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1950-03-23 第7回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十三日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 只今から会議を開きます。通告順によつて発言を許可いたします。
  3. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 私はこの食糧対策に関する問題と、それから最近現内閣が処理されました人事に関する問題についてお尋ねいたしたいということで、総理に祕書官を通じて御通告を申上げてあつたのでありますが、そのうちの人事に関する問題として、通産大臣兼任、この問題につきましては昨日同僚堀越委員からのお尋ねがありましたので、ここに改めて繰返す必要もないと思いまするが、併し昨日の総理堀越君に対するところの御答弁のうち私の承服のできない点がございますので繰返してお尋ねいたします。  今日大きい問題となつて取上げられておる問題は、農村の問題と、中小企業に関する問題であります。その中小企業振興育成強化、これは随分大きい問題でありまするが、こういう時に当つて專任大臣を置かずに、大蔵通産大臣と兼攝になつておりますが、これは国民斉しく納得の行かないところであります。総理大臣の昨日の御答弁によりますというと、今日中小企業に対しては金融の面が非常に大きい問題だ、これを解決さすために大蔵大臣を兼務させることが妥当であるからそうやつたのだということでありますが、そういたしますならば、この論法で行きますならば、同じく農林大臣の森さんをお辞めさせになりまして、そうして大蔵大臣兼任させることがよいのではないか。こういうふうにも我我は一応受取られるのであります。何となれば、中小企業以上に今日は農林関係金融が逼迫いたしております。再生産が行詰つておるのであります。大臣のお考えなつておるように、理想といたしますならば、吉田総理大蔵、この二人だけで一騎当千、これで行つたらば国費も非常に減少するのであります。これが我々の理想であるが、併し現実の問題としてこういう大きな問題が兼任のまま解決できるか、ここに大きな問題があるのであります。改めてこの点の所信をお伺いしたいのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申すのは差当りという問題でありまして、永久に兼任を、ということではないのであります。差当り兼任せしめた方がよい、差当りの問題と御承知を願いたい。
  5. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 よく分りました。昨日差当りということはおつしやらんだつたと思います。いつまでもこのまま行くのかと、こう誤解しておつたのでありますが、どうぞ成るべく速かなる時機にこれを早く解決して頂きたい。実は昨日堀越君からこれは不穏当な言葉であつたかとも思うのですが、党利党略大変総理御機嫌斜めで、御答弁の模様から考え調子が悪かつたように思うのでありますが、これは私は党利党略という言葉がお気に召さんならば、自由党党内事情と柔かに申上げます。確かにこれは自由党党内事情に間違いないということは国民斉しく認めておるのであります。全国新聞が歩調を揃えて書いておる、一回ならず、二回ならず書いておる。総理が如何に御都合のよい御答弁をなさろうが国民納得をいたさんのであります。どうぞ一つこういう際でありまするからして、中小企業のために、この振興のために、この育成強化にために、一日も速かに党内事情ということも拔きにいたしまして專任大臣を置かれるように私は希望したい。あなたのお手許にも行つておることと存じますが、数日前に皇居前広場で全国中小企業大会が開催されました。その宣言決議の写を我々頂いておるのであります。やはりあの決議の中にはつきりこう書いてある。一、大蔵兼……池田さんのことですが、大蔵通産大臣を即時罷免すること、もう一つは專任通産大臣を速かに設置せよという決議も出ておる。これが中小企業者から出たところの言葉でありまして、ひとり中小企業のみならず、全国民総理に要請しておるところであります。この点を御考慮の上に党内事情は国の政治から考えまして比重が低いのであります。速かに一つ專任大臣を設置されまして、この行詰つておるところの中小企業に対して最善の努力をされることを私は希望する次第であります。  その次にもう一つ人事の問題で、今日非常に大きな疑惑を招いておる問題でありますが、三月四日でありましたが、幸いに今日は森農林大臣もお見えでありますから、私大変調子よく質問するのでありますが、三月四日でありましたか、水産庁長官飯山太平氏が突如として罷免された。これは非常に大きい疑惑を招いておるのであります。これはひとり日本国民だけでなく、一昨日の読売新聞の夕刊を見ますと、堂々と外人記者の直言として出ておつたので、農林大臣吉田総理も御覧になつたことと思うのであります。このくらい、これは大きく取上げられておる問題であります。と申しますのは、どうも罷免理由はつきりしない。総理森農林大臣はつきりしておるか知らんが、国民納得できるような理由がない。言い換えれば理由が薄弱であります。森農林大臣のあの新聞における発表を見ますと、こういうことになつておる。適格者でない、いわゆる無能者である。これが一つ理由。いま一つはどうも出勤の時間が遅い、これが一つであります。いま一つ大臣の御判を頂かずに無届で北海道に出張した。それからこれは大臣から言われた言葉じやないと思いますが、俺のところに一向来ぬ、寄り付かない。併しこれは次の新聞で取消されておつたようであります。もう一つ理由は農林省における幹部の会合に滅多に出ない。結局煎じ詰めれば協力しないということになるのでありましよう。これだけの理由を以てわざわざ公務員法を制定し、人事院という特別機関を設けて公務員福利増進身分の保障安定ということを当然やらねばならんのに、こういう簡單な理由で以て、いわゆる公務員法における罷免権を発動しておる。昔の言葉で言えば懲戒免官であります。こういう極端なことをおやりになつたその真相について総理大臣の御意見を先ずお伺いしたいのであります。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 兼任問題については、お話は了承いたしました。これは決して党利党略のためではありません。兼任は当分の間させて置きます。  それから水産庁長官の問題は政府都合で処理いたしたのであります。役人の処置について国民が了解いたすようにこういうことがあつた、ああいうことがあつたと一々申すことは、これはとても政府としてはできない。政府の役所の都合なり、或いは所管大臣意見で以て罷免したり、任命したりします。罷免について一々理由を説明しなければならんという場合には、任命についてもこういうわけであるから、これを任命したというふうにも言わなければならんのでありましようから、これは政府権限で処理することも今後往々あることを御了承願います。
  7. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 それは総理のおつしやる通りであります。私も昔は小役人をやつたことがありまして、人の首を切つたこともあります。あなたのおつしやることも一通り筋は立つております。併しその前に中小企業庁長官蜷川さんの問題もあります。これは私大臣に申上げて置きます。蜷川さんも飯山さんも私個人的の附合はございません。飯山さんは私一度拜見したことがあるくらいで、国から陳情が来ましてこれと同行して水産庁会つたのが初対面した程度で、蜷川さんの顔は私は知つておりません。だからそこだけは誤解のないように前以て申上げて置きますが、丁度この蜷川長官が三月危機中小企業に対する三月危機、これをどつかで先生お喋りなつたか、新聞で見たか知りませんが、これが問題になつた。閣議では、これを協力しないから怪しからんと首を切るように決めた。蜷川さんは幸いにして自分から自発的にお辞めになつた、だからしてこれは事はなかつた飯山長官の場合は、最後まで俺は辞めさせられる理由はないからして俺は辞めない。つまり懲戒免官にした。それは役人の誰も彼も採用するから罷免するからとそのときどき一々国民に公開する、納得させるということはできないことは分つております。これは御都合次第で上司は部下に対して首を切る、大根の首を切るように切ることは必要でしよう、あり得ることでしよう。併しこの二つの問題は、今月非常に国民の視聽を集めている大きな問題であります。はつきり突込んで申上げましよう。吉田内閣自由党都合の悪い者は片つ端から切るのだとこういう誤解があるのです。これはあなたも御存じでしよう。突込んで申上げます。で、自由党のためにならん、これは片山内閣の時分に任命したやつだから都合が悪い。蜷川長官の場合は、芦田内閣のときに、我我の反対の立場にある芦田内閣のとき任用したのだからこれもどうも危險人物でいかん。こういうのが多分にあるということを国民は非常に心配しておる、恐れておるのであります。若し仮にそういうことが、いわゆる堀越君の党利党略ということは拔きにして党内事情のために、かりそめにもこの人事をやられるということになれば、私は戰争前政友会憲政会、あの二大政党のときの人事を繰返すようになりはせんか。それに国民が懲り懲りして嫌だからわざわざ公務員法を制定して、公務員身分の保障とその福利増進をするための公務員法が制定されておるのだ、特別のこの独立機関として人事院というものを設置しておるのであります。その点を私は心配しておる。御承知のように、公務員はこれはどこどこまでも一党一派に偏するべきではあります。政党に関する政治活動規正令で以て禁止されておるのは御承知通りであります。自由党都合が悪いから必ずしもそれが職務に違反するわけではない、こう我々は考えておる。ただ公務員などは又昔の政友会憲政会時代のことを今の吉田内閣は繰返すのではないかということを恐れ戰いているから、その疑惑をこの際公明正大に、率直にお述べになることがいいのじやありませんか。世間往々にしてそういうことを言つております。この点について更に御所見を承わりたいのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 極くはつきりお答えいたします。自由党都合のために、党利党略のために役人を左右することは断じてございません。これは私がここで責任を以てお答えいたします。
  9. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 更にお伺いいたします。これは飯山さん個人の問題でありまするので、どうなさるか知りません。若し私が飯山であるならば、私はこれを、幸いにして人事院提訴する途が開かれております。提訴いたしまして、黒か白かはつきりこれを裁きを待ちたいと私は考えております。飯山さんはどうするか知れませんが、若し飯山氏が人事院提訴をして、いわゆる公平な裁きを受ける。その結果これは内閣のやつたことが間違いであつた、そういう判決が下れば、あなたは飯山さんのポストに又飯山さんをお迎えするところの、そのお考えがありますか。これを承わりたい。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 人事院はどう決定いたすか、これは人事院権限によつて決定されることと思います。併し政府政府の見るところを以て処置いたしたことは、前申す通りであります。
  11. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 そういうお考えであるから駄目だというのです。そうするとわざわざ人事院という独立機関を設けて、而もあそこに公平課という課を置いて、そういう提訴俟つて至公至正の裁定を下すということが無意味になるのであります。あなたそのものが公務員法、或いは人事院の設置ということと相反したお考えを持つておるということを私はここに断定いたしまして、この問題は更に追及いたしません。  次に角度を変えまして、私が森大臣にも大蔵大臣にも……事が余り大きな問題であるからして、食糧対策についてお伺いしたのでありますが、どうも私の腑に落ちませんから、一番責任者であるところの吉田総理に今質さんとするのであります。この食糧増産対策は如何にこれが今日大事な問題であるか、大きな問題であるかということは今更喋々を要しません。この問題につきましては、先般来本会議でも羽生君その他数氏から緊急動議、或いはその他の形において、現内閣食糧対策についての論議が交され、総理も又御答弁なさつておるのであります。関係当局それぞれ御答弁なさつておりまするが、ただ私が遺憾と思いますことは、総理施政方針演説の中に、食糧増産して、そうして食糧自給度を高めるためにいろいろの施策を講ずると仰せられておるが、それがどこに現われておるか。そのうち羽生君の質問に対して、総理は、予算を御覽なさいと、実にあつさりした答弁をなさつたが、不幸にして私は予算を見たけれども、そういう施策の点は、大して取上げられておらない。これをどういうふうにお考えでありましようか。
  12. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 私からお答えいたします。食糧増産施策については、岩男委員から先般御質疑がありましたので、この席においてもお答えいたしておきました次第であります。予算の面をよく調査して頂きますれば、食糧増産に対する政府施策もおのずから御了承願えることと存じます。食糧増産事新らしい問題ではありません。従来おつてやりました農業政策を、更に推進する意味におきまして、あらゆる角度から、あらゆる政策を行なつておることを御了承下さることと存じます。
  13. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 これは事志と反しまして、又森大臣の御答弁を頂いたことは私は遺憾とするのであります。実は内閣の首班たる総理大臣に対して私は聽いておるのであります。又国民もそういうことを希望しているのであります。今日今の吉田内閣で、これはいろいろ非難を受けておる政策は沢山あります。ありますが、最も非難を受けておる大きい問題は、農業政策に関する問題と中小企業に対する政策の持合せがないという問題であります。日本経済を再建する上に、その基盤をなすところのこの二つの重要な政策において、どうも我々が納得のできない、まあ極端な言葉で言えば、自由党吉田内閣は、これに対する熱意がないのだ、その熱意、その時局に対する認識がありさえすれば、もつと思い切つた施設予算化されそうなものだということを国民斉しく言つておるのであります。どうでございますか。今日農民は低米価政策と重税のために板挾みになつて、窒息した状態にいるのであります。実に窮境に陷つている。外国から食糧はどしどし輸入せられる、国際的に食糧は非常に豊富になつ日本にどしどし入つて来る傾向がある。そういう際に、ここに新らしいところの従来の政策を着々遂行するぐらいの生やさしいことでは駄目でありまして、新らしい角度から、新らしい見地に立つてこの転換期の農業というものを育成強化して進行させることが刻下最も必要な重大事項であると私は考えておるのであります。その意味において、今森農林大臣予算を見れば分る、成る程見ております。少々はサービスがあるようでありまするが、これでは足りないというのです。この食糧問題、現在及び将来のこの大きい日本食糧問題を解決するのには余り微温的である、余り熱意がないということを私は絶叫いたしておるのであります。もういつも答弁が決まつておる。どうせ四つの島に限られた、そこで食糧は足りない、人口は八千二百万、これがやがて一億になるだろう、どうせ日本の狹い耕地では国土ではその生産自給自足はできない、そういうような考えを持つておるところに間違いがある。出発点において間違いがある。我々はどこどこまでもこの大事な食糧というももは如何に国土は狹められましても、四つの島に局限されましても、どこどこまでも自給度を高めて行く、自給自足ということを一つ理想としてそれに到達するように、少くともその達成ができるような施策を講ずることが必要であるということを叫んでおるのであります。その意味からして今日吉田内閣の採つておる農林政策は甚だ貧困である。私達ではない、これは国内津津浦々誰でも相言葉なつておる言葉であります。耳を覆えばそれは分らんかも知れませんが国の輿論であります。もつと思い切つたことができませんか。いずれも懇請懇請で二合四勺の配給ができるまでは懇請懇請で頭を下げておつた、今年は二百万トンが更に三百七十万トンになり、主要食糧だけでも三百四十万トン、これでは入り過ぎるから御遠慮申上げたらよかろうという同僚議員がありましたが、これは私も同感でありますが、併し現在足らんものは仕方がないからして、少くとも二合四勺から五勺、九勺その程度を高めることも必要でありますが、これは輸入を仰がなければならんのは、現実の問題としては足らないのですからしてそれは輸入することもよろしいのでありますが、これ以外に途はない、併しこれをいつまでも続けるようなそういう農業政策では駄目であります。外に新らしいところの新農業政策というものをその基本的の方針を確立いたしまして、そういたしますというと、昨日言われたいわゆる計画経済になるかも知れませんが、私は社会党でないからそんなことは言いません。一寸先も見えない、一年先も見えないようなそういう対策では駄目であります。この食糧に関する対策は、もうこれは分り切つておる。三歳の童子でも分り切つておる問題だからして、今しつかりしたところの腹を決めてうちかかつて頂きたいとこう私は言うのであります。輸入に対しましても、今年三百七十余万トン以上を懇請するように予算に現われておるようであります。四百五十億円の価格差補給金を計上いたしております。そういうことを将来これは長くやるわけには行かないから、そういう補給金を限定する等いろいろあります。この農村改善対策といたしましては、先ず第一に限られたる耕地でありますけれどもが、これは拡張余地があります。例を申上げますというと、干拓事業のごときは最も至るところに適地があるのであります。ただ費用が余計かかるからやらないというふうなお考えであります。これはやつて失敗した例はないのであります。ただ費用がかかる。費用がかかつてもやればいいじやないか。そうすると干拓ができる、その結果は今までの歴史がはつきり証明しておる。干拓失敗したことはない。それだけ耕地も殖えます。その他今まで耕地開発、いわゆる開拓事業でありますが、どうもこれには非難があります。いろいろ失敗だという人も成功だという人もある。私は失敗とは考えておりません。一部の局地的には失敗の方もありまするが、これはまだまだ積極的に、これは併し相当費用がかかります。予算的措置を講ぜねばならんのでありまするが相当あるのであります。これを何故もつと積極的に将来のことを考えておやりにならないか。いわゆる私から言えば全く耕地開発耕地保金対策、この保金対策の中には、この前も森農林大臣に質問いたしたのだが、この土地改良に関する問題が主たるものでありましよう。或いは又災害地復旧工事、これも重要な問題であります。こういうような耕地保金対策というものを尚耕種改善に達する施設、その拡充強化という面は非常に夥しいものを取上げて増産面に活用はできるのであります。私は農業のことは幾らか素人より知つている。自分で実際やつて見て経験がある。その耕種改善施設というものに対しまして如何なる予算的措置が講ぜられておるかと私は歎くものであります。尚この労力関係ですが、今労力はあり余つておるのでありますが、これを放任している。今日この失業者農村に吸收しまして、これを喰わせることは許すべからざることですが、失業対策とも相関連する問題でありますが、とにかく日本農業生産費が高いということは一番欠点だ、その生産費を低下させる意味において、いわゆるコストを下げる意味においてどうしても共同利用施設拡充強化することが必要だ、この意味から言えば現に組織されておるところの農業協同組合、これを育成強化することは目下重大なるこれは喫緊事であります。併しこれも野放しにされておる。気息奄々として事法作つて趣旨、その志と相反して、今日は自滅状態に陷つておるのであります。こういう有樣でこれに関して何ら施設は講ぜられておらないということをここで訴えるものであります。尚この耕種改善の面においてはこの前森農林大臣にもお尋ねしたのでありますが、優良種苗を増殖するというか、言い換えれば新らしい品種優良種苗を増殖する。これを普及させる。尚この科学的基礎の上に置いた改良されたところの農業技術を速かに普及徹底させる。こういうようなことは、これはもう戰争前からも叫ばれ、多年の間叫ばれておつたが、悲しいことには口ばかりであつて具体的の施設、工作というものが伴なつておらなかつたのであります。換言すれば予算的措置が講ぜられておらなかつた、だから笛吹けども踊らず、増産どころか却つて減産という現象を呈しているのが今日の状態であります。こういうことで果して日本の現在及び将来の食糧問題が解決できるか。我が国は憲法で戰争を放棄いたしております。だから日本に関する限りは戰争はないでありましようが、この冷い戰争二つの世界に分れて冷い戰争が行われておるのであります。ここで如何なる不祥事が又起らんとも誰が保証できましよう。そういう場合に国民の約半数が餓死するというようなことの我々はこれは仮定の問題でありません。こういうことを考えてどこどこまでも食糧というものは増産し、自給度を高めて、少くとも過剩人口とは言いますけれどもが八千万の国民、九千万の国民自給自足程度において賄い得るような施策が講ぜられねばならないと私は将来を心配しているものであります。これには吉田総理の御答弁がなければ、再びここに農林大臣の御答弁を願います。
  14. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。食糧自給度を高めるということは、お説の通り最も我が国の現状としては重大なことであります。四つの島に限られた人口が八千二百万、これが一億にもなろう。そうしてどうしても自給自足はできないのであるという諦めをいたしておるというような気持は全然ないのであります。併しながらこれは数字の上から申しましても、限りなく殖える人口を限りある国土において養なうということは、これは絶対に不可能なことであります。併しながらまだ増産余地は多く残されておるのであります。この残されておる増産の方法に対しまして政府は積局的にこれを進めんといたしておるのであります。お説のように品種改良耕種改良といろいろ手落ちのようにお話になつたのでありますが、御承知通り戰争以品種改良ということにつきましては、その余裕がなかつたことは御了承ができると存じます。今農事試験場農業研究所に改めまして、そうして全国的に品種改良に今熱中をいたしております。御審議を願います通り全国農事試験場を総合いたしまして、縱と横の繋がりをいたしまして、技術普及員を設置いたし、そうしてこの滲透努力をいたしておるのであります。尚耕種改良につきましては、これは限度がありますが、曾て富民協会のやりました増收の競技におきましては八石四斗穫つた実績が島根県にあります。これは必ずしも全国耕地にこれを見ることは不可能なことであります。併し今日平均反收を米において申上げますと二石四斗何がしになつておりますが、まだこれを殖やす余地はあろうと存じます。それについては技術滲透品種改良又病虫害の防除等消極的或いは積極的の面から指導をいたしまして増産を確保したいと考えております。併し日本には年々我々の思わざる災害が繰返されるのでありまして、折角できました稻作が昨年のごとくたびたびの台風によつて被害を蒙むるというような情勢でありますので、これは今日の国土計画の上から治山治水に最も力を入れまして、そうして耕種安全性を期したい。これが我が政府として考えておりまする治山治水の最も力を入れておる点であります。土地改良等におきましても、又耕地拡張につきましても、この干拓も決して疎かにいたしておりません。できるだけ干拓等によりまして耕地を拡げて行く。そうして土地利用度を高めて行くということに努力をいたしておるのでありまして、決して足らんということを諦めて、そうして輸入食糧依存になつておるという意味ではないことを御了承願いたいと存じます。
  15. 岩男仁藏

    岩男仁藏君 この前の御答弁のことを又再び繰返して拜聽をいたしたのでありますが、実はこの前私はこれは非常に大きい問題だから内閣諸公のどなたでも申上げて置きたいという意味で、大蔵大臣にも……これは大蔵大臣には主に農村金融の問題についてお尋ねをしたのでありますが、ついでにこの食糧の自給確保の問題について意見を述べたのでありますが、大蔵大臣は、これは素人だから私は責めはいたしません。本人が謙遜して、私は素人だから分りませんと言つておるから、それでいいのでありますが、四つの島に限られた、戰争前は朝鮮、台湾から莫大な米が移入されておつた、これは大変な間違いなんです。実は戰争中は朝鮮、台湾で自給自足程度でありまして、五百万石程度そこそこ、ときには四百万石程度しか入つて来ておりません。余り内地の食糧を助けておらんのであります。一番好調のときに千五百万石、これは一回か、二回……、先ず一千万石や五百万石の程度、こういうことであります。これを理由にして、日本日本の今の耕地では自給自足はできない。こういうふうに早合点をされて、外国の輸入食糧に依存するというような、そういう政治を立てられることがあるならば、これは由々しい問題であります。その点だけを警告いたしまして、どこどこまでも将来殖えんとするところの人口増加、これに伴うところの食糧自給度を、これを自給自足の域に達せしめるような万全の措置を講ずるようにお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  16. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は総理に対しまして、去る一月二十三日における施政方針演説及び二十五年度予算の編成方針に関連しまして、御質問申上げたいと思います。  質問の第一は、総理は未だに現在でも日本の経済は安定しておる。そういうふうにお考えであるかどうか。施政方針演説においては、経済は安定しておる。こういう前提に立つて演説されました。又池田大蔵大臣も、経済は安定しておる。こういう基礎に立つて予算を編成されておるのでありますが、未だに総理日本の経済は安定しておる。こういうふうにお考えでありますかどうか。先ずこの点をお伺いいたします。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は安定しておると考えます。安定といつても、いつの時代を目標にするか。更に安定しておる時代を目標にすれば、安定しないとも考えられますが、これを戰前、或いは終戰以来の事情に考えて見まして、一、二年来、特に一昨年来安定の道を辿つておる。そのためにインフレーシヨンもなくなつた。物価も安定もし、若しくは下りつつあるということは事実と私は考えて、安定しておるということを確信しておるわけであります。
  18. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは総理は通貨の安定ということと経済実態の安定ということと、これを間違えておられるのではないか。インフレーシヨンのときは、通貨が非常に不安定だ。それと又同時に経済も不安定でありましたが、今度はダイス・インフレーシヨンの政策、ドツジ・ラインによつてインフレーシヨンは一挙に止めたわけです。従つて通貨はとにかく強力に安定せしめられた。対米三百六十円の為替相場と超均衡予算によつて一応通貨、物価はそういうような強力な施策によつて安定せしめられた。ところがいわゆる。デイス・インフレの政策であれば、そこで安定するわけですが、超均衡予算、均衡予算でなく、バランス・バジェットでなくてスーパー・バランス・バジェットによつて、急速に、一挙に而も超均衡予算によつてこれを安定せしめたから、通貨は安定しました。対米為替は三百六十円で固定して安定した。又通貨の発行も強力にこれを止めたのですから……。併しその止め方が非常にひどい。その結果デフレーシヨンを起つた。非常に強力なデフレが起きたから経済は安定していない。これを通貨の安定と経済実態の安定とをお間違えではないか。こういうように思うのですが、その点はどういうようにお考えですか。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いろいろ專門的にお話がありましたが、私は常識として安定しておる。(笑声)これを現在が不安定なりと断定するのは余りに暴論ではないか。(笑声)こういうように思います(「常識的安定か」と呼ぶ者あり)
  20. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは常識的にお伺いいたしますが、(笑声)最近非常に自殺とか、心中とか、犯罪とか、そういうものが非常に殖えておる。この原因はどこにあるか。どういうところにあるか。総理はどういうふうにお考えになりますか。例えば毎日の新聞に出ておりますが、職業安定所に失業者が百五十人も二百人も押掛けて行つて、最近は單なるストライキと違つて、これは重大な社会不安だと思います。各所に起きておる。これは私は重大な問題だと思う。こういう現象の起る原因、こういう現象が盛んにこの頃起つておる。それで毎日の新聞は我々に非常に不快の感を抱かせる。明るにニーユスがちつともない。毎日自殺とか、或いは生活苦による心中とか、こういうものが毎日出ておる。而も職業安定所を襲つて、そうしていろいろな事態が起つておる。こういうのは安定しておる証拠ではないと思う。この点についとはどうお考えか。又この原因はそれではどこにあると考えるか。この点についてお伺いしたいと思います。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、原因はいろいろ社会事情もあり、又或る季節的な事情もあるでありましよう。併しながら今日戰後において、イギリスあたりにしましても相当犯罪の数が殖えておると心配をいたしておるのであつて日本だけが不安定であると考えることは余りに不合理ではないかと思うのであります。
  22. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは比較論ですね。併し政治を相当しておる総理として、最近起つておる社会不安、これは率直に認めなければならないと思うのです。そこでただ外国と比べてその程度が少ないというのだからいたし方ないというのは、政治にはならないのであつて、やはりその原因の起るところを見極めて……。決して最近安定しておるとは言えないと思う。日本国民一般が、総理御自身でも毎日新聞を御覧になつても、決して愉快な、明朗な気持になれないと思う。ですから外国がそうであるから日本もいたし方ない、そういう比較論ではなく、飽くまでも日本国民生活を安定させる……毎日失業者が職業安定所に押掛けても職業がないという状態、これは実に悲惨な問題だと思うのであります。総理日本政治をやつておられるのですから……、現状を以てやはり満足されておるのですか、いたし方ないと……、これでは政治にならないと思う。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はいたし方ないと申すのではないので、安定というものは結局比較論ではないかと思う、ときに比較して……外国との比較もあり、別の比較もあり、ときに比較して日本状態如何を考えて見れば、これが不安定なりといつて、例えば中国におけるところの内乱が起つて、そうして非常に国民として苦しんでおる、それらの国から考えて見て、日本の今日の状態が不安定なりとは言い得ないのじやないか、即ち安定しておるのではないか、他に比べて安定しておるのではないか。安定というのは他に比較しての安定であり、もつと安定しない国から見れば安定している、更に日本より安定している国より考えれば、日本は不安定というふうにも考えられますが、これは比較の問題であります。(「了解」と呼ぶ者あり)
  24. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはどうも我々国民を代表する総理大臣のお言葉としては非常に頼りない。(「その通り」と呼者あり)そういう御答弁では、常識論と言いますからそうかも知れませんが、それはもつと低俗な常識論であつて総理としての常識はもつとハイ・コンモンセンスを要求する、もつと高い常識に基いて御答弁願いたい。よそではそうである、成る程外国に比較して、よそは非常に苦しい、従つて我々の苦しみを精神的にカバーするためにはそういう考えもそれは他山の石として必要でないということはないと思います。思いますけれども、日本はこれから平和的文化的な国家を建設して行くために、一路邁進して行くのです。他を顧みる必要はないと思う。日本は飽くまでも世界で一番安定して、そうして文化的な生活に進んで行かなければならない。他がそうであるからといつて努力を惜んではいけないのであつて、而も今のお話ですと現実をちつとも認識されていない。私はその点を一番恐れるのであります。やはり現実を率直にお認めになつて、政府が、若し施策が足りないならこの点が足りないからこういう点に欠陥があるので、努力して行くという御答弁でしたらいいですけれども、今の御答弁ですと、いたし方ないという言葉はお使いになりませんけれども、実際には放任です。ですからもつと最近の税金、或いは……それから行政整理、或いは企業整備に基く失業、それから起つて来るところの自殺、心中、そういう生活苦、この原因をもつとよく見極めて、そうしてその基盤に立つて政治をとられるのが当り前だと思う。最近新聞にこういうことが出ている。十二月一日から七日までに各新聞に出た自殺の記事を集めると八十四件の自殺事件がある。その原因を調査して見ると、原因不明が一番多いけれども、これを除けば生活苦が一番多い。家庭の不和や失恋或いは離縁という問題も、究極のところは生活が苦しいため起る。その次に多いのは病苦であるが、病苦も亦單に病を苦にするというのではなく、金がなくて治療したいにも治療できないで自殺するのが多い。借金苦、税金苦、事業の失敗、いずれも民自党政府による大衆の負担において資本主義的な日本を再建するという政策がもたらしている、こういうふうに……青年新聞という小さな新聞でありますがまじめにこういう記事を取扱つて論評しているのです。その原因がやはり政策面にある。今の政府がお採りになつている政策に全部の原因があると言いませんが、もつと根本的な支配的な原因がある。この点は総理大臣はお認めになりませんかどうか。政府のやはり責任があるかどうか。今の政策にやはり原因があるということをお認めにならないかどうか。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、私は先程安定したかしないかというお話から出発して、安定しておるのだ、よその国に比べ或るときに比べて安定しているのである。こう申したので、今の社会現象に対しては誠に悲しむべきことと考えます。現に政府としては、失業保險であるとか、或いは失業救済或いは厚生施設等に相当の予算が組入れて、支出を予算に組入れて……これを救済に充てる考え予算に組入れております。予算面について御研究を願いたいと思います。
  26. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは抽象的に安定しているとか安定してないとか、そういう問題についてでなく、現在のいろいろな社会上の不安定或いは不安、そういうものについては総理も今お認めになつたわけであつて、その原因はやはり政府の今のドツジ・ラインに基くところの超均衡予算による政策、これに原因があるのであつて、これによつてそういう現象が起る。従つてこれについては生活保護法或いは失業救済という対策を講じて今政策をやつておられる。こういうわけでございますね。そういう意味に解してよろしいですか。今のドツジ・ラインによる政府政策によつて、失業苦とか或いは自殺、その他の職業安定所を襲うようなああいう事件が起きている、これはやはり根本においては政府政策に原因があつて、従つてそれから生じた問題については政府がいろいろ対策を講じている、こういうふうに考えていいわけですね。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府といたしましては、原因の……すべての社会現象が政府政策による、政府責任であるというような御議論でありますが、政府としては、或る現象が起つた、その現象に対して対策を行なうということで努力しているのであつて、徒らに原因を探求して……そうしてそのままに放置して置いていたし方ないとしたならば政府責任でありますが、或る事実が起る、その事実に対して救済対策を講ずる、或いは政府として直ぐ適当な善後措置を講ずる、そのために予算を組む、これが政府のいたすべきことであると考えておるのであります。予算について、現内閣がこれらの社会のいろいろな現象に対して如何なる善後策を講じつつあるかということを一つ御覧を願いたいと思います。
  28. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 丁度質問が本筋に入つて来るわけでありますが、政府はやはりそういういろいろな社会不安が起つておることは今お認めになつたわけですから、それに対して予算を通じていろいろな政策をやつて行く、それが適切な対策であるかないかがこの委員会あたりで、又国会で検討する問題であると思うのです。我々は適切でないと思う。政府政策日本の実情に合つていない。その根本の原因から、そういう問題が起きて不必要な失業者を出し、不必要に自殺者を出し、そういう状態なつておる。従つて総理は私はこのドツジ・ラインというものに対してどういうふうにお考えなのか、これが私は一番重大な問題だと思うのです。ドツジ・ラインというものを今の日本の経済の実情と照合せまして、このドツジ・ラインは適切なものであるかどうか。成る程ドツジ・ラインによつて通貨は安定したのです。為替相場も安定した。それはドツジ・ラインのインフレ一挙收束の線、これは決して私は反対するものではない。むしろこれまでにインフレは誰がやつても止まらないと言われたのが、ドツジ氏のあの政策によつて止まつたのですから、これは私は正しいと思うのです。併しそれは通貨的な安定であつて、それによつて生ずるところのこのデフレ的な現象、それが今の社会不安の原因になつておるのですから、ドツジ・ラインについては最も日本の実情に合つたところの検討を加うべきである。ドツジ・ラインについて総理はどういうふうにお考えなつておるか。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いわゆるドツジ・ラインなるものは日本の財政経済を救う上において適切なりと政府考え、そのラインによつて予算を組んだのであります。併しながらその結果、或る方面において犠牲を生ずる、或る方面において不安ができたとすれば、その不安を適当に是正する、調整する。そのために予算において相当の善後策を講ずるために予算を組んだと御承知を願います。
  30. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは分りました。ですからドツジ・ラインをあの通り実行して行けばその影響が非常に大きく現われて来るということは分つてつたわけです。インフレ一挙收束する……そこで政府はその影響を緩和するためにいろいろ施策を講じておると言つておられますが、併しドツジ・ラインを実行してその結果生ずるところの現象に対して手を打つても、それは対策にならないのです。結局において……例えば二十四年度予算でもそうでありましたが、二十五年度予算についても超均衡予算ということを建前に置いて旧債務を償還して、その結果非常なデフレになるけれども、これを緩和するために、銀行の貸出しを殖やして、そうして通貨の急激な縮小を防いで、いわゆる、通貨面から言えばデイス・インフレという形に直しておるわけです。これはドツジ・ラインの修正だと思うのです。或る程度の……。併しながら旧債務償還というそのことを直さなければ旧債務を一旦償還して、国民の税で徴つた金を銀行に渡して、銀行から貸出しするということではデフレを緩和できない。これは最近の事実が明らかにすることである。最近銀行ではこれ以上貸出しはできないという状態なつておることは御存知だと思うのです。預金と貸出しの比率、或いは銀行の資産運用の中に占める貸出し比率が余り大きくなり過ぎて、銀行の経営が非常に不健全になり過ぎておる。これ以上貸出しはできない。そうなつて来るとデフレになるのですか超均衡予算というものを均衡予算の線まで直す、そういうことによつて問題が解きほごされて来る。こういうふうに総理はお考えにならないのですか。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ドツジ・ラインによる均衡予算という予算日本の経済の大局から見て必要であり、適当であると考えて、政府はそのラインに従つて予算を組んだのであります。併しながらこの政策を採れば、それによつて他の或るものが或る部分において不利益を生ずる、或いは犠牲になる、その犠牲を成るべく少くする。大局から考え政策を採つて、そのために犠牲者を生じた、その犠牲者を苦痛を成るべく少くする、これが即ち善後策であると思います。その考えから、今御指摘になつて銀行等の金融については、政府としても相当の金融を図つて、銀行がその金融機関として業務に差又ないように、或いは政府の預金を増すとか、適当な施策をして大蔵省としては施策を講じております。
  32. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そう言われれば総理の立場としてそういう御答弁をするより止むを得なかつたと思うのです。が併し実際問題として本当に日本の経済を安定させる、再建さして行く、そういう純粹な見地から考えますと、総理の御答弁はこれは総理の立場上の御答弁であつて、本当の日本の経済の安定、この日本国民大衆のことを本当に考え日本の将来のことを本当に考える御答弁ではないと思うのです。何故ならば、総理がいろいろな施策を施して、ドツジ・ラインによつて生ずるところの影響を緩和する施策を講ずると言われておりますが、二十四年度予算の編成の過程を総理は思い出して頂けばお分りと思う。二十四年度予算を編成するときには二月の十幾日でありましたか、民自党の政府として、これは幾度も私は申上げましたが、実はドツジ・ラインに基く二十四年度予算七千四百億幾らという超均衡予算を組む腹はなかつたわけであります。五千七百八十億というあの予算を閣議で決定したのではないですが、そうして関係方面に〇・Kを貰いに行つたときに、関係方面で〇・Kを貰えないで、そうして超均衡予算として二十四年度の予算なつた。従つて政府はあの最初の閣議によつて決定したあの予算を実行する場合の心構えは赤字公債約千億、日本銀行の通貨が五百四十億殖えてもいいという建前でそういう心構えで予算を決定した。ところがそれから一週間か二週間の間に、それと全く違つた予算を〇・Kを貰つたわけです。ですから政府にはドツジ・ラインに基いて起る影響、どういう影響が起つて来るか、それには検討する遑もなかつた。更に又それに対する対策考える遑もなかつた。不用意の中に飛び込んだのです。ですからドツジ・ラインによる安定は、單なる通貨上の安定に過ぎなかつた日本銀行の貸出しを締める、予算の上では超均衡予算、外国為替は三百六十円で固定するというだけで、それによつて今までインフレで進んで来た日本の経済がその反動的影響を受ける、そういうことを予想していなかつたのではないのですか。予想していなかつたから対策も十分できていなかつた。ですから今のような現状になつて来た。換言すれば分つておれば、先ず通貨の安定をした後に第二、第三、第四の対策の準備をして置くべきであつた。それができていなかつたから、あとは皆泥繩式に追掛けて、失業者が出たら、失業対策として今度ちよつぴり四十何億、そういう泥繩式にやつて来ておるのです。彌縫策です。本当に日本経済の再建、経済安定を考えるならば、ドツジ・ラインそのものを日本経済に実情に合つておるというふうに言われるのは、総理の私は言い過ぎではないかと思うのです。総理はこの間の地方財政の場合に、「〇・Kを貰えなかつたらいたし方ない。」こういう考えを常に持つておられたのじやないのですか。最初五千七百八十億の予算を実行しようと思つたけれども、それと全く違つた予算を押しつけられたといつてよいかどうか分りませんが、それを実行せざるを得なくなつた。そこに根本の原因があるならば、実は民自党内閣はこれと違つた予算、財政を行うべきであつたけれどもこういうふうになつてしまつたのだ。その結果十分用意がないから、それに対して鋭意対策を講ずる、こういうふうに言うべきである。何だか総理お話を聽きますと、政府が本当に日本の経済再建にとつてドツジ・ラインが必要であると確信してやつているというように伺いますが、私はその点は実情にそぐわないのじやないか。ドツジ・ラインについて、もつとドツジ・ラインの意味、ドツジ・ラインの影響、こういうものについて真劍に考慮されなければならないと思うのですが、私はその点について総理はどうもドツジ・ラインというものについて何か自由党の今の政府が、こういう政策を発見した、みずから発案してやつているというように考えられていますが、この点については、どういうふうにお考えなつているか。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 予算の編成についての曲折については私よりもあなたの方が余程詳細に御存じのようであります。(笑声)併しながら政府といたしては、ドツジ・ラインの政策がいい、この際適切なる財政政策なりと考えて、それによつて予算を編成いたしたのであります。
  34. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは分りました。ですから問題はそれによつて生ずるところの影響に対してどういう適切な手を打つかということが問題になつて来るわけです。そこで次に伺いたいのは施政演説におきまして、そのドツジ・ラインに基いてこの予算を編成されましたが、その予算編成方針一つとして給與ベースを引上げないということが、これが一つの大きな予算編成の條項になつていると思うのです。それと物価が横這いであるということと、それから輸出貿易、貿易の問題、それから自由経済に移して行くというこの四つの條件によつて予算は作られていると言われておりますが、給與ベースの引上げできない理由について総理は、この施政演説では、給與ベースを引上げると逐月低落している物価が、又これは低落を止めて、賃金と物価の悪循環をして行くから、給與ベースを引上げできないのだ、総理はそう言つておられますが、今でもそういうお考えであります。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今でもその考えでおります。
  36. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 給與ベースを引上げた場合に、物価と賃金が悪循環しないということが分れば、きつきりして来れば、引上げてもよろしいのでありますか。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 引上げることによつて、悪循環もせず、何らの弊害ができなければ喜んで引上げますが、私はそれはむずかしいことと考えて、引上げないことに今のところやつているわけであります。
  38. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 引上げることによつて弊害が起らない、安定して行くというならば喜んで引上げられるという御意図であります。それでは、今の日本の景気政策として、いわゆるドツジ・ライン、これは超均衡予算である。均衡予算ではない。超均衡予算のために非常にデフレになつて、総理も施政演説において逐月物価が低落しているというお話ですが、経済安定のためには物価がどんどん低落して行くということはいいことじやないと思うのです。物価がどんどん上つて行くこともよくないことです。いわゆる物価は現状に安定することが一番好ましいのです。それでこそデイス・インフレで、経済安定の指標になる物価が逐月低落して行くというのは、結局大衆の購買力が少くなつて、余りに超均衡予算のために多く税を徴つて、これをいわゆる資本蓄積と言いますか、銀行の方にやつて資本にしてしまう。このために大衆購買力が少くなつて、物が売れなくて滯貨が多くなる、そうして不景気になる。従つて大衆の購買力を殖やすために給與ベースを上げる。  そうして余り資本を溜めることばかりを急がなくして……速度の問題、程度の問題でありますが、その前に大衆の購買力を涵養する。そのためには超均衡予算を直して、例えば旧債の償還、こういうものを一応緩和されて、大衆の購買力を殖やせば、物価がどんどん低落しないのみならず、一応止まつて安定して行く。これが経済安定の一番重要な條件になる。物価が逐月どんどん低落して行くのに、又今度の二十五年度の計画を見れば生産が相当殖えて行く計画なつております。そういう場合に給與ベースを上げるならば悪循環をしない。しないばかりでなく、むしろ物価はどんどん低落してデフレにならないのみか、安定して行く、今の水準に安定して行くのであります。而も賃金と物価の悪循環ということは、政府が赤字公債を出して、これを日本銀行に引受けさして、不換紙幣が新らしく日本銀行から出て来るという形で賃金引上げを行えば、インフレになつて行くわけですが、日本銀行から新らしく札を出さないで、今の国民所得の範囲内で、範囲内で給與ベースを引上げるならば、物価と賃金の悪循環は起りつこないのです。起りつこない。むしろ給與ーベスを引上げた方が経済の安定に資する、経済の安定に有利である。これはデフレを防いで、デイス・インフレの線へ戻す、こういうことがはつきりしておると思う。これでも総理は給與ベースの引上げを行わないと言われるのですか。悪循環ということはあり得ない。今の状態ではあり得ない。赤字公債を出さない以上は……、赤字公債を出して日本銀行へ引受けさせない以上は悪循環にならない。なるというのは、これはその議論が間違つておる。実際から言つても、理論的に間違つておる。むしろ給與ベースを引上げた方が景気政策として非常にいい。失業苦も緩和され、自殺とか、心中とか、そういうものが緩和されて明るくなつて来る。こういうことがはつきりしていても、尚給與ベースを引上げるようになりませんか。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御議論は御議論として伺いますが、只今としては……只今を給與ベースを引上げる考えはありません。
  40. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今は引上げる御意思はない……それでは情勢によつては将来考えられる、こういうことでございますか。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私はしばしば言明いたしておりますが、余裕があれば、財政面その他の事情を考えて給與ベースを引上げることができれば引上げることは喜んで引上げたらと思つております。
  42. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、今のお話は物価と賃金の悪循環じやなくて、悪循環するから引上げないのではなくて、財政に余裕があるならば引上げると、こういう御意見でございますか。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 悪循環も困るし、又財政の余裕がなくても困る。(笑声)併しすべての事情がこれを許すならば喜んで給與ベースを引上げる、こういうわけであります。
  44. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 総理を見解とか、議論であるとか、見解御意見として聞いて置くというお話でありますが、併しそれは全く立場の違う間の議論であるならばそうなるのです。私は資本主義経済の理論の上に立つての質問なんです。ですから意見が違うということは、これはこの間池田蔵相にも申上げたのですが、どつちかが間違つておる。どつちかが間違つておる。私が間違つておれば、私は直さなければならん。総理が間違つておれば総理が直さなければならん問題だと思う。それでなければこういうところで予算を審議するに当つて一つも議論しても意味がない。国民のために我々がここで総理に御質問し、そうして問題の所在を明らかにするということは、同じ立場に立つて、そうして論議するわけです。そうしますと、この問題が間違つておるか、間違つていないかは、どつちかが間違つておる、どつちかが正しい、こういうことになるわけです。それについて問題の所在を明らかにさして、意見がどつちが正しいのか、それは国民がそれを民主的に公正に批判して行く、そこに私は重要性があると思う。ところが総理意見として承つて置く。これでは質問する意味がないと思う。意見のどこが違つておるか。これまで私が述べました物価と賃金が悪循環しないという意見のどこが違つておるか。或いは財源が私はあると言いますが、財源があるという考えはどこが間違つておるか。その間違つておる点を総理は指摘されて、であるから給與ベースは引上げできない。こういうふうに我々に説明さるべきであつて、議論は議論、意見意見として聞き置くが、給與ベースは上げられない、これでは議論としては無茶だと思う。議論としては、これはむしろ相手の意見を十分聽くという民主的な態度ではないと思うのです。そこで今の総理お話では、悪循環を避けるということと、それから財政上余裕ができたら、今はできていないから、できたら引上げるのであつて、今はないから引上げない。この二つ理由である。一つ理由が追加されたわけです。悪循環しないことは、私の悪循環しないという議論を総理はつきり事実或いは理論によつて否定されない以上は、私は、その議論は私の方は間違つていないと了承しまして、そうして今度は財源がないという問題です。財源はこれは自然にあるのではないのであつて総理も御承知通り、財源というものは政治的なものだと思うのです。財源は政治である。ですからこういう財源を作ろうという意見があれば、予算の編成の仕方を変えてできると思うのです。而もそれをやるために経済界に混乱を起し、日本経済再建に障害を與えるような財源の作り方であつたならば、無論これはいけないわけですけれども、超均衡予算を直して均衡予算の線にまで持つて来る、それでデフレを直してデイス・インフレの線まで持つて来るという形において財源が捻出されればこれ程いいことはないと思うのです。少くとも一般会計における七百三十何億かのあの債務償還のうち二十五年までに債務償還の時期が来ない約五百億、これを一時中止すればこういう財源がここにも出て来るわけです。或いは又今度の予算編成において総理は物価は逐月低落すると言われるのであるが、二十五年度予算は物価が逐月低落するという線に沿うてその線で予算を編成しているのじやないのです。大体昨年九月頃の物価を基準にしまして、そうして予算を編成しておるのですから、その後物価が下つて物件費に相当節約ができることはもう間違いないのです。そういうところに財源があるわけです。ですから財源がないということは言えないと思う。財源は作るべきものである。その財源をお作りになる意思があるか。施政方針演説におきましても総理はやはり今の給與を以て満足されないということを言つておられます。ですから給與を引上げたいのであるということを言つておられます。但しその理由として悪循環するから引上げられないのだということをこの施政方針演説はつきりとお述べになつているのです。ですから悪循環論が解消されたといたしますれば、これは財源問題ですから、その財源をお作りになつたらどうですか。お作りになる意思があるかどうか。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はやはり賃金と物価は悪循環するものと考えます。又私の説が間違つておるか間違つておらないかは……、あなたは、あなたの説が間違つておらないと確信しておられるでありましようが、私も又私の見るところは間違つておらない。いずれが正しいかということは国民が審判する、これが民立政治であると思います。今日においては現在予算を変える考えはございません。
  46. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではてんでデベイトにならないです。総理はやはり方方外国へ行つておられますですね、こういう討議というものを御存じだと思います。デベイト、これは問題の所在を明らかにする意味においてデベイトする、相手のどこの根拠が間違つているかということを、総理として、総理は單に経済問題ばかりでなく、政治の問題、或いは外交の問題について総合的な線を考えられていると思うのです。ですから私の言う、この悪循環論というものは非常にこの問題をはつきりさせるということが重要なんです。單にここで空論を討かわしているのじやなくて、この問題がはつきりすることによつて景気政策も変つて来る。非常に生活に困つている一般公務員、或いは又労働者、或いは中小企業者農村の人達、そういう人達が、この問題を解決することによつてはつきりすることによつて景気政策が変り、そのうちデフレが緩和される、そうして経済が安定して行く、これが経済の基本になつておるのです。ただあなたはそう信ずるだろう、私はこう信ずるでは、総理はいつもそういう議論の進め方でありますが、これは私は民主的な進め方でないと思う。デベイトの体をなしていないと思う。で私の、いわゆる賃金と物価が悪循環しないというのが間違つておるとすれば、間違つておるその根拠を示して頂きたい。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先程から同じことを繰返すようでありますが、政府といたしては、又私といたしては、賃金と物価は飽くまでも悪循環すべきものと考えます。しないと言われるけれども、現にするのだからこの事実は如何ともできないと思います。これがしないとかするとか言つて議論したところが、事実は悪循環するのであるから、それはそう言わざるを得ない。又この説が間違つておるか、あなたの説が正しいかということは、先程も申上げた通り国民が批判するであろうと思います。間違つておれば政府政策が悪いとして、政府が信望を失なつて倒れる、これが民主政治であると思います。
  48. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 問題の所在が段々明らかになつて来ましたが、総理は悪循環ということと、賃金を引上げると物価に影響があるということとお間違えになつておるのじやないですか。それは賃金を上げれば物価に影響があることは明らかである。物価に影響があるということと悪循環ということとは違うのです。悪循環というのは、昭和二十三年までああいうふうに賃金を上げれば物価が上り、物価が上れば賃金が上る、ああいう形、スパイラルな形で、ああいうふうに螺旋型で上つて行くような悪循環、そういうことがないというのです。ドツジ・ラインによつて超均衡予算で占められておる、このバランスされておる均衡予算の線まで引下げても危險がない、インフレ予算でないからそういう危險がないのに、そういうことを言われるというのは私はおかしいと思う。影響ということと、悪循環ということと間違えている。どうも失礼でありますけれども、池田蔵相でも総理でも御答弁がラフで、非常にラフなんです。これは何ですか、経済理論というと語弊がありますが、経済の常識としてももう少し問題を具体的に、正確に科学的に把握して御答弁さるべきであると思いますが、非常にラフなんです。物価と賃金とが影響があるということと、悪循環ということとを混同して、そうして賃金を引上げない理由にされたのではこれは国民として納得できない。総理国民が批判するであろうというお話でありますから、それは国民の批判に俟つことにして、これ以上追究いたしません。それでは現在は引上げないけれども、将来財源の余裕ができたら引上げる。現在はどういたしますか。現在においてはこの給與がこれでは足りないということは総理も施政演説で認められておる。最近新聞では実質的にこの給與を充実するようなお考えであるということが発表されておりますが、どういう形でですね。このベースは引上げないけれども、ベースを引上げると予算の編成に今後関係するから引上げられないけれども、ベースは引上げない形において賃金を充実するというお考えがあるように聞いておるが、どういう形で引上げるか、或いは新聞に伝えられておるような形において充実させるのかどうか、この点確かめて置きたいと思います。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それはしばしば申す通りに、財政に余裕があるならば、又余裕を生ぜしめても賃金ベースは事情が許す限りこれは引上げたい。どういう方法であるというならば、いわゆる予算なり、政府の財政に余裕を生じたときに引上げる。これ以上お答えする必要はないと思う。
  50. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今先の御答弁とあとの御答弁とどうもよく分らないのですが、最初は予算がある、或いは予算の余裕を生ぜしめても賃金を引上げたい、こういう御意思があることは分つたのです。ところが現状では生ぜしめる意思ということは予算を、財源を作り出すことなんですが、あとの御答弁では財源がないからできない。それでは矛盾している。どういうことで生ぜしめるように努力なされるか。どういう形で財源を生ぜしめるようにするか、この点をお伺いしたいのでございます。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今は生ぜしめることができないからできないと申すのであつて、私の答弁一つも矛盾しておらないと思います。
  52. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 どうも総理の御答弁を伺つておりますと、理窟に合わないと思うのです。理窟に合つても合わなくても、とにかく給與ベースを引上げたくないのだ、そういうふうにしか解釈できないのです。どんなに不合理であつても何でも、とにかく給與ベースは引上げないのだ。その通りでございますか。無茶でも何でも、不合理でも何でも引上げない、引上げたくないのだ。そういうふうに了承してよろしいのですか。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は無茶でもと申したことはありません。財政に余裕ができたならば引上げたい。こう申したのであつて、無茶でも何でも、理窟もなく引上げないというような放言をいたしたことはありません。(笑声)
  54. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 無論そうだと思いますけれども、まあはつきりですね、極端な形をとつて表現して見たのですが、それなら財源の余裕ということを言われておりますが、そこが問題だと思うのです。今度の二十五年度予算を見ましても、財源が作れるのですが、作る努力をされておらない。おらないで、施政方針演説においては、給與を引上げる、給與のその内容を引上げて行くとこう言つておられるのですが、それではその内容を引上げると言われているその内容というのは、どういう内容でございますか。
  55. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 木村さんちよつと御相談ですが、午後から大蔵大臣が見えますから、この上のことは当面の大蔵大臣に御質疑なされるという工合にできませんか。
  56. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうですか、よろしうございます。
  57. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それでは次の問題を……
  58. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 繰返して今の点をちよつと御答弁願いたいと思うのです。どういう形で実質賃金を引上げるお考えを持つておりますか、目下……
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先程も申す通り予算に余裕ができたならば引上げるとお答えを申上げるより仕方がありません。
  60. 和田博雄

    ○和田博雄君 ちよつと関連して一言御質問を申したいのですが、この二十四年度の予算と二十五年度の予算とは、これは性格が同じなのです。それで総理は二十四年度の予算で、止むを得ず二十四年度のドツジ・ラインによつて予算をお組みになつた。それがいいと信ぜられて経済が安定したと、こう言われるのは、木村君が言つたように一応貨幣的に安定したと、私はそこから出発したと言つていいと思うのです。ただ二十五年度の予算については、二十四年度の予算で相当もう悪い結果が出て来ているのです。ですからそれを直すための政策を、二十五年度の予算で組まれたと言うのですが、予算そのものの中に実は本格的な政策が取入れられていない、性格が変つていないのだということを木村君も問題にされているのです。  そこで賃金と物価の悪循環ということは全く事情が違います。これは木村君の言うように、超均衡予算で抑えられておれば、賃金を上げても物価との悪循環ということは起らない。これは物価に影響するというだけだと思うのです。そこで私は二十五年度の予算については、少くとも政府とせられては、二十四年度のこの一年間の経験によつて、思わぬ不景気の現象が出て来たものを是正するために、この予算の超均衡予算という点は変えるけれども、赤字財政という点は変えない。均衡のとれた予算ということにして、やはり給與ベースなんかは上げるということになると又財源が問題になつておりますが、総理政治力でこれはやはり向うと交渉されて……直接問題になつている債務償還が多過ぎるということは、財界も政界も日本人が全部認めていると思うのです。それは私はここでこういうことは余り頑張らずに、これは本質的に向うはドツジ・ラインで、ドツジのあれで一生懸命頑張つているけれども、併しやり方が悪ければ経済の上に出て来る。国民の批判として出て来る。経済現象として出て来るのですから、そこで政府としては取りまとめて是正して行くということにして、財源を生み出して、経済が円滑に運営されるように、この際政府としては努力すべきだと思います。これは資本主義の立場に立つて……私なんか反対党であるが、資本主義自身の立場に立つても、これだけのことをやることは、やはり何か政治の上から、いろいろ今の日本政治の段階からして、ちつとも僕はひけをとるべきことじやないと思うのです。その点は総理大臣として政治を担当されている方としては、よくその点を、実際をよく御勘案になつて、やはり木村君に今言われた点については、私共もこの点は是非……財源の点について財源があればとこういうことを言われている以上、この点は努力で、これはむずかしい努力であるかもしれないが、政府としてもとことんまでやつて行かれることを僕は希望します。その点を一つ答弁を願います。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば私が申す通り給與ベースは上げたい、上げたいと思いますが、併しながら今の財政計画方針では上げられない。併しながら余裕ができれば喜んで上げたいと思います。尚上げ方については御指摘を受ければ非常に仕合せであります。
  62. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今和田委員の御質問に対して総理は御答弁になりましたが、その上げ方について具体的な案があればいつでも聞きますと言う、それはもうあるのです。沢山あるのです。例えば一番、財界でもどこでも問題になつている旧債務償還の問題、この点をとにかく総理はお考えなつて頂きたい。総理は最近の経済の実情をもう少し御認識になる必要があると思う。私は総理に特にこの経済問題についてこういうふうにお話するのは、総理は経済の素人であるということで満足されてはいけないのであつて、やはり経済問題が外交の基礎になり、政治の基礎になるのであつて、こういうことは私が言う必要はないのでありますが、総理はどうも自分は経済が苦手で余り経済のことを知つていないでもいいというお考えであつてはならない。今後はそういう考え政治をやられたのでは国民が大迷惑です。そういう意味でお伺いしているのです。  財界では今度の三月の決算期はどうやら越えられるかも知れないけれども、来る十月において危機が乘切れるかどうか分らないというような、非常に財界は不安定な状態にあつて、不安の状態なつている。そういうこともよくお考えなつて、そうして二十五年度予算については十分に愼重に考慮される必要がある。そうしてその方式としては旧債務償還、これを緩和或いは削減するその意思、これは具体的な方策です。これについて総理はその御意思があるかどうか、又努力される意思があるかどうか。
  63. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先程から申す通り、只今の予算を変更する考えはございません。併しながら賃金引上げができる場合には、喜んで努力をいたします。
  64. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではもうこれ以上伺つても御答弁は同じですから、この問題はこれで打切ります。  次にお伺いしたいのは、この予算編成方針の中に、これは大蔵大臣にも一応質問したのですが、総理にも質問したいのです。それは昭和二十五年度予算の説明書が配付されておるのですが、この中に二十五年度予算を編成する建前がはつきり書いてあるのです。それは「経済の合理的かつ自主的運営態勢を推進することを建前として編成され」たとなつておるのですが、この点について大蔵大臣は、この経済の自主的運営態勢というのは、これまで政府が統制その他で経済を干渉しておつた、そういう統制をどんどん外して、民間の自主的な立場において経済を運営して行くということを意味しておる、こういうふうに御答弁があつた。併し私はこの自主的運営態勢という意味は、日本政府が財政なり経済その他をやつて行く場合に、日本政府が占領下にありましても、その占領下に置かれた状態における自主性です。そういうふうに自主性というものを解釈すべきだ、こういうふうに質問しましたのですが、大蔵大臣は外交の問題については、或いはそういう問題については、自分の立場が違うからというお話で御答弁がなかつた日本の今の政治をやつて行かれる上において、自主性という問題について、総理はどういうふうにお考えなつておられるか。この点を今後の経済の運営、或いは又我我がこれからいろいろな法案、予算を審議する上に非常に私は重要であると思うのであります。自主性ということについてどういうふうにお考えなつておられるか。
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 自主性と申すことは、即ちすべて予算その他の立案は日本政府の現内閣責任においてなされたもの、こう解釈をします。
  66. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、日本政府責任において立案し国会に提出する、責任においてこれを実行する。そうするとその責任はどういうふうにしておとりになるのですか。責任をとる、例えば今度でも直ぐ問題が起つたのですが、地方税というような問題、あれが遅延して、非常に支障を生ずるという場合、その責任日本政府にある。併し責任を負わないかどうか、責任の帰属の問題です。これは常にそこで逃げられてしまうのである。〇・Kがないからしようがない。こういうのでは、我々予算その他の法案を審議しても意味がない。その点については、責任の限界或いは責任を負う、そのはつきりした所在、そういう点についてどういうふうにお考えになるか。
  67. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先程も申しました通り日本政府責任において、すべて行政その他立案はいたすものでありますけれども、遅延したその結果政府は非常に怪しからんということであれば、国民が批判して、政府に辞職勧告をいたすでありましよう。(笑声)即ち責任というのは、そういう意味で私は申上げたのであります。
  68. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは了承しました。そういう解釈の仕方については了承しました。ただ私は一つ要望して置きたいことは、この自主権をもつと強め、そうして自主性を占領下においても多く獲得するというふうに、常に努力されることを望む。ということは、簡單な一つの例でも、アメリカの対日援助資金を使うという使い方についても、その自主性を以て努力するしないによつて非常に違うのです。外貨のままで使わして貰えば、この前も申上げましたが、外貨のままで使わして貰えば非常に助かる。そういうような努力余地は沢山あると思うのであります。そういう面についてもつと日本国民日本経済再建のために有利になるような自主的な立場を、ますます今の占領下においても確保するように努力されんことを私は希望いたしまして、次の質問に移りますが、施政方針演説において、総理は税制改革と関連しまして、行政の簡素化その他行政整理に関するようなことをお述べになつておりますが、更に行政整理、それをもつと進めて行くお考えであるか、又今どういうような方針をとろうとしておるか、又そういう具体案を用意しておられるかどうか、行政整理についてお伺いいたしたい。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の行政の制度は余りに尚複雑であつて、これを成るべく簡素にしなければいかん、簡素化される必要に迫られていると痛感いたしております。故に行政整理は続行いたします。如何なる方法で以てやるかということは、今本多国務大臣のところで以て頻りに研究いたしているのであります。成案を得ましたら発表いたします。
  70. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その具体的な内容等につきましては、本多国務大臣に御質問いたします。  最後に講和の問題についてお伺いいたしたいのでありますが、施政方針演説におきまして、総理は講和の問題に触れたのですが、併しこの問題は客観情勢如何によるものであつて、一に客観情勢如何によるものである。こういうふうに言われているが、最初総理が講和の問題を言われた当時と最近においては、客観情勢が非常に違つて来ている。一時国民は、とにかく講和ということに対して、單独講和或いは全面講和という問題が明らかになる前に、とにかく講和というものに対して相当近いのではないか、こういう関心を相当持つてつた。最近においてはいわゆる客観情勢ですか、講和の問題は一にかかつて客観情勢によると総理施政方針演説に述べられている。その客観情勢は非常に変つていると思う。客観情勢と睨み合せて講和の問題はどういう状態にあるか、この点についてお伺いいたします。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は種々申すのでありますが、今日日本政府としては、在外公館その他の機関がないのでありますから、客観情勢の推移は今こうである、ああであるということは、あなた方諸君と同じく、新聞雑誌以外に何もないのでありますから、従つて客観情勢と申すことも、新聞雑誌にある以上の知識は持合せておりません。又新聞雑誌を通じての海外の情報を考えて見れば、実はこの間、いつでありましたか御説明いたした通り、客観情勢は甚だ講和問題については不利に動いていることは、オーストリアにしても、ドイツにしても、今尚講和條約ができないような状態であります。又日本に対しても早期に講和締結という議論がありますが、同時にこれを妨げる事情もあつて、曾ては戰後間もなく或いに一、二年にして講和ができるかとも考えられたのでありますが、この客観情勢なるものは、講和に不利なように動いているということは御存じの通りであろうと思うのであります。予期したよりも遅くなつたというのが私の結論であります。そうして何故遅くなつたか、どういう理由で遅くなつたかということは、確定的に私が特に政府の持つている情報として今お話するだけの資料はないのであります。
  72. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 総理は外に御用があつて退席したいとおつしやるのですが、成るたけ簡潔に……
  73. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 僕はもう一つ、これだけです。最後に、今お話を伺いますと、單独或いは全面講和、そういうことは別問題にいたしましても、講和の時期が予想したよりも相当遅れるといういろいろな新聞雑誌その他の情報を総合すれば、そういうふうに総理考えられている。そうしますと非常にいろいろな問題にこれが影響して来ると思うのであります。政治、経済その他にいろいろな微妙な、デリケートな影響が現われて来ると思うのであります。特に講和の問題、即ち日本の貿易の問題などについては、これは非常に関心を持つているわけでありまして、今の日本の不景気を直す一つ対策として、やはり中国との貿易というものを非常に大きな要素に考えられておるわけであります。そうしますと、そういう中国との貿易もどうも前途は楽観できない、なかなか十分に伸張できないということになると、相当日本の経済界もこれは又苦しくなる、非常に重要なことになると思うのですが、従つてこれまで総理はいつ頃が予想をされますとか、いつ頃講和ができるものと予想されていろいろな政策を立てて来られたか、それとこれは非常に違つて来るわけですね。いろいろな政策が……どういうふうにその政策が違つて来るか。この点最後に御答弁を願いたいと思います。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは客観情勢による、客観情勢の推移によつて講和が早くなり、遅くなる。これによつて日本に対して多少影響が違いますが、併しながら現在の事情、現在の情態を土台として予算等を組むより仕方がないのでありまして、現在の状態を基礎として予算を組んだのであります。
  75. 内村清次

    ○内村清次君 対日講和の問題につきましては、私詳しく総理にお尋ねしたかつたのでありますが、今日は只今木村委員の質問に対しましても総理の御答弁がありました関係で、関連しまして数点お伺いしたいと思います。総理の只今おつしやいましたのは、客観情勢のため対日講和は少し遅れておるというような御答弁でありました。この答弁総理の御答弁を聞く国民といたしましては、これは相当失望感に打たれることと私は思います。問題は客観情勢のために遅れておるというそのことを、実は私も総理の今までの国会における答弁の段階からいたしまして、聞きたかつたわけです。これは二月二十八日の衆議院の本会議におきまして、この論議が、いわゆる共産党の野坂君に対する何と申しまするか、反対的な論議に、これは自由党の星島君がやつていたようでございますが、その中にはいわゆる自由党の代表議員といたしまして、いわゆる全面講和も望ましいけれども、併しながらこれは現在の国民感情から考えて見たならば、單独講和或いは又多数講和も止むなしというような発言であつて、而も又総理大臣もこれに唱和されてそういうような御答弁をなさつておる。そのときにやはり客観情勢という含みというものが、どの連合国の特定国にあるという点を、これは国民感情の即ち裏におきまして何か匂わせるような御態度の御答弁なつておる様子、而も又一番結論におきましては大分共産党のことにつきまして相当国民のためにこれを排撃するというような激烈なお言葉も使つておられるようでありますが、その後におきまして、いわゆる十四日の日にソ連と中共との友好同盟が発表せられて、その二條にもやはり連合国は早期対日講和を考えなければならないという條項も入つて来ておる。そうしますると、直ちに総理は本会議におきまして我が党の勝間田君の御答弁には、こういうような、即ち客観情勢は対日講和を遅らせる情勢に立至つたというような御答弁をなさつておられるのでありますが、総理は一体客観情勢というこの事態、これは長らく総理といたしまして外務省関係にも携わつて、世界の外交に対しても相当造詣深い方でありますが、どういう客観情勢のために遅れて行くのであるか、この点につきまして第一に総理の率直な一つ御感想を述べて頂きまするのと、それから私が最初申しましたように、国民は斉しくこの講和につきましては関心を持つて、その早い締結を望んでいることは私がもう申すまでもない。終戰後もも五ケ年にもなる今日であります。こういう状態のときでありまするからして、総理はあらゆる、勿論外務大臣といたしましての、これは何と申しますか、相当外交手腕を、勿論今国として同列の、又独立国といたしましての外交はできないといたしましても、やはり外務大臣といたしましての即ち職責からして、こういうような情勢の緩和、いわゆる一日も早くその締結のできるような方向に、御発言及び外交手段をおとりになることが総理といたしましての職責を十分果されることにつきまして最も大事なことであろうと考えます。そういう観点に立つて考え方、外務大臣としての考え方の点も第二点としてお伺いしたい。  第三点といたしまして、これはもう一つ総括的の時間の関係で申上げますが、十九日のロンドンAFP電におきまして、いわゆるソ連から、今日本の外務省に対しまして、いわゆる中共貿易を大幅に、これを條約的に認めたならば千島列島を返還してもよろしいというようなことが出ておりまするが、こういうようなことは、これはいわゆる現在の貿易市場につきましてもアメリカの貿易市場においては、やはり結論といたしまして七〇%乃至六〇%の市場は持つているけれども、英連邦は二〇%、又これはアジアも含んでおりますが二〇%というような点であるし、日本の貿易振興というものは中共を含むところのアジア圈内を先ず考えなければ今後の貿易振興はできない。自立経済に移れないという状態でありますが、中共貿易に対しまする総理といたしましてのお考え、この三点につきまして御質問申上げたいと思います。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 客観情勢としばしば私は繰返しますが、最近の状態においても、例えばイギリスに例を取りましても、イギリスの総選挙の結果は、政界不安定といいますか、與党も野党も殆んど同数というぐらいな接近した多数であるし、外交政策については両党とも非常に違つた意見はないでありましよう、外交でございますから……、併しながら対日講和を論ずる場合に、若し重要な点について意見が違つた、両党の間に違つた、或いは政府日本に対して或る政策を強行する、対日講和を成るべく早期にやる、或いは講和條約内の問題について、反対党の意見を押切つて政府が自党の意見を強行するということになれば、自然に問題は早く片付くでありましようけれども、今日の政府の力としては、イギリスの政界の状態としては、政府は余り強い政策は採れないということもありましようし、即ち総選挙後のイギリスの政界の不安定ということが、或いは対日講和を遅らせるとまで言わなくとも、問題の解決を遅らせはしないかということを私は心配いたします。又その他中国の関係にしても今尚内乱は大体治まらない。従つて政治上のいろいろな問題があるでありましようし、対日講和は早急に解決するとしても、中国としては強い政策も採れないということもありましようし、又東南アジアにおける不安定の状態、要するに洋の東西を問わず、今日の状態は甚だ不安定な状態であり、従つて対日講和を早急に取決めるとしても、若し何かの問題について難点が生ずれば、その解決は容易ならん時間をとるとうことも考えられるのでありましよう、曾てよりは国際の情勢が不安定になつただけ、それだけ対日講和は勿論のこと、その他の国に対する講和も自然遅れるということも想像し得られるのであります。そこで私共は終戰後間もない一、二年にして講和の時期に際会するものという希望を持ち、考えてもおつたのでありますが、それができずに今日に至つた。然らばいつできるか。皆成るべく早く対日講和をしたらいいということは、これは各国とも考えておるようでありますが、その実現については実際の状況においてどうだろうかということを心配いたします。  それから二番目の講和に時期は、只今申上げた通りに私共が希望いたすよりも遅くなる。そうして又いつになるかということについては、今日予定もできないのでありますけれども、各国共に早期講和ということを言つておりますから、そう長くいつまでもうつちやらかして置くことはないであろうと思います。  又日本との関係を平常な関係に復した方が列国共に貿易その他から考えて見ましても利益があるでありましようから、無期限にということはありますまいが、然らばいつということは私においても今判定いたしかねます。  それから千島伝々のことにつきましては、これは政府としては何らの交渉を受けておりません。電報は私は見ましたけれども、政府として何らの折衝といいますか、交渉を受けておりません。  それから中国との交易でありますが、これは中国との交易を成るべく早く復旧するのみならず、増進いたしたいと思いますが、今日は僅かに香港を通じての貿易がある。又その他多少の貿易というか、密貿易というか、多少の貿易はあるでありましようが、今日のところでは、南北共に戰乱の状態におるものでありますから、平常の関係において貿易取引は進んでおらないことは誠に遺憾と思います。
  77. 内村清次

    ○内村清次君 それから第二番目に外務大臣としての御責任上、即ち早期講和に対してどういうお考えを持つておるか……
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは言い残しました。我々としては無論成るべく早く、一日も早く締結せらるるように努力もいたし、又努力いたしたいと思いますが、然らばどういう話をしておるか、どういう処置をとつたかということは、相手のあることでもありますからして、申すことを差控えたいと思います。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行について発言したいと思いますが、実はこの次私の番になつておるのでありますが、総理は何だか都合で今日は午後から出られないということになつておる。それは一応了承します。了承しますが、まだ各党の代表質問が終つていない状態であつて、実際本格的な審議といいますか、総括的な質問からいつて明らかにしなければならない問題が一通り……総理の出席が今まで少なかつたためになかつた。更に各代表の質問が終つても、その後に各委員の質問があるだろう。総理の出席は成るたけ余り時間を切つて……無論忙しい事情も分りますけれども、できるだけ出席をして頂きたい。取敢えず私の明日の質問に対しては、明日午前中の出席があるかどうか。その点確かめて置きたい。
  80. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 総理は明日は午前中御出席なさるそうでありますから、午前はこの程度で打切りまして、午後一時半まで休憩いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩    —————・—————    午後二時四十二分開会
  82. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それではこれから会議を開きます。先ず通告順によつて発言を許可いたします。赤木正雄君。
  83. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 私は農林大臣に先ず開墾の問題からお尋ねいたします。昭和二十年から二十四年の九月までに三十七万町歩の入植或いは増産のための開懇がされております。初め百五十万町歩の開墾を計画されていたのでありますが、後の残つた分は今後どういうふうにお考えなつているか、その点を伺いたいと思います。
  84. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 百五十万町歩というこの開墾予定地は、前内閣のときに立てられたのでありますが、これは恐らく基礎のない数字であつたんではないかと存じております。それがために昨年の春でありますか、この百五十万町歩の開墾が進捗しないで、早くこれを進捗せよという関係方面からの注意もありましたので、農林省といたしましては一応これを各府県に割当てたというようなこともあつたようであります。併しこれは立地條件が備わらなければ開墾したくてもできないのでありまして、恐らく今日は各府県においても開墾の可能なるところは大体開墾が終了いたしておると考えておるのであります。で、今後問題になりますのは、平地林と相当勾配のある土地でありますが、申上げるまでもなく日本は非常に雨の多い国でありますので、傾斜地におきましては、耕地を作りましても表土が流れてしまつて駄目なんであります。これは十五度以内ということに制約いたしておりますけれども、十五度それ自体が作付の状況によりましては地方を年々減耗さして行くのでありまして、将来立派な耕地として維持することは困難な情勢であるのであります。併しながら十五度までは今日まで認めて参つたのでありますが、今多く各府県で問題になつておりますのは、この平地林が開墾すべきかすべからざるかということが問題になつておるのでございます。これは一昨年の十一月に次官通牒を以て、それより余り逸脱せないよう注意いたしたのでありますが、これが徹底いたさなかつたのであります。更に昨年この適地であるかどうかという審議会を府県に設けさすことにいたしました。その府県の審議会においてこれは開墾してもいいということを認定した場合において、農地委員会がこれを買收し得るという制度を設けて、逸脱した平地林の開墾を牽制する処置をとつておるのであります。日本食糧事情から申しまして耕地拡張は必要であるのでありますが、それが逸脱いたしましたことになりますと、却つて食糧増産を傷つけるという事実があるのであります。現に昨年徳島県で起りました被害の状況を見ましても、山裾の遊水地常、いわゆる平地林を開墾いたしましたがためにその遊水林の次にある立派な熟田がすつかり一尺五寸からの表土が流れてしまつた。そうして岩石が出て来たという事実があるのであります。これは耕地拡張するという手段が却つて耕地を失うという手段になりますので、適当な平地林もこれは開墾すべきところはすべきでありますが、逸脱した平地林、未耕地の開墾は今後その実情に即してこれを是正して行きたい、かような考えを持つているわけであります。
  85. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 最初の百五十万町歩の開墾地が殆んど杜撰なものであつた。実はむしろ私はその農林大臣と同じ意見なんです。この問題をちよつと貴族院の終りの頃に私も審議したときに、殆んど参謀本部の図面で、これは閣墾に適する、こういうふうな有樣でありました。私はこの議場でこれは全く計画性がないのだ、殆んど机上のプランたど言つて、これ程乱暴なプランはないというふうな観点からして初めから私はこれは不賛成だ、こんな杜撰な百五十万町歩の開墾は意味がないということを申したのでありますが、丁度私の思つたところと同じようなお考え農林大臣考えておられることは、同じ観点からして私非常に嬉しいと思います。併しそれにつきまして、では現在行われている開墾そのものについてもいいか悪いかこれも農林大臣お話がありましたが、昨年の暮に私は群馬県の榛名山の一つの開墾地において、これは群馬県としては最も効果の挙つた開墾地とされております。併しその立地状況を見たときに、果してここに森林を育成さしておいた方が生産価値があるか、或いは食糧増産食糧増産と申しましても、開墾地では普通の土地程そう多くの食糧はできません。そういう意味から食糧増産、或いは入植の関係で、開墾した方がいいか、丁度その際農林省から開拓局の関係又林野局の関係を見てみまして、一体両方の立場からよく検討されて開墾されているのか。ところがそういう具体的の検討はない。つまり開墾適地としてこれを開墾しておるのだ。恐らく全国ともこういうふうな観点から、これは或いは土地関係、或いは交通の関係、或いは傾斜の関係、地味その他を勘安して開墾されておると思いますが、もう一歩進んで永久性の開墾をなる場合には今申した通りにどちらの方面に生産があるか、開墾した方がよいか、或いは植林にした方がよいか、治水問題を別としましても、長い観点からどちらの方にした方がよいか十分そういう観点から開墾は計画すべきものだ、遺憾ながらその計画がないのは残念と思います。のみならず、もう一歩進めて行きますと、一体昭和十二年からして例の昭和十九年に至るまでの宅地その他の工場が約九万九千町歩、広場の敷地、例の飛行場その他六万六千町歩、こういう農地がそれだけいろいろに利用されていました。その中には、すでに飛行場のごときは開墾されておるのもありますが、工場のごときも、殆んどまだ工場が建たなく、又無論耕地にも復されていない。一体日本国土計画の立場からして将来の日本をどうするかという場合に、工場として置いた方がよいか、そういう土地をやはり農地に転換した方がよいか、或いは一つの市街を造るにしましても、その市街の性格を如何なる性格の市街にするかといえ科学的な観点からされておるものは日本には一つもない。言い換えるならば、将来の日本考え国土計画の本当の案というものは少しもないじやないか。これは農林大臣御一人にお伺いしても少し的外れかも知れませんが、そういう状態でありますからしてこの農地のごときも今まで立派な農地が工場になつておるものを、これを又農地にした方が将来の日本としてよいじやないか、こういうふうな観点が十分ありますからして、これは單に農地の関係から考えましても、早く日本の総合した国、全体としての国土計画をお立てになつて、その線に向つて開墾も或いはすべきものはする、或いはしなくてもよいところは廃止して貰う、一日も早くこの計画をお立てになるのが日日の立場からも当然と思いますが、これに対するお考え如何でしようか。
  86. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 御説誠にお尤もでありまして、河川、道路、市街地というものは一連の関係を持つことは申上げるまでもないのであります。  道路の改修にいたしましても、河川の建設にいたしましても、これが住宅、いわゆる市街地と結び付くということは当然な帰結でありますので、この問題に対しまして、この農林省関係の林野行政、或いは耕地行政等の問題も、この国土建設的立場から考えて行くということが勿論必要なことと考えておるのであります。今日でも森林の関係にいたしましても、或いは開墾等の問題が起りましても、やはり建設省関係の事業と相協力いたしまして、そうして仕事の無駄のないように、そうしてその目的が一つになるようにやつて行きたい。この考え方を以て進んでおるわけであります。今後未開墾地等の開墾につきましてもこれが市街地としてよいか、或いは耕地として変更すべきかということも、今赤木さんのお述べになりました見地からいたしまして、総合的な立場でこれに検討を加えて実施いたしたいと考えております。
  87. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 その点は私の考えと同じでありますから、これ以上申上げません。  次にお伺いしたいのは、農地の交換分合は今後の農村経営として最も大事なことであります。昭和十四年から十八年までに四十八ケ町村の土地の交換分合ができたと報告されております。果してこれが合理的にできておるが、私の存じておるところでは、京都府の天田郡雲原村の交換分合は根本的にできておる、これ程よくできておるのは他に日本にはない。ここは水害地で治水と同時に利水を行なつて、そのために新らしい人家を三十七戸造つて、その家の周囲の土地は皆その家に属するようになつた。以前は自分の農地というものは一里も一里半も行かなければならなかつた。今では自分の周囲の土地はその家に属しておる。これ程完全に行つております。それがために昨年も進駐軍から見に来て、これはどうしてできたのかという話があつた。これは昭和十年の大水害に鑑みまして、その治水の結果、單に治水だけでなく、同時に土地の交換分合をやつてあの貧弱な村をあのように立派な村にした。これもその時の村長さんの努力でできたのであります。こういうように指導者もよかつたが、又政府の指導もよかつた。こういうふうに一貫性があつて初めて立派な農業経営ができると思います。それで農林省の報告では四十八ケ町村が農地の交換分合ができておるということでありますが、この四十八ケ町村のうちには水害を蒙つたところも、又今後水害を蒙るところもありましよう。従つて水害を防ぐために、つまり治水と同時に土地の交換分合をやるという方向に向わなければ、労力なり資金なりで非常に無駄でありますから、これに対する農林大臣のお考えを承わりたい。
  88. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 農地の再分配をいたしまして、今後の日本農業といたしましては、この小さい農業ができるだけ能率を高めて生産力を高めて行くということを第一に考えて行かなければならんことと思います。土地改良法を昨年国会に提出いたしまして御協賛を得たわけでありますが、この土地改良法に対しましても、農地改革の終局の目的は農地の交換分合であるといつたような構想を以て改良を進めておるのでありますが、今お話のありました通り農地の交換分合ということは一つ理想でありますが、なかなか実現はでき得ないのであります。今お述べになりました京都府のごときは大洪水があつて、その村の耕地が甲乙の差別なく一応埋没してしまつて御破算になつてしまつて耕地整理によつてこれを何とかしなければならんという現状に立至つて、初めて農地の交換分合よりはむしろ耕地の分配ということが強調されて行われたものと思うのであります。これはそういうふうな原因のない土地改良区を設けまして耕地の交換分合をやろうといたしましてもなかなかでき得ない。と申しますのは、地方が非常に違うのであります。一町歩を区画しておりますところも、十町歩を区画しておるところもあります。又灌漑水の位置等によりまして非常に土地に肥瘠がありますし、耕作者の便、不便といつたことによりましても、これを交換分合することはなかなか容易なことでないのであります。併し今後農業を合理的に経営する上におきまして、あちらに飛びこちらに飛ぶというように散在しておる耕地を耕作することは非常に能率の上からいつても不都合でありますから、できるだけ一固りのところにこれを集合するということを考えて行かなければならない。併しこの農地の交換分合には用水、排水というものをよく考えてやらなければ、交換分合にために一局部に耕地が固つてしまつて、そこが年々水害を受けたり、或いは旱魃を受けるというようなことがあつては、耕地の交換分合をやりましたため却つて一部の人が損をするということになりますので、今お話に例をお挙げになりましたように非常なシヨツクによりまして、地方が協力して耕地を作り直そうかというような機会を得ることは、誠にこれはそういう場合において一つの禍を転じて福となすことになるのでありますが、普通の耕地におきましては、なかなか容易ならざる事情があります。併しながら、農地の改革の究極の目的が、能率を上げる上において交換分合が必要であるということを考ますならば、地方の希望によりまして、そうしてそれが実際でき得るかでき得ないか、無理にこれをやるということでなしに、耕作者の十分なる理解の下にその耕地の交換分合のできるように指導して行きたいと、かように考えておるわけであります。
  89. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 私の今挙げた例につきまして、農林大臣は、非常に大水害を受け大きなシヨックがあつたために、禍を転じて福としたと、こういうようなお話でした。成る程水害を受け、それが原因になりました。併し、今お話通りに、土地には無論地味のよいところもありますし、又悪いところもありますからして、この村におきましても、先ず土地の交換分合をするに当りましては、土地改良も十分やつてしまつた、殆んど一村同じような地味にする程土地改良もやつて来たと、又交通のこともお話がありましたが、これは無論申すまでもなく、この村に行きましたならば、どの畑に行くのにも農道のないような畑は一つもない。無論農道も考え土地の地味も考えて、初めて土地の交換分合ができるのであります。だから、農林大臣は無論それをお考えに上に、單にその町村が自発的にやるならば、土地の交換分合に持つて行こうというような考えではなかなかできるものではないので、私はこの前あの農地法ができましたときに、そのときの大臣は和田さんでしたが、私は農地法のできるときに、この際の土地の交換分合ならまだできる、併し農地法が決定してしまつて、小さい農家がおのおの耕地を得たときには、今後の土地の交換分合は非常に困難になるということをはつきり申したのです。事実その通りで、今土地の交換分合は、あの農地法の際ならばできたかも知れませんが、非常に困難だと思います。でありますから、政府の御方針では、昭和二十五年から五ケ年間に百七十一万五千町歩、又昭和二十五年に全国九百二十ケ町村十八万四千町歩の交換分合を計画されておる、こういうふうなことを聞きましたが、果してどういう理念の下に、これらの土地が、先程申した通りに、農道もでき、或いに地味の良否も大体これを一様にすると、或いは治水、利水、それも十分考えておられる案かと、それを承わりたい。これがなしにただ計画をなしたところが、とてもできるものではありません。でありますから、実態のところをお伺いしたい。
  90. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 詳細な計画の内容につきましては、私も詳しく承知いたしておりませんが、今回の土地改良法によりまして、従来行なつておりました耕地整理というものが、土地改良区となつて行われるのであります。そういう機会に土地の交換分合ということを行うという、これが原則として考えられることであります。その意味におきまして計画を立てて進みたいと、ただ單に地方が希望するからというのでなしに、地方が希望する場合においては、昔の耕地整理法に則つて、そうして耕地状態を同一の環境に置くという、この整理の目的達成と同時に、交換分合、これは耕地整理として当然やることでありますが、そういう方に指導して行く計画を立てておることと存じます。
  91. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 重ねて申しますが、幾ら土地の交換分合をいたしましても、これは一番将来の被害となるものはやはり水害であります。でありますから、土地の交換分合をなさる点におきまして、建設省とか、或いは農林省とか、そういう各省の考えに余り囚われないで、いわゆる国土再建という意味から、治水、利水を一丸として、特にこの点にお考えあるように希望を述べて私の質問を終ります。
  92. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 農林大臣に御質問申上げたいと思います。農村の一番重大な問題で、我々考えるところによると、新農村を建設するためにはどうしても農村協同組合を強化しなければならんと、かように存じておるのでありまするが、大臣もその点は御同感でございまするが、然らばこれをどうして強化拡大するかということになつて来ると、大臣の御答弁を本会議あたりで聞いておりまするというと、大体協同組合は自主的なものだから、自主的にやつて行くべきもので、自主的にやらなければ提案のしようもない、こういうような御答弁のように伺つておるのでありますが、併し今日の農村は、御承知のように、土地の担保力もなくなつておるし、農産物の鋏状価格差の開きもどんどん大きくなるし、米価の問題、あらゆる点から農村が非常な転換期に立つておるというので、そういうときにただ野放しに協同組合が自主的に回復しなければ応援できないということでは私は困ると思うのです。そこで私は、一体そういう根本方針に対して、何か自発的に政府がこれを保護するという意味で積極的にこれを考えておる点があるかということを先ず伺いたい。
  93. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 協同組合の組織につきましては、御承知通り農業者が自分の業種の弱い力を協同の力によつてつて行くという気持で組織されておるのであります。これはつ農業会というものと比較検討を加えられる場合が多いのでありますが、農業会は御承知通り、法律によつて、地方の農業者の三分の二以上の発議があれば、農業を営む者は、或る限度はありましたが、全部農業会に加入しなければならないという強制加入であつたのであります。なぜ農業会を強制加入によつて組織させたかと申しますと、当時の政治のやり方が、政府のやる仕事を農業会を通じて行なつたのであります。従つて農業会員が自分のところで欲しないというような、幾らか不都合のあるような場合がありましても、農業会をしてこれを敢行せしめたという、こういう政府一つの執行機関とも見られたのであります。従つて、この農業会に対しましては、補助政策を採りまして、そうして技術員の指導であるとか、或いは事業の遂行等について補助をいたして来たのであります。これは当然なことと思うのであります。併し、今回組織されました協同組合は、全然その農業会と意味を異にしまして、先程も申しました、農業者自身が自分で必要を認めて協同の力をまとめて行くと、こういう組織でありますので、一村におきましても、三つも四つも協同組合ができております。そうして加入、脱退は自由でありまするから、加入しようと、しまいと随意であるというような、自由な立場に置かれておるのであります。併し、今後の政府農業政策は、この自主的にできました協同組合を目当として行なつて行きます。これは昨年農政局に農業協同部を作るか作らないかというような、いろいろ御議論のありましたときに、私はその信念を申上げておつたのでありますが、農業政策は相手方が協同組合である。それであるから、協同組合部というものを作らなくてもよいという気持を持つてつたので、現在でも日本農業政策を行う上においては、協同組合が相手である、かように考えておるのであります。然るに、協同組合を組織いたしましたが、先程申しました農業会の腐れ縁と申しますか、いろいろの財産の引き継ぎであるとか、或いは債権債務の引き継ぎというようなことで、新らしく生れてからまだ二年余りの協同組合が、相当な負債の背負つておるという現実であります。而も、これがばらばらにできまして、非常に力の弱い協同組合となりましたので、今回皆様の御審議を得まして、地方におきましては、販売、購買連合会を一つにする。そうして、指導組合と信用部と、いわゆる三本立、中央はやはり販売組合、購買組合、指導組合信用組合とこの四本立、地方は三、中央は四、こういう連合会の組織によつて成るべく同じ農業者があちらの組合にもこちらの組合にも入るというような、いわゆる力を分散しないような指導をして行きたい、かように考えているわけであります。ただ今問題になりますのは協同組合がそういう経過を辿つて参りましたために非常に力が弱い、力が弱いというのは信用力に代るべきいわゆる担保力を持たないということであります。従つて今後農林中央金庫等より資金を廻すとしましても、個人としては不可能でありましようから、協同組合の信用によつてこれを融通いたしたい、かように考えておるわけであります。そこで組合員になられる農業者におきましても、今までのような国家の助成だ、保護だというような気持を拾てて、自分らの業態を保護する、協同組合ということ、協同組合を自分らのものだという気持で組織して貰うということでなければ協同組合は発達しないと思います。或る地方に行きますと、協同組合員でありながら自分の協同組合に金を預けない、隣りの郵便局や銀行に預けて、自分の作つている組合を自分で信用しないというような協同組合員がある。そういう組合に誰が、第三者が信用を高めるか、こういう問題であります。これは政府としましては補助金を出す、特別の取扱いをすることはでき得ませんから、これは経営者に対する指導をいたして行くことといたしまして、そうして組合員自体が自分らの組合だという気持で、組合の強固な発達をして貰うということによらなければならない、かように考えておるのであります。これを組合員自体が自覚して貰うということによつて、協同組合が本当の線に、軌道に乘つて来るのだという考えで、その軌道に乘せるように積極消極に政府といたしまして指導して行きたいと思います。今までのように政府が勧誘することは許されないのでありますから、その意味において指導奬励をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  94. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 協同組合は確かに自主的なものでこれはその通りでありますが、何の商売によらずこれは自主的だと思うのであります。そういう自主的なものだから自分勝手にやれということはこれは全く我々には分らないのでありますが、特に協同組合のごときは終戰後いろいろな、前の農業会の悪い資産を引継いだり、そういう中においても尚且つ政府農村対策に対して協力をして参つている。その点において非常に農村の協同組合は割の悪い立場において政府に協力していると思うのであります。だからこそこの際農村がこういうふうになつて来る現状において、農業協同組合を世話する政府責任があるし、又本当に新らしい農村を築くためには、何としても協同組合を盛んにしなければならないというようになつて来れば、私は今後の日本の新農村の建設のためには、今のようなただ農業協同組合員自体が自覚が足らないからそれでいいのだ、目を覚まさせるための指導をするのだ、そういうことでは誠に私は、何というか弱いものには世話せんで、喧ましく言つて来るところの、力のあるところの大金融資本には世話するが、ばらばらになつて自先の見えない農民には構わない、こういう見解だと思わざるを得ない。それでは誠に困るのでありまして、そういう弱い、自分農業協同組合を作つてつても、その真意がまだ徹底しないと農林大臣はいわれますが、そういうところであればこそ、私共は政府としても特別のいわゆる担保力を作らせるなり、経済的実力を與えるなりしてその自覚を促さなければならない。ただ目を覚ませ覚ませといつても、自分の力がある程度まで固まらなければ、誰でも銀行の方に預けてしまう。或る程度農業協同組合に力が付いて来れば、誰でも自分の組合だから金を預けて、強化を図るが、今のような状態では目を覚ませといつても、これは言う方が無理なんで、どうかその辺を考え直して、何か特別の方法はないか。例えば見返資金の方からでも特別に緊急に農村の方に長期に低利な資金を廻して貰う、そうして協同組合のいわゆる基礎的な固定的な資産の拡充を図るようなお考えはないのでございますか。
  95. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 協同組合を潰すも起すも組合員の考え一つだと私は考えております。併し協同組合に対しましては政府は飽くまでも干渉はしてはならない、内面的指導をしてはいけないということが堅く制約させておりのであります。併しながら今日の協同組合の実態から申しまして、このまま放任いたしますれば、これはもう破滅せざるを得ないような協同組合ができているのであります。それで今回協同組合法の一部を改正いたしまして、協同組合自体の資産、自己資産の拡充、これが余りにも自由に任してあるために、十分にその獲得ができておらないという事実等もありますので、今回少し当初の法制とは変つておるような気持がいたしますが、そういう自己資産の拡充ということを指導して行きたい。又場合によりましてはこの内容等について監督の一項目も加えまして、無理なことのできないように、誤つたことのできないように指導して行きたいと思つております。こういう制度が実現しますことによつて組合の基礎が確実になり、信用が高まり、又政府といたしましてもその内容はよく承知いたすことができまするから、担保力なき組合員でありましても、政府の資金の融通等もおのずからそこにできて来よう、かように考えて今回協同組合法の一部を改正する法律案を御審議願うことになつておるわけであります。
  96. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 どうも大臣の話を承つておると、まだ具体的に物質を以て協同組合を強めるという考えには相成つていないということが言えると思いますが、特に協同組合で問題になつておるのは、報奬物資を今まで扱つてつたところが、皆んな最近農村が金詰りで報奬物資を受取らないという傾向がどこにもあるのであります。ところで受取らないので政府が今度三割引きにして受取つて呉れという話になつておるそうでありますが、最近聞くところによりますと、三割引きでなくて、要らなければ農村からもう報奬物資を持つて行くという意見政府の一部にあるということを聞いております。この点本当ですか。
  97. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 昨年度の藷、麦に対する報奬物資の問題についてはここ一旬以来非常な問題になつておりますので、政府は速かにこの問題の解決をいたしたく関係各省寄りまして協議を進めておるのであります。今日でもその結論を出したいと存じておるわけでありますが、これは御承知通り今まで加工品で配給しておつたのが大部分であつたのでありますが、これは是非原反でそのまま配給しろ、こういう強い要求もあります。殊に報奬物資であるから、商売人を通じて全部協同組合を経由しろという強い主張もありまして、更に農林省等におきましてもそういう意見も大いに無理もないことだという考えを持つてつたのでありますが、昨年の成績を見ますと六割が協同組合で、四割が普通の商業団体になつておるのであります。ところが一月になつて取引高税が廃止になり、織物消費税が一割減じましたために市価の方が安くつく、九月に配給いたしまして十月、十一月頃に配給が終つたところは別に問題がなかつたのでありますが、これが一月になつて配給しようと思うときにおいてすでに値が下つておる、市価の方が安い、そういう高いものを我々は買わない。それで協同組合から一応配給いたしましたけれども突返して来た、突返して来て非常に困つたというのが事実であります。又中には農家から金を受取つて金が問屋に方に廻つていない組合もあります。又取つた金が手形になつておつて、その金が他に融通されておる組合もあります。従つて一応初めの問題は今まで農家が金がないし、高いし、引き取れないから、問屋としても仕方がないから全部原反は返して下さいということを申出たわけであります。そうしなければ問屋といたしましては、二月二十八日が手形の期限で破産してしまいます。若し我々の持つている手形を失効いたしますと、各県の協同組合が潰れてしまう、共倒れになるから何とかしようというのが二月の末の要求でありまして、何とか早くこれを処置しなければならない、ところが内容がいろいろ区々になつておりまして、はつきりこれを掴むことができませんので、全購連等を通じまして、又農政局を通じまして、各県の状況を調査いたしたのがいろいろ内容が変つておるのであります。原反は返したくない人もある、割引してくれさえすれば欲しい、そうでなければ返してもよい、紺木綿のごときは返しても、又農家に来るのだから割引して欲しい、自転車の場合には乘つてしまつたから返せないというように種々雑多におかれておるのであります。併しいずれにいたしましても、これは、手形を発行されておりますので、金融機関の状況から申して手形をいつまでもそのままにしておくわけにも行きませんでしようから、この手形の解決を第一に考えなければなりません。又農家に対するお礼の意味で出した報奬物資でありますから、下落するということは止むを得ませんが、できるだけ現在の価格に合うようにしたい。こういう意味関係各省が協議をいたしておるのであります。この問題解決につきましては、相当の金も用意しなければならんのでありますから、そういう金をどこから持つて来るか、こういうことと金の多少に拘わらず、そういう理論が立つか立たないか、いろいろな問題から今研究を進めておるのでありますが、これは荏苒を許さない重大な問題でありますので、今明日中にも解決いたしまして、そうして協利組合なり、或いは卸商等が落着くようにいたしたいと考えておるわけであります。
  98. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 農村では折角協同組合も報奬物資には随分苦労をしておるので今言つたように、大臣のおつしやつたようにいろいろな事情がある、それを簡單に政府の方で簡單な気持で、そういういろいろむずかしい問題があるから、むずかしい問題に触れたくないから、一律にそういう問題の報奬物資は、取上げてしまおうじやないかというような考えがあるとすれば、それは誠にいろいろ苦労をしておる協同組合に対して同情がなさ過ぎると思うのですが、今御研究のようでありますから、是非共余り弱い者いじめをしないように御研究を願いたいと思うのであります。  それからこれは地方河川の氾濫、赤木さんが見えたのですが、赤木さんがいつも問題にしている砂防の問題が日本は不十分のために、どこの河川も川底が上つてしまうために、排水機或いはそういう潅漑、排水の問題が方々で殖えて参つております。ところが排水機問題についてどこでも非常に問題が多い、始終ごたごたする、結構なことであるけれども始終ごたごたするということは、私に言わしむるならば、いろいろこういうことを考えるのが……この契約をさせることについて本当に地元の農民の参画を許していないからじやないか。ともすれば技術は一番大切でしようけれども、技術よりもその村に住んでいる人たちの長年の経験というか、生活の態度そういうものが相当に取入れられなければならんと思うのです。そこで今後はそういう排水機の問題に対して何か地元農民を、その計画或いは技術的な問題に関連してまでも、そういう計画を入れた意味計画に参加させるところの御意思はあるかないか伺いたいと思います。
  99. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 河川の改修の問題だと存じますが、用水排水共にありますが、こういうものを施設いたします場合におきましては、一応技術的に計画を進めるのであります。その河川における一年を通じた水量等、或いはこの水量がどういうふうに潅漑され排水されなければならないかという技術的な立場から一応計画を進めるのであります。この計画を立てまして、そうして地方にこういうふうな計画を以てやりたいと思うことは、町村会とか或は市会とかいう方に相談いたしまして、そうして地方の希望なり或いは意見を十二分に質すのであります。そういうことをしなければ工事の進捗について地元の協力を得ることができませんし、又円満なる工事の遂行ができないのみならず、若しも技術上誤つた施設をやつて、却つて個々に迷惑をさせるようなことがありましてはいけないので、これは十二分にそのことを地元と協調をいたしまして決定いたすことになつておるのであります。ただここにこれらの問題については随分昔から因習と言いますか、習慣と言いますか、随分不文律がありまして、なかなか理窟通りに行かないのがあるのであります。先般私は岡山の或地方に行きまして、この用水問題について慣例に支配されて迷惑しておるということを聽かされて来たのでありますが、これは到るところいわゆる水利権であるとか、排水権であるとかいろいろなものが、いわゆる旧幕時代から培われておると思うのであります。そういう関係で用水路を作るにしましても、この位置がいいとかあの位置がいいとかという問題が起るのであります。現に農林省の指導いたしておりまする河川の水路を設ける上におきましても、我々技術者といたしましては、ここに置きたいと思う際に、地元としては下流に置いてくれということをやかましく言つて、協調が纏まりませんという報告が来ている向きもありますが、そういうふうに地元の意見も尊重しなければなりませんが、そういう固隔意見によつてこの百年の計画を誤まるというようなことがあつては大変と思います。そういう場合においては技術者の立場から断乎とした措置をとる、若しもそういうことが実行できなければ工事は中止するとまで考えなければならんと思うのでありますが、御説の通り工事の原則といたしましては、地元に十分なる了解を得ることに努力いたしまして、そうして協力してこの工事を進めて行きたい、そのような考えを持つて指導いたしておるわけであります。
  100. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 これはこの間栃木県の諸君が排水機の問題で大分陳情に上つたものですが、地元で非常な混乱をしておる。どうも政府の土木事業というか、或いはこういう農村土木もそうでありますが、ともすれば建築土木業者と顔役とが結託して、余り事情に通じない農民を愚弄する傾向がある。併しその中に本当に農民の代表を、こんな顔役でなくて本当の働く農民の代表を入れるような今後の組織を、排水機事業の計画の組織に入れるお考えがあるかないかということを聽いているのですが、その点はどうなんです、考えがあるかどうか。
  101. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 栃木県の例をお挙げになりましたが、農林事務局にこの事情を聞きましたら、こういう事業に反対を受けたのは珍らしいというようなことを言つておりました。これは内容調査をいたしますと、地元の負担が重いというような理由に聞いておりましたが、又一面には是非これを完遂して呉れという面の陳情も同一の問題で受けたわけでありますが、併しこれは農林省といたしまして、農地局の技術的な立場からその内容を調査いたしたことを報告を受けまして、これは是非とも遂行すべきものであるということを当局といたしましては方針を定めているわけであります。これが不純な事情によつて賛成し反対するというようなことがあつては毛頭ならないと思います。地方の顔役とか、或いは有力者というようなものを、この問題に介在させてやるということはどうかと存じております。政府といたしましては、純真な立場からこの用排水をどうすべきかということを、技術的に又その効果がどういう程度に現れるかということを考えまして、そうしてできるだけ地元の了解を得るということに努力いたしたいと存じます。ダムを作る場合におきましては、ダムの建設地におきましては、場合によりまして、人家の十戸、二十戸、或いは二十戸、三十戸というものを他に移転しなければ、ダムのできないような場合もあるのであります。そういう場合において、ダムの水底になる所の部落といたしましては祖先伝来の部落を離れることにつきまして、相当強い反対があります。併しそういう面につきましても十分利害関係を説明いたしまして、そうしてこの犠牲に対する十分なる報いをいたすことにいたしまして、了解を得ている例は全国数々あるのであります。これは国家の大きな事業のために犠牲になつて頂くことでありますから、そういう犠牲になつて貰う人に対しましては衷心感謝の意を持つて、又その人々の将来立ち行くように政府といたしましては、その方法を考えて、そうして国家の生産増強のために、そういう事業も起さざるを得ないような場合もありますので、今栃木県の例をお示しになりましたが、これは内容調査をいたしました結果そういうむづかしい問題でなしに、政府計画通り進捗し得る事業と考えているのであります。
  102. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 それから用排水について、大分電力が今度は値上りしたので、農村で困つているということは、大臣も十分御承知と思うのでありますが、大体ああいうものは河川が荒れるために仕方がなくて、揚水機を作り或いは修繕しなければならんということは、結局国家がこれは河川に対して十分の管理をしていないからそうなるので、恐らくこれはこういう問題に対しては、政府が全額的に補助してやつてもいいと思うのでありますけれども、そこまで行かん立場でありましようから、せめて電力の、使用電力の値下げは是非ともやつて貰いたい、大臣も適当なときには、適当な値下げをするのであるということを会議で申述べておつたようでございますが、近いうちにそういうことをやろうという考えがあるのでありましようか。
  103. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 電力料金値上の問題につきまして、潅漑用排水の電力料が非常な影響を及ぼしますので、この問題につきまして、政府関係庁寄り寄り協議をいたしまして、何とかして善処いたしたいということに努力いたしておるのであります。併し今御質問の中にお加えになりました河川の状況が変つたがために潅漑用排水をやらなければならない、結局政府当局が責任を持つのであるというような御意見もあつたと存じますが、今日まで常に電力を用いまして潅漑用排水をやつておりますのは干拓地区が多いのであります。例えば一番先に干拓できました京都の小倉ケ池のごときはその模範的なものでありますが、これを干拓いたしまして、これこれの電力が一年中要る、こういう計画の下にあの小倉ケ池の干拓が進捗いたして完遂いたしたのであります。ところがこの電力が今までの場合においては、何とかかんとか、收支償つてつたが、今回の電力料金の値上げによつて非常な経費が嵩んで来る、こういうのが一つの例でありますが、常に電力を用いて潅漑用排水をいたしておりますのは、浜辺を干拓いたしまして、その堤防内の水を出すのであります。或いは塩水を汲み出すというようなものが作られておるのが問題になつている。潅漑用排水の電力料金の問題であります。併しこれは別の問題だと思いますし、又折角作つた工事がこの電力の値上げのために放棄されるというようなことがあつては、国家の重大な問題でありまするので、無論收支の償うように何とかして電力に特例を設け得られないかと、政府といたしましては、関係方面とも十分な交渉をいたしまして、そうして打開の途を見つけたい、かように考えておるわけです。
  104. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 干拓はさようでございましようけれども、利根川の場合なんかは干拓はなくて、河床の隆起のためにやむを得ず、排水機を据えなければ米が取れなくなるこういうところが非常に多い、これは今の農林大臣干拓お話の場合と全然違うので、こういうふうなものには同じ排水機であろうとそれに対する補助とか、扱い方は特別に違つた扱いをしなければならんじやないかと思うのですが如何でございましようか。
  105. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 一つの例を挙げただけでありますが、全国的に見ましていろいろの事情によつて潅漑排水をやつておる部面があります。これは土地改良という工事としてすべてやつておるわけでありますが、その原因がどこにありますか、一応その工事に対する計画予算が、立つてやりつつあるのが、今回電力の値上げによつて、非常に收支償わないというような立場にあるところがある。この原因は電力潅漑、或いは天然潅漑ということはいずれにいたしましても、その工事が食糧生産に間に合うような計画を以て進めて来たのでありまするから、原因の如何に拘わらず、電力料金に対する考え方は同じことでありますので、できるだけこの負担の軽減の実現できるように努力いたしたいと考えております。
  106. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 それからもう一つ伺いたいと思います。この前の予算委員会においてもお聞きしたのですけれども、農地の買收売渡しによる登記事務が最近どの程度まで進んでおるかお聽きしたいのであります。
  107. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 詳しく数字は今持つておりませんが、この年度内において大体終了いたすよう努力いたしておるわけであります。
  108. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 私もちよつと今日は資料を持つて来ませんが、大体終了しそうもないと私は見ておるのですけれども、大臣はこの前の委員会のときには来年度には、即ち二十五年度においてはさような意味で登記事務の助成のために特別に二十四年度の倍額、補正予算の倍額くらいは登記事務進捗のためには出すであろうということを、ここでお話したと思うのですがそれはもうお忘れになりましたか。
  109. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 無論予算措置もいたしております。この登記事務については御承知通りすでに不在地主というより、むしろ死んでしまつておる、いわゆる保存登記もできなければ、その管理者が誰かというようなことの分らんようなものが相当あるのであります。併し一日も早くこの登記を完了いたしまして、農地委員会からその証明書を貰わなければ自作の資格が生じないのでありますから、政府といたしましてはできるだけ早くこれをやりたい、併し相当の数ができまして、その成績のいいところには表彰もいたしておるわけであります。これは大蔵関係の登記事務にも登記所といたしまして、重大なものがありますので、大蔵省の登記事務関係の面とも協力いたしまして、そうしてできるだけ簡易なる書式によつてこの遂行を図つて行くわけであります。政府計画といたしましては、本年三月三十一日をもつて大体終了する方針をもつて今督励いたしておるのでありますが、それで必ず全部が百パーセント登記完了ができれば結構でありますが、できない場合においては、その残つたものこそ本当の手数のかかる厄介なものが残されるのでありますから、それに対しましては予算措置によつてはやく完了いたしたい、かように考えているのであります。
  110. 岩間正男

    ○岩間正男君 蔵相にお伺いいたしたいのでありますが、まず第一点、輸入食糧の問題でありますが、これは二十四年度の三月までの当初の金額では二百四十万トンということになつたのでありますが、この前の補正予算でそれが二百九十万トンということになつたと思います。併し最近は二十四年度のものがまだどんどん入つている。すでに三百四十万トンを突破しているということを聞くのでありますが、これらの具体的な数字について本年度内の輸入食糧の額は一体どのくらいであるか、これを数字的にお伺いしたい。
  111. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十四年におきましては、二百九十万トンを予定いたしておるのであります。大体只今のところその程度つて来るように思います。二十五年度におきましては大豆を入れまして三百七十五万トンでございます。除きますと三百四十万トンになるのであります。
  112. 岩間正男

    ○岩間正男君 私のお聞きしたいのは二十四年度、それについて伺つておるのでありますが、三百四十万トン入つておるというような情報を我々は耳にしておるのでありますが、その事実があるかないか、その点についてお伺いいたしたい。
  113. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私はそういうことはまだ聞いておりません。
  114. 岩間正男

    ○岩間正男君 二十四年度の数字については尚いろいろな資料をもつて質したいと思います。そこで本年度でありますが、本年度の計画は只今お話のように工業用を除いて三百四十万トンこういう話でありますが、これについていろいろなこれも情報が入つているのです。四百万トン或いは四百二十万トンくらいになるのじやないか、こういうような情報があると思うと、一方におきましては最近の安定本部の計画においては、三百四十万トンをもつと下廻るような計画を立てて、それがすでに農林当局と了解がついているというようなことが確か読売新聞つたと思いますが、三、四日前にこれが発表されている。そういうような情勢は果してあるのかどうか。当初の三百四十万トン、大豆を入れて三百七十五万トンの線であくまで進んでいるのかどうか、この点はつきり答弁願いたいと思います。
  115. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 先程大蔵大臣のお答えいたしました三百四十万トンということを予定といたしておるのであります。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 読売新聞の報ずる輸入食糧の圧縮という案が一週間ばかり前に我々見たのでありますが、これに対して安本長官はどういうあれを持つておりますか。
  117. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今大蔵大臣農林大臣ともお答えになつたように、三百四十万というのが安定本部におきましてもその通りの数字であります。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 飽くまでも今政府が発表された数字、そうするとどういうふうなことになりますか、巷間にこういうような情報が流れておるのでありますが、こういうものは全然根拠がないのでありますか、これはどういうふうなんですか、例えば安本ではこういうような情報が流れておるということに対してどういうような処置が取られておりますか。
  119. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 私のところへは別にそういうおつしやるような報告は参つておりません。従つて三百四十万トンというところを信じております。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 この点は現在安本並びに農林当局のそういう言明に従つて一応そういう数字というものに立脚して行かなければならないわけでありますが、今後どうなんですか、こういうような今後の見通しにおいて例えば去年も当初の予算計画では二百四十万トン、こういうことになつておりましたが、途中であのように増加したのでありますが、今年度においてそういうような変更があるかどうか、こういう見通しはどうですか。
  121. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 需給推算の上から一応三百四十万トンというものを予定いたしておるわけであります。併しこの三百四十万トンのその内容につきましてはガリオアで参るものもございます。又輸出力によつて輸入するものも含んでおるわけであります。併しこれは輸出力は必ずしもそれだけの輸出ができなければ、米の輸入が行われないという結論になるのでありますが、大体それだけの輸出力があるものとして三百四十万トンを予定いたしておるのであります。途中これが更に四百万トンになり、五百万トンになるということは、日本食糧の需給状況から申しまして必要がないのでありまして、さようなことはないと存じております。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体現在立てておるガリオア、並びにコンマーシャルアカントでどういうような内容になつておりますか、それを一応伺いたい。    〔委員長退席、理事堀越儀郎君着席〕
  123. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) その内容につきましては、関係方面との事情がありますのではつきり申上げることはできませんが、大体ガリオアで百四十万トン、あとがイロアハンドと考えておるわけでありますが、その差別は国々によつて分れておるのでありますが、それは申上げる程、はつきりいたしておりませんので差し控えたいと思います。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは二十四年度の内訳についてはすでにもう実行済みのことですからこれは発表できるでしようね。二十四年度の内訳について……
  125. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 二十四年度におきます食糧輸入が、ガリオアとコンマーシャルとどうなるかということはちよつと分つておりません。外貨の関係は昨年の十二月から日本政府の方の管理になりましたので、それ以前の段階においては関係方面において管理しておりました関係上どの分がガリオアであり、どの分がコンマーシャルであるということがはつきりいたしておりません。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも納得が行かないのでありますが、今輸入食糧の問題は、これは全国民の視聽を集めておる重大な問題である、従つて関係方面というようなことを一枚看板にしてその内容が詳細に示されないということは、食糧輸入の問題が、世界の食糧の過剩生産の嵐の前におののいておる日本農村の恐慌問題を控えて非常に重要だと思うのであります。どうしてそういうことが発表できないのでありましよう。午前中にも吉田首相が自主性、政府責任ということを強調されたのでありますが、日本政府でありますから、日本政府責任においてこれくらいのことは発表するのが当り前だと思うのでありますが、なぜそういうようなことが発表できないのでありますか、この点をお伺いいたします。
  127. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御承知通りに昨年十一月の末までは管理貿易になつております。関係方面でやつておりましたので、その数字はどの資金から幾ら入つたということは只今のところ私のところに分つていないのであります。民間貿易になりましてからコンマーシャルで入つたものにつきましては、私の記憶ではビルマからも来ることになつております。或いは韓国からも来るようになつております。その数字は大体貿易協定によつて決まつておりますので、それは我々の方にも分るのであります。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 管理貿易の件は、これは明らかになつていない。これは全然我々は納得しかねるのでありますが、このコンマーシャルの分は、これは二十四年度のものはここで発表して貰えますね。
  129. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) コンマーシャルの分は御説明をできるかと思います。併しこの発表につきましてははつきりしたことは申上げられませんが、これは我々の方で調べれば分ることだと思います。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体何万トンくらいというようなことは、これは見当はつくのでしよう。
  131. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の記憶では、まだこれも実際入つておるかどうかはつきりいたしませんが、先達つて韓国から十万トンの契約をいたした記憶がございます。又シヤム、ビルマとも貿易協定で契約したものがありますが、それがどのくらい日本に入つておるかという正確な数字は只今記憶しておりません。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこれは今までの答弁全部を総合してでありますけれども、どうも不明瞭であります。これだけの重大なる問題が掴まれないで、そうして一方においては、例えばこの前の補正予算において厖大な食糧補給金が決定されておる。本年度につきましても……。本年度の補給金の過半に達するところの三百四十五億という厖大な補給金国民の血税の中から出されておる。こういう問題に対してなぜ一体政府がこれに対して数字を発表できないのか。私は甚だ奇怪に思う。実にこれは国民に対して、知らせない政治であるということと思いますが、そう取つてもよろしうございますか。
  133. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 主食の輸入補給金につきましては、昭和二十四年度二百九十万トン、二十五年度におきまして三百四十万トンというふうにはつきりさしておるのであります。併し今の御質問は、どこからどれだけのものが来ておるかという御質問でございますので、その点は只今のところはつきりお答えできない状況であるのであります。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は補給金の状況を伺つておるのじやなくて、輸入されておる量が、どういうような内容で、どういうふうな建前になつておるかということを聽いておるのです。これを明らかにすることは、甚だ予算審議に取つて重大なる問題です。従つて我々は補給金を決定する場合に非常な関心を持つのであつて政府政策全貌についてここで明らかにしなければ、我々は国民の前に責任を明らかにすることはできないと思います。そういう建前で聽いているのですが、依然としてこれは発表されないのですか。どうしてそのような原因が伏在しているのか、この点が甚だ奇怪であります。
  135. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十五年度の四百五十数億円の主食の輸入補給金の算出根拠は、予算説明書に多分載つてつたかと思います。ただ三百四十万トンの米なり麦なりが、どの地方から来るかということははつきり申上げられません。それは将来例えばポンド地域との貿易協定によつて決まりますし、いずれにいたしましても、三百四十万トンの主食が入つて来る計画予算を作つておるのであります。    〔理事堀越儀郎君退席、委員長着席〕
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもやはり依然として私は納得できないと思います。今のところでは、そこに何か問題が伏在すると考えざるを得ない。なぜこれが明らかにされないのであるか。我々の耳にした情報においては、南方からそういうようなものが沢山入つて来る、日本に南方の食糧が最近非常に多く入る、従つてそれは南方にドル資金が蓄積されるというような結果になるような情報が明らかなのでありますから、こういうことになりますと、これは日本農民と日本財政の負担によつて南方が強化される。こういう一連のアジアの現在の政策のうち、国際独占資本がやつておるところの政策と連絡があるのではないか。こういうことを我々は疑わざるを得ない。そういう連関について我々はこの問題は非常に重大だと思うのでありますが、政府が答えられない。こういうことと連関しまして我我はそのように確認しておいてよいかどうか。
  137. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 二十五年度予算につきましては、先程申上げましたように三百四十万トン輸入計画を立てておるのであります。而してその主食が、例えば米がどこから来るか、小麦がどこから来るかという問題につきましては、ポンド地域との貿易協定によつて決まるのであります。例えば外の例で申上げますと、東南アジアから参る予定の石油が、貿易協定その他の関係で来ないようになつたというときには、ドル地域から持つて来なければならんのであります。それから又東南アジアのポンド地域から来る予定であつた小麦がアルゼンチンとの貿易協定で、こちらから人絹を出し向うから小麦が来るというふうになつて来ますと、東南アジアから来る予定であつた小麦が、ドル地域のアルゼンチンから来るということに相成つて来ざるを得ない。大体予算の面におきましては三百四十万トン輸入すれば、大体小麦であつたならばトン当りどうというので輸入補助金を決めておるのであります。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう操作のいろいろな変化、そういうものも一応考えられるのでありますが、その操作の仕方、そのものの中にも又問題が多く伏在しておると思います。併しどうも今の答弁の内容では、我々はこういう問題について明かにするという便宜を得ないのでありますから、政府はできるだけ……、日本政府責任においてできるだけ早く、本予算の審議のうちにこういうものを明らかにするように努力されたい。  問題を次に進めますが、とにかく輸入食糧の問題は日本のもう大きな関心事であることは私からくどくどしく申上げる必要はない。又最近のいろいろなこういうような一連の対外的な政策との連関におきまして、日本農業政策食糧政策というものが大きく転換しなければならない、変更しなければならないというようなことが、新聞などで、そういう情報が流れておるのであります。従つて日本農村の恐慌をどのようにして守るか、こういう点について対策を我々としては愼重に考えなければならんのでありますが、私は今まで、或いは政府が非公式に、或いは新聞なんかで発表された、新聞なんかの情報で我々が耳にした、こういうものを確認する意味で一応伺いたいのでありますが、先ず第一に雑穀の供出制度をどうするか。今後あれば廃めるか。この点……
  139. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 雑穀の統制につきましては、こちらで一応お答えいたしたいと存じておるのであります。今日食糧の事情は緩和されて参りましたが、これはひとり日本食糧増産されたのみではないのでありまして、必らずしも日本といたしましては楽観を許しません。益々食糧生産を、国内の自給度を高めて行くということは、依然として強行すべき問題と考えております。然らば雑穀はどうするかという問題でありますが、雑穀は特殊地帶に主要作物として栽培されておるのでありますが、これを主食の代替として認めておりますけれども、これは配給の面において雑穀は食糧として配給いたしておらないのであります。供出はさせておりますけれども、これを主食として配給をいたしておらないのであります。従つて今日の日本食糧が海外の事情等において緩和されました以上は、この主食に代替配給のでき得ない雑穀は成るべく供出を緩和して行きたい、この気持を常に持つておる、現在でもさように考えております。併し本年度の米穀年度といたしましては、一応雑穀の代替供出を認めて生産計画を立てておるのでありますから、成るべく早い時期において、若し許されるならば、この七月に米国が日本食糧に対して、どういう政策を持つて来るかという目途が付きました場合におきましては、この雑穀の中のいろいろのグリンピースであるとか、小豆であるとか、そばであるとかいうようなものは一応雑穀から外してもいいのではないか、かようなことを考えておるのであります。本年の米穀年度の生産計画の中におきましては、雑穀の代替供出を認めておる以上、これは供出を受入れるという態勢を持つておるのでありますが、これは統制を緩和するということは、今申しました将来の事情によりまして、できるだけこれを実現いたしたい、こういう気持であます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 将来の事情というのは、どういう事情ですか、お聽きします。
  141. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 主食は成るべく米と麦とによりたいというのが考え方であります。将来麦と米とによりまして、大体の主食は間に合うということが目途がつきました場合においては、この雑穀を取外したいと考えております。御承知通り雑穀は供出さしておりますけれども、主食の代替として配給はいたしておらないのであります。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは今まで或いは答弁なつて重複をする点がありますかも知れませんが、ここで確認せする意味から、尚お聽きします。第二点として、二十五年秋の早場米奬励金をどうするか、これは政府として今どういうふうに考えておられるか。
  143. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 二十五年生産計画を立てました上におきましては、この超過供出、早場米の奬励金は予算にこれを見積つておるのでありますから、この方針は変えないつもりでおります。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも農相の答弁は、大体今予算を組むときに立てた方針について述べられておるのでありますが、私は最近のつまり今問題になつて恐らく天下で周知の問題と思うのですが、つまりさつき話しましたところの一つの世界の食糧事情との連関において、日本食糧政策というものは大きな転換に迫られておるということは、私がここでくどくどと申さないでも事実だと思います。そういう中での対策を聽いておるのでありまして、私は予算の説明書の中に書かれているような事情を聽いておるのじやありません。従いまして二十五年度の早場米の奬励金をどうするか、どう今後しようとしておるかということについてお答え願いたい。
  145. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 早場米は従来通りやる方針であります。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではその次に伺いますが、第三点としまして、秋以後の小麦の集荷と販売方法はどうするか、どういう対策を持つておりますか伺います。
  147. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 二十五年度の食糧政策につきましては変りません。小麦は生産割当をいたしておりまして、これを買入れる方針であります。併し御承知通り明年の三月三十一日を以て現在の食糧確保臨時措置法等が一応役を終る、それで今後食糧政策が、供出制度の改正ということが、おのずから、ここに浮んで来るのであります。今日の供出制度というものが決して完全なものではないのであります。何とかしてこれの合法的な方法を得たいということで、今日まで研究を続けておるのでありますが、来年の三月三十一日にその期間が参りまして、それまでに新らしい供出制度、配給制度を決めたいと目下検討を加えておるのであります。若しその方策が現在やつておりますことを変更することになる場合には、今年の九月、十月に播付ける麦に対しましては、その考えたことによつて適当な処置を採つて行くつもりであります。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじや今の問題とも関連しますが、第四番目に、供出制を全般的に改訂する意向があるか、今どういうふうな腹案を持つておられるか、その点をお答え願います。
  149. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) まだ具体的に申上げる段階に入つておりませんが、今日の供出制度は非常に農民に対して過重である。現に本年三百二十余万石を生産割当をいたしました。これは昨年の割当と殆んど同額でありますが、それが尚且つ農家に対して透徹しないという情勢にあることを考えましても、今日の供出制度は更に根本的に改善をしなければならん、かように考えておるわけであります。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうするとなんですか、今非常に供出制度が過重だということを農相は言われたのですが、これは三、四月前にはあのような両院の……参議院におきまして、この前の食確法が流れたのでありますが、そういうものを無視してポ政令を国会が開会中であるにも拘わらず出した、かような過重なことをやられたということになると思いますが、如何ですか。そういうことをお認めになるのですな、今の御答弁では……。ポ政令を出して、ポ政令で強引に、而も随分いろいろな異論の沢山あるものをやつた、而もそのやり方が、供出制度が過重であると、今農相は発言されたと思いますが、そういうことを自分で認められるわけですか。
  151. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) あの政令を出しました趣旨は、すでにたびたび申した通り日本食糧政府責任において確保しなければならないという段階におきまして、その年柄によりまして、その作柄によつて、事前割当以上の收穫があると認めた場合には、あの政令によつてこれを再供出をなさしめるということをあの政令で出したのであります。決してあの政令を出すあの段階におきましては、政府といたしましては、当然ああすべきものであるというこの段階において発令いたしたわけであります。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の農相の答弁のようなことを農民が聞かれたら、一体どういう感じを持たれるかということについて、農相は考えられたことがありますか。実に重大な発言じやないかと思うのであります。あのときにおいてはああするより外なかつた。なぜ今日において過重だと言わざるを得ないような、あのようなことをポ政令で以て強引に出したか、なぜそんなら、そのときにおいてもう少し日本政府責任において、どういうような困難な事情があるかも知れませんが、日本のためにならないなら、断乎としてなぜやらないか、このことを聽きたい。この点如何ですか。
  153. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 決して私はあの政令を出すことによつて、農民を苦しめるとは考えておりません。あの政令を出しました当時は、向うより指令されました。そうして日本食糧を絶対に確保しろ、こういう指令の下にあの改正法案を議会に提出いたしたことは、御存じの通りであります。而も今回日本食糧事情が緩和されたと言いながら、それはひとり農村の先程申しました日本農業増産のみによるものではありませんが、すでに農家においては、今回生産割当をいたしますにつきまして、いろいろ紛糾をしているのであります。これはすでに東北五県でありますが、先般割当てたものの末端の指令ができないといういろいろの事情を申しているのでありますが、そういう事情にあることが、現在の供出制度としては、そこに不公正である、均霑した供出の制度でないという点が、いろいろ物議を起しておるのでありますから、この供出制度は根本的に改正する必要あり、かように考えておるわけであります。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうするとまあああいう形で、或る意味では自分で本意でないけれども出した、併しどうも無理だということは最初から考えて出されたということになりますね。そうして今情勢が変化して、すでにもうそういうような情勢がなくなつたので、今度は改正したい、こういうのでこれは首尾一貫すると思いますか、こういう説明が……。果してこれを農民が納得するかどうか、あの時代においてあの食確法が苛酷であるかないか、苛酷なものとは農相は思つていないと答弁されましたが、あのときどのような反撃があり、実際に農民からの反対運動があつたかということを私はここで多く言う必要はない、こういう一連のものを総合して考えるときに、農相の今の説明で首尾が一貫されると思いますか。
  155. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 御承知通り食確法は事前割当をすることだけになつているのであります。併し若し豊作であり、而も更に事前割当以上に生産があるという場合においては、更にこれを供出せしめる、いわゆる超過供出であります。それから食糧事情が非常に緊迫いたしておるが、併し作柄が非常に悪かつたという場合においては、いわゆる補正減額もあります。補正減額なり超過補正なり、そのことを法的に措置し得る政令であります。現在でも超過供出はこの政令を出しておりますけれども、政令によらなくても超過供出できるところは超過供出されておるのであります。決してあの政令によつて農家の自由を奪うということは断じてないのでございます。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点、いつまでも議論する気持はありません。ただ、今の制度そのものですね、制度について新らしい、これは再検討の段階になつた。政府が今恐らくそういう腹案を進めているだろうと思いますが、この問題と、さつきの輸入食糧の内容を明細にすることができない、この問題の中にははつきり一連の関連がある、こういうふうに我々は考えるのであります。併しこれは政府は、政府に聞いても埒があかないでありましよう。その間の問題をもつともつと日本国民大衆の前に明らかにするところの義務が、これは政府にもあるだろうし、我々国会議員にもある。従つてこの問題については今後保留したいと思います。  その次に伺いたいのは農村の潜在失業人口、この問題であります。これを一体農林当局はどのように見ておるか、どれくらいの数が現在失業人口としてあるか、どのように掴んでおるか、この点伺いたいと思います。
  157. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 今手許に細かい統計数字を持つておりません。後程おえいたします。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではこれは数字を貰つてからにしたいと思います。それから、それに対する対策、この問題もさつきの食糧問題と全く密接不可分の重大な問題でありますから、十分にこれはこれに対して正しい資料を欲しいと思います。  最後にお聞きしたいのは、輸入食糧に関して税金の問題でありますが、食糧の関税、この関係を一体日本政府は、これは永久に無税にされる考えであるかどうか、現在の情勢を見ますというと、永久無税というような、そういう要請があり、又これに対して重大な日本農業の保護政策と連関して重大な問題をなしておると思うのでありますが、これはどういうふうに政府としては考えておられますか。
  159. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 永久無税の考えは持つておりません。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではですね、非常に政府は困難なところに追込まれておるのじやないかと思う。我々はまあ推測であり又情報を検討してなんでありますが、そうするというと、これをどのうよに機会において外そうと考えておるか、それを伺いいたします。
  161. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 関係方面との折衝の内容について申上げることは差控えたいと思いまするが、決して今困難な状態に陷つていないのであります。私の見るところでは、従来通り関税定率法には一定の輸入税を課すことにいたしまして、当分の間、即ち例えば二年とか三年とか、三年までは考えておりませんが、短期間の間、今の現状から申しまして、輸入関税をかける要のない期間だけを免税にいたしたいと、こういうふうな気持で進んでおるのであります。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 現在免税になつておる、そうしてそれがまださつきの食糧の量、輸入される食糧の量と関係し、更にこれが農村の実態と関係するのでありますが、政府としてはどうですか。こういうような状態が今のお話では、これは二、三年後というような、漠然とした話でありますけれども、もつと努力してこれを、関税を、このはつきりした保護関税的な性格を持つところの食糧の関税をはつきりかけるという方向に努力する意向を持つておられるかどうか、これは今の日本の状況を見れば、一日も早く日本はこの態勢をとらなければならん、こういうふうに考えるのでありますが、これは政府としては、どういうお考えですか。
  163. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程お答え申上げた通りでございまして、従来の関税定率法には関係をかけることになつておりますが、特別の規定で免税の処置を取つておるのであります。これは過去十年余りを継続しておる状況であるのでありますが、お話のように、只今直ぐ関税をかけると申しましても、国内の主食の価格と、外国の価格が非常に差があるのでございまして、私は今輸入食糧に対しまして、一定の関税をかけるということは策の得たるものではないと考えておるのであります。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただこれはもう今の時期の問題とも連関するのでありまするが、非常に重大な問題だと思われるのであります。実際この食糧の過剩生産が、恐慌が非常にこの世界を襲つておる。そうして日本に入つて来る食糧は、一体どのような性格の食糧であるか、こういうことをはつきり考える必要があるのじやないか。我々はただ援助されておる、そうして日本食糧が足りないのであるから、その点からもう惠まれておるのであつて、これをどこまでも三拜九拜してこれを食糧を貰わなくちやならん。無論足りないという情勢に対しましては、これに対して日本国民考え方もあると思うのでありますけれども、一体どのような形でこのような食糧が、現在の世界の市場に隘れておるところの食糧日本に持込まれておるか。そうして又それが政府の発表しておるところの額よりも遥かに突破しておる。そうして又補給金がこれに大きく食われておる。こういうような態勢を見ますときに、今の保護関税とも連関しまして、非常に重要な問題になると思うのでありますが、このような問題は、いずれもつと輸入食糧の具体的な、先程要求しましたところの資料を貰つてから我々は再質問するとこを保留したいと思います。    〔木下源吾君発言の許可を求む〕
  165. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 関連して……
  166. 木下源吾

    ○木下源吾君 関連してちよつと……それではお伺いしますが、輸入食糧の面ですが、これは食糧問題はなかなかやつぱり重大なんだが、今年度の米穀年度に繰越される数字と、前年度の繰越の数字はどのくらいになつておるか。
  167. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二十四年から二十五年までで繰越されますものが約三百二十万トン、明年度から明後年度に繰越されます場合におきましては三百四十万トン程度であります。
  168. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は国内食糧を……
  169. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 国内だけで申しますと、今年の四月一日持越されますものが千五百八十万、明年でありますと……
  170. 木下源吾

    ○木下源吾君 前年……
  171. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 前年は只今手許に持つておりませんが、トン数全体で申しますと、前年は約三百万トン足らずだつたと記憶いたします。
  172. 木下源吾

    ○木下源吾君 今の国内の食糧のことを聞いておるのだが、今ごつちやになつておるようですから一つその点を明らかにして貰いたい。今輸入食糧の現在高は前年同期と比較してどうなつておりますか。
  173. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 現在只今手許に数字を持つておりませんが、私の記憶で若し間違いましてたら恐縮でありますが、持越におきまして約二、三十万トン、今年度の方が多いと思つております。
  174. 木下源吾

    ○木下源吾君 この数字は非常に重要なんであります。前にお聞きしたのと併せて、これは資料を、資料と言いますか、別の機会に明確にお聞きしたいと思います。  次には肥料の関係ですが、この国内の窒素肥料の需給状況はどうなつておりますか。
  175. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 肥料の生産は、石炭、電力等の事情が緩和されまして、大体国内の需要を満たし得る、細かい数字は今持つておりませんが、生産されているのであります。併し後今肥料の価格の値上りについて農村がこれを、配給を受け得るか得ないかということは別問題でありますが、大体予定の、配給し得るだけの化学肥料を生産し得られると存じております。
  176. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) お諮りいたしますが、実は木村君が……
  177. 木下源吾

    ○木下源吾君 関連しているから聞いているのです。
  178. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) ですから大蔵大臣の関連質問でほんの少しだと思つたのですが、それが……
  179. 木下源吾

    ○木下源吾君 ちよつとさへ聽いて置けばいいのですから、後の人が聽くといつても必要なことですから……。そこで今後の窒素肥料の輸入計画はどのくらいになりますか。
  180. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 硝安が十五万トン、加里塩が十八万トンであります。
  181. 木下源吾

    ○木下源吾君 国内の需給ができているのに、そういう計画が必要な理由一つ承ります。
  182. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 大体の需給を満たす予定と申したのでありますが、この計画を樹てます場合におきましての状態は、農村に対しての計画通りの数字が勘案できない。そこに幾分の余裕を認めるという主張から硝安の輸入計画いたしているのであります。石炭事情、電力事情等もその当時を比較いたしますと今は余程好転しております。けれども予算を決める当時におきましては尚不安の状態でありました。
  183. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 木村君。木村君に発言を許しましたから。
  184. 木下源吾

    ○木下源吾君 今これで打切りますから泡食わんでよろしい。あとでこれは保留して置きます。
  185. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 前回に引続きまして大蔵大臣及び通産大臣に御質問申上げますが、その前に只今岩間委員からお話がありました輸入食糧について簡單に御答弁願いたいのです。二十四年度、二百九十万トンのうちエード・ファンドによる分がいくら、コンマーシャルアカウントによる分がいくら、コンマーシャル・アカウントのうち、どこの国からどうということを……
  186. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程申しましたように数字は今記憶しておりませんので、調べまして後刻お答えいたします。
  187. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これはこの前も御質問申上げたのですが、それは本当にはつきりコンマーシャル・アカウントとエード・ファンドのあれで区別して……、これはすぐ若し発表できるならあとで発表して頂けますか。
  188. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程申上げた中にもあつたと思うのでありますが、関係方面が管理してやつております貿易の際の分は分りませんと思います。民間貿易になりましてからの分は私は分ると思いますから、調査いたしましてお答え申したいと思います。併し調査ができましても発表相成らんということになるかも分りませんが、私としてはそうお答えして置きます。(「不まじめだ」と呼ぶ者あり)
  189. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これはそうしますとこの予算編成方針に自立復興予算ということを言つておる。自立予算という意味は、大体アメリカからの援助を段段減して行く、そうして日本の輸出において輸出を多くして賄つて行く。そういう自立予算であるかどうかを見る上においても、二十四年度においてどのくらいエード・ファンドで入つた。どのくらいコンマーシャル・アカウントで入つたか、二十五年度はエードファンドがどのくらいか、コンマーシャル・アカウンドがどのくらい、成る程対日援助による輸入はこれだけ減つて、コンマーシャル・アカウントによる輸入がこれだけ殖えるということがはつきり分るのです。そこがはつきり分るわけなのにどうして発表できないか。そこがどういう事情でできないのか(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)了解できないのです。それは外貨予算においても外貨予算というものはあるのです。外貨予算においてもどのくらい食糧輸入するか分るわけです。その分だけでも……。エード・ファンドの分はよろしゆうございます。コンマーシャル・アカウントがどのくらいか、何トンぐらいか……。(「正確に、正確に」と呼ぶ者あり)
  190. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨年十一月末までの分は管理貿易でございますので、コンマーシャル・アカウントか、ガリオア・ファンドか分りません。先方には分つておるかも知れませんが、私のところでは今までは分らなかつたのでございます。併しできるだけのことは調ベてみようと思います。併し今度は民間貿易になりましてからの分は分ると思います。だから取調べて、とこう申上げたわけであります。
  191. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 併し大蔵大臣、十一月までは管理貿易であつた。併しそれは引渡されておるわけです。引渡されておりますからそれが分らないというのはおかしい。
  192. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 民間貿易になつてからの分は分ると思います。こうお答えいたしております。それで調査いたしましてお答え申上げたいと思います。
  193. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 一応了解いたしました。それでは食糧関係について今後予算を変更するということはありませんか。例えば三百四十万トン輸入して、輸入計画を樹てておる。ところが減つて予算の変更を生ずるとか、或いは殖えて追加予算が必要であるとか、補正予算が必要であるとかいうような食糧輸入関係から、予算上に変更を生ずることはないですか。
  194. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今のところの見通しといたしましては、予算が変つて来るとは考えられませんが、併し先のことでありますから絶対に変ることはないと申上げられないと思います。
  195. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 更に御質問申上げますが、これまで二十五年度予算の編成の基礎になつた今の日本経済の実態について御質問申上げますが、それは結局御質問した結論は、内容が、日本経済の実態がどうでも、とにかく大蔵大臣は実態がデフレでも何であつて自分はデイス・インフレと信ずる、こういう結論を得たのでありますが、そこで更に進んで予算編成の基礎條件について御質問申上げておるわけでして、そのうち第一の給與ベースの問題について御質問して打切りになつたのですが、給與ベースについてはいろいろな方からも御質問があるのでくどくは申しません。要点だけを御質問しますが本日総理大臣に給與ベースをなぜ引上げないかと御質問申上げたところが、総理大臣は最初物価と賃金の悪循環が生ずるから引上げないと言いましたが、それを訂正しまして予算に余裕があれば給與ベースは喜んで引上げたい、こういうことを言つておりました。そこで予算に余裕があれば大蔵大臣も給與ベースは喜んで引上げるおつもりであるかどうか。
  196. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は予算に余裕がないと思いますので、給與ベースを動かすことはできません。
  197. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 ところが先程も議論があつたのですが、財源は作るものであつて、自然に放つて置いて出て来るものではない。それに努力しないことは理窟に合うが合うまいが、とにかく給與ベースを引上げないのだ、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  198. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 給與ベースは只今のところ動かないというのは私は閣議決定と心得ております。而して我々は予算の範囲内におきまして、公務員の実質賃金が上つて行くように極力努力をいたしたいということも申合せいたしておるのであります。この線に副つて行きたいと考えております。
  199. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは実質賃金が上るということはどういうことですか、例えば世上伝えられるように号俸を上げるとか、或いは超過勤務手当を多く出すとか、そういうことなんでございますか。
  200. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 公務員の実質賃金を上げるのはいろいろな方法があると思うのであります。例えば住宅その他厚生施設をやるとか、或いは将来若し方が一予算の余裕があるというような場合につきましてはいろいろな手が打たれると思うのでありますが、只今具体的にそういう問題につきましてお答え申上げる段階に至つておりません。
  201. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは今答える段階にはないという御答弁ですが、併しそのことは今検討しておられるわけですか。
  202. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私といたしましては公務員の生活状況を考えまして、ずつと以前から常に検討いたしております。今後も検討を続けて行きたいと考えております。
  203. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 只今の御答弁ちつとも要領を得ないのですが、財源はこれから御質問して、作ればあるということは分つて来ると思うのですが、そこで私はこの予算は物価と関連して相当ふくれて編成されてある。この点この前の御質問申上げましたからこの要点についてお伺いします。この予算は昨年の九月頃の物価を基準として編成されておる。ところが政府から配付された資料によりますと昨年九月から物価は下つております。消費者物価指数は明らかに下つております。ところが政府は物価は横這いと言いながら予算の編成の基礎は物価が上る計算になつております。そこで物価が上る計算で予算を編成し、実際の物価は下つて来ておる。従つてここに二重に予算上において編成されておる。この事実を大蔵大臣はお認めになりませんですか。
  204. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) あなたのお話を認めるわけには行きません。私は昭和二十五年度の物価状況は先般お答え申上げておりますように、全体とした横這いの状況であると考えております。いろいろな補給金を外します関係上鉄とか肥料が上つて参りますし、又他に下る材料もありますので、大体横這いであると考えておる次第であるのであります。
  205. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 横這いであるという場合の根拠を示して頂きたいと思います。政府から配付された資料によれば横這いじやない、明かに消費者物価指数は下つております。こういう事実が下つておるのに横這いということは、ただ希望するだけであつてつておるのです。
  206. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨年の三月頃に比べまして消費者物価指数は下つております。それはお話通りであります。併し四月からの物価を言つておるのであります。昭和二十五年四月から物価の見通しを言つておるのでありますから、これは私は横這いと考えて然るべきと考えております。物価の問題は物価庁より一応お答えいたすことにいたします。
  207. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 我々に配付されました租税に関する参考計表というのがあるのです。これは正式に我々に大蔵省主税局から配付されのです。これの六十四頁を見て頂けばここに総理府統計局調べでちやんとなつております。九月に一四〇・二の指数が十一月に一三一・四になつております。まだ十一月までしかありませんが、その後恐らく低落しておることはは明らかであります。これは横這いということはいえないと思います。とに角一〇・下つております。更に今後下つておる。更に政府の積算の基礎は物価が上つて行く基礎になつておる。これでも物件費の計算において二重にギャップがあるということをお認めになりませんですか。
  208. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物価の問題はお話のようにC・P・Iの点は下つておりましよう。併し四月から補給がなくしたりするいろいろな材料がありまして、私は大局的には物価は横這いと考えておる次第であります。将来の見通しの問題で議論の点はありますが、私の考えでは補給金その他の関係で横這と考えております。
  209. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この点は非常に重要ですから明らかにしておきたいと思うのですが、非常に曖昧です。もう事実が指数において示しているのです。九月から十一月までとに角下つている。それで今後においては補給金を撤廃する、公定価格が上つて行く。ところが政府生産は上つて行くということになつていて、闇物価は下つて来ます、これはもう常識であります。而も九月から十一月までに明らかに一〇・下つているのです。それを横這いということは言えないと思うのです。今後の見通しと言いますけれども、見通しについても一つの根拠がなければならない。常識として下つている。この間物価局の作業によつて日本経済新聞に出されましたあれは正確かどうか知りませんが、給與ベースを七千九百八十八円人事院勧告案までに上げても、消費者価格は七%下る、そういう作業がなされた。あれが正確かどうかは知りませんが、大勢は物価は下つて来ている。総理は逐月物価は低落しつつあるということを施設方針演説において述べております。又大蔵大臣も物価の安定よりは、むしろ物価は今後下げたいということを大蔵大臣は言つておられる。従つて本年内において物価は下つている。明らかに大蔵大臣は財政演説において物価はこれから更に下げたいと言つている。それじや物価は下つて行くわけです。ところが予算は物価が上ることになつて積算されて編成されておる。それは大蔵大臣が将来の予想は分らんと言いますが、これほど明らかに事実が示しているのにも拘わらず、どうしてこれをお認めにならないか、もう一度御答弁願いたい。
  210. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 木村君の言われる物価は下つているという根拠は、CPIの関係だと思います。消費者の生活も見まして、それは闇物価が相当下つて参りましたからCPIは下つて参りましよう。併しCPIが下つたら直ちに全般の物価、公定価格等が下るのだという断定は少し行過ぎではないかと考えるのでございます。而して予算では物価が上ることに見ている、こういうお話でございますが、それは米の生産省価格が上つておるという一点を掴まえておつしやつておると思うのでありまするが、これは肥料の補給金を外すことによりまして最も強く響いたのであります。而して米が上つたから全般の物価が公定価格が上るのだ、こういう即断もできないと思うのであります。これは私がいろいろな消費者の物価指数というものは、闇がなくなつて来て、そうして下げたい、横這いであるが、闇なんかやらずにだんだん下落の傾向に持つて行きたいというような希望は申しておるのであります。これは以上のお答えはできないと思います。
  211. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 おかしいですな、CPIというものはあらゆる場合の基礎になつているのです、賃金を決める場合にも……、これ以外に物価指数というものが具体的にあるのか。CPIを発表するときに総司令部においては、これはあらゆる問題を考えるときに最も基本的になり、又権威あるオフィシヤルな指数であるということをちやんと発表したのです。CPIを度外視して私は問題を論ずることはおかしいと思う。その他に公定価格がある、それでは何を基準にしてこの予算を積算して行くのか。CPIを基礎にしなければ、これは基準にならない。それから先程もう一ついわゆる米価を決める場合の食糧管理特別会計の予算を決める場合パリティー指数が上つて行く。そこでパリティー指数が上ることを以て、直ちに予算の積算の基礎が、全部物価が騰るという計算をするのは間違である。特に肥料の公定価格を撤廃するから、肥料価格が非常にウエートが大きくて上るから、そうだと言つておりますが、パリティー指数というのはもう大蔵大臣御存じの通り、農家が買うところのいろいろな肥料以外のいろいろな、生活必需品、肥料だけではないと思う。鉄鋼価格もこの間大蔵大臣答弁つた通りに、鉄鋼の補助金も削る。それじや鉄鋼価格も騰つて行きます。肥料ばかりじやないと思います。基礎資料、重要安定、資材ですな、安定資材について補給金を削つて行けば、それに関連するものは皆騰つて行くのです。だから農家が買うところの生活必需品が騰るということは、一般の消費者物価が騰ることで、或いは農民に対して特に肥料のウエートは、多少それは大きいかも知れませんが、消費者物價が騰つて行く、こういう計算になつておることは疑いないと思う。そうでなければ私はおかしいと思う。従つてこれは今後において事実が示すと思う。必ず予算が余つて来る。そうして又これは前みたいに余裕金として生じて来るに違いない。それでも尚この予算について、そういう余計な計算をしていない。こういうことを断言されるのですか。この点についてはつきり、それ以上は追究しませんが、はつきりここで確かめて置きたい。
  212. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物価の見通しを見ますのにCPIも一つの参考でありますが、CPIだけによつて考えるわけにも行かんと思うのであります。木村さんは專門家でございますから物価庁の專門家を以て物価の問題について答弁いたします。私は横這いの考えでおりますので、大体二十五年度の予算はこの通り行われることと期待いたしております。
  213. 渡邊喜久造

    政府委員(渡邊喜久造君) 先程のお話に物価庁の調査のお話が出ましたので、一言ちよつとお断りしておきたいと思いますが、新聞に物価庁調査とございましたのは、あれは全然誤謬であります。ちよつと一言申しますと、物価庁の中にああいう調査のあつたことは、これはあります。ただあの調査は生産所得と分配所得の両方を一応両建てにしまして、そうして分配国民所得と、生産国民所得の誤差によつて将来の物価のあり方を見通そうというような一応の行き方でございましたので、これは本来理論的に申しますと、生産国民所得と分配国民所得と、これは理論的には一致しなければならんものである。そこに誤差があつたとしましても、これは技術的な誤差であり、従つてそこから将来の物価の見通しをすることは間違じやないか、こういうふうな中に異議が出まして、更に検討を進めようということになつて棚上げになつたのが、新聞が材料を得まして物価庁調査というふうに発表したものであります。  それから只今のお話でございますが、CPIがお説のように下つておるということはこれは確かにそうであります。ただ予算は御承知のように物件費、人件費それぞれから成つておりまして、結局CPIが直接に関連を持ちますものは、どちらかと言えば人件費、或いは給與のベースといつたものの問題になるのでございまして、物件費関係はどちらかと申しますと生産資材的なものが余程それに連繋を持ちますし、又CPIが下つたことにつきましては多分に闇の下落が入つておりますが、闇価の下落を見て参りますと消費材の闇値は可なり下つておりますが、生産材の闇値は最近……、例えば鉄鋼の補給金が外れたということによつて公定価格が騰る。そうしますと闇値が非常に、公定価格の五倍、十倍の時代におきましては、公定価格が騰りましてもそれ程に影響を受けませんが、最近のように闇値が極く僅かしかし廻つていないという時期におきましては、公定価格が騰がれば闇価もやはり騰る。こういうような傾向をもちまして、生産材の闇値というものを下げませんでも、逆に総合的に騰つておるような傾向にあると思います。予算の方は闇値は余り考慮しませんで、まあ公定価格で出しますが、生産材の関係におきましては、補給金の撤去等に伴いまして多分に騰つて行く予想もございますので、現在としましては予算の面として考えますときには、現在とつております昨年の十月ベースというものが、そこに非常なゆとりがあるという結論にならんじやないかと思つております。
  214. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは只今CPIが下つておるということははつきり認られたわけですね。  只今物価局からお話もありましたが、このCPIの作り方を変えましたですね、八月から……。それでこれを変えました根拠を伺いましたが、若しかこれを今まで通りフィッシャーにすれば、こんなに下らないと思いますね。これを今度はラスパイルにしたので、余計下つておる。こういう点はお認めになりますか。
  215. 渡邊喜久造

    政府委員(渡邊喜久造君) 今お話のように昨年の八月、従来のフィッシャーの方式をラスパイルの方式に変えたことは、お話通りであります。併しその後におきましてフィッシャーの数字は計算されておりません。従つて発表されておりません。それでラスパイルが常にフィッシャーより下に出るということにもならんようであります。これは過去の経験によりまして……。従いまして現在の状況におきましてフィッシャーにしたらきつとこれより上るんじやないかということは、現在私としては何とも申上げ兼ねます。
  216. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 政府は賃金を引上げないという場合にはCPIを使つて、そうしてなるべく物価が下つておるというようなことを言い、予算の編成の場合にはCPI以外にも積算の参考にすると言いましたが、大臣は横這い、横這いとこういうふうに言つておるんですが、そこが非常に私は物価について政府考え方が二通りなつておると思う。賃金を上げないという根拠に対しては、物価は下つておる、ますます逐月物価は下つて行くということを総理も言つており、大蔵大臣も下げたいということを言つておる。にも拘わらず、予算の方においては少くともこれは横這い……。我々はもつと、今の物価庁のお話でも、公定価格を大体基礎にして物価は騰つて行く……。その騰つて行く基礎です。併しながら公定価格も闇がどんどん下るに従つて、恐らく私は鞘寄せして来ると思うのですが、この点如何に追究してもはつきりした結論に到達しないようですから、この点は私は見解が違う。意見が違う。そこでこの点はそれで止めますが……、次に予算編成の基礎條件として……
  217. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 その前にちよつと関連質問で……。次の議題に移る前に、木村委員と大蔵大臣、物価庁等との御見解が非常に相違いたしておるのは、我々といたしましては納得し難いのでありますが、只今も物価庁からお話がありましたが、今回の一般予算及び政府機関並びに特別会計等の積算当時並びに政府が二十五年度といたしまして見積られた価格の基礎というものが、凡そこの予算面には、当然それを根拠として計上されておるものと私は思うのであります。そこでこの際こうした論争の真実を把握するために、大蔵省は一般会計及び特別会計その他政府関係機関、国鉄、專売公社等を挙げての物件費の内容につきまして、至急に資料を出して頂きたい。それはその品目、数量、單価、積算トータルでありますが、要するに最近の政府当局も御承知通り、或いは運輸省におきましても、通産、農林、建設、大蔵、電信、各省におきましても各種の入札があります。この入札がすでに我々関係いたしておるいろいろの各機関から事実におきまして、この入札が政府の予定よりべらぼうに廉くて、政府自体ですらびつくりするような入札、落札をいたしておるというのが最近の実情であります。これは陸上小運搬におきましても、船舶運費におきましても最近非常な低落をいたしておりますから、或いは貿易面におきまする物件費等におきましても、莫大なるものが私は浮いて来ると思うのです。従つて貿易面におきまする、こういつた物件費に含まれた、こうした要素のものを挙げて、至急にその内容の資料を今申上げました品目、数量、單価、積算トータル、これらを挙げて、お出し願いたい。又只今鉄鋼等が、価格補給金が撤廃されるから上るものもある、或いは生産資材は決して下つておらないという御見解でありますが、これはどうも実情とは聊か相違いたしておるのではないか、殊に鉄鋼の補給金撤廃につきましては、それをすでに予算に計上いたしておるのでありますから、物価が肥料の場合、或いはソーダ灰のごとくそれぞれ上るということを基礎にして、それぞれ支出予算に、歳出予算政府は計上しておる筈でありまして、今更取つてひつつけても、例えば鉄鋼のごとく補給金撤廃のために、どうも生産資材が上る等の言い分が、どうも筋が通らないのではないか、かように思うのでありますから、この資料を先ずお出し願いまして、大蔵大臣と木村委員との御見解の相違をお互いに研究いたしたいことが一点、これを至急にお願いすることが一点と、この際合せてお願いいたしたいことは、專売公社におきまする人件費の余剩が出たから、法律的措置等を考慮して、政府は今回これに対する特別の措置を講じ得ることになつたのだという御見解であります。この場合に国鉄公社におきましても、同樣の場合が考えられるのでありますが、のみならず一般公務員の場合におきましても、その他政府機関、その他のあらゆる公務員的な要素を持つておる政府監督指揮機関におきましても、元来人件費というものの内容は、どういう内容であるかどうか、よく世上で噂されますことは、例えば昨年でもないないと言つてつたものが、ああした賞與を政府は出されたのでありまして、これは悉く人件費のうちから出て来た。又人件費が余るから年度末には旅行をするとか、宴会をするとかいろいろの催しをするといつたようなことは、これは世間の通例の官庁の行事であります。こういうふうな点から見まして、是非この際今私が申上げました政府機関及びこれに関連する公社等の機関、一般会計、特別会計を含んだ人件費の内容を、これも併せてお出し願いたい。これは定員と、それから実在人員とのその数をお出し願いたい。そしてベース、或いは特勤手当であるとか、家族手当であるとかいつたような、こうした特別手当等の内容につきましてのことの、大蔵省で予算を編成する上におきまして、各省のものが全部集つていられる筈であると思いますから、これも是非至急にお出しを願いたい。この二点によりまして專売裁定のその後におきまする一般給與の問題、及び今考慮されておりまする物件費、及び物価の問題も、我が予算委員会といたしましては相互に検討いたしたいと、かように思いますから、これを御提出願いたいと存じます。御承知かどすか返答を承わりたい。
  218. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 今岩木さんからのおつしやいましたような資料は、予算の参照書に全部付いてございます。物件費、人件費の総額につきましてもお手許に差上げました予算参照書に付いております。物件費につきましては一般会計千五百八十五億、特別会計四千四百四十二億、それから政府関係機関八千四百七十六億、合計約一兆四千五百億円であります。人件費につきましては、一般会計、特別会計、それから政府機関を通じまして、約一千五百億円。全部出ております。
  219. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 木村さん、ちよつとお諮りしますがね。あなたどうですか。今日中に上りますか、上りませんか。
  220. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 いや、時間によりますが……
  221. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) じやあなたの質問を割いて頂いてですね、それから後で質問を願うように……。余り関連の質問が出て来ると……    〔「その方がいい。後から後に出て来ると」と呼ぶ者あり〕
  222. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 もう一点だけ局長にお尋ねしますが、私が申上げました各品目種類の單価等は現われておりますか。
  223. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 予算参照書の中におのおの單価が出ております。或いは特別会計、或いは公社等につきましては、数量実施計画等において現われておるものもございますが、大体において全部現われております。
  224. 内村清次

    ○内村清次君 大蔵大臣にちよつとこれは国鉄の第二次裁定の問題ですが、只今までのあなたの御答弁では、まだ政府では態度が決つておらないようなお話でしたが、政府の態度は決つておらないかどうか一つ……
  225. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の知つておる範井内におきましてはまだ態度を決めていないと思います。明日の閣議にかけられるのではないかと思います。
  226. 内村清次

    ○内村清次君 明日の閣議には当然、これはもうかけて貰わなくては政府みずから公労法の精神を蹂躪されることになつて……。併し問題はそれをどういう態度になさるかは、又公労法の精神にも或いはこれをそのまま御承認になるのか、精神を尊重されるのか、これは分りませんが、とに角一応は公労法の精神によつて、十六條によつて明日御決定になる。そこで今日特に希望を私はいたしておきますが、本日この問題につきまして緊急質問の通告をやつておりますからして、成るたけ一つ早めに態度を御決定になつて頂きたい。この点を一つ特に大蔵大臣に希望しておきます。
  227. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 引続いて御質問申上げますが、先程物価庁の方からのお話ですが、生産資材ですね。消費材は下つているけれども、生産資材は上る見込だと言いますけれども、これは問違いで、恐らく消費材の下り方は急速であるけれども、生産材の下り方は消費材の下り方ほどひどくない。それは統計にはやはりそういうふうに出ています。生産資材はやはり下つていますけれども、消費材よりも下り方は低い。そういうふうに理解すべきじやないでしようか。
  228. 渡邊喜久造

    政府委員(渡邊喜久造君) 先程申しましたのは、私の方で生産材についての非配給物価を実は作つております。非常に不完全なものでありまして、あまり大きなことも言えませんが、この数字を眺めて参りますと、昨年の八月頃に百六十八になつておりますが、それが十月には百七十三で、ちよつと二月には下りまして、百六十四という数字になつております。でまあ上つたり下つたりしておりますが、どこを基準にとつて下ると言いますか、上ると言いますか、これは非配給という物資の価格でありますから、安価定格で残つておりますものにつきましては、生産材につきましてはどちらかといいますと、まだ電力の値上等もありまして、ぼつぼつ上るものもあるということを申上げたわけでございます。
  229. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大体政府考えは、生産資材においては大体横這い、併しながら消費材物価においては下つて行く、こういう意味に理解しておきます。ですから物価全体をひつくるめた場合にはやはり下つて行くけれども、それにも拘わらず政府は横這い、そういうふうに私は理解します。  次にこの予算編成の基礎條件の第三ですが、この我々に配付された予算の説明書を見ますと、今後補給金を削減して行くに従つて統制を廃止して行く、これはですから自由経済にだんだん持つて行くことは、ドツジ・ラインの一つの大きな狙いだと思うのですが、この際大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、こういう統制をどんどん外してそれで結局経済の合理性というものを基礎にして、経済の運営をやらして行くこの考え方、いわゆるドツジ・ラインの一つの重要な要素でありますが、こういうドツジ・ラインの考え方、これについて検討されたことがあるかどうか、このドツジ・ラインの考え方は日本経済の再建にとつて、これは好ましいものではない。ドツジ・ラインは通貨の方の安定をやつて後は経済は自由にして行く、こういう線だと思う。こういう方式で本当の日本の経済が、バランスのとれた日本の経済が再建できるかどうか、この点について大蔵大臣は深く検討されたことがあるかどうか、この自由経済方式についての御意見を伺いたい、通産大臣の立場としても伺いたいのです。
  230. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 根本の方針といたしましては補給金をとりまして、自由な能率経済にして行こうといたしておるのであります。併し問題はやはりそれをいつの場合にやるかということは余程考慮しなければなりません。適当なときにやらなけれとならんと思うのであります。予算編成のときにおきまして補給金の外し方につきましては、肥料、鉄鋼それぞれその場合を考えておるのであります。
  231. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これは今の政府政策の基本だと思うのでありますが、この点について、これが日本の経済の再建にとつて好ましくないということになれば、これは非常に重要な問題だと思うのです。そこで通産大臣としても日本経済の再建方式、自由経済方式、このドツジ・ラインによつていわゆる経済の合理性というものに基いて、いわゆる採算主義によつて潰れるものは潰れる、そうして生き残るものは生き残る、こういう形の経済再建方式が果して日本の経済再建にとつてよいかどうか、私の意見によりますれば、第一にドツジ・ラインは貨幣的な安定の方式に止まつておる。第二には貨幣的安定は事実の出発点でなければなりませんけれども、事実のためには貨幣的な安定だけではいけないのであつて、他の第二、第三の施策を講じなければならん、ところが貨幣的安定においても我々が前に主張したように、いわゆる通貨改革と、こういう方式を講じて、そうしてインフレを一挙に收束した場合においては事情が違つて来ますが、ドツジ・ラインに基くような通貨改革をやらないで、超均衡予算と、金融引締めを以てそういう形でインフレを処理して経済を安定して行く、そうして経済の合理性、自由経済という形で、古典的な形で経済を安定させて行くという考え方は私は限界があると思う。結局それは社会的な合理性と衝突をする、社会的な合理性と今のようなやり方では、従つてそのために却つて経済の合理性そのものも阻害される、こういう矛盾があるのです。社会的な合理性というものをちつとも考えていないと思う。個人的な個々の企業はいわゆる採算が合い、それで自由競争によつてそれを除いて行くという形では日本経済の全体の総合的な再建という見地からいつてこれは好ましいものではない。それでありますから、政府もドツジ・ラインを修正しておる、ドツジ・ラインをモデルケーシヨンして、そうして貸出政策、信用政策によつてこれを糊塗していると思う。そうでなければ、ドツジ・ラインのあの線ではますます個人的な採算主義による再建が強化されて、社会的な合理性と衝突する、そういうところに私は危險があると思うのです。従つて自由経済方式、ドツジ・ラインによる自由経済方式は、これは訂正さるべきものであつて、いわゆる社会的合理性を考えて自由経済方式というものも考えなければ、今の形では私は限界があつて、却つてますます日本経済再建が妨げられる、そういうように考えられる。従つて国家統制というものも、例えば見返り資金の運用なんかについてももつて国家資本の役割を強化して行くべきである。あそこで旧債務償還をしてその金を銀行にやるというような形ではなく、見返り資金自体において直接投資をもつと大きくする。そういう形において社会的な合理性を強めて行くべきものだと思うのです。大蔵大臣はこのドツジ・ラインの古典的な経済合理主義というものは正しいと思つておられるか、この点についてお伺いしたいのです。
  232. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ドツジ・ラインはどういうものか、これにつきまして議論をしなければならんと思うのでありまするが、今私のやつております政策が古典的であり、而も金融の通貨の安定だけに止まつておる、それでもう満足しておる、こういう考え方は持つておりません。経済の安定につきということは木村さんも十分お分りであろうと思うのであります。私は通貨の安定をし、産業を復興して、そうして経済自立態勢を整えようといたしておるのであります。経済の原則に古典的とか近代的というのは私はどうかと思うのでありますが、私といたしましては、これは木村さんの言つておられるように、通貨改革をやつて、それからどうこうしろというあの超非常手段をやらなくても、今のような方法で自立経済になり得ると考えておるのであります。
  233. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その点は徒らな議論というのではなく、日本経済を再建する場合に、真劍にどういう方式がいいかということは考えるべきだと思うのです。自由党政府だからどうこうということを一応問題外としましても、経済の再建の仕方に古典的とかそうでないものがあるかどうか分らんという大蔵大臣の御答弁は、非常に不満足なんです。もう少し最近の経済の学問ですか、それくらい常識として……、例えばよく言われるケインズの考え方、いわゆる雇用というものに非常に重きを置いてやる、失業を出さない、そういうやり方と、失業をどんどんしてもいい、出して強いところは残れ、そういうやり方は古典的だというのです。ですからこれは理論ではなくて実際であつて、その古典的なやり方でやるから失業者が多く出る。それで大蔵大臣は失言のようなことを言われたわけなんです。それは大蔵大臣がああいうことを言われたこと自体が、ドツジ・ラインの古典的な通貨安定政策或いは再建政策、それが頭に泌み込んでいるからです。それから脱却しなければ駄目だと思う。脱却しなければ大蔵大臣のために不幸であるし、日本経済再建にとつても不幸なんです。もう少し経済再建をやる場合に理論的にもつと最新的は学問を基礎に科学的に考えて、そうして單なる自由経済というものに持つて行かない、そうして最も科学的に再建方式を考えなければならん。むしろ大蔵大臣は古典的と言われましたが、実は大蔵大臣のやつていることは古典的ではなく修正しているのです。ドツジ・ラインの修正、その修正の仕方が却つて悪くなる。例えば超均衝予算で、それでドツジ・ラインを貫こうとしておる、それを大蔵大臣金融によつてカバーしている。そうしてドツジ・ラインの修正で……鬼つ子なんです。ドツジ・ラインの鬼つ子を生んでいるのが大蔵大臣政策だと思う、ですからそれはますます混乱しているのです。ドツジ・ラインが日本経済再建にとつて好ましくない上に、それのモデル・ケイションをやつて、それがますます混乱を招いている。ですから我々はどうしてもそういう方式でなく、もつと新らしい経済再建方式、即ちそれは経済の社会的合理化というものを考えた総合的資金計画、総合的な物資計画、いわゆる社会主義的な計画的な経済再建方式でなければ、本当の日本経済再建はできない。これは私は非常に不幸だと思う。こういう考え方、それを大蔵大臣は、ただ古典的というものはそういうものではないと言われますけれども、今大蔵大臣が実際に考えられ、或いは不用意に失言されるということはやはり古典的なんです。失業者を一遍出して、そうして整理するといえ考え方、新らしいケインズ的な考え方……、失業者を出さないで、日本経済を総合的に安定する考えと、どつちがいいか、大蔵大臣に御答弁を願いたい。
  234. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いろいろな批評は承つて置きますが、我々としても失業者を出すことを好んでやつておるのではありません。いろいろな手を打ち、失業者をできるだけ出さないような方法を講じてやつておるのであります。
  235. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣は先程通貨的なことだけを考えてやつているんではないと言いましたけれども、通貨以外にどういう政策をおとりになつておりますか、通貨安定政策以外に、超均衝予算と、それから金融面の対策以外に失業者を出さないような政策は、どういう政策をおとりになつておるか、具体的に示して頂きたい。
  236. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 生産の増強、企業の合理化につきまして、できるだけの措置を講じております。
  237. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 政府の発表によれば、或いは安本あたりの発表によれば、それは有効需要によつてやる。有効需要によつて生産を増加させる、或いは消費を増加させる、これが政策でありますか。有効需要が殖えるということによつて生産を増加する。生産増加に対して具体的な政策をとるんではなくて、結局有効需要を増加するということは、結局見返資金を通貨面から使う。預金部資金をどこかに流す。こういうことじやないんですか。ですから政府がやつていることは金融的な措置しかやつていない。それ以外のことは自由経済に任せる。これは政府のやり方で、その金融的措置以外にどういう具体策を講じておられるか、これを聽いているわけです。
  238. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは生産の増強を図りますと同時に、直接需要の増加も図つておるのであります。それをあなた金融面からだけ見ておられるのでありますが、生産増強その他につきましては、金融面も相当重要な部門でございましよう。
  239. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 具体策は示されませんから、ないと我々は承知いたします。あつてもウエートが非常に小さくて、本当に日本の経済を正しく再建する方策と逆な方策をやつておると思います。これ以上質問いたしましても時間が経ちますから、更に次に最後の予算編成の基礎條件である貿易の問題についてお伺いしたい。  大蔵大臣は輸出貿易を大分楽観しておるようでありますが、現在の三百六十円は決して円高でないと度々言つておられる。そうして三百三十円にも理想としては持つて行きたいと言つておりますが、最近のポンドはブラック・マーケットはどのくらいであるか、どのくらいに落ちているか御承知だろうと思うんです。御承知であつたら御答弁願いたいと思います。
  240. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ポンドのブック・マーケットは正確に申上げるわけには行かない。ときと所によつて違うのでありますが、私の承知いたしておりますのは、大体二割程度考えております。フランも同樣でございます。ただフランにいたしましても、ベルギーフランは闇はないように聞いております。
  241. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう御認識ですと輸出貿易上これは大変だと思うのです。通産大臣としてそういうようなポンドが二割、公定価格が二割下つたというような最近の御認識ではとんでもない。最近は二ドルを割つておるんです。最近は二ドルを割つておるということを御存じだと思うんです。それを、聞くところによれば紡績会社は一ドル九十セント程度で外国商社と契約して棉花を買つて、そうして公定で外貨資金を得る。こういうことになれば非常に儲かるということを言われておりますが、とにかく日本と直接の取引のあるポンドは二ドルを割つておるんです。公定価格は御承知の二ドル八十セント、二ドル八十セントに対して二割程度のブラック・マーケットの下り方だと、こういう程度の御認識では輸出貿易は、これはとんでもないことになると思う。今公定価格の二ドル八十セントでは到底貿易できないということを言われております。而も大蔵大臣通産大臣として御主管になつておる通商産業大臣官房室調査課の調べた調査報告というのがあります。この八十二頁にこういうことが書いてある。中小企業が何故行詰つているか、その原因として、第一に中小企業製品と目されるものには、生産費が高く。一ドル三百六十円では引合わんものが多く、生産費の高過ぎることが中小企業製品の輸出不振の大きな原因をなしている。こうあなたの所管するこの調査月報にあるのです。例えば右の輸出中小工業実態調査において、輸出実績のない理由として挙げられているものは、値段が引合わないというのが大多数、而も大多数の業者は輸出に進出したいという意欲に満されて、注目すべきことは、戰前輸出の景気を有する企業のごときは、一ドル三百六十円でも輸出できると答えているものが多いが、これらの企業は合理化が割合に進んでいる。従つて輸出振興のためには生産費の切下が必要で、合理化が必要であるけれども、経費節約による合理化には限界があるということをはつきりと書いている。三百六十円では引合わない、そういうことがはつきり言われている。大蔵大臣が為替の問題について前から三百三十円へ理想として持つて行くと言うのはとんでもない。今のポンドの相場は二ドルを割つているということ、この点をお考えなつて、そうして輸出貿易のことを考えなければとんでもないことになる。最近のブラック・マーケットについて、そういう事態が起つている、こういう状態日本の輸出貿易、この予算編成の輸出條件で考えているようなこういう計画を持つていて、輸出貿易ができるとお考えであるか、この点を伺いしたい。
  242. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 言葉を返すようでございまするが、二ドルを割つているという資料はどこから出て来ているのでございましようか。ニューヨークの調べによりますと、ニューヨークは二ドル四十十セントと聞いております。インドでは二ドル二十セント及至二ドル三十セントと聞いているのであります。この点につきましては、後から、あなたからも資料を頂きますし、私からも二割程度という資料をお上げしてもよいと思います。従いまして、この闇は二割程度と私は考えているのであります。そうして今ポンド地域との取引は御承知通り貿易協定によつてつているのであります。ただ貿易協定が昨年の六月頃までは非常にこちらが輸出超過、向うは輸入超過である関係……、向うは買控え、こちらは買あせつた、こういうことでポンドが不足していることは御承知通りであるのであります。私は最近関係方面の方で東南アジア等を旅行された二、三の方に聽きまして、今三百六十円レートが十分引合うというようなことを、極く最近においても聽いているのであります。木村君とはポンドの闇なんかにつきましても見識を異にしているのでありますが、私はこの三百六十円なるが故に日本の貿易が非常に不振であるとは考えておりません。殊に南米等の取引におきましては、繊維品等におきまして三百六十円で十分やつて行ける。値段の問題、為替レートの問題ではないと私は只今のところ考えているのであります。
  243. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは、私は非常に今後の日本の貿易政策、或いはそれに関連する中小企業対策をお考えになる場合に重大な御答弁だと思うのです。最近の輸出、殊に中小産業の輸出が振わないというのは、為替レートの関係でないと、こういうふうに言われている。無論私も為替レートだけが輸出不振の原因だとは申しません。又この調査月報においては、それだけが輸出不振の原因だとは言つておりません。その他いろいろ中小企業自体の脆弱性とか、或いは又政府政策によると、中小企業では手の及ばない、いろいろな原因から中小企業は不振であると言つておりますから、為替レートが高いということだけが原因でないことは私も認めるのでありますが、それが相当大きな原因になつておる。実際問題としてこの点はやはり認めて、中小企業対策を私は講ずべきだと思います。單にこの場合において私の質問に簡單に答えればいいというのではなく、これはやはり真劍に中小企業の大きな問題として、殊に中小企業は貿易におけるウエートが大きいから、そういうことにおいてやはり真劍にレートの問題も、大蔵大臣は軽く考えておられるようでありますけれども、私はこれは今の日本のデフレの大きな原因となつておると思いますから、その点十分お考え願いたいと思います。  それからさつきのブラック・マーケットの相場ですが、これは為替銀行の極く最近の情報でありますから、為替銀行にお問合せになれば合ります。為替銀行の情報によるブラック・マーケットの相場でありますから、いろいろあると思います。それで一ドル九〇セントを割つておるというのはこれは全部割つておるというのではない。そういうレートもあるのです。これは調査されればきつと出て来ますから、御調査願いたいと思います。  それから更にこの貿易の見通しについては、大蔵大臣はこの予算の基礎として計画されておるような輸出ができるとお考えかどうか。それから大蔵大臣は協定貿易、協定貿易と言われますが、協定貿易は協定を結んだら必ず向うで輸入してくれるかどうか、そういうものであるかどうか、これは通産大臣としてお伺いいたします。
  244. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) どうも議論が個々の事実を捕えて、それを全般に押進めようとされるような議論であるのでありますが、今の闇の問題なんかも、大体のことはこれは時と所によつて違いますが、二割程度引下つておると申したのであります。直ぐそれで、一部で一ドル九〇セントを割つておるということでどうこう言われてもこれは議論にならないと思います。而して又輸出が思うように行かない場合におきましては、中小商工業者の或る種類のものにつきましては、殊に輸出業者は標ね円安になることを願つておるのであります。併し円安にいたしますと、輸入原料の問題から、いろいろの点から考えてましてなかなかうまく行かない。一部の輸出業者、一部の中小企業の輸出業者が特殊の原因でそうなつておるからといつて、直ちに三百六十円レートだから輸出ができないという結論に持つてつて頂くことは、これは困る問題だと思います。議論がどうも前からそういうふうになつておるようでありますが、私は全体を見てお答え申上げておる次第であります。  それから輸出の見通しはどうかというお話でございますが、先程申上げましたような状況によりまして、一月、二月のポンド地域に対しましての輸出は、先程申上げました原因によりまして、かなり不振でございます。大体月にポンド地域におきましては二千万ドルずつを予定いたしておりましたが、半分ちよつと割つておるような状況であるのであります。併しドル地域に対しましては、かなり殷賑を極めるという程でもございませんが、予定以上になつて参りまして、大体月四千万ドル程度の輸出になつております。而してポンド地域がそういうふうに半分以下になつております関係上、全体として落ちてるようでありますが、将来、即ち二十五年度の見通しといたしましては、六億ドルは十分確保できると思うのであります。これは今日通産委員会で問題になつたのでありますが、又最近関係方面を視察した人なんかの意見を聞きまして、どうしてもやはりプラント輸出、或いは輸出の特別金融措置を講じて、できるだけ長期資金を貿易の方に廻したい、こういうふうな考えで今願つておるのであります。これをやりましたならば、相当の輸出の実績が上り得ることと考えておるのであります。繰返して申上げまするが、六億ドルの輸出は確保できると自信を持つております。
  245. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 協定貿易というのは、性格はどういうのですか。一応輸出入の協定をしたら向うは買う義務があるのかどうか。
  246. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 協定貿易は買う義務をつけてはおりません。相互の関係でございます。而して協定貿易は今までの実積によりますと、そこまで行かない場合が相当あるのでございます。我々は相手国と話をいたしまして、できるだけ協定貿易に達するようやつておるのであります。協定貿易の数量は大体五億ドルを超えておるような状況でございまして、これを下廻りましても、六億ドルの輸出に対しまして、輸出計画が非常に支障を来すというふうなことはないと考えております。
  247. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、協定貿易というものは一応いわば紳士協定であるから、例えば採算によつてよそから……、もつと向うで、相手側で安く買えればよそから買つてもいいと、こういうことになる可能性はあるわけですね。
  248. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私はそこまでルーズなものとは考えておりません。これは協定貿易の内容によつては詳しくは存じませんが、大体法律上の義務があるところまでは行きませんが、とにかくバーターでございますから、こちらのものをこれを取る、向うからはこれを取る、こういうふうにして、その品目別に原則としてやつて行くことになつておると考えておるのであります。
  249. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その御答弁は一応分りましたが、併し結局これは商取引でありますから、結局コストの安いところから買うのは当然であつて、協定貿易を結んだからそれを基礎にしてこういう計画を建てたから安心である、こういうわけには行かないと思います。やはりそれについては今後の世界経済の情勢、それからまあポンドの成り行なんかも重大なエレメントだと思います。それでポンドの成り行についても大蔵大臣は二割程度の低落に過ぎないから……、現在はそうかも知れないが、ポンドについていろいろな問題があるわけなんですから、これについては十分関心を持たなければならんと思うのであります。  次に貿易の問題についてお伺いしたいんですが、貿易資金特別会計における二百五十億ですね。これはこの三月一杯に返済することに返済することになつておるわけですね。これは滯貨を処分して返済することになつておるのですが、その計画通り返済されるのでございましようか。
  250. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ポンドの闇値その他の動向につきましては、私は最も関心を持つておる一人であるのであります。ポンド切下げ後三ケ月間、イギリスにおきます金の保有量は殖えて来ております。闇はありましても今早急にイギリスがポンド引下げその他の措置をとらんだろうと私は想像いたしておるのであります。  次に御質問の貿易会計の二百五十億の繰入れにつきましては、予定通りつて行けると考えております。
  251. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 滯貨を処分せられて大体返済するということになつておるのですが、予定通りに返済できるものと思うというような御答弁ですが、実際に今の滯貨処分はマーケットを紊すので、一時中止されたように聞いておるのですが、それで本当に三月一杯に返済できるのですか。
  252. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 二百五十億の貿易資金借入金でありますが、これは只今木村委員は三月一杯というお話でありましたが、整理期間もございますので、その期間におきまして返済できるという見込みを持つております。
  253. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 整理期間というのは……
  254. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 整理期間として、四月一杯が整理期間になつております。
  255. 内村清次

    ○内村清次君 私達もまた大蔵大臣に対しましてうんと質問したいのでありますが、木村議員もまだ質問の途中であります。併しながら御承知通り質問者も随分後にたくさん控えていらつしやる。こういう状況ではまだなかなか時間もかかる。(笑声)こういうような状態でどうも我々といたしましては何と申しますか、その……與党の誠意を疑います。そこでもう相当時間も経つておりますし、これで大分今日は勉強したので……。(「賛成、異議なし」と呼ぶ者あり)
  256. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) どうですか。
  257. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 まだ残つておりますが明日に保留して……
  258. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後五時三十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            内村 清次君            岩木 哲夫君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岩崎正三郎君            木下 源吾君            和田 博雄君            羽生 三七君            森下 政一君           池田宇右衞門君            石坂 豊一君            岡崎 真一君            小串 清一君            小林米三郎君            城  義臣君            團  伊能君            堀  末治君            安達 良助君            藤森 眞治君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            伊達源一郎君            玉置吉之丞君            藤野 繁雄君            帆足  計君            松村眞一郎君            藤田 芳雄君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 殖田 俊吉君    大 蔵 大 臣    通商産業大臣  池田 勇人君    文 部 大 臣 高瀬荘太郎君    農 林 大 臣 森 幸太郎君    郵 政 大 臣    電気通信大臣  小澤佐重喜君    建 設 大 臣 益谷 秀次君    国 務 大 臣 青木 孝義君    国 務 大 臣 樋貝 詮三君   政府委員    内閣官房副長官 菅野 義丸君    地方自治政務次    官       小野  哲君    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主計局次長) 石原 周夫君    大蔵事務官    (主税局調査課    長)      忠  佐市君    通商産業政務次    官       宮幡  靖君    通商産業事務官    (通商化学局    長)      長村 貞一君    通商産業事務官    (中小企業振興    部長)     記内 角一君    経済安定事務官    (総裁官房長) 平井富三郎君    経済安定事務官    (動力局長)  増岡 尚士君    経済安定事務官    (財政金融局    長)      内田 常雄君    経済安定事務官    (物価庁第一部    長)      渡邊喜久造君