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1950-03-25 第7回国会 参議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十五日(土曜日)    午前十時二十六分開会   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) これより会議を開きます。通告順によつて発言を許可いたします。岩間君。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 私は今まで総理の出席をお待ちしていろいろお尋ねしたいと思つてつたのですが、先ず第一に昨日参議院の本会議におきまして問題になりました官紀粛正の問題であります。これにつきましては堀議員質問に対しまして、吉田総理は、五井産業事件、こういう非常に官紀の紊れて世上に問題になつておることについては、当然吉田内閣最初から声明した態度従つてこれを嚴重に取締りたい、併しこれに対しては世評によつて、それだけを信じて、それで事を処理することはできないというような答弁であつたのであります。併し昨日の御答弁だけでは、これは十分じやないというふうに思われる。問題はこの五井産業事件の中に、答弁されたところの吉田総理関係されておるというような、この世の中世評が起つており、更に本院の法務委員会においての調査におきましても、そのような実情が出ておるのであります。従つて私はお聽きいたしたいのでありますが、果してこの五井産業事件によるところの、あの收賄事件に対して、総理関係を持つておられるのであるかどうか、この点は非常にこの政治粛正のために重要な問題であり、又吉田内閣が今後政策を続行して行く上において非常に重要な関連を持つと思うのでありますから、この点先ず総理にお伺いいたしたいと思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 全然関係はございません。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 これに対して只今の御答弁があつたのでありますが、そうしますと、私は日本の国政に携わる者としましてこの際総理に尚お伺いしたいのでありますが、世の中では疑惑を以て見ておるのでありますから、これに対して積極的にむしろこういう事実はない、そうしてこの内閣の性格、総理の現在の潔癖な態度というものを積極的に天下声明される必要があるのじやないか、こういうふうに考えるのであります。そうすることが現在の疑惑を解き、そうして政治の運行のためにいい影響を與える、こういうふうに思うのでありますが、総理にはそのような積極的に意思を表明されるところの意思をお持ちかどうか、この点伺いたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点は警視庁なり裁判所なりに問題が繋属いたしておりますから、判決において事態は明白になると思います。関係はないものをないと言つてからに申すよりも、裁判所なりその係官決定が一番天下をして信ぜしむる有効なる方法であると思いますから、政府としては今日のところ声明をいたす考えは毛頭ございません。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 私は法理的なそういう究明はそれでいいと思うのでありますが、併し同時に総理は行政の最高責任者なのでありますから、政治的に考えますときに、そのような声明をすることは、今の世評がとかくするというとこういう問題に対していろいろな疑惑を起しているときでありますから、一刻も早くこの態度を明らかにするということが重要ではないかと、こういうふうに考えるのです。どうも今までの古い政治の形によると、こういうものを心境的に扱うとか、そういうような形でやつて来られたんでありますけれども、今後の政治はやはりはつきりそういう態度について明確な形をとつて政治を進めることが最も必要ではないかと思います。そういう新らしい政治方向から私はお伺いしているのでありますが、もつと明白にこの態度をされるということが必要じやないかと、こういうふうに思うのでありますが、重ねて答弁をお願いいたします。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国会においてかく声明をし、又裁判所係官調査の結果を公表するということが、一番積極的な明瞭な方法であると、私は確信いたしますから、政府としてはこの際係官決定を待つという以外には、積極的にいたすことの必要を認めません。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 その点の見解は、必ずしも今の答弁で私は満足できない。やはり政治的な、積極的な責任という点から考えると、これはそのような途をとられるのこそ、このような今までともするというと起りました政治上の諸問題をはつきり処理するという、新らしい一つの形を開く途にもなるのでありますから、我々は要望したいのでありますが、併し総理がそういう態度を持つておられるとすれば、これに対して私の希望を強く申上げて置くに止める外仕方がないと思うのです。併しそれによつてやはり依然として何かまだ問題が疑惑の中に匂まれておる、こういう状態にあるということは、非常に不利であると思う。このことだけは我々は確信せざるを得ないと思うのであります。これと関連してお伺いしたいのでありますけれども、あの警視庁の中にはです、追放されたところの旧職員が、非常に背後で躍つておるという事実も、こちらの法務委員会究明の結果、ほぼ明らかにされたのでありますが、こういうような動きに対して、政府一体どのような責任をとられるのであるか。この頃この追放違反の問題が頻々と起つておる。これらの一環としましても、殊に警視庁のような職責から考えまして、こういうようなところにこういう問題が起つておるということは、実に重大だと思うのでありますが、これに対する政府処置態度責任、そういうものについて御伺いいたしたいと思います。
  10. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 私からお答えを申上げます。追放令違反につきましては、いろいろの噂がありまするが、政府といたしましては十分にこれを取締りまして、さような違反のことのないように努めておるのであります。世上いろんなことを申しておりますけれども、世上の噂は必ずしも真実ではありません。その噂に躍らされて、政府が一々動くわけには参りません。政府政府なりに止まつて最も適切なる方法によつてこれを取締つておるのであります。政府責任取締にあるのでありまして、たとえ違反者が出て来た、違反行為をやつたということがあつたからと申して、それが政府責任だと申すわけには行かない。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  11. 岩間正男

    岩間正男君 政府責任ではないというお話でありましたが、その取締が十分にできていないから、それで違反行為頻々と起るということについては、はつきり政府責任ということが言えるのではないかと思います。それから世上の噂というようなことを言われておりますけれども、これは法務委員会あたりの樣子を聞きましても、相当問題は重大化しておると思うのです。そういう点から、これは法務総裁としては今までどのような処置をおとりになつたか。單に噂として聞き流しにして置いていい問題かどうか。これに対して、これを噂として聞き流す程度の問題と仮にされておるならば、そうされるだけの根拠がなくちやならんと思いますけれども、どういう根拠によつてそういうことをおつしやるか伺いたい。
  12. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 噂にいたしましても、噂でありませんでも、取締る必要があると思うものは取締つておりまするし、又適当に調査も進めておるのであります。決してさような大事なものを疎かにしておることは毛頭ございません。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 私のお聽きしておるのは、そういうような……とにかく重大な噂なら噂、その噂が流布されておるのでありますが、これについて何らかのタッチをされたかと思う。これは根も葉もないものであるとか、これは相当やはり調べなくちやならんものであるとか、そういうことを今まで法務府としてはどういう処置をとつておるのでありますか、この処置についてお聽きしたい。
  14. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 処置すべきものは処置いたしております。今お話の問題を処置しておらんというのではない。処置すべきものは処置しております。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 具体的に五井産業事件についてはやはりそういう調査を進めておられるのですか。
  16. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 五井産業事件と申しますのは、本体は五井産業詐欺事件であります。その外に只今容疑に上つておるものはないのであります。涜職とか贈賄とかいうようなお話がありましたが、それも極く一部にございますが、それは実はまだ容疑が確立されておらないのであります。それに関連しまして追放令違反の問題が出ております。追放令違反等の問題につきましては調査をいたしております。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく私はここで政府態度として望みたいことはですね、官紀粛正ということを第二次の組閣当時から最も大きな一つの目標として掲げて来た吉田内閣であります。更に過般におきましては、昨年度は十数万に余るところの官公吏整理を断行して、又新たに六、七千人に上るところの第二次整理を断行される、こういうことを計画されていると聞く吉田内閣従つてその根元の官房長官総理大臣、こういうところに疑惑の眼が向けられているのでありますから、このような粛正をするところの根拠が……そうしてその大本がこのような疑惑の中に投げ込まれているということは、非常に重大なことだと思いますから、法務府は飽くまで独立したところの権限を以てこれらの問題を明らかにさせなければ、日本政治の暗黒を取拂うことはできない。こういうふうに考えておるのでありますから、我々は現在容疑に上つておる問題につきまして一方的に偏することなく、飽くまでもその職責を遂行して貰いたい、こういうことを切望して置きます。  次にお伺いしたいのは、講話の問題であります。それで施政方針演説におきまして吉田総理講和が間近いと、非常に朗報じみたことを申された。これが一月ばかり前でありますが、衆議院予算審議最終階におきまして議員質問に対しまして、講和は現在の段階においては遅れざるを得ない……又一昨々日だと思いますが、本委員会において木村委員質問に対してもそのような御答弁があつたと思うのであります。こういうことは非常に国民の期待に反したことになると思います。この原因は何であるか、こういうものを一つ徹底的に究明して、そうして最初施政方針演説において闡明されたような態度はつきりここで実現できるような、そういう方向に進むべきだと思うのでありますが、その後こういうような情勢の変化に対しまして、吉田総理はどういうような一体対策をお持ちになり、又この講和打開の道を促進するようなところに、具体的にお進みになつておられるか、その点を伺いたいのであります。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私がしばしば申す通り講和問題は客観情勢によつて支配される以外に支配されるのである。この客観情勢の変る度ごとに私の考えておるところ、見たところ、感じたところを率直に申述べた。で、客観情勢は変るのであり、率直に述べた結果が違う、これは当然のことであります。又これに対して如何なる処置とつたか、先ず第一に申さなければならんことは、政府としては積極的に今日外交的に動くことが禁じられておるのであります。その権能がないのであります。でありまするからして、政府としては、公然何らかの処置を講ずることはできないのであります。然らば陰にどういうことをしたか、これは私としてここに言明することのできないことを遺憾といたします。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 国民がこれを聞いたら非常に不満足に思う御答弁であると思うのであります。政府代表国民代表として、こういうような希望を、而も平和を一日も早く実際的に実現するような講和態勢を確立するために政府努力することは、現在の情勢において禁止せられておる。こういうことも私達は了承ができないのであります。而もこれは国民運動一つの先頭に立つてそういうことをやる意思があるかどうかという点につきましては、過般我が党の野坂參三氏質問の中でもこういうことは述べられた筈なんでありますが、首相は依然として消極的態度しかとつておられないことは、国民を甚だ満足せしめない状態に陷れておると思うのであります。又今のお話では、客観情勢によつて決まる問題だ、こういうのでありますけれども、その客観情勢把握そのものが、一体どういうことになつておるか、この点についても政府見解が甚だ曖昧じやないかと思うのであります。例えば四大国、この動行考えて見ますというと、これはソ連におきましてはモロトフ、マレンコフ、こういうような人達の口を通じまして、はつきりこれは四大国の協調によるところの全面講和ということの希望が述べられ、早期講和への要望が展開されておる。又中国も同じであります。又イギリス情勢はどうかといいますと、最近のニュースによりますと、例えばここにロンドンの二十日発のUP電がございますが、イギリス外務次官のデヴィス氏が、やはりこれに対して單独講和はあり得ない。関係国一国だけが日本單独講和をするというようなことはあり得ないので、飽くまでもこれは極東委員会参加国の如何なる国と雖も、日本とその国だけの單独講和を結ぶことはできない。米国或いはその他の如何なる国も、その国だけで單独に結ぶことはできないというので、こういうようなことを下院で答えられておるのでありまして、はつきり全面講和への希望が展開されておる。そうすると関係国の中で、もう三つの三大国がこのような全面講和への希望を披瀝されておる。こういう情勢に対しまして、政府一体こういうような態勢の中で本当にこれを実現するために努力をして行くという態度が必要だ。そう今国民希望しておるんだというふうに考えられるのでありますけれども、政府態度は何故にこの問題を消極的に扱つておるのか、我々として甚だ納得の行かないところであります。この点について、総理の御答弁をお願いいたします。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題は私はしばしば議会において述べておるのでありますが、今お話ソヴィエトイギリス等は完全な独立をいたして、その外交上の行動等については、一応尤もであります。日本降伏條約以後、連合国の監視の下にあるのであります。自由独立を未だ回復しないのであります。故に独立を回復するために講和を一刻も早くせしめたいということは、これは我々も念願して止まないところであります。然らば如何なる勢力をしたか。いずれの国においても独立国外務大臣として、只今交渉はこういうことをいたしておる、ああいうことをいたしておる、こういう施策をいたしておるというようなことを、外務大臣が、公然、議会においてもその他においても言明をするというような外務大臣はどこの国においてもないのであります。ソヴィエトは存じませんけれども、我々の承知いたしておるところでは、外務大臣外交交渉機密を一々明確に言明する、そういう処置はどこの国においてもとつておりません。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 私はその機密についてまでお聽きしようとしているのじやない。ただ政府答弁、これはポツダム宣言によつて明らかにされたそれとの関連におきまして、日本国民態度を明らかにするということは、何ら疚しいことではない、国会で公言するということは無論必要なことである、講和を促進する意味において。然るに政府は過去の古い軍閥によつて引きずられたあの時代、戰争前のあの馬鹿げた外交祕密外交のような口吻を匂わした御返答総理はされている。私は国会を通じて国民の世論を取上げ、その思考するところ、希望するところをはつきりここで言明されることが、何で一体おかしいことであるのか。どうか、こういうふうに考えるのでありますが、この点は総理如何ですか。この点改めて又伺います。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国民講和その他の問題において自由に意思を発表することは、私は毛頭防げておりません。国民は自由にその意思なり希望なり述べるがいいということは、しばしば述べているところであります。然らば政府としてどうということは言わない方が……言明すべき慣習でもなければ、言明して利益ないということをしばしば申しているのであります。これ以上は答弁いたしません。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 総理は、全面講和を望むということはこれは何回も述べられた。併しどういうことを一体考えてそう述べられているのか分らないのでありますが、併しやはり意思表明は或る程度されているのでありますね。それでこの全面講和でありますが、今言つたように、例えば関係大国におきまして、三大国がそのようなものを希望している。併し何故にそれが遅れているかということは、これは国民の齊しく現在聽きたいところの問題だと思うのであります。これに対して一昨日も、木村委員質問つたと思いますが、その中で、結局海外の情報をどのように掴んでいるか、認識の問題だと思うのでありますが、これに対して情報は、現在においては新聞やラジオや雑誌を通じて比較的多く集まつてつて戰争前よりも広くそういうものを聽いている、こういうお話であります。併し一方におきましては、まだこのアジアにおけるいろいろな混乱があるとか、それからソ連における動きというものが、大体正しく把握されているのであるかどうか、こういう点から考えまして、私はここでお聽きしたいのでありますけれども、我々は本当に正しい世界の客観的な情勢を聽きたい。そうしてこれを聽くところの権利を有する。むしろ今日これを私達が要求することは、この敗戰によつて、そうして飽くまでも再びあの馬鹿だけ戰争に陷らない、飽くまでも平和を護り拔く、ポツダム宣言によつて規定され、そうして日本の憲法によりましてはつきりと謳われているところのものを貫くためには、そのような権限があると思うのであります。然るにそのような情報日本の現在の情勢を以て見ますと非常に一方的である。あらゆる情報を、すべてを公平に酌み入れるという機関も非常に少いし、我々はこの一方的な放送の中に耳を強いられて、場合によつて聾棧敷に追詰められているというような情勢にあると思うのでありますが、これに対して総理は飽くまでも、このような世界情勢について十分に正しく、広く、而し客観的に、公平にこれを聞き入れるというような態勢を確立するものと思いまするが、この点に対して総理見解をお伺いしたい。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それはしばしば申述べておる通りでありますから、更にこの際お答えはいたしません。    〔「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 岩間正男

    岩間正男君 これは事実を以て見ればはつきり分ると思う。現在例えば学者連中はどういうことを言つておるかというと、なかなか現在の情勢ではソ連の書物なんか手に入れることが困難だ、こういうようなことを言つておる。こういうことでも分りますように、なかなかそういうようないろいろな知識を、海外的な知識を我々は持つことができないような情勢になつておる。これは非常に危險だと私は私う。あらゆる正しい世界情勢を我々は飽くまでも正しく入れる。世界な視野を確立する。そうして過去に我々が陷つたあの軍閥戰争時代のように、国民には目に蓋をする。物は見せない、真相は聞かせない、そうして我々の国をあのように戰争に再び陷らせないために、そのように態度を積極的に展開されることを私は切望して止まないのであります。  要するに今の講和に関しまする質問を総合しますに、総理は一方に偏つたものの見方をされておるのじやないか。飽くまで公平な、あのポツダム宣言の指向するところによりまして、関係国の公平な見解、公平な立場でこういうものを十分に取入れた上に立つて、この講和を促進させる。そういうような答弁をされた筈であるに拘わらず、そのような努力はどうも具体的に見当らない、こういうことを我々は歎かざるを得ないのであります。これに関連する問題でありますが、以下私はこの講和に対して、むしろ非常に有害であるというような、いろいろな條件国内に現在出ておる。こういう問題に対して一体政府はどのような見解を持ち、首相はどのような対策を持たれるか。若し私が以下質問するような問題に対して明快な、正しい措置ができないとすれば、首相が口の先で全面講和が望ましいということを言われたとしても、それが具体的な政策として採られていない限りは、それは單なる空念仏に過ぎないと断定せざるを得ないのであります。先ずお伺いしたいのでありますけれども。例えばこれは最近の朝日新聞天声入語欄でも問題になつたのでありますけれども、台湾に対するところの有棘鉄線、これが日本の業者によつて最近数千トン台北の国民政府へ送られておる。このようなことが外にあるかも知れない。又この天声人語に従いますと、これに対して日本が單に自分が戰争を放棄しただけでなくて、このような戰争が起るかも知れない危險のところに、このような戰略的な物資を送ることについては、世界国民疑惑が深まるだけであるから、このような態度は止めるべきであるということを朝日新聞天声人語欄では論じておるのであります。このような事実に対して首相はどのような考えを持つておられるか、対策を持つておられるか伺いたいと思うのであります。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の御質問は何を言つてあるのですか。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 有棘鉄線……棘のある鉄條綱に使う、そういう鉄線を数千トン送つておると、こういうのです。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 実事を知りませんから、調べた上でお答えいたします。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 これはしばしば今までも問題にされ、それから朝日新聞のような大新聞も問題にされておるような天下周知の事実だと思うのでありまして、首相が今これについて知らないというようなことを言われるのは頼りない感じを持つのであります。できるだけ早くこれに対する返答を聽きたいと思うのであります。このような形で、單にこれだけじやないということを言われておりますように、いわゆる貿易政策の中にこのような危險を含むところの戰争挑発的な戰略物資というようなものが送られたりしております。そういうような戰略地帶との取引というような点について、これは政府一体基本的にどういうような対策を持つて、どのような考えを持つておられるか。これは私はこの有棘鉄線の問題を離れても、一般の問題としてお伺いしたいと思うのであります。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 戰争用、戰争に用いる物、戰争に用いられない物を、その用途によつて区別することは余程むずかしいことだろうと思いますが、政府としては今日まで戰争放棄をいたしておるのでありますからして、例えば大砲などを送り出すというようなことは断じてない筈だと思います。それから又現在の貿易はいわゆる管理貿易であつて、G・H・Qとしても戰争を惹き起すような、或いは戰争を助長するような物を日本から輸出することは許さない筈であります。でありますからして、お尋ねの心配のようなことはないと思います。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 これは御心配のようなことはないと言われるのでありますが、非常に国民心配しておる問題であります。又これに対して挙げれば沢山の例があると思うのでありますが、こういうような貿易政策について、これは最も根本的に検討しなければならないと思うのであります。  次いでお伺いしたいのでありますが、やはり貿易の中でダンピングの問題であります。最近の新聞情報によつてでありますが、見ますと、カナダ政府日本の商品が非常に最近ダンピングされる、そうしてこれは国内産業が破壞される、これに対してダンピングを阻止するところの関税障壁を設けなければならない。そういうことが新聞紙によつて報道されておるのでありますが、日本の現在のダンピング情勢に対して総理は、これは非常に戰争を誘発するやはり経済的な一つの大きな基礎になる。こういうふうに思われるのでありますが、これに対してどのような見解を持たれるか、お伺いしたいのであります。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダンピング戰争原因なつたということは私は曾て浅学にして聽いたことはないのであります。又日本政府ダンピングはしないということを明らかに声明を………私の名において声明をいたしております。併しながら商売でありますから、安く売り得るものは安く売るということは当り前の話なんで、ただそれが個々の相手方の産業危險に落すような工合に不当にダンピングをする、或いは政府の補助金においてダンピングさせる、こういうことは政府といたしては決していたさせません。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 奇怪なお話を聞くのでありますが、ダンピング戰争原因でないと、首相はどういう根拠からそういうことを出されるのか、私ははつきり聞きたいのであります。日本の過去の侵略戰争、あの根源は正にダンピングによつて指導されたのじやないか。これはどういう根拠によつてはつきりそういうふうに言明されるのか。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はダンピングによつて戰争が起つたということは断じて信じません。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 この議論をやつていても、これは世の中の物笑いの種を買うだけで……(「どつちが物笑いだか……」と呼び、その他私語する者あり)総理が、日本総理大臣が過去の戰争原因をどのように掴んでおるか、そうしてダンピング戰争原因でない、だからそのような考えを持つておるからして、又ダンピングに対して今言つたよう答弁がなされておる。止めろというお話でありますけれども、この問題を今日論じないで一体何を論ずるかと言いたいのであります。日本の過去の侵略戰争原因一体諸君は掴んでおられるのか……
  36. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 岩間君、私語を禁じます。総理質問を思います。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 そこで進めますが、ダンピングはないということを首相が言われた。それから同じようなことをこの前労働大臣も言われた。ダンピングがないなら、何故一体ダンピングのこのような恐怖に対して関税政策を以て対抗しなければならないか。私は例を挙げます、そうなれば……あるかないか、こういうことで御判断願いたい。   「カナダの綿業協会会長W・Sバリル氏は、十二月十四日の同協会の年次大会で日本纖維品のダンピングについて次のように報告した。世界政府日本の安価な製品に脅やかされている。低価格の表示であつた戰前のメイドイン・ジャパンの貼札は早くも復活して来た。戰前の労働條件と、甚だしい低生活水準を改善するため、日本において実施された筈の社会的経済的政策は未だ効果を奏していない。我々は、日本ダンピングから、カナダの纖維産業を保護するため、輸入制限を実施するよう要請するであろう。」このような情報、更に又「アメリカの、これはパターソン商工会議所会頭エドワードJ・マツクユーアン氏は、日本ダンピングについて十二月七日UP記者に次のように語つた。アメリカ実業家の一部は、毎年数百万ドルに上る日本製品がアメリカ市場にダンピングされるため、脅威を受けている。この競争を受けているアメリカ産業をどうして救うかについて、関係アメリカ実業家の会議を開くべきである。更に彼は次のように言つている。現在我々が頼り得る唯一の手段は、アメリカ関税委員会に持ち出すことである。我々の見解によれば、日本のフロア・プライス制の撤廃は、その他の多くの分野で予想される措置の先ぶれにしか過ぎず、これらの措置はアメリカ産業を破産させ、多くの人々を失業させることになろう。私はこのような影響を及ぼすものとして、木製、プラスチック製、ゴム製、金属製の玩具と、すでに対日輸入量がますます増大している綿織物及び婦人、子供用手袋編物を挙げる。」  こういうようなことが報じられている。  又イギリスにおきましても、例えばアフリカの北海岸におきまして、日本商品とイギリスの綿製品が激しい衝突をしているというような情報が伝えられている。このような、殊に物凄い綿工業の中に集約的に現われている。過去もそうでありましたが、日本の場合は纖維産業の中にはつきり現われている。このようにダンピングの脅威についていろいろな世界情報が語つているのであります。この事実を首相は否定されるのであるかどうか、これについて伺いたい。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞の論評或いは相手国の、日本との競争国の商業会議所その他の攻撃に対して、政府としては一々弁明する暇はありませんからいたしません。ただ、政府としてはダンピングさせるために、特に政府が助成金を出すとか何とかというような、ダンピング政策政府としては採つておらない。併しながら民間が勉強して、そうして安い物を作り出す、これは止めるべきではないと思います。まずまず安い物を作る、不当な廉価販売ではいけないけれども、正当な価格によつて、そうして世界に売出す、そうして相手方が不利を蒙るから日本産業に対してダンピングを攻撃する、これに対して一々政府答弁をする責任は感じません。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 この前の木村委員質問であつたと思いますが、総理は、世界情報はやはり新聞や雑誌によつて知るということを言われた。だからその新聞や雑誌の情報に対して、これは十分に我々は、自分の疑義を質すべきものだと考えます。その例として、私はいろいろ例を挙げている。これに対して総理は、都会の悪いところになるというと、新聞や雑誌に対しては我々は責任を以て答弁することはできないという逃言葉を言われる。逃言葉に過ぎない。今のような事実がはつきり出ているのであります。そうして、このような今の説明は、これは我々絶対了解することができないのであります。なぜこのようなことが起るかというと、これは日本の低賃金と深く関係を持つておる現在の農村の状態、殊に厖大な輸入食糧を無制限に入れて来ておるところの現在の情勢から来ておる農村の恐慌、更にそこに起つて来ておるところの潜在的な過剰人口というものが、最近については例えば上野や浅草あたりに現われておるように、青少年の物凄い家出の現象にも現われておる。これはここで数字を挙げませんけれども、最近この傾向が非常に目立つておる。而もこれらの青少年浮浪兒に落ちて行くところの青少年をよく調査して見ると、最近は東北の農村からこういうものが流れて来ておる。もう溢れておるのです。引揚者と復員者と失業者が最近農村に溢れて行つて、そうして農村の過剰人口の問題の解決というものは非常に大きな問題になつておる。而もつくづく考えて見ると、太平洋戰争の大きな基盤はこのような過剩人口が低賃金制の実は温床であつた、補給金であつた。こういうことと非常に深い関係があるこれらの者がどんどんと工場に安く、まるで人身御供のように売られまして、そうして低賃金に追込まれ、その低賃金で作られたものがそれが世界に脅威を與えた。そうしてそれに対する関税の戰が戰わされ、そういうような事態を突破して、とても解決がつかなくなつたときに実力行使の戰争が起つた。このような情勢について首相は何ら御覧になつていない。だからダンピングの危機についても今のような答弁をされておる。或いは知つてとぼけておられるのであるか、甚だ疑問に思うのであります。従つて、そういう現在採られておるところの吉田内閣政策、これを貿易政策の面から見ましても、大体日英協定を結んで、それで協定貿易に入つた。併しながら外貨資金が不足して買えない。もう殆んど資金が枯渇して、何ともこれは最初予定したところの貿易態勢を維持することができない。従つて資金を何とか作らなければならない。作るには仕方がないからこれは国内の滯貨を売拂つて、どんどんダンピングに陷れて外貨を作る、そうして何とかこれを政府の立てた貿易政策を、これで何とか息をつかせなくちやならんというのがこの方向じやないか。こういうような方向はつきり出ておるのに対して、今日ぬけぬけと、吉田総理大臣は、これは我々が知つておることじやない、業者が安く売るのである。そこでそれなら吉田内閣貿易政策は何ものであるか、全く、これは全然かような政策がないということを言わざるを得ないと思うのでありますけれども、一体このような、世界に脅威を與えておるところのダンピング政策に対しまして、吉田内閣はどのような政策考え、どのような対策を今お持ちになるか、今後の、これについての見通しを伺いたいと思うのであります。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 議論に亘りますからお答えいたしません。
  41. 木下源吾

    ○木下源吾君 議事進行について……委員長にお尋ねするが、総理大臣に対する質問が、各委員に質問の機会が與えられるかどうか、どういうようにして與えられるか、そういう点について一つ御意見を承わりたい。
  42. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 各党代表で一巡済みましてから、各委員に質疑をお願いしたいと思つております。只今は……
  43. 木下源吾

    ○木下源吾君 と申しますのは、総理大臣に対する各党代表になつておるのでありますか。
  44. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) さようであります。
  45. 木下源吾

    ○木下源吾君 それが済むと又総理大臣に対して各委員が機会を與えられる。こういうことになつていますか。
  46. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) さようでございます。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 次に伺いたいのでありますが、この輸入食糧の問題であります。この輸入食糧の問題について、一昨日農林大臣並びに池田蔵相並びに安本長官が立会われてお伺いしたのでありますが、この昨年度の輸入食糧については、何ら明示されなかつた。今年度の輸入計画についても、これは甚だ漠然とした返答しかなかつたのであります。併し補給金ははつきり国民の税金から出されておるのでありますから、我々はこの費用が、どのような輸入の内容によつて、どのように拂われておるかということを質すところのはつきりした疑問を持つておるものであります。又権利を持つものであります。そういう点から考えて、これが発表されなかつたことは、甚だ不明朗な感じを持つのでありまするけれども、総理はこういうような情勢についてどう考えられるか、お伺いいたします。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 食糧の欠乏は、過去数年間において具さにその苦痛を甞めたところがあつて国民の食糧は飽くまでも一応確保しなければならんと、この観点の下に外国の食糧を輸入しております。その数量等については、所管大臣からお聞きを願います。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 この過大な輸入食糧の輸入によつて、農村の恐慌が非常に深められておる。こような問題については、もう触れませんが、私は無制限にこういうようなものが、例えば昨年の予定額がもつと超過して今年は入れられておる。二百九十万トンのものが、三百四十万トンにも、三百九十万トンにもなるのではないかというようなことが、これは情報されておるのである。又来年度も、三百七十五万トンのものが、四百二十万トンぐらいに行くのじやないか、こういうことが一方で言われておることを聞いておる。こういうような問題について、これは非常に予算とも関係のある問題でありますが、こういうような問題を明らかにし、更にその結果が日本の農村の将来の運命と非常に深い関係を持つ。いや現在関係を持つておる。こういう問題について、政府はこの輸入食糧の量を明らかにしないという点については、我々はどうも納得することができないのであります。これはできるだけ早い機会に明らかにすべきじやないかと思いますが、これについて、総理はそういうふうな態度をとられるかどうか、お伺いしたい。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 輸入食糧は、只今申した通り国民の食糧を確保するに必要な量だけ入れておるのでありまして、その数字等については、主管大臣から御希望によつて発表いたすようにいたさせます。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 果して必要な額であるかどうか、この問題は、これまでの農林大臣の答弁なんかによつても、非常に疑問のあるところだと思うのであります。日本の現在の食糧の必要量は果して超えていないかどうか。これはここで首相と議論しても仕方がないと思いますが、この問題について、できるだけ明らかにすることを要望したい。  次にお伺いしたいことは、食糧に対する関税の問題でありまするが、この関税は、最近永久にこの食糧に対しては無関税にすると、こういうような意向があるようでありますが、これに対して政府一体どのように考えておられるか。そうしてどのような対策を持つておられるか。無関税というものを一体正しいと考えておられるかどうか。先程も申しました、日本の農村を保護すると、こういう立場から考えましても、これに対する首相の意見を伺いたいと思う。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今は外国の食糧が高価であるからして、無税を許しておるのでありますが、永久に無税にするという考えは毛頭ございません。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、いつ頃これに対して関税をかけるということを考えておられるか、今の見通しを伺いたい。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは見通しとしては、只今のところは外国の食糧が高価であるから無税にしておると、併しながら、いつ外国の食糧が安くなるかと、この見通しは私にはないのでありますから、安くなつたなら関税はかけると、こう御承知を願いたい。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 次に見返資金について伺いたいのでありまするが、の見返資金の日本経済において占める位置というものは、これは実に殆んど絶対的なものになつて来るのではないかというふうに思われます。一体この見返資金は、援助資金を裏付として、そうして日本国民を拂つたところの食糧の売上代金、更にそれに対するところの補助金、こういうふうなもので成り立つているのでありますが、当然援助資金そのものと見返資金とは区別をされるものであるというふうに考えますが、この点は首相は如何お考えですか。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 見返資金と援助資金というのは、直接には関係がありませんが、間接においては相関連しておることは、御承知の通りであります。而して、援助資金が将来どういうふうにせられるかということは、今日決まつておりません。従つて、見返資金が、外国との関係、或いは援助資金との間にどういう関係を法律的に持つかということは、條約によつて規定されることと思います。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 この援助資金は、はつきり日本の債務になつておるのかどうか、この点はどうですか。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは只今申した通り、條約によつて決まることと思います。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 これは條約によつて決まるのでありましようが、併し、これに対する今までの折衝の結果とか、そういうことはないのですか。例えば、阿波丸協定の協定を政府はされたと思います。あの協定にもいろいろ問題はあつたのでありますが、あの協定の條項の中で、そういうようなことは触れてないのでありますか。それから又マッカーサー元帥が米国の国会に出した書簡の中に、このような援助資金というものは如何なる日本の債務よりも優先して取立てるところの債務であるということが、国会宛の書簡に報告されたということを聞いておるのでありますが、こういう事実については、首相はお知りかどうか。そうしてお知りならば、これに対してどういうような見解を持たれるか。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その点は、私の記憶でありますけれども、尚正確なことは取調べをしてお答えをいたしますが、只今のところは何も正式の交渉を受けておらんと記憶いたしております。取調べた上でお答えいたします。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 現在の情勢で行きますと、殊に吉田内閣のとられた阿波丸協定なんかの処置から総合して考えると、この援助資金ははつきりこれは日本の債務になるのではないかと考えられる見通しが非常に強いのであります。それとの連関におきまして、食糧が輸入されておるのであります。その結果見返資金ができておるのでありますが、この見返金というものは、さつきの首相の御答弁にもあつたように、はつきり区別することができる。関係はあるけれども、区別することができる。それは関係はあります。それは裏と表の関係はあるようでありますが、はつきり区別ができる。従つて、この見返資金というものはどこのもであるか、これは我々は日本のものである、日本国民のものであると、こう考えますけれども、首相はこれに同意されるかどうか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは御承知の通り、援助資金と相連関性を持つておるのでありますからして、これは日本のものなりと、日本政府が自由になるものではないのであります。
  63. 岩間正男

    岩間正男君 この問題は、先程の援助資金が債務であるかどうかということと深く連関して来るのでありますが、今漠然と両方の性格をしておいて、そうしてこの見返資金が非常に日本経済の実際の権利を握つてしまう、こういう形になつてからこの問題が決定されるような形でも、非常に危なつかしいのではないかということを憂えるものであります。この点で私は尚お聞きしたいのでありますが、池田蔵相が過般の衆議院の予算委員会におきまして、我が党の川上委員の質問に対しまして、あの見返資金の法案の中で、これを使用するには一々連合軍の許可を受けなければならないという條項が確か第四條第六項でありましたか、それにあつたと思う。然るにこれに対して本会議におきましても蔵相は第六條にはつきりそのようなことが規定されておるということを、しばしば言明された。併し事実はあの條項は削除されておる、従つて削除されておるのでありますから、あの條項を完全に運用するということが正しくなされますならば、当然これは日本政府があの実権を握る、又国会がこれに対してこの使用方法はつきり握るべきだと、こういうふうに我々考えるのでありますが、首相はどう考えるのでありますか。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申しました通り援助資金と関係のあるものでありますから、今日のところは政府が独断で勝手に使うことはできないのであります。
  65. 岩間正男

    岩間正男君 併し何のために法案を作り、何のために法案を修正したのか、我々は疑わざるを得ない。つまり日本国会並びに政府がですね、あれに対して、あれは自分のもの、自主権を確立するというためにあの法案は修正されたものと思う。ところがこの法案が第五国会であつたと思いますが、修正されてから一年間池田蔵相はこの事実を知らなかつた、忘れておる、そして全部これを連合軍のいろいろな指図を受けて、あらゆる点までこれに対して向うさんの指示を仰いでやつておる。これは明らかに国会を無視したやり方である。それから法律を無視したところのやり方と思うのですが、この責任に対して蔵相はどういうふうに処断される考えであるか、お伺いします。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今大蔵大臣の説明等については、私は詳細を存じませんから、大蔵大臣からしてお聞き願いたいと思う。その答弁によつて私もお答いたしますが……
  67. 岩間正男

    岩間正男君 非常に重要な日本の、よく吉田内閣が口にされる自主性と関連した問題である。日本の民族の運命を決定するところの重大な問題であります。この見返資金が日本のあらゆる経済界がこれで以て実権を握るということになつた。そしてそれがその條件が不明なまま、そしてこれが左右されるということだつたら、日本経済というものはどういうようなところに追込まれるか、ということは明らかである。私はその例としてここで挙げたい。今度の見返資金は国鉄とかそれから電気事業、国有林なんかに相当入ると思うのですが、この中で国鉄の例を例えば挙げて見る。国鉄の資産は大体四十九億ということになつていると思う。ここに新たに四十九億の資産が見返資金から資金が入る、こういう形になると思う。ところがこれが資産再評価後であつたならば、この問題はそれ程には市場からいつて響かないかも知れませんが、資産再評価前におきましてこれが入る、そしてそれが厖大な何千億という再評価されますというと、その約四十五%が見返資金によつて握られる。而もその條件がどうか。この條件についてはこれは、これ程重要な問題でありますから首相は御存知だとと思いますから首相にお伺いしたい思う。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り見返資金と援助資金は関係があるから政府は勝手に使うことができないのであります。この始末はどうなるか。これは講和條約において決まつて行く。
  69. 岩間正男

    岩間正男君 私の聞いているのは、国鉄の四十億を投資する。資産再評価前に投資されて、四十五%も向うの、そういうような見返資金というような性格不明な売金によつて握られる、そのようなことが非常にやはり日本国民は大きな関心を持つと思う。そういうことを聞いておるのですが、どのような條件を持つておるのですか。少くともこれは日本の将来にとつて重大な問題ですから、首相はこれははつきり責任者として御存知だろうと思う。これをお伺いする。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 未決の問題ははつきり私も存じません。條約によつて決まるということはしばしば申しておる。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 どうも我々の聞いたところ、現に昨日の衆議院の予算委員会において明らかにされたと思うのでありますけれども、この條件は全く今のところ明らかでない。貰つたものか借りたものか、それから先になつてどうなるのであるか、これは一切不明である。そうして首相が今答弁をされたような講和会議によつてこの問題が決定される。実にこのような形でこの見返資金が入る。これは国鉄の一例でありますけれども、果して日本の国有鉄道というものの将来の性格がどういうことになるか、実にこれは重大な関心を、これは国会なり国民は持たざるを得ない問題だと思うのであります。而もその権限は、首相が今言われておりますところの見返資金の性格をはつきりして、この紐がどこからついて、そうしてそれは援助資金は例えば負債なら負債、これは性格がはつきりするならそれに対してこれは見返資金は日本のものである。国民のものである。然らば国会がこれに対して、この実際の行使権を握るということにしなければ、日本の民族の運命に対して一つの大きな課題を私は提供するものだと思うのであります。この点についてこれは決して單純に、その辺で何か言つておられる方がありましたが、これ程の大きな運命に対して等閑視しておることがおかしいのであります。こういう点から是非これは今後政府態度を明らかして欲しいと思う。どうしてもこういう点について見返資金の性格を明らかにして、日本の経済の実勢、政治の実勢を確立するのだ、その政治的な責任においてやつておるのだと首相は言明するのでありますから、その言明に従つて当然さような責任を持つと思いますが、どうぞもう一遍首相の意見を質したいと思います。
  72. 小澤佐重喜

    国務大臣(小澤佐重喜君) 岩間君の御質問でありますが、御指摘の例は運輸省の例でありますが、これと同様のものが私の所管いたす電気通信事業にありますことは御承知の通りであります。この問題につきましては、要するに岩間君の御指摘なさつたことは、資産の再評価をしないで、例えば私の方で言えば二百四十億、今年度、来年度、こういうものが入ると非常に資本金は見返資金が重くなつて、資本金の比重が重くなつて、将来は電気通信事業とか、鉄道というものが、非常に向うの資金が優勢になつて来るのではないかという御心配をされるために、御承知のように実際上は資産の再評価はしておりませんが、予算上に当りましては、電気通信事業の方にやはり資産再評価いたしております。例えば千六百億というような資産再評価を、いたしまして、そうしてこれに基いて減価償却を行なつておる現状でありますから、経理の上におきましてはその点ははつきりいたしておりますから、岩間君の御心配のようなことはございません。
  73. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 岩間君に申上げますが、総理はお忙しくてお帰りになりたいとおつしやるのですが……
  74. 岩間正男

    岩間正男君 こつちも、私は三回も私の前になつて止めて、いつでも総理の都合によつて何回も無駄足を踏んでおる。お忙しいでしようが、もう少し何して、総理の都合だけでいつもなさるやり方は委員長においで注意を與えて頂きたい。
  75. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 成るたけ縮めて願いたい。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 これだけの重大なる問題ですから……それは国鉄においても同じことが言えますか。
  77. 小澤佐重喜

    国務大臣(小澤佐重喜君) 同じことであります。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 次に伺いたいのでありますが、台東会館の、最近の朝鮮人彈圧事件であります、これは法務総裁いらつしやいますか。あれはどういうような工合によつてあのような騒擾事件が起されておるのか、これに対して……
  79. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 総理の分だけを願います。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 総理に伺います。総理はあのような騒擾事件に対して、どのような見解を持ち、どのように処理されますか。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法律の基定によつて処理いたします。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 法律の基定と言われますが、この前の朝連解散の問題もこれはあつたのでありますが、そうしてあのような一方的にこれを強制接收する、而もこれは財産まで取上げるということをやつたんでありますが、それに対してこれは朝鮮人の諸君がこれを東京地裁に訴えられた。この不当について訴えられた。併しそれに対してはつきりとこれは日本の裁判権に属しないというので、これは第二回の公判だと思いますが、そこで却下された。そうすると私はここで問題にしたいと思うのでありますけれども、一方的にそういうような行為は行使する、而もそれは日本政府責任においてやるというておいて、その結果の救済規定というものについては全然これは顧みられない。日本の裁判においては全然これは裁判できないのだから勝手にするがいい。これを突破してしまう。この問題が一体どのような国際的にも影響を與えるかどうかという問題です。これが果してこのようなやり方をやつてつて一方で全面講和を口にしてもこれは全く全然根拠のない、裏付のないものになりはしないか。このようなことが果して今後東亜との修好を結んで、そうして東亜の繁栄の中に生きて行かなければならないことを当然運命付けられておるところの日本にとつて果していいものか。更に講和を促進するためにこのようなやり方というものは果して効果的であるかどうかこの点……
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えいたします。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 私は政治責任について聞いておるのでありますから、法務総裁答弁は後に廻して貰いたい。
  85. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 講和講和、法律の規定によつて政府は行動する。これは政府の義務でありますから、法律の命ずるところによつて万事処置いたします。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 今度の騒擾事件ですね、あの関係者のなにを聞きますというと、例えばあそこの台東区長、それから警察署長も朝連の財産ではないということをはつきり認めておる。こういう事実があるのですが、これに対して朝連の財産なりといつて強制執行するというこのやり方はどうでしよう。
  87. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 朝鮮人連盟を解散いたしましたのは昨年の九月でありまして、そのとき直ちに台東会館は連盟の所有の家屋であると考えたのでありますけれども、朝鮮人側におきましていろいろと証拠らしきものを持つて参りまして、これは連盟の財産ではないという主張をしたのでありますから、連盟の財産であるということは確実でありましたけれども、これらの主張を一々聞きまして、一遍全部これを調べ直したのであります。調べ直しました結果、如何にしても朝鮮人連盟の財産であるということが客観的に動かせなくなつたのであります。そこでこれを接收を実際にやらなければならないということになりました。ところがその接收すべき家屋の中に住居しておる者が約二十数人おつたのであります。そこでこれらの人を立退かせませんければ接收が完全に参りませんから、そこでそれらの人のために別に所を作りまして、そうして住居を拵えましてそこへ移すことを明示いたしました。そうして移つて呉れということを頼みましたのであります。ところがどうしても移らず、移らなければそれは政府の側においてこれを移す、荷物をまとめまして、そうしてそこへ運ぶということまでやるという話をいたしたのであります。最も穏やかな方法で、最善を盡してこれは接收にかかつたのであります。若しこれをいろいろな文句があるから接收をしないことでありますれば、あの法律の規定が無効になるのでありまして、法律を嚴正に執行する立場からいたしまして到底許可することができない。全国数十ケ所或いは数百ケ所の連盟の財産について同一なことが起り得るのでありますから、法律の飽くまで規定するところに従つて処置をする。併しながらいろいろな影響がある。その影響は最小限度にこれを止めたという折角の苦心をいたしたのであります。ところがこれを聞きました朝鮮人側におきまして、あの当日接收を決行いたしましたときに、数百名の朝鮮人が集まりまして、そうして家の内外に屯ろしまして、そうして家の中に二百人ぐらいおつたそうです。僅か七十五坪の建物であります。そういたしましてこれを接收に参りました者にこれを拒絶し、保護して参りました警察官に対して煉瓦のかけを投げる、板を投げる、板切れを投げるというようなことで、結局これを防衞しますために騒擾のような形になつたのでありまして、これは甚で遺憾でありますけれども、何ら政府処置に手落ちはなかつたのであります。これが朝鮮人側においてこれに抵抗し、これが騒擾になつたからと申して少しも政府の側に責任はないのであります。これを責任があると申すならば、責任の所在は到底明らかにならんのであります。従つてこれらの騒擾を起した朝鮮人側約百数十名を検束いたしまして取調べました結果、これは告発すべきものと警察で考えまして、只今告発になつて、検事局において只今それを十分に調査いたしておるような次第であります。少しもその間に不当とか彈圧ということはなかつたのであります。昨年の九月からこの三月まで、実は長い期間を置いてこれを調整しておつたのであります。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 今のお話だけでは辻褄が合つているように聞かれますけれども、要するにこのような、朝鮮人に対する、つまり外国人に対するところの政府の基本的な政策が問題なんです。今のお話ではこういうなにを作つたからそこに移れ。併しその家が一体どういう條件であるか。この條件が果して満されておるのであるか。本当にこれを保護するという立場からしたのであるか。まるでこれを隔離するという立場からしたのであるか。更に今までの朝連の解散に対して納得してできないからといつて、これに対して提訴している。これを一方ではそのように強制執行しておるのであつたなら当然に保護規定をとつて、この裁判を受けて、その結果を明らかにするというのが日本政府の立場でなければならない。然るにそういうことはしない。又一方に外国人の登録なんかの例を聞いたのでありますけれども、これは最近、例えば手帳のようなものを持つて歩いて、実に嚴重です。風呂場に行くまであれを持つていないととても身動きもできないというような情勢が私達に訴えられておるのであります。こういうような、基本的に一体このような朝鮮に対して飽くまでもこれは新らしい友達として、これに対して我々がはつきりした保護的な態度で出るか、或いはこれに対して依然として今までとつてつたような朝連の朝鮮人に対する考え方でやるか、ここのところに基本的な問題の分れ方があると思う。今のおお話は一応辻褄が合つているように思うのでありますが、一体朝鮮人に対して全面的にそのような方策を採るという態度を持つていられるのか。そうしてそれが日本の将来の例えば講和、平和を確立するという方向と、一体密接な関係があると思うのでありますが、このような、いわば民族に対する一つの抑圧のような態勢をとられて、果して一体講和を促進するために役に立つとお考えになるか。これを首相に私は伺いたいのであります。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今も申す通り講和講和日本の秩序、法律が紊され、若しくは侵されて、これは政府として傍観いたすわけには行きません。秩序を破壞するような法律を侵す者は、それが如何なる場合においても一応政府としては法によつて処分いたさなければならぬ。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 秩序を破壞するというような話でありますけれども、これに対して今度のなにを見ますと、例えば裝甲車二台が動員されておる。それから警官も千人も動員されておる。こういうような物々しい態勢でなされている。ここに非常にやはり日本の現在とつておる政府のやり方、それが非常に或る意図の下にされているのではないか、彈圧そのものが非常に大きなやはり危險を孕んでおるのではないかというように考える。私達はここに思い起したのでありますが、例えばナチスがあのような戰争に入る前に、ユダヤ人を追放した。他民族を圧迫した。この他民族を圧迫するというようなこの狭い民族主義の上に立つて、そうして一体世界の平和を維持するというような方向を取ることができるかどうか。こういう点から考えるときに、今度の朝鮮人に対するところの措置というのは、非常にこれは重要な意味を持つものだ、こういうふうに思います。こういう点について、それは時間も余り少いのでありますから、議論をやつても仕方がないから、この程度で止めます。  次に同じような彈圧問題でありますけれども、労働組合に対するいろいろな彈圧の事業があるのでありますが、殊に教員の首切問題、これについては昨日殖田法務総裁にも聞いたのでありますが、私は事実を示して言つた。例えば教員の首切りというときに、それに対して依願免職か、それから或いは懲戒免職か二通のこれは辞令を一遍に突きつけて、そうして二十四時間以内に返答しろ、こういうような方法で京都あたりでは切られている。東京あたりでもこれに近いような方法でやつておる。これは人権蹂躪ではないとはつきり昨日総裁は答えられた。調査の上だと言つて答えられた。首相はこのような事実を、首切りに対して人権が蹂躪されないとお考えになりますか、首相答弁を聞きたい。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお答えいたします。
  92. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 昨日そのことはお答えいたしたいのでありますが、教育委員会がみずから最も適当と思う方法によりまして、自主的にこれは処理したことでありまして、私はその間特に人権蹂躪というような、或いは違法の何らの措置はなかつたものと信じます。
  93. 岩間正男

    岩間正男君 これは法務総裁と昨日相遣り合つた問題であります。法務総裁から御答弁があつても、新らしいことは聞けないと思います。私は首相に聞きたいのです。法務総裁はどういう方法でそれを調べたのですか。誰を遣わして、どういう方法で調べたか。あなたは昨日調べられたと言われたが、確かな事実があるのですか。
  94. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 誰を遣わす必要もないのでありまして、書面の報告だけでも明瞭なことなのであります。
  95. 岩間正男

    岩間正男君 法務府というのは何ですか。一方的に、例えば裁判の行使と同じようなものですか。一方の何だけ聞いて断定されるのですか。法務府もそういうことをやつておられますか……
  96. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 何もこれは犯罪の容疑でもありませんし、裁判でもございません。たださような風説につきまして、お話につきまして、そうして報告を求めて調べましただけであります。
  97. 岩間正男

    岩間正男君 総理は帰られたのですね。黙つて帰られたのですね。
  98. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 帰りました。
  99. 岩間正男

    岩間正男君 これらは委員会を無視するというのと違いますか。
  100. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 無視するという意味ではありませんが、都合で帰られました。
  101. 岩間正男

    岩間正男君 質問者が質問を展開している際の帰るということはどういうことですか、失礼な……。これは国会無視です。国会議員侮辱です。
  102. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 私には無視とは思えません。やはり御都合で帰られたのですから……
  103. 岩間正男

    岩間正男君 委員長の釈明を聞きましよう。
  104. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 大臣の出席や何は自由でありますから、向うの御方に御用があられればいたし方がないと私は思います。それですから先刻から私はあなたに対しては御注意申上げておりましたが、大臣は非常にお忙しいのでありますから、而もこちらへ出る前に十一時半ということを申上げてあつたのであります。今行かれましたのは、十一時四十五分でありますから、十五分はあなたに敬意を拂つて総理はおられたものと私はそう考えております。(笑声)
  105. 岩間正男

    岩間正男君 大臣の出席は自由だ。国会議員も自由であります。而も重要な問題について発言をし、審議を進めている最中に、これはお互いに一つの友誼というものはあるだろうし、そこに礼儀もあるでしよう。それに対して会釈もなく、而も大臣はどういうのだか分りませんが、土曜日の午後は恒例によつてあなたは大磯であります。
  106. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それは存じません。(笑声)
  107. 岩間正男

    岩間正男君 私は散々今まで総理の出席を持つたのです。私の前でいつも切れて……昨日もそうだ。昨日はこの委員会において約束した。併しながら総理が本会議の方に出る。こういうことであつたから一応私は了解した。その前の日も、私の前で切れて、そうして午前中で止めた。二時ということを約束しておつたのに止めた。こういう関係で、而も私は問題が山積している。これは明らかにしなければ議員としての責件は負えない。これだけの問題を持つて、まだ半ぱだ。半ぱだのに立つて行かれた。委員長は今のように釈明をしておられるが、あなたは自由党の党員と私は認めます。併し国会の委員長としてはどうですか。
  108. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 私は決して自由党の党員というのではなく、予算委員長として総理が御都合がありますから、一国の総理大臣を如何なることがあつてもおれというわけには行きません。あなたに対しては質問中に十一時半ですからと私は注意を與えた。それがいつまで待つても切りがない。これはお帰りになるのはしようがないと私は思います。
  109. 岩間正男

    岩間正男君 それは了解していないのに……
  110. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 議事進行について……只今岩間君の御立腹は、遂に我が党の委員長なりという断定を下されたので一言なきを得ないのであります。委員長は非常に公明正大、公平にやつておられますことは明らかであると我々確信している。今朝九時半理事会を開きまして、その際において各大臣の出席も皆協議しました。総理は十一時半を限つて、他に用件があるからそれまで出る、こういうことでありました。而も君の質疑に対してはまだ十分以上雅量を示していたと私は信ずる。それを委員長を責めるということは当らないと思う。さようなことに言論を費やされば、專ら議に熱中する方が適当だろうと思います。
  111. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今日理事会を開いた事実はありません。理事会を九時半に開くというので私は九時に来て待つておりました。ところが理事会が開かれたことはありません。理事会はこれが終つてから開くということに変更されたのでしよう。  それからもう一つ委員長は、総理が行かれることはこれは止むを得ないかも知れません。併し質問されている方に対して、これから総理が帰られますからと一応了解を得て、その了解が聞かれなかつたら、止むを得ず退席されてもいいのですが、我々公平に見ておりまして、如何にも岩間君が共産党の方であり、総理が自由党であつて、非常に政治的な見解が対立して感情的なことになるのは止むを得ないかも知れませんが、一国の総理として我々がここに見ておりまして、まだ質問を続行しているのに、総理が默つて逃げるようにして帰られるという態度はよろしくないと思う。委員長はやはり一応こういうことで総理が帰りますからよろしうございますか、そういうふうにはつきりした措置をとつてやられるべきだと思う。今まで我々見ていても、こつそり帰るような形において措置されたが、今後やはり運営される場合には非常に感情的に共産党と対立しているからそういう態度を取るという印象を與えるのです。それから答弁態度などもやはり我々見ておりまして、国民代表としての答弁のやり方ではないと思います。感情的な……こういう党についてやはり御注意される必要があるのではないですか。
  112. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 御注意の点は十分了承いたしました。委員諸君も……その前に岩間君にも言つたのでありますが、成るべくその辺は御了承下すつてお互いにその辺のところをば繰合せるような要領にして頂きたいということを申しているのであります。これは意見が相違しますから、いつまでやつても結論を得ないから止めます。それから御相談ですが、あなたの質問に対して丁度通告をしております郵政大臣が来ておりますから……
  113. 岩間正男

    岩間正男君 こだわる気持はありませんが、ただ明らかにして置きたいのは、私はこれで三回待つたんだ。無駄足を踏んでいるんです。いつも閣僚の都合で本委員会が進められるという運営の仕方はおかしいと思います。木村氏の発言もありましたから、やはり我々の委員長なんですから、毅然として国会役員の役をおとり願いたいと思います。それから私の質問は依然として半ぱでありますから、当然残つておりますから、明日か明後日当然首相の出席を求めて答弁を要求したいと思います。
  114. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 次に郵政大臣が見えておりますが、岩間君、丁度郵政大臣に通告がありますが……
  115. 岩間正男

    岩間正男君 今日は私はこれで何しましよう。途中で切られて甚だ何か、いい感じじやありませんな。
  116. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) そういたしますとこの際……
  117. 岩間正男

    岩間正男君 フェア・プレーで行きましよう。
  118. 内村清次

    ○内村清次君 先程、理事会を開いたというような御発言があつたが、速記録に残つておりますが、理事会を開いて、総理が十一時半まで、或いは又各省大臣が来るのだという、そういうお互いが、理事が了解の上に決して、この委員会に入つたということならば、これは又別ですけれども、これは先程木村君も言われるように、僕達まだ実際その理事会には出席しておらないのだが、それで先程からこの委員会が始まつておるのです。そうすると一体どういう理事の方々が集まられて、次の、即ち委員会の順序の行くような打合せをされたかということが、今日のこれは相当期間が切迫しておりますときにおきまして、そういう動きがあることはどうも私は感心しないと思う。そこで正規の理事会が、もう話が決まつたというような発言あつたようですが、取消して貰いたいと思うのです。
  119. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 その点で……。理事会の招集があつたのであります。定刻になつても来られない方が多かつた。それで前に打合せをして総理は十一時半に帰られるのだから……総理はすでに理事会を始めたときに来ておられました。早く始めようじやないか、岩間さんが来られなかつたら誰か通告の人があるから、それからでも始めて貰おうというところまでやつた、正式の理事会じやありません。定足数が揃わない。それで後でもう一遍相談しようじやないかと言つて別れたのです。
  120. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は九時に参つて今日公報を見ましたら、九時半と出ておりましたから、九時に参つてつたのです。ところが十時になつても理事会の招集がないのです。ところが、少し過ぎてから総理が来られたからやる。理事会はどうしたかと言つたら、理事会は議事が終つた後にやるというような了承でした。ですから理事会は開かれなかつたわけです。
  121. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 やつたけれども揃わなかつた
  122. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 我々の方に何らのあれがなかつた
  123. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 方々探しに廻つたのです。
  124. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 九時に来たのですよ。
  125. 岩間正男

    岩間正男君 この理事会の問題は、理事会が今まで例のない九時半なんという時間に、開かれたということは問題だと思う。昨日何らの話がなくて私ぽかんとして、尤も電話を掛けて下すつたそうですが、不幸にして私のところへ電話が届かない。今朝の公報が間に合わないというので理事会を知らない。だから事前にこういう行き違いの起らないように余裕の取れるはつきりした時間に決めて貰いたい。なんぼ問題が急迫してもおかしい形ではいけない。
  126. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 了承いたしました。どうです、ここで休憩いたしましようか。    〔「休憩」と呼ぶ者あり〕
  127. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 休憩をいたしまして、一時から再開いたします。    午前十一時五十四分休憩   —————————————    午後一時五十一分開会
  128. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) では只今から休憩前に引続きまして会議を開きます。通告順によつて発言を許可いたします。寺尾君。
  129. 寺尾博

    ○寺尾博君 私の質問は食糧問題に関係していますので、農林大臣に関係もするわけですけれども、経済安定本部の総合的計画に関係することと思うので、安本長官にお尋ねいたしたいと思います。  来年度の輸入食糧が激増するということが農業方面に非常なセンセイションを起していることは御承知の通りであります。又その輸入食糧の増加に伴つての価格補給金四百五十六億という大きな額、こういう関係から先ず輸入食糧のことについて一応お伺いして置きたいと思います。来年度の輸入食糧計画につきまして、商業資金によるものと、援助資金によるものとどういう内訳になつているかということが一つ。それから商業資金によるものの輸入先別の輸入計画はどういうふうになつているかということの御説明をお伺いしたい。  尚それに連関いたしまして、近来輸出不振であるというようなこともありますし、又国際情勢のいろいろの関係から、商業資金によるところの輸入予定先における食糧の買付けとか、契約及び輸入が、計画通りに実行困難ではないだろうかというような懸念をしておる向きもあるようでありますが、それに関する最近の事情はどうであるか。  尚本年度二十四年度の商業資金による輸出入の計画とその実績がどうなつているかということの御説明をお願いしたい。  もう一つ最後に国際小麦協定に参加することが段々決まりそうになつて来ているようでありまするが、尚その点が決定的にはつきりしないので、これも食糧問題と関係しているので、その最近の経過について御説明をお伺いしたい。一応それだけであります。
  130. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今の寺尾委員の御質問に対してお答えを申上げます。第一に国際小麦協定に関する問題でございますが、これは御承知の通りかねてから九十万トンを要請をいたしまして、協定参加ができることを希望いたしておりますが、この間の会議におきましては、日本からはドル関係だけでなく、更にスターリング地域からもこれだけのものを両方から輸入したい。もう少し具体的に申上げれば、オーストラリア等からも輸入したいというような申入れでありましたので、ドイツはその当時ドル関係からだけでもよろしいということで加入いたしたようでありますが、日本のはその点が折合いませんので、一応不許可の形に相成つておる次第であります。併しながらこれは将来入るべきものというふうに政府考えておる次第でございます。それから尚、二十五年度の輸入計画でありますが、これはガリオア資金でございまして、輸入先は米国、オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、イラク、それからビルマ、シャム、朝鮮、エジプトというふうになつておりますが、そこでもう少し詳しく申上げますれば、百五十万トンの小麦はこれは大体米国からというふうに予定をいたしております。併しながらこれは必ずしも今申上げたこの通りに行くかどうかということがまだはつきりいたしませんけれども、予定といたしまして大体これははつきり区別がここで申上げにくいのでございます。ガリオア資金とコンマーシャル資金というので区別をするということがどうかと思いますが、ともかくも小麦が五十四万五千トン、大麦が十八万五千トン、米が九十三万三千トン、そういうような数字でございまして、総計三百十六万三千トンというような数字が計画と相成つております。併しながら御承知の通り三百四十万トンという到着数量と言いますか、一応廻つておりまするので、ズレて行く量を見越しておりますので、三百四十万トンということに相成つておるのであります。併しながらこの二十五年度の計画としては、今申上げましたように三百十六万三千トンということに予定をいたしております。それからこの数量でございますが、どこからかというについてもう少し詳しく申せば、小麦の約二百万トン、これはオーストラリア、アルゼンチンから、それから十八万トンはオーストラリア、イラク、これは大麦であります。大麦の輸入は十八万トン、オーストラリア、イラク、アルゼンチン、それから米が九十四万トンで、ビルマ、シャム、朝鮮、エジプト、それで計算が多分三百十六万トンくらいになると思いますが、大体そういうふうな計画を立てております。それから二十四年度におきまする経過でございますが、ガリオアで輸入いたしましたのがこれは実績で、ガリオアで二百三十一万七千トン、それからコンマーシャルで八十八万五千トン、総計いたしまして三百二十万二千トンという計算に相成つております。これは総計でございます。併しこれは到着数量として予定いたしました計画です。それはガリオア資金で百七十七万六千トン、これは小麦でございます。それからコンマーシャル・フアンド、これはオーストラリアから十九万七千トン、イラクから一万一千トン、それからアルゼンチンから九万トン、カナダから五万七千トンというふうな、総計しまして三十五万五千トン、それが小麦でございます。そしてそういたしますと、そのトータルとしまして、小麦の総数が二百十三万一千トンという数字になつているわけです。それから大麦がガリオア資金で五十三万五千トン、それからコンマーシャル・フアンドでオーストラリアから四万八千トン、それからイラクから九万六千トン、それからこれはアフリカから七万五千トン、アルゼンチンから一万七千トン、小計で二十三万六千トン、合計いたしまして七十七万一千トン、それから米がガリオア・フアンドで六千トン、それからコンマーシャル・フアンドでビルマから六万九千トン、シャムから二十二万五千トン、計二十九万四千トン、合計いたしまして三十万という計算になつております。大体そういうような状況でございますが、それから尚附加えで申上げますると、小麦の輸入は、協定に基きます輸入価格というものはCIF値段で大体一トン当り九十一ドルというのであります。併しこの協定になりますと、これは普通のCIF値段でありまするが、協定になりますると八十一ドル五十セントくらいになると思います。それから日本の小麦はまあ今計算いたしましたところでは七十ドル弱くらいに相成りまするので、この国際協定の目的というものをこれから考えますれば、当然そこに国際小麦価格の安定と、そうして一応水準というようなものが目標になつておるので、そう大きな開きがないようにということが目標になつて、この協定の問題ができ上つておるのだというふうに解釈をいたしておる次第でございます。大体御質問の点はそれくらいの点であろうかと思いますが……
  131. 寺尾博

    ○寺尾博君 重ねてお伺いしますが、先程も申上げました輸出の不振のために、これらの計画を実現するだけの商業資金は、輸出不振等によつてむずかしいのじやないかというふうに心配されておりますが、その点についてはどういうお考えを持つていられますか。
  132. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今ここに細かい数字は持合わせておりませんが、我々の年間の見通しといたしましては、予定の程度の輸出輸入の関係、特に貿易の結果というものは得られるものというふうに考えておりますが、御承知の通りこの一月、二月という点から言いますると少し輸出が落ちておる。それから輸入食糧の関係におきましても、多少そういう関係があると思いますけれども、我々の予定といたしまして、又現在そういう状況にはありまするけれども、やはり今一—三月の関係、更にこの年度と、それから日本の暦年の年度と、アメリカの、或いは外国の……アメリカは御承知の通り大体六月三十日というところから、七月に入つて予算が決まつて行くということでありますので、そういう点については余り今のところ心配しなくてもよくはないかというふうに考えておる次第でございます。
  133. 寺尾博

    ○寺尾博君 国際小麦協定に参加する時期のお見通しはどういうのでございますか。
  134. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 多分次回の六月頃ではないかと心得えております。
  135. 寺尾博

    ○寺尾博君 輸入食糧は内地の食糧需給の関係からも必要がありましよう。又国際関係からこういうことにもなるかと思うのでありまするが、これには相当多額の、予算の上に現われておるところから言いましても、四百六十五億かの価格補給金が必要とされておる。一方日本の食糧自給力はまだまだ決して低くないのでありまして、従来の食糧政策としては種々の制約に制限されて増産を結果するようなる十分なる方策が立てられておらない。俄かに食糧が十分に充足するに至らないから輸入又止むを得なかつたと思うのでありまするけれども、かように今御説明になつたような多量の輸入食糧をするということは、一方において日本の内地農業に対する非常な脅威を與えることになつておる。従来の食糧増産に対する施策が非常に強力に行われておつて、而も足らないということになれば止むを得ないのでありますけれども、私は経済安定本部としては国産食糧の自給政策をいま一層強化して、又これには直ちに増産に効果の上らない数年を要するような事業もありますし、又速効的に相当多量の食糧も増産できる技術的の問題もありまして、すでに来年度予算に九千万円の稻の増産に関する助成金が出ておりますが、この仕事などは今年のところでは僅かに一部分の地方に霑潤する程度であります。これは百万町歩程度に及んで適用できる仕事であり、これによつて何らの労働過重にもならず而も今年この奬励をすれば、今年秋にその増産が行われる、而してそれ故にこの増産は一年でも早く実現すべきものである。百万町歩にこれを奬励すれば少くとも四、五百万石から、活用によつては一千万石にも近い食糧ができることは確実である。こういうようなことに十分力を入れないで、輸入の方に重きを置くようなことになると、食糧政策の見地からも、農業政策の見地からも、必ずしも適切ではないじやないか、こう思うのであります。それで政府としては日本の食糧自給度をどの程度に考えておるかということ、従つてそれに対して今日は多量の食糧輸入をしておるが、国内食糧の増産に対してどれだけの意図を抱いておるのですか。来年度予算に現われておる限りにおいては我々が見るところによりますれば、この国内食糧増産の考え方はまだ非常に不十分である。こう思うのでありますが、これらの点に関するところの経済安定本部の御方針について御所見を伺いたいと思うのであります。
  136. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 寺尾委員のおつしやいます通り、食糧の自給度を高めて行くということのお考えに我々も勿論賛成であり、当然そういう考え方で進んでおりますが、現在の輸入食糧は御承知の通り二合七勺だけを配給することを基準として輸入をいたしておりますので、多少の過不足ということも考えますのでありまするけれども、先ずそういう方針で進んでおる次第であります。尚自給度を高める農地の改良とか或いは増産の方策等につきましては財政の許します限りこの方面に努力をして参りたいと存じております。
  137. 寺尾博

    ○寺尾博君 私は今までの政府は食糧増産に対して十分に力を用いておるような感じがしないので、この際農業政策の見地からももつと強力な食糧増産をやるのは、やはり根本になるものにつきましては、いろいろ来年度予算にもありまする土地改良等の計画もありまするが、今後日本の食糧政策としては、その生産額を国内において十分高める必要があり、又可能性があると共に、生産費を低下して輸入食糧と対抗し得るようなふうに持つて行くことができておるということは農業の実際から言えば一反歩当りの收穫を従来よりもつと遥かに高めて、すでに近来供出に追われたという結果と見てもよろしいが、地方によりまして一反歩当り十俵、即ち四石或いはそれ以上の多收穫を挙げているものが珍しくなつた。それだけの増産の可能性がある。今日まではその生産費が比較的高いのである。これはそういう反当收量を高めると共に、その生産費を下げ、輸入食糧と対抗するような方策を採つて置くことが是非必要であります。その建前からすると、どうしても食糧生産の労力を低下することが必要である。これが幸いにして稻作には労力の節約が多大で、労力を遥かに節約して、場合によると二分の一に近い程度の労力で以て今まで以上の收穫を挙げ得る実例さえすでに現われておるし、目下そういう方面の試験、研究も進行しておるのである。と同時にここに農業で使うところの資材、農機具、薬剤、肥料、これらのものが品質優良なものが成るたけ安く農家に供給せられるということによつて初めて低米価主義とも一致するわけである。従つてそういう意味におきまして、これはそういう工業生産部門に対するところの助成と見てもよろしいし、或いは農業生産に対する助成と見てもよろしい。とにかく輸入食糧によつて数百万の補給金というものが用いられておる、それを考えるというと、遥かにそれより少い程度の助成によつて実質的に増産を結果し得るようなやり方ができるわけであります。ここに経済安定本部としては、農業と工業とを総合的に考え、農業に直結する工業に対するところの適切なる方策を立てるということが必要であると思うが、これは通産省にも連関することでもありまするが、経済安定本部としては総合的の計画をお立てになるところでありまするからして、今後の農業政策に関してそういう見方を持つことが非常に必要である。殊に従来の脆弱性を持つた日本の経営を強化する最も重大なる要素は、農村電化である。で、工業方面から考えても、日本の国力を強化する上から見ましても、水力電気の割当は非常な重要問題になるわけでありますが、これが農業経営においても農民の生活においても農村電化が推進されることは、非常に日本農業の建設上根本的に重大な原動力になるのであります。併しながらその発電計画が、いわゆるの利潤第一主義で行われるとするならば、その農村に供給される電力は非常に高価なものになる虞れがある。で、国家的に考え、又都市と農村、農業と商業、すべての釣合をとる総合的の考えの下において、水力電気の開発及び電力の供給、こういうことが望ましいのでありまするが、こういう農業と工業との関連においての見方について経済安定本部はどういう方針をおとりになるかについてお伺いいたしたいと思います。
  138. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 寺尾さんがおつしやいますように、政府といたしましても反当の増收というようなことは願わしい次第でありまして、できるだけ自給度を高めたいことに変りはございません。そのための施策につきましてもできるだけの努力をいたしておる次第でありますが、只今農工両面に亘り総合計画としての輸出とかいうような問題に触れての御質問でございますが、これは寺尾さんの御承知の通り、あなたのお弟子さんの秋元眞次郎さんなんかは、私の国の半田でありますが、明らかにとうもろこしから糊を生産して輸出品にするというようなことを現に実行しておられるので、これらも輸出の最も新らしい一つの行き方だというふうに考えております。我々にも大いにこれには奬励の気持を持つている次第でございます。  それからの尚電力の問題でありますが、これは今日の状況でも大資本とか何とかいうようなものに偏倚した電力政策というような点からは、必ずしもこの農業に関する電力の問題は解決せられないということはお説の通りだと存じます。従いまして政府としても小電力の開発というか、この発電等を奬励いたしまして、見返資金からも多分一億数千万円ぐらいは出ておるんではないかと見ておりますが、今後ともできるだけ農村に電力を供給すること、並びにそれが低コストで供給せられるようなことについては、十分検討いたし努力をいたして参りたいと存じております。
  139. 寺尾博

    ○寺尾博君 只今の御説明で私の伺いたいところに多少御答弁がまだ足りないように思う。農業と工業との問題につきましてでありまするが、農機具であるとか、その他の薬剤、肥料、アメリカは戰前の四倍に生産が上つているというようなことが言われておるが、その重大な原因はやはり種々の工業製品、機械、資材等も改良されて、優秀なる薬剤や機具が発明され、それが多量に生産されて農業に潤沢に供給されるということが最も大きな原因である。日本の場合におきましても、農業を農家自身、或いは農業関係の範囲の、即ち農業のインサイド・フアクターによつて農業を強化するということが、その限度が限られている。どうしても農業のアウトサイド、即ち工業方面この方の機械改良発明という、又その生産に関するところの工業政策を強化することによつて初めて農業が飛躍的の進歩を遂げ得るわけである。それなしには農業の側だけに注目しているだけではできないし、又そうすることによつて工業方面にも活気が現われるのでありまして、この脆弱性を持つた日本農業の今後の建設のためにも、特にこの農業に直結された工業に対するところの考慮を、今言う意味において拂うことが非常に重要である。従来の工業方面は、概して工業は工業という一つの企業本位に考えているように思いますが、この農業方面の考えからして、農業に直結した工業についての特殊の考慮を、今言うような意味において拂うことが必要である。経済安定本部は、願わくばこの食糧の輸入も、大豆のような日本で十分今日まだ生産できないようなもの、或いはとうもろこしのようなもの、これを輸入して工業化するということは、他の工業原料を輸入することと同じである。併しながら米のごときものは、まだやはり我が国の領土は依然として瑞穂の国でありまして、生産力は多大である。ただ生産し得るような施策が採られていないから生産し得ない。こういう広い意味においての農業の建設に邁進されることを我々は希望するのでありますが、尚この点についての安本長官の御意見を承わりたいと思います。
  140. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 農業の増産、自給度を高めるという意味において、副次的な農業薬剤であるとか、その他農機具等の改良、発明というようなことのお言葉でございますが、これも又我々も是非そういう方面の改良されて行くこと、農機具等につきましては、できるだけそういう点が早く改良されて行くことを念願いたしております。勿論只今大豆のお話もございましたが、大豆はどうしても計画としては三十六万トン輸入しなければなりません。これも大体政府考え方としては、三十六万トンの輸入は可能であるというふうに考えておりますが、これとても昨年から今年度末になりましても、大体この農家においても相当そういう方面に力を入れて来たということも承つておりますが、政府としてはそういう必要なものについてはできるだけその所要を充たすような方策、そこに力を入れるような考え方で経済安定本部の作業等におきましてもそういう方向で常に検討をやつている次第でございます。
  141. 寺尾博

    ○寺尾博君 私の質問はこれで終りますが、安本長官の御説明では、私が重要視するような政策が十分力強く採られているような感じを與えないように感ずるのであります。(「賛成」と呼ぶ者あり)(笑声)甚だ遺憾に感ずるのであります。一向私の要求には答えて下さらなかつた感じでありまして、この点は甚だ失礼かも知れませんが、どうも真劍に私の問題を取上げて下さつたかどうか、幾らか疑問が残るような気がいたします。どうもこの点は私は甚だ不満足でありますが、ここで一応終ることにいたします。
  142. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 寺尾さんは專門家でおられまするから、いろいろ私の答えの中に欠点があつたと御了解であろうと思いますが、御質問の要旨多少食違つたところがあるかも知れませんけれども、経済安定本部が現在目標としておる作業及び最初の過程におきまする輸入の計画、そうして輸出先等についても数字的に一応御説明申上げておりますから、御質問に対してはお答え申したと存ずる次第でございます。
  143. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 安本長官に、先ず寺尾さんの御質問関連して私も質問を始めたいと思つております。  先程安本長官のお話によりますと、現在の小麦のCIF価格が九十一ドル、国際小麦協定に入つた場合八十一ドル五十セント、現在のところでは日本の小麦価格は約七十ドルだろう、こういうお話であつたのであります。それでこのままで価格が大体ずつとそういう程度で続いて行けば別に問題はないのですが、併し現在の世界の小麦の生産状況並びに、つまり供給側の状況或いは需要側の状況から見て参りますと、小麦の価格は大体において下落ちの傾向がある。場合によりますというと国際小麦協定に参加しておらない国国の小麦の価格が、むしろ国際小麦協定で決めました価格を下廻るような場合が起るのでないかということが予想され得るのであります。又日本国内の小麦の価格もこのままでは止まらないのでありまして、例えば今日の日本政府の小麦価格の決定を見ておりましても、肥料の価格の騰貴その他によりまして、小麦の価格を引上げて行かなければならない、こういうような事情が出て参りまして、先ず小麦の点からいたしましても外国小麦が日本の小麦よりも安くなるだろうということが予想されるのであります。その予想が合うといたしますならば、外国から食糧の供給を受けることにつきまして、我々としてもいろいろ考えを変えなければならない。又国内日本の農業を保護する意味におきましても、何らかの措置をとらなければならない必要が生れて来るわけであります。その点につきまして安本長官は将来、而も近き将来に小麦の価格が国内産の小麦の価格を下廻る見込があるかどうか。そういう見通しに立つておられるかどうか。その点を先ずお伺いしたいと思います。
  144. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) しばしば報道されておりますように、食糧生産が世界的に非常に過剩である。そういう点から見て小麦の価格が現在よりも段段下つて行くだろう。場合によつては極端な値下りが生ずるのではないかという御質問でありますが、これは先の見通しの問題にもなるのでありますが、やはり先程お答え申上げましたように、世界の国際小麦協定というものは、大体全体としての小麦の価格の水準というようなものが平均するようにというようなことが目標になつておるのではないかというふうに考えておりますので、従つてその価格がどの程度に下るかということについても、今ここでどれだけ下るだろうというようなことは申上げられないのでありますが、我々としては若し極端に下る場合においては、何とか考えなければならんということを考えておりまするけれども、ともかく現に今のところでは関税問題等も問題にはなつておりません。併しながら穀物全体、農業保護の立場というような問題から考えますれば、やはりそれらの点も準備をして置かなければならんだろうというふうな意味で、主として食糧等の問題について従来の従量税的なものが従価税に換えられて、そうして大体どれくらいなところで関税の問題を考えて行つたらいいかというような基本的な問題について、只今検討中でございます。
  145. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 只今安本長官のお話ですと、食糧の関税問題について現在検討しておられるということでありまして、私共としては誠に結構なことと思うのでありますが、過日新聞紙上にこれは関係方面の方から食糧の関税についてはこれは無税にしろ、こういうような申入があつたというように聞いておるのであります。今のように国際的な価格が国内の食糧よりも高い場合におきましては、これはもう無論問題はないのでありますが、先ず小麦におきまして恐らく日本の小麦価格を下廻るであろうということが近く予想される、そういう場合に、若しそういう方針で日本政府従つて行くといたしますならば、これは日本の農業にとつて重大な問題になるのであります。この点につきましては、恐らく関係方面の方からの申入並びにそれに対する日本政府側のいろいろな回答といいますか、或いは折衝というものが行われておるだろうと思うのでありますが、その点につきましての経緯をお伺いしたいと思います。
  146. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今のところ私共が経済安定本部として検討いたしておりまする事柄は、必ずしも正式にこれこれといつて来たようには自分は承つておりませんが、ともかくそういう問題が将来起つて来るかも知れんというような予想の下に、関税等の問題を考えておるということでありまして、尚それ以上に詳細な点は私のところへはまだ別段話は参つておりません。問題はどれくらいな程度でしたらいいかということで検討しておるということでございます。
  147. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのはガリオア資金によるところの食糧の輸入が、漸次ガリオア資金が減つて参りますというと、これはコンマーシヤル・フアンドによるものに切替えられて行かなければならん、そうして大体ガリオア援助が終る時期を一九五二年度にいたしておるのでありますが、その後におきましては、やはり我々といたしましてはコンマーシャル・フアンドで相当多量のものを輸入しなければならなくなつて行くわけであります。今後二ケ年間の間にその切替えができるかどうかということは、非常に見通しの困難な問題じやないかと思います。その場合におきまして、若し日本の輸出が順調に増加して参りまして、それに伴つて穀物の輸入をそちらへ切替えることができればいいのでありますが、現在の輸出の増加の状況から見ますというと、なかなかそれができない。そういたしますと日本としては、依然として食糧の問題について重大な危機に当面しなければならんことになる。この点について安本長官は如何なる計画を持つておられるかお聞きしたいのであります。
  148. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) お説の通りにガリオア、或いはイロア、援助資金というようなものがなくなつてつたら、どうしてもこれは確かに大きな問題でございます。只今のところの方針といたしましてもやはり相当な輸出が予想され、又貿易外の受取勘定等によつてともかくも国際收支のバランスを得なければならんということのために各般の努力をいたしておる状態でございますが、その見通しといたしましては、曾て二十四年、五年、六年、七年、八年というふうにいろいろとその計画の上で検討をして参りました経過から見ましても、何とか輸出を増加するという方策を立てなければならん。又それと同時に貿易外の受取勘定等も増加しなければならんと、こういう意味で今後とも努力を続けて、仮にそういうものが、ガリオアがなくなつた場合に、コンマーシャル・フアンド等によつてこれを賄つて行けるように、食糧が賄えるような対策考えて行かなければならんと思いますが、現在のところではできるような方向に持つて行くための努力を続けておる次第でございます。
  149. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも只今お話では甚だ不安なんでありまして、何とかしなければならんというだけであつて、何とかしなければならんその方策が何ら示されておらない。これは非常に私共にとりまして不安なことであると思うのであります。  更にもう一つ食糧問題についてお伺いしたいのは、御承知のように日本の人口は年々百五十万も六十万も殖えて来ている。で、食糧の生産はそれに伴つておりません。そういたしますと、若し現在の二合七勺の配給量を続けて行くといたしましても、年々相当数量の輸入食糧を増加させて行かなければならんという問題が起るわけであります。更に二合七勺が戰前の食糧の消費の水準に達しておらないということになりまして、これを更に増加せしめて行く、そうして平時状態に復帰せしめて行くということになりますというと、更に多量の食糧の輸入を必要とすることになるわけであります。恐らく今日三百四十万トン、大豆を入れ三百七十六万トンと予想されておるのでありますけれども、これが或いは四百五十万トンになり、或いは五百万トンを必要とするというようなことになつて参るかと思う。こういうような見通し、つまり輸入食糧を増加しなければならんというような予想に対しまして、安本長官はどうお考えになりますか。それに対してどういうふうにしてこれと辻褄を合せる政策をお採りになるか。その計画について詳細にお伺いしたい次第であります。
  150. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 御承知の通り只今二合七勺で、将来昔のように三合或いは三合一勺とかそういうふうに増加して行くということについての食糧政策一般の問題は、勿論非常にむずかしい問題でありますが、現在の日本の食糧の状況から見ては、どうしても輸入しなければならん。併しながら今後段々国の自給度も高められて行く、その程度というものもございますが、ともかくも、食糧の絶対量は尚今後ともずつと足りないということであれば、それに応じた輸入もしなければならん。而も先程の問題に帰りまして、やはり輸出を増加するというようなことによつてこれに対応するところの輸入ができるのだと、こういう意味で、やはり食糧の問題も当然国全体の国際貿易というようなものに関連して考えなければならんと思いますが、我々がやらなければならんことは、やはり食糧の増産ということに大いに努めて行かなければならんということはもとより考えておるところであります。併しながら今ガリオアがなくなり、そうして一切コンマーシャル・フアンドに変つてつた場合にどうするかというようなところまでは、尚明確な計画というようなものは立つておりませんが、併しながらそれらの問題を中核とする、而もその目標において、今後とも十分それらの点を検討して参りたいと存じております。
  151. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日本の経済全体にとりまして輸出が非常に大切であることは申すまでもないことであります。国といたしまして輸出につきましても、輸入につきましても、一定の計画が採られ、本年度といたしましては、大体六億ドルの輸出が予想されておるのです。これは月平均五千万ドルに上るわけですが、一月以降の状況を見ておりますと、五千万ドルに達しておらない。こういうような状態でありまして、果して今年の計画である六億ドルが達成できるかどうか非常に疑問に思われるのであります。而も六億ドルが達成できないということになつて参りますというと、いろいろ原料の輸入にも問題が起つて参りますし、その外にいろいろな問題も関連して起つて国内産業に影響するところも非常に大きいのであります。安本長官はこの輸出不振の原因がどこにあるとお考えになるか。それにつきまして安本長官のお考えを承わりたいのであります。
  152. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) お説のように一、二月の数字から申せば満足なものではございませんが、併しながら今後の見通しといたしましては、漸次輸出は増加して予定の結果が得られるものと我々は信じておりますが、併しながらそれならば一、二月はどうして輸出が少なかつたか。こういう点でありますが、これは御承知の通り民間貿易に切替えられました当初のことでありまして、輸入は始まつたばかりということでありまして、その間の手続であるとか、その他の関係もございまするし、かたがた多少少くなつておるということは認めざるを得ないと思います。今後この四、五、六、というような頃になれば、段々これは予定のように進行して行くのではないかと思いますが、何しろ御承知の通り、今までの協定貿易というものについても、それぞれ限界がありまして、例えばドイツだとかいうような地域に対しては、ローガン構想に基きまして、或る程度の義務というようなものが伴つておるというようにも考えられますが、併しながらその他の協定等によりますと、多少その内容における変更、例えば予定通りにはその時間的にズレがあるというような結果から変調を呈しておるものと考える次第でございます。
  153. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 貿易の問題につきまして例のローガン構想がとられ、それに基いて貿易が行われるようになつた。で、このローガン方式による貿易は、ドイツにおきましても最初は効果があつたようでございますが、その後のドイツの状況を見ておりますと、結局予期された結果を示しておらない。日本におきまして、最初ドイツの成功のようなつもりでおやりになつたのだろうと思うのです。日本におきましては最初からその効果が現われておらない。この方式は、今後続けて行くといたしますならば、日本にとりましては相当いろいろな難問題が起つて来ると思いますが、このローガン方式に基く貿易というものについては政府が検討を加えられておられるが、そしてこれに対して何らかの修正と申しますか、或いは変更を試みるつもりであるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  154. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 今御質問の輸出が非常に減少しておるからローガン構想に基いての輸出というのは、その結果が必ずしも適当に予定通りに行つていないじやないかというふうな結論になるかと思いますが、これに対しましては今申告高がこの統計、数量が参りましたので、金額にいたしましてちよつと申上げますが、この三月になりまして、三月は二十日間で五千万ドルを超えておるというようなことを今知らして参りましたが、例えば一月の場合におきましても、それから二月の場合におきましても、大体六千万ドルに達していないけれども、大体予定に近いものが出て行つておる。而も三月は今申上げましたように、二十日間で五千万ドルを超えておる。極めて好調にあるというふうに、特にポンド地域は一月の倍以上に達しておるというふうに今言つてつておりますが、これらを見ましてもやはり大体において我々はこのローガン構想に基きまする予定としては、漸次その予定の線で進行しておるというふうに考えておる次第でございます。
  155. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ポンド地域との貿易の問題でありますが、御承知のようにポンド地域からの輸入が非常に殖えておる。そしてポンド地域からの輸入を一時止めなければならないような状態になつておる。そういたしますと、恐らくそれが更に日本の輸出にも響いて来る結果を来たすであろうということも予想されるのであります。で、今後のポンド地域との貿易というものについては、單なるポンド地域の各国との通商協定だけではなかなか解決できない問題もあるんじやないかというふうに考えられます。それからポンド地域の各国とだけの問題でなく、更にポンド地域全体、つまり英連邦全体と日本との貿易関係というものを設定して行かなければならんじやないかというふうにも考えられます。そういう点についても英連邦全体との貿易の調整、そういうことについてどういうふうなお考えであるか、お伺いしたいと思います。
  156. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 貿易の協定につきましては、当初におきましては、大体十八ケ国との間に協定が成つておりましたが、段々増加して只今のところでは、二十一ケ国ぐらいが協定が成立しておるようでございます。漸次その方面も協定をく広く殖やしまして、そうして輸出を増加する、又成るべくこの輸出量からその輸入の促進も必要な程度にやつて行くというふうな考えで進んでおりますので、私共の今の見通しといたしましては、予定のように行くということを前提として考えておりまするが、更に貿易の輸出振興に関しましては今後ともあらゆる努力を拂いまして、我々の予定をできるならば超えさすという程度にまで持つて行きたいと存じております。
  157. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、ドル地域との貿易の問題でありますが、ドル地域との貿易は大体において伸び悩みの状況にあるように思われるのでありますが、今後ドル地域との貿易がどうなつて行くか、又ドル地域に対する輸出増加について安本長官はどういうふうな構想を以てその増加のために努められようとするか、その点についてお伺いしたい。
  158. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 御承知の通りドルとポンドでありますが、この場合におきましては、やはり輸出におきましても、その協定の範囲或いは協定国以外におきましても、できるだけ貿易上有利な立場を取つて行くということは言うまでもございません。併しながらやはり輸入におきましても輸出におきましても、その時期、その量、その商品等のすべてを勘案して、そうして処理して参らなければなりませんので、ここではつきりと決めてかかるということはなかなかむづかしいのでありますが、大体外貨予算等を見ながらその輸入の点、輸出の点等を勘案して適当に処理して参るというのが我々の態度でございます。
  159. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、国内の物価の見通しについて大体池田大蔵大臣の御言明ですと、物価は横這いするであろう、勿論個々の商品についての高下はあるが、大体物価は横這いするであろう。この物価の横這いということを前提として予算を組んだ、こういうことを言われておる。或いは平均はそうなるかも知れない。併しながら例えば今後電力料金の値上げの影響というようなことを見て参りましても、重要なる産業、肥料産業とか或いはその外の重要なる産業のコストがそのために非常に上つて来ておる。更に電力会社が分割されるということになりますと、地域的にそういう点で非常な不利な状況になる会社ができて来る、工業が生じて来る、こういうことも考えられるのです。又肥料の補給金の廃止というようなことからいたしまして、農産物の価格もそれに相応した値上りを示すであろうし、更に又鉄のごときも補給金の撤廃後は相当他の製品の価格に影響を及ぼして来るであろうと思われるのであります。そういたしますと、平均は動かないといたしても、重要なる産業、特に輸出産業等におけるコスト高が起つて参る。それがもはや他の方法によつて打消されないということになつて参りますというと、輸出にも響いて参る。更に国内の消費用の財貨であるとか、或いは生産材でありましたそれらのものが更に第二次的に他の品物の価格を騰貴せしめる方向に動いて来るであろうということが予想されるのであります。こういうような点について單に平均的でなく、重要なる物品の物価が上ることによりまして及ぼす影響というものを、安本長官はどういうふうにお考えになつているか、その点承わりたいのであります。
  160. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 物価の問題につきましてはいろいろと御心配を頂いておりまするが、個々の商品並びに個々の製品の価格におきまして、いろいろと凸凹がある、而も重要な製品については、いろいろなファクター等によつてつて来る可能性が多分にある、そういうものをどうするかということは、これまでもやつて参りましたけれども、二次、三次、或いはできるだけあらゆる点を勘案いたしまして、別な点からこれを吸收して、全体としては物価体系を維持して行くという態度を持している次第でありまして、昨日は下る方の問題についていろいろ御質問ございましたが、上る点につきましても、下る点につきましても、どちらにも都合のよいようにきちつと行くということは、なかなかこれはむずかしい問題ではありますが、物価庁といたしましては、できるだけその点を検討考慮いたしまして、調整を保つて行くという態度を持して参るつもりでございます。
  161. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に補給金の撤廃の問題でありますが、政府は漸次補給金を撤廃して行く方針を取つていることは明らかでありますが、例えば肥料の補給金の撤廃、これはもう当然農産物の価格を引上げなければならんことになるのです。最近肥料の問題につきまして輸出の問題が起つておるようであります。本日の新聞にそれが現われておるのでありますが、例えば今まで日本はガリオア資金によりまして硝安なり硫安なりを輸入しておつた。そして先頃関係方面の方で、お前の国は食糧が要るのか、或いは肥料が要るのかということを言われたというようなことも出ておつたんですが、そういうふうに肥料の輸入が行われた。その場合におきまして今度は肥料の輸出ということが許可されるということになつた。今日の肥料は硫安におきましては補給金を受けてやつておる。そうして公団買取制で以てやつておるんでありますが、これが輸出されるという場合にはどういうような形式で行われるのか。この輸出は公団が廃止された後において行われることになるのか。或いは公団の存続中に行われることになるのか。その場合の補給金との関係、或いは外国の商品と、例えば硫安の場合に、それとの太刀打ができるかどうか。そういう点についてお伺いしたいと思います。
  162. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今肥料の補給金が段々外されて、解除されて行く。そうしますというと、二十五年度百七十億になる。そういたしますと、それが幾らか値上りを生ずる、これは一応分ります。ただ最近の新聞に国外に輸出するという問題でありますが、私は別にまだそれを正式に通知をともかくも受けておりませんし、私のところへまだ報告が来ておりませんので、はつきりしたことは分りません。そういうことになればともかくも日本の肥料というものが相当増産されて、そうして多少ゆとりができて来ておる。であるから輸出してもいいのではないかというような問題から来ておるのだと存じますが、只今申上げましたように、正式にそういう問題を私自身として受取つておりませんのではつきりお答えはできません。
  163. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私はこれを以て終ります。
  164. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 次は松村眞一郎君。
  165. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、農業経営の方面においてどういうような方向に改善をして行くようにお考えになつておるのか、それを承わりたい。私の言わんとするのは、農業のうちで最も重点を置くベきものは、日本の農業が昔ながらの鎌と鍬の手農業である。それから脱却いたしませんと、どうしても根本的な改善ができないということを考えておるんです。結局人間としての学力の価値を十分に発揮しなければならない。先ず役畜に委せていいことを人間が担当しているというところに、非常に日本の農業の欠点があると思うのです。人間でなければ働くことのできないという方面を人間が担当するのが適当であつて、役畜に委せてよいという部面を人間が担当しているということの結果、一般において農家は労働に余りに体を使い過ぎておる。どうしても農業経営の上から農民の重労働からの解放というところに要点を置かなければいけない。結局人としての尊嚴を傷付けておるということを私は考える。体が頑丈でなければ農業に従事できないという考え方で農業を見るならば、頭の働く人は農村から離村して行くということになる。やはり農業というものを心持よく行なつて行くというような方向に導いて行かなければならんと私は考えるのであります。労働を成るべく軽減をしまして家畜に委すべきものを委すということになれば、そこに時間の余裕が出るのは当然であつて、そこで自分の修養もして行く、文化の向上もできる。馬は十人力というのでありますから十人前の仕事をするのであるから、一日で済むことを人間がみずからやれば十日間かかる。こういうことに農繁期というようなものも或る意味において役畜を使用すれば相当そこに省略ができると私は思うのであります。そんなことから考えましてこの度の予算を見ると、そういう方面の考慮が非常に不十分であると私は考える。例えば畜産局の予算を見ますというと、有畜営農促進費が前年度は六百七十万、今年度は三百三十万円しか取つていない。半減しておる。そういうような考え方が予算の中に現われておるところを見ますと、恐らくは畜産業の改善を大臣は平生よく言われるが、食物のことばかり考えておるんではないか。日本が余りに蛋白質の給源を水産物に求めておるに止まつて畜産を重要視していない。牛乳にしましても、卵にしましても、肉にしても日本人は外の国に比べては殆んど比較にならん程僅かなものしか消費していない。もう少し澱粉に偏したところの胃拡張の弊害を除却するためには、蛋白給源を畜産に求めなければならんということに重点を置いておられるように私は思う。これは非常に結構であります。併しながら人間としての価値は体位を向上するという外に人間らしい生活を向上させるということが要点でなければならん。これはどうしても先程申上げたごとく農家が人間らしい生活をする、私は人間らしいと言つてもいいと思う。従来は余りに体力を使い過ぎておる。こういう点について大臣はどういう御考慮をされておるか。結局畜力、機械化ということに重点を置かなければ日本の農業の改善はできないと思う。土地の改革ができました。そうして非常に農家が細分しておる。零細の農家になつておる。土地の交換分合ということが必要になる。何を目的として交換分合をするか。農業の適正経営ということを考えなければならん。家畜を使つた程度のものをそれを適正と考え方法で指導されることが必要であり、農家と共にそういう方向に相談して進められることがいいと私は思う。例えば早場米地方におきましては、どうしても適期適作ということが必要であるが故に、現に岐阜や長野の馬が石川、富山に行つて働いておる。そうして早く耕作をして、耕起をし、代掻ということをして、今度は又岐阜に帰り、長野に帰つてもう一度働く。馬というものは早く耕作できることによつてそういう効果が現われておる。例えば山形県においていえば、労力を馬に仰ぐ、牛に仰ぐということのできない零細農家は、牛馬を持つておる人から馬に農具を附けたものを借りて、そうして重労働は牛馬を使役してやつておる。それに対しての返礼として、人が馬の場合には二人分労力の提供をする、或いは田植のときに手助けをして行く。牛の場合は一人八分で労力を返却するというようにそういう方法を取つて役畜が相当使われておる。そういうようないい事例はできるだけ一般農家に知らせて行つて有効に農業経営ができるようにお考え頂きたいと思いますが、大臣のお考えはどうですか。
  166. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お答えをいたします。日本の農業の規模が非常に小さくなつて参りましたので、アメリカのように機械化ということは到底でき得ないのであります。併しお説の通りできるだけ畜力を利用いたしまして、そうして過労な点を緩和して行くということは当然考えられる点であります。併しこの畜力によりまする耕耘につきましても土地の事情が非常に関係を持つて来まして、粘稠土壤におきましては畜力の利用ができないというような面も考えられるのでありまして、この地方に対しては土質の改良によりまして畜力の利用ができるような土質に建直すということが必要であります。いずれにしましても畜力というものを農業経営の上に取入れて行きますことは、單に労力を節約するのみならず地方を向上する上におきましても、又経営を有利に導く上におきましても必要であるのであります。従来家畜と申しますと牛や馬ということに考えられておりました。而も馬がこの軍国主義で競走に強い馬、いわゆる走る馬というような今日までの育て方であつたのでありますが、これでは一般の農家に普及することは非常に困難な事情がありますので、もつと小さき形の役馬を作るという方針を立てておるのであります。併し今日普及する上におきましては容易ならざる事業でありますので、今回人工受精の方法を考慮いたしましてそうして種牡馬を選定いたす、そうして人工によつてそういう家畜の増加を図るという施設を設けたのであります。農家の経営の規模によりましては、この大きい家畜を十分入れ、又経営の中以下のものに対しましては、その今の家畜を入れるということによつて、後段お話になりました蛋白質の給源を自分の力で求める、こういう方法で以て行こうと考えておるのであります。現にお話通り家畜を持たい農家、耕作面積の小さい農家におきましては、馬を借りましてそうして耕耘いたしておる実情であります。この家畜をできるだけ殖やして行きたい。而もそれは競走馬、競馬式の馬でなしに、農家に適切なる馬の種類を普及いたしたいという計画を以て進んでおるわけであります。
  167. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 土壤の種類によつて役畜に使えないというようなことをおつしやいましたが、そういうことはありません、如何なる土壤でも畜力は機械を使うのでありますから機械を鋭いものにすれば、どこでも使えるのでそういうことはないのでありますから、兎に角役畜によつて機械化しなければならない。そういうことを申上げておる。大規模な機械は日本の零細農家には適しません。ですから畜力を利用する農機具の奬励を考えることが必要であるが、そういつたようなことが予算の面に現われていないから、私は遺憾とするということを申上げておる。この機械を用いれば何でもないのである。役畜で耕やせないというものはありません。只今も地力の増進ということをおつしやいましたが、これは畜産全体に共通の問題であるから牛馬に限られない。豚を飼つても、山羊を飼つても、羊を飼つてもそれは厩肥になるのであります。その厩肥の点から眺めるという眺め方では、本当に家畜を活かすものでない。人間の力というものを余程節約することをお考え願いたい。農林省で家畜、畜産増産計画というものを書類を作つて前に発表されておりますものを見ますと、馬の増産計画に基く生産物概産に、それは何が書いてあるかというと、馬から肉はこれだけ得られる。皮はこれだけ得られる。厩肥はこれだけ得られるということが書いてあつて馬の最も尊ぶべきところの能力、役ということの関係が少しも考えていない。このような考え方で畜産を奬励しておつたのでは、ただそのつぶしを考えておる。畜産はつぶしを考えておる。そうでない。生きておるものがどう活躍するかということについて重点をおかなければ、畜産の奬励はできない。その頭がないから予算に現われていないことを私は遺憾であるということを申したのである。それから尚今申しました鎌と鍬との農業から脱却するということになりますと、どうしても刈取機の発明、奬励とかいう方向にも余程力を入れなければならんと思いますが、この今度の予算を見るとそういうところにちよつとでも考慮が拂つていない。そういうようなことについてはどの位重点をおいておられるかということを私は伺うのである。若しそういうことが必要であるというなら、そういう方向に向つての何らかの考案を立てて、予算をそういう方向で使うというところをお考えにならなければならないと私は思いますが、その点如何でありますか。
  168. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 畜産事業の経費に対しましては昨年の国会の御希望等もありましたので、予算編成につきましては競馬の收入の三分の一は畜産奬励に特に使うという予算を立てておるのであります。その他種畜場等の経営、先程申しました人工受精等のことについて相当の計画をして進んでおるわけであります。
  169. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 競馬のことを頻りにおつしやいますが、競馬というものはたつた一万頭しかいない。従来から馬は大体百五十万頭ということを言つております。その大部分は役馬である、農耕馬である、軍馬といつても軍馬は十万頭以上使うことはない。全体が皆役馬である、農耕馬である。併しながら農耕馬は農耕に使われないで、ただ一年に多くて七十日くらい使つて後は厩肥を作つておる。それを糞畜と称しておる。役畜でなくて糞畜になつておるからいけないということを日本の農業の改良を論ずる人は種々言つておる。その方向に頭をもう少し向けて行かなければ農村の文化の向上はできないということを申しておる。畜産奬励に金を使うことはよいが、畜産奬励の何にお使いになるかということを伺つておるのである。競馬によつて得たものを畜産に使う、ただ漠然としたことである。幾らでも使い方はある、酪農を奬励することもよい、鷄を奨励することもよいでありましよう。豚を奬励することもよいでありましよう。これは畜産に三分の一使うというようなことはどこに重点を置かれておるかということは私は伺つておる。私の考えておるような方向にどうぞ御盡力願いたいというのが私の要望であります。大臣の御答弁によりますとどうも余りその方について関心が深くないように考えますから、要点は農村の文化の向方がある。役畜によりまして労働力をもう少し値打のあることにしたい、人間の労働力を時間の余裕を得て自分達の修養に向けたい、これが要点であります。非常に大事なことである、それについてお尋ねいたしますのは、畜産を奬励したる場合に先ず農家自身が、自己の地位の向上を図ることも私は必要だと思う。農家が御馳走するというとお魚を出すというやり方でなく、豚の肉を供給する、新らしい卵を供給する、新らしい乳が農村に行けば飲ませられるということが必要である。農村でいろいろ宴会をして出て来るものは魚である。それはおかしい。そういうような方針でやつておられてはいかないのである。すべて農家は自給本位に考えることがよいのではないかと私は思う。交換経済で成るべく売れるものを作るようにという奬励の方針であるか。農家自身は自分の入用なものを先づ自分で供給をして余つたものを全体に供給するという方針に重点をおかれるか。その点をお聽きしたいと思います。
  170. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 今日の農業政策としてとつております方針といたしましては、先づ第一に食糧の増産ということを考えておるのであります。然らばこの食糧増産をどういうふうにして農家が協力を得られるかという態勢を作つて行くということが第二に考えられることであります。今政府として考えておりますことは、無畜農家をなくする、いわゆる農家の経営規模相応な家畜をとり入れる。今お話のように鷄も、豚も、兎も、緬羊も、山羊もありましようが、その農家の経営規模相応な家畜をとり入れる。そうしてこの有畜ならざるところの農業者をなくするという方針を先づ第一にやるということは、今お話のごとくに自家消費によつて、これらの蛋白質給源を求めるということが目的でありまして、彼の曾て奬励されたような酪農というようなことは、相当の市場を獲得して初めてこれが有利に展開するのであります。従つてホルスタイン系統の乳でなくとも、牛の乳を、掛け合せによつてそう大量の生産をしなくとも、自家消量の乳が得られるということにするというような、農家の経営規模に相応するような有畜農業に指導していきたい、かように考えておるのであります。今お話の畜力を利用するということにつきましては、これは一町歩、二町歩、三町歩というわけで、大きく経営するものによつて今日まで利用されておるのでありますが、これが二反、三反、五反という小さい規模の農家については、みずから牛を飼い、みずから馬を持つということは経営の面からいうてもどうかと考えられるのでありまして、こういうものは協同的な飼育をいたし、協同組合においてこれを設けるというふうにして、相互扶助の気持によつて畜力を利用するという面もあろうかと思いまするが、この牛や馬のような大きい家畜を取入れる場合におきましては、相当の一町歩以上、一町五反歩以上という営農の状況によつてこれは奬励すべきものであり、又一般に小さい動物までも入れるということは、その運用面から考え、又地方を向上する上からさようにすることが妥当であるとかように考えておるわけであります。
  171. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 有畜農業と仰せられますが、有畜ということはどういうことに重点を置いて有畜するかというのが私のお尋ねの要点であります。ただ家畜を持つということになると、その共通点は厩肥が得られるということです。有畜営農をどこに目的を置くか。農家に自給の蛋白給源を得させるためであるか、或いは厩肥を取るつもりである。労役に服せしむるところに重点を置くかということを決める。そうして有畜営農ということを御奬励にならないというと、ただ家畜を持つてつたらよかろうということは、何のために持つのかということを、農家は疑わざるを得ないと思うのであります。その点をもう少し明確にして頂きたい。  私は役畜を本位にして、先ず農民の重労働からの開放というところに重点を置く、そうしなければ農業の経営の改善はできないと思う。小さい零細な土地をもつて耕作することはよい営農ではないのでありまして、そういうことは協同耕作ということを考えてよい。それは一九四八年十月二十六日に天然資源局農業部から日本農業機械化に関するステートメントというものが出ておる。これは非常に適切なことを言つておるのでありますが、それが行われていないことを私は遺憾とする。必ずしも日本に適せないことを述べておるのではない。アメリカにおいても四十エーカー、八十エーカー乃至百六十エーカー程度の多くの農業では、その農作業は依然として畜力に依存しておるということを言つておる。日本においては役畜を今後使用することは重労働力を相当必要とする農作業にやはり奬励さるべきものであるということを言つておる、これは要点を掴んでおると思う。而して日本には農作業の大部分を引受けさせるには十分な役畜が要る。役畜の共有乃至協同利用によつて、より大きな能率を得ることが可能であるというところに重点を置いて、日本農業の機械化ということをここに唱道しておる。こんなふうな方向は、最も要点を掴んであるのでありますから、私は将来こういう方向に重点を置いて、農林省の方でもお考え願いたいというのが私の質問の要点であります。これ以上にお尋ねすることはありません。ただこれは希望するのであります。もう少し重点を置いて有畜営農ということをお考え願いたい、こういうことであります。
  172. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣に対しまして前回に引続きまして御質問申上げたいと思うのです。この前に予算編成の基礎條件について御質問したのでありますが、その四つの基礎條件のうち、最後の第四の輸出入貿易について御質問したのでありますが、この貿易の問題につきましては先程来安本長官にも質問がございまして、これは今度の予算を実行する場合重大な問題になりますので、この点については十分お尋ねしておきたいと思うのですが、政府はこの貿易の前途について非常に楽観されております。併しながらいろいろな條件から言つて貿易の前途は決して楽観できない状態にあると思う。昨日私はポンドの闇相場のことについてお伺いいたしましたが、私が二ドルを割つているものがあるということを言つたのは、その後私が調査いたして見ましたら、これは非常に無理なケースであつて、大体まあ大蔵大臣が言われた程度の闇相場であるということは確め得ました。従つて私が昨日挙げた二ドルを割つているものはあるかも知れないけれども、これはレヤー・ケースであるという実際家の話でありましたから、これは私は訂正いたします。併しながら実情を聽いて見たところが、最近御承知の通りインドネシアにおいても通貨改革をやつた。その結果が、影響がやはり相当ある。それからパキスタンもこの間通貨改革をやりそうであつたけれども、これは一応やらなかつたけれども、ポンドの切下げ以後、そういう各国で通貨改革の問題も起り、そしてポンドの闇相場も下つておるので、貿易の前途については相当悲観的です。この実業家に聽きましても……。政府は最近まで非常に楽観論を言われておりますが、実際家に聽きましてもその前途は決して楽観できないのです。この点について大蔵大臣は最近のこのインドネシアの通貨改革、或いはポンドの闇相場の下落、そういうことから来る貿易の前途に対する見通し、こういう問題についてどうお考えになつているか、これは通産大臣としても御答弁願いたいと思う。
  173. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は貿易の前途を楽観しているというふうにお取り頂かないように願いたいと思うのであります。悲観していない、こういうのであります。(笑声)決して我が国の今の状態で何も楽観するところは余りないのでございます。とにかく悲観せずに努力いたしておると御了承願いたいと思うのであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)  御承知の通り昨年上期におきまして、ポンド地域に対しましては、相当輸出超過であつたのが影響いたしまして、下半期並びに今年の一、二月におきましては向うが非常に買控えをし、日本が買あせつた結果、ポンド資金が非常に足りなくなつて来て、ポンド地域との貿易は予想の半分しかいかなかつたのであります。ポンド地域との貿易がそれでは今後どうなるかという問題でございますが、インドネシアの国内通貨の半分に引下げた分の影響は、まだ検討はいたしておりますが、まだ私のところへは入つておりません。併し私は今ポンド再引下の措置を採るかどうかということを、世間では云々しておりますが、私はやらないのじやないか。やらないだろう、それは何故かと申しますと、昨年の切下後イギリス所有の金貨は可なり殖えております。エードを受けた程度殖えております。而して卸売物価は七%から八%上りましたが、小売物価は今のところ上つていないような、これは一ケ月ぐらい前までの報告でありますが、上つていないような状況であります。ですからイギリスはポンドの再引下をやろうとは只今のところ考えておりません。従つてポンド地域全体は大体今のところでよいのじやないか、而して向うの買控え、こちらの買あせりという結果は、大分最近是正せられまして、貿易協定によりまして、大分将来の明るい見通しも附いて来ておるのであります。ただ私は今の状況では何を申しましても、こつちに滯貨があり、それに対する貿易の長期金融、クレジットの点が非常に足りないのじやないかということに自分も考えますし、又最近向うの方へ行つてつた方々の報告を聞きましてもそういう状況であるのであります。プラント輸出に対しましても、日本政府の肚だけで金融ができれば相当の話合いができると思つておりますし、その他の点につきましても、長期金融をつければかなり貿易がよく行く見通しが極く最近ついて参りました。具体的に今検討を通産省でいたしているような状況でございまして、悲観する状況ではないという見通しを持つているのであります。ポンド地域はそうでございまするが、ドル地域の方につきましては、これはカナダ、アメリカ方面は大体予想よりもよく行つております。鍵は南米との分でございまするが、これは船の関係、その他向うとの話合いがつきましても、ライセンスがなかなかつきにくいという状況でありますので、極力南米方面の政府と話合いを進めております。ドルの方は予定よりもよく行つている状況であるのであります。従いまして私は相当生産も殖えつつあるのでありまするから、ここに何か金融その他につきまして手を打ちまして、そうして貿易の振興を図つて行きたいと考えているのでありまして、いろんな問題がありますが。私が今申上げる段階に達していない点も相当ありますので、この程度で御了承願いたいと思います。
  174. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、相手国に対して円の割合に長期的のクレジットを與えれば相当貿易が振興、増加する見込みがある。いわゆる円クレジットと言われている、その問題ですか。
  175. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 前からも稻垣通産大臣がプラント輸出をこの席上でもおつしやられたのでありますが、これは具体的にならなかつた。私はこれを具体的に進めて見たいと思いまして今計画を進めている状況であります。プラント輸出のみならず、とに角日本の商品を向うへ持つてつて、そうして向うの人に見せれば、これは一例でございますが、ラングーンにおける展覧会で日本の農機具が圧倒的に好評を博しまして、ドイツ等から行つているものは、折角持つてつても展覧会に出さなかつた、こういう状況を私は聞いているのであります。これはラングーンばかりでございませんで、日本のいわゆる手工業的なもの、或いは小規樣の機械等についても、相当の私は希望があることを聞いているのであります。
  176. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今ポンドの予想につきまして、大体見通しをお伺いしたのですが、大体私もポンドの再切下げはないと思つておりますから、大蔵大臣の見通しも大体まあ間違いじやないと思います。ただ大蔵大臣のお話ですと、イギリス貿易勘定がよくなつているというお話ですが、やはり物価は総合物価で六%上つているそうですし、再切下げしないということは、大体恐らくアメリカの借款その他の援助によつて、これを再切下げさせないと、こういうことだろうと思うのです。これは観測の相違でありますから、敢て又申上げる必要もないのでありますが、次にお伺いいたしたいのは、外貨資金の使い方ですね。これについては木内さんにでも詳しく他の機会にお伺いしたいのですが、大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、外貨資金の使い方によつて非常に日本が損しているんじやないかという問題ですね、これはもう少し日本に有利になるように、商売的にこれを運用して貰わないと非常に損するのじやないか、前のポンド切下げのときに、これも損したということを言われておりましたが、最近新聞にも問題になつておりましたが、ポンド地域からの輸入が非常に多くて、輸出が思うように行かないという問題ですね。これについては最近何か手を打つておりますかどうか、その最近の折衝その他の状況についてどういうふうになつておりますか、お伺いしたいのです。
  177. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程申上げましたように、昨年の六月までは相当こちらは輸出超過になつてつたのであります。で七月から貿易協定が始まつたのでありまするが、前の状況が非常に相手国にも強く響き、又日本の方にも非常に輸出超過になつておるから、一つどしどし入れよう、こういうのでやつたため、昨年の暮から一月頃まで締切つて見ますと、    〔委員長退席、理事田村文吉君著席〕 実績を見ますと非常に差が出ておる。これではいけないというので、一月の中頃から又話合をいたしまして、できるだけ向うさんにも買つて貰う、こちらの方はポンド資金不足で御承知の通り買控えした。こういうふうな状況であるのでありますが、この実績が双方とも予想以上に響いたということが分りましたので、具体的に話を進めておる状況なのであります。
  178. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 一応ローガン方式によつて、こちらが先ず輸入優先で輸入して、そうしてあとそれに基いて輸出をする、こういうことになつておりますが、最近の実績は輸入はどんどんするけれども、輸出がうまくいかない。今後もそういう調整はうまく行く見込でございますか。
  179. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは向うの方も実はびつくりしたような状況だつたそうでございまして、大分買付の方もあると私は期待いたしておるのであります。こういう問題は常に先方と話合を進めまして、過不足のないようにやつて行きたいと考えております。
  180. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次にやはり貿易の問題と関連しておるのでありますが、関税の問題ですが、これまで食糧の関税についての議論がありましたが、私は石油ですね。石油の関税の問題についてお尋ねしたいのでございますが、御承知の通り四月一日からですか、統制が廃止になるわけです。石油の方はそうしますと、いわゆる帝石の今の採算ですと、九千九百円ですか、九千何ぼになる。それから向うからの輸入原油でやる場合には六千何百円で、若し保護関税をかけないで統制を撤廃したならば、これはもう帝石は到底競争できないような重大な段階に立至るということが言われておりますが、この石油の関税の問題ですね。或いは関税その他の以外においてこれを防止する、そういうふうな何か対策はお考えでございますか。
  181. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 関税の問題は只今大蔵省の関税部長の方で関税定率法の改正を検討いたしておるのであります。原則を自由主義的の方面に持つて行くか、保護貿易の方に持つて行くかという問題であるのでありまするが、私は何と申しましても、そういう保護関税を設けなければならんと考えておる次第であります。先般も外の方面で問題になりました食糧永久無税というようなことが新聞にあつたというので、議論の的になつたのでありますが、私としては毛頭そういうことは考えておりません。  次に石油問題でございまするが、御承知の通りに我が国の石油は消費量の大体一割程度しかないのであります。而も相当高くついております。従いましてこれに或る程度の関税を考えなければならんのでありまするが、余りにも違い過ぎますので、而も関税をかけることによつて国内一般の物価に相当の影響もありますので、その点はどの程度にしようかというので今検討いたしておりまするが、当分の間はやはりプール制を敷いて、或る程度の関税をかけますと同時に、国内とのプール制を敷かなければやつていけないじやないかというふうに今検討を加えつつあるのであります。
  182. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 食糧の関税問題については永久無税という考えでなく、今検討中であり、いろいろ折衝中であるということを伺つたのですが、現在は外国食糧が高いからいいのでありますが、食糧以外のものについては直ぐに統制を外して行つた場合にすぐ問題が起るのでありまして、石油以外にそういう問題が起る可能性があるのでありまして、私は石油を一つの例として、今御質問したいのでありますが、国内的にも国際的にも自由経済に持つてつた場合、どんどん統制を外して行く場合、若しか目下、起つている石油の問題のようなことが次々と起るならば、これは日本の経済は混乱して大変なことになると思うのです。そういう国内の自由経済方式、或いは国際的にもこの自由経済のやり方を当篏めて行くという行き方、これについては今大蔵大臣も、そういうふうに手放してはいけないというお話であつたのですが、單に石油だけでなく、日本経済全体の問題、今後ローガン方式に基いて国際貿易をやつて行く場合、どういうふうな構想でやつて行かれるか、その点お伺いしたい。
  183. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国内の統制の問題と輸入関税の問題とは、そう直接に関係はないと思います。私は外国の商品に対して負けないようにするために、やはりできるだけ国内産業を強力なものにしなければならない。強力なものにするときに、どういう方法を取るかというと、私は自由的な考え方で行くべきだという考えを持つているのであります。そういうふうにいたしましても尚且つ、向うの商品とこちらとの競争等考えまして、そのときに関税政策の問題が起つて来ると思うのであります。石油ばかりではございません。自動車にいたしましても直ちに相当の問題があるのであります。その他いろいろな方面に影響を及ぼすことが多いのでありまして、今折角検討を重ねているのであります。何と申しましても、この保護関税をどの程度に使うか、これを余り使い過ぎますと国内物価を上昇させることになります。又自由主義的に傾きますと、国内産業が立ち行かんということになりますので、この関税政策ということは、余程重要な問題だと私は考えまして、愼重に検討を加えている次第であります。
  184. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 愼重に検討を加えておられるとのことですが、それはもう是非そういうことは必要であると思うのでありますが、この点については日本政府側において検討した案ですね、検討して、相当これは実現する可能性があるのでございますか。例えば食糧の問題については、まあ将来についても非常に重要でありますけれども、例えば今すぐ問題になつた場合、折衝してすぐ解決ができる、関税について、こういう関税は引上げをする必要があるという場合にすぐ間に合うように、実現し得る可能性があるのでありますか。
  185. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは私は自主的に決めたいと思いまして、向うの意向並びに国内産業界の意向を聞いて、適当に決めたいと思うのでありますが、私の方は、今折衝には実は全く入つておりません。従いまして、関税部長の方にやらしておるのでありますが、方針だけは援けまして、ときどきは報告を受けている状況であります。
  186. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 いわゆる関税自主権ですか、これはまあ独立国とならなければ関係ないと思うのでありますが、今の占領下におきましても、或る程度の自主的な余地はあるのでございますか。
  187. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は日本のためにならんことはなかなかきかぬつもりであります。
  188. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その意気でやつて頂きたいと思うのであります。それは單に関税ばかりでなくて、この予算全体についても、又自由党の政策全体についても、日本のためになることは是非頑張つてつて頂きたいと思うのであります。これまで御質問しております通り、最近の中小業者が倒産したり、或いは失業者が沢山出て、そうして職業安定所に押しかける、こういう悲惨な状態が出ているのは、ドツジ・ラインに基くところの超均衡予算、これにあるのでありますから、これについても、大蔵大臣は日本国民のためになるように、一つ頑張つて頂きたい。  次に予算の内容についてお伺いしたいのでありますが、時間も長くなりますから、その要点について御質問申上げたいと思います。この二十五年度予算は、これまでになく早く一応輪郭ができて、そうして今までは予算編成が遅れて、十分その予算を検討する余地がなかつたのですが、今度は非常に早く一応一般会計予算の全貌は明かにされた、これは私は非常に今喜んでおるのですが、併しそれだけに私はその理由は、ドツジ氏によつて枠が早く決められたから、政府も非常に決め易かつたと思うのです。それで予算の枠だけは決つたけれども、その中身は従つてまだ具体的に決つていないのじやないか、こういうふうに憂慮されておるのです。例えば公共事業費が非常に殖えるというようなことになつておりますけれども、具体的に公共事業費は何のためにどこにどういうように使うかということは、はつきりまだ分つていないのじやないか、こういうふうに言われておる、大体政策が具体的に決つて、それから積み上げて予算というものは作られて行く、編成されて行くのと逆に、枠が決つてそれから公共事業費、その他の実際の支出が決つて行く、そういう状況にあるやに聞いておりますが、実際はどういうのでございましようか。
  189. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先般申上げましたように、昭和二十四年の当初予算におきましては、経済九原則に対しまする考え方が少しちぐはぐがありまして、ドツジ氏は一気にやる、私は一二年でやるというのが違つたのでありますが、この二十五年度の予算につきましては、公共事業費につきましては、私の思う通りに行つております。何にも向うかち枠を決められておりません。債務償還につきましては、私は大体地方債を三百億円程度を見まして、一般会計からの債務償還も三百億円程度と考えておつたのでありますが、地方債も殖えて来ましたので、実は一般会計からの債務償還を殖やして五百億にしたのであります。この点が違つただけで、あとは私の考え通りに、向うから来ておるのであります。決して枠を決められてそれによつてその枠に篏込んだ、こういうことは二十五年度の予算案につきましてはございませんから一つ御安心願いたいと思います。而して御審議を願いまして、御賛成を得ましたならば、今の経済状況から申しまして、私は早速に計画を立てて、四月からどんどん入つて行きたい、こういう考えを持つておるのであります。公共事業費につきましても大体もう計画はできております。ただ見返資金の公共事業費の分につきましては、これはちよつと考え方が違うのでございまして、私は外の機会にも申上げましたように、見返資金におきます公共事業関係の分はやはりそのときの労働條件、金融の状況、経済界の状況を見まして、予備軍的に使つて行きたいという考えを今まで持つてつたのであります。併しながらこういう情勢でありますから、できるだけ早くこういうものの計画を立てて御審議を願いますならば直ちに実行に移つて、有効需要を殖やすとか労働関係を調整するというふうな、いろいろなことを考えて行きたいと思います。
  190. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大体大蔵大臣の予想された額において公共事業費、これが折合いが付いたと言つておりますが、私はその額についてでなく、例えばこの委員会においても赤木議員質問されているのですが、河川の砂防費とかそういうものについて、一体どこの河川のどこの砂防をどういうふうにすると、そういう計画がないのではないか、そこで最初金額はできておりますけれども、あとでこの計画が立つた、そうしますと、予算を実行される場合において、計画がなくて一応予算は取れた、併しこれからどういうふうに計画するか、こういうことに若しかなつているのであるならば、   [理事田村文吉君退席、委員長著   席]  これは非常に予算の編成が前と逆で、金額だけは取つて置いてあとで考える、これは予算編成の正常の型でないと思うのです。従つて若しそういう具体的な計画がおありであるとすれば、この公共事業費についての具体的の、河川その他の或いは土地改良、そういうものについてもどこをどういうふうに改良し、どこをどういうふうに修理をするか、そういう計画があつたならば、今直ぐではないのでありますが、そういう計画をお出し願いたいと思うのです。そういうものがございますかどうか。
  191. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 公共事業費につきましては、関係各省や安本と相談いたしまして計画を作つていると考えております。而してまた早く作つて早く実行しなければならんのはお説の通りでございまして、別の機会に具体的のことを関係各省から申上げても結構だと思います。
  192. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはこの予算審議中になるべく分科会あたりで審議できるようにお問い合わせ願いたいと思います。
  193. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 公共事業費につきましては御承知のように認証の問題がございます。予算の説明にも出ておりますが、一応ああいう大きな枠が決つております。その中におきまして毎四半期ごとに認証をいたすのでありますが、従来の認証のやり方等から見まして、寧ろ認証の回数を減らした方がいいじやないか、或いは全然これをやめるというようなこともあるのでありまして、その枠の中におきまする細部の計画は、これは認証の度ごとに決るのでありますが、第一四半期におきます認証の計画が大体決つております。災害関係で申しますれば、年度の初めに五割程度はやつてしまいたいというのが一応の計画でございます。ただ確定的なものでございませんから、そういう意味においてでありますれば分科会等で御説明できると思います。
  194. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 具体的に予算審議をする場合には、そういう具体的な資料が是非欲しいわけでありますから、なるべく分科会に間に合うように、そういうなるべく詳細な計画を一つお出し願いたいと思うのです。  そこで次に御質問したいのでありますが、この予算の内容に入りまして、まず歳出の問題ですが、見返資金についていろいろな疑問があるのですが、これは各委員からいろいろな疑問が出されましたから重複する点については御質問いたしません。私がお伺いしたのは、例えば復金債券を見返資金で償還したが、今後また国債も償還する、或いはまた仮に銀行の債券ですか、銀行債を見返資金で持つ、そういう場合に見返資金の資産内容においてはどういうことになりますか、復金債を償還した場合には復金債は見返資金の債券として資産としてやる。或いは公債を償還したために見返資金の資産として公債が残つて行くのかまたこの債券、銀行の債券などを見返資金から買つた場合、引受けた場合それは債券として残つて行くのか、その資産勘定の形でどういうふうになるものですか。その点をお伺いしたいのです。
  195. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御承知の通りに今年度におきまして復金債を六百二十四億ほど償還いたしました。今月もあと七十億ぐらいでいいのでありますが、これは交付公債を出しましてそれを見返資金の方で買つてそうして潰してしまうことになるのであります。だから債務償還した分につきましては、それだけなくなつてしまう。そういう格好になります。貸付けは貸付金として残るわけであります。そうしてまた二十五年度におきましては、鉄道とか或いは電気通信の方に出しますけれども、それもなくなつてしまい、出資したという事蹟が残るだけで債権としては残りません。
  196. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、見返勘定で復金債或いは公債償還した場合、それは復金債も国債もなくなり、見返勘定の例えば千四百五十億を見返勘定であるとしまして、その中で昨年度仮に千五百億そういう償還をしたとして後それがなくなつてしまう。そうするとバランスシートはどうなりますか、やはりなくなつても見返資金から国庫に対する債権というのは残らないのですか。それを……
  197. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 債務償還の分だけは復金債にいたしましても、復金債償還に国債を出しております。それを見返資金で潰す、こういうことになるのであります。従いまして見返資金勘定によるものは残りません。残るのは貸付金ということになるのであります。
  198. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと見返勘定で交付公債を持つということになるのですか。
  199. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 復金債のやり方でありますが、交付公債を御承知の通り石炭とか金属鉱山のあれでありますが、交付公債で補償してやるわけであります。その交付公債で以て復金に借金を返すという恰好になるのであります。その公債を見返資金が買いまして、そうしてその公債はそのまま潰される、得た資金で以て復興金融金庫が発行しております債券が償却になるこういう形を取つておるのであります。
  200. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大体分つたのでありますが、潰されるというのはどういうのですか。
  201. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 潰されると申しますのは、償却されてなくなつてしまうという意味であります。今まで償還には二色ございまして期限が来て返す分はこれは償還でございます。期限内に一種の買入れ償還と申しますが、まだ期限が参りませんけれども、国債としては消滅の途を迫る、こういう意味合でございます。
  202. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、バランスシートにおいて片方落ちるわけですか、両方落ちるわけですか。
  203. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 国債の形はなくなりますので、国の債務ということはここで消滅いたします。それから見返資金としても、それは出した金でありますから、債権関係はもう一切そこで打切られてしまう、債務償還として使われてしまつておるという恰好でバランスシートには残りません。
  204. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、見返資金というものは、そういうふうにすでになくなるとすれば貰えるものですか、何らあとに債権債務は起らない。そうなりますと、公債償還を沢山するのもいいかも知れない、それでそれだけ落ちてしまつた援助資金に対して公債償還ができて何らあとは債権債務の関係は残らん、そういうふうに解釈していいのでありますか。
  205. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) あとアメリカとの債権債務の問題は私はあると思います。国内的には何にもなくなるわけであります。そうしてその見返りが例えば、復金の方では資産の方に貸付金が残つております。債務の方に貸付金が残つております。債務の方に債券の発行がある、その債務の分がなくなつてしまつて貸付金の債権ばかりになつて復金債の方はなくなると思います。国の方は国債が幾ら幾らあつたのがなくなつてしまう……
  206. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますとやはり対米関係においては、援助関係においては、やはり債務か何んか又後に決るかも知れませんが、その勘定は落ちてないというふうに了解していいわけですね。
  207. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは見返資金ができました分につきましても、又見返資金関係を取つた二十一年から二十三年までの分も、向うから来た援助資金というものははつきりある。
  208. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 更に旧債務償還をする場合に国債の、この財閥解体のときに交付した公債がありますね、財閥解体のときに……。その公債も償還になるのでありますが、
  209. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の記憶ではまだ公債を交付するということになつておるだけで、公債をまだ出していないと思います。而して公債をたとえ出しておつたりいたしましても、私はこの見返資金で以て償還する分については、そういうところまで及ぼしたくないと思つております。或いは財閥解体のときの国債償還は年限もありますし、讓渡その他の制限規定があつたと思います。従いまして、私らの方では出していないと記憶しておるとしか申上げられません。
  210. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これはやはりこの経済民主化と非常に密接な重要な関係がありますから、後の機会でよろしいですが、その点はつきりした御答弁願いたいのです。それからその他の交付公債については、例えばその予算外において出た交付公債についてもやはり償還されるわけですか。
  211. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この前もここでお話し申上げましたように、農地証券等につきましてはあれは九十億あまりでございます。二十四年度で十億、二十五年度は当初四十億と計画いたしております。これを全部つぶしてしまうと、こういうふうなことに最近いたしました。どの国債を償還するか、又誰の持つている国債を償還するかということは、今後検討して行きたいと考えております。
  212. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 前にこの予算外として、いわゆる交付公債を予算外として出すのだから、それでその予算外として出す交付公債はその償還、償還というより日銀の担保とか、なんとかになつて、そのためにインフレの危險がないから、そういう予算外交付公債を出しても差支えないというような、前に話があつたわけです。そうすると交付公債というのは、それ以外今お話なつた農地証券ですか、それ以外にはないわけですか。交付公債と言つても普通の公債に変りないのですけれども、前に流通について相当制限があつたように記憶しているのですが、そういうことはないのですか。
  213. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 最近では交付公債を発行いたしました、と申しましても、先程の六百二十四億の補償の分だけでございまして、その外には先程大臣の言われました農地証券でありますが、その外にありますものとしましては、日本育英会の資本金を交付公債で交付したことがございますが、そういう程度のもので、殆んど交付公債は現実的にございません。
  214. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 債務償還する場合に、今公債の所有高は相当日銀に偏在しておると思う。日銀が相当持つておると思うが、それで今のような所有高に応じて償還するとすれば、相当通貨收縮になる危險がありますし、又償還によつてデフレにならないような、更にデフレにならんような考慮はあるわけですか。
  215. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それは私としては当然やらなきやならない問題だと思うのであります。でこれは償還いたします場合に、片一方で御審議願つております銀行の長期債券、そういうものとの見合も当然起つて来ると思うのであります。それから又特殊の金融につきましても考慮を巡らしながら償還して行きたいと考えております。
  216. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 まあ実際の償還に当つてそういう措置は講ぜられるのは当然かと思うのですが、その点は実際に可能なわけですね。
  217. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これを、日銀所有の国債を償還したらば木村さんのおつしやるように非常にデフレになりましようが、それはいたしませんからデイス・インフレになつて行くと、こう言うておるのであります。而してこれには成算がございます。
  218. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次にお伺いしたいのですが、終戰処理費の予算の組み方なんですが、我々に配布されました説明書によりますと、これまでの組み方と違つておるのです。それでこの労務費については別の資料によつて出ておりますが、この説明書にも二十五年度予算から編成の仕方が違つておるのですが、これはどういうわけですか。
  219. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これは主として予算統制の関係でございまして、従来終戰処理費につきましては、御承知のようなことで予算がまあどんどん要つて困る、困ると申しますか、不足するというような事態が起ることを避けるために、各部隊或いは機関別に予算の一年間において使用する額を決めまして、その範囲内で処理すると、こういうふうな方針に最近なつたのであります。従つてその関係はつきりいたさせますために、予算の上においてもまあ部隊別、組織別というふうにいたした次第であります。
  220. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 我々予算書を貰いまして見る場合、昨年度の分については例えば労務費四百何十億とあつたのです。今度の予算を見ますと分らないです、あれでは。今後そういうものを分るようにするにはどういうふうにしたら分るのですか。
  221. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これは別にお手許に資料を出さなかつたかどうでしたか記憶いたしませんが、各部隊一応労務費は幾らとか、或いは物件費は幾らとかいうような調査はございます。又中の目の小分けにおきまして、そういうふうな区別はあるのでありますが、予算上といたしましては、これをそういうふうな分け方をしますと、予算の流用というような点についてもいろいろ支障を起す点もありますので、いわゆる一本にいたしたのであります。併し内容の積算の根拠はあるのであります。
  222. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはまあ別の政府で資料を出すことによつて補えると、こういう御答弁ですか。
  223. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これはその各部隊々々等でいろいろ使い方が違うのでありまして、まあ一応の見込はあるのでありますが、実際はP・Dが出まして、それに応じて出すということになりますので、実行に当りましては相当異動を生ずるものでありますから、まあ資料と申しましても、そう的確なものとしては御判断を願うわけにはいかんかと思います。
  224. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 二十四年度予算まではよく分つたのですが、二十五年度において分らなくなつたので非常にまあ遺憾に思つておりますが、この点についてはその程度で余りに追及いたしませんが、次に今度の予算の非常に特徴になつておる平衡交付金の問題に関してお伺いしたいのですが、その平衡交付金は地方財政にまあ非常な大きな影響があるのですが、これはこの地方として一応平衡交付金に安心して頼れるような制度になつておるのですか、若しかそれが例えば地方財政で平衡交付金というものが、始終一般会計の都合によつて殖えたり減つたりしますと、これは非常に不安定なものだと思うのですが、その関係はどういうふうなにつておりますか。
  225. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今年度は御承知の通りに財政平衡交付金として、シヤウプ博士も検討を加えて千二百億円と言つておられたので、この中厚生省で除けておきます生活保護費を引きまして千五十億と相成つたのであります。前年度に比べますると今の配付税、配付金におきまして大体七、八十億殖えたと思います。その他義務教育費等適正に見込んで入れまして、これならば大体昭和二十五年度の地方財政は地方税の收入と相俟ちましてやつて行ける、こういう見通しを持つております。将来の問題としてどうするかという問題でございますが、これは地方財政委員会というものができまして、これは大体国務大臣が二人、それから都道府県代表、市長代表或いは町村代表、三人入りまして五人を以て地方財政委員会を組織いたし、地方財政委員会におきまして財政平衡交付金を測定いたしまして、そうして内閣に申出る制度になつておるのであります。内閣といたしましてはできるだけ地方財政委員会の意見を検討いたしまして、適正な金額を決めたいと、こういう制度に相成つておるのであります。
  226. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これまで大蔵大臣も御承知の通り、今まで配付金の場合は一般会計の非常な犠牲になつたわけですね。それで今まで地方税法によつて決められていた率が非常に下げられた、そういうような形は今後平衡交付金においては心配はないのでありますか。
  227. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 非常に地方が困つたという議論もありますし、国の方としては少しやり過ぎたというようなこともあつて、これはいづれにしても何でございます相当議論のあつたところでございます。従いまして御案内の通りに国の事務、地方の事務ということにつきましても再検討を加える必要があるので、行政審議会を設けましたり、又別箇に地方財政委員会を設けまして、そうして適正な区分関係、又交付関係を検討して行く制度になつているのであります。
  228. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この点については地方の経費、その他必要経費、その他の決め方等が非常に重要になると思いますが、これは地方税法の問題に関連して別の機会に本多国務相に質問したいと思います。そこでそれに関連しておるのですが、寄附の問題、寄附金の問題はシヤウプ勧告によつて大体百億、百億に減るとこういうようなことになつておりますが、この寄附金の問題は、これはどうしてその寄附を禁止するという措置が採れないのかどうか。百億取るということにしておいても、この寄附の問題は非常に実際問題としてはデリケートなんでして、百億に止めるといつてもそれをきちんと百億に止めるということはできないと思うのですから、思い切つて寄附というものを政府は公式にこれから禁止すると、こういうような政策が取れないものでございましようか。原則として寄附は禁止すると。
  229. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) シヤウプ博士は勧告にもあります通りに、税とも見るべきような寄附金が四百億円、こういうものは望ましくないから、いつそ税にして寄附金というものをもう止めるくらいのつもりで行つたらどうかという意見を洩されたのであります。それで私は四百億心という根拠はどこにあるかと言つたら、大体の見当だというようなことを言つておられましたが、木村さんのようなお説も一部にはあるのであります。併し何と申しましても、因襲の久しきと申しまするか、一挙に止めるということは、なかなかこれは困難じやないかと考えております。で、シヤウプ博士の四百億と見積られた根拠も、例えば自治警察の問題とか、或は六三制の問題とか、或はPTA関係とか、いろんな、まあ敗戰後の一—二年間、二—三年間の問題で非常に嵩んだと思うのでおりますが、政府といたしましては、できるだけそういうものはやはり税の形で取つて貰うのが一番いいんじやないか、原則としては止めたいという気持を持つておりますが、これを法制化するところまでは、只今のところ行きかねておる状況であるのであります。
  230. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 政府としては原則として、寄附は禁止する方針で行きたいと、こういうあれでございますね。その寄附は禁止するというあれを出しても、それでも今までの因襲では、尚寄附を取られると思うのです。だからその点は政府で原則的に寄附を禁止するということを出されれば、非常に寄附を出すのに、出さない理由に困つておる人には断りいいと思うのです。最近の学校その他で非常に無理がありますから、そういうお考えがあるならはつきりと出された方が……、出されても私はそれでも尚寄附は取られると思うのです。このくらいのお気持はあるかどうか。
  231. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今は個人の意見を申上げまして、そう申上げるのは如何かと思いますが、お考えの点は我々も十分分つておるのであります。併し政府全体としてはつきり寄附を禁止しようというような声明を出すことは、只今のところ如何かと考えております。
  232. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次に歳入の問題でありますが、特に今度の予算については、まあ税の問題が一番重要になつておりますが、このシャウプ勧告に基いて税制改革が今度行われることになつておりますが、その詳細については、大蔵委員会において、細い点について質問したいと思つていますが、この際はその重要な点について御質問いたしたいと思うのです。このシャウプ勧告の狙いの一つで、この税制改革について資本の蓄積を考えておるということを言われております、ところがシャウプ勧告においても、税制を通じて資本の蓄積を行う、而も又今後は債務償還を通じて強制的に資本蓄積も行う、こういう資本蓄積に対して二重に二十五年度は考えられておると思うのです。二十四年度においては、そうではなかつたわけです。二十四年度においては、いわゆる強制的な資本蓄積、債務償還一本でやつてつたと思う。今度の税制において高額所得者に非常に有利に税制を改革して、それで高額所得者の余裕をもつて、例えば株の配当なども税金を負け、或いは法人税などもうんと負けて、そういう形で又資本蓄積をやつて行くと、そういう形ですと強制的、税でも資本蓄積を行われ、債務償還の形においても税を取る、更に税制改革を通じてもそういうことが行われる。これはあまりに両面から非常に資本蓄積が強行されるので、若しか政府の方において、そういう税制改革を行うのならば、少くとも一般会計における五億程度の強行的な資本の蓄積は止められたらどうか、そうすればその強制的な資本蓄積を止める分が、この税制改革を通ずる二次的な資本蓄積に転化して行く可能性がある。それをやらないから今度株式の増資をしようとしても、それを買う能力がない、ないから如何にシャウプ勧告を通じて資本蓄積を二次的に行わしめようとしても、地方において強制的な資本蓄積を強行するから、それで成功しない、こういう矛盾があると思うのですが、この点については、どうお考えですか。
  233. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この点は木村委員と私とは意見を異にしておるのであります。二十四年度におきましては、減税もせずにどんどん債務償還をやつてつた一般会計の方から外の方を繰入をやつてつた、こういうやり方であつた、二十五年度は減税をいたしまして、民間にそれだけの金を残すようにする。そうして又債務償還もしてやる、こういうのでありまして、二十四年度よりも余程良くなつたと考えておるのであります。この税制の方で資本蓄積し、又片方の見返資金の方で資本蓄積をする、二重だとおつしやるが、二重ではないのであります。あらゆる手を使つて国民の方にも減税して、資本蓄積して貰つたり、或いは生活水準を上げて貰つたり、税制の方におきましても、又会社に対しまして減税をして資本の蓄積されるように、こういうようにやつておるのでありまして、見返資金から債務償還をするから片一方の方の資本蓄債は要らんと、こういうふうに考えるのは如何かと思います。
  234. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう形での二本立ての蓄積方針が税の負担の公正という面から言い、公平という面から言つて、非常な影響があると思うのです、ですから高額所得者には非常に有利になりますけれども、低額所得者には有利にならない、同じく一般会計で七百億を減税するといつても、一体誰が減税されるのか、高額所得者五十万円以上については相当の累進税が課けられておつたのですけれども五五%で一本になる。それから法人の減税については、あらゆる措置が講ぜられておる。そうすれば、資本蓄積の負担が非常に違つて来るのじやないかと思うのです。その負担の公平という面からいつて、そういう二重の形をとる資本蓄積のし方が、非常に負担が不均衡になるのじやないかと、こういう意味なんです。
  235. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の議論は、初めの御質問とは別でございまして、これは、債務償還をして資本蓄積をする、而して又減税をいたしまして資本蓄積をする、大納税者につきましても、小納税者につきましても、資本蓄積をする、この二つの行き方は、別にされると私は思うのであります。第二の御質問は、誰のところに一番資本蓄積をさすか、こういう問題であると思うのであります。これは、税制改正の基本の問題になると思うのであります。今まで通り五百万円超八五%、而して別に住民税を取ると、こういうことが今の現状からいつて適当なりや否や、所得税並びに住民税を通じて、所得税で八五%を取り、而も尚住民税でも取るということが、日本の経済の将来からいつてよいかという問題で議論が起つて来ると思います。而して、五十万円超五五%ということにいたしましたのは、住民税が相当高くなつて参りまして、住民税を入れますと六六%程度になります。又富裕税を入れますと、これは財産の有無、所得にもよりますけれども、大体七十から七十五ぐらいになるものが相当あるのであります。所得税の最高限度をどこへ持つて行くかということは、税法上の最も重要な問題でありまして、シャウプ博士の考え方では、大体所得というものは最高七〇%くらいの負担でよいのじやないかというふうな強い意見を持つておられたようであります。我々も昔は、八五%か或いは九〇%くらいのところまで行く税法を作つたのでありますが、この際このときといたしましては、大体地方税その他の税を合せまして、所得に対する税といたしましては、七〇%から七五%くらいが適当であろうかとこういうことにいたしたのであります。而して、小所得者につきましても、相当程度の減税はいたしておるのであります。安定の過渡期といたしましては、この程度のものが適当であろうかと思うのであります。  而して、次に法人の問題について申上げまするが、従来日本の税法はドイツ系の税法でございまして、個人と法人とを別個の事業主体と考えておつたのでありまするが、英国流の、法人というものは個人の延長であると、こういう考え方に変えた方が産業復興によいと、こう考えまして、今までのドイツ流の税制を英国流にいたしたのであります。私は、この問題につきましても、我が国におきまして従来から議論のあつたところでありますが、この際やはり英国流の、法人は個人の延長であるというふうな考え方で産業復興によいのではないかというので、採用いたした次第であります。
  236. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の法人の税のかけ方については、いろいろ議論のあるところだと思うのですが、一応シャウプ勧告に基いて、個人、法人の所得は同じであると、こういうことになつたと思うのですが、それについては議論になりますから止めますが、我々そういう考え方には反対です。法人はやはり一つの人格として課税すべきであるという考えでありまするが、そこでまあ枝葉に亘つての議論は成るべく避けまして、このシャウプ勧告に基く税制改革において一番量要な点は、所得をどういうふうに捕捉するか、算定するかという点が、一番重要であつたと思うのです。シャウプ勧告は、昭和二十三年度の所得を基礎にしまして、そうして所得階層別に、どれぐらいの所得があるということを計算して、税制改革の基礎にしたと思うのですが、この点については非常に問題があると思うのです。大蔵大臣も御承知の通り昭和二十三年度はインフレ期でありまして、あの当時インフレ期であるために、所得が公正に捕捉できないで、そうして税のかけ方がでたらめに等しくなつておるということは、当時嘆かれたところなんです。その結果、このシャウプ勧告に基く税制改革ということになつて来たのでありますけれども、昭和二十三年度の所得を基礎にして、二十五年度の所得を推測して、そうして税制改革を考えるという場合には、非常に問題があると思うのです。そこで大蔵大臣は、あのインフレ期における二十三年度の所得の決め方及びあの所得階層別の決め方、あれは恐らく主税局の資料によつてシャウプ博士は推定されたと思うのですが、あの調査は適当であるとお考えであるか。これが二十五年の税制改革を決める根本の資料になつておるのですが、この点について御意見を承わりたい。
  237. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 大体私は適当であると考えておるのであります。あれは課税実績でございますので、大体異議の申立てがあつた分なんかにつきましては、相当の是正を加えておると考えておるのであります。
  238. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは大蔵委員会でも主税局長に伺つたのですけれども、やはり課税実績であるという御答弁であつたのです。そこで、特に大蔵大臣に御質問したいのは、課税実績であるからこそ問題なんです。私は、そこに相当のアジャストメント、修正が加えられたというならばよいと思うのです。インフレーション下における所得の捕捉の困難さ、これをアジャストされれば、これはよいと思うのですが、課税実績であれば、あの当時のインフレ下においては、具体的に所得を捕捉しようとしても、それは困難なことは、もう明らかなんです。ですから、実績に基けば基く程、それは所得の算定のし方が不公平になると思うのです。殊にシャウプ博士の三十万円以上九百億ですか、あの算定には、相当やはり專門家の間にも問題があるのであつて、あれが必ずしも正しいとは言えないと思うのです。例えば最近の雑誌にも、都留重人氏がそういうことを書いておりますが、都留氏は相当具体的にその後調査されております。岩波から出しておる「経済研究」というのに、最近の調査が出ておるのですが、シャウプ勧告に基く税制改革は、この点が私は一番問題だと思うのです。ですから、実績である、実績であるとおつしやいますけれども、インフレーション下において、実績であるからこそ所得の捕捉が正確でない。これに対して何かアジャストを加えられたかどうか、インフレーション下における所得分布について何か修正を加えられたかどうか。そうしなければ、非常に無理が生ずる。それに基く税制改革ですから、この結果を見ますと、取るべきところから、相当所得額のあるところから税を取つていないのです。三十万円以上については、九百億どころではなく、相当多い計算だと思うのです。その二倍とすれば、千八百億金があるとすれば、それから一割取る場合には、相当多くの税を取れるのです。ですから、そこが非常に問題であつて、大蔵大臣は、その点について、何か調整を加えてこの税制改革の基礎とされたかどうか。
  239. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 勿論それは調整を加えております。二十三年度の課税実績を基本にいたしまして、その後の物価の動き、所得の分布状況等は、勿論加味してやつておると考えております。又やらなければいかんと思います。
  240. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでありますけれども、我々に配付されました予算の説明書、主税局から頂いておるのですが、これを見ますと、我々どうしても、納得行かないのです。例えば五十万以上の所得者の人員を見ると、十一万人というような数字が出て来ておるのです。これは常識から考えてもどうしても私はそういうような数字が出て来る筈はないと思うのです。それでこれは正確な資料ではないのですが、一つの参考として二十三年度の予算、私の社会党にいた頃二十三年度の予算を検討するので、安本から貰つた資料があるのですが、これは正確な資料であるかどうかは分りませんが、あの当時の二十三年度の階級別所得があるのです。これには相当推定価額があると思うのですが、それを基礎にして計算してみたのと、政府から提出されましたこの所得階級別の調査とは非常に差がありまして、その点は我々どうしても納得が行かないのです。もつと人数が多かるべきであるというふうに思うのですが、その点は大蔵大臣はどういうふうに思つておられますか。
  241. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私はその主税局から出しましたものをまだ見ていないのでありますが、これは主税局長或いはその他の政府委員からお聽きになると分ると思います。二十三年度におきまして五十万円以上の所得者が何人だとか、それから今後どう見ているか、こういう見方の問題だと思うのでございますが、とにかく課税実績を基本にいたしまして、経済界の変動その他を十分加味して見積つておると私は考えておるのであります。
  242. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今勤労の方は一万一千人です。ところが営業の方は申告の方が十一万、で更に今度はこの配付された資料に基いて国民所得が出ております。この国民所得と政府がこの予算の基礎として配付された国民所得との間に非常にギャツプがあるのです。それが僅かなギャツプならまだいいのです。非常に大きなギャツプがあります。例えばその勤労所得について見ますと、政府の分配国民所得の調査によれば一兆三千八百五十億です。ところがこの配付された租税をかけるところの基礎になつ国民所得は、一兆一千百二十四億になつているのです。これは給與所得者別見込総人員に基いて收入金額を出しておる。そうしますとその差は二千七百二十六億という差があります。更に今度はこれが業種所得になるともつと著しく開いております。分配国民所得による業種所得は一兆七千四百三十一億になつている。ところがこの配付された資料によりますと一兆一千百九十五億で、六千二百三十六億という差があるのです。このような差がですね、それは僅かの差ならいいのですが、こんなに沢山の差が出て来ておる。そうしますとその間に実際の所得の推定と二十三年度のあのインフレ下における所得算定、あれを階級別所得を基礎にした算定との間に非常にどつかにギャツプがある。ですから二十三年度のあれを先ず基礎にするについては、相当検討しなければ、あれに基いて行なつた税制改革は相当問題ではないか。こういうギャツプが生じて来るのはどういうわけでありますか。
  243. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御承知の通り国民所得の算定は可なり困難な問題であるのであります。従いまして税の收入の見込といたしましては、安本の国民所得を基本にしてはいないのであります。課税実績をもとにしまして、そうして安本の国民所得の増加割合によつてこれをアジャストして行こう、こういうやり方でありますので、そこの間に違いが出て来ると思うのであります。そうして又主税局の方は勤労所得の方を課税所得にしておりますかどうかという問題と、それから安本の方としてはどうしても範囲が狹くなるのではないかという考えを持つておるのであります。そこで従来からこの問題につきましては毎国会で議論になるのでありますが。数字に亘りますことでありますので、大蔵委員会とか或いはこの委員会におきましても、主税局長或いはその他の政府委員から説明させた方が適当かと考えております。
  244. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 たまたま質問が数字になりましたが、これは数字を挙げないと問題がはつきりしませんので、質問が少し細かい数字に亘りましたが、問題はその差が僅かならいいのです。ところが相当大きな、六千億以上、いや勤労所得の方の差を入れれば更に大きくなるのでありまして、約九千億近い差が出て来る。九千億近い差というのは、如何にそれは誤差があるとしても、私はひどすぎると思う。こういう差を放つて置いて、そうして税をとる、或いは税制改革を考えるという場合に、これは公正なる税制改革が私はできつこないと思うのです。従つてこの点については私は大蔵委員会において更にもつと御質問したいと思うのです。  その次にお伺いしたいのは、今度の税制改革においても、税の負担の公平化というものは、これは税制改革の一つの大きな目的になつていると思うのです。ところがあらゆる点から見て、税負担の公平化は私は期せられていないと思うのです。第一ですね、その税をかけたことによつて税をかけた後の所得分布は公平になつているかどうかという資料さえないと思うのです。ですから税を徴收した後における国民所得の分布、こういうものに対してまでも私は調査を進めるべきだと思うのですが、そういうものを見ようと思つても、ないのです。それから租税統計なんかについても、非常にそういうところは私は不備だと思うのですが、今度の税制改革において、例えば二十三年度の税の負担、各階層の負担などを見ますと、五十万円を超えた者が五十万円以下よりも軽い。そういうような税の累進度などについて非常に不公平、不均衡があると思うのです。そういう点は今度の税制改革において十分考えられたかどうかということ。  更に大蔵大臣は前に、今度の税負担の軽減はいわゆる税制による負担軽減と言いましたが、税制による負担軽減と実際の負担軽減とは非常な違いがあると思うのです。それで果して大蔵大臣は今度の減税を税制による減税であると考えられるか、実際による減税を考えておられるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  245. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私が申上げているのは、いつも税法改正によりまする減税を言つておるのであります。それより外にはなかなか言いにくいと考えております。  尚今度の税負担の問題で言つておられますが、所得税だけの問題でございましようか。住民税を入れての問題でございましようか。所得税の問題につきましてならば、やはり累進税率が相当動いておりますので、五十万円の人と五百万円の人との所得百円あたりの負担は可なり違つておるのであります。
  246. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはもう具体的に検討して行けば分るのでありますが、細かい数字になりますから避けますが、大体において十万円以下は割合に軽くなつている。それから五十万円以上も軽くなつている、併し十万円から五十万円以下の間は軽くなつていない。ところが二十三年度の国民所得を基礎にしたからそういうことになつたのであつて、実際に主税局の調査などを基礎にしてやつたからそういうことになつたのであつて、こうなると大体農村或いは中小業者その他はみんな十万円か五十万円の間に入れば、その人達の税負担は余り軽くならないということになると思います。ところが実際の国民所得はどういうところにあるかといえば、五十万円以上のところに相当あるのであります。そういうところは五十五%でもう累進しない。こういう税のかけ方だから非常にそこに不均衡がある、こういうふうに思うのであります。更に問題なのはいつも大蔵大臣は税法によると言われておりますが、我々国会において税法に基く減税の案を審議しても、これを実際の減税にさせるかどうかは今度は行政官吏、末端の税務官吏になるのである。ところが国会においてただ税法だけを審議して、後はそれ以上追及できない、追及できないことになれば全く意味がないと思うのであります。ですから仮に七百億減税するということが、仮に税法によつて決まつてもそれを具体的に減税たらしめるかどうかは税務官吏の行政によるのです。ですから我々はどこまでもはつきりとさせなければならないと思うのです。ですから実際の税の負担率というものは、国会で決めるのじやなくて税務行政当局が決めると、こういうことになつておる、実際はです。そこでこのギャツプ、即ちこのギャツプの埋め方はどういうふうにしてお埋めになるか、ただ税法上七百億を減税するといつても、これは本当の減税にならない、この点のギャツプをどういうふうにお埋めになるか。
  247. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 木村さんは。五十万円以上の所得者は大蔵省が見積つておるものよりも非常に多いという御想像でございますが、若し多いとすれば資料を拜見してもいいと思います。勤労所得で一万一千となつておりますのは控除した後であります。我々は一万一千の中に入つていないと観察しております。課税所得によつて、課税所得を基本にいたしまして国民所得の増減によつて加味するより外には今のところございません。若しいい見積り方があつたならば承りたいと思いますが、我々といたしましては、只今のところ二十三年度の課税実績によりまして国民所得の増加、経済界の変動を加味して、アレンジして見積るより方法がないのであります。いい方法がありましたら検討し、又御意見を承つてもいいと思います。而して御質問の第三に、国会で税法を決めても税務官吏が適当にやるんだから、減税とかなんとかにならんということは非常に奇妙な御意見でございまして、国会が税法を決めて、税務官吏はその税法に従つて行くべきであるのであります。従いまして例を以て申しますると、問題の中小業者の負担は昭和二十四年度当初におきましては、申告納税千九百億円を見積つておりまして、その後の経済事情によつて千七百億円になつたのであります。補正予算、税法は改正いたしません。而して千七百億円に引下げたのが千五百億円くらいになりそうなんです。今の状態から行きますと、二百億円くらいの減收になりそうです。併しこれは減税とは言えない。これは当然なんだ。私は飽くまで国民の租税負担は国会において御審議なさつた通りで、税務官吏は税法に従つて行政を取るのであります。若し税法に違反したようなものがあるならば、これは改めなければならないのであります。
  248. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは理窟であつて、実際には、その現実の負担率を現した税体系、税体系について見れば、これは例えば業種所得の方が軽くなるとか、勤労所得が重くなるということは、その所得の補足、そういうことに非常に重大な関係があるのであつて、それが、無論国会でその税法は決めるのでありますけれども、従つて所得の補足その他いろいろの関係によれば、実際現実の税負担が、必ずしも税法に反映していない。これは日本ばかりでなく、どこの国でも問題になることでありまして、従つて大蔵大臣は減税という場合に、税法において、ただ減税の税法が通れば、それで減税になるというふうにお考えなつたらそれは私は間違いじやないかと思う。こういう点を質問しておるわけであります。
  249. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 税法はそのままにいたしましても、国民所得の増減によりまして減つたり殖えたりするのであります。だから先程例に取りました、農業、中小企業者の納められます申告納税につきましても、税法は改正いたしませんが、当初予算に比べましては、四百億円くらいの收入減であります。これは私は減税したとは申しません。減收なのであります。減税は政府はいたしておらん、減收だ、こういうことであるのであります。税法が決まりまして、その通りにやつて行きましても、或いは国民所得の減税によりまして税收入が動いて行くのであります。
  250. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは当然のことですが、我が国ばかりでなく、各国で問題になつておるのは、そういう意味での税法上の税負担と、実際上の税負担との間にギャップがあるということは、そういう意味じやないと思う。同じ国民所得であつてもその補足の問題です。その補足の問題によつて、例えば一〇〇%正直に申告した場合の所得と、実際に税金を拂う基礎となる所得と、この間にギャツプがある。このギャツプが問題だと思う。ですからこれを極力縮める。極力縮めるにはどういう方策を取るかということが具体的な問題になるのでありまして、所得が多くなれば税額が多くなるということは分り切つたことでありまして、これは我々税法を審議する場合に一番重要な問題だと思うのであります。税法上ではなる程減税であるように見えても、実際上減税にならない場合もあり、又租税の負担の均衡上からいつても、それが非常に問題になる。ですから青色申告というものも出て来たと思うのでありますが、青色申告自体が今非常に問題になつているわけです。これで私はそういう單純なことをお尋ねしておるわけではありません。
  251. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは昔から言つております通りに、脱税ということは、いつの世でも、いつのところでも行われておるのであります。これは国民の納税思想にもよりまするし、又税務官吏の所得の把握力にもよつて来るのであります。我々はできるだけ誠実な申告をお願いしますと同時に、税務機構を強化いたしまして、適正な課税に努力をいたしておるのであります。今回もお話通り青色申告の制度を布きまして、できるだけ正確な所得を把握しようと努力いたしておるのであります。
  252. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう御答弁だと分るのです。従つてその税務行政の問題は非常な重要と思いますので、これは青色申告とも関連して重大なる問題でありますから、大蔵委員会においてもつと詳細に御質問申上げたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、この予算と財政と非常に密接の関係にある金融政策の問題でありまして、金融政策の問題についてお伺いしたいと思うのでありますが、ドツジ予算になつてから、いわゆるドツジ・ラインが実行に移されてから一番問題になつたのは、財政と金融の分離でありますが、財政と金融の分離の結果、大蔵大臣は、その結果どういうことになつたか。例えば財政と金融の分離の結果、民間の金融機関の力が非常に強くなる。そこで日銀にポリシー・ボードを設けて金融機関の公共性を高めるという一連の政策を取られたものですが、その後の実績をどういうふうにお考えでありますか。財政と金融の分離した結果よかつたか悪かつたか、日本経済再建安定のために、財政と金融と分離してよかつたか悪かつたか、今までの実績を検討されてそのお考えを伺いたい。
  253. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政と金融の分離の主なる点は、復金があると思うのであります。いつまでも財政が金融におんぶして行くやり方は、よくないのでありまして、これは改めて行きつつあるのであります。而してその改めました過程におきまして、十分でない点もあるのでありますが、今後御審議願つております金融機関関係の法案の改正によりまして、我々の願つている財政と金融の分離が軌道に乘つてくると考えられるのであります。
  254. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その財政金融分離の結果はよかつた、こういう御答弁ですね。
  255. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 分離の結果はいい方に向つておると考えております。
  256. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それならお伺いいたしますが、財政と金融の分離の結果、財政の負担がいわゆる金融の方へ皺寄せしてきたということは大蔵大臣も言つておられるわけですね。
  257. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政の負担が金融の方に皺寄せしたというお言葉の意味はどういう意味でございますか。
  258. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは復金債務償還によつて、税收入を復金債務償還によつて銀行にこれを返還する。そうしてその金が銀行に行く、その間に財政的なデフレを金融的な貸付によつてカバーして行く、併しながら又見返資金その他のエード・フアンドなどの関係から見返資金により民間の金を吸收したけれども出て来ない。従つてそれをカバーするために日銀ではつなぎ融資などをしたわけです。そうして民間の銀行のオペレーシヨンその他で国債その他を買上げて貸出を多くした。その結果が金融機関の預金、貸出しの比率が非常に多くなつて来て、最近では銀行の貸出しは限界に来ておる、こういうことが言われておる、銀行経営の健全化の上から言つたら、私はそういう財政デフレを、銀行の信用インフレですか、そういう貸出しによつて賄わしたために、それがだんだん限界に来たのであつて、限界に来て、これ以上銀行の貸出し政策に頼れない、こういう段階に来ていると思うのですが、そういうことがいわゆる一般に言われておる財政の負担を金融の方に転嫁してきた、こういうことだと思うのです。
  259. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政と金融の分離というものをそういうふうにお取りになりますならば、その意味でお答え申上げましようか。この債務償還をいたします点は、インフレを收束してディス・インフレの線で行く結果として、こういうことが起りますと同時に、アメリカの援助、それを全部我々の生活水準の向上に当てていかない、援助の全部を生活水準向上の方へ持つて行かない、こういうことからくるのであります。これは日本の経済再建に最も必要な手段と考えまして、そういう点をやつておるのであります。而してその結果ディス・インフレでなしに、非常にデフレで、滯貨で收縮ということが起つてはいけませんので、できるだけ早く見返資金を経済界に出して、或いは政府の預金をできるだけ資金涸渇の方面に出して行こうとしてやつておるのであります。而して今の銀行の貸付けが非常に多くなつてきて、これは限界点に達している、こういうふうなお話ですが、私は実はそう考えていないのであります。政府が国債を発行したり、復金債を発行したりはいたしません。従いまして銀行の預金はどんどん殖えます。遊ばしているわけには行かないからこれは貸出をしておるのであります。これは国債や復金債を発行しない当時におきましてはこういう状況が起つて来るのであります。例えば昭和元年から七八年までにおきましては預金に対しましての貸出は大体八%程度であつたのであります。預金に対しての貸出は……。而して最近の状況は大体預金に対しまして八〇%の状況に相成つておるのであります。これは何によつてこういう現象が起るかというと債券の発行が少いからであります。国債の発行は勿論いたしません。同時に金融債の発行も少いからであります。そこで御承知の通りに、私は見返資金を使うとか、或いは銀行増資によりまして信用長期債券を千億以上も発行して行こう。この債券というものは銀行が持つことを期待いたしておるのであります。又預金部が持つことを期待しておるのであります。そうしますと信用長期債券の発行は貸出しの増加とならず、別に債券を銀行が持つことになりますから、預金と貸出しとの割合が七〇%或いは六五%になることもありましようし、又今八〇%であるからといつて、今の状態を何も心配する必要はないと私は考えておるのであります。
  260. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それから(「簡單簡單」と呼ぶ者あり)簡單では分らないのです。簡單で分れば簡單にいたしますが、これは十分納得が行くまで質問しなければ駄目です。今までずつと出席しておらないで、どういう経過でこういう質問をしておるのかお分りにならないでそんなことを途中から言われるものではない。(「失敬なことを言うな。最初からちやんと出ている。」と呼ぶ者あり)間もなく終りますから暫く御辛抱願います。  只今大蔵大臣は金融債の発行、それから又銀行の増資なども考えたい、銀行の資本金を殖やして、増資株を、又これを或いは見返資金で引受ける、そういうようなことによつて金融の操作をやつて行かれようとしているようでありますが、これは実現する可能性があるのでありますか。
  261. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 実現する可能性はございます。
  262. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それから、銀行債券でなく、銀行の増資ですが、これはどこが引受けるわけですか。
  263. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今までの株主が引受ける場合もありますし、私は見返資金から出資をしてもいいのではないかという計画を以て只今折衝を続けておるのであります。今金融機関等の増資を計画いたしましたのは、商工中金一億五千万を五億に、これは順調に進んでおります。農林中金は四億を八億に、これも順調に進んでおります。その他の銀行につきましても計画を立てておることを御承知願いたいと思います。
  264. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう増資は見返資金で持つことが可能であるか、できるわけですか。
  265. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今申上げました数字は農林中金、商工中金の増資であります。併し別に見返資金からの出資を計画しておるのであります。
  266. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは可能ですか。
  267. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今申上げましたように可能と存じます。
  268. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 最近そういうようにしていろいろ金融操作によつて、金融緩和の方策を講ぜられておりますが、そういうことが結局滯貨金融の問題でありますが、滯貨金融をやる場合、日銀が指定倉庫に対して倉荷証券を適格手形として再割を認める、そういうことは無論それが信用インフレを、今はデフレ傾向にありますが、そういう形は将来において信用インフレを刺戟する、或いは助長する可能性は含まないのかどうかということです。
  269. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そこが問題であるのであります。金詰りという声もありますが、外の機会で申上げましたように、昨年一月から六月までは七百億円貸しておる。七月から十二月までは二千億円の貸出増であるのであります。ところでこういう事実がありましても、非常に金詰りということを聞くのであります。ですから一方では金詰りを緩和すると同時に、又一方では信用インフレの起らないような方法を取つて行かなければならない。  私は今特殊な銀行に対しまして、そういうことをやることが金融を円滑にし、又信用インフレを起さないように適当な措置が講じ易い機構として考えておるのであります。
  270. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 信用インフレを起す危險があるから信用インフレを起さないような機構的な措置を講じている、とそう言われたのですが、やはりそういう面に信用インフレを起す危險性は起らないと大蔵大臣はお認めになつておるわけですね。
  271. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 如何に通貨を縮小し、財政を緊縮いたしましても、信用インフレということは常に我我は警戒しなければならないことだと考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  272. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はそれこそ大蔵大臣の言う通りに警戒すべきだと思う。ところでドツジ・ラインにおいて一番心配されているのは消費インフレです。消費インフレということは常に非常に心配されております。ドツジ・ラインにおいて政府も強く言つておる。ところがこれは、これまでの質問において明らかになつたのですが、物価と賃金は悪循環する、こういうことはないわけであつて、消費インフレの危險よりも、むしろ信用インフレの危險がある。あればこれに対して政府は、今非常に愼重にやられて行くというのでありますが、消費インフレの方については、どういうふうにお考えになりますか。信用インフレと消費インフレとどつちが起る可能性があるか、危險性があるのか、どつちが潜在的なあれを持つているか。
  273. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) どちらも危險性がないということはないのであります。殊に公務員の給與を上げ、それが又一般給與に影響いたしますと、今までの日本状態が消費インフレであるということに鑑みまして、その点危險性が多分にあると私は考えておるのであります。
  274. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その点については、もうこれまで消費インフレについては何回も質問いたしましたから繰返しませんが、未だに物価と賃金の悪循環、こういうことをお考になつている意味が私はちつとも分からないのです。そこで結局これまで御質問したことによつて、大体財政デフレを信用インフレで緩和して行く。これが政府のこれまでの政策だと思うのですが、併し財政デフレを信用インフレで緩和するということは困難なのであつて、財政デフレを緩和するにはやはり財政によつて緩和するより外はない。こういう結論に到達せざるを得ない。その結果は最近金融的には非常に信用操作をやつても、やはり金詰りになる。今大蔵大臣の言われたようにですね、そこに問題があるのであつて、私はそういう意味でその今までの財政デフレを信用インフレでカバーするという政策には限界が来た、限界が来たんで重大な政策転換をせざるを得ない段階に来たのではないか。そういうふうに思われるのです。従つてこれまでのように財政デフレを信用インフレで補つて行けない。状に二十四年度においては一応ドツジ・ラインに基く旧債務償還というものは、超均衡予算によるインフレ政策も必要であつたかも知れませんが、それによつても相当のデフレになつた上に、更にまた二十五年度において同じような性格の超均衡予算をやつたら、非常な私はデフレになる。それを信用インフレで調整して行こうとしているようですが、その調整も限界に来た。即ち私はもうそういう形のドツジ・ライン、正しいドツジ・ラインではないと思うのですが、池田蔵相の修正されたドツジ・ラインですね、そういう形は私は限界に来ていると思うのです。  ここでどうしてもその矛盾を解決するためには、財政デフレを信用インフレで補うのではなくて、財政自体においてこのデフレを調整して行かなければならない段階に来た。即ちこれはドツジ・ラインの根本的な転換。その段階に来たのではないかと思うのです。具体的にはそれは旧債務償還の中止という、こういう段階に私は来ているのではないかと思うのですが、大蔵大臣はそういうふうにお考になりませんか(「意見の相違だ」と呼ぶ者あり)
  275. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そういうふうには考えておらないのでございまて、財政デフレということをおつしやいますが、私は財政がデフレ的傾向がある。即ちディス・インフレだということは申上げますが、あなたのおつしやるような財政デフレだとは考えておらないのです。而して私は消費インフレを恐れますと同時に、信用インフレも恐れて今の政策をやつているのです。御批判は御批判でございますが、私は今の政策を変える考はございません。
  276. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではこれ以上お伺いいたしませんが、これは新聞等に最近出ているようですが、例えばドツジ・ラインを続けて行つて、それで徴收その他に非常に多額な負担が来て、それで非常に無理であるという場合には、その調整も修正とは書いていないのです。調整も考えておると、これは吉田首相がそういうことを考えているような新聞の報道がありましたが、そういうことは事実無根でございますか。
  277. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は新聞で、何かシャウプ博士の勧告を修正するという新聞は見ました。或る新聞にはドツジ・ラインの修正ということも載つていたかと思いますが、私と吉田総理とは財政経済問題につきましては、全然一致しております。代りにお答を申上げてもよろしいのでございますが、経済は生物でございます。だからら何もかたくなに一筋ばかりに行くのではございません。ドツジ・ラインと申しましても、ドツジラインは日本の経済を自立させるのがドツジ・ラインでありまして、従いまして情勢によりまして、いろいろなことを考えなければならない。ディス・インフレによつて日本の経済をよりよい自立経済態勢に持つて行くということがドツジ・ラインであるということを御承知願いたいと思います。
  278. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは、例えば旧債務償還を中止するということが本当にディス・インフレの線に戻すということであり、それが日本経済再建のためになる、自立経済になるということになれば、そういうことがはつきりすれば、そういう政策もお組みになる可能性があるわけですか。
  279. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 将来債務償還を昭和二十年度等におきましてどうするかということは問題でありますが、只今のところ、あれだけの債務償還をすることが最もディス・インフレで、経済再建のいい方法だと只今のところでは考えています。
  280. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 非常な重要な点ですが、只今のところというのは二十五年度予算においてはという意味でありますか、そうしますと絶対に二十五年度予算を実施して行く期間内においては、現在の債務償還計画は絶対に変えない。こういう御意見でありますか。
  281. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今のところさようでございます。
  282. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今のところというのは、よく分からないのですが、情勢が変わればですね、変更を加える意思がある。こういうふうに解釈してよろしいのでございますか。
  283. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十四年度でも補正予算を組みまして調整したように、これは情勢の変化によつては皆様方の御意見によりまして調整することはない、とは言いません。私はこのままで只今のところは進んで行く、こう申上げておるのであります。(「この程度でどうですか」「頭が馬鹿になつてしまう」「了解」「緊張々々」と呼ぶ者あり)
  284. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次にお伺いしたいのですが、金利政策の問題についてお伺いしたいのです。政府は低金利政策ということを言つておりまして、大蔵大臣も相当低金利政策の推進には努力されたように聞いておりますが、最近ですね。銀行は又金利を下げるところまでいつておりますが、銀行の最近の低金利政策に対する協力の程度は、私はこれは本当に低金利政策を取る誠意を示していないと思います。最近の預金コストと貸出の比率は若干開き過ぎておると思うのであります。どうしてもそういう意味からやはり低金利政策、貸出の金利の引下げが問題になつておると思うのでありますが、最近金利引下げと言つても、今度の金利引下げによりますと、今までの金利引下げ、八月頃下げましたのが、あのときの金額五百万円の金額を、四百万円に今度引下げるという程度であつて、実際から言うと、三毛か二毛か、三毛くらいの引下げくらいにしかならないということを言われております。又こういう程度でいわゆる低金利政策に協力して行くということは言えるでありましようか。その点についてお伺いいたします。
  285. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨年八月原則として一厘下げました。又本年の二月の十五日に原則として二厘下げた。併し中小企業と申しますか、五百万円以下の貸出につきまして、手数その他を要しますので、一厘下げて、原則の二厘を一厘にいたしたのであります。二月の十五日に下げまして、その後の樣子を見ますと、まあ三月の決算期には、その影響は一ケ月半しか出て来ないわけでありますが、将来の状況を見まして、今原則として一厘下げる、併し銀行によりましては可なり苦しいところもありますので、五百万円以下の二銭六厘、それを三百万円以下にするとか、いろいろなことを言つておるようでありますが、私は大蔵大臣としては常にできるだけ早い機会に金利は下げるようにということを申しておるのであります。折角日銀並びに銀行協会の方で検討を続けておるようでありますが、機会あるごとに私も低金利政策は申しておるような状況であります。
  286. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ところが実際には、今まで大蔵大臣の低金利政策が金融機関の非協力の態度により妨げられておるのじやないですか、この点についてはどうお考えですか。
  287. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これはあながち非協力とは思つておりません。十分機会あるごとにそういうことを申しておるのであります。
  288. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは実際問題として、預金コストと今の貸出金利との開き、これから見て、この四月一日に平均二、三毛程度の金利引下げと言われますが、その程度の引下げで、大蔵大臣は低金利政策に協力しておるとお考えですか。
  289. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨年の八月に引下げ、二月に引下げ、又今回下げようとしておるのであります。そうして又五六月に下げるかも分りません。こういう情勢を見ますと、銀行の方も協力して呉れていると考えておるのであります。何と申しましても、銀行の貸出その他経営の内容につきまして見なければならんのでございまして、今回の引下げも三毛に止まるということも決まつておるのじやない、私は常に監視いたしておる状況であります。そういう点から見まして、協力していないとは私は言われないと思います。
  290. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣としてはまあそういう御答弁をするより仕方がないと思うのですが、我々が新聞その他で推察したところでは、金融機関その他協力しない、その筋の助言その他によつて漸く金利引下げの方向に協力した、こういうことを言われておるのですが、これは結局私は財政と金融を分離した結果、金融機関に非常に大きな日本経済再建の役割がかかつてつたに拘わらず、金融機関の性格が飽くまでも公共化されていない、こういう点にあると思うのであります。従つて今後金融機関の性格というものは、非常に私は重要だと思うのでありまして、この点について大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、現在の金融機構、これは大蔵大臣はこれで理想的であると、そういうふうにお考えであるかどうか。
  291. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは御承知の通り敗戰までは、日本には長い間の何と申しまするか経験から申しまして、商業銀行或いは不動産金融を主とする長期金融の特殊銀行があつたのであります。一挙にいたしまして特殊銀行がなくなつた、あると言えば日本興業銀行だけになつたのであります。併しこの制度は日本の制度に合いませんので、先程来申上げましたように、長期資金を扱う債券発行銀行が欲しいという考えの下に法案を提出いたしまして、御審議願うようになつたのであります。私はこの長期資金を扱いまする普通銀行と、一般の商業銀行、それに農林或いは商業工業等の特殊金融機関、無盡会社或いは信用協同組合等をやつて行けば、大体やつて行けるのではないかと考えている次第であります。
  292. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう機構の問題も亦いろいろ問題があると思うのですが、それと同時に金融機関の性格ですね、これはこの間大蔵大臣にお伺いしたのですが、更にはつきりして置きたいのは、対日理事会でホジソン氏が質問した点でありますが、八大銀行の独占的な性格の問題、この点については、一応司令部でそういう疑いはない、こういう声明を出しました。更に又進んで調査を要求されたのでありますが、これについて政府はどういう措置をお採りになつておりますか。
  293. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 聞くところによりますと、対日理事会で日本の八大銀行は貸出預金の大体五〇%を占めておる、こういうようなことを根拠に、財閥解体ができていない、或いは独占的であるということを言われたということを聞いておるのであります。併しこれはイギリスで申しますと、三大銀行で八十五%預金を持つているのであります。カナダ或いは濠洲におきましても、三大銀行、或いは五大銀行ぐらいで七五%ぐらいの預金を持つている、こういう事実から申しまして、日本が八大銀行で五十%ということは、アメリカやカナダ、濠洲に比べて何ら差支えないのじやないかということをGHQの方から発表されたようであります。私はそう聞いておるのでありまして、その後におきましては、確たる報告は受けておりません。新聞でもちよつと又議論があつたということを言つております。
  294. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私はその預金比率それから資本金、そういう点からいつて、それが六割近いものを独占している、併しながら外国においても、それ以上やはり資本金、預金貸出等が偏在している例があるから、それが独占的ではないのじやないか。こういうふうに大蔵大臣は言われたのですが、実はその銀行の性格が問題であつて、これは大蔵大臣が御存じかどうか知りませんが、大蔵省銀行局で編纂いたしました金融四季報というのがありますが、その第一号にこういうことが書いてある。これは相当問題だと思います。これは金融機関の再建整備に関連してこういうように報告してあるのであります。大蔵省の銀行局で作つた金融四季報の第一号に、「右の増資方針に基いて各金融機関は、概ね再建整備も完了した。又昭和二十三年七月三十日には銀行に対しては集中排除法による指定が行われないことに確定し、唯財閥銀行は財閥的商号を変更するに留ることとなつた。更に同年七月及び八月には、信託会社も財閥会社はその商号を変更し、同時に信託銀行として出発することとなつた。」こういうように書いてある。「財閥銀行は財閥的商号を変更するに留ることとなつた。」と書いてある。これで金融機関の再建整備が終つたのであります。問題はここにあると思います。財閥的な内容、性質というものが変つておらないということをちやんと大蔵省の金融四季年報においてちやんと報告しておる。ですからそういう内容の銀行が財閥的な性格を拂拭してない。そういう銀行が預金或いは資本金貸出し、そういうものの六割以上を独占しておるということが問題なんです。この四季年報のこの報告を大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておるか。
  295. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 木村さんの御議論はいつまでもそういうふうなことがあるのでありまするが、その書いてあることだけでお考えになる。株主の状況はどうなりましたか、いろいろな問題も財閥というものは解体してしまつたという前提の下に、皮相な表に見えるところだけを書いたのでありまして、昔の財閥銀行の株主の構成がどうなつたかということからお考えになればそれを同じように御覽になつても私と違つた意見は出ないと思うのであります。それは單に目に見えておる分だけを言つておるだけで、その底に流れて解体してしまつたことは当然のこととして謳つてないからであります。
  296. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その点については時間が遅くなりますから更に詳細にはお尋ねいたしませんが、最近例えばエコノミストという雑誌に財閥解体後における調査が相当詳しく書いてあります。それから更に日本経済新報にもその後の金融機関の事実が詳細に報道されております。こういうことを見ましても、まだ日本の金融機関の性格が表面は解体されたといつておりますけれども、その性格がまだそういう財閥的な性格を拂拭してないということは明らかであると思うのです。併しながらこれは大蔵大臣がそうであるという肯定的な御答弁を期待できませんから、これ以上私は質問いたしません。  更に私は日本銀行の納付金が今度の予算で非常に減つているんです。これは金融政策関連しての質問でありますが、どういうわけで日本銀行の納付金が本年度に、二十五年度予算においては減つておるか、二十四年度におきましては六十九億八千五百万円、ところが二十五年度は三十五億一千百万円に、半分くらい減つておるんです。この理由はどういうところにあるんです。
  297. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 昭和二十四年度の補正予算を組みましたときに、日本銀行の納付金は日年度下期の分も概算で納めるように財源に関係からそういたしたのであります。明年度におきましてはその関係が平常通りに戻りますので、予算の面から申しますと減るように恰好になつております。
  298. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この日本銀行の納付金の問題については、更に詳細にお尋ねいたしたいのでありますが、いつも日本銀行の納付金を決めるときには予算がありますね、日本銀行の予算というものがある筈です。ですから最近における決算と日銀の予算書、これを御提出願いたいと思います。それに基いて日本銀行の経理につきまして、日本銀行総裁その他にお伺いしたいと思いますからこれ以上私はここで質問いたしません。  最後にお尋ねいたしたいのは、中小企業の対策なんですが、この問題については前にも大蔵大臣に伺いましたが、その金融対策一つとして、信用保証、協会、これが中小金融の一つ機関となつておりますから、これは中小企業に対する損失補償、政府の損失補償という形になるのでございますか、信用行証協会の補償というものは。
  299. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 信用保証協会は全国で四十六程できておりまして、大体貸出しも四、五十億と、補償も四、五十億となつておると思います。これは市が主催で、市がやつておるのでございます。政府は特別に補償をいたしておりません。市の方でやつておるのであります。
  300. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと今の零細な中小企業者に対する金融というのは、政府補償を伴わなければ殆んど金融がし得ない実情にある、これはこの間も御質問申上げたのですが、政府がそういう、今一番問題になつている零細な中小企業者に対するどういう対策をお持ちか。これは通商産業大臣としても私は十分お尋ねして置きたいと思う。
  301. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 信用保証協会の育成発達も一つの手でございましよう。或いは信用協同組合の育成もそれでありましよう。又無盡等も育成して行かなければなりませんし、又一県一行主義をやりまして、中小企業に直接関係するような銀行の増設を認めることもその一つでございましよう。又最近では大銀行が東京或いは京阪神、名古屋の方に三十数ケ所の中小企業金融專門の支店を設けて、これに当ろうとして計画を進めておりますし、又私の申上げる段階にはどうかと思いますが、特別の銀行を考えてもいいんじやないかというふうな気持を持つておるのであります。又見返資金から出ますところの中小企業金融も、三ケ月で二億五千万円出る予定であります。今までに二億を昨日は超えておるのであります。その他いろいろ手もあるのでありますが、まあ参議院、衆議院で非常に議論になつております中小企業者に対する貸出の補償を政府でやるかという問題につきましても、私は検討を加えておるのでありまするが、何と申しましても信用インフレの問題もありますし、いろいろな点がありますので、いろいろな点を勘案しながら、できるだけ中小企業金融の円滑を図るように努力いたしておる次第であります。
  302. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今お伺いいたしますと、政府が損失補償するという形の融資も検討中であると言われ、又特別の中小企業金融、そういうものを検討中のように承つたのですが、それはどういうような構想でございますか。その点をお伺いしたい。
  303. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 中小企業專門の銀行を作るということは政府では考えておりません。民間にそういうふうな声があるということを聞いておるのであります。十前後の大銀行が、特別の、中小企業專門の支店を京阪神、東京、名古屋方面に設けるということは、もう大分話が進みまして、近日中に話が具体化するのではないかと考えております。尚中小企業金融の補償制度というのは、只今のところ政府が一定の金を積んでというところまではまだ行つておりませんが、いろいろな場合を考えて研究をいたしておるのであります。
  304. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大銀行が中小金融專門の支店を設ける、こういう話は新聞に出ておりましたが、これは実際に効果があると考えて……、実は伝えられるところによれば八大銀行など非常な独占的な地位を利用して大企業にばかり金融しておる、そういうことであるが、対日理事会などで問題になつたその手前、形式的にこういうことをやるというのでは本当の私は中小業者に資するゆえんではないと思うのですが、大蔵大臣はこういう今の計画が本当に相当中小企業の金融難打開に役立つ、そういうふうにお考えでありますか。どの程度に本腰を入れてやるという計画なんですか。
  305. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は八大銀行に限らず、十一二かと記憶しておりますが、そういう銀行がこういうふうに乘出して来るということは非常によいことであり、そういう考え方をするのは言い訳にするのだ、そういうひがめで見たくはないと考えております。そうしてそういう專門の支店ができましたならば、中小企業金融をそういう支店にどういうふうに行わせるか。政府としてもできるだけこういう方面に金融の斡旋をするとか、或いは別額融資をやるとか、いろいろな方法を講じて行つて中小企業の金融の円滑を期したいと考えておるのであります。
  306. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 中小企業対策としては、政府はその金融対策以外にどういう対策をお考えになつておるか。
  307. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これはもう日本の経済産業の復興が第一でございまして、その線によりまして金融を図つて行く、又税の問題につきましても、中小企業には今回相当減税の措置を講じます。又なんと申しましても中小企業の方に受入れ態勢が十分にできておりません。そこで企業協同組合とか、こういうようなものの育成を図りますと同時に、通産省といたしましては、中小企業の指導育成にあらゆる方法を講じて行きたいとこう考えておるのであります。なんと申しましても、やはり産業の復興が第一でありますので、そういう基礎の下にいろいろな手を考えて行き、やつておるのであります。
  308. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう点につきましては、通産省から出された調査資料によつて一応拜見しておるのですが、例えば中小企業の育成指導とか、或いは協同組合ですな。方策がいろいろここに書いてあるんですが、実際にそれがどれだけ役立つておるか、実際にそれはどれだけ具体化されたかという点になると、実にこれは殆んど、殆んどといつてもいい程対策の効果はないのじやないか。それで今承わりますと、大体その外の対策も講ぜられておりますが、中心は金融であつて、今のような金融の仕方では私はどうしても零細企業を救えないのじやないか。私はこれ以上質問はいたしませんが、これは結果を見れば分ることであつて、こういうような状態で又この程度の私は対策ではこの中小企業の金融対策にならない。而も今の中小金融の対策の性質が、総理のお考えになつておるのとは全然違うペーイング・ベーシスに則つた金融対策では、どうしたつて零細な中小企業は救われつこはない。従つて損失補償を含むところの金融対策を、大蔵大臣は御検討されておるようなお話もありましたので、更にもつと進んだ対策を検討してそうして実行されることを私は希望いたします。  それからもう一つこれは簡單な問題ですが、本会議において千葉信議員が簡易生命保險の資金の運用の問題について御質問しましたが、大蔵大臣はこの具体化について方法を研究中であるというように言われましたが、それは具体的にどういう方法をお考えでありますか。それは御答弁できる段階に至つておるかどうか。
  309. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 具体的方法を検討中とは私答弁いたしませんで、これは両院の議決に基きまして、簡易保險或いは厚生年金の積立金を郵政省の方へ移すように閣議決定いたした。それでこれを関係方面に持つてつて折衝いたしておるのであります。ただ御承知の通り昭和二十一年一月に連合国の最高司令官からの覚書がございまして、統合運用という指令が出ておるのでありますから、閣議決定に基いて今折衝を重ねておるこういう状況であります。具体的内容は前とたいしたことはないのであります。
  310. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、大体衆参両院の決議の通りに実現する見込があるわけでございますか、近く……
  311. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 我々はそのつもりで折衝しておるのでありますが、なんと申しましても指令が、覚書が出ておりますので、まだ折衝には時日を要すると思うのであります。
  312. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それからマーカット少将の指令でございますが、簡易保險積立金、預金部資金の運用に関する件ですね。あれには預金部資金の運用については、政府事業及びその地方公共団体の事業ですね、ああいうものを優先的に先ず賄う、そうしてその賄つて後にその他に運用するということになつておるようです。ところが最近地方の起債、その他の地方資金の需要は相当多いと思うんです。併しながら今度の運用計画では、大体地方債に対する割当は大体三百億、或いは三百五十に大蔵大臣は殖やした、こういうふうに言われておりますが、実際の需要は更にそれより多いと思うんです。ですから若しかあの精神によれば、地方の需要は相当多いので預金部資金がまだその方に運用すベきであつて、そうしてその余りを以て、この外の或いは事業者に運用すべきである、こういうふうに解釈すべきではないかと思うんですが、この点はどうなんでしようか。
  313. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨年は当初二百三十億で、地方債二百三十億の枠であつたのでありますが、補正予算を組みまして七十億円になりましても、これでは足りませんので、私は短期金融といたしまして昨年の四月頃から六、七月にかけまして、年度内の融資としまして九十億出しております。昭和二十五年度は、当初三百億の話であつたのでございまするが、三百七十億までは話がつきました。これを四百億にしようといたしておるのであります。併し必要に応じまして、何と申しましても地方公共団体への融資を主眼とすべきでございますから、情勢によりましては相当の金額を長期融資という割当てでやつていいと考えております。何と申しましても或る程度に行きますれば、預金部は二十五年度におきましては、預金部が我々の想像通りに行きますれば、六百五十億の運用し得る金がございます。相当地方の方には地方債、並びに長期融資として流して行きたいという計画を持つておるのであります。
  314. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、あの指令、覚書ですか、は大体中央政府及び地方公共団体の資金需要が優先する、こういう原則になつておるわけでございますか。
  315. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は今覚書の内容をはつきり記憶いたしておりませんが、私の考えでは地方へ優先的に持つて行きたい。それから余つたものを事業者の方へ長期資金の方へ持つて行きたいとこういう考えであります。
  316. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 又最後となつてあれですが、実は大蔵大臣の施政演説にこういう言葉があつたのですが、これについて私はどういう意味でこういうことを言われたのか了解に苦しむのですが、それは今の日本の現状をディス・インフレといわないが、現状はデフレであると、そういう議論をするのはためにする議論であるということをお述べになつた、これは私は相当問題だと思うんです。一体ためにする議論というのはどういう意味でございますか。この点は財政演説において堂々と言われておるのでありますから、この点特に私は又現状を大蔵大臣と見解を異にしましてデフレである、そういうふうに考えておりますので、この点御意見を聞いて置きたいと思うんです。
  317. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は言い過ぎの議論だと意味で言つたのであります。
  318. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはためにする議論というのは、大蔵大臣の言われたことが言い過ぎである、こういう意味でございますか。
  319. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 逆でございます。
  320. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この実情は経済の実情を分析してそれがデフレであると、こういう認定をするのはそれぞれの立場において根拠があるからである。普通の通念として、社会通念として、ためにする議論という場合、それは言い過ぎである。こういうふうに理解されますかどうか。この前に石橋大蔵大臣が、前の自由党内閣のときの石橋大蔵大臣は、インフレが非常に昂進しておる。我々はその実態はインフレであるということを主張した。そのとき石橋大蔵大臣は、今の状態をインフレであると主張する者はためにする議論であるということを言われた。それで貯蓄が余り増加しないのはインフレであるという議論をするけれども、それはする者の責任である、こういうことを言つたことがある。それは原因は財政政策にあるのだ。大蔵大臣は、今がデフレであるということは、今の財政政策にあるのであつて従つてそれに基いて議論するのをためにする議論というのは、何か意図を持つて、ただ言い過ぎた議論ではない。私はただ言い過ぎの議論だというように解釈できない。ためにする議論というならば、我々は一般国民のためにする議論をしているのです。大蔵大臣は誰のためにする議論をしているか。これは問題になると思う。私は大蔵大臣はただ言い過ぎであるというだけでこれは済まされないと思う。ためにするという表現の仕方は……、(「止むを得んではないか」、「見方の相違だ」と呼ぶ者あり)この点について大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。今後も政府考えと違つた考え、違つた議論をする者、そういう者に対して大蔵大臣は、そういう議論をしてはいけないと言うのかどうか、いけないということは無論言えないと思いますが、政府はそういうふうな議論を一つの意見として尊重する意思がないのか。
  321. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今お答えした通りでございまして、御批判は御自由にお任せします。御議論も御自由に……    〔「その通り」、「返答無用だ」と呼ぶ者あり〕
  322. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それならばそういうふうに理解いたします。併し常識から考えてそういうことは言えないと思う。何のために財政演説にあんなことを堂々と謳うのか。あすこになければ私は何も問題にしないのですか、財政演説において堂々と、ためにする議論であるという言い方は、私はそれこそ言い過ぎの議論である。そういうふうに思うのですが、私は長い時間を費して検討して参りましたが、ところで、大蔵大臣、総理大臣、或いは安本長官その他の答弁を聞いて参つたのですが、その結論は、結局一番最初我々が配付されたこの二十五年度予算編成書にあるのと全く逆だと思います。それには合理的な、そうして自主的な経済運営態勢を確立する。これが二十五年度予算編成方針であるということを言われましたが、これまで我々検討して来た結果は、又政府の御答弁を聞いた結果は、結局これは政府の立場をただこれまで頑強に主張するだけであつて、一向正しい議論に耳を傾けようとしていない。非常に合理的じやない。不合理です。これはもう楽観一辺倒であつて、ドッヂ・ライン一辺倒であり、従つて大資本擁護一辺倒の予算内容であると今まで検討した結果、そういう結論に到達せざるを得ない。與党の諸君も今日に限つて非常に多く出られて我我を野次られましたが、又非常に審議を珍らしく急がれているようでありますから、私の大蔵大臣に対する質問はこれで打切ります。
  323. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) ちよつとお諮りをいたします。速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  324. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 速記を始めて下さい。  本日はこれを以て散会いたします。    午後五時四十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            内村 清次君            岩木 哲夫君            伊達源一郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            岡田 宗司君            木下 源吾君            羽生 三七君            石坂 豊一君            岡崎 真一君            小串 清一君            小林米三郎君            城  義臣君            堀  末治君            深川タマヱ君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            玉置吉之丞君            藤野 繁雄君            帆足  計君            松村眞一郎君            川上  嘉君            藤田 芳雄君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 殖田 俊吉君    大 蔵 大 臣    通商産業大臣  池田 勇人君    文 部 大 臣 高瀬荘太郎君    農 林 大 臣 森 幸太郎君    郵 政 大 臣    電気通信大臣  小澤佐重喜君    建 設 大 臣 益谷 秀次君    国 務 大 臣 本多 市郎君   政府委員    内閣官房副長官 菅野 義丸君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主計局次長) 石原 周夫君    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    農林事務官    (農政局長)  藤田  巖君    労働事務官    (労政局長)  賀來才二郎君    経済安定政務次    官       西村 久之君    経済安定事務官    (総裁官房長) 平井富三郎君    経済安定事務官    (総裁官房次    長)      河野 通一君    経済安定事務官    (貿易局次長) 湯川 盛夫君