策の参考にいたしたいと考えているのであります。私としては万人に気に入られるように、又納得されるような方策を取つているのでありますが、何と申しましても不敏でございますので、いろいろな批評を受けることは止むを得ないと考えております。
  187. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく安定経済といい、それからドツジラインというものについても、多くの大衆はこれに対してこういうものだという性格をはつきりつていると思うのでありますが、併し蔵相は、やはりこれを頬被り的に、どうしても今のような希望的観測とか、これに対して万人にいいようにということを言われますけれども、実際悲惨なそういう破壞的な現象が起つているのであつて、我々はここでこのドツジライン、こういうようなものについてやはり大きな課題が深く織込まれると、こういうふうに考えたのであります。全く安定ということは、この頃は国会用語になつた感じがあると、こういう気がいたします。全く安定ということは、不安定の裏返し、これは本当に安易に使われているということがいわれると思います。  ここで私はお伺いしたいのですが、最近新聞の伝えるところによりますと、池田蔵相並びに本多国務相は渡米される、というようなことが頻々と報じられているのであります。この渡米は事実であるかどうか。渡米されるとすれば、一体どういう目的をもつて渡米されるのであるか。といいますのは、恐らく現職の国務大臣が現職のままで渡米をしたということは、日本の今までの内閣になかつたことじやないか、これ程重大な問題を提げて行かれるとすると、そこにやはり国民を納得させるものが必要だと、こういうふうに思うのでありますが、これに対して私が今お聞きしました果して行かれるのかどうか、それから行かれるとすればどういうような目的をもつて行かれるのか、この点明らかにして頂きたい。
  188. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 本多国務大臣が、二十五日か、或いは何ケ月かアメリカへ行かれるということは聞きました。併し私の問題につきましては何ら決まつた問題ではございません。
  189. 岩間正男

    岩間正男君 これは決つた問題でないというのですが、非常に国民は聞きたがつていると思うのでありますが、そういう話はあるのでございますか、決まつてはいないでしようが……。
  190. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は人の噂はとやこういうべきでない、自分はその話につきまして何の指示も受けておりません。
  191. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとこれは何ですか、今のお話だと、そういうお話もなさそうでありますから、この行かれるということは、そういう話は全然ないというふうに我々は取つていいのでございますか。それとも先の情勢の変化によつて、やはり行くようになるかも知らんと、こういうふうに取つておけばいいわけですか。
  192. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) アメリカへ行つたらどうかということは私の友人から聞いたことがございます。又行つたらどうかということを言う人もありまするが、この問題は決つた問題ではないのでございますから、ここではつきり申上げられないのであります。
  193. 岩間正男

    岩間正男君 蔵相は、これは立入つて聽いて惡いようですが、蔵相はどうお考えになつておられますか。蔵相自身として渡米について……。
  194. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は今、この問題で余り考えておることはございません。
  195. 岩間正男

    岩間正男君 それではこの問題は、これ以上お聽きしても無駄と思いまするので、その次に移りたいと思いますが、見返資金の問題であります。見返資金の問題につきましては、これは一昨日であつたと思いますが、そのときにもこれは一部お聽きしたのでありますが、先ず私は素人でありますから、或いは蔵相から見ればおかしい質問になるかも知らんが、その点はまあ笑われないで答えて貰いたいと思うのであります。  第一に援助資金と見返資金とはどう違うのか、その点が非常に今日日本の見返資金、援助資金を考える上において、明らかになつていない。明らかのようで明らかでない。この性格を規定するということは、日本の国民経済の上に非常に重大である。殊に見返資金の性格を考えるときは、長期設備資金というようなものが非常に少ない。従つて見返資金が一千五百億円に上るところの厖大な見返資金がここに長期資金的な性格を持つて民間に投資される、こういうことは非常に重要なんです。日本の経済の将来を左右するような大きな意味を持つと思う。従つて先ず私の質問は、援助資金と見返資金はどう違うかというような初歩的な質問からいたしたいと思うのですが、この点蔵相の見解を承わりたい。
  196. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これはどう申しまするか、アメリカから援助のあつた資金、この援助というものは呉れたのであるか、借りたのであるかという問題になりますと、借りた資金であります。その資金を別に貯めておきまして、そうして日本政府のものとして使つておるのであります。
  197. 岩間正男

    岩間正男君 この二つはまあ関連はあると思いまするが、はつきり違うということは言えると思いますが、いかがでしよう
  198. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 関連はあるが、はつきり違うというのはどういう意味になるのでございましようか。私はアメリカの援助資金によつて物が入つて来て、そのものを売却いたしまして、そうしてその金を対日援助見返資金として特別会計をおき、日本政府において使用すべく処分をしているのであります。
  199. 岩間正男

    岩間正男君 私は違うという意味は、一昨日の木村委員質問に対しまして、援助資金は、これは対日債務となるというようはつきり答えられたと思うのであります。それとの連関でありますが、そうすると見返資金はこれは日本国民のものである、こういうふうに私達はつきり解釈するのですが、この点そう確認してようございますか。
  200. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それはそうでございます。日本政府の金でございまして、特別会計を作つて皆さんに御審議つているので、日本政府の金でございます。
  201. 岩間正男

    岩間正男君 只今の明快な答弁がありましたので、この点は確認いたしたいと思う。見返資金は日本国民のものであることをはつきり確認するわけであります。そこでお聞きするのでありますけれども、そうしたならばこの見返資金の今後の運用、こういうものについてはこれは日本国民のものでありますから、当然これは日本の国会、こういうものがはつきりこれの運用の何と申しますか、鍵と言いますか、実権を持つということが当然のふうに考えられますが、これに対して蔵相はどういうお考えをもつていられるか。
  202. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御承知通りアメリカの援助資金であるという実質的の問題から、この援助資金を使います場合におきましては、向うと十分の打合せをし、向うの意見を聽くことに相成つておるのであります。
  203. 岩間正男

    岩間正男君 見返資金は対日の債務であると、これは蔵相はお答えになりましたね。もう一度この点も私は確答を得たいのでありますけれども、私は今木村委員にも質したので、そういうようなことを聽いておりますから、もう一度これは間違いないと思いますが、速記録を調べて見ても……、この点伺つておきます。
  204. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は債務と、只今のところ債務と考えております。
  205. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると援助資金が債務であると我々はまあ援助資金については、将来これはいつになりますか、講和会議か何かの行なわれた後にはつきりこれは拂う金だと思う、これについても後でこの数字をお伺いしたいと思いますが、厖大なものになると思います。これはいずれ日本の国民がアメリカに返さなくちやならない金であります。従つてそうしますと見返資金というのは、これは日本国民のものであると蔵相は答えられた。従つてそこに関連があることは分りますよ。例えば物を借りればそれに対して感謝の心を持つとか、それに対して礼の気持を感ずるとかこういうことは分ります。併し、こういう感情的な問題で今日問題が論ぜられてはいかんのじやないか。これは阿波丸事件でもあつたと思います。あの阿波丸事件の例を挙げますと、あの阿波丸事件はあの当時、あのことは向うの潜水艦の攻撃を受けた日本の病院船であつたと思いますが、それが向うの南方地域に捕虜の物資を運んでおる。国際法によつてこれは認められておる。当時の金で私は二億二千万円であつたと記憶しますが、これははつきり支拂われる、こういうことになつておる。併しそれが国会の決議で以ていつの間にかこれはもう取らないことにするんだというような形になつたのであります。あれについては我々は反対したのであります。参議院あたりでも随分これは野党側から反対せられ、借りるものは借りるものである。拂うべきものは拂うものである。債務は債務である。この点が私達は今日日本の政治をやる上において非常に重要だと考える。これは家を買うについて好意を感ずるという感情の問題と、それから国民国民の経済をはつきりこれを科学的に立つて行くと、そういう建前というものを明らかにするということが非常に重要と思いますのですが、どうも今の蔵相のお話によりますというと、見返資金は日本国民のもの、併し援助資金は債務だとこうおつしやつておるのでありますから、当然の帰結として我々はここにこの見返資金の運営については日本国民のものであり、従つてこの国会がこれをはつきりその力を握るべきものであると、こういうふうに考えるのでありますが、蔵相の答えられた御答弁の中の後の方がどうも理解し兼ねるのであります。それはどういうお気持なんですか。これは感情でしかないと思いますが……。
  206. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この見返資金の発生原因が向うの納税者の負担になつております関係上、又衆議院の議決もありましたごとく、実際問題といたしましては、私のところで発案いたしまして、そうして向うと協議することに相成つておるのであります。発案はこちらの方でいたします。    〔理事田村文吉君退席委員長着席〕
  207. 岩間正男

    岩間正男君 それでやはり何ですか。私のお聞きしたいのは、日本国会に属するもの、国会がこれについて運用の方式、このいろいろな力を握るべきだということについては蔵相はどういう御見解をお持ちでありますか、私はどうも今の御説明では、これはどうもはつきりしないと思うのです。成る程この前の、昨年と思いますけれども、見返資金の法案、これが出されましたときに、最初はこれは連合軍のいろいろそれとの関係が謳われておつた。併しこれははつきり削除された筈です。このことを併し池田蔵相は御存じなかつた。一年間御存じなかつた。つまりこういう削除された事実を知らなくて、そうして国会においても、例えば見返資金の第六條によつてそういうことがはつきり謳われておると言われた筈です。併しながらこれは衆議院予算委員会におきましても、我が党の川上議員の質問によつてこれは誤まりであつた。第四條第六項でありますが、第四條第六項というのははつきり削除された。こういうことが明らかになつて、蔵相もその点釈明されたと思うのであります。そうしますと、一年間法案によつてはつきり性格が明らかになつた問題を、つまり削除以前の考えを持つてこれを運用されておつたということになるのでありますが、これはお認めになりますか。
  208. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) あのとき実は忘れておりまして、ああいう答弁をしたのでありますが、実際問題といたしましては、あの削除しました場合に、衆議院決議もあります通りに、向うの承認を受けるという衆議院決議があるのであります。実際の問題といたしましては見返資金の使用につきまして閣議で決定いたしました点は、向うの方の了解を得ることに実際上なつておるのであります。
  209. 岩間正男

    岩間正男君 決議というのと、それから私達は法案というものは非常にこれは分けて考えておるのであります。国会のこの運用の中で、決議は希望的なものであり、それは政府に対して一応勧告する。決議は法制的な力を持つておるということは未だあり得なかつたと思うのでありますが、だから法案で削除されたことが決議によつて未だ生きておるというふうな蔵相の御見解は我々はいけないと思う。どうもおかしいと思うのでありますが、この点如何でありますか。
  210. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 法案決議の効力は違いまするが、実際問題は只今申上げましたように、向うの承認を得ることになつておるのであります。
  211. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私はそうなつて来ますと、国会の運営というものに随分疑惑を持たざるを得ないのであります。折角国会が必要を認めて多数で以て修正した、このことが併し実質的にその法案と違つた運営がなされておるとしたならば、一体我々立法府としましてこの法を守る立場から考えて、これはどういうふうな運営をしたらいいか。これは全部の法案がそういうふうに一応決められておるけれども、併しながらその運営については実際は違つておる。そうするとそこに二重の我々は一体生活をしなくちやならないんですか。二重の性格を持つたものに一体何であるか。この点がどうも我々には曖昧なのでありますが、蔵相はどう説明されますか。
  212. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 向うからの指令によりまして相談することに相成つておるのであります。
  213. 岩間正男

    岩間正男君 これは私は先程からいろいろお聞きしましたような点から考えますと、日本の国民のものである、見返資金は……。そうして又援助資金については我々は将来債務として、はつきり負うものであると、こういうことになりますと、向うのそういうお話があつたとしましても、日本の本当にこれは自主性と言いますか、日本経済の自立ということを考える、そういう点からすれば、これに対しましては正しいやはり日本の立場をこれははつきりさせるというふうに努力されるのが、これは当然現政府責任であり、それからこれが人民大衆の預託を受けて、そうして政治を握つているところの吉田内閣の当然の務める任務であると、こういうふうに私は考えるのでありますが、この点はなされておるのですか。それはどうなつておるのですか。
  214. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 向うの承認を得るのでありまするが、実際問題といたしましては、我々の立つた案によつて運用をいたしておるのであります。
  215. 岩間正男

    岩間正男君 この点はやはりもつと努力される考えがありますかどうか。私ははつきりやはり国民はそれを期待しておると思うのであります。どうも物はお借りした。それでその借りた物についてははつきり拂うところの我々は将来責任を負つておるのですから、そうしたら借りた物について我々の自由にする権限が、これは普通の一般の貸借関係の中では成立すると思うのでありまするが、どうも蔵相は援助という形で来ていて、その結果我々の国民の税金で作つたところの資金、それに対して今度は、そういうよう一つの指令の下に動いている。こういうことになりますというと、どうもそこのところが合点が行かないし、日本国民はこの運営に対しまして重大なる関心を持たざるを得ないと、こういうふうに考えるのでありますが、これはどうしてもその点お聞きしたいと思います。政府は一体そういう状態を満足しておられるか、若し満足でなければ、これに対してどういう努力を一体やつておられるか。
  216. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 指令によつて動いているのではございません。我我が発案いたしまして、その案の承認を求めることに相成つておるのであります。で、最近に至りましては、余程運用その他につきましても、こちらの意見が殆ど全部通るような状況でございまして、自主性の問題から申しますと、殆んど日本政府の案が認められるような状況に相成つて来ているのであります。
  217. 岩間正男

    岩間正男君 これはもう一歩進んではつきりこちらのものに、その性格をはつきり規定して、そうして国会にこれを移すということをお考えにならないのでありますか。
  218. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういうふうにいたしたいと思つておりますが、発生の原因等から考えまして、今直ちにそういうふうにすることはなかなか困難であるかと思います。
  219. 岩間正男

    岩間正男君 併しこれについては、見返資金の性格というものが今日明らかにされていないので、国民はそういう何が今まで関心が薄かつたと思いますけれども、これは真相が明らかにされたのだから、非常にそういう希望が直ぐ浮んで来る、こういうふうに思うのでありますが、こういうふうな国民の、下からの声が起つた場合についても、やはり政府は今のままでおられますか。
  220. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今お答えした通りでございます。
  221. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく私は、この援助資金の性格が非常に今の政府のとられている、今の私の質問と蔵相の御答弁によつても明らかになつたように、はつきりしない、釈然としてない、こういうようなことのために、いろいろこれは将来に対しまして、この経済的な、何と言いますか割切れないものを残すだろう、こういうふうに考えられますので、政府は当然、もつと積極的にこれは努力すべきものだというふうに考えます。  そこで見返資金のことにつきまして、もつとお伺いしたいのでありますが、この最近の運用状況につきましてはこの前資料を頂いたのであります。そこで先ず、あの資料を頂いた後に追加されたのもあるかと思うのでありますが、先ず伺いますが、一千五百八十一億というものが今度の見返資金の、この予算になつていると思いますが、その中の五百億の債務償還でありますが、これについて、この債務償還の順位と言いますか、こういうものはどういうようになつておるのでありますか。
  222. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十四年度の問題でございますか。五百億円の債務償還と申しますと、二十五年度でございますか。
  223. 岩間正男

    岩間正男君 二十五年度です。
  224. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十五年度の債務償還につきましては、いつ誰の持つている国債を償還するかということは、経済情勢を見てから考えたいと思います。
  225. 岩間正男

    岩間正男君 大体償還は一遍でやられるのじやないから、これは大体計画が樹つておることと思うのでありますが、この順位についてはどういうような腹案をお持ちになつていらつしやいますか。
  226. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは公企業、私企業への投資並びに債務償還こういう問題、この三者を兼合して考えなければならんと思いますし、又この見返資金が毎月々々の輸入の状況によつてつて参りますので、今ここでいつどうするということを申上げる段階至つておりません。
  227. 岩間正男

    岩間正男君 それじや次に、その点は成るべく明かにして欲しい問題でありますが、これは今その問題を措くとしまして、公共投資の四百億の問題でありますが、これは大体国有林の融資條件、それから国鉄の融資條件、それから電気通信ではどのように使うかというような、やはり融資條件ですね、こういうような條件があると思うのでありますが、この條件について伺います。
  228. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 林野の三十億円につきましては、造林とか索道等に使いたいと思います。それから電気通信に八十億、国鉄の四十億はこれは建設勘定の方の設備費に使いたいと考えております。
  229. 岩間正男

    岩間正男君 これは確か金利は五分五厘だと思いますが、そうでございますか。
  230. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十四年度におきましてはその程度でございましたが、二十五年度は出資するというので金利はありません。
  231. 岩間正男

    岩間正男君 今の国鉄の投資の場合、一例でありますけれども、これは小澤郵政大臣がこの前説明に立たれて、私はこういうことを伺つたのであります。国鉄の資金が約四十九億というところに今度この四十億入る、併しこれが固定資産の再評価をやらない前に入る、そうしてそれが而も單なる融資じやなくて、これは資金として投資されるというような形になりますから、それが再評価をして来れば、将来この四十億の占めるパーセンテージというものは、非常に厖大なものになると思うのであります。そういうふうになると、現在国鉄の資産の状況から考えますと、将来見返資金の占める何といいますか、力というものは、その中で見返資金の権力というものは非常に厖大になり、我々の計算では四十六%くらいなものが、そういうふうな見返資金によつて国鉄の資産の部面を占める、こういう点が非常に重大じやないかと思います。そうしますと、今お話ししましたように、完全に日本の国民のもの、日本国家のものであるなら、見返資金というものはこれは何ら、我々はこれに対しまして不安の感じを抱かないのであります。併しながらこれに対してどうも今池田蔵相のお話のような点でありますと、その点が明らかになつていない。それから尚問題なのは、この点私質したのでありますが、吉田首相の答弁によりますと、これは援助資金というものは、対日債務であるかどうかということは、これはまだ分らないというお話であつたのでありますが、そこのところの喰違いについてもお聞きしたいと思うのであります。そういうことになりますと、これは一体どういうものか誠に曖昧な形で、ある場合には将来日本のものになるのであるか、或いはこれは外国のものになるのであるか、そうしてそういうような不安定な形に置かれておるというと、国鉄というものは、果してこれはやはり将来日本の国民の所有に帰するものであるか、それともそうでない形を取るものであるか、実に重大な問題を提起しておる。これは国鉄だけについてその一例を挙げているのでありますけれども、こういう点について私はお伺いしました。ところがこれに対して郵政大臣はいやそれは大体電通なんかの場合においてはすでにもう今までの財産は、これはもう資産再評価をした形になつておる、そうしてそういう原価償却をやつておる、資産再評価をやつたと同じような形でやつておるのだから、そこへ四十億や百二十億入つても大したことじやない、こういうお話だつたのでありますが、併しこれはそうじやなくて、資産として投資されておる、こういうような点がまるでやはり電通省の話とは私は違うのです。性格は違うのでありますから、こういう点から考えて非常に融資條件というやつが明確になつていない、この点が非常にやはり国民が不安定な感じを持つと思うのでありますが、蔵相はこういう点をどういうふうにして明確にし、そうして国民を安心させたらいいとお考えになつていらつしやいますか。
  232. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 見返資金は先程申上げましたように、政府のものである。従いまして電通その他に見返資金から出したからといつて、何も国鉄、或いは電気通信関係に必配はないと考えております。
  233. 岩間正男

    岩間正男君 これは、今の点を私ははつきり確認したいと思うのであります。併しどうもこういうようないろいろ先々のことを心配するような状況があると思いますので、こういう点は進んで蔵相は明らかにされることが必要だと思いますがそういう御気持をお持ちですか。
  234. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今の答えで明らかになつていると思います。
  235. 岩間正男

    岩間正男君 それではこの私企業投資の場合の四百億でありますが、その中でお聞きしたいのでありますが、この日発あたりにこれが相当今度入ると思うのでありますが、そういうときに借入の場合におきまして特約條項というものが作られていると思うのであります。日発の特約條項とか、それからもう一つのこれはその他に日本鋼管の場合なんかの特約條項があると思うのでありますが、これはどういうふうになつておりますか、お示しを願いたいと思います。
  236. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 見返資金から私企業に出します場合は、嚴重な規定を設けまして、資金を確保するよう方法をとつておるのであります。又各会社によりまして違いますので、今特約條項は私ここへ持つておりません。別の機会にお話申上げてもよいかと思います。
  237. 岩間正男

    岩間正男君 これは我々の情報ですから正確かどうか分らないので、大体こういうことであるかどうか蔵相からこれを確かめて頂きたいと思います。日発の例でありますが、「大蔵大臣は次の五條件の一つがある場合は日発の債務の一部又は全体を償還しなければならない。」一つの條件としまして「日発は借入金使途以外、又は長期に亘つてこの資金を使用しない場合、二、書面に記載した條項、又はこの條項に基ずく大蔵大臣の指示に違反した場合、三、資産又は事業の重大な変更の結果二の條項履行が困難になつた場合、四、大蔵大臣に対して虚僞の事実又は必要な事項の報告を怠つた場合、五、資本の増加又は收益の増加、社債の発行によつて借入金返済の余裕が生じた場合、」こういうようなことが日発の場合に謳われておる、又日本鋼管の場合を挙げて見ますと、「一、日銀の指定した工場に特約銀行を設けそこから引出す、二、引出すとき買うものを明確にせねばならん、三、帳簿を別にし、又経理上の一切の報告をせねばならん、四、日銀がこれを監査する、五、新らしい設備金の借入増資、社債発行をなす場合は一々大蔵大臣の許可を要す。六、見返資金で作られたものを担保にするときは大蔵大臣の許可を要す。」大体こういうような條項と私共は聞いたのでありますが、大体こういう條項でございますか。
  238. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) そういう條項があつたと思つております。即ち復金融資の場合におきましては、折角長期資金として出したのが、外の方面に使われたり何かするという悪例もあります。兎に角借入申込の場合におきましてこういう計画で、こういう考えで借入れたのだというときにはその方に直ちに使われる、借りて置いて暇で金を遊ばせておるということもよくあるから、そういうような今お話があつた、それが全部ではない、そういうよう考え方で貸出しをしておるのであります。
  239. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、見返資金というものは窮屈なものであり、殆んどこれは大蔵大臣のいろいろな権限の制肘を受けるということになると思うのでありますが、こういうことになりますと、而も今私が先程から問題にしましたところの、これがやはり連合軍の司令部の方の許可を受けなくちやならない、こういうことになりますと、これに対して大蔵省を通して私共やはりそういうよう一つの支配というものが、こういうような投資の條件として大きく今後入つて来る、そういうものに規定される、いろいろな條項を挙げて細かく言つている暇がございませんから大雜把に申したのでありますけれども、そういうことになると思うのでありますけれども、そういうような点は如何でございましようか。
  240. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大蔵大臣の責任において貸付しておるのであります。関係方面が直接に貸した会社にどうこうということはないと私は考えております。
  241. 岩間正男

    岩間正男君 先程も木村委員から質問が私の前にあつたと思うのでありますが、これは見返資金の運用の一つ方法の中に特銀の増資、新株を引受けるという形で特銀に見返資金を投資する方法、これについていろいろ挙げられておると思いますが、これについて興銀、勧銀、それから農林中金、商工中金、北拓とかそういうものに対してどれだけの見返資金を入れられるのであるか、それからその計画はどうなつておるのでありますか。
  242. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今向うと折衝中でございまして金額について申上げる段階至つておりません。
  243. 岩間正男

    岩間正男君 これも将来の増資、それから株発行、そういうような資金の二十倍ぐらいの株を発行するというようなことになりますと、大蔵省の発表の前に我々はこれは早めに聞いたかどうか知りませんが、聞いたのでありますが、相当大量のものが入る、興銀五〇%、勧銀五〇%、農林中金七一%、商工中金五〇%、北拓五八%というような比率で見返資金が入つて来る。それが将来の増資の中で大きな比率を占めるというふうになり、それからこれに対しては別に條件ということは、一応いろいろ銀行側の反対もあつて別についていないけれども、併し実質的にはそれと同じよう運営方法になるのじやないか。というのは大蔵省の銀行局の何ですか、検査課ですか、これを非常に拡充して将来銀行局の中心にこの検査課がなる、こういうような形で検査課が強化されるという形で、見返資金を通じて銀行の検査や監査が明瞭に実権的なものが把握される。こういうような情勢が我々の耳に入つて来るのでありますけれども、これはどういうふうな方向に動いているか、こういう形の方向に動いているか、それとも最近は別な方向に動いているか、その程度について……。
  244. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 銀行の検査監督を充実するという考え方で進んで行つておるのであります。見返資金から出資、特殊の銀行に出資する計画とは別個に考えておるのであります。
  245. 岩間正男

    岩間正男君 やはりこれについていろいろな條項は特約條項のようなものは作らないのですか、やはり私の話したような形になりますか。
  246. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) ただ見返資金から出すことを計画して折衝しておるのであります。條件については、まだ折衝するところまで行つておりません。
  247. 岩間正男

    岩間正男君 以下挙げましたのは、私達の非常に少い資料、そういう問題からでありますけれども、やはり見返資金の、先程も申しました、日本の今後の経済に占める位置というものは、非常に大きなものになると思います。それで、これに対するやはり支配の方向がどこにあるか、それが日本の本当の利益のために、本当国民のために、経済再建のために、そうして日本の自立経済確立のために、これがあるかどうかということは、重大な関心を国民は持つであろうと思うし、又持つべきであると考えるのでありますが、こういう点について、今の私の質した点の中にまだいろいろな点で明確にされない問題があつて、やはり国民はこの真相が分れば聞きたがつておると思うのでありますが、尚この問題につきましては、機会を改めて、もつとこの見返資金の問題についてお聞きしたいと思います。  次にお伺いしたいのは、関税問題であります。この頃巷に非常に私達も朝夕見るのでありますが、マッチとかチユーインガムが非常に溢れておる。殊にマッチは、最近外国製のマッチが至る所に溢れておると思います。一体あれはどこから出ておるのですか、これは通産大臣として蔵相はお掴みになつていらつしやると思いますが、お伺いします。
  248. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 出ておることは認めるのでありまするが、今どこから出たかということをはつきり申上げるまでには至つておりません。これは、進駐軍の方から貰つた場合もあると思います。いろいろな方法があると思うのでありまするが、今的確にどこからどれだけ出たという資料を持つておりません。
  249. 岩間正男

    岩間正男君 これはやはり非常に重大な問題じやないかと思うのでありますが、あんな厖大なものが、日本の現在中小企業が非常に経営困難だというような中に、厖大なああいう外国品が入つて来ておる。而も、それがどこから出て来ているのだか分らない。通産省もこの情報を掴んでおられない。これはちよつとやそつとならそれ程目に立たないと思いますけれども、今日では至る所溢れておると言つてよいくらい多いと思うのです。これはやはり日本の一つの生産計画の上に重要な関連を持つ問題だと思うのでありますけれども、これでよいのですか。
  250. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話のようにそう沢山出ているとは、私は思つておりません。只今出所につきましては、調査をいたしておるのであります。
  251. 岩間正男

    岩間正男君 これはいつ頃分りますか。やはりはつきりさして頂かなくちやならないと思うのですが……。それともう一つお聞きしたいのは、あれには関税がかかつておるのですか。
  252. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 正式の手続で参りましたものにつきましては、関税がかかつておるわけです。
  253. 岩間正男

    岩間正男君 それでは、例えば今私が話しましたマッチ、チューインガムなんか課税されておるのですか。これはどうでしようか。今お分りにならないというお話であつたし、正式のルートのものは課税されておると、そうすると、課税されておるものはどういうものですか。
  254. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 闇で入つて来るのは、これはかけようがないのであります。マッチにつきまして今関税がどれだけかかつておるか、はつきりいたしません。いずれ調べましてお答えしてもよろしうございまするが、日本人が正式の手続で輸入した場合におきまして、関税定率法に税率が規定してありますれば、関税はかかつておるのであります。
  255. 岩間正男

    岩間正男君 まあマッチのごときは、私達の聞いたところでは、一月以降八千万個というようなことを聞いているのであります。こういうふうなことになりますと、これは国内業者が非常な打撃を受けるのであります。中小企業の潰滅なんということを、吉田総理はつきりそういう言葉で表現されましたが、そうすれば、これはやはりこういうようなものを放出されたら、重大な関連を持つと思います。これはマッチやチユーインガムだけじやなく、この外に沢山例があることと思いますが、そうしますと、これは将来どういうふうな対策を以てこれに対して課税されるかどうか、こういうことが重大だと思いますので、これは通産大臣としての対策をお伺いします。
  256. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今関税定率法の改正につきまして、検討を加えておるのであります。正式手続で入つて来ますものにつきましては、関税定率法を適用いたしまして、関税をかけることにいたしたいと思います。
  257. 岩間正男

    岩間正男君 而も、この入つて来るものは、こういう形で入つて来ているのもあるのではないかと思う。これはキリスト教の団体を通じて入つているのですが、例えば、イギリスのカソリツク教会を通じて纖維品が入つて来た。こういうものについては、これは関税がかかつているのであるかどうか。又純毛の羅紗地が、これは一メートル四百五十円くらいで二百十万メートルも入つておると、こういうことも私達は聞いたのでありますけれども、掴んでいられますか。これは一体関税的に考えれば、これに対して関税をかけておられるのか。かけておられないとすれば、どういうよう意味合で以てこういうものに対して放任されているのであるか、お聞きします。
  258. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今は進駐軍の使用しますもの、又OSSで売られますものにつきましては、只今のところ課税になつていないのであります。その他、民間の人が輸入いたしまして、日本人の消費するものにつきましては、課税に相成つておるのでございます。将来の問題といたしましては、OSSで売られるバイヤーの買うようなものにつきましては、課税をいたすべく考えておるのであります。
  259. 岩間正男

    岩間正男君 これも、例えば日本で純毛の羅紗地というようなことになりますと、一メートル千五百円から千六百円するのではないかと思います。それが四百五十円というような形で入つておる。そうして、それが二百十万メートルも入りますというと、日本の業者は非常にこれは脅威を受けると、こういうふうに考えられる。それから又、協会からどのようにして流れるかと、こういうような方向もよく分らない、こういうことになりますと、随分やはり影響を持つものだと思うのでありますが、これは今調査は進めておられるわけですか。
  260. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 品物によつて違いますので、調査を命じて……、先程申上げましたように、進駐軍用並びに進駐軍関係の外人に対しましては、只今のところ関税を課すことができないことに相成つておりますので、これは止むを得ないと思います。その他のものにつきましては、関税定率法その他のものによりまして、課税いたしております。
  261. 岩間正男

    岩間正男君 その外に靴下が一足で十円くらいで非常に沢山入つてくるとかいろいろな情報がある、併し私が、今挙げたのは一例じやないかと思う。もつともつと日本闇市場の中には、多くのものがあふれておると思うが、これが本当に捕捉されて……、私の問題にしたいのは、このような形で何んといいますか、市場には不明朗は物資がどんどんあふれて行くというようなことが許されるということになると一体国内産業はどうなるか、これはどうしても将来対策を持ち課税したいという話でありますけれども、やはり勿論今の状況は、我々は日常の生活の中で町に出て見て痛感するのでありますが、もうこれ以上放任することはできない、これに対してやはり徹底的な対策を取るべきである。そうしてそれについては、我々のやはり経済の自主的な建前、こういうものからやはりはつきりした態度を取るべきだと思いますが、そういう対策についてもう一度でまきしたら具体的に伺いたいと思うのであります。
  262. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話のような点がありますので、只今関税定率法の改訂と同時に、そういうことのないようにやつて行きたいと考えております。
  263. 岩間正男

    岩間正男君 まあ輸入食糧の問題の関税についてはこの前伺いましたからここでは省きますけれどもそれにも連関いたしまして、これは、国内の産業の脅威というものは、非常なものになると思うのであります。そこで私は大体日本の関税政策をお決めになる上において、やはりいろいろな問題が重要だと思うのですが。従量税、従価税というような性格の問題でありますが、税率の問題でありますが、私は参考に蔵相が若し御存じならばお聞きしたい。アメリカあたりの関税の実情はどういうふうになつておるか、例えばアメリカがイギリス商品、こういうようなものを仮に入れるとしました場合にどういうふうになつておるかちよつとお聞きしたいと思う。
  264. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) アメリカにおきましても大体関税政策は自由主義でなしに、或る程度の保護関税をやつております。従つて輸入商品につきましては、適当な課税をいたしておると考えております。
  265. 岩間正男

    岩間正男君 日本の場合は、保護関税的な性格をはつきり取り得るのですか。
  266. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 保護関税的の考え方で只今進めております。
  267. 岩間正男

    岩間正男君 ここで私はちよつと、これも又情報として耳にしたのでありますが、例えばアメリカの関税を見ると、日本から行くものにつていは五〇%課かる、こういうことになつておるのですが、ところが同じ場合にイギリスあたりから入るということになりますと、これに対しまして一〇%から二〇%高い、こういうことを聞いておりますが、こういうようなことについて蔵相は御存じでしようか。
  268. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それは協定税率でいろいろな差があるのでありますが、私は将来の問題といたしましては、やはり各国平等であるべきと考えておるのであります。
  269. 岩間正男

    岩間正男君 現状においてはやはり止むを得ないというお考えですか。
  270. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 現状においては止む得ないと考えております。
  271. 岩間正男

    岩間正男君 無論日本は通商協定にもまだ入つていないし、国際……、いや通商協定には入つてけれども、国際関税には入つていないのですから不利な條件にあるということは分ります。併し日本の援助というよう建前から考えても、やはり輸入の場合は、例えば食糧の場合は無税、それから輸出の場合には非常に高率である、こういうようなことになると非常に日本の国内産業保護の場合、その建前から考えるときに、やはり重大な問題を持つておるのではないか、こういうふうに思いますが、この保護関税的な政策を推進するために、今通産省としてどういう努力をなさつておられるか、こういう点お聞きしたいと思います。
  272. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 主として折衝に当つておるのは大蔵省でございますが、大蔵省は通産省並びに関係各省と連絡はいたしておるのであります。
  273. 岩間正男

    岩間正男君 私の質問はまだ多くに及ぶのでありますが、七時までというと話が途中でぽつつと切れてしまうので、私はお話きしたいことは沢山持つておるのでありますが、五分前ですけれども、この辺で一応これはなんにして頂きたいと思いますが、そういうことに……。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それでは本日はこの程度において散会いたします。    午後六時五十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            岩木 哲夫君            伊達源一郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            岡田 宗司君            木下 源吾君            和田 博雄君            羽生 三七君            原  虎一君            下條 恭兵君            森下 政一君            小林 英三君            黒川 武雄君            石坂 豊一君            岡崎 真一君            横尾  龍君            團  伊能君            小串 清一君            城  義臣君            堀  末治君            木内 四郎君            木内キヤウ君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            玉置吉之丞君            藤野 繁雄君            帆足  計君            川上  嘉君            藤田 芳雄君            小川 友三君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    大 蔵 大 臣    通商産業大臣  池田 勇人君    文 部 大 臣 高瀬荘太郎君    厚 生 大 臣 林  讓治君    農 林 大 臣 森 幸太郎君    郵 政 大 臣    電気通信大臣  小澤佐重喜君    建 設 大 臣 益谷 秀次君    国 務 大 臣 青木 孝義君    国 務 大 臣 本多 市郎君    国 務 大 臣 増田甲子七君   政府委員    内閣官房副長官 菅野 義丸君    行政管理政務次    官       一松 政二君    地方自治庁次長 荻田  保君    大蔵政務次官  水田三喜男君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主計局次長) 石原 周夫君    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    厚 生 技 官    (公衆衞生局    長)      三木 行治君    厚生事務官    (医務局次長) 久下 勝次君    厚生事務官    (薬務局長事務    代理)     星野毅子郎君    経済安定政務次    官       西村 久之君    経済安定事務官    (総裁官房長) 平井富三郎君    経済安定事務官    (総裁官房次    長)      河野 通一君    経済安定事務官    (貿易局長)  谷林 正敏君    経済安定事務官    (物価庁第一部    長)      渡邊喜久造君